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主文 本件上告を棄却する。上告費用は上告人の負担とする。理由 上告代理人村沢義二郎の上告理由について。原審の認定するところによれば、訴外Dは上告組合の当時の組合長Eから金融斡旋の依頼を受け、その方法として合計金額の限度を三〇万円として適宜数通の約束手形を振り出すこと並にそのために補助者を使用することを容認されたところ、金融獲得のため補助者として使用した訴外Fから融資を受ける見込がついた旨の連絡を受けたところから、上告組合から同組合長の印顆を取り寄せ書損その他の必要に備えて数通の手形用紙に押印した上、先ず上告組合振出、訴外G宛の金額五万円、一〇万円、一五万円の約束手形三通を作成してFに交付したが、その際Fの要請によりさらに右組合長の印を押捺した手形用紙二枚を必要のとき所定事項を記入の上行使することを許容して交付したというのであるから、右手形用紙二枚の交付は前記三通の手形による金融獲得の不能な場合にのみ振り出すべき趣旨においてなされたものと認むべく、したがつてその交付自体はもとよりDの権限内の行為と認めなければならない。しかしさらに原審確定の事実によると訴外Dの補助者たる訴外Fは右手形用紙二枚のうちの一枚を利用し、金額を一〇万円とする本件手形を作成しこれを訴外Hに振出交付して同訴外人から金融をえその金員を自己のために費消したというのであるから、Fの右手形振出行為はDの権限を濫用したものにほかならず、これをもつて当然に同訴外人の受任の範囲内の行為ということはできない。それ故に原審がこれをもつてDの受任の範囲内に属する権限内の行為であるとしたのは、その措辞稍々隠当を欠くが、権限濫用による手形振出の場合においてもその手形は偽造手形ではなく(無権限の署名代理による手形振出についての当裁判 つてDの受任の範囲内に属する権限内の行為であるとしたのは、その措辞稍々隠当を欠くが、権限濫用による手形振出の場合においてもその手形は偽造手形ではなく(無権限の署名代理による手形振出についての当裁判所昭和- 1 -三二年二月七日言渡の判決参照)、その手形は真正のものというべきであつて、ただ手形振出人は手形取得者の悪意なる場合に限りその事由をもつてこれに対抗しうるに止まると解すべきであり、原審の判示も畢竟その趣旨に帰すると認められるから、原判決には何ら所論のような違法はない。 欠くが、権限濫用による手形振出の場合においてもその手形は偽造手形ではなく(無権限の署名代理による手形振出についての当裁判所昭和- 1 -三二年二月七日言渡の判決参照)、その手形は真正のものというべきであつて、ただ手形振出人は手形取得者の悪意なる場合に限りその事由をもつてこれに対抗しうるに止まると解すべきであり、原審の判示も畢竟その趣旨に帰すると認められるから、原判決には何ら所論のような違法はない。もつとも、所論のようにDが本件手形振出前上告組合から金融斡旋の委任を解除され、Fに対してもその旨通知して本件手形ないし手形用紙の返還を請求したものとすれば、Dはすでに本件手形振出の権限を失つたこととなり、したがつてその補助者たるFの本件手形振出行為もその権限消滅後の行為に属する理であるが、かかる事実関係は原審の確定しないところであるだけでなく、仮にかかる場合に属するとしても、その手形を偽造手形とはいえず、したがつて手形振出人たる上告組合は善意の取得者に対してはその責を免れないことは、前説示の場合と同様である。これを要するに所論は原審の認めない事実を基礎とし、独自の見解により原判決を非難するものにすぎず、所論判例は刑事責任に関するものであつて、本件には適切でなく、論旨採用に値しない。よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官河村又介裁判官島保裁判官小林俊三裁判官垂水克己- 2 - 裁判官 島保 裁判官 小林俊三 裁判官 垂水克己
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