平成21(行ウ)194 生活保護申請却下処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成25年10月31日 大阪地方裁判所 その他
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判決文本文77,370 文字)

 主文 1 岸和田市福祉事務所長が平成20年7月28日付けで原告に対してした生活保護開始申請却下決定を取り消す。 2 被告は,原告に対し,68万3709円及びうち8万3709円に対する平成20年7月28日から,うち60万円に対する平成21年1月22日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は,これを10分し,その9を被告の負担とし,その余は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 主文1項と同旨 2 被告は,原告に対し,100万円及びこれに対する平成20年7月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,妻とともに大阪府岸和田市に居住している原告が,生活保護法による保護の実施機関である岸和田市長から保護の決定及び実施に関する事務を委任された岸和田市福祉事務所長に対して,平成20年6月24日から同年12月24日までの間に,計5回の生活保護の開始申請(以下,申請がなされた日付が古いものから順に,「本件第1申請」,「本件第2申請」,「本件第3申請」,「本件第4申請」,「本件第5申請」といい,これらをあわせて「本件各申請」という。)をしたところ,いずれの申請についても却下する旨の決定(以下,決定がなされた日付が古いものから順に,「本件第1却下決定」,「本件第2却下決定」,「本件第3却下決定」,「本件第4却下決定」,「本件第5却下決定」といい,これらをあわせて「本件各決定」という。)を受けたことから,岸和田市福祉事務所長が所属する地方公共団体である被告に対し,①本件第2却下決定の取消しを求めるとともに,② 本件各決定がなされたこと及び平成20年5月20日頃ないし同年6月中旬 ことから,岸和田市福祉事務所長が所属する地方公共団体である被告に対し,①本件第2却下決定の取消しを求めるとともに,② 本件各決定がなされたこと及び平成20年5月20日頃ないし同年6月中旬頃の間に原告が被告の福祉事務所を訪れ,生活保護に関する相談をした(以下「本件相談」という。)のに対し,被告の職員が原告に生活保護の開始申請を行わせなかったことが原告の人格権を侵害する違法な行為であり,これらにより財産的損害及び精神的損害を被ったとして,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料及び生活保護費相当額の損害賠償金100万円及びこれに対する本件第2却下決定がなされた日である平成20年7月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 生活保護法等の定め(1) 生活保護法2条は,すべて国民は,同法の定める要件を満たす限り,同法による保護(以下「保護」という。)を無差別平等に受けることができると定めている。 (2) 生活保護法4条1項は,保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用することを要件(以下「保護の補足性の要件」といい,このうちの,利用し得る能力を活用することを「稼働能力活用の要件」という。)として行われると定め,同条2項は,民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は,すべて生活保護法による保護に優先して行われるものとすると定めている。 (3) 生活保護法10条本文は,保護は,世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとすると定めている。 (4) 生活保護法19条1項1号は,市長は,その管理に属する福祉事務所(社会福祉法(昭和26年法律第45号)に規定する福祉に関する事務所のことをいう 程度を定めるものとすると定めている。 (4) 生活保護法19条1項1号は,市長は,その管理に属する福祉事務所(社会福祉法(昭和26年法律第45号)に規定する福祉に関する事務所のことをいう。以下同じ。)の所管区域内に居住地を有する要保護者に対して,生活保護法の定めるところにより,保護を決定し,かつ,実施しなければならないと定めている。 (5) 生活保護法19条4項は,同条1項ないし3項の規定により保護を行うべき者(以下「保護の実施機関」という。)は,保護の決定及び実施に関する事務の全部又は一部を,その管理に属する行政庁に限り,委任することができると定めている。 (6) 岸和田市福祉事務所長委任規則は,生活保護法の保護に関する事務について,岸和田市長の権限に属するものを岸和田市福祉事務所長に委任すると定めている。 (7) 生活保護法24条1項は,保護の実施機関は,保護の開始の申請があったときは,保護の要否,種類,程度及び方法を決定し,申請者に対して書面をもって,これを通知しなければならないと定めている。 (8) 生活保護法24条2項は,同条1項の書面には決定の理由を附さなければならないと定めている。 (9) 生活保護法24条3項本文は,同条1項の通知は,申請のあった日から14日以内にしなければならないと定め,同条3項但書は,扶養義務者の資産状況の調査に日時を要する等特別な理由がある場合には,これを30日まで延ばすことができ,その場合には同条1項の書面にその理由を明示しなければならないと定めている。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,各項掲記の証拠(枝番号が存するものについては全枝番号を含む。以下同じ。)等により容易に認められる事実等。)(1) 当事者等ア原告は,昭和○年○月○日生まれの男性であり,原 に争いがないか,各項掲記の証拠(枝番号が存するものについては全枝番号を含む。以下同じ。)等により容易に認められる事実等。)(1) 当事者等ア原告は,昭和○年○月○日生まれの男性であり,原告の妻であるAは,昭和○年○月○日生まれの女性である。原告は,平成20年2月25日,Aとともに大阪府大東市から大阪府岸和田市甲町の賃貸住宅(以下「本件住宅」という。)に転入し,同月28日に転入届を提出した。原告とA(以下「原告夫婦」という。)とは同一の世帯(以下「原告世帯」という。)に属している。(乙22,弁論の全趣旨)イ被告は,岸和田市福祉事務所長が所属する地方公共団体である。 ウ岸和田市福祉事務所長は,保護の実施機関である岸和田市長から生活保護法19条4項,岸和田市福祉事務所長委任規則の規定により同法に規定する保護の決定及び実施に関する権限の委任を受けたものである。 (2) 本件各決定に至る経緯ア本件第1却下決定(ア) 原告は,平成20年6月24日,A及びB会のCとともに,被告の福祉事務所を訪問し,岸和田市福祉事務所長に対し,仕事が見つからず生活が苦しいとの理由により,保護の開始申請(本件第1申請)をした。なお,その際,原告は同年3月3日から同年6月23日までの原告夫婦の求職活動の状況を記載した書面(以下「本件求職活動状況報告書1」という。),資産申告書及び収入申告書を提出した。資産申告書には,原告の所持金が300円であること,預貯金がAと合わせて合計477円であることが記載され,収入申告書にはAが5月に3日間稼働して得た給料1万4255円が収入として記載されていた。 (イ) 被告の職員であったDは,本件第1申請の担当者として,平成20年6月26日に,原告方を訪問し,原告夫婦と面談した。Dは,原告に対して して得た給料1万4255円が収入として記載されていた。 (イ) 被告の職員であったDは,本件第1申請の担当者として,平成20年6月26日に,原告方を訪問し,原告夫婦と面談した。Dは,原告に対して,社会福祉協議会の離職者支援資金貸付制度を案内し,離職票を持って社会福祉協議会へ行くよう助言した。Aは,同面談後,Dに対して,大阪府泉北郡乙町で清掃の仕事が見つかった旨を電話で報告した。(乙6)(ウ) 岸和田市福祉事務所長は,平成20年7月1日付けで,原告に対し,本件第1申請を却下する旨の決定(本件第1却下決定)をした。本件第1却下決定の通知書には,決定理由として,「稼働能力の活用が図られるため最低生活維持可能」と記載されている(甲42。なお,甲42の決定通知書の作成日付は「平成20年6月30日」となっているが,同年7月1日付けで本件第1却下決定がされたことは当事者間に争いがなく,同決定通知書の作成日付については,Dは,事務処理システム上の処理のため,仮に却下起案入力を行ったときの日付である旨供述している(乙62,証人D)。)。 イ本件第2却下決定(ア) 原告は,平成20年7月7日,A及びCとともに,被告の福祉事務所を訪問し,岸和田市福祉事務所長に対し,仕事が見つからないことを理由として,保護の開始申請をした(本件第2申請)。その際,原告から提出された資産申告書には,所持金が400円であること,預貯金がないことが記載され,収入申告書にはAの同月分の収入見込額が2万円であることが記載されていた(乙9,10)。 (イ) 原告は,岸和田市に所在する株式会社E製作所という釣り具のリール製造会社で平成20年7月19日から就労することが決まり,AもF加工会社というカニ加工会社で同月22日から就労することが決まったため,同月18日 和田市に所在する株式会社E製作所という釣り具のリール製造会社で平成20年7月19日から就労することが決まり,AもF加工会社というカニ加工会社で同月22日から就労することが決まったため,同月18日に,Cが本件第2申請の担当者であったDに対して,その旨を電話で報告した。 (ウ) 原告は,平成20年7月19日にE製作所において就労をしたものの,同日で退職した。また,Aは,就労開始日であった同月22日にF加工会社には出勤せず,同年8月7日及び同月8日の2日間同社で就労した後,退職した。 (乙60,61)(エ) 岸和田市福祉事務所長は,原告に対して,平成20年7月28日付けで,原告の本件第2申請を却下する旨の決定(本件第2却下決定)をした。 本件第2却下決定の通知書には,決定理由として,「稼働能力の活用が図られるため最低生活維持可能」と記載されており,「申請後14日経過した理由(開始却下の時)」の欄には,何も記載されていない(甲1)。 (オ) 原告は,平成20年9月18日付けで,大阪府知事に対し,本件第2却下決定に係る審査請求をしたが,大阪府知事は,平成21年6月3日付けで,同審査請求を棄却する旨の裁決をした(甲2,乙14)。 ウ本件第3却下決定(ア) 原告は,平成20年9月5日,A及びCとともに,被告の福祉事務所を訪問し,保護の開始申請(本件第3申請)をした。原告は,本件第3申請に先立ち,Gゴム及び岸和田市丙町の工場の面接を受け,同月3日にはGゴムから内定を得ていた。 Gゴムに対しては,原告から就労開始日の確認の連絡をすることになっており,また,丙町の工場からも同月8日までには採用の結果が通知される予定であった(乙27)。 同月5日に行われた被告職員との面接において,原告は上記求職活動及び採用状況につき報告をしたと とになっており,また,丙町の工場からも同月8日までには採用の結果が通知される予定であった(乙27)。 同月5日に行われた被告職員との面接において,原告は上記求職活動及び採用状況につき報告をしたところ,同職員から,就労先が決まれば社会福祉協議会の貸付制度の利用が可能であるため,同制度による貸付けを受けられた場合には本件第3申請を取り下げるよう促されたため,原告はこれを了承し,社会福祉協議会へ向かった。 なお,本件第3申請の際には,資産申告書及び収入申告書の提出はなされていない(弁論の全趣旨)。 (イ) 本件第3申請の担当者であったDは,平成20年9月10日,原告方を訪問し,原告夫婦と面談した。その際,Dが,原告に対し,社会福祉協議会による貸付制度の利用状況について尋ねたところ,原告は,同制度の利用手続をとっていない旨答えた。また,原告は,Dに対し,同月8日に丙町の工場から不採用の連絡を受けたこと,Gゴムについては,内定に対する返事が遅れたため,不採用になったことを告げた。 (ウ) 岸和田市福祉事務所長は,平成20年9月22日付けで,原告に対して,原告の本件第3申請を却下する旨の決定(本件第3却下決定)をした。 本件第3却下決定の通知書には,決定理由として,「稼働能力の活用が図られるため最低生活維持可能」と記載されており,「申請後14日経過した理由(開始却下の時)」の欄には,何も記載されていない(甲7)。 エ本件第4却下決定(ア) 原告は,平成20年10月23日,A及びCとともに,被告の福祉事務所を訪問し,生活が苦しいためという理由で,保護の開始申請(本件第4申請)をした。 原告は,本件第4申請をする際,原告夫婦の同年9月3日から同年10月22日までの求職活動の状況を記載した書面(以下「本件求職活動状況報告書 めという理由で,保護の開始申請(本件第4申請)をした。 原告は,本件第4申請をする際,原告夫婦の同年9月3日から同年10月22日までの求職活動の状況を記載した書面(以下「本件求職活動状況報告書2」という。),資産申告書及び収入申告書を岸和田市福祉事務所長に対して提出しており,資産申告書には,所持金,預貯金等の資産がないことが記載され,収入申告書には,AがHという会社に勤めている旨の記載がなされていた(ただし,収入額については記載がない。)(乙32ないし35)。 (イ) 岸和田市福祉事務所長は,平成20年11月19日付けで,原告に対し,原告の本件第4申請を却下する旨の決定(本件第4却下決定)をした。 本件第4却下決定の通知書には,決定理由として,「稼働能力の活用が図られるため最低生活維持可能」と記載されており,「申請後14日経過した理由(開始却下の時)」の欄には,「その他」と記載されている(甲8)。 オ本件第5却下決定(ア) 原告は,平成20年12月24日,Cとともに,被告の福祉事務所を訪問し,岸和田市福祉事務所長に対し,生活が苦しいためという理由で,保護の開始申請(本件第5申請)をした。 原告は,本件第5申請の際に,資産申告書及び収入申告書を提出した。資産申告書には,所持金が2000円であること,預貯金等他の資産がないことが記載され,収入申告書には,原告が同年10月及び11月にIという会社で雑貨商品の袋詰め作業に従事して各5000円の収入を得たこと,Aが同年10月及び11月にHという会社でピッキング作業に従事して各5万円の収入を得たことが記載されていた(乙46,47)。 なお,原告は,同年12月24日に行われた面接において,面接員であったDから,本件第4申請以降に行った求職活動の 状況について報告書 万円の収入を得たことが記載されていた(乙46,47)。 なお,原告は,同年12月24日に行われた面接において,面接員であったDから,本件第4申請以降に行った求職活動の 状況について報告書を提出するよう求められた(乙45)。 (イ) 本件第5申請の担当者であったJは,平成21年1月19日,原告方を訪れ,原告夫婦と面談した。その際,原告は,平成20年9月3日から平成21年1月16日までの原告夫婦の求職活動の状況を記載した書面(以下「本件求職活動状況報告書3」という。)を提出した(乙48,54,55)。 (ウ) 岸和田市福祉事務所長は,平成21年1月22日付けで,原告に対し,原告の本件第5申請を却下する旨の決定(本件第5却下決定)をした。 本件第5却下決定の通知書には,決定理由として,「稼働能力の活用が図られるため最低生活維持可能」と記載されており,「申請後14日経過した理由(開始却下の時)」の欄には,「関係資料の提出が遅延したため」と記載されている(甲9)。 (3) 生活保護開始決定ア原告は,本件第5却下決定の後,平成21年3月上旬に,K新聞の夕刊の配達員として就労することが決定した。勤務時間は,月曜日から土曜日まで1日2時間であり,給料は月に2万円から3万円であった。また,Aも,同年4月に,クリーニング店での就労が決まり,給料は月に8万円から9万円ほどであった。(甲52,53,58,59)イ原告は,平成21年7月10日,Cとともに被告の福祉事務所を訪問し,原告夫婦ともに収入を得ているが,生活費に不足するとして,岸和田市福祉事務所長に対し,保護の開始申請を行った(甲58)。 ウ岸和田市福祉事務所長は,平成21年7月31日付けで,「低収入・無収入のため」という理由で,原告に対し,生活扶助とし て月1 田市福祉事務所長に対し,保護の開始申請を行った(甲58)。 ウ岸和田市福祉事務所長は,平成21年7月31日付けで,「低収入・無収入のため」という理由で,原告に対し,生活扶助とし て月12万0830円及び住宅扶助として月2万3000円の合計月14万3830円の保護を支給する旨の保護の開始決定(以下「本件保護開始決定」という。)をした(甲57)。 エ原告は,現在ではK新聞の夕刊の配達員に加え,他の新聞の朝刊配達員としても就労している。また,Aは,平成23年10月末に前記ア記載のクリーニング店を解雇されるまで,同クリーニング店で就労していた。(甲59)(4) 原告は,平成21年11月10日,本件訴訟を提起した。なお,原告は,当初は,大阪府も共同被告として,大阪府に対し,本件第2却下決定に対してした審査請求に係る棄却裁決の取消し及び慰謝料50万円の支払を求めていたが,大阪府の関係では,平成22年7月15日取下げにより終了した。(顕著な事実)(5) 社会福祉協議会による離職者支援資金貸付制度社会福祉協議会による離職者支援資金貸付制度とは,都道府県の社会福祉協議会が実施主体となり,低所得世帯や障害者世帯,高齢者世帯,失業者世帯等に対し,世帯の生活の安定や自立を図ることを目的に,必要な生活資金を低利で貸し付ける制度である生活福祉資金貸付制度の一つである。離職者支援資金貸付制度は,求職活動を行っている失業者世帯(離職の日から2年を超えていない者)に対し,生計中心者が再就職するまでの間の生活資金を貸し付ける制度であり,平成21年10月当時,大阪府社会福祉協議会において,離職者支援資金貸付を受けるためには,原則として連帯保証人1名が必要であり,連帯保証人がいない場合には,通常無利子の貸付利子が年1.5%と定められ 成21年10月当時,大阪府社会福祉協議会において,離職者支援資金貸付を受けるためには,原則として連帯保証人1名が必要であり,連帯保証人がいない場合には,通常無利子の貸付利子が年1.5%と定められていた。また,貸付けを受けた場合には,据置期間(最終貸付日から6か月以内)経過後10年以内に償還する必要があった。(甲38,39) 3 争点(1) 本件第2却下決定の取消請求についてア本件第2却下決定当時,原告世帯は生活保護法4条1項が定める稼働能力活用の要件を充足していたか(争点1)イ本件第2却下決定は,他の生活保護受給者と原告とを差別的に取り扱ったものであり,無差別平等の原則を定める生活保護法2条に違反するか(争点2)ウ適正手続違反があったか(ア) 本件第2却下決定は,理由附記につき定める行政手続法8条1項,生活保護法24条2項に違反するか(争点3)(イ) 本件第2却下決定は,決定通知延期の理由附記について定める生活保護法24条3項但書に違反するか(争点4)(ウ) 本件第2却下決定につき,決裁後直ちに却下決定通知を行っていないことが生活保護法24条3項本文の趣旨に反するか(争点5)(2) 国家賠償請求についてア本件相談の際の被告職員の対応に教示義務違反,申請意思確認義務違反が認められるか(争点6)イ本件各決定が保護の補足性の要件につき定める生活保護法4条1項に違反し,本件各決定に関与した被告職員らの職務行為に国家賠償法1条1項の違法性が認められるか(争点7)ウ本件各決定が無差別平等の原則を定める生活保護法2条に違反するものとして,国家賠償法1条1項の違法性が認められるか(争点8)エ本件各決定に適正手続違反があ られるか(争点7)ウ本件各決定が無差別平等の原則を定める生活保護法2条に違反するものとして,国家賠償法1条1項の違法性が認められるか(争点8)エ本件各決定に適正手続違反があることを理由とする国家賠償請求について(ア) 本件各決定は,理由附記につき定める行政手続法8条1項,生活保護法24条2項に違反するか(争点9)(イ) 本件第2ないし第4却下決定は,決定通知延期の理由附記につき定める生活保護法24条3項但書に違反するか(争点10)(ウ) 本件第2ないし第4却下決定につき,各決裁後直ちに決定の通知を行っていないことが生活保護法24条3項の趣旨に反するか(争点11)オ損害額(争点12) 4 争点に関する当事者の主張(1) 本件第2却下決定の取消請求についてア争点1(本件第2却下決定当時,原告世帯は生活保護法4条1項が定める稼働能力活用の要件を充足していたか)について(原告の主張)本件第2却下決定は,「稼働能力の活用が図られるため最低生活維持可能」であることを理由とするものであるが,その判断は生活保護法4条1項が定める稼働能力活用の要件の解釈適用を誤ったものであり,違法である。理由は以下のとおりである。 (ア) 稼働能力活用の要件の意義稼働能力活用の要件は,① 稼働能力,② 稼働能力活用の意思,③ 稼働能力を活用する就労の場の3要素によって,生活困窮者がその利用し得る能力を活用しているか判断するのが相当である。 もっとも,①稼働能力については,その有無だけでなく,当該申請者の学歴や資格,職歴,現在の心身の状態,成育歴等も考慮しながら,どの程度の稼働能力を有しているかという点も検討する必要がある もっとも,①稼働能力については,その有無だけでなく,当該申請者の学歴や資格,職歴,現在の心身の状態,成育歴等も考慮しながら,どの程度の稼働能力を有しているかという点も検討する必要がある。 また,②稼働能力活用の意思については,主観的な要素であり恣意的な判断に流されやすいものであるから,「真摯さ」などという,さらに恣意的で主観的な要素を盛り込んではならない。 これは,生活保護法2条が無差別平等の原理を定めていること,旧法(昭和21年法律第17号。昭和25年法律第144号により廃止)が「能力があるにもかかわらず,勤労の意思のない者,勤労を怠る者,その他生計の維持に努めない者」を「素行不良な者」と併せて保護の対象から除外する欠格条項を置いていたのに対して,現行法では,あえてそのような欠格条項を設けなかったことからも明らかである。 ③稼働能力を活用する就労の場については,一般的,平均的な統計に過ぎない求人数や求人倍率を根拠として判断することは許されない。また,法は不可能を強いることはできないことから,保護の補足性の要件を定める生活保護法4条1項の「その利用し得る」という文言は,本人の意思のみに基づいて直ちに利用することができるという意味に解すべきである。したがって,稼働能力活用の要件の判断においても,申請者が稼働能力及びそれを活用する意思を有している以上,当該申請者の意思のみに基づいて直ちにその稼働能力を活用できる就労の場がない限り,なお当該申請者はその利用し得る能力を,その最低限度の生活の維持のために活用しているものであって,稼働能力活用の要件を充足すると解すべきである。したがって,③稼働能力を活用する就労の場については,当該申請者の意思のみに基づいて直ちにその稼働能力を活用する就労の場を得られるかどうかで判断すべき 働能力活用の要件を充足すると解すべきである。したがって,③稼働能力を活用する就労の場については,当該申請者の意思のみに基づいて直ちにその稼働能力を活用する就労の場を得られるかどうかで判断すべきである。 他方,申請者が現に就労の場を得ていた場合には,稼働能力の有無やその意思について判断するまでもなく,当然に稼働能力活用の要件を充足すると解するべきである。 (イ) 稼働能力活用の要件の充足性そこで,上記(ア)の判断枠組みをもとに,本件について検討するに,以下のとおり,原告世帯は本件第2却下決定時,稼働能力活用の要件を充足していた。 a ①稼働能力について原告は,本件第2却下決定時,満35歳であり,就労を阻害するような疾病等もなかったものの,原告の最終学歴は中学校卒業であり,その後,主に派遣会社などを通じて,製造工場の作業員として就労してきたため,原告には,特殊な技能も経験もなかった。さらに,原告にはフォークリフトの免許以外に資格はなかった。したがって,健康面では就労を阻害する要因はないものの,その学歴,経験,資格を考慮すると,原告の稼働能力は高いものではなく,軽度な単純作業に従事することができるにとどまるものであった。 また,Aは,5年ほど前から膝に水が溜まり,座ることも辛く,限られた仕事しかできない状態であった。 b ②稼働能力活用の意思原告は,中学校を卒業した後,長年にわたり,製造工場の作業員等として稼働してきたのであり,岸和田市に転居してきた平成20年3月以降も,ハローワークや求人広告等を利用して頻繁に求職活動を行っていた。その結果,原告は同年7月にはE製作所での就労が決定し,Aも同年6月からL製作所で清掃のパート従業員として稼 きた平成20年3月以降も,ハローワークや求人広告等を利用して頻繁に求職活動を行っていた。その結果,原告は同年7月にはE製作所での就労が決定し,Aも同年6月からL製作所で清掃のパート従業員として稼働し,さらにはより良い雇用条件の就労先を探していたところ,同年7月にカニの加工会社であるF加工会社で就労することが決まったのである。 その後も,平成21年3月頃には,原告は新聞配達員としての就労が決定し,現在も新聞配達員として就労を継続していること等に照らせば,原告夫婦には本件第2却下決定当時,稼働能力を活用する意思があったといえる。 被告は,原告が本件第1申請時に提出した本件求職活動状況報告書1の内容と,DがハローワークM及びハローワークNからの回答で得た原告夫婦の求職活動の状況とが齟齬するとして,本件求職活動状況報告書1は真実を記載したものではなく,原告夫婦は真摯に求職活動を行っていなかったと主張し,さらには,原告がE製作所を就労開始日に辞めていることをもって,原告の稼働能力活用の意思を否定する。しかし,ハローワークから求人の紹介を受けられた場合にのみ,ハローワークにおいてその履歴が残されるのであるから,原告夫婦がハローワークに赴いて備付けの求人検索用のパソコン端末を使用した場合や,そこで得られた求人票を打ち出して自宅に持ち帰った場合についてはハローワークにおいて求職活動状況の履歴としては残らない。また,原告夫婦はその他にも新聞の折り込みチラシや求人情報誌に掲載されている求人情報を利用した求職活動も行っていた。したがって,ハローワークから得られた原告夫婦の求職活動状況が芳しくなく,かつ,原告が提出した本件求職活動状況報告書1と整合しないことを理由に,原告夫婦には稼働能力活用の意思がないとする被告の主張には って,ハローワークから得られた原告夫婦の求職活動状況が芳しくなく,かつ,原告が提出した本件求職活動状況報告書1と整合しないことを理由に,原告夫婦には稼働能力活用の意思がないとする被告の主張には理由がない。さらに,原告がE製作所を退職したのは,勤務初日に仕事も教えてもらえず怒鳴り続けられたことから,精神的に辛く,継続して勤務することができなかったためであり,原告が怠業していたわけではない。長期間仕事を継続できないということは低賃金の不安定な仕事ではあり得ることであり,1日や短期で辞めたことをもって,稼働能力活用の意思がないとするのは誤りである。 c ③稼働能力を活用する就労の場被告は,原告が平成20年7月19日よりE製作所で就労することが決定したこと,AについてもF加工会社で就労することが決定していたことや,その当時の求人倍率を踏まえると,原告夫婦には稼働能力を活用する就労の場があったと主張する。 しかし,一時的に就労することが決まっていたとしても,就労が開始して,それに対する給料が支払われるまでは時間差がある。また,原告がE製作所を1日で退職していることから明らかなように,就労が決定していてもその就労が継続するとは限らない。したがって,一時的に就労が決まったというだけでは,就労の場があったとはいえない。 また,被告は,平成20年5月当時の泉州地域の求人倍率及び大阪市の求人倍率を根拠として,原告夫婦が就労の場を得ることについて期待できる状況であったと主張するが,被告がその主張の根拠とする求人倍率によっても,原告にとって求人倍率が1倍を超えるのは,大阪市内における常用的パートのみであった。これに原告の最終学歴や資格取得状況等の個別事情を加えて考慮すると,現実に その主張の根拠とする求人倍率によっても,原告にとって求人倍率が1倍を超えるのは,大阪市内における常用的パートのみであった。これに原告の最終学歴や資格取得状況等の個別事情を加えて考慮すると,現実に原告が就労の場を得ることが期待できる状況であったとはいえなかった。したがって,本件第2却下決定当時,原告夫婦の意思のみに基づいて直ちにその稼働能力を活用する就労の場を得られる状況であったとは認めることができない。 以上より,原告夫婦には,稼働能力及びそれを活用する意思はあったものの,稼働能力を活用する就労の場がなかったのであるから,原告夫婦はなおその利用し得る能力を活用していたものであって,稼働能力活用の要件を充足していたというべきである。 したがって,本件第2却下決定は生活保護法4条1項の解釈適用を誤ったものであり,違法である。 (被告の主張)(ア) 稼働能力活用の要件の意義稼働能力活用の要件については,① 稼働能力の有無,② その具体的な稼働能力を前提としてその能力を活用する意思の有無,③ 実際に稼働能力を活用する就労の場の有無により判断すべきである。 そして,稼働能力を活用する意思の有無を判断するにあたり,申請者が真摯な求職活動をしているかどうかが考慮要素となる。 さらに,就労の場があるか否かについては,求人状況等の公的データを踏まえながら,申請者が一般人に期待される程度の具体的な就労努力をしてもなお就労の場を得ることができなかったか否かにより判断すべきである。 (イ) 稼働能力活用の要件の不充足a ①稼働能力本件第2却下決定当時,原告は満35歳,Aは満43歳であったところ,Dが本件第2却下決定に先立ち,原告夫婦に対して,就労を阻害する疾病等がないか確認したのに対し a ①稼働能力本件第2却下決定当時,原告は満35歳,Aは満43歳であったところ,Dが本件第2却下決定に先立ち,原告夫婦に対して,就労を阻害する疾病等がないか確認したのに対し, Aが若干の腰痛を訴える程度で,他に就労を阻害する要因の申出はなかったのであるから,原告夫婦はいずれも稼働能力を有していた。原告は,Aについては,約5年前から膝に水がたまり,座るのも痛い状態で,限られた仕事しかできない状態であった旨主張するが,本件第2却下決定がなされるまでの間,そのような申出は一切なかった。 また,原告は軽度な単純作業に従事することができるにとどまる旨主張するが,原告は本件第2却下決定までの間に,多種多様な職業経験を積んでいたのであるから,原告が従事できる作業が軽度で単純なものに限られるとはいえない。 b ②稼働能力を活用する意思原告は,平成20年7月19日からE製作所において就労をすることが決定していたにもかかわらず,原告が作業している間,社長が背後から口を出してきて,煩わしくて嫌だったという理由で,同日以降就労を途絶している。 また,Aについても,F加工会社で同月22日からの就労が決定したにもかかわらず,同日には出社せず,同社において就労したのは,同年8月7日及び8日の2日間だけであった。 また,原告は,同年7月1日,本件第1申請の関係でDとともに,ハローワークMに求職方法を相談しに行く約束をしていたにもかかわらず,当日になって,Dに対し,ハローワークMへは行かない旨の連絡をした。さらに,本件求職活動状況報告書1には,原告夫婦の同年3月3日から同年6月23日までの求職活動の内容が記載されており,ハローワークへ多数回にわたって求職活動に赴いたとされ は行かない旨の連絡をした。さらに,本件求職活動状況報告書1には,原告夫婦の同年3月3日から同年6月23日までの求職活動の内容が記載されており,ハローワークへ多数回にわたって求職活動に赴いたとされているにもかかわらず,Dが原告夫婦の求職活動状況についてハローワークMへ電話で問い合わせたところ,原告については2件,Aについては0件の求人紹介の記録しかなく,本件求職活動状況報告書1の内容とは大きな齟齬があった。 以上の事実から,原告夫婦には,稼働能力を活用する意思がなかったものといえる。 c ③稼働能力を活用する就労の場原告は平成20年7月19日からE製作所で就労することが決定していたこと,Aも同月22日からF加工会社で就労することが決定していたことから,原告夫婦は現に就労の場を得ることができる状況にあった。 さらに,同年5月当時の泉州地域の求人倍率が,常用的パートの場合には,35歳からは0.90,45歳からは1. 30であり,大阪市の求人倍率は,常用的パートの場合には,35歳からは1.18,45歳からは1.54であったことから,原告夫婦が何らかの事情で上記各就労先での就労を継続することができなくなったとしても,一般人に期待される程度の具体的な就労努力をすれば,就労の場を得ることができたといえる。したがって,原告夫婦は,実際にその稼働能力を活用する就労の場を得ることができる状況にあるにもかかわらず,いまだ稼働していなかったのであるから,稼働能力活用の要件を充足していなかった。 イ争点2(本件第2却下決定は,他の生活保護受給者と原告とを差別的に取り扱ったものであり,無差別平等の原則を定める生活保護法2条に違反するか)について(原告の主張) 岸和田市在住の50代の一人暮 は,他の生活保護受給者と原告とを差別的に取り扱ったものであり,無差別平等の原則を定める生活保護法2条に違反するか)について(原告の主張) 岸和田市在住の50代の一人暮らしの男性が,平成17年10月以降仕事がなく無収入であったため,平成18年2月に保護の開始申請を行ったところ,岸和田市福祉事務所長は同月中に保護の開始決定をしている。それにもかかわらず,原告に対してだけ保護の開始決定をしないというのは無差別平等を定める生活保護法2条に違反するものであり,違法である。 (被告の主張)生活保護は,個々の事案に応じてその要否が決せられるべきものである。 したがって,あたかも資産ないし所持金の有無のみによって保護の受給が認められているかのようにいう原告の主張が失当であることは明らかであるし,原告主張の事案に関する対応によって,本件第2却下決定の違法性が基礎づけられるかのようにいう原告の主張が失当であることも,また明らかである。 ウ適正手続違反があったか否か(ア) 争点3(本件第2却下決定は,理由附記につき定める行政手続法8条1項,生活保護法24条2項に違反するか)について(原告の主張)行政手続法8条の趣旨は,行政機関の判断の慎重と公正妥当を担保して,その恣意を抑制するとともに,行政処分の理由を申請者に明らかにすることによって,申請者の不服申立てに便宜を与えるためである。したがって,同条の趣旨を受けて定められた生活保護法24条2項との関係でも,岸和田市福祉事務所長は,いかなる根拠に基づいていかなる法規ないし審査基準を適用して拒否処分がなされたかを,申請者においてその記載自体から了知し得る程度に理由附記をしなければならない。 事務所長は,いかなる根拠に基づいていかなる法規ないし審査基準を適用して拒否処分がなされたかを,申請者においてその記載自体から了知し得る程度に理由附記をしなければならない。 それにもかかわらず,本件第2却下決定の通知書には,決定理由として「稼働能力の活用が図られるため最低生活維持可能」と記載されているのみであり,かかる記載では保護の開始要件ないし被告が設定する判断基準のいずれにあたらないと判断されたのかが明らかではなく,また,原告の稼働能力やその活用の事実に関していかなる事実認定がされたのかについても明らかでない。したがって,本件第2却下決定は行政手続法8条及び生活保護法24条2項に違反するものであり,違法である。 被告は,稼働能力活用の要件の判断基準については公刊物で公表されているため,いかなる判断がなされたのかを原告は容易に判断できると主張するが,公刊物で判断基準が公表されていたとしても,原告がその判断基準のどの要件で却下されたのかにつき了知できないものである以上,理由附記の違法性に影響を与えるものではない。 (被告の主張)本件第2却下決定の通知書の却下理由の記載から,原告は稼働能力が図られていないことを理由として開始申請が却下されたことを了知し得る。 このことは,原告が本件第2却下決定に対して審査請求を行い,生活保護法4条1項の解釈を述べた上で,具体的事情に基づき,自身が稼働能力を活用している旨を明確に主張していることからも明らかである。 これに対して,原告は本件第2却下決定の通知書では,いかなる事実関係についていかなる審査基準を適用したのかが,記載自体からは了知し得ない旨主張するが,「生活保護法による保護の実施要領について」 して,原告は本件第2却下決定の通知書では,いかなる事実関係についていかなる審査基準を適用したのかが,記載自体からは了知し得ない旨主張するが,「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発第246号各都道府県知事・各指定都市市長宛厚生省社会局長通知(平成20年3月31日社援発第0331027号による改正後のもの。乙25,59)。以下「本件246号通知」という。)において,「稼働能力を活用しているか否かについては,①稼働能力があるか否か,②その具体的な稼働能力を前提として,その能力を活用する意思があるか否か,③実際に稼働能力を活用する就労の場を得ることができるか否か,により判断すること。」と記載されており,そのことは公刊物によって公表されているのであるから,原告はいかなる考慮要素をもって判断がされたのかということを容易に了知できる状況にあった。したがって,原告の理由附記不備の違法の主張は失当である。 (イ) 争点4(本件第2却下決定は,決定通知延期の理由附記について定める生活保護法24条3項但書に違反するか)について(原告の主張)本件第2却下決定は,本件第2申請がなされた平成20年7月7日から21日後の同月28日に通知されているところ,同通知には法定の14日間を経過した理由につき何ら記載がないため,生活保護法24条3項但書に明らかに違反している。 同項は,迅速な保護の開始がなされることを要求し,安易にこれが延長されないよう,延長につき理由の明示を定めたものであり,同項但書の違背は,本件第2却下決定の取消事由を構成するものである。 (被告の主張)本件第2却下決定につき,生活保護法24条3項但書が定める手続が履践されていないこ 同項但書の違背は,本件第2却下決定の取消事由を構成するものである。 (被告の主張)本件第2却下決定につき,生活保護法24条3項但書が定める手続が履践されていないことは争わない。しかし,同項但書が定める遅延理由の記載は,処分に対する不服申立ての便宜を与えるものではない。また,同条4項がいわゆるみなし却下決定の規定を置いていることに鑑みれば,同条3項の決定通知期間の定めは訓示規定であると解される。このような同項の趣旨及び性質からすると,同項但書が遅延理由の記載を要求した趣旨も一般的な処分の理由附記(同条2項参照)とは異にするものであるから,同条3項但書に違反したとしてもそれが申請却下処分の取消事由となるとは解されない。 (ウ) 争点5(本件第2却下決定につき,決裁後直ちに却下決定通知を行っていないことが生活保護法24条3項本文の趣旨に反するか)について(原告の主張)生活保護法24条3項本文は,申請から決定通知までの期間について定めを置くことによって,要保護者が申請をしてから保護を受けるまでの迅速性を担保している。かかる趣旨から,保護の実施機関は,保護の開始申請を受けた場合には,審査,決定及び通知を早急に行う義務が課されている。 それにもかかわらず,本件第2却下決定は,本件第2申請から15日が経過してから却下の決裁がなされ,同決裁から6日後に却下決定の通知がなされているため,同項本文の趣旨に反しており,違法な処分として取り消されるべきである。 (被告の主張)生活保護法24条3項及び4項は,保護の実施機関が保護の開始申請に対する内部的な判断をした時点を起点として,どの程度の期間内に通知を行うべきであるかについて,何ら定めて の主張)生活保護法24条3項及び4項は,保護の実施機関が保護の開始申請に対する内部的な判断をした時点を起点として,どの程度の期間内に通知を行うべきであるかについて,何ら定めていない。 よって,本件第2却下決定について,申請を却下する旨の決裁がされてから通知までに6日が経過していることによって,同決定が違法となる余地はなく,原告の主張は失当である。 (2) 国家賠償請求についてア争点6(本件相談の際の被告職員の対応に教示義務違反,申請意思確認義務違反が認められるか)について(原告の主張)原告は所持金が200円となり,生活に困窮していたため,被告の福祉事務所に電話にて住所と氏名を伝えた上で,仕事が見つからないため相談したい旨伝えたところ,被告職員から「とりあえず相談に乗るので窓口に来てください。」との返答があった。原告夫婦は,その翌日である平成20年5月20日ないし同年6月中旬頃の間に,被告の福祉事務所を訪問し,「昨日電話したOです。 生活保護の相談をしたいんですけど。」と申し入れた(本件相談)ところ,応対したPなる被告職員は,原告に対して病気を患っているか尋ね,原告が患っていない旨答えると,「そうですか。病気でもないんですから,健康だから無理です。若いし,まだ仕事を探せば見つかるので,探して仕事してください。」と述べ,原告夫婦から生活状況や求職状況等の事情を聴き取り,要保護性を確認することすらせず,原告夫婦に保護申請を諦めさせた。 生活保護法7条は申請保護の原則を定めているものの,その前提として,申請をなし得るだけの制度や申請の方法等に関する知識を有していなければならないところ,多くの生活困窮者にはそのような知識がない以上,自ら明確に生活保護 保護の原則を定めているものの,その前提として,申請をなし得るだけの制度や申請の方法等に関する知識を有していなければならないところ,多くの生活困窮者にはそのような知識がない以上,自ら明確に生活保護開始の申請の意思表示をすることは期待できない。したがって,保護の実施機関は,同条及び憲法25条に基づいて,保護の開始申請ないし相談のために来所した者に対し,申請の意思を有しているか確認する義務及び申請に必要な所要の事項について積極的に聴取すべき義務があり,その他にも生活保護制度について正確な説明及び教示を行う義務,相談者の要保護性を認識した場合には申請を促す等申請を援助する義務があるにもかかわらず,Pは上記のように原告の年齢及び健康状態のみから保護の受給は不可能だとして,原告に対して申請の意思があるか確認せず,誤った教示をしたのであるから,職務上の法的義務に違背していることは明らかである。 保護の実施機関の職員に上記のような申請意思確認義務があることは,平成20年3月3日に行われた厚生労働省の社会・援護局関係主管課長会議において,重点事項として申請意思の確認が挙げられていたこと,同会議の内容が同年4月21日に開催された平成20年度第2回生活保護査察指導員会議において被告の福祉事務所職員にも周知されていたこと,被告の福祉事務所において同年7月7日に使用されていた面接記録票の欄外右下に申請意思確認欄が新設されていることから明らかである。 (被告の主張)本件相談の記録自体一切存在しない上に,原告は,被告の福祉事務所において相談した日時及び内容について曖昧不明確な主張に終始し,さらに,本件訴訟を提起し,被告が職員の氏名を明らかにするよう指摘するまでその氏名を把握していないのであるから,本件相談の事実が存 務所において相談した日時及び内容について曖昧不明確な主張に終始し,さらに,本件訴訟を提起し,被告が職員の氏名を明らかにするよう指摘するまでその氏名を把握していないのであるから,本件相談の事実が存在したとはいえない。 仮に本件相談の事実があったとしても,原告の対応をした職員には何らの法的義務違反はなかった。原告の主張によれば,原告が職員に伝えた情報は,① 仕事を探していて見つからないこと,② 保護について相談したいこと,③ 病気はないことの3点に留まる上,原告夫婦は,職員による説明を聞いて直ちに帰宅したというのであるから,このような場合にまで申請意思を確認し,申請を行わせる作為義務があったとは到底解されない。 また,法律による行政という考え方によれば,公務員の職務上の法的義務は,原則として法令によって生じることとなるため,厚生労働省主宰の会議である主管課長会議において,生活保護の相談の在り方についてある見解が示されたとしても,そのことをもって,保護の実施機関である市長等が,直ちに何らかの職務上の法的義務を負うものとは解されない。 被告の福祉事務所の面接記録票における申請意思の確認欄は,「『生活保護法施行細則準則について』の一部改正について(通知)」(平成21年3月31日付け社援発第0331006号)において,申請意思の有無を記載する欄を設けるよう通知されたことを踏まえ,同年4月頃に設けられたものである。平成20年7月7日付けの面接記録票に申請意思の確認欄が設けられているのは,平成22年7月に原告による個人情報の開示請求に対応した際,上記の改正がなされた後の書式で面接記録票を出力したことによるものである。 イ争点7(本件各決定が保護の補足性の要件につき定める生活保護法4条1項に違 よる個人情報の開示請求に対応した際,上記の改正がなされた後の書式で面接記録票を出力したことによるものである。 イ争点7(本件各決定が保護の補足性の要件につき定める生活保護法4条1項に違反し,本件各決定に関与した被告職員らの職務行為に国家賠償法1条1項の違法性が認められるか)について(ア) 総論(原告の主張)本件第2却下決定のほか,本件第1却下決定,本件第3ないし第5却下決定も以下(イ)ないし(カ)で述べるとおり,生活保護法4条1項の解釈を誤った違法なものである。 そして,保護の開始申請に係る判断を行うに際し,保護の実施機関の職員には適切な調査及び正しい法知識に基づき上記判断をする義務が職務上あるにもかかわらず,本件各決定に係る調査を行ったD及びJ並びに本件各決定を行った岸和田市福祉事務所長は,原告のように健康で年齢も若い申請者については保護の支給はしないという先入観から,保護の開始要件の充足性につき判断するために不可欠な原告夫婦の生活困窮状態や求職活動状況等につき十分な調査を尽くすことなく,原告世帯は稼働能力活用の要件を充足していないと誤った判断をし,また,社会福祉協議会による離職者支援資金貸付制度は生活保護法4条1項が定める「その他あらゆるもの」に含まれないにもかかわらず,原告夫婦が同制度を利用しないことを理由として,同項に違反する本件各決定を行ったものである。したがって,D,J及び岸和田市福祉事務所長は,職務上尽くすべき注意義務に違反したものであって,国家賠償法1条1項の違法性が認められる。 (被告の主張)本件各決定当時,原告世帯が稼働能力活用の要件を充足していなかったことは以下(イ)ないし(カ)のとおりであり,本件各決定は適法で 条1項の違法性が認められる。 (被告の主張)本件各決定当時,原告世帯が稼働能力活用の要件を充足していなかったことは以下(イ)ないし(カ)のとおりであり,本件各決定は適法である。 仮に,本件各決定が生活保護法4条1項に違反するものであったとしても,そのことから直ちに国家賠償法1条1項の違法性が認められるわけではない。すなわち,正しい法の解釈,適用をすることが公務員に期待されているのは事実であるとしても,ある時点で法解釈について争いがあり,いずれかの解釈に よることに相当の合理的根拠があった場合には,後にその解釈が裁判所の判断により誤りであるとされたからといって,当該行為の時点でみれば,公権力の行使にあたって公務員が遵守すべき行為規範に違背しているとはいえず,これを国家賠償法上違法であるとすることは相当でないというべきである。したがって,公務員が客観的には法の解釈,適用を誤った場合であっても,それが明らかに違法とはいえない政省令や通達等に従って事務処理をした結果である場合には,職務上の法的義務に違背したとはいえず,違法であるとはいえない。 そこで本件につきみるに,本件各決定当時,生活保護に関する事務については,本件246号通知において,稼働能力活用の意思の有無を判断するにあたって,真摯な求職活動を行っているか否かを踏まえる旨定めているのであるから,申請者が提出する求職活動状況報告書に申請者が就労の場を得るための努力を尽くしたことが表れていないと解し,真摯な求職活動を行っていないとして,稼働能力活用の意思がないと判断したとしても,国家賠償法上の違法が生じる余地はない。 また,社会福祉協議会による離職者支援資金貸付制度が生活保護法4条1項の「その他あらゆるもの」に て,稼働能力活用の意思がないと判断したとしても,国家賠償法上の違法が生じる余地はない。 また,社会福祉協議会による離職者支援資金貸付制度が生活保護法4条1項の「その他あらゆるもの」に含まれないことについては争わないものの,「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年4月1日厚生省発社第123号各都道府県知事・各指定都市市長宛厚生事務次官通知(平成20年3月31日厚生労働省発社援第0331006号による改正後のもの,乙25)。以下「本件123号通知」という。)において,他の法律又は制度による保障,援助等を受けることができる者又は受けることができると推定される者については極力その利用に努めさせることと定められ,また,本件246号通知においては,「第6 他法他施策の活用」として,「次に掲げるものは,特にその活用を図ること」とし,「39号生活福祉資金」と記載されていたことから,同制度が生活保護法4条1項にいう「その他あらゆるもの」に含まれると解した上で,他法他施策を活用していないとして行った生活保護の開始申請却下決定は国家賠償法上違法とはいえない。 (イ) 本件第1却下決定について(原告の主張)原告夫婦は,本件求職活動状況報告書1記載のとおり,ハローワークに赴き求人紹介を受けたり,求人票を打ち出したり,その他にも地域内の貼り紙やチラシ等で求人情報を得たりする等の求職活動を行っていた。原告世帯が困窮状態に置かれていたことに照らすと,原告夫婦は,いずれもその具体的な稼働能力を前提として,それを活用する意思を有していたということができ,こうした困窮状況の下,その意思のみに基づいて直ちにその稼働能力を活用する就労の場を得ることができるとは認められなかったのであるから,原告夫婦は利用し れを活用する意思を有していたということができ,こうした困窮状況の下,その意思のみに基づいて直ちにその稼働能力を活用する就労の場を得ることができるとは認められなかったのであるから,原告夫婦は利用し得る能力をその最低限度の生活の維持のために活用したといえる。 被告の主張によれば,原告がDとの間で,Dとともに平成20年7月1日にハローワークに行くことを約束していたにもかかわらず,原告が皮膚科に行くことを理由にこの約束を反故にしたことや,Dが原告に対して離職者支援資金貸付制度の利用を求めたにも関わらず,原告がAの母に保証人になってもらうことができないと言い理解を示さなかったことを理由に却下をしたようである。  しかし,原告はDとの間で上記約束をしていたものの,その後原告が蕁麻疹を発症し,皮膚科の予約が平成20年7月1日しか空いていなかったため,やむなく同日に予約を入れたため,Dに対して日程変更を申し出たにすぎず,ハローワークへ行かない等とは言っていない。そもそも,保護開始決定後の職員からの指導については生活保護法27条に定めがあるものの,申請時から開始決定までになされる職員からの助言指導については同法に定めがなく,遵守されなかった場合の効果等についても定められていないのであるから,申請者に助言指導に従うべき受忍義務があるわけではなく,遵守しなかったことをもって,保護開始の申請を却下することは許されない。 また,社会福祉協議会による離職者支援資金貸付制度は,同法4条1項で活用が求められる「その他あらゆるもの」にあたらないことは既述のとおりであり,離職者支援資金貸付制度を活用していないことをもって原告の申請を却下した岸和田市福祉事務所長の判断は同項の解釈を誤った違法なものであった。 なお,離 ゆるもの」にあたらないことは既述のとおりであり,離職者支援資金貸付制度を活用していないことをもって原告の申請を却下した岸和田市福祉事務所長の判断は同項の解釈を誤った違法なものであった。 なお,離職者支援資金貸付制度が,同項にいう「その他あらゆるもの」にあたらず,保護に優先するものではないという考え方は厚生労働省が平成13年12月17日の時点で明らかにしていた。 以上の事実より,本件第1却下決定は同法4条1項の要件の解釈を誤った違法なものである。 (被告の主張)本件第1却下決定当時,①原告夫婦は稼働能力を有していたこと,②原告はDとともにハローワークMに行くことを約束したにもかかわらず,当日になってハローワークMへは行かない旨連絡してきたことに照らすと,原告が真摯に求職活動を行い,稼働能力を活用する意思を有するのかについて疑問を差し挟まざるを得なかったこと,③Aについては,本件第1申請後に,大阪府泉北郡乙町で清掃の仕事が見つかっており,現に就労の場を得ることが出来たことから,原告夫婦はいまだ十分に稼働能力を活用しておらず,稼働能力活用の要件を充足していなかったものである。 原告は保護申請時の助言指導違反に基づく却下は許されない旨主張するが,申請者の求職活動状況が稼働能力活用の意思の有無を判断する際の考慮要素となることは明らかであるから,上記のような約束反故という事情は,原告が真摯に求職活動を行い,稼働能力を活用する意思を有しているかを判断する上で当然に考慮できるものである。 なお,原告はDに対してハローワークMに赴く日時の延期を依頼したにもかかわらず,それを拒否された旨主張するが,Dが原告からのそのような申し出を拒否する理由や必要性があるとはいえず,原告 なお,原告はDに対してハローワークMに赴く日時の延期を依頼したにもかかわらず,それを拒否された旨主張するが,Dが原告からのそのような申し出を拒否する理由や必要性があるとはいえず,原告の主張は不自然と言わざるを得ない。 社会福祉協議会による離職者支援資金貸付制度の不活用が本件第1却下決定の理由の一つであることは認めるが,それが仮に国家賠償法上違法であるとしても,上記のとおり,原告夫婦は稼働能力活用の要件を充足していなかったのであるから,本件第1却下決定の適法性に影響を及ぼすものではない。 (ウ) 本件第2却下決定について(原告の主張)争点1に係る原告の主張で述べたとおり,本件第2却下決定は生活保護法4条1項の解釈適用を誤ったものであり,違法である。 (被告の主張)争点1に係る被告の主張で述べたとおり,原告に対する本件第2却下決定は適法な決定であるから,国家賠償法1条1項の違法性も認められない。 (エ) 本件第3却下決定について(原告の主張)a 原告夫婦は本件第2却下決定から本件第3申請までの間,ハローワークや求人広告を利用して求職活動を行っていた。 原告は実際に平成20年8月中旬からQ電気で数日間派遣社員として就労し,同社を退職することを余儀なくされた後も求職活動を行い,その結果,同年9月3日にはGゴムの内定を受け,さらには岸和田市丙町の工場の面接も受けていた。 Aについても同年8月上旬に前述のF加工会社を退職した後,約1か月間Q電気で派遣社員として就労し,また同時に内職の仕事も行っていた。したがって,原告夫婦は稼働能力活用の意思を有していた。 被告は,原告がE製作所を1日で退職したことや,AがF加工 約1か月間Q電気で派遣社員として就労し,また同時に内職の仕事も行っていた。したがって,原告夫婦は稼働能力活用の意思を有していた。 被告は,原告がE製作所を1日で退職したことや,AがF加工会社を2日で退職したことをもって,原告夫婦の稼働能力活用の意思を否定するようであるが,原告がE製作所を退職した理由は争点1に係る原告の主張で述べたとおりであるし,AがF加工会社を短期で退職したのも,同社での作業が冷凍室内で冷凍のカニを扱う作業であったことから,膝痛が悪化したためであり,原告夫婦は怠業していたわけではない。原告夫婦はこれらの会社を退職した後,すぐに求職活動を再開し,実際に内定を得たり,稼働をしたりしているのであるから,このことからも被告の主張は理由がない。 なお,原告がGゴムからの内定を得ながら,同社で稼働をしなかった理由は次のとおりである。すなわち,原告夫婦は本件第3申請時,家賃約25万円及び国民年金保険料を滞納しており,収入を早く得られる仕事に就く必要があったところ,給与体系が毎月末締め翌月末日払いとなっているGゴムでは,原告が平成20年9月から就労を開始したとしても,同年10月31日まで無収入で生活しなければならなかった。そのため,同年9月5日に岸和田市丙町にある工場での週払いの仕事の面接を受け,同社の面接の返事を受けるまで,Gゴムの内定に対する返事を保留にしたいとGゴムの担当者に事情を伝え,了解を得ていたにもかかわらず,上記工場から不合格の通知を受け,原告がGゴムの担当者に連絡をしたところ,上記の約束を反故にされ,内定を取り消す旨告げられたためである。したがって,原告がGゴムで稼働しなかったことにつき原告に落ち度はなく,これをもって原告に稼働能力活用の意思がないとすることはできない。 にされ,内定を取り消す旨告げられたためである。したがって,原告がGゴムで稼働しなかったことにつき原告に落ち度はなく,これをもって原告に稼働能力活用の意思がないとすることはできない。 b 本件第3却下決定は,被告職員が原告に対して社会福祉協議会による貸付制度への申込みをするよう誘導したのに対し,原告が申込みをしなかったことをも理由とするようであるが,同制度は生活保護法4条1項にいう「その他あらゆるもの」にあたらない。したがって,原告が同制度に申し込まなかったことをもって本件第3却下決定をしたのであれば,明らかに違法である。 c 以上より,本件第3申請を却下した本件第3却下決定は生活保護法4条1項の解釈を誤った違法なものである。 (被告の主張)本件第3却下決定は,① 原告夫婦がいずれも健康で就労の意思を有すること,② 泉州地域の平成20年5月における求人倍率を考慮すると,原告夫婦はともに就労を期待できる可能性があると判断されること,③ 現に原告は同年7月及び9月に内定を得ていることから,原告夫婦は稼働能力を十分活用しておらず,生活保護法4条1項が規定する稼働能力活用の要件を満たさないとの判断でなされたものであり,これによると,本件第3却下決定時点において,原告夫婦は稼働能力を十分活用していないものといわざるを得ない。 (オ) 本件第4却下決定について(原告の主張)原告は本件第3却下決定後,ハローワークを利用したり,派遣会社に電話して面接を受ける等して,求職活動を続け,実際に釣り道具の内職の仕事をしたり,派遣会社から派遣され,物流の仕事に1日従事している。Aも引き続き内職の仕事に加え,ハローワークや求人広告を利用し,派遣の登録や面接を受ける等して,求 を続け,実際に釣り道具の内職の仕事をしたり,派遣会社から派遣され,物流の仕事に1日従事している。Aも引き続き内職の仕事に加え,ハローワークや求人広告を利用し,派遣の登録や面接を受ける等して,求職活動を続け,実際に平成20年9月中旬以降は日雇いの仕事に就き,同年10月中旬以降は派遣社員として就労するようになった。その結果,Aは1週間に2万5000円程度の給与を得るようになった。 このように原告は本件第4申請時において,継続的に求職活動を行っており,具体的な稼働能力を活用する意思を有していたのであるから,その意思に基づいて直ちにその稼働能力を活用する就労の場を得ることができると認められない以上,稼働能力活用の要件を充足していたものであり,Aについては実際に稼働し,就労の場を得ていたのであるから,当然に稼働能力活用の要件を充足していた。 以上のとおり,本件第4却下決定当時,原告夫婦は稼働能力活用の要件を充足していたのであるから,本件第4却下決定は生活保護法4条1項の解釈を誤った違法なものである。 なお,求職活動状況報告書2とハローワークM及びハローワークNからの原告夫婦の求職活動状況に関する回答との間に齟齬があることを理由として,原告夫婦に稼働能力活用の意思がないとすることができないことについては争点1に係る原告の主張で述べたとおりである。そもそも,Dがハローワークからの求人紹介以外にも,窓口相談の履歴等についても照会を行えばこのような齟齬は生じなかったはずである。 また,本件求職活動状況報告書2には,実際に仕事へ行ったことについて多く記載されているものの,求職活動がなされた旨の記載が少なく,求職活動の記載も真実か確認できず,真摯な求職活動とはいえないと判断した旨Dは供述するが,同 告書2には,実際に仕事へ行ったことについて多く記載されているものの,求職活動がなされた旨の記載が少なく,求職活動の記載も真実か確認できず,真摯な求職活動とはいえないと判断した旨Dは供述するが,同報告書の求職活動の日時や求職先の記載は十分に具体的である。また,その記載に不明な点があったのであれば,Dは原告夫婦に対して確認すればよく,求職活動の回数が少ない点についても他に求職活動をしていないか確認する必要があったにもかかわらず,Dは原告夫婦に対して求職活動状況に関し一切確認することなく,同報告書の記載が不十分であることだけをもって,稼働能力を活用していないと判断しており,調査義務を懈怠している。 (被告の主張)本件第4却下決定は,原告夫婦が求職活動をする際に最も活用することが期待されるハローワークを十分活用しているとはいえず,求職活動の方法や頻度が,本件第1ないし第3申請時点から変化が見られないことから,原告夫婦は,稼働能力を十分活用しておらず,稼働能力活用の要件を満たさないとの判断からなされたものである。本件第3却下決定時における事情に加え,ハローワークM及びハローワークNへの照会によって明らかとなった原告夫婦の求職活動状況を考慮すると,本件第4却下決定の時点においても,原告夫婦は稼働能力を十分に活用していたとはいえないため,本件第4却下決定は適法であり,国家賠償法上違法とされる余地はない。 (カ) 本件第5却下決定について(原告の主張)本件第4却下決定後も原告はハローワークに行って求人を探す等の求職活動を行っていた。それにもかかわらず就労の場を得ることができなかったのであるから,原告には稼働能力活用の意思があったものの,その意思のみに基づいて直ちにその稼 ーワークに行って求人を探す等の求職活動を行っていた。それにもかかわらず就労の場を得ることができなかったのであるから,原告には稼働能力活用の意思があったものの,その意思のみに基づいて直ちにその稼働能力を活用する就労の場を得ることができるとは認められなかったのであり,原告は稼働能力活用の要件を充足していた。 本件第5申請の担当者であったJが,原告に対して,ハローワークで求人情報を検索したのであればその検索書類を残しておくこと,面接の結果,面接場所,面接担当者を求職活動状況報告書に記載するよう求めたにもかかわらず,原告が提出した本件求職活動状況報告書3にはその記載がなかったことから,原告夫婦が真摯に求職活動を行ったとは到底思えないことを理由に本件第5却下決定がなされたようであるが,本件求職活動状況報告書3には面接の日時,電話をした事業所の記載もあり,面接場所も全てではないが記載してあるのであるから,具体的なものであったといえる。また,そもそも求職活動状況報告書になぜ担当者の氏名や面接場所などを記載していないと真摯に求職活動を行ったといえないのか合理的な理由がない。 原告が平成20年7月にE製作所において1日就労しただけで退職したことや,同年9月にGゴムから内定を得ていたにもかかわらず同社で就労しなかったことが原告の稼働能力活用の意思の有無に影響を与えないことは争点1及び上記(エ)で述べたとおりであり,かつ,本件第5却下決定より3か月ないし5か月も前の事実であることから,これらの事実をして本件第5却下決定の理由とすることは認められない。 Jは本件第5却下決定に先立ち,原告の資格,生活歴,職歴を基に求人を検索したところ求人が多数存在したため,原告が就労の場を得ることは困難ではないと判断し 理由とすることは認められない。 Jは本件第5却下決定に先立ち,原告の資格,生活歴,職歴を基に求人を検索したところ求人が多数存在したため,原告が就労の場を得ることは困難ではないと判断したようである。しかし,その検索で得られた求人票を見る限り,原告が有していない資格(自動車免許,交通誘導警備等)の所持者を優遇しており,資格も経験もない原告が採用される見込みは極めて低いものであった。実際に,原告はそれらの求人のうち,いくつかについて応募をしたところいずれも採用に至らなかったのであるから,これらの求人の存在によって原告は就労の場を得られたとすることはできない。 以上のとおり,原告は稼働能力活用の要件を充足していたにもかかわらず,本件第5申請を却下した本件第5却下決定は生活保護法4条1項の解釈を誤った違法なものである。 (被告の主張)本件第5却下決定は,① 原告には定期的に通院している事 実はなく,健康状態を聴取された際も不調はない旨述べている上,原告はフォークリフトの資格を有しており,学歴は中学校卒業であるものの,これまで派遣を中心に職に就いてきたこと,② 原告は金銭的余裕がないため求職活動を十分に行えない旨述べているが,就労場所等が原告方から自転車で赴くことが可能な場所にある求人が多数あること,③ 原告に対して,求職活動状況の報告に際し,例えば,ハローワークに行ったのであれば,求人票を検索した書類を残したり,連絡をとった人事担当者の氏名,面談場所,面談者の氏名等を具体的に報告するよう指導していたにもかかわらず,原告が提出した本件求職活動状況報告書3の書面からはこれらの点について具体的な内容が読み取れなかったこと,④ 原告の年齢等に基づいて求人情報を検索したところ,求人が多数存在すること にもかかわらず,原告が提出した本件求職活動状況報告書3の書面からはこれらの点について具体的な内容が読み取れなかったこと,④ 原告の年齢等に基づいて求人情報を検索したところ,求人が多数存在することが確認できたこと,⑤ 実際に原告は平成20年7月及び9月に内定を得ていることから,原告は稼働能力活用の要件を充足していないとの判断でなされたものである。 本件第4却下決定時の事情に加え,上記①ないし⑤の事情も考慮すれば,本件第5却下決定時においても原告が稼働能力活用の要件を充足していないとした本件第5却下決定は適法であり,国家賠償法上違法と評価される余地はない。 ウ争点8(本件各決定が無差別平等の原則を定める生活保護法2条に違反するものとして,国家賠償法1条1項の違法性が認められるか)について(原告の主張)年齢及び原告の過去の職歴等を理由に原告からの申請を却下した本件各決定は生活保護法2条,ひいては憲法14条に違反する処分である。 (被告の主張)生活保護法2条は「すべて国民は,この法律の定める要件を満たす限り」同法による保護を無差別平等に受けることができると規定するところ,「この法律に定める要件」には同法4条1項が規定する稼働能力活用の要件も含まれるのであるから,稼働能力活用の要件を充足しない場合に保護が認められないことは当然である。 エ本件各決定に適正手続違反があることを理由とする国家賠償請求について(ア) 争点9(本件各決定は,理由附記につき定めている行政手続法8条1項,生活保護法24条2項に違反するか)について(原告の主張)本件各決定の通知書に記載されている「稼働能力の活用が図られるため最低生活維持可能」の文言のみでは, 続法8条1項,生活保護法24条2項に違反するか)について(原告の主張)本件各決定の通知書に記載されている「稼働能力の活用が図られるため最低生活維持可能」の文言のみでは,行政手続法8条,生活保護法24条2項で定められている理由附記としては不十分であることは争点3に係る原告の主張で述べたとおりである。 そして,本件各決定に上記のような理由附記不備があったため,原告は稼働能力活用の要件のうちいずれの要件が充足されていないのかについて了知できず,原告の稼働能力やその活用の事実について岸和田市福祉事務所長がどのような事実を認定したのかについても了知できなかったことから,何を改善すれば良いのかもわからないまま,求職活動を継続し,何度も保護の開始申請をしては却下されるという事態が生じ,1年以上も 最低限度の生活を維持できなかった。したがって,理由附記の不備によって原告は精神的損害を被ったのであるから,被告には原告に対して慰謝料を賠償する責任がある。 (被告の主張)本件各決定の通知書の理由の記載が行政手続法8条1項ないし生活保護法24条2項に違反しないことは争点3に係る被告の主張で述べたとおりである。 (イ) 争点10(本件第2ないし第4却下決定は,決定通知延期の理由附記につき定める生活保護法24条3項但書に違反するか)について(原告の主張)本件第2ないし第4却下決定の各通知は,申請から14日を超えてなされているにもかかわらず,通知書には通知期間延長に関する理由が記載されておらず,これらの理由附記不備が生活保護法24条3項但書に違反することは争点4に係る原告の主張と同様である。 原告は,決定通知の延期理由が記載されていない 延長に関する理由が記載されておらず,これらの理由附記不備が生活保護法24条3項但書に違反することは争点4に係る原告の主張と同様である。 原告は,決定通知の延期理由が記載されていないことで,原告の適正,迅速な決定を受ける権利が制限されるべき特別な理由の有無について判断する権利が侵害されているのであるから,これによって精神的苦痛を被った。したがって,本件第2ないし第4却下決定の同項但書違反によって,原告の被告に対する国家賠償法上の損害賠償請求が認められる。 (被告の主張)本件第2ないし第4却下決定について生活保護法24条3項但書の違反があったことは認める。 しかしながら,同項但書が定める手続が履践されていないとしても,同条項は訓示規定であるから,同手続を履践しないことが直ちに国家賠償法上違法と評価されることはない。 さらに,本件第2ないし第4却下決定は,原告の保護の開始申請を却下する旨の決定であり,仮にこれらの処分によって原告が精神的苦痛を被るとすれば,それは原告の申請が却下されるという処分の内容そのものによるものであり,通知書に申請から通知までの期間が14日を超えた理由が記載されていなかったからといって,そのことによって,原告が精神的苦痛を受けるとは解し難い。 (ウ) 争点11(本件第2ないし第4却下決定につき,各決裁後直ちに決定の通知を行っていないことが生活保護法24条3項の趣旨に反するか)について(原告の主張)本件第2却下決定だけでなく,本件第3及び第4却下決定についても,申請から14日を超えてから却下の決裁がなされているにもかかわらず,決裁からすぐに却下決定通知がなされていないため,本件第2ないし第4却下決定が生活保護法24条3項の 及び第4却下決定についても,申請から14日を超えてから却下の決裁がなされているにもかかわらず,決裁からすぐに却下決定通知がなされていないため,本件第2ないし第4却下決定が生活保護法24条3項の趣旨に反することは争点5に係る原告の主張と同様である。 被告は保護の補足性の要件の判断に相応の日数を要したと主張するが,決裁後に速やかに通知することの支障にはならないため,被告の主張は理由がない。 原告は本件第2ないし第4却下決定が同法24条3項の趣旨に反することによって,迅速な決定及び通知を受ける権利が侵害され,早急に審査請求ないしその他の生活維持手段を検討する機会を逸したのであるから,原告の被告に対する国家賠償法上の損害賠償請求が認められる。 (被告の主張)原告の主張は独自の見解に基づくものであり,失当であることは争点5に係る被告の主張で述べたとおりである。 オ争点12(損害額)について(原告の主張)原告は,本件相談における被告職員の対応及び保護の開始申請を5回にもわたって却下した本件各決定(これらをあわせて,以下「本件各決定等」という。)によって精神的損害を被った。 また,本件相談の際に被告職員が適切な対応をしていれば原告は保護の開始申請をしていたはずであり,同時期から保護が開始されていたはずである。それにもかかわらず,本件各決定等によって,保護の開始が平成21年7月10日まで遅れた。したがって,原告は本来受けられるはずの保護を約1年2か月の間受けられなかった。 以上のとおり,原告には精神的損害及び受給し得た生活保護費と同額の財産的損害が生じているところ,前者に係る損害額は100万円,後者に係る損害額は以下のとおり149 間受けられなかった。 以上のとおり,原告には精神的損害及び受給し得た生活保護費と同額の財産的損害が生じているところ,前者に係る損害額は100万円,後者に係る損害額は以下のとおり149万4390円が相当であるため,被告が原告に対して,100万円の損害賠償責任を負うことは明らかである。 (財産的損害の内容)(ア) 原告が財産的損害を被った期間原告が本件相談をした日(平成20年5月20日から同年6月中旬頃の間)から本件保護開始決定による保護の開始がなされた日(平成21年7月10日)までである。 (イ) 損害金a 平成20年6月頃から平成20年10月まで(a) 1か月あたりの生活保護費本件住宅の家賃4万0100円+生活費12万0830円=16万0930円(b) 上記期間に受け取ることができたであろう生活保護費16万0930円×5か月=80万4650円b 平成20年11月から平成21年3月まで(a) 1か月あたりの生活保護費本件住宅退去後の住居の家賃2万3000円+生活費12万4650円=14万7650円(b) 上記期間に受け取ることができたであろう生活保護費14万7650円×5か月=73万8250円c 平成21年4月から同年6月まで(a) 1か月あたりの生活保護費本件住宅退去後の住居の家賃2万3000円+生活費12万0830円=14万3830円(b) 上記期間に受け取ることができたであろう生活保護費14万3830円×3か月=43万14 3000円+生活費12万0830円=14万3830円(b) 上記期間に受け取ることができたであろう生活保護費14万3830円×3か月=43万1490円d まとめ上記aないしcの合計額は,197万4390円(80万4650円+73万8250円+43万1490円)であるところ,平成21年3月より原告が月3万円,Aが月9万円の収入を得ていたとしても,その合計額は48万円((3万円+9万円)×4か月)であるから,この額を差し引いた149万4390円が少なくとも原告に生じた財産的損害となる。 (被告の主張)争う。 第3 争点に対する判断 1 本件第2却下決定の取消請求について(1) 争点1(本件第2却下決定当時,原告世帯は生活保護法4条1項が定める稼働能力活用の要件を充足していたか)についてア認定事実前記前提事実に加え,各項掲記の証拠によれば,以下の各事実が認められる。(ア) 原告夫婦が岸和田市に転入するまでの経歴等(甲53,原告本人)a 原告は,昭和○年○月○日,大東市で出生し,その後,昭和58年頃,両親が離婚したため,母に引き取られることとなった。原告の母は,離婚の後,生活保護の受給を開始した。 b 原告の就労状況等( ) 原告は,昭和63年に中学校を卒業後,高校へは進学せず,Rというレストランに就職し,同年10月まで同レストランで調理の助手や洗い物の業務に従事した。() 原告は,昭和63年秋頃から平成元年秋頃までSというスーパーで商品の袋詰めの業務に従事したほか,コンサートの警備員等のアルバイトをしていた。 (c) 原告は,平成元年11月頃から約2年間,Tという会社で 頃から平成元年秋頃までSというスーパーで商品の袋詰めの業務に従事したほか,コンサートの警備員等のアルバイトをしていた。 (c) 原告は,平成元年11月頃から約2年間,Tという会社で,スキーのリフトや船の減速機のケースの洗浄業務にアルバイトとして従事した。 () 原告は,平成4年頃から約8か月間,Uという弁当のトレイ等の製造会社でアルバイトとして従事した。(e) 原告は,平成5年から約5年間,Vという通信販売の下請会社の正社員として,衣類やアクセサリーの仕分作業等に従事した。原告はVの費用でフォークリフトの資格を取得した。 (f) 原告が就労していたVの大東営業所が廃止になったため,原告はVを退職し,平成11年7月頃からWという派遣会社の派遣社員としてX電機の工場でテレビ部品の組立作業に従事した。原告はこの頃,大東市にある自宅から同市丁に転居した。 (g) 原告は,平成13年2月16日,X電機での就労を辞め,大阪市内の通信機器会社での就労を開始したが,数日で同社を退職した。 (h) 原告は,上記通信機器会社を辞めてから約1,2週間後には,Yというリフォーム会社に正社員として採用され,営業業務に従事し,平成14年2月頃まで同社で就労した。 (i) 原告は,平成14年2月頃からZという派遣会社の派遣社員としてX電機で携帯電話の部品の組立作業に従事したが,平成16年に派遣会社を解雇された。 (j) 原告は,上記(i)の解雇の後平成18年初め頃まで別の派遣会社の派遣社員として,ピッキングや引越作業の短期の仕事に従事した。 (k) 原告は,平成18年初め頃から同年5月頃まではAAの物流倉庫で蛍光灯類のピッキン 成18年初め頃まで別の派遣会社の派遣社員として,ピッキングや引越作業の短期の仕事に従事した。 (k) 原告は,平成18年初め頃から同年5月頃まではAAの物流倉庫で蛍光灯類のピッキング作業に,同年6月1日から同年7月14日までBBで携帯電話のピッキング作業に従事した。 (l) 原告は,平成18年7月頃,Aとの同居を開始し,同年8月17日にAと婚姻した。原告夫婦は大東市戊の家賃月5万円の住居に転居した。 (m) 原告は,平成18年8月からCCという派遣会社の派遣社員として,X電機でプロジェクターの組み立て作業に従事したが,同年12月16日に解雇された。 (n) 原告は,平成19年1月にDDというエアコンカバー製造会社で派遣社員として就労したものの,一日で退職した。 (o) 原告は,平成19年2月から同年4月までX電機の工場でプロジェクターの梱包作業等に従事した。 (p) 原告夫婦は,平成19年7月頃,家賃を滞納したために大東市戊の住居から同市己にある住居へと転居した。 (q) 原告は,平成19年8月から同年11月まで,EEという派遣会社の派遣社員として,FFという紙袋製造工場で就労し,その後はGGやHHという派遣会社に登録し,短期のアルバイトとして会社の移転作業やトラックの荷卸し,ピッキング作業等に従事した。 (イ) 本件第1却下決定についてa 本件第1申請に至る経緯原告夫婦は,平成20年2月に大東市から岸和田市に転居したが,岸和田市に転入した際は両者とも無職であったため,Aの母から食糧を分けてもらったり,原告夫婦が所持していたCDや本の売却代金を生活費に充てていた。また,Aが同年5月に派遣社員として3日間就 したが,岸和田市に転入した際は両者とも無職であったため,Aの母から食糧を分けてもらったり,原告夫婦が所持していたCDや本の売却代金を生活費に充てていた。また,Aが同年5月に派遣社員として3日間就労したことによって得た1万4255円も生活費に充てていた。しかし,同月にはガス料金を滞納したため,本件住宅へのガスの供給が止められた。 (甲52,53,原告本人)原告夫婦は,同年6月,本件住宅の郵便受けに,生活保護に関する相談等を行う「くらしのなんでも相談会」が開催される旨が記載されたB会のチラシが入っていたため,同相談会に赴いたところ,Cが原告夫婦に対応した。Cは,原告夫婦に対し,今までの求職活動状況を記した書類を作成した上で,それを持参してCとともに被告の福祉事務所に行き,保護の開始申請をするよう助言した。(甲52ないし54,証人A,原告本人)b 本件第1申請について原告は,平成20年6月24日,A及びCとともに,被告の福祉事務所に赴き,本件第1申請をした。 本件第1申請の際に行われた面談にて,被告職員が,原告夫婦に対して就労を阻害するような疾病等の有無につき尋ねたところ,Aから少し腰痛がある旨の申告はあったものの,他に原告夫婦に就労を阻害する健康面での要因がある旨の申告はなかった(乙2)。 c 本件第1申請に係る面談Dは,平成20年6月26日,原告夫婦の自宅を訪問し,本件第1申請に係る面談を行い,その際,原告夫婦に対して就労に支障のある疾病がないか確認したところ,原告夫婦はこれに対してそのような疾病はない旨回答した(乙6,証人D)。(なお,原告は,本件第1申請時及び上記面談の際に,Aが,被告職員に対して,膝が痛くて長時間立っていられないと話した旨主張し,原 夫婦はこれに対してそのような疾病はない旨回答した(乙6,証人D)。(なお,原告は,本件第1申請時及び上記面談の際に,Aが,被告職員に対して,膝が痛くて長時間立っていられないと話した旨主張し,原告もこれに沿う供述をするが(甲5 3),ケース記録票には,原告夫婦からそのような申告があった旨の記載がなく,Aが被告職員に対し,膝痛を持病として申告したとは認められない。)また,Dは原告に対して,社会福祉協議会の離職者支援資金貸付制度の案内をし,離職票を持参して社会福祉協議会へ行くよう助言をした。 さらに,Dは,原告夫婦には就労阻害要因がなく,年齢を考慮しても仕事が見つからないというのは考え難く,求職方法について何か問題があるのではないかと考えたため,同年7月1日午後1時半にDとともにハローワークに赴き求職方法の相談に行くことを原告と約束した(乙6,証人D)。 d 平成20年6月26日の面談後の事情Dが原告夫婦の自宅(本件住宅)に訪問した翌日である平成20年6月27日に,原告はDに対し,社会福祉協議会に離職者支援資金貸付制度について相談するために赴いたが,離職者支援資金貸付を受けるためにはAの母に保証人になってもらう必要があると説明されたこと,Aの母に迷惑をかけることになるため同制度は利用できないことを電話にて報告した。これに対してDは,他法他施策の活用は生活保護を受けるための要件になっている旨説明し,同制度の利用を促したものの,原告はこれに応じなかった。(乙6,証人D,原告本人)また,同日,Aは,Dに対し,L製作所という会社での清掃の仕事が決まったとの報告を電話でした(甲52,乙6)。 e ハローワークに一緒に行くとのDとの約束について(a) 原告 た,同日,Aは,Dに対し,L製作所という会社での清掃の仕事が決まったとの報告を電話でした(甲52,乙6)。 e ハローワークに一緒に行くとのDとの約束について(a) 原告は平成20年6月26日に自宅の掃除をした後,発疹及び掻痒感の症状が発現したため,同月30日の午後6時頃に医療法人IIの岸和田II病院総合内科を受診したところ,右前腕や右側腹部に発赤紅斑が見受けられ,蕁麻疹である旨の診断がなされ,皮膚科を受診するよう促された。そのため,原告は,同年7月1日午後3時30分ころ同病院の皮膚科を受診し,慢性湿疹との診断を受け,軟膏等の薬を処方された。(甲45,52,53,証人A)(b) 原告は,平成20年7月1日,Dに対して,皮膚科を受診するため,ハローワークへは行けない旨を連絡した(乙6,証人D)。 f 本件第1却下決定Dは,平成20年6月27日までの調査結果に基づき,同月30日頃,原告世帯は「稼働能力の活用が図られるため最低生活維持可能」との理由で,本件第1申請を却下すべきとの保護決定調書を作成した。 Dは,同年7月1日,原告夫婦ともに就労阻害要因がなく,年齢を考慮しても十分就労可能であるため,原告世帯は他法ないし稼働能力が未活用であるとして,生活保護法4条1項が定める保護の補足性の要件を充足していないことを理由に,本件第1申請を却下すべき旨を本件第1申請に係るケース記録票に記載した。 同日,上記ケース記録票や保護決定調書等を基に岸和田市福祉事務所長による本件第1申請に対する却下の決裁がなされ,本件第1却下決定がなされた。 (乙6,7,62,証人D)(ウ) 本件第2却下決定について a 本件第2申請原告は,本件第1却下決定後もB 第1申請に対する却下の決裁がなされ,本件第1却下決定がなされた。 (乙6,7,62,証人D)(ウ) 本件第2却下決定について a 本件第2申請原告は,本件第1却下決定後もB会やAの母から食糧を分けてもらいながら生活をしていたが,Cに促され,平成20年7月7日,本件第2申請を行った(甲52,53,証人A)。 b 本件第2申請後の事情(a) Dは,本件第2申請を受け,担当者として原告夫婦の求職活動状況を調べるため,ハローワークMに対して,原告夫婦に対する求人紹介件数を電話で問い合わせたところ,原告については,平成20年3月11日付けでハローワークNより求人紹介をしたこと,同年6月23日付けでハローワークMより倉庫作業の求人を紹介するも不採用となったこと,Aについては求人紹介の記録がないことの回答を受けた(乙11,証人D)。 (b) E製作所及びF加工会社について原告は,本件第2申請後,平成20年7月19日からE製作所にて就労することが決定した。E製作所は,釣り具のリール製造会社であり,雇用条件は月曜日から土曜日までの午前9時から午後5時まで,時給730円,給料は毎月末日締めの翌月10日払いであった。原告は,同日にE製作所にて就労したものの,同日で退職した。 なお,原告は,E製作所を1日で退職した理由を本件第5申請に係る面談において担当者であったJに対して述べた。Jは,その聴取内容として,原告は,原告が作業している間,社長が背後から原告に対して指示を出すため,煩わしくて嫌だったからE製作所を退職した旨,本件第5申請に係るケース記録票に記載した。 (甲52,53,乙11,48,証人A,原告本人)Aは,本件第2申請時もL製作所での清掃の仕事を継続 らE製作所を退職した旨,本件第5申請に係るケース記録票に記載した。 (甲52,53,乙11,48,証人A,原告本人)Aは,本件第2申請時もL製作所での清掃の仕事を継続していたものの,より良い雇用条件の就労先を探して求職活動をしていたところ,本件第2申請後,F加工会社での就労が決定した。F加工会社は,カニの加工会社であり,雇用条件は月曜日から土曜日までの午前9時から午後3時までの勤務であり,時給740円,給料は毎月20日締めの末日払いであった。Aは,F加工会社での就労を同月22日から開始する予定であったが,前日の夜に急性胃腸炎になったことから,同年8月7日に就労を開始した。しかし,Aは,同日及び同月8日の2日間就労した後,冷凍室での立ち作業が原因で持病の膝の痛みが出たとして,同社を退職した。(甲52,53,乙11,27,証人A)c 本件第2却下決定Dは,平成20年7月18日,原告夫婦はともに健康で,就労の意思もあり,かつ,同年5月当時の泉州地域及び大阪市内の求人状況を考慮すると,原告夫婦ともに就労を期待できる可能性はあるため,原告世帯は稼働能力が未活用であり,生活保護法4条1項が定める保護の補足性の要件を充足しておらず,本件第2申請を却下する旨を本件第2申請に係るケース記録票に記載した上で,同年7月22日に,「稼働能力が図られるため最低生活維持可能」との理由で本件第2申請を却下すべきとの保護決定調書を作成した。同日,上記ケース記録票や保護決定調書等を基に岸和田市福祉事務所長による本件第2申請に対する却下の決裁がなされ,同月28日,本件第2却下決定がなされた。(乙11,13)(エ) 本件第2却下決定後の原告夫婦の求職活動及び就労状況a 原 る本件第2申請に対する却下の決裁がなされ,同月28日,本件第2却下決定がなされた。(乙11,13)(エ) 本件第2却下決定後の原告夫婦の求職活動及び就労状況a 原告について(a) 原告は,平成20年8月,Q電気にて2日間ないし1,2週間程度カーペットの梱包業務に従事した(甲53,乙18,27,原告本人)。 (b) 原告は,平成20年9月3日,Gゴムの面接に行き,内定を得た。Gゴムでの雇用条件は,月曜日から金曜日までの1日7時間半の勤務で,時給1000円,給与は毎月末締めの翌月末日払いとのことであった。原告はGゴムに対して,内定への返事を直ちにしないでいたところ,Gゴムから後日不採用との連絡を受けた。また,原告は,そのころ,岸和田市丙町の工場の面接も受けたが,同工場については,同月8日に不採用との連絡を受けた。(乙27)(c) 原告は,平成20年10月及び11月にIという会社にて雑貨商品の袋詰め作業に従事し,各月5000円の収入を得た。 (d) 原告は,平成21年3月上旬に,K新聞の夕刊の配達員として就労を開始し,その後,他の新聞の朝刊配達員としての就労も開始し,現在もこれらの就労を継続している。 bAについて(a) Aは,F加工会社を退職した後,平成20年8月,Q電気で約1か月間,カーペットの梱包作業に従事した(甲52,53,証人A,原告本人)。 (b) Aは,平成20年10月中旬頃から平成21年1月まで,株式会社Hという派遣会社の派遣社員として就労し,月に約5万円の収入を得ていたが,同年2月下旬頃には同社での仕事はほとんどなくなった(甲52,53)。 (c) Aは,平成21年 株式会社Hという派遣会社の派遣社員として就労し,月に約5万円の収入を得ていたが,同年2月下旬頃には同社での仕事はほとんどなくなった(甲52,53)。 (c) Aは,平成21年4月から株式会社JJというクリーニング店で就労を開始し,平成23年10月末に解雇されるまで同社での就労を継続し,月に約8万円ないし9万円の収入を得ていた。その後,Aは,被告職員の指導の下,ハローワークでの面談をしたり,清掃作業員の面接に行ったりする等の求職活動を行った。(甲59)(オ) 有効求人倍率(乙12)a 平成20年5月当時のハローワークM所管内の有効求人倍率35歳から44歳までの有効求人倍率は,常用労働者が0. 32であり,常用的パート労働者が0.61であった。 b 平成20年5月当時の泉州(ハローワークN,ハローワークM,ハローワークKKの各所管内)地域の有効求人倍率35歳から44歳までの有効求人倍率は,常用労働者が0. 40であり,常用的パート労働者が0.90であった。 c 平成20年5月当時の大阪市内の有効求人倍率35歳から44歳までの有効求人倍率は,常用労働者が0. 60であり,常用的パート労働者が1.18であった。 イ稼働能力活用の要件について生活保護法は,憲法25条に規定する理念に基づき,国が生活に困窮するすべての国民に対し,その困窮の程度に応じ,必要な保護を行い,その最低限度の生活を保障するとともに,その自立を助長することを目的とし(生活保護法1条),すべて国民は,同法の定める要件を満たす限り,同法による保護を無差別平等に受けることができるとして,無差別平等の保護を定めている(同法2条)一方で,保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他 の定める要件を満たす限り,同法による保護を無差別平等に受けることができるとして,無差別平等の保護を定めている(同法2条)一方で,保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われるとして,保護の補足性の要件を定めている(同法4条1項)。これら同法の規定は,生活に困窮した国民について,その困窮の原因は様々であり,これをあげて当該国民の責任に帰することは相当でなく,当該国民を保護すべき責務を国が負うべきことをその理念として明らかにすると共に,資本主義社会における制度である以上,国が当該国民を保護すべき前提として,当該国民が自ら最低限度の生活を維持するための努力を尽くすこと,すなわち,当該国民がその利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用することを国が保護を行うべき要件として定めている(保護の補足性)ものと解される。本件においては,保護の補足性の要件のうち,原告世帯がその利用し得る能力をその最低限度の生活の維持のために活用していたか(稼働能力活用の要件)が問題となっているところ,同要件の充足性の判断においても当然に上記立法趣旨を勘案すべきである。具体的には,① 稼働能力があるか否か,② その具体的な稼働能力を前提として,その能力を活用する意思があるか否か,③ 実際に稼働能力を活用する就労の場を得ることができるか否かによって稼働能力活用の要件を充足しているか否かを判断するのが相当である。 まず,稼働能力があるか否か(①)については,稼働能力を活用する意思(②)や稼働能力を活用する就労の場(③)の判断とも関係してくるため,その有無だけでなく,稼働能力がある場合にはその程度についても考慮する必要があり るか否か(①)については,稼働能力を活用する意思(②)や稼働能力を活用する就労の場(③)の判断とも関係してくるため,その有無だけでなく,稼働能力がある場合にはその程度についても考慮する必要があり,かかる稼働能力の程度については,申請者の年齢や健康状態,申請者の生活歴,学歴,職歴等や,申請者が有している資格等を総合的に勘案して判断すべきである。 次に,稼働能力を活用する意思があるか否か(②)については,上記立法趣旨のとおり,申請者自らが最低限度の生活を維持するために努力すべきことが求められていることから,申請者には最低限度の生活を維持するための努力をする意思を有していることが必要である。もっとも,上記稼働能力の程度について掲げた考慮要素等からも明らかなように,申請者の有する資質は年齢や健康状態,生活歴,学歴等から千差万別である上,申請時におかれた困窮の程度も様々であること(求職活動に要する履歴書用紙の購入費用や,面接会場までの交通費等の捻出自体極めて困難な場合も少なくない。)に鑑みると,申請者に対して,その時点において一般に行い得ると考えられるあらゆる手段を講じていなければ最低限度の生活を維持するための努力をする意思があるとは認められないとすることは,申請者に不可能を強いることにもなりかねず,また国の責務として生活に困窮する国民に対する必要な保護を与えるとの理念にもとる事態を生じさせかねないものであって,相当ではない。このことからすれば,上記のような申請者の資質や困窮の程度等を勘案し,当該申請者について社会通念上最低限度必要とされる程度の最低限度の生活の維持のための努力を行う意思が認められる以上は,それが一般的にみればさらなる努力をする余地があるものであったとしても,なお稼働能力を活用する意思を有しているものと認め とされる程度の最低限度の生活の維持のための努力を行う意思が認められる以上は,それが一般的にみればさらなる努力をする余地があるものであったとしても,なお稼働能力を活用する意思を有しているものと認めるのが相当である。 さらに,稼働能力を活用する就労の場を得ることができるか否か(③)については,申請者が求人側に対して申込みをすれば原則として就労する場を得ることができるような状況であったか否かを基準として判断すべきである。すなわち,求人倍率等の数値から就労する場を得る抽象的な可能性があるといえる場合であっても,実際に申請者が就労を開始するためには,申請者からの求人側に対する申込み,求人側との面接,求人側による当該申請者を採用することの決定,両者の間での雇用契約の締結等が必要となるのであるから,最低限度の生活の維持のために努力をしている者であっても,求人側の意向等申請者の努力によっては如何ともし難い理由によって,就労の場を得ることができないことがあることは否定できない。そのような場合にまで,抽象的には就労の場を得ることが可能であるとして,保護を行うことを認めないとすることは,最低限度の生活の維持のために努力をしている者に対する保護を認めないことにほかならず,これは上記立法趣旨に反するものというほかない。このことに加え,国の責務として生活に困窮する国民に対する必要な保護を与えるという生活保護法の理念をあわせ鑑みれば,稼働能力を活用する就労の場を得ることができるか否かは,申請者の稼働能力の程度等も踏まえた上で,当該申請者が求人側に対して申込みをすれば原則として就労する場を得ることができるような状況であったか否かを基準として判断すべきものと解するのが相当である。なお,就労の場があり,その場をいまだ利用していない場合には保護が して申込みをすれば原則として就労する場を得ることができるような状況であったか否かを基準として判断すべきものと解するのが相当である。なお,就労の場があり,その場をいまだ利用していない場合には保護が認められないことに照らせば,ここにいう「就労の場」とは,申請者が一定程度の給与を一定期間継続して受けられるような場をいうものと解するのが相当である(例えば一日限りのアルバイト等に就労することができる場を得ることができるといったことから,保護が受けられなくなるというのはおよそ不合理であるといえよう。)。 以上のような観点に立って,原告世帯が本件第2却下決定当時,稼働能力活用の要件を充足していたかにつき,以下検討する。 ウ稼働能力(①)について(ア) 原告について原告は,昭和○年○月○日生まれの男性であり,本件第2却下決定当時,満35歳であったところ(前記認定事実(ア)a),中学校を卒業した後,長年にわたり,飲食店の店員,工場での組立・梱包等の作業員等として稼働してきたこと(前記認定事実(ア)b),本件第1申請に係る面談において,就労に支障のある疾病がない旨被告職員に回答していること(前記認定事実(イ)b,c)によれば,原告は本件第2却下決定当時,稼働能力を有していたものと認めることができる。 もっとも,上記のとおり,原告の最終学歴は中学校卒業であり,その後は工場での組立・梱包等の比較的単純な作業の業務に長年従事してきたこと,また,原告はフォークリフトの資格のほかには何ら特殊な技能ないし資格を有していないこと(前記認定事実(ア)b(e),弁論の全趣旨)に鑑みれば,原告が本件第2却下決定当時に有していた稼働能力の程度は高度なものではなく,比較的単純な作業への従事の程度にとどまるもので 有していないこと(前記認定事実(ア)b(e),弁論の全趣旨)に鑑みれば,原告が本件第2却下決定当時に有していた稼働能力の程度は高度なものではなく,比較的単純な作業への従事の程度にとどまるものであったというべきである。 (イ) AについてAは,昭和○年○月○日生まれの女性であり,本件第2却下決定当時,満43歳であったところ(前記前提事実(1)ア),本件第1申請以降,清掃員,工場での加工作業員,梱包作業員,クリーニング店の店員等の業務に従事していること(前記認定事実(イ)d,(ウ)b(b),(エ)b),本件第1申請に係る面談において,腰痛がある以外に他に就労に支障のある疾病がな い旨被告職員に回答していること(前記認定事実(イ)b,c)によれば,Aは本件第2却下決定当時,稼働能力を有していたことが認められる。 もっとも,その稼働能力の程度については,上記の職歴やAが特殊な資格等を有していたとは認められないこと(弁論の全趣旨)からすると,原告と同様に比較的単純な作業への従事の程度にとどまるものであったというべきである。また,本件第3申請の際に行われた面談において,Aは冷凍室での仕事で持病の膝痛が出たためF加工会社を早期に辞めた旨述べていること(乙27),本件第5申請の際に行われた面談においてもAは膝の調子が悪いとの申告をしていること(乙45)に照らすと,本件第2却下決定当時も,Aの膝の状態は良くなく,膝に大きな負担がかかる仕事に就くことは難しかったものと認められる。 エ稼働能力を活用する意思(②)について(ア) 原告についてa 原告は,上記ウ(ア)のとおり,比較的単純な作業に従事し得る程度の稼働能力を有していたものの,本件第2却下決定当時,無職,無収入であった ②)について(ア) 原告についてa 原告は,上記ウ(ア)のとおり,比較的単純な作業に従事し得る程度の稼働能力を有していたものの,本件第2却下決定当時,無職,無収入であった(前記前提事実(2)イ(ア))。 したがって,同決定時,原告の稼働能力は現に活用されていなかったものと認められる。 もっとも,原告は中学校を卒業してから平成20年2月に岸和田市に転入するまでの約20年間,断続的に飲食店の店員,工場での組立・梱包等の作業員等として稼働してきたこと(前記認定事実(ア)b),岸和田市に転入した後も同年3月11日及び同年6月23日にはハローワークで求人紹介を受け,そのうちの1件については面接を受けていること(前記認定事実(ウ)b(a)),本件第2申請後には釣り具のリール製造会社であるE製作所の内定を得て,1日ではあるものの就労をしたこと(前記認定事実(ウ)b(b)),本件第2却下決定後には,Q電気で2日ないし1,2週間程度就労し,また,Gゴム及び丙町の工場の採用面接を受け,Gゴムについては内定を得たこと(前記認定事実(エ)a(a),(b)),本件第5却下決定後には新聞配達員として就労を開始し,本件保護開始決定を受けた後も現在に至るまで,新聞配達員として約4年以上稼働を継続していること(前記認定事実(エ)a(d))が認められる。 さらに,本件求職活動状況報告書1及び本件第2却下決定に対する審査請求の際に岸和田市福祉事務所長が提出した弁明書に対する原告の反論書(以下「本件反論書」という。)に添付されていた原告の求職活動状況を一覧にした書面によれば,原告は,平成20年3月20日から同年7月7日の本件第2申請までの間に,面接に約13回行ったこと,仕事を探しにハローワークへ約6回 。)に添付されていた原告の求職活動状況を一覧にした書面によれば,原告は,平成20年3月20日から同年7月7日の本件第2申請までの間に,面接に約13回行ったこと,仕事を探しにハローワークへ約6回行ったこと,その他求人広告に掲載されていた求人先に電話をかけるなどしていたこと等が認められる(乙5,18)。なお,これらの書面に記載されている原告の求職活動状況については,求人先の企業名等の記載はないものの,製造業,派遣会社等の業種の記載はあり,その他特段不自然,不合理な点はないため,信用できるものといえる。 以上の事実によれば,原告は,本件第2却下決定前において,ハローワークや求人広告等を利用して求人情報を自ら探し,面接を受ける等就労先を得るための求職活動を行ってい たものであって,上記のように岸和田市に転入する前や本件第5却下決定以降は実際に長期間稼働を継続していたことに照らしても,原告は本件第2却下決定当時,自らの最低限度の生活を維持するために少なくとも社会通念上最低限度必要とされる程度の努力を行う意思を有していたと認めるのが相当である。 b これに対して被告は,(ⅰ)原告がE製作所を1日で退職していること,(ⅱ)原告が本件第1申請に係る面談において,Dとの間で,一緒にハローワークMに求職方法を相談しに行く約束をしていたにもかかわらず,当日になってその約束を反故にしたこと,(ⅲ)原告が平成20年3月11日及び同年6月23日の2件しかハローワークで求人紹介を受けていなかったにもかかわらず,本件求職活動状況報告書1にはハローワークへ多数回行った旨記載されていることをもって,原告には稼働能力を活用する意思がない旨主張する。 (ⅰ)の点については,確かに就労先を1日で自ら退職するという 報告書1にはハローワークへ多数回行った旨記載されていることをもって,原告には稼働能力を活用する意思がない旨主張する。 (ⅰ)の点については,確かに就労先を1日で自ら退職するというのは,一般的には好ましくない就労態度と言わざるを得ないが,原告は退職した理由につき,作業をしている原告の背後から,社長がもっと早く仕事をしろ,もっとやる気を出せ等と終始怒鳴っていたため,精神的に耐えられなかった旨供述している(甲53,原告本人)。E製作所の社長が原告に対して上記原告供述のような終始威圧的な態度で接していたかは定かではないが,就労初日であるため,原告に対して作業内容等を指導するために,作業をしている原告の傍で指示を出していたことは十分に考え得るところであり,これに対する原告の作業内容が社長の思うような内容ではなく,原告に対して強い調子の言葉を発した可能性もある。そして,原告の性格,性質につき,原告は思い詰めやすく,他人から言われたことを真に受け,自分を責めたりする傾向にある旨Aが供述していること(甲52,証人A),本件各申請につき原告世帯の援助をしてきたCも,原告は組織的な職場では人間関係でのトラブルが原因で長続きしないため,原告の性格に何か問題があるのではないかと述べていること(甲58),本件保護開始決定後の原告世帯の指導及び援助等を担当していた被告職員も,原告の性格上職種等に若干の制限があると思われる旨報告していること(甲59)からすると,一般的には威圧的とはいえないような指導・言動であっても,社長の指導・言動を威圧的なものと感じ,翌日以降もそのような指導・言動の下で就労をすることは精神的に難しいと原告が考え,退職するに至ったとしても原告の性格上不自然とはいえず,このような場合に原告の性格を勘案せず,1日 圧的なものと感じ,翌日以降もそのような指導・言動の下で就労をすることは精神的に難しいと原告が考え,退職するに至ったとしても原告の性格上不自然とはいえず,このような場合に原告の性格を勘案せず,1日で退職したことのみをもって稼働能力を活用する意思がないとするのは相当でない。このように,原告がE製作所を1日で退職したことにはそれ相応の理由が認められるため,この点は上記aの判断を左右しない。 また,上記(ⅱ)の点について,原告は,Dとの上記約束の後,蕁麻疹を発症したところ,皮膚科の予約が同年7月1日しか空いておらず,やむなく同日に予約を入れたため,Dとハローワークへ行くことは出来なかった旨主張し,それに沿う供述をしている(甲53,原告本人)。原告が同年6月30日の夕方に発疹及び掻痒感を理由に病院を受診し,蕁麻疹との診断を受け,その翌日である同年7月1日にも同病院の皮膚科を受診して,慢性湿疹との診断を受けたことが認められるのであるから(前記認定事実(イ)e(a)),これと整合する上記原告の供述は信用でき,原告は同年6月30日に同病院を受診した際に,医師から翌日の午後3時頃であれば皮膚科の予約が可能である旨の教示を受け,予約をした上で,同年7月1日の午後3時頃に再び同病院の皮膚科を受診したことが認められる。したがって,原告がDとの上記約束を守らなかったことにつき相応の理由が一応認められる。また,原告がDに対して約束当日に断りの連絡をしたことは事実であり,社会常識に照らし必ずしも適切な対応とはいえないものの,原告は約束前日である同年6月30日に病院を受診した後にDに対して断りの連絡をしようとしたところ,時間が遅かったためDにはつながらなかった旨供述する(甲53)。 同日の原告の受診時間が午後6時と遅かったこと(前 日である同年6月30日に病院を受診した後にDに対して断りの連絡をしようとしたところ,時間が遅かったためDにはつながらなかった旨供述する(甲53)。 同日の原告の受診時間が午後6時と遅かったこと(前記認定事実(イ)e(a))からすれば,原告の供述は信用でき,断りの連絡が遅くなったことについても相応の理由が認められる。したがって,原告がハローワークに一緒に行くとのDとの約束を守らなかったことをもって原告には稼働能力を活用する意思がないとすることはできない。 上記(ⅲ)の点については,原告がハローワークから求人紹介を受けた回数が少ないことは被告主張のとおりであり,求職活動のあり方としては必ずしも相当とはいえないとみる余地もある。しかし,ハローワークからの求人紹介以外にも,原告主張のとおり,ハローワークにおいて求人票を複写したり,窓口で相談をしたり,求人広告を利用することも当然に求職活動の方法として認められるところ,原告は上記aのとおり,これらの求職活動によって実際に面接を受け,内定を得る等しているのであるから,ハローワークからの求人紹介の頻度が少ないことをもって上記aの判断を覆すことはできない。また,ハローワークにおいて可能な求職活動は求人紹介に限られないことは上記のとおりであり,原告自身,ハローワークへは求人票の複写に行ったり,窓口へ相談をしに行っていた旨供述している(原告本人)のであるから,本件求職活動状況報告書1のハローワークへ行った旨の記載もこれらを意味するものと認められる。そうすると,本件求職活動状況報告書1の記載と原告がハローワークから求人紹介を受けた件数とが一致しないことを理由として原告の稼働能力を活用する意思を否定する被告の主張は採り得ない。 (イ) AについてaAは,本件 書1の記載と原告がハローワークから求人紹介を受けた件数とが一致しないことを理由として原告の稼働能力を活用する意思を否定する被告の主張は採り得ない。 (イ) AについてaAは,本件第1申請後にL製作所での清掃の仕事を開始し,本件第2申請後にF加工会社での就労が決定するまで稼働を継続していたこと(前記認定事実(イ)d,(ウ)b(b)),F加工会社において2日間稼働したこと(前記認定事実(ウ)b),本件第2却下決定後もQ電気の工場作業員として平成20年8月から約1か月間,派遣社員として同年10月から約3か月間稼働したこと(前記認定事実(エ)b(a),(b)),本件第5却下決定後にはクリーニング店で約2年半稼働し,月に8万円ないし9万円の収入を得ていたことが認められる(前記認定事実(エ)b(c))。 また,Aについても本件求職活動状況報告書1及び本件反論書に添付されていたAの求職活動状況を一覧にした書面によると,平成20年3月3日から同年7月7日の本件第2申請までの間に約9件の面接を受け,ハローワークへは約9回赴き,その他求人広告に掲載されている求人先に連絡をとっていたことが認められる(乙5,18)。 以上の事実によれば,Aも本件第2却下決定前後を通じ,ハローワークや求人広告等を利用して求人情報を自ら探し,面接を受ける等就労先を得るための求職活動を行い,実際に就労先を自ら獲得して継続して稼働していたものであるから,本件第2却下決定当時,Aは自らの最低限度の生活を維持するために少なくとも社会通念上最低限度必要とされる程度の努力を行う意思を有していたことが認められる。 b これに対し,被告は,AがF加工会社での就労開始日に出社しなかったこと,同社での就労は2日のみであっ 社会通念上最低限度必要とされる程度の努力を行う意思を有していたことが認められる。 b これに対し,被告は,AがF加工会社での就労開始日に出社しなかったこと,同社での就労は2日のみであったことを理由に,Aには稼働能力を活用する意思がなかったと主張する。しかしながら,前者について,Aは,入社日前日に急性胃腸炎になったため入社日を延期した旨を本件第2却下決定に対する審査請求時から一貫して供述するところ(甲52,乙18),同供述に特段不自然・不合理な点はなく,同供述は信用できる。また,後者について,Aは,冷凍室での立ち仕事によって膝に大きな負担がかかったため,就労が困難となり,わずか2日で退職した旨供述しているところ,上記ウ(イ)で認めたとおり,Aには,本件第2却下決定前後を通じて,就労先を大きく制限するほどのものではないが,少なからず膝に痛みがある状態であったと認められるから,上記Aの供述には信用性が認められる(甲52,証人A)。以上より,被告が主張する事実は,上記aの判断を左右するものではない。 なお,本件求職活動状況報告書1の記載とAがハローワークから求人紹介を受けた件数との間に齟齬があるとはいえないことは,上記(ア)bで述べたところと同様である。 オ稼働能力を活用する就労の場(③)について(ア) 原告について原告は,本件第2却下決定当時,無職であったところ,原告の具体的な稼働能力を前提にして,原告が求人側に対して申込みをすれば原則として就労する場を得ることができる状況にあったものとは,本件全証拠によっても認めることができない。 被告は,ハローワークM所管内,泉州地域,大阪市内それぞれの平成20年5月当時の有効求人倍率を根拠に,原告は稼働能力を活用する就労の場を は,本件全証拠によっても認めることができない。 被告は,ハローワークM所管内,泉州地域,大阪市内それぞれの平成20年5月当時の有効求人倍率を根拠に,原告は稼働能力を活用する就労の場を得ることができた旨主張するが,かかる求人倍率等の数値から就労の場が抽象的には存在するといえるとしても,これをもって直ちに原告の具体的な稼働能力に応じた就労の場を得ることができたとすることは許されないことは上記イにおいて述べたとおりである。また,原告が稼働能力を活用する就労の場を得ることができたか否かの判断において,有効求人倍率を一事情として勘案するとしても,本件第2却下決定当時の原告の資産及び収入状況によれば(前記前提事実(2)イ(ア)),原告には大阪市内までの往復交通費を負担する余力すらなく,大阪市内へ求職活動のためにその都度赴くことは極めて困難であったと認められるため,大阪市内の有効求人倍率を考慮することは相当とはいえない。そして,原告に当てはまる35歳から44歳までの有効求人倍率は,常用労働者については,ハローワークM所管内が0.32,泉州地域についても0.40と0.5を下回る極めて低いものであり,常用的パート労働者についてもハローワークM所管内は0.61と低く,泉州地域についても0.90と1倍を下回るものであって,高い倍率であったとは決していえない状況にあった。これに原告がフォークリフトの資格以外に特段の技能を有していなかったことや,原告の最終学歴が中学校卒業であること等も勘案すると,有効求人倍率が判断の一事情となるとしても,原告について求人側に対して申込みをすれば原則として就労する場を得ることができる状況にあったものとは認められないとの上記判断は,何ら左右されるものではない。 また,被告は,原告が本件 原告について求人側に対して申込みをすれば原則として就労する場を得ることができる状況にあったものとは認められないとの上記判断は,何ら左右されるものではない。 また,被告は,原告が本件第2申請後にE製作所で就労が決定したことをもって,原告が一般人に期待される程度の具体的な就労努力をすれば,就労の場を得ることができたと主張するが,過去に一度就労の場を得ることができたとしても,そのことから直ちにその後同様に就労の場を得ることができるとはいえないのであるから,被告の主張はやはり就労の場を得ることができる抽象的可能性をいうにすぎず,採用することができない。実際に,原告は上記エ(ア)aで認定したとおり求職活動を行っていたにもかかわらず,E製作所を含め,就労の場を得られた回数はごく限られたものであったことからも,原告にとって,E製作所を退職した後,就労の場を得ることが極めて困難であったことがうかがわれる。 なお,上記被告の主張を,原告が本件第2却下決定直前にE製作所を自ら退職した(前記認定事実(ウ)b(b))ことをもって,本件第2却下決定当時,原告が自ら退職さえしなければ稼働能力を活用する就労の場を有していたという主張であると解したとしても,上記イのとおり,稼働能力を活用する就労の場とは,申請者が一定程度の給与を一定期間継続して受けられるような場をいうところ,上記説示のような原告がE製作所を退職するに至った経緯と原告の性格(上記エ(ア)b)とに鑑みれば,原告がE製作所での稼働を継続することは極めて困難であったと認められるのであって,原告がE製作所に就職することができたことをもって,原告が稼働能力を活用することができる就労の場を得ることができたものということはできない。 (イ) Aについて められるのであって,原告がE製作所に就職することができたことをもって,原告が稼働能力を活用することができる就労の場を得ることができたものということはできない。 (イ) AについてAは,本件第2申請後,F加工会社での就労が決定し,本件第2却下決定当時もなお同社を退職していなかったのである(前記認定事実(ウ)b(b))から,原告とは異なり,無職ではなく,まさに就労の場を有し,本件第2却下決定当時なおその就労の場を現に活用していたということができる。その後,Aが同社を退職していることは,処分後の事由であり,本件第2却下決定当時に就労の場を活用していたとの判断には何ら影響を与えない。 カ小括以上によれば,本件第2却下決定当時,原告は稼働能力を有し,その稼働能力を活用する意思も有していたものの,稼働能力を活用する就労の場を得られる状況になかったため,就労していなかったことが認められるから,稼働能力活用の要件を充足していたと認めるべきである。また,Aについても,膝の痛みはあったものの,稼働能力を有し,その稼働能力を活用する意思をもって,実際に就労の場を得て活用していたのであるから,当然に稼働能力活用の要件を充足していたことが認められる。 そして,本件第2却下決定当時の原告世帯が最低限度の生活を維持するために必要な生活費(以下「最低生活費」という。)は月 16万0930円であったところ(乙13。なお,乙13の保護決定調書において,原告世帯の最低生活費は合計12万0830円と記載されているが,住宅費である4万0100円がそこには計上されていない。),AがF加工会社で1か月稼働した場合に得られたであろう給与の額は明らかに16万0930円を下回ること(前記認定事実(ウ)b(b)), るが,住宅費である4万0100円がそこには計上されていない。),AがF加工会社で1か月稼働した場合に得られたであろう給与の額は明らかに16万0930円を下回ること(前記認定事実(ウ)b(b)),F加工会社の給与支払方法が毎月20日締めの末日払いであったため,Aが平成20年7月22日に就労を開始したとしても,給与を得られるのは同年8月31日であり,本件第2却下決定の約1か月後であったこと(前記認定事実(ウ)b(b)),及び,本件第2却下決定当時の原告世帯の資産,収入状況(所持金400円,預貯金なし,Aの同年7月分の収入見込額は2万円。前記前提事実(2)イ(ア))からすると,本件第2却下決定当時,原告世帯は最低限度の生活を維持できず,保護が必要な状態にあったことは明らかである。 それにもかかわらず,原告世帯は稼働能力を活用していないとして,本件第2申請を却下した本件第2却下決定は,生活保護法4条1項の稼働能力活用の要件の解釈を誤った違法なものである。 (2) 以上より,本件第2却下決定は,争点2ないし5につき判断をするまでもなく,取消しを免れない。 2 国家賠償請求について(1) 争点6(本件相談の際の被告職員の対応に教示義務違反,申請意思確認義務違反があったか)についてア保護の実施機関の義務保護の実施機関は,福祉事務所の窓口等に相談に訪れる者からの生活保護の開始申請行為が認められない場合であっても,そのような者の申請権を侵害してはならないことはいうまでもない。 そして,福祉事務所に相談に訪れる者の中には,真に生活に困窮し,保護を必要としている者が当然に含まれているところ,そういった者の中には,受給要件や保護の開始申請の方法等につき正しい知識を有していないため,第三者の援助がなければ保護の開 は,真に生活に困窮し,保護を必要としている者が当然に含まれているところ,そういった者の中には,受給要件や保護の開始申請の方法等につき正しい知識を有していないため,第三者の援助がなければ保護の開始申請ができない者も多いのであるから,保護の実施機関としては,そのような者が保護の対象から漏れることのないよう,相談者の言動,健康状態に十分に注意を払い,必要に応じて相談者に対し適切な質問を行うことによって,その者が保護を必要としている者か否か,また,保護の開始申請をする意思を有しているか否かを把握し,有している場合には保護の開始申請手続を援助することが職務上求められるものといえる。 したがって,保護の実施機関が,相談者の言動等からその者が保護の開始申請をする意思を有していることを把握したにもかかわらず,申請の意思を確認せず,また,相談者に対して現在の生活状況等の質問等をすれば相談者が保護の開始申請をする意思を有していることを容易に推知し得たにもかかわらず,申請の意思を確認せず,その結果,相談者の申請権が侵害されたものといえるときは,保護の実施機関が有する職務上の義務違反が認められ,保護の実施機関が所属する行政主体はこれによって生じた損害について賠償する責任を負うものというべきである。そこで,以下では,上記の観点から本件において申請権侵害行為があったかにつき検討する。 イ申請権侵害行為の事実の有無(ア) 原告は,生活に困窮していたため,被告の福祉事務所に電話で住所と氏名を伝えた上で,仕事が見つからず相談したい旨伝えたのに対し,電話応対にあたった被告職員から「とりあ えず相談に乗るので窓口に来てください。」との返答があったことから,原告夫婦は,電話をかけた翌日である平成20年5月20日ないし同年6月中旬頃の間 し,電話応対にあたった被告職員から「とりあ えず相談に乗るので窓口に来てください。」との返答があったことから,原告夫婦は,電話をかけた翌日である平成20年5月20日ないし同年6月中旬頃の間に,被告の福祉事務所を訪問し,「昨日電話したOです。生活保護の相談をしたいんですけど。」と申し入れた(本件相談)ところ,応対した被告職員のPは,原告に対して病気を患っているか尋ね,原告がこれに対して患っていない旨答えると,「そうですか。病気でもないんですから,健康だから無理です。若いし,まだ仕事を探せば見つかるので,探して仕事してください。」と述べ,原告夫婦から生活状況や求職状況等の事情を聴き取ったり,要保護性を確認したりすることすらせず,原告夫婦に保護の開始申請を諦めさせたと主張し,原告及びAはこれに沿う供述をする(甲52,53,証人A,原告本人)。 (イ) そこで検討するに,本件第1申請時の面談記録票に「先週窓口での相談のみのケース」との記載があること(乙2)からすると,原告夫婦は,本件第1申請(平成20年6月24日)をした前の週に被告の福祉事務所に相談のために訪問したことが認められる(なお,その際に原告夫婦の対応をした被告職員の氏名については,当初原告夫婦は覚えておらず,本件訴訟が提起された後に,被告から指摘を受けたため,被告の福祉事務所を訪れ,当該職員がPという名前であることを初めて原告において確認した旨供述しているところ(甲52,証人A,原告本人),本件相談から本件訴え提起までの間だけでも約1年半が経過していることからすると,原告夫婦のこの点についての供述は採用し難く,本件相談に対応した職員がPであったと認めることはできない。もっとも,窓口での相談に訪れた者がその対応をした職員の名前を逐一記憶している すると,原告夫婦のこの点についての供述は採用し難く,本件相談に対応した職員がPであったと認めることはできない。もっとも,窓口での相談に訪れた者がその対応をした職員の名前を逐一記憶していることが通常であるとはいえないため,このことをもって原告夫婦の供述全体の信用性が減殺されるものではない。)。 (ウ) そして,本件第1申請当時,原告夫婦は所持金300円,預貯金477円しか有しておらず,ガスの供給も止められ,極めて厳しい生活状態であったこと,及び,生活保護に関する相談をするためにB会が開催していた「くらしのなんでも相談会」に自ら赴き,本件第1申請をするに至ったこと(前記認定事実1(1)ア(イ)a,b)からすると,原告夫婦は本件第1申請に近接する本件相談時も同様に厳しい生活状態にあり,保護を必要とする状況にあったものと推認され,かかる状況下において,原告が被告の福祉事務所への相談に及んでいることに鑑みれば,原告は,本件相談時にも保護の開始申請をする意思を有していたものと認めるのが相当である。 (エ) このように厳しい生活状態にあり,保護の開始申請を望んでいる者が福祉事務所を訪れて職員に対して現在の状況等を申告し,職員から保護の開始申請に関する説明を受ける等の適切な対応を受けた場合には,その場で保護の開始申請手続を行うのが自然であるといえることに照らせば,原告が本件相談の日には保護の開始申請をしていないということは,原告は本件相談の際に上記のように厳しい生活状況にある原告の現状を申告できなかったか,保護の開始申請手続に関する説明を受ける等の適切な対応を受けられなかったために,保護の開始申請に至らなかったものと解するのが相当である。 したがって,本件相談の際に,その応対をした被告職員が,原告の 続に関する説明を受ける等の適切な対応を受けられなかったために,保護の開始申請に至らなかったものと解するのが相当である。 したがって,本件相談の際に,その応対をした被告職員が,原告の年齢,健康状態では保護を受けることができないと一方的に決めつけ,「病気でもないんですから,健康だから無理です。 若いし,まだ仕事を探せば見つかるので,探して仕事してください。」と述べて,それ以上原告夫婦から生活状況や求職状況等の事情を聴き取ることもしなかったため,保護の開始申請をすることができなかったという原告及びAの供述は信用することができ,原告主張のとおりのやりとりが行われたと認めるのが相当である。 ウそして,原告夫婦は被告の福祉事務所を訪れ,前日に電話した旨や生活保護の相談に来た旨,原告夫婦ともに無職である旨を,応対した被告職員に告げていることからすれば,被告職員は原告夫婦が無職状態にあり,生活に困窮しているため保護の開始申請を行うことを念頭において相談に訪れていることを把握していたと優に推認できる。そうであるならば,被告職員は,原告夫婦の現在の生活状態や就労,求職状況等を聴取することによって,原告夫婦が保護の開始申請を必要とする状態であること,ひいては保護の開始申請の意思を有していることを容易に推知し得たというべきである。それにもかかわらず,被告職員は原告夫婦の現在の生活状態や就労,求職状況等の聴取を怠り,かつ,保護の可否については慎重な判断が要求されるにもかかわらず,原告の年齢及び健康状態のみに基づいて安易に原告は稼働能力活用の要件を充足していないと即断し,それ以上原告夫婦への対応を行わなかったものといえる。原告は保護の開始申請の意思を有していたのであるから,被告職員が原告夫婦の保護の開始申請の意思の有無 働能力活用の要件を充足していないと即断し,それ以上原告夫婦への対応を行わなかったものといえる。原告は保護の開始申請の意思を有していたのであるから,被告職員が原告夫婦の保護の開始申請の意思の有無を把握するために適切な聞き取り等を行っていれば,原告は保護の開始申請をすることができたはずであって,かかる被告職員の対応は原告の申請権を侵害するものであると認められ,職務上求められる義務を怠った国家賠償法上違法なものであり,この点につき少なくとも過失があると認められる。 (2) 争点7(本件各決定が保護の補足性の要件につき定める生活保護法4条1項に違反し,本件各決定に関与した被告職員らの職務行為に国家賠償法1条1項の違法性が認められるか)についてア認定事実前記前提事実に加え,各項掲記の証拠によれば,以下の各事実が認められる。 (ア) 本件第3却下決定についてa 本件第3申請に至る経緯原告は,本件住宅に入居以来一度も賃料及び共益費(以下「賃料等」という。)の支払をしていなかったことから,本件住宅の所有者である独立行政法人LLから,賃貸借契約解除に基づき本件住宅の明渡し並びに未払賃料等及び遅延損害金の支払を求める訴訟を提起された。同訴訟の第1回口頭弁論期日が平成20年9月5日に開かれ,同期日において,原告と独立行政法人LLとの間で,原告が未払賃料等の合計額25万4700円及びこれに対する遅延損害金を同月19日までに支払うこと,原告が同支払を怠ったときは賃貸借契約は当然に解除となり,原告は本件住宅を直ちに明け渡すことを内容とする和解がなされた。(乙19)原告夫婦は,身内の援助やAの内職による月約1万円の収入によって生活をしていたが,上記和解条項に基づ となり,原告は本件住宅を直ちに明け渡すことを内容とする和解がなされた。(乙19)原告夫婦は,身内の援助やAの内職による月約1万円の収入によって生活をしていたが,上記和解条項に基づく賃料等の支払に迫られ,同月5日,本件第3申請をするに至った(甲53,乙27)。 b 本件第3申請後の事情(a) 原告は,本件第3申請の際に行われた面接において,被告職員に対し,Gゴムの内定をすでに得ていること及び丙町の工場の採用結果が平成20年9月8日に出ることを伝えるとともに,原告はGゴムへ就労開始日の確認の連絡をしなければならないが,Gゴムの給与は毎月末締めの翌月末日払いであるのに対し,丙町の工場は週払いであるため,生活を考えると週払いで給与を得られる丙町の工場で働く方が良いのではないか悩んでいる旨を伝えた(乙27)。 (b) 原告は,本件第3申請の際に,被告職員から就労先が決定した場合には社会福祉協議会の貸付制度の利用が可能になるとして,同制度の利用を促されたため,平成20年9月5日,社会福祉協議会を訪れたところ,同協議会の職員から,就労先が決定した場合には10万円の緊急小口貸付が可能であるため,Gゴムに就労先を決定するよう指導された。 c 本件第3却下決定本件第3申請の担当者であったDは,平成20年9月10日に,原告から,Gゴムへの連絡が遅れたため不採用となったこと及び丙町の工場も不採用となったことの連絡を受けた。 Dは,同月19日,原告夫婦はともに健康で,就労の意思があり,かつ,同年5月当時の泉州地域及び大阪市内の有効求人倍率並びに原告が同年7月及び9月に就労先の内定を得ていることからすると,原告夫婦はともに就労を期待できる可能性があるため,原告 労の意思があり,かつ,同年5月当時の泉州地域及び大阪市内の有効求人倍率並びに原告が同年7月及び9月に就労先の内定を得ていることからすると,原告夫婦はともに就労を期待できる可能性があるため,原告世帯は稼働能力が未活用であり,生活保護法4条1項が定める保護の補足性の要件を充足しておらず,本件第3申請を却下する旨を本件第3申請に係るケース記録票に記載した上で,同月19日,「稼働能力の活用が図られるため最低生活維持可能」との理由で本件第3申請を却下すべきとの保護決定調書を作成した。同日,上記ケース記録票や保護決定調書等を基に岸和田市福祉事務所長による本件第3申請に対する却下の決裁がなされ,同月22日付けで本件第3却下決定がなされた。(乙28,29)(イ) 本件第4却下決定についてa 本件第4申請に至る経緯原告が上記(ア)a記載の和解条項で定められた支払期日までに本件住宅の未払賃料等を支払わなかったため,独立行政法人LLは,平成20年10月7日,同和解調書を債務名義として,動産差押及び家屋明渡の強制執行を申し立てた。 その結果,本件住宅に係る家屋明渡の強制執行が同年11月7日に実施されることとなった。原告夫婦は同日までに本件住宅から退去しなければならなくなったものの,保証人や初期費用の支払等の問題から転居先を見つけられなかったため,原告は本件第4申請をするに至った。 (甲53,乙31,36,37,原告本人)b 本件第4申請後の事情(a) 原告は,平成20年11月3日,友人から引越費用を借り,かつ,Aの母に保証人になってもらい,賃料額2万3000円,風呂なしの住宅を賃借し,転居した(甲52,53,乙42,証人A)。 (b) 本件第4申請の担当者であったDは,平成20年11 かつ,Aの母に保証人になってもらい,賃料額2万3000円,風呂なしの住宅を賃借し,転居した(甲52,53,乙42,証人A)。 (b) 本件第4申請の担当者であったDは,平成20年11月11日,原告宅を訪問し,原告夫婦と面談をした。Dは,原告に対して求職活動において最も活用すべきハローワークにて求職の記録がほとんどない状況では,原告夫婦が十分に求職活動しているとは認め難い旨伝え,もっとハローワークを活用するよう助言をした。(乙42)(c) Dは,平成20年10月31日に,ハローワークM及びハローワークNに対し,原告夫婦の同年1月1日以降の月日別求人紹介数及びその結果を文書で照会したところ,① ハローワークMからは,同年11月10日,原告に対して同年6月23日に求人を1件紹介したが結果は不採用であったこと,Aについては求人紹介の事実がなかったこと,② ハローワークNからは,同年11月12日,原告夫婦に対して同年3月11日にそれぞれ1件の求人を紹介したが,いずれも不採用であったことが確認された旨の回答を受けた(乙38ないし42)。 c 本件第4却下決定Dは,平成20年11月12日,ハローワークM及びハローワークNからの上記照会に対する回答結果を受け,原告夫婦は求職活動をするにあたり最も活用することが期待されるハローワークを十分活用しているとは到底言えず,求職活動の方法や頻度は本件第1ないし第3申請時と変わっていないとして,稼働能力を活用しておらず,生活保護法4条1項が定める保護の補足性の要件を満たさず,本件第4申請を却下すべき旨を本件第4申請に係るケース記録票に記載した上で,「稼働能力の活用が図られるため最低生活維持可能」との理由で本件第4申請を却下する旨の保護決定調書を作成した。 同日,上記 本件第4申請を却下すべき旨を本件第4申請に係るケース記録票に記載した上で,「稼働能力の活用が図られるため最低生活維持可能」との理由で本件第4申請を却下する旨の保護決定調書を作成した。 同日,上記ケース記録票や保護決定調書等を基に岸和田市福祉事務所長による本件第4申請に対する却下の決裁がなされ,同月19日付けで本件第4却下決定がなされた。(乙42,43)(ウ) 本件第5却下決定についてa 本件第5申請後の事情(a) 原告からの本件第5申請を受け,担当となったJは,平成21年1月8日,原告から求職活動状況につき聴取したところ,同月6日にハローワークMへ求人情報の検索をしに赴いたこと,ハローワークの職員とも窓口で相談をし,原告が望む職種に該当する仕事があれば連絡をしてもらうことになったことの報告を受けた。Jは,同月8日,ハローワークM及びハローワークNに対し,原告の平成20年11月以降の月日別求人紹介数及びその結果を文書で照会したところ,両ハローワークにおいて原告に求人を紹介した記録がないとの回答がされた。 (乙48,50ないし53)(b) Jは,平成20年1月19日,原告方を訪問し,原告夫婦と面談をし,その際,原告から本件求職活動状況報告書3の提出を受けた。Jは,原告から,E製作所を1日で退職した理由を聴取した。Jは,その聴取内容として,原告は,作業中に社長が背後から常に口を出してくるため,煩わしくて嫌だったからと答えた旨,本件第5申請に係るケース記録票に記載した。(乙48)(c) Jは,平成20年1月20日,ハローワークMにおいて,原告の年齢,資格,生活歴及び職歴を基に,原告が応募可能な求人情報を検索したところ,警備員,工場内組立作業,介護福祉施設利用者の (c) Jは,平成20年1月20日,ハローワークMにおいて,原告の年齢,資格,生活歴及び職歴を基に,原告が応募可能な求人情報を検索したところ,警備員,工場内組立作業,介護福祉施設利用者の補助員,ピッキング作業等の職種に関する7件の求人情報を得た(乙48,56)。  b 本件第5却下決定(a) Jは,平成20年1月20日,被告職員であるMM及びNNと原告世帯の稼働能力活用の要件充足性につき協議をした。その結果,① 定期通院もなく,不調はないとの回答をしていることや,これまで派遣業を中心に就労してきたことから原告には稼働能力が認められ,② 原告方より自転車で通える求人が多数あること,求職活動を記載する書面には面接場所や面接担当者,面接の結果等を具体的に記載するよう,本件第4却下決定時,本件第5申請時及び面談時に指導していたにもかかわらず,本件求職活動状況報告書3からは具体的な内容が読み取れず真摯な求職活動を行っていたとは到底思えないこと,E製作所を1日で退職したこと,Gゴムから内定を得ながらも就労する旨の意思を伝えなかったため不採用になったこと等から,原告には稼働能力を活用する意思があるとは認められず,③ハローワークMでの求人検索結果並びに原告がE製作所及びGゴムの内定を得たことをもって,原告は稼働能力を活用する就労の場を得ることができると認められる,と稼働能力の活用に係るそれぞれの要素につき判断した。そして,Jは,上記①ないし③の要素を総合すると,原告は稼働能力を有するにもかかわらず,それを活かそうとしているとは思えないとして,生活保護法4条1項の稼働能力活用の要件を充足していないため,本件第5申請を却下すべきと判断し,その旨を本件第5申請に係るケース記録票に記載した。(乙48)また,J ているとは思えないとして,生活保護法4条1項の稼働能力活用の要件を充足していないため,本件第5申請を却下すべきと判断し,その旨を本件第5申請に係るケース記録票に記載した。(乙48)また,Jは,同日,「稼働能力の活用が図られるため最低生活維持可能」との理由で本件第5申請を却下すべきとの保護決定調書を作成し,上記ケース記録票や保護決定調書等を基に岸和田市福祉事務所長による本件第5申請に対する却下の決裁がなされ,同月22日付けで,本件第5却下決定がなされた(乙57)。 イ本件各決定が生活保護法4条1項の解釈適用を誤った違法なものであるかについて(ア) 本件各決定が生活保護法4条1項の解釈適用を誤った違法なものであるかにつき,以下検討する。 前記1(1)イで述べたとおり,生活保護法4条1項が定める稼働能力活用の要件の充足性は,申請者に稼働能力があるか否か,その具体的な稼働能力を前提として,その能力を活用する意思があるか否か,実際に稼働能力を活用する就労の場を得ることができるか否かの3要素によって判断するのが相当である。本件各決定は,平成20年7月1日から平成21年1月22日までの間になされているところ,上記3要素の有無ないし程度は,その性質上,特段の事情がない限り,短期間で変動するものではない。したがって,前記1(1)カで説示したとおり,本件第2却下決定当時,原告世帯は稼働能力活用の要件を充足していたものである以上,前記1(1)ウないしオにおいて考慮した事情のほかにその判断を覆すような特段の事情がない限り,同決定に近接してなされた本件第2却下決定を除く他の本件各決定当時も,原告世帯は稼働能力活用の要件を充足していたものと認めるのが相当であるところ,かかる特段の事情が本件各決定当時に存したものと認めるに 定に近接してなされた本件第2却下決定を除く他の本件各決定当時も,原告世帯は稼働能力活用の要件を充足していたものと認めるのが相当であるところ,かかる特段の事情が本件各決定当時に存したものと認めるに足る証拠はない。 (イ) これに対して被告は,① 原告がGゴムから内定を得ていたにもかかわらず,内定に対する返事をするのが遅れたため不採用となったこと,② 原告が被告職員に提出した本件求職活動状況報告書1ないし3の記載が具体的でないことをもって,原告ないし原告夫婦に稼働能力を活用する意思がなかったことを基礎付ける事実として主張し,さらに,③ Jがハローワークにおいて原告が応募可能な求人情報を検索したところ7件の求人情報が存在したことをもって,原告が稼働能力を活用する就労の場を得ることができる状況にあったことを基礎付ける事実として主張しているため,以下それぞれにつき検討する。 a ①Gゴムについて原告は本件第3申請時にGゴムから内定を得ていたものの,Gゴムへ内定に対する返事を直ちに行わずにいたところ,後日,Gゴムから不採用とされたことは前記前提事実(2)ウ(イ)のとおりである。原告は,この点につき,本件第3申請時の生活状況から,可能な限り早く収入を得られる仕事に就く必要があったところ,Gゴムでは,給与は毎月末締めの翌月末日払いとの雇用条件であったことから,原告が平成20年9月から就労を開始したとしても,同年10月31日まで給与の支払を得ることができない状態で生活をしなければならなかったため,週払いであった丙町の工場の方が就労先として好ましいと考え,同工場からの採否の結果が出るまで,Gゴムの内定に対する返事を保留にしたい旨Gゴムの担当者に伝え,了解を得ていたにもかかわらず,同工場から不採用の った丙町の工場の方が就労先として好ましいと考え,同工場からの採否の結果が出るまで,Gゴムの内定に対する返事を保留にしたい旨Gゴムの担当者に伝え,了解を得ていたにもかかわらず,同工場から不採用の通知を受け,原告がGゴムに連絡をしたところ,上記の約束を反故にされ,内定を取り消す旨告げられたと主張し,これに沿う供述をする(甲53,原告本人)。 原告は,本件第3申請時の面談でも,被告職員に対し,Gゴムの給与は毎月末締めの翌月末日払いであるのに対し,丙町の工場は週払いであるため,生活を考えると週払いで給与を得られる同工場で働く方が良いのではないか悩んでいる旨を伝えていたのであるから(前記2(2)アの認定事実(ア)b(a)),実際にGゴムの担当者が内定に対する返事の留保を了解していたものであったか否かはさておき,少なくとも原告が,かかる了解を得られたとの認識の下,より早期に収入を得ることができるとの観点から,Gゴムよりも丙町の工場への就職を優先しようと考えたとしても特段不自然な点は見あたらず,上記原告の供述には信用性が認められる。そして,本件住宅の未払賃料等約25万円を平成20年9月19日までに支払わなければ本件住宅を退去しなければならなかった等の本件第3申請時の原告夫婦の生活状況(前記2(2)アの認定事実(ア)a)からすると,毎月末締めの翌月末日払いのGゴムではなく,週払いの丙町の工場での就労を望み,Gゴムに対する返事を保留にした原告の対応が相当性を欠くものということはできない。したがって,この点をもって,原告には稼働能力を活用する意思がないとすることはできない。 b ②本件求職活動状況報告書1ないし3の記載について本件求職活動状況報告書1の記載内容に信用性が認められることは,前記1(1)エ(ア)aで述べた る意思がないとすることはできない。 b ②本件求職活動状況報告書1ないし3の記載について本件求職活動状況報告書1の記載内容に信用性が認められることは,前記1(1)エ(ア)aで述べたとおりであるところ,本件求職活動状況報告書2及び3についても,その記載に特段不自然,不合理な点はなく,かつ,面接先や求人広告を見て電話をした先の会社名,面接の結果,ハローワークへ窓口に相談をしに行ったこと等の求職活動の内容の記載がある等,本件求職活動状況報告書1よりもさらに具体性を備えたものであることからも,その記載内容には信用性が認められる。 そして,本件求職活動状況報告書2及び3によれば,原告夫婦は,平成20年9月から平成21年1月の間,ハローワークでの窓口相談や求人情報の検索,求人広告を利用した求人先への接触,面接,内職活動,日雇い労働,派遣社員としての就労等の各求職活動を月に複数回ずつ行っていたものと認められるから(乙34,35,54,55),原告夫婦は,本件第2却下決定後も自らの最低限度の生活を維持するために少なくとも社会通念上最低限度必要とされる程度の努力を行う意思を有していたものと認められる。 c ③求人情報検索の結果について本件第5申請の判断のために,Jがハローワークにおいて原告が応募可能な求人情報として検索したところ,7件の求人情報があったことは事実であるが(前記2(2)アの認定事実(ウ)a(c)),前記1(1)イで述べたとおり,複数の求人情報が存在したことからは,原告が就労先を得られる抽象的可能性が認められるといえるにすぎず,原告がそれらの求人先に就労の申込みをしたとしても,必ずしも求人先が原告を採用するとは限らない。また,その件数も7件にとどまること(その中には,梱包・ピ 抽象的可能性が認められるといえるにすぎず,原告がそれらの求人先に就労の申込みをしたとしても,必ずしも求人先が原告を採用するとは限らない。また,その件数も7件にとどまること(その中には,梱包・ピッキング作業を職務内容とするOO株式会社のように,すでに原告において就職活動を行ったが,採用されなかった求人先もある(原告本人)。),その中には,雇用条件として,交通誘導警備2級所持者や普通自動車免許取得者を優遇するものもあったこと,原告のこれまでの就労経験や前記1(1)ウ(ア)で認定したような原告の具体的な就労能力の内容,原告が運転免許等も有していないこと等に照らすと,原告がこれら求人先に就労の申込みをしたとしても,採用される蓋然性があったものともいえないのであるから,上記のような原告が応募可能な求人情報が存在することをもって,直ちに,原告が稼働能力を活用する就労の場を得られる状況にあったとすることはできない。 d その他,被告は,原告夫婦のハローワークの利用頻度,有効求人倍率,原告が実際に平成20年7月にE製作所,同年9月にGゴムからそれぞれ内定を得ることができたことを理由に,本件各決定当時,原告世帯は稼働能力を活用していなかった旨主張するが,これらの主張に理由がないことは前記1(1)エ及びオで述べたとおりである。 (ウ) 以上より,原告ないし原告夫婦に稼働能力を活用する意思がなかった,また,原告が稼働能力を活用する就労の場を得ることができる状況にあったとする上記被告の主張は採り得ず,その他,上記(ア)の判断を覆すような事情は認められないため,本件各決定当時,原告世帯は稼働能力活用の要件を充足していたというべきである。 そして,本件第1ないし第3却下決定当時の原告世帯の最低生活費は16万0930円で 覆すような事情は認められないため,本件各決定当時,原告世帯は稼働能力活用の要件を充足していたというべきである。 そして,本件第1ないし第3却下決定当時の原告世帯の最低生活費は16万0930円であり,本件第4却下決定当時は14万3830円,本件第5却下決定当時は14万7650円であったところ(前記2(2)アの認定事実(イ)b(a),乙7,13,29,43,57。なお,本件各決定に係る保護決定調書の中には,記載されている最低生活費に原告世帯が月々支払う家賃が含まれていないものもあるため,そのような場合には家賃を加えて上記金額を算出するのが相当である。),本件各決定当時の原告世帯の生活状況(前記前提事実(2)ア(ア),イ(ア),エ(ア),オ(ア),前記2(2)アの認定事実(ア)a)からすると,本件各決定当時,原告世帯は最低限度の生活を維持できない状態であったことが認められる。 それにもかかわらず,原告世帯は稼働能力を活用していないとして本件各申請を却下した本件各決定は,生活保護法4条1項の稼働能力活用の要件の解釈を誤った違法なものと認められる。 ウ生活保護法4条1項に違反する本件各決定に関与した被告職員らの職務行為に国家賠償法1条1項の違法性が認められるかについて国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに,国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するものであり,ある行政処分がその根拠法規の定める要件を欠くなどして違法であるとしても,そのことから直ちに国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく,行政庁が資料を収集し,これに基づき事実を認定し,処分要件に該当するか否かを判断する上にお て違法であるとしても,そのことから直ちに国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく,行政庁が資料を収集し,これに基づき事実を認定し,処分要件に該当するか否かを判断する上において,職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と処分をしたと認め得るような事情がある場合にはじめて,国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものと解される(最高裁判所平成元年(オ)第930号,同年(オ)第1093号同5年3月11日第一小法廷判決・民集47巻4号2863頁参照)。 そこで,かかる観点から,生活保護法4条1項に違反する本件各決定に関与した,D,J及び岸和田市福祉事務所長の職務行為に国家賠償法1条1項にいう違法性が認められるかにつき,以下検討する。 (ア) DについてaDは,本件第1ないし第4申請を担当し,それぞれの申請につき,① 原告夫婦ともに健康であること,② 原告夫婦の求職活動方法ないし頻度が不十分であり,原告夫婦には稼働能力を活用する意思が認められないこと,③ 平成20年5月当時の泉州地域及び大阪市内の有効求人倍率や原告がE製作所やGゴムの内定を実際に得たことから原告夫婦は就労の場を得ることができる状況にあったことをそれぞれ認定し,その結果,原告世帯は稼働能力を活用していないため,生活保護法4条1項の要件を充足せず,本件第1ないし第4申請を却下すべきと判断して,その旨の意見をケース記録票に付し,岸和田市福祉事務所長へと保護決定調書を提出したことが認められる(前記1(1)アの認定事実(イ)f,(ウ)c,前記2(2)アの認定事実(ア)c,(イ)c)。この点,本件第1ないし第3申請に係るケース記録票には,②の記載はないものの,稼働能力活用の意思の有無は,稼働能力活用の の認定事実(イ)f,(ウ)c,前記2(2)アの認定事実(ア)c,(イ)c)。この点,本件第1ないし第3申請に係るケース記録票には,②の記載はないものの,稼働能力活用の意思の有無は,稼働能力活用の要件充足性の判断要素の1つであって,本件第4申請のケース記録票には,求職活動の方法や頻度が本件第1ないし第3申請時から変化していないことをもって,稼働能力を活用していないことの理由としていることから,Dは本件第1ないし第3申請の際にも,原告夫婦の求職活動方法や頻度が不十分であると認定し,稼働能力を活用する意思がない,若しくは,原告夫婦にかかる意思があるかは疑わしいと判断していたと認めるのが相当である。D自身も,本件第1ないし第3申請に係る調査の結果,原告夫婦ないし原告が十分な求職活動を行っていないとの判断をした旨述べている(証人D)。 b(a) Dが上記②の判断をした根拠は,本件第1,第2及び第4申請については,原告が提出した本件求職活動状況報告書1及び2の記載内容が具体性に欠け,記載されている求職活動の回数も不十分であり,ハローワークが原告夫婦に対して行った求人紹介の回数との間に齟齬もあったことから,原告夫婦が真摯に求職活動を行っていたとは到底認められないと判断したことにあり(証人D),本件第3申請については,原告が内定を得ていたGゴムへの連絡を怠り,結果,不採用となったと判断したためであった(証人D)。 (b) しかし,本件求職活動状況報告書1及び2の記載に具体性が認められ,その記載内容には特段不自然,不合理な点がなく,記載されている求職活動状況からすると,原告夫婦が自らの最低限度の生活を維持するために少なくとも社会通念上最低限度必要とされる程度の努力を行っていたことが認められることは前記イ(イ)bで述べ なく,記載されている求職活動状況からすると,原告夫婦が自らの最低限度の生活を維持するために少なくとも社会通念上最低限度必要とされる程度の努力を行っていたことが認められることは前記イ(イ)bで述べたとおりである。Dは,ハローワークに最低でも週に1回行けるはずであるのに,原告夫婦がこれを怠っていたことをもって不十分な求職活動であると認めた旨供述するが(証人D),ハローワークは生活困窮者が容易に利用可能な求職活動の場として重要なものではあるものの,それを超えて他の就職活動の活用よりもハローワークの活用を常に最優先にしなければならないとまでいうことはできず,原告夫婦のように求人広告等のハローワーク以外の方法も活用している場合に,ハローワークを十分に活用していないからという理由で,不十分な求職活動であるとすることには何ら合理性は認められない。 また,申請者が提出した自らの求職活動内容を記載した書面の内容が具体性に欠け,求職活動内容が明らかでない場合や客観的な事実との間に齟齬があるように思われる場合には,保護の実施機関の職員は,申請者から具体的な求職活動内容を聴取することによって,求職活動状況や客観的事実との齟齬の有無,その理由を明らかにすることが可能であって,国が生活に困窮するすべての国民に対し,その困窮の程度に応じ,必要な保護を行い,その最低限度の生活を保障するとともに,その自立を助長することを目的とし(生活保護法1条),すべて国民は,同法の定める要件を満たす限り,同法による保護を無差別平等に受けることができる(同法2条)という同法の趣旨に鑑みても,保護の実施機関の職員は,上記聴取を行うなどして申請者の求職活動状況を適切に調査すべき義務を負うものといえる。 本件においても,Dが,原告夫婦から求職活動内容 (同法2条)という同法の趣旨に鑑みても,保護の実施機関の職員は,上記聴取を行うなどして申請者の求職活動状況を適切に調査すべき義務を負うものといえる。 本件においても,Dが,原告夫婦から求職活動内容につき適切に聴取していれば,原告夫婦が相当程度の求職活動を行っていること,並びに,ハローワークからの照会結果と本件求職活動状況報告書1及び2との間に齟齬が存するとはいえないことが明らかになったものといえる。しかしながら,Dは,本件求職活動状況報告書1及び2の記載内容が具体性に欠けるとしながら,その記載内容について原告夫婦から何ら聴取することもしていない(証人D)。かかるDの対応に照らせば,Dは,原告の年齢が若く,健康状態に問題がないことに照らせば就労の場は十分存するはずである,それにもかかわらず就労していないのは,十分な就労活動をしていないためにほかならないといった先入観をもって原告に接していたものというほかない。 (c) さらに,原告がGゴムから内定を得たものの,それに対する返事をするのが遅くなってしまったことにつき相当性を欠くものとはいえず,これをもって原告の稼働能力を活用する意思を否定することができないことは,前記イ(イ)aで述べたとおりである。そしてこのようなGゴムの就職活動に関する事情は,本件第3申請時に作成された面接記録票の相談内容の欄に記載されており,本件第3申請の担当者であったDは,同面接記録票からかかる事情を認識していたものである(乙27,証人D)。それにもかかわらず,Dは,内定を得ている仕事を優先することが自然であるとして,原告がGゴムの内定を得ながら週払いであって早期に給与の支払を受けることができる丙町の工場の採用を優先しようとしたという,原告夫婦が当時置かれていた生活状況等やそれに基 ることが自然であるとして,原告がGゴムの内定を得ながら週払いであって早期に給与の支払を受けることができる丙町の工場の採用を優先しようとしたという,原告夫婦が当時置かれていた生活状況等やそれに基づく原告の対応を認識しながら,原告が内定に対する返事をせず,放置して不採用となった事実は大きく,他の事情は調査するまでもないとして,原告夫婦の生活状況や求職活動状況につき何ら調査をすることなく,原告夫婦には稼働能力活用の意思が認められないとの判断をしている(証人D)。かかるDの対応は,Gゴムから得た内定を無駄にしてしまったという外形のみをみて,その経緯やその背景にある当時の原告夫婦の生活状況等について, 上記のとおり一定の事情等が存することを認識しながら,原告夫婦からさらに聴き取りを行うなどの必要な調査を行うことを怠ったものというほかない。 c また,前記1(1)イで述べたとおり,稼働能力を活用する就労の場を得られる状況であったか否かの判断においては,有効求人倍率や過去に申請者が求人先から内定を得たこと等の抽象的可能性をもってその基準とすべきでないから,上記③のDの判断は生活保護法4条1項の解釈を誤ったものである。 なお,本件246号通知において,就労の場を得ることができるか否かの評価については,本人の稼働能力を前提として,地域における有効求人倍率や求人内容等の客観的な情報や,育児や介護の必要性などその者の就労を阻害する要因をふまえて行うこととされていたことから(乙25),Dが有効求人倍率等を考慮したことをもって,直ちに国家賠償法上違法であると認めることはできない。しかし,有効求人倍率自体は高く,また,申請者も就労の場を得るために努力をしているといった場合であっても,当該申請者の稼働能力の程度や求人の内容,さらには,当 上違法であると認めることはできない。しかし,有効求人倍率自体は高く,また,申請者も就労の場を得るために努力をしているといった場合であっても,当該申請者の稼働能力の程度や求人の内容,さらには,当該申請者の性格等の個別的事情から,就労の場を得られないことも存することは明らかであるから,有効求人倍率自体を1つの判断材料とするとしても,本件246号通知にもあるように求人内容等を把握するとともに,申請者の過去の求職活動状況及びその結果や,申請者の稼働能力の程度や性格等の個別的事情を調査し,申請者が就労の場を得られる状況にあるか否かを適切に判断すべき義務が保護の実施機関の職員に存したことは,上記のような本 件246号通知の内容から何ら否定されるものではない(本件246号通知も,上記のような有効求人倍率等や求人内容等の客観的な情報や,その者の就労を阻害する要因を「ふまえて」就労の場を得ることができるか否かの判断をすべきものとしているのであって,そこで掲げられている情報や要因のみによって判断すべきものとする趣旨とは認められない。)。 本件においては,本件求職活動状況報告書1及び2から,原告夫婦が平成20年3月以降,求職活動を続けていたこと,及び,特に原告については,面接を繰り返しても原告が一定期間継続して就労できるような就労先を得ることは困難な状況にあったことがうかがわれる。それにもかかわらず,Dは,原告夫婦の具体的な求職活動状況を適切に把握してそれを考慮しようとはせず,その他,原告夫婦の個別的事情についても調査することなく,有効求人倍率等の抽象的可能性のみを理由に上記③の判断をしている。 d 以上のb及びcより,Dは,原告夫婦の稼働能力を活用する意思や稼働能力を活用する就労の場を得られるか否かという,稼働能力活用の 等の抽象的可能性のみを理由に上記③の判断をしている。 d 以上のb及びcより,Dは,原告夫婦の稼働能力を活用する意思や稼働能力を活用する就労の場を得られるか否かという,稼働能力活用の要件の充足を判断する上での重要な要素につき,その負っている調査義務に反して適切な調査を行わず,また,原告に有利な事情を考慮しない等,保護の実施機関の職員として申請者の稼働能力活用の要件の充足性に係る調査をし,その調査に基づく意見を述べるに際し,職務上通常尽くすべき注意義務を尽くしていないことが明らかであり,Dが本件第1申請ないし本件第4申請の担当者として原告夫婦に対する適切な調査等を行わず,岸和田福祉事務所長に対しこれら各申請を却下すべきとの意見を述べたことについて, 国家賠償法1条1項の違法性が認められる。 e(a) また,Dが,本件第1申請の担当者として,原告に対して,社会福祉協議会の離職者支援資金貸付制度を利用することが保護を受けるための要件となっている旨伝えていること(前記1(1)アの認定事実(イ)d),本件第1申請に係るケース記録票に,本件第1申請を却下すべき理由として,原告世帯が他法を活用していない旨記載していること(前記1(1)アの認定事実(イ)f)から,Dは原告世帯が社会福祉協議会の離職者支援資金貸付制度を利用しなかったことをも,原告世帯が保護の補足性の要件(生活保護法4条1項)を満たしていないとの判断の理由としたことが認められる。しかし,離職者支援資金貸付制度は,同項にいう「その他あらゆるもの」には該当せず,この点は被告も争っていない。したがって,本件第1却下決定については,この点でも同項の解釈適用を誤ったものというほかない。 (b) もっとも,被告は,本件246号通知によって,本件各決定当 は被告も争っていない。したがって,本件第1却下決定については,この点でも同項の解釈適用を誤ったものというほかない。 (b) もっとも,被告は,本件246号通知によって,本件各決定当時,生活福祉資金の活用を図ることが求められていたことから,離職者支援資金貸付制度の不活用を理由に本件第1却下決定を行ったことに,国家賠償法上の違法性は認められない旨主張する。しかし,生活保護法4条1項において,その他あらゆるものの活用を求めていたとしても,活用しないことにつき合理的な理由がある場合には,それをもって同項の補足性の要件を充足していないと判断することが許されないと解されるのであって,本件246号通知もかかる解釈を否定するものではないことは明らか である。この点を措くとしても,厚生労働省社会・援護局地域福祉課課長補佐が平成13年12月17日付けで各都道府県生活福祉資金担当課長宛に「生活福祉資金(離職者支援資金)貸付制度について」と題する事務連絡を発し,「失業により生計維持が困難になった世帯から相談があった場合,離職者支援資金及び生活保護の活用が考えられるが,まず離職者支援資金を活用することとなるか。」との問いに対し,「仮にどちらの制度も活用が可能である場合には,そのどちらを活用するかは本人の選択によるものである」との回答をしており(甲19),遅くとも同時点で厚生労働省は生活福祉資金貸付は他法他施策に当たらないとの解釈を採っていたものと認められる。被告は上記事務連絡が生活保護担当部局宛に発出されていないことを指摘するが,生活保護の開始決定等に関与する保護の実施機関の職員が申請者に対し他法他施策の活用を促す以上,生活保護に関連する通知等については共有されて然るべきであって,上記事務連絡の宛先が生活保護担当部局宛では 活保護の開始決定等に関与する保護の実施機関の職員が申請者に対し他法他施策の活用を促す以上,生活保護に関連する通知等については共有されて然るべきであって,上記事務連絡の宛先が生活保護担当部局宛ではないことをもって,被告の生活保護担当部局が上記事務連絡の存在を認識しなかったことが正当化されることにはならない。 本件において,原告はDから離職者支援資金貸付制度の利用を促され,社会福祉協議会に赴いたところ,同制度の利用にはAの母に保証人になってもらう必要があるとの説明を受けたため,Aの母に迷惑をかけることになると考え,Dに対して,同制度を利用することはできない旨説明している(前記1(1)アの認定事実(イ)c,d)。原告のかかる説明には何ら不合理な点はなく,原告世帯が離職者支 援資金貸付制度を利用しないことにつき合理的な理由が認められる。それにもかかわらず,原告からの上記説明を考慮することなく,原告世帯が離職者支援資金貸付制度を利用していないことをもって,生活保護法4条1項の保護の補足性の要件を充足していないとしたDの判断は,事実の評価及び同法の解釈を誤ったものであり,この点でも,Dが岸和田福祉事務所長に対し本件第1申請を却下すべき旨の意見を述べたことには国家賠償法1条1項の違法性が認められる。 (イ) Jについてa 本件第5申請を担当したJも,Dと同様に,① 原告夫婦は稼働能力を有していること,② 本件求職活動状況報告書3の記載が具体性を欠き,かつ,原告がGゴムからの内定に対する返事を怠ったため,原告夫婦には稼働能力を活用する意思が認められないこと,③ 原告が応募可能な求人情報が7件存在したこと並びに原告がE製作所及びGゴムから内定を得たことから原告は稼働能力を活用する就労の場を得ることができること,それぞれを認定 意思が認められないこと,③ 原告が応募可能な求人情報が7件存在したこと並びに原告がE製作所及びGゴムから内定を得たことから原告は稼働能力を活用する就労の場を得ることができること,それぞれを認定し,原告世帯は稼働能力活用の要件を充足しておらず,本件第5申請を却下すべきと判断し,その旨の意見を本件第5申請に係るケース記録票に付し,保護決定調書を岸和田市福祉事務所長に提出した(前記2(2)アの認定事実(ウ)b)。 b そして,本件求職活動状況報告書3には何ら具体性を欠く点はなく,信用性が認められ,その記載内容からすれば,原告世帯が自らの最低限度の生活を維持するために少なくとも社会通念上最低限度必要とされる程度の努力を行っていたこ とが認められるにもかかわらず(前記2(2)イ(イ)b),Jは,面接担当者の記載がないためという不合理な理由で本件求職活動状況報告書3は記載内容に具体性が欠けるとの判断をし,それ以上,原告夫婦から求職活動状況につき聴取する等の調査をしていない(証人J)。また,本件第3申請時の面談において作成された面談記録票(乙27)の記載から,原告がGゴムよりも週払いの丙町の工場で働くべきか悩んでいたという事情を認識しながらも,Jは,そのような事情,さらにはその背景にある原告夫婦が置かれていた生活状況を何ら考慮することなく,Gゴムへの返事を怠ったことを理由として上記②の判断をしている(証人J)。さらに,ハローワークに求人紹介件数の照会を行う(前記2(2)アの認定事実(ウ)a(a))以外に,上記のとおり,本件求職活動状況報告書3に係る原告夫婦への聴取等求職活動状況についての調査を十分にせず,その結果,原告が平成20年3月から本件第5申請に至るまでの間,相当数の面接を受けながらも,自らの最低限度の生活を維持できる 報告書3に係る原告夫婦への聴取等求職活動状況についての調査を十分にせず,その結果,原告が平成20年3月から本件第5申請に至るまでの間,相当数の面接を受けながらも,自らの最低限度の生活を維持できるような就労の場を得られていないという事情を考慮することなく,求人件数や過去の内定を得た回数等の原告が就労の場を得られる抽象的可能性をもって,上記③の判断をしている。 以上のようなJの調査態様及び判断内容は,Dと同様に,保護の実施機関の職員として通常尽くすべき注意義務を漫然と怠ったものといえる。 c また,その他,Jは,原告がE製作所を1日で退職したことを上記②の判断理由としている(前記2(2)アの認定事実(ウ)b(a))ところ,本件第5申請で初めて原告世帯の 担当となったJが,原告の性格等を十分に把握していたとはいえず,原告がE製作所を1日で退職した事実をもって稼働能力を活用する意思がないことの一事情として考慮したこと自体はやむを得ないものともいえる。しかしながら,原告が提出した本件求職活動状況報告書3の記載内容からすれば,原告には稼働能力を活用する意思が十分にあったことが明らかであって,E製作所を1日で退職したという,本件第5却下決定から約6か月も前の一事情によって,稼働能力を活用する意思がないと認定することはできないものであった。それにもかかわらず,Jは,面接担当者の記載がないとの不合理な理由で本件求職活動報告書3を適切に評価せず,これにE製作所の退職の事実を併せて,原告には稼働能力を活用する意思がないことを基礎付ける事情として考慮し,誤った判断をしたものである。 d 以上b及びcより,JもDと同様に,本件第5申請に係る調査をし,その調査に係る意見を述べるに際し,保護の実施機関の職員として,通常尽 事情として考慮し,誤った判断をしたものである。 d 以上b及びcより,JもDと同様に,本件第5申請に係る調査をし,その調査に係る意見を述べるに際し,保護の実施機関の職員として,通常尽くすべき注意義務を漫然と怠ったものであり,Jが岸和田市福祉事務所長に対し,本件第5申請を却下すべきとの意見を述べたことについて国家賠償法1条1項の違法性が認められる。 (ウ) 岸和田市福祉事務所長について上記(ア)及び(イ)のとおり,本件各申請の担当者であったD及びJは,原告世帯の求職活動状況について調査及び適切な評価をすることを怠り,その結果,原告世帯の稼働能力活用の意思の有無及び稼働能力を活用する就労の場を得られる状況であったかという2点につき誤った評価をしている。申請者と 直接接触をして調査を行う担当者の意見は,福祉事務所長が保護の開始申請に対する判断を行うに際し考慮すべきものではあるが,本件では,D及びJが上記調査義務を怠り,適切な調査をしていないことや,事実の評価を誤っており,その結果,本件各申請を却下すべきとの誤った意見となっていることは,本件各申請に係るケース記録票の記載内容自体及び添付された本件求職活動状況報告書1ないし3等からうかがい知ることができたといえるから(前記1(1)アの認定事実(イ)f,(ウ)c,前記2(2)アの認定事実(ア)c,(イ)c,(ウ)b,乙5,34,35,54,55),岸和田市福祉事務所長は,D及びJに対してさらなる調査を命じる等して,原告世帯の稼働能力活用の意思があったか否か及び稼働能力を活用する就労の場を得られる状況にあったか否かの各点につき,慎重に調査を行う必要があったにもかかわらず,それを怠り,その結果,生活保護法4条1項の解釈適用を誤った本件各決定をした 否か及び稼働能力を活用する就労の場を得られる状況にあったか否かの各点につき,慎重に調査を行う必要があったにもかかわらず,それを怠り,その結果,生活保護法4条1項の解釈適用を誤った本件各決定をしたものというべきである。 したがって,岸和田市福祉事務所長は,保護の実施機関として,職務上通常尽くすべき調査義務を怠り,漫然と違法な本件各決定を行ったのであるから,本件各決定には国家賠償法1条1項の違法性が認められる。 (エ) 真摯な求職活動に係る被告の主張について被告は,本件各決定当時,生活保護に関する事務については本件246号通知が発出されており,これには,稼働能力活用の意思の有無を判断するにあたって,真摯な求職活動を行っているか否かを踏まえる旨定めているのであるから,申請者が提出する求職活動状況報告書に申請者が就労の場を得るための努 力を尽くしたことが表れていないと解し,真摯な求職活動を行っていないとして,稼働能力活用の意思がないと判断したとしても,国家賠償法上の違法が生じる余地はない旨主張する。 仮に,第一号法定受託事務として法に係る事務を遂行する被告としては,国の発出する通達や通知に明白な誤りがない限りこれらに従わざるを得ず,上記通達や通知の基準に従ったことそれ自体が国家賠償法上違法であると評価することができないとしても,そのあてはめの前提たる調査や事実認定において職務上通常尽くすべき注意義務を怠り,漫然と職務を行った場合には,やはり国家賠償法上の違法があるというべきである。本件については,上記(ア),(イ)で説示したとおり,被告職員のD及びJは,「真摯な求職活動」に当たるか否かの前提となる調査や事実認定において職務上通常尽くすべき注意義務を怠り,漫然と職務を行ったものであるから,被告の主張は採り得ない。 したとおり,被告職員のD及びJは,「真摯な求職活動」に当たるか否かの前提となる調査や事実認定において職務上通常尽くすべき注意義務を怠り,漫然と職務を行ったものであるから,被告の主張は採り得ない。 エ以上のとおり,本件各決定は生活保護法4条1項に違反し,かつ,本件各決定に関与した,D,J及び岸和田市福祉事務所長の職務行為には,それぞれ国家賠償法1条1項の違法性が認められ,このことについて過失も認められる以上,原告が主張する,本件各決定によって原告世帯が最低限度を下回る生活を余儀なくされたことによる精神的損害及び財産的損害については,本件各決定と相当因果関係のある範囲において被告に賠償責任が認められる。 なお,原告は,本件各決定が国家賠償法上違法であることの根拠として,生活保護法2条違反及び適正手続違反をも主張する(争点8ないし11)が,これらの違反によって,本件各決定等によって原告世帯が最低限度を下回る生活を余儀なくされたことによる精神的損害及び財産的損害に対する賠償をもって賄えない損害 が生じているものとは認められないから,争点8ないし11については判断を要しない。 (3) 争点12(損害額)についてア生活保護費相当額(ア) 本件第2却下決定の取消判決が確定すれば,原告は,同取消判決の拘束力に従い,岸和田市福祉事務所長から本件第2申請に基づく生活保護の開始決定を受け,平成20年7月7日(本件第2申請日)から平成21年7月9日(原告が現に受けている生活保護の開始日の前日)までの生活保護費の支給を受けることが見込まれるから,原告の経済的損害として平成20年7月7日以降の生活保護費相当額の損害は認められない。 他方,本件第1却下決定当時,原告世帯は稼働能力活用の要件を充足し,かつ,収入は最低生 ることが見込まれるから,原告の経済的損害として平成20年7月7日以降の生活保護費相当額の損害は認められない。 他方,本件第1却下決定当時,原告世帯は稼働能力活用の要件を充足し,かつ,収入は最低生活費を下回っていたのであるから(前記2(2)イ(ウ)),本件第1申請に近接する本件相談時も,原告が申請をしていれば保護の開始決定がなされるべき状況であったと優に認めることができる。 したがって,原告が本件相談に訪れた日から本件第2申請の前日である平成20年7月6日までに原告が受けられたであろう生活保護費相当額については,原告に生じた財産的損害と認めるのが相当である。 (イ) 本件相談に訪れた日について本件第1申請時(平成20年6月24日)に作成された面談記録票に,「先週窓口での相談のみのケース」とあること(前記(1)イ)から,原告は平成20年6月24日の前の週である同月16日(月曜日)から20日(金曜日)の間に,本件相談のために被告の福祉事務所を訪れたものと認められる(なお, 同年5月20日ころ以降,上記期間以前に,原告が本件相談のため被告の福祉事務所を訪れたものと認めることはできない。)ものの,そのうちのいずれの日であるかについては明らかではないため,損害額の算定に当たっては,遅くとも同年6月20日には本件相談に訪れたものとして,同日を前提として生活保護費相当額を算定するのが相当である。 (ウ) 平成20年6月20日から同年7月6日までの生活保護費相当額を算定するに当たっては,上記期間における原告世帯の最低生活費から収入を控除すべきである。また,原則として生活保護費が毎月支給されていること(乙63参照)に鑑み,暦月ごとに生活保護費相当額を算定するのが相当である。 a 平成20年6月 の最低生活費から収入を控除すべきである。また,原則として生活保護費が毎月支給されていること(乙63参照)に鑑み,暦月ごとに生活保護費相当額を算定するのが相当である。 a 平成20年6月20日から同月30日まで(a) 最低生活費平成20年6月当時の原告世帯の最低生活費は,16万0930円であった(前記(2)イ(ウ))。 (b) 収入原告は,平成20年6月20日から同月30日までの間稼働しておらず,収入を得ていない。また,Aは同月25日からL製作所における清掃の仕事を開始したものの,給与は翌月25日払いであったため,同年6月の収入として算定することはできない(乙10)。 (c) そうすると,平成20年6月20日から同月30日までの上記(a)の日割額は5万9007円となる(小数点以下の端数切り捨て。以下同じ。)。 (計算式)16万0930円×11÷30≒5万9007円 b 平成20年7月1日から同月6日まで(a) 最低生活費平成20年7月1日から同月6日までの原告世帯の最低生活費は,16万0930円であった(前記(2)イ(ウ))。 (b) 収入原告は,平成20年7月1日から同月6日までの間稼働しておらず,収入を得ていない。また,上記a(b)記載のとおり,Aは同年6月25日からL製作所での清掃の仕事を始めているところ,L製作所での就労条件は,週5日,3時間の勤務であり,給与は時給740円,15日締め25日払いであった(乙10)。 本件では同日から同年7月15日までの間に,AがL製作所に勤務した日数ないし給与額は定かではないが,Aが の勤務であり,給与は時給740円,15日締め25日払いであった(乙10)。 本件では同日から同年7月15日までの間に,AがL製作所に勤務した日数ないし給与額は定かではないが,Aが上記就労条件どおりに就労した場合には,同月25日に,3万3300円(45時間分)が上記期間における給与額としてAに支払われるため,これをもって同月分のAの収入として認定するのが相当である。 なお,原告は同月19日にE製作所で1日就労をしたものの,給与は同年8月10日に支払われたため,同年7月分の収入として算定することはできない(前記1(1)アの認定事実(ウ)b(b))。 (c) そうすると,平成20年7月1日から同月6日までの生活保護費相当額は次の計算式のとおり2万4702円となる。 (計算式)(16万0930円-3万3300円)×6÷31≒2 万4702円c 以上より,平成20年6月20日から同年7月6日までの原告世帯の生活保護費相当額は,上記a(c)とb(c)の合計額である8万3709円となる。そして,これに対する民法所定の年5分の割合の遅延損害金の起算日は,本件第1却下決定の日の後であって,原告が求める同月28日(本件第2却下決定の日)と認めるのが相当である。 イ慰謝料について(ア) 原告は,生活に困窮し,本件相談のために被告の福祉事務所を訪れたにもかかわらず,被告職員によって保護の開始申請に係る申請権の侵害に当たる対応をされ,また,本件各決定によって5回にわたり保護の開始申請を却下された結果,保護の開始申請をしても辛い思いをするだけであり,保護の開始申請をするのはやめようと思ったというのである(甲53)。そして,前記(1)及び 決定によって5回にわたり保護の開始申請を却下された結果,保護の開始申請をしても辛い思いをするだけであり,保護の開始申請をするのはやめようと思ったというのである(甲53)。そして,前記(1)及び(2)で認定した被告職員の各違法な行為により,平成20年6月から平成21年7月まで1年以上にわたり保護を受けられなかったことや,それによる原告夫婦の生活困窮の状況(甲52,53,証人A,原告本人)など,本件弁論に顕れた諸般の事情を考慮すると,本件各決定等と相当因果関係のある原告の精神的苦痛に対する慰謝料として60万円を認めるのが相当である。 (イ) 本件各決定等と相当因果関係のある慰謝料60万円に対する民法所定の年5分の割合による遅延損害金につき,原告は本件第2却下決定がなされた平成20年7月28日を起算日として請求しているところ,上記(ア)の精神的苦痛は,継続した一連の違法行為たる本件各決定等によって発生したものであ って,上記慰謝料60万円はその全体を通じてみることによって認められる額であるといえるから,遅延損害金の起算日は違法行為の終期である本件第5却下決定時とすべきである。すなわち,上記(ア)の慰謝料60万円に対する遅延損害金の起算日は,平成21年1月22日と認めるのが相当である。 第4 結論よって,原告の本訴請求のうち,本件第2却下決定の取消請求は理由があるからこれを認容し,国家賠償請求については,被告に対して,68万3709円及びうち8万3709円については本件第2却下決定の日である平成20年7月28日(原告が求める起算日)から,うち60万円については本件第5却下決定の日である平成21年1月22日から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余は理由がないか 求める起算日)から,うち60万円については本件第5却下決定の日である平成21年1月22日から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法64条本文,61条を適用して,主文のとおり判決する。なお,国家賠償請求に係る仮執行宣言の申立てについては,その必要がないものと認め,付さないこととする。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官田中健治 裁判官尾河吉久  裁判官木村朱子

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