平成15(ワ)1499 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成16年5月31日 福岡地方裁判所
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判決文本文19,408 文字)

平成16年3月23日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成15年(ワ)第1499号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成15年12月15日 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨 1 被告は,原告に対し,5000万円及びこれに対する平成15年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は,被告の負担とする。 第2 事案の概要本件は,介護タクシーサービス(ホームヘルパーの資格を取得した運転手が身体介護と移送を行うサービス)を事業として行っていた訪問介護事業者の指定を受けたタクシー会社である原告が,被告に対し,被告が厚生労働省の見解を曲解又は誤解して介護支援専門員(ケアマネージャー)等に誤った行政指導を行った結果,原告のサービスが介護サービス計画(ケアプラン)に盛り込まれることがなくなり,そのために原告は利用者を失って事業継続を断念させられ損害を被ったとして,国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を求めた事案である。 なお,省庁再編成により,平成13年1月6日以降,「厚生省」は「厚生労働省」,「運輸省」は「国土交通省」となっており,平成13年1月6日前の事務連絡等については旧省庁名である「厚生省」,「運輸省」と,同日以降の通達等については新省庁名の「厚生労働省」,「国土交通省」とそれぞれ記載する。 1 争いのない事実及び証拠上明らかな事実(1)介護保険制度について介護保険法は,平成9年に制定され,平成12年4月1日から施行された。 介護保険の内容は,加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり,入浴,排せつ,食事等の介護,機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について,これらの者がその有する能 内容は,加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり,入浴,排せつ,食事等の介護,機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について,これらの者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう,必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うこととされている。 (2)介護保険制度における都道府県の役割等介護保険の保険者は,市町村及び特別区である(介護保険法3条1項)。 都道府県は,介護保険事業の運営が健全かつ円滑に行われるように,必要な指導及び適切な援助を行うこととされ,都道府県知事は,介護サービスを提供する事業者の指定等を行うこととされている。利用者は,同指定事業者と個別に契約して介護サービスを受けるものとされ,指定されていない事業者の行うサービスは保険給付の対象とならない。(乙1)(3)当事者ア被告は,介護保険法5条2項に基づき,介護保険事業の運営が健全かつ円滑に行われるように必要な指導及び適切な援助をする責務を負っている地方公共団体(県)である。 イ原告は,昭和46年2月2日に設立された一般乗用旅客自動車運送事業等を目的とする株式会社(設立時の商号は海老津タクシー株式会社)である。設立時より一般乗用旅客自動車運送事業免許(平成12年5月26日法律第86号による改正で,平成14年2月1日以後は,同事業許可とみなす。)を取得し(福陸自第4712号),平成15年3月12日に九州運輸局から同事業の許可取消処分を受けるまでの間,同事業許可を保有していた。 ウ原告は,平成12年3月1日,被告から介護保険法70条1項に基づき訪問介護事業者に,同年7月1日,同法79条1項に基づき居宅介護支援事業者にそれぞれ指定された(介護保険事業所番号40751 ウ原告は,平成12年3月1日,被告から介護保険法70条1項に基づき訪問介護事業者に,同年7月1日,同法79条1項に基づき居宅介護支援事業者にそれぞれ指定された(介護保険事業所番号4075100117)。 (4)いわゆる介護タクシーア原告は,当初は通常のタクシー事業のみを行っていたが,高齢者や障害のある人のケアと結びついた新しい移送サービスを目指すべく介護タクシーサービスを発案し,平成10年8月に同サービスを事業として開始した。 原告が発案した介護タクシーサービスとは,訪問介護員の資格を持つ運転手が①利用者の自宅内からタクシーに乗せるまでの付添いと介護②タクシーでの移送と介護③タクシーを下車させてから病院などの目的先内までの付添いと介護を行うものである。(甲4,5)イ介護保険制度上,訪問介護サービスのうち身体介護の一類型として通院・外出介助というサービスが認められており,これは,声かけ・説明から目的地(病院等)に行くための準備(更衣等),バス等の交通機関への乗降,気分の確認及び受診等の手続(場合により院内の移動等の介助)までの一連のサービスとされる。 自動車を使用して人を移送することは,訪問介護サービスの類型として設けられていない。(乙12,乙13)ウタクシー業務適正化特別措置法によれば,「タクシー」とは,道路運送法上の一般乗用旅客自動車運送事業を経営する者がその事業の用に供する自動車でハイヤー以外のものいう(ハイヤーは,当該自動車による運送引き受けが営業所のみについて行われる点でタクシーと区別される。)とされ,「タクシー事業」とは,タクシーを使用して行う一般乗用旅客自動車運送事業をいい,これを経営する者をタクシー事業者とされている。 道路運送法は,貨物自動車運送事業法と相 区別される。)とされ,「タクシー事業」とは,タクシーを使用して行う一般乗用旅客自動車運送事業をいい,これを経営する者をタクシー事業者とされている。 道路運送法は,貨物自動車運送事業法と相まって,道路運送事業の運営を適正かつ合理的なものとすることにより,道路運送の利用者の利益を保護するとともに,道路運送の総合的な発達を図り,もって公共の福祉を増進することを目的とし(1条),他人の需要に応じ,有償で,自動車を使用して旅客を運送する事業(旅客自動車運送事業)について,許可制(平成12年5月26日法律86号による改正前は免許制。)を採用している。一般乗用旅客自動車運送事業は旅客自動車運送事業の一種類である(3条)。 (5)介護タクシーをめぐる国の見解ア厚生省は,平成12年6月ころまでには,いわゆる介護タクシーサービスといわれる①利用者の自宅内からタクシーに乗せるまでの付添いと介護,②タクシーでの移送と介護,③タクシーを下車させてから病院などの目的先内までの付添いと介護という一連の行為のうち,①及び③のサービスは介護保険法にいう身体介護にあたるが,②のタクシーによる移送サービスは,介護保険法にいう身体介護にあたらず,介護保険の適用を受けるのは,①と③のサービスのみであるとの見解を示し,介護保険から①と③のサービスの時間を合計して30分以内の場合,2100円の介護報酬(うち本人負担分210円)が支給されることとなった。 イこの見解を受けて運輸省は,道路運送法上の一般乗用旅客自動車運送事業免許を有する指定訪問介護事業者が上記②の移送サービス部分について利用者から運賃を徴収しないのは,適正な運賃収受を定めた道路運送法に違反するとの見解を示し,一般乗用旅客自動車運送事業免許を有する指定訪問介護事業者に対し,利用者から②の移 移送サービス部分について利用者から運賃を徴収しないのは,適正な運賃収受を定めた道路運送法に違反するとの見解を示し,一般乗用旅客自動車運送事業免許を有する指定訪問介護事業者に対し,利用者から②の移送サービス部分については料金を収受するように指導していた。 ウ厚生省老人保健福祉局振興課は,平成13年1月5日付け「いわゆる介護タクシーに関する考え方について」と題する書面で,介護タクシーサービスについて,運行中の運賃を徴収するかどうかは,道路運送法の問題であるとの見解を示した。(甲16)運輸省自動車交通局旅客課は,同日付け「訪問介護と一体となった要介護者輸送の取扱いに関する運輸省としての現時点での考え方について」と題する書面で,次のとおりの見解を示し,従来の見解を改めた。(甲16)「1 当該事業に係る輸送形態については,介護保険の対象になるか否かにかかわらず,有償のタクシー事業に該当するものであり,タクシー事業の免許を受けるとともに認可を受けた運賃を収受することが必要である。 2 運賃に係る問題については,2つの場合に分けて考えることが必要である。 ① タクシー輸送部分が市町村の特別給付事業の対象となっている場合利用者が支払うべき運賃の一部を,タクシー事業者,利用者及び市町村の合意のもとに,市町村が負担しているものであるが,タクシー運賃を利用者以外の者が負担することについては,道路運送法上何ら問題はない。 ② 問題となっている事業形態の場合厚生省見解によれば,移送は介護保険の対象外であり,介護報酬は介護サービスに対する対価であって,運賃相当分を含むものとして支払われるものではない。しかしながら,タクシー運賃相当額が,事実上,当該事業の実施に伴う事業者の収入になって の対象外であり,介護報酬は介護サービスに対する対価であって,運賃相当分を含むものとして支払われるものではない。しかしながら,タクシー運賃相当額が,事実上,当該事業の実施に伴う事業者の収入になっていれば,認可運賃を収受しているという理解も可能であり,道路運送法上ただちに違法とはいえない。 ただし,介護報酬と利用者の自己負担分を超える運賃分については,別途利用者から収受する必要がある。」エ厚生労働省老健局振興課は,平成13年3月28日付け「運営基準等に係るQ&Aについて」において,「指定訪問介護事業所の指定を受けているタクシー会社(いわゆる介護タクシー)において訪問介護員の資格を有する運転手が,タクシーを運転して通院・外出介助を行う場合は,運転中は運転に専念するため介護を行い得ず,また,移送(運転)の行為は,訪問介護サービスに含まれないことから,運転中の時間は介護報酬の算定対象とはならない」,との見解等を示した。(甲17)(6)被告の行政指導被告保険福祉部介護保険室長は,各指定訪問介護事業所管理者に対し,平成13年10月26日付けで,「訪問介護員の自家用車等を使っての通院・外出介助」について,前記■エの事務連絡を添付して,①いわゆる「介護タクシー」についての厚生労働省の見解はあくまで訪問介護事業所の指定を受け,かつタクシー会社等地方運輸局において旅客自動車運送事業の免許を有する事業者に関するものであること,②訪問介護員が所属する事業所の自家用自動車や,介護員本人の自家用自動車を使用して利用者の通院・外出介助を行うことは道路運送法に抵触する可能性があること,また,厚生労働省がかかる行為による介護報酬の請求を認めていないこと,③訪問介護員による自家用自動車の使用を伴った通院・外出介助等,保険給付の対 助を行うことは道路運送法に抵触する可能性があること,また,厚生労働省がかかる行為による介護報酬の請求を認めていないこと,③訪問介護員による自家用自動車の使用を伴った通院・外出介助等,保険給付の対象とは認められないサービス内容を含む訪問介護計画を作成している場合には,速やかに見直しを行うこと等を通知した。 (甲18)(7)平成15年3月27日付け事務連絡厚生労働省老健局振興課が,各都道府県介護保険担当部局担当官宛に,平成15年3月27日付け「介護保険における事業者指定等と道路運送法等との関係について」との事務連絡を行い,同日付で,厚生労働省老健局介護保険課から別紙「介護保険最新情報」と題した文書が各都道府県介護保険担当課に通知された。 平成15年4月1日以降,介護報酬の改定により,「通院等のための乗車又は降車の介助」が新たに設けられたが,この場合においても,移送自体について報酬が支払われないことが明示されている。(甲39,乙1)(8)原告の一般乗用旅客自動車運送事業許可(以下「タクシー事業許可」という。)の取消等ア原告は,平成14年10月からタクシー事業許可の区域外である福岡市において,自家用自動車5台を使用して園児の送迎や買い物に同行する等介護以外の移送サービスを開始した。 イ原告は,北九州交通圏で介護タクシー事業を行っていたが,福岡交通圏において,平成14年10月,運転手を兼ねたスタッフが園児を保育園に送り届けたり,利用者の買い物に同行する独自の執事サービスを自家用自動車で開始した。 九州運輸局は,平成14年11月14日に,原告会社に対し,特別監査を行って,平成15年1月15日に,福岡交通圏において原告が上記執事サービスに使用していた自家用自動車5台を67日間の使用停止処分にすると 運輸局は,平成14年11月14日に,原告会社に対し,特別監査を行って,平成15年1月15日に,福岡交通圏において原告が上記執事サービスに使用していた自家用自動車5台を67日間の使用停止処分にするとともに,北九州交通圏においては,事業用自動車2台を35日間の使用停止処分にした。 しかし,原告は,上記各使用停止処分に従わなかったため,平成15年3月12日,九州運輸局から道路運送法40条に基づき,タクシー事業許可取消処分を受けた。 (9)原告のタクシー事業許可取消を巡る地方公共団体等の対応原告のタクシー事業許可取消を受けて,福岡県介護保険広域連合及び北九州市は,居宅介護支援事業者に対し,介護タクシー部分の介護サービス計画(ケアプラン)作成につき,乗降介助等を行う許可事業者の介護タクシーを利用するように依頼した。同依頼文書作成に当たり,被告は,福岡県介護保険広域連合及び北九州市から上記指導に関して意見を求められ,差し支えない旨回答した。 (甲34ないし36,弁論の全趣旨)(10)原告の訪問介護事業ア原告は,タクシー事業許可取消処分を受け,要介護者及び要支援者の移送サービスを乗降介助も含めすべてを無料とし,身体介護及び生活支援を中心とした訪問介護事業を展開すべく,平成15年3月15日に介護支援専門員(ケアマネージャー)を集め,新たな事業の説明を行ったが,介護支援専門員(ケアマネージャー)の介護サービス計画(ケアプラン)に取り入れられず,新規事業展開の目途がつかなかったために,同月31日に従業員を全員解雇した。 (甲40,48,乙14,18)イ原告は,平成15年4月1日,タクシー事業許可取消を理由に,訪問介護事業を休止した。(乙16) 2 争点(1)被告の行政指導の違法性(2)損害の発生及びその額 ,乙14,18)イ原告は,平成15年4月1日,タクシー事業許可取消を理由に,訪問介護事業を休止した。(乙16) 2 争点(1)被告の行政指導の違法性(2)損害の発生及びその額 3 争点に関する主張(3)被告の行政指導の違法性(原告の主張)ア被告は,平成13年10月26日付け通知により,介護タクシー事業者を一般乗用旅客自動車運送事業者に限定するのが厚生労働省の見解であり,被告も厚生労働省の見解に従って一般乗用旅客自動車運送事業の免許(許可)を有しない介護タクシー事業者の介護報酬請求は認めないとの指導を行い,その後も継続している。 さらに,被告は,前記介護保険の適用を受ける介護タクシー事業者は一般旅客自動車運送事業者に限定されるとの独善的見解に立ち,原告が道路運送法上の旅客自動車運送事業許可を取り消された後には,原告が行うサービスについて介護保険を適用することは好ましくないと判断し,原告が九州運輸局の指導に従わずタクシー事業許可取消は避けられないとマスコミで報道されたころから,北九州市や福岡県介護保険広域連合に対し,原告の一般旅客自動車運送事業許可取消後は,原告が行う介護タクシーサービスにつき介護報酬を支払うのは適切でないので原告の介護タクシーサービスの利用者を他のタクシー事業許可を有する介護タクシー事業者のサービス利用にスムーズに切り替えるよう指導した。(以下,被告の一連の行政指導を「本件行政指導」と略す。)イところで,介護保険制度における被告の事務は自治事務であるから,その事務処理にあたっては,法令の範囲内で一定の裁量が認められるが,地方自治法1条の2,2条11項ないし13項などの規定,さらには,関与の基本原則(地方自治法245条の3)を踏まえて定立される法律やこれに基づ 理にあたっては,法令の範囲内で一定の裁量が認められるが,地方自治法1条の2,2条11項ないし13項などの規定,さらには,関与の基本原則(地方自治法245条の3)を踏まえて定立される法律やこれに基づく政令の規定するところにより,国も関与を許されないものではない。 介護保険制度は,高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みとして創設され,全国的に展開される社会保険制度であるから,全国一律の基準により適正かつ均質なサービスが提供されることが要請され,地方公共団体の被告の裁量も係る要請から制約されると言うべきである。 ウ介護保険法70条2項は,都道府県知事が訪問介護事業者を指定する際の除外事由として,申請者が法人でないことや同法や省令の定める一定の基準を満たしていないこと等を規定しているが,移送サービスを行うにつき道路運送法上の許可を要求していない。それにもかかわらず,被告は,介護保険事業資格取得の要件として道路運送法上の許可を要する旨の行政指導を行ったのであるから,本件行政指導は,介護保険法の定めに違反する裁量権の濫用と言うべきである。 また,介護保険の対象外とされた移送サービスについては厚生労働省の指導も及ばないところ,被告が,移送サービス事業につきタクシー事業許可を要すると新たな基準を付加すること自体が法令の範囲を超えた行為であり,裁量権を逸脱したものといわざるをえない。 さらに,介護保険制度において移送サービス自体については,保険給付の対象ではなく,介護報酬は支払われておらず,しかも事業者は,移送の部分については,運賃を徴収していない。したがって,「タクシー事業許可」を持たない者が行っている移送サービスはそもそも有償ではなく,無償でなされているのであって,道路運送法に違反する「白タク行為」に該当するもの は,運賃を徴収していない。したがって,「タクシー事業許可」を持たない者が行っている移送サービスはそもそも有償ではなく,無償でなされているのであって,道路運送法に違反する「白タク行為」に該当するものではないし,デイサービス等の送迎が有償(送迎加算)で行われているにもかかわらず,被告がこれらについて道路運送法上の許可を要求していないこととの整合性が保たれているかは疑問である。 エ仮に,被告の本件行政指導に一定の合理性があるとしても,本件行政指導において,厚生労働省の見解が被告と同一の見解であり,被告は,同省の指導に基づいて指導したとしたのは,明らかに裁量権の濫用である。 すなわち,厚生労働省老健局振興課は,前記1■エの平成13年3月28日付け事務連絡文書において,いわゆる介護タクシーの定義について「指定訪問介護事業所の指定を受けているタクシー会社」と表記しているが,一般乗用旅客自動車運送事業の免許(許可)の要否については何ら言及しておらず,同免許(許可)を有するタクシー会社であることまでは要求していないことが明らかであって,その後の平成15年3月27日の事務連絡文書においても,訪問介護事業者が行う移送サービスに係る道路運送法上の許可の要否については,従来どおり,個々の事業者の実態に応じて運輸支局等で判断がなされ,必要に応じて指導がなされており,道路運送法上の許可を得なければ介護保険の適用を受けられないものではないことを周知徹底するようにと通知しており,介護タクシーについて厚生労働省は,必ずしも一般乗用旅客自動車運送事業の免許(許可)を必要としない見解であった。全国的にみても,タクシー事業許可を有していない指定訪問介護事業所の中には,自家用自動車で,タクシー事業許可を有する介護タクシー事業者と同様のサービスを提供している 可)を必要としない見解であった。全国的にみても,タクシー事業許可を有していない指定訪問介護事業所の中には,自家用自動車で,タクシー事業許可を有する介護タクシー事業者と同様のサービスを提供している業者が多数あった。 被告は,故意又は過失により厚生労働省の見解を曲解ないし誤解して,介護タクシー事業者や指定訪問介護事業者に対し,介護タクシー事業を行うには,一般乗用旅客自動車運送事業の免許(許可)が必要であって,係る被告の見解は厚生労働省の指導に基づくものであると行政指導したのであるから,本件行政指導が,裁量権を濫用したものであることは明らかである。 (被告の主張)ア被告は,本件行政指導として,一貫して①介護保険制度においては,移送サービス自体は保険給付の対象ではないこと,②「タクシー事業許可」を持たない者が有償で移送サービスを行うことは,道路運送法に抵触し,違法であり,かつ,被移送者の安全並びに万一の事故時の責任の所在及び賠償能力の不明確性の観点等から適当ではないと事業者等に指導してきた。 ただし,後者の点については,道路運送法に基づいて取締り等を行うのは,介護保険の事業者の指定・取消を行う都道府県ではなく,道路運送法を所管する国土交通省である。 本件行政指導の内容として,原告が主張する被告の北九州市や福岡県介護保険広域連合に対する指導というものはなく,被告が保険者からの紹介に対して「他の緑ナンバーの介護タクシー会社のサービス利用にスムーズに切り替えるように指導してもよいか」という照会について,「差し支えない」と回答したことがあるだけである。 イところで,介護保険制度における被告の事務は,自治事務である。 自治事務については,地方公共団体が法令の範囲内でその裁量により行うものであって 」と回答したことがあるだけである。 イところで,介護保険制度における被告の事務は,自治事務である。 自治事務については,地方公共団体が法令の範囲内でその裁量により行うものであって,その裁量を濫用し,または裁量の範囲を超えたときに,不当となりうるにすぎない。 介護保険制度は,自治事務の中でも特に地方公共団体の実情に応じた工夫や,また,事業者間の競争と利用者の選択によるサービスの質の向上が期待されている分野であって,全国一律の基準により適正かつ均質なサービス確保の観点から地方公共団体の裁量が制約されるという原告の主張は失当である。 ウ本件行政指導は,法令を遵守するよう行政機関として一般的な事実行為である指導を要介護者の生命・身体の安全という目的から行っているものであり,地方公共団体としての裁量の範囲内の行為であって何ら違法・不当なものではない。 都道府県知事の訪問介護事業者指定に関する介護保険法70条1項及び同2項の省令には,移送を伴う訪問介護事業の場合に一般乗用旅客自動車運送事業免許(許可)を必要とするか否かについては特段の定めはない。介護保険制度に,そもそも「移送サービス」という類型がないから当然である。 そうすると,都道府県知事は,介護保険法の規定に反せず,かつ,利用者の立場に立ったサービスの提供や事業の適正な運営確保等の事業者指定を行う際の法令の趣旨に照らして妥当と考えられる限りにおいて,指定権限の行使にあたって裁量の余地が認められているものと解釈できる。 人を有償で移送するサービスはタクシー行為に該当するので,移送を伴う訪問介護サービスをタクシー事業許可を有せずに行った場合には道路運送法に違反することは,道路運送法を所管する国土交通省の一貫した見解である。 そこで, サービスはタクシー行為に該当するので,移送を伴う訪問介護サービスをタクシー事業許可を有せずに行った場合には道路運送法に違反することは,道路運送法を所管する国土交通省の一貫した見解である。 そこで,被告は,移送サービスを伴う介護について,タクシー事業許可を有せずに行うことは,道路運送法に違反するだけでなく,被移送車の安全面,事故時の責任の所在や賠償資力の観点等に鑑みて適切でないと指導してきたものである。 他方,訪問介護サービス自体は,介護保険法の所定の要件を満たして介護保険事業者として指定を受けていれば,当該サービスについて介護報酬を請求することに何ら問題はないと考えている。 エもとより国は,自治事務について,地方自治法に基づき都道府県に対し技術的な助言を行い,又は勧告する権限を有しており,厚生労働省の事務連絡文書はその技術的助言の一環である。 原告が被告の行政指導が誤りであったことが明らかになった根拠として挙げる平成15年3月27日付け厚生労働省老健局振興課の事務連絡文書は,「これまでの道路運送法上の取扱いが変更されることはない」と,従来どおりの取扱いであることを確認したのみであるから,なんら被告としても認識を改める必要はないと判断したものである。 いずれにしても,被告は,被告の裁量において行政指導を行ったのであって,厚生労働省の見解のみに基づいて行ったものではないから,原告の主張は失当である。 また,道路運送法上,タクシー事業許可を有しないタクシー会社はおよそ存在しないから,厚生労働省の見解についての原告の理解は誤っている。 (2)損害の発生及びその額(原告の主張)ア被告が一貫して誤った本件行政指導を行ったため,利用者は,原告のサービスを介護サービス計画(ケアプラン)に盛 ての原告の理解は誤っている。 (2)損害の発生及びその額(原告の主張)ア被告が一貫して誤った本件行政指導を行ったため,利用者は,原告のサービスを介護サービス計画(ケアプラン)に盛り込まなくなり,他のタクシー事業許可を有する介護タクシー事業者のサービスを受けるようになった。平成15年3月27日付けで厚生労働省は,訪問介護事業者が行う移送サービスににつき道路運送法上の許可を得なければ介護保険の適用を受けられないものではないことを周知徹底するようにと通知しており,同通知が速やかに明らかになっていれば,原告は,事業を継続することができたはずである。しかし,被告が同通知を明らかにしなかったため,原告は,長年の企業努力により取得した約600名の利用者を全て失い,平成15年3月31日付けで社員51名全員を解雇し,介護タクシー事業から撤退を余儀なくされた。これにより生じた損害は下記のとおり1億5519万8190円に上り,その詳細は別紙「一覧表」記載のとおりである。 イ(ア)ヘルパー研修費等介護タクシー事業立ち上げ費用 1524万円(イ)広告宣伝費 1926万3474円(ウ)特許出願費用 104万9050円原告は,将来の収益を見越して■ないし■の先行投資をし,事業開始以来着実に売上高を伸ばしていたが,事業閉鎖により投資の回収が不可能となった。これらは,事業に伴う通常損害である。 (エ)解雇予告手当原告は,事業閉鎖にあたり従業員に対し,解雇予告手当合計656万2166円を支給することを余儀なくされた。 (オ)車両関係費用原告は,介護タクシー事業展開にあたり,別紙「介護のための車両関係費用の明細」記載のとおり,車両関係費用として支出した金 円を支給することを余儀なくされた。 (オ)車両関係費用原告は,介護タクシー事業展開にあたり,別紙「介護のための車両関係費用の明細」記載のとおり,車両関係費用として支出した金5045万5000円の回収が不可能となった。 (カ)ソフト開発費用原告は,介護タクシー事業展開にあたり,ソフト開発費用として投資した金762万8500円の回収が不可能となった。 (キ)営業逸失利益原告会社は,長年の企業努力により600名を超す利用者を獲得し,収益もあがりつつあり,順調に営業を続ければ3年間の間に少なくとも5000万円の収益を挙げることが可能であった。 (ク)弁護士費用 500万円原告は,本件訴訟提起を弁護士に委任したが,本件訴訟の難易度,その他の諸般の事情を考慮すると上記金額が相当である。 (被告の主張)本件行政指導と原告が利用者を失って訪問介護事業を休止するに至ったこととの間に相当因果関係はない。したがって,損害の発生もない。 原告は,平成15年3月1日に,タクシー事業許可取消処分を受けた後も,指定訪問介護事業所の指定取消処分を受けたわけではないから,移送を伴わないものであれば,訪問介護サービスの提供をすることが可能であった。しかし,原告は,タクシー事業許可取消処分後も,会員制で使い放題のハイパー料金制と称する新しい移送サービスを行うと居宅介護支援事業者等を対象に開催した説明会で発表した。かかる移送サービスは,介護保険制度の支給限度基準額一杯のサービス利用を前提としたものであって,利用者の心身の状況やその置かれている環境等に応じ,また,要介護状態の軽減や悪化の防止という観点から適切なサービスの提供を目指す介護保険制度の根本的な理 一杯のサービス利用を前提としたものであって,利用者の心身の状況やその置かれている環境等に応じ,また,要介護状態の軽減や悪化の防止という観点から適切なサービスの提供を目指す介護保険制度の根本的な理念を全く無視したものであったため,介護支援専門員(ケアマネージャー)の理解・支持を得られず,その結果原告は,利用者を失うことになったにすぎない。 第3 判断 1 争点(1)(本件行政指導の違法性)について(1)行政指導の裁量の範囲行政指導とは,行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導,勧告,助言その他の行為であって処分に該当しないものであり,相手方の任意の協力によってのみ実現される行政機関の事実上の行為である(行政手続法2条)。 上記行政指導の性質からすると,被告の介護保険制度に関する行政指導が違法と評価されうるのは,行政指導の内容が,行政指導の範囲を超えて,その裁量を著しく濫用又は逸脱し,法令に反するものである場合に限られる。 介護保険法3条は,保険者を市町村及び特別区とし,都道府県の責務については,介護保険法5条2項が,介護保険事業の運営が健全かつ円滑に行われるように,必要な指導及び適切な援助をすることと抽象的な規定をおいていることからすると,都道府県の上記指導及び援助に関する裁量の範囲は少なくなく,介護保険法の趣旨に明らかに反しない限り,その指導等は違法ということはできない。 原告は,地方公共団体である市町村及び都道府県の介護保険法上の事務を行うについての裁量が,全国一律の基準により適正かつ均質なサービス確保の観点から制約されると解すべきである旨主張するが,介護保険法は,各地方公共団体による地域性に応じた制度運営を期待して,保 事務を行うについての裁量が,全国一律の基準により適正かつ均質なサービス確保の観点から制約されると解すべきである旨主張するが,介護保険法は,各地方公共団体による地域性に応じた制度運営を期待して,保険者を市町村及び特別区としているのであって,介護に関する地方公共団体の裁量が,全国一律の基準による適正かつ均質なサービス確保の観点から制約されるものではない。もっとも,国は,上記介護保険法上の事務について,介護に関する基準を示し,地方公共団体に対して勧告等を行っているが,これは,地方自治法に基づき都道府県に対し技術的な助言を行い,又は勧告する権限を有しているからであって,地方公共団体の裁量を制約するものではない。もとより,上記裁量が介護保険法の趣旨に反するものであってはならないことはいうまでもない。 ところで,原告が違法であると主張する本件行政指導上の問題点は,移送を伴う訪問介護を行う際,移送に関しタクシー事業許可が必要であるとの被告の行政指導を違法というものであるところ,介護保険法では,移送を介護として位置づけていない。従って,移送が介護保険と関連するのは,移送を伴う訪問介護の場合であるが,介護保険制度が規定するのは,その前後の介助だけであって,移送自体に関しては触れられておらず,移送自体の問題は,前記厚生省又は厚生労働省(以下「厚生労働省」という。)及び運輸省又は国土交通省(以下「国土交通省」という。)の事務連絡文書等によっても明らかなように,国土交通省の所管事項である一般乗用旅客自動車運送事業といえるか否かである。もとより,この点については,被告の裁量の及ぶところではない。 ところが,病院や施設等で介護を受けるためには,移送なしには現実的な介護はできず,そのために,被告が,介護に関する指導上,介護と移送との関係を明らかに ては,被告の裁量の及ぶところではない。 ところが,病院や施設等で介護を受けるためには,移送なしには現実的な介護はできず,そのために,被告が,介護に関する指導上,介護と移送との関係を明らかにしたものが,本件行政指導である。 (2)本件行政指導の内容前記第2の1の事実に加え,証拠(甲18,乙5,11)及び弁論の全趣旨によれば,訪問介護事業者の訪問介護員が,所属する事業所や介護員本人の自家用自動車を使用して利用者の通院・外出介助を行っている事例が多数見受けられる状況の下,被告は,利用者の安全確保及び道路運送法の遵守を目的に,訪問介護事業者管理者に対し,本件行政指導として,前記第2の1(6)の通知をし,移送を伴う訪問介護を行うについては,タクシー事業許可が必要であると指導したことが認められる。 原告は,被告が介護保険事業資格取得の要件として道路運送法上の許可を要するとの介護保険法に反する行政指導を行ったと主張するが,被告の本件行政指導には,訪問介護事業者ないし訪問介護員等が訪問介護を行うこと自体について,タクシー事業許可等の道路運送法上の許可を要すると指導しているものではなく,この点に関する原告の主張は,本件行政指導の意味を誤解したものであって,採用できない。 被告の本件行政指導は,移送を伴う訪問介護に関し,その移送が有償で行われる場合,移送については道路運送法上の許可が必要であり,道路運送法上の許可を受けていない業者が,移送を無償としその前後の介助だけを保険適用として保険給付の対象とすることは認められないとし,これを保険給付の対象になるとして訪問介護計画を作成している場合には,見直しを行うようにと通知したものである。 原告は,厚生労働省老健局振興課の平成13年3月28日付け事務連絡文書(第2の1(5 保険給付の対象になるとして訪問介護計画を作成している場合には,見直しを行うようにと通知したものである。 原告は,厚生労働省老健局振興課の平成13年3月28日付け事務連絡文書(第2の1(5)エの連絡文書)では,いわゆる介護タクシーの定義について「指定訪問介護事業所の指定を受けているタクシー会社」と表記しているが,タクシー事業許可の要否については何ら言及しておらず,同許可を有するタクシー会社であることまで要求していない旨主張するところ,前記(第2の1(4)ウ)のとおり,タクシー業務適正化特別措置法及び道路運送法によれば,タクシー事業を行う場合,その事業者はタクシー事業許可を必要とするものであり,上記定義の「タクシー会社」とは,タクシー事業許可を得たタクシー事業者を前提とした定義と解すべきであって,原告の主張は理由がない。 次に原告は,厚生労働省老健局振興課の平成15年3月27日付け事務連絡文書において,訪問介護事業者が行う移送サービスに係る道路運送法上の許可の要否については,従来どおり,個々の事業者の実態に応じて運輸支局等で判断がなされ,必要に応じて指導がなされており,道路運送法上の許可を得なければ介護保険の適用を受けられないものではないことを周知徹底するようにと通知しており,介護タクシーに関する厚生労働省は,必ずしもタクシー事業許可を必要としない見解であったのに,被告は,故意又は過失により厚生労働省の見解を曲解ないし誤解して,介護タクシー事業者や指定訪問介護事業者に対し,介護タクシー事業を行うには,タクシー事業許可が必要であると行政指導したのであるから,本件行政指導が,裁量権を濫用したものであることは明らかであると主張する。 しかしながら,上記平成15年3月27日付け事務連絡文書では,介護報酬の改定において「通 行政指導したのであるから,本件行政指導が,裁量権を濫用したものであることは明らかであると主張する。 しかしながら,上記平成15年3月27日付け事務連絡文書では,介護報酬の改定において「通院等のための乗車又は降車の介助」を新設したことに伴い,現に移送を伴う訪問介護を行っている事業者について,新たに一律に道路運送法の許可を受けなければならないものではなく,「通院等のための乗車又は降車の介助」に係る届出を含め,介護保険の事業者指定等に当たっての当該事業者に関する道路運送法上の取扱いは従来と変わらないことが記載され,介護タクシーにつき,タクシー事業許可を不要としたものではない。 このことは,上記連絡文書に添付された国土交通省の説明文書により明らかであって,同説明では,介護事業者が行っている訪問介護と一体となった要介護者輸送につき,介護保険の対象となるか否かにかかわらず,有償で行うかぎり,タクシー事業に該当するものであり,原則として道路運送法に基づくタクシー事業許可を受けることが必要であるが,有償性を有するか否かを判断するに当たっては,本来の介護サービスの提供とは別に,介護事業者が主体的な立場において自動車を運行の用に供することにより旅客運送を行っているかどうか等について,社会通念に照らし,十分実態を調査したうえで判断する必要があること,道路運送法の許可を受けずに乗降介助を行っている介護事業者については,可能なものは,道路運送法の許可を申請するよう指導を行うというものであって,介護事業者が行っている訪問介護と一体となった要介護者輸送(移送)は,それが有償とみとめられる以上,道路運送法に基づくタクシー事業許可を要するとする従来の国土交通省の見解は変わっていない。 上記連絡文書及び説明文書は,証拠(甲39,乙11)によれば, 送)は,それが有償とみとめられる以上,道路運送法に基づくタクシー事業許可を要するとする従来の国土交通省の見解は変わっていない。 上記連絡文書及び説明文書は,証拠(甲39,乙11)によれば,介護報酬として「通院等のための乗車又は降車の介助」を新設したことに伴い,現に移送を伴う訪問介護を行っている事業者でタクシー事業許可を得ずに,介護タクシー事業者と同様のサービスを提供している事業者が多数あり,この事業者の間に,新たに道路運送法上の許可を受けなければならないか否かにつき混乱が生じたことから,有償移送に関しては従前どおりタクシー事業許可を必要とし,有償性の判断は,移送を伴う訪問介護を行っている事業者の事業実態をふまえ,それが旅客運送の実態を持つか否か,すなわち移送が訪問介護事業者の事業の主たる目的なのか補助的なものか,事業の規模・内容等を総合考慮して判断するとされたものであって,同一地域の介護タクシー事業者の有無やその事業の営利性の有無・程度等の実態に応じて,道路運送法上の処分や指導を行うとしたものであることが認められる。 そこで,訪問介護事業者である原告が企画していた平成15年4月1日以降の事業内容につき検討するに,証拠(甲29,32,乙14,18)によれば,原告は,通院等のための移送及び乗降等の介助をいずれも無料とする一方,原告の訪問介護(身体介護及び生活支援)を保険給付及び自己負担分を合計して1か月6万円以上利用する要介護(要支援及び要介護)の認定を受けた者に対し,目的及び回数に制限のない無料移送サービスを行うというものであって,同年3月15日に原告が居宅支援事業者の介護支援専門員(ケアマネージャー)等を招き,説明した料金等は別紙「メディスのハイパー料金」のとおりであることが認められる。 上記事業内容において て,同年3月15日に原告が居宅支援事業者の介護支援専門員(ケアマネージャー)等を招き,説明した料金等は別紙「メディスのハイパー料金」のとおりであることが認められる。 上記事業内容において,原告は,移送サービスを無料であるとするが,訪問介護の利用料金(保険給付及び自己負担分)全体との関係からすると,有料の移送と解する余地があり,有償と解される場合,それが観劇等介護に関係のない移送部分に関係するとすれば,道路運送法に明らかに抵触する。 原告は,介護保険制度において移送サービス自体は,保険給付の対象ではなく,介護報酬は支払われておらず,しかも事業者は,移送の部分については,運賃を徴収しておらず,したがって,「タクシー事業許可」を持たない者が行っている移送サービスはそもそも有償ではなく,無償でなされているのであって,道路運送法に違反する「白タク行為」に該当するものではないし,デイサービス等の送迎が有償(送迎加算)で行われているにもかかわらず,被告がこれらについて道路運送法上の許可を要求していないこととの整合性が保たれているかは疑問である旨主張する。 しかしながら,上記有償性の有無は,名目だけで判断されるものではなく,移送を主目的としながら,移送前後の介助だけの名目で報酬を取得することは有償とみなされるのであって,有償性の判断は,移送を行う事業所がタクシー事業許可を得ているか否かに係わるものではない。このことは,介護タクシーに関する有償性の問題と同様であって,タクシー事業許可を取得しているタクシー会社が,移送を無料としながら,乗降前後の介助に関する介護報酬を受けることにつき,タクシー会社の有償移送に反するものではないとすることと同様である。 また,デイサービス等の送迎が有償(送迎加算)で行われているにもかかわらず, 降前後の介助に関する介護報酬を受けることにつき,タクシー会社の有償移送に反するものではないとすることと同様である。 また,デイサービス等の送迎が有償(送迎加算)で行われているにもかかわらず,被告がこれらについて道路運送法上の許可を要求していないとの点につき,ここにおける移送は,デイサービス等介護本体に付随してなされる移送であって,移送を主目的としながら補助的な介助から報酬を得る介護タクシーとは異なる問題である。したがって,被告が付随的な移送に対し,道路運送法上の許可を要求していないからといって,被告の指導に整合性がないとはいえない。 (3)本件行政指導の違法性原告は,介護保険法は移送行為につき何ら規定しておらず,厚生労働省の指導も及ばないから,被告が移送サービスに関して本件行政指導を行うこと自体が法令の範囲を超える指導である旨主張する。しかし,被告が,訪問介護事業者に対して,訪問介護員等が訪問介護サービスと事実上一体として行っている移送行為について指導を行うことは,介護保険事業の運営が健全かつ円滑に行われるようにするために,関係する法規制等との調整を計る必要な指導であって,介護保険法5条2項が定める都道府県の責務として当然行うべきものであるから,法令の範囲を超えるとの原告の主張は当たらない。 以上によれば,被告の本件行政指導に違法性はない。 2 被告の不法行為責任(違法性及び故意又は過失,損害との因果関係)(1)違法性及び故意又は過失前記認定の事実によれば,被告の本件行政指導に違法性は認められず,もとより,不法行為を構成する故意又は過失も認められない。 (2)損害との因果関係原告は,本件行政指導によって,原告の利用者が,原告のサービスを介護サービス計画(ケアプラン)に盛り込まなくなり,他の 不法行為を構成する故意又は過失も認められない。 (2)損害との因果関係原告は,本件行政指導によって,原告の利用者が,原告のサービスを介護サービス計画(ケアプラン)に盛り込まなくなり,他のタクシー事業許可を有する介護タクシー事業者のサービスを受けるようになった結果事業を継続できずに介護タクシー事業から撤退を余儀なくされ損害を被ったと主張する。 しかしながら,証拠(甲29,32,48,乙1,14,18)によれば,原告が平成15年4月1日から予定していた訪問介護事業は,訪問介護(身体介護と生活支援)を中心に行うというものであって,移送を中心としたタクシー事業を予定していたものではないこと,そのために移送前後の乗降介助の保険報酬を事業の収入とすることなく,したがって車からの乗降につき介助を必要としない「要支援者」をも原告の事業の利用対象者と予定していたこと,原告が同年3月15日に介護支援専門員(ケアマネージャー)等を集めて原告の新規業務の説明をした際,介護支援専門員(ケアマネージャー)等からは,原告の訪問介護員には身体介護と生活支援についての経験がないのではとか,要支援又は要介護度1の要介護の認定を受けた者にあっては保険支給限度額の全額又は大半を原告の訪問介護事業に利用することになって利用者の承諾を得難い等との質問及び意見があり,介護支援専門員(ケアマネージャー)の介護サービス計画(ケアプラン)に取り入れられることにはならなかったこと,原告は,原告の訪問介護事業を利用する者がないため,その事業を断念したことが認められる。 そうすると,原告の利用者が原告の介護サービスを介護サービス計画(ケアプラン)に盛り込まなくなったのは,原告が介護タクシー事業から訪問介護(身体介護及び生活支援)に事業内容を変更したことにつき,介護サー すると,原告の利用者が原告の介護サービスを介護サービス計画(ケアプラン)に盛り込まなくなったのは,原告が介護タクシー事業から訪問介護(身体介護及び生活支援)に事業内容を変更したことにつき,介護サービス計画(ケアプラン)を作成する介護支援専門員(ケアマネージャー)の理解が得られなかったことによるのであって,原告の予定していた利用者が他のタクシー事業許可を有する介護タクシー事業者のサービスを受けるようになったこととの間には,直接の因果関係はない。また,被告の本件行政指導は,原告が介護タクシーを止めて身体介護及び生活支援中心にその事業を展開しようとしたことを制約するものではなく,原告の訪問介護事業の断念と本件行政指導との間には何らの関係も認められない。 第4 結論以上によれば,原告の請求は,その余の点につき検討するまでもなく,理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条に従い,主文のとおり判決する。 福岡地方裁判所第2民事部裁判長裁判官横山秀憲裁判官鈴木陽一郎裁判官田巻貴子※ 別紙の添付は省略した。

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