令和1(ワ)27053 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年8月31日 東京地方裁判所
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判決文本文40,614 文字)

令和3年8月31日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 令和元年(ワ)第27053号特許権侵害差止等請求事件 口頭弁論終結日令和3年6月8日判決 原告 ニプロ株式会社 同訴訟代理人弁護士 牧野知彦 岡田健太郎 同訴訟代理人弁理士 田村啓 大釜典子 被告 株式会社トップ 同訴訟代理人弁護士 清水節 渡邉佳行 鈴木隆太郎 同訴訟代理人弁理士 佐藤辰彦 吉田雅比呂 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,別紙物件目録記載の各製品の生産,譲渡,輸出,輸入,又は譲渡の申出をしてはならない。 2 被告は,前項記載の各製品を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,288万3600円及びこれに対する令和元年10月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は,発明の名称を「留置針組立体」とする特許の特許権を有する原告が,被告による別紙物件目録記載の各製品の製造販売等の行為は,原告の特許権を侵害していると主張して,特許法100条1項及び2項に基づき,上記各製品の製造販売等 体」とする特許の特許権を有する原告が,被告 による別紙物件目録記載の各製品の製造販売等の行為は,原告の特許権を侵害していると主張して,特許法100条1項及び2項に基づき,上記各製品の製造販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに,民法709条及び特許法102条2項に基づき,288万3600円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和元年10月22日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合に よる遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(証拠等の掲示のない事実は,当事者間に争いがない。なお,枝番の表示のない証拠は,枝番の全てを含む。以下同様。)⑴ 当事者ア原告は,医療機器,医薬品等の製造販売等を業とする株式会社である。 原告は,平成7年頃,翼付静脈留置針(「静脈留置針」とは,点滴等の際に用いられる,針先を患者の静脈の血管内に刺したまま留置できる注射針であり,「翼付」とは,針から左右に突き出している翼・羽状の部分を指し,この突起部分をテープ等で皮膚に固定することにより,針の脱落を防止する。)に関し,新たなスライド移動型の誤刺防止機構(「誤刺防止機構」とは,医療従事者等が,患者から針を 引き抜く際や,引き抜いた針に蓋を被せる際に,針で手指を刺してエイズ・肝炎等の感染症の血液感染を受けるのを防止すべく,抜針時に針の先端を安全・容易に保護部材に収納するための機構である。)を開発し,平成8年9月20日には特許第3134920号に係る特許(乙1。以下「原告先行特許」という。)の特許出願をし,平成12年12月1日に設定登録を受けるなどして,誤刺防止機構付 きの翼付静脈留置針(以下「セーフティ型留置針」という。)の市場において約8 0%のシェアを獲得してき の特許出願をし,平成12年12月1日に設定登録を受けるなどして,誤刺防止機構付 きの翼付静脈留置針(以下「セーフティ型留置針」という。)の市場において約8 0%のシェアを獲得してきた(乙7,8)。 イ被告は,医療機器の製造販売等を業とする株式会社である。 被告は,平成28年4月26日,セーフティ型留置針に関し,特許第6664270号に係る特許の特許出願(出願番号:特願2016-88440。以下「被告原出願」といい,その当初明細書等に記載された発明を「被告原出願発明」と いう。)をし,平成29年11月2日,同特許に係る公開特許公報(乙2)が公開され,令和2年2月20日に設定登録を受けた(乙52)。 ⑵ 本件特許ア原告は,発明の名称を「留置針組立体」とする下記の特許(請求項の数は3。 以下,請求項1~3に係る特許を「本件特許」といい,本件特許に係る特許権を 「本件特許権」という。)の特許権者である。なお,原告は,特許庁に対し,本件特許の請求項1及び2について,訂正審判請求を申し立て,令和3年1月7日付けで訂正(以下「本件訂正」という。)を認める審決がなされた。 特許番号特許第6566159号優先日平成28年6月3日(特願2016-112071) 原出願日平成29年6月2日(特願2018-521150の分割。 以下「原告共通原出願」という。)出願日平成31年4月26日(特願2019-86613)公開日令和元年7月18日(特開2019-115835)登録日令和元年8月9日 イ本件特許に係る特許請求の範囲(以下「本件特許請求の範囲」という。)の記載~3の発明をそれぞれ「本件発明1」~「本件発明3」といい,これ 5)登録日令和元年8月9日 イ本件特許に係る特許請求の範囲(以下「本件特許請求の範囲」という。)の記載~3の発明をそれぞれ「本件発明1」~「本件発明3」といい,これらを併せて「本件発明」という。また,その明細書(図面を含む。)を「本件明細書」といい,その該当部分の記載を【0001】 る。なお,本件訂正による訂正部分は,下線部である。 本件特許請求の範囲a 請求項1(本件発明1)「針先を有する留置針と,前記留置針の基端側に設けられた針ハブと,筒状の周壁を有し,前記針ハブに外挿装着されて針先側へ移動することで 該留置針の針先を覆う針先プロテクタを備え,該留置針の針先側へ該針先プロテクタが移動せしめられた所定位置において,該針先プロテクタに設けられた係止片が該針ハブに対して係止されることで該留置針の針先の再露出が防止されるようになっている留置針組立体であって, a)前記針先プロテクタは,針軸方向に延びる円筒状部を有し,前記円筒状部の基端側には,前記係止片と,前記円筒状部より大径で前記係止片よりも外周側にあり,小径部と大径部とを備えた拡開部とが設けられ, 前記大径部の周壁に,前記針ハブが係合されて前記留置針の針先が突出状態に保持される針ハブ係合部が設けられ,前記係止片は,前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し,前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される一方,前記小径部側には設けられておらず, b)前記針ハブは,前記針先プロテクタの前記針ハブ係合部に係合して,前記留置針の針先を突 記円筒状部と一体形成される一方,前記小径部側には設けられておらず, b)前記針ハブは,前記針先プロテクタの前記針ハブ係合部に係合して,前記留置針の針先を突出状態に保持する係合腕と,外部管路と接続して前記外部管路から前記留置針に至る流体流路を形成する接続筒部とを有し, 前記接続筒部の少なくとも一部が,前記係合腕が弾性変形する支点とな る当該係合腕の基端部分よりも基端側に突出している,留置針組立体。」b 請求項2(本件発明2)「針先を有する金属製の留置針と,前記留置針の基端側に設けられた針ハブと,筒状の周壁を有し,前記針ハブに外挿装着されて針先側へ移動することで 該留置針の針先を覆う針先プロテクタとを備え,該留置針の針先側へ該針先プロテクタが移動せしめられた所定位置において,該針先プロテクタに設けられた係止片が該針ハブに対して係止されることで該留置針の針先の再露出が防止されるようになっている留置針組立体であって, a)前記針先プロテクタは,針軸方向に延びる円筒状部を有し,前記円筒状部の基端側には,前記係止片と,前記円筒状部より大径で前記係止片よりも外周側にあり,小径部と大径部とを備えた拡開部とが設けられ, 前記大径部の周壁に,前記針ハブが係合されて前記留置針の針先が突出状態に保持される針ハブ係合部が設けられ,前記係止片は,弾性変形可能で,前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し,前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される一方,前記小径部側には設けられておらず, b)前記針ハブは,前記針先プロテクタの前記針ハブ係合部に係合して,前記留置針の針先を突出状態に保持する係合腕と,外部 状部と一体形成される一方,前記小径部側には設けられておらず, b)前記針ハブは,前記針先プロテクタの前記針ハブ係合部に係合して,前記留置針の針先を突出状態に保持する係合腕と,外部管路と接続して前記外部管路から前記留置針に至る流体流路を形成する接続筒部とを有し, 前記接続筒部の少なくとも一部が,前記係合腕が弾性変形する支点とな る当該係合腕の基端部分よりも基端側に突出している,留置針組立体。」c 請求項3(本件発明3)「針先を有する留置針と,前記留置針の基端側に設けられた針ハブと,筒状の周壁を有し,前記針ハブに外挿装着されて針先側へ移動することで 該留置針の針先を覆う針先プロテクタとを備え,該留置針の針先側へ該針先プロテクタが移動せしめられた所定位置において,該針先プロテクタに設けられた係止片が該針ハブに対して係止されることで該留置針の針先の再露出が防止されるようになっている留置針組立体であって,a)前記針先プロテクタは, その先端部分に,翼状部を有し,針軸方向に延びる円筒状部を有し,前記円筒状部の基端側には,前記係止片と,前記円筒状部より大径で前記係止片よりも外周側にあり,小径部と大径部とを備えた拡開部とが設けられ, 前記大径部の周壁に,前記針ハブが係合されて前記留置針の針先が突出状態に保持される針ハブ係合部が設けられ,前記係止片は,弾性変形可能で,前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し,前記拡開部の内部にあって,前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される一方,前記小径部側には設けられておらず, b)前記針ハブは,前記針先プロテクタの前記針ハブ係合部に係合して,前記留置針の針先を突出状態に保持する係合腕と,外部管路 と一体形成される一方,前記小径部側には設けられておらず, b)前記針ハブは,前記針先プロテクタの前記針ハブ係合部に係合して,前記留置針の針先を突出状態に保持する係合腕と,外部管路と接続して前記外部管路から前記留置針に至る流体流路を形成する接続筒部とを有し, 前記接続筒部の少なくとも一部が,前記係合腕が弾性変形する支点とな る当該係合腕の基端部分よりも基端側に突出している,留置針組立体。」本件発明の構成要件の分説a 本件発明11A 針先を有する留置針と,1B 前記留置針の基端側に設けられた針ハブと, 1C 筒状の周壁を有し,前記針ハブに外挿装着されて針先側へ移動することで該留置針の針先を覆う針先プロテクタを備え,1D 該留置針の針先側へ該針先プロテクタが移動せしめられた所定位置において,該針先プロテクタに設けられた係止片が該針ハブに対して係止されることで該留置針の針先の再露出が防止されるようにな っている留置針組立体であって,1E a)前記針先プロテクタは,1E① 針軸方向に延びる円筒状部を有し,1E② 前記円筒状部の基端側には,前記係止片と,前記円筒状部より大径で前記係止片よりも外周側にあり,小径部と大径部とを備えた拡開 部とが設けられ,1E③ 前記大径部の周壁に,前記針ハブが係合されて前記留置針の針先が突出状態に保持される針ハブ係合部が設けられ,1E④ 前記係止片は,前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し,前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される一方,前記小径部側には 設けられておらず,1F b) 1E④ 前記係止片は,前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し,前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される一方,前記小径部側には 設けられておらず,1F b)前記針ハブは,1F① 前記針先プロテクタの前記針ハブ係合部に係合して,前記留置針の針先を突出状態に保持する係合腕と,1F② 外部管路と接続して前記外部管路から前記留置針に至る流体流路を 形成する接続筒部とを有し, 1F③ 前記接続筒部の少なくとも一部が,前記係合腕が弾性変形する支点となる当該係合腕の基端部分よりも基端側に突出している,1G 留置針組立体。 b 本件発明22A 針先を有する金属製の留置針と, 2B~2E③ 1B~1E③と同じ。 2E④ 前記係止片は,弾性変形可能で,前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し,前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される一方,前記小径部側には設けられておらず,2F~2G 1F~1Gと同じ。 c 本件発明33A~3E 1A~1Eと同じ。 3E① その先端部分に,翼状部を有し,3E②~3E④ 1E①~1E③と同じ。 3E⑤ 前記係止片は,弾性変形可能で,前記針ハブに向かって傾斜した内 側面を有し,前記拡開部の内部にあって,前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される一方,前記小径部側には設けられておらず,3F~3G 1F~1Gと同じ。 ⑶ 被告製品ア被告による被告製品の製造販売等 被告は,平成30年12月以降,業として,別紙物件目録記載1及び2の各製品(以下,それぞれ「被告製品1」,「被告製品2」といい,これらを併せて「被告製品」という による被告製品の製造販売等 被告は,平成30年12月以降,業として,別紙物件目録記載1及び2の各製品(以下,それぞれ「被告製品1」,「被告製品2」といい,これらを併せて「被告製品」という。)の製造,販売,輸出,輸入,又は譲渡の申出(以下「製造販売等」という。)をしている。 イ被告製品の構成 被告製品1は,セーフティ型留置針(甲3)であり,被告製品2は,セーフテ ィ型留置針と採血ホルダーがセットになった製品(甲4)である。 被告製品は,いずれもセーフティ型留置針の部分が同一の構成になっているところ,その構成は,次のとおりである(甲3~6,乙4,5,弁論の全趣旨)。 a 被告製品は,針先を有するステンレス製の針管を有する。 b 被告製品は,針管の基端側に設けられた針基を有する。 c 被告製品は,針先保護部を有している。針先保護部は,軸方向に延びる円筒状の胴部を有しており,針基を中に挿入して針基の周囲に装着されており,針先保護部と針基とが軸方向に相対移動することで針管の針先を覆う構造になっている。 d 被告製品は,針先保護部に大径部係止手段及び小径部側壁部が設けられて おり,針管と針先保護部が相対移動してクリック感が生じる位置において,⑴針先保護部に設けられた大径部係止手段が針基に対して係止されることで,針管の針先が再度,針先保護部の先端側から露出することを防止するとともに,⑵針先保護部に設けられた小径部側壁部が針基に対して係止されることで,針管が針先保護部の基端側から脱落して針先が露出すること を防止する構成になっている。また,被告製品は,針基に設けられた縦リブと針先保護部に設けられた小径部側壁部とが,このクリック感が生ずる位置を含めて針管と針先保護部の位 して針先が露出すること を防止する構成になっている。また,被告製品は,針基に設けられた縦リブと針先保護部に設けられた小径部側壁部とが,このクリック感が生ずる位置を含めて針管と針先保護部の位置関係にかかわらず,小径部側壁部の突端面により縦リブの側面を挟持することで互いに係合することにより,針基が針先保護部に対して回動することを防止する構成になっており,仮 にこのような回動が発生して針基の受け部が大径部係止手段のない小径部側まで移動した場合には,針基が大径部係止手段をすり抜けて針先保護部に対して前進することになる。 e① 針先保護部は,翼部を有している。 e② 針先保護部は,前記のとおり,軸方向に延びる円筒状の胴部を有している。 e③ 針先保護部は,針先保護部の円筒状の胴部の基端側には,大径部係止手段 と,円筒状の胴部より大径で,大径部係止手段よりも外周側にあり,基端側の背面が楕円形で,背面から針先側に1mmを超えて進んだ部分の断面は楕円形ではない,下図の形状の基端部とが設けられている。 e④ 針先保護部は,大径部の周壁に,針基の係合腕が係合されて針管の針先が 突出状態に保持される,該係合腕との係合部分が設けられている。 e⑤ 針先保護部は,そこに設けられた大径部係止手段が針基に向かって内側に傾斜し,かつ,大径部側に円筒状の胴部と一体に形成されている。一方,小径部側には,小径部側壁部が設けられており,該小径部側壁部は針基に向かって内側に傾斜していない。 f① 針基は,針先保護部に設けられた前記係合部分に係合して,針管の針先を突出状態に保持する一対の係合腕を有している。 f② 針基は,チューブと接続してチューブから針管に至る流体の流路を形成するチューブ接続部を有している。 設けられた前記係合部分に係合して,針管の針先を突出状態に保持する一対の係合腕を有している。 f② 針基は,チューブと接続してチューブから針管に至る流体の流路を形成するチューブ接続部を有している。 f③ 針基は,下図⒜,⒝のとおり,チューブ接続部に,針軸に垂直な切断面が ドーナツ状となる空間が,基端側から針先側に向けて設けられており,当該空間によって,チューブ接続部の基端側の部分が,当該空間の内側にあるチューブ接続部内側部分と当該空間の外側にあるチューブ接続部外側部分とに分かれており,チューブ接続部内側部分の一部が,係合腕が弾性変形する支点となる係合腕の基端部分よりも基端側に突出している(ただし, 当該突出部分がチューブと密着してチューブを脱落しにくくしているかに は当事者間で争いがある。)。 図⒜ 図⒝ g 被告製品は,針刺し事故防止機能付き翼状針である。 ウ構成要件充足性被告製品の構成は,本件発明の構成要件1A(3A),2A,1B(2B,3B),1C(2C,3C),1D(2D,3D),1E(2E,3E),1E① (2E①),3E①,1E③(2E③,3E④),1F(2F,3F),1F①(2F①,3F①),1F②(2F②,3F②),1G(2G,3G)を充足する。 一方,本件発明の構成要件1E②(2E②,3E③),1E④,2E④,3E⑤,1F③(2F③,3F③)の充足性については,後記2⑴ア~ウの各争点の 限度で,当事者間に争いがある。 ⑷ 先行文献本件特許の優先日である平成28年6月3日の前に頒布されていた刊行物として,次のものが存在した。 ア中華人民共和国実用新型考利CN204219517U(乙23。公告日:平 成27年3月25日。以下, である平成28年6月3日の前に頒布されていた刊行物として,次のものが存在した。 ア中華人民共和国実用新型考利CN204219517U(乙23。公告日:平 成27年3月25日。以下,これに記載された発明を「引用発明1」という。)イ米国特許公報US2007/0260190A1(乙36。公開日:平成19年11月8日。以下,これに記載された発明を「引用発明2」という。)ウ中華人民共和国実用新型考利説明書CN200951238Y(乙37。公告日:平成19年9月26日。以下,これに記載された発明を「引用発明3」とい う。) 2 争点⑴ 被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)ア被告製品の小径部側壁部が,本件発明で小径部側に設けられてはならないとされている「係止片」に当たらないといえるか-構成要件1E④,2E④,3E⑤充足性(争点1-1) イ被告製品のチューブ接続部内側部分の突出部が,本件発明の「接続筒部」の「突出」部といえるか-構成要件1F③(2F③,3F③)充足性(争点1-2)ウ被告製品が「大径部」及び「小径部」を備えているか-構成要件1E②(2E②,3E③)充足性(争点1-3)⑵ 本件特許に無効理由があるといえるか(争点2) ア無効理由1(被告原出願に基づく拡大先願違反)の有無(争点2-1)イ無効理由2(引用発明1に基づく新規性・進歩性欠如)の有無(争点2-2)⑶ 先使用権の成否(争点3)⑷ 独占禁止法違反に基づく権利濫用の成否(争点4)⑸ 原告の損害の有無及び額(争点5) 3 争点に関する当事者の主張⑴ 争点1-1(被告製品の小径部側壁部が,本件発明で小径部側に設けられてはならないとされ 利濫用の成否(争点4)⑸ 原告の損害の有無及び額(争点5) 3 争点に関する当事者の主張⑴ 争点1-1(被告製品の小径部側壁部が,本件発明で小径部側に設けられてはならないとされている「係止片」に当たらないといえるか-構成要件1E④,2E④,3E⑤充足性)ア原告の主張 被告製品には,針先保護部の小径部側に「係止片」が設けられていないから,本件発明の構成要件である「前記係止片は,…前記小径部側には設けられておらず,」(構成要件1E④,2E④,3E⑤)を充足する。 本件発明において「係止片」によって防止される「針先の再露出」(構成要件1D(2D,3D))とは,下図の右矢印のように,針先プロテクタが留置針の 基端側から針先側へ移動して留置針の針先が覆われた状態から,再度,針先プ ロテクタが留置針の基端側に移動して,針先プロテクタの針先側から留置針の針先が再度露出することを意味している。すなわち,本件発明で小径部側に設けられてはならないとされている「係止片」は,この意味における「針先の再露出」を防止するものに限られている。 そして,被告製品の小径部側壁部は,針先プロテクタの基端側から留置針及び針ハブが脱落することを阻止するための部材にすぎず,針先プロテクタの針先側から留置針の針先が再度露出することを阻止するための部材ではないため,「針先の再露出」を防止する「係止片」に当たらない。すなわち,被告製品には,針先保護部の小径部側に「係止片」が設けられていない。 これに対し,被告は,「針先の再露出」には,上図の左矢印のように,針先プロテクタが針先側へ移動して針先プロテクタの基端側から留置針が脱落することも含まれると主張するが,「留置針の針先の再露出」という文言や,本件明細 ,「針先の再露出」には,上図の左矢印のように,針先プロテクタが針先側へ移動して針先プロテクタの基端側から留置針が脱落することも含まれると主張するが,「留置針の針先の再露出」という文言や,本件明細書において「針先再露出」と「針抜出し」が明確に区別されていること(【0028】,【0029】等)などに照らせば,本件発明において「係止片」によっ て防止される「針先の再露出」が「針抜出し」を含むものでないことは明らかである。 さらに,被告は,被告製品の小径部側壁部が上記の意味における「針先の再露出」を防止する機構をも備えていると主張する。しかし,本件発明の構成要件1Dは,「係止片」について,針先再露出防止を行う「所定位置」において弾 性復帰して針ハブ(に設けられた受部)と「係止」されることによって「再露出を防止する(つまり,留置針が前進しないように止める)」ものであることを述べているところ,被告製品の小径部側壁部は,針基の縦リブの側面を挟持して針基の回動を防止しているだけで,針基の前進を防止しているわけではない。 被告製品において針先再露出を防止しているのは,小径部側壁部ではなく,大 径部係止手段である。仮に被告製品に小径部側壁部が存在しなかったとしても,縦リブが大径部係止手段を乗り越えるところまで針基を回動させて大径部係止手段と針基の受部との係止を解除しなければ針基が前進しないことからしても,針先再露出を防止しているのはあくまでも大径部係止手段と針基の受け部の係止であって,小径部側壁部による回動防止は,そのための前提条件になってい るにすぎない。また,被告製品の小径部側壁部が針基の縦リブの側面を挟持する場所は,針基と針先保護部の位置関係にかかわらないのであって,「所定位置」において係止するものでもない。こ なってい るにすぎない。また,被告製品の小径部側壁部が針基の縦リブの側面を挟持する場所は,針基と針先保護部の位置関係にかかわらないのであって,「所定位置」において係止するものでもない。これらの事情に照らすと,被告製品の小径部側壁部が「針先の再露出」を防止する「係止片」に該当しないことは明らかである。 加えて,本件発明の構成要件1E④(2E④,3E⑤を含む)は,「前記係止片は,前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し,」と規定しており,本件発明で小径部側に設けられてはならないとされている「係止片」は,「前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し」ているものに限られている。 そして,被告製品の小径部側壁部は,針基に向かって内側に傾斜していない ため,本件発明で小径部側に設けられてはならないとされている「係止片」に当たらない。すなわち,被告製品には,針先保護部の小径部側に「係止片」が設けられていない。 以上のとおり,被告製品の針先保護部には,小径部側に「針先の再露出」を防止し,かつ「針ハブに向かって傾斜した内側面」を有する「係止片」が設け られておらず,その一方で大径部側には「係止片」が設けられているため,本 件発明の構成要件1E④(2E④),3E⑤を充足する。 イ被告の主張 被告製品には,小径部に係止手段を構成する小径部側壁部が存在するため,本件発明の構成要件である「前記係止片は,…前記小径部側には設けられておらず,」(構成要件1E④,2E④,3E⑤)を充足しない。 前提として,「針先の再露出が防止される」(構成要件1D(2D,3D))という文言には,一旦覆われた針先がもう一度露出することを防止するという意味しかなく,針先が再露出する態様を限定するものではない。また して,「針先の再露出が防止される」(構成要件1D(2D,3D))という文言には,一旦覆われた針先がもう一度露出することを防止するという意味しかなく,針先が再露出する態様を限定するものではない。また,針先再露出防止機構と針先抜出防止機構を一体的に設けなければ,構造を簡単なものとする,拡開部の内部スペースを巧く利用するという本件発明の効果が不十分な ものとなってしまうため,本件発明は,針先再露出防止機構と針先抜出機構を一体的に,かつ小径部側ではなく大径部側に設けることを想定していると考えるのが合理的である。すなわち,本件発明で小径部側に設けられてはならないとされている「係止片」は,針先再露出防止機構に限らず,針先抜出防止機構をも含んでおり,いずれかの機構を有していればこれに当たると考えられる。 そして,被告製品には,小径部に針先抜出防止機構を有する小径部側壁部が存在するため,本件発明の構成要件を充足しない。 また,仮に,本件発明で小径部側に設けられてはならないとされている「係止片」が針先再露出防止機構を有するものに限られ,針先抜出機構のみを有するものがこれに該当しないとしても,被告製品の小径部側壁部は,針先抜出機 構だけでなく針先再露出防止機構も有しているため,「係止片」に当たる。すなわち,下図のとおり,被告製品の小径部側壁部は,針先保護部が留置針の針先側に移動せしめられた所定の位置において,針基に設けられた回転防止の縦リブの側面を挟持して針基の回動を防止しており,これによって,針基の第2突出部と針先保護部の大径部係止手段との係止が解除されて針基が前進し,針先 が針先保護部の先端側から再露出することを防止している。そのため,いずれ にせよ,被告製品は本件発明の構成要件を充足しない。 の係止が解除されて針基が前進し,針先 が針先保護部の先端側から再露出することを防止している。そのため,いずれ にせよ,被告製品は本件発明の構成要件を充足しない。 原告は,小径部側に設けられてはならない「係止片」について,「前記針ハブに向かって傾斜した内側面」を有するものに限定され,被告製品の小径部側壁部がこれに当たらないとも主張するが,当該文言は,文章の構成上,本件発明 で実際に大径部側に存在する「係止片」の形状を説明したものにすぎず,小径部側に設けられてはならない「係止片」の形状を説明したものではない。また,明細書や出願経過をみても,本件発明において,小径部側に設けられてはならない「係止片」の形状は全く問題とされていない。小径部側に設けられてはならない「係止片」の形状について原告が主張する限定を加えることに,どのよ うな合理性があるのかも不明である。このように,小径部側に設けられてはならない「係止片」の形状を限定する根拠はない。 したがって,被告製品の小径部側壁部が針基に向かって内側に傾斜していないことは,被告製品の小径部壁部が本件発明で小径部側に設けられてはならないとされている「係止片」に当たることを否定する理由にならない。 以上のとおり,被告製品には,本件発明で小径部側に設けられてはならないとされている「係止片」に当たる小径部側壁部が存在するため,被告製品は構成要件1E④(2E④),3E⑤を充足しない。 ⑵ 争点1-2(被告製品のチューブ接続部内側部分の突出部が,本件発明の「接続筒部」の「突出」部といえるか-構成要件1F③(2F③,3F③)充足性) ア原告の主張本件特許請求の範囲には,「前記接続筒部の少なくとも一部が,前記係合腕が弾性変形する支 「接続筒部」の「突出」部といえるか-構成要件1F③(2F③,3F③)充足性) ア原告の主張本件特許請求の範囲には,「前記接続筒部の少なくとも一部が,前記係合腕が弾性変形する支点となる当該係合腕の基端部分よりも基端側に突出している」(構成要件1F③(2F③,3F③))と記載されている。 そして,被告製品は,下図⒜,⒝のとおり,針管の基端側に設けられた針基については,チューブ接続部に,針軸に垂直な切断面がドーナツ状となる空間が,基端側から針先側に向けて設けられており,当該空間によって,チューブ接続部の基端側の部分が,当該空間の内側にある「チューブ接続部内側部分」と当該空間の外側にある「チューブ接続部外側部分」とに分かれており,「チューブ接続 部内側部分」の一部が,「係合腕が弾性変形する支点となる当該係合腕の基端部分よりも基端側に突出している」。 図⒜ 図⒝ これに対し,被告は,本件発明の「接続筒部」の突出部の内周は,その内側に挿入された「外部管路」の外周と密着することによって,「外部管路」の脱落を防止する機能を備えていることが必要であると主張するが,本件特許請求の 範囲にも本件明細書にも,そのような位置関係に「限定」する記載や,そのような位置関係自体による「接続筒部」と「外部管路」の密着や脱落防止の効果を指摘する記載はないのであり,いずれの接続方法にするかは,当業者が適宜選択できる設計事項にすぎない(乙16,17,27)。また,被告製品のチューブ接続部内側部分の外周とチューブの内周は,突出部のうちのごく先端の一 部分を除き,互いに接着しているのであり(甲9),突出した「接続筒部」により「外部管路」と「接続筒部」との接触面積が増加することによって,「外部管路」を脱落しにく 突出部のうちのごく先端の一 部分を除き,互いに接着しているのであり(甲9),突出した「接続筒部」により「外部管路」と「接続筒部」との接触面積が増加することによって,「外部管路」を脱落しにくくすることができる効果を奏している。 したがって,被告製品は,本件発明の構成要件1F③(2F③,3F③)を充足する。 イ被告の主張本件明細書の段落【0051】の記載及び図面並びに出願経過(乙13)を参酌すると,本件発明の「接続筒部」は,その突出部の内周が,その内側に挿入された外部管路の外周と密着していること,これにより外部管路の脱落を防止する機能を備えた構成であることが必要である。また,原告の後記⑷イの主張を前提 とすれば,本件発明の技術的意義は,外部管路と接続する接続筒部が,係止片や係合腕と干渉しにくくして,不都合が生じることを防止している点にあることになる。 これに対し,被告製品は,下図のとおり,接続筒部(チューブ接続部内側部分)の外周とチューブ(青色部分)の内周とが密着している上,接続筒部の突出部に ついては,チューブと密着しておらず,脱落防止機能にも寄与していない(乙31,32)。また,被告製品は,被告原出願発明と同様に,係合腕や係止片や接続筒部が狭い空間に密接して設けられている構成のままであり,外部管路と接続する接続筒部が,係止片や係合腕と干渉しにくくして,不都合が生じることを防止しているものでもない。被告製品は,あくまで接続筒部をチューブ内に挿入する 際の位置決め・ガイドとしての役割を果たしているにすぎない。 したがって,被告製品は,本件発明の構成要件1F③(2F③,3F③)を充足しない。 図被告製品の接続方法の参考図⑶ 争点1-3(被告製品が「大径部」及び「小 役割を果たしているにすぎない。 したがって,被告製品は,本件発明の構成要件1F③(2F③,3F③)を充足しない。 図被告製品の接続方法の参考図⑶ 争点1-3(被告製品が「大径部」及び「小径部」を備えているか-構成要件1E②(2E②,3E②)充足性) ア原告の主張 本件特許請求の範囲には,「前記円筒状部の基端側には,…小径部と大径部とを備えた拡開部とが設けられ」との構成(構成要件1E②(2E②,3E②))が記載されている。 本件明細書の段落【0024】によれば,上記構成は,針先プロテクタの円筒状部の基端側にある「拡開部」を,角部を備えていない略楕円筒形状とし,「小径 部」が備わることで,「拡開部」が患者に痛みを感じさせるおそれを低減させようとしたものであり,拡開部をそのような略楕円筒形状にすれば,自ずと「小径部」(相対的に径の小さい側)と「大径部」(相対的に径の大きい側)を備えることになる。 そして,被告製品は,下図のとおり,「切り欠き」を除いた形状が略楕円筒形状 になっていることは明らかであるから,被告製品の「拡開部」が「小径部」と「大径部」を備えることは明らかである。 これに対し,被告は,被告製品において針先再露出防止機構が存在する部分は,回避されるべき厚肉自体が生じない構造となっているし,「切り欠き」によって大 径部が消失していると主張するが,被告製品の大径部側においては,円筒状の胴部が軸方向に基端側にそのまま伸びているだけではなく,それを挟み込むように大径部の骨格を形作る上下の部材が膨らみながら形成されており,全体としては「拡開部」は略楕円筒形状になっているのであるから,当然に「小径部」と「大径部」とを有しており,その上で「大径部」 込むように大径部の骨格を形作る上下の部材が膨らみながら形成されており,全体としては「拡開部」は略楕円筒形状になっているのであるから,当然に「小径部」と「大径部」とを有しており,その上で「大径部」の一部に切り欠きがあるにすぎない。 したがって,被告製品は,「大径部」と「小径部」を有しており,本件発明の構成要件1E②(2E②,3E②)を充足する。 イ被告の主張 被告製品の針先保護部は,下図のとおり,基端側の背面は楕円形であるが,拡幅部は全体として回転楕円体形状ではないから,小径「部」及び大径「部」は存在しない。特に,「大径部」側は,針先保護部を構成する円筒状の胴部が軸方向にそのまま伸びており,この胴部からは離れた場所で「小径部」と「小径部」を繋ぐ接続部(係合腕との係合部分)が存在しているため,基端側から見たときに楕 円形を構成しているだけである(基端以外にはこの接続部もない。)から,「大径部」と呼べる部分は存在しない。また,原告は,本件発明の特徴として,「大径部」が厚肉となることが回避されることを強調するところ,被告製品において「針先再露出」防止機構が存在する部分は,下図のとおり,そもそも回避されるべき厚肉自体が生じない構造となっているから,この点でも「大径部」に該当するもの ではない。 これに対し,原告は,被告製品について,「切り欠きを除いた形状」を出発点とし,そうすれば「小径部」と「大径部」があり,大径部の一部に「切り欠き」があるだけだと主張する。しかし,被告製品は,円筒状の胴部に,当該胴部を挟む ように2つの「小径部」を設け,更にこれらの「小径部」の間を繋ぐ接続部を設けて係合腕との係合部分とした形状を一体的に成型したものであって,「切り欠き 製品は,円筒状の胴部に,当該胴部を挟む ように2つの「小径部」を設け,更にこれらの「小径部」の間を繋ぐ接続部を設けて係合腕との係合部分とした形状を一体的に成型したものであって,「切り欠きを除いた形状」を出発点に「切り欠き」を設けたものではない。仮に「切り欠きを除いた形状」(略楕円筒形状の拡幅部)を出発点としても,被告製品が再現できるように「大径部」に「切り欠き」を行えば,それは「大径部の一部に切り欠き がある」というより,「大径部が消失して存在しなくなる」ものであるから,いずれにせよ「大径部」がないことに変わりはない。 したがって,被告製品は,「大径部」と「小径部」を有しておらず,本件発明の 構成要件1E②(2E②,3E②)を充足しない。 ⑷ 争点2-1(無効理由1(被告原出願に基づく拡大先願違反)の有無)ア被告の主張仮に被告製品が本件発明の技術的範囲に属するのであれば,本件発明と被告原出願発明(乙2)に係る相違点は,被告製品と被告原出願発明の差異である「前 記接続筒部の少なくとも一部が,前記係合腕が弾性変形する支点となる当該係合腕の基端部分よりも基端側に突出している」との構成(構成要件1F③(2F③,3F③))のみであると考えられる。 しかし,翼付静脈留置針等において,接続筒部と外部管路(チューブ)を接続する方法には様々なものがあるところ,接続筒部と外部管路の接触面積を増やせ ば外部管路が脱落しにくくなるのは当然のことであり,接続筒部と外部管路の接触面積を増やすことにより外部管路を脱落しにくくする技術は,「前記接続筒部の少なくとも一部が,前記係合腕が弾性変形する支点となる当該係合腕の基端部分よりも基端側に突出している」との構成に限っても,複数の文献(乙16~19 外部管路を脱落しにくくする技術は,「前記接続筒部の少なくとも一部が,前記係合腕が弾性変形する支点となる当該係合腕の基端部分よりも基端側に突出している」との構成に限っても,複数の文献(乙16~19,59,60)に記載されており,これは周知・慣用技術にすぎない。 加えて,被告原出願の課題は,ハブとプロテクタを格別に成形しつつ,容易に組み付けることを可能とすることであり,本件特許等3件(甲1・2,7・8,乙9)の原出願である原告共通原出願(乙3)の課題は,従来よりも安全性等の向上を図ることのできる,新規な構造の留置針組立体を提供することであるところ,接続筒部と外部管路との接続方法は,これらの発明の課題と無関係であり, それにより新たな効果を奏するものではなく,また,被告原出願及び原告共通原出願のいずれの明細書においても,この接続方法について,原告が主張する特有の技術的意義(課題,解決手段,効果)は説明も示唆もされておらず,任意の構成を採用できるから,この部分は,発明の課題と無関係な単なる付加にすぎない。 さらに,そもそも被告原出願発明においては,下図のとおり,接続筒部と外部 管路との接続は,「係合腕が弾性変形する支点となる当該係合腕の基端部分」より も針先側で,接続筒部の内周と外部管路の外周とを十分に密着させることで達成されており,針先側と基端側のどちらで密着させるかだけの問題であるから,この点でも,付加により新たな効果が生じるものではない。 乙2 の図6D そうすると,本件発明と被告原出願発明に係る相違点は,課題解決のための具体化手段における微差(周知技術,慣用技術の付加…であって,新たな効果を奏 するものではないもの)にすぎない。 したがって,本件発明は,被告原出願発明と実質同一であり 違点は,課題解決のための具体化手段における微差(周知技術,慣用技術の付加…であって,新たな効果を奏 するものではないもの)にすぎない。 したがって,本件発明は,被告原出願発明と実質同一であり,本件特許は,被告原出願に基づく拡大先願違反となる(特許法29条の2)。 イ原告の主張本件発明と被告原出願発明は,本件発明が「接続筒部の少なくとも一部が,前 記係合腕が弾性変形する支点となる当該係合腕の基端部分よりも基端側に突出している」との構成であるのに対し,被告原出願発明は,「接続筒部が,係合腕が弾性変形する支点となる係合腕の基端部分よりも基端側に突出していない」との構成である点で相違する。 そして,上記相違点は,単なる周知技術の付加等ではなく,本件発明の作用効 果とも関連する特有の技術的意義を有している。すなわち,左下図のとおり,本件発明では,「接続筒部の少なくとも一部が,前記係合腕が弾性変形する支点となる当該係合腕の基端部分よりも基端側に突出している」との構成をとることによって,外部管路との接触面積を十分に取りつつ,外部管路と接続する接続筒部が,大径部側に設けられた係止片や係合腕と干渉しにくくして,スムースな動作を確 保しつつ,外部管路が接続筒部から抜けにくくするという技術的意義を有している(被告原出願と被告製品の対比である右下図も参照)。 これに対し,被告が指摘する文献は,接続筒部と係合腕と係止片が互いに干渉するような構造になっておらず,上記相違点の技術的意義を開示したものではないから,単に構成の外形のみをもって,周知・慣用技術等の根拠とすることはできない。 したがって,本件発明は,被告原出願発明と実質同一とはいえず,本件特許は,被告原出願に基づく拡大先願違反にはならない。 に構成の外形のみをもって,周知・慣用技術等の根拠とすることはできない。 したがって,本件発明は,被告原出願発明と実質同一とはいえず,本件特許は,被告原出願に基づく拡大先願違反にはならない。 ⑸ 争点2-2(無効理由2(引用発明1に基づく新規性・進歩性欠如)の有無)ア被告の主張次のとおり,本件発明1は,引用発明1(乙23)と同一の発明であり,仮に 相違点があるとしても,本件発明は,引用発明1に引用発明2(乙36),引用発明3(乙37)又はこれらを含む周知・慣用技術を適用することにより,当業者(発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者。以下同様。)が容易に発明をすることができたものであるから,新規性・進歩性欠如の無効理由がある。 引用発明1の構成 中華人民共和国実用新型考利CN204219517U(乙23)には,次の発明が記載されている。 図1 針先露出時:斜視図図3 針先収納時:斜視図図2 針先露出時:断面図図4 針先収納時:断面図a 針先を有する針22と,b 針22の基端側に設けられた針ハブ20と,c 筒状の周壁を有し,針ハブ20に外挿装着されて針先側へ移動することで針22の針先を覆う外筒10とを備え,d 移動後の所定位置において,外筒10に設けられた係止受部122が針 ハブ20に対して係止されることで針22の再露出が防止されるようになっている留置針組立体であって,e 外筒10は,e① 針軸方向に延びる楕円形の筒状部を有し,e② 楕円形の筒状部の基端側には,係止受部122と楕円筒状部よりも大径 で係止受部122よりも外周側 e 外筒10は,e① 針軸方向に延びる楕円形の筒状部を有し,e② 楕円形の筒状部の基端側には,係止受部122と楕円筒状部よりも大径 で係止受部122よりも外周側にあり,小径部と大径部とを備えた拡開部とが設けられ,e③ 大径部の周壁に,針ハブ20が係合されて針22の針先が突出状態に保持される係合窓14が設けられ, e④ 係止受部122は,針ハブ20に向かって傾斜した内側面を有し,大径部側に円筒状部と一体形成される一方,小径部側には設けられておらず,f 針ハブ20は,f① 外筒10の係合窓14に係合して,針22の針先を突出状態に保持する係合腕280と, f② チューブ30と接続してチューブ30から針22に至る流体流路を形成する接続筒部及びその貫通孔282とを有し,f③ 接続筒部の一部が,係合腕280が弾性変形の支点となる係合腕280の基端部分よりも基端側に突出している,g 留置針組立体。 本件発明1(新規性・進歩性欠如)a 新規性欠如本件発明1の構成要件とこれに対応する引用発明1の構成を対比すると,両者は同一の発明であるといえるから,本件発明1は,新規性を欠いている。 これに対し,原告は,本件発明1と引用発明1には,相違点1~3が存在 すると主張するが,次のとおり,これらはいずれも相違点とはならない。 ⒜ 相違点1(係止片の有無)原告は,本件発明の「係止片」は「自由端」と「固定端」を有する「片」状の部材を意味しているのに対し,引用発明1の「係止受部122」は,外筒10の内壁が肉厚になっているにすぎず,「自由端 原告は,本件発明の「係止片」は「自由端」と「固定端」を有する「片」状の部材を意味しているのに対し,引用発明1の「係止受部122」は,外筒10の内壁が肉厚になっているにすぎず,「自由端」や「固定端」を有 する「片」状の部材とはいえないから,「係止片」とはいえないと主張する。 しかし,①本件特許請求の範囲の記載は,そのような自由端・固定端を有する構成に限定されてはいないこと,②原告は,本件特許の出願過程において,「係止部」を「可撓性の弾性片」とする補正について,審査官から補正の根拠が十分でないとの指摘を受けて,単に「係止片」としており(乙 38),それにもかかわらず「係止片」が自由端・固定端を有するもの(弾 性変形可能なもの)に限られると主張するのは,禁反言に反すること,③「片」の字には「2つのうち一方」との意味もあるところ,引用発明1の「係止受部122」は,まさに係止部26とセットをなす一方であること,④「片」の字に,「薄く小さな切れ端」といった意味を読み込むとしても,「係止受部」は外筒から内側に突出するにつれて薄く小さくなっており, 「片」というのに支障はないこと,⑤「係止受部122」でも,外筒側が「固定端側」・内側への突出側が「自由端側」と理解できること等からすれば,この「片」の点は,形式的にも相違点となるものではないし,それによって発明の効果には変わりがないから,少なくとも実質的相違点となるものではない。 したがって,原告主張の相違点1 は,相違点ではない。 ⒝ 相違点2(係止片と拡開部と円筒状部の位置関係)原告は,本件発明では,「係止片」と「拡開部」がいずれも「円筒状部」の基端側に並列して位置するのに対し,引用発明1では,「係止受部」が「円筒 係止片と拡開部と円筒状部の位置関係)原告は,本件発明では,「係止片」と「拡開部」がいずれも「円筒状部」の基端側に並列して位置するのに対し,引用発明1では,「係止受部」が「円筒状部」の中間に設けられており,「拡開部」の「内周側」には設けられて おらず,「円筒状部の基端側」に設けられているとも,「係止片よりも外周側」に設けられているともいえないと主張する。 しかし,本件特許請求の範囲の文言には「並列して存在」といった限定はないことは明らかであり,原告が主張するように限定して理解する根拠はないところ,引用発明1の「係止受部」は,下図のとおり,実際に「円 筒状部」の針先側ではなく基端側に存在し,かつ,小径部と大径部を備えた「拡開部」が「係止片」よりも「外周側」に存在するから,原告が主張する点が相違点となることはない。 引用発明1 の「拡開部」と「係止受部」 したがって,原告主張の相違点2も,相違点ではない。 ⒞ 相違点3(小径部側における係止片の有無)原告は,本件発明1では,「係止片」が「小径部側」には設けられていないのに対し,引用発明1では,「係止受部」が「小径部側」に設けられているか不明であるという点で相違すると主張する。 しかし,引用発明1には,図面のみでなく,その説明文を見ても,「小径部側」に「係止片」等の特別な構造がある旨や,それを示唆する記載は一切存在しないから,「小径部側」には「係止片」がないと考えるのが自然かつ合理的である。原告は,乙23の図2,3に,「小径部側」の構造の記載がない旨を指摘するが,「小径部側」の構造の記載がないのは,「小径部側」 には「係止片」を含め特異な構造がないため,記載を 合理的である。原告は,乙23の図2,3に,「小径部側」の構造の記載がない旨を指摘するが,「小径部側」の構造の記載がないのは,「小径部側」 には「係止片」を含め特異な構造がないため,記載を省略したと考えるのが自然かつ合理的である。 したがって,原告主張の相違点3も,相違点ではない。 b 進歩性欠如仮に本件発明1と引用発明1に相違点2(ただし,拡開部と係止片が並列 していない点という限度)が存在するとしても,次のとおり,引用発明2,3には,相違点2に係る構成が開示されているところ,引用発明1に引用発明2,3記載の相違点2に係る構成を適用し,本件発明1の構成に至ることは,当業者にとって容易に想到することができる。 すなわち,引用発明2,3には,それぞれ下図のとおり,拡開部と係止部 (いずれも22)が並列し,係止部の外周側に拡開部が存在する構成が開示されている。 乙36 の図3乙37 の図2 そして,主引用発明たる引用発明1 と,副引用発明たる引用発明2,3は,いずれも翼付静脈留置針というごく狭い分野に属する技術であって,針ハブ(針基)の係止部と外筒(プロテクタ)の係止部とを当接させて針ハブと外筒とを係止するという構成・機能も同一であるから,当業者には,引用発明1に引用発明2,3を適用する動機付けが認められる。また,外筒の係止部 を基端側のどの部分に設けるかは,当業者が任意に選択できる設計事項にすぎないし,翼付静脈留置針は,小型の医療機器であるから,安定的かつ効率的な構成がより好まれるところ,引用発明1については,外筒の係止部を拡開部と並列させ,拡開部の内側に設けたほうが,係止部を径がより太い部分に設けられて安定する,拡開部の肉厚部分を有効利用できる等の点で有利で がより好まれるところ,引用発明1については,外筒の係止部を拡開部と並列させ,拡開部の内側に設けたほうが,係止部を径がより太い部分に設けられて安定する,拡開部の肉厚部分を有効利用できる等の点で有利で あるから,当業者には,引用発明1に引用発明2,3を適用する動機付けが認められる。さらに,上記効果は,その構成から当然予想できるものであるし,引用発明1への引用発明2,3の適用を阻害する要因も特にない。 したがって,本件発明1は,引用発明1に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,進歩性を欠いている。 本件発明2(進歩性欠如)a 本件発明2の構成要件とこれに対応する引用発明1の構成を対比すると,本件発明2の「係止片」が「弾性変形可能」であるのに対し,引用発明1の 「係止受部」は「弾性変形しない」点において相違する(相違点4(係止片の弾性可能性))。 b しかし,次のとおり,引用発明2,3には,相違点4に係る構成(外筒(プロテクタ)側の係止部を弾性変形可能とした構成)が開示され,かつ周知・慣用技術であったと認められるから,引用発明1に引用発明2,3記載の相 違点4に係る構成を適用し,本件発明2の構成に至ることは,当業者にとって容易に想到することができる。 すなわち,引用発明2の明細書の段落【0017】には,「停止プレート22の各々は薄い可撓性プレートであり,若干,外向きに押され得る。」とあり,外筒側の「係止部(停止プレート22)」が「弾性変形可能」であることが開 示されている。 乙36 の図3・図4 また,引用発明3の外筒側の「係止部(内部係止ブロック22)」については,「弾性変形可能」との明示はないものの,明細書の「使用後には あることが開 示されている。 乙36 の図3・図4 また,引用発明3の外筒側の「係止部(内部係止ブロック22)」については,「弾性変形可能」との明示はないものの,明細書の「使用後には,スライ溝⒀に係止され,針⑾を防護する。」との記載からすれば,この「内部係止ブロック22」 は「弾性変形可能」で「外部係止溝13」に入り込んで係止を行うものと考えるのが自然かつ合理的である。 乙37 の図2・図3 そして,主引用発明たる引用発明1と,副引用発明たる引用発明2,3とは,いずれも翼付静脈留置針というごく狭い分野に属する技術であって,針ハブ(針基)の係止部と外筒(プロテクタ)の係止部とを当接させて針ハブと外筒とを係止するという構成・機能も同一であるから,当業者には,引用発明1に引用発明2,3を適用する動機付けが認められる。また,そもそも, 針ハブの係止部と外筒の係止部を,一度互いに擦れ違わせた後に当接させて係止するためには,両係止部の少なくとも一方を「弾性変形可能」にする必要があるところ,針ハブの係止部を「弾性変形可能」とするか,外筒の係止部を「弾性変形可能」とするかは当業者が適宜選択できる設計事項であって,それによって効果に特段の差異が生じるものではない。さらに,このような 適用・置換を阻害する要因も特にない。 加えて,相違点4,5(下記)に係る構成は,外国において,引用発明2,3で開示されていたのみならず,日本国内においても,平成10年に公開された原告先行特許(乙1)で既に開示されていたほか,平成15年頃に上市されて現在も市場で圧倒的なシェアを誇る原告製品(乙54,61,6 2)でも使用されているから,周知・慣用技術であったと認められるのであり,これを引用発明1に適用するこ か,平成15年頃に上市されて現在も市場で圧倒的なシェアを誇る原告製品(乙54,61,6 2)でも使用されているから,周知・慣用技術であったと認められるのであり,これを引用発明1に適用することは,一層容易想到である。 c したがって,本件発明2は,引用発明1に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,進歩性を欠いている。 本件発明3(進歩性欠如) a 本件発明3の構成要件とこれに対応する引用発明1の構成を対比すると,上記で指摘した相違点4(係止片の弾性可能性)に加え,本件発明3の「係止片」は「拡開部の内部にある」とされているのに対し,引用発明1の「係止受部」は「拡開部の内部にない」点において相違する(相違点5(係止片と拡開部の位置関係))。 b しかし,上記,引用発明2,3には,相違点4, 5に係る構成がいずれも開示され,かつ周知・慣用技術であったと認められるから,引用発明1に相違点4,5に係る構成を適用し,本件発明3の構成に至ることは,当業者にとって容易に想到することができる。 なお,本件発明3と引用発明1には,相違点4,5という2つの相違点が存在するが,これらは,乙36,37にそれぞれセットで開示されているも のであるし,一方の適用が他方の適用を困難とするといった事情も存在しないから,相違点が複数存在することは,上記の適用の妨げとはならない。 c したがって,本件発明3は,引用発明1に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,進歩性を欠いている。 イ原告の主張 次のとおり,本件発明1と引用発明1には,相違点1~3があり,新規性を欠いておらず,本件発明1は,引用 することができたものであるから,進歩性を欠いている。 イ原告の主張 次のとおり,本件発明1と引用発明1には,相違点1~3があり,新規性を欠いておらず,本件発明1は,引用発明1に引用発明2,引用発明3又はこれらを含む周知・慣用技術を適用することにより,当業者が容易に発明をすることができたものでもないから,進歩性を欠いていない。 本件発明1(新規性・進歩性) a 新規性次のとおり,本件発明と引用発明1には,相違点1~3がある。これらの相違点は,肉厚の大径部を設けることなく,大径部の内周側に係止片を設けることにより,拡開部の内部スペースを巧く利用することができ,部材内へのエアの混入を効果的に防止することができるなど,本件発明の作用効果に 密接に結びつく実質的な相違点である。 したがって,本件発明は,引用発明1と同一の発明ではなく,新規性を欠いていない。 ⒜ 相違点1(係止片の有無)本件発明1は「係止片」によって「留置針の針先の再露出」が防止され るのに対し,引用発明1はそのような構造になっていない点において相違 する。 すなわち,本件発明1の「係止片」は,「片」という用語が使われている点,また,本件明細書の段落【0072】に「係止片74,74の自由端側」,「係止片74,74の固定端側」という記載があるとおり,「自由端」と「固定端」を有する「片」状の部材を意味している。これに対し,引用 発明1の「係止受部」は,外筒の内壁が肉厚になっているにすぎず,「自由端」や「固定端」を有する「片」(薄く小さな切れ端)状の部材とはいえない。したがって,引用発明1の「係止受部1」は「係止片」とはいえない。 ⒝ 相違点2(係止片と拡開 厚になっているにすぎず,「自由端」や「固定端」を有する「片」(薄く小さな切れ端)状の部材とはいえない。したがって,引用発明1の「係止受部1」は「係止片」とはいえない。 ⒝ 相違点2(係止片と拡開部と円筒状部の位置関係)仮に引用発明1の「係止受部」が本件発明1の「係止片」に相当すると しても,本件発明1は,「前記円筒状部の基端側には,前記係止片と,前記円筒状部より大径で前記係止片よりも外周側にあり,小径部と大径部とを備えた拡開部とが設けられ」ているとの構成であるのに対し,引用発明1の「係止受部」と「拡開部」と「円筒状部」の位置関係は,そのような構成になっていないという点で相違する。 すなわち,本件特許請求の範囲の記載に加え,本件明細書の段落【0013】~【0023】,【0025】等の記載を参酌すると,本件発明1については,「係止片」と「拡開部」が,いずれも「円筒状部の基端側」に設けられており,「拡開部」が「係止片よりも外周側」にあるという構造になっているから,「係止片」と「拡開部」と「円筒状部」の位置関係と しては,下図のとおり,「係止片」と「拡開部」がいずれも「円筒状部の基端側に並列して位置する」ことが規定されているといえる。 これに対し,引用発明1については,下図のとおり,「係止受部」が「円筒状部」の「中間」に設けられており,「拡開部」の内周側に設けられていない」から,「円筒状部の基端側」に設けられているとも,「係止片よりも外周側」にあるともいえない。 ⒞ 相違点3(小径部側における係止片の有無)仮に引用発明1の「係止受部」が本件発明1の「係止片」に相当するとしても,本件発明1においては,「係止片」が「小径部側には設けられていない」の 点3(小径部側における係止片の有無)仮に引用発明1の「係止受部」が本件発明1の「係止片」に相当するとしても,本件発明1においては,「係止片」が「小径部側には設けられていない」のに対し,引用発明1においては,「係止受部」が「小径部側に設け られているか不明である」という点で相違する。 b 進歩性被告は,本件発明1と引用発明1の相違点が相違点2(の一部)のみであることを前提とした上で,引用発明1に基づく進歩性欠如を主張しているが,相違点1,3を無視して相違点2に係る構成が容易想到か否かのみを問題に しても,進歩性欠如を否定する主張にならないことは明らかである。 また,被告は,引用発明2,3の具体的内容を主張しておらず,かつ,引用発明1にどのように引用発明2又は3を組み合わせるかについての具体的な説明もしていないから,引用発明1にどのような引用発明2,3を,どのような動機付けに基づいて,どのように組み合わせることによって本件発明1に至るのかは不明である。 なお,仮に被告の主張が,引用発明1の係止構造を全て引用発明2又は3に置き換えるという方法であるとしても,引用発明1は,「安全性を高めて自滅を実現し,二次利用を回避することができ,構造が簡単で低コストである安全な自滅式医療用針を提供することを目的」とする考案であって,そのうち変形可能な係止部26が針ハブ20に設けられている構成や,外筒10の 内腔に係止部26とロック係合する係止受部122が設けられている構成は,クレームにも記載された引用発明1にとっての本質的部分であって,この部分を全て引用発明2又は3に係る構成に置き換える動機付けがないばかりか,そのように置き換えることについて強い阻害要因があるといえる。 したがって,本件発明1 明1にとっての本質的部分であって,この部分を全て引用発明2又は3に係る構成に置き換える動機付けがないばかりか,そのように置き換えることについて強い阻害要因があるといえる。 したがって,本件発明1は,引用発明1に基づいて,当業者が容易に発明 をすることができたものであるとはいえず,進歩性を欠いていない。 本件発明2(進歩性)本件発明2と引用発明1には,上記aで指摘した相違点1~3に加え,前記で被告も認める相違点4があるが,上記で指摘したとおり,これらの相違点が当業者において容易想到であるとはいえない。 したがって,本件発明2は,引用発明1に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず,進歩性を欠いていない。 本件発明3(進歩性)本件発明3と引用発明1には,上記で指摘した相違点1~3に加え,上記アで被告も認める相違点4,5があるが,前記で指摘したとおり, これらの相違点が当業者において容易想到であるとはいえない。 したがって,本件発明3は,引用発明1に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず,進歩性を欠いていない。 ⑹ 争点3(先使用権の成否)ア被告の主張次のとおり,被告は,本件発明の内容を知らないで自らその発明をし,そ の特許出願の際,現に日本国内においてその発明の実施である事業の準備をしている者であり,被告が現在行っている被告製品の製造販売等は,準備に係る発明及び事業の目的の範囲内であるから,被告は,被告製品の製造販売等につき,本件特許の通常実施権(先使用権)を有するものである(特許法79条)。 前記⑷のとおり,仮に被告製品が本件発明の技術的範囲に属するのであれば, 範囲内であるから,被告は,被告製品の製造販売等につき,本件特許の通常実施権(先使用権)を有するものである(特許法79条)。 前記⑷のとおり,仮に被告製品が本件発明の技術的範囲に属するのであれば, 被告原出願発明は,被告原出願発明と被告製品の差異である,接続筒部の突出の点を除いて,本件発明と一致すると考えられる。 そして,被告は,被告原出願発明に基づいて被告製品の細部を更に具体化するに当たり,本件発明に係る基準日(本件特許の優先日)である平成28年6月3日の前の日である同年5月17日には,接続筒部の一部を基端方向に突出 させる構成を採用し,その製作図を作成していた(乙49)。 したがって,被告は,本件発明の内容を知らないで,自らその発明を具体的・客観的なものとして完成させたといえる。 また,被告は,平成25年8月頃から,原告先行特許が平成28年9月に期間満了となることを見越して,新たなセーフティ型留置針の検討を開始し(乙 41),平成27年中頃には,3つのプロトタイプやその試作金型を作成するまでに,開発を具体化させていた(乙42)。被告は,同年12月には,3つのプロトタイプの長所に基づいて,被告製品のほぼ原形となる第4案を取りまとめ,この第4案や平成29年4月(自動組立品は同年9月)の上市を目標とする基本的な開発スケジュールが,社長を含む経営陣からも承認された(乙43)。被 告は,その後も,平成28年2月のプロジェクト会議等を通じて,第4案及び 開発スケジュールの具体化を進めていき(乙44),また,細部の設計事項を除いて仕様がほぼ固まったことから,各種原料の手配(乙45),コスト削減に重要な自動組立機業者との打合せ(乙46),関連部門への確認・販売名の検討(乙47),被告原出願(乙2),金型 部の設計事項を除いて仕様がほぼ固まったことから,各種原料の手配(乙45),コスト削減に重要な自動組立機業者との打合せ(乙46),関連部門への確認・販売名の検討(乙47),被告原出願(乙2),金型の準備(乙48)等を重ねていった。そして,被告は,被告原出願発明に基づいて被告製品の細部を更に具体化・微調整して いく中で,同年5月17日には,接続筒部の一部を基端方向に突出させる構成を採用し,経営陣の承認も取得した(乙49~51)。 したがって,被告は,遅くとも本件特許の優先日までには,本件発明の構成について即時実施の意思があり,これが客観的に認識される態様,程度において表明されていたといえるから,現に日本国内においてその発明の実施である 事業の準備をしていた者に当たる。 加えて,被告は,被告製品につき,平成28年5月17日における接続部の突出の採用後も,細部の微調整を行っているが,本件発明の構成要件の該非に関連する部分について特段の変更を加えるものではなく,現在の被告製品も,準備に係る発明の範囲内であるし,当時から,被告製品の製造(子会社への製 造委託を含む。)・販売を準備していたものである。 したがって,被告が現在行っている被告製品の製造販売等は,準備に係る発明及び事業の目的の範囲内である。 イ原告の主張次のとおり,被告は,発明を完成させたか否かも不明であり, 本件発明に係る基準日(本件特許の優先日)の時点において,「事業の準備」をしていたとはいえないのであるから,被告に先使用権は成立しない。 被告は,本件発明の内容を知らないで自らその発明をしたことの証拠として,平成28年5月17日付けの製作図(乙49)を提出する。 しかしながら,被告が提出した乙49は,針基の部分のみの 被告は,本件発明の内容を知らないで自らその発明をしたことの証拠として,平成28年5月17日付けの製作図(乙49)を提出する。 しかしながら,被告が提出した乙49は,針基の部分のみの製作図であり, しかも,最終的な製作図であるかも不明であるから,この製作図のみで,被告 が本件発明の内容を知らないで自らその発明をした(完成した)とはいえない。 また,本件特許の優先日である平成28年6月3日の時点において,乙49は「案」の状態であって,金型改造さえ完了しておらず,改造された金型による試作品も完成していない状況にあった上,上市予定時期は1年以上先の平成29年9月とされており,実際に上市されたのは更に1年4か月後の平成31 年1月である。 したがって,被告が,本件特許の優先日の時点で,即時実施の意図を有しており,かつ,その即時実施の意図が客観的に認識される態様,程度において表明されているとはいえないから,「事業の準備」をしていたとはいえない。 ⑺ 争点4(独占禁止法違反に基づく権利濫用の成否) ア被告の主張原告は,①原告先行特許(乙1)の寄与もあり,セーフティ型留置針の市場で独占的な地位を有していたところ(乙7),②原告先行特許の期間満了(平成28年9月)後に,被告が被告原出願発明(乙2)という新たな技術を採用した被告製品を上市し,市場で好評を得ていたことから,③被告製品を排除しようと,原 告共通原出願(乙3)の利用を検討したものの,その特徴は既に被告原出願発明に開示されていると考えられたため,④被告原出願から被告製品を開発するに当たって具体化された差異であって,この具体化前から原告共通原出願に開示されているといえそうなものを検討した結果,⑤原告共通原出願 開示されていると考えられたため,④被告原出願から被告製品を開発するに当たって具体化された差異であって,この具体化前から原告共通原出願に開示されているといえそうなものを検討した結果,⑤原告共通原出願における外部管路の脱落防止のための接続筒部の突出と,被告製品における位置決め・ガイドのため の接続筒部の突出という外形的類似に想到し,⑥外部管路の脱落防止のための接続筒部の突出が周知・慣用技術ないし単なる設計事項であり,だからこそ原告共通原出願の明細書において何ら具体的な言及・説明をしていなかったにもかかわらず,分割出願によりこれを構成要件化した本件特許を取得の上,⑦被告製品の接続筒部の突出につき,本来の技術的意義が異なる外形上の類似にすぎないにも かかわらず,本件特許の構成要件を充足するとして,⑧新技術を用いた被告製品 をセーフティ型留置針の市場から排除し,もって原告先行特許で得られた同市場での独占的な地位を維持しようとしたものである。 このように,原告は,被告原出願発明と被告製品との些細な設計事項の差異を奇貨として,被告原出願後兼公開前・被告製品発売前の原告共通原出願を基に,当該差異を構成要件とすることを意図した分割出願・特許化及びその行使により, 被告製品を排除・妨害し,原告の独占的地位を維持しようとするものである。 したがって,本件請求は,独占禁止法21条の適用除外規定は適用されず,私的独占(排除型。同法3条,2条5項),不公正な取引方法(取引妨害。同法19条,2条9項6号ヘ,一般指定14項)として独占禁止法に違反するものであり,権利濫用に当たる。 イ原告の主張原告の請求は,「知的財産の利用に関する独占禁止法の指針」(乙22)に照らし,特許法21条の適用除外の規定が適用されない るものであり,権利濫用に当たる。 イ原告の主張原告の請求は,「知的財産の利用に関する独占禁止法の指針」(乙22)に照らし,特許法21条の適用除外の規定が適用されないとされる,知的財産制度の趣旨を逸脱し,又は同制度の目的に反する私的独占等には当たらない。 ⑻ 争点5(原告の損害の有無及び額) ア原告の主張次のとおり,原告が,被告の不法行為(本件特許権の侵害行為)により被った損害の額は,合計288万3600円である。 特許法102条2項による損害原告は,特許法102条2項に基づき,被告がその侵害行為により利益を受 けているときは,その利益の額について自己が受けた損害の額として賠償を請求することができる。 被告は,遅くとも本件特許の登録日である令和元年8月9日以降,現在に至るまで,被告製品の製造販売等を継続しており,その間に被告が被告製品を販売して得た利益は167万円(≒年間売上高2000万円×利益率50%×2 /12)を下らない。 弁護士費用相当額原告は,被告の不法行為によって,本件訴訟を提起することを余儀なくされたところ,これに要した弁護士費用は100万円を下らない。 合計上記,の合計額267万円に消費税8%を加算すると,288万360 0円となる。 イ被告の主張原告の主張は,否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 本件発明について 本件特許請求の範囲の記載は,前記前提事実⑵イとおりであるところ,本件明細書には,発明の詳細な説明として,次のとおりの記載がある(別紙特許公報(甲8)参照)。 ア技術分野【0001 本件特許請求の範囲の記載は,前記前提事実⑵イとおりであるところ,本件明細書には,発明の詳細な説明として,次のとおりの記載がある(別紙特許公報(甲8)参照)。 ア技術分野【0001】本発明は,血管に穿刺されて留置される留置針の使用後に当該留置針 の針先を保護する留置針用針先プロテクタを備える留置針組立体に関するものである。 イ背景技術【0002】従来から,輸液や採血,血液透析を行う際に用いられる留置針が知られている。この留置針は,先端に針先を備えている一方,基端は針ハブに固定され ている。かかる留置針が患者の血管に穿刺されて留置されることで,針ハブに接続されるカヌラなどの外部管路を通じて,輸液や採血,血液透析が実施されるようになっている。 【0003】ところで,留置針は,誤穿刺や再使用の防止,或いは廃棄処理の容易化などの目的で,使用後の針先を保護する針先プロテクタを備えているものがあ る。たとえば,かかる留置針用の針先プロテクタおよび針先プロテクタを備えた留 置針組立体としては,本出願人が提案した特許第3134920号公報(特許文献1)などがある。 【0004】すなわち,特許文献1に記載の針先プロテクタは筒状の周壁を備えており,留置針の使用後に当該周壁を針先側に移動させることで,留置針の針先が針先プロテクタにより保護されるようになっている。具体的には,留置針の使用前に は,針先プロテクタと針ハブとが,留置針の針先が露出する状態で連結固定されているが,使用後に針先プロテクタと針ハブとの連結を解除することで,針先プロテクタが針ハブに対して針先側へ移動して針先を保護するとともに,係止部(可撓性衝合枝43)でかかる状態を保持することができるようになっている。このような針先プロテクタおよ を解除することで,針先プロテクタが針ハブに対して針先側へ移動して針先を保護するとともに,係止部(可撓性衝合枝43)でかかる状態を保持することができるようになっている。このような針先プロテクタおよび留置針組立体を採用すれば,留置針の針先が安全に保護で きて,誤穿刺などのおそれが効果的に防止され得る。 【0005】そして,本出願人は,かかる針先プロテクタを備えた留置針組立体の更なる改良を検討して,上記特許文献1に記載の留置針組立体よりも,安全性などに優れた本発明を開発し得たのである。 ウ発明が解決しようとする課題 【0007】本発明は,上述の事情を背景に為されたものであって,その解決課題は,従来よりも安全性などの向上を図ることのできる,新規な構造の留置針組立体を提供することにある。 エ課題を解決するための手段【0012】本発明の留置針組立体に用いられる針先プロテクタは,以下の態様を 含みうる。 【0013】第1の態様は,筒状の周壁を備えており,留置針の針ハブに外挿装着されて針先側へ移動することで該留置針の針先を覆う針先プロテクタであって,前記留置針の針先側への移動位置において前記針ハブに係止されて,該留置針の基端側への後退を阻止することで前記針先の再露出を防止する係止部が,前記筒 状の周壁で覆われた内部に形成されていると共に,該係止部が該筒状の周壁に一 体成形されていることを特徴とするものである。 【0014】本態様に従う構造とされた留置針用針先プロテクタによれば,針先の再露出を防止する係止部が周壁の内部に一体的に形成されていることから,係止部に対して外部からアクセスし難くできる。その結果,意図せず係止部に接触したり何らかの外力により係止部が破損して,針先の保護状態が解除されるようなこ 壁の内部に一体的に形成されていることから,係止部に対して外部からアクセスし難くできる。その結果,意図せず係止部に接触したり何らかの外力により係止部が破損して,針先の保護状態が解除されるようなこ とも防止することが可能になる。 【0015】第2の態様は,前記第1の態様に係る留置針用針先プロテクタにおいて,前記係止部が,前記筒状の周壁内で該周壁の基端側に向かって延びているものである。 【0016】本態様に従う構造とされた留置針用針先プロテクタによれば,係止部 が周壁の基端側に向かって延びていることから,針先プロテクタに対して留置針を基端側へ移動させる際に,例えば係止部が先端側へ延びている場合に比べて,引っ掛かったり,使用者が抵抗感を感じるおそれが低減され得る。 【0017】第3の態様は,前記第1又は第2の態様に係る留置針用針先プロテクタにおいて,前記係止部の全体が,前記筒状の周壁で覆われた内部に収容状態とさ れているものである。 【0018】本態様に伴う構造とされた留置針用針先プロテクタによれば,係止部の全体が周壁の内部に収容されていることから,係止部への外部からのアクセスが一層困難とされており,針先が意図せず露出することが更に効果的に防止されて,安全性の更なる向上が図られ得る。 【0019】第4の態様は,前記第1~第3の何れかの態様に係る留置針用針先プロテクタにおいて,前記筒状の周壁の基端側に外周に広がる拡開部が設けられており,該拡開部の中に前記係止部が設けられているものである。 【0020】本態様に伴う構造とされた留置針用針先プロテクタによれば,周壁の基端側に設けられた拡開部の中に係止部が設けられていることから,係止部の大 きさを十分に確保しつつ,周壁に挿通される針ハブの径が小さくなりすぎること た留置針用針先プロテクタによれば,周壁の基端側に設けられた拡開部の中に係止部が設けられていることから,係止部の大 きさを十分に確保しつつ,周壁に挿通される針ハブの径が小さくなりすぎること も回避される。 【0021】第5の態様は,前記第4の態様に係る留置針用針先プロテクタにおいて,前記拡開部の前端部分には,前記筒状の周壁の内周面において前方に向かって外周側に広がる段差状面が設けられており,該段差状面よりも該拡開部の後端部分において後方に向かって前記係止部が突出形成されているものである。 【0022】本態様に従う構造とされた留置針用針先プロテクタによれば,周壁の内周面に,前方に向かって外周側に広がる段差状面が設けられていることから,例えば針ハブの外周面に外周側に突出する係止凸部を設けることで,針先プロテクタに対して留置針を基端側へ移動させた際に,係止凸部と段差状面とが係合して,それ以上の留置針の基端側への移動が制限され得る。それ故,係止部を利用して, 留置針が針先プロテクタの基端側から抜け落ちることを防止することも可能となる。 【0023】第6の態様は,前記第4又は第5の態様に係る留置針用針先プロテクタにおいて,前記拡開部が,互いに直交する小径部と大径部とを備えた略楕円筒形状とされており,該大径部の周壁で覆われた内部に前記係止部が設けられている と共に,該大径部の周壁において前記針ハブが係合されて前記留置針の針先が突出状態に保持される針ハブ係合部が設けられているものである。 【0024】本態様に従う構造とされた留置針用針先プロテクタによれば,拡開部が角部を備えていない略楕円筒形状とされていることから,拡開部が患者に接触して患者が痛みを感じるおそれが低減され得る。特に,拡開部が小径部を備えてい れた留置針用針先プロテクタによれば,拡開部が角部を備えていない略楕円筒形状とされていることから,拡開部が患者に接触して患者が痛みを感じるおそれが低減され得る。特に,拡開部が小径部を備えてい ることから,患者への接触量を小さくすることができて,患者が痛みを感じるおそれが一層低減され得る。 【0025】また,単に肉厚の大径部を設けるのではなく,大径部の内部に係止部を設けることで拡開部の内部スペースを巧く利用することができるとともに,部材内へのエアの混入を効果的に防止することができて,寸法誤差を小さくできる など製品の品質も向上され得る。 【0028】第8の態様は,前記第1~第7の何れかの態様に係る留置針用針先プロテクタにおいて,前記係止部において前記筒状の周壁から延びる自由端側が,前記針ハブへの係止により該筒状の周壁内での前記留置針の針先側への移動による針先再露出を阻止する第一係止部とされていると共に,該係止部において該筒状の周壁によって一体的に支持された固定端側が,該針ハブへの係止により該筒状 の周壁内での該留置針の基端側への移動による針抜出しを阻止する第二係止部とされているものである。 【0029】本態様に従う構造とされた留置針用針先プロテクタによれば,周壁に形成された係止部により留置針の針先プロテクタに対する先端側および基端側への両方向の移動が防止されることから,針先再露出阻止機構と針抜出阻止機構を 別々に設ける場合に比べて,構造を簡単なものとすることができる。 【0032】前記第1~9の何れかの態様に係る留置針用針先プロテクタに対して,基端側に針ハブを備えた留置針が軸方向で移動可能に挿通されており,該留置針の針先側へ該針先プロテクタが移動せしめられた所定位置において,該針先プロテクタに設けら 係る留置針用針先プロテクタに対して,基端側に針ハブを備えた留置針が軸方向で移動可能に挿通されており,該留置針の針先側へ該針先プロテクタが移動せしめられた所定位置において,該針先プロテクタに設けられた前記係止部が該針ハブに対して係止されることで該留置針 の針先の再露出が防止されるようになっている留置針組立体が得られる。 【0040】留置針組立体および留置針用針先プロテクタにおいて,針先の再露出を防止する係止部が周壁の内部に一体的に形成すれば,係止部への意図しない接触などが回避されて,安全性の向上が図られ得る。 オ発明を実施するための形態 【0054】この針先プロテクタ10(周壁58)は,針軸方向で形状が異ならされており,先端側が,断面が略真円環形状とされた円筒状部62とされているとともに,基端側が,円筒状部62よりも大径で外周に広がる拡開部としての拡径部64とされている。(中略)【0055】拡径部64は,図6にも示されるように,略楕円筒形状とされており, 図6中の小径方向である左右方向における外周面の幅寸法に比べて,図6中の大 径方向である上下方向における外周面の幅寸法の方が大きくされている。すなわち,拡径部64を構成する壁部のうち,図6中の左右方向の壁部を構成する部分が小径部66,66とされている一方,図6中の上下方向の壁部を構成する部分が大径部68,68とされており,これら小径部66,66の対向方向と大径部68,68の対向方向とが互いに直交している。 【0061】(中略)さらにまた,垂直面79a,79aの外周側に位置する傾斜面79b,79bが,外周側になるにつれて先端側に傾斜していることから,垂直面79a,79aと基端側規制面40とが傾斜面79b,79bに干渉されることなく当接することが 79aの外周側に位置する傾斜面79b,79bが,外周側になるにつれて先端側に傾斜していることから,垂直面79a,79aと基端側規制面40とが傾斜面79b,79bに干渉されることなく当接することができて,針ユニット20と針先プロテクタ10の軸方向における相対移動防止効果がより確実に発揮され得る。 【0070】そして,図7~9に示されるように,針ユニット20を針先プロテクタ10に対して後退移動させる(針ユニット20の針先14側へ針先プロテクタ10を前進移動させる)ことにより,留置針16の針先14が針先プロテクタ10で覆われるとともに,係止片74,74の係止爪78,78が針ハブ本体26のテーパ状面34を乗り越えて弾性復帰して,係止凹部36内に入り込むようになっ ている。かかる状態では,係止爪78,78の特に垂直面79a,79aと係止凹部36の基端側規制面40とが当接する(係止爪78,78が基端側規制面40に係止される)ことで針ユニット20の先端側への移動(針先プロテクタ10の針軸方向基端側への移動)が制限されるようになっている。これにより,留置針16の針先14の再露出が阻止されるようになっている。 【0071】それとともに,係止片74,74の前端部分に設けられた段差状面76と係止凹部36の先端側規制面42とが当接する(段差状面76が先端側規制面42に係止される)ことで針ユニット20の基端側への移動が制限されるようになっている。これにより,留置針16の,針先プロテクタ10の基端側への抜出しが阻止されるようになっている。それ故,針先プロテクタ10に対する針ユニッ ト20の軸方向両側への移動が阻止されて,針先プロテクタ10による留置針1 6の針先14の保護状態が維持されるようになっている。 は,輸液や 針先プロテクタ10に対する針ユニッ ト20の軸方向両側への移動が阻止されて,針先プロテクタ10による留置針1 6の針先14の保護状態が維持されるようになっている。 は,輸液や採血,血液透析を行う際に用いられ,誤穿刺,再使用の防止,廃棄処理の容易化などを目的として使用後の針先を保護する針先プロテクタを備えた留置針組立体に関するものである。そして,本件発明は,その円筒状部基端側に拡開部を設け,患者への接触量を小さくするために当該拡開部 に小径部を設けるとともに,スペースの効率的利用,エア混入防止,寸法誤差の減少,意図しない破損防止などの技術的見地から,使用後の針先再露出を防止する構成として,針先の先端側への移動を阻止する係止片を当該拡開部の大径部側に一体形成し,小径部側には設けないとの構成を採用することとした。本件発明は,このような構成を採用することにより,従来よりも安全性などの向上を図るという課題 を解決できる留置針組立体を提供するものであるといえる。 2 争点1(被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか)について争点1-1(被告製品の小径部側壁部は,係止片は大径部側に一体形成される一方小径部側には設けられていないという文言を充足するか-構成要件1E④,2E④,3E⑤充足性)について 構成要件1E④,2E④,3E⑤によれば,「係止片は」「大径部側に」「一体形成される一方」「小径部側には設けられておらず」というのであり,上記のとおり,本件発明は,従来よりも安全性などの向上を図るというその目的をより良く達成するという上記の技術的見地から,針先再露出防止を担う係止片の構成を工夫して,拡開部の大径部側に一体形成し小径部側には設けないという構成を採用したものとい うことができる。これによれば,本 成するという上記の技術的見地から,針先再露出防止を担う係止片の構成を工夫して,拡開部の大径部側に一体形成し小径部側には設けないという構成を採用したものとい うことができる。これによれば,本件発明において,拡開部に設ける「係止片」については,大径部側に一体形成されている必要があるとともに,小径部側には設けられていない構成である必要があるものであって,「係止片」が小径部側に設けられている構成は排除されているものといわなければならない。 そして,この「係止片」は,使用後の針先再露出を防止する部材であるといえる が,当該部材が針先の先端側への移動を阻止して針先再露出を防止する態様につい ては,構成要件1Dに「該留置針の針先側へ該針先プロテクタが移動せしめられた所定位置において,該針先プロテクタに設けられた係止片が該針ハブに対して係止される」とある以上には何ら具体的な限定がなされていない。また,本件明細書の発明の詳細な説明を見ても,当該部材が,針先の先端側への移動を阻止する具体的態様を限定する根拠となり得るような記載は見当たらない。加えて,本件特許の出 願経過を見ると,証拠(乙14,15)によれば,原告は,令和元年5月15日頃,特許庁から進歩性欠如等を理由とする拒絶理由通知を受け,その際,構成要件1Dに関し,「針先プロテクタの断面形状を,周知の形状である小径部と大径部とを備えた楕円形とし,大径部の周壁に針ハブ係合部を設け,大径部の周壁で覆われた内部に係止部を設けた構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。」などと 指摘されたことを踏まえて,同年6月19日,従前の請求項で「前記拡開部の前記大径部に対応する位置に,前記筒状の周壁に一体形成された前記係止部が設けられて」と記載していた部分を,「前記大径部側に 指摘されたことを踏まえて,同年6月19日,従前の請求項で「前記拡開部の前記大径部に対応する位置に,前記筒状の周壁に一体形成された前記係止部が設けられて」と記載していた部分を,「前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される一方,前記小径部側には設けられておらず,」と補正したものであることが認められる。その上で原告は,同日特許庁に提出した意見書において,本件発明の進歩性を基礎付 ける事情として,拒絶理由通知書で審査官が指摘した引用文献(乙27,29)については,いずれも針先プロテクタの小径部側に係止部が設けられており本件発明とは異なる旨主張し,その際,当該係止部が針先の先端側への移動を阻止する具体的態様には言及していなかったことが認められる。そして,本件特許は,その上で登録されている。 そうすると,本件特許請求の範囲の記載文言をみても,本件明細書の発明の詳細な説明をみても,小径部側に設けられてはならないとされている「係止片」が針先の先端側への移動を阻止する具体的態様を限定する根拠となり得るような記載がなく,加えて,原告自身,本件特許の出願手続においては,その特許請求の範囲を前記のように「前記小径部側には設けられておらず,」と補正した上で,意見書におい て,具体的態様については何ら限定しないまま,小径部側に「係止片」が設けられ ていない点を本件発明の進歩性を基礎付ける事情として主張し,その上で本件特許が登録されたものである。 以上によれば,本件発明において小径部側に設けられてはならない「係止片」は,針先の先端側への移動を阻止する具体的態様が限定されているものではなく,他の部材と協働して針先の先端側への移動を阻止する構成を含むものであるといわなけ ればならない。 そこで,被告製品をみるに,前記前提事実 の移動を阻止する具体的態様が限定されているものではなく,他の部材と協働して針先の先端側への移動を阻止する構成を含むものであるといわなけ ればならない。 そこで,被告製品をみるに,前記前提事実によれば,被告製品においては,針基に設けられた針リブと針先保護部に設けられた小径部側壁部とが,小径部側壁部の突端面により縦リブの側面を挟持することで互いに係合することにより,針基が針先保護部に対して回動することを防止する構成になっており,仮にこのような回動 が発生して針基の受部が大径部係止手段のない小径部側まで移動した場合には,針基が大径部係止手段をすり抜けて針先保護部に対して前進することになる。すなわち,小径部側壁部がなければ,大径部係止手段が無効化されて,針基が前進し,留置針の針先が針先保護部の先端側から再露出することになるのであるから,被告製品においては,小径部側壁部による針基の回動防止と大径部係止手段による針基の 受け部の係止が協働して機能することによって,針先の再露出を防止していると認められる。 そうすると,被告製品の小径部側壁部は,他の部材と協働して,針先の先端側への移動を阻止する構成であるといえ,当該小径部側壁部は,本件発明において小径部側に設けられることが排除されている「係止片」に当たるといわなければならな い。これによれば,「係止片」が針先抜出防止機構を含むものであるか否かに関わらず,被告製品は,小径部側に「係止片」が設けられているものとして,本件発明において排除されている構成を有しているから,本件発明の構成要件1E④,2E④,3E⑤をいずれも充足しないといわなければならない。 したがって,被告製品は,本件発明の技術的範囲に属するとはいえない。 ⑵ 原告の主張について ア原告は,本 E④,2E④,3E⑤をいずれも充足しないといわなければならない。 したがって,被告製品は,本件発明の技術的範囲に属するとはいえない。 ⑵ 原告の主張について ア原告は,本件発明の構成要件1Dの「係止片」が,針ハブ(に設けられた受部)と「係止」されることによって「再露出を防止する(つまり,留置針が前進しないように止める)」ものであるのに対し,被告製品の小径部側壁部は,針基の縦リブの側面を挟持して針基の回動を防止しているだけで,針基の前進を防止しているわけではないから,「係止片」に該当しないなどと主張する。 しかし,前記説示のとおり,本件発明にいう「係止片」は,他の部材と協働して針先の先端側への移動を阻止する構成を含むものといわなければならない。そして,被告製品において,小径部側壁部がそれ単体として針先の再露出を防止するものでないとしても,小径部側壁部による針基の回動防止と大径部係止手段による針基の受け部の係止が協働して機能することによって針先の再露出を防止し ているものである以上,本件発明にいう「係止片」に該当しないということはできない。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 イまた,原告は,被告製品の小径部側壁部が針基の縦リブの側面を挟持する場所は,針基と針先保護部の位置関係にかかわらないのであって,留置針の針先側へ 針先プロテクタが移動せしめられた「所定位置」において係止するものでないため,被告製品の小径部側壁部は「係止片」に当たらないとも主張する。 しかしながら,前記のとおり,被告製品は,小径部側壁部がそれ単体として針先の再露出を防止するものではなく,小径部側壁部による針基の回動防止と大径部係止手段による針基の受け部の係止が協働して機能することによって針先の再 り,被告製品は,小径部側壁部がそれ単体として針先の再露出を防止するものではなく,小径部側壁部による針基の回動防止と大径部係止手段による針基の受け部の係止が協働して機能することによって針先の再 露出を防止するものであり,その機能が発揮される場所は,前記前提事実のとおり,針管と針先保護部が相対移動してクリック感が生じる位置に限定されている。 このことからすれば,被告製品の小径部側壁部は,「留置針の針先側へ針先プロテクタが移動せしめられた所定位置において」,大径部係止手段と協働して針先の再露出を防止しているといえる。被告製品の小径部側壁部が,針先と針先保護部の 位置関係にかかわらず針基の縦リブの側面を挟持しているという事情は,この説 示を左右するものではない。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 ウさらに,原告は,本件発明の構成要件1E④,2E④,3E⑤が「前記係止片は,前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し,」と規定していることをもって,本件発明で小径部側に設けられてはならないとされている「係止片」は「前記針 ハブに向かって傾斜した内側面」を有しているものに限られているなどと主張する。 しかし,構成要件1E④,2E④,3E⑤の「前記係止片は,前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し」との文言は,本件明細書の段落【0061】の記載(「…垂直面79a,79aの外周側に位置する傾斜面79b,79bが,外周 側になるにつれて先端側に傾斜していることから,垂直面79a,79aと基端側規制面40とが傾斜面79b,79bに干渉されることなく当接することができて,針ユニット20と針先プロテクタ10の軸方向における相対移動防止効果がより確実に発揮され得る。」との記載)も併せると,そのような大径部側 傾斜面79b,79bに干渉されることなく当接することができて,針ユニット20と針先プロテクタ10の軸方向における相対移動防止効果がより確実に発揮され得る。」との記載)も併せると,そのような大径部側に一体形成される係止片の構成について,規定した針ユニットと針先プロテクタの軸方 向における相対移動防止効果がより確実に発揮されるという効果を奏させるべく規定されたものであると認められる。そうすると,当該文言は,大径部側に円筒状部と一体形成される係止片について特定したものにすぎず,設けられていてはならない位置にある「係止片」の形状を限定するものではないというべきである。 したがって,被告製品の小径部側壁部が「傾斜した内側面」を有しないことは, 被告製品の小径部側壁部が本件発明において小径部側に設けられてはならないとされている「係止片」に当たることを否定する理由にはならない。原告の上記主張は,採用することができない。 エ以上によれば,原告の上記主張はいずれも採用できない。原告は,その他も縷々主張するが,それらの主張内容を慎重に精査しても,上記説示を左右するに足り るものはない。 3 結論以上のとおり,被告製品は,本件発明の構成要件1E④,2E④,3E⑤を充足しないものであるから,本件発明の技術的範囲に属しないものというべきである。 よって,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官田中孝一 裁判官鈴木美智子 裁判長 裁判官田中孝一 裁判官鈴木美智子 裁判官稲垣雄大 別紙 物件目録 1 製品名:ファインガードSVセット 2 製品名:ファインガードSV採血セット以上 (別紙特許公報省略)

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