主文 1 被告は,原告に対し,600万円及びこれに対する平成19年7月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを5分し,その2を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求被告は,原告に対し,1000万円及びこれに対する平成19年7月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,枚方市長であった期間内の平成19年7月6日に被告が発行したA新聞朝刊に掲載された記事により名誉を毀損されたことを理由に,不法行為に基づく損害賠償請求として,慰謝料1000万円及びこれに対する不法行為の日である同日からの民法所定の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いがないか争うことが明らかにされないもの)(1) 原告は,平成7年5月1日から平成19年9月10日まで枚方市長を務めた者である。 被告は,A新聞を発行する新聞社である。 (2) 被告が発行した平成19年7月6日付けA新聞朝刊(大阪版)に,「枚方談合」,「市長,頻繁に接待受ける」,「B側から」,「ほぼ毎月の時期も」との見出しの下に,次のアのとおりのリードとイのとおりの本文による記事(甲1。以下「本件記事」という。)が掲載された(本件記事の原文は,「枚方談合」との見出しを除き,全て縦書きである。)。本件記事は,公共の利害に関 する事実に関し,専ら公益を図る目的に出たものである。 ア清掃工場建設を巡る大阪府枚方市の官製談合事件で,C市長(51)は,逮捕されたB顧問らから頻繁に接待を受けていたことが五日分かった。元市議で府議のD 関し,専ら公益を図る目的に出たものである。 ア清掃工場建設を巡る大阪府枚方市の官製談合事件で,C市長(51)は,逮捕されたB顧問らから頻繁に接待を受けていたことが五日分かった。元市議で府議のD容疑者(49)がB側に工事参入を持ちかけた場にも同席しており,大阪地検特捜部は,一連の接待でのやり取りの全容解明を進めている。 イ不正の舞台となった清掃工場建設の入札は二〇〇五年十一月で,BとEの共同事業体(JV)が五十五億六千万円で落札した。 関係者によると,B側の接待係は,営業担当だった顧問のF容疑者(64)=贈賄容疑で再逮捕=で,談合担当のトップだった元顧問,G被告(71)=起訴=の了承を得て,工事の受注工作に奔走した。 C市長は,建設用地の買収段階だった二〇〇〇年ごろ,F,D両容疑者と会った。その際,D容疑者が「工事を受注させてやる」などとF容疑者に持ちかけているが,両者のやりとりを聞いていたという。 その前後からF容疑者らによるC市長の接待が始まり,〇五年に入っても断続的に続いた。主な場所は大阪市内や枚方市内の料亭で,ほぼ毎月のように接待していた時期もあったという。 一方,談合罪で起訴された副市長のH被告(61)は〇三年春ごろ,C市長の紹介で,業者側の窓口の一人だった大阪府警警部補,I被告(47)=起訴=と知り合った。その後,I被告に工事の情報を漏らすなどしていたが,特捜部の調べに「市長が談合のことを知らなかったはずがない」などと供述しているという。 特捜部はC市長の任意の事情聴取の内容も合わせ,市長が大筋で談合を認識・把握していたとの見方を強めており,詰めの捜査を進めている。 2 争点及びこれに関する当事者の主張の要旨(1) 本件記事の事実摘示が原告の社会的評価を低下させるものであるか否か。 ア原告 本 との見方を強めており,詰めの捜査を進めている。 2 争点及びこれに関する当事者の主張の要旨(1) 本件記事の事実摘示が原告の社会的評価を低下させるものであるか否か。 ア原告 本件記事は,原告が談合に関与した旨の事実と,原告が長期間にわたり,かつ,多いときはほぼ毎月,株式会社Bから接待を受けるという収賄罪の構成要件に該当する行為をした旨の事実を摘示しており,本件記事のこれらの事実摘示は原告(C)の社会的評価を低下させるものである。 イ被告争う。 本件記事は,原告が談合の事実を認識しており,談合の共謀に関与した旨の事実と,原告がB側から接待を受けていた旨の事実を摘示するものである。 (2) 本件記事の摘示事実が真実であるか否か。 ア被告(ア) 上記のとおり,本件記事が摘示したのは原告が談合の事実を認識しており談合の共謀に関与した旨と原告がB側から接待を受けていた旨であるから,真実性の立証対象もこの2点である。 (イ) 原告が談合の事実を認識しており談合の共謀に関与した旨の事実は,大阪地方裁判所平成19年(わ)第4648号談合被告事件(以下「本件刑事事件」という。)判決及びその控訴審判決において原告に談合罪の共謀共同正犯が成立することが認められているとおり,真実であることは明らかである。 (ウ) 原告がB側から接待を受けていた旨の事実は,次のとおり真実である。 a 原告自身が接待を受けた事実を認めていること。 原告は,平成19年5月30日の午前中に行った記者会見(以下「本件記者会見」という。)において,平成16年頃に料亭JでB関係者とした会食(以下「本件会食」という。)の際の飲食代を自ら支払っていないこと,すなわち飲食の接待を受けたことを認めた。 また,平成11年12月末頃に大阪市内にあるホテルKの会 年頃に料亭JでB関係者とした会食(以下「本件会食」という。)の際の飲食代を自ら支払っていないこと,すなわち飲食の接待を受けたことを認めた。 また,平成11年12月末頃に大阪市内にあるホテルKの会議室において原告がB営業担当役員らと会談した際(以下,この会談を「K会談」 という。)の室料等の諸費用はB側が全額負担しており,原告は一切負担していない。 b 捜査機関に対する取材結果(a) 被告の大阪編集局社会部所属のL記者は,平成19年6月20日,大阪地方検察庁のM検事正に対し夜回り取材(対象者の帰宅の際にする取材をいう。)をした。 原告は,同日の時点では,Bの営業担当役員のFと会ったのは本件会食の1回だけである旨発言していた。しかし,M検事正は,原告とFが会ったのはこの1回だけであるのかとのLの質問に対し,これを否定する回答をした。 上記取材の結果,原告とFが複数回会っていたこと及び原告が公式の場で事実と異なる発言をしていることが明らかとなった。 (b) また,被告の大阪編集局社会部所属のN記者は,平成19年6月25日,大阪地方検察庁のO次席検事に対し朝回り取材(対象者の出勤の際にする取材をいう。)をした。 O次席検事は,Bの原告に対する接待が複数回にわたり行われていたのかとのNの質問に対し,これを肯定し,さらに,接待は大阪市内だけではなく枚方市内でも行われていたのかと質問に対しても,これを肯定した。 これまでの取材とO次席検事に対する上記取材の結果,原告がBから何度も大阪市内や枚方市内において接待を受けていたこと及び原告が公式の場で事実と異なる発言をしていることが明らかとなった。 (c) さらに,Lは,平成19年6月29日,O次席検事に対し夜回り取材をした。 O次席検事は,Fと会ったのは本件会食の1回だ び原告が公式の場で事実と異なる発言をしていることが明らかとなった。 (c) さらに,Lは,平成19年6月29日,O次席検事に対し夜回り取材をした。 O次席検事は,Fと会ったのは本件会食の1回だけである旨の公式の場における原告の発言は正しいかとのLの質問に対し,その1回だ けということはあり得ないと回答し,さらに,原告がBから頻繁に接待を受けていたのかとの質問に対し,これを肯定した。 これまでの取材とO次席検事に対する上記取材の結果,原告がBから頻繁に大阪市内や枚方市内において接待を受けていたこと及び原告が公式の場で事実と異なる発言をしていることが明らかとなった。 c 捜査機関に対する取材結果が真実であること。 (a) 捜査機関は,捜査権限を有し,事件に関する大量かつ詳細な情報を保有している。また,捜査機関は,捜査継続中の事件に関する記者発表の際や報道関係者からの個別取材に対しては,報道の自由及び国民の知る権利の観点から必要最小限度の情報のみを開示し,継続中の捜査に支障を生じさせたり報道機関が誤った捜査情報を報道したりしないよう慎重に対応している。したがって,一般に,記者からの個別取材における質問に対し捜査機関の適切な立場の者から肯定的な回答があったときは,その回答の信用性は極めて高いということができる。 (b) 大阪地方検察庁においては,報道対応の最終的な責任者は次席検事が務め,検事正も報道機関からの個別取材の対応をすることが長年の慣行となっている。特に,本件で問題とされている枚方市の清掃工場建設工事をめぐる談合事件(以下「本件談合事件」ということがある。)のように特捜部が担当する政治家等を捜査対象とする重大事件については,上級庁である大阪高等検察庁や最高検察庁と協議を行いながら捜査方針を決定するところ,そのよ 下「本件談合事件」ということがある。)のように特捜部が担当する政治家等を捜査対象とする重大事件については,上級庁である大阪高等検察庁や最高検察庁と協議を行いながら捜査方針を決定するところ,そのような協議を行うのも検事正及び次席検事であることから,検事正及び次席検事は,特捜部の部長などから事件の捜査状況等の報告を受けている(次席検事は特捜部の部長を監督する立場にもある。)。したがって,本件に関する最適な捜査機関の取材対象者は,M検事正及びO次席検事である。 (c) Lは,平成19年5月以降担当者としてほぼ毎日取材を行った経験 と,同業者やM検事正の前任地である神戸地方検察庁の関係者から聞いた評判などから,M検事正は,① うそはいわず,回答できないことに対しては,知らない,報告がないなどと回答する,② 質問者が誤った認識を有している場合には,それは違う,考え直した方がよいなどと回答して当該認識を修正させる,③ 他の報道機関のスクープの真偽についてはそのニュアンスを伝えるという対応をする人物であると認識しており,したがって,M検事正に対する取材の結果は信頼できると考えた。 (d) Nは,平成19年2月以降担当者としてほぼ毎日取材を行った経験から,O次席検事は,① 質問内容が間違っているときは必ず否定する,② 確認を取ろうとした内容が正しい場合には肯定をするという対応をする人物であると認識しており,したがって,O次席検事に対する取材の結果は信頼できると考えた。 (e) このように,M検事正及びO次席検事は,本件に関する捜査状況等を把握しており,かつ,報道機関からの個別取材に対する回答内容も信頼することのできる人物であったから,M検事正及びO次席検事に対する取材によって得られた上記bの情報は真実である。 dPの取材結果 把握しており,かつ,報道機関からの個別取材に対する回答内容も信頼することのできる人物であったから,M検事正及びO次席検事に対する取材によって得られた上記bの情報は真実である。 dPの取材結果当時被告の名古屋支社編集部に所属していた記者であるPは,B関係者から,原告が大阪で毎日のようにBから接待を受けていたと社内でいわれている旨の情報を得た。 イ原告(ア) 原告は,談合を共謀しておらず,共謀に基づく行為もない。 大阪府議会議員のDがBに対して工事を受注させてやると持ち掛けたことや,原告がそのような場に同席したこともない。K会談が行われた当時はまだ枚方市第2清掃工場は用地買収も済んでおらず,いつ実現するかも 分からない状態であった。原告は,同工場ではなく,汚泥処分地の工法や有害物質除去工事に関する談合の有無を聞くためにB関係者と面談したのである。 (イ) 原告がBから接待を受けた事実はない。K会談の際にコーヒー等の飲料が提供された可能性はあるが,これは社会通念上一般的なものであり接待に当たらない。 また,本件会食の際の飲食代は参加者各自が負担しており,これも接待ではない。本件会食は,Dの快気祝いとしてDと大阪府警警察官のI,原告の3名で食事をする予定のものであったのに,Iが原告に無断でFも誘っていた。原告は,料亭に到着してそのことを知り,怒って帰ろうとしたが,Iが執ように引き止めたため仕事の話はしないことを条件に会食することとし,1時間弱で解散した。仮に,本件会食の際の飲食代をBが負担したとしても,原告が少なくとも6年以上もの長期間にわたり恒常的に接待を受けていたなどという事実はない。 (ウ) 枚方市副市長のHが,原告が談合を知らなかったはずがないなどと供述したことはない。Hは,捜査段階から一貫して官製談合 年以上もの長期間にわたり恒常的に接待を受けていたなどという事実はない。 (ウ) 枚方市副市長のHが,原告が談合を知らなかったはずがないなどと供述したことはない。Hは,捜査段階から一貫して官製談合の存在を否定していた。 (3) 本件記事の摘示事実が真実であると信じるにつき相当の理由があるか否か。 ア被告仮に,原告がB側から接待を受けていた旨の事実が真実であるとはいえないとしても,次のとおり,被告が当該事実を真実であると信じたことについて相当の理由がある。 (ア) 上記(2)ア(ウ)aのとおり,原告は,本件記者会見において,本件会食の際の会食代を自ら支払っていないこと,すなわち飲食の接待を受けたことを認めた。また,同b及びcのとおり,被告は,当時の状況の下で唯一することができた取材である捜査機関に対する取材により,原告がBから頻 繁に大阪市内や枚方市内において接待を受けていた旨の信頼性の高い情報を得たのであり,これに何らの疑義を生じさせる事情もなかった。 (イ) 次のとおり,被告が行った取材は十分なものであった。 a 被告の取材態勢について本件談合事件は,大阪地方検察庁特捜部(以下「特捜部」という。)が直接捜査を開始したことから,被告の大阪編集局社会部に所属し大阪司法記者クラブにも所属していたQ,L及びNの3名が中心となって取材をすることとした。このうち,Qが統括的立場を務め,LとNが大阪地方検察庁や原告への取材を担当し,その結果等を3名で共有していた。 そのほか,大阪府警記者クラブ所属の記者(現役の警察官であったIも捜査対象であったため),大阪府庁記者クラブ所属の記者(大阪府議会の議員であったDも捜査対象であったため)及び遊軍の記者(重大事件を機動的に取材するため)もそれぞれ取材を行った。 bB関係者に対 捜査対象であったため),大阪府庁記者クラブ所属の記者(大阪府議会の議員であったDも捜査対象であったため)及び遊軍の記者(重大事件を機動的に取材するため)もそれぞれ取材を行った。 bB関係者に対する取材ができなかったこと。 本件談合事件の共謀に関与していたGは平成19年6月4日に,Fは同年5月29日にそれぞれ逮捕され,R及びSも同日に逮捕されたため,被告がこれらの当事者本人に取材をすることは不可能であった(談合という事件の性質に鑑み,本件記事の掲載日の前日である同年7月5日の時点で本件談合事件に関与したことを被告が知らなかったT,U及びVの3名やその他のBの従業員等は取材対象とはなり得なかった。)。 また,被告は,上記の身柄拘束されたB関係者の弁護人に対する取材を試みることとし,数日間にわたって大阪拘置所の入口に記者を派遣して接見に訪れた弁護人に確認することによりその一部を特定することができたものの,当該弁護人は,被告の取材に対して十分な対応をしなかった。 c 原告に対する取材ができなかったこと。 (a) 被告の記者は,接待の事実の有無を確認すべく,原告の出勤時や登庁後の執務室への入室時に原告に対しコメントを求めたが,原告は,捜査中であることを理由に取材に応じなかった。また,被告の記者は,個別取材の機会を設けていただきたいと伝えて携帯電話の番号を記載した名刺を登庁した原告に手渡したり,個別取材を申し入れる旨を記載した名刺を原告の自宅の郵便受けに投函したりしたが,原告からの連絡はなかった。さらに,原告は,本件記事を掲載した前日の平成19年7月5日,捜査中のことであり詳細についてはコメントできない旨を記載した文書を配布し,報道機関からの取材には応じないとの姿勢を明確に示し,実際に質問に対して無言を貫くようになった。 の平成19年7月5日,捜査中のことであり詳細についてはコメントできない旨を記載した文書を配布し,報道機関からの取材には応じないとの姿勢を明確に示し,実際に質問に対して無言を貫くようになった。 このように,原告は,被告から取材を受けることを拒絶した。 (b) Nは,平成19年6月21日の朝,O次席検事に対し朝回り取材をした。 原告は,同月4日の時点では,Fと会ったのは本件会食の1回だけである旨発言していたが,同月21日付けW新聞朝刊において,原告がFと初めて会ったのは平成16年ではなく,約7年前にも大阪市内のホテルで会っていた旨の報道がされた。O次席検事は,このW新聞朝刊の記事は事実であるのかとのNの質問に対し,8年前すなわち平成11年にも会っていたと回答した。 これまでの取材とO次席検事に対する上記取材の結果,原告とFが複数回会っていたこと及び原告が公式の場で事実と異なる発言をしていることが明らかとなった。 (c) このように,被告は,原告が被告から取材を受けることを拒絶している上,原告からコメントがあってもそれを直ちに信頼することはできない状況であると判断し,原告に対する取材を断念した。 イ原告 (ア) Pが名古屋のB関係者から聞いたという情報は,単なるうわさ話の域を出ないものである。 (イ) 原告は,本件記者会見において,記憶に基づくものであり断言できるものではないことを留保して発言している。また,Iは,B関係者ではないから,仮にIが本件会食の際の飲食代を支払ったとしても,これがBから受けた接待であるとはいえない。 (ウ) M検事正は,大阪地方検察庁を統括する地位にあるから,個別の事件の事実関係を逐一把握しているとは考え難い。また,O次席検事の発言は,被告の主張を前提としても,頻繁に接待があったこと ない。 (ウ) M検事正は,大阪地方検察庁を統括する地位にあるから,個別の事件の事実関係を逐一把握しているとは考え難い。また,O次席検事の発言は,被告の主張を前提としても,頻繁に接待があったことを肯定するものではなく,あいまいな発言をしているにとどまる。 また,被告の主張は,検察官の発言と被疑者,被告人の発言が食い違った場合には,被疑者,被告人が嘘をつき,検察官が真実を述べているとの前提に立つものであるが,検察庁が意図的に真実と異なる情報を発信する可能性も否定できないのであるから,何らの証拠も有しない報道機関が一方当事者にすぎない検察関係者が正しいと判断して報道すべきではない。 (エ) 以上によれば,被告が本件記事の摘示事実が真実であると信じるにつき相当の理由があるとはいえない。 (4) 損害額ア原告原告は,本件記事が掲載された当時,談合事件について容疑を受けており,そのような状態に置かれた原告が接待を受けていないと反論しても,世間に信用されないのではないかという無力感に襲われることは想像に難くない。 また,原告は,大阪地方検察庁が原告の刑事責任を追及する一手段としてありもしない接待をあえて報道機関にリークしたのではないかという疑心暗鬼にも陥った。原告の受けた精神的損害は計り知れず,その慰謝料は1000万円が相当である。 イ被告争う。 第3 当裁判所の判断 1 本件記事の事実摘示が原告の社会的評価を低下させるものであるか否か(争点(1))について(1) 証拠(甲1)及び弁論の全趣旨によれば,本件記事は,平成19年7月6日付けA新聞朝刊(大阪版)の社会面トップに掲載されたものであり,また,同朝刊には,本件記事に三方を囲まれる形で,次のような記事が掲載されていることが認められる。 ア小見 ,平成19年7月6日付けA新聞朝刊(大阪版)の社会面トップに掲載されたものであり,また,同朝刊には,本件記事に三方を囲まれる形で,次のような記事が掲載されていることが認められる。 ア小見出し「談合関与」の質問には無言枚方市長イ本文C市長は五日午後,市民会館で開かれた市主催の「高齢者交通安全大会」に出席。千百人を前にしたあいさつの中で「事件に関し多大なご心配をおかけした」と,改めて謝罪した。終了後,報道陣から「談合を認めたか」「関与したのではないか」との質問を受けたが,無言を貫いた。 (2) そこで,一般読者の普通の注意と読み方とを基準として,「枚方談合」,「市長,頻繁に接待受ける」,「B側から」,「ほぼ毎月の時期も」という前提事実(2)に掲記したとおりの見出しと,同アのとおりのリード及び同イのとおりの本文から成る本件記事を,上記(1)の記事も含めた全体として通覧すると,本件記事によって,①㋐清掃工場建設をめぐる枚方市の官製談合事件の談合が行われる過程で,枚方市長である原告が,平成12年頃,関係者が談合を持ち掛ける場面に居合わせ,そのやり取りを聞いていた上,㋑その前後から,原告が,逮捕されたB関係者からの受注工作としての料亭等での接待を受け始め,それが平成17年に入っても時々途切れながらも続き,ほぼ毎月の時期もあったとの事実(以下,①㋐の事実を「事実①㋐」と, ①㋑の事実を「事実①㋑」という。)が摘示されているということができる(被告は,単に,原告がBから接待を受けていた旨の事実摘示がされているのみである旨を主張するが,見出しには「市長,頻繁に接待を受ける」,「ほぼ毎月の時期も」とあり,リードには「逮捕されたB顧問らから頻繁に接待を受けていたことが五日分かった。」とあり,さらに,本文中には みである旨を主張するが,見出しには「市長,頻繁に接待を受ける」,「ほぼ毎月の時期も」とあり,リードには「逮捕されたB顧問らから頻繁に接待を受けていたことが五日分かった。」とあり,さらに,本文中には「二〇〇〇年ごろ,F,D両容疑者と会った。・・・その前後からF容疑者らによるC市長の接待が始まり,〇五年に入っても断続的に続いた。主な場所は大阪市内や枚方市内の料亭で,ほぼ毎月のように接待していた時期もあったという。」とあることに照らし,長期間にわたって接待を受け続け,ほぼ毎月のように接待があった時期があることが強調されていることが明らかであり,このことに加え,接待を〔一度〕受けたとの事実と接待を長期間にわたり頻繁に受け,それが毎月の時期もあったとの事実は,社会的に異質の事柄として受けとめられるのが通常であると考えられることに照らせば,一般読者は,普通の注意と読み方でもって,上記のような事実摘示があることを読み取ることが明らかであるというべきである。)。 また,そうした事実摘示があることに加え,「談合関与」の質問に対し原告が無言を貫いたなどという上記(1)の記事と,原告からの紹介で業者側の人間と知り合って工事の情報を漏らすなどしており,また,談合罪で起訴された枚方市副市長が,原告が談合のことを知らなかったはずがないと供述しており,捜査機関の中の捜査機関ともいえる特捜部が,原告が談合を認識,把握していたとの見方を強め,詰めの捜査を進めているとの記事とが並記されることによって,一般読者としては,② 原告が談合のことを知っていた旨を談合罪で起訴された原告の関係者が確信をもって述べており,また,原告が談合を認識,把握していたとの見方を捜査機関が強めているということを超えて,原告が枚方市の清掃工場を巡る談合に関与していた疑いが極めて濃厚で された原告の関係者が確信をもって述べており,また,原告が談合を認識,把握していたとの見方を捜査機関が強めているということを超えて,原告が枚方市の清掃工場を巡る談合に関与していた疑いが極めて濃厚であるとの事実(以下「事実②」という。)の摘示を読み取るものと認 められる。 (3) そうすると,事実①㋐,事実①㋑及び事実②の事実摘示は,地方公共団体の長である原告がその職務に関わる犯罪行為が行われる場面に関与し,職務に関連して犯罪を犯し,あるいは職務に関わる犯罪に関与していた疑いが極めて濃厚であることをいうものであって,いずれも原告の社会的評価を低下させるものであることが明白である。 2 本件記事の摘示事実が真実であるか否か(争点(2))について(1) 事実①㋐についてア事実①㋐は,上記1(2)のとおり,清掃工場建設工事をめぐる枚方市の談合事件の談合が行われる過程で,枚方市長である原告が,平成12年頃,関係者が談合を持ち掛ける場面に居合わせ,そのやり取りを聞いていたというものである。 イこの点,原告が平成11年12月末頃に大阪市内にあるホテルKの会議室においてD,Xの社長のY,並びにBの営業担当役員のT及びFと会談(K会談)をしたことは当事者間に争いがなく,証拠(甲4,7,11)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 (ア) 原告を被告人とする本件刑事事件の弁護人冒頭陳述(甲4)に,平成11年12月,ホテルKにおいてFたちと原告が会った席で,枚方市の公共工事について話が出,Bには受注意欲があるとの発言があったとの記載がある。 (イ) 本件刑事事件の判決(甲7)において,大阪地方裁判所は,K会談において,原告が,Dと一緒にB関係者と面談してBを主 出,Bには受注意欲があるとの発言があったとの記載がある。 (イ) 本件刑事事件の判決(甲7)において,大阪地方裁判所は,K会談において,原告が,Dと一緒にB関係者と面談してBを主体とした枚方市の公共工事の受注調整を積極的に働き掛け,その一環として,清掃工場工事をBが談合により受注することを原告が了承したことを認定している。 (ウ) 本件刑事事件判決に対する控訴審である大阪高等裁判所平成21年(う)第981号談合被告事件(以下「本件刑事控訴事件」という。)の判決(甲 11)において,大阪高等裁判所は,K会談において,DがBの力で政敵であるZ市議の息の掛かった業者が枚方市の公共工事を受注しないようにしてもらいたい旨を依頼する発言をし,原告も同席してDの発言を聞いており,これに同調する態度を示していたこと,それらの話合いの際,BのTから清掃工場工事を将来Bが受注したいとの発言があり,これに対して,原告が全部が全部取っては駄目ですよなどと述べて,同工事を将来Bが受注することを容認する発言をしたことを認定している。 ウ以上によれば,K会談において,DがB関係者に,Z市議の息の掛かった業者が枚方市の公共工事を受注しないようBが受注調整をするように要請し,原告がその発言を聞いていたこと,他方,B側は,枚方市の清掃工場建設工事を受注したい旨を述べ,原告がこれを了承する趣旨の発言をしたことが認められ,この認定に反する証拠は見当たらない。 これに対し,原告は,DがFに「工事を受注させてやる」と持ち掛けた事実はないと主張しており,確かにその証拠は見当たらない。しかし,事実①の主要な事実関係は,K会談で,DからB関係者に対し談合をするよう依頼がされ,それを原告が聞いていたとの点であり,以上に けた事実はないと主張しており,確かにその証拠は見当たらない。しかし,事実①の主要な事実関係は,K会談で,DからB関係者に対し談合をするよう依頼がされ,それを原告が聞いていたとの点であり,以上に認定した事実によれば,この点は真実であるということができるから,事実①㋐の摘示事実は主要な点において真実であるというべきである。 したがって,前提事実を併せれば,本件記事による事実①の事実摘示は違法性を欠くというべきである。 (2) 事実①㋑についてア事実①㋑は,上記1(2)のとおり,事実①㋐の前後から,逮捕されたB関係者からの受注工作としての料亭等での接待を受け始め,それが平成17年に入っても時々途切れながらも続き,ほぼ毎月の時期もあったというものである。 イ(ア) この点,原告は,平成16年1月にJという料亭でF,I及びDと会食(本件会食)をしたことを自認しており,また,証拠(甲12,乙2~5, 原告本人)によれば,原告が平成19年5月30日の本件記者会見において,本件会食の際の飲食代金を自ら支払っておらず,Iが出してくれたのではないかとの趣旨の発言をしたことが認められる。 しかし,この発言を前提としても,直ちにB関係者が費用負担をして原告をもてなしたものとはいえず,本件会食がB関係者からの接待であるとは認めることができない。 (イ) 他方,原告は,本件記者会見の際の上記発言は,勘違いであり,食事代は出席者それぞれが負担してIがまとめて支払ったのが事実だと思う旨陳述しており(甲12),本人尋問では,同旨のほか,刑事公判廷においてFが本件会食の代金は割り勘であった旨証言したのを聞いて,みんなで払ったという記憶がはっきりしてきた旨供述している。そして,本件刑事 述しており(甲12),本人尋問では,同旨のほか,刑事公判廷においてFが本件会食の代金は割り勘であった旨証言したのを聞いて,みんなで払ったという記憶がはっきりしてきた旨供述している。そして,本件刑事事件第14回公判期日の証人尋問において,Fが本件会食の支払は各自会費でやった旨証言したことが認められる(甲9)。 これらを前提とすれば,本件会食の際の原告の会食代は原告自身が負担したということになり,本件会食がB関係者からの接待であると認めることはできない。 (ウ) さらに,Fは,上記証言に続けて,本件会食の代金について,他の出席者よりも多少余分に負担したとの趣旨を述べている(甲9)。 しかし,そもそも,出席者それぞれがどのような飲食をし,それぞれの費用はいくらであったのか,本件会食全体の代金がいくらであったか,Fが余分に負担したという金額がいくらであったのかといった事情を確定するに足りる証拠はないのであって(Jのパンフレット〔乙1〕はいつのものか不明であり,直ちに本件会食の内容を確定する資料とすることはできない。また,原告は,本人尋問において,普通の会席料理であったと思う,酒も出ていたと思う,1万5000円から2万円くらいを退席する際に置いてきたと思う旨を供述しているが,その裏付けはなく,この供述がどの 程度の精度を持ったものであるかすら明確にならない。),Fが刑事公判廷で他の出席者よりも多少余分に負担したと証言したことから直ちに本件会食がB関係者からの接待であるとまでいうことはできない。 (エ) 他に証拠はなく,本件会食がB関係者からの接待であるというに足りる事情を認めることはできない。 ウまた,被告は,原告がK会談のための室料等の金銭 はできない。 (エ) 他に証拠はなく,本件会食がB関係者からの接待であるというに足りる事情を認めることはできない。 ウまた,被告は,原告がK会談のための室料等の金銭的な負担をB側が全額負担したと主張しており,原告は,本人尋問において,会議室の利用に要した費用は負担していないと供述している。 しかし,B側の出席者であるT又はFが当該室料等を負担したことの証拠はなく,また,その際に出席者らが飲食をしたとも認められない。原告は,本人尋問において,室料等はK会談をセットしたXのYが出したのではないかとの推測を述べているところ,この供述を前提として,XがBの協力企業であり,その社長がB関係者に当たるとしても,会議室利用料を負担することが料亭等での接待に当たるとはにわかに認めることができない。さらに,そもそも,事実①㋑は,K会談の前後から料亭等での接待が開始されたことを摘示するものであり,一般の読者の普通の注意と読み方をもってしても,料亭等での接待の中にはK会談でのことは含まれないというべきであるから,K会談が行われたことをもって,事実①㋑の摘示事実が真実であるということはできないといわざるを得ない。 エ(ア) さらに,証拠(乙6,8の2,同15,16,証人L,証人N)及び弁論の全趣旨によれば,① 大阪司法記者クラブ所属のLは,平成19年6月20日夜に,M検事正に対する取材を行い,「B関係者に話を聞くと,B側はC市長を頻繁に接待していたとのことなんですが。話の内容はともかく,頻繁に会っていたというのは堅い話ですか?」と質問したところ,M検事正が「頻繁かどうかは知らんけど。Cはどういっているんだっけ。」と逆に聞いてきたので,「2004年にFと1回会っただけで,あとは何 もないと公式の い話ですか?」と質問したところ,M検事正が「頻繁かどうかは知らんけど。Cはどういっているんだっけ。」と逆に聞いてきたので,「2004年にFと1回会っただけで,あとは何 もないと公式の場では発言しています。」と答えたところ,M検事正は,「そんなことはないやろ。何度かは知らんけど,1回っちゅうことはないわ。」と応じたため,Lが「そういう供述が出ているということですか。」と問うたが,M検事正は,「・・・そこまでは知らんけどなあ。」と回答したこと,② 大阪司法記者クラブ所属のNは,平成19年6月25日朝に,O次席検事に対する取材を行い,「BのCに対する接待は頻繁とはいわないまでも,複数あった?」と質問したところ,O次席検事は,「うん。」と答え,更にNが「大阪だけじゃなく,枚方でもやってたんですよね?」と問うと,O次席検事は,「それでいいんじゃない。」と答えたことが認められる。 しかし,上記①のM検事正の発言によって認められるのは,せいぜい,㋐ M検事正は,B側が原告と頻繁に会っているかどうかについて知らないこと,㋑何度かは分からないが,B側と原告が会ったのが1回ということはないだろうとM検事正が考えていること,及び㋒ Bと原告が複数回会ったことがある旨の供述が出ているとはいえないことまでである(M検事正が信頼を置くことができる取材先であったとしても,M検事正の発言が準拠する客観的根拠が何ら提示されていない以上,このようにいわざるを得ない。被告は,M検事正の回答の趣旨は,原告とFがあったのは1回だけではないというものであると主張するが,M検事正の上記発言がそこまで断定的な回答をするものとは認めることができない。)。また,上記②のO次席検事の発言によって認められるのは,㋓ Bからの原告に対する接待は,頻繁とまでは ると主張するが,M検事正の上記発言がそこまで断定的な回答をするものとは認めることができない。)。また,上記②のO次席検事の発言によって認められるのは,㋓ Bからの原告に対する接待は,頻繁とまではいわないまでも,複数回あったとO次席検事が考えていること,及び㋔ Bからの原告に対する接待は,大阪だけではなく,枚方でも行われたと考えてよいとO次席検事は考えていること程度までである(L及びNの陳述書〔乙15,16〕には,それまでの取材の過程からして,O次席検事は,非常に慎重な性格であって,余り積極的な発 言はしないのに,「それでいいんじゃない。」という発言は,O次席検事にしては珍しい積極的な発言であったから,Nの質問に対する明解な肯定の答えであったと理解しているなどとの記載があり,証人Nも同旨の供述をしているが,仮にO次席検事が慎重,誠実で信頼できる取材先であるとのNの認識が妥当であったとしても,その発言について何らの客観的な根拠も提示されていない以上,結局のところ,上記②のO次席検事の発言は,O次席検事の主観的な認識を示したものにすぎないといわざるを得ない。 被告は,O次席検事の回答は,Bが原告に対し複数回の接待を行っていた旨及び接待は大阪市内だけではなく枚方市内でも行われていた旨を述べる趣旨であると主張するが,以上に照らし,失当というべきである。)。 (イ) 加えてさらに,Lの陳述書(乙15)には,平成19年6月29日夜,LがO次席検事に対して取材をし,原告がBから頻繁に接待を受けていたのか質問したところ,O次席検事は,「いっぱい会っていたんでしょ。」と答えた旨の記載があり(Nの陳述書〔乙16〕にもこれに沿う記載がある。),証人L及び証人Nは,これに沿う供述をしている。 しかし,同日LがO次席検事 ,「いっぱい会っていたんでしょ。」と答えた旨の記載があり(Nの陳述書〔乙16〕にもこれに沿う記載がある。),証人L及び証人Nは,これに沿う供述をしている。 しかし,同日LがO次席検事を取材し,O次席検事が上記のような回答をしたことの客観的裏付けとなるものは見当たらず,これらの記載等をにわかに採用することはできない(Lの説明によっても,キャップのQの統括の下で枚方市の談合事件の取材が進められていたというのであり,また,ある意味より情報量が少ないM検事正からの上記のような取材結果のメモですら作成されているのに,O次席検事に対する上記の取材結果につき取材メモが作成されていないのは不自然であるといわざるを得ず,そのことはLに翌日朝刊用の原稿執筆等の仕事があったとしても合理化されることはない。)。また,この点をおき,上記の記載等によるとしても,O次席検事の発言によって認められるのは,原告がBといっぱい会っていたのだろうとO次席検事が推測あるいは認識していることまでであって,この発 言から原告がBから頻繁に接待を受けていたことまでを認めることはできない(O次席検事の上記発言の語尾表現に鑑みれば,推測内容を述べたものとみるのが自然である上,そのように回答したことの客観的根拠が何ら提示されていないことに鑑みても,上記のようにいわざるを得ない。)。 (ウ) そして,検察に強制捜査権があり,圧倒的に多くの情報を持っているとしても,また,地方検察庁の検事正や次席検事に捜査情報が集中するとしても,上記(ア)又は(イ)のようなM検事正又はO次席検事の主観的認識を示すにすぎない発言がそうした捜査情報に準拠したものであり,かつ,その捜査情報が十分な捜査結果に基づくものであることの確証がないことに鑑みるだけでも,直ちにその M検事正又はO次席検事の主観的認識を示すにすぎない発言がそうした捜査情報に準拠したものであり,かつ,その捜査情報が十分な捜査結果に基づくものであることの確証がないことに鑑みるだけでも,直ちにその発言内容が真実であると認めることは困難であるといわざるを得ない(被告は,捜査継続中の事件に関する取材に対して報道の自由及び国民の知る権利の観点から必要最小限度の情報のみを開示し,継続中の捜査に支障を生じさせたり報道機関が誤った捜査情報を報道したりしないよう,捜査機関が慎重に対応しているなどと主張するが,そのような一般論が妥当すると認めるに足りる証拠は見当たらない〔LやNの陳述・供述だけでは到底足りない。〕。また,仮に一般論としては一応の妥当性が認められるとしても,そのことから直ちに,M検事正又はO次席検事が捜査機関としての正式の発表をするのとは異なる場面で,しかも,記者の質問に答える形で,当時特捜部が捜査対象としていたとは直ちには認められない,原告が料亭等で接待を受けていたとの疑惑に関してした上記のような内容の発言が全て真実であるとまでは到底いえないというべきである。)。 オ原告は,原告が大阪で毎日のようにBから接待を受けていたと社内でいわれている旨の情報をPがB関係者から得たとの趣旨を主張しており,Lの陳述書等(乙6,15,16,証人L)にはこの主張に沿う内容がある。しかし,被告の説明によっても,当該B関係者はBによる接待の事実を直接知り得る立場 の者ではないというのであり,要するに上記情報はうわさ話の域を出ないものであるといわざるを得ないことに鑑みれば,上記情報に基づき,原告が大阪で毎日のようにBから接待を受けていたと認めることはおよそ困難である(このことは,M検事正及びO次席検事の発言内容を併せても変わらな あるといわざるを得ないことに鑑みれば,上記情報に基づき,原告が大阪で毎日のようにBから接待を受けていたと認めることはおよそ困難である(このことは,M検事正及びO次席検事の発言内容を併せても変わらないというべきである。原告は,上記情報がM検事正及びO次席検事がしたと認められる発言内容と一致するかのようにいうが,同発言内容は既に説示したとおりのものにすぎず,原告がBから毎日のように又は頻繁に接待を受けていた,あるいは,そのように認識しているとの内容を含むものではないことに照らし,上記情報と一致するものとはいえない。)。 カそして,他に証拠はない上に,かえって,証拠(証人L)及び弁論の全趣旨によれば,原告に対して贈収賄の容疑で捜査が行われたことはなかったと認められるのであって,以上の事実に照らし,事実①㋑の摘示事実が真実であると認めることは到底できない。したがって,本件記事による事実①の事実摘示は違法性を有するものというべきである。 (3) 事実②について上記1(2)によれば,事実②の摘示事実のうち主要な部分は,原告が枚方市の清掃工場建設工事をめぐる談合に関与していた疑いが極めて濃厚であるというものであると解される。 この点,証拠(甲6,7,11)及び弁論の全趣旨によれば,① 大阪地方検察庁検察官は,平成19年8月20日,要旨,原告がD,I,Fらと共謀の上,枚方市が平成17年11月10日に開札した「仮称第2清掃工場建設工事(土木建設工事)」の制限付き一般競争入札の公正な価格を害する目的で談合したとの公訴事実に基づき,本件刑事事件の公訴提起をしたこと,② 大阪地方裁判所は,平成21年4月28日,本件刑事事件について,原告がD,I,Fらと共謀の上,上記入札に,Bと株式会社Eの共同企 談合したとの公訴事実に基づき,本件刑事事件の公訴提起をしたこと,② 大阪地方裁判所は,平成21年4月28日,本件刑事事件について,原告がD,I,Fらと共謀の上,上記入札に,Bと株式会社Eの共同企業体のほか,α株式会社大阪支店及びβ株式会社関西支店が参加するに際し,公正な価格を害する目的で,平成17年10 月20日頃から同年11月10日頃までの間,大阪府下又はその周辺において,上記共同企業体に同工事を落札させることで合意するとともに,その頃,α株式会社大阪支店及びβ株式会社関西支店のそれぞれの入札金額を上記共同企業体の入札金額を超える金額とする旨の協定をし,もって,入札の公正な価格を害する目的で談合したとの事実を認定して,原告を懲役1年6月に処し,3年間その刑の執行を猶予するとの有罪判決を宣告し,さらに,③ 大阪高等裁判所は,平成22年11月18日,本件刑事控訴事件について,訴訟手続の法令違反及び事実誤認の主張には理由がないことを理由に,原告からの上記②の判決に対する控訴を棄却する旨の判決を宣告したこと,④ 原告は,上記③の判決に対して上告したが,現在までにこれに対する裁判はないことが認められる。 これらによれば,原告は,D,I,Fらと共謀の上,枚方市の清掃工場建設工事の入札の公正な価格を害する目的で談合したとの事実に基づき有罪判決を受け,この判決に対する控訴を棄却する旨の判決が言い渡されている一方,刑事手続上これらの判決の事実認定が誤りであるといえる状態には至っていないといえる。そうすると,原告が枚方市の清掃工場建設工事をめぐる談合に関与していた疑いが極めて濃厚であるといわざるを得ないのであって,事実②の摘示事実のうち主要な部分について真実性を認めることができるというべきである。 したがって,前提事実を をめぐる談合に関与していた疑いが極めて濃厚であるといわざるを得ないのであって,事実②の摘示事実のうち主要な部分について真実性を認めることができるというべきである。 したがって,前提事実を併せれば,本件記事による事実②の事実摘示は違法性を欠くというべきである。 3 本件記事の摘示事実が真実であると信じるにつき相当の理由があるか否か(争点(3))について(1) 真実性を認めることができない事実①㋑の摘示事実につき,それが真実であると信じるについて相当の理由(真実相当性)があるか否かを次に検討する。 前提事実その他以上に認めた事実及び当事者間に争いがない事実に加え,証拠(甲1~12,乙1~16〔枝番号があるのに個別に掲記しない場合はその全てを含む。以下同じ。〕,証人L,証人N,原告本人)及び弁論の全趣旨に よれば,次のとおり認めることができる。 ア平成19年5月29日,本件談合事件に関して特捜部が枚方市役所等を捜索した。 被告は,特捜部が強制捜査に着手したことを端緒として,本件談合事件の取材を開始した。具体的には,大阪編集局社会部に所属し,また,大阪司法記者クラブに所属していたQ,L及びNが中心となって当たり,Qがキャップとして全体を統括し,実際の取材はL及びNが行った。 なお,Lの陳述書(乙15)には,大阪府警記者クラブに所属していた記者や大阪府庁記者クラブに所属していた記者,遊軍の記者も取材を担当した旨の記載があるが(証人Lは,これに沿う供述をしている。),具体的にどのような取材をしたのかおよそ判然としない上,Lが本件談合事件を取材していた記者に対して情報連絡のために送信したという電子メール(乙6)の宛て先はQとNのみであると認められ,その他の証拠として提出された電子メ 材をしたのかおよそ判然としない上,Lが本件談合事件を取材していた記者に対して情報連絡のために送信したという電子メール(乙6)の宛て先はQとNのみであると認められ,その他の証拠として提出された電子メール(乙8の1,14の1)によっても,情報のやり取りはQ,L及びNの3者の間でされたのみであることが認められること,証人Nが上記の3者で担当した旨を供述していることに照らし,上記の3者以外の記者が主体的に本件談合事件の取材に当たったというには多分に疑問があり,特に,原告がB関係者から頻繁に料亭等で接待を受けていたとの件に関して上記の3者以外の者(Pを除く。)がその取材に関与したとは認めることができない。 イ平成19年5月29日に枚方市役所に対して捜索が行われたことを受け,原告は,同月30日の午前中,本件記者会見をした。本件記者会見において,記者からの質問を受けて原告は,3年ほど前にIから食事を誘われて行った大阪市内の料亭又は料理屋でFと知り合った旨,その際,Fがいるとは思わずに行くと,B関係者であるFがいたため驚いたが,断れずに会食した旨,原告は,自らの食事代を支払っておらず,記憶があやふやだがIが出してくれたのではないかと思う旨を答えた。この記者会見には,被告からはNが参加した。 なお,Nの陳述書(乙16)には,原告が本件記者会見の最後に,官製談合はなかった旨強調したが,原告自身が本件談合事件に関与したかどうかの詳細は検察の捜査中なのでいえないとする回答を繰り返すばかりであったとの記載がある(証人Nも,これに沿う供述をしている。)。しかし,本件記者会見の内容を報道するA新聞以外の新聞記事中には,本件記者会見の際に原告が原告自身の本件談合事件への関与は否定した旨記載のあるものが複数認められ(乙3,5),このことに照らし,N 。しかし,本件記者会見の内容を報道するA新聞以外の新聞記事中には,本件記者会見の際に原告が原告自身の本件談合事件への関与は否定した旨記載のあるものが複数認められ(乙3,5),このことに照らし,Nの陳述書の上記記載を直ちに採用することはできない。 ウ平成19年5月30日までに,Fを含んだB関係者,I等合計6名が本件談合事件に関する談合の容疑で逮捕された。 エ原告は,平成19年6月4日及び7日に記者会見を開いた。 オ平成19年6月18日のγ新聞からの取材に対し,原告は,「現在,捜査が進められている中で,個々の具体的な事柄についてお答えするのは,差し控えさせて頂きます」とのコメントをした。また,同月21日付けδ新聞朝刊には,原告が徒歩で移動する際に新聞記者から追っかけ取材を受けても,原告は,ノーコメントをほぼ貫くのが慣例となっている旨の記事(乙10)が掲載された。 カ Lは,平成19年6月20日,その頃Bが捜査を受けていた名古屋市発注の地下鉄工事に関する談合事件を取材していた被告名古屋支社編集部所属のPとの間で,それぞれが取材している事件の進捗状況等について電話で情報交換をした際に,PがB関係者への取材を行っていたところ,そのB関係者(この者は,Bによる原告に対する接待が行われているか否かを直接知り得る立場にはない。)から,原告をそれこそ毎日のように接待していたと聞いている旨を名古屋のB関係者が話していた旨を聞いたとの情報を入手した。 キ Lは,平成19年6月20日夜に,退庁後のM検事正に対する夜回り取材を行い,「B関係者に話を聞くと,B側はC市長を頻繁に接待していたとのことなんですが。話の内容はともかく,頻繁に会っていたというのは堅い話です か?」と質問したところ,M検事正が「頻繁かどうかは知らんけど。Cはどうい B側はC市長を頻繁に接待していたとのことなんですが。話の内容はともかく,頻繁に会っていたというのは堅い話です か?」と質問したところ,M検事正が「頻繁かどうかは知らんけど。Cはどういっているんだっけ。」と逆に聞いてきたので,「2004年にFと1回会っただけで,あとは何もないと公式の場では発言しています。」と答えたところ,M検事正は,「そんなことはないやろ。何度かは知らんけど,1回っちゅうことはないわ。」と応じたため,Lが「そういう供述が出ているということですか。」と問うたが,M検事正は,「・・・そこまでは知らんけどなあ。」と回答した。 なお,上記取材結果を知らせるLのQ及びN宛て電子メール(乙6)には,上記カのPからの情報がある旨の記載のほか,「もうちょっと取材すれば,市長逮捕後か直前くらいに「B側,市長を頻繁に接待」という続報を書けると思います。」との記載がある。 ク平成19年6月21日付けW新聞朝刊に,原告がFと初めて会ったのは平成16年ではなく,それ以前に大阪市内のホテルで会っていた旨の記事(乙13)が掲載された。これを見たLは,原告が記者会見でした説明とは異なっていることから,Nに対し,O次席検事に対して事実確認をするように指示をした。 これを受けてNは,平成19年6月21日朝に,O次席検事に対する朝回り取材を行い,「Wが書いていた7年前から市長とFがDの紹介で知り合っていたということはそれでいい?」と質問したところ,O次席検事は,「7年前,8年前かなあ。」と答え,Nが更に「Dの紹介で?」と質問したところ,O次席検事は,「うん。」と答えた。 また,同じ機会に,Nは,O次席検事に対し,原告が談合でBが落札すると知りながらその都度決裁していたという話があるが,要は事前に談合が行われていて,Bに決まってい 検事は,「うん。」と答えた。 また,同じ機会に,Nは,O次席検事に対し,原告が談合でBが落札すると知りながらその都度決裁していたという話があるが,要は事前に談合が行われていて,Bに決まっていたということをHが知っていて,原告もそれを知っていたということかと質問したところ,O次席検事は,「うーん」と答えてうなずいたため,更にNが「市長が知らなかったはずがないという供述でいい?」と問うと,O次席検事は,「いいんじゃない。」と答えた。 ケ原告は,平成19年6月21日,記者会見を開き,被告からはNが出席した。 その際,Nは,原告に対し,Bから頻繁に接待を受けていることに関して何らの質問もしなかった。 コ Nは,平成19年6月25日朝に,O次席検事に対する朝回り取材を行い,「BのCに対する接待は頻繁とはいわないまでも,複数あった?」と質問したところ,O次席検事は,「うん。」と答え,更にNが「大阪だけじゃなく,枚方でもやってたんですよね?」と問うと,O次席検事は,「それでいいんじゃない。」と答えた。 サ原告は,平成19年7月5日,談合に関わっていないが,捜査中のことであり,詳細についてコメントできない旨が記載された文書を発表した。 シ被告が発行した平成19年7月6日付けA新聞朝刊(大阪版)の社会面トップに本件記事が掲載された。 ス被告の記者が本件記事を掲載する前に原告に対し,B関係者から頻繁に接待を受けていたことに関し文書での問い合わせをしたことはない。また,被告の記者は,裁判所に対して,B関係者で逮捕された者の弁護人が誰であるかを問い合わせたことはない。さらに,被告の記者は,B関係者で本件談合事件に関し起訴されたFの弁護人1人に対して取材をしたが,その際,B関係者が原告に対して頻繁に接待をしていたことに関する質 であるかを問い合わせたことはない。さらに,被告の記者は,B関係者で本件談合事件に関し起訴されたFの弁護人1人に対して取材をしたが,その際,B関係者が原告に対して頻繁に接待をしていたことに関する質問をしたことはない。 また,Hが談合の事実を認めている旨を検察関係者が報道機関に対し発表したが,実際には,捜査機関からの取調べに対してHは,供述拒否を貫き,自らの談合の事実を認める旨の供述をしたり,原告が談合について知らなかったはずはないといった供述をしたりしたことはなかった。 セ原告に対して贈収賄の容疑で捜査が行われたことはなかった。 (2) 被告は,原告が本件記者会見において接待を受けたことを認めていた旨主張するが,原告の本件記者会見での発言がB関係者から接待を受けたことを認める趣旨のものであったと認めることができないことは既に説示したとおりであ り,被告の記者が当該発言をもって原告がB関係者から接待を受けたことを認めるものと信じたとしても,そのことに相当な理由があるということはできない。 (3) 被告は,捜査機関に対して取材を行った結果,原告がBから頻繁に大阪市内や枚方市内において接待を受けているとの取材結果を得ていた旨主張する。 アしかし,被告の記者がM検事正やO次席検事に対する取材によって得た情報は,㋐ M検事正は,B側が原告と頻繁に会っているかどうかについて知らないこと,㋑何度かは分からないが,B側と原告が会ったのが1回ということはないだろうとM検事正が考えていること,㋒ Bと原告が複数回会ったことがある旨の供述が出ているとはいえないこと,㋓ Bからの原告に対する接待は,頻繁とまではいわないまでも,複数回あったとO次席検事が考えていること,及び㋔ Bからの原告に対する接待は,大阪だけでは とがある旨の供述が出ているとはいえないこと,㋓ Bからの原告に対する接待は,頻繁とまではいわないまでも,複数回あったとO次席検事が考えていること,及び㋔ Bからの原告に対する接待は,大阪だけではなく,枚方でも行われたと考えてよいとO次席検事は考えていること程度であることは既に説示したとおりである。したがって,これらを総合しても,被告の記者が取材から得た結果は,① M検事正は,Bと原告が複数回会ったと考えており,また,O次席検事は,Bから原告に対する接待が大阪や枚方で複数回行われたと考えていることと,② そうした認識に沿う供述が出ているとはいえないことまでであって,捜査機関に対する取材により原告がBから頻繁に大阪市内や枚方市内において接待を受けているとの取材結果を得ていたとまでは到底いえない。 イまた,M検事正やO次席検事が上記㋐,㋑,㋓及び㋔のような認識を持つに至った根拠は何ら示されておらず,地方検察庁の長及び次席の認識であるからといって,それが捜査機関としての正式な発表の内容を成すものではないことに鑑みても,直ちに十分な捜査結果に基づくものであるとまでいうことはできないというべきである(このことは既に説示したところに照らし,多言を要しない。)。 この点,LやNの陳述書(乙15,16)には,M検事正やO次席検事が信 頼できる取材先であり同人らが話した内容は真実であると思った旨の記載があり,また,証人L及び証人Nは,これに沿う供述をしている。しかし,LやNがM検事正やO次席検事に対してそのような認識を持った根拠は,証人Lによれば,新聞記者の間での評判や自身の経験からM検事正やO次席検事が積極的な嘘をつく人物ではないと認識していたことによるというのであり,また,証人Nによれば,O次席検事が慎重な性格で, は,証人Lによれば,新聞記者の間での評判や自身の経験からM検事正やO次席検事が積極的な嘘をつく人物ではないと認識していたことによるというのであり,また,証人Nによれば,O次席検事が慎重な性格で,事実を認める場合はまれであるが,その場合には事実を認めることを明確にしてくれる人物であることと,検察には強制捜査権があり,圧倒的に多くの情報を持っていることによるというのである。 これらによれば,LやNがM検事正やO次席検事の認識が真実であると信じていたとしても,それは,要するに,信頼を置くことができる人物であると思われる捜査機関の長等の発言だから真実を述べているに違いないといったLやNの主観的かつ一般的な認識を根拠とするものにすぎず,それを超えて,M検事正やO次席検事から示された上記のような個別具体的な認識を真実であると信じることがもっともなことであるというに足りる客観的な事情があるとまでは認めることができない(なお,談合が行われており,Bが競落することに決まっていることを原告が知らなかったはずはない旨の供述をHがしているということでよいかとの確認の質問をNがしたのに対し,O次席検事が「それでいいんじゃない。」と答えたという経過があったが,実際には,Hがそのような供述をした事実がなかったことは既に説示したとおりであることに照らしても,O次席検事の主観的な認識が必ずしも客観的な事実に沿うわけではないことが明らかであるということができ,このことに鑑みても,そもそも,LやNの上記認識の妥当性自体に相当な疑問があるというべきである。)。 ウ LやNがM検事正やO次席検事の認識が真実であると信じていたとしても,そのことに相当な根拠があるということはできないといわざるを得ない。 (4) 被告は,被告の取材活 。 ウ LやNがM検事正やO次席検事の認識が真実であると信じていたとしても,そのことに相当な根拠があるということはできないといわざるを得ない。 (4) 被告は,被告の取材活動が十分であったと主張する。 ア(ア) しかし,被告の記者が本件記事を掲載する前に原告に対し,B関係者から頻繁に接待を受けていたことに関し,文書で問い合わせたり,記者会見の席上質問をしたりしたことがないことは上記(1)のとおりである。 この点,被告は,被告の記者が接待の事実を確認するため,原告の出勤時に自宅前でコメントを求めたり,原告が登庁をした後執務室にいる際にコメントを求めたり,原告が登庁する際に個別に話を聞きたいので連絡をしてほしい旨記載した名刺を原告に渡したりといったことをした旨主張しており,証人L及び証人Nは,これに沿う供述や陳述をしている。しかし,これらの供述等の裏付けは何もなく,同供述等を直ちに採用することはできない(他に,原告に対して,B関係者が原告に対して頻繁に接待をしていたことに関する取材活動を被告の記者がしたことの証拠はない。)。 (イ) 原告が平成19年7月5日に,談合に関わっていないが,捜査中のことであり詳細についてコメントできない旨を記載した文書を発表したことも上記(1)のとおりである。 しかし,他方において,原告は,本人尋問において,個別の取材に直接応じた場合,情報が一人歩きすることにもなりかねないので,それは避けており,また,捜査に支障を来すような話はしないように弁護士や検察官から注意を受けていたため,捜査に支障を来すような質問には応じていなかったが,捜査に支障がない範囲では報道陣の質問に答えており,文書による質問に対して回答したこともあった,文書によ に弁護士や検察官から注意を受けていたため,捜査に支障を来すような質問には応じていなかったが,捜査に支障がない範囲では報道陣の質問に答えており,文書による質問に対して回答したこともあった,文書によって接待を受けていたかとの質問があれば,接待を受けたことはない旨の回答を当然していた旨供述しているところ,この供述を虚偽であるとして排斥するに足りる根拠は見当たらない。そして,上記(1)のとおり,原告に対して贈収賄の容疑で捜査が行われたことはなかったことに照らしても,他に証拠はない以上,談合の容疑とは一応区別ができる接待に関する質問についてまで,原告がコメントしないことを一般的に表明していたと断定することはできない。 (ウ) そうすると,被告の記者が原告に対して,B関係者から接待を受けていたことについての取材をすることができない状況であったとは認められないにもかかわらず,被告の記者がそうした取材をしたことがあったとは認められないといわざるを得ない(なお,上記(1)によれば,原告が本件記者会見において,Fといつ知り合ったか等の点について客観的事実と異なる説明をしたことが明らかであるが,そのことをもって直ちに原告に対する上記取材活動をする必要性がなかったとまでいうことはできない。)。 イまた,被告は,B関係者で本件談合事件に関与した者は平成19年6月4日までに逮捕されており,同月20日の時点でも身柄拘束が続いていたから,それらの者に取材を行うことは不可能であったと主張する。しかし,被告自身が認めるとおり,身柄拘束を受けた者の弁護人を通じて取材する方法があることに鑑み,上記主張は失当であるといわざるを得ない。そして,被告の記者が,裁判所に対してB関係者で逮捕された者の弁護人が誰であるかを問い合わせたり,B関係者で本件 弁護人を通じて取材する方法があることに鑑み,上記主張は失当であるといわざるを得ない。そして,被告の記者が,裁判所に対してB関係者で逮捕された者の弁護人が誰であるかを問い合わせたり,B関係者で本件談合事件に関し起訴されたFの弁護人1人に対して取材をした際に,B関係者が原告に対して頻繁に接待をしていたことに関する質問をしたりしたことがないことは上記(1)のとおりである(証人Nは,Fの弁護人に対し取材を試みたが,取材対応をしてくれなかった旨供述しているが,どのような取材を試みて当該弁護人がどのような対応をしたのかは判然とせず,また,結局のところ当該弁護人に対して上記質問をしていないことに鑑みても,上記質問をしても回答を得ることが期待できる状況になかったとまでいうことはできない。)。 ウ以上によれば,事実①㋑の事実摘示は,Pからのうわさ話の域を出ない伝聞情報のほかに,M検事正及びO次席検事に対するそれぞれ1回ずつの短時間の取材によって得た主観的かつ断片的な情報だけに基づいてされたものであるといわざるを得ない。そして,原告や弁護人を通じたB関係者に対する取材活動を行う余地がなかったとはいえないのに,これらが行われたとはいえないこ と,さらに,M検事正やO次席検事に対する追加的な取材をし,より客観的かつ網羅的な情報を取得する余地がなかったとも認められないのに,そうした取材が行われたとは認められず,平成19年6月25日までの取材結果のみに基づいて,その11日後の同年7月6日に事実①の事実摘示がされたといわざるを得ないことに照らしても,被告の記者による取材活動が十分であったとは到底認めることができない(被告の記者には取材をするための時間は十分にあったというべきである上,LがM検事正に対し,原告がFと複数回会った旨の供述が出 も,被告の記者による取材活動が十分であったとは到底認めることができない(被告の記者には取材をするための時間は十分にあったというべきである上,LがM検事正に対し,原告がFと複数回会った旨の供述が出ているかを確認したことがあるのは上記(1)のとおりであることに鑑みても,例えば,M検事正等に対し,原告がB関係者から料亭等での接待を頻繁に受けていた旨の供述が出ているかを問うことは十分に可能であったと考えられるが,そのような取材を被告の記者がしたことがあるとは認められない。)。 (5) これまでに検討した諸点に鑑み,他に別段の事情があるとも認められない以上,事実①㋑の摘示事実が真実であると信じるについて被告に相当の理由(真実相当性)があると認めることはできない。 (6) したがって,平成19年7月6日付けA新聞朝刊に本件記事を掲載して事実①㋑の事実摘示をし原告の名誉を毀損したことについて,被告に不法行為責任が成立するというべきである。 4 損害額(争点(4))について(1) 本件においては,次のような事情の存在を指摘することができる。 ア被告が発行するA新聞が我が国有数の日刊紙であることは当裁判所に顕著であり,その朝刊(大阪版)の社会面トップに本件記事が掲載されたことに照らし,相当数の読者が本件記事を目にしたことは明らかである。そして,前提事実(2)に掲記した本件記事の内容(特に,見出し及びリードの内容)に鑑みて,事実①の事実摘示が本件記事の中心的な内容であるということができるから,読者がこの事実摘示を認識した割合は一層高いものというべきである。 イ原告は,本件記事が掲載された当時,枚方市長であった。事実①の事実摘示は,その原告に職務の公正及びこれに対する社会の信頼を害する犯罪事実がしばしばあ 高いものというべきである。 イ原告は,本件記事が掲載された当時,枚方市長であった。事実①の事実摘示は,その原告に職務の公正及びこれに対する社会の信頼を害する犯罪事実がしばしばあったことを指摘するものであるとともに,本件記事によって原告が本件談合事件に関与していた疑いが極めて濃厚であるとの事実摘示が同時にされていることとあいまって,原告が酒食の供応を頻繁に受ければ法をまげるような人物であるといった印象を読者に抱かせるものであるということができ,事実①の事実摘示が政治家である原告に対して与えた打撃の程度は著しいものであるというべきである。 ウそのように強力な打撃を与えるものであるにもかかわらず,事実①の事実摘示は,真実性及び真実相当性が認められないばかりか,上記3において検討したような極めて薄弱な取材結果にしか依拠していないものである(M検事正及びO次席検事に対する取材から得た情報が主観的かつ断片的なものにすぎないことに加え,Q及びNに宛てて発信されたM検事正からの取材結果を知らせるLの電子メール〔乙6〕に,Pからの情報がある旨の記載に加えて,M検事正に対する取材しか行っていないこの時点で既に,「もうちょっと取材すれば,市長逮捕後か直前くらいに「B側,市長を頻繁に接待」という続報を書けると思います。」との記載がされていること,M検事正からの当該取材結果は上記のようなものにすぎないことに鑑みれば,被告の記者は,Pからのうわさ話の域を出ない伝聞情報から直ちに予断を抱いて,客観的な取材を十分にすることもないままに,M検事正等からその予断に沿った断片的な発言を引き出し,うわさ話をあたかも事実のように粉飾して事実①の事実摘示を行ったのではないかとの疑いを受けてもやむを得ないといえる面があるといわざるを得ない。)。 からその予断に沿った断片的な発言を引き出し,うわさ話をあたかも事実のように粉飾して事実①の事実摘示を行ったのではないかとの疑いを受けてもやむを得ないといえる面があるといわざるを得ない。)。 エ原告は,でたらめな本件記事を掲載されて激しいショックを受け,その後は会う人ごとに「Bから接待など受けていません」と釈明しなければならなかった旨,窮地に陥った人間を足蹴にするようなペンの暴力の前に情けなくて悔し くてどうしようもなく腹が立ったが,新聞の影響力は大きく,「Bに接待漬けにされていたのか」,「新聞が書くのだから事実なのでは」と,それまで原告を信じてくれていた人さえ離れていったが反論するすべがなかった旨等を陳述し(甲2),本人尋問においても,同旨の供述をしている。 これらの陳述等の信用性を否定すべき事情は見当たらず,むしろ,これまでに説示したところに照らして,同陳述等は原告の被害の実情を端的に示すものというべきである。 オ本件記事による事実①の事実摘示は,社会の公器であるべき新聞に付託された報道の自由を,少なくとも結果において,逸脱,濫用したものといわざるを得ず,被告の記者その他の者が原告に上記のように強い打撃の結果を与えたことについて遺憾の意の一端でも表明するといったことすらしたとは認められないことに鑑みても,悪質なものであるといわざるを得ない。 (2) このように,本件記事による事実①の事実摘示が原告の名誉を毀損する程度及びこれにより原告が被った精神的苦痛の程度は相当のものであったというべきであり,その反面,被告が行った取材活動は,当該事実摘示を正当化するには到底足りない粗末なものでしかなかったといわざるを得ない。その上,被告が原告に対して何らかの名誉回復あるいは慰謝の措置を採ったとも認められず,今な 告が行った取材活動は,当該事実摘示を正当化するには到底足りない粗末なものでしかなかったといわざるを得ない。その上,被告が原告に対して何らかの名誉回復あるいは慰謝の措置を採ったとも認められず,今なお原告の被害感情は強固であることが明らかである。これらの事情に加えて,本件口頭弁論に現れた一切の事情を総合考慮すれば,被告の上記不法行為により原告が受けた精神的苦痛に対する慰謝料は600万円とするのが相当である。 5 まとめ以上の次第で,原告の請求は,被告に対し,名誉毀損の不法行為に対する慰謝料として600万円及びこれに対する不法行為日である平成19年7月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める範囲で理由があるが,その余は理由がない。 第4 結論よって,原告の請求を上記の理由のある範囲で認容し,その余を棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第25民事部 裁判長裁判官小海隆則 裁判官齋藤聡及び裁判官藤根康平は,いずれも異動のため,署名押印することができない。 裁判長裁判官小海隆則
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