平成12(ワ)2936 漁業補償金等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年5月29日 神戸地方裁判所
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判決文本文14,447 文字)

主文 1 参加人と原告との間において,関西国際空港第2期工事について被告が原告名義で配分決定した補償金の内399万2000円,神戸空港工事による漁協補償について被告が原告名義で配分決定した補償金の内821万5000円が参加人に属することを確認する。 2 参加人と被告との間において,関西国際空港第2期工事による漁協補償につき,被告が原告名義で配分決定した補償金の内398万2000円が参加人に属することを確認する。 3 参加人と原告との間において,参加人が別紙目録記載の供託金について還付請求権を有することを確認する。 4 参加人のその余の請求をいずれも棄却する。 5 原告の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は,原告に生じた費用の全て並びに被告及び参加人に生じた費用の各4分の3を原告の負担とし,被告及び参加人に生じた費用の各8分の1を被告の負担とし,被告及び参加人に生じたその余の費用を参加人の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 原告の請求(1) 被告は原告に対し,713万6000円及びこれに対する平成13年1月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 参加人は原告に対し,714万6492円及びこれに対する平成13年10月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 原告と参加人との間において,原告が別紙目録記載の供託金について還付請求権を有することを確認する。 2 参加人の請求(1) 参加人と原告との間において,関西国際空港第2期工事及び神戸空港工事による漁協補償につき,被告が原告名義で配分決定した補償金は参加人に属する ことを確認する。 2 参加人の請求(1) 参加人と原告との間において,関西国際空港第2期工事及び神戸空港工事による漁協補償につき,被告が原告名義で配分決定した補償金は参加人に属することを確認する。 (2) 参加人と被告との間において,関西国際空港第2期工事による漁協補償につき,被告が原告名義で配分決定した補償金は参加人に属することを確認する。 (3) 主文3項同旨第2 事案の概要本件は,以下のとおりの事案である。 ① 原告は被告に対し,被告が原告に対して配分決定をした神戸空港建設工事に伴う漁業補償金の未払金の支払い及びこれに対する訴状送達日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求めている。 ② 原告は参加人に対し,上記未払補償金を含む原告の貯金を参加人が不当に利得していると主張して,その返還及びこれに対する参加人に対する請求と題する書面の送達日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求めている。 ③ 参加人は,被告が原告に対して配分決定した神戸空港建設工事及び関西国際空港第2期工事に伴う各漁業補償金の実際の取得権者は参加人であると主張して,参加人と原告との間で,これらが自己に属することの確認を求めている。 ④ 参加人は,上記関西国際空港第2期工事に伴う漁業補償金の所属について,参加人と被告との間においても,自己に属することの確認を求めている。 ⑤ 原告と参加人は,上記関西国際空港第2期工事に伴う漁業補償金を被告が供託したため,互いに,その還付請求権の確認を求めている。 1 争いのない事実等(1) 当事者参加人は漁師である。 国際空港第2期工事に伴う漁業補償金を被告が供託したため,互いに,その還付請求権の確認を求めている。 1 争いのない事実等(1) 当事者参加人は漁師である。 原告は,中学校を卒業した平成6年3月から,参加人の従業員として働き始めたが,平成12年8月に退職した。 被告は,組合員が協同して経済活動を行い,漁業の生産能率を上げ,もって組合員の経済的,社会的地位を高めることを目的とする協同組合である(乙1)。 参加人は被告の組合員であり,原告は被告の準組合員である。 ただし,原告は,被告から,平成14年1月16日,準組合員の資格を喪失した旨の通知を受けている(乙17)。 (2) 被告には,漁業補償の交渉,補償金の受領,組合員に対する適正公平な配分等を目的とする漁業損失補償金規約(以下「補償金規約」という)がある。 補償金の配分に関する補償金規約の規定は概ね次のとおりである(乙4)。 ア漁業補償交渉及び補償金配分の適正を期するため,その都度,漁業補償配分委員会(以下「配分委員会」という)を設置する(3条1項)。 イ配分委員会は,受領した補償金を適正かつ公平に配分するため,次の基準により配分の算定を行う。 当該補償金の交渉,配分に要する経費,組合への出資金及び納税引当金…20%個人配分額…80%ウ組合員補償金の配分額は,次の区分に従い,当該補償金の場所,条件等を考慮して配分委員会でその比率を決定する。 (ア) 組合員割組合員割の算出は,次の区分に従い,当該補償の場所,条件等を考慮して,配分委員会でその該 条件等を考慮して配分委員会でその比率を決定する。 (ア) 組合員割組合員割の算出は,次の区分に従い,当該補償の場所,条件等を考慮して,配分委員会でその該当項目及び比率を決定する。 a 組合員均等割正組合員を1点,準組合員を0.3点として算出した総点数で除して得た金額を1点当たりの金額とし,各々の点数に1点当たりの金額を乗じた金額とする。 b 組合員年功割正組合員期間1年を1点,準組合員期間1年を0.3点として算出した総点数で除して得た金額を1点当たりの金額とし,各々の点数に1点当たりの金額を乗じた金額とする。 c 漁業権行使割漁業権行使料の納付状況を勘案して配分委員会で定める。 (イ) 総水揚実績割(以下「実績割」という)補償解決日前3か年の漁業収益高を基礎とし,次の算式により計算して得た額の比率により算出する。 間接影響額=1か年平均漁業収益高×間接影響率総水揚実績割額÷間接影響額合計=総水揚実績配分率間接影響する漁業種類及び間接影響率はその都度配分委員会で定める。 漁業収益高とは,組合水揚台帳による漁業種類別水揚額から当該漁業の経費を控除した額である(漁業種類毎の経費の率又は額は配分委員会で定める)。 (ウ) 依存度実害割(以下「依存度割」という)補償解決日前3か年の漁業収益高を基礎とし,次の算式により計算して得た額(依存額)の比率により算出する。 (ウ) 依存度実害割(以下「依存度割」という)補償解決日前3か年の漁業収益高を基礎とし,次の算式により計算して得た額(依存額)の比率により算出する。 依存額=1か年平均漁業収益高×直接依存率依存度実害割額÷依存額合計=依存度配分率直接依存する漁業種類及び直接依存率は,その都度委員会で定める。 依存度実害割の受領者は総水揚実績割と併せて配分されるものとする。 総水揚実績割と依存度実害割の計算については正組合員と準組合員の取扱いは同等とする。 (3) 関空2期工事の漁業補償金平成11年3月ころ,関西国際空港2期工事に伴う埋め立て工事補償金について,交渉が成立し,許可漁業の操業利益消滅の補償金が支払われることになった(甲9)。配分委員会は,原告の配当金(以下「関空2期補償金」という)を次のとおり合計432万5000円と決定した。 組合員割均等割 56万3000円年功割 11万0000円実績割 166万8000円依存度割船曳網 232万0000円魚曳調整 -6000円前渡金 -33万0000円合計 432万5000円(4) 関空2期補償金の供託しかしながら,関空2期補償金の受領権限について,原告と参加人との間に争いがあるため,被告はその支払いを留保し,平成13年6月2 2万5000円(4) 関空2期補償金の供託しかしながら,関空2期補償金の受領権限について,原告と参加人との間に争いがあるため,被告はその支払いを留保し,平成13年6月22日,関空2期補償金を,神戸地方法務局に対し,被供託者を原告又は参加人として供託した(供託番号平成13年度金第1281号)。 (5) 神戸空港工事の漁業補償金平成12年2月10日,神戸市が施行する神戸港ポートアイランド沖建設事業及び関連事業の実施により許可漁業等が制限,消滅することになり,これによって生じる損害に対して補償金が支払われることになった(甲9)。 配分委員会は,原告の配当金(以下「神戸空港補償金」という)を次のとおり合計1280万6000円と決定した。 組合員割均等割 127万1000円年功割 28万1000円地区調整(均等割) 303万9000円実績割 253万1000円依存度割曳縄・一本釣 5000円船曳網 567万9000円合計 1280万6000円(6) 神戸空港補償金の流れ被告は,神戸空港補償金を,原告名義の被告普通貯金口座(以下「本件原告口座」という)に振込送金した。同口座は参加人が原告名義で被告に開設し,通帳及び届出印を保有するものであった。 参加人は,平成12年8月1日,原告に電話して,上記補償金を受け取りにくるよう連絡したと 振込送金した。同口座は参加人が原告名義で被告に開設し,通帳及び届出印を保有するものであった。 参加人は,平成12年8月1日,原告に電話して,上記補償金を受け取りにくるよう連絡したところ,原告の父が出向いて来た。参加人は,神戸空港補償金1280万6000円の中から567万円のみを原告の父に交付した。 その後,原告は,神戸空港補償金が567万円を上回る額であることを知り,平成12年8月8日,被告に赴いて,本件原告口座の残高714万6492円全額を引き出した。 同日の午後,被告の従業員であるAが参加人と共に,原告が留守中の原告宅に赴き,原告の両親に対して,原告が本件原告口座から引き出した金員は参加人のものであると説明して返金を受けた。 被告は,平成12年8月10日,原告の両親から回収した上記714万6492円を参加人の普通貯金口座に振り替えた。 その後,原告は参加人に対して,上記714万6492円の返還を求めたが,参加人はこれに応じない。 2 争点(1) 本件補償金の権利者は原告か,参加人かア原告の主張本件各補償金の受領権者は原告であって,参加人ではない。 原告は,漁業従事者であり,被告もこれを認めて原告に対する配分額を決定している。 参加人は従業員には補償金を受領する権利がないと主張するが,そのような慣習は存在しない。 本件漁業補償は,将来における損失補填として支給されるものであり,現時点で従業員であるとしても,将来は独立して漁業に従事することが予定されているのであるから,原告に配分決定されることに何ら問題はない。 参加人は, 填として支給されるものであり,現時点で従業員であるとしても,将来は独立して漁業に従事することが予定されているのであるから,原告に配分決定されることに何ら問題はない。 参加人は,実績割及び依存度割については,従業員である原告には固有の水揚げがないから請求できないという。しかし,組合員資格審査基準によれば,準組合員の資格要件の一つとして,水揚げ基準額は200万円以上あるものとされており,「船主が乗組員に給与を支払った場合その支払った額を船主の水揚げから減額する」とされているのであるから,従業員が船主から取得した給与は準組合員の水揚げとして計上すべきである。原告は,従業員として漁業に従事し,参加人の水揚げに寄与しているのであり,水揚高がないとはいえない。 補償金は個々の組合員に当然に帰属するのではなく,法人としての協同組合に帰属するのであり,個々の組合員は総会の特別決議によって決定された配分額を受領する権利を有するに過ぎない。そして,規約によれば,準組合員も補償金配分の権利が認められる以上,準組合員である原告が補償金の受領権限を有することは明らかである。 許可漁業の操業利益の消滅に伴う損失が組合員個人に属するものであるとしても,個々の組合員が具体的に補償請求権を有するものではない。関西空港,神戸空港の建設に伴い,一定の操業禁止地域が発生し,漁民の水揚高等に損失が生じるが,その損失をどう算出するかは難しい問題であり,操業禁止地域で操業できなくなった漁民が他の地域で操業することにより,他の漁民の水揚高が減少することにもなり,準組合員であっても,水揚げの減少による影響のみならず,将来正組合員になった後も操業地域の制限により影響を受ける。このように,影響は広範であり,個々の損失を確定すること 揚高が減少することにもなり,準組合員であっても,水揚げの減少による影響のみならず,将来正組合員になった後も操業地域の制限により影響を受ける。このように,影響は広範であり,個々の損失を確定することは不可能である。そこで,漁民の共同組織体であり,その社会経済的地位の向上を図ることを目的とする被告が,個人に属する利益に関し,団体協約を締結する独自の権限が与えられるのである。そして,被告は,全体の利益を考慮して,適正な配分をも組合の権限としてなし得るのである。すなわち,被告は,独自の団体協約締結権に基づき,補償契約を締結し,補償金を受領し,配分したのであって,組合員個人は,被告組合の決定した配分額を受領する権利を有するに過ぎない。 仮に許可漁業の操業利益の消滅が組合員個人に属するとしても,本件各補償金については,被告作成の漁業損失補償金規約に基づき,準組合員を含む全組合員が委任状を組合に提出し,漁業補償の交渉,補償金の受領,配分に関する権限を組合長に委任しており,各組合員は上記補償金規約により決定された配分額に従い,補償金を受領する権利を有するに過ぎない。そして,同規約には,準組合員についても,正組合員と差はあるが,補償金を配分する旨規定されている。 参加人は,昭和61年に作成された漁業損失補償金規約の存在を承知の上で,原告を準組合員にしたのであり,一定の水揚高を原告の水揚高として計上している。従って,補償金問題が発生すれば,準組合員である原告にも配分がなされることを容認していたというべきである。 イ参加人の主張本件各補償金の受領権者は参加人であって,原告ではない。 本件補償金はいずれも被告の共同漁業権消滅による補償ではなく,大阪湾沿岸各漁協が締 イ参加人の主張本件各補償金の受領権者は参加人であって,原告ではない。 本件補償金はいずれも被告の共同漁業権消滅による補償ではなく,大阪湾沿岸各漁協が締結した「大阪湾協定」に基づく入会漁業すなわち許可漁業利益の消滅に対する補償である。従って,受領権限を有するのは,漁業を営む者,漁業許可を受けた経営者であって,従業員に過ぎない原告は,漁業権,許可漁業の対価である補償金を受領する権利を有しない。 許可漁業の補償金の交渉を漁業組合が行うのは,個人での交渉,妥結が難しいことに鑑み,補償交渉の集団的処理の必要性,配分の公平性の担保等の観点から,許可漁業権者が組合に対し,補償の交渉,妥結及び契約の締結,補償金の受領,組合員に対する適正かつ公正な配分を委任したものである。原告が主張するような,独自の団体協約を締結する権限を与えられており,その独自の権限で協約を締結できるというものではない。 他人に雇用される,しかも極めて若年の従業員が,従事する仕事がたまたま漁業であったというだけで2000万円に近い漁業補償金を請求する権利があるなど,常識的にも到底是認できない。 被告の配分委員会による準組合員に対する補償金の配分は形式的なものであって,実際は,親方が取得することを当然の前提として,親方に支払い,親方が乗り子にどう分配するかは,親方の裁量に委ねる。 原告は,参加人の従業員として給与の支払いを受けながら漁業に従事していた者で,漁業者ではなく,神戸空港工事,関空工事により失う何らの操業利益もない。工事により何らの損失も受けない者,すなわち補償金の権利者でない者が,補償金の交渉,妥結,配分の委任をすることはできない。また,受任者に過ぎない 戸空港工事,関空工事により失う何らの操業利益もない。工事により何らの損失も受けない者,すなわち補償金の権利者でない者が,補償金の交渉,妥結,配分の委任をすることはできない。また,受任者に過ぎない被告が補償金の権利者を決定することもできない。 準組合員は,本来組合員とすべきでないものに組合の施設を利用させることが適当な場合に,便宜上組合員と同一に扱っている者であって,漁業上何らかの権利を有するかどうかとは無関係である。 仮に,原告が,組合員割(組合員均等割と組合員年功割)を受領する権利があるとしても,実績割と依存度割については受領権を有しない。これらは,補償解決日前3か年の漁業収益高を基礎とし,当該工事による間接影響率や直接依存度を乗じて計算される。ところが,原告名義で計上された9パーセントの水揚高は,実際は参加人が上げたものである。参加人は,被告組合において,準組合員が正組合員になるためには,5年間一定額の水揚げがあることが条件とされていたため,原告に正組合員の資格を得させようと考えて,平成8年度以降,自分の水揚高の9パーセントを原告の水揚げとして計上してきたのである。なお,原告は,参加人が原告に支払った給与をもって,準組合員の水揚げとして計上すべきであるというが,およそ会社や事業主に雇用されている人間で,会社や事業主の収益の一部を自らの売上げと称する者はいない。 (2) 被告の参加人に対する支払いによる免責の有無ア被告の主張被告は,上記争いのない事実のとおり,平成12年8月10日,原告から回収した神戸空港補償金の一部713万6000円を含む714万6492円を参加人の普通貯金口座に振り替えた。 仮に,参加人に神戸空港補償金の受領権 ,平成12年8月10日,原告から回収した神戸空港補償金の一部713万6000円を含む714万6492円を参加人の普通貯金口座に振り替えた。 仮に,参加人に神戸空港補償金の受領権限がないとしても,参加人と原告の親方と乗り子の関係や,参加人が原告名義口座を開設し管理していたことなどから,被告は,参加人について,原告の行う金銭授受,申告,その他事務に関する全てにわたって原告の世話をし,代理をしているものと認識していた。従って,被告が,参加人が受領権を有すると信じるのは無理からぬところであって,参加人は表見的代理受領権者に該当し,債権の準占有者に対する弁済として有効である。 イ原告の認否反論参加人が債権の準占有者に当たるという主張は否認する。 (3) 当事者の請求ア原告の請求原告は,被告に対し,神戸空港補償金1280万6000円のうち,原告が未受領の713万6000円及びこれに対する平成13年1月13日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。 また,原告は,参加人に対し,参加人が本件原告口座から振替送金を受けた714万6492円及びこれに対する参加人に対する請求と題する書面を送達した日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。 さらに,原告は,原告と参加人との間において,被告が供託した関空2期補償金について,原告が還付請求権を有することの確認を求める。 イ参加人の請求参加人は,参加人と原告との間において,関空2期補償金及び神戸空港漁協金が参加人に属することの確認を求める。 有することの確認を求める。 イ参加人の請求参加人は,参加人と原告との間において,関空2期補償金及び神戸空港漁協金が参加人に属することの確認を求める。 参加人は,参加人と被告との間において,関空2期補償金が参加人に属することの確認を求める。 参加人は,参加人と原告との間において,被告が供託した関空2期補償金について,参加人が還付請求権を有することの確認を求める。 第3 争点に対する判断 1 証拠(甲12,13,原告本人,参加人本人及び以下に掲げる証拠)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 参加人は,現在,兵庫県海面における,いわし・いかなご船びき網漁業,さより船びき網漁業,ひきなわ漁業について,兵庫県知事から許可を得て,所有する12トンの動力船1隻と,長男他の共同経営者が所有する動力船2隻を使用して,船曳網漁を営んでいる(丙1ないし6,16ないし21)。 参加人は,平成6年3月,鷹取中学校から紹介を受けて,中学校を卒業したばかりの原告を従業員として雇い入れた。原告は,漁船に乗り込み,いわし,いかなご,ちりめん漁における船上作業や荷役作業,のりの養殖作業等に従事した。給与は,当初,月15万円(給与1か月分の賞与が年2回有り)であったが,その後1か月25万円まで上昇した。 参加人は,原告を被告の準組合員にするために,平成7年3月27日,準組合員の登録に必要な特別賦課金30万,出資金20万円,加入金10万円の合計60万円を原告に代わって被告に支払ったほか(丙7の1・2),4級の海事免許を取得させるために原告を講習に通わせ,講習費約16万円を負担するなどした。また,被告において準組合員が正組合員になるには,5年間連続して に代わって被告に支払ったほか(丙7の1・2),4級の海事免許を取得させるために原告を講習に通わせ,講習費約16万円を負担するなどした。また,被告において準組合員が正組合員になるには,5年間連続して,漁船漁業において400万円以上の水揚高があることが条件と定められているため(組合員資格審査基準・乙3),参加人は,原告が将来正組合員になり,漁業者として独立できるようにと考え,平成8年度から,水揚げの9パーセント相当額が自動的に原告の水揚げとして計上されるよう被告における手続をした。 参加人は,平成9年10月17日,本件原告口座を被告に開設し(乙7),同口座の通帳,届出印を所持した。 平成9年12月,被告において,原告に対する六甲南アイランド補償金の配分が決定された。内訳は,均等割が104万円,年功割が1万5000円の合計105万5000円であった(甲1の2)。同補償金は本件原告口座に振り込まれ,参加人はこれを原告に全て交付した(乙7)。 平成10年12月11日には,神戸製鋼所火力発電所建設工事の補償金74万3000円が本件原告口座に振り込まれたため,参加人はこれを引き出して原告に交付した(丙15)。 平成11年8月5日,9日には,関空2期補償金の前払金33万円が本件原告口座に振り込まれたため,参加人はこれを引き出して原告に交付した(丙15)。 平成11年10月25日,関空2期補償金432万5000円がいったん本件原告口座に振り込まれたが,翌日同振込が取り消された(これは,参加人が,同補償金の全体額から組合経費として支払われる組合長の報酬額が多額であるとして,被告に対し異議を述べていたことによるものであると推認される)(丙15)。 平成12年7月24日には,神戸空港補償金1 全体額から組合経費として支払われる組合長の報酬額が多額であるとして,被告に対し異議を述べていたことによるものであると推認される)(丙15)。 平成12年7月24日には,神戸空港補償金1280万6000円が本件原告口座に振り込まれた。参加人は,関空2期補償金と神戸空港補償金のうち,年功割と均等割に相当する部分について原告に交付しようと考えたが,関空2期補償金については,個人配分表の交付を被告から受けておらず,年功割と均等割の金額がわからなかったので,二つの工事の年功割と均等割の合計金額を600万円と概算し,そこから既に交付した関空2期補償金の前払金33万円を控除した567万円を平成12年7月31日に本件原告口座から引き下ろして用意し,平成12年8月1日,原告に電話して,上記補償金を受け取りにくるよう連絡したところ,原告の父が出向いて来たので,同金員を原告の父に交付した。 原告は,神戸空港補償金の額が,他の人が受け取った金額と比べるとあまりにも少ないため,平成12年8月8日,被告に問い合わせたところ,1280万6000円が配分決定されていることを知り,同日被告に赴いて,信用部の職員に抗議し,通帳のないまま本件原告口座の残高714万6492円全額を引き下ろしてしまった。被告は,同貯金引出しに問題があると判断し,被告の信用部長Aが,参加人を連れて原告宅に赴き,原告が留守中であったため,原告の両親に対して714万6492円の返還を求め,同額の返金を受けた(甲12,乙20)。 被告は,平成12年8月10日,原告の両親から回収した上記714万6492円を参加人の普通貯金口座に振り替えた(乙15,丙15,16,20)。 2 以上の事実を前提に,原告が本件補償金の受領権限を有するかどうかを検討する。 (1) 収した上記714万6492円を参加人の普通貯金口座に振り替えた(乙15,丙15,16,20)。 2 以上の事実を前提に,原告が本件補償金の受領権限を有するかどうかを検討する。 (1) 参加人は,許可漁業の制限の補償金の場合,従業員に過ぎない準組合員にはおよそ受領権限はない旨主張する。 そこで検討するに,補償金規約は,1条において,「この規約は,組合が受有する総ての漁業権の消滅,変更,放棄及び許可,自由漁業並びに入漁関係等あらゆる漁業の制限,休止等により被る損失に対する漁業補償の交渉,妥結及び契約の締結,補償金の受領並びに組合の運営,組合員に対する適正且つ公平なる配分を行うことを目的とする」とその目的を規定しており,許可漁業の制限の場合の補償金を含めて組合員に対する適正かつ公平な配分を目的として定めていることが認められる。 また,確かに,許可漁業権自体は事業主個人のものであると認められるけれども,雇用主がこれを喪失し,水揚げが減少することによって,従業員である準組合員についても,給与が減少したり,将来その許可漁業権を取得できなくなったり,取得しても従前より水揚げが減ったりするという損害を被る可能性がある。そこで,被告の組合員全員が,本来は個人の利益である許可漁業に対する補償の場合も含めて,配分規定に服する旨の団体協約を締結し,正組合員,準組合員の大小様々な損失を調整,補償する見地から,補償金を公正に配分するために,補償金規約を締結したものと解することが可能である。 従って,許可漁業に対する補償金の場合,従業員である準組合員はおよそ受領権限を有しないという参加人の主張する解釈を採ることはできない。 そうすると,本件における原告の受領権限の有無については,個々の配分 対する補償金の場合,従業員である準組合員はおよそ受領権限を有しないという参加人の主張する解釈を採ることはできない。 そうすると,本件における原告の受領権限の有無については,個々の配分基準に関する補償金規約の規定の解釈によって決するしかないというべきである。 そこで,以下,かかる観点から補償金規約の規定を検討する。 (2) 均等割,年功割について補償金規約は,均等割の場合,正組合員を1点,準組合員を0.3点として算出した総点数で除して得た金額を1点当たりの金額とし,各々の点数に1点当たりの金額を乗じた金額とすること,年功割の場合,正組合員期間1年を1点,準組合員期間1年を0.3点として算出した総点数で除して得た金額を1点当たりの金額とし,各々の点数に1点当たりの金額を乗じた金額とすることを定めている(21条)。 以上のとおり,補償金規約は,均等割,年功割のいずれについても,準組合員について何ら条件を付けずに一律に受領権限を認めた上で,均等割,年功割については正組合員との間に1対0.3という画一的な基準による差を設けているに過ぎない以上,これらの規定の解釈としては,均等割,年功割については,準組合員であれば一律に受領権限を有するものと解するのが妥当である。参加人は,従業員である準組合員は,本来,組合員割による配分を受領する権限がなく,親方から恩恵的に給付を受けることができるに過ぎない旨主張するが,上記のような均等割,年功割に関する規定の仕方に照らすと,そのような解釈を取ることはできない。 もっとも,本件においては,上記認定のとおり,原告の準組合員の登録手続を参加人が行い,これに必要な費用60万円等も参加人が負担したことが認められる。しかし,そうであるから きない。 もっとも,本件においては,上記認定のとおり,原告の準組合員の登録手続を参加人が行い,これに必要な費用60万円等も参加人が負担したことが認められる。しかし,そうであるからといって,原告が準組合員であることが否定されるわけではないから,これらの事情は,原告が組合員割による配分を受領することについての妨げにはならないというべきである。 (3) 実績割,依存度割について補償金規約は,実績割,依存度割のいずれについても,正組合員と準組合員を区別せず,補償解決日前3か年の漁獲収益高を基礎として計算する旨規定しているのであって(23,24条),このことからすると,準組合員であっても実績割,依存度割の受領資格を有するものの,自ら漁業を営み,一定の漁獲高があることが条件であると解される。そして,証拠(乙2,27,証人B)によれば,準組合員の中には,自ら漁業を営む(従って,水揚げが減少すれば収入も減少する)者もいれば,従業員として漁業に従事する(従って,水揚げが減少しても一定の給与収入が得られる)者もいることが認められ,後者については,自らの漁獲高ということ自体があり得ないのであるから,従業員に過ぎない準組合員は,実績割,依存度割の受領権限を有しないと解すべきである。 もっとも,神戸空港補償金の個人配分表(甲1の2)によれば,原告について,平成8年から10年にかけて,毎年平均366万8000円の漁獲高が計上されていたことが認められるが,それは,前記認定のとおり,参加人が,原告に将来正組合員の資格を得させるための,自らの漁獲高の9パーセントが原告の漁獲高になるように被告に申告していたことによるものであって,実態を伴わないものであるから,これをもって原告の漁獲高と認めることはできない。 を得させるための,自らの漁獲高の9パーセントが原告の漁獲高になるように被告に申告していたことによるものであって,実態を伴わないものであるから,これをもって原告の漁獲高と認めることはできない。 以上の次第で,参加人に雇用される従業員であり,自らの漁獲高を有さない原告については,実績割,依存度割による補償金の配分を認めることはできない。 そうすると,原告について配分決定された,実績割,依存度割による補償金は,補償金規約に反する根拠のないものであって,むしろ,これらの配分を受け得るのは,実際に漁獲収益を上げた参加人であると認められる。 これに対して,被告の参事であるCは,一般的に準組合員であっても水揚げがあり,それによって生活している旨,従業員には実績割,依存度割がないというのは参加人の独自の見解である旨供述する(甲9)。しかしながら,同供述は個人的な意見の域を超えるものとは認められないし,反対尋問を経てもいないものであるから,これを根拠に,従業員である準組合員であっても水揚げがあると認めることはできない。また,D及びEは,「自分たちは正組合員又は準組合員のひとりです。親方に雇われ給料をもらっていますが,配分額どおり被告から補償金をもらいました」という陳述書(甲14)を提出する。しかしながら,証人Bの証言及び同人の供述聴取書(乙27)によれば,Dは正組合員であり,Eは準組合員ではあるが,いずれも「当たり」と呼ばれる立場であって,実際の水揚げから一定の割合で分配を受けて収入を得ていた(従って,水揚げが少なければ,収入も減少する)ことが認められ,これに反する上記陳述書は信用することができない。 3 結論以上の次第で,関空2期補償金,神戸空港補償金のいずれについても,原告が受領権限を れば,収入も減少する)ことが認められ,これに反する上記陳述書は信用することができない。 3 結論以上の次第で,関空2期補償金,神戸空港補償金のいずれについても,原告が受領権限を有するのは組合員割(均等割,年功割)に該当する部分のみである。 そして,前記認定のとおり,原告の水揚高割,依存度割の根拠となった水揚高は,参加人が自分の水揚げの一部を原告の水揚げとして申告していたことによるものと認められるから,原告に配分決定された水揚高割,依存度割については参加人が受領権限を有するものであると認められる。 従って,原告及び参加人が各々受領し得る金額は,以下のとおり,原告が合計493万4000円,参加人が合計1219万7000円である。 (関空2期)原告 34万3000円(=均等割56万3000円+年功割11万円-前払金33万円)参加人 398万2000円(=水揚高割166万8000円+依存度割231万4000円)(神戸空港)原告 459万1000円(=均等割127万1000円+年功割28万1000円+地区調整(均等割)303万9000円)参加人 821万5000円(=水揚高割253万1000円+依存度割568万4000円)そして,原告は,現に,上記受領権限を有する493万4000円を上回る567万円の補償金の交付を受けている以上,これ以上の補償金の受領を認めることはできない。 そうすると,被告が参加人に対し,平成12年8月10日,原告の両親から返金を受けた714万6492円を参加人の普通貯金口座に振り替えたことは,参加人が債権の準占有者に当たるかどうかを検討するまでもなく,補償金の適法な支払いと認 ,平成12年8月10日,原告の両親から返金を受けた714万6492円を参加人の普通貯金口座に振り替えたことは,参加人が債権の準占有者に当たるかどうかを検討するまでもなく,補償金の適法な支払いと認められる。 また,上記のとおり,参加人は1219万7000円の受領権限を有するところ,被告から714万6492円の支払いを受けているのであるから,残り505万0508円について,被告に対して補償金の支払いを求めることができる。従って,被告が供託した供託金432万5000円については,参加人に対して還付請求権を認めるのが相当である。 よって,原告の請求はいずれも理由がないので棄却する。また,参加人の請求については,関空2期補償金の内398万2000円,神戸空港補償金の内821万5000円が参加人に属することを確認する限度で認容し,供託金の還付請求権の確認についてはこれを全部認容する。 神戸地方裁判所第4民事部裁判官太田敬司

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