令和2(行コ)153 運転免許取消処分取消請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和3年6月17日 東京高等裁判所
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判決文本文5,451 文字)

1 令和3年6月17日判決言渡令和2年(行コ)第153号 運転免許取消処分取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所令和元年(行ウ)第322号) 主 文51 原判決を取り消す。 2 東京都公安委員会が平成31年4月14日付けで被控訴人に対してした運転免許取消処分に係る被控訴人の請求を棄却する。 3 東京都公安委員会が平成31年4月14日付けで被控訴人に対してした運転免許を受けることができない期間の指定処分に係る被控訴人の訴えを10却下する。 4 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。 事 実 及 び 理 由第1 控訴の趣旨1 原判決を取り消す。 152 被控訴人の請求をいずれも棄却する。 第2 事案の概要1 本件は,被控訴人が,東京都公安委員会から酒気帯び運転をしたとして運転免許(以下「免許」という。)の取消処分(以下「本件取消処分」という。)を受けるとともに,1年間免許を受けることができない期間として指定する処20分(以下「本件指定処分」といい,本件取消処分と併せて「本件各処分」という。)を受けたことについて,酒気帯び運転の事実はないなどとして,それらの取消しを求める事案である。 原審は,運転時に呼気検査をすれば呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上のアルコールが検出される状態であったと認めるに足りないから,本件25取消処分は処分基準の要件を満たさず違法であるとして同処分を取消し,これ 2 を前提とする本件指定処分も取り消したところ,控訴人が控訴した。 2 関係法令の定め,前提事実及び当事者の主張は,原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要」2から4まで(原判決2頁7行目から7頁2行 提とする本件指定処分も取り消したところ,控訴人が控訴した。 2 関係法令の定め,前提事実及び当事者の主張は,原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要」2から4まで(原判決2頁7行目から7頁2行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 第3 当裁判所の判断51 道路交通法(以下「法」という。)65条1項は,「何人も,酒気を帯びて車両等を運転してはならない。」と定めている。この条項は,昭和45年第63回国会において上記のように改正されたものであるところ,同改正前の法65条は,「何人も,酒気を帯びて(身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあることをいう。以下同じ。)」車両等を運転してはならな10いと定めていた。この改正前の法65条は,「酒気を帯びて」という用語の定義として「身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態であることをいう。」と規定しており,政令で定める程度以上に「身体にアルコールを保有する状態で車両等を運転してはならない。」旨定めるものであった。 そして,この昭和45年の改正によって,「政令で定める一定程度」以上に15「身体にアルコールを保有する状態で車両等を運転」することを禁じる規定を改め,アルコールの程度のいかんを問わず,およそ「身体にアルコールを保有する状態で運転すること。」を全て禁止することに変更された。 このような改正が行われた趣旨について,昭和45年第63回国会の参議院地方行政委員会において政府委員A警察庁長官は,「非常に急激なモータリゼ20ーションの結果,それに伴いまして事故が非常にふえております。…この道交法について,私どもとしては根本的な実は改正をしたい,こういう考え方を持っております。…そこでとりあえず本年度の改正は,…悪質違反,たとえば酒気帯び 伴いまして事故が非常にふえております。…この道交法について,私どもとしては根本的な実は改正をしたい,こういう考え方を持っております。…そこでとりあえず本年度の改正は,…悪質違反,たとえば酒気帯び運転の禁止…といった当面の改正だけを今年はやらせていただきたい。」「第65条第1項の改正規定は,現行の酒気帯び運転の禁止が,身体に一定程25度以上のアルコールを保有する状態で運転することの禁止となっております 3 のを,アルコールの程度のいかんにかかわらず酒気を帯びた状態で運転することの禁止に改めようとするものであります。なお,新たに禁止される部分につきましては,罰則を付さないこととしておりますが,これによって,飲酒運転の習慣をなくしようとするものであります。」と答弁している(いずれも乙25・第63回国会参議院地方行政委員会会議録第10号)。 5すなわち,この酒気帯び運転に関する昭和45年の法改正は,アルコールの程度のいかんを問わず,およそ「身体にアルコールを保有する状態で運転すること。」を全て禁止することにより,飲酒をして運転する習慣を排除し,飲酒運転による事故の発生を抑止するための根本的な改正であると認められる。 2 しかし,昭和45年第63回国会の参議院地方行政委員会における政府委員10警察庁B交通局長答弁にあるように,「午前中にコップ一ぱいのビールを飲んで,午後何時かころになってそれが酒気帯びであるのかどうかという境目の判定が非常にむずかしい。…何らの基準なしに,酒気帯びであるからおまえは罰金だという言い方は,どうも法律上は非常に困難であるということで,何らかの限度を設けなければいけない…」(乙26・第63回国会参議院地方行政委15員会会議録第11号)ということで,法119条1項7号の2で「第65条(酒気帯 上は非常に困難であるということで,何らかの限度を設けなければいけない…」(乙26・第63回国会参議院地方行政委15員会会議録第11号)ということで,法119条1項7号の2で「第65条(酒気帯び運転等の禁止)第1項の規定に違反して車両等を運転した者で,その運転した場合において身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあったもの」に3月以下の懲役又は3万円以下の罰金に処することとされた。 20そして,上記の「政令で定める程度」として,道路交通法施行令44条の3は,「法119条第1項第7号の2の政令で定める身体に保有するアルコールの程度は,血液1ミリリットルにつき0.5ミリグラム又は呼気1リットルにつき0.25ミリグラムとする。」と定めた。この道路交通法施行令44条の3の定める内容につき,政府委員警察庁B交通局長は,昭和45年第63回国25会の参議院地方行政委員会において,「現場で容易に判定し得る限度であり, 4 かつまたいろいろな科学的な検査をやってみますと,少なくとも7割くらいの人がいろいろな機能の障害を,本人は自覚しませんでも機能の障害を来たす程度」であると答弁した(乙26・第63回国会参議院地方行政委員会会議録第11号)。 3 このような酒気帯び運転に関する昭和45年の道路交通法の改正の経緯を見5ると,改正前の法65条に「酒気を帯びて」の定義規定を置いていたときから,「身体にアルコールを保有する状態」を基準として,法規範が制定され改正されたことが認められる。 そして,処罰対象を明確にするために設けられた,同改正後の法119条1項7号の2(現在の道路交通法117条の2の2第3号)においても,「第6105条(酒気帯び運転等の禁止)第1項の規定に違反して車両等(軽車両を除く。)を運転し 設けられた,同改正後の法119条1項7号の2(現在の道路交通法117条の2の2第3号)においても,「第6105条(酒気帯び運転等の禁止)第1項の規定に違反して車両等(軽車両を除く。)を運転した者で,その運転をした場合において身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあったもの」と定め,「身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態」にあったものを罰則の対象とすることにし,「身体にアルコールを保有する状態」の程度によって,処罰対象の基準とする15ことを決めることとしているところ,これは,前述のとおり,昭和45年の道路交通法改正前からの同法が定める酒気帯び運転に関する一貫した考え方に基づくものである。 そして,昭和45年の道路交通法改正に伴い,上記の「政令」である当時の道路交通法施行令44条の3において,「血液1ミリリットルにつき0.5ミ20リグラム又は呼気1リットルにつき0.25ミリグラム」という基準が設けられたが,これは,前述の政府委員の答弁にあるように,処罰規定を設ける以上は,一定の基準ないし限度が必要であるところ,現場で容易に判定し得る基準であることや,科学的検査により一定の人に機能の障害が生じることなどを勘案して設けられた基準であって,この政令の基準は,体内にどの程度のアルコ25ールが保有されているかを運転中に測定することがほぼ不可能であることを 5 踏まえ,血液や呼気にそのような変化を生じさせる程度の「身体にアルコールを保有する状態」であることを処罰の基準とするものと解すべきである。 4 このような法65条1項の定める酒気帯び運転等の禁止に関する規定や改正の経緯等を見てくると,現行の道路交通法施行令44条の3の定める「血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム又は呼気1リットルにつ このような法65条1項の定める酒気帯び運転等の禁止に関する規定や改正の経緯等を見てくると,現行の道路交通法施行令44条の3の定める「血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム又は呼気1リットルにつき0.15ミリ5グラム」という基準は,「身体に保有するアルコール」の量の徴表としての数値であると解すべきである。そして,このことは,酒気帯び運転についての違反点数を定める施行令別表第2の備考二の9,5,2の解釈においても,特にこれと異なる解釈をすべき理由は見出し難い。むしろ,このような解釈は,施行令別表第2の備考二の5が「身体に…程度以上のアルコールを保有する状10態」で運転している場合と定めている文言とも符合する。 証拠(乙32,35の1,2)及び弁論の全趣旨によれば,一般に,経口摂取されたアルコールの約95から98パーセントは,胃,小腸等の消化管から吸収され,血流に乗って心臓や脳,筋肉や脂肪組織など全身に保有され,最終的には門脈を通じて肝臓に送られて分解,代謝され,呼気,汗,尿,便などで15未変化体のまま直接体外に排出されるアルコールは,摂取量の2ないし5パーセント以内程度であることが認められ,経口摂取された「身体に保有するアルコール」の量は,追加してアルコールを摂取しなければ,減ることはあっても増えることはないところ,本件の被控訴人は運転終了後,呼気検査までの間にアルコールを追加摂取しておらず,飲酒開始後約35分後に呼気検査をした結20果,呼気1リットルにつき0.16ミリグラムのアルコールが検出されているのであるから,被控訴人は,道路交通法施行令44条の3の定める基準を超える呼気1リットルにつき0.16ミリグラムに対応する「アルコールを身体に保有した状態」で車両等を運転していたと認められる。 そうすると,本件 訴人は,道路交通法施行令44条の3の定める基準を超える呼気1リットルにつき0.16ミリグラムに対応する「アルコールを身体に保有した状態」で車両等を運転していたと認められる。 そうすると,本件において,被控訴人は,施行令別表第2の1の表にいう25「酒気帯び運転(0.25未満)」を行ったと認めることができ,点数13点 6 を付加し,これを前提に東京都公安委員会が,本件取消処分をしたことは適法である。 なお,被控訴人は,東京都公安委員会の本件各処分にかかる事務処理に合理的理由のない遅延があった旨主張するが,本件各処分までに,原判決記載の前提事実で認定した経緯を要したのは,東京都公安委員会からの出頭要請に応じ5ない等の被控訴人側の対応に原因があったといえ,同委員会の手続上の瑕疵と評価されるものではなく,被控訴人の主張は採用できない。 5 本件指定処分の訴えの利益について被控訴人は,本件指定処分の取消しも請求しているが,同処分によって被控訴人が免許を受けることができない期間は,同処分の日から1年を経過した令10和2年4月13日に満了していることは明らかであり,同処分を取り消さなければ回復できない法律上の利益が現に被控訴人に存在することを肯定させるような事実は認められない。 したがって,本件指定処分の取消を求める被控訴人の訴えは,訴えの利益を欠き不適法である。 156 以上によれば,被控訴人の請求のうち,本件取消処分の取消請求は理由がないからこれを棄却することとし,本件指定処分の取消請求は訴えの利益がないからこれを却下することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第21民事部 20 裁判長裁判官 定 塚 誠 25 を却下することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第21民事部 20 裁判長裁判官 定 塚 誠 25裁判官 神 野 律 子 7 裁判官 須 賀 康太郎 5

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