令和3(行コ)70 遺族補償一時金不支給処分取消請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和5年4月25日 名古屋高等裁判所 名古屋地方裁判所
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判決文本文28,182 文字)

主文 1 原判決を取り消す。 2 津労働基準監督署長が控訴人に対して平成26年9月26日付けでした労働者災害補償保険法による遺族補償一時金を支給しない旨の処分を取り消す。 3 訴訟費用は第1、2審とも被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨主文同旨第2 事案の概要(略語は、本判決で定めるもののほか、原判決の例による。以下、本判決において同じ。) 1 本件は、中部電力株式会社(本件会社)に平成22年4月1日に入社し、三重支店営業部法人営業グループのソリューションスタッフ(SO)チームに配属されたa(本件労働者)の母である控訴人が、本件労働者は、本件会社における過重な業務及び上司によるパワーハラスメントにより精神障害を発病し、▲年▲月▲日に自殺(本件自殺)をするに至った旨主張して、労働者災害補償保険法(労災保険法)に基づく遺族補償一時金の支給を請求したところ、津労働基準監督署長(処分行政庁)が平成26年9月26日付けで不支給とする旨の処分(本件処分)をしたことから、被控訴人に対し、本件処分の取消しを求める事案である。 原審が、本件労働者の精神障害の発病について業務起因性を認めることはできず、本件処分は適法にされたものであるとして、控訴人の本件請求を棄却したところ、控訴人がこれを不服として控訴した。 2 前提事実並びに本件の争点及び当事者の主張は、原判決3頁2行目の「対しては,」の次に「『OJTガイド』で」を、6行目末尾に「本件会社の将来を担う、新入社員の無限の可能性を現実のものにすることが、新人育成に携わる者の最大の使命である。ただし、入社した時点では、新入社員に期待する能力 レベルと現状の能力レベルには大きな差があり、この差を効率的、効果的に の可能性を現実のものにすることが、新人育成に携わる者の最大の使命である。ただし、入社した時点では、新入社員に期待する能力 レベルと現状の能力レベルには大きな差があり、この差を効率的、効果的に埋めていくことが新人育成の課題である。OJTについては、特に、職場において日常的に新入社員と接しながらOJTを進める上長及び指導員には、『率先垂範』、すなわち、上長及び指導員が業務の知識・技能はもちろんのこと、仕事に対する態度や心構え、生活態度に至るまで幅広い範囲で見本を示し、温かさと厳しさを持って『共に取り組む』ことが求められている。」を、4頁20行目の「b課長」の次に「並びに営業担当者であるq(以下『qAM』という。)」をそれぞれ加え、13頁16行目の「存在しなから」を「存在しないから」に改め、次項に当審における控訴人の補充主張の要旨を、次々項に当審における被控訴人の補充主張の要旨を付加するほかは、原判決「事実及び理由」第2の1及び2に記載のとおりであるから、これを引用する。 3 当審における控訴人の補充主張の要旨(1) 業務起因性の判断について原判決は、業務の質的過重性として、本件労働者が、平成22年5月頃から同年7月頃まで携わったクボタ松下電工外装株式会社の案件(クボタ松下案件)、同年8月末頃から同年10月12日まで主担当として携わった三重県科学技術振興センターに関する案件(技術振興センター案件)、同年7月26日以降、主担当として携わった三井住友金属鉱山伸銅株式会社の案件(三井住友案件)、同年8月頃から同年9月頃まで携わった日立金属株式会社桑名工場の案件(日立金属桑名案件)及び同年7月7日に応募したフレッシャーズ産業論文コンクール(産業論文)並びに本件労働者の直属長であるb課長による暴言を、1つ1つ検討して業務による心 金属株式会社桑名工場の案件(日立金属桑名案件)及び同年7月7日に応募したフレッシャーズ産業論文コンクール(産業論文)並びに本件労働者の直属長であるb課長による暴言を、1つ1つ検討して業務による心理的負荷の程度を評価しているが、本件労働者は、同時期に複数の業務を並行して遂行していたのであるから、同時期の並行する業務遂行により受けた心理的負荷は総合的に評価されるべきであり、新入社員に対する指導及び援助が不十分であったこと等を総合して考えれば、本件労働者の心理的負荷は極めて大きいことが明らか である。 (2) 技術振興センター案件の業務と心理的負荷について技術振興センター案件は、熱源構成や機器容量などの試算条件を設定した上、ランニングコスト及びイニシャルコストを算出し、経済性と環境性を総合的に判断して最適のシステムを提案する業務であるが、全く経験のない新入社員である本件労働者にとっては困難な作業である。特に、提案書では、熱源に電気式ヒートポンプ外3方式の比較をし、それぞれを算定した上、電力会社として電気式ヒートポンプが最も有力になるように加工操作をする必要があった。この作業(チョイス)は豊富な熱源選定経験の上に醸成されるものであるため、新入社員である本件労働者にはできない作業が多々あるところ、指導、支援が不十分である上、三井住友案件と同時並行で作業を進めなければならず、加えて、b課長のいう「計算ミス」が判明し、b課長から理不尽な叱責を受けたことからすると、本件労働者が受けた心理的負荷が極めて大きかったことは明らかである。 (3) 三井住友案件の業務と心理的負荷について三井住友案件は、①セントラル方式で工場全体に熱供給を行っている蒸気設備の省エネルギー対策の提案、②15か所の個別の機器の熱源を蒸気から (3) 三井住友案件の業務と心理的負荷について三井住友案件は、①セントラル方式で工場全体に熱供給を行っている蒸気設備の省エネルギー対策の提案、②15か所の個別の機器の熱源を蒸気からヒートポンプへ変更する提案、③最終的に工場全体の熱源を電気設備に変更する提案を行う案件であるが、上記提案をするために必要な蒸気配管図の作成が極めて困難であるところ、本件労働者にはその知識及び経験がなく、上司らからも適切な指導や助言を得られなかったこと、平成22年10月27日に命じられた中間報告書の作成において求められている内容が本件労働者の現場実務能力を超えるものであり、中間報告書を作成できない状態で中間報告をせざるを得なかったこと、本提案のための熱損失計算、省エネルギーの方法の検討及び提案書の作成が困難を極めたこと、これらに加え、三井住友案件の目標が本件労働者に明確にされておらず、上司らの対応がさらに本 件労働者を混乱させたこと等からすれば、三井住友案件の業務が新入社員である本件労働者にとって過重な業務であり、心理的負荷が過大であったことは明らかである。 (4) パワーハラスメントの有無について原判決は、過去にb課長から指導を受けた社員がパワーハラスメントを受けているとの認識を有していなかったこと、b課長が本件労働者を罵倒するなどしていた事実が見当たらないこと、b課長のパワーハラスメント行為を直接見聞きした者がいないこと等を理由に、b課長によるパワーハラスメントの事実を否定するが、h(旧姓i)の証人尋問における証言により同事実は十分立証されている。また、b 課長が飲み会の場で「学卒も大したことないな」、「聞いたことがない大学」などと発言した事実は少なくとも認定できるところ、このような発言も本件労働者にとって相当程度 実は十分立証されている。また、b 課長が飲み会の場で「学卒も大したことないな」、「聞いたことがない大学」などと発言した事実は少なくとも認定できるところ、このような発言も本件労働者にとって相当程度強い心理的負荷になったといえる。さらに、過大な要求もパワーハラスメントに当たるところ、容易な業務でない技術振興センター案件における計算ミスについてb課長が理不尽な叱責をしたことや、十分な実務教育や相談しやすい雰囲気もない中で本件労働者を難易度の高すぎる三井住友案件の主担当にしたことは、パワーハラスメントに該当する。 (5) 精神障害の発病との業務起因性原審で主張したところに加え、以上によれば、本件労働者は、新入社員であり現場実務能力がないのにその能力を超える責任の重い過大な業務を課され、周囲の支援態勢等がない中で複数の業務を同時並行して行わざるを得なくされ、さらに上司からパワーハラスメントを受けたことによる業務上の心理的負荷により精神障害を発症し本件自殺に至ったことが明らかであるから、本件労働者の精神障害の発病及び死亡は業務に起因するものである。 4 当審における被控訴人の補充主張の要旨(1) 業務起因性の判断について 精神障害の発病と業務との相当因果関係が認められるためには、①当該業務による負荷が平均的な労働者にとって客観的に精神障害を発病させるに足りる程度の負荷であると認められること及び②当該業務による負荷が、その他の業務外の要因に比して相対的に有力な原因となって当該精神障害を発病させたと認められることが必要である。 本件労働者は、大学・大学院レベルでの数学的な知識を有しているほか、建築物の構造や設備に係る一定程度以上の知識を有しており、更に本件会社に入社してからも各提案業務に資する研 が必要である。 本件労働者は、大学・大学院レベルでの数学的な知識を有しているほか、建築物の構造や設備に係る一定程度以上の知識を有しており、更に本件会社に入社してからも各提案業務に資する研修を受けている。業務負荷を評価するに当たっては、本件労働者と同種の知識・経験を有する平均的な労働者を基準として、業務の困難性の程度、業務遂行に向けた上司・周囲のサポートの有無及び程度を総合判断する必要がある。 (2) 技術振興センター案件について技術振興センター案件の提案書は、過去に作成された提案書(乙34。以下「乙34の提案書」という。)と試算条件や比較項目がおおむね同一であって、これを参考に作成することが可能なものであり、提案書に記載する数値も本件労働者が研修で使用方法を学んだ計算ソフトを用いて簡単に計算でき、指導員の支援も受けられていたことから、困難な業務ではなかったといえる。平成22年10月8日に判明した提案書の計算ミスについても、2、3時間程度で修正できる計算ミスであって業務の困難性を裏付けるものではない。 (3) 三井住友案件について本件労働者は三井住友案件の主担当者であったが、三井住友案件は資料を参照して作業すれば容易に提案書を作成できる一般的な案件であった上、常に同僚が現場に同行するなどして本件労働者をサポートしており、業務の引継ぎもされていたことから、新入社員である本件労働者にとって過大な業務であったとはいえない。また、三井住友案件は、本件会社にとって販売戦略 上重要な案件でもなく、本案件の成否が本件会社にとって重要なものであったわけでもなかった。 三井住友案件の提案書に必要な蒸気配管図とは、客先に対して省エネルギー対策のための各種手段を提案する前提として、現状の蒸気配管の熱 否が本件会社にとって重要なものであったわけでもなかった。 三井住友案件の提案書に必要な蒸気配管図とは、客先に対して省エネルギー対策のための各種手段を提案する前提として、現状の蒸気配管の熱損失を説明するためのプレゼンテーション資料の1つとして作成されるものであり、施工工事のために作成される蒸気配管図の精度とは、求められる精度に雲泥の差がある。また、蒸気配管の熱損失計算も、三井住友案件の提案書(乙17・7頁)によれば、公刊物記載の数式を用いた計算であり、配管径ごとの配管長、保温材の厚み、ドレントラップの数を現場で計測して収集していれば可能な計算である。 本件労働者の作成途中の提案書案(甲A1の2・804頁)、三重支店作成のスケジュール(甲A15)等のほか、f(f 主任)と本件労働者の会話状況に鑑みれば、本件労働者は、三井住友案件の提案書で指摘すべき事項について、f 主任らとの間で認識を共有していた。そして、提案書の提出期限は、平成22年4月時点では同年11月上旬とされていた(甲A17の4)ものの、少なくとも同年8月30日時点では、社内的にも同年11月末に変更されており、実際には客先の都合で同年12月上旬に提案しているから、提案期限が短縮されたものではない。 三井住友案件は、飽くまで「蒸気設備の省エネルギー」を検討するものであり、ボイラーを廃止して全工程をヒートポンプに置き換えて電化することなど当初から目標とされていない。平成22年8月30日時点のスケジュール(甲A15)でも三井住友案件につきプロセス電化をテーマとして提案する方針とされていることや、本件労働者作成に係る資料(甲A54の2)でも飽くまで蒸気があることを前提にした提案が予定されていることからすれば、本件労働者はボイラーの移設更新を前提に提案を検討 提案する方針とされていることや、本件労働者作成に係る資料(甲A54の2)でも飽くまで蒸気があることを前提にした提案が予定されていることからすれば、本件労働者はボイラーの移設更新を前提に提案を検討していたといえる。 過去に三重支店で作成した蒸気配管の熱損失を計算した提案書(乙12) と、三井住友案件の提案書(乙17)とを比較すると、枚数や図面の有無に違いはあるが、蒸気配管の熱損失計算としては両者に大きな違いはない。三井住友案件は、上記過去の案件と比べると、蒸気配管の熱損失を計算する対象箇所が多いため、現場計測箇所が多いという違いがあるが、現場計測は合計7回にわたりf 主任らも一緒に行っており十分なサポートを受けている。 以上によれば、三井住友案件の業務は、本件労働者と同種の平均的労働者からして精神障害を発病させるほどの業務負荷のあるものではない。 (4) パワーハラスメントの有無について本件労働者の同期の社員は、本件会社による調査において、b 課長から大学名を馬鹿にされた、「帰れ」、「役に立たない」と言われたなどと本件労働者から聞いた旨の回答をしているが、本件労働者と同じ職場で勤務していた同僚は、いずれもこのような発言の存在を否定しており、d(d 指導員)及びf 主任も、b 課長による不穏当な発言は聞いたことがない旨の証言をし、b 課長自身もパワーハラスメントに該当するような言動を明確に否定する旨の証言をしている。同期の社員の上記回答は、いずれも本件労働者から聞いた話にすぎず、性質上、伝聞に伴う記憶の不正確性や誇張などが内包されており、そもそも上記回答の内容自体、いつ、どのような状況で言われたものか明らかでない。 また、証人i の「上司から、こんなん全然駄目とか、そんなんも作れへんのか 確性や誇張などが内包されており、そもそも上記回答の内容自体、いつ、どのような状況で言われたものか明らかでない。 また、証人i の「上司から、こんなん全然駄目とか、そんなんも作れへんのか、それでも大卒か、みたいな感じのことを言われるっていうことを話していました。」との証言も伝聞に基づくものであって、性質上、その証言内容の真実性を立証する証拠としては極めて弱いものでしかなく、証言内容も抽象的であり、b 課長から本件労働者に対する具体的なパワーハラスメントを裏付けるものではない。 さらに、控訴人は本件労働者に対する過重な業務負荷もパワーハラスメントに該当する旨主張するが、過重な業務負荷はないから主張の前提を欠く。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、原審と異なり、本件労働者の精神障害の発病及びこれによる本件自殺について業務起因性が認められるから、津労働基準監督署長が控訴人に対して平成26年9月26日付けで行った労災保険法による遺族補償一時金を支給しない旨の本件処分は取り消されるべきものと判断する。その理由は、次のとおり改めるほかは、原判決「事実及び理由」第3の1ないし4に記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決19頁7行目の「仕事に厳しく,」の次に「部下からは熱いと感じられており、マナーや気遣いにも高いレベルを要求し、」を、同行目の「新人に」の次に「大きな声で」を、9行目の「同320」の次に「、321」をそれぞれ加える。 (2) 原判決19頁9行目末尾を改行の上、次のとおり加える。 「 本件労働者は、三重支店営業部に配属され、その業務を担当することになって以降、b 課長から、注意を受ける際、大きな声で怒鳴られ、『こんなんで大卒か』、『学卒も大したことないな』、『聞いたことがない大学』など 者は、三重支店営業部に配属され、その業務を担当することになって以降、b 課長から、注意を受ける際、大きな声で怒鳴られ、『こんなんで大卒か』、『学卒も大したことないな』、『聞いたことがない大学』などとも言われていた(なお、平成22年9月以降のb 課長の本件労働者に対する指導等については、後記のとおりである。)。本件労働者は、これについて、日常的に電話で話をしたり一緒に食事をしたりしていた友人のi に、『静かに言ってもらえればわかるのに』、『何かあると大きな声で怒鳴られる』などと述べ、仕事内容等については、『書類の作り方が分からへん』、『見よう見まねで作っている』、『作ってもあまり評価してもらえない』、『すぐ捨てられる』などと述べていた。このようなb 課長の指導等に対する本件労働者の受け止め方は、同年の春から夏頃には、気持ちが外側に向いており、仕事が分からない自分や上司に対する怒りであったのが、同年の盆過ぎ以降は、気持ちが内側に向いて、仕事が分からない自分が悪いのかという様に変わってきた。本件労働者が、本件会社の仕事について、i に話す 内容等には、当初から仕事が楽しいというような発言はなく、ほとんど愚痴ばかりであり、同年9月頃以降は、話を聞いているi において、深刻なものと受け止め、簡単に頑張れというのはいけないと判断して、聞くに徹するような状況であった。また、本件労働者は、うつ病で休職中の別の友人に、自分もうつ病ではないかと相談するなどしていた。そのほか、本件労働者が所属する部署では、飲み会が多く、本件労働者がこれを断った次の日に無視されるなどしたため、非常に断り難い状況になっており、本件労働者は、飲み会では、周囲からいじられたり、強くあたられたりするなどもしていた。さらには、本件労働者は、同年6月の職場の慰安旅行の際 に無視されるなどしたため、非常に断り難い状況になっており、本件労働者は、飲み会では、周囲からいじられたり、強くあたられたりするなどもしていた。さらには、本件労働者は、同年6月の職場の慰安旅行の際に、上司等のために風俗店の予約を取らされるなどし、その後も、風俗関係の予約を取らされることがあり、本件労働者は、理不尽に感じ、『こんな低俗なことをしている会社だとは思わなかった』、『これも仕事なんかなあ』、『これが仕事やったら、やってけやん』などと述べていた。(甲A1の1・42頁、43頁、215頁、326、327頁、477頁、甲A1の2・548〜550頁、証人i 調書3〜7頁。なお、i は、ことさら虚偽の事実を述べるような立場にはなく、証人として反対尋問も受けており、その供述等は十分に信用できるものである。)」(3) 原判決23頁15頁の「b 課長は,」の次に「本件労働者が十分に答えられない様子を見て電話を代わり、上記誤りの内容を聞いて、単純な計算で済みそうになく、本件労働者1人が土日に出勤して対応しても絶対修正できないと考え(甲A12の2・101~102頁)、」を、18行目の「行った。」の次に「その際、b 課長は、本件労働者に対し、『計算ミスはお前のせいや』、『こんな単純なことも分からんのか』、『おまえなんか要らん』、『自分で全部直せ』、『そんなんもできひんのに大卒なのか』(証言どおり記載)などと言って叱責した(証人i 調書6頁)。」をそれぞれ加え、21行目冒頭から23行目末尾までを削除し、24頁5行目冒頭から22行目末尾までを 次のとおり改める。 「 b 課長は、平成22年11月18日に控訴人宅で行われた、控訴人及び控訴人の父と、三重支店営業部のs グループ長、b 課長、f 主任、qAM及びc(c 指導員)との懇談(以下 とおり改める。 「 b 課長は、平成22年11月18日に控訴人宅で行われた、控訴人及び控訴人の父と、三重支店営業部のs グループ長、b 課長、f 主任、qAM及びc(c 指導員)との懇談(以下『11月18日の懇談』という。)において、同年10月8日に判明した、技術振興センター案件の提案書の数値の誤りについて、単純な計算ミスではなく本件労働者1人では絶対修正できないものであった旨の発言をしている(甲A12の2・101~102頁)。 これについて、b 課長は、上記のような発言をした記憶はなく、同発言の内容が事実かどうかも分からない旨の証言をする(証人b 調書28~30頁)が、11月18日の懇談は、同年10月8日の約1か月後という近接した時期に行われたものであり、この間に、ゴルフコンペの最中に連絡を受けて翌日の休日出勤を決めたという、同日の特徴的な出来事に関する記憶が薄れるとは考え難く、また、11月18日の懇談の際に、この点に関し、控訴人や控訴人の父の心情に配慮してあえて事実と異なる話をすべき具体的な必要性も見当たらないから、11月18日の懇談におけるb 課長の上記発言は、b 課長が当時の記憶に沿って述べたものと認めるのが相当であり、上記証言によっても同認定は左右されない。なお、b 課長は、令和元年9月6日に実施された三重労働局での聴取において、上記の数値の誤りにつき、修正作業自体はそれほど困難なものではなく、修正作業だけであれば本件労働者一人でも対応は可能であったと思うが、休日明けに客先に提案を行う予定になっていたことから、時間的な猶予がなかったため一緒に休日出勤した旨を述べているが(乙30の16項)、11月18日の懇談や原審の証人尋問でこのような説明をしていないことに照らせば、労働局での上記陳述によって上記認定が左右されるものでは ったため一緒に休日出勤した旨を述べているが(乙30の16項)、11月18日の懇談や原審の証人尋問でこのような説明をしていないことに照らせば、労働局での上記陳述によって上記認定が左右されるものではない。 また、平成22年10月9日の休日出勤の際にb 課長が本件労働者に対し前記(ア)のような発言をして叱責したことについて、b 課長は、注意はし たと思うが叱責はしていない旨の証言をしている(証人b 調書34~36頁)。しかし、i は、上記休日出勤の翌々日である同月11日に本件労働者と一緒に食事をした際、本件労働者から、上記休日出勤の際に上司から前記(ア)のように言われた旨の証言をしている(証人i 調書6~7頁)。上記証言について、被控訴人は、伝聞に基づくものであり証言内容も抽象的であるから前記(ア)の発言があったことを立証するに足りない旨主張する。しかし、証人i の上記証言は、同月11日にi と本件労働者とが一緒に食事をすることになった経緯や食事をした店等も含めて具体的な出来事として証言されているものの一部であり、i が、過去の出来事であっても、そのときの状況や周りの情景とともに会話の内容を鮮明に記憶し思い出すことができる旨の証言をしていること(証人i 調書8頁)も踏まえれば、証人iの証言の信用性は高いものと認められるし、証言内容もむしろ具体的といえるもので、抽象的なものではない。そして、本件労働者の性格等について、本件会社内でも、『冷静で落ち着いている』、『誠実。仕事に関して責任感が強く、自分で何とかしようという意識が高い。』等と受け止められていたこと(甲A1の1・472頁)や、i が、本件労働者が大げさに話したりうそを言ったりすることはなく、むしろ話を小さく言うところがあった、何でも話せる仲なので今更気を引こうとすると 受け止められていたこと(甲A1の1・472頁)や、i が、本件労働者が大げさに話したりうそを言ったりすることはなく、むしろ話を小さく言うところがあった、何でも話せる仲なので今更気を引こうとするということも考えられない旨の証言をしていること(証人i 調書7頁)等に照らせば、本件労働者がi を含む第三者に対し、上司(b 課長)から言われてもいないことを言われたと話したり大げさに言ったりするとは考え難く、同月11日が上記休日出勤から続く休日(連休)であったことも踏まえれば、本件労働者は、b 課長から上記休日出勤の際に叱責された言葉として記憶していることをそのままi に話したものと認められる。したがって、証人i の上記証言から、b 課長が本件労働者に対し前記(ア)の同月9日の発言をして叱責したとの事実を優に認定することができるのであり、被控訴人の上記主張は理由 がない。」(4) 原判決25頁23行目の「予定していたが,」の次に「同年4月の時点で、客先から、同年7月1日に合併するため待ってほしいと言われたため中断となり(甲A1の1・278頁)、」を加え、26頁5行目の「自ら提案内容を」を「検討項目を一から」に改め、6行目から7行目にかけての「また」から9行目の「いた。」までを削除する。 (5) 原判決27頁15行目の冒頭に「三井住友案件では、蒸気配管の熱損失計算を対流損失と放射損失という2つの計算式を用いて算定しているところ(甲A16の4、乙17)、三重支店において、平成15年度から本件労働者が亡くなる平成22年10月30日までの間に蒸気設備に対する提案が行われた案件の提案書に、熱損失計算を対流損失及び放流損失の双方の計算式を用いて行ったものは見当たらない(乙12、22、証人f 調書23~25頁、証人t 調書13頁)。」を加え、 設備に対する提案が行われた案件の提案書に、熱損失計算を対流損失及び放流損失の双方の計算式を用いて行ったものは見当たらない(乙12、22、証人f 調書23~25頁、証人t 調書13頁)。」を加え、19行目の「簡易な熱損失計算の方法等」を「提案に必要な計算方法等」に、20行目の「もらったところ」を「もらった。同月20日、四日市営業所の、蒸気配管に詳しい社員を含めて打合せを行ったところ、いくつかのアドバイスを受け」にそれぞれ改め、28頁17行目の「戻った。」の次に「その後、再び本件労働者が車を運転して客先に向かったが、本件労働者が考え事をしながら運転している様子であったため、qAMは、『考え事しながら運転してるみたいだから、運転を代わる。』と言って本件労働者と運転を代わった。」を、29頁7行目末尾に「本件労働者は、客先から三重支店に戻る車中で、f 主任から、同日の客先での現場調査結果を基に熱損失計算を何分ぐらいでできるか問われ、30分もあればできる旨答えた。」を、26行目の「本件労働者に,」の次に「今後はスケジュールも大切になってくる、いくつもの内容を実施するのは無理だと思うなどと話し、」をそれぞれ加え、30頁24行目冒頭から31頁16行目末尾までを次のとおり改める。 「 これに対し、被控訴人は、三井住友案件は飽くまで蒸気設備の省エネルギーを検討するものであり、本件労働者の作成途中の提案書案や三重支店作成のスケジュール等によれば、本件労働者も飽くまで蒸気があることを前提にした提案を予定していたといえるから、三井住友案件の提案書で指摘すべき事項に関し、本件労働者とf 主任らとの間で認識に齟齬はない旨主張する。確かに、三井住友案件に関し、平成22年10月28日の中間報告前の打合せ等の際に本件労働者とf 主任及びqAMとの間で交 摘すべき事項に関し、本件労働者とf 主任らとの間で認識に齟齬はない旨主張する。確かに、三井住友案件に関し、平成22年10月28日の中間報告前の打合せ等の際に本件労働者とf 主任及びqAMとの間で交わされた会話の内容(甲A41)や、『本件労働者に部分電化の提案でいいという話もした』旨の証人f の証言(証人f 調書36頁)、『平成23年にボイラー更新の予算要求がされる可能性を本件労働者に隠す理由はなく、g 主任からの引継ぎの際に必ず伝わっているものだと思う』旨の証人b の証言(証人b 調書15~26頁)等によれば、本件労働者においても、三井住友案件の客先においてボイラー更新の予算要求がされる可能性があることや、当初から工場全体の電化(屋外配管を撤去して電気設備を入れるもの)を提案するのではなく、まずは部分的な蒸気配管の熱損失の削減やヒートポンプの導入等(電化)による省エネルギーの提案をしていくことは認識していたと認められる。 しかし、三井住友案件の提案書(乙17)の『まとめ』には、『工場全体での蒸気レスに向けたヒートポンプの導入を是非ご検討ください。』と記載されており、これについて、f 主任は、工場全体のヒートポンプ化がベストであり、本件労働者にもベストはそれだと話していた旨の証言をしていること(証人f 調書36頁)、平成22年10月28日の中間報告に向かう車中で、本件労働者に対し、f 主任が、概要『ここからスピードを上げて提案書を仕上げていく必要がある。方法としては、最終的には電化の提案につなげられればよく、蒸気配管の熱損失を削減する方法を考えていく必要がある。その方策として、工場全体ではなく、ある一か所を特定 するなどして熱源のベーパライザーやヒータ式のトレース等を検討していく方がよい。』旨の話をし、qAMが『お客様は来年 考えていく必要がある。その方策として、工場全体ではなく、ある一か所を特定 するなどして熱源のベーパライザーやヒータ式のトレース等を検討していく方がよい。』旨の話をし、qAMが『お客様は来年度の予算でボイラーの更新をする可能性がある。今回の案件のために、昨年も予算を上げようとしたが待ってくれている。』と話したのに続けて、f 主任が『最終的な報告書でなくてもいいから、お客様がもう1年予算申請を待ちたくなるような提案ができるのが一番よい。ボイラーを更新した場合、電化の話は厳しくなってくる。』との話をしていること(甲A41)等からすると、少なくとも本件労働者としては、三井住友案件について、単に部分的な蒸気配管の保温等による熱損失削減の省エネルギー提案を行うことのみを目的とするものではなく、最終目標は飽くまで工場全体のヒートポンプ化(電化)であり、その最終目標に向けた第一段階として、部分的な電化等の提案を行う必要があるとの認識を有していたものと考えられ、qAMの『昨年も予算を上げようとしたが待ってくれている。』旨の発言や、f主任の『お客様がもう1年予算申請を待ちたくなるような提案ができるのが一番よい。』旨の発言からしても、このような認識を持つことは三井住友案件の主担当としてごく自然のことであったといえる。そうであるからこそ、中間報告の際に客先からボイラー更新の予算申請の話を具体的に聞いた本件労働者が、これまで最終目標としていた工場全体の電化の提案が物理的に不可能になったと感じ、今後の進め方が分からなくなった旨を述べたものと考えられる(前記(エ))。 このような経緯に照らせば、本件労働者としては、新入社員ではあるものの、三井住友案件の主担当として、工場全体の電化という最終目標の実現に向けて、まずは部分的な電化を含む蒸気配管の熱損失削 エ))。 このような経緯に照らせば、本件労働者としては、新入社員ではあるものの、三井住友案件の主担当として、工場全体の電化という最終目標の実現に向けて、まずは部分的な電化を含む蒸気配管の熱損失削減の提案を予定どおり行うことができるよう、蒸気配管図の作成や熱損失計算等の業務を試行錯誤しながら進めていたと認められるのであり、三井住友案件が自身の勉強になるとの認識は本件労働者においても当然有していたと考 えられるものの、その勉強自体が三井住友案件の主目的で客先への省エネルギーの提案や電化の提案は副次的なものと認識していたとは考え難い(実際にも、勉強が主目的であったとは、認め難い。)。したがって、三井住友案件の第1の趣旨は蒸気の勉強であるとのb課長の発言(これは、三井住友案件の主担当が務まるだけの力量を有するまでに至っていない本件労働者を主担当としてしまったことや、本件労働者に対する組織としてのサポートが不十分であったことの責任逃れのための発言であった可能性が高い。)は、本件労働者のこれまでの理解、認識と合致しないもので、f主任及びqAMの上記各発言とも齟齬するものであるから、本件労働者を著しく混乱させるものであったと認められる。そして、本件労働者は、b課長から、今後のスケジュールが重要であるから時間を意識してスケジュールを立てるようにと、第1の趣旨が蒸気の勉強であるとする上記発言と必ずしも整合しない内容の指示をされ、更に混乱したものと考えられ、そのため、打合せ後にf主任からb課長の話が分かったかと問われたのに対し、何も答えなかったものと合理的に推認できる。 したがって、被控訴人の上記主張は理由がない。」(6) 原判決33頁5行目末尾を改行の上、次のとおり加える。 「 平成22年4月に三重支店に配属された新入社員は本件労 合理的に推認できる。 したがって、被控訴人の上記主張は理由がない。」(6) 原判決33頁5行目末尾を改行の上、次のとおり加える。 「 平成22年4月に三重支店に配属された新入社員は本件労働者1人であった(甲A1の2・809頁)。同年8月1日付けで、大学院卒で本件労働者と年次の近い同僚(先輩)であったc指導員、k氏及びo 氏が異動により転出したが、これについて、本件労働者は、いしずえの同年7月20日の週の欄に『8/1に転出される方々には本当に色々なことを教えていただきました。会社の中では一番身近な存在で皆さんとてもやさしいのでかなりあまえてしまいました。そんな皆さんがいなくなると寂しいです。』と記載した(甲A3・39頁)。なお、控訴人は、11月18日の懇談の際、概要『本件労働者から、c指導員は、一緒にい てくれて自分の状態を分かってくれる人で、どういうところで困っているかわかってくれてフォローしてくれると聞いていた。c指導員、k氏及びo 氏が抜けた後、本件労働者が1人になった』旨を述べており(甲A12の2・73頁)、三重支店営業部のu 販売課長作成の報告書(甲A31の2)にも『8月の異動で年齢の近い3人の先輩が同時に転勤した時には、寂しげな顔や不安そうな様子を見かけることもありました』との記載があり、本件労働者は、実際にもそのような状況であったと認められる。 本件労働者は、o 氏との間で度々メールを交わしており、平成22年8月28日には『三重支店の事情をわかってくださる先輩がいて、心強いです』と、同年10月7日には『仕事は全く上手くいきません。しかも、僕の常識と日本会社の常識は全く違うようです。自分を犠牲にしないと生きていけないなんて、よくわかりません』とのメールを送信しており(甲A46)、これも本件労働者の当時 全く上手くいきません。しかも、僕の常識と日本会社の常識は全く違うようです。自分を犠牲にしないと生きていけないなんて、よくわかりません』とのメールを送信しており(甲A46)、これも本件労働者の当時の認識ないし気持ちであったと認められる。」(7) 原判決37頁11行目冒頭から26行目末尾までを次のとおり改める。 「 これに対し、被控訴人は、技術振興センター案件の提案書は、過去に作成された乙34の提案書と試算条件や比較項目がおおむね同一であり、乙34の提案書を参考に作成することができること、数値も既に使用方法を習得している計算ソフトを用いて簡単に算出できること、指導員の支援を受けていたことから、困難な業務ではなかったなどと主張し、b 課長やd 指導員は、三重労働局での聴取において上記主張に沿う旨を述べている(乙29・7項、乙30・6項)。 技術振興センター案件は、三重支店において平成19年12月に提案した乙34の提案書について、平成22年8月24日に客先に対しフォローを行ったところ、客先から空調設備のリニューアル再提案の 依頼を受けたというものであるが(乙30・2項)、確かに、乙34の提案書と技術振興センター案件の提案書(乙36等)とでは、試算条件や比較項目が類似しているといえる。 しかし、両提案書を比べると、採用するシステムの構成や台数等に相違があり、それに伴い、比較結果として記載されている数値も当然異なるものになっている。そして、これらの点について、本件会社の元従業員であるt 氏は、両提案書は目的が同じではないためヒートポンプの機種の選定や台数に相違が生じ、計算ソフトによる計算も、電気システムが最も経済的であるとの結果が出るまで入力条件を加工するのが新入社員にとっては非常に難しい旨を陳述書で述べている(甲A6 ポンプの機種の選定や台数に相違が生じ、計算ソフトによる計算も、電気システムが最も経済的であるとの結果が出るまで入力条件を加工するのが新入社員にとっては非常に難しい旨を陳述書で述べている(甲A66・8~12頁)。また、b 課長も、11月18日の懇談で、技術振興センター案件における計算に関し、概要『キャリアと知識のある者であれば、この機械よりはこちらの方がいいだろうという判断ができるが、キャリアが薄ければ薄いほど、やらないと積みあがらない。 皆同じように何十回も計算するということは結構ある。』と、上記tの見解におおむね沿う内容の発言をしている(甲A12の2・103~104頁)。なお、b 課長の上記発言について、被控訴人は、本件自殺から日が浅い時期であり控訴人の感情を刺激しないように言葉を選んで受け答えをしていたものであるから、発言内容が必ずしも真実であるとはいえない旨主張するが、上記発言の具体的内容に照らし、控訴人の心情に配慮してあえて事実と異なる内容を述べたものとは考え難く、『技術振興センター案件の空調の提案において、どの空調機器を選ぶかということ(チョイス)は、空調機の経験がなければ難しいものなのかもしれない。』旨の証人b の証言(証人b 調書31頁)にも照らせば、11月18日の懇談におけるb 課長の上記発言の内容は、b 課長の当時の認識を述べたものとみるのが相当である。 そうすると、技術振興センター案件は、特に機種の選定や台数の選択について、経験のない新入社員にとっては困難な作業を伴うものであったと認められるから、新入社員である本件労働者にとっても、最適な数値を見つけるため、試行錯誤しながら何度も空調機を選定して計算するということを繰り返す困難な業務であったと認めるのが相当である。なお、本件労働者は、作成した提案書に る本件労働者にとっても、最適な数値を見つけるため、試行錯誤しながら何度も空調機を選定して計算するということを繰り返す困難な業務であったと認めるのが相当である。なお、本件労働者は、作成した提案書について、d 指導員から、提案する設備の優先度等の修正を受けるなどの支援を受けているが(前記2(2)ウ(ア))、まずは主担当である本件労働者において、最適な数値を見つけて提案書を作成することが求められていたと考えられるから、上記のような支援を受けていることをもって、本件労働者にとって提案書作成業務が困難な業務でなかったとはいえない。 イ平成22年8月末頃に本件労働者が主担当とされた技術振興センター案件は、上記のとおり乙34の提案書のフォローをした際に客先から依頼された、いわゆる飛び込みの案件であるが、本件労働者が同年7月26日に後記のとおり難しい案件である三井住友案件の主担当を命じられたばかりであり、その業務と並行して上記アのとおり困難を伴う技術振興センター案件の業務を主担当として行っていかなければならないことを考慮すれば、技術振興センター案件により本件労働者が受ける心理的負荷の程度はより大きいものであったといえる。 これに加え、前記2(2)ウ(ア)のとおり、本件労働者は、平成22年10月9日の休日出勤の際に、b 課長から、『計算ミスはお前のせいや』、『おまえなんか要らん』、『そんなんもできひんのに大卒なのか』などと、業務指導の範囲を超える叱責をされていることも含めて総合的に判断すれば、技術振興センター案件によって本件労働者が受けた心理的負荷の程度は、少なくとも『中』に該当するとみるのが相当である。」 (8) 原判決38頁4行目の「主張する。」の次に「これに対し、被控訴人は、三井住友案件は過去に類似の事例があり、資料を参 負荷の程度は、少なくとも『中』に該当するとみるのが相当である。」 (8) 原判決38頁4行目の「主張する。」の次に「これに対し、被控訴人は、三井住友案件は過去に類似の事例があり、資料を参照して容易に提案書を作成できる一般的な案件であった上、本件労働者が常に同僚からサポートを受けていたこと、本件会社にとって重要な案件でもなかったこと、おおよその数値や蒸気配管図をもとにした提案で足りるものであったことから、本件労働者にとって過大な業務であったとはいえない旨主張し、同主張に沿う旨の証人b 及び証人f の各証言がある(証人b 調書9~10頁、証人f 調書6~7頁等)。」を加え、5行目の「前記認定事実」から7行目の「いたものの,」までを削除し、11行目の「認められる。」の次に「なお、被控訴人は、三井住友案件は一般的な案件であった旨主張し、g 主任は、労働基準監督署による聴取において同主張に沿う旨を述べている(甲A1の1・279頁等)が、平成15年度から平成22年度までの間に実施された三井住友案件と同種の案件として被控訴人が提出する乙12号証及び乙22号証を見ても、三井住友案件以前に行われた提案はいずれも蒸気配管の保温による省エネルギー対策を提案するものであり(乙22号証によれば、平成23年1月に蒸気ボイラーのヒートポンプ化の検討が2件行われたようであるが、いずれも資料がないため具体的な内容は不明である上、三井住友案件の提案後にされた提案である。)、三井住友案件と同程度の設備のヒートポンプ化を提案した事例は見当たらない。」を加え、14行目の「当初」を「平成22年8月30日時点で」に改め、20行目末尾に「なお、上記①のスケジュールの遅れについては、g 主任が主担当であった平成22年4月時点では、同年7月下旬までの間に、ボイラーの現場調 「当初」を「平成22年8月30日時点で」に改め、20行目末尾に「なお、上記①のスケジュールの遅れについては、g 主任が主担当であった平成22年4月時点では、同年7月下旬までの間に、ボイラーの現場調査、ボイラー及び熱設備に関する検討並びに省エネルギーの提案を行う予定とされていたところ、客先の都合で上記の予定が全く進まず(前記2(2)オ(ア))、これらの作業が全て、本件労働者が主担当を引き継いだ同月下旬以降にずれ込んだことが大きく影響しているものであり、本件労働者は、 主担当となった当初から、g 主任が主担当であった頃よりもタイトなスケジュールで三井住友案件の業務を進めることが求められていたものである。」を加える。 (9) 原判決38頁21行目冒頭から39頁20行目末尾までを次のとおり改める。 「 また、蒸気配管図の作成については、施工工事のために作成される図面のような正確性までは要求されていなかったものの、蒸気配管の熱損失計算をする前提となる資料であるため、配管の太さや長さのほか、ドレントラップ(疎水排水弁)の数及び位置、バルブの数、個別機器等、熱損失計算をする上で必要となる多数の指標を現場調査で集め、その結果を落とし込んで作図する必要があったものである(甲A12の2・22、31~32頁、証人t 調書・2~3頁)。本件労働者は、大学院で建築学を専攻していたことから、f 主任(それまで蒸気配管図を作成した経験はなかった。)から蒸気配管図の作成を指示され、業務時間外に寮の自室で自身のCAD(建築設計等に用いるソフト)を用いるなどして蒸気配管図を作成していたが(前記2(2)オ(イ)、甲A12の2・22、31~32頁等)、本件労働者としても、通常の建物の図面等ではなく特殊な設備である蒸気配管図を作成するのは初めてであったため、作図 気配管図を作成していたが(前記2(2)オ(イ)、甲A12の2・22、31~32頁等)、本件労働者としても、通常の建物の図面等ではなく特殊な設備である蒸気配管図を作成するのは初めてであったため、作図方法等をインターネットで検索して調べるなどしながら10日間余りにわたり深夜の時間帯等に作成していたのであり、図面に記載される数値や個別機器等が徐々に増えている経過(甲A37、38〔枝番を含む。〕)等に照らせば、蒸気配管図の作成業務は、本件労働者にとって容易な作業ではなく、f 主任ら周囲の援助がほとんどなく独力で行っていたことからすると、相当の心理的負荷を受ける業務であり、本件労働者と同様に建築学を履修した者にとっても同様であったと認めるのが相当である。 なお、f 主任は、三重労働局での聴取の際、三井住友案件における蒸気配管図の作成に関し、本件会社内にあるワードやエクセル、パワーポイント等のソフトで概略が分かる程度の簡単な図を作れば足りるものであり普通のレベルのものであるなどと述べているが(乙10・4項、乙19・10項)、f 主任は、本件労働者が自宅のパソコンでCADを用いて作図していることを認識しつつ(乙19・11項)、本件労働者に対し、本件会社内のソフトを用いて作図することで十分である旨の指導や助言をしたとはうかがわれないから、仮に、f 主任の上記陳述のとおり実際は簡単な図で足りるものであったとしても、同事実を本件労働者が認識していたと認められない以上、同事実は、蒸気配管図の作成業務により本件労働者が受けた心理的負荷の程度に影響しないというべきである。 そして、三井住友案件では、蒸気配管の熱損失計算を対流損失と放射損失という2つの計算式を用いて算定しているところ、三井住友案件以前にそのような算定方法を用いた前例があったとは というべきである。 そして、三井住友案件では、蒸気配管の熱損失計算を対流損失と放射損失という2つの計算式を用いて算定しているところ、三井住友案件以前にそのような算定方法を用いた前例があったとはうかがわれないこと(前記2(2)オ(イ))、b 課長も、三井住友案件当時に熱損失計算の方法が対流損失と放射損失という2つの計算式で算定する方法に切り替わったか否か記憶にない旨の証言をしていること(証人b 調書12頁)、d 指導員やf 主任から具体的な計算方法についての十分な指導があったとは認められないこと、平成22年10月中旬頃の打合せで、本件労働者が熱損失計算に不安がある旨述べたことを契機に本件労働者とf 主任とが同月19日に本件会社のエネルギー応用研究所を訪問したこと、同訪問以後は熱損失計算の方法自体が問題とされることはなかったと認められることからすると、三井住友案件の熱損失計算においては、エネルギー応用研究所を訪問して初めて解決し得るような問題があったと考えられるところ、この点に関する上記の経緯等に照らせば、少なくとも同月中 旬頃に本件労働者が熱損失計算に不安がある旨を述べるに至るまで、熱損失計算に関する本件労働者への指導や支援が十分かつ適切に行われていたとは認め難いというべきである。 なお、被控訴人は、エネルギー応用研究所への訪問は、簡単にできる計算方法についての助言を受けることを目的としたものである旨主張し、f主任は同主張に沿う旨の証言等をする(乙10・6項、証人f 調書12頁)。しかし、上記のとおり三井住友案件ではそれまでにない対流損失と放射損失という2つの計算式を用いた熱損失計算がされていること、本件会社作成の『10月28日(木)に訪問したお客さまへの省エネルギー提案業務について』と題する書面(甲A1の1・499頁、 対流損失と放射損失という2つの計算式を用いた熱損失計算がされていること、本件会社作成の『10月28日(木)に訪問したお客さまへの省エネルギー提案業務について』と題する書面(甲A1の1・499頁、甲A28)には、エネルギー応用研究所への訪問に関し、『当社エネルギー応用研究所を訪問し、提案に必要な計算方法等を学ぶ』(『■業務の主な実施内容』の『10/19』欄) 、『ご子息(本件労働者)から配管ロスの計算に不安を感じている旨の発言があったため、当社エネルギー応用研究所に行って教えてもらうように助言した。』(『■業務関係者の役割とご子息への指導内容およびご子息の様子』の『g 主任』欄)、『当社エネルギー研究所訪問後、これで計算できそうかを確認すると、ご子息は計算できそうですと答えた』(同『f主任』欄)、『(エネルギー応用研究所訪問の)当日ご子息から携帯電話に、定時に終了しこれで配管ロスの計算ができるとのメールがあり、翌日もご子息は配管ロスの計算は大丈夫ですと自信を持って発言していた。』(同『b 課長』欄)と記載されていること等によれば、蒸気配管の熱損失計算がうまくできないことから、計算方法について教示を受けるためにエネルギー応用研究所を訪問したものと認められ、熱損失計算自体はできるもののより簡易な計算方法の教示を受けるためにあえてエネルギー応用研究所を訪問したとは考え難く、同趣旨をいう証人f の上記証言等は採用できず、被控訴人の上記主張は理由がない。 さらに、本件労働者は、三井住友案件の主担当として提案書の作成やスケジュール管理等を主体的に行う立場にあったところ、前記認定事実(前記2(2)オ)によれば、三井住友案件の主担当となる際にはg 主任から引き継ぎを受け、また、スケジュールの策定や現場調査等の具体的な工程等につい 等を主体的に行う立場にあったところ、前記認定事実(前記2(2)オ)によれば、三井住友案件の主担当となる際にはg 主任から引き継ぎを受け、また、スケジュールの策定や現場調査等の具体的な工程等については、f 主任から指導を受けたり、g 主任やqAMからアドバイスを受けたりしていたと認めることはできる。 しかし、本件労働者は、三井住友案件の主担当を命じられて以降、いしずえに、三井住友案件の業務に関し、『次のステップは見えているのに、誰に何を話せば次に進めるのかわからず、時間が過ぎている気がします。』(平成22年8月2日の週)、『今後、蒸気配管ガスの測定ができれば良いと思っていますが、良い計測方法が見つかりません。何か考えなくては・・・』(同月9日の週)、『問題が沢山あって、手づまりです。』、『お客さんの立場に立って考えるということが私には全然できません。お客さんの状況が全然読めない。』(同月23日の週)、『住金の計測機器つけてきました!まだまだ問題山積みですが、少しずつ前進しています。』、『保温材の厚みを決めるための“保温JIS”というものがあるそうで、自分で計算してみましたが難しいです。まだまだわからないことがいっぱいですが、明日には調査なのでとにかくやるしかないです。』(同年9月13日の週)等と記載しているが、これに対するコメント記載欄に記載されたd 指導員のコメントは、『肩の力をもう少しぬいてみたら?』、『とりあえず報連想を忘れずに!!』など抽象的なものにとどまり(甲A3・40~43頁)、いしずえの上記記載等を契機に、d 指導員やf 主任らから積極的に本件労働者に働きかけて、三井住友案件の業務に関する悩みの具体的内容を聞き出したり、その解決方法を一緒に考えたりするなどの対応がとられたことは全くうかがわれない。 また、本件労働者 らから積極的に本件労働者に働きかけて、三井住友案件の業務に関する悩みの具体的内容を聞き出したり、その解決方法を一緒に考えたりするなどの対応がとられたことは全くうかがわれない。 また、本件労働者と普段からしばしば電話等で話をしていたi は、三井 住友案件を担当するようになった頃以降の本件労働者について、概要『平成22年9月以降、本件労働者の話が深刻になったように思う。自分に自信がなくなり気持ちが内側に向いているような感じだった。同月13日夜の電話では、書類が作れない、作っても駄目出しばかりされて、どこが駄目なのか具体的に教えてもらえない、どうしたらいいかと言っていた。一緒に食事をした同月26日にも、書類が作れない、見よう見まねで作っているが、こんなのは全然駄目とか、そんなのも作れないのかとか、それでも大卒かみたいな感じのことを言われると話していた。』旨の証言をしている(証人i 調書3~5頁)。 さらに、f 主任は、11月18日の懇談で、概要『三井住友案件は、新入社員にとってはちょっと難しめな案件で、なかなか思うように進んでいなかったよう。こちらから声を掛けると、できますと答えるものの、実際には何もできていないということがよくあった。多分、どう進めていいのか分かっていなかったと思う。本件労働者には分からなかったら聞けよと言っており、本件労働者が聞きに来た際にアドバイスをすると、分かりましたと言うが、結局また分からないということの繰り返しだったと思う。 本件労働者は、分かりましたと言っても実は分かっていないことがあり、理解できないまま進むので、指示に応じた答えが返ってこず、何度もそれを繰り返すというのがあったように見えた。』等の発言をしている(甲A12の2・19、44~45頁)。 上記のいしずえの記載や証人i の証言の内容、f むので、指示に応じた答えが返ってこず、何度もそれを繰り返すというのがあったように見えた。』等の発言をしている(甲A12の2・19、44~45頁)。 上記のいしずえの記載や証人i の証言の内容、f 主任の発言の内容によれば、本件労働者は、三井住友案件の主担当となった当初から業務の進め方を含めて分からないことばかりで焦ったり悩んだりしていたところ、f主任らは、本件労働者のそのような状況を相応に認識していながら、基本的に、わからないところがあれば聞きに来るようにという指示の下、本件労働者から相談や質問があったときにだけ指導や支援をしていたもので あり、本件会社のOJTガイド(甲A5)で新入社員のOJTに必要とされている『率先垂範』等(前記第2の1(4)ア)は行われていなかったと認められ、また、本件労働者から質問や相談等がされた場合も、新入社員である本件労働者に理解できるような丁寧な指導や助言等がされていたとは認め難く、本件労働者が、分かっていないのに分かったと言って進もうとする悪循環に陥っているのを認識しながら、これを改善させるための積極的な指導や働きかけは行われなかったものである。そうすると、本件労働者に対しては、入社後わずか半年程度の新入社員でありながら難しい案件を主担当として行わなければならない状況を十分に考慮した指導や支援が適切に行われていなかったといわざるを得ない。」(10) 原判決39頁22行目冒頭から40頁21行目末尾までを次のとおり改める。 「 前記認定事実(2(2)オ(イ)(ウ))のとおり、本件労働者は、平成22年10月19日のエネルギー応用研究所への訪問及び同月20日の打合せを経て判明した提案に必要な情報を収集するため、同月28日に現場再調査を行う予定としていたところ、同月26日に行われた感謝 平成22年10月19日のエネルギー応用研究所への訪問及び同月20日の打合せを経て判明した提案に必要な情報を収集するため、同月28日に現場再調査を行う予定としていたところ、同月26日に行われた感謝の集いでqAMが客先から中間報告を求められたことから、急きょ、同月28日に中間報告を行うことになったものであるが、本件労働者が、A4用紙1枚程度の中間報告書の作成を指示されこれを引き受けたものの、結局、作成できなかったことや、同月28日の客先に向かう車中で、報告書なしで中間報告をすることにつき、本件労働者がf 主任に対し『どんな風にすればよいか?』との質問を繰り返していたこと(甲A41)等からすれば、本件労働者は、中間報告で何をどのように報告したらよいかを理解できていなかったものと認められるが、中間報告を行うことになった上記の経緯に照らせばやむを得ないことであり、理解できていないまま自身が主となって中間報告を行わざるを得ない状況になったことは、本件労働者には相当に大 きな心理的負荷になったと考えられる(このことは、本件労働者が、持参すべきメジャーやカメラを忘れ、事務所まで取りに戻ったこと、安全に自動車の運転ができる状態ではなかったことにも現れている)。そして、客先から、中間報告書がないことについて、『今日はこれだけ?』と言われ、これを受けたqAMが、謝罪して、当日の聴き取り結果と現場再調査結果に基づき早急に資料を作成すると述べたことは、三井住友案件の主担当であり、上記のような状況であった本件労働者にいわば追い打ちをかけたに等しいものであり、心理的負荷が大きく増大することになったと考えられるのであって、前記2(2)オ(カ)のとおり、上記のような経過とその後のb課長やg 主任とのやり取りを受けて、本件労働者は三井住友案件の業務の進め方 心理的負荷が大きく増大することになったと考えられるのであって、前記2(2)オ(カ)のとおり、上記のような経過とその後のb課長やg 主任とのやり取りを受けて、本件労働者は三井住友案件の業務の進め方や目標等について大きく混乱し、予定どおりに進められなかったことに自信を失い、更なる心理的負荷を受けたものと認められる。 ウ三井住友案件により本件労働者が受けた心理的負荷の程度前記ア及びイは、いずれも三井住友案件に関する出来事等であり相互に密接に関連し合うものであるから、心理的負荷の程度はこれらを一体として評価するのが相当である。前記アのとおり、三井住友案件は、そもそも新入社員にとっては難易度の高い業務であり、かつ、本件労働者が主担当を引き継いだ際には、当初(平成22年4月)予定されていたスケジュールから3か月程度遅れていたため、引き継いだ当初からタイトなスケジュールで業務を進めざるを得ない状況になっていたものであり、本件労働者としては、業務の進め方自体も分からずにいるところ、参考となり得る適切な前例等の資料もなく、f 主任らから見本等を示されることもなく、それ以前から見よう見まねで書類等を作成しても駄目出しをされ、本件労働者が真に理解できるような十分な説明や指導が必ずしもされていなかったという状況であったことを踏まえると、中間報告前までの段階においても、本件労働者が受けていた心理的負荷の程度は少なくとも『中』に該 当するものであったと認められるところ、前記イのとおり、中間報告の前後を含めた一連の出来事を通じて本件労働者がさらに著しい心理的負荷を受けたと認められることを考慮すると、三井住友案件の業務に関して本件労働者が受けた心理的負荷の程度が『強』に該当することは明らかというべきである。」(11) 原判決41頁9行目冒頭か 負荷を受けたと認められることを考慮すると、三井住友案件の業務に関して本件労働者が受けた心理的負荷の程度が『強』に該当することは明らかというべきである。」(11) 原判決41頁9行目冒頭から42頁21行目末尾までを次のとおり改める。 「 本件労働者の友人であるi は、本件労働者から、前記2(2)ウ(ア)及び(イ)のとおり、平成22年10月8日の休日出勤の際にb 課長から『お前なんか要らん』、『そんなんもできひんのに大卒なのか』などと言われたとの話を聞いた旨の証言をするほか、同じ上司から、本件労働者が作成した書類について『こんなのは全然駄目』とか『そんなのも作れないのか、それでも大卒か』などと言われたとの話を聞いた旨の証言をする(証人i 調書4~5頁)。また、本件労働者は、大学時代の友人や茶道仲間にも『お前なんていらない』などと職場で言われた旨を話していたほか(甲A1の1・43、45~47頁)、同期入社の社員にも『b 課長から大学名を馬鹿にされた。帰れ、役に立たないなどと言われた。』旨の話をしていた(甲A30・6頁)。 証人i の証言の信用性が高いこと及び本件労働者がありもしないことを言ったり大げさに言ったりするとは考え難いことは前記2(2)ウ(イ)において検討したとおりであることに加え、労働基準監督署での聴取において、o 氏が『b 課長は仕事に厳しい人で、若手に対して大きな声で厳しく指導していたことがある』旨を述べ(甲A1の1・312頁)、平成22年6月まで三重支店に勤務していたm 課長代理が『b 課長は、短時間で新人を育てなければならないので、一部厳しい面があったと思う。 b 課長は仕事ができる方だったが、こんなことまで言われなければなら ないのと思うことがあった。』旨を述べていること(甲A1の 時間で新人を育てなければならないので、一部厳しい面があったと思う。 b 課長は仕事ができる方だったが、こんなことまで言われなければなら ないのと思うことがあった。』旨を述べていること(甲A1の1・305、307頁)、11月18日の懇談において、控訴人が、本件労働者が『そんな大学聞いたことない』、『そんなところでよく入れたな』等とよく言われるなどパワーハラスメントを受けていた旨の話をしたのに対し、c 指導員が『確かにそういった指導が入ることも、よくある、よくあるというかあるんですけども』、『(いなくなってしまえ、やめてしまえ、お前なんかいらないと)そういうニュアンスで言われたかもしれませんが』などと答えており、本件労働者が大学名を馬鹿にされたり、いなくなってしまえという趣旨のことを言われたりしていたことを必ずしも否定していないこと(甲A12の2・64~67頁)等の事情に鑑みれば、職場でのb 課長の発言等に関し、証人i の証言のみならず友人や同期入社の社員等が本件労働者から聞いたとしている話の内容は、いずれも本件労働者が職場で実際に経験したものであると認められる。 これに対し、労働基準監督署での聴取において、本件会社の社員であるr 氏は『b 課長は厳しいだけではなく、人情味のある人で、常に部下のことを考えてくれる上司であり、大きな声で怒鳴られたり、馬鹿野郎とか辞めてしまえというような罵声を浴びたりした記憶はない。』旨を述べ(甲A1の1・315~316頁)、m 課長代理も『本件労働者に対してb 課長が強い口調で接していたことは記憶にない。私が三重支店で3か月、本件労働者と接した中で、パワハラ等を受けていたことはなく、本件労働者からの相談も受けていない。』旨を述べており(甲A1の1・305~306頁)、また、b 課長が 記憶にない。私が三重支店で3か月、本件労働者と接した中で、パワハラ等を受けていたことはなく、本件労働者からの相談も受けていない。』旨を述べており(甲A1の1・305~306頁)、また、b 課長が本件労働者に対し『お前なんかいらん』等の発言をしていた場面を直接見た旨を明確に述べた同僚の陳述等は見当たらない。しかし、b 課長との間での仕事の打合せ等は基本的に別室で行われていたこと(甲A1の1・305、312頁)からす れば、上記社員等が、b 課長が本件労働者に上記の発言をしていた場面を直接見ていなかったとしても不自然ではなく、これをもって上記発言の事実がなかったということはできず、また、m 課長代理が三重支店に在籍したのが平成22年6月までであることからすると、m 課長代理の上記の陳述をもって同年7月以降も含めて本件労働者がパワーハラスメント等を受けていた事実がなかったということはできないから、上記認定は左右されない。 以上によれば、本件労働者は、b 課長から、前記2(2)ウ(ア)のとおり、平成22年10月9日の休日出勤の際に『お前なんか要らん』、『そんなんもできひんのに大卒なのか』などと言われて叱責されるほか、日々の業務等においても、同様のことを言われたり大学名を馬鹿にされたりしていたと認められる。そして、これらの発言は、業務指導の範囲を逸脱するものであるほか、本件労働者の人格や人間性を否定するものと評価し得るものであるから、これらの発言により本件労働者が受けた心理的負荷の程度は、少なくとも『中』に該当すると認めるのが相当である。」(12) 原判決42頁22行目冒頭から43頁2行目末尾までを次のとおり改める。 「(7) 小括以上検討したところによれば、本件労働者が上司からしばしば業務 当である。」(12) 原判決42頁22行目冒頭から43頁2行目末尾までを次のとおり改める。 「(7) 小括以上検討したところによれば、本件労働者が上司からしばしば業務指導の範囲を超え人格等も否定するような発言をされており、それによる心理的負荷の程度が少なくとも『中』に該当することをベースとして、本件労働者が平成22年4月1日付けで本件会社に入社してから本件自殺までの間に担当した業務のうち、技術振興センター案件により本件労働者が受けた心理的負荷の程度は『中』に、三井住友案件により本件労働者が受けた心理的負荷の程度は『強』にそれぞれ該当すると評価し得ることを総合考慮すれば、本件労働者が本件会社における業務により 受けていた心理的負荷の程度は、全体評価としても『強』に該当することは明らかというべきである。 (8) 精神障害の発病等本件労働者がICD-10診断ガイドラインの「F43.2 適応障害」を発病したと認められることは、前記3のとおりである。 本件労働者は、前記(7)のとおり、本件会社における業務の遂行により『強』に該当する心理的負荷を受けたと認められ、本件会社に入社して以降、他に、本件労働者が強い心理的負荷を受ける業務以外の出来事があったとは認められないから、本件労働者の上記精神障害の発病は、業務に起因するものと認めるのが相当である。 そして、業務によりICD-10診断ガイドラインのF0からF4に分類される精神障害を発病したと認められる者が自殺を図った場合には、精神障害によって正常の認識、行為選択能力が著しく阻害され、又は自殺行為を思いとどまる精神的抑制力が著しく阻害されている状態に陥ったものと推定されるところ(原判決別紙2「心理的負荷による精神障害の認定基準」第8の1)、本件において、 能力が著しく阻害され、又は自殺行為を思いとどまる精神的抑制力が著しく阻害されている状態に陥ったものと推定されるところ(原判決別紙2「心理的負荷による精神障害の認定基準」第8の1)、本件において、同推定を覆すに足りる事情が存するとはうかがわれないから、本件自殺についても業務に起因するものと認められる。」 2 まとめ以上のとおり、本件労働者は、本件会社における業務の遂行により「強」に該当する心理的負荷を受けたもので、本件労働者の精神障害の発病及び本件自殺は、業務起因性が認められる。 したがって、控訴人による遺族補償一時金の支給に係る申請について、本件労働者の精神障害の発病が業務上の事由によるものとは認められないとの理由で不支給とした処分行政庁の本件処分は、違法であるから、取り消されるべきである。 第4 結論よって、本件処分は取り消されるべきであるところ、これと異なる原判決は失当であって、本件控訴は理由があるから、原判決を取り消した上、本件処分を取り消すこととして、主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第2部 裁判長裁判官長谷川恭弘 裁判官寺本明広 裁判官松田敦子

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