令和5(わ)648 現住建造物等放火被告事件

裁判年月日・裁判所
令和6年2月2日 札幌地方裁判所
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判決文本文1,920 文字)

- 1 - 主文 被告人を懲役3年に処する。 この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。 理由 (犯行に至る経緯)被告人は、中学校での集団生活になじめず、気分変調症を発症したこともあって、14歳の頃から常に死にたいとの気持ちを抱くようになった。そして、高校生の時に2回、海への入水自殺を試みたが、いずれも母のことが思い浮かんで自殺を断念した。後に母に自殺を試みた旨を話したところ、母は被告人の話を聞いてくれたものの、それ以上の働き掛けはなかった。被告人は、高校卒業後も就職先の人間関係が合わず、夜間自室にてテープで首を絞めて自殺しようとしたが、寝入るか気を失うかしている間に母から声を掛けられて自殺を遂げなかった。 その後、被告人は、アルバイトとして働いていたが、令和5年5月頃からアルバイト先の業務が忙しくなり、シフトとして出勤する日も急増したため、疲労が蓄積するようになった。同月31日はアルバイトのない日であったため、被告人は午後1時過ぎに起床した後、趣味のゲームやインターネット等に興じ、日が変わった同年6月1日午前4時頃までこれを続けた。その後床に就いたが寝付けずにいたところ、アルバイトでの疲労や上記遊興を通じて友人と話せた満足感ゆえの心残りはないとの思いから、今すぐに死んでしまいたいと思うようになった。そして、死ぬための方法として、これまで大切にしてきたゲームや漫画と一緒に死にたいとの思いや、自宅に火を放てば家の中の大切なものが無くなるので、仮に自分が生き残っても後悔するであろうから、あえてそのような後悔するであろう方法をとることで後戻りできないようにしたいとの考えから、自宅に放火して死のうと思い立った。 (罪となるべき事実)被告人(当時21歳)は、父 悔するであろうから、あえてそのような後悔するであろう方法をとることで後戻りできないようにしたいとの考えから、自宅に放火して死のうと思い立った。 (罪となるべき事実)被告人(当時21歳)は、父であるA及び母であるBが現に住居に使用し、かつ、Bが現にいる北海道美唄市a条b丁目c番d号A方居宅(木造亜鉛メッキ鋼板葺2階建、 - 2 -床面積合計134.14平方メートル)に放火して自殺しようと考え、令和5年6月1日午前5時50分頃、前記居宅2階南西側洋室において、ごみ袋にライターで点火するなどして火を放ち、その火を同室内の壁、天井等に燃え移らせ、よって、前記居宅の一部を焼損(焼損面積約25.72平方メートル)した。 (証拠の標目)省略(法令の適用)罰条刑法108条刑種の選択有期懲役刑を選択する。 酌量減軽刑法66条、71条、68条3号刑の執行猶予刑法25条1項訴訟費用(不負担) 刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)本件放火は、家内に散乱したゴミ等に引火して更に燃え広がる可能性もあったのであり、近隣住民に不安や恐怖を与え得る危険な犯行である。 もっとも、被告人としては、犯行に至る経緯に記載した幼稚な動機から、自殺の方法として放火を選択したのであり、火の危険性や周囲への迷惑に思いが至らなかった点で残念ではあるが、他人に危害を加える意図まではなかった。そして、現に負傷者はおらず、自宅の一部を焼損した以外に被害はない。このように本件は、危険ではあるが、子どもじみた面の残る犯行であり、一般に想起される放火事案よりは悪質性が低い(なお、弁護人は、被告人の気分変調症の影響を酌むべきである旨主張する。この点、たしかに被告人が自殺を決意したのは気分変調症の影響とい た面の残る犯行であり、一般に想起される放火事案よりは悪質性が低い(なお、弁護人は、被告人の気分変調症の影響を酌むべきである旨主張する。この点、たしかに被告人が自殺を決意したのは気分変調症の影響といえるが、自殺の手段として放火を選択したのは気分変調症の影響とはいえないから、気分変調症の点は量刑上は考慮しない。)。 そして、本件について述べる被告人の言葉にも母の言葉にも物足りなさは残るものの、被告人においては、保釈後に医療機関を受診し、前向きに投薬治療を受けるとともに、本件を機に自分が変わらなければならないとの自覚を持つに至っている。 - 3 -被告人に前科がなく、粗暴な傾向も見受けられないことも考慮すると、若い被告人に対しては、社会内で更生の機会を与えるのが相当と考えた。 よって、主文のとおり判決する。 (求刑-懲役5年、弁護人の科刑意見-執行猶予付き判決)令和6年2月2日札幌地方裁判所刑事第2部裁判長裁判官井戸俊一 裁判官新宅孝昭 裁判官滝嶌秀輝

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