- 1 -平成18年8月31日判決言渡平成14年(ネ)第3877号保険金請求控訴事件(原審・神戸地方裁判所伊丹支部平成13年(ワ)第120号)判決主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1控訴の趣旨 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。 上記取消しに係る被控訴人の請求を棄却する。 第2被控訴人の請求の趣旨控訴人は,被控訴人に対し,9000万円及びこれに対する平成11年12月4日(控訴人に対する保険金請求の後で,被控訴人が加入していた他の保険会社による保険金の支払日の翌日)から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 第3事案の概要 本件はQ株式会社後に控訴人と合併したが合併前における同会社も控,(,「」。),(「」。)訴人というとの間に海外旅行傷害保険契約以下本件契約というを締結した被控訴人が,台湾のホテルにおいて,カップ麺と箸などを持って室内を移動していた際に転倒したため,箸の1本が右眼に刺さり(以下,同事故を「本件事故」という,視力が光覚弁(失明)となったと主張して,控訴。)人に対し,保険金9000万円の支払を求めた事案である。 控訴人は,本件事故が,被控訴人の自傷行為に基づくものであって,本件契約における約款(以下「本件約款」という)にいう「急激かつ偶然な外来の。 事故」に当たらないから,控訴人には保険金支払の義務はなく,そうでなくて- 2 -も,被控訴人の右眼は光覚弁には至っておらず,また,被控訴人の右眼が光覚弁となったとしても,そのことと本件事故との間には因果関係がないと主張したが,原判決が控訴人の主張を採用せず,被控訴人の主たる請求を全部認容したことから(ただし,遅延損害金の起算日は,控訴人 が光覚弁となったとしても,そのことと本件事故との間には因果関係がないと主張したが,原判決が控訴人の主張を採用せず,被控訴人の主たる請求を全部認容したことから(ただし,遅延損害金の起算日は,控訴人が必要な調査を終えた後である平成12年12月27日とした,これを不服として控訴に及んだも。)のである。 基礎となるべき事実及び争点は,以下のとおり当審における控訴人の主張を付加するほか,原判決「事実及び理由」欄第2「事案の概要」の1及び2(原判決1頁末行から8頁12行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 当審における控訴人の主張( ) 本件事故の偶然性について ア原判決の不当性原判決は「事故の偶然性」の主張,立証責任が被控訴人にあるにもか,かわらず(最高裁判所平成13年4月20日判決,明白な主張,立証も)させず,さらには被控訴人でさえ主張していない事実を勝手に想定して認,,,定し控訴人の防御権を不当に奪っており上記最高裁の判例に反する点及び弁論主義違反の点でも破棄を免れない。 むしろ,以下の諸点からすると,被控訴人の主張する本件事故の状況は極めて不自然であり,被控訴人の意図的な行為によらなければ,右眼の眼球下部と眼窩との間に箸1本が刺さることなど起こりえないものであって,本件事故が被控訴人の故意によるものであることが明らかである。 イ本件事故の不自然性(ア)原判決は,被控訴人が,右手の親指,人差し指及び中指でカップ麺の容器を持ち,当該容器と掌の間に箸1膳(2本とも細い方を上に向けていた)を挟んで薬指と小指で握り,左手にはお茶の入ったカップを把。 - 3 -手に親指を入れて持ち,それらを零さないように手元を見ながらゆっくりと移動していたところ,旅行鞄に躓くか,ビニール袋に滑るかなどして,右足首 指で握り,左手にはお茶の入ったカップを把。 - 3 -手に親指を入れて持ち,それらを零さないように手元を見ながらゆっくりと移動していたところ,旅行鞄に躓くか,ビニール袋に滑るかなどして,右足首を外側に捻った上,前のめりに転倒し,その途中,2本の箸のうち1本を手元から落とし,他の1本はやや下にずり落ちたが,被控訴人は前のめりに転倒して右手を床に着く際,箸の握り部端がまず床に着き,被控訴人の体重が負荷されて,握っていた箸は上記小指付け根部付近を支点として折損し,これにより箸の先の部分が被控訴人の顔側に向き,同部分が右眼下部の眼球と眼窩内に突き刺さったと認定する。 (イ)原判決が上記のような認定をしたのは,本件では,被控訴人が熱湯を注いだカップ麺を右手に持ち,左手にもお茶を注いだカップを持ったまま転倒したのに,特にカップ麺の熱湯(汁)が被控訴人にかかっておらず,また,被控訴人が箸2本を握っていたといいながら,1本が右眼に刺さったのみで,他には外傷がないという不自然性があることから,カップ麺の容器及び箸は進行方向前方を向いており,その状態のまま前のめりに転倒し,そのわずかな時間に2本の箸のうち1本を落とし,他の1本はやや下にずり落ちたとして,これらの不自然性を回避しようとしたからである。 (ウ)しかしながら,このような認定をしたことにより,新たな矛盾点が発生している。 ①まず,カップ麺の熱湯や麺が前方に零れたとしても,その位置は床の染みの場所(乙19・43頁,52頁)である。被控訴人が染みの方向に倒れたとすると,腰から上の上半身にカップ麺の熱湯や麺が付着していなければならないが,そのような事実は全く認められていない。被控訴人の転倒位置が,同室していたガイドのAの主張する場所(乙19・58頁)であったとした場合,被控訴人の転倒方向が 熱湯や麺が付着していなければならないが,そのような事実は全く認められていない。被控訴人の転倒位置が,同室していたガイドのAの主張する場所(乙19・58頁)であったとした場合,被控訴人の転倒方向が染みの方向となると,旅行鞄の上に倒れなければならず,これも事実に合- 4 -致していない。 被控訴人が,進行方向にまっすぐ転倒したのであれば,カップ麺の容器,熱湯及び麺はほぼ真横に飛んでおり,たとえ着床時に箸1本を折ったとしても,当該箸の先は顔の横から右眼方向に回転することになり,その角度からして刺込み可能角度(乙18・71から74頁,90から93頁)に合致せず,到底右眼球下部と眼窩の間には刺さら。 ,,ないそもそも着床する前に椅子やテーブル又はAに右手が当たりその場でカップ麺の容器や箸を取り落としていることになる。被控訴,,人の転倒位置がAの主張する場所であったとすればカップ麺の容器熱湯及び麺が右やや前方に飛んだことになるが,箸は右手着床後に折れたとしても,右手首の回転角度は,到底右眼球下部と眼窩との間に箸が刺さる角度には曲がらない。 ②次に,被控訴人は,転倒する瞬間,カップ麺の中身や熱いお茶を零さないように90度に曲げていた両肘を,さらにぐっと手前に引いたと供述している。そうすると,カップ麺の容器,熱湯及び麺は,到底上記染みの位置まで飛ぶはずもなく,たとえカップ麺の容器と箸の先が進行方向を向いていても,両者とも転倒時に被控訴人の胸部の下敷きとなり,被控訴人は胸部に火傷等を負うとともに,箸も胸部か,せいぜい首当たりに傷をつけることになり,右眼球下部と眼窩との間に刺さることはあり得ない。 (エ)さらに,原判決の事故状況の認定が,著しく経験則に反し,弁論主義にも反することは,以下のとおりである。 ①原判決が暗黙のうちに前提と なり,右眼球下部と眼窩との間に刺さることはあり得ない。 (エ)さらに,原判決の事故状況の認定が,著しく経験則に反し,弁論主義にも反することは,以下のとおりである。 ①原判決が暗黙のうちに前提とする「右手に持っていたカップ麺の容器及び箸1本が進行方向前方を向いていた」場合には,着床時に箸が折れたとすると,箸の先は右手小指付近を支点として円運動をしたことになるが,そうであれば,仮に箸が右目付近に来たとしても,眼球- 5 -そのものが邪魔をして,到底右眼球下部と眼窩内に箸の先端40ミリメートル以上は刺さらない。 ②逆に,箸の先約40ミリメートル以上が,右眼球下部と眼窩内に刺さるには,ほとんど隙間のない箇所であるから,相当の抵抗を押しのける程度の強い力で箸の後部が押されなければならない。すなわち,乙19の38ないし41頁のような体勢となることが必要である。同39頁中央列の写真の角度で,箸及び頭部の位置関係が決まらない限り,要は箸が床面に着いて押され右眼球下部と眼窩内に刺さってから折れるのでなければ,到底箸は刺さらない。 ,,原判決が前提とする状況であれば眼球周辺に引っかき傷が付くか眼球の上部(下部ではない)と眼窩との間に箸の先が刺さる事態し。 か発生し得ないのである。 ③原判決の前提とは逆に,仮に「右手に持っていたカップ麺の容器及び箸1本が,被控訴人の顔側に向いており,まず箸の握り部端が床」に着いた場合には,箸の先は,顔から遠ざかる形で円運動を行うことになり,到底右眼球下部と眼窩との間に箸の先は刺さらない。 ④以上のとおり,乙19の38ないし41頁のような体勢とならない限り,箸の先約40ミリメートル以上が右眼球下部と眼窩との間には刺さらないのであり,その場合,必ず右手に持っていたカップ麺の容器も,被控訴人の体(顔)側を向い 38ないし41頁のような体勢とならない限り,箸の先約40ミリメートル以上が右眼球下部と眼窩との間には刺さらないのであり,その場合,必ず右手に持っていたカップ麺の容器も,被控訴人の体(顔)側を向いていなければならず,この体勢で転倒すれば,被控訴人の顔面や体に火傷等の傷害が発生していなければならないが,被控訴人の顔面や体には何らの火傷その他の傷害もなく,着ていた衣服にもカップ麺の熱湯やお茶はかかっていないし,被控訴人が右手で持っていたカップ麺の容器,熱湯及び麺は,被控訴人の右横又は右前方に零れているのであり,転倒時において上記体勢でなかったことは明々白々である。 - 6 -箸の刺さり方,カップ麺の熱湯やお茶の染みの位置,被控訴人の火傷,外傷の有無といった客観的状況から,事故の偶然性が明白に否定されるのである。 ⑤さらに,原判決が認定する「右手に持っていたカップ麺の容器及び箸1本が,進行方向前方を向き,着床時に箸が折れた」のであれば,被控訴人の右手,右肘,右腕には強い外力がかかり,被控訴人はこの状況を十分に説明し,主張することができるはずである。 ところが,被控訴人は,訴訟段階となってから,転倒状況を一切説明も主張もしないのである。このこと自体が不自然極まりないものであるが,さらに,原判決は,被控訴人が主張も説明もしない内容を勝手に想定し,認定しているのであり,原判決は控訴人の防御権を不当に奪った上で,経験則に反する認定を行っている。 ⑥なお,控訴人は,原判決の言渡し後,株式会社Bに依頼して,本件事故の発生機序を検討したが(当審提出の乙32,その結果による)と,被控訴人がいかなる姿勢,状態で転倒したとしても,所持していた箸が右眼に突き刺さることはあり得ないことが明らかとなっている。 (オ)本件事故の偶然性についての原判決の認定 ,その結果による)と,被控訴人がいかなる姿勢,状態で転倒したとしても,所持していた箸が右眼に突き刺さることはあり得ないことが明らかとなっている。 (オ)本件事故の偶然性についての原判決の認定には,他にも不合理な点がある。 ①原判決は,被控訴人が転倒途中に,2本の箸のうち1本を落とし,他の1本はやや下にずり落ちたと認定するが,同事実が,転倒時のわずか1,2秒の間に完了することは不可能である。 転倒時に何らかの衝撃が加われば,カップ麺の容器と箸を握った指は,ぎゅっと強く握るか,持っている物を放してしまうかのいずれかである。強く握ったのであれば,箸2本による傷がなければおかしいし,持っている物を放したのであれば箸を支える力がなく,到底箸の- 7 -先が40ミリメートル以上も右眼球下部と眼窩の間に刺さることはあり得ない。 被控訴人にだけ都合よく,2本の箸のうち1本を落とし,他の1本も「握り部端から約90ミリメートル部分の位置が小指付け根部分付近となる位置まで」ずり落ちることなど,到底あり得ない。そもそもずり落ちたということは,薬指と小指とによる箸2本の握りが弱くなっていたのであり,着床時の衝撃に耐えて箸を握ったままでいることはできず,箸が折れることもなければ,右眼球下部と眼窩との間に40ミリメートル以上も刺さるまで箸を支えることなどできないのである。 このような認定は,被控訴人でさえ主張していない内容であって,,,,あまりに非現実的な主張となるため被控訴人は訴訟段階になって転倒状況はわからないと主張して逃げているのである。 また,原判決は,被控訴人が故意に本件事故を招来させたと仮定した場合,わざわざ箸を折損させる合理的理由が存在しないと説示しているが,箸の折損は,箸が3つに折れるほどの酷い「事故」が発生したとの印象付けを狙 判決は,被控訴人が故意に本件事故を招来させたと仮定した場合,わざわざ箸を折損させる合理的理由が存在しないと説示しているが,箸の折損は,箸が3つに折れるほどの酷い「事故」が発生したとの印象付けを狙ったことが明らかである。 ②原判決は,被控訴人の顔面及び眼球に全く傷害がない点は,通常では考えられないとしながら,故意による事故招致の場合「少なくとも眼瞼及び眼球に傷つけることなく箸を眼に突き刺すことが可能であるかは極めて疑問である」と全く矛盾した説示をしている(12頁。 ),,通常ではあり得ない事象だからこそ故意であれば可能なのでありこれは経験則上,当然の事理である。箸の先にワセリンでも塗って差し込みやすくすれば「真実の事故」よりも極めて容易に「右眼球下,部と眼窩の間に箸を差し込む」ことが可能である。箸の先が右眼球下部と眼窩の間に刺さっていたとの事実は「事故」の作出には必要不,- 8 -可欠の内容であるが,この事実が認められるからといって「事故の,偶然性が認められる」ことにはならないのは,自明の理である。 ③原判決は,箸についた窪みにつき,台湾の大学病院で箸を除去する際についた可能性も否定できないとしているが,同窪みは,写真(乙19・7頁C②)から見ても明らかなように,相当程度の圧迫を加えないとできないものである。被控訴人が上記病院に搬送されたときには,すでに箸は3つに折れていたのであり,その後,右眼に刺さっていた箸の端の一方だけに,このように強い力で圧迫した痕などつけることはできないのである。箸を抜く際にできたのであれば,ペンチ状のもので箸を押さえたことくらいしか考えられない。しかし,ペンチ状のものであれば,窪みは箸の両側にできていなければならないところ,反対側にそのような窪みは存在しない。また,ペンチ状のもので箸を挟 のもので箸を押さえたことくらいしか考えられない。しかし,ペンチ状のものであれば,窪みは箸の両側にできていなければならないところ,反対側にそのような窪みは存在しない。また,ペンチ状のもので箸を挟むなら,中央部分(もっと先端に近い部分)を挟むことが明白である。 (カ)本件事故時に同室していたとするAの供述の虚偽性①原判決後に控訴人が調査した結果,被控訴人が,本件事故当日にAにガイドを依頼するきっかけとなったとする平成11年2月19日のツアーには,Aは参加していない事実が判明した。同ツアーには,女性の見習いガイドがいたが,同ガイドは30歳代であり,当時47歳のAとは別人であり,さらに同ガイドは,同ツアーの解散前にはいな(,)。 ,,くなっていた以上当審提出の乙33したがって被控訴人が同ツアーにおいて,Aに対し,翌々日のガイドを依頼したという事実も,本件事故時にAが同室していたという事実も,ともになかったのである。 ②また,被控訴人の宿泊したホテルは,一流ホテルであり,宿泊客以外の者を室内に入れることを許していないし,同ホテルに頻繁に出入- 9 -りするAが,ホテルの意向に反する行為に及ぶこと自体が疑わしい。 しかも,Aが被控訴人の部屋を訪れた際,被控訴人はジャージ姿で迎えており,Aを部屋に入れた後で着替えるというのであって,これが真実とすれば,両者はまともな関係ではないことになる。そして,本件「事故」後には,女性(A)が男性(被控訴人)の部屋に入り込んでいたのがまずいとして,被控訴人は,Aがホテルを出て行くまで助けを求めなかったというのである。 ,,Aが目撃証人として登場する経緯も加味すればそのような経緯は全くつじつまの合わないことが明らかである。 ③Aは,ホテルの男性の部屋に行くことに同意しながら,男性の めなかったというのである。 ,,Aが目撃証人として登場する経緯も加味すればそのような経緯は全くつじつまの合わないことが明らかである。 ③Aは,ホテルの男性の部屋に行くことに同意しながら,男性の部屋にいたことを理由に,事故の発生後に被控訴人を助けず,男性と同室していたことが公になると親族等に迷惑がかかると言いながら,調査員に面談し,同様の理由で供述書面に署名できないと言いながら,結局,供述書面2通(甲14,乙9の2)を作成し,しかもその内容は「眼球が飛び出していた」との虚偽の内容であり,上記供述書面のうち1通の作成日付は平成11年5月26日でありながら,その後の同年10月17日及び18日のホテルでの被控訴人の事故状況の説明に通訳として同席しても,何一つ説明しないという矛盾した態度をとっている。 以上のとおり,Aの態度は矛盾の繰り返しであり,その登場が保険金取得のための援護射撃以外の何物でもないことは明らかである。 ④Aの供述書面は,被控訴人の転倒状況がいかなるものであったかという肝心な点について,一言も供述しておらず,単に「あっ」という声がしたので見てみたら,被控訴人がしゃがんで右眼を押さえていたというのみであり,転倒したとも言っていないのであって,その供述書面の内容は全く信用に値しない。 - 10 -⑤なお,当審における控訴人の調査の結果,調査会社の調査員であるC(以下「C」という)が,平成11年5月26日の午前中10時。 から10時30分までに,台湾のD大飯店において,Aと面談して,当日,乙8の陳述書を作成したという事実(甲14)は,全くの虚偽であることが判明した(当審提出の乙37,41の1。 )Cは,他の保険会社から依頼された調査員であるにもかかわらず,被控訴人の利益のために行動し,控訴人に保険金の支払を迫るため, )は,全くの虚偽であることが判明した(当審提出の乙37,41の1。 )Cは,他の保険会社から依頼された調査員であるにもかかわらず,被控訴人の利益のために行動し,控訴人に保険金の支払を迫るため,虚偽の目撃者を作り出そうとしたのである。Cが,いつ,誰から,Aの存在を知らされたか,いつどのような方法でAと連絡したのか,Cからの的確な回答もない。 (キ)被控訴人の供述の変遷と信用性①原判決は,(a)被控訴人は,事故後において,控訴人の調査員に,「旅行鞄に躓き又は旅行鞄に足が当たってこれを避けようとした足がビニール袋を踏んで滑り,前のめりに転倒したと説明していた」と認定しながら明確な記憶がないとも説明していたとも認定し(b),「」,平成11年10月における上記ホテルでの事故状況の再現状況については「記憶が不確かであって,推測を交えて説明をしている旨を述,べていたか否かは疑問の余地がある」と認定しながら,(c)「平成13年6月18日付原告準備書面において,転倒状況について明確な記憶がない旨主張しており…供述を変遷させたものではない」という唖然とする認定をしている。 しかしながら,控訴人は,(a)の前段の被控訴人の説明では事故状況が明確に把握できないので,できるだけ事故状況を再現して説明してほしい旨を述べたところ,被控訴人が台湾の現場でこれを説明すると述べたため,控訴人関係者は台湾に出向いて,(b)の再現に臨んだのである。したがって,この事実だけでも,被控訴人が(b)のみなら- 11 -ず,(a)の時点においても事故状況を覚えていないなどと言っていたはずがないのであり,被控訴人に供述の変遷がないとした原判決は全くの誤りである。仮に,(a)の時点での記憶が十分でなかったとしても,(b)の時点では被控訴人は控訴人に対して,通 ないなどと言っていたはずがないのであり,被控訴人に供述の変遷がないとした原判決は全くの誤りである。仮に,(a)の時点での記憶が十分でなかったとしても,(b)の時点では被控訴人は控訴人に対して,通訳まで同行して積極的に事故状況の説明を行ったのである。以上の経過を全て覆し,事故状況を覚えていないという被控訴人の主張が,全く信用性のないものであることは論をまたない。 ②また,被控訴人は,旅行鞄の角に右足が躓き,ビニール袋の上で右足を滑らせて,前のめりに転倒したことを,自ら確認書において述べているほか(甲6,乙5,当審提出の乙26,27,平成11年5)月8日には,調査会社の調査員に対し,同様の事故態様であることを申告しているのであるから(当審提出の乙31,被控訴人が本件事)故の態様に記憶がないということはあり得ない。 (ク)被控訴人の経済状況被控訴人は,サラ金に約280万円の借財があるというが,借入限度額などを考えれば,少なくとも5軒程度から借金していることになり,それだけでも被控訴人の経済状況が尋常でないことが明らかである。被控訴人は,他社から合計で約1億円もの保険金を取得しながら,ローンの返済もしておらず,経済的苦境に陥っているのであり,表面上現れない多額の借財があることは明らかである。 (ケ)被控訴人の保険付保状況の異常性被控訴人は,カード以外にも,自ら申込書に記入して通信販売の2種類の保険(保険金額は合計で1億3000万円)に加入しながら,保険金7500万円の本件契約を締結しているのであり,そのこと自体,異常性を露呈するものにほかならない。 ( ) 被控訴人の右眼は光覚弁ではないこと,並びに右眼の視力と本件事故との - 12 -因果関係ア被控訴人の右眼は光覚弁ではなく,原判決の判示は,具体的な原因事実である視神 ほかならない。 ( ) 被控訴人の右眼は光覚弁ではないこと,並びに右眼の視力と本件事故との - 12 -因果関係ア被控訴人の右眼は光覚弁ではなく,原判決の判示は,具体的な原因事実である視神経萎縮及び網膜剥離の不存在を無視した非科学的な態度である。気泡の存在という明らかに異常な事実を考えれば,被控訴人の光覚弁の主張が虚偽であることは明らかで,原判決の認定は明らかな経験則違背である。 なお,被控訴人は,平成15年2月4日には,右眼に付けていた眼帯を外し,サングラスをしてバイクを運転しており,控訴審の開始時には,右眼に視力があったことが推認される(当審提出の乙34。 )また,仮に,被控訴人が光覚弁であったとしても,本件事故とは因果関係がない。 (ア)被控訴人は,いろいろと病院を変えて受診しながら,どの病院においても,光覚弁の原因でなければならない視神経萎縮及び網膜剥離が認められていない。さらに,E医大の検査では,被控訴人の右眼の硝子体内に存在するはずのない気泡が発見されているという異常事態が発生している。 ところが,原判決は,存在するはずのない気泡が発見されたE医大の検査で,他覚的所見があるとの理由で,簡単に光覚弁を認めている(原判決24頁。右眼の硝子体内に存在するはずのない気泡が発見された)という事実は,検査に先立ち,被控訴人が右眼球に何らかの細工を施した証左である。このような細工を弄した検査結果を根拠に,被控訴人の光覚弁を認める原判決の態度が,極めて不当であり,経験則違反であることは明らかである。 (イ)さらに,被控訴人が受診したどの病院においても,箸の先端部分約20ミリメートルは見つかっていない。この点も原判決は認めていながら(原判決24頁,その存在を完全には否定できないとしている。 )- 13 -しかし,その根拠 たどの病院においても,箸の先端部分約20ミリメートルは見つかっていない。この点も原判決は認めていながら(原判決24頁,その存在を完全には否定できないとしている。 )- 13 -しかし,その根拠たるや,被控訴人が受診した病院とは全く関係のない別の機関が,撮影された写真を見て意見を言っているだけの内容であり(甲15,何の信憑性もない。箸の先が残存しているはずだとの被)控訴人の訴えを聞いて検査している複数の病院で何も見つかっていないのに,何の検査もしていない第三者の意見など全く意味がない。 (ウ)原判決の認定は「眼に箸が刺さったという事実自体からして,視力,に障害が生じていても何ら不自然ではない(原判決24頁)との説示」,「」に明らかなように頭が何かにぶつかれば死亡しても不自然ではないといった類の,粗雑な論理がその根拠である。 本件では視神経萎縮も網膜剥離も認められず,まして検査時に存在するはずのない気泡が発見されているのである。そのため,E医大のカルテには「視力喪失の詐病の可能性は否定できない」との記載もあり(乙14・33頁,これからすれば,被控訴人の主張する光覚弁が同人の)作出した詐病にすぎず,全く医学的根拠のないものであることが明らかである。 原判決の認定は,光覚弁の具体的原因事由たる視神経萎縮及び網膜剥離が複数の病院でも認められないという明らかな事実があるのに,これを無視し,硝子体内に気泡が見つかるという異常事態から被控訴人の詐病作出が容易に推認できるにかかわらず,これも何ら考慮せず,全く正反対の認定を行ったもので,破棄を免れない。 (エ)また,眼瞼下垂について,原判決が掲げる根拠は,甲24の資料3-2であるが,これは紙1枚の内容で,そこで引用する(図2)なるものも添付されていない(原判決25頁。このような代物 を免れない。 (エ)また,眼瞼下垂について,原判決が掲げる根拠は,甲24の資料3-2であるが,これは紙1枚の内容で,そこで引用する(図2)なるものも添付されていない(原判決25頁。このような代物で事実認定する)原判決の態度は,軽率を通り越したこじつけ以外の何ものでもない。 イ当審における鑑定の結果(鑑定人F作成にかかる鑑定書及び同人に対する鑑定人尋問の結果。以下,これを総合して「鑑定結果」といい,鑑定人- 14 -尋問の結果を録取した調書を「F調書」という)をもっても,被控訴人。 の右眼が光覚弁であるとはいえず,また,光覚弁であるとしても本件事故との因果関係は認められない。 (ア)本件事故の態様(箸の刺さり方)について①鑑定結果によると,CT画像で約19ミリメートルの異物が下眼窩裂に刺さっているとみられ,箸がそこまで到達したとすれば,右眼の視神経に何らかの障害が及んだ可能性があるところ,その際,眼球が飛び出すほどになれば,眼球も1センチメートルくらい上にずれることもあり,そうなれば,箸の先端が下眼窩裂に刺さることも可能であるという(F調書8ないし16頁。 )②しかしながら,上記鑑定結果は極めて非現実的なものである。箸の先端が下眼窩裂に到達し,そこに刺さるには,下方約45度で侵入し,,,た箸が折れて一度水平になりさらに奥の下眼窩裂にまで到達して再度約90度下を向く必要がある(乙18・24頁上図。鑑定人も)当初そのような供述であったが,さすがにそれは無理と思い直し,箸が折れるのではなく,箸が硬い眼窩壁に沿って下眼窩裂まで到達してそこに刺さった,そのとき眼球は外に出ながら1センチメートルくらい上がれば,これは可能であるという供述に至った。 ③まず,箸が硬い眼窩壁に当たり,そこでいわば横滑りして奥の下眼窩裂にまで到 達してそこに刺さった,そのとき眼球は外に出ながら1センチメートルくらい上がれば,これは可能であるという供述に至った。 ③まず,箸が硬い眼窩壁に当たり,そこでいわば横滑りして奥の下眼窩裂にまで到達したとの点であるが,当該眼窩壁は骨折して小穴が開いている。この事実からすれば,箸の先端は骨折した小穴に入って引っかかり,3つに折れたと解するのが通常の経過であろう。骨に小穴を開けているのに横滑りしたとの前提は,到底説得力ある説明とはいえない。 ④次に,通常,眼窩内で眼球が動ける範囲は大きくて2ないし3ミリメートルである。そのため,鑑定人は「眼球は外に出ながら1セン,- 15 -」。 ,チメートルくらい上にあがればとの供述を行ったのであるしかし眼球の直径は通常24ミリメートル程度であり(F調書21頁,こ)の眼球(の一部)が眼窩の外に飛び出そうが1センチメートルも上に上がれば,眼球は上眼窩と箸に挟まれて潰れているのである。また,これほどの外傷が加われば,たとえ潰れていなくても,被控訴人の右眼球に箸の食い込んだ痕跡が残り,眼球自体が酷い損傷を受けているはずのところ,そのような外傷所見は,事故直後から全く認められていない。さらに,眼球が眼窩の外に飛び出すような事態になれば,視神経の断裂(一部でも)が起きていて当然であるが,そのような所見も全く認められていない。そもそも,本件の態様では,箸自身が邪魔をして,眼球が外に飛び出すこと自体が不可能と解され,鑑定人の上,。 記供述は自説に固執した非現実的な内容であることが明らかである⑤鑑定人は,鑑定書と異なり,約19ミリメートルの異物が見つかったことを大きな根拠に据えた供述をしている。 しかし,被控訴人の右眼窩内に,明確に異物とされるものが認められたのは,本件事故後6年を経た今回が初めてな 定書と異なり,約19ミリメートルの異物が見つかったことを大きな根拠に据えた供述をしている。 しかし,被控訴人の右眼窩内に,明確に異物とされるものが認められたのは,本件事故後6年を経た今回が初めてなのである。台湾を除いて最も早い時期のCT,MRIは甲15であり,本件事故直後の平成11年3月2日に市立G病院で撮影されたものである。ところが,同病院では,この画像によっても,箸は確認できていないことを明確に述べており(乙11・2頁のH医師の報告文書。なお,同画像に9ミリメートル大の異物が映っていると主張しているのは,平成13年10月になって被控訴人が依頼した第三者〔甲15,16の1・2〕であって,撮影した市立G病院の関係者ではない,甲15に異物が)映っているとする鑑定人の供述には,元々多大な疑義がある。 したがって,本件事故後6年を経た鑑定人の診察時に,約19ミリメートルの異物が認められたからといって,いわばその事実に寄りか- 16 -かってこれを重大視し,鑑定事項を判断している鑑定人の結論には大幅な割引が必要である。 (イ)視神経萎縮がない時期の「光覚弁」主張の原因についてこの点に関しては,鑑定人も,①本件事故直後(国立I病院からJ病院)の検査で,視神経萎縮や網膜剥離が認められていないこと,②鑑定人自身の見解でも,器質的障害(視神経への直接の障害。箸による視神経への何らかの障害)は軽度であったと推定されることから,被控訴人の右眼が「光覚弁」であったとは認めていない。 被控訴人の訴えが「光覚弁」であったとしても,その原因は心因性のものとしている。そして,心因性の内容は,詐病・ヒステリー・皮質盲が考えられ,ヒステリー・皮質盲は両眼性で,詐病は片眼性もあると述べている。 したがって,鑑定結果を素直にみれば,本件事故後の被控訴人による「光 る。そして,心因性の内容は,詐病・ヒステリー・皮質盲が考えられ,ヒステリー・皮質盲は両眼性で,詐病は片眼性もあると述べている。 したがって,鑑定結果を素直にみれば,本件事故後の被控訴人による「光覚弁」の訴えは,心因性のものであり,その原因も片眼性であることから詐病の要素が大となる。要するに,鑑定結果からしても被控訴人による「光覚弁」の主張は,心因性(詐病)のものであり,客観的には認められないのである。 (ウ)鑑定人診察日の「光覚弁」と本件事故との因果関係について鑑定人による平成17年4月の診察日には,被控訴人の右眼に視神経萎縮(光覚弁)が認められている。鑑定人は,本件事故が原因と仮定して,当該事故から5,6年も経ってから視神経萎縮が起きる根拠に関して,(a)箸の影響が視交叉以前の視神経乳頭部から離れた部位に起きて視神経萎縮の発現が遅れた可能性,(b)視神経周囲組織に急性浮腫が起こって急激な視力低下をきたし,視神経自体への萎縮が遅れた可能性,(c)後に箸の毒性などが加わった可能性を推論している。 しかしながら,これも極めて非現実的な内容ばかりである。 - 17 -まず,(a)についてみると,視交叉以前で最も遠い位置は眼球から2ないし2.5センチメートル程度であるが(F調書21頁,本件事故)時にその位置に損傷を受けたとしても,視神経は神経繊維の束であり,断裂しているわけではないのであるから,束のうちの一部の損傷なら,視野の一部が欠落するような症状となるはずであるが,そのような所見は全くない(心因性のものでも,詐病でなければ,回復すれば同所見が出てくるはずである。また,視神経を損傷すれば,通常1ないし3か)月で視神経乳頭の萎縮が認められるのであり(鑑定人の経験でも6か月。 ),(),が最長F調書23頁本件ではJ病院の1年 が出てくるはずである。また,視神経を損傷すれば,通常1ないし3か)月で視神経乳頭の萎縮が認められるのであり(鑑定人の経験でも6か月。 ),(),が最長F調書23頁本件ではJ病院の1年3か月後まで乙12被控訴人が提出した甲25(平成14年2月9日付け医療法人社団K眼科医師L作成の診断書における「眼底異常を認めず」との所見)では約3年後でも,視神経萎縮が起きていない。 (b)も基本的には(a)と同じであり,本件事故後早期の「光覚弁」主張を理屈づけようとしたものである。要は,事故後すぐに急性浮腫が起,「」。 きたので一時的に光覚弁と同様の症状となったとするものであるしかし仮に急性浮腫が起きても1か月もすれば浮腫は治るのでありF,(調書24頁,治れば「光覚弁」も解消するはずである。しかし,被控)訴人の主張は,いつまでも「光覚弁」のままであり,急性浮腫の仮定は成り立たない。 (c)についても同様で,たとえば,箸の毒性物質が視神経まで到達する前に,当該毒性物質によって右眼球の周囲組織に何らかの異変が起きるのが当然といえるが,被控訴人自身そのような症状を訴えたことはなく,各医療機関においても全く認められていないのである。 要するに,本件においては,本件事故と6年後の視神経萎縮との因果関係は極めて不可解な点が多く,通常の因果の流れにより結びつけることが極めて困難なのである。本件のような外傷に対して結果が起こると- 18 -いう論文はなく,臨床上の根拠もないまま,推論に推論を重ねて結論を捻り出したというのが鑑定結果であり,これでは本件事故と被控訴人主張の光覚弁に因果関係がないことは,むしろ明らかといえる。 第4当裁判所の判断 本件事故の偶然性の主張立証責任被控訴人が控訴人との間に傷害保険である本件契約を締結した れでは本件事故と被控訴人主張の光覚弁に因果関係がないことは,むしろ明らかといえる。 第4当裁判所の判断 本件事故の偶然性の主張立証責任被控訴人が控訴人との間に傷害保険である本件契約を締結したことは前記のとおりであるが,同契約における本件約款(乙1)においては,被保険者が海外旅行の行程中に急激かつ偶然な外来の事故によって身体に傷害を被り,その直接の結果として,事故の日からその日を含めて180日以内に後遺障害が生じたときは,後遺障害保険金を支払うこと(1条1項,6条1項,保険契約)者又は被保険者の故意によって生じた傷害に対しては保険金を支払わないこと(故意免責。3条1項1号)がそれぞれ規定されているところ,同約款に基づき,控訴人に対して後遺障害保険金の支払を請求する者は,発生した事故が偶然な事故であることについて,主張,立証すべき責任を負うものと解するのが相当であり,同約款のうちの故意免責の定めは,保険金が支払われない場合を確認的注意的に規定したものにとどまり,被保険者の故意等によって生じた傷害であることの主張立証責任を保険者に負わせたものではないと解すべきである(最高裁判所平成13年4月20日第二小法廷判決・判例時報1751号171頁,最高裁判所同日第二小法廷判決・民集55巻3号682頁参照。 ) 本件事故の発生とその偶然性,「」本件事故が発生したこと及びその経緯については原判決が事実及び理由欄第3「争点に対する判断」の( )(原判決8頁15行目から10頁24行目 まで)において認定するとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決8頁16行目の「14」を削り,同10頁21行目から22行目にかけての,「同箸先端方向はさらに先端部分約20㎜が折損していたが,同部分は発見されなかった」の後に「が,当審における鑑定の し,原判決8頁16行目の「14」を削り,同10頁21行目から22行目にかけての,「同箸先端方向はさらに先端部分約20㎜が折損していたが,同部分は発見されなかった」の後に「が,当審における鑑定の過程で実施されたCT検査及び- 19 -MRI検査により,長さ約19㎜の異物が右下眼窩裂に刺さっているのが確認された」を付け加える。 。)しかして,同事実によると,被控訴人は,本件契約の保険期間において,海外旅行の行程中,宿泊先のホテルの室内を移動中に不意に転倒し,所持していた箸のうち1本を右眼に突き刺したこと(本件事故が発生したこと)が認められるのであり,本件事故は,本件約款にいう「急激かつ偶然な外来の事故」に該当するものと認められる。 本件事故の発生に関する控訴人の主張について( ) 控訴人は,第1に,本件事故の状況が極めて不自然であり,本件事故は被 控訴人の意図的な行為によらなければ発生しないと主張し,本件事故当時の四囲の状況,被控訴人の動静等から推定される転倒の機序を再現しようとしても,箸が眼に刺さるような事故が生じることはないとする実験結果及びコンピュータグラフィックによる推論(乙15,16,18,19,当審提出の乙32)を提出する。 しかしながら,上記の各実験結果等は,いずれも被控訴人とは体型や重心の位置等が異なる被験者に,相応の装備をさせた上で,故意に転倒させ,あるいは,刺入の過程における箸の動き等を考慮せずに,箸の刺入角度を推定しているにすぎないものであって,被控訴人の転倒の機序についての原判決の認定を覆すには至らないというべきである。 そして,控訴人は,被控訴人が,ホテルに備えられた椅子やテーブル,あるいは椅子に座っていたAに触れることなく,また,カップ麺の熱湯や麺を身体や衣服に浴びずに,前のめりに床上に転倒した うべきである。 そして,控訴人は,被控訴人が,ホテルに備えられた椅子やテーブル,あるいは椅子に座っていたAに触れることなく,また,カップ麺の熱湯や麺を身体や衣服に浴びずに,前のめりに床上に転倒したこと,転倒のわずかな瞬間に2本のうち1本の箸のみがずり落ちたこと,被控訴人が右眼に刺さらなかったもう1本の箸によって傷害を負っていないこと,さらに1本の箸のみ,,,が顔面や眼球に傷害を加えずに右眼球と眼窩との間に突き刺さったことその箸には人為的と思われる窪みがついていたこと,その箸の先端部が見つ- 20 -からないことについて,それぞれに疑問を呈するが,これらの点がいずれも不合理ということができないことは,原判決が「事実及び理由」欄第3「争点に対する判断」の1( )①(ア)ないし(オ)(原判決11頁冒頭から14頁5 行目まで。ただし,14頁3行目の「突いた」を「ついた」と訂正する)。 に説示するとおりであり,控訴人が指摘する上記の点が被控訴人やAの供述並びに客観的状況と齟齬するものでもないのであって,もとより上記認定が弁論主義に反することもないし,上記認定及び説示が経験則に反するということもできない。 ,,,,( ) 次に控訴人は本件事故当時Aが被控訴人と同室していたことはなく その供述も虚偽のものであると主張する。 そして,控訴人は,調査会社のMが作成した調査報告書(当審提出の乙33)によると,被控訴人がAに本件事故当日のガイドを依頼したとする平成11年2月19日に,被控訴人と同じツアーに参加した女性が,同ツアーには女性の見習いガイドがいたが,同人は30歳代であり,ツアーの解散前にいなくなったと上記Mに供述していることを指摘し,被控訴人がそもそもAに本件事故当日のガイドを依頼したこと自体が虚偽であると主張する。しか 見習いガイドがいたが,同人は30歳代であり,ツアーの解散前にいなくなったと上記Mに供述していることを指摘し,被控訴人がそもそもAに本件事故当日のガイドを依頼したこと自体が虚偽であると主張する。しかしながら,上記供述内容は,同報告書におけるA及び同じツアーにガイドとして参加した同人の夫(N)の供述に照らし,措信することができない上,47歳であったAを30歳代と見間違うことも,不自然とはいえず,上記報告書によっても,ツアーのあった日に,被控訴人がAにガイドを依頼するために接触する時間がなかったということも明らかとなっていない。また,上記見習いガイドはマッサージ師の女性であるとする上記M作成の調査報告書(当審提出の乙35)も,推論の域を出るものでなく,Aが上記ツアーにガイドとして加わっていたことを覆す証拠とはなり得ない。 ,,,さらに控訴人は他の保険会社から調査依頼を受けた調査員であるCが同年5月26日にAと面談したという報告をしているが(甲14,当審に)- 21 -おける控訴人の調査の結果,そのような面談の事実はないことが判明したと主張する。しかし,Cが,同日に,Aと面談して,本件事故につき事情聴取したとの事実はなかったとしても(当審提出の乙37,Aについては,同)年12月26日,控訴人代理人であるO弁護士及び被控訴人代理人であるP弁護士とが共同で事情聴取をしており(甲5,9,その供述は,Aの作成)した「申請書」と題する陳述書(乙9の2・3)とともに,大筋において信用のできるものと認められるところ,同供述によると,Aは,被控訴人から前々日に受けた依頼に基づいて,観光ガイドを行うため,本件事故当日,被控訴人のホテルの部屋を訪れたが,その際,被控訴人が箸を眼に刺して転倒しているのを目撃したことが認められるのである。したがって, 前々日に受けた依頼に基づいて,観光ガイドを行うため,本件事故当日,被控訴人のホテルの部屋を訪れたが,その際,被控訴人が箸を眼に刺して転倒しているのを目撃したことが認められるのである。したがって,Cによる上記報告に虚偽があったとしても,これにより,Aが本件事故の現場に居合わせたことや,その供述内容が虚偽であるということはできない。 なお,Aが,本件事故当日,被控訴人のホテルの部屋を訪れ,被控訴人がトレーナーとジャージを着用したまま応対したことが,あながち不自然ではないことは原判決が 事実及び理由 欄第3争点に対する判断の1( ),「」「」 ①(カ)(原判決14頁6行目から15頁1行目まで。ただし,14頁17,18行目の「被告」をいずれも「被控訴人」と訂正する)において説示す。 るとおりであり,また,Aが本件事故当時,被控訴人と同室していたことを隠そうとしたり,逆に調査員の面談に応じたりしていることも,必ずしも不合理な態度とはいえないというべきである。また,Aが,本件事故当時,被控訴人の眼球が飛び出ていたと述べた点についても,鑑定結果によると,本件事故においては,眼球が一時的に突出したと考えられるから,Aの上記供述を必ずしも虚偽ということもできない。 ( ) 第3に,控訴人は,被控訴人が,本訴提起前には,本件事故での転倒状況 について,保険会社の調査員に説明をしていたのに,本訴提起後には,本訴提起前からその記憶がなかった旨供述が変遷しているのは,不自然であり,- 22 -被控訴人の主張は信用性がないと主張する。 しかしながら,被控訴人が,原審における本人尋問において,記憶がないと供述したのは,転倒した原因がトランクに躓いたのかビニール袋に足を滑らせたのかという点と,どの位置に転倒したのかという点についてであり,上記 ,被控訴人が,原審における本人尋問において,記憶がないと供述したのは,転倒した原因がトランクに躓いたのかビニール袋に足を滑らせたのかという点と,どの位置に転倒したのかという点についてであり,上記のいずれかの原因で転倒し,箸を眼に刺したことについては,本訴提起の前後を通じて,陳述の変遷があるわけではなく,本件事故の発生に関する被控訴人の陳述については,本件事故の発生状況を述べる確認書と題する書面(乙5ないし7,調査会社に対する事故状況の説明結果(乙3)及び上)記供述のいずれにおいても,控訴人の主張するような供述の変遷は認められないから,控訴人の上記主張は理由がない。 この点に関する原判決の説示(原判決15頁10行目から16頁12行目まで)も相当であって,これを論難する控訴人の主張も採用することができない。 ( ) 第4に,控訴人は,被控訴人には,表面に現れない多額の借財があると主 張するが,これを認めるに足りる的確な証拠はない。 また,被控訴人の経済状況及び付保状況の異常性に関する控訴人の主張がいずれも理由のないことは,原判決が「事実及び理由」欄第3「争点に対す」()る判断の1( )④及び⑤原判決19頁20行目から21頁10行目まで において説示するとおりである。 被控訴人の光覚弁と本件事故との因果関係( ) 本件事故後の被控訴人の受診経緯については,原判決が「事実及び理由」 欄第3「争点に対する判断」の2( )(原判決21頁15行目から24頁3 行目まで)において認定するとおりである。 上記事実によると,被控訴人の右眼の視力については,本件事故直後に治療を受けた国立I大学医学院付設医院においては,10ないし20センチメートルの指数弁であるとされているが,平成11年3月2日には市立G病院- 23 -において光覚 視力については,本件事故直後に治療を受けた国立I大学医学院付設医院においては,10ないし20センチメートルの指数弁であるとされているが,平成11年3月2日には市立G病院- 23 -において光覚弁であると診断され(なお,甲10によると,同病院の同日分の診療録においては「光覚弁又は20センチメートルの手動弁」と読みと,ることもできるが,同月25日の診療録及び診断書には,被控訴人の右眼は光覚弁であり,回復の見込みがないとの記載がされているので,遅くとも同日には,光覚弁と診断されたといえる,以後,E医科大学病院及びJ病。)院においても,機械的なテストなども用いられた上で,同様の診断を受けていることが明らかであり,また,鑑定結果によると,被控訴人の右眼の視力について,平成17年3月29日,H眼科医院のH医師により「視神経萎,縮(右)を認め,右視力は手動弁に止まる。視力改善の可能性はない」と。 の診断を受け,さらに同年5月17日における鑑定人の診察では,視神経萎縮,網膜電位図での錐体機能の低下などがあり,有効な視力がないときに眼球がやや外を向くという廃用性外斜視となっていると考えられたことから,失明(光覚弁)といえる可能性が高いと診断されたことが認められる。 したがって,被控訴人は,本件事故の発生した日から180日以内である平成11年3月25日には,右眼の視力は光覚弁となっており,その改善の見込みはないものと認められるべきである。なお,被控訴人については,同年7月14日,E医科大学病院の診察において,右眼硝子体腔内に気泡が発見されているが(甲13,鑑定の結果によっても,気泡が存在した理由は)明らかでなく,気泡の存在又はその原因行為が右眼の光覚弁を招来したことを認めるに足りる証拠もなく,また,被控訴人が,右眼の眼帯をせずにバイクを運 13,鑑定の結果によっても,気泡が存在した理由は)明らかでなく,気泡の存在又はその原因行為が右眼の光覚弁を招来したことを認めるに足りる証拠もなく,また,被控訴人が,右眼の眼帯をせずにバイクを運転していたことがあっても(当審提出の乙34,片眼で運転するこ)とが不可能とはいえないから,それだけでは被控訴人の右眼の視力が光覚弁に達していないということもできず,上記の各事情は,いずれも前記判断を左右するものではない。 ( ) 控訴人は,光覚弁となるためには,視神経萎縮又は網膜剥離が認められな ければならず,視神経萎縮は視神経の受傷から3か月くらい後には現れるべ- 24 -きところ,被控訴人について,初めて右眼の視神経萎縮と診断されたのは,本件事故後,1年3か月又は約3年を経過して以降(甲25)のことであるから,被控訴人の訴える光覚弁は詐病であると主張する。 確かに,前記認定事実及び乙25によると,被控訴人の右眼について,初めて視神経萎縮が指摘されたのは,J病院での平成12年5月15日の診察時においてであるのに(これも眼底検査により明確に確認されたわけでもない,被控訴人は本件事故後,間もなくのころから光覚弁であると診断さ。)れていたことが明らかである。 しかしながら,鑑定結果によると,前記のとおり,被控訴人については,鑑定の過程で実施されたCT検査及びMRI検査により,折れた箸の先端部であると思われる長さ約19ミリメートルの異物が,右下眼窩裂に刺さっているのが確認されているところ,本件事故の態様からすると,箸の先端は刺入時には同位置よりもさらに奥まで達していたと考えられること,その際,右眼球は外に突出しながら,1センチメートルくらい上に移動したと考えても不思議ではなく,この場合,眼球自体に損傷はなくとも,眼球に相当のダ,,メー らに奥まで達していたと考えられること,その際,右眼球は外に突出しながら,1センチメートルくらい上に移動したと考えても不思議ではなく,この場合,眼球自体に損傷はなくとも,眼球に相当のダ,,メージを受けることにより眼球の周囲の視神経が伸展することになるからこれが視神経障害の原因となり得ること(眼瞼下垂の原因もこれにより説明がつくこと,視神経障害が眼球のかなり奥で起こり,視神経部分の栄養血)管系が傷んでいなかったとすれば,視神経萎縮が確認されるまで,1年2,3か月ほど,又はそれ以上の遅れが出ても不自然ではないこと,あるいは視神経周囲組織に急性浮腫が起こって急激な視力低下をきたした場合,浮腫が治った後に視神経萎縮が起こることもあり,このような場合には,同様に視神経萎縮の発見まで時間の遅れがあり得ることが認められ,これを覆すに足りる医学的知見も見当たらない。また,以上の認定に照らし,眼底に異常を認めないとする平成14年2月9日付けの診断書(甲25)の内容は措信することができないから,これを前提とする控訴人の主張も採用することがで- 25 -きない。 以上により,本件事故と被控訴人の光覚弁との間に相当因果関係が認められると判断すべきことは,原判決が「事実及び理由」欄第3「争点に対する判断」の2( )及び3(原判決24頁4行目から25頁17行目まで)に説 示するとおりであり,これに上記の認定事実に加え,被控訴人については他に右眼の光覚弁を招来するような疾病や傷害があったとする証拠はないことをも総合考慮すると,被控訴人は,本件事故により,視神経に傷害を受け,間もなく右眼の視力が光覚弁となったが,眼底検査により視神経萎縮が確認されるまでには相当期間を要したと認めるのが相当である(したがって,上記光覚弁が心因性のもの,あるいは詐病であること 傷害を受け,間もなく右眼の視力が光覚弁となったが,眼底検査により視神経萎縮が確認されるまでには相当期間を要したと認めるのが相当である(したがって,上記光覚弁が心因性のもの,あるいは詐病であることは否定される。 。)そのほか,鑑定人尋問の結果中,箸の刺さり方についての鑑定人の供述を論難する控訴人の主張はいずれも採用することができず,また,右眼の散瞳状態・対光反応がプラスであったりマイナスであったりしたことも,上記の判断を左右するものではない。 遅延損害金の起算日については,原判決が「事実及び理由」欄第3「争点に対する判断」の4(原判決25頁18行目から26頁4行目まで)に説示するとおりである。 以上の次第で,被控訴人の本訴請求は,原判決が認容した限度において理由があり,これを認容すべきものであり,その余は失当として棄却すべきものである。 よって,以上と同旨の原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第5民事部裁判長裁判官大和陽一郎- 26 -裁判官菊池徹裁判官市村弘
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