令和4(行ウ)62 手続却下処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年1月31日 東京地方裁判所
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令和5年1月31日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和4年(行ウ)第62号手続却下処分取消等請求事件口頭弁論終結日令和4年11月4日判決 原告アイエスシーエーマネジメントエルティーディー. 同特許管理人弁理士矢口太郎同特許管理人弁護士千且和也同補佐人弁理士尾 城 日奈子 被告国 処分行政庁特許庁長官同指定代理人小川翔平岡田裕介稲垣若菜加茂絢弓 中澤直樹 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求特許庁長官が令和3年7月29日付けでした、特願2019-546273号についての令和元年8月21日付け提出の国内書面に係る手続却下の処分及び令和2年12月18日付け提出の出願審査請求書に係る手続却下の処分をい ずれも取り消す。 第2 事案の概要等 1 事案の要旨本件は、「千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約」(以下「特許協力条約」という。)に基づき外国語で国際出願をした原告が、特許法184条の4第1項が定める優先日から2年6月の国内書面提出期間内に 同項に規定する明細書等の翻訳文(以下「本件明細書等翻訳文」という。)を提出 。)に基づき外国語で国際出願をした原告が、特許法184条の4第1項が定める優先日から2年6月の国内書面提出期間内に 同項に規定する明細書等の翻訳文(以下「本件明細書等翻訳文」という。)を提出することができなかったことについて、同条の4第4項(令和3年法律第42号による改正前のもの。以下同じ。)の正当な理由があるにもかかわらず、特許庁長官(処分行政庁)が、令和3年7月29日付けで原告に対して国内書面に係る手続を却下する処分(以下「本件処分①」という。)をするとともに、 同日付けで原告に対して出願審査請求書に係る手続を却下する処分(以下、「本件処分②」といい、本件処分①と併せて「本件各処分」という。)をしたことが違法であるとして、その各取消しを求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠(以下、書証番号は特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) ⑴ 当事者ア原告は、カナダ国ブリティッシュコロンビア州の法律に基づいて設立され、現存する外国法人であり、特許法8条の規定による特許管理人を選任している(弁論の全趣旨)。 イ被告は国であり、本件各処分の行政庁は特許庁長官である。 ⑵ 原告による国際出願原告は、平成29年12月21日、優先日を平成28年12月21日、カナダ知的財産庁を受理官庁、国際出願言語を英語とする、特許協力条約に基づく国際出願をした(甲20。PCT/CA2017/051580号。以下「本件PCT出願」という。)。 本件PCT出願は、特許協力条約4条⑴(ⅱ)の指定国に日本国を含むものであるから、特許法184条の3第1項の規定に基づき、当該PCT出願の出願日である平成29年12月21日に日本国にされ 本件PCT出願は、特許協力条約4条⑴(ⅱ)の指定国に日本国を含むものであるから、特許法184条の3第1項の規定に基づき、当該PCT出願の出願日である平成29年12月21日に日本国にされた特許出願とみなされた(特願2019-546273号。以下「本件国際特許出願」という。)。 ⑶ 本件訴訟に至る経緯 ア本件国際特許出願における本件明細書等翻訳文の提出期間は、優先日から2年6か月以内である令和元年6月20日まで(以下「本件国内書面提出期限」という。)であったが(特許法184条の4第1項)、原告は、同日までに本件明細書等翻訳文及び特許法184条の5第1項に規定する国内書面のいずれも提出しなかったため、本件国際特許出願は取り下げたも のとみなされた(特許法184条の4第3項)。 イ原告は、令和元年8月21日、特許庁長官に対し、特許法184条の5第1項各号に掲げられた事項を記載した国内書面に、本件明細書等翻訳文を添付して提出し(以下「本件国内書面等提出手続」という。)、併せて回復理由書を提出した(甲1、2)。 特許庁長官は、令和3年7月29日、原告が国内書面提出期限までに本件明細書等翻訳文を提出することができなかったことにつき「正当な理由」があるとはいえず、本件国内書面等提出手続は特許法184条の4第4項に規定する要件を満たさないため、本件国際特許出願は特許法184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされ、本件国内書面等提 出手続は特許庁に係属していない出願に対して行われた不適法なものであるとして、本件国内書面等提出手続却下の処分(本件処分①)を行った。 ウ原告は、令和2年12月18日、本件国際特許出願に係る出願審査請求書を提出した。 特許庁長官は、令和3年7月29日、特許法 るとして、本件国内書面等提出手続却下の処分(本件処分①)を行った。 ウ原告は、令和2年12月18日、本件国際特許出願に係る出願審査請求書を提出した。 特許庁長官は、令和3年7月29日、特許法184条の4第4項の規定 による本件国内書面等提出手続において、「正当な理由」があるものと認 められなかったことから、本件国際特許出願は特許法184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされ、上記出願審査請求書提出手続は客体が存在しない出願についてされた不適法なものであるとして、上記出願審査請求書提出手続却下の処分(本件処分②)を行った。 エ原告は、令和4年1月28日、本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な 事実)。 3 争点原告が本件国内書面提出期限内に本件明細書等翻訳文又は国内書面を提出しなかったことにつき「正当な理由」(特許法184条の4第4項)があるか否か 4 争点に関する当事者の主張(原告の主張)⑴ 「正当な理由」の解釈特許法184条の4第4項は、法定の期間内に手続をすることができなかった場合の救済手続について規定したものであり、特許法等の一部を改正す る法律(平成23年法律第63号。以下「平成23年改正法」という。)による改正により新設されたものであること、特許法条約(PLT)12条は、加盟国に対し、手続期間を徒過した場合の救済を認める要件として、「状況により必要とされる相当な注意を払ったにもかかわらず当該期間を遵守することができなかったものである」との主観的基準によることを求めているこ と、特許庁のウェブページにも、「正当な理由」は、上記特許法条約12条の要件と同様に、「状況に応じて必要とされるしかるべき措置」を講じていたかどうかを判断基準とし 準によることを求めているこ と、特許庁のウェブページにも、「正当な理由」は、上記特許法条約12条の要件と同様に、「状況に応じて必要とされるしかるべき措置」を講じていたかどうかを判断基準としていると記載されていることに照らすと、期間内に手続をすることができなかったことにつき「正当な理由」があるか否かの判断は、①手続又は優先権主張を伴う出願をするために出願人等が何らかの 措置を講じていたか、②当該措置が状況に応じて必要とされるしかるべき措 置であったか、③当該措置にもかかわらず、何らかの理由により期間徒過に至ったかという基準により判断されるべきである。なお、上記の「しかるべき措置」とは、特許法条約12条に規定する「状況により必要とされる相当な注意を払っ」ていることを示す措置(以下「相応の措置」という。)のことであると解釈すべきであり、その措置を講ずれば全ての「何らかの理由に よる期間徒過」を防げるような完璧な措置ではないことは明らかである。なぜなら、相応の措置としてそのような完璧な措置を求めるのであれば、そもそも全ての「何らかの理由による期間徒過」はその措置により防げるのであり、本救済規定の「正当な理由」の意義が没却されるからである。 ⑵ 本件において「正当な理由」があること ア期限徒過の発生経緯について(ア) ガウリング国際法律事務所(以下「本件事務所」という。)における特許期限管理方法本件事務所は、本件PCT出願及び本件国内書面等提出手続について原告から委任を受けたA弁護士(以下「本件弁護士」という。)が所属 する事務所である。本件事務所では、特許期限管理の体系的な一括管理を行うために、CPAGlobal社の特許期限管理システムであるInprotechシステム(以 本件弁護士」という。)が所属 する事務所である。本件事務所では、特許期限管理の体系的な一括管理を行うために、CPAGlobal社の特許期限管理システムであるInprotechシステム(以下「本件システム」という。)を使用している。 本件システムにおいては、毎日生成・更新される特許出願未処理案件 の期限の一覧表(以下「期限管理リスト」という。)を出力することができるところ、本件事務所においては、期限管理リストのハードコピーが、毎朝、特許コーディネーターに配布され、特許コーディネーターが、これを担当特許弁護士との間で共有し、期限が近くなると担当特許弁護士に処理を促すとともに、当該処理が期限内になされたかをモニターす ることにより、各特許出願案件の期限の管理がされていた。 また、本件システムにおいては、上記期限管理リストとは別に、期限に関するリマインダーとして機能する、自動送信電子メール(以下「担当案件期限確認リポート」という。)を、特定日に利用者へ自動配信する設定とされているため、担当特許弁護士と、特許コーディネーターを含む補助者事務員が、電子メール形式のリマインダーである担当案件期 限確認リポートに基づいて、各特許出願案件の期限を確認するのが、通常の作業手順となっていた。 (イ) 本件国内書面提出期限徒過の経緯本件事務所の特許コーディネーターであるBは、令和元年6月20日(カナダ国標準時。特段の断りのない限り以下同じ。)、本件弁護士の担 当案件の期限管理リストを確認したところ、同期限管理リスト上に本件PCT出願のカナダ国への国内移行期限日が翌日の令和元年6月21日であることが記載されていた。このため、Bは、本件弁護士に対し、原告から受領した小切手が同時点においては現金化されて 理リスト上に本件PCT出願のカナダ国への国内移行期限日が翌日の令和元年6月21日であることが記載されていた。このため、Bは、本件弁護士に対し、原告から受領した小切手が同時点においては現金化されていないことを伝え、指示を求めた。本件弁護士は、カナダ国への国内移行期限日が翌日 であることを考慮して、小切手の現金化を待たずにカナダ国への国内移行手続の準備を行うようBに指示した。しかし、同月20日付けの期限管理リスト上では、本件PCT出願のカナダ国への国内書面提出期限のみが記載され、本件国内書面提出期限については記載されていなかったため、本件国内書面等提出手続はされなかった。 Bは、令和元年6月20日、本件システムから自動配信された担当案件期限確認リポートを受領し、同月21日、本件PCT出願の日本への国内移行がされていないこと及び本件国内書面提出期限が同日であることを確認したが、本件事務所の所在地(カナダ国、バンクーバー)と日本とは16時間の時差があるため、日本への国内移行期間を既に徒過し ていた。 後に調査したところ、本件システムは、カナダ国の国内移行の場合とは異なり、日本を含む外国への国内移行の場合には、国内移行期限日の1か月前、2週間前及び3日前に担当案件期限確認リポートで国内移行期限日を告知した後、2日前及び前日には告知せず、期限日当日に再び告知するという動作をするようになっていたことが判明した。 また、期限管理リストについても、同リストの生成に係る「DueDateCalculation(期限日の計算)」の設定自体は正しくされていたにもかかわらず、同設定はカナダ国への国内移行にのみ適用され、日本を含む外国の国際特許出願に適用されておらず、令和元年6月21日の2日前及び前日に本件国内書面 の計算)」の設定自体は正しくされていたにもかかわらず、同設定はカナダ国への国内移行にのみ適用され、日本を含む外国の国際特許出願に適用されておらず、令和元年6月21日の2日前及び前日に本件国内書面提出期限が期限管理リストから削除されると いう不具合があったことが発覚した。 これらのことから、本件国内書面提出期限の徒過は、本件システムの不具合に起因して生じたものであるといえる。 イ相応の措置がとられていること本件事務所は、大手の法律事務所であり、本件弁護士自身も本件国内書 面提出期限徒過の原因となった事象が発生した当時、650ないし700件のカナダ国及び外国特許出願・中間処理案件を直接又は間接的に担当しており、本件事務所では、このような数多くの特許案件の期限日を体系的に一括管理するために、本件システムを採用しているものである。このような数多くの案件の出願及び中間処理を代理している状況において、各担 当弁護士及び補助者が各案件の期限を記憶するのは、効率的でないばかりでなく、不合理である。 したがって、本件弁護士が講じていた、本件システムに則り特許の期限管理をする措置は、カナダ国における具体的期限管理状況を考慮すると「相応の措置」であるといえる。 前記アのとおり、令和元年6月20日の時点で本件弁護士が日本への国内移行手続についてBに指示を出さず、本件国内書面提出期限を徒過したのは、本件システムの不具合により、同日付けの期限管理リストに本件国内書面提出期限が掲載されず、また、担当案件期限確認リポートについても、日本を含む外国への国内移行の場合には期限日の2日前及び前日には 告知されないとの動作をするようになっていたことにより、リマインダー機能が働かなかったためである。 このように、原 についても、日本を含む外国への国内移行の場合には期限日の2日前及び前日には 告知されないとの動作をするようになっていたことにより、リマインダー機能が働かなかったためである。 このように、原告は、「相応の措置」をとっていたにもかかわらず、本件システムの不具合により本件国内書面提出期限を徒過したのであるから、同期限内に本件明細書等翻訳文を提出できなかったことには「正当な理由」 があるといえる。 (被告の主張)⑴ 「正当な理由」の解釈特許法184条の4第4項の改正の経緯等に鑑みると、同項の「正当な理由」があるときとは、特段の事情がない限り、出願人(代理人を含む。)と して、相当な注意を尽くしていたにもかかわらず、客観的にみて国内書面提出期間内に明細書等翻訳文を提出することができなかったときをいうと解するのが相当である。 ⑵ 原告が相当な注意を尽くしたといえないことア原告は、本件国内書面提出期限を徒過したのは、本件システムの不具合 により、本件国内書面提出期限が同期限の2日前及び前日には期限管理リストに掲載されなかったことにより、本件弁護士及びBにおいて早期に対応すべき案件として気づくことができなかったためであると主張する。 イしかし、本件国内書面提出期限直前である令和元年6月18日に出力された期限管理リストには、本件国内書面提出期限が同月21日であること とともに、次回の掲載日は同月21日であることが記載されていたことか らすると、本件システムはこの記載どおりに稼働していたのであり、本件国内書面提出期限がその2日前及び前日の期限管理リストに掲載されないことは、本件システムの不具合ではなく、単なる仕様にすぎないものといえる。 したがって、原告(代理人を含む していたのであり、本件国内書面提出期限がその2日前及び前日の期限管理リストに掲載されないことは、本件システムの不具合ではなく、単なる仕様にすぎないものといえる。 したがって、原告(代理人を含む。以下同じ。)は、本件システムが上 記のような仕様であることを前提として、本件国内書面提出期限の徒過を回避するために相当な注意を尽くさなければならなかったものである。 ウ仮に、原告主張のとおり、本件システムに予期せぬ不具合が生じていたとしても、原告は、次に述べるとおり、本件国内書面提出期限の徒過を回避するために相当な注意を尽くしたとはいえない。 本件弁護士は、令和元年6月18日には、同日に出力された期限管理リストにより、本件国内書面提出期限が3日後の同月21日であり、本件国内書面等提出手続が未だ行われていないことを認識したといえるところ、同月18日及びその後、Bに対し、本件国内書面等提出手続を指示した事実はうかがわれない。 また、本件事務所においては、小切手の現金化が行われた上で出願人から受任した手続を行うことが処理方針として確立されていたというのであり、その受任した手続の期限が間近に迫っているにもかかわらず、現金化がなされていない状況があるのであれば、一層の注意を払うことが求められる状況であったというべきである。にもかかわらず、本件弁護士は、B から小切手が現金化されていない旨の報告を受けた同月18日から本件国内書面提出期限である同月20日までの間、一層の注意を払ったとする事実は全くないのであって、漫然と本件国内書面提出期限を徒過したといわざるを得ない。 さらに、特許協力条約に基づく国際出願の特許出願人は、通常、複数の 国において特許を出願しようとするのが通常であって、一 、漫然と本件国内書面提出期限を徒過したといわざるを得ない。 さらに、特許協力条約に基づく国際出願の特許出願人は、通常、複数の 国において特許を出願しようとするのが通常であって、一つの国に、それ も自国のみに出願しようとするのは例外的な場合だと考えられるから、国内移行手続を行うに当たって、いずれの国を指定国として手続を行うのか、十分に注意を払うことが通常であるといえる。しかし、本件弁護士は、漫然と自国であるカナダ国への国内移行手続のみをBに対して指示したものといえる。 エ以上のことから、本件弁護士は、本件国内書面提出期限の徒過を回避するために相当な注意を尽くしたとはいえないから、原告が同期限内に本件国内書面等提出手続を行わなかったことにつき「正当な理由」があるとは認められない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実、後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 本件弁護士は、原告から本件PCT出願及び本件国内書面等提出手続の委任を受けた弁護士であり、本件弁護士の所属する本件事務所においては、B が本件弁護士の業務を補助していた(弁論の全趣旨)。 ⑵ Bは、令和元年6月5日、本件PCT出願及び国内移行手続に係る原告の担当者から、本件PCT出願について、本件弁護士に日本への国内移行手続を含む複数国への国内移行手続を依頼するメールを受領した(甲17)。 ⑶ Bは、令和元年6月7日、原告から本件PCT出願の国内移行費用の前払 のための小切手を受領したことを受け、担当部署に対して本件国内書面等提出手続に関する新件登録を依頼し、同担当部署は本件システムに同手続に関する新件登録処理を行うとともに、本件国内書面提出期限日を登録した。なお、同小 領したことを受け、担当部署に対して本件国内書面等提出手続に関する新件登録を依頼し、同担当部署は本件システムに同手続に関する新件登録処理を行うとともに、本件国内書面提出期限日を登録した。なお、同小切手は同月10日に現金化のために銀行に呈示された。(甲14ないし16、18、弁論の全趣旨) ⑷ Bは、令和元年6月18日、本件弁護士が担当している案件の期限管理リストを確認したところ、同日付けの期限管理リストには、本件国内書面提出期限が同月21日であることに加え、次回の期限管理リストによる本件国内書面提出期限の掲載は同日にのみされることも記載されていた。Bは、上記の期限管理リストに基づいて、原告から受領した小切手が銀行において現金 化され本件事務所の銀行口座へ入金されたかについて、経理部に問合せをしたところ、同日の時点では小切手がいまだ現金化されていないことが分かったため、この報告を受けた本件弁護士は、同月18日の時点では本件国内書面等提出手続の準備を保留にするという判断をした。(甲10、弁論の全趣旨) ⑸ Bは、令和元年6月20日、本件弁護士の担当案件の期限管理リストを確認したところ、同期限管理リスト上に本件PCT出願のカナダ国への国内移行期限日が翌日の同月21日であることが記載されていた。そこで、Bは、経理部に小切手の現金化の状況について問合せをしたところ、この時点でも小切手が現金化されていないことが分かったため、本件担当弁護士にその旨 伝え、指示を求めた。 本件弁護士は、本件システムから令和元年6月20日付けで出力された期限管理リスト上に記載されていたカナダ国について、小切手の現金化を待たずにカナダ国への国内移行手続の準備を行うようBに指示した。 Bは、令和元年6月20日、本件弁護士の指示に基 日付けで出力された期限管理リスト上に記載されていたカナダ国について、小切手の現金化を待たずにカナダ国への国内移行手続の準備を行うようBに指示した。 Bは、令和元年6月20日、本件弁護士の指示に基づいてカナダ国への国 内移行の出願書類を同日付けでカナダ国知的財産庁に提出した。他方で、同日付けの期限管理リスト上では、本件国内書面提出期限については記載されていなかった。(甲11、18、20、弁論の全趣旨)⑹ Bは、令和元年6月21日の午前中、本件システムから同月20日午後11時54分付けで本件弁護士及びBに自動配信された担当案件期限確認リポ ートを確認し、本件PCT出願は、カナダ国のみならず日本への国内移行手 続をとるべきであったこと、同時点においては、本件事務所と日本とは16時間の時差があるため、本件国内書面提出期限を既に徒過していたことが判明した。なお、本件国内書面提出期限に係る担当案件期限確認リポートは、同月18日及び19日には自動配信されなかった。(甲13、21、弁論の全趣旨) 2 争点に対する判断⑴ 「正当な理由」の解釈我が国においては、従前、国内書面提出期間内に明細書等翻訳文を提出しなかった外国語特許出願の出願人は救済されなかったところ、平成23年改正法は、国内書面提出期間内に明細書等翻訳文又は特許法184条の5第1 項に規定する国内書面を提出することができなかったことについて「正当な理由」があるときには、一定の期間内に限りこれを救済するという趣旨から、特許法184条の4第4項を新設した。 上記の改正は、特許法条約において、手続期間の経過によって出願又は特許に関する権利の喪失を引き起こした場合の「権利の回復」に関する規定 (12条)が設けられ、加盟国に対して、手 設した。 上記の改正は、特許法条約において、手続期間の経過によって出願又は特許に関する権利の喪失を引き起こした場合の「権利の回復」に関する規定 (12条)が設けられ、加盟国に対して、手続期間を徒過した場合の救済を認める要件として、「DueCare(いわゆる「相当の注意」)を払っていた」又は、「Unintentional(いわゆる「故意ではない」)であった」のいずれかを選択することを認めているところ、我が国においては、第三者の監視負担に配慮しつつ実効的な救済を確保できる要件として「DueCare」を採用すると ともに、具体的な条文の文言は、行政事件訴訟法14条1項等の規定に倣って、従前の要件である「その責めに帰することができない理由」に比して緩やかな要件である「正当な理由があるとき」として、個別の事案における様々な事情を考慮しつつ、柔軟な救済を図ることができるよう、特許法条約と同様の考え方を取り入れたものと解される。しかし、他方で、①特許協力 条約に基づく国際特許出願の制度は、国内書面提出期間内に翻訳文を提出す ることによって、我が国において、当該外国語特許出願が国際出願日にされた特許出願とみなされるというものであるから、同制度を利用しようとする外国語特許出願の出願人には、自己責任の下で、国内書面提出期間内に明細書等翻訳文を提出することが求められる。また、②取り下げられたものとみなされた国際特許出願に係る権利の回復を無制限に認めると、国内書面提出 期間経過後も、当該国際特許出願が取り下げられたものとみなされたか否かについて、第三者に過大な監視負担をかけることになる。 以上のような事情を考慮すると、特許法184条の4第4項所定の「正当な理由」があるときとは、特段の事情がない限り、出願人(代理 されたか否かについて、第三者に過大な監視負担をかけることになる。 以上のような事情を考慮すると、特許法184条の4第4項所定の「正当な理由」があるときとは、特段の事情がない限り、出願人(代理人を含む。 以下同じ。)として、相当な注意を尽くしていたにもかかわらず、客観的に みて国内書面提出期限内に明細書等翻訳文又は特許法184条の5第1項に規定する国内書面を提出することができなかったときをいうと解するのが相当である。 この点について、原告は、「正当な理由」があるか否かの判断は、手続又は優先権主張を伴う出願をするために出願人等が何らかの措置を講じていた か、当該措置が状況に応じて必要とされるしかるべき措置であったか、当該措置にもかかわらず、何らかの理由により期間徒過に至ったかという基準により判断されるべきであり、上記の「しかるべき措置」とは、その措置を講ずれば全ての「何らかの理由による期間徒過」を防げるような完璧な措置である必要はないなどと主張するが、特許法184条の4第4項所定の「正当 な理由」の解釈に当たっては、上記①及び②の点を考慮しなければならないことからすると、原告が主張するように、期限徒過をした者の柔軟な救済のみを強調し、「正当な理由」の有無を緩やかに解釈することは相当ではない。 ⑵ 本件において原告又はその代理人が相当な注意を尽くしていたといえるか前記1の認定事実⑷のとおり、本件弁護士及びBは、令和元年6月18日 には、期限管理リストを確認し、本件PCT出願は、日本への国内移行手続 をとる必要があること、本件国内書面提出期限が同月21日であること、本件国内書面提出期限が間近に迫っているにもかかわらず、小切手の現金化が未了であることを認識し、また、次の期限管理リストによる本件 をとる必要があること、本件国内書面提出期限が同月21日であること、本件国内書面提出期限が間近に迫っているにもかかわらず、小切手の現金化が未了であることを認識し、また、次の期限管理リストによる本件国内書面提出期限の掲載は、本件国内書面提出期限当日である同月21日にされることを認識し、又は認識し得たといえる。そして、日本とカナダ国との時差を考 慮すると、同日に期限管理リストによる本件国内書面提出期限の掲載を受けてから本件国内書面等提出手続の準備をしても本件国内書面提出期限を徒過する可能性が高いことは明らかであるから、本件弁護士及びBは、同月18日に期限管理リストを確認した時点において、本件システムがする期限管理リストによる国内書面提出期限の掲載又は担当案件期限確認リポートの配信 に頼ることなく、小切手の現金化の状況を継続的に確認しつつ、現金化の完了後に直ちに本件国内書面等提出手続を実行するか又は現金化を待たずに本件国内書面等提出手続を実行するかを随時検討するなどし、確実に本件国内書面提出期限を遵守できるよう対応する必要があったといえ、また、そのような対応をとることが困難であったと認めるに足りる事情はない。 それにもかかわらず、本件弁護士及びBは、令和元年6月18日以降も、必要な対応を検討しないまま、本件システムに依存して本件国内書面提出期限を管理することとしたのみならず、同月20日、本件弁護士の担当案件の期限管理リストに本件国内書面提出期限が記載されなかったことをもって、カナダ国への国内移行手続のみを実行し、日本への国内移行手続を失念した のであるから、出願人として、本件国際特許出願に要求される相当の注意を尽くしていたとはいい難い。 よって、本件国内書面提出期限内に本件明細書等翻訳文又は特許法184 移行手続を失念した のであるから、出願人として、本件国際特許出願に要求される相当の注意を尽くしていたとはいい難い。 よって、本件国内書面提出期限内に本件明細書等翻訳文又は特許法184条の5第1項に規定する国内書面を提出しなかったことに、「正当な理由」があるとは認められず、本件の事実経過に鑑みれば、「正当な理由」があっ たとすべき特段の事情があるとも認められない。 ⑶ 原告の主張についてア原告は、本件事務所においては、数多くの特許案件の出願及び中間処理を代理しているのであり、各担当弁護士及びその補助者が各案件の期限を記憶するのは効率的でないばかりでなく、不合理であるから、本件システムを採用しているのであり、同システムを採用していることで、相当の注 意は尽くされていると主張するものと解される。 しかし、本件弁護士とBは、令和元年6月18日、本件国内書面提出期限が間近に迫っているにもかかわらず小切手の現金化がされていないという通常とは異なる事態に直面していたといえ、原告の権利喪失という重大な結果を生じさせないためにも、本件国内書面提出期限を確実に遵守する ことができるよう、特段の注意を払う必要があったといえる。そして、そのような状況下において、前記1の認定事実⑷のとおり、本件弁護士とBは、同日、次の期限管理リストによる本件国内書面提出期限の掲載がカナダ国の場合と異なり本件国内書面提出期限の当日である同月21日のみにされる旨が記載された期限管理リストを受領していたものである。 このような通常とは異なる特殊な状況下においては、本件弁護士が原告の主張するとおり多数の案件を抱えていたといった事情を考慮しても、本件システムを採用し、これに則って事務を遂行することのみをもって、出 のような通常とは異なる特殊な状況下においては、本件弁護士が原告の主張するとおり多数の案件を抱えていたといった事情を考慮しても、本件システムを採用し、これに則って事務を遂行することのみをもって、出願人として、相当な注意が尽くされているということはできないといわざるを得ない。 よって、原告の上記主張は採用することができない。 イまた、原告は、本件国内書面提出期限の徒過は、本件システムにおいて、国際特許出願の日本を含む外国への国内移行の場合には国内移行期限日の2日前及び前日には同期限が告知されなくなるという不具合が生じていたことによるものであった旨主張する。 しかし、本件において、日本を含む外国への国内移行手続が必要な場合、本件システム上、国内書面提出期限の2日前及び1日前に告知がされる機能がシステムの設計又は導入当初から備わっていることが予定されていたと認めるに足りる証拠は提出されていないから、国内移行期限日の2日前及び前日に期限管理リストによる本件国内書面提出期限の掲載及び本件国 内書面提出期限に係る担当案件期限確認リポートの配信をしないことが本件システムの不具合によるものであるとの事実を認めるに足りない。 よって、原告の上記主張は採用することができない。 3 本件各処分の違法性前記2の判断を前提とすると、本件処分①が適法であるといえ、本件国際特 許出願は特許法184条の4第3項により、取り下げられたものとみなされ、原告による出願審査請求手続の客体が存在しないことになるから、それを前提とする本件処分②も適法であるといえる。 4 結論以上の次第で、原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することと し、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 前提とする本件処分②も適法であるといえる。 主文 以上の次第で、原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 國分隆文 裁判官 間明宏充 裁判官 バヒスバラン薫

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