昭和54(行ス)1 文書提出命令に対する即時抗告申立事件

裁判年月日・裁判所
昭和54年7月2日 高松高等裁判所 住民訴訟
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【DRY-RUN】○ 主文 原決定中別紙目録記載の各文書提出を命令した部分を取消し、これを原審に差戻 す。 ○ 理由 第一 本件抗告の趣旨及び理由は、別紙即時抗告申立書に記載のとおりであり、こ れに対する相手方らの意見

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○ 主文原決定中別紙目録記載の各文書提出を命令した部分を取消し、これを原審に差戻す。 ○ 理由第一本件抗告の趣旨及び理由は、別紙即時抗告申立書に記載のとおりであり、これに対する相手方らの意見は、別紙意見書に記載のとおりである。 第二当裁判所の判断は、次のとおりである。 (一) 一件記録によると、次の事実を認めることができる。 前掲損害賠償請求事件は、抗告人が坂出市<地名略>地区の坂出港港湾整備事業計画に必要な土地を確保するため、右<地名略>両地先公有水面の埋立を企図し、これに伴い、右地域に漁業権を有する別紙目録記載の一七漁業協同組合(一七漁協という)に対し、漁業権消滅等の補償費四七億七〇〇〇万円、会議費四五〇〇万円及び利子補給金三八〇〇万円の総額四八億五三〇〇万円のいわゆる漁業補償を支払つたことについて、抗告人の住民である相手方らは、正当に支払うべき右漁業補償額は漁業権消滅補償金二五〇〇万円及び底びき網漁に対する影響補償金一二〇万円の合計二六二〇万円にすぎないから、前記支出総額から右金額を控除した四八億二六八〇万円は違法な公金支出であるとして、地方自治法二四二条の二、一項四号に基づき、抗告人に代位し、坂出市長、同市収入役たる各個人及び一七漁協に対し、連帯して不法行為による損害賠償金として抗告人に右金員の支払を請求するものである。そして、同訴訟において、相手方らは、抗告人に、別紙文書提出命令申立書記載の文書につき、民訴法三一二条二号及び三号により文書提出の義務ありとして提出命令を申立てた。原審は抗告人の所持する別紙目録記載の各文書(本件文書という)は民訴法三一二条三号前段の挙証者たる相手方らの利益のためにも作成された文書に該当するとして、抗告人に同各文書の提出を命じた(別紙文書提出命令申立書記載の文書中本件文書以外の文書は、その存在 いう)は民訴法三一二条三号前段の挙証者たる相手方らの利益のためにも作成された文書に該当するとして、抗告人に同各文書の提出を命じた(別紙文書提出命令申立書記載の文書中本件文書以外の文書は、その存在が認められないとして申立を却下した。)。 (二) これに対し、抗告人は、原審が提出を命じた本件文書は、住民である相手方らの権利義務を発生させあるいは相手方らの地位や権利、権限を証明するために作成されたものではなく、また間接的にせよ、住民の法律上の利益を明らかにする目的で作成された文書ではなく、いずれも民訴法三一二条三号前段の挙証者の利益のために作成せられた文書に該当しないというのである。 (三) よつて検討するに、(1) 本件訴訟の如き地方公共団体が実体法上有する請求権を積極的に行使しない場合に、その住民が地方公共団体に代位して、右請求権を行使できることが認められたいわゆる住民訴訟において、原告たる住民が、訴訟を提起し、これを維持するためには、被代位者たる地方公共団体の所持する文書の引渡又は閲覧を求めることができないとすると、挙証が不可能になる場合もあると考えられる。 ところで、地方自治法においては、住民たる原告に対し、同法二四二条の二による住民訴訟につき、挙証上必要とする文書の引渡又は閲覧を許す旨の明文の規定はない。しかし、法が住民訴訟なる新らしい訴訟形態を認めたからには、その実効が期せられるべきものと解するので、本件の如き住民訴訟においては、限定せられた条件の下に、住民訴訟の特質よりして、文書の引渡又は閲覧をさせる義務が、被代位者たる地方公共団体にあると認むべき場合もあると考える。本件において、相手方らが、文書提出の義務の原因として、民訴法三一二条二号を掲げているのは、右の如き見解によるものと解せられる。 (二) 更に検討するに、本件文書は あると認むべき場合もあると考える。本件において、相手方らが、文書提出の義務の原因として、民訴法三一二条二号を掲げているのは、右の如き見解によるものと解せられる。 (二) 更に検討するに、本件文書は、抗告人所持にかかる「坂出市長と一七漁業協同組合との間で締結された坂出港東部開発に伴う損失補償に関する契約書、覚書および確認書」(契約書類と略記する)及び「一七漁業協同組合に対する右損失補償金の支払命令および領収書」(支払書類と略記する)であるところ、一件記録によると、右支払書類は、右契約書類に基づく公金支出の証憑書類であり、抗告人のみが所持するものであるが右契約書類は本件訴訟の被告である一七漁協においてもそれぞれ所持していることが認められる。 しかして、右文書が、坂出市と各漁協との間の利益文書又は法律関係文書であると認められるところより、本件住民訴訟のような代位訴訟において、判決の効力が被代位者にも及ぶような場合には、民訴法三一二条三号にいう「挙証者」というのは、訴訟の原告となつている代位者だけでなく、その挙証によつて直接利益を受けることになる被代位者も含まれるという考え方が採用できるのであるが、これによつて文書の提出命令の申立が許されるのは、訴訟の相手方又は訴訟外の第三者の所持している文書に関してであつて、原告と一体とみなされる被代位者自身の所持している文書について更に被代位者を第三者として提出命令の申立をすることは、法文解釈上自己矛盾を生ずるものといわざるを得ない。代位者と被代位者間は、同法二号によつて律すべきであると解する所以である。 原決定が、被代位者たる抗告人の所持する本件文書を間接的なる利益文書と認定した根拠は必ずしも明確ではないが、本件住民訴訟の構造よりして、抗告人よりの文書提出のために本三号を拡張解釈することは相当でない。 よ 、被代位者たる抗告人の所持する本件文書を間接的なる利益文書と認定した根拠は必ずしも明確ではないが、本件住民訴訟の構造よりして、抗告人よりの文書提出のために本三号を拡張解釈することは相当でない。 よつて、民訴法三一二条三号により、抗告人に対し本件文書の提出を命じた原決定は失当であると認めざるを得ない。 (3) そこで、最初にかえり、本件につき民訴法三一二条二号により、抗告人に対し本件文書の提出を命ずべきか否かにつき検討するに、同号による文書の引渡又は閲覧については、法律上又は契約上の根拠が必要であるとして従来限定されてきたものであり、住民訴訟の特質よりして、条理上代位者と被代位者間を同号で律することができるとしても、他に方法のない場合における必要最少限に止むべきは当然である。 本件文書中契約書類は前記の如く被告たる各漁協が、同一内容のものをそれぞれ所持しているものと認められるので、利益ないし法律関係文書に関する前記の如き見解の下においては、訴訟の相手方より提出させることができるものと認められるのみならず、訴訟の相手方所持の文書は、先ずその相手方より提出させるのが本則であると解する。 なお、右支払書類については、右契約書類に基づく支払事実のみの立証にかかるものと認められるので、右支払書類を敢えて抗告人から提出させる必要があるかどうかも問題があると考えられる。 よつて、本件については、前記の如き民訴法三一二条三号の解釈適用と同条二号による文書提出申立の拒否につき、更に審議を尽くすべきものと認める(四) 以上のとおりであるから、本件文書の提出を命じた原決定部分は、爾余の抗告理由について判断するまでもなく、失当であるから、これを取消し、本件を原審に差戻すこととし、主文のとおり決定する。 (裁判官越智傳菅浩行川波利明)別紙目録一坂出 定部分は、爾余の抗告理由について判断するまでもなく、失当であるから、これを取消し、本件を原審に差戻すこととし、主文のとおり決定する。 (裁判官越智傳菅浩行川波利明)別紙目録一坂出市長と後記各漁業協同組合との間で締結された坂出港東部開発に伴う損失補償に関する契約書、覚書および確認書一後記各漁業協同組合に対する右損失補償金支払命令および領収書記高松第一漁業協同組合(以下、省略)別紙文書提出命令申立書一提出命令を求める文書の所持者坂出市<地名略>坂出市右代表者坂出市長 A二文書の表示 1 坂出市長と後記各漁業協同組合との間で締結された、坂出港東部開発に伴う損失補償に関する契約書、覚書、念書、確認書、およびこれらの附属書類 2 坂出港東部地区開発計画に伴う漁業補償基準要領 3 後記各漁協に対する右損失補償金支払命令および領収書 4 後記各漁協から坂出市長に対する前記補償に関する要求書、要望書 5 坂出市職員と、同漁協との間における交渉経過書および交渉会議議事録記高松第一漁業協同組合(以下、省略)三立証すべき事実坂出市長と被告各漁協間の損失補償契約の経過、内容、およびその基準四文書の趣旨文書の表示自体から明らかである。 五文書提出義務の原因民事訴訟法第三一二条第二号、三号別紙即時抗告申立書(抗告人)抗告の趣旨一原決定中、第一項の部分を取消す。 二相手方等の本件文書提出命令の申立を却下する。 との裁判を求める。 抗告の理由一原裁判所は、相手方等の申立に基づき、昭和五四年二月七日、原決定表示のとおり、文書提出命令の決定をなし、同決定は、同月九日抗告人に送達された。 二而して、原決定の理由とするところは、別紙目録記載の各文書は、いずれも原告B外二名、被告A外一八名間の高松地方裁判所昭和五二年 り、文書提出命令の決定をなし、同決定は、同月九日抗告人に送達された。 二而して、原決定の理由とするところは、別紙目録記載の各文書は、いずれも原告B外二名、被告A外一八名間の高松地方裁判所昭和五二年(行ウ)第四号損害賠償請求事件の挙証者たる相手方等の利益のためにも作成された文書であるから、民事訴訟法第三一二条第三号前段の文書に該当するものと解されるところ、右訴訟において、坂出市が被告一七漁協に対して漁業補償として支出した金四八億五、三〇〇万円が高額にすぎて違法な公金支出に該当するか否かを判断するには、単に、被告一七漁協に対する漁業補償の総額が確定されるだけでは足りず、さらに進んで被告一七漁協毎の補償事由、ことに補償基準および補償金額が主要な争点となることが必定であり、その点において、右各文書が極めて必要かつ重要な証拠方法であることは明らかであるから、本件文書の提出を求める必要性は十分認められ、本件申立は認容されるというものである。 三しかしながら、原決定は、次のとおり、違法かつ不当であることは明らかであり、当然取り消されるべきものと思料する。 1 抗告人は、本件各文書の所持者ではあるが、公法人たる第三者であるので、民事訴訟法第三一二条の文書提出義務を負うものではない。 すなわち、民事訴訟法第三一二条の文書提出命令が発せられるためには、命令をうける者に文書提出義務があることが当然必要である。 ところで、民事訴訟法第三一二条は、文書所持者である第三者が、裁判所の発した文書提出命令に従わないときは、過料の制裁を科するものとしているが、すべての過料の場合を通じて、国または公共団体が私人・私法人に対して過料を科することは予定されているものの、官公署その他の公法人を過料の客体とすることは予定されておらず、公法人たる第三者に対し同条を適用することは許 合を通じて、国または公共団体が私人・私法人に対して過料を科することは予定されているものの、官公署その他の公法人を過料の客体とすることは予定されておらず、公法人たる第三者に対し同条を適用することは許されないのであるから、文書所持者である第三者の中には、官公署その他の公法人は含まれず、公法人たる第三者である抗告人には、同法第三一二条の文書提出義務はないと解するのが相当である。 この点につき、原決定は官公署その他公法人が第三者である場合の文書提出義務は、もつぱら公法人の私法上の関係に基礎を置くものであつて、公法人たると私人たるとによつて、その取扱を異にする理由はないとして、公法人たる第三者にも、同条の文書提出義務を認めているが、これは、同法第三一八条の規定との関連を無視し、同法第三一二条の規定のみを形式的に解釈した結果によるものであり、妥当でない。 2 原裁判所が、抗告人に対して提出を命令した本件各文書は、いずれも民事訴訟法第三一二条第三号前段の「挙証者ノ利益ノ為ニ作成セラレタ」文書に該当するものではない。 すなわち、同三号前段にいう「挙証者ノ利益ノ為ニ作成セラレタ」文書とは、後日の証拠のために、または権利義務を発生させるために作成されたものであり、挙証者の地位・権利または権限を示す文書をいうのであり、たとえば、身分証明書、同意書、領収書、委任状などがこれに属する。ところで、原裁判所が提出を命令している本件文書は、抗告人と前記一七漁協間の漁業補償に関する契約書およびそれの支出に伴う関係書類などであるが、これらの文書は、住民である相手方等の権利義務を発生させ、あるいは相手方等の地位や権利・権限を証明するために作成されたものでないことは明らかであり、同三号前段に該当する文書ではない。 しかるに、原決定は、同三号前段にいう文書は、挙証者の法律上の利 発生させ、あるいは相手方等の地位や権利・権限を証明するために作成されたものでないことは明らかであり、同三号前段に該当する文書ではない。 しかるに、原決定は、同三号前段にいう文書は、挙証者の法律上の利益を明らかにすることが、その文書作成の直接の目的であるものに限らず、間接的に目的とされているものをも含むとして、本件各文書は、直接的には抗告人と前記一七漁協の法律上の利益を明らかにする目的で作成された文書といえるけれども、単にそれに止まらず、右漁業補償が地方公共団体たる抗告人のなした公金の支出であり、住民には、地方自治法第二四二条の住民監査請求権や同法第二四二条の二に基づく住民訴訟提起の権限があることからして、間接的ではあるが、市住民である相手方等の法律上の利益を明らかにする目的で作成された文書ともいうことができ、同三号前段に該当するとしている。 成程、地方公共団体の構成員である住民は、自己の属する地方公共団体の公金の支出が違法もしくは不当な場合は、判示のとおり住民監査請求を求めることもでき、さらには違法な公金支出につき住民訴訟を提起することもできる制度的保障が与えられているが、これら制度的保障があることをもつて、直ちにその支出に関する文書が、住民固有の法律上の利益を明らかにする目的で作成されたものと解するのは、短慮に過ぎた論理であり、何故に公金の支出であることからして、間接的にしろ、住民の法律上の利益を明らかにする目的で作成された文書とされるのかを理由づけるものではない。 また、原決定の右見解に従えば、地方公共団体が公金の支出に関して、その行政上作成する文書は、すべて、同三号前段の文書に該当することとなり、その提出を求められることとなつて、行政行為の麻痺を招来しかねない不合理を生ずることとなることからも、その見解が妥当でないことは明らかであ 成する文書は、すべて、同三号前段の文書に該当することとなり、その提出を求められることとなつて、行政行為の麻痺を招来しかねない不合理を生ずることとなることからも、その見解が妥当でないことは明らかであろう。 民事訴訟法第三一二条は、挙証者の利益をはかる一方、文書所持者の利益を侵害するものであるから、その適用にあたつては、原判示のごとく、いたずらにこれを拡張解釈すべきではない。 3 本件については、いまだその提出を命令する必要性は認められない。 すなわち、文書提出命令の申立は、いうまでもなく、証拠方法としての書証申立の一方式であり、当事者双方の主張事実が具体的に明確にされたうえで、その立証段階に至つてなすべきものであるところ、本件訴訟では、いまだその主張事実が具体的に明確にされているとはいえず、むしろ、これを具体的に明確にするために文書提出命令を求めているものと推認することができるほどであり、その必要性を認めることはできない。(東京高裁、昭四七、五、二二決定、判例時報六六八号一九頁参照)本件訴訟では、被告が主張しているところによると、原告である相手方等は、当初明確な論拠もなく補償金中高く見積つても金二〇億円が正当な補償であつて、これを超える二八億五、三〇〇万円が不当な支払であるから、その支払を求めるといい、次に、正当な補償は二、六二〇万円であり残余の四八億二、七八〇万円がすべて不当であるから、その支払を求めると変更したもので、そのへだたりは極めて大であり過ぎ、事実を誠実に調査し論拠を構えて提訴しているとは到底認められず、さらには、原決定も指適しているとおり、本件訴訟において、損失補償の一たるいわゆる漁業補償における適正額は、本来漁業権者たる各漁協がそれぞれ蒙る損失内容に応じて個別的具体的に決せられるべきものであるので、補償金額が高額にすぎて とおり、本件訴訟において、損失補償の一たるいわゆる漁業補償における適正額は、本来漁業権者たる各漁協がそれぞれ蒙る損失内容に応じて個別的具体的に決せられるべきものであるので、補償金額が高額にすぎて適法な公金支出に該当するか否かを判断するには、単に被告一七漁協に対する漁業補償の総額が確定されるだけでは不十分であり、さらに被告一七漁協毎の補償事由、ことに補償基準および補償金額が主要な争点になることは必定であるとされているところ、いまだ、その争点は、具体的に明確にされていない。原決定は、右争点を明らかにするため本件各文書が極めて必要かつ重要であるとして、その提出を求める必要性を認めているようであるが、それは本末転倒であり、文書提出命令の申立が、証拠方法の一方式にすぎず、具体的事実を明確にするための手段方法として認められるものでないことから、到底認められるものではない。 4 地方公共団体である抗告人が行つている行政事務は、本件公金の支出を含め、すべて、その構成員たる住民の利益のために公正かつ妥当なものであるが、本件文書を提出すべくことになると、公益ないし秘密の保持が害されるなど地方行政に混乱を招来する結果となり、妥当でない。 すなわち、抗告人等地方公共団体が漁業補償を伴う各種公共事業を計画遂行するにあたつては、対象漁協の協力を得なければ、円滑な事務を行うことができないものであり、抗告人に限らず、各地方公共団体では、かねて、漁業補償交渉を行う際、対象漁協との間で、その結果を公表しないことを約し、これを厳守してきたのであり、その結果を公表しないことは、いまや漁業補償交渉の一般的な慣行となつているのである。(別添照会回答書写四通参照)従つて、抗告人において、右約定および慣行を守らなければ、現在計画中の漁業補償を伴う各種公共事業について、今後各漁協の協 漁業補償交渉の一般的な慣行となつているのである。(別添照会回答書写四通参照)従つて、抗告人において、右約定および慣行を守らなければ、現在計画中の漁業補償を伴う各種公共事業について、今後各漁協の協力が得られず、これを遂行できないばかりか、同種問題をかかえる他の公共団体にも多大の影響を与えるなど公益ないし秘密の保持が害され、地方行政に著しい混乱を招来することは必定であり、本件文書提出の申立は、この点からも認められるべきではない。 以上のとおり、いずれの点からも、本件につき、文書提出命令を発することは失当であるのに、原決定はこれを認容しているので、当然取り消されるべきである。 目録一坂出市長と後記各漁業協同組合との間で締結された坂出港東部開発に伴う損失補償に関する契約書、覚書および確認書一後記各漁業協同組合に対する右損失補償金支払命令および領収書記高松第一漁業協同組合(以下、省略)別紙意見書(相手方ら)第一抗告人は、抗告人が公法人であることをもつて、民事訴訟法第三一二条の文書提出命令の客体たり得ないという。しかし、公法人といえども私人と同じく私法的関係において、多くの経済的、あるいは取引的活動を展開している。民事訴訟法上の義務はまさにこの私法的関係における義務であるから、公法人といえど何ら別異に取り扱う理由はない。抗告人は過料の制裁を科し得ないことをもつてその根拠とするもののようであるが、過料の制裁が為し得るかどうかということは、義務違背に対する結果としての制裁の問題であつて、制裁手段が取り得ないからといつて義務がないということにならないのである(公法人が一般的に過料の客体とならないとする議論にも疑問が多い。公法人といえども、その事業活動において法令違反を引き起こすことはあり、罰規定のある、例えば人の健康に係る公害犯罪の処罰に ないのである(公法人が一般的に過料の客体とならないとする議論にも疑問が多い。公法人といえども、その事業活動において法令違反を引き起こすことはあり、罰規定のある、例えば人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律違反等については処罰の可能性は存する)。 伊方原発訴訟において有名な御庁の決定(昭和五〇年七月一七日)は、内閣総理大臣に提出命令を認めているし、スモン訴訟においては国公立の各病院に対するカルテの提出命令を認めている。 第二次に抗告人は、本件文書が「挙証者の利益の為」作成されたものに該当しないという。 しかし、この議論は原決定に述べられている論理が現在の判例・通説であつて、抗告人の論説は採るに値しない。本件文書の作成の根拠・理由そして本件訴訟が住民訴訟であることからすれば、まさしく住民たる原告らの利益の為に作成せられているものである。 抗告人は、原決定の見解に従えばすべての公金支出に関する文書が右に該当することとなるというが、もちろん法令により公務員に対し守秘義務が課せられているものについては、また別の理由により法益の調整を図る必要があるが、そうでないものについては、公金の支出に関する文書は住民訴訟においては、その訴訟との関連が認められる限りでは右に該当すると解されるべきものである。これによつて何ら行政の麻痺を招来することはない。 第三抗告人は、提出命令の必要性がないと主張する。 しかし、証拠提出の採否は原審の裁量・専権であつて、これが抗告審における独立した審理の対象たり得ないことは理の当然であつて、反論するまでもない。(参照東京高決昭53・10・31判時九一一・一一四、大阪高決昭53・9・4同九一八・八六)第四次に抗告人は、本件文書が公表されることで行政上の混乱が生じるというが、そのような事実はまつたくない。混乱が生じるとすると 10・31判時九一一・一一四、大阪高決昭53・9・4同九一八・八六)第四次に抗告人は、本件文書が公表されることで行政上の混乱が生じるというが、そのような事実はまつたくない。混乱が生じるとすると、その内容があまりに不公平であり、不平等であり、法令に抵触するからであろう。しかし、それは不提出の根拠たり得ない。 本件文書を公表しないのが漁業補償交渉の一般的な慣行というが、これまで数多くの漁業補償協定が公にされており、そのような慣行は存しない。抗告人にとつて都合が悪いから公表しないのみである。 逆に、納税者である一般市民は、暗闇のままにおかれる漁業補償について「知る権利」があり、「追求する権利」がある。 これを秘密にすることが公益になどなり得ない。 このことは原審において述べたとおりである。 (原裁判等の表示)○ 主文相手方は、別紙目録記載の各文書を当裁判所に提出せよ。 申立人らのその余の申立を却下する。 ○ 理由第一申立人らの申立及びその理由は別紙「文書提出命令申立書」及び別紙「文書提出命令申立意見書(一)、(二)」に記載のとおりであり、これに対する被告らの意見は別紙「文書提出命令申立書に対する反論書」に記載のとおりである。 第二本件訴訟は、訴外坂出市が、同市<地名略>地区の坂出港港湾整備事業計画に必要な土地を確保するため、右<地名略>両地先公有水面の埋立を企図し、これに伴い、右地域に漁業権を有する被告一七漁業協同組合(以下「一七漁協」という)に対し、漁業権消滅等の補償金四七億七、〇〇〇万円、会議費金四、五〇〇万円及び利子補給金三、八〇〇万円の総額金四八億五、三〇〇万円のいわゆる漁業補償を支払つたことについて、いずれも坂出市の住民である原告らが、正当に支払うべき右漁業補償額は漁業権消滅補償金二、五〇〇万円及び底びき網漁に対する影響補償 総額金四八億五、三〇〇万円のいわゆる漁業補償を支払つたことについて、いずれも坂出市の住民である原告らが、正当に支払うべき右漁業補償額は漁業権消滅補償金二、五〇〇万円及び底びき網漁に対する影響補償金一二〇万円の合計金二、六二〇万円にすぎないから、前記支出総額から右金額を控除した金四八億二、六八〇万円(原告らは金四八億二、七八〇万円と主張するが、計算上明白な誤記と認める)は違法な公金支出であるとして、地方自治法二四二条の二、一項四号に基づき、坂出市に代位し、坂出市長、同市収入役たる各個人及び前記一七漁協をそれぞれ被告とし、被告らに対し、連帯して不法行為による損害賠償金として坂出市に右金員の支払を請求するものであるところ、被告らは、坂出市が一七漁協に対し総額金四八億五、三〇〇万円のいわゆる漁業補償をなした事実は認めるものの、各漁協毎への支出額及びその算出根拠等については、これを明らかにする義務はない旨主張し一切これを明らかにしないため、原告らにおいて本件申立に及んだものである。 第三ところで、申立人らは本件申立にかかる各文書が民事訴訟法三一二条二号、三号に該当する文書であるとして、その提出を求めているが、先ず本件申立にかかる文書のうち、別紙目録記載の文書以外の文書は、坂出市長Aの審尋の結果によれば、同市長においてその存在を否定し、一件記録によるもその存在自体を認めるには足りないので、右文書についての提出命令申立は、民事訴訟法三一二条二号、三号についての判断をするまでもなく、失当といわなければならない。 なお、前記審尋の結果によれば、別紙「文書提出命令申立書」の文書の表示5記載の文書に関連するものとして、市の担当職員が交渉内容等を便宜上任意にメモしたものの存在は認めうるが、右メモは同職員個人が作成した私的な備忘録の類であつて坂出市の所持する 令申立書」の文書の表示5記載の文書に関連するものとして、市の担当職員が交渉内容等を便宜上任意にメモしたものの存在は認めうるが、右メモは同職員個人が作成した私的な備忘録の類であつて坂出市の所持する文書とは認められないので、本件文書提出命令の対象とはならないものというべきである。 第四そこで、次に本件申立にかかる文書のうち、前記審尋の結果により、坂出市が所持することが推認される別紙目録記載の各文書について、これらの文書が同条三号前段の「挙証者の利益のために作成された」文書に該当するか否かについて判断する。 1 右規定の「挙証者の利益のために作成された」文書とは、後日の証拠のために又は権利義務を発生させるためになど、挙証者の法律上の利益を明らかにする目的で作成された文書を指し、この場合の挙証者の法律上の利益には一人挙証者のみの利益だけではなく、挙証者と所持人など第三者との共同の利益が含まれて差し支えなく、また、挙証者の法律上の利益を明らかにすることが、その文書作成の直接の目的であるものに限らず、間接的に目的とされているものをも含むと解される。 2 別紙目録記載の各文書は、いずれも坂出市と一七漁協との間の前記漁業補償に伴い、補償契約の成立、内容及び補償金の支払を明確にする目的で作成された文書であることは、右各文書の性格自体からして明らかであるところ、右各文書は、直接的には坂出市と一七漁協の法律上の利益を明らかにする目的で作成された文書といえるけれども、単にそれに止まらず、右漁業補償が地方公共団体たる坂出市のなした公金の支出であることからして、間接的ではあるが、同市の住民である申立人らの法律上の利益を明らかにする目的で作成された文書ともいうことができる。 けだし、地方公共団体の構成員たる住民らは、当該地方公共団体の財産の享有者として、当該地方公 はあるが、同市の住民である申立人らの法律上の利益を明らかにする目的で作成された文書ともいうことができる。 けだし、地方公共団体の構成員たる住民らは、当該地方公共団体の財産の享有者として、当該地方公共団体のなす公金の支出に利害関係を有することはもとよりであるところ、自己の属する地方公共団体の公金の支出が違法もしくは不当な場合は、地方自治法二四二条に基づきいわゆる住民監査請求を求めることができ、さらに、違法な公金の支出については同法二四二条の二に基づきいわゆる住民訴訟を提起してその是正を求める制度的保障が与えられていることに鑑みると、公金の支出についての住民の右利害関係は単に事実上のものたるに止まらず、法律上の利害関係というになんらの妨げはなく、そうすると、地方公共団体の公金の支出を明らかにする目的で作成された文書は、当該地方公共団体の住民にとつても、違法もしくは不当な公金支出を法的に是正し得る地位にあるという意味あいにおいて、住民ら固有の法律上の利益を明らかにする目的で作成された文書と解するのが相当である。 加えて、別紙目録記載の各文書のうち、支払命令書、領収書及び契約書は、いずれも坂出市の会計規則ないしは契約規則によりその作成が義務づけられており、その趣旨とするところは、第一次的には坂出市内部の会計処理の公正を図ることにあるは勿論のことながら、単にこれに止まらず、坂出市の住民において、公金の支出に関し違法もしくは不当があるときは、究極的にはこれらの資料によつて前記地方自治法に基づく住民監査請求ないしは住民訴訟を求めることが可能となるのであつて、この点も右各文書の作成を法的に義務づけた趣旨とも解せられるのである。 3 しかして、本件訴訟は、第二項に記載のとおり、申立人らが坂出市のなした漁業補償を違法な公金支出として提起した住民訴訟であるから この点も右各文書の作成を法的に義務づけた趣旨とも解せられるのである。 3 しかして、本件訴訟は、第二項に記載のとおり、申立人らが坂出市のなした漁業補償を違法な公金支出として提起した住民訴訟であるから、右漁業補償の契約の成立、内容ないしは支出額を明らかにする別紙目録記載の各文書は、上来説示に照らし間接的にではあるが、挙証者たる申立人らの利益のためにも作成された文書ということができ、民事訴訟法三一二条三号前段の文書に該当するものと解される。 第五次に、本件文書提出を求める必要性について検討するに、本件訴訟において、原告らは、訴外坂出市が被告一七漁協に対し漁業補償として支出した金四八億五、三〇〇万円は補償基準たる昭和三七年六月二九日閣議決定による「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」に照らし、通常の漁業補償の額をはるかに上回る過大な支出であつて違法な公金支出に該当する旨主張するに対し、被告らは、右要綱は法規範性がないうえ、国その他の行政機関が公共用地を取得する際、各省庁間に取扱いが区々になるのを防ぐため類型的項目をかかげて補償の大綱を示した一般的政策的配慮にすぎず、ことに上命下服の関係のない地方自治体に対しては、助言ないし勧告程度の意味を有するにすぎない旨主張して争つている。しかし、損失補償の一たるいわゆる漁業補償における適正額は本来漁業権者たる各漁協がそれぞれ蒙る損失内容に応じて個別的具体的に決せられるべきものであるから、前記補償金額が高額にすぎて違法な公金支出に該当するか否かを判断するには、単に被告一七漁協に対する漁業補償の総額が確定されるだけでは不十分であり、更に進んで、被告一七漁協毎の補償事由、ことに補償基準及び補償金額が本件訴訟の主要な争点となることは必定であり、この点について、別紙目録記載の各文書が極めて必要かつ重要な証拠方法 では不十分であり、更に進んで、被告一七漁協毎の補償事由、ことに補償基準及び補償金額が本件訴訟の主要な争点となることは必定であり、この点について、別紙目録記載の各文書が極めて必要かつ重要な証拠方法であることは明らかであるから、本件文書の提出を求める必要性は十分これを認めうるものというべきである。 第六なお、被告ら及び相手方は、原告らは、具体的事実が不明確なまま本件訴訟を提起し、その訴訟の進行中に坂出市に対し文書の提出を求め、その中から具体的事実を探り出そうとするものであつて、本件申立はいわゆる「見切り発車」による濫訴を助長するものであり、また、本件文書提命令が発せられると今後坂出市において漁業権の関連する各種公共事業計画の遂行にあたり、今後各漁協の協力が得られないばかりか、同種問題をかかえる他の自治体にも多大の影響を与えるなど公益ないし秘密の保持が害され、地方行政に混乱が生ずる旨主張するが、対等な当事者を予定する通常の民事訴訟とは異なり、行政訴訟においては住民等利害関係人には、国又は公共団体がした処分もしくは契約等の行為の存否、内容等についてその詳細を知りうる機会が乏しく、事後的にこれを争う形をとるのが通例であつて、かかる特質や本件記録上明らかな本件訴訟の経緯に照らすと、たとえ、本件申立を認容したからといつて、それが濫訴を助長するとは考えられず、又、本来、公正かつ明朗であるべき行政の理念に合致こそすれ、行政処理上、混乱が生ずる故をもつて、本件申立を拒否する事由とはなしえないものというべきである。 また、被告らは第三者である文書の所持者が文書提出命令に応じないとき民事訴訟法三一八条は過料の制裁を規定しているが、右第三者が官公署その他の公法人である場合には過料の客体となりえず、従つて同条の適用は除外されるので文書の所持者である第三者の中に 命令に応じないとき民事訴訟法三一八条は過料の制裁を規定しているが、右第三者が官公署その他の公法人である場合には過料の客体となりえず、従つて同条の適用は除外されるので文書の所持者である第三者の中には官公署その他の公法人は含まれず、相手方たる坂出市には提出義務はない旨主張するが、官公署その他公法人が第三者である場合の文書提出義務はもつぱら公法人の私法上の関係に基礎を置くものであつて、公法人たると私人たるとによつて、その取扱いを異にする理由はなく、被告らの前記主張は独自の見解というべきであつて到底採用できない。 第七以上のとおりであつて、別紙目録記載の各文書は民事訴訟法三一二条三号前段の利益文書に該当するのでその余の根拠法条の適用を論ずるまでもなく本件申立は、別紙目録記載の文書の提出を命ずる限度においてこれを認容し、その余については、これを却下することとし、主文のとおり決定する。 目録、文書提出命令申立書(省略)文書提出命令申立意見書(一)一本件訴訟はいわゆる原告らが地方公共団体に対し、代位して為す損害賠償請求である。すなわち、原告らは、地方公共団体に対するその職員の違法な財務行政上の行為を是正し、その損害を回復しようというものであり、原告らは本件訴訟に関する限りにおいて当該地方公共団体を代表する地位と同視しうるものである。原告ら住民に原告適格が認められているのはこの趣旨であると解すべきである。 しかるときは、原告らは、本件訴訟において必要とする限りにおいて、地方公共団体に対し、その必要とする書類の引渡、又は閲覧を請求することが出来るものというべきである。 してみると、本件提出を求める文書は、いずれも、本件訴訟において必要不可欠の証明文書であるから、原告らはその引渡、又は閲覧を求めることの出来るものであるから民訴三一二条二号に該当する。 べきである。 してみると、本件提出を求める文書は、いずれも、本件訴訟において必要不可欠の証明文書であるから、原告らはその引渡、又は閲覧を求めることの出来るものであるから民訴三一二条二号に該当する。 二本件は、右のように住民訴訟であり、地方公共団体の職員の不法な財務行為を是正しようとするものであるから、その財務行為の手続は客観的に公開され、住民の前に明示されるべきものであり、行政手続としての公開の原則が要求されるものである。 そしてまた、本件提出を求めている各文書は、坂出市会計規則三三条(支出命令書)、同四九条(領収書)、坂出市契約規則二二条(契約書等)等によつて、法令上その作成が義務づけられているものである。 かくの如き文書については、挙証者たる原告ら住民の利益のため、すなわち、納税者たる住民に対し、その手続が公正かつ妥当なものであることを公開し、証明するために作成されたものであるから、原告らの利益のため作成されたものというべきであつて、民訴法三一二条三号に該当するものである。 また、右のように、公開の原則と客観的真実主義の原則がとられる行政訴訟では(行訴法二四条は職権証拠調を採用している)、本件文書は原告ら住民と地方公共団体との間の法律関係について作成されたものと拡大解釈されるべきものである。 文書提出命令申立意見書 (二)一本件事件は、被告Aは坂出市長として、同Cは同市収入役として被告各漁協らと、本件漁業補償契約を締結するにあたつて、そのよるべき補償基準によらず、同市に対する忠実義務に違背して違法に高額な補償を為したというものであるから、坂出市が右各漁協に対し、いかなる根拠と資料により、いかなる手続によつて、いくらの金額を支払つたかという事実を明らかにする必要がある。そして、これを明らかにする資料として、本件提出命令を求めている各 坂出市が右各漁協に対し、いかなる根拠と資料により、いかなる手続によつて、いくらの金額を支払つたかという事実を明らかにする必要がある。そして、これを明らかにする資料として、本件提出命令を求めている各資料はいずれも不可欠かつ有効なものである。したがつて、本件提出命令が本件訴訟の現段階において、必要なことはこれまた明白である。 二第三者たる坂出市の所持するこれらの文書は、民訴法三一二条三号の、原告らの利益のために作成され、また原告らと坂出市との間の法律関係について作成されたものに該当するものである。 坂出市会計規則および同契約規則等が坂出市に対し一定の文書の作成を義務づけているのは、その手続を明確にし、過誤のないように為し、かつ、このことを広く公証しようというものである。したがつて、納税者であり市の会計処理について一定の公開と公表を要求し、その一般的な監督を為しうる地位にある原告らにとつて、これらの文書はまさに原告らの利益に作成されたということは明らかである。これらの文書は単に坂出市の内部事情のために作成されたものではない。 三 A市長は、本件文書を提出することによつて、以後の埋立等に伴う漁業補償について各漁協の協力が得られず行政がスムーズに進行しないし、また他の公共団体に与える影響が大きいと主張する。 しかし、漁業補償についてはこれを秘密にする合理的根拠はまつたくない。不当な、あるいは常識を逸した補償ではなく、公平でかつ相当なものである限りこれを公表すべきである。現在公表されないのは、各漁協によつてアンバランスであつたり、その額が不当に高額であつたり、あるいは一つの漁協の内部でその分配について、一部の幹部が勝手放題を為すことを容易にするためでしかない。このため漁協の幹部が背任・横領を為す事例が跡を絶たない。また、いわゆる有力者あるいは自治 り、あるいは一つの漁協の内部でその分配について、一部の幹部が勝手放題を為すことを容易にするためでしかない。このため漁協の幹部が背任・横領を為す事例が跡を絶たない。また、いわゆる有力者あるいは自治体に顔のきくとか自治体の首長と特別の政治的関係のある者のいる漁協に多額の補償が為されるという結果を招来している。本件においても、被告漁協のある者は、坂出市長Aの選挙母体の後援者であり、本件補償金の一部は逆に漁協からA宛に政治献金されているとの噂が、市民の間でささやかれている。 また、公表したことで後の補償の進行が困難ということはない。漁業補償ではなく、土地・建物その他の物件の補償については、これは公表されているが、公共事業は拡大し推進されている。いうところの困難さは何らない。これを秘密にすることは、漁協や漁業補償の有する前近代的で暗黒の部分を拡大するためでしかない。 また、他の市町村等に与える影響が大きいともいうが、本来公表すべきもの(電源立地等他の事例では、その契約や協定書は広く公表されている)を秘すという悪しき慣例を坂出市においてつくつておいて、与える影響云々というのは筋ちがいというものであろう。違法に高額で、しかもきわめてバランスのとれない不公平な漁業補償を為したがために、他の市町村が苦慮しているのであつて、公表ということのために生ずる弊害ではない。 さらに、漁業補償に費消される金員は、市民の税金であり、市民全体の利害が伴うものである。関係漁民のみを対象として行政が為されるものでもない。他の市民の犠牲において関係漁民のみが利得するという結果は、行政のあるべき姿ではない。 文書提出命令申立意見書に対する反論書一原告らは、文書所持者である訴外坂出市に対して、民訴法三一二条による文書提出命令の申立をなしているが、訴外坂出市には文書提出義務はなく申 あるべき姿ではない。 文書提出命令申立意見書に対する反論書一原告らは、文書所持者である訴外坂出市に対して、民訴法三一二条による文書提出命令の申立をなしているが、訴外坂出市には文書提出義務はなく申立は失当である。 すなわち、民訴法三一二条の提出命令が発せられるためには、命令を受ける者が文書提出義務があることが当然必要である。ところで、文書の所持者が第三者で公法人である場合、提出義務があるかどうか議論の存するところであるが、民訴法が文書提出義務に従わない場合には、当事者については不利益な効果を付し(同法三一六条)、第三者に対しては過料の制裁を科するものとしているところ、すべての過料の場合を通じて国又は公共団体が私人、私法人に対して過料の制裁を科することは予定されているが、国又は官公署その他の公法人が過料の客体になることは予定されておらず、したがつて民訴法三一八条を適用することはできないから文書所持者である第三者の中には、官公署、その他の公法人は含まれておらず、第三者が公法人である場合は、民訴法三一二条の適用はないと解するのが妥当である(斉藤秀夫注解民事訴訟法(5)一九四頁)。 二仮りに、訴外坂出市に対して民訴法三一二条による提出命令が適用され得るとしても、原告が提出を申立てる文書はいずれも民訴法三一二条二号、三号に該当しないから右申立は失当である。 (一) 原告らは、本件提出を求める文書は同条二号に該当し「挙証者カ文書ノ所持者ニ対シ其ノ引渡又ハ閲覧ヲ求ムルコトヲ得ルトキ」に該当すると主張する。 しかし、同条二号の「引渡又ハ閲覧ヲ求メ得ルトキ」に該当するのは、文書の提出を申立てた当事者が文書の所持者に対して、実体法上かつ私法上その文書の引渡し又は閲覧を請求することができる場合に限られるべきである(菊井維大、村松俊夫「民事訴訟法」II三一二 当するのは、文書の提出を申立てた当事者が文書の所持者に対して、実体法上かつ私法上その文書の引渡し又は閲覧を請求することができる場合に限られるべきである(菊井維大、村松俊夫「民事訴訟法」II三一二頁、兼子「条解民事訴訟法II」一一九頁、斉藤秀夫注解民事訴訟法(5)一九九頁など)。すなわち、同号は実体法上かつ私法上法律の規定に基づくと、契約に基づくと又債権的であろうと物権的であろうとを問わず、文書を支配し利用する権利を有する者は、訴訟上においてもその文書を自己のための証拠方法として請求できる旨規定したものである。 ところで原告は、本件訴訟が原告らが地方公共団体に対して代位する訴訟であり、本件訴訟においてこれらの文書が必要であるから、原告らはその引渡又は閲覧を求めることが出来るとしているが、本件の如く地方自治法二四二条の二の訴訟を提起さえすれば直ちに私法上、実体法上閲覧又は引渡を請求する権利が発生するとする法的根拠はなく又本件訴訟の効果が地方公共団体の損害回復につながることを以つて、ただちに訴と同時に原告らが当該地方公共団体の代表者になるものでもなければ、地方公共団体と同一の人格になるものでもない。これらはいずれも訴訟の結果について法律が与えた効果であつてそれが与えられることを理由に、原告らが当該地方公共団体が所持する文書を支配し、利用する権利が当然に与えられるものではない。 このように原告らが提出を求めている文書は実体法上、訴外坂出市に対して何ら文書の引渡し又は閲覧を求める権利を有しないものであるから民訴法三一二条二号の規定に基づく文書の提出を求めることはできないものである。 (二) 原告らは、本件文書は民訴法三一二条三号前段の「挙証者ノ利益ノ為ニ作成セラレタ」文書に該当すると主張する。 しかし、原告らが提出を求める本件文書はいずれも同条三 めることはできないものである。 (二) 原告らは、本件文書は民訴法三一二条三号前段の「挙証者ノ利益ノ為ニ作成セラレタ」文書に該当すると主張する。 しかし、原告らが提出を求める本件文書はいずれも同条三号前段に該当しない。 すなわち、同三号前段にいう「挙証者ノ利益ノ為ニ作成セラレタ」文書とは、後日の利益のために又は権利義務を発生させるために作成されたものであり、挙証者の地位、権限または権利を示す文書をいう。たとえば委任状、領収書、同意書、身分証明書などがこれに該当することは明白である(兼子前掲、一一九頁、斉藤前掲二〇〇頁、菊井・村松前掲三七九頁など)。ところで、原告らが提出を求める文書は、坂出市と被告各漁協間の漁業損失補償に関する契約書及びそれの支出に伴う関係書類であるがこれらの書類は原告らの権利義務を発生させ或は原告らの権限や地位を証明するために作成されたものではない。坂出市が行う行政事務が納税者たる住民の利益のために公正かつ妥当になされていることは当然のことであるが、それ故を以つて坂出市がその行政上作成する文書が全て、民訴法三一二条三号前段の挙証者(原告ら)の利益のために作成された文書に該当するものではない。 このように原告らが提出を求めている文書は、同条三号前段に該当しないから、同条三号前段の規定に基づく原告らの文書提出命令の申立は失当である。 (三) 原告らは更に原告らが提出を求めている文書は、いずれも民訴法三一二条三号後段の「挙証者ト文書ノ所持者トノ間ノ法律関係ニ付作成セラレタル」文書に該当する旨主張する。 しかし、原告らが当事者でない訴外の坂出市に対して提出を求める本件文書は、いずれも同条三号後段の文書に該当しない。 すなわち、同条三号後段にいう「挙証者ト文書ノ所持者トノ間ノ法律関係ニ付作成セラレタル」文書とは、契約書、通帳、判取帳な 出市に対して提出を求める本件文書は、いずれも同条三号後段の文書に該当しない。 すなわち、同条三号後段にいう「挙証者ト文書ノ所持者トノ間ノ法律関係ニ付作成セラレタル」文書とは、契約書、通帳、判取帳など挙証者と文書の所持者との法律関係それ自体を記載した文書だけではなく、文書の記載の事実が文書の所持者と挙証者の法律関係に関連がある文書も含まれるが(菊井・村松前掲三七九頁、斉藤前掲二〇二頁)、法律関係に関連があるというのは、なんらかの意味で関係があると考えられる事項を記載した一切の文書というように包括的に解すべきではなく、挙証者と所持者との法的地位を基礎づけるものとして両者が直接又は間接に関与して作成されたものであつて、所持者が単独で作成したものを含まない(東京高裁昭和四七年五月二二日決定)。 ところで、原告らが提出を求めている文書は、前述のように訴外坂出市が被告各漁協との間で締結した損失補償に関する契約書などこれに付随する書類とこれが支出に伴う書類とするが、これらの文書は挙証者(原告ら)と文書の所持者(訴外坂出市)との間に成立する法律関係自体を記載したものでなく又これらの文書の作成に原告らは直接又は間接に関与しておらず、更にこれらの文書は、原告らと訴外坂出市との法的地位を基礎づけるものでもない。 強いていえば原告らが坂出市の市民であることと現在文書の所持者そのものでない被告に対し損害賠償請求の本件訴訟を提起していることであるが、これらの事実ではいまだ原告と坂出市との間の法的地位を基礎づけるものとはいえない。若しこの程度の事実によつて第三者たる地方公共団体に文書提出の義務があるとすれば地方公共団体が行政上作成する文書について地方自治法二四二条ノ二の訴訟を提起さえすれば全て裁判所へ提出する義務が生ずることとなり行政行為の麻痺を招来することとなる 団体に文書提出の義務があるとすれば地方公共団体が行政上作成する文書について地方自治法二四二条ノ二の訴訟を提起さえすれば全て裁判所へ提出する義務が生ずることとなり行政行為の麻痺を招来することとなるべく、一方原告側は、具体的な事実関係がわからないまま徒らに訴訟を「見切り発車」させ、訴訟進行のなかで官公署に文書を提出させ、その文書のなかから具体的な事実を探り出そうとすることになり、濫訴を助長することになつて妥当ではない。本来民訴法三一二条は弁論主義の例外である以上文書提出の解釈の範囲は自ずから限界があると解すべきである。 本件についてこれをみるも原告らは、当初明確な論拠もなく、補償金中高く見積つても金二〇億円が正当な補損であつて、これを超える二八億五、三〇〇万円が不当な支払であるから、その支払を求めるといい、次で正当な補償は二、六二〇万円であり残余の四八億二、七八〇万円がすべて不当であるから、その支払を求めると変更したもので、そのへだたりの余りにも大であり過ぎるのであつて、この一事をもつてしても原告らが誠実に事実を調査し論拠を構えて提訴しているとは到底考えられず、行政を混乱せしむる意図のもとに本件訴訟を提起したものではないかとの邪推さえ生まれるものである。 ひとたび文書提出命令が発せられると一般私人と異なり行政庁は、行政に大きな影響を与えることが予想され、公益ないし第三者との秘密の保持が損われる恐れがある等も考慮せられるべきである。 以上により原告らが提出を求める本件文書は、いずれも民訴法三一二条三号後段に規定する挙証者と文書の所持者との法律関係につき作成された文書には該当せず、原告らの文書提出命令の申立は失当である。 き作成された文書には該当せず、原告らの文書提出命令の申立は失当である。

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