平成12(行コ)6 所得税更正処分等取消請求控訴事件(原審・広島地方裁判所平成11年(行ウ)第2号)

裁判年月日・裁判所
平成13年3月27日 広島高等裁判所 租税
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判決文本文12,656 文字)

主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第一控訴の趣旨一原判決を取り消す。 二被控訴人が平成八年一〇月七日付けでした控訴人の平成六年分の所得税に係る更正処分のうち総所得金額七三八万〇九三四円、納付すべき税額五四万三六〇〇円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分(ただし、いずれも平成一〇年一〇月三〇日付け裁決により一部取り消された後のもの)を取り消す。 第二事案の概要一本件は、被控訴人が平成八年一〇月七日付けでした控訴人の平成六年分の所得税につき総所得金額を一〇六九万七六六〇円、納付すべき税額を一四五万九六〇〇円とする旨の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(いずれも平成一〇年一〇月三〇日付け裁決により一部取り消された後のもの)に関して、控訴人が、ゴルフ会員権の譲渡所得について、従前平日会員権であったゴルフ会員権を正会員権に転換したことは新たな資産の取得であり、その転換費用に充てた借入金の利子並びに抵当権設定登記費用及び同抹消登記費用は、所得税法三八条一項所定の「資産の取得費」として譲渡所得の金額の計算上全額を控除すべきであると主張し、右控除を認めなかった被控訴人の右各処分は違法であるとして、右更正処分のうち控訴人の確定申告額(総所得金額七三八万〇九三四円、納付すべき税額五四万三六〇〇円)を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分の取消しを求めた事案である。 二本件における争いのない事実等、争点及び争点に関する当事者双方の主張は、当審における当事者双方の主張等に則して次のように原判決について加除、訂正するほか、原判決が「第二事案の概要」の一及び二に記載するとおり(ただし、原判決中の「抵当権設定費用」を「抵当権設定登記費用」に、「抵当権抹消費用」を「抵当権抹消 のように原判決について加除、訂正するほか、原判決が「第二事案の概要」の一及び二に記載するとおり(ただし、原判決中の「抵当権設定費用」を「抵当権設定登記費用」に、「抵当権抹消費用」を「抵当権抹消登記費用」にそれぞれ改める。)であるから、これを引用する。 1 原判決一〇頁五行目の「投資ブーム」の前に「バブル期の」を、同一〇行目の「得るために、」の次に「すなわち、」をそれぞれ加える。 2 同一五頁五行目の「(2)」を削り、同一六頁七行目の次に改行して、次のとおり加え、同八行目本文の冒頭に「したがって、」を加える。 「(2) また、収入から相当因果関係のある支出としての必要経費を控除して純所得を計算し、そこに担税力を見いだして所得税課税を行う純所得課税の原則は、所得税一般に妥当するものであり、譲渡所得課税も例外ではなく、譲渡所得の金額の計算上控除される「取得費」の範囲も右原則に則して解釈する必要がある。本件転換は、バブル期の投資行為であり、個人の日常の生活領域とは明らかに異なる独立した経済活動であって、家事領域に属するものではなく、控訴人の支出した借入金利子は、控訴人の右経済活動にとって不可欠な支出であり、相当因果関係のある必要経費であって、これを収入から控除しないとすれば納税者の担税力を超えた課税となり、純所得課税の原則に反することになる。譲渡所得課税の本質はキャピタルゲインに尽きるものではなく、譲渡所得課税においても、経済活動に欠かせない投下資本やコストが所得を構成しないという所得税課税すべてに共通する本質が妥当するものというべきである。 所得税法三八条一項は、必要経費の控除について規定する同法三七条を当然の前提としながら、譲渡所得課税においては控除される必要経費が所有期間中の複数年に及ぶことから特に設けられた規定にすぎず、これらの規定の 法三八条一項は、必要経費の控除について規定する同法三七条を当然の前提としながら、譲渡所得課税においては控除される必要経費が所有期間中の複数年に及ぶことから特に設けられた規定にすぎず、これらの規定の文言の相違は、右に述べた所得税課税における本質的要請を何ら否定ないし限定するものではない。したがって、同法三八条一項の「資産の取得費」には、資産の取得又は改良のために実質的に欠かせないものとして投下された資本又はコストのすべてが含まれるものと解すべきであり、その内訳としての「資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費」はその代表的な例示にすぎず、本件の借入金利子は資産の取得又は改良のために実質的に欠かせないコスト(必要経費)としてその全額が控除されるべきである。」 3 同一八頁四行目及び同六行目の各「資産の取得のために要した金額」を各「資産の取得費」に改め、同八行目の「そして、」の次に「居住用不動産の譲渡所得の取得費につき右中間説の立場を採った最高裁平成四年七月一四日第三小法廷判決・民集四六巻五号四九二頁並びに」を、同行の「同三八ー八の二」の次に「の基準」をそれぞれ加え、同末行の末尾に次のとおり加える。 「すなわち、右最高裁判決において「使用開始の日」とは現に使用を開始した日の意味で用いられており、右判決を前提とすれば、ゴルフ会員権の場合にはそれを用いて初めてゴルフプレーをした日(又はビジターを紹介してプレーをさせた日)を使用開始日としてとらえるほかはないのであり、かかる使用開始の時期は、ゴルフ場を通じての客観的・事後的な確認により容易に把握することができるので、居住用不動産よりよほど容易に使用開始時期の客観的・事後的な特定をすることが可能であり、その特定に税務行政上の困難を伴うものではなく、課税上の衡平に反する結果を招来するおそれもない。 とができるので、居住用不動産よりよほど容易に使用開始時期の客観的・事後的な特定をすることが可能であり、その特定に税務行政上の困難を伴うものではなく、課税上の衡平に反する結果を招来するおそれもない。右最高裁判決及び基本通達は、使用を開始するのに相応の期間を経過しているか否か、あるいは借入金利子の支払を余儀なくされるか否かにかかわらず、使用開始前の借入金利子の取得費算入を認めているのであり、また、使用を開始する上で「必要な」準備費用か否かも、借入金利子の取得費算入の基準ではない。右最高裁判決の趣旨を「資産の取得のために要した金額」と「改良費」とで別異に取り扱う理由はなく、仮に本件の借入金利子が「改良費」に含まれるとしても、取得費算入の範囲を異にするものではない(「改良費」についても、「取得費」の例示にほかならず、改良に直接要した費用に限定することなく、資産の改良のために実質的に欠かせないものとして投下された資本又はコストのすべてが含まれると解すべきである。)。」 4 同一九頁五行目の「は、」の次に「最高裁判例に反するとともに、」を加え、同行の次に改行して、次のとおり加える。 「 なお、右基本通達三八ー八の二(3)にいう書画や骨とう、美術工芸品などは、その本来の使用方法が所有し、愛玩し、鑑賞するというものである以上、取得時から使用が開始されるものであるのに対し、ゴルフ会員権は、その本来の使用方法を異にするものであるから、書画等と明確に区別して取り扱われるべきものである。」 5 同頁七行目の「仮に」から同行の「されなくても、」までを「仮に、右(一)及び(二)の主張が認められないとしても、」に改め、同二〇頁六行目の次に改行して「(五)予備的主張(四)」を加え、同七行目冒頭の「(五)」を削る。 6 同二一頁六行目の「また、」の次に「右支払利子は、」を (二)の主張が認められないとしても、」に改め、同二〇頁六行目の次に改行して「(五)予備的主張(四)」を加え、同七行目冒頭の「(五)」を削る。 6 同二一頁六行目の「また、」の次に「右支払利子は、」を、同一〇行目の冒頭に「ア」を、同二二頁末行の「最高裁判所平成四年七月一四日第三小法廷判決」の前に「前掲」をそれぞれ加え、同二三頁一行目の次に改行して、次のとおり加える。 「イ所得税法は、各種所得のうち、不動産所得、事業所得、雑所得等の控除項目については「必要経費」という最も幅のある包括的な文言を用いているのに対して、譲渡所得については他の所得に比してより限定的な文言を用いており、このような差異が生ずるゆえんは、投下資本の生産力による収益である不動産所得、事業所得、雑所得等は純所得(ネット・インカム)課税に親しむものであるのに対して、譲渡所得課税は、資産の値上がりにより毎年潜在的に発生している増加益が資産の譲渡により顕在化したときに課税の対象とされる関係で期間計算に親しまないこと等から、純所得(ネット・インカム)に課税するものとはいえず、キャピタルゲイン、すなわち所有資産の価値の増加益に対する清算課税という本質を有することにあるものというべきである。このように、譲渡所得課税と他の所得税課税とは課税の趣旨を異にするものであって、仮に、控訴人の主張に沿って譲渡所得について単純に純所得課税を貫こうとすると、資産の取得から譲渡に至るまでの資産の維持管理に要した支出のすべてを経費に算入すべきことになるが、それではキャピタルゲインが課税所得にほとんど反映されない結果となり、譲渡所得課税の目的を達成することが不可能となる。さらに、資産の保有期間中の維持管理費は、業務用の資産の場合には当該業務に係る毎年の各種所得金額の計算上控除され、居住用等(非業務用)の 結果となり、譲渡所得課税の目的を達成することが不可能となる。さらに、資産の保有期間中の維持管理費は、業務用の資産の場合には当該業務に係る毎年の各種所得金額の計算上控除され、居住用等(非業務用)の資産の場合には家事費とされるのであり、仮にこれらを譲渡収入から控除するとすれば、同一人に帰属する所得の計算上二重控除をする結果となり、不合理であることをも併せ考えると、純所得課税の原則がそのまま譲渡所得課税にも当てはまるとすることはできない。」 7 同二三頁六行目の「考えられず」の次に「(本件においても、控訴人が借入金により入会金追加額を払い込んだ平成元年九月二〇日から正会員権への登録替手続がされた同月二二日までの三日間は、いずれも平日であって、平日会員権に基づく使用が可能であったのであるから、たとえ右期間が本件転換に要した期間であるとしても、ゴルフ会員権の行使が一時制限されていたものではない。)」を、同一〇行目の「ゴルフ会員権」の前に「本件の」をそれぞれ加え、同二四頁一行目の「当該不動産」を「当該会員権」に、同二行目の「該当しない」を「該当せず、改良のための付随費用としての「改良費」にも該当しない」にそれぞれ改める。 8 同二五頁四行目の「持って」を「もって」に、同七行目の「よって、」から同八行目末尾までを「すなわち、住民票又は戸籍の附票の記載をもって使用開始時期を客観的・事後的に確認することが可能な居住用不動産とは異なり、ゴルフ会員権にあっては、ゴルフプレーの有無をゴルフ場の利用者名簿等の書類で調べるとしても、当該書類がゴルフ会員権の取得から譲渡の時まで保存されている保証はないし、時の経過やゴルフ場の閉鎖等により当該書類が散逸ないし消失する場合もあるので、客観的・事後的に使用開始の時期を特定することは不確実であるから、偶々一度でもプレーした 時まで保存されている保証はないし、時の経過やゴルフ場の閉鎖等により当該書類が散逸ないし消失する場合もあるので、客観的・事後的に使用開始の時期を特定することは不確実であるから、偶々一度でもプレーしたか否かという多分に偶然性が加わる事情によって「改良費」に含める借入金利子の範囲を画することは、課税上の衡平に反する結果を招来し、税務行政上著しい困難を生じさせるおそれがあって適切ではなく、前記(3)の書画等と同様に、ゴルフ会員権の行使が可能となった日、すなわち会員としての資格を取得した日をもって使用開始の日とするのが相当である。」にそれぞれ改め、同九行目冒頭から同二六頁一行目末尾までを次のように改める。 「 そして、正会員権への転換が新たな資産の取得とは認められない以上、本件転換はあくまで平日会員権という一つの資産を改良したにすぎないものであるから、控訴人が当該資産を取得した日は、所得税法六〇条により、控訴人の亡夫であるAが平日会員権を取得した日である昭和四三年七月一一日ということになり、同日をもってゴルフ会員権の使用開始の日と認めるのが相当である。 したがって、仮に、ゴルフ会員権についても使用開始の前後で借入金利子の取得費算入の範囲を画する見解を採ったとしても、本件のゴルフ会員権に関しては、右のとおり昭和四三年七月一一日をもって使用開始の日と認められる以上、その全部又は一部を取得費に算入することはできないものというべきである。」 9 同二六頁四行目の「本件で」から同六行目の「こととなるが、」までを「仮に、本件において、控訴人が借入金により入会金追加額を払い込んだ平成元年九月二〇日から正会員権への登録替手続がされた同月二二日までの三日間の期間に対応する借入金利子を取得費(改良費)に算入する計算方法を採ったとしても、」に改め、同一〇行目の「以上 を払い込んだ平成元年九月二〇日から正会員権への登録替手続がされた同月二二日までの三日間の期間に対応する借入金利子を取得費(改良費)に算入する計算方法を採ったとしても、」に改め、同一〇行目の「以上のとおり、」の次に「仮に右計算方法を採ったとしても、」を加え、同末行の「所得税法基本通達」から同行の「よっても、」までを削る。 10 同二七頁一〇行目の「正会員権への転換」から同末行の「借入金とは異なり、」までを「「改良費」とは改良に直接要した費用をいうものと解すべきところ、抵当権設定登記費用は、」に改め、同行の「とはいえず、」の次に「また、抵当権設定登記費用の取得費(改良費)算入の可否については、改良費の支出(借入れ)に伴って支払われる費用としての性質上、借入金利子と同様の理由により判断されるべきであるところ、前記のとおり本件の借入金利子は取得費(改良費)に含めるべきではない以上、本件の抵当権設定登記費用についても、同様に取得費(改良費)に算入することはできないというべきであって、いずれにしても、」を加え、同二九頁四行目の「取得は」を「取得とは」に改める。 11 同三二頁八行目の次に改行して、次のとおり加える。 「4 不利益変更禁止の原則との関係(控訴人の主張)被控訴人の主張は、国税不服審判所の裁決と同様の原判決を、納税者である控訴人にとって不利益に変更するものであり、不利益変更禁止の原則に反し許されない。 (被控訴人の主張)課税処分取消訴訟で裁決において認定された金額と異なった主張をしたとしても、これは処分の正当性を理由あらしめる主張をしているのであって、裁決の拘束力に反しないし、処分庁が処分を根拠付けるためにする主張が裁決の理由中の判断と同一でなければならないことはないのであって、裁決はそのような意味での拘束力を持たない。 し いるのであって、裁決の拘束力に反しないし、処分庁が処分を根拠付けるためにする主張が裁決の理由中の判断と同一でなければならないことはないのであって、裁決はそのような意味での拘束力を持たない。 したがって、被控訴人は、原判決を控訴人にとって不利益に変更することを求めているわけではなく、あくまで原処分の正当性を理由あらしめる主張をしているだけであって、控訴人の主張は、課税処分取消訴訟における主張の範囲を正解しておらず、失当である。」第三当裁判所の判断一当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がないと判断するものであり、その理由は、次のように原判決について訂正、加除するほか、原判決の「第三争点に対する判断」と題する部分の説示と同一であるから、これを引用する。 1 原判決三二頁末行の「一四)によれば」を「一四、一七)及び弁論の全趣旨を総合すると」に改め、同三四頁三行目の次に改行して、次のとおり加える。 「 なお、本件転換において、控訴人が本件の借入金により入会金追加額を払い込んだ平成元年九月二〇日から正会員権に係る会員資格を付与された同月二三日の前日までの三日間は、いずれも平日であり、平日会員権によるゴルフ場の使用が可能であったため、右期間中も控訴人の会員権の行使が別段制限されていたものではなかった。」 2 同頁末行の「しかしながら、」を「他方で、」に、同三五頁三行目の「改良費」を「所得税法三八条一項にいう「資産の取得に要した金額」ではなく、同条項にいう「改良費」」にそれぞれ改め、同四行目の「投資ブーム」の前に「バブル期の」を加える。 3 同三六頁三行目の「清算して課税する趣旨のものである」の次に「(最高裁昭和四七年一二月二六日第三小法廷判決・民集二六巻一〇号二〇八三頁、最高裁昭和五〇年五月二七日第三小法廷判決・民集二九巻五号六四一頁参照) 三行目の「清算して課税する趣旨のものである」の次に「(最高裁昭和四七年一二月二六日第三小法廷判決・民集二六巻一〇号二〇八三頁、最高裁昭和五〇年五月二七日第三小法廷判決・民集二九巻五号六四一頁参照)」を、同五行目の「費用」の次に「の額」を、同行の「控除するものとし」の次に「(同法三三条三項)」をそれぞれ加える。 4 同三七頁一行目の「一般に」の次に「、」を、同二行目の「費用そのもの」の前に「当該」を、同四行目の「したがって、」の次に「右の借入金の利子は、当該資産の客観的価値を増加させる金額に該当せず、また、右増加のための付随費用に当たるともいうことができないのであって、むしろ、」を、同七行目の「原則として、」の次に「当該資産の」を、同八行目の「というべきである」の次に「(前掲最高裁平成四年七月一四日第三小法廷判決(以下「平成四年最高裁判決」という。)参照)」をそれぞれ加え、同頁九行目冒頭から同四一頁一〇行目末尾までを次のように改める。 「4 本件のようなゴルフ会員権の平日会員権から正会員権への転換の場合には、個人の居住の用に供される不動産(以下「居住用不動産」という。)の取得の場合とは異なり、転換資金(入会金追加額)の借入れの後に個人が当該会員権の使用を開始するまでに相応の期間を要するのが通常であるとはいえず(現に、本件転換における入会金追加額の払込みから正会員権の資格付与の前日までの期間はわずか三日間にすぎず、右期間中も控訴人による会員権の行使に別段制限は加えられていなかった。)、したがって、一般にその転換に際して相応の期間当該会員権を使用することなく利子の支払を余儀なくされるものとはいえない以上、右の借入金の利子は、当該会員権の使用開始の前後を問わず、当該会員権をその用途に供する上で必要な準備費用ということはできず、そのための付随費 ることなく利子の支払を余儀なくされるものとはいえない以上、右の借入金の利子は、当該会員権の使用開始の前後を問わず、当該会員権をその用途に供する上で必要な準備費用ということはできず、そのための付随費用に当たるものということもできないから、右3の原則に対して居住用不動産の場合のような例外を認めるべき理由はなく、右にいう「改良費」には含まれないものと弊するのが相当である。 5 控訴人は、主位的主張(1)において、正会員権への転換が新たな資産の取得であるとして、これに伴う費用が「資産の取得に要した金額」であることを前提に、使用開始の前後を問わず、借入金利子の全額を「資産の取得に要した金額」に算入すべきである旨主張するが、正会員権への転換が新たな資産の取得とは認められないことは前示のとおりであるから、控訴人の右主張はその前提において理由がなく、採用することができない。 また、控訴人は、主位的主張(2)において、譲渡所得課税においても、収入から相当因果関係のある支出としての必要経費を控除して純所得を計算し、そこに担税力を見いだして所得税課税を行う純所得課税の原則に基づき、経済活動に欠かせない投下資本やコストが所得を構成しないという所得税課税すべてに共通する本質が妥当する以上、所得税法三八条一項の「資産の取得費」には、資産の取得又は改良のために実質的に欠かせないものとして投下された資本又はコストのすべてが含まれるものと解すべきであり、その内訳としての「資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費」はその代表的な例示にすぎず、本件の借入金利子は資産の改良のために実質的に欠かせないコスト(必要経費)としてその全額が控除されるべきである旨主張する。しかしながら、所得税法は、所得金額の計算上控除項目を包括的に「必要経費」(三七条)と規定している他の各所得( めに実質的に欠かせないコスト(必要経費)としてその全額が控除されるべきである旨主張する。しかしながら、所得税法は、所得金額の計算上控除項目を包括的に「必要経費」(三七条)と規定している他の各所得(投下資本の生産力による収益である不動産所得、事業所得、山林所得及び雑所得)に係る課税とは異なり、譲渡の際に顕在化する資産価値の増加益に対する清算課税という譲渡所得課税の特質にかんがみ、譲渡所得の金額の計算上控除する「資産の取得費」を「資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費」の合計額と規定し(三八条一項)、控除項目を個別具体的に限定列挙しており、かかる譲渡所得課税の特質及び所得税法の規定の趣旨・文言等に照らすと、前示のとおり本件の借入金利子は右にいう「資産の取得に要した金額」又は「改良費」のいずれにも該当しないものと解される以上、前記の他の各所得について純所得課税の原則に従って必要経費の控除が認められているからといって、直ちに譲渡所得課税において右借入金利子の控除が認められるものとはいえず、右主張は採用することができない。 6 控訴人は、予備的主張(一)において、居住用不動産の譲渡所得の取得費につき前記中間説の立場を採った平成四年最高裁判決を根拠として、本件のゴルフ会員権についても、使用開始日までの借入金利子を取得費として控除すべきであり、控訴人は右会員権の使用を開始しないままこれを譲渡したから、借入金利子の全額を控除すべきである旨主張する。しかしながら、平成四年最高裁判決は、資産の取得資金に係る借入金の利子の取得費算入の可否について前記3の原則を一般的に承認した上で、居住用不動産に関する限り、当該借入れの後に個人が当該不動産をその居住の用に供するまでには相応の期間を要するのが通常であり、当該個人は右期間中当該不動産を使用することなく利子 を一般的に承認した上で、居住用不動産に関する限り、当該借入れの後に個人が当該不動産をその居住の用に供するまでには相応の期間を要するのが通常であり、当該個人は右期間中当該不動産を使用することなく利子の支払を余儀なくされるものであることを勘案して、当該不動産の使用開始日までの借入金利子を、当該不動産をその取得に係る用途に供する上で必要な準備費用(当該不動産を取得するための付随費用)と認め、右の原則に対する例外を認めたものであって、前記4のとおり、ゴルフ会員権の平日会員権から正会員権への転換の資金に係る借入金の利子を対象とする本件とは事案を異にするものであり、控訴人の右主張は理由がない。 また、控訴人は、右主張の中で、併せて所得税法基本通達三八ー八及び同三八ー八の二を根拠として挙げているが、右基本通達は、固定資産(建物内に存する機械及び装置並びに書画、骨とう、美術工芸晶等を含む。)の取得費用に係る借入金の利子について規定したものにとどまり、ゴルフ会員権の取得又は改良(平日会員権から正会員権への転換等)の資金に係る借入金の利子については別段規定を設けておらず、本件の事案に関する前示の判断を左右するに足りるものではない。」 5 同四二頁七行目冒頭から同八行目末尾までを次のように改める。 「 また、控訴人の予備的主張(三)については、前記4のとおり、本件の借入金利子は、その全額が所得税法三八条一項の「改良費」に該当しないものと解されるので、右主張は理由がない。 そして、控訴人の予備的主張(四)については、生命保険金等の一時所得における保険料の借入利息に係る税務実務上の取扱いに関する所論は、本件とは事柄の性質を異にするものであり、本件の事案に関する前示の判断を左右するに足りるものではない。」 6 同頁一〇行目冒頭から同四三貢一行目の「解される。」ま る税務実務上の取扱いに関する所論は、本件とは事柄の性質を異にするものであり、本件の事案に関する前示の判断を左右するに足りるものではない。」 6 同頁一〇行目冒頭から同四三貢一行目の「解される。」までを次のように改め、その次に改行して同行の「しかし、」を「また、」に改め、同四行目冒頭から同八行目末尾までを削る。 「 前示のとおり、資産の改良費そのものは、当該資産の客観的価値を増加させる金額に該当するが、右費用を借入金によったか自己資金によったかは、本来、資産価値の増加とは直接関連性を有しない資金調達上の事情にすぎないと解される以上、その借入金の利子と同様に、借入金債務に係る抵当権設定登記費用も、当該資産の客観的価値を増加させる金額に該当せず、また、右増加のための付随費用に当たるともいうことができないのであって、原則として、所得税法三八条一項にいう「改良費」に該当しないものというべきである。 そして、本件のようなゴルフ会員権の平日会員権から正会員権への転換の場合において、転換資金(入会金追加額)の借入れに際して個人が自己所有の不動産に抵当権を設定するのが通常であるとはいえず、したがって、一般にその転換に際して抵当権設定登記費用の支払を余儀なくされるものとはいえない以上、右抵当権設定登記費用は、当該会員権をその用途に供する上で必要な準備費用ということはできず、そのための付随費用に当たるものということもできないから、右の原則に対する例外を認めるべき理由はなく、右にいう「改良費」には含まれないものと解するのが相当である。」 7 同四四頁四行目の、「改良費に付随する費用」から同五行目の「借入金利子一万〇三七四円、」までを削り、同七行目の「二四四一万〇六七四円」を「二四二七万五〇〇〇円」に、同行及び同一〇行目の各「一三五八万九三二六円」を各「一三 良費に付随する費用」から同五行目の「借入金利子一万〇三七四円、」までを削り、同七行目の「二四四一万〇六七四円」を「二四二七万五〇〇〇円」に、同行及び同一〇行目の各「一三五八万九三二六円」を各「一三七二万五〇〇〇円」に、同行から同末行にかけての「六七九万四六六三円」を「六八六万二五〇〇円」に、同行の「一〇六二万九八二三円」を「一〇六九万七六六〇円」にそれぞれ改める。 8 同項末行の次に改行して「四争点3(本件各処分の適法性)について」を加え、同四五頁一行目冒頭の「四」を「1」に改め、同二行目冒頭から同四行目末尾までを次のように改める。 「 以上によると、本件裁決により一部取り消された後の本件更正処分は、右処分に係る総所得金額及び納付すべき税額が前記三認定の総所得金額及び納付すべき税額の範囲内であるから、適法であり、したがって、本件更正処分(総所存金額を一〇六二万九八二三円、納付すべき税額を一四四万三三〇〇円とする旨の本件裁決により一部取り消された後のもの)のうち控訴人の申告に係る総所得金額七三八万〇九三四円、納付すべき税額五四万三六〇〇円を超える部分の取消しを求める控訴人の本訴請求は、理由がない。」 9 同四五頁五行目冒頭の「五」を「2」に改め、同行の「本件賦課決定処分」の次に「の適法性」を加え、同八行目の「認められないから、」から同一〇行目末尾までを「認められず、また、本件裁決により一部取り消された後の本件賦課決定処分は、右処分に係る過少申告加算税額が前記三認定の納付すべき税額に基づく過少申告加算税額(一〇万円)の範囲内であるから、適法であり、したがって、本件賦課決定処分(過少申告加算税を九万七五〇○円とする旨の本件裁決により一部取り消された後のもの)の取消しを求める控訴人の本訴請求は、理由がない。」に改める。 10 同頁一〇行目の 、したがって、本件賦課決定処分(過少申告加算税を九万七五〇○円とする旨の本件裁決により一部取り消された後のもの)の取消しを求める控訴人の本訴請求は、理由がない。」に改める。 10 同頁一〇行目の次に改行して、次のとおり加える。 「五争点4(不利益変更禁止の原則との関係)について 1 控訴人は、被控訴人の主張は、国税不服審判所の裁決と同様の原判決を、納税者である控訴人にとって不利益に変更するものであり、不利益変更禁止の原則に反し許されないと主張する。 2 しかしながら、控訴審におけるいわゆる不利益変更禁止の原則とは、控訴人の不服申立ての範囲を超えて原判決を取り消し、又は変更することができない(民事訴訟法三〇四条)というにあり、本件において、控訴人は、控訴人の請求を棄却した原判決の全部取消しを求めているのであるから、被控訴人の主張に沿った理由に基づいて控訴棄却の判決がされたとしても、何ら不利益変更禁止の原則に低触するものではない。 また、一般に、審査請求の裁決を経た課税処分の取消訴訟において、当該処分をした行政庁は、当該処分の適法性を根拠付ける理由に関する主張の内容について、裁決の理由に拘束されるものではなく、裁決の理由と異なる内容の主張をすることを妨げられるものではない。被控訴人が本訴において「資産の取得費」として主張している額が裁決で認定された額を下回っているとしても、被控訴人はそれを理由に控訴人の税額を増大させようとしているのではなく、処分の適法性を理由あらしめる事由としてこれを主張しているのであって、裁決の拘束力に反するものではない。 したがって、本件において、被控訴人の主張が控訴人の指摘するような手続的な観点から許されないものとすべき理由はなく、控訴人の右主張は失当である。」二結論以上の次第で、控訴人の本訴請求を棄却し したがって、本件において、被控訴人の主張が控訴人の指摘するような手続的な観点から許されないものとすべき理由はなく、控訴人の右主張は失当である。」二結論以上の次第で、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。 広島高等裁判所第二部裁判長裁判官川波利明裁判官布村重成裁判官岩井伸晃

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