令和3年3月10日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成29年(ワ)第7207号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日令和2年12月24日判決原告株式会社IHI機械システム 原告株式会社IHI上記両名訴訟代理人弁護士牧野知彦 加治梓子原告株式会社IHI訴訟代理人弁理士倉貫北斗被告高砂工業株式会社 同訴訟代理人弁護士小野寺良文 佐々木奏 平田憲人 位田陽平同補佐人弁理士大塚康徳 大塚康弘 木村秀二主文 1 被告は,別紙1物件目録記載の製品を生産し,譲渡し,輸入し,譲渡の申出をし,又は輸出してはならない。 2 被告は,その占有にかかる前項記載の製品及びその製造中の半製品(別紙1物件目録記載の構造を具備しているが製品として完成するに至らないもの)を廃棄せよ。 3 被告は,原告株式会社IHI機械システムに対し,1億9074万2387円及びこれに対する令和元年11月19日から支払済みまで年5分の 割合による金員を支払え。 4 被告は,原告株式会社IHIに対し,1億9074万2387円及びこれに対する令和元年11月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は,これを2分し,その1を原告らの負担とし,その余を被告 の負担とする。 7 この判決は,第1項,第3項及び第4項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求の趣旨 1 主文第1項及び第2項同旨 2 被告は,原告株式会社IHI機械システムに対し,4億 項,第3項及び第4項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求の趣旨 1 主文第1項及び第2項同旨 2 被告は,原告株式会社IHI機械システムに対し,4億4550万円及びこれに対する令和元年11月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告株式会社IHIに対し,4億4550万円及びこれに対する令 和元年11月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 仮執行宣言第2 事案の概要 1 本件は,いずれも発明の名称を「真空洗浄装置および真空洗浄方法」とする特許第6043888号(以下「本件特許権1」という。)及び第59768 58号(以下「本件特許権2」という。)の各特許権(以下「本件各特許権」という。)を共有する原告らが,別紙1物件目録記載の製品(以下「被告製品」という。)は,本件特許権1の請求項1(以下「本件発明1」という。)及び本件特許権2の請求項1(以下「本件発明2」という。)の各発明(以下「本件各発明」という。)の技術的範囲に含まれるものであるから,被告による被 告製品の製造販売は,本件各特許権の侵害に当たるとして,被告に対し,特許 法100条1項に基づき,被告製品の製造販売等の差止めを求め,同条2項に基づき,被告製品及びその半製品の廃棄を求めるとともに,原告らの本件各特許権の持分割合に応じ,民法709条に基づき,不法行為に対する損害の賠償及び被告製品の最終の売上日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案であ る。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記した証拠及び弁論の全趣旨により認定できる事実。なお,本判決を通じ,証拠を摘示する 定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案であ る。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記した証拠及び弁論の全趣旨により認定できる事実。なお,本判決を通じ,証拠を摘示する場合には,特に断らない限り,枝番を含むものとする。)(1) 当事者 ア原告株式会社IHI機械システムは,一般機械,工業用炉,真空熱処理炉,新素材製造設備,真空浸炭炉,製鉄・製鋼設備機器等の設計,製造,販売などを業とする株式会社である。 イ原告株式会社IHIは,資源・エネルギー・環境関連製品,社会インフラ・海洋構造物,産業システム・各種機械,航空・宇宙・防衛関連製品の 開発,製造,販売などを業とする株式会社である。 ウ被告は,各種工場炉,真空炉の設計,製造,販売などを業とする株式会社である。 (2) 本件各特許権原告らは,以下の本件各特許権を共有している(甲1~4)。 ア本件特許権1(甲1,2)特許番号特許第6043888号出願番号特願2016-146784発明の名称真空洗浄装置および真空洗浄方法出願日平成28年7月26日 原出願日平成24年11月20日 優先日平成23年11月25日優先権主張国日本登録日平成28年11月18日イ本件特許権2(甲3,4)特許番号特許第5976858号 出願番号特願2015-22618発明の名称真空洗浄装置および真空洗浄方法出願日平成27年2月6日原出願日平成24年11月20日優先日平成23年11月25日 優先権主張国日本登録日平成28年7月29日ウ本件各特許の出願経過(ア) 原告らは,平成24年11月20日,特願2013-5 20日優先日平成23年11月25日 優先権主張国日本登録日平成28年7月29日ウ本件各特許の出願経過(ア) 原告らは,平成24年11月20日,特願2013-545937号を出願(以下「本件原出願」という。)した(乙8)。 (イ) 原告らは,平成27年2月6日,前記(ア)からの分割として,本件特許権2を出願した。 (ウ) 原告らは,平成28年7月20日,前記(イ)からの分割として,特願2016-142767号を出願した(乙10)。 (エ) 原告らは,平成28年7月26日,前記(ウ)からの分割出願として, 本件特許権1を出願した。 エ手続補正の経過本件発明2に係る出願に関し,特許庁は,進歩性を欠くとして,平成27年11月13日付け拒絶理由通知書(乙9の2)を発したところ,原告らは,平成28年1月14日付け手続補正書(以下「本件補正」という。 乙9の3)により請求項1等を補正するとともに,同日付け意見書(以下 「本件意見書」という。乙9の3)において「本願発明は,洗浄室よりも低い温度に保持された凝縮室を洗浄室と連通させることのみによって,洗浄室のワークを乾燥させます。…このような本願発明によれば,従来手法(真空ポンプを使って洗浄室を徐々に減圧する方法)に比較して短時間でワークを乾燥させることが可能です。」と説明した。 (3) 特許請求の範囲の記載本件各発明の特許請求の範囲の記載は,以下のとおりである。なお,本件各特許の特許公報(甲2,4)の明細書の「発明の詳細な説明」の記載及び図面は,段落【0007】及び【0011】を除くと,形式的な点が異なるにすぎないため,以下,原則として,両者を区別せず「本件明細書等」とい う。 ア本件発明1(本件特許1の請求 の記載及び図面は,段落【0007】及び【0011】を除くと,形式的な点が異なるにすぎないため,以下,原則として,両者を区別せず「本件明細書等」とい う。 ア本件発明1(本件特許1の請求項1)「真空ポンプと,石油系溶剤の蒸気を生成する蒸気生成手段と,前記真空ポンプによって減圧され,当該減圧の状態において前記蒸気生成手段から供給される蒸気によってワークを洗浄する洗浄室と,前記真空ポンプに よって減圧され,当該減圧の状態が保持される凝縮室と,前記凝縮室を前記洗浄室よりも低い温度に保持する温度保持手段と,前記凝縮室と前記洗浄室とを連通させ,または,その連通を遮断する開閉バルブと,を備え,前記蒸気を前記洗浄室に供給してワークを洗浄した後,前記開閉バルブによって前記洗浄室を当該洗浄室よりも低い温度に保持された前記凝縮室と 連通させてワークを乾燥させることを特徴とする真空洗浄装置。」イ本件発明2(本件特許2の請求項1。なお,下線部は本件補正により補正された部分である。後記(4)イも同様。)「真空ポンプと,石油系溶剤の蒸気を生成する蒸気生成手段と,前記真空ポンプによって減圧され,当該減圧の状態において前記蒸気生成手段か ら供給される蒸気によってワークを洗浄する洗浄室と,前記真空ポンプに よって前記洗浄室とは独立して減圧され,当該減圧の状態が保持される凝縮室と,前記凝縮室を前記洗浄室よりも低い温度に保持する温度保持手段と, 前記凝縮室と前記洗浄室とを連通させ,または,その連通を遮断する開閉バルブと,を備え,前記蒸気を前記洗浄室に供給してワークを洗浄した後,前記開閉バルブによって前記洗浄室を当該洗浄室よりも低い温 度に保持された前記凝縮室と連通させてワークを乾燥させることを特徴とする真空洗浄装置。」 蒸気を前記洗浄室に供給してワークを洗浄した後,前記開閉バルブによって前記洗浄室を当該洗浄室よりも低い温 度に保持された前記凝縮室と連通させてワークを乾燥させることを特徴とする真空洗浄装置。」(4) 構成要件の分説本件各発明は,以下のとおり,次の構成要件1A~1H及び2A~2Hの各構成要件に分説することができる。なお,構成要件1A~1Hと2A~2 Hとの相違は,構成要件2Dの「前記洗浄室とは独立して」の部分が,構成要件1Dには含まれない点のみである。 ア本件発明1の構成要件1A 真空ポンプと,1B 石油系溶剤の蒸気を生成する蒸気生成手段と, 1C 前記真空ポンプによって減圧され,当該減圧の状態において前記蒸気生成手段から供給される蒸気によってワークを洗浄する洗浄室と,1D 前記真空ポンプによって減圧され,当該減圧の状態が保持される凝縮室と,1E 前記凝縮室を前記洗浄室よりも低い温度に保持する温度保持手段と, 1F 前記凝縮室と前記洗浄室とを連通させ,または,その連通を遮断する開閉バルブと,を備え,1G 前記蒸気を前記洗浄室に供給してワークを洗浄した後,前記開閉バルブによって前記洗浄室を当該洗浄室よりも低い温度に保持された前記凝縮室と連通させてワークを乾燥させる 1H ことを特徴とする真空洗浄装置。 イ本件発明2の構成要件2A 真空ポンプと,2B 石油系溶剤の蒸気を生成する蒸気生成手段と,2C 前記真空ポンプによって減圧され,当該減圧の状態において前記蒸気生成手段から供給される蒸気によってワークを洗浄する洗浄室と, 2D 前記真空ポンプによって前記洗浄室とは独立して減圧され,当該減圧の状態が保持される凝縮室と,2E 前記凝縮室を前記洗浄室 生成手段から供給される蒸気によってワークを洗浄する洗浄室と, 2D 前記真空ポンプによって前記洗浄室とは独立して減圧され,当該減圧の状態が保持される凝縮室と,2E 前記凝縮室を前記洗浄室よりも低い温度に保持する温度保持手段と,2F 前記凝縮室と前記洗浄室とを連通させ,または,その連通を遮断する開閉バルブと,を備え, 2G 前記蒸気を前記洗浄室に供給してワークを洗浄した後,前記開閉バルブによって前記洗浄室を当該洗浄室よりも低い温度に保持された前記凝縮室と連通させてワークを乾燥させる2H ことを特徴とする真空洗浄装置。 (5) 被告製品の構成 被告製品の構成は,以下のとおりである(なお,2gの構成については当事者間に争いがある。)。 2a 真空ポンプと,2b 石油系溶剤の蒸気を生成する蒸気生成手段と,2c 前記真空ポンプによって減圧され,当該減圧の状態において前記蒸気 生成手段から供給される蒸気によってワークを洗浄する洗浄室と,2d 前記真空ポンプによって前記洗浄室とは独立して減圧され,当該減圧の状態が保持されるL型真空弁及び水冷バッフルと,その先に油拡散エジェクタポンプを備え,2e 前記L型真空弁及び水冷バッフルを前記洗浄室よりも低い温度に保持 する温度保持手段と, 2f 前記L型真空弁及び水冷バッフルと前記洗浄室とを連通させ,または,その連通を遮断する開閉バルブと,を備え,2g 前記蒸気を前記洗浄室に供給してワークを洗浄した後,前記開閉バルブによって前記洗浄室を当該洗浄室よりも低い温度に保持された前記L型真空弁及び水冷バッフルと連通させてワークを乾燥させる 2h ことを特徴とする真空洗浄装置。 (6) 被告製品の製造販売ア被告は,本件特許2の登録 よりも低い温度に保持された前記L型真空弁及び水冷バッフルと連通させてワークを乾燥させる 2h ことを特徴とする真空洗浄装置。 (6) 被告製品の製造販売ア被告は,本件特許2の登録日である平成28年7月29日から令和元年11月19日までの間,真空洗浄機である被告製品合計●(省略)●基を 製造販売し,●(省略)●円を売り上げた(乙57・別紙1)。 イなお,真空洗浄機とは,減圧した洗浄室内に洗浄剤を気化させ,洗浄対象物(ワーク)の表面に凝縮させることにより,ワークに付着した油脂を溶解し,洗い落とすなどする装置である(甲24・6頁)。 (7) 先行文献 ア本件各特許の優先日前に,その発明の名称を「溶剤洗浄システム」とする米国特許第6004403号公報(乙14。以下「乙14公報」といい, 同公報に記載された発明を「乙14発明」という。)が存在した(乙14)。 イ本件各特許の優先日前に,その発明の名称を「洗浄装置」とする特開2000-160378号公報(乙15。以下「乙15公報」といい,同公報に記載された発明を「乙15発明」という。)が存在した(乙15)。 ウ本件各特許の優先日前に,その発明(以下「乙9発明」という)の名称を「蒸気洗浄装置」とする特開2000-51802号公報(以下「乙9公報」という。)が存在した(乙9の2の2)。 エ本件特許権2の出願日前に,その発明の名称を「真空洗浄装置および真空洗浄方法」とする国際公開第2013/07736号公報(以下「乙8 の15公報」という。)が存在した(乙8の15)。 (8) 実験及びシミュレーションア甲12実験原告らが,平成29年10月16日,被告製品について,被告製品の運転時における洗浄室内の圧力変化(油拡散エジェクタポンプの した(乙8の15)。 (8) 実験及びシミュレーションア甲12実験原告らが,平成29年10月16日,被告製品について,被告製品の運転時における洗浄室内の圧力変化(油拡散エジェクタポンプの作動の有無 を含む。),L型真空弁及び水冷バッフルの壁面温度,L型真空弁及び水冷バッフルの寸法などを確認する実験をした(甲12,13)。 イ乙13実験被告は,平成29年8月29日,被告製品について,油拡散エジェクタポンプシステム(油拡散エジェクタポンプ及び真空ポンプ)を作動させず に乾燥工程を実施した場合の洗浄室内の圧力変化を測定するなどし(乙13),後日,複数回の追試をした(乙22~24)。 ウ甲18実験原告らは,平成30年3月28日から4月15日にかけ,原告製品である本件各特許の実施品を使用し,乙13実験を検証するなどし,また,本 件各特許の非実施品(従来品)を使用し,真空ポンプのみによる乾燥工程 における減圧状況を測定するなどした(甲18)。 エ甲20シミュレーション原告らは,平成30年6月11日,被告製品のクイック乾燥の工程において,真空ポンプによる排気と水冷バッフルによる凝縮のうち,いずれの影響が支配的であるかについてシミュレーション解析をし(甲20,2 1),本件訴訟における技術説明会の後,追加解析をした(甲25)。 オ甲27実験原告らは,平成30年10月24日,被告製品を通常運転させ,そのクイック乾燥の工程及び最終乾燥の工程において,エジェクタポンプの後方に接続された配管上のサイトグラスを通じ,乾燥工程時に凝縮室において 凝縮した溶剤蒸気が液体として流出する状況を観察するなどした(甲27~31)。 3 争点(1) 構成要件充足性ア被告製品が,構成要件1G及び ラスを通じ,乾燥工程時に凝縮室において 凝縮した溶剤蒸気が液体として流出する状況を観察するなどした(甲27~31)。 3 争点(1) 構成要件充足性ア被告製品が,構成要件1G及び2Gの「洗浄室を…凝縮室と連通させて ワークを乾燥させる」との構成を備えるか(争点1-1)。 イ被告製品が,構成要件1D~1F及び2D~2Fにいう「凝縮室」を備えるか(争点1-2)。 (2) 無効理由の有無ア乙14発明による進歩性の欠如(争点2-1) イ乙15発明による進歩性の欠如(争点2-2)ウ分割要件違反による新規性及び進歩性の欠如(争点2-3)エ実施可能要件違反(争点2-4)オサポート要件違反(争点2-5)(3) 原告らの損害額(争点3) 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1-1(被告製品が,構成要件1G及び2Gの「洗浄室を…凝縮室と連通させてワークを乾燥させる」との構成を備えるか。)について(原告らの主張)(1) 構成要件1G及び2Gにいう「凝縮室」は,洗浄室と凝縮室とを連通させることにより所望の乾燥時間で洗浄室の蒸気を凝縮し,乾燥させるものであ ると解すべきである。 すなわち,被告製品の洗浄室に直結しているL型真空弁は,長さ42センチメートル,直径52センチメートルであり,水冷バッフルは,長さ47センチメートル,直径52センチメートルであって,その容量は洗浄室からの蒸気をより多く取り込み,凝縮させるに十分な大きさである(甲13)。 また,被告製品のL型真空弁及び水冷バッフルには給水管,排水管が接続されており,L型真空弁及び水冷バッフルは給水管から供給された水により十分に冷却されているので,洗浄室から高温の蒸気がL型真空弁及び水冷バッフルに流れてき 弁及び水冷バッフルには給水管,排水管が接続されており,L型真空弁及び水冷バッフルは給水管から供給された水により十分に冷却されているので,洗浄室から高温の蒸気がL型真空弁及び水冷バッフルに流れてきても,蒸気の凝縮による温度上昇は抑えられ,これらの外筒部の温度は上昇しない(甲12,13,乙24)。このことは,L型真空 弁及び水冷バッフルが,洗浄機からの蒸気を冷却,凝縮させるのに十分な水冷能力を有していることを示している。 これに対し,被告は,水冷バッフルは,油拡散エジェクタポンプからの作動油の逆流防止のためのものであり,L型真空弁の水冷は,シール部を保護するためのものにすぎないと主張するが,水冷バッフルの直径は,油拡散エ ジェクタポンプに比しても大きいものであり,その主な機能が,作動油の逆流防止のためであるとは考えられない。L型真空弁も,当該シール部からは離れた位置に存在しており,その主な機能は当該部分の保護にはない。 そうすると,被告製品のL型真空弁及び水冷バッフルは,本件各発明にいう「凝縮室」に当たる。 (2) 被告製品は,蒸気洗浄の工程の後,洗浄室と「凝縮室」に当たるL型真空 弁及び水冷バッフルを連通させ,乾燥を実施している。そして,本件各発明は,加熱部(洗浄室)を高温・高圧とし,冷却部(凝縮室)を低温・低圧とすることで,蒸気の移動が生じるという自然現象を利用したものであるところ,被告製品も,水冷バッフル及びL型真空弁で蒸気を凝縮させ,洗浄室から水冷バッフルに蒸気を移動させており,本件各発明の作用効果を奏してい る。 したがって,被告製品は,構成要件1G及び2Gの「洗浄室を…凝縮室と連通させてワークを乾燥させる」との構成を備える。 (3) 被告製品において,洗浄室と凝縮室との連通のみにより急速な る。 したがって,被告製品は,構成要件1G及び2Gの「洗浄室を…凝縮室と連通させてワークを乾燥させる」との構成を備える。 (3) 被告製品において,洗浄室と凝縮室との連通のみにより急速な乾燥を行うことが可能となることは,原告らが行った甲20シミュレーションの結果か らも裏付けられる。 すなわち,原告らは,解析ソフトを利用し,様々な条件で被告製品の洗浄室の圧力変化を再現し,甲20シミュレーションを行った。その結果,被告製品の真空ポンプの排気力のみでは被告製品のような急速な乾燥を再現することができず,洗浄室と凝縮室との連通のみの場合に急速な乾燥を行うこと ができることが確認された(甲20,21)。 甲20シミュレーションの基本設定(洗浄液,配管による圧力損失,真空ポンプの性能,機器配管寸法等)は,いずれも妥当である(甲21)。また,同シミュレーションは,被告製品の実機のクイック乾燥の実測値を再現した上で,真空ポンプの性能について実機よりも大きく見積もっており,被告に 有利なモデルとなっている。 被告は,本件訴訟で行われた技術説明会において,被告製品の洗浄室の体積は甲20シミュレーションの3倍以上であり,洗浄室の残液量も10~20リットル(甲20シミュレーションでは0.3リットル)であると説明したが,そうすると被告製品のL型真空弁及び水冷バッフルの凝縮力は甲20 シミュレーションの最大で7.5倍となる(甲25)。これを真空ポンプの 排気力のみで乾燥させた場合には,排気に要する時間は格段に長くなり,乾燥にほとんど寄与しないことは明らかである。 (4) また,原告らは,被告製品のエジェクタポンプの直後に設置されているサイトグラスから配管内部の状況を観察したところ,乾燥工程の開始とともに大量の凝縮液 ほとんど寄与しないことは明らかである。 (4) また,原告らは,被告製品のエジェクタポンプの直後に設置されているサイトグラスから配管内部の状況を観察したところ,乾燥工程の開始とともに大量の凝縮液が流れ始め,乾燥工程が終了するとともに,その流れが止まる ことが確認された(甲27実験)。仮に,被告製品の真空ポンプ及び水冷バッフルで凝縮が生じないのであれば,このような凝縮液が発生することはないので,これらの凝縮液は洗浄室を乾燥させたために生じたものである。この観察結果も,被告製品において,「凝縮室」による凝縮によって洗浄室が乾燥されていることを客観的に裏付けるものである。 (5) 従来技術においては,洗浄装置にアフタークーラー及び真空ポンプが連結されているのが通常であるが,被告製品においてこのような従来技術の構造を採用せず,洗浄室に隣接してL型真空弁及び水冷バッフルを配置し,連通させているのは,冷却されたL型真空弁及び水冷バッフルを用いて乾燥させるためにほかならない。 そして,被告製品におけるL型真空弁及び水冷バッフルの容量は洗浄室からの蒸気をより多く取り込み,凝縮させるに十分な大きさであるのに対し,被告製品が採用している真空ポンプなどの性能は従来品と同程度のものであり,油拡散エジェクタポンプも付け足し程度に用いられているにすぎない(甲12実験)。 このような被告製品の構造に照らしても,同製品が本件各発明の技術思想を採用したものであるということができる。 (6) 被告は,以下のとおり主張するが,いずれも失当である。 ア被告は,本件各発明の技術的範囲には,真空ポンプを併用する装置が含まれないと主張する。 (ア) しかし,本件明細書等には,本件各発明の技術的範囲を上記のように 限定をする旨の ア被告は,本件各発明の技術的範囲には,真空ポンプを併用する装置が含まれないと主張する。 (ア) しかし,本件明細書等には,本件各発明の技術的範囲を上記のように 限定をする旨の記載はなく,本件各発明は,真空ポンプという付加的な構成を併用することを排除するものではない。本件各発明の乾燥工程で生じる現象は,温度差,圧力差のある洗浄室と凝縮室を連通させれば自ずと生じる現象であり,乾燥工程で真空ポンプを併用したとしても,従来の真空ポンプのみによる方法に比べて乾燥時間を短縮することができ るという効果を得ることができる以上,本件各発明を実施していることに変わりはない。 また,本件各発明において真空ポンプを併用すると,配管の隙間から凝縮室に侵入した非凝縮性ガスが排除されることにより,凝縮が促進されこそすれ,阻害はされないから,凝縮をより効率よく起こすために真 空ポンプを用いることは本件各発明が前提としている技術であるということができる。 (イ) 被告は,原告らは,本件意見書(乙9の4)の「凝縮室と洗浄室とを連通させることのみによって,洗浄室のワークを乾燥させます」との記載を根拠として,本件各発明が真空ポンプの使用を排除していないとい う原告らの主張が包袋禁反言に反するとも主張する。 しかし,上記記載は,真空ポンプなどを使用しなくとも従来技術よりも短時間の乾燥を実現することが可能であることを説明しているにすぎず,同記載に基づき付加的に真空ポンプを使用することを除外する意図があったと解することはできない。 イ被告は,乙13実験の結果を根拠として,被告製品において洗浄室と水冷バッフルとを連通させるだけでは減圧が生じないと主張する。 しかし,当該実験は,洗浄工程の後,連通のみの乾燥を行うために手動操 イ被告は,乙13実験の結果を根拠として,被告製品において洗浄室と水冷バッフルとを連通させるだけでは減圧が生じないと主張する。 しかし,当該実験は,洗浄工程の後,連通のみの乾燥を行うために手動操作に切り替え,真空ポンプを停止させ,乾燥工程に移行しているが,真空ポンプの停止中に凝縮液タンクに残存する空気や窒素などの非凝縮性ガ スがL型真空弁,水冷バッフル,エジェクタポンプに逆流し,蒸気の凝縮 を阻害した可能性が高い。 原告らは,このことを確認するため,本件各発明を実施している原告製品を使用し,乾燥工程の前に十分に排気を行った上で洗浄室と凝縮室とを連通させる実験と意図的に空気を残存させる実験を行って対比したところ(甲18実験),後者の実験では急速な減圧は生じなかった。この結果は, 乙13実験では初期条件の排気が不十分であった可能性が高いことを示している。 ウ被告は,被告製品について,洗浄室に接続するL型真空弁及び水冷バッフルの部分を大口径にすることにより,真空ポンプによる減圧によって洗浄室から排気される上記の量を大幅に増やすことができるという独自のノ ウハウを使用することにより,従来技術を利用しつつ,急速乾燥を実現したものであると説明する。 しかし,被告製品における配管は直列に複数接続されているところ,L型真空弁や水冷バッフルの口径は大口径であっても,アフタークーラーの前後は小口径の配管となっており,この部分が排気スピードを律してい るので,排気スピードはほとんど速くならない。被告製品は,これを避けるため,L型真空弁及び水冷バッフルの部分において,洗浄室からの蒸気を凝縮するというメカニズムを採用しているのであるから,急速乾燥を実現する要因として,凝縮力が主となっていることは明らかである。 エ被告 型真空弁及び水冷バッフルの部分において,洗浄室からの蒸気を凝縮するというメカニズムを採用しているのであるから,急速乾燥を実現する要因として,凝縮力が主となっていることは明らかである。 エ被告は,被告製品においては,真空ポンプの吸引力が,凝縮器の凝縮力 と複合一体的な作用を果たしていると主張する(なお,同主張は,時機に後れた攻撃防御方法であり,却下されるべきである。 )。 しかし,被告製品で急速減圧が可能になったのは,配管径を太くすることにより真空ポンプの吸引と凝縮の複合的一体的作用が改善したからではなく,被告製品に大容量の凝縮室を洗浄室に直付けした構成を採用し,そ こで大規模凝縮を生じさせているからである。 被告は,真空ポンプの吸引で生じる強制対流により凝縮が促進されると主張するが,被告の主張する作用は従来技術で生じていた作用にすぎず,被告製品で同様の作用が生じている旨の説明はない。被告製品においては,水冷バッフルなどから成る大きな凝縮室と,太い径を持つ冷却されたL型真空弁を設けたことにより生じる急速な蒸気の流入による対流が圧倒的な 影響を与えており,真空ポンプの吸引による対流の影響はごく僅かである。 このように,被告製品の洗浄室の急速な減圧は凝縮室の凝縮能力によるものであり,真空ポンプは付加的併用にすぎない。 (被告の主張)(1) 従来の真空洗浄機の乾燥工程は,洗浄室の蒸気を真空ポンプで真空引きす るという方式であり,この方式においても,洗浄室から真空ポンプに至る凝縮器その他の経路において蒸気の冷却・凝縮という現象が生じていたが,その間の経路が小口径であったため,真空ポンプの能力に見合った排気をし得ないという問題があった。本件各発明は,真空ポンプを利用した乾燥工程に時間を要するという課題を ・凝縮という現象が生じていたが,その間の経路が小口径であったため,真空ポンプの能力に見合った排気をし得ないという問題があった。本件各発明は,真空ポンプを利用した乾燥工程に時間を要するという課題を解決するため,真空ポンプは使用せず,熱吸収量 の大きい凝縮器を使用した上,洗浄室と凝縮室とを連通させ,大規模の凝縮作用を生じさせることにより,短時間に減圧乾燥するという技術思想によるものである。 このような本件各発明の技術思想を踏まえると,構成要件1G及び2Gにいう「洗浄室を…凝縮室と連通させてワークを乾燥させる」のうち,「凝縮 室」とは「それだけで洗浄室を乾燥させるに足りるだけの大きな熱吸収量を有する凝縮器」との意義に,「連通による乾燥」とは「大きな熱吸収量を有する凝縮器との連通だけで(急速に)乾燥する」との意義にそれぞれ解釈されるべきである。 (2) 被告製品の水冷バッフルやL型真空弁は,「それだけで洗浄室を乾燥させ るに足りるだけの大きな熱吸収量を有する」ものではないから,本件各発明 の「凝縮室」に該当しない。 被告製品の水冷バッフルの伝熱面積は,従来機のアフタークーラーの6分の1程度にすぎず(乙39),そもそも,被告製品の水冷バッフルは,油拡散エジェクタポンプからの作動油の逆流防止のためのものであり,L型真空弁は,シール部を保護するためのものであって,いずれも凝縮のためのもの ではない(乙27)。 (3) 本件各発明が「大きな熱吸収量を有する凝縮器との連通だけで(急速に)乾燥する」ものであり,従来技術のような真空ポンプの使用を排除していることは,本件明細書等及び本件特許権2の出願経過からも明らかである。 すなわち,本件明細書等には,真空ポンプを用いてワークを乾燥させるこ とに関する記載は存在せ 真空ポンプの使用を排除していることは,本件明細書等及び本件特許権2の出願経過からも明らかである。 すなわち,本件明細書等には,真空ポンプを用いてワークを乾燥させるこ とに関する記載は存在せず,実施例を見ても,真空ポンプを使用しないものしか記載されていない。また,原告らが本件特許権2の出願過程において特許庁に提出した本件意見書には,「本願発明は,…凝縮室を洗浄室と連通させることのみによって,洗浄室のワークを乾燥させます」との記載があり,凝縮室と洗浄室との連通以外の手段を排除している。そうすると,真空ポン プを用いてワークを乾燥させる手段も本件各発明に含まれるとの原告らの主張は,包帯禁反言に反するというべきである。 (4) 被告製品は,L型真空弁及び水冷バッフルの口径を大口径のものとすることにより,真空ポンプによる減圧により洗浄室から排気される蒸気の量を大幅に増やし,洗浄室から急速に大量の蒸気を排気することを可能にするとの 被告のノウハウを活かしたものであり,真空ポンプによる吸引力と凝縮器による凝縮機能とによる複合一体的な作用により急速な乾燥を実現するものである。 すなわち,被告製品における乾燥工程では,洗浄室から移動してきた洗浄蒸気が水冷バッフル等で凝縮・液化するが,水冷バッフルを横置きにしてい るので,その中に比較的高温の液溜りが相当量生じるなどして,水冷バッフ ル内の熱伝達を阻害する。このため,被告製品では,乾燥工程の最初から真空ポンプを作動させ,洗浄室を吸引し続けており,これにより,洗浄蒸気が強制的に対流し,凝縮液の液膜表面に微小な波立ちが生じるとともに,液膜が動く速度が大きくなるため,凝縮が促進される。加えて,真空ポンプで吸引することによる強制対流により,凝縮液の逆流が抑制され,また,吸引減 流し,凝縮液の液膜表面に微小な波立ちが生じるとともに,液膜が動く速度が大きくなるため,凝縮が促進される。加えて,真空ポンプで吸引することによる強制対流により,凝縮液の逆流が抑制され,また,吸引減 圧によって,凝縮液の再蒸発に伴う気化熱で水冷バッフル内の温度上昇を防ぐことが可能になる。 このように,被告製品は,従来技術でも生じていた真空ポンプによる吸引と凝縮作用による複合的一体的作用から生まれる減圧を行っており,真空ポンプを使用しないとシステム自体が成り立たない。 したがって,被告製品は,従来技術の延長上にある技術というべきものであって,本件各発明とは基本的な技術思想を異にする。 (5) 被告は,油拡散エジェクタポンプ及び真空ポンプによる真空引きを行うことなく,洗浄室と水冷バッフルとを連通させる乙13実験(乙13,22~24)を行ったところ,水冷バッフルにおいて生じる凝縮による減圧は微々 たるもので,大半は,従来技術に属する真空引きにより洗浄室の減圧が行われていることが確認された。 これに対し,原告らは,上記の乙13実験について,非凝縮性気体が混入したため,誤った結果を示している可能性があると主張し,甲18実験の結果を提出する。 しかし,被告製品のような真空洗浄機は,当然に気密性を確保している上,被告製品は非凝縮性気体を洗浄室から排出する機能を有している。被告は,乙13実験において,連通のみの実験であっても洗浄工程終了までは自動運転をしており,蒸気洗浄中,非凝縮性の気体は洗浄室から排気されていた。 また,甲18実験に使用された原告らの従来機は,高効率の凝縮器を採用 しており,被告製品とはスペックが大きく異なる上,当初から手動運転をし ているなど,乙13実験と異なる実験条件に基づくものである 8実験に使用された原告らの従来機は,高効率の凝縮器を採用 しており,被告製品とはスペックが大きく異なる上,当初から手動運転をし ているなど,乙13実験と異なる実験条件に基づくものである。このような他機種による異なる条件による実験により乙13実験の信用性が左右されることはない。 (6) 加えて,原告らは,以下のとおり主張するが,いずれも失当である。 ア原告らは,甲20シミュレーションの結果に基づき,被告製品の真空ポ ンプの排気力のみでは被告製品のような急速乾燥を再現することができないと主張する。 しかし,そもそも,シミュレーションは仮定に基づくものであり,実機による裏付けがないと信用性を欠く上,甲20シミュレーションにおけるモデル,パラメータの設定の正確性については客観的な検証資料が存在し ない。 また,個別のパラメータ設定についても,洗浄液残液量を0.3リットルと過小に設定されていること,複合一体的に作用する真空引きと凝縮作用による減圧効果を考慮していないため,水冷バッフルの凝縮能力(冷却熱量)が過大に見積もられていること,配管の途中で蒸気の凝縮が生じな いという実態と乖離した設定が用いられることなどの問題がある。 イ原告らは,被告製品において,洗浄室に隣接してL型真空弁及び水冷バッフルを配置したのは,冷却されたL型真空弁及び水冷バッフルを用いて乾燥させるためであると主張するが,被告製品のようにエジェクタポンプを採用すればその上流側に水冷バッフルを設けることが必要となるのは当 然であり,また,浄水器と真空ポンプの間に凝縮器を設けるという構成は周知技術である。 また,原告らは,被告製品のL型真空弁及び水冷バッフルの容積が大きいことを指摘するが,この程度の大きさ及び容量では原告らの主張するよ 器と真空ポンプの間に凝縮器を設けるという構成は周知技術である。 また,原告らは,被告製品のL型真空弁及び水冷バッフルの容積が大きいことを指摘するが,この程度の大きさ及び容量では原告らの主張するような連通だけによる急速な減圧は生じない(乙13,22,23)。 2 争点1-2(被告製品が,構成要件1D~1F及び2D~2Fにいう「凝縮 室」を備えるか。)について(原告らの主張)上記1(原告らの主張)のとおり,被告製品のL型真空弁及び水冷バッフルは,構成要件1D~1F及び2D~2Fにいう「凝縮室」に該当する。 (被告の主張) 上記1(被告の主張)のとおり,被告製品のL型真空弁及び水冷バッフルは,構成要件1D~1F及び2D~2Fにいう「凝縮室」に該当しない。 3 争点2-1(乙14発明による進歩性の欠如)について(被告の主張)(1) 本件発明2について 本件発明2は,以下のとおり,乙14発明及び周知事項に基づき,当事者が容易に想到し得たものであり,進歩性を有しない。 ア乙14公報の開示する発明乙14公報には,以下の発明が開示されている。 14A 真空ポンプ26,36と, 14B 溶剤の蒸気を生成する蒸留タンク58およびヒータ60と,14C 真空ポンプ26によって減圧され,当該減圧の状態において蒸留タンク58から供給される蒸気によって物品20を洗浄する室12と,14D 真空ポンプ36によって室12とは独立して減圧され,当該減圧の状態が保持される凝縮器34と, 14E 凝縮器34を室12よりも低い温度に保持する冷却ユニット48と,14F 凝縮器34と室12とを連通させ,または,その連通を遮断するバルブ32と,を備え,14G 蒸気を室12に供給して物品20を洗浄した を室12よりも低い温度に保持する冷却ユニット48と,14F 凝縮器34と室12とを連通させ,または,その連通を遮断するバルブ32と,を備え,14G 蒸気を室12に供給して物品20を洗浄した後,バルブ32によ って室12を室12よりも低い温度に保持された凝縮器34と連通させ て物品20を乾燥させる14H ことを特徴とする溶剤洗浄システムイ一致点及び相違点乙14発明の上記アの構成は,本件発明2の構成要件2A~2Hに対応する。両者の相違点は,以下のとおりであり,その余の構成において一致 する。 〈相違点14-1〉本件発明2が,「石油系溶剤」(構成要件2B)を用いるのに対し,乙14発明が,「溶剤」を用いる点ウ相違点14-1に係る構成の容易想到性 真空洗浄装置における洗浄に溶剤石油系溶剤を用いることは,本件特許権2の出願時における周知技術であるから(乙8の8の2,乙8の9の2・3,乙9の2の2),本件特許権2の出願当時の当業者であれば,相違点14-1に係る構成を容易に想到し得たものである。 エ原告らの主張する相違点14-2について 原告らは,本件発明2と乙14発明とは相違点14-2において相違すると主張するが,原告らの主張する相違点は存在せず,仮に存在するとしても当業者が容易に想到し得たものである。 (ア) 本件明細書等の第1実施形態では,凝縮室21の減圧の後,洗浄室2の減圧を行っているが,第2実施形態では,準備工程において凝縮室2 1と洗浄室2の減圧をまとめて行っている。これを総合すると,構成要件2Dの「前記洗浄室とは独立して減圧され」とは,洗浄室と凝縮室との連通いかんにかかわらず,「時系列的に」凝縮室の減圧が洗浄室の減圧と別の工程で行われることを意味すると解すべきで 総合すると,構成要件2Dの「前記洗浄室とは独立して減圧され」とは,洗浄室と凝縮室との連通いかんにかかわらず,「時系列的に」凝縮室の減圧が洗浄室の減圧と別の工程で行われることを意味すると解すべきである。原告らの主張は,室12と凝縮室34とが連通した状態で減圧されることは「独立 して」には当たらないというものであると理解できるが,本件明細書等 の第2実施形態の記載と矛盾する。第2実施形態も本件発明2の実施例である。 以上の解釈を踏まえて,乙14公報をみると,同公報には,室12が洗浄工程に入る前に真空ポンプにより減圧され,その減圧とは別の工程において凝縮器34が同ポンプにより減圧されることが記載されている。 このため,乙14発明では,「時系列的に」凝縮室の減圧が洗浄室の減圧と別の工程で行われるということができる。 したがって,乙14発明は構成要件2Dを備えているということができるので,相違点2は存在しない。 (イ) 乙14公報は,構成要件2Dの「当該減圧の状態が保持される」との 構成も開示している。 すなわち,乙14公報に記載された溶剤洗浄システムでは,物品20(ワーク)の搬入・搬出を繰り返し,物品20を連続して処理することが想定されている。乙14発明では,室12が洗浄前に凝縮器34とは別に真空ポンプ26で減圧されるところ,溶剤蒸気を効率よく凝縮させ ることを考慮すれば,一連の処理が終わり,室12から物品20を取り出す際,凝縮器34にわざわざ空気を導入するはずがない。当業者であれば,室12から物品20を取り出す際,バルブ32を閉弁し,凝縮器34の減圧状態を維持すると考えられる。 (ウ) 仮に,原告らの主張する相違点14-2が存在するとしても,真空洗 浄装置において石油系溶剤を使用することは,本件 際,バルブ32を閉弁し,凝縮器34の減圧状態を維持すると考えられる。 (ウ) 仮に,原告らの主張する相違点14-2が存在するとしても,真空洗 浄装置において石油系溶剤を使用することは,本件特許権2の出願時において周知の技術事項であるところ,石油系溶剤を使用する洗浄装置では,酸素を混入しないようにすることは当然である。 また,乙14を含む従来の真空洗浄装置では,真空ポンプの故障を回避するために,洗浄室と真空ポンプとの間に凝縮器を介在させ,凝縮器 で洗浄液の蒸気を凝縮させているが,凝縮器の凝縮作用によって,真空 ポンプに蒸気が到達するのを抑制している以上,凝縮器の凝縮性能を考慮せざるを得ず,非凝縮性ガス(空気)が存在すれば凝縮性能が低下することは当業者の技術常識である(乙16~18)。 これに対し,原告らは,乙14発明の凝縮器は溶剤の液体や蒸気が真空ポンプ36に入るのを回避するためのものではないと主張するが,溶 剤蒸気は凝縮器34で凝縮されて液体になるからこそ,その下流に位置する真空ポンプ36に溶剤蒸気が流れ込むのを防止できる。 さらに,乙14発明の【発明の属する技術分野】には「洗浄プロセスと溶剤回収および溶剤洗浄プロセスから空気を排除することで,従来の凝縮による蒸気の完全な回収を可能にし,周囲への排出部の制御をす る。」と記載されており,これによれば,乙14発明の目的は,洗浄プロセスのみならず,溶剤回収及び溶剤洗浄プロセスにおいても空気を排除することにある。 そうすると,凝縮器を扱う当業者であれば,燃焼の危険性を回避するため,また凝縮性能の低下を回避するため,乙14発明において,洗浄 工程で閉鎖されているバルブ32を開放して室12と凝縮器34を連通させる前に,予め凝縮器34から酸素を除去する( 性を回避するため,また凝縮性能の低下を回避するため,乙14発明において,洗浄 工程で閉鎖されているバルブ32を開放して室12と凝縮器34を連通させる前に,予め凝縮器34から酸素を除去する(凝縮器34を真空引きして減圧する)ことは,当然行う事項である。 (エ) 真空洗浄装置において,凝縮器を予め減圧して使用することは,乙9公報にも記載がある。 すなわち,乙9公報には,①まず,バルブ29,49を開弁し,真空ポンプ10を駆動して,減圧タンク1(洗浄室)を真空状態にするとともに,溶剤Aを加熱コイル15で加熱して溶剤蒸気Bを発生させること(段落【0025】),②次に,バルブ29,49を閉弁し,真空ポンプ10を停止する一方,エゼクタ26により減圧タンク1内の真空状態 を保持しながらワークを蒸気洗浄すること(段落【0026】),③そ して,バルブ49を開弁し,真空ポンプ10を駆動して,冷却タンク6(凝縮室)を予め真空状態にしてから,バルブ29を開弁して減圧タンク1内の溶剤蒸気Bを冷却タンク6に差圧吸引すること(段落【0028】)が開示されている。 乙9発明は,ワーク洗浄前に減圧タンク1とともに減圧された冷却タ ンク6の減圧状態を保持した上で,減圧タンク1と冷却タンク6とを連通させる前に真空ポンプ10を駆動し,冷却タンク6のみを確実に真空状態にしてから,バルブ29を開いて減圧タンク1内の蒸気を吸引するものであり,乙9公報には,凝縮器を予め減圧して使用することが示されているということができる。 これに対し,原告らは,乙9発明における,減圧タンク1を予め減圧した冷却タンク6に連通させる工程は,洗浄後に溶剤Aをサブタンク7に導出する際,バルブ23が開弁され,減圧タンク1内に空気が混入することから,洗浄室内に は,乙9発明における,減圧タンク1を予め減圧した冷却タンク6に連通させる工程は,洗浄後に溶剤Aをサブタンク7に導出する際,バルブ23が開弁され,減圧タンク1内に空気が混入することから,洗浄室内にあえて導入した空気を排気するためのものであると主張する。確かに,乙9発明においては,連通前の減圧タンク1内 に空気が混入されているが,これは,連通後に行われるワークの乾燥を妨げないよう,連通前に減圧タンク1内の圧力をサブタンク7内の圧力より上昇させて,減圧タンク1内の液体状の溶剤Aをサブタンク7に導出するためである。 また,乙9発明について,原告らは,本件発明2とはワークの乾燥手 法が異なると主張するが,乙9発明でワークの乾燥時に使用されている加熱コイル13は請求項2における加熱管に相当し,ワークの乾燥効率をさらに向上させるためのものにすぎないので(段落【0005】,【0010】),本件発明2と乙9発明とではワークの乾燥手法に差異はない。 (オ) 以上のとおり,本件発明2において,「洗浄室と連通させる前に予め 凝縮室を減圧しておく」ことが必須の構成だとしても,そのことは乙14公報に実質的に開示されている。またそうでなくても,当業者であれば,乙14に記載された発明に出願時の周知事項及び技術常識を組み合わせることにより,上記構成を容易に想到し得たものである。 オ原告らの主張する相違点14-3について 構成要件2Gは,その文言上,「洗浄室を凝縮室と連通させてワークを乾燥させる」構成が含まれていれば,「真空ポンプで真空引きをしながら連通させる態様」を含み得る。 乙14発明では,洗浄室内の蒸気を専ら真空ポンプで吸引することにより洗浄室内を減圧しているが,途中の凝縮器で蒸気が凝縮されるため,凝 縮作用によ 引きをしながら連通させる態様」を含み得る。 乙14発明では,洗浄室内の蒸気を専ら真空ポンプで吸引することにより洗浄室内を減圧しているが,途中の凝縮器で蒸気が凝縮されるため,凝 縮作用によっても洗浄室内が減圧される。このように,凝縮器を介して洗浄室を真空ポンプで吸引すると,程度の違いこそあれ,必然的に「凝縮器における凝縮→洗浄室の減圧→乾燥」という現象が生じる。 これに対して,原告らは,本件発明2の乾燥工程における真空ポンプの使用は付加的なものであると主張するが,構成要件2Gには連通による減 圧の程度や真空ポンプによる減圧の程度については何ら記載されていない。 (2) 本件発明1について本件発明1の構成要件1Dは「前記洗浄室とは独立して」という文言がない点のみが本件発明2の構成要件2Dと異なる。乙14発明は,本件発明1の構成要件1D及び1Gを開示しており,仮に,本件発明1と乙14発明と の間に相違点が存在するとしても,同相違点に係る構成は当業者であれば容易に想到し得た設計事項にすぎない。 (原告らの主張)(1) 乙14発明についての被告の認定の誤りア乙14公報は,構成要件2Dを開示していない。 (ア) 乙14発明において,室12と熱交換器34とを結ぶバルブ32が閉 まった状態で真空ポンプ36が作動するのであれば,熱交換器34と室12とは「独立して」減圧することにはなるが,乙14公報にはそのような記載は存在しない。むしろ,同公報には「熱交換器34がオンでバルブ32が開放した状態で,真空ポンプ36が作動する。」(7欄48~49行)との記載があり,これによれば,室12と熱交換器34は連 通された状態で減圧されていると解することが相当である。そうすると,熱交換器34と室12は「独立して」減 作動する。」(7欄48~49行)との記載があり,これによれば,室12と熱交換器34は連 通された状態で減圧されていると解することが相当である。そうすると,熱交換器34と室12は「独立して」減圧されてもいないし,その状態が「保持」もされていないということができる。 (イ) これに対し,被告は,構成要件2Dの「洗浄室とは独立して減圧され」の意義について,洗浄室と凝縮室の連通の有無にかかわらず,凝縮室の 減圧が,時系列的にみて,洗浄工程に入る前の洗浄室の減圧と別の工程で行われることを意味すると主張する。 しかし,「独立して」という用語の通常の意味に照らすと,上記構成要件が,凝縮室が洗浄室とは連通していない状態で洗浄室とは異なる圧力に減圧されることを意味することは一義的に明らかであり,また,本 件明細書等の段落【0023】に開示された第1実施形態においても,凝縮室のみを減圧する準備工程が開示されている(なお,被告が援用する第2実施形態は,本件発明2の原出願に係る記載である。)。 イ乙14公報は,構成要件2Gを開示していない。 乙14発明では,「熱交換器34がオンで,バルブ32が開放した状態 で,真空ポンプ36が作動する。こうして物体20と関連する蒸気を含むタンク12内の蒸気66が引き出されて,このプロセス中に物体が乾燥される。」(乙14公報7欄48~51行)のであるから,これは従来技術である真空ポンプを用いた乾燥であって,本件発明のように洗浄室と凝縮室とを連通させることによって乾燥させるものではない。 (2) 相違点14-1以外の相違点 上記(1)によれば,本件発明2と乙14発明は,相違点14-1に加え,以下の点において相違する。 〈相違点14-2〉本件発明2の凝縮室が「真空ポンプによって 相違点14-1以外の相違点 上記(1)によれば,本件発明2と乙14発明は,相違点14-1に加え,以下の点において相違する。 〈相違点14-2〉本件発明2の凝縮室が「真空ポンプによって洗浄室とは独立して減圧され,当該減圧の状態が保持される」ものであるのに対し(構成要件2D),乙1 4発明はそのような構成を備えていない点〈相違点14-3〉本件発明2が「前記蒸気を前記洗浄室に供給してワークを洗浄した後,前記開閉バルブによって前記洗浄室を当該洗浄室よりも低い温度に保持された前記凝縮室と連通させてワークを乾燥させる」(構成要件2G)ものである のに対し,乙14発明はそのような構成を備えていない点(3) 相違点に係る構成の容易想到性ア相違点14-1について相違点14-1に関し,本件発明2の出願当時,蒸気洗浄装置に石油系溶剤を使用することが周知であったことは争わない。 イ相違点14-2について(ア) 被告は,乙14公報に,密閉系のシステムで,溶剤と空気(非凝縮性ガス)との混合を極力回避する旨の記載があることから,室12から溶剤蒸気を引き出す時(乾燥時)には,溶剤蒸気が空気と混合しないよう,凝縮器34は予め真空ポンプ36により減圧され,内部の空気が除去さ れている状態になっていると考えるのが自然であると主張する。 この点,確かに,乙14発明には,空気と溶剤の混合を回避する旨の記載はあるが,同発明は,混同防止という目的を,溶剤を導入する前に室12から空気を排除しておく方法によって実現しているのであり,熱交換器34を含むその他の部材の空気を排除することは一切開示されて いない。 (イ) 被告は,乙8の8の2を根拠に,石油系溶剤の燃焼回避のため,連通・乾燥前に熱交換器34を減圧 ,熱交換器34を含むその他の部材の空気を排除することは一切開示されて いない。 (イ) 被告は,乙8の8の2を根拠に,石油系溶剤の燃焼回避のため,連通・乾燥前に熱交換器34を減圧しておくことは当然行うべき事項であると主張する。 しかし,乙14発明は,石油系溶剤を使用していないのであるから,乙14公報に記載も示唆もされていない燃焼回避という新たな課題を発 見した上で予め熱交換器34を減圧しておくという新しい構成を採用する動機は存在しない。 (ウ) 被告は,真空ポンプの故障を回避するために凝縮器を設けている以上,熱交換器34の凝縮性能を向上させることを考慮しないはずがなく,非凝縮性ガスの存在が凝縮性能を低下させることは技術常識であるとして, 熱交換器34の空気は連通・乾燥前に排除されていると主張する。 しかし,凝縮室の凝縮性能を向上させるために凝縮室内の非凝縮性ガスを排出することは技術常識ではなく,実際,乙14公報にもそのようなことは記載されていない。 また,そもそも,乙14発明の熱交換器34は真空ポンプの故障回避 のために設けられたものではない。すなわち,乙14公報の図1では,熱交換器34と連結して真空ポンプ36が設けられ,それが保管タンク38につながる構成となっているから,熱交換器34で凝縮された液体は真空ポンプ36を通って保管タンク38に貯蔵される構成となっている。このような仕様の真空ポンプ36(液体の流れ込みにも耐え得るポ ンプ)においては,溶剤の液体や蒸気が入るのを回避する必要はないので,熱交換器34は,真空ポンプ36に液体や蒸気が入って故障するのを回避するために設けられたものではない。 (エ) 被告は非凝縮性ガスの排除は周知であったとして,乙16~18を提出している。 熱交換器34は,真空ポンプ36に液体や蒸気が入って故障するのを回避するために設けられたものではない。 (エ) 被告は非凝縮性ガスの排除は周知であったとして,乙16~18を提出している。 しかし,これらの文献に記載されているのは,空気などの非凝縮気体 が存在すると凝縮性能が低下するという一般論であって,同各文献から,本件各発明のような洗浄室のワークを温度差・圧力差を利用して乾燥させるという技術を知らない当業者が,凝縮室を予め減圧しておくことや,洗浄室と独立して減圧しておくことを着想するとは考え難い。 (オ) 被告は,構成要件2Dの「減圧の状態が保持され」という構成に関し, 乙14発明の室12は洗浄前に凝縮器34とは別に真空ポンプ26で減圧されるところ,溶剤蒸気を効率よく凝縮させることを考慮すれば,一連の処理が終わり,室12から物品20を取り出す際,凝縮器34にわざわざ空気を導入するはずがないなどと主張する。 しかし,乙14公報には,溶剤蒸気を効率よく凝縮させるために,一 連の処理が終わった後,凝縮器34を減圧した状態に維持する旨の記載又は示唆は存在しない。 (カ) 乙9公報には「而して,ワークの蒸気洗浄終了後においては,ワークの乾燥処理に先立って,バルブ23,36を開弁し,ライン25に作用する大気圧とライン37に作用する負圧との差圧を利用して,減圧タン ク1内の加熱された溶剤Aを,該タンク1外へ導出して,この溶剤Aをサブタンク7内に一時貯溜する。」(段落【0027】),「減圧タンク1内の溶剤Aをサブタンク7内に吸引完了した時点で,上述の各バルブ23,36を閉弁する。次に真空ポンプ10を駆動すると共に,バルブ,49を開弁して冷却タンク6内を予め真空状態に成し,その後,バ ルブ29を聞いて減圧タ 内に吸引完了した時点で,上述の各バルブ23,36を閉弁する。次に真空ポンプ10を駆動すると共に,バルブ,49を開弁して冷却タンク6内を予め真空状態に成し,その後,バ ルブ29を聞いて減圧タンク1内に残存する溶剤蒸気Bを,ライン30を介して冷却タンク6に差圧吸引する。」(段落【0028】)との記載がある。 これによれば,乙9発明においては,蒸気洗浄工程後,洗浄室の溶剤をサブタンクに導出する工程において,バルブ23を開弁して減圧タン ク1(洗浄室)内に空気を入れ,この空気の圧力によって溶剤Aを押し 出し,バルブ36を通じてサブタンク7に入れること,すなわち,減圧タンク1(洗浄室)内に空気が混入した状態となることは明らかである。 そして,同発明では,その後,「減圧タンク1(洗浄室)の溶剤蒸気Bを冷却タンク6に導入する工程」において,溶剤蒸気Bと空気が冷却タンク6(凝縮室)に導入される。 これに対し,乙14発明は,空気と溶剤の混同防止を目的とし,蒸気洗浄前に室12(洗浄室)から空気を排除することで同目的を実現しているから,洗浄室から排出されるのは蒸気(空気と混同していない)である。乙14においては洗浄室に空気を混入させることや,蒸気と空気が混合した気体を洗浄室から排出することは全く予定されていない。 そうすると,乙9発明は洗浄室にあえて導入した空気を排気する工程を含むものであり,洗浄室から空気が排除されている乙14発明の技術事項とは全く異なるものであるから,これを乙14発明に適用する動機がない。 ウ相違点14-3について (ア) 乙14発明が従来技術であることは,被告も認めるところであり,洗浄室と凝縮室の連通による乾燥を実現するものでない。 本件発明2は,付加的に真空ポンプを併用する態様を排 -3について (ア) 乙14発明が従来技術であることは,被告も認めるところであり,洗浄室と凝縮室の連通による乾燥を実現するものでない。 本件発明2は,付加的に真空ポンプを併用する態様を排除していないが,従来技術のように真空ポンプの減圧で洗浄室の圧力を低下させて洗浄液を気化させ,発生した蒸気を真空ポンプで吸引するという形 態は,上記メカニズムを利用した乾燥に当たらない。 (イ) 乙9発明は,洗浄槽内に溶剤が存在する従来技術では,乾燥工程において溶剤が気化して乾燥を妨げることから,乾燥工程に先立って溶剤を別の場所に移動させることを目的とする発明であり,その構成が請求項1に記載されている。そして,請求項2では,段落【0029】に記載 された乾燥工程における加熱コイルについて述べている。 被告は,加熱コイル13はワークの乾燥を促進するために付加的に配置されているにすぎないと主張するが,乙9公報には,乾燥工程において加熱コイル13を用いる構成の記載しか存在せず,加熱コイル13がなくても溶剤蒸気Bが減圧タンク1から冷却タンク6に移動して減圧タンク1内が減圧されることにより,ワークが乾燥される工程についての 記載や示唆もない。 (4) 以上のとおり,本件発明2と乙14発明には相違点14-1~3があるところ,これらの相違点(特に相違点2及び3)は当業者が容易に想到し得たものではないので,本件発明2が進歩性を欠くとの被告の主張は理由がない。 本件発明1についても,本件発明2と同様の理由から,被告の主張は理由 がない。 4 争点2-2(乙15発明による進歩性の欠如)について(被告の主張)(1) 本件発明2について本件発明2は,以下のとおり,乙15発明及び周知事項に基づき,当事者 が容易に想到 。 4 争点2-2(乙15発明による進歩性の欠如)について(被告の主張)(1) 本件発明2について本件発明2は,以下のとおり,乙15発明及び周知事項に基づき,当事者 が容易に想到し得たものであり,進歩性を有しない。 ア乙15公報の開示する発明乙15公報には,以下の発明が記載されている。 15A バキュームポンプ14と,15B 蒸気を生成する蒸気発生部4および加熱手段8と, 15C バキュームポンプ14によって減圧され,当該減圧の状態において蒸気発生部4から供給される蒸気によって被洗浄物5を洗浄する蒸気洗浄部3と,15D バキュームポンプ14によって減圧される凝縮器15と,15E 凝縮器15を蒸気洗浄部3よりも低い温度に保持する冷却パイプ 9と, 15F 凝縮器15と蒸気洗浄部3とを連通させ,または,その連通を遮断する第一電磁弁17と,を備え,15G 蒸気を蒸気洗浄部3に供給して被洗浄物5を洗浄した後,第一電磁弁17によって蒸気洗浄部3を蒸気洗浄部3よりも低い温度に保持された凝縮器15と連通させて被洗浄物5を乾燥させる 15H ことを特徴とする減圧蒸気洗浄装置。 イ一致点及び相違点乙15発明の上記アの構成は,本件発明2の構成要件2A~2Hに対応する。両者の相違点は,以下のとおりであり,その余の構成において一致する。 〈相違点15-1〉本件発明2が「石油系溶剤」(構成要件2B)を用いるのに対し,乙14発明が「洗浄液」を用いる点〈相違点15-2〉本件発明2の凝縮室は「真空ポンプによって洗浄室とは独立して減圧さ れ,当該減圧の状態が保持される」(構成要件2D)ものであるのに対し,乙15発明の凝縮器15は,バキュームポンプ14によって減圧されるも の凝縮室は「真空ポンプによって洗浄室とは独立して減圧さ れ,当該減圧の状態が保持される」(構成要件2D)ものであるのに対し,乙15発明の凝縮器15は,バキュームポンプ14によって減圧されるものの,「蒸気洗浄部3とは独立して減圧され,当該減圧の状態が保持される」ものではない点ウ相違点15-2に係る構成の容易想到性 本件特許権2の出願当時,当業者が,乙15発明に乙9発明を組み合わせることにより,相違点15-2に係る構成を想到することは容易であった。 (ア) 乙9公報の段落【0026】,【0028】によれば,乙9公報に記載された蒸気洗浄装置においては,蒸気洗浄後にバルブ49を開弁 し(バルブ29は閉弁),真空ポンプ10を駆動することにより,減 圧タンク1とは独立して冷却タンク6のみを真空状態にし,冷却タンク6の真空状態を保持したままバルブ29を開弁し,減圧タンク1を冷却タンク6に連通させているということができる。 乙9発明は,機械部品を減圧下で溶剤蒸気を用いて洗浄する装置に係る発明であり,乙15発明と技術分野を同じくするばかりか,「洗浄槽 →凝縮器→真空ポンプ」という装置の構成も同一である。そして,乙9発明は,洗浄蒸気を効率よく凝縮させるという課題を解決するため,バルブを閉弁した状態で真空ポンプを駆動して,減圧タンクとは独立して冷却タンクのみを真空状態にする技術を開示しているが,この課題は,乙15発明にも共通するものである。 したがって,乙15発明には,乙9発明の開示する技術を採用する動機付けがあり,乙15発明において,バキュームポンプ14により凝縮器15を蒸気洗浄部3とは独立して減圧し,当該減圧の状態を保持する構成を採用することは,当業者であれば容易に想到し得たことということができる。 り,乙15発明において,バキュームポンプ14により凝縮器15を蒸気洗浄部3とは独立して減圧し,当該減圧の状態を保持する構成を採用することは,当業者であれば容易に想到し得たことということができる。 そして,乙9公報の記載に基づいて,乙15の洗浄装置の凝縮器15を蒸気洗浄部3とは独立して減圧し,その状態を保持するには,第一電磁弁17を閉弁した状態でバキュームポンプ14を作動させればよく,これは当業者であれば容易になし得る事項である。 (イ) 原告らは,乙15発明に乙9発明を組み合わせる動機付けがないとも 主張する。しかし,凝縮器の凝縮作用を利用する以上,凝縮性能の低下を防ぐため,凝縮器から空気を除去し,あるいは,爆発防止などの安全性の観点から凝縮器から酸素を除去することは必須である。このように,乙15発明に乙9発明を組み合わせる動機は,乙15発明に内在しているということができる。 (2) 本件発明1について 乙15発明は,本件発明1の構成要件1D及び1Gを開示しており,仮に,本件発明1と乙15発明との間に以下の相違点が存在するとしても,同相違点に係る構成は当業者であれば容易に想到し得た設計事項にすぎない。 ア相違点本件発明1と乙15発明は,上記相違点15-1のほかに,以下の点で 相違する。 〈相違点15-2’〉本件発明1の凝縮室においては,「真空ポンプによって減圧され,当該減圧の状態が保持される」が,乙15発明の凝縮器15は,乾燥工程で蒸気洗浄部3と連通させる前にバキュームポンプ14によって減圧されるが, 当該減圧の状態が保持されるか不明な点イ相違点15-2’について乙15公報の段落【0030】,【0033】及び【0035】並びに【図1】からは,凝縮器15において蒸気洗浄 されるが, 当該減圧の状態が保持されるか不明な点イ相違点15-2’について乙15公報の段落【0030】,【0033】及び【0035】並びに【図1】からは,凝縮器15において蒸気洗浄前に減圧された状態が乾燥処理開始まで保持されているか不明であるが,蒸気洗浄前に一旦凝縮器1 5を減圧し内部の空気を除去した後で,あえてバキュームポンプ14を停止して凝縮器15内に再び空気を流入させ,その後に乾燥工程で凝縮器として使用するという使い方は,凝縮器の通常の使用方法からは考え難い。 そして,内部に空気などの非凝縮性ガスが存在したまま凝縮器を使用した場合,熱伝達率が低下して凝縮性能が低下する。このことは,乙16, 18に記載されているように,乙15発明の出願時における当業者の技術常識である。また,溶剤を引火点以上に加熱して蒸気洗浄を行う真空洗浄装置においては,爆発を引き起こす危険性がある空気を積極的に系内に導入するなどということはあり得ない。さらに,真空ポンプは,停止すると空気が逆流するため,常時作動させるのが一般的である。 したがって,当業者であれば,真空ポンプを連続運転して,空気を排出 し続け,内部を減圧状態にした状態で凝縮器を使用するものと理解すると考えられ,乙15においても,蒸気洗浄から乾燥処理までの間にバキュームポンプ14を停止するという記載はない。 そうすると,乙15の減圧蒸気洗浄装置においても,洗浄処理前から乾燥処理が開始されるまでの間バキュームポンプ14は作動しており,凝縮 器15の減圧状態が保持されると考えるのが相当である。 仮にバキュームポンプ14を停止したとしても,凝縮器15とバキュームポンプ14との間に逆止弁を介在させれば,凝縮器15の減圧状態を容易に保持することができるので, 持されると考えるのが相当である。 仮にバキュームポンプ14を停止したとしても,凝縮器15とバキュームポンプ14との間に逆止弁を介在させれば,凝縮器15の減圧状態を容易に保持することができるので,乙15発明の凝縮器15において「バキュームポンプ14によって減圧され,当該減圧の状態が保持される」こと は,乙15の記載から当業者が容易に想到し得たことである。 (原告らの主張)(1) 相違点15-1・2以外の相違点乙15発明は,洗浄室と凝縮室を連通させてワークを乾燥させるものではないため,本件発明2と乙15発明は,相違点15-1・2に加え,以下の 点において相違する。 〈相違点15-3〉本件発明2が「前記蒸気を前記洗浄室に供給してワークを洗浄した後,前記開閉バルブによって前記洗浄室を当該洗浄室よりも低い温度に保持された前記凝縮室と連通させてワークを乾燥させる」(構成要件2G)のに対し, 乙15発明はそのような構成を備えていない点(2) 相違点に係る構成の容易想到性ア相違点15-2について被告は,乙15発明に乙9発明を組み合わせることは容易であると主張する。 (ア) しかし,被告が根拠とする乙9公報の段落【0028】の記載は乾燥 工程の前段階の工程であって,乾燥工程に関する記載ではなく,それに続く段落【0029】に「このような条件下において減圧タンク1内のワークを乾燥処理する。つまり,バルブ14を開いて,加熱コイル13に加熱オイルを流通させ,この熱媒により減圧タンク1内およびワークを加熱して,該ワークを乾燥させる。」と記載されているとおり,乙9 発明の乾燥工程は「加熱コイル13」による乾燥のみである。 したがって,乙9公報には,乾燥工程において,「真空ポンプによって洗浄室とは独 ,該ワークを乾燥させる。」と記載されているとおり,乙9 発明の乾燥工程は「加熱コイル13」による乾燥のみである。 したがって,乙9公報には,乾燥工程において,「真空ポンプによって洗浄室とは独立して減圧され」る構成は記載されていない。 (イ) 仮に,乙9公報が乾燥工程において洗浄室と凝縮器とを独立して減圧する構成を開示しているとしても,乙15発明の乾燥工程は,乙15公 報の段落【0035】に「この蒸気洗浄部(3)に接続するバキュームポンプ(14)を稼働して,蒸気洗浄部(3)内を急速に減圧する。この急速減圧により,被洗浄物(5)や蒸気洗浄部(3)内に付着した洗浄液(7)の沸点が低下し,急速な乾燥が可能となる。」と記載されているとおり,真空ポンプの吸引力で減圧・吸引を行う,本件各発明が課題とする従来 技術にほかならないので,乙15発明において,洗浄室と凝縮器とを独立して減圧して減圧状態を保持する必要性がない。 したがって,乙15発明に乙9の2の2を組み合わせる動機はない。 イ相違点15-3について前記のとおり,乙15発明は本件明細書等が開示する従来技術であり, その他の証拠にも相違点3にかかる構成は記載も示唆もされていないので,本件発明2の出願当時の当業者が相違点3に係る構成を想到することが容易であったということはできない。 (3) 以上のとおり,本件発明2と乙15発明には相違点15-1~3があるところ,これらの相違点(特に相違点15-2・3)は当業者が容易に想到し 得たものではないので,本件発明2が進歩性を欠くとの被告の主張は理由が ない。 本件発明1についても,本件発明2と同様の理由から,被告の主張は理由がない。 5 争点2-3(分割要件違反による新規性及び進歩性の欠如)について(被告 くとの被告の主張は理由が ない。 本件発明1についても,本件発明2と同様の理由から,被告の主張は理由がない。 5 争点2-3(分割要件違反による新規性及び進歩性の欠如)について(被告の主張) (1) 本件原出願の出願当初の明細書等(乙8の1)との関係ア本件原出願の出願当初の明細書及び図面(以下「乙8の1明細書等」という。)には,その乾燥工程において,真空ポンプを用いずに,洗浄室と凝縮室とを連通させることだけで,ワークを乾燥させる真空洗浄装置が開示されているが(段落[0029]~[0030],[0032]~[0 040]),同工程において真空ポンプを用いることについては,その技術的な可能性,それを用いた場合の問題点を含め,開示も示唆もされていない。ここから導かれる技術的事項は,真空ポンプを用いず,洗浄室と凝縮室とを連通させるだけでワークを乾燥させる技術である。 イしかるに,本件各発明は,構成要件1G及び2Gのとおり,乾燥工程に おいて,真空ポンプをも併用した上,洗浄室と凝縮室とを連通させて乾燥させる形態をも含み得るものとなっている。これは新たな技術的事項を導入するものとして,分割要件に違反する。 これに対し,原告らは,本件原出願は,真空ポンプを併用する形態を排除するものではないと主張するが,本件原出願は,真空ポンプを用いるこ となく短時間でワークを乾燥するという課題を解決したのであるから,さらに真空ポンプを併用する必要性がない。むしろ,これを併用すれば,「密閉された室内」(段落[0039])を保つことができなくなり,「装置全体のコストを低減できる」(段落[0040])という効果も生じなくなるから,真空ポンプを併用することが自明な事項であったという ことはできない。 ウし ことができなくなり,「装置全体のコストを低減できる」(段落[0040])という効果も生じなくなるから,真空ポンプを併用することが自明な事項であったという ことはできない。 ウしたがって,本件各特許権については,特許法44条2項の出願日の訴求が許されず,その現実の出願日を出願日とすることになる。他方,本件各特許権の現実の出願日前に頒布された刊行物である乙8の15公報には,乾燥工程において,真空ポンプを用いながら,洗浄室と凝縮室とを連通させて乾燥させる発明が記載されているから,本件各発明は,新規性欠如の 無効理由を有する。仮に,本件各発明との間に何らかの相違があるとしても,当業者が容易に発明することのできた微差又は設計事項にすぎないので,本件各発明は,進歩性欠如の無効理由を有する。 (2) 本件特許権2の分割直前の明細書等(乙8の15)との関係ア本件原出願の本件特許権2の分割直前の明細書及び図面(以下「乙8の 15明細書等」という。)の記載を総合すると,①洗浄室と凝縮室とを隣接状態に設け,②真空ポンプを用いることなく凝縮室と洗浄室とを連通させることのみによりワークを乾燥させるという技術的事項を導くことができるが(【請求項1】~【請求項5】,段落【0007】~【0011】,【0029】~【0030】,【0032】~【0040】),洗浄室と 凝縮室とを離間状態させたり,真空ポンプを用いて乾燥させたりすることは,開示も示唆もされていない。 イ特に,請求項1及び5については,最初の手続補正において,「引用発明1のような洗浄室と凝縮室とを離間配置して配管で相互接続するような構成では,本願発明の目的を達成することはできない。」(乙8の7)と して,「洗浄室と凝縮室とを隣接状態に設けること」という部分 1のような洗浄室と凝縮室とを離間配置して配管で相互接続するような構成では,本願発明の目的を達成することはできない。」(乙8の7)と して,「洗浄室と凝縮室とを隣接状態に設けること」という部分が追加されており(乙8の6),また,2回目の手続補正において,引用文献1及び2との抵触回避のため,「真空ポンプを用いることなく開閉バルブを開弁して洗浄室と凝縮室とを連通させることによってワークを乾燥させること」が追加されたという経緯がある(乙8の12)。 ウ他方,本件明細書等の全ての記載から導かれる技術的事項は,少なくと も凝縮室と洗浄室とを連通させることによりワークを乾燥させる技術であり,真空ポンプを用いて減圧する形態や洗浄室と凝縮室とを離間状態に設ける形態が含まれる。そうすると,本件特許2の出願は,乙8の15明細書等との関係において分割要件に違反する。 したがって,本件各特許権は,前記⑴ウで述べたのと同様の理由により, 本件各特許権の現実の出願日前に頒布された刊行物である乙8の15公報との関係で新規性又は進歩性欠如の無効理由を有する。 (3) 本件特許権1の原出願の当初明細書等(乙10の1)との関係ア本件特許権2からの分割出願(前提事実(2)ウ(ウ))の出願当初の明細書及び図面(以下「乙10の1明細書等」という。)の記載を総合すると, ①洗浄室と凝縮室とを隣接状態に設け,②乾燥工程において,真空ポンプを用いて凝縮室を減圧することなく,凝縮室と洗浄室とを連通させることのみによりワークを乾燥させるという技術的事項が導かれるが(【請求項1】~【請求項5】,段落【0007】~【0011】,【0029】~【0030】,【0032】~【0040】),洗浄室と凝縮室とを離間 状態に設けたり,凝縮室を減圧しながら かれるが(【請求項1】~【請求項5】,段落【0007】~【0011】,【0029】~【0030】,【0032】~【0040】),洗浄室と凝縮室とを離間 状態に設けたり,凝縮室を減圧しながら乾燥させたり,真空ポンプを用いながら乾燥させるたりすることは,記載も示唆もされていない。 イ他方,本件明細書等の全ての記載から導かれる技術的事項は,少なくとも凝縮室と洗浄室とを連通させることによりワークを乾燥させる技術であり,真空ポンプを用いて減圧する形態や洗浄室と凝縮室とを離間状態に設 ける形態が含まれる。そうすると,本件特許1の出願は,乙10の1明細書等との関係において分割要件に違反する。 したがって,本件特許権1は,この観点からも,本件特許権1の現実の出願日前に頒布された刊行物である乙8の15公報との関係で新規性又は進歩性欠如の無効理由を有する。 (4) 時機に後れた攻撃防御方法に当たらないこと なお,被告の前記(2)及び(3)の主張は,平成30年2月11日付け準備書面で追加したものであるが,原出願には真空ポンプを使わない技術しか含まれていないが,分割後には真空ポンプを含む技術まで権利範囲が拡張されているという主張は,平成29年7月28日付け準備書面から一貫している。 これらの主張は,原告らの防御権を不当に侵害するものとはいえないのであ り,時機に後れた攻撃防御方法に当たるものではない。 (原告らの主張)(1) 本件原出願の出願当初の明細書等(乙8の1)との関係ア本件各発明は,温度差,圧力差のある洗浄室と凝縮室を連通させれば自ずと生じる自然現象を利用し,急速な乾燥を実現するものであるが,この ようなメカニズムが,乙8の1明細書等にも明記されていることに争いはない。そして,真空ポンプを併用する 縮室を連通させれば自ずと生じる自然現象を利用し,急速な乾燥を実現するものであるが,この ようなメカニズムが,乙8の1明細書等にも明記されていることに争いはない。そして,真空ポンプを併用することは,本件各発明の構成要件ではないのであるから,分割要件違反が成立する余地はない。 イ本件原出願は,前記のメカニズム利用する上で,「付加的」に真空ポンプを利用する形態を排除するものではない。例えば,非凝縮性ガスが装置 の隙間や凝縮液タンクから凝縮室に入り込んで凝縮を妨げることを防ぐために真空ポンプで排気する場合や,凝縮で急速な乾燥を実現した上で,それ以上に減圧するために真空引きをする場合などが「付加的」な使用に当たる。 ウこれに対し,被告は,乙8の1明細書等には真空ポンプを併用する形態 の技術的可能性等が記載されていないと主張する。しかし,真空ポンプの使用の有無にかかわらず蒸気が低圧の凝縮室側に移動することは,一般常識レベルの技術的事項であり,真空ポンプの排気力を併用したところでその作用効果が阻害されることがないことも,当業者に自明な事項である。 エ被告は,本件原出願の出願当初の明細書等の段落[0039]及び[0 040]の記載を指摘する。しかし,同各記載は,原出願の明細書等の第 1実施形態の内容を説明したものにすぎない。また,段落[0039]は,密閉だから再利用率が高いと述べているにすぎず,凝縮,乾燥を生じるためには密閉が必要であるとか,真空ポンプを使用してはならないとは記載されていない。 (2) 本件特許権2の分割直前の明細書等(乙8の15)との関係 ア乙18の15明細書等も,前記⑴アと同様の乾燥メカニズムを開示しているところ,その記載に接した当業者は,蒸気の効率的な凝縮のための構成を適宜 2の分割直前の明細書等(乙8の15)との関係 ア乙18の15明細書等も,前記⑴アと同様の乾燥メカニズムを開示しているところ,その記載に接した当業者は,蒸気の効率的な凝縮のための構成を適宜設定することができるのであるから,洗浄室と凝縮室とを隣接させることが必須であると理解するものではない。また,真空ポンプの併用が排除されていないと理解することも既に述べたとおりであるので,この 点に関する分割要件違反の主張も失当である。 イ乙18の15明細書等の請求項1には「隣接し」や「真空ポンプを用いられることなく」と記載されているが,分割出願に係る発明は原出願当初の特許請求の範囲に記載された発明である必要はなく,明細書及び図面に記載されている発明で足りるので,同請求項に係る発明が上記のとおり限 定されていても,本件特許権2が分割要件違反となるものではない。 (3) 本件特許権1の原出願の当初明細書等(乙10の1)との関係ア乙10の1明細書等は,乙8の15明細書等と同様の内容であり,これに接した当業者が,洗浄室と凝縮室とを隣接させることが必須であるとは理解せず,真空ポンプの併用などが排除されないと理解することは,既に 述べたとおりであるので,この点に関する分割要件違反の主張も失当である。 イ乙10の1明細書等に係る特許請求の範囲の【請求項4】には,「隣接し」,「凝縮室を減圧することなく」,「乾燥に真空ポンプを寄与させることなく」との記載があるが,分割出願に係る発明は原出願当初の特許請 求の範囲に記載された発明である必要はなく,明細書及び図面に記載され ている発明で足りることは前記(2)イのとおりである。 (4) 時機に後れた攻撃防御方法に当たること被告の前記(2)及び(3)の主張は,本件訴訟が提起 必要はなく,明細書及び図面に記載され ている発明で足りることは前記(2)イのとおりである。 (4) 時機に後れた攻撃防御方法に当たること被告の前記(2)及び(3)の主張は,本件訴訟が提起されてから1年半以上が経過した後,裁判所から無効論を尽くした旨の確認を受けた上,技術説明会を終了した段階で提出されたものである。当該主張は,新たな文献を根拠と するものであり,被告の故意または重大な過失により時機に後れた攻撃防御方法に該当することは明らかであって,これらの主張は却下されなければならない(民訴法157条1項)。 6 争点2-4(実施可能要件違反)について(被告の主張) (1) 本件明細書等の段落【0029】,【0030】によれば,洗浄室と凝縮室との間に「温度差」があることは理解できるが,洗浄室と凝縮室の「圧力差」に関する記載はないため,当業者は,洗浄室を凝縮室と連通させることによりどのようにしてワークを乾燥することができるのかを理解することができない。 (2) 本件明細書等の段落【0032】~【0038】には,真空乾燥実験が開示されている。この実験においては,洗浄室や凝縮室の容積,凝縮室の伝熱面積などに関する実験条件が極めて重要であるところ,本件明細書等には,これらの実験条件は開示されておらず,実験に用いた真空ポンプや圧力計の種類やスペック,単位換算の方法なども記載されていないので,本件各発明 のメカニズムを理解していなかった当時の当業者は,当該実験を再現することができなかった。 (3) 実際,被告が,本件明細書等の実験条件(段落【0025】,【0029】,【0040】,【0035】)に従った再現実験をしてみても,本件各発明の効果を得ることはできなかった(乙13実験)。また,本件明細書 が,本件明細書等の実験条件(段落【0025】,【0029】,【0040】,【0035】)に従った再現実験をしてみても,本件各発明の効果を得ることはできなかった(乙13実験)。また,本件明細書 等には,凝縮室を「10㎪以下」に減圧するとあるが,甲18実験によれば, これを1㍱まで減圧したとしても,本件各発明の課題を解決し得ないということになる。 以上のとおり,本件各発明を実施するためには,当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を重ねる必要があり,本件各発明は実施可能要件欠如の無効理由を有する。 (原告らの主張)(1) 本件各発明は,①飽和蒸気圧にある洗浄室を圧力差・温度差を設けた凝縮室に連通させると,洗浄室の蒸気が低圧の凝縮室に移動し,凝縮室が低温であるために凝縮される,②凝縮室の圧力は同室の温度に対応する飽和蒸気圧に保持される結果,洗浄室と凝縮室との圧力差により,洗浄室から凝縮室へ 蒸気が供給され,洗浄室の圧力が下がる,③洗浄室の圧力が下がると,それに伴い液体の沸点が下がるため,洗浄室では液体が更に蒸気になり,その蒸気が洗浄室から凝縮室に移動し続ける,という方法によりワークの乾燥を行うものである。飽和蒸気圧にある洗浄室と凝縮室に圧力差・温度差を設けることによりこのような現象が生じることは,基礎的な技術常識であり,当業 者は容易に理解し得る。 被告は,本件明細書等には,洗浄室と凝縮室に温度差を設けることは記載されているが,圧力差を設けることは記載されていないと主張するが,構成要件1D及び2Dにおいて,凝縮室は洗浄前に真空ポンプによって減圧され,その状態が保持されていること,このような減圧された凝縮室と洗浄室とを 連通させることにより乾燥が生じるとされていることに照らすと,凝縮室が連通前の洗 室は洗浄前に真空ポンプによって減圧され,その状態が保持されていること,このような減圧された凝縮室と洗浄室とを 連通させることにより乾燥が生じるとされていることに照らすと,凝縮室が連通前の洗浄室よりも低い圧力に保持されていることは当業者に自明である。 (2) 被告は,本件明細書等には,記載された真空乾燥実験の実験条件が開示されていないと主張するが,本件各発明の乾燥メカニズムからすれば,本件明細書等に記載の実験を再現するには,洗浄室と凝縮室との間に石油溶剤の凝 縮点・飽和蒸気圧を踏まえた温度差・圧力差を設ければ足りることを,当業 者であれば容易に理解し得る。それ以上の詳細な実験条件は,石油溶剤の種類,洗浄室と凝縮室の体積など,再現実験をする個別具体的な状況に基づいて,当業者が適宜設定することが可能なのであるから,そのような実験条件が本件明細書等に開示されていないとしても,実施可能要件には違反しない。 (3) なお,被告は,乙13実験の結果を示し,実際にも当該実験を再現し得な かったと主張するが,当該実験は,実験条件さえも開示されておらず,意図的に温度差,圧力差を小さくするなど,効果を確認し難い条件を設定したものであると考えられる。また,被告指摘の甲18実験の結果は,本件発明の実施品であっても,空気を残すなど,あえて発明の効果が出にくい条件設定をすれば減圧は緩やかとなり,被告実験もそのような条件設定でなされた可 能性があることを示すためのものであり,本件各発明の実施可能要件とは関係がない。 7 争点2-5(サポート要件違反)について(被告の主張)(1) 前記6(被告の主張)のとおり,本件明細書等の発明の詳細な説明には, 洗浄室と凝縮室との間の蒸気移動のメカニズムや真空乾燥実験を再現できるだけの 要件違反)について(被告の主張)(1) 前記6(被告の主張)のとおり,本件明細書等の発明の詳細な説明には, 洗浄室と凝縮室との間の蒸気移動のメカニズムや真空乾燥実験を再現できるだけの実験条件も開示されていない。本件各発明の出願時の技術常識に照らしても,本件各発明に係る「請求項1」の範囲にまで,発明の詳細な説明に開示された内容を一般化することができない。 (2) 本件明細書等の発明の詳細な説明には,真空ポンプを用いることなく,洗 浄室と凝縮室とを連通させることのみによって洗浄室を減圧し,ワークを乾燥させる発明が記載されており,真空ポンプを使用する形態は,従来技術や比較例としてのみ記載されているにすぎないが,本件各発明は,文言上,その程度を問わず,真空ポンプを用いる形態を含み得るものとなっている。 (3) 本件各発明の構成要件1G等の「ワークを乾燥させる」という構成につい て,本件明細書等には裏付けとなる記載がない。本件明細書等の段落【00 36】~【0038】によると,洗浄室内の圧力が「最高減圧レベル」に到達したことをもって「ワークが乾燥した」と判断するようであるが,「ワークが乾燥したこと」と「洗浄室の圧力が最高減圧レベルに到達したこと」とがどのように関係するか不明である。 (原告らの主張) (1) 被告は,本件明細書等には,洗蒸気移動のメカニズムや真空乾燥実験の実験条件が開示されておらず,サポート要件に違反すると主張するが,前記6(原告らの主張)のとおり,いずれも失当である。 (2) 被告は,本件明細書等に真空ポンプを使用する場合の記載がないことを指摘するが,本件各発明を実施する場合の全ての実施態様を明細書等に記載し なければならないというものではない。特に,真空ポンプを併用する態様は 書等に真空ポンプを使用する場合の記載がないことを指摘するが,本件各発明を実施する場合の全ての実施態様を明細書等に記載し なければならないというものではない。特に,真空ポンプを併用する態様は補助的な用法にすぎないのであるから,かかる態様が本件明細書等に記載されていないとしてもサポート違反にはならない。 (3) 本件各発明の構成要件1G等の「ワークを乾燥させる」という構成に関するサポート要件違反の主張は趣旨が理解し難いが,乾燥としてどの程度のレ ベルを求めるかは当業者が適宜設定すべき問題であって,本件明細書等により十分にサポートされている。 8 争点3(原告らの損害額)について(原告らの主張)(1) 原告らに生じた損害額は,特許法102条2項に基づき,本件特許2の登 録日である平成28年7月29日から令和元年11月19日までの被告製品の売上高(前提事実(5)ア)から経費を控除した限界利益に相当する額であると推定される。そして,ここで控除すべき経費は,別紙2の原告ら認否欄の項目の金額であるから,その限界利益は,●(省略)●円である。 当事者間に争いのある経費の項目に関する原告らの主張は,以下のとおり である。 ア労務費〈経費2〉被告は,労務費が変動費に該当すると主張するが,労務費は,製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費ではないので,変動費には当たらない。被告の真空炉事業部の従業員は,被告製品の製造等のために雇用されたわけではなく,他部署への配置転換が可能である。実際にも,被告 製品を製造販売開始の前後で,被告の従業員数に変動はないので(甲48),被告主張の労務費は,控除されるべき経費に当たらない。 仮に,労務費を控除するとしても,被告の主張数字の根拠となる「関わり比率」なる 製造販売開始の前後で,被告の従業員数に変動はないので(甲48),被告主張の労務費は,控除されるべき経費に当たらない。 仮に,労務費を控除するとしても,被告の主張数字の根拠となる「関わり比率」なるものは,従業員の主観に基づく自己申告にすぎず,客観的な根拠がなく,同業者である原告らから見ても,その人工計算の数字は過大 である。また,被告主張の数字は,管理部門の労務費も含んでいる点でも不当である。 イ外注費〈経費3〉被告の真空炉事業部の外注費用は,労務費と同額という高額になっている上,毎年継続的に発生していることから,固定的に外注を活用するとい う形態になっていると思われる。このような費用は,もはや被告の従業員に対する人件費と同視すべき性質のものであるから,被告主張の外注費は変動費には当たらないというべきである。仮に,その一部が変動費に当たるとしても,被告主張額の半額程度とすべきである。 ウ旅費交通費,旅費日当〈経費4③,④〉 いわゆる出張交通費や旅費日当は,通常の営業活動や巡回サービスなどを含め,多種多様な費用を含むのが一般である。被告主張の費用も,その明細が不明である以上,変動費に含めることはできない。 エ通信費〈経費4⑥〉通信費は固定費に分類される。被告主張の通信費が,被告製品の製造販 売のために直接関連して追加的に必要となったものであることを示す証拠 はないから,これを変動費と認めることはできない。 オ修繕維持費,減価償却費(真空度測定機器)〈経費4⑩,⑪〉内容及び金額の根拠が不明である。 カ産廃処理費〈経費4⑫〉被告は,製造部門の産廃処理費の総額に「関わり比率」で案分した額を 費用として控除すべきであると主張するが,当該比率は,労働力と製造機製造の関係に基づくもの る。 カ産廃処理費〈経費4⑫〉被告は,製造部門の産廃処理費の総額に「関わり比率」で案分した額を 費用として控除すべきであると主張するが,当該比率は,労働力と製造機製造の関係に基づくものであり,産廃処理費の発生の多寡とは無関係な要素で算定されている。また,当該比率の基礎となる数値は,自己申告ないし独自設定によるものであるので,これを変動費と認めることはできない。 キ雑費(デザイン料)〈経費4⑬〉 被告の製造する製品は,被告製品に限らず,他の種類の機械も統一的にデザインされているから(甲37,49),そのデザイン料は,被告製品の製造に追加的に必要となった費用ではない。 ク旅費交通費〈経費5①〉いわゆる出張交通費や旅費日当は,通常の営業活動や巡回サービスなど を含め,多種多様な費用を含むのが一般である。被告主張の費用も,その明細が不明である以上,変動費に含めることはできない。 ケ販売手数料〈経費5②〉具体的な内容及び根拠が不明である。 コ修繕維持費,減価償却費〈経費5③,④〉 当該経費の対象となるソフトウェア(乙49別紙6)は,被告の他製品を製造する際にも必要となる一般的なソフトウェアであり,被告製品の製造に追加的に必要となった費用ではない。 サ試験機製造原価及び改造費〈経費6〉試験機イ号・ロ号の製造経緯に係る被告の主張は客観的根拠を欠いてい る。いずれにせよ,その製造費用は,被告製品の製造のため,追加的に必 要となった変動費には当たるとはいえない。 また,試験機イ号は,イ号製品(甲5)の試作機に当たるものと思われるが,被告の主張によっても,試験機イ号は,被告製品とは技術思想が全く異なっており,被告製品の試作機ということはできない。 そして,試験機ロ号は,被告の主張 製品(甲5)の試作機に当たるものと思われるが,被告の主張によっても,試験機イ号は,被告製品とは技術思想が全く異なっており,被告製品の試作機ということはできない。 そして,試験機ロ号は,被告の主張によっても,平成26年8月に受注 を開始したというのであるから,試作機ではなく,実際の商品である。その製造費が,被告製品の変動費に当たるということはできない。 なお,これらの改造費用についていえば,その改造期間として主張されている期間(平成26年4月~平成28年3月)は,概ね被告製品の販売開始(平成26年8月1日)の後である。したがって,この点からしても, その改造費用が被告製品の経費に当たるということはできない。 (2) 前記の限界利益額は,原告らの損害額と推定される。その推定の覆滅をいう被告の主張は,以下のとおり,いずれも理由はない。 ア被告製品は,本件各特許を実施することにより,従来技術では10分~15分を要していた乾燥工程を3分にまで短縮している(甲12・24 頁)。乾燥工程は,真空洗浄機における洗浄機能の実現のために必須のものである上,乾燥時間が短いことは,消費電力量の節減や洗浄処理回数の向上といったメリットにも直結する。 イ被告は,本件各特許の進歩性が低いため,その寄与度も低いなどと主張するが,侵害論の蒸し返しであり,時機に遅れた攻撃防御方法として却下 されるべきである。被告は,乾燥工程のため,エジェクタポンプを用いた独自技術を採用していることも指摘するが,当該技術は,本件各特許の技術で十分に減圧した後,エジェクタポンプで100Paまで減圧するという技術にすぎず,付加的なものである。 ウ被告は,被告製品には,乾燥機能以外にも,洗浄性能を始め,種々のセ ールスポイントがあると主張するが,被告が ェクタポンプで100Paまで減圧するという技術にすぎず,付加的なものである。 ウ被告は,被告製品には,乾燥機能以外にも,洗浄性能を始め,種々のセ ールスポイントがあると主張するが,被告がカタログ(甲37)でアピー ルするのは「急速乾燥」であり,調査会社に対し,急速時間が短いことがメリットであると回答している上(甲36),他社と比較しても,原告製品や被告製品の乾燥時間は短くなっている(甲38,42)。他方,被告製品の洗浄性能が高いという証拠はなく,タッチパネル等のその他のセールスポイントは重要ではない。 エそして,業界における他社製品と比較して,急速乾燥をセールスポイントとするのは,原告製品と被告製品のみであり(甲37~甲44),両者は競合品であると認識されていた(甲47)。需要者が被告製品を購入したのは,被告製品の急速乾燥機能に着目したためであり,被告製品が市場に存在しなければ原告製品が購入されたことは明らかである。実際,被告 は,原告らの顧客をターゲットにネガティブ・キャンペーンをするなどして,急速に市場シェアを拡大したのである(甲36,47,50)。 オ被告は,被告製品が存在しなくても,株式会社不二越(以下「不二越」という。)の製品が,代替製品になったとも主張する。しかし,同社の主力製品は「浸漬あり」(洗浄室内の洗浄油に製品を浸して洗う)タイプで あり,洗浄力に強みがあるのに対し,本件各発明を実施した原告製品及び被告製品は,使用洗浄油の少ない「浸漬なし」(蒸気やシャワーなどを利用して洗う)タイプであるから,両者は相互に代替する関係にはない。 (3) したがって,原告らは,被告に対し,●(省略)●円の損害賠償請求権を有する。原告らは,本件訴訟において,その一部請求として合計7億500 あるから,両者は相互に代替する関係にはない。 (3) したがって,原告らは,被告に対し,●(省略)●円の損害賠償請求権を有する。原告らは,本件訴訟において,その一部請求として合計7億500 0万円の支払を求めるが,被告らの行為と相当因果関係にある弁護士費用は7500万円を下らず,これに対する税率8%で計算した消費税額は6600万円である。そこで,原告らは,被告に対し,これらの合計8億9100万円(各4億4500万円)及び最終の売上日である令和元年11月19日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (被告の主張) (1) 被告製品の売上高から控除すべき経費は,別紙2の経費1~6のとおりであるから,その利益は,●(省略)●円となる。ただし,前記の売上高は,本件各発明とは無関係の「搬送機,据付工事,試運転,諸経費」に係る売上げを含むから,実際の限界利益は,それ以外の売上比率●(省略)●%を乗じた●(省略)●円となる(乙57・2頁)。 当事者間に争いのある経費の項目に対する被告の主張は,以下のとおりである。 ア労務費〈経費2〉被告製品の製造に不可欠であったと認められる労務費は,控除すべき経費に当たり,その額は●(省略)●円である。これは,被告の製造部門の 労務費合計に被告製品に対する「関わり比率」(被告の事業部のうち,真空炉事業部に用いられた労務費の比率,②役職に応じた製造工程への関与の程度,③洗浄機製造に直絶従事した比率を乗じた値)を乗じて得た額である。 また,被告製品の製造に必要となる人工に平均賃金を乗じた計算方法を とっても,その額は●(省略)●円と計算されるから,少なくとも,当該金額の経費控除は認められるべきである。ちなみに,製造部門の労務費を売上げで案分計 要となる人工に平均賃金を乗じた計算方法を とっても,その額は●(省略)●円と計算されるから,少なくとも,当該金額の経費控除は認められるべきである。ちなみに,製造部門の労務費を売上げで案分計算したとしても,●(省略)●円の労務費が発生している。 原告らは,その経費該当性を争うが,労務費は,被告製品を製造販売しなければ,何らかの形で整理されるはずであるから,被告製品の製造販売 に直接必要な経費ということができる。被告製品の製造等のために雇用された者の労務費である必要はない。 イ外注費〈経費3〉被告は,被告に人的余裕がない場合や技術的に内製できない場合に個別に外注をしており,固定的に外注を活用するという事業形態はとっていな い。したがって,外注費は,被告製品の製造に直接関連して追加的に必要 となった費用であり,変動経費に当たる。 ウ旅費交通費,旅費日当〈経費4③,④〉被告の製造部門の者が被告製品のために使用した交通費であり,変動費に当たる。具体的には,受注後に設計者が打合せのために訪問する際,製造部所属の者が顧客工場へ装置設置のために訪問する際,技術部所属の者 が顧客工場へ試運転を行うために訪問する際などに要したものである。 エ通信費〈経費4⑥〉 電話やFAXその他の通信のための費用である。被告の製造部門で発生した通信費の総額を「関わり比率」で案分したものであり,管理部門で使用するものは含まれていない。なお,基本料金も含まれているが僅少なも のである。 オ修繕維持費,減価償却費(真空度測定機器)〈経費4⑩,⑪〉製造原価内の修繕維持費及び減価償却費のうち,真空炉のみに必要とする測定機器について生じたものであり,洗浄機が関連する寄与度●(省略)●%を乗じて算出した金額である。これら 機器)〈経費4⑩,⑪〉製造原価内の修繕維持費及び減価償却費のうち,真空炉のみに必要とする測定機器について生じたものであり,洗浄機が関連する寄与度●(省略)●%を乗じて算出した金額である。これらは,被告製品の製造に直接関連 して追加的に必要となったものとして,売上金額から控除すべきである。 カ産廃処理費〈経費4⑫〉別紙2の経費4⑫は,被告の製造部門全体で発生する産廃処理費を「関わり比率」で案分計上したものであり,その大部分は,材料,部品等の仕入れ商品が送付される際の梱包材の処理費用であり,被告製品の製造に紐 づいて発生する。同種費用は,他の製品を製造する際にも,同程度の量が発生するところ,仮に「関わり比率」での案分ではなく,売上比率による案分をしたとしても,少なくとも,●(省略)●円は経費となる計算である。 キ雑費(デザイン料)〈経費4⑬〉 平成26年に生じた費用●(省略)●万円は,被告製品の拡販のため, 新たに発生したものである。被告製品の後発品が同一のデザインを採用しているとしても結果論にすぎず,被告製品のために発生した費用である。 また,平成27年及び平成30年に発生したデザイン料についても同様である。仮に,それが被告製品のためだけに発生したものとはいえないとしても,同一デザインを利用した製品のうち,被告製品の売上げが占める 比率●(省略)●%を乗じた●(省略)●円は経費となるべきである。 ク旅費交通費〈経費5①〉被告製品の販売のために営業部門の者が使用した費用であり,変動費に当たる。交通費が約●(省略)●を占めるが,旅費日当,接待交際費,レンタカーの賃借料,展示会出展費用,消耗品購入費用等も含まれる。 ケ販売手数料〈経費5②〉被告が,被告製品の販売先の紹介を受け 交通費が約●(省略)●を占めるが,旅費日当,接待交際費,レンタカーの賃借料,展示会出展費用,消耗品購入費用等も含まれる。 ケ販売手数料〈経費5②〉被告が,被告製品の販売先の紹介を受けた商社等に対して支払った手数料であるから,被告製品の販売に直接関連して追加的に必要となったものである。ライン受注によるものもあるが,その紹介手数料については,洗浄機が関連する寄与度●(省略)●%を乗じて算出している。 コ修繕維持費,減価償却費〈経費5③,④〉被告が,被告製品の開発等のために購入したものである(乙49)。被告製品の後発品が同一のソフトウェアを利用しているとしても,被告製品の製造に直接関連して必要になったことに変わりはないが,別紙2経費5③,④の費用額は,真空炉事業部における使用頻度に照らした寄与度を乗 じて額を計上している。 サ試験機製造原価及び改造費〈経費6〉被告は,平成24年12月,大型凝縮器を組み込んだ真空洗浄機の自社開発に着手し,平成26年3月,試験機イ号の試運転及び検証試験を完了したが,技術的な障害が発覚したため,その販売は断念した。 被告は,平成26年7月,試験機イ号の改良として,エジェクタポンプ を用いた試験機ロ号の開発を進め,同年8月に同型機の受注を開始し,平成27年5月,現行の被告製品を完成した。 このように試験機イ号及びロ号は,被告製品の製造に向けた一連の流れの中で製造されたものであり,被告製品の開発に必要なものであったから,その製造・改造費用は変動経費に当たる。 なお,これらの試験機の改造は,平成26年4月から始まったが,被告製品の販売開始時期である平成26年8月に基本的に一致する。少なくとも同月以降の改造費用は変動経費に当たる。 (2) 本件各発明が被告 お,これらの試験機の改造は,平成26年4月から始まったが,被告製品の販売開始時期である平成26年8月に基本的に一致する。少なくとも同月以降の改造費用は変動経費に当たる。 (2) 本件各発明が被告製品の売上げに寄与した割合は,最大●(省略)●%と評価すべきであり,●(省略)●%の覆滅が認められるべきである ア本件各発明は,被告製品のうち,凝縮室と洗浄室を連通させて乾燥させることのみに関わる。洗浄機は,本来,汚れている製品を洗浄することが目的であり,乾燥機能は副次的なものであるから,乾燥機能のみに着目するのではなく,洗浄機能に重きを置くべきである。しかも,本件特許は,乾燥機能の一部を本質的部分とする特許であり,その寄与は,被告製品が 有する洗浄,乾燥その他の機能のうち,乾燥機能の一部に関係するにすぎない。 イ被告製品の購入に当たり,購入者が洗浄機能も重視していることは明らかである。被告製品は,ピュアな洗浄蒸気を発生させるなどし,洗浄品質が高いことなどの特徴を有し,その「高品質洗浄」(乙61)が, 顧客に高い評価を受けている(乙63~65)。 また,被告製品は,消費電力の低さにおいても評価されており,消費電力,圧力や温度の表示等の機能,遠隔モニタリングや稼働時間のカウント機能などのセールスポイントも有しているので,原告らの製品の代替品ではない。 被告製品の原材料費及び外注費の合計のうち,凝縮器に対応する部分の 原材料費及び外注費の合計の割合は,平均●(省略)●%である。本件は,特許侵害が一部にのみ係る場合であり,その寄与率は●(省略)●%を超えることはないというべきである。 ウ原告らの製品の販売台数が極めて少ないことからすると,仮に被告が被告製品を販売していなかったとしても,被告製品 み係る場合であり,その寄与率は●(省略)●%を超えることはないというべきである。 ウ原告らの製品の販売台数が極めて少ないことからすると,仮に被告が被告製品を販売していなかったとしても,被告製品を購入した顧客の大部分 は,市場占有率がトップの不二越をはじめとする競合他社の製品を購入したと考えるのが合理的である。原告らの市場シェアは最大でも3分の1を超えないと推定されるから,少なくとも被告の得た利益のうち65%については,推定が覆滅されるというべきである。 エ本件各発明は,仮に進歩性を有するとしても,その程度は相当に小さい から,その寄与度は小さい。本件各発明と公知技術との相違点は,実質的に「凝縮室が,開閉バルブによって洗浄室と連通される前に減圧される」という点のみである。また,被告製品は,「完全乾燥」の実現のため,真空ポンプ及びエジェクタポンプを利用する独自技術も用いている。 オ原告らの製品は,初期不良により顧客の信用を失い,本件各特許を実施 している原告製品の製造・販売台数は極めて少ない。このような事情からすると,原告らは,本件各特許を実施する製品を製造するための実施能力を有しないと考えられる。したがって,そもそも,特許法102条2項の推定を適用する基礎を欠いている。 第4 当裁判所の判断 1 本件発明の2の内容当裁判所は,被告製品が,本件発明2の技術的範囲に属し,無効理由もないと判断する(なお,仮に,本件発明1に係る請求が認容されるべきものとしても,その認容の範囲は,本件発明2に係る請求による場合を超えることはないと考えられるので,以下,本件発明2のみについて判断する。)。 (1) 本件明細書等の記載 本件明細書等(以下,本件発明2に固有の部分を含む。)には,以下の記載があ えることはないと考えられるので,以下,本件発明2のみについて判断する。)。 (1) 本件明細書等の記載 本件明細書等(以下,本件発明2に固有の部分を含む。)には,以下の記載がある(甲4)。なお,「特許文献1」とは乙9公報のことである。 ア技術分野「本発明は,減圧下にある洗浄室に石油系溶剤の蒸気を供給してワークを洗浄する真空洗浄装置および真空洗浄方法に関する。」(段落【000 1】)イ背景技術「従来,例えば,特許文献1に示される真空洗浄装置が知られている。 この真空洗浄装置によれば,まず,ワークが搬入された蒸気洗浄・乾燥室を真空ポンプによって減圧する減圧工程がなされる。その後,石油系溶剤 の蒸気を蒸気洗浄・乾燥室に供給して,ワークを洗浄する蒸気洗浄工程がなされる。次に,浸漬室に貯留された石油系溶剤にワークを浸漬させ,特に蒸気洗浄工程で洗浄が不十分となるワークの隙間等を洗浄する浸漬洗浄工程がなされる。」(段落【0002】)「このようにしてワークの洗浄が完了すると,再び蒸気洗浄・乾燥室に ワークを搬送する。その後,蒸気洗浄・乾燥室をさらに減圧して,ワーク表面に付着した溶剤を蒸発させる乾燥工程がなされる。そして,乾燥工程が終了したら,蒸気洗浄・乾燥室を大気圧に復帰させる。その後,ワークを搬出して,一連の工程が終了する。」(段落【0003】)ウ発明が解決しようとする課題 「上記特許文献1の真空洗浄装置によれば,乾燥工程において,蒸気洗浄・乾燥室を真空ポンプで真空引きして減圧している。このとき,蒸発によって100倍以上の体積に気化した気体を,従来のメカニカルな回転駆動式真空ポンプで排気乾燥するのは容易ではない。また,乾燥性を高めるために更に減圧すれば,さらに気体が膨張して排気時間 とき,蒸発によって100倍以上の体積に気化した気体を,従来のメカニカルな回転駆動式真空ポンプで排気乾燥するのは容易ではない。また,乾燥性を高めるために更に減圧すれば,さらに気体が膨張して排気時間がかかる。そのた め,この従来の乾燥方法による乾燥工程には長時間を要する。すなわち, 安定した洗浄品質かつ生産性を高める乾燥工程において,その時間の短縮化が望まれている。」(段落【0005】)「本発明は,ワークの乾燥に要する時間を短縮して全体の処理能力を向上することができる真空洗浄装置および真空洗浄方法を提供することを目的とする。」(段落【0006】) エ課題を解決するための手段「本発明は,上記課題を解決するために以下の手段を提供している。本発明の第1の態様は,真空洗浄装置である。この真空洗浄装置は,真空ポンプと,石油系溶剤の蒸気を生成する蒸気生成手段と,前記真空ポンプによって減圧され,当該減圧の状態において前記蒸気生成手段から供給され る蒸気によってワークを洗浄する洗浄室と,前記真空ポンプによって前記洗浄室とは独立して減圧され,当該減圧の状態が保持される凝縮室と,前記凝縮室を前記洗浄室よりも低い温度に保持する温度保持手段と,前記凝縮室と前記洗浄室とを連通させ,または,その連通を遮断する開閉バルブと,を備え,前記蒸気を前記洗浄室に供給してワークを洗浄した後,前記 開閉バルブによって前記洗浄室を当該洗浄室よりも低い温度に保持された前記凝縮室と連通させる。」(段落【0007】)オ発明の効果「本発明によれば,ワークの乾燥に要する時間を短縮して全体の処理能力を向上することができる。」(段落【0012】) カ発明を実施するための形態 【図1】 ,ワークの乾燥に要する時間を短縮して全体の処理能力を向上することができる。」(段落【0012】) カ発明を実施するための形態 【図1】「図1は,第1実施形態の真空洗浄装置1を説明するための概念図である。この図1に示すように,真空洗浄装置1は,内部に洗浄室2が設けられた真空容器3を備えている。この真空容器3には,開口3aが形成されており,開閉扉4によって開口3aが開閉可能となっている。したがって, ワークWを洗浄する際には,開閉扉4を開放して,開口3aから洗浄室2内にワークWを搬入して載置部5に載置する。その後,開閉扉4を閉じて,ワークWを洗浄する。その後,再び開閉扉4を開放して,開口3aからワークWを搬出する。」(段落【0015】)「そして,上記の洗浄室2には,蒸気供給部6が設けられている。この 蒸気供給部6は,蒸気供給管7を介して,蒸気発生室8に接続されている。 蒸気発生室8は,ヒータ8aを備えており,石油系溶剤を加熱して溶剤蒸気(以下,単に蒸気という)を生成する。このように,蒸気発生室8によって生成された蒸気は,蒸気供給管7および蒸気供給部6を介して,洗浄室2に供給される。なお,この石油系溶剤の種類は,特に限定されない。 …」(段落【0016】)「また,洗浄室2には,配管9を介して,真空ポンプ10が接続されている。この真空ポンプ10は,ワークWの洗浄を開始する前の減圧工程に おいて,真空容器3内を真空引き(初期真空)によって減圧する。さらに,洗浄室2には,この洗浄室2を大気開放するための配管11が接続されている。この配管11は,ワークWの洗浄工程および乾燥工程が終了した後の搬出工程において,洗浄室2を大気開放して大気圧に復帰させる。」(段 2には,この洗浄室2を大気開放するための配管11が接続されている。この配管11は,ワークWの洗浄工程および乾燥工程が終了した後の搬出工程において,洗浄室2を大気開放して大気圧に復帰させる。」(段落【0017】) 「そして,洗浄室2には,開閉手段である開閉バルブ20を介して,凝縮室21が接続されている。開閉バルブ20を開弁すると,洗浄室2と凝縮室21とが連通し,開閉バルブ20を閉弁すると,洗浄室2と凝縮室21との連通が遮断される。この凝縮室21も,洗浄室2と同様に,配管9から分岐する分岐管25を介して真空ポンプ10に接続されており,減圧 状態を保持することが可能である。また,この凝縮室21には,熱交換器等からなる温度保持装置22(温度保持手段)が設けられており,凝縮室21内の温度が洗浄室2内の温度よりも低い一定温度(5℃~50℃,より好ましくは15℃~約25℃)に保持することが可能である。」(段落【0018】) 「さらに,凝縮室21の底部には,リターン配管23を介して,リザーバタンク24が接続されている。凝縮室21で凝縮した石油系溶剤をリターン配管23からリザーバタンク24に導くとともに,このリザーバタンク24に一時的に貯留することが可能である。このリザーバタンク24は,蒸気発生室8に接続されており,一定量以上の石油系溶剤が貯留されると, リザーバタンク24から蒸気発生室8に石油系溶剤が導かれる。つまり,リターン配管23およびリザーバタンク24は,石油系溶剤を回収する回収手段として機能する。こうした回収手段によって回収された石油系溶剤は,蒸気発生室8に還流して再度気化されて洗浄室2に供給される。」(段落【0019】) 「なお,図1に示すように,蒸気供給管7には,洗浄室2と蒸気発生室 8と て回収された石油系溶剤は,蒸気発生室8に還流して再度気化されて洗浄室2に供給される。」(段落【0019】) 「なお,図1に示すように,蒸気供給管7には,洗浄室2と蒸気発生室 8とを連通させたり,その連通を遮断したりする切換バルブV1が設けられている。配管9には,洗浄室2と真空ポンプ10とを連通させたり,その連通を遮断したりする切換バルブV2が設けられている。配管11には,洗浄室2を大気に開放したり,洗浄室2を大気から遮断したりする切換バルブV3が設けられている。分岐管25には,凝縮室21と真空ポンプ1 0とを連通したり,あるいは,その連通を遮断したりする切換バルブV4が設けられている。」(段落【0020】)「次に,上記の真空洗浄装置1におけるワークWの真空洗浄方法について,図1および図2を用いて説明する。なお,以下では,真空洗浄装置1における真空洗浄方法を具体的に説明するため,石油系溶剤として第3石 油類溶剤であるテクリーンN20を用いた場合を説明する。…」(段落【0021】)「図2は,真空洗浄装置1の処理工程を説明するフローチャートである。 真空洗浄装置1を利用するにあたっては,まず,準備工程(ステップS100)を1回行う。その後,1つのワークWに対して,搬入工程(ステッ プS200),減圧工程(ステップS300),蒸気洗浄工程(ステップS400),乾燥工程(ステップS500),搬出工程(ステップS600)を行う。そして,以後,順次搬入されるワークWに対し て,ステップS200~ステップS600の工程が行われる。以下に,図1を参照しながら,上記の各工程について説明する。」(段落【0022】)「(準備工程:ステップS100) まず,真空洗浄装置1を稼働させ る。そのため の工程が行われる。以下に,図1を参照しながら,上記の各工程について説明する。」(段落【0022】)「(準備工程:ステップS100) まず,真空洗浄装置1を稼働させ る。そのために,開閉バルブ20および切換バルブV1~V3を閉弁す 【図2】 るとともに,切換バルブV4を開弁して真空ポンプ10を駆動する。これにより,凝縮室21を真空引きして,この凝縮室21の内部を10kPa以下に減圧する。そして,温度保持装置22を駆動して,減圧状態にある凝縮室21を,洗浄室2よりも低い温度,より詳細には,使用する石油系溶剤の凝縮点以下の温度(5℃~50℃,より好ましくは15℃~約2 5℃)に保持する。」(段落【0023】)「また,ヒータ8aを駆動して蒸気発生室8に貯留されている石油系溶剤を加温し,蒸気を生成させる。なお,このとき,蒸気発生室8は飽和蒸気圧となっており,かつ切換バルブV1が閉じられているため,蒸気発生室8で生成された蒸気は,この蒸気発生室8内に充満している。これによ り,真空洗浄装置1の準備工程が終了し,真空洗浄装置1によるワークWの洗浄が可能となる。」(段落【0024】)「(搬入工程:ステップS200) 真空洗浄装置1によってワークWの洗浄を行う際には,まず,開閉扉4を開放し,開口3aから洗浄室2にワークWを搬入して載置部5に載置する。このとき,開閉バルブ20は閉 弁したままであり,凝縮室21が減圧状態に維持されている。そして,ワークWの搬入が完了したら,開閉扉4を閉じて洗浄室2を密閉状態にする。 このとき,ワークWの温度は,常温(15~40℃程度)となっている。」(段落【0025】)「(減圧工程:ステップS300) 次に,真空ポンプ10を駆動して, 真空引きにより洗浄室2を る。 このとき,ワークWの温度は,常温(15~40℃程度)となっている。」(段落【0025】)「(減圧工程:ステップS300) 次に,真空ポンプ10を駆動して, 真空引きにより洗浄室2を凝縮室21と同じ10kPa以下に減圧する。」(段落【0026】)「(蒸気洗浄工程:ステップS400) 次に,切換バルブV1を開弁して,蒸気発生室8によって生成された蒸気を洗浄室2に供給する。このとき,蒸気の温度は,70~150℃(より好ましくは115~125℃) に制御されており,高温の蒸気が洗浄室2に充満する。」(段落【002 7】)「このように,洗浄室2に供給された蒸気がワークWの表面に付着すると,ワークWの温度が蒸気の温度に比べて低いことから,蒸気がワークWの表面で凝縮する。その結果,ワークWの表面に付着していた油脂類が,凝縮された石油系溶剤によって溶解,流下され,ワークWが洗浄される。 この蒸気洗浄工程は,ワークWの温度が,蒸気の温度(石油系溶剤の沸点)である70~150℃(115~125℃)に到達するまで行われるとともに,ワークWの温度が蒸気の温度に到達したときに切換バルブV1を閉弁する。こうして,蒸気洗浄工程が,終了する。」(段落【0028】)「(乾燥工程:ステップS500) 上記ステップS400の蒸気洗浄 工程が終了すると,次に,洗浄の際にワークWに付着した石油系溶剤を乾燥させる乾燥工程が行われる。この乾燥工程は,開閉バルブ20を開弁して,洗浄室2と凝縮室21とを連通させることによって行われる。具体的には,乾燥工程の開始時には,洗浄室2の温度が蒸気の温度である70~150℃となっているが,凝縮室21の温度は,温度保持装置22によっ て5~50℃(より好ましくは15~25℃)に維持されている は,乾燥工程の開始時には,洗浄室2の温度が蒸気の温度である70~150℃となっているが,凝縮室21の温度は,温度保持装置22によっ て5~50℃(より好ましくは15~25℃)に維持されている。」(段落【0029】)「したがって,開閉バルブ20を開弁すると,洗浄室2内に充満している蒸気は,凝縮室21に移動して凝縮する。これにより,洗浄室2が減圧されることから,ワークWに付着している石油系溶剤および洗浄室2内の 石油系溶剤が,全て気化して,凝縮室21に移動する。その結果,従来に比べて極めて短時間で,洗浄室2(ワークW)を乾燥させることが可能となる。なお,第1実施形態の真空洗浄装置1における乾燥時間については,後で詳細に説明する。」(段落【0030】)「(搬出工程:ステップS600) 上記のように,洗浄室2およびワ ークWの乾燥が完了したら,開閉バルブ20を閉弁して,洗浄室2と凝縮 室21とを遮断する。そして,切換バルブV3を開弁して洗浄室2を大気開放し,洗浄室2が大気圧まで復圧したときに,開閉扉4を開放して開口3aからワークWを搬出する。こうして,ワークWに対する全工程が,終了する。このとき,凝縮室21は,所望の圧力に維持されていることから,以後は,上記ステップS200~ステップS600を繰り返すことで, 次々とワークWを洗浄することができる。」(段落【0031】) 【図3】【図4】「図3は,従来の真空洗浄装置による乾燥工程の試験データを示す図であり,図4は,第1実施形態の真空洗浄装置1による乾燥工程の試験データを示す図である。なお,図3および図4は,ほぼ同一の条件下において,ワークWとして小型の金属製部品150kgを乾燥させた際の各種データ を示している。また,従来の真空洗浄装 燥工程の試験データを示す図である。なお,図3および図4は,ほぼ同一の条件下において,ワークWとして小型の金属製部品150kgを乾燥させた際の各種データ を示している。また,従来の真空洗浄装置は,乾燥工程において洗浄室2を減圧する際に,蒸気対応の特殊真空ポンプで真空引きする。この点のみが,第1実施形態の真空洗浄装置1と異なり,その他の構成は全て同じである。」(段落【0032】)「図3に示すように,従来の真空洗浄装置において,洗浄工程の終了後 に真空ポンプを駆動して真空引きを開始すると,蒸気発生室8の蒸気温度および液温は,いずれも緩やかな上昇傾向を示している。このとき,洗浄室2は,真空引きによって徐々に減圧され,およそ150秒で900Pa に到達し,真空引き開始からおよそ418秒で,最高減圧レベルである280Paに到達している。」(段落【0033】)「これに対して,図4に示すように,第1実施形態の真空洗浄装置1において,洗浄工程の終了後に開閉バルブ20を開弁して乾燥を開始すると,蒸気発生室8の蒸気温度および液温が,上記と同様に,いずれも緩やかな 上昇傾向を示している。一方,洗浄室2は,蒸気が凝縮室21に向けて急激に移動することから,急速に減圧され,およそ12秒で900Paに到達し,開閉バルブ20の開弁からおよそ22秒で,最高減圧レベルである280Paに到達している。」(段落【0034】) 【図5】【図6】「また,図5は,従来の真空洗浄装置による乾燥工程の他の試験データ を示す図であり,図6は,第1実施形態の真空洗浄装置1による乾燥工程の他の試験データを示す図である。この図5および図6は,ワークWとして上記と同じ小型の金属製部品150kgと,石油系溶剤70ccが溜められたスチール缶とを 第1実施形態の真空洗浄装置1による乾燥工程の他の試験データを示す図である。この図5および図6は,ワークWとして上記と同じ小型の金属製部品150kgと,石油系溶剤70ccが溜められたスチール缶とを洗浄室2に載置した状態で乾燥工程を行った際の各種データを示している。なお,洗浄工程においては,石油系溶剤が部品の 隙間や凹部等に残液として溜まることがあり,この試験は,こうした残液が溜まってしまった場合を想定して行われた。」(段落【0035】)「図5に示すように,従来の真空洗浄装置によれば,洗浄室2が,真空 引きによって徐々に減圧され,およそ353秒で900Paに到達し,真空引き開始からおよそ508秒で,最高減圧レベルである320Paに到達している。つまり,従来の真空洗浄装置によれば,洗浄工程においてワークWに残液が溜まってしまった場合は,残液が溜まっていない場合に比べて,最高減圧レベルに到達するまでの時間がおよそ90秒長くなり,最 高減圧レベル到達時における洗浄室2の圧力も更に高くなっている。したがって,当然のことながら,ワークWに溜まった残液が多くなるほど,乾燥工程に要する時間が長時間になる。」(段落【0036】)「これに対して,図6に示すように,第1実施形態の真空洗浄装置1によれば,洗浄室2が,開閉バルブ20の開弁後,およそ20秒で900P aに到達し,開閉バルブ20の開弁からおよそ44秒で,最高減圧レベルである280Paに到達している。つまり,第1実施形態の真空洗浄装置1によれば,洗浄工程においてワークWに残液が溜まってしまった場合でも,残液が溜まっていない場合に比べて,最高減圧レベルに到達するまでの時間は僅か22秒しか長くならず,最高減圧レベル到達時における洗浄 室2の圧力も,残液が溜まっていない まってしまった場合でも,残液が溜まっていない場合に比べて,最高減圧レベルに到達するまでの時間は僅か22秒しか長くならず,最高減圧レベル到達時における洗浄 室2の圧力も,残液が溜まっていない場合と同じ圧力まで減圧されている。」(段落【0037】)「このように,第1実施形態の真空洗浄装置1と従来の真空洗浄装置とを比較すると,第1実施形態の真空洗浄装置1を用いることにより,乾燥工程に要する時間が顕著に短縮化され,この時間差は,ワークWに溜まる 残液が多くなるほど一層顕著になることが確認された。したがって,上記の真空洗浄装置1によれば,乾燥工程の短縮により,全体的な処理時間が短縮され,単位時間当たりの処理量が向上するとともに,省エネルギー化を実現することができる。さらに,処理時間が短縮されることから,1つのワークに対して,上記ステップS400~ステップS500の工程を繰 り返し行うことにより,短時間で洗浄精度をより向上させることも可能で ある。」(段落【0038】)「また,凝縮室21に移動して凝縮された石油系溶剤は,リターン配管23を介してリザーバタンク24に導かれ,このリザーバタンク24において一時的に貯留された後に,再び蒸気発生室8に導かれて再利用される。 このとき,石油系溶剤は,洗浄室2および凝縮室21という外部から密閉 された室内を循環している。そのため,従来のような真空ポンプによって屋外に排気される場合に比べて,石油系溶剤の再生率(再利用効率)が非常に高い。したがって,石油系溶剤の消費が低減され,ランニングコストを低減することができる。」(段落【0039】)「さらには,従来の真空洗浄装置においては,減圧工程と乾燥工程との 双方で,洗浄室を真空ポンプによって真空引きする。この場合,乾燥工程 グコストを低減することができる。」(段落【0039】)「さらには,従来の真空洗浄装置においては,減圧工程と乾燥工程との 双方で,洗浄室を真空ポンプによって真空引きする。この場合,乾燥工程では,洗浄室から多量の蒸気が吸引されるため,特殊仕様の真空ポンプを採用しなければならない。そのため,こうした特殊な部品を設けることが,装置全体のコストアップの大きな要因となっている。これに対して,第1実施形態の真空洗浄装置1によれば,洗浄室2に蒸気がない減圧工程での み,真空ポンプを用いる。そのため,特殊仕様ではない一般的な真空ポンプを採用することが可能となり,装置全体のコストを低減することができる。」(段落【0040】)キ産業上の利用可能性「本発明は,減圧下にある洗浄室に石油系溶剤の蒸気を供給してワーク を洗浄する真空洗浄装置および真空洗浄方法に利用することができる。」(段落【0055】)(2) 本件発明2の意義・内容本件発明2の特許請求の範囲及び本件明細書等の上記記載によれば,本件発明2は,①減圧下にある洗浄室に石油系溶剤の蒸気を供給してワークを洗 浄する真空洗浄装置に係る発明であり,②蒸気洗浄・乾燥室を真空ポンプで 真空引きして減圧するという従来の方法では乾燥工程に長時間を要するとの課題を解決するため,③乾燥工程において,洗浄室とは独立に減圧され洗浄室よりも低い温度に保持される凝縮室を洗浄室と連通させることにより,洗浄工程後に洗浄室内に充満していた石油系溶剤の蒸気を凝縮室に移動及び凝縮させ,それによって,洗浄室が減圧される結果,ワークに付着している石 油系溶剤及び洗浄室の石油系溶剤が全て気化し,凝縮室に移動することを可能とし,④従来に比べて極めて短時間でワークを乾燥するとの効果を奏するもの ,洗浄室が減圧される結果,ワークに付着している石 油系溶剤及び洗浄室の石油系溶剤が全て気化し,凝縮室に移動することを可能とし,④従来に比べて極めて短時間でワークを乾燥するとの効果を奏するものであるということができる。 2 争点1-1(被告製品が,構成要件1G及び2Gの「洗浄室を…凝縮室と連通させてワークを乾燥させる」構成を備えるか。)について (1) 「凝縮室」に該当するかどうかについてまず,被告製品の水冷バッフル及びL型真空弁が,構成要件1G及び2Gにいう「凝縮室」に当たるかどうかについて検討するに,証拠(甲12)によれば,被告製品の洗浄室に直結しているL型真空弁は,長さ42センチメートル,直径52センチメートルであり,水冷バッフルは,長さ47センチ メートル,直径52センチメートルであると認められ,その容量は洗浄室からの蒸気を凝縮させるに十分な容量を有するということができる。 また,被告製品のL型真空弁及び水冷バッフルには給水管,排水管が接続され,L型真空弁及び水冷バッフルは給水管から供給された水により十分に冷却されているので,洗浄室から高温の蒸気がL型真空弁及び水冷バッフル に移動しても蒸気の凝縮による温度上昇は抑えられ,これらの外筒部の温度は上昇しないものと認められる(甲12,13,乙24)。そうすると,被告製品のL型真空弁及び水冷バッフルは,洗浄機からの蒸気を冷却,凝縮させるのに十分な水冷能力を有しているということができる。 そうすると,被告製品のL型真空弁及び水冷バッフルは,本件各発明にい う「凝縮室」に当たると認められる。 (2) 「洗浄室を…凝縮室と連通させてワークを乾燥させる」に該当するかどうかについて次に,被告製品が「洗浄室を…凝縮室と連通させてワークを乾燥させる」 「凝縮室」に当たると認められる。 (2) 「洗浄室を…凝縮室と連通させてワークを乾燥させる」に該当するかどうかについて次に,被告製品が「洗浄室を…凝縮室と連通させてワークを乾燥させる」(構成要件2G)ものであるかどうかを検討するに,同製品が,その乾燥工程において,ワークが載置された洗浄室と水冷バッフルとの間のL型真空弁 を開いて洗浄室を減圧し,ワークを乾燥させるものであり(甲28・24頁),その減圧に当たり,洗浄室内の蒸気が,洗浄室から排気され,水冷バッフルで凝縮することは,当事者間に争いがない。 そして,被告製品のL型真空弁及び水冷バッフルは,洗浄室からの蒸気を凝縮させるに十分な容量を有すると認められるのは前記(1)のとおりであり, また,被告製品において真空ポンプによる作用は付加的なものにすぎず,本件発明2と同様の作用効果は,凝縮室と洗浄室との連通による凝縮作用により生じるといい得ることは,後記(4)ないし(8)で判示するとおりである。 そうすると,被告製品は,L型真空弁及び水冷バッフルから構成される凝縮室と洗浄室とを連通させてワークを乾燥させるものであるということがで きるので,構成要件2Gを充足する。 (3) 「洗浄室を…凝縮室と連通させてワークを乾燥」との文言の解釈についてこれに対して,被告は,構成要件2Gの「洗浄室を…凝縮室と連通させてワークを乾燥」との構成は,洗浄室と凝縮室の連通のみでワークを急速に乾燥させることを意味し,真空ポンプの使用を含むそれ以外の使用態様を排除 するものであると主張し,被告製品は,減圧及び乾燥のため,真空ポンプの作用をも利用していることから,同構成要件を充足しないと主張する。 しかし,以下のとおり,構成要件2Gは真空ポンプを使用する態様を排除するものではな し,被告製品は,減圧及び乾燥のため,真空ポンプの作用をも利用していることから,同構成要件を充足しないと主張する。 しかし,以下のとおり,構成要件2Gは真空ポンプを使用する態様を排除するものではないというべきである。 ア本件発明2は,本件明細書等に記載されているように,真空洗浄機の乾 燥工程において真空ポンプの真空引きによって,洗浄室内を減圧し,ワー クを乾燥するという従来技術が非効率であったことなどから(段落【0005】),洗浄室に凝縮室を連通させることによって,洗浄室内の蒸気が凝縮室に移動及び凝縮するという作用を利用し,洗浄室内を減圧し,ワークを乾燥させるものである(段落【0030】)。 そして,本件発明2の構成要件Gは,「洗浄室を当該洗浄室よりも低い 温度に保持された前記凝縮室と連通させてワークを乾燥させる」というものであり,「洗浄室を当該洗浄室よりも低い温度に保持された前記凝縮室と連通させることのみによってワークを乾燥させる」とは規定されておらず,本件明細書等においても,本件発明2におけるワークの乾燥が洗浄室と凝縮室の連通のみによって行われることや,乾燥過程において真空ポン プを使用してはならない旨の記載は存在しない。 イまた,本件発明2による減圧の効果は,前記のとおり,凝縮室内での蒸気の凝縮で生じる洗浄室との圧力差によって,これが平衡するように蒸気が移動するという性質によるものであるが,非凝縮性ガスが装置の隙間や凝縮液タンクから凝縮室に入り込んで凝縮を妨げることを防ぐため,又は, 更に急速な乾燥を実現するため,本件発明2を構成する真空ポンプを付加的に利用することは,本件発明2の作用効果を阻害するものではなく,むしろ,乾燥工程に要する時間を短縮化するとの本件発明2の目的に資するものであると 実現するため,本件発明2を構成する真空ポンプを付加的に利用することは,本件発明2の作用効果を阻害するものではなく,むしろ,乾燥工程に要する時間を短縮化するとの本件発明2の目的に資するものであるということができる。このような本件発明2の目的や作用効果に照らすと,本件発明2が乾燥工程において真空ポンプを併用することを 排除していると解することはできない。 ウ被告は,本件明細書等の実施例には乾燥工程に真空ポンプを使用しない態様のみが示されていると指摘するが,本件発明2を本件明細書等に記載された実施例に限定して解釈すべき理由はなく,付加的な構成を実施例に全て記載する必要もないので,構成要件2Gの「洗浄室を…凝縮室と連通 させてワークを乾燥」との文言の意義を実施例に記載された構成に限定し て,真空ポンプの併用が排除されていると解釈することはできない。 エ被告は,本件意見書(乙9の4)の「本願発明は,洗浄室よりも低い温度に保持された凝縮室を洗浄室と連通させることのみによって,洗浄室のワークを乾燥させます。」との記載を根拠として,本件各発明が真空ポンプの使用を排除していないという原告らの主張が包袋禁反言に反すると主 張する。 しかし,本件意見書における上記記載は,本件発明2の請求項1の「洗浄室を…凝縮室と連通させる」との文言を「洗浄室を…凝縮室と連通させてワークを乾燥させる」との文言に補正する理由の説明であり,同記載の後に「このような本願発明によれば,従来手法(真空ポンプを使って洗浄 室を徐々に減圧する方法)に比較して短時間でワークを乾燥させることが可能です。」との記載が存在することに照らすと,その趣旨は,従来技術との対比において,本件発明2におけるワークの乾燥が洗浄室との凝縮室との乾燥により行われることを明 短時間でワークを乾燥させることが可能です。」との記載が存在することに照らすと,その趣旨は,従来技術との対比において,本件発明2におけるワークの乾燥が洗浄室との凝縮室との乾燥により行われることを明確にするという点にあると理解するのが相当である。同記載をもって,本件発明2において洗浄室と凝縮室の連通 以外の付加的な構成が一切排除されていると解することはできない。 そうすると,原告らの主張が包袋禁反言に当たり,信義則に反するとの被告の主張は採用し得ない。 (4) 甲20シミュレーションについて被告製品が「洗浄室を…凝縮室と連通させてワークを乾燥」していること は,甲20シミュレーションの結果から裏付けられるというべきである。 ア甲20シミュレーションは,被告製品における実際の減圧状況(乙24実験Ⅴ)を再現し得るように,洗浄室や水冷バッフルの体積,配管寸法等の条件を設定した上,多様な産業分野で用いられている解析ツールを用い,洗浄室内の減圧状況を解析したものであると認められる。 甲20シミュレーションの結果によれば,真空ポンプのみを作動させた 場合には,洗浄室の圧力は被告製品の実機を用いた上記実験Vと比較してかなり緩やかに低下し(甲20の図11),他方,洗浄室と水冷バッフルの連通のみによる場合には,上記実験結果Vと近似する結果を得られた(同図16)ものと認められる。同シミュレーションの解析手法,解析モデル,基本設定等には,特に不合理又は不自然な点はなく,その結果は信 用し得るものであるということができる(甲21)。 イこれに対し,被告は,そもそもシミュレーションは実機による裏付けがないと信用性を欠く上,甲20シミュレーションの基本設定は,洗浄液残液量を0.3リットルと過小に設定していること,複合一体的 。 イこれに対し,被告は,そもそもシミュレーションは実機による裏付けがないと信用性を欠く上,甲20シミュレーションの基本設定は,洗浄液残液量を0.3リットルと過小に設定していること,複合一体的な作用を考慮していないため,水冷バッフルの凝縮能力が過大に見積もられているこ と,配管の途中での凝縮を考慮していないことなどの点で不適切であると主張する。 (ア) しかし,甲20シミュレーションは,被告製品における実際の減圧状況(乙24実験Ⅴ)を再現し得るように,洗浄室や水冷バッフルの体積,配管寸法等の条件を設定したものであるから,実機を用いた実験結果に 基づくものであるということができ,シミュレーションであることから直ちに信用性を欠くということはできない。 (イ) また,被告の主張に従い,洗浄液残液量を10リットルと設定して行ったシミュレーション結果(甲25)によれば,真空ポンプのみを稼働して行った場合には,同残液量が0.3リットルの場合よりも圧力低下 に長時間かかり,洗浄室と水冷バッフルの連通のみによる場合には,上記実験Vとより一致するとの結果を得たものと認められる。これによれば,甲20シミュレーションにおける洗浄液残液量の設定は,むしろ被告に有利なものであって,その結果の信用性を左右しない。 (ウ) さらに,被告は,水冷バッフルの凝縮能力が過大に見積もられている と主張するが,甲20シミュレーションは,真空ポンプの性能を実機よ りも大きく見積もった上で,凝集室,アフタークーラー及び真空ポンプの能力を合計し,凝縮室の冷却熱量を計算しているのであるから,水冷バッフルの冷却熱量が過大に見積もられているということができない。 (エ) 加えて,被告は,配管の途中での凝縮を考慮していないと主張するが,甲20シミ 縮室の冷却熱量を計算しているのであるから,水冷バッフルの冷却熱量が過大に見積もられているということができない。 (エ) 加えて,被告は,配管の途中での凝縮を考慮していないと主張するが,甲20シミュレーションでは,水冷バッフルとは異なる凝縮器であるア フタークーラーによる冷却熱量について被告に有利な条件を設定した上で,真空ポンプ及びアフタークーラーによる冷却を行った場合のシミュレーションを行っている。その結果,アフタークーラーによる冷却は洗浄室の圧力低下にはほとんど影響していないとの結果が得られているのであるから(甲20の図13),配管の途中での凝縮の影響が解析の結 果を左右したとは考え難い。 以上のとおり,被告の上記各主張は採用し得ない。 ウ甲20シミュレーションの結果によれば,被告製品における洗浄室の圧力低下に関しては,水冷バッフルによる冷却が支配的に影響したものであり,被告製品においては,水冷バッフルと真空ポンプによる連通により乾 燥が行われていると評価することができる。 (5) 甲27実験について被告製品が「洗浄室を…凝縮室と連通させてワークを乾燥」していると評価し得ることは,甲27実験の結果からも裏付けられるというべきである。 甲27実験は,被告製品のエジェクタポンプの後方に設けられたサイトグ ラスを観察し,乾燥工程時に,凝縮室であるL型真空弁,水冷バッフルにおいて凝縮した溶剤蒸気が液体となって流出する状況を確認したものであるが,その結果,乾燥工程の開始とともに大量の凝縮液が流れ始め,乾燥工程が終了するとともに,その流れが止まることが確認されたと認められる(甲27,30)。 この観察結果によれば,被告製品では, 洗浄室に連通した「凝縮室」に相 当するL型真空弁水冷バッフルにおけ るとともに,その流れが止まることが確認されたと認められる(甲27,30)。 この観察結果によれば,被告製品では, 洗浄室に連通した「凝縮室」に相 当するL型真空弁水冷バッフルにおける凝縮により洗浄室が乾燥されているということができる。 (6) 乙13実験について被告は,乙13実験の結果を根拠として,被告製品の通常の洗浄工程の後,真空ポンプを作動させず,洗浄室と水冷バッフルを連通させる操作をすると, 真空ポンプを作動させた通常の場合に比し,減圧速度が大幅に低下することが確認されたと主張する。 しかし,乙13実験は,水冷バッフルと洗浄室の連通のみにより生じる乾燥のデータを採取するため,洗浄工程の後に手動操作に切り替え,真空ポンプを停止させ,乾燥工程に移行しているが(乙22),真空ポンプの停止中 に凝縮液タンクに残存する空気などの非凝縮性気体がL型真空弁,水冷バッフル等に逆流し,蒸気の凝縮を阻害した可能性を否定できない。乾燥工程において洗浄機内に非凝縮性ガスが混入した場合に減圧速度が大幅に低下することは,甲18実験の結果が示すとおりである。 これに対し,被告は,乙13実験においては,洗浄工程終了まで自動運転 をして非凝縮性気体を洗浄室から排出していたと主張するが,非凝縮性気体が洗浄工程の後の手動運転の間に混入した可能性を否定できないことは,上記のとおりである。 また,被告は,甲18実験に使用された原告らの従来機は被告製品とスペックが大きく異なるなどと主張するが,同実験は,乾燥工程において洗浄機 内に非凝縮性ガスが混入した場合に減圧速度が大幅に低下することを示すものであり,その結果は被告製品にも妥当すると認めるのが相当である。 そうすると,乙13実験に基づき,被告製品において洗浄室と水冷バッフ 非凝縮性ガスが混入した場合に減圧速度が大幅に低下することを示すものであり,その結果は被告製品にも妥当すると認めるのが相当である。 そうすると,乙13実験に基づき,被告製品において洗浄室と水冷バッフルを連通させた場合に,真空ポンプを作動させた場合と比べ,減圧速度が大幅に低下すると認めることはできない。 (7) 被告独自のノウハウを活用したとの主張について 被告は,被告製品においてL型真空弁及び水冷バッフルの口径を大口径としたのは,真空ポンプによる減圧により洗浄室から排気される蒸気の量を大幅に増やし,洗浄室から急速に大量の蒸気を排気することを可能にする被告独自のノウハウであり,従来技術の延長上にある技術であると主張する。 しかし,被告製品において直列に複数接続されている配管のうち,L型真 空弁及び水冷バッフルの口径が大口径であっても,アフタークーラーの前後の配管は小口径であることからすると,排気スピードはアフタークーラー前後の小口径の配管によって律せられ,真空ポンプによる洗浄室からの排気スピードはそれほど早くならないというべきである。 そうすると,被告製品における急速な乾燥は,むしろ,L型真空弁及び 水冷バッフルの部分における蒸気の凝縮によるものであると認めるのが相当である。 (8) 被告製品の乾燥が複合一体的な作用により生じる旨の主張について被告は,被告製品は,被告独自の上記ノウハウを活かしたものであり,真空ポンプによる吸引力と凝縮器による凝縮機能とによる複合一体的な作用に より急速な乾燥を実現するものであって,真空ポンプを使用しないとシステム自体が成り立たないと主張する。 しかし,L型真空弁及び水冷バッフルの口径を大口径とするという被告のノウハウにより,真空ポンプによる洗浄室からの排気スピード あって,真空ポンプを使用しないとシステム自体が成り立たないと主張する。 しかし,L型真空弁及び水冷バッフルの口径を大口径とするという被告のノウハウにより,真空ポンプによる洗浄室からの排気スピードが早くなるとは考え難いことは,前記(7)で説示するとおりである。 また,被告は,真空ポンプを併用することにより,洗浄蒸気が強制的に対流し,凝縮液の液膜表面に微小な波立ちが生じるとともに,液膜が動く速度が大きくなるため,凝縮が促進されるなどの作用効果があると主張するが,かかる作用効果が,乾燥工程で真空ポンプを使用する際に生じる一般的な作用効果を超え,凝縮器による凝縮機能との複合一体的な作用であると認める に足りる証拠はなく,また,上記の現象が被告製品で実際に生じていること を客観的に示す証拠もない。 そうすると,被告製品が,真空ポンプによる吸引力と凝縮器による凝縮機能とによる複合一体的な作用により急速な乾燥を実現するものであるということはできず,真空ポンプを使用しないとシステム自体が成り立たないとの被告主張は採用し得ない。 (9) 小括したがって,被告製品は,本件発明2の構成要件2Gを充足する。 3 争点1-2(被告製品が,構成要件1D~1F及び2D~2Fにいう「凝縮室」を備えるか。)について前記2で判示したとおり,被告製品のL型真空弁及び水冷バッフルは,構成 要件2D~2Fにいう「凝縮室」に当たるということができる。 4 争点2-1(乙14発明による進歩性の欠如)について被告は,本件発明2は,乙14発明及び周知事項に基づき,当該発明の出願時の当業者が容易に想到し得たものであるから,本件特許2は無効にされるべきものであると主張する。 しかし,以下のとおり,乙14発明は相違点14-1~3に 及び周知事項に基づき,当該発明の出願時の当業者が容易に想到し得たものであるから,本件特許2は無効にされるべきものであると主張する。 しかし,以下のとおり,乙14発明は相違点14-1~3において本件発明2と相違すると認められ,このうち,相違点14-2及び3に係る構成を当業者が容易に想到し得たということはできないので,本件発明2に無効理由があるとはいうことはできない。 (1) 乙14公報の記載 乙14公報には,以下の記載がある(明らかな誤記と認められる部分は訂正した。)。 「改良型溶剤洗浄およびシステムであり,このシステムは,洗浄対象の物体が室に載置され,空気や他の非凝縮性ガスを除去するため負のゲージ圧を受けた後に,排気済みの室へ溶剤が導入されて物体が洗浄されてから,清浄 な物体が取り出される前に密閉システム内で物体および室から溶剤が回収さ れる真に密閉されたシステムである。」(要約)「本発明は,改良型洗浄システムに,詳しくは,洗浄作業全体を通して溶剤と空気との混合物を実質的に排除する密閉溶剤洗浄方法およびシステムに関する。洗浄プロセスと溶剤回収および溶剤洗浄プロセスから空気を排除することで,従来の凝縮による蒸気の完全な回収を可能にし,周囲への排出物 を制御する。」(発明の属する技術分野)「洗浄作業に使用される化合物とその結果生じる廃液の処分についてのますます厳しくなる環境要件のため,洗浄作業は業界のさらなら負担となりつつある。…いわゆる密閉システムは,これらの問題の解決を試みたものであるが成功には無縁である。…というのも,溶剤が密閉室へ導入される時にシ ステムが「密閉」されていていも,溶剤が中の空気と混合するからである。 洗浄作業の後に,液体の形の溶剤は空気から容易に分離されるが,蒸気の 縁である。…というのも,溶剤が密閉室へ導入される時にシ ステムが「密閉」されていていも,溶剤が中の空気と混合するからである。 洗浄作業の後に,液体の形の溶剤は空気から容易に分離されるが,蒸気の形の溶剤はそうではない。…」(発明の背景)(図1)「洗浄作業全体で溶剤と空気との混合物を実質的に排除し,そのため洗浄作業が完了した後に空気から溶剤を分離する困難なステップを排除するこの ような改良型密閉回路溶剤洗浄システムおよび方法を提供することが,本発明のさらなる目的である。」「本発明は,…溶剤と空気とが決して一緒にならないように溶剤が導入される前に洗浄対象の物品を収容する洗浄室を排気 することで大気への露出を排除することにより,洗浄作業後に空気から溶剤を分離しなければならないという負担を伴わない。それから,洗浄作業が完了した後で室から物品を取り出す間に,室および物品の空気への露出に先立って,エアレス溶剤が容易に抽出および凝縮され,さらに再利用のために洗浄されうる。」(第3欄) 「本発明の技術を実施するための図1のシステム10は,熱交換器14を含む洗浄または脱脂タンクまたは室12を含む。…洗浄対象の物品20は,室12の中の適当な支持体22に載置されうる。…ポンプ26は,真空ポンプとして機能するときに,負のゲージ圧を室12に印可するのに使用される。 …バルブ30は,真空ポンプ26を通して,炭フィルタ28へ流出物を排出 するように機能し,一方で,サイクルの異なる部分で,バルブ32は凝縮器34への流出物を真空ポンプ36を通して保管タンク38へ誘導する。…冷却器ユニット48は,熱交換器34,50,52へ冷却剤を供給するのに使用される。…」(好適な実施形態の開示・第6欄)「動作時に蒸留タンク58には溶剤が貯蔵されて して保管タンク38へ誘導する。…冷却器ユニット48は,熱交換器34,50,52へ冷却剤を供給するのに使用される。…」(好適な実施形態の開示・第6欄)「動作時に蒸留タンク58には溶剤が貯蔵されており,ヒータ60が起動 されてテトラクロロエチレンなどの溶剤の温度を100℃まで上昇させ,400トルの蒸気圧を発生される。…それからバルブ24が開放されて室12を大気へ通気し,物品20が室12内の支持体22に載置され,バルブ24が閉鎖され,真空ポンプ26が作動する。空気と非凝縮性ガスと何らかの揮発性汚染物のすべてが真空ポンプ26により引き出され,開放バルブ30に より大気へ直接,または代替的に炭フィルタ28を通ってから大気へ誘導される。そして真空ポンプ26が遮断される。蒸留タンク58内のテトラクロロエチレン溶剤が100℃であって蒸気圧が400トルであるので,バルブ62が開放されると,蒸気が室に12へ流入するため蒸気66が室12を満たして凝縮し,物品20を洗浄する。…洗浄サイクルが完了した後に,…バ ルブ62は周期的に開放され,開放バルブ62を通して蒸留タンク58まで 液体溶剤68が重力により排水される。あるいはより一般的には,760トルという高い圧力が汚染物を含む液体を蒸留タンク58へ動かす。すると,室12内の圧力が約400トルまで降下する。」「これに続いて,熱交換器34がオンでバルブ32が開放した状態で,真空ポンプ36が作動する。こうして物体20と関連する蒸気タンク12内の蒸気66が引き出されて,こ のプロセス中に物体が乾燥される。実質的に純粋な蒸気が凝縮器34で凝縮され,再び保管タンク38へ送達され,タンクは,蒸留タンク58内の溶剤が汚染されて除去および処理が行われなければならない時に使用されうる清浄な溶剤 が乾燥される。実質的に純粋な蒸気が凝縮器34で凝縮され,再び保管タンク38へ送達され,タンクは,蒸留タンク58内の溶剤が汚染されて除去および処理が行われなければならない時に使用されうる清浄な溶剤のみを貯蔵する。…バルブ62を通してタンク58内の蒸気溶剤を絞るのと同時に,ポンプ36によってバルブ78および凝縮器34を通して 室12から蒸気を引き出すことにより,室12内の物品20の乾燥が補助されうる。」「最終的に,真空ポンプ36が停止され,バルブ24が開放されて室12が大気へ通気し,乾燥および洗浄された物品20が取り出され,危険な廃棄物を大気へ導入することはない。同時に,空気と混合されなかったので,最小の労力および出費で溶剤が完全に回収され,空気から溶剤を分離 して,溶剤汚染物から空気を洗浄するのに必要な,費用がかかる複雑な手順に着手する必要はない。」(同・第7欄)(2) 乙14発明の意義・内容上記(1)の記載によれば,乙14発明は,①洗浄作業が完了した後に空気から溶剤を分離することが困難なことから,溶剤が導入される前に洗浄対象 の物品を収容する洗浄室を排気することを目的とするものであり,②具体的には,対象物(物品20)が洗浄室(室12)に搬入された後,溶剤による洗浄が開始される前に真空ポンプ(真空ポンプ26)により洗浄室を減圧して非凝縮性ガス等を排出し,②その後,溶剤の蒸気(蒸気66)が洗浄室内に導入されて,対象物を洗浄し,③洗浄終了後に,凝縮室(凝縮器34/熱 交換器34)がオンにされ,バルブ(バルブ32)が開放されて洗浄室と連 通した状態で,真空ポンプ(真空ポンプ36)が作動し,洗浄室内の蒸気が引き出されて,このプロセス中に対象物が乾燥されるというものであると認められる。 すなわち,乙14発 放されて洗浄室と連 通した状態で,真空ポンプ(真空ポンプ36)が作動し,洗浄室内の蒸気が引き出されて,このプロセス中に対象物が乾燥されるというものであると認められる。 すなわち,乙14発明の凝縮器は,洗浄室と連通した状態で真空ポンプにより減圧され,洗浄対象物は,真空ポンプによる真空引きにより蒸気が洗浄 室から引き出される過程で乾燥されるものであるということができる。 (3) 構成要件2Dの意義・解釈本件発明2と乙14発明の対比に先立ち,構成要件2Dの「真空ポンプによって…洗浄室とは独立して減圧され…る凝縮室」という構成の意義について検討するに,「独立して」という語の通常の意味に照らすと,同構成要件 は,凝縮室と洗浄室が「共同して」減圧されるものではないこと,すなわち,両室が相互に影響を受けない状態で減圧されることを意味すると理解するのが自然である。 これに対し,被告は,構成要件2Dの「独立して」とは,凝縮室の減圧と洗浄室の減圧とが「時系列的に別の工程で」行われれば足り,凝縮室の減圧 と洗浄室の減圧とが連通して行われることを排除していないと主張するが,洗浄室と凝縮室が連通した状態で減圧することも「洗浄室とは独立して減圧され」に当たるとの被告の解釈は,当該用語の通常の意味と整合しない。また,被告の主張によれば,洗浄室と凝縮室が連通され,相互に気体が流通する状態において洗浄室の減圧(構成要件2C)と凝縮室の減圧(同2D)と いう別個の操作が行われることになるが,そのような理解は不自然であるというべきである。 また,本件明細書等の第1実施形態においても,洗浄室と凝縮室が,両室を繋ぐ開閉バルブ20が閉弁された状態でそれぞれ減圧されることが示されている(段落(段落【0023】,【0025】,【0026】)。 また,本件明細書等の第1実施形態においても,洗浄室と凝縮室が,両室を繋ぐ開閉バルブ20が閉弁された状態でそれぞれ減圧されることが示されている(段落(段落【0023】,【0025】,【0026】)。なお, 被告は,「第2実施形態」において凝縮室と洗浄室が連通した状態で減圧さ れていると指摘するが,当該実施例は本件発明2の実施例には当たらない。 したがって,構成要件2Dの「独立して」とは,凝縮室と洗浄室が相互に影響を受けない状態で減圧されることを意味し,両室を連通して減圧することは「独立して」に該当しない。 (4) 本件発明2と乙14発明の対比 ア相違点14-1について本件発明2と乙14発明との間に相違点14-1(「本件発明2が,「石油系溶剤」(構成要件2B)を用いるのに対し,乙14発明が,「溶剤」を用いる点」)が存在すること,同相違点に係る構成が本件特許権2の出願当時の周知技術であったことについては,当事者間に争いがない。 イ相違点14-2について(ア) 凝縮室と洗浄室を連通して減圧することは構成要件2Dの「独立して」には当たらないことは前記(3)のとおりである。乙14公報には「熱交換器34がオンでバルブ32が開放した状態で,真空ポンプ36が作動する。」(好適な実施形態の開示・第7欄)と記載されているが,これ によれば,乙14発明においては,洗浄工程の終了後,凝縮室に相当する「熱交換器34」と洗浄室に相当する「室12」が連通した状態で真空ポンプ36により両室の減圧がされるものと認められ,同公報には熱交換器34の減圧に関し,他の形態は記載されていない。 そうすると,乙14発明は,構成要件2Dの「真空ポンプによって… 洗浄室とは独立して減圧され…る凝縮室」との構成を備えていないというべ 交換器34の減圧に関し,他の形態は記載されていない。 そうすると,乙14発明は,構成要件2Dの「真空ポンプによって… 洗浄室とは独立して減圧され…る凝縮室」との構成を備えていないというべきであり,この点が本件発明2との相違点となる。 (イ) 構成要件2Dは「真空ポンプによって…減圧され,当該減圧の状態が保持される凝縮室」との構成を含むものである。これを構成要件2Gの「ワークを洗浄した後,…洗浄室を…凝縮室と連通させてワークを乾燥 させる」との構成と併せて読むと,本件発明2の凝縮室は乾燥工程に入 る前に減圧され,洗浄室と連通して乾燥工程が行われるまでその減圧状態が保持されるものと認められる。 他方,乙14公報の【好適な実施形態の開示】には,凝縮室の減圧に関し,「熱交換器34がオンでバルブ32が開放した状態で,真空ポンプ36が作動する。こうして物体20と関連する蒸気タンク12内の蒸 気66が引き出されて,このプロセス中に物体が乾燥される。実質的に純粋な蒸気が凝縮器34で凝縮され,再び保管タンク38へ送達され,…」との記載があるにとどまり,乾燥工程の開始前に凝縮室に相当する「凝縮器34/熱交換器34」が減圧され,その状態が保持される旨の記載は存在しない。 そうすると,乙14発明は,構成要件2Dの「真空ポンプによって…減圧され,当該減圧の状態が保持される凝縮室」との構成を備えていないか,少なくとも,同構成を備えているかどうかは明らかではなく,この点が本件発明2との相違点となるというべきである。 (ウ) 以上によれば,本件発明2は,原告らの主張する相違点14-2にお いて乙14発明と相違すると認められる。 これに対して,被告は,原告らの主張する相違点14-2は実質的に存在しないと主張するが,以下の れば,本件発明2は,原告らの主張する相違点14-2にお いて乙14発明と相違すると認められる。 これに対して,被告は,原告らの主張する相違点14-2は実質的に存在しないと主張するが,以下のとおり,理由がない。 a 被告は,①真空洗浄装置内に非凝縮性ガスが存在すれば凝縮性能が低下することは当業者の技術常識であること,②石油系溶剤を使用す る洗浄装置では,燃焼の危険性を回避するため,酸素を混入しないようにすることは当然であること,③乙14発明では,真空ポンプの故障を回避するために,洗浄室と真空ポンプとの間に凝縮器を介在させ,凝縮器で洗浄液の蒸気を凝縮させているが,凝縮器の凝縮作用により真空ポンプに蒸気が到達するのを抑制している以上,凝縮器の凝縮性 能を考慮して非凝縮性ガスを排除することは当然であることなどを根 拠に,乙14発明においては,室12と凝縮器34を連通させる前に,予め凝縮器34から非凝縮性ガスが除去されていると主張する。 しかし,真空洗浄装置内に非凝縮性ガスが存在すれば凝縮性能が低下するとの一般論から,本件発明2の凝縮器34が乾燥工程に入る前に減圧され,室12と連通して乾燥工程が行われるまで減圧状態が保 持されると推認することはできず,また,乙14発明は石油系溶剤を使用しておらず,燃焼の危険性の回避を課題とするものでもない。 加えて,乙14公報には,真空ポンプの故障を回避するために凝縮器を介在させていることや,凝縮室の凝縮性能を向上させるために凝縮室内の非凝縮性ガスを排出することは何ら記載されておらず,その ようにすることが当然の技術常識であると認めるに足りる証拠もない。 かえって,乙14の図1には,熱交換器34と連結して真空ポンプ36が設けられ,それが保管タンク38に連結される構成が示さ その ようにすることが当然の技術常識であると認めるに足りる証拠もない。 かえって,乙14の図1には,熱交換器34と連結して真空ポンプ36が設けられ,それが保管タンク38に連結される構成が示されており,これによれば,同発明の真空ポンプ36は液体の流れ込みにも耐え得るものであり,真空ポンプ36に液体や蒸気が入って故障するの を回避するために凝縮器34が設けられたとは考え難い。 b 被告は,乙14発明では,物品20の搬入・搬出を繰り返し,連続して処理することが想定されており,当業者であれば,室12から物品20を取り出す際,バルブ32を閉弁し,凝縮器34の減圧状態を保持すると主張する。 しかし,乙14公報には,「最終的に,真空ポンプ36が停止され,バルブ24が開放されて室12が大気へ通気し,乾燥および洗浄された物品20が取り出され,危険な廃棄物を大気へ導入することはない。」(第7欄)との記載があるにとどまり,物品20の搬入・搬出を繰り返し,連続して処理することを想定して,凝縮器34を減圧し, その状態を保持することを示唆する旨の記載は存在せず,またそのよ うにすることが当然の技術常識であると認めるに足りる証拠もない。 c 以上によれば,乙14発明に相違点14-2に係る構成が開示されているということはできず,また,上記a及びbで摘示した被告の主張に係る周知技術等に基づき,本件特許2の出願当時の当業者が同相違点に係る構成を容易に想到し得たということもできない。 ウ相違点14-3について(ア) 前記1(2)のとおり,本件発明2は,洗浄室・乾燥室を真空ポンプで真空引きして減圧するという従来の方法では乾燥工程に長時間を要するとの課題を解決するため,構成要件2Gの「洗浄室を…凝縮室と連通させてワー (2)のとおり,本件発明2は,洗浄室・乾燥室を真空ポンプで真空引きして減圧するという従来の方法では乾燥工程に長時間を要するとの課題を解決するため,構成要件2Gの「洗浄室を…凝縮室と連通させてワークを乾燥させる」との構成を採用し,凝縮室と洗浄室との連通 により洗浄室内の溶剤の蒸気を凝縮室に移動及び凝縮させ,洗浄室を減圧してワークに付着している溶剤を全て気化させることにより,従来より短時間でワークを乾燥するとの効果を奏するものであるということができる。 このような本件発明2の従来技術や同発明の意義を踏まえると,本件 発明2は,乾燥工程による真空ポンプの併用を排除するものではないものの,従来技術のように真空ポンプの作用を主としてワークを乾燥させるのではなく,洗浄室と凝縮室との連通による凝縮作用が支配的に影響するなどして,洗浄室と凝縮室との連通により同発明の作用効果が生じるといい得るものであるということができる。 (イ) 他方,乙14公報には,「これに続いて,熱交換器34がオンでバルブ32が開放した状態で,真空ポンプ36が作動する。こうして物体20と関連する蒸気タンク12内の蒸気66が引き出されて,このプロセス中に物体が乾燥される。実質的に純粋な蒸気が凝縮器34で凝縮され,再び保管タンク38へ送達され,タンクは,…清浄な溶剤のみを貯蔵す る。…ポンプ36によってバルブ78および凝縮器34を通して室12 から蒸気を引き出すことにより,室12内の物品20の乾燥が補助されうる。」との記載が存在する。 上記記載によれば,乙14発明における物品20の乾燥は,従来技術と同様に真空ポンプ36による真空引きにより行うものであり,室12と凝縮器34を連通することは開示されているものの,凝縮室と洗浄室 の連通によりワ ,乙14発明における物品20の乾燥は,従来技術と同様に真空ポンプ36による真空引きにより行うものであり,室12と凝縮器34を連通することは開示されているものの,凝縮室と洗浄室 の連通によりワークを急速に乾燥するという本件発明2の技術思想が開示ないし示唆されているということはできない。 そうすると,乙14発明は,原告らの主張する相違点14-3において本件発明2と相違すると認められる。 (ウ) これに対し,被告は,洗浄室を凝縮室と連通させてワークを乾燥させ るという構成を備えるものであれば,真空ポンプによる真空引きをするものであっても,本件発明2の構成要件2Gの技術的範囲に含まれると解すべきであり,乙14発明では,洗浄室内の蒸気を専ら真空ポンプで吸引することにより洗浄室内を減圧しているとしても,途中の凝縮器で蒸気が凝縮され,その凝縮作用によっても洗浄室内が減圧される以上, 本件発明2の同構成要件の構成と相違するものではないと主張する。 しかし,前記判示のとおり,本件発明2は,洗浄室・乾燥室を真空ポンプで真空引きして減圧するという従来の方法では乾燥工程に長時間を要するとの課題を解決するため,構成要件2Gの「洗浄室を…凝縮室と連通させてワークを乾燥させる」との構成を採用したものであることを 踏まえると,従来技術のように真空ポンプの作用を主としてワークを乾燥させるものではなく,洗浄室と凝縮室との連通により同発明の作用効果が生じることを要するというべきである。そうすると,乾燥工程において洗浄室と凝縮室とが連通するという構成を備えているとしても,真空ポンプの作用を主としてワークを乾燥させるものは同構成要件の技術 的範囲に含まれないというべきである。 乙14発明の物品20の乾燥が専ら真空ポンプ36による真空 えているとしても,真空ポンプの作用を主としてワークを乾燥させるものは同構成要件の技術 的範囲に含まれないというべきである。 乙14発明の物品20の乾燥が専ら真空ポンプ36による真空引きにより行われていることは,乙14公報の記載から明らかであり,上記が真空引きされる過程において凝縮器34による凝縮が生じるとしても,その乾燥効果は僅かであり,同発明において,室12と凝縮器34の連通による凝縮作用により物品20が乾燥されているということができな いことは明らかである。 したがって,本件発明2の構成要件2Gの「洗浄室を凝縮室と連通させてワークを乾燥させる」との構成が乙14公報に開示されているということはできない。 (5) 相違点14-2に係る構成の容易想到性 被告は,乙14発明が相違点14-2において本件発明2と相違するとしても,乙9公報に開示された周知技術(乙9発明)と組み合わせることにより,当業者が容易に想到し得たと主張する。 ア乙9公報の記載そこで検討するに,乙9公報には以下の記載が存在する。 (ア) 発明が解決しようとする課題「この発明の請求項1記載の発明は,蒸気洗浄後にタンク内の溶剤をタンク外へ導出し,ワークの乾燥後にタンク外の溶剤をタンクの溶剤貯溜部に還流させることで,ワークの乾燥時においてタンク内の溶剤が気化してワークの乾燥が妨げられることがなく,良好なワーク乾燥を実行 することができる蒸気洗浄装置の提供を目的とする。」(段落【0004】)(イ) 実施例「この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。図面は蒸気洗浄装置を示し,図1において,この蒸気洗浄装置は,ワークを減圧乃至 真空状態下にて蒸気洗浄する減圧タンク1と,冷却コイル2が内設され てイ 施例を以下図面に基づいて詳述する。図面は蒸気洗浄装置を示し,図1において,この蒸気洗浄装置は,ワークを減圧乃至 真空状態下にて蒸気洗浄する減圧タンク1と,冷却コイル2が内設され てインレットポート3とアウトレットポート4との間を仕切板5で区画した冷却タンク6と,蒸気洗浄後に減圧タンク1内の溶剤A(例えばHC)を一時貯溜するサブタンク7(貯溜手段)と,2つのプールタンク8,9と,減圧手段としての真空ポンプ10と,この真空ポンプ10に接続され水(H2O)を用いて溶剤を浄化する浄化タンク11と,一方のプー ルタンク8と他方のプールタンク9との間に接続された真空蒸留機12(蒸溜手段)とを備えている。」(段落【0011】)【図1】「図示実施例は上記の如く構成するものにして,以下作用を説明する。 まず,真空ポンプ10を駆動すると共に,バルブ29,49を開弁して各要素19,30,29,3,4,50,49を介して減圧タンク1内 を真空状態にすると共に,バルブ16を開弁して加熱コイル15に加熱オイル(熱媒)を流通させ,減圧タンク1内の溶剤Aを真空状態下にて加熱して,溶剤蒸気Bを発生させる。」(段落【0025】)「このようにして,溶剤蒸気Bを発生させた後に,真空ポンプ10の駆動を停止すると共に,各バルブ29,49を閉弁する。一方,バルブ 27を開弁してエゼクタ26の負圧形成部26aに形成される負圧を利 用して,ライン28を介して減圧タンク1内の真空状態を保持し,この状態下において上述の溶剤蒸気Bによりワークを蒸気洗浄する。」(段落【0026】)「ワークの蒸気洗浄終了前において,真空ポンプ10を駆動し,またバルブ42を開弁して,ライン43を介してサブタンク7内を予め真空 状態に成す。而して,ワークの蒸気 る。」(段落【0026】)「ワークの蒸気洗浄終了前において,真空ポンプ10を駆動し,またバルブ42を開弁して,ライン43を介してサブタンク7内を予め真空 状態に成す。而して,ワークの蒸気洗浄終了後においては,ワークの乾燥処理に先立って,バルブ23,36を開弁し,ライン25に作用する大気圧とライン37に作用する負圧との差圧を利用して,減圧タンク1内の加熱された溶剤Aを,該タンク1外へ導出して,この溶剤Aをサブタンク7内に一時貯溜する。」(段落【0027】) 「減圧タンク1内の溶剤Aをサブタンク7内に吸引完了した時点で,上述の各バルブ23,36を閉弁する。次に真空ポンプ10を駆動すると共に,バルブ49を開弁して冷却タンク6内を予め真空状態に成し,その後,バルブ29を開いて減圧タンク1内に残存する溶剤蒸気Bを,ライン30を介して冷却タンク6に差圧吸引する。この場合,ライン3 0からのインレットポート3を介して冷却タンク6に吸引された溶剤蒸気Bは冷却コイル2により凝縮されると共に,仕切板5による区画構成により,溶剤蒸気Bがアウトレットポート4からライン50および真空ポンプ10側に直接吸込まれるのを防止することができる。」(段落【0028】) 「このような条件下において減圧タンク1内のワークを乾燥処理する。 つまり,バルブ14を開いて加熱コイル13に加熱オイルを流通させ,この熱媒により減圧タンク1内およびワークを加熱して,該ワークを乾燥させる。」(段落【0029】)「上述のワークに対する上記洗浄および乾燥の一連の処理終了後にお いて,バルブ32,33を開弁し,各要素32,34,33,20を介 して蒸留溶剤Aを減圧タンク1の溶剤貯留部1aに供給して,次のワークの蒸気洗浄および乾燥処理に備える。」 理終了後にお いて,バルブ32,33を開弁し,各要素32,34,33,20を介 して蒸留溶剤Aを減圧タンク1の溶剤貯留部1aに供給して,次のワークの蒸気洗浄および乾燥処理に備える。」(段落【0031】)「なお,上述のサブタンク7に一時貯溜された溶剤Aは,バルブ44の開時に,ライン45を介してプールタンク8に供給され,このプールタンク8内において冷却コイル63で冷却された後に,各要素8b,6 0を介して真空蒸溜機12に至り,ここで,蒸溜再生された溶剤Aは各要素62,61,9eを介して別のプールタンク9に送液される。」(段落【0032】)「このように上記構成の蒸気洗浄装置によれば,上述のワークは減圧乃至真空状態下において減圧タンク1内部で蒸気洗浄されるので,上述 の導出手段(ライン37参照)はワークの蒸気洗浄後つまりワークの乾燥に先立って減圧タンク1内の溶剤Aを減圧タンク1外へ導出するので,ワークの乾燥時において減圧タンク1内の溶剤Aが気化してワークの乾燥が妨げられることがなく,良好なワーク乾燥を実行することができる効果がある。」(段落【0033】) 「また,上述の還流手段(ライン34参照)がワークの乾燥後において減圧タンク1外の溶剤A(この実施例では蒸溜された溶剤A)を減圧タンク1の溶剤貯溜部1aに還流させるので,次のワークの蒸気洗浄に備えることができる効果がある。」(段落【0034】)イ乙9発明の意義・内容 上記記載によれば,乙9発明は,①蒸気洗浄後にタンク内の溶剤をタンク外へ導出することにより,ワークの乾燥時においてタンク内の溶剤が気化してワークの乾燥が妨げられないようにすることを目的とするものであり,②このため,ワークの蒸気洗浄終了前において,真空ポンプによりサブタンク7を とにより,ワークの乾燥時においてタンク内の溶剤が気化してワークの乾燥が妨げられないようにすることを目的とするものであり,②このため,ワークの蒸気洗浄終了前において,真空ポンプによりサブタンク7を予め真空状態にした上で,ワークの蒸気洗浄終了 後に,減圧タンク1(洗浄室)内に空気を導入し,減圧タンク1とサブ タンク7の負圧差を利用して,減圧タンク1内の溶剤Aをサブタンク7に導出するものであり,③その後,真空ポンプ10を駆動して冷却タンク6内を予め真空状態にし,続いて減圧タンクと冷却タンクを連結するバルブ29を開いて減圧タンク1内に残存する溶剤蒸気Bを,冷却タンク6に差圧吸引するものであると認められる。 ウ乙14発明と乙9発明の組合せについて上記イ③によれば,乙9発明は,真空ポンプ10により冷却タンク6(凝縮室)を真空状態にした上で,それを保持した状態で,減圧タンク1(洗浄室)と連結させるものであり,構成要件2Dの「真空ポンプによって…洗浄室とは独立して減圧され…る凝縮室」との構成が開示されている ということができる。 しかし,乙14発明は,前記のとおり,洗浄作業後に空気から溶剤を分離する負担を回避することを課題とし,そのために,溶剤による洗浄が開始される前に真空ポンプにより洗浄室を減圧して非凝縮性ガス等を排出した上で,洗浄室の真空状態を可能な限り維持した状態で凝縮室と連通させ るものであるのに対し,乙9発明は,ワークの乾燥時においてタンク内の溶剤が気化してワークの乾燥が妨げられないようにすることを課題とし,そのために,蒸気洗浄後にバルブを開弁して洗浄室内に空気を導入し,空気が導入された洗浄室と真空状態のサブタンクの負圧差を利用し,タンク内の溶剤をタンク外へ導出した上で,空気が含まれる状態の洗浄室と そのために,蒸気洗浄後にバルブを開弁して洗浄室内に空気を導入し,空気が導入された洗浄室と真空状態のサブタンクの負圧差を利用し,タンク内の溶剤をタンク外へ導出した上で,空気が含まれる状態の洗浄室と凝縮 室を連通させるものであると認められる。 このように,乙14発明と乙9発明は,真空洗浄装置である点においては共通するものの,その課題は異なり,特に,乙14発明は,その課題を解決するため洗浄工程において空気を含む非凝縮性ガスを極力排除するのに対し,乙9発明は,同工程において開弁して洗浄室内に空気を導入する ものであることに照らすと,両発明を組み合わせることについては阻害要 因があるというべきである。 エしたがって,乙14発明に乙9発明を組み合わせることにより,当業者が相違点14-2に係る構成を容易に想到し得たということはできない。 (6) 相違点14-3に係る構成の容易想到性ア乙9公報には,洗浄対象物の乾燥工程に関し,「このような条件下にお いて減圧タンク1内のワークを乾燥処理する。つまり,バルブ14を開いて加熱コイル13に加熱オイルを流通させ,この熱媒により減圧タンク1内およびワークを加熱して,該ワークを乾燥させる。」(段落【0029】)との記載がある。 上記記載によると,乙9発明におけるワークの乾燥は加熱コイルによる 加熱により行われるものとも理解できるが,他方で,加熱コイルによる加熱に係る構成は,乙9発明の請求項2に対応するものであるところ,同公報の段落【0005】には「請求項2記載の発明は,…タンクの少なくとも溶剤蒸気層に加熱管を配置して,…タンク内部を加熱することで,ワークの乾燥効率をさらに向上させる蒸気洗浄機装置の提供を目的とする」と の記載があることに照らすと,加熱コイル13によ 少なくとも溶剤蒸気層に加熱管を配置して,…タンク内部を加熱することで,ワークの乾燥効率をさらに向上させる蒸気洗浄機装置の提供を目的とする」と の記載があることに照らすと,加熱コイル13による加熱は,ワークの乾燥の補完的な手段であるとも理解できる。 イ仮に,加熱コイル13による加熱は,ワークの乾燥の補完的な手段であるとすると,乙9発明におけるワークの乾燥は,真空ポンプ10を駆動して冷却タンク6内を予め真空状態にし,その後,減圧タンク1と冷却タン ク6を連結するバルブ29を開いて減圧タンク1内に残存する溶剤蒸気Bを,冷却タンク6に差圧吸引することにより行われるとも考えられる。 しかし,乙9公報には加熱コイル13による加熱以外の乾燥方法についての記載はなく,また,仮に上記のように理解するとしても,それは,真空ポンプによる真空引きにより乾燥するという従来技術の方法にほかなら ず,少なくとも,減圧タンク1と冷却タンク6の連結による凝縮作用によ りワークの乾燥をしているといい得るかどうかは明らかではない。 むしろ,乙9公報の段落【0028】によれば,冷却コイル2の役割は,吸引された溶剤蒸気Bを凝縮して液体化し,溶剤蒸気Bが真空ポンプ10側に直接吸込まれるのを防止することにあるとうかがわれるのであり,乙9発明におけるワークの乾燥は,乾燥工程前にタンク内の溶剤をタンク外 へ導出した上で,真空ポンプによる真空引きで行い,これを加熱コイルによる加熱により補完することにより達成されると考えるのが合理的である。 そうすると,本件発明2の構成要件2Gの「洗浄室を凝縮室と連通させてワークを乾燥させる」との構成が乙9公報に開示されているということはできないので,乙14発明に乙9発明を組み合わせても,本件発明2の 構成要件 明2の構成要件2Gの「洗浄室を凝縮室と連通させてワークを乾燥させる」との構成が乙9公報に開示されているということはできないので,乙14発明に乙9発明を組み合わせても,本件発明2の 構成要件2Gの構成を備えないというべきである。 (7) 小括したがって,乙14発明に基づき,本件発明2が進歩性を欠如するということはできない。 5 争点2-2(乙15発明による進歩性の欠如)について 被告は,本件発明2は,乙15発明及び周知事項に基づき,当該発明の出願時の当業者が容易に想到し得たものであるから,本件特許2は無効にされるべきものであると主張する。 しかし,以下のとおり,乙15発明は相違点15-1~3において本件発明2と相違すると認められ,このうち,相違点15-2及び3に係る構成を当業 者が容易に想到し得たということはできないので,本件発明2に無効理由があるとはいうことはできない。 (1) 乙15公報の記載乙15公報には,以下の記載がある。 ア産業上の利用分野 「本発明は,電機部品,機械部品その他の部材に,洗浄及び乾燥処理を 施すための洗浄装置に係るもので,各処理を,迅速かつ経済的に行うことが出来るようにしたものである。」(段落【0001】)イ従来の技術「従来,被洗浄物の蒸気洗浄及び乾燥等の処理を行う洗浄装置には,蒸気洗浄部と蒸気発生部とを各々別の槽に形成し,パイプ等を介して蒸気発 生部の洗浄蒸気を蒸気洗浄部に導入して,被洗浄物の蒸気洗浄を行うものがあった。そして,蒸気洗浄が終了したら,蒸気発生部からの洗浄蒸気の導入を遮断し,被洗浄物の乾燥処理を行っていた。」(段落【0002】)ウ発明が解決しようとする課題「しかしながら,このように蒸気洗浄部と蒸気発生部とを別の槽に設け 発生部からの洗浄蒸気の導入を遮断し,被洗浄物の乾燥処理を行っていた。」(段落【0002】)ウ発明が解決しようとする課題「しかしながら,このように蒸気洗浄部と蒸気発生部とを別の槽に設け ると,洗浄装置が大きくなり,設置には広いスペースを必要とし,装置を高価とするものであった。…」(段落【0003】)「本発明は上述の如き課題を解決しようとするものであって,洗浄槽を蒸気洗浄部と蒸気発生部とに分割し,この蒸気洗浄部と蒸気発生部との間の連通口に,密閉蓋体を設け,この密閉蓋体を上下方向に移動する事によ り,連通口の開口と密閉を可能とするものである。その結果,一つの洗浄槽で蒸気洗浄処理と乾燥処理を行う事を可能とするとともに,無駄な設置スペースを省いて,洗浄装置をコンパクトで経済的に形成しようとするものである。」(段落【0006】)「また,密閉蓋体と連通口との接続部に配置するシール部材の摩耗や破 損を防いで,洗浄装置の密閉性や耐久性を持続可能とする。また,この良好な密閉性により,洗浄液やエネルギーの無駄な使用を防止して,経済的な乾燥処理を可能とするものである。」(段落【0007】)エ実施例「以下,本発明の一実施例を図1,図2に於て説明すれば,(1)は縦型 の洗浄槽で,仕切壁(2)を介して上部側を蒸気洗浄部(3),下部側を蒸気発 生部(4)としている。そして,蒸気洗浄部(3)には,被洗浄物(5)を載置するための載置台(6)を配置している。この載置台(6)は,金網材やパイプ材等で形成する事により,蒸気発生部(4)から導入される洗浄蒸気が,載置台(6)を通過して,被洗浄物(5)に到達が可能なものとしている。」(段落【0022】) 「また,蒸気発生部(4)には,洗浄液(7)を充填しており,電気ヒー 4)から導入される洗浄蒸気が,載置台(6)を通過して,被洗浄物(5)に到達が可能なものとしている。」(段落【0022】) 「また,蒸気発生部(4)には,洗浄液(7)を充填しており,電気ヒーター,加熱オイルを流通した加熱パイプ等の適宜の加熱手段(8)により,この洗浄液(7)の蒸気化を可能としている。また,蒸気発生部(4)には,サーモスタット(32)を設置し,加熱手段(8)による洗浄液(7)の加熱を制御している。 そして,仕切壁(2)には,蒸気洗浄部(3)と蒸気発生部(4)とを連通するとと もに,蒸気発生部(4)で発生する洗浄蒸気を蒸気洗浄部(3)内に導入するための連通口(10)を開口している。」(段落【0023】)「また,蒸気洗浄部(3)は,第1電磁弁(17)を介してバキュームポンプ゚(14)に連結し,蒸気洗浄部(3)内を減圧可能としている。また,第1電磁弁(17)とバキュームポンプ(14)との間には,凝縮器(15)を介在し,蒸気洗 浄部(3)の減圧の際に,蒸気洗浄部(3)内の洗浄蒸気を凝縮器(15)に導入可能としている。この凝縮器(15)の内部には,冷却水が流通する冷却パイプ【図1】 (9)を挿通し,凝縮器(15)に導入された洗浄蒸気を凝縮可能としている。 このように凝縮器(15)で凝縮された凝縮液は,第2電磁弁(35)を介して蒸気発生部(4)内に移送され,再生使用を可能としている。」(段落【0026】)「そして,上述の如き洗浄槽(1)で被洗浄物(5)の蒸気洗浄及び乾燥処理 を行う手順を説明する。大気圧蒸気洗浄を行うには,蒸気洗浄部(3)内の載置台(6)に,被洗浄物(5)を載置する。そして,仕切壁(2)の連通口(10)を被覆する密閉蓋体(11)を,蒸気発生部(4)側に下降する事により,洗浄蒸気が流 洗浄を行うには,蒸気洗浄部(3)内の載置台(6)に,被洗浄物(5)を載置する。そして,仕切壁(2)の連通口(10)を被覆する密閉蓋体(11)を,蒸気発生部(4)側に下降する事により,洗浄蒸気が流通する僅かな流通間隔(27)を介して連通口(10)を開口し,蒸気発生部(4)と蒸気洗浄部(3)とを連通する。」(段落【0028】) 「また,減圧蒸気洗浄を行うには,蒸気発生部(4)と蒸気洗浄部(3)との連通状態で,バキュームポンプ(14)を作動して減圧する。そして,この減圧によって洗浄液(7)の沸点が低下し,洗浄液(7)の加熱温度よりも沸点が低くなると,洗浄蒸気が発生する。そして,この洗浄蒸気が蒸気洗浄部(3)側に流動し,被洗浄物(5)と接触して凝縮する事により,減圧蒸気洗浄 が行われる。…」(段落【0030】)「そして,上述の如き洗浄処理で凝縮された凝縮液は,被洗浄物(5)から洗い流された汚物とともに,連通口(10)を介して蒸気発生部(4)側に流下する。…」(段落【0031】)「…本実施例では,シール部材(12)を仕切壁(2)の下面に設けているの で,シール部材(12)には,密閉蓋体(11)との接続面に,汚物等の異物が付着する事はない。また,仕切壁(2)とシール部材(12)とで形成される凹部(16)は,図1に示す如く,下側を向いているので,汚物や洗浄液(7)が滞留する事もない。そのため,被洗浄物(5)や蒸気洗浄部(3)の内部に付着した凝縮液が,蒸気発生部(4)側に確実に流下し,蒸気洗浄部(3)内は良好な 液切りが行われるものとなる。また,蒸気発生部(4)内に流下した凝縮液 は,蒸留再生使用が可能となり,無駄に消費される事がないので,洗浄液(7)の経済的な使用も可能となる。」(段落【0032】)「そし れるものとなる。また,蒸気発生部(4)内に流下した凝縮液 は,蒸留再生使用が可能となり,無駄に消費される事がないので,洗浄液(7)の経済的な使用も可能となる。」(段落【0032】)「そして,洗浄処理が終了したら,乾燥処理を行うが,それには,図2に示す如く,連通口(10)に密閉蓋体(11)を接続して蒸気洗浄部(3)内への洗浄蒸気の流入を遮断するとともに蒸気洗浄部(3)内を気密的に密閉する。 …。」(段落【0033】)「次に,この蒸気洗浄部(3)に接続するバキュームポンプ(14)を稼働して,蒸気洗浄部(3)内を急速に減圧する。この急速減圧により,被洗浄物(5)や蒸気洗浄部(3)内に付着した洗浄液(7)の沸点が低下し,急速な乾燥が可能となる。この乾燥処理の際も,前述の如く,被洗浄物(5)や,蒸気 洗浄部(3)内の余分な洗浄液(7)の液切りが良好に行われているので,乾燥時間を短縮する事ができるとともに,乾燥に使用するエネルギーを節約でき,乾燥処理を迅速かつ経済的に行う事が可能となる。」(段落【0035】)「また,バキュームポンプ(14)により蒸気洗浄部(3)内を減圧すると, 蒸気洗浄部(3)内に残留していた洗浄蒸気が,第1電磁弁(17)を介して凝縮器(15)に移動し,凝縮液化する。そして,この凝縮液を,第2電磁弁【図2】 (35)を介して蒸気発生部(4)に移送する事により,再び洗浄蒸気化し,蒸留再生使用が可能となり,洗浄液(7)の経済的な再生使用が可能となる。 …」(段落【0036】)「そして,乾燥処理が終了したら,蒸気洗浄部(3)に接続した真空破壊弁(26)を介して,蒸気洗浄部(3)内にエアーを導入する。このエアーの導 入により,蒸気洗浄部(3)内が常圧状態に戻るので,洗浄槽(1)の開閉蓋( 了したら,蒸気洗浄部(3)に接続した真空破壊弁(26)を介して,蒸気洗浄部(3)内にエアーを導入する。このエアーの導 入により,蒸気洗浄部(3)内が常圧状態に戻るので,洗浄槽(1)の開閉蓋(30)を外して,蒸気洗浄部(3)内の被洗浄物(5)を安全に取り出す事ができる。」(段落【0037】)(2) 乙15発明の意義・内容上記記載によれば,乙15発明は,①蒸気洗浄部と蒸気発生部とを各々別 の槽に形成する従来の洗浄装置に対し,これを一個の洗浄槽に形成することなどにより,コンパクトで経済的なものにすることを目的とするものであり,②被洗浄物の洗浄処理が終わると,バキュームポンプ(14)(真空ポンプ)で蒸気洗浄部(3)(洗浄室)を急速に減圧し,被洗浄物や蒸気洗浄部(3)内に付着した洗浄液(7)の沸点を低下させることにより急速な乾燥を行い,③蒸気 洗浄部(3)内の減圧に伴い,蒸気洗浄部(3)内に残留していた洗浄蒸気が,第1電磁弁(17)を介して凝縮器(15)(凝縮室)に移動し,凝縮液化するので,洗浄液(7)の経済的な再生使用が可能となるものであると認められる。 (3) 本件発明2と乙15発明の対比乙15発明が相違点15-1及び2において本件発明2と相違することに ついては,当事者間に争いがない。 また,乙15公報の段落【0035】及び【0036】によれば,乙15発明における被洗浄物は真空ポンプであるバキュームポンプ(14)による真空引きにより乾燥されるものであり,洗浄室に相当する蒸気洗浄部(3)と凝縮室に相当する凝縮器を連通することは開示されているものの,凝縮室と洗浄 室の連通によりワークを急速に乾燥するという本件発明2の技術思想が開示 ないし示唆されているということはできない。そうすると,乙15発明は 通することは開示されているものの,凝縮室と洗浄 室の連通によりワークを急速に乾燥するという本件発明2の技術思想が開示 ないし示唆されているということはできない。そうすると,乙15発明は,原告らの主張する相違点15-3において本件発明2と相違すると認められる。 (4) 相違点15-2に係る構成の想到容易性被告は,相違点15-2に係る構成は,乙15発明に乙9発明を組み合わ せることにより,当業者が容易に想到し得たと主張する。 ア乙9発明は,真空ポンプ10により冷却タンク6(凝縮室)を真空状態にした上で,それを維持した状態で,減圧タンク1(洗浄室)と連結させるものであるので,構成要件2Dの「真空ポンプによって…洗浄室とは独立して減圧され…る凝縮室」との構成を備えることは,前記判示の とおりである。 イしかし,乙15発明は,前記のとおり,蒸気洗浄部と蒸気発生部とを各々別の槽に形成する従来の洗浄装置に対し,洗浄槽を蒸気洗浄部と蒸気発生部とに分割し,その間の連通口に密閉蓋体を設け,これを上下方向に移動することにより,連通口の開口と密閉を可能とし,一個の洗浄槽で蒸 気洗浄処理と乾燥処理を行うことを可能にするものである。 そして,乾燥工程については,蒸気洗浄部内の減圧により洗浄室内の沸点が低下することにより急速な乾燥が可能になる旨の記載があるにとどまり(段落【0035】),凝縮器については洗浄蒸気を凝縮液化することの言及はあるものの(段落【0036】),蒸気洗浄部と凝縮器の連通に よる凝縮作用が乾燥に寄与する旨の記載がないことはもとより,凝縮器が乾燥において一定の役割を果たすことを示唆する記載もない。 他方,乙9発明は,前記のとおり,ワークの乾燥時においてタンク内の溶剤が気化してワークの乾燥が妨げられ の記載がないことはもとより,凝縮器が乾燥において一定の役割を果たすことを示唆する記載もない。 他方,乙9発明は,前記のとおり,ワークの乾燥時においてタンク内の溶剤が気化してワークの乾燥が妨げられないようにすることを課題とし,そのために,蒸気洗浄後に,空気が導入された減圧タンクと真空状態のサ ブタンクの負圧差を利用し,タンク内の溶剤をタンク外へ導出した上で, 空気が含まれる状態の減圧タンクと冷却タンクを連通させるものである。 そして,乙9発明の乾燥工程については,加熱コイルによる加熱によりワークを加熱する旨の記載があるのみであり,その他の乾燥のメカニズムについての説明がない上,冷却タンクが乾燥工程においてどのような役割を果たすのか明らかではなく,冷却タンクを予め真空状態にすることの意 義についても説明されていない。 上記のとおり,乙15発明及び乙9発明はその課題及び課題解決方法において異なる上,いずれの発明においても,洗浄蒸気が凝縮により液化することの開示又は示唆はあるものの,洗浄室蒸気洗浄部と凝縮室の連通による凝縮作用が乾燥に寄与する旨の記載がないことはもとより,凝縮室に 相当する部分が乾燥において一定の役割を果たすことを示唆する記載もなく,更に乙9公報には冷却タンクを予め真空状態にする意義も説明されていないことに照らすと,乙15公報及び乙9公報に接した当業者が,急速な乾燥を実現するため,乙9発明の「真空ポンプによって…洗浄室とは独立して減圧され…る凝縮室」との構成を乙15発明に適用することを容易 に想到し得たとは考え難い。 ウしたがって,本件特許権2の出願当時の当業者が,乙15発明に乙9発明を組み合わせることにより,相違点15-2に係る構成容易に想到し得たということはできない。 (5) 相違点 たとは考え難い。 ウしたがって,本件特許権2の出願当時の当業者が,乙15発明に乙9発明を組み合わせることにより,相違点15-2に係る構成容易に想到し得たということはできない。 (5) 相違点15-3に係る構成の容易想到性 ア前記のとおり,乙15発明における被洗浄物はバキュームポンプによる真空引きにより乾燥されるものであり,凝縮室と洗浄室の連通によりワークを急速に乾燥するという本件発明2の技術思想は開示ないし示唆されていないことから,本件発明2が「前記蒸気を前記洗浄室に供給してワークを洗浄した後,前記開閉バルブによって前記洗浄室を当該洗浄室よりも低 い温度に保持された前記凝縮室と連通させてワークを乾燥させる」(構成 要件2G)のに対し,乙15発明がそのような構成を備えていないことは相違点となる。 イそして,乙9発明では,前記のとおり,減圧タンク1と冷却タンク6の連結による凝縮作用によりワークの乾燥をしているといい得るかどうかは明らかではなく,むしろ,同発明におけるワークの乾燥は,乾燥工程前に タンク内の溶剤をタンク外へ導出した上で,真空ポンプによる真空引きで主に行い,これを加熱コイルによる加熱により補完することにより達成されると考えるのが合理的である。 ウこのように,本件発明2の構成要件2Gの「洗浄室を凝縮室と連通させてワークを乾燥させる」との構成が乙9公報に開示されているということ はできないので,乙15発明に乙9発明を組み合わせても,本件発明2の構成要件2Gの構成を備えないというべきである。 (6) 小括したがって,乙15発明に基づき,本件発明2が進歩性を欠如するということはできない。 6 争点2-3(分割要件違反による新規性及び進歩性の欠如)について(1) 本件原出願 (6) 小括したがって,乙15発明に基づき,本件発明2が進歩性を欠如するということはできない。 6 争点2-3(分割要件違反による新規性及び進歩性の欠如)について(1) 本件原出願の出願当初の明細書等(乙8の1)に関する主張について被告は,本件原出願に係る乙8の1明細書等は,真空ポンプを用いず,洗浄室と凝縮室とを連通させるだけでワークを乾燥させる装置を開示するにすぎないのに対し,本件明細書等は真空ポンプを併用する構成を含むものであ り,乙8の1明細書等に記載された技術的事項の範囲を超えるので,分割要件に違反すると主張する。 しかし,乙8の1明細書等は,本件明細書等と同様に,洗浄室を温度差のある凝縮室と連通させることによって,凝縮室内での蒸気の凝縮で生じる洗浄室との圧力差が平衡するように蒸気が移動するという作用を利用し,洗浄 室内を減圧し,ワークを乾燥させるという真空洗浄装置を開示するものであ るところ(段落[0030]),乙8の1明細書等には,ワークの乾燥が洗浄室と凝縮室の連通のみによって行われることや,乾燥過程において真空ポンプを使用しない旨の記載は存在しない。 また,乙8の1明細書等に開示された真空洗浄装置において,非凝縮性ガスが装置の隙間や凝縮液タンクから凝縮室に入り込んで凝縮を妨げることを 防ぐため,又は,更に急速な乾燥を実現するため,真空ポンプを付加的に利用することは,その作用効果を阻害するものではなく,むしろ,乾燥工程に要する時間を短縮化すると考えられる。このため,乙8の1明細書等においても,乾燥工程において真空ポンプを用いる装置を排除していないものというべきである。 被告は,分割要件違反の根拠として,乙8の1明細書等の段落[0039]や[0040]の記載を指摘するが, ても,乾燥工程において真空ポンプを用いる装置を排除していないものというべきである。 被告は,分割要件違反の根拠として,乙8の1明細書等の段落[0039]や[0040]の記載を指摘するが,これらは,真空ポンプを利用しない第1実施形態についての説明にすぎず,これらの記載をもって,乙8の1明細書等が真空ポンプを併用することを排除していると解することはできない。 したがって,本件明細書等に記載された技術的事項が,乙8の1明細書等 に記載された技術的事項の範囲を超えるとして,本件発明2に係る特許出願が分割要件に違反する旨の被告の主張には理由がない。 (2) 本件特許権2の分割直前の明細書等(乙8の15)に関する主張について被告は,①本件特許権2の分割直前の乙8の15明細書等は,真空ポンプを用いず,洗浄室と凝縮室とを連通させるだけでワークを乾燥させる装置を 開示するにすぎないのに対し,本件明細書等は,真空ポンプを併用する構成を含む点,②乙8の15明細書等は,洗浄室と凝縮室とが隣接する構成を開示するにすぎないのに対し,本件明細書等は,洗浄室と凝縮室が離間状態にある構成まで含む点において,乙8の15明細書等に記載された技術的事項の範囲を超えるので,分割要件に違反すると主張する。 アしかし,前記(1)と同様の理由から,上記①に係る分割要件違反の主張 は理由がない。 イ被告は,上記②について,乙8の15明細書等に係る発明の請求項1が洗浄室と凝縮室とが隣接する構成に限定していることなどを理由に,同明細書等に記載された技術的事項の範囲には,洗浄室と凝縮室とが離間する構成を含まないと主張する。 しかし,乙8の15明細書等には,洗浄室と凝縮室の位置関係を一定の形態に限定する旨の記載は存在せず,当業者は,同 た技術的事項の範囲には,洗浄室と凝縮室とが離間する構成を含まないと主張する。 しかし,乙8の15明細書等には,洗浄室と凝縮室の位置関係を一定の形態に限定する旨の記載は存在せず,当業者は,同明細書等に記載された作用効果を実現するため,洗浄室と凝縮室の位置関係を適宜設定することができるのであって,両室を隣接状態にすることが必須ということはできない。 また,分割出願に係る発明は,原出願の分割直前の明細書等に係る特許請求の範囲に記載された発明である必要はなく,当該明細書等に記載されている発明で足りるので,上記請求項1において洗浄室と凝縮室とが隣接する形態に特定されていても,それにより本件特許権2の出願が分割要件に違反するものではない。 ウしたがって,本件明細書等に記載された技術的事項が,乙8の15明細書等に記載された技術的事項の範囲を超えるとして,本件発明2に係る特許出願が分割要件に違反する旨の被告の主張には理由がない(なお,原告らは,前記(2)に係る被告の主張に対し,時機に遅れた攻撃防御方法であると主張するが,これにより訴訟の完結が遅延するものとは認められない から,その却下の申立ては理由がない。)。 7 争点2-4(実施可能要件違反)について(1) 被告は,当業者は,本件明細書等の記載に接したとしても,洗浄室を凝縮室と連通させることによりワークを乾燥するメカニズムを理解することができないと主張する。 しかし,本件明細書等の段落【0029】,【0030】には,溶剤蒸気 が充満した高温の洗浄室と低温の凝縮室と連通させることによって,洗浄室内の蒸気が凝縮室に移動及び凝縮し,これにより洗浄室内が減圧されて,ワークに付着した溶剤が全て気化して乾燥が行われることが記載されている。 当業者で 室と低温の凝縮室と連通させることによって,洗浄室内の蒸気が凝縮室に移動及び凝縮し,これにより洗浄室内が減圧されて,ワークに付着した溶剤が全て気化して乾燥が行われることが記載されている。 当業者であれば,上記記載から,洗浄室と凝縮室を連通することにより,ワークの乾燥が行われるメカニズムを容易に理解することができる。これに 加えて,同明細書等の段落【0023】~【0040】の記載を参酌すれば,当業者は,一連の具体的な処理工程や試験データ等を把握することができるから,過度の試行錯誤を要することなく,本件発明2を実施することができるというべきである。 (2) 被告は,本件明細書等には,真空乾燥実験の実験条件が明示されていない ため,当業者は,その実験を再現することができないと主張する。 しかし,前記のとおり,当業者は,洗浄室と凝縮室を連通することによりワークの乾燥が行われるメカニズムを容易に理解することができるので,真空ポンプや圧力計の種類やスペック,単位換算の方法などの実験条件は,適宜設定し得る。 そうすると,本件明細書等に更に詳細な実験条件等が記載されていないとしても,当業者であれば,過度の試行錯誤を重ねることなく,本件発明2を実施できるというべきである。 (3) 被告が,乙13実験において,本件各発明の効果を再現し得なかったと主張するが,乙13実験は,本件訴訟において,被告製品が本件特許2の技術 的範囲に含まれないことを立証する証拠として提出されたものであり,同実験の結果をもって,本件明細書等の記載が実施可能要件に反すると認めることはできない。 (4) したがって,本件明細書等の記載が実施可能要件に違反するとの被告の主張は理由がない。 8 争点2-5(サポート要件違反)について (1 反すると認めることはできない。 (4) したがって,本件明細書等の記載が実施可能要件に違反するとの被告の主張は理由がない。 8 争点2-5(サポート要件違反)について (1) 被告は,本件明細書等の発明の詳細な説明において,蒸気移動のメカニズム,真空乾燥実験の実験条件が開示されていないことが,サポート要件に違反すると主張する。 しかし,当業者が,本件明細書等の発明の詳細な説明の記載により,洗浄室と凝縮室を連通することによりワークの乾燥が行われるメカニズムを理解 し得ることができ,その理解を前提に,真空乾燥実験の実験条件を適宜に設定し得ることは,前記7(2)に説示したとおりである。 したがって,当業者が,本件明細書等の発明の詳細な説明の記載によって,課題を解決し得ると認識し得ないということはできない。 (2) 被告は,本件発明2の請求項の記載が,その程度を問わず,真空ポンプを 用いる形態を含み得るものとなっていることが,サポート要件に違反すると主張する。 しかし,本件発明2の構成要件2Gは「洗浄室を当該洗浄室よりも低い温度に保持された前記凝縮室と連通させてワークを乾燥させる」と規定しており,真空ポンプを併用したとしても,同構成要件を充足するようにワークを 乾燥させることを要するのであるから,本件発明2の請求項の記載が,真空ポンプによる作用の程度を問わず,真空ポンプを用いる全ての形態を含み得ると解することはできない。 したがって,被告の上記主張は,その前提を欠くものである。 (3) 被告は,本件明細書等にいう「最高減圧レベル」と本件発明2の効果とさ れる「乾燥」との関係が不明であると主張する。 しかし,本件発明2におけるワークの「乾燥」は,溶剤蒸気が充満した高温の洗浄室と低温の凝縮室と 等にいう「最高減圧レベル」と本件発明2の効果とさ れる「乾燥」との関係が不明であると主張する。 しかし,本件発明2におけるワークの「乾燥」は,溶剤蒸気が充満した高温の洗浄室と低温の凝縮室と連通させることによって,洗浄室内の蒸気が凝縮室に移動及び凝縮し,これにより洗浄室内が減圧されることにより行われることは前記判示のとおりである。また,本件明細書等の段落【0033】, 【0034】,【0036】,【0037】及び【図3】~【図6】によれ ば,「最高減圧レベル」は,乾燥工程において洗浄室内の圧力が最大限減圧された状態をいうものと認められ,「最高減圧レベル」と「乾燥」との関係が不明であるといことはできない。 (4) したがって,本件特許権2がサポート要件に違反して無効であるということはできない。 9 争点3(原告らの損害額)について(1) 原告らは,特許法102条2項所定による損害額を請求するが,同項所定の侵害行為により侵害者が受けた利益の額は,侵害者の侵害品の売上高から,侵害者において侵害品を製造販売することによりその製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利益の額であり,その主張立証 責任は特許権者側にあるものと解すべきである(知的財産高裁平成30年(ネ)第10063号令和元年6月7日判決参照)。 (2) 被告製品の売上高本件特許権2の侵害品である被告製品の売上高は,前提事実(5)アのとおり,●(省略)●円である。被告は,この売上高には「搬送機,据付工事, 試運転,諸経費」に係る売上げが含まれることを指摘し,これらは本件発明2の実施とは無関係であるとして,割合的な控除を主張するが,これらの売上げは,被告製品の販売と一体となり,あるいは,被告製品の販売に付随するものと 係る売上げが含まれることを指摘し,これらは本件発明2の実施とは無関係であるとして,割合的な控除を主張するが,これらの売上げは,被告製品の販売と一体となり,あるいは,被告製品の販売に付随するものと考えられるので,これも本件特許権2の侵害に係る売上げに含めるのが相当である。 (3) 控除すべき経費他方,その製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費は,別紙2の裁判所の認定欄のとおり,合計●(省略)●円であると認めることができるから,これを前記の売上高から控除した限界利益は●(省略)●円と計算され,これが特許法102条2項の推定が及ぶ損害の額となる。これらの経 費のうち,争いのある費目に対する判断は,以下のア~サのとおりである。 ア労務費〈経費2〉被告は,被告製品の製造販売に携わった従業員は,被告製品を製造販売しなかったとすれば,何らかの形で人員整理されていたはずであるとして,これが追加的に必要となった経費であると主張するが,労務費は,製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費ではないので,変動費には当 たらない。 イ外注費〈経費3〉原告らは,被告においては,固定的に外注を活用していたと考えられるから,その外注費は労務費と同視すべきであると主張するが,外注費は,製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費であり,被告の主張す る外注費が実質的には労務費であると認めるべき証拠はない。そうすると,被告製品に係る外注費は,その製造販売のため,追加的に必要となった経費に当たるというべきである。 ウ旅費交通費,旅費日当〈経費4③,④〉原告らは,これらの費目は通常の営業活動や巡回サービスなどを含むと して,被告製品の製造販売に直接関連する経費であることを争う。 しかし,被告主 ウ旅費交通費,旅費日当〈経費4③,④〉原告らは,これらの費目は通常の営業活動や巡回サービスなどを含むと して,被告製品の製造販売に直接関連する経費であることを争う。 しかし,被告主張の金額は,個々の被告製品に紐付けられた経費(乙48の2・8~9頁)のほか,被告製品に係る搬送機,据付工事,諸経費に関連する費用(乙51・6頁)として,被告の会計システム上,製造経費として計上されていたものの合計であり,その内容は,受注後の打合せ, 設置工事などのための交通費や日当であると認められる(乙49・5頁)。 そうすると,これらの経費は被告製品の製造販売に直接関連して生じたものであると解するのが相当である。 エ通信費〈経費4⑥〉被告は,製造部門における通信費を「関わり比率」で案分した額が,控 除すべき経費に当たると主張する。 しかし,被告の請求する通信費は,製造部門全体における通信費を按分したものであり,被告製品や当該製品に係る据付工事のために必要になったものであることを示す証拠はない。また,実際に被告製品のために出費した通信費と被告の主張する「関わり比率」との間に強い相関があって,同比率が実態に合致したものであると推認すべき合理的な根拠も見出し難 い。 そうすると,被告主張の金額を被告製品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費と認めることはできない。 オ修繕維持費,減価償却費(真空度測定機器)〈経費4⑩,⑪〉原告らは,これらの費用の内容及び根拠が不明であるとして,その経費 該当性を争う。 しかし,証拠及び弁論の全趣旨によれば,真空度測定機器は,顧客ごとに製作した真空洗浄機の真空度の測定に使用するものであるところ,その修繕維持費及び減価償却費とは,真空度測定機器の校正維持のた う。 しかし,証拠及び弁論の全趣旨によれば,真空度測定機器は,顧客ごとに製作した真空洗浄機の真空度の測定に使用するものであるところ,その修繕維持費及び減価償却費とは,真空度測定機器の校正維持のための整備費用及びその機械部品の減価償却費であり,真空洗浄機の寄与度を乗じて 算出したものであると認めることができる(乙48の2・9~10頁,令和2年10月23日付け被告準備書面(損害論についてその4)・別紙1)。 そうすると,上記費用は控除すべき経費に当たると考えるのが相当である。 カ産廃処理費〈経費4⑫〉被告は,製造部門の産廃処理費の総額を「関わり比率」で案分した額を費用として控除すべきであると主張するところ,被告製品を新たに製造すれば,材料,部品の梱包材の処理費用など,追加的な産廃処理費が発生すると認めることはできる。もっとも,その金額が,被告のいう「関わり比 率」との間に強い相関を有すると認めることはできないので,その具体的 な金額は,被告の真空炉事業部全体の産廃処理費用を売上比率で案分するのが相当である。 これにより計算すると,控除すべき産廃処理費の合計は,以下の(ア)~(エ)のとおり,合計●(省略)●円と認めることが相当である。 (ア) 平成29年3月期 真空炉事業部の産廃処理費●(省略)●円×(「洗浄機売上」●(省略)●円÷真空炉事業部の売上高●(省略)●円)=●(省略)●円(乙45別紙)(イ) 平成30年3月期真空炉事業部の産廃処理費●(省略)●円×(「洗浄機売上」●(省 略)●円÷真空炉事業部の売上高●(省略)●円)=●(省略)●円(乙45別紙)(ウ) 平成31年3月期真空炉事業部の産廃処理費●(省略)●円×(「洗浄機売上」●(省略)●円÷真空炉事業部の売 略)●円÷真空炉事業部の売上高●(省略)●円)=●(省略)●円(乙45別紙)(ウ) 平成31年3月期真空炉事業部の産廃処理費●(省略)●円×(「洗浄機売上」●(省略)●円÷真空炉事業部の売上高●(省略)●円)=●(省略)●円 (乙45別紙)(エ) 令和2年3月期前記(ア)~(ウ)の合計●(省略)●円×(令和2年3月期の被告製品の売上高●(省略)●円÷平成29年3月期~平成31年3月期の被告製品の売上高●(省略)●円)=●(省略)●円(乙57別紙1) キ雑費(デザイン料)〈経費4⑬〉(ア) 証拠及び弁論の全趣旨によれば,被告主張の雑費のうち,平成26年に生じた●(省略)●万円は,新たに被告製品の販売を開始するに当たり,認知度の向上を図るため,そのデザインを外部委託した費用であると認めることができる(乙48の2・4頁,乙49・6頁,別紙5)。 そうすると,これは被告製品の製造販売に直接関連し追加的に必要とな った費用ということができる。原告らが指摘するように,当該デザインが,その後の他の製品のために使われているにしても,それは付随的な結果にすぎないとみるのが相当であり,前記の結論を左右するものではない。 (イ) 他方,平成27年及び平成30年に生じた●(省略)●円は,「シ ョールーム展示グラフィック製品のロゴデザイン」や「製品デザインのガイドライン」の費用とされるものであり(乙49・別紙5),被告製品の製造販売のために追加的に必要となった費用ということはできないので,これを経費として控除することはできない。 ク旅費交通費〈経費5①〉 被告は,当該費用を被告製品の販売のために営業部門が使用したものであるとしながら,その内訳には,接待交際費,展示会出展費用,消耗品購入費用 ることはできない。 ク旅費交通費〈経費5①〉 被告は,当該費用を被告製品の販売のために営業部門が使用したものであるとしながら,その内訳には,接待交際費,展示会出展費用,消耗品購入費用なども含まれるというのであり,その性質は必ずしも明らかではない。当該費用が,製造経費に係る旅費交通費等(前記ウ)とは別の販管費として計上されていることからしても,これを被告製品の製造販売に直接 関連して発生した費用ということはできない。 ケ販売手数料〈経費5②〉原告らは,これらの費用の内容及び根拠が不明であるとして,その経費該当性を争う。 しかし,証拠及び弁論の全趣旨によれば,当該費用は,被告製品の販売 先の紹介を受けた商社等に対して支払った手数料又は手数料の案分額であると認めることができる(乙48の2・11~12頁,乙49・7頁,令和2年10月23日付け被告準備書面(損害論についてその4)・別紙3)。 そうすると,これは被告製品の製造販売に直接関連し追加的に発生した 費用というべきである。 コ修繕維持費,減価償却費〈経費5③,④〉原告らは,当該費用の対象となるソフトウェアは,他製品を製造する際にも必要となる一般的なソフトウェアであると指摘する。 しかし,証拠及び弁論の全趣旨によれば,当該ソフトウェアは,新たに被告製品の製造を開始するに導入したソフトウェアであり,しかも,当該 費用は,その修繕維持及び減価償却のための費用のうち,被告製品の製造販売に寄与した割合のみを計上したものであると認められるのであるから(乙48の2・12頁,乙49・7頁,別紙6),被告製品の製造販売に直接関連し追加的に発生した費用とみるのが相当である。 サ試験機製造原価及び改造費〈経費6〉 (ア) 試験機イ号 るから(乙48の2・12頁,乙49・7頁,別紙6),被告製品の製造販売に直接関連し追加的に発生した費用とみるのが相当である。 サ試験機製造原価及び改造費〈経費6〉 (ア) 試験機イ号及び同ロ号の開発経緯に関し,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 a 試験機イ号は,平成24年12月から開発に着手し,平成26年の初め頃に完成したものであるが,技術的な障害が発覚したことから,その販売は断念し,試験機ロ号の開発を開始することとした。 b 試験機イ号は,大型凝縮器を組み込み,溶剤蒸気の廃棄にエジェクタポンプを使用しない機器であり(甲5,答弁書・5頁),「真空脱脂洗浄機,処理重量660㎏」の名称で固定資産計上されている。 c 試験機ロ号は,大型凝縮器の代わりに,エジェクタポンプを組み込んだものであり,平成26年8月に完成後,受注を開始し,●(省略) ●基を販売している。試験機,「TVD-2B」の名称で固定資産計上されている(乙49・別紙7)。 d 被告は,その後,試験機ロ号について改良を重ねた上で,平成27年5月に被告製品を完成した。 (イ) 上記(ア)の認定事実によれば,試作機イ号,同ロ号及び被告製品は, その構成において差異はあるものの,その技術思想が全く異なるもので はなく,一連の開発過程において開発されたものであるということができる。被告製品のような真空洗浄装置を開発するためには,相応の開発費用を要すると考えられ,その費用は被告製品の製造販売に直接関連し追加的に発生した費用と解することができるところ,試作機イ号及び同ロ号は,被告製品とは異なる装置であり,特に試作機ロ号については実 際に受注販売されたという事情も認められるが,他方で,その受注数量は●(省略)●基に 解することができるところ,試作機イ号及び同ロ号は,被告製品とは異なる装置であり,特に試作機ロ号については実 際に受注販売されたという事情も認められるが,他方で,その受注数量は●(省略)●基にとどまることや,両試作機は固定資産として計上されていることなどを考えると,試験機イ号及び同ロ号の製造原価は,実質的には被告製品の開発費用とみなすことができるというべきである。 また,改造費についても,被告製品のような製品は,その販売開始後 であっても,改良を加えることは通常のことであると考えられることから,その支出の時期を問わず,これを控除すべき経費として認めるのが相当である。 (4) 覆滅事由の存否及びその割合特許法102条2項は推定規定であるから,侵害者の側で,侵害者が得た 利益の一部又は全部について,特許権者が受けた損害との相当因果関係が欠けることを主張立証した場合には,その限度で前記の推定は覆滅される。そして,以下に検討するとおり,当該推定は,5割の限度で覆滅されるというべきであるから,被告製品の製造販売自体について,原告らに生じた損害は,3億2111万5130円であると認めることができる。 ア本件特許権2は,真空洗浄装置の乾燥工程に関するものである。真空洗浄装置は,本件明細書等の段落【0023】~【0031】にも記載があるとおり,準備工程,搬入工程,洗浄工程,乾燥工程,搬出工程などを経て一連の作業が行われる。このうち,乾燥工程も重要な役割を担うものの,真空洗浄装置の主たる目的はワークを洗浄することにあるので,被告製品 全体において本件特許の寄与する割合はその一部にとどまるということが できる。 また,顧客が真空洗浄機を購入するに当たっても,所望のワークを洗浄し得るかという点に大きな関心を 製品 全体において本件特許の寄与する割合はその一部にとどまるということが できる。 また,顧客が真空洗浄機を購入するに当たっても,所望のワークを洗浄し得るかという点に大きな関心を有すると考えられ,本件発明2による急速乾燥の効果が顧客誘引力に与える程度は,洗浄能力に比べると小さいというべきである。 イ証拠(甲36・添付資料)によれば,平成27年3月期における真空洗浄装置の市場占有率は,不二越52.5%,原告25.0%,アクア化学株式会社7.5%,株式会社クリンビー4.5%,被告4.5%であったと認められる。 他方で,例えば,市場シェアが首位の不二越は「浸漬あり(洗浄室内の 洗浄湯に製品を浸して洗う)」のタイプの製品に強いのに対し,原告及び被告は,いずれも「浸漬なし(蒸気やシャワーなどを利用して洗う)」のタイプの製品の開発・販売にも注力していたものと認められる(甲50)。 実際のところ,被告製品は「浸漬なし」のタイプに属し,容量の大きいL型真空弁及び水冷バッフルを用いることにより急速な乾燥を可能にする ものであると認められ,被告製品の製品案内(甲37)にも「製品を急速乾燥する。従来の乾燥時間の10分を1~2分へ大幅に短縮」などの記載があり,洗浄性能等を強調する他社の製品案内(甲38~甲43)と比較すると,原告製品(甲44)と同様,急速乾燥をメリットとして顧客にアピールる製品であったと認められる。 そうすると,本件特許権2の侵害行為がなければ,被告製品の顧客の一定の割合が原告ではなく,競合他社から真空洗浄装置を購入したとしても,被告製品が「浸漬なし」のタイプに属し,急速乾燥の実現を特徴としていることに照らすと,原告製品の被告製品に対する代替性は競合他社に比べて高いというべきである。 真空洗浄装置を購入したとしても,被告製品が「浸漬なし」のタイプに属し,急速乾燥の実現を特徴としていることに照らすと,原告製品の被告製品に対する代替性は競合他社に比べて高いというべきである。 ウ被告は,本件発明2の進歩性の程度が低いと主張する(なお,この点に 関する被告の主張が,損害論としてのものであるから,これが時機に遅れた攻撃防御方法であり,却下されるべきであるとする原告らの主張は理由がない。)。 しかし,本件発明2は,洗浄室・乾燥室を真空ポンプで真空引きして減圧するという従来の方法では乾燥工程に長時間を要するとの課題を解決す るため,「前記真空ポンプによって前記洗浄室とは独立して減圧され,当該減圧の状態が保持される凝縮室と,」との構成(構成要件2D)や,「洗浄室を…凝縮室と連通させてワークを乾燥させる」との構成(同2G)等を採用し,凝縮室と洗浄室との連通による凝縮作用により急速な乾燥を実現するものであるが,同発明の技術思想や特徴的な構成が特許2の出願 当時に公知であったと認めるに足りる証拠はない。 そうすると,本件においては,被告製品を販売することができなかった事情として,本件発明2の進歩性の程度を考慮することは相当でない。 エ以上の事情を総合考慮すれば,特許法102条2項による前記の損害の推定は,5割の限度で覆滅されるというべきである。なお,被告は,さら に,原告らには,その損害額に対応する製品を実施する余力を有していなかったとも主張するが,そのような事実を認めるべき証拠はない。 (5) そして,原告らに生じた被告製品の製造販売自体に対する前記3億2111万5130円の損害と相当因果関係にある弁護士費用相当損害は3211万1513円であり,これらに対する消費税は少なくとも税率8%で計算 て,原告らに生じた被告製品の製造販売自体に対する前記3億2111万5130円の損害と相当因果関係にある弁護士費用相当損害は3211万1513円であり,これらに対する消費税は少なくとも税率8%で計算 した2825万8131円になると計算されるから,原告らに生じた損害の合計は,3億8148万4774円(各1億9074万2387円)であると認めることができる。 10 結論よって,原告らの各請求(本件発明2に係るもの)は,被告製品の生産等 の差止め及び被告製品及び半製品の廃棄を求め,各1億9074万2387 円及び不法行為の後(最終の売上日)である令和元年11月19日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,その限度で認容し,その余はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部裁判長裁判官 佐藤達文 裁判官 𠮷野俊太郎 裁判官 齊藤敦 (別紙1)物件目録商品名:真空洗浄機 TVD型
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