昭和45(ネ)109 損害賠償請求、同附帯控訴事件

裁判年月日・裁判所
昭和46年6月29日 高松高等裁判所
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判決文本文12,869 文字)

主文 1 原判決主文第一項を次のとおり変更する。控訴人(附帯被控訴人)らは被控訴人(附帯控訴人)に対し、各金九万八、四六四円およびこれに対する昭和四二年一二月一〇日以降完済まで年五分の割合による金員の支払いをせよ。被控訴人(附帯控訴人)のその余の請求(当審での新請求を除く)を棄却する。2 控訴人(附帯被控訴人)らは被控訴人(附帯控訴人)に対し、各金四〇万円およびこれに対する昭和四二年一二月一〇日以降完済まで年五分の割合による金員の支払いをせよ。3 被控訴人(附帯控訴人)のその余の当審での請求拡張部分(新請求)を棄却する。4 訴訟費用は第一、二審を通じてこれを一〇分し、その一を控訴人(附帯被控訴人)らの連帯負担とし、その余を被控訴人(附帯控訴人)の負担とする。5 被控訴人(附帯控訴人)において各控訴人(附帯被控訴人)に対しそれぞれ金一〇万円の担保を供するときは、本判決中金員の支払いを命じた部分につき仮りに執行することができる。事実 控訴人(兼附帯被控訴人、以下単に控訴人という)ら訴訟代理人は、「原判決中控訴人ら敗訴部分を取り消す。被控訴人(兼附帯控訴人、以下単に被控訴人という)の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。被控訴代理人は、附帯控訴として、「原判決主文第一項を次のとおり変更する。控訴人らは被控訴人に対し、各金一五八万二、七二〇円およびこれに対する昭和四二年一二月一〇日から完済にいたるまで年五分の割合による金員の支払いをせよ。」との判決を求め、さらに、当審において請求を拡張し(当審での新請求)、「控訴人らは被控訴人に対し、右金員に付加し る昭和四二年一二月一〇日から完済にいたるまで年五分の割合による金員の支払いをせよ。」との判決を求め、さらに、当審において請求を拡張し(当審での新請求)、「控訴人らは被控訴人に対し、右金員に付加して、各金五三万円およびこれに対する昭和四二年一二月一〇日から完済にいたるまで年五分の割合による金員の支払いをせよ。 に、当審において請求を拡張し(当審での新請求)、「控訴人らは被控訴人に対し、右金員に付加し る昭和四二年一二月一〇日から完済にいたるまで年五分の割合による金員の支払いをせよ。」との判決を求め、さらに、当審において請求を拡張し(当審での新請求)、「控訴人らは被控訴人に対し、右金員に付加して、各金五三万円およびこれに対する昭和四二年一二月一〇日から完済にいたるまで年五分の割合による金員の支払いをせよ。」との判決を求め、控訴代理人は「本件附帯控訴を棄却する。附帯控訴費用は附帯控訴人の負担とする。」との判決を求めた。当事者双方の事実上および法律上の主張は、左のとおり付加するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、その記載をここに引用する。(控訴人の主張)一本件事故の発生に寄与した亡Aの過失と控訴人Bの適失との割合は、前者が八割、後者が二割と認めらるべきものである。すなわち、本件甲道路の巾員は乙道路の巾員に比較して明らかに広いものであるから、控訴人B運転の本件乗用車に通行優先権があり、また、Aが乙道路から本件交差点に進入するに際しては一時停止の標識に従つて一時停止すべき義務があつたのにかかわらず、Aはこれらを無視して漫然と時速約二〇キロメートルの速度で右交差点に進入してきたことから本件事故の発生をみるにいたつたものであつて、Aの右の過失は、控訴人Bの過失に較べてきわめて重大といわなければならない。二 Aの右の過失は、同人の相続人であり、また、本件事故の際にAの運転する本件二輪車に同乗していた被控訴人の固有の損害賠償債権の額を算定するに際しても当然に斟酌せらるべきものである。三被控訴人は、みずから本件事故によつて受けた傷害にもとづく休業補償費ならびに慰籍料として、昭和四三年四月八日ごろまでに、自動車損害賠償責任保険金合計金二七万三、七〇〇円を受領しているから、本訴請求の損害額から右の金額が控除されなければならない にもとづく休業補償費ならびに慰籍料として、昭和四三年四月八日ごろまでに、自動車損害賠償責任保険金合計金二七万三、七〇〇円を受領しているから、本訴請求の損害額から右の金額が控除されなければならない。四さらに、控訴会社は被控訴人に対し左のとおり金九万円の損害賠償請求権を有していたところ、本訴において、昭和四五年六月二三日付の準備書面により、被控訴人に対し右債権をもつて本訴請求の損害賠償債権と対当額で相殺する旨の意思表示をなし、右書面はそのころ被控訴人に到達したので、本訴債権はその限度において遡つて消滅するにいたつたものである。 ているから、本訴請求の損害額から右の金額が控除されなければならない。四さらに、控訴会社は被控訴人に対し左のとおり金九万円の損害賠償請求権を有していたところ、本訴において、昭和四五年六月二三日付の準備書面により、被控訴人に対し右債権をもつて本訴請求の損害賠償債権と対当額で相殺する旨の意思表示をなし、右書面はそのころ被控訴人に到達したので、本訴債権はその限度において遡つて消滅するにいたつたものである。なお、右相殺の受働債権は不法行為にもとづく損害賠償債権ではあるけれども、自動債権もまた左のとおり同一事故にもとづく損害賠償債権であつて、かような債権相互の間においては互に相殺することを禁ずべき合理的理由が存しないから、かかる相殺については民法五〇九条の適用はないというべきである。しかして、控訴会社の有していた損害賠償債権は左のごときものである。すなわち、控訴人Bの運転していた本件事故車(ブルーバード六四年型)は、本件事故の結果修理不能なまでに大破するにいたつたため、控訴会社はやむなくこれを金三万円で売却することとなつた。ところで、右自動車は、昭和四一年五月控訴会社において中古車として金三五万円で買い入れたものであつて、昭和四二年六月一一日の事故当時においては、定率減価償却をしても金二〇万円の価値は有していたものである。したがつて控訴会社としては、Aの過失にもとづく本件事故によりこれを金三万円で売却するのやむなきにいたり、一七万円の損害を被ることとなつたものであつて、右事故におけるAの過失割合を八割とみれば、同人に対し一三万六、〇〇〇円の損害賠償債権を取得したものといわなければならない。かくて、同人の死亡に たり、一七万円の損害を被ることとなつたものであつて、右事故におけるAの過失割合を八割とみれば、同人に対し一三万六、〇〇〇円の損害賠償債権を取得したものといわなければならない。かくて、同人の死亡により、右債務は相続分(三分の二)に応じて被控訴人に承継されるにいたり、これによつて控訴会社は被控訴人に対し、金九万円の損害賠償債権を有することとなつたものである。五被控訴人がAの死亡に伴つて受領した自動車損害賠償責任保険金一〇〇万円は、Aの死亡によつて被控訴人が被つた精神的損害のみならず、Aの被つた財産上、精神上の損害をも填補すべきものとして支払われたものである。(被控訴人の主張)一被控訴人が控訴人ら主張のごとき保険金合計金二七万三、七〇〇円を受領したことは認める。 これによつて控訴会社は被控訴人に対し、金九万円の損害賠償債権を有することとなつたものである。五被控訴人がAの死亡に伴つて受領した自動車損害賠償責任保険金一〇〇万円は、Aの死亡によつて被控訴人が被つた精神的損害のみならず、Aの被つた財産上、精神上の損害をも填補すべきものとして支払われたものである。(被控訴人の主張)一被控訴人が控訴人ら主張のごとき保険金合計金二七万三、七〇〇円を受領したことは認める。二控訴会社が本件事故車の破損によりその主張のような損害を被つたとの事実は知らない。かりにそのような事実があつたとしても、本訴債権のごとき不法行為にもとづく損害賠償債権を受働債権とする相殺は法律上許されないから、控訴人らの相殺の主張は失当である。三被控訴人の父Aは本件事故によつて頭蓋骨々折等の重傷を受け、死亡するにいたつたものであるが、これによつてA自身の被つた精神的損害の額は金二〇〇万円と算定するのか相当であり、Aの過失割合を六割とみればその金額は八〇万円となる。しかして被控訴人は、Aの死亡により、相続分(三分の二)に応じてその権利義務を承継したものであつて、右慰籍料請求権についても、その三分の二に当る金五三万円(円以下切捨)を相続したものであるから、当審においてこれを請求する(当審での請求拡張部分)。また、右Aは植条工務店に雇われて型枠造りなどの仕事をする大工として働いていたものてあるが、その仕事の性質、近時における大工などの職人不足の現状などからする を請求する(当審での請求拡張部分)。また、右Aは植条工務店に雇われて型枠造りなどの仕事をする大工として働いていたものてあるが、その仕事の性質、近時における大工などの職人不足の現状などからすると、その死亡当時における就労可能年数は六年程度と見積るのが妥当であるから、同人の逸失利益は、年五分の割合による中間利息を差引いた金三五二万四、四〇〇円となり、同人の過失割合を六割として過失相殺しても金一四〇万九、七六〇円となるといわなければならない。しかして被控訴人は、Aの死亡に伴い、その相続分(三分の二)に応じて同人の権利義務を相続したものであるから、右逸失利益についてもその三分の二に当る金九三万九、五〇〇円を承継したものというべきところ、原判決は被控訴人の承継した右逸失利益の賠償請求権をわずか九万三、三三〇円しか認めなかつたものであるから、当審においては、右の差額八四万六、一七〇円を原判決主文第一項において認容された金七三万六、五五三円に加算した金一五八万二、七二〇円(円以下切捨)の限度で請求を認容すべきである(附帯控訴の理由)。 であるから、右逸失利益についてもその三分の二に当る金九三万九、五〇〇円を承継したものというべきところ、原判決は被控訴人の承継した右逸失利益の賠償請求権をわずか九万三、三三〇円しか認めなかつたものであるから、当審においては、右の差額八四万六、一七〇円を原判決主文第一項において認容された金七三万六、五五三円に加算した金一五八万二、七二〇円(円以下切捨)の限度で請求を認容すべきである(附帯控訴の理由)。(当審での請求拡張部分ならびに附帯控訴の理由に対する控訴人らの反論)一一般に慰籍料請求権は一身専属的なものであるから相続の対象になりえないというべきである。かりにその相続性が認められるとしても、本件の場合、被害者であるAが本件事故当時六四才の老人であつたこと、右事故の発生について同人の重大な過失が寄与していること、同人によつて扶養される子女がいなかつたこと、相続人である被控訴人もまたAの死亡によつて被つた精神的損害の賠償を本訴において請求していることなどの諸事情を斟酌してその額を算定するのが妥当である。二 Aの死亡当時における就労可能年数を六年とみることは、同人の仕事が大工という肉体労働であることから考 の賠償を本訴において請求していることなどの諸事情を斟酌してその額を算定するのが妥当である。二 Aの死亡当時における就労可能年数を六年とみることは、同人の仕事が大工という肉体労働であることから考えても経験則に反して全く不当というべきであつて、これを七ケ月間とした原判決の認定はまことに正当である。証拠(省略) 理由 一当裁判所は、被控訴人の控訴人らに対する本訴請求(当審での新請求を除く)は各金九万八、四六四円およびこれに対する昭和四二年一二月一〇日以降完済まで年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で正当であり、また、当審での請求拡張部分(新請求)は各金四〇万円およびこれに対する昭和四二年一二月一〇日以降完済まで年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるが、その余は失当と判断するものであつて、その理由の詳細は、左のとおり付加訂正するほかは、原判決理由中の説示と同一であるから、それをここに引用する。(一) 本件事故に対する双方の過失の寄与率について。原判決一六枚目表九行目の「Aの過失は六割」を「Aの過失は七割」と訂正する。(二) Aの逸失利益について。Aが本件事故によつて死亡した当時六四才の男子であつたこと、統計上六四才の男子の平均就労可能年数が六・二年であることは当事者間に争いがなく、原審証人Cの証言ならびに原審での被控訴人本人尋問の結果によると、Aはかねてより大工の職にあつたものであるが、近時大工などの職人は漸次その平均年令が高くなり、七〇才位の大工も現に就労しているような状態にあること、Aは本件事故当時きわめて健康であつて仕事を休むようなこともほとんどなく、壮年者と見誤られるほど元気に働いていたことがそれぞれ認められるのであつて、以上の諸点を総合して考えれば、 争いがなく、原審証人Cの証言ならびに原審での被控訴人本人尋問の結果によると、Aはかねてより大工の職にあつたものであるが、近時大工などの職人は漸次その平均年令が高くなり、七〇才位の大工も現に就労しているような状態にあること、Aは本件事故当時きわめて健康であつて仕事を休むようなこともほとんどなく、壮年者と見誤られるほど元気に働いていたことがそれぞれ認められるのであつて、以上の諸点を総合して考えれば、 な状態にあること、Aは本件事故当時きわめて健康であつて仕事を休むようなこともほとんどなく、壮年者と見誤られるほど元気に働いていたことがそれぞれ認められるのであつて、以上の諸点を総合して考えれば、Aの死亡当時の大工としての稼働可能年数は少くとも六年は下らないものと認定するのが相当である。しかるところ、右当時におけるAの純収入は月五万円と認められるから(その理由は原判決理由のとおり)、同人の死亡日から稼働可能年数六年間の収入の合計額は金三六〇万円、ホフマン式(年ごと式)計算法によつて民事法定利率年五分の割合による中間利息を控除したその現価は金三〇八万一六〇円(円未満切捨)であり、Aは本件事故により右同額の得べかりし利益を喪失したものといわなければならない。(三) 被控訴人の受傷による慰籍料について。原判決一九枚目裏一〇行目の「右認定の事情」の次に「Aの過失の程度」を加え、同一二行目の「五〇万円」を三〇万円と訂正する。(四) 過失相殺について。本件事故によつてAの喪失した得べかりし利益の現価が金三〇八万一六〇円であることは前記認定のとおりであるから、控訴人らが同人に対して負担した損害賠償義務の額は、同人の過失を斟酌して、右金額よりその寄与率七割を乗じた金額を控除した額九二万四、〇四八円と算定するのが相当である。しかるところ控訴人らは、被控訴人みずからが本件事故によつて被つた損害の額の算定に際しても、Aの前記過失を掛酌すべきものと主張するので、以下この点について考えるに、右損害額の算定についてAの過失を斟酌することは、被害者本人以外の者の過失を斟酌することとならざるをえないけれども、民法七二二条二項に定める被害者の過失とは単に被害者本人の過失のみでなく、ひろく被害者側の過失をも包含する趣旨であり、かつ、右にいう被害者側の過失と 者の過失を斟酌することとならざるをえないけれども、民法七二二条二項に定める被害者の過失とは単に被害者本人の過失のみでなく、ひろく被害者側の過失をも包含する趣旨であり、かつ、右にいう被害者側の過失とは、被害者本人と身分上ないし生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失をいうものと解せられるから(最高裁判所昭和四〇年(オ)第一〇五六号、同四二年六月二七日第三小法廷判決、民集二一巻六号一五〇七頁参照)、被控訴人とAとの間に身分上ないし生活関係上一体をなすとみられるような関係が存在するかぎり、前記損害の額の算定についてAの過失を斟酌することはなんら差し支えがないといわなければならない。 は、被害者本人と身分上ないし生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失をいうものと解せられるから(最高裁判所昭和四〇年(オ)第一〇五六号、同四二年六月二七日第三小法廷判決、民集二一巻六号一五〇七頁参照)、被控訴人とAとの間に身分上ないし生活関係上一体をなすとみられるような関係が存在するかぎり、前記損害の額の算定についてAの過失を斟酌することはなんら差し支えがないといわなければならない。しかして、右にいわゆる「身分上ないし生活関係上一体をなすとみられる関係」が認められるためには、必ずしも、幼児とその監督者である父母などのことく被害者と第三者とが同一の家族共同体に属していたり、また、経済的基盤を共通にしたりすることを要するものではないのであつて、そのような関係にない被害者と第三者との間においても、第三者の過失によつて生じた損害を加害者よりはむしろ被害者の負担に帰せしめるのが公平と認められるような具体的な事情もしくは関係が両者の間に存在するような場合には、右の一体関係ありと認めるのが相当というべきである。けだし、民法七二二条二項が、損害賠償の額を定めるにあたつて被害者の過失を斟酌することができる旨を定めたのは、発生した損害を加害者と被害者との間において公平に分担させるという公平の理念に基づくものにほかならないからである。<要旨第一>そこで、右のような観点から、本件の場合前記Aと被控訴人との間に右のような一体関係が認められ</要旨第一>るかどうかについて考えてみるに、原審ての被控訴人本人尋問の結果によると、被控訴人はAの長男であるが( 右のような観点から、本件の場合前記Aと被控訴人との間に右のような一体関係が認められ</要旨第一>るかどうかについて考えてみるに、原審ての被控訴人本人尋問の結果によると、被控訴人はAの長男であるが(他に子はいない)本件事故当時すでに二五才に達し、約二年前に結婚した妻Dおよび同女との間に生まれた二児とともに香川県仲多度郡a町にある妻の実家の一部を間借りして、丸亀市内に独り居住する父Aと別居しそれぞれ世帯を別にしていたこと、被控訴人はとび職、Aは大工の職にあり、仕事の上で両者はたがいに交渉はなかつたけれども、不断からしばしば往き来をする間柄であつて、本件事故も、丸亀市内のA方に被控訴人の妻が置き忘れてきた物をAが被控訴人宅へ届けてやつた際、たまたま丸亀市方面へ赴く用件のあつた被控訴人に頼まれて本件二輪車の荷台に同乗させ、自宅へ帰る途中に発生したものであることが認められ、右認定に反する証拠はない。 帯を別にしていたこと、被控訴人はとび職、Aは大工の職にあり、仕事の上で両者はたがいに交渉はなかつたけれども、不断からしばしば往き来をする間柄であつて、本件事故も、丸亀市内のA方に被控訴人の妻が置き忘れてきた物をAが被控訴人宅へ届けてやつた際、たまたま丸亀市方面へ赴く用件のあつた被控訴人に頼まれて本件二輪車の荷台に同乗させ、自宅へ帰る途中に発生したものであることが認められ、右認定に反する証拠はない。しかして、右のごとき事実関係からすると、なるほど被控訴人とAとは同一の家族共同体に属するものとはいえず、また、経済的基盤を共通にするものとも認めることはできないけれとも、他方、Aと被控訴人とが親子の関係にあり、しかも、本件事故が、被控訴人よりAに頼んで本件二輪車の荷台に同乗させてもらい、自己の用件のため丸亀市方面へ赴く途中に生じたものであるところがらすれば、被控訴人の被つた損害のうちAの過失に帰因する部分は、控訴人らよりはむしろ被控訴人自身の負担に帰せしめるのが公平と認められることもこれを否定することができないのである。そうだとすると、前説示のとおり、Aと被控訴人との間には「身分上もしくは生活関係上一体をなすとみられるような関係」が存在し、したがつて、Aの過失は被害者側の過失にあたるものと認めて、被控訴人の被つた損害の額の算定に際してもこれを斟酌す 控訴人との間には「身分上もしくは生活関係上一体をなすとみられるような関係」が存在し、したがつて、Aの過失は被害者側の過失にあたるものと認めて、被控訴人の被つた損害の額の算定に際してもこれを斟酌するのが相当であるといわなければならない。しかるところ、被控訴人は、本件事故により金二三万六、五五三円の得べかりし利益を喪失し、Aの葬式費用、墓碑建設費、仏壇仏具購入費として合計二一万五、〇〇〇円を支出したものと認められるから(その理由は原判決理由中の説示のとおりである。ただし、原判決二〇枚目裏一二行目の「金六万円」を「金五万円」と訂正する。)、控訴人らが被控訴人に賠償すべき被控訴人固有の財産的損害の額は、Aの前記過失を斟酌して、右金額からその寄与率七割を乗じた額を控除して逸失利益の額は金七〇、九六五円、葬式費用等の額は六四、五〇〇円と算定するのが相当である。(五) Aの死亡による慰籍料について。本件事故のため、被控訴人の父Aが頭蓋骨々折、頭蓋内出血等の重傷を負い、事故の三日後である昭和四二年六月一四日国立善通寺病院において死亡するにいたつたことは当事者間に争いのないところ、本件事故の態様、被害の程度、控訴人BおよびAの過失の割合その他一切の事情を考慮すれば、右事故によつてAの被つた精神的損害を慰籍すべき慰籍料の額は金六〇万円と認めるのが相当である。 。(五) Aの死亡による慰籍料について。本件事故のため、被控訴人の父Aが頭蓋骨々折、頭蓋内出血等の重傷を負い、事故の三日後である昭和四二年六月一四日国立善通寺病院において死亡するにいたつたことは当事者間に争いのないところ、本件事故の態様、被害の程度、控訴人BおよびAの過失の割合その他一切の事情を考慮すれば、右事故によつてAの被つた精神的損害を慰籍すべき慰籍料の額は金六〇万円と認めるのが相当である。さらに、被控訴人が右Aの唯一人の子であることは当事者間に争いのないところ、本件事故によつて父Aを失つたことによつて被控訴人が多大の精神的苦痛を受けたことは明らかであつて、Aの前記過失、年令その他諸般の事情を斟酌すれば、その慰籍料の額は金四〇万円と認定するのが妥当である。(六) 被控訴人が相続によつて取得した本件事故による損害賠償請求権の額について。Aの相続人が妻であるE(一審原告)お の事情を斟酌すれば、その慰籍料の額は金四〇万円と認定するのが妥当である。(六) 被控訴人が相続によつて取得した本件事故による損害賠償請求権の額について。Aの相続人が妻であるE(一審原告)および唯一人の子である被控訴人のみであつて他に相続人が存在しないことは控訴人らの争わないところであるから、被控訴人はAの死亡に伴い、前記九二万四、〇四八円(逸失利益)の三分の二に当る金六一万六、〇三二円の賠償請求権ならびに右慰籍料六〇万円の三分の二に当る金四〇万円の慰籍料請求権を相続によつて取得したこととなる(慰籍料請求権もまた、財産的損害の賠償請求権と同様、当然に相続の対象となるものと解する。)。(七) 損害の一部填補について。Aの死亡に伴い、自動車損害賠償責任保険金として被控訴人が金一〇〇万円を受領したことは被控訴人の自認するところであり、当審証人Fの証言によれば、右保険金は、Aの死亡によつて被控訴人自身が被つた精神的損害を賠償すべき慰籍料、葬祭費ならびにAの死亡による逸失利益の賠償に充当さるべきものとして給付されたものであることが認められるから、前認定の慰籍料四〇万円(一の(五)の後段)、葬式費用等六四、五〇〇円(一の(四))はいずれも右保険金によつて填補され、逸失利益六一万六、〇三二円(一の(六))も内金五三万五、〇〇〇円(一〇〇万円より右四〇万円および六四、五〇〇円を控除した金額)はすでに填補され、残額八〇、五三二円のみが現に賠償さるべきAの死亡による逸失利益の額である。 充当さるべきものとして給付されたものであることが認められるから、前認定の慰籍料四〇万円(一の(五)の後段)、葬式費用等六四、五〇〇円(一の(四))はいずれも右保険金によつて填補され、逸失利益六一万六、〇三二円(一の(六))も内金五三万五、〇〇〇円(一〇〇万円より右四〇万円および六四、五〇〇円を控除した金額)はすでに填補され、残額八〇、五三二円のみが現に賠償さるべきAの死亡による逸失利益の額である。また、被控訴人みずからが本件事故によつて受傷したことにもとづき控訴人らに対して取得した財産的損害のうち得べかりし利益の喪失による損害が七〇、九六五円(一の(四))、慰籍料の額が三〇万円(一の(三))であることは前記のとおりであるか、被控訴人が右受傷にもとづく休業 らに対して取得した財産的損害のうち得べかりし利益の喪失による損害が七〇、九六五円(一の(四))、慰籍料の額が三〇万円(一の(三))であることは前記のとおりであるか、被控訴人が右受傷にもとづく休業補償費ならびに慰籍料として、自動車損害賠償責任保険金二七万三、七〇〇円を受領していることは当事者間に争いがないから、右の合計額からこれを控除した九七、二六五円が現に賠償さるべき損害の額である。(八) 相殺の抗弁について。そこで次に、控訴人らの相殺の抗弁について考えるに、債務が不法行為によつて生じたときには、その債務者が相殺をもつて債権者に対抗することができないことは民法五〇九条の明定するところであるから、不法行為であることの明らかな本件事故によつて生じた被控訴人の損害賠償請求権を受働債権とする<要旨第二>相殺の抗弁は、その主張自体において失当であるかのごとくみえないわけではない。しかしながら、ひる</要旨第二>がえつて考えてみるに、本件の場合のごとく、同一の衝突事故から双方に生じた損害賠償請求権相互の間においてまで右法条を適用して相殺を禁止すべき合理的理由が存在すると言いうるかどうか、きわめて疑問であるといわざるをえない。すなわち、民法五〇九条は、不法行為の被害者をして現実の弁済により損害の填補を受けしめるとともに、不法行為の誘発を防止することを目的とする規定であるが、双方の過失による自動車の衝突の場合のように、同一の事故にもとづいて同時に、しかも双方相互に損害賠償請求権が生じたときには、現実の弁済によつて損害を填補すべきことを要請される全く同じ性質の債務(その点では、一方が財産的損害の賠償債務、他方が精神的損害の賠償債務であつてもなんら異なるところはない)が同時かつ相互に発生したことになるわけであるから、現実の弁済による損害の填補の を目的とする規定であるが、双方の過失による自動車の衝突の場合のように、同一の事故にもとづいて同時に、しかも双方相互に損害賠償請求権が生じたときには、現実の弁済によつて損害を填補すべきことを要請される全く同じ性質の債務(その点では、一方が財産的損害の賠償債務、他方が精神的損害の賠償債務であつてもなんら異なるところはない)が同時かつ相互に発生したことになるわけであるから、現実の弁済による損害の填補の じ性質の債務(その点では、一方が財産的損害の賠償債務、他方が精神的損害の賠償債務であつてもなんら異なるところはない)が同時かつ相互に発生したことになるわけであるから、現実の弁済による損害の填補の要請を理由にこれらの債務相互間の相殺を禁止することは無意味であり、場合により不公平でもあるといわざるをえず、また、これを許しても、不法行為が誘発されるというような弊害が生ずる虞れは全くないといわなければならないのである。そうだとすると、右のような場合においては民法五〇九条の適用はなく、一方の損害賠償債権をもつて他方の損害賠償債権と相殺することはなんら差し支えがないと解するのが相当である。そこで、右相殺の抗弁の当否について検討するに、成立に争いのない乙第七ないし第九号証、当審証人Gの証言によると、本件衝突事故の結果、控訴人Bの運転していた控訴会社所有の乗用車が修理不能なまでに大破したこと、そのため、控訴会社が控訴人ら主張のごとく金一七万円の損失を被つたことがそれぞれ認められる。しかして、右事故の発生についてAの過失が七割の率で寄与していることは前記のとおりであるから、Aは控訴会社に対し、右金額から控訴人Bの過失の寄与率三割を乗じて得た金額を控除した(控訴人Bは控訴会社の被用者であるから、右損害額の算定に際してその過失を斟酌しうることはいうまでもない)金一一万九、〇〇〇円の賠償債務を負担したものというべく、右債務はAの死亡により、被控訴人にその相続分(三分の二)に応じて相続されたものといわなければならない。したがつて、控訴会社は被控訴人に対し、本件事故にもとづく損害賠償債権金七万九、三三三円(円未満切捨)を取得したものというべきところ、控訴代理人が本訴において、昭和四五年六月二三日付の準備書面により被控訴人に対し、右債権をもつて本訴請求の損害 にもとづく損害賠償債権金七万九、三三三円(円未満切捨)を取得したものというべきところ、控訴代理人が本訴において、昭和四五年六月二三日付の準備書面により被控訴人に対し、右債権をもつて本訴請求の損害賠償債権(ただし、当審での請求拡張部分を除く)と対当額で相殺する旨の意思表示をなし、右書面がそのころ被控訴人に到達したことは記録上明らかなところであるから、本訴債権中当審での請求拡張部分を除く金一七万七、七九七円(前記一の(七)の残額の合計額)はその限度において本件事故当時に遡つて消滅するにいたつたものであつて、その残額は九万八、四六四円であるといわなければならない。 、右債権をもつて本訴請求の損害賠償債権(ただし、当審での請求拡張部分を除く)と対当額で相殺する旨の意思表示をなし、右書面がそのころ被控訴人に到達したことは記録上明らかなところであるから、本訴債権中当審での請求拡張部分を除く金一七万七、七九七円(前記一の(七)の残額の合計額)はその限度において本件事故当時に遡つて消滅するにいたつたものであつて、その残額は九万八、四六四円であるといわなければならない。二以上のとおりであるとすると、被控訴人の本訴請求(当審での新請求を除く)は各金九万八、四六四円およびこれに対する本件事故の日より後であることの明らかな昭和四二年一二月一〇日以降完済まで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で正当であるが、その余は失当であり、また、被控訴人の当審での請求拡張部分(新請求)は各金四〇万円およびこれに対する右昭和四二年一二月一〇日以降完済まで右同率の遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるが、その余は理由がない。よつて、控訴人らの控訴ならびに被控訴人の附帯控訴にもとづいて、右と異なる原判決をその限度で変更することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、九二条、九三条、仮執行宣言につき同法一九六条一項を各適用して主文のとおり判決する。(裁判長裁判官橘盛行裁判官今中道信裁判官藤原弘道)

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