令和5(ワ)28824 建物収去土地明渡等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年11月21日 東京地方裁判所
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判決文本文10,725 文字)

令和6年11月21日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和5年(ワ)第28824号建物収去土地明渡等請求事件口頭弁論終結日令和6年8月27日判決主文 1 被告会社は、原告に対し、別紙物件目録記載2の建物を収去して、同目録記載1の土地を明け渡せ。 2 被告Aは、原告に対し、別紙物件目録記載2の建物を退去して、同目録記載1の土地を明け渡せ。 3 被告らは、原告に対し、連帯して、令和5年11月1日から別紙物件目録記 載1の土地の明渡済みまで月4万3727円の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は被告らの負担とする。 5 この判決は、第1 項~3項に限り、仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 主文同旨第2 事案の概要本件は、別紙物件目録記載1の土地(以下「本件土地」という。)を所有し、これを被告会社に賃貸した原告が、下記(1)~(3)の各請求をする事案である。 (1) 被告会社が本件土地上に建築所有する別紙物件目録記載2の建物(以下 「本件建物」という。)を暴力団の本部事務所として使用させたために、用法遵守義務違反等を理由に賃貸借契約を解除したとして、被告会社に対し、賃貸借契約の終了に基づき、本件建物の収去及び本件土地の明渡しを求める。 (2) 被告Aが本件建物を占有することで本件土地を占有しているとして、被告 Aに対し、所有権に基づき、本件建物からの退去及び本件土地の明渡しを 求める。 (3) 被告らに対し、債務不履行又は不法行為に基づき、月額4万3727円の賃料相当損害金の連帯支払を求める。 1 前提事実(争いがない事実の他は末尾に証拠等を記載する。)(1) 当事者等 ア原告は、宗教法人である(甲1)。 イ 基づき、月額4万3727円の賃料相当損害金の連帯支払を求める。 1 前提事実(争いがない事実の他は末尾に証拠等を記載する。)(1) 当事者等 ア原告は、宗教法人である(甲1)。 イ被告会社は、不動産の売買等を目的とする会社である(甲2)。 ウ松葉会は、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(以下「暴対法」という。)3条の指定を受けている暴力団(指定暴力団)であり、令和4年末時点において、1都7県を勢力範囲とし、約330人の構成員 を有している(甲4)。被告会社は、松葉会のいわゆる「フロント企業」である。 エ被告Aは、松葉会を代表する者として公告された者である(甲3)。 (2) 原告の土地所有原告は、昭和28年7月3日、本件土地の所有権を取得し、以降、本件土 地を所有している。 (3) 賃貸借契約の締結及び基づく引渡し原告は、平成7年4月4日、被告会社に対し、以下の約定で本件土地を貸し渡した(以下、下記の賃貸借契約を、「本件賃貸借契約」という。)。 ア目的(1条) 堅固建物所有イ賃貸期間(2条)平成7年4月4日から30年間(令和7年4月3日まで)ウ賃料(3条)月額4万3727円 エ支払期日(3条) 毎月末日までに当月分を支払う。 オ無断増改築禁止(4条)本件土地上に所有する建物を改築又は増築するときは、事前に賃貸人の書面による承諾を受けなければならない。 (4) 被告会社の建物所有と土地占有 被告会社は、平成8年6月11日、本件土地上に本件建物を建築、所有し、本件口頭弁論終結時に至るまで本件土地を占有している。 (5) 被告らに対する仮処分の申立て等原告は、被告らを債務者として、本件建物についての処分禁止及び占有移 土地上に本件建物を建築、所有し、本件口頭弁論終結時に至るまで本件土地を占有している。 (5) 被告らに対する仮処分の申立て等原告は、被告らを債務者として、本件建物についての処分禁止及び占有移転禁止等の仮処分命令を申し立て、令和5年9月26日、占有移転禁止、引 渡命令、保管命令等の仮処分決定を受けた(甲43。以下「本件仮処分決定」という。)。同年10月3日、被告会社代表者などの立会いのもと、本件仮処分決定の執行が実施され、執行官により本件建物の現況等の調査を経て、本件建物に対する被告らの占有を解いて執行官の保管とするなどの措置が執られた(甲44)。 (6) 解除の意思表示原告は、令和5年10月4日、被告会社に対し、被告会社が本件建物を松葉会の本部事務所として使用させていることにより、原告及び被告会社の間の信頼関係は破壊されているとして、本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をした(甲41の1・2)。 (7) 賃料相当損害金の額令和5年10月4日の翌日以降に発生する本件土地の賃料相当損害金の額は、1か月4万3727円である(弁論の全趣旨)。 (8) 令和5年10月分の賃料又は損害金の支払被告会社は、令和5年10月27日、原告に対し、同月分の賃料又は損害 金として、4万3727円を支払った。 2 争点及び当事者の主張(1) 争点1(無催告解除の有効性)について(原告の主張)被告会社が本件建物を指定暴力団である松葉会の本部事務所として使用させたことは、本件賃貸借契約の用法遵守義務に違反する。また、被告会社は、 原告の承諾なく、本件建物に大型の監視カメラを公道に向けて設置し、2階部分の窓に鉄格子を設置した。これは、本件賃貸借契約における無断増改築禁止条項(4条)の趣旨に違 反する。また、被告会社は、 原告の承諾なく、本件建物に大型の監視カメラを公道に向けて設置し、2階部分の窓に鉄格子を設置した。これは、本件賃貸借契約における無断増改築禁止条項(4条)の趣旨に違反する。 これらは、賃貸借契約当事者間の信頼関係を裏切って賃貸借関係の継続を著しく困難ならしめる行為であるから、原告は、本件賃貸借契約を無催告で 解除することができる。 (被告らの主張)否認し又は争う。 (2) 争点2(解除権の行使が信義則に反するか)について(被告らの主張) 原告は、本件賃貸借契約締結時又はそれ以降の段階で、松葉会と一体である被告会社が、本件建物を利用することを容認していた。そのような状況の中、原告は、被告会社代表者が令和2年2月に原告代表者を訪問した後、本件訴え提起までの4年近くの間、解除権を行使していない。これにより、被告会社としては、被告会社と松葉会の関係を理由に本件賃貸借契約が解除さ れることはないと信頼するに至っていた。原告による解除権の行使は信義則に反し許されない。 (原告の主張)被告らが、被告会社と松葉会の関係を理由に本件賃貸借契約が解除されることはない旨信頼していたことは否認又は争う。 原告は、本件賃貸借契約締結当時、被告会社が松葉会の「フロント企業」 であるとの認識はなかった。その後、原告は、本件建物が松葉会の本部事務所として利用されているのではないかと疑いを強めたが、解除権を行使した場合に原告関係者に危険が及ぶことを恐れ、長らく解除権を行使し得なかった。しかるところ、令和2年1月頃、本件建物に松葉会の敵対組織から火炎瓶が投げ込まれるという事件が発生するなど、本件建物を取り巻く状況が急 激に悪化したために、原告は解除権を行使するに至った。このよう かるところ、令和2年1月頃、本件建物に松葉会の敵対組織から火炎瓶が投げ込まれるという事件が発生するなど、本件建物を取り巻く状況が急 激に悪化したために、原告は解除権を行使するに至った。このように、原告が解除権を行使しなかったのはやむを得ない理由によるから、解除権の行使は信義則に反しない。 (3) 争点3(被告Aによる本件土地の占有)について(原告の主張) 松葉会は暴力団組織であり、その構成員は代表者である組長に対する全人格的・包括的な服従統制下に置かれるから、松葉会又はその構成員(以下、松葉会とその構成員を含めて「松葉会」ということもある。)と被告Aは一体のものといえる。したがって、被告Aは松葉会の組長として本件建物を占有し、これにより本件土地を占有している。 (被告Aの主張)被告Aが本件土地について独立の占有を有することは否認し又は争う。 (4) 争点4(被告Aの占有と損害との因果関係)(原告の主張)他人が地上権を有する土地に無権原で建物を所有する者から建物を賃借し て占有使用する者がある場合において、その者の上記建物の占有使用と地上権者が上記土地を使用できないこととの間には、特段の事情がない限り、相当因果関係はないと解される(最高裁昭和29年(オ)第213号同31年10月23日第三小法廷判決。以下「昭和31年判決」という。)。 松葉会又はその構成員と被告Aが一体のものであることは前記(3)原告の主 張記載のとおりであるところ、被告会社は、松葉会のフロント企業として、 松葉会すなわち被告Aに本件建物の全部を利用させることを目的に本件建物を所有しており、かつ、被告Aは現実に本件建物の全部を占有しているから、実質的に本件建物の占有者と所有者が一体となって本件土地を占有してい なわち被告Aに本件建物の全部を利用させることを目的に本件建物を所有しており、かつ、被告Aは現実に本件建物の全部を占有しているから、実質的に本件建物の占有者と所有者が一体となって本件土地を占有しているといえ、上記特段の事情が認められる。したがって、被告Aの占有と原告の損害との間に相当因果関係がある。 (被告Aの主張)昭和31年判決は、無権原であることを認識しつつ土地の占有を開始して建物を建築し、当該建物を賃貸して収益を得ていたという事案であって、本件とは事案を異にする。被告Aは、およそ認められ得ない弁明を繰り返したり、あるいは被告会社による明渡しを故意に妨害したりしたこともないから、 昭和31年判決にいう特段の事情は認められない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実以下の事実は、争いのない事実のほか、前提事実、後掲の証拠及び弁論の全趣旨から認められる。 (1) 本件建物の使用状況等本件建物は、遅くとも平成9年2月7日以降、松葉会の本部事務所として使用されている(争いがない)。 本件建物は公道に面しており、その両側にはビルが建ち並び、周辺には浅草駅やホテル等の施設が存している(甲40の1~3)。 被告会社又は松葉会は、本件建物に、遅くとも令和2年2月までに公道に向けて監視カメラを2台設置し、また同月から令和3年5月までの間に2階部分の一部の窓に鉄格子を設置した(甲40の1~3、弁論の全趣旨)。 (2) 被告会社と松葉会の関係被告会社の登記簿上の本店は本件建物に置かれている。また、被告会社代 表者Bは、かつて松葉会の総本部局長の地位にあった者であるほか、被告会 社の過去の役員らも松葉会の幹部構成員が就いていたなど、被告会社は、松葉会がその経営を実質的に支配する暴力団関係企業 表者Bは、かつて松葉会の総本部局長の地位にあった者であるほか、被告会 社の過去の役員らも松葉会の幹部構成員が就いていたなど、被告会社は、松葉会がその経営を実質的に支配する暴力団関係企業(いわゆる「フロント企業」)である(争いがない)。 (3) 本件賃貸借契約の解除に至る経緯ア原告代表者は、平成8年6月に本件建物が建築された後、警察から、松 葉会に土地を貸していないかとの問い合わせを受けたが、知らないと回答した。原告代表者は、その後、被告会社に松葉会との関係を問い合わせることはしなかった。(甲42、弁論の全趣旨)イ令和2年1月17日、松葉会の組員が、東京都内の他の暴力団(指定暴力団六代目山口組の傘下組織である良知二代目政竜会)の本部事務所にダ ンプカーで突入し、建造物損壊の被疑事実で逮捕された(以下「建造物損壊被疑事件」という。)。上記組員については、「うちの組の縄張りに他の組が無断で事務所を出すことが許せない」などと供述している旨の報道がされた。 同月25日午前6時25分頃、本件建物に火のついた火炎瓶が投げつけ られ、シャッターの一部及び外壁が焦げるという事件が発生した(以下「放火未遂被疑事件」という。)。同事件について、良知二代目政竜会の組長ら3名が非現住建造物等放火未遂等の被疑事実で逮捕された旨の報道がされた。また、警視庁暴力団対策課は、同事件を前記の建造物損害被疑事件の報復として計画されたものであるとみている旨も報道され た。 (甲27、29~32)ウ被告会社代表者は、令和2年2月、原告代表者に対し、本件土地の購入を打診した。原告代表者は、被告代表者に対し、後日不動産会社を通じて回答する旨述べた。その後、不動産会社から、被告会社代表者に対し、関 係各所に相談したが 月、原告代表者に対し、本件土地の購入を打診した。原告代表者は、被告代表者に対し、後日不動産会社を通じて回答する旨述べた。その後、不動産会社から、被告会社代表者に対し、関 係各所に相談したが売却はできない旨の回答があった。(弁論の全趣旨) エ被告会社は、令和5年3月6日頃、同年4月4日頃及び同年5月12日頃、代理人を通じて、原告に対し、本件賃貸借契約の更新に関する協議を申し入れた(甲9、乙1、2)。これを受け、被告会社代理人は、令和5年7月11日、原告代理人(当時)と面談し、本件賃貸借契約の更新を希望する旨伝えた(乙3)。 オ原告は、令和5年10月4日、被告会社に対し、本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をした(前提事実(6))。本件賃貸借契約締結時から上記解除の意思表示に至るまで、原告が被告会社に対して本件土地の明渡しを求めたことはない(争いがない)。 2 争点1(無催告解除の有効性)について (1) 賃貸借契約の当事者の一方が、契約に基づき信義則上当事者に要求される義務に違反して、その信頼関係を破壊することにより賃貸借関係の継続を著しく困難ならしめたときは、相手方は、催告なくして賃貸借契約を解除することができる(最高裁昭和45年(オ)第942号同47年11月16日第一小法廷判決・民集26巻9号1603号参照)。 (2) 本件賃貸借契約において、本件土地の使用目的は「堅固建物所有」とされている(前提事実(3)ア)が、そのほか、認定事実(1)で認定した本件土地の立地状況等によれば、被告は、本件賃貸借契約に基づく賃借人の信義則上の義務として、原告に対し、近隣の居住者等の生命・身体・財産に危害が生じるような態様で本件土地を使用してはならないという用法遵守義務を 負うというべきである 賃貸借契約に基づく賃借人の信義則上の義務として、原告に対し、近隣の居住者等の生命・身体・財産に危害が生じるような態様で本件土地を使用してはならないという用法遵守義務を 負うというべきである。 前提事実(4)及び認定事実(1)によれば、被告会社は、遅くとも平成9年2月7日以降、本件建物を松葉会の本部事務所として、松葉会に使用させていると認められるところ、暴力団の本部事務所はその権勢の象徴であって、暴力団同士の抗争においては敵対組織による襲撃の対象となる可能性が高く、そ の際けん銃等の殺傷能力の高い武器が使用されることが少なくないことは、 当裁判所に顕著な事実であり、本件建物が存在することで、近隣の居住者等は、上記抗争に巻き込まれ、その生命・身体・財産に危害が生じるおそれがあるといえる。そして、令和2年1月、本件建物に火のついた火炎瓶が投げ付けられ、外壁等が焼損するという放火未遂被疑事件が発生していること(認定事実(3)イ)からすれば、上記のおそれは、抽象的なものにとどまらず、 具体的、現実的なものになっていると認められる。その後、本件建物の2階部分の一部の窓に鉄格子が設置されたこと(認定事実(1))も、外部からの攻撃を受ける可能性等を前提とするものと考えられ、被告会社において、上記のおそれが具体化、現実化したことを把握したものと推認される。 以上のことからすれば、被告会社が、遅くとも令和2年1月以降、本件建 物を松葉会の本部事務所として松葉会に使用させていることは、近隣の居住者等の生命・身体・財産に危害が生じるような態様で本件土地を使用してはならないという用法遵守義務に違反することは明らかであり、その余の無断増改築禁止条項違反について言及するまでもなく、当事者間の信頼関係を破壊して賃貸借関係の継続 じるような態様で本件土地を使用してはならないという用法遵守義務に違反することは明らかであり、その余の無断増改築禁止条項違反について言及するまでもなく、当事者間の信頼関係を破壊して賃貸借関係の継続を著しく困難ならしめる行為であるというべきであ るから、無催告解除ができる場合に当たるというべきである。 これに対し、被告らは、被告会社は放火未遂被疑事件の被害者であるからこれを解除の有効性の判断に際して重視することは許されない旨主張する。 しかし、認定事実(3)イによれば、同事件は、建造物損壊被疑事件を含め、松葉会と良知二代目政竜会の対立に起因するものであることが強くうかがわれ るのであり、被告会社自身が本件建物を暴力団本部事務所として使用させていることの危険性が具体化、現実化したというべきである。被告らの上記主張は採用できない。なお、松葉会及び良知二代目政竜会はいずれも特定抗争指定暴力団(暴対法15条の2第1項。指定暴力団等の相互間に対立が生じ、対立抗争が発生した場合において、当該対立抗争に係る凶器を使用した暴力 行為が人の生命又は身体に重大な危害を加える方法によるものであり、かつ、 当該対立抗争に係る暴力行為により更に人の生命又は身体に重大な危害が加えられるおそれがあると認めるときに指定される。)に指定されていない(弁論の全趣旨)が、暴力団同士の対立・抗争が上記の程度に至っていない場合であっても、近隣の居住者等の生命・身体・財産に何らかの危害が生じるおそれは直ちに否定されない。松葉会及び良知二代目政竜会が特定抗争指 定暴力団に指定されていないことは、前記判断を左右しない。 3 争点2(解除権の行使が信義則に反するか)について(1) 解除権を有する者が長きにわたってこれを行使せず、相手方においてその 定暴力団に指定されていないことは、前記判断を左右しない。 3 争点2(解除権の行使が信義則に反するか)について(1) 解除権を有する者が長きにわたってこれを行使せず、相手方においてその権利はもはや行使されないものと信頼すべき正当の事由を有するに至ったため、その後にこれを行使することが信義誠実に反すると認められるよう な特段の事由がある場合には、解除は許されない(最高裁昭和28年(オ)第1368号同30年11月22日第三小法廷判決・民集第9巻12号1781頁参照)。 (2) 被告らは、原告は本件建物が松葉会の本部事務所として使用されていることを認識しつつ、これを容認していた旨主張する。しかし、原告が、どの 時点で本件建物が松葉会の本部事務所として使用されている状況を認識するに至ったかは必ずしも明らかでないが、仮に本件賃貸借契約締結後まもなくの時点で上記の状況を認識していたとしても、解除権をいつ行使するかは専ら解除権者である原告の判断に委ねられるのが原則であり、特に暴力団の利用を遮断するという点で、原告やその関係者等に対する報復等の 危険も生じ得ることから、原告としてもできるだけ確実な解除事由を把握する必要があったといえる。そうすると、原告が、松葉会の本部事務所として使用されていることを認識した時点で速やかに解除権を行使しなかったことのみをもって、直ちに松葉会が本件建物を本部事務所として使用することを容認していたとはいえない。また、本件建物をめぐっては、遅く とも令和2年1月に発生した放火未遂被疑事件により近隣の居住者等の生 命・身体・財産に危害が生じるおそれが具体化、現実化したと解されるところ(前記2(2)参照)、認定事実(3)ウ~オのとおり、原告は、令和2年2月及び令和5年3月から 隣の居住者等の生 命・身体・財産に危害が生じるおそれが具体化、現実化したと解されるところ(前記2(2)参照)、認定事実(3)ウ~オのとおり、原告は、令和2年2月及び令和5年3月から同年5月にかけて被告会社から本件土地の購入や本件賃貸借契約の更新に関する打診を受けつつも、被告会社の本件建物の利用継続に対して積極的な対応をとることなく、前提事実(6)のとおり、同 年10月には本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をしている。したがって、遅くとも令和2年1月以降、原告が被告会社に対し松葉会による本件建物の本部事務所としての利用を認識しつつこれを容認するような態度をとった事実は認められないから、少なくとも、被告会社において、本件賃貸借契約が被告会社と松葉会との関係を理由として解除されることはな いと信頼すべき正当な事由を有するに至ったとは認められない。ほかに、原告による解除権の行使が信義則に反すると認めるに足りる事情はない。 したがって、原告による本件賃貸借契約の解除は有効であり、本件賃貸借契約は、令和4年10月4日をもって終了したと認められる。 4 争点3(被告Aによる本件土地の占有)について (1) 建物はその敷地を離れて存在し得ないから、建物を占有使用する者は、これによってその敷地も占有するものと解すべきである(最高裁昭和31年(オ)第532号同34年4月15日・集民第36号61頁参照)。 (2) 本件建物は、松葉会の本部事務所として使用されているところ(認定事実(1))、暴力団においては、強固な組織の結びつきを維持するため、組長の 組員が家父長制を模した序列的擬制的血縁関係を結び、組員は、組長に対する全人格的包括的な服従統制下に置かれている(甲16)。このような暴力団の組織的な特性に照らせば、 を維持するため、組長の 組員が家父長制を模した序列的擬制的血縁関係を結び、組員は、組長に対する全人格的包括的な服従統制下に置かれている(甲16)。このような暴力団の組織的な特性に照らせば、組長である被告Aの意思決定及び行動は、松葉会、すなわち組員の意思決定及び行動と同義であり、被告Aと松葉会の組員は実質的に一体のものとみることができる。そうすると、被告 Aは、被告会社から有償又は無償で本件建物を借り受けて松葉会の本部事 務所としてこれを使用占有しており、それによって、本件土地を占有していると認められる。 これに対し、被告Aは、本件土地について被告会社と離れて独立した占有を有していない旨主張する。しかしながら、被告Aは、被告会社とは異なる法人格を有し、別個の法主体になり得る者である。そして、令和5年10月 3日に実施された本件仮処分決定の執行に際し、被告会社代表者は、執行官に対し、本件建物は、被告会社と被告Aが共同して事務所として使用している旨を陳述しており、執行官も、一件記録及び現場の状況等を総合勘案して、被告らが本件建物全部の共同占有者である旨を認定している(前提事実(5))。 被告Aの上記主張は根拠を欠く。 5 争点4(被告Aの占有と損害との因果関係)について(1) 他人の所有する土地に権原なく建物を所有する者から建物を賃借して占有使用する者がある場合において、その者の当該建物の占有使用と所有者がその土地を使用できないこととの間には、特段の事情が存しない限り、相当因果開係はない(昭和31年判決・民集第10巻10号1275頁、最 高裁平成15年(受)第413号同16年10月29日第二小法廷判決・公刊物未登載参照)。 (2) 本件賃貸借契約の解除により、被告会社は、令和5年10月5日 民集第10巻10号1275頁、最 高裁平成15年(受)第413号同16年10月29日第二小法廷判決・公刊物未登載参照)。 (2) 本件賃貸借契約の解除により、被告会社は、令和5年10月5日以降、原告が所有する本件土地に権原なく本件建物を所有するに至ったところ、被告Aは、被告会社から、本件建物を有償又は無償で貸借して松葉会本部事 務所として占有使用している者といえる(前記4(2))。 そこで、前記特段の事情について検討するに、認定事実(2)のとおり、被告会社は松葉会のフロント企業であって、現在の代表者を含む役員は松葉会の幹部経験者であること、松葉会と被告Aは実質的に一体のものであること(前記4(2))を併せ考慮すれば、被告会社の意思決定は実質的には松葉会の 組長である被告Aの影響を大きく受けることが強く推認される。このような 関係性に加え、本件建物が被告会社の登記簿上の本店とされ、松葉会の権勢の象徴というべき本部事務所としても使用されていること(認定事実(1)、(2))を考えれば、被告Aは、本件建物の使用占有に関し、その所有者である被告会社と実質的に同一の利害関係を有する立場にあるといえる。そうすると、被告Aによる使用占有は、単なる本件建物の賃借人によるそれとは異なり、 本件建物の所有者である被告会社と共に原告による本件土地の使用を妨げていると評価するのが相当であり、前記特段の事情が認められる。 したがって、被告Aによる本件建物の占有と原告の損害との間に相当因果関係が認められるから、原告は、被告Aに対しても、不法行為に基づき、賃料相当損害金の支払を求めることができる。 6 結論よって、原告の請求はいずれも理由があるからこれらを認容することとして、主文のとおり判決する。 東京地方 も、不法行為に基づき、賃料相当損害金の支払を求めることができる。 結論 よって、原告の請求はいずれも理由があるからこれらを認容することとして、主文のとおり判決する。 主文 東京地方裁判所民事第26部 裁判長裁判官 本多智子 裁判官 安藤巨騎 裁判官 上田文和 別紙物件目録については記載を省略。

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