平成28年1月28日判決言渡平成27年(行ケ)第10058号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成27年12月16日判決 原告エノテカ株式会社 訴訟代理人弁護士川合弘造 同島田まどか 同宍戸充 同大向尚子 同杉村光嗣 訴訟代理人弁理士谷口登 被告Y訴訟代理人弁理士野田薫央 被告エノテカイタリアーナエス.アール.エル. 商標管理人Y 主文 1 特許庁が無効2014-890023号事件について平成27年2月9日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文第1項と同旨 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 被告Yと被告エノテカイタリアーナエス.アール.エル.(以下「被告会社」という。)は,以下の商標(商標登録第5614496号。以下「本件商標」という。)の商標権者である(甲1の1, 緯等(1) 被告Yと被告エノテカイタリアーナエス.アール.エル.(以下「被告会社」という。)は,以下の商標(商標登録第5614496号。以下「本件商標」という。)の商標権者である(甲1の1,3)。 商標の構成別紙本件商標目録記載のとおり登録出願日平成24年12月13日登録査定日平成25年7月29日設定登録日平成25年9月13日指定商品第35類「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,酒類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ワイングラスの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,タオル及びハンカチの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,エプロンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,陶器製の食器類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ガラス製食器類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(2) 原告は,平成26年4月3日,本件商標の商標登録を無効にすることについて審判を請求した。 - 3 -特許庁は,上記請求を無効2014-890023号事件として審理を行い,平成27年2月9日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月19日,原告に送達された。 (3) 原告は,平成27年3月20日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 本件審決の理由の要旨本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりであり,その要旨は,以下のとおりであ ) 原告は,平成27年3月20日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 本件審決の理由の要旨本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりであり,その要旨は,以下のとおりである。 (1) 本件商標の商標法4条1項11号該当性についてア本件商標は,縁取りしてやや図案化されたワインレッド色の「EnotecaItaliana」の文字をまとまりよく一体的に表してなるものであって,これより生ずると認められる「エノテカイタリアーナ」の称呼もよどみなく一連に称呼することができるものである。そして,その構成中の「Enoteca」の文字は,「貴重なワインのコレクション,ワイン展示館,試飲のできるワインの販売所,ワイン屋」等の意味を有するイタリア語であり,また,「Italiana」の文字は,「イタリアの」の意味を有するイタリア語の形容詞「italiano」の変化形であることから,本件商標は,ワイン及びその提供場所等との関係においては自他商品・役務の識別力がさほど強いとはいえない,上記意味合いの既成の2語からなるものとして認識し把握されるものというべきである。 イ被請求人(被告ら)提出の証拠によれば,「Enoteca」は,「エノテカ」と称され,「ワインを販売する店」ないし「ワインを提供する飲食店」という店舗の種類ないし性格を意味する用語としてワイン愛好者や西洋料理に関心のある需要者の間で相当程度認識されているというべきであり,また,「Enoteca ○○○」(エノテカ○○○)として店舗- 4 -名を表すことが多いことも相当程度認識されているものといえる。 加えて,「エノテカイタリアーナ」(被告会社)は,本件商標を「会社概要」のパンフレットや店舗の看板に使用しているほか,イタリアにおいてワインのオスカー賞といわれるオ 認識されているものといえる。 加えて,「エノテカイタリアーナ」(被告会社)は,本件商標を「会社概要」のパンフレットや店舗の看板に使用しているほか,イタリアにおいてワインのオスカー賞といわれるオスカー・デル・ヴィーノの2002年の最優秀エノテカ賞を受賞し,フランスのシャンパーニュ地方で行われた2005年の「世界最優秀個人経営ワインショップ」で世界第3位に入賞したことが認められる。 以上によれば,本件商標は,「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部分とに分離分断して看取されるよりも,むしろ全体をもって一連一体の店舗名を表したものとして認識し把握されるものというべきであり,「エノテカイタリアーナ」の一連の称呼のみを生ずるものとみるのが自然である。 ウ他方,請求人(原告)提出の証拠等によれば,「ENOTECA」又は「エノテカ」の標章(以下,これらを併せて「使用標章」という場合がある。)は,原告の業務に係る役務「ワインの小売又は卸売の業務について行われる顧客に対する便益の提供」について使用する商標として,本件商標の登録出願時には既に,この種業界において,取引者,需要者の間に相当程度広く認識されていたものというべきである。 別紙引用商標目録記載1の登録商標(以下「引用商標1」という。甲2の1,3)は,使用標章のうちの「ENOTECA」の標章と同一の構成からなるものであり,上記役務を含む役務を指定役務とするものであること,同目録記載3の登録商標(以下「引用商標3」という。甲4の1,2)は,同じく「ENOTECA」の標章と同一の綴りからなるものであり,ワインを含む商品を指定商品とするものであることからすると,引用商標1及び3についても上記と同様のことがいえる。 しかしながら,別紙引用商標目録記載2の登録商標(以下 一の綴りからなるものであり,ワインを含む商品を指定商品とするものであることからすると,引用商標1及び3についても上記と同様のことがいえる。 しかしながら,別紙引用商標目録記載2の登録商標(以下「引用商標2」と- 5 -いう。甲3の1,2)は,上記「ENOTECA」の標章と同一の構成からなるものであるとしても,ワインとの関連性が薄い商品を指定商品とするものであり,その指定商品について使用する商標として広く認識されているものとはいえない。 そして,引用商標1ないし3(以下,これらを併せて「引用商標」という。)は,いずれもその構成に照らし,「エノテカ」の称呼を生じ,「ワインを販売する店」ないし「ワインを提供する飲食店」を想起,観念させるものといえる。 エ本件商標については,たとえ,引用商標1及び3の周知性を考慮したとしても,「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部分とに分離分断して看取されるよりも,むしろ全体をもって一連一体の店舗名を表したものとして認識し把握されるものと判断するのが相当であり,「Enoteca」の文字部分のみが独立して自他役務・商品の識別標識としての機能を果たす要部となるものではない。 そして,本件商標から生ずる「エノテカイタリアーナ」の称呼と引用商標から生ずる「エノテカ」の称呼とは,構成音数が異なるばかりでなく,「イタリアーナ」の音の有無という顕著な差異により容易に区別することができるものである。また,本件商標と引用商標とは,それぞれの構成に照らし,外観上判然と区別し得る差異を有するものである。さらに,本件商標は,全体をもって,ワインを販売する店ないしはワインを提供する飲食店のエノテカという形態をとる「EnotecaItaliana」という店舗名を表したものとして認識し把握され, る。さらに,本件商標は,全体をもって,ワインを販売する店ないしはワインを提供する飲食店のエノテカという形態をとる「EnotecaItaliana」という店舗名を表したものとして認識し把握され,「Enoteca」の文字部分のみが独立して観念されることはないのに対し,引用商標は,「ワインを販売する店」ないしは「ワインを提供する飲食店」という観念を生じるものであるから,両者は観念においても異なるものである。 したがって,本件商標と引用商標とは,称呼,外観及び観念のいずれの- 6 -点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標であるから,本件商標は,商標法4条1項11号に該当するものとはいえない。 (2) 本件商標の商標法4条1項15号該当性について原告が使用する使用標章の周知性や使用標章に係る役務と本件商標の指定役務との関連性等を考慮したとしても,本件商標をその指定役務について使用した場合,これに接する取引者,需要者が「Enoteca」の文字部分のみに注目して使用標章ないしは原告を連想,想起するようなことはないというべきであり,当該役務が原告又は原告と経済的,組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く,その出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。 したがって,本件商標は,商標法4条1項15号に該当するものとはいえない。 (3) むすび以上のとおり,本件商標は,商標法4条1項11号及び15号のいずれにも違反して登録されたものではないから,本件商標の商標登録は無効にされるべきものではない。 第3 当事者の主張 1 原告の主張(1) 取消事由1(本件商標の商標法4条1項11号該当性の判断の誤り)本件審決は,本件商標は,その構成中の「Enoteca」の文字部分のみが はない。 第3 当事者の主張 1 原告の主張(1) 取消事由1(本件商標の商標法4条1項11号該当性の判断の誤り)本件審決は,本件商標は,その構成中の「Enoteca」の文字部分のみが独立して自他役務・商品の識別標識としての機能を果たす要部となるものではないとした上で,本件商標と引用商標は,称呼,外観及び観念のいずれの点についても相紛れるおそれのない非類似の商標であるから,本件商標は,商標法4条1項11号に該当しない旨判断した。 しかしながら,以下のとおり,本件商標から「Enoteca」の文字部分を要部として抽出し,この文字部分と引用商標とを対比して,本件商標と- 7 -引用商標の類否を判断すべきであり,その結果,本件商標と引用商標とは類似する商標であるというべきであるから,本件審決の上記判断は誤りである。 ア本件商標の要部抽出の可否についての判断の誤り(ア) 引用商標が原告の著名な商標であること引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告の業務に係る役務の出所を表示する商標として,取引者,需要者の間で著名であったものである。 a 原告は,ワインの輸入販売,レストラン業等を主要な事業目的とする株式会社である。 原告は,昭和63年8月に創業し,平成元年9月に東京都内に旗艦店であるワインショップ「ENOTECA」(エノテカ)広尾本店とレストラン&ワインラウンジ「ENOTECA」(エノテカ)を開店して以来,ワインの輸入販売をはじめとして,直営のワインショップ経営,ワインの通信販売,ワイン商品の開発・選定,ワイン文化と知識の普及などの事業活動を行っている。 原告は,平成25年3月期時点で,国内において,東京都内の著名なスポット,国内主要都市,各都市のランドマーク施設等に合計42の直営ワイ 選定,ワイン文化と知識の普及などの事業活動を行っている。 原告は,平成25年3月期時点で,国内において,東京都内の著名なスポット,国内主要都市,各都市のランドマーク施設等に合計42の直営ワインショップを展開し,海外の店舗数も香港,中国,シンガポール及び韓国を併せて18店舗に上り,原告とその海外子会社を含むエノテカグループによる年間売上高は,約144億円に上っていた。 また,原告は,約1100種類,年間600万本(平成25年3月期)に上る自社直輸入ワインを,直営ワインショップ及びインターネット(自社の直販サイト及び他社のインターネットショッピングモール)を通じて小売販売するとともに,全国の有名百貨店,高級スーパー,主要高級ホテル及び全国有名レストラン等に卸販売していた。 b 原告は,ワインショップ「ENOTECA」(エノテカ)広尾本店- 8 -及びレストラン&ワインラウンジ「ENOTECA」(エノテカ)を開店して以来,20年以上継続して,ワインショップの名称として「ENOTECA」の標章を使用するとともに,店舗の看板,包装用の紙袋,包装用箱,プライスリスト,メニュー等に「ENOTECA」,「Enoteca」及び「エノテカ」の各標章を使用している。 c 原告は,平成7年に,ワイン文化と知識の普及のために主にワインの愛好家を対象とした「クラブエノテカ(ClubEnoteca)」という名称の会員組織を設立し,遅くとも平成11年ころから,会報誌を発行し,その発行部数は,年々増加し,平成20年に約14万8500部,平成24年に約19万6200部,現在では年間約20万部に上る。 また,原告は,高級ブランドや著名人とのワインのイベントやセミナー等を店舗などで積極的かつ継続的に行っているほか,カード会社,航空会社等のオンラインシ 200部,現在では年間約20万部に上る。 また,原告は,高級ブランドや著名人とのワインのイベントやセミナー等を店舗などで積極的かつ継続的に行っているほか,カード会社,航空会社等のオンラインショップ,企業が運営する会員サイト,旅行会社,ジャズ,化粧品会社,花屋,百貨店,不動産会社,自動車会社,映画会社,美術関連など,多岐にわたる業種と提携し,社会の様々な層の人々へ「ENOTECA」ブランドの浸透を図るとともに,ワインの啓蒙活動を行ってきた。 さらに,原告は,10年以上にわたり,自らの店舗のみならず,全国紙を含む新聞や雑誌を通じた宣伝広告活動を積極的に展開し,東京メトロ広尾駅構内の広告,インターネット上のバナー広告等様々な広告媒体によって,相当程度の宣伝広告費(平成25年3月期で約2億円)をかけて,「ENOTECA」,「Enoteca」及び「エノテカ」の各標章を露出させている。 また,原告の店舗やブランドは,海外事業も含め,著名な新聞,雑誌といった全国規模での主要メディアに多数取り上げられており,平- 9 -成24年及び平成25年のみでも少なくとも100件以上,雑誌や新聞等で取り上げられている。 d 原告は,日本で,イタリア語を語源とする「ENOTECA」,「エノテカ」の語が全く知られていない時期から,「Enoteca」の登録商標(引用商標3)を有していた第三者から使用許諾を得て,その使用を開始した後,平成7年に多額の対価を支払ってその商標権を取得し,さらに,平成19年に小売等役務商標制度が導入されると,引用商標1の商標登録出願をし,翌年にその商標登録を受けた。 また,原告は,無断で引用商標を使用する者に対しては速やかに警告書を送付して,「ENOTECA」ブランドの保護を図っている。 このように,原告は,日本で 出願をし,翌年にその商標登録を受けた。 また,原告は,無断で引用商標を使用する者に対しては速やかに警告書を送付して,「ENOTECA」ブランドの保護を図っている。 このように,原告は,日本で「ENOTECA」,「エノテカ」の語が全く知られていない状況の中で,多額の費用をかけて,「Enoteca」の登録商標(引用商標3)の使用権を取得して使用を開始し,長期にわたり引用商標を含む「ENOTECA」,「Enoteca」及び「エノテカ」の各標章の価値を守り抜いて,自らの力で「ENOTECA」ブランドを作り上げてきた。 その結果,ワインに関する小売等役務において「エノテカ」の称呼を含む登録商標は,引用商標を含む原告保有の登録商標のみとなっており,第三者による登録商標は,本件商標を除いて,これまで認められていない。 e 以上によれば,引用商標を含む「ENOTECA」,「Enoteca」及び「エノテカ」の各標章は,原告を表すものとしてブランドイメージが確立され,ワイン販売事業において,需要者に幅広く認識されるに至り,本件商標の登録出願時(平成24年12月13日)及び登録査定時(平成25年7月29日)には,原告を表すハウスマークないし原告の業務に係る役務の出所を表す商標として,日本国内の- 10 -取引者,需要者の間で著名となっていたものといえる。 (イ) 本件商標の各構成部分が不可分的に結合しているとはいえないことa 本件商標は,「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部分の二つの構成部分を組み合わせた結合商標であり,その外観は,「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部分の各語頭のみが大文字であり,両文字部分の間には約1文字分の空白がある。 また,本件商標は,全体として一個不可分の既成の その外観は,「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部分の各語頭のみが大文字であり,両文字部分の間には約1文字分の空白がある。 また,本件商標は,全体として一個不可分の既成の概念を示すものではなく,少なくとも日本国内においては,「エノテカイタリアーナ」(被告会社)は全く知られておらず,むしろ,前記(ア)のとおり,「Enoteca」が著名な原告のハウスマークであることからすれば,本件商標に接した取引者,需要者は,「Enoteca」の文字部分から本件商標を原告の業務に関連する著名な表示として把握するものといえる。仮に「Enoteca」のイタリア語としての意味が一定の範囲の需要者に認識されていたとしても,本件商標に接した需要者は,イタリア語の語源に由来する意味を認識すると同時に,本件商標を原告の業務に関連する表示として把握するものといえるから,本件商標から原告を想起することを妨げるものではない。 さらに,本件商標は,アルファベットで15文字,称呼としては片仮名で10文字(「エノテカイタリアーナ」)からなる外観及び称呼が比較的長い商標であるから,「エノテカ」と「イタリアーナ」の間で一拍置いてから称呼されることが少なくないはずであるし,本件商標の「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部分からはそれぞれ異なる観念が生じる。 b したがって,本件商標は,「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部分が,それらを分離して観察することが取引- 11 -上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいえない。 (ウ) 「Enoteca」の文字部分が役務の出所標識として強く支配的な印象を与えること原告は,昭和63年の会社設立以来,「エノテカ」を商号の一部とし,日本 合しているものとはいえない。 (ウ) 「Enoteca」の文字部分が役務の出所標識として強く支配的な印象を与えること原告は,昭和63年の会社設立以来,「エノテカ」を商号の一部とし,日本でイタリア語を語源とする「Enoteca」,「エノテカ」の語が全く知られていない状況の中で,多額の費用をかけて,「Enoteca」の登録商標(引用商標3)の使用権を取得して使用を開始し,長期にわたり引用商標を含む「ENOTECA」,「Enoteca」及び「エノテカ」の各標章の価値を守り抜いて,自らの力でエノテカブランドを作り上げてきた。その結果,ワインに関する小売等役務において「エノテカ」の称呼を含む登録商標は,引用商標を含む原告保有の登録商標のみとなっており,第三者による登録商標は本件商標を除いてこれまで認められていない。 したがって,本件商標の「Enoteca」の文字部分は,取引者,需要者に対し,原告の業務に係る役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものといえる。 また,仮に本件審決の認定を前提としても,「ENOTECA」又は「エノテカ」の標章は,原告の業務に係る役務「ワインの小売又は卸売の業務について行われる顧客に対する便益の提供」について使用する商標として,本件商標の登録出願時には既に,この種業界において,取引者,需要者の間に相当程度広く認識されていたのであるから,本件商標の「Enoteca」の文字部分は,取引者,需要者に対し原告の上記役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものといえる。 (エ) 「Italiana」の文字部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないこと- 12 -「Italiana」の語が「イタリアの」という意味を有することが一般的に知られていることからすれば,本件商標のい a」の文字部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないこと- 12 -「Italiana」の語が「イタリアの」という意味を有することが一般的に知られていることからすれば,本件商標のいずれの指定役務に係る取引者,需要者であっても,本件商標の「Italiana」の文字部分については,役務の提供の場所,質,態様,提供の方法その他の特徴(役務の提供の用に供する物の産地等)を指すものと認識,理解するものといえる。また,地名を含む結合商標においては,その地名部分に識別力が生じるものとはいえない。 したがって,本件商標の「Italiana」の文字部分からは,それ自体で出所識別標識として独立した称呼,観念は生じない。 (オ) 「Enoteca」の文字部分を要部として抽出できること以上によれば,本件商標は,「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部分が,それらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいえないし,「Enoteca」の文字部分が役務の出所標識として強く支配的な印象を与えるものであるのに対し,「Italiana」の文字部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないのであるから,本件商標から「Enoteca」の文字部分を要部として抽出し,これと引用商標とを対比して,本件商標と引用商標の類否を判断することは許されるというべきである。 (カ) 本件審決の判断が誤りであること本件審決は,①「Enoteca」が,「ワインを販売する店」ないし「ワインを提供する飲食店」という店舗の種類ないし性格を意味する用語としてワイン愛好者や西洋料理に関心のある需要者の間で相当程度認識されていること,②「Enoteca」が,「Enoteca ○○○(エノテカ○○○)」として という店舗の種類ないし性格を意味する用語としてワイン愛好者や西洋料理に関心のある需要者の間で相当程度認識されていること,②「Enoteca」が,「Enoteca ○○○(エノテカ○○○)」として店舗名を表すことが多いことが相当程度認識されていること,③被告会社が,本件商標を「会社概要」のパン- 13 -フレットや店舗の看板に使用していること,イタリアにおいてオスカー・デル・ヴィーノ(ワインのオスカー賞)の平成14年の最優秀エノテカ賞を受賞したこと,平成17年の「世界最優秀個人経営ワインショップ」で世界3位に入賞したことなどを根拠として,本件商標は,「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部分とに分離分断して看取されるよりも,むしろ全体をもって一連一体の店舗名を表したものとして認識し把握されるものであり,「Enoteca」の文字部分が本件商標の要部とならない旨判断した。 しかしながら,上記①の点については,本件審決がその認定の根拠として挙げる乙号各証(乙3ないし11,15,16(枝番のあるものは枝番を含む。以下,他の書証についても同じ。))の記載は,いずれもローマやフィレンツェに所在する店舗に関するものであり,イタリアにおける事情を紹介するものであって,日本における状況について説明するものではない。また,上記乙号各証は,イタリアへの旅行を希望する者を読者とするものであり,日本においては,「Enoteca」のイタリア語の語義になじみがないからこそ,その語義を解説しているともいえる。しかも,前記(ア)のとおり,「ENOTECA」,「Enoteca」及び「エノテカ」の各標章は,原告を表すハウスマークないし原告の業務に係る役務の出所を表す商標として,日本国内の取引者,需要者の間で著名であることに照らすと,「Enot ECA」,「Enoteca」及び「エノテカ」の各標章は,原告を表すハウスマークないし原告の業務に係る役務の出所を表す商標として,日本国内の取引者,需要者の間で著名であることに照らすと,「Enoteca ○○○(エノテカ○○○)」との標章を見聞した取引者,需要者が認識するのは,原告の業務に係る「Enoteca」(エノテカ)であって,「Enoteca ○○○(エノテカ○○○)」との店舗名ではない。 さらに,そもそも,本件商標の指定役務は,複数の商品についての小売等役務であるところ,その需要者は一般消費者であり,本件審決のいうような「ワイン愛好者や西洋料理に関心のある需要者」に限られるも- 14 -のではない。 次に,上記②の点については,本件審決が挙げる「Enoteca ○○○」とする店舗名の例は,いずれも「○○○」に該当する文字が,本件商標における「Italiana」の文字のように,役務の提供の場所,質,態様,提供の方法その他の特徴(役務の提供の用に供する物の産地等)を指すものと認識される文字からなるものではない。 さらに,上記③の点については,いずれも日本国外における事実であるから,日本で登録された本件商標の類否判断に何ら影響するものではないし,少なくとも日本においては,被告会社は全く知られていない。 以上によれば,上記①ないし③の諸点は,いずれも本件商標から「Enoteca」の文字部分を要部として抽出することができないことの根拠となるものではない。また,仮に上記①ないし③の諸点を前提としたとしても,前記(ウ)のとおり,本件商標の「Enoteca」の文字部分は,取引者,需要者に対し,原告の業務に係る役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものといえるから,本件商標から「Enoteca」の文字部分を要部とし 件商標の「Enoteca」の文字部分は,取引者,需要者に対し,原告の業務に係る役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものといえるから,本件商標から「Enoteca」の文字部分を要部として抽出することができるというべきである。 したがって,「Enoteca」の文字部分が本件商標の要部とならないとした本件審決の判断は誤りである。 イ本件商標と引用商標の類否判断の誤り(ア) 本件商標の要部である「Enoteca」の文字部分と引用商標を対比すると,いずれも「Enoteca」又は「ENOTECA」で綴りが同一であり,外観が同一又は近似する。 また,本件商標の「Enoteca」の文字部分及び引用商標からは,「エノテカ」という同一の称呼が生じる。 さらに,本件商標の「Enoteca」の文字部分及び引用商標から,原- 15 -告のワインショップ「エノテカ」という同一の観念が生じる。仮に「Enoteca」のイタリア語としての意味が一定の範囲の需要者に認識されていたとしても,本件商標に接した需要者は,イタリア語の語源に由来する意味を認識すると同時に,本件商標を原告の業務に関連する表示として把握するといえるから,本件商標から原告を想起するものといえる。 したがって,本件商標と引用商標は,外観,称呼及び観念のいずれの点についても同一又は類似の商標である。 (イ) 本件商標の指定役務のうち,「飲食料品」,「酒類」,「菓子及びパン」,「ワイングラス」,「かばん類及び袋物」,「陶器製の食器類」及び「ガラス製食器類」の各小売等役務については,引用商標1の指定役務と同一又は類似する。 また,本件商標の指定役務のうち,「タオル及びハンカチ」及び「エプロン」の各小売等役務については,引用商標2の指定商品と類似する。 さらに,本 ては,引用商標1の指定役務と同一又は類似する。 また,本件商標の指定役務のうち,「タオル及びハンカチ」及び「エプロン」の各小売等役務については,引用商標2の指定商品と類似する。 さらに,本件商標の指定役務のうち,「酒類」の小売等役務については,引用商標3の指定商品と類似する。 ウまとめ以上によれば,本件商標は,引用商標に類似する商標であって,本件商標の指定役務は,引用商標の指定役務又は指定商品と同一又は類似するから,本件商標は商標法4条1項11号に該当する。 したがって,本件商標は商標法4条1項11号に該当するものとはいえないとした本件審決の判断には誤りがあるから,本件審決は取り消されるべきものである。 (2) 取消事由2(本件商標の商標法4条1項15号該当性の判断の誤り)本件審決は,本件商標をその指定役務について使用した場合,これに接する取引者,需要者が「Enoteca」の文字部分のみに注目して原告の使- 16 -用標章ないしは原告を連想,想起するようなことはないというべきであり,当該役務が原告又は原告と経済的,組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く,その出所について混同を生ずるおそれはないから,本件商標は商標法4条1項15号に該当しない旨判断した。 しかしながら,①本件商標は,引用商標と同一の部分をその構成の一部に含む結合商標であって,その外観,称呼及び観念上,この同一の部分がその余の部分から分離して認識され得ること,②引用商標は,ワイン及びこれに関連する商品の小売等役務について使用する商標としてのみならず,広く原告の業務について使用する商標として,取引者,需要者の間で著名であり,少なくとも相当程度広く認識されていたこと,③引用商標は,純粋な造語ではないものの,日本においては る商標としてのみならず,広く原告の業務について使用する商標として,取引者,需要者の間で著名であり,少なくとも相当程度広く認識されていたこと,③引用商標は,純粋な造語ではないものの,日本においては誰もがその原語における意味を知っているとはいえないイタリア語の「Enoteca」を用いるものであり,一定程度の独創性があること,④本件商標の指定役務は全て引用商標が現に使用されている商品・役務と同一であるか又はこれとの関連性の程度が極めて強いものであり,本件商標と引用商標の取引者及び需要者が共通すること,⑤本件商標の指定役務の対象となる商品が日常的に消費される性質の商品であることや,その需要者が特別な専門的知識経験を有しない一般大衆であることからすると,上記商品を購入するに際して払われる注意力はさほど高いものではないことを総合考慮すると,本件商標が指定役務に使用された場合,本件商標に接した取引者及び需要者は,原告の周知又は著名な「ENOTECA」の表示を連想する可能性が非常に高く,その役務が,原告との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る役務であると誤信するおそれがあるといえる。 したがって,本件商標は,「他人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがある商標」(商標法4条1項15号)に当たるから,本件審決の上記判断- 17 -には誤りがあり,本件審決は取り消されるべきものである。 2 被告らの主張(1) 取消事由1(本件商標の商標法4条1項11号該当性の判断の誤り)に対しア 「本件商標の要部抽出の可否についての判断の誤り」について(ア) 本件商標の外観及び称呼について本件商標は,縁取りして統一的に図案化されたワインレッド色の「Eno 判断の誤り)に対しア 「本件商標の要部抽出の可否についての判断の誤り」について(ア) 本件商標の外観及び称呼について本件商標は,縁取りして統一的に図案化されたワインレッド色の「EnotecaItaliana」の文字をまとまりよく一体的に表してなるロゴタイプの商標であり,本件商標から「エノテカイタリアーナ」の一連の称呼がよどみなく生じる。 このように本件商標は,色彩や形態によって外観が不可分一体であり,称呼も一連一体である。 (イ) 「Enoteca」の文字部分について「エノテカ」は,イタリア語で「貴重なワインのコレクション,ワイン展示館(蒐集館),試飲のできるワインの販売所,ワイン屋」などの意味を持つ普通名称であり,ワインの展示・販売・試飲・つまみの提供などのサービスを一体的に行う店舗の種類を表す普通名称として,日本語のガイドブック等でも繰り返し使われている(乙2ないし11,15,16,27ないし38,46ないし49,52ないし57,59)。 イタリア国内には,「Enoteca ○○○(エノテカ○○○)」の名称の店舗が多数存在しており,これらの店舗の一部は,日本語のガイドブック等にも紹介されている(乙4,7ないし9,53,59,60)。また,日本国内においても,「Enoteca ○○○(エノテカ○○○)」の名称は,ワインショップやイタリアンレストランの名称等に頻繁に利用されており,これらの店舗が出版物にもたびたび掲載されている(乙29,31ないし34,38,46,47,49,52)。 - 18 -以上によれば,「エノテカ」,「Enoteca」又は「ENOTECA」の語は,日本国内においても,需要者の間で,ワインを販売・提供する店舗等を示す一般的な名称として広く認識され,使用されている。特に,「E れば,「エノテカ」,「Enoteca」又は「ENOTECA」の語は,日本国内においても,需要者の間で,ワインを販売・提供する店舗等を示す一般的な名称として広く認識され,使用されている。特に,「Enoteca」が他の語と結合して「Enoteca ○○○(エノテカ○○○)」として用いられた場合は,需要者は「Enoteca ○○○」の店舗名全体から特定の店舗を認識するから,本件商標の「Enoteca」の文字部分の識別力は微弱である。 したがって,本件商標の「Enoteca」の文字部分が役務の出所標識として強く支配的な印象を与えるものとはいえない。 (ウ) 「Italiana」の文字部分について本件商標の「Italiana」の文字部分は,通常は役務に係る地名表示に用いられない外国語(イタリア語)であり,かつ,国名の形容詞形であり,さらに形容詞「Italiano」を日本語のルールにはない形で変化させたものであるから,役務に係る地名を直接表示する語とはいえず,上記部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないことはあり得ない。 (エ) 被告会社及び本件商標の周知性ないし著名性について被告会社は,1972年(昭和47年)にイタリアで創業されて以来,43年にわたり,エノテカ形式の店舗で本件商標を店舗名として使用しており,また,会社概要のパンフレットや店舗の看板やウェブサイト等にも本件商標を使用している(乙25,26)。 被告会社は,イタリアで最も権威のあるオスカー・デル・ヴィーノ(ワインのオスカー賞)で,2002年(平成14年)のイタリア最優秀エノテカ賞を受賞したほか,平成17年には,「世界最優秀個人経営ワインショップ」で世界第3位に入賞するなどしている。また,被告会社代表者は,平成18年から現在まで,ボローニャの新聞に記事を ア最優秀エノテカ賞を受賞したほか,平成17年には,「世界最優秀個人経営ワインショップ」で世界第3位に入賞するなどしている。また,被告会社代表者は,平成18年から現在まで,ボローニャの新聞に記事を執筆し,情- 19 -報発信を行っている(乙18,20ないし23)。 被告会社は,日本国内でも,書籍「初めてのイタリアワイン」(平成24年7月15日発行。乙24)で紹介されているほか,日本の支店として日本語のオンラインショップを準備中である。 また,被告会社は,平成25年1月24日から同月27日まで,同年5月4日及び5日の2回にわたり,東京都内で,イベントを実施し,看板,名刺,チラシ,ポスター,ワイングラスのロゴ刻印等に本件商標を使用している。 さらに,被告会社は,平成26年10月から,日本国内の個人を対象に,カタログ通信販売によるワイン販売事業を開始している。 以上によれば,本件商標は,その構成全体から,被告会社又はその店舗名を表すものとして,日本国内において著名又は周知である。 (オ) 小括以上のとおり,本件商標は,外観が不可分一体で,称呼も一連一体であり,観念についても,その構成全体から,ワインを販売・提供する店舗の名称あるいは被告会社の周知な店舗名を表すものであること,本件商標の構成中の「Enoteca」の文字部分は強く支配的な印象を与えるものはいえないことからすると,本件商標から「Enoteca」の文字部分のみを要部として抽出することはできないというべきであるから,本件商標の全体と引用商標とを対比して,本件商標と引用商標との類否を判断すべきである。 イ 「本件商標と引用商標の類否判断の誤り」について本件商標と引用商標を対比すると,本件商標から生じる「エノテカイタリアーナ」の称呼と引用商標から生じる「エ 商標との類否を判断すべきである。 イ 「本件商標と引用商標の類否判断の誤り」について本件商標と引用商標を対比すると,本件商標から生じる「エノテカイタリアーナ」の称呼と引用商標から生じる「エノテカ」の称呼とは,構成音数が異なるばかりでなく,「イタリアーナ」の音の有無という顕著な差異により容易に区別することができる。 - 20 -また,本件商標と引用商標とは,それぞれの構成に照らし,外観上明確に区別し得る差異を有している。 さらに,観念については,本件商標は,その構成全体から,ワインを販売・提供する「EnotecaItaliana」という店舗の名称あるいは被告会社の経営する有名なワイン店「EnotecaItaliana」が認識されるのに対し,引用商標から「ワインを販売する店」ないし「ワインを提供する飲食店」という観念が生じるものであるから,両商標は,観念においても異なる。 したがって,本件商標と引用商標とは,称呼,外観及び観念が異なる非類似の商標であるから,本件商標は,商標法4条1項11号に該当しない。 ウまとめ以上によれば,本件商標が商標法4条1項11号に該当しないとした本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由1は理由がない。 (2) 取消事由2(本件商標の商標法4条1項15号該当性の判断の誤り)に対しア前記(1)アのとおり,本件商標は,その構成全体を不可分一体として,有名なワイン店の店舗名を表したものとして認識されるものであり,「Enoteca」の文字部分のみが看者の注意を特に強く惹くことはない。 また,「Enoteca」,「ENOTECA」及び「エノテカ」の語自体は,「貴重なワインのコレクション,ワイン展示館,試飲のできるワインの販売所,ワイン屋」等の意味を有する既成語であって, い。 また,「Enoteca」,「ENOTECA」及び「エノテカ」の語自体は,「貴重なワインのコレクション,ワイン展示館,試飲のできるワインの販売所,ワイン屋」等の意味を有する既成語であって,ワイン業界においては自他商品・役務の識別力が極めて弱い。特に,「Enoteca ○○○」と他の語と結合した場合には,全体として店舗名等を表すという取引の実情が国内外に多数存在し,このような他の語と結合した「Enoteca」の文字部分は,識別力が極めて微弱である。 さらに,本件商標と引用商標が非類似の商標であることは,前記(1)のと- 21 -おりである。 イ以上によれば,本件商標をその指定役務について使用した場合,需要者が「Enoteca」の文字部分のみに注目して原告の使用標章ないし原告を想起することは考え難いから,その役務が,原告の業務に係る役務と混同を生ずるおそれはないし,原告と関係のある営業主の業務に係る役務であると誤信するおそれもない。 したがって,本件商標が商標法4条1項15号に該当しないとした本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由2は理由がない。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(本件商標の商標法4条1項11号該当性の判断の誤り)について複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,その構成部分全体によって他人の商標と識別されるから,その構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは原則として許されないが,取引の実際においては,商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は,必ずしも常に構成部分全体によって称呼,観念されるとは限らず,その構成部分の一部だけによって称呼 離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は,必ずしも常に構成部分全体によって称呼,観念されるとは限らず,その構成部分の一部だけによって称呼,観念されることがあることに鑑みると,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,商標の構成部分の一部を要部として取り出し,これと他人の商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも,許されると解するのが相当である(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁,最高裁平成19年- 22 -(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。 そこで,以下においては,上記の観点を踏まえて,本件商標が引用商標に類似する商標(商標法4条1項11号)に該当するかどうかについて判断する。 (1) 前提事実ア引用商標について前記第2の1の事実と証拠(甲2ないし9,12ないし16,18ないし56,58ないし68,70ないし113,136ないし139,142ないし156,158,160ないし163,175ないし181,183ないし185,187ないし190,192,乙50(枝番のあるものは枝番を含む。))及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア) 原告は,ワインの輸入販売業,レストラン業等を主要な事業目的とする株式会社である。また,原告は,引用商標の商標権者である。 (イ) 原告は,昭 弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア) 原告は,ワインの輸入販売業,レストラン業等を主要な事業目的とする株式会社である。また,原告は,引用商標の商標権者である。 (イ) 原告は,昭和63年に創業し,平成元年9月に東京都内にワインショップ・エノテカ広尾本店及びレストラン&ワインラウンジ「ENOTECA」を開店して以来,平成9年3月にワインショップ・エノテカ大阪店,同年10月にワインショップ・エノテカ札幌店,平成10年11月にワインショップ・エノテカ広島三越店,平成11年3月にワインショップ・エノテカ博多店,同年12月にワインショップ・エノテカウィング高輪店,平成13年12月にワインショップ・エノテカ横浜そごう店,平成15年4月にワインショップ・エノテカ新潟店,ワインショップ・エノテカ吉祥寺店及びワインショップ・エノテカ六本木ヒルズ店,平成16年4月に日本橋高島屋店及びワインショップ・エノテカ柏高島屋店,同年10月にワインショップ・エノテカ芦屋大丸店,同年11月にワインショップ・エノテカ京王百貨店聖蹟桜ヶ丘店,平成17年3月にワインショップ・エノテカ名古屋ラシック店,丸の内店,JR名古屋高- 23 -島屋店,大阪高島屋店及びワインショップ・エノテカ八尾西武店,同年9月に横浜高島屋店,平成18年3月に京都高島屋店,同年4月にワインショップ・エノテカ港南台高島屋店,平成19年3月にワインショップ・エノテカフードメゾンおおたかの森店,平成20年3月にワインショップ・エノテカタカシマヤフードメゾン新横浜店,平成21年9月にエノテカ&ケーシーズ札幌円山店,平成22年1月にワインショップ・エノテカ上野松坂屋店,同年2月にワインショップ・エノテカ仙台藤崎店,同年3月にワインショップ・エノテカANAインターコンチネンタルホテル カ&ケーシーズ札幌円山店,平成22年1月にワインショップ・エノテカ上野松坂屋店,同年2月にワインショップ・エノテカ仙台藤崎店,同年3月にワインショップ・エノテカANAインターコンチネンタルホテル東京店,同年9月にワインショップ・エノテカ金沢香林坊大和店,平成23年3月にワインショップ・エノテカJR博多シティ店,ワインショップ・エノテカ富山大和店及びワインショップ・エノテカ二子玉川東急フードショー店,同年4月にワインショップ・エノテカ博多大丸店,同年6月にワインショップ・エノテカ姫路山陽店,同年11月にワインショップ・エノテカ浜松遠鉄店,平成24年4月にワインショップ・エノテカ渋谷ヒカリエShinQs店,平成25年2月にワインショップ・エノテカ銀座店カフェ&バーエノテカ・ミレ,同年4月にエノテカ&ケーシーズ御殿場プレミアム・アウトレット店及びワインショップ・エノテカグランフロント大阪店カフェ&バーエノテカ・ミレをそれぞれ開店し,本件商標の登録査定前(登録査定日平成25年7月29日)に,東京都内,全国主要都市のランドマーク施設,デパート等に少なくとも39の直営店舗を開店した。なお,原告及びその海外子会社は,香港,中国,シンガポール及び韓国にも,本件商標の登録査定前に14店舗を開店している。 また,原告は,全国の有名百貨店,高級スーパー,主要高級ホテル及び全国有名レストラン,コンビニエンスストア等に自社輸入ワインを卸販売している。 - 24 -さらに,原告は,平成12年5月から通信販売も開始し,遅くとも平成18年12月10日までには,インターネット販売を開始し,遅くとも平成21年4月ころからは自社サイト及び他社のショッピングモールにおいて販売を行っており,現在に至っている。 (ウ) 原告の店舗では,引用商標1及び2と でには,インターネット販売を開始し,遅くとも平成21年4月ころからは自社サイト及び他社のショッピングモールにおいて販売を行っており,現在に至っている。 (ウ) 原告の店舗では,引用商標1及び2と同様の書体の「ENOTECA」の標章が使用されている。また,原告のウェブサイトでも,引用商標1及び2と同様の書体の「ENOTECA」の標章並びに「エノテカ」の標章が使用されているほか,ウェブサイトでも同様の「ENOTECA」の標章及び「エノテカ」の標章が使用されている。 (エ) 原告は,顧客らのワイン愛好家を対象に会員組織「クラブエノテカ」を設け,平成11年ころから会報誌を発行している。会報誌では,引用商標1及び2と同様の書体の「ENOTECA」の標章並びに「エノテカ」の標章を使用している。 また,原告は,ワインの販売につき,平成12年7月ころから平成25年7月以前までに日本経済新聞等の新聞や雑誌等及び東京メトロ広尾駅に広告をしており,これらにおいては,引用商標1及び2と同様の書体の「ENOTECA」の標章並びに「エノテカ」の標章を使用している。 平成2年ころから平成25年7月ころまでの間,原告及びその事業内容,その店舗(ワインショップ)等に関する記事が,日本経済新聞(甲20)等の新聞や,「ケイコとマナブ」(甲33),「じゃらん」(甲34),「ぴあ」(甲35),「Hanako」(甲41,54),「週刊新潮」(甲45),「MEN’SEX」(甲64,71)等の雑誌に多数掲載されている。その中には,「ワイン愛好家の間でエノテカブランドは浸透しているため…「ワイン」の検索ワードでエノテカは上位に登場」(「日本ネット経済新聞」平成24年5月17日。甲22),「世- 25 -界中から選りすぐったワインを取り揃えたワインショップとして名高 ているため…「ワイン」の検索ワードでエノテカは上位に登場」(「日本ネット経済新聞」平成24年5月17日。甲22),「世- 25 -界中から選りすぐったワインを取り揃えたワインショップとして名高い「エノテカ」がオープン予定」(「Hanako」平成13年6月13日号。甲41),「日本のワインシーンをリードする存在」(「ELLE a table」平成25年3月号。甲68),「日本でも有名なワインショップ・エノテカがなんと香港に4店舗あり。」(「STORY」平成24年3月号。甲145)などと紹介するものもある。これらの雑誌においては,原告を示すものとして「エノテカ」の標章が用いられており,さらに,引用商標1及び2と同様の書体の「ENOTECA」の標章を掲載するものもある。 さらに,原告は,平成15年以降,毎年ワインのテイスティングイベントを開催し,そのチラシには引用商標1及び2と同様の書体の「ENOTECA」の標章並びに「エノテカ」の標章を使用している。 また,原告は,平成13年7月から平成24年3月までの間に,高級ブランドや著名人らとのコラボレーションによるイベントを行っているほか,平成14年ころから平成25年7月ころまでの間,クレジットカード会社,旅行会社,音楽関係,化粧品会社,フラワーギフトサイト,不動産会社,映画会社などと各種の提携やタイアップを行っており,これらの広告やチラシ等においても,引用商標1及び2と同様の書体の「ENOTECA」の標章及び「エノテカ」の標章の双方又は「エノテカ」の標章が使用されている。 (オ) 原告の平成20年4月1日から平成21年3月31日までの売上高は105億0774万円,同年4月1日から平成22年3月31日までの売上高は109億4557万3000円,同年4月1日から平成23年3月31日 平成20年4月1日から平成21年3月31日までの売上高は105億0774万円,同年4月1日から平成22年3月31日までの売上高は109億4557万3000円,同年4月1日から平成23年3月31日までの売上高は119億1462万6000円,同年4月1日から平成24年3月31日までの売上高は131億1891万3000円,同年4月1日から平成25年3月31日までの売上高は144- 26 -億0069万9000円(ただし,海外子会社を含む。)である。 (カ) 平成25年10月10日時点で,本件商標及び原告が商標権者となっているものを除き,日本国内において,第35類を指定役務とし,「エノテカ」,「ENOTECA」又は「Enoteca」の文字を含む商標の商標登録はされていなかった(甲158)。その後,「エノテカ・アリーチェ」(標準文字)の文字からなる商標が,指定役務を「第33類日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」及び「 第35類飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,商業又は広告のための商品の販売に関するイベントの企画・運営又は開催,商品の販売に関する情報の提供,飲食料品の輸出入に関する事務の代理又は代行」として,平成26年6月20日に設定登録(商標登録第5679892号)されている(乙50の5)。 イ被告らの本件商標の使用の状況等証拠(乙18,21,22,25,26,51,63,64(枝番のあるものは枝番を含む。))及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア) 被告会社は,1972年(昭和47年)に設立されたイタリアのボローニャ所在の会社であり,イタリア製のワインを販売し,少なくともボローニャの店舗及び被告会社のイタリア語のウェブサイト(ただし,平成26年7月10日時点であ (昭和47年)に設立されたイタリアのボローニャ所在の会社であり,イタリア製のワインを販売し,少なくともボローニャの店舗及び被告会社のイタリア語のウェブサイト(ただし,平成26年7月10日時点である。)において,本件商標を使用している。被告会社は,イタリアで最も権威あるワインアワードの一つであるとされるオスカー・デル・ヴィーノ(ワインのオスカー賞)で,平成14年のイタリア最優秀エノテカ賞を受賞したほか,平成17年には,「世界最優秀個人経営ワインショップ」で世界第3位に入賞するなどしている。 (イ) 被告らは,平成25年1月24日から同月27日まで,東京都港区のメリーロード高輪において,「ワインショップENOTECAIT- 27 -ALIANA日本に初上陸! 食の都イタリア,ボローニャに本店を置くエノテカイタリアーナがメリーロード高輪のカフェ10で期間限定バールオープンワンコイン(500yen)試飲も可(種類限定)」などと銘打って,被告会社の選んだイタリア製のワインを販売するイベントを実施した。また,被告らは,同年5月4日及び5日,「エノテカイタリアーナ好評につき2度目の出店! 食の都イタリアボローニャに本店を置くエノテカイタリアーナが2日間限定バールオープン」と銘打って同様のイベントを実施した。なお,2回目のイベントの際のチラシには,「今回は高輪のれんノ市との連動イベントによりボトルでの販売はございません。」との記載がある。 上記各イベントの際,イベントの垂れ幕,チラシ,ポスター,名刺及びイベントで使用されたワイングラスのロゴ刻印等に本件商標が使用された。 ウ 「Enoteca(エノテカ)」の語義及び使用状況等について(ア) 「enoteca」の語は,「貴重なワインのコレクション,ワイン展示館,試飲のできるワイ ゴ刻印等に本件商標が使用された。 ウ 「Enoteca(エノテカ)」の語義及び使用状況等について(ア) 「enoteca」の語は,「貴重なワインのコレクション,ワイン展示館,試飲のできるワインの販売所,ワイン屋」等の意味を有するイタリア語である(乙2,27)。 (イ) 本件商標の登録査定前に日本国内において発行された書籍には,「エノテカ」,「Enoteca」に関し,次のような記載がある。 a イタリア語で「ワインの箱や棚」を意味する言葉で,転じて地元ワインの販売所を指す。店内でもワインを飲めるように,カウンターやテーブルを用意してあるところも多い。食事は簡単なおつまみだけを提供するところがほとんど。カンティーナと呼ぶこともある。近年はワインを主体としたレストランなどもエノテカと呼ばれる(「ワインの用語500」平成24年7月31日発行。乙3)。 b ワイン居酒屋。ワイン店の一角で,客にグラスワインとつまみを提- 28 -供したのが始まり。本格的な料理を出す店も多い(「ララチッタローマ・フィレンツェ」平成24年11月発行。乙4)。 c ワイン販売店に併設されるワインバー。チーズをはじめ数種類のつまみが用意されている。気に入れば,その場でワインの購入も(「まっぷるイタリア2013」平成24年1月20日発行。乙5)。 d 本来は,量り売りワインの販売店。多くはワインバーを併設し,おつまみとともにグラスワインを味わうことができる。気に入ったワインをその場で購入できるのもうれしい。なかには食事にこだわったリストランテに近い店もある(「地球の歩き方arucoイタリア」平成24年3月23日発行。乙10)。 e エノテカは,普通はワインを中心に売る酒屋のこと。中には何種類かのワインをグラスで味わうことのできるカウンターを備えてい 「地球の歩き方arucoイタリア」平成24年3月23日発行。乙10)。 e エノテカは,普通はワインを中心に売る酒屋のこと。中には何種類かのワインをグラスで味わうことのできるカウンターを備えている店もある。店の中に入るとき赤,白,スプマンテと分けてその日に試飲できる銘柄が書かれていて,人々はナッツ類などの軽いものをつまみながらグラスに注がれたワインを楽しんでいる。こうしたエノテカでは店の人が自信を持って選んだボトルをリストに並べていて,香り,味わいともにそれぞれに違ったワインが揃っている。最近では,軽い食事を出す料理自慢の店も増えた(「’13~’14 地球の歩き方ローマ」。乙15)。 f 酒屋を兼ねたワインバーをエノテカ(ヴェネツィアでは「バーカリBacari」)という。高級ワインもグラスで頼めるし,おつまみだけでなく軽めの料理も提供される(「わがまま歩き…○29「ローマミラノフィレンツェヴェネツィア」 ブルーガイド」平成23年1月25日発行。乙16)。 g イタリア語。「ワインを専門的に集めているところ」の意で,フランス語のヴィノテークに当たる。イタリアでは,各地に公営の展示所- 29 -を設け,それをエノテカと称しているが,販売を目的とした純然たる商業ベースのエノテカもある。また,ワインの品揃えの多いレストランが,店名にエノテカという語を冠することもある(「新版ワインの事典」平成22年5月1日発行。乙28)。 (ウ) さらに,本件商標の登録査定前に日本国内で発行されたイタリアの旅行ガイドブック等の書籍において,「エノテカ○○○」との名称を有するイタリア所在のレストラン,ワインバー及び酒販店が相当数紹介されている(乙4,7ないし9,15,59)。 (エ) 日本国内において,「エノテカ○○○」との名称のレスト ノテカ○○○」との名称を有するイタリア所在のレストラン,ワインバー及び酒販店が相当数紹介されている(乙4,7ないし9,15,59)。 (エ) 日本国内において,「エノテカ○○○」との名称のレストラン,バー等が相当数存在する(乙29,31ないし34,38,49の6ないし8,52)。 他方,酒類の小売店で「エノテカ○○○」との名称を用いているものには,神戸市の「エノテカ・ラ・シレーナ」(乙29)がある。また,平成27年9月27日に大阪市で開催された「大好きイタリアワイン」とのイベントにおいて,ワインの販売ブースである「エノテカブース」に「エノテカビアンキ」及びイタリアワイン専門店である「エノテカイルソッフィオーネ」が出店している(乙49の1ないし5)。 (2) 本件商標の要部抽出の可否についてア(ア) 本件商標は,別紙本件商標目録記載のとおり,縁取りして図案化されたワインレッド色の「EnotecaItaliana」の欧文字を横書きに書して成り,「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部分とから構成される結合商標である。 本件商標は,その構成全体から「エノテカイタリア-ナ」の称呼が自然に生じる。 一方で,本件商標は,その構成中の「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部分との間に空白があること,それぞれの- 30 -文字部分の冒頭の文字が大文字で,冒頭以外の文字が小文字であることからすると,本件商標の外観上,「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部分とを明瞭に区別して認識することができる。 (イ) 前記⑴ウ認定のとおり,「enoteca」の語は,「貴重なワインのコレクション,ワイン展示館,試飲のできるワインの販売所,ワイン屋」を意味するイタリア語であること, 認識することができる。 (イ) 前記⑴ウ認定のとおり,「enoteca」の語は,「貴重なワインのコレクション,ワイン展示館,試飲のできるワインの販売所,ワイン屋」を意味するイタリア語であること,ワインに関連する書籍,イタリアの事情等を紹介する書籍には,「エノテカ」(Enoteca)が上記意味合いを有する語であることの記載があること,日本国内において,「エノテカ○○○」との名称のレストラン等の飲食店が相当数存在することからすると,ワイン愛好者や,イタリア料理,イタリア事情,イタリアへの旅行等に関心のある者の間においては,本件商標の登録査定当時(登録査定日平成25年7月29日),「Enoteca」が,「エノテカ」と称され,「試飲のできるワインの販売所」,「ワイン屋」(ワイン店)などの意味を有するイタリア語であることを相当程度認識されていたものと認められる。 一方で,前記⑴アの認定事実を総合すると,原告が,ワインの輸入販売,直営のワインショップ及びインターネット販売による小売,卸売,ワイン文化と知識の普及などの事業活動において,「ENOTECA」及び「エノテカ」の各標章を継続して使用した結果,本件商標の登録査定当時には,「ENOTECA」又は「エノテカ」は,原告及び原告が行うワインの輸入販売,小売,卸売等の事業ないし営業を表示するものとして,日本国内において,取引者,需要者である一般消費者の間に,広く認識され,周知となっていたことが認められる。 以上によれば,本件商標の「Enoteca」の文字部分から,取引者,需要者において,原告の周知の営業表示としての「ENOTECA」又は「エノテカ」の観念が生じるものと認められる。また,需要者のうち,ワ- 31 -イン愛好者や,イタリア料理,イタリア事情,イタリアへの旅行等に関心の 周知の営業表示としての「ENOTECA」又は「エノテカ」の観念が生じるものと認められる。また,需要者のうち,ワ- 31 -イン愛好者や,イタリア料理,イタリア事情,イタリアへの旅行等に関心のある者においては,「Enoteca」の文字部分から,「試飲のできるワインの販売所」,「ワイン屋」(ワイン店)などの観念が生じるとともに,原告の周知の営業表示としての「ENOTECA」又は「エノテカ」の観念も生じるものと認められる。 (ウ) 「italiana」の語は,「イタリアの」の意味を有するイタリア語の形容詞である。また,イタリア語の知識を有しない者にとっても,「italiana」の語は,その構成文字及び「イタリアーナ」の称呼が生じることから,国名の「イタリア」に関連することを示す語であることを容易に認識できるものといえる。 そうすると,本件商標の「Italiana」の文字部分から,「イタリアの」という観念を生じるものと認められる。 (エ) 以上のとおり,本件商標は,「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部分とから構成される結合商標であるが,その外観上,それぞれの文字部分を明瞭に区別して認識することができること,それぞれの文字部分から別異の観念が生じることに鑑みると,本件商標の「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部分は,それを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められないというべきである。 イ本件商標の登録査定当時には,「ENOTECA」又は「エノテカ」は,原告及び原告が行うワインの輸入販売,小売,卸売等の事業ないし営業を表示するものとして,日本国内において,取引者,需要者である一般消費者の間に,広く認識され,周知となっていたこと,本件商標の 」は,原告及び原告が行うワインの輸入販売,小売,卸売等の事業ないし営業を表示するものとして,日本国内において,取引者,需要者である一般消費者の間に,広く認識され,周知となっていたこと,本件商標の「Enoteca」の文字部分から,取引者,需要者において,原告の周知の営業表示としての「ENOTECA」又は「エノテカ」の観念が生じることは,前記ア(イ)認定のとおりである。 - 32 -他方で,前記ア(ウ)認定のとおり,本件商標の「italiana」の文字部分から「イタリアの」という観念を生じるが,本件商標の指定役務との関係においては,本件商標の「italiana」の文字部分は,その役務の提供の場所,提供の用に供される物等がイタリアに関連することを示すものと認識されるにとどまるものといえる。 以上を総合すると,本件商標が「ワインの小売又は卸売の業務について行われる顧客に対する便益の提供」の役務及びワインに関連する役務に使用された場合には,本件商標の構成中の「Enoteca」の文字部分は,取引者,需要者に対し,上記各役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められ,独立して役務の出所識別標識として機能し得るものといえる。 そうすると,本件商標から「Enoteca」の文字部分を要部として抽出し,これと引用商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるというべきである。 ウこれに対し,被告らは,本件商標は,外観が不可分一体で,称呼も一連一体であり,観念についても,その構成全体から,ワインを販売・提供する店舗の名称あるいは被告会社の周知な店舗名を表すものであること,本件商標の構成中の「Enoteca」の文字部分は強く支配的な印象を与えるものはいえないことなどからすると,本件商標から「Enoteca」の 名称あるいは被告会社の周知な店舗名を表すものであること,本件商標の構成中の「Enoteca」の文字部分は強く支配的な印象を与えるものはいえないことなどからすると,本件商標から「Enoteca」の文字部分のみを要部として抽出することはできない旨主張する。 しかしながら,被告らの主張は,以下のとおり理由がない。 (ア) 被告らは,本件商標は,縁取りして統一的に図案化されたワインレッド色の「EnotecaItaliana」の文字をまとまりよく一体的に表してなるロゴタイプの商標であり,本件商標から「エノテカイタリアーナ」の一連の称呼がよどみなく生じるから,本件商標は,色彩や形態によって外観が不可分一体であり,称呼も一連一体である旨主張- 33 -する。 しかしながら,前記ア(ア)認定のとおり,本件商標は,その構成全体から「エノテカイタリア-ナ」の称呼が生じるが,一方で,本件商標は,その構成中の「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部分との間に空白があること,それぞれの文字部分の冒頭の文字が大文字で,冒頭以外の文字が小文字であることからすると,本件商標の外観上,「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部分とを明瞭に区別して認識することができるから,本件商標の外観が不可分一体であるということはできない。 また,本件商標の構成全体から「エノテカイタリア-ナ」の称呼が自然に生じることからといって直ちに本件商標から「Enoteca」の文字部分を要部として抽出することができないとはいえない。 したがって,被告らの上記主張は,本件商標から「Enoteca」の文字部分のみを要部として抽出することはできないことの根拠となるものではない。 (イ) 被告らは,①「エノテカ」は,イタリア語で「貴重なワインのコ 告らの上記主張は,本件商標から「Enoteca」の文字部分のみを要部として抽出することはできないことの根拠となるものではない。 (イ) 被告らは,①「エノテカ」は,イタリア語で「貴重なワインのコレクション,ワイン展示館(蒐集館),試飲のできるワインの販売所,ワイン屋」などの意味を持つ普通名称であり,ワインの展示・販売・試飲・つまみの提供などのサービスを一体的に行う店舗の種類を表す普通名称として,日本語のガイドブック等でも繰り返し使われていること,②イタリア国内には,「Enoteca ○○○(エノテカ○○○)」の名称の店舗が相当数存在しており,これらの店舗の一部は,日本語のガイドブック等にも紹介されており,日本国内においても,「Enoteca ○○○(エノテカ○○○)」の名称は,ワインショップやイタリアンレストランの名称等に頻繁に利用されており,これらの店舗が出版物にもたびたび掲載されていることからすると,「エノテカ」,「Eno- 34 -teca」又は「ENOTECA」の語は,日本国内においても,需要者の間で,ワインを販売・提供する店舗等を示す一般的な名称として広く認識され,使用されているといえるものであり,特に,「Enoteca」が他の語と結合して「Enoteca ○○○(エノテカ○○○)」として用いられた場合は,需要者は「Enoteca ○○○」の店舗名全体から特定の店舗を認識するから,本件商標の「Enoteca」の文字部分の識別力は微弱であるなどとして,本件商標の「Enoteca」の文字部分が役務の出所標識として強く支配的な印象を与えるものとはいえない旨主張する。 a しかしながら,「enoteca」の語は,「貴重なワインのコレクション,ワイン展示館,試飲のできるワインの販売所,ワイン屋」を意味するイタリア語である 象を与えるものとはいえない旨主張する。 a しかしながら,「enoteca」の語は,「貴重なワインのコレクション,ワイン展示館,試飲のできるワインの販売所,ワイン屋」を意味するイタリア語であること,ワインに関連する書籍,イタリアの事情等を紹介する書籍には,「エノテカ」(Enoteca)が上記意味合いを有する語であることの記載があること,日本国内において,「エノテカ○○○」との名称のレストラン等の飲食店が相当数存在することは,前記ア(イ)認定のとおりである。これらの事実から,本件商標の登録査定当時,日本国内において,ワイン愛好者や,イタリア料理,イタリア事情,イタリアへの旅行等に関心のある者の間で「Enoteca」又は「ENOTECA」の語が「試飲のできるワインの販売所」,「ワイン屋」(ワイン店)などの意味を有するイタリア語であることが相当程度認識されていたことが認められるとしても,一般消費者を含む需要者の間で「エノテカ」,「Enoteca」又は「ENOTECA」の語がワインを販売・提供する店舗等を示す一般的な名称として認識されていたとまで認めることはできない。 また,イタリア国内には,「Enoteca ○○○(エノテカ○○○)」といった名称の店舗が相当存在しており,これらの店舗の一- 35 -部がイタリアの事情等を紹介する書籍に掲載されているとしても,それらの掲載記事は,イタリアの国内の状況を示したり,イタリア国内の店舗を紹介するにすぎないものであるから,上記と同様である。 他方で,日本国内において,「Enoteca ○○○(エノテカ○○○)」の名称が,ワインを小売するワインショップに用いられているのは,証拠上3件にすぎず(前記(1)ウ(エ)),他の多くはレストランやバーなど飲食物の提供を役務とする飲食店に用いられて エノテカ○○○)」の名称が,ワインを小売するワインショップに用いられているのは,証拠上3件にすぎず(前記(1)ウ(エ)),他の多くはレストランやバーなど飲食物の提供を役務とする飲食店に用いられているにすぎない。 加えて,本件商標の登録査定当時には,「ENOTECA」又は「エノテカ」は,原告及び原告が行うワインの輸入販売,小売,卸売等の事業ないし営業を表示するものとして,日本国内において,取引者,需要者である一般消費者の間で,広く認識され,周知となっており,本件商標の「Enoteca」の文字部分から,取引者,需要者において,原告の周知の営業表示としての「ENOTECA」又は「エノテカ」の観念が生じること(前記ア(イ))に鑑みると,「Enoteca」が他の語と結合して「Enoteca ○○○(エノテカ○○○)」として用いられた場合であっても,需要者は「Enoteca」又は「エノテカ」の文字部分から原告の周知の営業表示としての「ENOTECA」又は「エノテカ」を想起するものといえるから,本件商標の「Enoteca」の文字部分が出所識別標識としての識別力が微弱であるということはできない。 b また,被告らは,本件商標の「Enoteca」の文字部分の出所識別標識としての識別力が微弱であることの理由として,本件商標は,その構成全体から,被告会社又はその店舗名を表すものとして,日本国内において著名又は周知である旨主張する。 しかしながら,被告らが本件商標が被告会社又はその店舗名を表す- 36 -ものとして日本国内において著名又は周知であることの根拠として挙げる事情は,主として,イタリアにおける被告会社の事業,本件商標の使用状況等に関する事情(前記イ(ア))であり,それらの事情は,日本国内において,本件商標が被告会社又はその店舗名 ことの根拠として挙げる事情は,主として,イタリアにおける被告会社の事業,本件商標の使用状況等に関する事情(前記イ(ア))であり,それらの事情は,日本国内において,本件商標が被告会社又はその店舗名を表すものとして著名又は周知であったことを基礎付けるものとはいえない。 また,日本国内における本件商標の使用状況(前記イ(イ))をみると,被告らが,平成25年1月24日から同月27日まで,同年5月4日及び5日の2回にわたり,東京都内において,ワインの試飲等のイベントを開催し,イベントの垂れ幕,チラシ,ポスター,名刺及びイベントで使用されたワイングラスのロゴ刻印等に本件商標を使用したことが認められるにとどまる。なお,被告らが被告会社を取り上げたものとして提出する書籍「初めてのイタリアワイン」(平成24年7月15日発行。乙24)には,本件商標も,被告会社の名称も記載されていないから,乙24をもって本件商標の日本国内における著名性又は周知性を基礎付けることはできない。 したがって,被告らの上記主張は採用することができない。 (ウ) 以上の次第であるから,本件商標から「Enoteca」の文字部分を要部として抽出することはできないとの被告らの主張は,理由がない。 (3) 本件商標と引用商標の類否についてア(ア) 本件商標の要部である「Enoteca」の文字部分と引用商標1を対比すると,引用商標1は,別紙引用商標目録記載1のとおり,黒色のゴシック調の書体の欧文字の大文字7字から成るのに対し,本件商標の「Enoteca」の文字部分は,別紙本件商標目録記載のとおり,同様の綴りの欧文字7字から成るが,冒頭の「E」の文字が大文字で,冒頭以外の文字が小文字である点及び各文字が縁取りして図案化された- 37 -ワインレッド色である点で,両商標の外 記載のとおり,同様の綴りの欧文字7字から成るが,冒頭の「E」の文字が大文字で,冒頭以外の文字が小文字である点及び各文字が縁取りして図案化された- 37 -ワインレッド色である点で,両商標の外観は,同一とはいえないが,紛らわしいものといえるから,類似するものと認められる。 本件商標の「Enoteca」の文字部分と引用商標1は,「エノテカ」の称呼が生じる点で,称呼において同一であり,また,引用商標1から,本件商標の「Enoteca」の文字部分と同様に(前記(2)ア(イ)),原告の周知の営業表示としての「ENOTECA」又は「エノテカ」の観念が生じるから,観念においても同一である。 以上によれば,本件商標の「Enoteca」の文字部分と引用商標1は,称呼及び観念が同一であり,外観は,同一ではないが,類似するものといえる。 (イ) 本件商標の要部である「Enoteca」の文字部分と引用商標2は,引用商標2が,別紙引用商標目録記載1及び2のとおり,引用商標1と同一の構成のものであるから,上記(ア)と同様に,称呼及び観念が同一であり,外観は,同一ではないが,類似するものといえる。 また,引用商標3は,別紙引用商標目録記載3のとおり,黒色のゴシック調の書体の欧文字7字から成り,引用商標1とは冒頭の「E」の文字以外の文字が小文字である点で異なるが,本件商標の「Enoteca」の文字部分とは綴りが同一である。 したがって,本件商標の「Enoteca」の文字部分と引用商標3は,称呼及び観念が同一であり,外観は,同一ではないが,類似し,その類似性の程度は高いものといえる。 イ本件商標の指定役務のうち,「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,酒類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供 似性の程度は高いものといえる。 イ本件商標の指定役務のうち,「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,酒類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ワイングラスの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋- 38 -物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,陶器製の食器類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ガラス製食器類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」は,引用商標1の指定役務のうち,「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,台所用品・清掃用具及び洗濯用具の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と同一又は類似するものといえる。 また,本件商標の指定役務のうち,「タオル及びハンカチの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,エプロンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」は,引用商標2の指定商品のうち,「布製身の回り品」及び「被服」と類似するものといえる。 さらに,本件商標の指定役務のうち,「酒類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」は,引用商標3の指定商品と類似するものといえる。 ウ以上のとおり,本件商標の要部である「Enoteca」の文字部分と引用商標(引用商標1ないし3)は,外観が類似し,称呼及び観念が同一であることからすると,本件商標及び引用商標が本件商標の指定役務に使用された場合には,その役務の出所について誤認混同を生ずるおそ と引用商標(引用商標1ないし3)は,外観が類似し,称呼及び観念が同一であることからすると,本件商標及び引用商標が本件商標の指定役務に使用された場合には,その役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるものといえるから,本件商標と引用商標はそれぞれ全体として類似しているものと認められる。 したがって,本件商標は引用商標に類似する商標であるものと認められる。 (4) まとめ以上によれば,本件商標は,引用商標に類似する商標であって,本件商標- 39 -の指定役務は引用商標の指定役務又は指定商品と同一又は類似するから,本件商標は商標法4条1項11号に該当するものと認められる。 したがって,本件商標は商標法4条1項11号に該当するとはいえないとした本件審決の判断には誤りがあるから,原告主張の取消事由1は理由がある。 2 結論以上のとおり,原告主張の取消事由1は理由があるから,その余の点について判断するまでもなく,本件審決は取り消されるべきものである。 よって,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官大西勝滋 裁判官神谷厚毅 - 40 -(別紙)本件商標目録- 41 -(別紙)引用商標目録 1 登録第5136985号商標商標の構成 登録出願日平成19年4月3日設定登録日平成20年6月6日指定役務第35類「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,電気機械器具類の小売の業務におい 9年4月3日設定登録日平成20年6月6日指定役務第35類「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,電気機械器具類の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,手動利器の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,台所用品・清掃用具及び洗濯用具の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,印刷物の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,たばこ及び喫煙用具の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,木製の包装用容器の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」 2 登録第2357005号商標商標の構成 登録出願日平成元年6月27日- 42 -設定登録日平成3年11月29日指定商品の書換登録日平成14年5月22日指定商品第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」第25類「被服」 3 登録第1860159号商標商標の構成 登録出願日昭和59年4月16日設定登録日昭和61年5月30日指定商品の書換登録日平成18年12月20日指定商品第32類「ビール」第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」
▼ クリックして全文を表示