- 1 - 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 湯沢市長が平成18年6月30日付けで原告に対してした平成18年度固定資産税減免申請不承認処分を取り消す。 2 湯沢市長が平成18年8月4日付けで原告に対してした平成18年度国民健康保険税減免申請不承認処分を取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が,被告に対し,原告の平成18年度固定資産税及び同国民健康保険税の各減免申請をいずれも不承認とした湯沢市長の各処分が違法であるとして,この処分の取消しを求める事案である。 1 争いのない事実等以下の事実は,当事者間に争いがないか後掲各証拠又は弁論の全趣旨により容易に認めることができる。 (1) 当事者ア被告は,地方税法5条2 項の定める固定資産税の課税団体であり,湯沢市市税条例(以下「市税条例」という。)に基づき,同市所在の固定資産の所有者に対し,固定資産税を賦課徴収している。 また,被告は,国民健康保険法3条1項の定める国民健康保険の保険者でもあり,湯沢市国民健康保険税条例(以下「国保税条例」という。)及び同施行規則(以下「国保税施行規則」という。)に基づき,世帯主を納税義務者として,各世帯ごとに算定した国民健康保険税(以下「国保税」という。)を賦課徴収している。 イ原告は,仏壇の木地の製造及び農業に従事している。 - 2 -平成18年度当時,原告,その妻,長男,二男及び妻の母(以下,単に「妻」などという。)は,いずれも湯沢市国民健康保険の被保険者であり,妻,長男及び妻の母は,原告を世帯主として同人と同居していた。 二男は,東京に居住し,都内の私立大学に在学し,陸上部 (以下,単に「妻」などという。)は,いずれも湯沢市国民健康保険の被保険者であり,妻,長男及び妻の母は,原告を世帯主として同人と同居していた。 二男は,東京に居住し,都内の私立大学に在学し,陸上部に在籍していた。二男は,奨学金を毎月合計約13万円受給していたが,原告は,二男の大学の入学金,4年間の授業料,陸上部の寮費(月額7万3千円)及び合宿,遠征等の費用などについてこの奨学金ではまかなえない分を負担していた(乙6,原告本人,弁論の全趣旨)。 また,原告は,湯沢市に所在する固定資産の所有者である。 (2) 固定資産税の減額及び免除(以下「減免」という。)に関する条例の定め被告においては,地方税法367条を受けて,市税条例において,固定資産税の減免について,次のとおり定めている(乙11)。 第69条市長は,次の各号のいずれかに該当する固定資産のうち,市長において必要があると認めるものについては,その所有者に対して課する固定資産税を減免する。 (1) 貧困により生活のため公私の扶助を受ける者の所有する固定資産(2) 市の全部又は一部にわたる災害又は天候の不順により,著しく価値を減じた固定資産(3) 公益のために直接専用する固定資産(有料で使用するものを除く。)(4) 前3号に掲げるもののほか,特別な事由がある固定資産(3) 国保税の減免に関する条例及び規則の定め被告においては,地方税法717条を受けて,国保税条例において,国保税の減免について,次のとおり定めている(乙12)。 - 3 -第19条市長は,次の各号のいずれかに該当する者のうち,必要があると認める者に対し,保険税を減免することができる。 (1) 貧困により生活のため公私の扶助を受ける者又はこれに準ずると認められる 第19条市長は,次の各号のいずれかに該当する者のうち,必要があると認める者に対し,保険税を減免することができる。 (1) 貧困により生活のため公私の扶助を受ける者又はこれに準ずると認められる者(2) 当該年において所得が皆無となったため生活が著しく困難となった者又はこれに準ずると認められる者(3) 前2号に掲げる者以外の者で特別の事情がある者(2項以下省略)また,国保税施行規則は,国保税条例2条の規定に基づき,条例の施行に関し必要な事項を定めているが,国保税条例19条1項に規定する減免について,以下のとおり定めている(乙14)。 第3条条例第19条第1項に規定する減免に該当する者は,次に掲げる者で,次条に規定する調査等により総合的に判断し,国民健康保険税の納付が著しく困難と認められる者とする。 (1) 貧困により生活のため公私の扶助を受ける者又はこれに準ずると認められる者ア生活保護法(昭和25年法律第144号)第11条に規定する扶助を受けている者イ次の者で,当該世帯の収入認定額が生活保護法による保護基準(昭和38年厚生省告示第158号)(以下「本件保護基準」という。)により算定した最低生活費の額以下の者(ア) 就学援助等の公的扶助を受けている者(イ) 社会事業団体の扶助及び生計を一にしていない者からの扶助を受けている者(ウ) 公私の扶助は受けていないが同程度の生活困窮の状態にある者 - 4 -(2)以下略(4) 湯沢市市税減免に関する取扱要領の定めさらに,湯沢市市税減免に関する取扱要領(平成18年4月28日訓令第23号)(以下「本件取扱要領」という。)は,市税条例及び国保税条例に定める固定資産税及び国保税等の減免に関し,必要な事項を定めている。 本件 市市税減免に関する取扱要領(平成18年4月28日訓令第23号)(以下「本件取扱要領」という。)は,市税条例及び国保税条例に定める固定資産税及び国保税等の減免に関し,必要な事項を定めている。 本件取扱要領は,固定資産税の減免対象者を市税条例第69条1項1号又は4号(1号に準ずると認められる者とする。)に該当する者と定め,国保税の減免対象者を国保税19条1項各号のいずれかに該当する者と定めるほか(2条),減免の判定基準について,以下のとおり定めている(乙15)。 第4条減免の判定には,本件保護基準を参考として用いるものとし,具体的な判定基準は,次に掲げるとおりとする。 (1) 判定の対象申請者(納税義務者)と生計を一にする世帯員全員の収入,資産等を対象とする。 (2) 収入金額減免の申請月から1年間の収入を推計するものとし,原則として税務資料による前年の所得をもとに,面談,申請書添付の書類及び調査によって得られた事実による当該年の状況変化を考慮し,推計する。 (3) 判定に用いる収入次の収入とする。 ア給与収入,報酬及び賃金イ事業収入(営業,農業,不動産等)ウ公的年金等以下中略(4) 最低生活費本件保護基準により12箇月分の生活費を算出する。 (5) 手持金(預貯金等) 世帯員全員の手持金(預貯金等)の合計額から前号の規定による最低生活費の2分の1を控除した額とす - 5 -る。なお,第3号に掲げる収入が振り込まれている場合は,更に,それらを控除した額とする。 第5条減免の承認又は不承認の決定に係る審査の手順は,次に掲げるとおりとする。 (1) 収入金額と最低生活費とを比較し,生活困窮の度合いを算出する。 (2) 手持金(預貯金等)の保有状況及び 第5条減免の承認又は不承認の決定に係る審査の手順は,次に掲げるとおりとする。 (1) 収入金額と最低生活費とを比較し,生活困窮の度合いを算出する。 (2) 手持金(預貯金等)の保有状況及び個別の事情を考慮の上,担税力の有無について審査する。 (3) 前2号の結果を総合的に判断し,決定する。 (5) 本件の経過等ア固定資産税の減免申請湯沢市長は,平成18年5月中旬,原告に対し,平成18年度固定資産税として,10万3300円を課税した。 原告は,同月24日,湯沢市税務課に市税減免(免除)申請書を提出し,平成18年度固定資産税の減免申請を行った(乙1)(以下「本件固定資産税減免申請」という。)。 被告が同月に作成した生活保護費算定表によれば,原告の世帯の構成員として記載されているのは原告本人,妻,長男及び妻の母であり,また,原告の最低生活費及び収入の計算において,農業収入の金額は「-200,000」,収入認定額は「0」とされていた(乙3)。 湯沢市長は,同年6月30日付けで,原告に対し,「世帯の収入が最低生活費を上回っており,該当しない」として,本件固定資産税減免申請を不承認とした(以下「本件固定資産税減免申請不承認処分」という。)。 原告は,同年8月25日,本件固定資産税減免申請不承認処分が違法であるとして,湯沢市長に対し,異議申立てをしたが(乙4),湯沢市長は,平成19年1月16日付けで,最低生活費220万3913円に対し収入 - 6 -認定額258万1367円で最低生活費を37万7454円上回るとして,異議申立てを棄却した。 イ国保税の減免申請湯沢市長は,平成18年7月中旬,原告に対し,平成18年度国保税として18万 額258万1367円で最低生活費を37万7454円上回るとして,異議申立てを棄却した。 イ国保税の減免申請湯沢市長は,平成18年7月中旬,原告に対し,平成18年度国保税として18万0100円を課税した。 原告は,同月24日,湯沢市税務課に市税減免(免除)申請書を提出し,平成18年度国保税の減免申請を行った(乙5)(以下「本件国保税減免申請」という。)。 被告が同日に作成した最低生活費計算書によれば,世帯員は原告本人,妻,長男,妻の母の4人とされ,原告本人の収入としては,営業所得121万6000円,勤労に伴う必要経費は基礎控除及び特別控除が計上されていた(乙7,乙8)。 湯沢市長は,同年8月4日付けで,原告に対し,「世帯の収入が最低生活費を上回っており該当しない。」として,本件国保税減免申請を不承認とした(以下「本件国保税減免申請不承認処分」といい,本件固定資産税減免申請不承認処分と合わせて「本件各処分」という。)。 原告は,同月25日,本件国保税減免申請不承認処分が違法であるとして,湯沢市長に対し,異議申立てをしたが(乙9),湯沢市長は,平成19年1月16日付けで,最低生活費220万3913円に対し収入認定額248万3819円で最低生活費を27万9906円上回るとして,異議申立てを棄却した。 2 争点とこれに対する当事者の主張原告は,本件固定資産税減免申請不承認処分及び本件国保税減免申請不承認処分について,下記のとおり,いずれも,(1)原告の二男を世帯分離して取り扱ったこと,(2)農業所得の赤字分を営業所得と通算していないことが違法であると主張しているところ,前記のとおり,固定資産税及び国保税の減免の判定基 - 7 -準は,いずれも,本件取扱要 2)農業所得の赤字分を営業所得と通算していないことが違法であると主張しているところ,前記のとおり,固定資産税及び国保税の減免の判定基 - 7 -準は,いずれも,本件取扱要領において,共通の定めがなされており,同様に取り扱う趣旨と考えられるから,以下,共通して検討することとする。 (1) 争点(1)(原告の二男を世帯分離して取り扱ったことの違法性)について(原告の主張)被告は,生活保護法に設けられている世帯分離の例外規定を,機械的に本件の原告に適用し,もともと分離の必要性のない原告世帯をわざわざ世帯分離扱いとして,減免の認定を行わなかったものであって,この措置が生活保護法の趣旨に反することは明らかであり,本件各処分は市税条例69条1項1号及び国保税条例19条1項1号の適用を誤った違法な処分である。 (被告の主張)「生活保護法による保護の実施要領について(昭和38年4月1日社発第246号厚生省社会局長通知)」(以下「本件保護実施要領」という。乙16)によれば,地方公共団体が実施する就学資金貸与事業による貸与金(イに該当するものを除く)であって独立行政法人日本学生支援機構法による貸与金に準ずる貸与金を受けて大学で就学する場合に該当するときは,世帯分離して差し支えないとされており,原告の二男はこれに該当するから,世帯分離したものである。 (2) 争点(2)(農業所得の赤字分を営業所得と通算していないことの違法性)について(原告の主張)被告が原告世帯の収入認定に際し,事業所得を営業と農業に分離し,農業の赤字20万円を営業所得と通算していない点は,本件取扱要領4条を正しく適用していないものであり,原告の事業収入を,右両事業を通算して認定判断すれば,少なくとも原告世帯の合計収入 農業に分離し,農業の赤字20万円を営業所得と通算していない点は,本件取扱要領4条を正しく適用していないものであり,原告の事業収入を,右両事業を通算して認定判断すれば,少なくとも原告世帯の合計収入額は最低生活費を下回るのであるから,本件各処分は市税条例69条1項1号及び国保税条例19条1項1号の適用を誤った違法な処分である。 - 8 -(被告の主張)生活保護法においては,事業所得の損失分についてはこれを収入とは認めず,控除される必要経費等にも当たらない。 よって,原告世帯の収入認定額の算出は適正であり,その認定額は最低生活費を上回っているのであるから,市税条例69条1項1号及び国保税条例19条1項1号に該当しない。 第3 当裁判所の判断 1 市税減免の実体的要件の判断基準について前記のとおり,固定資産税及び国保税の減免について,本件取扱要領4条は,減免の判定には,本件保護基準を参考として用いるものと定め,同条4号において,最低生活費については,本件保護基準により12箇月分の生活費を算出すると規定している。 ところで,地方自治法245条の9第1項及び第3項の規定により,都道府県又は市町村が法定受託事務を処理するに当たりよるべき基準の定めとして,厚生省社会局長から各都道府県知事・各指定都市市長あてに本件保護実施要領(乙16)が発せられているところ,生活保護制度は,困窮の程度に応じ必要な保護を行い,最低限度の生活を保障するものであり(生活保護法1条),一般的に困窮の度合いを判断する根拠として認知されているものであるから(乙18の1),本件保護実施要領は,本件保護基準とともに,申請者の収入及び最低生活費の認定について,減免申請の判定の基準となるものと解される。 2 争点(1)(原告の二男を いるものであるから(乙18の1),本件保護実施要領は,本件保護基準とともに,申請者の収入及び最低生活費の認定について,減免申請の判定の基準となるものと解される。 2 争点(1)(原告の二男を世帯分離して取り扱ったことの違法性)について(1) 本件保護実施要領の世帯認定について生活保護法は,生活保護について世帯単位の原則を定め,保護は世帯を単位としてその要否及び程度を定めるとしている(同法10条)が,証拠(乙16)によれば,さらに,本件保護実施要領は,世帯の認定について,以下のとおり定めていることが認められる。 - 9 -第1の5 次のいずれかに該当する場合は,世帯分離して差しつかえないこと(1) 保護開始時において,現に大学で就学している者が,その課程を修了するまでの間であって,その就学が特に世帯の自立助長に効果的であると認められる場合(2) 次の貸与金を受けて大学で就学する場合ア独立行政法人日本学生支援機構法による貸与金イ国の補助を受けて行われる就学資金貸与事業による貸与金であってアに準ずるものウ地方公共団体が実施する就学資金貸与事業による貸与金(イに該当するものを除く。)であってアに準ずるもの(3) 生業扶助の対象とならない専修学校又は各種学校で就学する場合であって,その就学が特に世帯の自立助長に効果的であると認められる場合(2) 本件の取扱いの違法性ア保護の補足性,世帯単位の原則,世帯分離,大学就学者のある世帯に関する生活保護法や生活保護実務の考え方生活保護法4条1項は,「保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。」と規定し 活保護実務の考え方生活保護法4条1項は,「保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。」と規定し,保護の補足性の原則を定めているところ,ここにいう能力の活用とは,稼働能力のある者は,その能力に応じて働くということを指す。 そして,生活保護法は,世帯単位の原則(同法10条本文)を取っており(「世帯」とは,保護が経済的援護を主体とすることから,主に生計の同一性に着目して,社会生活上現に家計を共同にして消費生活を営んでいると認められる一つの単位を指す。),世帯員のうちに保護の要件を欠く者 - 10 -がある場合(例えば,稼働能力のある者が働いていない場合など)には,その世帯の構成員すべてに対して保護を適用しないのが原則とされる。 もっとも,世帯単位の原則を貫くと余りに酷な事態が生じたり,また生活保護の目的の1 つである自立助長に相反する場合も考えられることから,生活保護法は,世帯単位の原則によりがたいときは,例外的に個人を単位として定めることができると規定している(同法10条但書)。実際は同一世帯を形成していても,一定の場合には,上記規定に基づき,世帯員を2分し,その一方のみに保護の要件充足を求め保護の対象とする措置がとられている。本件保護実施要領第1の5の定めなどがこれに当たり,世帯分離と呼ばれている。 これを大学就学者等の世帯分離に関する本件保護実施要領第1の5に即して説明すると,大学就学者は,稼働能力があるとみなされるのが通常であり,大学就学者がある世帯の場合,世帯単位の原則を貫くと,能力の活用が十分でなく保護の要件を欠くとして,その世帯の構成員すべてに対して保護が適用されないことになりかね があるとみなされるのが通常であり,大学就学者がある世帯の場合,世帯単位の原則を貫くと,能力の活用が十分でなく保護の要件を欠くとして,その世帯の構成員すべてに対して保護が適用されないことになりかねないが,それでは,経済的に余裕のない家庭に生まれた子どもの大学就学の道を閉ざすことに繋がりかねないし,就学が被保護世帯の自立助長に資する場合もあることから,本件保護実施要領第1の5は,一定の場合に大学就学者を世帯分離して残余の世帯員につき保護の要件充足を求め保護の対象とする措置(大学就学を容認する措置)をとって差し支えないとしているのである。 イ固定資産税や国保税の減免の判定に本件保護基準を参考として用いる旨規定している本件取扱要領4条が,以上のような保護の補足性,世帯単位の原則,世帯分離,大学就学者のある世帯に関する生活保護法や生活保護実務の考え方を前提として包含していることは明らかであり(原告は,市税の減免の場面では,前記の生活保護において大学就学者がある世帯に世帯単位の原則を貫いた場合の帰結(保護が適用されない。),それを回避するための - 11 -世帯分離という図式が当てはまらないと主張するが,市税の減免の場面においても生活保護の場合と同様の考え方を採用することは可能と考えられ,原告の主張は根拠に乏しい。),これを前提に被告が原告の二男を世帯分離した点の違法性の有無を検討すべきである。 このような観点で本件各処分をみると,原告の二男は,大学就学者であり,世帯単位の原則を貫くと,それだけで減免の要件を欠くことになりかねないところ,そのようにはされずに,本件保護実施要領の第1の5(2)ウに該当する(原告の二男が,旧雄勝町から大学入学時に準備金として50万円を貸与され,また,奨学金として,毎月3万円 ことになりかねないところ,そのようにはされずに,本件保護実施要領の第1の5(2)ウに該当する(原告の二男が,旧雄勝町から大学入学時に準備金として50万円を貸与され,また,奨学金として,毎月3万円を受給してきた事実について当事者間に争いはないからこれに該当することは問題がない。)として,二男を世帯分離し,残余の世帯員につき減免の要件の有無が検討されたものの,結局要件を満たさなかったので不承認とされたにすぎないとみることができるから,被告が原告の二男を世帯分離した点に何ら違法性はない。 ウ原告の主張について(ア) 原告は,生活保護法が世帯分離を認めた趣旨は,真に保護が必要である対象者に対して適切な保護を与えることができるようにするため,生活保護の原則である世帯単位の原則の例外として設けられたものであり,分離されたそれぞれの世帯の両方ともに保護を与えなくするための制度ではないとか,市税減免の場面では世帯分離をすることによりかえって保護を受けられなくなり不合理であるなどと主張するけれども,前記のとおり,固定資産税や国保税の減免の判定に本件保護基準を参考として用いる旨規定している本件取扱要領4条が保護の補足性,世帯単位の原則,世帯分離,大学就学者のある世帯に関する生活保護法や生活保護実務の考え方を前提として包含していることを精解していない主張といわざるを得ず採用できない(すなわち,既に判示したところによれば,本件は,世帯分離によって減免を受けられなくなっ - 12 -た事案ではなく,世帯分離によっても減免を受けられなかった事案にすぎないのである。)。 (イ) また,原告は,世帯分離した二男を被保険者均等割の数に含めて国保税の計算をすることはおかしいとも主張するが,これは,国民健康保険法116条(就学中の被 かった事案にすぎないのである。)。 (イ) また,原告は,世帯分離した二男を被保険者均等割の数に含めて国保税の計算をすることはおかしいとも主張するが,これは,国民健康保険法116条(就学中の被保険者の特例)により,学生の場合は,例外的に,在学しなければ属したであろう世帯に属するものとみなすとして当該世帯の所在地の市町村の行なう国民健康保険の被保険者とされていることによるものであり,このことをもって世帯分離が不当であるということはできない。 (ウ) さらに,原告が主張するように,証拠(甲1,甲2)によれば,秋田市においては,平成20年度より,国保税減免審査において,世帯主と同居・同一世帯の大学就学者については世帯認定の対象とするよう認定基準を改めたこと,さらに,平成21年度からは,世帯主と同居していなくとも,世帯主と別生計であるとの申し出があった場合を除いては世帯認定の対象とするよう認定基準を改めたこと(前記の生活保護法や生活保護実務と異なり,いずれも大学就学者の世帯内就学を認めることが前提である。)が認められるが,減免の判定基準をどのようにするかは,各市町村がその実情に応じて決定すべきものなのであって,秋田市の基準が上記のとおり変わったからといって,被告の減免判定基準が生活保護法の趣旨に反して違法とまでいえるものではないから,原告の主張は理由がない。 (エ) 加えて,原告は,実際に,二男の大学の入学金,4年間の授業料,生活費は,奨学金の他は,原告らの収入から捻出されていると主張するけれども,原告が主張のよりどころとする上記(ウ)の秋田市の基準でさえも就学に伴う経費は費用の対象外とされていることに照らせば,上記原告の主張は説得的とはいいがたい。 - 13 -(オ) したがって,被告が原告の二男を世 田市の基準でさえも就学に伴う経費は費用の対象外とされていることに照らせば,上記原告の主張は説得的とはいいがたい。 - 13 -(オ) したがって,被告が原告の二男を世帯分離した点において本件各処分が違法であるとの原告の主張は理由がない。 3 争点(2)(農業所得の赤字分を営業所得と通算していないことの違法性)について(1) 本件保護実施要領の収入認定について本件保護実施要領によれば,収入認定の取扱いについて,勤労控除として,基礎控除,特別控除,新規就労控除,未成年者控除,その他の控除を定め,農業収入又は農業収入以外の事業(自営)収入の基礎控除については,生産必要経費又は事業必要経費を控除した後の収入額によることとしていることが認められる。 (2) 本件の取扱いの違法性ア本件においてみると,原告の農業収入の赤字20万円は事業収入からの控除が認められる必要経費には明らかに該当しないし,他にこれを控除として認める規定も存しないため,事業収入から控除することは認められないから,農業所得の赤字分を営業所得と通算していない点に問題はない。 イ原告の主張について(ア) 原告は,被告においては,本件取扱要領4条において,収入金額は,「原則として税務資料による前年の所得をもとに」推計するとされているところ,ここでいう「所得」とは,所得税法27条2項が「事業所得の金額は,その年中の事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする」と定めており,事業の各項目ごとに損益を算出したのちにこれを積み上げるという方式を採用していないこと,また,同法69条1項は,損益通算として,異なる所得間での損益通算も認めていることなどから,本件においては,事業所得については,2つの事業(木工業,農業)の所得 げるという方式を採用していないこと,また,同法69条1項は,損益通算として,異なる所得間での損益通算も認めていることなどから,本件においては,事業所得については,2つの事業(木工業,農業)の所得の合計から,必要経費の合計を差し引いて事業所得を算出するべきであると主張する。 - 14 -しかしながら,本件取扱要領5条によれば,減免の承認又は不承認の決定に係る審査の手順は,まず,収入金額と最低生活費とを比較し,生活困窮の度合いを算出することとされており,最低生活費については本件保護基準により算出するとされているのであるから,収入についても本件保護基準,ひいては本件保護実施要領に基づいて比較することが妥当であること,前記の本件取扱要領4条2号の定めは,収入金額について,「税務資料による前年の所得」のみを基準とするものにはなっていないこと,本件取扱要領は,本件保護基準によっていることから,収入の認定は月額によることを基本とした上で減免申請月から1年間の収入を推計することになるが,税務資料による損益通算は,一会計年度の計算を前提としており,これをそのまま固定資産税及び国保税の収入認定に利用するにはそぐわない点もあることを考慮すると,収入の認定において税法上の損益通算を行わないことが不合理であるとまではいえない。 (イ) 原告は,その年の農業が赤字になれば,他の収入で埋めなければならないのであるから,担税力の有無は,家計全体の収入を基準としなければならず,収入認定の際に農業の赤字を考慮しないのは当該世帯の家計,担税力を正確に把握することにならないと主張し,さらに,自身の生い立ちや家族の就業実態,苦しい家計の窮状を切々と述べている。 しかしながら,すでに述べているとおり,生活保護制度は,困窮の程度に応じ必要 力を正確に把握することにならないと主張し,さらに,自身の生い立ちや家族の就業実態,苦しい家計の窮状を切々と述べている。しかしながら,すでに述べているとおり,生活保護制度は,困窮の程度に応じ必要な保護を行い,最低限度の生活を保障するものであり,一般的に困窮の度合いを判断する根拠として認知されているものであって,本件保護実施要領に従った結果損益通算されないからといって直ちに不合理とまでいえないことに加え,原告の述べる生活状況は,市税減免が認められないことが明らかに不当というほどの事情とも認めがたい。(ウ) してみれば,農業所得の赤字分を営業所得と通算していない点において本件各処分が違法であるとの原告の主張は理由がない。 4 以上の次第であるから,本件固定資産税減免申請不承認処分及び本件国保税減免申請不承認処分はいずれも適法であって,原告の本件各処分の取消しを求める請求は理由がないのでいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 秋田地方裁判所民事第一部 裁判長裁判官鈴木陽一 裁判官佐藤久貴 裁判官工藤美香
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