平成24(ワ)25843 著作権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成25年7月18日 東京地方裁判所
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判決文本文9,523 文字)

平成25年7月18日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成24年(ワ)第25843号著作権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成25年6月6日判決千葉県柏市<以下略>原告A 同訴訟代理人弁護士寒河江孝允千葉県四街道市<以下略>被告 B 東京都千代田区<以下略>被告有限会社シーエムシー・リサーチ 東京都千代田区<以下略>被告株式会社シーエムシー出版 主文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告らは,原告に対し,連帯して84万円及びこれに対する平成24年10月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告Bは,原告に対し,100万円及びこれに対する平成24年10月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告有限会社シーエムシー・リサーチ(以下「被告リサーチ」という。)は,原告に対し,100万円及びこれに対する平成24年10月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告株式会社シーエムシー出版(以下「被告出版」という。)は,原告に対 し,50万円及びこれに対する平成24年10月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被告らは,別紙書籍目録2の書籍(以下「被告書籍」という。)を,複製,譲渡あるいは公衆送信してはならない。 6 被告らは,被告書籍を廃棄せよ。 7 被告らは,被告書籍を電子デ 金員を支払え。 5 被告らは,別紙書籍目録2の書籍(以下「被告書籍」という。)を,複製,譲渡あるいは公衆送信してはならない。 6 被告らは,被告書籍を廃棄せよ。 7 被告らは,被告書籍を電子データで記憶した,USBメモリ,CD-R,パソコン内ハードディスクを廃棄せよ。 8 被告らは,今後1年間,各自のホームページに,別紙告知文のとおり,告知文を掲載せよ。 第2 事案の概要本件は,原告が,被告らに対し,被告らが共謀して被告書籍を作成・販売し,インターネット上に掲載している行為が,別紙書籍目録記載1の書籍(以下「本件書籍」という。)に掲載された14個の表(別紙対照表の左側に記載されたもの(ただし,ピンク色及び緑色の着色はされていない。)。以下「本件書籍の各表」と総称する。)についての原告の著作権(複製権,譲渡権及び公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)を侵害していると主張して,①著作権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき,被告らに対し,84万円及びこれに対する不法行為の後である平成24年10月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を,②著作者人格権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき,被告Bに対し100万円,被告リサーチに対し100万円,被告出版に対し50万円及びこれらに対する平成24年10月18日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を,③著作権法112条1項に基づき,被告らに対し,被告書籍の複製,譲渡あるいは公衆送信の差止めを,④同条2項に基づき,被告らに対し,被告書籍の廃棄及びその電子データを記憶した媒体の廃棄を,⑤同法115条に基づき,被告らに対し,別紙告知文のとおりの告知文の掲載を求めた事 案である。 1 前提事実(当事者間に争いのな し,被告書籍の廃棄及びその電子データを記憶した媒体の廃棄を,⑤同法115条に基づき,被告らに対し,別紙告知文のとおりの告知文の掲載を求めた事 案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者ア原告原告は,昭和53年以来,自動車用プラスチックの研究開発,企画,市場開発,営業及びコンサルティングを業として行ってきた者であり,本件書籍の著者である。 イ被告ら(ア) 被告Bは,被告書籍の著者の一人である。 (イ) 被告リサーチは,国内外のエレクトロニクス,バイオインダストリー,化学工業,新素材等に関する調査等を目的とする特例有限会社であり,被告書籍の発行元である。 (ウ) 被告出版は,国内・国外の産業に関する情報の収集,出版並びに販売等を目的とする株式会社であり,被告書籍の発売元である。 (2) 本件書籍の記載内容本件書籍(甲1)は,原告を著者とし,株式会社工業調査会によって平成22年3月25日付けで発行された。 本件書籍は,自動車用プラスチック部品の同書籍発行当時までの状況を検証し,近未来への展望を考察することを目的としたもので,①自動車用プラスチックの20世紀後半から21世紀初頭までの発展の経緯を統計データをもとに振り返り,近未来(平成23年から32年まで)の自動車に求められる主要ニーズに対してプラスチックがどのように寄与することが期待されているかについて考察し,さらに,プラスチックの最大の特長である軽量性が「枯渇資源の保護(延命化)」と「地球温暖化防止」に寄与しうることを記述した「第Ⅰ編総論-成長を続ける自動車用プラスチック-」,②日本車 を中心としたプラスチック製自動車部品の採用動向と近未来における展望を考察した 」と「地球温暖化防止」に寄与しうることを記述した「第Ⅰ編総論-成長を続ける自動車用プラスチック-」,②日本車 を中心としたプラスチック製自動車部品の採用動向と近未来における展望を考察した「第Ⅱ編プラスチック製自動車部品」,③自動車用プラスチックが「人と環境への優しさ」に対して貢献するためにはどうあるべきかについて考察した「第Ⅲ編環境-人と環境への優しさ-」という3編から成る約420頁の書籍である。 本件書籍には,別紙対照表の左上部分に記載した頁に,本件書籍の各表が掲載されている。 (3) 被告書籍の記載内容被告書籍(甲2)は,被告リサーチによって平成23年5月30日付けで発行され,被告出版によって発売された。 被告書籍は,自動車産業全体を対象に,グローバル規模での自動車メーカーの生産動向及び生産拠点並びに主要部品メーカーの動向及び生産拠点を網羅し,主要部品のサプライチェーンに迫りながらプラスチック部品の開発・需要動向の分析を目的とし,①世界の主要自動車メーカー32社,プラスチック部品メーカー70社の生産拠点を網羅,②採用プラスチック材料の車種区分別に部位別に解析し,プラスチック需要量を試算,③次世代自動車の普及による部品構成の変化からプラスチック材料に及ぼす影響を分析,④各部品別プラスチック材料と生産時の樹脂投入量を解析,樹脂別の需要予測,⑤部品のモジュール化における企業動向,部品・材料・開発動向及びモジュール化のメリット,デメリットを詳述,プラスチック部品の成型技術の最近の進歩と技術動向を詳述したもので,「Ⅰ 総括」,「Ⅱ自動車産業」,「Ⅲ 自動車部品産業」,「Ⅳ プラスチック部品・モジュール」,「Ⅴ プラスチック関連技術」,「Ⅵ 環境規制」,「Ⅶ プラスチックデータ」の七つの章から成る約330頁の書籍である 「Ⅱ自動車産業」,「Ⅲ 自動車部品産業」,「Ⅳ プラスチック部品・モジュール」,「Ⅴ プラスチック関連技術」,「Ⅵ 環境規制」,「Ⅶ プラスチックデータ」の七つの章から成る約330頁の書籍である。 被告書籍には,別紙対照表の右側に記載のとおり(ただし,ピンク色及び緑色の着色はされていない。),総計29個の表(以下,これらの表を「被告 書籍の各表」と総称する。)が掲載されている。 被告リサーチ及び被告出版は,そのウェブサイトに被告書籍の記載内容を掲載している。 2 争点(1) 本件書籍の各表の著作物性の有無(2) 本件書籍の各表に関する著作権及び著作者人格権の侵害の有無(3) 故意・過失及び共謀の有無(4) 損害(5) 差止め及び廃棄請求の可否(6) 名誉回復措置請求の可否 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(本件書籍の各表の著作物性の有無)について(原告の主張)本件書籍の表現上の創作性は,本件書籍の各表に,本件書籍を出版した当時の最新かつ正確なデータ(情報)を取り入れた点にあり,このような本件書籍の各表の創作性によってその著作物性が基礎付けられる。 本件書籍の各表は,要するに,表としての表現が,部品について最適の選択と配列を行い,採用されたプラスチックについて原告の実務経験に基づく情報を掲載しているため,他の資料にはない正確かつ詳細な最新情報を記述し,読者に今後の技術開発・市場開発の将来展望を与えるものとして,原告の個性と独創性が発揮されており,創作性が表現されたものである。 なお,本件書籍の各表は,本件書籍の表3.1を除き,原告と他の執筆者による共同著作物である。 (被告Bの主張)本件書籍の各表は,自動車部品の材料としてプラスチックが使用されている部品について,部位別,部品 籍の各表は,本件書籍の表3.1を除き,原告と他の執筆者による共同著作物である。 (被告Bの主張)本件書籍の各表は,自動車部品の材料としてプラスチックが使用されている部品について,部位別,部品別に配列しているにすぎず,まったく常識的 なものであり,既に多くの書面において取られている手法である。また,上記部品をどのように並べるかは,この業界に関わりのある者であれば,容易に想到し得るものである。 また,本件書籍の各表の多くは,上記のような手法により作成された表を載せた,多数の著者による多数の著作物が掲載された「AutomotiveMaterials」誌の表を引用したものである。確かに,原告はその著者の一人ではあるが,同誌記載の表が原告一人により創作されたものでないことは明白である。 (被告リサーチの主張)本件書籍の各表は,自動車の一般的な「部品名」,「使用材料」など公知の事実を記載したものである。これらは自動車メーカー,自動車部品メーカー,材料メーカー等のカタログ,技術資料,各社ホームページ等に公表されている。したがって,業界で関連業務に携わる者ならば容易に知り得る情報である。 また,本件書籍の各表は,公知の自動車部品と採用樹脂の関係を示したものである。これらの関係を整理した表は数多く,本件書籍の各表にも他者が作成した表が含まれている。したがって,本件書籍の各表は原告だけによって作成されたものではなく,創作性はない。原告は,本件書籍の各表は,本件書籍の表3.1を除き,原告と他の執筆者による共同著作物である旨を主張しているが,かかる主張を裏付ける証拠はない。 (被告出版の主張)争う。 (2) 争点(2)(本件書籍の各表に関する著作権及び著作者人格権の侵害の有無)について(原告の主張)ア著作権の侵害につい かかる主張を裏付ける証拠はない。 (被告出版の主張)争う。 (2) 争点(2)(本件書籍の各表に関する著作権及び著作者人格権の侵害の有無)について(原告の主張)ア著作権の侵害について 別紙対照表において,被告書籍の各表(対照表の右側に記載された各表)のピンク色の枠線で囲われた部分は,本件書籍の表現上の本質的な特徴(対照表の左側に記載された本件書籍の各表のピンク色の枠線で囲われた部分)を再製したものである。他方,被告書籍の各表は,緑色の枠線で囲われた部分を,その左側に記載された本件書籍の各表のピンク色の枠線で囲われた部分に付加し,また,緑色の枠線で囲い,かつバツ印を付した部分を修正増減しているところ,これらの付加,修正増減には創作性が認められない。したがって,被告書籍は本件書籍の複製物に当たる。 被告Bは,被告書籍の各表部分を作成し,被告リサーチは被告書籍を印刷し,被告出版は同書籍を出版した。これらの行為は本件書籍に係る原告の複製権(著作権法21条)及び譲渡権(同法26条の2)の侵害に当たる。また,被告らは,平成24年5月初旬頃から,被告書籍の内容を各自のウェブサイト上に掲載しており,かかる行為は原告の公衆送信権(同法23条)を侵害する。 イ著作者人格権の侵害について上記アで述べたとおり,被告書籍の各表は本件書籍の各表に付加,修正増減を施したものであるところ,被告書籍は,原告の意に反して本件書籍を改変したものであり,かかる行為は,本件書籍に係る原告の同一性保持権(同法20条)の侵害に当たる。 また,被告書籍中の各表は,本件書籍中の各表に依拠して作成されたものであるにもかかわらず,原告が著者である本件書籍から引用した旨の記載が全くない。このように,被告らが,被告書籍においてその引用元である原告の氏名を の各表は,本件書籍中の各表に依拠して作成されたものであるにもかかわらず,原告が著者である本件書籍から引用した旨の記載が全くない。このように,被告らが,被告書籍においてその引用元である原告の氏名を表示しないことは,本件書籍に係る原告の氏名表示権(同法19条)を侵害する行為に当たる。 (被告Bの主張)いずれも争う。本件書籍の表3.2については,被告書籍の表4-6と構 成が全く異なる。 (被告リサーチの主張)いずれも争う。本件書籍の表3.2については,被告書籍の表4-6及び同4-22(4)と目的,構成,内容が全く異なる。 (被告出版の主張)いずれも争う。 (3) 争点(3)(故意・過失及び共謀の有無)について(原告の主張)原告は,平成22年12月16日,自動車部品会館において開催されたカワサキテクノリサーチ主催の講演会において,本件書籍に基づく講演を行い,その際,本件書籍が「出版社の倒産により絶版となった。」旨を話した。同講演会に列席していた被告リサーチの代表者であるCは,同月中旬ころ,被告Bに対し,本件書籍について,「出版社が倒産して存在しなくなり,絶版になった。」旨を申し向け,「この中の表は価値が高いので,これを参考にしてこれ以上の表を作成して欲しい。」との依頼をし,被告Bは,同依頼に応じ,本件書籍に依拠して,被告書籍を執筆した。また,Cは,同月下旬ころ,被告出版の代表者であるDに対し,本件書籍について,「出版社が倒産して存在しなくなり,絶版になった。」旨を申し向け,被告書籍を発売するよう依頼し,被告出版は,同依頼に応じ,平成23年5月20日,被告リサーチが発行(印刷)した被告書籍を発売した。 以上のとおり,被告らには,原告の著作権及び著作者人格権の侵害につき故意又は過失があり,これら原告の著作権及び著作 に応じ,平成23年5月20日,被告リサーチが発行(印刷)した被告書籍を発売した。 以上のとおり,被告らには,原告の著作権及び著作者人格権の侵害につき故意又は過失があり,これら原告の著作権及び著作者人格権の侵害につき,被告らには共謀があった。 (被告Bの主張)被告Bは,安田ポリマーリサーチ研究所の一員として,被告書籍の執筆の一部を分担したのみであり,Cから依頼を受けた事実はない。また,被告Bは, 被告出版とは,被告書籍が出版される以前に面接したことはない。 (被告リサーチの主張)Cは,原告が行った平成22年12月16日の講演に先立つ同年11月に,安田ポリマーリサーチ研究所の所長であるEと共に,被告書籍の企画を開始していた。Cは,Eに対し,被告書籍の執筆を依頼し,安田ポリマーリサーチ研究所の副所長であった被告Bは,Eの依頼を受けて,被告書籍の第4章の主要部分を執筆したにすぎず,Cから依頼を受けたものではない。また,Cが,平成22年12月下旬ころ,Dに対し,被告書籍の発売を依頼し,Dがこれに応じた事実はない。 (被告出版の主張)被告出版は,被告書籍の企画,編集,執筆などには一切関わらず,販売のみ行っている。Cが,平成22年12月下旬ころ,Dに対し,被告書籍の発売を依頼し,Dがこれに応じた事実はない。 (4) 争点(4)(損害)について(原告の主張)ア著作権の侵害による損害被告書籍は,1冊当たり定価14万円(税抜き)であり,被告らは,平成23年5月30日から平成24年9月10日までの間,少なくとも60部を作成,販売して,840万円(14万円×60部)を売り上げた。 したがって,原告は,著作権法114条3項により,少なくとも上記金額の1割に当たる84万円を自己が受けた損害の額として,被告らに対し,連帯して賠 して,840万円(14万円×60部)を売り上げた。 したがって,原告は,著作権法114条3項により,少なくとも上記金額の1割に当たる84万円を自己が受けた損害の額として,被告らに対し,連帯して賠償するよう請求することができる。 イ著作者人格権の侵害による損害被告らによる著作者人格権の侵害行為によって,原告は多大な損害(民法710条)を被った。その損害は,被告Bによる損害として100万円,被告リサーチによる損害として100万円,被告出版による損害として5 0万円をそれぞれ下らない。 (被告らの主張)いずれも争う。 (5) 争点(5)(差止め及び廃棄請求の可否)について(原告の主張)被告らは,本件書籍に係る原告の著作権及び著作者人格権を侵害するものであるから,原告は,被告らに対し,著作権法112条に基づき,それら侵害の停止等を請求することができる。 (被告B及び被告出版の主張)いずれも争う。 (被告リサーチの主張)いずれも争う。被告書籍は,既に商品として販売されていない。 (6) 争点(6)(名誉回復措置請求の可否)について(原告の主張)被告らは,故意又は過失によって,本件書籍に係る原告の著作者人格権を侵害したのであり,それにより原告の人格的価値が低下させられたのであるから,原告の名誉若しくは声望を回復するため,著作権法115条に基づき,別紙告知文記載のとおりの告知文の掲載をする必要がある。被告リサーチ及び被告出版は,「引用文献に関する訂正のお知らせ」を平成24年5月中旬に発送した旨を主張するが,そうであるとしても,被告著作物を販売開始した平成23年5月30日から上記発送がされるまでの1年間における著作権侵害につき,告知文の掲載が認められる必要がある。 (被告Bの主張)争う。 (被告リサー るとしても,被告著作物を販売開始した平成23年5月30日から上記発送がされるまでの1年間における著作権侵害につき,告知文の掲載が認められる必要がある。 (被告Bの主張)争う。 (被告リサーチの主張)争う。本件書籍の各表の著作権者が原告であるとする告知文の内容は虚偽 である。また,被告らは,被告書籍の購入者に対し,平成24年5月14日付けで「引用文献に関する訂正のお知らせ」を送付している。 (被告出版の主張)争う。被告出版は,平成24年5月中旬に被告書籍の販売先に対して「引用文献に関する訂正のお知らせ」を発送した。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)について(1) 著作権法の保護の対象となる著作物は,「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)をいうのであって,表現の内容とされた思想,感情若しくはアイデアなどそれ自体又は表現ではあっても表現上の創作性がないものについては,著作権法による保護は及ばない。そして,表現上の創作性があるというためには,作成者の独創性が現れていることを要するものではないが,作成者の何らかの個性が表現として現れていることを要するものであって,表現が平凡かつありふれたものである場合は,これに当たらないというべきである。 (2) これを本件についてみると,原告は,本件書籍の著作物性は本件書籍の各表が創作性を有することに基礎付けられている旨主張し,その創作性の具体的な内容として,本件書籍の各表が,自動車に用いられるプラスチック部品につき最適の選択と配列を行い,その採用プラスチックについて原告の実務経験に基づく情報を掲載しているため,他の資料にはない正確かつ詳細な最新情報が記述され,読者に今後の技術開発・市場開発の将来展望を与えるものとして,原告の個性と独創性が発揮されてい ついて原告の実務経験に基づく情報を掲載しているため,他の資料にはない正確かつ詳細な最新情報が記述され,読者に今後の技術開発・市場開発の将来展望を与えるものとして,原告の個性と独創性が発揮されていることを挙げている。 しかしながら,原告の上記主張は,本件書籍の各表を作成するに当たってのアイデアの独創性や,本件各表に記載されている情報そのものの価値を主張するものにすぎず,これらは著作権法による保護の対象となるものではない。したがって,原告の上記主張はそれ自体失当というほかない。 さらに,本件書籍の各表の記載内容は別紙対照表のとおりであって,例えば,その1番目に記載の表には,「表1.3 バンパーモジュールのプラスチック採用例」との表題の下,モジュールの分類として「バンパーモジュール」が記載され,その「構成部品」(バンパー,フェーシア等)ごとに,これに使用されている「プラスチック」の種類及びその成形法が列挙されている。そして,証拠(甲1,乙1,4,10の1~3・5・7・8・10~12)及び弁論の全趣旨によれば,同表は,本件書籍の執筆段階において自動車に用いられていたプラスチックの種類,採用部位,成形法等を当該分類項目に従って整理したものであること,このような事項を整理した表は本件書籍の発行以前にも多数みられたことが認められ,この点は本件書籍の各表のうち他のものについても同様ということができる。そうすると,本件書籍の各表は,自動車に採用されているプラスチックに関する事実をごく一般的な表の形式に整理したものにすぎないから,その表現自体は平凡かつありふれたものというべきであって,これに著作物性を認めることはできないと判断するのが相当である。 2 小括以上によれば,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由が つありふれたものというべきであって,これに著作物性を認めることはできないと判断するのが相当である。 2 小括以上によれば,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がない。 第4 結論よって,原告の請求をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官長谷川浩二 裁判官高橋彩 裁判官植田裕紀久 (別紙)書籍目録 1 書籍名 「プラスチック自動車部品 PlasticAutomotiveParts ケーススタディから読み解く現状と近未来」発行所株式会社工業調査会発行日 2010年3月25日著者 A 2 書籍名 「自動車用プラスチック部品のメーカー分析と需要予測AnalysisonTheMfrs. & DemandforAutomotivePlasticParts 世界の完成車・部品メーカー分析/HEV・EV 時代のプラスチック需要予測」発行者 C発行所有限会社シーエムシー・リサーチ発行日 2011年5月30日発売元株式会社シーエムシー出版 (別紙)※告知文及び対照表は省略

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