- 1 - 主文 本件上告を棄却する。 理由 弁護人宮村啓太、同水橋孝徳、同藤井智紗子の上告趣意のうち、最高裁平成6年(し)第173号同7年6月28日第二小法廷決定・刑集49巻6号785頁を引用して判例違反をいう点は、事案を異にする判例を引用するものであって、本件に適切でなく、その余は、憲法違反、判例違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であって、刑訴法405条の上告理由に当たらない。 なお、所論に鑑み記録を調査しても、刑訴法411条を適用すべきものとは認められない。 付言すると、本件は、被告人が、⑴2回にわたり自動車運転免許証を偽造し、これを利用して預金通帳や携帯電話機を詐取するなどしたという有印公文書偽造、同行使、有印私文書偽造、同行使、詐欺、詐欺未遂と、⑵自宅において、妻(当時33歳)、養女(当時11歳)、長男(当時7歳)、二男(当時5歳)、三男(当時3歳)及び四男(当時3歳)を、柳刃包丁で複数回突き刺した上、自殺しようと考え、いまだ同人らが現に住居に使用し、かつ、現に同人らがいた自宅を、非現住建造物と誤認して、その床面等にガソリンをまいて放火し、自宅の柱等を焼損するとともに、同人ら6名を、外傷、一酸化炭素中毒又はこれらの競合により死亡させて殺害したという殺人、非現住建造物等放火から成る事案である。 量刑判断の中心となる⑵の犯行についてみると、6名の生命を奪ったという結果は極めて重大である。鋭利な包丁を用いて、就寝中の妻子らの身体の枢要部を狙令和5年(あ)第541号殺人、非現住建造物等放火、有印公文書偽造、同行使、有印私文書偽造、同行使、詐欺、詐欺未遂被告事件令和7年2月21日第二小法廷判決- 妻子らの身体の枢要部を狙令和5年(あ)第541号殺人、非現住建造物等放火、有印公文書偽造、同行使、有印私文書偽造、同行使、詐欺、詐欺未遂被告事件令和7年2月21日第二小法廷判決- 2 -い、妻及び養女をそれぞれ多数回、長男、二男、三男及び四男をそれぞれ数回突き刺したという殺害の態様は、強固な殺意に基づく残虐なものである。被告人は、6名に対して続けざまにそのような行為に及んでおり、人命軽視の態度が甚だしい。 被告人は、妻から離婚を切り出されたことを契機として、妻子らを殺害して自殺することを考え始めると、柳刃包丁等を購入し、その後、2日間にわたる葛藤の末、離婚及び妻子らとの別居の開始が予定されていた日の早朝に実行を決意し、犯行に及んだものであって、突発的な犯行ではなく、事前の準備に基づく犯行という側面がある。妻が懇意にしている男性に妻子らを取られたくないと考え、また、妻を殺害した後に残される子らの将来を悲観したという動機は身勝手であり、経緯も特に酌むべきものとはいえない。遺族らは、被告人に対し、非常に厳しい処罰感情を示している。 以上のような事情に照らせば、被告人の刑事責任は極めて重大であるといわざるを得ず、同種前科がないことや、犯行後間もなく自首して事実を詳細に認める供述をし、反省悔悟の弁を述べていたことなど、被告人のために酌むべき事情を十分に考慮しても、原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は、やむを得ないものとして、当裁判所もこれを是認せざるを得ない。 よって、刑訴法414条、396条、181条1項ただし書により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 検察官岡本哲人公判出席(裁判長裁判官草野耕一裁判官三浦守裁判官岡村和美裁判官尾島明) 一致の意見で、主文のとおり判決する。 検察官岡本哲人公判出席(裁判長裁判官草野耕一裁判官三浦守裁判官岡村和美裁判官尾島明)
▼ クリックして全文を表示