【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄する。 被告人を懲役二月に処する。 この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。 理 由 (控訴趣意及び答弁)
主 文 原判決を破棄する。 被告人を懲役二月に処する。 この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。 理 由 (控訴趣意及び答弁) 本件控訴の趣意は、大阪地方検察庁検察官検事清水博作成の控訴趣意書に記載の とおりであり、これに対する答弁は、弁護人池田啓倫作成の答弁書に記載のとおり であるから、これらを引用する。 (検察官の論旨) その要旨は、原判決は本件公訴事実にかかる速度違反は平成元年一二月一二日大 阪簡易裁判所が被告人に対してした略式命令の確定裁判にかかる速度違反と単純一 罪あるいは包括して一個の速度違反の罪を構成すべきものとし、刑訴法三三七条一 号により被告人に対し免訴の判決を言い渡したが、右二個の速度違反の罪は別罪を 構成し、併合罪の関係にあることが明らかであるのに、原判決がこれらを一罪と評 価したのは道路交通法二二条一項、四条一項、一一八条一項二号及び刑法四五条、 ひいては刑訴法三三七条一号の解釈適用を誤った違法があり、その誤りが判決に影 響を及ぼすことが明らかであるから、とうてい破棄を免れない、というのである。 (当裁判所の判断) そこで、所論にかんがみ記録を調査し、当審における事実取調の結果をもあわせ て検討するに、まず、本件の概要として、原審で取り調べた関係証拠及び原審公判 調書中の被告人の供述記載によると、被告人は、普通乗用自動車を運転し、平成元 年八月七日午前零時一九分ころ、滋賀県蒲生郡a町b地先名神高速自動車国道下り 四四六・七キロポスト付近道路(以下、「1」の地点とする)において、法定最高 速度一〇〇キロメートル毎時を三八キロメートル超える時速一三八キロメートルの 速度で進行し、同所に設置された速度違反自動取締装置で写真撮影されたが、これ に気付かず、その後も少なくとも時速一 、法定最高 速度一〇〇キロメートル毎時を三八キロメートル超える時速一三八キロメートルの 速度で進行し、同所に設置された速度違反自動取締装置で写真撮影されたが、これ に気付かず、その後も少なくとも時速一〇〇キロメートル以上の速度で走行してい るとの感じを持ちながら運転を継続し、同日午前零時四九分ころ、「1」の地点か ら約五九・四キロメートル離れた大阪府高槻市cd丁目名神高速自動車国道下り五 〇六・一キロポスト付近道路(以下、「2」の地点とする)において、指定最高速 度八〇キロメートル毎時を七一キロメートル超える時速一五一キロメートルの速度 で進行し、再び、同所に設置された速度違反自動取締装置で写真撮影されるに至っ たことが認められる。 このように本件は、被告人が高速自動車国道を普通乗用自動車を運転し走行中、 連続して二回にわたり速度違反自動取締装置により検挙された事案に関するもので あって、本件公訴事実はそのうち「2」の地点における二回目の速度違反にかかる ものである。 これに対し原判決は、「1」の地点における最初の速度違反について被告人が同 年一二月一二日大阪簡易裁判所で罰金五万円の略式命令を受け、同裁判は同月二七 日確定しており、この略式命令の既判力が「2」の地点における二回目の速度違反 に及ぶとして、刑訴法三三七条一号により被告人に対し免訴の判決を言い渡した が、その理由として、「もともと速度違反の罪においては、時間的、場所的に限定 されたいわば一時的、一場所的な行為がその対象となっているが、同罪もある程度 の時間的継続と場所的移動を伴う点で継続犯であるから、速度違反の状態が継続し ている限りいかにそれが長くても単純一罪であると解すべきである」と判示したう え、本件では、「1」の地点における速度違反と「2」の地点における速度違反の 間に「速度違反の違法状態が解消され 状態が継続し ている限りいかにそれが長くても単純一罪であると解すべきである」と判示したう え、本件では、「1」の地点における速度違反と「2」の地点における速度違反の 間に「速度違反の違法状態が解消されたと認定できる積極的証拠は存しない」との 判断を示す一方、「両違反地点間における計算上の平均時速が約一一八・八キロメ ートルであることから道路状況等によって一時的にせよ制限速度以下に減速された ことが全く考えられないではない」と言及し、更に「両違反の間には、時間にして 約三〇分、距離にして約五九・四キロメートルの間隔があり、また両地点における 違反速度も異なることなどに問題がないではない」と指摘しながらも、「仮に減速 によって速度違反の状態が一旦解消されたとしても、それは一時的なものであった と考えられるし」、「両地点間における違反が、同一の動機(この点につき原判決 は、深夜で交通量が少なかったことや、同乗中の母親が持病の肋間神経痛による痛 みを訴えていたことで早く帰宅したいとの気持からであったと認定している)に基 づく速度違反の包括的犯意の下に、同じ高速自動車国道上でなされたもので、走行 速度自体の違いも一三キロメートル毎時に止まっていることなどの事情に鑑みれ ば、両地点の違反を包括して一罪と評価するのが相当というべきである」と説示 し、「2」の地点における速度違反は「1」の地点における速度違反と「単純一罪 あるいは包括して一個の速度違反の罪を構成すべきものであった」と判示してい る。 <要旨>確かに、速度違反の行為態様は時間的・場所的に広がりのある運転行為に 伴なうものであって、その性質上</要旨>ある程度の時間的・場所的な継続性が生じ ることは否定し得ないところである。しかしながら、道路交通法における速度違反 の罪の規定の趣旨は、当該道路の具体的状況(直線道路かカーブか て、その性質上</要旨>ある程度の時間的・場所的な継続性が生じ ることは否定し得ないところである。しかしながら、道路交通法における速度違反 の罪の規定の趣旨は、当該道路の具体的状況(直線道路かカーブか、平坦な道路か 坂道か、幅員が広いか狭いか、交通事故の少ない地点か多発地点か、交通量が少な いか多いか、歩行者が少ないか多いか、など)に応じて、その個々の道路における 危険を防止することなどにあり、したがって、速度違反の罪は運転行為の継続中に おける一時的・局所的な行為をその対象としているものと解せられる(なお、最高 裁判所昭和五〇年五月二三日第二小法廷判決・裁判集刑事一九六号四五三頁参 照)。そうとすれば、原判決がいうように、速度違反の罪はその最初の違法状態が 一旦解消されない限りいかにそれが長くても継続的な一個の行為と評価すべきもの であるとするのは誤りであって、二個の道路地点における継続した速度違反であっ ても、両地点の道路が社会通念上単一の地点と評価し得る範囲を超える場合には、 二個の速度違反の罪が別個独立に成立すると解するのが相当である。 これを本件についていえば、「2」の地点が「1」の地点から約五九・四キロメ ートルも離れている以上、それだけで両地点の道路が社会通念上単一の地点と評価 し得ないことは明らかであり、原判決の示すように、「1」の地点から「2」の地 点に至るまで速度違反の違法状態が解消されたと認定し得る積極的証拠が存しない としても、「2」の地点における速度違反の罪が「1」の地点における速度違反の 罪と別個独立に成立するのは当然である。したがって、原判決が両地点の速度違反 をもって単純一罪を構成すべきであるとしたのは容認することができない。 更に進んで、原判決が仮定的前提に立って「2」の地点における速度違反は 「1」の地点における速度違反と包括して一罪 地点の速度違反 をもって単純一罪を構成すべきであるとしたのは容認することができない。 更に進んで、原判決が仮定的前提に立って「2」の地点における速度違反は 「1」の地点における速度違反と包括して一罪を構成すべきであるとしている点に ついて考えるに、速度違反の罪質を前記のごとくとらえるならば、本件のように、 二個の道路地点における速度違反が時間的に約三〇分、距離的に約五九・四キロメ ートルの隔たりがあるのみならず、両地点で最高速度及びその規制方法を異にし、 違反速度も相違しているような場合には、両地点の速度違反の罪は併合罪の関係に あると解するのが相当であって、原判決の挙げるような理由をもって両地点の速度 違反を包括的に評価し一罪と認めるのは妥当でないというべきである。したがっ て、この点でも原判決の判断は支持することができない。 以上要するに、原判決には検察官所論のような法令の解釈適用の誤りがあり、そ の誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、破棄を免れない。論旨は理 由がある。 (結論) 刑訴法三九七条一項、三八〇条により原判決を破棄し、同法四〇〇条但書に従い 更に次のとおり判決する。 一 罪となるべき事実 被告人は、普通乗用自動車を運転し、平成元年八月七日午前零時四九分ころ、道 路標識により最高速度が八〇キロメートル毎時と指定されている大阪府高槻市cd 丁目名神高速自動車国道下り五〇六・一キロポスト付近道路において、右最高速度 を七一キロメートル超える時速一五一キロメートルの速度で進行したものである。 二 証拠の標目(省略) 三 法令の適用 被告人の判示所為は道路交通法一一八条一項二号、二二条一項、四条一項、同法 施行令一条の二第一項に該当するので、所定刑中懲役刑を選択し、その所定刑期の 範囲内で被告人を懲役二月に処し、情状により刑法二五条一項 の判示所為は道路交通法一一八条一項二号、二二条一項、四条一項、同法 施行令一条の二第一項に該当するので、所定刑中懲役刑を選択し、その所定刑期の 範囲内で被告人を懲役二月に処し、情状により刑法二五条一項を適用してこの裁判 確定の日から二年間右刑の執行を猶予することとする。 よって、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官 右川亮平 裁判官 阿部功 裁判官 鈴木正義)
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