主文 1 別紙2認容額等一覧表の一審原告A及びB欄記載の一審原告ら(訴訟承継人を含む、以下同じ)の各控訴に基づき、原判決中上記一審原告らに関する部分を次のとおり変更する。 ⑴ 一審被告は、上記一審原告らそれぞれに対し、認容元金欄記載の金 員及びこれに対する認容起算日欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑵ 上記一審原告らのそのほかの請求をいずれも棄却する。 2 一審被告の別紙2認容額等一覧表の一審原告C欄記載の一審原告に対する控訴に基づき、原判決中上記一審原告に関する部分を次のとおり変 更する。 ⑴ 一審被告は、上記一審原告に対し、認容元金欄記載の金員及びこれに対する認容起算日欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑵ 上記一審原告のそのほかの請求を棄却する。 3 別紙2認容額等一覧表の一審原告C及びD欄記載の一審原告らの各控訴及び一審被告の同一覧表の一審原告A及びD欄記載の一審原告らに対する控訴をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は、第一、二審を通じて、別紙3訴訟費用目録のとおりとする。 5 この判決は、第1項⑴及び第2項⑴に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 一審原告ら ⑴ 原判決を次のとおり変更する。 ⑵ 一審被告は、別紙2認容額等一覧表の一審原告欄記載の一審原告らそれぞれに対し、請求元金欄記載の金員及びこれに対する請求起算日欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 一審被告⑴ 原判決中一審被告敗訴部分を取り消す。 ⑵ 前記取消しに係る一審 記載の金員及びこれに対する請求起算日欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 一審被告⑴ 原判決中一審被告敗訴部分を取り消す。 ⑵ 前記取消しに係る一審原告らの請求をいずれも棄却する。 第2 事案の概要(略称は断らない限り原判決のとおり) 1 事案の要旨一審被告は、船舶の建造及び修理等を行う株式会社である。一審原告ら計35名は、一審被告が運営する長崎造船所で就労していた労働者18名(本件労 働者ら)に係る本人11名及び相続人24名である(一部争いあり)。 本件は、一審原告らが、一審被告において下請・孫請企業の従業員等であった本件労働者らを指揮監督する中で粉じん対策に係る安全配慮義務に違反したことにより、本件労働者らがじん肺及び続発性気管支炎又は肺がんに罹患するなどしたとして、一審被告に対し、債務不履行又は不法行為に基づき、別紙2 認容額等一覧表の請求元金欄記載の慰謝料等及びこれに対する訴状送達日の翌日又は不法行為後の日である上記一覧表の請求起算日欄記載の日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を求めた事案である。 原判決(本人13名及び相続人17名の原告ら計30名)は、原判決別紙2 請求額・認容額一覧表の認容額合計欄記載のとおり、本件労働者らのうち13名に係る本人9名及び相続人11名の原告ら計20名の請求を一部認容し、そのほかの請求をいずれも棄却したところ、一審原告ら及び一審被告が各敗訴部分を不服として各控訴をした。 一審原告らは、当審で、本件労働者ら1名当たりの慰謝料等の額に関する主 張を最大3520万円から最大3080万円に変更し、請求元金を原判決別紙 2請求額・認容額 として各控訴をした。 一審原告らは、当審で、本件労働者ら1名当たりの慰謝料等の額に関する主 張を最大3520万円から最大3080万円に変更し、請求元金を原判決別紙 2請求額・認容額一覧表の請求額合計欄記載の金額から別紙2認容額等一覧表の請求元金欄記載の金額に減縮した。 2 前提事実(争いのない事実及び証拠(以下枝番略)等により認められる事実)⑴ 当事者等ア原判決「事実及び理由」(かぎ括弧部分以下略)第2の2⑴アを引用 イ一審原告等(ア) 一審原告a・b・d・g・h・i・j・k・l・o・rの11名と亡c1・e1・m1・n1・q1(亡c1・e1・m1・n・q1)及び亡f1・p1(以下「亡f1・p1」という。)の7名の計18名は、長崎造船所で就労していた一審被告の下請・孫請企業等の労働者ら(本件労働者ら)である(一部争いあり)。 (イ)~(カ) 原判決第2の2⑴イ(イ)~(カ)を引用ただし、(カ)の末尾に「s1は、当審係属中の令和5年7月12日に死亡し、同人を子である一審原告s1承継人s2・s3が相続し、訴訟承継した。 (弁論の全趣旨)」を加える。 (キ) 亡p1は、当審係属中の令和5年7月5日に死亡し、同人を妻である 一審原告p1承継人p2と子である一審原告p1承継人p3・p4が相続し、訴訟承継した。(弁論の全趣旨)(ク) 亡f1は、当審係属中の令和5年11月22日に死亡し、同人を妻である一審原告f1承継人f2と子である一審原告f1承継人f3・f4が相続し、訴訟承継した。(甲F19) ⑵ 原判決第2の2⑵を引用ただし、イ(イ)の「をと規定し」を「と規定し」と改める。 ⑶ 原判決第2の2⑶を引用 継人f3・f4が相続し、訴訟承継した。(甲F19) ⑵ 原判決第2の2⑵を引用ただし、イ(イ)の「をと規定し」を「と規定し」と改める。 ⑶ 原判決第2の2⑶を引用ただし、ア(ア)の「同日、続発性気管支炎」を「同年3月2日(乙A9)から続発性気管支炎」と、イ(ア)の「続発性気管支炎」を「同年1月27日 (乙B9)から続発性気管支炎」と、ウ(イ)の「石綿にさらされる業務によ る肺がん」から「に該当する」までを「平成26年3月3日(甲C10)から石綿にさらされる業務による肺がんに罹患している」と、エ(ア)の「続発気管支炎」を「同年3月7日(乙D1)から続発性気管支炎」と、オ(ア)の「同日、続発性気管支炎」を「平成26年10月21日(乙E1)から続発性気管支炎」と、同(ウ)の「地方労災医院」を「地方労災医員」と、「r」 を「p(甲E8~10)」と、カ柱書の「原告f1」を「亡f1」と(以下同じ)、同(ア)の「続発性気管支炎」を「同年8月25日(乙F5)から続発性気管支炎」と、キ(ア)の「続発性気管支炎」を「同年4月15日(乙G3)から続発性気管支炎」と、ク柱書の「23日生」を「22日生(甲H16等)」と、同(ア)の「続発性気管支炎」を「平成19年10月18日(乙H 1)から続発性気管支炎」と、ケ(ア)の「続発性気管支炎」を「同年1月6日(乙I16)から続発性気管支炎」と、コ(ア)の「続発性気管支炎」を「平成25年10月15日(乙J2)から続発性気管支炎」と、サ(ア)の「続発性気管支炎」を「同年10月4日(乙K9)から続発性気管支炎」と、「決定を)」を「決定を」と、シ(ア)の「続発性気管支炎」を「同年1月1 6日(甲L11)から続発性気管支炎」と、ス(ア)の「同日、続発性気管支炎 10月4日(乙K9)から続発性気管支炎」と、「決定を)」を「決定を」と、シ(ア)の「続発性気管支炎」を「同年1月1 6日(甲L11)から続発性気管支炎」と、ス(ア)の「同日、続発性気管支炎」を「同年10月22日(乙M2)から続発性気管支炎」と、セ(ア)の「続発性気管支炎」を「同年4月23日(乙N17)から続発性気管支炎」と、ソ(ア)の「同日、続発性気管支炎」を「同年6月3日(甲O8)から続発性気管支炎」と、タ柱書の「原告p1」を「亡p1」と(以下同じ)、同(ア) の「続発性気管支炎」を「同年7月22日(乙P1)から続発性気管支炎」と、チ(ア)の「続発性気管支炎」を「平成27年9月18日(乙Q13)から続発性気管支炎」と、ツ(ア)の「続発性気管支炎」を「同年5月11日(乙S1)から続発性気管支炎」と、それぞれ改める。 ⑷ 原判決第2の2⑷を引用 ただし、「第1事件」の次に「(一審原告r及び亡p1・q1を除く本件労働 者ら関係)」を、「第2事件」の次に「(亡p1関係)」を、「第3事件」の次に「(亡q1関係)」を、「第4事件」の次に「(一審原告r関係)」を、それぞれ加える。 第3 争点等 1 本案前の争点は、①一審原告aによる訴訟委任の有効性、②亡q1による訴訟 委任の有効性である。 ⑴ 一審原告aによる訴訟委任の有効性についてア原判決第3の2⑴ア第1段落を引用証拠(甲A5、6、乙A2)によれば、一審原告aは、かねてから認知症を患っていたが、その進行はなく、通常の意思疎通ができることが認め られる。 一審被告の上記主張は、採用することができない。 イ原判決第3の2⑴イ第1段落を引用しかし、上記診療記録にある一審原告aの署名の各筆 きることが認め られる。 一審被告の上記主張は、採用することができない。 イ原判決第3の2⑴イ第1段落を引用しかし、上記診療記録にある一審原告aの署名の各筆跡と陳述録取書にある同人の署名の筆跡(甲A7)は同一と認められるので、上記陳述録取 書は、同人の意思に基づくものと推定され(民事訴訟法228条4項)、これを覆す事情は認められない。そして、上記陳述録取書によれば、一審原告aの長男は、一審原告aから依頼を受け、上記訴訟委任状を代筆したことが認められ、訴訟委任は有効である。 一審被告の上記主張は、採用することができない。 ⑵ 亡q1による訴訟委任の有効性について原判決第3の2⑵を引用 2 本案の争点は、①安全配慮義務違反の有無、②じん肺及び続発性気管支炎への罹患等の有無、③因果関係の有無、④損害の有無及び額、⑤過失相殺の可否及び割合、⑥消滅時効の成否である。 第4 原審における当事者の主張 1 争点①(安全配慮義務違反の有無)について原判決第4の4を引用ただし、(一審原告らの主張)⑵ウ(イ)の「周辺者業者」を「周辺業者」と、(一審被告の主張)⑵柱書の「安瀬配慮義務」を「安全配慮義務」と、同ア(ア)の「乗じ」を「常時」と、それぞれ改める。 2 争点②(じん肺及び続発性気管支炎への罹患等の有無)について原判決第4の1・2を引用ただし、2(一審原告らの主張)⑵アの「原告」を「亡e1・m1・n1・q1以外の本件労働者ら」と、同(一審被告の主張)⑵イ(エ)の「正常」を「性状」と、同ウ~オ各(ア)の「始めて」を「初めて」と、それぞれ改める。 3 争点③(因果関係の有無)について原判決第4 労働者ら」と、同(一審被告の主張)⑵イ(エ)の「正常」を「性状」と、同ウ~オ各(ア)の「始めて」を「初めて」と、それぞれ改める。 3 争点③(因果関係の有無)について原判決第4の3を引用ただし、(一審原告らの主張)⑴ウの「石綿粉じん mg」を「石綿粉じん2mg」と、同⑶アの「じん肺」を「肺がん」と、同⑷イの「長崎亡n1」を「亡n1」と、それぞれ改める。 4 争点④(損害の有無及び額)について原判決第4の6を引用ただし、(一審原告らの主張)⑴アを「本件労働者らは、一審被告の安全配慮義務違反により、じん肺及び続発性気管支炎又は肺がんに罹患するなどし、重大な精神的苦痛を被った。」と、同ウの「慰謝料3200万円、弁護士費用 320万円」を「慰謝料2800万円、弁護士費用280万円」と、同⑵アの「原告の主張」を「一審原告らの主張」と、「じん肺に罹患し、肺がんを発症して死亡した」を「肺がんを発症して死亡するなどした」と、同イの「本件労働者」を「本件労働者ら」と、それぞれ改める。 5 争点⑤(過失相殺の可否及び割合)について 原判決第4の5を引用 ただし、(一審原告らの主張)⑴イ(ア)の「原告の主張」を「一審原告らの主張」と改める。 6 争点⑥(消滅時効の成否)について原判決第4の7を引用第5 当審における当事者の補充主張 1 争点①(安全配慮義務違反の有無)について(一審原告らの主張)⑴ 別紙4不服目録の1(一審原告らの主張)記載の5名は、原判決の判断と異なり、同記載の期間に同記載の下請・孫請企業の従業員として長崎造船所で粉じん作業に従事していた。 ⑵ 本件労働者らは、一審被告から指揮監督を受けていた昭和 記載の5名は、原判決の判断と異なり、同記載の期間に同記載の下請・孫請企業の従業員として長崎造船所で粉じん作業に従事していた。 ⑵ 本件労働者らは、一審被告から指揮監督を受けていた昭和29年から平成27年までの間、長崎造船所で自他の粉じん作業から生じる粉じんに曝露し得る環境(以下「粉じん環境」という。)にあった。このため、一審被告は、その間、本件労働者らに対し、粉じんの測定と結果の周知、混在作業の制限、換気装置の設置、防じんマスクやフィルターの支給と着用の指導、じん肺教 育の実施を十分にすべき安全配慮義務を負っていたが、これらを十分にせず、上記義務に違反した。 なお、一審被告が長崎造船所で測定していた粉じん測定値は、平成10年までに改善した。しかし、これは、粉じん作業から離れた地点で測定するようになったからであり、その後もじん肺の有所見者が一審被告の従業員だけ で毎年数百名単位で確認されていたことに照らせば、上記測定値は信用することができない。 (一審被告の主張)⑴ 原判決の判断と異なり、別紙4不服目録の1(一審被告の主張)⑴記載の9名は同記載の期間に同記載の下請・孫請企業に所属しておらず、同⑵記載 の1名は同記載の期間に長崎造船所で就労しておらず、同⑶記載の6名は同 記載の期間に粉じん作業に従事していなかった。 ⑵ 一審被告は、本件労働者らを指揮監督していなかったので、本件労働者らに対して粉じん対策に係る安全配慮義務を負っておらず、下請・孫請企業が負っていた。仮に一審被告が本件労働者らに対して安全配慮義務を負っていたとしても、下請・孫請企業には履行が困難な換気装置の設置等に限られ、 下請・孫請企業にも履行が容易な防じんマスクやフィルターの支給と着用の指導等は含まれなか 者らに対して安全配慮義務を負っていたとしても、下請・孫請企業には履行が困難な換気装置の設置等に限られ、 下請・孫請企業にも履行が容易な防じんマスクやフィルターの支給と着用の指導等は含まれなかった。また、一審被告は、仮に本件労働者らに対して粉じんの測定と結果の周知、混在作業の制限、換気装置の設置、防じんマスクやフィルターの支給と着用の指導、じん肺教育の実施を十分にすべき安全配慮義務を負っていたとしても、昭和の頃からこれらを十分にしており、当該 義務に違反していない。 なお、長崎造船所では平成以降も毎年相当数の従業員が管理2の管理区分決定を受けていたが、管理3の管理区分決定に進んだのは数名であったことに照らせば、ほとんどがじん肺に罹患していなかったといえる。 2 争点②(じん肺及び続発性気管支炎への罹患等の有無)について (一審原告らの主張)⑴ じん肺の管理区分や続発性気管支炎の労災支給は、じん肺健康診断担当医等がじん肺関係法令やじん肺診査ハンドブックに基づく各種検査・問診等によって罹患の診断をし、地方じん肺診査医や地方労災医員が診査するなどした上で、決定されるので、これらの決定を受けた労働者はじん肺や続発性気 管支炎に罹患したと推認される。 本件労働者ら17名は、いずれも、管理2の管理区分決定を受けるとともに、続発性気管支炎の労災支給決定を受けたので、じん肺と続発性気管支炎に罹患したと推認される。 ⑵ 一審被告協力医は、本件労働者ら17名の胸部CT画像を読影した上で、 一審原告i以外、粒状影や不整形陰影がほとんど認められず、大半は血管影 であるなどとして、じん肺に罹患していない旨の意見を述べている。 しかし、CTは、X線よりも空間分解能(いわば解像度)で劣っ 告i以外、粒状影や不整形陰影がほとんど認められず、大半は血管影 であるなどとして、じん肺に罹患していない旨の意見を述べている。 しかし、CTは、X線よりも空間分解能(いわば解像度)で劣っているので小さな病変部を把握できず、病変部の分布や広がり、程度の把握も難しいこと、CTによるじん肺の撮影・診断基準はいまだ存在せず、診断に読影者の主観が入りやすいこと、粒状影や不整形陰影は、本件労働者ら17名の胸 部CT画像によっても相当数認められ、血管影でもないこと等に照らせば、上記意見を信用することはできず、前記推認は覆らない。 このため、別紙4不服目録の2(一審原告らの主張)⑴記載の7名は、原判決の判断と異なり、じん肺に罹患したりこれが増悪したりした。 ⑶ 本件労働者ら17名のうち一部の者は、労災認定の前後で続発性気管支炎 の診断に必要なせきやたんが出ないこともあった。 しかし、続発性気管支炎は症状の消長を繰り返すこと、年齢や服薬の影響、検査のタイミングによってはせきやたんが出ないこともあること、労災認定後も支給が維持されてきたこと等に照らせば、前記推認は覆らない。 このため、別紙4不服目録の2(一審原告らの主張)⑵記載の9名は、原 判決の判断と異なり、続発性気管支炎に罹患したりこれが増悪したりした。 (一審被告の主張)⑴ じん肺の管理区分や続発性気管支炎の労災支給は、労働者の健康の保持その他福祉の増進に寄与することを目的とした行政上の制度であり、検査や診断等もX線画像の読影やたんの目視といった簡便な方法で行うこととされて いる。このため、労働者は、管理2の管理区分決定や続発性気管支炎の労災支給決定を受けてもじん肺や続発性気管支炎に罹患したと推認されないし、仮に推認された といった簡便な方法で行うこととされて いる。このため、労働者は、管理2の管理区分決定や続発性気管支炎の労災支給決定を受けてもじん肺や続発性気管支炎に罹患したと推認されないし、仮に推認されたとしても、より高精度な検査等で診断結果と整合しない事実が認められれば、前記推認は覆る。 ⑵ CTはX線よりも高精度な検査であるところ、本件労働者ら17名の胸部 CT画像によれば、一審原告i以外、繊維増殖性変化が生じたことを示す粒 状影や不整形陰影はほとんど認められず、大半は血管影であること、肺の所見が長崎造船所で従事した粉じん作業の内容と整合しないこと等が認められるので、前記推認は覆る。 このため、原判決の判断と異なり、別紙4不服目録の2(一審被告の主張)⑴記載の9名はじん肺に罹患しておらず、同⑵記載の6名もじん肺に至らな い程度の健康被害を受けていない。 ⑶ 続発性気管支炎は、その病態上、細菌に感染していることを要するところ、本件労働者ら17名の細菌検査からは細菌への感染がほとんど認められなかったこと、細菌への感染を示すCRP値もほぼ正常値であり、抗菌薬も投与されていないこと、たんの検査は適正な方法で行われず、診断も正しく行わ れていないこと、管理2のじん肺で続発性気管支炎に罹患することはほとんどないこと等に照らせば、前記推認は覆る。 このため、原判決の判断と異なり、別紙4不服目録の2(一審被告の主張)⑶記載の8名は続発性気管支炎に罹患しておらず、同⑷記載の4名も続発性気管支炎に類する症状が生じていない。 3 争点③(因果関係の有無)について(一審原告らの主張)⑴ 平成以降も、一審被告は本件労働者らを指揮監督する中で前記安全配慮義務に違反し、別紙4不服目録の3(一審原 い。 3 争点③(因果関係の有無)について(一審原告らの主張)⑴ 平成以降も、一審被告は本件労働者らを指揮監督する中で前記安全配慮義務に違反し、別紙4不服目録の3(一審原告らの主張)⑴記載の3名はじん肺等に罹患したりこれが増悪したりした。 このため、上記3名は、原判決の判断と異なり、一審被告の安全配慮義務違反とじん肺等の罹患や増悪との間に因果関係がある。 ⑵ じん肺法が定期的なじん肺健康診断の間隔を3年と定めていることを考慮すれば、労働者は、5年以上、粉じんに曝露すれば、それだけでじん肺等に罹患し得るといえる。別紙4不服目録の3(一審原告らの主張)⑵記載の3 名は、じん肺等に罹患するまでの間に5年以上、長崎造船所の粉じん環境で 作業に従事したので、それだけでじん肺等に罹患したといえる。 このため、上記3名は、原判決の判断と異なり、寄与度減責をすべきでない。 (一審被告の主張)別紙4不服目録の3(一審被告の主張)記載の10名は、じん肺等に罹患す るまでの間、長崎造船所の粉じん環境で作業に従事していないか一時期しか従事していないので、じん肺等に罹患し得ない。 このため、原判決の判断と異なり、上記目録の3(一審被告の主張)記載の10名は、一審被告の安全配慮義務違反とじん肺等の罹患との間に因果関係がなく、仮にあったとしても、少なくとも、一審原告aは10分の7、同hは2 分の1、同iは4分の3、同kは5分の2、同rは5分の2、亡c1は4分の1、亡m1は2分の1、亡n1は5分の2の寄与度減責をすべきである。 4 争点④(損害の有無及び額)について(一審原告らの主張)慰謝料の額は、同種裁判例での認容額や特定石綿被害建設業務労働者等に対 の1、亡n1は5分の2の寄与度減責をすべきである。 4 争点④(損害の有無及び額)について(一審原告らの主張)慰謝料の額は、同種裁判例での認容額や特定石綿被害建設業務労働者等に対 する給付金等の支給に関する法律所定の基準慰謝料額、交通事故慰謝料額を考慮し、少なくとも、本件労働者1名あたり一律2800万円とすべきである。 そうでなくとも、肺がんを直接的な原因として死亡した亡c1・n1は各2800万円、じん肺を間接的な原因として死亡した亡e1・q1は各2300万円、そのほかの本件労働者らは各1700万円とすべきである。 (一審被告の主張)否認又は争う。 5 争点⑤(過失相殺の可否及び割合)について(一審被告の主張)亡c1は重度の喫煙歴を有し、一審原告b・h・i・k、亡n1は管理2の管理 区分決定を受けた後も喫煙を継続し、じん肺等を増悪させた。 このため、上記6名は、別紙4不服目録の4(一審被告の主張)記載の原判決の判断と異なり、一審原告b・h・i・kは各1割超、亡c1は5割以上、亡n1は3分の1超の過失相殺をすべきである。 (一審原告らの主張)喫煙のじん肺等に対する影響の有無・程度は不明であるので、喫煙歴を過失 相殺事由とすべきでない。 このため、別紙4不服目録の4(一審原告らの主張)記載の原判決の判断と異なり、同記載の4名は過失相殺をすべきでない。 6 争点⑥(消滅時効の成否)について(一審被告の主張) 初めて管理2の管理区分決定がされてから本件提訴までの間に10年以上が経過した本件労働者らについては、続発性気管支炎に罹患していないので、消滅時効が完成した。 (一審原告らの主張)⑴ 一審原告g 2の管理区分決定がされてから本件提訴までの間に10年以上が経過した本件労働者らについては、続発性気管支炎に罹患していないので、消滅時効が完成した。 (一審原告らの主張)⑴ 一審原告gは、昭和55年3月17日に管理2の管理区分決定を受けたが、 続発性気管支炎にも罹患し、平成25年10月31日にその労災認定を受けた上で、平成28年4月7日、本件提訴をした。このため、消滅時効は、起算日が平成25年10月31日となり、未完成である。仮に続発性気管支炎に罹患していなかったとしても、同日から権利行使が現実に期待できるようになったので、消滅時効はなお未完成である。 ⑵ 仮に消滅時効が完成していたとしても、一審被告は、一審原告gに対してじん肺教育を十分に実施せず、一審原告gの甚大な犠牲によって膨大な利益を得てきたこと等を考慮すれば、消滅時効の援用は権利の濫用である。 第6 当裁判所の判断の要旨当裁判所は、一審原告らの請求は、債務不履行に基づき、別紙2認容額等一 覧表の認容元金欄記載の慰謝料等及びこれに対する当該一覧表の認容起算日欄 記載の日(一審原告p1承継人p2・p3・p4は訴状送達後に損害が生じた日の翌日、そのほかの一審原告らは訴状送達日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の各支払を求める限度で理由があり、そのほかはいずれも理由がないと判断する。その理由は、以下のとおりである。 第7 争点①(安全配慮義務違反の有無)についての判断 1 長崎造船所における造船・修繕工事及び粉じん環境の概要原判決第5の1を引用ただし、⑴ウ(オ)の「ブロック擬装法」を「ブロック艤装法」と、同エ(ウ)の「被告は、昭和56年2月に石綿含有保温・断熱材の使用を禁止した。」を「一審 境の概要原判決第5の1を引用ただし、⑴ウ(オ)の「ブロック擬装法」を「ブロック艤装法」と、同エ(ウ)の「被告は、昭和56年2月に石綿含有保温・断熱材の使用を禁止した。」を「一審被告は、昭和56年2月、石綿含有保温・断熱材の新規使用を禁止した (甲2(128頁)、13、47、乙267、408)。」と、それぞれ改める。 2 本件労働者らの粉じん環境職歴以下のとおり、本件労働者らの粉じん環境職歴は、別紙5認定判断表の粉じん環境職歴欄記載のとおりである。 ⑴ 一審原告a 原判決第5の2⑴を引用ただし、ア柱書の「粉じん作業職歴」を「粉じん環境職歴」と改める(以下同じ)。 ⑵ 一審原告b原判決第5の2⑵を引用 ただし、ア(ア)の「昭和33年4月」を「昭和32年6月1日(甲B4、6)」と改める。 ⑶ 亡c1ア長崎造船所における粉じん環境職歴(ア) 原判決第5の2⑶ア(ア)を引用 ただし、「丸菱商会」を「丸菱商会本部(甲C6、8)」と改める。 (イ) 原判決第5の2⑶ア(イ)第1文を引用証拠(甲C6、9、15、乙C10)によれば、亡c1は、久保工業の従業員として、平成12年10月から平成13年11月までの間は風車の羽根の製作作業に、同年12月から平成15年9月までの間はクレーンの玉掛作業に、それぞれ従事したことが認められるが、これらの作業 環境が粉じん環境にあったことを認めるに足りる証拠はない。 (ウ) 平成21年1月5日から平成22年9月30日までの間は株式会社豊工業の従業員として、同年10月1日から平成23年11月30日までの間は大丸工業の従業員として、い 足りる証拠はない。 (ウ) 平成21年1月5日から平成22年9月30日までの間は株式会社豊工業の従業員として、同年10月1日から平成23年11月30日までの間は大丸工業の従業員として、いずれも足場の架設及び解体作業に従事(甲C6、17) 証拠(甲C5、10、15)によれば、亡c1は、平成26年11月に過去石綿粉じん作業に従事したことで肺がんに罹患したとして労災を申請した際、豊工業と大丸工業の両職歴を申告せず、平成27年12月に交付された健康管理手帳(石綿)にも上記両職歴が記載されなかったことが認められるが、これは上記両社で、石綿粉じん作業に従事しなかっ たことを示すにすぎず、およそ粉じん作業に従事せず粉じん環境にもなかったことを示すものとはいえない。 イ他の事業所での粉じん環境職歴原判決第5の2⑶イを引用⑷ 一審原告d 原判決第5の2⑷を引用⑸ 亡e1原判決第5の2⑸を引用ただし、ア(イ)の末尾に「証拠(甲E16、乙E2、3)によれば、亡e1は、溶接の資格を有していなかったが、一審被告において資格が不要とされ ていた仮付溶接の作業に従事していたことが認められる。」を加える。 ⑹ 亡f1原判決第5の2⑹を引用ただし、アの「平成9年2月」を「平成9年11月(甲F2、3、乙F6)」と改める。 ⑺ 一審原告g ア長崎造船所における粉じん環境職歴(甲G1、7、11~13、17、乙G3)(ア) 遅くとも昭和32年4月~昭和36年5月31日丸井工業の従業員として石綿を含む保温・断熱材の作成・取付・交換作業に従事(甲G4、一審原告g本人) 丸井 3)(ア) 遅くとも昭和32年4月~昭和36年5月31日丸井工業の従業員として石綿を含む保温・断熱材の作成・取付・交換作業に従事(甲G4、一審原告g本人) 丸井工業の職歴に係る一審原告gの陳述(甲G7、11~13、同本人)は、客観的な裏付けがなく、始期も昭和31年4月と昭和32年4月との間で変遷しているが、労働基準監督署は始期を昭和31年4月として認定した上(甲G17)、そのほかは一貫し、内容も具体的であるから、上記認定の限度でこれを信用することができる。 (イ) 昭和36年6月1日~平成12年6月30日(昭和37、38年頃の約7か月半を除く) 株式会社日本冷熱工産工業部(後の日本冷熱)の従業員として、昭和47年頃までは石綿を含む保温・断熱材の作成・取付・交換作業に、昭和48年頃からは石綿を含まない保温・断熱材の作成・取付・交換作業や石綿を含む保温・断熱材の交換作業に、それぞ れ従事(甲G2、4、8~10、弁論の全趣旨)(ウ) 平成12年7月1日~平成15年3月31日日装の従業員として石綿を含まない保温・断熱材の作成・取付・交換作業や石綿を含む保温・断熱材の交換作業に従事(甲G2)日装での石綿を含む保温・断熱材の交換作業に係る一審原告gの陳述 (甲G11、12)は、平成16年8月に交付された健康管理手帳(じ ん肺)や平成20年12月に交付された同手帳(石綿)、平成25年5月に発行されたじん肺健康診断結果証明書のいずれにもその記載がないが(甲G4、9、10)、上記作業が中心的な業務でなかったことによるものとうかがわれる上、同年10月に労働基準監督署は上記職歴を粉じん作業職歴として認定したから(甲G17、乙G3)、これを信用す ることが 9、10)、上記作業が中心的な業務でなかったことによるものとうかがわれる上、同年10月に労働基準監督署は上記職歴を粉じん作業職歴として認定したから(甲G17、乙G3)、これを信用す ることができる。 イ他の事業所での粉じん環境職歴昭和37、38年頃の約7か月半日本冷熱工産工業部の従業員として他の造船所等で石綿を含む保温・断熱材の作成・取付作業に従事(甲G7、11、弁論の全趣旨) ⑻~⑽ 一審原告h・i・j原判決第5の2⑻~⑽を引用⑾ 一審原告k原判決第5の2⑾を引用ただし、ア(イ)の「平成14年11月」を「平成14年10月(弁論の全 趣旨)」と改める。 ⑿ 一審原告l原判決第5の2⑿を引用⒀ 亡m1原判決第5の2⒀を引用 ただし、ア(ア)の「船内で、新造船の電気設備の配線作業に従事」を「新造船内での溶接を伴う電線設置作業に従事(甲M6)」と、同(イ)の「船内で、修繕船の電気設備の配線作業に従事」を「修繕船内での電線架設作業や溶接等に使われている電気設備の巡回作業に従事(甲M6)」と、それぞれ改める。 ⒁ 亡n1 ア長崎造船所における粉じん環境職歴(ア)(イ) 原判決第5の2⒁ア(ア)(イ)を引用(ウ) 昭和47年9月1日~昭和50年9月30日、昭和51年4月1日~昭和52年5月31日、同年7月4日~昭和53年3月31日、同年7月7日~同年8月31日小柳組の従業員として、ガス切断作業に従 事(甲N1、5、10、15、16)亡n1の健康管理手帳には、この頃に鉄銅センターで就労していた旨の記載があるが(甲N5)、長崎造船所内にあっ 組の従業員として、ガス切断作業に従 事(甲N1、5、10、15、16)亡n1の健康管理手帳には、この頃に鉄銅センターで就労していた旨の記載があるが(甲N5)、長崎造船所内にあった鉄鋼センターの誤記と認められる(甲195、N23)。 (エ) 昭和54年8月1日~平成11年12月31日興洋工業の従業員 として、ガス切断、溶接作業に従事(甲N1、2、5、10、15、16、19、20)(オ) 平成13年12月~平成14年12月31日興洋工業の従業員として、三共工業に出向してガス切断作業に従事(甲N1、4、5、10、11、17、乙N14、41) 亡n1の健康管理手帳には、この時期に九州スチールセンターで就労していた旨の記載があるが、長崎造船所内にある九州スチールセンターを指すものと認められる(甲195、N23、乙N15)。 イ他の事業所での粉じん環境職歴無し(甲N1) ⒂ 一審原告o原判決第5の2⒂を引用⒃ 亡p1ア長崎造船所における粉じん環境職歴(ア)~(ウ) 原判決第5の2⒃ア(ア)~(ウ)を引用 (エ) 平成13年2月~平成18年8月一ノ瀬商会の従業員として、長 田工業に出向して足場の架設・解体、ガス切断作業に従事(甲P4、5、7、9、10、亡p1本人)ガス切断の対象に係る亡p1の陳述(甲P5、9、10、同本人)は、平成30年6月に風車の管から風車建造工場の管に変更されたが、重要な変更とはいえない上、そのほかは一貫し、内容も具体的であるから、 上記認定の限度でこれを信用することができる。 イ他の事業所での粉じん環境職歴原判決第5の されたが、重要な変更とはいえない上、そのほかは一貫し、内容も具体的であるから、 上記認定の限度でこれを信用することができる。 イ他の事業所での粉じん環境職歴原判決第5の2⒃イを引用⒄ 亡q1ア長崎造船所における粉じん環境職歴(甲Q1、18) (ア) 昭和37年3月1日~昭和41年2月長崎木装の従業員として、石綿を含む保温・断熱材の取付・交換、清掃作業に従事(甲Q3~5、10、11)(イ) 昭和41年7月14日~昭和50年12月27日日電の従業員として、溶接等が行われている船内での電線設置作業に従事(甲Q9) (ウ) 昭和51年11月1日~昭和53年10月2日長崎木装の従業員として、上記(ア)と同様の作業に従事(甲Q3~5、9~11)(エ) 昭和57年11月1日~昭和61年3月20日長崎木装の従業員として、石綿を含まない保温・断熱材の取付・交換、石綿を含む保温・断熱材の交換、清掃作業に従事(甲Q3~5、9~11、乙Q13) イ他の事業所での粉じん環境職歴無し⒅ 一審原告rア長崎造船所における粉じん環境職歴(甲S1、7、8、13、乙S2)(ア) 昭和29年4月~昭和42年1月15日長崎木装の従業員として、 石綿を含む保温・断熱材の取付・交換、清掃作業に従事(甲S2、5) (イ) 昭和45年2月1日~昭和47年6月20日向井組の従業員として、石綿を含む保温・断熱材の取付・交換作業に従事(ウ) 昭和47年6月21日~平成3年2月28日長崎船舶装備の従業員として、石綿を含む保温・断熱材や石綿を含まない保温・断熱材の取付・交換作業に従事(甲S2、 材の取付・交換作業に従事(ウ) 昭和47年6月21日~平成3年2月28日長崎船舶装備の従業員として、石綿を含む保温・断熱材や石綿を含まない保温・断熱材の取付・交換作業に従事(甲S2、5、6、乙S1、3) イ他の事業所での粉じん環境職歴無し 3 長崎造船所における粉じん対策の経緯等⑴ 一審被告は、かねてより、多数の協力企業に対して長崎造船所での各種工事を発注し、下請・孫請企業との間で打合せを随時行いながら、当該企業の 労働者に対して日々の作業内容を間接的又は直接的に指示するとともに、その進捗を管理してきた。 下請・孫請企業の労働者は、一審被告の指示の下、長崎造船所の設備や機器等を用いながら、一審被告の労働者が従事する作業と同じ作業に従事したり、船内の狭あい部での溶接など当該労働者が嫌う作業に従事したりしてき た。 (甲4、5、19、32、36、51、甲A7、B8、C9、D7、F7、G11、H7、I6、J9、K10、L5、M6、O5、P9、Q1、S8、一審原告a及び亡c1・e1・m1・n1・q1を除く本件労働者ら各本人)⑵ 長崎造船所では、戦後、鉄等を電炉で溶かして砂の鋳型に流し込み、固ま った後に砂を落として複雑な部材を作る鋳造作業、鋼材をガスで切断したり電気で溶接したりして船を建造する船殻・艤装作業、不要部分をグラインダーやサンダー等で取り除いて表面を仕上げる研削・研磨作業、石綿を含む保温・断熱材を加工して管や壁に取り付ける防熱作業等により、工場内や船内がかすむほどの粉じんが生じていた。 そのような中、粉じんの健康に対する有害性が周知の事実となり、昭和2 2年には使用者が粉じんによる危害を防止するため換気やマスクなど必要な 内がかすむほどの粉じんが生じていた。 そのような中、粉じんの健康に対する有害性が周知の事実となり、昭和2 2年には使用者が粉じんによる危害を防止するため換気やマスクなど必要な措置を講じる義務等について定めた労働基準法(旧42条)や労働安全衛生規則(旧172条、173条、181条等)が施行され、昭和30年には砂じんで罹患するけい肺の悪化の防止等を目的としたけい肺等特別保護法が施行され、昭和35年にはじん肺の適正な予防等を目的としたじん肺法が施行 された。 これに伴い、一審被告は、遅くとも昭和24年以降、長崎造船所で粉じんの濃度を測定してその結果を発表し、送風機や排気装置、換気設備等を導入し、各種マスクやフィルターを支給してその着用方法等を指導し、粉じん教育やけい肺・じん肺健康診断を実施するなどの各種粉じん対策を講じるよう になった。 もっとも、上記対策は、その多くが解釈等で任意の措置とされ、初めしばらくは粉じん作業に従事する一審被告の労働者のうち一部の者に対して一部の対策を講じるにとどめるなど、漸次的なものであった。また、一審被告は、高度経済成長期にタンカー等の造船需要が高まる中、短くした工期に間に合 わせるため、労働者らに混在作業を度々行わせた。 その結果、昭和35年以降も工場内や船内では許容濃度を大幅に上回る粉じんが生じ続け、粉じん作業に従事する一審被告の労働者のうちじん肺の所見があると診断された者(じん肺有所見者)の割合を示すじん肺有所見率は、じん肺有所見者の一部に作業転換等の措置が講じられながらも、同年の約2. 6%(153名中4名)から昭和48年の約6.1%(2669名中162名)まで増加していった。 (甲2、10~13、18~68、97、100 換等の措置が講じられながらも、同年の約2. 6%(153名中4名)から昭和48年の約6.1%(2669名中162名)まで増加していった。 (甲2、10~13、18~68、97、100、130~154、191~193、195、206~209、甲A7、B8、18、C9、D7、F7、16、G11、H7、I6、J9、19、K10、L5、M6、O5、 P9、Q1、S8、乙85~88、90~106、131、139~147、 166、169、170、209、215、248、366~370、424、427、428、560、一審原告a及び亡c1・e1・m1・n1・q1を除く本件労働者ら各本人)⑶ 昭和45年頃には石綿の発がん性が周知の事実となり、翌46年に石綿の製造等を規制する特定化学物質等障害予防規則が施行された後、石綿への規 制が漸次強化された。また、翌47年には一審被告が造船需要の拡大に対応するため香焼工場を開設したが、翌48年に第1次石油危機が生じて造船需要が収まった。その結果、同年以降は工場内や船内の粉じんが減少するとともに、翌49年にはじん肺有所見率も減少へ転じ、昭和52年の約1.1%(4573名中50名)まで減少していった。 これに対し、一審被告は、長崎造船所で前記各種粉じん対策を継続し、昭和56年に石綿を含む保温・断熱材の新規使用を禁止する一方で、事業の多角化と合理化を進め、労働者らに再び混在作業を行わせた。その結果、工場内や船内では再び粉じんが多く生じるようになり、じん肺有所見率も昭和53年に増加へ転じ、翌54年に約6.5%(3394名中221名)となっ た。 また、一審被告の労働組合である長崎造船分会は、昭和56年にじん肺対策委員会を、昭和58年にじん肺患者会を、 年に増加へ転じ、翌54年に約6.5%(3394名中221名)となっ た。 また、一審被告の労働組合である長崎造船分会は、昭和56年にじん肺対策委員会を、昭和58年にじん肺患者会を、それぞれ立ち上げた上で、翌59年から一審被告との間で換気対策の拡充や混在作業の解消を中心に交渉していたが、一審被告から努力中と回答されるにとどまるなど、一審被告の対 策はなお漸次的なものであった。その結果、じん肺有所見率は、更に増加し、平成4年に約10.7%(2745名中293名)となった。 しかし、一審被告は、平成7年から翌8年にかけては第1次粉じん対策として約7億円を投じる100件の排気・換気対策を、平成11年から翌12年にかけては第2次粉じん対策として約4億円を投じる60件の排気・換気 対策を、平成14年から翌15年にかけては第3次粉じん対策として約1億 円を投じる23件の換気・排気対策を、平成20年から翌21年2月にかけては追加粉じん対策として約5億円を投じる26件の排気・換気対策を、それぞれ講じた。 その結果、じん肺有所見率は、平成に入った頃から管理2のじん肺有所見者のうち約4分の1に作業転換等の措置が毎年講じられながらも、平成11 年の約13.1%(2993名中392名)まで増加していったが、翌12年(3033名中398名)と翌13年(2853名中374名)は約13. 1%が続いた後、翌14年には減少へ転じた。じん肺有所見率は、その後も減少し続け、平成16年に10%を(3757名中307名=約8.2%)、平成22年に5%を(2765名中132名=約4.8%)、平成27年に 2%を(1189名中20名=約1.7%)、平成30年に1%を(588名中5名=約0.9%)、それぞれ下回り、現在に至 、平成22年に5%を(2765名中132名=約4.8%)、平成27年に 2%を(1189名中20名=約1.7%)、平成30年に1%を(588名中5名=約0.9%)、それぞれ下回り、現在に至っている。 (甲2、3、15、17、73、90、98~100、155~178、180~190、231~238、乙89、107~130、132~149、151~159、167、168、209、216~221、229~24 7、271、275~277、283~286、371~408、423~426、429~431、434~447、545~572、592、弁論の全趣旨) 4 一審被告の本件労働者らに対する安全配慮義務の有無・内容・程度⑴ 判断枠組み 他者を指揮監督して労務の成果を収受する者は、当該他者との間で特別な社会的接触の関係にあるといえるから、当該労務が当該他者の生命及び健康等に対する危険性を有し、これを具体的に予見して回避することが可能な場合、信義則上、当該他者の生命及び健康等を当該危険性から保護すべき安全配慮義務を負うものと解される(最高裁昭和48年(オ)第383号同50年 2月25日第三小法廷判決・民集29巻2号143頁、最高裁平成元年(オ) 第516号、同年(オ)第1495号同3年4月11日第一小法廷判決・裁判集民事162号295頁参照)。そして、安全配慮義務は、その根拠を上記の特別な関係に求める以上、上記危険性を除去するのに必要な措置が十分に尽くされる必要があるものと解される(最高裁昭和58年(オ)第152号同59年4月10日第三小法廷判決・民集38巻6号557頁等参照)。 ⑵ 当てはめア特別な社会的接触の関係の有無前記認定事実によれば、一審被告は 年(オ)第152号同59年4月10日第三小法廷判決・民集38巻6号557頁等参照)。 ⑵ 当てはめア特別な社会的接触の関係の有無前記認定事実によれば、一審被告は、昭和29年4月から平成27年2月まで、本件労働者らが長崎造船所で提供した労務の成果を間接的又は直接的に収受していた。その間、本件労働者らは、一審被告から日々の作業 内容の指示や進捗の管理を受け、一審被告の指示の下、長崎造船所の設備や機器等を用いながら、一審被告の労働者が従事すべき作業と同じ作業に従事していたから、一審被告からの指揮監督も受けていたといえる。 このため、一審被告は、本件労働者らとの間で、特別な社会的接触の関係にあったと認められる(前記最高裁平成3年4月11日判決参照)。 イ労務の危険性の有無仮に一審被告が昭和29年4月から平成27年2月までの間に長崎造船所で粉じん対策を講じなければ、鋳造作業や船殻・艤装作業、研削・研磨作業、防熱作業等によって鉄や砂、石綿等の粉じんが膨大に生じ、これを本件労働者らが吸入してじん肺等にいち早く罹患したと推認される。 このため、本件労働者らが長崎造船所で提供した労務は、粉じん環境の中で提供されたという点において、本件労働者らの生命及び健康等に対する危険性を有していたと認められる。 ウ予見・回避可能性の有無戦後、粉じんの健康に対する有害性が周知の事実となり、昭和22年か ら昭和35年にかけて、粉じんによる疾病等を防ぐ諸法令が施行された。 そのような中、一審被告は、長崎造船所で工場内や船内がかすむほどの粉じんが生じていたことから、遅くとも昭和24年以降、粉じんの濃度を測定して結果を発表し、送風機や排気装置、 法令が施行された。 そのような中、一審被告は、長崎造船所で工場内や船内がかすむほどの粉じんが生じていたことから、遅くとも昭和24年以降、粉じんの濃度を測定して結果を発表し、送風機や排気装置、換気設備等を導入し、各種マスクやフィルターを支給して着用方法等を指導し、粉じん教育やけい肺・じん肺健康診断を実施するなどの各種粉じん対策を講じた。一審被告は、昭 和29年、社内報で鋳造・溶接作業等によりけい肺やじん肺に罹患するおそれがあるとして防じんマスクの着用等を促す注意喚起も行った(乙90)。 これら粉じんによる病害についての知見や規制、長崎造船所での粉じんの状況や対策等を総合すれば、一審被告は、遅くとも本件労働者らが長崎 造船所の粉じん環境で就労し始めた昭和29年4月以降、本件労働者らが粉じん環境の中で提供していた労務の生命及び健康等に対する危険性を具体的に予見して回避することが可能であったと認められる。 エ安全配慮義務の内容・程度本件労働者らが粉じん環境の中で提供していた労務の危険性を減少させ るには、基本的には防じんマスク・フィルターの支給と着用方法の指導が必要であり、作業や連絡等で外す必要が生じたり顔面との間に隙間が生じたりすることもあったから(甲24、238等)、排気・換気装置等の設置も必要であったというべきである。また、上記危険性の除去までするには、粉じんの測定や粉じん教育・健康診断の実施も必要と認められる。 このため、一審被告は、本件労働者らが長崎造船所の粉じん環境で就労していた昭和29年4月から平成27年2月まで、本件労働者らに対し、防じんマスク・フィルターの支給と着用方法の指導、排気・換気装置等の設置、粉じんの測定及び粉じん教育・健康診断の実施といった で就労していた昭和29年4月から平成27年2月まで、本件労働者らに対し、防じんマスク・フィルターの支給と着用方法の指導、排気・換気装置等の設置、粉じんの測定及び粉じん教育・健康診断の実施といった粉じん対策を生命及び健康等に対する危険性が除去されるまで十分に尽くす安全配慮 義務(以下「本件安全配慮義務」という。)を負っていたというべきであ る。 ⑶ 一審被告の主張に対する判断ア一審被告は、本件労働者らを少なくとも直接的・具体的には指揮監督していなかったので、本件労働者らに対して安全配慮義務を負っておらず、下請・孫請企業が負っていた旨主張する。 しかし、一審被告が本件労働者らを直接的・具体的に指揮監督することもあったことは、前記3⑴認定のとおりである。間接的・抽象的に指揮監督していたとしても、ある者が他者に対して安全配慮義務を負うのは、他者を支配して利益を得る者が損失も負担すべきという報償責任の原理に基づくものと解されるところ、一審被告が本件労働者らを支配して利益を得 ていたことに変わりはないから、前記判断を左右しない。 また、下請・孫請企業は、本件労働者らが長崎造船所で提供した労務の成果を収受していたと認め難い。仮に本件労働者らを指揮監督して当該成果の一部を収受していたとしても、一審被告と連帯して安全配慮義務を負うことがあるにすぎないから、これも前記判断を左右しない。 一審被告の上記主張は、採用することができない。 イ一審被告は、仮に本件労働者らに対して安全配慮義務を負っていたとしても、下請・孫請企業には履行が困難な換気装置の設置等に限られ、下請・孫請企業にも履行が容易な防じんマスクやフィルターの支給と着用の指導等は含まれなかった旨主張する。 全配慮義務を負っていたとしても、下請・孫請企業には履行が困難な換気装置の設置等に限られ、下請・孫請企業にも履行が容易な防じんマスクやフィルターの支給と着用の指導等は含まれなかった旨主張する。 しかし、下請・孫請企業が本件労働者らにおいて長崎造船所で提供した労務の成果を収受していたとは認め難く、本件労働者らに対して安全配慮義務を負っていたと認め難いこと、仮に負っていたとしても、一審被告と連帯して負うにすぎないことは、前記アと同様である。 一審被告の上記主張は、採用することができない。 5 一審被告の本件労働者らに対する安全配慮義務違反の有無・期間 ⑴ 安全配慮義務違反の有無・始期前記3で認定した事実によれば、一審被告は、遅くとも昭和24年から長崎造船所で各種粉じん対策を講じていたが、漸次的なものであった上、高度経済成長期には、労働者らに混在作業を度々行わせたことから、工場内や船内でなお多くの粉じんが生じていた。実際、昭和29年当時、工場内や船内 の各所で許容濃度を上回る粉じんが生じ、有所見者もけい肺で42名以上、じん肺で21名以上確認され、その後も同様の状況であった(甲132、137~141、乙90)。そして、じん肺有所見率は、昭和35年以降、増加していった。 これらの事実を総合すれば、一審被告は、本件労働者らに対して本件安全 配慮義務を負うようになった昭和29年4月以降、必要な粉じん対策を、本件労働者らの生命及び健康等に対する危険性が除去されるまで十分に尽くしていなかったと認められ、本件安全配慮義務に違反していたというべきである。 ⑵ 安全配慮義務違反の終期 前記認定事実によれば、一審被告は、昭和29年以降も長崎造船所で各種粉じ ていなかったと認められ、本件安全配慮義務に違反していたというべきである。 ⑵ 安全配慮義務違反の終期 前記認定事実によれば、一審被告は、昭和29年以降も長崎造船所で各種粉じん対策を継続していたところ、昭和48年以降は工場内や船内の粉じんが減少するとともに、翌49年にはじん肺有所見率も減少へ転じ、昭和52年には1%強まで減少した。 しかし、同年のじん肺有所見者は、なお50名いた。また、一審被告は、 漸次的な粉じん対策を講じ続けた上、この頃から労働者らに再び混在作業を行わせたことから、工場内や船内で再び粉じんが多く生じるようになり、じん肺有所見率も昭和53年に増加へ転じ、平成4年に約11%となった。 もっとも、一審被告は、平成7年から平成21年2月にかけて、4次に及ぶ大型の粉じん対策として計約17億円を投じる200件以上の排気・換気 対策を講じたことから、じん肺の有所見率は平成11年に約13%まで、有 所見者数も翌12年に398名まで、それぞれ増加したが、その後は有所見者数や有所見率が減り続け、平成30年には5名となって1%を下回った。 これらの事実を総合すれば、一審被告は、大型の粉じん対策を講じていた平成21年2月までは、必要な粉じん対策を本件労働者らの生命及び健康等に対する危険性が除去されるまで十分に尽くしていなかったと認められ、本 件安全配慮義務に違反していたというべきである。他方、一審被告は、上記対策を終えた同年3月以降は、必要な粉じん対策を上記危険性が除去されるまで十分に尽くしていなかったと認められず、本件安全配慮義務に違反していたといえない。 ⑶ 一審被告の主張に対する判断 ア一審被告は、昭和49年以降、工場内や船内の粉じんが許容濃度を 分に尽くしていなかったと認められず、本件安全配慮義務に違反していたといえない。 ⑶ 一審被告の主張に対する判断 ア一審被告は、昭和49年以降、工場内や船内の粉じんが許容濃度を下回っていた旨主張する。 証拠(甲155~160、乙133~138、423、436)によれば、粉じん濃度の測定値は、昭和49年以降、許容濃度をおおむね下回っていたことが認められるところ、それが昭和50年前後までは造船需要の 低下によるものであることは、前記3⑶認定のとおりである。 しかし、その後の測定値は、じん肺有所見者数・有所見率の増加やその対策等をめぐる労働組合と一審被告間の交渉、一審被告による大型粉じん対策の実施といった事実と整合しない。一審被告は、昭和52年に単位作業場所の粉じん濃度が均一でなければ粉じん作業地点から約2m(=1.5 m×√2)以内の地点でも粉じん濃度を測定する旨等を作業環境測定要領で定め(乙423)、測定結果を年報で発表していたにもかかわらず、昭和56年から発表しなくなり(甲157~161)、粉じん作業地点から10m以上離れた製造ブロック外の地点で粉じん濃度を測定していたことを総合すれば(乙436)、粉じん濃度の測定値が許容濃度を下回るように していたものと推認することができる。 一審被告の上記主張は、採用することができない。 イ一審被告は、平成以降に管理3へ進んだ管理2のじん肺有所見者が数名にすぎなかったので、ほとんどがじん肺に罹患していなかった旨主張する。 弁論の全趣旨によれば、管理3のじん肺有所見者は、平成7年から平成30年までの24年間に年平均約0.3名が確認されるにとどまったこと が認められる。 しかし、管理2以上 弁論の全趣旨によれば、管理3のじん肺有所見者は、平成7年から平成30年までの24年間に年平均約0.3名が確認されるにとどまったこと が認められる。 しかし、管理2以上のじん肺有所見者は、後記第8の1⑵イのとおり、じん肺への罹患が事実上推定され、この推定に合理的な疑いを抱かせる証拠はない。じん肺は、治療方法がなく、一般に不可逆性の疾病ではあるが、粉じんへの曝露を減らしたりなくしたりすることで進行を遅くすることは 可能であるところ(甲70、乙2の1(49・109頁)、じん肺法20条の3、21条参照)、一審被告は、前記3⑶認定のとおり、平成に入った頃から、管理2のじん肺有所見者のうち約4分の1に作業転換等の措置を毎年講じ、管理3への進行を防いでいたことがうかがわれる。 一審被告の上記主張は、採用することができない。 6 したがって、一審被告は、昭和29年4月から平成21年2月までのうち本件労働者らが長崎造船所の粉じん環境で就労していた期間、本件労働者らそれぞれに対し、本件安全配慮義務に違反した。本件労働者らそれぞれに対する安全配慮義務違反の期間をまとめると、別紙5認定判断表の安全配慮義務違反期間欄記載のとおりとなる。 第8 争点②(じん肺及び続発性気管支炎への罹患等の有無)についての判断 1 じん肺への罹患の有無⑴ じん肺の種類及び特徴原判決第5の3⑴を引用ただし、ウ(イ)abの各「線条影」をいずれも「線状影」と、エ(ア)の 「帰化」を「気化」と、それぞれ改める。 ⑵ 管理区分決定によるじん肺への罹患の推定と反証の可否ア管理区分決定の流れとその効果等(乙1、2、57)常時粉じん作業に従事する労働者等は、3 、それぞれ改める。 ⑵ 管理区分決定によるじん肺への罹患の推定と反証の可否ア管理区分決定の流れとその効果等(乙1、2、57)常時粉じん作業に従事する労働者等は、3年又は1年に1回、じん肺健康診断を受ける必要がある(じん肺法8条)。 上記健康診断を行う医師は、じん肺法令や旧労働省が作成したじん肺診 査ハンドブック(甲1)に基づき、粉じん作業職歴の調査とX線写真による検査を行い、上記X線写真と同省が作成したじん肺標準X線フィルム(甲127)を対比する。上記調査と当該対比によってじん肺やその疑いの所見があると診断できると、胸部に関する臨床検査(既往歴の調査、胸部の自覚症状及び他覚所見の有無の検査)と肺機能検査(スパイロメトリ ー及びフローボリューム曲線による検査等)等も行い、これらの結果を記載したじん肺健康診断結果証明書(甲122)を作成する(じん肺法3条、12条、同施行規則4条、5条)。 じん肺に関し相当の学識経験を有する医師として任命された都道府県労働局所属の地方じん肺診査医は、提出された上記X線写真と上記証明書を 基礎としつつも、必要があれば追加のX線写真や検査結果証明書等の提出も受けた上で、診断又は審査をする。都道府県労働局長は、この診断又は審査に基づき、じん肺の所見やじん肺による粒状影、不整形陰影又は大陰影、肺機能障害の有無・程度等についての管理区分決定(管理1~4)をする。この処分に不服がある事業者や労働者は、審査請求や取消訴訟で争 うことができる。(じん肺法4条、13条、18~20条、39条)事業者は、管理2以上の管理区分決定を受けた労働者に対し、管理区分に応じて、粉じん曝露低減措置や作業転換措置等の努力義務、作業転換措置や転換手当支 法4条、13条、18~20条、39条)事業者は、管理2以上の管理区分決定を受けた労働者に対し、管理区分に応じて、粉じん曝露低減措置や作業転換措置等の努力義務、作業転換措置や転換手当支払、療養措置の義務を負う(じん肺法20条の2~23条)。 イ判断枠組み 管理区分決定は、前記アのとおり、じん肺健康診断の担当医が国により確立された調査と検査を行ってじん肺の所見の有無を診断し、じん肺の専門医も必要な検査を追加するなどしてじん肺による陰影等の有無を更に診断又は審査する方法によりされていること、また、事業者にじん肺の所見がある労働者への各種義務を負わせる効果があり、審査請求や取消訴訟で 争われ得ること、さらに、3年又は1年に1回は見直しの機会があることを総合すれば、慎重な判断の下にされているといえる。 これらの事情を総合すれば、管理2以上の管理区分決定を受けた労働者は、反証等によってじん肺への罹患に合理的な疑いが生じない限り、管理区分決定に相当する程度のじん肺に罹患したと事実上推定されるというべ きである。 ⑶ 当てはめ本件労働者ら17名は、前提事実⑶のとおり、昭和53年3月から平成27年12月までの間に、1回目となる管理2の管理区分決定を受けたから、遅くともその時期には管理2のじん肺に罹患したと事実上推定される。上記 決定の基礎となったじん肺健康診断担当医や地方じん肺診査医の診断・審査が誤っていたことを認めるに足りる証拠等、本件労働者ら17名がじん肺に罹患したことに合理的な疑いを抱かせる証拠はない。 ⑷ 一審被告の主張に対する判断ア一審被告は、管理区分決定につき、①労働者の健康の保持その他福祉の 増進に寄与することを目的とした行 たことに合理的な疑いを抱かせる証拠はない。 ⑷ 一審被告の主張に対する判断ア一審被告は、管理区分決定につき、①労働者の健康の保持その他福祉の 増進に寄与することを目的とした行政上の制度であり、肺の陰影と粉じん曝露量や潜伏期間、経時的変化との整合性、他の疾患等による可能性が考慮されずに機械的にされること、②X線写真が様々な組織の重なり像である上、じん肺標準X線フィルムも経年劣化したり数が少なかったりして対比が困難であることから、肺に管理区分相当の陰影のあることが推認され るだけで、管理区分相当のじん肺に罹患していることは推認されない旨主 張する。 しかし、①につき、じん肺法は、4条に「じん肺による」の文言が多数あるとおり、じん肺に罹患した労働者についてのみ具体的な健康管理措置を講じることを予定している(20条の2~23条)。また、じん肺法は、肺の陰影と粉じん曝露量や潜伏期間、経時的変化との整合性、他の疾患等 による可能性についても、定期健康診断で行う粉じん作業職歴の調査やX線写真による検査、臨床検査等で考慮することを予定している(3条、8条)。このため、管理区分決定は機械的にされていたものではない。 また、②につき、証拠(甲1(38頁)、126、127、乙2の1(74頁)、10、23)によれば、X線写真は様々な組織の重なり像であることやじ ん肺標準X線フィルムも経年劣化しているとはいえない上に、むしろ二十数枚もあることから、その対比に習熟を要することが認められる。しかし、そのような状況下で、管理2以上の管理区分決定は、上記対比等によってじん肺やその疑いの所見があると認められる労働者につき他の検査結果も考慮した上でされることを考慮すれば、反証等によってじん肺への罹患に な状況下で、管理2以上の管理区分決定は、上記対比等によってじん肺やその疑いの所見があると認められる労働者につき他の検査結果も考慮した上でされることを考慮すれば、反証等によってじん肺への罹患に 合理的な疑いが生じない限り、管理区分決定に相当するじん肺に罹患したと事実上推定されるというべきである(なお、じん肺に罹患していなかったのに管理2の管理区分決定を受けたような事例を紹介する書籍もあるが(乙16)、当該人物がじん肺に罹患していなかったことを認めるに足りる証拠はない。)。 一審被告の上記主張は、採用することができない。 イ一審被告は、CTがX線よりも高精度な検査であるところ、一審原告iを除く本件労働者ら17名の胸部CT画像には粒状影や不整形陰影がほとんど認められず、大半は血管影なので、じん肺への罹患の推定が覆る旨主張する。 証拠(甲9、76、79(44頁)、80(17頁)、乙2(76頁)、10、68、 69、186、187、450)によれば、CT(ComputedTomographyコンピューター断層撮影)は、空間分解能が通常約0.3mmまでであってX線の約0.1mmに劣るが、約0.5~10mmの厚さで撮影するので重なり像となりにくく、濃度分解能もX線より優れ、総合的にはX線よりも精度の高いことが認められる。そして、一審被告協力医は、一審原告 iを除く本件労働者ら17名が1回目となる管理2の管理区分決定を受けた後に撮影された胸部CT画像を読影した上で、粒状影や不整形陰影がほとんど認められず、認められても大半の陰影に連続性があり、血管影である旨述べている(乙54~56、412、573、584、585)。 しかし、一審原告らの協力医は、上記CT画像でも粒状影や不整形 認められず、認められても大半の陰影に連続性があり、血管影である旨述べている(乙54~56、412、573、584、585)。 しかし、一審原告らの協力医は、上記CT画像でも粒状影や不整形陰影 が認められ、大半は血管影でもない旨述べているところ(甲203、224、242)、多くの陰影に連続性があることを認めるに足りる証拠はない。仮に上記CT画像に粒状影や不整形陰影が映っていないとしても、その大きさが約0.1~0.3mmしかないために映らなかった可能性がある。その大きさが約0.3mmを超えているとしても、CTは、濃度等の 条件を調整して画像表示の対象を選択し得ることから、陰影の読影に適した条件に調整する必要があるところ(甲9、76、79(44頁)、乙2(76頁)、65~67、186、539)、上記条件自体がいまだX線ほど確立されていない上(甲76、106、116)、上記CT画像が上記条件の下に表示されたものであることを認めるに足りる証拠はない。本件労働者 ら17名のX線写真を読影してきたじん肺健康診断担当医や地方じん肺診査医は、前提事実⑶のとおり、1回目となる管理2の管理区分決定以来、じん肺の所見があると診断し続けてきたことも併せ考慮すれば、上記X線写真だけでなく上記CT画像にも粒状影や不整形陰影があったものと推認することができる。 一審被告の上記主張は、採用することができない。 ウ一審被告は、本件労働者ら17名の肺の所見が長崎造船所で従事した粉じん作業の内容と整合しないので、じん肺への罹患の推定が覆る旨主張する。 しかし、証拠(甲A3、9、11、12、B2、10~12、15~17、D2、9~11、E2、F2、11、13~15、G4、6、10、 14~16、 への罹患の推定が覆る旨主張する。 しかし、証拠(甲A3、9、11、12、B2、10~12、15~17、D2、9~11、E2、F2、11、13~15、G4、6、10、 14~16、H2、11、12、17、18、I2、7、9~12、15~17、J2、11、14、16~18、K3、12、15、16、L2、8、12、13、M4、7、13、14、N3、O2、7、11~13、P4、8、11~13、Q4、5、20、22、S2、6、12、14~16)によれば、本件労働者ら17名の肺の所見は、溶接工肺や石綿肺、 けい肺等であることが認められるところ、前記第7の3⑵⑶のとおり、長崎造船所では戦後から船殻・艤装作業や防熱作業、鋳造作業等で多くの粉じんが生じ、混在作業も行われてきたから、本件労働者ら17名は、従事していない粉じん作業に対応するじん肺にも罹患し得たといえる。 一審被告の上記主張は、採用することができない。 エ一審被告は、亡m1が肺サルコイドーシスに罹患していたので、同人におけるじん肺への罹患の推定が覆る旨主張する。 証拠(甲M1、3、4、8、11、12、16、乙M1、2、11、12、20、21)によれば、亡m1は、平成24年1月には、右胸部痛でCT検査を受けたところ、右側を優位とする両肺門リンパ節の腫大や両上肺 に粒状影、両下肺に線状網状影、両胸膜に石綿への曝露を示すプラーク等が認められ、肺に肉芽腫ができる肺サルコイドーシス及びアスベストーシス疑いと診断されたこと、平成27年12月には、上記線状網状影が不整形陰影に当たるとして、管理2の管理区分決定がされたこと、平成28年2月には、X線写真から肺サルコイドーシスによる右肺門リンパ節の腫脹 が認められたが、石綿肺と続発性気 、上記線状網状影が不整形陰影に当たるとして、管理2の管理区分決定がされたこと、平成28年2月には、X線写真から肺サルコイドーシスによる右肺門リンパ節の腫脹 が認められたが、石綿肺と続発性気管支炎への罹患も認められるとして、 労災支給決定を受けたことが認められる。 上記認定事実を総合すれば、亡m1は、じん肺と肺サルコイドーシスの双方に罹患していたといえる。じん肺が肺サルコイドーシスと両立し得ない疾病であることを認めるに足りる証拠はない。 一審被告の上記主張は、採用することができない。 オ一審被告は、亡n1が気腫合併肺線維症等に罹患していたので、同人におけるじん肺への罹患の推定が覆る旨主張する。 証拠(甲N1、5~7、12~14、17~19、乙N1、2、4、8~13、16、20~32、46、一審原告n3本人)によれば、亡n1は、昭和30年頃から1日30本ほどの喫煙をし、平成7年8月に管理2の管 理区分決定がされたところ、遅くとも平成16年以降、じん肺健康診断の際に受けたCT検査で上肺に気腫化、下肺に繊維化の所見がある旨指摘されるようになったこと、平成20年7月に続発性気管支炎への罹患も認められるとして労災支給決定を受け、この頃に喫煙もやめたこと、平成21年8月からは悪性関節リウマチ等の各種疾病で入退院を繰り返すようにな るとともに、平成22年11月頃には肺がんにも罹患し、平成24年3月、肺がんに由来する肺炎で死亡したこと、同月に行われた病理解剖では、上記所見と同様の所見が確認されたことが認められる。 上記認定事実を総合すれば、亡n1は、じん肺と悪性関節リウマチや肺がん等のいずれにも罹患していたといえる。じん肺が悪性関節リウマチや肺 がん等と両立し得な されたことが認められる。 上記認定事実を総合すれば、亡n1は、じん肺と悪性関節リウマチや肺がん等のいずれにも罹患していたといえる。じん肺が悪性関節リウマチや肺 がん等と両立し得ない疾病であることを認めるに足りる証拠はない。 一審被告協力医は、亡n1が長崎造船所の粉じん環境で就労していない前提で喫煙を原因とする気腫合併肺線維症に罹患していた旨述べるが(乙56)、前記第7の2⒁のとおり、亡n1は長崎造船所の粉じん環境で就労していたから、上記意見は前提を欠く。 一審被告の上記主張は、採用することができない。 2 続発性気管支炎への罹患の有無⑴ 続発性気管支炎の特徴(甲1(20・98頁)、70、223、乙1、2(45・53・101頁)、57、162)続発性気管支炎は、じん肺法によって創設されたじん肺の合併症であり(じん肺法2条2項、同施行規則1条3号)、じん肺診査ハンドブックによ り、1年のうち3か月以上毎日のようにせきとたんがあり、かつ、たんの量が多く、たんが膿性である疾病をいうものとされている。 じん肺に罹患すると、気道に慢性炎症性変化が生じ、せきやたんの出ることが多く、その治療は不可能であるが、細菌に感染するなどして多くのせきや膿性たんが出る場合、その治療は可能と考えられており、合併症として療 養の対象とする趣旨である(じん肺法23条)。治療法としては、鎮がい去たん薬や抗菌薬等が用いられる。 続発性気管支炎は、今日、じん肺の合併症の中で最も罹患者の多い合併症である。 ⑵ 労災支給決定による続発性気管支炎への罹患の推定と反証の可否 ア労災支給決定の流れとその効果等(甲1、222、乙2、57、162)じん肺 の多い合併症である。 ⑵ 労災支給決定による続発性気管支炎への罹患の推定と反証の可否 ア労災支給決定の流れとその効果等(甲1、222、乙2、57、162)じん肺健康診断を行う医師は、じん肺診査ハンドブックに基づき、胸部の自覚症状の有無の検査で1年のうち3か月以上毎日のようにせきとたんがあることを認め、じん肺の所見もあって続発性気管支炎にかかっている疑いがあると診断できると、たんに関する検査を行う。具体的には、起床 後おおむね1時間以内にたんを1回採取させ、量が3mℓ以上かつ膿を含むものであることを確認できれば、続発性気管支炎に罹患していると判定し、その結果も記載したじん肺健康診断結果証明書を作成する。(じん肺法3条、同施行規則7条)労働基準監督署所属の調査官は、提出された労災請求書類一式とX線写 真、上記証明書を基礎としつつも、必要があれば地方じん肺診査医に対し て意見を求め、じん肺健康診断担当医から診療録の提示等も受けるなどした上で、労働基準監督署長に対して調査結果を報告する。労働基準監督署長は、この報告に基づき、労災支給・不支給決定をする。この処分に不服がある労働者は、審査請求や再審査請求、取消訴訟で争うことができる。 (労働者災害補償保険法38~40条、46~49条) イ判断枠組み続発性気管支炎に係る労災支給決定は、前記アのとおり、じん肺健康診断の担当医が国により確立された検査を行って続発性気管支炎の罹患の有無を判定し、労働基準監督署の調査官もじん肺の専門医の意見を求めるなどして続発性気管支炎の罹患の有無を更に調査する方法によりされている こと、また、労働者に給付請求権を生じさせる効果があり、審査請求や再審査請求、取消訴訟で争われ ん肺の専門医の意見を求めるなどして続発性気管支炎の罹患の有無を更に調査する方法によりされている こと、また、労働者に給付請求権を生じさせる効果があり、審査請求や再審査請求、取消訴訟で争われ得ること、さらに、3年又は1年に1回は管理区分決定と共に見直しの機会があることを総合すれば、慎重な判断の下にされているといえる。 これらの事情を総合すれば、続発性気管支炎に係る労災支給決定を受け た労働者は、反証等によって続発性気管支炎への罹患に合理的な疑いが生じない限り、罹患認定日に続発性気管支炎へ罹患したと事実上推定されるというべきである。 ⑶ 当てはめア亡p1を除く本件労働者ら17名は、前提事実⑶のとおり、平成19年1 0月から平成28年5月までの間に続発性気管支炎へ罹患したとして最初の労災支給決定を受けたから、遅くともその時期には続発性気管支炎に罹患したと事実上推定される。上記決定の基礎となったじん肺健康診断担当医の判定や労働基準監督署調査官の調査報告が誤っていたことを認めるに足りる証拠等、亡p1を除く本件労働者ら17名が続発性気管支炎に罹患し たことに合理的な疑いを抱かせる証拠はない。 イ亡p1は、前提事実⑶タのとおり、平成28年7月に続発性気管支炎へ罹患したとして最初の労災支給決定を受けたが、そのたんに関する検査で朝から昼にかけてたんを数回採取して提出したから(亡p1本人)、起床後おおむね1時間以内に1回採取したたんとはいえず、亡p1がその時期に続発性気管支炎に罹患したことに合理的な疑いを抱かせる証拠があるといえる。 もっとも、亡p1は、平成31年1月9日、たんに関する検査で3mℓの膿性痰(P2)を採取して提出し、続発性気管支炎に罹患していると判定され 理的な疑いを抱かせる証拠があるといえる。 もっとも、亡p1は、平成31年1月9日、たんに関する検査で3mℓの膿性痰(P2)を採取して提出し、続発性気管支炎に罹患していると判定されたから(甲P11)、遅くとも上記同日には続発性気管支炎に罹患したと認められる。亡p1が上記検査においてもたんを数回採取して提出するなど、上記判定が誤っていたことを認めるに足りる証拠はない。 ⑷ 一審被告の主張に対する判断ア一審被告は、労災支給決定につき、労働者の健康の保持その他福祉の増進に寄与することを目的とした行政上の制度であり、細菌検査を要件とせず、じん肺健康診断担当医によるたんの目視という簡便な方法で機械的にされることから、続発性気管支炎に罹患したことは推認されない旨主張す る。 しかし、労働者災害補償保険法は、疾病の場合、7条1項に「疾病…に関する保険給付」の文言が複数あるとおり、疾病にかかった労働者についてのみ保険給付を行うことを予定している(1条)。また、じん肺診査ハンドブック(甲1(98頁))や労働者災害補償保険法(49条等)は、たん が出て、それが膿性であることについても、じん肺健康診断担当医による目視だけでなく、同医による問診や聴診による臨床検査、労働基準監督署調査官による診療録の検査等で考慮することを予定している。このため、労災支給決定は機械的にされるものではない。 一審被告の上記主張は、採用することができない。 イ一審被告は、本件労働者ら17名のじん肺健康診断担当医において、① 上記労働者らにせきとたんが3か月以上続くか経過観察していない、②管理2で続発性気管支炎に罹患することはほとんどなく、罹患しても短期間で治癒するのに、何年も罹患中と判定 診断担当医において、① 上記労働者らにせきとたんが3か月以上続くか経過観察していない、②管理2で続発性気管支炎に罹患することはほとんどなく、罹患しても短期間で治癒するのに、何年も罹患中と判定しているので、続発性気管支炎への罹患の推定が覆る旨主張する。 しかし、①につき、続発性気管支炎は、じん肺法によって創設され、じ ん肺診査ハンドブックによって具体化された疾病であるところ、じん肺診査ハンドブックは、せきとたんが1年のうち3か月以上続くことを問診等の臨床検査で確認することとし、3か月以上経過観察することを求めていないから、経過観察は不要である。 また、②につき、証拠(甲222、乙2(53頁))によれば、続発性気管 支炎は、細菌への感染だけでなく気管支壁の肥厚等も原因と考えられており、症状の消長が繰り返され、難治性の疾病であることが認められる。管理2で続発性気管支炎に罹患することはほとんどなく、罹患しても短期間で治癒することを認めるに足りる証拠はない。本件労働者ら17名も、前提事実⑶のとおり、最初の労災支給決定以来、じん肺健康診断担当医から 続発性気管支炎に罹患していると判定され続けるとともに、国から治癒していない前提で労災保険金を受給し続けてきたことを考慮すれば、細菌感染以外の原因によって続発性気管支炎に罹患したものとうかがわれる。 一審被告の上記主張は、採用することができない。 ウ一審被告は、一審原告a・d・g及び亡m1のじん肺健康診断担当医におい て、上記労働者らの唾液や鼻水が採取されただけで、たんが採取されなかったのに、たんとして扱ったので、続発性気管支炎への罹患の推定が覆る旨主張する。 証拠(甲240、乙482、483、A25、D9、G5、M6)に 鼻水が採取されただけで、たんが採取されなかったのに、たんとして扱ったので、続発性気管支炎への罹患の推定が覆る旨主張する。 証拠(甲240、乙482、483、A25、D9、G5、M6)によれば、一審原告a・d・g及び亡m1のじん肺健康診断担当医は、最初の各労 災支給決定を受けるに先立ち、上記労働者らによる肺がんへの罹患の有無 を調べるため、提出された呼吸器の分泌液を喀痰細胞診検査に出したところ、肺にある肺胞組織球が認められず、むしろ口内にある扁平上皮細胞が多く認められ、検体として不適格との報告を受けたことが認められる。 しかし、上記報告は、検体が肺の分泌液でないことを意味するにすぎず、下気道の分泌液であるたんでないことまで意味するものではない(乙57 8、579)。じん肺診査ハンドブックは、前記アのとおり、提出された呼吸器の分泌液がたんであることを目視や問診、聴診で確認することを予定しており、本件労働者ら17名のじん肺健康診断担当医も、たんの該当性を目視や問診、聴診で確認していたものと認められる。 一審被告の上記主張は、採用することができない。 エ一審被告は、本件労働者ら17名のじん肺健康診断担当医において、当該労働者らが細菌感染していないのに、膿性たんとして扱った、CRP値もほぼ正常値であり、抗菌薬も投与していないので、続発性気管支炎への罹患の推定が覆る旨主張する。 証拠(乙617、A34、38、B6、8、13、D2、10、12、 E19、20、28、F10、11、13、24、G2、7、13、H10、13、I11、18、20、22、J17、19、26、K4、18、21、L3、21、33、M7、8、24、N19、43、48、O14、16、17、25、P5 1、13、24、G2、7、13、H10、13、I11、18、20、22、J17、19、26、K4、18、21、L3、21、33、M7、8、24、N19、43、48、O14、16、17、25、P5、Q16、18、25、S4、11、19)によれば、一審原告a・hを除く本件労働者ら17名のじん肺健康診断担当医 は、最初の各労災支給決定を受けるに先立ち、上記労働者らによる細菌等への感染の有無を調べるため、提出されたたんを細菌等検査に出したところ、一審原告oと亡n1以外は目的とした細菌等が認められず、むしろ口腔常在菌等が認められる旨の報告を受けたこと、本件労働者ら17名は、当時、炎症反応の有無・程度を示すCRP値がおおむね正常値で、その後も 抗菌薬を投与されていなかったことが認められる。 しかし、上記報告は、検体に目的とした細菌等がなかったことを意味するにすぎず、およそ細菌等がなかったことを意味するものではない(甲240)。また、続発性気管支炎は、前記イのとおり、細菌感染以外にも原因があると考えられており、その場合は、細菌等検査で細菌等が認められず、CRP値も正常値となり、抗菌薬を投与する必要もないことになる。 上記認定事実を総合すれば、本件労働者ら17名は、細菌感染以外の原因によって続発性気管支炎に罹患したものと推認することができる。 一審被告の上記主張は、採用することができない。 3 じん肺及び続発性気管支炎の増悪の有無本件労働者ら17名が罹患したじん肺は、合併症である続発性気管支炎への 罹患によって増悪したといえるが、これらの症状が増悪したことを認めるに足りる証拠はない。 4 したがって、本件労働者ら17名は、遅くとも昭和53年3月から平成27年12月までの間には管理2の 罹患によって増悪したといえるが、これらの症状が増悪したことを認めるに足りる証拠はない。 4 したがって、本件労働者ら17名は、遅くとも昭和53年3月から平成27年12月までの間には管理2のじん肺に罹患し、遅くとも平成19年10月から平成31年1月までの間には続発性気管支炎に罹患した。 第9 争点③(因果関係の有無)についての判断 1 じん肺、続発性気管支炎及び肺がんの罹患に要する期間粉じん環境で作業に従事する労働者は、通常、管理2のじん肺に罹患するのには約5~10年以上を、続発性気管支炎に罹患するのには更にじん肺が進展するのに要する期間を、肺がんに罹患するのには約15年以上を、それぞれ要 すると言われている。(甲1(20頁)、3(56頁)、70、80(24・27頁)、109(43頁)、乙2(29・146・155頁)、48(29頁)、49(9頁)、197、587) 2 判断枠組み⑴ 本件労働者らの要罹患期間前記認定事実に前記第7の3で認定した長崎造船所におけるじん肺有所見 率の推移等も併せて考慮すれば、粉じん環境で作業に従事した本件労働者ら は、少なくとも、管理2のじん肺に罹患するのには7.5年を、続発性気管支炎に罹患するのには10年を、肺がんに罹患するのには15年を、それぞれ要したものと認めるのが相当である(以下、この期間を「本件要罹患期間」という。)。 ⑵ 本件安全配慮義務違反との因果関係 ア本件労働者らが昭和29年4月から平成21年2月までの間でじん肺等に罹患するまでの間に長崎造船所の粉じん環境での就労期間が本件要罹患期間以上であった場合は、特段の事情がない限り、一審被告の本件安全配慮義務違反と本件労働者らによるじん肺等の罹患との間に因果関係が認め 罹患するまでの間に長崎造船所の粉じん環境での就労期間が本件要罹患期間以上であった場合は、特段の事情がない限り、一審被告の本件安全配慮義務違反と本件労働者らによるじん肺等の罹患との間に因果関係が認められる。 なお、本件労働者らがじん肺等に罹患するまでの間に他の事業所の粉じん環境でも本件要罹患期間以上就労したとき(いわゆる択一的競合)は、民法719条1項後段の類推適用により、上記事業所の安全配慮義務違反と本件労働者らによるじん肺等の罹患との間にも因果関係が認められる可能性があり、そうでないときは、当該因果関係が認められない。 イ本件労働者らが昭和29年4月から平成21年2月までの間でじん肺等に罹患するまでの間に長崎造船所の粉じん環境で本件要罹患期間以上就労しなかった場合で、じん肺等に罹患するまでの間に他の事業所の粉じん環境でも本件要罹患期間以上就労しなかったが、長崎造船所と他の事業所を併せた粉じん環境で本件要罹患期間以上就労したとき(いわゆる重合的競 合)は、民法719条1項後段の類推適用と寄与度減責により、特段の事情がない限り、一審被告の本件安全配慮義務違反と本件労働者らによるじん肺等の罹患との間に一審被告の寄与度に応じた因果関係が認められる。 ウ本件労働者らが昭和29年4月から平成21年2月までの間でじん肺等に罹患するまでの間に長崎造船所の粉じん環境で本件要罹患期間以上就労 しなかった場合で、①じん肺等に罹患するまでの間に他の事業所の粉じん 環境でも本件要罹患期間以上就労せず、長崎造船所と他の事業所を併せた粉じん環境でも本件要罹患期間以上就労しなかったとき、②じん肺等に罹患するまでの間に他の事業所の粉じん環境で本件要罹患期間以上就労したときは、特段の事情がない限り、一審被 造船所と他の事業所を併せた粉じん環境でも本件要罹患期間以上就労しなかったとき、②じん肺等に罹患するまでの間に他の事業所の粉じん環境で本件要罹患期間以上就労したときは、特段の事情がない限り、一審被告の本件安全配慮義務違反と本件労働者らによるじん肺等の罹患との間に因果関係が認められない。 3 当てはめ前記判断枠組みで一審被告の本件安全配慮義務違反と本件労働者らによるじん肺等の罹患との間の因果関係を検討すると、別紙5認定判断表の因果関係欄記載のとおりとなる。すなわち、⑴一審原告h及び亡e1・f1・p1によるじん肺の各罹患、一審原告iによる続発性気管支炎の罹患については、前記2⑵ウ② の理由により、因果関係が認められず、⑵亡e1による続発性気管支炎の罹患については、前記2⑵イの理由により、38%(≒6.3年/計16.8年)の限度で因果関係が認められ、⑶そのほかの本件労働者らによるじん肺等の罹患については、前記2⑵アの理由により、因果関係が認められる。この判断を覆すに足りる特段の事情は認められない。 4 一審原告らの主張に対する判断一審原告らは、じん肺法が定期的なじん肺健康診断の間隔を3年と定めているので、本件要罹患期間は5年で足りる旨主張する。 しかし、訴訟上の因果関係は、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性を要する(最高裁昭和48年(オ)第517号同50 年10月24日第二小法廷判決・民集29巻9号1417頁参照)。管理2のじん肺に罹患するには、前記1のとおり、通常、約5~10年以上を要すると言われている上、前記第7の3⑶のとおり、一審被告が大型の粉じん対策を講じ始めてじん肺有所見率が減少し始めるのに7年、上記粉じん対策を完了してじん肺有所見率が1%を下 常、約5~10年以上を要すると言われている上、前記第7の3⑶のとおり、一審被告が大型の粉じん対策を講じ始めてじん肺有所見率が減少し始めるのに7年、上記粉じん対策を完了してじん肺有所見率が1%を下回るのに9年弱を要したことにも照らせば、長崎造 船所において5年で管理2のじん肺に罹患する高度の蓋然性があったとはいえ ない。じん肺法8条が定期健康診断の間隔を最長3年と定めているのは、いかなる粉じん作業が行われている事業場であっても、じん肺有所見者を早期に発見して適切な健康管理のための措置を講じることができるようにする趣旨であり(甲109(43頁)、乙1(137頁))、長崎造船所が3~5年で管理2のじん肺に罹患するような事業場であったことを認めるに足りる証拠はない。 一審原告らの上記主張は、採用することができない。 5 一審被告の主張に対する判断⑴ 一審被告は、他の事業所での粉じん環境職歴がある本件労働者らにつき、広く寄与度減責をすべき旨主張する。 しかし、本件労働者らは、前記2⑵アのように長崎造船所の粉じん環境で 本件要罹患期間以上就労した場合、その期間だけでじん肺等に罹患し得るから、因果関係の一部不存在を認めることができず、寄与度減責をする理由がない。 一審被告の上記主張は、採用することができない。 ⑵ 一審被告は、亡c1・n1につき、重度の喫煙によって肺がんに罹患したので、 因果関係がなく、少なくとも寄与度減責をすべき旨主張する。 証拠(甲C3、乙53、199~201、361、C1、2、5)によれば、喫煙は肺がんの主な要因であるとともに、累積喫煙量と肺がんの罹患率との間には相関関係があること、1日の喫煙本数に喫煙年数を乗じた喫煙指数(ブリンクマン指数)が400 361、C1、2、5)によれば、喫煙は肺がんの主な要因であるとともに、累積喫煙量と肺がんの罹患率との間には相関関係があること、1日の喫煙本数に喫煙年数を乗じた喫煙指数(ブリンクマン指数)が400を超えると肺がんに罹患する危険性が高ま り、600を超えると重度の喫煙として上記危険性が更に高まると言われていること、亡c1は、昭和39年頃から平成23年頃まで、1日35本ほどの喫煙をしていたこと(喫煙指数1645(=35本×47年))が認められる。また、亡n1は、第8の1⑷オのとおり、昭和30年頃から平成20年頃まで、1日30本ほどの喫煙をしていた(喫煙指数1590(=30本×53年))。 しかし、亡c1は、平成27年10月、久保工業等で石綿にさらされる業務 に従事したことにより平成26年3月から原発性肺がんに罹患しているとして、労災支給決定を受けた(前提事実⑶ウ、甲C10、11)。また、亡n1の遺族も、平成24年9月、亡n1がじん肺の合併症としての原発性肺がんに罹患して死亡したとして、労災支給決定を受けた(前提事実⑶セ)。このため、亡c1・n1は、労災支給決定による続発性気管支炎への罹患の推定(前記 第8の2⑵)と同様、いずれも、長崎造船所の粉じん環境で就労したことによって肺がんに罹患したと事実上推定され、これに合理的な疑いを抱かせる証拠はない。 かえって、厚生労働省は、平成24年3月以来、1年以上石綿を用いた防熱作業との混在作業等を含む石綿曝露作業に従事し、作業開始から10年以 上経過して発症した原発性肺がんにつき、乾燥肺重量1g当たり5000本以上の石綿小体が認められる場合等は業務起因性を認める旨の通達を施行しているところ、亡c1・n1の肺からは、乾燥肺重量1g当たり、亡c1で5604本 発性肺がんにつき、乾燥肺重量1g当たり5000本以上の石綿小体が認められる場合等は業務起因性を認める旨の通達を施行しているところ、亡c1・n1の肺からは、乾燥肺重量1g当たり、亡c1で5604本、亡n1で7426本の各石綿小体が認められた(甲C12、N18、乙51)。上記通達が不合理なものであることを認めるに足りる証拠はない。 そうすると、亡c1・n1は、前記2⑵アのように長崎造船所の粉じん環境で本件要罹患期間以上就労したことにより、肺がんに十分罹患し得たといえるから、因果関係の全部又は一部の不存在を認めることができず、因果関係を否定する理由や寄与度減責をする理由がない。 一審被告の上記主張は、採用することができない。 6 したがって、⑴一審原告h及び亡e1・f1・p1によるじん肺の各罹患、一審原告iによる続発性気管支炎の罹患については、因果関係が認められず、⑵亡e1による続発性気管支炎の罹患については、38%の限度で因果関係が認められ、⑶そのほかの本件労働者らによるじん肺等の罹患については、因果関係が認められる。 第10 争点④(損害の有無及び額)についての判断 1 判断枠組み証拠(甲A8、B9、C16、D8、E7、F4、G13、H10、I5、J12、K11、L7、M10、N19、O6、P10、Q19、S11、一審原告a及び亡c1・e1・m1・n1・q1を除く本件労働者ら並びに一審原告e2・n3・q2各本人)によれば、本件労働者らは、じん肺や続発性気管支炎、肺がんに より、頻発するせきやたん、息切れ等に悩まされるとともに、今後の増悪や死亡を恐れてきたこと、特に亡c1・n1は、肺がんが増悪して死亡したことが認められ、各疾病の種類や進行等に対応する精神的損害を被ったとい 頻発するせきやたん、息切れ等に悩まされるとともに、今後の増悪や死亡を恐れてきたこと、特に亡c1・n1は、肺がんが増悪して死亡したことが認められ、各疾病の種類や進行等に対応する精神的損害を被ったといえる。 上記認定事実に、一審原告らが労災支給分を除くと慰謝料と弁護士費用のみを請求していることなど本件に現れた一切の事情を併せて総合すれば、慰謝料 は、①本件安全配慮義務違反によって管理2のじん肺に罹患した者を900万円、②本件安全配慮義務違反によって続発性気管支炎に罹患した者を400万円、③本件安全配慮義務違反によって肺がん等に罹患し、かつ、その疾病によって死亡した者を2500万円とし、必要な寄与度減責をして算定するのが相当である。その上で、損害額は、後記第11で必要な過失相殺をし、後記第1 2で時効消滅していない場合、その残額に1割の弁護士費用を加えて算定するのが相当である。 2 当てはめ前記判断枠組みで本件労働者らの慰謝料を算定すると、別紙5認定判断表の慰謝料(過失相殺前)欄記載のとおりとなる。すなわち、⑴亡e1については、 前記1②と寄与度減責の理由により、152万円(=400万円×0.38)、⑵一審原告h及び亡f1・p1については、前記1②の理由により、各400万円、⑶一審原告iについては、前記1①の理由により、900万円、⑷亡c1・n1については、前記1③の理由により、各2500万円、⑸そのほかの本件労働者らについては、前記1①②の理由により、各1300万円となる。 3 当事者の主張に対する判断 ⑴ 一審原告らは、慰謝料の額を同種裁判例での認容額や特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律所定の基準慰謝料額、交通事故慰謝料額を考慮し、少なくとも一律28 判断 ⑴ 一審原告らは、慰謝料の額を同種裁判例での認容額や特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律所定の基準慰謝料額、交通事故慰謝料額を考慮し、少なくとも一律2800万円とすべき旨主張する。 しかし、本件労働者らが被った精神的損害は、前記1のとおり、各疾病の種類や進行等に関係なく同程度であるとはいえない。また、本件慰謝料の額 は、上記基準慰謝料額を上回っている上、同種裁判例での認容額や交通事故慰謝料額に比べて必ずしも少ないとはいえない。 一審原告らの上記主張は、採用することができない。 ⑵ 一審被告は、慰謝料額の算定に当たり、労災支給金を考慮すべき旨主張する。 本件慰謝料は、本件労働者らが被った精神的損害を補填するものであって、財産的損害を補填する労災支給金と異なる。一審原告らが他に請求しないことによって財産的損害を実質的に補填するものであったとしても(最高裁平成元年(オ)第1667号同6年2月22日第三小法廷判決・民集48巻2号441頁参照)、労災支給金は逸失利益を含まないなど財産的損害の一部し か補填しないから、労災支給金を考慮する理由がない。 一審被告の上記主張は、採用することができない。 4 したがって、本件労働者らに生じた過失相殺前の慰謝料の額は、⑴亡e1が152万円、⑵一審原告h及び亡f1・p1が各400万円、⑶一審原告iが900万円、⑷亡c1・n1が各2500万円、⑸そのほかの本件労働者らが各1300 万円となる。 第11 争点⑤(過失相殺の可否及び割合)についての判断 1 喫煙による過失相殺⑴ 喫煙のじん肺等に対する影響の有無と対策の経緯等かねてより、喫煙のじん肺に対する影響は未解明であるが、続発性 ⑤(過失相殺の可否及び割合)についての判断 1 喫煙による過失相殺⑴ 喫煙のじん肺等に対する影響の有無と対策の経緯等かねてより、喫煙のじん肺に対する影響は未解明であるが、続発性気管支 炎や肺がん等に対する影響はあると言われていた。このため、就労先等から 管理2以上の管理区分決定が通知された労働者には、続発性気管支炎等への罹患を防ぐため、禁煙の指導等が行われることがあった。また、平成17年には、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約が発効し、たばこの包装へ健康に対する具体的な警告が大きく表示されるようになった(以下、この表示を「警告表示」という。)。(甲216(62頁)、220、乙2(49頁)、3、 53)⑵ 本件労働者ら9名及び亡c1の喫煙歴等前記認定事実に後記証拠によって認められる事実を併せて総合すれば、次のとおりとなる。 ア一審原告bは、昭和35年頃から平成16年頃まで、1日15本ほどの 喫煙をし(喫煙指数660(=15本×44年))、その間の昭和61年4月に管理2の管理区分決定が通知された。(甲B2、5、9)イ亡c1は、昭和39年頃から平成23年頃まで、1日35本ほどの喫煙をし(喫煙指数1645(=35本×47年))、その間の平成17年にたばこの包装へ警告表示がされるようになった。(前記第9の5⑵) ウ亡e1は、昭和38年頃から平成21年頃まで、1日30本ほどの喫煙をし(喫煙指数1380(=30本×46年))、その間の平成17年にたばこの包装へ警告表示がされるようになった。(甲E2、乙E16、17、24)エ亡f1は、昭和47年頃から平成27年頃まで、1日20本ほどの喫煙をし(喫煙指数860(=20本×43年))、その間の昭 装へ警告表示がされるようになった。(甲E2、乙E16、17、24)エ亡f1は、昭和47年頃から平成27年頃まで、1日20本ほどの喫煙をし(喫煙指数860(=20本×43年))、その間の昭和54年10月に管理 2の管理区分決定が通知された。(甲F2、4、乙F7)オ一審原告hは、昭和32年頃から平成16年頃まで、1日25本ほどの喫煙をしたが(喫煙指数1175(=25本×47年))、その間には管理2の管理区分決定が通知されず、平成18年9月に通知された。(甲H5、10、乙H1、2) カ一審原告iは、昭和41年頃から平成26年頃まで、1日20本ほどの 喫煙をし(喫煙指数960(=20本×48年))、その間の平成17年にたばこの包装へ警告表示がされるようになった。(甲I2、乙I6、11、12、14、16)キ一審原告kは、昭和38年頃から平成23年頃まで、1日20本ほどの喫煙をし(喫煙指数960(=20本×48年))、その間の共栄工業での就労 期間中にじん肺に罹患している旨が通知された。(甲K3、11、乙K9)ク亡m1は、昭和27年頃から平成4年頃まで、1日15本ほどの喫煙をしたが(喫煙指数600(=15本×40年))、その間には管理区分決定がされなかった。(甲M4)ケ亡n1は、昭和30年頃から平成20年頃まで、1日30本ほどの喫煙を し(喫煙指数1590(=30本×53年))、その間の遅くとも平成10年に管理2の管理区分決定が通知された。(前記第9の5⑵、甲N1、19)コ亡p1は、昭和35年頃から平成27年頃まで、1日15本ほどの喫煙をし(喫煙指数825(=15本×55年))、その間の平成7年8月に管理2の管理区分決定が通知された。(甲P4、5 19)コ亡p1は、昭和35年頃から平成27年頃まで、1日15本ほどの喫煙をし(喫煙指数825(=15本×55年))、その間の平成7年8月に管理2の管理区分決定が通知された。(甲P4、5、10、乙P2~5) ⑶ 判断枠組み前記認定事実に前記第9の5⑵で認定した喫煙指数と肺がんに罹患する危険性の関係等も併せて考慮すれば、管理2以上の管理区分決定が通知されたりたばこの包装へ警告表示がされるようになったりした後も喫煙をし、続発性気管支炎や肺がんに罹患する前に喫煙指数600以上の重喫煙者になった 労働者には、過失があり、民法418条により、上記疾病の慰謝料から1割の過失相殺をするのが相当である(なお、第10の1③の場合は、罹患の経緯を問わず、全体の慰謝料から1割の過失相殺をするのが公平の見地から相当である。)。 ⑷ 当てはめ 一審原告h・i及び亡m1を除く本件労働者ら9名並びに亡c1は、管理2の 管理区分決定等が通知されたりたばこの包装へ警告表示がされるようになったりした後も喫煙をし、続発性気管支炎や肺がんに罹患する前に重喫煙者になったから、上記疾病の慰謝料から1割の過失相殺をするのが相当である。 他方、一審原告h及び亡m1は、続発性気管支炎に罹患する前に重喫煙者になったが、管理2の管理区分決定が通知されたりたばこの包装へ警告表示が されるようになったりした後に喫煙をしていないから、続発性気管支炎の慰謝料から過失相殺をするのが相当でない。 また、一審原告iは、たばこの包装へ警告表示がされるようになった後も喫煙をし、続発性気管支炎に罹患する前に重喫煙者になったが、一審被告との関係では上記疾病の慰謝料請求権を有していないから、過失相殺をするの が相当で この包装へ警告表示がされるようになった後も喫煙をし、続発性気管支炎に罹患する前に重喫煙者になったが、一審被告との関係では上記疾病の慰謝料請求権を有していないから、過失相殺をするの が相当でない。 その結果、本件労働者ら9名及び亡c1の慰謝料は、別紙5認定判断表の慰謝料(過失相殺後)欄記載のとおりとなる。 ⑸ 一審被告の主張に対する判断一審被告は、本件労働者らのうち亡c1など喫煙指数が特に大きな者につき、 1割を超える過失相殺をすべき旨主張する。 しかし、粉じんやじん肺の続発性気管支炎・肺がんに対する影響度と喫煙の続発性気管支炎・肺がんに対する影響度の優劣は、未解明であることに照らせば(甲220)、1割を超える過失相殺をするのが相当とはいえない。 一審被告の上記主張は、採用することができない。 2 続発性気管支炎を治療しないことによる過失相殺本件労働者ら17名は、前記第8の2⑷エのとおり、細菌感染以外の原因によって続発性気管支炎に罹患したから、抗菌薬の投与を受ける必要があったとはいえず、過失が認められない。 3 したがって、本件労働者らに生じた過失相殺後の慰謝料の額は、⑴亡e1が1 36万8000円、⑵亡f1・p1が各360万円、⑶一審原告hが400万円、 ⑷一審原告iが900万円、⑸一審原告b・kが各1260万円、⑹亡c1・n1が各2250万円、⑺そのほかの本件労働者らが各1300万円となる。 第12 争点⑥(消滅時効の成否)についての判断 1 判断枠組み雇用者の安全配慮義務違反によってじん肺に罹患したことを理由とする損害 賠償請求権の消滅時効は、管理区分についての最終の行政上の決定を受けた時から進行する(前記最高裁平成6年2月22 み雇用者の安全配慮義務違反によってじん肺に罹患したことを理由とする損害 賠償請求権の消滅時効は、管理区分についての最終の行政上の決定を受けた時から進行する(前記最高裁平成6年2月22日判決参照)。また、雇用者の安全配慮義務違反により罹患したじん肺によって死亡したことを理由とする損害賠償請求権の消滅時効は、死亡の時から進行する(最高裁平成13年(受)第1759号同16年4月27日第三小法廷判決・裁判集民事214号119頁参 照)。 さらに、じん肺法上の合併症に罹患した場合についても、じん肺によって当該合併症に罹患する蓋然性は医学的に不明である上、従前の病状に基づく損害とは質的に異なるから、上記平成16年4月27日判決の理は同様に妥当し、最初の労災支給決定を受けた時から進行するものと解される。 2 当てはめ亡c1・p1を除く本件労働者らは、前提事実⑶⑷のとおり、平成20年1月から平成28年7月までの間に続発性気管支炎に係る最初の労災支給決定を受けたりじん肺によって死亡したりし、同年4月から平成29年6月までの間に本件訴えを提起したから、その法的性質を債務不履行とする本件安全配慮義務違 反に基づく損害賠償請求権の消滅時効は完成していない。 他方、亡c1は、じん肺やその合併症に罹患していないから、前記判断枠組みが妥当しない。もっとも、亡c1は、前提事実⑶ウのとおり、平成26年3月に肺がんに罹患し、平成28年4月に本件訴えを提起したから、上記消滅時効は完成していない。 また、亡p1は、前提事実⑶タのとおり、平成28年11月に続発性気管支炎 に係る最初の労災支給決定を受けたものの、前記第8の2⑶イのとおり、その時に続発性気管支炎に罹患していたとは認められないから、前記 p1は、前提事実⑶タのとおり、平成28年11月に続発性気管支炎 に係る最初の労災支給決定を受けたものの、前記第8の2⑶イのとおり、その時に続発性気管支炎に罹患していたとは認められないから、前記判断枠組みが妥当しない。もっとも、亡p1は、同イ及び前提事実⑷のとおり、同年7月に本件訴えを提起し、平成31年1月までに続発性気管支炎に罹患したから、上記消滅時効は完成していない。 3 したがって、消滅時効は、いずれも未完成である。 第13 まとめ 1 本件労働者らの最終的な損害額(元金)は、1割の弁護士費用を加え、別紙5認定判断表の損害額(相続前)欄記載のとおりとなる。すなわち、⑴亡e1が150万4800円、⑵亡f1・p1が各396万円、⑶一審原告hが440万円、 ⑷一審原告iが990万円、⑸一審原告b・kが各1386万円、⑹亡c1・n1が各2475万円、⑺そのほかの本件労働者らが各1430万円となる。 2 一審原告らの最終的な損害額(元金)は、別紙5認定判断表の損害額(相続後)欄記載のとおりとなる。すなわち、⑴一審原告e3・e4・e5・e6・e7が各15万0480円、⑵一審原告e2が75万2400円、⑶一審原告f1承継人f3・ f4及び同p1承継人p3・p4が各99万円、⑷一審原告s1承継人s2・s3が各143万円、⑸一審原告f1承継人f2及び同p1承継人p2が各198万円、⑹一審原告q2・q3・q4・q5が各286万円、⑺一審原告hが440万円、⑻一審原告n2・n3・n4が各825万円、⑼一審原告iが990万円、⑽一審原告c2・c3が各1237万5000円、⑾一審原告b・kが各1386万円、⑿一審原告a・d・g ・j・l・m2・o・rが各1430万円となる。 第14 結論以上によれば、一審原告 原告c2・c3が各1237万5000円、⑾一審原告b・kが各1386万円、⑿一審原告a・d・g ・j・l・m2・o・rが各1430万円となる。 第14 結論以上によれば、一審原告らの請求は、債務不履行に基づき、別紙2認容額等一覧表の認容元金欄記載の慰謝料等及びこれに対する当該一覧表の認容起算日欄記載の日(一審原告p1承継人p2・p3・p4は訴状送達後に損害が生じた日の翌 日、そのほかの一審原告らは訴状送達日の翌日)から支払済みまで年5分の割 合による遅延損害金の各支払を求める限度で理由があり、そのほかはいずれも理由がない。 よって、原判決から増額又は一部認容とすべき別紙2認容額等一覧表の一審原告A及びB欄記載の一審原告らの各控訴、及び、原判決から減額とすべき一審被告の同一覧表の一審原告C欄記載の一審原告に対する控訴に基づいて原判 決を変更し、そのほかの各控訴をいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第4民事部 裁判長裁判官松田典浩 裁判官志賀勝 裁判官穗苅学は、転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官松田典浩 別紙1「当事者目録」は、掲載省略 元金起算日元金起算日一審原告a3080万円平成28年5月17日1430万円平成28年5月17日一審原告c21540万円同上1237万5000円同上一審原告c31540万円同上1237万5000円同上一審原告d3080万円同上1430万円 0万円平成28年5月17日一審原告c21540万円同上1237万5000円同上一審原告c31540万円同上1237万5000円同上一審原告d3080万円同上1430万円同上一審原告i3080万円同上990万円同上一審原告k3080万円同上1386万円同上一審原告m23080万円同上1430万円同上一審原告n21026万6666円同上825万円同上一審原告n31026万6666円同上825万円同上一審原告n41026万6666円同上825万円同上一審原告q2616万円平成28年9月10日286万円平成28年9月10日一審原告q3616万円同上286万円同上一審原告q4616万円同上286万円同上一審原告q5616万円同上286万円同上一審原告r3080万円平成29年6月16日1430万円平成29年6月16日一審原告s1承継人s2308万円平成28年9月10日143万円平成28年9月10日一審原告s1承継人s3308万円同上143万円同上一審原告e21540万円平成28年5月17日75万2400円平成28年5月17日一審原告e3308万円同上15万0480円同上一審原告e4308万円同上15万0480円同上一審原告e5308万円同上15万0480円同上一審原告e6308万円同上15万0480円同上一審原告e7308万円同上15万0480円同上一審原告g3080万円同上1430万円同上一審原告l3080万円同上1430万円同上一審原告f1承継人f21540万円平成28年5月17日198万円平成28年5月17日一審原告f1承継人f3 万円同上1430万円同上一審原告l3080万円同上1430万円同上一審原告f1承継人f21540万円平成28年5月17日198万円平成28年5月17日一審原告f1承継人f3770万円同上99万円同上一審原告f1承継人f4770万円同上99万円同上一審原告p1承継人p21540万円平成28年8月5日198万円平成31年1月10日一審原告p1承継人p3770万円同上99万円同上一審原告p1承継人p4770万円同上99万円同上C(減額に)一審原告h3080万円平成28年5月17日440万円平成28年5月17日一審原告b3080万円同上1386万円同上一審原告j3080万円同上1430万円同上一審原告o3080万円同上1430万円同上※網掛け部分は、当審主文の対象外だが、原審主文を参考記載請求認容D(同額)(別紙2)認容額等一覧表一審原告A(増額に)B(一部認容に) (別紙3)訴訟費用目録 1 第一、二審を通じて、一審原告a、同d、同g、同k、同l、同m2又は同rに生じた費用の2分の1及び一審被告に生じた費用の360分の10をそれぞれ同 一審原告の負担とする。 2 第一、二審を通じて、一審原告c2又は同c3に生じた費用の5分の1及び一審被告に生じた費用の各360分の2をそれぞれ同一審原告の負担とする。 3 第一、二審を通じて、一審原告e2に生じた費用の20分の19及び一審被告に生じた費用の360分の10を同一審原告の負担とする。 4 第一、二審を通じて、一審原告e3、同e4、同e5、同e6又は同e7に生じた費用の20分の19及び一審被告に生じた費用の各360分 生じた費用の360分の10を同一審原告の負担とする。 4 第一、二審を通じて、一審原告e3、同e4、同e5、同e6又は同e7に生じた費用の20分の19及び一審被告に生じた費用の各360分の2をそれぞれ同一審原告の負担とする。 5 第一、二審を通じて、一審原告hに生じた費用の10分の9及び一審被告に生じた費用の360分の18を同一審原告の負担とする。 6 第一、二審を通じて、一審原告iに生じた費用の10分の7及び一審被告に生じた費用の360分の14を同一審原告の負担とする。 7 第一、二審を通じて、一審原告n2、同n3又は同n4に生じた費用の5分の1及び一審被告に生じた費用の各360分の1をそれぞれ同一審原告の負担とする。 8 第一、二審を通じて、一審原告q2、同q3、同q4又は同q5に生じた費用の2分の1及び一審被告に生じた費用の各360分の2をそれぞれ同一審原告の負担とする。 9 第一、二審を通じて、一審原告s1承継人s2又は同s3に生じた費用の2分の1及び一審被告に生じた費用の各360分の1をそれぞれ同一審原告の負担とす る。 10 第一、二審を通じて、一審原告f1承継人f2又は同p1承継人p2に生じた費用の10分の9及び一審被告に生じた費用の各360分の9をそれぞれ同一審原告の負担とする。 11 第一、二審を通じて、一審原告f1承継人f3、同f4、同p1承継人p3又は同p4に生じた費用の10分の9及び一審被告に生じた費用の各360分の5をそれぞ れ同一審原告の負担とする。 12 第一、二審を通じて、上記1ないし11の一審原告らに生じたその余の各費用及び一審被告に生じた費用の360分の123を一審被告の負担とする(なお、第一、二審を通じて、一審被告に生じたその余の費用( 2 第一、二審を通じて、上記1ないし11の一審原告らに生じたその余の各費用及び一審被告に生じた費用の360分の123を一審被告の負担とする(なお、第一、二審を通じて、一審被告に生じたその余の費用(360分の60)は、一審被告のその余の一審原告ら(一審原告b、同j及び同o)に関する訴 訟費用と認める。)。 13 一審原告b、同j又は同oの控訴費用はそれぞれ同一審原告の、一審被告の同一審原告に関する控訴費用はいずれも一審被告の、各負担とする。 以上 (別紙4)不服目録 1 争点①(安全配慮義務違反の有無)について(一審原告らの主張) ⑴ 下請・孫請企業への所属が認められなかった者亡 c1 平成21年 1月~平成22年 9月豊工業平成22年10月~平成23年11月大丸工業一審原告g 昭和32年 4月~昭和36年 5月丸井工業平成12年 7月~平成15年 4月日装 一審原告h 昭和40年12月~昭和43年11月日本商工亡 p1 平成13年 2月~平成18年 8月一ノ瀬商会⑵ 長崎造船所での就労が認められなかった者亡 n1 昭和47年 9月~昭和50年 9月昭和51年 4月~昭和52年 5月小柳組 昭和52年 7月~昭和53年 3月昭和53年 7月~昭和53年 8月昭和54年 8月~昭和56年 2月興洋工業⑶ 粉じん作業への従事が認められなかった者亡 c1 平成12年10月~平成15年 9月久保工業 年 8月昭和54年 8月~昭和56年 2月興洋工業⑶ 粉じん作業への従事が認められなかった者亡 c1 平成12年10月~平成15年 9月久保工業 (一審被告の主張)⑴ 下請・孫請企業への所属、長崎造船所での就労及び粉じん作業への従事が認められた者一審原告a 昭和32年 7月~昭和40年 3月大和工業昭和42年 7月~昭和44年 6月小柳組 亡 c1 昭和39年 3月~昭和40年 4月丸菱商会 昭和55年 3月~平成12年 9月久保工業一審原告g 昭和36年 6月~昭和41年12月日本冷熱工産工業部昭和42年 1月~平成12年 6月日本冷熱一審原告h 昭和43年12月~昭和44年 3月大丸工業昭和44年 4月~昭和45年 5月日本冷熱 一審原告k 昭和41年 5月~昭和51年 3月宝和工業一審原告l 昭和37年 6月~昭和41年12月吉本協運昭和42年 1月~平成12年 1月日本冷熱平成12年 2月~平成14年 3月日装平成14年 4月~平成16年 3月船舶メンテナンス 亡 n1 昭和36年11月~昭和41年 6月大丸工業一審原告o 昭和37年 1月~昭和37年 2月崎陽工業昭和39年 3月~昭和41年 5月吉本協運昭和42年 5月~昭和49年 2月丸菱商会本部昭和55年 5月~昭和57年 昭和39年 3月~昭和41年 5月吉本協運昭和42年 5月~昭和49年 2月丸菱商会本部昭和55年 5月~昭和57年 4月長田工業 亡 p1 昭和36年 2月~昭和37年 5月日本冷熱工産工業部平成 6年11月~平成 8年 8月港栄船舶平成 8年 9月~平成12年 2月小浜総業⑵ 長崎造船所での就労及び粉じん作業への従事が認められた者亡 n1 平成13年12月~平成14年12月興洋工業 ⑶ 粉じん作業への従事が認められた者亡 e1 平成14年 1月~平成20年 4月奥田工業所亡 m1 昭和45年 5月~昭和48年12月松石電設工業昭和55年 1月~平成 6年 9月亡 n1 昭和41年 7月~昭和44年11月興洋工業 亡 q1 昭和37年 3月~昭和41年 2月長崎木装 昭和41年 7月~昭和50年12月日電昭和51年11月~昭和53年10月長崎木装昭和57年11月~昭和61年 3月一審原告r 昭和29年 4月~昭和42年 1月長崎木装昭和45年 2月~昭和47年 6月向井組 亡 f1 平成 9年 2月~平成21年 6月新星興業 2 争点②(じん肺及び続発性気管支炎への罹患等の有無)について(一審原告らの主張)⑴ じん肺への罹患・増悪が認められなかった者一審原告a・d・k・l・r、亡m1・q1 ⑵ 続発性気管支炎 び続発性気管支炎への罹患等の有無)について(一審原告らの主張)⑴ じん肺への罹患・増悪が認められなかった者一審原告a・d・k・l・r、亡m1・q1 ⑵ 続発性気管支炎への罹患・増悪が認められなかった者一審原告a・d・g・k・l・r、亡m1・q1・p1(一審被告の主張)⑴ じん肺への罹患が認められた者一審原告b・g・h・j・o、亡e1・n1・f1・p1 ⑵ じん肺に至らない程度の健康被害が認められた者一審原告a・d・k・r、亡m1・q1⑶ 続発性気管支炎への罹患が認められた者一審原告b・h・i・j・o、亡e1・n1・f1⑷ 続発性気管支炎に類する症状が認められた者 一審原告d・k・r、亡q1 3 争点③(因果関係の有無)について(一審原告らの主張)⑴ 因果関係が認められなかった者亡e1・f1・p1 ⑵ 寄与度減責がされた者 一審原告h・i、亡c1(一審被告の主張)⑴ 因果関係が認められた者一審原告a・k・o・r、亡m1・q1⑵ 寄与度減責がされた者 一審原告h・i、亡c1・n1 4 争点⑤(過失相殺の可否及び割合)について(一審被告の主張)⑴ 過失相殺が認められなかった者一審原告i・k ⑵ 過失相殺の割合が主張どおりに認められなかった者一審原告b・h、亡c1・n1(一審原告らの主張)・過失相殺が認められた者一審原告b・h、亡c1・n1 以上 (別紙5)争点④(損害)争点⑤(過失相殺)就労期間粉じん環境就労先一審被告又は下請・孫請該当性一審原告ら(肩書略) 者一審原告b・h、亡c1・n1 以上 (別紙5)争点④(損害)争点⑤(過失相殺)就労期間粉じん環境就労先一審被告又は下請・孫請該当性一審原告ら(肩書略)金額S32/7/1~S40/3/4大和工業〇S32/7/1~S40/3/4S42/7/3~S44/6/30小柳組〇S42/7/3~S44/6/30S44/7/1~S50/12/27三浦工業所〇S44/7/1~S50/12/27S61~H5秋頃福田建設7.8年7.8年罹患認定日H21/6/23H21/3/2 判断 ○○S32/6/1~H12/7/31久保工業〇S32/6/1~H12/7/3128.9年H12/10/12~H16/3/31ピーワイテック〇H12/10/12~H16/3/31H16/4/1~H22/4/7個人請負〇H16/4/1~H21/2/28罹患認定日S61/4/11H27/1/27 判断 ○○S39/3/18~S40/4/27丸菱商会本部○S39/3/18~S40/4/27S55/3/17~H12/9/30久保工業○S55/3/17~H12/9/30H21/1/5~H22/9/30豊工業○H21/1/5~2/280.2年H22/10/1~H23/11/30大丸工業○罹患認定日H26/3/3 判断 ○S43/1/19~S45/7/26佐伯鉄工所2.5年2.5年S46/3/1~H14/12/3一審被告○S46/3/1~H14/12/326.6年H15/10~H21/2/28船舶メンテナンス○H15/10~H21/2/28H21/3/1~H27/2/28本村工業○罹患認定日H9/9/30H27/3/7 判断 ○○S47 H15/10~H21/2/28船舶メンテナンス○H15/10~H21/2/28H21/3/1~H27/2/28本村工業○罹患認定日H9/9/30H27/3/7 判断 ○○S47/8~S48/5池島炭鉱0.8年0.8年e275万2400円S49/2/20~8/23共立土建0.5年0.5年e315万0480円H3/3/6~H12/5/20丸金佐藤造船9.2年9.2年e415万0480円H14/1~H20/4奥田工業所○H14/1~H20/46.3年6.3年e515万0480円罹患認定日H27/1/27H26/10/21e615万0480円 判断 ×38%e715万0480円S47/3/15~S61/11/28三菱石炭鉱業7.6年14.7年f1承継人f2198万円H9/11~H21/6新星興業○H9/11~H21/2/2811.3年f1承継人f399万円罹患認定日S54/10/4H27/8/25f1承継人f499万円 判断 ×○S32/4~S36/5/31丸井工業○S32/4~S36/5/31S36/6/1~H12/6/30(S37、38頃の約7か月半を除く)日本冷熱○S36/6/1~H12/6/30(S37、38頃の約7か月半を除く)H12/7/1~H15/3/31日装○H12/7/1~H15/3/31罹患認定日S55/3/17H25/4/15 判断 ○○まとめ認定判断表H16/11/1~H20/12/31長崎機工4.2年150万4800円損害額(相続前)1430万円2475万円1386万円1430万円g(本人)1430万円d(本人)1430万円損害額(相続後)a(本人)1430 工4.2年150万4800円損害額(相続前)1430万円2475万円1386万円1430万円g(本人)1430万円d(本人)1430万円損害額(相続後)a(本人)1430万円b(本人)1386万円c2c31237万5000円1237万5000円1430万円396万円1300万円1300万円1300万円1300万円同左同左360万円136万8000円慰謝料(過失相殺後)同左2250万円1260万円慰謝料(過失相殺前)152万円400万円2500万円亡c1一審原告d本件労働者ら争点①(安全配慮義務違反の有無)一審原告a一審原告b争点③(因果関係の有無)21.6年37.2年粉じん環境職歴51.6年16.2年じん肺続発性気管支炎肺がん安全配慮義務違反期間16.2年45.4年22.3年亡e1亡f1一審原告g 争点④(損害)争点⑤(過失相殺)就労期間粉じん環境就労先一審被告又は下請・孫請該当性一審原告ら(肩書略)金額S30/10/3~S33/8/15一審被告○S30/10/3~S33/8/152.9年2.9年S35/9/27~12/14川岸工業0.2年0.2年S39/8/1~10/10富田工業0.2年0.2年S39/11/1~12/25共進工業0.2年0.2年S40/2/1~11/13富田工業0.8年0.8年S43/12/1~S44/4/3大丸工業○S43/12/1~S44/4/3S44/4/9~S45/5/10日本冷熱○S44/4/9~S45/5/10S45/5/16~S54/11/30林兼船渠8.8年9.5年S59/6/5~H7/7/22日章工業○S59/6/5 /9~S45/5/10日本冷熱○S44/4/9~S45/5/10S45/5/16~S54/11/30林兼船渠8.8年9.5年S59/6/5~H7/7/22日章工業○S59/6/5~H7/7/2211.1年H7/7/23~H8/2/20町工場0.6年罹患認定日S54/3/16H19/10/18 判断 ×○S44/10/4~S54/1/12菱工業○S44/10/4~S54/1/129.3年9.3年S54/2/1~H3/3/31久保水道設備工業所12.2年12.2年H3/4/1~H22/6/25日進工業19.2年19.2年罹患認定日H27/3/2H28/1/6 判断 ○×S40/11~H4/7/31長崎木装○S40/11~H4/7/3112.4年H5/4~H16/5菱陽商事○H5/4~H16/5罹患認定日S53/3/23H25/10/15 判断 ○○S35頃~S41/4頃(S38/5・6頃の約2か月を除く)梶山組6.2年6.2年S41/5/2~S51/3/15宝和工業○S41/5/2~S51/3/15S51/3/18~H14/10共栄工業○S51/3/18~H14/10H14/11~H17/7/31共栄工業2.8年罹患認定日H6/12/22H23/10/4 判断 ○○S37/6/15~S41/12/26吉本協運○S37/6/15~S41/12/26S42/1/7~H12/1/31日本冷熱○S42/1/7~H12/1/31H12/2/1~H14/3/31日装○H12/2/1~H14/3/31H14/4/1~H16/3頃船舶メンテナンス○H14/4/1~H16/3頃罹患認定日S55/3/17H21/1/16 2/1~H14/3/31日装○H12/2/1~H14/3/31H14/4/1~H16/3頃船舶メンテナンス○H14/4/1~H16/3頃罹患認定日S55/3/17H21/1/16 判断 ○○S45/5/1~S48/12/14松石電設工業○S45/5/1~S48/12/143.6年3.6年S48/12/16~S54/11/30林兼造船6.0年6.0年S55/1/8~H6/9/30松石電設工業○S55/1/8~H6/9/3014.7年14.7年罹患認定日H27/12/22H27/10/22 判断 ○○本件労働者ら争点①(安全配慮義務違反の有無)争点③(因果関係の有無)まとめ粉じん環境職歴安全配慮義務違反期間じん肺続発性気管支炎肺がん慰謝料(過失相殺前)慰謝料(過失相殺後)損害額(相続前)1430万円l(本人)1430万円m21430万円990万円i(本人)990万円j(本人)1430万円k(本人)1386万円h(本人)440万円損害額(相続後)1430万円440万円1430万円1386万円同左同左1260万円同左1300万円1300万円1300万円1300万円同左同左900万円400万円17.7年41.8年38.0年28.7年36.5年一審原告l亡m11.4年1.4年一審原告h一審原告i一審原告j一審原告k 争点④(損害)争点⑤(過失相殺)就労期間粉じん環境就労先一審被告又は下請・孫請該当性一審原告ら(肩書略)金額S36/11/1~S41/6/30大丸工業〇S36/11/1~S41/6/30S41/7/1~S44/11/30興洋工業〇S41/7/1~S44/11/3 性一審原告ら(肩書略)金額S36/11/1~S41/6/30大丸工業〇S36/11/1~S41/6/30S41/7/1~S44/11/30興洋工業〇S41/7/1~S44/11/30S47/9/1~S50/9/30小柳組〇S47/9/1~S50/9/30S51/4/1~S52/5/31小柳組〇S51/4/1~S52/5/31S52/7/4~S53/3/31小柳組〇S52/7/4~S53/3/31S53/7/7~8/31小柳組〇S53/7/7~8/31S54/8/1~H11/12/31興洋工業〇S54/8/1~H11/12/31H13/12~H14/12/31興洋工業〇H13/12~H14/12/31罹患認定日H7/8/28H20/4/23H22/11 判断 ○○○S37/1/4~2/17崎陽工業〇S37/1/4~2/17S39/3/2~S41/5/19吉本協運〇S39/3/2~S41/5/19S42/5/6~S49/2/18丸菱商会本部〇S42/5/6~S49/2/18S49/3~S50/12長崎鋼業所1.8年1.8年S55/5/15~S57/4/16長田工業〇S55/5/15~S57/4/161.9年1.9年罹患認定日H23/8/30H23/6/3 判断 ○○S36/2/20~S37/5/7日本冷熱工産工業部〇S36/2/20~S37/5/71.2年1.2年S38/3/26~H1/2/28早瀬鉄工所25.9年25.9年H6/11~H8/8港栄船舶〇H6/11~H8/80.8年H8/9~H12/2小浜総業〇H8/9~H12/2H13/2~H18/8一ノ瀬商会〇H13/2~H18/8H18/9~H2 11~H8/8港栄船舶〇H6/11~H8/80.8年H8/9~H12/2小浜総業〇H8/9~H12/2H13/2~H18/8一ノ瀬商会〇H13/2~H18/8H18/9~H21/9松尾鉄鋼所3.1年罹患認定日H7/8/28H31/1/9 判断 ×○S37/3/1~S41/2長崎木装〇S37/3/1~S41/2q2286万円S41/7/14~S50/12/27日電〇S41/7/14~S50/12/27q3286万円S51/11/1~S53/10/2長崎木装〇S51/11/1~S53/10/2q4286万円S57/11/1~S61/3/20長崎木装〇S57/11/1~S61/3/20q5286万円罹患認定日S60/6/6H27/9/18s1承継人s2143万円 判断 ○○s1承継人s3143万円S29/4~S42/1/15長崎木装〇S29/4~S42/1/15S45/2/1~S47/6/20向井組〇S45/2/1~S47/6/20S47/6/21~H3/2/28長崎船舶装備〇S47/6/21~H3/2/28罹患認定日S58/4/30H28/5/11 判断 ○○【凡例】S:昭和、H:平成争点③の年数:網掛けなしは長崎造船所での罹患前就労年数、網掛けありは他の事業所での罹患前就労年数(四捨五入あり)○:あり、×:なし、%:寄与度割合(四捨五入あり)争点①(安全配慮義務違反の有無)争点③(因果関係の有無)まとめ粉じん環境職歴安全配慮義務違反期間じん肺続発性気管支炎肺がん慰謝料(過失相殺前)慰謝料(過失相殺後)損害額(相続前)損害額(相続後)1430万円r(本人)1430万円o(本人)p1承継 安全配慮義務違反期間じん肺続発性気管支炎肺がん慰謝料(過失相殺前)慰謝料(過失相殺後)損害額(相続前)損害額(相続後)1430万円r(本人)1430万円o(本人)p1承継人p4p1承継人p3p1承継人p299万円99万円198万円n4n3825万円825万円825万円n21300万円1300万円1300万円396万円1430万円2475万円1430万円1430万円同左2250万円同左同左360万円18.0年18.8年26.1年33.9年9.1年9.1年10.1年400万円2500万円29.4年34.8年34.8年亡n1一審原告o一審原告r亡q1亡p1本件労働者ら
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