平成24(行ケ)10113 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成24年11月29日 知的財産高等裁判所 3部 判決 請求棄却
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判決文本文22,172 文字)

平成24年11月29日判決言渡平成24年(行ケ)第10113号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成24年9月13日判決 原告サクラインターナショナル株式会社 被告ザグッドウェアコーポレイション,インコーポレイテッド 訴訟代理人弁護士鈴木 修同磯田直也同弁理士青木博通 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求特許庁が取消2011-300044号事件について平成24年3月2日にした審決を取り消す。 第2 争いのない事実 1 特許庁における手続の経緯 (1) 被告は,下記商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である。 記登録番号第4660048号出願日平成14年3月8日登録日平成15年4月4日商標別紙記載1のとおり商品及び役務の区分第25類指定商品米国製のスウェットパンツ,米国製のベスト,米国製のティーシャツ,米国製のスウェットシャツ,米国製のその他の被服,米国製のガーター,米国製の靴下止め,米国製のズボンつり,米国製のバンド,米国製のベルト,米国製の履物,米国製の仮装用衣服,米国製の運動用特殊衣服,米国製の運動用特殊靴(2) 原告は,平成23年1月17日,特許庁に対し,本件商標の通常使用権者である大協産業株式会社(以下「大協産業」という。)が本件商標に類似する商標(後記使用商標1~3)を本件商標の 動用特殊靴(2) 原告は,平成23年1月17日,特許庁に対し,本件商標の通常使用権者である大協産業株式会社(以下「大協産業」という。)が本件商標に類似する商標(後記使用商標1~3)を本件商標の指定商品に使用し,その使用は他人の業務に係る商品と混同を生ずるものであるとして,商標法53条1項に基づき,本件商標登録を取り消すことについて審判(取消2011-300044号事件)を請求した(以下「本件審判」という。)。特許庁は,平成24年3月2日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「審決」という。)をし,その謄本は同月6日に原告に送達された。 2 審決の理由審決の理由は,別紙審決書写しのとおりであり,その要旨は次のとおりである。 (1) 使用商標及び使用商品について使用商標1(別紙記載2のとおり)及び使用商標2(「GOODWEAR」及び「グッドウェア」の文字よりなる。)を大協産業が自己の商標として使用しているものということはできない。 使用商標3(別紙記載3のとおり)は,大協産業が自己の商標として,商品「テ ィーシャツ」について使用していたものと認めることができる。 (2) 通常使用権者の使用について大協産業は,本件商標の通常使用権者であると推認することができる。 (3) 商標及び商品の類否ア本件商標と使用商標3は類似する商標ということができる。 イ大協産業は,使用商標3を本件商標の指定商品と同一の商品に使用するものである。 (4) 他人の業務に係る商品との混同について引用登録商標1(別紙記載6のとおり),引用登録商標2(別紙記載7のとおり)及び引用使用商標(別紙記載9のとおり)(以下,総称して「引用商標群」という。)は需要者に広く認識されているものとはいえず,かつ,使用商標1~3と引用商標 り),引用登録商標2(別紙記載7のとおり)及び引用使用商標(別紙記載9のとおり)(以下,総称して「引用商標群」という。)は需要者に広く認識されているものとはいえず,かつ,使用商標1~3と引用商標群は,共通する「Goodwear」の文字部分の意味合い,輪郭線(輪郭部)の有無,書体及び色彩の違い,図形の有無という明らかな差異を有することから,両者の類似性は弱く,使用商標1~3をその使用商品へ使用したとしても,これに接する取引者,需要者が,引用商標群ないしは引用商標権者を連想,想起することはないものというべきであって,使用商品についての使用商標1~3の使用は「他人の業務に係る商品であるかのごとく,商品の混同を生ずるものをしたとき」には当たらない。 第3 当事者の主張 1 取消事由に関する原告の主張審決は,他人の業務に係る商品との混同についての判断を誤り,(取消事由1),品質誤認行為の主張に対する判断を脱漏した(取消事由2)もので,審決の結論に影響を及ぼすから,違法として取り消されるべきである。 (1) 取消事由1(他人の業務に係る商品との混同についての判断の誤り)ア審決は,大協産業による使用商標1~3の使用は商標法53条1項の要件を欠くと判断したが,誤りである。大協産業による使用商標3の使用は,「他人の業務に係る商品との混同」を生ずるものである。 審決には,現実に使用された襟ネーム1(別紙記載4のとおり。使用商標3が表示されている。)と現実に使用された引用商標(襟ネーム1)(別紙記載10のとおり。以下「引用襟ネーム1」という。),引用商標(襟ネーム2)(別紙記載11のとおり。以下「引用襟ネーム2」という。)との混同に対する評価についての判断の誤りがある。 イ比較されるべき本件商標に類似する使用商標と引用商標について ),引用商標(襟ネーム2)(別紙記載11のとおり。以下「引用襟ネーム2」という。)との混同に対する評価についての判断の誤りがある。 イ比較されるべき本件商標に類似する使用商標と引用商標について(ア) 本件商標に類似する使用商標(以下「本件使用商標」という。)は,原告が,大協産業が直接経営するネットショップ「CURRENTPRICE」から平成23年1月14日に購入した商品(甲1)に付された唯一の商標であり,審決において,本件商標の類似の使用と認定されたものである。同商品には「Goodwear®」以外に商標は見当たらない。 (イ) 引用襟ネーム1は,原告及びその元ライセンシー3社により平成11年より使用されていた襟ネームであり,当時の商品(甲2~甲7)に付されたものである。 引用襟ネーム2は,登録番号第5393150号商標(平成22年12月9日出願,平成23年2月25日登録。別紙記載12のとおり)及び登録番号第5429546号商標(平成23年2月15日出願,同年8月5日登録。別紙記載13のとおり)の通常使用権者であるハワード株式会社が平成22年4月より平成23年6月にかけて販売した商品(甲8~甲11)に付されたものである。 原告は,「GoodWear」に関する登録商標群の前権利者ビーグッドカンパニー株式会社より現権利者サクラグループ有限会社に至るまで,同商標群について平成3年から約20年の使用実績を有している。その中でも上記引用襟ネーム1,2に使用されている商標(以下「引用使用商標」という。別紙記載9のとおり)は,原告により,遅くとも平成11年より登録番号4105562号商標(平成8年4月出願,平成10年1月登録。以下「引用登録商標3」という。別紙記載8のとおり)の社会通念上同一の商標(少なくとも類似商標)として現在に至るまで継 成11年より登録番号4105562号商標(平成8年4月出願,平成10年1月登録。以下「引用登録商標3」という。別紙記載8のとおり)の社会通念上同一の商標(少なくとも類似商標)として現在に至るまで継続的に使用されてきたものである。ちなみに,引用登録商標3は,平成20年1月,原告の更新 失念により権利が消滅したが,引用使用商標は,現在に至るまで継続的に使用されていた。 ウ 「GoodWear」の識別力について(ア) 「GoodWear」,「Goodwear」は,いずれも「良い被服」と訳され,第25類で使用される場合は商標法3条1項3号の「商品の品質」を表示するものに該当するとして特許庁によって拒絶査定されている。したがって,単独の登録は不可であり,他の文字,図形との結合商標,又はデザイン性の加味によってのみ登録が可能とされている。 しかし,現実のアパレル業界で,服の品質を「グッドウェア」などと表現することはほぼ皆無であることから,特許庁の判断基準とは異なり,第25類に使用された場合においても,「Goodwear」,「Goodwear」は,その取引者,需要者にとって十分に識別性を有する商標として成立している。 (イ) 本件においては,①一般にアパレルに対する品質表示,品質表現として使用が皆無である「Goodwear」,「Goodwear」という単語を要部として含む商標が類否判断の対象であること,②本件両商標を付した商品の需要者は,商標法に精通している者ではないこと,③実際の使用において,両商標の「Goodwear」,「Goodwear」部分が,ベージュの背景に白枠が施された大きな赤い字という外観的構成において特別顕著性を有し,強く支配的な印象を与える要部となっていること,④現実に,それぞれのブランドが「グッドウェア」と ear」部分が,ベージュの背景に白枠が施された大きな赤い字という外観的構成において特別顕著性を有し,強く支配的な印象を与える要部となっていること,④現実に,それぞれのブランドが「グッドウェア」と称呼され,「Goodwear」,「Goodwear」と記載されて,需要者間で認識されていること等より,「Goodwear」,「Goodwear」が日本訳で商標法3条1項3号に該当することは,需要者にとっての識別性に何ら影響を与えるものではない。 したがって,「Goodwear」,「Goodwear」の識別性が弱いとする審決の判断は,全くの誤りである。 エ本件使用商標と引用使用商標の類似について(ア) 需要者の認識 原告及び被告の両商標権者が各々の登録商標を使用した結果,取引者,需要者間では,共に「グッドウェア」と称呼され,被告の商標は「Goodwear」,「GOODWEAR」などと表記され,原告の商標は「GoodWear」,「GOODWEAR」などと表記されてきた。 その結果,それぞれの取引者,需要者にとっては,「Goodwear」部分及び「GoodWear」部分が,それぞれ識別性を有する商標の要部となった。 (イ) 要部観察a 称呼両商標の称呼は,「グッドウェア」と完全一致である。 b 観念「Goodwear」と「GoodWear」より想起される観念は,「良い被服」であり,一致する。 c 外観本件使用商標は,「Good」と「wear」を結合してなるものである。引用使用商標では,「Good」と「Wear」の間にスペースを挿入しているが,実際の引用使用商標は,正確に表現するなら,「Good」と「Wear」の間に約2mm のスペースがあり,大文字の幅は約6~11mm,小文字の幅は約4~5mm であるので, にスペースを挿入しているが,実際の引用使用商標は,正確に表現するなら,「Good」と「Wear」の間に約2mm のスペースがあり,大文字の幅は約6~11mm,小文字の幅は約4~5mm であるので,大文字換算0.18~0.33スペース,小文字換算0.4~0.5スペースであり,文字間のスペースについては,需要者間では識別性に有意に働く程の意義を有していない。 本件使用商標は,「G」のみが大文字であるが,引用使用商標は,「G」及び「W」が大文字である。しかし,大文字,小文字については,需要者(特に消費者)にとって識別性に有意に働く程の意義を有していない。 本件使用商標は,センチュリーゴシック体を,引用使用商標は,ヒイラギ角ゴシック体をほぼ忠実に使用しているものと思われるが,両書体とも,日常よく目にするありふれた書体であることより,需要者間では字体の差異が識別性に有意に働く程の意義を有していない。 両商標とも,色彩は赤という点で一致し,白の縁取りがされているという点でも 一致する。 以上より総合的に判断して,本件使用商標と引用使用商標のそれぞれの要部である「Goodwear」部分と「GoodWear」部分との外観上の差異はほぼ皆無である。 d まとめしたがって,本件使用商標と引用使用商標は,それぞれの要部である「Goodwear」部分と「GoodWear」部分において,称呼及び観念において完全に一致し,外観においてもほぼ一致するから,社会通念上,酷似するものである。 (ウ) 全体観察a 対比観察取引者,需要者の通常の観察力,注意力をもって判断した場合,本件使用商標が表示された襟ネーム1において,要部以外の部分は,付記的表記であり,商標と判断される部分は存在しない。「ExclusiveformonogramCorp 意力をもって判断した場合,本件使用商標が表示された襟ネーム1において,要部以外の部分は,付記的表記であり,商標と判断される部分は存在しない。「ExclusiveformonogramCorp.」は出所を表示するものとして認識される可能性はあるものの,同一商品の襟ネーム2において同部分は「forT'sCUSTOMMADE」と表記され,異なる表記部分ということで,需要者は同部分を購入する際のメルクマールとはしないとみるのが合理的である。 一方,引用使用商標においては,要部以外に,「G が三角形にデザインされた部分」が存在し,同部分から特に観念は生じないが,「ジー」の称呼を生じる可能性がある。 しかし,20年にわたる使用実績において,引用使用商標が「ジー」,「ジー・グッドウェア」,「グッドウェア・ジー」と称呼され,あるいは表記されたことはなく,実際の需要者間では,「G が三角形にデザインされた部分」よりも「GoodWear」が出所識別機能を有する部分として圧倒的に支持された証左であり,その結果,称呼としても「グッドウェア」のみが定着したという現実がある。したがって,実際の取引者,需要者の通常の観察力,注意力をもって判断した場合,両商標は,ベージュを基調とする襟ネームに出所識別標識として強く支配的な印象を与える一際大きな赤文字でかつ白で縁取りされた「Goodwear」及び「GoodWear」部分の外観上の特別顕著性及び酷似性から,非常に類似していると判断するのが妥当である。 b 隔離的観察最高裁昭和38年12月5日第一小法廷判決(民集17巻12号1621頁)判示のとおり,特に最終需要者である消費者の立場に立った場合,襟ネーム等の商標確認に費やす時間は一瞬であり,大部分の時間は商品自体をチェックすることに費やされる現 判決(民集17巻12号1621頁)判示のとおり,特に最終需要者である消費者の立場に立った場合,襟ネーム等の商標確認に費やす時間は一瞬であり,大部分の時間は商品自体をチェックすることに費やされる現状を考慮したとき,両商標の要部が酷似し強く支配的な印象を与えること,その他の大きな黒字部分(本件使用商標が表示された襟ネーム1においてサイズ表示部分(アルファベット1文字又は2文字),引用使用商標の「G」のアルファベット1文字)があったことを漠然と記憶する程度である。 したがって,隔離的観察によれば,本件使用商標と引用使用商標は,酷似であると判断するのが妥当である。 オ商品の類似について本件使用商標を付した商品は,引用使用商標に係る商品と混同を生じる程度に類似している。 カ実際の混同例(ア) 取引者による混同例甲18には,「大手カジュアルチェーンなどで販売されている日本商社のライセンス生産品ではありません。……米国生産品(当店取扱)と日本商社による中国製ライセンス生産品と多少サイズが異なります」との記載が,甲19には,「実は,日本で販売しているGOODWEAR 商品の多くは,中国のライセンス生産品」との記載がある。 本件商標は,実際に中国製の販売は行っていないので,上記「日本商社による中国製ライセンス生産品」,「中国のライセンス生産品」とは,引用商標の業務に係る商品を指していることとなる(実際に,引用商標の業務に係る商品には,米国製のみならず,中国製,韓国製も多数存在する。)。上記文面からは,「引用商標の業務に係る商品」に関して,「米国法人である被告」が「日本の商社」に使用許諾をしているという記載がなされているが,全く事実無根である。 したがって,上記記載は,出所は別であるが何らかの関係があると誤信する広義 の混同が 米国法人である被告」が「日本の商社」に使用許諾をしているという記載がなされているが,全く事実無根である。 したがって,上記記載は,出所は別であるが何らかの関係があると誤信する広義 の混同が実際に生じている証拠である。 (イ) 消費者による混同例甲20は,消費者による上記(1)の混同例と全く同種の混同例である。 (ウ) 古着屋による混同例甲21は,掲載商品は,引用使用商標に係る商品であるにも関わらず,説明文中では,出所を被告としている混同の例である。 キ広知性について(ア) 審決は,「商標が混同を生ずるおそれがあるとするためには,一般的に,当該他人の商標が広く知られているもの(一定の著名性)でなければならないものと解される」(15頁18行~20行)とした。 しかし,周知,著名と認定される商標のみの保護を商標法53条の保護対象とする考え方は,明文上規定のない要件の加重であり,適切ではない。同条が周知,著名性を要件とするのであれば,約173万件存在する既登録商標中の約千件が対象ということになり,そのような特異なケースのみを本条が想定しているのであれば,きちんとした明文規定が必要である。同条は,登録商標の専用権に付随する禁止権の反射的効果として,使用権の濫用により商標登録制度の根本である商品と出所の対応規律を壊すことに対する制裁であり,需要者の不利益,正当使用者の不利益を回避すべく全ての商標を使用するものへ均等に与えられた権利であると考えるのが妥当である。 したがって,同条の「他人の商標」に広知性を要求することは,商標法の趣旨に反すると解釈するのが適切である。 (イ) また,審決は,引用商標の年間売上げ「2億円ないし10億円」を評して,アパレル業界の規模4.1兆円/年に比して微々たるものと指摘するが,第25類の登録商 反すると解釈するのが適切である。 (イ) また,審決は,引用商標の年間売上げ「2億円ないし10億円」を評して,アパレル業界の規模4.1兆円/年に比して微々たるものと指摘するが,第25類の登録商標だけでも約33万件あり,1商標当たりの売上げは約1250万円/商標/年となり,これと比較しても引用商標の売上げは決して少ないものとはいえない。引用商標の使用実績が約20年にわたることを加味すれば,引用商標群は,日 本全国規模においての広知性とまではいかなくても,少なくとも特定の需要層に対するある程度の広知商標であるといえる。 ク通常使用権者の使用について本件使用商標が付された商品に関する取引のあらましは,①大協産業が,商品の全企画をし,生産の一部を被告に依頼し,被告は,米国における生産仲介業者(ブローカー)として,同企画を米国の第三者生産工場に依頼し,②そこで生産された半製品を日本へ輸出し,大協産業は同製品を輸入し,③大協産業は,日本で被告の許諾の下(乙4),日本の外部加工工場にその半製品を投入し,加工させ,④完成品を仕入れ,⑤日本において卸売し,また,小売直販した,というものであり,上記⑤の販売に際し,「定番のGOODWEAR【グッドウェアー】が発売になりました!!/メイドインU.S.A.を貫きヘヴィーウェイトで頑丈なTシャツを作り続けているブランドです。素材に関しても純アメリカ産の綿素材を使用し,こだわり派なユーザーに多大な評価があるブランドです。今回,カレントプライス(判決注:大協産業の販売店舗名)ではメーカーへ形の依頼をし,日本人の体型に合わせたTシャツを作りました。また,日本国内の優れた工場で後染め加工を施し,各種プリントも揃え完全限定リミテッドなTシャツを作りました。」(「/」は改行を示す。以下同様)との広告宣伝 本人の体型に合わせたTシャツを作りました。また,日本国内の優れた工場で後染め加工を施し,各種プリントも揃え完全限定リミテッドなTシャツを作りました。」(「/」は改行を示す。以下同様)との広告宣伝文句(甲25の4)を付していた。 上記取引のあらましにより,大協産業は,少なくとも本件商標と類似の本件使用商標の通常使用権者であることに疑いの余地はない。正確に表現するなら,この契約は,通常使用権の許諾ではなく,使用権者に対しては禁止権(37条1号)の行使を控えることを約束するだけのものであるが,類似標章の使用に関する限り,通常使用権と同様の効果を有する。したがって,商標法53条の趣旨に照らし,大協産業を本件商標の通常使用権者と擬制すべきである(少なくとも,推定し,そうでないことの証明責任を被告に転換すべきである。)。 (2) 取消事由2(品質誤認行為の主張に対する判断の脱漏)ア判断の脱漏について 審決は,原告が本件審判においてした,本件使用商標が「商品の品質若しくは役務の質の誤認」を生起するとの主張に対する判断の脱漏があり,理由不備は明らかである。 被告は,取消事由2は本訴の審理範囲に含まれるないと主張するが,原告は,特許庁に提出した平成23年8月13日付け上申書(甲27の1)のとおり,品質誤認行為の主張をしているから,被告の主張には根拠がない。 イ品質誤認行為について本件使用商標は,「Goodwear」に「®」を付しているが,「Goodwear」は,登録されていない商標である。日本において,「®」を登録商標表示として使用している例も多く,その様な「®」の使用に際しては傍らに「○○は□□社の登録商標です」と小さく記載されている例も少なくないことから,日本の消費者は,「®」を登録商標表示と理解しているものと容易に推測で いる例も多く,その様な「®」の使用に際しては傍らに「○○は□□社の登録商標です」と小さく記載されている例も少なくないことから,日本の消費者は,「®」を登録商標表示と理解しているものと容易に推測できる。したがって,本件使用商標「Goodwear」に「®」付して使用する行為は,商標法74条にいう登録商標以外の商標に商標登録表示と紛らわしい表示を付する行為(1号)及びその商品を使用する行為(2号)に該当する。 また,商標審査基準の「商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標」によれば,「商標の付記的部分に「JIS」,「JAS」,「特許」,「実用新案」,「意匠」等の文字又は記号があるときは,これらの文字等が補正により削除されない限り本号の規定を適用するものとする」とされている。上記「JIS」,「JAS」,「特許」,「実用新案」,「意匠」等の文字,記号に共通することは,権利の公示を表す付記的表示ということになる。その意味においては,「登録商標」表示も,登録により「商標に関して他人の権利を侵害しないことを商標法に基づき特許庁が保証していること」を想起させ,ある種の権利の合法性を保証するという意味で,それが付された商品の品質及び役務の質を表す表示である。具体的には,「®」が,商標権者又は使用権者によって,指定商品,指定役務に付された登録商標に適正に表示されている限り,「他人の業務に係る商品若しくは役務との混同」による処罰がされな いという合法性が保証されていることを需要者に示すものであり,取引者,需要者に同法上の取引の安全性を保証する効能があり,また,それを付された商標が他人の商標権を侵害しないこと等の合法性を商標法に基づき特許庁が保証していることを需要者に想起させるから,そのような合法性を商品購買の一つの基準とする取引者, 効能があり,また,それを付された商標が他人の商標権を侵害しないこと等の合法性を商標法に基づき特許庁が保証していることを需要者に想起させるから,そのような合法性を商品購買の一つの基準とする取引者,需要者にとっては,「商品の品質若しくは役務の質」を表す表示である。さらに,本件商標のように,商標法3条1項該当商標に対する虚偽表示は,「長年の使用による著名性の獲得」という同条2項の登録要件をクリアーしたということを意味し,登録査定時点で既に一定の知的財産価値を具備していることを商標法が裏付けているとの効果があり,不正競争を惹起する。すなわち,被告は,「Goodwear」の拒絶査定が確定したにもかかわらず,当該拒絶査定された商標に「®」を付すことにより,同商標が,日本の登録商標であると取引者,需要者をして誤認せしめ,品質,サービスが優れた老舗ブランドであると見せかけ,他者の商標に対して優位性を確保することを当初からの目的としていたとしか理解しようがない。 したがって,「Goodwear」に「®」を付した本件使用商標は,商標登録表示に関する虚偽表示及び誤認惹起表示に該当し,その使用は,当該商品の取引の法的安全性という商品の品質の誤認を生じさせるおそれのある行為である。 2 被告の反論(1) 取消事由1(他人の業務に係る商品との混同についての判断の誤り)に対しア引用商標群が周知著名ではないことについて(ア) 審決が判断するとおり,商標法53条に規定する「他人の業務に係る商品との混同」を生じさせるためには,当該他人の業務を示す商標等の表示が広く知られていること(周知ないし著名であること)が必要と解すべきである。実際の裁判例でも,出所の混同を肯定する際に他人の使用商標の周知著名性を認定している(知的財産高等裁判所平成19年2月28日判決・ られていること(周知ないし著名であること)が必要と解すべきである。実際の裁判例でも,出所の混同を肯定する際に他人の使用商標の周知著名性を認定している(知的財産高等裁判所平成19年2月28日判決・判例時報2006号107頁等)。 (イ) 本件において,原告は引用商標群が付された商品の年間売上げが2億ないし10億円に上るとか,引用商標群の使用実績が約20年にわたる等主張しているが, いずれの事実についてもそれらを証する具体的な証拠は一切提出されておらず,引用商標群が広く認識されていたとの事実は証拠上認めることができない。 イ本件使用商標と引用使用商標が類似しないことについて(ア) 「Goodwear」,「GoodWear」の識別力本件使用商標と引用使用商標に含まれる「Goodwear」,「GoodWear」の文字部分は,全体として「良い被服(着るもの)」 程度の意味を持つ英語であり,商品分類第25類の「被服」に含まれる商品との関係では,出所識別力が非常に弱いものである。 このことは,原告が平成22年12月9日に出願した文字商標「GoodWear」(乙1)につき単に商品の品質を表示するにすぎず,自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないとして,商標法3条1項3号により登録を拒絶されている(甲17)ことからも明らかである。その後,原告は,「GoodWear」の文字部分と「G」を模した図形部分を結合させた商標を出願することで初めて商標登録が認められた(乙2,3)。 (イ) 本件使用商標の著名性本件使用商標は,本件商標とともに,日本において周知,著名となっている。すなわち,本件使用商標は,米国商標登録第2,452,350号(甲26の3)にあるように,遅くとも1983年(昭和58年)6月14日より被告によって米国で使 に,日本において周知,著名となっている。すなわち,本件使用商標は,米国商標登録第2,452,350号(甲26の3)にあるように,遅くとも1983年(昭和58年)6月14日より被告によって米国で使用が開始された後,日本では,遅くとも平成2年より現在まで20年以上にわたって本件使用商標を付した商品の販売がされている。この点,上記販売開始直後の平成5年3月17日発行の雑誌「POPEYE」(甲26の4)に株式会社ソーズカンパニーが本件商標及び本件使用商標に係るティーシャツを取り扱っていることが紹介されている。「ファッションブランド年鑑2002年」(甲26の5)には,本件使用商標に係るティーシャツの販売店の一つとして株式会社百又が掲載され,本件商標等の使用に係るティーシャツの年商が同社だけで5億円であることが記載されている。本件商標等の使用に係るティーシャツを扱うのは,上記株式会社百又のみではなく,海外の高級品を集めて販売するいわゆるセレクトショップの代表格 である株式会社ビームスほか,多数の小売店やオンラインショップを通じて販売されてきた(甲18,甲25の2,3,4,9,32等)。また,遅くとも平成16年から現在に至るまで,株式会社ソニークラブ(平成19年より株式会社ライトアップショッピングクラブ)の発行する通信販売カタログ「HD ザ・ヘビーデューティ・カタログ」でも本件商標及び本件使用商標を使用してティーシャツが販売されている(甲26の6~11)。このように20年を超える長年の販売により,本件商標及び本件使用商標は,商品「ティーシャツ」について日本国内で周知,著名となっているものである。 (ウ) 本件使用商標と引用使用商標との類否本件使用商標と引用使用商標とを対比すると,両者は英単語である「good」と「wear」とを含む点で いて日本国内で周知,著名となっているものである。 (ウ) 本件使用商標と引用使用商標との類否本件使用商標と引用使用商標とを対比すると,両者は英単語である「good」と「wear」とを含む点では共通するものの,本件使用商標は「Goodwear」という文字のみからなるのに対し,引用使用商標では「GoodWear」という文字の下にアルファベット大文字の「G」を逆三角形にデザインした図形が表示されている点で,外観上大きく相違する。また,上記文字部分のみに着目してみても,本件使用商標では,「Goodwear」と,両単語の間にスペースを入れることなく,通常の用法に反して両単語を結合して「G」のみを大文字として一語の形で表示しているのに対し,引用使用商標では,通常の用法どおり両単語の間にスペースを入れ,両語の頭文字を大文字にして表示している点で外観上相違する。また,両商標は一見して書体が異なっていることが分かる。 以上のような相違点と,引用使用商標が取引者,需要者に広く認識されてきたとはいえないこと,及び本件使用商標が取引者,需要者の間で周知,著名であったとの事情を考慮すれば,本件使用商標と引用使用商標が示す出所につき誤認混同させるおそれはなく,両商標は類似しない。 ウ通常使用権者の使用について被告は,これまで大協産業に対し,本件商標ないし本件使用商標の使用につき許諾を与えたことはなく,大協産業は本件商標に係る通常使用権者には当たらない。 大協産業は,単に,被告が製造した被告商品を,日本国内に事実上輸入し,販売しているにすぎない。 審決は,被告商品のティーシャツの襟ネームの2枚目裏側に大協産業の表示がされていることから,同社が日本における被告商品の「取扱者(出所)」である旨認定したが(審決13頁),大協産業の表示をしているの 審決は,被告商品のティーシャツの襟ネームの2枚目裏側に大協産業の表示がされていることから,同社が日本における被告商品の「取扱者(出所)」である旨認定したが(審決13頁),大協産業の表示をしているのは,家庭用品品質表示法に基づく要請により,被告商品の品質の表示の責任者として表示しているものである。すなわち,家庭用品品質表示法の運用によれば,日本国の一般消費者が製品の品質を正しく認識できるように日本国内に営業拠点のある事業者の名称及び住所又は電話番号の表示が要求されている(家庭用品品質表示法3条1項,繊維製品品質表示規程3条5号(平成9年10月1日通商産業省告示第558号)等)。しかるに,被告自身は日本国内に支店や営業所を持たないことから,輸入販売業者である大協産業を日本国内の品質表示責任者として表示したものにすぎず,被告商品の出所が大協産業であることを表示したものではない。また,被告商品のティーシャツに付されている襟ネームは,大協産業の表示のあるものを含む2枚とも,被告が米国において商品に付したものである。すなわち,被告は,大協産業より同社の表示のある家庭用品品質表示法の要請に係る方の襟ネームを送らせ,その後米国内において本件使用商標が表示された襟ネームと併せて,被告商品に付した(乙4)。これは,被告として,被告の商品を日本の市場で流通に置くために必要な処置を行ったということである。被告商品の出所は,襟ネームの1枚目表にある本件使用商標が表示しているとおり被告以外にはなく,審決が認定するような,被告において大協産業が日本での被告商品の出所であると意識していた事実は存在しない。 また,審決は,大協産業が被告に対し製品のサイズ等について注文を行ったこと,日本国内で後染め加工を行ったこと,大協産業のホームページ上に「日本総代理店」と表示され と意識していた事実は存在しない。 また,審決は,大協産業が被告に対し製品のサイズ等について注文を行ったこと,日本国内で後染め加工を行ったこと,大協産業のホームページ上に「日本総代理店」と表示されていることを挙げる(審決13頁)。しかしながら,ティーシャツ商品について輸入業者が海外製造業者に対しサイズ等の個別注文を行うことは通常あり得るのであって,注文生産であるがゆえに製造された商品の出所が直ちに注文者とな るものでもなく,かかる事情の存在をもって商品に使用されている商標の使用許諾を与えたということはできない。また,大協産業が後染め加工を行ったとしても,それは被告の了解の下,被告商品の最終仕上げとして行われたものであって,同加工によって被告商品が「大協産業の商品」に変化するわけではない。そうすると,このような事情を根拠として,被告が大協産業に対し商品の出所を示す本件使用商標の使用許諾を与えたということはできない。さらに,「日本総代理店」との表示についても,これが商標の使用許諾の根拠とならないことは明白である。 以上のとおり,大協産業は本件商標ないし本件使用商標に係る通常使用権者に当たるとする審決は,判断を誤ったものといわざるを得ない。 (2) 取消事由2(品質誤認行為の主張に対する判断の脱漏)に対しア取消事由2が本訴訟の審理範囲に含まれないこと本件審判の一件記録を参照しても,原告が「商品の品質若しくは役務の質の誤認」に関する主張を行っていた事実は認められず,審決は「商品の品質若しくは役務の質の誤認」に関する判断を脱漏していない。 原告は,平成23年8月13日付け上申書(甲27の1)において,取消2011-30162号事件(以下「別件審判」という。)における平成23年2月14日付け審判請求書及び平成23年7月19日付け審 原告は,平成23年8月13日付け上申書(甲27の1)において,取消2011-30162号事件(以下「別件審判」という。)における平成23年2月14日付け審判請求書及び平成23年7月19日付け審判事件弁駁書を本件審判(取消2011-300044号事件)にも援用すると表明することによって,「®」表示に起因する「商品の品質若しくは役務の質の誤認」惹起行為を本件審判でも主張していたと主張するようである。しかしながら,商標法上,商標登録取消審判の審理は,審理の併合(商標法56条1項,特許法154条1項)がなされない限り,審判事件ごとに行われることが予定されているから,審決の前提となる主張立証についても事件ごとに行われる必要がある。別の審判事件における取消理由を「援用」すると上申するだけで当該理由を裏付ける主張事実を具体的に明らかにしないのであれば,その理由について当該審判事件では主張されたといえないことは明らかである。 以上から,原告の主張は失当であり,原告主張に係る取消事由2は本訴の審理の 範囲外にある。 イ商標法74条1号,2号違反は「商品の品質若しくは役務の質の誤認」に含まれないこと商標法53条1項は,「指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についての登録商標又はこれに類似する商標の使用であって商品の品質若しくは役務の質の誤認……を生ずるものをしたとき」と規定しており,その文言から,登録商標又はその類似商標の使用によって「商品の」品質若しくは「役務の」質に誤認を生じせしめることを要件としていることが明らかである。これに対して,商標法74条1号,2号は「商標登録表示又はこれと紛らわしい表示を付する行為 」と規定して,「表示」自体の使用行為を規制するものであって,「商品の」品質若しくは「役務の」質と である。これに対して,商標法74条1号,2号は「商標登録表示又はこれと紛らわしい表示を付する行為 」と規定して,「表示」自体の使用行為を規制するものであって,「商品の」品質若しくは「役務の」質とは全く関係がない。よって,商標法74条1号,2号違反の行為が「商品の品質若しくは役務の質の誤認」を生じると解する余地はない。 原告は,合法性という商品の品質,役務の質に関して誤認を生じさせるなどと主張するが,その主張するところも専ら「®」という記号表示の合法性をいうものにすぎず,「商品の」品質若しくは「役務の」質との関連性は何ら明らかにされていない。 よって,原告の主張は失当である。 また,原告は,「JIS」,「JAS」,「特許」,「実用新案」,「意匠」といった文字又は記号を含む商標が商標法4条1項16号に規定する「商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標」に該当すると説明する商標審査基準を引用した上で,上記文字又は記号の全てが「権利の公示を表す付記的表示」と断じて,「登録商標」表示も登録により商標に関して他人の権利を侵害しないことを商標法に基づき特許庁が保証していることを想起させ,ある種の権利の合法性を保証するという意味で,それが付された商品の品質および役務の質をあらわす表示であると主張するが,牽強付会というほかはない。「®」を含む「登録商標」に関する表示が「商品の」品質若しくは「役務の」質に関連しないことは,同審査基準において「登録商標」に関する表示があえて記載されていないことからも明らかである。したがって, この点でも原告の主張は失当である。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(他人の業務に係る商品との混同についての判断の誤り)について(1) 通常使用権者の使用ア審決は,使用商標1,2を大協産業が 主張は失当である。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(他人の業務に係る商品との混同についての判断の誤り)について(1) 通常使用権者の使用ア審決は,使用商標1,2を大協産業が自己の商標として使用しているものということはできないと認定したものであるところ,原告はこの認定を争わないので,以下,使用商標3についての大協産業の使用が通常使用権者の使用に該当するかについて検討する。 イ使用商標3が表示された襟ネーム1は,原告が平成23年1月14日に大協産業の運営するインターネットショップ「CURRINTPRICE」から購入したティーシャツに付された襟ネームに表示されているものであり,同襟ネーム2は,原告が同月13日に同インターネットショップから購入したティーシャツに付された襟ネームに表示されているものである(甲1,甲25の6,7,18,19,21)。 上記襟ネーム1,2が付されたティーシャツの製造,販売は,①大協産業が日本人の体型に合わせたティーシャツを被告に注文し,受注したティーシャツを被告において製造し,②上記襟ネームは,品質表示のための襟ネーム(「濃色の物は,移染する場合があります……タンブラー乾燥はお避けください。」,「コットン0%」,「TAIKYOSANGYO(株)」等が記載されている。)とともに,米国における被告の工場で縫い付け,③被告は,上記工程で完成した製品を日本に輸出し,大協産業において販売する,という方法で行われていた。上記「TAIKYOSANGYO(株)」の表示は,家庭用品品質表示法3条1項,繊維製品品質表示規定(平成9年10月1日号外通商産業省告示第558号)3条5号に基づき,繊維の組成,家庭洗濯等取扱い方法とともに,品質等の表示者としてされたものであると認められる(甲25の3, ,繊維製品品質表示規定(平成9年10月1日号外通商産業省告示第558号)3条5号に基づき,繊維の組成,家庭洗濯等取扱い方法とともに,品質等の表示者としてされたものであると認められる(甲25の3,4,乙4,弁論の全趣旨)。 ウ上記認定事実によれば,襟ネーム1,2は被告において商品に付されたもの であり,大協産業は,上記被告製品の販売者と認められるものの,「TAIKYOSANGYO(株)」の表示は品質等の表示者としてされたものであるから,これらの事実からは大協産業が本件商標の通常使用権者であると推認することはできず,ほかに大協産業が本件商標の通常使用権者であると認めるに足りる証拠はない。 原告は,大協産業は本件商標と類似する本件使用商標の使用を許されたのであるから,大協産業を本件商標の通常使用権者と擬制すべきであるとか,少なくとも推定すべきであると主張するが,襟ネーム1,2は被告において商品に付されたものであることは上記のとおりであるから,原告主張のように解さなければならない理由はなく,採用することができない。 エ以上のとおり,大協産業が,本件商標の通常使用権者として使用商標3を使用したと認めることはできない。 (2) 大協産業が本件商標の通常使用権者と認められない以上,商品「ティーシャツ」の襟ネームにおける使用商標3の使用が商標法53条に該当しないことは明らかであるが,本件事案に鑑み,使用商標3の使用が「他人の業務に係る商品との混同」を生ずるものであるかについて,以下検討する。 ア 「Goodwear」,「Goodwear」の識別力「Goodwear」,「Goodwear」の文字部分は,「good」が「良い」,「wear」が「衣服,着用」等の意味を有する,いずれも親しまれた英語であって,全体として「良 wear」の識別力「Goodwear」,「Goodwear」の文字部分は,「good」が「良い」,「wear」が「衣服,着用」等の意味を有する,いずれも親しまれた英語であって,全体として「良い被服(着るもの)」程の意味合いを容易に認識させるものであるから,当該文字自体は,商品「ティーシャツ」との関係においては,自他商品の識別標識としての機能は弱いものと認められる。 原告は,「GoodWear」等は,原告らの使用の結果,取引者,需要者にとって識別性を有する商標の要部となったと主張するが,そのような事実を認めるに足りる証拠はない。 イ本件使用商標と引用使用商標との類否(ア) 外観 使用商標3は,別紙記載3のとおり,「Goodwear」の文字とその右上に小さく配された「®」の記号からなるものである。引用使用商標は,別紙記載9のとおり,「GoodWear」の文字を横書きした下に,アルファベット大文字の「G」を逆三角形にデザインした図形が表示され,更にその下に「AUTHENTICCLOTHING」の文字を横書きしてなるものであり,「Good」と「wear」の文字部分を共通にするものの,全体の外観は異なるものである。 (イ) 称呼使用商標3は,「Goodwear」の文字から,「グッドウェア」の称呼を生じるものと認められる。引用使用商標は,「GoodWear」の文字から「グッドウェア」の称呼を,「G」を逆三角形にデザインした図形から「ジー」の称呼を,「AUTHENTICCLOTHING」の文字から「オーセンティッククロージング」の称呼を生じるものと認められるから,両者は,「グッドウェア」の称呼を生じる点で一部共通するものである。 (ウ) 観念使用商標3は,「Goodwear」の文字から「良い ティッククロージング」の称呼を生じるものと認められるから,両者は,「グッドウェア」の称呼を生じる点で一部共通するものである。 (ウ) 観念使用商標3は,「Goodwear」の文字から「良い被服(着るもの)」の観念が,「®」の記号から「登録商標」の観念が生じると認められる。引用使用商標からは,「GoodWear」の文字から,「良い被服(着るもの)」の観念が,「AUTHENTICCLOTHING」の文字から,「本物の衣服」,「正統な衣服」程の観念が生じると認められるが,「G」を逆三角形にデザインした図形からは特定の観念が生じるとは認められない。したがって,両者は,「良い被服(着るもの)」の観念を生じる点で一部共通するものである。 (エ) 以上から,本件使用商標と引用使用商標を対比すると,いずれも「グッドウェア」の称呼と「良い被服(着るもの)」の観念を生じる点で一部共通するものの,同文字部分は,商品「ティーシャツ」との関係においては,自他商品の識別標識としての機能は弱いものであることは上記アのとおりであり,また,外観において両者は異なるから,その類似の程度は弱いものというべきである。 ウ引用使用商標の広知性(ア) 原告が混同行為と主張する行為(使用商標3の使用)が行われた平成23年 1月当時において,引用使用商標が原告の業務に係る商品「ティーシャツ」の表示として,当該商品の取引者,需要者の間で広く知られていたと認めるに足りる証拠はない。 原告は,引用商標群の年間売上げが2億円ないし10億円であると主張するようであるが,これを認めるに足りる的確な証拠はない。原告は,引用商標群の宣伝広告状況,売上げ実績等を立証するとして,甲30(A作成の平成24年7月9日付け陳述書),甲31(B作成の平成24年8月2日付け陳述 が,これを認めるに足りる的確な証拠はない。原告は,引用商標群の宣伝広告状況,売上げ実績等を立証するとして,甲30(A作成の平成24年7月9日付け陳述書),甲31(B作成の平成24年8月2日付け陳述書,)甲32(C作成の平成24年8月2日付け陳述書)及び甲33(原告代表者作成の平成24年8月3日付け陳述書)を提出するが,これらは,いずれもその体裁から本件訴訟に提出するために作成された陳述書と認められるところ,そこに記載された販売数量,売上高等についての客観的な裏付け資料を欠くものであり,また,これらの陳述書に添付された雑誌等に紹介された原告製品の写真を見ても,引用使用商標が目立つように表示されたものは見当たらず,これらの証拠から引用使用商標が取引者,需要者の間で広く知られていたと認定することはできない。 (イ) 審決は,「商標が混同を生ずるおそれがあるとするためには、一般的に、当該他人の商標が広く知られているもの(一定の著名性)でなければならないものと解される」(15頁18行~20行)としたものであるところ,原告は,商標法53条の他人の業務を示す表示に広知性を要求することは商標法の趣旨に反すると主張する。しかしながら,当該他人の業務を示す表示が取引者,需要者に広く知られていなければ,当該他人の業務に係る商品との混同は生じ難いから,審決の上記説示が誤りであるということはできない。 エまた,原告は,実際に混同が生じているとして,甲18~21を提出する。 しかしながら,甲18~20の記載をみても,そこに記載された「中国製ライセンス生産品」が原告に関連する商品を示していると特定できる記載はなく,また,甲21は原告商品を被告の商品として紹介するもの(原告商品を被告の商品と混同したもの)であるから,これらの証拠は,いずれも原告主張の混同の 原告に関連する商品を示していると特定できる記載はなく,また,甲21は原告商品を被告の商品として紹介するもの(原告商品を被告の商品と混同したもの)であるから,これらの証拠は,いずれも原告主張の混同の事実を認める ものではない。 オ以上検討したところによれば,本件使用商標と引用使用商標の類似の程度は弱いものであり,かつ,引用使用商標は取引者,需要者の間で広く知られていたと認めることはできないのであるから,使用商標3の使用は,原告の業務に係る商品との混同を生ずるものであると認めることはできない。 (3) したがって,使用商標3の使用について,商品の出所について混同を生じさせるおそれはないとした審決の判断に誤りはなく,取消事由1は理由がない。 2 取消事由2(品質誤認行為の主張に対する判断の脱漏)について(1) 原告は,平成23年8月13日付け上申書(甲27の1)のとおり品質誤認行為の主張をしたが,審決は,同主張に対する判断の脱漏があると主張する。 上記上申書には,「「取消2011-300162号」(判決注:別件審判)に関する下記書類に含まれる請求人の主張・説明の内商標法第53条と関連するものすべて(『®』表示に起因する「商品の品質若しくは役務の質の誤認」惹起行為を含む)を,「取消2011-300044(判決注:本件審判)」に関する補充主張・補充説明として正式に援用致しますので,審査に際してそれらをもご考慮願います。/■ 審判請求書(平成23年2月14日提出)およびその添付書証/■ 審判事件弁駁書(平成23年7月19日提出)およびその添付書証」との記載がある。 しかしながら,本件審判と別件審判とは,別の審判事件であるから,別件審判の主張及び立証を援用すると記載した上申書を提出しただけでは,別件審判の主張及び立証の具 よびその添付書証」との記載がある。 しかしながら,本件審判と別件審判とは,別の審判事件であるから,別件審判の主張及び立証を援用すると記載した上申書を提出しただけでは,別件審判の主張及び立証の具体的内容が明らかではなく,当該主張及び立証が本件審判において提出されたことにはならない。 したがって,品質誤認行為の主張は,本件審判の審理の対象になっていたと認めることはできず,審決に原告主張の判断の脱漏があると認めることはできない。 (2) なお,品質誤認行為の主張は,本件審判の審理の対象になっていたとしても,原告の主張に理由がないことは,以下のとおりである。 使用商標3とほぼ同一と認められる「Goodwear」の文字のみからなる商標は米国 で商標登録されているものの(甲26の3),使用商標3が我が国において商標登録されていないことは,当事者間に争いがない。また,「®」の記号は,登録商標の表示として,主として米国で用いられている記号であるが,我が国においても,登録商標の表示として使用されることも多く,一般の取引者,需要者においても「®」の記号を登録商標の表示として認識することも多いものと認められる(甲25の34~42,弁論の全趣旨)。 商標法53条1項の商品の品質の誤認を生ずる使用とは,商標が指定商品の種類を表示又は暗示する標章を含むものであるときに,指定商品と商標が実際に使用されている商品との間に相違がある場合,商標が表示する商品の品質が虚偽の事実を含む場合等をいうものと解される。しかしながら,「®」の記号を商標に付する行為は,これに接する取引者,需要者に当該商標が登録商標であるとの認識を与えるものの,登録商標であるか否かは,当該商標が付された商品の品質を示すものではないから,未登録商標に「®」の記号を付しても,品質の誤 これに接する取引者,需要者に当該商標が登録商標であるとの認識を与えるものの,登録商標であるか否かは,当該商標が付された商品の品質を示すものではないから,未登録商標に「®」の記号を付しても,品質の誤認を生ずると認めることはできない。 原告は,「®」が付されていることにより,それを付された商標が,「他人の業務に係る商品若しくは役務との混同」による処罰がされないという合法性が保証されていることを示すものであるとか,それを付された商標が他人の商標権を侵害しないこと等の合法性を商標法に基づき特許庁が保証していることを想起させるものであるとか,あるいは,商標法3条2項の登録要件をクリアーしたということを意味し,品質,サービスが優れた老舗ブランドであると見せかけるなどと主張するが,商品「ティーシャツ」の一般の取引者,需要者は必ずしも商標法の規定を認識しているわけではないから,原告主張のように想起すると認めることはできず,また,原告の主張する上記の点は,商品の品質ということはできない。 (3) したがって,取消事由2は理由がない。 3 結論以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,ほかに本件審決には これを取り消すべき違法はない。よって,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官芝田俊文 裁判官岡本 岳 裁判官武宮英子 (別紙) 1 本件商標 2 使用商標1 裁判官武宮英子 (別紙) 1 本件商標 2 使用商標1 3 使用商標3襟ネーム1 襟ネーム2 4 襟ネーム1 5 襟ネーム2 6 引用登録商標1 7 引用登録商標2 8 引用登録商標3 9 引用使用商標 10 引用商標(襟ネーム1) 11 引用商標(襟ネーム2) 12 登録番号第5393150号商標 13 登録番号第5429546号商標

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