平成31年3月15日判決言渡平成29年(行ウ)第143号消費税更正処分等取消請求事件 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 西税務署長が平成28年3月28日付けで原告に対してした平成25年6月10日から同月30日までの事業年度分の法人税の更正処分のうち所得金額につきマイナス49万6724円を超える部分及び翌期へ繰り越す欠損金49万 6724円を下回る部分をいずれも取り消す。 2 西税務署長が平成28年3月28日付けで原告に対してした平成25年7月1日から平成26年6月30日までの事業年度分の法人税の更正処分のうち翌期へ繰り越す欠損金98万6237円を下回る部分を取り消す。 3 西税務署長が平成28年3月28日付けで原告に対してした平成26年7月 1日から平成27年6月30日までの事業年度分の法人税の更正処分のうち翌期へ繰り越す欠損金238万2039円を下回る部分を取り消す。 4 西税務署長が平成28年3月28日付けで原告に対してした平成25年6月10日から同月30日までの課税期間分の消費税及び地方消費税の更正処分のうち消費税の納付すべき税額につきマイナス273万8526円を超える部分 及び地方消費税の納付すべき税額につきマイナス68万4631円を超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が,別紙1物件目録記載3の建物(以下「本件建物」という。)を取得したこと及び当該取得に関して司法書士から登記申請に係る役務の提供 を受けたことをそれぞれ課税仕入れとし,本件建物の売買契約の締結日である 平成25年6月28日がこれらの課税仕入れを行った日で 及び当該取得に関して司法書士から登記申請に係る役務の提供 を受けたことをそれぞれ課税仕入れとし,本件建物の売買契約の締結日である 平成25年6月28日がこれらの課税仕入れを行った日であるとして,本件建物の取得に係る対価の額及び当該司法書士に対する報酬の額を平成25年6月10日から同月30日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)における課税仕入れに係る支払対価の額に含めて,本件課税期間の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の確定申告をし,また,平成25年6月10 日から同月30日までの事業年度(以下「平成25年6月期」という。),同年7月1日から平成26年6月30日までの事業年度(以下「平成26年6月期」という。)及び同年7月1日から平成27年6月30日までの事業年度(以下「平成27年6月期」という。)の各法人税の確定申告をしたところ,所轄の西税務署長が,本件建物の取得に係る課税仕入れを行った日は,原告が本件建物の引 渡しを受けた平成25年7月31日であり,本件課税期間の課税標準額に対する消費税額から当該課税仕入れに係る消費税額を控除することはできないとして,平成28年3月28日付けで,原告に対し,本件課税期間の消費税等の更正処分(以下「本件消費税等更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)を行い,これに伴い,平成25年 6月期,平成26年6月期及び平成27年6月期の各法人税の更正処分(以下「本件法人税各更正処分」といい,本件消費税等更正処分と併せて「本件各更正処分」という。)をしたことから,原告が,本件各更正処分及び本件賦課決定処分(以下,併せて「本件各更正処分等」という。)の違法を主張して,これらの各処分(本件各更正処分については,申告 「本件各更正処分」という。)をしたことから,原告が,本件各更正処分及び本件賦課決定処分(以下,併せて「本件各更正処分等」という。)の違法を主張して,これらの各処分(本件各更正処分については,申告額よりも原告に不利な部分に限る。) の取消しを求める事案である。 1 関係法令等の定め(1) 消費税法(平成24年法律第68号による改正前のもの。以下同じ。)の定めア消費税法2条1項12号は,課税仕入れとは,事業者が,事業として他 の者から資産を譲り受け,若しくは借り受け,又は役務の提供を受けるこ と(当該他の者が事業として当該資産を譲り渡し,若しくは貸し付け,又は役務を提供したとした場合に課税資産の譲渡等に該当することとなるものに限る。)をいう旨を定めている。 イ消費税法30条1項1号は,事業者が,国内において行う課税仕入れについては,当該課税仕入れを行った日の属する課税期間の課税標準額に対 する消費税額から,当該課税仕入れに係る消費税額(当該課税仕入れに係る支払対価の額に105分の4を乗じて算出した金額をいう。)を控除する(以下,当該控除する消費税額を「控除対象仕入税額」といい,当該控除を「仕入税額控除」という。)旨を定めている。 ウ消費税法30条6項は,上記イに規定する課税仕入れに係る支払対価の 額とは,課税仕入れの対価の額(対価として支払い,又は支払うべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とし,当該課税仕入れに係る資産を譲り渡し,若しくは貸し付け,又は当該課税仕入れに係る役務を提供する事業者に課されるべき消費税額及び当該消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額に相当する額がある場合には, 当該相当する額を含む。)をいう旨を定めている。 仕入れに係る役務を提供する事業者に課されるべき消費税額及び当該消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額に相当する額がある場合には, 当該相当する額を含む。)をいう旨を定めている。 (2) 消費税法基本通達(平成27年5月26日付け課消1-17ほか5課共同による改正前のもの。以下「基本通達」という。)は,課税仕入れを行った日の意義について,別紙2のとおり定めている。 2 前提となる事実(当事者間に争いがないか,掲記の証拠等により容易に認定 できる事実)(1) 当事者等ア合同会社A(以下「A社」という。)の概要(ア) A社は,①不動産の賃貸,売買,管理,②株式の保有,売買等を事業目的として,平成23年9月1日に設立された,決算日を9月30日 とする資本金30万円の合同会社である。A社の唯一の業務執行社員及 び代表社員は,本訴訟における原告補佐人のB税理士である。 (乙3,4)(イ) A社は,平成23年9月12日,C株式会社から金地金200gを98万0550円で購入し,同月26日,当該金地金を同社に対して84万6000円で売却した(乙5)。 (ウ) A社は,平成25年6月10日,新設分割により原告を設立した上 で,同年9月30日に解散し,平成26年6月18日に清算結了した(乙3)。 イ原告の概要(ア) 原告は,①不動産の賃貸借及び所有・管理・利用,②それらに附帯関連する一切の業務を事業目的として,平成25年6月10日にA社か らの新設分割により設立された,決算日を6月30日とする資本金100万円の株式会社である(乙3,4)。 (イ) 原告は,新設分割により設立された法人であるため,本件課税期間の消費税等の納税義務の有無について,新設分割親法人であるA社の平成 0日とする資本金100万円の株式会社である(乙3,4)。 (イ) 原告は,新設分割により設立された法人であるため,本件課税期間の消費税等の納税義務の有無について,新設分割親法人であるA社の平成23年9月1日から同月30日までの課税期間を基準期間として,同 課税期間のA社の課税売上高84万6000円(前記ア(イ))を1年換算した金額(1015万2000円)により判定することとなる結果,当該基準期間の課税売上高が1000万円を超えることから,本件課税期間において消費税の課税事業者に該当することとなった(乙1)。 (ウ) 原告は,平成25年6月17日,C株式会社から金地金5gを2万 3475円で購入し,同月26日,当該金地金を同社に対して2万0915円で売却した。原告の本件課税期間における資産の譲渡等の対価の額は,課税資産の譲渡等の対価の額である当該金地金の売却に係る金額のみであることから,原告は,本件課税期間において課税売上割合が100%となった。(甲4,乙17の1~3) (エ) Dは,原告の代表取締役であり,E及びF(以下,この3名を併せ て「Gら」という。)は,原告の取締役である。 (2) 本件建物等に係る売買契約等ア土地の売買契約原告は,平成25年6月28日,Gらとの間で,同人らが共有する別紙1物件目録記載1及び2の土地(以下「本件土地」という。)を代金72 80万円で買い受ける旨の売買契約を締結した。その売買契約書には,概要,以下のとおり記載されていた。(甲2の2)(ア) 買主は,売主に対し,売主による所有権移転登記完了(本件土地の引渡し)と同時に7280万円を支払う(第3条)。 (イ) 売主は,売買代金全額の支払を受けるのと引換えに,買主に対し, 本件土地の引 は,売主に対し,売主による所有権移転登記完了(本件土地の引渡し)と同時に7280万円を支払う(第3条)。 (イ) 売主は,売買代金全額の支払を受けるのと引換えに,買主に対し, 本件土地の引渡し及び所有権移転登記申請手続を行うものとする(第4条)。 (ウ) 本件土地に関する固定資産税及び都市計画税(以下「固定資産税等」という。)については,所有権移転登記の日をもって区分し,その前日までは売主が,その日以後は買主が負担する(第5条)。 イ本件建物の売買契約原告は,平成25年6月28日,Dとの間で,同人が所有する本件建物を代金7108万5000円(うち338万5000円は消費税等相当額)で買い受ける旨の売買契約を締結した。その売買契約書には,概要,以下のとおり記載されていた。(甲2の1) (ア) 買主は,売主に対し,売主による所有権移転登記完了(本件建物の引渡し)と同時に7108万5000円を支払う(第3条)。 (イ) 売主は,売買代金全額の支払を受けるのと引換えに,買主に対し,本件建物の引渡し及び所有権移転登記申請手続を行うものとする(第4条)。 (ウ) 本件建物に関する固定資産税等については,所有権移転登記の日を もって区分し,その前日までは売主が,その日以後は買主が負担する(第5条)。 (エ) 本件建物から生ずる収益の帰属については,上記(イ)の引渡日をもって区分し,その前日までは売主の,その日以後は買主の収益とする(第6条)。 (3) 本件建物等の売買契約締結後の経緯ア原告は,平成25年7月31日,Gら(ただし,本件建物についてはD)に対し,本件土地及び本件建物(以下「本件不動産」という。)の売買代金の全額を支払った。 イ Gら(ただし,本件建 ア原告は,平成25年7月31日,Gら(ただし,本件建物についてはD)に対し,本件土地及び本件建物(以下「本件不動産」という。)の売買代金の全額を支払った。 イ Gら(ただし,本件建物についてはD)は,平成25年7月31日,司 法書士法人H(なお,実際の登記手続等は,同法人の社員であるIが担当した。以下,同人を「本件司法書士」という。)を代理人として,本件不動産に設定されていたDの取引銀行の抵当権を抹消する旨の登記申請を行い,同日,当該登記がされた。 ウ原告及びGら(ただし,本件建物についてはD)は,平成25年7月3 1日,本件司法書士を代理人として,本件不動産の売買による所有権移転登記の申請を行い,同日,当該登記がされた(乙20,21の1~3)。 エ原告は,平成25年7月31日,本件司法書士を代理人として,原告の取引銀行である株式会社関西アーバン銀行の原告に対する債権を被担保債権とする極度額1億4040万円の根抵当権を本件不動産に設定する 旨の登記申請を行い,同日,当該登記がされた。 オ原告は,平成25年7月31日,本件司法書士に対し,上記ウ及びエの登記申請に係る報酬として,原告名義の上記エの取引銀行本店営業部の普通預金口座から193万7716円(うち420円は振込手数料)を支払った。 カ原告及びGら(ただし,本件建物についてはD)は,本件不動産の固定 資産税等に係る契約当事者間の負担割合について,平成25年7月31日を基準に按分計算を行い,同日の前日までの分をGらが,同月31日以後の分を原告が負担した。 キ原告は,平成25年7月31日,本件建物の管理会社である株式会社Jとの間で,契約期間を同日から平成27年7月30日までとする本件建物 分をGらが,同月31日以後の分を原告が負担した。 キ原告は,平成25年7月31日,本件建物の管理会社である株式会社Jとの間で,契約期間を同日から平成27年7月30日までとする本件建物 に係る管理委託契約を締結し,同社に賃料の請求,受領等の管理業務等を委託した。 ク原告及びDは,平成25年8月,本件建物の入居者に対し,同年7月31日付けで本件建物の賃貸人がDから原告に変更した旨通知した。 ケ Dは,平成25年8月30日,上記キの管理会社から,同年7月30日 までの本件建物の賃料等を受領した。また,原告は,同年9月2日,同管理会社から,同年7月31日及び同年8月分の本件建物の賃料等を受領した。 コ原告は,平成28年9月30日,株式会社ムゲンエステートに対し,本件不動産を売却した。 (4) 本件各更正処分等ア原告は,本件不動産の売買契約の締結日である平成25年6月28日付けで,未払金勘定を相手科目として,本件不動産を土地,建物及び建物付属設備勘定に資産計上する経理処理を行った。 イ原告は,平成25年6月期,平成26年6月期及び平成27年6月期の 各法人税並びに本件課税期間(平成25年6月課税期間)の消費税等について,それぞれ別表1及び2の「確定申告」欄記載のとおり,法定申告期限までに申告した。原告は,上記消費税等の申告において,本件建物をDから取得したこと(以下「本件資産の譲受け」という。)及び当該取得に関して本件司法書士から登記申請に係る役務の提供を受けたこと(以下「本 件役務の享受」という。)をそれぞれ課税仕入れとし,本件建物の売買契約 の締結日である平成25年6月28日がこれらの課税仕入れ(以下「本件課税仕入れ」という。)を行った日であるとして 件役務の享受」という。)をそれぞれ課税仕入れとし,本件建物の売買契約 の締結日である平成25年6月28日がこれらの課税仕入れ(以下「本件課税仕入れ」という。)を行った日であるとして,本件課税仕入れに係る支払対価の額である次表の金額7147万2260円を本件課税期間における課税仕入れに係る支払対価の額に含めて,控除対象仕入税額の計算を行った(甲6の4)。 科目支払先課税仕入れに係る支払対価の額建物D5694万5208円 本件司法書士11万4914円建物付属設備D1423万6302円 本件司法書士2万8728円土地本件司法書士14万7108円合計7147万2260円ウ Gらは,平成25年分の所得税について,それぞれ確定申告書の添付書類に本件不動産の引渡しの日を同年7月31日と記載し,また,Dにおいては,同年分の不動産所得の計算上,本件建物に係る賃貸借契約期間及び減価償却費の償却期間を同年7月までの期間で計算した上で,法定申告期限までにそれぞれ申告した。 エ西税務署長は,平成28年3月28日付けで,原告に対し,平成25年6月期,平成26年6月期及び平成27年6月期の各法人税並びに本件課税期間の消費税等について,それぞれ別表1の「更正処分」欄及び別表2の「更正処分等」欄記載のとおり,本件各更正処分等をした。 オ本件消費税等更正処分は,本件課税仕入れに係る支払対価の額を否認し, 控除対象仕入税額を減額したものであり,その通知書には,更正の理由について,概要,以下のとおり記載されていた(甲6の4)。 (ア) 原告は,本件建物の取得に係る課税仕入れについて,平成25年6月28日を課税仕入れの日として,上記イの表の金額71 について,概要,以下のとおり記載されていた(甲6の4)。 (ア) 原告は,本件建物の取得に係る課税仕入れについて,平成25年6月28日を課税仕入れの日として,上記イの表の金額7147万2260円を本件課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額に含めて,控除対象仕入税額の計算を行った。しかしながら,本件建物の取得に係る平成25年6月28日付けの「不動産売買契約書」には,本件建物は,原告 が売買代金の全額支払を行うことと引換えに本件建物を原告に引き渡す旨が定められているところ,原告は同年7月31日に売買代金の全額を支払ったこと,原告は同日以降の本件建物から生じる賃料収入を受領していること,及び,同日,売買を原因として本件建物の所有権移転登記がされていることからすると,消費税法30条1項1号に規定する課税 仕入れを行った日は,本件建物の引渡しを受けた日である平成25年7月31日と認められるので,本件建物の取得に係る支払対価の額7147万2260円は,本件課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額には該当しない。したがって,本件課税期間における正当な控除対象仕入税額を再計算した結果,控除対象仕入税額が272万2753円減少した。 (イ) 上記(ア)により本件課税期間の消費税等の額を再計算した結果,納付すべき消費税等の額が新たに340万3300円算出された。 カ本件法人税各更正処分は,本件消費税等更正処分において否認した本件課税仕入れに係る支払対価の額7147万2260円に係る未払消費税額等340万3441円と,同更正処分による消費税等の納付税額の増加額 340万3300円との差額141円を,平成25年6月期の益金の額に算入したことに伴い,平成25年6月期,平成26年6月期及び平成27年6月期にお 同更正処分による消費税等の納付税額の増加額 340万3300円との差額141円を,平成25年6月期の益金の額に算入したことに伴い,平成25年6月期,平成26年6月期及び平成27年6月期における各翌期へ繰り越す欠損金の額をそれぞれ同額の141円ずつ減少させたものである。 キ本件賦課決定処分は,国税通則法(平成27年法律第9号による改正前 のもの。以下「通則法」という。)65条1項及び2項に基づき,本件消 費税等更正処分により納付すべき消費税等の合計税額(1万円未満の端数切捨て)である340万円に100分の10の割合を乗じて算出した34万円に,当該納付すべき消費税等の合計税額340万3300円から50万円を差し引いた後の金額(1万円未満の端数切捨て)である290万円に100分の5の割合を乗じて算出した14万5000円を加算した金額 48万5000円を過少申告加算税の額としたものである。 ク原告は,本件各更正処分等を不服として,平成28年5月20日付けで異議申立てをしたところ,西税務署長は,同年8月8日付けでいずれも棄却する旨の決定をした。 ケ原告は,平成28年9月13日,国税不服審判所長に対し,審査請求を したが,同日の翌日から起算して3か月を経過しても裁決がされなかった。 (5) 原告は,平成29年4月1日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 3 争点(1) 本件資産の譲受けに係る「課税仕入れを行った日」は,本件課税期間に属する日であるか否か (2) 本件役務の享受に係る「課税仕入れを行った日」は,本件課税期間に属する日であるか否か(3) 本件消費税等更正処分における理由の提示に不備があるか否か(4) 本件消費税等更正処分は,信義則に反し,違法であるか否か 入れを行った日」は,本件課税期間に属する日であるか否か(3) 本件消費税等更正処分における理由の提示に不備があるか否か(4) 本件消費税等更正処分は,信義則に反し,違法であるか否か(5) 原告に通則法65条4項に規定する「正当な理由」があるか否か 4 当事者の主張(1) 争点(1)(本件資産の譲受けに係る「課税仕入れを行った日」は,本件課税期間に属する日であるか否か)について(原告の主張)ア(ア) 固定資産を譲り受けた場合の「課税仕入れを行った日」(消費税法 30条1項1号)については,消費税課税の対象となる「資産の譲渡等」 の時期の判定と同様の基準により判断することになる。消費税法上,「資産の譲渡等」がいつ行われたのかの判断基準等については,明文の規定は設けられていない。しかし,課税標準としての「対価の額」については,「対価として収受し,又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額」(同法28条1項本文括弧書き) とされていることからすると,所得税法における収入金額や法人税法における益金と同様に,対価の流入の蓋然性の有無,すなわち権利確定主義を基準として,「資産の譲渡等」の時期を判断すべきであるから,その対価を収受すべき権利が確定的に発生した時点をもって「資産の譲渡等」が行われたものと解すべきである。そして,課税資産である建物の 譲渡の対価たる権利が確定するのは,契約の効力発生の日とするのが相当であるが,双務契約においては同時履行の抗弁権が存在することから,「引渡しがあった日」を「資産の譲渡等」が行われた日とすることも可能である。 (イ) この点,所得税法において,建物の譲渡に関する課税は一般に譲渡 所得として課税されるところ(同 とから,「引渡しがあった日」を「資産の譲渡等」が行われた日とすることも可能である。 (イ) この点,所得税法において,建物の譲渡に関する課税は一般に譲渡 所得として課税されるところ(同法33条1項),その時期は,権利確定主義に基づき,収入すべき金額が確定した時期である(同法36条1項)。そして,所得税基本通達36-12では,山林所得又は譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期について,納税者の選択により,当該資産の譲渡に関する契約の効力発生の日とすることを認めている。 また,法人税法(平成30年法律第7号による改正前のもの。以下同じ。)において,収益の計上時期は,「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従うとされ(同法22条4項),建物の譲渡による収益の計上時期に関し,法人税基本通達(平成30年5月30日付け課法2-8ほか2課共同による改正前のもの)2-1-14は,固定資産の 譲渡に係る収益の帰属時期について,引渡しがあった日の属する事業年 度を原則としつつ,固定資産が土地,建物その他これらに類する資産である場合には,当該固定資産の譲渡に関する契約の効力発生の日の属する事業年度の益金の額に算入できるとして,選択可能性を認める形になっている。 (ウ) そして,消費税法上も,固定資産の課税仕入れを行った日について, 基本通達11-3-1が準用する同通達9-1-13は,固定資産を譲り受けた場合の課税仕入れを行った日を,その本文において,引渡しがあった日としつつ,そのただし書において,当該固定資産が土地,建物その他これらに類する資産である場合につき,事業者の選択により当該固定資産の譲渡に関する契約の効力発生の日を資産の譲受けの時期とす ることを認めており,建物の譲受けにつき,「引 産が土地,建物その他これらに類する資産である場合につき,事業者の選択により当該固定資産の譲渡に関する契約の効力発生の日を資産の譲受けの時期とす ることを認めており,建物の譲受けにつき,「引渡しがあった日」と「契約の効力発生の日」のいずれの日を基準とするかについて,選択可能性を認める形となっている。 (エ) このように,消費税法,法人税法及び所得税法は,建物の譲渡に関する時期の判断基準を統一的に定めており,契約の効力発生の日を基準 とすることを排除していない。 被告は,基本通達9-1-13ただし書は,資産の引渡しの事実関係が客観的に明らかな場合には適用できない旨主張するが,同ただし書の文言上,そのような内容は全く示されていないし,むしろ,引渡しの日の判断基準については,同通達9-1-2が示しており,そこで,引渡 しの日が不明な場合でも一定の結論が出せるようになっている。また,被告の主張するように,契約の効力発生の日を限定する解釈を採用すると,法人税法及び所得税法上当然に許されている契約の効力発生の日に基づく年度帰属の判断と矛盾することになり,税法全体の法体系の統一的な解釈を妨げることになって相当でない。 イ原告は,本件資産の譲受けについて,本件建物の売買契約が締結され, その効力が発生した日である平成25年6月28日を「課税仕入れを行った日」として確定申告を行っており,消費税法30条1項1号に何ら違反するものではない。 (被告の主張)ア 「課税仕入れを行った日」の意義 (ア) 消費税法は,事業者が,国内において課税仕入れを行った場合には,当該課税仕入れを行った日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から,当該課税仕入れに係る消費税額(控除対象仕入税額)を控除することによ は,事業者が,国内において課税仕入れを行った場合には,当該課税仕入れを行った日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から,当該課税仕入れに係る消費税額(控除対象仕入税額)を控除することによって,取引段階の進展に伴って税負担が累積することを防止することとしている。消費税法上,「課税仕入れを行った日」がいつ であるかについての具体的な定めは置いていないが,同法2条1項12号は,「課税仕入れ」の意義について,「事業者が,事業として他の者から資産を譲り受け…ること」をいうとした上で,その括弧書きにおいて,「当該他の者が事業として当該資産を譲り渡し…たとした場合に課税資産の譲渡等に該当することとなるもの…に限る。」との限定を付し て規定しており,「課税資産の譲渡等」と「課税仕入れ」を表裏一体の関係にあるとみている。消費税法は,「課税資産の譲渡等」の日がいつであるか具体的な定めを置いていないが,課税資産の譲渡等をした時が消費税を納付する義務の成立時期であるとされ(通則法15条2項7号),消費税法が資産の譲渡等により譲渡人の下で生じた付加価値が移転する のを捉え,消費税の課税対象としていることを併せ考えると,「課税資産の譲渡等」の日とは,その資産につき,その同一性を保持しつつ,他人に移転することにより譲渡人の下で生じた付加価値が移転した時をいうものと解すべきであり,具体的には,当該資産が譲渡人から譲受人に引き渡された日をいうと解すべきである。 (イ) 資産の引渡しがあった日がいつであるかは,当該資産の内容,性質, 当該契約や取引の内容等に応じて個別具体的に検討すべきであり,固定資産の譲渡に関しては,代金の支払の有無,対抗要件である所有権移転登記の具備,当該資産の譲渡等に係る契約内容の履行状況等か 当該契約や取引の内容等に応じて個別具体的に検討すべきであり,固定資産の譲渡に関しては,代金の支払の有無,対抗要件である所有権移転登記の具備,当該資産の譲渡等に係る契約内容の履行状況等から,引渡しの日として合理的であると認められる日をいうと解するのが相当である。 イ当てはめ本件では,①原告は,平成25年7月31日,本件建物に係る売買代金の全額を売主であるDに支払っていること,②Dは,同日,本件建物に設定されていた抵当権の抹消登記申請手続を行い,抵当権が抹消されたこと,③原告及びDは,同日,本件売買契約を原因として本件建物に係る所有権 移転登記申請を行い,当該登記が経由されたこと,④原告は,同日,本件建物に取引銀行のために根抵当権を設定し,その登記手続を行ったこと,⑤本件建物の固定資産税等に係る契約当事者間の負担割合については,同日を基準に按分計算がされ,原告及びDは同計算に従った税額をそれぞれ負担したこと,⑥同日,原告と管理会社との間で,同日を契約開始日とす る本件建物に係る管理委託契約が締結されていること,⑦原告は本件建物の入居者に対し,同日付けで賃貸人が変更した旨の通知をしたこと,⑧原告は,同日から本件建物の賃料の収受を開始したこと,⑨Dの平成25年分の所得税の確定申告書の添付書類において,本件建物の引渡しの日が同日と記載され,また,同人の同年分の不動産所得の計算上,本件建物に係 る賃貸契約期間及び減価償却費の償却期間を同年7月までの期間で計算したところにより所得税の申告がされていること等を総合的に考慮すれば,本件資産の譲受けにおける本件建物の引渡しの日は,平成25年7月31日であり,同日が「課税仕入れを行った日」となるから,本件課税期間に属さないことは明白である。 ウ原告 的に考慮すれば,本件資産の譲受けにおける本件建物の引渡しの日は,平成25年7月31日であり,同日が「課税仕入れを行った日」となるから,本件課税期間に属さないことは明白である。 ウ原告の主張について (ア) 基本通達9-1-13ただし書の解釈について基本通達9-1-13は,本文において,固定資産の譲渡の時期は引渡しがあった日とするとして,消費税法の解釈において,「課税仕入れを行った日」とは譲受人が資産の引渡しを受けた日であると解されることを確認的に定めた上で,ただし書において,「その固定資産が土地, 建物その他これらに類する資産である場合において,事業者が当該固定資産の譲渡に関する契約の効力発生の日を資産の譲渡の時期としているときは,これを認める」と定めている。その趣旨は,土地,建物,構造物等については,一般的にその引渡しの事実関係が外形上明らかでないことが多いので,事業者がその譲渡契約の効力の発生の日(一般には, 特約のない限り,契約締結の日)を譲渡の日としている場合は,これを認めたものであり,飽くまで引渡しを認識することが困難な場合を補完するものである。したがって,資産の引渡しに関する事実関係が客観的に明らかな場合には,上記ただし書の適用は認められないというべきである。本件では,前述したとおり,本件建物の引渡しの時期は明らかで あるから,上記ただし書にいう契約の効力発生の日をもって「課税仕入れを行った日」とすることはできない。 (イ) 原告は,本件課税期間において課税事業者となり,非課税売上げに対応する課税仕入れに該当するものとして,その大半が仕入税額控除の対象とならない本件建物を取得し,1か月に満たない期間である本件課 税期間内において,原告の事業目的に関連しな ,非課税売上げに対応する課税仕入れに該当するものとして,その大半が仕入税額控除の対象とならない本件建物を取得し,1か月に満たない期間である本件課 税期間内において,原告の事業目的に関連しない少量の金地金5gを売買することにより,本件課税期間の課税売上割合を100%とする一方で,平成25年6月28日に原告及びDの意思のみによって作成可能な売買契約書を作成し,また,同日付けで未払金勘定を相手科目として本件建物を資産計上し,あたかも確定的に所有権が移転したとする経理処 理をしたものであり,かかる原告の一連の行為は,単に消費税等の還付 を受けることのみを目的として,上記ただし書を適用して本件建物の取得に係る仕入税額控除を受けようとするものといえ,消費税法及び仕入税額控除の趣旨に反するから,上記ただし書を適用する余地はない。 (2) 争点(2)(本件役務の享受に係る「課税仕入れを行った日」は,本件課税期間に属する日であるか否か)について (原告の主張)司法書士との準委任契約に関しては,消費税法上,「課税仕入れを行った日」につき特に規定を置いていない。もっとも,基本通達9-1-11(1)は,設計等の技術に係る役務の提供に係る資産の譲渡等の時期について,報酬の額が日数等により算定され,かつ,一定の期間ごとにその金額を確定さ せて支払を受けるような場合,その支払を受けるべき報酬の額が確定した日にその確定した金額に係る役務の提供を行ったものとする旨を定めており,本件司法書士に対する報酬についても,手続ごとにその報酬が算出される契約ともいえる以上,報酬の額が確定した日をもって,「課税仕入れを行った日」とするのが相当である。 原告は,本件司法書士に渡すべく,登記に必要となる書類である原告の印鑑証 算出される契約ともいえる以上,報酬の額が確定した日をもって,「課税仕入れを行った日」とするのが相当である。 原告は,本件司法書士に渡すべく,登記に必要となる書類である原告の印鑑証明書を平成25年6月14日には取得している(乙20)。委任状の作成日は,同年7月31日付けであるが,原告は,同日,本件司法書士に対し,登録免許税の預け金を含めて,報酬金を支払っており,その場で当該金銭を支払う意思決定をしたわけではない。請求書は同年7月26日付けであるが, 上記印鑑証明書を取得した同年6月14日以後,遅くとも本件不動産の売買契約が成立し,効力を生じた同年6月28日には,本件司法書士との間で,預け金の額,報酬金額も定まった準委任契約が成立していた。 したがって,本件役務の享受に係る「課税仕入れを行った日」は,本件司法書士に本件不動産の登記手続を委任した平成25年6月28日であり,本 件課税期間に属する日であることは明らかである。 (被告の主張)ア 「課税仕入れを行った日」の意義消費税法は,役務の提供において生じた付加価値が付与されるのを捉えて消費税の課税の対象としていると解されること,また,請負契約においては,その報酬請求権は,仕事の目的物の引渡しを要する請負にあっては その引渡しの時,目的物の引渡しを要しないときは仕事の完成の時に発生し(民法633条,624条1項),委任契約においては,期間によって報酬を定めた場合を除き,委任事務を履行した時に発生する(同法648条2項)ことからすると,消費税法は,このような役務の享受については,役務の提供の全部が完了した日を「課税仕入れを行った日」とするものと 解される。 イ当てはめ原告が支払った本件司法書士に対する報酬は,原告 法は,このような役務の享受については,役務の提供の全部が完了した日を「課税仕入れを行った日」とするものと 解される。 イ当てはめ原告が支払った本件司法書士に対する報酬は,原告が購入した本件不動産の登記申請に係る役務の提供の対価である。本件司法書士は,原告の代理人として,平成25年7月31日に売買契約を登記原因とする所有権移 転登記の申請,原告の取引銀行のための根抵当権の設定登記の申請をそれぞれ行い,同日,これらの登記が経由されたことからすれば,本件司法書士が原告から委任を受けた本件不動産の登記申請に係る役務の提供の全部を完了した日は,平成25年7月31日であると認められる。そうすると,本件役務の享受に係る「課税仕入れを行った日」は平成25年7月31日 であり,同日は本件課税期間に属する日ではない。 (3) 争点(3)(本件消費税等更正処分における理由の提示に不備があるか否か)について(原告の主張)ア本件消費税等更正処分は,法令の解釈・適用に関する法的評価に関する 事項について否認するものであり,そのような評価判断に至った過程を具 体的に説明又は摘示する必要がある。とりわけ,更正処分に先立ち,争点となり得る法令及び納税者の主張する解釈が明らかでありながら,処分行政庁がこれと異なる法解釈に基づき更正処分を行う場合,何ら法解釈の過程の説明又は摘示を行うことなく更正処分を行うのであれば,納税者は処分行政庁が採用した法解釈が法令に適合するのか,また自らの法令の解釈 がなぜ法律の定めに従っていないのかの検討材料を欠き,不服申立てにおいて指摘すべき事項すら判然としないこととなるため,不服申立ての便宜を欠き,また,処分行政庁の恣意的な法解釈を容認することになってしまう。したがって,こ ていないのかの検討材料を欠き,不服申立てにおいて指摘すべき事項すら判然としないこととなるため,不服申立ての便宜を欠き,また,処分行政庁の恣意的な法解釈を容認することになってしまう。したがって,このような場合は,法令の解釈の過程を具体的に説明又は摘示する必要がある。 イ原告の税務代理人であったB税理士は,税務調査において,本件建物の取得に係る課税仕入れについて,基本通達9-1-13ただし書で示されているとおり,契約の効力発生の日を課税仕入れを行った日としている旨,消費税等の申告の法的根拠を伝えていた。 本件消費税等更正処分の通知書には,①本件建物の売買契約書における 代金支払及び引渡しに関する定め,②代金支払日,③賃料収入受領の範囲並びに④所有権移転登記の日の各事実が指摘され,その直後に,消費税法30条1項1号に規定する課税仕入れを行った日は,本件建物の引渡しを受けた日である平成25年7月31日であると認められる旨記載されているが,本件建物の取得に係る事実と結論が示されているのみで,法令の 解釈・適用に関する法的評価,すなわち消費税法30条1項1号における「課税仕入れを行った日」の解釈として,なぜ「引渡しの日」が導き出され,「契約の効力発生の日」は排除されるのか,なぜ基本通達9-1-13ただし書の適用が否定されたのか等についての解釈及び理由は一切記載されていない。 これでは,原告において,いかなる理由に基づいてどのように基本通達 9-1-13の本文とただし書が適用されて,本件消費税等更正処分がされたのか,なぜただし書の適用が否定されて,本文が適用されたのかを知ることができない。 ウまた,被告は,本件の事実関係を前提に,仕入税額控除の趣旨から判断して,基本通達9-1-13ただし書の適用は たのか,なぜただし書の適用が否定されて,本文が適用されたのかを知ることができない。 ウまた,被告は,本件の事実関係を前提に,仕入税額控除の趣旨から判断して,基本通達9-1-13ただし書の適用はない旨主張しているが,そ のような事実関係は,本件消費税等更正処分の理由として一切提示されていない。 エさらに,本件役務の享受に係る「課税仕入れ」の時期については,「支払先」と「課税仕入れにかかる支払対価の額」が記載されているほかは,何らの理由も記載されておらず,本件司法書士との契約につきどのように 検討して本件消費税等更正処分がされたのか全く不明である。 オよって,本件消費税等更正処分には,明らかに理由提示の不備の違法があるというべきである。 (被告の主張)ア行政手続法14条1項が,不利益処分をする場合にその理由を名宛人に 示さなければならないとしているのは,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものであり,不利益処分一般について,どの程度の理由を提示すべきかは,上記のような趣旨に照らし,当該処分の根拠法令の規定内容,当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公 表の有無,当該処分の性質及び内容,当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきである。 イ当てはめ(ア) 本件資産の譲受けに係る部分本件消費税等更正処分の通知書の記載内容からすれば,本件課税期間 の仕入税額控除の対象から除外する課税仕入れに係る支払対価の額であ る合計7147万2260円は,原告とDとの間で締結された売買契約に基づく本件建物の取得に係る支払対価の額及び本件司法書士による役務の提供に係る支払対 る課税仕入れに係る支払対価の額であ る合計7147万2260円は,原告とDとの間で締結された売買契約に基づく本件建物の取得に係る支払対価の額及び本件司法書士による役務の提供に係る支払対価の額であること,これらの課税仕入れを行った日は,本件建物の引渡しに係る本件売買契約の約定内容,代金の支払日,本件建物の賃料の収受開始日,所有権移転登記の日に照らして,本件建 物の引渡しがされた平成25年7月31日であり,本件課税期間に属しないため,上記7147万2260円は,本件課税期間における課税仕入れに係る支払対価の額として仕入税額控除することはできないという本件消費税等更正処分に至る処分行政庁の判断過程が具体的に示されている。 そうすると,本件消費税等更正処分の通知書の記載は,処分行政庁の判断の慎重と合理性を確保する点について欠けるところはなく,原告においても,その記載自体から,本件建物の契約締結日が本件建物に係る「課税仕入れを行った日」でない旨を容易に読み取ることができ,不服申立ての便宜という趣旨にも適うものとなっている。よって,法の要求 する更正処分の理由の提示として欠けるところはない。 (イ) 本件役務の享受に係る部分本件消費税等更正処分の通知書には,本件役務の享受に係る「課税仕入れを行った日」を平成25年7月31日であると判断するに至った過程につき,本件課税期間中の仕入税額控除の範囲を示した消費税法30 条1項1号の記載とともに,本件不動産の所有権移転登記がされた日を認定・判断するために考慮した事実関係を具体的に摘示しているのであるから,更正の理由の提示に不備があるとは認められない。 仮に本件役務の享受に係る部分につき更正の理由の提示に不備があるとしても,本件役 ために考慮した事実関係を具体的に摘示しているのであるから,更正の理由の提示に不備があるとは認められない。 仮に本件役務の享受に係る部分につき更正の理由の提示に不備があるとしても,本件役務の享受に係る部分については格別,本件消費税等更 正処分全体が違法となるものではない。 ウ原告の主張について原告は,基本通達9-1-13の本文とただし書の適用関係についての判断過程を提示すべき旨の主張をする。しかし,消費税法30条1項1号の「課税仕入れを行った日」は,資産の引渡しを受けた日をいうものであるところ,本件建物が原告に引き渡された日は明らかであり,上記ただし 書を適用する余地はない上,本件消費税等更正処分の通知書には,消費税法30条1項1号が示されている以上,その確認的な定めである基本通達9-1-13の本文を重ねて付記する必要がないことはもとより,同本文とそもそも適用の余地のないただし書のいずれを適用するかの判断過程を付記する必要もない。 (4) 争点(4)(本件消費税等更正処分は,信義則に反し,違法であるか否か)について(原告の主張)ア租税法律関係において,信義則に違反するとして課税処分の法律上の効果が否定されるのは,納税者間の平等,公平という要請を犠牲にしてもな お当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に限られ,当該事情が存するかの判断に当たっては,①税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したことにより,②納税者がその表示を信頼しその信頼に基づいて行動したところ,③後にその表示に反する課税処分が行われ, そのために納税者が経済的不利益を受けることになったものであるかどうか,ま たことにより,②納税者がその表示を信頼しその信頼に基づいて行動したところ,③後にその表示に反する課税処分が行われ, そのために納税者が経済的不利益を受けることになったものであるかどうか,また,④納税者が税務官庁の上記表示を信頼しその信頼に基づいて行動したことについて,納税者の責めに帰すべき事由がないかどうかという点の考慮が必要である。 イ当てはめ これを本件についてみるに,①消費税法30条1項1号の「課税仕入れ を行った日」の意義に関して,国税庁長官が,消費税法制定当時から,基本通達9-1-13によって公的見解を表示していたことにより,②原告は,基本通達における解釈を信頼して,本件の確定申告を行ったところ,③原告は,本件消費税等更正処分を受けて,消費税等の納付を余儀なくされ,また,本件賦課決定処分により過少申告加算税を課され,経済的不利 益を被った。そして,④基本通達9-1-13は,明文をもって納税者の選択可能性を認めており,これと異なる実務上の運用があったわけでもないから,同通達を信じて行動した原告に帰責事由はない。 したがって,本件消費税等更正処分は,信義則に反し,違法である。 (被告の主張) ア基本通達9-1-13ただし書は,原告が主張するように,固定資産の引渡しの時期が明らかな場合か否かを問わず,納税者において,資産の譲渡等の時期を引渡しの日とするか契約の効力発生の日とするかを自由に選択することを認めたものではないから,その旨の公的見解を表示したものではない。 イ原告は,前述したとおり,消費税等の還付を受ける目的で,基本通達9-1-13ただし書が仕入税額控除に係る課税仕入れを行った日につき,固定資産の引渡しの日あるいは契約の効力発生の日のいずれとするかを納税者の自由 したとおり,消費税等の還付を受ける目的で,基本通達9-1-13ただし書が仕入税額控除に係る課税仕入れを行った日につき,固定資産の引渡しの日あるいは契約の効力発生の日のいずれとするかを納税者の自由な選択に委ねている旨の独自の見解に基づき,あえて意図的に同ただし書を選択・適用して確定申告をしているのであるから,原告が税 務官庁の「表示を信頼しその信頼に基づいて行動した」とは認められない。 ウ本件消費税等更正処分及び本件賦課決定処分は,いずれも適法であり,その結果,原告の納付すべき税額が増加したにすぎないから,原告に経済的不利益は生じていない。 エ原告は,基本通達9-1-13ただし書により,納税者に自由な選択が 認められているとの独自の解釈に基づいて消費税等の確定申告をしたので あり,かかる解釈をとったことについて,原告の責めに帰すべき事由がないとはいえない。 オ以上のとおり,本件において信義則の法理を適用する余地はない。 (5) 争点(5)(原告に通則法65条4項に規定する「正当な理由」があるか否か)について (原告の主張)ア通則法65条4項が定める「正当な理由があると認められる」場合とは,真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり,過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である。 イ基本通達9-1-13ただし書は,本件建物の売買契約の効力発生の日を課税仕入れの日とすることを認めており,税務当局の解釈としても,土地,建物等の有形固定資産について,このような例外を認めている。 したがって,原告が平成25年7月31日を「課税仕入れを行った日」としなかったとしても,これは基本通達で客観的 釈としても,土地,建物等の有形固定資産について,このような例外を認めている。 したがって,原告が平成25年7月31日を「課税仕入れを行った日」としなかったとしても,これは基本通達で客観的に示されていた消費税法 30条1項1号の解釈に忠実に従ったという,真に原告の責めに帰することのできない客観的事情によるものであり,原告に過少申告加算税を課すことは他の納税者との公平の観点からも,不当又は酷であることは明らかであるから,本件賦課決定処分は,原告に通則法65条4項にいう「正当な理由」があるものとして,取り消されるべきである。 (被告の主張)原告は,前述したとおり,消費税等の還付を受ける目的で,基本通達9-1-13ただし書が仕入税額控除に係る課税仕入れを行った日につき,固定資産の引渡しの日あるいは契約の効力発生の日のいずれとするかを納税者の自由な選択に委ねている旨の独自の見解に基づき,あえて意図的に同ただし 書を選択・適用して確定申告をしているのであるから,原告が同確定申告に おいて適用した同ただし書を本件消費税等更正処分において適用しなかったことについて,原告において,真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があるとは認められないし,過少申告加算税の趣旨に照らしても,なお原告に過少申告加算税を賦課することが不当ないし酷であるとは認められない。 よって,原告に通則法65条4項に規定する「正当な理由」があるとは認められない。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(本件資産の譲受けに係る「課税仕入れを行った日」は,本件課税期間に属する日であるか否か)について (1)ア消費税法30条1項1号によれば,本件のように事業者が国内において課税仕入れを行った場合,仕入税額 る「課税仕入れを行った日」は,本件課税期間に属する日であるか否か)について (1)ア消費税法30条1項1号によれば,本件のように事業者が国内において課税仕入れを行った場合,仕入税額控除の時期は,「当該課税仕入れを行った日」の属する課税期間であるところ,同法2条1項12号は,「課税仕入れ」とは,事業者が,事業として他の者から資産を譲り受け,若しくは借り受け,又は役務の提供を受けること(当該他の者が事業として当該 資産を譲り渡し,若しくは貸し付け,又は当該役務の提供をしたとした場合に課税資産の譲渡等に該当することとなるものに限る。)をいうと規定している。消費税法上,「当該課税仕入れを行った日」についての明確な定めはないものの,上記のとおり,課税仕入れとは,当該資産の譲渡等をした者から見た場合に,それが事業として行われれば課税資産の譲渡等に 該当するものに限られていることからすると,課税仕入れと課税資産の譲渡等は表裏の関係にあり,課税仕入れの時期は課税資産の譲渡等の時期に準じて判断するのが相当である。 ところで,課税資産の譲渡等の時期についても,消費税法には明確な定めはないものの,国内において事業者が行った資産の譲渡等については, 当該資産の譲渡等そのものが消費税課税の対象とされていること(同法4 条1項),課税資産の譲渡等をした時が消費税を納付する義務の成立時期とされていること(通則法15条2項7号)からすれば,課税資産の譲渡等の時期とは,当該課税資産の譲渡等が現実に行われた時,すなわち,資産の譲渡においては,原則として,当該資産に係る権利(所有権)が移転した時をいうものと解するのが相当である。したがって,課税仕入れの時 期についても,当該課税仕入れが現実に行われた時,すなわち,資産の譲 においては,原則として,当該資産に係る権利(所有権)が移転した時をいうものと解するのが相当である。したがって,課税仕入れの時 期についても,当該課税仕入れが現実に行われた時,すなわち,資産の譲受けにおいては,原則として,当該資産に係る権利(所有権)を取得した時をいうものと解するのが相当である。 イこの点,原告は,課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準である課税資産の譲渡等の対価の額が「対価として収受し,又は収受すべき一切の金 銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額」(消費税法28条1項本文括弧書き)とされていることから,所得税法における収入金額や法人税法における益金と同様に,権利確定主義を基準として「資産の譲渡等」の時期を判断すべきであり,その対価を収受すべき権利が確定的に発生した時点をもって「資産の譲渡等」が行われたものと解すべきであ る旨主張する。 なるほど,所得税法において,各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額は,その年において「収入すべき金額」(同法36条1項)とされ,現実の収入がなくても,その収入の原因たる権利が確定的に発生した場合には,その時点で所得の実現があったものとして,これを当該権利の発生 した時期の属する年分の課税所得とすべきものと解されていること,法人税法においても,内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は,資本等取引以外の取引に係る当該事業年度の収益の額とするものとされ(同法22条2項),原則として,ある収益をどの事業年度に計上すべきかは,一般に公正妥当と認められる会計 処理の基準に従うべきであり(同条4項),これによれば,収益の額は,そ の実現があった時,すなわち,その収入すべき権利が確定した時期の 計上すべきかは,一般に公正妥当と認められる会計 処理の基準に従うべきであり(同条4項),これによれば,収益の額は,そ の実現があった時,すなわち,その収入すべき権利が確定した時期の属する事業年度の益金の額に計上すべきものと解されていることは,原告の指摘するとおりである。しかしながら,所得税法及び法人税法の解釈において,権利確定主義による収入ないし収益の実現の時期が課税時期と直結しているのは,まさに当該収入ないし収益によって構成される個人ないし法 人の所得がそれぞれ所得税ないし法人税の課税対象となっているからであり,消費税の課税対象が「資産の譲渡等」という取引行為とされ,その対価の額が課税標準とされるにとどまる消費税法の場合とは前提を異にするものである。したがって,消費税の課税標準としての対価の額の算定に当たり,権利確定主義の考え方を導入する余地はあり得るとしても,そ れによる対価収受の実現の時期が直ちに当該資産の譲渡等の時期となるものではない。課税資産の譲渡等の時期及び課税仕入れの時期については,上記アのとおりに解すべきであるから,原告の上記主張は採用できない。 ウなお,基本通達11-3-1は,「課税仕入れを行った日」の意義について,同通達第9章の取扱いを準用し,同通達9-1-13は,固定資産 の譲渡の時期について,その本文において,「引渡しがあった日」としつつ,そのただし書において,固定資産が土地,建物その他これらに類する資産である場合には,事業者が当該固定資産の譲渡に関する契約の効力発生の日を資産の譲渡の時期としているときは,これを認めるとしている。 当該取扱いは,固定資産の譲渡については,同時履行の抗弁権の存在等に より,現実には,引渡時に当該資産の権利(所有権)が移転するものとさ 産の譲渡の時期としているときは,これを認めるとしている。 当該取扱いは,固定資産の譲渡については,同時履行の抗弁権の存在等に より,現実には,引渡時に当該資産の権利(所有権)が移転するものとされていることが多いことから,引渡時を基準としつつ,契約によって,別途権利(所有権)の移転日を定めている場合には,これによる旨を定めたものであると解され,同通達ただし書の文言上,売買等の契約の効力発生の日をもって直ちに「課税仕入れを行った日」とすることを認めておらず, 事業者が当該固定資産の「譲渡に関する契約」のその「効力発生の日」を 「資産の譲渡の時期としている」ことを要求しているのは,上記趣旨によるものと解される。したがって,その限りにおいて,上記アの消費税法の解釈とも整合し,合理的なものと認められる。 この点,被告は,資産の引渡しに関する事実関係が客観的に明らかな場合には,基本通達9-1-13ただし書の適用は認められない旨主張する。 しかしながら,同通達9-1-13は,その注書において,本文の取扱いによる場合において,固定資産の引渡しの日がいつであるかについては,同通達9-1-2の例によると定めているところ,同通達9-1-2では,棚卸資産の引渡しの日について,出荷した日,相手方が検収した日,相手方において使用収益ができることとなった日等,棚卸資産の種類や性質等 から,引渡日として合理的な日によるとしつつ,棚卸資産が土地又は土地の上に存する権利であり,その引渡しの日が明らかでないときは,①代金の相当部分(おおむね50%以上)を収受するに至った日,②所有権移転登記の申請(その登記の申請に必要な書類の相手方への交付を含む。)をした日のうちいずれか早い日にその引渡しがあったものとすることがで 部分(おおむね50%以上)を収受するに至った日,②所有権移転登記の申請(その登記の申請に必要な書類の相手方への交付を含む。)をした日のうちいずれか早い日にその引渡しがあったものとすることがで きる旨規定している。すなわち,当該規定によれば,固定資産の引渡しの日をいずれかの日に特定することは可能であるから,被告の主張する解釈によれば,同通達9-1-13ただし書を適用する場面はないことになり,同規定の存在意義を失わせることになってしまい相当でない。よって,被告の上記主張は採用できない。 (2) そこで,原告が本件建物に係る権利(所有権)を取得した日を検討するに,前記前提となる事実のとおり,本件建物の売買契約において,①売主(D)は,売買代金全額の支払を受けるのと引換えに,買主(原告)に対し,本件建物の引渡し及び所有権移転登記申請手続を行うものとされていること,②本件建物に関する固定資産税等については,所有権移転登記の日をもって区 分し,その前日までは売主(D)が,その日以後は買主(原告)が負担する とされていること,③本件建物から生ずる収益の帰属については,上記①の引渡日をもって区分し,その前日までは売主(D)の,その日以後は買主(原告)の収益とするとされていることが認められ,さらに,売買契約締結後の経緯として,①原告は,平成25年7月31日に,Dに対し,本件建物の売買代金の全額を支払っていること,②Dは,同日,本件建物に設定されてい た抵当権の抹消登記申請手続を行ったこと,③原告とDは,同日,本件建物について,売買を原因として所有権移転登記手続を行ったこと,④原告は,同日,本件建物に取引銀行のための根抵当権を設定し,その設定登記手続を行ったこと,⑤原告とDは,本件建物の固定資産税等については,同日を て,売買を原因として所有権移転登記手続を行ったこと,④原告は,同日,本件建物に取引銀行のための根抵当権を設定し,その設定登記手続を行ったこと,⑤原告とDは,本件建物の固定資産税等については,同日を基準として按分計算し,同日より前の分はDが,同日以降の分は原告が負担し たこと,⑥原告と管理会社は,同日を契約期間開始日とする本件建物に係る管理委託契約を締結したこと,⑦原告とDは,本件建物の入居者に対し,同日付けで賃貸人がDから原告に変更した旨の通知をしていること,⑧原告は,同日分から本件建物の賃料の収受を開始したこと,⑨Dの平成25年分の所得税の確定申告書の添付書類において,本件建物の引渡しの日が同日と記載 され,また,同人の同年分の不動産所得の計算上,本件建物に係る賃貸借契約期間及び減価償却費の償却期間を同年7月までの期間で計算したところにより所得税の申告がされていることが認められる。 これらの事実からすれば,原告とDは,本件建物の引渡日をもって所有権を移転する旨合意していたと認めるのが相当であり,本件建物の所有権移転 登記の時期,使用収益の実態等契約締結後の事情を踏まえれば,本件建物は,平成25年7月31日にDから原告に引き渡されたものと認められるから,原告がDから本件建物に係る権利(所有権)を取得した日は,平成25年7月31日であると認められる。 (3) 原告は,基本通達9-1-13ただし書により,本件建物の売買契約を締 結した平成25年6月28日が本件資産の譲受けに係る「課税仕入れを行っ た日」である旨主張する。 しかし,基本通達9-1-13ただし書は,前述した消費税法の解釈に基づき,契約において固定資産に係る権利(所有権)の移転の時期を定めているときはこれによることを定めたものであ 旨主張する。 しかし,基本通達9-1-13ただし書は,前述した消費税法の解釈に基づき,契約において固定資産に係る権利(所有権)の移転の時期を定めているときはこれによることを定めたものであると解される(前記(1)ウ)。しかるに,本件建物の売買契約においては,契約締結日をもって所有権を移転す る旨の明示的な合意はされていない上(甲2の1),前記(2)のとおり,原告とDは,本件建物の引渡日をもって所有権を移転する旨合意していたと認められ,契約締結日たる平成25年6月28日をもって本件建物の所有権の移転の時期とする合意があったとは認められない。よって,原告の上記主張は採用できない。 (4) 小括以上によれば,本件資産の譲受けに係る「課税仕入れを行った日」は,平成25年7月31日であり,本件課税期間に属するとは認められない。 2 争点(2)(本件役務の享受に係る「課税仕入れを行った日」は,本件課税期間に属する日であるか否か)について (1) 消費税法30条1項1号にいう「課税仕入れを行った日」については,前記1で説示したとおり,役務の提供を受けるなどの課税仕入れが現実に行われた日をいうものと解すべきである。 (2) 前記前提となる事実によれば,本件役務の享受に係る役務の内容は,①本件不動産の売買契約を登記原因とする所有権移転登記の申請手続と②原告の 取引銀行のためにする本件不動産に対する根抵当権の設定登記の申請手続であり,原告と本件司法書士との間で当該役務の提供に関する契約が締結されたのは,原告の主張によっても平成25年6月14日から本件不動産の売買契約が締結された同月28日までの間であり,また,前記前提となる事実によれば,本件司法書士は,上記①及び②の役務を同年7月31日に完了した 原告の主張によっても平成25年6月14日から本件不動産の売買契約が締結された同月28日までの間であり,また,前記前提となる事実によれば,本件司法書士は,上記①及び②の役務を同年7月31日に完了した ことが認められる。 これらの事実からすると,原告が本件司法書士から当該役務の提供を現実に受けたのは,平成25年7月31日であると認められ,本件役務の享受に係る「課税仕入れを行った日」は,同日であると認められる。 (3) この点,原告は,基本通達9-1-11(1)を引用しつつ,本件役務の享受に係る「課税仕入れを行った日」は,遅くとも本件司法書士との間で預け 金の額,報酬金額も定まった準委任契約が成立していた平成25年6月28日である旨主張する。 しかし,前記(1)で説示したとおり,役務の提供を受けることに係る「課税仕入れを行った日」とは,当該役務の提供を現実に受けた日をいうと解すべきであって,契約が成立した日をいうものとは解されないし,前記(2)の事実 関係によれば,本件役務の享受に係る役務の内容は,登記申請に係る一回的なものであって,原告と本件司法書士との間の契約において,継続的な役務の提供を前提に期間によって報酬を定める旨の合意がされていたというような事情もうかがわれない。よって,原告の主張は採用できない。 (4) 小括 以上によれば,本件役務の享受に係る「課税仕入れを行った日」は,平成25年7月31日であり,本件課税期間に属するとは認められない。 3 争点(3)(本件消費税等更正処分における理由の提示に不備があるか否か)について(1) 行政手続法14条1項本文が,不利益処分をする場合に同時にその理由を 名宛人に示さなければならないとしているのは,名宛人に直 正処分における理由の提示に不備があるか否か)について(1) 行政手続法14条1項本文が,不利益処分をする場合に同時にその理由を 名宛人に示さなければならないとしているのは,名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解される。そして,同項本文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは,上記のような同項本 文の趣旨に照らし,当該処分の根拠法令の規定内容,当該処分に係る処分基 準の存否及び内容並びに公表の有無,当該処分の性質及び内容,当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきである(最高裁平成23年6月7日第三小法廷判決・民集65巻4号2081頁参照)。 (2)ア本件消費税等更正処分は,通則法24条に基づき,納税申告書に記載された課税標準等の計算が国税に関する法律の規定である消費税法30条 1項1号の規定に従っていなかったとしてされた処分であるところ,同号にいう「課税仕入れを行った日」との文言は一義的に明確なものとまではいえない。また,固定資産の譲受けに係る「課税仕入れを行った日」の意義については,基本通達9-1-13において定められ,同通達は公表されているが,その本文とただし書の解釈をめぐっては,現に原告と被告と の間で争いがあるように,これも明確なものとはいえない。 しかし,前記前提となる事実のとおり,本件消費税等更正処分の通知書には,更正の理由について,本件建物の売買契約の内容,売買代金の支払時期,所有権移転登記のされた時期等の具体的事実を摘示した上で,当該各事実からすると,本件建物の取得 ,本件消費税等更正処分の通知書には,更正の理由について,本件建物の売買契約の内容,売買代金の支払時期,所有権移転登記のされた時期等の具体的事実を摘示した上で,当該各事実からすると,本件建物の取得に係る課税仕入れについて,消費税法 30条1項1号にいう「課税仕入れを行った日」は,本件建物の引渡しを受けた日である平成25年7月31日と認められる旨示されており,少なくとも本件資産の譲受けについては,本件建物の引渡しを受けた日をもって「課税仕入れを行った日」と認定されたことが明らかである。基本通達の適用関係については明示されていないが,同更正処分が固定資産である 本件建物の引渡しを受けた日を基準にしていることは明らかであるから,同通達9-1-13本文が適用されたことも容易に推測できる。そして,本件においては,上記の程度の理由の提示でも,行政庁が自らの判断過程を検証することは可能であり,その判断の慎重と合理性を確保するという点において欠けるところはなく,納税者としても,引渡しを受けた日をも って「課税仕入れを行った日」と認定されたことは明らかであるから,同 通達9-1-13ただし書により契約で定められた権利(所有権)の移転日をもって「課税仕入れを行った日」とすべき旨の主張をしてこれを争うことは可能であり,不服申立てに必要な材料は提供されているといえ,不服申立ての便宜という点でも最低限の要請は満たされているといえる。 イこの点,原告は,基本通達9-1-13の本文とただし書の適用関係や, ただし書の適用が否定された理由等が示されていないから,理由提示の不備がある旨主張する。しかし,上記アで説示したとおり,本件では,同通達9-1-13の本文が適用され,ただし書は適用されなかったことが処分通知書の記載から容 た理由等が示されていないから,理由提示の不備がある旨主張する。しかし,上記アで説示したとおり,本件では,同通達9-1-13の本文が適用され,ただし書は適用されなかったことが処分通知書の記載から容易に推測することができるのであり(この点でこのような適用関係が明らかでなかった前掲最判平成23年6月7日の事案 とは異なるものである。),適用されないただし書の規定についてまで,その解釈等を示さなければならないとは解されない。よって,原告の上記主張は採用できない。 ウまた,原告は,本件役務の享受に係る課税仕入れの時期については,支払先及び課税仕入れに係る支払対価の額以外は,何らの理由も記載されて おらず,理由提示の不備がある旨主張する。しかし,先に説示したとおり,本件役務の享受に係る役務の内容は,平成25年7月31日に完了した本件建物に係る所有権移転登記等の申請手続であるところ,これを前提に,本件建物の所有権移転登記が行われた日等も踏まえて,課税仕入れを行った日が認定されていることに照らせば,当該登記が行われた日(登記の申 請手続が完了した日)である平成25年7月31日をもって,役務の提供を受けた日と認定されたものであることも容易に推測でき,この程度の記載でも,理由提示の趣旨にもとるものとは認められない。 (3) 小括以上によれば,本件消費税等更正処分における理由の提示に不備があると は認められない。 4 争点(4)(本件消費税等更正処分は,信義則に反し,違法であるか否か)について(1) 租税法規に適合する課税処分について,法の一般原理である信義則の法理の適用により,当該課税処分を違法なものとして取り消すことができる場合があるとしても,法律による行政の原理なかんずく租税法律主義の 租税法規に適合する課税処分について,法の一般原理である信義則の法理の適用により,当該課税処分を違法なものとして取り消すことができる場合があるとしても,法律による行政の原理なかんずく租税法律主義の原則が貫 かれるべき租税法律関係においては,租税法規の適用における納税者間の平等,公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に,初めて上記法理の適用の是非を考えるべきものである。そして,上記特別の事情が存するかどうかの判断に当たっては,少なくとも,税 務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したことにより,納税者がその表示を信頼しその信頼に基づいて行動したところ,後にその表示に反する課税処分が行われ,そのために納税者が経済的不利益を受けることになったものであるかどうか,また,納税者が税務官庁の上記表示を信頼しその信頼に基づいて行動したことについて納税者の責めに帰すべき事由がな いかどうかという点の考慮は不可欠のものであると解すべきである(最高裁昭和62年10月30日第三小法廷判決・裁判集民事152号93頁参照)。 (2) そこで検討するに,本件では,消費税法30条1項1号の「課税仕入れを行った日」の意義について,基本通達が定められ,これが公表されてきたところであるが,同通達9-1-13は,土地,建物等の固定資産について, 事業者の選択により,売買等の契約の効力発生の日をもって「課税仕入れを行った日」とすることを当然に認めることを表示したものではないから,そのような公的見解を表示したものとはいえないし,本件では,同通達9-1-13ただし書が適用される事案ではないため,その本文を適用して本件消費税等更正処分が に認めることを表示したものではないから,そのような公的見解を表示したものとはいえないし,本件では,同通達9-1-13ただし書が適用される事案ではないため,その本文を適用して本件消費税等更正処分が行われたものであり,同通達に表示した内容に反する課税 処分が行われたものでもない。 (3) したがって,本件においては,租税法規の適用における納税者間の平等,公平という要請を犠牲にしてもなお本件消費税等更正処分に係る課税を免れしめて原告の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存するということはできないから,本件消費税等更正処分について信義則の法理の適用はないというべきである。 5 争点(5)(原告に通則法65条4項に規定する「正当な理由」があるか否か)について(1) 当初から適正に申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに,過少申告による納税義務違反の発生を防止し適正な申告納税の実現を図るという過少申告加算税の趣旨に照らせば,過少申告があ っても例外的に過少申告加算税が課されない場合として通則法65条4項の定める「正当な理由があると認められる」場合とは,真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり,上記のような過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である(最高裁平成27年6月12日 第二小法廷判決・民集69巻4号1121頁等参照)。 (2) そこで検討するに,本件では,原告は,基本通達9-1-13ただし書に基づいて,本件建物の売買契約の効力発生の日(締結日)を「課税仕入れを行った日」として消費税等の申告をしているところ,同ただし書は,前述したとおり ,本件では,原告は,基本通達9-1-13ただし書に基づいて,本件建物の売買契約の効力発生の日(締結日)を「課税仕入れを行った日」として消費税等の申告をしているところ,同ただし書は,前述したとおり,事業者の選択により,売買等の契約の効力発生の日を「課税仕入 れを行った日」とすることを当然に認めているわけではなく,事業者が,譲渡に係る契約の効力発生の日を資産の譲渡の時期としているとき,すなわち,契約において資産に係る権利(所有権)の移転の時期を定めているときは,その日を「課税仕入れを行った日」とすることを認めるものであると解される。しかるに,本件では,本件建物の売買契約の効力発生の日(締結日)を もって所有権を移転する旨の合意があるとは認められないことは前記1で説 示したとおりであって,結局,原告が本件建物の売買契約の効力発生の日(締結日)を「課税仕入れを行った日」として消費税等の申告をしているのは,基本通達の解釈・適用,ひいては消費税法の解釈・適用を誤ったことにほかならないというべきである。 (3) 以上によれば,本件において,真に納税者の責めに帰することのできない 客観的な事情があり,過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になるとはいえないから,通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとは認められない。 6 以上によれば,原告の本件課税期間の消費税に係る控除対象仕入税額,納付すべき消費税額及び納付すべき地方消費税額(譲渡割額)は,本件消費税等更 正処分におけるこれらの金額(別表2の「更正処分等」欄)と同額となり,本件消費税等更正処分に伴って原告に賦課されるべき過少申告加算税の額は,本件賦課決定処分により原告に賦課された過少申告加算税の額(別表2の「 けるこれらの金額(別表2の「更正処分等」欄)と同額となり,本件消費税等更正処分に伴って原告に賦課されるべき過少申告加算税の額は,本件賦課決定処分により原告に賦課された過少申告加算税の額(別表2の「更正処分等」欄)と同額となり,原告の平成25年6月期,平成26年6月期及び平成27年6月期の各法人税に係る所得金額及び翌期へ繰り越す欠損金の額は, 本件各法人税更正処分におけるこれらの金額(別表1の「更正処分」欄)と同額となることが認められる(弁論の全趣旨)から,本件各更正処分等は適法であると認められる。 第4 結論以上によれば,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主 文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官古田孝夫 裁判官西村康夫 裁判官味 元 厚二郎(別紙1省略) (別紙2)基本通達の定め 1 基本通達11-3-1(課税仕入れを行った日の意義) 消費税法30条1項1号に規定する「課税仕入れを行った日」とは,課税仕入れに該当することとされる資産の譲受け若しくは借受けをした日又は役務の提供を受けた日をいうのであるが,これらの日がいつであるかについては,別に定めるものを除き,第9章(資産の譲渡等の時期)の取扱いに準ずる。 2 基本通達9-1-13(固定資産の譲渡の時期) 固定資産の譲渡の時期は,別に定めるものを除き,その引渡しがあった日とする。ただし,その固定資産が土地,建物その他これらに類する資産である場合において,事業者が当該固定資産の譲渡に関する契約の効力発生の日を資産の譲渡の時期としているときは,これを認める。 (注)本文の取扱 だし,その固定資産が土地,建物その他これらに類する資産である場合において,事業者が当該固定資産の譲渡に関する契約の効力発生の日を資産の譲渡の時期としているときは,これを認める。 (注)本文の取扱いによる場合において,固定資産の引渡しの日がいつであるか については,9-1-2の例による。 3 基本通達9-1-2(棚卸資産の引渡しの日の判定)棚卸資産の引渡しの日がいつであるかについては,例えば,出荷した日,相手方が検収した日,相手方において使用収益ができることとなった日,検針等により販売数量を確認した日等,当該棚卸資産の種類及び性質,その販売に係る契約 の内容等に応じてその引渡しの日として合理的であると認められる日のうち,事 業者が継続して棚卸資産の譲渡を行ったこととしている日によるものとする。この場合において,当該棚卸資産が土地又は土地の上に存する権利であり,その引渡しの日がいつであるかが明らかでないときは,次に掲げる日のうちいずれか早い日にその引渡しがあったものとすることができる。 ① 代金の相当部分(おおむね50%以上)を収受するに至った日 ② 所有権移転登記の申請(その登記の申請に必要な書類の相手方への交付を含む。)をした日以上
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