平成22(行ウ)12 公務外認定処分取消請求事件(通称 地公災基金横浜市支部長公務外認定処分取消)

裁判年月日・裁判所
平成23年10月13日 横浜地方裁判所
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判決文本文26,125 文字)

平成23年10月13日判決言渡平成22年(行ウ)第12号公務外認定処分取消請求事件 主文 1 処分行政庁が平成18年8月24日付けで原告に対してした,亡Aの被った災害を公務外の災害と認定した処分を取り消す。 2 訴訟費用は,被告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要原告の夫であるAは,平成▲年▲月▲日に勤務先である横浜市消防局X1消防署X2消防出張所(以下「X2出張所」という。)の救急隊員用の寝室で死亡したため,原告は,地方公務員災害補償基金横浜市支部長(以下「処分行政庁」という。)に対し,Aの死亡が公務に起因して発生したものとして公務災害認定請求をした。 本件は,前記公務災害認定請求に対し,処分行政庁が平成18年8月24日付けでAの被った災害を公務外の災害と認定した(以下「本件処分」という。)ため,原告が,Aは過重業務から喘息発作に引き続く心室細動により死亡したものであるなどとして,本件処分の取消しを求める事案である。 1 前提となる事実(争いのない事実及び当裁判所に顕著な事実)(1) Aの身分関係等ア Aは,昭和▲年▲月▲日生まれの男性であり,原告は,Aの妻であり,Aとの間に3人の子どもがいる。 イ Aは,平成▲年▲月▲日,X2出張所の救急隊員用の寝室で死亡したが, その死体検案書には,死亡推定時刻として同日午後11時と,直接の死因として気管支喘息と,それぞれ記載されていた。 (2) Aの経歴Aは,昭和54年4月1日から横浜市消防職員として勤務を開始し,平成7年10月から平成14年9月まで横浜市消防局X3消防署(以下「X3消防署」と と,それぞれ記載されていた。 (2) Aの経歴Aは,昭和54年4月1日から横浜市消防職員として勤務を開始し,平成7年10月から平成14年9月まで横浜市消防局X3消防署(以下「X3消防署」という。)に勤務し,同年10月から平成▲年▲月▲日に死亡するまでX2出張所に勤務していた。Aは,その間,救助隊員,大型機関員,はしご消防車機関員,救急隊員の各資格を取得して,警防部門における救助,消火,救急の全業務に精通していた。 (3) 消防士の業務内容等横浜市消防局の警防部門のほとんどの消防職員は,1課,2課が交代して勤務する2部制であり,1勤務(当直)の拘束時間は朝から翌朝までの24時間となる。この拘束時間中,昼・夕・翌朝の休憩時間及び夜間の仮眠時間を合算した「休憩時間」といわれる時間が8時間30分,「休息時間」といわれる時間が30分,「勤務時間」といわれる時間は15時間30分あり(「休息時間」は「勤務時間」に含まれる。),職員は,労働時間の150パーセント以上に当たる時間について拘束された状況のもとにある。 また,職員は,「休憩時間」中の食事中,深夜の仮眠中であっても,出場命令があれば直ちに災害現場に向かわなければならず,その活動は,消火活動にせよ救急活動にせよ,それ自体,危険を伴っている。 (4) Aの健康状態等ア Aは,平成13年,平成14年の健康診断において心電図の異常が認められており,平成16年には異常所見の「判定区分C」により「イエローカード」(受診勧告)を受け,横浜市に対し,循環器科での受診状況を報告した。 Aは,平成17年の健康診断でも心電図上の頻発性心室期外収縮が認め られたが,同年の異常所見(判定区分C)については,受診を求めるイエローカードに対する報告義務がなくなったことから,Aに対し,受診状況 平成17年の健康診断でも心電図上の頻発性心室期外収縮が認め られたが,同年の異常所見(判定区分C)については,受診を求めるイエローカードに対する報告義務がなくなったことから,Aに対し,受診状況報告書用の文書は交付されなかった。 イ Aは,X3消防署に勤務していた平成13年12月ころ,気管支喘息の診断を受け,治療を受けており,平成14年2月24日には,喘息重症発作を起こした。 (5) Aの死亡当日の行動等Aは,平成17年10月2日及び同月3日,連続して年次休暇を取得した。 Aは,同月4日,5日は勤務日ではなく,休日であった。 Aは,同月▲日に勤務に就き,同日午前中に交通事故の救急出場が,午後には安全運転講習会がそれぞれあり,その後,午後4時ころ,救急出場があった。Aは,救急出場による病人搬送を終えた後,消防署への帰途において,喘鳴が出るようになり,X2出張所内での同僚との夕食の後,具合が悪いと言って一人で救急隊員用の寝室に行き,その後,(1)イのとおり,死亡した。 (6) 本件処分の経緯等ア原告は,平成18年3月24日,処分行政庁に対し,Aが死亡するに至った疾病は公務に起因して発生したものであるとして公務災害認定請求をした。 イ処分行政庁は,同年8月24日,原告に対し,Aが発症1か月前から死亡当日までの間に従事していたのは本人に割り当てられた通常の職務であり,異常な出来事・突発的事態もなく,過重な精神的,肉体的負荷はなかったとし,Aの死亡は,アレルギー等の病的素因や基礎疾患が自然経過的に発病したことによるものであるなどとして,その疾病を公務外の災害と認定する決定を行い(本件処分),その旨を通知した。 ウ原告は,同年11月6日,地方公務員災害補償基金横浜市支部審査会に対し,本件処分を不服として審査請求を行った として,その疾病を公務外の災害と認定する決定を行い(本件処分),その旨を通知した。 ウ原告は,同年11月6日,地方公務員災害補償基金横浜市支部審査会に対し,本件処分を不服として審査請求を行ったが,同審査会は,平成20 年11月26日,審査請求を棄却する旨の裁決を行った。 そのため,原告は,平成21年1月8日付けで,地方公務員災害補償基金審査会に対し,再審査請求を行ったが,同審査会は,同年7月27日,再審査請求を棄却する旨の裁決を行い,原告は,同年8月19日,それを知り,平成22年2月17日,本件訴訟を提起した。 2 争点及び争点に対する当事者の主張本訴の争点は,(1)Aの死因とその死亡の公務起因性,(2)Aの公務のための治療機会喪失の有無であり,これらの争点に対する当事者の主張は,以下のとおりである。 (1) 争点(1)についてア原告(ア) Aは,死亡時,腹臥位で顔は下向きにまっすぐベッドに向けられていたところ,喘息の重症発作を起こした患者は,呼吸困難となり,少しでも空気を吸い込もうとし,呼吸を容易にする姿勢をとるはずであるから,その姿勢は,喘息発作による窒息によって死亡した状況と異なっている。また,Aの解剖所見によっても,主気管支の完全閉塞の所見はなく,気管支喘息の重症発作によって死亡した場合の組織学的所見である杯細胞の過形成,基底膜の肥厚などの所見は認められていない。そして,心臓死と矛盾する所見は存在しない。 前記1(4)記載のAの既往症からすれば,Aは,喘息発作に引き続き期外収縮により致死性の心室細動が引き起こされて死亡したものと認められる。 (イ) Aの勤務体制は,前記1(3)のとおりであって,Aが26年間もの間,拘束されてきた24時間拘束2交代制の過重性は明らかであり,そのような勤務体制の中 起こされて死亡したものと認められる。 (イ) Aの勤務体制は,前記1(3)のとおりであって,Aが26年間もの間,拘束されてきた24時間拘束2交代制の過重性は明らかであり,そのような勤務体制の中で長年従事してきた消防職員・救急隊員の通常業務の過重性,それによる生理的,肉体的負担,慢性的な蓄積疲労,身体 への悪影響等は顕著である。 (ウ) Aは,平成14年2月24日以後は大きな喘息発作を起こしていなかったが,前勤務署であるX3消防署及び死亡当時の勤務署であるX2出張所の署内外の車両による排気ガスにさらされた環境や過重な公務の中で,大きな負荷が加われば喘息発作が起こり得る状況にあった。 そして,Aは,平成▲年▲月▲日午後4時ころ,横浜市α区β町の急病出場を担当した。この急病出場は同日午後4時14分から午後5時までの間に行われたが,傷病者の自宅が長い階段上のさらに細い道の奥に位置していたため,約80キログラムの重い傷病者を他の救急隊員らと3人がかりで重さ約9キログラムのスクープストレッチャーから落とさないように気を付け,階段を踏み外すなどして転倒しないように注意して,階段下に停車させた救急車までの道のりを運ばなければならず,Aに著しく緊張を強い,体力を消耗させる重労働となった。 そのため,Aは,その搬送を終えた後,X2出張所への帰途において喘鳴が出るようになり,前記1(5)のとおり,死亡した。 (エ) Aの突然死は,発症当日の大きな負荷によるものであると同時に,それまでの過重な労働が基礎となって現れたものであり,心室細動のきっかけとなった喘息発作自体が過重な業務と悪環境によるものであって,公務起因性がある。 仮にAの死亡が喘息の重症発作によるものであるとしても,1度しかなかった重症発作が繰り返されたのは発症当日の業務の大き った喘息発作自体が過重な業務と悪環境によるものであって,公務起因性がある。 仮にAの死亡が喘息の重症発作によるものであるとしても,1度しかなかった重症発作が繰り返されたのは発症当日の業務の大きな負荷によるものであり,また,喘息の増悪は,過重な労働,排気ガスについての劣悪な環境によるものであって,Aの喘息の増悪,その中での死亡は,公務起因性がある。 イ被告(ア) 地方公務員災害補償法施行規則の別表第一の八に定める疾病につい ては,通常の業務に従事するだけでは,その発症の危険があるとは評価できず,通常の公務と比較して特に過重な公務に従事した場合に初めて,公務に内在する危険が現実化して当該疾病が発症したと評価できる。したがって,公務が当該疾病発生の単なる誘因にすぎない場合には公務起因性は認められない。 (イ) Aの平成17年4月から死亡時までの時間外労働が長時間に及ぶとはいえない。 Aの死亡当日の救急出場による病人搬送については,救急隊員がストレッチャーで傷病人等を搬送することは通常の公務であることから,過重な公務とはいえない。 Aは,同年10月2日から同月5日まで4日連続で休んでおり,十分に休養の取れた翌日である同月▲日に死亡しているから,公務過重性は認められない。 (ウ) Aの死体検案書では,直接死因が気管支喘息とされ,解剖の結果等についても,「気管支内に多量の粘液,両肺肺気腫及びうっ血,左右冠状動脈硬化狭窄軽度,心筋に肉眼的に病変認めず。左肺620g,右肺630g。外傷なし。」とされた上,心室性期外収縮とAの死亡の因果関係はないと判断されている。 こうした事実に,X3消防署及びX2出張所の環境に問題が認められないこと,Aの既往歴を踏まえれば,Aは,自宅で飼っていたペットのウサギアレルギーにより喘息に罹患 果関係はないと判断されている。 こうした事実に,X3消防署及びX2出張所の環境に問題が認められないこと,Aの既往歴を踏まえれば,Aは,自宅で飼っていたペットのウサギアレルギーにより喘息に罹患し,喫煙習慣を継続するなどして,これを増悪させた結果,死亡に至ったものであり,公務起因性は認められない。 (2) 争点(2)についてア原告(ア) Aは,平成17年10月5日夜,咳のためにろくに眠れなかったに もかかわらず,既に年休を直前に取得し,24時間2交代制という人員の余裕がない状況のために年休を取得することが極めて困難であったため,同月▲日,診察を受けることもなく,勤務に就いた。 (イ) 医師の治療を受ければAの喘息は早期におさまり,仮に心室細動が発生しても適切な措置を受けられたにもかかわらず,Aは,同月▲日午後の急病出場の後,喘鳴が発生していたものの,治療のために勤務から離脱することができず,医師の診察を受けることができず,救急隊員用の寝室で休んだにすぎなかった。 (ウ) Aの職場であるX2出張所は,常時最低限の人員しか配置されていないことから,本署(X1消防署)から人員が送り込まれない限り,体調不良を理由とする職場離脱をすることができない。そして,交代人員は誰でもよいわけではなく,Aのように救急隊員や機関員などの資格が必要な人員の欠如の場合,本署において必要な資格を持つ者が余剰人員の中にいなければ,X1消防署の他の出張所を当たり,他の出張所の該当者と本署の余剰人員とを交代させた上で,必要な資格者を消防車等で送り込むなどのやりくりが必要となり,こうした交代の手続には相当の手間と時間を要する。また,当日の必要な人員が確保できない場合,当直勤務を終えたばかりの明け番の者をそのまま午後5時まで勤務させ,翌日朝から勤務する りくりが必要となり,こうした交代の手続には相当の手間と時間を要する。また,当日の必要な人員が確保できない場合,当直勤務を終えたばかりの明け番の者をそのまま午後5時まで勤務させ,翌日朝から勤務する予定の者を前日の午後5時から勤務させて交代させるというような強引な引継ぎによって,消防隊・救急隊が定員不足を理由とした運行停止に陥らないよう阻止することとなる。 また,出張所においては,人員交代の指示を出せる管理所監督者は出張所長(係長級)であるが,所長は平日の日中のみの勤務時間であるため,夜間や休日には,職員の健康管理を司る責任者がいない。よって,実際のところ,本件被災当日の夜間にはAの職場離脱を許可することができる者がX2出張所にはいなかった。 (エ) Aは,以上のとおり,その症状をおして勤務に就かざるを得ず,公務の体制から治療機会を奪われた結果,死亡に至ったから,この点からも公務起因性は明らかである。 イ被告(ア) 治療機会の喪失が認められるためには,①Aに治療を受ける意思があったこと,②その意思を表明したにもかかわらず,公務遂行を指示されたこと,③意思を表明したとしても,公務を遂行せざるを得ない客観的状況が認められること,④治療を受ければ,救命できたことが必要である。 しかし,Aは,平成13年12月19日にBクリニックで気管支喘息の診断・治療を受けたものの,平成15年5月2日を最後に,同クリニックに通院しておらず,その後,平成17年3月3日にCクリニックで「のどの痛み」「下痢(++)」等で診断を受けたものの,気管支喘息患者にとって必要な気管支喘息コントロールのための定期的な通院をしていた形跡はなかったから,気管支喘息の発作が起きていない状態で,Aが診察治療を受けたとする根拠はない。Aは,平成▲年▲月▲日午後5時に帰 とって必要な気管支喘息コントロールのための定期的な通院をしていた形跡はなかったから,気管支喘息の発作が起きていない状態で,Aが診察治療を受けたとする根拠はない。Aは,平成▲年▲月▲日午後5時に帰署後も喘息発作を起こしておらず,同日午後6時には夕食,同日午後6時30分頃から午後7時まではミーティングに参加していたのであるから,Aに同日に治療を受ける意思があったとは認められない。 (イ) Aは,平成17年4月1日から死亡するまでの間に,11日間の年休を取得しており,年休を取得することができないという客観的状況はなく,仮に,年休取得で人員不足が生じた場合は,他消防署等から応援を受けることができるのであり,人員不足が生じるからといって,年休を取得できないことはない。 第3 当裁判所の判断 1 公務起因性の判断枠組み 地方公務員災害補償法31条及び42条の「職員が公務上死亡した場合」とは,職員が公務に起因して死亡した場合,すなわち,公務と職員の死亡との間に相当因果関係がある場合を意味する(最高裁判所第二小法廷昭和51年11月12日判決・裁判集民事119号189頁参照)。 この相当因果関係は,職員の死亡が公務を唯一の原因または相対的に有力な原因とする場合に限らず,当該職員に基礎疾患があった場合において,公務の遂行が基礎疾患をその自然の経過を超えて増悪させて死亡に至ったときには,公務に内在する危険が現実化して死亡に至ったものとして,これを肯定することができるというべきである(最高裁判所平成8年1月23日第三小法廷判決・裁判集民事178号83頁,最高裁判所平成8年3月5日第三小法廷判決・裁判集民事178号621頁参照)。また,公務が職員の疾病を自然の経過を超えて著しく増悪させるものと認められない場合であっても,職員の疾病が客観的に 3頁,最高裁判所平成8年3月5日第三小法廷判決・裁判集民事178号621頁参照)。また,公務が職員の疾病を自然の経過を超えて著しく増悪させるものと認められない場合であっても,職員の疾病が客観的にみて治療を要する状況にあるにもかかわらず,職員において休暇の取得その他治療を受けるための方法を講じることができず,引き続き職務に従事しなければならないような事情が認められるときは,そのこと自体が職務に内在する危険であるということができるから,このような事情の下に職務に従事した結果職員の疾病が自然経過を超えて著しく増悪したときはこれを職務に起因するものというべきである(東京高等裁判所平成12年8月9日判決・労働判例797号4頁,最高裁判所平成8年1月23日第三小法廷判決・裁判集民事178号83頁参照)。 2 認定事実前提事実に以下の証拠(甲4ないし14,17ないし23,25ないし39,42ないし44,乙1ないし8,10ないし16,23,24(以上について各枝番を含む。),証人D,証人E,証人F及び原告本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) Aの職歴,公務の内容,健康状態等 ア Aの昭和54年4月1日採用以降の消防署における職歴は以下のとおりである。 発令年月日所属及び補職S54.04.01教育課初任教育生初任教育生消防士S54.09.29X1消防署消防士S59.07.01X1消防署X4消防出張所一係消防隊隊員消防士S61.04.01X5消防署X6消防出張所二係救助隊隊員消防士S63.04.01X7消防署X8消防出張所二救助隊副機関員消防士H02.10.01X7消防署警備第二課第二消防隊隊員消 X5消防署X6消防出張所二係救助隊隊員消防士S63.04.01X7消防署X8消防出張所二救助隊副機関員消防士H02.10.01X7消防署警備第二課第二消防隊隊員消防士H03.10.01X7消防署警備第二課第二消防隊副機関員消防士H04.04.01X7消防署X8消防出張所二梯子消防隊正機関員消防士H04.11.01X7消防署X9消防出張所二係梯子消防隊正機関員消防士H05.10.01X7消防署X9消防出張所二係ミニ消防隊機関員消防士H05.12.20X7消防署X9消防出張所二係梯子消防隊正機関員消防士H06.06.01X7消防署X9消防出張所二係消防隊副機関員消防士H07.10.01X3消防署警備第一課第二消防隊隊員消防士H11.02.26X3消防署警備第一課第二消防隊副機関員消防士H12.10.01X3消防署警備第一課第二消防隊隊員消防士H13.04.01X3消防署警備第一課第二消防隊副機関員消防士H13.10.01X3消防署警備第一課第二消防隊隊員消防士H14.04.01X3消防署警備第一課救急隊隊員消防士H14.10.01X1消防署X2消防出張所二係ミニ消防隊機関員消防士 イ Aの資格等Aは,普通自動車運転免許,第2級陸上特殊無線技士,危険物取扱者丙 種,大型自動二輪車運転免許,消防機動二輪隊員認定,救助員認定者,大型自動車運転免許,機関員認定者,(旧)航空救助員認定者,梯子機関員認定者,消防機動二輪隊指導員認定,酸素欠乏危険作業主任者第二種,職員,救急標準課程隊員,救急隊員認定者の免許,資格を有していた。 転免許,機関員認定者,(旧)航空救助員認定者,梯子機関員認定者,消防機動二輪隊指導員認定,酸素欠乏危険作業主任者第二種,職員,救急標準課程隊員,救急隊員認定者の免許,資格を有していた。 ウ Aの勤務実態Aは,横浜市消防局の警防部門の他の消防職員と同様,以下のとおりの隔日勤務をしていた(横浜市消防職員の勤務時間等に関する規程第3条)。 8:45 12:00 13:00 17:15 17:45勤務時間休息時間(15 分)休憩時間(45 分)勤務時間休憩時間(30 分)勤務時間 21:00 6:00 7:15 7:30 7:45 8:45休憩時間 21 時から翌朝6時まで(7時間) うち2時間を勤務勤務時間休息時間(15 分)休憩時間(15 分)勤務時間 通常,午前8時45分交代で翌日午前8時45分まで24時間2交代制で勤務する。午前8時45分に前日の当直勤務員と引き継ぎ交代し,車両点検,無線試験等を行った後に事務所で業務調整を行う。 特に訓練や防災指導等がない場合は,担当業務の事務処理を行う。 昼食後午後1時まで休憩し,午後については管内の巡回を中心に消防車両で出向する。 救急隊として勤務する時は,出場が多いために担当事務以外に救急活動の事務処理が加わり,時間外業務が多くなる。 夜間については午後9時から翌日午前6時までの間に2時間の勤務(通常午後9時から午後11時)を行う以外は休憩時間となり,X2出張所2階にある寝室で仮眠を取ることができる。 消防隊,救急隊ともに昼の休息,休憩時間 時から翌日午前6時までの間に2時間の勤務(通常午後9時から午後11時)を行う以外は休憩時間となり,X2出張所2階にある寝室で仮眠を取ることができる。 消防隊,救急隊ともに昼の休息,休憩時間,夜の休憩時間中であっても,災害指令があれば出場する。 エ Aの事務分掌X2出張所事務分掌によれば,Aの職務内容は,X2出張所の1係の副担当者であり,事務分掌は,庁舎(付属する施設及び器具を含む。)の保全及び庁中取り締まりに関すること,超過勤務に関すること,週休,休暇等に関すること,市内外出張旅費に関することなどであった。 オ Aの救急出場Aは,平成17年4月から同年10月にかけて合計57回当直勤務を行っているが,そのうち23時から翌朝6時までの仮眠時間に出場した当直日が26回あった(乙1の79頁)。 カ時間外勤務Aの,平成17年4月から同年▲月▲日までの時間外勤務時間(休憩時間における出場,深夜の休憩時間における出場を含む。)は以下のとおりであった。 月時間外勤務時間数(週休日を含む) 21時間57分 68時間27分 22時間27分 34時間14分 15時間14分 32時間35分 0時間 キ休暇取得Aは,平成17年4月以降,同月に2日,同年5月に3日,同年6月 に1日,同年7月は夏季休暇2日,同年8月に1日と夏季休暇3日,同年9月に2日,同年10月に2日の年次有給休暇を取得していた。 ク Aの勤務状況Aの死亡1か月前の勤務状況は,以下のとおりであった。 年月日状況9月6日 当直(救急隊) 救急出場(14:19~15:11)救急出場(19:49~21:05) 務状況Aの死亡1か月前の勤務状況は,以下のとおりであった。 年月日状況9月6日 当直(救急隊) 救急出場(14:19~15:11)救急出場(19:49~21:05)救急出場(22:28~0:00)9月7日非番救急出場(8:15~9:35)9月8日当直(消防隊)学校巡回(14:30~15:10)9月9日非番救急出場(4:15~5:30)9月10日週休 9月11日非番 9月12日 当直(救急隊) 救急出場(9:45~10:45)救急出場(13:00~14:56)救急出場(16:24~17:21)救急出場(17:21~18:20)救急出場(22:00~23:30)9月13日非番救急出場(3:44~5:04)救急出場(8:30~9:45)9月14日 救急隊 救急出場(13:56~14:50)救急出場(15:14~16:14)救急出場(16:14~17:00)救急出場(20:48~21:37)救急出場(23:22~0:42) 9月15日 非番 救急出場(2:41~4:25)救急出場(5:54~6:40)救急出場(7:32~8:23)救急出場(8:23~9:40)9月16日当直(はしご隊)救急出場(12:26~13:15)夜間巡回(22:30~23:30)9月17日非番 9月18日週休 9月19日非番 9月20日当直(消防隊)巡回広報(15:00~16:10)巡回警戒(22:00~23:00)9月21日非番 9月22日 当直(はしご隊) 9日非番 9月20日当直(消防隊)巡回広報(15:00~16:10)巡回警戒(22:00~23:00)9月21日非番 9月22日 当直(はしご隊) 巡回広報(13:50~15:00)災害出場(15:00~16:00)夜間巡回(23:00~0:00)9月23日非番 9月24日 当直(はしご隊) 広報(9:45~10:45)広報(13:30~14:00)広報(15:15~16:00)9月25日非番 9月26日週休 9月27日非番 9月28日年次休暇 9月29日年次休暇 9月30日当直(はしご隊)訓練(0:00~翌2:00) 10月1日非番 10月2日年次休暇 10月3日年次休暇 10月4日週休 10月5日週休 ケ Aの喫煙習慣Aは,16歳ころから1日約20本の喫煙習慣があったが,後記コ(イ)のとおり,平成14年2月24日に喘息発作を起こした際,医師から禁煙を勧められたこともあり,それ以降,自宅では喫煙しなくなり,喫煙本数は減っていた。 コ Aの受診状況(ア) Aは,平成13年,同14年,同16年,同17年に健康診断において心電図の異常が認められた。Aは,平成16年7月28日に受診した健康診断において,心室性期外収縮によりC判定を受けて受診勧告を受け,同年9月13日,G市民病院で受診したところ,不整脈を指摘され,約3か月間継続して通院した。 Aは,平成17年8月22日実施の健康診断においても医師の指示として心電図専門医受診とされたが,横浜市消防局において,C判定については受診結果の報告 指摘され,約3か月間継続して通院した。 Aは,平成17年8月22日実施の健康診断においても医師の指示として心電図専門医受診とされたが,横浜市消防局において,C判定については受診結果の報告を求められなくなったことから,受診しなかった。 (イ) Aは,平成13年12月に,Bクリニックを受診し,気道過敏症,アレルギー性鼻炎との診断を受け,また,平成14年1月,気道過敏症,アレルギー性鼻炎,気管支喘息との診断を受けた。 Aは,自宅において,平成14年2月24日の夜から咳が激しくなり,重症の喘息発作を起こした。Aは,呼吸が困難となり唇の色が変 わったことから,原告が救急車を呼ぼうとしたが,Aから,救急車を呼ぶとこの状態だと入院になり,入院すると何週間も仕事に出ることができなくなるかもしれない,そんなに休むわけにはいかないと言われたため,救急車を呼ぶことなく一晩過ごし,Aは,翌朝2月25日になって,Bクリニックを受診した。Aは,BクリニックからG市民病院を紹介され,同病院で受診したが,診察と処方のみで入院しないことになった。Aは,その後,平成15年5月までBクリニックに継続して通院していた。Aは,その後は,喘息の大発作でBクリニックを受診することはなく,感冒等をきっかけに小発作を起こし,短期間のステロイド薬の内服を数回要していたが,仕事が忙しいため,受診せず,処方のみのこともあった。 Aは,平成17年3月,Cクリニックを受診し,上気道炎,細気管支炎,急性胃腸炎,気管支喘息との診断を受けた。また,Aは,平成17年4月,Cクリニックを受診し,上気道炎,細気管支炎,急性胃腸炎,気管支喘息,食欲不振,脱水症,糖尿病疑い,高脂血症,インフルエンザ疑いと診断されているが,これを最後に医療機関を受診していない。 サウサギA 受診し,上気道炎,細気管支炎,急性胃腸炎,気管支喘息,食欲不振,脱水症,糖尿病疑い,高脂血症,インフルエンザ疑いと診断されているが,これを最後に医療機関を受診していない。 サウサギAの自宅では,平成13年6月頃から,ペットとしてウサギを飼い始めた。ウサギは,購入時から専用の飼育ケージに入れて屋外において飼っているが,雨の強い時にケージごと玄関に入れることはあった。ウサギの世話は原告が,リードを付けての散歩はAの子ども達が行っており,Aがウサギに接触することはほとんどなかった。 Aは,平成14年2月25日,Bクリニックにおいて受診した血液検査において,スギ(杉)とカトジョウヒ(家兔上皮)に対するIGE値(アレルギー反応を示す値)が基準範囲を大幅に上回っていた(スギは 16.02,カトジョウヒは5.18)。 (2) Aの死亡に至る状況(この項について日付は特に記載のない限り▲月▲日である。)ア Aは,年次休暇を取得していた平成17年10月3日頃から咳をするようになり,Cクリニックから半年前に処方された薬(具体的な薬剤名は不明である。)を飲んでいた。Aは,午前2時頃,Aは,咳がひどい状況で,布団の上に正座で座り,居間から持ってきた椅子にもたれていた。 イ Aは,午前6時30分頃に自宅を出て,午前8時頃にX2出張所に出勤した。 当日,X2出張所に勤務していたのは,合計9名であり,Aは,正規の配置はミニ消防隊の機関員(運転手)であるが,当日は,救急隊機関員として,E,Hとともに合計3名で救急隊を構成していた。X2出張所には,他に,消防隊として,3名,ミニ消防隊として1名,はしご隊として2名が勤務していた。 出勤時のAの顔色は悪く,引き継ぎの際に顔を合わせたはしご隊のDとAとの間で,「あれ,Aさん,ずい 所には,他に,消防隊として,3名,ミニ消防隊として1名,はしご隊として2名が勤務していた。 出勤時のAの顔色は悪く,引き継ぎの際に顔を合わせたはしご隊のDとAとの間で,「あれ,Aさん,ずいぶん顔色悪いね,疲れているの,夜更かしのしすぎじゃあないんですか」「そお,そんなに悪い」「悪いっすよ」「またまた,人を病人にしようとして,でも,最近疲れがとれなくてさ」「健康診断でひっかかっているのだから気をつけないと」「血圧でひっかかっている,Dちゃんには言われたくないよ」「でも,調子悪いなら休暇取った方が良いですよ。」「出勤しちゃったしね。人がいればね」という会話が交わされた。Aは,日頃と比べ,当日は明らかに疲れている様子であった。 ウ午前中,Aは,横浜市γ区のδ町で発生した交通事故に救急出場した。 Aは,汗をかく体質であったが,昼食時,いつもより大量の汗をかいていた。 Aは,昼食後,午後1時15分から午後3時まで,横浜市γ区η町の米軍施設ノースピアで行われた安全運転講習会に出席した。 Aは,午後4時14分から午後5時まで,横浜市α区β町に急病出場した。腰痛の体重約80キログラムの女性高齢者を病院に搬送するというものであったが,傷病者の自宅は階段の上にあり,救急車が付近まで入ることができなかったため,Aを含めた救急隊員3名で徒歩で傷病者を停車した救急車まで搬送することになった。救急車を停車した場所から自宅までの道のりは,幅3.8メートル,長さ9.55メートル,段数30段,一段の高さ17センチメートル,踏み場の幅25センチメートル,斜度が約35度の階段を上り,さらに,長さ28メートルの27段の階段を上る必要があった。なお,救急車の停車位置から現場までの歩行距離は全長62. 55メートルであった。当日の負傷者 5センチメートル,斜度が約35度の階段を上り,さらに,長さ28メートルの27段の階段を上る必要があった。なお,救急車の停車位置から現場までの歩行距離は全長62. 55メートルであった。当日の負傷者は,腰痛であり,坐位の姿勢がとれなかったために,金属製の担架で落下防止のため傷病者を確実に固定できるスクープストレッチャー(重量約9キログラム)を使用した。Aは,スクープストレッチャーの下側をHとともに持ち,Eが上側を持った状態で,負傷者を搬送した。 エ Aは,患者を病院に搬送した後,帰路に救急車を運転していたが,Aの隣に座っていたHは,Aの呼吸の音が「ひゅーひゅー」となっていることに気がつき,「どうしたの,大丈夫」と声をかけたところ,Aは「風邪をひいただけだよ」と答えた。 午後6時頃の夕食時,Aはいつも食べ終わるのが一番遅かったが,この日は早めに食事を済ませ(残さず食べていた。),Dが半分も食べ終わっていないのに食事を終えていた。Dが「兄貴,はぇ。どうしたんですか」と言うと,Aは「そんなことないよ。でも,疲れているから今日は早く休むよ。」と言い,疲れている様子であった。 Aは,夕食の後片づけ,食事代の精算,示達(ミーティング)が終わっ た後,午後8時30分頃,食堂に入ってきて,Dに「疲れたから少し休むね。」と言って食堂を出て寝室に向かった。 Eが午後11時過ぎに救急隊寝室のベッドに入ったときは,照明は減光された状態であり,EはAはうつぶせでベッドで寝ていると考え,就寝した。 Hは,翌7日の午前0時頃,救急隊寝室に入ったが,照明は減光された状態で,Aの様子は分からず,照明を消して就寝した。 オこの日の夜間には,救急出場はなく,消防隊だけの災害出場が翌7日の午前2時57分にあり,救急隊の寝室を含めた全館に火災指令が流れたた れた状態で,Aの様子は分からず,照明を消して就寝した。 オこの日の夜間には,救急出場はなく,消防隊だけの災害出場が翌7日の午前2時57分にあり,救急隊の寝室を含めた全館に火災指令が流れたため,EとHは一度起きあがったが,直ぐ就寝した。この際,Aは起きあがらなかった。 翌7日午前6時に起床の一斉放送が放送されたが,Aが起床しないため,EがAに声をかけたところ,Aはベッドの上に置いてある布団の上に腹臥位の状態で,顔は下向きにまっすぐベッドに向けられており,少量の嘔吐と失禁があり,死後硬直が始まっていた。 Aは,仮眠時には,いつも作業服を脱いで就寝していたが,発見された際,Aは,作業服の上着は脱いでいたものの,ズボンと靴下を履いたままであった。 (3) Aの職場環境ア X2出張所の状況X2出張所は,所長以下,消防第1係8名,消防第2係8名,救急第1係4名,救急第2係5名で構成され,Aは第2係のミニ消防隊機関員,消防士として配属されていた。X2出張所には,4台の車両(はしご車,大型消防車,小型消防車,救急車)があったが,Aは,いずれも車両の機関士(運転手)としての資格を有していたことから,その日の部隊編成によって,異なる車両を運転していた。 X2出張所は,交通量の多い幹線道路(主要地方道ε線(ζ通り))に面して2階建の建物である。1階には車両の駐車場,事務室,訓練室,洗面所,風呂があり,2階には,食堂,トイレ,消防隊寝室,救急隊寝室がある。1階の駐車場は幹線道路に面してシャッターがあり,午前6時から日没までシャッターが開かれたままにされていた。Aが死亡時に発見された救急隊の寝室は広さ約11平方メートルであり,内部には,横幅100センチメートル,縦200センチメートルの簡易ベッドが3台置かれていた。救急隊寝 ーが開かれたままにされていた。Aが死亡時に発見された救急隊の寝室は広さ約11平方メートルであり,内部には,横幅100センチメートル,縦200センチメートルの簡易ベッドが3台置かれていた。救急隊寝室は幹線道路からの騒音を防ぐため二重窓にされ,さらに,ベニア板が張られていた。 X2出張所において,夜間の休憩時間中に消防隊にのみ出場指令がある場合は,救急隊寝室の照明が点灯されることはないが,救急隊寝室を含めた全館放送で指令音声が拡声されるため,救急隊隊員の睡眠も分断されることとなった。 イ X3消防署の状況Aは,平成7年10月から平成14年9月までX3消防署に勤務していたところ,X3消防署は昭和44年築の老朽化した建物であり,消防車両の排気ガスが外に出にくい構造になっていた。また,ガレージにシャッターがついていない庁舎であったことから,ガレージが面している道路を走る車両による排ガスや埃などもガレージ内の排気ガスに加わることとなった。ガレージの唯一の開口部は,2階の寝室や事務所に通ずる階段であり,2階の事務室や寝室に排気ガスや埃が流入する環境であった。 (4) Aの死因についての医師の所見ア神奈川県監察医I医師(ア) 神奈川県監察医I医師作成のAの死体検案書には,死亡推定時刻は▲月▲日午後11時,Aの直接死因は「気管支喘息」,主要所見として,「両肺肺気腫及びうっ血,気管支内に多量の粘液」と記載され,死因の 種類として,病死及び自然死の欄に丸印が付されている(乙1の16頁)。 (イ) 神奈川県監察医I医師は,被告からの照会に対して,以下のとおり回答している。 (検死時の所見)気管支内に多量の粘液,両肺肺気腫及びうっ血,左右冠状動脈硬化狭搾軽度,心筋に肉眼的に病変認めず。左肺620グラム,右肺630グ 会に対して,以下のとおり回答している。 (検死時の所見)気管支内に多量の粘液,両肺肺気腫及びうっ血,左右冠状動脈硬化狭搾軽度,心筋に肉眼的に病変認めず。左肺620グラム,右肺630グラム。外傷なし(Aの平成14年2月24日の喘息重症発作と死亡との因果関係について)重症発作については診療していないので不詳(Aは,平成16年9月から同年11月まで心室性期外収縮で医療機関を受診しているところ,死亡との因果関係について)因果関係はないと考えられる。 (気管支喘息の発症原因)喘鳴を伴う呼吸困難発作を生じる慢性の炎症性気道疾患で,基本的な病態として種々の刺激に対して気道が過剰な収縮反応を示す,好酸球が関与する慢性の気道炎症が考えられる。 また,同医師は,原告代理人弁護士からの,Aの死因について,心臓に起因する死亡の可能性,心室細動が発生し,死に至った可能性はないでしょうかという照会に対し,平成19年3月20日付けで,「本屍は喘息発作をおこしたことは間違いないが,肺の一部がうっ血していることから本屍がもともと持っている病気である,不整脈が発症したことにより死期を早めた可能性は十分あるが,断定はできない。なぜなら,解剖所見では不整脈と断定できないため。」と回答している。 イ Jクリニック院長・K大学工学部客員教授 L医師作成の意見書(乙1 の193頁以下)法医解剖医による死体検案書の記載からは,少なくとも気管支喘息はあったと考える。しかし,主気管支の完全閉塞の所見は全くなく,急死の形態をとるとは考えられない。以上より,Aの健康診断で何度も指摘されていた不整脈のもとでは,その救急隊・消防隊業務自体が身体的な状況を悪化させ,致死性の不整脈が出やすい状態をもたらし,死亡当日も,前夜の咳で とは考えられない。以上より,Aの健康診断で何度も指摘されていた不整脈のもとでは,その救急隊・消防隊業務自体が身体的な状況を悪化させ,致死性の不整脈が出やすい状態をもたらし,死亡当日も,前夜の咳で体調が極めて悪いのに,「休めない」状況で,それにもかかわらずあえて出勤した勤務における出場で過重・重激な労働負担を強いられ,致死性の不整脈が多くなる条件が整っていた,あるいは実際に不整脈が多数回出ていたと考えられる。そして疲労困憊し,さらに咳が出てつらい状態が起きていた。その中で引き起こされた低酸素状態が,致死性の心室期外収縮,さらには心室細動を引き起こし,心停止となったものと考える。 ウ M診療所所長N医師作成の意見書(甲34)健康診断で見つかった不整脈との関係は不明であるが,喘息発作による酸素欠乏から致命的な不整脈が惹起された可能性もあるとはいえる。 3 争点(1)-Aの死因及び死亡の公務起因性(1) Aの死因原告は,第2・2(1)ア(ア)のとおり,Aは,喘息発作に引き続き,致死性の期外収縮により心室細動が引き起こされた結果死亡したと主張し,Aは,発見時,腹臥位で顔は下向きにまっすぐベッドに向けられていたところ,重症発作を起こした喘息患者は呼吸困難となって少しでも空気を吸い込もうとし,呼吸を容易にするような姿勢をとるはずであり,また,解剖所見によっても,主気管支の完全閉塞の所見はなく,重症発作によって死亡した場合の組織学的所見である杯細胞の過形成,基底膜の肥厚などの所見は認められていないこと,心臓死と矛盾する所見は存在しないことを指摘する。 そこで検討するに,Aの平成14年度,平成16年度,平成17年度の心 電図(乙5ないし7)に心室性期外収縮がみられること,Aが平成16年9月13日にG市民病院で検 しないことを指摘する。 そこで検討するに,Aの平成14年度,平成16年度,平成17年度の心 電図(乙5ないし7)に心室性期外収縮がみられること,Aが平成16年9月13日にG市民病院で検査した心電図(乙8)に心室性期外収縮が存在することを示す「RonT」が見られたこと,喘息発作によって心室性期外収縮が惹起されることがあること(乙14・O医師の回答書)は認められるものの,原告が提出するL医師の意見書(甲27)及びN医師の意見書(甲34)によっても,Aの死因について心臓死としても矛盾する所見が存在しない,あるいは喘息発作による酸素欠乏から致命的な不整脈が惹起された可能性もあるとはいえるというのみで,Aが心室性期外収縮によって引き起こされた心室細動が原因で死亡したことを積極的に裏付ける所見があるものではなく,あくまでその可能性を指摘するにすぎない。また,神奈川県監察医I医師も,Aに不整脈が発症したことで死期を早めた可能性は十分あるが,断定はできないとしている(前記2(4)ア(イ))。 そして,死体検案書(乙1の16頁)を作成した前記I医師の判断によれば,死亡時のAに気管支喘息があったことが認められること(前記2(4)ア(ア)),原告が提出する上記医師らの意見書(甲27,34)によってもAが死亡直前に喘息発作を起こしていたことを前提とした意見を述べていること,Aが平成13年12月頃から,断続的ではあるものの,喘息の治療を受けていたこと(前記2(1)コ(イ)),Aが平成▲年▲月▲日深夜に咳が出て,座位の姿勢をとっていたこと(前記2(2)ア),同日午後の救急出場からの帰路,Aに「ひゅーひゅー」という喘鳴がみられたこと(前記2(2)エ)からすると,遅くとも同日午後の救急出場からの帰路の時点で,Aに喘息症状があったと認められ,これらの事 ,同日午後の救急出場からの帰路,Aに「ひゅーひゅー」という喘鳴がみられたこと(前記2(2)エ)からすると,遅くとも同日午後の救急出場からの帰路の時点で,Aに喘息症状があったと認められ,これらの事実を考慮すると,Aは,死亡直前に重篤な喘息発作を起こし,そのことによって死亡したものと判断するのが相当である。 仮に,Aの喘息発作に引き続き心室細動が起こったとしても,それは,喘息発作と無関係に発症したものではなく,喘息発作が起こったことによりA の心臓に負担がかかったことによって引き起こされたものみることができるから,結局,Aの死亡は当日の死亡直前の喘息発作が引き起こしたもの判断するのが相当である。 そこで,以下においては,Aが基礎的素因として有していた喘息症状が悪化し,死亡直前に重篤な喘息発作が起こったことにより死亡したことを前提に検討する。 (2) 公務起因性ア職場の環境(ア) 原告は,第2・2(1)ア(イ)及び(ウ)のとおり,Aの勤務形態(変則的隔日勤務)及び当直の仮眠・休憩の環境が身体に対する負担の重いものであったと主張するところ,前記2(1)で判示したとおり,Aは,昭和54年4月1日に消防士に採用されて以来,同様の形態の勤務を約26年間続けてきていたのであって,このような勤務形態及び職場環境に十分慣れていたと考えられるし,消防職員の,夜間にも消防あるいは救急出場を余儀なくされることによる勤務形態による疲労は,通常であれば,非番,週休日の休養により回復されていたものと推測され,現に平成13年頃までは,勤務を継続していてもAに格別身体的変調は見られなかったのであるから,消防署の勤務形態及び職場環境がAの死亡を引き起こしたということまでは認めることはできない。 (イ) 原告は までは,勤務を継続していてもAに格別身体的変調は見られなかったのであるから,消防署の勤務形態及び職場環境がAの死亡を引き起こしたということまでは認めることはできない。 (イ) 原告は,第2・2(1)ア(ウ)のように,平成13年12月頃からAに喘息症状が見られるようになったことについて,Aが勤務したX3消防署及びX2出張所内の排気ガスが流入するような劣悪な環境によるものと主張するが,前記2(1)コ,サのとおり,Aは,自宅でウサギを飼い始めた平成13年6月の後,平成13年12月にBクリニックを受診し,気道過敏症,アレルギー性鼻炎の診断を受け,平成14年1月,気道過敏症,アレルギー性鼻炎,気管支喘息の診断を受け,通 院を継続しているところ,Aの血液検査の結果では,Aがウサギに対するアレルギーを有していたことが示されていることからすれば,Aの喘息の主な原因は,発症の時期も符合するウサギをアレルゲンとするものであることを推認することができる。 (ウ) そして,AがX3消防署に勤務するようになったのは,平成7年10月1日からであるから,勤務開始後,6年以上経過した平成13年12月になって,X3消防署の環境(前記2(3)イ)が原因で喘息を発症したとするのは,前記ウサギをアレルゲンと判断することに比べて相当性を欠くから,Aの喘息の原因がX3消防署の環境によるものと認めることはできない。また,Aは,喘息発症後の平成14年10月1日からX2出張所において勤務を開始したものであるから,X2出張所の環境(前記2(3)ア)が原因で喘息を発症したということもできない。 イ死亡前のAの勤務状況Aの死亡前6か月間の勤務状況については,消防署に24時間勤務の形態で勤務する者として通常の勤務であ で喘息を発症したということもできない。 イ死亡前のAの勤務状況Aの死亡前6か月間の勤務状況については,消防署に24時間勤務の形態で勤務する者として通常の勤務であり,ある程度の時間外勤務をしていること(前記2(1)カ)は認められるものの,平成17年5月の月間68時間を除いては,月間35時間未満であって,公務起因性の観点からすれば著しい長時間勤務であるとまではいえず,非番日のほか,週休日が設定され,年次休暇や夏季休暇も毎月取得していること(前記2(1)キ)からすれば,Aが消防署に勤務する他の24時間勤務者と比較して過重な勤務を行っていたということはできない。 また,Aは,死亡前日に出勤する前日まで,取得した有給休暇と週休日を合わせて4日間連続して休暇を取ることができており,この休暇を取る直前についても,通常の勤務と比較して特に過重な勤務を行った事実は認められないから(前記2(1)ク),死亡前日の勤務を開始するに当たり, 十分な休養を取ることができていたと認められる。 ウ死亡前日及び当日のAの勤務状況前記2(2)のとおり,Aは,死亡当日,通常どおり朝8時45分から勤務を開始し,午前中に交通事故の現場に救急隊として出場し,午後は1時15分から3時まで安全運転講習会に出席し,午後4時14分から午後5時まで,横浜市α区β町に救急隊として出場している。 原告は,第2・2(1)ア(ウ)のとおり,Aが死亡当日の午後に行った横浜市α区β町への救急出場が,過重な職務遂行であり,Aの死亡の原因となったことを主張するところ,Aは当日は救急隊員として勤務していたのであるから,傷病者を救急車まで運搬するという職務は,Aが救急隊員として勤務するに際に日常的に行っている通常の職務であるといえ,上記救急出場 を主張するところ,Aは当日は救急隊員として勤務していたのであるから,傷病者を救急車まで運搬するという職務は,Aが救急隊員として勤務するに際に日常的に行っている通常の職務であるといえ,上記救急出場のように,重量約9キログラムのスクープストレッチャーを使用することも,傷病者の体重が80キログラムを超えることも,車が進入することができない場所から停車した救急車まで傷病者を運搬することも,救急隊員として救助活動をすることが想定された業務の一環であり,訓練を受けた標準的な救急隊職員を基準とすれば,これをもって過重な職務ということはできない。この点,当日,救急隊の隊長代行を務めていたEも,3人では安全に搬送できない,車内収容まで持ち込めないという状況であれば,増強隊を呼んで対応することができたが,救急隊員3名でぎりぎりこの傷病者を運搬することができると判断した旨証言しており,この点からもこの救助活動が救急隊員として過重な職務執行であったとは認められない。 エ以上検討してきたとおり,Aが,消防署の勤務形態,職場環境が原因で死亡の原因となった喘息を発症したと見ることはできないし,また,Aの死亡前6か月あるいは直前の職務遂行が,標準的な消防署職員を基準とした場合に著しく過重なものであったと見ることもできないのであるから, Aが,消防署職員としての公務を遂行したことによって,死亡に至ったものと見ることはできない。 よって,この点についての原告の主張は理由がない。 4 争点(2)-治療機会の喪失(1) 原告は,Aは,治療を要する状況にあったところ,交代要員を確保することが困難であったことから,その症状をおして勤務に就かざるを得ず,公務の体制から治療機会を奪われた結果,死亡に至ったことを主張する。 (2) そこで,検討するに,証拠(甲14な 交代要員を確保することが困難であったことから,その症状をおして勤務に就かざるを得ず,公務の体制から治療機会を奪われた結果,死亡に至ったことを主張する。 (2) そこで,検討するに,証拠(甲14ないし16,19ないし24,35,38,39,42ないし44(以上について各枝番含む。),証人D,証人E及び証人F)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 ア消防隊,救急隊を構成する職員に体調不良者が出た場合の対応消防隊,救急隊等の部隊運用を図る上で,階級や資格をきちんと満たしていることが必要であり,突然人員が欠けるといった事態が生じた場合,人員が欠けたまま部隊を運用することはできず,交代要員を確保する必要がある(これができなければ欠隊(運行停止)となり,その消防隊,救急隊には出場指令を出すことができないから,管轄区域から出場要請があってもこれに対応することができず,近隣の他の消防署や出張所に出場を要請することとなる。)。交代要員を確保するためには,人員に余裕があり,内部で有資格者を確保することができる場合には,同じ消防署内,出張所内で人員を確保すれば足りるが,人員が不足している場合,あるいは有資格者を確保することができない場合には,X2出張所であれば,通常本署(X1消防署)に人員の補充(助勤)を依頼することとなり,本署においても有資格者が不足している場合は,他の消防署から有資格者を補充してもらい,本署からその消防署に人員を送り込むなどして部隊を構成することが必要となる。そのような業務は,日中であれば,X2出張所の所長が 担当することになるが,所長は日勤勤務であり,夜間は勤務していないことから,夜間にそのような事態が生じた場合は,当直の責任者である本署の警備課長が人員の確保を行うこととなる。 このような人員の 担当することになるが,所長は日勤勤務であり,夜間は勤務していないことから,夜間にそのような事態が生じた場合は,当直の責任者である本署の警備課長が人員の確保を行うこととなる。 このような人員の補充は,事前に判明していれば本署等からの助勤者の手配を行う時間的な余裕があり,それほど困難なことではないが,突発的な欠員を補充する場合は,部隊配置を緊急に整える必要があり,人員を確保する責任者の負担が増大することとなる。 他の消防署からの補充の人員を確保することが容易でない場合には,当日午前8時45分に勤務を終えた職員をそのまま勤務させたり,翌日の午前8時45分から出勤する予定の者を前日の夜間から勤務させる非直助勤と呼ばれる勤務を職員に要請することになるが,そのようなことは,本来休息すべき日に勤務を要請される職員の疲労が蓄積し,また,時間外手当の支給を要することから,望ましくないことと認識されていたものの,横浜市消防局全体において,A死亡後の平成19年の時点で,1署1か月あたり,昼間は17.6人,夜間に3.2人の非直助勤が生じていた(甲38資料5,A死亡当時の資料は提出されていない。)。 なお,現在は,所属長判断による1欠運用(本来の人員から1人欠員が生じた状態で部隊を運用すること)が認められているが,Aの死亡当時は,このような運用は認められていなかった。 イ当時のX2出張所の人員配置状況A死亡当時のX2出張所では,余裕を持った人員及び有資格者の配置はされておらず,Aは,本来はミニ消防隊機関員として配置されていたが,消防士,救急隊機関士等の複数の資格を有していたことから,欠員の出た部隊の補充として勤務することが頻繁にあったところ,死亡当日は救急隊として補勤(当日出勤していない正規消防隊員の補充)していた。A死亡当日のX2出張所は, 複数の資格を有していたことから,欠員の出た部隊の補充として勤務することが頻繁にあったところ,死亡当日は救急隊として補勤(当日出勤していない正規消防隊員の補充)していた。A死亡当日のX2出張所は,X4出張所から助勤者(補充の人員)に勤務しても らうことで部隊を編成しており,正規の部隊配置からすると,既に欠員が生じている状況にあった。 Aは,過去に週休編成の業務を担当したことがあり,欠員が生じた場合に補充人員を確保するについて,担当職員に相当程度の負担が生じることを認識しており,このことを裏付けるように,死亡当日も,Aの体調を気遣うDに対し,「出勤しちゃったしね。人がいればね。」と話していた。 ウ当時の消防隊,救急隊職員の認識A死亡当時のX1消防署の消防隊,救急隊を構成する職員の間には,勤務中に多少の体調不良が生じても,交代の人員を確保することには困難を伴い,代替勤務を要請される職員及びその手配に当たる職員に多大な負担をかけることになるから,勤務から離脱することは考えず,無理を押してでも勤務を続けることを是とする共通の認識があり,また,体調不良が生じても,すぐに勤務から離脱することは許されず,まず人員の確保が優先されるという理解が浸透していた。実際に,勤務を開始した後に体調不良を理由に勤務を離脱する職員はきわめて少なく,Eの記憶する限りでは,年間1,2名程度であった。 (3) 以上の事実に基づいて検討するに,前記1のとおり,公務と死亡との相当因果関係は,職員の死亡が公務を唯一の原因または相対的に有力な原因とする場合に限らず,当該職員に基礎疾患があった場合において,公務の遂行が基礎疾患をその自然の経過を超えて増悪させて死亡に至ったときにも,公務に内在する危険が現実化したものとしてこれを肯定することができるというべきであ 該職員に基礎疾患があった場合において,公務の遂行が基礎疾患をその自然の経過を超えて増悪させて死亡に至ったときにも,公務に内在する危険が現実化したものとしてこれを肯定することができるというべきであるところ,職員が基礎疾患を有する場合に,その公務を遂行する標準的な職員を基準とすれば公務の過重性が認められないとしても,職員の疾病が客観的にみて治療を要する状況にあるにもかかわらず,当該公務が職種自体あるいは人員配置などの職場環境から代替性がなく,職員において休暇の取得その他治療を受けるための方法を講じることができず引き続き職務 に従事しなければならないような事情が認められるときは,そのこと自体が職務に内在する危険であるということができるから,公務と死亡との間に相当因果関係があるものと認めるのが相当である。 (4) そして,A死亡当時のX1消防署は,制度としては,体調不良者が出た場合に,代わりの人員を補充して部隊を編成し,あるいはその部隊を欠隊(運行停止)にして他の消防署や出張所に代わりに出場を要請する手段が整備されていたことが認められるし,証人Fの証言に照らせば,事前に勤務できないことが判明している職員の代替人員を確保するについては,そのような制度が有効に機能していたということができるものの,当日勤務を開始した後に治療を要する身体的状況が生じた職員について,当該職員から自発的に交代を申し出て勤務を外れることは,制度としては存在し,認められているものの,当時は,現在とは異なり,人員が1名欠けた状態で消防隊,救急隊を運営する手法も許容されていなかったこともあり,消防隊員及び救急隊員においてそのような申し出をするべきではないとの共通認識があり,実際にそのような申し出をする職員は極めて少数であったことからすると,このような制度が実質的に機能 ったこともあり,消防隊員及び救急隊員においてそのような申し出をするべきではないとの共通認識があり,実際にそのような申し出をする職員は極めて少数であったことからすると,このような制度が実質的に機能していたとは到底いうことができず,実際に勤務する職員にとっては有名無実のものであったといわざるを得ない。現に,Aは,死亡当日,その体調を気遣うDに対し,「出勤しちゃったしね。人がいればね。」と話しており,このことも,そうした現実を裏付ける発言と評価することができる。 (5) Aの治療の必要性及び救命可能性Aは,死亡当日出勤する前夜から咳が出て,当日の出勤時には顔色が悪く,体調不良であったところ,午後の救急出場からの帰路の時点で喘鳴が出て,喘息症状が出現していたことが認められるから(前記2(2)),軽度の喘息症状でも放置すれば重篤な喘息発作を引き起こすことがあるという喘息の特性に照らせば,Aは,重篤な喘息発作を回避するために,喘鳴が出た時点で 速やかな治療を要する客観的状況にあったと認められる(甲28の2の3,5,10及び11並びに乙22の4)。 喘息を適切にコントロールするためには,継続的に通院し,医師の指示に従って予防的措置を続けることが必要であるところ(乙17ないし24),Aの通院状況(前記2(1)コ(イ))からすれば,Aは,このような認識に欠けており,Aが自身の喘息を適切にコントロールするための措置を取っていたとはおよそいえない。しかしながら,他方,Aは,平成13年12月にBクリニックを受診し,平成14年1月に同クリニックにおいて気管支喘息の診断を受けた以降,平成15年5月までの約1年6か月,継続的に喘息の治療のために通院を続け,その後,感冒等をきっかけに小発作を起こし,ステロイド薬の服薬をしたりし,その後はしばらく通院は途 支喘息の診断を受けた以降,平成15年5月までの約1年6か月,継続的に喘息の治療のために通院を続け,その後,感冒等をきっかけに小発作を起こし,ステロイド薬の服薬をしたりし,その後はしばらく通院は途絶えているが,平成17年3月及び4月には,別の医院であるCクリニックに上気道炎,気管支喘息等により通院しているから(前記2(1)コ(イ)),Aは,少なくとも,自身が気管支喘息を基礎的素因として有していること,感冒等をきっかけに喘息の小発作を起こした経験から,体調不良等により喘息症状が悪化することがあること,悪化した場合は医師を受診する必要があることは認識していたことが推認される。 前記2(2)エのとおり,Aが,平成▲年▲月▲日午後の救急出場からの帰路において救急車に同乗していたHから,喘鳴が出たことについて「大丈夫」と問いかけられ,また,A自身が当日の夕食の際に「疲れているから今日は早く休むよ。」と述べ,さらに,当日午後8時30分頃,本来であればまだ勤務時間であり,他の職員は体力錬成等を行っている時間帯であるにもかかわらず(証人D),「疲れたから少し休むね。」と述べて,救急隊の寝室に向かったことからすると,A自身も自身の喘息症状が悪化しつつあることを認識していたものと認められる。 そして,前判示のとおり,重篤な喘息発作を回避するために喘鳴が出た時 点で治療を開始すべきであり,仮に,ひとたび喘息発作状態になっても,速やかに治療すれば死亡に至る可能性は低く,救急外来でステロイド薬などの点滴注射の後,吸入ステロイド薬の連用で入院を免れることが多く,重症であっても,入院しステロイド薬の点滴注射や酸素吸入で回復する可能性が高いから(N医師の意見書,甲34),Aに喘鳴が出た死亡当日午後5時頃の時点,あるいは遅くともAが救急隊の寝室に向かった午後 重症であっても,入院しステロイド薬の点滴注射や酸素吸入で回復する可能性が高いから(N医師の意見書,甲34),Aに喘鳴が出た死亡当日午後5時頃の時点,あるいは遅くともAが救急隊の寝室に向かった午後8時30分頃の時点で,Aが公務を離脱し,医師の診察を受けていれば,Aの死亡は避けることができたということができる。 しかし,上記(4)のとおり,Aの当時の職場環境においては,勤務途中で公務から離脱することは著しく困難であり,Aも自身の26年に及ぶ長年の勤務経験から自身の置かれたそのような職場環境を十分認識していたことから,公務から離脱することを申し出ることなく,公務を続けたものと認められる。 (6) 以上検討したところによれば,Aは,死亡当日,客観的にみて治療を要する状況にあるにもかかわらず,Aの当時の職場環境が職種自体あるいは人員配置の点から代替性がなく,Aが休暇の取得その他治療を受けるための方法を講じることができず引き続き職務に従事しなければならないような状況にあり,公務を続けることを余儀なくされたものと認められるから,Aの公務とAの死亡との間には相当因果関係があるものと認めるのが相当である。 5 結論以上のとおりであるから,Aの死亡についてその公務起因性を否定した本件処分は,取り消されるべきである。 よって,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 横浜地方裁判所第7民事部裁判長裁判官深見敏正 裁判官新谷祐子 裁判官林 まなみ 官新谷祐子 裁判官林まなみ

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