主文 一申立人の相手方法務大臣に対する申立てを却下する。 二相手方東京入国管理局主任審査官が申立人に対して平成一一年六月一日付けで発付した退去強制令書に基づく執行は、その送還部分に限り、本案事件(当庁平成一一年(行ウ)第一二六号在留期間更新不許可処分等取消請求事件)の第一審判決の言渡しまで停止する。 三申立人の相手方東京入国管理局主任審査官に対するその余の申立てを却下する。 四申立費用中、申立人と相手方法務大臣との間に生じたものは、申立人の負担とし、申立人と相手方東京入国管理局主任審査官との間に生じたものはこれを二分し、その一は申立人の負担とし、その余を相手方東京入国管理局主任審査官の負担とする。 理由 第一当事者の申立て一申立ての趣旨 1 相手方法務大臣が申立人に対し平成一一年四月六日付けでした在留期間更新不許可処分の効力を本案訴訟(当庁平成一一年(行ウ)第一二六号在留期間更新不許可処分取消等請求事件)の第一審判決の言渡しがあるまで停止する。 2 相手方東京入国管理局主任審査官が申立人に対し平成一一年六月一日付けで発付した退去強制令書発付処分の執行を本案訴訟の第一審判決の言渡しがあるまで停止する。 二相手方らの意見 1 相手方法務大臣申立人の相手方法務大臣に対する申立てを却下する。 2 相手方東京入国管理局主任審査官申立人の相手方東京入国管理局主任審査官に対する申立てを却下する。 第二本件処分に至る経緯等本件記録によれば、以下の事実が一応認められる。 一申立人は、昭和四三年に中華人民共和国(以下「中国」という。)において出生した中国国籍を有する外国人である。 二申立人の入国及び在留状況等 1 申立人は、平成四年三月二三日、中国・上海から新東京国際空港に到着し、東京入国管理局(以下「東京入 中国」という。)において出生した中国国籍を有する外国人である。 二申立人の入国及び在留状況等 1 申立人は、平成四年三月二三日、中国・上海から新東京国際空港に到着し、東京入国管理局(以下「東京入管」という。)成田支局入国審査官に対し上陸申請し、右同日、入国審査官から、出入国管理及び難民認定法(以下「法」という。)別表第一所定の在留資格「就学」、在留期間「六月」とする上陸許可を受け、本邦に上陸した。 2 申立人は、平成四年三月二四日、東京都豊島区長に対し、外国人登録申請をし、同年四月八日、外国人登録証明書の交付を受けた。 3 申立人は、平成四年八月二五日、平成五年三月三日及び同年九月一日、相手方法務大臣に対し、在留期間更新許可申請をし、それぞれ在留期間を六月とする更新許可を受けた。 また、申立人は、平成五年三月三日及び同年九月一日、相手方法務大臣に対し、資格外活動許可申請をし、右同日、右許可を受けた。 4 申立人は、平成六年三月二二日、相手方法務大臣に対し、在留資格「留学」への在留資格変更許可申請をし、同月二九日、在留資格「留学」、在留期間一年とする変更許可決定を受けた。 5 東京入管における記録では、申立人は、平成六年六月七日、法務大臣に対し、再入国許可を申請し、同日、右許可を受け、同年六月一五日、新東京国際空港から香港に向けて出国したこととされているが、当該再入国許可による再入国の事実は記録されていない。また、申立人は、当該出国の事実を否定している。 6 申立人は、平成六年一二月一九日、旧旅券を紛失したため、駐日本中国大使館より新旅券の発給を受けたとして、新旅券の在留資格変更許可印の転記の願い出をし、同日、右転記を受けた。 7 申立人は、平成七年三月一五日、同年九月二一日及び平成八年二月一六日、相手方法務大臣に対し、在留期間更新許可申 受けたとして、新旅券の在留資格変更許可印の転記の願い出をし、同日、右転記を受けた。 7 申立人は、平成七年三月一五日、同年九月二一日及び平成八年二月一六日、相手方法務大臣に対し、在留期間更新許可申請をし、それぞれ在留期間を六月とする更新許可を受けた。 8 申立人は、平成八年三月七日、長男Aを出産し、同年四月二三日、相手方法務大臣に対し、Aに係る在留資格取得許可申請をし、同年五月八日、同人につき、在留資格「家族滞在」、在留期間一年とする取得許可を受けた。 9 申立人は、平成八年九月一七日、相手方法務大臣に対し、在留期間更新許可申請をし、在留期間を六月とする更新許可を受けた。また、申立人は、平成九年三月一九日及び平成一〇年一月一九日、相手方法務大臣に対し、在留期間更新許可申請をし、それぞれ在留期間を一年とする更新許可を受けた。 10 前項による在留更新許可により、申立人の在留期限は、平成一一年三月二三日となっていたところ、申立人は、平成一一年一月一四日、相手方法務大臣に対し、在留期間更新許可申請をした。 これに対し、法務大臣は、不法残留容疑で違反調査を受けた申立外Bの供述等に基づき、申立人が第三者の不法出入国をほう助した嫌疑があると認め、同年四月六日付けで、申立人の在留状況が好ましいと認められないことを理由として、右申請を不許可とする処分(以下「本件不許可処分」という。)をし、同年四月一四日、これを告知した。 三退去強制令書発付に至る経緯 1 東京入管入国警備官は、平成一一年四月一四日、東京入管主任審査官が発布した同日付け収用令書を執行し、申立人を東京入管第二庁舎収容場に収容した。 2 東京入管入国審査官は、違反調査をし、平成一一年四月二八日、申立人が法二四条四号ロに該当する旨の認定をし、これを通知した。その後、特別審理官は、申立人の請求 東京入管第二庁舎収容場に収容した。 2 東京入管入国審査官は、違反調査をし、平成一一年四月二八日、申立人が法二四条四号ロに該当する旨の認定をし、これを通知した。その後、特別審理官は、申立人の請求に基づき口頭審理をし、同年五月一一日、申立人が法二四条四号ロに該当する旨の判定をし、これを通知した。 3 申立人は、相手方法務大臣に対して、異議の申出をしたところ、相手方法務大臣は、平成一一年五月三一日、申立人からの異議申出については理由がない旨の裁決をし、同日、これを告知した。 4 相手方東京入管主任審査官は、平成一一年五月三一日、申立人に対して本件退去強制令書(以下「本件退令」という。)を発付した(以下、これを「本件退令発付処分」という。)。東京入管入国警備官は、同年六月一日、これを執行し、申立人を前記収容場に引き続き収容した。 第三当事者の主張一本件申立ての理由は、別紙執行停止申立書及び執行停止申立書補充書記載のとおりである。 二相手方らの意見は、別紙意見書、意見書(二)及び同(三)記載のとおりである。 第四当裁判所の判断一申立人の相手方東京入管主任審査官に対する本件申立ての適法性について 1 相手方らは、本件申立ての本案訴訟において、本件不許可処分の取消しを求める請求と本件退令の取消しを求める請求とは、行政訴訟法(以下「行訴法」という。)一三条一項の各号に該当する関連請求に当たらないから、これらを併合して訴えを提起することはできず、本件退令発付処分の取消しを求める請求に係る訴えは不適法であって、各請求は独立の訴えとして取り扱われるべきものであるところ、各独立の訴えに対する執行停止の申立てもそれぞれ別個にされるべきものであるから、本件のように一個の申立てにおいて申し立てることはできないと主張する。 2 そこで検討するに、法は、在 のであるところ、各独立の訴えに対する執行停止の申立てもそれぞれ別個にされるべきものであるから、本件のように一個の申立てにおいて申し立てることはできないと主張する。 2 そこで検討するに、法は、在留期間更新不許可処分がなされた場合、当然に退去強制手続が開始されることを予定するものではないが、本件は、本件不許可処分の結果、法二四条四号ロ(「在留期間の更新を受けないで在留期間を経過して本邦に残留する者」)該当性の嫌疑が生じた申立人に対して、右嫌疑が認められて本件退令発付処分がされたという事案であるから、本件各請求は、事実に関する争点が相当程度共通し、かつ、各請求の基礎となる社会的事実が同一ないし密接に関連するということができ、本案訴訟において各請求を併合審理すれば審理の重複と裁判の矛盾抵触を回避できることは明白である。そうすると、本案訴訟における右各請求は、行訴法一三条一項六号の「その他当該処分又は裁決の取消しの請求と関連する請求」に該当するというべきであり、本件退令発付処分の取消しを求める請求が不適法であるということはできない。 したがって、本件申立てが不適法であるとする相手方らの主張は、その前提を誤ったものであるから、これを採用することができない。 二本件不許可処分の執行停止について 1 本件不許可処分の執行停止を求める申立てが不適法か否かについて(一) 相手方法務大臣は、本件不許可処分の執行停止を求める申立てが不適法であると主張するところ、この点に関する相手方法務大臣の主張の要旨は、以下のとおりである。 (1) 一般に、申請に対してこれを不許可とし、あるいは拒否する行政処分については、それ自体何ら積極的な内容を有しておらず、その効力を停止してみても、単に当該行政処分がなされていない状態、すなわち申請時の状態に戻るに止まり、それ以上 許可とし、あるいは拒否する行政処分については、それ自体何ら積極的な内容を有しておらず、その効力を停止してみても、単に当該行政処分がなされていない状態、すなわち申請時の状態に戻るに止まり、それ以上に行政庁に対する申請が認められたのと同一の状態が形成されることにはならないから、執行停止の申立ての利益を欠くと解される。 (2) 在留期間の更新許可申請に対する不許可処分が行われた本件についても、右と別異に解すべき理由はなく、仮に本件処分の効力が停止されたとしても、停止の時点から将来に向かって不許可処分の効力がない状態に置かれるだけであって、不許可処分の効力の停止により許可があった状態が形成されるわけではないから、申立人は、本件処分の効力の停止を求める法的利益を有しないものといわなければならない。 すなわち、法は在留期間の更新許可申請に対して、法務大臣がこれを許可することによって初めて外国人の当該法律上の地位が形成されるとの立法政策をとっており、したがって、在留期間の更新許可申請状態にあることでもって何らかの法的保護が認められるというものではなく、当該申請者が同申請時に有している在留資格及び在留期間には何ら変化はないから、在留期間の経過により退去強制手続が開始されることに変わりはない。 (二) そこでこの点について検討するに、申請に対してこれを不許可とする行政処分の執行停止決定は、行政庁に対して、当該執行停止決定の趣旨に従った処分をし直す義務を課すものではなく、在留期間更新不許可処分の効力が停止されても、そのことから当然に、外国人が法務大臣の許可なしに本邦に在留する権利を取得するということはできず、単に、不許可処分がなかったのと同じ状態、すなわち、在留期間更新の申請がなされた状態が作出されるに止まるものであると解される。 ところで、在留期間 本邦に在留する権利を取得するということはできず、単に、不許可処分がなかったのと同じ状態、すなわち、在留期間更新の申請がなされた状態が作出されるに止まるものであると解される。 ところで、在留期間の更新を受けようとする外国人は、在留期間の満了する日までに法務大臣に対し文書をもって更新許可の申請をしなければならず、法務大臣は当該外国人が提出した文書により、在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときはこれを許可することができることとされていること(法二一条一項ないし三項、出入国管理及び難民認定法施行規則二一条一項)に徴すれば、法は、在留外国人に対して在留期間更新許可の申請権を認め、これに対応して適法な在留期間更新の申請に対しては許否いずれかの処分をなすべきことを法務大臣の義務としているのであって、在留期間更新許可の申請をした者は、その申請が権利の濫用にわたるなど特段の事情がない限り、許否いずれかの処分がなされるまでは、たとえ旅券に記載された在留期間が徒過した後においても、不法残留者としての責任を問えないという意味において、本邦に残留することができるものと解するのが相当である。 そうすると、在留期間更新不許可処分の効力の停止は、当該申請人に対して右のごとき法的状態を回復させるものであるから、右不許可処分を受けた者は、その執行停止を申立てる利益を有するというべきである。 右のように解し、右不許可処分について、執行停止を申立てる利益を肯定したとしても、その執行停止は、申立人に対し、法の定めにより在留期間更新申請をした者と同一の法的地位を付与するにすぎず、申立人に対して在留期間の更新が認められたと同一の地位を創設し、あるいは、従前の地位とは異なった新たな地位を実質的に認める効果をもたらすものではない。 (三) 以上によれば、本件不 付与するにすぎず、申立人に対して在留期間の更新が認められたと同一の地位を創設し、あるいは、従前の地位とは異なった新たな地位を実質的に認める効果をもたらすものではない。 (三) 以上によれば、本件不許可処分の執行停止を求める申立てが不適法であるとする相手方法務大臣の主張は採用することができない。 2 本件不許可処分の執行停止につき、「回復困難な損害を避けるための緊急の必要性がある」(行訴法二五条二項)か否かについて(一) この点に関する申立人の主張は以下のとおりである。 (1) 申立人が出国させられるときは、申立人は、本案訴訟の訴えの利益を失い、または事実上本案訴訟の追行の目的を失い、処分の違法を争うことができなくなる。さらに、たとえ本案訴訟において勝訴の確定判決を得たとしても、執行停止前に置かれていた原状を回復し得る制度的な保障がなく、再入国が困難である。これらの損害は、事後的に回復が困難である。 (2) 申立人は、平成七年四月から大東文化大学経済学部に在籍する成績優秀な学生で、平成一一年度に卒業予定であり、既に卒業に必要な単位一二四のうち一一六を取得している。しかし、このまま収容が継続されれば、本年度の授業の履修が不可能となり、仮に本案訴訟で勝訴して処分が取り消されたとしても、既に本年度の授業を受けることができなくなる。 (二) そこで検討するに、申立人の主張する右の損害は、本件不許可処分がなされたことにより直接に生じるものではなく、本件退令が執行されることにより生じるもの又は現に本件退令により収容されていることにより生じるものであって、いずれも、本件退令の執行を直接の原因とする損害であるところ、退去強制令書が既に発付されている本件においては、本件不許可処分の執行を停止することにより回避することが可能な損害であるということはできない。 も、本件退令の執行を直接の原因とする損害であるところ、退去強制令書が既に発付されている本件においては、本件不許可処分の執行を停止することにより回避することが可能な損害であるということはできない。 そして、他に本件において「回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があるとき」に該当する事実の主張及び疎明はない。 (三) 以上によれば、本件不許可処分の執行停止を求める申立ては、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。 三本件退令に基づく収容の執行停止について 1 本件退令に基づく収容の執行停止につき、「回復の困難な損害を避けるため緊急の必要がある」か否かについて(一) 退去強制令書の執行による収容は、退去強制事由(法二四条各号)に該当すると認定された外国人に対して行われるものであって、単に送還のために身柄を確保するのみならず、退去強制令書の発付を受けた者を隔離し、その者の我が国における在留活動を禁止する趣旨をも含むものであると解される。 したがって、法は、退去強制令書の執行による収容により、被収容者が収容に伴う自由の制限や精神的苦痛等の不利益を受けることを当然に予定しているものというべきところ、その不利益が収容に通常伴う程度のものにとどまる限りにおいては、これによる損害は事後的な金銭賠償によって回復が図られるべきであり、退去強制令書の収容部分の執行停止を求める申立てにおいて、行訴法二五条二項にいう「回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があるとき」に該当するというためには、被収容者の身体的状況、収容所の環境その他の理由から、収容が継続されることにより、被収容者が収容に通常伴う程度の不利益を受けるというにとどまらず、収容の継続を不相当とするような特別な損害を被るおそれがあることを要するものと解するのが相当である。 (二) そこで れることにより、被収容者が収容に通常伴う程度の不利益を受けるというにとどまらず、収容の継続を不相当とするような特別な損害を被るおそれがあることを要するものと解するのが相当である。 (二) そこで本件について検討するに、申立人は、前記二2(一)(2)記載のとおり、本件退令による収容により、事後的に回復することが困難な損害を被っている旨主張する。 この点、一件記録によれば、申立人は、日本において経済学等を学ぶことを目的として約七年前に来日し、最初の二年間は日本語学校で日本語を勉強し、城西大学別科で一年勉強した後、大東文化大学経済学部に入学したこと、入学後は、子の出産のため休学した一年間を除いては、勉学を続け、三年次を終了した段階で既に卒業に必要な単位の大部分を取得したこと、専門科目のゼミの担当教授からも日本人学生の模範とされるほどの高い評価を得ていること、大東文化大学では、休学期間は一年以内とし、当該学年限りとすること、特別の事情がある場合には一年を限度として引き続き休学を許可することがあるも、休学期間は通算して四年を超えることができないとされていること(同大学学則三二条)がそれぞれ認められる。 右の事実を基に判断するに、申立人が在籍中の大学において学士号を取得できるかどうかは、申立人の今後の生活に多大な影響を及ぼす事柄であることは否定できないものの、申立人の収容が今後継続され、大学の授業に出席できない状態が一定の期間続いたとしても、当面は、休学制度を利用するなどすれば、直ちに除籍処分を受けることなく、後に単位を追加取得すれば卒業することのできる状態を維持することが可能であるといえるから、申立人が収容に伴い被る損害は、現段階においては、収容の継続を不相当とする特別な損害とまでいうことはできないし、また、当該損害を回避するために本件退令 る状態を維持することが可能であるといえるから、申立人が収容に伴い被る損害は、現段階においては、収容の継続を不相当とする特別な損害とまでいうことはできないし、また、当該損害を回避するために本件退令に基づく収容の執行を停止すべき緊急の必要があるということもできない。 2 したがって、申立人の本件申立てのうち、本件退令に基づく収容の執行停止を求める部分は、「回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があるとき」に該当するとの点の疎明がなく、その余の点について判断するまでもなく、理由がないというべきである。 四本件退令に基づく送還の執行停止について 1 本件退令に基づく送還の執行停止につき「回復の困難な損害を避けるため緊急の必要がある」か否かについて本件において、本件退令に基づき申立人が中国に送還された場合には、申立人と訴訟代理人との間で本案事件の訴訟追行のための十分な打合わせができなくなるなど、申立人が本案事件の訴訟を追行することが著しく困難になることは明らかであり、また、申立人の場合、送還後一年を経過すれば本案事件の訴えの利益がなくなり、本案判決による本来の救済を受けることができなくなってしまうものである。 さらに、仮に申立人が本案事件について勝訴判決を得ても、その送還前に置かれていた原状を回復する制度的な保障はないことをも考慮すれば、申立人は、本件退令に基づく送還の執行により回復の困難な損害を被るものと認められ、本件においては、右の損害を避けるため本件退令に基づく送還の執行を停止すべき緊急の必要があるというべきである。 2 「本案について理由がないとみえるとき」(行訴法二五条三項)に該当するかどうかについて(一) 法所定の在留資格を有する外国人も、当然に我が国で在留を継続する権利を有するものではなく、相手方法務大臣において、在留期間の更 いとみえるとき」(行訴法二五条三項)に該当するかどうかについて(一) 法所定の在留資格を有する外国人も、当然に我が国で在留を継続する権利を有するものではなく、相手方法務大臣において、在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があると判断した場合に在留期間更新の許可が認められるのであり、右の要件が具備されているかどうかは、国内の治安と善良の風俗の維持などの国益の保持の見地から、当該外国人の在留中の行状や国内外の情勢など諸般の事情を総合的に勘案して的確に判断されるべきであり、かかる判断は、事柄の性格上、国内及び国外の情勢について通暁し、出入国管理の衝に当たる相手方法務大臣の裁量に委ねられているものと解される。 しかし、その裁量権の行使が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかなときは、その判断は、法二一条三項により相手方法務大臣に与えられた裁量権の範囲を逸脱し又はその濫用があったものとして違法になるものと解するのが相当である。 そして、在留期間更新申請を不許可とする処分が違法として取り消されるべき場合に、その処分を前提として、法二四条四号ロに該当することを理由としてされた退去強制令書発付処分が違法となることはいうまでもない。 (二) 申立人は、本件不許可処分が違法である根拠として、以下のとおり主張する。 (1) 本件不許可処分は、申立人が第三者の不法出入国をほう助したとの事実認定に基づいて行われているところ、右は事実誤認であるから、本件不許可処分は違法である。 (2) 相手方法務大臣は、右の嫌疑について処分の過程で申立人に対し何らの告知聴聞の機会を与えなかったことは、適正手続保障を欠く。さらに、本件不許可処分の決定書記載の理由において、右嫌疑を明らかにしておらず、法により要求される理由付記の程度を満たしてい 立人に対し何らの告知聴聞の機会を与えなかったことは、適正手続保障を欠く。さらに、本件不許可処分の決定書記載の理由において、右嫌疑を明らかにしておらず、法により要求される理由付記の程度を満たしていない。これらの点でも、本件不許可処分は違法である。 (三) これに対して、相手方法務大臣は、申立人が第三者の不法出入国をほう助した疑いがあると認めた根拠は、以下のとおりであると主張する。 (1) 平成一〇年一〇月七日、東京入管第二庁舎において、不法在留容疑で違反調査を受けたBが、次のとおり供述したこと。 ① Bは城西大学日本語別科において申立人と同じクラスであったことから申立人と面識を得た。 ② Bは、申立人から、同人の旅券を第三者の中国人に使用させて帰国させたいとの依頼を受けたので、平成六年五月及び七月ころの二回にわたり、再入国許可を受けたうえで旅券を申立人に貸し、その謝金として一回につき金一〇万円を受領した。 ③ Bは、申立人から、二回目に貸与した旅券については、第三者が当該旅券を成田空港において提示した際に不正使用が発覚したと聞かされた。 ④ その後、Bは、申立人から教わったとおり、旅券の紛失届を警察に出し、中国大使館から旅券の再発行を受け、証印転記の願い出をした。 (2) 右供述の信憑性を裏付けるものとして、以下の事情が認められること。 ① 申立人とBとが同じ時期に城西大学別科日本文化専修課程に在籍していたこと。 ② Bは、申立人から同人から借受けに係る旅券の使用に関して「一回目は成功したが、二回目は成田空港で出国審査官に見つかったと聞いた」旨供述しているところ、平成六年八月五日、東京入管成田支局において、第三者が変造されたB名義の旅券を行使して出国しようとしたが、外国人登録証明書を所持せず、入国後二年が経過し、在留資格が「留学」となっている いるところ、平成六年八月五日、東京入管成田支局において、第三者が変造されたB名義の旅券を行使して出国しようとしたが、外国人登録証明書を所持せず、入国後二年が経過し、在留資格が「留学」となっているにもかかわらず日本語がたどたどしいことから、事情聴取をしたところ、同人が逃亡したという事件が発生していた事実が認められたこと。 ③ 申立人においても、紛失を理由に中国大使館から新旅券の発行を受け、証印転記の願い出をした経緯があり、また、申立人名義の旧旅券についても第三者による不正使用がされていること(前記第二の二5及び6)。 (3) 申立人名義の旅券紛失の経緯に関する申立人の従来の供述には変遷があること等からして、申立人が不法出国に何らかの形で加担していたことすらうかがえること。 (三) そこで検討するに、申立人は、第三者の不法出入国のほう助の嫌疑を否認しているところ、前記(二)(1)記載のBの供述については、同(2)、(3)の事情を勘案してもなお、その信用性の有無に関して慎重な審理を必要とするというべきである。 してみると、申立人に在留期間更新許可を与えなかった法務大臣の判断には違法がある旨の申立人の主張については、第一審における本案審理を経る余地がないほどに理由がないとまで断定することは困難であり、現段階においては、本件申立てが、「本案について理由がないとみえるとき」に該当すると認めることはできないというべきである。 3 「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき」(行訴法二五条三項)に該当するかどうかについて本件退令に基づく送還の執行停止に関し、相手方が公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとして主張するところは、送還の執行停止による一般的な影響をいうものであって、具体性がなく、本件において、本件退令に基づく送還の執行を 停止に関し、相手方が公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとして主張するところは、送還の執行停止による一般的な影響をいうものであって、具体性がなく、本件において、本件退令に基づく送還の執行を停止すると公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとの事情をうかがわせる疎明はない。 4 以上によれば、相手方東京入管主任審査官に対する本件申立てのうち、本案事件の第一審判決の言渡しがあるまで本件退令に基づく送還の執行停止を求める部分は、理由があるというべきである。 五結論以上によれば、申立人の相手方法務大臣に対する申立ては理由がないからこれを却下し、申立人の相手方東京入国管理局主任審査官に対する申立てのうち、本案事件の第一審判決の言渡しのあるまで本件退令に基づく送還の執行停止を求める部分は理由があるから、これを認容し、その余は理由がないからこれを却下することとし、申立費用の負担について、行訴法七条、民訴法六一条、六四条本文を適用して、主文のとおり決定する。 平成一一年八月六日東京地方裁判所民事第三部裁判長裁判官青●馨裁判官谷口豊裁判官加藤聡
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