平成14(ワ)8848

裁判年月日・裁判所
平成15年10月23日 大阪地方裁判所
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判決文本文30,303 文字)

平成14年(ワ)第8848号損害賠償等請求事件口頭弁論終結の日平成15年7月16日判決原告アドビシステムズインコーポレーテッド原告クォークインク原告マイクロソフトコーポレーション原告ら訴訟代理人弁護士村本武志同田中千博同近藤剛史同和田宏徳原告ら訴訟復代理人弁護士西端裕子被告ヘルプデスク株式会社被告 A被告ら訴訟代理人弁護士三山峻司同西迫文夫 主文 1 被告らは、連帯して(1) 原告アドビシステムズインコーポレーテッドに対し、金1757万8000円、(2) 原告クォークインクに対し、金916万6000円、(3) 原告マイクロソフトコーポレーションに対し、金1203万9200円及び上記各金員に対する平成12年7月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は10分し、その7を原告らの、その余を被告らの各負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告らは、連帯して(1) 原告アドビシス この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告らは、連帯して(1) 原告アドビシステムズインコーポレーテッドに対し、金3531万1380円、(2) 原告クォークインクに対し、金1837万8360円、(3) 原告マイクロソフトコーポレーションに対し、金2446万2048円及び上記各金員に対する平成12年7月5日(最終の不法行為のあった日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、後記のコンピュータ・プログラムについて著作権を有する各原告が、被告会社による複製権(著作権法21条)侵害行為があり、被告Aにも、その職務を行うにつき悪意又は重過失があったなどとして、被告らに対し、民法709条、商法266条の3(被告Aのみ)に基づく損害賠償を請求した事案である。 (基本的事実)1(1) 原告ら(以下「原告アドビシステムズインコーポレーテッド」を「原告アドビ」、「原告クォークインク」を「原告クォーク」、「原告マイクロソフトコーポレーション」を「原告マイクロソフト」という。)は、いずれもコンピュータ・プログラム及びシステム等の制作・開発・販売等の業務を行っているものである。 (2) 被告ヘルプデスク株式会社(以下「被告会社」という。)は、その設置する教室において、コンピュータ・プログラムの講習を業とする株式会社であり、被告Aは、設立当時から、その代表取締役の地位にあったものである(乙 10)。 2 各原告は、それぞれ次の各コンピュータ・プログラム(以下、一括して「本件プログラム」ともいう。)について著作権を有する。 (1) 原告アドビ Adobe ある(乙 10)。 2 各原告は、それぞれ次の各コンピュータ・プログラム(以下、一括して「本件プログラム」ともいう。)について著作権を有する。 (1) 原告アドビ Adobe IllustratorAdobe Photoshop(2) 原告クォーク QuarkXPress(3) 原告マイクロソフト MicrosoftOfficeMicrosoftVisualBasic 3 原告らは、被告会社による本件プログラムの違法複製が行われているとして、証拠保全(当庁平成12年(モ)第4291号)を申し立て、その検証手続(以下「本件証拠保全手続」という。)が、平成12年7月5日、被告会社事務所(パソコン教室を含む。)において実施された。その結果は、次のとおりである(検証)。 (1) 複製に関する検証結果別紙「複製プログラム検証結果一覧表」記載のとおり(プログラム名にバージョン番号の記載のないものはバージョンが不明という趣旨である。)。 (2) 被告会社保有のライセンスに関する検証結果別紙「マスターディスク等一覧表」記載のとおり。 (争点) 1 損害の発生―被告会社による本件プログラムの複製数と被告会社保有のライセンス数との差(原告らの主張)(1) 被告会社による本件プログラムの複製数別表1「検証番号」(別紙「複製プログラム検証結果一覧表」記載の検証番号に対応する。以下、括弧内の番号は、別紙「複製プログラム検証結果一覧表」及び別表1の該当「検証番号」を指す。)欄の各コンピュータ 別表1「検証番号」(別紙「複製プログラム検証結果一覧表」記載の検証番号に対応する。以下、括弧内の番号は、別紙「複製プログラム検証結果一覧表」及び別表1の該当「検証番号」を指す。)欄の各コンピュータに対応する各「ソフト」欄に「1」及び「」(白黒の反転文字)と記載されたものすべてが、本件証拠保全手続の実施された平成12年7月5日までに、被告会社により本件プログラムの複製がされたものであり、その複製総数は、同表末尾の「各原告主張のインストール合計数」記載のとおりである。これを基礎付ける次の事実がある。 ア 本件証拠保全手続において、被告会社のコンピュータ内に本件プログラムの複製が直接確認できたものは一部であるが、本件プログラムに関連するフォルダの存在やレジストリへの形跡、「アプリケーションの追加と削除」、Windowsにおけるショートカット(Macintoshにおけるエイリアス)に本件プログラムの情報を確認できたものがあるから、本件プログラムが複製されていたといえる。 イ 本件サーバーコンピュータ(検証番号10-99)、Helpdeskサーバーコンピュータ(検証番号「ヘルプデスクサーバ」)又はPublicサーバーコンピュータ(検証番号「パブリックサーバ」)には本件プログラムの一部が複製されていたところ、被告会社には、これらのサーバーコンピュータとネットワークで接続されたクライアントコンピュータ(別紙「複製プログラム検証結果一覧表」の「その他備考」欄に、上記各サーバーへのアクセス履歴ありと記載されたもの)があった。本件証拠保全手続において、このクライアントコンピュータのメニュー上の「最近使ったサーバー」を閲覧し、各サーバーコンピュータが表示されたほか、同メニュー上の「最近使用したアプリケーション」には本件プログラムの名称 続において、このクライアントコンピュータのメニュー上の「最近使ったサーバー」を閲覧し、各サーバーコンピュータが表示されたほか、同メニュー上の「最近使用したアプリケーション」には本件プログラムの名称やエイリアスが表示された。実際にも、クライアントコンピュータからネットワーク越しに本件プログラムを起動させたところ、正常に作動した。したがって、その余のクライアントコンピュータについても、同様に本件プログラムの複製があったといえる。 ウ 被告会社は、接客中を理由に、本件証拠保全手続の開始を遅滞させた。また、本件証拠保全手続の実施中も、本件サーバーコンピュータ(検証番号10-99)が、上記イの設定状態から「不可視フォルダにあるため起動できない。」として表示できない設定状態に変更されたことがあった。裁判官が、被告会社従業員に対し、同フォルダを可視状態にするように求めたにもかかわらず、同従業員は、そのような作業は当日休んでいる従業員しか分からないと返答してこれを拒否した。そこで、別のコンピュータの検証を実施した後、再度、被告Aをして、不可視状態を解除するように求めたところ、今度は、不可視フォルダそのものが消去されていた。さらに、当初は、正常に起動していたコンピュータが起動不能となったり、システムフォルダ内のシステムファイル全部が「ごみ箱」に捨てられたりしたこともあった。このように、本件証拠保全手続中に、被告会社による組織的な証拠堙滅行為が行われたのは、被告会社のコンピュータに違法に複製された本件プログラムがあったためである。 エ 被告らの主張(1)イについて反論すれば、本件証拠保全手続において、被告Aは、他のコンピュータ(検証番号10-36~10-38、10-40~10-49)に関する説明と異なり、新規開講の講座のために準備中 らの主張(1)イについて反論すれば、本件証拠保全手続において、被告Aは、他のコンピュータ(検証番号10-36~10-38、10-40~10-49)に関する説明と異なり、新規開講の講座のために準備中のコンピュータであるから、本件プログラムを複製していないなどという説明をしていなかった。また、本件証拠保全手続の当時における被告のパンフレットや受講実施状況に照らしても、新規開講の講座のために準備中であったとはいえない。 (2) 被告会社の保有ライセンス数本件証拠保全手続の実施された平成12年7月5日当時、被告会社が保有していたライセンスは、別表2のうち、番号欄の数字に○印を付したもの(◎印のものは除く。)のみである。これを基礎付ける次の事実がある。 ア 本件証拠保全手続当時、被告会社側からマスターディスクの提示があったものはライセンスがあることになるが、それ以外のものは、パッケージ等が残っていたとしても、マスターディスクが存在しなかったのであるから、ライセンスがあるとはいえないはずである。 イ 本件証拠保全手続における被告Aのライセンスに関する説明は、原告アドビ及び原告マイクロソフト関係の本件プログラムが10~15本ある、原告クォーク関係の本件プログラムが2本くらいあるというにとどまり、本件訴訟における被告らの主張を裏付けるような説明は全くなされていない。むしろ、被告Aは、本件プログラムを使用するたびに、マスターディスク(CD-ROM)から複製し、使用が終わると削除する取扱いをしているなどと、必要とされる数のマスターディスクを提示できないことを正当化しようとする弁解に終始していた。 ウ 本件プログラムのうちQuarkXPress(正規品)を使用するためには、パッケージに同梱されたハードウ のマスターディスクを提示できないことを正当化しようとする弁解に終始していた。 ウ 本件プログラムのうちQuarkXPress(正規品)を使用するためには、パッケージに同梱されたハードウェアキーをコンピュータ本体等に装着する必要があるにもかかわらず、このハードウェアキーを装着した被告会社のコンピュータは1台もなかった。被告会社のコンピュータに複製されていたQuarkXPressは、ハードウェアキープロテクト機能を違法に解除した違法コピーを用いたものであるから、被告会社は1本たりとも同プログラムの正規のライセンスを有していない。被告会社のコンピュータにインストールされているその他のプログラムについても、インターネット上で違法に公開されている「シリアル集」のシリアルナンバーと同一のものがある。 (3) 結論上記(1)の被告会社による本件プログラムの複製数と上記(2)の被告会社の保有ライセンス数の差が被告会社による違法複製の数となる。具体的には、別表3の各「複製物名」欄の本件プログラムに対応する「違法複製数」欄記載の数となる。 (被告らの主張)(1) 被告会社による本件プログラムの複製数本件証拠保全手続の実施された平成12年7月5日までに、被告会社による本件プログラムの複製があったものは、別表1「検証番号」欄の各コンピュータに対応する各「ソフト」欄に白黒の反転文字で「」と記載されたものに限られ、その複製総数は、同表末尾の「被告ら主張のインストール合計数」記載のとおりである。これを基礎付ける次の事実がある。 ア 本件証拠保全手続当時、被告会社が開講していたパソコン教室の受講生は、利用時間報告書(乙1の1~3)や「予約状況(日別)」と題する書面(乙2の1~3)によ 基礎付ける次の事実がある。 ア 本件証拠保全手続当時、被告会社が開講していたパソコン教室の受講生は、利用時間報告書(乙1の1~3)や「予約状況(日別)」と題する書面(乙2の1~3)によれば、最大でも59人であった。したがって、被告会社の開講する講座等に対応するためには、59台のコンピュータで本件プログラムが利用できれば足り、この数を上回って本件プログラムを複製する必要はなかった。 イ 本件証拠保全手続当時、被告会社に合計139台ものコンピュータがあったのは、次の事情に基づく。すなわち、被告会社は、雇用・能力開発機構大阪センターの委託(乙4)を受けて、新たに3講座(定員1講座当たり20人、受講期間3か月)を開設する予定であり、具体的には、第1回が平成12年7月18日~10月17日、第2回が同年8月22日~11月14日、第3回が同年9月19日~12月12日の開講を予定していた。したがって、被告会社としては、上記3講座の最初の開講日である平成12年7月18日までに約60台(20×3)、最後の開講日である同年9月までに合計180台(60×3)のコンピュータを新たに導入する必要があったためである。本件証拠保全手続当時、被告会社にあったコンピュータのうち、上記新規講座の開講準備のために新たに購入されたものは、その取引関係書類(乙5の1、2、乙6の1~4、乙7)によれば、合計64台である。これらのコンピュータは、ネットワークに接続し、起動の確認やシステム作動の確認等をしていたにすぎず、実際に講義に使用されていたわけではないから、本件プログラムの複製が行われていたことはあり得ない。 ウ 本件証拠保全手続当時、被告会社にあったコンピュータのうち、上記イの新規購入分を除いた残りのコンピュータの中には廃棄予定のものも含まれて グラムの複製が行われていたことはあり得ない。 ウ 本件証拠保全手続当時、被告会社にあったコンピュータのうち、上記イの新規購入分を除いた残りのコンピュータの中には廃棄予定のものも含まれており、この廃棄予定のコンピュータについては、講座に使用されていたわけでもないから、本件プログラムの複製はなかった。 エ 原告らの主張(1)アについて反論すれば、被告会社は、講座や自習において(被告会社が正規のライセンスを有する)プログラムをインストールした後、アンインストールすることもあり、その際、インストールを失敗したり、アンインストールが完全でない結果、被告会社のコンピュータ内に使用の痕跡が残ったことがあるにすぎない。 (2) 被告会社の保有ライセンス数別紙「マスターディスク等一覧表」を含め、本件証拠保全手続の実施された平成12年7月5日当時、被告会社が保有していたライセンスは、下記のとおりである(合計99本)。これを基礎付ける次のア~ウの事実がある。 記AdobeIllustrator 5.5J 2本AdobeIllustrator 7.0J/7.0.1J 合計4本AdobeIllustrator 8.0J 19本AdobePhotoshop 4.0J 2本AdobePhotoshop 5.0.2J 23本 2本AdobePhotoshop 5.0.2J 23本QuarkXPress 3.3J 2本MicrosoftOffice 2000 ProffessionalEdition 6本MicrosoftOffice 95 ProffessionalEdition 3本MicrosoftOffice 97 ProffessionalEditionPoweredbyWord 98 11本MicrosoftAccess 97 1本MicrosoftVisualBasic 5.0/6.0 ProffessionalEdition(VisualStudioを含む。) 合計26本ア 被告会社が本件証拠保全手続当時までに本件プログラムを購入した数は、被告会社の総勘定元帳、注文書、領収証、納品書等から明らかである。 イ 本件証拠保全手続において、上記アに相当するマスターディスク数を提示できなかったのは、段ボール箱に入れるなど本来の保管場所以外の場所に置いていたこと、被告会社は、現在まで数回移転しているため、その際に紛失したこと、被告会社の講師が社外へ持ち出したものや、持ち出したまま紛失したものが相当数あっ 入れるなど本来の保管場所以外の場所に置いていたこと、被告会社は、現在まで数回移転しているため、その際に紛失したこと、被告会社の講師が社外へ持ち出したものや、持ち出したまま紛失したものが相当数あったことによるものである。 ウ 被告Aは、本件証拠保全手続が混乱した状態でその対応に追われ、マスターディスクを探す十分な時間もなかったため、被告会社の保有するマスターディスクの一部を提示したにすぎない。 (3) 上記(1)の被告会社による本件プログラムの複製数と上記(2)の被告会社の保有ライセンス数の差が被告会社による違法複製の数となる。仮にそうでないとしても、同一バージョンでシリアルナンバーが同一のものは、被告会社は、その有していたマスターディスク1枚を用いて複数のコンピュータに複製したものであるから、少なくとも正規のライセンス1本分は違法複製ではない。 2 損害の額(原告らの主張)(1) 本件において、著作権法114条2項の「受けるべき金銭の額に相当する額」を算定するに当たっては、次の事情があることを斟酌した上で、正規品の事前購入者が支払う対価に比し、侵害行為者が負担すべき損害賠償額がいくらであれば、客観的に公平な負担をしたといえるかという観点から決定されるべきである。 具体的には、本件プログラムの正規品購入価格(標準小売価格)の2倍を下らないというべきである。 したがって、原告らの損害額は、別表3の損害賠償額欄記載のとおりであり、各原告につき次の金額となる。 原告アドビ 3195万6000円原告クォーク 1663万2000円原告マイクロソフト 2213万7600円ア プログラムの違法複製による被害の甚大性 3195万6000円原告クォーク 1663万2000円原告マイクロソフト 2213万7600円ア プログラムの違法複製による被害の甚大性プログラム著作物は、その性質上、複製が極めて容易な反面、組織内における違法複製を著作権者が発見・捕捉することが困難であるため、組織的かつ意図的な違法複製が後を絶たない実情にある。これらの違法複製を漫然と放置することは、プログラム産業の健全な発展を阻害し、その存立を脅かすことになるから、原告らは、プログラムの違法複製を防止するために、多大な労力と費用を投じて、学校や企業等に対し、著作権思想の啓蒙、違法複製の撲滅キャンペーン、違法複製情報の収集(同情報提供の呼びかけを含む。)・分析・調査等の活動を行っている。原告らによるこれらの諸活動は、被告会社を含む侵害者の違法行為が存在するが故に行わざるを得ないものであり、その費用の支出も、被告会社を含む侵害者の違法行為が存在するが故に余儀なくされるものであるから、被告会社を含む侵害者にこれを負担させることが公平にかなう。また、被告会社の違法複製を原告らが覚知した後、本件訴訟を提起するに至るまでに要した諸経費のうち本件訴訟費用に含まれないものについては、侵害者である被告会社に負担させることが公平にかなう。 しかるところ、これらの諸費用の内訳やその額を、被告会社の違法行為と直接結びつけた具体的な金額として算定することは、その性質上、極めて困難であるから、上記諸費用を適切に勘案した相当な損害額を認定すべきである。 イ 被告会社の行為の高度の違法性本件プログラムは、被告会社がその講習を行うために不可欠なものであり、本来、その購入の対価は、受講料等の算定 損害額を認定すべきである。 イ 被告会社の行為の高度の違法性本件プログラムは、被告会社がその講習を行うために不可欠なものであり、本来、その購入の対価は、受講料等の算定に斟酌され、そのうちの相当額を占めるものである。したがって、被告会社が、その業務であるプログラム講習において本件プログラムを繰り返し使用することは、その違法複製したものを受講生の数だけ販売したに比すべき高度の違法性がある。 また、被告会社は、コンピュータスクールを経営するものとして、プログラム著作権の重要性を最もよく理解し、もしくは理解し得べき立場にあり、かつ、その重要性を受講生や被告会社従業員に周知徹底させる義務がありながら、大量の違法複製行為を行っていたのであるから、この点でも、高度の違法性がある。 さらに、争点1で主張したとおり、本件証拠保全手続の実施中であるにもかかわらず、被告会社により違法複製物の削除という証拠堙滅行為が行われたのであるから、その悪性の程度も高い。 ウ 正規品の事前購入者との均衡事前に正規品を購入した者との間で公平な負担というためには、事後的な損害賠償額は、正規品購入価格よりも高額でなければならない。すなわち、①プログラムの違法複製が発覚することは少なく、仮に発覚したとしても、その違法行為すべてを個別具体的に立証することは相当な困難を伴うのが通常である。②正規品購入価格は、購入者が著作権を遵守し、誠実にプログラムを利用することを前提として定められたものであるから、この前提を欠く者が負担すべき損害賠償額は正規品購入価格より高くなるのが当然である(プログラムの使用開始に際し、正規品を事前購入すべきか否かを選択する機会があったにもかかわらず、敢えて正規品を事前 この前提を欠く者が負担すべき損害賠償額は正規品購入価格より高くなるのが当然である(プログラムの使用開始に際し、正規品を事前購入すべきか否かを選択する機会があったにもかかわらず、敢えて正規品を事前購入せず、違法複製を行うことを選択した者は、その著作権遵守や誠実性の点で、正規品の事前購入者と大いに相違する。)。③仮に事後的な損害賠償額が正規品購入価格と同額で足りるとすれば、侵害行為が常に発覚するわけではない以上、侵害行為をした方が得策となり、不当である。 エ 社会的ルールの要請違法行為による事後的な損害賠償額が、事前に適法に支払う金額よりも割高となることは、既に社会的なルールとして確立しており、このことは、例えば、印紙税法20条1項、2項や、鉄道営業法18条2項の定める内容からも窺われる。 (2) 仮に上記(1)の金額(正規品購入価格の2倍)が認められないとしても、本件プログラムを正規に購入しようとすれば、正規品購入価格に相当する金員を出捐しなければならない以上、被告会社は、本件プログラムの違法複製により同出捐を免れたということができるから、著作権法114条1項の「その侵害の行為により利益を受けているとき」に該当し、被告会社は、正規品購入価格と同額の損害賠償額を負担すべきである。 さらに、原告らは、多額の資本を投じて開発した本件プログラムの違法複製を防止するために、更に多額の費用を投じて予防啓発活動を行っているのに対し、被告会社は、自ら率先してプログラムの著作権遵守をすべき立場にありながら、本件のような大量の違法複製を行ったという悪性があることに照らすと、著作権法114条1項、2項の損害賠償とは別に、民法709条に基づき、無形損害その他の損害として、逸失利益と同額の損害賠償が認められるべ のような大量の違法複製を行ったという悪性があることに照らすと、著作権法114条1項、2項の損害賠償とは別に、民法709条に基づき、無形損害その他の損害として、逸失利益と同額の損害賠償が認められるべきである(民事訴訟法248条、著作権法114条の4により、相当な損害額の認定を求める。)。 したがって、その合計額は上記(1)と同じ金額(正規品購入価格の2倍)を下らないというべきである。 (3) 弁護士費用原告らは、被告会社との訴訟前交渉を弁護士に依頼したが、被告会社との合意に至らなかったため、やむを得ず訴訟提起し、その遂行を弁護士に委任せざるを得なかった。 原告らは、原告ら代理人に対し、別表3の弁護士費用欄記載の弁護士報酬及びそれに対する消費税の支払を約した。 (被告らの主張)(1) 原告らが本件プログラムを販売する場合の価格は、卸売価格であり、標準小売価格ではないから、原告らが「受けるべき金銭の額に相当する額」(著作権法114条2項)とは、卸売価格相当額であるはずである(小売店に帰属すべき小売予定利益まで原告らが受けるべき金銭に含まれる根拠はない。)。原告らの主張は、実際に生じた損害の賠償に加えて、制裁及び一般予防を目的した賠償の支払を受けようとするものであって、不法行為に基づく損害賠償制度の基本理念と相容れない。正規品の事前購入者との均衡の点も、被告会社は、事後的に正規品を購入することにより、正規品の購入価格に相当する金員を既に支出しており、これに加えて損害賠償を支払えば、必然的に正規品購入価格より高くなるから、侵害者が正規品の事前購入者より有利になるとはいえず、不公平とはいえない。 (2) 著作権法114条1項の「その侵害の行為により利益を受けているときは、 然的に正規品購入価格より高くなるから、侵害者が正規品の事前購入者より有利になるとはいえず、不公平とはいえない。 (2) 著作権法114条1項の「その侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額」は、本件プログラムの違法複製により、その分の購入費用に相当する金員の支出を免れた利益であるから、市場において被告会社が本件プログラムを購入する額(実勢販売価格)であるというべきである。本件プログラムにつき具体的な金額が判明しているものは、次のとおりである。 AdobeIllustrator 8.0及びAdobePhotoshop 5.0  合計15万9600円MicrosoftOffice 2000 ProffessionalEdition 1万4162円MicrosoftOffice 97 1万9300円MicrosoftVisualBasic 5.0 ProffessionalEdition 1万1450円MicrosoftVisualBasic 6.0 ProffessionalEdition 1万7980円MicrosoftAccess 97 8316円 3 損害のてん補(被告らの主張)(1) 被告会社が本件プログラムと同一の正規品(乙8の1~22、違法複製時の旧バージョンではなく、新バージョンではあるが、新バージョンは旧バージョンと一体性を保ちながら、その機能を拡張したものであるから、実質的には同一のものといえる。)を本件証拠保全手続後に購入したことにより、原告ら主張の損害はすべててん補された。すなわち、本件プログラムの と一体性を保ちながら、その機能を拡張したものであるから、実質的には同一のものといえる。)を本件証拠保全手続後に購入したことにより、原告ら主張の損害はすべててん補された。すなわち、本件プログラムの使用に関しては、ペイドアップ方式によるシュリンク・ラップ使用許諾契約が採用されている。ペイドアップ方式とはライセンス料を一括して前払いする方式のことであり、シュリンク・ラップとはプログラムパッケージにプログラムの使用条件を印刷しておき、ユーザーがパッケージを開封すると、当該条件下でプログラムの使用許諾契約が成立したものとみなす旨を記載しておくことであり、この方式の下では、同一プログラムの使用対価を1回支払えば、永久かつ無制限に使用できるものであるから、後に正規品を購入したことにより、過去の使用分も遡及しててん補されたものということができる。損害賠償の制度趣旨に照らしても、原告らは、被告会社による正規品購入以前の損害を含め、本件プログラムの予定する収入をすべて回収したということができるから、原告ら主張の損害はすべててん補されたというべきである。 (2) 仮にそうでないとしても、上記(1)のとおり、被告会社が正規品を購入した以上、原告らの損害は、違法複製の時点から正規品購入の時点までの期間に相当する使用料相当額に限定されるというべきである。正規品の購入価格には将来の使用料が含まれているのであるから、原告らの主張を前提とすると、正規品購入後の本件プログラムの使用について二重に使用料を支払うことになり、不当である。 (原告らの主張)(1) 被告らの主張(1)は否認する。被告会社による事後的な正規品購入は、単に当該正規品を購入時から将来的に使用できる地位を被告会社に獲得させるものにすぎず、既に確定した原告らの損害賠償請求権に何 (1) 被告らの主張(1)は否認する。被告会社による事後的な正規品購入は、単に当該正規品を購入時から将来的に使用できる地位を被告会社に獲得させるものにすぎず、既に確定した原告らの損害賠償請求権に何ら影響するものではない。被告らの主張するペイドアップ方式によるシュリンク・ラップ使用許諾契約も、当該正規品のみに妥当するものにすぎない。 (2) 被告らの主張(2)は否認する。正規品の事前購入者さえ、現実の使用期間の長短にかかわらず、正規品価格を支払うのであるから、違法複製をした者がこれより少額の賠償をすればよいなどということはあり得ない。 4 被告Aの故意過失(民法709条)又は故意重過失(商法266条の3)(原告らの主張)(1) 被告会社はコンピュータスクールであり、約20名の従業員の大半がインストラクター業務に従事していたところ、その代表取締役である被告Aは、被告会社の業務全般を統括管理し、インストラクターの指導を行っていた。 したがって、被告Aは、その職務上、本件プログラムのライセンス数が被告会社設置のコンピュータにおける複製数に足りることを確認し、被告会社をして本件プログラムの違法複製を行わないように注意すべき義務があったのにこれを怠り、被告Aは、被告会社設置のコンピュータへの本件プログラムの違法複製を自ら行ったか又は被告会社従業員をしてこれを故意に行わせた(被告会社はMOUS(原告マイクロソフトのプログラムの利用能力を資格として証明できる同原告主催の試験制度)実施校であり、MOUSの実施には被告会社のコンピュータのインストール状況の過不足を調査することが必要であるところ、被告会社の担当者は被告A自身であった。被告会社設置のコンピュータへ違法複製された本件プログラムの登録名には(被告会社名 社のコンピュータのインストール状況の過不足を調査することが必要であるところ、被告会社の担当者は被告A自身であった。被告会社設置のコンピュータへ違法複製された本件プログラムの登録名には(被告会社名義ではなく)被告A名義とされたものが散見される。また、本件プログラムのうちQuarkXPressについては、およそライセンスを有していなかったのであるから、被告Aが違法複製を認識していなかったということはあり得ない。)。 (2) 仮にそうでないとしても、被告会社の業務上、本件プログラムの違法複製が行われざるを得ない状況があったのであるから、被告Aに未必の故意又は重過失があったことは明らかである。 (同被告の主張)(1) 被告Aは、被告会社代表者として、受講生の募集、受講生への説明、講師等の採用、スタッフの管理、広告宣伝、教室の設置管理、会計管理など会社運営全体にかかわる事項について業務執行を行っており、被告A個人は本件プログラムを使用した講座を担当していなかった。 また、被告会社は、受講生の募集に際して個別指導を強調するとともに、講師の募集に際しても講師の裁量が大きく柔軟な対応が可能であることを強調していたため、必要なプログラムの購入管理についても、その担当講師を信頼して任せていた。具体的には、被告Aは、担当講師からのプログラム購入の要望に応じて随時これを購入し(被告Aとしては、複製に対応するライセンスは十分に確保されているものと考えていた。)、専用の場所にマスターディスクを保管するように指示していた。ただし、講師の自主性を尊重して保管場所の施錠はなく、講師であれば、本件プログラムのマスターディスクを自由に持ち出しできる状態にあった。仮にその紛失等があったとしても、講師からの個別的報告がない限り、被告A 講師の自主性を尊重して保管場所の施錠はなく、講師であれば、本件プログラムのマスターディスクを自由に持ち出しできる状態にあった。仮にその紛失等があったとしても、講師からの個別的報告がない限り、被告Aがこれを知ることは困難であった。原告ら主張の本件プログラムの登録名の点も、インストールを委ねていた講師の個別的判断の結果にすぎず、被告Aの指示によるものではない。被告Aは、講師にマスターディスクの社外持ち出しを認めていたが、その際は被告会社のコンピュータからアンインストールするように指導していた。 (2) このように、被告Aには、被告会社代表者としての業務があるため、受講の現場に関与して、本件プログラムの管理をすべてチェックすることは困難であった(ただし、被告Aとしても、講師らによる違法複製の事実に気付いたときは、その削除を指示し、今後そのようなことがないように注意するなどしていた。特に原告ら主張のMOUS実施については、その調査に際し、被告会社におけるライセンスの不足数がないかをチェックするから、その時点では違法複製がなかったといえる。)から、被告Aに故意重過失はない。なお、現時点では、被告会社は、コンピュータやプログラムの管理体制を強化し、講師や受講生が無断でプログラムをインストールできないようにした。 第3 判断 1 争点1(損害の発生―被告会社による本件プログラムの複製数と被告会社保有のライセンス数との差)について(被告会社による本件プログラムの複製数)(1) 別表1「検証番号」欄の各コンピュータに対応する各「ソフト」欄に白黒の反転文字で「」と記載された部分が、本件証拠保全手続の実施された平成12年7月5日までに、被告会社により本件プログラムの複製がされたものであることは当事者間に争いがない。その余の部分 」欄に白黒の反転文字で「」と記載された部分が、本件証拠保全手続の実施された平成12年7月5日までに、被告会社により本件プログラムの複製がされたものであることは当事者間に争いがない。その余の部分(「1」と記載された部分)についても、被告会社による本件プログラムの複製があったか否かについて検討すると、上記基本的事実に証拠(後掲各書証のほか検証)を総合すれば、次の事実が認められる。 ア 被告会社において、本件プログラムに関し、本件証拠保全手続当時、総合コース(CULTIVATION COURSE)として次の①~③の各講座が、シングルコースとして次の④~⑫の各講座がそれぞれ開講されていた。被告会社作成の学校案内によれば、各コースは自由予約制とされ、受講希望者が任意の時間帯を選択することができ、1日何時間でも受講可能であることや、その入学も随時可能であることが大きく宣伝されていた。また、総合コース受講修了後のシングルコースの受講料を半額とする特典を設けるなど、1人の受講生が複数のコースを受講することを容易ならしめていた(甲8、9、乙3)。 ① MacDTP総合コース(その後「DTP・デザイン・Webプロ総合コース」に名称変更された。)使用プログラム AdobeIllustrator 8.0/7.0/5.5JAdobePhotoshop 5.0/4.0JQuarkXPress 3.3/4.1J② Windowsビジネス総合コース(その後「Windowsビジネス・MOT総合コース」に名称変更された。)使用プログラム Word2000/98/97 ② Windowsビジネス総合コース(その後「Windowsビジネス・MOT総合コース」に名称変更された。)使用プログラム Word2000/98/97Excel2000/97PowerPoint2000/97Access2000/97③ VB・VBAプログラミング総合コース使用プログラム VisualBasic④ Excel表計算⑤ Word文書処理⑥ Accessデータベース⑦ PowerPoint⑧ VBプログラミング⑨ VBAプログラミング(アクセスVBA・エクセルVBA)⑩ Illustrator⑪ Photoshop⑫ QuarkXPressイ 本件証拠保全手続において、被告Aによる指示説明の内容は、次のようなものに限られていた。 ① 被告会社のコンピュータは9階と10階に配置している。検証番号10-36~10-38、10-40~10-49のコンピュータはホームページ作成用講義の場所であって、本件プログラムはインストールされていない。本件プログラムを使用する際は、毎日使用するごとにCD-ROM(マスターディスク)でインストールし、使用が終わると削除する取扱いをしている。 ② AdobeIllustrator、AdobePhotoshop、MicrosoftOffice、MicrosoftW ールし、使用が終わると削除する取扱いをしている。 ② AdobeIllustrator、AdobePhotoshop、MicrosoftOffice、MicrosoftWord、MicrosoftExcel、MicrosoftAccess、MicrosoftPowerPoint、MicrosoftOutlook、MicrosoftVisualBasicのマスターディスクは、合計10~15本ある。 ただし、その一部を講師が持ち帰っている可能性があるので、現在、被告会社にあるもののみを提示する。 QuarkXPressのマスターディスクは、2本くらいあるが、講師が持ち帰っているので、提示できない。 ③ コンピュータにインストールされているプログラムについて、被告会社が使用許諾を得ていることを示す書類等は、被告会社の事務所の引っ越しがあった関係で所在の判明しないものがある。現在、被告会社にあるもののみを提示する。 ウ これに対し、本件証拠保全手続の検証結果は、別紙「複製プログラム検証結果一覧表」及び別紙「マスターディスク等一覧表」記載のとおりであった。なお、別紙「複製プログラム検証結果一覧表」の「ソフト備考」及び「その他備考」各欄記載の事実があったほか、次のような事実もあった。 ① Macintoshサーバーコンピュータ(検証番号10-99)については、不可視フォルダとしてAdobeIllustrator5.5があり、クライアントコンピュータから接続できない状態になっていた。そこで、裁判官が、9階にいた被告Aに対し、この不可視状態を解除するように申し入れた。ところが、その15分後には、当該不可視フォルダそのものが消去されていた。 ない状態になっていた。そこで、裁判官が、9階にいた被告Aに対し、この不可視状態を解除するように申し入れた。ところが、その15分後には、当該不可視フォルダそのものが消去されていた。 ② 本件プログラムにつき、通常のアンインストール作業を行わなかった結果と思われるエラー表示がみられた。例えば、「関連付けるアプリケーションの設定エラー」(検証番号9-1)、「ショートカットエラー」(検証番号9-1、9-6、9-7、10-20、10-22、10-23、10-24、10-26)、「既定のフォルダが開けない」、「ロードできない」、「動作していない」旨(検証番号10-50、10-52、10-53、10-57)の表示がされたものがあった。Mac版においても、エイリアスからアプリケーションを開くことができない旨のエラー表示(検証番号9-26)があった。さらに、およそ通常は行われない削除の形跡もみられた。例えば、Office2000のフォルダそのものが「ごみ箱」の中にあった(検証番号10-123)。 ③ 単なるインストールやアンインストールの講習ではなく、本件プログラムを利用すると思われるアプリケーション名が、「アプリケーションの追加と削除」の欄にみられた。例えば、「MOUS模擬問題集CD-ROM Word97一般編」(検証番号10-20)、「MicrosoftWord2000セミナーテキスト応用編、MOUS模擬問題集CD-ROM Excel97上級編」(検証番号10-67)、「MOUS試験対策問題集Excel97上級編、同Word97上級編、MOUS対策問題集Word97一般編、同Excel97一般編、MOUS模擬試験Excel97、同Word97、MOUS模擬問題集CD-ROM Excel97一般編、同Excel97上級 97上級編、MOUS対策問題集Word97一般編、同Excel97一般編、MOUS模擬試験Excel97、同Word97、MOUS模擬問題集CD-ROM Excel97一般編、同Excel97上級編、同Word97一般編、同Word97上級編」(検証番号10-70。なお、検証番号10-76~10-84にも同様の名称がみられた。)があった。 ④ 本件プログラムを利用して作成されたファイル(その各拡張子により認める。)のうち、被告会社の受講生ではなく、被告A又は被告会社担当者自身が作成したと思われるものもあった。例えば、「講師シフト表.xlsへのショートカット」(検証番号9-1、9-2)、「テキスト在庫表.doc、面接受付表.xls、見学者アンケート.xls」の各ファイル(検証番号9-2)。「試験業務管理.mdb」のファイル(検証番号9-4)がある。「インストラクターを目指すまで.ppt」(検証番号10-22、10-23)、「中高年向けパソコン教室の提案.ppt」(検証番号10-23)、「インターネット体験コースカリキュラム.doc」(検証番号10-28)も、最近使ったファイルという使用履歴にみられた。 (2) 上記(1)認定の事実によれば、被告会社は、パソコンスクールとして多数の受講生の受講を前提として、本件プログラムの講習が実行できるように準備していたものと推認される。そして、本件プログラムのインストールを直接確認できたコンピュータはもとより、そのインストールの痕跡があるコンピュータについても、本件プログラムの複製の事実を推認させるものということができる。 これに対し、被告らは、①本件証拠保全手続当時の最大受講者数(59人)を上回る複製を行う必要性がなかった、②新規講座のために未だ準備中のコンピュータ 推認させるものということができる。 これに対し、被告らは、①本件証拠保全手続当時の最大受講者数(59人)を上回る複製を行う必要性がなかった、②新規講座のために未だ準備中のコンピュータ(64台)には本件プログラムは複製されていない、③廃棄予定のコンピュータもあった、④本件プログラムの使用の痕跡は、インストールの失敗や不完全なアンインストールによるものもある旨を主張する。しかし、上記①、②については、被告会社の受講対象とするプログラムは、OSをMacintosh用とするものとWindows用とするものの双方があり、この両者に対応するためには相応の数の各コンピュータを用意した上、それぞれに対応する本件プログラムを各コンピュータ上に複製することが必要である(同一プログラムであっても、受講希望者のニーズに応じてMacintosh用とWindows用の双方を複製する必要があることは、被告会社作成のパンフレットにおいて、従来の「Mac DTP総合コース」(甲8)というMacintosh用に限定されたかのような講座名を変更し、「パソコンはMacとWindowsの両方を使用します。」と明記している(甲9、乙14)ことや、本件証拠保全手続において、AdobeIllustratorにつき、Macintosh版のみならず、Windows版の複製の痕跡(検証番号10-42にはその拡張子(ai)がみられる。)が、MicrosoftOfficeにつき、Windows版のみならずMacintosh版の複製の痕跡(検証番号9-26)が認められることからも明らかである。)。被告ら主張の最大受講者数も、その基礎とする算定期間が極めて短期間である点で、その統計的な価値に疑問があるほか、被告会社における多数の講習コースのうち各総合コースの合計を主とするものであり ある。)。被告ら主張の最大受講者数も、その基礎とする算定期間が極めて短期間である点で、その統計的な価値に疑問があるほか、被告会社における多数の講習コースのうち各総合コースの合計を主とするものであり、シングルコースの受講生数を考慮していない点でも疑問が残るといわざるを得ない。のみならず、被告会社は、受講希望者の随時の入学と自由な予約を大きな宣伝材料としていたのであるから、現在の受講生数を上回る需要の増加に対応できるだけの準備を予めしておくのが通常と思われる(被告Aも、受講生の数以上のコンピュータを用意し、トラブルの発生があっても、バックアップの予備機で直ちに対応できるという受講環境を整えていたことを自認している(乙10)。)。そして、その準備というのも、コンピュータのハードウェアとしての作動確認等だけにとどまらず、使用を予定するソフトウェア(プログラム)をインストールした上、その作動を確認するのが通常であるというべきである(被告Aも、本件証拠保全手続において、上記②に相当する弁解は全くしていなかった。)。上記③については、本件証拠保全手続の検証結果において、一切起動しないコンピュータの存在が相当数認められる(別表1のうち「故障のため起動せず」等の記載があるもの)ところではあるが、これらのコンピュータについてまで違法複製の事実を原告らが主張するものではないから、この点に関する被告らの主張は失当である。上記④についても、確かに、プログラムのインストールやアンインストールを講習の一内容とすることも考えられるところであり、その際、不慣れな受講生がインストールを失敗したり、不完全なアンインストールを行うことも皆無であるとはいえない。しかし、被告会社の講師により、その講習前に受講生への適切な指示がされたり、講習後にはこれを修正する等の適切な措置が トールを失敗したり、不完全なアンインストールを行うことも皆無であるとはいえない。しかし、被告会社の講師により、その講習前に受講生への適切な指示がされたり、講習後にはこれを修正する等の適切な措置が講じられるものと考えられる(そうでなければ、当該講習が無意味なものとなり、その後の講習の実施にも支障を来すことが予想される。)のであるから、被告らの主張する原因によるものは(仮にあったとしても)極めて少数であると考えられる。ところが、本件証拠保全手続の検証結果によれば、単にインストールやアンインストールの操作にとどまらない、本件プログラムの使用を前提としたファイルの存在が認められるほか、操作ミス等では合理的に説明できないほどの不自然な痕跡が多数残されているのであって、このような痕跡は、被告らにおいて本件証拠保全手続を契機として短時間のうちに異常なプログラム消去を行おうとしたためであると推認せざるを得ない(本件証拠保全手続の検証開始に当たり、被告会社側の申し入れにより、30分ほどの待機を余儀なくされており、その時間的余裕がなかったとはいえない。)。また、被告らは、本件証拠保全手続の検証結果に照らし、複製の事実が比較的明白なもののみのインストールを認め、使用の痕跡にとどまるものは否認するという主張態度に終始するばかりか、本件証拠保全手続の際の被告Aの指示説明とも大きく相違するから、この点でも、被告らの主張は採用することができない(仮に検証の対象とされたコンピュータの中に、真に被告ら主張のような原因に基づく痕跡にすぎないものがいくらかあったとしても、自らの行為によりこれを不明なものとした者が不利益を被ることはやむを得ないというべきである。)。この点に関する被告らの主張は採用することができない。 (3) 以上によれば、別表1「検証番号」欄の各 行為によりこれを不明なものとした者が不利益を被ることはやむを得ないというべきである。)。この点に関する被告らの主張は採用することができない。 (3) 以上によれば、別表1「検証番号」欄の各コンピュータに対応する各「ソフト」欄に白黒の反転文字で「」と記載されたものに限らず、その余の部分(「1」と記載された部分)についても、被告会社による本件プログラムの複製があったというべきである。 (被告会社保有のライセンス数)(4) 別表2のうち、番号欄の数字に○印を付したものが、本件証拠保全手続の実施された平成12年7月5日当時、被告会社が保有していたライセンスであることは当事者間に争いがない。 (5) これに対し、被告らは、過去に本件プログラムのマスターディスク購入履歴のある数が、被告会社が保有していた本件プログラムのライセンス数である旨を主張する。 確かに、被告会社において、過去に相当数の本件プログラムのライセンスを購入したことが認められないわけではない(検証調書添付の「複写紙綴り」参照。ただし、被告会社においては、いったん見積もりを取った後、発注するという取引形態であったと認められる。例えば、2000年3月27日付け及び同年4月17日付け「御見積書」には、その表題を「注文書」に訂正し、見積もりに係る数量を変更した上で「注文します」という記載が書き加えられているものがある。また、同年5月30日付け及び同月31日付け「御見積書」にも、「発注済」と記載されたものもある。したがって、見積もりに対応する請求書、納品書又は出金がないものは、見積もりの段階にとどまり、取引に至らなかったとみる余地があるから、単なる見積書の作成にとどまるものは、そもそもこれに対応するだけのライセンスの購入があったとは認めるに足り 書又は出金がないものは、見積もりの段階にとどまり、取引に至らなかったとみる余地があるから、単なる見積書の作成にとどまるものは、そもそもこれに対応するだけのライセンスの購入があったとは認めるに足りない。)。 しかし、被告らは、本件証拠保全手続において、上記認定の複製数に相当するだけのマスターディスク数を提示できなかったものであり、その際の被告Aの指示説明や争点4に関する被告Aの主張を斟酌すれば、被告会社は講師によるマスターディスクの社外持ち出しを広く許容していたものであり、いったん購入したライセンスを喪失したものといわざるを得ない(このような場合が著作権法47条の2第2項の「滅失」に該当しないことは明らかである。)。もとより講師によるマスターディスクの社外持ち出しが一時的なものであれば、被告会社がライセンスを喪失していないと解する余地がないわけではない。しかし、本件証拠保全手続における被告Aの指示説明でも、その複製数に相当するだけのマスターディスクの保有数は全く主張されておらず、かえって原告アドビ、原告マイクロソフトの本件プログラムの保有マスターディスク数は合計10~15本であると主張するにとどまっていた(さらに、被告Aは、本件プログラムの使用開始時にインストールし、使用終了時にアンインストールする取扱いを繰り返しているなどという不合理な弁解に終始していた。)のであるから、被告A自身においても、講師による社外持ち出しによりライセンスを喪失したことを自認したと評価されてもやむを得ない。そして、本件証拠保全手続が終了し、被告らにおいて複製数に対応するマスターディスク数の所在を確認しなければならない現実的な必要性を認識しながら、本件訴訟の提起に至るまで2年以上もの時間があり、本件訴訟においても、この点に関する求釈明を受けたにも 複製数に対応するマスターディスク数の所在を確認しなければならない現実的な必要性を認識しながら、本件訴訟の提起に至るまで2年以上もの時間があり、本件訴訟においても、この点に関する求釈明を受けたにもかかわらず、その主張に係る数に相当するようなマスターディスクを一切提示することができなかったのであるから、この点に関する被告らの主張は採用の限りではない。なお、被告らは、マスターディスクの保管が不備であったことや本件証拠保全手続における混乱等も主張するが、前者の点は講師による社外持ち出しと何ら矛盾するものではなく、後者の点も概算としてのライセンス数に関する自己の認識を伝えることができなかったほどの事情であるとは考えられないから、被告らの上記主張も採用することができない。 (6) 被告らは、別表2のうち番号欄の数字に○印を付していない分につき、ライセンスの保有を主張する。 しかし、上記(5)で判示した事情に照らせば、単にそのパッケージ(商品梱包箱)や取扱説明書のみがあったとしても、本件証拠保全手続当時におけるライセンスの保有を証するものとはいえないから、本件プログラムに対応するマスターディスクそのものの存在が認められない部分に関する限り、被告らの上記主張は採用することができない(別表2のうち、番号5-1、5-2のMicrosoft Outlook98のマスターディスクの存在は認められる(検証)が、単体ソフトのマスターディスクの存在をもって統合ソフト(MicrosoftOffice98)のライセンス保有の根拠とすることができないことは明らかである。)。 また、別表2のうち番号1-2(AdobeIllustrator 8.0J)、2-2(AdobePhotoshop5.0.2J)については、そのシリアルナンバーの 明らかである。)。 また、別表2のうち番号1-2(AdobeIllustrator 8.0J)、2-2(AdobePhotoshop5.0.2J)については、そのシリアルナンバーのものにつき、被告会社がライセンスを保有することを前提とした原告アドビ作成の文書(乙17。そのシリアルナンバーは、例えば、後者につき検証番号10-20、10-21、10-24、10-25、前者につき10-57、10-58等の各コンピュータにインストールされた本件プログラムのシリアルナンバーと一致する。)が存することは認められる。しかし、これに相当するマスターディスクの存在が認められず(本件において、パッケージ等の存在をもってマスターディスクの存在を推認することができないことは、既に判示したとおりである。)、かえって別表2の番号1-2、2-2とそれぞれ同じプログラムである番号1-1、2-1(これについてはそのシリアルナンバーは不明であるものの、マスターディスクの提示があり、被告会社のライセンス保有につき当事者間に争いがない。)と同一のライセンスに関するものにすぎないのではないかとの疑問が残り、他に、別表2の番号1-1、2-1とは別個に、番号1-2、2-2につき被告会社のライセンス保有を認めるに足りる証拠はない。したがって、別表2の番号1-2、2-2につき被告会社のライセンス保有を認めることはできないというべきである。以上の認定に反する被告らの主張は採用することができない。 もっとも、原告は、別表2のうち、マスターディスクの提示のあった番号3-1、3-2のMicrosoftOffice97についてまで、Editionが不明であることを根拠に、そのライセンスを否定する。しかし、検証調書添付「マスターディスク等一覧表」末尾写真には、少なく 1、3-2のMicrosoftOffice97についてまで、Editionが不明であることを根拠に、そのライセンスを否定する。しかし、検証調書添付「マスターディスク等一覧表」末尾写真には、少なくとも「MicrosoftOffice97 Powered by Word98」のものであることが明らかなパッケージ(商品梱包箱)が撮影されており、本件訴訟において問題とされる「MicrosoftOffice97」は「Proffessional Edition Poweredby Word98」のみであるから、本件証拠保全手続において提示のあったMicrosoftOffice97の上記マスターディスク(番号3-1、3-2)2枚は、いずれも本件プログラムの1つである「MicrosoftOffice97 Proffessional Edition Powered byWord98」のものであると推認するのが相当である。したがって、番号3-1、3-2に対応するライセンスを被告会社が保有していたと認めるのが相当であり、この点に関する原告らの主張は、採用することができない。 (7) 被告らは、同一バージョンでシリアルナンバーが同一のものは、被告会社が有していたマスターディスク1枚を用いて複数のコンピュータに複製したものであるから、少なくともその1本分のライセンスを保有する旨も主張する。 しかし、本件において、過去の一時点でのライセンスの取得が、本件証拠保全手続当時におけるライセンスの保有を直ちに基礎付けるものでないことは、既に判示したところに照らし、明らかである。また、QuarkXPressに至っては、同一バージョンでシリアルナンバーが同一のもの(別紙「複製プログラム検証結果一覧表」の9-14~9-16、9-19、9-21~9- ころに照らし、明らかである。また、QuarkXPressに至っては、同一バージョンでシリアルナンバーが同一のもの(別紙「複製プログラム検証結果一覧表」の9-14~9-16、9-19、9-21~9-24)でありながら、マスターディスクの提示がないことはもとより、正規版であれば必要なハードウェアキーの装着(甲11)が全くみられなかったのであるから、この点に関する被告らの主張は採用することができない。 (8) 結論以上を総合すれば、被告会社による本件プログラムの複製数は、別表3の各「複製物名」欄の本件プログラムに対応する「複製数計」欄記載のとおりであり、被告会社の保有ライセンス数は、上記(6)で認定した「MicrosoftOffice97Proffessional Edition Powered by Word98」のライセンス数として2本を加えるほかは、同表「ライセンス保有数」欄記載のとおりである。したがって、被告会社による違法複製の数は、「MicrosoftOffice97 Proffessional EditionPowered by Word98」を60(62-2)に減ずるほかは、別表3「違法複製数」欄記載の数と認めるのが相当である。 2 争点2(損害の額)について(1) 原告らは、被告会社による本件プログラムの違法複製によって被った損害の賠償として、著作権法114条2項に基づく請求をする。 著作権法114条2項は、著作権を侵害した者に対し、著作権者は「著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を自己が受けた損害の額として」その賠償を請求することができる旨定めているが、同項にいう「受けるべき金銭の額に相当する額」は、侵害行為の対象となった著作物の性質、内容、価値、取引の実情 に相当する額を自己が受けた損害の額として」その賠償を請求することができる旨定めているが、同項にいう「受けるべき金銭の額に相当する額」は、侵害行為の対象となった著作物の性質、内容、価値、取引の実情のほか、侵害行為の性質、内容、侵害行為によって侵害者が得た利益、当事者の関係その他の訴訟当事者間の具体的な事情をも参酌して認定すべきものと解される。そして、本件に現れたこれらの事情を勘案すると、本件においては、原告らが請求できる「受けるべき金銭の額に相当する額」は、本件プログラムの正規品購入価格(標準小売価格)と同額であると認めるのが相当である。 原告らは、原告らの「受けるべき金銭の額に相当する額」につき、①プログラムの違法複製による被害の甚大性、②被告会社の行為の高度の違法性、③正規品の事前購入者との均衡、④社会的ルールの要請を根拠に、本件プログラムの正規品購入価格(標準小売価格)の2倍を下らない旨を主張する。 しかし、不法行為に基づく損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を金銭的に評価し、加害者にこれを賠償させることにより、被害者が被った不利益を補てんして、不法行為がなかったときの状態に回復させることを目的とするものである。このことは、著作権侵害を理由として損害賠償を請求する場合であっても異ならず、著作権法114条2項の規定に基づき、著作権者が著作権を侵害した者に対し、「著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を自己が受けた損害の額として」その賠償を請求することも、基本的に上記の不法行為による損害賠償制度の枠内のものというべきである。 このような観点から原告らの主張を検討すると、まず、原告ら主張の①の点は、別個の損害(プログラムの違法複製を防止するための費用の支出)を、争点1で認定した損害の ものというべきである。 このような観点から原告らの主張を検討すると、まず、原告ら主張の①の点は、別個の損害(プログラムの違法複製を防止するための費用の支出)を、争点1で認定した損害の額の算定に含めようとするに等しく、相当ではない。②の点も、本件のようなプログラムの違法複製の事案においては、違法性が高度であるからといって、そのことが直ちに損害の額に反映される性質のものではなく、少なくとも、当該プログラムの正規品購入価格(標準小売価格)の2倍というような額の賠償を根拠付けるものとはいえない。③の点も、市場における実勢販売価格より標準小売価格が高額であるのが一般であるから(なお、不法行為に基づく損害賠償の場合は、別途不法行為時からの遅延損害金も加算される。)、直ちに正規品の事前購入者との均衡を失するものとはいえない。原告らの主張を、加害者に対する制裁や将来における同様の行為の抑止(一般予防)を目的とするものと解しても、不法行為による損害賠償の制度は、直接にそのようなことを目的とするものではない。 ④の点も、プログラムの違法複製について、原告らの主張(プログラムの正規品購入価格より高額の金銭を支払うべきものとすること)を根拠付けるような実定法上の特別規定があるわけではないし、そのような内容の社会規範が確立していると認めるべき証拠もない。原告らの主張はいずれも採用することができない。 一方、被告らは、原告らが「受けるべき金銭の額に相当する額」(著作権法114条2項)とは、卸売価格相当額である旨を主張するが、違法行為を行った被告らとの関係で、適法な取引関係を前提とした場合の価格を基準としなければならない根拠を見い出すことはできない。この点に関する被告らの主張は採用することができない。 以上のとおり、原告らが「 との関係で、適法な取引関係を前提とした場合の価格を基準としなければならない根拠を見い出すことはできない。この点に関する被告らの主張は採用することができない。 以上のとおり、原告らが「受けるべき金銭の額に相当する額」(著作権法114条2項)としては、本件プログラムの標準小売価格を基準として算定すべきである。 原告らは、予備的に、著作権法114条1項に基づく損害賠償額の算定も主張するが、その主張に係る具体的金額が標準小売価格にとどまり、同条2項による場合の認定額を上回るものではないから、判断する必要をみない。 (2) 次に、原告らは、著作権法114条1項又は2項による損害賠償とは別に、民法709条に基づき、無形損害その他の損害として、逸失利益と同額の損害賠償が認められるべき旨を主張する。 もとより、被告らの違法行為と相当因果関係ある無形損害その他の損害が発生したことが認められるのであれば、上記(1)の損害とは別に、損害額を算定しなければならないことはいうまでもない。 しかし、原告らは、「被告らの違法行為と相当因果関係ある無形損害その他の損害」を何ら具体的に主張立証しないから、この点に関する原告らの主張は、その前提を欠き、採用することができない(このような場合に、民事訴訟法248条や著作権法114条の4を根拠として、損害額を算定することはできない。)。 (3) したがって、原告らの被った損害額は次のとおり算定するのが相当である。 ア本件プログラムの違法複製本件プログラムの各標準小売価格は、証拠(甲5の1~6、甲6、7)によれば、別表3の「標準価格」(ただし、バージョンの記載のあるものに限る。)欄記載のとおり認められる。 これに 本件プログラムの各標準小売価格は、証拠(甲5の1~6、甲6、7)によれば、別表3の「標準価格」(ただし、バージョンの記載のあるものに限る。)欄記載のとおり認められる。 これに対し、被告らの違法複製に係る本件プログラムの中でバージョンが不明なもののうち、同一プログラムでバージョンごとに標準小売価格が異なるものがあるため、その損害額の算定とすべき標準小売価格をいずれのバージョンのものに定めるかという問題はある。争点1で認定した被告会社による本件プログラムの複製状況に照らすと、最新バージョンのものが大半を占めるというわけではなく、被告会社作成のパンフレット(甲9)においても、新バージョンと並んで旧バージョンも受講の対象とすることとされているから、複製されたものが常に最新バージョンのものと推認するのは相当でない。他方、このような状態を招いたのは、被告会社により本件証拠保全手続の検証が妨害されたことに起因するところが大きいのであるから、同一プログラムのうち最低額の標準小売価格を損害算定の基礎とすることも相当でない。以上のような事情を勘案すれば、結局、損害の発生が認められるにもかかわらず、損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難な場合に該当するものとして、著作権法114条の4に基づき、原告ら主張の損害額(標準小売価格の最高額を基礎とする。)を相当な損害額として認めるのが相当である。 したがって、この点に関する原告らの損害は、次のとおり訂正するほか、別表3の「被害金額」欄記載の金額となる。 ① 複製物「MicrosoftOffice97 Proffessional Edition Poweredby Word98」の被害金額欄の「4,017,600」を「3,8 る。 ① 複製物「MicrosoftOffice97 Proffessional Edition Poweredby Word98」の被害金額欄の「4,017,600」を「3,888,000(64,800×60)」と訂正する。 ② 「マイクロソフト計」に対応する被害金額欄の「11,068,800」を「10,939,200(11,068,800-(4,017,600-3,888,000))」と訂正する。 イ弁護士費用本件に関する弁護士費用としては、本件事案の難易、請求額、認容額、その他諸般の事情を考慮し、次の金額をもって相当と認める。 原告アドビ 160万円原告クォーク 85万円原告マイクロソフト 110万円ウ損害額の結論各原告の総損害額は次のとおりである。 原告アドビ 1757万8000円(15,978,000+1,600,000)原告クォーク 916万6000円(8,316,000+850,000)原告マイクロソフト 1203万9200円(10,939,200+1,100,000) 3 争点3(損害のてん補)について(1) 被告らは、本件証拠保全手続後に、被告会社が本件プログラムと実質的に同一の正規品(乙8の1~22)を購入したことにより、原告ら主張の損害はすべててん補された旨を主張する。 しかし、弁済は一定の給付がなされたこと及びその給付が当該債務の履行としてなされたことを要するところ、被告らの支払に係る金銭というのは、正規品購入の対価としてであ された旨を主張する。 しかし、弁済は一定の給付がなされたこと及びその給付が当該債務の履行としてなされたことを要するところ、被告らの支払に係る金銭というのは、正規品購入の対価としてであって、本件損害賠償債務の履行としてのものでないことは明らかであるから、弁済の要件を充たさない。被告らは、本件プログラムの使用許諾契約の方式を根拠とするかのようでもあるが、各契約の内容(甲1の1~9、甲2、3の1~6)上、正規品の購入により既発生の損害賠償債務の消滅をもたらすような条項も認められない。したがって、被告らの上記主張は採用することができない。 (2) 次に、被告らは、被告会社の正規品購入により、原告らの損害が違法複製の時点から正規品購入の時点までの期間に相当する使用料相当額に限定される旨を主張する。 しかし、本件プログラムの価格は、いずれもユーザーによる使用期間の長短にかかわらず一定の額が定められており(甲5の1~6、甲6、7)、正規品の事前購入者さえ、たとえ1回の使用しか予定していない場合であっても、これを利用するためには所定の金額を支払わなければならないのであるから、被告会社の使用期間が限られたものであっても、その賠償すべき損害額を減ずる根拠となるものではない。被告らの上記主張は採用することができない。 また、被告らは、正規品の購入価格には将来の使用料が含まれるから、正規品購入後の本件プログラムの使用について二重に使用料を支払うことになるとも主張する。 しかし、正規品の購入は、本件損害賠償債務の消滅の効果をもたらすものでないことは上記(1)で判示したとおりであり(同購入時点以後の正規品の使用を可能にする地位を取得するものにすぎない。)、逆に、本件損害賠償債務についての弁済も、同債務消 の消滅の効果をもたらすものでないことは上記(1)で判示したとおりであり(同購入時点以後の正規品の使用を可能にする地位を取得するものにすぎない。)、逆に、本件損害賠償債務についての弁済も、同債務消滅の効果をもたらすだけのものである(弁済以後の正規品の使用を可能とする地位を取得させるものではない。)。二重の支払を強いられるかのような被告らの上記主張は、両者の法的効果を混同するものであって、採用することができない。 4 争点4(被告Aの故意過失(民法709条)又は故意重過失(商法266条の3))について(1) 被告会社はコンピュータスクールであり、本件プログラムの利用を前提とした各講習を業としていたのであるから、その代表取締役である被告Aとしても、その職務上、自己又はその被告会社従業員をして、本件プログラムの違法複製を行わないように注意すべき義務があったのにこれを怠り、被告Aは、自ら本件プログラムの違法複製を行ったか又はその被告会社従業員がこれを行うのを漫然と放置していたのであるから、被告Aに少なくとも重過失があったことは明らかである。 (2) 被告Aは、同被告個人が本件プログラムを使用した講座を担当せず、被告会社従業員である講師を信頼していたことや、被告会社代表者としての別個の業務を遂行する必要があったことなどを根拠として、同被告の故意又は重過失を否定するが、本件プログラムの違法複製の防止に関する管理体制が不備であったことは、被告Aの自認する本件証拠保全手続後の管理体制の強化の点に照らしても明らかであるから、被告Aの上記主張は採用することができない。 第4 結論以上によれば、原告らの請求は、上記の限度で理由がある。 なお、本件訴訟の経過において、原告らの訴訟活動に訴訟を遅滞させるものといわざるを得な 採用することができない。 第4 結論以上によれば、原告らの請求は、上記の限度で理由がある。 なお、本件訴訟の経過において、原告らの訴訟活動に訴訟を遅滞させるものといわざるを得ない点があること(すなわち、(1)原告らは、本件訴訟の提起に当たり、①弁護士に委任しながら、被告会社のみを相手方とする訴訟委任状を提出するにとどまり、被告Aを相手方とする訴訟委任状を提出せず、②当初、本件損害賠償と違法複製に係るプログラムの差止等を請求していたところ、同差止等請求のみならず本件損害賠償請求についても、訴え提起の手数料としての収入印紙を全く納付しなかった。当裁判所からの補正の督促や補正命令を受けながら、原告らは補正を遅らせ、補正が完了したのは訴え提起から27日を経過してからであった。(2)審理開始後も、原告らは、①当裁判所の求釈明に対し期限までに回答せず、その後の回答の際に求釈明の趣旨に応じて請求の趣旨を変更する予定である旨予告しながら、当裁判所の督促にもかかわらず、これを遅滞し、②口頭弁論期日に、当裁判所から次の期日に弁論を終結する旨の告知を受け、原告らにおいて、総括的な準備書面を次回期日前に提出することを約しながら、これを次回期日に提出しなかったばかりか、期日に被告らに対する釈明を求め、審理を続行せざるを得なくした。)を斟酌して、訴訟費用の負担を定めた。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官小松一雄 裁判官田中秀幸 裁判官守山修生 裁判官 守山修生

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