令和2(ワ)19834 地位確認等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年5月29日 東京地方裁判所
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判決文本文40,134 文字)

令和5年5月29日判決言渡し同日原本交付裁判所書記官令和2年(ワ)第19834号地位確認等請求事件口頭弁論終結日令和5年2月6日判決 主文 1 本件訴えのうち、本判決確定日の翌日以降を支払日とする賃金及びこれに対する遅延損害金の支払を求める部分を却下する。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 原告が、被告会社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 2 被告会社は、原告に対し、令和2年7月から毎月末日限り38万5783円及びこれに対する各支払日の翌日から支払済みまで年3分の割合による金員を支 払え。 3 被告Bは、原告に対し、110万円及びこれに対する令和2年6月30日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は、被告会社との間で雇用契約を締結していた原告が、①被告会社が原告 に対してした解雇は無効であると主張して、被告会社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認並びに解雇後である令和2年7月分以降の賃金として同月から毎月末日限り38万5783円及びこれに対する各支払日の翌日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求め、②被告会社の代表取締役である被告Bに対し、違法な解雇をしたことを理由とする 不法行為又は会社法429条1項に基づく損害賠償金110万円及びこれに対 する不法行為時である令和2年6月30日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実) 為時である令和2年6月30日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)⑴ 被告会社の事業等 ア被告会社は、米国及び英国に本社を置く世界最大規模の客船運行会社であるCarnivalCorporation & Plc(以下「カーニバル社」という。)の完全子会社であり、カーニバル社が提供するクルーズ船旅行商品の日本における販売や日本市場を拡大するためのマーケティング活動等を事業とする株式会社である。(乙20、41) イ被告Bは、平成27年9月14日から被告会社の代表取締役を務める者である(争いがない。)。 ⑵ 原告と被告会社の雇用契約ア原告は、平成25年3月、被告会社との間で雇用契約を締結し、以後、営業を担当していた(争いがない。)。 イ原告の令和2年6月時点の労働条件は、以下のとおりである(争いがない。)。 賃金月額基本給38万5783円 賃金支払日 毎月末日締め当月末日払い⑶ 被告会社による整理解雇等ア令和2年2月頃、カーニバル社が運航するクルーズ船であるダイヤモンド・プリンセス号(以下「本件クルーズ船」という。)において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者が確認されたことから、横浜 港沖で検疫及び船内待機が行われ、被告会社はその対応等を行った。また、 その頃から全世界的に新型コロナウイルスの感染が拡大した。(乙10、弁論の全趣旨)イ米国の疾病予防管理センター(以下「CDC」という。)は、令和2年3月14日、米国内でのクルーズ船の運航を の頃から全世界的に新型コロナウイルスの感染が拡大した。(乙10、弁論の全趣旨)イ米国の疾病予防管理センター(以下「CDC」という。)は、令和2年3月14日、米国内でのクルーズ船の運航を禁止する命令を発出し、同命令は、同年10月31日まで更新され、カーニバル社は、全てのクルーズ船の運航 ができなくなった(乙2)。 ウ被告会社は、令和2年6月4日頃、被告会社の従業員(正社員)67名のうち、原告を含む23名の従業員それぞれに対し、同月15日をもって退職することに合意する旨の記載のある「退職に関する合意書」(以下、原告に対し交付された上記文書を「本件退職合意書」という。)を交付して退職勧奨を 行い、同月8日午後3時までに回答するよう求めた(甲9の1・2、弁論の全趣旨)。 エ被告会社は、令和2年6月26日、退職に合意しなかった原告を含む7名に対し、同月30日をもって解雇する旨記載した解雇予告通知書をメールで送信し、もって、原告を同日付けで解雇した(以下「本件解雇」という。甲 5の1ないし3)。 オ被告会社の就業規則26条7号は、「事業上のやむをえない理由又は不可抗力その他の避けがたい事由により、事業の継続が困難になったとき又は会社のオペレーションの縮小、事業の変更、部門の閉鎖等が必要になったとき」は30日前に予告するか又は平均賃金の30日分を支給して解雇すると規 定している。被告会社は、令和2年7月1日、原告に対し、同規定に基づき解雇した旨の解雇理由証明書を送付した。(甲1、15の3)⑷ 雇用調整助成金制度ア雇用保険法62条1項1号は、政府は、雇用安定事業として、「景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくさ れた場合において、労 ⑷ 雇用調整助成金制度ア雇用保険法62条1項1号は、政府は、雇用安定事業として、「景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくさ れた場合において、労働者を休業させる事業主その他労働者の雇用の安定を 図るために必要な措置を講ずる事業主に対して、必要な助成及び援助を行うこと」ができる旨規定している。 イ雇用保険法施行規則(昭和50年労働省令第3号。以下「規則」という。)102条の2は、雇用保険法62条1項1号の事業として、雇用調整助成金を支給する旨規定している。 規則102条の3の内容は、別紙1の第1のとおりであり、景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由により、事業所において、急激に事業活動の縮小を余儀なくされた事業主(同条の3第1項1号イ)等が、対象被保険者である労働者について休業を行い、所定の要件を満たす方法で労働者に休業手当又は賃金を支払った場合は、事業主に対し、事業者が支払った休 業手当又は賃金の額に一定割合(中小企業事業主の場合は3分の2)を乗じた額(ただし、対象労働者1人あたりにつき基本手当日額の最高額を上限とする。)のうち、休業の初日から1年の間に最大100日分、3年の間に最大150日分を支給する旨規定している(以下、上記の雇用調整助成金を「通常時雇調金」ということがある。)。 なお、ここでいう中小企業事業主とは、別紙1の第1の規則102条の3第1項2号イ(5)のとおり、資本金の額又は出資の総額が3億円(サービス業を主たる事業とする事業主については5000万円)を超えない事業主及びその常時雇用する労働者が300人(サービス業を主たる事業主については100人)を超えない事業主を指す。 また、令和2年3月1日変更から同年8月1日 いては5000万円)を超えない事業主及びその常時雇用する労働者が300人(サービス業を主たる事業主については100人)を超えない事業主を指す。 また、令和2年3月1日変更から同年8月1日変更までの基本手当日額の最高額は8330円であった(乙14、顕著な事実)。 ウ新型コロナウイルス感染症による特例措置等政府は、令和2年2月14日、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う事業活動の縮小に係る特例として雇用調整助成金の特例措置(以下「雇調金特 例措置」という。)を定めた。雇調金特例措置の内容は、新型コロナウイルス 感染症に伴う経済上の理由により急激に事業活動の縮小を余儀なくされた規則102条の3第1項第1 号イに該当する事業主(以下「関係事業主」という。)に対する雇用調整助成金の助成率の引き上げ・上乗せ、上限額の引き上げ、支給限度日数の特例、助成対象の拡大、要件緩和、手続の大幅な簡素化など多岐にわたるが、本件解雇に至るまでの支給限度日数、助成率及び支 給上限額に関する主要な制度の内容は、概ね以下のとおりであった。(いずれも顕著な事実であり、この項で引用する厚生労働省令及び雇用関係助成金支給要領による。その内容を確認するには、厚生労働省ホームページの「報道・広報>報道発表資料」及び「政策について>分野別の政策一覧>雇用・労働>雇用>雇用関係助成金支給要領>令和2年2月14日現在の支給要 領~令和2年8月25日現在の支給要領」参照)。 令和2年3月10日厚生労働省令第29号により、規則附則15条4の3が別紙1の第2のとおり改正され、同日公布、施行された。 これにより、関係事業主において、令和2年1月24日から同年7月23日までの間(以下「特例期間」という。)に休業を実施する場合は、1年 間 紙1の第2のとおり改正され、同日公布、施行された。 これにより、関係事業主において、令和2年1月24日から同年7月23日までの間(以下「特例期間」という。)に休業を実施する場合は、1年 間で最大100日分までとする通常時雇調金の支給限度日数とは別に、上記期間についての支給を受けられることとなった。 令和2年4月10日厚生労働省令第83号により、規則附則15条4の3が別紙1の第3のとおり改正され(以下「4月10日改正」という。)、同日公布、施行された。 4月10日改正により、上記の特例期間が維持されるとともに、令和2年4月1日から同年6月30日までの期間(以下「緊急対応期間」という。)に関係事業主である中小企業事業主が対象被保険者の労働者について休業を行った場合の上記中小企業事業主に対する助成率は、原則として5分の4に引き上げられた。また、上記中小企業事業主が、規則附則15 条4の3第5項所定の要件(以下「雇用維持要件」という。)に該当すると きは、助成率は10分の9に引き上げられた。 厚生労働省が雇用調整助成金の支給について定めた雇用関係助成金支給要領(以下「支給要領」という。)は、雇用維持要件の認定について別紙2の1111aハ【雇用維持要件】のとおり定めていた(別紙2は令和2年4月10日施行の支給要領の一部である。支給要領は現在まで数次にわたり 改正されているが、本件解雇までこの部分の内容に変更はない。)。これによれば、雇用維持要件の充足のためには、概要、以下の要件をいずれも満たすこととされていた。 a 1判定基礎期間(賃金締切期間を指す。以下同じ。支給要領0607aイ参照)の末日における事業所労働者の数が、令和2年1月24日から判 定基礎期間の末日まで(以下「比較期間」という いた。 a 1判定基礎期間(賃金締切期間を指す。以下同じ。支給要領0607aイ参照)の末日における事業所労働者の数が、令和2年1月24日から判 定基礎期間の末日まで(以下「比較期間」という。)の各月末の事業所労働者数の平均の5分の4以上であること(以下「要件a」という。)b 比較期間中に、次に掲げる解雇等を行わないこと。(以下「要件b」という。)。以下には新型コロナウイルス感染症を理由とする解雇等も含む。 期間の定めのない労働契約を締結する労働者の場合、事業主都合に よる解雇により離職をさせること⒝ 期間の定めのある労働契約を締結する労働者の場合、解雇と見なされる雇止め、中途契約解除となる事業主都合による離職をさせること⒞ 派遣労働者の場合、労働者派遣契約期間満了前の事業主都合による契約解除 令和2年6月12日厚生労働省令第127号により、規則附則15条4の3が別紙1の第4のとおり改正され(以下「6月12日改正」という。)、同日公布、施行された。 6月12日改正により、上記の特例期間及び上記の緊急対応期間が同年9月30日まで延長されるとともに、中小企業事業主に対する助成率 の上限は、原則として5分の4、雇用維持要件に該当するときは10分の 10に引き上げられ、受給額の上限は、1人当たり日額8330円から1万5000円に引き上げられた。 エ雇用調整助成金ガイドブックなど厚生労働省は、雇調金特例措置を報道関係者に伝達したりウェブサイトに掲載したりして周知を図った(甲36の1~4、顕著な事実)。厚生労働省が 事業主に対し雇用調整助成金の支給要件等を説明するために作成した令和2年3月1日付け「雇用調整助成金ガイドブック」には、助成金の対象となる雇用維 た(甲36の1~4、顕著な事実)。厚生労働省が 事業主に対し雇用調整助成金の支給要件等を説明するために作成した令和2年3月1日付け「雇用調整助成金ガイドブック」には、助成金の対象となる雇用維持の方策として、休業が挙げられており、休業については、生産量の変動に機動的に対応する場合や、比較的短期間のうちに生産量の回復が見込まれる場合等における実施が考えられる旨の記載があった(乙13)。 オ本件解雇後の雇調金特例措置令和2年8月、上記の特例期間及び緊急対応期間は、同年12月31日まで延長され、その後も、上限額などを変更しつつ、令和4年11月30日まで延長された。その経過措置(上限額及び助成率を減じたもの)は、令和5年3月31日まで実施された。(甲36の5~12、甲37の1~7、甲59 の1~3、乙53、顕著な事実) 3 争点及びこれに関する当事者の主張本件の争点は、⑴本件解雇の有効性、⑵原告の就労の意思の有無、⑶中間収入の控除、⑷本件解雇は違法であり、これにより不法行為が成立するか、慰謝料の額であり、これに関する当事者の主張は次のとおりである。 ⑴ 本件解雇の有効性(被告会社の主張)ア判断枠組み本件解雇は、整理解雇であるところ、以下のとおり、①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人員選定の合理性、④手続の相当性の4要素のいずれの 観点からしても、本件解雇に客観的に合理的な理由があり、社会通念上の相 当性(労働契約法16条)が認められることは明らかである。 また、上記4要素は、各企業の置かれた個別具体的な状況に照らして考慮されるものであり、どれか一つが欠ければ解雇が無効になるというようなものではない。さらに、被告会社は、カーニバル社のクルーズ旅行商品を日本国内 要素は、各企業の置かれた個別具体的な状況に照らして考慮されるものであり、どれか一つが欠ければ解雇が無効になるというようなものではない。さらに、被告会社は、カーニバル社のクルーズ旅行商品を日本国内の旅行会社に紹介したり、日本国内のマーケティング活動を行う子会社 であって、カーニバル社の事業活動のほかに資金を調達できる手段があるわけではないのであって、被告会社の経営は、カーニバル社の経営の一部であり、独自に人員削減の必要性を判断したり、解雇回避努力ができるわけではない点も考慮すべきである。 イ人員削減の必要性 新型コロナウイルス感染症の影響により、被告会社が扱った令和2年2月以降の旅行の予約は全てキャンセルされた。CDCが米国内でのクルーズ船の運航停止命令を発出したため、カーニバル社のクルーズ船は全面的な運航停止を余儀なくされ、被告会社の売上げは全くなくなり、被告会社及びカーニバル社には多額の営業損失が生じた。令和2年4月9日時点で、カーニバ ル社のクルーズ船の運航再開は早くとも令和3年4月との見込みであり、仮に、運行が再開されたとしても、本件クルーズ船が新型コロナウイルスの震源地となってしまったため、国内需要が早期に回復するとは思われない状況であった。カーニバル社すら存続が危ぶまれ、被告会社は閉鎖の可能性もある状況の下、カーニバル社は、被告会社に対し、人件費を50%削減するよ う指示し、被告会社はこれに従い従業員を24名削減する必要があった。 ウ解雇回避努力 被告会社は、令和2年3月より、販売費を大幅に削減し、出張旅費・交際費を全面的に削減した。また、同年7月以降、人員削減と同時に、被告会社に残る従業員と役員の給与と報酬一律20%減額し、従業員への通勤 手当(定期券代)の支給を 費を大幅に削減し、出張旅費・交際費を全面的に削減した。また、同年7月以降、人員削減と同時に、被告会社に残る従業員と役員の給与と報酬一律20%減額し、従業員への通勤 手当(定期券代)の支給をやめて実費精算としている。 被告会社は、令和2年2月から6月にかけて、派遣社員4名の契約を、契約期間満了により順次終了させているし、カーニバル社全体の方針として、同年4月以降は、新規採用を全面的に停止している。 被告会社は、業務量の激減に伴い、西日本地域での営業やマーケティングの拠点であった大阪営業所の閉鎖を決定し、令和2年6月30日付けで 閉鎖した。 被告会社の従業員は67名に過ぎず、希望退職を募集すれば、優秀な従業員から応募することが多い。必要な人材が流出してしまっては、業務再開に対処できないことが明らかであり、被告会社において希望退職の募集は、実行不可能な施策である。 雇用調整助成金は、一時休業を実施し休業手当を支給した使用者を助成する制度であり、休業が終わった後も雇用を維持することを前提としており、人員削減を先送りにするための利用は制度の趣旨に反する。1年以上の間、「売上げゼロ」が続き、その後の見通しも立たない状況において、雇用調整助成金を申請したとしてしたとしても、解決にならず、解雇は避け られない。雇用調整助成金を受給した後に解雇することが明らかな場合に、その受給を認めれば、失業手当との関係で実質的に雇用保険の二重取りとなる。 オフィスの賃貸借契約を解約すれば、原状回復のために高額の費用が発生するし、事務所を移転する場合には、顧客などへの周知などにも多額の 費用が必要となるため、経費の節減策としてオフィスを解約するのは極めて非現実的である。 れば、原状回復のために高額の費用が発生するし、事務所を移転する場合には、顧客などへの周知などにも多額の 費用が必要となるため、経費の節減策としてオフィスを解約するのは極めて非現実的である。 エ人員選定の合理性 被告会社は、カーニバル社の指示に基づき、事業上必要不可欠な役割と廃止すべきポジションを特定した上で、個々の従業員の業務量、勤務成績、 能力などを評価し、削減の対象となるポジションと対象者を選定するとい う手順で人員選定を行った。選定の際には、検討結果を記載した資料(乙24の2・3。以下「評価シート」という。)を作成している。 原告が所属していたプリンセス・クルーズ部門の営業担当者は16名おり、4名がマネージャーで、各マネージャーの下に各3名の部下がいたが、営業の業務量が激減したため、マネージャーを1名削減し、3名のマネー ジャーに各2名の部下を配置することとしたことから、原告のポジションは削減対象となった。そして、原告は、積極的な姿勢や提案力がなく、コミュニケーション能力に欠け、周囲との衝突も多かったため、退職勧奨の対象となった。 本件のような突発的な災害により企業が存亡の危機に立たされた場合 の人員削減においては、削減の対象となる従業員の選定について、使用者の判断が最大限尊重されるべきであるし、前記のとおり、本件の人選が不合理でも恣意的でもないことは明らかである。 オ手続の相当性被告会社は、令和2年4月17日、従業員に対し、被告会社を含むグルー プ全体が極めて深刻な状況になることを伝えていること、被告会社の人事担当者であるC(以下「C」という。)は、令和2年5月15日、従業員に対し、カーニバル社のCEOであるD(以下「D」という。)の人員削減を含め めて深刻な状況になることを伝えていること、被告会社の人事担当者であるC(以下「C」という。)は、令和2年5月15日、従業員に対し、カーニバル社のCEOであるD(以下「D」という。)の人員削減を含めた施策が実行される旨のメッセージを引用し、予断を許さない状況であることをメールで明確に伝えていること、退職勧奨に当たり、一人当たり約15分か ら30分程度の面談を行ったこと、退職勧奨の対象者に対し、退職金規程に基づく通常の退職金に加えて、特別退職金の支給と有給休暇の買取を提示したこと、原告が加入した組合との団体交渉を行い、事前に財務状況に関する資料を提供し、2時間以上にわたり、会社の経営状況等を説明したことからすると、被告会社は、本件解雇に至るまで、丁寧な手続を経ており、手続の 相当性が認められることは明らかである。 (原告の主張)ア判断枠組み本件のように経営危機を理由とする整理解雇については、①人員削減の必要性②解雇回避努力③人員選定の合理性④手続の相当性のいわゆる整理解雇の4要件を満たさなければ、その解雇は権利の濫用として許されない。本 件解雇は以下のとおりその要件を満たしておらず、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でなく無効である(労働契約法16条)。 イ人員削減の必要性被告Bは、令和2年4月時点で、資金調達により解雇はしない旨述べており、その時点で人員を削減する必要性はなかったし、同年5月15日時 点においても、被告会社は日本では何も決まっていない旨を述べており、当面人員削減が必要な状況ではないというのが被告会社の認識であった。 被告会社は、令和2年4月末の時点で、原告を含む従業員に対し2%程度の昇給をし、従業員を同年2月に1名、同年4月に1名を採用している。 被 必要な状況ではないというのが被告会社の認識であった。 被告会社は、令和2年4月末の時点で、原告を含む従業員に対し2%程度の昇給をし、従業員を同年2月に1名、同年4月に1名を採用している。 被告会社が、カーニバル社により、人件費を50%削減するよう指示さ れた事実は認められず、仮に認められるとしても、雇用調整助成金の利用によって令和2年4月から9月までは雇調金特例措置により休業手当の全額を補填することができるという状況にあり、余剰人員について一次帰休、交代勤務、時短勤務とすることで人件費の負担なく雇用を維持することができる状況にあった。 仮に、一定数の人員削減の必要性があったとしても、退職勧奨の対象となった24名のうち7割にあたる17名が令和2年6月15日時点で退職に応じており、その時点で被告会社が設定した人員削減の目標が概ね達成できた状況であり、解雇をして人員削減する必要はなかった。 以上によれば、人員削減の必要性は認められない。 ウ解雇回避努力 被告会社は、令和2年6月時点において、6月12日改正後の雇調金特例措置を利用すれば、同年9月30日までは人件費を一切負担することなく従業員の雇用を維持することができ、同年10月1日から令和3年1月までは、通常時雇調金を受給することによって、ごく僅かな人件費を負担するだけで従業員を解雇することなく雇用を維持することができた。被告 会社は、それにもかかわらず、申請すらしないまま24名の人員削減と退職勧奨を決定し、退職勧奨に応じない者は解雇することを決定した。被告会社と同様に運行停止に追い込まれた同業他社が雇用調整助成金を受給して雇用を維持しており、また、政府が新型コロナウイルス感染症拡大による失業者の増大を防ぐため雇調金特例 解雇することを決定した。被告会社と同様に運行停止に追い込まれた同業他社が雇用調整助成金を受給して雇用を維持しており、また、政府が新型コロナウイルス感染症拡大による失業者の増大を防ぐため雇調金特例措置を設け、解雇を回避するよう 呼び掛けている状況で、被告会社が同助成金を受給して雇用を維持しなかったことは極めて不合理である。コロナ禍の将来の状況は誰も予想できず、コロナ禍が継続すれば、雇調金特例措置も延長されることは当然考えられたし、事業再開の見通しが立たない状況でこそ、雇用調整助成金を受給して雇用を維持すべきである。令和3年4月に運行開始ができるのであれば、 その準備業務が同年1月までに再開されており、同月には人員が必要であった。 被告会社は、令和2年末に新聞広告だけで約1億7500万円の広告宣伝費を使用したと推定され、同年12月には、ある旅行会社に対し、「販促費が余っているので2000万円の販促費を支払う。その請求書を送って ほしい」旨を伝えた上、販促費の支払をしている。その他の広告宣伝費も合わせれば、被告会社は同年末時点で約2億円程度の広告宣伝費を支出したものと思われ、令和元年度の広告宣伝費(約2億7000万円)と同程度が使用されている。 被告会社は、役員の報酬を削減しているが、従業員を解雇した後の令和 2年7月から実施するという遅い対応であり、しかもその額は20%に過 ぎない。また、同月から20%削減していた従業員の給与について、同年12月からは元の額に戻しており、さらに被告Bとの契約期間を3年延長している。また、被告会社は令和2年度のボーナスとして、カーニバル社の自社株を従業員に譲渡しているし、カーニバル社は令和3年2月に10億ドルの増資をするなど、随時資金調達をして運転資 期間を3年延長している。また、被告会社は令和2年度のボーナスとして、カーニバル社の自社株を従業員に譲渡しているし、カーニバル社は令和3年2月に10億ドルの増資をするなど、随時資金調達をして運転資金を確保している。 Eにある被告会社の740㎡もの広大なオフィスはリモートワークにより多くのスペースが余っているはずであり、一部区画を返還して年間7600万円にも上る多額の賃料を削減することは十分現実的かつ合理的なことであるが、被告会社はそれを一切検討していない。 被告会社は希望退職募集を行っていない。希望退職募集を行うと業務に 必要な従業員が確保できないという懸念については、被告会社が承認した者のみに希望退職を認めることを条件とし、各従業員との個別の面談及び対応を行うことで対策が可能であるから、被告会社においてこれを行わなくてよい理由とならない。 退職合意書に記載されていた特別退職金は各人あたり月額給与の約5 箇月分であったが、解雇をせずに雇用調整助成金等を活用しながらこの特別退職金を原資として当面の雇用を維持することは十分可能であった。 以上によれば、被告会社は、解雇回避努力を尽くしたものとは到底いえない。 エ人員選定の合理性 被告会社による人員選定は、客観的指標に基づいてなされておらず、被告B及び部門長の主観的・恣意的判断によって人員選定がされた可能性が極めて高い。 被告会社は、本件解雇にあたっての人選過程を裏付けるものとして評価シートを提出しているが、組合が令和2年6月23日の団体交渉において、 人選にあたっての比較資料を出すよう求めたのに対し、被告会社は、比較 資料が存在しないことを繰り返し回答していたのであって、評価シートが、 が令和2年6月23日の団体交渉において、 人選にあたっての比較資料を出すよう求めたのに対し、被告会社は、比較 資料が存在しないことを繰り返し回答していたのであって、評価シートが、同年5月時点で作成されていたか極めて疑わしく、本件訴訟のために事後的に作成されたものである可能性が高い。また、評価シートの点数が他の者と同等又はより高いにもかかわらず退職勧奨の対象者とされるなど不合理な点が見受けられる。 被告会社が、令和2年2月及び4月に採用した従業員については、実質的に「勤務成績」如何を問わずに退職勧奨及び解雇の対象から除外していること、また育休取得中のため被告会社が人件費を負担していない従業員2名を退職勧奨及び解雇の対象としていることも、本件解雇の人選基準の不合理性を示している。 被告会社は、原告の問題点を主張するが、以下のとおり、根拠がない。 a 原告は、他の営業社員がおこなっていない詳細な海外出張レポートを作成することで社員や旅行会社の販促に度々寄与していたし、企画クルーズや船内での企業イベント等の取扱い件数は社内トップであって、各旅行会社に可能なコラボレーション企画の提案を多数行い、実現させて きた。 b 原告の取引先が担当を原告以外に変えて欲しいと言ったこと、旅行代理店から、『彼と話していても埒が明かないから』と言われた事実は認めるが、原告には何の落度もなく、解雇対象者とする合理的理由にはなり得ない。原告が被告会社に就労していた当時の取引先からは、原告の 業績や業務姿勢、人柄等を高く評価する内容の陳述書が寄せられている。 c 原告が電話をほとんど取らなかった事実及び原告が入院中の顧客に送る物資の梱包作業を依頼されても断り帰った事実はない。 d 原告が、被告会社のホームペ 高く評価する内容の陳述書が寄せられている。 c 原告が電話をほとんど取らなかった事実及び原告が入院中の顧客に送る物資の梱包作業を依頼されても断り帰った事実はない。 d 原告が、被告会社のホームページから大手旅行代理店のリンクを削除しようとした事実は認めるが、原告以外の営業社員が担当するある大手 旅行会社が、期限を超過してもホームページの情報を更新しなかったた めに、原告は通常の運用どおり、リンクを削除しようとしたのであって問題はない。 e 原告は、十分な引継ぎリストの作成を失念して休暇に入ってしまったことがあったが、休暇中も常にインターネット経由でオフィスにいる社員と連絡を取り合い、トラブルになったことも、業務に支障をきたした ことも一切なかった。 したがって、人員選定に合理性はない。 オ手続の相当性被告会社は、令和2年5月15日の時点では、従業員に対し、「日本を含むアジアに関しては、具体的な決定と指示はなされていません。」という アナウンスをしていながら、同年6月3日に突如ミーティング実施を告知し、翌4日にわずか15分の面談のみで本件退職合意書への同意を同月8日までに判断するよう迫った。原告は、なぜ自分が退職勧奨の対象者に選ばれたのかの具体的説明もされず、被告会社の財務状況についての具体的資料も提示されないまま、わずか4日間で本件退職合意書に同意するかど うかを判断することを強いられた。退職の条件として提示されたのは、多い者で月額給与の7箇月分に過ぎなかった。 また、団体交渉では、被告会社は不誠実な対応に終始し、雇用調整助成金の活用等を求める労働組合に対し、「将来の見通しが立たない。」、「焼け石に水ですね。」などと述べて合理的理由なく否定し、解雇対象者の具体 的選定 被告会社は不誠実な対応に終始し、雇用調整助成金の活用等を求める労働組合に対し、「将来の見通しが立たない。」、「焼け石に水ですね。」などと述べて合理的理由なく否定し、解雇対象者の具体 的選定基準について、人員選定に用いられた資料は一切ないと述べるなど十分な説明や資料提供をせず、直近の財務状況についての十分な客観的資料も提示せず、17名が退職に応じた後にさらに7名を削減する必要性について説明しなかった。 したがって、被告会社の解雇に至る手続及び解雇後の対応に相当性は認 められない。 ⑵ 原告の就労の意思の有無(原告の主張)原告は、本件解雇に先立つ退職勧奨を受けて、令和2年6月17日に組合に加入し、被告会社に対して雇用継続を求めて団体交渉を申入れ、本件解雇後も解雇撤回を求めて団体交渉を行い、一貫して復職を求めており、同年8月7日 に本件訴訟を提起した後も、強く復職を求めてきた。原告は、本件解雇によって収入を断たれたため、生計維持のために、やむなく暫定的に他社で就労しているにすぎない。 したがって、原告が就労の意思を有しているのは明らかである。 (被告会社の主張) 原告は、他社に正社員として勤務しており、労務を提供する意思がない。 ⑶ 中間収入の控除(被告会社の主張)仮に、争点⑴及び⑵について原告の主張が認められるとしても、本件解雇後に原告が他社から得た別紙3記載の賃金のうち、平均賃金の6割を超える部分 については、賃金請求の認容額から控除されるべきである。 (原告の主張)原告が他社から別紙3記載の賃金を得たことは認め、被告会社の主張は争う。 ⑷ 本件解雇は違法であり、これにより不法行為が成立するか、慰謝料の額(原告の主張) 告の主張)原告が他社から別紙3記載の賃金を得たことは認め、被告会社の主張は争う。 ⑷ 本件解雇は違法であり、これにより不法行為が成立するか、慰謝料の額(原告の主張) ア上記⑴(原告の主張)のとおり、本件解雇は、労働契約法16条に違反するだけでなく、不法行為を構成する違法なものである。 被告Bは、人員削減の高度の必要性がない状況で、雇用調整助成金等を使うなど解雇を回避するための十分な措置を採ることなく、曖昧で恣意的な選定基準によって解雇対象者を選定した。また、入社して半年から1 年半ほど しか経っておらず社内事情をよく理解していない従業員に組合対応を任せ きりにして、自らは団体交渉の場に一切出席せず、原告や組合に対し十分な説明・資料提供をすることもないまま、安易に本件解雇を行った。本件解雇を決定した被告Bには、本件解雇が不法行為にあたることにつき少なくとも過失が認められるというべきであり、民法709条に基づき、損害賠償責任を負う。 イまた、被告Bは、株式会社の代表取締役として労働関係法令を遵守した業務執行を行う職務上の義務を負っているにもかかわらず、違法な本件解雇を安易に行ったものであり、任務懈怠について悪意または重過失が認められることから、会社法429条1項に基づき損害賠償責任を負う。 ウ本件解雇により、原告の被った精神的苦痛に対する慰謝料は100万円、 弁護士費用は10万円が相当である。 (被告Bの主張)上記⑴(被告会社の主張)のとおり本件解雇は有効であり、不法行為及び任務懈怠は認められない。損害は争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実上記前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。 ⑴ 被告会社の事業及び組 任務懈怠は認められない。損害は争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実上記前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。 ⑴ 被告会社の事業及び組織の概要アカーニバル社は、米国及び英国に本社を置く世界最大級の客船運行会社で あり、プリンセス・クルーズなど、大型客船による世界各国を寄港地とするクルーズ旅行などを旅行客に提供する事業を行っている(乙3、12、41)。 被告会社は、平成24年3月、カーニバル社の完全子会社として設立され、以後、株主構成は現在まで変わらず、令和2年6月当時、資本金は2350万円であり、代表取締役4名のうち被告B以外の3名はカーニバル社の役員 であり、被告会社の取締役1名もカーニバル社の役員であった(乙19ない し21)。 被告会社に雇用されていた従業員は、同月時点で正社員67名、派遣社員1名であった(乙1、弁論の全趣旨(被告最終準備書面⑶))。 イ被告会社の事業は、カーニバル社が提供するクルーズ旅行商品を我が国の旅行会社に紹介すること、上記商品を消費者に販売する旅行会社と消費者で ある旅行客との間の仲介をすること、及び、我が国におけるクルーズ市場拡大のためのマーケティング活動等であった。旅行会社を通じてクルーズ旅行商品が消費者に販売されると、旅行客が支払った旅行代金のうち旅行会社への手数料を除いた金額がカーニバル社の売上げとなり、カーニバル社は、被告会社に対して、上記代金の一定割合を、販売促進、広報活動及び人件費等 の対価として支払い、これが被告会社の売上げとなっていた。本件会社の事業収入は、カーニバル社から支払われる上記金員のみであった。(乙41、43、弁論の全趣旨(答弁書3頁))カーニバル社のクルーズ旅行商 として支払い、これが被告会社の売上げとなっていた。本件会社の事業収入は、カーニバル社から支払われる上記金員のみであった。(乙41、43、弁論の全趣旨(答弁書3頁))カーニバル社のクルーズ旅行商品は全て旅行会社を通して販売されるため、被告会社は、我が国の旅行会社に対して営業活動を行っており、被告会 社にとっては、上記商品を多く取り扱う我が国の大手旅行会社が重要な営業相手となっていた(乙41、弁論の全趣旨)。 ウ被告Bは、カーニバル社の指揮命令系統(レポーティング・ライン)の中に組み込まれ、カーニバル社のアジア太平洋地域部門(以下「APAC」というとき、カーニバル社のアジア太平洋地域部門を指す。)からの指示に従 って、被告会社の経営を行っていた(乙1、41)。 エ被告会社の組織は、クルーズ船のブランドごとに、①プリンセス・クルーズ部門、②キュナード・ライン部門及び③シーボーン・クルーズ部門に分かれており、そのほかに④バックオフィス部門(財務、人事)及び⑤グローバルサービス部門(港湾手配など)があった(乙1、41)。 ①プリンセス・クルーズ部門は、令和2年6月当時45名が配置され、令 和元年10月以降、コマーシャル・ディレクターのF(以下「F」という。)が統括していた(乙1、41、44)。 ②キュナード・ライン部門は、令和2年6月当時13名が配置され、コマーシャル・ディレクターのG(以下「G」という。)が統括していた。プリンセス・クルーズは、カーニバル社の米国本社に本部があり、キュナード・ラ インは、英国に本部があったところ、Gに対しては、英国のキュナード・ライン本部から、被告Bを介さず、直接指示がなされることがあった。(乙1、41、43)令和2年6月当時、③シーボーン ・ラ インは、英国に本部があったところ、Gに対しては、英国のキュナード・ライン本部から、被告Bを介さず、直接指示がなされることがあった。(乙1、41、43)令和2年6月当時、③シーボーン・クルーズ部門は1名、④バックオフィス部門は財務3名、人事2名、⑤グローバルサービス部門は4名の配置があ り、③シーボーン・クルーズ部門及び④バックオフィス部門は、従来から、被告Bを介さずに、APACから直接の指揮命令を受けていた(乙1、42、弁論の全趣旨(被告準備書面⑶7頁)。 ⑵ 新型コロナウイルス感染症の拡大及び被告会社への影響等ア令和2年2月初め、本件クルーズ船の乗客が新型コロナウイルス感染症に 感染していたことが確認され、同月3日に本件クルーズ船が横浜港沖に停泊した後、我が国の厚生労働省による検疫が開始された。同月5日、検疫の過程で乗客らの集団感染が判明したため、我が国の政府は、本件クルーズ船の乗船者約3700人に対し2週間の船内待機を要請した。そして、同年3月1日に乗船者全員が下船するまでの約1箇月間、乗員・乗客を合わせて70 0人以上の感染が確認され、10人以上が死亡するという被害が発生した。 本件クルーズ船での上記被害は、我が国において確認された新型コロナウイルス感染症の初めての集団感染であったため、マスコミによって広く報道された。 (乙10、41、42、顕著な事実) イ被告会社は、令和2年2月以降の日本発着クルーズの予約を全てキャンセ ルして旅行代金を払い戻すこととし、同月の売上は、約900万円に減少し、同月だけで約7900万円の営業損失が生じた(乙4)。 ウ被告Bは、令和2年3月13日、社内のミーティングにおいて、従業員らに対し、不安に感じるだろうが、雇用は守る 、約900万円に減少し、同月だけで約7900万円の営業損失が生じた(乙4)。 ウ被告Bは、令和2年3月13日、社内のミーティングにおいて、従業員らに対し、不安に感じるだろうが、雇用は守る旨の発言をした(甲62、乙41)。 エ新型コロナウイルス感染症の全世界的な拡大を受け、CDCは、令和2年3月14日、米国内のクルーズ船について、30日間の運航停止命令を発出し、世界各国も同様の措置をとるようになったため、カーニバル社は、クルーズ船の運航を全面的に停止した(乙2、41)。 オ被告会社の人事担当であるCは、令和2年3月26日、従業員らに対し、 在宅勤務を推進する旨メールで連絡した(弁論の全趣旨)。 カカーニバル社は、大型クルーズ船を105隻保有していたところ、船舶は、運行せずに港に停泊しているだけでも費用がかかることから、直ちに資金繰りが厳しい状態になり、クルーズ船を担保に銀行から融資を受けることとした。これを受けて、被告Bは、令和2年4月8日、ミーティングにおいて、 従業員に対し、カーニバル社が、キャッシュの保持、支出経費の最小化を条件として銀行から融資を受けることになったため、従業員の給与やクルーズ船のエンジンの保持は可能な見込みである旨述べた。(乙12、41、弁論の全趣旨(被告準備書面(1)6頁))キ CDCは、令和2年4月9日、運行停止命令を100日間(同年7月24 日まで)延長することを決定した(乙2)。 被告Bは、同月時点における運行再開の見込みについて、①被告会社が販売を仲介するクルーズ旅行商品の船舶は、全て外国籍の船舶であり、かつ、各国の寄港地を巡るため、一度停止した運行を再開するためには、各国の当局などとも調整をした上で運行計画を策定する必要 被告会社が販売を仲介するクルーズ旅行商品の船舶は、全て外国籍の船舶であり、かつ、各国の寄港地を巡るため、一度停止した運行を再開するためには、各国の当局などとも調整をした上で運行計画を策定する必要があり、その上で顧客へ の宣伝・販売をするため、準備に時間を要すること、②運航再開には、世界 各地で待機している乗組員をクルーズ船に呼び戻す必要があり、準備に時間を要すること、③本件クルーズ船が我が国における集団感染の発端となったため、カーニバル社のクルーズ旅行の安心安全について、評判の回復に時間を要することなどの理由から、極めて楽観的に考えても、運行再開は令和3年4月以降であり、より現実的には、令和3年以内の再開は難しいと考えて いた(乙41、43、44)。 ク被告会社は、令和2年4月末、平成30年12月1日から令和元年11月30日までの事業年度(以下「令和元年度」という。)の業績等に基づき、原告を含む従業員の給与を約2%引き上げ、令和2年4月、経理担当の管理職が退職したため、経理担当の従業員を採用した(弁論の全趣旨)。 被告会社の令和元年度の決算は、営業利益が2億0348万3028円、税引後純利益が1億4077万1334円であり、良好であった。ただし、同年度の期末(令和元年11月30日)における被告会社の純資産は15億0663万7873円の欠損であり(その前の事業年度末は16億4740万9207円の欠損)、令和元年度の期末時点において、被告会社は、カーニ バル社からの借入金21億7915万2747円により運転資金を賄っていた。(甲14、被告B本人44頁)被告会社がカーニバル社から借入れを受ける場合は、被告会社からカーニバル社に対し、借入金の用途及びその経営上の必要性について説明して承諾 により運転資金を賄っていた。(甲14、被告B本人44頁)被告会社がカーニバル社から借入れを受ける場合は、被告会社からカーニバル社に対し、借入金の用途及びその経営上の必要性について説明して承諾を受けた上で借入れをしており、被告会社は、カーニバル社が承諾した用途 以外に借入金を当てることはできなかった(被告B本人19、44、45頁)。 ケ上記エの運行停止により、クルーズ旅行商品を販売することができないため、被告会社は、令和2年3月以降、売上げが完全に途絶えて0円となった(この状態は少なくとも、令和4年7月頃まで続いた。)。そこで、被告会社では、経費削減のために、販売費として月額約2300万円支出していたの を令和2年3月から約200万円に削減し(同月5月以降は約400万円)、 出張旅費・交際費として月額300万円を支出していたのを同年3月から0円に削減した。(乙4、33、38、39、42)コ被告会社は、令和元年から採用手続を開始していた従業員2名を令和2年2月に雇用し、前記クのとおり経理担当の従業員1名を同年4月に雇用したが、その後、採用活動を停止し、令和2年2月末時点で4名いた派遣社員と の契約を契約期間満了により順次終了したほか(同年6月末をもって最後の派遣社員1名が期間満了により終了した。)、同年6月30日付けで、西日本地域での営業やマーケティングの拠点であった大阪営業所を閉鎖した(乙16、42、弁論の全趣旨(被告最終準備書面⑶)。 また、被告会社は、肩書所在地の事務所の賃料年間約6000万円の負担 を減じるため、一部の区画を解約しようと貸主と交渉したが、貸主が一部解約を拒んだため解約はできなかった(乙4、被告B35、36頁)。 サカーニバル社の令和元年12月1日から 円の負担 を減じるため、一部の区画を解約しようと貸主と交渉したが、貸主が一部解約を拒んだため解約はできなかった(乙4、被告B35、36頁)。 サカーニバル社の令和元年12月1日から令和2年11月末日までの事業年度(以下「令和2年度」という。)の第2四半期(令和2年3月1日から5月末日まで)の損失は、約24億ドル(約2500億円)となり、決算書に も、「クルーズ船再開の見通しは立っておらず、現段階で業績予測を立てることはできない」と記載されていた(乙6)。第3四半期末になると、さらに損失が拡大し、カーニバル社の令和元年12月1日から令和2年8月末日までの9箇月の損失は約80億ドル(約8400億円)に達した(乙3、42)。 カーニバル社の株価(1株)は、令和2年1月時点で50ドル以上であっ たが、同年4月には8ドル前後まで下落し、同年12月半ばまで10ドル前後で推移していた(乙11、42)。 ⑶ 人員削減の決定過程等ア被告Bは、令和2年4月23日から同月25日まで頃、APACを統括するH(以下「H」という。)から、カーニバル社の本体及び子会社等につき全 世界において人件費の50%を削減することが決定されたこと、被告会社に おいても人件費の50%を削減する必要があることを伝達され、運航停止命令が解除された後に通常業務を再開する際に営業できる最小限の人員のみを残すという観点から、人員削減案を作るよう指示された(乙41、被告B本人2ないし4頁)。被告Bは、その際、Hから、従業員の労働力を評価する指針を記載した文書(乙24の1。以下「本件評価指針」という。)及びプリ ンセス・クルーズ部門等の従業員を評価するための評価シート(乙24の2)の送付を受けた(乙41、被告B本人4 力を評価する指針を記載した文書(乙24の1。以下「本件評価指針」という。)及びプリ ンセス・クルーズ部門等の従業員を評価するための評価シート(乙24の2)の送付を受けた(乙41、被告B本人4、5頁)。 イ Gは、令和2年5月上旬頃、英国のキュナード・ライン本部のI(以下「I」という。)から、被告会社のキュナード部門において人件費の50%を削減することとなったため、被告会社に残すポジションと人員を検討する必要が ある旨伝えられ、本件評価指針及びキュナード・ライン部門の従業員を評価するための評価シートの送付を受けた(乙24の1・3、乙43、証人G2、3頁)。 ウ本件評価指針には、ステップ1として、①運航停止中及び通常業務再開時に必要なポジションか否か(以下「ステップ1A」という。)、②当該従業員 が現在担当しているポジションの重要性及び生産性(以下「ステップ1B」という。)、③通常時の業務量を100とした場合の現在の業務量(以下「ステップ1C」という。)の3点を考慮して、「事業上必要不可欠な役割」と「廃止すべきポジション」を特定し、ステップ2として、①当該従業員の年次評価(以下「ステップ2A」という。)、②業務量減少に伴う組織の変更後にお いて、新しい業務に適応する能力及び新しいスキルを身に付けられる可能性(以下「ステップ2B」という。)を考慮して、従業員の業績と能力を評価し、ステップ3として、これらの評価を踏まえ、人員削減の対象とするべき対象者を選定するというものであった(乙24の1)。 評価シートには、各従業員の氏名と給与額が記載されており、削減対象者 を選択し、残る従業員の給与の削減割合を記入すると、自動的に削減できる 金額及び割合が計算できるものとなっていた(乙2 シートには、各従業員の氏名と給与額が記載されており、削減対象者 を選択し、残る従業員の給与の削減割合を記入すると、自動的に削減できる 金額及び割合が計算できるものとなっていた(乙24の2・3、乙41)。 エ被告Bは、Fの意見を聴取しながら、概要、以下の検討過程を経て、原告を削減の対象者として選定した(乙1、24の2、乙41、44、証人F2、3頁、被告B本人9ないし11頁)。 プリンセス・クルーズ部門には、4部署があり、令和2年5月当時、① セールス部に22名、②イールド部(収益管理)に2名、③リザベーション部(予約手配)に13名、④マーケティング・PR部に7名の従業員が所属していた。 上記のセールス部には、部門長1名、営業担当者が16名、セールスオペレーション(営業補佐)が5名いた。営業担当者の16名の組織構成 は、マネージャー(課長)4名の下にそれぞれ3名の部下(スーパーバイザー(係長)3名及びエージェント(平社員)9名の合計12名)が配置されているというものであった。 上記のセールス部の営業担当者については、当時は、クルーズ船の運航停止により業務がほぼなくなり人員の余剰が生じていたが、被告会社の 主要収益部門であったことから、運行再開時に備えて能力の高い従業員を残しておく必要があった。この考えに基づき、マネージャーは能力が高いことから1名減に留め、残る3名のマネージャーに各2名の部下を配置することとし、スーパーバイザー及びエージェントの合計12名のうち6名を残し、6名を減じることとした。 原告は、プリンセス・クルーズ部門のセールス部に所属する営業担当者でエージェントであったところ、本件評価指針に基づき、①ステップ1Aにつき、 を残し、6名を減じることとした。 原告は、プリンセス・クルーズ部門のセールス部に所属する営業担当者でエージェントであったところ、本件評価指針に基づき、①ステップ1Aにつき、運行停止により営業担当者の人員が過剰となったことから、3段階で最も低い「低(役割が存続可能でない、又は運航停止中、ショアサイドのオペレーション業務に必要ない。)」とし、②ステップ1Bにつき、原 告が営業担当者としての積極的な姿勢や提案力がなく、コミュニケーショ ン能力にも欠け、周囲との衝突が絶えなかったことから、3段階で最も低い「低(一貫して、ポジションの基準を下回るパフォーマンスを示している。)」とし、③ステップ1Cにつき、業務量が20%程度に低下していたことから、「20%」とし、④ステップ2Aにつき、令和元年度の年次評価に基づき、4段階で上から2番目の「3(基準を満たしている、問題点や 明らかな欠点はない。)」とし、⑤ステップ2Bにつき、積極性やコミュニケーション能力に欠けており、少ない人数で協調して業務に取り組めると思えなかったことから、4段階で下から2番目の「2(新しいスキルを獲得できる可能性のある優れたスキルセット)」とした上で、ステップ3の結論として削減の対象とした。 オ被告Bは、プリンセス・クルーズ部門において原告を含めた16名を削減対象者として選定したところ、その人員を削減した上で、同部門の従業員の給与を20%減額すると、同部門等の人件費削減割合は39.3%になると試算された(なお、後記クのとおり、最終的には17名が削減の対象者として選定された。)。(乙1、24の2、被告B本人11頁) Gは、キュナード・ライン部門について、本件評価指針に基づき、評価シートを作成し、同部門の従 り、最終的には17名が削減の対象者として選定された。)。(乙1、24の2、被告B本人11頁) Gは、キュナード・ライン部門について、本件評価指針に基づき、評価シートを作成し、同部門の従業員13名のうち、6名を削減対象としたところ、同部門の人件費削減割合は48.2%になると試算された(他の従業員の給与減額は試算されていない。なお、後記クのとおり、最終的には5名が削減の対象者として選定された。乙24の3、乙43)。 カ被告B及びGは、令和2年5月15日、それぞれH及びIに対し、上記オの人員削減案を提出した(乙41、43)。 キ Cは、令和2年5月15日、従業員らに対し、本日、カーニバル社及び各グループのリーダーからいくつかのメッセージが届いたこと、大変な状況の中、難しい決断が下されているものの、日本を含むアジアに関しては、現時 点では具体的な決定と指示はないことを記載したメールを送信した。同メー ルには、カーニバル社の経営最高責任者であるDの英文のメッセージが添付されており、同メッセージには、地上人員を削減して、支出をさらに削減する必要があり、この削減は、人員削減、(無給の)一時帰休、及び、会社に残る従業員の労働時間と給与の削減の組み合わせとなるため、多くの皆様に深刻な影響を与える旨の記載があった。(甲6) ク被告Bは、令和2年6月2日、Cとともに、H及びAPACの人事部長であるJ(以下「J」という。)らとのオンライン会議に参加し、H、J及びCと協議の上、具体的な人員削減の対象者24名(キュナード・ライン部門の5名、プリンセス・クルーズ部門の17名、シーボーン部門の1名、バックオフィス部門の1名の合計24名)を決定し、同月4日に同人らに退職勧奨 を行うこととした。また、被 キュナード・ライン部門の5名、プリンセス・クルーズ部門の17名、シーボーン部門の1名、バックオフィス部門の1名の合計24名)を決定し、同月4日に同人らに退職勧奨 を行うこととした。また、被告Bは、人員削減の対象ではない従業員についても給与を一律20%減額することを決定した。 なお、これに先立つ同年5月半ば頃、Cはハローワークなどを訪問し、被告会社が雇用調整助成金を受給できることや助成内容などについて教示を受け、被告Bにその内容を報告するなどした。被告Bは、雇用調整助成金の 支給を受けても一時的なものであり、長期にわたり収入が途絶する見込みの被告会社の人件費削減策にはならないと判断し、雇用調整助成金の受給をしないことを決めた。また、希望退職者募集は、事業の再開時に必要な人材が退職してしまう可能性があること、必要な人材を慰留し退職が避けられたとしても、その者の意欲や帰属意識が低下してしまうおそれがあることから、 行わないことを決めた。 (乙25、26、41、42、証人C5ないし7、16、17頁、被告B本人15ないし17、31、33ないし35頁)。 ⑷ 退職勧奨及び本件解雇等ア Cは、令和2年6月3日、被告会社の従業員67名のうち22名に対し、 同月4日に人事ミーティングを行う旨のメールを送信した(甲7)。当初、人 員削減の対象者は24名とされていたが、1名は自主退職を申し出ていたため面談は実施されず、1名はシーボーン・クルーズ部門の従業員であったためカーニバル社の担当者により面談が実施された(弁論の全趣旨)。 イ被告Bは、令和2年6月4日午前0時21分のメールで、従業員らに対し、①本件クルーズ船における新型コロナウイルス感染症の感染者の発生と横 浜港での検疫により、被告会社 論の全趣旨)。 イ被告Bは、令和2年6月4日午前0時21分のメールで、従業員らに対し、①本件クルーズ船における新型コロナウイルス感染症の感染者の発生と横 浜港での検疫により、被告会社の従業員の日常が一変したこと、②現在も顧客の対応等に関わっている従業員もおり、これまでのチームワークと尽力に感謝していること、③日本では、先週、緊急事態宣言が解除されたが、世界ではロックダウンを強いられている地域や国があり、クルーズはいつ再開できるのか不透明な中で被告会社のビジネスへの影響は言葉で表現できない ほどの打撃を受けていること、④全客船の運航停止により収入が無い中で、事業継続のために非常に厳しい判断を下さなければいけない事態に陥ったこと、⑤当初、従業員の収入とポジションは守られるとアナウンスをし、努力を行ってきたが、アジア・パシフィックの全オフィスを対象に、令和2年11月30日まで全従業員の労働時間を20%削減し、それに見合った給与 に減額し、組織再編も行うこと等を伝達した(甲8)。 ウ C及び各部門長は、令和2年6月4日午前9時30分頃から、原告を含む22名の従業員と個別に順次面談し、退職日を令和2年6月15日とする退職合意書を交付して退職勧奨を行い、同月8日午後3時までに、回答するよう求めた(甲9の1・2、乙26、証人C6頁、弁論の全趣旨)。 エ原告に交付された本件退職合意書には、原告は被告会社を令和2年6月15日付けで退職すること、被告会社は、原告に対し、退職金規程に基づく退職金のほかに、特別退職金として180万0321円を支給すること、未消化の年次有給休暇を買い取ることなどの記載があった。本件退職合意書には、退職勧奨の対象者として選定された具体的理由や選定基準についての記載 はなか として180万0321円を支給すること、未消化の年次有給休暇を買い取ることなどの記載があった。本件退職合意書には、退職勧奨の対象者として選定された具体的理由や選定基準についての記載 はなかった。(甲9の2) オ Cは、令和2年6月7日、退職勧奨を受けた従業員の要望を踏まえ、退職勧奨の対象者に対し、上記ウの退職合意書の内容について、①退職日を同月30日に変更し、②年次有給休暇の買取りにつき金額算出方法を明示し、③会社都合退職として手続することを明記する旨連絡し、合意を検討する者については翌日8日に上記変更に係る退職合意書を取りに来るように指示し た(甲10、証人C8、9頁)。人員削減の対象者24名のうち17名は、同月8日頃までに、上記変更後の退職合意書の条件に同意し、自署するなどした退職合意書を被告会社に提出した(甲10、乙1)。 カ被告会社は、令和2年6月9日、退職勧奨の対象となっていない従業員に対し、賃金を20%減額することを説明し、承諾を求めた(甲62)。 キ退職勧奨の対象従業員のうち原告を含む従業員3名(以下「本件3名」という。)は、令和2年6月17日までに労働組合である連合ユニオン東京(以下「組合」という。)に加入し、組合は、同月18日、被告会社に対し、本件3名の退職合意の件について団体交渉を申し入れた(甲11の1ないし3、弁論の全趣旨)。 ク令和2年6月23日、第1回団体交渉(以下「本件団体交渉」という。)が開催され、被告会社からは、F、G及びC、並びに、被告会社代理人の弁護士2名が出席した。 本件団体交渉において、組合は、本件3名は本件退職合意書に合意はせず、雇用継続を強く望むことを伝え、今後の退職勧奨・強要を行わないこと、同 時に不利益取扱 社代理人の弁護士2名が出席した。 本件団体交渉において、組合は、本件3名は本件退職合意書に合意はせず、雇用継続を強く望むことを伝え、今後の退職勧奨・強要を行わないこと、同 時に不利益取扱いも一切行わないよう要求をするとともに、同業他社や取引先旅行会社が実施しているのと同様に、雇用継続のために雇用調整助成金を活用するよう求めた。 本件団体交渉において、被告会社からの出席者は、組合に対し、「会社の財務状況について」と題する文書(以下「財務状況文書」という。)、月別損益 が記載された表(甲13の1・2)及び決算報告書(甲14)を交付した(以 下、同日交付された書面を、併せて「本件説明資料」という。)。財務状況文書には、令和2年3月以降は売上げが零であること、今後の日本発着クルーズ運航の再開については最短で令和3年3月であるが、現段階では見通しが立っていないこと、支出については、毎月2300万円であった販売費を、令和2年3月及び4月は月約200万円、同年5月以降は月約400万円に 抑えていること、月4100万円の人件費を削減するため、24名の従業員に退職をお願いし、残りの役職員について7月以降賃金を20%削減すること、退職勧奨の対象となった人選について、必要最低限の人員で業務を回していくという観点から、最適な人員構成を検討した結果であること等が記載されていた。また、被告会社からの出席者は、退職合意に至らなければ解雇 予告通知書を今週中に交付すること、令和2年6月30日付けで解雇することは同月上旬時点の会社の方針として決定済みであり結論が変わることはないこと、原告を被解雇者として選定した理由は、他の社員と比較して、能動的な姿勢に欠け、コミュニケーション能力に問題があるという点であることなどを述べた。また、 して決定済みであり結論が変わることはないこと、原告を被解雇者として選定した理由は、他の社員と比較して、能動的な姿勢に欠け、コミュニケーション能力に問題があるという点であることなどを述べた。また、被告会社代理人弁護士は、雇用調整助成金の活用等 については、「焼け石に水ですよね」等と発言して申請しない旨述べ、希望退職募集を行うことを求める組合に対し、必要人員の削減は行いたくないとの考え方から希望退職募集は行えない旨回答した。 (甲12ないし14)ケ被告会社は、令和2年6月30日付けで、退職に合意しなかった原告を含 む7名(本件3名を含む。)を解雇した(第2の2⑶エ)。 ⑸ 本件解雇後の被告会社の経営状況等ア被告会社の令和元年度の人件費は約4億2000万円であり、月額では、令和2年1月から5月までが約4100万円であり、同年6月は退職金の支払等により約7600万円に上昇したが、同年7月から11月までは約20 00万円となり、人件費が半減した(甲14、乙4)。 イ被告会社は、カーニバル社からの指示により、同年12月以降、20%減額していた従業員の賃金の額を元に戻した(乙23、証人C26頁)。また、カーニバル社からの借入金により、同年11月から12月にかけてクルーズ旅行についての新聞広告を行った(甲18ないし22)。 被告会社における広告宣伝費は、令和元年度は約2億7000万円(甲1 4)、令和2年度は約4300万円(乙33)、令和2年12月1日から令和3年11月末日まで(以下「令和3年度」という。)は約8100万円であった(乙39)。 ウ被告会社では、令和2年2月から少なくとも令和4年7月まで売上げが得られていない(乙4、38)。 令和2年度の被告会社の営業 度」という。)は約8100万円であった(乙39)。 ウ被告会社では、令和2年2月から少なくとも令和4年7月まで売上げが得られていない(乙4、38)。 令和2年度の被告会社の営業損失は6億5663万6299円、税引前損失は8億2319万2895円、期末(令和2年11月末)のカーニバル社からの借入金は25億3739万7349円であった(乙33)。 令和3年度の被告会社の売上げは15万5057円、営業損失は5億1076万9063円、税引前損失は2億3427万9684円、期末(令和3 年11月末)のカーニバル社からの借入金は29億3124万3038円であり、令和元年11月末時点と比較して約8億円増加した(甲14、乙39)。 エ日本発着のカーニバル社のクルーズ旅行は、令和5年2月時点においても、運行が再開されていない(乙9、27、34、37、弁論の全趣旨)。 ⑹ 令和2年2月頃までの原告の勤務態度等 ア被告会社においては、毎年、取引先の旅行代理店の従業員をクルーズ船に招待して案内するイベントを開催していた。令和元年3月頃のイベントに関し、原告は、上司のK部長から、招待できる人数に限りがあるので一度招待したことがある者の参加は断るよう指示を受けたため、原告が営業を担当していたL(以下「L」という。)の担当者に対し、一度招待したことがあるの で今年は招待できない旨伝えた。ところが、K部長は、招待された経験のあ る他の旅行代理店の従業員1名を、自らの上記指示に反して上記のイベントに参加させていたため、これを知ったLの担当者が、原告に対し電話でクレームを伝えてきた。 この電話を受けて、原告は、Lの担当者に対し、謝罪をしつつ、上記招待経験者を招待したのはK部長の不正であるため、K部 せていたため、これを知ったLの担当者が、原告に対し電話でクレームを伝えてきた。 この電話を受けて、原告は、Lの担当者に対し、謝罪をしつつ、上記招待経験者を招待したのはK部長の不正であるため、K部長と直接話してほしい などと伝え、K部長に電話を転送した。Lの担当者は、原告の上記応対に立腹し、被告会社に対し、原告を担当から外してほしい旨の要望を伝えてきたため、原告は担当から外れた。 (甲62、乙35の70、71頁、原告本人5、10ないし13頁)イ原告は、令和元年8月頃、旅行会社である株式会社阪急交通社(以下「阪 急交通社」という。)が販売するクルーズ船の日本発着の商品及び海外発着の商品の両方を担当していた。海外発着の売上げが伸びなかったことから、当時の上司が、原告に対し、特典などの売上げを伸ばす企画の提案を強化するよう指導した。原告は、新たな提案などを提出することはなく、売上げに変化がなかったため、同年11月頃、海外発着の商品の担当から外れること となった。(乙35の67ないし69頁、乙40の3、原告本人15、16、20、21頁)ウ被告会社のホームページには、プリンセス・クルーズの商品を扱っている旅行会社のリンクが表示されているページがあり、当該リンクをクリックすると、各旅行会社のプリンセス・クルーズの情報が掲載されているページに 移動する仕組みとなっており、被告会社の営業社員は、毎年2回被告会社の新たなパンフレットが完成するのに合わせて、取引先の各旅行会社に対して、各旅行会社のホームページの情報を最新の内容に更新するよう期限を定めて依頼していた。そして、旅行会社が期限内に更新を行わない場合は、ペナルティとして、被告会社のホームページから当該旅行会社のリンクを削除す る取扱いとなっており、原告は 更新するよう期限を定めて依頼していた。そして、旅行会社が期限内に更新を行わない場合は、ペナルティとして、被告会社のホームページから当該旅行会社のリンクを削除す る取扱いとなっており、原告は、各旅行会社への依頼業務をとりまとめ、期 限を超過しても更新しない旅行会社があった場合には、被告会社のホームページを管理する部署に対し、リンクを削除するよう依頼する業務を担当していた。(甲62)令和元年夏頃、被告会社の売上げの上位2位又は3位の重要顧客であり、原告以外の営業社員が担当する大手旅行会社が、期限を経過してもホームペ ージの情報を更新していなかった。原告は、上記担当の営業社員に対し、期限の2箇月前に口頭でリマインドし、期限の直前に警告のメールを送付したほかは、事情を十分に確認することなく、大手旅行会社のリンクの削除を依頼し、その結果、リンクが削除された。(甲62、乙40の3、原告本人13ないし15、21、22頁) エ令和2年2月頃、本件クルーズ船における新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、被告会社の従業員は、船内の状況把握、船内で必要とする物資の手配及び下船準備などの対応に追われており、事業所の電話が鳴りやまない状況となっていた。原告は、電話に出る業務は新人が行うものであるという考えに基づき、呼出音が5回ぐらい鳴って新人が取らないことを確認し て初めて電話に出るという姿勢をとっており、他の従業員と比較して電話に出る機会が少なかった。(乙40の3、乙41、証人F12、13頁、原告本人19、20頁) 2 争点⑴-本件解雇の有効性⑴ 判断枠組み 本件解雇は、経営上の理由から余剰人員の削減を行うためにした解雇であり、いわゆる整理解雇である。整理解雇は、事業組織を存続さ 2 争点⑴-本件解雇の有効性⑴ 判断枠組み 本件解雇は、経営上の理由から余剰人員の削減を行うためにした解雇であり、いわゆる整理解雇である。整理解雇は、事業組織を存続させるため、必要となる場合があることは否定できないから、一概に有効性を否定されるべきものではなく、労働契約法16条にいう客観的合理的な理由、社会通念上相当性を肯定できる場合があると解される。 他方、整理解雇は、基本的に落ち度のない労働者に対して行われるものであ るため、安易にその有効性を認めることはできないというべきである。そして、整理解雇を必要とする上記目的及び使用者と労働者との間の労働契約上の信義則に照らせば、①人員削減の必要性があるか、②解雇回避努力を尽くしたか、③被解雇者選定の妥当性があるか、④手続の妥当性があるかが検討されるべきであり、これらの要素を総合考慮して、労働契約法16条にいう客観的合理的 な理由及び社会通念上相当性があるかを判断するのが相当である。 ⑵ 人員削減の必要性ア被告会社は、旅客運行会社である親会社のカーニバル社が提供するクルーズ旅行商品を我が国で宣伝し、上記旅行商品を国内の旅行会社が消費者へ販売するのを仲介することにより、カーニバル社から販売実績に応じた対価を 受け取り、これをほぼ唯一の収入源としていた会社である(1⑴アイ)。 令和2年2月に本件クルーズ船において新型コロナウイルス感染症の感染者が発生したことから、被告会社は、同月以降の日本発着クルーズ旅行の予約を全てキャンセルすることとなり、同年3月だけで約7900万円の営業損失が生じた(1⑵アイ)。また、同月及び同年4月、CDCが米国でのク ルーズ船の運航停止命令を発出し、世界各国も同様の措置をとったことにより、カ ととなり、同年3月だけで約7900万円の営業損失が生じた(1⑵アイ)。また、同月及び同年4月、CDCが米国でのク ルーズ船の運航停止命令を発出し、世界各国も同様の措置をとったことにより、カーニバル社のクルーズ船は全世界で運航を停止し、日本発着の便も運行できなくなったことから、同年3月以降、被告会社の売上げは完全になくなった(1⑵エキケ)。 その上、本件解雇の時点において、カーニバル社のクルーズ船の日本発着 便の運航再開の見通しは全く立っておらず、被告会社の代表者である被告Bにおいて、①カーニバル社のクルーズ旅行は、全て外国籍の船舶を使い、かつ、各国の寄港地を巡るものであるため、一度停止した運行を再開するためには、各国の当局などとも調整をした上で運行計画を策定する必要があり、その上で顧客への宣伝・販売をすることから、準備に時間を要すること、② 運航再開には世界各地で待機している乗組員をクルーズ船に呼び戻す必要 があり、準備に時間を要すること、③本件クルーズ船が我が国における集団感染の発端となったため、クルーズ船内の安心安全についての評判の回復に時間を要することから、極めて楽観的に考えても運航再開は令和3年4月以降であり、現実的には令和3年以内に運航を再開することは難しいと予測していた(1⑵キ)。この予測は、カーニバル社の提供するクルーズ旅行商品が 外国籍の大型旅客船舶で全世界の寄港地を巡るものであって、かつ、それゆえ世界各地の乗組員の復帰を必要とするものであること(1⑴ア)、本件クルーズ船における集団感染の発生状況及びこれについての我が国での報道の状況(1⑵ア)に照らして、令和2年6月時点の予測として合理的なものであったと評価できる(この予測は、令和5年2月の時点でもカーニバル社 の日本発着の 生状況及びこれについての我が国での報道の状況(1⑵ア)に照らして、令和2年6月時点の予測として合理的なものであったと評価できる(この予測は、令和5年2月の時点でもカーニバル社 の日本発着のクルーズ旅行が運行を再開していないことから、より悪い形で的中している。)。 そうすると、被告会社は、令和2年6月末の時点において、少なくとも1年程度は売上げを獲得できない蓋然性が極めて高い状況にあったと認められる。 イ被告会社は、本件解雇の前年度である令和元年度の決算は、営業利益が約2億円と良好であったが、同年度期末の純資産の欠損として約15億円を計上し、カーニバル社からの借入金約21億8000万円により運転資金を賄っており(1⑵ク)、カーニバル社のクルーズ船が運行を停止する前から、運転資金を親会社であるカーニバル社からの借入金に依存していた。そして、 上記アのとおり、被告会社は、令和2年6月末当時、将来にわたり約1年以上売上げが得られない見通しであり、再び売上げを得られる時期まで、従業員を雇い続けて給料を支払い、組織を維持するには、カーニバル社からのさらなる借入れにより人件費を賄わなければならない状況であった。 ウそして、親会社であるカーニバル社自身、全世界におけるクルーズ船の運 航停止により、令和2年2月から5月までの3箇月間だけで約24億ドル (約2500億円)という多大な損失を計上し、令和元年12月1日から令和2年8月末までの9箇月で約80億ドル(約8400億円)の損失を計上するなど、同年6月以降損失が拡大している状況で、船舶を停泊させるだけでも資金が必要となることから、船舶を担保として銀行から融資を受けるなどして事業を維持していた(1⑵カサ)。 さらに、カーニバル社は、上記の営業損失が 大している状況で、船舶を停泊させるだけでも資金が必要となることから、船舶を担保として銀行から融資を受けるなどして事業を維持していた(1⑵カサ)。 さらに、カーニバル社は、上記の営業損失が拡大し、借入れによって資金調達する状況下における経費削減の必要性の下、被告会社に対して、令和2年5月上旬頃、人件費を50%削減するよう指示していた(1⑶アイ)。 エ以上から、被告会社は、令和2年6月末の時点において、少なくとも将来にわたり1年程度は、売上げを得られない蓋然性が極めて高い状況にあった ところ、被告会社が再び売上げを得られる時期まで、従業員を雇ったまま賃金を支払い組織を維持するには、被告会社が従来から運転資金を借り入れているカーニバル社からのさらなる借入れにより人件費を賄うしかない状況であり、そのカーニバル社自身が、クルーズ船の運航停止により営業損失が拡大し、借入れにより船舶の維持費などの運転資金を調達する状況となって おり、経費削減のため、被告会社に対し、人件費を50%削減するよう要請してきたというのであるから、被告会社としては、これに応じるほか組織を存続させる手段はなく、人員削減の高度の必要性があったと認めることができる。 オ被告会社が令和2年4月末に従業員の給与を2%程度上げたのは、良好で あった令和元年度の被告会社の業績によるもので(1⑵ク)、被告会社へ運転資金を貸し付け、その使途を決定していたカーニバル社の同意を得て(1⑵ク)、被告会社においてあらかじめ決定していたものと認められる。したがって、上記昇給は、令和2年5月上旬時にカーニバル社から人件費50%削減の指示を受けた時点における被告会社の人件費削減の必要性を否定す る根拠になり得ない。 また、被告会社が、令和2年4 記昇給は、令和2年5月上旬時にカーニバル社から人件費50%削減の指示を受けた時点における被告会社の人件費削減の必要性を否定す る根拠になり得ない。 また、被告会社が、令和2年4月に従業員1名を採用しているのは、組織を維持する上で必要であった経理担当者が退職したための補充であるから(1⑵ク)、人員削減の必要性を否定する事情と認めることはできない。 ⑶ 解雇回避努力ア被告会社は、本件解雇を行うに当たり、経費削減のために、月額約230 0万円であった販売費を月額200万円~400万円に大幅に削減したほか、月額300万円の出張旅費・交際費を全額削減し、大阪営業所を閉鎖した(1⑵ケコ)。年間約6000万円の負担を生じる事務所の賃料については、被告会社は、一部区画を解除しようと貸主と交渉したが、貸主が解約を拒んだため解約はできなかった(1⑵コ)。 人件費の削減についても、4名いた派遣社員の契約を全て契約期間満了により終了させているほか(1⑵コ)、解雇に先立ち、人員削減の対象者23名に対し、特別退職金(原告については月給の約4.7箇月分)の支払及び年次有給休暇の買取りの提案を伴う退職勧奨を実施しており(1⑷アないしエ)、退職勧奨の対象とならなかった従業員及び役員については、その給与 (報酬)を令和2年7月から同年11月まで20%削減した(1⑷カ)。 以上のとおり、被告会社は、解雇回避のため、一定の経費削減を行ったものと評価できる。 イ被告会社は、希望退職者募集を実施しなかったが、被告会社の正社員の従業員は約67名であり、これが5部門に分かれ、その部門内でもそれぞれ役 割が細分化されていたところ(1⑴アエ、1⑶エ)、希望退職者を募集すると、上記各部門で枢要な役割を果たしている従業員が、 業員は約67名であり、これが5部門に分かれ、その部門内でもそれぞれ役 割が細分化されていたところ(1⑴アエ、1⑶エ)、希望退職者を募集すると、上記各部門で枢要な役割を果たしている従業員が、希望退職者募集に応じて退職するおそれがあり、そうなると業務に支障が生じ、組織が存続できなくなる可能性が高かったと認められる。仮に、応募した者のうち被告会社が承認した者のみに早期退職を認めるという方法をとったとしても、いった ん希望退職者募集に応じた者の帰属意識及び勤労意欲の低下は避けられず、 組織の存続が困難になることに変わりはない。 そして、整理解雇は、事業組織の存続のために行われるものであるから、事業組織の存続という目標が達成できる範囲で、客観的に実行可能な解雇回避措置をとれば足りるもので、上記事情の下で、被告会社において希望退職者募集をしなかったことをもって、解雇回避努力が不十分であったというこ とはできない。 ウ雇用調整助成金の受給による解雇回避策について検討するに、被告会社は、新型コロナウイルス感染症に伴う経済上の理由により急激に事業活動の縮小を余儀なくされた関係事業主に該当し(第2の2⑷ウ、第3の1⑵イケ、甲14、乙4)、また、資本金、業種及び従業員数から、規則102条の3第 1項2号イ(5)の中小企業事業主にも該当し(第2の2⑷イ、第3の1⑴ア)、かつ、従業員23名に退職勧奨を行った令和2年6月4日の時点においては、雇用維持要件も充足していたため(第2の2⑷ウ(イ)、弁論の全趣旨(被告最終準備書面⑶))、正社員67名を退職させずに雇用を維持して休業を命じた場合、雇用調整助成金として、令和2年6月30日までは休業手当 又は賃金の10分の9(ただし、日額は8330円まで)、同年7月1日から最 、正社員67名を退職させずに雇用を維持して休業を命じた場合、雇用調整助成金として、令和2年6月30日までは休業手当 又は賃金の10分の9(ただし、日額は8330円まで)、同年7月1日から最大100日分までは休業手当又は賃金の3分の2(ただし、日額は8330円まで)の支給を受けることができる状況であった。 しかし、上記内容の雇用調整助成金では、一日当たり8330円までしか支給されないことから、賃金の全額を支払った場合には、人件費を50%削 減したこととならないし、賃金を減じた場合には、休業を命じているといっても、賃金を減じられたことに不満を感じる従業員が被告会社を退職することは予想されるから、被告会社の組織の存続が困難となる。また、受給期間が令和2年7月1日から100日分に限られており、最も楽観的な運航再開見込み時期であった令和3年4月までであっても、雇用を維持することはで きない見通しであった。 したがって、令和2年6月4日の時点において、被告会社が雇用調整助成金を受給することによって、人件費を50%削減しつつ事業再開時に通常営業ができるような組織を維持することは困難であり、被告会社が、同日の時点で、雇用調整助成金を受給することなく、従業員23名に対し退職勧奨をしたことはやむを得ないというべきである。 エ次に、6月12日改正後の雇用調整助成金受給による解雇回避策について検討する。6月12日改正後、被告会社が、従業員を休業させた場合、同年9月30日までは、休業手当又は賃金の5分の4(ただし、日額は1万5000円まで)、同年10月1日から100日分の休業手当又は賃金の3分の2(ただし、日額は8330円まで)の支給を受けることができる状況とな っていた。なお、被告会社は、同年6月12日の時点 00円まで)、同年10月1日から100日分の休業手当又は賃金の3分の2(ただし、日額は8330円まで)の支給を受けることができる状況とな っていた。なお、被告会社は、同年6月12日の時点において、既に退職勧奨を行い17名がこれに応じて退職合意書を作成していたことから(1⑷オ)、雇用維持要件のうち要件aを充足しておらず(第2の2⑷ウ。なお、要件bも充足していないと認定される可能性が高かった。)、助成率10分の10の受給はできなかったと考えられる。 そうすると、被告会社は、本件解雇をした令和2年6月30日時点において、退職合意書に同意しなかった7名の従業員に対し、雇用を維持したまま休業を命じ、雇用調整助成金の受給を受けることにより、社会保険料のほか、令和2年9月30日までは休業手当の5分の1、同年10月1日から令和3年1月頃までは休業手当の3分の1の金額を負担することで、令和3年1月 頃までは雇用を維持することが可能であったと認められる。上記7名は、もともと人員削減もやむなしと判断した7名であったから、この7名が休業に嫌気がさして退職しても業務に著しい支障はなく、被告会社の組織の維持の面では問題がないといえる。 しかし、本件解雇の時点において、新型コロナウイルス感染症の影響によ り、クルーズ船の運航再開の見通しは全く立っておらず(1⑵エキケ)、特 に、被告会社においては、本件クルーズ船が我が国における新型コロナウイルス感染症の集団感染の端緒となっていて(1⑵ア)、信頼回復には時間を要することが見込まれたことから、運航再開時期についての合理的な予測は、楽観的に考えても令和3年4月以降であり、現実的には令和3年以内は難しく令和4年以降と予測されていた(1⑵キ)。そのため、被告会社 することが見込まれたことから、運航再開時期についての合理的な予測は、楽観的に考えても令和3年4月以降であり、現実的には令和3年以内は難しく令和4年以降と予測されていた(1⑵キ)。そのため、被告会社は、令和2 年6月末の時点において、将来にわたり少なくとも1年程度(令和3年6月末頃まで)は、売上げを得られない蓋然性が高い状況にあった(⑵ア)。そのような状況下において、令和3年1月頃まで雇用調整助成金を受給できるからといって、7名に対する解雇を回避し続けることができるという見通しを持つことは困難であると認められる。また、7名の雇用を維持すべく雇用調 整助成金を受給した場合、被告会社には、最低でも、社会保険料のほか、令和2年9月30日までは休業手当の5分の1、同年10月1日から令和3年1月頃までは休業手当の3分の1の各負担が発生するが、これら雇用調整助成金で賄えない経済的負担については、被告会社はカーニバル社からの借入金に頼らざるを得ない状況であった。そして、被告会社が、雇用調整助成金 で賄えない経済的負担についてカーニバル社から借入れを受けるとしても、いつまで幾ら借入れを受ければ解雇回避ができるのか不明確な状況であった。 したがって、被告会社において、本件解雇の時点において、雇用調整助成金を受給することにより解雇を回避しつつ人件費50%削減を達成できる といえる状況であったとは認められないから、上記事情の下で、被告会社において雇用調整助成金を受給せずに直ちに解雇をしたからといって、解雇回避努力が不十分であったということはできない。 オ以上から、被告会社としては、本件解雇の時点で、事業組織の存続という目標が達成できる範囲で、できる限りの解雇回避努力を行ったと評価するこ とができる。 ⑷ できない。 オ以上から、被告会社としては、本件解雇の時点で、事業組織の存続という目標が達成できる範囲で、できる限りの解雇回避努力を行ったと評価するこ とができる。 ⑷ 被解雇者選定の妥当性ア被告会社は、人員削減の対象者を選定する方法として、部門の従業員全員を対象として、一律に、当該従業員が担当しているポジションが業務再開時に必要か、及び、当該従業員が担当しているポジションの重要性・生産性を評価するとともに、従業員の年次評価及び新しい業務への適応能力等を評価 して、これにより選定することとしており(1⑶ウ)、選別方法に不合理な点はないと判断できる。 イ被告会社は、原告が担当しているポジション(プリンセス・クルーズ部門のセールス部の営業担当でエージェント)の必要性は低いと判断しているところ、原告が担当していた営業は運航停止により業務が縮小していたと認め られるから(1⑵イキケ)、被告会社が原告のポジションの必要性は低いと判断した点について、不合理な点はない。また、セールス部の営業担当者が主要収益部門であったことから、営業再開時に備えて能力の高い者を残すべく、能力の高いマネージャー3名のうち2名を残し、これに2名ずつの部下(スーパーバイザー及びエージェント)を配置するとしたこと(1⑶エ(ウ)) にも、不合理な点はない。 そして、原告は、積極的な姿勢や提案力がなく、コミュニケーション能力に欠け、周囲との衝突が絶えないという理由で、低評価を受け、人員削減の対象者となった(1⑶エ(エ))。その判断の合理性について検討するに、原告は、自身が担当する営業相手であるLの担当者からクレームを受けた際、上 記担当者に対し、原告の上司が不正をしたと告げた上、当該上司と直接話してほしいなどと伝えて電 理性について検討するに、原告は、自身が担当する営業相手であるLの担当者からクレームを受けた際、上 記担当者に対し、原告の上司が不正をしたと告げた上、当該上司と直接話してほしいなどと伝えて電話を転送し(1⑹ア)、被告会社に対する不信感を煽るような態度をとっているのであるから、コミュニケーション能力及び協調性について疑義が生じることはやむを得ないというべきである。また、原告は、阪急交通社が販売する海外発着の商品に関し、上司から、売上げを伸 ばす企画の提案を強化するよう指導されたにもかかわらず、新たな提案をす ることなく、業績が改善しなかったのであり(1⑹イ)、積極的な姿勢や提案力がないと評価されてもやむを得ない。また、原告が、売上げの上位に位置する大手旅行会社が、ホームページの情報を期限までに更新しなかったからといって、事情を十分に確認することなくリンクを削除したことは(1⑹ウ)、被告会社の売上げを阻害しかねない杓子定規な対応であり、コミュニケーシ ョン力に疑問を抱かせる。また、本件クルーズ船における新型コロナウイルス感染症の集団感染発生により、被告会社の従業員が対応に追われ、事務所の電話が鳴りやまない状況となった際に、電話に出る業務は新人が行うべきであるとの考えに基づき、率先して電話を取ることはしない態度をとったことは(1⑹エ)、原告の積極性及びコミュニケーション能力に疑問を抱かせ る。したがって、上記低評価には、根拠があるといえる。 ウ以上から、原告を人員削減の対象者に選定したことには合理性がある。 ⑸ 手続の妥当性被告会社は、人員削減の対象者に対し、個別に面談して、特別退職金の支払及び年次有給休暇の買取り等を提示した上で、退職勧奨を行い(1⑷アないし エ)、回答期限こそ面談 ⑸ 手続の妥当性被告会社は、人員削減の対象者に対し、個別に面談して、特別退職金の支払及び年次有給休暇の買取り等を提示した上で、退職勧奨を行い(1⑷アないし エ)、回答期限こそ面談の4日後であったが、従業員の要望を踏まえ、同年6月15日付けとされていた退職日を同月30日付けに変更する旨の提案を行った。また、本件解雇前に実施された団体交渉においては、説明資料を交付して被告会社の財務状況を説明し、本件3名の質問を受けて、原告を人員削減の対象者として選定した理由、雇用調整助成金の利用しなかった理由及び希望退職 者の募集を行わない理由について、それぞれ回答しており、被告会社の応対には虚偽はなく、妥当なものと認められる。 ⑹ 原告の主張に対する補足的判断ア原告は、被告会社がカーニバル社により人件費を50%削減するように指示された事実はない旨主張する。 しかしながら、カーニバル社と被告会社との資本関係、被告会社の資金調達 の状況及び事業の状況(1⑴アイ、1⑵ク)からすれば、カーニバル社からの具体的な人員削減の指示がないにもかかわらず、被告会社が人員削減及び削減割合を独自に決定してこれを実行するとは考え難い。また、カーニバル社から被告会社に提供された本件評価指針は、具体的に選定の指針を示すもの、また、評価シートは、従業員の氏名と給与額が記載され、削減の対象者を選択すると 削減割合が計算できるものとなっており(1⑶ウ、乙24の2・3)、削減割合について指示があったことを裏付ける。また、人員削減の対象者が退職した後、被告会社の人件費は半減した(1⑸ア)。これらのことからすれば、人件費50%を削減するよう指示を受けた旨の被告B及び証人Gの供述は、十分信用することができる。この点の原告の主張は採 者が退職した後、被告会社の人件費は半減した(1⑸ア)。これらのことからすれば、人件費50%を削減するよう指示を受けた旨の被告B及び証人Gの供述は、十分信用することができる。この点の原告の主張は採用できない。 イ原告は、被告会社が、令和2年末時点において約2億円の広告宣伝費を支出し、令和元年度と同程度が使用されているから、解雇回避努力が不足している旨主張する。 しかし、被告会社の決算書(甲14、乙4、34、39)に照らし、被告会社が約2憶円の広告費を支出した事実は認定できず、決算書によれば、広告宣 伝費は、令和2年度以降、大幅に削減されている。そして、大型客船で世界を巡るクルーズ旅行商品の販売促進のためには、中高年齢者にアピールすること、社会的信用を維持することが必要であるから、日刊紙上での新聞広告をすることは有効であるといえ、また、一定の広告宣伝費は、クルーズ旅行商品のマーケティングを柱とする被告会社の事業及び組織を維持するため不可欠である。 したがって、広告宣伝費に関する支出をもって、解雇回避努力が不十分であったということはできない。 ウ原告は、役員及び従業員の給与減額が令和2年7月から同年11月までの20%にすぎず、不十分である旨主張する。 しかし、被告会社の従業員は約67名であるところ、18名が退職し、7名 が解雇された。被告会社に残った従業員に対する賃金減額が継続拡大すれば、 被告会社において営業再開時に必要であると判断して残した従業員まで、退職してしまうことが懸念される。したがって、組織維持のために、減額は最低限にとどめるとした判断に合理性がないとはいえず、減額の程度や期間が不十分であったとはいえない。 エ原告は、被告会社が、令和2年5月15日、従業員に対し、カーニバル 、組織維持のために、減額は最低限にとどめるとした判断に合理性がないとはいえず、減額の程度や期間が不十分であったとはいえない。 エ原告は、被告会社が、令和2年5月15日、従業員に対し、カーニバル社か ら具体的な決定と指示はされていないと伝えるメールを送付しながら、突如、同年6月4日にミーティングを実施して、同月8日までに退職勧奨に応じるか否か判断するように迫ったことが不合理であると主張する。 しかし、上記メールには、人員を削減する必要性がある旨記載されたカーニバル社のCEOのメッセージが添付されていたから(1⑶キ)、上記メールは、 カーニバル社が人員削減を予定しているという前提の下で、現在、カーニバル社から被告会社に対し、具体的決定と指示はされていないと伝えるメールであると認められる。したがって、ことさら虚偽の事実を伝えたものとはいえない。 また、退職勧奨に応じるか否かの回答期限は4日で短いといえるが、これが不合理とまではいえない。 オ原告は、本件団体交渉において、人選にあたっての比較資料を出すように求めたにもかかわらず、評価シートが提出されなかった点を指摘して、評価シートは事後的に作成された可能性が高いと主張する。 本件団体交渉において、被告会社代理人弁護士が、人員削減の対象者として原告が選定された具体的理由が記載された文書は存在しないから提出できな い旨回答した事実はあることは(甲12の20、21頁)、原告が指摘したとおりである。 他方で、評価シートには評価の根拠となる具体的な事実の記載はなかったものであり(乙24の2・3)、上記被告会社代理人弁護士の返答は、評価の根拠となる具体的事実の記載のある文書の有無を返答したものと考えられる。した がって、上記返答をもって、評価シートが当時不存在であっ (乙24の2・3)、上記被告会社代理人弁護士の返答は、評価の根拠となる具体的事実の記載のある文書の有無を返答したものと考えられる。した がって、上記返答をもって、評価シートが当時不存在であったとはいえない。 そして、本件評価指針(乙24の1)及び評価シート(乙24の2・3)の内容に照らし、これらが事後的に作成されたものであるとは認められない。 したがって、この点についての原告の主張も採用できない。 ⑺ 小括以上を総合すれば、本件解雇は、①人員削減の高度の必要性があり、②被告 会社において、組織存続と両立する範囲で解雇回避努力を尽くし、③被解雇者選定の妥当性があり、④手続の妥当性もあるから、これらの要素を総合考慮して、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でないとはいえないから、有効である。 本件解雇が有効である以上、被告会社のした本件解雇が違法とされることは なく、原告の請求は、その余の点(⑵原告の就労の意思の有無、⑶中間収入の控除、⑷本件解雇は違法であり、これにより不法行為が成立するか、慰謝料の額)につき判断するまでもなく、いずれも理由がない。 3 本件訴えのうち本判決確定日の翌日以降を支払日とする賃金部分について将来の給付を求める訴えが適法となるのは、あらかじめ請求する必要がある場 合に限られるところ、特段の事情がない限り、被告会社が労働契約上の地位を確認する判決確定後に履行期が到来する賃金の支払を拒むとは認め難い。 したがって、本判決確定日の翌日以降を支払日とする賃金及びこれに対する遅延損害金の支払を求める部分については、あらかじめ請求する必要があるとはいえないから、不適法である。 第4 結論以上によれば、本件訴えのうち本判決確定日の翌日以降を支払日とする 遅延損害金の支払を求める部分については、あらかじめ請求する必要があるとはいえないから、不適法である。 第4 結論以上によれば、本件訴えのうち本判決確定日の翌日以降を支払日とする賃金及びこれに対する遅延損害金の支払を求める部分は不適法であるからこれを却下することとし、原告のその余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用につき民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第33部 裁判長裁判官伊藤由紀子 裁判官根本宜之 裁判官舘洋一郎は、転補につき、署名押印することができない。 裁判長裁判官伊藤由紀子

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