主文 1 被告a及び被告bは奈良県に対し、各自金543万6667円及びこれに対する平成9年8月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告奈良県知事cが、被告a及び被告bに対し、同人らが平成6年度に支出した食糧費名目の支出金543万6667円の返還請求を怠ることは違法であることを確認する。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は被告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告a及び被告bは奈良県に対し、各自金551万1248円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告奈良県知事cが、被告a及び被告bに対し、同人らが平成6年度に支出した食糧費名目の支出金551万1248円の返還請求を怠ることは違法であることを確認する。 第2 事案の概要本件は、奈良県の住民である原告らが、奈良県東京事務所(以下「東京事務所」という)が平成6年4月1日から同年10月末日までの間にかけて中央官庁の職員等との懇談等を実施したとして支出した費用等を奈良県の公金(食糧費)から支出したのは違法であると主張して、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、奈良県に代位して上記支出命令権限を有する職員であった被告a及び被告bに対し、各自金551万1248円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による損害賠償の支払いを求めるとともに、同条同項3号に基づき、被告奈良県知事cが、被告a及び被告伊藤に対し、同人らが支出した上記金額の返還請求を怠ることは違法であることの確認を求めている住民訴訟である。 1 争いのない事実等(1) 原告らは奈良県の住民である。 (2) 被告aは平成6年度の東京事務所長、被告bは同年度の東京事務所次長の地位にあった者 違法であることの確認を求めている住民訴訟である。 1 争いのない事実等(1) 原告らは奈良県の住民である。 (2) 被告aは平成6年度の東京事務所長、被告bは同年度の東京事務所次長の地位にあった者である。 (3) 被告奈良県知事cは奈良県を統括し代表するとともに予算の執行、会計の監督等の事務を担任し、奈良県執行機関及び県職員に対し包括的な指揮監督権限を有する者である。 (4) 奈良県における予算の執行は、知事が担任するとされているが(地方自治法149条2号)、東京事務所における食糧費の支出負担行為及び支出命令については東京事務所長に権限委任され(奈良県会計規則3条)、所長が不在のときには次長が代決できるとされている(奈良県事務決裁規定8条)。 (5) 東京事務所は、奈良県行政組織規則に基づいて設置された財政課を主幹課とする奈良県の出先機関であり、その所掌事務は、①中央官庁との連絡に関する事柄、②宿泊に関する事柄、③農林産物の流通情報の提供に関する事柄、④観光・物産の宣伝及び紹介に関することとされている。 (6) 食糧費とは、予算科目としては需要費(節)の細節であり(地方自治法施行規則15条2項別記参照)、需要費、すなわち地方行政事務に伴い必要とされる消費的な物品の取得及び修理等に要する経費等のほか一般的にその効用が短期間に費消される経費の一種として、行政事務、事業の執行内部的、直接の必要に基づいて費消される経費であって、各種会議用、式日用茶菓、接待用茶菓、弁当、非常炊出賄、警察留置人食料、病院、療養所等の患者食糧、宿泊所、保育所等の賄料等がこれに該当するとされている。 (7) 東京事務所は、平成6年4月6日から同年10月27日にかけて、食糧費から、別表記載分の支出(以下、「本件各支出」という。)を含む、執行件数269件、金額にして181 に該当するとされている。 (7) 東京事務所は、平成6年4月6日から同年10月27日にかけて、食糧費から、別表記載分の支出(以下、「本件各支出」という。)を含む、執行件数269件、金額にして1811万5734円を中央官庁の職員等との懇談や、来訪者などへの食事、残業夜食代等として支出した。 本件各支出は、いずれも被告bが代決して決済していた。 (8) 原告らは、平成9年4月16日、奈良県監査委員に対し、本件各支出の公金(食糧費)からの支出について地方自治法242条1項に基づく監査請求をしたところ、監査委員は、同年6月25日、原告らに対し、監査結果を送付するとともに同日付で公告したが、その内容は、監査請求にかかる食糧費の支出の一部について、事実関係をさらに調査解明し、相当でないと認められるものについては、当該支出した費用のうち相当額について奈良県に対する損害の補填をするなどの措置を講ずることを奈良県知事に勧告するにとどまった。 (9) 奈良県は、平成9年6月5日、副知事を委員長とする「食糧費調査委員会」(以下「調査委員会」という。)を設置し、東京事務所における平成6年度から平成8年度までの食糧費の執行状況に関する実態を調査した。その結果、調査委員会は、平成9年9月19日、職員間の懇談と認められたもの、あらかじめ業者へ前払していたもの、支払手続を簡略化するため、過去において複数回実施した懇談等の支払をまとめて行ったもの、懇談の実態が明確に確認できなかったもの、懇談の実態が確認できたが、バー・クラブ等で懇談を行っていたもの、同様に懇談の実態が確認できたが、予算執行の都合等から実態と異なる相手方を記載していたものについては、不適正なものとする、食糧費調査結果報告書(以下「報告書」という。)をとりまとめた。 これを受け、平成10年1月30日、上 たが、予算執行の都合等から実態と異なる相手方を記載していたものについては、不適正なものとする、食糧費調査結果報告書(以下「報告書」という。)をとりまとめた。 これを受け、平成10年1月30日、上記不適正とされた支出約2億909万円及びこれに対する法定利息を含めた2億2838万7644円が財団法人奈良県職員互助会によって一括返済され、さらに1000万円が知事の給与等の減額により補填された。これらの措置により、不適正と判断された支出1260万4486円も奈良県に返還された。 (10) 平成6年4月6日から同年10月27日までの間の支出に関し、結果報告書により適正な執行と判断され、補填されなかったものは、本件各支出、すなわち、別表記載の72件、金額にして551万1248円である(なお、別表の各支出に付した番号は、1からの連番となっていないが、本件事案の理解の便宜のため、原告らの平成10年4月22日付準備書面添付の別表一による番号を踏襲している。)。 3 争点(一) 本件各支出を奈良県の公金(食糧費)から支出したことは違法か。 (二) 被告a及び同bは本件各支出について奈良県に対し損害賠償責任を負うか。 (三) 被告知事が、上記被告らに対し、上記損害賠償責任に基づく金員を奈良県に返還を求めていないことは違法か。 4 争点に関する当事者の主張(原告らの主張)上記2の争いがない事実等(10)において調査委員会の結果報告書により適正と判断された本件各支出の72件、金額にして551万1248円の支出すべてが違法な支出である。 (一) 中央官庁の職員を相手方とする懇談等に伴う食糧費支出(合計34件。別表番号9、11、14、16、17、19、26、28、30、33、37、38、40ないし42、47、50、55、57、65、68、76、80ないし8 方とする懇談等に伴う食糧費支出(合計34件。別表番号9、11、14、16、17、19、26、28、30、33、37、38、40ないし42、47、50、55、57、65、68、76、80ないし82、86、89、95、141、164、210、221、239、246。以下「本件中央官庁職員に関する支出」という。)の違法性(1) 地方自治体は他の団体と異なり、住民の公租公課によって賄われており、住民の信託に基づいて、法律・条例にしたがって、住民の福利の増進を目的として事務を遂行すべき性質を有するものであることにかんがみると、対外的接遇に当たっても一層の制約があってしかるべきであり、地方公共団体の事務を処理するに当たっては最少経費で最大の効果を挙げることが要請されるとともに(地方自治法2条13項(現行14項))、その経費は目的を達成するための必要かつ最少限を超えてはならない(地方財政法4条1項)といった法の趣旨は十分に尊重されるべきである。 かかる法の趣旨をふまえるならば、予算執行時の経済状態、国民の消費及び生活水準等の諸事情に加え、当該接遇を必要とする行政事務の性質、内容、目的、効果等をも勘案し、社会通念上相当な範囲内にあると認められることが必要である。 さらに、上記支出が食糧費からされている場合には、行政事務等の執行上直接に費消される経費であるという食糧費の性質にかんがみ、当該行政事務等の存在が明確にされるとともに上記支出と事務執行との間に直接の関連性が認められることをも要すると解すべきである。 したがって、本件各支出についても、上記の観点からみて、これが社会通念上相当な範囲を超えており、予算執行権限を有する財務会計職員の裁量を逸脱していると認められる場合には、違法と解される。 (2) 以上を前提にすれば、本件中央官庁職員に関する支出は みて、これが社会通念上相当な範囲を超えており、予算執行権限を有する財務会計職員の裁量を逸脱していると認められる場合には、違法と解される。 (2) 以上を前提にすれば、本件中央官庁職員に関する支出は違法である。 ① 本件中央官庁職員に関する支出にかかる懇談の目的、実態からして、違法である。すなわち、これらの支出にかかる懇談等でされたという情報交換、要望、相談の具体的内容が全く不明であること、懇談の相手方の所属・地位等が曖昧不明なものも多いこと、懇談の準備の際も相手方には事前に懇談のテーマを個別具体的に伝えることもなかったこと、懇談のために用いる資料なども作成しないことが多かったこと、懇談の内容を記録したりする役割の者もいなかったこと、食事の場所も飲食店やホテルがほとんどであること、食事が提供されると食事に専念して誰も話をしないこともあったこと、食事の内容も高額で明らかに酒類が提供されている場合も多いこと、酒類を提供している場合は相手方との懇親を進める意図があったこと、事後に懇談の内容を記録に残したりすることもなく、懇談の内容に関して関係部局へ連絡する場合も口頭で行われていたに過ぎないこと等の事情が認められ、これらの事情に照らせば、本件中央官庁職員に関する支出にかかる懇談等は、相手方との飲食そのものが目的化しており、情報交換、要望、相談が具体的に行われたとの事情は存在しない。 ② 中央官庁の職員との間において、飲食を伴う懇談を行う必要性、飲食提供の効果からしても違法である。すなわち、中央官庁の職員との飲食を伴う懇談については、平成8年ころから住民監査請求や市民からの異議申し立てがあり、それ以降はできる限り不必要な食糧費の支出は抑制するようになり、平成10年4月1日に食糧費の運用マニュアルができて以降、一切していないこと、現在は通常の時間帯 査請求や市民からの異議申し立てがあり、それ以降はできる限り不必要な食糧費の支出は抑制するようになり、平成10年4月1日に食糧費の運用マニュアルができて以降、一切していないこと、現在は通常の時間帯で中央官庁への要望を行っていること、中央官庁の職員に飲食のもてなしをすることでどういった利益があがったのか不明であること、中央官庁の職員との飲食を伴う懇談をしなくなってから、そういった懇談を行っていた時代ならば得られたであろう情報が得られなくなったり、あるいは要望や相談に応えてくれなくなるといった困った事態は、少なくとも被告bの立場では生じていないこと等の事情からすると、本件中央官庁職員に関する支出はその必要性も効果もない。なお、県職員が、仮に中央官庁の職員との間で情報交換、要望、相談を目的として懇談する必要があったとしても、これらの目的は中央官庁の職員に対して飲食を提供しなくても十分に達成でき、飲食提供の効果は極めて疑問であり、その必要性は認められない。このように、中央官庁の職員に対する飲食の提供が、現実の効果及び必要性の点で極めて強い疑問があるほか、そもそも、中央官庁の職員は国家公務員であり、全体の奉仕者として職務の公平性が要求されるものである以上(憲法15条2項、国家公務員法82条1項3号、96条1項等)、飲食提供の有無や多寡によって地方自治体に対する情報提供、要望、相談への対応に差異が生じることは本来あってはならないはずである。 ③ 当該行政事務等の存在の明確性もないし、上記支出と事務執行との間に直接の関連性もない。すなわち、懇談の目的は中央官庁との情報交換、要望、相談とされているが、具体的にいかなる情報交換、要望、相談がされたのか全く不明であり、むしろ、飲食そのものが目的であった疑いが濃い。したがって、行政事務等の存在が明確になって 庁との情報交換、要望、相談とされているが、具体的にいかなる情報交換、要望、相談がされたのか全く不明であり、むしろ、飲食そのものが目的であった疑いが濃い。したがって、行政事務等の存在が明確になっているとは到底い難い。また、食糧費の支出された飲食に伴い具体的な情報交換、要望、相談がされた形跡がない以上、上記食糧費の各支出と中央官庁との情報交換、要望、相談といった事務執行との間には直接の関連性もない。 ④ 中央官庁の職員に対する飲食の提供と国家公務員倫理上の弊害国家公務員倫理法(平成12年4月1日施行)は、国の職員が利害関係者から供応接待を受けること及び利害関係人と飲食をすることを禁止しており(国家公務員倫理規程3条1項6、7号)、許認可のみならず、補助金等の交付事務の相手方、行政指導の相手方も利害関係人に当たる。したがって、同法及び同規程に照らせば本件のような中央官庁の職員との飲食を伴う懇談はそのほとんどが禁止されるべきものである。なお、本件の食糧費支出は、同法及び同規程の施行の約5、6年前に行われたものである。しかし、同法及び同規程は国家公務員の倫理として従前から普遍的に禁止されてきた事項を改めて確認したものにすぎないと解すべきである。 ⑤ 以上のように、本件中央官庁職員に関する支出にかかる飲食については、奈良県職員が中央官庁との間において、情報の交換、要望、相談を行う必要上提供されたものとされている。しかし、上記のとおり、これらの支出にともなう飲食の際、情報交換、要望、相談が具体的に行われた形跡がなく、むしろ飲食そのものが目的であった可能性が濃厚であること、当該行政事務等の存在の明確性も、上記支出と事務執行との間に直接の関連性もないこと、情報交換、要望、相談といった目的があったとしても、相手方たる中央官庁の職員に飲食を提供することの必 濃厚であること、当該行政事務等の存在の明確性も、上記支出と事務執行との間に直接の関連性もないこと、情報交換、要望、相談といった目的があったとしても、相手方たる中央官庁の職員に飲食を提供することの必要性及びその効果については強い疑問があること、むしろ、中央官庁の職員に殊更飲食を提供することは、国家公務員の倫理に反する行為を助長する結果となり、国民の行政に対する不信を増幅させる結果となって、弊害の方が大きいこと、ましてや、これらの支出が、飲食そのものを目的としている疑いが濃厚である以上、法律の有無にかかわらず、このような飲食の提供を受けることによって、惹起される国民の行政への不信は極めて大きいと考えられること、以上を総合すると、中央官庁職員に関する支出は社会通念上も相当な範囲を超えており、予算執行権限を有する財務会計職員の裁量を逸脱し、違法であることは明らかである。 (二) 全国知事会職員ないし他の都道府県職員を相手方とする懇談、懇親、打合せ等に伴う食糧費支出(合計5件。別表番号21、43、45、101、247。 以下「本件全国知事会職員等に関する支出」という。)の違法性(1) 全国知事会の公的性格全国知事会に関しては次のような理由から、都道府県職員を相手方とする懇談に伴う食糧費支出と同様に考えられるべきである。 全国知事会とは、全国の知事によって組織され、「各都道府県間の連携提携を緊密にして、地方自治の円滑な運営と進展を図る」ことを目的として設立された団体であり、その設立について地方自治法263条の3第1項に基づき、総務大臣(当時は自治大臣)に届出をしている。 また、同第2項により「地方自治に影響を及ぼす法律又は政令その他の事項に関し」、内閣に対し意見を申し出、国会に対する意見書の提出することが認められている。その他、「各都道府県の に届出をしている。 また、同第2項により「地方自治に影響を及ぼす法律又は政令その他の事項に関し」、内閣に対し意見を申し出、国会に対する意見書の提出することが認められている。その他、「各都道府県の事務に関する連絡を行うこと」「地方自治の推進を図るため必要な施策の立案及び推進に関すること」「諸外国との友好交流に関すること」等の事業を行っている。運営については各都道府県の分担金によっている。 また、財団法人都道府県会館所有の建物に事務局を置いている。 以上のように、全国知事会は、全国の知事によって組織され、地方自治体の支出によって運営され、地方自治体の事務、地方自治に関連する事業を行っている公的性格を有する団体である。したがって、その職員との懇談に伴う食糧費の支出も都道府県の職員の場合と同様に考えられる。 (2) 本件全国知事会職員に関する支出についても、中央官庁職員に関する支出において論じたのと同様に考えるべきである。 すなわち、飲食の際に具体的な情報交換等がされた形跡がなく、飲食そのものが目的であった可能性が濃厚であること(出席者1人あたりの支出は別表番号21が2万4150円、同45が1万2000円、同101が4289円、同247が2884円、なお、同247ついては近畿各府県の東京事務所長8名が出席者であるにもかかわらず、奈良県が全額負担していることになっている。)、当該行政事務等の存在の明確性も、上記支出と事務執行との間に直接の関連性もないこと、情報交換、要望、相談といった目的があったとしても、相手方たる他の地方自治体の職員に飲食を提供することで効果があがるのかどうか疑問であること、他の地方自治体の職員に殊更飲食を提供することは、地方公務員の倫理に反する行為を助長する結果となり、地方行政に対する不信を増幅させる結果となって、弊害の方が とで効果があがるのかどうか疑問であること、他の地方自治体の職員に殊更飲食を提供することは、地方公務員の倫理に反する行為を助長する結果となり、地方行政に対する不信を増幅させる結果となって、弊害の方が大きいこと等の事情に照らし、違法である。 なお、国家公務員倫理法は、地方自治体についても同法に準じて倫理保持のため必要な施策を講ずるべきものとされているところである(同法43条)。 (三) 民間人(企業)を相手方とする懇談、懇親、打合せ等に伴う食糧費支出(合計10件。別表番号18、32、56、94、96、99、104、229、234、237。以下「本件民間人に関する支出」という。)の違法性(1) 青果市場役員等に対する飲食提供奈良県産青果物の京浜市場・流通促進会役員及び太田市場役員と県職員との飲食6件(別表番号18、96、99、104、229、237)のうち、証拠上、酒類も提供されたことが明らかなものが4件(別表番号18、96、104、229)、1人あたりの飲食代金が5000円を超えるものが1件(別表番号99。5115円)である。 懇談の具体的内容も何ら明らかではなく、懇談の効果についても具体的に検証することは不可能である。 したがって、飲食、飲酒そのものが目的であったといわざるを得ず違法である。 (2) 報道機関の記者等に対する飲食提供奈良新聞社の職員(記者)と県職員との飲食3件(別表番号32、56、94)についても、証拠上、酒類が提供されたことが明らかなものが1件(別表番号94)あり、すべてにおいて1人あたりの飲食代金が5000円を超えている(最高は別表番号32の1万5931円、最低でも別表番号94の5527円)。 上記各支出に関係する懇談の具体的内容については何らの記録も存在せず、それ自体明らかではない。したがって、飲食、飲酒 いる(最高は別表番号32の1万5931円、最低でも別表番号94の5527円)。 上記各支出に関係する懇談の具体的内容については何らの記録も存在せず、それ自体明らかではない。したがって、飲食、飲酒そのものが目的であった可能性が高い。 仮に情報交換の必要性があったとしても、報道機関から取材を受けたり情報交換したりすることは、飲食を提供しなくても可能であり、現在は飲食の提供を一切しないで情報交換したりしているのであるから、酒類を含む高額な飲食を提供する必要性はない。 ましてや、「報道機関の報道は、民主主義社会において、国民が国政に関与するにつき、重要な判断の資料を提供し、国民の『知る権利』に奉仕するものである。」とされ、公的性格を有するのであって、行政にとって不都合なことでも報道すべき社会的使命を有する以上、報道機関に対して飲食を無償で提供することは、報道機関のかかる社会的使命を阻害することにもつながりかねず弊害も大きい。 したがって、上記各支出も違法といわざるを得ない。 (四) 奈良県職員の残業夜食代に関する食糧費の支出(合計20件。別表番号224、244、245、251ないし261、263ないし268。以下「本件残業夜食代に関する支出」という。 )及び奈良県職員のみの飲食に関する食糧費の支出(合計2件。別表番号203、240。以下「本件職員のみに関する支出」という。)の違法性(1) 給与条例主義の原則地方自治法は、「給料、手当及び旅費の額並びにその支給方法は、条例で定めなければならない。」とし(同法204条3項)、いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基く条例に基かずにはこれを職員に支給できない旨規定する(同法204条の2、いわゆる給与条例主義)。地方公務員法にも同様の規定がある(同法24条6項、25条1項)奈良県において も法律又はこれに基く条例に基かずにはこれを職員に支給できない旨規定する(同法204条の2、いわゆる給与条例主義)。地方公務員法にも同様の規定がある(同法24条6項、25条1項)奈良県においても、上記のように地方自治法及び地方公務員法所定のいわゆる給与条例主義に基づき、「一般職の職員に関する条例」(昭和32年9月10日奈良県条例第33号)が定められ、給料や諸手当が支給されているが、本件残業夜食代に関する支出や本件職員のみに関する支出を根拠づける規定は一切ない。 そして、実質上も、職員に対して法律又はこれに基づく条例によらない「いかなる給与その他の給付」も支給されることのないよう、「宿舎、食事、制服その他生活に必要な施設等の全部または一部が職員に支給される場合においては・・・その相当額を、その職員の給料から控除する。」とされている(同条例3条2項)。 (2) 給与条例主義と本件残業夜食代に関にする支出の違法性東京事務所の奈良県職員の残業夜食代等は、本件残業夜食代等が支出された当時、通常職員が3時間程度残業をする場合については東京事務所の所長の権限で残業夜食代をとることを認めていた。したがって、3時間程度の残業した職員に対しては、実質上、残業夜食という名目で「食事」という「給付」がされてきたことになる。 ところが、本件残業夜食代は食糧費から支出されている。食糧費は、「歳出の予算にかかる節の区分は、別記のとおり定めなければならない。」という地方自治法施行規則15条2項を受けて定められた「歳出予算に関する区分」の中の「需用費」という節の中に含まれており、本来、職員の残業夜食代に支出されることを予定していないというべきであって、これを職員の残業夜食代に当てる法令上の根拠は何ら存在しない。 そして、同条例3条2項の趣旨に従い、食糧費から残 れており、本来、職員の残業夜食代に支出されることを予定していないというべきであって、これを職員の残業夜食代に当てる法令上の根拠は何ら存在しない。 そして、同条例3条2項の趣旨に従い、食糧費から残業夜食の給付を受けた職員について、その給料から当該残業夜食代相当額が差し引かれたといった事情も存在しない。 よって、食糧費から職員の残業夜食代を支出することは、金額の多寡を問わず、給与その他の給付も法律又はこれに基づく条例に基づかずにはこれを職員に支給できないとする地方自治法204条の2、地方公務員法25条1項に反して違法である。 (3) 本件残業夜食代に関する支出の実質的違法性実質的に見ても、残業する職員には超過勤務手当(前記条例13条)等が支給されることになっており、更に残業夜食代を公費から支出すべき必要性は認められない。 のみならず、本件残業夜食代は、通常職員が3時間程度残業をする場合については東京事務所の所長の権限で残業夜食代をとることが認められ、かかる基準で毎月残業夜食代が食糧費から支出されていたのであって、次のような事情をみればその支出は恒常的になされていたと認められる。 すなわち、本件残業夜食代支出後の平成9年4月ないし同年12月の間においても毎月職員の残業夜食代が支出されている。また、奈良県の調査によれば、所属人員の少ない東京事務所だけに限ってみても平成6年度の残業夜食代が現に108万7179円に上っているのである。 このような法令上の根拠のない支出(職員に対する「給付」)が適法として恒常的になされることになると、奈良県庁全体では多額の食糧費が法令の根拠なく、職員の残業夜食代として支出される危険にさらされることになり、ひいては、給与条例主義の趣旨が没却されかねない。 (4) 本件職員のみに関する支出の違法性また、奈 では多額の食糧費が法令の根拠なく、職員の残業夜食代として支出される危険にさらされることになり、ひいては、給与条例主義の趣旨が没却されかねない。 (4) 本件職員のみに関する支出の違法性また、奈良県職員のみの飲食(合計2件。別表番号203、240)についても、かかる飲食が許される何らの基準も示されていない。かかる飲食は、前記の残業夜食代について支出が許される内部的な基準が一応存在したのと比べても、極めて恣意的に行われたといわざるを得ず、給与条例主義に反することは一層明らかである。 (5) 違法支出に対する是正措置の存在なお、奈良県においては平成10年4月以降、食糧費の運用マニュアルが実施されてからは残業に伴う夜食についても食糧費が支出されることはなくなっている。 このことは、食糧費から職員の残業夜食代を支出することの不当性を奈良県が実質上認めたからに他ならない。 (6) 以上により、食糧費からの本件残業夜食代に関する支出及び本件職員のみに関する支出は、金額の多寡を問わず地方自治法204条の2、地方公務員法25条1項及びこれらの諸規定を受けて定められた同条例3条2項の趣旨に反して違法である。 (7) 目的外使用の違法性来客用飲み物とされている麦茶等の支出(1件。別表番号269)は、その内容は「現像料」、「プリント」など明らかに食糧費でないものが含まれており、違法な支出である。 (五) 被告a及び被告bの責任(1) 東京事務所長及び次長の権限前記争いがない事実等記載のとおり、被告aは、本件各支出当時の東京事務所長として、被告bは本件各支出当時の東京事務所次長として勤務していた。 東京事務所長は、奈良県会計規則3条に基づき、東京事務所における食糧費支出に関する支出負担行為や支出命令に関する権限を委任されている。また、所長が不在のと 当時の東京事務所次長として勤務していた。 東京事務所長は、奈良県会計規則3条に基づき、東京事務所における食糧費支出に関する支出負担行為や支出命令に関する権限を委任されている。また、所長が不在のときには次長が代決できるとされている(奈良県事務決裁規定8条)。 本件各支出については、前記争いがない事実等記載のとおり、被告bが代決していたものである。 (2) 被告a及び同bの責任以上の事実に照らせば、決裁権者である被告aは、代決者が違法な財務会計上の行為を行わないようにこれを指揮監督すべ議務があるにもかかわらずこれを怠ったものであり、また代決をした被告bは、これまで東京事務所の本件各支出の具体的な必要性や相当性について何ら精査、検討することなく、漫然と上記各食糧費支出にかかる代決を行ったものであり、このことについて少なくとも過失があること。 したがって、被告a及び同bは、奈良県に対して本件各食糧費支出に相当する金額について損害賠償の責に任ずべきであることは明らかである。 (六) 損害賠償請求を怠る事実の違法性被告a及び同bの過失による本件各食糧費の支出に関し、被告知事は、被告らに対し損害賠償を求めて奈良県が被った損害を回復すべき法律上の義務があるのに漫然これを怠っているものであり、被告知事の上記不作為は違法である。 (被告らの主張)(一) 東京事務所の業務目的と本件各支出の適法性(1) 東京事務所の所掌事務は前記争いがない事実記載のとおりであり、主要な業務として、中央官庁、全国知事会等の各種団体、国会議員及び各都道府県等との連絡調整を図りつつ、県庁の各部局と密接に連絡を取りながら、情報収集並びに情報交換及び要望活動等を行っており、これらの活動は、県勢の発展及び県民生活の向上を図っていく上で、極めて重要なものであり、特に財政基盤の脆弱な 、県庁の各部局と密接に連絡を取りながら、情報収集並びに情報交換及び要望活動等を行っており、これらの活動は、県勢の発展及び県民生活の向上を図っていく上で、極めて重要なものであり、特に財政基盤の脆弱な奈良県にとっては、より早く的確かつ有益な情報を得ることが必要不可欠である。 したがって、中央官庁の職員等との懇談は、原告らが主張するような単なる接待を目的とするものではなく、県の事務事業をより円滑に執行するため、関係者と意見交換や調整するための渉外活動の一環として行われるもので、さらに、関係機関との意志の疎通を図り、信頼関係を築くことにより、奈良県への理解と協力を得るとともに、事業を進めていく上で必要かつ重要な情報を得ることを目的として行われていたものである。 (2) そして、行政事務、事業の執行上の直接の必要に基づいて費消される経費である食糧費をどの程度支出するかは基本的には当該支出権限を有する職員の裁量に委ねられており、上記支出が裁量の範囲内といえるには社会通念上相当の範囲内である必要があることはいうまでもないが、相当性の判断については、職務執行との関連、支出を必要とする事情、相手方、内容等を加味して判断することになる。 (二) 本件各支出の適法性本件各支出は、中央官庁の職員との懇談、全国知事会外他の都道府県職員との懇談、民間人との懇談、叙勲者に対する昼食の提供、職員に対する夜食代の提供等の5種に大別されるところであるが、それぞれの支出についての行政目的は何ら問題はない。すなわち、中央官庁の職員との懇談は、県の事務をより円滑に執行するため、中央官庁との間で意見交換や連絡調整を、全国知事会外他の都道府県職員との懇談は、全国知事会等の各種団体や他の都道府県からの情報収集や意見交換を、民間人との懇談については、農林産物の流通情報の収集及び提 央官庁との間で意見交換や連絡調整を、全国知事会外他の都道府県職員との懇談は、全国知事会等の各種団体や他の都道府県からの情報収集や意見交換を、民間人との懇談については、農林産物の流通情報の収集及び提供、また、奈良県の最新情報の提供を、叙勲者に対する昼食の提供については、奈良県からの叙勲対象者に対する祝いを兼ねており、奈良県民に対する福利厚生を、職員に対する夜食代の提供等は、職員に対する福利厚生を、それぞれの行政目的として支出され、いずれも社会通念上相当の範囲内にあり、何ら食糧費の支出には裁量を逸脱した違法はない。詳述すれば、以下のとおりである。 (1) 中央官庁職員に関する支出について(なお、以下において中央省庁等の呼称はいずれも支出当時のものである。)① 中央官庁の職員との懇談については、原告らが主張するような単なる接待を目的とするものではなく、県の事務事業をより円滑に執行するため、関係者と意見交換や調整するための渉外活動の一環として行われるもので、さらに、関係機関との意志の疎通を図り、信頼関係を築くことにより、奈良県への理解と協力を得るとともに、事業を進めていく上で必要かつ重要な情報を得ることを目的として行われていたものである。 例えば、別表番号14の支出については、運輸省における奈良県人会の者との懇談であり、リニア中央新幹線や京阪奈新線のことが話されている。同19の支出については、大蔵省主計局の担当官と、奈良県が行う政府要望の情報交換や国の来年度予算の方針等について話がされている。同28の支出については、文部省施設助成課の公立学校の施設助成についてのヒヤリングの後に行われたもので、文部省の同課職員と公立学校の施設助成について話がなされている。同40の支出については、国土庁防災企画官との懇談であり、国土庁全般についての情報収集が行 助成についてのヒヤリングの後に行われたもので、文部省の同課職員と公立学校の施設助成について話がなされている。同40の支出については、国土庁防災企画官との懇談であり、国土庁全般についての情報収集が行われている。同76、同80、同141はいずれも自治省幹部との懇談であるが、それぞれ、都道府県の政府要望についての奈良県の実状、奈良県の新しい予算概要等について説明を行うなどしているのである。 なお、各懇談について議事録の作成等はされていないが、口頭ではあるものの、当日話をしたい事項については相手方に伝えているところであるし、出席者は東京事務所の所長や次長らに対して報告を行っていたのである。 原告らは、現在奈良県が中央官庁の職員等との懇談を行っていなくても事務遂行に困難が生じていないから、本件支出の当時も支出の必要性はなかった主張するが、本件支出がされていた時期の状況を捨象してそのような判断を行うことはできないはずである。 ② 上記各懇談は飲食を伴っているが、中央官庁の職員等と必要な意見交換、情報収集を行う場合には、相手方の日程の都合上、夕刻の食事時の時間帯しか日程調整ができないような場合も多々あるのである。そのような時間帯に懇談することとなった場合に食事を提供することは社会通念上相当な範囲の行為である。 また、酒類の提供が直ちに問題とはいえない。中央官庁の職員等と必要な意見交換、情報収集を行うためには上記職員らと人的な信頼関係を作る必要があり、酒類の提供がその際の潤滑油的な役割を果たしていることは事実なのである(人間関係を構築することも情報収集のためには時に必要であり懇親的な要素があったから問題であると即断することはできない。)。したがって、懇談に際しての食事の提供という行為自体に社会的必要性を認めることができる状況の下酒類が提供されたと めには時に必要であり懇親的な要素があったから問題であると即断することはできない。)。したがって、懇談に際しての食事の提供という行為自体に社会的必要性を認めることができる状況の下酒類が提供されたとしても、酒類の提供が上記のような目的をもってされている以上、酒類の提供をそれだけ取り出して評価するべきではなく、全体としてみれば社会通念上なお相当な範囲内にある。 なお、本件支出がされていた時期は奈良県以外の各地方公共団体においても出先機関である各地方団体の東京事務所においては、本件支出と同様の支出は奈良県以上に行われていたのである。そのような状況の中で、必ずしも盤石の財政的基盤を有していない奈良県が他の地方公共団体が情報収集のために行っていた行為を行わないという選択肢を取ることはできなかったし、また、中央官庁の職員も本件のような懇談を情報交換の場として位置付けていたことは明らかである。したがって、原告が主張するように、現在行っていなくても事務遂行に支障がないのであるから、本件支出当時も支障はなかったはずであり、本件支出の必要性はなかったとは、一概にはいえない。 (2) 本件全国知事会職員等に関する支出について全国知事会等との懇談については、中央官庁や他の自治体の動向を入手することを目的として開催されたものであり、このような情報交換の場を設けその際食事をとることが問題とまではいえない。 例えば、別表番号21の支出については、全国知事会事務局職員との懇談であるが、同19の支出と同じく奈良県の行う予算要望の関係で情報を入手することや各都道府県の動向を入手するために行われたものである。同43、同45の各支出については、それぞれ、東京事務所と同じビルの同じフロアーに入っていた都道府県の、近畿の他府県の東京事務所職員との懇談であるが、これらについ を入手するために行われたものである。同43、同45の各支出については、それぞれ、東京事務所と同じビルの同じフロアーに入っていた都道府県の、近畿の他府県の東京事務所職員との懇談であるが、これらについては、他府県の動向をつかむこと及び事務が円滑に推進するようにお互いの懇親を目的に行われたものである。 (3) 本件民間人に関する支出についてこれらの懇談は、農林産物の流通情報の収集及び提供、また、奈良県の最新情報の提供を目的として行われたものであり、奈良県として積極的に推進されるべき活動である。民間人から情報を収集し、広報活動の一翼を担ってもらうために場を設けた際に、飲食等を提供することが許されないとまではいえない。 例えば、別表番号32、56、94の支出については、地元新聞社東京支社との懇談であるが、奈良県に関わる首都圏での諸活動(県及び市町村の各官庁等への要望活動、各種全国大会等の開催状況、奈良県出身者や奈良と関わりのある人への取材等)について、情報交換や情報提供等を行ったものである。これらの具体的な成果も新聞記事等によって現れている。 また、別表番号18、96、99、104、229、237の各支出は、東京都中央卸売市場太田市場の関係者との懇談に関するものであるが、奈良県は、同市場内(事務棟・4階)に奈良県東京事務所奈良農産物事務所を設置し、職員1名が常駐し奈良県内の農産物の首都圏での販路を拡大し、また、出荷量や価格調整を迅速・的確に行うための情報収集や情報交換を行っているところである。そして、首都圏には、青果を取り扱う卸売市場が約20カ所あり、それらの市場の卸売会社の関係者で「京浜奈良会」を設置し、情報交換や情報収集活動等を行っていたが、上記支出はこれらの関係者と、次の販路拡大に繋げるべく、出荷した農産物の品質に対する市場の評価 あり、それらの市場の卸売会社の関係者で「京浜奈良会」を設置し、情報交換や情報収集活動等を行っていたが、上記支出はこれらの関係者と、次の販路拡大に繋げるべく、出荷した農産物の品質に対する市場の評価や苦情に迅速・的確に対処するため実施したものである。 これらの懇談等を通して得た情報は県農林部や県下生産団体に通知され、販路拡大や価格維持等を図る成果を挙げているのである。 ちなみに、丙6、7号証は、上記各支出の後である平成8、9年に行われた同種の懇談であるが、添付されている案内状には平成8年度の柿や農産物の販売結果や平成9年度の取組等が議題とされていることが明示されている。本件各支出も全く同様の趣旨で開催されたのである。 (4) 叙勲者に対する昼食の提供について別表番号234の支出は、平成6年春の自治功労による叙勲受章者が拝謁のため皇居に出発する際に、集合場所になっていた東京事務所内応接室でお祝いを兼ねて昼食を提供したものであり、奈良県民に対する福利厚生の一環といえ何ら問題のない支出である。 (5) 本件残業夜食代に関する支出の適法性奈良県職員に対する夜食代の支給は、東京事務所にて3時間以上の残業を行っている者に対して、近くに夜食をとる場所がないために運用として夜食代を支給していたものである。 金額が3000円と必ずしも低額ではないが、夜食を店屋物でとるにはそのような価格のところであったことから、一種の職員に対する福利厚生であることをかんがみると、不当に高額とまではいえないものである。 第3 争点に対する判断 1 争点(一)(本件各支出を奈良県の公金(食糧費)から支出したことは違法か)について(一) 普通地方公共団体は、その事務を処理するために必要な経費を支弁するものであるところ(地方自治法232条1項)、その執行機関が、当該団体の の公金(食糧費)から支出したことは違法か)について(一) 普通地方公共団体は、その事務を処理するために必要な経費を支弁するものであるところ(地方自治法232条1項)、その執行機関が、当該団体の事務を遂行し対外的折衝や意見交換等を行う過程において、社会通念上儀礼の範囲に止まる程度の接遇を行うことは、当該団体も社会的実体を有するものとして活動している以上、上記事務に随伴するものとして許容されるべきであると解されるから、当該接遇が社会通念上儀礼の範囲内と判断し得る場合は、その費用を公金から支出することも許されると解すべきである。 そして、上記「社会通念上儀礼の範囲内か否か」の判断は、当該接遇の必要性のほか、予算執行時における経済状態、国民の消費及び生活水準等の諸事情を考慮してされるべきものであるから、第一次的には予算の執行権限を有する財務会計職員の裁量に委ねられていると解さざるを得ない。しかし、他方で地方公共団体は公的存在であって、地方公共団体の事務を処理するに当たっては最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならず(地方自治法2条13項(現行14項))、その経費は目的を達成するための必要かつ最少の限度を超えて支出してはならない(地方財政法4条1項)と規定されており、そのような法の趣旨をふまえるならば、上記財務会計職員の裁量の範囲を検討するについては、上記諸事情に加えて、当該接遇を必要とする行政事務の性質・内容、目的、効果等をも勘案し、社会通念上相当な範囲の儀礼的支出と認められることが必要である。 さらに、上記支出が食糧費からされている場合には、行政事務等の執行上直接に費消される経費であるという食糧費の性質にかんがみ、当該行政事務等の存在が明確にされるとともに上記支出と事務執行との間に直接的な関連性が認められることをも要すると 場合には、行政事務等の執行上直接に費消される経費であるという食糧費の性質にかんがみ、当該行政事務等の存在が明確にされるとともに上記支出と事務執行との間に直接的な関連性が認められることをも要すると解すべきである。 したがって、公金からの本件各支出についても、上記観点からみて、これが儀礼の範囲にとどまるものとして、社会通念上相当な範囲を超えており、予算執行権限を有する財務会計職員の前記裁量を逸脱していると認められる場合には違法となる。 (二) 本件中央官庁職員に関する支出(合計34件。別表番号9、11、14、16、17、19、26、28、30、33、37、38、40ないし42、47、50、55、57、65、68、76、80ないしし82、86、89、95、141、164、210、221、239、246)について(1) 一般に、地方行政を円滑に進めるためには、国すなわち中央官庁と意見調整を図り、情報交換をすることが必要となる局面も多々存すると推察されるから、中央官庁の職員と連絡を取り意見交換の場を設けることも地方行政事務の執行上重要であるということができ、各地方自治体が東京に設置している事務所はそのための機関であると考えられる。そして、奈良県においても、東京事務所の所管事務には中央官庁との連絡が含まれており、東京事務所は、奈良県の各部局から懇談の相手方たる中央官庁を指示されて、当該官庁と連絡を取り、奈良県及び中央官庁の出席者の予定を調整して、時間や場所を決め、懇談を実施するという形で運営していたこと、本件各懇談もその一環として実施されたことが認められる(乙1、丙1、被告b本人)。そして、中央官庁の職員を相手方とする懇談等に伴う食糧費の支出は、奈良県職員と中央官庁職員との意見交換や情報収集の場として実施されたものであれば、当該懇談を実施する れる(乙1、丙1、被告b本人)。そして、中央官庁の職員を相手方とする懇談等に伴う食糧費の支出は、奈良県職員と中央官庁職員との意見交換や情報収集の場として実施されたものであれば、当該懇談を実施することが、その内容、目的、効果に照らし有益であると認められ、かつ、これに要した費用が社会通念上相当な範囲内にとどまる場合は、当該費用を食糧費から支出したことに違法はないが、上記範囲を超える場合は、支出担当職員の裁量権を逸脱する違法なものと解すべきである。そして、上記相当性の判断に際し、懇談等の相手方が中央官庁職員である場合には、本来、当該国家公務員である職員が、職務に関し、最も厳正な倫理を要求される立場にあるという特質にかんがみれば、接遇する側における上記相当性の判断も、自ずと厳格さが要求されていると考えるべきである。 (2) 上記観点から、本件中央官庁職員に関する支出の違法性について判断する。 証拠(乙6、7、丙1及び被告b本人。なお、弁論の全趣旨によれば、乙6、7は調査委員会の調査結果に基づき作成されたものと認められる。)及び弁論の全趣旨によれば、これらの支出は懇談等に伴うものであって、当該懇談等の内容、目的は、例えば、別表番号9については、県側の職員1名が建設省の国道二課幹部2名を相手方とするものであって、その目的は奈良県の道路事情の説明及び情報収集というものであるが、当該説明に関する事前の資料や事後の報告書等、懇談や情報収集の具体的内容を示す記録は一切作成、残されておらず、実際に話し合われた内容は全くといってよいほど不明であり、相手方の所属、地位も不明で、したがって懇談の実際の内容、目的は、これを確認することができないものであり、しかも当該懇談で得られた効果も捉えようがないものであること、さらに、当該懇談に要した費用は「昼食代」であっ 位も不明で、したがって懇談の実際の内容、目的は、これを確認することができないものであり、しかも当該懇談で得られた効果も捉えようがないものであること、さらに、当該懇談に要した費用は「昼食代」であって、1人当たり7843円という高額であること等の事実が認められ、これらの事情に照らせば、この支出が、当該懇談の内容、目的、効果に照らし不要なものであることは明らかであり、その金額も不相当に高額であるといわざるをえない。そして、他の、別表番号11ないし246の懇談の内容、目的、効果についても、同9とほぼ同様のことを指摘することができ、懇談の内容、目的、効果は明らかでない一方、その1人あたりに要した金額も高額である(最も高額なものは同42の建設大臣・建設省幹部との会議及び懇談名目で支出された1人あたり2万9455円であるのに対し、同81及び同221については1人あたり2000円台であるが、いずれの懇談も単なる飲食としか認めるほかはないものである。)。 なお、乙1の調査委員会の調査結果によれば、東京事務所において平成6年度に開催した食糧費支出を伴う懇談は553件にのぼるが、その8割を超える447件の懇談は不適正執行と判断されている。また、平成7年度に開催した食糧費支出を伴う懇談は280件にのぼるが、その8割に近い214件の懇談は不適正執行と判断されている。一方、平成8年度における食糧費支出を伴う懇談の開催は年間5件に激減している。かかる事実にかんがみると、地方行政の円滑な遂行のために中央官庁の職員との協議が有益であることは事実であるとしても、それが酒食を伴う接遇をもってされることの必要性は、客観的にみて極めて低いものであったことが明らかである。 被告らは、別表番号14は運輸省の奈良県人会の者との懇談であり、リニア中央新幹線や京阪奈新線のごとが話 う接遇をもってされることの必要性は、客観的にみて極めて低いものであったことが明らかである。 被告らは、別表番号14は運輸省の奈良県人会の者との懇談であり、リニア中央新幹線や京阪奈新線のごとが話されているし、同19、28、40、76、80、141についても県の要望、情報収集等について話し合われているもので、飲食を伴うのは、相手方との日程の都合上、夕刻になりがちである、また、酒類も情報収集を行うための人的関係を作る上での潤滑油的な役割を果たしている等縷々弁明するが、いずれも採用の限りではない。 さらに、被告らは、本件各支出がされた当時は、奈良県以外の地方公共団体の東京での出先事務所において、奈良県以上の支出が行われていたという状況があり、必ずしも盤石の財政基盤を有していない奈良県が、他の地方公共団体が情報収集のために行っていたことをしないという選択肢はとりえなかったとも主張するが、かかる主張は、本件各支出がされた当時、情報収集という行政目的に藉口して、他の地方公共団体が地方財政上の見返りを期待して、あるいはその目的さえからも遊離して行う中央官庁の職員との遊興という非倫理的手段を是認し、追随するものであることにほかならず、到底採用できるものではない。 以上を総合して検討すると、本件中央官庁職員に関する支出は、すべて社会通念上も相当な範囲を超えており、予算執行権限を有する財務会計職員の裁量を逸脱し、違法であるといわざるをえない。 (三) 本件全国知事会職員等に関する支出(合計5件。別表番号21、43、45、101、247)について(1) 中央官庁の職員を相手方とする懇談等に伴う食糧費支出についての判断において示したのと同様、一般に、地方行政を円滑に進めるためには、中央官庁や他の地方公共団体の動向を入手するために、中央官庁の職員以外の外部 庁の職員を相手方とする懇談等に伴う食糧費支出についての判断において示したのと同様、一般に、地方行政を円滑に進めるためには、中央官庁や他の地方公共団体の動向を入手するために、中央官庁の職員以外の外部団体や他の地方公共団体の職員らと情報交換をする場を設けることが必要となる局面も多々存すると推察されるから、全国知事会(全国知事会は、全国の知事によって組織され、各都道府県の共通の問題を協議、処理するための全国的連合組織であって、その設立について地方自治法263条の3第1項に基づぎ、自治大臣(当時)に届出をしているもので、同第2項により地方自治に影響を及ぼす法律又は政令その他の事項に関し自治大臣(同)を経由して、内閣に対し意見を申し出、又は国会に対する意見書の提出することが認められている、公的性格を有する団体である。)ほか、他の都道府県職員との意見交換の場を設けることも地方行政事務の執行上重要であるということができ、各地方自治体が東京に設置している事務所はそのための機関でもあると考えられる。そして、これらの懇談等が実施される流れも、ほぼ中央官庁の職員との懇談等と同様の手続きで実施されていたものである(乙1、丙1、被告b本人)。そして、これら懇談等に伴う食糧費の支出は、奈良県職員と全国知事会職員ないし他の都道府県職員との意見交換や情報収集の場として実施されたものであれば、当該懇談を実施することが、その内容、目的、効果に照らし有益であると認められ、かつ、これに要した費用が社会通念上相当な範囲内にとどまる場合は、当該費用を食糧費から支出したことが許されるが、そうでない場合は当該支出は支出担当職員の裁量権を逸脱する違法なものと解すべきである。 (2) 上記観点から本件全国知事会職員等に関する支出の違法性について検討するに、証拠(乙6、7、丙1、被告b 、そうでない場合は当該支出は支出担当職員の裁量権を逸脱する違法なものと解すべきである。 (2) 上記観点から本件全国知事会職員等に関する支出の違法性について検討するに、証拠(乙6、7、丙1、被告b)によれば、これらの支出に関する懇談等の内容、目的は、例えば、別表番号21については、東京事務所の出席者5名が全国知事会事務局職員1名を相手方とするものであって、その目的は全国知事会との予算要望などの情報交換というものであるが、当該懇談の資料作成や事後の報告書等、懇談や情報収集の具体的内容を示す記録は一切作成、残されておらず、実際に話し合われた内容は全くといってよいほど不明であり、相手方である全国知事会事務局職員の所属、地位も不明であり、したがって懇談の実際の内容、目的は、これを確認をすることができないものであり、しかも当該懇談で得られた効果も捉えようがないものであり、当該懇談に要した費用は1名あたり2万4150円という高額なものであると認められる。 そして、同43の懇談の目的は、情報交換とされてはいるものの、前記21と同様、懇談の内容を確認する資料は一切なく、「5Fブロック東京事務所懇談」との記載(乙7)からみる限り、ビル内の同一階にある宮崎県、神奈川県、石川県、奈良県の各東京事務所の職員が各県の特産品を持ち寄って単なる懇親会を開催したものとみるほかはないもので、この費用に3万7183円が支出されているのである。さらに、同45は、近畿府県東京事務所職員が懇談したもので、東京事務所の職員被告aほか10名が出席し、1名当たり1万2000円の飲食代を支出しているものであり、同101は、全国知事会国際部長ほか1名と東京事務所の被告aほか1名が出席して行われたもので、1名当たり7506円の飲食代を支出しているものであり、247は、近畿各府県の東京事 しているものであり、同101は、全国知事会国際部長ほか1名と東京事務所の被告aほか1名が出席して行われたもので、1名当たり7506円の飲食代を支出しているものであり、247は、近畿各府県の東京事務所長8名と東京事務所の被告a1名が昼食会を催し、1名当たり2884円を支出しているものであり、以上の3件についても、懇談の内容を確認する資料は一切ない。 このように、全国知事会職員を相手方とする飲食については、飲食の際に具体的な情報交換等がされた資料が認められず、飲食そのものが目的とみるほかはないものである。 以上を総合して検討すると、本件全国知事会職員等に関する支出は、社会通念上も相当な範囲を超えており、予算執行権限を有する財務会計職員の裁量を逸脱し、違法であるといわざるをえない。 (四) 本件民間人に関する支出(合計10件。別表番号18、32、56、94、96、99、104、229、234、237)について(1) 青果市場役員等に対する飲食提供(別表番号18、96、99、104、229、237)証拠(丙1、5ないし7、被告b)によれば、被告ら主張のとおり、奈良県は東京都中央卸売市場内に奈良県東京事務所奈良農産物事務所を設置し、職員1名が常駐して奈良県内で生産された柿、梅、みょうが、なす、いちご等の農産物を、東京、神奈川、埼玉等の首都圏での販路拡大と出荷量や価格調整を迅速、的確に行うための情報収集や情報交換を行っていたこと、首都圏には、青果を取り扱う卸売市場が約20か所あり、それらの市場の卸売会社の関係者で「京浜奈良会」を設置し、情報交換や情報収集活動等を行っていたこと、これら関係者との会食を伴う懇談等については、次の販路の拡大に繋げるべく、出荷した農産物の品質に対する市場の評価や苦情に迅速、的確に対処するため、卸売会社の関係者を集 情報収集活動等を行っていたこと、これら関係者との会食を伴う懇談等については、次の販路の拡大に繋げるべく、出荷した農産物の品質に対する市場の評価や苦情に迅速、的確に対処するため、卸売会社の関係者を集め、会食を伴う懇談を実施し、これらの懇談等を通して得た情報を、県農林部や県下生産団体に通知した結果、販路拡大や価格維持等を図る成果を挙げられたとの事実が認められ、これらの目的のために懇談を行うことは、農業県である奈良県の県勢の推進に有益であると一応は推認でき、そのための懇談に会食が伴うことを一概に否定することはできない。 しかしながら、証拠(乙6及び7、甲4の18の1及び2、同4の96の1及び2、同4の99の1及び2、同4の104の1及び2、同4の229の1及び2)によれば、別表番号18は、1名当たり4194円、同96は1名当たり3834円、同99は1名当たり5115円、同104は1名当たり3673円、同229は1名当たり2884円と、決して低額ではない上、いずれも酒類(ビール)を伴っており、これらの支出は、上記懇談目的の有益性を考慮にいれたとしても、公金からの支出としては社会通念上相当な範囲を超え、違法な支出というべきである。 他方、別表番号237の懇談は、苦情処理についての打合せ時のもので、太田市場役員2名に対し東京事務所の職員1名が1名当たり1854円(消費税込み)の昼食をとったというものであるから、懇談の内容、目的等に照らし、社会通念上、相当な範囲内にあると認めることができ、これを違法とまではいえない。 (2) 報道機関の記者等に対する飲食提供(別表番号32、56、94)証拠(乙6、7、甲4の94の1、2)によれば、奈良新聞社の職員(記者)と県職員との飲食3件については、別表番号32が1名当たり1万5931円、同56が1名当たり 提供(別表番号32、56、94)証拠(乙6、7、甲4の94の1、2)によれば、奈良新聞社の職員(記者)と県職員との飲食3件については、別表番号32が1名当たり1万5931円、同56が1名当たり7615円と高額であり、同94は、1名当たり5527円である上、酒類(ビール)を伴う会食であり、本件全証拠によってもこれらの懇談の目的は明らかではないことからすると、これらはいずれも社会通念上相当な範囲を超えた違法な支出といわざるをえない。 被告らは、これら支出は、地元新聞社東京支社との懇談であって、奈良県に関わる首都圏での諸活動(県並びに市町村の各官庁等への要望活動、各種全国大会等の開催状況、奈良県出身者や奈良と関わりのある人達への取材等)について、情報交換や情報提供等を行ったものであり、これらの支出により奈良県の文化や歴史が奈良新聞社発行の奈良新聞やタウン紙に紹介されていることをもって懇談の具体的成果があったとも主張するが、これらが「成果」といえるかどうかは疑問であるのみならず、これら新聞等の記事の存在が、上記社会通念上の相当性の判断に影響を与えるものではない。 (3) 叙勲者に対する昼食の提供(別表番号234)について乙6、丙1、被告bによれば、別表番号234の支出は、平成6年春の自治功労による叙勲受章者が拝謁のため皇居に出発する際に、集合場所になっていた東京事務所内応接室でお祝いを兼ねて昼食を提供したものというものであり、東京事務所の奈良県民に対する福利厚生の一環といえ、その額も1名当たり2369円であって、これを社会通念上相当な範囲を超えた違法な支出とまではいえない。 (五) 本件職員のみに関する支出(合計2件。別表番号203、240)及び本件残業夜食代に関する支出(合計20件。別表番号224、244、245、251ないし261、 た違法な支出とまではいえない。 (五) 本件職員のみに関する支出(合計2件。別表番号203、240)及び本件残業夜食代に関する支出(合計20件。別表番号224、244、245、251ないし261、263ないし268)について(1) 東京事務所の職員の昼食代及び残業夜食代証拠(乙6、丙1、被告b本人)によれば、別表番号203の支出4995円は、東京事務所の職員3名が、中央官庁との協議に先立つ東京事務所での打合せ時の昼食代であり、同240の3605円の支出も同様な趣旨の東京事務所の職員2名の昼食代であることが認められる。 また、上記証拠によれば、別表番号224、244、245、251ないし261、263ないし268は東京事務所の職員の残業夜食代であって、東京事務所では、通常職員が3時間程度、午後9時以降まで残業する場合については残業夜食代を食糧費から支出していたこと、これらの支出については、奈良県の内規等の根拠は一切ないこと、1名当たりの代金は、1700円から3451円であること、以上の事実を認めることができる。 (2) 地方自治法は、「給料、手当及び旅費の額並びにその支給方法」は、条例で定めなければならないとし(同法204条3項)、いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基づく条例に基づかずにはこれを職員に支給できない旨規定している(同法204条の2)。地方公務員法にも同様の規定がある(同法24条6項、25条1項)。 奈良県においては、「一般職の職員に関する条例」(昭和32年9月10日奈良県条例第33号)が定められている。同条例によれば、県職員に対して正規の勤務時間の勤務に対する報酬としての「給料」(同条例3条)の他、諸手当として初任給調整手当(9条の2)、扶養手当(10条)、調整手当(11条の2)、住居手当(11条の5)、通勤 県職員に対して正規の勤務時間の勤務に対する報酬としての「給料」(同条例3条)の他、諸手当として初任給調整手当(9条の2)、扶養手当(10条)、調整手当(11条の2)、住居手当(11条の5)、通勤手当(11条の6)、単身赴任手当(11条の7)、特殊勤務手当(12条)、超過勤務手当(13条)、宿日直手当(14条)、管理職員特別勤務手当(14条の2)、夜間勤務手当(15条)、休日勤務手当(16条)、管理職手当(17条)、期末手当(19条)、勤勉手当(20条)、義務教育等教員特別手当(20条の2)、産業教育手当(20条の3)、定時制通信教育手当(20条の4)、農林業改良普及手当(20条の5)及び災害派遣手当(20条の6)が支給されることになっている。 そして、実質上も、職員に対して法律又はこれに基づく条例によらない「いかなる給与その他の給付」も支給されることのないよう、「宿舎、食事、制服その他生活に必要な施設等の全部または一部が職員に支給される場合においては・・・その相当額を、その職員の給料から控除する。」とされている(同条例3条2項)。 このように、奈良県の職員に対する「給付」は、すべて法令上の根拠に基づいて詳細、厳密に規定されているのであって、およそ法令上の根拠に基づかないで職員に対し財産的「給付」をすることが許されるものではなく、違法である。 したがって、本件職員のみに関する支出及び本件残業夜食代に関する支出は、前記奈良県条例上の職員への給付を定めた根拠に基づかないものである以上、これら財産的給付は地方自治法204条の2、地方公務員法25条1項、前記奈良県条例に違反し、すべて違法といわざるをえない。 被告らは残業時間が3時間を超える場合の残業夜食代について、金額が低額なものはもとより、金額が1人当たり3000円と必ずしも低額ではな 1項、前記奈良県条例に違反し、すべて違法といわざるをえない。 被告らは残業時間が3時間を超える場合の残業夜食代について、金額が低額なものはもとより、金額が1人当たり3000円と必ずしも低額ではないものについても、夜食を店屋物でとるにはそのような価格のところであったことから、一種の職員に対する福利厚生であるとして、不当に高額ではないので、残業夜食代全体が社会通念上相当な範囲内にあり、適法な支出と主張する。 しかし、上記説示のとおり、地方公共団体の活動に付随する公金の支出が「社会通念上儀礼の範囲を逸脱しない限り」違法とはいえないとの判断基準は、対外的折衝から生ずる公金の支出に関するものであり、職員のみによって費消される昼食代や残業夜食代は、対外的折衝とは無関係な内部的に支出であって、これらに支出される公金について、前記(一)と同列の基準によって適法性を論ずることはできないことは明らかである。 したがって、食糧費から職員の昼食代や残業夜食代を支出すること自体が、その金額の多寡を問わず、違法であるといわざるをえない。 (六) 目的外使用(別表番号269)について証拠(乙6、甲4の269及び270(請求書))によれば、別表番号269の支出は、来客用麦茶等であるが、その内容を子細に見ると、確かに現像料やプリント代が含まれている。 しかし、東京事務所の来客に対し、飲物類同様、接遇の一環として写真撮影等が行われることもあることと推測され(もっとも、現像代やプリント代が予算科目としての需用費(節)の細節からの支出として適切かどうかとの疑問はあるものの、予算の違法な流用とまでは認め難い。)、これらが社会通念に照らし相当性の範囲を超える違法な支出であるとまではいえない。 (七) 結論以上までの検討によれば、本件各支出のうち、別表番号234、237 予算の違法な流用とまでは認め難い。)、これらが社会通念に照らし相当性の範囲を超える違法な支出であるとまではいえない。 (七) 結論以上までの検討によれば、本件各支出のうち、別表番号234、237、269の3件以外支出の合計543万6667円は違法な支出である。 2 争点(二)(被告a及び同bは本件各支出について奈良県に対し損害賠償責任を負うか)について(一) 東京事務所長は奈良県会計規則3条に基づいて、東京事務所における食糧費支出に関する支出負担行為や支出命令に関する権限を委任されているところであり、本件各支出については、当時東京事務所長の地位にあった被告aがその決裁権者たる地位にあったものであること、そして、当時東京事務所次長の地位にあった被告bがこれらの権限を代決したものであることは前記のとおりである。 (二) 本件各支出の一部にかかる543万6667円は違法な支出であるのは前示のとおりであるところ、前記認定の事実に照らせば、決裁権者である被告aは、代決者が違法な財務会計上の行為を行わないようにこれを指揮監督すべき義務があるにもかかわらずこれを怠ったものと認められるのであり、また代決をした被告bは、これまで東京事務所の懇談費用等が食糧費から支出されてきた慣例に従って、その具体的な必要性や相当性について何ら精査、検討することなく、漫然と上記食糧費支出にかかる代決を行ったものと認められ、このことについて少なくとも過失があることは明らかである。 被告a及び同bは、奈良県に対し、上記543万6667円の違法な公金の支出について、同額を奈良県に対し賠償する義務がある。 3 争点(三)(被告知事が、上記被告らに対し、上記損害賠償責任に基づく金員を奈良県に返還を求めていないことは違法か)について被告a及び同bは、上記のとおり、奈良県に対し 対し賠償する義務がある。 3 争点(三)(被告知事が、上記被告らに対し、上記損害賠償責任に基づく金員を奈良県に返還を求めていないことは違法か)について被告a及び同bは、上記のとおり、奈良県に対し543万6667円の損害賠償義務を負うところ、前記のとおり、被告知事は奈良県を統括し代表するとともに予算の執行、会計の監督等の事務を担任し、奈良県執行機関及び県職員に対し包括的な指揮監督権限を有する者であるから、これらの損害賠償金を奈良県に返還させる義務があり、当該義務の履行を怠っていることが違法であることは明らかである。 4 以上の次第であるから、原告らの被告らに対する請求は、主文掲記の限度で理由があるが、その余の請求はいずれも理由がない。 奈良地方裁判所民事第2部裁判長裁判官永井ユタカ裁判官島川勝裁判官松阿弥隆
▼ クリックして全文を表示