【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人古川豊吉の上告趣意書は「我憲法第三十八条第三項ニハ「何人モ自己ニ不 利益ナ唯一ノ証拠ガ本人ノ自白デアル場合ニハ有罪
主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人古川豊吉の上告趣意書は「我憲法第三十八条第三項ニハ「何人モ自己ニ不 利益ナ唯一ノ証拠ガ本人ノ自白デアル場合ニハ有罪トサレ又ハ刑罰ヲ科セラレナイ」 ト規定セラレ国民ハ基本的人権トシテ自白ヲ不利益ナ唯一ノ証拠トシテ有罪トサレ 又ハ刑罰ヲ科セラレナイコトヲ保証シテ居ル、而シテ第十一条ニハ「国民ハスヘテ ノ基本的人権ノ享有ヲ妨ケラレナイ」コト並ニ「コノ憲法カ国民ニ保障スル基本的 人権ハ侵スコトノ出来ナイ永久ノ権利トシテ現在及将来ノ国民ニ与ヘラレル」コト ヲ規定シテ居ルカラ此ノ基本的人権ハ現在及将来ノ国民ニ与ヘラレルモノデアリ従 ツテ憲法ノ施行ト同時ニ現在ノ国民ニ与へラレ其ノ時カラハ此ノ基本的人権ニ背反 スル裁判ハ許サレナイ、原判決ヲ見ルニ上告人ノ原審公廷ニ於ケル自白ヲ唯一ノ証 拠トシテ有罪ノ判決ヲ下シテ居リ之レハ明カニ憲法ノ規定ニ違反スル、其ノ詳細ハ 左ノ通リデス一、原判決ハ其理由第一ニ於テ上告人ハ(一)昭和二十一年十月一日 頃A外二名ト共謀シ・B方テ同人所有ノ毛糸二十五束衣類等合計約三百六十五点ヲ 窃取シ(二)同年十一月十八日頃東京デ知合ツタC外二名ト共謀シテD方デ同人所 有ノモーニング一着外洋服衣類等約六十点ヲ窃取シタ事実ヲ認定シ之レカ証拠トシ テ・B、D提出ノ被害上申書(原審第二回公判調書ノ後部ニ綴込ミアリ)ヲ挙ゲテ 居ルケレドモ右上申書ハ何レモ作成者ノ住所ノ記載作成ノ年月日ノ記入モナク第一 審裁判当時ニハ存在セズ又原審ノ公判廷ニ於テモ展示セラレナカツタモノデアルカ ラ其ノ成立ヲ疑フニ足ルヘキ証拠力ノナイ文書デアル然ルニ原判決ハ採証ノ法則ヲ 誤ツテ之レヲ証拠トシタ違法ガアルカラ上告人ノ自白ヲ唯一ノ証拠トシテ有罪ノ判 決ヲ下シタモノト言フヘク原判決ハ破毀ヲ免レサルモノト信スル」というにある。 拠力ノナイ文書デアル然ルニ原判決ハ採証ノ法則ヲ 誤ツテ之レヲ証拠トシタ違法ガアルカラ上告人ノ自白ヲ唯一ノ証拠トシテ有罪ノ判 決ヲ下シタモノト言フヘク原判決ハ破毀ヲ免レサルモノト信スル」というにある。 所論・B及びDの各被害上申書には、その作成の年月日が記載されていないこと - 1 - は、正に所論のとおりであるが、作成者である同人等の住所及び氏名はともに明記 されている。本件盗難被害上申書にその作成の年月日の記載がないからといつて、 直ちにその上申書は無効であるとか、これに証拠力を認めてはならない。とかとい う理由はない。けだし、刑事訴訟法第七十三条には、官吏又は公吏にあらざる者の 作るべき書類には年月日を記載し署名捺印すべしと規定されているが、その年月日 の記載がないときはその書類を無効とするという規定はないのであるから、裁判官 は諸般の証拠によつて、その書類が真正に成立したかしないかを自由に判断するを 妨げるものでないからである。苟くも、その書類が真正に成立したものと認められ、 且つ、その内容が信用するに足るものである以上、これを証拠として採ることは、 事実審である原審の自由裁量権に属するとこである。なお原審第四回公判調書の記 載によれば、各被害上申書はいずれも適法に証拠調が行われていることが明らかで あるから、原判決には所論のように証拠調をしない証拠を罪証に供したという遠法 もない。そして原判決は所論第一の(一)及び(二)の各窃盗事実を認定するに当 つて、証拠として被告人が原審公判廷においてした被害金額の点を除く外判示と同 旨の供述、すなわち、被告人の自白と右被害上申書とを綜合して、これを認めてい るのである。従つて本件全体としては被告人の自白だけを唯一の証拠として有罪を 認定したものではない、原判決には何等所論のような憲法違反はない。されば論旨 は総て理由がないも とを綜合して、これを認めてい るのである。従つて本件全体としては被告人の自白だけを唯一の証拠として有罪を 認定したものではない、原判決には何等所論のような憲法違反はない。されば論旨 は総て理由がないものである。よつて裁判所法第十条但書第一号、刑事訴訟法第四 百四十六条により主文の通り判決する。 この判決は裁判官全員の一致した意見によるものである。 検察官 松岡佐一関与 昭和二三年五月一二日 最高裁判所大法廷 裁判長裁判官 塚 崎 直 義 - 2 - 裁判官 長 谷 川 太 一 郎 裁判官 沢 田 竹 治 郎 裁判官 霜 山 精 一 裁判官 井 上 登 裁判官 栗 山 茂 裁判官 真 野 毅 裁判官 庄 野 理 一 裁判官 島 保 裁判官 斎 藤 悠 輔 裁判官 藤 田 八 郎 裁判官 岩 松 三 郎 - 3 -
▼ クリックして全文を表示