判決平成14年8月13日神戸地方裁判所平成14年(わ)第53号ストーカー行為等の規制等に関する法律違反被告事件 主文 被告人を懲役6月に処する。 この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人(元大学教授)は,元交際相手の(当時49歳)に対して,好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で, 1 平成13年11月14日午後9時ころ,神戸市兵庫区A町a丁目b番所在のM西側中央階段付近で勤務先から徒歩で帰宅途上の同女を待ち伏せ,同日午後9時55分ころから同日午後10時ころまでの間,同所から,同区S通c丁目所在の神戸市営地下鉄M駅付近まで,帰宅中の同女の身辺につきまとい, 2 同月28日午後9時30分ころ,前記M西側中央階段付近で勤務先から徒歩で帰宅途上の同女を待ち伏せ,同日午後10時4分ころから,同日午後10時10分ころまでの間,同所から,前記神戸市営地下鉄M駅付近まで,同女の身辺につきまとい, 3 同年12月7日午後9時ころ,前記M西側中央階段付近で勤務先から徒歩で帰宅途上の同女を待ち伏せ,同日午後9時6分ころから同日午後9時10分ころまでの間,同所から同区A町a丁目b番所在の神戸電鉄株式会社N駅出入口付近まで,同女の身辺につきまとい, 4 同日午後9時13分ころ,同区A町a丁目b番所在のM西口バス停付近で,同女を待ち伏せし,同日午後9時25分ころから同日午後9時30分ころまでの間,同所から前記神戸市営地下鉄M駅付近まで,同女の身辺につきまとい,同女に対し,その身体の安全,住居等の平穏若しくは名誉が害され,又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるよ 30分ころまでの間,同所から前記神戸市営地下鉄M駅付近まで,同女の身辺につきまとい,同女に対し,その身体の安全,住居等の平穏若しくは名誉が害され,又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により,つきまとい等を反復継続して行い,もって,ストーカー行為をしたものである。 (証拠の標目)省略(法令の適用) 1 罰条ストーカー行為等の規制等に関する法律13条1項,2条2項,1項1号 2 刑種の選択懲役刑選択 3 執行猶予刑法25条1項(量刑の理由)本件は,被告人が,元交際相手の女性に対し,判示のとおりのつきまとい等を反復継続して行った,というストーカー行為等の規制等に関する法律違反1件の事案である。この犯行の罪質,動機,態様,結果及び犯行後の事情等,殊に,被告人は,昭和58年に神戸市内の公立高校に赴任した際,同じく教師として赴任してきた被害者と知り合い,同女と交際を始めて肉体関係を持ち,その後同女と不倫関係にあったものであるが,平成13年1月に,不倫関係を清算しようとした被害者から別れ話を持ちかけられたにもかかわらず,同女を手放したくないとの思いから,同女を待ち伏せたり,電話をかけたり,メールを送るなどして,同女の翻意を期待したものの,望みがかなえられないことから,次第に怨恨の情を募らせて,同女に対し,いやがらせや中傷行為を行い,同年9月20日,神戸西警察署から,同女に対するストーカー行為の件で出頭を求められ,取調べを受けた際,「今後一切ストーカー行為はしない。」旨の誓約書を作成したにもかかわらず,この誓約をも守らず,本件犯行に及んだものであって,被告人との関係を清算しようとした被害者の心情を無視した本件の自己中心的な動機・経緯には酌むべき事情が認められないこと,その態様も,被害者に対して繰り返さ をも守らず,本件犯行に及んだものであって,被告人との関係を清算しようとした被害者の心情を無視した本件の自己中心的な動機・経緯には酌むべき事情が認められないこと,その態様も,被害者に対して繰り返されたストーカー行為の一環をなし,かつ,自らが書いた警察への誓約書も無視したものであって,執拗かつ悪質であること,被害者が受けた不安感・疲弊感等の精神的苦痛には大きなものがあること,被告人は,現役の大学教授として教育者としても高い社会的地位にあったもので,本件が教育関係者の信用に与えた悪影響も無視しえないこと,加えて,被告人は,本件起訴の翌日,弁護人を介する場合のほか,被害者に対し,直接間接を問わず,一切接触をしてはならない旨の条件を付せられた上で保釈を許可されたにもかかわらず,被害者の引っ越し先であるマンションを単独で訪れて被害者との接触を図り,これにより保釈を取り消されたものであって,犯行後の事情も甚だ芳しくないこと,以上を併せ考えると,本件の犯情は悪く,被告人の刑事責任は決して軽くみることができないものといわざるを得ない。なお,被告人は,本件のストーカー行為について,これは,平成13年10月17日に被告人が被害者の勤務先の高校で講演をすることが予定されていたのに,被害者側からの抗議により中止になったことから,同女に対し,講演会が中止になった事情や同女の真意について尋ねようとしたものである旨供述し,弁護人も,この供述を受けて,被告人の本件ストーカー行為は,それ以前に被告人が被害者に対し行った同女への未練等からしたストーカー行為とは分けて考察すべきである旨主張するが,講演会が中止になった事情自体は一次的には高校側に尋ねるべきものである上,このころには被害者が被告人と接触することすら拒否していることは被告人にとっても明らかな状況にあったのである ある旨主張するが,講演会が中止になった事情自体は一次的には高校側に尋ねるべきものである上,このころには被害者が被告人と接触することすら拒否していることは被告人にとっても明らかな状況にあったのであるから,自ら被害者の真意を尋ねに行くのが目的であったといってみたところで,被告人の本件行為がこれまでのストーカー行為とは異なる性質のものとして殊更分断して考察すべきものとは到底認められず,この点を量刑上過大に評価することはできない。 しかしながら,他方,被告人が,現在では本件犯行について反省の態度を示し,今後2度と被害者と接触しない旨誓っていること,被告人にはこれまで前科・前歴がないこと,本件は,現役の大学教授が起こした事件として報道され,被告人は大学教授のほか有していた教育機関における様々な地位等をすべて失うに至っており,これにより被告人は相応の社会的制裁を受けたといえること,妻が被告人の更生に助力するとみられること,前記のとおり被告人が保釈条件を遵守せず保釈が取り消されたためとはいえ,被告人の未決勾留期間が約4か月半に及んだこと,その他弁護人が主張し記録上も認められる被告人のために酌むべき諸事情を十分考慮すると,被告人を直ちに服役させるのではなく,その自省を強く求めた上,今回は被告人に対し社会内において更生の機会を与えるのを相当と思料した。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑懲役6月)平成14年8月13日神戸地方裁判所第14刑事係乙裁判官浦島高広
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