平成30(ワ)2386 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年2月19日 札幌地方裁判所
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判決文本文11,995 文字)

- 1 -判決主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,2199万2210円及びこれに対する平成28年2月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,道立高校の生徒であった原告が,スキー授業の際に転倒したことにつ き,同校の教諭らには天候等に鑑みて授業を中断するなどの措置を講じる義務があったのに,これを怠ったため,原告が転倒したと主張して,同校を設置する被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償金2199万2210円及びこれに対する不法行為の日(上記転倒事故の日)である平成28年2月5日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分 の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(証拠等を掲記した事実以外は当事者間に争いがない。)(1) 当事者等ア原告は,▲年▲月生まれの男性であり,平成28年2月当時,A高等学校(以下「本件高校」という。)の2年5組の生徒であった者である。 イ被告は,本件高校を設置する地方公共団体である。 ウ B教諭(以下「B教諭」という。),C教諭(以下「C教諭」という。)及びD教諭(以下「D教諭」といい,併せて「本件教諭ら」という。)は,平成28年2月当時,本件高校の保健体育教諭であった者らである。 エ E(以下「E」という。),F(以下「F」という。)及びG(以下「G」 という。)は,平成28年2月当時,それぞれ本件高校の2年6組,2年- 2 -8組,2年7組の生徒であった者である。 なお,このうちE及びFは,いずれも原告の友人である。 (2) 原告の転倒事故 平成28年2月当時,それぞれ本件高校の2年6組,2年- 2 -8組,2年7組の生徒であった者である。 なお,このうちE及びFは,いずれも原告の友人である。 (2) 原告の転倒事故本件高校の2年5組から8組までの男子生徒らは,平成28年2月5日,Iスキー場でのスキー授業を受けるため,本件教諭らの引率により同スキー 場に赴いた上,同日午前10時30分頃,同スキー場の山頂付近を起点とするパープルコースにおいて,滑降を開始した。 そして,同日午前11時頃から同コースにおいて実技試験が実施され,原告は,同日午前11時10分頃に同コースを滑降したところ,転倒した(以下,この転倒事故を「本件事故」という。)。 (3) 原告の診断原告は,本件事故直後には医師から右足の打撲と診断され,数日間の安静指示を受けていたが,平成28年2月25日,右膝前十字靱帯損傷及び右膝半月板損傷と診断され,さらに,本件事故から約1年後の平成29年1月25日には,外傷性腰椎椎間板ヘルニアと診断された。 そして,原告は,同年8月30日,「右下腿のしびれ,右膝の不安感,腰痛」につき症状固定とされた(甲3の2,甲13の1,甲21の1)。 (4) 障害見舞金の支給独立行政法人日本スポーツ振興センター(以下「日本スポーツ振興センター」という。)は,平成30年3月28日,原告の残存する腰痛につき,「独 立行政法人日本スポーツ振興センターに関する省令」(平成15年文部科学省令第51号)別表第12級第13号の「局部に頑固な神経症状を残すもの」との後遺障害に該当するとして,障害見舞金を支給する旨の決定をし,同年4月25日,原告に210万円を支給した(甲22,弁論の全趣旨)。 2 争点 (1) 本件教諭らの注意義務違反の有 の」との後遺障害に該当するとして,障害見舞金を支給する旨の決定をし,同年4月25日,原告に210万円を支給した(甲22,弁論の全趣旨)。 2 争点 (1) 本件教諭らの注意義務違反の有無- 3 -(2) 注意義務違反と本件事故との因果関係の有無(3) 損害発生の有無及びその額 3 争点に対する当事者の主張(1) 争点(1)(本件教諭らの注意義務違反の有無)について(原告の主張) 本件事故が発生した当時,実技試験を実施していたパープルコースは,吹雪のため視界不良の状況にあり,生徒らから「試験をやめた方がいい。」という声も上がっていた。 これに加え,当時,小学生らが実技試験のコース(パープルコースのうち山頂からみて中央よりも右側の部分)に入り込んできており,接触の危険も 存在していた。 そのため,このような状況で実技試験を実施すれば,生徒が転倒するなどしてその生命・身体に危険が生じるおそれがあったのであるから,本件教諭らにおいては,実技試験を中断したり,試験場所を変更したりするなどの措置を講ずべき義務があった。しかるに,本件教諭らはこれを怠ったものであ り,この点に注意義務違反が存在する。 (被告の主張)本件事故当時にパープルコースが視界不良であったという事実はない。当時は粉雪がちらついていた程度で,吹雪にはなっておらず,実技試験のスタート地点から約150m先のゴール地点まではっきりと見える状態であった。 また,実技試験のコース上に小学生らがいたという事実もない。小学生らはパープルコースの左側の部分にいたのであって,実技試験のコース(パープルコースの右側の部分)を滑降する限り,小学生らと接触する危険はなかったし,小学生らが実技試験のコースに進入してくることもな らはパープルコースの左側の部分にいたのであって,実技試験のコース(パープルコースの右側の部分)を滑降する限り,小学生らと接触する危険はなかったし,小学生らが実技試験のコースに進入してくることもなかった。 したがって,本件教諭らには,実技試験を中断したり,試験場所を変更し たりするなどの措置を講ずべき義務はなく,注意義務違反は存しない。 - 4 -(2) 争点(2)(注意義務違反と本件事故との因果関係の有無)について(原告の主張)本件事故は,原告が,本件教諭らの上記(1)の注意義務違反によって視界不良の中での滑降を余儀なくされ,実技試験のコース上に他の小学生が入り込んできたことに気付くのが遅れて,これを回避するために転倒したもので ある。 (被告の主張)本件事故は,原告が滑降者としてスピードコントロールを十分に行わなかった過失により,自ら招いた事故であって,本件教諭らの指導等との間に因果関係は存在しない。 (3) 争点(3)(損害発生の有無及びその額)について(原告の主張)ア通院慰謝料 170万0000円原告は,平成28年2月5日から平成29年8月30日までの通院治療を余儀なくされたものであり,その通院に係る慰謝料は170万円を下回 らない。 イ後遺障害逸失利益 1539万2210円原告には,症状固定後も右下腿のしびれ,右膝の不安感及び腰痛といった症状が残存しており,このうち腰痛(腰椎椎間板ヘルニア)については日本スポーツ振興センターから後遺障害等級12級に該当するとの判断が されているのであって,原告はこれにより労働能力を14%喪失したものである。 そして,原告は,現時点では大学には入学していないが,平成2 興センターから後遺障害等級12級に該当するとの判断が されているのであって,原告はこれにより労働能力を14%喪失したものである。 そして,原告は,現時点では大学には入学していないが,平成29年3月には大学に合格しており,さらに平成31年4月にはより高いレベルの高い大学に入学する見込みであって,その卒業時には24歳となるから, 43年間にわたり,平成28年賃金センサス大学卒の平均賃金626万6- 5 -100円が得られる見込みがある。 したがって,原告の逸失利益は,以下の計算式のとおり1539万2210円となる。 (計算式)626万6100円×0.14×17.5459(43年のライプニッツ係数)≒1539万2210円 ウ後遺障害慰謝料 290万0000円原告の後遺障害に係る慰謝料は,290万円とすべきである。 エ弁護士費用 200万0000円原告は,本件事故によって本件訴訟の提起を余儀なくされたのであり,弁護士費用として本件事故により通常生ずべき損害は,上記合計の1割程 度である200万円となる。 オアないしエの合計 2199万2210円カ被告の主張に対する反論被告は原告の受給した障害見舞金210万円による免責を主張するが,同見舞金は,上記オの損害額元本に対する本件事故日から受給日(平成3 0年4月25日)までの遅延損害金243万7218円に充当されるべきである。 (被告の主張)ア通院慰謝料について通院期間は認め,金額は争う。 イ後遺障害逸失利益及び後遺障害慰謝料について原告腰部の症状は,本件事故により起因するものとは認められない。そもそも原告が腰椎椎間板ヘルニアに係る症 て通院期間は認め,金額は争う。 イ後遺障害逸失利益及び後遺障害慰謝料について原告腰部の症状は,本件事故により起因するものとは認められない。そもそも原告が腰椎椎間板ヘルニアに係る症状を訴え始めるまで相当期間が経過しているし,しかも,原告は身長180cm,体重110kgであって,このような体形に加え,原告が本件事故後に様々な運動をしていたことも 相まって,腰椎椎間板ヘルニアが発症したとも考えられる。 - 6 -また,原告の診療録やリハビリテーション記録によれば,腰椎椎間板ヘルニアの症状は徐々に改善し,現在では後遺障害と評価すべき症状は残存していない。 その余は不知ないし争う。 ウ弁護士費用について 争う。 エ障害見舞金による免責原告はスポーツ振興センターから障害見舞金210万円を受領しているのであるから,被告は,独立行政法人日本スポーツ振興センター法31条1項に基づき,同額の限度で免責される。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) パープルコースについてパープルコースは,Iスキー場のスキーコースのうち,山頂に最も近い位 置にあるコースであり,中・上級者向けのコースとされている。 パープルコースの山頂からみて左側には,同コース専用のリフトが設置されている(乙3,4)。 (2) 原告のスキーの技能原告は,自らのスキーの技能につき,それほど上手ではないものの,小学 校や中学校でスキー授業を受けていたこともあり,中・上級者向けコースであるパープルコースでも問題なく滑降することができる程度の技能はあるものと考えていた(原告本人〔9頁〕)。 (3) スキー授業開始時の状況本件高校 を受けていたこともあり,中・上級者向けコースであるパープルコースでも問題なく滑降することができる程度の技能はあるものと考えていた(原告本人〔9頁〕)。 (3) スキー授業開始時の状況本件高校の2年5組から8組までの男子生徒らは,平成28年2月5日午 前10時30分頃,パープルコースに到着し,練習のため,順次,同コース- 7 -を滑降した。 当時,雪は降っていたものの,視界は確保されていた。原告も,滑降には問題がないと感じ,1,2回滑降した(原告本人〔3頁〕)。 (4) 実技試験の開始午前11時頃,パープルコースのうち山頂からみて中央よりも右側の部分 を用いて,実技試験が始まった。 実技試験は,別紙図面のⒶ地点をスタート地点とし,約150m先のⒹ地点をゴール地点として,生徒らが一人ずつ自由に滑降し,これを採点担当の教諭が見て,スピードをコントロールしたターンができているか,足首が正しく曲がった状態でスキーの中心に乗ることができているかなどを評価し, 採点するというものであった。 B教諭はスタート地点付近におり,滑降開始の合図を担当していた。また,C教諭及びD教諭はゴール地点付近におり,このうちC教諭が生徒らの滑降を見て評価・採点していた(乙4,15,証人B〔2,3,7,17頁〕,証人C〔3頁〕)。 (5) 原告の転倒原告は,午前11時10分頃,B教諭から滑降開始の合図を出され,滑降を開始したが,スタート地点から50m程度滑降した別紙図面のⒷ地点で転倒し,そこから更に50m程度滑落して,Ⓒ地点で停止した(乙4,証人E〔28頁〕,証人F〔13,14頁〕,証人B〔13,14頁〕,証人G〔9 頁〕,原告本人〔10,11頁〕)。 2 争点(1)(本件教諭らの注意義務違反の有無)につ 地点で停止した(乙4,証人E〔28頁〕,証人F〔13,14頁〕,証人B〔13,14頁〕,証人G〔9 頁〕,原告本人〔10,11頁〕)。 2 争点(1)(本件教諭らの注意義務違反の有無)について原告は,①本件事故当時,吹雪のため視界不良の状況にあった,②小学生らが実技試験のコース(パープルコースのうち山頂からみて中央よりも右側の部分)に入り込んできており,接触の危険も存在していたとして,このような状 況においては,本件教諭らには実技試験を中断したり,試験場所を変更したり- 8 -するなどの措置を講ずべき義務があったと主張する。 そこで,以下,上記①及び②のような状況にあったのか否か,順次検討する。 (1) 吹雪のため視界不良の状況にあったのかについてアまず,実技試験のスタート地点にいたB教諭は,証人尋問において,当時の天候に問題はなく,スタート地点からは150m程度先のゴール地点 のC教諭及びD教諭がはっきり見えていたこと,もし見えていなければ,採点者から生徒らの滑降を見ることもできないため,実技試験を中止していたこと,原告が転倒・滑落したのも見えていたことなどを証言している(証人B〔5ないし8頁〕)。 また,実技試験のゴール地点にいたC教諭も,当時は雪がちらつく程度 で,スタート地点にいたB教諭が見えていたこと,原告が滑降を開始し,転倒・滑落したのも見えていたことなどを証言している(証人C〔5ないし9頁〕)。 そして,本件高校の生徒であったGも,天候は悪くなく,スタート地点からゴール地点の教諭やスキーストックなどがはっきり見えていたこと, 原告が転倒したのもスタート地点から見えていたことなどを証言している(証人G〔4,5,9,10頁〕)。 したがって,これらの各証言を 教諭やスキーストックなどがはっきり見えていたこと, 原告が転倒したのもスタート地点から見えていたことなどを証言している(証人G〔4,5,9,10頁〕)。 したがって,これらの各証言を前提とすると,本件事故当時,天候に問題はなく,実技試験のスタート地点からゴール地点まではっきり見通せていたものであって,およそ吹雪のため視界不良の状況にあったわけではな いということになる。 イこれに対し,原告は,当時は吹雪のため視界不良の状況にあったと主張し,本人尋問においても,視界は悪く,下までは見えず,目で見える範囲の70%から80%は真っ白であったと供述する(原告本人〔6,7頁〕)。 しかし,原告の上記主張及び供述は,B教諭,C教諭及びGの上記各証 言とにわかに整合しないばかりか,以下のとおり,原告の友人であるE及- 9 -びFの証言とも,必ずしも整合しているとはいい難い。 すなわち,原告の友人のEは,当時の天候は「結構ふぶいていました。」,「余りはっきり見えない感じで,ぱらぱらと雪が降っている感じでした。」などと証言するが(証人E〔3頁〕),他方で,原告が転倒するところはスタート地点から見えており,滑落して止まったところまで見えていたとも 証言しているのであって(同〔6,19頁〕),Eの証言を前提にしても,スタート地点から原告の滑落停止地点までの100m程度の視界はあったということになる(前記1(5)参照)。 また,原告の友人のFも,当時の天候は「雪が降っていて,かなり視界とかもぼんやりしている感じ」,「今ふぶいて,更にふぶいてたという感じ」 などと証言するが(証人F〔4,9頁〕),他方で,原告が転倒するところはスタート地点から見えており,滑落して止まったところまで見えていたとも 感じ」,「今ふぶいて,更にふぶいてたという感じ」 などと証言するが(証人F〔4,9頁〕),他方で,原告が転倒するところはスタート地点から見えており,滑落して止まったところまで見えていたとも証言しているのであって(同〔2,6,15頁〕),やはり,スタート地点から原告の滑落停止地点までの100m程度の視界はあったということになる。 そもそも,E及びFは,当初作成した陳述書では単に原告の転倒等を見ていたとだけ記載し,その見え方については何らの留保も付していなかったところ(甲25の1,2),被告から,そうであれば100m程度の視界は確保されていて,視界不良という状況になかったのではないかとの指摘を受けると(令和元年10月31日付け被告第三準備書面〔3,4頁〕), いずれも,「吹雪いていた状態でしたので,ぼんやりと見えたという感じです。」(甲28の1),「吹雪いていたためぼんやりとはしていました」(甲28の2)などという,新たな陳述書を作成するに至っている。 しかも,このうちEは,Iスキー場に到着した際,一番下のコース(レッドコース)の天気は「ちょっとふぶいていました。」,「まあ,ふぶいて いました。」,「風と雪が結構来るといった感じですかね。」,「レッドコース- 10 -の方が〔ふぶいているのが強かった〕。」などと証言するが(証人E〔21,22頁〕),同スキー場によれば,一番下のレッドコースの天候は「晴」であったというのであるし(乙5の4),原告も,レッドコースで晴れていたことは認めているのであって(原告本人〔2頁〕),Eの証言については,直ちに採用するのには躊躇がある。 また,Fについては,陳述書(甲28の2)では原告の転倒を「下から見ていました。」と明確に記載していたにもかかわら 本人〔2頁〕),Eの証言については,直ちに採用するのには躊躇がある。 また,Fについては,陳述書(甲28の2)では原告の転倒を「下から見ていました。」と明確に記載していたにもかかわらず,証人尋問の際には「正しくは上から見ていたというふうに直したい」(証人F〔2頁〕)として,目撃地点及び目撃方向を大きく変遷させている。しかも,その変遷の理由については,原告代理人の「打合せをしているときに,あなたの当 時のクラスから,もしかしてあなたのほうがH君〔注:原告〕より後から滑ったんじゃないかという話になったんだよね。」,「考えてみたらあなたのほうが後から滑ったかもしれないという記憶になったから,訂正したいということかな。」という誘導的な質問に対して「はい」と答えるのみであり(同〔2頁〕),それ以上の具体的な説明はしていないのであって,い ずれにせよ,このような根本部分において大幅な変遷のあるFの証言についても,やはり直ちに採用するのには躊躇がある。 ウそもそも,スキー場において,吹雪のため危険を感じるほど視界不良になるのであれば,スキー客の安全を確保するため,リフトの営業運転が一時休止されるものとも解されるところ,本件事故当日にパープルコース専 用のリフトの営業運転が一時休止になった事実はなく(乙5の1),本件高校の生徒らは,実技試験を受けるため,当該リフトに乗ってパープルコースを上がっていったというのである(証人E〔9頁〕参照)。 また,本件高校の実技試験は,ゴール地点付近にいるC教諭が,生徒らの滑降を見た上,スピードをコントロールしたターンができているか,足 首が正しく曲がった状態でスキーの中心に乗ることができているかなどを- 11 -評価し,採点するというものであって(前記1(4)) た上,スピードをコントロールしたターンができているか,足 首が正しく曲がった状態でスキーの中心に乗ることができているかなどを- 11 -評価し,採点するというものであって(前記1(4)),仮に吹雪のため視界不良の状況にあったり,ぼんやりとしか見えていなかったりしたのであれば,上記のような評価・採点もできず,そもそも実技試験の実施にすら至らなかったのではないかというべきである。 したがって,本件事故当時,吹雪により視界不良であったとする原告の 主張は,採用することができないものといわざるを得ない。 エなお,この点につき原告は,実技試験の開始の際,生徒らから「試験をやめた方がいい。」という声も上がっていたと主張する。 しかし,そのような発言がされた状況は本件証拠上必ずしも明らかではないし,被告によれば,上記発言は,普段からスキー授業への参加意欲が 低く,何かにつけて中止を口にしている生徒のものというのである。いずれにせよ,これまで説示してきたところに照らせば,本件事故当時,吹雪により視界不良の状況にあったと認めるのは困難であって,上記発言があったからといって,この認定が左右されるものではない。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 オ以上によれば,本件全証拠によっても,本件事故当時,吹雪により視界不良の状況にあったと認めることはできない。 (2) 小学生らが実技試験のコースに入り込んでいたのかについて上記(1)のとおり,本件事故当時に吹雪により視界不良の状況にあったと認めることはできないため,原告の主張はその余の点について判断するまで もなく理由がないことになるものと解されるが,念のため,小学生らが実技試験のコースに入り込んでいたのか否かについても検討す 認めることはできないため,原告の主張はその余の点について判断するまで もなく理由がないことになるものと解されるが,念のため,小学生らが実技試験のコースに入り込んでいたのか否かについても検討する。 アまず,B教諭は,証人尋問において,実技試験の際,小学生らは引率の先生の後を一列になって,いわゆるトレインの状態で滑っていたものであるが,滑っていたのはパープルコースのうち山頂からみて中央よりも左側 の部分であって,本件高校で実施していた実技試験のコース(パープルコ- 12 -ースのうち山頂からみて中央よりも右側の部分)に入り込むことはなかった旨証言している(証人B〔5,8ないし10頁〕)。 また,C教諭も,証人尋問において,小学生らは引率の先生の後を一列になって滑っていたが,非常に低速で,ターンの幅もそれほど広くなく,しかもパープルコースのうちリフト側(山頂からみて中央よりも左側の部 分)を滑っていたのであって,実技試験のコースに入り込むことはなかった旨証言している(証人C〔7,10,20頁〕)。 そして,Gも,証人尋問において,小学生らその他の一般の利用客がパープルコースのうちリフト側で滑っていたが,実技試験はパープルコースのうち山頂からみて中央よりも右側の部分で実施しており,こちらに小学 生が入り込むこともなかった旨証言している(証人G〔2ないし4頁〕)。 したがって,これらの各証言を前提とすると,本件事故当時,小学生らが実技試験のコースに入り込んでいたという事実はなかったということになる。 イこれに対し,原告は,本人尋問において,小学生らはパープルコースの うちリフト側を引率の先生に付いて滑っていたが,中には実技試験のコースに入り込む小学生もおり,現に,自分よりも前の生徒 イこれに対し,原告は,本人尋問において,小学生らはパープルコースの うちリフト側を引率の先生に付いて滑っていたが,中には実技試験のコースに入り込む小学生もおり,現に,自分よりも前の生徒が滑降する際,小学生に衝突しそうになっていた旨供述する(原告本人〔4ないし8,20ないし22,25,26,37,38頁〕)。 また,原告の友人のEも,証人尋問において,小学生が実技試験のコー ス付近にいたと証言し(証人E〔6,11,13,14頁〕),同じく友人のFも,証人尋問において,小学生が実技試験のコースに少なくとも2,3回は入り込んでいたと証言する(証人F〔11頁〕)。 しかし,E及びFの証言というものが直ちに採用し難いのは前述のとおりであるし,しかもEは,実技試験のコース上にいた小学生の数を問われ るも,「数人か数十名くらい」などとして,著しく曖昧な証言しかしてい- 13 -ない(証人E〔10,11頁〕)。 そもそも,これまでの各証言ないし供述に照らせば,小学生らは,引率の先生の後を一列になって滑っていたことがうかがわれるところ,引率の先生からすれば,本件高校の男子生徒らがパープルコースの山頂からみて右側の部分で実技試験を行っていることは,その態様からしても容易に推 測が付くというべきであって(証人B〔9頁〕参照),引率の先生があえて実技試験のコースに近づいたり,これに入り込んだりするというのはにわかに考え難いし,これに付いていく小学生の一部が列を大きく外れて単独行動を取り,実技試験のコースに入り込んでいくというのもにわかに考え難い。 したがって,原告の上記供述及びE及びFの上記各証言は,にわかに採用することができない。 ウなお,原告は,自らの実技試験の滑降中に,小学生が来 でいくというのもにわかに考え難い。 したがって,原告の上記供述及びE及びFの上記各証言は,にわかに採用することができない。 ウなお,原告は,自らの実技試験の滑降中に,小学生が来てぶつかりそうになり,これを避けようとして転倒したと供述し(原告本人〔11,12頁〕),E及びFもおおむねこれに沿う証言をする(証人E〔6,7頁〕, 証人F〔6,14頁〕)。 しかし,B教諭は,原告の滑降時に小学生がコースに入ってきた事実はなかったと証言し(証人B〔5頁〕),C教諭も,小学生が接触するような状況ではなかったと証言し(証人C〔7,10頁〕),Gも,小学生が原告の進路に入り込んできたとか,原告がこれを避けようとしたという事実は なかったと証言している(証人G〔4頁〕)。 そして,原告及びEの供述ないし証言についてみても,原告は「前方左前から小学生が来〔た〕」(原告本人〔11頁〕)と供述しているのに対し,Eは「後ろから小学生が来ていた」(証人E〔7頁〕)と証言しており,にわかに原告の上記供述と整合しない上,後には「左側のほうから入ってき た」,「前から入り込んだ」(同〔18頁〕)などと証言を変遷させている。 - 14 -また,Fの証言についてみても,Fは小学生が「リフト側から斜めに入ってくる感じ」で原告に近づいた旨証言するが(証人F〔14頁〕),前記(1)イでも指摘したとおり,Fはその様子を陳述書では「下から」見ていたとするのに対し(甲28の2),証人尋問では「上から」見ていたとしているのであって(証人F〔2頁〕),その根本部分につき大幅な変遷があ る。 そもそも,B教諭は,原告はスピードコントロールができずに転倒したものであるとし,おそらく片足のスキー板を踏んだか,少し深い雪に足の内側を 頁〕),その根本部分につき大幅な変遷があ る。 そもそも,B教諭は,原告はスピードコントロールができずに転倒したものであるとし,おそらく片足のスキー板を踏んだか,少し深い雪に足の内側を取られたかしたと証言している(証人B〔6頁〕)。また,C教諭は,より具体的に,原告は体重移動をしないまま滑降し始め,多少コントロー ルが効かなくなったところで,右のスキー板が浮いて左のスキー板の先端に重なって転倒したものであり,スキー板が重なるところがはっきり見えたと証言している(証人C〔5,6頁〕)。そして,原告自身も,実技試験で良い点数を取るために,ある程度スピードを出そうと考えていたというのであって(原告本人〔44,45頁〕),本件事故は,単にスピードコン トロールのできなくなった原告が単独で転倒したものにすぎないのではないかといわざるを得ない。 エ以上によれば,本件全証拠によっても,本件事故当時,小学生らが実技試験のコースに入り込んでいたものと認めることはできない。 (3) 小括 以上のとおり,本件事故当時,吹雪のため視界不良の状況にあった事実も,小学生らが実技試験のコースに入り込んでいた事実も認めることができないのであるから,本件教諭らに実技試験を中断したり,試験場所を変更したりするなどの措置を講ずべき義務があったとの原告の主張は,その前提を欠くものというべきである。 したがって,争点(1)における原告の主張は,理由がない。 - 15 - 3 結論よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第5部 裁判長裁判官 孝 裁判官萩原孝基 裁判官 請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 主文 札幌地方裁判所民事第5部 裁判長裁判官 孝 裁判官萩原孝基 裁判官佐藤克郎

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