【DRY-RUN】主 文 一 本件控訴を棄却する。 二 被控訴人(附帯控訴人)の附帯控訴(拡張請求)に基づき原判決を次のとおり 変更する。 控訴人(附帯被控訴人)は被控訴人(附帯控訴人)に対し、一三三万六五〇〇円
主文 一本件控訴を棄却する。 二被控訴人(附帯控訴人)の附帯控訴(拡張請求)に基づき原判決を次のとおり変更する。控訴人(附帯被控訴人)は被控訴人(附帯控訴人)に対し、一三三万六五〇〇円及びうち三七万九八〇〇円に対する昭和五七年三月一日以降、うち六四万四七〇0円に対する昭和五九年四月一日以降、うち三一万二〇〇〇円に対する昭和六〇年一一月一日以降各完済まで年六分の割合による金員を支払え。三訴訟費用は第一、二審を通じて控訴人(附帯被控訴人)の負担とする。四この判決は第二項につき仮に執行することができる。 事実 第一当事者の求めた裁判一控訴人(附帯被控訴人)(以下「控訴人」と略称する。) 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人(附帯控訴人)(以下「被控訴人」と略称する。)の請求を棄却する。 3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。 附帯控訴について 1 本件附帯控訴にかかる請求を棄却する。 2 附帯控訴費用は附帯控訴人の負担とする。 二被控訴人 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 附帯控訴として(請求の拡張等) 1 控訴人は被控訴人に対し、三一万二〇〇〇円及びこれに対する昭和六〇年一一月一日以降完済まで年六分の割合による金員を支払え。 2 附帯控訴費用は控訴人の負担とする。 3 第1項につき仮執行宣言 4 原判決主文第1項につき仮執行宣言 第二当事者の主張一請求の原因 1 控訴人は普通銀行業務を目的とする会社であり、被控訴人は昭和二三年四月一日控訴人銀行に入社し、以来昭和六〇年九月三〇日付をもって退職するまで、同銀行に継続して勤務し、本件当時職能資格規程による副主事の職能資格を有する役付(主任)の女子行員であった。 2 控訴人銀行は、その給与規程三六条一項において「扶養親族を 〇日付をもって退職するまで、同銀行に継続して勤務し、本件当時職能資格規程による副主事の職能資格を有する役付(主任)の女子行員であった。 2 控訴人銀行は、その給与規程三六条一項において「扶養親族を有する世帯主たる行員に対しては、別表基準により家族手当を支給する。」と定め、同条二項本文前段では「前項の世帯主たる行員とは、自己の収入をもって、一家の生計を維持する者」をいうと定めている。また、同規程三九条の二において「配偶者もしくは子を扶養して世帯を構成している行員に対し、別表基準により世帯手当を支給する。 前項の配偶者および子の範囲は第三七条に準ずる。」旨定めている(世帯手当は昭和五九年三月末日をもって廃止された)。 3 被控訴人の所属する岩手銀行従業員組合(以下「従組」という。)と控訴人銀行との間の労働協約によると、控訴人銀行は副主事の職能資格を有する役付の行員に対し、別紙添付の別表三の各「賞与支給日」欄記載の日に各「算式」欄記載の算式による賞与を支給することになっていた。そして、現に右該当者には協約に従った賞与の支給がなされている。 4 (一)被控訴人は、本件当時(昭和五五年一月一日ないし昭和六〇年九月三〇日の間)、肩書住所地において、住居を構えて、夫a(昭和四年一二月二〇日生)、同人との間の長女b(昭和四三年一〇月五日生)、実母c(明治四〇年六月一八日生)その他実母cの夫であるd(明治三七年三月八日生、昭和六〇年二月死亡)以上四名の家族と同居し、生計を同じくしていた。(二)被控訴人はその収入でやりくり算段して家族の生活費を賄い、一家の生計を維持していた。bは主として控訴人銀行からの給与収入によって扶養されていた。(三)したがって、被控訴人は扶養親族を有する世帯主たる行員であり、子を扶養して世帯を構成している行員である。 5 (一)控訴 していた。bは主として控訴人銀行からの給与収入によって扶養されていた。(三)したがって、被控訴人は扶養親族を有する世帯主たる行員であり、子を扶養して世帯を構成している行員である。 5 (一)控訴人銀行は被控訴人に対し、昭和五六年一月以降それまで支給していた家族手当及び世帯手当の支給(支給日は毎月二三日)を中止し、協約に基づく賞与算定基礎として右両手当を加えることをせず、その結果生じた差額分の賞与の支給(支給日は別紙添付別表三の賞与支給日欄のとおり)をしなかった。(二)すなわち、控訴人銀行は被控訴人に対し、期日を過ぎても、別紙添付の別表一、同二各記載のとおり、昭和五六年一月から昭和六〇年九月までの家族手当(合計五四万六〇〇〇円)及び世帯手当(合計二八万二三〇〇円)を支給せず、また同別表三の未支給金額欄記載の賞与(合計五〇万八二〇〇円)以上合計一三三万六五〇〇円を支給しない。(三)これは控訴人銀行において法律上の原因なく、右支払を免れて利得し、被控訴人に損害を及ぼしているものである。そうでないとしても、控訴人銀行は、被控訴人を女性行員なるが故に右手当等の支給をしないという差別扱いにより、被控訴人の人格権を侵害し、右不払額相当の精神的損害を被らせている。 6 よって、被控訴人は控訴人銀行に対し、(一)給与規程に基づく請求として、又はこれと選択的に不当利得返還請求として、(二)予備的に不法行為に基づく損害賠償(慰謝料)請求として、別紙添付別表一ないし三の合計一三三万六五〇〇円及び内金三七万九八〇〇円(昭和五六年一月から昭和五七年二月までの家族手当、世帯手当、昭和五六年上期及び下期の賞与の未支給分の合計額相当)に対する昭和五七年三月一日以降、内金六四万四七〇〇円(昭和五七年三月から昭和五九年三月までの家族手当、世帯手当、昭和五七年、昭和五八年の 帯手当、昭和五六年上期及び下期の賞与の未支給分の合計額相当)に対する昭和五七年三月一日以降、内金六四万四七〇〇円(昭和五七年三月から昭和五九年三月までの家族手当、世帯手当、昭和五七年、昭和五八年の各上期及び下期の賞与の未支給分の合計額相当)に対する昭和五九年四月一日以降、内金三一万二〇〇〇円(昭和五九年四月から昭和六〇年九月までの家族手当、昭和五九年、昭和六〇年の各上期及び下期の賞与の未支給分の合計額相当)に対する昭和六〇年一一月一日以降各支払済みまで年六分の割合による遅延損害金又は法定利息の支払を求める。 二請求の原因に対する認否 1 請求の原因1は認める。 2 同2は認める。但し、本件給与規程三六条一項の「世帯主」とは世帯を主宰する者をいい、世帯を主宰する者とは「主として世帯の生計を維持する者であって、その世帯を代表する者として社会通念上妥当と認められるもの」であり、これは同条がもともと住民基本台帳法上の世帯主の概念(自治省の通達「住民基本台帳事務処理要領」及び「世帯主の認定基準」)に依拠して作られたものであるところから、同三六条も同様の解釈によったものである。そして、これによると、同条二項はその具体的認定基準を示したものであり、同項本文前段は、夫婦と子の世帯で夫婦の一方が稼働している場合の認定基準であって、夫婦共働きの世帯の場合は含まない。共働きの世帯では夫を世帯主と認めるのが社会通念に合する。同規程三九条の二の「世帯を構成している行員」と右世帯主の解釈と同じである。 3 同3は認める。 4 同4のうち、(一)は認めるが、(二)、(三)は否認する。世帯主の認定に当たっては、その者が主としてその世帯の生計を維持しているかどうか、およびその世帯を代表する者として社会通念上認められるものかどうかの二点について審査し、この二点を充足するも 認する。世帯主の認定に当たっては、その者が主としてその世帯の生計を維持しているかどうか、およびその世帯を代表する者として社会通念上認められるものかどうかの二点について審査し、この二点を充足するものを世帯主として認定すべきである。そうすると、被控訴人方の世帯主は、市議会議員である被控訴人の夫aと認定すべきであって、被控訴人であるなどと認定すべきものではない。長女bを主として扶養しているのも被控訴人ではない。本件規程三六条は昭和四八年四月一日実施の旧給与規程のもとにおいて控訴人銀行の内部で取りきめていた(内規)「家族手当支給に関する取扱基準」(自治省の「住民基本台帳事務処理要領」及び「世帯主の認定基準」に依拠したもの)による運用の実際を従業員に周知させるべく労働基準監督署の行政指導によって明文化したものであり、これについては控訴人銀行の従業員の大多数で組織する岩手銀行労働組合(以下「労組」という。)及び被控訴人の所属する従組とも協議の上、各同意を得て盛岡労働基準監督署長に届け出て、昭和五一年八月一〇日異議なく受理されている。本件規程三六条一項は、家族手当の一般的支給要件を扶養親族のある「世帯主」たる行員と定め、同条二項は、その「世帯主」の具体的認定基準例を示しているものである。同二項本文前段は、夫婦及び子をもって構成され、夫婦の一方のみが稼働している標準的世帯の場合について適用され、被控訴人のような共働き(生計維持者が二名)の場合には適用されず、したがって、共働きの場合には、夫婦のいずれが「世帯主」かは同前段によるその収入の多寡のみによって決められるものではない(共働きの場合の具体的基準例は同条二項本文後段で示されている)。被控訴人のような共働き世帯では同条一項が直接適用され、被控訴人が同項の「世帯主」に当たるかどうかによって決められる られるものではない(共働きの場合の具体的基準例は同条二項本文後段で示されている)。被控訴人のような共働き世帯では同条一項が直接適用され、被控訴人が同項の「世帯主」に当たるかどうかによって決められる。同条二項本文前段とは全く関係なく、社会通念に従い判定されなければならない。自治省が右「住民基本台帳事務処理要領」及び「世帯主の認定基準」に示す「社会通念」による例示に照らすと、被控訴人は「世帯主」ではなく、それは明らかに市議会議員であるaであるといわなければならない。現にこのことは、被控訴人方の住民票上の従前の世帯主dの死亡後は世帯主をaに変更する届出をしていることからも裏付けられる。また、被控訴人が世帯手当の支給対象者たる「世帯を構成している」行員でないことも右と全く同様である。 5 同5のうち(一)、(二)は認めるが、(三)は否認する。労働基準監督署が労基法四条に違反しないとして行った行政指導により、労使双方が異議なく同意して実施してきた本件規程による扱いであるから、控訴人銀行には不当差別の意思は全くなく、不法行為の成立する余地はない。 三仮定抗弁仮に本件規程三六条一項の「世帯主」が同条二項本文前段の「生計維持者」を指称するもの、すなわち同前段の定めが夫婦共働きの世帯にも適用があり、被控訴人が「生計維持者」であるとしても、 1 同条項本文後段で「その配偶者が所得税法に規定されている扶養控除対象限度額を超える所得を有する場合は、夫たる行員とする。」と規定している。 2 被控訴人の夫aは、昭和五四年一二月の選挙により一関市議会議員に当選し、昭和五五年一月以降同市議会議員として多額の議員報酬を受け、所得税法上の扶養控除対象限度額を超える所得があることになった。 3 したがって、被控訴人方の生計維持者たる世帯主は本件規程三六条二項本文後段の適 五年一月以降同市議会議員として多額の議員報酬を受け、所得税法上の扶養控除対象限度額を超える所得があることになった。 3 したがって、被控訴人方の生計維持者たる世帯主は本件規程三六条二項本文後段の適用(世帯手当にも類推適用)により昭和五五年一月以降家族手当及び世帯手当の支給対象者ではなくなった。また、控訴人銀行の被控訴人に対する本件手当等の不支給は右法律上の原因がある。 四仮定抗弁に対する認否 1 仮定抗弁1は認める。 2 同2は認める。 3 同3は否認する。 五再抗弁 1 控訴人銀行は、本件規程三六条二項本文後段により、男子行員に対しては、妻に収入(所得税法上の扶養控除対象限度額を超える所得)があっても、家族手当、世帯手当等を支給してきた。しかし、被控訴人のような共働きの女子行員に対しては、実際に子を扶養するなどしていても、同規程条項により、夫に収入(右限度額を超える所得)があると右手当等の支給をしていない。 2 右手当等は労基法一一条の労働の対償としての賃金であるところ、控訴人銀行の支給におけるこの差別扱いは、夫婦共働きの世帯の生計維持者は常に夫であり、妻とはいえないし、子を扶養して世帯を構成しているとも認めないとするものであり、明らかに男女の性のみによる賃金の差別扱いである。したがって、その根拠である本件規程の右条項は、憲法一四条、労基法四条、民法九〇条により無効である。 六再抗弁に対する認否 1 再抗弁1は認める。 2 同2は否認する。本件手当等は労基法一一条の賃金ではない。憲法一四条は控訴人銀行のような私企業を直接規律するものではない。私企業における雇傭労働関係、労働条件はもともと労使の私的自治によって律せられるところ、従前から控訴人銀行では労使ともに家族手当等の支給対象について、控訴人銀行主張のような扱いに異議を挟むことなく 私企業における雇傭労働関係、労働条件はもともと労使の私的自治によって律せられるところ、従前から控訴人銀行では労使ともに家族手当等の支給対象について、控訴人銀行主張のような扱いに異議を挟むことなくなされてきたものである。本件給与規程は労働基準監督署をはじめ行政庁から容認されている。また、夫婦共働きで共に収入があるときでも、一般に世帯主はその収入の多寡にかかわらず夫とされるのが社会通念に則し、社会的慣行である。本件手当等に関する本件規程条項及びこれに基づく取扱いは社会的許容性の範囲内のことである。自治省の世帯及び世帯主に関する通達である「住民基本台帳事務処理要領」及び「世帯主の認定基準」によれば、「世帯主」とは「世帯を主宰する者」で、それは「主として世帯の生計を維持する者であって、その世帯を代表する者として社会通念上妥当とみとめられる者」と解するとされ、その参照具体例(昭和四三年三月二六日自治省振第四一号通達)の一つとして「夫が不具廃疾等のため無収入で、妻が主として世帯の生計を維持している場合は、妻が世帯主」である旨示しているが、本件規程三六条二項本文後段は右より広く、妻が世帯主たる認定を緩やかにしているので自治省のいう「社会通念」に沿い、全く問題はない。すなわち、本件規程の方は、自治省の示す事例の、夫が不具廃疾等のため無収入である場合に限定せず、収入があっても所得税法上の扶養控除対象限度額以下の所得である場合は妻が一家の生計維持者であるが、それを超える所得がある場合になって初めて夫が生計維持者で世帯主であると認められるのである。本件手当等は労働に対する報酬性をもつものではなく、もっぱら、行員に対する生計費補助の目的で支給するものでその性格は生活補(扶)助費であって、労基法一一条の賃金に当たらないから同法四条の禁止する女子の差別扱いに当 働に対する報酬性をもつものではなく、もっぱら、行員に対する生計費補助の目的で支給するものでその性格は生活補(扶)助費であって、労基法一一条の賃金に当たらないから同法四条の禁止する女子の差別扱いに当たらない。また、夫婦共働きによる世帯の場合は主として生計を維持しているのは夫婦のどちらであるかを判定するため、各々の収入の割合、消費内容や配分割合等プライバシーにまで立ち入っていちいち調査を実施しなければならなくなるため、予め社会通念に従って画一的に定めておく必要がある。本件規程三六条二項本文後段はこのような必要から定められているものである。いずれにしても、同後段の定め及びこれに基づく扱いは社会的許容性の範囲内のことであって、合理性があり、公序良俗に違反するものではない。 第三証拠(省略) 理由 (争いのないこと)一控訴人銀行の本件当時における給与規程三六条、三七条、三九条の二として別紙添付(別表四)のような規程条項があること、請求の原因1、3、4の(一)、5の(一)(二)、被控訴人の夫aが昭和五四年一二月の市議会議員選挙により当選し、昭和五五年一月以降一関市議会議員として議員報酬を受け、所得税法上の扶養控除対象限度額を超える所得があるようになったこと、控訴人銀行が本件規程三六条二項本文後段により、男子行員に対しては、妻に所得税法上の扶養控除対象限度額を超える所得があるかどうかにかかわらず、家族手当、世帯手当等を支給してきたが、被控訴人のような共働きの女子行員に対しては実際に子を扶養するなどしていても夫に右限度額を超える所得があると右手当等の支給をしていないこと、以上は当事者間に争いがない。 (規程三六条一項の世帯主とは生計維持者であること)二いずれも成立に争いのない乙第一一号証、同第三七、同第三八号証によれば、住 あると右手当等の支給をしていないこと、以上は当事者間に争いがない。 (規程三六条一項の世帯主とは生計維持者であること)二いずれも成立に争いのない乙第一一号証、同第三七、同第三八号証によれば、住民登録法、住民基本台帳法等には、世帯及び世帯主について格別の概念規定は見当たらず、社会通念による事実認定にまかされ、住民登録法下では「世帯主とは世帯の主宰者であり、当該世帯の生計を維持する責任者である。戸主とか戸籍の筆頭者が当然に世帯主となるのではない。父や夫が当然に世帯主となるのでもない。妻や子が世帯の生計の維持について責任を負うものであるときは、夫や父ではなく、妻または子がそれぞれ当該世帯の世帯主である。」などとされ、生計維持者が世帯主として扱われていた(「生計維持者説」と仮称する)が、住民基本台帳法下になってからは、例えば自治省行政局長等から各都道府県知事あて昭和四二年一〇月四日付通知のうちの住民基本台帳事務処理要領では、住民票上の世帯主を決めるにつき「世帯とは、居住と生計をともにする社会生活上の単位である。世帯を構成する者のうちで、その世帯を主宰する者が世帯主である。」「その世帯を主宰する者とは、主として世帯の生計を維持する者であって、その世帯を代表する者として社会通念上妥当とみとめられる者と解する。」旨解説されていて、この解説の限りでは、住民基本台帳下の本件当時における住民票上の世帯主の認定については、「主として世帯の生計を維持する者」であることと同時に、「世帯を代表する者」であることが社会通念上認められなければならない(「併存説」と仮称する)ということが一般的行政解釈のようである。しかし同時に戸籍の筆頭者または祭具等の承継者であるからといって必ず世帯主となるものではないとされていること、また昭和四三年三月二六日付自治振興課長から各 )ということが一般的行政解釈のようである。しかし同時に戸籍の筆頭者または祭具等の承継者であるからといって必ず世帯主となるものではないとされていること、また昭和四三年三月二六日付自治振興課長から各都道府県総務部長宛通知などは、世帯主の認定の基準について「世帯主の認定に当たっては、当該世帯の実態に即し、次の具体例を参照のうえ認定されたい」として、いくつかの具体例を挙示しているが、それらの例の中には併存説というよりも「主として生計の維持をしている」ことに重点を置いていると解されるもの、特に「夫が不具廃疾等のため無収入で、妻が主として世帯の生計を維持している場合は、妻が世帯主」であるとされている事例などがあり、これらは生計維持者という経済的側面に重点を置く立場(生計維持者説)によっていると解されること、そうかと思うと、外国人と日本人との混合世帯においては、事実上外国人が世帯主であるときでも、住民票上、外国人を世帯主とせず、日本人の世帯員のうちで世帯主にもっとも近い地位にある者を世帯主としてまず表示する扱いになっていて、この場合は対外的形式的な面をより重視する正に「代表者説」によっているといえること、以上のようなことが認定される。巷間「世帯持だから大変だ。」、「所帯を持つことになれば苦労が多い。」「大所帯を抱えているから大変だ。」とか「一家を構えている身だから大変だ。」などという場合は「主たる生計維持者」である世帯主なるが故に経済的負担が重く、大変であるというような意味合いであって、「世帯を代表する者」であるということとはほとんど関係がない。このように「世帯主」概念は一義的に明確なものであるという訳ではない。世帯主であるかどうかということを社会通念に従って認定するといっても、その概念は生計維持者としての立場を重視する場合と世帯の代表者としての に「世帯主」概念は一義的に明確なものであるという訳ではない。世帯主であるかどうかということを社会通念に従って認定するといっても、その概念は生計維持者としての立場を重視する場合と世帯の代表者としての立場を重視する場合とで相違し、その用いられる場面によって異なるものであると解される。そして、本件手当等が法的に賃金性をもつものであると共に経済的には生活扶助給付の性質をもつものであること後記のとおりである。だがしかし、生活扶助給付といっても、生活保護法による生活扶助給付については、同法三一条三項が原則として「世帯単位に計算し、世帯主又はこれに準ずる者に対して交付する。」旨規定しているところ、ここにいう交付の相手(給付の対象は世帯)なる世帯主とは世帯の代表者(又は準代表者)であることに重点を置いていることは明らかである。これは緊急でかつ国民多数の要保護世帯に対する扶助事務を画一迅速に処理する必要からくる当然の帰結である。しかしながら、本件のような私企業の雇傭契約ないし労務契約における家族手当等については、事務処理の規模も遥かに小型で受給者の緊急性(困窮の程度)も格段に低いといわなければならないので、右の場合とは大いに相違する。したがって、本件規程三六条一項にいう「世帯主」は、事務処理の画一、迅速性という便宜によらずに、世帯の生計という経済面にもっぱら関係する家族手当及び世帯手当等の支給対象者の認定という場面において捉えなければならず、当然に世帯の代表者というよりも生計の維持者であるかどうかという点に重点が置かれるべきである。 以上、本件規程三六条一項の「世帯主たる行員」とは「主として生計を維持する者である行員」を指称するものであると認めることが社会通念に最もよく適する。 それ故に同条二項本文前段の「世帯主たる行員とは、自己の収入をもって、一家の の「世帯主たる行員」とは「主として生計を維持する者である行員」を指称するものであると認めることが社会通念に最もよく適する。 それ故に同条二項本文前段の「世帯主たる行員とは、自己の収入をもって、一家の生計を維持する者をいい」とあるのは、一項の「世帯主たる行員」の概念を生計維持者説により把握すべきことの説明としての条項であり、代表者説または併存説によらないものであると認めるを相当とする。したがって、同条項をして、夫婦と子で構成され、夫婦の一方のみに収入がある世帯の具体例であるとするものではない。もっとも、控訴人銀行は「本件規程三六条一項の家族手当支給対象者の「世帯主」の範囲は、自治省等の前記住民基本台帳事務処理要領(併存説)に依拠して規定され、同条二項本文前段は夫婦と子で構成され、夫婦の一方だけが稼働しているという一般的世帯の場合の例示であり、夫婦共働きの世帯には適用されない。このことは労組も従組も共に同意し、従業員もその旨承知している」旨主張し、証人eの証言は右主張に添うものであるけれども、前示乙第一一号証、証人f、同gの各証言及び弁論の全趣旨に照らし措信できない。他に右認定を覆して控訴人銀行の右主張を認めるに足りる証拠はない。 (被控訴人は「生計維持者」で子の扶養者であること)三そこで、被控訴人世帯の場合をみてみるに、いずれも成立に争いのない甲第四五号証、同第五三ないし第五九号証、同第六二号証、乙第一三号証、同第一六号証の一ないし一〇、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる甲第六〇、第六一号証、被控訴人本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によると、本件当時、dは住民票上世帯主(死亡するまで)とされていたが、一関東映に勤め、その収入は月額約五万円、aは昭和五六年一月以降は市議会議員の報酬として昭和五五年度は二七九万一五〇〇円(控除対象 ると、本件当時、dは住民票上世帯主(死亡するまで)とされていたが、一関東映に勤め、その収入は月額約五万円、aは昭和五六年一月以降は市議会議員の報酬として昭和五五年度は二七九万一五〇〇円(控除対象配偶者無し、扶養親族なし、社会保険料等の金額二一万三〇〇〇円、源泉徴収税額三五万九一六〇円)、昭和五七年度は三一七万六五〇〇円(控除対象配偶者無し、扶養親族なし、社会保険料等の金額二四万六〇〇〇円、源泉徴収税額五二万八四〇〇円)の各支払を受けており、昭和五八年九月二一日支給の報酬(給料)は二〇万五〇〇〇円で、所得税三万四一〇〇円、社会保険料二万一〇〇〇円、預金二万円、慶弔会費等三〇〇〇円の控除があり、差引支給額は一二万六九〇〇円であること、被控訴人の昭和五五年一二月の給与の支給額は合計三〇万八一一九円(税込み、家族手当八〇〇〇円、世帯手当一万〇一〇〇円を含む。)で、年間支払を受けた給与額は昭和五五年度は五七七万二四〇三円(源泉徴収税額三九万六二〇〇円、控除対象配偶者無し、老人扶養親族一(母c)、その他の扶養親族一(b)、社会保険料等控除分の金額二六万九八一九円、生命保険料控除額五万円)、昭和五六年度は五七三万六三八三円(源泉徴収税額三八万〇八〇〇円、社会保険料等控除分三一万七九九八円、生命保険料控除額五万円、本件手当等を含まない。その他は前年度と同様)、昭和五七年度は六二三万一二五二円(源泉徴収税額四六万四七〇〇円、社会保険料等控除分三一万四七七四円、生命保険料控除額五万円、その他は前年度と同様)であること、その後の年度においてもa及び被控訴人の各収入は昭和五七年度におけるような比較差において推移しているであろうこと、他に被控訴人世帯においては収入のある者はいないこと、消費による支出については、通常の世帯に比べてaの政治活動に関連するものが特 入は昭和五七年度におけるような比較差において推移しているであろうこと、他に被控訴人世帯においては収入のある者はいないこと、消費による支出については、通常の世帯に比べてaの政治活動に関連するものが特別必要であるという以外は格別問題視すべきことは見当たらない(bは生育盛りの女子で教育費、食費等がかかることも通常家庭と別段変りはないであろう)こと、d死亡後は住民票の世帯主は変更の届出によりaがなっていること、以上のことが認められ、これによると、本件当時、被控訴人方世帯の代表者としての世帯主は、d生存中は同人であり、同人死亡後はaであるが、主たる生計維持者は被控訴人であり、bは主として被控訴人によって扶養されていると認めるのが相当である。したがって、被控訴人は本件規程三六条二項本文前段の「自己の収入をもって、一家の生計を維持する者」に該当し、同規程三九条の二(廃止前)による子を扶養して世帯を構成している行員に当たると認めることができる。 (妻たる行員に支給制限があること)四控訴人銀行は仮定的に「被控訴人が自己の収入をもって、一家の生計を維持する者」であるとしても、本件規程三六条二項本文後段の規定により(世帯手当にも類推適用)妻たる行員である被控訴人に対しては世帯手当等の支給はできない」旨抗争し、被控訴人方世帯が共働きで夫aは市議会議員としての報酬を受け、昭和五五年一月一日以降所得税法に規定される扶養控除対象限度額を超える所得があることになったことは争いのないこと前示のとおりであるから、被控訴人は右規定により、同日以降は前叙認定のところにもかかわらず、本件家族手当等の支給を受けられないことになる。 (労基法上の賃金であること)五本件手当等が配偶者や子など扶養親族を有する世帯主たる行員に限られ支給されるものであること及び成立に争いのない乙第 、本件家族手当等の支給を受けられないことになる。 (労基法上の賃金であること)五本件手当等が配偶者や子など扶養親族を有する世帯主たる行員に限られ支給されるものであること及び成立に争いのない乙第三九号証から窺知される家族手当等の果している社会経済における一般的役割に徴すると、本件手当等が行員の具体的労働に対する対価(報酬)という性格を離れ、控訴人銀行の行員に対する生活扶助給付、生計補助給付であるという経済的性格をもつものであることは明らかである。しかしながら、これら手当等は、支給条件、基準等について控訴人銀行の裁量に任せられているものではなく、就業規則(給与規程)により規定され、労働協約によって決められていて、控訴人銀行は、これら規定により所定の要件を具備する者に対しては法的に一律の支払義務を負担し、一方該当行員はこれら手当等の受給権(支払請求権)を取得すると解することができる。このことからすると、本件手当等は労基法一一条にいう「労働の対償」に当たる賃金であると認めるを相当とする。 (労基法四条違反であること)六本件手当等が労基法一一条の賃金であることは右のとおりであるから、これらは同法四条による直接規制を受けるものといわなければならない。 労基法四条は、憲法一四条一項の理念に基づきこれを私企業等の労使関係における賃金について具体的に規律具現した条文であり、かつまたこれに違反したときは労基法一一九条一号による刑事罰の対象となるなど、いずれにしても、明らかに強行規定であり、公序に関する規定であると解される。したがって、一般的に、労基法四条に違反する就業規則及びこれによる労働契約の賃金条項は民法九〇条(一条ノ二)により無効であるといわなければならない。 控訴人銀行は本件規程三六条二項本文後段を根拠にして、男子行員に対しては、妻に収 に違反する就業規則及びこれによる労働契約の賃金条項は民法九〇条(一条ノ二)により無効であるといわなければならない。 控訴人銀行は本件規程三六条二項本文後段を根拠にして、男子行員に対しては、妻に収入(所得税法上の扶養控除対象限度額を超える所得)があっても、本件手当等を支給してきたが、被控訴人のような共働きの女子行員に対しては、生計維持者であるかどうかにかかわらず、実際に子を扶養するなどしていても夫に収入(右限度額を超える所得)があると本件手当等の支給をしていないというのだから、このような取扱いは男女の性別のみによる賃金の差別扱いであると認めざるを得ない。 控訴人銀行は本件規程三六条二項本文後段及びこれによる本件手当等対象者認定上の取扱いは社会通念に則った規定であり、社会的許容性の範囲内にあるから、民法九〇条の公序良俗に反するものではない旨その合理性を主張する。 社会通念、社会的許容性とか公序良俗という概念は、もともと不確定概念で、宗教、民族の違いなどのほか、国内でも時(代)と地域(都市、地方など)により認識や理解に相違のあることは否定できない。しかしながら、これら概念は不確定なるが故に発展的動態において捉えねばならない。そうでないと、旧態は旧態のままで社会の進歩発展は望み得ないことになるからである。それは私的自治の支配する私企業の労使関係における賃金等労働条件を規律する法的基準としても同様である。そして、たとえ控訴人銀行の本店のある岩手県盛岡市をはじめ東北地方の平均的住民の観念が、本件規程三六条二項本文後段の定めまたはその趣旨を、その制定当時、さらにはその以前から現在に至るも当り前のこととして容認し、これに依拠した取扱いを許容しているとしても、日本国憲法一四条一項(法の下の平等)は、性別により政治的、経済的または社会的関係において差別 、さらにはその以前から現在に至るも当り前のこととして容認し、これに依拠した取扱いを許容しているとしても、日本国憲法一四条一項(法の下の平等)は、性別により政治的、経済的または社会的関係において差別されない旨定め、男女不二たるべく、男女平等の理念を示している。労基法四条男女同一賃金の原則は右憲法の理念に基づく具体的規律規定である。そして、それは理念ではあっても達成可能な理念であるから、この理念達成という趣旨に悖るような観念は、「社会通念」「社会的許容性」「公の秩序善良の風俗」として、前記規程条項及びこれによる取扱いの法的評価の基準とすることはできないものといわなければならない。 したがって、本件規程三六条二項本文後段の取扱いをめぐり、これまで労使間で異議が挟まれることもなく過ごされて来たし、労働基準監督署などからも違法の指摘を受けることなく過ぎてきたとしても、同条項本文後段による右のような取扱いを、社会通念に則り、社会的許容性の範囲内であり、公序良俗に反しないなどという訳にはいかない。また、同条項本文後段の規定が自治省の「住民基本台帳事務処理要領」及び「世帯主の認定の基準」で示された「夫が不具廃疾等のため無収入で妻が主として世帯の生計を維持している場合は、妻が世帯主」であるという事例に比較して妻が世帯主である場合を「夫に収入があっても所得税法上の扶養控除対象限度額以下であれば妻が世帯主である」というまでに緩和しているから、社会通念に合致し、社会的許容限度内であるなどとも結論づけられない。夫婦のどちらが生計維持者であるかを具体的に認定するとなると、家庭のプライバシーにわたることに立ち入って調査しなければならなくなるため、予め画一的に規定しておく必要があるといっても、これまた、調査対象行員において、右認定に必要な程度の家庭内情況の開示を拒 、家庭のプライバシーにわたることに立ち入って調査しなければならなくなるため、予め画一的に規定しておく必要があるといっても、これまた、調査対象行員において、右認定に必要な程度の家庭内情況の開示を拒絶するものとはとうてい思案できないし、また必要な限度ならばやむを得ないことでもある。 その他本件規程三六条二項本文後段の規定及びこれによる本件手当等の男女差別扱いをして、合理性があるとするような特別な事情も見当たらないので、結局右条項及びこれによる控訴人銀行と被控訴人間の労働契約の本件手当等の給付関係条項は強行規定である労基法四条に違反し、民法九〇条(一条ノ二)により無効であるといわなければならない。 (結論)七よって、控訴人銀行は被控訴人に対し、給与規程及び労働協約に基づき別紙添付の別表一ないし三記載の家族手当、世帯手当、賞与及びこれらに対する年六分の割合による各遅延損害金の支払義務があるところ、被控訴人の当審における附帯控訴により請求拡張した部分を除く請求を認容した原判決は正当であり、本件控訴は理由がないので棄却し、右拡張部分の請求は理由があるので、さらにこれを認容することとし、同附帯控訴に基づき原判決をその限度で変更し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九六条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官三井喜彦武藤冬士己小野貞夫)別表一家族手当<02834-001>合計五四万六〇〇〇円別表二世帯手当<02834-002>合計二八万二三〇〇円注昭和五九年四月から世帯手当は廃止された。 別表三賞与<02834-003>注1 P1=本人給+役付手当+家族手当+世帯手当P2=本人給+役付手当 合計二八万二三〇〇円注昭和五九年四月から世帯手当は廃止された。 別表三賞与<02834-003>注1 P1=本人給+役付手当+家族手当+世帯手当P2=本人給+役付手当+家族手当注2 被控訴人は、昭和六〇年九月三〇日付で退職。したがって、番号10の昭和六〇年下期の賞与については算式の六分の三が支給額となる。 別表四規程条項給与規程<02834-004>別表<02834-005>
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