主文 1 本件訴えのうち、一般旅券の発給の義務付けを求める部分を却下する。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 主位的請求(1) 原告が日本の国籍を有することを確認する。 (2) 外務大臣が原告に対して令和2年6月22日付けでした一般旅券の発給をしない旨の処分が無効であることを確認する。 (3) 外務大臣は、原告に対し、一般旅券を発給せよ。 (4) 被告は、原告に対し、904万円及びこれに対する令和4年12月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 予備的請求被告は、原告に対し、904万円及びこれに対する令和4年12月23日か ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等本件は、原告が、被告に対し、①主位的に、自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失うとの国籍法11条1項の規定は憲法に違反して無効であると主張して、(1)原告が日本の国籍を有することの確認、(2) 外務大臣が原告に対して2020年(令和2年)6月22日付けでした一般旅券の発給をしない旨の処分(以下「本件処分」という。)が無効であることの確認、(3)外務大臣が一般旅券を発給することの義務付け、並びに(4)同項の改廃をしなかった立法不作為、同項を周知しなかったこと及び原告に対する本件処分は国家賠償法(以下「国賠法」という。)上違法である旨主張して、同法1条 1項に基づき、原告の被った損害のうち904万円及びこれに対する訴状送達 の日である令和4年12月23日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金 損害のうち904万円及びこれに対する訴状送達 の日である令和4年12月23日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め、②予備的に、法務大臣が原告の国籍喪失届を不受理として原告に在留資格を付与しなかったことは国賠法上違法である旨主張して、同法1条1項に基づき、原告の被った損害のうち904万円及びこれに対する上記遅延 損害金の支払を求める事案である。 1 関係法令等の定め本件に関係する法令等の定めは、別紙2「関係法令等の定め」記載のとおりである。なお、同別紙において定める略称等は、以下においても用いることとする。 2 前提事実(争いのない事実、顕著な事実並びに後掲の証拠(枝番号のある書証については特に明記しない限り枝番号を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお、争いのない事実には証拠等を掲記しない。)(1) 当事者等ア原告は、▲年▲月▲日、日本国民である父の子として出生し、日本の国 籍を取得した者である。(甲1)イ原告は、2008年(平成20年)4月2日、カナダ市民権法5条1項に基づき、自らの申請によりカナダ市民権を取得した。(甲3の6、甲136)ウ原告は、2019年(平成31年)4月1日以降、A大学B学部の准教 授として、同大学に雇用されている。(甲2、5)(2) 原告による国籍喪失の届出に係る経緯等ア原告は、カナダ国内に居住していたが、父の介護等を見据えて、日本に戻って生活することを検討し、2018年(平成30年)10月31日、在留資格を「短期滞在」、在留期間を90日間とする上陸許可を受けて、本 邦に入国した。原告は、当初より本邦に長期にわたり在留する って生活することを検討し、2018年(平成30年)10月31日、在留資格を「短期滞在」、在留期間を90日間とする上陸許可を受けて、本 邦に入国した。原告は、当初より本邦に長期にわたり在留することを意図 していたものの、一旦本邦に入国した上で必要な手続を進める方が、在カナダ日本国領事館を通じて手続を進めるよりも迅速に手続を進めることができると考えて、「短期滞在」の在留資格による上陸許可を受けて本邦に入国したものである。(甲3の2、乙A8)イ原告は、2018年(平成30年)11月5日、東京都世田谷区C総合 支所区民課戸籍係(以下「世田谷区役所戸籍係」という。)を訪れ、カナダ市民権を保持した上で長期の在留資格の認定を受けるための手続の一環として、同日付けの国籍喪失届に係る届書(以下「本件国籍喪失届1」という。)並びに「02 April 2008」の日付及び「この書類は市民権の証明とはなりません。写真を伴う書類が市民権を証明する書類となります。」との記 載のあるカナダ外務大臣名義の書簡(以下「本件書簡」という。)を提出したが、世田谷区役所戸籍係の担当職員は、本件国籍喪失届1に受付時刻の記録をすることなく、本件国籍喪失届1と本件書簡の写しを作成した上で、これらの書類を原告に対して返戻した。(乙A2)ウ原告は、2018年(平成30年)12月14日、再度世田谷区役所戸 籍係を訪れ、同日付けの国籍喪失届に係る届書(以下「本件国籍喪失届2」という。)、本件書簡、「2007 11」との記載のある写真付きの原告のカナダ市民権カード(以下「本件市民権カード」という。)及び原告のカナダ旅券を提出したところ、世田谷区役所戸籍係の担当職員は、上記各書面の写しを作成するとともに、欄外に「受附時刻午前10時45分」と記録した上 権カード(以下「本件市民権カード」という。)及び原告のカナダ旅券を提出したところ、世田谷区役所戸籍係の担当職員は、上記各書面の写しを作成するとともに、欄外に「受附時刻午前10時45分」と記録した上 で本件国籍喪失届2を受領した。このとき、世田谷区役所戸籍係の担当職員は、原告に対し、本件市民権カードにはカナダ市民権取得年月日が記載されておらず、かつ、本件書簡に記載されている年月日を原告のカナダ国籍取得年月日と認めてよいかどうか疑義があるため、東京法務局長に対して受理照会を行う予定である旨の説明をした。(乙A2) エ原告は、2018年(平成30年)12月14日、東京入国管理局(当 時。以下同じ。)を訪れ、同局の担当職員に対し、「理由」欄に「日本国籍保有者判明による」との記載のある在留資格抹消願出書を提出した。同局の担当職員は、これを受理するとともに、原告のカナダ旅券上の上陸許可の証印に、「CANCELLED」及び「日本国籍判明により抹消」とのスタンプを押捺した。(甲3の2及び4、乙A3及び8) オ原告は、2018年(平成30年)12月17日、再度世田谷区役所戸籍係を訪れ、同係の担当職員に対し、本件国籍喪失届2に係る届出を取り下げる旨を伝えたところ、同職員は、原告に対し、前記ウの各添付書類の写しとともに本件国籍喪失届2を返戻した。(乙A2)(3) 本件処分 ア原告は、2019年(平成31年)2月12日、埼玉県入間市役所において、一般旅券の発給の申請をしたが、同月15日、これを取り下げた。 (乙A5、弁論の全趣旨)イ原告は、2019年(令和元年)12月5日、京都府旅券事務所において、一般旅券の発給の申請をした(以下「本件旅券発給申請」という。)。 ウ外務大臣(処分行政庁)は、20 論の全趣旨)イ原告は、2019年(令和元年)12月5日、京都府旅券事務所において、一般旅券の発給の申請をした(以下「本件旅券発給申請」という。)。 ウ外務大臣(処分行政庁)は、2020年(令和2年)6月22日、原告によるカナダ国籍の取得が国籍法11条1項の国籍喪失事由に該当するため、原告は日本の国籍を喪失していると認められるとして、原告に対して一般旅券の発行をしない旨の本件処分をした。(甲3の5)(4) 審査請求 原告は、2020年(令和2年)9月23日、外務大臣に対し、本件処分の取消しを求めて審査請求をした。 これに対し、外務大臣は、2022年(令和4年)12月23日、上記審査請求を棄却する旨の裁決をした。(乙A12)(5) 本件訴えの提起 原告は、2022年(令和4年)12月21日、本件訴えを提起した。(顕 著な事実)(6) 原告による再度の国籍喪失届及び在留資格の認定ア原告は、本件訴訟係属中の2023年(令和5年)5月24日、本件書簡、本件市民権カード及び原告のカナダ旅券を添付書類として、京都市D区役所において国籍喪失届を提出したところ、同届出が受理された。(甲1 36の1)イ原告は、2023年(令和5年)8月18日、大阪出入国在留管理局長から、在留資格を「日本人の配偶者等」、有効期限を「2024年(令和6年)1月29日まで」とする在留資格の変更許可を受けた。(甲137) 3 争点 (1) 主位的請求に係る争点ア国籍法11条1項が憲法に違反するか否か(争点1)イ原告が日本の国籍を有するか否か(争点2)ウ本件処分が無効であるか否か(争点3)エ国籍法11条1項の改廃に係る立法不作為が国賠法1条1項の適用上違 法か否か(争点4) 争点1)イ原告が日本の国籍を有するか否か(争点2)ウ本件処分が無効であるか否か(争点3)エ国籍法11条1項の改廃に係る立法不作為が国賠法1条1項の適用上違 法か否か(争点4)オ被告が自己の志望によって外国の国籍を取得した者に対して国籍法11条1項の規定を周知しなかったことが国賠法1条1項の適用上違法か否か(争点5)カ原告の損害の有無及びその額(争点6) (2) 予備的請求に係る争点ア法務大臣が原告の国籍喪失届を不受理として原告に在留資格を付与しなかったと評価し得るか否か、また、そのことが国賠法1条1項の適用上違法か否か(争点7)イ原告の損害の有無及びその額(争点8) 4 争点に対する当事者の主張 (1) 争点1(国籍法11条1項が憲法に違反するか否か)について(原告の主張)ア憲法10条、98条2項、31条及び11条違反について(ア) 国籍法11条1項の、憲法10条、98条2項、31条及び11条適合性に係る審査基準 a 憲法10条が日本の国籍の剥奪を委任していないと解する場合の違憲審査基準憲法10条は、日本の国籍の剥奪を法律に委任していないから、日本の国籍を剥奪する法律は、憲法10条の委任の範囲を逸脱しており、違憲無効である。ここで、条文上「剥奪」を意味する文言が明示的に は用いられていないとしても、その法律の適用によって本人の意思にかかわらず、あるいは、本人の意思に反して日本の国籍を喪失させられる事態が生じるのであれば、その法律は日本の国籍を剥奪するものにほかならず、当該法律は違憲無効となる。また、国籍喪失事由として定められた行為がされたことを根拠として日本の国籍を喪失させる 法律は、その行為者に日本の国籍を離脱する「 の国籍を剥奪するものにほかならず、当該法律は違憲無効となる。また、国籍喪失事由として定められた行為がされたことを根拠として日本の国籍を喪失させる 法律は、その行為者に日本の国籍を離脱する「真実の意図」があったことを日本政府が証明したときに限り日本の国籍を喪失させる効果が生じると解釈される必要があり、これは、適正手続保障(憲法31条)の要請である。 b 専断的な国籍剥奪の禁止に係るガイドライン 仮に、憲法10条が日本の国籍の剥奪を法律に委任しているとしても、専断的な国籍剥奪の禁止は、世界人権宣言15条2項にも定められた国際慣習法であり、憲法98条2項にも照らせば、これを誠実に遵守することは被告に課せられた責務である。また、憲法11条は基本的人権と考えられるもの全てを保障することを宣言しており、世界 人権宣言や多数の条約で保障されている専断的に国籍を剥奪されない 権利も憲法上の人権として保障される。このことは、日本政府も国会答弁において認めている。したがって、日本の国籍を剥奪する法律は、剥奪が専断的なものとならないために、国連難民高等弁務官事務所の「専断的(恣意的)な国籍剥奪」を防止するためのガイドライン(以下「専断的国籍剥奪禁止ガイドライン」という。)が示す3つの要件、 すなわち、①国籍の取り上げが法律で定められたことに適合していること、②正当な目的を達成するための最も侵害的でない手段であること及び③適正な手続に従うことの全てを満たす必要がある。 (イ) 国籍法11条1項が標記の憲法の各条項に違反しており違憲無効であること a 憲法10条が日本の国籍の剥奪を委任していないと解する場合国籍法11条1項固有の存在意義は、外国の国籍を取得した本人の意思や希望にかかわらず、自動的かつ おり違憲無効であること a 憲法10条が日本の国籍の剥奪を委任していないと解する場合国籍法11条1項固有の存在意義は、外国の国籍を取得した本人の意思や希望にかかわらず、自動的かつ強制的に日本の国籍を喪失させる点にあり、同項の適用によって、本人の意思にかかわらず、あるいは、本人の意思に反して日本の国籍を喪失させられるという事態が生 じる。また、同項は、外国の国籍を志望取得したという外形的事実のみを根拠として日本の国籍を喪失させる規定であり、その行為者に日本の国籍を離脱する「真実の意図」があったことを被告が証明した場合にのみ日本の国籍を喪失させるものであるとの限定解釈は条文上不可能である。 このように、国籍法11条1項は、日本の国籍を剥奪する規定であるから、憲法10条の委任の範囲を逸脱しており、違憲無効である。 b 専断的国籍剥奪禁止ガイドラインの適用仮に、憲法10条が日本の国籍の剥奪を法律に委任しているとしても、後記ウにおいて詳論するとおり、国籍法11条1項の採用する手 段は、「国籍変更の自由の保障」の立法目的を達成するための最も非侵 害的な手段ではないし、「複数国籍の発生防止」の立法目的は、正当な目的であるとは考え難い上に、同項の採用する手段は、立法目的を達成するための最も非侵害的な手段であるともいえない。また、同項の下では、外国の国籍を志望取得すると同時に日本の国籍が自動的に剥奪されてしまい、剥奪の正当性に関する公正な聴聞の機会は保障され ない。 したがって、国籍法11条1項は、専断的国籍剥奪禁止ガイドラインの②及び③を満たさないため、憲法98条2項、31条及び11条に違反し、憲法10条の委任の範囲を逸脱しており、違憲無効である。 イ憲法14条1項違反について 項は、専断的国籍剥奪禁止ガイドラインの②及び③を満たさないため、憲法98条2項、31条及び11条に違反し、憲法10条の委任の範囲を逸脱しており、違憲無効である。 イ憲法14条1項違反について (ア) 国籍法11条1項の憲法14条1項適合性に係る審査基準a 日本の国籍の取得に関する法律の要件によって生じた区別が、立法府に与えられた裁量権を考慮しても、なおそのような区別をすることの立法目的に合理的な根拠が認められない場合、又はその具体的な区別と上記の立法目的との間に合理的関連性が認められない場合には、 当該区別は、合理的な理由のない差別として、憲法14条1項に違反する。 b ここで、国籍法11条1項は、日本の国籍という重要な法的地位を本人の意図ないし認識とは無関係に喪失させるものであるところ、日本国民としての基盤にかかわる重要な法的地位を本人の意図ないし認 識と無関係に喪失させることが適切であるかについては慎重な検討がされるべきである。また、本件は、日本の国籍の後発的取得の要件に関する区別ではなく、もともと有する日本の国籍を喪失させるという取扱いに関する区別の合理性が問われる事案であり、かつ、本人の意思によらずに日本の国籍を喪失させるものであるから、より一層、慎 重に検討する必要がある。 c そして、区別と目的との合理的関連性は、別異の取扱いが立法目的の達成に役立たない場合だけでなく、別異の取扱いが立法目的達成に必要な限度を超えて過剰な場合等にも否定される。 (イ) 国籍法11条1項が憲法14条1項に違反しており違憲無効であること a 国籍法11条1項により生じる差別的取扱いに立法目的との合理的関連性が認められないこと(a) 国籍法は、①外国の国籍を当然取得によっ 法14条1項に違反しており違憲無効であること a 国籍法11条1項により生じる差別的取扱いに立法目的との合理的関連性が認められないこと(a) 国籍法は、①外国の国籍を当然取得によって取得した日本国民、②外国の国籍を生来的に取得した日本国民及び③自己の志望によって日本の国籍を取得した外国人には重国籍となることを認め、日 本の国籍と外国の国籍のいずれかを選択する機会を与えて、その選択によっては日本の国籍を保持し続けることを認めているにもかかわらず、自己の志望によって外国の国籍を取得した日本国民のみが、国籍法11条1項の規定に基づいて外国の国籍の取得と同時に日本の国籍を喪失するという差別的取扱いを受けている。 (b) 国籍法11条1項は、日本の国籍の喪失を求めない者についてまで日本の国籍を強制的に喪失させてしまうという点において、「国籍変更の自由の保障」という立法目的に対して過剰であるし、そもそも、上記の立法目的に資する場面の存否すら明らかでない。 したがって、前記(a)の区別は、「国籍変更の自由の保障」という 立法目的との合理的関連性を欠く。 (c) 外国の国籍の志望取得と当然取得との差異は、外国の国籍法制が本人の国籍取得の意思表示を国籍取得の要件としているか否かに起因するものであるところ、そのような外国の国籍法制の定め方の違いに応じて、日本の国籍という重要な法的地位を本人の意思に反 してでも直ちに喪失させ、複数国籍の発生を徹底して防止し、複数 国籍であり続けることをおよそ不可能にすることに合理性はない。 また、「複数国籍の発生防止」の要請は、複数国籍の発生原因によって異なるものではなく、自己の志望によって外国の国籍を取得した場合には複数国籍の発生を徹底して防止する一方で、外 に合理性はない。 また、「複数国籍の発生防止」の要請は、複数国籍の発生原因によって異なるものではなく、自己の志望によって外国の国籍を取得した場合には複数国籍の発生を徹底して防止する一方で、外国の国籍を生来的に取得した場合には複数国籍の発生を許容するという区 別にも合理性はない。また、自己の志望によって日本の国籍を取得した場合には一旦複数国籍を発生させた上でその解消を本人の意思に委ね、場合によっては複数国籍状態が残ることを許容する一方で、自己の志望によって外国の国籍を取得した場合には日本の国籍を喪失させ、徹底して複数国籍の発生を防止するという区別にも合 理性がない。 このように、前記(a)の区別は、「複数国籍の発生防止」という立法目的との合理的関連性にも欠ける。 b 「法律の不知」への対処の不平等について国籍法11条1項の適用対象者は、同項の存在を知らずに外国の国 籍を取得した場合にも一律かつ機械的に日本の国籍を喪失させられてしまう一方で、同法14条以下の国籍選択制度の適用対象者には、「法律の不知」のせいで日本の国籍を喪失することとならないように、選択催告というセーフガードが設けられている。 このように、国籍法は、自己の志望によって外国の国籍を取得する 場合に限り、「法律の不知」に対処するための手当を設けていないところ、このことに合理的な根拠はない。 c 家族関係、経済生活、社会生活が国境を越えてしまったという社会的身分に基づく幸福追求権享受に係る差別について国籍法11条1項は、日本国民のうち家族関係や経済生活、社会生 活が国境を越えてしまったという社会的身分に基づき、幸福追求権の 享受について、他の日本国民との間で差別的取扱いをしている。そして、同項の立法目的とさ ち家族関係や経済生活、社会生 活が国境を越えてしまったという社会的身分に基づき、幸福追求権の 享受について、他の日本国民との間で差別的取扱いをしている。そして、同項の立法目的とされる「国籍変更の自由の保障」や「複数国籍の発生防止」については、日本の国籍と外国の国籍の両方を持って幸福を追求するという現実の利益に優先させるべき特段の事情が認められるものではない。 d 不公平な適用が本質的に避けられないことについて国籍法11条1項は、自己の志望によって外国の国籍を取得した事実がたまたま発覚した者と、当該事実を自己申告した者にのみ適用され、それらの者のみを不利益に取り扱って日本の国籍を剥奪するものであり、厳密で公平な適用が不可能な規定である。この点に照らして も、同項の規定は、平等原則(憲法14条1項)に違反する。 e 小括以上によれば、国籍法11条1項は、憲法14条1項に違反し、違憲無効である。 ウ憲法11条、13条、22条2項及び31条違反について (ア) 日本の国籍を意思に反して剥奪する法律の違憲審査基準憲法11条は基本的人権と考えられるもの全てを保障することを宣言しており、世界人権宣言や多数の条約で保障されている専断的に国籍を剥奪されない権利も憲法上の人権として保障される。このことは、日本政府も国会答弁において認めており、日本の国籍の剥奪は憲法原理によ る制約を受け、「やむにやまれぬ政府利益を達成するために必要不可欠な場合」でなければ許されない。また、憲法11条による保障を具体化する個別規定として、憲法22条2項は、憲法13条と結びついて、「個人の意思に反して国籍の離脱を強制されない自由」すなわち「日本の国籍を離脱しない自由」を保障しており、適正手続保障(憲法3 を具体化する個別規定として、憲法22条2項は、憲法13条と結びついて、「個人の意思に反して国籍の離脱を強制されない自由」すなわち「日本の国籍を離脱しない自由」を保障しており、適正手続保障(憲法31条)の要 請から、国籍を喪失させる法律は、その行為者に日本の国籍を離脱する 「真実の意図」があったことを日本政府が証明したときに限り、日本の国籍を喪失するという効果が生じるものと解釈される必要がある。 このように、仮に、憲法10条が日本の国籍の剥奪を法律に委任していると解するとしても、その立法裁量は、憲法11条、13条及び22条2項が保障する「国籍を離脱しない自由」によって厳しく制約され、 その違憲審査に当たっては、「やむにやまれぬ政府利益を達成するために必要不可欠な場合でなければ許されない」とする基準が用いられるべきである。 (イ) 国籍法11条1項が標記の憲法の各条項に違反しており違憲無効であること a 「国籍変更の自由の保障」の立法目的について仮に、国籍法11条1項の立法目的に「国籍変更の自由の保障」が含まれるとしても、同項の下においては外国の国籍を取得することにより、直ちに日本の国籍を離脱することになるため、同項は、むしろ、国籍変更の自由を阻害するものとなる。一方、国籍変更の自由を実現 しながら、日本国民の国籍を奪うことのない立法をすることは難しくない。 したがって、国籍法11条1項の規定は、上記の目的を達成するための手段として必要不可欠なものとはいえない。 b 「複数国籍の発生防止」の立法目的について 「複数国籍の発生防止」は憲法上の要請ではないし、複数国籍の発生による弊害は根拠がないか、抽象的・観念的なおそれにとどまり、国際的にみても、複数国籍の弊害よりも有益性が重 目的について 「複数国籍の発生防止」は憲法上の要請ではないし、複数国籍の発生による弊害は根拠がないか、抽象的・観念的なおそれにとどまり、国際的にみても、複数国籍の弊害よりも有益性が重視されており、複数国籍を肯定することは、むしろ、平和主義・民主主義・人権擁護といった憲法上の要請にかなう。一方、上記の立法目的は何を犠牲にし てでも達成しなければならないほど重要なものではなく、現在におい ては、被告も重要な目的とはしていない。また、上記の立法目的を徹底して追求すれば、日本の主権者の範囲を外国の国籍法制に従属させることになり、生来の複数国籍者の人格を傷つけ、差別を助長・扇動するおそれもある。これらを総合して考慮すると、「複数国籍の発生防止」という立法目的は、当該利益のために日本の国籍を保持する権利 の制約を受け入れざるを得ないほどに強力なものとはいえず、「やむにやまれぬ政府利益」ではない。 また、国籍法11条1項によって複数国籍の発生が防止できるのは自己の志望によって外国の国籍を取得した場合のみであり、出生による場合や帰化による場合等に発生する複数国籍は防止できないため、 同項の手段は、立法目的との関係で過小包摂である。また、被告の主張するような「複数国籍の弊害」を防止するためには、必ずしも日本の国籍を剥奪して複数国籍の発生そのものを防止する必要はないのであって、同項の手段は、立法目的の達成のために必要不可欠ともいえない。 このように、国籍法11条1項の立法目的を「複数国籍の発生防止」ととらえた場合には、目的が「やむにやまれぬ政府利益」ではなく、手段も必要不可欠なものとはいえないことになる。 c 小括以上のように、「複数国籍の発生防止」という立法目的は「やむにや ま とらえた場合には、目的が「やむにやまれぬ政府利益」ではなく、手段も必要不可欠なものとはいえないことになる。 c 小括以上のように、「複数国籍の発生防止」という立法目的は「やむにや まれぬ政府利益」ではないし、仮に上記の目的や「国籍変更の自由の保障」を国籍法11条1項の立法目的ととらえるとしても、同項に定められた手段は、その立法目的を達成するために必要不可欠なものではないから、同項は、憲法11条、13条、22条2項、31条に違反し、違憲無効である。 (被告の主張) ア憲法10条、98条2項、31条及び11条の違反がないことについて(ア) 憲法10条は、国籍の得喪に関する要件をどのように定めるかについては、国籍立法の基本理念や立法主義ないし諸原則を前提としつつ、それぞれの国の歴史的沿革、伝統、社会的・経済的事情、国際社会の状況等の諸要因によって左右されるところが大きいことから、その決定を憲 法の基本原則に違反しない限度で、広く国会の定める法律に委ねる趣旨であると解され、憲法10条が国籍喪失の要件に係る法律への委任の範囲を限定していると解釈すべき根拠はない。 (イ) 原告が挙げる専断的国籍剥奪禁止ガイドラインは、各国政府等が無国籍の問題に対応する際の「解釈の法的指針」であり、拘束力のない国際 文書の1つである。国際慣習法上も、国内法により、任意の外国の国籍の取得によって原国籍を喪失することは、専断的な国籍の剥奪には当たらないと理解されている。 したがって、国籍法11条1項が国際慣習法に違反するとの原告の主張にも理由がない。 (ウ) 以上によれば、国籍法11条1項は、憲法98条2項、10条には違反しないというべきであり、その余の原告の主張は争う。 イ憲法14条1項の違反がない の原告の主張にも理由がない。 (ウ) 以上によれば、国籍法11条1項は、憲法98条2項、10条には違反しないというべきであり、その余の原告の主張は争う。 イ憲法14条1項の違反がないことについて(ア) 国籍法11条1項の憲法14条1項適合性に係る判断基準国籍法の規定が憲法14条1項に違反するのは、立法府に与えられた 区別をすることの立法目的に合理的な根拠が認められない場合又はその具体的な区別と立法目的との間に合理的関連性が認められない場合に限られるというべきである。 ここで、国籍法11条1項により生じる区別の特徴は、飽くまでも自己の志望によって外国の国籍を取得したことによって生ずるものであり、 自らの意思や努力によって変えることのできない事柄によるものではな いから、問題となる区別に合理的な理由があるか否かについて、特別に慎重な検討が求められるとはいえない。 (イ) 国籍法11条1項は憲法14条1項に違反するものではないことa 原告の主張する制度間の区別には合理性があること①外国の国籍の当然取得、②外国の国籍の生来的取得及び③日本の 国籍の志望による取得は、いずれも、国籍法11条1項の規律する外国の国籍の志望による取得の場面とは、前提となる制度の目的や趣旨が異なるから、重国籍発生防止を図る方法にも差異が生じるのは当然であり、これらを単純に比較すること自体が誤りである。この点をおくとしても、以下のとおり、上記の区別には合理性がある。 (a) 外国の国籍を当然取得した場合、当該外国の国籍の取得には本人の意思が介在していないから、当該外国の国籍の取得をもって直ちに日本の国籍を失うこととすると、何ら本人の意思を介在させることなく日本の国籍を失わせることになってしまう。そこ 外国の国籍の取得には本人の意思が介在していないから、当該外国の国籍の取得をもって直ちに日本の国籍を失うこととすると、何ら本人の意思を介在させることなく日本の国籍を失わせることになってしまう。そこで、外国の国籍を当然取得した者については、ひとまず重国籍が発生すること を許容した上で、自らの意思でどちらかの国籍を選択することを認めることを通じて、事後的に重国籍を解消させるのが相当である。 したがって、外国の国籍を当然取得した日本国民と自己の志望によって外国の国籍を取得した日本国民との間に取扱いの差異を設けることは合理的である。 (b) 外国の国籍の生来的な取得に伴う重国籍の発生につき当該個人に責任がないことは明白であるから、そのような者については、ひとまず重国籍が発生することを許容した上で、自らの意思でどちらかの国籍を選択することを認めることを通じて、事後的に重国籍を解消させるのが相当であり、この場合についても、自己の志望によっ て外国の国籍を取得した日本国民との間に取扱いの差異を設ける ことに合理性がある。 (c) 国籍法3条又は17条1項の規定により日本の国籍を取得する場合、日本の国籍の取得前から外国の国籍を有していることになるが、外国の国籍の得喪に関する要件が各国の国内管轄事項であることからすれば、そのような経緯で日本の国籍を取得した者に対して一 律に重国籍発生防止義務を課すことは相当でないため、当該外国の国籍法に我が国の国籍法11条1項のような自国籍を当然喪失する旨の規定がない場合には、ひとまず重国籍が発生することを許容した上で、自らの意思でどちらかの国籍を選択することを通じて事後的に重国籍を解消させるという制度が採用されている。上記の場 面のように、日本の国籍の取得前から外 まず重国籍が発生することを許容した上で、自らの意思でどちらかの国籍を選択することを通じて事後的に重国籍を解消させるという制度が採用されている。上記の場 面のように、日本の国籍の取得前から外国の国籍を有する場合と日本の国籍の取得後に自己の志望によって外国の国籍を取得した場合とで、重国籍発生防止の取扱いに差異を設けることは合理的である。 また、帰化により日本の国籍を志望取得しようとする外国人につ いては、国籍法5条1項5号による重国籍発生防止条件を充足することが原則であり、同条2項による特別な事情が認められて帰化の許可がされた場合であっても、日本の国籍を取得した以上、当該外国の国籍の離脱又は放棄が可能になったときは、本国の国籍を離脱又は放棄することを通じて、事後的に重国籍を解消させることとし ている。国籍の得喪の決定が各国の国内管轄事項であることから生じる制約上、国内法制で重国籍の解消を完全に実現することには限界があることからすれば、国籍法11条1項の適用場面と同法5条2項の適用場面とで取扱いに差異を設けることには合理性がある。 b 国籍法11条1項が「法律の不知」への対処について不平等を生じ させているとの原告の主張が誤りであること 国籍選択制度が適用される外国の国籍の当然取得や生来的取得は、外国の国籍の取得について本人の意思が介在することのない場面である一方、国籍法11条1項は自己の志望によって外国の国籍を取得した場面で適用されるものであり、重国籍が発生する原因なども異なるから、重国籍発生防止を図る方法にも差異が生じるのは当然であって、 目的や趣旨の異なる制度を比較する原告の主張は失当である。 また、当然取得や生来的取得によって外国の国籍を取得した者は、自らの意思によらず 発生防止を図る方法にも差異が生じるのは当然であって、 目的や趣旨の異なる制度を比較する原告の主張は失当である。 また、当然取得や生来的取得によって外国の国籍を取得した者は、自らの意思によらずに外国の国籍を取得することになるため、国籍選択の機会を与えることが合理的である一方、自己の志望によって外国の国籍を取得した者については、当該外国の国籍を取得する前に日本 の国籍か外国の国籍かを選択する機会が与えられているのであるから、外国の国籍取得後にあえて再度国籍選択の機会を与える必要性に乏しい。そして、重国籍から生じる弊害をできる限り防止し、これを解消するという観点からは、速やかに日本の国籍を喪失させることが望ましいところ、その実現を図るという国籍法11条1項の立法目的及び 立法目的達成のための手段は合理的であるから、当然取得及び生来的取得の場面と自己の志望による取得の場面とで異なる制度になっていることは何ら不合理ではない。 c 国籍法11条1項が社会的身分に基づく幸福追求権の享受について差別を生じさせているとの原告の主張が誤りであること 国籍法11条1項は、自己の志望によって外国の国籍を取得した者に適用されるものであり、原告が主張する「家族関係や経済生活、社会生活が国境を越えてしまった」点に着目して適用されるものではないから、原告の主張は前提を欠き、失当である。 また、近時、多くの国では、外国人に対して法律上の保護を与える 必要性があるとして、一定の制限はあるものの、外国人による広範な 権利の享受を認めるようになってきており、外国に移住した者や、家族関係や経済生活、社会生活が国境を越えた者について、必ず外国の国籍の取得が必要であるため、そのような者が国籍法11条1項の適用を受けざるを得ない状 めるようになってきており、外国に移住した者や、家族関係や経済生活、社会生活が国境を越えた者について、必ず外国の国籍の取得が必要であるため、そのような者が国籍法11条1項の適用を受けざるを得ない状況下に置かれているかのような原告の主張は誤りである。 d 国籍法11条1項は不公平な適用が避けられないものであり憲法14条1項に違反するとの原告の主張が誤りであること国籍法11条1項は、戸籍法上の手続等を行うことなく、自己の志望によって外国の国籍を取得した者に当然に適用され、自己の志望によって外国の国籍を取得した時点で自動的に日本の国籍を喪失するの であるから、同項が不公平な適用を行うものであるという原告の主張は前提を誤っており、失当である。 e 小括以上によれば、国籍法11条1項は、憲法14条1項には違反しないというべきであり、その余の原告の主張は争う。 ウ憲法11条、13条、22条2項及び31条の違反がないことについて(ア) 国籍得喪要件に係る広い立法裁量とこれに関する憲法適合性判断基準a 憲法10条が国籍の得喪に関する要件の定めを法律に委ねた趣旨は、国籍の得喪はそれぞれの国の歴史的沿革、伝統、社会的・経済的事情、国際社会の状況等種々の要因を考慮する必要があることから、これを どのように定めるかについて、立法府の合理的な裁量判断に委ねざるを得ないことにある。そして、国籍の得喪に起因する利益は、上記のような広範な立法裁量を下敷きにして定められた国家制度を前提とした利益にとどまるものであるから、その性質上、かかる利益に何らかの制約が課せられたとしても、それによる個人の不利益の程度は限定 的である。しかも、国籍法11条1項が適用される場合には、日本の 国籍を喪失する者による の性質上、かかる利益に何らかの制約が課せられたとしても、それによる個人の不利益の程度は限定 的である。しかも、国籍法11条1項が適用される場合には、日本の 国籍を喪失する者による自己決定が存在する。 したがって、仮に、同項について憲法13条や22条2項の適合性が問題となるとしても、その判断基準としては、立法目的とその立法目的の達成手段についての合理性が認められれば足りるというべきである。 b また、原告は、憲法22条2項等を根拠として、「日本の国籍を離脱しない自由」ないし「日本国籍を保持する権利」が保障される旨主張するが、上記の主張は、詰まるところ、「重国籍を保持する利益」を主張するものにすぎず、憲法上の根拠を欠くものである。すなわち、憲法22条2項が保障する国籍離脱の自由は、国家の構成員たる資格か らの離脱を自ら意欲する者に対して(無国籍状態が招来されない限りは)国家があえて引き留めず、妨害しないという、いわば消極的権利であり、同項の文理に照らしても、同項が、日本の国籍を有する者に対して、国籍を離脱することではなく、原告が主張するような「日本の国籍を保持する権利」を具体的に保障しているとは解し難いから、 「日本の国籍を保持する権利」、「日本の国籍を離脱しない自由」、「個人の意思に反して国籍の離脱を強制されない自由」等が憲法13条又は22条2項により保障されることを前提とする原告の主張は失当である。 (イ) 国籍法11条1項の立法目的は合理的であること a 国籍法11条1項の立法目的は、国籍変更の自由を認めるとともに、国籍の積極的抵触(重国籍の発生)を防止することにある。ここで、国籍が、国家の基本的構成要素の一つである国民、すなわち、主権の保持者であり統治権に服する者の 目的は、国籍変更の自由を認めるとともに、国籍の積極的抵触(重国籍の発生)を防止することにある。ここで、国籍が、国家の基本的構成要素の一つである国民、すなわち、主権の保持者であり統治権に服する者の範囲を画定するという問題である以上、一人の人間に対して複数の国家が対人主権を持つ、又は主権在民 の国において一人の者が複数の国に対して同時に主権を持つというこ とは、主権の考え方とは根本的に相容れないことであり、人は必ず国籍を持ち、かつ、国籍は唯一であるべきとの考え方が、国籍の本質から導かれる。重国籍の発生防止は、この国籍の本質から導かれる国際法上も認められてきた国籍立法の理想であるから、これを我が国の国籍法の立法目的の一つとして掲げることが、憲法適合性の吟味におい て不合理であるとされる余地はない。 b 重国籍の弊害等として、①外交保護権の衝突、②兵役義務の抵触、③納税義務の衝突、④適正な入国管理の阻害、⑤重婚の防止不能及び⑥単一国籍者が得られない利益を享受する者の発生の6点が挙げられるところ、これらの弊害は、重国籍という事実状態に内在する問題で あり、重国籍の発生がこれらの弊害の要因と考えられる以上、その防止を図ることを立法目的とすることは合理的である。 (ウ) 国籍法11条1項の立法目的達成の手段が合理性を有すること日本の国籍を有する者が自己の志望によって外国の国籍を取得した場合、日本の国籍を喪失させなければ、その者は必ず重国籍者となる。そ うすると、自己の志望によって外国の国籍を取得した段階で、その者の日本の国籍を喪失させ、その者が重国籍の状態に至るのを防ぐことが合理的である。したがって、国籍法11条1項の手段は、国籍変更の自由を認めるとともに重国籍の発生を防止するという同項の立法目的達成の の日本の国籍を喪失させ、その者が重国籍の状態に至るのを防ぐことが合理的である。したがって、国籍法11条1項の手段は、国籍変更の自由を認めるとともに重国籍の発生を防止するという同項の立法目的達成の手段として合理的である。 (エ) 小括以上のとおり、国籍法11条1項の立法目的は合理的であり、目的達成の手段も合理性を有するから、同項は憲法13条や22条2項等に違反するものではないというべきであり、その余の原告の主張は争う。 (2) 争点2(原告が日本の国籍を有するか否か)について (原告の主張) 国籍法11条1項は違憲無効であるから、原告はカナダ市民権を取得した後も日本の国籍を失っていない。東京入国管理局が2018年(平成30年)12月に原告のカナダ旅券に押印された「上陸許可短期滞在」のスタンプの上に「CANCELLED」というスタンプを重ね、さらに、「日本国籍判明により抹消」というスタンプを押したことからしても、被告は、原告が日 本の国籍を失っていないことを認めている。 (被告の主張)原告は、カナダ市民権法5条1項に基づき、2008年(平成20年)4月2日にカナダ市民権を取得し、これにより、国籍法11条1項に基づき、日本の国籍を喪失した。同項が憲法に違反するものでないことは、争点1に おける被告の主張のとおりであり、その余の原告の主張は争う。 (3) 争点3(本件処分が無効であるか否か)について(原告の主張)外務大臣は、必要書類を揃えた一般旅券の発給申請がされた場合、旅券法13条1項列挙事由に該当しない限り、一般旅券を発給する義務があるとこ ろ、原告について同項列挙事由該当性は認められない。本件処分は、違憲無効とされるべき国籍法11条1項を根拠とした処 旅券法13条1項列挙事由に該当しない限り、一般旅券を発給する義務があるとこ ろ、原告について同項列挙事由該当性は認められない。本件処分は、違憲無効とされるべき国籍法11条1項を根拠とした処分であるから、当然に無効である。 (被告の主張)旅券とは、「その所持人が自国民であることを発行国政府が国際的に証明 し、併せてその国民を通路故障なく旅行させ、同人に必要な保護と扶助を与えるよう関係の諸官に要請する公文書」であり、このような旅券の性質や機能を踏まえれば、旅券法に基づく旅券の発給は、申請者が日本の国籍を有していることを当然の前提とし、旅券発給の要件としていると解される。 争点1及び2における被告の主張のとおり、国籍法11条1項は憲法に違 反するものではないところ、原告は、自己の志望によってカナダ市民権を取 得し、その結果、同項に基づき、日本の国籍を喪失したものであって、原告による本件旅券発給申請が認められる余地はないから、本件処分は適法である。その余の原告の主張は争う。 (4) 争点4(国籍法11条1項の改廃に係る立法不作為が国賠法1条1項の適用上違法か否か)について (原告の主張)被告は、①複数国籍の発生防止という国籍法11条1項の立法目的の正当性が疑われることについては昭和57年までに、②外国の国籍の志望による取得の場合にのみ「法律の不知」に対するセーフガードを設けないという差別的な制度を創出することについては昭和58年までに、③同項が本人の意 思に反してでも日本の国籍を喪失させる規定であり、日本の国籍を恣意的に奪われない権利を侵害するものであることについては平成元年までに、それぞれ認識しており、又は容易に認識することができた。そして、被告は、これらを認識することにより る規定であり、日本の国籍を恣意的に奪われない権利を侵害するものであることについては平成元年までに、それぞれ認識しており、又は容易に認識することができた。そして、被告は、これらを認識することにより、同項の違憲性を容易に認識することができたし、認識すべきであった。 日本の国籍が憲法上極めて重要な地位・資格であることは、憲法の規定内容と沿革からしても明らかであり、被告は、直ちに国籍法11条1項の改廃に取り組む義務を負っていたが、故意又は重大な過失により、これを漫然と怠り、同項を存続させたものであるから、被告による上記の立法不作為は、国賠法1条1項の適用上違法となる。 (被告の主張)国籍法11条1項の立法目的は、①国籍変更の自由を認めるとともに、②国籍の積極的抵触(重国籍の発生)を防止することにあり、「自己の志望によって」外国の国籍を取得した者については、国籍変更の自由が保障されている以上、重国籍発生防止の見地から、当然に従来の国籍を放棄する意思があ るとみて、その反射的効果として日本の国籍を失うこととしたものである。 争点1における被告の主張(前記(1)(被告の主張)ウ)のとおり、上記のような同項の立法目的は合理的であり、同項が憲法上保障され又は保護されている権利利益を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反するものであることが明白であるとはいえないから、立法府が国籍法11条1項の改廃を行わなかったことが国賠法1条1項の適用上違法であるとはいえ ない。 (5) 争点5(被告が自己の志望によって外国の国籍を取得した者に対して国籍法11条1項の規定を周知しなかったことが国賠法1条1項の適用上違法か否か)について(原告の主張) 被告は、「法律の不知」により日本の国籍を喪失する て外国の国籍を取得した者に対して国籍法11条1項の規定を周知しなかったことが国賠法1条1項の適用上違法か否か)について(原告の主張) 被告は、「法律の不知」により日本の国籍を喪失するという不利益を防ぐために、昭和59年の国籍法改正で、選択催告(国籍法15条)というセーフガードを設けたが、その一方で、同法11条1項の適用対象である外国の国籍の志望取得者に関しては、そういったセーフガードを設けることはしなかったし、設けようともしなかった。 そうである以上、被告は、日本の国籍の喪失という重大な結果をもたらす同項の存在や適用場面等につき、全国民に対して効果的に周知徹底する義務を負っていたというべきである。そして、上記の周知徹底は容易であったにもかかわらず、被告は、重大な過失によってこれを怠ったものであるから、被告が自己の志望によって外国の国籍を取得した者に対して国籍法11条1 項の規定を周知しなかったことは、国賠法1条1項の適用上違法である。 (被告の主張)原告は、違法行為をしたとする「公務員」、職務上の違法行為の内容及び故意又は過失の内容を何ら明らかにしておらず、本件に国賠法1条1項を適用する余地はないから、原告の主張は失当である。 この点をおくとしても、最高裁昭和33年10月15日大法廷判決(刑集 12巻14号3313頁)は、「成文の法令が一般的に国民に対し、現実にその拘束力を発動する(施行せられる)ためには、その法令の内容が一般国民の知りうべき状態に置かれることを前提要件とするものであること、またわが国においては、明治初年以降、法令の内容を一般国民の知りうべき状態に置く方法として(中略)原則としては官報によつてなされるものと解するを 相当とすることは、当裁判所の判例とするところで またわが国においては、明治初年以降、法令の内容を一般国民の知りうべき状態に置く方法として(中略)原則としては官報によつてなされるものと解するを 相当とすることは、当裁判所の判例とするところである」と判示している。 そして、法律の公布は、行政府が法令を国民に周知させるための公知の手段であると解されているところ、国籍法11条1項については昭和59年5月25日に適法に公布されており、同項の規定は既に国民一般に周知されている。 公布を行うことのほか、特定の公務員が同項の規定を周知するために何らかの行為を行う職務上の法的義務を有すると解すべき根拠はなく、この点からしても原告の主張には理由がない。 (6) 争点6(主位的請求に係る原告の損害の有無及びその額)について(原告の主張) 原告は、被告の違法な公権力の行使によって、次のとおり、合計2億0904万円の損害を被ったものであるところ、本件訴訟においては、その一部である904万円及びこれに対する訴状送達の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 ア精神的損害 (ア) 原告は、違憲無効な国籍法11条1項の規定によって日本の国籍を喪失したものとして扱われ、その過程において被告による差別的で不当な取扱いを受けるなどして、甚大な精神的苦痛を被った。その金額を金銭に換算すると1億円を下らない。 (イ) また、原告は、被告の周知義務違反のため、国籍法11条1項を知ら ないままカナダ市民権を取得し、その結果、被告から日本の国籍がない ものとして扱われ、甚大な精神的苦痛を被った。その金額を金銭に換算すると1億円を下らない。 (ウ) さらに、原告は、在留資格がないまま日本に滞在している者として扱われ、カナダ旅券で日本を出国し ものとして扱われ、甚大な精神的苦痛を被った。その金額を金銭に換算すると1億円を下らない。 (ウ) さらに、原告は、在留資格がないまま日本に滞在している者として扱われ、カナダ旅券で日本を出国しようとすれば非正規滞在者として退去強制手続に乗せられるために自由に出国することもできず、出国してし まった場合には5年間日本に帰国することが許されないという状況に置かれることとなった。このように、原告は、自由に海外渡航をすることができず、甚大な精神的苦痛を被った。その金額を金銭に換算すると576万円を下らない(損害が顕在化した時期を原告が本件旅券発給申請をした2019年(令和元年)12月と考え、そこから2022年(令 和4年)11月までの36か月間に、1か月当たり16万円相当の精神的損害が発生したとして算定した金額である。)。 イ経済的損害原告は、被告によりカナダ旅券での海外渡航が禁じられている状況下において、被告により旅券の発給も拒否され、これにより、海外渡航が完全 にできなくなった。そのため、大学教員としての業務である海外交換留学引率、インターンシップ引率、海外学会出席などの業務の遂行が不可能となり、経済的損害を受けた。その額を金銭に換算すると、328万円を下らない(学生の海外引率4回分の機会費用160万円と、人事考課損失機会費用168万円(2019年(平成31年)4月から月4万円の人事考 課損失機会費用の3.5年分)とを合計した金額である。)。 (被告の主張)否認ないし争う。 (7) 争点7(法務大臣が原告の国籍喪失届を不受理として原告に在留資格を付与しなかったと評価し得るか否か、また、そのことが国賠法1条1項の適用 上違法か否か)について (原告の主張)原告は、国籍喪失届 告の国籍喪失届を不受理として原告に在留資格を付与しなかったと評価し得るか否か、また、そのことが国賠法1条1項の適用 上違法か否か)について (原告の主張)原告は、国籍喪失届を適法に行ったにもかかわらず不受理とされ、その結果、本来であれば適法な在留資格の申請も不受理とされた。これにより、原告は、本来であれば得られたはずの在留資格(就労又は永住資格)を得ることができなくなったのみならず、本来であれば可能なカナダ旅券での海外渡 航もできなくなった。 上記のとおり、①法務大臣が原告による適法な本件国籍喪失届1及び2を不受理としたこと(以下「違法事由①」という。)並びに②法務大臣が所管する東京入国管理局が原告による適法な在留資格変更申請を不受理としたこと(以下「違法事由②」という。)は、国賠法1条1項の適用上違法であり、違 法事由①及び②を基礎づける事実は、以下のとおりである。 ア違法事由①に係る事実(ア) 法務大臣が「市町村長が戸籍事務を処理するに当たりよるべき基準」を定めるに当たり、国籍喪失届受理の要件として戸籍法が課していない要件(外国の国籍を志望取得した年月日が記載されている書面の添付) を定めたこと(法律の委任の範囲の逸脱)すなわち、戸籍法103条2項は、外国の国籍の志望取得による国籍喪失届の届書には、「国籍喪失を証すべき書面」を添付することを求めるのみであり、外国の国籍を志望取得した年月日が記載された書面を添付することまでは求めていない。ところが、本件では、世田谷区役所戸籍 係の担当職員が、原告の提示した本件市民権カードにカナダ市民権取得の日付が記載されていなかったことを理由として、本件国籍喪失届1及び2の受理を拒否した。世田谷区役所戸籍係がこのような違法な対応に及んだのは 職員が、原告の提示した本件市民権カードにカナダ市民権取得の日付が記載されていなかったことを理由として、本件国籍喪失届1及び2の受理を拒否した。世田谷区役所戸籍係がこのような違法な対応に及んだのは、法務大臣が戸籍法3条1項に基づいて法文にない要件を定めたからである。 (イ) 法務大臣が国籍喪失届受理の要件として戸籍法が課していない前記 (ア)の要件を課すという地方公共団体による権限逸脱行為を防止するために適切な措置をとっていなかったことすなわち、仮に、法務大臣が前記(ア)の要件を定めていなかったとすれば、世田谷区役所戸籍係の担当職員又は世田谷区長が、その独自の判断により、国籍喪失届を受理するためには「外国の国籍を志望取得した年 月日が記載されている書面」の添付が必要であるとして、原告の本件国籍喪失届1及び2の受理を拒否するという権限逸脱行為に及んだことになるところ、そうすると、法務大臣は、地方公共団体によるかかる権限逸脱行為を防止するために適切な基準を設けていなかったことについての責任を負うというべきである。 (ウ) 法務大臣がカナダ市民権を志望取得した者の国籍喪失届を地方公共団体や領事館等の受付窓口が即時かつ適切に受理することができるようにするために必要な情報共有を容易に実現できるのにこれを行っていなかったことすなわち、法務省及び外務省が、帰化によるカナダ市民権取得日が市 民権宣誓の日であることや、市民権取得日が市民権証や記念文書に記載されていること等のカナダ市民権法に関する情報を把握し、それらが法務大臣を通じて世田谷区役所に共有されていれば、原告の本件国籍喪失届1は、2018年(平成30年)11月5日に速やかに受理されていたはずであるところ、法務大臣は、こうした情報収集や情報共有 れらが法務大臣を通じて世田谷区役所に共有されていれば、原告の本件国籍喪失届1は、2018年(平成30年)11月5日に速やかに受理されていたはずであるところ、法務大臣は、こうした情報収集や情報共有が阻害 される事情は何ら存しなかったにもかかわらず、これを行わなかったのであるから、本件国籍喪失届1及び2が速やかに受理されなかったことによる原告の損害は、法務大臣に帰責されるべきである。 イ違法事由②に係る事実(ア) 原告は、2018年(平成30年)12月14日、「就労ビザ」への在 留資格変更申請をしたが、東京入国管理局は、原告の国籍喪失届が受理 されていないために在留許可に関する審査ができないとの理由で不受理とした。 (イ) 法務大臣が、「国籍喪失を証すべき書面」(戸籍法103条2項柱書)を添付することができず国籍喪失届が受理されない状況に置かれた元日本人に対して在留資格を付与する制度を設けていないことは違法で ある。 すなわち、原告は、自らに非がないにもかかわらず国籍喪失届を受理されず、そのために被告の職員から不法滞在であると言われ、5年近くにわたって海外渡航のできない状態に置かれた。原告がこのような苦境に置かれたのは、被告が国籍法11条1項と戸籍法及び旅券法に関する 調和的で適切な制度設計をしてこなかった結果にほかならない。したがって、被告は、適切な制度設計を怠ったことにより原告にもたらした損害の責任を負うというべきである。 (被告の主張)ア違法事由①について (ア) 国籍喪失の届出につき、受理又は不受理の決定を行うのは法務大臣ではなく市区町村長であり、本件において法務大臣が原告の国籍喪失届を不受理としたことはない。また、法務大臣は、本件に関し、受理照会に対する回答という方 につき、受理又は不受理の決定を行うのは法務大臣ではなく市区町村長であり、本件において法務大臣が原告の国籍喪失届を不受理としたことはない。また、法務大臣は、本件に関し、受理照会に対する回答という方法(後記(イ))も含めて何ら手続に関与していない。 したがって、国(法務大臣)が原告の国籍喪失届に係る手続に関して国 賠法上の責任を負う余地はない。 そもそも、原告は、2018年(平成30年)11月5日の本件国籍喪失届1については届出を行っておらず、同年12月14日の本件国籍喪失届2については同月17日に自ら届出を取り下げたのであって、本件に関し、市区町村長たる世田谷区長においても、原告の国籍喪失届を 不受理としたものではない。原告の主張は、本件国籍喪失届1及び2が 不受理とされたことを前提としている点においても誤っている。 (イ) 前記(原告の主張)ア(ア)及び(イ)は、国籍喪失届に係る手続において国籍喪失の年月日が記載された添付書面の提出が法令上要求されていないとの理解を前提とする点において明らかに誤っている。国籍喪失届に係る手続において、国籍喪失の年月日が記載された添付書面が法令上要 求されていることは明らかであって、法務大臣において、市区町村長が国籍喪失届受理の要件として、前記(原告の主張)ア(ア)の要件を課すことを防止するために何らかの「措置」をとることが相当であったとはいえない。 また、前記(原告の主張)ア(ウ)については、市区町村長において国籍 喪失届に係る事務を含めた戸籍事務の適正迅速な処理を図るために法務大臣が関与する一般的な仕組みは存在するのであって、これに加えて原告の主張するような方法による情報共有を行う必要性は見当たらないことを看過している点において誤っている。すなわち、戸籍事務 ために法務大臣が関与する一般的な仕組みは存在するのであって、これに加えて原告の主張するような方法による情報共有を行う必要性は見当たらないことを看過している点において誤っている。すなわち、戸籍事務については、戸籍法3条1項、同条2項、同法施行規則82条等の規定に基づき、 戸籍事務の適正な処理を確保するために国が関与する一般的な仕組みが設けられている。そして、国籍喪失の届出において添付しなければならない「国籍喪失を証すべき書面」(同法103条2項)の該当性は、当該書面が国籍の喪失(喪失の年月日を含む。)を確認することのできる客観的な手段といえるかどうかという観点から判断されるべきであるところ、 市区町村長において、届出人から提出された書面が、「国籍喪失を証すべき書面」に該当する書面であるか否かについて疑義が生じた場合には、同法施行規則82条に基づいて地方法務局等に受理照会をすることができ、これにより適正迅速な処理を行い得る体制が整えられている。 本件に関し、法務大臣が、以上のような一般的な体制整備義務を超え て、カナダ市民権法に係る情報等の共有を行うために何らかの対応をす べき職務上の義務を負っていたとはいえない。 イ違法事由②について(ア) そもそも、本件において原告が主張する資格(変更)申請の不受理処分は存在しないことから、法務大臣が原告の在留資格の変更申請に係る手続に関して国賠法上の責任を負う余地はない。 (イ) 原告が主張する間接的事実(前記(原告の主張)イ(イ))について、「国籍喪失を証すべき書面」の該当性判断に当たっては、国籍の喪失(喪失の年月日を含む。)について確認する客観的な手段といえるかという観点から柔軟な取扱いがされており、原告が主張するような、外国の国籍を志望取得したこ き書面」の該当性判断に当たっては、国籍の喪失(喪失の年月日を含む。)について確認する客観的な手段といえるかという観点から柔軟な取扱いがされており、原告が主張するような、外国の国籍を志望取得したことが客観的事情から明らかであるにもかかわらず、「国籍 喪失を証すべき書面」(戸籍法103条2項)の添付ができないために国籍喪失届が受理されない場合が生じ得るとは考え難く、法務大臣が、そのような状況に置かれた元日本人がいることを想定して、在留資格を付与するための何らかの制度設計をすべきであったとの原告の主張は、その前提を欠くものであって、誤りである。 そもそも、平成30年時点において原告の国籍喪失届が受理されるに至らなかったのは、原告が同年12月14日に世田谷区役所で提出した本件国籍喪失届2を同月17日に取り下げ、その後、令和5年5月24日に至るまで国籍喪失の届出を行わなかったことによるものであり、原告は、「国籍喪失を証すべき書面」の添付ができないために「国籍喪失届 が受理されない」状況に置かれた「元日本人」に当たるとはいえないから、原告が同年8月18日まで在留資格を得ることができなかったことに関し、法務大臣の職務執行行為に国賠法上の違法があったとはいえない。 (8) 争点8(予備的請求に係る原告の損害の有無及びその額)について (原告の主張) 前記(7)(原告の主張)のとおり、法務大臣は、違法に原告の国籍喪失届を不受理とし、在留資格を付与しなかった。また、法務大臣は、カナダ市民権を志望取得した者の国籍喪失届を地方公共団体の戸籍担当窓口が即時かつ適切に受理することができるようにするために必要な情報提供等をすべきであったのにこれを怠り、この違法な不作為によって、世田谷区役所戸籍係の違 法な行為 失届を地方公共団体の戸籍担当窓口が即時かつ適切に受理することができるようにするために必要な情報提供等をすべきであったのにこれを怠り、この違法な不作為によって、世田谷区役所戸籍係の違 法な行為を引き起こし、あるいは防ぐことができなかった。 上記の違法な公権力の行使によって原告の被った損害を金銭に換算すると、次のとおり、576万円と328万円の合計額である904万円を下らない。 ア精神的損害原告は、法務大臣が原告の国籍喪失届を不受理とし、原告に在留資格を 付与しなかったことにより、「自国に帰る権利」及び「自国に入国する権利」(憲法22条2項、98条2項、市民的及び政治的権利に関する国際規約12条4項)を著しく制限され、精神的損害を受けた。その額を金銭に換算すると、576万円を下らない(損害が顕在化した時期を原告が本件旅券発給申請をした2019年(令和元年)12月と考え、そこから202 2年(令和4年)11月までの36か月間に、1か月当たり16万円相当の精神的損害が発生したとして算定した金額である。)。 イ経済的損害原告は、被告によりカナダ旅券での海外渡航が禁じられたため、海外渡航が完全にできなくなり、大学教員としての職務である海外交換留学引率、 インターンシップ引率、海外学会出席などの業務の遂行が不可能となり、経済的損害を受けた。その額を金銭に換算すると、328万円を下らない(学生の海外引率4回分の機会費用160万円と人事考課損失機会費用168万円(2019年(平成31年)4月から月4万円の人事考課損失機会費用の3.5年分)とを合計した金額である。)。 (被告の主張) 否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(国籍法11条1項が憲法に違反するか否か)について 費用の3.5年分)とを合計した金額である。)。 (被告の主張) 否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(国籍法11条1項が憲法に違反するか否か)について(1) 国籍法11条1項が、憲法10条、98条2項、31条及び11条に違反するか否かについて ア憲法10条に違反するか否かについて原告は、憲法10条は日本の国籍の剥奪を法律に委任していないから、本人の意思に反して日本の国籍を剥奪させられる旨の法律の規定は同条の委任の範囲を逸脱しているため違憲無効である旨主張する。 しかし、同条は、「日本国民たる要件は、法律でこれを定める。」と規定 し、これを受けて、国籍法は、日本国籍の得喪に関する要件を規定しているところ、憲法10条の規定は、国籍は国家の構成員としての資格であり、国籍の得喪に関する要件を定めるに当たってはそれぞれの国の歴史的事情、伝統、政治的、社会的及び経済的環境等、種々の要因を考慮する必要があることから、これをどのように定めるかについて、立法府の裁量判断に委 ねる趣旨のものであると解される(最高裁平成18年(行ツ)第135号同20年6月4日大法廷判決・民集62巻6号1367頁(以下「平成20年大法廷判決」という。)、最高裁平成25年(行ツ)第230号同27年3月10日第三小法廷判決・民集69巻2号265頁(以下「平成27年第三小法廷判決」という。))。 そして、憲法10条は、「日本国民たる要件は、法律でこれを定める。」と規定するのみであり、その文言上、日本国民たる要件に係る法律の委任の範囲について何らの限定も付していないから、日本国民が自己の志望によって外国の国籍を取得したことを理由として、本人の意思にかかわらず当然に日本の国籍を喪失させる旨の法律 民たる要件に係る法律の委任の範囲について何らの限定も付していないから、日本国民が自己の志望によって外国の国籍を取得したことを理由として、本人の意思にかかわらず当然に日本の国籍を喪失させる旨の法律の規定が、同条の委任の範囲外に なると解することはできない。 したがって、上記の原告の主張は採用できない。 イ憲法31条に違反するか否かについて原告は、国籍喪失事由として定められた行為がされたことを根拠として日本の国籍を喪失させる法律については、その行為者に日本の国籍を離脱する旨の「真実の意図」があったことを日本政府が証明したときに限り国 籍喪失の効果が生じると解することが適正手続の法理を定める憲法31条によって要請される旨主張する。そして、原告は、上記主張の根拠として、単なる財産権についてさえ法律による没収(喪失)には告知、弁解、防御の機会が必要とされているのに対し(最高裁昭和30年(あ)第2961号同37年11月28日大法廷判決・刑集16巻11号1593頁)、法律 により日本国籍を剥奪する(日本国籍を離脱しないという個人の自由を奪う)場合に、告知、弁解、防御の機会が不要であるとするのは不均衡である旨指摘する。 しかし、前記アのとおり、国籍の得喪に関する要件を定めるに当たってはそれぞれの国の歴史的事情、伝統、政治的、社会的及び経済的環境等、 種々の要因を考慮する必要があり、これらの諸要因の考慮については、その性質上、立法府の裁量判断に委ねられる。そして、国籍法11条1項は、第三者の行為によってではなく、自己の志望によって、外国の国籍を取得したときの日本の国籍の喪失について定めるものであり、刑事手続上、被告に対する附加刑として第三者の所有物を没収する場合の適正手続に係る 上記判例法理が適 、自己の志望によって、外国の国籍を取得したときの日本の国籍の喪失について定めるものであり、刑事手続上、被告に対する附加刑として第三者の所有物を没収する場合の適正手続に係る 上記判例法理が適用される場合とは手続や場面を異にするものといわざるを得ないから、上記判例法理が、国籍の得喪に関する要件を定める際の上記立法府の裁量を制約する根拠になるとはいえない。 したがって、日本の国籍を喪失させる法律の規定については、憲法31条の定めるところにより、日本の国籍を離脱する旨の「真実の意図」があ ったことを日本政府が証明したときに限り効力が生じる旨の原告の主張は、 その前提において採用することができない。 ウ憲法98条2項、11条、10条に違反するか否かについて原告は、専断的に国籍を剥奪されない権利は憲法11条によって保障されており、専断的な国籍剥奪の禁止は、世界人権宣言15条2項にも定められた国際慣習法であり、これを誠実に遵守することは被告に課せられた 責務であるところ、国籍法11条1項は、専断的国籍剥奪禁止ガイドラインの要件を充足しないから、憲法98条2項、11条に違反し、憲法10条の委任の範囲を超えるものであるとも主張する。 しかし、そもそも、世界人権宣言は、国際連合の基本的な考え方を表明したものであって、加盟国に対して法的拘束力を有するものではなく、専 断的国籍剥奪禁止ガイドラインも、各国政府等が無国籍の問題に対応する際の解釈の法的指針にすぎない。また、1997年ヨーロッパ国籍条約(乙B19)が、「何人も、ほしいままにその国籍を奪われない。」(4条c)と規定するとともに、国内法により法律上当然に国籍を喪失する旨の規定を設けてよい場合として「任意の外国国籍取得」を挙げていること(7条1 人も、ほしいままにその国籍を奪われない。」(4条c)と規定するとともに、国内法により法律上当然に国籍を喪失する旨の規定を設けてよい場合として「任意の外国国籍取得」を挙げていること(7条1 項a)からしても、国際慣習法上、自己の志望によって外国の国籍を取得した場合に当然に従来の国籍を喪失させることが専断的な国籍剥奪に該当して許されないとする確立した原則が存在するとはいえない。また、後記(2)イのとおり、憲法10条が日本の国籍の得喪に関する要件を立法府の裁量判断に委ねている以上、そのような立法府の裁量によって付与される地 位について、憲法11条に基づいて直ちに何らかの権利(専断的に国籍を剥奪されない権利)が保障されるものとは解し難い。 したがって、国籍法11条1項の規定が憲法98条2項、11条に違反し、憲法10条の委任の範囲を逸脱するものであるとの上記の原告の主張も採用することはできない。 (2) 国籍法11条1項が、憲法10条、11条、13条及び22条2項に違反 するか否かについてア 「日本の国籍を離脱しない自由」等が憲法11条、13条及び22条2項によって保障されているか否かについて(ア) 原告は、世界人権宣言や多数の条約の規定に照らしても、憲法11条、13条及び22条2項は、「日本の国籍を離脱しない自由」、「個人の意思 に反して国籍の離脱を強制されない自由」、「日本の国籍を保持する権利」等を保障している旨主張する。 (イ) しかし、憲法22条2項は、「何人も(中略)国籍を離脱する自由を侵されない。」と規定して、国籍離脱の自由を定めているものの、「日本の国籍を離脱しない自由」、「個人の意思に反して国籍の離脱を強制され ない自由」、「日本の国籍を保持する権利」等が保障されるか否か れない。」と規定して、国籍離脱の自由を定めているものの、「日本の国籍を離脱しない自由」、「個人の意思に反して国籍の離脱を強制され ない自由」、「日本の国籍を保持する権利」等が保障されるか否かについては何らの規定も置いていない。そして、前記(1)アのとおり、憲法10条の規定は、国籍が国家の構成員としての資格であり、国籍の得喪に関する要件を定めるに当たってはそれぞれの国の歴史的事情、伝統、政治的、社会的及び経済的環境等、種々の要因を考慮する必要があることか ら、これをどのように定めるかについて、立法府の裁量判断に委ねる趣旨のものであると解されること(平成20年大法廷判決、平成27年第三小法廷判決参照)からすると、憲法22条2項の定める国籍離脱の自由は、日本の国籍からの離脱を望む者に対して、その者が無国籍者となるのでない限り、国家がこれを妨げることを禁止するという消極的権利 を定めたものにとどまると解するのが相当であり、同項の規定を根拠に、憲法上、「日本の国籍を離脱しない自由」、「個人の意思に反して国籍の離脱を強制されない自由」、あるいは、「日本の国籍を保持する権利」等が積極的に保障されていると解することはできない。 また、上記のとおり、憲法10条が日本の国籍の得喪に関する要件を 立法府の裁量判断に委ねている以上、そのような立法府の裁量によって 付与される地位について、憲法11条や13条に基づいて直ちに何らかの権利が保障されるものとは解し難いというべきであり、「日本の国籍を離脱しない自由」、「個人の意思に反して国籍の離脱を強制されない自由」、「日本の国籍を保持する権利」等が憲法11条又は13条によって保障されるものと解することもできない。 (ウ) なお、原告は、障害者の権利に関する条約18条 して国籍の離脱を強制されない自由」、「日本の国籍を保持する権利」等が憲法11条又は13条によって保障されるものと解することもできない。 (ウ) なお、原告は、障害者の権利に関する条約18条1項(a)や児童の権利に関する条約8条1項が「日本の国籍を保持する権利」等の根拠になるとも主張する。 しかし、障害者の権利に関する条約18条1項(a)は、締約国は、障害者に対して国籍を取得し、及び変更する権利を有すること並びにその国 籍を恣意的に又は障害に基づいて奪われないことを確保すること等により、障害者が他の者との平等を基礎として移動の自由、居住の自由及び国籍についての権利を有することを認める旨規定しているが、その文理上明らかであるとおり、同規定は、障害者がその障害に基づいて他の者と異なる取扱いを受けないことを確保する旨を定めたものであり、障害 者と他の者とを区別することなく国籍喪失要件が定められる限りにおいて、同規定が立法府の裁量を制約する根拠とはなり得ない。また、児童の権利に関する条約8条1項は、締約国は、児童が法律によって認められた国籍、氏名及び家族関係を含むその身元関係事項について不法に干渉されることなく保持する権利を尊重することを約束する旨規定するが、 同規定も児童の国籍に対する「不法」な干渉を禁止しているにとどまるから、同規定が直ちに憲法の他の規定によって保障されていない「日本の国籍を離脱しない自由」、「個人の意思に反して国籍の離脱を強制されない自由」、「日本の国籍を保持する権利」等の根拠になるともいえない。 (エ) したがって、前記(ア)の原告の主張は採用できない。 イ国籍法11条1項が、憲法10条、11条、13条及び22条2項に違 反するか否かの判断枠組みについて(ア) 日 (エ) したがって、前記(ア)の原告の主張は採用できない。 イ国籍法11条1項が、憲法10条、11条、13条及び22条2項に違 反するか否かの判断枠組みについて(ア) 日本国籍は、我が国の構成員としての資格であるとともに、我が国において基本的人権の保障、公的資格の付与、公的給付等を受ける上で意味を持つ重要な法的地位であることから(平成20年大法廷判決参照)、仮に、日本国籍を意思に反して奪われないという利益又は法的地位が、 憲法11条、13条及び22条2項等の精神に照らして尊重されるべきものであることにより、憲法10条に基づき国籍の得喪に関する要件について与えられた立法府の裁量に一定の制約が及び得るとしても、前記(1)アのとおり、同条が国籍の得喪に関する要件の定めについて、立法府の裁量判断に委ねていることからすれば、日本の国籍の喪失について定 める規定については、当該規定の立法目的が合理的であり、かつ、日本の国籍を喪失させるという手段が上記の立法目的との関連において合理的である場合には、立法府の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものということはできず、憲法11条、13条又は22条2項に違反するとはいえないというべきである。 (イ) 原告は、「日本の国籍を離脱しない自由」等が、憲法11条、13条及び22条2項により保障されていることを前提に、仮に、憲法10条が日本の国籍の剥奪を法律に委任していると解するとしても、その立法裁量は、「日本の国籍を離脱しない自由」との関係で厳しく制約されるから、その違憲審査に当たっては、「やむにやまれぬ政府利益を達成するために 必要不可欠な場合でなければ許されない」とする基準が用いられるべきである旨主張するが、前記アのとおり、「日本の国籍を離脱しない 違憲審査に当たっては、「やむにやまれぬ政府利益を達成するために 必要不可欠な場合でなければ許されない」とする基準が用いられるべきである旨主張するが、前記アのとおり、「日本の国籍を離脱しない自由」等が、憲法11条、13条及び22条2項により保障されているとはいえないから、上記の原告の主張は、その前提において採用することができない。 ウ国籍法11条1項の立法目的の合理性の有無について (ア) 国籍法11条1項の立法目的に関し、後掲の証拠によれば、以下の事実が認められる。 a 明治32年に制定された旧国籍法は、出生による国籍の取得については父系血統主義を採用するとともに(同法1条ないし3条)、無国籍防止の観点から補充的に生地主義を採用した(同法4条)。そして、同 法20条は、「自己ノ志望ニ依リテ外國ノ國籍ヲ取得シタル者ハ日本ノ國籍ヲ失フ」と定め、その趣旨については、自己の意思をもって外国の国籍を取得した者に日本の国籍を保持させるのは、国籍非強制の原則(国籍変更自由の原則)の観点から適当ではなく、かつ、国籍の積極的衝突が生じる弊害を避ける必要があるためなどと説明されていた。 また、同法は、他の国籍喪失事由として、外国人の妻になった場合等、一定の身分行為又は身分関係に基づいて当然に日本の国籍を喪失する場合があることを定めていた一方で、17歳以上の男子は陸海軍の現役に服したとき又はこれに服する義務がないときでなければ日本の国籍を失わないなどの一般的制限が設けられていた(同法18条な いし24条)。 (以上、甲25、乙B5、12)b 昭和25年に旧国籍法を廃止した上で制定された国籍法(同年法律第147号)は、憲法22条2項が国籍離脱の自由を保障したことを受けて、前記aの国籍離脱 条)。 (以上、甲25、乙B5、12)b 昭和25年に旧国籍法を廃止した上で制定された国籍法(同年法律第147号)は、憲法22条2項が国籍離脱の自由を保障したことを受けて、前記aの国籍離脱に関する一般的制限を撤廃し、外国の国籍 を有する日本国民は届出により日本の国籍を離脱することができるものとした。その一方で、自己の志望によって外国の国籍を取得した者は日本の国籍を失うと定めていた旧国籍法20条については、国籍法8条(現行法11条1項)としてそのまま踏襲することとされた。 上記国籍法制定の際の法案審議における立法担当者(政府委員)の 説明では、新憲法下の新たな国籍法においても、国籍の積極的抵触(二 重国籍)及び消極的抵触(無国籍)の発生防止等の旧国籍法の立脚する諸原則には変更がなく、新国籍法8条(現行法11条1項)は、国籍変更の自由を認めるとともに、国籍の抵触を防止することを目的とする規定であるとされていた。 (以上、甲28ないし34、乙B5、36) c 昭和59年の国籍法改正では、昭和55年に政府が署名した「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」の批准に備えること、昭和25年の国籍法制定以来の国際情勢及び社会情勢の変化に対応すること等を理由として、出生による国籍の取得に関する父系血統主義が改められ、父母両系血統主義が採用された。また、父母両系血 統主義の採用等により重国籍者が増加する事態が想定されることを受けて、重国籍者は成年に達した後、所定の期間内にいずれかの国籍を選択しなければならないものとする国籍選択制度(上記改正後国籍法14条ないし16条)が新設されるとともに、国籍留保制度の対象範囲を拡大し、出生により外国の国籍を取得する子で、日本国外で生ま れた者全て ればならないものとする国籍選択制度(上記改正後国籍法14条ないし16条)が新設されるとともに、国籍留保制度の対象範囲を拡大し、出生により外国の国籍を取得する子で、日本国外で生ま れた者全てにこれを適用することとされた(同法12条)。また、上記の改正の機会においても、自己の志望によって外国の国籍を取得した者は日本の国籍を失う旨の規定は、同法11条1項として存続した。 (以上、甲39、46、乙B13、14、28、30)(イ) 以上の沿革を踏まえて、国籍法11条1項の立法目的について検討す ると、国籍法11条1項は、旧国籍法20条の規定を踏襲したものであり、その趣旨は、日本国民が自己の志望によって外国の国籍を取得したときには日本の国籍を当然に喪失することとして、重国籍の発生を防止するとともに、憲法22条2項により保障される国籍離脱の自由の一場面として国籍変更の自由を保障することを趣旨とするものと解される。 このように、国籍法11条1項の立法目的は、①重国籍の発生を可能な 限り防止しつつ、②国籍変更の自由を保障するというものであり、両者は密接に関連しているといえる。 なお、これに関し、原告は、上記②の目的は国籍法11条1項の立法目的に含まれない旨主張するが、前記(ア)において認定した同項の沿革に照らせば、採用することはできない。 (ウ) 以上を前提として、国籍法11条1項の立法目的の合理性について検討すると、国籍は、国家の基本的構成要素である国民、すなわち、国家の主権者たる地位ないし権利とともに国家の統治権に服する地位ないし義務を持つ者の範囲を画するものであるから、個人に対して複数の国家が対人主権を持つ場合や、個人が複数の国家に対して主権を持つ場合に は、外交保護権の衝突等に伴う国家間の摩 権に服する地位ないし義務を持つ者の範囲を画するものであるから、個人に対して複数の国家が対人主権を持つ場合や、個人が複数の国家に対して主権を持つ場合に は、外交保護権の衝突等に伴う国家間の摩擦を生ずるおそれ、納税義務や兵役義務等の国家と個人との間の権利義務に矛盾衝突が生じるおそれ、あるいは、別個の旅券を行使することが可能になることに伴う入国管理上の弊害が生じたり、重婚を防止し得ない事態が生じたりするおそれ等があり得るため、重国籍の発生を可能な限り防止し、解消させるべきで あるという理念には合理性があるといえる。そして、国籍法11条1項は、重国籍の発生をできる限り防止しつつ、憲法22条2項により保障される国籍離脱の自由の一場面として外国籍への変更を認めることにより、国籍変更の自由を保障するものであるから、その立法目的は合理的なものであるといえる。 (エ) これに関し、原告は、「複数国籍の発生防止」の立法目的は、憲法上の要請ではなく、ここで言われる弊害には根拠がないか、抽象的・観念的なおそれにとどまり、国際的にも重視されておらず、当該利益のために日本の国籍を保持する権利の制約を受け入れざるを得ないほどのものではない旨主張する。 しかし、外交保護権の衝突、兵役義務の抵触、納税義務の衝突、適正 な入国管理行政の阻害等の重国籍によって生じ得る種々の弊害について、他に弊害を回避する方法があり得るとしても、このような弊害が生じる原因である重国籍それ自体について、可能な限りその発生を防止しようとする国籍法11条1項の立法目的自体が不合理であるとはいえない。 また、重国籍による弊害の中には、納税義務の衝突のように国家間の条 約等によって解決することが可能な事項があるとしても、全ての国との間でそのような弊害 の立法目的自体が不合理であるとはいえない。 また、重国籍による弊害の中には、納税義務の衝突のように国家間の条 約等によって解決することが可能な事項があるとしても、全ての国との間でそのような弊害の防止等を目的とする条約等を締結することは現実的であるとはいえず、現に我が国がそのような条約等を締結している状況にあるわけでもない。さらに、仮に重国籍によって生じる国家間の紛争を解決する国際慣習法上のルールが存在するとしても、その解釈や適 用等をめぐる紛争を未然に防ぐ必要性があることは否定できない。 以上によれば、原告の主張を踏まえても、重国籍の発生を可能な限り防止しつつ、国籍変更の自由を保障するという立法目的が不合理であるとはいえないから、原告の上記の主張は、採用することができない。 エ国籍法11条1項の立法目的と手段との合理的関連性の有無について (ア) 上記のとおり立法目的に合理性があることを前提として、立法目的と国籍法11条1項の採用する手段との合理的関連性の有無について検討するに、重国籍の発生を可能な限り防止するとともに国籍変更の自由を保障するという観点からすれば、自己の志望によって外国の国籍を取得した者については、外国の国籍の取得に伴って当然に日本の国籍を喪失 させることには合理性が認められる。また、出生によって生来的に重国籍が発生する場合や、外国人との婚姻等の身分行為等によって当然に重国籍が発生する場合には、外国の国籍の取得について自己の意思が介在していないのに対し、自己の志望によって外国の国籍を取得する場合は、上記のような場合とは異なり、外国の国籍を取得する前に日本と外国の 国籍のいずれかを選択する機会が与えられているといえるから、自己の 志望によって外国の国籍を取得することを選択した 上記のような場合とは異なり、外国の国籍を取得する前に日本と外国の 国籍のいずれかを選択する機会が与えられているといえるから、自己の 志望によって外国の国籍を取得することを選択した者については、当然に日本の国籍を喪失させることとする点についても合理性が認められる。 したがって、国籍法11条1項の規定は、立法目的を達成する手段として合理的なものであるといえる。 (イ) 原告は、国籍法11条1項によって重国籍の発生を防止できるのは 外国の国籍の志望取得の場合のみであって、出生による場合や帰化による場合等に発生する重国籍は防止できないし、そもそも、被告の主張する「複数国籍の弊害」を防止するために必ずしも日本の国籍を剥奪する必要性はないから、同項の規定には目的達成のための手段としての合理性がない旨主張する。 しかし、国籍法は、出生により生来的に重国籍を取得するに至った者については、事後的に重国籍を解消するため、国籍離脱制度や国籍選択制度を設けているところ(同法13条ないし16条)、前記(ア)のとおり、出生によって生来的に重国籍が発生する場合には、外国の国籍の取得について本人の意思が介在していないという点において、日本国民が自己 の志望によって外国の国籍を取得した場合に日本の国籍を喪失させる場合とは、場面が異なるというべきである。したがって、日本国民が、自己の志望によって外国の国籍を取得する場合と、出生により生来的に重国籍が発生する場合とで、重国籍の防止や解消について、異なる制度や手段が設けられているということのみをもって、前者の手段が重国籍の 発生をできる限り防止するとともに国籍変更の自由を保障するとの目的達成のための手段として不合理なものになるとはいえない。 また、帰化の場合、国籍の得喪 のみをもって、前者の手段が重国籍の 発生をできる限り防止するとともに国籍変更の自由を保障するとの目的達成のための手段として不合理なものになるとはいえない。 また、帰化の場合、国籍の得喪に関する要件をどのように定めるかは各国の国内管轄事項に属しており、外国の国籍の喪失について我が国の法律で規律することができないため、帰化申請者の自らの意思によって 許可前に重国籍防止条件を備えることができない場合等の特別の場合に 結果的に重国籍が発生することになるのはやむを得ないというべきである(国籍法5条2項)。そうすると、日本国民が自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、上記のような帰化の場合とは場面が異なるのであるから、当然に日本の国籍を失うものとすることが、重国籍の発生を可能な限り防止するとともに国籍変更の自由を保障するという立法目 的との関係で不合理であるということはできない。 そして、前記ウ(エ)のとおり、重国籍によって生じ得る種々の弊害について、他に弊害を回避する方法があり得るとしても、そのような方法を選択することが必ずしも現実的であるとはいえない以上、自己の志望によって外国の国籍を取得した者については当然に日本の国籍を失うこと として、重国籍の発生を可能な限り防止するとともに国籍変更の自由を保障することは、目的達成のための合理的な手段に当たるといえる。 (ウ) また、原告は、国籍法11条1項の下においては、外国の国籍を取得することにより、直ちに日本の国籍を失うこととなるため、むしろ、国籍変更の自由が阻害されるとも主張する。 しかし、前記ウ(イ)のとおり、同項は、重国籍の発生を可能な限り防止しつつ、国籍変更の自由を保障するという2つの趣旨を含んでおり、これらの目的は相互に密接 由が阻害されるとも主張する。 しかし、前記ウ(イ)のとおり、同項は、重国籍の発生を可能な限り防止しつつ、国籍変更の自由を保障するという2つの趣旨を含んでおり、これらの目的は相互に密接に関連しあうものであるから、国籍変更の自由の保障という観点のみから目的と手段との合理的関連性について判断することは相当でない。仮に、同項の規定の存在を踏まえて外国の国籍を 取得することを思いとどまる者がいたとしても、そのことのみをもって、直ちに、重国籍の発生を可能な限り防止しつつ、国籍変更の自由を保障するという立法目的に照らし、同項の採用する手段が合理性を欠くことにはならないというべきである。 オ小括 以上によれば、国籍法11条1項について、重国籍の発生を可能な限り 防止しつつ、国籍変更の自由を保障するという立法目的は合理的なものであり、立法目的とこれを達成する手段との間の合理的関連性も肯定できるというべきであり、これに反する原告の主張はいずれも採用できない。 そして、以上に説示したところによれば、同項の規定が、立法府の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものとして憲法10条に違反すると はいえないし、憲法11条、13条、22条2項に違反するともいえない。 (3) 国籍法11条1項が憲法14条1項に違反するか否かについてア判断枠組み前記(1)アのとおり、憲法10条の規定は、国籍は国家の構成員としての資格であり、国籍の得喪に関する要件を定めるに当たってはそれぞれの国 の歴史的事情、伝統、政治的、社会的及び経済的環境等、種々の要因を考慮する必要があることから、これをどのように定めるかについて、立法府の裁量判断に委ねる趣旨のものであると解される。そして、憲法14条1項が法の下の平等を定め 、社会的及び経済的環境等、種々の要因を考慮する必要があることから、これをどのように定めるかについて、立法府の裁量判断に委ねる趣旨のものであると解される。そして、憲法14条1項が法の下の平等を定めているのは、合理的理由のない差別を禁止する趣旨のものであって、法的取扱いにおける区別が合理的な根拠に基づくもの である限り、同項に違反するものではないから、上記のようにして定められた日本国籍の取得に関する法律の要件によって生じた区別につき、そのような区別をすることの立法目的に合理的な根拠があり、かつ、その区別の具体的内容が上記の立法目的との関連において不合理なものではなく、立法府の合理的な裁量判断の範囲を超えるものではないと認められる場合 には、当該区別は、合理的理由のない差別に当たるとはいえず、憲法14条1項に違反するということはできないものと解するのが相当である(最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁、最高裁平成10年(オ)第2190号同14年11月22日第二小法廷判決・裁判集民事208号495頁、平成20年大法 廷判決、平成27年第三小法廷判決参照)。 イ国籍法上の重国籍の防止又は解消方法に係る区別我が国の国籍法は、11条1項において日本国民が自己の志望によって外国の国籍を取得した場合には当然に日本の国籍を失う旨規定する一方で、日本国民が、婚姻等の身分行為等によって外国の国籍を当然取得する場合や、出生により生来的に外国の国籍を取得する場合については、一旦重国 籍となることを許容した上で、後に、当該日本国民自身がいずれかの国籍を選択することを通じて、重国籍の解消を図ることとしている(同法14条ないし16条)。また、帰化により日本の国籍を取得する外 籍となることを許容した上で、後に、当該日本国民自身がいずれかの国籍を選択することを通じて、重国籍の解消を図ることとしている(同法14条ないし16条)。また、帰化により日本の国籍を取得する外国人についても、法務大臣が特別の事情があると認めるときには、一旦重国籍となることを許容した上で(同法5条1項5号、2項)、後に、当該外国の国籍の離 脱に努めるべきこととしている(同法14条2項、16条1項)。 原告は、このように、重国籍の防止又は解消方法に係る区別について、自己の志望によって外国の国籍を取得した日本国民と、①外国の国籍を当然取得した日本国民、②出生により生来的に外国の国籍を取得した日本国民及び③自己の志望によって日本の国籍を取得した外国人との間に区別が 生じていることについて、合理的理由のない差別に当たる旨主張することから、以下検討する。 ウ上記区別の合理性(ア) 外国の国籍を当然取得した日本国民との区別についてa 国籍の得喪は各国の国内管轄事項であることから、外国の国籍の得 喪を我が国の法律で規律することができないところ、日本国民が、婚姻等の身分行為等によって外国の国籍を当然取得する場合には、外国の国籍の取得そのものについて本人の意思は介在していないため、国籍法14条1項は、このような場合において、外国の国籍の取得によって直ちに日本の国籍を失うこととはせず、一旦重国籍の発生を許容 した上で、自己の意思によっていずれかの国籍を選択する機会を与え ることにより、重国籍を解消させることとしたものであり、その立法目的には、合理的な根拠があるといえる。 そして、同項が外国の国籍を取得した時から2年以内(外国の国籍を取得した時が18歳に達する以前であるときは20歳に達するまで) としたものであり、その立法目的には、合理的な根拠があるといえる。 そして、同項が外国の国籍を取得した時から2年以内(外国の国籍を取得した時が18歳に達する以前であるときは20歳に達するまで)にいずれかの国籍を選択しなければならないとしていることは、上記 の立法目的との関連において不合理なものではないといえる。 これに対し、同法11条1項については、前記(2)ウ(イ)のとおり、重国籍の発生を可能な限り防止しつつ、国籍変更の自由を保障するという立法目的には合理性があるところ、日本国民が自己の志望によって外国の国籍を取得した場合、当該外国の国籍の取得前に、日本の国籍 か外国の国籍かを選択する機会が与えられている点において、婚姻等の身分行為等によって外国の国籍を当然取得する場合とは場面が異なり、外国の国籍の取得後に、更に国籍の選択のための機会を設ける必要性は乏しい一方で、速やかに日本の国籍を喪失させるのが望ましい。 そのため、このような区別をすることの立法目的には合理的な根拠が あるといえる。そして、自己の志望によって外国の国籍を取得する場合は、上記のとおり、婚姻等の身分行為等によって外国の国籍を当然取得する場合とは場面が異なることから、外国の国籍の取得によって当然に日本の国籍を失うこととしたものであり、このような区別の具体的内容は上記の立法目的との関連において不合理なものではないと いえる。 以上によれば、自己の志望によって外国の国籍を取得した日本国民と、外国の国籍を当然取得した日本国民との間の、重国籍の防止又は解消方法に係る区別については、そのような区別をすることの立法目的に合理的な根拠があり、その区別の具体的内容についても、上記の 立法目的との関連において不合理なものとはいえず、立法府の合理的 消方法に係る区別については、そのような区別をすることの立法目的に合理的な根拠があり、その区別の具体的内容についても、上記の 立法目的との関連において不合理なものとはいえず、立法府の合理的 な裁量判断の範囲を超えるものということはできない。 b これに関し、原告は、外国の国籍の志望取得と当然取得との差異は、外国の国籍法制が本人の国籍取得の意思表示を国籍取得の要件としているか否かに起因するものであるところ、そのような外国の国籍法制の定め方の違いだけで日本の国籍を直ちに喪失させるか否かの区別を 生じさせることには合理性がない旨主張する。 しかし、国籍の得喪は各国の国内管轄事項に属しており、外国の国籍の得喪を我が国の法律で規律することはできないから、重国籍の発生を可能な限り防止するための制度設計に当たり、各国の国籍法制により外国の国籍を当然取得する場合があることについては、これを所 与の前提とせざるを得ない。そして、外国の国籍の取得そのものについて本人の意思が介在している場合とそうでない場合とでは場面が異なることから、自己の志望によって外国の国籍を取得した日本国民と、外国の国籍を当然取得した日本国民との間の、重国籍の防止又は解消方法に係る区別が何ら不合理なものとはいえないのは、前記aのとお りであり、上記の原告の主張は採用できない。 c したがって、自己の志望によって外国の国籍を取得した日本国民と外国の国籍を当然取得した日本国民との間の重国籍の防止又は解消方法に係る区別は、合理的理由のない差別には当たらないというべきである。 (イ) 出生により生来的に外国の国籍を取得した日本国民との区別についてa 出生により生来的に外国及び日本の両方の国籍を取得する場合についても、外国の国籍 らないというべきである。 (イ) 出生により生来的に外国の国籍を取得した日本国民との区別についてa 出生により生来的に外国及び日本の両方の国籍を取得する場合についても、外国の国籍の取得について本人の意思は介在していないため、国籍法14条1項は、このような場合において、外国の国籍の取得によって直ちに日本の国籍を失うこととはせず、一旦重国籍の発生を許 容した上で、自己の意思によっていずれかの国籍を選択する機会を与 えることとしたものであり、その立法目的には、合理的な根拠があるといえる。 そして、同項が、外国及び日本の両方の国籍を出生により取得した者については20歳に達するまでにいずれかの国籍を選択しなければならないとしていることは、上記の立法目的との関連において不合理 なものではないといえる。 これに対し、前記(ア)aのとおり、日本国民が自己の志望によって外国の国籍を取得した場合、当該外国の国籍の取得前に、日本の国籍か外国の国籍かを選択する機会が与えられている点において、出生により生来的に外国の国籍を取得する場合とは場面が異なり、外国の国籍 の取得後に、更に国籍の選択のための機会を設ける必要は乏しい一方で、速やかに日本の国籍を喪失させるのが望ましい。そのため、このような区別をすることの立法目的には合理的な根拠があるといえる。 そして、自己の志望によって外国の国籍を取得する場合は、上記のとおり、出生により生来的に外国の国籍を取得する場合とは場面が異な ることから、外国の国籍の取得によって当然に日本の国籍を失うものとしたものであり、このような区別の具体的内容は上記の立法目的との関連において不合理なものではないといえる。 以上によれば、自己の志望によって外国の国籍を取得した日本国民と に日本の国籍を失うものとしたものであり、このような区別の具体的内容は上記の立法目的との関連において不合理なものではないといえる。 以上によれば、自己の志望によって外国の国籍を取得した日本国民と出生により生来的に外国の国籍を取得した日本国民との間の、重国 籍の防止又は解消方法に係る区別については、そのような区別をすることの立法目的には合理的な根拠があり、その区別の具体的内容についても、上記の立法目的との関連において不合理なものとはいえず、立法府の合理的な裁量判断の範囲を超えるものともいえない。 b これに関し、原告は、重国籍防止の要請は、重国籍の発生原因によ って異なるものではないから、自己の志望によって外国の国籍を取得 した場合には重国籍の発生を徹底して防止する一方で、生来的取得の場合にはこれを貫徹しないという区別に合理性はない旨主張する。 しかし、外国の国籍の取得について本人の意思が介在しているか否かは重大な差異であり、重国籍の発生を可能な限り防止するという目的を達成するため、上記の点に着目した上で、出生により外国の国籍 を取得した者につき、重国籍の発生防止を貫徹するのではなく、一旦重国籍となることを許容した上で、20歳に達するまでにいずれかの国籍を選択させることを通じて重国籍の解消を図るという手段を設けていることは何ら不合理なものということはできず、上記の原告の主張は採用できない。 c したがって、自己の志望によって外国の国籍を取得した日本国民と外国及び日本の両方の国籍を出生により取得した日本国民との間の重国籍の防止又は解消方法に係る区別は、合理的理由のない差別には当たらないというべきである。 (ウ) 自己の志望によって日本の国籍を取得した外国人との区別について a した日本国民との間の重国籍の防止又は解消方法に係る区別は、合理的理由のない差別には当たらないというべきである。 (ウ) 自己の志望によって日本の国籍を取得した外国人との区別について a 国籍法5条2項は、外国人がその意思にかかわらずその国籍を失うことができない場合において、特別の事情があると認められるときには、当該外国人が外国の国籍を保持したまま帰化により日本の国籍を取得することを認めているところ、そもそも、国籍の得喪は各国の国内管轄事項に属しており、外国の国籍の喪失について、我が国の法律 によって規律することはできないから、上記のような場合に、一旦重国籍の発生を許容した上で、事後的に重国籍を解消させることとした立法目的には合理性がある。 また、国籍法5条2項により、自己の志望によって日本の国籍を取得した外国人が、当該外国の法律等の規律のために当該外国の国籍を 失うことができず、結果的に重国籍となってしまった場合には、当該 外国の国籍の離脱又は放棄が可能となったときは、当該外国の国籍を離脱する、あるいは、日本の国籍を選択し、かつ、当該外国の国籍を放棄する旨の宣言をすることとなり、この場合には、外国の国籍の離脱に努めなければならないとされる(国籍法14条2項、16条1項)。 上記各規定は、外国の国籍の喪失について我が国の法律で規律するこ とができない中で、重国籍者に対して外国の国籍を離脱することに向けられた努力義務を課し、重国籍の状態を可能な限り解消しようとするものであり、上記立法目的との関連において合理性を有するといえる。 これに対し、日本国民が自己の志望によって外国の国籍を取得する 場合の日本の国籍の喪失については、外国人が帰化によって日本の国籍を取得し、我が国の法律で規律す いて合理性を有するといえる。 これに対し、日本国民が自己の志望によって外国の国籍を取得する 場合の日本の国籍の喪失については、外国人が帰化によって日本の国籍を取得し、我が国の法律で規律することができない当該外国の法制に従い、元々有していた外国の国籍を離脱するよう努めるべき場合とは場面が異なり、重国籍の発生を可能な限り防止しつつ、国籍変更の自由を保障する必要があることから、上記の区別をすることの立法目 的には合理的な根拠があるといえる。そして、自己の志望によって外国の国籍を取得する場合は、上記のとおり、外国人が、外国の法制に従い、元々有していた外国の国籍を離脱するよう努めるべき場合とは場面が異なることから、外国の国籍の取得によって当然に日本の国籍を失うこととしたものであり、このような区別の具体的内容は上記の 立法目的との関連において不合理なものではないといえる。 以上によれば、自己の志望によって外国の国籍を取得した日本国民と、自己の志望によって日本の国籍を取得した外国人との間の重国籍の防止又は解消方法に係る区別については、そのような区別をすることの立法目的に合理的な根拠があり、その区別の具体的内容について も、上記の立法目的との関連において不合理なものとはいえず、立法 府の合理的な裁量判断の範囲を超えるものということはできない。 b したがって、自己の志望によって外国の国籍を取得した日本国民と自己の志望によって日本の国籍を取得した外国人との重国籍の防止又は解消方法に係る区別についても、合理的理由のない差別には当たらないというべきであって、これに反する原告の主張は採用できない。 エその余の憲法14条1項違反に係る原告の主張について(ア) 原告は、国籍法は自己の志望によって外国の国籍 い差別には当たらないというべきであって、これに反する原告の主張は採用できない。 エその余の憲法14条1項違反に係る原告の主張について(ア) 原告は、国籍法は自己の志望によって外国の国籍を取得した場合に限って、同法14条以下の国籍選択制度のような「法律の不知」に対する対処を設けていないところ、これについても合理的根拠のない差別である旨主張する。 しかし、前記ウ(ア)及び(イ)のとおり、自己の志望によって外国の国籍を取得する場合には、当該外国の国籍を取得する前にいずれかの国籍を選択する機会が十分に与えられているのに対し、外国の国籍を当然取得する場合や出生等により生来的に取得する場合については、当該外国の国籍の取得について、本人の意思が介在していないから、直ちに日本の 国籍を失わせるのではなく、国籍を選択する機会を与えることとしたのであって、制度目的や趣旨の異なる制度を単純に比較することはできない。 また、自己の志望によって外国の国籍を取得する場合と、外国の国籍の当然取得や生来的取得の場合とで取扱いを異にする立法目的には合理 的な根拠があること、並びにその区別の具体的内容についても上記立法目的との関連において不合理とはいえないことについては前記ウ(ア)及び(イ)のとおりであり、これに反する上記の原告の主張は採用できない。 (イ) 原告は、国籍法11条1項は、日本国民のうち家族関係や経済生活、社会生活が国境を越えてしまったという社会的身分に基づき、幸福追求 権の享受について、他の日本国民との間で差別的取扱いをしており、こ のような差別的取扱いは憲法14条1項に違反するとも主張する。 しかし、国籍法11条1項は、自己の志望によって外国の国籍を取得した場合にのみ適用される規定であ 的取扱いをしており、こ のような差別的取扱いは憲法14条1項に違反するとも主張する。 しかし、国籍法11条1項は、自己の志望によって外国の国籍を取得した場合にのみ適用される規定であって、国境を越えて家族生活、経済生活、社会生活を送る日本国民に対して、そのことに着目して何らかの規制を課すものではないし、国境を越えて家族生活、経済生活、社会生 活を送るために外国の国籍を取得することが必要不可欠となるものでもない。 したがって、同項の規定が国境を越えて生活を送る者とその他の日本国民との間で差別的取扱いを行うものである旨の原告の主張は、その前提を欠くものであり、採用できない。 (ウ) 原告は、国籍法11条1項は、自己の志望によって外国の国籍を取得した事実がたまたま発覚した者や、当該事実を自己申告した者にのみ適用され、それらの者のみを不利益に取り扱う規定であり、本質的に不公平な適用が避けられないものであるから、この点に照らしても憲法14条1項の定める平等原則に違反する旨主張する。 しかし、国籍法11条1項は、日本国民が自己の志望によって外国の国籍を取得した場合に、何らの手続も要することなく、直ちに日本の国籍を喪失するという効果が発生する規定であり、不公平な適用が避けられない旨の原告の主張については、その前提を誤ったものであって失当といわざるを得ない。なお、自己の志望によって外国の国籍を取得した ことにより日本の国籍を喪失した者が戸籍法103条1項の規定に違反して届出を怠った場合であっても、戸籍上、同人が日本の国籍を喪失した旨が記録されないというにとどまり、同人は国籍法11条1項の規定に基づいて既に日本の国籍を喪失しており、日本国民としての権利を行使することができないのであるから、不公平な 同人が日本の国籍を喪失した旨が記録されないというにとどまり、同人は国籍法11条1項の規定に基づいて既に日本の国籍を喪失しており、日本国民としての権利を行使することができないのであるから、不公平な適用が避けられないとの 批判は当たらない。 (4) 小括以上のとおりであって、国籍法11条1項の規定は、立法目的に合理性があり、立法目的と手段との間の合理的関連性も認められるから、立法府の裁量権の範囲を逸脱するものではなく、憲法10条に違反するとはいえないし、憲法98条2項、31条及び11条に違反するともいえない。また、国籍法 11条1項の規定は、憲法11条、13条、22条2項の規定により保障される権利を侵害するものでもなく、これらの各規定に違反するともいえない。 さらに、国籍法は、重国籍の防止又は解消方法につき、同法11条1項の適用対象となる自己の志望によって外国の国籍を取得した場合とそれ以外の場合とで一定の区別を設けているものの、そのような区別を設けることの立 法目的には合理的な根拠があり、かつ、その区別の具体的内容は上記の立法目的との関連において不合理なものではなく、立法府の裁量判断の範囲を超えるものでもないから、上記の区別は、合理的理由のない差別には当たらず同項が憲法14条1項に違反するともいえない。 よって、国籍法11条1項が原告の主張する憲法の諸規定等に違反する旨 の原告の主張はいずれも採用することができない。 2 争点2(原告が日本の国籍を有するか否か)について(1) 前記1のとおり、国籍法11条1項は原告の主張する憲法の諸規定等に違反するものではなく、同項が違憲無効であるとはいえないところ、原告は、2008年(平成20年)4月2日、自らの申請によってカナダ市民権を取 得 籍法11条1項は原告の主張する憲法の諸規定等に違反するものではなく、同項が違憲無効であるとはいえないところ、原告は、2008年(平成20年)4月2日、自らの申請によってカナダ市民権を取 得し(前記前提事実(1)イ)、これにより、同項に基づき、日本の国籍を失ったものと認められる。 (2) なお、原告は、東京入国管理局の職員が2018年(平成30年)12月14日に「上陸許可短期滞在」の証印の上に「CANCELLED」及び「日本国籍判明により抹消」というスタンプを押捺したことからしても、被 告は原告が日本の国籍を失っていないことを認めている旨主張する。 しかし、前記(1)のとおり、原告は、自己の志望によってカナダ市民権を取得したことにより、国籍法11条1項に基づき、直ちに日本の国籍を失ったものであり、その後、原告が再度日本の国籍を取得したものと認めるに足りる証拠もない。また、東京入国管理局の職員が上記処理を行ったことをもって、被告において原告が日本の国籍を有することを認めたものと評価するこ ともできないから、上記処理の趣旨にかかわらず、原告は日本の国籍を有しないものといわざるを得ず、これに反する原告の主張は採用できない。 3 争点3(本件処分が無効であるか否か)について旅券は、その所持人が自国民であることを発行国の政府が国際的に証明し、その国民を通路故障なく旅行させ、同人に必要な保護と扶助を与えるよう関係 諸官に要請する公文書であることから、日本の旅券法で定める旅券の発行対象者は、当然に日本の国籍を有する日本国民に限られるものと解されるところ、前記2のとおり、原告は日本の国籍を有しないから、旅券法上の旅券の発行対象者には当たらない。 したがって、日本の国籍を有しない原告による本件旅券発給 する日本国民に限られるものと解されるところ、前記2のとおり、原告は日本の国籍を有しないから、旅券法上の旅券の発行対象者には当たらない。 したがって、日本の国籍を有しない原告による本件旅券発給申請を却下する 旨の本件処分は適法であり、これに反する原告の主張は採用できない。 4 争点4(国籍法11条1項の改廃に係る立法不作為が国賠法1条1項の適用上違法か否か)について(1) 国賠法1条1項は、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個々の国民に対して負担する職務上の法的義務に違反して当該国民に損害を加 えたときに、国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するものであるところ、国会議員の立法行為又は立法不作為が同項の適用上違法となるかどうかは、国会議員の立法過程における行動が個々の国民に対して負う職務上の法的義務に違反したかどうかの問題であり、立法の内容の違憲性の問題とは区別されるべきものである。そして、上記行動についての評価は 原則として国民の政治的判断に委ねられるべき事柄であって、仮に当該立法 の内容が憲法の規定に違反するものであるとしても、そのゆえに国会議員の立法行為又は立法不作為が直ちに国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない。 もっとも、法律の規定が憲法上保障され又は保護されている権利利益を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反するものであること が明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってその改廃等の立法措置を怠る場合などにおいては、国会議員の立法過程における行動が上記職務上の法的義務に違反したものとして、例外的に、その立法不作為は、国賠法1条1項の規定の適用上違法の評価を受けることがあるというべきである(最高裁昭和53年( 国会議員の立法過程における行動が上記職務上の法的義務に違反したものとして、例外的に、その立法不作為は、国賠法1条1項の規定の適用上違法の評価を受けることがあるというべきである(最高裁昭和53年(オ)第1240号同60年11月21日第 一小法廷判決・民集39巻7号1512頁、最高裁平成13年(行ツ)第82号、第83号、同年(行ヒ)第76号、第77号同17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁、最高裁平成25年(オ)第1079号同27年12月16日大法廷判決・民集69巻8号2427頁参照)。 (2) 本件につき、原告は、国籍法11条1項が原告の主張する憲法の諸規定等 に違反するものであることを前提として、被告の立法不作為が国賠法1条1項の規定の適用上違法の評価を受けると主張して、同項に基づいて損害の賠償を求めている。 しかし、国籍法11条1項が原告の主張する憲法の諸規定等に違反するものでないことは、前記1のとおりであり、そうである以上、国籍法11条1 項を改廃しない旨の立法不作為が、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受ける余地はないというべきであって、これに反する原告の主張は採用できない。 5 争点5(被告が自己の志望によって外国の国籍を取得した者に対して国籍法11条1項の規定を周知しなかったことが国賠法1条1項の適用上違法か否 か)について (1) 原告は、被告が国籍法11条1項の存在や適用場面等について国民に対して周知徹底する義務を怠ったことが国賠法1条1項の適用上違法となる旨主張する。 (2) しかし、国籍法11条1項(昭和59年法律第45条による改正後のもの)の規定は、昭和59年5月25日に公布され、他の法令等と同様に官報に掲 載されて国民に対して周知されており、同項 。 (2) しかし、国籍法11条1項(昭和59年法律第45条による改正後のもの)の規定は、昭和59年5月25日に公布され、他の法令等と同様に官報に掲 載されて国民に対して周知されており、同項の内容や適用場面等につき、他の法令等とは異なる特別な態様をもって、これを国民に対して特に周知徹底することを国に対して義務付ける旨の定めも見当たらない。また、本件全証拠及び弁論の全趣旨によっても、国籍法の立法過程等において、同法11条1項に基づく国籍の喪失に係る制度の国民への周知を国に対して義務付け る旨の立法機関の意思が表明されていたとも認められない。 そうすると、自己の志望によって外国の国籍を取得した場合に国籍法11条1項の規定に基づいて日本の国籍を失うことになる旨を国民一般に対して周知徹底することが、国の公務員に課せられた職務上の法的義務であるとまでいうことはできない。したがって、被告が同項の存在や適用場面等を周 知徹底する義務を怠ったことが国賠法1条1項の適用上違法となる旨の前記(1)の原告の主張は、その前提において採用することができない。 6 小括(主位的請求のうち国家賠償請求に係る部分の結論)以上によれば、国籍法11条1項の改廃に係る立法不作為及び被告が自己の志望によって外国の国籍を取得した者に対して同項の規定を周知しなかった ことが、国賠法1条1項の適用上違法である旨の原告の主張は、いずれも採用することができないから、その余の点(争点6)について判断するまでもなく、原告の主位的請求に係る国家賠償請求については理由がないというべきである。 7 争点7(法務大臣が原告の国籍喪失届を不受理として原告に在留資格を付与 しなかったと評価し得るか否か、また、そのことが国賠法1条1項の適用上違 理由がないというべきである。 7 争点7(法務大臣が原告の国籍喪失届を不受理として原告に在留資格を付与 しなかったと評価し得るか否か、また、そのことが国賠法1条1項の適用上違 法か否か)について(1) 法務大臣が原告の国籍喪失届を不受理とした事実の有無(違法事由①)ア国籍喪失の届出は、戸籍法103条1項の規定に基づいてされるものであるところ、国籍喪失の届出を含む戸籍に関する事務は、市町村長(特別区においては区長。以下同じ。)が管掌するものであり、上記事務は法定受 託事務とされる(同法1条、4条、地方自治法2条9項1号)。すなわち、国籍喪失の届出の受理の主体は、法務大臣ではなく、市町村長であり、本件国籍喪失届1及び2についても、いずれも、被告国の機関ではなく、世田谷区役所戸籍係において処理されている。そして、戸籍法施行規則82条は、戸籍事務の取扱いに関して疑義を生じたときは、市町村長は、管轄 法務局若しくは地方法務局又はその支局を経由して、法務大臣にその指示を求めることができる旨規定している。 イ前記前提事実によれば、原告は、2018年(平成30年)12月14日(金曜日)に世田谷区役所戸籍係に対して本件国籍喪失届2を提出し、世田谷区役所戸籍係の担当職員は、本件国籍喪失届2について、東京法務 局長に対して戸籍法施行規則82条に基づく受理照会を行うことを検討していたが(前記前提事実(2)ウ)、原告が担当職員により受理照会の手続がされる前の同月17日(週明けの月曜日)に本件国籍喪失届2に係る届出を取り下げたことから(前記前提事実(2)オ)、本件国籍喪失届2については、同条に基づく受理照会の手続がとられなかったことが認められる。 これに加えて、乙A2、乙A17、原告本人尋問の結果及び調査嘱 げたことから(前記前提事実(2)オ)、本件国籍喪失届2については、同条に基づく受理照会の手続がとられなかったことが認められる。 これに加えて、乙A2、乙A17、原告本人尋問の結果及び調査嘱託の結果を含む本件全証拠によっても、世田谷区役所戸籍係の担当職員が、2018年(平成30年)11月5日又は同年12月14日に、本件国籍喪失届1及び2に関し、東京法務局に対して電話、受理照会その他の問合せを行った事実は認められず、本件国籍喪失届1及び2を受理するか否かの 処理につき、国の機関、ひいては、法務大臣による何らかの関与があった との事実を認めることはできない。 ウ以上のように、そもそも、本件につき、法務大臣が本件国籍喪失届1及び2を不受理とした事実は認められず、その他、法務大臣が本件国籍喪失届1及び2の受理・不受理に係る処理に関与したものと認めることもできないから、法務大臣が原告の国籍喪失届を不受理としたことを前提とする 原告の主張は、その前提を欠くものといわざるを得ず、採用することができない。 (2) 世田谷区長が原告の国籍喪失届を違法に受理しなかったといえるか否か(違法事由①)ア外国の国籍を取得したことを理由とする国籍喪失の届出をする際には、 国籍喪失の原因及び年月日並びに新たに取得した国籍を記載した届書を提出するとともに、「国籍喪失を証すべき書面」を添付しなければならない(戸籍法103条2項)。国籍喪失の届出に係る事務を行う市町村長は、形式的審査権限を有するにとどまり、適式な届書と添付書類が提出されればこれを受理しなければならないが、受理することができるか否かにつき疑義が ある場合には、戸籍法施行規則82条に基づく受理照会をすることができる。 イ原告は、2018年(平成30年) れればこれを受理しなければならないが、受理することができるか否かにつき疑義が ある場合には、戸籍法施行規則82条に基づく受理照会をすることができる。 イ原告は、2018年(平成30年)11月5日、世田谷区役所戸籍係を訪れ、本件国籍喪失届1を提出しようとしたが、この際、原告が添付書類として提出した本件書簡には、原告がカナダ市民権を取得した年月日であ る「02 April 2008」との記載があった一方で、「この書類は市民権の証明とはなりません。写真を伴う書類が市民権を証明する書類となります。」との記載もあった(前記前提事実(2)イ)。上記の本件書簡の記載内容に照らせば、世田谷区役所戸籍係において、本件書簡がカナダ市民権の取得を証する書面には当たらず、戸籍法103条2項の「国籍喪失を証すべき書面」 の提出があったものとして取り扱うのは困難であるから、本件国籍喪失届 1を直ちに受理することができないと判断したことが不合理であったとはいえず、担当職員が当日中に本件国籍喪失届1を受理することなく返戻したことが違法な取扱いであったともいえない。 なお、これに関し、原告は、2018年(平成30年)11月5日には、本件書簡に加えて、カナダ官憲の発行した写真付きの本件市民権カードも 持参した旨主張し、陳述書(甲165)においてもその旨陳述する。しかし、証拠(乙A2、調査嘱託の結果、原告本人尋問の結果)及び弁論の全趣旨によれば、原告が同日に世田谷区役所戸籍係に持参した書類については、全てその写しが作成されたことが認められるが、同日に世田谷区役所戸籍係において本件市民権カードの写しは作成されておらず、かえって、 原告は、同日、「カナダ市民権証書、カード原本紛失のため、在日カナダ大使館での再発行が困難なこと れるが、同日に世田谷区役所戸籍係において本件市民権カードの写しは作成されておらず、かえって、 原告は、同日、「カナダ市民権証書、カード原本紛失のため、在日カナダ大使館での再発行が困難なことにより(6か月程度か以上)、現段階では正式に市民権を取得した年月日の証明が不可能となっております。」との記載のある直筆の申述書を作成したことが認められる。これらの事実に鑑みれば、同日において、原告が本件市民権カードを持参したとの上記の原告の陳述 を採用することはできず、その他、原告が同日に世田谷区役所戸籍係に本件市民権カードを持参したものと認めるに足りる証拠はない。 ウ原告は、2018年(平成30年)12月14日、再度世田谷区役所戸籍係を訪れ、本件国籍喪失届2を提出したが、このときには、添付書類として、本件書簡に加えて、本件市民権カード及び原告のカナダ旅券も提出 した。しかし、本件市民権カードには原告のカナダ市民権の取得年月日が記載されておらず、「2007 11」という記載は、本件書簡の年月日とも異なるものであった。上記のような状況に鑑み、世田谷区役所戸籍係の担当職員は、やはり、本件書簡に記載されている年月日を原告のカナダ市民権取得の年月日と取り扱うことには疑義があるとして、本件国籍喪失届2を直 ちに受理するのではなく、東京法務局長に対して受理照会を行う旨の説明 をしたものである(以上、前記前提事実(2)ウ)。 このように、「2007 11」という本件市民権カードの記載は、年月日のうち「日」の記載がないものであり、かつ、「02 April 2008」という本件書簡に記載されていた年月日とも食い違いがあったことや、前記前提事実(2)イのとおり、本件書簡には「この書類は市民権の証明とはなりません。」と の記載 、「02 April 2008」という本件書簡に記載されていた年月日とも食い違いがあったことや、前記前提事実(2)イのとおり、本件書簡には「この書類は市民権の証明とはなりません。」と の記載があったこと等を踏まえれば、世田谷区役所戸籍係の担当職員が、本件書簡、本件市民権カード及び原告のカナダ旅券の3点が提出されたことをもって直ちに「国籍喪失を証すべき書面」の提出がされたものとして取り扱うことについては疑義があるとして、東京法務局長に対して受理照会の手続を行うこととした判断について不合理な点はなく、上記の世田谷 区役所戸籍係の対応が違法なものであったともいえない。 そして、原告は、世田谷区役所戸籍係の担当職員が東京法務局長宛てに受理照会の手続をとる前の、土日を挟んだ週明けの月曜日である2018年(平成30年)12月17日には、本件国籍喪失届2に係る届出を取り下げている(前記前提事実(2)オ)。すなわち、本件国籍喪失届2が結果的 に受理されることがなかったのは、原告自らがこれを取り下げたことによるものであったと認められるから、本件国籍喪失届2に係る世田谷区役所戸籍係の対応についても、違法な点があったとはいえない。 エ以上のように、本件国籍喪失届1及び2に係る世田谷区役所の対応にも違法な点があったとはいえず、世田谷区長が原告の国籍喪失届を違法に受 理しなかったと評価することもできないから、これを前提とする原告の主張も採用できない。 (3) 法務大臣は国籍喪失届受理の要件として戸籍法が課していない要件を定めたといえるか否か(違法事由①)ア原告は、戸籍法103条2項は、外国の国籍の志望取得による国籍喪失 届の届書には、「国籍喪失を証すべき書面」を添付することを求めているに すぎず、その年月 か否か(違法事由①)ア原告は、戸籍法103条2項は、外国の国籍の志望取得による国籍喪失 届の届書には、「国籍喪失を証すべき書面」を添付することを求めているに すぎず、その年月日が記載された書面の添付を求めているものではないにもかかわらず、法務大臣が法文にない要件を定めてこれを提出させることとしたために、世田谷区役所戸籍係が本件国籍喪失届1及び2の受理を拒否するに至ったものである旨主張する。 イしかし、戸籍法103条2項1号は、国籍喪失届の届書に「国籍喪失の 原因及び年月日」を記載する必要がある旨を明文で定めた上で、届書に「国籍喪失を証すべき書面」を添付しなければならないと定めていること(同項柱書)、添付書類は届書の記載内容を客観的な手段によって確認するために提出が求められているものであることからすれば、上記届書の添付書類は、「国籍喪失の原因及び年月日」を含む届書の記載内容を確認することが できる客観的な手段である必要があるものと解するのが相当である。 ウしたがって、戸籍法103条2項の「国籍喪失を証すべき書面」は、国籍喪失の年月日を含む届書の記載内容を確認することができる客観的な手段であることが法令上当然に予定されているというべきであり、これに反する原告のよって立つ前記アの法解釈は採用し難いから、前記アの原告の 主張はその前提において採用できない。 (4) 法務大臣が地方公共団体による権限逸脱行為を防止するために適切な措置をとっていなかったといえるか否か(違法事由①)ア原告は、本件国籍喪失届1及び2については、世田谷区役所戸籍係担当職員又は世田谷区長が、独自の判断により、国籍喪失届を受理するには「外 国の国籍を志望取得した年月日が記載されている書面」の添付が必要であると判断した 及び2については、世田谷区役所戸籍係担当職員又は世田谷区長が、独自の判断により、国籍喪失届を受理するには「外 国の国籍を志望取得した年月日が記載されている書面」の添付が必要であると判断したために受理されなかったものであるところ、法務大臣は、かかる地方公共団体による権限逸脱行為を防止するための適切な基準を設けていなかったとも主張する。 イしかし、戸籍法103条2項が国籍喪失届の添付書類として提出するこ とを求めている「国籍喪失を証すべき書面」は、国籍喪失の年月日を含む 届書の記載内容を確認することができる客観的な手段であることが法令上当然に予定されていると解釈されることについては、前記(3)ウにおいて説示したとおりである。そうすると、本件国籍喪失届1について、「この書類は市民権の証明とはなりません。」との記載のある本件書簡だけでは同項の「国籍喪失を証すべき書面」の提出があったものとして取り扱うことは困 難であることから、本件国籍喪失届1を直ちに受理することができないと判断した世田谷区役所戸籍係の対応や、本件国籍喪失届2について、本件書簡とは異なる年月の記載がされているにすぎず、カナダ市民権取得年月日の記載があるとは認められない本件市民権カードが追加で提出されたとしても、未だ「国籍喪失を証すべき書面」の提出があったものとして取り 扱ってよいかどうか疑義が残るため、受理の可否について確認する趣旨で東京法務局長宛ての受理照会をすることとした同係の対応が、戸籍法103条2項等の関係法令の趣旨に反してその権限を逸脱するものであったということはできない。 したがって、前記アの原告の主張は、その前提において採用できない。 (5) 法務大臣が地方公共団体との間での適切な情報共有を怠っていたといえるか るものであったということはできない。 したがって、前記アの原告の主張は、その前提において採用できない。 (5) 法務大臣が地方公共団体との間での適切な情報共有を怠っていたといえるか否か(違法事由①)ア原告は、法務省及び外務省がカナダ市民権の取得に係る仕組みや本件書簡の位置付け等の情報を把握してこれを地方公共団体に共有することを怠り、カナダ市民権を志望取得した者による国籍喪失届を即時かつ適切に受 理することができるような体制を整備することができたにもかかわらず、これをしなかったものであるところ、上記のような適切な情報共有等がされていれば、本件国籍喪失届1及び2は受理されていたはずである旨主張する。 そして、証拠(甲146ないし152)によれば、2012年(平成2 4年)2月1日より前にカナダ市民権を取得した者については、カナダ市 民権カード(記載された日付はカードの発行日でありカナダ市民権の取得日ではない)によって市民権を証明できること、カナダ市民権を取得するためには、市民権セレモニーにおいて宣誓をする必要があり、宣誓をした際に発行される記念文書には、カナダ市民権の取得日が記載されることが認められる。そして、本件市民権カードは上記のカナダ市民権カードであ り、本件書簡は、上記の市民権セレモニーの際に発行された記念文書であり、本件書簡に記載された日付が原告のカナダ市民権の取得日であったことが認められる。 イしかし、証拠(甲151)によれば、カナダ市民権を証明することのできる書類については、2012年(平成24年)にも変更されていること が認められるところ、各国の国籍取得要件や、国籍取得の事実を証明することのできる書面に係る運用が時々刻々と変化する中で、法務省又は外務省が、190 12年(平成24年)にも変更されていること が認められるところ、各国の国籍取得要件や、国籍取得の事実を証明することのできる書面に係る運用が時々刻々と変化する中で、法務省又は外務省が、190を超える国の国籍取得要件やその証明書類に係る最新の運用を逐一把握した上で、それを変更がある都度、余すことなく全国の地方公共団体に共有し、周知徹底するよう求めることは、現実的でないといわざ るを得ない。 また、戸籍法施行規則82条は、戸籍事務の取扱に関して疑義を生じたときは、市町村長は、管轄法務局等を通じて法務大臣にその指示を求めることができる旨規定しているところ、このような受理照会の制度は、まさに、自己の志望によって外国の国籍を取得したことを理由とする国籍喪失 の届出を含む戸籍に関する事務を、管轄法務局等を通じた法務大臣の指示の下で適正迅速に処理するために設けられた制度であるということができる。そうすると、国の公務員が、このような戸籍法施行規則82条に基づく受理照会の制度を設ける以上に、各国の個別具体的な国籍取得要件やその証明書類に係る運用等を全国の地方公共団体に周知徹底する仕組み等を 構築すべき職務上の法的義務を負うものと解することはできない。 したがって、前記アの原告の主張も採用できない。 (6) 東京入国管理局が原告による在留資格変更申請を不受理とした事実の有無(違法事由②)について原告は、2018年(平成30年)12月14日、「就労ビザ」への在留資格変更申請をしたが、東京入国管理局は、原告の国籍喪失届が受理されてい ないために在留許可に関する審査ができないとの理由で不受理とした旨主張する。 しかし、前記前提事実(2)エのとおり、原告が、同日、東京入国管理局において行ったのは、「日本国 届が受理されてい ないために在留許可に関する審査ができないとの理由で不受理とした旨主張する。 しかし、前記前提事実(2)エのとおり、原告が、同日、東京入国管理局において行ったのは、「日本国籍保有者判明による」との理由による在留資格抹消の願い出であるから、原告が、同日、在留資格変更申請をしたものと認める に足りない。 したがって、東京入国管理局が在留資格変更申請を不受理とした旨の上記の原告の主張は、その前提において採用することができない。 (7) 「国籍喪失を証すべき書面」を提出できないために国籍喪失届が受理されない状況に置かれた元日本人に対する在留資格を付与する制度がないこと の違法(違法事由②)に係る原告の主張についてア原告は、自らに非がないにもかかわらず国籍喪失届を受理されず、そのために不法滞在者扱いされ、5年近くにわたって海外渡航ができない状態に置かれたところ、このように「国籍喪失を証すべき書面」を提出できないために国籍喪失届が受理されない状況に置かれた日本人について法務大 臣が在留資格を付与する制度を設けていないことについても違法性がある旨主張する。 イしかし、前記(2)イのとおり、原告は、2018年(平成30年)11月5日に本件国籍喪失届1を提出しようとした際、「この書類は市民権の証明とはなりません。写真を伴う書類が市民権を証明する書類となります。」と の記載のある本件書簡を持参したことが認められるものの、同日に本件市 民権カードを持参したものとは認められないから、本件国籍喪失届1が同日中に受理されなかったことが不合理であるとはいえない。 また、前記(2)ウのとおり、原告は、同年12月14日に本件国籍喪失届2を提出しようとした際には、本件書簡に加えて、本件市民権カードも 1が同日中に受理されなかったことが不合理であるとはいえない。 また、前記(2)ウのとおり、原告は、同年12月14日に本件国籍喪失届2を提出しようとした際には、本件書簡に加えて、本件市民権カードも持参したものの、本件書簡に記載されていた日付と本件市民権カードに記載 されていた日付は異なるものであり、本件市民権カードには、原告がカナダ市民権を取得した年月日が記載されていなかったから、世田谷区役所戸籍係において、本件国籍喪失届2を受理することができるかどうか疑義があるとして、東京法務局長宛てに受理照会を行うとの判断に至ったことについても不合理であるとはいえない。そして、原告は、2018年(平成 30年)12月17日、世田谷区長が受理照会の手続を行う前に本件国籍喪失届2に係る届出を自ら取り下げたものであり(前記前提事実(2)オ)、その後、2023年(令和5年)5月24日に京都市D区役所において新たに国籍喪失届を提出するまでの間、国籍喪失の届出を行っていない(前記前提事実(6)イ参照)。 このように、原告による国籍喪失の届出が2023年(令和5年)に至るまで受理されなかったのは、原告が国籍喪失の届出に際して適式な「国籍喪失を証すべき書面」を窓口に持参せず、又はこれを持参した上で行った届出が受理される前に自らその届出を取り下げ、その後、同年に至るまで国籍喪失の届出を行わなかったことによるものであって、原告は、国籍 喪失を証すべき書面」を提出できないために国籍喪失の届出を受理されない立場に置かれた者には当たらない。したがって、前記アに係る原告の主張は、その前提を欠くものといわざるを得ず、採用することができない。 (8) 小括以上のとおりであって、法務大臣が原告の国籍喪失届を不受理として原告 に在留資 て、前記アに係る原告の主張は、その前提を欠くものといわざるを得ず、採用することができない。 (8) 小括以上のとおりであって、法務大臣が原告の国籍喪失届を不受理として原告 に在留資格を付与しなかった事実があることを前提に、これが国賠法1条1 項の適用上違法であるとする旨の原告の主張は、いずれもその前提において採用することができないから、その余の点(争点8)について判断するまでもなく、原告の予備的請求については理由がないというべきである。 8 まとめ以上に説示したとおり、国籍法11条1項の規定は原告の主張する憲法の諸 規定等に違反するものではなく、原告は、2008年(平成20年)4月2日に自己の志望によってカナダ市民権を取得したことにより(前記前提事実(1)イ)、日本の国籍を失ったものであるから、原告が日本の国籍を有することを確認する旨の請求については理由がなく、原告が日本の国籍を失ったことを踏まえてされた本件旅券発給申請に対する拒否処分(本件処分)も適法であり、本 件処分が無効であることを確認する旨の請求についても理由がない。 そして、一般旅券を発給することの義務付けの訴えは、いわゆる申請型義務付けの訴えであり、訴訟要件として、併合提起された処分等の無効等確認の請求が認容されるべきものであることが必要となるところ(行政事件訴訟法37条の3第1項2号、3項2号参照)、上記のとおり、本件処分が無効であること を確認する旨の請求については棄却されるべきものであるから、一般旅券の発給の義務付けの訴えは、上記訴訟要件を欠き、不適法である。 また、原告の被告に対する国賠法1条1項に基づく損害賠償請求は、主位的請求・予備的請求を通じて、いずれも理由がない。 第4 結論 よって、本件訴えの 記訴訟要件を欠き、不適法である。 また、原告の被告に対する国賠法1条1項に基づく損害賠償請求は、主位的請求・予備的請求を通じて、いずれも理由がない。 第4 結論 よって、本件訴えのうち、一般旅券の発給の義務付けを求める部分は不適法であるからこれを却下し、その余の原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官横田典子 裁判官藤村享司 裁判官片岡翔子は、差支えのため、署名押印できない。 裁判長裁判官横田典子 (別紙2)関係法令等の定め 1 国籍法の定め(1) 国籍法2条は、子は、①出生の時に父又は母が日本国民であるとき、②出 生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であったとき、③日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないときのいずれかの場合には、日本国民とする旨規定している。 (2) 国籍法3条1項は、父又は母が認知した子で18歳未満のものは、認知をした父又は母が子の出生の時に日本国民であった場合において、その父又は 母が現に日本国民であるとき、又はその死亡の時に日本国民であったときは、法務大臣に届け出ることによって、日本の国籍を取得することができる旨規定している。 (3) 国籍法5条1項5号は、法務大臣は、国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によってその国籍を失うべきことの条件を備える外国人でなければ、その 帰化を許可することができない旨規定し、同条2項は、法務大臣は、外国人がその意思にかかわらずその国籍を失うことができない場 得によってその国籍を失うべきことの条件を備える外国人でなければ、その 帰化を許可することができない旨規定し、同条2項は、法務大臣は、外国人がその意思にかかわらずその国籍を失うことができない場合において、日本国民との親族関係又は境遇につき特別の事情があると認めるときは、その者が前項5号に掲げる条件を備えないときでも、帰化を許可することができる旨規定している。 (4) 国籍法11条1項は、日本国民は、自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う旨規定している。 (5) 国籍法12条は、出生により外国の国籍を取得した日本国民で国外で生まれたものは、戸籍法の定めるところにより日本の国籍を留保する意思を表示しなければ、その出生の時にさかのぼって日本の国籍を失う旨規定している。 (6) 国籍法13条は、外国の国籍を有する日本国民は、法務大臣に届け出るこ とによって、日本の国籍を離脱することができる旨規定し、同条2項は、前項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を失う旨規定している。 (7) 国籍法14条1項は、外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなった時が18歳に達する以前であるときは20歳に達 するまでに、その時が18歳に達した後であるときはその時から2年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない旨規定している。 (8) 国籍法15条1項は、法務大臣は、外国の国籍を有する日本国民で前条1項に定める期限内に日本の国籍の選択をしないものに対して、書面により、国籍の選択をすべきことを催告することができる旨規定し、同条3項本文は、 第1項の規定による催告を受けた者は、催告を受けた日から1月以内に日本の国籍の選択をしなければ、その期間が経過した時 、国籍の選択をすべきことを催告することができる旨規定し、同条3項本文は、 第1項の規定による催告を受けた者は、催告を受けた日から1月以内に日本の国籍の選択をしなければ、その期間が経過した時に日本の国籍を失う旨規定している。 (9) 国籍法16条1項は、選択の宣言(日本の国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨の宣言(同法14条2項))をした日本国民は、外国の国籍の 離脱に努めなければならない旨規定している。 2 戸籍法の定め(1) 戸籍法1条1項は、戸籍に関する事務は、この法律に別段の定めがあるものを除き、市町村長がこれを管掌する旨規定し、同条2項は、前項の規定により市町村長が処理することとされている事務は、地方自治法2条9項1号 に規定する第1号法定受託事務とする旨規定している。 (2) 戸籍法3条1項は、法務大臣は、市町村長が戸籍事務を処理するに当たりよるべき基準を定めることができる旨規定し、同条2項は、市役所又は町村役場の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長は、戸籍事務の処理に関し必要があると認めるときは、市町村長に対し、報告を求め、又は助言若し くは勧告をすることができ、この場合において、戸籍事務の処理の適正を確 保するため特に必要があると認めるときは、指示をすることができる旨規定している。 (3) 戸籍法4条は、この法律中市、市長及び市役所に関する規定は、特別区においては特別区、特別区の区長及び特別区の区役所にこれを準用する旨規定している。 (4) 戸籍法103条1項は、国籍喪失の届出は、届出事件の本人、配偶者又は四親等内の親族が、国籍喪失の事実を知った日から1か月以内(届出をすべき者がその事実を知った日に国外に在るときは、その日から3か月以内)に、これをしなければ 喪失の届出は、届出事件の本人、配偶者又は四親等内の親族が、国籍喪失の事実を知った日から1か月以内(届出をすべき者がその事実を知った日に国外に在るときは、その日から3か月以内)に、これをしなければならない旨規定している。 (5) 戸籍法103条2項は、国籍喪失の届書には、①国籍喪失の原因及び年月 日並びに②新たに外国の国籍を取得したときは、その国籍を記載し、国籍喪失を証すべき書面を添付しなければならない旨規定している。 3 戸籍法施行規則の定め(1) 戸籍法施行規則82条は、戸籍事務の取扱に関して疑義を生じたときは、市町村長は、管轄法務局若しくは地方法務局又はその支局を経由して、法務 大臣にその指示を求めることができる旨規定している。 (2) 戸籍法施行規則83条は、この省令中市、市長及び市役所に関する規定は、特別区においては特別区、特別区の区長及び特別区の区役所にこれを準用する旨規定している。 4 旅券法の定め (1) 旅券法3条1項本文は、一般旅券の発給を受けようとする者は、外務省令で定めるところにより、国内においては都道府県知事を経由して外務大臣に対し、国外においては領事官に対し、一般旅券発給申請書、戸籍謄本、申請者の写真等の必要書類を提出して、一般旅券の発給を申請しなければならない旨規定している。 (2) 旅券法5条1項本文は、外務大臣又は領事官は、第3条の規定による発給 の申請に基づき、外務大臣が指定する地域以外の全ての地域を渡航先として記載した有効期間が10年の数次往復用の一般旅券を発行する旨規定している。 5 カナダ市民権法等の定め(甲146、148)(1) カナダ市民権法3条1項(c)は、第5条の規定に基づいて市民権を与えら れ、又は取得した者で、その日年齢14歳 行する旨規定している。 5 カナダ市民権法等の定め(甲146、148)(1) カナダ市民権法3条1項(c)は、第5条の規定に基づいて市民権を与えら れ、又は取得した者で、その日年齢14歳以上であった者の場合は、市民権の宣誓をした者については、市民とする旨規定している。 (2) カナダ市民権法5条1項は、カナダ市民権法の施行を所管する主務大臣は、カナダ市民でない者でカナダ市民権を申請した者が、①年齢18歳以上、②永久居住のため合法的にカナダ入国を認められ、かつ、申請の日の直前の4 年間のうち少なくとも合計3年間カナダに居住し、③カナダの公用語のいずれかに十分の知識を有し、④カナダ及びカナダ市民権に関する責任と特権につき十分の認識を有し、⑤退去命令を受けておらず、かつ、カナダの治安維持に有害であり、又は、カナダの公秩序に反するおそれがある旨の総督の宣言がされていない者であるときは、カナダ市民権を付与しなければならない 旨規定している。 (3) カナダ市民権規則19条1項は、市民権をカナダ市民権法5条1項の下で付与された者は、市民であることを宣誓し又は厳粛に確約することによって市民権判事の前で市民権の宣誓を行わなくてはならない旨規定し、カナダ市民権規則19条2項は、大臣から特に指示のない限り、市民権の宣誓は市民 権セレモニーにおいてなされなくてはならない旨規定している。 以上
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