1 主 文1 本件控訴を棄却する。 2本件附帯控訴に基づき原判決を次のとおり変更する。 控訴人は、被控訴人に対し、50万円及びこれに対する平成30年1月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被控訴人のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は、第1、2審を通じて、控訴人の控訴費用を除いた2分の1を被控訴人の負担とし、その余を控訴人の負担とする。 事実及び理由第1 当事者の求めた裁判1 控訴の趣旨 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 前項の取消しに係る被控訴人の請求を棄却する。 2 附帯控訴の趣旨 原判決を次のとおり変更する。 控訴人は、被控訴人に対し、100万円及びこれに対する平成30年1月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要(なお、略語は原判決の例による。以下同じ。)1被控訴人(一審原告)は、平成26年4月10日、岐阜県公安委員会の認定を受けた警備会社(本件会社)との間で雇用契約(本件雇用契約)を締結し、工事現場や駐車場等での交通誘導警備業務に従事していたところ、平成28年11月9日、保佐開始の審判の申立てをし、同29年2月23日、被控訴人に対して保佐開始及び保佐人選任の審判がされ、同年3月16日に確定した。本件雇用契約は、警備業法の規定を受けて、警備員としての欠格事由の発生を解除条件としており、上記審判の確定により上記解除条件が成就したことから、本件会社は、同月20日、被控訴人に対して本件雇用契約の2 終了を伝え、被控訴人は本件会社を退職した(本件退職時点)。 警備業法は、昭和47年7月 により上記解除条件が成就したことから、本件会社は、同月20日、被控訴人に対して本件雇用契約の2 終了を伝え、被控訴人は本件会社を退職した(本件退職時点)。 警備業法は、昭和47年7月5日に制定され、同57年の改正で、警備業者及び警備員の欠格事由として成年被後見人、被保佐人(当時は「禁治産者」、「準禁治産者」)を規定したが(14条、3条1号。本件規定)、成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律(令和元年法律第37号。令和元年12月14日施行。一括整備法)により、本件規定は削除された。 被控訴人は、控訴人(一審被告)が本件規定を設けたことは憲法13条(個人の尊重、幸福追求権、公共の福祉)、14条1項(法の下の平等)、22条1項(職業選択の自由)及び27条1項(勤労の権利)に違反し、本件退職時点までに本件規定を改廃せずに存置し続けたことは国家賠償法(国賠法)1条1項の「違法行為」に当たり、本件規定により本件会社を退職せざるを得なくなり精神的苦痛を被ったなどと主張して、控訴人に対し、国賠法1条1項に基づき慰謝料100万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成30年1月25日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下、特記しない限り同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 これに対し、控訴人は、被控訴人の主張を争うとともに、本件退職時点で被控訴人は警備業法14条1項、3条7号、警備業の要件に関する規則(昭和58年国家公安委員会規則第1号)3条1項の欠格事由(以下、欠格事由について、警備業法3条1号又は7号のみを表示する場合がある。)に該当する状態であったから、本件規定の存在及び本件規定を廃止しなかったことと被控訴人の退 則第1号)3条1項の欠格事由(以下、欠格事由について、警備業法3条1号又は7号のみを表示する場合がある。)に該当する状態であったから、本件規定の存在及び本件規定を廃止しなかったことと被控訴人の退職との間に因果関係はないなどと主張した。 原審は、本件退職時点で被控訴人について警備業法3条7号に該当する事由はなく、本件規定の存在あるいは本件規定を改廃しなかったことと被控訴人の退職との間には因果関係があるとした上、本件規定は憲法22条1項及3 び14条1項に違反し、本件規定の違憲性が国会にとっても明白となった平成22年7月頃から本件退職時点(同29年3月20日)までの約6年8か月の間に、国会が本件規定を改廃しなかったことは、国賠法1条1項の適用上違法と評価され、これにより被控訴人は本件会社を退職することになり、精神的苦痛を被ったとして、国賠法1条1項に基づき、控訴人に対して慰謝料10万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で被控訴人の請求を認容し、その余の請求を棄却した。 そこで、控訴人は、敗訴部分を不服として控訴し、被控訴人も、敗訴部分を不服として附帯控訴した。 2 前提事実、関係法令等、争点及びこれに関する当事者の主張次項及び次々項で当審における当事者の主張を付加するほか、原判決「事実及び理由」中の「第2」の「2」から「4」までに記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、原判決4頁13行目の「という。」の後に「なお、標題が『警備業者の欠格事由』から『警備業の要件』に改められたが、その実質に変更はない。」を、7頁4行目の「3条7号」の前に「警備業法」を、14行目の「平成29年3月20日時点」の後に「(本件退職時点)」をそれぞれ加え、11頁11行目の「業法による」を「警備業法による」と改め はない。」を、7頁4行目の「3条7号」の前に「警備業法」を、14行目の「平成29年3月20日時点」の後に「(本件退職時点)」をそれぞれ加え、11頁11行目の「業法による」を「警備業法による」と改める。 3 当審における控訴人の主張 本件規定と憲法22条1項(職業選択の自由)についてア 職業は、本質的に社会的な、しかも主として経済的な活動であって、その性質上、社会的相互関連性が大きいものであるから、職業選択の自由(職業の自由)は、それ以外の憲法の保障する自由、殊にいわゆる精神的自由に比較して、公権力による規制の要求が強く、憲法22条1項が「公共の福祉に反しない限り」と留保の下に職業選択の自由を認めているのもこのことを示している。そして、職業の自由に対する規制措置は、それぞれの事情に応じて各種各様の形をとることとなるため、その規制措置が憲法24 2条1項にいう公共の福祉のために要求されるものとして是認されるかどうかは、これを一律に論ずることができず、具体的な規制措置について規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、制限の内容及び程度を検討し、これを比較考量した上で慎重に決定されなければならない。このような検討と考量をするのは、第一次的に立法府の権限と責務であり、裁判所としては、規制の目的が公共の福祉に合致するものと認められる以上、そのための規制措置の具体的内容及びその必要性と合理性については、立法府の判断がその合理的裁量の範囲にとどまる限り、立法政策上の問題としてその判断を尊重すべきものである。 イ 本件規定の目的は、あらかじめ警備業務の適正な実施を期待することができない類型の者を警備業務から排除し、警備業務の実施における適正の確保、すなわち、警備業務の依頼者及び第三者の生命、身 イ 本件規定の目的は、あらかじめ警備業務の適正な実施を期待することができない類型の者を警備業務から排除し、警備業務の実施における適正の確保、すなわち、警備業務の依頼者及び第三者の生命、身体、財産等に対する事故、危害が確実に警戒、防止されるよう、警備業務の適切かつ効果的な実施を図るとともに、このような消極的目的にとどまらず、警備業務及び警備員に対する国民の信頼を確保し、警備業の社会的に健全な発展を図ることにある。そして、本件規定による規制措置の具体的内容は、上記各目的を達成するため、警備業務に必要な認知、判断等に関する能力を類型的に欠いていると判断される被保佐人を、警備員の欠格事由と定めて警備員から排除するというもので、専らその対象者には何ら関係のない外部の客観的事情を基準とする制限ではなく、あくまでも本人の職業遂行能力に関係する被保佐人という属性に着目したもので、本人に一定の資質や能力を要求する主観的事情を基準とする制限である。 また、警備業務の適切、効果的な実施を図るための具体的な方策、更には警備業の社会的に健全な発展を図るという政策的な判断をするためには、警備業の実態及びそれを取り巻く社会的な状況等を把握、分析した上で、専門的知見等に基づき、更に本件規定との関係では国民全体の警備業5 務に対する信頼の状況を踏まえつつ、制限行為能力者に対する理解、受容の意識のかん養を図りながら、いかなる施策を想定し、選択するのが相当かといった政策的な観点を含む総合考慮を行う必要があり、このことは立法府の判断を強く尊重すべき事情といえる。 このように、本件規定は、その制約が職業選択の自由そのものの制約であって、職業遂行の自由と比較して強い制約であることを踏まえても、立法府の判断を尊重すべき必要性が高い事柄であるから、本件規定の合 このように、本件規定は、その制約が職業選択の自由そのものの制約であって、職業遂行の自由と比較して強い制約であることを踏まえても、立法府の判断を尊重すべき必要性が高い事柄であるから、本件規定の合憲性判断は、いわゆる合理性の基準に基づいて行うことが適切であり、規制目的が合理性を欠き、又は同目的を達成するための規制手段が必要性、合理性を欠くことにより、立法府に与えられた合理的裁量の範囲を超えるものと認められない限り、憲法違反とはならないというべきである。 したがって、原審の判断、すなわち、本件規定を設けた立法府の判断が、その合理的な裁量の範囲内にとどまるというためには、それが重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であって、より緩やかな規制によっては上記の目的を十分に達成することができないと認められることを要するとの判断は誤りというべきである。 ウ前記イのとおり、本件規定の目的は、あらかじめ警備業務の適正な実施を期待することができない類型の者を警備業務から排除し、警備業務の実施における適正の確保、すなわち、警備業務の依頼者及び第三者の生命、身体、財産等に対する事故、危害が確実に警戒、防止されるよう、警備業務の適切かつ効果的な実施を図るとともに、このような消極的目的にとどまらず、警備業務及び警備員に対する国民の信頼を確保し、警備業の社会的に健全な発展を図ることにあるから、立法目的は合理的である。 また、警備業務は、他人の生命・身体の安全や財産の管理について、依頼を受けて依頼者のために又は依頼者に代わって、事故や危害の発生6 を警戒し、防止する業務であるところ、その業務の性質上、警備員には高い人的信頼が求められるほか、警備業務を実施する中で、警備業務対象施設や依頼者及び第三者の状況を十分認識することや の発生6 を警戒し、防止する業務であるところ、その業務の性質上、警備員には高い人的信頼が求められるほか、警備業務を実施する中で、警備業務対象施設や依頼者及び第三者の状況を十分認識することや、適時適切な判断力、責任感等が求められるほか、警備の性質上他人の権利や自由を侵害するおそれのある場面等に遭遇し、そのような場面において、突発的に生じる種々の事態に臨機応変に対応できるだけの高い認知、判断等に関する能力が必要とされ、そのような能力としては、少なくとも他人の助けを必要としない健常者と同程度であることが求められるというべきで、このような能力を期待することができない者が警備業務を遂行することは相当ではないとして欠格事由を定めることは、公共の福祉にかなうものである。 そして、禁治産制度及び成年後見制度における家庭裁判所の判断は、必ず医学上の見解を基礎としているのに対し、警備業者が独自に行う警備員として必要な能力の有無及び程度の判断は、その精度に差異があり、警備業者による個別的審査によっては、警備員として必要な認知、判断及び意思疎通の各能力を備えているかについて適切な判断がされない事態が生じることを否定できない。そのため、家庭裁判所が判断する禁治産制度及び成年後見制度を借用して、警備員として必要な認知、判断等の各能力を欠く者が警備業務に従事することを予防することには合理性があるといえる。 したがって、本件規定はその目的を達成する手段としても合理的であるといえる。 昭和57年改正で本件規定が設けられた後、平成11年整備法による平成11年改正及び警備業法についての平成14年改正がされているが、平成11年改正は、禁治産者、準禁治産者であることを欠格事由等と規定している法令について、ノーマライゼーションの理念等の 備法による平成11年改正及び警備業法についての平成14年改正がされているが、平成11年改正は、禁治産者、準禁治産者であることを欠格事由等と規定している法令について、ノーマライゼーションの理念等の観点から欠7 格事由を削除したもので、成年被後見人及び被保佐人につき欠格条項を設けることが許されず、違憲であることを前提とするものではないから、警備員について本件規定を設ける必要については何ら変化はなく、本件規定の目的は相変わらず合理的であり、これにより手段の合理性が否定されることにもならない。 また、平成14年改正は、それまで精神病者が警備員の欠格事由とされ、一律に排除されていたのを、精神医学が発達し、その治療技術や医薬品等について進展が見られたことで、精神病者であるからといって直ちに健常者と同程度の認知、判断等に関する能力を有することを期待できないとは必ずしもいえなくなったことを考慮して、絶対的欠格条項とされていたものを、相対的欠格条項として実質的判断をすることにしたものであり、これに対して、被保佐人は、家庭裁判所の審判を経ているもので、類型的に考えて警備業務を実施するのにふさわしい認知、判断等に関する能力を有しておらず、適正な警備業務の実施を期待できないことに変わりがなかったから、平成14年改正によっても本件規定の目的及び手段の合理性が否定されたわけではない。 その後、一括整備法により本件規定は削除されたが、それは、ノーマライゼーション、自己決定権の尊重といった成年後見制度の理念を踏まえ、同制度の利用を促進するという基本理念によるもので、このような政策的判断を優先させたものにすぎず、一括整備法によって、本件規定の目的及び手段の合理性が否定されたわけではない。 したがって、本件規定が設けられた後、一括整備法によっ ので、このような政策的判断を優先させたものにすぎず、一括整備法によって、本件規定の目的及び手段の合理性が否定されたわけではない。 したがって、本件規定が設けられた後、一括整備法によってそれが削除されても、それまでの間も、その後も、本件規定の目的及び手段の合理性に対する評価に変わりはなく、いずれも合理的なものである。 以上のとおり、本件規定は、目的及び手段ともに合理的であり、憲法22条1項に違反するものではない。 8 本件規定と憲法14条1項(法の下の平等)について職業選択の自由に関する事項の立法行為又は立法不作為が憲法14条1項に違反するかどうかは、憲法22条1項の解釈と整合的に判断する必要があり、前記のとおり、本件規定の目的及び手段はいずれも合理的であり、憲法22条1項に適合するから、本件規定による取扱いは憲法14条1項に違反しない。 国会が本件規定を改廃しなかった立法不作為についてア 前記及びのとおり、本件規定は憲法22条1項及び14条1項に適合しているから、本件規定が憲法に違反することが明白であるという事態はおよそ生じ得ない。 イ 原審は、平成22年7月頃には本件規定が被保佐人の職業選択の自由を合理的な理由なく制約していることが、国会にとっても明白であったとしているが、成年後見制度研究会が研究報告を発表した平成22年7月以降のいずれの時点においても、本件規定が憲法に違反することが明白であったとはいえない。すなわち、成年後見制度研究会は、当時の成年後見制度の実情及び課題の把握、運営の改善に向けた対応策の検討を目的としていたが、その研究の成果を直ちに法制度の見直しに結びつけることまでを目的としていたわけではないし、研究報告の内容も、成年後見制度全般の、主に運用面におけ 、運営の改善に向けた対応策の検討を目的としていたが、その研究の成果を直ちに法制度の見直しに結びつけることまでを目的としていたわけではないし、研究報告の内容も、成年後見制度全般の、主に運用面における現状の分析と課題を検討した研究成果であり、欠格条項に関する記載はごく一部にみられるのみである。 ウ 以上によれば、昭和57年改正で本件規定が設けられた後、一括整備法により本件規定が削除されるまでのいかなる時点においても、本件規定が憲法に違反することが国会にとって明白であったとはいえない。 本件規定の存在と本件雇用契約の終了との間の因果関係についてア 本件雇用契約の終了による損害と、本件規定を制定し又は改廃しなかった国会の立法行為又は立法不作為との間に因果関係が認められるために9 は、被控訴人自身が本件退職時点において警備業法3条7号、国家公安委員会規則3条1項に該当していなかったことを立証する必要があるところ、この点についての立証はされていない。 イ 原審は、警備業法3条7号及び警備業の要件に関する規則3条1項にいう「警備業務」を警備業法2条1項に定めるあらゆる警備業務をいうものでなく、当該警備員が従事する予定の警備業務をいうとした上で、被控訴人は、これまで警備業務に問題があると指摘されたことはないから、警備業法3条7号、国家公安委員会規則3条1項に該当しないとしているが、警備業法の用語や規定の仕方からすれば、警備業法3条7号及び警備業の要件に関する規則3条1項にいう「警備業務」とは警備業法2条1項各号の全てを指すと解されるし、被控訴人の精神科受診歴や保佐開始の審判に至る経過からすれば、被控訴人は、本件退職時点で警備業法3条7号、国家公安委員会規則3条1項の欠格事由に該当していたとみるのが自然である。 ⑸ 解されるし、被控訴人の精神科受診歴や保佐開始の審判に至る経過からすれば、被控訴人は、本件退職時点で警備業法3条7号、国家公安委員会規則3条1項の欠格事由に該当していたとみるのが自然である。 ⑸ 以上のとおり、本件規定は憲法に違反するものではないし、仮に本件規定が違憲であったとしても、国会が本件規定を改廃しなかった立法不作為は国賠法上違法ではないし、仮に国会の立法不作為が違法であったとしても、本件規定の存在と本件雇用契約の終了との間に因果関係はないから、被控訴人の請求は棄却されるべきである。 4 被控訴人の主張前記3の控訴人の主張は、いずれも争う。 被控訴人にとって警備員の仕事は、単に生活の糧を得るための労働ではなく、生まれながらの障害を抱えながらもその能力を発揮して自立した生活を目指すとともに、社会の構成員の一員として、他者との関わりの中で世の中に貢献していく自己実現の場としての価値も兼ねるものであった。被控訴人は、本件会社に勤務する以前に別の警備会社で約5年間、本件会社で約3年弱の間、警備10 員として交通誘導の警備業務に従事し、各現場で自身の能力を発揮し、求められる警備員としての業務を遂行し、その役割を果たしてきた。警備員としての業務経験を重ねていく中で、被控訴人は自身の能力を発揮できる仕事を得られたことを喜び、誇りをもって与えられた警備員としての業務に取り組んできた。 そのため、本件規定があったことで、本件雇用契約が終了し、警備員としての仕事を続けられなくなったことは、被控訴人にとって受け入れ難いことであり、これにより多大な精神的苦痛を被っている。このような立法府である国会の違法行為による被控訴人の精神的苦痛について、原審がわずか10万円と評価したことは、あまりに不当であるといわざるを得ない。 これにより多大な精神的苦痛を被っている。このような立法府である国会の違法行為による被控訴人の精神的苦痛について、原審がわずか10万円と評価したことは、あまりに不当であるといわざるを得ない。 したがって、上記の点も考慮した上、控訴人には、被控訴人に対して100万円の慰謝料を支払わせるのが相当である。 第3 当裁判所の判断1 当裁判所も、原審と同様、本件規定の存在あるいは本件規定を改廃しなかったことと被控訴人の退職との間には因果関係があり、本件規定は憲法22条1項及び14条1項に違反し、本件規定の違憲性が国会にとっても明白となった平成22年7月頃から本件退職時点までの約6年8か月の間に、国会が本件規定を改廃しなかったことは国賠法1条1項の適用上違法と評価でき、これにより被控訴人が精神的苦痛を被ったと認められるが、慰謝料の額については、原審と異なり、本件規定が職業選択の自由そのものを規制し制限するもので、被控訴人に対する保佐開始の審判が確定すると直ちに本件雇用契約が終了するに至っており、これによって被控訴人が受けた影響の大きさなどからすると、被控訴人が被った精神的苦痛を慰藉するには50万円が相当であると判断する。 その理由は、以下のとおり原判決を補正し、次項で当審における当事者の主張に対する判断を付加するほか、原判決「事実及び理由」中の「第3」に記載のとおりであるから、これを引用する。 (原判決の補正)11 ⑴ 原判決26頁17行目と18行目の間に次のとおり加える。 「ウ 前記アの民法の一部改正の前後を通じて、成年被後見人(禁治産者)の法律行為は、取り消すことができ、被保佐人(準禁治産者)が借財、保証、不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為等をするには、その保佐人の同意を得ることを要し、これを得な 禁治産者)の法律行為は、取り消すことができ、被保佐人(準禁治産者)が借財、保証、不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為等をするには、その保佐人の同意を得ることを要し、これを得ないでしたものは取り消すことができるなどとされていた(上記改正前後の民法12条)。また、上記改正後の被補助人(精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者)については、家庭裁判所は、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができ、これを得ないでしたものは取り消すことができるなどとされた(上記改正後の民法16条)。」⑵ 原判決28頁2行目の「(1条),」の後に次のとおり加える。 「同条約の原則は、『(a)固有の尊厳、個人の自律(自ら選択する自由を含む。)及び個人の自立の尊重、(b)無差別、(c)社会への完全かつ効果的な参加及び包容、(d)差異の尊重並びに人間の多様性の一部及び人類の一員としての障害者の受入れ、(e)機会の均等』等とされ(3条)、」⑶ 原判決28頁5行目から6行目の「等を求め(4条1項(b)),」を「、『公の当局及び機関がこの条約に従って行動することを確保すること』等を求め(4条1項(b)、(d))、障害者が他の者との平等を基礎として労働についての権利(障害者に対して解放され、障害者を包容し、及び障害者にとって利用しやすい労働市場及び労働環境において、障害者が自由に選択し、又は承諾する労働によって生計を立てる機会を有する権利を含む。)を有することを認めた上、」と改める。 ⑷ 原判決28頁10行目末尾に次のとおり加える。 「そして、同条約では、締約国は、『全ての者が、法律の前に又は法律に基づいて平等であり、並びにいかなる差別もなしに法律による平等の保護及び利12 原判決28頁10行目末尾に次のとおり加える。 「そして、同条約では、締約国は、『全ての者が、法律の前に又は法律に基づいて平等であり、並びにいかなる差別もなしに法律による平等の保護及び利12 益を受ける権利を有することを認め』(5条1項)、『障害に基づくあらゆる差別を禁止するものとし、いかなる理由による差別に対しても平等かつ効果的な法的保護を障害者に保証する』(同条2項)とし、『あらゆる活動分野における障害者に関する定型化された観念、偏見及び有害な慣行(性及び年齢に基づくものを含む。)と戦うこと』のための即時の、効果的なかつ適当な措置をとることを約束する(8条1項(a))などとされている。また、同条約の前文では、同条約の締約国が、『障害が発展する概念であることを認め、また、障害が、機能障害を有する者とこれらの者に対する態度及び環境による障壁との間の相互作用であって、これらの者が他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げるものによって生ずることを認め』(e)、『障害者の多様性を認め』(i)、『障害者による人権及び基本的自由の完全な享有並びに完全な参加を促進することにより、その帰属意識が高められること』等を認め(m)、『障害者にとって、個人の自律及び自立(自ら選択する自由を含む。)が重要であることを認め』(n)るなどし、『障害者が、政策及び計画(障害者に直接関連する政策及び計画を含む。)に係る意思決定の過程に積極的に関与する機会を有すべきであることを考慮』(o)するなどして協定したことが明らかにされている。」⑸ 原判決29頁21行目の「同25年3月14日判決。」の後に「以下『東京地裁平成25年判決』という。」を加え、25行目末尾を改行の上、次のとおり加える。 「 この際、成年被後見人の選挙権とともに ⑸ 原判決29頁21行目の「同25年3月14日判決。」の後に「以下『東京地裁平成25年判決』という。」を加え、25行目末尾を改行の上、次のとおり加える。 「 この際、成年被後見人の選挙権とともに成年被後見人の被選挙権は回復されたものの、多数の法律等で欠格条項が放置されたままであった。これについて、平成26年8月の時点においても、研究者から、『こうした欠格条項問題の背景には、成年後見制度の本旨を度外視して、成年後見の開始という事実を、全く性質が異なる法領域での画一的・形式的な法律要件として、機械的に“転用”するという安直な立法姿勢の蔓延がある。』、民法典以外の種々13 の法律や省令に基づく転用について、『転用先の法制度の趣旨と成年後見制度本来の法的位置づけとの整合性が明らかに欠けていることが珍しくない。』などとし、『転用問題からみた欠格条項の問題点』として、『人間の能力の多様性を無視することの弊害である。現行実務は、成年後見制度をあくまでも私法上の財産管理制度として運用しているために、審判で参照される鑑定や診断書での能力評価は財産管理能力のみを対象に実施されている。・・・種々の欠格条項が前提とする当該資格業務等の遂行に関する特定の能力の有無については、何ら具体的な評価を行っているわけではない。』、『成年後見制度の転用による資格制限は、当該資格業務の遂行に必要な特定の能力の欠如という実質的基準によってではなく、後見等の開始の有無という形式的な基準に依拠している。このため、たとえば認知症によって同程度の判断能力の低下があったとしても、本人が法定後見を利用していない限り、資格制限は受けないという不平等が生じることになる。さらに言えば、任意後見の利用は欠格事由とされていないため、法定後見の利用者と任意後見の利用者との間に明らかな不平 が法定後見を利用していない限り、資格制限は受けないという不平等が生じることになる。さらに言えば、任意後見の利用は欠格事由とされていないため、法定後見の利用者と任意後見の利用者との間に明らかな不平等が生じることになる。・・・このことは、当該資格業務の遂行に関する一定の資質の担保を目的とした欠格条項の趣旨にも矛盾することになるだろう。』などとし、『成年後見制度の転用に対する各省庁の安易ともみえる姿勢の結果、現在、成年被後見人等を欠格事由とする法令は、平成11年の削減前よりも、むしろ増加してしまっているのである。・・・中央省庁の多くは欠格条項が持つ人権侵害の可能性に無頓着なために、これらを些末な規定にすぎないと捉えており、他の類似法令との平仄を合わせることだけを意図して、類似法令の欠格条項をコピペしておけば十分であると考えているのではないだろうか。おそらく、そこでは、平成11年に法務省が示した基準との整合性はおろか、当該法令の趣旨と成年被後見人を欠格事由とすることとの論理的な必然性すら、ほとんど検討されていないように思われるのである。』などの指摘がされるなどしていた。(乙45)」14 ⑹ 原判決34頁24行目の「同号の規定ぶりが」を「同号が心身の障害の状況に応じた相対的欠格事由として定められたもので、その規定ぶりが」と改め、26行目の末尾に次のとおり加える。 「また、控訴人は、警備業法が、被保佐人とは異なり、被補助人に係る欠格事由を設けていないことについて、被補助人は、その状態によって、警備業務に関し健常者と同等以上の高い判断能力を備えていることを期待し得るからであるなどと主張する。しかし、この点については、被保佐人が、被補助人と異なり、その状態によっても警備業務に関し健常者と同等以上の高い判断能力を備えていることが期待できな ていることを期待し得るからであるなどと主張する。しかし、この点については、被保佐人が、被補助人と異なり、その状態によっても警備業務に関し健常者と同等以上の高い判断能力を備えていることが期待できないとの事実を認めるに足りる証拠はないし、被補助人の中に警備業務に関し健常者と同等以上の高い判断能力を備えていることを期待し得る者が存在するということは、少なくとも警備業務に関して、本人の具体的な状態による個別的な要素が大きいことを示しているのであって、むしろ被保佐人か被補助人かによって一律に線引きを行うことには相当性がないといえるのである。」⑺ 原判決35頁5行目から6行目の「診断書」を「本件診断書(甲9)」と改め、11行目の末尾に次のとおり加える。 「なお、控訴人は、本件診断書について、作成した医師の専門領域が内科で、同医師が被控訴人に知的障害があり、療育手帳が交付されていたこと等の被控訴人の精神状態を診断する上で重要な事項を把握していた形跡がなく、知能検査又はこれに類する検査が実施されていないから、信用することはできない旨主張する。しかし、本件診断書は、平成26年4月10日に、被控訴人が、①『精神機能の障害により警備業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者』に該当するか否か、②アルコール等の中毒者に該当するか否かという2つの事項に絞って、医師によって作成された診断書であり、医師は、自ら診察しないで診断書を交付してはならない(医師法20条。違反した場合の罰則(同法33条の3)も定15 められている。)のであるから、その診断に必要な被控訴人の診察を行った上で作成されたものと認められるのであって、これに反する証拠はないし、被控訴人がその後平成29年3月20日まで問題なく交通誘導の警備業務を行 る。)のであるから、その診断に必要な被控訴人の診察を行った上で作成されたものと認められるのであって、これに反する証拠はないし、被控訴人がその後平成29年3月20日まで問題なく交通誘導の警備業務を行ってきたことは、本件診断書が信用できるものであることを示しているものといえる。したがって、控訴人の上記主張は理由がない。」⑻ 原判決36頁15行目の末尾に次のとおり加える。 「その他、被控訴人が、本件診断書(甲9)作成後に、精神機能の低下等によって警備業法3条7号の欠格事由に該当するに至ったと認めるに足りる証拠はない。そうすると、被控訴人は、本件規定が存在しなければ、本件会社から解雇されることはなく、交通誘導警備業務に従事することを続けていたものと認められる。」⑼ 原判決39頁10行目の「ものであって」を「もので、都道府県公安委員会において、事業主である警備業者に対し、被保佐人を警備業務から排除するよう指示処分を出したり、これに従わない場合は警備業務に係る営業の全部又は一部の停止を命ずることができるという強制手段が設けられているものであって」と、12行目の「本件規制の目的」を「本件規定による規制の目的」とそれぞれ改め、18行目の「守る権限を」の後に「私的な」を、18行目から19行目の「ものであって,」の後に「公権力に基づく警察活動とは異なり、」を、19行目の「有するものでは」の後に「なく、依頼者本人において行うことが許される範囲内で私的な行為が行われるものにすぎ」をそれぞれ加える。 (10) 原判決40頁13行目の「制度ではない。」の後に「そして、同項の警備業務には、1号から4号まで幅広い業務が含まれている。」を、14行目の「あったとしても,」の後に「その管理について通常法律行為を要するものではないから、」をそれぞれ加え、15行目 そして、同項の警備業務には、1号から4号まで幅広い業務が含まれている。」を、14行目の「あったとしても,」の後に「その管理について通常法律行為を要するものではないから、」をそれぞれ加え、15行目の「わけではなく,」を「わけではない。 したがって、」と改め、16行目の「かえって,」を次のとおり改める。 16 「これについて、控訴人は、警備業法2条1項各号所定のいずれの警備業務においても健常者と同等以上の財産管理能力が必要になるとして、警備業務の中には他人の重要な財産を管理することを求められるものがあるし、いずれの警備業務においても他人の財産を預かり管理することが求められる場合があることは容易に想定されるから、これらの業務を適切に行うには、健常者と同等以上の財産管理能力が必要になることは明らかであるなどと主張している。なるほど、どのような警備業務においても他人の財産を管理する必要があり、かつ、そのような場合に、管理のために他人を代理するなどして契約等の法律行為を行うことが必要とされるのであれば、不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為等を行うのに保佐人の同意を要するもの(民法13条1項)とされている被保佐人(準禁治産者)がこれを行うことは相当でないともいえよう。しかし、警備員が警備業務として、他人の財産について契約等の法律行為を行うことが求められているとは考え難い。 そして、警備業務として盗難等から財産を守るのに、契約等についてその利害得失を判断するような能力や抽象的、概念的思考等が必要とされているとも考え難い。また、例えば、交通誘導の警備業務において、他人の財産を預かり管理することが求められるとは通常考えられないのであって、控訴人が主張するようにいずれの警備業務においても他人の財産を預かり管理することが求められる 、交通誘導の警備業務において、他人の財産を預かり管理することが求められるとは通常考えられないのであって、控訴人が主張するようにいずれの警備業務においても他人の財産を預かり管理することが求められる場合があると想定することは容易とはいえず、むしろ困難というべきである。したがって、この点に関する控訴人の主張は理由がないし、控訴人のこのような主張からすると、本件規定を定めるに当たって、警備業務の種類に応じた具体的な検討がほとんど行われていなかったことがうかがわれるのである。しかも、」(11) 原判決41頁26行目の「まで」を削除し、42頁9行目の末尾に、次のとおり加える。 「また、同法2条1項の警備業務には1号から4号まで幅広い業務が含まれ17 ているところ、全ての警備業務から準禁治産者を排除することが、上記の目的達成のために必要な手段であったといえるだけの根拠があったと認めることもできない。そして、通常の警備業務に比して専門的知識や専門性のある高度の判断が必要とされたり、高度の身体能力等が必要とされたりする業務があり得るとしても、そのような業務に限定して資格制限を設けることなども可能なのであるから、より制限的でない他の選びうる手段がなかったということもできない。そうすると、準禁治産者であることを欠格事由として全ての警備業務から排除することは、目的達成のために必要な範囲を超えた規制を行うものといわざるを得ない。 なお、控訴人は、本件規定により警備員から排除される者の範囲は、警備業法3条7号によって警備員から排除される者の範囲に完全に包含される旨主張する。しかし、被保佐人とされる者が、全て『心身の障害により警備業務を適正に行うことができない者として国家公安委員会規則で定めるもの』に該当することを認めるに足りる証拠はない。むしろ 含される旨主張する。しかし、被保佐人とされる者が、全て『心身の障害により警備業務を適正に行うことができない者として国家公安委員会規則で定めるもの』に該当することを認めるに足りる証拠はない。むしろ、被控訴人のように、警備業法3条7号によっては警備員から排除されない者が、本件規定により警備員から排除されてしまっているのであるから、控訴人の上記主張が理由のないことは明らかというべきである。そして、仮に、控訴人が主張するように、警備業法3条7号が、被保佐人を、その具体的状況によっても、一律に全て警備員から排除する規定であるとすれば、ひるがえって、今度は警備業法3条7号の合憲性が問題となるのである。 さらに、控訴人は、被保佐人について、精神障害による認知能力、判断能力等の低下が、保佐開始の審判に先立つ医学的な診断や鑑定を根拠として認定されており、財産管理能力のみならず、認知能力、判断能力等が全般的に低下していることが医学的、客観的に明らかな者ということができるから、健常者と同等以上の判断力等を備えておらず、被保佐人を警備業務を適正に行うことが期待できない者として、警備員の欠格事由とすることには合理性18 がある旨主張する。しかし、保佐開始の審判等を行う家庭裁判所の手続に関して作成された『成年後見制度における診断書作成の手引』(乙9。最高裁判所事務総局家庭局作成。平成18年5月、同23年6月及び同25年12月の改定を経たものであるが、主要な部分は、これが当初作成された同12年1月から同様であったと考えられる。)には、医師が作成する家庭裁判所提出用の診断書のひな型が掲載されており、その『判断能力についての意見』欄は、①『自己の財産を管理・処分することができない。』、②『自己の財産を管理・処分するには、常に援助が必要である。』、③『自 提出用の診断書のひな型が掲載されており、その『判断能力についての意見』欄は、①『自己の財産を管理・処分することができない。』、②『自己の財産を管理・処分するには、常に援助が必要である。』、③『自己の財産を管理・処分するには、援助が必要な場合がある。』、④『自己の財産を単独で管理・処分することができる。』のいずれかをチェックするか、意見欄に記入する方式とされており、『成年後見制度における鑑定書作成の手引』(甲13。最高裁判所事務総局家庭局作成。平成18年5月及び同19年6月の改定を経たものであるが、主要な部分は、これが当初作成された同12年1月から同様であったと考えられる。)にも、鑑定人が作成する鑑定書についての『鑑定書記載ガイドライン』の鑑定主文の例として、上記と同様の4つが挙げられているように、保佐開始の審判に先立つ医学的な診断や鑑定では、『自己の財産を管理・処分する能力』について診断や鑑定がされるのであって、成年後見制度が、精神上の障害により法律行為を行うについて利害得失を判断して適切な意思決定を行うことが困難な者の能力を補うことによって、本人の権利利益を擁護する制度であることからしても、当然のことといえる。そうすると、家庭裁判所の保佐開始の審判に先立つ医学的な診断や鑑定においても、『自己の財産を管理・処分する能力』について診断ないし鑑定がされるのであって、これを離れて、認知能力、判断能力等の全般的な能力が診断ないし鑑定されるわけではないし、ましてや『警備業務を適正に行うことが期待できるか否か』について診断ないし鑑定されるものでないことは明らかである。したがって、被保佐人について、保佐開始の審判に先立つ医学的な診断や鑑定19 により、認知能力、判断能力等が全般的に低下していることが医学的、客観的に明らかな者ということは とは明らかである。したがって、被保佐人について、保佐開始の審判に先立つ医学的な診断や鑑定19 により、認知能力、判断能力等が全般的に低下していることが医学的、客観的に明らかな者ということはできず、ましてや警備業務を適正に行うことが期待できない者であることが明らかということはできないから、被保佐人であることを警備員の欠格事由とすることに合理性がないことも明らかというべきであって、控訴人の上記主張は、成年後見制度の趣旨を正解しないものであり、理由がない。我が国を含む障害者権利条約の締約国は、『障害者に関する定型化された観念、偏見及び有害な慣行』と戦うこと(8条1項(b))を求められているのである。」(12) 原判決42頁17行目の「本件規定は,」の後に「職業選択の自由を侵害するもので、」を加え、43頁9行目の「まで」を削除し、14行目の「本件規定は,」の後に「法の下の平等に反するもので、」を加える。 (13) 原判決44頁5行目の「しかしながら,」の後に「そもそも国会議員は、憲法を尊重し擁護する義務を負っている(憲法99条)のであって、」を加え、20行目及び24行目の「憲法22条1項」の後にそれぞれ「及び14条1項」を加え、26行目の「立法行為が」の後に「直ちに」を加える。 (14) 原判決46頁20行目の「そうすると,」の後に「遅くとも研究会報告が発表された」を、23行目の「その後,」の後に「平成22年10月に」をそれぞれ加え、25行目の「東京地裁判決」を「東京地裁平成25年判決」と改める。 (15) 原判決47頁17行目の「されたものであり,」から19行目末尾までを次のとおり改める。 「された上、他の会社等において警備業務に従事することも不可能にされたものであるから、被控訴人は、国会における前記4⑷の違法行為と相当因果 たものであり,」から19行目末尾までを次のとおり改める。 「された上、他の会社等において警備業務に従事することも不可能にされたものであるから、被控訴人は、国会における前記4⑷の違法行為と相当因果関係のある損害として、経済的損害を被っただけでなく、これによっては評価し尽くすことのできない多大な精神的苦痛を被ったものと認められる。そして、本件規定が職業選択の自由そのものを制約するものであり、これによ20 って被控訴人が習熟しており生計維持のためにも必要な社会経済活動を制限され、被控訴人と同程度の能力を有する法定後見制度を利用しない者との間で不平等な扱いを受け、社会生活をしていく中でその能力を発揮する主要な場を奪われ、個人の自律及び自立(自ら選択する自由を含む。)を妨げられ、個人としてその人格の発現ないし展開を図っていわゆる自己実現をすることのできる重要な機会を強制的に奪われたものであることなど本件に現れた一切の事情を考慮すると、被控訴人の精神的苦痛に対する慰謝料としては50万円が相当である。」2 当審における当事者の主張に対する判断控訴人の主張についてア 本件規定と憲法22条1項(職業選択の自由)について控訴人は、本件規定が憲法22条1項に反するかどうかを判断する基準として、本件規定は、あらかじめ警備業務の適正な実施を期待することができない類型の者を警備業務から排除し、警備業務の実施における適正を確保するという目的を達成するため、警備業務に必要な認知、判断等に関する能力を類型的に欠いていると判断される被保佐人を、警備員の欠格事由と定めて警備員から排除するもので、あくまで本人の職業遂行能力に関係する被保佐人という属性に着目し、本人に一定の資質や能力を要求する主観的事情を基準とする制限であること、警備業務の適 員の欠格事由と定めて警備員から排除するもので、あくまで本人の職業遂行能力に関係する被保佐人という属性に着目し、本人に一定の資質や能力を要求する主観的事情を基準とする制限であること、警備業務の適切、効果的な実施を図るための具体的な方策、更には警備業の社会的に健全な発展を図るという政策的な判断のためには、警備業の実態及びそれを取り巻く社会的な状況等を把握、分析した上で、専門的知見等に基づき、国民全体の警備業務に対する信頼の状況を踏まえつつ、制限行為能力者に対する理解、受容の意識のかん養を図りながら、いかなる施策を想定し、選択するのが相当かといった政策的な観点を含む総合考慮を行う必要があるから、いわゆる合理性の基準によって判断すべきで、規21 制目的が合理性を欠き、又は同目的を達成するための規制手段が必要性、合理性を欠くことにより、立法府に与えられた合理的裁量の範囲を超えるものと認められない限り、憲法違反とはならないなどと主張する。 本件規定は、本人の能力に関係する被保佐人という属性に着目するもので、その意味では本人に一定の資質や能力を要求する主観的事情を基準とする制限であるといえるが、被保佐人の資質や能力はその人それぞれによって様々であり、しかも、民法上の保佐や成年後見の制度は、本人の法律行為能力を補うことによってその者の財産等の権利を擁護することを目的とするもので、警備業法における規制とはそもそも制度の趣旨が異なっているのであるから、立法府には本件規定のような制限を設けるに当たっては、慎重な判断が求められるというべきであって、本件規定による規制が本人の主観的事情を基準とする制限であることをもって、これをいわば他の制度から借用してくることについて、立法府に広範な裁量が与えられているとは認め難い。 また、控訴人の 本件規定による規制が本人の主観的事情を基準とする制限であることをもって、これをいわば他の制度から借用してくることについて、立法府に広範な裁量が与えられているとは認め難い。 また、控訴人の本件規定の目的が警備業の社会的に健全な発展を図るという政策的な目的にあるとの主張については、既に原判決を引用して説示したとおり、本件規定の目的は、あらかじめ警備業務の適正な実施を期待できない類型の者を欠格事由として定めて警備業務から排除し、警備業務の実施の適正を図ることにより、国民の生命、身体、財産等に対する危険を防止することにあるから、本件規定は、消極的、警察的目的のための規制措置で、社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではないし、控訴人が主張する上記の目的を含んでいるとしても、それはあくまでも副次的なものにすぎず、本件規定の主たる目的とは認め難い。 控訴人は、立法府の判断を強く尊重すべき事情であるとして、警備業の社会的に健全な発展を図るという政策的な判断等のためには、警備業22 の実態及びそれを取り巻く社会的な状況等を把握、分析し、専門的知見等に基づき、本件規定との関係では国民全体の警備業務に対する信頼の状況を踏まえつつ、制限行為能力者に対する理解、受容の意識のかん養を図りながら、いかなる施策を想定し、選択するのが相当かといった政策的観点を含む総合考慮を行う必要があるなどと主張している。しかし、本件規定を定める際に、専門的知見等に基づき、国民全体の警備業務に対する信頼の状況を踏まえ、制限行為能力者に対する理解、受容の意識のかん養を図りながら、施策の想定、選択といった総合考慮が行われたなどの事実を認めるに足りる証拠はない。むしろ、本件規定のように制限行為能力者であることを欠格事由とする規定を設けることは、制 の意識のかん養を図りながら、施策の想定、選択といった総合考慮が行われたなどの事実を認めるに足りる証拠はない。むしろ、本件規定のように制限行為能力者であることを欠格事由とする規定を設けることは、制限行為能力者はおよそ適正に業務を遂行することができないというレッテルを貼り、これを公的に示すことになってしまうのであって、かえって制限行為能力者に対する理解や受容の妨げになるものであるから、この面で上記主張と相反する選択を行ったことになる。すなわち、障害は、「機能障害を有する者とこれらの者に対する態度及び環境による障壁との間の相互作用であって、これらの者が他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げるものによって生ずる」ものである(障害者権利条約前文(e)参照)。 そもそも、国民一般(ないし全体)の信頼を確保する、特定の産業の社会的に健全な発展を図るなどといった目的は、何らかの危害を防止するために国民の権利を制限する規制を設ける場面等では、その検討を開始するに当たっても、事後的に説明を行うに当たっても、容易に目的として付け加えることが可能なものであるから、このような目的を目的として主張することによって、消極的目的にとどまらない目的があるなどとして裁量の範囲を広げ、厳格な検討を要しないとすることは許されないというべきである。また、ある事柄に対して国民の信頼を得ることが望23 ましいことは当然のことともいえるもので、ほとんどの場合がこれに当てはまることになるし、ある産業の社会的に健全な発展を図るということも、それが基本的に違法なものであったり、地球環境を破壊するものであったりするなどの弊害が明らかでない限り、通常は望ましいことである。このように、一般的に何にでも当てはめることができるような目的を、目的として主張 に違法なものであったり、地球環境を破壊するものであったりするなどの弊害が明らかでない限り、通常は望ましいことである。このように、一般的に何にでも当てはめることができるような目的を、目的として主張しなければならないこと自体が、控訴人の主張するいわゆる合理性の基準によって判断すべきであるとする根拠が薄弱なものであることを示しているということもできるし、十分に具体化されていないこのような目的を独立した目的であるかのように主張することで憲法上の権利を制限しようとすることは認められるべきでないということができる。 したがって、本件規定が憲法22条1項に違反するかどうかについて、いわゆる合理性の基準に基づいて判断すべきであるとの控訴人の上記主張を採用することはできない。 控訴人は、前記で主張する判断基準を前提とするなどして、本件規定が憲法22条1項に違反しない旨主張するが、その主張内容は、おおむね従前の主張の繰り返しであるし、その前提とする控訴人の主張を採用できないことは、前記のとおりである。 本件規定は、欠格事由を定めるものであり、欠格事由とされたところに該当する者を排除し、その業務を行うことができなくするもので、業者に対しても、これに違反して該当者を業務に従事させた場合に、指示処分や営業停止命令の対象とすることで、これを強く強制するものである。いったん保佐開始の審判がされると、これが取り消されない限り、いかなる努力を行っても欠格事由に該当して警備業務から排除される状態から脱することはできないのであって、このように職業選択の自由を制限して強力な排除の効果を生じさせる欠格事由を定めるについては、24 厳格な検討が行われる必要があり、あまねく当該事由に該当する者であれば、当該業務に従事することが相当でないといえる 自由を制限して強力な排除の効果を生じさせる欠格事由を定めるについては、24 厳格な検討が行われる必要があり、あまねく当該事由に該当する者であれば、当該業務に従事することが相当でないといえるか否かを具体的な根拠をもって専門的見地から検討すべきものである。しかし、本件規定について、あまねく被保佐人であれば、警備業務に従事することが相当でないといえるだけの根拠は見当たらない。被保佐人は、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者(民法11条)であるが、保佐の制度は、民法の第1編第2章第3節の行為能力の規定として定められており、被保佐人に重大な影響を及ぼす同法13条1項が定める重要な行為等について、保佐人の同意等を得なければならないものとし、これを得ないでした行為を取り消すことができるものとして(同条4項)、被保佐人を保護するためのものである。そして、被保佐人は、同条1項が定める重要な行為等を除けば、保佐人の同意を得ずに、自ら単独で行うことができるのであって、例えば、不動産その他重要な財産に関するもの(同項3号)でなければ、権利の得喪を目的とする行為を行うことができるのである(以上の点は、平成11年法律第149号による改正前民法の準禁治産者においても同様である。)。また、成年被後見人と同様に、日用品の購入その他日常生活に関する行為を完全に有効な行為として行うことができることはいうまでもない(同項ただし書)。 すなわち、保佐の制度は、本人の財産上の利益を他者から保護する目的で定められているものであって、適切に警備業務を遂行することができない者がこれを行って他者の生命、身体、財産等に危害が生じないようにするという警備業法が欠格事由を定める目的とは全く異なる目的で定められているものである。そうすると、この両者はそもそも制 ことができない者がこれを行って他者の生命、身体、財産等に危害が生じないようにするという警備業法が欠格事由を定める目的とは全く異なる目的で定められているものである。そうすると、この両者はそもそも制度の目的が異なるものであるし、被保佐人は、不動産その他重要な財産に関するもの(同項3号)でなければ、権利の得喪を目的とする行為を行うことができる者なのであるから、被保佐人が、精神上の障害により事理を弁識25 する能力が著しく不十分な者であるからといって、あまねく適切に警備業務を遂行することができない者であり、その具体的な状態によっても、警備業務を行うと他者の生命、身体、財産等に危害が生じる恐れがあるなどといえるものでないことは、明らかというべきである。しかも、警備業務には、多種の業務があるが、これらに要する能力が一律のものであるとも認め難い。 控訴人は、警備員に対しては、警備業法2条1項各号のどの業務に該当するかにかかわらず、不測の事態に適切に対応できるだけの健常者と同等以上の判断能力等を備えることが要求されているとし、警備業法における規制について、立法府が専門的見地から判断する事項であるなどとしている。しかし、控訴人は、本件規定について、類型的定型的に見て、健常者よりも判断能力が著しく低く、警備員としての資質を欠くと考えられる者を欠格者として扱うものであるなどと抽象的な主張をするのみで、本件規定を定めるに当たって、どのようにして専門的見地から判断したのか具体的な主張がなく明らかではないし、借用してくる制度である成年後見(保佐を含む)に関わる精神医学や法律の専門家、当事者、実務担当者等からの意見聴取など、専門的見地から検討したことがうかがわれるような証拠も見当たらない。そうすると、本件規定は、控訴人自身が「類型的定型的に見て」 関わる精神医学や法律の専門家、当事者、実務担当者等からの意見聴取など、専門的見地から検討したことがうかがわれるような証拠も見当たらない。そうすると、本件規定は、控訴人自身が「類型的定型的に見て」などと主張しているように、成年被後見人、被保佐人といった制限行為能力者は、一般的にすべての面で行為能力の制限を受けない者と同等以上の判断能力がないであろうといった考え等に基づいて、専門的見地からの十分な検討を行うことなく定められたものと考えざるを得ない。すなわち、控訴人は、職業の自由に対する規制措置は、具体的な規制措置について規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、制限の内容及び程度を検討し、これを比較考量した上で慎重に決定されなければならず、この26 ような検討と考量をするのは、第一次的に立法府の権限と責務である旨主張しているが、本件規定を定めるに当たって、このような具体的検討と比較考量を行ってその責務が果たされていたと認めることはできないのである。 すべて国民は、個人として尊重され、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする(憲法13条)のであるから、専門的見地からの慎重な検討もなく、個人的な差異があることを考慮しないで、個人としてその能力には様々な個性のあることを尊重せずに、上記のような「類型的定型的」観点から、自由及び幸福追求に対する国民の権利を制限することは許されないというべきである。また、障害者権利条約においても、前文で、締約国の認識として、「障害者の多様性を認め」(i)とされ、締約国は、「障害者に関する定型化された観念、偏見及び有害な慣行」と戦うことのための即時の、効果的なかつ適当な措置をとることを約束する(8条1 国の認識として、「障害者の多様性を認め」(i)とされ、締約国は、「障害者に関する定型化された観念、偏見及び有害な慣行」と戦うことのための即時の、効果的なかつ適当な措置をとることを約束する(8条1項(b))などとされているのである。 なお、控訴人は、本件規制の目的は消極的目的にとどまらないとした上、従事できる警備業務の内容に規制を加えるのではなく、警備業務に従事できる警備員自体にあらかじめ一定の規制を加えておくことは重要で、健常者と同程度以上の高い認知能力、判断能力を保持していることが全く期待できない者を、警備業務を適正に行うことを期待できない者として警備業務に従事できないこととすることは合理性があるなどとも主張している。しかし、被保佐人について、警備業務に関し、健常者と同程度以上の高い認知能力、判断能力を保持していることが全く期待できないとの事実を認めるに足りる証拠はないし、控訴人の主張するところが、警備業務に関する能力を超えて、法律行為を行ってする財産管理能力を含んだ全般的な能力として、健常者と同程度以上の高い認知能力、27 判断能力を保持していることが警備員として要求されているというものであるとすれば、警備業務の適正な実施を確保するという目的を超えた規制を行うことになってしまうから、正当な主張とはいえないことになる。また、控訴人の意図するところが、控訴人の主張する「警備業及び警備員に対する国民の信頼の確保」という目的を実現するために、警備員には、全般的な能力として、法律行為を行うことを含めた健常者と同程度以上の能力が必要であるというものであるとすれば、そのような目的を、警備業務の適正な実施を図ることによる副次的な目的ではなく、それ自体を独立した目的とすることの正当性、合理性が問題となるのであって、これを目 が必要であるというものであるとすれば、そのような目的を、警備業務の適正な実施を図ることによる副次的な目的ではなく、それ自体を独立した目的とすることの正当性、合理性が問題となるのであって、これを目的とした規制により、警備業務を適正に行うことは期待できるが、重要な財産に関する法律行為等を行うことには不安があるというだけの者を、不特定者の信頼感ないし安心感の確保といったもののために警備業務から一切排除することになってしまうことになるのであるから、ひるがえって、このように幅広い規制をしなければならないことになるような国民の信頼の確保といった漠然とした目的を独立したものとして設定することについての正当性、合理性自体に疑問が生じるのであって、むしろ、これを正当化できるだけの合理的根拠があると認めるに足りる証拠はない。さらに、控訴人は、本件規制について、「警備業の社会的に健全な発展を図ること」も目的である旨主張するが、副次的な目的としてはともかく、それ自体ではさらに漠然としたものであり、他の目的を介さなければ本件規制との関連性さえ不明確なものである。 すなわち、「警備業の社会的に健全な発展を図ること」それ自体のために、どのような理由から、警備員に全般的な能力として法律行為を行うことを含めた健常者と同程度以上の能力を必要とするというのか、全く不明というほかないのである。 したがって、控訴人の上記主張は失当であるし、「警備業務の実施の適28 正を図ることにより、国民の生命、身体、財産等に対する危険を防止する」といった目的のほかに、このような消極的目的にとどまらないものとして、「警備業及び警備員に対する国民の信頼の確保」、「警備業の社会的に健全な発展を図ること」といったものを副次的なものではない目的として加えたものを前提に、本件規定による規 的にとどまらないものとして、「警備業及び警備員に対する国民の信頼の確保」、「警備業の社会的に健全な発展を図ること」といったものを副次的なものではない目的として加えたものを前提に、本件規定による規制に合理性があるなどとする控訴人の主張が理由のないことも明らかというべきである。 その他、控訴人は、本件規定が憲法22条1項に違反しないとして種々主張するが、以上の認定及び判断を左右するものではない。 イ 本件規定と憲法14条1項(法の下の平等)について控訴人は、本件規定の目的及び手段はいずれも合理的であり、憲法22条1項に適合するから、本件規定による取扱いは憲法14条1項に違反しないなどと主張する。 しかし、本件規定が憲法22条1項に違反するものであることは、既に原判決を引用するなどして説示したとおりである。そして、憲法14条1項は、事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り、法的な差別的取扱いを禁止する趣旨のものであると解され、障害があるか否かや成年後見等の障害者を保護するための制度を利用するか否かといった、自らの意思や努力によっては変えることのできない事情による取扱いの区別が許されるか否かは、厳格な検討に基づいて判断されるべきところ、本件規定が事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものといえないことは、以上に述べたとおりであるし、本件規定は、同程度の判断能力であっても、保佐の制度の利用者のみを欠格事由ありとするものであるから、憲法14条1項に違反するものであることは明らかであって、控訴人の上記主張は理由がない(なお、障害者を保護するための制度の利用については、これを利用するか否かが障害者自身の判断による場合もあるが、その前提となる障害は自らの意思や努力によっては変えることのできないもので29 い(なお、障害者を保護するための制度の利用については、これを利用するか否かが障害者自身の判断による場合もあるが、その前提となる障害は自らの意思や努力によっては変えることのできないもので29 あるし、障害者がこれを保護する制度を利用したことによって、利用しなかった場合より不利益な取扱いを受けるのでは、制度の趣旨に反することになってしまうから、制度の利用が障害者の判断による場合であっても、自らの意思や努力によって変えることのできない事情に該当しないということはできない。)。この点に関しては、障害者権利条約においても、3条で「無差別」(b)を同条約の原則とした上、5条で、締約国は、「全ての者が、法律の前に又は法律に基づいて平等であり、並びにいかなる差別もなしに法律による平等の保護及び利益を受ける権利を有することを認め」(1項)、「障害に基づくあらゆる差別を禁止するものとし、いかなる理由による差別に対しても平等かつ効果的な法的保護を障害者に保証する」(2項)などとされているところである。 ウ 国会が本件規定を改廃しなかった立法不作為について控訴人は、本件規定は憲法22条1項及び14条1項に適合しているから、本件規定が憲法に違反することが明白であるという事態はおよそ生じ得ないし、成年後見制度研究会の目的や研究成果の内容からも、平成22年7月以降のいずれの時点においても本件規定が憲法に違反することが明白であったとはいえず、昭和57年改正で本件規定が設けられてから一括整備法により本件規定が削除されるまでのいかなる時点においても、本件規定が憲法に違反することが国会にとって明白であったとはいえないなどとして種々主張する。 しかし、本件規定が憲法22条1項及び14条1項に違反していることは既に説示したとおりであるし、前記認定事実のとおり 法に違反することが国会にとって明白であったとはいえないなどとして種々主張する。 しかし、本件規定が憲法22条1項及び14条1項に違反していることは既に説示したとおりであるし、前記認定事実のとおり、昭和57年改正で本件規定が設けられた後、成年後見制度研究会が平成22年7月に研究成果を発表するまでの間の警備業法の改正とその経緯、平成5年3月の障害者施策推進本部による新長期計画の策定、平成11年整備法の制定とその際の附帯決議、平成19年9月に障害者権利条約に署名していることな30 どからすると、遅くとも平成22年7月頃には、本件規定が被保佐人の職業選択の自由を合理的な理由なく制約していることが国会にとっても明白であったというべきであり、成年後見制度研究会の目的や研究成果の内容が控訴人の主張するとおりの内容であったとしても、以上の判断を覆すに足りるものではない。そもそも、平成11年整備法の国会審議において、本件規定についても見直しを行う契機はあったといえるし、警備業法の平成14年改正において、それまで精神病者が警備員の絶対的欠格事由とされ、一律に排除されていたものを、精神病者であるからといって直ちに健常者と同程度の認知、判断等に関する能力を有することを期待できないとは必ずしもいえないことを踏まえて、相対的欠格条項として実質的判断をすることにしたのであるから、被保佐人等についても同様の検討を開始する契機が十分に備わっていたものといえる。 さらに、国会は、平成22年10月に成年後見法世界会議において、日本の課題として現行成年後見制度に多く残されている欠格事由を撤廃すべきことが挙げられた横浜宣言が採択されても、成年被後見人の選挙権について東京地裁平成25年判決がされた後にこの点に関する対応を行ったものの、本件規定を見直すことはなく、平 れている欠格事由を撤廃すべきことが挙げられた横浜宣言が採択されても、成年被後見人の選挙権について東京地裁平成25年判決がされた後にこの点に関する対応を行ったものの、本件規定を見直すことはなく、平成26年1月に障害者権利条約を批准しても、また、研究者から成年後見制度の転用について欠格条項の問題点が指摘されるなどしていても、本件規定をそのままにして放置していたのである。前記のとおり、国会議員は憲法を尊重し擁護する義務を負っている(憲法99条)のであるし、障害者権利条約を批准したことにより、障害者に対する差別となる既存の法律、規則等を修正し、又は廃止するための全ての適当な措置(立法を含む。)をとること、あらゆる形態の雇用に係る全ての事項に関し、障害に基づく差別を禁止する等の措置をとることなどが求められていたのである(障害者権利条約は、憲法13条、14条1項、22条1項等の規定の趣旨とも軌を一にするものであるところ、31 これを批准しても、これによって求められている措置が国政において実施されなければ、国際的に条約に加わったという形だけのものになってしまうのである。)から、本件規定を改廃しなかった立法不作為の違法性は大きいといわざるを得ない。 エ 本件規定の存在と本件雇用契約の終了との間の因果関係について 控訴人は、本件雇用契約の終了による損害と、本件規定を制定し又は改廃しなかった国会の立法行為又は立法不作為との間に因果関係が認められるためには、被控訴人自身が本件退職時点において警備業法3条7号、国家公安委員会規則3条1項に該当していなかったことを立証する必要があるなどと主張する。 しかし、前提事実のとおり、本件雇用契約が終了したのは、被控訴人について保佐開始の審判が確定したことによるもので、警備業法3条7号、国家 当していなかったことを立証する必要があるなどと主張する。 しかし、前提事実のとおり、本件雇用契約が終了したのは、被控訴人について保佐開始の審判が確定したことによるもので、警備業法3条7号、国家公安委員会規則3条1項の欠格事由によるものではないから、特段の事情のない限り因果関係が認められるのであって、被控訴人が上記の点について立証責任を負うものではなく、控訴人の上記主張は失当である。 控訴人は、警備業法3条7号及び警備業の要件に関する規則3条1項にいう「警備業務」とは警備業法2条1項各号の全てを指すと解すべきであるとした上で、被控訴人の精神科受診歴や保佐開始の審判に至る経過からすれば、被控訴人は本件退職時点で警備業法3条7号の欠格事由に該当していたとみるのが自然であるなどと主張する。 しかし、既に原判決を引用するなどして説示したとおり、被控訴人は、本件退職時点で警備業法3条7号等の欠格事由に該当していたとは認められず、むしろこれに該当していなかったと認められるのであって、控訴人の上記主張は理由がない。 オ 控訴人は、その他種々主張して原判決を論難するが、いずれも以上の認32 定及び判断を左右するものではなく、理由がない。 被控訴人の主張について被控訴人は、警備員という仕事が被控訴人にとって生活の糧を得るための労働ではなく、自己実現の場としての価値を有することなども考慮して、慰謝料額を100万円とすべきである旨主張する。 しかし、被控訴人が指摘する点のほか立法不作為の違法性が大きいこと等を考慮しても、原審の認容した額は少額に過ぎるとはいえるものの、前記のとおり被控訴人に対する慰謝料としては50万円が相当というべきであるから、被控訴人の主張はこの限度において理由があり、その こと等を考慮しても、原審の認容した額は少額に過ぎるとはいえるものの、前記のとおり被控訴人に対する慰謝料としては50万円が相当というべきであるから、被控訴人の主張はこの限度において理由があり、その余は理由がない。 3 よって、本件控訴は理由がないのでこれを棄却し、本件附帯控訴は上記の限度で理由があるのでその限度で原判決を変更することとし、主文のとおり判決する。 なお、被控訴人は、仮執行宣言の申立てをしているが、その必要があるとは認められないので、これを付さないこととする。 名古屋高等裁判所民事第2部 裁判長裁判官 長谷川 恭 弘 裁判官 末 吉 幹 和 裁判官 寺 本 明 広
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