- 1 -令和2年6月24日判決言渡令和元年(行コ)第239号相続税更正処分等取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成29年(行ウ)第539号) 主文 1 本件各控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は,控訴人らの負担とする。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 処分行政庁が平成28年4月27日付けで控訴人Aに対してした,被相続人Bの相続に係る相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。 3 処分行政庁が平成28年4月27日付けで控訴人Cに対してした,第2項の相続に係る相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取 り消す。 4 処分行政庁が平成28年4月27日付けで控訴人Dに対してした,第2項の相続に係る相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。 第2 事案の概要(略語は,新たに定義しない限り,原判決の例による。以下,本 判決において同じ。)1⑴ 被相続人B(本件被相続人。大正7年▲月▲日生)は,平成24年▲月▲日に死亡し,その相続(本件相続)が開始した。本件被相続人の相続人は,本件被相続人の妻であるE(訴外E),長女である控訴人C,長男である控訴人A,二男であるF(訴外F)及び養子(訴外Fの長男)である控訴人D の5名(本件共同相続人)であった。 - 2 -⑵ 本件相続に係る相続財産には,原判決別表1記載の東京都杉並区(住所省略)所在の土地(本件甲土地)及び本件甲土地上に存する原判決別表2記載の建物(本件甲建物)並びに原判決別表3記載の川崎市(住所省略)所在の土地(本件乙土地)及び本件乙土地上に存する建物(本件乙建物)が含まれていた。 ⑶ 本件共同相続人 存する原判決別表2記載の建物(本件甲建物)並びに原判決別表3記載の川崎市(住所省略)所在の土地(本件乙土地)及び本件乙土地上に存する建物(本件乙建物)が含まれていた。 ⑶ 本件共同相続人は,本件被相続人の平成21年10月16日付け公正証書による遺言及び本件共同相続人の間で平成24年10月17日に行った協議による遺産の分割に基づき,本件相続に係る相続財産を取得した(本件甲土地及び本件甲建物〔本件甲不動産〕並びに本件乙土地及び本件乙建物〔本件乙不動産〕は,上記遺言により,控訴人Dが取得した。)。 ⑷ 控訴人らは,平成25年3月11日,本件相続開始時における本件甲不動産及び本件乙不動産(本件各不動産)の相続税法22条に規定する時価を財産評価基本通達(昭和39年4月25日付け直資56・直審(資)17による国税庁長官通達。ただし,平成25年5月16日付け課評2-18による改正前のもの。評価通達)の定めによって評価した価額(本件各通達評価 額)として,処分行政庁に対し,本件相続に係る相続税(本件相続税)の申告(本件申告)をした。 ⑸ 札幌国税局長は,平成28年2月17日付けで,国税庁長官に対し,本件各不動産について評価通達6を適用し,評価通達の定める評価方法によらずに他の合理的な評価方法によって評価することとしたい旨の上申(本件上 申)をし,国税庁長官から,同年3月10日付けで,本件上申について「貴見のとおり取り扱うこととされたい」との指示(本件指示)を受けた。 ⑹ 処分行政庁は,本件各不動産について,評価通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められるとして,別途実施した鑑定における評価額(本件各鑑定評価額)をもって,本件相続開始時における相続税法22条に 規定する時価として,控訴人ら各自に対応し て評価することが著しく不適当と認められるとして,別途実施した鑑定における評価額(本件各鑑定評価額)をもって,本件相続開始時における相続税法22条に 規定する時価として,控訴人ら各自に対応した平成28年4月27日付けの- 3 -各通知書(本件各通知書)を控訴人らに対し送達することにより,本件相続税に係る各更正処分(本件各更正処分)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(本件各賦課決定処分)をした。 2 本件は,本件被相続人の相続人である控訴人らが,本件各不動産について,評価通達の定めによって評価することが著しく不適当とは認められず,本件相 続開始時における相続税法22条に規定する時価を本件各鑑定評価額とすることは違法であるなどとして,被控訴人に対し,本件相続税について処分行政庁から受けた本件各更正処分及び本件各賦課決定処分(本件各更正処分等)の各取消しを求める事案である。 3 原審は,要旨,本件各不動産については,評価通達の定める評価方法以外の 評価方法によって評価することが許され,その相続税法22条に規定する時価は本件各鑑定評価額であると認められ,また,本件各更正処分等に手続上の違法も認めらないから,本件各更正処分等は適法であるとして,控訴人らの各請求をいずれも棄却する旨の判決をした。 4 控訴人らは,原判決を不服として本件各控訴を提起した。 5 関係法令等の定め,前提事実,本件各更正処分等の根拠及び適法性に関する被控訴人の主張,争点及び争点に関する当事者の主張の要旨は,次のとおり補正し,後記6のとおり当審における当事者の主張を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」第2・1ないし5(原判決2頁8行目から19頁15行目まで。別紙1及び別紙2,別表1ないし5並びに6の1及び2を含む。)に記載 のとおり る当事者の主張を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」第2・1ないし5(原判決2頁8行目から19頁15行目まで。別紙1及び別紙2,別表1ないし5並びに6の1及び2を含む。)に記載 のとおりであるから,これを引用する。 原判決2頁23,24行目の「公正証書に係る遺言」を「公正証書による遺言」と,同頁25行目の「遺産分割に従って,」を「協議による遺産の分割に基づき,」と,それぞれ改める。 原判決5頁16行目の「上記上申」を「本件上申」と改める。 ⑶ 原判決6頁23,24行目の「評価通達の定める評価方法によらない評価- 4 -が許されるための特別の事情の内容」を「財産を評価通達の定めによらずに評価することが許される場合」と改める。 ⑷ 原判決9頁20行目の「というべきであり,」を「ことからすると,」と改める。 ⑸ 原判決9頁24行目の「行為について」を「行為が専ら相続対策を目的と するものであったこと」と改める。 ⑹ 原判決19頁3行目の「民集65巻4号2081頁参照」の次に「(以下「最高裁平成23年判決」という。)」を加える。 6 当審における当事者の主張⑴ 争点①(本件相続開始時における本件各不動産の時価)について (控訴人ら)ア相続税法22条に規定する時価として,財産を評価通達の定めによらずに評価する要件である「特別の事情」については,処分行政庁のみならず,納税者においても,その要件に該当する評価根拠事実を特定することができる程度の一般化した判断基準が示されていなければ,時価評価の予測可 能性と法的安定性を害し,租税法律主義に違反する。 イ相続税法は,特段の定めがある場合を別として,相続開始前における被相続人が財産を形成し,又はこれを変動させた行為が,相続開始時における当 能性と法的安定性を害し,租税法律主義に違反する。 イ相続税法は,特段の定めがある場合を別として,相続開始前における被相続人が財産を形成し,又はこれを変動させた行為が,相続開始時における当該財産の評価に影響を与えるという仕組みを採用しておらず,評価通達1⑶も,「財産の評価に当たっては,その財産の価額に影響を及ぼすべ きすべての事情を考慮する。」と定めており,「特別の事情」とは評価通達による評価額が実情に即しないような特殊事情を備えた財産が持つ固有の事情を差し(最高裁平成29年2月28日民集71巻2号286頁),最高裁平成23年2月18日判決(裁集民236号71頁)の判断からしても,時価評価に全く影響しない相続開始前後の事情や租税回避又は租税 負担の減少の意図などは,財産を評価通達の定めによらずに評価する要件- 5 -である「特別の事情」に当たらない。また,相続税法は租税回避を防止するための租税回避措置の否認を個別具体的に規定していることからすると,このような個別の規定が存在しない以上,評価通達6を租税回避措置の否認のために用いることは租税法律主義に反する。 ウ本件各不動産に係る本件各鑑定評価額と本件各通達評価額との間の3な いし4倍の開差というのは,特に異常なものではなく,本件各不動産の周辺の同種又は類似する物件についても同じく普遍的に存在することからすると,本件各不動産についての「特別」な事情とはいえないから,評価通達の定めによらずに評価する要件である「特別の事情」に当たらない。 また,相続税に係る財産評価は,相続財産の評価であり,将来収益を見 込むフローの財産評価ではなく,相続開始時点の財産評価であるから,土地については路線価を,建物については固定資産評価基準に基づく固定資産評価額を,それぞ ,相続財産の評価であり,将来収益を見 込むフローの財産評価ではなく,相続開始時点の財産評価であるから,土地については路線価を,建物については固定資産評価基準に基づく固定資産評価額を,それぞれ採用することが合理的であると評価通達が定めているのであって,本件各鑑定評価額とは評価における根本的な考え方が異なるので,本件各通達評価額と本件各鑑定評価額を比較して開差が大きいと すること自体が不合理である。 エ本件被相続人が本件各不動産を取得したのは,札幌市内に所有していた賃貸物件が建物の経年により投資運用効率が悪化してきたことや,不動産事業の承継者である控訴人Dが将来に在住することを予定している首都圏に賃貸物件の拠点を移すためであった。本件被相続人は本件相続開始の3 年半前に本件甲不動産を購入し,これを賃貸して賃料を得るようになり,本件相続開始後も控訴人Dはこれを保有し続けており,また,本件被相続人が本件乙不動産を購入したのも本件相続開始の2年半前であり,同様にこれを賃貸して賃料収入を得ており,控訴人Dが本件相続開始の9か月後にこれを売却したのは,より利回りの良い物件の取得を準備するためであ った。本件相続開始前後の本件各不動産に係る一連の取引は,G株式会社- 6 -の次世代への事業承継のための経営効率の改善を目的としたものであって,租税回避を目的としたものではなかった。 (被控訴人)アそもそも,評価通達は,相続税及び贈与税の課税財産の全てについて,また,稀にしか起こらない事例についてまで,具体的な評価方法又は評価 額を示すことなく,評価通達5及び6によって評価することとしているのであって,評価通達6は適正な時価評価を行うための言わば評価通達の他の各規定の補完的な役割を担うものであるから,このような 価 額を示すことなく,評価通達5及び6によって評価することとしているのであって,評価通達6は適正な時価評価を行うための言わば評価通達の他の各規定の補完的な役割を担うものであるから,このような通常想定していない例外的な場面でのみ適用される評価通達6について,普遍化できる評価基準を具体的に示すことは著しく困難である。 イ財産の評価通達の定めによらない評価は,評価通達の定める評価方法を画一的に適用するという形式的な平等を貫くことによって,かえって実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかな場合に認められるものであって,当該財産について潜在的な価格変動要因がある場合に限られない。納税者の一連の行為により意図的に相続税の租税負担を軽減させるこ とは,本来相続税法の予定するところではなく,法の趣旨目的に反するものであって,それが実質的な租税負担の公平を著しく害するのであれば,そのような納税者の主観的意図についても,評価通達の定めによらずに評価すべき特別な事情の判断における考慮要素となる。 なお,被控訴人は,税負担の軽減を結果としてもたらす行為を阻止する ための根拠又はツールとして評価通達6を適用しているのではなく,租税回避が行われたとして,それが本来相続法の予定するところではなく,法の趣旨目的に反するものであって,実質的な租税負担の公平を著しく害するという場合には,それが特別の事情に該当するとしているにすぎない。 そして,特別の事情がある場合に評価通達6を用いることは租税平等主義 や租税要件明確主義に反しない(東京高裁平成27年4月22日判決・税- 7 -務訴訟資料265号順号12654号)。 ウ本件各不動産は,評価通達の定めによっては適正な時価を適切に評価することができない。本件各不動産につ (東京高裁平成27年4月22日判決・税- 7 -務訴訟資料265号順号12654号)。 ウ本件各不動産は,評価通達の定めによっては適正な時価を適切に評価することができない。本件各不動産については,評価通達の定めによらずに評価することが相当と認められるような特別の事情が認められることから,他の客観的な交換価値と認められる本件各鑑定評価額をその時価として本 件各更正処分がされたのであって,本件各更正処分が相続税法の規定及びその解釈に基づいて行われた適法なものであることは明らかである。 争点②(評価通達6の定める国税庁長官の指示に関する手続上の違法の有無)について(控訴人ら) 評価通達6の適用に当たって「国税庁長官の指示を受けて評価する」として国税庁長官の指示を要件とした趣旨は,手続法上の平等取扱原則(憲法14条)を担保し,評価通達の恣意的な使い分けを防止するという憲法上の適正手続の保障にある。評価通達の例外規定である評価通達6を適用するに当たっては,納税者に対する十分な手続保障が不可欠であり,国税庁長官の指 示は,憲法上の適正手続の保障の要請と位置付けなければならない。そのため,課税処分を行う行政庁に対しても厳格な手続要件の履践を強制し,事前に国税庁長官の指示を受けた場合に限り,評価通達6による課税が対外的にも効力を認められると解すべきである。 しかるに,本件各更正処分において,処分行政庁は,国税庁長官の指示を 待たず,その約1年前に不動産鑑定会社2社に本件各不動産の鑑定評価を依頼し,鑑定評価書を入手しており,評価通達が行政先例法としての地位を占めていることからすると,その違反は重大な法的瑕疵といえる。 (被控訴人)評価通達6の適用の有無は,鑑定等によって評価額を算定しなければ判断 おり,評価通達が行政先例法としての地位を占めていることからすると,その違反は重大な法的瑕疵といえる。 (被控訴人)評価通達6の適用の有無は,鑑定等によって評価額を算定しなければ判断 することができないのが当然であり,本件でも,本件各通達評価額が適当で- 8 -あるか否かを確認するために,国税庁長官への本件上申の前に鑑定評価が実施された。処分行政庁は,その後,国税庁長官への本件上申を行って,その指示(本件指示)を適切に受けているのであるから,本件各更正処分について,評価通達6の国税庁長官の指示に係る手続上の瑕疵が存在しないことは明らかである。 また,評価通達6の「国税庁長官の指示」は行政組織内部における指示,監督に関するものと解すべきであり,この規定に反することが直ちに国民の権利,利益に不利益を与えるものとはいえないから,その指示の有無によって本件各更正処分の効力が影響を受けるものと解することはできない。 ⑶ 争点③(本件各更正処分等の理由の提示に関する違法の有無)について (控訴人ら)本件各更正処分等の理由としては,本件各通知書において,処分行政庁指定の不動産鑑定士による本件各鑑定評価額を唯一絶対的な時価であるとして,本件各申告における本件各通達評価額との開差が3倍ないし4倍あることのみが記載されるにとどまっており,評価通達6の適用要件を充足することの 具体的な理由が述べられていない。また,本件上申に係る上申書には,本件各土地に係る一連の行為が過度の節税に該当するのでこれ否認したい旨が記載されていたところ,本件各通知書の記載はこれと齟齬があることからすると,通常一般人の視点からみて処分行政庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由提示制度の趣旨を充たしていないことは明らかである。 ていたところ,本件各通知書の記載はこれと齟齬があることからすると,通常一般人の視点からみて処分行政庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由提示制度の趣旨を充たしていないことは明らかである。 (被控訴人)本件各更正処分等の通知書には,本件各更正処分等の理由として,処分行政庁が,相続財産の評価に係る法令解釈等を踏まえ,本件各通達評価額と本件各不動産の取得価額及び譲渡価額(本件各取引額)並びに本件各鑑定評価額との間には,著しい価額のかい離があり,本件各不動産の価額を評価通達 の定めにより評価することが著しく不適当であると認定した上で,国税庁長- 9 -官の指示に基づいて本件各不動産の価額の評価を行い,本件各更正処分等をした旨が記載されており,本件各更正処分等の理由が理由提示制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示されていると認められるから,理由の提示として欠けるところはない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,本件各更正処分について,本件各不動産に係る相続税法22条に規定する時価を,評価通達の定めによって評価した本件各通達評価額とせず,本件各鑑定評価に基づく本件各鑑定評価額としたことは適法であり,また,控訴人らの主張する国税庁長官の指示の有無は,本件各更正処分の効力を左右するものではなく,さらに,本件各更正処分等については,行政手続法1 4条1項本文の趣旨が求める程度に理由が提示されているものと認められるから,本件各更正処分等は適法であり,これらの取消しを求める旨の控訴人らの請求はいずれも棄却すべきものと判断する。その理由は,次のとおり補正し,後記2において当審における当事者の主張に対する判断を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」第3・1ないし5(原判決19頁17行目から29頁1 のと判断する。その理由は,次のとおり補正し,後記2において当審における当事者の主張に対する判断を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」第3・1ないし5(原判決19頁17行目から29頁1 4行目まで。別紙2及び各別表を含む。)に記載のとおりであるから,これを引用する。 ⑴ 原判決20頁10行目の「評価通達の定める」から同頁12行目の「認められる限り,」までを削る。 原判決20頁16行目の「評価対象の財産に」から同頁20行目の「解さ れるのであって,」までを削る。 原判決20頁25行目の「他方,」の次に「評価通達に定められた評価方法によるべきであるとする趣旨が上記のようなものであることからすると,」を加える。 ⑷ 原判決21頁2,3行目の「租税負担の実質的な公平を著しく害すること が明らかである特別の事情(評価通達6参照)がある場合には,」を「実質- 10 -的な租税負担の公平を著しく害し,法の趣旨及び評価通達の趣旨に反することになるなど,評価通達に定められた方法によることが不当な結果を招来すると認められるような特別の事情がある場合には,」と改める。 ⑸ 原判決22頁11行目の「これらに加え,」を「一方,」と改める。 ⑹ 原判決22頁22行目の「をも勘案すれば,」を「などからすると,本件 各鑑定評価額及び本件各取引額とかい離する」と改める。 ⑺ 原判決22頁23行目の「(本件相続開始時」から同頁25行目の「有すること)」までを削る。 ⑻ 原判決22頁26行目末尾に「そして,本件各不動産の価額の相違により,原判決別表4の「各人の合計」の「相続税の総額」欄のとおり,2億400 0万円を超える課税額の差が生じている。」を加える。 ⑼ 原判決23頁3行目末尾に「むしろ」を加える。 ⑽ 原判決25頁7 判決別表4の「各人の合計」の「相続税の総額」欄のとおり,2億400 0万円を超える課税額の差が生じている。」を加える。 ⑼ 原判決23頁3行目末尾に「むしろ」を加える。 ⑽ 原判決25頁7行目末尾に「そして,このような事情は,本件各不動産について,評価通達の定める評価方法によっては適正な時価を適切に算定することができず,実質的な租税負担の公平を著しく害し,法の趣旨及び評価通 達の趣旨に反することになるなど,評価通達に定められた方法によることが不当な結果を招来すると認められるような特別の事情の存在を示すものといえる。」を加える。 ⑾ 原判決25頁8行目の「以上にみた事実関係の下では,」を「以上のとおり,本件各通達評価額が,本件各鑑定評価額,本件各取引額及び本件乙不動 産売却額と相当程度かい離していることに加え,これによって,相続税額にも相当額の差を生じており,これらについて,本件被相続人及び控訴人らが意図してあえて実行したものと認められることからすると,本件各不動産については,評価通達の定めによって適正な時価を適切に算定することが困難であると認めるのが相当であるから,」と改める。 ⑿ 原判決25頁12行目の「租税負担の」から同頁14行目末尾までを「実- 11 -質的な租税負担の公平を著しく害し,法の趣旨及び評価通達の趣旨に反することになるなど,評価通達に定められた方法によることが不当な結果を招来すると認められるような特別の事情がある場合に当たるものと認められるから,評価通達の定める方法以外の他の合理的な方法によって評価することが許されるものと解される。」と改める。 ⒀ 原判決26頁4,5行目の「租税負担の実質的な公平を著しく害することが明らかである特別の事情があるか否かという観点」を「実質的な租 って評価することが許されるものと解される。」と改める。 ⒀ 原判決26頁4,5行目の「租税負担の実質的な公平を著しく害することが明らかである特別の事情があるか否かという観点」を「実質的な租税負担の公平を著しく害し,法の趣旨及び評価通達の趣旨に反することになるなど,評価通達に定められた方法によることが不当な結果を招来すると認められるような特別の事情がある場合に当たるか否かという観点」と改める。 ⒁ 原判決26頁5,6行目の「原告らの上記主張はその前提を異にするものである。」を「控訴人らの上記主張は,その前提となる解釈を採用することができないものである。」と改める。 ⒂ 原判決26頁14行目の「評価通達は」から同頁17行目末尾までを「評価通達6の「国税庁長官の指示」は,行政組織内部における指示,監督に関 する定めと解すべきであり,これに反することが直ちに国民の権利を害したり,不利益を与えたりするものとはいえないから,その指示の有無は評価通達6による更正処分等の効力に影響を与えるものとは解されない。」と改める。 ⒃ 原判決27頁6行目の「前掲最高裁平成23年判決参照」を「最高裁平成 23年判決参照」と改める。 2 当審における当事者の主張に対する判断⑴ 争点①(本件相続開始時における本件各不動産の時価)についてア控訴人らは,財産を評価通達の定めによらずに評価する要件である「特別の事情」については,処分行政庁のみならず,納税者にとっても,その 要件に該当する評価根拠事実を特定することができる程度の一般化した判- 12 -断基準が示されていなければ,時価評価の予測可能性と法的安定性を害し,租税法律主義に違反すると主張する。 しかし,相続によって取得した財産の価額は,当該財産の取得の時における た判- 12 -断基準が示されていなければ,時価評価の予測可能性と法的安定性を害し,租税法律主義に違反すると主張する。 しかし,相続によって取得した財産の価額は,当該財産の取得の時における時価によるということは,相続税法22条によって定められており,評価通達でも,評価通達1⑵において,財産の価額は,時価によるものと し,時価とは,課税時期において,それぞれの財産の現況に応じ,不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい,その価額は,評価通達の定めによって評価した価額によるとした上で,評価通達6において,評価通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産については,評価通達の定めによって評価 されない場合があることを定めていることからすると,相続により取得した財産について,本判決において付加訂正の上で引用する原判決(以下「原判決」という。)の「事実及び理由」第3・1⑴(原判決19頁18行目から21頁4行目まで)で説示するような場合に,評価通達の定める評価方法以外の方法によって評価した価額を当該財産の時価とすることについ て,それがどのような場合であるかについて通達等によってあらかじめ示されていなかったからといって,租税法律主義に違反するものとは解されない。 よって,控訴人らの上記主張を採用することはできない。 なお,付言するに,原判決の「事実及び理由」第3・1⑵(原判決21 頁5行目から25頁18行目まで)で判示するように,本件甲不動産通達評価額は2億0004万1474円,本件乙不動産通達評価額は1億3366万4767円であるところ,本件被相続人が本件相続開始の約3年半前に本件甲不動産を購入した額は8億3700万円であり,その約2年半前に本件乙不動産 万1474円,本件乙不動産通達評価額は1億3366万4767円であるところ,本件被相続人が本件相続開始の約3年半前に本件甲不動産を購入した額は8億3700万円であり,その約2年半前に本件乙不動産を購入した額は5億1900万円であって,こうした事 実に照らすと,控訴人らにおいて,本件各通達評価額が時価とかい離して- 13 -いることを想定することは,可能であったというべきであり,本件各更正処分等が時価評価の予測可能性を侵害しているとはいい難い。 イ控訴人らは,時価評価に全く影響しない相続開始前後の事情や租税回避又は租税負担の減少の意図などは,財産を評価通達の定めによらずに評価する要件である「特別の事情」に当たらず,租税回避の否認のための特段 の規定もない以上,評価通達6を租税回避措置の否認のために用いることは租税法律主義に反するなどと主張する。 しかし,相続法22条の規定する財産の時価の判断において,相続開始前後の事情を考慮することができないとの控訴人らの主張を採用することができないことは,原判決の「事実及び理由」第3・1⑶(原判決25頁 19行目から26頁6行目まで)で説示するとおりである。 また,本件における被控訴人の主張や本件各通知書の記載によれば,処分行政庁は,飽くまで,本件各通達評価額と本件各鑑定評価額との間の著しいかい離から,本件各不動産を評価通達の定めによって評価することが著しく不適当であるなどとして,本件各不動産を評価通達の定めによって 評価しないものとしたのであって,単に税負担の軽減を結果としてもたらす行為を阻止するために評価通達6を適用したものとは認められないから,控訴人らの主張はその前提を誤るものというべきである。 その他,控訴人らは,自らの主張の根拠として最高裁平成23年2月1 もたらす行為を阻止するために評価通達6を適用したものとは認められないから,控訴人らの主張はその前提を誤るものというべきである。 その他,控訴人らは,自らの主張の根拠として最高裁平成23年2月18日判決(裁集民236号71頁)の存在を指摘するが,同判決の事案は 本件とは事案を異にするものであり,同判決が判示するところは本件に妥当するものとは認められない。 したがって,控訴人らの上記主張を採用することはできない。 ウ控訴人らは,本件各不動産に係る本件各鑑定評価額と本件各通達評価額との3ないし4倍の開差について,特に異常なものではなく,本件各 不動産の周辺の同種又は類似する物件についても同じく普遍的に存在す- 14 -ることからすると,本件各不動産についての「特別」な事情とはいえず,本件各不動産を評価通達の定めによって評価しない「特別の事情」に当たらないと主張する。 しかしながら,上記の開差は,それ自体が大きなものと認められるし,それによって生ずる税額の差や,本件被相続人及び控訴人らが,あえて, 本件各不動産の購入及び本件被相続人の本件相続開始時の残債務に係る各借入れ(本件各借入れ)が近い将来発生することが予想される本件被相続人の相続において控訴人らの相続税の負担を減じ又は免れさせるものであることを知り,かつ,それを期待して,本件各不動産の購入及び本件各借入れを企画して実行し,その結果,本件各借入れ及び本件不動 産の購入がなければ,本件相続に係る課税価格は6億円を超えるものであったにもかかわらず,本件各通達評価額を前提とする本件各申告による課税価格は2826万1000円にとどまり,基礎控除により本件相続に係る相続税は課税されないことになることなどからすると,原判決の「事実及び理由」第3・1⑵ウの第1段 額を前提とする本件各申告による課税価格は2826万1000円にとどまり,基礎控除により本件相続に係る相続税は課税されないことになることなどからすると,原判決の「事実及び理由」第3・1⑵ウの第1段落(原判決25頁8行目から 14行目まで)で説示するとおり,本件各不動産については,評価通達の定める評価方法によっては適正な時価を適切に算定することができないものと認められ,評価通達の定める評価方法によって評価した価額を時価とすることは,かえって租税負担の実質的な公平を著しく害することが明らかであると認められる。しかるに,控訴人らの提出する証拠(甲 15の①ないし③,21,23)によっても,本件各不動産の周辺の同種又は類似する物件についても同じく普遍的に存在するとまでは認められない。 また,仮に,本件各不動産の周辺の同種又は類似する物件について,評価通達の定めによる評価と実際の取引額等の間に本件各不動産と同様 の開差が生じる可能性がある物件が存在し,あるいは,実際,同様の開- 15 -差が生じているのに評価通達による課税がされた物件が存在したとしても,そのような物件が存在することによって,直ちに,本件各不動産について評価通達の定めによらずに評価したことが租税平等の原則に違反する違法なものになるとは認められない。 したがって,控訴人らの上記主張を採用することはできない。 また,控訴人らは,相続税に係る財産評価は,相続財産の評価であり,将来収益を見込むフローの財産評価ではなく,相続開始時点の財産評価であり,土地について路線価を,建物については固定資産評価基準に基づく固定資産評価額を,採用することが合理的であると評価通達が定めているのであって,本件鑑定評価額は評価における根本的な考え方が異 なるので,両者 路線価を,建物については固定資産評価基準に基づく固定資産評価額を,採用することが合理的であると評価通達が定めているのであって,本件鑑定評価額は評価における根本的な考え方が異 なるので,両者を比較して開差が大きいとすること自体が不合理であると主張する。 しかし,原判決の「事実及び理由」第3・1⑵アbの第2段落(原判決23頁23行目から24頁1行目まで)で説示するとおり,相続税法22条に規定する時価,すなわち当該財産の客観的な交換価値は,不 特定多数の当事者間で自由な取引が行われた場合に通常成立すると認められる価額をいうものと解されるところ,収益還元法を用いた本件各鑑定評価額もこの価額に相当し得るものであるから,その価額と本件各通達評価額を比較してその開差を考慮することが不合理なものであるなどとは認められない。 したがって,控訴人らの上記主張を採用することはできない。 エ控訴人らは,本件相続開始前後の本件各不動産に係る一連の取引は,Gの次世代への事業承継のための経営効率の改善を目的としたものであって,租税回避を目的としたものではなかったと主張する。 しかし,先にも判示したとおり,処分行政庁は,飽くまで,本件各通達 評価額と本件各鑑定評価額との間の著しいかい離から,本件各不動産を評- 16 -価通達の定めによって評価することが著しく不適当であるなどとして,本件各不動産を評価通達の定めによって評価しないものとしたのであって,単に税負担の軽減を結果としてもたらす行為を阻止するために評価通達6を適用したものとは認められないから,控訴人らのこの点についての主張は先の判断を左右できない。この点を措くとしても,本件被相続人及び控 訴人らは,本件各不動産の購入及び本件各借入れを,本件被相続人及びGの事業承継 められないから,控訴人らのこの点についての主張は先の判断を左右できない。この点を措くとしても,本件被相続人及び控 訴人らは,本件各不動産の購入及び本件各借入れを,本件被相続人及びGの事業承継の過程の一つと位置付けつつも,それらが近い将来発生することが予想される本件被相続人の相続において控訴人らの相続税の負担を減じ又は免れさせるものであることを知り,かつ,それを期待して,あえてそれらを企画して実行したと認められ,これを覆すに足りる証拠は見当た らないことは,原判決の「事実及び理由」第3・1⑵イ(原判決24頁3行目から25頁7行目まで)で説示するとおりである。 したがって,控訴人らの上記主張を採用することはできない。 争点②(評価通達6の定める国税庁長官の指示に関する手続上の違法の有無)について 控訴人らは,処分行政庁が,国税庁長官の指示を待たず,その約1年前に不動産鑑定会社2社に鑑定評価を依頼し,鑑定評価書を入手していることが,「国税庁長官の指示を受けて評価する」とした評価通達6に違反するものであって,これが手続上の重大な法的瑕疵に当たると主張するが,評価通達6の定める国税庁長官の指示の有無が本件各更正処分の効力に影響を与えるも のではないことは,原判決の「事実及び理由」第3・2(原判決26頁9行目から19行目まで)で説示するとおりである。また,控訴人らは,評価通達6の「国税庁長官の指示を受けて評価する」という定めをもって,国税庁長官の指示を受けた後に鑑定等による評価を行うべきことを定めたものであることを前提として,本件各更正処分等における評価通達6の適用に係る手 続が評価通達6の定めに違反すると主張するようであるが,評価通達6は,- 17 -評価通達6に基づいて評価を行って課税処分をすることを て,本件各更正処分等における評価通達6の適用に係る手 続が評価通達6の定めに違反すると主張するようであるが,評価通達6は,- 17 -評価通達6に基づいて評価を行って課税処分をすることを国税庁長官の指示に係らしめたものであって,課税庁が国税庁長官の指示に先立って鑑定等を実施することを禁止したものとは解されない。したがって,控訴人らの主張は,評価通達6の解釈を誤るものであって,採用できない。 ⑶ 争点③(本件各更正処分等の理由の提示に関する違法の有無)について 控訴人らは,本件各通知書には,本件各鑑定評価額と本件各申告における本件各不動産の評価額との開差が3倍ないし4倍あることが記載されるにとどまっており,評価通達6の適用要件を充足することの具体的な理由が述べられていないから,本件各更正処分等の理由の提示は違法であると主張するが,本件各更正処分等の理由の提示に関する違法が認められないことは,原 判決の「事実及び理由」第3・3⑵及び⑶(原判決26頁23行目から28頁9行目まで)で認定,説示するとおりである。控訴人らは,本件各通知書に記載された本件各更正処分等の理由と本件上申に係る上申書の記載との齟齬も問題とするが,当事者に示された理由提示の内容と行政庁の内部文書の内容との違いをもって当該理由提示が違法なものになるという主張は,控訴 人独自のものであって採用することができない。よって,控訴人らの主張を採用することはできない。 3 その他,控訴人らは種々主張するが,前記認定,判断を左右するものはない。 第4 結論 よって,原判決は相当であり,本件各控訴は理由がないから,これらをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第1民事部 裁判長 よって,原判決は相当であり,本件各控訴は理由がないから,これらをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 主文 東京高等裁判所第1民事部 裁判長裁判官深見敏正 裁判官菊池絵理 裁判官齊藤充洋 (別紙1、別紙2省略)
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