平成25年4月25日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成23年(ワ)第28301号違約金等請求事件口頭弁論の終結の日平成25年2月21日判決千葉県長生郡<以下略>原告大昌建設株式会社同訴訟代理人弁護士大津卓滋原田活也佐藤一誠堺市<以下略>被告株式会社佐川同訴訟代理人弁護士藤井伸介主文 1 被告は,原告に対し,1169万5200円及びこれに対する平成23年3月31日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを10分し,その1を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,原告に対し,1169万5200円及びこれに対する訴状送達の日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 2 被告は,別紙機械目録記載の各機械を堺市<以下略>所在の原告関西支店へ運搬せよ。 第2 事案の概要 本件は,原告が,別訴において被告との間で訴訟上の和解をしたところ,被告が上記和解において合意された被告の受注工事に関し原告の指定する事項を報告すべき義務及び被告の工事に用いる機械を原告の指定する場所に保管すべき義務を履行しないと主張して,上記和解に基づき,違約金として被告が受注した工事代金相当額である1169万5200円及びこれに対する訴状送達の日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払と別紙機械目録記載の各機械 解に基づき,違約金として被告が受注した工事代金相当額である1169万5200円及びこれに対する訴状送達の日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払と別紙機械目録記載の各機械(以下,各機械を同目録の番号順にそれぞれ「被告機械1」,「被告機械2」といい,両者を併せて「被告各機械」という。)の原告の指定した場所までの運搬を求める事案である。 1 前提事実(争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1)ア原告は,建設業及び土木工事業等を営む株式会社である。 イ被告は,かつて原告の従業員であった被告代表者が原告退職後に設立した,建築工事や土木工事等の設計,施工,監理及び請負,住宅リフォーム業,解体工事業,宅地建物取引業,産業廃棄物収集運搬業等を営む株式会社である。 (2) 原告代表者は,発明の名称を「法面の加工方法および法面の加工機械」とする発明に関する特許権(特許第2008978号。以下,この特許を「本件特許」という。)を有していた。本件特許は,平成2年9月12日に特許出願され,平成8年1月11日に特許権の設定の登録がされた(以下,この特許権を「本件特許権」という。)。(乙1,3,6の1)(3) 原告代表者は,原告に対し,本件特許権について専用実施権を設定した。 (乙1,3,6の1)(4) 原告は,平成21年11月20日,被告が和歌山県橋本市向副外地内を施行場所とする国道371号災害復旧工事において使用する別紙方法目録記載の方法(以下「被告方法」という。)が本件特許の特許出願の願書に添付 した明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る各発明(以下「第1及び第2発明」という。)の技術的範囲に属すると主張して,東京地方裁判所に,本件特許権に基づき,被告に対し,被告方法を 添付 した明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る各発明(以下「第1及び第2発明」という。)の技術的範囲に属すると主張して,東京地方裁判所に,本件特許権に基づき,被告に対し,被告方法を用いた工事の差止めと損害賠償を求める訴え(平成21年(ワ)第42168号。以下「前訴」という。)を提起した。被告は,被告方法は第1及び第2発明の技術的範囲に属しないし,第1及び第2発明は新規性,進歩性を欠くから,これらに係る特許には無効理由があると主張した。なお,前訴における原告の訴訟代理人2名及び被告の訴訟代理人は,本件の各訴訟代理人と同一である。(乙1,3,6の1)(5) 原告と被告は,平成22年6月8日,前訴において,訴訟上の和解をした(以下「本件和解」という。)。本件和解は,被告が,原告の許諾を得ずに,被告方法を用いた工事を10件以上受注し,施工した事実及び原告が権利を有する特許権を侵害する物件を製造していた事実を認めて,原告に謝罪した(1項)上,原告と被告が次のような合意をした(2項)ことを内容とするものである。 ア被告は,原告に対し,本件和解成立時以降,被告が受注する工事に関し,原告が要求する事項の全部を報告するものとする。(1号)イ被告が被告方法を用いた工事その他原告が権利を有する特許権に抵触する工事(以下「原告特許権に関する工事」という。)を受注する時には,次のとおりとする。(2号)① 被告は原告の書面による許諾を得なければならない。 ② 原告特許権に関する工事の許諾料は工事代金の25%相当額とする。 ウ被告が原告特許権に関する工事を施工する際,原告が被告に対して指示監督をした時は,被告は原告の指示監督に従わなければならない。ただし,本条項は原告が権利を有する特許権の価値を維持することを目的に, 被告が原告特許権に関する工事を施工する際,原告が被告に対して指示監督をした時は,被告は原告の指示監督に従わなければならない。ただし,本条項は原告が権利を有する特許権の価値を維持することを目的に,原告の被告に対する権利を定めたものであり,被告が原告特許権に関する工事 の施工の際に第三者に損害を与えた時の当該第三者に対する関係での原告の被告に対する監督義務を定めたものと解釈されてはならない。(3号)エ被告が原告が権利を有する特許権に抵触する物件(以下「原告特許権に関する物件」という。)を製造しようとする時には,被告は原告の書面による許諾を得なければならない。(4号)オ被告が原告特許権に関する物件を製造した時には原告の検査を受け,かつ,原告の使用許可を受けなければならない。(5号)カ被告が原告特許権に関する物件を譲り受けようとする時には,原告が指定する者から譲り受けなければならない。(6号)キ被告は,被告の業務において使用するバックホウその他工事に用いる機械の全部を原告が指定する場所に保管しなければならない。(7号)ク被告が,上記ア,イ①,ウないしキの合意に反した時の違約金は,合意に反した事実が生じた時以降被告が第三者から受ける工事代金の100%相当額とする。(8号。以下「本件違約金条項」という。)ケ本項の合意に関する細目は原告と被告が別途協議の上定めるものとする。 (9号)(6) 原告は,本件和解成立後,被告に対し,前記(5)アの「原告が要求する事項」として,被告が受注する工事に関し,設計書,図面,現場写真,注文書及び請書のコピーを提出して報告すべき旨,また,前記(5)キの「原告が指定する場所」として,堺市<以下略>所在の原告関西支店とする旨を通知した。 (7) ノーベル技研工業株式会社は,第 真,注文書及び請書のコピーを提出して報告すべき旨,また,前記(5)キの「原告が指定する場所」として,堺市<以下略>所在の原告関西支店とする旨を通知した。 (7) ノーベル技研工業株式会社は,第1発明外に係る特許についての無効審判(無効2010-800012号事件)を請求し,特許庁は,平成22年7月5日,第1発明外についての特許を無効とする旨の審決をした。原告代表者は,知的財産高等裁判所に,上記無効審決の取消しを求める訴え(同裁判所平成22年(行ケ)第10244号)を提起し,同裁判所は,平成23 年3月24日,原告代表者の請求を棄却する旨の判決を言い渡し,同審決は,そのころ確定した。(乙4,5)(8) 被告は,平成22年10月ころ,次の工事(以下「本件工事」という。)を代金1169万5200円で受注した。(甲3)元請名新日本緑地株式会社工事名藤木地区上流斜面対策工事工事場所大分県日田市大山町西大山 2 争点(1) 被告が本件和解2項1号(上記1(5)ア)の合意に違反したか否か(争点1)(2) 原告が本件和解2項7号(上記1(5)キ)の合意に基づき被告に対し機械の運搬を請求することができるか否か(争点2)(3) 本件和解が錯誤により無効であるか否か(争点3)(4) 本件和解が公序良俗に反し無効であるか否か(争点4)(5) 本件違約金条項に基づく違約金の請求が権利の濫用に当たるか否か(争点5) 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点1(被告が本件和解2項1号の合意に違反したか否か)について(原告)被告は,平成22年10月ころに本件工事を受注したのに,原告に対し,報告をしなかった。 (被告)被告は,原告に報告し,その了承を得た。なお,被告が本件和解2項1号の合 て(原告)被告は,平成22年10月ころに本件工事を受注したのに,原告に対し,報告をしなかった。 (被告)被告は,原告に報告し,その了承を得た。なお,被告が本件和解2項1号の合意に基づき報告をするのは,本件特許権を侵害するような工事に関してだけである。 (2) 争点2(原告が本件和解2項7号の合意に基づき被告に対し機械の運搬 を請求することができるか否か)について(原告)被告がその業務において使用する機械を原告関西支店に保管するためには,機械を保管場所まで運搬することが必要不可欠であるから,原告は,被告に対し,本件和解2項7号の合意に基づき,機械を原告関西支店まで運搬するよう請求することができるというべきである。 (被告)原告の主張は争う。被告は,被告機械1を所有しているが,被告機械2はリースを受けたもので,これを所有していない。 (3) 争点3(本件和解が錯誤により無効であるか否か)について(被告)被告は,本件和解が成立した平成22年6月8日時点において,本件特許について,被告自らが無効審判請求をするに足る資料を収集できておらず,第三者が無効審判請求をしている事実も知らなかったので,やむを得ず,本件特許権の存在を前提に,被告がそれに係る特許に対するライセンス料を支払うことを主眼とする本件和解を成立させたが,仮に被告において本件特許が無効となるべきものであると知っていたならば,本件和解をするはずはなかった。しかるに,第1発明に係る特許については,平成23年9月13日に進歩性の欠如を理由とする無効審判が確定したものであり,第2発明は,第1発明に遠隔操作などを付加したものに過ぎないから,進歩性が欠如している。 本件和解においては,本件特許権が有効であることが前提となっていて, とする無効審判が確定したものであり,第2発明は,第1発明に遠隔操作などを付加したものに過ぎないから,進歩性が欠如している。 本件和解においては,本件特許権が有効であることが前提となっていて,それが意思表示の重要な要素であるから,被告において,本件特許権が有効であると信じて成立させた本件和解は,意思表示の重要な要素に関し錯誤があり,無効である。 (原告) 被告の主張は争う。 (4) 争点4(本件和解が公序良俗に反し無効であるか否か)について(被告)ア本件和解は,原告特許権に関する工事を受注する際の取決めであって,「原告特許権」とは本件特許権を指すところ,本件特許権は平成22年9月12日に存続期間が満了した。特許権の消滅後に当該技術の使用を制限したり,当該技術の実施に対して実施料の支払義務を課したりすることは,独占禁止法19条が規定する不公正な取引方法に該当するが,本件和解は,本件特許権の消滅後も引き続きその実施料の支払義務があることを定めたものであって,不公正な取引方法に該当し,自由競争秩序に反する。 イ本件違約金条項は,軽微な違反行為に対する制裁として,その後の一切の工事についての工事代金全額を違約金として支払わせるもので,被告にその後一切の工事をさせないというに等しく,暴利行為に当たる。 ウそうであるから,本件和解は公序良俗に反し,無効である。 (原告)原告代表者は,法面工事の機械及び方法に関する多数の特許権を有し,被告が業として行っている法面工事は,原告が独占的通常実施権を有する上記特許権のいずれかに抵触するというのが原告と被告との間での共通認識であり,本件和解においては,被告が受注する工事の全てを事前に報告し,上記特許権への抵触の有無を双方で事前に確認した上で,抵触する場合には 権のいずれかに抵触するというのが原告と被告との間での共通認識であり,本件和解においては,被告が受注する工事の全てを事前に報告し,上記特許権への抵触の有無を双方で事前に確認した上で,抵触する場合には被告が相応の実施料を支払い,上記特許権の価値を毀損しないように被告を原告の監督下に置き,その確認のために被告が使用する機械を原告の指定場所に保管させる等の合意をしたのであって,本件和解の条項が,本件特許権に限定せず,「別紙方法目録記載の方法を用いた工事その他原告が権利を有する特許権に抵触する工事」との表現を用いているのはそのためである。 被告は,本件和解により,報告義務等の本件和解で合意された容易に履行 することができる義務の履行をしさえすれば,低廉な許諾料で業務を遂行することができるのであり,原告が本件和解において過去の損害賠償請求権を放棄したことも考慮すると,本件和解は,被告にとってかなり有利な内容のものであるし,合意した被告の報告義務や保管義務は,被告に野放図に侵害され続けていた特許権を巡る原告の権益を保全するためのもので,特許権侵害に関する原告の立証の負担の軽減も意図されていた。また,被告は,工事施工を主要業務とはしていないから,違約金額を本件和解条項違反の後に被告が受ける工事代金全額としても,被告の営業が廃業に追い込まれるなどということもなく,上記のとおり,原告が前訴で損害賠償請求権を放棄していることを考慮すると,本件違約金条項が定める違約金が実際に生ずる損害に比べて大きいとしても,これが著しく過大であるとはいえない。 したがって,独占禁止法違反や公序良俗違反の問題を生じることはない。 また,仮に本件違約金条項に問題があるとしても,一部無効にとどめられるべきである。 (5) 争点5(本件違約金条項に基づく違約金の請求 って,独占禁止法違反や公序良俗違反の問題を生じることはない。 また,仮に本件違約金条項に問題があるとしても,一部無効にとどめられるべきである。 (5) 争点5(本件違約金条項に基づく違約金の請求が権利の濫用に当たるか否か)について(被告)被告は,原告代表者に対し,受注した工事案件につき報告をしていたが,工事代金から諸経費等を控除すると,工事代金の25%も残らないため,被告が現実に原告に支払える金額は,工事終了後に諸経費を控除した残額が確定してから協議する以外になく,原告代表者はこうした事情を把握し,了承していた。しかし,例えば,稲葉建設株式会社が元請けである津市美杉町上多気地内の美杉町災害現場の工事において,原告は,被告が原告代表者に事前に報告した工事入札情報,被告の入札予定価格などを入手した上で,被告の入札予定価格308万8050円よりも1割以上低い金額で受注しようとし,このため,被告が当初の見積金額より1割以上低い262万5000円 で受注したことがあったが,このように,原告は,被告を倒産させることをもくろみ,被告が受注した工事を許諾することを前提として被告に報告義務を課しておきながら,被告が受注した工事について報告すると,自らがこれを受注しようと被告との競争をし,このため,被告は,受注金額を減額し,工事代金の25%相当額の許諾料の支払もできなくなってしまうのであって,そもそも原告に受注した工事を報告することができなかったものである。原告は,被告が報告をしない案件を見つけるや,直ちに本件の訴えを提起してきたのであり,原告の本訴請求は,権利を濫用したもので許されない。 (原告)原告が,被告の受注する工事を認識するためには,被告から報告を受ける以外に手段はなく,仮に原告が他の方法により被告の受注工事を知る 原告の本訴請求は,権利を濫用したもので許されない。 (原告)原告が,被告の受注する工事を認識するためには,被告から報告を受ける以外に手段はなく,仮に原告が他の方法により被告の受注工事を知ることがあったとしても,本件和解で合意した被告の報告義務がなくなるわけではない。また,原告が被告を倒産させようとしたことはない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(被告が本件和解2項1号の合意に違反したか否か)について被告代表者尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば,被告が,原告に対し,被告が受注した本件工事に関して,設計書,図面,現場写真,注文書及び請書のコピーを提出して報告しなかったことが認められる。 そうすると,被告は,本件和解2項1号の合意に違反したものといわなければならない。 被告は,被告が報告をするのは,本件特許権を侵害するような工事に関してだけであると主張するが,本件和解2項1号では,被告が原告に報告しなければならない工事に何らの限定も付されていないのに対し,同項2号では,原告の許諾を得なければならない工事が原告特許権に関する工事に限定されているから,被告が受注する工事の全てに関し,被告が原告に報告をすべき旨を合意したものというべきである。被告の上記主張は,採用することができない。 2 争点2(原告が本件和解2項7号の合意に基づき被告に対し機械の運搬を請求することができるか否か)について本件和解には,本件和解2項7号の合意に反したときについて,本件違約金条項があるだけであり,かえって,同項9号で,細目は別途協議の上定めるものとしていることを併せ考えると,2項7号の合意があるからといって,このことから直ちに,原告が,被告に対し,機械を原告の指定する場所に運搬することを請求する権利があるということはできない 上定めるものとしていることを併せ考えると,2項7号の合意があるからといって,このことから直ちに,原告が,被告に対し,機械を原告の指定する場所に運搬することを請求する権利があるということはできない。 そうすると,原告の被告各機械の運搬請求は,その余の点につき検討するまでもなく,理由がない。 3 争点3(本件和解が錯誤により無効であるか否か)について第1発明に係る特許についての無効審決が確定したことは,前記のとおりであるが,第2発明に係る特許についての無効審決が確定したことを認めるに足りる証拠はなく,第2発明に係る特許に無効理由があると即断することもできないから,第2発明に係る特許に関しては,被告に錯誤があったということはできない。また,前記前提事実によれば,前訴においては,本件特許の効力が争いの目的となっていたから,被告が本件和解後に第1発明に係る特許についての無効審判が確定したことを理由にその効力に錯誤があったと主張することは,和解の確定力(民法696条)により許されない。 4 争点4(本件和解が公序良俗に反し無効であるか否か)について(1) 被告は,本件和解の「原告特許権」が本件特許権を指すことを前提に,本件和解は,平成22年9月12日に存続期間が満了した本件特許権の消滅後も被告にその実施料の支払義務があることを定めたものであるから,不公正な取引方法に該当し,自由競争秩序に反すると主張する。しかしながら,本件特許は方法の特許であるのに,本件和解1項には,原告が権利を有する特許権を侵害する物件を製造した事実を被告が認めて謝罪するというように,物の特許を前提とする記載があり,本件和解2項2号にも,「別紙方法目録 記載の方法を用いた工事その他原告が権利を有する特許権に抵触する工事」と本件特許権に限定せず,むしろ他 るというように,物の特許を前提とする記載があり,本件和解2項2号にも,「別紙方法目録 記載の方法を用いた工事その他原告が権利を有する特許権に抵触する工事」と本件特許権に限定せず,むしろ他の特許権があることを前提とする記載があること,前記前提事実に,証拠(甲7,乙11,原被告各代表者)及び弁論の全趣旨を総合すれば,被告代表者及び被告訴訟代理人は,本件和解以前から,本件特許権以外にも関連する特許権が存在する可能性があることを認識していて,まず,原告代表者と被告代表者が直接面会して和解内容について話し合い,さらに,それぞれの訴訟代理人を通じて条項案のやりとりをするなどした上で,平成22年6月8日,本件和解が成立したことが認められることなどの事情を併せ考えると,本件和解の「原告特許権」が本件特許権に限られるものではないというべきである。被告の上記主張は,その前提を欠くものであって,採用することはできない。 (2) 被告は,本件違約金条項は,軽微な違反行為に対する制裁として,その後の一切の工事についての工事代金全額を違約金として支払わせるものであるから,暴利行為に当たると主張する。本件違約金条項は,合意に違反した事実が生じた時以降のあらゆる工事について被告が受ける工事代金に相当する額を違約金と定めたものである(このことは,当事者間に争いがない。)。 しかしながら,本件違約金条項は,被告による和解内容の履行を担保し,かつ,被告による特許権侵害の事実の立証負担の軽減を図るべく,賠償額の予定を定めたものであって,このことに合理性があるということができる。そして,原告は,本件工事に関し,被告が報告をしなかったことを理由に本件工事代金に相当する額の違約金の支払を求めているのであって,少なくともその限度においては,違約金の額が著しく過大であると きる。そして,原告は,本件工事に関し,被告が報告をしなかったことを理由に本件工事代金に相当する額の違約金の支払を求めているのであって,少なくともその限度においては,違約金の額が著しく過大であるとまでは認められない。 そうであるから,本件違約金条項に基づく違約金の支払が暴利行為に当たるということはできず,他に暴利行為であることを基礎付けるに足りる事情は本件全証拠によっても見出すことができない。被告の上記主張も,採用することができない。 5 争点5(本件違約金条項に基づく違約金の請求が権利の濫用に当たるか否か)について被告は,原告が,被告を倒産させることをもくろんで,例えば,美杉町災害現場の工事において受注を妨害するなど,被告に報告義務を課しておきながら,被告が報告することができないようにしているから,権利の濫用に当たると主張をする。しかしながら,被告がその主張の裏付けとして提出するのは被告が作成した上記工事の見積書2通(乙7の1・2)であり,上記主張に沿う被告代表者の供述を考慮しても,これらをもって,原告が被告を倒産させることをもくろんだとか,被告の受注を妨害したと認めることはできず,他に権利の濫用に当たることを窺わせるような事情も認められない。被告の上記主張は,採用することができない。 6 なお,被告は,原告が,本件和解において,「原告が権利を有する特許権」が全て消滅するまで本件和解の効力を存続させることを意図したのであれば,被告に対し,本件和解に先立ち,被告がその存続期間を認識するに足りる情報を提供すべきであったのに,これをしなかったのであるから,本件特許権以外の特許権をもって被告に対抗することができず,本件特許権の消滅後は本件和解の効力を主張することができないと主張する。しかしながら,仮に原告に上記情報を提 これをしなかったのであるから,本件特許権以外の特許権をもって被告に対抗することができず,本件特許権の消滅後は本件和解の効力を主張することができないと主張する。しかしながら,仮に原告に上記情報を提供すべき義務があったとしても,これを怠ったことによって,本件特許権以外の特許権を被告に対抗することができなくなるというわけではないし,原告が上記のような義務を負うことを基礎付ける事情は何ら見当たらないから,被告の上記主張は,失当というほかない。 7 以上によれば,被告は,原告に対し,違約金1169万5200円を支払う義務があるところ,違約金支払債務は,期限の定めのない債務であって,請求により遅滞に陥るから,これについて遅延損害金が発生するのは,訴状の送達により被告に請求した日の翌日であることが記録上明らかな平成23年3月31日である。したがって,原告の請求は,違約金請求のうち,違約金1169 万5200円及びこれに対する平成23年3月31日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが,その余は理由がなく,被告各機械の運搬請求は,理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官高野輝久 裁判官三井大有 裁判官志賀勝 別紙機械目録 下記2台の機械。 ただし,機械の斜体に貼付された建設機械持込許可証に「所属㈱佐川」と記載されているもの。 1 メーカー名コマツ型式 PC40MR-1上記建設機械の中間にリフティング機構とウインチ機構を取り付けたもの 2 メーカー名コマツ型式 るもの。 1 メーカー名コマツ型式 PC40MR-1上記建設機械の中間にリフティング機構とウインチ機構を取り付けたもの 2 メーカー名コマツ型式 PC35MR上記建設機械の中間にリフティング機構とウインチ機構を取り付けたもの 別紙方法目録 1 土砂面の切取り,掘削等の作業を行おうとする土砂斜面の上部に存する同等の2本の生立木の根株をアンカーとして選定し,又は同土砂斜面の上部に埋め込みアンカー,コンクリートアンカー,ロックボルト,重量置き換えアンカーのいずれかを2個設置する。 2 前記1の2個のアンカーにそれぞれワイヤーロープ固定器具を設置する。 3 モンキーカーエクスカベーションと被告において称しているバックホウ(以下「被告マシーン」という。)の後部の左側と右側に,それぞれ各1個のワイヤーロープが巻かれたウインチを取り付ける。 4 前記3のワイヤーロープを前記2のワイヤーロープ固定器具に接続する。 5 被告マシーンにオペレーターが乗車してマニュアル操作し,又は被告マシーンを遠隔地からリモコン操作することにより,被告マシーンを登坂走行させ,かつ,前記3の2個のウインチの一方を巻き上げて一方を巻き下げ,又は双方を巻き上げ若しくは巻き下げることにより被告マシーンを土砂の切取り又は掘削をしようとする位置に移動させる。 6 前記5により被告マシーンを移動させた場所において土砂の切取り又は掘削の作業を被告マシーンにより行う。
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