平成17(行ウ)7 所得税納税告知処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成18年11月21日 東京地方裁判所 租税
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判決文本文29,353 文字)

- 1 -主文 被告が原告に対して平成15年7月8日付けでした,平成12年7月分ないし平成14年12月分までの各月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分(但し,いずれも平成15年11月26日付け異議決定により一部取消された後のもの)及び不納付加算税の各賦課決定処分のうち,別表2の「源泉徴収すべき税額」及び同「不納付加算税額」欄に各記載の金額を超える部分をいずれも取り消す。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用はこれを20分し,その3を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 事実及び理由 第1請求被告が原告に対して平成15年7月8日付けでした,平成12年7月分ないし平成14年12月分までの各月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分(但し,いずれも平成15年11月26日付け異議決定により一部取消された後のもの)及び不納付加算税の各賦課決定処分を取り消す。 第2事案の概要本件は,原告が,使用していたホステスに対して,半月ごとに報酬を支払っていたところ,所得税法(以下「法」という。)204条1項6号,205条2号所定の源泉徴収に係る所得税額を納付するに際し,当該報酬の額から,ホステスが欠勤や遅刻した場合に差し引くこととしていたペナルティの額のほか,法205条2号,所得税法施行令(以下「施行令」という。)322条所定の控除額として,5000円に上記半月の日数を乗じた額を差し引いた残額に100分の10を乗じて計算した金額を納付したところ,被告が,法205条2号,施行令322条所定の控除額は,5000円にホステスの実際の出勤日数を乗じた額であるとして,これを前提として算出した納付額と原告の納付額と- 2 -の差額分に相当する金額について納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分をしたため,原告がそれらの取消しを求 日数を乗じた額であるとして,これを前提として算出した納付額と原告の納付額と- 2 -の差額分に相当する金額について納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分をしたため,原告がそれらの取消しを求めた事案である。 法令の定め(1)法204条1項は,居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金,契約金又は賞金の支払をする者は,その支払の際,その報酬若しくは料金,契約金又は賞金についての所得税を徴収し,これを国に納付しなければならない旨規定し,同項6号は,当該報酬若しくは料金,契約金又は賞金のひとつとして,キャバレー,ナイトクラブ,バーその他これに類する施設でフロアにおいて客にダンスをさせ又は客に接待をして遊興若しくは飲食をさせるものにおいて客に侍してその接待をすることを業務とするホステスその他の者のその業務に関する報酬又は料金(以下「ホステス報酬等」という。)を規定している。 (2)法205条第2号は,ホステス報酬等については,その金額から政令で定める金額を控除した残額に100分の10を乗じて計算した金額が上記(1)の規定により徴収すべき所得税の額である旨規定している。 (3)施行令322条は,ホステス報酬等について法205条2号に規定する政令で定める金額を,同一人に対し1回に支払われる金額につき,5000円に当該支払金額の計算期間を乗じて計算した金額(当該ホステス報酬等の支払者が当該ホステス報酬等の支払を受ける者に対し法28条1項に規定する給与等の支払をする場合には,当該金額から当該期間に係る当該給与等の額を控除した金額)とする旨規定している。 争いのない事実等(1)原告は,屋号を「A」(東京都立川市α××番33号所在)とするパブクラブを経営している。 (2)原告の主たる業務は,自社の経営する店舗において顧客に る旨規定している。 争いのない事実等(1)原告は,屋号を「A」(東京都立川市α××番33号所在)とするパブクラブを経営している。 (2)原告の主たる業務は,自社の経営する店舗において顧客に対し,接待をして遊興又は飲食をさせるものであり,原告は,当該店舗において接待をする- 3 -ことを業務とするホステス(以下「本件各ホステス」という。)を使用している。 (3)原告は,毎月1日から15日まで(ただし,毎年1月は3日から15日まで)及び毎月16日から月末まで(ただし,毎年12月は16日から30日まで)をそれぞれ1期間と定め(以下当該各々の期間を「本件各期間」という。),本件各期間ごとに本件各ホステスの報酬(以下「本件各ホステス報酬」という。)の支給額を計算し,毎月1日から15日までの報酬をその月の25日(土曜日,日曜日及び祝日に当たるときはこれらの日の翌日)に,16日から月末までの報酬を翌月の10日(土曜日,日曜日及び祝日に当たるときはこれらの日の翌日)に本件各ホステスに対してそれぞれ支払っている。 (4)本件各ホステス報酬の額の計算方法は,1時間当たりの報酬額に勤務した時間数を乗じて計算した金額に手当を加えるというものである。 (5)原告は,本件各ホステス報酬の額から「ペナルティ」(本件各ホステスが欠勤・遅刻等をした場合に,罰金として本件各ホステス報酬の額から差し引かれるもの。以下「本件各ペナルティ」という。)に係る金額を控除した後の金額から,5000円に本件各期間の日数を乗じた金額を控除した金額に100分の10を乗じて算出された源泉所得税の額を,法定納期限までに被告に納付している。 (6)被告は,原告に対し,本件各ホステス報酬の額から「ペナルティ」に係る金額を控除した後の金額から,5000円に本件各ホステスの本件各期 た源泉所得税の額を,法定納期限までに被告に納付している。 (6)被告は,原告に対し,本件各ホステス報酬の額から「ペナルティ」に係る金額を控除した後の金額から,5000円に本件各ホステスの本件各期間における出勤日数(以下「本件出勤日数」という。)を乗じた金額を控除した後の金額に,100分の10を乗じて計算した金額が本件各ホステス報酬に係る源泉所得税の額であるとして,平成15年7月8日付けで,平成12年7月から平成14年12月までの各月分の源泉徴収に係る所得税について,別表1の各「原処分の額」欄記載のとおりの各納税告知処分及び不納付加算- 4 -税の各賦課決定処分を行った。 (7)原告は,これらの処分を不服として,平成15年8月27日,被告に対し,異議申立てをしたところ,被告は,同年11月26日付けで,別表1の各「異議決定」欄のとおり,平成12年10月分及び平成14年1月から同年10月までの各月分の各納税告知処分については,いずれもその一部を取り消す異議決定を,また,その他の各月分の各納税告知処分並びに平成12年7月から平成14年12月までの各月分の不納付加算税の各賦課決定処分については,異議申立てをいずれも棄却する異議決定をした(以下,異議決定を経た後の各納税告知処分及び不納付加算税の各賦課決定処分をそれぞれ「本件各納税告知処分」「本件各賦課決定処分」という。)。 (8)これに対し,原告は,平成15年12月26日,国税不服審判所長に対して審査請求をしたところ,同所長は平成16年10月15日付けで審査請求をいずれも棄却する裁決をし,裁決書謄本は同年10月19日に原告に到達した(原告への到達日につき,弁論の全趣旨)。 (9)原告は,平成17年1月14日,本件訴えを提起した(弁論の全趣旨)。 争点 (1)施行令322条の「当該支 謄本は同年10月19日に原告に到達した(原告への到達日につき,弁論の全趣旨)。 (9)原告は,平成17年1月14日,本件訴えを提起した(弁論の全趣旨)。 争点 (1)施行令322条の「当該支払金額の計算期間の日数」の意義(2)本件各ペナルティの控除の可否 争点に関する当事者の主張の要旨(1)争点(1)(施行令322条の「当該支払金額の計算期間の日数」の意義)について(被告の主張)アホステス報酬等の源泉徴収制度の立法(改正)過程をみると,同制度においては,納税者の職務の性質上,少額の所得のみ存在したり,報酬等に比して多額の経費を要するものが存在することが考慮され,一方で所得税の還付手続を省きつつ,他方では納税者の最終的に納付すべき所得税額と- 5 -源泉徴収税額とをなるべく近似させて両者の差が大きくならないようにし,確定申告時に納付する税額をできるだけ減少させるようにして,確実な租税の徴収を図ることができるよう立法されたものと解される。 イ施行令322条の表においては,報酬等から控除される一定の基礎控除の金額について,司法書士等の報酬,診療報酬等,職業拳闘家等の報酬,ホステス等の報酬等といった法205条2号所定の種別毎に異なる算定方法が規定されているが,これらは,それらの報酬等の種別に応じた経費の発生状況,発生態様の違いを念頭に置いて設定されたものと解されるから,当該基礎控除の額には,その報酬等の種別に応じた経費的性格があると解される。したがって,ホステス等の報酬等に対する源泉徴収税額の算定方法に関する施行令322条の解釈についても,単に同条の表中の字句のみに拘泥することは適切ではなく,報酬等の種別に応じた基礎控除額の経費的性格を考慮した上で,最終的に納付すべき税額と源泉徴収税額をなるべく近似させ,確定申告時に 釈についても,単に同条の表中の字句のみに拘泥することは適切ではなく,報酬等の種別に応じた基礎控除額の経費的性格を考慮した上で,最終的に納付すべき税額と源泉徴収税額をなるべく近似させ,確定申告時に納付する税額をできるだけ減少させようとする同条及び法205条2号の立法趣旨,目的に整合するよう解釈されなければならない。 一方,源泉徴収されるホステス等の報酬等には,ホステス等が給与所得として受ける報酬等が含まれないのであるから(法204条2項1号),法204条1項6号及び205条2号並びに施行令322条によって源泉徴収されるホステス等の報酬等とは,個人事業者であるホステス等が事業所得として受け取る報酬等であり,ホステス等の1日1日の業務に対応する報酬等が積み重なったものにほかならない。 それゆえ,このような報酬等を得るための必要経費もまた,ホステス等の1日1日の業務に対応する経費が積み重なったものというべきである。 ホステス等の報酬等に係る経費の発生状況がこのような形態のものである以上,経費的性格を有する基礎控除額についても,このような経費の発生- 6 -状況ないし発生態様と整合的に解釈すべきであり,これとかけ離れた解釈をすべきではない。 ウ施行令322条の「当該支払金額の計算期間の日数」の解釈については,このような基礎控除額の経費的性格を考慮しつつ,確定申告時に納付する税額をできるだけ減少させようとした同条及び法205条2号の立法趣旨に整合的に解すべきである。しかるに,ホステス等の報酬等が発生する余地のない日を基礎控除額の金額の計算の対象日とすることは,勤務しない日も基礎控除額の計算対象に盛り込むことを意味するから,ホステス等の経費の発生状況ないし態様とは合致しないばかりか,租税収入の確保の見地からも,課税の公平の観点からも極めて不合 ることは,勤務しない日も基礎控除額の計算対象に盛り込むことを意味するから,ホステス等の経費の発生状況ないし態様とは合致しないばかりか,租税収入の確保の見地からも,課税の公平の観点からも極めて不合理であり,施行令322条の解釈適用を誤るものといわねばならない。換言すれば,施行令322条の「当該支払金額の計算期間の日数」は,当該報酬等の支払金額の計算の対象となった日の合計日数であると解さなければ,基礎控除方式による源泉徴収制度を採用した施行令322条及び法205条2号の立法趣旨に整合しないというべきである。 エ本件各ホステスは,各営業日の開店前までに,原告との間で各当日の出勤について合意した営業日についてのみ業務上の拘束を受けるものであるから,本件各ホステスの「支払金額の計算期間の日数」とは,当該支払金額の計算の対象となった日の合計日数,すなわち,本件各ホステスが実際に出勤した日数をいうことになる。 確定申告によってはホステス等の報酬等について税収を確保するのは困難であるとの立法事実を背景に,ホステス報酬等の源泉徴収制度が設けられたのであるから,源泉徴収税額間の公平を図るためには,同種,同額の報酬に対しては,同額の源泉徴収額が予定されているというべきである。 オ基礎控除方式の制度趣旨が,確定申告時の還付又は不足分の納付という事務手続をする必要性が発生しないよう,源泉徴収の段階で確定的な税額- 7 -に近い額を源泉徴収税額として徴収するため,同一人に対して1回に支払われる金額から必要経費に相当する額を控除することにあることに照らせば,本件各ホステスのように,実際の出勤日においてのみ業務上の拘束を受け,報酬額についても各自の実際の出勤日を計算要素として算出されている場合,本件各集計期間の日数ではなく,実際の出勤日の日数が施行令 ホステスのように,実際の出勤日においてのみ業務上の拘束を受け,報酬額についても各自の実際の出勤日を計算要素として算出されている場合,本件各集計期間の日数ではなく,実際の出勤日の日数が施行令322条の「当該支払期間の計算期間の日数」に該当するというべきである。 (原告の主張)ア一般に,「期間」とは,ある時点からある時点までの継続した時の区分であり一時点を示すものではなく,所得税法施行令322条の「当該支払金額の計算期間の日数」も,当該支払金額の計算の対象となる起算点から満了点までの継続した日数と解するのが相当である。 イ本件の場合,本件各ホステスに対して1回に支払う報酬の計算期間は,本件各期間,すなわち毎月1日から15日まで,及び毎月16日から月末までをそれぞれ1期間と定めているのであるから,本件各期間の日数が所得税法施行令322条に規定する「計算期間の日数」に相当する。 ウ文理解釈(ア) 租税法の解釈租税法の解釈は,原則として文理解釈により行うべきであり,文理解釈によって規定の意味内容を明らかにすることが困難な場合,又は文理解釈では妥当な結果が得られないときに,はじめて規定の趣旨目的に照らして論理解釈を行うことになる。 租税法の文理解釈に当たっては,忠実にその字句に則し,文法に従って,その規定の意味を汲み取るようにし,法令上用いられている用語について,法令中に定義規定が存在しなければ,世間一般で理解されている意味に解して読むことになるのである。 - 8 -(イ) 「期間」の意義a国税通則法国税通則法10条1項は,国税に関する法律のみならず,これに基づく政令及び省令に定める期間にも実質的に適用があるものと解されており,同条は施行令322条にも適用される。「平成16年改訂国税通則法精解」(甲第8号証)191頁には,同条項 律のみならず,これに基づく政令及び省令に定める期間にも実質的に適用があるものと解されており,同条は施行令322条にも適用される。「平成16年改訂国税通則法精解」(甲第8号証)191頁には,同条項について「この条第1項における期間とは,ある時点からある時点まで継続した時の区分である。」との記載がある。以上のように税法における「期間」とは,「ある時点からある時点まで継続した時の区分」なのであり,このことは,施行令322条の「当該支払金額の計算期間」の解釈においても当然当てはまるものである。 b民法民法においては,138条ないし143条に「期間」についての規定がある。数多くの民法総則の基本書,概説書のいずれも「期間」をもって,ある時点からある時点までの時間の継続性を重要な要素としている。 c労働基準法,労働基準法施行規則労働基準法108条では,賃金台帳に「賃金計算の基礎となる事項」を記入すべきものとされ,それを受けて労働基準法施行規則54条1項が,「賃金計算期間」を賃金台帳の必要的記載事項として規定するとともに,同条項は「労働日数」を別個の概念とし別個に記載することを定めている。 ホステス等に対する報酬等も労働基準法11条の定める「労働の対償として使用者が労働者に支払うもの」であり「賃金」に該当することからしても,労働基準法施行規則54条1項の「賃金計算期間」は,施行令322条の「当該支払金額の計算期間」と同義であると解され- 9 -る。仮に,本件ホステス報酬等が労働基準法11条の「賃金」に該当しないとしても,同報酬等と「賃金」は,役務提供の対価という点で共通する類似の概念であり,賃金台帳の記載事項についての定めは,本件各ホステス報酬についても十分考慮されるべきである。 d法律用語辞典,国語辞典法律用語辞典や国語辞典におい 務提供の対価という点で共通する類似の概念であり,賃金台帳の記載事項についての定めは,本件各ホステス報酬についても十分考慮されるべきである。 d法律用語辞典,国語辞典法律用語辞典や国語辞典においても,「期間」の意義について「ある時点から他の時点までの一定の時間隔たりの間の長さ」(法律用語事典第2版)(甲第15号証),「一定の時期から他の一定の時期までの間」(広辞苑第5版)(甲第16号証)などと定義されている。 (ウ) 施行令322条のかっこ書きの文言施行令322条は,ホステス報酬等につき控除されるべき金額を「5000円に当該支払金額の計算期間の日数を乗じて計算した金額(当該報酬又は料金の支払者が当該報酬又は料金の支払を受ける者に対し法第28条第1項に規定する給与等の支払をする場合には,当該金額から当該期間に係る当該給与等の額を控除した金額)」であると規定している。 同条かっこ書き内の「当該期間」は同条本文の「当該支払金額の計算期間」と同義であるところ,法令の解釈に当たっては,同一の条項において用いられている文言については,同一の意味に解するのが法律解釈の常道である。そして,上記の「当該期間」はその文言から,法28条1項(給与所得)に規定する給与等の支払金額の計算期間であり,これがある時点からある時点までの継続した時の区分を意味することは明らかである。 したがって,かかるかっこ書き内の「当該期間」との関係からも,「当該支払金額の計算期間」は,ある時点からある時点までの継続した時の区分,本件でいえば本件各期間,すなわち,毎月1日から15日まで,及び毎月16日から月末までの継続した日数を意味することは明ら- 10 -かである。 (エ) 施行令308条2項に定める「給与等の計算の基礎となった日数」の意義法185条は,賞与以外の給与等に ,及び毎月16日から月末までの継続した日数を意味することは明ら- 10 -かである。 (エ) 施行令308条2項に定める「給与等の計算の基礎となった日数」の意義法185条は,賞与以外の給与等に係る徴収税額について規定しているが,同条2項は,同条1項1号及び2号に規定する給与等の「日割額」の意義等について必要な事項は法令で定めると規定し,これを受けて,施行令308条2項は,法185条1項1号又は2号に規定する給与等の日割額は,給与等の支給すべき額をその「給与等の計算の基礎となった日数」で除して計算した金額とすると規定する。 この施行令308条2項の「給与等の計算の基礎となった日数」という文言は,施行令322条の「当該支払金額の計算期間の日数」という文言に比して,「基礎となった」という文言が入っている分だけ,その意義について,当該集計期間中の出勤日数(稼働日数)とする解釈により馴染む表現である。しかし,所得税基本通達185-4(一)は,施行令308条2項に規定する「給与等の計算の基礎となった日数」の意義について,「あらかじめ定められた支給期が到来するごとに支払う給与等については,その給与等に係る計算期間の日数(当該計算期間中における実際のか働日数のいかんを問わない。)」と規定し,当該給与等の集計期間の日数の合計であり,稼働(出勤)日数ではないことを明らかにしている。 (オ) 以上のとおり,文理解釈によれば,施行令322条の「当該支払金額の計算期間の日数」の意義は原告の主張するとおりに解釈されるべきものであり,これを「出勤日数」とする被告の主張は誤っている。 エ源泉徴収税額の計算方法(基礎控除方式)の趣旨目的に照らしても,原告の行った計算が正当であること(ア) 基礎控除方式が採用されている趣旨目的- 11 -ホステス等の源泉徴収 張は誤っている。 エ源泉徴収税額の計算方法(基礎控除方式)の趣旨目的に照らしても,原告の行った計算が正当であること(ア) 基礎控除方式が採用されている趣旨目的- 11 -ホステス等の源泉徴収税額の計算においては,「その支払金額が一定限度以下である場合には源泉徴収を要しないこととするいわゆる免税点方式」ではなく,「一定金額を控除した残額に対し税率を適用して課税するいわゆる基礎控除方式」が採用されている。 ホステス等の源泉徴収税額の計算に基礎控除方式が採用された趣旨目的は,「できる限り源泉徴収税額の還付の手数を省くこと」にある。そして,その趣旨目的を徹底するために,その後の税制改正により,さらに源泉徴収に係る控除額の引き上げを行って現在に至っている。 また,現在の基礎控除制度は,かつての所得控除に代わるものではなく,(1)少額所得の不追求,ないし(2)徴収義務者の便宜を考慮して,源泉徴収される報酬,料金等の範囲で制限する趣旨であるとされている。 以上のとおり,基礎控除方式が採用された趣旨目的としては,「できる限り源泉徴収税額の還付の手数を省くこと」と「少額所得の不追求及び源泉徴収義務者の負担を緩和するものであること」が妥当なものと考えられる。 (イ) 原告の計算方法は,被告の計算方法に比較して,必ず源泉徴収税額が少なくなる。そうすると,「できる限り源泉徴収税額の還付の手数を省くこと」という趣旨目的を達成できる可能性があるのは,原告の計算方法である。「少額所得の不追求及び源泉徴収義務者の負担を緩和するものであること」という趣旨目的に合致するのも,原告の計算方法である。 オ所得税の源泉徴収制度は租税の徴収手続であること租税の確定の方式としては,申告納税方式と賦課納税方式とがあるが,それ以外に,納税義務が成立すると同時に特別の手続を必要と ,原告の計算方法である。 オ所得税の源泉徴収制度は租税の徴収手続であること租税の確定の方式としては,申告納税方式と賦課納税方式とがあるが,それ以外に,納税義務が成立すると同時に特別の手続を必要とせずに法規の定めに従って当然に確定する租税(自動確定の租税)がある。そして,源泉所得税はこの自動確定の租税に該当し,租税の確定手続を要せず,源泉徴収の要件の充足と同時に自動的に確定するが(国税通則法15条3項- 12 -2号),これは源泉所得税の課税標準が明白であり,しかも税額の計算が極めて容易なためである。すなわち,所得税の源泉徴収方式は,確定した租税の徴収方式に関する方式にすぎず,源泉徴収義務者は課税標準を確認する特別の行為をすることなく特定の税額を納付する義務のみを負うものとされている。税法の意味内容が不明確で,源泉徴収義務者が徴収すべき税額を画一的に計算できず,解釈により徴収すべき税額を認定し判断しなければならないということは,そもそも法が予定していないのであるから,この観点からしても,「当該支払金額の計算期間の日数」は,その文理に忠実に解釈されなければならない。 (2)争点(2)(本件各ペナルティの控除の可否)について(被告の主張)源泉徴収の対象となる所得とは,給与,報酬等であるところ,本件各ペナルティは,原告と本件各ホステスとの間で定められた違約金にすぎないから,本件各ホステス報酬算定の際の考慮要素とならないことは明らかであり,その性質からみて本件各ホステスの所得の計算上,必要経費となるべきものである。 したがって,本件各ホステス報酬に係る源泉所得税の額を計算するに当たっては,当該ペナルティの額は本件各ホステス報酬の額から控除すべきものではない。 (原告の主張)アホステス等の業務に関する報酬もしくは料金(法204条1項 報酬に係る源泉所得税の額を計算するに当たっては,当該ペナルティの額は本件各ホステス報酬の額から控除すべきものではない。 (原告の主張)アホステス等の業務に関する報酬もしくは料金(法204条1項6号)の源泉徴収においては,政令で定める同一人に対して1回に支払われる金額より基礎控除の金額を控除した残額に10%の税率を乗じた金額を徴収する(法205条2号)ものとされている。「同一人に対して1回に支払われる金額」とは,同一人に対し1回に支払われるべき金額をいうと解され(国税庁長官通達「所得税基本通達205-1」),同通達により「支払- 13 -われる金額」とは支払確定ベースによるべきであることが明らかにされている。 イ本件ペナルティは,本件各ホステス報酬の算定に際してのみ考慮されるべきもので,報酬が生じない計算期間において別個に発生するものではない。したがって,本件ペナルティは,各種手当と同様に,本件各ホステス報酬を構成する要素の1つ,すなわち本件各ホステス報酬の算定要素である。 第3当裁判所の判断 前記第2の2の事実,証拠(甲4,17~21,23,40,乙1~5,7,16,20の1~3)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる(末尾に認定に供した主要な証拠等を挙げた。)。 (1)報酬,料金等に係る源泉徴収制度ア概要ホステス報酬等のほか,居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金,契約金又は賞金の支払をする者は,その支払の際,それぞれ所得税を徴収しなければならないとされている(法204条,同205条,施行令322条参照)。 (ア) 支払金額に100分の10(同一人に対し1回に支払われる金額が100万円を超える場合,その超える部分の金額については100分の20)の税率(以下「二段階税率」という。)を乗じて計算 参照)。 (ア) 支払金額に100分の10(同一人に対し1回に支払われる金額が100万円を超える場合,その超える部分の金額については100分の20)の税率(以下「二段階税率」という。)を乗じて計算した金額を徴収すべきものa原稿,さし絵,作曲,レコードの吹き込み又はデザインの報酬,放送謝金,著作権(著作隣接権を含む。)又は工業所有権の使用料及び講演料並びにこれらに類するもので政令で定める報酬又は料金b弁護士(外国法事務弁護士を含む),公認会計士,税理士,社会保険労務士,弁理士,測量士,建築士,不動産鑑定士,技術士その他こ- 14 -れに類する者で政令で定めるものの業務に関する報酬又は料金c職業野球の選手,競馬の騎手,モデルその他これに類する者で政令で定めるものの業務に関する報酬又は料金d映画,演劇その他政令で定める芸能又はラジオ放送若しくはテレビジョン放送に係る出演若しくは演出(指揮,監督その他政令で定めるものを含む。)又は企画の報酬又は料金その他政令で定める芸能人の役務の提供を内容とする事業に係る当該役務の提供に関する報酬又は料金(これらのうち不特定多数の者から受けるものを除く。)e役務の提供を約することにより一時に取得する契約金で政令で定めるもの(イ) 支払金額から政令で定める金額を控除した残額に100分の10の税率を乗じた金額を徴収すべきものa司法書士,土地家屋調査士又は海事代理士の業務に関する報酬又は料金同一人に対し1回に支払われる金額から1万円を控除する。 b診療報酬同一人に対しその月分として支払われる金額から20万円を控除する。 c職業拳闘家の業務に関する報酬同一人に対し1回に支払われる金額から5万円を控除する。 d外交員,集金人又は電力量計の検針人の業務に関する報酬又は料金同一人に対しその から20万円を控除する。 c職業拳闘家の業務に関する報酬同一人に対し1回に支払われる金額から5万円を控除する。 d外交員,集金人又は電力量計の検針人の業務に関する報酬又は料金同一人に対しその月中に支払われる金額から,12万円(当該報酬又は料金の支払者が当該報酬又は料金の支払を受ける者に対し,法28条1項に規定する給与等の支払をする場合には,12万円からその月中に支払われる当該給与等の額を控除した金額)を控除する。 e広告宣伝のための賞金で政令で定めるもの- 15 -同一人に対し1回に支払われる金額から50万円を控除する。 f馬主が受ける競馬の賞金で政令で定めるもの同一人に対し1回に支払われる金額から施行令298条1項に規定する金額を控除する。 イ源泉徴収制度の趣旨源泉徴収制度は,税収の確保,徴税手続の簡便さ,徴税費の節約等の便宜上の理由から採用されたものといわれている。具体的には,①支払われる金額を課税対象とするから,課税標準等の把握が正確であること,②徴税が確実であること,③徴税費が少なくてすむことの徴税側の便宜のほか,④支払われる段階で徴税されるので,納税に対する苦痛が比較的少なくてすむこと,⑤確定申告時に多額の納税資金を手当てする必要がないことなど,納税者にとっても便利な点がないわけではない。反面,徴収義務者に負担を強いる結果となること,申告納税制度と比較して所得税の前取りであり,納税面に不公平感を抱かせる等の短所があるとされている(甲23,乙7)。 ウ基礎控除制度の趣旨外交員や集金人の報酬,料金等については,昭和29年度の税制改正により源泉徴収を要しない限度額(免税点)が設けられ,昭和42年度の税制改正時に基礎控除制度に改められたが,基礎控除制度については,①少額所得の不追求,ないし②徴収義務者の便宜を考慮 年度の税制改正により源泉徴収を要しない限度額(免税点)が設けられ,昭和42年度の税制改正時に基礎控除制度に改められたが,基礎控除制度については,①少額所得の不追求,ないし②徴収義務者の便宜を考慮して,源泉徴収される報酬,料金等の範囲で制限する趣旨であり,報酬,料金等の範囲を拡大したことに伴う源泉徴収義務者の負担を緩和するものであろう,とする見解がある(甲19)。 (2)ホステス報酬等への課税制度等ア概要ホステス報酬等は,所得税法上,給与所得に該当するものを除けば,事- 16 -業所得ないし雑所得として,その年中の総収入金額から必要経費を控除した金額を所得の額とし(法27条2項,35条2項2号),それらの合計である総所得金額に各種控除等を行った上で(法72条以下参照),所定の税率を適用する等して最終的な所得税額が算出されるが,具体的に納付すべき額は確定申告手続(法120条以下)において確定される。源泉徴収された又はされるべき所得税の額がある場合には,確定申告手続において,所得税額から控除されるが,控除しきれなかった額がある場合には,還付を受けることができる。 イ改正経緯(ア) 昭和42年度の税制改正では,バー等のいわゆるホステス等の業務に関する報酬について,職業拳闘家・プロゴルファー・プロレスラーの業務に関する報酬又は料金,馬主が受ける競馬の賞金とともに,所得税の源泉徴収を行うことになった。立法担当者の解説によれば,これらの報酬等について源泉徴収を行うことにしたのは,この種の報酬等に類似する報酬について既に源泉徴収の対象としていることとのバランスや,これらの報酬等については収入が固定的に発生するものではないので確定申告の際に一時に納税するよりは,収入があった都度一定の所得税を天引して納めておく方が納税しやすくなるという ることとのバランスや,これらの報酬等については収入が固定的に発生するものではないので確定申告の際に一時に納税するよりは,収入があった都度一定の所得税を天引して納めておく方が納税しやすくなるという事情等を考慮したことによるとされている。もっとも,これらの報酬等のうちには,少額なものがあったり,異常な経費がかさむものもあるので,一定の控除額を設け,その納税の実情に即するように配慮するとして,ホステス等の業務に関する報酬については,同一人に対し1回に支払われる金額から2000円にその支払金額の計算期間の日数を乗じて計算した金額(別に給与等の支払をする場合には,その計算した金額からその期間に係る給与等の額を控除した金額)を控除した残額の10パーセント相当額を徴収税額とした(乙1)。 - 17 -上記税制改正では,外交員,集金人等の特定の報酬等に関する所得税の源泉徴収については,従来はその支払金額が一定限度以下である場合には源泉徴収を要しないこととするいわゆる免税点方式が採用されていたが,この免税点方式では,その金額を若干でも超えると全体の金額について10パーセントの税率による源泉徴収が行われることになるので,還付の手数を省略しようとする本来の趣旨の徹底を欠くきらいがあったことから,その趣旨をさらに徹底させる見地から,一定の金額を控除した残額に対して税率を適用して課税するいわゆる基礎控除方式に改め,できる限り源泉徴収税額の還付の手数を省くことになった(乙1)。 (イ) 昭和47年度の税制改正では,外交員,集金人の報酬又は料金及びホステスの報酬について源泉徴収に際し控除すべき金額が引き上げられた。 ホステスの報酬については,控除すべき1日当たりの金額が2000円から3000円に引き上げられた。基礎控除の引き上げは,昭和42年度の税制改正後に いて源泉徴収に際し控除すべき金額が引き上げられた。 ホステスの報酬については,控除すべき1日当たりの金額が2000円から3000円に引き上げられた。基礎控除の引き上げは,昭和42年度の税制改正後における累次の所得税減税によって,特に外交員,集金人及びホステスについては,確定申告における還付が増加しつつある現状にあることから,昭和42年後における課税最低限の引き上げ状況等をも勘案してなされたものとされている(甲17)。 (ウ) 昭和50年度税制改正では,外交員,集金人の報酬又は料金とともに,ホステス等の報酬について源泉徴収に係る控除額が引き上げられ,ホステス等では,同一人に対し1回に支払われる金額から控除する額を3000円から現行の5000円に引き上げた。これは,昭和47年度改正後の累次の所得税減税によって,外交員,集金人及びホステス等についての還付の事例が増加していることからなされたものであるとされている(甲18)。 ウホステス等の報酬等を源泉徴収の対象とした理由ホステス等の報酬等を源泉徴収の対象とした理由については,納税者か- 18 -らの自主的な申告納税を全く期待し得ないわけではないが,源泉徴収をしておいた方が納税者にとっても税務当局にとっても能率的で煩わしくないような所得に該当するとの見解や,ホステス等の報酬の捕捉が困難であることを配慮したものと思われるとする見解がある(甲23)。 (3)本件各ホステスの出勤状況原告は,本件各ホステスの採用に際して応募申込書を徴しており,当該申込書には,本件各ホステスの出勤可能な曜日及び出勤時間等の勤務方法並びに入店時の保証報酬として1時間当たりの金額が記載される。 本件各ホステスから徴収した応募申込書に記載された出勤可能な曜日及び時間はあくまでも目安にすぎず,必ずそのとおりにホステスが出 の勤務方法並びに入店時の保証報酬として1時間当たりの金額が記載される。 本件各ホステスから徴収した応募申込書に記載された出勤可能な曜日及び時間はあくまでも目安にすぎず,必ずそのとおりにホステスが出勤するわけではない。原告においては,毎日,営業終了時に,当日出勤しているホステスに翌日出勤することが可能かどうかを尋ね,翌日の不足人員を補充している。また,予め応募申込書で出勤可能なホステスに対しても,電話で翌日の出勤の可否を確認している。翌日出勤するホステスが不足する場合は,応募申込書によると出勤可能でないホステスに対しても,電話等をして出勤を促し,要請することもある。 さらに,事前には出勤の予定がないホステスであっても,当日,顧客と約束して同伴出勤してくるホステスもいる。 原告は,本件各ホステスの出勤日における同伴の有無及び指名個数等について「リスト表」(乙第4号証)などを作成し,日々管理している(以上につき,甲40,乙3,4,弁論の全趣旨)。 (4)本件各ホステス報酬の支払原告は,本件各ホステスの報酬の額について,1時間当たりの報酬額に,勤務した時間数を乗じて算出した額に,手当の額を加算して算出している。 そして,原告は,上記額から,主に次のエないしクとして算出される金額を控除して支給額を算出し,当該差引支給額を本件各ホステスに支払ってい- 19 -る(甲4,40,乙5,弁論の全趣旨)。 ア1時間当たりの報酬額原則として,本件各期間における本件各ホステスの指名個数等の合計を本件出勤日数で除して算出された平均指名個数等に応じて決定される金額に精勤手当等を加えて原告が算定する金額である。なお,入店して間もないホステスについては,一定金額が1時間当たりの報酬額として保証されている。また,本件各期間の間に出勤予定日を2日以上休むと時給が3 に精勤手当等を加えて原告が算定する金額である。なお,入店して間もないホステスについては,一定金額が1時間当たりの報酬額として保証されている。また,本件各期間の間に出勤予定日を2日以上休むと時給が300円減額され,本件各期間に5回以上の同伴出勤を行った場合は,その回数に応じて,時給が100円,200円または300円増額される。 イ勤務した時間数原告が日々管理している,本件各期間のうち本件各ホステスが出勤した日におけるそれぞれの勤務時間の合計である。 さらに,「同伴指名手当」として,ホステスが同伴出勤をした場合には,実際の入店時間を遡って勤務時間が加算される。また,平均指名個数が0. 5単位の時給設定額は,ホステスが1期間に10日以上出勤した場合に適用され,1期間の出勤日数が10日未満の場合は,1単位未満を切り捨てた平均指名個数に対する時給設定額が適用される。 ウ手当本件各ホステスが,本件各期間において客との同伴出勤をした回数に応じて支給される同伴手当が主なものである。 エ「税,厚生費」の額本件各期間における本件各ホステス報酬の額に12パーセントを乗じたもので,本件各ホステス報酬に係る源泉所得税の額と厚生費の額とを合わせた概算額である。 オ「ペナルティ」の額本件各ホステスが欠勤,遅刻等をした場合の罰金である。 - 20 -カ「日払い」の額本件各ホステスからの要望に応じて勤務当日に1万円を限度として仮払された金額である。 キ「寮費」,「水道光熱費」,「スーツ代」,「送り代」等の額各項目ごとに本件各ホステスが各人で負担すべき金額を原告が支払ったものであり,本件各ホステス報酬の額から差し引かれる金額である。 クその他原告が本件各ホステスに貸付金を有している場合,毎月約定の返済額も控除される。この場合は,報酬支払明細の「その他」 支払ったものであり,本件各ホステス報酬の額から差し引かれる金額である。 クその他原告が本件各ホステスに貸付金を有している場合,毎月約定の返済額も控除される。この場合は,報酬支払明細の「その他」欄に記入される。 (5)本件各ホステスが負担する経費本件各ホステスは,オリジナル様式の名刺,衣装,化粧,靴,バッグ,携帯電話,寮費,店舗からの自動車による送迎代の各費用を経費として負担している(甲40)。 争点(1)(施行令322条の「当該支払金額の計算期間の日数」の意義)について(1)一般に,租税法は侵害規範であり,法的安定性の要請が強く働くものであるから,租税法の解釈は,まず成文法の文理解釈によるのが原則であり,それが租税法律主義にもかなうものというべきである。もっとも,文理解釈によって規定の意味内容を明らかにすることが困難である場合には,当該規定の趣旨目的や立法経過等に照らして論理解釈を行う必要があるし,文理解釈によれば規定の意味内容が一見明らかであると見られるような場合であっても,その解釈による帰結が明らかに不合理であり,そのような帰結を導く立法がされたとは考えられないというような場合には,やはり,当該規定の趣旨目的や立法経過等に照らし,通常人が納得するような常識的な帰結を導き出す論理解釈が可能かどうかを検討する必要がある場合もあり得るものと考えられる。 - 21 -そこで,以下,このような観点から検討する。 (2)「当該支払金額の計算期間の日数」の文理解釈についてアまず,施行令322条の「当該支払金額の計算期間の日数」のうち,「当該支払金額」とは,同条の規定の仕方からみて,「同一人に対し1回に支払われる金額」を指すと考えられる。したがって,「当該支払金額の計算期間の日数」とは,「同一人に対し1回に支払われる金額の計算 「当該支払金額」とは,同条の規定の仕方からみて,「同一人に対し1回に支払われる金額」を指すと考えられる。したがって,「当該支払金額の計算期間の日数」とは,「同一人に対し1回に支払われる金額の計算期間の日数」を意味することになる。 次に,「計算期間」は,社会生活において日常的に用いられる用語ではなく,税法上も特段の定義はなされていないところ,「期間」は,一時点から一時点までの時間的隔たりといった,時的連続性を持った概念であるから(甲8~16参照),「(当該支払金額の)計算期間」も,例えば「(当該支払金額の)計算の基礎となった期間の初日から終日まで」というように,時的連続性を持った概念と解するのが自然である。そして,「期間の日数」といった場合,具体的に限定がなされない限り,かかる時間的隔たりに含まれる日数の全てを含むと解するのが通常である。以上を前提として考えると,定期的に報酬が支払われることが合意されている場合における「当該支払金額の計算期間の日数」とは,契約において支払の対象とされた期間(本件においては,毎月1日から15日までと,16日から月末まで)の全日数を意味すると考えるのが文言上素直な解釈であるというべきである。 これに対し,被告は,「当該支払金額の計算期間の日数」とは,出勤し,報酬支払の対象となる稼働が行われた日の日数(したがって,当該期間中の全稼働日数)を意味するという趣旨の主張をするのであるが,このような解釈は,「計算期間の日数」を,点としての稼働日を集計したものという意味に解することとならざるを得ず,時間的連続性を前提としているものと解すべき「期間の日数」という概念とは明らかに矛盾する,文言上は- 22 -無理のある解釈であるといわざるを得ない。また,被告主張のような意味を表すのであれば,「当該支払金額の計算期間 いるものと解すべき「期間の日数」という概念とは明らかに矛盾する,文言上は- 22 -無理のある解釈であるといわざるを得ない。また,被告主張のような意味を表すのであれば,「当該支払金額の計算期間中の全稼働日数」とか「当該支払金額の対象となった全稼働日数」などといった用語を用いればよいわけであるし,そのような用語を用いることに支障があるとも考えられない。それにもかかわらず,実際の施行令においては,「計算期間の日数」という用語が用いられている以上,その解釈に当たっては,その文言に即した解釈を行わざるを得ないのであって,概念の異なる別の用語と読み替えるような解釈は行うことはできないものというべきである(なお,施行令308条2項の「給与等の計算の基礎となった日数」の意義については,所得税基本通達185-4において,あらかじめ定められた支給期が到来するごとに支払う給与等については,その給与等に係る計算期間の日数(当該計算期間中における実際のか働日数のいかんを問わない。)であって,計算期間中の全日数を意味するとされている。このことは課税庁自身も,「計算期間の日数」とは,計算期間中の稼働日数ではなく,その期間の全日数とみるのが常識的な理解であると認識していることをうかがわせるものである。)。 イこれに対し,被告は,ホステス等の報酬・料金の性質,必要経費の算定方法,他の報酬等の基礎控除額の規定との整合性,本件各ホステスの勤務状況等に基づき,「当該支払金額の計算期間の日数」とは,当該支払金額の計算の対象となった日の合計日数をいい,ホステス等の報酬についていえば,ホステスが実際に稼働した日数をいうことになると主張している。 ところで,「当該支払金額の計算期間」とは,「同一人に対し1回に支払われる金額の計算期間」を意味するものと考えられることは前説示 いえば,ホステスが実際に稼働した日数をいうことになると主張している。 ところで,「当該支払金額の計算期間」とは,「同一人に対し1回に支払われる金額の計算期間」を意味するものと考えられることは前説示のとおりであるが,ここでいう「1回に支払われる金額」とは,ホステスの客観的な稼働状況に照らして判断されるべきものであるから,ホステスの各日における稼働状況がそれぞれ完全に独立しており,報酬の支払をする者- 23 -との間の継続的契約に基づいて稼働しているというよりは,日々新たに契約を締結し,新たな契約に基づいて稼働しているという実態にあるとみられる場合には,各日に支払われるべき金額が,それぞれ「1回に支払われる金額」になるものと解され,したがって,このような場合における「当該支払金額の計算期間」とは,各日すなわち1日を意味することとなる。 そうすると,このような実態がある場合に,報酬そのものは,定期的に数日分がまとめて支払われていたとしても,それは,「1回に支払われる金額」が数回分まとめて支払われていたものと考えるべきであるから,このような場合における「当該支払金額の計算期間」とは,まとめて支払われた金額に対応する日数,すなわち,ホステスが実際に稼働した日数を意味することになる。被告の主張が,このような趣旨であるとするならば,それは,文理的にも十分に成り立ち得る主張であるということができるが,これはあくまでも「1回に支払われる金額」という文言の解釈によって導き出された帰結であり,また,本件に対してこのような解釈を適用することが可能かどうかは,本件におけるホステスの勤務実態に照らして判断されるべき事柄である(この点については,後に改めて検討する。)。これに対し,被告の主張が,「法は,ホステスの勤務実態が,上記のような(あるいは,それに近い におけるホステスの勤務実態に照らして判断されるべき事柄である(この点については,後に改めて検討する。)。これに対し,被告の主張が,「法は,ホステスの勤務実態が,上記のような(あるいは,それに近い)形態である場合が多い(あるいは少なくない)という事実認識を前提として,『計算期間』という用語を『実際に稼働した日数』という意味で用いている。」と主張するものであるとすれば,それは,文言解釈の限界を超えるものであって,採用することはできないことは,既に指摘したとおりである。 また,被告は,ホステス等の報酬・料金の性質,必要経費の算定方法,他の報酬等の基礎控除額の規定との整合性について,司法書士・土地家屋調査士の報酬・料金,馬主が受ける競馬の賞金,職業拳闘家の報酬,広告宣伝の賞金のいずれの基礎控除額も,その報酬,料金を支払うべき契約の- 24 -個数を単位として定められているところ,ホステス等の報酬も,ホステス等の1日1日の業務の報酬等の積み重ねなのであり,必要経費もまた1日1日の業務に対応する経費の積み重ねであって,その報酬等を支払うべき契約も,ホステス等の報酬等の計算期間の要素となった日数ごとに成立していると認められるから,「当該支払金額の計算期間の日数」を当該支払金額の計算期間の要素となった日数を意味すると解することが整合的であるとする。しかしながら,被告の議論は,ホステスの稼働実態が,日々新たに締結する契約に基づいて行われていると認められるような場合には通用するとはいえても(この場合における,「当該支払金額の計算期間の日数」は,「当該支払金額の計算期間中の稼働日数」の意味であると解されることは既に指摘したとおりである。),ホステスの稼働実態が,継続的契約に基づくものであると認められ,日々新たに締結する契約に基づいて行われているとは 額の計算期間中の稼働日数」の意味であると解されることは既に指摘したとおりである。),ホステスの稼働実態が,継続的契約に基づくものであると認められ,日々新たに締結する契約に基づいて行われているとは認められないような場合にまで通用するものとはいい難いことは既に指摘したとおりである。被告が指摘する,司法書士・土地家屋調査士の報酬・料金等との比較という点も,1個の契約に基づく支払は1個であるということを根拠付けているのにすぎないのであるから,1個の契約に基づいて支払われる金額の「計算期間の日数」という用語を解釈する際の参考になるものであるとはいいがたい。 ウしたがって,「当該支払金額の計算期間の日数」の文理解釈としては,同一人に対し1回に支払われる金額の計算の基礎となった,一時点から一時点までの時間的隔たりに含まれる日数の全てをいうと解するのが相当である。 (3)「当該支払金額の計算期間の日数」の論理解釈についてア前記のとおり,租税法の解釈にあたっては,文理解釈によって規定の意味内容を明らかにすることが困難な場合には,論理解釈により規定の意味内容を明らかにすべきであるところ,被告は,「当該支払金額の計算期間- 25 -の日数」という文言の字句の意味のみからは,「当該支払金額の計算期間の全日数」を指しているのか,「当該支払金額の計算期間の出勤日数」を指しているのか明らかではないとも主張する。しかしながら,既に検討したとおり,「期間の日数」とは,特に限定がない場合,一時点から一時点までの時間的隔たりに含まれる日数の全てを意味するのが通常であると考えられ,文言の字句の意味のみから,計算期間の全日数を指すのか出勤日数を指すのかが不明であるとはいいがたい。 イ次に,上記解釈による帰結が明らかに不合理であるといえるかどうかを検討する。 (ア 考えられ,文言の字句の意味のみから,計算期間の全日数を指すのか出勤日数を指すのかが不明であるとはいいがたい。 イ次に,上記解釈による帰結が明らかに不合理であるといえるかどうかを検討する。 (ア) 前示のとおり,一般に,申告納税制度を原則とする現行所得税法において源泉徴収制度が採用されたのは,税収の確保,徴税手続の簡便さ,徴税費の節約といった徴税側の便宜に加え,納税に対する苦痛が比較的少なくてすむ,確定申告時に多額の納税資金を手当てする必要がなくなるといった納税者にとって便利な点がないわけではないとの便宜上の理由と解されている。また,源泉徴収の対象となる収入のうち,基礎控除制度が設けられているものについては,少額所得の不追求,源泉徴収制度の導入により負担が課せられる徴収義務者の負担の緩和などがその趣旨として挙げられている。さらに,ホステス報酬等に対する源泉徴収制度の導入及び改正を内容とする各税制改正では,主として源泉徴収税額の還付の手数を省くことがその理由として挙げられている。 以上の事実に照らすと,ホステス報酬等に対する源泉徴収制度も,これら徴税側の便宜(税収の確保,徴税手続の簡便さ,徴税費の節約,還付に応じる手数の省略),納税者にとっての不都合(納税に対する苦痛,確定申告時の資金手当,還付請求の手間,少額所得に対する追求)の回避,徴収義務者の負担の緩和という,源泉徴収制度に関わる各関係者の利益を総合考慮して定められたものと考えられる。 - 26 -(イ) この点について,原告は,基礎控除制度の理由としての還付の手数の省略,少額所得の不追求及び源泉徴収義務者の負担の緩和にのみ着目した主張をするが,かかる主張はホステス報酬等に対する源泉徴収制度の趣旨目的の一部のみを強調するものであり,適切とはいいがたい。 (ウ) 他方,被告は,ホ 追求及び源泉徴収義務者の負担の緩和にのみ着目した主張をするが,かかる主張はホステス報酬等に対する源泉徴収制度の趣旨目的の一部のみを強調するものであり,適切とはいいがたい。 (ウ) 他方,被告は,ホステス報酬等の源泉徴収制度の目的を,所得税の還付手続を省きつつ,納税者の最終的に納付すべき所得税額と源泉徴収税額をなるべく近似させて,確定申告時に納付する税額をできるだけ減少させ確実な租税の徴収を図ることと理解した上で,源泉徴収の基礎控除額には経費的性格があることを強調しているが,この主張もまたホステス報酬等の源泉徴収制度の目的の一面のみを強調したものといわざるをえない。 a被告は,まず,昭和42年度税制改正時の立法担当者の解説(乙1)を引用して,基礎控除額に経費的性格があるとするが,上記解説では,前示のとおり,基礎控除額を設けた理由として,これらの報酬等のうちには少額のものがあることも挙げており,少額所得に対する不追求としての面があることも明記している。 被告はまた,昭和42年度税制改正の立法担当課長の講演録(乙16)を引いて,馬主が受ける競馬の償金の基礎控除額に経費的性格があるとする。しかしながら,同講演録によれば,「競争馬を1頭持っておれば,いまのところ150万~160万円経費がかかる。それから一方の入着のチャンス,プロバビリティも見て,50~60万円程度引いておれば還付をすることもなかろうということで,20%プラス60万円を基礎控除額にしたわけである。」とあって,基礎控除額が経費そのものでないことは同講演録からも明らかである。他方,同講演録によれば,ホステス報酬等については,「ホステスにもぴんからきりまである。いわゆる課税最低限的なものを設定して,そうして- 27 -基礎控除制を作ったわけである。これは1日あたり2千円というの 演録によれば,ホステス報酬等については,「ホステスにもぴんからきりまである。いわゆる課税最低限的なものを設定して,そうして- 27 -基礎控除制を作ったわけである。これは1日あたり2千円というのが基礎控除の考え方である。日給的に払っておれば2千円,7日分として払っておれば1万4千円,こういうものを控除するわけである。」と説明されているものの,1日分の経費が現実に2000円程度であることを窺わせる説明はない(なお,被告は,上記説明を根拠に,立法担当者も「当該支払金額の計算期間の日数」とはホステス等の実際の出勤日数を意味すると考えていたことは明白であるとも主張するが,上記説明中の「7日分」を,計算期間の全日数が7日である場合に1回に支払われる金額を指していると解することも格別不合理なものとはいえないから,上記説明を根拠に,「当該支払金額の計算期間の日数」の解釈を決することは相当ではない。)。さらに,職業拳闘家については「5万円という基礎控除で相当多額の報酬をもらう人から源泉徴収をしておくということである。これもすべて簡素化の見地から,できるだけ還付を少なくしようという考えた方である。」として,専ら還付請求の手間の回避及び少額所得に対する不追求を趣旨とするかのような説明となっている。 そもそも,源泉徴収の対象となる報酬等のうち,例えば弁護士報酬であれば,事務所維持費や事務員の人件費等,定型的に相当額の経費を要することが想起されるにもかかわらず,基礎控除方式ではなく二段階税率方式がとられている。また,基礎控除方式がとられているものであっても,その多くは固定された控除額が定められているが,前述の立法担当者の説明等をみても,これらの固定された控除額が各種報酬等に対応する経費額を具体的に把握した上で決定された金額であることを裏付ける事情は その多くは固定された控除額が定められているが,前述の立法担当者の説明等をみても,これらの固定された控除額が各種報酬等に対応する経費額を具体的に把握した上で決定された金額であることを裏付ける事情は認められない。 これらの点に鑑みると,経費の存在は基礎控除額を設けた理由の1つであるとはいえても,それは考慮要素の1つにすぎず,基礎控除額- 28 -が金額的に経費と厳密な対応関係にあることが予定されているとは考え難い。 b次に,源泉徴収制度においては,確定申告時に納付する税額ができるだけ減少するように制度が設計されているとする点についてみると,被告は,その根拠として,二段階税率方式は,作家の印税や映画俳優の出演料や職業野球選手の報酬等のように高額な報酬を受けている者については,確定申告によってかなりの税額を納付している実情にあることから導入されたこと(乙1),基礎控除方式の対象とされた報酬等も,確実な租税の徴収と納税者の便宜を図る源泉徴収制度を構成する仕組みの一環なのであるから,二段階税率方式の場合と同様に考えるべきこと,施行令322条は報酬等の種別に応じて基礎控除や算定方法を個別に定めていることを挙げている。 しかしながら,報酬,料金等による所得は,もともと確定申告時に正確な税額を算定することが予定されており,実際上も,納税者は独立の事業主体として複数の支払者から支払を受けることが通例であろうから,1人の支払者が支払をする時点で,納税者が確定申告時に納付すべき税額を予想してそれと過不足のないようにすることはもともと困難であって,制度上もそのようなことは期待されていないものと考えられる。 また,施行令322条においては,報酬の種類に応じて基礎控除や算定方法を個別に定めているとはいっても,全く控除額がないものもあるし,あっても定額なも ようなことは期待されていないものと考えられる。 また,施行令322条においては,報酬の種類に応じて基礎控除や算定方法を個別に定めているとはいっても,全く控除額がないものもあるし,あっても定額なものにすぎない以上,源泉徴収は,概算徴収であることを免れないのであって,源泉徴収税額の算定にあたって個々の納税者が確定申告時に負担すべきであった税額に近づけるまでの正確性を追求したものでないことは明らかである。むしろ,報酬,料金等の源泉徴収制度の多くは,二段階税率方式,基礎控除方式をとわ- 29 -ず,源泉徴収義務者において,支払金額さえ確定すれば,他の計算要素によらずに,源泉徴収税額を自動的に算定できる仕組みとなっているとみることができる。これは,源泉徴収義務者の負担の軽減への考慮がなされているものと考えられるし,徴税側にとっても,確定申告を受ける段階で正確な税額を確認する必要があることに加えて,源泉徴収する段階でも,支払金額以外の計算要素を確認する作業の負担を負うことを避けることができるとみることもできる。 したがって,源泉徴収制度を導入し,基礎控除や算定方法を定めるについては,立法論として,確定申告時に納付する税額ができるだけ減少するような配慮がなされるべきであるとしても,現行制度としては,徴税者,納税者及び源泉徴収義務者それぞれの便宜にも配慮した結果,確定申告時に納付する税額が相当額残存することも制度上容認されているものといわざるをえない。 (エ) そこで,以上のような源泉徴収制度・基礎控除制度の理解を前提に,(2)で示したような文理解釈が明らかに不合理な結果を帰結するかどうかを検討するに,被告は,基礎控除制度には,必要経費の控除という側面や徴税の確保という側面があることを前提として,ホステスの必要経費額はその実際の稼働日数に応じ 明らかに不合理な結果を帰結するかどうかを検討するに,被告は,基礎控除制度には,必要経費の控除という側面や徴税の確保という側面があることを前提として,ホステスの必要経費額はその実際の稼働日数に応じてその多寡が決まる傾向があるものといえる上,徴税の確保や納税者間の公平といった観点からしても,同種,同額の報酬に対しては,同額の源泉徴収がされるべきであるにもかかわらず,「計算期間の日数」を本件各期間の全日数であると解すると,①実際の稼働日数が1日のホステスも,15日のホステスも基礎控除額が同額となってしまい,また,②出勤日毎に報酬等を支払う場合と,定期的に報酬等を支払う場合とでは,実際の稼働日数が同じであっても基礎控除額が異なることとなるのであって,これらの結論は,余りにも不合理というべきであり,法(その委任を受けた施行令322条)が,その- 30 -ような帰結を導く解釈を予定していたものとは到底解することはできないと主張する。しかしながら,これらの主張を採用することはできない。 まず,①の点についてみると,基礎控除額に経費的性格があることは事実であるとしても,それは厳密な計算に基づいて算出されたものではなく,むしろ,概算徴収のための計算要素という程度にとどまることは前説示のとおりなのであるから,基礎控除額が稼働日数に対応して変動しなければならないという被告の主張の前提そのものに疑問がある。しかも,ここで問題としているのは,継続的契約に基づいて稼働しているホステスなのであるから,1支払期のみを捉えれば,稼働日数に1日と15日といった違いが生ずることはあっても,長期的にはそのような違いが平準化されることも考えられるのであるから,特定の支払期における稼働日数の違いを強調することにも疑問が残るところである。また,少額所得を追求しないという観 ことはあっても,長期的にはそのような違いが平準化されることも考えられるのであるから,特定の支払期における稼働日数の違いを強調することにも疑問が残るところである。また,少額所得を追求しないという観点からすれば,各支払期の収入が,その稼働日数にかかわらず一定額に達しないホステスについては源泉徴収をしないという制度も十分にあり得るのであって,この観点からすれば,稼働日数1日のホステスと,15日のホステスとで基礎控除額が同じであっても,何ら異とするには足りないということになる。更に,源泉徴収手続の便宜という観点からすると,源泉徴収を行う側にとっても,また,その適否を確認する課税庁の側にとっても,実際の稼働日数を確認することなく源泉徴収税額を算定できるという意味では,「計算期間の日数」を本件各期間の全日数と考える方が簡便であることは明らかである。このように,基礎控除制度の趣旨・目的として考えられる様々な要素を踏まえて検討していくと,文理解釈に基づき,「計算期間の日数」を本件各期間の全日数と解することにも十分な合理性が認められるものというべきである。被告の主張は,極端な事例を挙げて,不合理な結果が生ずると主張しているものにすぎず,採用することはできない(なお,- 31 -被告の挙げる例を,そもそも,不合理な結果とみるべきであるかどうかも疑問であるし,仮に不合理との評価があり得るとしても,その帰結は,源泉徴収が行われないというレベルにとどまるのであって,課税そのものが否定されるわけではないのであるから,文理解釈の結果を否定しなければならないほど重大な問題であるとはいいがたいと考えられることを付言しておく。)。 また,②の点についても,①と同様の点を指摘できる上,そもそも,継続的契約に基づいて継続的な稼働形態にあるホステスと,いわば日々雇用 な問題であるとはいいがたいと考えられることを付言しておく。)。 また,②の点についても,①と同様の点を指摘できる上,そもそも,継続的契約に基づいて継続的な稼働形態にあるホステスと,いわば日々雇用的な稼働形態にあるホステスの取扱いを同一にしなければならないという前提そのものにも疑問があるのであって,いずれにせよ被告の主張を採用することはできない。 ウ以上の次第で,施行令322条所定の「当該支払金額の計算期間の日数」とは,本件でいえば,本件各期間の全日数を指すのが原則であるというべきであるが,前に説示したとおり,ホステスの稼働状況の実態が,継続的契約に基づいて稼働をしているのではなく,日々新たに締結される契約に基づいて稼働していると認められる場合には,実際の稼働日数がこれに当たるものと解され,被告の主張には,このような趣旨も含まれていると考えられる。そこで,本件が,上記のような場合に当たるかどうかを検討してみると,前認定の事実(第3,1,(3)・(4))に証拠(甲40,乙3,4,乙18の1ないし4)を併せると,①本件各ホステスは,報酬支払者である原告に応募申込書を提出して採用され,少なくとも形式上は,いったん採用された後は,原告所属のホステスとして取り扱われ,稼働日ごとに契約を締結し直すといったことは行われていないこと,②ホステスは,毎日,原告から出勤の可否を確認され,出勤可能と回答した者のみが出勤して稼働しており,この意味において,各ホステスには出勤するかどうかの選択権が与えられているものの,原告側に出勤を求めるホステスを- 32 -拒否する自由があることをうかがわせる証拠はなく,ホステスとしては,当初締結した契約に基づいて,その希望する日に出勤し,稼働することができる地位が与えられているものと解されること,③ホステスの報酬額を 否する自由があることをうかがわせる証拠はなく,ホステスとしては,当初締結した契約に基づいて,その希望する日に出勤し,稼働することができる地位が与えられているものと解されること,③ホステスの報酬額を算定するに当たっては,報酬支払期間中の同伴出勤の数等が実績として評価され,加算される仕組みになっており,各期において支払われる報酬は,単なる日給の積み重ねではなく,支払期間中の実績を全体的に評価することが予定されているものと解されること,④本件各ホステスの出勤状況をみると(乙18の1ないし4),出勤日数1日という者がいる一方で,出勤日数11日,12日というほぼ常勤に近い者も少なからず存在し,各ホステスの各期ごとの出勤状況にも変動があることがうかがわれることなどの事実が認められ,これらによれば,本件各ホステスは,あくまでも原告との継続的な契約に基づいて出勤し,稼働しているものであって,原告との間で,出勤日毎に新たな契約を締結し直しているような実態にあるとは認め難い。 したがって,本件各ホステスの勤務実態という観点から被告の主張を採用することも困難であるというほかはない。 (4)以上の検討結果によると,争点(1)に関して被告の主張を採用することはできず,原告の主張が正当であるというべきである。 争点(2)(本件各ペナルティの控除の可否)について前示のとおり,本件各ペナルティは,本件各ホステスが原告との間で前日までに出勤する旨を合意したにもかかわらず,欠勤,遅刻等をした場合に課されるものであり,その法的性質は,上記合意違反を理由とする,債務不履行に基づく損害賠償と解することができ,そうであれば,本件各ホステス報酬とはもともと異なる性質のものである。 また,本件各ホステス報酬の支払に際して「税,厚生費」として控除される額は,本件各期間における づく損害賠償と解することができ,そうであれば,本件各ホステス報酬とはもともと異なる性質のものである。 また,本件各ホステス報酬の支払に際して「税,厚生費」として控除される額は,本件各期間における本件各ホステス報酬の額に12パーセントを乗じた- 33 -もの,すなわち,(時給×勤務時間数+手当)×0.12の式により算定されおり,ペナルティの額は考慮されないこと,報酬支払明細書上においても,「総支給額」としてペナルティ控除前の金額を表示していること(乙13の1~4)からみて,原告自身,ペナルティが本件各ホステス報酬の算定要素に当たらないものとして扱ってきたものと考えられる。 加えて,乙14・15の各1・2によれば,当該計算期間の報酬から控除しきれなかったペナルティの残額が,次の計算期間の報酬から控除されていることが認められ,残額部分は報酬の発生の有無にかかわらず別個に発生しているものといえる。したがって,本件各ペナルティは,単なる報酬の算定要素の1つではなく,債務不履行に基づく損害賠償債務としての実体を有しているものといえる。 これらの事実によれば,本件各ペナルティは本件各ホステス報酬の計算要素には当たらず,「同一人に対し1回に支払われる金額」は,本件各ペナルティ控除前の金額であると解するのが相当である。 まとめ前記第2の2(5),(6),(7)のとおり,本件各納税告知処分及び本件各賦課決定処分の内容は,①本件各ホステス報酬の額からペナルティに係る金額を控除した後の金額から,5000円に出勤日数を乗じた金額を控除した後の金額に,100分の10を乗じた額と,②原告の納付済税額(本件各ホステス報酬の額からペナルティに係る金額を控除した後の金額から,5000円に本件各期間の日数を乗じた金額を控除した後の金額に,100分の10を乗じた額) 10を乗じた額と,②原告の納付済税額(本件各ホステス報酬の額からペナルティに係る金額を控除した後の金額から,5000円に本件各期間の日数を乗じた金額を控除した後の金額に,100分の10を乗じた額)との差額に当たるところ,原告が納付すべきであった額は,本件各ホステス報酬の額(ペナルティに係る金額の控除前のもの)から,5000円に本件各期間の日数を乗じた金額に,100分の10を乗じた額であるから,結局,原告の納付済税額は,ペナルティに係る金額として控除された額に対する源泉徴収税額(10パーセント)相当額が不足していたことになる。 - 34 -そして,甲3によれば,法定納期限ごとのペナルティに係る金額として控除された額は,別表2の「ペナルティ」に係る金額欄記載のとおりと認められる。 したがって,本件各納税告知処分及び本件各賦課決定処分のうち,別表2記載の源泉徴収すべき税額及び不納付加算税額を超える部分は,違法である。 以上によれば,原告の請求について,本件各納税告知処分及び本件各賦課決定処分のうち別表2記載の源泉徴収すべき税額及び不納付加算税額部分の取消しを求める部分は理由がないから棄却し,本件各納税告知処分及び本件各賦課決定処分のうち上記各金額を超える部分は違法であるから取り消すこととし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,64条本文を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部鶴岡稔彦裁判長裁判官中山雅之裁判官進藤壮一郎裁判官

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