判決平成14年9月3日神戸地方裁判所平成9年(ワ)第1211号火災保険金請求事件 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求(主位的請求)被告は,原告に対し,金1710万円及びこれに対する平成7年4月4日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (予備的請求)被告は,原告に対し,金900万円及びこれに対する平成7年4月4日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,その所有にかかる本件建物が平成7年1月17日の阪神・淡路大震災により発生した火災により焼失したとして,昭和60年12月23日,被告との間で本件建物につき締結した本件火災保険契約に基づき,保険金1710万円の請求を,予備的に(1)地震保険契約に基づく金900万円の地震保険金の支払いを,また,(2)地震保険制度などの情報提供義務の懈怠よる不法行為・債務不履行・契約締結上の過失責任に基づく地震保険金相当額の損害賠償の支払いを請求する事案である。 1 争いのない事実等(1) 原告は,平成7年1月17日当時,別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)を所有していた者であり,被告は,損害保険業等を目的とする株式会社である。 (2) 原告と承継前被告住友海上火災保険株式会社(以下「旧被告」ともいう。)は,昭和60年12月23日,下記の内容の住宅火災保険契約を締結した(以下「本件火災保険契約」という。)。 記 住友海上火災保険株式会社(以下「旧被告」ともいう。)は,昭和60年12月23日,下記の内容の住宅火災保険契約を締結した(以下「本件火災保険契約」という。)。 記当事者保険者は旧被告,保険契約者は原告証券番号 6380-410747保険の目的物本件建物保険金額金1800万円保険期間昭和60年12月23日から平成17年12月23日まで(3) 本件建物は,平成7年1月17日,阪神・淡路大震災(以下「本件地震」という。)後に発生した火災(以下「本件火災」という。)の延焼により焼失した。 (4) 原告は,旧被告に対し,平成7年2月末頃,本件火災による損害の発生を通知した。 (5) 旧被告は,原告に対し,平成8年6月14日,地震火災費用保険金として金90万円を支払った。 (6) なお,旧被告は,平成13年10月1日,三井海上火災保険株式会社と合併し(被告名義に商号変更),旧被告が解散し,三井海上火災保険株式会社に吸収される合併形式が採られた。 2 主位的請求に関する当事者双方の主張(1) 地震免責条項の適用の有無《原告の主張》ア本件建物の火災損害について,地震免責条項の適用はない。 約款開示論により地震免責条項の拘束力は否定されるべきである。 旧被告(以下「被告」ともいう。)は,原告に対し,火災保険約款中の地震免責条項につき,被告の解釈によれば地震による地盤の揺れが治まった後発生した火災で本件建物が延焼した場合にも,火災保険金が支払われないというような内容である旨を開示説明したことはなく,このような場合には地震免責条項の拘束力は否定される。 ① れが治まった後発生した火災で本件建物が延焼した場合にも,火災保険金が支払われないというような内容である旨を開示説明したことはなく,このような場合には地震免責条項の拘束力は否定される。 ① 知り得ないものには同意は与えられず,原告が認識できなかった約款条項が契約内容として取り込まれることはない。 ② 募取法16条1項1号所定の重要事項の告知がなかったものとみることができる。 ③ 不可視のサービス商品である保険を文書により形式化したものが保険約款であり,被告には,取引上の信義則により,商品内容そのものというべき約款条項を開示するべき義務があった。 イ地震免責条項の公序良俗違反地震免責条項は,公序良俗に反しており,無効である。 地震免責条項は,地震災害が多額の損失を生じるところから,損害保険会社の企業的採算を維持し,その存立をはかる目的の範囲でのみ合理性を有するところ,関東大震災以後の大地震後には,損害保険会社の存立を危うくするような大規模火災は発生しておらず,むしろ地震と同じく予測し難いフェーン現象,風水害による被害の方が大規模となっていることを見れば,確固たる財政基盤を有する今日の損害保険会社を地震免責条項により保護する合理性はなく,むしろ地震免責条項は漠然不明確であることから,その適用範囲が不当に広がってしまう危険もある。 ウ地震免責条項の解釈地震免責条項に定める「地震」とは,「地震による地盤の揺れと同時に広範囲にわたって多発的に火災が生じ,被害に見合う保険金の支払いをすると損害保険会社の経済的基盤が危うくなるような地震」と限定解釈されるべきである。 ① 地震免責条項の趣旨は,地震損害の巨大性,予測 発的に火災が生じ,被害に見合う保険金の支払いをすると損害保険会社の経済的基盤が危うくなるような地震」と限定解釈されるべきである。 ① 地震免責条項の趣旨は,地震損害の巨大性,予測不可能性がもたらす結果から損害保険会社の経営基盤を保護するという点にあり,この趣旨を超えて適用されるべきではない。 ② 疑わしきは作成者に不利に,の解釈原則からすれば,地震免責約款の解釈に当たっては,保険会社の解釈よりも顧客側の解釈が優先されるべきところ,原告を含む一般の消費者は,「地震」という言葉を「地盤の揺れ」と同義に理解しており,地盤の揺れの後に発生する消防力低下などの社会生活上の事象まで「地震」であるとは考えていない。 ③ 本件建物の火災損害は,地震免責条項の「地震によって生じた火災の延焼による損害」でもなく,また,本件火災が「地震によって延焼又は拡大して生じた損害」にも該当しない。 エ地震免責条項の不意打ち条項性顧客の,自己が異常に不利益,不衡平には扱われないであろうとの信頼を裏切るような「不意打ち条項」については,約款によるとの意思推定が及ばず,拘束力が否定されるところ,地震免責条項は,火災による被害にあったときは,火災保険金が支払われるであろうとの信頼をもって契約関係に入った顧客を予期できない思いもよらない保険金不給付の事態に陥らせる条項であって,「不意打ち条項」に該当する。 ① 大審院大正4年12月24日判決は,意思推定説の根拠について「保険契約者が普通約款の内容に通暁せずして之により契約するは,多くは其の約款が内容の如何にかかわらず概して適当なるべきに信頼して契約するものに外ならず」としており,信頼に反する約款条項には意思推定が及ばない が普通約款の内容に通暁せずして之により契約するは,多くは其の約款が内容の如何にかかわらず概して適当なるべきに信頼して契約するものに外ならず」としており,信頼に反する約款条項には意思推定が及ばないことを前提としている。 ② 学説上も「不意打ち条項」の理論は,広く支持されている。 オ情報提供義務違反による信義則上の制限地震免責条項の射程・合理性を担保するものとして地震保険制度が存する以上,地震保険制度についての情報提供義務の懈怠があった本件においては,地震免責条項の全面的な適用は排除される。 《被告の主張》本件建物の火災損害は,地震免責条項の「地震によって生じた火災の延焼による損害」及び「発生の原因の如何を問わず火災が地震によって延焼又は拡大して生じた損害」に該当する。 ア保険約款の効力① 保険制度は,高度の技術的基盤の上に立ち,団体的性格を有しており,保険契約者全員の平等・公平という要請を充足し,迅速かつ大量の契約を行うための契約条項が保険約款である。 保険約款は,主務官庁の監督を受けながら,保険会社において作成するが,その内容は社会的妥当性を有している。 ② 保険契約者は,この約款と附合することによって保険契約を締結するものであり,保険契約者の知・不知や主観的な意思に関わりなく,約款が保険契約者を拘束すると解されており,判例は「当事者双方が特に普通保険約款によらざる旨の意思を表示せずして契約したるときは,反証なきかぎり,その約款による意思を以て契約したるものと推定」するとして,確立されている。 ③ 保険約款は,主務官庁の監督下で作成され,公開されている。地震免 て契約したるときは,反証なきかぎり,その約款による意思を以て契約したるものと推定」するとして,確立されている。 ③ 保険約款は,主務官庁の監督下で作成され,公開されている。地震免責条項も大正15年の判決で有効性が認められてから,すでに70年の歴史を持ち,その間にも有効性が確認されていて,公知・周知の事実となっている。 ④ 募取法16条1項は,保険会社の役員・使用人等の不当な勧誘・募集行動等を禁止し,これを取り締まるための取締法規にすぎず,また,保険会社は,信義則により約款条項を開示すべき抽象的な義務を負うものではない。 イ地震免責条項は,公序良俗に違反するものではない。 ① 損害保険制度は,大数の法則のもとに,収支相当の原則,給付反対給付均等の原則に則り成立し,保険の技術性・保険の団体性という性質を有する。 ② 前記特質や,公平・平等・迅速・大量の契約という保険制度の目的を果たすのが約款であり,保険契約者はこれに附合することによって保険契約を締結することとされ,この約款の拘束力が有効であることは前述のとおりである。 ③ 地震免責条項は,「地震損害の巨大性」,「発生予測の困難性」(大数の法則が適用しない),「逆選択の危険」などを理由として,地震が極めて恐るべき危険であるとともに,危険に馴染みにくい異常危険であることを識者も一致してして認めており,火災保険制度発足時から認められ,かつ,その有効性が確定している。 ウ地震免責条項の解釈地震免責条項は何ら漠然不明確といわれる内容ではなく,地震免責条項の限定的解釈は理由がない。 保険制度の特質・目的及び免責条項の明確性並びに地震保険の存在から考え 地震免責条項は何ら漠然不明確といわれる内容ではなく,地震免責条項の限定的解釈は理由がない。 保険制度の特質・目的及び免責条項の明確性並びに地震保険の存在から考えれば,免責条項につき限定した解釈はあり得ない。 エ地震免責条項はいわゆる不意打ち条項ではない。 ① 前述のとおり,約款の拘束力及び地震免責条項の有効性が火災保険発足時から認められてきたこと,並びに地震保険制度が設けられて30年以上を経過しているだけでなく,約款は公開され,保険契約者は認識可能であった。 ② 我が国及びドイツにおいても,損害保険につき,約款中の条項を保険契約者の主観面における知・不知を問題にするのではなく,客観的合理性によって有効性を判断することにしており,約款の拘束力を認めているものである。 オ地震保険制度につき,被告は,情報提供義務を負担せず,情報提供の懈怠ありとして地震免責条項の適用を排除されるべき理由はない(後述のとおり。)。 (2) 質権設定の場合の給付訴訟の可否《原告の主張》質権設定者である原告も,質入債権である本件火災保険金請求権につき給付訴訟を提起し得る。 質権設定者が質入債権の取り立てを禁止されると説かれることがあるが,このような禁止は,質権者の利益保護を目的にしており,質権設定者の行為を質権者に対抗できないという意味にとどまる。 《被告の主張》本件火災保険金請求権は,株式会社総合保証に対して質権設定がなされており,質権設定者である原告に対して,被告は支払義務を負担しない。 3 予備的請求に関する当事者の主張(1) 地震保険契約に基づく地震保険金請求《原告の主張》 おり,質権設定者である原告に対して,被告は支払義務を負担しない。 3 予備的請求に関する当事者の主張(1) 地震保険契約に基づく地震保険金請求《原告の主張》(総論)原則自動付帯方式の帰結として,家計保険たる火災保険契約締結にあたっては,損害保険会社において地震保険の説明を行い,契約者が地震保険を付帯しない旨の意思表示を行わない限り,地震保険が付帯されるが,本件において,原告は被告から地震保険に関する一切の説明を受けておらず,地震保険を付帯しない旨の意思表示をしたことはない。 したがって,本件では,地震保険契約が成立している。 (各論)ア原則付帯方式原則付帯方式とは,保険会社において契約時に必ず地震保険の説明を行い,契約者が地震保険を付帯しない旨の意思表示を行わない限り,地震保険が付帯されるという方式と定義されるところ(甲15の18頁),昭和54年6月14日付け保険審議会答申(甲16)を受けた昭和55年の地震保険法第4次改定により地震保険の引受方式は原則付帯方式に一本化された。 原則付帯方式の帰結として,火災保険契約の契約者が特に地震保険を付帯しない旨の意思表示をしなければ,地震保険が付帯されることになる。このことは,地震保険法第4次改定の際の国会答弁(甲17号の1ないし3)や同改定についての解説(甲30)でも明らかである。 イ地震保険不付帯の火災保険契約の締結過程火災保険契約締結過程において,地震保険不付帯の意思表示がなされるまでの経過は,正常に情報提供がなされた場合には,次のようになる。① 保険会社は,契約申込者に対し,地震保険 の締結過程火災保険契約締結過程において,地震保険不付帯の意思表示がなされるまでの経過は,正常に情報提供がなされた場合には,次のようになる。① 保険会社は,契約申込者に対し,地震保険契約付帯の火災保険契約書の書式を提示する。保険会社側は必ず,地震保険付帯の形で火災保険契約の締結を求めることになる。 ② 契約申込者は,火災保険契約締結の意思をもって,保険会社側が提示する契約書式に署名し,その名下に押印する。この時点で火災保険契約が成立することになるが,地震保険原則付帯方式が適用される結果,このとき成立する火災保険契約は,常に地震保険付帯火災保険契約となる。 ③ 地震保険付帯の火災保険契約が成立した後,保険会社から契約者に対し,地震免責条項との関連における地震保険制度の存在とその内容及び地震保険の付帯方式等に関する情報提供がなされる。 具体的には,保険会社から契約者に対し,(ア)地震免責条項の存在及びその内容に関する情報提供,すなわち,火災保険約款中には極めて広汎な免責を規定する地震免責条項が存在し,火災保険だけでは地震後の火災には保険金は一切支払われないことになるであろうという説明,(イ)地震保険の存在及びその内容に関する情報提供,すなわち,上記地震による危険を填補するため地震保険制度が存在しており,地震保険を付帯しておれば,地震後の火災の場合でも保険金が支払われるという説明,(ウ)地震保険の付帯方式に関する情報提供,すなわち,地震保険は火災保険に原則付帯されているものの取り外しは可能であり,これを取り外す場合には,契約申込書中の地震保険確認欄に押印する方法によるべきこと,及び,(エ)地震保険を取り外した場合には,その分だけ保険料が安く済むことの説明がなされる。 あり,これを取り外す場合には,契約申込書中の地震保険確認欄に押印する方法によるべきこと,及び,(エ)地震保険を取り外した場合には,その分だけ保険料が安く済むことの説明がなされる。 ④ 契約者において,保険会社から開示説明された情報をもとに,特に (ア)地震保険を取り外した場合の危険性,すなわち,極めて広汎な免責を規定する地震免責条項が火災保険約款中に存在するため,地震後の火災には保険金は一切支払われないことになるであろうという,地震保険付帯の動機付け要因と,(イ)地震保険を取り外した場合のメリット,すなわち,地震保険を取り外すと,その分だけ保険料が安くて済むという,地震保険不付帯の動機付け要因とを比較考量の上,不填補の危険を覚悟で地震保険不付帯を決意した場合には,「地震保険を申し込みません。」との地震保険確認欄に押印がなされ,これが地震保険契約不付帯の申し出となる。 ウ地震保険に関する主張,立証責任保険契約者において,地震保険不付帯の意思表示をしなっかった場合,あるいは,保険契約者のした地震保険不付帯の意思表示が何らかの原因で無効であった場合には,地震保険が付帯されたままの火災保険契約が成立することになる。 以上のことから,地震保険契約締結についての主張,立証責任は,次のように整理することができる。 まず,保険契約者が,当事者間における火災保険契約の成立を主張・立証する。 これにより,原則付帯方式の帰結として,火災保険契約に付帯して地震保険契約が成立したことが基礎付けられる。 次に,当事者間の火災保険契約成立にもかかわらず,地震保険契約の締結を否定する保険会社においては,地震保険不付帯の申し出がなされたことを抗弁事由として主張・立証することになる られる。 次に,当事者間の火災保険契約成立にもかかわらず,地震保険契約の締結を否定する保険会社においては,地震保険不付帯の申し出がなされたことを抗弁事由として主張・立証することになる。 エ別個の意思表示必要論に対する反論現行の制度では,地震保険は,火災保険とは別の種類の保険と位置付けられていることから,地震保険契約締結については,火災保険契約とは別に保険者と保険契約者の意思の合致が必要である,との見解は相当でない。両者が別種の保険であることは,別個の意思表示が必要であることの論理的根拠とはなり得ない。 地震保険契約については,法律上単独では申し込むことができず,必ず他の家計火災保険に付帯されるものとされており(地震保険法2条2項3号),しかもその引受方式として原則付帯方式という抱き合わせ販売の手法がとられている結果,火災保険契約申込みの意思表示がなされると同時に,それに包含される形で地震保険契約の申込みの意思表示がなされる仕組みとなっているものであり,地震保険契約のみに関する独立した申込みの意思表示は予定されていない。 家計火災保険と地震保険とは別個の種類の保険ではあるが,両者が原則自動付帯という抱き合わせ販売の手法で一括して販売されている以上地震保険付きの火災保険の取引がなされるのであって,地震保険についての独自の意思表示は不要である。契約締結時において,保険契約者が家計火災保険のみに着目し,地震保険を意識しなかったとしても,地震保険が付帯された火災保険が成立する。 オ衆参両院における付帯決議の趣旨昭和55年における地震保険法改正の際,衆参両院で,地震保険の加入並びにその付保割合及び付保金額は,契約者の意向を尊重し,強制にわたることのな オ衆参両院における付帯決議の趣旨昭和55年における地震保険法改正の際,衆参両院で,地震保険の加入並びにその付保割合及び付保金額は,契約者の意向を尊重し,強制にわたることのないよう行政指導を万全にするとの付帯決議がなされている。 この付帯決議は,「契約者が,特にこれから自動附帯ということになりますと,知らないうちに入るというか,それが非常に保険料が高い,そういうことがございまして,非常にこれからもめるのではないか。」(大蔵委員会議録第29号・甲17の2の6頁)との懸念に基づいているものであり,地震保険が原則自動付帯される結果,家計火災保険の契約者が知らないうちに地震保険に加入することになることを前提に,保険会社側がこれを利用して,地震保険に関する説明を懈怠したまま知らないうちに地震保険に加入させ,高額な地震保険料を請求するという事態を危惧したものである。ただし,現実には保険会社側は,地震保険についての説明を怠ったまま不付帯の押印をさせる取り扱いを行ってきたため,付帯決議が危惧したような強制的に地震保険に加入させるという事態は稀で,逆に地震保険について何も知らされないまま強制的に地震保険を不加入にするという事態が一般的となってしまった。 この衆参両院における付帯決議は,次の二点で原告の主張を根拠付けるものである。 第一点は,衆参両院における付帯決議が,保険契約者が知らないうちに地震保険に加入する事態があり得ることを前提としている点である。第二点は,衆参両院における付帯決議が,契約者の意向尊重を要求しており,その前提として保険会社に地震保険制度に関する説明を求めている点である。保険会社において,地震保険の加入並びにその付保割合及び付保金額に関して,契約者の意向を尊重するた 約者の意向尊重を要求しており,その前提として保険会社に地震保険制度に関する説明を求めている点である。保険会社において,地震保険の加入並びにその付保割合及び付保金額に関して,契約者の意向を尊重するためには,地震保険制度について契約者に説明をすることが当然の前提として必要である。地震保険制度について何も知らせないことは,契約者の意向尊重という付帯決議の趣旨に真っ向から反している。 カ地震保険確認欄の趣旨地震保険確認欄は,保険契約者の意思をより明確に確認することによって,①地震保険の契約洩れを防止する一方,②災害時の保険金支払いに当たって地震保険付帯の有無にかかるトラブル発生の未然防止を図る目的で導入されたものである。 この地震保険確認欄の制度の導入後,前記の自動付帯による引受方式が採用された結果,次のような効果が生じていることを指摘している。 まず,①の地震保険の契約洩れを防ぐという点については,火災保険契約申込書に必ず地震保険確認欄を設け,地震保険を不付帯とする場合に押印するようにすることにより,損害保険会社が地震保険の存在を保険契約者に告知し,その内容を説明することが制度的に保障された。 次に,②の地震保険付帯の有無にかかるトラブル発生の未然防止という点については,地震保険確認欄に保険契約者が納得のうえ押印した場合を除いては,地震保険が付帯されたものとして取り扱わなければならず,事業方法書所定の「この契約を付帯しない旨の申し出」(地震保険不付帯の意思表示)は,必ず地震保険確認欄への押印の方法によらなければならないとされる一種の要式行為となった。 キ地震保険不付帯の意思表示の欠如 ① 意思の欠缺・表示上の錯誤 意思表示は,内心的効果意思 保険確認欄への押印の方法によらなければならないとされる一種の要式行為となった。 キ地震保険不付帯の意思表示の欠如 ① 意思の欠缺・表示上の錯誤 意思表示は,内心的効果意思が表示意思に導かれて表示行為として表出することにより成り立つが,本件において原告には,そもそも地震保険確認欄への押印という表示行為によって地震保険不付帯の法律効果をもたらそうという内心的効果意思を有しておらず,また,原告は,上記のような効果意思を表示しようとする表示意思も有していなかった。 被告は,原告に対し,情報面での著しい格差,地震保険及び損害保険会社の公共性,募取法をはじめとする実定法規則の趣旨,原則付帯方式の採用などの結果として,地震保険の存在とその内容,並びに地震保険確認欄への押印によって地震保険不付帯の法律効果が生じることについて情報提供するべき信義則上の義務を負担していたにもかかわらず,上記情報提供を行わなかった。 そのため,原告は,地震保険の存在はもとより,地震保険確認欄への押印の法的意味も知らなかった。 銀行員による火災保険契約申込書(乙2)所定の地震保険確認欄への押印は,被告が予め鉛筆で指示した位置への機械的な印鑑押捺にすぎず,原告の了知・了解なく無権限でなされたものであり,上記印影は原告の意思によって顕出されたものではなく,原告による地震保険不付帯の意思表示は意思の欠缺により不存在であり,あるいは,表示上の錯誤により無効である。 ② 代理権限の不存在 本件において,原告は,銀行において火災保険契約締結の手続きをしており,実際に原告の印鑑をその手に持って,火災保険契約申込書(乙2)に押捺したのは,住友銀行湊川支店の担当銀行員である 存在 本件において,原告は,銀行において火災保険契約締結の手続きをしており,実際に原告の印鑑をその手に持って,火災保険契約申込書(乙2)に押捺したのは,住友銀行湊川支店の担当銀行員である(甲7)。 その際,原告は,銀行員に対し,火災保険契約申込みの押印の代行を委ねたにすぎず,地震保険不付帯のための地震保険確認欄への押印の代行を依頼したことはない。 原告は,被告の情報提供義務不履行の結果,地震保険及び地震保険確認欄への押印の意味について,了知する機会を一切与えられておらず,このような自ら全く知らないことについての代理権限を,銀行員に授権することはなかった。 さらに,原告から印鑑を預かった銀行員は,乙第2号証の書類中,予め被告会社の従業員が鉛筆で丸印を付けていた所に,その指示どおりに押印をしている。銀行員は,押印にあたり,原告から印鑑を預かっておきながら,被告の指示に従って地震保険確認欄への押印をしたという意味で,原告の使者あるいは代理人の立場で行動しており,これは,自己契約ないしは双方代理(民法108条)をしていることにほかならない。 上記のとおり,原告は,住友銀行の銀行員に対し,地震保険不付帯の意思表示について代理権限を与えたこともなければ,地震保険確認欄への押印を指示したこともなく,上記銀行員が被告の指示に従って震保険確認欄への押印をしている点については,民法108条の適用があることからすれば,代理権限の不存在は明白である。 したがって,本件において,仮に,乙第2号証の地震保険確認欄への押印により,地震保険不付帯の意思表示が成立したとしても,その効果は,無権代理を理由として,原告には帰属しない。 したがって,本件において,仮に,乙第2号証の地震保険確認欄への押印により,地震保険不付帯の意思表示が成立したとしても,その効果は,無権代理を理由として,原告には帰属しない。 ③ 私文書の真正の推定について本件においては,乙第2号証の地震保険確認欄に「甲」の印鑑がが押捺されているが,上記印鑑は原告が所有する印鑑である。しかしながら,このことから直ちに民事訴訟法228条4項及びこれに関するいわゆる二段の推定を判示した判例により,地震保険不付帯の意思表示がなされていると考えてはならない。 上記の私文書の成立に関する二段の推定は,比較的簡単な反証によって覆るとされているところ(例えば,後藤勇・判例タイムズ1018号・100頁),委託背任型の間接反証として,本人が当該文書への使用とは異なる特定の目的のために他人に印章を交付した事実が立証されれば,たとえ印影が本人の印章によるとしても,それは,本人の意思に基づかないで顕出された疑いが生じる結果,私文書の成立についての推定は妨げられる。 本件においては,原告は,火災保険契約を締結するため,自己の印鑑を銀行員に手渡して押印を代行してもらったものであって,署名も自らはしていないという状況にあった(甲7)。 そして,被告ないしその保険代理店は,乙第2号証の調印現場に立ち会っておらず,地震保険に関する如何なる情報提供も行わず,そのため,原告は,地震保険について,そのようなものが存在するということ自体を含め,一切何も知らなかった。 本件において,原告は,地震保険のことなど何も知らなかったのであって,地震保険不付帯の意思表示をするために,銀行員に対して自己所有の印鑑を交付したこと 一切何も知らなかった。 本件において,原告は,地震保険のことなど何も知らなかったのであって,地震保険不付帯の意思表示をするために,銀行員に対して自己所有の印鑑を交付したことなど一切なく,地震保険確認欄(乙2)への押印は,原告から火災保険契約締結のための押印代行を依頼された銀行員が,その委託の趣旨に違反して原告に無断で,権限もないのに行ったものである。 したがって,本件においては,地震保険確認欄に原告の印章による印影が存するものの,これは原告から火災保険契約締結のための押印代行を委託された銀行員が委託の趣旨に違背して無断で押印したものであって,私文書の成立に関する推定は働かず,結局のところ,原告は,地震保険不付帯の意思表示をしていないことになり,本件においては,地震保険は,自動付帯されている。 ④ 黙示の意思表示について事後的に送付された保険証券写し(甲1)の下欄に,「地震保険金額欄に金額の記載がない場合は地震保険契約はお引受けしておりません。」との記載があるが,これにつき原告が異議を述べなかったからといって,原告が黙示的に地震保険を付帯しない意思を表示していたものと解することはできない。 異議を述べなかったことを理由として上記のような黙示の意思表示があったと評価するためには,そもそも,原告が事後的に送付された保険証券写し(甲1)の下欄に,上記記載があることを認識したことが必要である。実際には,原告は,上記記載のあることは本件訴訟になるまで気付かなかったし,上記印刷文字は,非常に小さい文字であり,気付かなくても無理はないものである。 また,地震保険確認欄が新設導入された趣旨は,保険契約者の意思を明確に確認す 付かなかったし,上記印刷文字は,非常に小さい文字であり,気付かなくても無理はないものである。 また,地震保険確認欄が新設導入された趣旨は,保険契約者の意思を明確に確認することによって,地震保険の契約洩れを防止する一方,災害時の保険金支払いに当たって,地震保険付帯の有無にかかるトラブル発生の未然防止を図ることに存するものであり(甲15の16頁),地震保険確認欄制度によって,地震保険不付帯の意思表示は,必ず地震保険確認欄への押印の方法によるとの制度が採用された以上(甲30の8頁・参考2),上記押印以外の方法による「黙示の意思表示」によって,地震保険が不付帯になされることなどありえない。 さらに,フランス法においては,契約締結後に送付される文書に記載された条項については,契約締結前に交付される文書と異なり特段の注意が払われないことが通常であることから,文書作成者の側で,相手方がその条項を認識した上で承認したことを証明しなければ,相手方に対抗できないとされており(甲33),本件における甲第1号証の効力を考える上で参考になる。 本件における甲第1号証記載の文言について,被告は,原告がこれを認識したうえで承認したことの証明などしていないのであって,このような文書の事後的送付をもって,契約締結段階における情報提供義務の懈怠が治癒されることはない。 ク地震保険契約締結に関する意思の合致被告は,その事業方法書において,「当会社は,地震保険の元受保険を法第2条第2項第3号の規定に従い,普通火災保険(住宅火災保険を含む,以下同じ),住宅総合保険,店舗総合保険,長期総合保険または団地保険に付帯して引き受ける。ただし,保険契約者からこの契約を付帯しない旨の申し出があった場合はこの限 ,普通火災保険(住宅火災保険を含む,以下同じ),住宅総合保険,店舗総合保険,長期総合保険または団地保険に付帯して引き受ける。ただし,保険契約者からこの契約を付帯しない旨の申し出があった場合はこの限りではない。」と定めて,地震保険の付帯方式につき原則付帯方式を採用し,かつ,自社で使用する火災保険申込書の書式には,地震保険確認欄を設けて,地震保険不付帯の意思表示は同欄への押印の方法によってなすべきことを書式上も明らかにしている。 原則付帯方式を採用した事業方法書及び地震保険確認欄を設けた火災保険申込書の書式により,被告は,火災保険契約の契約者に対して,地震保険付帯の意思表示を一律かつ包括的に行っていると見られる。 他方,原告にとっては,原則付帯方式を採用した事業方法書及び地震保険確認欄を設け,地震保険に加入しない場合にのみ押印することとなっている火災保険契約申込書の書式は,約款として機能することになり,判例上採用されている,いわゆる意思推知説によって,原告は,火災保険契約締結に当たっては事業方法書(約款)記載のとおり,地震保険契約を付帯しない旨の特段の申し出をしない限り,自動的に地震保険に加入することになる。 原告は,上記の如く,原則付帯方式による引受方式が採用されている状況のもとで,被告に対し家計火災保険の契約を申し込んだものであり,家計火災保険の契約には自動的に地震保険が付帯される結果,家計火災保険の契約申込みの意思表示には,原告の知・不知にかかわらず,地震保険契約の申込みの意思表示を含むことになる。地震保険は法律上,単独では申し込むことができず,必ず他の家計火災保険に付帯されるものであるから(地震保険法2条2項3号),そもそも地震保険契約の申込みの意思表示が,家計火災保険の申込みの意思 る。地震保険は法律上,単独では申し込むことができず,必ず他の家計火災保険に付帯されるものであるから(地震保険法2条2項3号),そもそも地震保険契約の申込みの意思表示が,家計火災保険の申込みの意思表示と独立して単独でなされるようなことは,法律上あり得ない。 また,実質的に考えても,火災保険契約の契約申込者は,地震後の火災であっても,広汎な地震免責条項が適用されるとは夢にも思わず,素朴に,火災で契約目的物が損害を受けた場合には地震であろうがなかろうが保険金が支給されるものと考えて火災保険契約を締結するのが通常であり,原告もそのような意思を有していたものである。黙示的にではあれ,地震保険契約締結の申込みの意思表示をしていることは明らかである。 したがって,原告と被告との間には地震保険契約締結の意思の合致が存する。 ケ事後的な保険証券写しの送付について被告は,契約締結手続き終了後に,原告に対し,保険証券写し(甲1)を送付したと主張している。 しかし,上記事後的な書面の送付は,被告の,契約締結時における情報提供義務の不履行を是正し,説明を代替する効果を有しない。 すなわち,そもそも,地震保険の存在さえ知らない原告に対し,蟻よりも小さいような文字で地震保険不付帯の旨を印刷した書面を送付しても原告がこれに気付く可能性は小さく,むしろ,契約締結時に提供すべき地震保険に関する情報を提供しなかった帰責事由のある被告において,その帰責性を脱却するべく,遅ればせながらも,より明確な情報提供をなすべき責務があるいうべきである。このような小さい文字で欄外に印刷された文章を,送付された契約者が読むということは通常期待できず,その意味では,原 却するべく,遅ればせながらも,より明確な情報提供をなすべき責務があるいうべきである。このような小さい文字で欄外に印刷された文章を,送付された契約者が読むということは通常期待できず,その意味では,原告が甲第1号証送付後において被告に対し地震保険とは何かとの問い合わせをしなかったとしても当然である。 また,重要なのは,契約締結手続き終了後,事後的に地震保険に関する情報提供を受けたとしても,原告は地震保険に加入することができなかったという点である。すなわち,阪神・淡路大震災前においては,地震保険に加入できるのは,火災保険契約の締結時のみであり,事後的に地震保険不付帯の事実を告知されたとしても,原告は地震保険に加入することはできなかった(甲31)。 したがって,事後的な保険証券写しの送付をもってしては被告の契約締結時における情報提供義務の不履行を糊塗することはできないというべきである。 コ成立する地震保険契約の内容特定地震保険の当事者,保険目的物については,地震保険が家計火災保険契約に付帯して締結される関係上,付帯される火災保険契約におけるのと共通である旨規定されている(地震保険約款23条)。 また,地震保険の保険料率は,保険の目的が建物か家財かの区分,建物の所在地域及びその構造によって,予め決められており,保険金額さえ確定すれば自動的に保険料が計算できる仕組みがとられている。 地震保険の保険金額は,唯一,自動的に決定されることなく,契約者に一定の選択の幅が認められている契約要素である。すなわち,地震保険契約の保険金額は,それが付帯される主契約の約定保険金額の30パーセントから50パーセントに相当する範囲で(地震保険法2条4号),かつ,保険目的物が居住用建物の場合に 約要素である。すなわち,地震保険契約の保険金額は,それが付帯される主契約の約定保険金額の30パーセントから50パーセントに相当する範囲で(地震保険法2条4号),かつ,保険目的物が居住用建物の場合には1000万円,生活用動産の場合には500万円を上限として(地震保険約款4条2項)決定される仕組みとなっている。 したがって,地震保険契約においては,当事者,保険目的物,保険料率,保険危険は個別に合意されることを要せず,法令または約款により定型的に定まるのであって,唯一,約款により自動的に決定されず契約者に選択の幅が認められているのは保険金額のみである。保険金額が決定されれば,保険料その他のすべての契約要素は約款により確定的に定まる。そして,地震保険金額についても,無限定な選択が許される訳ではなく,地震保険契約の保険金額は,それが付帯される主契約の約定保険金額の30パーセントから50パーセントに相当する範囲で,かつ,保険目的物が居住用建物の場合には1000万円,生活用動産の場合には,500万円が上限という制限が存する。 上記のとおり,地震保険契約において,未確定部分といえるのは,地震保険金額のみであり,しかも保険金額は,法令及び約款により一定範囲内に定まっているものであり,これが契約意思ないしは任意法規により具体的に確定することができるものであることは明白である。 サ地震保険金額の選択本件において,原告は,上記地震保険契約の保険金額について,次の三通りの主張をする。 第1次的には,原告が付帯し得る地震保険金額の上限,すなわち主契約の約定保険金額の50パーセント相当額が黙示的に選択されていると主張する。 原告は,火災保険約款中の地震免責条項の存在を知らず, 告が付帯し得る地震保険金額の上限,すなわち主契約の約定保険金額の50パーセント相当額が黙示的に選択されていると主張する。 原告は,火災保険約款中の地震免責条項の存在を知らず,地震後の火災であろうとも全額火災保険金が支払われると信じていたものであるから,これを合理的に解釈すると,原告の地震保険原則付帯火災保険契約申込み時の意思の内容としては,主契約の保険金額の100パーセントの地震保険金額を選択するつもりがあったと理解するのが正当である。ただし,上記のような主契約たる火災保険金額の100パーセントを保険金額とする地震保険は,法律上及び約款上存在しないため,上記意思は法律及び約款の制約を受ける結果,約款及び法律上の最上限である50パーセントの保険金額として,地震保険契約が成立することになると理解するのが,当事者の意思に最も合致する。 第2次的には,原告が,地震保険金額について何ら特定していないとすれば,中等の品質を定める民法401条1項の規定の趣旨に鑑み,これを類推し,地震保険契約の保険金額が主契約の約定保険金額の30パーセントから50パーセントの範囲とされているところから,その「中等」として,主契約の約定保険金額の40パーセント相当額が選択されていると主張する。 第3次的には,原告が地震保険不付帯の意思表示をしていない以上,ともかく地震保険契約は成立しているところ,地震保険金額については最小限でも主契約の約定保険金額の30パーセントとされているのであるから,これが選択されている,と主張する。 《被告の主張》(総論)原告の主張は,法的根拠さえ有しないものである。 火災保険と地震保険とは,根拠法令,保険約款,再保険制度等を異にする全く別個の保険である。 告の主張》(総論)原告の主張は,法的根拠さえ有しないものである。 火災保険と地震保険とは,根拠法令,保険約款,再保険制度等を異にする全く別個の保険である。 地震保険契約の締結について法令が定めるのは,特定の損害保険契約に付帯して締結されること,及び特定の損害保険の契約とは,火災相互保険,建物更新保険,満期戻長期保険であることの2点である。 すなわち,法の定めるところでは,地震保険契約は,単独で締結せず,必ず特定の損害保険に付け添えて締結されることとされているもので,その他に,特定の損害保険に加入すれば,当然に地震保険契約が成立する旨を定めた法令は存しない。 したがって,特定の損害保険に加入すれば,当然に地震保険契約が成立するという原告の主張は,その法的根拠を欠くものである。 (各論)ア原則付帯方式① 昭和54年6月の保険審議会の答申を経て,昭和55年に行われた地震保険法の第4次改定では,従来の自動付帯・原則自動付帯・任意付帯の3方式が,すべての火災保険につき原則付帯(原告の主張する内容ではない。)に一本化された。 ② 上記改正法の国会審議においては,「地震保険への加入並びにその付保割合及び保険金額については,契約者の意向を十分に尊重し,仮にも強制にわたることのないよう行政指導に万全を期すること」等の付帯決議がなされている。 ③ この付帯決議の趣旨は,原則付帯という用語によって,結果的にいわゆる強制付帯という契約者の負担を強制するような取り扱いにならないよう十分な留意を求めるという意味である。 ④ 地震保険の引受方法の根拠は,各保険会社が主務大臣に提出する「事 ゆる強制付帯という契約者の負担を強制するような取り扱いにならないよう十分な留意を求めるという意味である。 ④ 地震保険の引受方法の根拠は,各保険会社が主務大臣に提出する「事業方法書」であり,変遷は,事業方法書改定という形で行われてきており,現行の昭和55年7月1日改定による事業方法書の規定は,「当会社は,地震保険の元受保険を法第2条2項第3号の規定に従い,普通火災保険(住宅火災保険を含む,以下同じ。),住宅総合保険,店舗総合保険,長期総合保険または団地保険に付帯して引き受ける。ただし,保険契約者からこの契約を付帯しない旨の申し出があった場合はこの限りではない。」と定めている。 ⑤ この定めは,国会の付帯決議を受けて,地震保険の加入,火災保険への付帯が保険契約者の任意であることを明らかにしている。 ⑥ したがって,特定の火災保険に加入すれば,当然に地震保険契約が成立することを意味するのではなく,地震保険に関する合意が成立しない限り,地震保険契約は成立しないという当然のことを述べているにすぎない。 ⑦ さらに,原告の引用する「奥尻判決」においても,「地震保険契約の成立の有無」の項で,「地震保険契約は,火災保険と同時に,これに付帯して契約を締結することを必要とするが,火災保険契約とは保険約款を異にする別個の契約であることは明らかである。したがって,地震保険契約が締結され,契約が成立したというためには,契約申込者が,地震保険の契約内容(保険の目的,保険金額,保険料)を確定した契約締結の申込みの意思表示をすることが必要とされる。」(甲32の23頁)旨を判示して,被告の主張を裏付けている。 イ地震保険不付帯の意思表示① 地震保険契約に関する意思確認方法は, 申込みの意思表示をすることが必要とされる。」(甲32の23頁)旨を判示して,被告の主張を裏付けている。 イ地震保険不付帯の意思表示① 地震保険契約に関する意思確認方法は,火災保険契約申込書に「地震保険契約は申込みません。」と記載された「地震保険確認欄」を設ける形式によって行っている。 本件において,原告は「地震保険確認欄」に押印をして,地震保険を付保しない意思を明確にしている。 ② 火災保険契約を締結する動機については,建物の購入又は建築のための資金融資を受けるにあたり,金融機関のために建物に抵当権を設定し,かつ,当該建物に火災保険契約を設定して保険金請求権に質権を設定するということが多い。これは,金融機関から融資を受ける条件として義務的に火災保険契約を締結しているということができる。 本件においても,原告は,建物新築費の融資を受ける条件として火災保険契約を締結していることが明らかである。 本件では,原告は株式会社住友銀行湊川支店から住宅ローン融資を受け,上記融資について,原告と株式会社総合保証との間で保証委託契約を締結し,株式会社総合保証の有する求償債権を担保するため,新築建物に同会社を抵当権者とする抵当権を設定するとともに,同会社を質権者として上記新築建物に係る火災保険金請求権に質権を設定しているという案件である。 ③ 次に,火災保険契約申込書の「申込人」欄や「所在地」欄,質権設定承認請求書の「被保険者氏名」欄の各記載及び押印箇所の鉛筆○印を誰が行ったかという点につき,原告は,被告が行ったと主張するが,次に述べるとおり,被告(代理店を含む。)は,上記各箇所の記載などは行っておらず,原告の主張は,事実に反するものである。 火災 つき,原告は,被告が行ったと主張するが,次に述べるとおり,被告(代理店を含む。)は,上記各箇所の記載などは行っておらず,原告の主張は,事実に反するものである。 火災保険契約申込書及び質権設定承認請求書兼承認書と一体となった書面(乙2)は,被告で使用している書式ではなく,金融機関側(融資銀行又は保証会社)が作成・使用している申込書面である。 このことは,火災保険契約の申込先である被告会社名「住友海上火災保険株式会社御中」のうち,「住友海上火災」だけがゴム印となっており,「保険株式会社御中」は印刷文字であり,さらに,「質権者(債権者)」欄の「株式会社総合保証(大阪),(協定により押印省略)」の記載が印刷文字となっていることから明らかである。 従って,上記書面中の前述した印刷欄の○印を含む記載について,金融機関側でなされているものなのである。 ④ 上記書面の前述した記載及び○印欄への押印した書面が,火災保険契約申込書面として被告代理店である「ギンセン」に届けられ,上記代理店は「申込人」「所在地」及び「被保険者」以外の記載をして,保険料を領収したうえで,火災保険契約の申込みを承諾したことによって,火災保険契約が成立するに至ったということなのである。 ⑤ 原告は,融資銀行の担当者があたかも被告の代理人であったかのような主張をしているが,前述のとおり,融資銀行の担当者は,被告の代理人となり得ず,むしろ,原告は,住宅ローン融資の条件として,義務的に保証会社に対する質権設定のために,火災保険契約を締結しており,その手続のすべてを融資銀行に依頼しているのであるから,融資銀行が原告の代理人又は契約の代行者であったことは明白な事実である。 証会社に対する質権設定のために,火災保険契約を締結しており,その手続のすべてを融資銀行に依頼しているのであるから,融資銀行が原告の代理人又は契約の代行者であったことは明白な事実である。 原告は,火災保険契約申込書を含め,融資に必要な書類については,原告の陳述書によれば,「私は,住友銀行湊川支店に出向いた際,住宅ローン関係の書類にたくさん押印しましたが,その中には,火災保険契約に関する書類もあったと思います。」(甲7の3頁)と述べており,原告自ら火災保険契約書を含む書類に押印したことを自認しているのである。仮に,原告主張のとおり,原告が,金融機関の担当者に押印をしてもらったとしても,前述のとおり,被告において押印欄の指示をしていないのであるから,原告の押印は,すべて原告の責任において金融機関の担当者に押印を任せていたということになり,押印について,被告は一切関与していないことが明らかである。 ⑥ 更に,被告は原告に対して保険証券写し及び保険約款を送付しており,保険証券写しには,「地震保険」欄の「保険金額」及び「保険料」が空欄となっていて,地震保険を付保していないことが明らかとなっているだけでなく,上記保険証券写し中の「ご注意」欄には,「地震保険金額欄に金額の記載がない場合は,地震保険契約はお引受けしておりません。なお,この場合は地震による倒壊等の損害だけでなく,地震による火災損害(地震による延焼損害を含みます。)についても保険金は支払われませんので,ご注意ください。」と明記しており(甲1),原告が加入した保険契約内容を再確認できるように配慮がなされている。 原告は,上記保険証券写しの内容について,万一,地震保険を付保する意思を有していたならば,被告に対して異議の申出をす が加入した保険契約内容を再確認できるように配慮がなされている。 原告は,上記保険証券写しの内容について,万一,地震保険を付保する意思を有していたならば,被告に対して異議の申出をすることも可能であり,さらに,火災保険契約締結後においても,地震保険を付保することが可能であったが,原告から異議の申し出や地震保険付保の申し出などは一切なかった。そうすると,原告は,本件火災保険契約を締結する意思は有していたものの,地震保険については,付保しない意思表示が原告の真意によるものと推認できるだけでなく,地震保険が付保されていないことについて,黙示的にその意思表示をしていたものと解することができる。 ⑦ 本件のように,主契約(火災保険契約)の保険期間が2年以上の場合には,火災保険契約の保険期間中途においても,始期を主契約年度の開始日(始期応答日)に合致させることによって,地震保険契約を主契約に付帯することができたのである(乙42)。 ウ地震保険契約の不成立① 原告と被告との間で,地震保険契約の合意がなされておらず,従って,契約が成立することはあり得ないものである。 ② 前述のとおり,火災保険と地震保険は別個の保険契約であるから,原告が地震保険を付保する場合には,地震保険契約について,保険金額,保険料その他について被告との合意が必要であるが,本件では原告と被告との間において,地震保険契約に関する合意がなされていないこと,地震保険の昭和55年の第4次改定によって,すべての火災保険につき「原則付帯」方式に一本化されたが,この第4次改定では,国会の審議において,「地震保険への加入並びにその付保割合及び付保金額については,契約者の意向を尊重し,仮にも,強制にわたることのないよ 険につき「原則付帯」方式に一本化されたが,この第4次改定では,国会の審議において,「地震保険への加入並びにその付保割合及び付保金額については,契約者の意向を尊重し,仮にも,強制にわたることのないよう行政指導に万全を期すること」等の付帯決議がなされており,被告の事業方法書も,この付帯決議に基づいて,契約者の任意性を尊重した内容となっており,任意付帯と同様の引き受け方法を行っていること,そして契約者において地震保険に加入する意思があるか否かについては,「地震保険確認欄」によって,意思確認を行っているが,この方法は,昭和55年の第4次改定前である昭和52年から行われていること,本件において,原告は,「地震保険確認欄」に押印をして地震保険を付保しない意思を明確にしていることなどから見れば,地震保険契約が成立していないことが明白である。 (2) 情報提供義務違反を理由とする損害賠償請求《原告の主張》(総論)被告は,原告に対して信義則上,地震免責条項及び地震保険に関する情報提供義務を負担しているにもかかわらず,上記義務を懈怠し,原告が地震保険確認欄への押印の意味を知り得ない態様で同欄に機械的に印影を顕出させ,もって,原告が地震保険を付帯する機会を剥奪したものであり,原告が付帯した蓋然性のある地震保険金相当額である金900万円の損害賠償義務を負担する。 (各論)ア情報提供義務事業者と消費者との情報量及び情報分析能力の格差が信義則上看過し得ない程度に達している場合(情報面での格差),あるいは,事業者が,当該事業に精通した専門家として,それに関する知識のない一般消費者 事業者と消費者との情報量及び情報分析能力の格差が信義則上看過し得ない程度に達している場合(情報面での格差),あるいは,事業者が,当該事業に精通した専門家として,それに関する知識のない一般消費者を顧客として事業を展開し利益をあげており,事業者に寄せられる社会的信頼に応える責務があると認められる場合(事業者の社会的責任)には,事業者は,消費者に対して情報提供義務を負担すると一般に理解されるところ,本件では,下記の事由が存在するから,被告は,原告に対して,地震免責条項の存在・内容,地震保険付帯方式の各点につき,情報提供をするべき義務を信義則上負担していた。 記① 理論的根拠(ア) 情報面での格差保険は,無形不可視の役務商品であり,その内容は約款により定型化されているものであるところ,保険約款を作成した保険会社は,自ら作成した約款条項の内容を熟知しているのに対し,家計保険の契約者である消費者側は,膨大かつ複雑な約款条項をいちいち吟味する能力はなく,保険約款の条項に関する知識は著しく乏しく,その情報格差は非常に大きい。 特に,地震保険については,保険審議会の答申においても,消費者に情報が乏しいことが指摘されており,一般の消費者は,説明を受けなければ,火災保険約款における地震免責条項も知らなければ,その地震免責条項で免責される範囲を付保する保険として地震保険制度が存在すること自体も知らないのが通例である。 このような現実に存在する情報面での格差は,情報提供義務を根拠付ける。 (イ) 地震保険に関する情報の重要性地震保険に関する情報は,消費者が,地震災害 このような現実に存在する情報面での格差は,情報提供義務を根拠付ける。 (イ) 地震保険に関する情報の重要性地震保険に関する情報は,消費者が,地震災害にどのように対処するかを決定するについて不可欠の情報であり,従前の裁判例からみて,地震保険に関する情報は,募取法16条1項1号所定の「保険契約の契約条項のうち重要な事項」に該当する。また,適正な情報提供の徹底は大蔵省通達によっても強調されているところである。 (ウ) 地震保険制度自体の持つ公共的性格地震保険制度は,新潟地震の後,火災保険が地震免責条項の存在により,地震災害には全く役に立たないことが国会で批判され,大蔵大臣から,地震災害に際しての国民の生活安定に資する制度をすみやかに確立する必要があるが,その方策如何との内容の諮問を受けた結果,保険審議会が制度発足を答申したとの歴史的由来をもつ。 このようにして,発足した地震保険制度は,「地震等による被災者の生活の安定に寄与することを目的とする」(地震保険法1条)ものであり,国が再保険引受の形で財政的支援を行っている。国家的事業としての取り組みがみられる社会公共性の高い制度である。 このような公共性の高い制度については,契約窓口となっている損害保険会社は,適切に国民に対して情報提供をすべき義務がある。 (エ) 損害保険会社自体の公共性保険会社が営む保険業は,公共性があり,大蔵省を主務官庁としてその監督を受けているところ,募取法の規定を受けて,大蔵省は保険会社に対して,昭和58年1月に,契約者に対して正確適切な情報を提供する上で募集文書の果たす役割は,より重要になってきており,契約者に本来 監督を受けているところ,募取法の規定を受けて,大蔵省は保険会社に対して,昭和58年1月に,契約者に対して正確適切な情報を提供する上で募集文書の果たす役割は,より重要になってきており,契約者に本来提供すべき情報を提供しなかったために契約者の判断を誤らせることのないように厳に留意すること,平成5年5月には,保険募集に際しては,契約者に商品内容の説明を十分に行うことを指導し,また,代理店による契約者に対する商品内容の説明には,齟齬を来すことのないよう指導の徹底を図るべきこと,保険会社は,公共性の高い免許法人であり,社会的批判を招くことがないように,各種法令の遵守に特段の努力を払うべきことを指導している。 (オ) 損害保険会社の地震保険引受に関しての国民からの受託者的地位地震保険は,単なる民間企業が営利目的で販売する保険商品ではなく,政府が再保険の形で関与する公共的な被災者への安全策であり,立法により創設された制度である。だからこそ,国会が関与し,地震保険制度について国民的な議論がなされているのである。 地震保険は,家計火災保険に付帯されて締結される仕組みとなっており(地震保険法2条2項3号),損害保険会社を通じて家計火災保険と一緒に抱き合わせで販売されることになっているため,地震保険の引受窓口は損害保険に一本化されており,一般市民は,損害保険会社から説明を受けなければ,地震保険制度についての情報を受け得ない立場に置かれている。 損害保険会社は,公共的性質を有する地震保険について,国民との接点となり,その引受の窓口となる立場にある。被告ら損害保険会社には,政府の委託を受けて地震保険の説明をなし,国民にこの制度を広く知らしめて,「地震等による被災者の生活の る地震保険について,国民との接点となり,その引受の窓口となる立場にある。被告ら損害保険会社には,政府の委託を受けて地震保険の説明をなし,国民にこの制度を広く知らしめて,「地震等による被災者の生活の安定に寄与する」(地震保険法1条)ため,公的な役割を果たす責務が存したものである。 ② 制度的根拠(ア) 地震保険意思確認欄制度昭和52年7月に設けられた地震保険意思確認欄の制度は,火災保険契約の締結時に,契約申込者に対して,火災保険における地震免責条項の存在と地震保険の存在,特に地震火災による損害について火災保険金が支払われないことを明確に記載した書面を必ず交付して,十分に説明して,地震保険に加入するか否かの意思確認を十分にして,地震保険を選択する意思決定の機会を十分に与え,地震保険意思確認欄に押印させることによって,加入しない場合の意思をより明確にする制度を創設することとして,これを実行することを損保業界が決定したものであり,火災保険契約申込者の地震保険選択の意思決定権,ないし,自己決定権の行使の機会を制度的に保証するためのものであると評価することができる。 このような地震保険意思確認欄制度は,損害保険会社において保険契約者に必ず地震保険制度を説明し,これを付帯するか否かについての意思決定の機会を与えようとする制度的保障をしたものと位置付けられる。 (イ) 原則付帯方式制度地震保険は,原則付帯方式により引受けされる。 具体的には,各損害保険会社は,保険事業の免許を受けるために主務大臣に提出すべきものとされている事業方法書(旧保険業法1条2項2号)の中で,「地震保険の元受保険を地震保険に関する法律2条 具体的には,各損害保険会社は,保険事業の免許を受けるために主務大臣に提出すべきものとされている事業方法書(旧保険業法1条2項2号)の中で,「地震保険の元受保険を地震保険に関する法律2条 2項3号の規定に従い,普通火災保険(住宅火災保険を含む。),住宅総合保険,店舗総合保険,長期総合保険又は団地保険に付帯して引き受ける。ただし,保険契約者から地震保険を付帯しない旨の申し出があった場合はこの限りではない。」というような規定をしているものである。 原則付帯方式は,保険会社において契約時に必ず地震保険の説明を行い,契約者が地震保険を付帯しない旨の意思表示を行わない限り地震保険が付帯されるという制度であるから,原則付帯方式は端的に損害保険会社に地震保険の説明を義務付けた制度であると評価し得る。 ③ まとめ損害保険会社に,地震保険に関する情報提供義務が存することは,上記のとおり,理論的に,保険約款において情報面での格差が著しいこと,地震保険に関する情報が重要であること,地震保険制度が公共性を有すること,損害保険事業が公共性の高い事業であることから基礎付けられる。また,損害保険会社の地震保険に関する情報提供義務は,地震保険意思確認欄制度及び原則付帯方式によって,制度的にも確立され,確固たる法的義務となっていたものである。 イ因果関係について① 地震保険意思確認欄制度・原則付帯方式地震保険については,地震保険に関する情報提供義務を制度的に保証するシステムとして,地震保険意思確認欄制度と原則付帯方式が採用されている。この両制度が合わさった結果,地震保険を付帯する場合には,何らの手続きも要しないが,地震保険を付帯しない場合には保険契約者がその旨の意 ムとして,地震保険意思確認欄制度と原則付帯方式が採用されている。この両制度が合わさった結果,地震保険を付帯する場合には,何らの手続きも要しないが,地震保険を付帯しない場合には保険契約者がその旨の意思表示として地震保険確認欄への押印をすることになる。したがって,因果の自然な流れは,地震保険を付帯する方向で流れており,地震保険に関する情報提供がなされず,地震保険の存在さえ知らされなかった保険契約者は,本来,地震保険確認欄への押印をわざわざすることもないから,自動付帯の帰結として,ことごとく地震保険に加入することになるのである。 ② 本件における因果関係論地震保険金相当額の損害賠償論において,因果関係の問題は,「損害保険会社側が,地震保険についての説明をしないまま地震保険確認欄への押印を促す行為に出なければ,保険契約者は地震保険確認欄への押印をしなかったか」という問題であると把握されるべきである。 被告は,この自然な因果の流れに介入し,地震保険に関する情報提供をしないまま,火災保険契約締結上の当然の必要事項であるかのように地震保険確認欄への押印を求めた。 すなわち,被告は,原告に対し,地震保険に関する情報提供義務を怠った上,地震保険を付帯しない形で保険料を予め事前に計算して原告に現金で用意させ,自己の手足として契約申込書作成に関与する銀行員に対し,契約申込書の書式中の地震保険確認欄に予め鉛筆で印をつけてここに原告の印鑑を押印してもらうよう指示をし,地震保険確認欄への押印の意味を原告が知り得ない態様のもとに,機械的に契約書を作成させた。 被告が地震保険に関する情報提供義務を怠り,原告に地震保険の加入・不加入の意思決定の機会を与えないまま,地震保険 味を原告が知り得ない態様のもとに,機械的に契約書を作成させた。 被告が地震保険に関する情報提供義務を怠り,原告に地震保険の加入・不加入の意思決定の機会を与えないまま,地震保険確認欄への押印を慫慂する行為が,全体として違法の評価を受けるのである。地震保険に関する情報提供をしないまま,地震保険確認欄に押印を促すという損害保険会社の作為が,信義則違反を構成し,この作為と押印による地震保険不付帯の結果との間の因果関係が判断されるべきものである。 原告は,地震保険についてはその存在も知らず,地震保険確認欄の存在も仕組み全く知らなかった。従って,原告は,敢えて地震保険を不付帯にするということなど考えもしていないし,地震保険確認欄にわざわざ押印することなど思いつきもしなかった。原告は,原則付帯方式の帰結として,自動的に地震保険に加入することができたものである。 被告による情報提供義務懈怠下での地震保険確認欄への押印慫慂行為がなければ,地震保険確認欄への原告の印鑑の押印はなかったであろうことは明白である。 ③ 反証としての地震保険不付帯の意思決定被告の情報提供義務の懈怠及び地震保険確認欄への押印慫慂行為がなければ,原告は自動的に地震保険に加入していた。 したがって,地震保険の説明を適正に受けていても,原告は,地震保険不付帯の意思決定をなしたであろうということは,論理的には反証として,被告において主張立証するべき事項である。 しかし,上記のような反証は,ドイツ法でいうところの「適法行為選択の異議」に該当し,現実に情報提供義務の不履行をしている被告が仮定的にであれ情報提供義務を尽くしたことを前提とする反証を行うことは,自己の態度に矛盾する な反証は,ドイツ法でいうところの「適法行為選択の異議」に該当し,現実に情報提供義務の不履行をしている被告が仮定的にであれ情報提供義務を尽くしたことを前提とする反証を行うことは,自己の態度に矛盾するものとして,信義則上許されない。 ウ損害被告は,地震保険に関する情報提供義務を懈怠したまま地震保険確認欄への押印を慫慂したことにより,原告が地震保険を付帯する機会を奪ったものであり,その損害額は,原告が地震保険に加入していたならば得られたであろうところの地震保険金相当額である。 原告が地震保険確認欄に押印をせず,地震保険に加入していた場合に成立することになる地震保険契約の保険金額は,主契約の約定保険金額の50パーセント,40パーセント,あるいは30パーセントの金額であって,原告はこれらの金額の地震保険金を受け取ることができたはずであり,これが賠償されるべき損害額となる。 エ自己決定権侵害による慰謝料請求被告が,原告に対し,地震保険に関する情報提供をせずに地震保険確認欄への押印を慫慂した行為が,信義則に反し違法であると評価されるものの,地震保険加入の因果関係と損害が立証されていないと判断される場合に備え,原告は予備的に,地震保険加入についての意思決定の機会及び地震保険に加入していれば自己の財産の損害を担保することができた可能性という財産的な利益を,違法に侵害されたものとして,その精神的苦痛に対して,地震保険に加入したであろう蓋然性の程度を考慮した慰謝料を請求する(前記ウと同額)。 オプラスアルファの違法行為論に対する反論情報提供義務を懈怠したまま地震保険確認欄への押印を慫慂した場合には,被告は,原告に対する損害賠償責任を負担するのであって )。 オプラスアルファの違法行為論に対する反論情報提供義務を懈怠したまま地震保険確認欄への押印を慫慂した場合には,被告は,原告に対する損害賠償責任を負担するのであって,上記情報提供義務の懈怠以上に,被告において,積極的に虚偽説明をなしたり,原告の誤解を助長したりするといったプラスアルファの違法行為があった場合にのみ,損害賠償義務が発生するものではない。 被告は,地震保険の加入・不加入を決定する上で不可欠な,地震保険が存在すること,その付保する保険事故,対価としての保険料,支払われる保険金額といった基本的な情報の提供さえ怠っており,原告から地震保険付帯についての機会を事実上奪ったものである。前記のとおり,地震保険制度に関する情報提供義務は法的な義務であり,特に原則付帯方式が採用されている現状のもとで,上記義務の懈怠があった場合には,積極的な虚偽説明あるいは誤解助長行為を要せずして損害賠償請求が認められてしかるべきである。 募取法16条1項1号が,「保険契約の契約条項のうち重要な事項を告げない行為」を刑罰をもって強く禁止している趣旨からみても,情報提供義務違反(不告知)が,積極的な虚偽説明あるいは誤解助長行為に比肩する重大な違法行為であることは明白であり,情報提供義務の懈怠は,それだけで損害賠償請求を基礎付ける。 本件において,被告は,契約締結時に代理店さえ立ち会わず,地震保険制度について何も説明しておらず,原告は,地震保険制度の存在,保険事故の範囲,付帯方式,保険料など一切について知識がなかったが,このような地震保険制度について何の知識も有しない保険契約者は,決して稀な存在ではない。日本損害保険協会が作成した「阪神・淡路大震災に際し地震保険に寄せられた苦情・要望(事例集約表)」によれば,地震 このような地震保険制度について何の知識も有しない保険契約者は,決して稀な存在ではない。日本損害保険協会が作成した「阪神・淡路大震災に際し地震保険に寄せられた苦情・要望(事例集約表)」によれば,地震保険を知らなかった等の苦情が存するとされる(甲36の39頁)また,保険審議会の答申においても,国会の答申においても,保険会社の説明不足が指摘されてきたものである。地震保険制度について原告が知識を有している保障もないのに被告は,代理店さえ契約調印の場に立ち会わせることをせず,もちろん,パンフレットも交付せず,地震保険制度にについて何らの説明もしなかったのである。このような情報提供義務の懈怠は,それ自体看過することのできない重大な違法行為であり,被告は,上記義務違反を理由として,原告に対し損害賠償責任を負担するというべである。 《被告の主張》(総論)地震免責条項については,主位的請求に対して,保険約款の有効性・妥当性に関して主張したとおりである。 地震保険については,その開示説明義務は,地震保険の普及を図るためのサービス業務として要請されているだけであり,法的義務となっているものではない。 保険会社は,このサービス業務として,協会による各マスコミ媒体を通じてのピーアール活動だけでなく,保険会社の地震保険の説明を含むパンフレットなどを用意して情報を提供している。 特に,平成5年7月17日に発生した北海道南西沖地震による火災については,連日の如く地震保険に関する報道がなされている。 そして,前述のとおり,被告は,原告に対して保険証券写しを送付して,原告が地震保険に加入していない旨の明確なる情報さえ提供している。 (各論) 関する報道がなされている。 そして,前述のとおり,被告は,原告に対して保険証券写しを送付して,原告が地震保険に加入していない旨の明確なる情報さえ提供している。 (各論)ア情報提供義務について① 前述のとおり,被告は,必要な情報を提供している。 ② 募取法16条1項は,保険会社の役員,使用人等が不当勧誘・募集行為を行うことなどを禁止し,これを取り締まるためのいわゆる取締法規であって,直ちに債務不履行または不法行為の基礎となる注意義務を課すものではない。 ③ 被告は,地震保険に関する情報提供については,地震保険の普及を図るためのサービス業務として要請されているのであって,保険会社の保険契約者に対する法的義務となっているものではないことを主張している。 ④ 「奥尻判決」においても,原告の引用部分のほかに「一般的な情報開示義務の存在の法的評価の成立について消極的に働く事実」(669頁~679頁)をも検討したうえで,「本件各火災保険契約締結時において,被告ら保険会社に,地震免責条項及び地震保険の情報について,一般的な情報開示説明義務が存在する旨の原告らの主張は,直ちに採用することができず,原告らの上記主張は,その義務違反の事実の有無について判断するまでもなく失当であると言わざるを得ない。」(682頁)と判示したうえで,さらに,「被告ら保険会社において,火災保険契約における地震免責条項及び地震保険に係る情報について,原告ら契約申込者に対して,情報を開示し,十分に説明して,十分な理解を得るべきことが,直ちに損害賠償責任に結びつく一般的な法的義務を構成すると解することは,少なくとも,本件各火災保険契約締結時において困難であると解されるのである。」(683 分に説明して,十分な理解を得るべきことが,直ちに損害賠償責任に結びつく一般的な法的義務を構成すると解することは,少なくとも,本件各火災保険契約締結時において困難であると解されるのである。」(683頁)と重ねて判示している。 ⑤ 被告の主張の要旨は,一般の火災保険は,すでに100年以上もの歴史を有していて,一般人にとって極めて馴染み深い保険であること,また,地震保険は,昭和41年5月18日に「地震保険に関する法律」が制定され,すでに30年以上の歴史を有しており,公知あるいは周知の保険となっていること,地震保険の内容の開示説明は,地震保険の普及をはかるためのサービス業務として要請されているものであり,保険会社の保険契約者に対する法的義務となっているものではないこと,保険会社は,このサービス業務として,日本損害保険協会による各マス媒体を通じてピーアール活動を行っており,また,保険会社において地震保険の説明を含むパンフレットを用意して,保険契約者において情報を受けられるようにしていること,関東大震災以来,大きな震災が発生するたびにマスコミ報道がなされており,特に,平成5年7月17日に発生した北海道南西沖地震による火災については,連日の如く報道が続けられ,その報道の中で地震保険が取り上げられていたこと,そして,原告との,火災保険契約については,原告に対して「保険証券写し」及び「約款」を送付しており,「保険証券写し」には一見して原告が地震保険に加入していないことが明らかとなっていること等である。 ⑥ 原告の主張によると,保険会社(または代理店)が,保険契約者と直接面接をして,説明をする必要があるかのような内容となっている。 しかし,原告のこの主張は,火災保険契約締結に至る各種の態様を全く無視する 告の主張によると,保険会社(または代理店)が,保険契約者と直接面接をして,説明をする必要があるかのような内容となっている。 しかし,原告のこの主張は,火災保険契約締結に至る各種の態様を全く無視することとなる。火災保険契約の締結にあたり,保険会社(または代理店)の担当者と保険契約者とが直接対面してなされる場合,保険契約者が自分で保険契約の申込みを郵送あるいは持参してなされる場合,そして本件のように保険契約者が,積極的に火災等によって自己の財産に生じる損害を担保するためでなく,金融機関からの融資を受ける条件として義務的に火災保険に加入する場合などの態様が存する(奥尻判決,677頁,678頁)。また,近時の損害保険については,外資系の保険会社において,いわゆる通信販売がなされていることや,航空機を利用する人は従前から空港において自動販売機による保険加入手続きも可能である。このような通信販売や自動販売機による保険加入手続きにおいては,保険会社側の担当者が口頭で直接に説明することは全く予定されていない。 ⑦ 本件においては,すでに述べてきたとおり,原告は,銀行から住宅ローン融資を受ける条件として火災保険契約の締結を求められ,原告は,これに応じて火災保険契約を締結したものであり,被告は原告に対して,「保険証券写し」や「約款」を送付しており,特に「保険証券写し」には,地震保険を付保していないことが明記されており,原告が加入した保険契約内容を再確認できるようになっているのである。 仮に,原告において「保険証券写し」の内容や「約款」について疑問が存したのであれば,被告またはその代理店に問い合わすことも可能であり,また,日常生活に関するハウツウ図書などによって確認することは容易なことである。 イ信義則違反につい ついて疑問が存したのであれば,被告またはその代理店に問い合わすことも可能であり,また,日常生活に関するハウツウ図書などによって確認することは容易なことである。 イ信義則違反について被告としては,私法全体の基本理念である信義則が企業対消費者間の附合契約の締結にも及ぶことを否定するものではないが,本件において,信義則違反と非難されるような事実は存しない。 なお,上記「奥尻判決」も,原告らの信義則違反の主張を退けている(甲32の19頁)。 ウ本件における信義則違反について① 原告は,本件火災保険契約申込書について,被告の従業員が「申込人」欄や「所在地」欄,質権設定承認請求書の「被保険者氏名」欄の各記載を行い,「地震保険確認欄」を含む押印箇所に○印をつけて押印を求め,金融機関の担当者にその押印を機械的に代行させており,これらのことが信義則に違反する行為態様であると主張している。 しかし,原告の上記主張は事実に反している。 ② 前述したとおり,本件火災保険契約申込書は,被告で準備している書式ではなく,金融機関側(融資銀行または保証会社)が作成・使用している申込書面であり,「申込人」欄,「所在地」欄,質権設定承認請求書の「被保険者氏名」欄の各記載がなされ,「地震保険確認」欄を含む押印がなされた書面をもって,被告に対して火災保険の申込みがなされたのである。被告の代理店である「ギンセン」において,上記記載以外の必要事項を記載して,保険料を領収して火災保険契約の申込みを承諾したものである。 ③ したがって,被告は,何ら信義則に反するような行為を行っておらず,また,「奥尻判決」が摘示した信義則違反の具体例のどの態様にもあて を領収して火災保険契約の申込みを承諾したものである。 ③ したがって,被告は,何ら信義則に反するような行為を行っておらず,また,「奥尻判決」が摘示した信義則違反の具体例のどの態様にもあてはまらないことが明白である。 ④ また,原告が,地震保険に加入する蓋然性を有していなかったことは,日本海中部地震(昭和58年5月26日発生)など数多くの地震が発生したものの,地震保険の契約件数減少が続いたこと(甲15の44頁),関西地区でも特に兵庫県において地震保険加入率が低かったこと(乙43),及び保険証券写しによって地震保険を付保していないことが明らかであったにもかかわらず,被告から異議の申し出や,その後の付保の申し出もなかったこと等から明らかである。 エ損害及び因果関係① 原告と被告との関係では,地震保険契約は成立しておらず,原告の請求は,法的根拠を有しないものである。 ② 被告には,前述のとおり,地震保険についての法的な情報提供義務はなく,サービス業務として十分な情報を提供している。 ③ また,被告は,何ら信義則に反するような行為を行っていない。 ④ したがって,原告の因果関係や損害に関する主張は,すべて失当である。 オ自己決定権侵害による請求について前述のとおり,被告は,原告の地震保険加入の意思決定などに対して,何らの侵害行為も行っておらず,原告の請求は理由がない。 (3) 事実に関する主張《原告の主張》原告は,本件建物を新築するため,新築費用の総額2500万円のうち金1200万円について住友銀行湊川支店で住宅ローンを組むこととした。 原告は,昭和60年12月末頃,上記住宅ローンの手続きをする は,本件建物を新築するため,新築費用の総額2500万円のうち金1200万円について住友銀行湊川支店で住宅ローンを組むこととした。 原告は,昭和60年12月末頃,上記住宅ローンの手続きをするため,住友銀行湊川支店に赴いたが,そのとき,応対に出たのは銀行員が一人だけであり,被告の従業員あるいは被告の保険代理店は居合わせなかった。 原告は,本件火災保険契約を,上記のとおり,住宅ローンの手続きをするため,住友銀行湊川支店に赴いた際に申し込んだものであるが,保険料については金20万円強であるから予め持参するように同支店の銀行員から事前に電話連絡があったため,これを持参したが,保険金額については,金1800万円であることを同支店に赴いた際にはじめて知らされた。 原告は,上記のとおり,住友銀行湊川支店に赴いて住宅ローンの手続きをした際,銀行員に自己の所有する印鑑を手渡して,住宅ローン関係の多数の書類に押印することを委ねたが,その多数の書類中の一枚が乙第2号証であり,原告は,自ら乙第2号証に押印したことはない。したがって,乙第2号証に押印されている印影は,すべて住友銀行湊川支店の銀行員により押捺されたものである。なお,乙第2号証の押印箇所に鉛筆で○印がつけられているのは,被告代理店の従業員が押印場所の指示をするために記載したものである。仮に,上記○印が銀行員によりつけられたものであったとしても,銀行員は,被告ないし被告代理店の締約補助者であるから,その行為は被告ないし被告代理店の行為と同視され,その帰責性には影響を与えない。 原告は,火災保険契約を締結すること自体は知っていたが,乙第2号証には,原告の署名その他自筆での記載は一切なく,すべての手書き文字は被告の従業員が記載したものである。したがって,原告は,乙第2 原告は,火災保険契約を締結すること自体は知っていたが,乙第2号証には,原告の署名その他自筆での記載は一切なく,すべての手書き文字は被告の従業員が記載したものである。したがって,原告は,乙第2号証の書類を,火災保険契約申込み手続きの際,自らの目で見ておらず,ここに地震保険確認欄が設けられていたことや,不動文字で地震保険への論及があることなど,全く認識していなかった。 原告は,火災保険契約締結の際,地震保険の存在など知らず,単純に地震の後であろうがなかろうが,本件建物が火災の被災に遭ったときは,火災保険金が支給されるものと思っていた。原告は,地震保険の存在や地震保険確認欄への押印によって地震保険不付帯となるといった仕組み等について,銀行員からも,被告ないしその保険代理店からも口頭で説明を受けたこともなければ,パンフレットなどの文書ももらったことがなく,一切の情報提供を受けることがないまま,火災保険契約締結手続きをした。 《被告の主張》原告の事実に関する主張は争う。 原告は,火災保険契約申込書を含め,融資に必要な書類については,原告の陳述書によれば,「私は,住友銀行湊川支店に出向いた際,住宅ローン関係の書類にたくさん押印しましたが,その中には火災保険契約に関する書類もあったと思います。」(甲7の3頁)と述べており,原告自ら火災保険契約書を含む書類に押印したことを自認しているのである。仮に,原告主張のとおり,原告が金融機関の担当者に押印をしてもらったとしても,前述のとおり,被告において押印欄の指示をしていないのであるから,原告の押印は,すべて原告の責任において金融機関の担当者に押印を任せていたということになり,押印について,被告は一切関与していないことが明らかである。 第3 当裁判所の判断〔主位的請求に あるから,原告の押印は,すべて原告の責任において金融機関の担当者に押印を任せていたということになり,押印について,被告は一切関与していないことが明らかである。 第3 当裁判所の判断〔主位的請求について〕 1 地震免責条項の適用の有無原告は,(1)本件建物の火災損害について,約款開示論により地震免責条項の拘束力は否定される,(2)地震免責条項は公序良俗違反である,(3)地震免責条項の解釈は限定的に解釈されるべきである,(4)地震免責条項は「不意打ち条項」に該当し約款の拘束力が否定される,(5)地震保険制度についての情報提供義務の懈怠があった本件においては地震免責条項の全面的な適用は排除される等,種々の事由を挙げて,本件建物の火災損害について,地震免責条項の適用はない旨主張する。 (1) しかしながら,原告の(1)の主張は,約款の個別的内容についての契約者の知,不知を問題とし,結局,約款に基づく附合契約を個別契約と同視するもので採用できない。 すなわち,火災保険契約は,附合契約によるべき典型的な契約類型というべきであり,約款の個別条項である地震免責条項自体を知っているか否かはさておき,保険契約は普通保険約款に従って契約内容が定まることは一般に知られているところであり,かつ,上記普通保険約款が合理的であると一般に信頼されていることは強く推定されるものである。 したがって,上記普通保険約款に従って保険契約がなされた場合は,特段の事情がない限り,保険契約の申込者は,上記普通保険約款に従う旨の意思を有するものと推認するのが相当である。そして,本件地震免責条項の適用についても同様と解すべきであって,保険者側が,地震による火災についても保険金が出る旨の積極的な説明をした,ないし,それと同視し得る特段の事情がない以上,普通 当である。そして,本件地震免責条項の適用についても同様と解すべきであって,保険者側が,地震による火災についても保険金が出る旨の積極的な説明をした,ないし,それと同視し得る特段の事情がない以上,普通保険約款に含まれる本件地震免責条項の適用があると解すべきである。 また,原告は,開示論の根拠として,①知り得ないものに同意は与えられないこと,②募取法16条1項1号,③信義則上の義務などを挙げるが,それらは,直ちに,原告の主張を基礎付けるものとはいえない。 (2) 原告の(5)の主張について,地震保険制度についての情報提供,説明の目的は原告の主張を前提としても,地震保険の付保の確認であるから,そうだとすれば,それを怠ったことが火災保険の約款中,地震免責条項の拘束力のみを否定する根拠にはなり得ず,上記主張も理由がない。 (3) 原告は,地震免責条項は「不意打ち条項」に該当し,約款の拘束力が否定されると主張する(主張(4))。 しかしながら,約款の拘束力及び地震免責条項の有効性は,火災保険発足時から認められてきたものであり,地震免責条項の有効性の判断は,約款中の条項を保険契約者の主観面における知,不知を問題とするのではなく,客観的合理性によって判断され,客観的合理性がある限り,約款の拘束力が認められているのである。 不意打ち条項論は,契約の外形から,条項内容が異常で非慣行的な場合に,その条項の拘束力を否定しようとするものであるところ,地震免責条項は,内容において異常でも非慣行的でもなく,不意打ちとはいえないから,地震免責条項の拘束力が否定されることにはならない。 すなわち,現行地震免責条項は,約款変更の際(昭和50年)に監督官庁により変更が認可され(弁論の全趣旨),合理性を有しているものであ 地震免責条項の拘束力が否定されることにはならない。 すなわち,現行地震免責条項は,約款変更の際(昭和50年)に監督官庁により変更が認可され(弁論の全趣旨),合理性を有しているものであるし,わが国以外においても,立法あるいは約款上,世界的に認められているのである。また,不意打ち条項論にいう「異常」と判断されるためには,その条項が約款による契約全体からして,合理的な一般人において想定することを期待することが不可能であることが必要と解されるところ,火災保険において,異常危険について免責条項があること,地震が異常危険に該当することを想定することは,合理的な一般人に期待することが不可能とはいい難いことからすると,地震免責条項が不意打ち条項に該当するとはいえない。 (4) 前示のとおり,地震免責条項は,現行の制度,運用を前提とする限り,その内容は合理的で社会的妥当性を有するものであるから,公序良俗違反をいう原告の主張((2))は理由がない。 (5) 原告は,地震免責条項の限定的解釈を主張する(前示((3)))。 しかしながら,地震免責条項にいう「地震」の意義を限定する必要はなく,「地震によって,」の意義も,地震と火災の発生ないし延焼に相当因果関係がある場合と解すべきである。 すなわち,原告は,「地震」の意義を「地震による地盤の揺れと同時に広範囲にわたって多発的に火災が生じ,被害に見合う保険金の支払をすると,損害保険会社の経済的基盤が危うくなるような地震」と限定解釈されるべきであると主張するが,上記主張は,地震免責条項に合理性が乏しいことを前提とするものであるところ,かかる前提に理由のないことは前示のとおりである。 (6) これを要するに,本件建物の火災損害について,地震免責条項の適用はない旨 地震免責条項に合理性が乏しいことを前提とするものであるところ,かかる前提に理由のないことは前示のとおりである。 (6) これを要するに,本件建物の火災損害について,地震免責条項の適用はない旨の原告の主張は理由がない。 2 本件火災の地震免責条項該当性(1) 被告が,原告との間で締結した本件火災保険契約(前示争いのない事実等(2))の普通保険約款には,地震免責条項が設けられており,「地震による火災及びその火災の延焼又は拡大による損害,並びに発生原因の如何を問わず,火災が地震によって延焼又は拡大して生じた損害」に対しては,地震火災費用保険金以外の保険金を支払わない旨規定されている(乙3の第2条第2項第2号)。 そして,本件火災保険契約締結の際,原告が上記約款によらない旨の意思を表示したとか,被告側の担当者が地震による火災についても保険金が出る旨の積極的な説明をした等の特段の事情の存在は,本件証拠上,これを認めることができない。 (2) 本件地震後の火災発生と消火活動の状況本件建物が,平成7年1月17日の本件地震後に発生した本件火災の延焼によって焼失したことは当事者間に争いがなく,証拠(乙1の火災調査報告書,火災原因認定書2,火災状況見分書,防火管理等調査書,原告本人)並び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実を認めることができる。 ア平成7年1月17日午前5時46分に発生した本件地震の直後の同日午前5時50分頃,本件火災は,神戸市a区b町c丁目d番e号A(84歳)方から出火したものと推測され,四周に延焼拡大し,大規模火災へと発展し,一般住宅及び各種用途対象物を含めて146棟全焼,2棟半焼,1棟部分焼,12棟ぼや,その計161棟,1万1500㎡を焼損した(原告の本件建物は,上記焼損域に 四周に延焼拡大し,大規模火災へと発展し,一般住宅及び各種用途対象物を含めて146棟全焼,2棟半焼,1棟部分焼,12棟ぼや,その計161棟,1万1500㎡を焼損した(原告の本件建物は,上記焼損域に含まれる。)。 イ出火建物付近では,都市ガスの配管が折れてガス漏れが生じていたため,次々と周辺の建物に燃え移っている(出火建物からの出火原因は,本件地震によって出火建物が倒壊したこと,出火が本件地震直後であること,上記ガス漏れで引火延焼している状況から,本件地震時に電気その他の火源から地震によって漏洩したガス若しくは倒壊した出火建物の可燃物に引火又は着火したものと推認される。)。 ウ兵庫消防署は,出火原因につき,地震災害続発のため原因調査が本件火災発生から10日後の1月27日になったこと,出火建物が全焼し十分な見分ができなかったこと,出火建物に居住していたA夫妻が死亡して情報を得られないこと等の理由から,出火箇所の認定,発火源等の特定ができないため不明火としている。 エ本件地震の直後から,神戸市内においては,同時多発的に火災が続発し,加えて,本件地震の結果,区域一帯の木造家屋の相当数が倒壊し,多くの住民が倒壊した家屋の下敷きとなり,このため,その救助に消防隊員が注力せざるを得ず,消火活動に十分な労力をさける状況ではなかった。 オ出火直後(午前5時55分頃)から,兵庫消防署情報通信部へ火災の発生の知らせがあったが,既にポンプ車など全車両が出動しており,本件火災現場には出火後暫くの間は出動できなかった。そして,午前6時30分頃,火災出動から一旦引き揚げてきた兵庫15小隊が火災発生を知らされ本件火災現場へ急行した。 カ前示の消防隊が現場到着時には,火災発生から40分程度経過していた った。そして,午前6時30分頃,火災出動から一旦引き揚げてきた兵庫15小隊が火災発生を知らされ本件火災現場へ急行した。 カ前示の消防隊が現場到着時には,火災発生から40分程度経過していたことから,湊菊公園の北側道路を挟んで接する建物が10棟ほど炎上・延焼中であり,火勢が凄まじく,さらに延焼拡大する様相を呈していた。現場一帯は,古くからの木造建物が多く,これら建物が倒壊し,建物間隔も非常に狭く密集し,ガス漏れしていたため延焼拡大が速やかで,消火活動に際しても断水のため消火栓が使用できず,また,応援車両もなく,消防力の絶対的な不足により,延焼を食い止め得る状況ではなく大規模火災へと発展した。 キ原告の本件建物は,同月17日午後0時30分頃,本件火災の延焼により焼失した。 ク本件火災の鎮圧は同月18日午前5時ころ,完全鎮火に至ったのは,火災発生の3日後である同月20日午前3時ころであった。 (3) 前示認定の事実,特に,本件出火の時間的,場所的状況に鑑みると,本件建物の火災損害は,「地震によって生じた火災の延焼による損害」に該当すると認められ,また,本件地震による消火栓の使用不能,消防車の出動の遅れ(約40分),初期の消火活動の支障,本件火災の延焼・拡大の状況,本件火災の出火から本件建物の焼失までの時間などによれば,本件建物の火災損害は,本件火災が地震によって本件建物に延焼したものとして,本件地震と上記延焼には相当因果関係が認められ,地震免責条項の,いわゆる第3類型(「発生の原因の如何を問わず,火災が地震によって延焼又は拡大して生じた損害」)にも該当するものというべきである。 (4) もっとも,本件火災の延焼・拡大の原因は,本件地震による消防力の低下,具体的には,同時多発的 が地震によって延焼又は拡大して生じた損害」)にも該当するものというべきである。 (4) もっとも,本件火災の延焼・拡大の原因は,本件地震による消防力の低下,具体的には,同時多発的な火災の発生,断水による水利の不足など,前示認定の種々の障碍が存在するところ,前示認定の本件地震の程度からすると,そのような障碍が発生し,それによって上記延焼が通常生じ得ることも十分考えられるところである。 また,神戸市においては,近隣自治体(市)と対比し,消防ポンプ車の数が消防力基準を下回っており,また,消防水利の面でも防火水槽の整備が遅れていたという人為的側面が存在したとしても,そのことによって,火災の延焼・拡大が本件地震によるものであるとの結論を左右するものではない(消防活動能力に影響を与える要因としては,単に,消防車の台数や防火水槽の数字だけではなく,本件地震による同時多発的大規模火災の発生,道路被害,建物損壊による交通障害,木造家屋の密集や危険物の存在,建物損壊による人命救助活動などの複合的要素が,消防力の低下を招いているのである。甲9)。 (5) これを要するに,本件地震と本件火災との間並びに本件地震と本件建物への延焼との間にはいずれも相当因果関係があるから,本件建物の火災損害は,前示地震免責条項(いわゆる第2及び第3類型)に該当する旨の被告の主張は理由がある。 (6) そうすると,原告の本件火災保険契約に基づく保険金請求(主位的)は,その余の点(質権設定の場合の給付訴訟の可否)について判断するまでもなく理由がない。 〔予備的請求について〕 1 地震保険契約の成否(1) 認定事実証拠(甲1,7,乙2,3,44,原告本人)並びに弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア原 予備的請求について〕 1 地震保険契約の成否(1) 認定事実証拠(甲1,7,乙2,3,44,原告本人)並びに弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア原告は,借家を買い取り居住していた建物が老朽化したため,昭和60年夏頃,その建て替えを計画し,新築費用(金2500万円)のうち金1200万円について,株式会社総合保証の保証のもとに住友銀行湊川支店でローンを組むこととし,同年12月23日ころ,同住宅ローンの手続きをするため,同支店に赴いた。 イ同支店では,銀行員一人が原告に応対し,被告及び被告の代理店の従業員は居合わせなかった。 原告は,住友銀行湊川支店から住宅ローン融資を受け,同融資について株式会社総合保証との間で保証委託契約を締結し,株式会社総合保証の有する求償債権を担保するため新築建物に同会社を抵当権者とする抵当権を設定するとともに,同会社を質権者として上記新築建物に係る火災保険金請求権に質権を設定したが,これら一連の契約関係書類に押印するため,自己の所有する印鑑を同銀行員に手渡して所要箇所への押印を依頼した。 ウ上記書類の中の一通が,「火災保険契約申込書」及び「質権設定承認請求書兼承認書」が一体となった書面(乙2)であるが,同書面中,質権設定承認請求書の「氏名」欄の原告の氏名・印影,火災保険申込書の「申込人」欄の記載及び印影,「地震保険確認欄」の印影,欄外の捨印及び「所在地」欄の記載は,いずれも同支店の銀行員が記載,押印した。 前記書面が火災保険契約申込書面として被告代理店(銀泉株式会社)に届けられ,同代理店が同書面中のその余の部分の記載をし,保険料を領収したうえ,火災保険契約の申込みを承諾することによって,本件火災保険契 記書面が火災保険契約申込書面として被告代理店(銀泉株式会社)に届けられ,同代理店が同書面中のその余の部分の記載をし,保険料を領収したうえ,火災保険契約の申込みを承諾することによって,本件火災保険契約が締結された。 エ同年12月27日頃,被告から原告の許に保険証券(写)(甲1)及び保険約款(乙3)が送付された。なお,上記保険証券(写)(甲1)には,「地震保険」欄の「保険金額」及び「保険料」欄が空欄となっており,「ご注意」欄には,「地震保険金額欄に金額の記載がない場合は,地震保険契約はお引受けしておりません。なお,この場合は,地震による倒壊等の損害だけでなく地震による火災損害(地震による延焼損害を含みます。)についても保険金は支払われませんので,ご注意ください」旨の記載がある。 (2) 原告は,原則自動付帯方式の帰結として,契約者が地震保険を付帯しない旨の意思表示をしない限り,地震保険が付帯されるところ,本件において,原告は被告から地震保険に関する一切の説明を受けておらず,地震保険を付帯しない旨の意思表示をしたことはないから,地震保険契約が成立している旨主張する。 しかしながら,前示認定の事実のもとでは,原,被告間で本件火災保険契約が締結されたことは認められるものの,それ以上に,地震保険契約まで締結されたものと認めることは,次に述べる理由から困難であるといわざるを得ない。 ア原告は,原則自動付帯方式の帰結として,本件において地震保険契約が成立する旨主張するが,地震保険の引受方式について,火災保険契約締結時に地震保険確認欄に押印する方法で地震保険に加入しない特段の意思表示をしない限り,地震保険契約が成立するという意味での原則自動付帯方式は,現行の地震保険法にその旨明定されていないのみならず,地震保険は 震保険確認欄に押印する方法で地震保険に加入しない特段の意思表示をしない限り,地震保険契約が成立するという意味での原則自動付帯方式は,現行の地震保険法にその旨明定されていないのみならず,地震保険は火災保険の内容によって保険金額及び保険料が当然に定まるものとはされていないこと(地震保険法中に明文化されたのは,地震保険が特定の損害保険契約に付帯して締結されるというに止まり,上記の一定の損害保険契約が締結された場合に地震保険契約の締結が擬制されると定めた規定はなく,同法で地震保険の保険金額は火災保険の30パーセント以上50パーセント以下と幅のあるものと定められた。),昭和55年の地震保険法改正の際,衆参両院で,地震保険の加入並びにその付保割合及び付保金額は,契約者の意向を尊重し,強制にわたることのないよう行政指導を万全にするとの付帯決議がなされていること(争いがない。),地震保険確認欄の制度は任意付帯の際にも採用されていたこと(弁論の全趣旨)などからすると,昭和55年の上記改正によって,原告の主張するような意味での原則自動付帯方式は採用されなかったものと解さざるを得ず,地震保険契約が成立するためには,火災保険契約とは別に保険者と保険契約者の意思の合致が必要であるところ,前示認定事実のもとでは,これを認めることができない。 イ① 前示認定のとおり,原告は,本件において,「地震保険確認欄」に押印して,地震保険を付保しない意思を明確にしていること,また,本件火災保険契約の締結後,被告から保険証券(写)の送付を受け,その記載文言から地震保険を付保していないことを了知し又は了知し得たにもかかわらず,被告に対し,何ら異議の申出や地震保険付保の申出をしていないこと(火災保険契約締結後においても,地震保険を付保することは可能であった。乙42)などから ないことを了知し又は了知し得たにもかかわらず,被告に対し,何ら異議の申出や地震保険付保の申出をしていないこと(火災保険契約締結後においても,地震保険を付保することは可能であった。乙42)などからすると,原告には,そもそも地震保険を付保する意思はなかったものと認めるのが相当であり,原告主張の地震保険契約の成立を認める余地はないというべきである。 ② もっとも,原告は,住友銀行湊川支店において火災保険契約締結の手続きをした際,実際に原告の印鑑をその手にもって火災保険契約申込書(乙2)に押印したのは,同支店の担当銀行員であるところ,同銀行員による地震保険確認欄への押捺は,被告が予め鉛筆で指示した位置への機械的な印鑑押捺にすぎず,上記印影は原告の意思によって顕出されたものではなく,原告の了解なく無権限でなされたものであるとして,地震保険不付帯の意思表示は,意思の欠缺により不存在であり,あるいは表示上の錯誤により無効であるとか,無権代理である旨主張する。 しかしながら,火災保険契約締結の手続の状況は,前示認定のとおりであり((1)イ,ウ),原告は,その責任において同銀行担当者に押印を任せていたものと認められ,地震保険確認欄の作成についても,これと別異に解すべき特段の事情はなく,原告が同銀行担当者を自己の締約代行者として署名,捺印させたものと認めるのが相当である(なお,原告は,地震保険制度の情報提供義務を強調するが,上記情報提供は,地震保険についての一般の認識を高め,契約洩れを防ぐために要請されているものであって,それ以上のものではなく,保険者側に一般的な情報提供義務があるとし,その履行を怠ることが保険者側の損害賠償責任を基礎付けると解するのは相当でない。)。 なお,原告は,被告が押印箇所を 上のものではなく,保険者側に一般的な情報提供義務があるとし,その履行を怠ることが保険者側の損害賠償責任を基礎付けると解するのは相当でない。)。 なお,原告は,被告が押印箇所を○印で指示していた旨主張するが,火災保険契約申込書及び質権設定承認請求書兼承認書と一体となった書面(乙2)は,被告の使用している書式ではなく,金融機関側(融資銀行又は保証会社)が作成・使用している申込書面であることが,同書面の印刷部分等の体裁から窺われるから(例えば,火災保険契約の申込先である被告会社名「住友海上火災保険株式会社御中」のうち,「住友海上火災」だけがゴム印となっているなど。),被告が押印箇所を○印で指示していた旨の原告の主張は当たらない。 ウ原告は,①原則付帯方式による引受方式が採用されている状況のもとで,被告に対し,家計火災保険の契約を申し込んだものであり,家計火災保険の契約には,自動的に地震保険が付帯される結果,家計火災保険の契約申込みの意思表示には,原告の知・不知にかかわらず,地震保険契約の申込みの意思表示を含むことになること,②実質的に考えても,火災保険契約の契約申込者は,地震後の火災であっても,地震免責条項が適用されるとは考えておらず,火災で契約目的物が損害を受けた場合には,地震であろうがなかろうが保険金が支給されるものと考えて火災保険契約を締結するのが通常であり,原告もそのような意思を有していたものであるから,黙示的にではあれ,地震保険契約の申込みの意思表示をしていることを挙げて,原告と被告との間には,地震保険契約締結の意思の合致が存する旨主張する。 ① しかしながら,原則自動付帯方式に関する原告の見解が採用できないことは,前示のとおりであるから原告の①の主張は採用できない。 ② 結の意思の合致が存する旨主張する。 ① しかしながら,原則自動付帯方式に関する原告の見解が採用できないことは,前示のとおりであるから原告の①の主張は採用できない。 ② 原告の②の主張についても,前示のとおり(イ①),原告には,そもそも地震保険を付保する意思はなかったものと認められるのであるが,このことは,(a)原告が本件火災保険契約を締結するに至った動機について,前示認定の事実によれば((1)ア,イ),原告が,新築建物の建築費を金融機関から融資を受ける条件として,いわば義務的に本件火災保険契約を締結したものであること,(b)日本海中部地震(昭和58年5月26日発生)など数多くの地震が発生したものの,地震保険の契約件数は減少が続いていたこと(甲15の44頁)や,関西地区でも特に兵庫県において地震保険加入率が低かったこと(乙43)などから,原告が地震保険に加入する蓋然性を有していたとはいえないこと,(c)原告は,融資を受けて新築した建物についても地震保険には加入していないこと(原告本人)などからも裏付けることができる。 したがって,原告が,黙示的に地震保険契約締結の申込みの意思表示をしていた旨の主張も理由がない。 (3) これを要するに,地震保険契約の成立をいう原告の主張は,いずれも理由がない。 2 情報提供義務違反による損害賠償請求の当否(1) 原告は,被告は原告に対して信義則上,地震免責条項及び地震保険に関する情報提供義務を負担するものであるところ,上記義務を怠り,原告に地震保険加入・不加入の意思決定の機会を与えないまま,地震保険確認欄への押印を慫慂し,もって,原告が地震保険を付帯する機会を剥奪した行為は,信義則違反を構成し,全体として違法の評価を受けるのであるから,地震保険金相 入の意思決定の機会を与えないまま,地震保険確認欄への押印を慫慂し,もって,原告が地震保険を付帯する機会を剥奪した行為は,信義則違反を構成し,全体として違法の評価を受けるのであるから,地震保険金相当額である金900万円の損害賠償義務を負担する旨主張する。 しかしながら,前示認定の事実によれば(1(1)イ,ウ),火災保険契約申込書(乙2)中,質権設定承認請求書の「氏名」欄の原告の氏名・印影,火災保険申込書の「申込人」欄の記載及び印影,「地震保険確認欄」の印影,欄外の捨印及び「所在地」欄の記載は,いずれも住友銀行湊川支店の銀行員が原告から依頼を受けて記載,押印したもので,その作成につき被告側(被告及び被告代理店)は関与しておらず,また,被告が予め鉛筆で指示して地震保険確認欄への押印を慫慂した旨の原告の主張が理由のないことは前示のとおり(1(2)イ②)である。 したがって,信義則上の情報提供義務違反をいう原告の主張は理由がない。 (2) 原告は,損害保険会社の情報提供義務は,地震保険約款の情報面での格差,損害保険事業の公共性,地震保険確認欄制度及び原則付帯方式の確立などにより法的義務となっていた旨主張する。 しかしながら,保険会社の地震保険に関する情報提供は,地震保険の契約洩れを防ぎ,地震保険の普及を図るために要請されるものであって,保険会社に一般的な情報開示(説明)義務が存在するものと解することはできない。 したがって,保険会社である被告が契約締結に際し,原告に地震免責条項や地震保険について積極的に説明しなかったからといって,直ちに損害賠償責任を基礎付ける一般的な法的義務違反を構成すると解することはできない(損害保険会社の上記情報(説明)提供義務を,あたかも金融商品販売法に 険について積極的に説明しなかったからといって,直ちに損害賠償責任を基礎付ける一般的な法的義務違反を構成すると解することはできない(損害保険会社の上記情報(説明)提供義務を,あたかも金融商品販売法により法定化され,かつ,その違反による損害賠償責任も法定されている金融商品販売業者等の説明義務と同様に解することは困難である。)。 (3) なお,原告は,予備的に,被告の上記情報提供義務違反によって,地震保険加入についての意思決定の機会及び地震保険に加入していれば自己の財産の損害を担保することができた可能性という財産的利益を違法に侵害され精神的苦痛を被った,として慰謝料を請求する。 しかしながら,前示のとおり,被告には,損害賠償責任に結びつくような,地震保険に関する一般的な情報開示(説明)義務が存在するとはいえないし(前示(2)),被告が地震保険確認欄への押印を慫慂する行為をしたとは認められず(前示1(2)イ②,2(1)),その他,被告が原告の地震保険を付帯する機会を剥奪したことを認めるに足りる証拠はない。 したがって,慰謝料をいう原告の主張も理由がない。 (4) これを要するに,情報提供義務違反を理由とする原告の損害賠償請求は,さらにその余の点について判断するまでもなく,理由がない。 3 まとめ以上の次第であるから,原告の予備的請求は,いずれも理由がない。 第4 結語よって,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却し,訴訟費用の負担につき民訴法61条に従い,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第六民事部 裁判長裁判官松村雅司 裁判官水野有 神戸地方裁判所第六民事部 裁判長裁判官松村雅司 裁判官水野有子 裁判官増田純平
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