平成14(ワ)1001 損害てん補等請求事件,損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年10月16日 神戸地方裁判所
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判決文本文27,184 文字)

主文 1 被告Dは,原告A及び原告Bに対し,それぞれ1250万円並びにそれぞれに対する平成13年10月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告Eは,原告A及び原告Bに対し,それぞれ1250万円並びにそれぞれに対する平成13年10月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告国は,原告A及び原告Bに対し,それぞれ1500万円並びにそれぞれに対する平成15年8月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告A及び原告Bのその余の請求並びに被告D及び被告Eの請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は,第1事件に生じた費用はこれを3分し,その1を原告A及び原告Bの,その1を被告国の負担とし,その余の費用及び第2事件に生じた費用は,いずれも被告D及び被告Eの負担とする。 6 この判決の主文第1項ないし第3項は,仮に執行することができる。 但し,主文第3項については,言渡しの日から2週間が経過したときに,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求及び申立 1 第1事件(1) 主文第1項及び第2項に同じ。 (2) 被告Cは,原告A及び原告Bに対し,それぞれ2500万円並びにそれぞれに対する平成13年10月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 被告国は,原告A及び原告Bに対し,それぞれ1500万円並びにそれぞれに対する平成13年10月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (4) 仮執行宣言 2 第2事件(1) 原告A,原告B,被告F,被告G及び同国は,被告D及び被告Eに対し,3000万円及びこれに対する平成13年10月27日から支 を支払え。 (4) 仮執行宣言 2 第2事件(1) 原告A,原告B,被告F,被告G及び同国は,被告D及び被告Eに対し,3000万円及びこれに対する平成13年10月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 仮執行宣言 3 被告国第1,第2事件につき,いずれも仮執行免脱宣言第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,別紙交通事故目録記載の交通事故(以下,「本件交通事故」という。)により,無保険の普通乗用自動車(以下,「本件車両」という。)に同乗していた亡H,亡I及び亡Jの3人が死亡したことに関し,亡Hの相続人である原告A及び原告B並びに亡Iの相続人である被告D及び被告Eが,それぞれ次のとおりの請求をした事案である。 (1) 第1事件ア本件車両の運転者が亡Iであると主張して,同人の相続人である被告D及び被告Eに対し,民法709条,同711条,自動車損害賠償保障法(以下,「自賠法」という。)3条に基づき,亡Hが被った損害賠償金の支払イ被告Cに対し,同被告が本件車両の運行供用者であると主張して,自賠法3条に基づき,亡Hが被った損害賠償金の支払ウ被告国に対し,本件車両が無保険車であったことを理由として,自賠法72条1項後段に基づき,亡Hが被った損害のてん補金の支払並びにそれぞれに対する不法行為日である本件交通事故の発生日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 (2) 第2事件ア本件車両の運転者が亡Hないし亡Jであると主張して,亡Hの相続人である原告A及び原告B並びに亡Jの相続人である被告F,被告Gに対し,民法709条,同711条,自賠法3条に基づき,亡Iが被 ア本件車両の運転者が亡Hないし亡Jであると主張して,亡Hの相続人である原告A及び原告B並びに亡Jの相続人である被告F,被告Gに対し,民法709条,同711条,自賠法3条に基づき,亡Iが被った損害賠償金の支払イ被告国に対し,本件車両が無保険車であったことを理由として,自賠法72条1項後段に基づき,亡Iが被った損害のてん補金の支払並びにそれぞれに対する不法行為日である本件交通事故の発生日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 2 前提事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,証拠上容易に認定することができる(末尾に証拠を掲記しない事実は,当事者間に争いがない。)。 (1) 当事者等ア原告A及び原告Bは,それぞれ亡H(昭和60年1月7日生)の父母である(甲3の1)。 イ被告D及び被告Eは,それぞれ亡Iの妻及び子である。 ウ被告F及び被告Gは,それぞれ亡Jの父母である。 (2) 本件交通事故の発生平成13年10月27日午後11時30分ころ,本件交通事故が発生し,本件車両に乗車していた亡I,亡H及び亡Jの3人が死亡した(丙1。但し,本件交通事故発生時の本件車両の運転者が誰であったかについては争いがある。)。 このうち,亡Hは,脳挫滅を直接死因として即死したが,その他に,頭部粉砕,脳消失,心挫滅,心破裂,肝挫滅,脾挫滅,左上腕骨折,左前腕骨折などの所見が見られ,遺体は激しく損傷していた(甲1,17)。 (3) 本件車両の登録名義人及び自動車損害賠償責任保険(以下,「自賠責保険」という。)の有無本件交通事故当時,本件車両には自賠責保険が付保されていなかった。また,同車両の所 (3) 本件車両の登録名義人及び自動車損害賠償責任保険(以下,「自賠責保険」という。)の有無本件交通事故当時,本件車両には自賠責保険が付保されていなかった。また,同車両の所有名義人はK(以下,「K」という。)であった(乙1)。 3 本件の争点(1) 本件交通事故発生当時の本件車両の運転者は誰であったか(争点1)(2) 被告Cが本件車両の運行供用者であったといえるか(争点2)(3) 政府の自動車損害賠償保障事業(以下,「保障事業」という。)てん補基準(丙2。以下,「てん補基準」という。)に基づくてん補金額の認定の拘束力(争点3)(4) 好意同乗減額の可否及び減額割合(争点4)(5) 損害てん補金に対する遅延損害金の有無及び起算日(争点5)(6) 亡Hの損害(争点6)(7) 亡Iの損害(争点7) 4 争点に対する当事者の主張(1) 争点1(本件交通事故発生当時の本件車両の運転者は誰であったか)について(原告A及び原告B(以下,「原告ら」という。),被告F及び被告G(以下,「被告Fら」という。)及び被告国の主張)本件車両の運転者は,亡Iであった。 (被告D及び被告E(以下,「被告Dら」という。)の主張)本件車両の運転者は,亡Hないし亡Jであり,そのどちらであるかは不明である。 (被告Cの主張)本件車両の運転者は,不明である。 (2) 争点2(被告Cが本件車両の運行供用者であったといえるか)について(被告Cの主張)ア本件車両は,被告Cの代表者であるL(以下,「L」という。)が,知人であるZからの個人的な依頼に基づいて,被告Cの駐車場に置いていたにすぎず, か)について(被告Cの主張)ア本件車両は,被告Cの代表者であるL(以下,「L」という。)が,知人であるZからの個人的な依頼に基づいて,被告Cの駐車場に置いていたにすぎず,その間に本件交通事故発生時に本件車両に乗車していた3人のうちの誰かが,本件車両を盗み出したものである。 すなわち,Lは,その知人であるZから,同人の義父であるKが所有する車検切れの本件車両を,再度車検登録して使用したいので,車検登録業者を紹介してほしいと依頼されたことから,Lが懇意にしていた下請業者にその旨を伝え,登録のために一旦本件車両を引き取ってもらった。しかしながら,その後,同下請業者から,本件車両の自動車税が滞納状態にあり車検を受けることができないとの理由で,本件交通事故発生の2,3日前に本件車両の返却を受けた。そこで,Lは,これを被告Cの駐車場内に置いたのであり,本件車両はLが個人的に知人から頼まれて同駐車場に置いていたものにすぎない。 被告Cは,Kとは何らの付き合いもなく,また,Zも同被告の下請けにすぎず,同人から本件車両の預託を受けることが,被告Cにとって,得意先に対するサービスの一環となると評価することもできない。 さらに,被告Cの業務は鉄筋工事業であり,車検の依頼の仲介は業務に含まれていない上,本件車両を車検登録するための業者をKに紹介したことについて,同人から何らの経済的対価も得ていない。 したがって,被告Cは,本件車両につき,運行支配も運行利益も有しておらず,同被告に運行供用者責任は発生しない。 イそもそも,第三者が運転する車両を保有していた者に運行供用者責任が認められるためには,当該車両の保管状況からして,第三者に対して運転することを容認したと客観 供用者責任は発生しない。 イそもそも,第三者が運転する車両を保有していた者に運行供用者責任が認められるためには,当該車両の保管状況からして,第三者に対して運転することを容認したと客観的に認められることが必要があると解されるが,そのような場合であっても,第三者の乗り出し目的,返還予定の有無,乗り出しから事故までの時間的場所的関係等諸般の事情を考慮し,保有者の運行支配が失われたと評価できる場合には,保有者は運行供用者責任を負わないと解すべきである。 本件車両が置かれていた被告Cの敷地は,無関係の第三者の自由な立ち入りを禁止する構造ないし管理状況にあったにもかかわらず,亡Iらは,共謀して本件車両を窃取し,領得意思をもって乗り出した上,乗り出し時から約6時間運行し続けた後に,被告Cの事務所から遠く離れた場所で本件交通事故を惹起させたものである。これらの事情を総合すると,被告Cの運行支配が失われたことは明らかであり,同被告に運行供用者責任は発生しない。 なお,被告Cは,本件車両を所有しておらず,Kから譲渡を受ける予定もなかったものである。 (原告らの主張)本件車両は,被告Cの所有であり,その運行支配,運行利益下にあったから,同被告は,本件車両の運行供用者であったといえる。すなわち,被告Cは,Kから本件車両の譲渡を受け,近日中に車検登録する予定であったものである。 仮に,本件車両の所有者がKであったとしても,同人は,Zを通じて被告Cに本件車両を預託したものであり,同被告が本件車両に対して現実に直接的支配を及ぼすことができる立場にあったから,同被告は,運行供用者責任を負う。 本件車両は,被告Cの敷地内で保管されていたし,Zは,同被告にとって仕事上のつき合いのある相手 して現実に直接的支配を及ぼすことができる立場にあったから,同被告は,運行供用者責任を負う。 本件車両は,被告Cの敷地内で保管されていたし,Zは,同被告にとって仕事上のつき合いのある相手であったから,現実の行為として預託を引き受けたのが被告代表者であるL個人であったとしても,法的には被告Cがその業務として引き受けたものであるといえる。 (3) 争点3(てん補基準に基づくてん補金額の認定の拘束力)について(原告らの主張)ア保障事業制度は,自賠責保険制度の延長線上に位置する制度であり,これと同質の制度であって,てん補金請求権は私法上の請求権であると解すべきである。 保障事業の財源の大半は,自動車保有者が支払う賦課金によって賄われており,保障事業制度が,一種の危険責任思想を背景として,自動車保有者集団に属する人々の不安な行動によって人身損害を被った被害者の救済を保有者集団全体の責任において実現することも目的としている以上,保障事業制度は,自賠責保険制度の延長線上にあるものと位置づけられるべきであり,これに基づくてん補金請求権も私法上の請求権と解すべきである。 そして,公平に被害者が救済を受けられるようにすることにより,自賠責保険という強制保険を実体のあるものとして運用させようとした保障事業制度の制度目的からすれば,あくまで政令で定める金額(本件では3000万円)の範囲内においては正当な司法判断によって認定される損害額を基準に損害がてん補されるべきである。裁判所が,政府独自のてん補基準に拘束される必要性及び合理性はない。このことは,自賠責保険の査定要綱に基づく査定金額が,裁判所を拘束しないものとされているのと同様である。 イ被告国の主張に対する反論 基準に拘束される必要性及び合理性はない。このことは,自賠責保険の査定要綱に基づく査定金額が,裁判所を拘束しないものとされているのと同様である。 イ被告国の主張に対する反論てん補基準による算定額が,被害者に対する賠償として極めて少額で不十分な内容となっていることは明らかである。 保障事業におけるてん補基準及びその運用について,各損害費目の基準額が低額であること自体が問題であるのみならず,自賠責保険ではほとんど行われない過失相殺が保障事業では高い過失割合を適用して行われている。また,自賠責保険では行われない好意同乗減額も,保障事業では合理的根拠も適用基準も不明確なまま安易に行われているなど,自賠責保険における認定と比較しても,保障事業におけるてん補金は極めて低額に認定されている。 また,後記争点5の被告国の主張のとおり,保障事業においては,保障金の請求から交付まで1年以上を要している上,遅延損害金の発生を認めない運用を行っている。 このように,てん補基準による損害の算定により迅速かつ均一な損害のてん補が図られているとはいえない。にもかかわらず,てん補基準による算定額が裁判所に対して拘束力を有することを認めることは,自賠責保険の付保の有無という被害者にとって選択できない事情によって,少額のてん補を強いるものであって不公平である。 (被告国の主張)ア被告国は,てん補基準によって算定された金額以上の金員を原告らに対して支払うべき義務はない。 そもそも保障事業は,自賠責保険を中核とする交通事故による被害者の救済制度において,同制度によって救済されない被害者に対して,とりあえず政府が,社会保障政策上の見地から損害賠償義務者に代わって損害 そもそも保障事業は,自賠責保険を中核とする交通事故による被害者の救済制度において,同制度によって救済されない被害者に対して,とりあえず政府が,社会保障政策上の見地から損害賠償義務者に代わって損害のてん補を行い,その救済を図ろうとした制度であり,他の手段によっては救済を受けることができない被害者に対し,最終的に最小限度の救済を与える趣旨のものである。 したがって,保障事業に基づいて被害者に発生するてん補金請求権は,損害賠償請求権ではなく,その存在を前提とする保障請求権であって,社会保障政策上の見地から本来帰責原因のない政府に立替払を求めることができるという自賠法により初めて認められた公法上の請求権であり,他の手段によっては救済されない被害者に最終的救済ないし必要最低限度の救済を与えることを目的として認められた権利である。 だとすれば,そのてん補金額は,不法行為上の損害賠償金額とは異なり,政府の社会保障政策の一環である保障事業における保障金として相当の額ということになる。 ところで,上記保障事業の制度趣旨からは,被害者に対して迅速かつ公平で均一な損害のてん補を図ることが要請されており,そのような要請に応えるために旧運輸大臣がてん補基準を定めるとともに,その解釈運用等を統一するために「政府の自動車損害賠償保障事業損害てん補基準実施要領」(以下,「実施要領」という。)が定められている。 そして,保障事業における保障金の算定にあたっては,社会・経済的諸条件,国の財政事情,多方面にわたる複雑多様なしかも高度の専門技術的な考察及びこれらに基づく政策的判断が必要とされるところ,国土交通省自動車交通局保障課は,保障事業の実務において,変動する社会経済的情勢を踏まえて改正されるてん補基準や実 様なしかも高度の専門技術的な考察及びこれらに基づく政策的判断が必要とされるところ,国土交通省自動車交通局保障課は,保障事業の実務において,変動する社会経済的情勢を踏まえて改正されるてん補基準や実施要領に基づいて適正公平な算定実務を行っている。 したがって,てん補基準に基づいて算定されたてん補金額は,保障事業における保障金として相当であり,被告国は,てん補基準によって算定された金額以上の金員について,原告らに対し支払義務を負わない。 イ原告らの主張に対する反論自賠責保険制度と保障事業制度とは,以下の各点で異なっており,両制度は明らかに異質であるから,両制度を同一の制度であると位置づける原告らの主張は前提において誤っている。 (ア) 自賠責保険制度が各車両ごとに保険契約締結を強制することによる保険方式を基本とする制度であるのに対し,保障事業制度は保険方式以外の方法によって被害者保護を図る制度である。 (イ) 自賠責保険制度においては,保険会社が被害者に対して損害賠償額の支払をしたときには,保険会社が責任保険の契約に基づき被保険者に対して損害をてん補したものとみなされるが(自賠法16条3項),保障事業制度においては,政府が被害者に対して損害のてん補をしたときには,政府は被害者が損害賠償の責任を有する者に対して有する権利を取得する,すなわち被害者に代位することが認められている(自賠法76条1項)。 (ウ) 自賠責保険制度においては他の制度との調整規定は存在しないが,保障事業制度では他の社会保障政策上の制度との調整規定が存在し(自賠法73条1項),他の社会保障制度によって保障されない場合の最終・最低保障であると解しうる。 (エ) 保障事業制 ,保障事業制度では他の社会保障政策上の制度との調整規定が存在し(自賠法73条1項),他の社会保障制度によって保障されない場合の最終・最低保障であると解しうる。 (エ) 保障事業制度の事業主体は政府であって(自賠法71条),その事務執行費用は国庫負担となっている(自賠法82条2項)。 (4) 争点4(好意同乗減額の可否及び減額割合)について(被告国の主張)アてん補基準によれば,被害者が好意同乗者であれば,減額を行うとされており,実施要領においては,被害者自身に過失は認められないが,同乗させた者との人間関係,同乗の目的,態様等から判断し,損害の全部を同乗させた者に弁済させるのは妥当ではないと認められる場合には,その損害の公平な分担を図るため,同乗者の損害について慰謝料部分の20ないし50パーセントの減額を行うことができるとされている。また,運転者が,飲酒,酩酊している場合,運転免許を有していない場合など運転者としての正常な運転を期待できないことを認識しながら同乗していたようなときについては,同乗者の全損害について好意同乗減額を適用できるとされている。 損害てん補請求権は,損害賠償請求権の存在を前提とする保障請求権であって,本来帰責原因のない政府に立替払を求める権利であるから,損害賠償額を定めるにつき被害者の過失が斟酌される場合には,政府がてん補すべき金額を定めるについて当然にこれを斟酌することができるというべきである。 イ(ア) 高速無謀運転亡I,亡H及び亡Jは,本件交通事故当日の午後6時23分から同日午後6時34分まで,及び同日午後7時から同日午後7時7分までの2回にわたり,サンクス三木志染店に入店しており,その後本件交通事故が発生するまでの間 び亡Jは,本件交通事故当日の午後6時23分から同日午後6時34分まで,及び同日午後7時から同日午後7時7分までの2回にわたり,サンクス三木志染店に入店しており,その後本件交通事故が発生するまでの間行動を共にしていたから,亡Hは,自己の意思によって亡Iらと行動を共にしていたものであり,乗車の目的も遊興目的のドライブないしこれに類似するものであったと考えられる。 また,本件交通事故現場付近の路上には22.1メートルのスリップ痕及び3.7メートルのスリップ痕が断続的に残っており,当時路面が乾燥していたことからすれば,これらのスリップ痕を完全に残して車両が停止した場合であっても,走行速度は約68キロメートル毎時であったことになる。しかし,本件車両は,上記制動の後に電柱と衝突し車両が分断されるほどの衝撃を受けているのであるから,衝突時点でも相当の高速度であったことが明らかである。しかも,本件交通事故現場付近の道路の制限速度が50キロメートル毎時であったことからすれば,亡Iの運転は無謀というほかなく,助手席に同乗していた亡Hも,その無謀運転を制止せずこれを許容して同乗していたと推測される。 (イ) 飲酒運転さらに,本件交通事故当時における亡Iの血中アルコール濃度は,血液1ミリリットル中に0.9ミリグラム(呼気1リットルあたり0.41ミリグラムないし0.45ミリグラム)と,大量のアルコールが含まれていたものであり,亡Iは大量に飲酒していたことが窺われる。 そして,亡Hは,助手席に乗車していたと考えられるから,運転席にいた亡Iが飲酒し,その影響のために正常な運転を期待することができないことを認識しつつこれを許容して同乗していたことは明らかである。 (ウ) そうす していたと考えられるから,運転席にいた亡Iが飲酒し,その影響のために正常な運転を期待することができないことを認識しつつこれを許容して同乗していたことは明らかである。 (ウ) そうすると,本件においては,実施要領に基づき,亡Hの全損害について過失相殺を適用することができるというべきであり,上記(ア)及び(イ)の事情に照らせば,少なくとも30パーセントの減額がされるべきである。 ウ安易に好意同乗減額を行うべきでないとする原告らの主張は,自賠責保険制度と保障事業制度とを同質の制度とみる立場を前提としており,前提が誤っている。 (原告らの主張)本件では,亡Hらの同乗の経緯や亡Iの飲酒の経緯が客観的に判明していない以上,被害者救済の見地からして安易に好意同乗減額を行うことは適切ではなく,被告国の主張は失当である。 亡H及び亡Jの血液からはアルコールが検出されなかったことからすれば,亡Iは,亡Hや亡Jの了知しない機会に飲酒していた可能性が高く,亡Hは,亡Iが正常な運転ができないほど飲酒していた状態であったことを認識していたとはいえない。 そもそも,争点3の原告らの主張で述べたとおり,自賠責保険では好意同乗減額は行われないのに対し,保障事業のてん補基準では合理的根拠も不明確なまま安易に好意同乗減額を行っており,妥当ではない。 (5) 争点5(損害てん補金に対する遅延損害金の有無及び起算日)について(原告らの主張)ア遅延損害金の発生の有無前記争点3の原告らの主張のとおり,保障事業制度は,自賠責保険制度と同質の制度であり,てん補金請求権は私法上の請求権であると解すべきであるから,自賠責保険金請求権と同様にてん補金請求権についても遅延損害 争点3の原告らの主張のとおり,保障事業制度は,自賠責保険制度と同質の制度であり,てん補金請求権は私法上の請求権であると解すべきであるから,自賠責保険金請求権と同様にてん補金請求権についても遅延損害金が発生すると解すべきである。 仮に,てん補金請求権が公法上の請求権であるとしても,その法的性質のみで遅延損害金が発生しないと解すべきではない。むしろ,国を当事者とする金銭債権について,会計法が30条ないし32条の規定において時効について民法の特則を定め,他の事項については触れられていないことからすれば,民法の規定どおりの遅延損害金の発生を肯定すべきである。 保障金の請求手続を行った後,実際に請求者が保障金を受領するまでには,1年以上という長期の日数を要しており,その間,損害のてん補を留保しておきながら遅延損害金の発生を認めないというのは極めて不合理な運用である。 イ遅延損害金の起算日保障事業制度が,自賠責保険制度と同質の制度であると解される以上,てん補金請求権についても,自賠責保険金請求権と同様に加害者の履行遅滞時からの遅延損害金を請求できると解すべきであるから,遅延損害金の起算日は,本件交通事故発生時とすべきである。 仮に,自賠法72条1項の「損害」に不法行為時からの遅延損害金が含まれないとしても,少なくとも,政府が被害者から請求を受けたときから履行遅滞に陥るのであるから,この時点からてん補金請求権について遅延損害金が発生すると解すべきである。 (被告国の主張)前記争点3の被告国の主張のとおり,てん補金請求権は私法上の損害賠償請求権とは性質の異なる公法上の請求権であると解される。 また,自賠法及び関係法令中には,てん補金の支払期日及び 前記争点3の被告国の主張のとおり,てん補金請求権は私法上の損害賠償請求権とは性質の異なる公法上の請求権であると解される。 また,自賠法及び関係法令中には,てん補金の支払期日及びそれを徒過した場合の遅延損害金についての規定はない。 したがって,自賠法72条は,てん補金については,遅延損害金を付して支払うことを予定しておらず,てん補金請求権者に遅延損害金請求権は発生しないと解すべきである。 会計法31条2項は,会計法第5章「時効」に規定されているものであり,同法条にいう「その他の事項」とは,「消滅時効」に関する事項に限られ,支払期日や遅延損害金等に関するものまで含む趣旨ではない。 仮に,国を当事者とする金銭債権の支払期日やそれを徒過した場合の遅延損害金について,会計法が民法の規定を準用することを予定しているのであれば,これらの事項についても消滅時効の場合(会計法31条2項)と同様,「民法の規定を準用する」ことを明確に定めているはずであるが,かかる規定はない。にもかかわらず,会計法が30条ないし32条の規定において時効について民法の特則を定め,他の事項に触れるところがない点を捉え,国を当事者とする金銭債権に関しては原則として民法の規定を準用する法意に出たものであるなどとする解釈は明らかに誤っている。 保障事業制度による損害てん補請求権は,損害賠償請求権ではなく,本来帰責原因のない政府に立替払を求める権利であり,社会政策上の見地から自賠法により初めて認められた権利であって,公法上の請求権であるから,請求から支給認定までの期間は,法所定の権利発生要件の調査に当然要する期間とみるべきであり,これをもって「債務者の責めに帰すべき事由」による遅滞期間と評価することはできない。 であるから,請求から支給認定までの期間は,法所定の権利発生要件の調査に当然要する期間とみるべきであり,これをもって「債務者の責めに帰すべき事由」による遅滞期間と評価することはできない。 (7) 争点6(亡Hの損害)について(原告らの主張)ア逸失利益 4035万5235円亡Hは,本件交通事故発生当時16歳であったから,就労可能年数である49年間(ライプニッツ係数16.480)について,女子全年齢平均賃金収入額である349万8200円を基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして計算すれば,次のとおり,逸失利益は4035万5235円となる。 (計算式)349万8200円×(1-0.3)×16.480=4035万5235円イ葬儀関係費等 100万円原告Aは,少なくとも次のとおり,葬儀費用等として100万9896円を支出したほか,治療費用として8000円を支出した。 (ア) 告別式執行費用 66万5465円(イ) 霊柩車代,用品購入代 32万4941円(ウ) 死体解剖費用 8000円(エ) 戸籍謄本費用 5450円(オ) 死体検案書費用 6000円(カ) 小計 100万9896円ウ慰謝料 2200万円(亡H及び原告らの合計額である。)本件交通事故は,亡Iが,無免許であったにもかかわらず,勤務先に保管されていた車検切れ・無保険である本件車両を無断で持ち出した上,亡H及び亡Jを同乗させていた際に,同車両を暴走させてこれを電柱に激突させたと 事故は,亡Iが,無免許であったにもかかわらず,勤務先に保管されていた車検切れ・無保険である本件車両を無断で持ち出した上,亡H及び亡Jを同乗させていた際に,同車両を暴走させてこれを電柱に激突させたというものであり,その結果,同乗者全員が死亡するに至ったという極めて悪質かつ重大な事故であった。 また,本件交通事故により,亡Hは,16歳という若年でありながら,頭部が粉砕し,脳挫滅及び心破裂並びに肝挫滅等により即死したものである。 このように,本件交通事故によって,亡H及び原告らが受けた精神的苦痛は計り知れないものがあり,その慰謝料額は合計で2200万円を下らない。 エ弁護士費用 600万円オ合計(ア) 原告A 3517万5617円(イ) 原告B 3417万7617円(被告Cの主張)争う。 (被告Dらの主張)争う。 (被告国の主張)ア逸失利益  1575万1584円亡Hは,本件交通事故当時,16歳の無職の女性であり,扶養家族もいなかったから,てん補基準にいう有職者,幼児・生徒・学生及び家事従事者以外の働く意志と能力を有する者に該当し,実施要領に従えば,18歳の年齢別平均給与(月額)15万9300円に基づいて算出することとなる。 また,生活費控除率は,生活費の立証がない場合には,50パーセントとするとされている。 したがって,上記平均給与額及び生活費控除率に,16歳におけるライプニッツ係数16.480を乗じて計算すると,次の計算式のとおり,1575万1584円となる。 (計算式)15万9300円×12×(1-0.50 率に,16歳におけるライプニッツ係数16.480を乗じて計算すると,次の計算式のとおり,1575万1584円となる。 (計算式)15万9300円×12×(1-0.50)×16.480=1575万1584円イ葬儀費用 60万円ウ慰謝料  950万円てん補基準によれば,死亡本人の慰謝料は350万円,遺族の慰謝料は請求権者を被害者の父母,配偶者及び子とし,請求権者2名の場合600万円とされているので,てん補金額は950万円となる。 エ弁護士費用 0円てん補基準では,弁護士費用の支払は認められていない。 (7) 争点7(亡Iの損害)について(被告Dらの主張)ア逸失利益 2058万1843円亡Iは,本件交通事故発生当時18歳であったから,就労可能年数は49年間(ライプニッツ係数18.169)である。また,亡Iは,鉄筋工であり,平成12年度の年収は170万9565円であったが,その後順調に年収が増加していくことを考えれば,基礎収入は平均賃金である月収18万8800円を基準とすべきである。そして,生活費控除率50パーセントとして計算すれば,次のとおり,逸失利益は2058万1843円となる。 (計算式)18万8800円×12×18.169×(1-0.5)=2058万1843円イ葬儀関係費 86万0650円ウ慰謝料 3000万円エ合計 5144万2493円(原告ら,被告Fら及び被告国の主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件車両の運転者は誰であったか)について 00万円エ合計 5144万2493円(原告ら,被告Fら及び被告国の主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件車両の運転者は誰であったか)について(1) 証拠(甲1,5ないし8,16ないし18,丙1)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア本件事故直前の行動亡I,亡H及び亡Jは,平成13年10月27日午後6時23分から同日午後6時34分まで,及び同日午後7時00分から同日午後7時07分まで,「サンクス三木志染店」に入店していた。その際,亡Iは白色軍足を着用し,スリッパを履いていた(甲16,18)。 イ本件事故当時の同乗者の服装(ア) 亡I水色作業衣上衣,水色作業衣ズボン,うす緑色長袖シャツ,軍足(甲16,17)なお,亡Iは,本件事故後に発見された際,靴を履いていなかった(甲16)。 (イ) 亡Hピンク色ワンピース,紺色ジーンズジャンパー,赤色ブーツ(甲17)(ウ) 亡J茶色パーカー,紺色ジーンズ,青色運動靴,赤色半袖パーカーウ本件車両の破損状況(ア) 本件車両は,2つに分断され,その部品が散乱していた(甲6)。 (イ) 本件車両の右側面のうち原形をとどめているのは,後部から約130センチメートルだけであり,それより前部は押しつぶされているが,運転席側のドアは脱落していなかった(甲6)。 (ウ) 運転席は,原形をとどめておらず,シートは右側を下にして車両右側面から70センチメートル外にはみ出し,助手席シートと比べて約40センチメート アは脱落していなかった(甲6)。 (ウ) 運転席は,原形をとどめておらず,シートは右側を下にして車両右側面から70センチメートル外にはみ出し,助手席シートと比べて約40センチメートル後方に押し出されていたが,脱落はしておらず,シートの回転なども認められなかった(甲6)。 (エ) 助手席側のドアは閉じられていた。また,助手席グローブボックスや助手席シートの脱落は認められなかった。 エ本件車両の実況見分を行った際に発見された資料等(ア) 運転席の足回り部ブレーキペダルは,右前部からの衝突により押しつぶされ,その左側のフットレストを除去したところ,左足用と思われるスリッパが存在していた(甲6・6頁,14頁,15頁)。 (イ) 右前ドア内側肘当て内面亡Iが本件事故当時に着用していた水色作業衣上衣及び同作業衣ズボンの構成繊維と同色系同質の繊維が付着していた(甲7)。 (ウ) 助手席グローブボックス後面左下部亡Hが本件事故当時に着用していた赤色ブーツの表面に塗装されていた赤色系塗料と同色系同質の赤色系塗膜が付着していた(甲7)。 (エ) 運転席センター部のラジオ枠左上角部亡Hが本件事故当時に着用していた赤色ブーツの表面に塗装されていた赤色系塗料と同色系同質の赤色系塗膜が付着していた(甲7)。 (オ) 運転席シート後面右側擦過部亡Jが本件事故当時に着用していたジーンズの構成繊維と同色系同質の青色系繊維が付着していた(甲7)。 (カ) 右フロントピラー内面中央部亡Iが本件事故当時に着用していた水色作 故当時に着用していたジーンズの構成繊維と同色系同質の青色系繊維が付着していた(甲7)。 (カ) 右フロントピラー内面中央部亡Iが本件事故当時に着用していた水色作業衣上衣及び同作業衣ズボンの構成繊維と同色系同質の繊維が付着していた(甲7)。 (キ) 右フロントピラー内面下部亡Jが本件事故当時に着用していた赤色パーカーの構成繊維と同色系同質の繊維が付着していた(甲7)。 (ク) ハンドル凹損部亡Hが本件事故当時に着用していた紺色ジーンズジャンパーの構成繊維と同色系同質の青色系繊維が付着していた(甲7)。 (ケ) 運転席シート前面上部亡Hの毛髪と形態的な類似点が多い毛髪が採取された(甲8)。 亡Hの血液型と同じ血液型の肉片が採取された(甲8)。 なお,亡I,亡H及び亡Jの血液型はいずれも異なっていた(甲8)。 (コ) 右フロントピラー内側上部亡Hの毛髪と形態的な類似点が多い毛髪が採取された(甲8)。 (サ) 右センターピラー内側上部亡Hの毛髪と形態的な類似点が多い毛髪が採取された(甲8)。 (シ) 右センターピラー内側下部亡Hの毛髪と形態的な類似点が多い毛髪が採取された(甲8)。 (ス) 左後ドア窓ガラス内面前端上部亡Hの血液型と同じ血液型の肉片が採取された(甲8)。 オ亡Iの飲酒状況本件交通事故発生後に発見された亡Iの血液には,1ミリリットルあたり0.9ミリグラムのアルコールが含有されていた。同数 液型の肉片が採取された(甲8)。 オ亡Iの飲酒状況本件交通事故発生後に発見された亡Iの血液には,1ミリリットルあたり0.9ミリグラムのアルコールが含有されていた。同数値は,呼気1リットルあたり0.41ないし0.45ミリグラムのアルコールが含有されているのと同程度の数値に相当する(丙4,5)。 個人差はあるものの,血中アルコール濃度が1ミリリットルあたり0. 5ミリグラム程度のアルコールを身体に保有している場合は,顔面や頸部が充血によって紅潮し,運動過多で落ち着きがなく,注意力が幾分低下するなどの症状が出現し始めるとされている(丙5)。 これに対し,亡Hの血液からはアルコールは検出されなかった(丙4)。 カ本件交通事故現場の状況(ア) 本件交通事故現場の道路状況本件交通事故現場は,制限速度が50キロメートル毎時の直線平坦な道路で,その手前は,本件車両の進行方向に向けて緩やかな右カーブとなっている(甲5)。 また,本件交通事故が発生した当時,本件交通事故現場の路上は乾燥していた(甲5)。 (イ) スリップ痕本件交通事故現場の路上には,中央線付近から衝突した電柱に向かって,長さ22.1メートル及び3.7メートルの2本のスリップ痕が残されており,2つのスリップ痕はほぼ一直線上に存在している(甲5)。 (2) 上記認定事実に基づき判断する。 ア助手席グローブボックス後面左下部には,亡Hが着用していた赤色ブーツの表面に塗装されている赤色系塗料と同色系同質の赤色系塗膜が付着していたものであるところ,助手席グローブボックスや助手席シートが脱落していた事実は認められず, 下部には,亡Hが着用していた赤色ブーツの表面に塗装されている赤色系塗料と同色系同質の赤色系塗膜が付着していたものであるところ,助手席グローブボックスや助手席シートが脱落していた事実は認められず,助手席以外に座っていた者の下肢が塗膜付着部分に衝突するとは考えられない。また,助手席に近いラジオの左角上部にも同様の塗膜が付着していた上,一般的に運転席ないし後部座席に座っている場合に比して助手席に座っている場合の死傷率は高いとされているところ,亡Iと比べて亡Hの遺体は損傷の程度が激しいと認められる(前記前提事実(2),乙16)。以上によれば,亡Hは,助手席に位置していたと推認するのが相当である。 イまた,運転席シート後面右側擦過部には,亡Jが着用していた紺色ジーンズの構成繊維と同色系同質の青色系繊維の付着が認められたところ,運転席が脱落したり,座席シートが回転していたなどの事情は認められず,後部座席以外に座っていた者が上記繊維付着部分に衝突するとは考えられないことからすれば,亡Jは後部座席に位置していたと推認するのが相当である。 ウこれに対し,運転席の右側ドア内側肘当て内面には,亡Iが着用していた作業衣と同色系同色の繊維が付着していたものであり,また,運転席の足回り部からスリッパが発見されているところ,前記(1)ア及びイ(ア)によれば,亡Iは,本件交通事故当時スリッパを履いていたと認められることから,上記スリッパは亡Iが履いていたスリッパであると認められ,亡Iが運転席にいたことがうかがわれる。 さらに,本件交通事故現場は,前記(1)カ(ア)のとおり,直線平坦な道路で(但し,その手前は,緩やかなカーブとなっている。)あり,通常交通事故が発生しにくい場所であるといえるにもかかわらず,その事故態様は,路上に 通事故現場は,前記(1)カ(ア)のとおり,直線平坦な道路で(但し,その手前は,緩やかなカーブとなっている。)あり,通常交通事故が発生しにくい場所であるといえるにもかかわらず,その事故態様は,路上に残されたスリップ痕(前記(1)カ(イ))から明らかなように,電柱に向けてほぼ直線に進行し,単にブレーキによる制動措置を講じただけで,特段の進路変更を取ることもなく車両を路外に逸脱させ,これを電柱に衝突させたというものであり,本件交通事故は,運転者が,通常ではあり得ないような運転ミスによって本件車両を路外に逸脱させた事故であったと推認される。酒気帯び状態で車両を運転していた者と飲酒の事実なく通常の状態で車両を運転していた者とを対比すれば,上記のような運転ミスを犯す可能性は酒気帯び状態で車両を運転していた者の方が高いといえるところ,亡Iは,本件交通事故発生当時,相当程度飲酒していたものである(前記(1)オ)。 エ以上のとおりであり,上記アないしウで検討したところを総合すれば,本件車両の運転者は亡Iであったと認めるのが相当である。 オこの点,前記(1)エ(キ)ないし(ス)によれば,右フロントピラー内面下部には,亡Jが着用していた赤色パーカーの構成繊維と同色系同質の繊維が,ハンドル凹損部には,亡Hが着用していた紺色ジーンズジャンパーの構成繊維と同色系同質の青色系繊維が,運転席シート前面上部,右フロントピラー内側上部,右センターピラー内側上部,右センターピラー内側下部には,亡Hの毛髪と形態的な類似点が多い毛髪が,運転席シート前面上部及び左後ドア窓ガラス内面前端上部には,亡Hの血液型と同じ血液型の肉片がそれぞれ付着していたことが認められるが,助手席にいた亡Hが運転席側から飛び出した場合には,運転席に近い場所に同人の身体が衝突し び左後ドア窓ガラス内面前端上部には,亡Hの血液型と同じ血液型の肉片がそれぞれ付着していたことが認められるが,助手席にいた亡Hが運転席側から飛び出した場合には,運転席に近い場所に同人の身体が衝突し,それによって毛髪ないし肉片が飛び散った結果,上記各場所に毛髪,肉片ないし着衣の繊維片が付着することは十分ありうるといえるし,同様に,後部座席にいた亡Jについても,衝突時に前部座席に投げ出され,運転席側から飛び出した場合には,同様に運転席に近い右フロントピラー下部に着衣の繊維片が付着することは十分ありうるといえるから,上記各事実をもってしても,前記エの認定を覆すには足りないというべきである。 (3) よって,亡Iの相続人である被告Dらは,本件交通事故により亡Hが被った損害について,原告らに賠償する義務を負う。他方,被告Dらの請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。 2 争点2(被告Cが本件車両の運行供用者であったといえるか)について(1) そもそも自賠法3条の運行供用者責任が認められるためには,当該自動車について運行支配を有している必要があると解されるところ,自動車の保有者が,自動車を駐車場等の保管場所に保管していた際に第三者に窃取された場合,当該保管場所が客観的に第三者の自由な立入を禁止する構造,管理状況にあると認められるときは,特段の事情のない限り,保有者は当該自動車に対する運行支配を喪失し,保有者には運行供用者責任は発生しないと解するのが相当である(最高裁判所昭和48年12月20日判決・民集27巻11号1611頁参照)。 (2) そこで本件についてみると,証拠(乙2,3)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア Lは,平成13年中ごろ,知人であるZから,車検登録がされていな 参照)。 (2) そこで本件についてみると,証拠(乙2,3)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア Lは,平成13年中ごろ,知人であるZから,車検登録がされていなかった本件車両の車検登録をするため,車検費用を後払いにできる業者を紹介してほしいと頼まれた。 Lは,上記依頼を引き受けて本件車両を預かり,知り合いであった下請業者にその旨を伝えたところ,下請業者はこれを承諾し,本件車両を引き取った。 その後,下請業者は,Lに対し,本件車両が自動車税を滞納していたことにより車検を受けることができないとの理由で,本件交通事故発生の2,3日前に本件車両を返却してきた。そこで,Lは,被告Cの事務所の敷地内に同車両を置き,同車両の鍵を事務所内の机の中に置いていた。 Lは,同年10月27日の夜,被告Cの事務所建物及び建物敷地に設置された門についてそれぞれ施錠をした上で,翌28日まで出張していた。 なお,亡Iは,当時被告Cの従業員であった(丁4,弁論の全趣旨)。 イ亡I,亡H及び亡Jらのうちのいずれか,ないしは全員が共謀の上で,同月27日夜,Lが上記建物から帰宅した後に,被告Cの事務所建物内に侵入し,門の鍵とともにLの机から本件車両の鍵を持ち出し,これらを使用して門を解錠した上,本件車両を敷地外へ持ち出した。 (3) 上記認定事実によれば,そもそもLは,被告Cの代表者としてではなく個人的に本件車両の預託を受けたものであって,被告Cが本件車両の保有者(自賠法2条3項)であるといえるかについて疑問がないわけではないが,その点は措くとしても,本件車両は,被告Cの事務所建物の敷地内に置かれていたところ,亡I,亡H及び亡Jらのうちのいずれか,ないしは全員が 2条3項)であるといえるかについて疑問がないわけではないが,その点は措くとしても,本件車両は,被告Cの事務所建物の敷地内に置かれていたところ,亡I,亡H及び亡Jらのうちのいずれか,ないしは全員が共謀の上でこれを窃取したものである。そして,被告Cは,同被告の事務所建物の敷地について,門を設置してこれを施錠していたものであるから,本件車両が置かれていた場所は,客観的に第三者の自由な立入を禁止する構造,管理状況にあったものと認められる。 加えて,本件交通事故現場は,被告Cの事務所から遠く離れた場所に位置していたのであり,本件全証拠によるも,被告Cが本件車両の運行支配を有していたことを認めるに足りる特段の事情はうかがわれない。 (4) よって,被告Cが,本件車両の運行支配を有していなかったと認められないから,同被告に運行供用者責任は発生せず,原告らの同被告に対する請求は,その余の点につき判断するまでもなく,理由がない。 3 争点3(てん補基準に基づくてん補金額の認定の拘束力)について(1) 自賠責保険を中核とする制度は,交通事故による被害者をおしなべて救済するという社会的要請に基づき設けられたものであるが,そのような保険の制度によっては,自動車の保有者が不明な場合や自動車が自賠責保険によって付保されていない場合など保険の制度になじまない特殊の場合における被害者を救済することができず,等しく交通事故の被害者であるにもかかわらず,自賠責保険によっては全く救済を受けることができない者が生じるのは適当でないとして,自賠法72条1項の保障事業が社会保障政策上の見地から特に,とりあえず政府において被害者に対し損害賠償義務者に代わり損害のてん補をすることによって,上記のような特殊の場合の被害者を救済しようとの趣旨に基づき定めら 項の保障事業が社会保障政策上の見地から特に,とりあえず政府において被害者に対し損害賠償義務者に代わり損害のてん補をすることによって,上記のような特殊の場合の被害者を救済しようとの趣旨に基づき定められたものであるから,保障事業による救済は,他の手段によっては救済を受けることができない交通事故の被害者に対し,最終的に最小限度の救済を与える趣旨のものであると解するのが相当である(最高裁判所昭和54年12月4日・民集33巻7号723頁参照)。 したがって,自賠法72条1項後段に基づくてん補金請求権は,被害者が本来有している私法上の損害賠償請求権とは異なり,同法条によって新たに創設された保障金請求権であって,公法上の請求権というべきである。 もっとも,てん補金請求権が公法上の請求権であるとしても,具体的に被害者が請求しうる金額が政府の定めたてん補基準による算定額に拘束されるかどうかといった保険金請求権の具体的な内容について,自賠法がこれを明確に規定していないことからすれば,その内容は,単に当該請求権が公法上の請求権か私法上の請求権かといったことによって決するのではなく,自賠法の規定,債権債務関係を発生させる保障事業の趣旨・目的等を総合的に考慮して判断すべきである。 (2) よって検討するに,前述のとおり,保障事業は,自賠責保険によって救済されない被害者について,等しく交通事故の被害者であることから,その救済を図ろうとした制度であって,被害者の救済を図るとの点では自賠責保険制度とその趣旨を同一にし,いわば自賠責保険制度を補完する役割を担うものであるということができる。 他方,自賠責保険制度が,報償責任原理,危険責任原理に基づき,各車両ごとの保険契約締結を強制することによる保険方式を基本とする制度である(自賠 役割を担うものであるということができる。 他方,自賠責保険制度が,報償責任原理,危険責任原理に基づき,各車両ごとの保険契約締結を強制することによる保険方式を基本とする制度である(自賠法5条)のに対し,保障事業制度は,保険方式以外の方法によって被害者保護を図る制度である点で,両者は異なるものである。しかし,保障事業の財源は,①責任保険の事業を行う保険会社及び責任共済の事業を行う組合が納付する賦課金(自賠法78条),②自賠責保険適用除外車の保有者が納付する賦課金(自賠法82条),③政府が保障事業の業務に要する経費の一部として一般会計から繰り入れる金員(自賠法82条2項),④過怠金(自賠法79条)のような保障事業の収入によって賄われるものであるところ,上記②,④の金員は自動車保有者により支払われるものであり,①についても保険会社・組合が自動車保有者から徴収した保険料・共済掛金のうちから支払うものであるから,結局,保障事業の財源は,③を除き,自動車保有者の負担する金員で賄われているということができ,保障事業が報償責任原理ないし危険責任原理に基づく側面を有していることを否定することはできない。また,自賠責保険制度についても,ノーロス・ノープロフィットの原則が採用され(自賠法25条),保険契約者ないし被保険者の悪意によって損害が生じたにもかかわらず,保険会社が被害者に対して保険金を支払った場合や,保有者の損害賠償責任が発生しなかったにもかかわらず,被害者に仮渡金を支払った場合には,保険会社はその支払った金額について政府に対して補償を求めることができる(自賠法16条4項,17条4項)とともに,期間が限定されてはいるものの,保険契約者が保険会社ないし組合に支払うべき保険料ないし共済掛金の一部に充当させるために,保険会社ないし組合に対して ができる(自賠法16条4項,17条4項)とともに,期間が限定されてはいるものの,保険契約者が保険会社ないし組合に支払うべき保険料ないし共済掛金の一部に充当させるために,保険会社ないし組合に対して保険料等充当交付金を交付するものとされている(自賠法附則7項)など,保険料収入だけでなく,政府の出捐によって保険金が賄われているとの側面も有するのであって,その点での相違も相対的なものにすぎないということができる。したがって,上記のような自賠責保険制度と保障事業制度の相違をもって,自賠責保険の場合の保険金に相当するてん補金が,自賠責保険の場合と異なり,実損害額の多寡に関わらず,政府が定めたてん補基準によって認定された額に限定され,その結果に裁判所が拘束されると解することはできないというべきである。 また,自賠法72条は,保障事業に基づいて被害者に給付されるてん補金については,「政令で定める金額の限度において,その受けた損害をてん補する」と規定しているところ,「その受けた損害をてん補する」との規定は,文理上は被害者が実際に被った損害をてん補すると解釈するのが自然である。また,上記法条により委任を受けた自賠法施行令は,てん補金額の上限については,これを規定しているものの(自賠法施行令20条),具体的な損害の算定基準については,何ら規定しておらず,自賠法上も,これを政府に委任する旨の規定は存在しない。自賠法72条3項も,手続については国土交通省令に定めるものと規定するにすぎないから,同規定をもってもてん補金の算定が委任されていると解することもできない。 さらに,仮に,てん補基準が裁判所を拘束する効力を有するのであれば,政府によるてん補基準に基づく損害の算定は,行政処分と類似の効力を有することになるから,その算定結果について不 ない。 さらに,仮に,てん補基準が裁判所を拘束する効力を有するのであれば,政府によるてん補基準に基づく損害の算定は,行政処分と類似の効力を有することになるから,その算定結果について不服がある者は,行政不服審査ないし処分取消訴訟によってこれを争うことができなければならない。特に,損害額の算定については,被告も主張するように高度の専門的技術的判断を要することから,自賠責保険に関する紛争を処理するために設けられている指定紛争処理機関と同様の紛争解決機関が設けられてしかるべきであるとも考えられる。しかしながら,自賠法は,てん補金の算定に不服がある場合の取扱いについて何らの規定もしていない。そうすると,政府が行うてん補金支払額の決定は,行政処分ではなく,被害者の損害額を客観的に査定する行政庁の内部手続に過ぎないと考えられる。 以上の諸点を総合すれば,保障事業に基づくてん補金が社会保障政策上の見地から給付されるものであることを考慮しても,交通事故の被害者が自賠法72条1項に基づいて,政府に対してん補金の支払を求める場合には,てん補基準は,行政機関における運用指針を定めた内部通達としての効力を有するにとどまり,裁判所に対する拘束力を有するものではないと解すべきであって,被害者がてん補金の支払を求める訴えを提起し,その実損害額を立証した場合には,裁判所は,てん補基準を超える金額の損害額を認定し,自賠法72条1項,同法施行令20条の上限の範囲内で,被告国に対し,てん補金の支払を命じることができるものと解するのが相当であり,これに反する被告国の主張は採用できない。 4 争点4(好意同乗減額の可否及び減額割合)について(1) 上記3(1)で述べたとおり,保障事業による救済が,他の手段によっては救済を受けることができない交 告国の主張は採用できない。 4 争点4(好意同乗減額の可否及び減額割合)について(1) 上記3(1)で述べたとおり,保障事業による救済が,他の手段によっては救済を受けることができない交通事故の被害者に対して,最終的に最小限度の救済を与える趣旨のものであると解されることからすれば,加害者に対して請求しうる損害賠償金について,好意同乗など被害者側に減額を行うべき事情が存するにもかかわらず,減額を行わないままてん補金を交付することは,当該被害者に対し,本来加害者から交付を受けることができる損害賠償金以上の金員を交付することになり,最小限度の救済を行おうとした保障事業の趣旨に反し,妥当ではない。 よって,好意同乗減額を行うべき事情が存する場合には,請求しうるてん補金の算定にあたってもこれを斟酌し,適正な減額を行った上で損害額を認定するのが相当であり,原告らの主張は理由がない。 (2) そこで,本件において好意同乗減額を行うべき事情が存するかについて検討するに,亡Hが,平成13年10月27日午後6時23分から同日午後6時34分まで,及び同日午後7時00分から同日午後7時07分まで,「サンクス三木志染店」に亡I及び亡Jとともに入店していた(前記1(1)ア)ことからすれば,少なくとも亡I,亡H及び亡Jの3人は,同日午後6時23分以降は,行動を共にしていたものと推認される。 そして,亡Iは,本件交通事故発生時に呼気1ミリリットルあたり0.41ないし0.45ミリグラムのアルコールを身体に保有していた(前記1(1)オ)ものであるところ,上記亡Iのアルコール保有量からすれば,同人と亡Hが行動を共にしていた間に亡Iが飲酒したものと推認するのが相当であり,亡Hは,亡Iが飲酒していたことを認識しながら,本件車両に同乗してい であるところ,上記亡Iのアルコール保有量からすれば,同人と亡Hが行動を共にしていた間に亡Iが飲酒したものと推認するのが相当であり,亡Hは,亡Iが飲酒していたことを認識しながら,本件車両に同乗していたと認められる。 また,前記1(1)カ(イ)のとおり,本件交通事故現場の路上には,中央線付近から衝突した電柱に向かって,長さ22.1メートル及び3.7メートルの2本のスリップ痕が残されていたものであり,2つのスリップ痕はほぼ一直線上に存在していたことから,上記2つのスリップ痕は同一のタイヤの痕であると推認される。 そして,本件交通事故が発生した当時,本件交通事故現場の路上は平坦で乾燥していたから,仮に,上記スリップ痕の終点で本件車両が停止したとしても,丙3によれば,本件車両は,制動を開始した時点では,68.7キロメートル毎時程度の速度で走行していたことになるところ,前記1(1)ウの本件車両の破損状況からすれば,本件車両は,電柱に相当の速度で衝突した上で,田圃に転落したものと推認されるから,亡Iは,本件交通事故現場付近で制動を開始するまでは,制限速度である50キロメートル毎時である道路を相当程度超過した速度で本件車両を運行させていたものと推認される。このように亡Iは,酒気帯び状態で,かつ,制限速度を相当程度超過した速度で本件車両を走行させるという危険かつ無謀な運転行為を行っていたものと推認できる。 以上の事情を総合すれば,亡Hにアルコールが検出されておらず,亡Iと共に飲酒したとの事実が認められないことを考慮しても,本件においては,亡Hに生じた全損害について,好意同乗減額を行うべき事情が存するものというべきであり,その減額割合は2割とするのが相当である。 5 争点5(損害てん補金に対する遅延損害金の有無及び起算 おいては,亡Hに生じた全損害について,好意同乗減額を行うべき事情が存するものというべきであり,その減額割合は2割とするのが相当である。 5 争点5(損害てん補金に対する遅延損害金の有無及び起算日)について前記1(1)で述べたとおり,てん補金請求権は,社会保障的見地から自賠法の規定によって初めて発生する公法上の請求権と解すべきところ,被害者によるてん補金の請求がなされた場合には,その支給認定までには様々な証拠資料を収集し,事実関係を調査する必要が生じるのであり,このことは制度上当然に予定されているものといえる。このような期間内についても遅延損害金が発生するというのは,自賠法が予定しているところを超える事態であると解される。 したがって,てん補金の請求手続を行ってから支給認定を行うまでに通常必要とされる合理的期間内においては,遅延損害金の発生を認めることはできないが,合理的期間が経過してもなお遅延損害金が発生しないと解することは,被害者の救済という見地からも妥当とはいえないから,遅延損害金が発生しないとする被告国の主張は採用できない。 そうすると,てん補金の請求を政府に対して行った場合には,支給認定までに要する合理的期間が経過した後は遅延損害金が発生すると解すべきであるが,原告らは,本件交通事故が発生した日から約半年が経過した平成14年5月14日に本件訴訟を提起するまで,被告国に対して,本件交通事故に基づく損害についてのてん補金の請求をしていなかったこと(弁論の全趣旨),被告国に対する本件訴訟の訴状送達日が同月23日になされたこと及び上記訴状送達日から本件訴訟の口頭弁論終結日(平成15年8月6日)までの期間が約1年2か月であること(いずれも当裁判所に顕著な事実)に加え,本件事案の内容を総合すれば,本件においては されたこと及び上記訴状送達日から本件訴訟の口頭弁論終結日(平成15年8月6日)までの期間が約1年2か月であること(いずれも当裁判所に顕著な事実)に加え,本件事案の内容を総合すれば,本件においては,てん補金の支給額を算定するのに必要な資料が揃い,その支給額を算定することが可能となるのは,口頭弁論終結時であると認めるのが相当である。 したがって,損害てん補金に対する遅延損害金の起算日は,口頭弁論終結日の翌日とすべきであり,その利率は,公法上の請求権に関する規定である会計法上特段の規定が存在しない以上,民法所定の年5分とするのが相当である。 6 争点6(亡Hの損害)について(1) 逸失利益亡Hは,本件交通事故発生当時16歳であった(前記前提事実(1))ところ,弁論の全趣旨によれば,就労可能年数である18歳から67歳までの49年間について,平均すると賃金センサス第1巻第1表集計の学歴計・産業計・企業規模計による女子労働者の全年齢平均賃金と同程度の収入を得ることができたものと認めるのが相当であり,上記認定を覆すに足りる証拠はない。 そこで,平成13年度における上記平均賃金349万8200円を基礎とし,生活費を3割控除し,ライプニッツ係数により年5分の割合による中間利息を控除して逸失利益の現価を算出すると,次のとおり4035万5235円となる(1円未満切捨て)。 (計算式)349万8200円×(1-0.3)×16.480=4035万5235円(2) 慰謝料亡Hは,本件交通事故が発生した当時16歳と若年者であったこと(前記前提事実(1)),亡Hの遺体が激しく損傷しており(前記前提事実(2)),葬儀を行った際,遺体には顔がなかったこと(甲27),その他原 Hは,本件交通事故が発生した当時16歳と若年者であったこと(前記前提事実(1)),亡Hの遺体が激しく損傷しており(前記前提事実(2)),葬儀を行った際,遺体には顔がなかったこと(甲27),その他原告らと亡Hの家族関係等本件に現れた諸般の事情を併せ考慮すると,亡Hが死亡したことに対する慰謝料は,2200万円であると認めるのが相当である。 (3) 相続原告らは,亡Hの父母であるところ,亡Hの死亡により,同人から上記損害賠償請求権を2分の1ずつ相続した(3117万7617円,1円未満切捨て)。 (4) 葬儀費用等甲24ないし26及び弁論の全趣旨によれば,原告Aは,亡Hの告別式執行費用等の葬儀費用として,100万円を超える支出をしたことが認められる。したがって,原告ら主張の葬儀関係費等100万円は,本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。 (5) 小計ア原告A3217万7617円イ原告B3117万7617円(6) 好意同乗減額前記5で認定説示したとおり,本件では,本件交通事故による亡Hの損害については2割の好意同乗減額をするのが相当であると認められるから,上記(5)の金額全額からそれぞれ2割を減額すると,原告Aについて,2574万2093円,原告Bについて2494万2093円となる(1円未満切捨て)。 (7) 弁護士費用弁論の全趣旨によれば,原告らは,本件訴訟の提起及び遂行を原告らの訴訟代理人に委任し,同代理人に対して相当額の費用の負担を約束したことが認められるところ,本件事案の内容,訴訟の経過及び請求認容額その他諸般の事情に照らせば,弁護士費用として被告Dらに損害賠償を求める金額は 人に委任し,同代理人に対して相当額の費用の負担を約束したことが認められるところ,本件事案の内容,訴訟の経過及び請求認容額その他諸般の事情に照らせば,弁護士費用として被告Dらに損害賠償を求める金額は,原告らそれぞれについて250万円と認めるのが相当である。 (8) 小計ア原告A2824万2093円イ原告B2744万2093円(9) 相続被告D及び被告Eは,亡Iの妻及び子であるから(前記前提事実(1)イ),原告らに対する上記(8)のア及びイの債務を各2分の1ずつ相続した。 7 原告らの認容額よって,被告D及び被告Eは,原告A及び原告Bに対し,それぞれ上記6(8)の2分の1の金額(原告Aについて1412万1046円,1372万1046円)の内金としてそれぞれ1250万円及びこれに対する不法行為日である本件交通事故の発生日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金について支払義務を負う。 また,被告国は,原告らに対し,上記6(8)の金員の内金として自賠法施行令20条が定める金額である3000万円(原告ら各1500万円)及びこれに対する口頭弁論終結日の翌日である平成15年8月8日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金について支払義務を負う。 8 結論以上の次第で,原告らの被告Dらに対する請求は理由があるから認容し,被告国に対する請求は,主文掲記の限度で理由があるから認容し,原告らのその余の請求及び被告Cに対する請求は理由がないから棄却し,被告Dらの請求は理由がないからいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき,民事訴訟法61条,64条を適用し,仮執行宣言については,同法259条1項を適用するとともに,事情に がないから棄却し,被告Dらの請求は理由がないからいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき,民事訴訟法61条,64条を適用し,仮執行宣言については,同法259条1項を適用するとともに,事情に鑑み,判決言渡後2週間の猶予期間を定めることとし,被告国の同免脱宣言の申立てについては相当でないからこれを却下することとして,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第1民事部裁判長裁判官古川行男 裁判官西村欣也 裁判官窪田俊秀(別紙)交通事故目録日時平成13年10月27日午後11時30分ころ場所神戸市北区M町N番地(以下,「本件交通事故現場」という。)加害車両自家用普通乗用自動車態様  I,H及びJが同乗していた加害車両(但し,運転者が誰であったかについては争いがある。)が,運行中に暴走して路外に逸脱し,電柱に激突して上記3名がいずれも死亡した。 本件車両は,大破し,上記3名は,いずれも車外に放出された。 本件車両は,大破し,上記3名は,いずれも車外に放出された。

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