主文 1 本件訴えをいずれも却下する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 主位的請求通商産業大臣が平成12年6月7日付けで溝江建設株式会社に対してした日田市における場外車券売場設置許可処分は無効であることを確認する。 2 予備的請求通商産業大臣が平成12年6月7日付けで溝江建設株式会社に対してした日田市における場外車券売場設置許可処分を取り消す。 第2 事案の概要本件は,通商産業大臣が,自転車競技法(以下「法」という。)4条1項に基づき,溝江建設株式会社(以下「溝江建設」という。)に対してした場外車券売場設置許可処分(以下「本件許可処分」という。)について,場外車券売場が設置される地元地方公共団体(以下「地元自治体」という。)である原告が,同許可処分が違法であるとして,主位的にその無効確認を,予備的にその取消しを求めている事案である。 1 争いのない事実等(括弧内に証拠番号を記載した事実は当該証拠等により容易に認定できる事実を含む趣旨である。)(1) 原告は,大分県北西部に位置する普通地方公共団体であり,被告は,経済産業省設置法により設置された経済産業省の長たる国務大臣であって,本件許可処分をした通商産業大臣の権限を承継している者である。 別府市は,大分県中部に位置する普通地方公共団体で,総理府告示第28号により昭和25年2月18日付けで自治大臣の指定を受け,昭和25年5月16日付けで通商産業大臣の競輪場設置許可を得て,公営自転車競技(以下「競輪」という。)「別府競輪」を主催している(顕著な事実)。 (2) 別府市は,原告の区域内である大分県日田市大字友田字荻鶴954番10ほか4筆の土地に,「別府競輪」の大型場外車券売場である「サテライト日田」を建設することを計画し,同計画に基づ 著な事実)。 (2) 別府市は,原告の区域内である大分県日田市大字友田字荻鶴954番10ほか4筆の土地に,「別府競輪」の大型場外車券売場である「サテライト日田」を建設することを計画し,同計画に基づき溝江建設は,平成9年7月31日,通商産業大臣に対して場外車券売場設置許可申請をし,同大臣は,平成12年6月7日,本件許可処分をした(甲6,乙8)。 2 関係法令の規定の概要(本件許可処分当時)(1) 自転車競走の施行都道府県及び人口,財政等を勘案して自治大臣が指定する市町村(以下指定市町村という。)は,自転車その他の機械の改良及び輸出の振興,機械工業の合理化並びに体育事業その他の公益の増進を目的とする事業の振興に寄与するとともに,地方財政の健全化を図るため,この法律により,自転車競走を行うことができる(法1条1項)。 (2) 届出競輪施行者が,競輪を開催しようとするときは,命令の定めるところにより,通商産業局長及び都道府県知事を経由して,通商産業大臣に届け出なければならない(法2条)。 (3) 競走場の設置競輪の用に供する競走場を設置し又は移転しようとする者は,命令の定めるところにより,通商産業大臣の許可を受けなければならない(法3条1項)。 通商産業大臣は,前項の許可をしようとするときは,あらかじめ,関係都道府県知事の意見を聞かなければならない(同条2項)。 都道府県知事は,前項の意見を述べようとするときは,あらかじめ,公聴会を開いて,利害関係人の意見を聴かなければならない(同条3項)。 通商産業大臣は,前項の許可の申請があったときは,申請に係る競走場の位置,構造及び設備が命令で定める公安上及び競輪の運営上の基準に適合する場合に限り,その許可をすることができる(同条4項)。 (4) 車券発売施設の設置車券の発売又は的中者への払 請に係る競走場の位置,構造及び設備が命令で定める公安上及び競輪の運営上の基準に適合する場合に限り,その許可をすることができる(同条4項)。 (4) 車券発売施設の設置車券の発売又は的中者への払戻金若しくは的中者がいない場合等の返還金の交付の用に供する施設を競輪場外に設置しようとする者は,命令の定めるところにより,通商産業大臣の許可を受けなければならない。当該許可を受けて設置された施設を移転しようとするときも同様とする(法4条1項)。 通商産業大臣は,前項の許可の申請があったときは,申請に係る施設の位置,構造及び設備が命令で定める基準に適合する場合に限り,その許可をすることができる(同条2項)。 (5) 学生生徒及び未成年者の車券購入の禁止学生生徒及び未成年者は,車券を購入し,又は譲り受けてはならない(法7条の2)。 (6) 場外車券売場設置等の許可申請法4条第1項の規定により,競輪場外における車券の発売等の用に供する施設(以下「場外車券売場」という。)の設置又は移転の許可を受けようとする者は,申請者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては代表者の氏名等所定の事項を記載した許可申請書を当該場外車券売場を設置し又は移転しようとする場所を管轄する通商産業局長を経由して,通商産業大臣に提出しなければならない(自転車競技法施行規則(以下「施行規則」という。)4条の2第1項)。 また,上記許可申請書には,以下の図面を添付しなければならない(同第2項)。 ① 場外車券売場附近の見取図(敷地の周辺から1000メートル以内の地域にある学校その他の文教施設及び病院その他の医療施設の位置並びに名称を記載した1万分の1以上の縮尺による図面)② 場外車券売場を中心とする交通の状況図③ 場外車券売場の施設の配置図(1000分の1以上の縮尺による図面 教施設及び病院その他の医療施設の位置並びに名称を記載した1万分の1以上の縮尺による図面)② 場外車券売場を中心とする交通の状況図③ 場外車券売場の施設の配置図(1000分の1以上の縮尺による図面)(7) 場外車券売場の許可基準① 自転車競技法4条2項の規定にいう「基準」について,施行規則4条の3第1項は,以下のとおり定めている。 ア学校その他の文教施設及び病院その他の医療施設から相当の距離を有し,文教上又は保健衛生上著しい支障をきたすおそれがないこと(以下「位置基準」という。)。 イ施設は,入場者数及び必要な設備に応じた適当な広さであること。 ウ車券の発売等の公正かつ円滑な実施に必要な次の構造,施設及び設備を有すること。 (ア) 車券の発売等の用に供する施設及び設備(イ) 入場者の用に供する施設及び設備(ウ) その他管理運営に必要な施設及び設備(エ) 外部とのしゃ断に必要な構造エ施設の規模,構造及び設備並びにこれらの配置は,入場者の利便及び車券の発売等の公正な運営のため適切なものであり,かつ,周辺環境と調和したものであって,告示で定める基準に適合するものであること(以下「構造等環境調和基準」という。)。 ② 上記「告示で定める基準」について,「自転車競技法施行規則第4条の3第1項第4号の規定に基づく場外車券売場の施設の規模,構造及び設備並びにこれらの配置の基準を定めた件に関する告示」(平成6年3月7日通商産業省告示第109号。以下「場外告示」という。)が定められているが,同告示第1,2(4)チは以下のとおり規定している。 記入場者の用に供するため,適当な数及び広さを有する次の施設を利用しやすい場所に設けてあること。 チ駐車場(駐車場は立地条件に応じ場外車券売場周辺の道路交通等に支障を及ぼすことのないよう入場者の自動 入場者の用に供するため,適当な数及び広さを有する次の施設を利用しやすい場所に設けてあること。 チ駐車場(駐車場は立地条件に応じ場外車券売場周辺の道路交通等に支障を及ぼすことのないよう入場者の自動車等を収容するのに十分な広さであること。自ら設置することが困難である場合には,車券発売中については他の駐車場所有者等との契約により十分な広さの駐車場を確保すること。) 3 本件許可処分の違法性に関する原告の主張の要旨(1)(本件許可処分の根拠規定である法4条は憲法92条の地方自治の本旨に反し違憲である。)憲法92条は,地方自治を国家の基本的な統治機構の一環として位置づけ,地方公共団体の組織と運営は地方自治の本旨に基づいて法律でこれを定めると規定し,地方公共団体の自治権が国の意思によってみだりに制約されてはならないこと,地方行政は地方自治の本旨に即して,積極的に制度の形成・運用が図られなければならないこととした。憲法の基本的な精神としては,地方公共団体は国の施策に準じた行政を行うための国の補足的従属的な団体ではなく,国と対等な統治団体と位置づけていることは明白であり,憲法制定後の国民の権利意識・自治意識の増大により地方行政需要が増大し,地方公共団体において一つのまちづくり方針に基づく統一的有機的地方行政の展開が求められている現在の状況変化を併せれば,地方公共団体の自治権は憲法が直接保障したものと解されるべきである。 平成11年7月に改正された地方自治法は,これを踏まえ,地方公共団体を地域における総合的行政主体と位置づけ,住民に身近な行政を優先的に行うことで地方公共団体の仕事を充実拡大することを求めた。そのためには,地方公共団体は,地域の個性,住民や企業の指向を踏まえて,個性的な地方公共団体として発展していく権能及びそれを実現するために総合的 ことで地方公共団体の仕事を充実拡大することを求めた。そのためには,地方公共団体は,地域の個性,住民や企業の指向を踏まえて,個性的な地方公共団体として発展していく権能及びそれを実現するために総合的に施策を立案し遂行する権能を有する必要があり,まちづくりは地方公共団体の全面的な意思決定に基づいて行われることとなった。 そして,競輪の場外車券売場,とりわけ「サテライト日田」のように大型スクリーンで競輪を実況中継する競輪場そのもののような施設の設置の可否はまちづくりの重要な要素であり,設置された場合には,原告のまちづくりは重大な打撃を被る。このような場外車券売場の設置について,設置希望者の申請と通商産業大臣(現経済産業大臣)の許可のみに関わり,設置公共団体の同意を要しないとすることは地方公共団体の自治権の侵害であり,法4条は憲法92条に反し,違憲である。 (2)(法4条は刑法が処罰対象としている賭博罪等について公営に限って違法性を阻却した趣旨に違反する。)地元自治体の同意なくしてなされた本件許可処分は,刑法犯である賭博開帳図利行為について公営に限って違法性を阻却し非犯罪化した趣旨に反している。 競輪は本質的には賭博であり,競輪で度々騒擾等の事件が発生してきたように,大人を興奮させるものであって,地域の生活環境を破壊し,青少年の健全な勤労意欲を失わせ,周辺地域の雰囲気を害し,地域に風紀上悪影響を及ぼす。そのような競輪が公営に限り違法性が阻却されるのは,財政及び経済政策的な配慮によるにすぎない。そうすると,違法性阻却のための実質的な根拠として,その態様の社会的相当性を確保しなければならないが,それは,競輪の社会的弊害の除去及び地域社会との融和を可能ならしめる存在であり,当該地域に責任を負う地方公共団体(地元自治体)が開催すること又は場外 の態様の社会的相当性を確保しなければならないが,それは,競輪の社会的弊害の除去及び地域社会との融和を可能ならしめる存在であり,当該地域に責任を負う地方公共団体(地元自治体)が開催すること又は場外車券売場が地元自治体の同意と協力を得て設置されることによってのみ実現され得る。 したがって,場外車券売場の設置に地元自治体の同意を要しないとする法4条は刑法の趣旨に反し違法であり,本件許可処分にかかる場外車券売場において車券の発売等をすることは賭博罪等に該当し,処罰されるべきものであるから,犯罪のための施設を許可した本件許可処分は違法である。 (3)(本件許可処分には法が通商産業大臣に与えた権限の濫用があり,違法である。)法は,通商産業大臣(現経済産業大臣)が場外車券売場の設置を許可することができると定め,同大臣に裁量による許可権限を与えている。 一方,場外車券売場の設置許可について,施行規則は構造等環境調和基準を定め,住民及び自治体の利益を侵害しない範囲でのみ場外車券売場の設置を容認しており,同大臣の権限はこの趣旨に従って制約される。また,上記規定の趣旨は場外車券売場が設置される自治体の意見を聴取した上で許可決定をなすか否かを判断すべき手続上の保障をも含み,同大臣は自治体(地域住民)が被ることになる不利益について十分な意見を聴取し,自治体の判断を尊重して許可処分をなすべきことが求められている。 さらに,同大臣は,公務員として憲法に定められた憲法遵守義務を負うのであって,上記の権限発動に際しても憲法を遵守しなければならない。前記のとおり憲法は92条で地方自治の本旨を定め,地方自治法を介して地方自治体のまちづくりその他固有の行政権能を保障している。そして,本件のような場外車券売場の設置は,自治体による自治権能の核心的な部分を占めるまちづ 92条で地方自治の本旨を定め,地方自治法を介して地方自治体のまちづくりその他固有の行政権能を保障している。そして,本件のような場外車券売場の設置は,自治体による自治権能の核心的な部分を占めるまちづくりそのもの及びまちづくりの基盤を否定するものであって,地元自治体の意思に反して許可が行われることになれば,憲法に保障された自治体の自治権能そのものが侵害されることになる。したがって,同大臣は本件許可処分をするに当たっては,少なくとも地元自治体がこれを受け入れられないとの意向を示している場合には許可処分をしてはならない義務を負うものであり,これに反しない範囲でのみ,許可することができる。 本件許可処分がなされるまでの間,原告が本件場外車券売場の設置は受け入れ難い旨を繰り返し表明しており,市民の圧倒的多数が反対し,近隣住民も建築には同意できないことを明確にしてきたこと,本件場外車券売場の設置はこれまで進めてきた原告のまちづくりの努力を根底から破壊する重大な影響を与えるものであること,原告は以上の事実を訴えて通商産業大臣宛に繰り返し働きかけを行ってきたこと,本件においては近隣住民との今後の話し合い調整をなすよう建設業者に要請するというに留まる別府市の確約書があるのみで,本件許可処分当時において話し合いによって問題が解決する目途は何一つなく,現在に至るまで原告の反対の意向には全く変化がないことからすると,本件許可処分は,法の趣旨に基づく手続が踏まれることなく,通商産業大臣に与えられた裁量権の範囲を逸脱した違法なものである。 4 争点本件の主要な争点は,原告が本件許可処分の無効確認又は取消しを求める原告適格を有するか否かであり,この点に関する当事者の主張は次のとおりである。 (1) 原告適格の有無(被告の主張)ア行政事件訴訟法(以下「行訴法」 原告が本件許可処分の無効確認又は取消しを求める原告適格を有するか否かであり,この点に関する当事者の主張は次のとおりである。 (1) 原告適格の有無(被告の主張)ア行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)9条は取消訴訟の原告適格につき,同法36条は無効等確認訴訟の原告適格について,いずれも当該処分の取消し又は無効等確認を求めるにつき「法律上の利益を有する者」に限り訴えを提起することができる旨規定しているところ,ここでいう「法律上の利益を有する者」とは,①当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいい,②当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益も法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取消し及び無効等確認訴訟における原告適格を有するというべきである。そして,当該行政法規が,不特定多数者の具体的利益をそれが帰属する個々人の具体的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むか否かは,当該行政法規及びそれと目的を共通する関連法規の関係規定によって形成される法体系の中で決するべきであり,また,当該行政法規の趣旨・目的,当該行政法規が行政処分を通して保護しようとしている利益の内容・性質等を考慮して判断すべきである。 イ本件許可処分は,申請者に対して場外車券売場の設置に関する一般的な禁止を解除するという法的効果を与えるにとどまり,場外車券売場の周辺住民や地元自治体に対して,何らかの権利義務の変動をもたらすものではないから,原告にその主張するような受忍義務 設置に関する一般的な禁止を解除するという法的効果を与えるにとどまり,場外車券売場の周辺住民や地元自治体に対して,何らかの権利義務の変動をもたらすものではないから,原告にその主張するような受忍義務を負わせるものではない。 ウ本件許可処分の根拠法規である法は,全体として競輪事業について定めているところ,競輪施行の目的については,自転車その他の機械の改良及び輸出の振興,機械工業の合理化並びに体育事業その他の公益の増進を目的とする事業の振興に寄与するとともに,地方財政の健全化を図ることとしているほか(法1条1項,11条,12条),公安上及び競輪の運営上の基準の確保,競輪の公正,安全かつ円滑な実施等,競輪場内等における秩序の維持に関する規定を置いており,これらを総合すると,法は,競輪事業における様々な局面における公正・円滑な運用,安全・秩序を確保し,もって収益を公共的な目的に用いることを規定した法律であると解される反面,地元自治体の利益保護を目的とするような規定は法には見当たらない。 エ競走場設置許可及び場外車券売場設置許可に係る法の改正経過に加え,両許可制度の趣旨・目的が異なると解すべき合理的な理由がないことに照らせば,場外車券売場設置許可制度の目的は,申請に係る施設の位置,構造及び設備が公安上及び競輪事業の運営上適当であるか否かを審査することにあると解するべきである。そして,場外車券売場設置許可基準について定めた施行規則及び場外告示の各規定は,規定自体に照らして,いずれも公安上及び競輪の運営上適当であるか否かを審査する観点から定められたものというべきであるし,前記各規定に照らしても,法4条及び施行規則が場外車券売場が設置される地元自治体に対する意見の聴取という手続上の保障をしていると解する法的根拠はない。 施行規則4条の3第1項4号は うべきであるし,前記各規定に照らしても,法4条及び施行規則が場外車券売場が設置される地元自治体に対する意見の聴取という手続上の保障をしていると解する法的根拠はない。 施行規則4条の3第1項4号は,「周辺環境との調和」を定めているが,同規定の制定経過に照らせば,その趣旨は,場外車券売場の入場者に対する配慮として周辺環境に調和した外観等の美観などに留意することを通じ,競輪の運営を改善し,ひいては競輪事業の目的を達成することを目的としたものというべきであって,地元自治体の利益を考慮した規定ということはできない。また,平成7年4月3日付け通商産業省機械情報産業局長通達「場外車券売場の設置に関する指導要領について」(以下「設置要領通達」という。)は,場外車券売場を設置するに当たっては,当該場外車券売場の設置場所が属する地域社会との調和を図るため,当該施設が可能な限り地域住民の利便に役立つものとなるよう指導することや,設置するに当たっては,当該場外車券売場の設置場所を管轄する警察署,消防署等とあらかじめ密接な連絡を行うとともに,地域社会との調整を十分に行うよう指導することとしているが,設置要領通達は,機械情報産業局長の各通産局長に対する行政内部の通達であり,行政指導上の指針にすぎず,設置を許可するに当たっての指導基準というよりは,場外車券売場の設置・運営が適正かつ円滑に行われるようにするための行政指導上の指針にすぎないから,設置要領通達をもって地元自治体に対する告知・聴聞の機会を保障したものということはできない。 以上のとおり,法4条及びこれに関する各規定は,いずれも施設の構造・設備を公安上及び競輪の運営上適当なものにすることを目的としたものであり,その結果として場外車券売場が設置される地域の住民や設置公共団体が美観等の環境面での利益を得るこ 規定は,いずれも施設の構造・設備を公安上及び競輪の運営上適当なものにすることを目的としたものであり,その結果として場外車券売場が設置される地域の住民や設置公共団体が美観等の環境面での利益を得ることがあったとしても,それは,そのような基準があることによる反射的利益にすぎない。 オ憲法第8章の地方自治に関する規定は,地方自治という制度自体を保障(いわゆる制度的保障)したものであり,地方自治法1条の2も地方自治における国と地方公共団体の役割分担についての基本的な考え方を表明したものであって,これらの規定から具体的な地方公共団体の法律上の利益が導かれるものではない。 カさらに,法律上保護された利益といえるかどうかは,当該行政法規及びそれと目的を共通にする関連法規の関係規定によって形成される法体系の中において決するべきであるが,法や場外車券売場設置許可制度の目的と地方自治法の目的とは異なるものであって,地方自治法は,自転車競技法と目的を共通にする関連法規の関係規定には当たらないから,地方自治法2条11項ないし13項は,原告の原告適格の根拠たり得ない。 キ以上のとおり,原告は,本件許可処分の無効確認及び取消しにつき法律上の利益を有していないから,原告適格を有しない。 (原告の主張)ア本件許可処分は,一般的禁止を解除するという法的効果を与えるにとどまる性質を有するものではなく,被告(本件許可処分時は通商産業大臣)に一定の裁量を与える趣旨であり,自治体の基本計画・基本構想に示された地域特性を損ない,地方自治の本旨を侵害しかねない場合には,不許可処分をするよう羈束されているものである。 イ本件許可処分によって,原告は場外車券売場の設置について受忍義務を課され,同設置がなければ行使する必要のない公安・公衆衛生等の地方自治体としての権能を行使する るよう羈束されているものである。 イ本件許可処分によって,原告は場外車券売場の設置について受忍義務を課され,同設置がなければ行使する必要のない公安・公衆衛生等の地方自治体としての権能を行使する義務が課され,また,原告がその固有の権能を行使して形成してきた健康・福祉・教育・環境・産業等の「まちづくり」に取り返しのつかない損失を被らせ,これが設置されなければ発揮できたはずの権能について,大きな制約を課せられることを余儀なくされる。 ウ本件許可処分により,原告は次の自治体固有の権能を奪われることになる。 ① 市議会の意思決定権本件許可処分は,一切の公営競技の場外車券売場の設置に反対するとの日田市議会の意思決定権を損なう。 ② 公営ギャンブルに関する決定権能の侵害地方自治体がどのような方法をもって自らの財源を確保するかは当該自治体の権能に属し,その方法として公営ギャンブルを開催してその売り上げを充てるように決定することも,反対に公営ギャンブルに依拠しないと決定することも,当該自治体固有の権能である。ところが,自治体が開設する競輪について他の自治体に場外車券売場を設置することが許可された場合には,地元自治体は,設置を拒む正当な権限を行使することが不可能な立場に置かれるが,場外車券売場の設置は競輪場を開設したに等しいものであるから,通商産業大臣の許可がなされることによって,地元自治体は,上記固有の権能を実質的に侵害されることになる。 ③ 公安・公衆衛生・道路・環境保全上の権能の侵害場外車券売場が設置されることによって,地元自治体は,設置されなければ行使する必要のない以下の権能を行使することを義務付けられ,その財政負担を強いられることになる。 a ごみの収集処理「サテライト日田」で発生するごみは,基本的には産業廃棄物として設置者が処理 ば行使する必要のない以下の権能を行使することを義務付けられ,その財政負担を強いられることになる。 a ごみの収集処理「サテライト日田」で発生するごみは,基本的には産業廃棄物として設置者が処理するよう義務づけられるが,磁気が入っている車券は資源としての活用が困難で,結局は原告の施設で焼却処理することになる。また,周辺の道路に散乱した新聞,はずれ車券,空缶・空瓶等の収集・処理については,原告が全面的に責任を負うことになる。日田市総合計画では,ごみの減量とリサイクルの推進を骨子とする資源循環型社会を目指す廃棄物対策の推進が掲げられているが,本件許可処分に基づく「サテライト日田」の設置によって,そうした総合計画に逆行した事態がもたらされ,原告が多大な費用負担を強いられることになる。 b 道路・公共交通「サテライト日田」の開設は,交通量を格段に増加させるので,市民の交通安全と利便を確保するために,各種交通安全施設の設置が求められる。このほか,開催日毎に道路や側溝の清掃業務が要請されることになる。 日田市総合計画では,効率的な交通体系を確保し,交通利便性や安全で快適な道路空間の確保をはかる道路改良・維持補修を進めることが定められているが,場外車券売場が設置されれば,こうした計画による道路・公共交通づくりのための人的・物的基盤が,場外車券売場の弊害への対処のために消耗させられ,喪失させられる。 c 学校教育・福祉・安全・医療「サテライト日田」の開設によって集まる,暴力団を含むギャンブルに群がる人々が脅かす生活上の危険から市民を守り,危険が具体化したときにはこれを解消して市民を救済することが,自治体の重要な責務となる。 そのために,児童・生徒・保護者に対して,車券売場への立ち入り及び車券購入禁止等の指導や,開催日(ほぼ毎日)の交通量増加に たときにはこれを解消して市民を救済することが,自治体の重要な責務となる。 そのために,児童・生徒・保護者に対して,車券売場への立ち入り及び車券購入禁止等の指導や,開催日(ほぼ毎日)の交通量増加に伴う交通安全指導を徹底することが求められる。さらにギャンブルによる射倖的・退廃的風潮は,家庭・学校・地域の崩壊に繋がり,その回復のために多大な努力を強いられることになる。例えば,福祉の分野においては,相談業務の増加や生活保護世帯の増加に繋がる。このことは,医療保険(国民健康保険)の財源確保にとっても問題が生じ,犯罪被害に対応した医療費負担とともに,福祉や医療分野において,軽視し得ない行財政上の負担を原告が負うことになり,その損失は甚大なものとなる。 d 犯罪対策競輪場や場外車券売場が設置されている地方公共団体(地元自治体)では,市民の財産や身体・性的自由を侵害する深刻な犯罪が問題になっている。こうした犯罪を防止するため,安全な道路や街並みを整備するなどの対策が求められる。また,特に子供や女性,高齢者が被害を受けやすく,これらの市民が被害を受けたときの福祉サービスの提供も求められることになり,そのために費やすことを余儀なくされる努力と財源は多大なものとなる。 ④ 教育・福祉・人権・産業・快適な住環境等をつくる権能の侵害地方自治体は,文化,市民生活,交通安全,観光を含む産業,青少年の育成,学校教育などの広汎な分野にわたる自治事務を実施する責任を負っている。そして原告は,地方自治法に基づいて義務づけられている基本構想としての総合計画である「まちづくり」計画を策定し,これに従って自治事務を処理する義務と権能を有している。日田市総合計画は,自然と歴史・文化を重んじ,(a)人々が自然との調和のもとで,(b)うるおいのある快適で住み良い都市基盤と生活環 計画を策定し,これに従って自治事務を処理する義務と権能を有している。日田市総合計画は,自然と歴史・文化を重んじ,(a)人々が自然との調和のもとで,(b)うるおいのある快適で住み良い都市基盤と生活環境を整備し,(c)日田という地域の特性を活かした活力ある産業振興と,(d)人々が生き生きと暮らすための福祉・健康・安全の確保,さらには,(e)豊かな心を育てる教育・文化・スポーツを充実させ,人権を保障すること,(f)人々が多様に関わり合う地域・自治体運営を基本骨子とする「まちづくり」を進めるとしているが,「サテライト日田」の建設は,これらのいずれとも共存できるものではない。上記総合計画を推進するための広範囲にわたる多様な自治事務に関する権能が,上記③に記載した権能も含め,総体として「まちづくり権」として法的に保護されるべきものであって,それが自治体固有のものであることは,地方自治行政の基本原則を定めた地方自治法2条の自治体に関する法令の定めや法令の解釈・運用は,地方自治の本旨に基づいて,かつ国と自治体との適切な役割分担をふまえたものでなければならないとし,さらに国は自治体が地域の特性に応じて自治事務を処理することができるよう,特に配慮しなければならないとする規定(11ないし13項)及び憲法の趣旨から明白というべきである。 エ① 法1条1項は,自治大臣が指定する市町村は,公益の増進を目的とする事業の振興に寄与するとともに地方財政の健全化を図るために自転車競走を行うことができると定めているが,これは,事業の振興は公益に適ったものでなければならず,かつ競輪の実施が地方財政の健全化を図る目的に沿ったものでなければならないことを定めるものであり,法の保護法益が公共の利益と地方財政の健全化にあることは明白である。そして,公共の利益とは,元来,住民の生活の の実施が地方財政の健全化を図る目的に沿ったものでなければならないことを定めるものであり,法の保護法益が公共の利益と地方財政の健全化にあることは明白である。そして,公共の利益とは,元来,住民の生活の安全,福祉,保健衛生,教育,青少年の健全育成,生活環境の保全を広く含むものであり,自治体の固有の権能である「まちづくり権」と重大な関連を有する。また,地方財政の健全化とは,競輪を開設する主催自治体の財政のみならず,地元自治体の財政の健全化についても等しく考慮すべきものとしていると解するべきであって,地元自治体の存立に関わる重要な固有の権能を保護法益とするものであることを根拠づけるものである。 法は,このように目的を定めた上で,競走場及び場外車券売場の設置を通商産業大臣の許可に係らせているが,場外車券売場の設置許可に関する法規は競走場の設置許可に関する法規と同様,公安上の利益を保護法益としていることは明白である。そして,この趣旨を受けて法4条2項及び施行規則4条の3は,許可要件として位置基準及び構造等環境調和基準を定めており,このことは,住民の生活の安全,福祉,保健衛生,教育,青少年の健全育成,生活環境の保全を重要な保護法益としていることを裏付け,地元自治体のまちづくり権を尊重するものである。さらに,法7条の2,21条は学生生徒及び未成年者の車券購入・譲受を禁止しているが,法が青少年の健全育成を重要な保護法益としていることは明白である。 これらの規制内容は,地域住民の文教上又は保健衛生上の権利利益を保護し,当該地域の環境保護を目的としているものであり,憲法及び法の趣旨をしんしゃくし,統一的・体系的な解釈を行うならば,直接的に責任を負うべき地元自治体の意思が最大限尊重されなければならない。なぜなら,本件許可処分により場外車券売場の設置について ,憲法及び法の趣旨をしんしゃくし,統一的・体系的な解釈を行うならば,直接的に責任を負うべき地元自治体の意思が最大限尊重されなければならない。なぜなら,本件許可処分により場外車券売場の設置について受忍義務を課せられる地元自治体は,競輪場を設置したに等しい公安・公衆衛生・福祉・教育・環境・産業等への影響とこれに対応した責任を全うするための人的・物的負担を背負うことになり,また,その固有の権能に基づいて形成してきた健康・福祉,教育・環境・産業・まちづくり等に対して取返しのつかない損害を被ることがあり,さらに自らの自治権の発動に対して大きな制約を受けることになるため,その適否を判断する機会を十分に与えられるべきであるからである。 ② また,法は,2条で,競輪施行者に,競輪の開催を,通商産業局長及び都道府県知事を経由して通商産業大臣に届け出ることを義務づけ,3条で,通商産業大臣に,許可に先立ち関係都道府県知事の意見を聴取することを,関係都道府県知事に,意見表明に先立って公聴会を開催して利害関係人の意見を聴取することをそれぞれ義務づけるなど地元自治体の利益保護を目的とする規定を置いている。 ③ したがって,法の趣旨はこれらの具体的利益を専ら一般的公益に吸収解消されるのではなく,当該行政処分によって影響を受ける地元自治体の個別的利益として保護していると理解できる。 オまた,法の「公益の増進と地方財政の健全化」という目的と地方自治法の「地方公共団体の健全な発達の保障」という目的は共通するから,地方自治法2条11項ないし13項は法と目的を共通する関連法規の関係規定といえるところ,本件場外車券売場の設置及びそれに伴う各種事務の受容ないしその拒絶は,まさにこれらの地方自治法の規定の予定する場面であり,本件は場外車券売場の設置の適否という地元自治体の「まち 規定といえるところ,本件場外車券売場の設置及びそれに伴う各種事務の受容ないしその拒絶は,まさにこれらの地方自治法の規定の予定する場面であり,本件は場外車券売場の設置の適否という地元自治体の「まちづくり」の方針との調和・整合性が求められ,また,直接的に影響を受けるものであることを考えると,地元自治体の意思を無視して行われるべき行政処分ではない。したがって,当該行政処分によって権利・利益の侵害を受けたと考える地元自治体の法律上の利益は認められる。 カ憲法92条及び地方自治法の前記各規定,並びに,国が全国各地における同種事案において,事実上,地元自治体等の立場を尊重しつつ許可処分をしてきたこと,類似の公営ギャンブルの制度において,競馬場や馬券売場等の設置につき地元自治体の意思や立場を尊重する運営が慣行としてなされてきていることを考慮すると,地方公共団体に重大な利害をもたらす国の権限行使に際しては,その手続において関係地方公共団体の意見を聴取し,それに配慮することが当然要請され,地方公共団体にはそうした手続的参加権が認められると解するべきである。 そして,この手続的参加権からすると,被告は,原告に対し,本件許可処分の前に告知,弁解,防御の機会を権利として与えられるべきであったところ,これを怠ったのであるから,原告はその手続的な不利益を争う法律上の利益を有する。 地方自治法244条の3は,公の施設の区域外設置が関係地方公共団体間の協議によるべきことを規定している。そして,場外車券売場の区域外設置についても同条の趣旨を適用し,地元自治体との協議を不可欠とすると解すべきであるから,そのような協議を受けるべき原告の地位は,同条を法が形成する法体系において,法律上保護された利益ということができる。 キさらに,憲法31条は適正手続の保障を定めていると とすると解すべきであるから,そのような協議を受けるべき原告の地位は,同条を法が形成する法体系において,法律上保護された利益ということができる。 キさらに,憲法31条は適正手続の保障を定めているところ,この権利は国民の基本的人権として規定されているものではあるが,性質に反しない限り,一個の権利主体である地方公共団体にも当然に準用されるべきである。法は,場外車券売場の設置について,地元自治体の意見の聴取を明文上予定しているわけではないが,従来,その運用においてはその意見聴取がなされてきたという経緯がある。しかし,本件許可処分については,その運用が全く無視されたのであり,憲法及び新地方自治法における,国と地方公共団体の対等・平等な関係から考えれば,原告には,その手続的な不利益を争い,憲法が直接保障した自治権の侵害を訴える法律上の利益があるといわなければならない。したがって,地方公共団体である原告は,憲法及び新地方自治法等により保障された自治権という法律上の利益に基づき,本件訴訟を提起し得る原告適格を有する。 ク諸外国では,地方自治体の自治権が侵害された場合,国等の行為に対する出訴を認めるのが一般的である。 例えば,ドイツでは,基本法28条2項で,市町村に対し,法律の範囲内において,地域共同体のすべての事項を,自己の責任において規律する権利を保障しているが,これには,市町村の区域を自己の責任で秩序付け,形成するための権利であり,市町村の国土に関係する行為の全体秩序を,財産上の確定も含めて,積極的・形成的に発展させる権利を包括している「まちづくり権」類似の「計画高権」が含まれている。そして,ドイツ連邦行政裁判所においては,基本法28条2項で保障された自治権及びそれと結びついた計画高権から,市町村の原告適格はほぼ問題なく承認されており,市町 」類似の「計画高権」が含まれている。そして,ドイツ連邦行政裁判所においては,基本法28条2項で保障された自治権及びそれと結びついた計画高権から,市町村の原告適格はほぼ問題なく承認されており,市町村の法的地位が実際に侵害されているかどうかの問題は訴訟要件ではなく本案の問題とされている。 また,フランスでは,市町村自治体(コミューン)の越権訴訟(取消訴訟に相当)の原告適格が1884年4月5日の市町村組織法により承認され,20世紀に入ると,行政裁判所は,警察事務において自治体固有の自治的警察権限を最大限尊重し,国に対する自治体の原告適格が拡張され,1973年7月18日のリモージュ市判決等を通じて,本件訴訟のような第三者訴訟についても市町村自治体の原告適格を認めるようになった。 さらに,アメリカでも,いわゆる国親思想であるパレンス・パトリエの法理を拡張解釈し,地域環境保護や経済発展の利益侵害を理由とする州又は地方公共団体の州,地方公共団体若しくは私人に対する差止訴訟が認められており,特に,ニューヨーク州最高裁判所1977年3月31日判決では,ホームルールという自治体の固有の事務権限の侵害を根拠とする,州に対する地方公共団体の原告適格を認めている。 ■ 出訴期間経過後の提訴(予備的請求に係る訴えにつき)(被告の主張)行政庁の処分及び裁決に対する取消訴訟は,処分又は裁決があったことを知った日から3箇月以内に提起しなければならない(行訴法14条1項)ところ,本件許可処分は,平成12年6月7日になされたものであり,同年7月3日に溝江建設の会長が原告代表者を訪ねて本件許可処分がなされたことを報告しているから,原告は,遅くとも同日には本件許可処分がされたことを知ったものである。 ところが,原告が,本件許可処分の取消しを求める趣旨である本件予備的請 表者を訪ねて本件許可処分がなされたことを報告しているから,原告は,遅くとも同日には本件許可処分がされたことを知ったものである。 ところが,原告が,本件許可処分の取消しを求める趣旨である本件予備的請求に係る訴えを提起したのは同日から3箇月を経過した後である平成13年3月19日であるから,出訴期間を経過した不適法な訴えである。 (原告の主張)出訴期間の規定は,著しく不合理で,実質上の裁判の拒否に等しい場合には憲法32条に違反するというべきであり,行訴法14条1項の規定も,憲法に適合するように限定解釈すべきであって,処分等を知った日から3箇月以内の提訴を要求することが手続上不可能又は著しく困難な場合には同規定は適用されないというべきである。 地方公共団体が訴訟を提起するには,手続上,議会の議決が必要とされているところ(地方自治法96条1項12号),議案が提案されるまでには,訴状完成,総務課における審査・立案,市長による決裁,印刷・製本,議員への議案の配布・説明などの様々な手続を経なければならないし,議会に提案された後も,審査の付託を受けた委員会の報告を受け,更に討議を経て採択される必要があって,地方公共団体が3箇月で提訴することは事実上不可能である。したがって,地方公共団体が提訴した本件訴えには行訴法14条1項は適用されるべきではない。 第3 当裁判所の判断 1 行訴法9条は,「当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者」が取消訴訟の原告適格を有する旨規定するが,同条にいう「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいい,当該行政処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰 若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいい,当該行政処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,かかる利益も上記にいう法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。そして,当該行政法規が,不特定多数者の具体的利益をそれが帰属する個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むか否かは,当該行政法規の趣旨・目的,当該行政法規が当該処分を通して保護しようとしている利益の内容・性質等を考慮して判断すべきである。 また,同法36条は,無効等確認訴訟の原告適格について,「当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者」と規定しているが,同条にいう「法律上の利益を有する者」の意義についても,上記取消訴訟の原告適格における意義と同義に解するのが相当である。 2 そこで,本件設置許可処分の無効確認ないしその取消しを求める本件訴えについて,原告が原告適格を有するかどうかについて判断する。 (1) 本件許可処分は,場外車券売場の設置に関する一般的禁止を解除するにとどまるものであって,その法律上の効果として,直接第三者である地元自治体の権利を侵害し,あるいは何らかの不利益を受忍させる法的効果を有するものではない。 したがって,本件許可処分の法律上の効果として,直接原告に場外車券売場の設置を受忍し,又は公安・公衆衛生等の権能を行使する義務を負わせたり,原告の主張する各 させる法的効果を有するものではない。 したがって,本件許可処分の法律上の効果として,直接原告に場外車券売場の設置を受忍し,又は公安・公衆衛生等の権能を行使する義務を負わせたり,原告の主張する各種権能を侵害し,あるいは費用負担等の不利益を課するものではない。 (2) 次に,本件許可処分の根拠法規である法が地元自治体である原告の個別的利益を保護すべきものとする趣旨を含むか否かについて検討する。 場外車券売場の設置について,上記のとおり,法4条1項は通商産業大臣の許可を受けなければならないと定め,同条2項は通商産業大臣は申請に係る施設の位置,構造及び設備が命令で定める基準に適合する場合に限り,その許可をすることができると定めている。 このような場外車券売場設置許可制度は,昭和27年法律第220号「自転車競技法等の一部を改正する法律」により設けられたものであり,同法により改正された後の法4条2項は,申請が「命令で定める基準に適合する場合に限り,その許可をすることができる」旨規定し,また,昭和27年法律第220号は,競輪場の設置についても通商産業大臣の許可によることとし,同法による改正後の法3条4項は,「申請に係る競走場の位置,構造及び設備が公安上及び競輪の運営上適当であると認めるときに限り,その許可をすることができる」旨規定していた。その後,昭和32年法律第168号「自転車競技法の一部を改正する法律」により,競輪場については,「申請に係る競走場の位置,構造及び設備が命令で定める公安上及び競輪の運営上の基準に適合する場合に限り,その許可をすることができる」と,場外車券売場については,「申請に係る施設の位置,構造及び設備が命令で定める基準に適合する場合に限り,その許可をすることができる」とそれぞれ改正された。 以上のような競輪場及び場外車券売 きる」と,場外車券売場については,「申請に係る施設の位置,構造及び設備が命令で定める基準に適合する場合に限り,その許可をすることができる」とそれぞれ改正された。 以上のような競輪場及び場外車券売場の設置許可に関する法の改正経過に加え,場外車券売場設置許可制度も競輪場設置許可制度と同様の趣旨・目的をもって設けられたものと解されることに照らすと,場外車券売場設置許可制度の目的は,申請に係る施設の位置,構造及び設備が公安上及び競輪事業の運営上適当であるか否かを審査することにあると解するのが相当である。 そして,前記のような場外車券売場設置許可制度の目的,法には,地元自治体の個別的利益を直接保護することを目的とする明文の規定が存しないばかりか,前記許可制度が地元自治体の個別的利益を保護する趣旨であることをうかがわせるような規定が存しないこと,法は場外車券売場の許可基準について具体的に規定することなく,これを命令に委任していることからすると,前記許可制度によって,法が一般的公益と別に地元自治体の個別的利益を保護する趣旨であると解するのは困難である(なお,設置要領通達は,場外車券売場の設置に当たっては,その設置場所の属する地域社会との調和を図るため,当該施設が可能な限り地域住民の利便に役立つものとなるよう指導することや,地域社会との調整を十分に行うよう指導することとしていることが認められる(乙7)が,設置要領通達は,機械情報産業局長の各通商産業局長に対する行政内部の通達であって,場外車券売場の設置・運営が適正かつ円滑に行われるための行政指導上の指針にすぎないから,これが,地元自治体の個別的利益を保護する趣旨であるということもできない。)。したがって,原告が,本件許可処分によって侵害されたと主張する権能等は地元自治体の個別的利益として法が保護し ぎないから,これが,地元自治体の個別的利益を保護する趣旨であるということもできない。)。したがって,原告が,本件許可処分によって侵害されたと主張する権能等は地元自治体の個別的利益として法が保護しているということはできない。 (3) なお,原告の主張にかんがみ,法が場外車券売場設置許可制度により地元自治体の個別的利益を保護する趣旨を含むかどうかについて検討する。 ア法1条1項について同条項は,自治大臣(現総務大臣)が指定する市町村は,公益の増進を目的とする事業の振興に寄与するとともに地方財政の健全化を図るため,自転車競走を行うことができる旨規定する。 そして,その規定自体から明らかなとおり,同条項は,競輪を施行する目的が,同条項に例示された公益の増進を目的とする事業の振興に寄与すること,及びこれを施行する市町村の財政の健全化にあることを定めた規定である。したがって,同条項によって,原告が主張するような,住民の生活の安全,福祉,保健衛生,教育,青少年の健全育成,生活環境の保全等地元自治体の公共の利益に関わる事項やその財政の健全化を個別的利益として保護する趣旨であると解することは到底できない。 イ法4条2項,施行規則4条の3(位置基準及び構造等環境調和基準)について位置基準及び構造等環境調和基準に関する施行規則の規定は前記のとおりであり,これを受けた場外告示の前記規定も考え併せると,これらの許可基準等が,場外車券売場の設置により周辺環境が受ける影響に一定の配慮をすべきものとしていると解される。 しかしながら,場外車券売場設置許可制度の目的は,前記(2)で判示したとおり,申請に係る施設の位置,構造及び設備が公安上及び競輪事業の運営上適当であるか否かを審査することにあり,前記の許可基準等もその目的のために設けられたものというべきであ は,前記(2)で判示したとおり,申請に係る施設の位置,構造及び設備が公安上及び競輪事業の運営上適当であるか否かを審査することにあり,前記の許可基準等もその目的のために設けられたものというべきであるから,施行規則及び場外告示の前記各規定は,場外車券売場の設置による周辺環境に悪影響が及ぶことをできるだけ回避するなどすることによって,これが社会的に受容され,公安を維持し,競輪事業の運営が円滑に行われることに資するという観点から定められたものと解するのが相当である。したがって,前記各基準がこれらの一般的公益と別に地元自治体の個別的利益を保護する趣旨であると解することはできない。なお,施行規則4条の2第2項1号は,場外車券売場設置許可申請書に場外車券売場付近の見取図(敷地の周辺から1000メートル以内の地域にある学校その他の文教施設及び病院その他の医療施設の位置並びに名称を記載した1万分の1以上の縮尺による図面)を添付しなければならないとしているが,これも添付図面として要求されているにすぎないから,前記の規定によっても,地元自治体の個別的利益が保護されているということはできない。 ウ法7条の2,21条について法7条の2,21条は,学生生徒及び未成年者の車券購入及び譲受を禁止するとともに,その禁止行為の相手方に罰則を科する規定であって,地元自治体の個別的利益を保護する趣旨でないことはその規定自体から明らかである。 エ法2条,3条について法2条は,競輪を開催しようとする場合の規定であり,法3条は競走場を設置又は移転しようとする場合の規定であって,場外車券売場設置許可についてはこれら各規定はいずれも準用されていないから,前記各規定も地元自治体の個別的利益を保護する趣旨であるということはできない。 オ地方自治法について地方自治法は,地方自 外車券売場設置許可についてはこれら各規定はいずれも準用されていないから,前記各規定も地元自治体の個別的利益を保護する趣旨であるということはできない。 オ地方自治法について地方自治法は,地方自治の本旨に基づいて,地方公共団体の区分並びに地方公共団体の組織及び運営に関する事項の大綱を定め,併せて国と地方公共団体との間の基本的関係を確立することにより,地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに,地方公共団体の健全な発展を保障することを目的とする(同法1条)ものである。他方,法は,その目的を明示した規定はないものの,自転車競走の施行に伴う諸制度を定めることを目的とするものであるから,法の目的と地方自治法の前記目的が共通するものでないことは明らかである。したがって,地方自治法の規定によって,本件許可処分の根拠法規である法が地元自治体の個別的利益を保護する趣旨であることを根拠づけようとすることはその前提を誤ったものであり,既にこの点において理由がないことは明らかである。 カ憲法31条及び憲法の保障する自治権についてこれら憲法の諸規定が本件許可処分の根拠法規である法と目的を共通するものでないことは明らかであるから,これらの規定によって場外車券売場設置許可制度に関して地元自治体の個別的利益が保護されているとすることはできない。 以上のとおり,原告の主張する各規定は,いずれも場外車券売場の設置に関して,地元自治体の個別的利益を保護する趣旨であるということができない。 (4) また,本件で原告に原告適格が認められるか否かは我が国の法令解釈の問題であるから,法制度の異なる諸外国において,地方自治体の自治権が侵害された場合に国等の行為に対する出訴が認められるとしても,原告が原告適格を有する根拠となるものではない。したがって,原告 解釈の問題であるから,法制度の異なる諸外国において,地方自治体の自治権が侵害された場合に国等の行為に対する出訴が認められるとしても,原告が原告適格を有する根拠となるものではない。したがって,原告の主張は採用できない。 (5) 以上によれば,原告は,本件許可処分に関して法律上保護された利益を有せず,その無効確認ないし取消しを求めるにつき法律上の利益を有しないから,原告は本件訴えについて原告適格を欠くというべきである。 3 よって,その余の点について判断するまでもなく,本件訴えはいずれも不適法であるから却下することとし,訴訟費用の負担につき行訴法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 (口頭弁論終結の日平成14年10月1日)裁判長裁判官須田啓之裁判官細野高広裁判官宮本博文
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