- 1 - 主文 1 本件訴えのうち別紙当事者等目録2記載の原告らによるものをいずれも却下する。 2 その余の原告らの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求処分行政庁(国土交通大臣)が平成17年12月19日付けで沖縄県に対してした空港設置許可処分(同日付け国空管第○号)を取り消す。 第2 事案の概要本件は,沖縄県(以下,単に「県」ということがある。)が沖縄県石垣市に設置しようとする公共の用に供する飛行場(以下「本件空港」という。)の敷地の一部に土地を共有する者などから成る原告らが,処分行政庁が平成17年12月19日付け国空管第○号をもって県に対してした本件空港の設置を許可する旨の処分(以下「本件許可処分」という。)につき,航空法(平成20年法律第75号による改正前のもの。以下同じ。)又は環境影響評価法(同年法律第75号による改正前のもの。以下「評価法」という。)の規定に違反する瑕疵があるなどとして,その取消しをそれぞれ求める事案である。なお,本件訴状には,形式上,アオサンゴ及びヤエヤマコキクガシラコウモリが原告であるかのような記載があるが,原告らが平成18年8月14日に提出した補正書により,この記載は本件訴えの原告を表示するものではないことが明らかにされた。 1 関係する法令の定め別紙関係する法令の定めに記載のとおり(以下,同別紙で定義した略語を本文中においても使用する。) 2 前提事実- 2 -(1) 本件空港は,県が,現在の石垣空港(以下「現空港」という。)の代替として,次のとおりの内容で設置しようとするものである。(乙3)ア名称新石垣空港イ位置石垣市(別紙飛行場位置図のとおり)ウ標点 石垣空港(以下「現空港」という。)の代替として,次のとおりの内容で設置しようとするものである。(乙3)ア名称新石垣空港イ位置石垣市(別紙飛行場位置図のとおり)ウ標点位置石垣市α1×-××北緯 ▲度▲分▲秒東経 ▲度▲分▲秒(別紙標点位置図のとおり)標高 31.00mエ種類陸上飛行場オ等級 C級カ滑走路の強度単車輪荷重 31.5t舗装体の設計強度 LA-12キ計器着陸又は夜間着陸計器着陸(CATⅠ)及び夜間着陸に供する。 ク利用を予定する航空機の種類及び形式ボーイング767型旅客機等ケ処分行政庁の指定を受けようとする進入区域の長さ 3000m進入表面のこう配 50分の1水平表面の半径 3000m転移表面のこう配 7分の1コ飛行場の施設の概要飛行場の敷地面積 141万9615㎡着陸帯長さ 2120m幅 300m- 3 -滑走路長さ 2000m幅 45m舗装の種類アスファルトコンクリート舗装方位真方位 N▲度▲分▲秒E磁方位 N▲度▲分▲秒E誘導路長さ 2318m(690m+1628m)幅 23m,26.5m,30m舗装の種類アスファルトコンク 誘導路長さ 2318m(690m+1628m)幅 23m,26.5m,30m舗装の種類アスファルトコンクリート舗装エプロン面積 7万5145㎡舗装の種類セメントコンクリート舗装バース数中型ジェット機(B-767等)用3バース小型ジェット機(B-737等)用4バースプロペラ機(DHC-8等)用1バースサ設置予定の航空保安施設の概要航空灯火 (飛行場設置者が設置するもの)飛行場灯台,進入灯,進入角指示灯等航空保安無線施設(処分行政庁が設置するもの)VOR/DME,ILS等シ供用開始予定期日平成25年3月7日(2)ア別紙当事者等目録1記載の原告ら(以下「第1原告ら」という。)は,次の2筆の土地(以下「本件共有地」という。)のいずれかの共有者である。本件共有地は,いずれも本件空港の敷地内に所在している。 - 4 -(ア) 所在石垣市α2地番 ×番146地目原野地積 780㎡(イ) 所在石垣市α2地番 ×番147地目原野地積 776㎡イ本件訴状において,第1原告らは,自らについて,石垣市α3(以下,単に「α3」ということがある。)にある世界的に貴重なサンゴ礁(以下「α3サンゴ礁」という。)や希少な野生動植物を次の世代に残したいと願う者が本件空港の敷地内の土地の共有地主となって 市α3(以下,単に「α3」ということがある。)にある世界的に貴重なサンゴ礁(以下「α3サンゴ礁」という。)や希少な野生動植物を次の世代に残したいと願う者が本件空港の敷地内の土地の共有地主となって,自らの土地は空港用地としては提供せず,県が石垣市に新しく設置を計画する空港(以下「新空港」という。)の位置をα4岳南側の陸上とする案(以下「α4岳陸上案」という。)の見直しを県に求めていく運動(以下「α3トラスト運動」という。)に参加しており,本件空港の建設をストップし,かけがえのない地球の財産であるα3サンゴ礁と絶滅危惧種である小型コウモリ類(以下,単に「コウモリ類」という。)など希少な野生生物を次の世代に残したいと願い,本件訴訟の原告となった者たちであると主張している。また,別紙当事者等目録2記載の原告ら(以下「第2原告ら」という。)は,自らについて,α3サンゴ礁の生態系(以下「α3サンゴ礁生態系」という。)に愛着を持ち,県にα4岳陸上案を撤回させ,かけがえのない地球の財産である陸海一体となったα3サンゴ礁生態系を次の世代に残したいと願い,本件訴訟の原告となった者たちであると主張している。(顕著な事実)(3)ア α3の海には,北半球最大最古のアオサンゴ群落を始め,巨大な塊状- 5 -のハマサンゴ(マイクロアトール),国内有数の規模を誇るユビエダハマサンゴの群落等が生育するα3サンゴ礁生態系が形成されており,その海域には世界最大のサンゴ礁といわれるオーストラリアのグレートバリアリーフに匹敵するサンゴが生育しているともいわれている。また,α3サンゴ礁には,300種類以上が確認されている魚類を始め,貝類,エビ類,カニ類,イカ類そしてウニやナマコ,更には海草,海藻など様々な生物が生育しており,生物多様性に富んだ豊かな海域となってい ,α3サンゴ礁には,300種類以上が確認されている魚類を始め,貝類,エビ類,カニ類,イカ類そしてウニやナマコ,更には海草,海藻など様々な生物が生育しており,生物多様性に富んだ豊かな海域となっている。 α3の住民は,この海を「魚湧く海」,「海の畑」,「命継ぎの海」と表現して,先祖代々利用してきた。 沖縄の海では昭和47年の復帰前後からオニヒトデが大発生し,その食害によってほとんどのサンゴ礁が壊滅的な状態になった。オニヒトデは沖縄本島を西海岸から反時計回りに1周した後,昭和55年頃まで八重山地域の海に移動した。その爆発的な異常発生によって八重山地域でもほぼ全海域でオニヒトデの食害を受け,大半のサンゴが死滅した。しかし,ほぼ唯一,オニヒトデの食害を受けなかったのがα3サンゴ礁である。α3ではオニヒトデの発生はなく沖縄の本来の海が奇跡的に残された。 イ県が平成17年9月9日から同年10月11日までの間,評価法27条の規定に基づき縦覧に供した評価書(補正後のもの。乙23。以下「本件補正書」という。)によれば,本件空港予定地周辺の海域においては,岸に沿ってリーフ(礁)が発達し,その内側に種々のサンゴが帯状に分布してサンゴ礁を形成しており,比較的広い範囲で被度50%以上のサンゴ群集が見られる。同予定地の南側を西方面から東方面に流れてこの海域に流れ込むα5川河口の南側にあるα3の海域には約100haの枝状コモンサンゴやユビエダハマサンゴを主とするサンゴ群集が分布するほか,北半球で最大といわれるアオサンゴの大群落も見られ,- 6 -貴重なサンゴ礁生態系を形成している。また,サンゴ礁の岸側には,アマモ類で構成される海草藻場が帯状に分布しており,本件空港予定地周辺海域の海域生物は,サンゴ礁,海草藻場が提供する多様な生息基盤を利用して生息し 礁生態系を形成している。また,サンゴ礁の岸側には,アマモ類で構成される海草藻場が帯状に分布しており,本件空港予定地周辺海域の海域生物は,サンゴ礁,海草藻場が提供する多様な生息基盤を利用して生息している。この海域において1000種を大幅に超える海域生物が確認されている。アオサンゴは,水産庁レッドデータブックにおいて「減少」とされている。(乙23の6-12-330・331・336頁)ウ本件補正書によれば,本件空港予定地周辺にある五つの洞窟(本件補正書6-12-174頁の図によって洞口の位置が示されているAないしE洞窟。以下,洞窟の名称は,同図並びに本件補正書6-12-157ないし165,178及び179頁の表及び図によって示されるところによる。)には,小型コウモリ類に属するヤエヤマコキクガシラコウモリ(以下「コキクガシラ」ということがある。),カグラコウモリ(以下「カグラ」ということがある。),リュウキュウユビナガコウモリ(以下「ユビナガ」ということがある。)が生息している。コキクガシラは,宮古島以北のコキクガシラコウモリ類と系統が異なる石垣島とα6島に生息する固有種であり,沖縄県危急種(絶滅の危険が増大しているもの)に指定されている。カグラは,東洋区系のカグラコウモリ類の北限に生息し,中国南西部からインド,タイ,マレー半島にかけて分布するヒマラヤカグラコウモリ群のうちで,最も小型で原始的な形質を持つ遺存種(かつては広く分布していたが,その後環境の変化などで衰退,分布を縮小し,現在では限られた場所に残るのみとなった種)とされ,個体間で身体が接触しないように20ないし30cmの間隔を空けて懸垂する日本では唯一の種で,八重山諸島の固有種であり,環境省希少種,沖縄県絶滅危惧種(絶滅の危機に瀕しているもの)に指定されている。ユビナガ 身体が接触しないように20ないし30cmの間隔を空けて懸垂する日本では唯一の種で,八重山諸島の固有種であり,環境省希少種,沖縄県絶滅危惧種(絶滅の危機に瀕しているもの)に指定されている。ユビナガは,八重山諸島のものが沖縄島のものよりやや大きいな- 7 -ど,各島しょでの遺伝的分化が進んでいると予想されるが,その全貌の解明はこれからの研究に委ねられる段階にあるという種であり,沖縄県危急種に指定されている。(乙23の6-12-154・155・172頁,用語解説-13頁)(4)ア新空港を設置する事業(以下「新空港設置事業」という。)を計画していた県は,平成11年6月22日に設置されたP1委員会の検討を経て,平成12年4月,新空港の設置位置として,α3の北方にあるα4岳の南側陸上とするα4岳陸上案を採用することを決めた。 イ県は,平成14年12月12日,本件空港を設置する事業(α4岳陸上案に基づいて新空港設置事業を具体化するもの。評価法2条3項所定の第二種事業に当たる。以下「本件事業」という。)の概要等の評価法4条1項所定の事項を処分行政庁に届け出るとともに,同条6項に基づき,処分行政庁の判定を受けることなく,評価法の規定による環境影響評価の手続を行うこととした。(乙24)ウ県は,平成14年12月,本件事業に係る環境影響評価を行う方法について評価法5条1項所定の事項を記載した環境影響評価方法書(乙13。以下「本件方法書」という。)を作成し,同月16日,評価法6条1項に基づき県知事(以下,単に「知事」という。)及び石垣市長宛てにこれを送付し,評価法7条に基づき,同月24日,これを公告するとともに,同日から平成15年1月29日までの間,県土木建築部新石垣空港建設対策室等において縦覧に供した。(乙13,24)エ県は,本 これを送付し,評価法7条に基づき,同月24日,これを公告するとともに,同日から平成15年1月29日までの間,県土木建築部新石垣空港建設対策室等において縦覧に供した。(乙13,24)エ県は,本件方法書の縦覧期間満了の日の翌日である平成15年1月30日から起算して2週間を経過する日である同年2月12日までの間,評価法8条1項に基づき,本件方法書に対する意見書の提出を受け付けるとともに,同期間が経過した後,これを取りまとめ,評価法9条に基づき,同月28日,知事及び石垣市長宛てに意見の概要を記載した書類- 8 -(乙14)を送付した。(乙14,24)オ上記エの書類の送付を受けた知事は,評価法10条に基づき,平成15年5月29日,本件方法書について環境の保全の見地からの意見を書面(乙15)により述べた。 カ県は,評価法11条1項に基づき,本件事業に係る環境影響評価の項目並びに調査,予測及び評価の手法を選定し,評価法12条に基づき,本件事業に係る環境影響評価を行った。 キ県は,上記カの環境影響評価の結果について環境の保全の見地からの意見を聴くための準備として,評価法14条1項に基づき,平成16年3月,環境影響評価準備書(乙16。以下「本件準備書」という。)を作成し,評価法15条に基づき,同月26日,知事及び石垣市長宛てにこれを送付し,評価法16条に基づき,同月30日,これを公告するとともに,同日から同年4月30日までの間,県土木建築部新石垣空港建設対策室等において縦覧に供した。(乙16,24)ク県は,評価法17条1項に基づき,上記縦覧期間内である平成16年4月21日に,石垣市内にある石垣市民会館において,説明会を開催した。(乙24)ケ県は,評価法18条1項に基づき,上記縦覧期間満了の日の翌日である平成16年5月1 記縦覧期間内である平成16年4月21日に,石垣市内にある石垣市民会館において,説明会を開催した。(乙24)ケ県は,評価法18条1項に基づき,上記縦覧期間満了の日の翌日である平成16年5月1日から起算して2週間を経過する日である同月14日までの間,本件準備書に対する意見書の提出を受け付けるとともに,同期間経過後,提出された意見を取りまとめ,評価法19条に基づき,同年5月31日,知事及び石垣市長宛てに意見の概要及び当該意見についての事業者の見解を記載した書類(乙17)を送付した。(乙17)この書類の送付を受けた知事は,評価法20条に基づき,事業者である県に対し,同年9月28日,本件準備書について環境の保全の見地からの意見を書面(乙18)により述べた。(乙18)- 9 -コ知事は,平成20年法律第75号による改正前の空港整備法5条1項の規定により,平成17年1月25日付け文書にて,県が石垣市に本件空港を設置しこれを管理することについて,石垣市長と協議をし,石垣市長は,同年2月4日,石垣市議会の議決を経た上で,同日付け文書をもって,知事に対し,このことにつき同意する旨通知した。また,県議会は,同年3月29日,同項の規定による本件空港の設置管理者を県とすることを議決した。(乙3)サ県は,評価法21条1項に基づき,平成17年2月,環境影響評価書(乙19。以下「本件評価書」という。)を作成し,評価法22条1項1号に基づき,同月28日,航空法38条1項の許可権者である処分行政庁宛てにこれを送付した。(乙19,24)シ処分行政庁は,評価法22条2項1号に基づき,平成17年3月2日,本件評価書の写しを環境大臣宛てに送付し意見を求めた。(乙24)スこれに対し,環境大臣は,評価法23条に基づき,平成17年4月15日,処分 は,評価法22条2項1号に基づき,平成17年3月2日,本件評価書の写しを環境大臣宛てに送付し意見を求めた。(乙24)スこれに対し,環境大臣は,評価法23条に基づき,平成17年4月15日,処分行政庁に対し,本件評価書についての環境の保全の見地からの意見を書面(乙20)により述べた。(乙20,24)セ処分行政庁は,評価法24条に基づき,上記スの環境大臣の意見の内容を勘案した上で,平成17年5月27日,県に対し,本件評価書についての環境の保全の見地からの意見(以下「本件国交大臣意見」という。)を書面(乙21。以下「本件国交大臣意見書」という。)により述べた。(乙21,24)ソ県は,評価法25条1項2号に基づき,本件評価書の記載事項に検討を加えて,本件評価書について補正を行い,同条3項に基づき,平成17年9月8日,処分行政庁に対し,補正後の環境影響評価書(本件補正書)を送付し,また,評価法26条2項に基づき,同日,知事及び石垣市長宛てに,本件補正書,これを要約した書類(以下「本件要約書」と- 10 -いう。)及び本件国交大臣意見書を送付した。さらに,県は,評価法27条に基づき,同月9日,所要の事項を公告するとともに,同日から同年10月11日までの間,県土木建築部新石垣空港建設対策室等において,本件補正書,本件要約書及び本件国交大臣意見書を縦覧に供した。 (乙23,24)タ処分行政庁は,評価法26条1項1号に基づき,平成17年9月13日,環境大臣宛てに,県から送付を受けた本件補正書の写しを送付した。 (乙24)チ県は,航空法38条2項に基づき,平成17年9月12日付けで,本件空港を公共の用に供する旨その他の航空法施行規則76条1項所定の事項を記載し(ただし,同項4号との関係では所定の事項が記載されたか否かに争いがあ 38条2項に基づき,平成17年9月12日付けで,本件空港を公共の用に供する旨その他の航空法施行規則76条1項所定の事項を記載し(ただし,同項4号との関係では所定の事項が記載されたか否かに争いがある。),同条2項所定の添付書類を添付した申請書(乙3。以下「本件申請書」という。)を処分行政庁宛てに提出して,本件空港の設置の許可の申請(以下「本件申請」という。)をした。 (乙3,4)ツ処分行政庁は,本件申請を受け,平成17年10月17日付けで,制限表面等,航空法38条3項及び航空法施行規則78条1項所定の事項を同年国土交通省告示第○号(乙4)として告示するとともに,県八重山支庁等において当該告示を掲示した。(乙4,25)テ処分行政庁は,航空法39条2項に基づき,平成17年11月10日,本件空港の設置に関し,県八重山支庁において,公聴会を開催した。 (乙5,10)ト処分行政庁は,航空法38条1項に基づき,平成17年12月19日付けで本件空港の設置を許可する旨の本件許可処分(乙6)をし,航空法40条に基づき,平成18年1月10日付け同年国土交通省告示第○号(乙7)をもって,本件空港の位置,範囲等を告示し,県八重山支庁- 11 -等において当該告示を掲示した。(乙6,7,25)(5) 県は,本件事業において,本件補正書に記載された本件事業に関する環境保全措置等(本件主務省令14条1項に規定する環境保全措置のほか,本件主務省令17条所定の事後調査及びその結果により環境影響の程度が著しいことが明らかとなった場合の対応その他の環境の保全のために行う一切の対応をいう。以下同じ。)の全てを実施する計画である。上記環境保全措置等の中で,県は,工事中の雨水等について,本件空港本体部分の周辺に設ける浸透ゾーンにより地下に浸透させて処理す のために行う一切の対応をいう。以下同じ。)の全てを実施する計画である。上記環境保全措置等の中で,県は,工事中の雨水等について,本件空港本体部分の周辺に設ける浸透ゾーンにより地下に浸透させて処理することなどを計画している。浸透ゾーンは,三つ設けられる計画であり,そのうちの二つ(浸透ゾーンⅠ及びⅢ)は本件空港本体部分の北東側に,一つ(浸透ゾーンⅡ)は南西側に設けられる(計画上の具体的な位置は別紙一般平面図のとおりである。)。また,滑走路等を整備するために盛土をする部分には,ドレーン層等を設けて,供用後の雨水をドレーン層から地下に浸透させ,地下水保全対策とする計画である(盛土部分の断面は,別紙標準断面図のとおりである。)。(乙3,23)(6) 原告らは,平成18年6月17日,本件訴訟を提起した。(顕著な事実)(7) 上記(2)ア(イ)の土地(所在石垣市α2,地番×番147,地目原野,地積776㎡の土地。以下「147共有地」という。)を共有する原告P2,原告P3,原告P4及び亡P5(平成▲年▲月▲日死亡により原告P6が訴訟承継)は,第2原告らに対し,α3の自然環境破壊につながる開発の阻止を図り,ひいてはα3サンゴ礁生態系や空港建設予定地のα7洞窟群生態系等の自然環境を保全し,それによってもたらされる有形無形の福利を第2原告らに享受せしめることを信託の目的として,上記原告P2ら(以下「原告P2ら」という。)が所有する財産について,次のアからクまでの事項に基づいて,管理,処分又はその他必要な行為を原告P2らが- 12 -自ら行う旨を通知する旨を記載し,郵便認証司が郵便法58条1号に規定する内容証明の取扱いに係る認証(同号の規定に従って記載された確定日付は平成21年5月18日である。民法施行法5条1項6号参照)をした同日付け書面( る旨を記載し,郵便認証司が郵便法58条1号に規定する内容証明の取扱いに係る認証(同号の規定に従って記載された確定日付は平成21年5月18日である。民法施行法5条1項6号参照)をした同日付け書面(内容証明郵便物)を,原告P7に対し送付し,この書面は同月19日に同原告に到達した(以下,この書面による信託を「本件自己信託」という。)。(甲130の1・2)ア信託の目的α3の自然環境破壊につながる開発の阻止を図り,ひいてはα3サンゴ礁生態系や本件空港建設予定地にあるα7洞窟群生態系等の自然環境を保全し,それによってもたらされる有形無形の福利を第2原告らに享受せしめること。 イ信託する財産147共有地ウ自己信託をする者の氏名原告P2,原告P3,原告P4及び亡P5エ受益者の氏名第2原告らオ信託財産に属する財産の管理又は処分の方法(ア) 147共有地について,受託者は区画・形質の変更を行わない。 (イ) 受託者は,第2原告ら以外の第三者に対して,147共有地の持分を譲渡,貸与しない。 カ信託行為の期限期限は定めない。 キ信託の終了事由(ア) 本件許可処分が取り消されたとき(イ) 147共有地について権利取得裁決がされ,147共有地の所有- 13 -権が移転したときク 147共有地が収用された場合の土地補償金の分配方法収用による土地補償金は,当該権利取得裁決時の所有者に帰属するものとする。 3 本件許可処分の根拠及び適法性に関する当事者の主張本件許可処分の根拠及び適法性に関する被告の主張は別紙本件許可処分の根拠及び適法性に関する被告の主張記載のとおりであるところ,後記4の争点に関する部分を除き,本件許可処分が飛行場設置許可の要件を充足していることに 拠及び適法性に関する被告の主張は別紙本件許可処分の根拠及び適法性に関する被告の主張記載のとおりであるところ,後記4の争点に関する部分を除き,本件許可処分が飛行場設置許可の要件を充足していることについて当事者間に争いはない。 4 争点(本案前)(1) 第2原告らの原告適格の有無(本案)(2) 航空法との関係での本件許可処分の適法性ア航空法38条2項及び3項並びに航空法施行規則78条1項及び76条1項4号の要件充足の有無イ 1号要件(航空法39条1項1号の要件)のうちの4号基準(航空法施行規則79条1項4号が定める基準)の充足の有無ウ 2号要件(航空法39条1項2号の要件)充足の有無エ 5号要件(航空法39条1項5号の要件)充足の有無(3) 評価法33条1項の審査との関係での本件許可処分の適法性ア評価法33条1項の審査及びこれについての司法審査の在り方イ本件許可処分の適法性(ア) 環境影響評価の手続の適否(イ) 環境影響評価の内容の適否a α3のサンゴ類ないしα3サンゴ礁生態系の保全- 14 -b 本件事業予定地周辺に生息するコウモリ類等の保全 5 争点に関する当事者の主張別紙争点に関する当事者の主張に記載のとおり(以下,同別紙で定義した略語を本文中においても使用する。)第3 当裁判所の判断 1 第2原告らの原告適格の有無(争点(1))について(1) 行政事件訴訟法9条は,取消訴訟の原告適格について規定するが,同条1項にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一 を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。そして,当該処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し,この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し,当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては,当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきものである(同条2項参照。以上につき,最高裁平成16年(行ヒ)第114号同17年12月7日大法廷判決・民集59巻10号2645頁- 15 -参照)。これに対し,第2原告らは,公益・私益区別論は改正行政事件訴訟法の下ではもはや合理性を失っており,個別保護要件を理由に原告適格の範囲を絞り込むことは立法趣旨に反するなどとるる主張するが(別紙争点に関する当事者の主張1(第2原告ら)(1)参照),以上に説示したところに照らし,この説示と異なる趣旨をいう限りにおいては,採用することがで 込むことは立法趣旨に反するなどとるる主張するが(別紙争点に関する当事者の主張1(第2原告ら)(1)参照),以上に説示したところに照らし,この説示と異なる趣旨をいう限りにおいては,採用することができない。 そこで,以上の観点を踏まえて,本件許可処分の相手方以外の者である第2原告らが本件許可処分の取消しを求める原告適格を有するか否かにつき検討する。 (2)ア航空法39条1項2号は,当該飛行場の設置によって他人の利益を著しく害することとならないものであることを飛行場設置許可の要件としている(2号要件)。これは,当該飛行場の設置によって著しく害されることから「他人の利益」を保護しようとするものであることは明らかである。 この点,被告は,同号の規定は主として制限表面等による私権制限の対象となる私人の財産権に対し配慮すべきことを定めたものであるという。 しかし,物件の制限等について定める航空法49条等の規定に照らし,同法39条1項2号は,同法49条による私権制限の対象となる財産権を保護する趣旨を含むものと解すべきことはそのとおりであるとしても,「他人の利益」には,例えば,設置しようとする当該飛行場周辺に居住する者が航空機の騒音によって障害を受けないという利益が含まれると解する余地は十分にあるといえること(最高裁昭和57年(行ツ)第46号平成元年2月17日第二小法廷判決・民集43巻2号56頁参照),「他人の利益」には何らの限定も付されていないことに照らし,航空法39条1項2号の規定の趣旨を被告がいうように限定的に解すべきものとは解されない。 - 16 -思うに,航空法39条1項2号は,飛行場が公共の利益に強く関わる公共施設である反面,広大な敷地を必要とし,また,飛行機が航行する施設であるといったことから とは解されない。 - 16 -思うに,航空法39条1項2号は,飛行場が公共の利益に強く関わる公共施設である反面,広大な敷地を必要とし,また,飛行機が航行する施設であるといったことから,その設置によって私的利益が受忍すべき限度を超えて侵害される事態が生じるおそれをはらんでいることに鑑み,「航空機を運航して営む事業の適正かつ合理的な運営を確保」するため(同法1条参照),著しく害されることから「他人の利益」を保護することとし,他人の利益を著しく害することとなるときには飛行場設置許可をしないものとして,そうした事態の発生を防止する趣旨であると解される。そして,「他人の利益」とは,これが法律をもって保護しようとする対象とされ,かつ,「他人の」ものであることに鑑みれば,飛行場の設置によって害され得るもので,当該飛行場を設置しようとする者以外の特定の個々人に帰属する法律上保護された私的利益をいうものと解される。 そうすると,この「他人の利益」に当たるといえれば,前記(1)の観点からみた法律上保護された利益にも当たるということができる。 なお,航空法39条2項は,処分行政庁が飛行場の設置の許可の審査を行う場合には,公聴会を開き,当該飛行場の設置に関し利害関係を有する者に当該飛行場の設置に関する意見を述べる機会を与えなければならない旨を定めており,この公聴会の制度は,同条1項2号の審査に資することを一つの目的としているものと解される。しかし,航空法施行規則80条は,同法39条2項の規定による利害関係を有する者とは同規則80条各号に列記されたものをいうとしているところ,同条各号に列記された者には,飛行場の区域等に私権を有する者のほかに,当該区域を管轄区域とする地方公共団体や飛行場を利用する者(同条2号の規 同規則80条各号に列記されたものをいうとしているところ,同条各号に列記された者には,飛行場の区域等に私権を有する者のほかに,当該区域を管轄区域とする地方公共団体や飛行場を利用する者(同条2号の規定に照らしてもこの「飛行場」とは設置の許可の対象とされる当該飛行場を指すものと解されるが,当該飛行場はいまだ設置されておらず,「利- 17 -用する者」には何らの限定も付されていないことに照らしても,当該飛行場を利用する意思を有する者であれば,これに該当するものと解される。)も含まれることに鑑みても,航空法39条2項の規定は,結局,法律上保護されたものか事実上のものかにかかわらず,さらに,私的利益であると公益であるとにかかわらず,広く当該飛行場の設置に関し利害関係を有する者の意見を聴き,飛行場の設置の許可の審査に資するものにしようとする趣旨と解されるから,同項の「利害関係を有する者」に当たるからといって,法律上保護された利益を有する者であるということはできないというべきである。 イ(ア) 第2原告らは,環境基本法,生物の多様性に関する条約,絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律,評価法及び新・生物多様性国家戦略との整合性の観点から,航空法39条1項2号の「他人の利益」には,第2原告らの環境的利益,特にコキクガシラやアオサンゴのような貴重な野生生物を生存させていくという生物多様性を確保することによる利益が含まれるなどと主張しており,この主張の趣旨は,上掲の法律等の趣旨及び目的をも参酌すると,貴重な野生生物を生存させていくという生物多様性を確保する環境的利益が公益を超えて第2原告らの個別的利益としても法律上保護されており,これが「他人の利益」に当たるというものであると解される。 (イ) ところで,環境基本 という生物多様性を確保する環境的利益が公益を超えて第2原告らの個別的利益としても法律上保護されており,これが「他人の利益」に当たるというものであると解される。 (イ) ところで,環境基本法は,環境の保全は,環境を健全で恵み豊かなものとして維持することが人間の健康で文化的な生活に欠くことのできないものであること及び生態系が微妙な均衡を保つことによって成り立っており人類の存続の基盤である限りある環境が,人間の活動による環境への負荷によって損なわれるおそれが生じてきていることに鑑み,現在及び将来の世代の人間が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受するとともに人類の存続の基盤である環境が将来にわたって維持さ- 18 -れるように適切に行われなければならないことを環境保全の基本理念の一つとした上で,環境基本法第2章に定める環境の保全に関する施策の策定及び実施は,基本理念にのっとり,① 人の健康が保護され,及び生活環境が保全され,並びに自然環境が適正に保全されるよう,大気,水,土壌その他の環境の自然的構成要素が良好な状態に保持されること,② 生態系の多様性の確保,野生生物の種の保存その他の生物の多様性の確保が図られるとともに,森林,農地,水辺地等における多様な自然環境が地域の自然的社会的条件に応じて体系的に保全されること,③ 人と自然との豊かな触れ合いが保たれることの確保を旨として行われなければならないとし,その環境の保全に関する施策の一貫として環境影響評価の推進のため必要な措置を講ずることを定めている(1条,3条,6条,14条,20条参照)。 また,評価法は,環境基本法20条が環境影響評価の推進のため必要な措置を講ずることを国に義務付けたことを受け,土地の形状の変更,工作物の新設等の事業を行う事業者がその事業 また,評価法は,環境基本法20条が環境影響評価の推進のため必要な措置を講ずることを国に義務付けたことを受け,土地の形状の変更,工作物の新設等の事業を行う事業者がその事業の実施に当たりあらかじめ環境影響評価を行うことが環境の保全上極めて重要であることに鑑み,環境影響評価について国等の責務を明らかにするとともに,規模が大きく環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価が適切かつ円滑に行われるための手続その他所要の事項を定め,その手続等によって行われた環境影響評価の結果をその事業に係る環境の保全のための措置その他のその事業の内容に関する決定に反映させるための措置を採ること等により,その事業において環境配慮がされることを確保し,もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に資することを目的として(評価法1条参照),制定されたものである。 そして,野生動植物は,生態系の重要な構成要素であるだけでなく,- 19 -自然環境の重要な一部として人類の豊かな生活に欠かすことのできないものであること(絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律1条参照)に照らしても,環境基本法や評価法が,人間の健康で文化的な生活に欠くことのできない環境を健全で恵み豊かなものとして維持し,現在及び将来の世代の人間がその恵沢を享受するとともに,人類の存続の基盤である環境が将来にわたって維持されるようにすることを一般的公益として保護しようとしており,その内容として野生生物の多様性が確保されるようにすることが含まれることは明らかである。 (ウ) しかし,生態系の多様性が確保されること,あるいは,野生生物の種の保存その他の生物の多様性の確保が図られることといっても,そ るようにすることが含まれることは明らかである。 (ウ) しかし,生態系の多様性が確保されること,あるいは,野生生物の種の保存その他の生物の多様性の確保が図られることといっても,そのことから直ちに保護対象としての具体的な内容やその主体の範囲,保護の態様等を明確にすることはできず,このことは,コキクガシラやアオサンゴのような貴重な野生生物を生存させていくという生物多様性を確保することと言ってみたところで同様である。そして,そうした野生生物の多様性が確保されるといった利益は,その性質を考えても,どのような場合にこれが侵害されたというのか一義的に明確でないばかりか,侵害されたとしても直ちに特定の者に著しい生活妨害や健康被害を生じさせるものではなく,また,その価値を評価するかどうかは多分に主観的な要素に係っていて,その利益が誰に帰属するのかを客観的に確定することも困難である(第2原告らの主張する上記のような環境は,人類の生存の基盤として人類が共にその保全に意を用いるべきものであることからすれば,人類一般がその利益の帰属主体であるというほかないともみられる。)。こうしたことに照らせば,前記(1)に掲げた観点に鑑みても,ある行政法規がこうした利益を一般的公益として保護することを超えて個々人の個別的利益として保- 20 -護する趣旨を含むというためには,当該行政法規及びその関連法令において,個々人の個別的なものとして保護されるべき利益の具体的な内容や主体の範囲,保護の態様等を画す趣旨を明確に読み取ることができることが必要であるというべきである。 (エ) この点に関して,第2原告らは,評価法1条の規定する「現在及び将来の国民の健康で文化的な生活」の内容には,個体としてのヒトが自然と触れて得られる人間性の回復や べきである。 (エ) この点に関して,第2原告らは,評価法1条の規定する「現在及び将来の国民の健康で文化的な生活」の内容には,個体としてのヒトが自然と触れて得られる人間性の回復や保健休養としての効用等の人間に対して環境が与える有形,無形の福利を享受することという具体的な利益が含まれ,また,評価法は,免許等の審査において,有意見者の意見は,その居住地域を問わず,事業に対する賛成,反対,その他提案事項等も含め尊重すべきことを要求しており,これらの者の利益が害されないように要請しているなどとした上で,飛行場設置許可により影響を受ける自然に触れることにより人間性の回復や保健休養としての効用等を享受し,あるいは,これを享受する蓋然性があった者で,当該飛行場設置許可が当該自然に与える影響についての有意見者について,第2原告らが主張する環境的利益が認められるとの趣旨を主張している。 しかし,評価法1条の「現在及び将来の国民の健康で文化的な生活」の内容について第2原告らが主張するように解することができるとしても,個体としてのヒトが自然と触れて得られる人間性の回復や保健休養としての効用等の人間に対して環境が与える有形,無形の福利を享受するという利益の内容はぼう漠としており,いかなる自然が保護の対象とされているのか,この利益がどの範囲の者に認められるのかといったことはおよそ明確とはいえない。そもそも,第2原告らの主張によれば,評価法は,将来の国民といういまだ具体的な利益の主体性を備えていない者に具体的な利益を認めたという背理を認めること- 21 -になるともいえるのであって,その主張をにわかに採用することはできない。 また,評価法は,その定める手続において,方法書及び準備書について有意見者に意見書の提出権 めること- 21 -になるともいえるのであって,その主張をにわかに採用することはできない。 また,評価法は,その定める手続において,方法書及び準備書について有意見者に意見書の提出権を認め(8条1項,18条1項),提出された意見の概要を都道府県知事に送付すること(9条)などそれらの意見の取扱いについて定めているが,こうして提出された意見の内容に関しては,都道府県知事が意見を述べたり,事業者が環境影響評価の項目等の選定及び評価書の作成をしたりする過程でこれに配意し,また,事業者がこれについての見解を示すことを定めるものの(10条3項,11条1項,14条1項4号,19条,20条2項,21条1項。なお,14条1項2号及び21条2項2号により,有意見者の意見の概要は準備書及び評価書に記載される。),それ以上の有意見者の意見の取扱いについては特段の定めを置いていない。第2原告らは,評価書作成過程において,有意見者の意見が最重要視されているなどと主張しているが(別紙争点に関する当事者の主張1(第2原告ら)(3)ア(ウ)),評価書を作成する過程で事業者が直接に考慮する意見が有意見者の意見と都道府県知事の意見のみであり,かつ,後者の意見は前者の意見又はその概要に配意して出されるものであって,その意味で前者の意見につき配意される場面が多いとしても,そのことは,有意見者の意見は多数に上ることも想定されその中には多様な内容が含まれ得ることから,都道府県知事等が意見を形成する上でも有意な場合があり得ることに鑑みたまでのものと解され,この関係から,評価法が有意見者の意見を特に尊重すべきことを定めているものということはできず,他に有意見者の意見を特に尊重すべきことを定めた規定は見当たらない。評価法が有意見者に対し方法書及び準備書に対する意見 評価法が有意見者の意見を特に尊重すべきことを定めているものということはできず,他に有意見者の意見を特に尊重すべきことを定めた規定は見当たらない。評価法が有意見者に対し方法書及び準備書に対する意見を述べることを認めたのは,後に詳述するように(後記6(1)- 22 -ア参照),地方公共団体や一般の人々を含めてその間に広く分散した形で保有されている環境情報を的確かつ効率的に収集し事業者が行う環境影響評価に役立てるためであると解され(このことは,評価法が制定された際の国会審議(乙49)における立法担当者の説明からも明らかである。なお,評価法14条1項4号,21条2項4号は有意見者等の意見に対する事業者の見解を準備書及び評価書に記載することとしているが,これは,事業者が有意見者等の意見につき勘案・配意することを確保するためであると解され,準備書及び評価書に記載されるのは有意見者の意見ではなくその概要にとどまること(評価法14条1項2号,21条2項2号)に鑑みても,事業者が個々の有意見者の意見に対して応答すべきことを定めたものとは考えられない。 したがって,P8・P9意見書(甲164の1)が説くような事業者の説明責任を認めることは困難である。),有意見者に対し,当該事業に関する社会的意思決定に参加する権利を認めたものとは解し得ない(そもそも事業に関する意思決定を行うのは事業者である。)。ましてや,評価法が有意見者に対し方法書及び準備書に対する意見を述べることを認めたことから,評価法33条の審査において有意見者の意見を,事業に対する賛成,反対,その他提案事項等も含めて尊重すべきことが要求されているとか,評価法が有意見者の実体的な利益が害されないように要請しているとかの結論を導くことはできない(第2原告らの主張によれば,場合によっては,相反す 提案事項等も含めて尊重すべきことが要求されているとか,評価法が有意見者の実体的な利益が害されないように要請しているとかの結論を導くことはできない(第2原告らの主張によれば,場合によっては,相反する意見をいずれも尊重すべきことになるが,そもそもそのようなことができるのかは疑問である。また,手続上一定の立場が認められているからといって,直ちに,その者の実体的な利益を尊重すべきことにはならないというべきであって,第2原告らの主張には論理の飛躍があるといわざるを得ない。)。 - 23 -さらに,第2原告らは,環境基本法1条,3条,6条,7条及び14条は,生態系の多様性を確保するという利益を含む法的利益を対象とした環境権を有することを確認しているなどというが(別紙争点に関する当事者の主張4(原告ら)(1)参照),これらの規定に照らしても,生態系の多様性の確保等に関し,個々人の個別的なものとして保護されるべき利益の具体的な内容や主体の範囲,保護の態様等を画す趣旨を明確に読み取ることは不可能であり,環境基本法が個々人の個別的,具体的な権利として第2原告ら主張のような環境権を認めたということはできない(なお,第2原告らは,憲法13条及び25条にも言及しているが,これらの憲法規定から直ちに第2原告ら主張のような個別的具体的な権利を導くことは困難である。)。 そして,評価法及び環境基本法のほか,第2原告らが引用する絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律,生物の多様性に関する条約の規定には,野生生物の多様性が確保されることに関して,他に,個々人の個別的な利益として保護されるべきものの具体的な内容や主体の範囲,保護の態様等を画す趣旨を明確に読み取ることができるものは見当たらず,その他この趣旨を明確に が確保されることに関して,他に,個々人の個別的な利益として保護されるべきものの具体的な内容や主体の範囲,保護の態様等を画す趣旨を明確に読み取ることができるものは見当たらず,その他この趣旨を明確に読み取ることができる関連法令の規定も見当たらない(なお,第2原告らは,新・生物多様性国家戦略を引用するが,これは法令に当たらない。)。 (オ) 結局,前記(ア)に掲げた法令及びその関連法令によって,飛行場設置許可により影響を受ける自然に触れることにより人間性の回復や保健休養としての効用等を享受し,あるいは,これを享受する蓋然性があった者で,当該飛行場設置許可が当該自然に与える影響についての有意見者について,個々人の個別的利益として第2原告らが主張するような環境的利益が認められるということはできないし,上記の法令の中に貴重な野生生物を生存させていくという生物多様性を確保する- 24 -ことの利益を個々人の個別的利益として保護する趣旨を含む規定が存在するとも認められない。 (カ) そして,他に,第2原告らが主張するような環境的利益を前記アでみたような「他人の利益」として保護する趣旨の法令は見当たらない。 ウまた,航空法39条1項2号の規定を離れて検討しても,航空法は,国際民間航空条約の規定並びに同条約の附属書として採択された標準,方式及び手続に準拠して,航空機の航行の安全及び航空機の航行に起因する障害の防止を図るための方法を定め,並びに航空機を運航して営む事業の適正かつ合理的な運営を確保してその利用者の利便の増進を図ることにより,航空の発達を図り,もって公共の福祉を増進することを目的とするものであって(1条参照),貴重な野生生物の保護あるいは生態系の多様性の確保を目的としたものではない。航空法及び航空 進を図ることにより,航空の発達を図り,もって公共の福祉を増進することを目的とするものであって(1条参照),貴重な野生生物の保護あるいは生態系の多様性の確保を目的としたものではない。航空法及び航空法施行令等のその関連法令には,騒音のほか,航空機の装備する発動機の排出物から環境を保護する趣旨であると解し得る規定が存するものの(航空法10条4項2号及び3号,航空法施行規則12条の2等。なお,国際民間航空条約第16附属書参照),貴重な野生生物を生存させていくという生物多様性あるいは生態系の多様性を確保することによる利益を個別具体的な利益として保護する趣旨であると解し得る規定は見当たらない。 これに対し,第2原告らは種々の主張をしているが(別紙争点に関する当事者の主張4(原告ら)(2)参照),以上に説示したところに照らし,いずれも失当である。 エさらに,評価法33条は,対象事業に係る免許等を行う者が当該免許等の審査に際し当該対象事業につき,環境配慮がされるものであるかどうかの審査(環境配慮審査)をすることを定め(1項),当該免許等に係る規定に定める基準に関する審査と環境配慮審査の結果を併せて判断するものとしており(2項),飛行場設置許可申請に関する航空法39条- 25 -1項所定の審査は,この「当該免許等に係る規定に定める審査」に含まれる(環境影響評価法施行令14条,別表第四参照)。したがって,前提事実によれば対象事業に係るものであることが認められる本件許可処分については,評価法もその処分の根拠となる法令に当たるということができる。 しかし,評価法及びその関係法令によって,第2原告らが主張するような環境的利益あるいは貴重な野生生物を生存させていくという生物多様性を確保することの利益が個々人の個別的利 とができる。 しかし,評価法及びその関係法令によって,第2原告らが主張するような環境的利益あるいは貴重な野生生物を生存させていくという生物多様性を確保することの利益が個々人の個別的利益として保護されているということができないことは,既に説示したところから明らかである(一般的公益として保護しようとしていることは前述のとおりである。)。 オ結局のところ,飛行場設置許可により影響を受ける自然に触れることにより人間性の回復や保健休養としての効用等を享受し,あるいは,これを享受する蓋然性があった者で,当該飛行場設置許可が当該自然に与える影響についての有意見者について,個々人の個別的利益として第2原告らが主張するような環境的利益が認められるということはできないし,航空法及びその関連法令(評価法及びその関連法令を含む。)が貴重な野生生物を生存させていくという生物多様性を確保することの利益を個々人の個別的利益として保護する趣旨を含むものであるとは認められず,この利益が航空法39条1項2号の「他人の利益」に含まれるものと解することもできない。第2原告らが主張する環境的利益は,一般的公益として保護されるが,その中に吸収され解消されるにとどまるものといわざるを得ない。 (3)ア次に,第2原告らは,本件自己信託によって,所有者(共有者)の使用処分権が制限され,その限度で第2原告らが消極的に147共有地の使用権を得たといえ,147共有地の共有者の権利と同等か又はそれ以上といってよいくらいに本件空港の敷地に対して密接な利害関係を持つ- 26 -立場となった,本件自己信託による第2原告らの受益権は,対価なく土地を使用できる権利という点で使用貸借による権利(航空法施行規則80条2項)に類似し,第2原告らは「土地に関する権利を - 26 -立場となった,本件自己信託による第2原告らの受益権は,対価なく土地を使用できる権利という点で使用貸借による権利(航空法施行規則80条2項)に類似し,第2原告らは「土地に関する権利を有する者」(同項)に該当するなどと主張している。 そして,航空法49条等の規定に照らし,同法39条1項2号の規定が同法49条による私権制限の対象となる財産権を保護する趣旨を含むものと解されることは既に説示したとおりであり(同法39条1項2号の「他人の利益」には,同法49条による私権制限の対象となる財産権が含まれるものと解される。),本件許可処分に基づきこの私権制限を受ける対象となる財産権を有する者は,本件許可処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」(行政事件訴訟法9条1項)に該当するものと解される(前提事実のとおり本件空港の敷地内に所在する本件共有地を共有する第1原告らは,この私権制限の対象とされる所有権(共有持分権)を有する者として,本件訴訟の原告適格を有するものと認められる。)。 イこの点,確かに,147共有地の共有者である原告P2らが本件自己信託をしたことは前提事実のとおりであり,本件自己信託により,第2原告らは,147共有地を信託財産とする受益権を取得したものと認められる。 しかし,前提事実によれば,① 本件自己信託は,α3の自然環境破壊につながる開発の阻止を図り,ひいてはα3サンゴ礁生態系や本件空港建設予定地にあるα7洞窟群生態系等の自然環境を保全し,それによってもたらされる有形無形の福利を第2原告らに享受せしめることを目的としており,本件自己信託においては,② 信託財産に属する財産の管理又は処分の方法として,本件土地について,受託者は区画・形質の変更を行わないことと,受託者は 利を第2原告らに享受せしめることを目的としており,本件自己信託においては,② 信託財産に属する財産の管理又は処分の方法として,本件土地について,受託者は区画・形質の変更を行わないことと,受託者は第2原告ら以外の第三者に対して本件土- 27 -地の持分を譲渡,貸与しないことが定められ,また,③ 信託の終了事由として,147共有地につき権利取得裁決がされてその所有権が移転することのほか,本件許可処分が取り消されることが定められている。 さらに,147共有地が収用された場合の土地補償金は,当該権利取得裁決時の所有者に帰属するものとするとされていることに鑑みても,第2原告らが本件自己信託によって取得した受益権は,α3の自然環境破壊につながる開発を阻止して,α3サンゴ礁生態系や本件空港予定地にあるα7洞窟群生態系等の自然環境を保全し,それによってもたらされる有形無形の福利を第2原告らが享受し続けられるようにするため,147共有地の共有者である原告P2らに対し,同人らが,自ら147共有地の区画・形質の変更をしたり,第2原告ら以外の第三者に対し147共有地の持分を譲渡又は貸与したりしないことを求める不作為請求権と,せいぜい,原告P2らが本件自己信託の定めに違反する行為をする場合における当該行為の差止め請求権(信託法44条1項)等の上記不作為請求権を確保するために同法の規定に基づいて取得する権利までであると認められる(同法2条7項参照)。 そうすると,第2原告らが本件自己信託によって取得した受益権が航空法49条1項による制限(一定の高さの建造物,植物その他の物件を設置し,植栽し,又は留置することの制限)によって規制される関係に立つとはおよそ認められない(第2原告らが本件自己信託によって取得した受益権は,第2原告らが147共 高さの建造物,植物その他の物件を設置し,植栽し,又は留置することの制限)によって規制される関係に立つとはおよそ認められない(第2原告らが本件自己信託によって取得した受益権は,第2原告らが147共有地を使用することを認めるものではないから,消極的に147共有地の使用権を得たなどという第2原告らの前記主張が失当であることは明らかである。)。 そして,原告P2らに対する前記のような内容の不作為請求権を主な内容とする第2原告らの本件自己信託による受益権が本件許可処分によって侵害されるというべき根拠は,他に見当たらない。 - 28 -(4) 以上によれば,第2原告らの主張に基づいて第2原告らが本件許可処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」に当たるということはできず,他に,第2原告らがこれに当たるというべき事情も見当たらない以上,第2原告らに本件訴訟の原告適格を認めることはできない。 2 航空法38条2項及び3項並びに航空法施行規則78条1項及び76条1項4号の要件充足の有無(争点(2)ア)について(1) 原告ら(第2原告らを除く。以下同じ。)は,県が本件申請書において本件共有地について1名分を除き所有者の氏名及び住所を記載しなかったとして,そのことが航空法38条2項及び航空法施行規則76条1項4号に違反するなどと主張している。 ところで,航空法施行規則76条1項4号が申請書に飛行場予定地の所有者の氏名及び住所の記載を求めたのは,飛行場予定地を特定する資料とするためであると解される(さらに,同規則78条1項によれば,飛行場予定地の所有者の氏名及び住所が航空法38条3項による公示及び掲示の対象事項に含まれるから,飛行場予定地の所有者の氏名及び住所を申請書に記載させることが公示及 らに,同規則78条1項によれば,飛行場予定地の所有者の氏名及び住所が航空法38条3項による公示及び掲示の対象事項に含まれるから,飛行場予定地の所有者の氏名及び住所を申請書に記載させることが公示及び掲示をする上で事実上便宜にかなうことも考慮されているものとも考えられる。)。原告らは,申請書における飛行場予定地の所有者の氏名及び住所の記載は,航空法39条2項で定められている公聴会で公述の申出をした者が当該区域内に私法上の権利を有しているか否かを処分行政庁が確認するのに不可欠なものであるなどというが,そのような確認を処分行政庁が行うとしても(そもそも,同項の公聴会において意見を述べる機会を与えられる「当該飛行場の設置に関し利害関係を有する者」には既に説示したとおり飛行場を利用する者も含まれること(航空法施行規則80条5号)に照らして,公聴会を開くに際して,公述を求める者が当該区域内に私権を有しているかどうかを処分行政庁が厳密に確認するということ自体に疑問がないではない。),申請書に記載があ- 29 -るか否かによって当該者が当該区域内に私権を有しているか否かを確定できるわけではないことに鑑みれば,原告らの上記主張を肯定することはできない。 本件申請書をみると,原告らが提出した甲第162号証によっても,本件共有地のそれぞれの土地について,共有者のうち1名の氏名及び住所が記載されたほかに,その余の共有者の人数が記載されていることに加え,当該土地の所在及び地番の記載によって本件共有地が空港予定地に含まれることが特定されているから,本件申請書が航空法38条2項及び航空法施行規則76条1項4号に違反しているということはできない(なお,原告らは,本件共有地の共有者だけその全員の氏名及び住所の記載がされなかったことは明らかに差別 本件申請書が航空法38条2項及び航空法施行規則76条1項4号に違反しているということはできない(なお,原告らは,本件共有地の共有者だけその全員の氏名及び住所の記載がされなかったことは明らかに差別的な取扱いであるなどというが,以上に説示したところから明らかなように,空港予定地の所有者の氏名及び住所の記載は空港予定地を特定するためのものである以上に特別の意味はないのであって,氏名及び住所の記載がないことによって本件共有地の共有者が何らかの不利益を受けることがあるとは認められず,この主張は失当である。)。 そして,他に要件該当性を疑わせる特段の事情はうかがわれないから,本件申請書は,航空法38条2項及び航空法施行規則76条1項4号の要件を満たしているものと認められる。 (2) 原告らは,本件申請に関して,航空法38条3項並びに航空法施行規則78条1項及び76条1項4号に基づく告示及び掲示において,飛行場予定地並びにその所有者の氏名及び住所の告示及び掲示に瑕疵があると主張している。 航空法38条3項は,処分行政庁に対し,飛行場の設置の許可の申請があったときに,飛行場の位置及び範囲,公共の用に供するかどうかの別,着陸帯,進入区域,進入表面,転移表面,水平表面,供用開始の予定期日その他国土交通省令で定める事項を告示するとともに,現地においてこれを- 30 -掲示することを義務付けている。また,航空法施行規則78条1項は,当該国土交通省令で定める事項として,同規則76条1項1号から5号まで,8号及び9号に掲げる事項を定め,同項4号は,飛行場予定地又は予定水面並びにそれらの所有者の氏名及び住所を掲げている。航空法39条2項が同条1項の審査を行う場合には公聴会を開き,飛行場の設置に関し利害関係を有する者に当該飛行場の設 項4号は,飛行場予定地又は予定水面並びにそれらの所有者の氏名及び住所を掲げている。航空法39条2項が同条1項の審査を行う場合には公聴会を開き,飛行場の設置に関し利害関係を有する者に当該飛行場の設置に関する意見を述べる機会を与えなければならないとしていることに鑑みれば,同法38条3項がこのような告示及び掲示を定めているのは,飛行場の設置に関し利害関係を有する者に,飛行場の設置の許可の申請があったこと及びその申請の概要を告知し,公聴会において当該飛行場の設置に関する意見を述べる機会を保障しようとする趣旨であると解される。 ところで,前提事実に加え,証拠(乙3,4,11)及び弁論の全趣旨によれば,本件申請書には,本件空港予定地の土地全360筆のうち被告及び県が所有する65筆を除く295筆中289筆について,その所有者(共有者を含む。以下同じ。)から知事宛ての「新石垣空港整備事業用地として,適正な価格で譲渡することに同意します。」等との記載のある同意書(以下「譲渡同意書」という。)の写しが添付され,その余の6筆は,所有者が行方不明であるか所有者の相続人が不存在であるため当該土地の県に対する売渡しを承諾する意思の有無を確認することができない4筆(うち3筆は同一人の所有である。)と本件共有地であったこと(147共有地の共有者は,全員が146共有地の共有者でもある。なお,146共有地の共有者の一部(9名)は,譲渡同意書を提出しており,その余の者(600名以上)及び147共有地の共有者全員については,本件申請書の添付書類上,県に対するその共有持分権の売渡しを承諾する意思がないことが確認されたとされている。),処分行政庁は,本件申請を受けて,平成17年10月17日付けで,制限表面等,航空法38条3項及び航空- 31 -法施行規則78条 分権の売渡しを承諾する意思がないことが確認されたとされている。),処分行政庁は,本件申請を受けて,平成17年10月17日付けで,制限表面等,航空法38条3項及び航空- 31 -法施行規則78条1項所定の事項を同年国土交通省告示第○号(乙4)として告示するとともに,県八重山支庁等において当該告示を掲示したこと,当該告示及び掲示には,飛行場の予定地として「沖縄県石垣市α2××番ほか三百五十九筆」,飛行場の予定地の所有者の氏名及び住所として「P10株式会社(沖縄県石垣市α8×番地一)ほか七百四十七名」と記載されているほか,「(飛行場の予定地並びにその所有者の氏名及び住所の詳細については,沖縄県庁において縦覧に供する。)」と記載され,さらに,標点の位置の記載や地図等によって飛行場の範囲,着陸帯,進入区域,進入表面,水平表面,転移表面が表示されていること(これらの表示に用いられている地図等を対比すれば,この飛行場の範囲は,着陸帯,進入区域並びに水平表面及び転移表面の投影面内の区域によって覆い尽くされていることが明らかである。)が認められる。そして,上記のとおり,146共有地は多数の者によって共有されており,その共有者の多くにつき共有持分権の売渡しを承諾する意思がないことが確認されたとされていること,本件空港予定地で他に多数の者によって共有されている土地は見当たらないことに鑑みれば,146共有地は,α4岳陸上案予定地の土地を取得し空港建設のためには同土地を売却しないというα3トラスト運動の対象地であって,その共有者は全員がα3トラスト運動の参加者であると推認される。他方,航空法施行規則80条は,航空法39条2項の規定による利害関係を有する者に,飛行場の区域,進入区域又は転移表面,水平表面等の投影面内の区域の土地又は建物について所有権などに あると推認される。他方,航空法施行規則80条は,航空法39条2項の規定による利害関係を有する者に,飛行場の区域,進入区域又は転移表面,水平表面等の投影面内の区域の土地又は建物について所有権などによる権利その他土地建物に関する権利を有する者や,飛行場を利用する者が含まれる旨規定している。 以上によれば,本件空港予定地(被告及び県が所有するものを除く。)の所有者のほぼ全員が,本件申請の当時には,その所有地(共有地を含む。 以下同じ。)が本件空港予定地に含まれることを知っていたと認められ- 32 -(多くの所有者は,知事宛てに譲渡同意書を提出していることに照らし,その所有地が本件空港予定地に含まれることを知っていたはずである。また,本件共有地の共有者(146共有地の共有者の中には147共有地の共有者全員が含まれる。)は,α3トラスト運動の参加者であって,本件共有地が本件空港予定地に含まれることを当然に知っていたはずである。),その所有地が本件空港予定地に含まれることを知っていたことが確認できないのは,既に所有名義人が死亡しており相続人が存在しない1筆分を除けば,行方不明のため県に対する当該土地の売渡しを承諾する意思の有無を確認することができない3筆の土地の所有者P11のみにすぎない。そして,上記告示・掲示には,1名分を除いて飛行場の予定地の所有者の氏名及び住所の記載が省略されていたものの,飛行場の予定地が石垣市α2××番ほか359筆であることが示され,飛行場の範囲,着陸帯,進入区域,進入表面,水平表面,転移表面が図示されていること等とあいまって,当該飛行場の範囲内に土地を所有する者等にとって,自らが航空法39条2項所定の利害関係者に該当することを認識することが可能な情報が一応含まれているものと認められる。さらに,飛行場の予定 あいまって,当該飛行場の範囲内に土地を所有する者等にとって,自らが航空法39条2項所定の利害関係者に該当することを認識することが可能な情報が一応含まれているものと認められる。さらに,飛行場の予定地並びにその所有者の氏名及び住所の詳細については,県庁において縦覧に供することも告示,掲示されており,その詳細を確認する方法が示されていることに鑑みても,前記のような航空法38条3項の告示・掲示の趣旨に照らし,飛行場の予定地の所有者の氏名及び住所の記載が1名分を除いて省略されていたからといって,本件の告示・掲示に航空法38条3項並びに航空法施行規則78条1項及び76条1項4号に違反する瑕疵があると認めることはできない。 (3) そして,他に特段の事情も認められない以上,本件申請に関し,航空法38条2項及び3項並びに航空法施行規則78条1項及び76条1項4号の要件は充足されているというべきである。 - 33 - 3 1号要件のうちの4号基準の充足の有無(争点(2)イ)について(1) 原告らは,① 本件空港の滑走路直下に洞窟ないし空洞が存在し,それらが崩壊することなどにより本件空港の滑走路が陥没ないし崩壊するおそれがあること,② 本件空港の滑走路において強い乱気流が発生するおそれがあること,③ 本件空港の滑走路が津波により水没するおそれがあることを理由に,本件許可処分が航空法39条1項1号及び航空法施行規則79条1項4号に違反した違法なものであるとして種々の主張をしている。 (2)ア航空法38条1項は,処分行政庁以外の者が飛行場を設置しようとするときは処分行政庁の許可を受けなければならないと定め,同法39条1項1号は,当該飛行場の位置,構造等の設置の計画が国土交通省令で定める基準に適合するものであることを飛行場設置 行場を設置しようとするときは処分行政庁の許可を受けなければならないと定め,同法39条1項1号は,当該飛行場の位置,構造等の設置の計画が国土交通省令で定める基準に適合するものであることを飛行場設置許可の要件としている。そして,航空法施行規則79条1項4号は,陸上飛行場にあっては,滑走路,誘導路及びエプロン(以下「滑走路等」ということがある。)が,これらを使用することが予想される航空機の予想される回数の運航に十分耐えるだけの強度(以下「十分な強度」という。)を有するものであることを航空法39条1項1号の基準の一つとする。他方,航空法42条は,飛行場の設置者は,当該許可に係る施設の工事が完成したときは,遅滞なく処分行政庁の検査を受けなければならず(1項),処分行政庁は,この検査の結果当該施設が申請書に記載した設置の計画に適合していると認めるときはこれを合格としなければならないこと(2項),飛行場の設置者は,同条1項の検査の合格があったときは遅滞なく供用開始の期日を定めてこれを処分行政庁に届け出なければならず(3項),この規定により届け出た供用開始の期日以後でなければ当該施設を供用してはならないこと(4項)を定めている。 これらによれば,航空法は,第1段階として,飛行場を設置しようとする者に飛行場設置許可を受けることを義務付け,飛行場設置許可申請- 34 -の審査において,飛行場の施設の設置の計画が国土交通省令で定める基準に適合するものであることを基準として審査することを定めるとともに,第2段階として,設置許可を受けた飛行場の施設の工事が完成したときに,当該施設が申請書に記載された設置の計画に適合するものであるかどうかを審査することとし,この審査に合格した後に飛行場の設置者が定めて処分行政庁に届け出た供用開始の期日より前に当 事が完成したときに,当該施設が申請書に記載された設置の計画に適合するものであるかどうかを審査することとし,この審査に合格した後に飛行場の設置者が定めて処分行政庁に届け出た供用開始の期日より前に当該施設を供用することを禁じている。このように,第1段階の飛行場設置許可申請の審査の段階では,施設の設置の計画が基準に適合するものであるかについて審査して,基準に適合しない計画による飛行場の施設の設置工事が行われることを防ぐとともに,第2段階の完成検査の審査の段階では,完成した施設がその設置の計画に適合するものであるかについて審査することにより,設置の計画に適合せず,ひいては基準に適合しない施設が供用されることを防ぐことによって,航空機の航行の安全及び航空機の航行に起因する障害の防止(航空法1条参照)を図ろうとしているものと解される。 航空法施行規則76条1項5号は,飛行場の設置の許可の申請書の記載事項として「滑走路の強度」を掲げているが,その記載は,例えば,本件でいえば「単車輪荷重31.5t,舗装体の設計強度LA-12」といったものであり,第1段階の飛行場設置許可申請の審査における4号基準についての審査は,このように申請書に記載された設置が計画されている滑走路の強度が,使用することが予想される航空機の予想される回数の運航に照らして,十分な強度を有するものであるかどうか等について審査するものである。 イ他方,航空法施行規則の一部を改正する省令(平成20年国土交通省令第54号)が平成20年7月1日に施行されたことにより(同省令附則1項参照),自然災害等に対する安全を担保するため,航空法施行規則- 35 -の定める空港の設置基準に,滑走路等の自重,地震動,水圧,波浪等による損傷等が当該施設の機能を損なわず,継続 同省令附則1項参照),自然災害等に対する安全を担保するため,航空法施行規則- 35 -の定める空港の設置基準に,滑走路等の自重,地震動,水圧,波浪等による損傷等が当該施設の機能を損なわず,継続して使用することに影響を及ぼさないことを追加する内容の改正が行われた(甲115,116参照)。このことに照らしても,「滑走路,誘導路及びエプロンがこれらを使用することが予想される航空機の予想される回数の運航に十分耐えるだけの強度を有するものであること。」(航空法施行規則79条1項4号)とは,航空機の運航による外力,すなわち航空機の荷重による外力が繰り返し加わることに対する滑走路等の属性としての強さの程度について,予想される航空機の予想される回数の運航に十分耐えるだけのものを求める趣旨であると解される。 (3)ア以上によれば,原告らの前記主張のうち,② 本件空港の滑走路において強い乱気流が発生するおそれがあることをいうものはもとより,③本件空港の滑走路が津波により水没するおそれがあることをいうものも,4号基準とは何ら関係しないというべきであって,いずれも失当である(乱気流の発生が航空機の荷重による外力に対する滑走路の属性としての強さの程度に何ら関係しないことはいうまでもないことであるし,津波による滑走路の水没は,これにより滑走路等が損傷を受けることをいうものであるとしても,前記のように航空法施行規則が改正された経過に照らし,当該改正前の規定に基づく基準である4号基準とは関係しないことが明らかである。)。 イまた,原告らの前記主張のうち,① 本件空港の滑走路直下に洞窟ないし空洞が存在し,それらが崩壊することなどにより本件空港の滑走路等が陥没ないし崩壊するおそれがあることをいうものは,これが実際に設置される滑走路等が強度不足 うち,① 本件空港の滑走路直下に洞窟ないし空洞が存在し,それらが崩壊することなどにより本件空港の滑走路等が陥没ないし崩壊するおそれがあることをいうものは,これが実際に設置される滑走路等が強度不足となるおそれがあることをいうものであれば,実際に設置される滑走路,誘導路及びエプロンが計画された当該強度を有するものであるかどうかは第2段階の完成検査の際の審査事項- 36 -であることに照らし,失当であるといわざるを得ない(滑走路直下の洞窟等の崩落のおそれの有無は,今後第2段階の完成検査の際に慎重に審査されるべきものということができる。)。 ウこれに対し,原告らは,4号基準においては滑走路等の直下の地盤の強度も当然に問題となり,飛行場設置許可処分がされた当時の計画が実現した場合における滑走路等の直下の客観的強度(補強等がある場合はそれを含めた強度)と飛行場における航空機滑走の頻度,滑走する航空機等の荷重,滑走路等の建造物の構造との相関関係によって,その適合性が判断されると主張している。 確かに,滑走路等が十分な強度を有することを基準として定める航空法施行規則79条1項4号の「滑走路,誘導路及びエプロン」にはそれらの基礎地盤が当然に含まれ,4号基準に関する審査において滑走路等が基礎地盤の点を含めて十分な強度を有することが審査の対象となるものと解することができる(航空法施行規則の一部を改正する省令(平成20年国土交通省令第54号)による同号の改正は,その趣旨を明確にするものであると解される。また,同様の観点から,航空法施行規則76条1項5号に基づいて飛行場の設置の許可の申請書に記載される「滑走路の強度」は,基礎地盤の点も含めて設置を計画する滑走路の強度を記載することが求められているものと解される。)が,それは,基礎地盤を含め 項5号に基づいて飛行場の設置の許可の申請書に記載される「滑走路の強度」は,基礎地盤の点も含めて設置を計画する滑走路の強度を記載することが求められているものと解される。)が,それは,基礎地盤を含めた滑走路等の計画される強度がその基準を満たすかどうか(十分な強度を有することを予定する計画となっているかどうか)を審査するものであるというべきである。 これに対し,原告らの上記主張が,滑走路等の設置の計画と滑走路等の直下の地盤の客観的強度とを対比,区別して考えるというものであるとすれば,その場合,滑走路等の直下の地盤の強度が明らかにならなければ4号基準の審査をすることができないはずであるが,飛行場の設置- 37 -の許可の申請書の記載事項及び添付書類等について定める航空法施行規則76条及び77条の規定に照らしても滑走路等の直下の地盤の強度についての記載又は資料の添付を求める趣旨の規定は見当たらないことに鑑みても,航空法及び航空法施行規則はそのような対比,区別を予定するものではないと解さざるを得ない(本件申請書についてみても,本件空港の滑走路等の直下の地盤の強度を明らかにする記載も,これを明らかにする添付資料も存しない(なお,原告らは,本件申請書の記載事項及び添付書類について,争点(2)アに関するものの他には特段の主張をしておらず,争点(2)アに関わるもの以外の記載事項及び添付書類に不足がないことにつき当事者間に争いはないものと認められる。)。)。 結局,平成20年国土交通省令第54号による改正前の航空法施行規則において,4号基準は,設置を計画する滑走路等が基礎地盤の点も含めて十分な強度を有するものであることを求めるものであるというべきであるが,この場合の滑走路等(基礎地盤も含む。以下同じ。)の設置の計画とは,具体的には,設置し を計画する滑走路等が基礎地盤の点も含めて十分な強度を有するものであることを求めるものであるというべきであるが,この場合の滑走路等(基礎地盤も含む。以下同じ。)の設置の計画とは,具体的には,設置しようとする滑走路等が有すべき性能としての強度そのものについての計画を指すものと解される(飛行場の設置の許可の申請書の記載事項を定める航空法施行規則76条1項5号は「滑走路の強度」とするのみであって,「滑走路の強度を実現するための構造等の計画」などとの定めは置いていないこと,飛行場の設置の許可の申請時における滑走路等の直下の地盤の強度について,これを滑走路それ自体等の強度と区別して申請書の記載事項とし又はこれを明らかにする資料を添付書類とする航空法及び航空法施行規則等の関連法令の規定は見当たらないことに加え,飛行場の設置の許可を受けた者(飛行場の設置者)は当該施設について国土交通省令で定める航空の安全のため特に重要な変更を加えようとするときは国土交通大臣の許可を受けなければならないとされ(航空法43条1項),この規定による許可を受- 38 -けなければならない重要な変更の一つとして,滑走路,着陸帯,誘導路又はエプロンの強度の変更が定められている一方で(航空法施行規則85条1号参照),飛行場の設置の許可を受けた者がその許可を受けた際に有していた滑走路等の構造等をどのようなものとするかについての具体的な計画(設計図書等)を変更することについては国土交通大臣の許可を必要としていないこと(飛行場設置許可の申請書に記載すべき飛行場の施設の概要(同規則76条1項8号参照)や,申請書に添付すべき飛行場の工事設計図書又は仕様書(同条2項3号参照)につき,設置許可を受けた後に変更があった場合にも,その変更の許可は必要とされていない。)に鑑みれば,強度に関 1項8号参照)や,申請書に添付すべき飛行場の工事設計図書又は仕様書(同条2項3号参照)につき,設置許可を受けた後に変更があった場合にも,その変更の許可は必要とされていない。)に鑑みれば,強度に関する滑走路等の設置の計画とは,例えば単車輪荷重31.5tに耐えられる滑走路等にすることといった滑走路等が有すべき性能の計画を意味するものと解さざるを得ない。)。原告らの前記主張が,上記のような性能の計画を離れて,飛行場の設置の許可の申請時点において設計図書等に基づき一応想定されている工事方法等によって施工がされた場合(補強がある場合にはこれに補強が施された後)における実際の強度を専ら問題とするものであれば,失当であるというべきである。 (4) そして,前提事実に加え,証拠(乙3,8)及び弁論の全趣旨によれば,① 本件申請書において,本件空港の滑走路の単車輪荷重は31.5t,舗装体の設計強度はLA-12,滑走路の舗装の種類はアスファルトコンクリート舗装,誘導路の舗装の種類はアスファルトコンクリート舗装,エプロンの舗装の種類はセメントコンクリート舗装,滑走路端部中央帯は下層路盤(粒状材修正CBR≧30)厚さ140mm,上層路盤(アスファルト安定処理材)厚さ130mm,基層厚さ30mmが2層及び表層50mm,平行・末端誘導路は下層路盤(粒状材修正CBR≧30)厚さ140mm,上層路盤(アスファルト安定処理材)厚さ130mm,基層- 39 -厚さ70mm及び表層70mm,エプロンは上層路盤(粒状材修正CBR≧45)厚さ150mm及びコンクリート360mmなどとする計画であることが示されていること(なお,単車輪荷重31.5tは,沖縄県空港の設置及び管理に関する条例5条1項本文の規定により,宮古空港及び久米島空港(これらの空港は,B76 ト360mmなどとする計画であることが示されていること(なお,単車輪荷重31.5tは,沖縄県空港の設置及び管理に関する条例5条1項本文の規定により,宮古空港及び久米島空港(これらの空港は,B767等の中型ジェット機が就航するのに対応した滑走路を有している。)について,単車輪荷重がそれ以上となる場合には,空港の施設を使用してはならないとされている航空機の単車輪荷重と同じである。),② 本件申請書上,本件空港の利用を予定する航空機の種類及び形式はB767-300,B737-400,DHC-8及びBN-2B型旅客機,平成28年度の年間旅客数は合計2238千人,機材別ピーク日便数は中型ジェット(B767-300)が14便,小型ジェット(B737-400)が38便,プロペラ機1(DHC-8)が2便,プロペラ機(BN-2B)が2便の合計56便,平成33年度の年間旅客数は合計2597千人,機材別ピーク日便数は中型ジェット(B767-300)が16便,小型ジェット(B737-400)が44便,プロペラ機1(DHC-8)が2便,プロペラ機(BN-2B)が2便の合計64便などとされていること,③ 国土交通省航空局監修の航空土木施設設計基準(乙8)によれば,滑走路等の基本施設及びそれに付帯する施設の舗装の設計荷重は,設計の対象となる舗装上の設計年数にわたる推計交通(通常は10年を標準とする。)を基に,設計荷重の区分のいずれかの中から選ぶことを標準とし,また,設計反復作用回数は,設計の対象となる舗装上の設計年数にわたる交通量と交通分布から求める方法等により算定し,設計反復作用の回数の区分のいずれかを選ぶことを標準とするなどとされた上,解説において,設計荷重としては,アスファルト舗装の場合,対象機材の中で最も厚い舗装厚を必要とする荷重区分を選ぶのが一般 し,設計反復作用の回数の区分のいずれかを選ぶことを標準とするなどとされた上,解説において,設計荷重としては,アスファルト舗装の場合,対象機材の中で最も厚い舗装厚を必要とする荷重区分を選ぶのが一般的などとされていること,④ 同基準における設計荷重の区分L- 40 -A-12は,B767を対象機種としていることが認められる。また,原告らは,本件申請書に示された上記のような滑走路等の設置の計画それ自体の4号基準への適合性に関しては特段の問題点を指摘していない。 以上によれば,本件空港の滑走路は,本件空港の利用を予定する航空機のうち単車輪荷重が最も大きいと認められるB767-300の荷重に耐えられる単車輪荷重に対応するものとして計画されており,また,滑走路等の基本施設及びそれに付帯する施設の舗装は,航空土木施設設計基準に基づき最も厚い舗装厚等を必要とするB767-300に対応した設計荷重の区分LA-12により推計交通に応じた設計反復作用回数の区分を選択して計画されているものであって,これらの計画は,基礎地盤を含めてそうした計画の実現を企図するものであると認められる。 (5) これらによれば,本件空港において設置が計画されている滑走路等は十分な強度を有するものと認められる(原告らの前記(3)ウに摘示した主張が,前述したような設計図書等に基づき想定されている工事方法等によって施工された場合の実際の強度を問題とするのではなく,基礎地盤を含めた滑走路等の設置の計画を問題にしており,当該計画が十分な強度を有しないことをいうものであるとしても,本件空港における滑走路等の強度の計画は以上に説示したとおりであり,十分な強度を有するものと認められるのであって,原告らの上記主張は失当であるといわざるを得ない。また,この判断は,原告らが前記①の 本件空港における滑走路等の強度の計画は以上に説示したとおりであり,十分な強度を有するものと認められるのであって,原告らの上記主張は失当であるといわざるを得ない。また,この判断は,原告らが前記①の主張に関連して様々に主張するところ及び本件空港予定地の地盤等に関して提出した種々の証拠のいずれによっても左右されない。)。 なお,航空法が飛行場の設置に関して前記のような2段階の審査を予定している趣旨等に鑑みたとしても,飛行場設置許可の申請書及びその添付書面から当該性能の計画におよそ実現可能性がないことが明らかであるときには,それを4号基準の審査というかどうかはともかく,当該飛行場設置- 41 -許可をすることができず,これに反してされた飛行場設置許可処分は不適法であると解する余地はあるが,高度に発達した現代の土木技術の水準に鑑みて,そのことが認められるのは特別の事情がある例外的な場合に限られるというべきであり,本件申請書及びその添付書面(乙3)に照らし,本件許可処分についてはこのような事情を認めることができない(むしろ,本件許可処分後の調査により空洞に崩落する可能性がある箇所があることが判明したことを受けて平成19年7月に行われた第10回P12委員会において,空洞対策工法として,場所に応じてアーチ(直接基礎)工法又はスラブ(直接基礎)工法が最適であるとされた経過(甲11)等に照らしても,当該性能の計画は十分に実現可能性があるというべきである。)。 以上によれば,本件申請における本件空港の位置,構造等の設置の計画は4号基準に適合しており,この点に関する1号要件を充足するものとした処分行政庁の判断に違法はないというべきである。 4 2号要件充足の有無(争点(2)ウ)について(1) 航空法39条1項2号は当該 しており,この点に関する1号要件を充足するものとした処分行政庁の判断に違法はないというべきである。 4 2号要件充足の有無(争点(2)ウ)について(1) 航空法39条1項2号は当該飛行場の設置によって他人の利益を著しく害することとならないものであることを飛行場設置許可の要件としているところ(2号要件),同号の趣旨が飛行場の設置によって私的利益が受忍すべき限度を超えて侵害される事態の発生を防止しようとするものであって,この「他人の利益」とは,飛行場の設置によって害され得るもので,当該飛行場を設置しようとする者以外の特定の個々人に帰属する法律上保護された私的利益をいうものであると解されることは既に説示したとおりである(なお,「他人」の利益である以上,自然物それ自体の利益を観念することができたとしてもこれが含まれないことはいうまでもないことである。)。この点,原告らは,航空法39条1項2号の「他人の利益」には,原告らの環境的利益,特に,コキクガシラ及びアオサンゴのような貴重な野生生物を生存させていくという生物多様性を確保することによる利- 42 -益が当然に含まれるなどというが,この主張が失当であることも既に説示したとおりである。 また,上記のような2号要件の趣旨に照らせば,他人の利益を著しく害することとならないものであるかどうかは,当該飛行場の公共性の有無やその程度,当該飛行場の設置によって侵害される他人の利益の性質及び内容,その侵害の態様及び程度,侵害に対する補償措置の有無やその内容等を総合的に考慮してこれを判断すべきものと解され,その判断は処分行政庁の合理的な裁量に委ねられているものと考えられる。 そうすると,2号要件の充足を認めた処分行政庁の判断が違法となるのは,その判断に裁量権の範囲の逸脱又 べきものと解され,その判断は処分行政庁の合理的な裁量に委ねられているものと考えられる。 そうすると,2号要件の充足を認めた処分行政庁の判断が違法となるのは,その判断に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるというべき事情が認められる場合に限られるというべきである。 (2) 原告らは,上記の環境的利益が侵害されると主張するばかりであり(この主張が失当であることは,上述したところから明らかである。),他に処分行政庁の判断に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があることを示す事情を何ら主張立証していない。他方,本件空港予定地の土地(被告及び県が所有するものを除く。)全295筆中289筆について,その所有者から知事に対し譲渡同意書が提出されていることは,既に説示したとおりである。 また,前提事実に加え証拠(乙3,10)及び弁論の全趣旨によれば,本件空港予定地やその周辺には畑や牧草地,荒地,山林等が広がっており,航空機騒音の被害を及ぼす人口密集地等は付近に存しないこと(P1委員会の資料上,α4岳陸上案により新空港を設置した場合に航空機騒音の及ぶ対象は,畜舎15件(WECPNL75が1件,同70が14件),養鶏場1件(WECPNL75),倉庫5件(WECPNL75が2件,同70が3件),肉用牛センター1件(WECPNL75)のほかに,民家が5件(WECPNL70)の合計27件であるとされている。),本件空港の制限表面の上に出る高さの物件は,α4岳及び原野を除くと,樹木- 43 -合計173本,電柱合計9本,樹林合計11件及びサイロ2本(それらの所有者は合計11人)のみであること,平成17年11月10日に石垣市に所在する県八重山支庁において開催された本件空港設置許可に係る公聴会においては,公述の申込みをした16人全員が公述したところ(一部代読 は合計11人)のみであること,平成17年11月10日に石垣市に所在する県八重山支庁において開催された本件空港設置許可に係る公聴会においては,公述の申込みをした16人全員が公述したところ(一部代読等がある。),県を代表した公述人を除く15人の公述人の中には,本件空港の設置により自ら又は第三者の利益が害される旨を訴えた者は一人もなく,α3の住民の自治組織である公民館の館長を含めたその全員が本件空港の設置に賛成する趣旨の公述をしたことが認められる。 以上によれば,むしろ,処分行政庁が本件空港の設置によって他人の利益を著しく害することとならないと認めたことには相当な理由があるということができ,その判断が裁量権の範囲の逸脱又は濫用に出たものであるとはおよそ認めることができない。 よって,本件申請が2号要件を充足するものと認めた処分行政庁の判断に違法はないというべきである。 5 5号要件充足の有無(争点(2)エ)について(1) 5号要件は,申請者が飛行場の敷地について所有権その他の使用の権原を有するか,又はこれを確実に取得することができると認められることを要件としている。確実に取得することができると認められることとは,取得しようとすれば取得の結果が確実に実現することになるという客観的な見込みが存在することをいうものと解される。 この点,原告らは,航空法が土地収用法の制定後に制定された法律であり,立法者が土地収用法が存在することを前提にあえて権原を確実に取得することができると認められるとの要件を規定したことなどを理由に,原則として,土地収用法による手続ではない任意取得の方法により取得しようとすれば取得が確実に実現することとなるという見込みが存在することが申請時までに証明されなければならないなどと主張 どを理由に,原則として,土地収用法による手続ではない任意取得の方法により取得しようとすれば取得が確実に実現することとなるという見込みが存在することが申請時までに証明されなければならないなどと主張している。 - 44 -しかし,5号要件が定められた趣旨は,次のように考えられる。すなわち,飛行場の設置は相当な規模の敷地を必要とするものであり,その設置のための工事も相当な規模のものとなるところ,敷地全部の使用権原を確実に取得できる見込みもないのに設置工事に着手することを認めた場合,相当な費用のほか社会的コスト(工事に伴い発生する様々な支障を関係する地域社会が受忍することを含む。)を掛けることになるのに,使用権原の一部でも取得できなければ飛行場の設置そのものが不能となってしまうが,このような事態は社会経済的にみて望ましいものとはいえない。また,特に,公共の用に供する飛行場については,一旦その設置許可がされた場合には航空法49条による制限が課され,また,当該飛行場が供用されるかどうかはその利用者の利害に強く関係することになる。このように,一旦飛行場設置許可がされるとそのことに起因して種々の公共の利益に関わる問題を胚胎する状況となることに鑑み,飛行場を設置しようとする者が敷地の使用権原を取得できない結果飛行場の設置をすることが不能となる事態が生じないように,敷地使用の権原を現に有さず,かつ,これを確実に取得することができるとは認められない場合には飛行場の設置を認めないこととするものであると解される。このような5号要件が定められた趣旨に照らしても,飛行場を設置しようとする者が敷地使用の権原を取得する方法のいかんは,何ら問われるものではない(多くの敷地について任意取得の見込みがほとんどない場合には,確実に取得することができると認められ ても,飛行場を設置しようとする者が敷地使用の権原を取得する方法のいかんは,何ら問われるものではない(多くの敷地について任意取得の見込みがほとんどない場合には,確実に取得することができると認められるとはいい難いことにはなるが,部分的に任意取得ができず,土地収用法による収用の方法が想定されるというにとどまる場合には,常に5号要件を欠くということはできない。)。 そして,土地収用法3条12号は,航空法による飛行場で公共の用に供するものを同法の適用対象事業として明示する一方,航空法39条1項5号は,同法が原告らの主張のとおり土地収用法制定後に制定されたにもかか- 45 -わらず,土地収用法により土地を収用する方法を敷地使用の権原を取得する方法から除外してはおらず,同号につき,土地を収用する方法を除外する趣旨は認められない。 そうすると,敷地使用の権原を取得する方法を原告らの主張するような任意買収等の交渉によることに限定して解する必要性は認められず,また,その相当性もないというべきである(原告らは,土地収用法による収用によれば敷地の取得が当然に可能となるにもかかわらず,あえて5号要件が定められたとして上記の主張をしているようであるが,土地収用法による収用は同法所定の要件を満たさなければ不可能であることや収用手続によることの相当性等も考慮されるべきであることに鑑みれば,この主張はそもそも前提を誤っており理由がないというべきである。なお,原告らが引用するP13運輸大臣(当時)の地域振興連絡協議会に対する文書による回答,運輸省航空局が成田空港問題円卓会議に提出した「基本的な考え方」及びP14運輸省航空局飛行場部計画課長(当時)の静岡空港建設反対運動をしている団体の質問に対する平成6年10月24日の回答は,運用上の対応方針を示した 空港問題円卓会議に提出した「基本的な考え方」及びP14運輸省航空局飛行場部計画課長(当時)の静岡空港建設反対運動をしている団体の質問に対する平成6年10月24日の回答は,運用上の対応方針を示したものにとどまり,いずれも法令には当たらないことが明らかであって,以上の判断を何ら左右しない。)。 (2) 以上によれば,使用の権原を確実に取得することができると認められるためには,前記のとおり,これを取得しようとすればその取得が確実に実現することになるという見込みが存在するといえることが必要であり,そのためには,売買契約を締結することによって所有権を譲り受けるといった方法のほか,土地収用法による収用をする方法も含めて,使用の権原を取得するために採ることができる現実的な方法があり,その方法を採った場合に権原取得の目的を達することが実際に期待できるといえる合理的な根拠の存在が認められることが必要であるというべきである。そこで,この観点から,本件申請について検討する。 - 46 -ア前記2において認定した事実に加え,証拠(乙3,11)及び弁論の全趣旨によれば,① 本件申請書及びその添付書類上,本件事業の総事業費は420億円(国直轄事業費合計33億0300万円を除くと386億9700万円であり,うち沖縄振興開発特別措置法による国庫補助対象事業(国庫の補助の割合が10分の9)が341億9700万円(うち国庫補助の額307億7730万円),県単独事業が45億円)であり,平成17年度からの8か年計画で,同年度に5億2050万円(うち国庫補助対象事業3億2050万円,県単独事業2億円),平成18年度に61億0737万6000円(うち国庫補助対象事業48億0600万円,県単独事業13億0137万6000円),平成19年度に59億7501万 事業3億2050万円,県単独事業2億円),平成18年度に61億0737万6000円(うち国庫補助対象事業48億0600万円,県単独事業13億0137万6000円),平成19年度に59億7501万5000円(うち国庫補助対象事業49億2100万円,県単独事業10億5401万5000円),平成20年度に51億9332万2000円(うち国庫補助対象事業49億2600万円,県単独事業2億3232万2000円),平成21年度に50億9846万1000円(うち国庫補助対象事業48億6300万円,県単独事業1億1146万1000円),平成22年度に68億5799万1000円(うち国庫補助対象事業63億8400万円,県単独事業1億7199万1000円),平成23年度に81億0872万9000円(うち国庫補助対象事業58億2450万円,県単独事業7億3622万9000円),平成24年度に41億3860万6000円(うち国庫補助対象事業21億5200万円,県単独事業6億9260万6000円)の支出を見込んでおり,うち県が負担すべき総額79億1970万円は一般県費をもって充てる旨,及び設置による土地の調達は,民有地等買収を要するものは買収し,普通財産である国有財産については国有財産法,空港整備法等の規定に基づき取得を行う旨が記載されていること,② 県議会は,平成16年7月22日に「新石垣空港の早期事業- 47 -化に関する要請決議」を,同年11月29日に「新石垣空港整備事業の平成17年度事業化に関する要請決議」をそれぞれ全会一致で議決したこと,③ 平成17年度県一般会計予算(歳出予算総額5859億3300万円,うち土木費961億9173万円)は平成17年第1回県議会の平成17年3月29日の会議において原案どおり可決されたこと,④ 本件空港の敷地に 年度県一般会計予算(歳出予算総額5859億3300万円,うち土木費961億9173万円)は平成17年第1回県議会の平成17年3月29日の会議において原案どおり可決されたこと,④ 本件空港の敷地に供する土地(土地の一部である場合を含む。以下同じ。)360筆面積合計142万0442㎡のうち,行方不明であったり既に死亡している上に相続人が不存在であったりしてその所有者の県に対する売渡しを承諾する意思の有無を確認することができない土地4筆面積合計3829㎡と本件共有地2筆(α3トラスト運動の参加者632名が共有する146共有地と,原告P2らが共有する147共有地)面積合計1556㎡を除いたもの354筆面積合計141万5057㎡は,被告又は県の所有であるか,石垣市を含めその所有者(共有の場合共有者全員)が譲渡同意書を提出した土地で占められていること,⑤ 146共有地の共有者で譲渡同意書を提出している者が9名いること,⑥ 知事は,本件申請に際して,国土交通省航空局長宛てに,残る同意を得ていない共有地権者に対して,今後ともねばり強く説得に当たり,事業への理解と協力を求めていくこと等により,県の責任において当該土地を取得する旨を確約し,また,相続人が不存在の1名及び不在者1名についても,民法上の手続等を通じて事業執行に支障のないよう県の責任において当該土地を取得することを確約する旨記載された確約書(乙11)を提出していることが認められる。 イこれらによれば,上記354筆の土地面積合計141万5057㎡について,県が既に所有しているもののほかは,国有財産法,空港整備法等の規定に基づいて取得を行う方法や,売渡しを受ける方法を現に採ることができ,この方法を採ることによってそれらの所有権を取得するこ- 48 -とが相当程度の確実性をもって期待 有財産法,空港整備法等の規定に基づいて取得を行う方法や,売渡しを受ける方法を現に採ることができ,この方法を採ることによってそれらの所有権を取得するこ- 48 -とが相当程度の確実性をもって期待できるというべきである(特に,被告及び石垣市が所有するものについては確実に取得することができると認められる。)。また,所有者が行方不明であったり既に死亡しておりその相続人が不存在であったりする4筆の土地面積合計3829㎡については,不在者の財産の管理人や相続財産の管理人の選任を請求するなどの手続をした上で,当該管理人から売渡しを受ける方法を現に採ることができ,この方法を採ることによってそれらの所有権を取得することができる可能性は十分にあるというべきである。さらに,原告らは,本件共有地の共有者のうち少なくとも約300名が処分行政庁に対して内容証明郵便により自ら所有する土地を本件空港建設用地に提供しない旨の意思を表示したなどと主張しているが,そうした事情があったとしても,他方においてα3トラスト運動の参加者の中にも146共有地について譲渡同意書を提出した者が複数名いることに照らせば,県がねばり強く説得に当たり,事業への理解と協力を求めていくこと等により,その共有持分権の売渡しを受けるに至る可能性を否定することはできない。 ウさらに,売渡しを受ける方法によったのでは本件空港の敷地の一部を取得できない事態に至ったとしても,その場合には,土地収用法による土地の収用によりこれを取得することが考えられ,この方法を採ることができれば,権原取得の目的を達することが確実に期待できるといえるから,問題は,土地の収用が使用の権原を取得するために採ることができる現実的な方法であるといえる合理的な根拠があるということができるかどうかである。そして,土地収用 ることが確実に期待できるといえるから,問題は,土地の収用が使用の権原を取得するために採ることができる現実的な方法であるといえる合理的な根拠があるということができるかどうかである。そして,土地収用法16条及び47条の2第1項の規定によれば,起業者は,土地の収用をしようとするときは,事業の認定を受けなければならない一方,事業の認定を受けた事業について収用の裁決の申請をすれば,原則として収用の裁決を受けることができる。 そうすると,県は,本件事業につき事業の認定を受けることができると- 49 -いえれば,土地の収用が使用の権原を取得するために採ることができる現実的な方法であるといえる合理的な根拠があるということができる。 (3) そこで,県が本件事業につき事業の認定を受けることができるといえるか,本件事業につき土地収用法20条の定める事業の認定の要件が認められるかどうかについて検討する必要がある。もっとも,この検討をするには,同条3号の要件との関係で,本件事業を実施することにより環境的利益が損なわれるかどうかといった点についても検討を加える必要が生じる。 そのため,土地収用法20条の定める事業の認定の要件が認められるかどうかについて検討する前に,便宜上,本件事業の環境的利益に関わる争点である争点(3)についてまず検討することとする。 6 評価法33条1項の審査及びこれについての司法審査の在り方(争点(3)ア)について(1)ア評価法は,環境影響評価について,土地の形状の変更,工作物の新設等の事業を行う事業者がその事業の実施に当たりあらかじめその事業に係る環境への影響について自ら適正に調査,予測又は評価を行い,その結果に基づき,その事業に係る環境の保全について適正に配慮することと規定する環境基本法20条の規定を受けて制定 りあらかじめその事業に係る環境への影響について自ら適正に調査,予測又は評価を行い,その結果に基づき,その事業に係る環境の保全について適正に配慮することと規定する環境基本法20条の規定を受けて制定されたものであり,土地の形状の変更,工作物の新設等の事業を行う事業者がその事業の実施に当たりあらかじめ環境影響評価を行うことが環境の保全上極めて重要であることに鑑み,環境影響評価について国等の責務を明らかにするとともに,規模が大きく環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価が適切かつ円滑に行われるための手続その他所要の事項を定め,その手続等によって行われた環境影響評価の結果をその事業に係る環境の保全のための措置その他のその事業の内容に関する決定に反映させるための措置を採ること等により,その事業に係る環境の保全について適正な配慮がされることを確保し,もって現在及び将- 50 -来の国民の健康で文化的な生活の確保に資することを目的としている(評価法1条)。そして,評価法は,環境影響評価につき,事業の実施が環境に及ぼす影響について環境の構成要素に係る項目ごとに調査,予測及び評価を行うとともに,これらを行う過程においてその事業に係る環境の保全のための措置を検討し,この措置が講じられた場合における環境影響を総合的に評価することと定義している(2条1項)。 さらに,評価法は,このように環境影響評価を当該事業の実施主体である事業者が自ら行うものであることを前提とした上で(なお,評価法12条参照),事業者に対し,① 環境影響評価の実施に先立って,対象事業の目的及び内容,環境影響評価の項目並びに調査,予測及び評価の手法等を記載した方法書(評価法5条1項,本件主務省令2条1項ないし4項)を作成して,それについて有意見者及 価の実施に先立って,対象事業の目的及び内容,環境影響評価の項目並びに調査,予測及び評価の手法等を記載した方法書(評価法5条1項,本件主務省令2条1項ないし4項)を作成して,それについて有意見者及び対象事業に係る環境影響を受ける範囲であると認められる地域を管轄する都道府県知事からの意見(この都道府県知事からの意見には実質上当該地域を管轄する市町村長からの意見も含まれ得る。)を受けるための手続を行い(5条ないし10条),② 提出された意見につき勘案・配意して,方法書に記載した環境影響評価の項目等に検討を加えた上で,本件主務省令5条ないし12条に定めるところにより環境影響評価の項目並びに調査,予測及び評価の手法を選定した上で(評価法11条),それらに基づいて,本件主務省令14条ないし17条に定めるところにより,事業の実施が環境に及ぼす影響について環境の構成要素に係る項目ごとに調査,予測及び評価を行うとともに,これらを行う過程においてその事業に係る環境の保全のための措置を検討し,この措置が講じられた場合における環境影響を総合的に評価するものである環境影響評価を実施し(評価法12条),③ 方法書についての上記の意見又はその概要,この意見についての事業者の見解のほか,環境影響評価の項目並びに調査,予測及び- 51 -評価の手法,環境の保全のための措置を含む環境影響評価の結果等を記載した準備書(評価法14条1項,本件主務省令18条)を作成して,これについて有意見者及び関係都道府県知事からの意見(関係都道府県知事からの意見には実質上関係市町村長からの意見も含まれ得る。)を受けるための手続を行い(14条ないし20条),④ 上記の意見につき勘案・配意して準備書の記載事項について検討を加え,当該事項の修正を必要とすると認めるときは必要に応じて改め 意見も含まれ得る。)を受けるための手続を行い(14条ないし20条),④ 上記の意見につき勘案・配意して準備書の記載事項について検討を加え,当該事項の修正を必要とすると認めるときは必要に応じて改めて環境影響評価を実施するなどした上で,準備書に記載すべき事項のほか,準備書についての上記の意見又はその概要及びこの意見についての事業者の見解を記載した評価書(評価法21条2項,本件主務省令19条)を作成して,免許等を行う者からの意見(免許等を行う者からの意見には環境大臣からの意見も含まれ得る。)を受けるための手続を行い(21条ないし24条),⑤ 免許等を行う者等の意見(24条意見)を勘案して,評価書の記載事項に検討を加え,当該事項の修正を必要とすると認めるときは必要に応じて修正部分について改めて環境影響評価を行うなどした上で,本件主務省令20条の定めるところにより評価書の補正をし,その上で免許等を行う者等に確定評価書(補正後の評価書)を送付するとともに,関係都道府県知事等に確定評価書,これを要約した書面及び評価法24条の書面(24条意見が記載されたもの。以下「24条書面」という。)を送付し,また,評価書を作成した旨等の公告や確定評価書及び24条書面(以下「確定評価書等」という。)等の縦覧をすること(25条ないし27条)を義務付けている(以下,事業者自らが行う環境影響評価に加え,環境影響評価をめぐり事業者が外部から意見を受けるための手続を含む以上のような評価法の定める一連の手続の全体を「外部手続を含む環境影響評価手続」という。)。 イこのように,評価法が,①方法書の手続,②環境影響評価の実施,③準- 52 -備書の手続,④評価書の手続,⑤評価書の再検討及び確定の手続という段階を踏む外部手続を含む環境影響評価手続を定め,方法 このように,評価法が,①方法書の手続,②環境影響評価の実施,③準- 52 -備書の手続,④評価書の手続,⑤評価書の再検討及び確定の手続という段階を踏む外部手続を含む環境影響評価手続を定め,方法書,準備書及び評価書のそれぞれについて,その段階に応じて有意見者,関係する都道府県知事等又は免許等を行う者等(以下,これらの者を「外部者」ということがある。)からの意見を受けることとしたのは,環境影響評価が,事業者がその事業の実施に当たりあらかじめその事業に係る環境への影響について自ら適正に調査,予測又は評価を行い,その結果に基づき,その事業に係る環境配慮をするものであって,そのために有益な情報は事業者が自ら収集するのが基本であるものの,そうした環境情報は地方公共団体等や一般の人々の間に広く分散して保有されており,これを的確かつ効率的に収集するための仕組みが必要とされることによるものと解される。そして,評価法が用意した環境情報を的確かつ効率的に収集する仕組みが機能するには,外部手続を含む環境影響評価手続が適切に進められることが必要であることに鑑みれば,外部者からの意見には手続の進行に関するものも含まれ,評価法は,事業者が外部者からの意見について配意・勘案してそれを手続の自律的かつ適切な進行に役立てることをも想定しているものと解される。 また,外部手続を含む環境影響評価手続によって最終的に作成される確定評価書等には,環境影響評価の項目並びに調査,予測及び評価の手法,環境保全措置等を含む環境影響評価の結果に加え,方法書及び準備書について外部者から提出された意見又はその概要,それらの意見についての事業者の見解,24条意見等が記載されていることに照らせば,確定評価書等は,外部手続を含む環境影響評価手続の最終成果物であって,当該事業による環境へ 出された意見又はその概要,それらの意見についての事業者の見解,24条意見等が記載されていることに照らせば,確定評価書等は,外部手続を含む環境影響評価手続の最終成果物であって,当該事業による環境への影響を調査,予測及び評価するとともに,環境保全措置が講じられた場合の環境影響を総合的に評価した結果の集大成であり,環境情報を集積し,これによって環境保全措置の検討を含- 53 -む環境影響評価及びその再検討を行い,その内容を確定させた過程(外部手続を含む環境影響評価手続の過程)及びその結果の集約物であるということができ,以上のことを逆にいえば,外部手続を含む環境影響評価手続は,このような内容の確定評価書等を作成するための手続であるともいうことができる。 ウさらに,評価法は,事業者に対し,評価法27条の規定による公告を行うまで,対象事業を実施してはならないとして(31条),外部手続を含む環境影響評価手続が確実に履践されることを担保し,その上で,対象事業に係る免許等を行う者に,確定評価書等に基づき,当該対象事業につき,環境配慮がされるものであるかどうかの審査(環境配慮審査)をすることを求め(33条1項),当該規定に定める当該基準に関する審査(以下「免許等基準審査」という。)と環境配慮審査の結果を併せて判断するものとし,免許等基準審査に適合している場合であっても,当該判断に基づき,当該免許等を拒否する処分を行い,又は当該免許等に必要な条件を付することができるものとする(同条2項1号)などしている。 これは,確定評価書等が外部手続を含む環境影響評価手続の最終成果物であって,外部手続を含む環境影響評価手続は確定評価書等を作成するための手続であるともいえること,確定評価書等が,当該対象事業による環境への影響を調査, が外部手続を含む環境影響評価手続の最終成果物であって,外部手続を含む環境影響評価手続は確定評価書等を作成するための手続であるともいえること,確定評価書等が,当該対象事業による環境への影響を調査,予測及び評価するとともに,環境保全措置が講じられた場合の環境影響を総合的に評価した結果の集大成であり,環境情報を集積し,これによって環境保全措置の検討を含む環境影響評価及びその再検討等を行い,その内容を確定させる過程(外部手続を含む環境影響評価手続の過程)及びその結果の集約物であることから,確定評価書等に基づいて,当該対象事業が環境配慮をするものであるかどうかを審査し,免許等基準審査の結果のみによれば当該免許等をすべき場合- 54 -であっても,免許等基準審査の結果と環境配慮審査の結果を併せて判断して当該免許等を拒否する処分等をすることができることとして,外部手続を含む環境影響評価手続の実効性を担保し,そのことをもって環境影響評価が適切かつ円滑に行われ,かつ,その結果が環境保全措置その他の当該対象事業の内容に関する決定に反映されるなどの環境配慮の確保に結び付けられるようにしているものであると解される。更に敷えんすれば,環境配慮審査は,上記のとおり,確定評価書等に基づいて,すなわち確定評価書等の内容を判断材料として,当該対象事業が環境配慮をするものであるかどうかを審査するものであるが,そのためには,前提として確定評価書の内容が環境配慮をするものとなっているかどうかを確認した上,確定評価書において検討された事項等に照らして審査判断をしていくことになる。その結果,外部手続を含む環境影響評価手続の結果(確定評価書に記載された環境影響評価の結果)が環境配慮をするものであり(不合理なものではなく),かつ,当該結果に照らして環境保全措置等を含む当該 る。その結果,外部手続を含む環境影響評価手続の結果(確定評価書に記載された環境影響評価の結果)が環境配慮をするものであり(不合理なものではなく),かつ,当該結果に照らして環境保全措置等を含む当該対象事業の内容が環境配慮をするものであるといえれば,当該対象事業において環境配慮がされるものであるといえることになる。評価法は,このような観点から,外部手続を含む環境影響評価手続の過程及び結果の集約物である確定評価書等に基づき当該対象事業について環境配慮審査をすることとし,もって,当該対象事業につき環境配慮がされることを確保しようとするものであると考えられる。 評価法33条2項各号の文言に照らし,例えば,同項1号の場合に当該免許等を行う者は,免許等基準審査の結果適合性が認められる場合において,環境配慮審査の結果では適合性が認められないときには,当該免許等を拒否する処分又は当該免許等に必要な条件を付することができるものの,必ず当該免許等を拒否する処分等をしなければならないとされているわけではなく,当該免許等を付与する処分をすることも可能であ- 55 -る(原告らは,環境配慮は絶対的な考慮要素であるなどと主張しており,その趣旨は,環境配慮審査適合性が認められないときは必ず免許等を拒否する処分をしなければならないというものであると解されるが,評価法及びその関連法令にそのように解し得る根拠は見当たらず,失当といわざるを得ない。)。しかし,評価法が対象事業において環境配慮がされることを確保し,もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に資することを目的としていること(1条),環境配慮審査が外部手続を含む環境影響評価手続の実効性を担保するために行われるものであることに加え,当該免許等に必要な条件を付することもできるとされているこ 資することを目的としていること(1条),環境配慮審査が外部手続を含む環境影響評価手続の実効性を担保するために行われるものであることに加え,当該免許等に必要な条件を付することもできるとされていることに鑑みれば,当該対象事業につき,環境配慮がされるものであるとはいえないにもかかわらず,必要な条件を付することもなく当該免許等を付与することができるのは例外的な場合に限られるというべきであり,免許等基準審査適合性が明白に認められることに加え,免許等基準審査の結果と環境配慮審査の結果を併せて判断したところ環境配慮審査適合性が認められなくても当該免許等を付与すべきやむにやまれざる事情が認められる場合であることを要するものと解される。 他方,免許等基準審査適合性に加え,環境配慮審査適合性が認められる場合に,当該免許等を行う者は,当該免許等を付与する処分をすることになるが,環境配慮審査は,環境の保全についての適正な配慮(環境配慮)がされるものであるかどうかの審査であって,包括的な概念である「環境」につき,その構成要素に変動をもたらす程度の規模内容を持つ土地の形状の変更等の事業である対象事業(評価法2条2項ないし4項参照)が行われ,その意味で「環境」の構成要素の一部は必ず変動することを前提に,当該変動の後前を通じて「環境」が「保全」されること,すなわち一定の状態のままに保持されることを問題とするものであることに鑑みれば,環境配慮審査は,全体としては変動がある中で「保全」- 56 -されるべき対象を取捨選択することの当否の判断を必然的に含む審査であるが,この当否を判断する際によるべき基準について直接定めた法令の規定は見当たらないから,その判断を当該免許等を行う者の合理的な裁量に委ねられたものと解さざるを得ない。また,保全のための手段方法 あるが,この当否を判断する際によるべき基準について直接定めた法令の規定は見当たらないから,その判断を当該免許等を行う者の合理的な裁量に委ねられたものと解さざるを得ない。また,保全のための手段方法は当然に一つではなく,保全についての「配慮」の内容や程度は多種多様にあり得るところ,そのような中で何をもって「適正な配慮」とするのかの判断も当然に含む審査であるところ,この判断においてよるべき基準を定めた法令の規定も見当たらないから,この点も当該免許等を行う者の合理的な裁量に委ねられたものと解すべきであって,環境配慮審査において当該免許等を行う者には合理的な範囲での裁量権が認められているといわざるを得ない。 そして,この環境配慮審査は,前記のとおり,確定評価書等に基づく審査であり,具体的には,確定評価書等に基づいて環境保全措置等を含む当該対象事業の内容が環境配慮をするものであるといえるかどうかを審査するものであるが,そのためには,外部手続を含む環境影響評価手続の結果が環境配慮をするものであると認められるかどうか(不合理なものでないかどうか)を検討する必要があり,そのためには,これを検証する限度で,当該結果に至る外部手続を含む環境影響評価手続の過程を検討する必要があるから,結局,確定評価書等に基づき,事業者が行った環境影響評価の項目並びに調査,予測及び評価の手法の選定や,それらに基づいて行われた環境の構成要素に係る項目ごとの調査,予測及び評価,それらを行う過程における環境保全措置の検討,当該措置が講じられた場合における環境影響の評価,さらに,これらの事項の再検討等,環境影響評価の結果の確定(外部手続を含む環境影響評価手続の結果の確定でもある。)に至るまでの過程につき,確定評価書等に集約された外部者からの意見をも含めた環境情報に照 に,これらの事項の再検討等,環境影響評価の結果の確定(外部手続を含む環境影響評価手続の結果の確定でもある。)に至るまでの過程につき,確定評価書等に集約された外部者からの意見をも含めた環境情報に照らして,外部手続を含む環境- 57 -影響評価手続の各過程を検討することが必要となる。当該免許等を行う者は,このような検討によって,外部手続を含む環境影響評価手続の結果が環境配慮をするものであり,かつ,その結果に照らして,環境保全措置を含む当該対象事業の内容が環境配慮をするものであると認められる場合に,環境配慮審査適合性を認めることになる。 (2)ア以上によれば,免許等を行う者が環境配慮審査適合性を認めて当該免許等を付与した判断が違法であるというためには,少なくとも,確定評価書等に基づき当該対象事業につき環境配慮がされるものであるとしたその判断が事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるなど,免許等を行う者に付与された裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものであることが明らかであることを要するものと解される(このことが認められる場合でも,さらに,免許等を行う者には,環境配慮審査適合性が認められない場合にも当該免許等を付与することができる前記のような裁量権があるから,当該判断が違法であるというためには,この点からの別段の考慮も必要となる。)。また,この場合,外部手続を含む環境影響評価手続が適正に実施されているかどうかは司法審査の直接の対象ではないが,当該対象事業につき環境配慮がされるものであるかどうか(環境配慮審査適合性)を審査するには,外部手続を含む環境影響評価手続の結果(環境影響評価の結果)が環境配慮の観点から合理的であるかどうかを審査する必要があり,そのためには当該結果が確定されるに至るまでの外 審査適合性)を審査するには,外部手続を含む環境影響評価手続の結果(環境影響評価の結果)が環境配慮の観点から合理的であるかどうかを審査する必要があり,そのためには当該結果が確定されるに至るまでの外部手続を含む環境影響評価手続の過程について検討する必要があるから,この過程の検討も以上のような観点から司法審査の内容に含まれることになる(環境影響評価手続の過程において手続上の瑕疵のために環境影響評価を左右する重要な環境情報が収集されずそのまま環境影響評価の結果が確定された場合等には,免許等を行う者による環境配慮審査適合性が認められるとの判断が違法- 58 -とされる余地があるものと解される。)。 原告らは,合理的理由なくして23条意見に沿わない環境配慮審査の結果,許認可等処分がされたときはその判断は違法となるというが,環境配慮審査は確定評価書及び24条意見に基づいて行われるものであって,これが23条意見に基づくべきことを求める評価法又はその関連法令の規定は見当たらないことに鑑みても,この主張をそのまま採ることはできない。 また,原告らは,合理的理由を示すことなく24条意見に対応しなかった場合にされた許認可等処分は当然に違法となるというが,評価法及びその関連法令に24条意見に従うべきことや24条意見に従わない場合にはその合理的理由を示すべきことを事業者に義務付ける趣旨の規定は見当たらないこと,24条意見は,環境保全の見地からより望ましい環境配慮の在り方を含めて幅広く述べられ得るものであり,環境配慮上必要不可欠な事由に限って述べられるものではないことに鑑みても,上記の主張には理由がないというべきである。 イ加えて,これまでに検討したところによれば,外部手続を含む環境影響評価手続は,事業者が,外部者か 述べられるものではないことに鑑みても,上記の主張には理由がないというべきである。 イ加えて,これまでに検討したところによれば,外部手続を含む環境影響評価手続は,事業者が,外部者からの環境情報を取り入れて,環境影響評価の実施及びその結果の見直し等を行い,これを確定する手続であるということができ,そこでは,外部者からの環境情報は,評価法所定の手続にのっとって収集・確定され,それらにつき勘案・配意して,環境影響評価の項目や手法の選定が行われた上で環境影響評価が実施され,また,その結果の見直し・再検討が行われた上で,環境影響評価の結果が確定される。そして,環境配慮審査は,このようにして確定された確定評価書等に基づいて対象事業につき環境配慮がされるものであるかどうかを審査するものであり,その一環として,上記の手続の過程についても環境配慮の観点からその合理性を検討するものであるということが- 59 -できる。これらのことに鑑みれば,環境配慮審査についての司法審査も,こうした手続の過程及び結果の集大成である確定評価書等に基づいて行うべきことは制度上当然の要請であると考えられる。もとより,①確定評価書等に現れた事実でなくても,②公知の事実や③公知とまではいえないにしても処分行政庁として知り又は当然知り得た事実(争いのない科学的知見を含む。)であれば,①の事実と共に環境配慮審査の基礎になるとしても,これら①ないし③の事実以外の事実(以下「確定評価書等外の事実」という。)はいわば手続外の情報であるから,環境配慮審査において確定評価書等外の事実が考慮されていないとしても,そのことから免許等を行う者の環境配慮審査適合性が認められるとの判断に裁量権の範囲の逸脱又は濫用が認められるとはいえないというべきである(同様の観点に加え,前述のと 事実が考慮されていないとしても,そのことから免許等を行う者の環境配慮審査適合性が認められるとの判断に裁量権の範囲の逸脱又は濫用が認められるとはいえないというべきである(同様の観点に加え,前述のとおり,外部者からの意見には手続の進行に関するものも含まれ,評価法は,事業者が外部者からの意見について配意・勘案してそれを手続の自律的かつ適切な進行に役立てることを想定しているものと解されることに鑑みれば,環境影響評価手続の過程に手続上の瑕疵があることが確定評価書等に現れていない場合には,当該瑕疵があることを免許等を行う者が考慮していないとしてもそのことをもって裁量権の範囲の逸脱又は濫用を認めることはできないというべきである。ただし,評価法の定める外部者からの意見を受ける手続が履践されておらず,そのため外部者が手続上の瑕疵があることにつき意見を提出することができなかったなど,評価法の定める根幹的手続が実施されずそのため重要な環境情報が収集されなかった場合には,評価法の予定する評価書に基づく環境配慮審査が行われたものということはできないというべきであり,確定評価書等にそのことが現れているか否かにかかわらず,その点が免許等の違法を来すものと解される。)。 7 評価法33条との関係での本件許可処分の適法性(争点(3)イ)について- 60 -そこで,次に,前記6の観点から原告らの主張を順次検討する。 (1) 環境影響評価手続違反を理由とする本件許可処分の違法性について原告らが主張する事由は,それに沿う事実が必ずしも確定評価書等に現れていない点をおくとしても,次のようにいうことができる。 ア方法書段階での手続違反について原告らは,本件方法書の公告縦覧が行われたのが本件事業の基本計画未発表の時点 現れていない点をおくとしても,次のようにいうことができる。 ア方法書段階での手続違反について原告らは,本件方法書の公告縦覧が行われたのが本件事業の基本計画未発表の時点であり,本件事業がどの場所に,自然環境のどの要素に,どの程度の影響を与えるかを判断する材料を与えられなかったなどと主張している。しかし,事業の基本計画が発表された後でなければ方法書の公告縦覧の手続をしてはならない旨の法令の規定は見当たらない。そして,評価法5条1項2号によれば,方法書に対象事業の内容を記載しなければならず,さらに,本件主務省令2条1項によれば,方法書に対象事業の内容を記載するに当たっては,事業の種類,事業が実施されるべき区域の位置,事業の規模,事業に係る飛行場の利用を予定する航空機の種類,事業の内容に関する事項(既に決定されている内容に係るものに限る。)であって,その変更により環境影響が変化することとなるものを記載しなければならないとしているところ,本件方法書がこれらの規定により要求されている内容を備えていなかったとは認められない。 また,原告らは,本件方法書には本件空港建設によって設置される航空障害灯や進入灯の記載がないと主張しているが,本件方法書が作成された時点で,航空障害灯や進入灯の設置の計画が既に決定されていたことを認めるに足りる証拠はない。 さらに,原告らは,本件方法書は,これから実施する環境影響評価の方法をどうするかという点が主体のものではなく,大半は既に実施された調査の結果をまとめたものであり,県は,実質上,本件方法書の縦覧前に住民等の意見を聴取することもなく評価法12条の調査に着手し,ほ- 61 -とんどの調査を終えていたなどと主張している。しかし,対象事業が実施 とめたものであり,県は,実質上,本件方法書の縦覧前に住民等の意見を聴取することもなく評価法12条の調査に着手し,ほ- 61 -とんどの調査を終えていたなどと主張している。しかし,対象事業が実施されるべき区域及びその周囲の概況が方法書の記載事項とされていること(評価法5条1項3号)に照らしても,評価法は,当該区域及びその周囲について既に把握している調査結果を方法書に記載することをむしろ求めているものと解すべきであって,本件方法書に既に実施された調査結果を記載することを特に異とすべき理由はなく,このことはその分量にかかわらない。また,評価法は,事業者が方法書につき外部者からの意見を受けた上で,環境影響評価の項目及び調査等の手法を選定し,それらに基づいて環境影響評価を実施することを予定しているが(11条1項及び12条1項参照),このことから,環境影響評価の項目及び調査等の選定がされ環境影響評価を実施する段階に至るまで全ての調査を禁じる趣旨であるとまで解することはできないし,他にその趣旨の規定は見当たらない。選定された調査の手法とあらかじめの調査の内容が合致しなければ,事業者としては選定された調査の手法に基づく調査を改めてすることになり手戻りが生じることにはなるが,評価法11条1項による環境影響評価の項目及び調査等の手法の選定の前に行われるか後に行われるかによって特定の調査対象に対する特定の調査の手法による調査の内容及び結果が左右されるとは考え難いことに照らしても,評価法は,手戻りの可能性があることを前提にあらかじめ特定の調査をすることを許容しているものと解さざるを得ない。 結局,原告らの主張によっても,本件方法書の手続にこれを違法とするような瑕疵があるとは認められない。 イ準備書段階での手続違反に しているものと解さざるを得ない。 結局,原告らの主張によっても,本件方法書の手続にこれを違法とするような瑕疵があるとは認められない。 イ準備書段階での手続違反について(ア) 原告らは,本件準備書には,平成15年度コウモリ類調査委託業務報告書の記載よりもコウモリの生息数や洞窟の利用頻度が少なく記載され,本件評価書で平成15年度コウモリ類調査委託業務報告書の記- 62 -載に戻されている部分が極めて多数あるが,本件準備書でこれらの点が正しく記載されていれば,コウモリ類が本件事業の影響を受ける洞窟を生活の本拠としていることを外部者が認識して,外部者から様々な意見が提出され,AないしE洞窟に破壊等の影響を与えることを回避するために計画地の変更や計画地内における施設の配置変更,洞窟への影響をより低くするための保全措置を行う等修正が必要と判断される可能性が十分にあったと主張している。 しかし,新石垣空港につき,昭和51年の計画策定以来,建設位置が環境保全上や農政上の課題で変更され,20数年にわたり事業実施に至らなかった経緯があり,本件事業予定地やそこでの施設の配置については,そうした経緯を踏まえて,P1委員会やP15会議を経て決定されたという経緯があること(本件準備書・本件評価書・本件補正書の各参考資料-1~9頁)に照らして,県によって計画地又は施設の配置が変更される可能性があったとは到底認められない。また,本件補正書に記載されたコウモリ類のための環境保全措置等の内容(7-63~65・68~73頁,8-9・10・14頁参照)は,後記(3)で説示するとおり相応に適切なものと認められることに照らし,さらに,原告らがそれ以上に採り得る措置(事業予定地又は施設の配置の変更を除く。 5・68~73頁,8-9・10・14頁参照)は,後記(3)で説示するとおり相応に適切なものと認められることに照らし,さらに,原告らがそれ以上に採り得る措置(事業予定地又は施設の配置の変更を除く。)があることについての具体的な主張を何もしていないことを考え併せても,それ以上の保全措置があるとは認め難く,原告ら主張の点をもって本件補正書に記載されたコウモリ類のための環境保全措置等の内容に変更があり得たと認めることはできない。 (イ) 原告らは,本件準備書に環境保全措置を講じるという前提を記載せずに「A洞窟やD洞窟がコウモリ類に利用されなくなる可能性は低いと考えられる。」とのコウモリ類に与える影響は小さいという評価だけが記載されているのは不当であるなどと主張している。 - 63 -しかし,原告らが指摘する本件準備書の記載(6-12-241頁)は,「環境保全措置」の項(6.12.1.3の1)(1))中にあり,当該記載の前後にある記載を見るだけでも,環境保全措置として講じる内容が示されておりその中に原告ら主張の前提に当たる記載があることは明白であるから(6-12-240頁の末尾には,「工事の実施中及び供用後において次に示す環境保全措置を講じコウモリ類の個体群の存続を図る。」との記載があり,この「次に示す環境保全措置」の内容として,6-12-241頁には,「A洞窟及びD洞窟は洞口の周囲の樹林が温存されなければ・・・コウモリ類がねぐらを利用しなくなる可能性が高いため洞口周辺の樹林を維持する。」などの記載がある。),評価だけが記載されているなどとは到底いえず,この主張は前提を欠いているといわざるを得ない。 (ウ) 原告らは,本件準備書において,絶滅危惧種コウモリ類に関する一部のデータが解析中とし だけが記載されているなどとは到底いえず,この主張は前提を欠いているといわざるを得ない。 (ウ) 原告らは,本件準備書において,絶滅危惧種コウモリ類に関する一部のデータが解析中として記載されていない上,投稿中で学術的な評価を経ていない未発表の「論文」が評価の根拠として引用されていたとした上で,そのため,本件準備書には,評価法14条1項7号イが求める「調査の結果の概要並びに予測及び評価の結果」が記載されているとはいえず,また,解析中のデータが記載されていれば絶滅危惧種小型コウモリに対する影響に関する意見が寄せられた可能性があり,この意見に基づき絶滅危惧種小型コウモリに関する環境保全措置が見直される可能性が十分にあったと主張している。 しかし,有意見者には,専門家も含まれることが明らかであるから,評価の根拠として不適当な「論文」が引用されていれば,それに対する環境の保全の見地からの意見が提出されることが期待できることに鑑みても,投稿中の「論文」を引用すること自体をもって直ちに手続上の瑕疵があるとすることはできないというべきである。また,本件- 64 -準備書の第6章には「調査の結果の概要並びに予測及び評価の結果」が記載されており,その内容は,生態系に関するもののみでも266頁に及んでおり,その中にはコウモリ類に関するものも含まれていることが明らかであって,コキクガシラについて平成15年冬期の目視若しくは出洞個体数の一部に解析中で具体的な数値が提示されていないものがあるとの一事(6-12-168頁参照)をもって,本件準備書に評価法14条1項7号イが求める「調査の結果の概要並びに予測及び評価の結果」が記載されていないなどということはできない。 さらに,前記(ア)において説示したところに照らし,当該数値が提示 件準備書に評価法14条1項7号イが求める「調査の結果の概要並びに予測及び評価の結果」が記載されていないなどということはできない。 さらに,前記(ア)において説示したところに照らし,当該数値が提示されていれば絶滅危惧種小型コウモリに関する環境保全措置が見直される可能性が十分にあったなどということは困難である。 ウ代替案が検討されていないことについて原告らは,計画段階において複数の候補地があり,しかも,その段階での環境保全上の検討が不十分であり,環境影響評価手続開始時点においても他の候補地への変更が現実的な選択肢として残されており,候補地を選択するに当たって環境保全上の観点が特に重視されるような場合,環境影響評価手続を行う事業者は,事業計画地の適否を再検討しなければならない義務を負うなどと主張している。 しかし,環境影響評価を行うに当たって事業計画地についての代替案を検討すべきこと,あるいは前提としている事業計画地の適否を再検討すべきことを定める法令の規定は見当たらない(環境保全措置に関する指針を定める本件主務省令15条は,環境保全措置の検討を行ったときは,環境保全措置についての複数の案の比較検討,実行可能なより良い技術が取り入られているかどうかの検討その他の適切な検討を通じて検討結果の検証をしなければならない旨を定めているが,これは,環境保全措置の検討結果の検証をするための適切な検討の例示として環境保全措置- 65 -についての複数の案の比較検討を挙げているだけであって,事業計画地について代替案を検討すべきことを定めたものではないことは明らかである。そして,一般的な場合を前提とするにせよ,特定の場合に限定してにせよ,事業計画地について代替案の検討又は一旦定められたものの適否の再検討 替案を検討すべきことを定めたものではないことは明らかである。そして,一般的な場合を前提とするにせよ,特定の場合に限定してにせよ,事業計画地について代替案の検討又は一旦定められたものの適否の再検討を義務付ける法令の規定は他に見当たらない。)。なお,P8・P9意見書(甲164の1)は,「環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)第四条第九項の規定により主務大臣及び国土交通大臣が定めるべき基準並びに同法第十一条第三項及び第十二条第二項の規定により主務大臣が定めるべき指針に関する基本的事項」(平成9年環境庁告示第87号)第二の五(3)アを引いて,環境保全措置についての代替案検討義務があることについて論じているが,そこで論じられているのは環境保全措置(環境影響の回避・低減に係る評価)についての複数案の検討であり,同告示も,「建造物の構造・配置のあり方,環境保全設備,工事の方法等を含む幅広い環境保全対策を対象として,複数の案を時系列に沿って又は並行的に比較検討すること,実行可能なより良い技術がとり入れられているか否かについて検討すること等の方法により,対象事業の実施により選定項目に係る環境要素に及ぶおそれのある影響が回避され,又は低減されているものであるか否かについて評価されるものとすること」と定めているにとどまり,事業計画地の選定等はこの評価の対象に含まれていない(そもそも,この告示は,評価法4条10項及び13条に基づき,評価法4条9項又は11条3項若しくは12条2項の規定により主務大臣が定めるべき基準又は指針に関する基本的事項を定めるものにすぎず,事業者を名宛て人として拘束するものではないから,事業者に当該義務があることの根拠とすることはできない。また,同告示において「複数の案を時系列に沿って又は並行的に比較検討すること」は,環境影響の ,事業者を名宛て人として拘束するものではないから,事業者に当該義務があることの根拠とすることはできない。また,同告示において「複数の案を時系列に沿って又は並行的に比較検討すること」は,環境影響の回避・低減に係る評価の方法の一例として例示さ- 66 -れているものにすぎず,その方法を必ず採るべき趣旨は定められていない。)。したがって,上記意見書の上記論述は原告らの前記主張とは直接関係しないものであるといわざるを得ない。また,上記意見書において「立地について代替案(複数案)が存在する場合,事業者の提案している案の必要性・合理性を検討する作業が不可欠である。」と論述する部分については,その法的根拠が示されておらず,「立地に係る代替案の環境影響評価における検討は,現行法上は義務とまではいえない。」との記述もあることからして,評価法上それが要求されるものと認めるべきことの論拠とすることはできない。 以上のとおり,原告らの主張には理由がないといわざるを得ない。 エ説明責任が果たされていないこと原告らは,本件補正書に記載された事業者の本件方法書及び本件準備書に対する住民意見に対する見解の中には,住民意見に対する回答になっていないものがあり,また,幾つもの住民意見を無理やり一つの項目にまとめて見解を示す方法を採っているため,事業者の見解が示されていない意見があるから,説明責任の不履行があるなどと主張している。 しかし,既に説示したところから明らかなように,評価法が準備書及び評価書に外部者の意見についての事業者の見解を記載することとしたのは,環境影響評価の項目等の検討・選定をし(準備書の場合。評価法11条1項参照),又は準備書の記載事項の検討・修正をする(評価書の場合。評価法21条1項参照)に当たって事業者 を記載することとしたのは,環境影響評価の項目等の検討・選定をし(準備書の場合。評価法11条1項参照),又は準備書の記載事項の検討・修正をする(評価書の場合。評価法21条1項参照)に当たって事業者が外部者の意見につき勘案・配意することを確実にさせるためであると解される(原告らが主張するような説明責任を事業者に課したものであると解するべき根拠となる規定は見当たらない。)。したがって,外部者の意見を受けて事業者がこれにつき勘案・配意したことが確認できる程度に事業者の見解が示されていれば足り,外部者の意見に対する事業者の回答を示したり,- 67 -外部者の意見全てに網羅的に見解を示したりするまでの必要はないというべきである。そして,原告らが指摘する個別の事情(別紙争点に関する当事者の主張6(原告ら)(2)エ参照)をもってしても,県が外部者の意見につき勘案・配意しなかったと認めることはできないから,原告ら主張の点から手続上の何らかの瑕疵があるということはできない。 オ 24条意見に対応していないこと評価書における事業者の対応が24条意見に必ずしも従ったものでなかったとしても,当然に環境配慮がされないものと判断されるものではなく,合理的理由がなく24条意見に対応しなかった場合にされた許認可処分が当然に違法となる旨の原告らの主張を採用することができないことは,前記6(2)アに説示したとおりである。 この点をおくとしても,以下のとおり,24条意見に対応していないことを理由とする原告らの主張は,いずれも採用することができない((ケ)については,後記(2)のとおり,結論において採用することができない。)。 (ア) 原告らは,本件国交大臣意見1が本件国交大臣意見2以下とは別個の取組を求めていること ない((ケ)については,後記(2)のとおり,結論において採用することができない。)。 (ア) 原告らは,本件国交大臣意見1が本件国交大臣意見2以下とは別個の取組を求めていることを前提として,本件補正書が本件国交大臣意見1に対応していないと主張している。 しかし,本件国交大臣意見1は「小型コウモリ類が出産・ほ育の場として利用しているA洞窟及びD洞窟については,その保全に万全を期すること。」というまでにすぎず(乙21),これとは別途,本件国交大臣意見2以下の意見が付されているからといって,直ちに本件国交大臣意見1が本件国交大臣意見2以下で求めるものに対する取組とは別個独立の取組を求める趣旨であると解することはできない(そのような趣旨の意見であれば,そのことが明示されたはずである。)。 よって,原告らの上記主張は前提を欠く。 - 68 -(イ) 原告らは,本件国交大臣意見2が工事期間中にコウモリ類の利用がなくなってしまった空洞や滑走路の直下に残された空洞にいかにしてコウモリ類を戻ってこさせるかという方策を要求しているのに,本件補正書はこれに対応していないなどと主張している。 しかし,本件国交大臣意見2は「本事業の実施に伴い消失するとしているB洞窟,C洞窟及びE洞窟については,できる限り小型コウモリ類が継続してこれらの洞窟を利用できるよう,実態,機能等について専門家の指導・助言を得た上で,可能な限り保全すること。また,検討の過程及び講じる措置を評価書に記載すること。」というものであり(乙21),それらの洞窟を可能な限りコウモリ類が利用できる状態で(利用するようにではない。)保全することを求める趣旨であることは明らかである。 そうすると,本件国交大臣 うものであり(乙21),それらの洞窟を可能な限りコウモリ類が利用できる状態で(利用するようにではない。)保全することを求める趣旨であることは明らかである。 そうすると,本件国交大臣意見2が一旦コウモリ類の利用がなくなってしまったところにコウモリ類を戻ってこさせる方策までを求める趣旨であるとは認められないから,原告らの上記主張は前提を欠く。 (ウ) 原告らは,コウモリ類の生態を調査する場合に,通常は複数年にわたる調査,最低でも1年を通じた調査が不可欠であるのに,平成17年5月及び6月の時期のみの追加調査だけをしても,本件国交大臣意見3に対応したことにはならないなどと主張している。 しかし,本件国交大臣意見3(乙21)は,事業実施区域及びその周辺でAないしE洞窟以外に確認されている洞窟について,コウモリ類の利用につき追加調査を行い,その結果利用が確認された場合には,その洞窟をコウモリ類が利用できる状態で可能な限り保全することを求めるものと解されるところ,本件補正書(6-12-181頁)によれば,事業実施区域及びその周辺でAないしE洞窟以外に確認されている11の洞窟のうち9つは,コウモリ類の利用の有無にかかわら- 69 -ず保全されることが認められる(原告らは,コウモリ類が継続利用するようにするための方策がなければ,本件国交大臣意見3の求める保全とはいえない旨主張しているが,本件国交大臣意見3は,本件国交大臣意見2について説示したところと同様,洞窟をコウモリ類が利用できる状態で可能な限り保全することを求めるまでであると認められるから,洞口から飛行場の外へボックスカルバートで結ばれる計画である洞窟番号②及び④の洞窟についても,本件国交大臣意見3にいうとおりの保全がされるものというべきである。)。そして,消失する残 られるから,洞口から飛行場の外へボックスカルバートで結ばれる計画である洞窟番号②及び④の洞窟についても,本件国交大臣意見3にいうとおりの保全がされるものというべきである。)。そして,消失する残り二つの洞窟は,奥行きが約4m又は約2mと極めて規模の小さい人工洞であること(しかも,本件補正書(6-12-180頁)によれば,平成14年に行われた調査の際にも,それらの洞窟をコウモリ類が利用していることは確認されていない。)に鑑みても,重要な洞窟とは到底認められないから,以上によれば,本件補正書は,事業実施区域及びその周辺でAないしE洞窟以外に確認されている洞窟につき,コウモリ類が利用するものであるか否かにかかわらず,重要性が認められないものを除いてその全てをコウモリ類が利用できる状態で保全するものといえる。そうすると,本件補正書は,本件国交大臣意見3に対応していないとは認め難い。 (エ) 原告らは,本件国交大臣意見4で要求されている浸透方法についての再検討は行われておらず,また,ドレーン層から流入した赤土を含む雨水がA洞窟奥部に影響を与えることを回避するための方策は一切採られていないから,本件補正書は本件国交大臣意見4に全く対応していないに等しいなどと主張している。 しかしながら,本件補正書(6-12-256~258頁)によれば,① ドレーン層近傍の地下水位の変化とA洞窟との関係について,P12委員会を開催し,次のとおりドレーン層の位置,浸透方法及び- 70 -影響等について検討を行ったこと,② ドレーン層はA洞窟の奥部より海側にあり,地下水の下流側に位置し,地下水・浸透水等は透水性の異なる地層境界や透水性の大きいところを流動していくことから,ドレーン層に浸透した雨水はフィルター層を通じ,面的に地下浸透が促され,線的にドレー ,地下水の下流側に位置し,地下水・浸透水等は透水性の異なる地層境界や透水性の大きいところを流動していくことから,ドレーン層に浸透した雨水はフィルター層を通じ,面的に地下浸透が促され,線的にドレーン層が設置されたとしても,その一帯にほぼ現況と同様に徐々に浸透するものと考えられ,また,ドレーン層設置による地下水位の変化の予測では,一部に若干の水位低下が見られるものの,A洞窟側の着陸帯直下付近では,現況とほぼ同様な水位を示しており,地下水位の変化は見られないこと,③ 検討の結果,ドレーン層の設置がコキクガシラが出産・ほ育に利用しているA洞窟の奥部に影響を及ぼすことはないと考えられるが,より万全な対策として,洞窟への影響をより確実に回避するため,A洞窟の範囲に相当する部分についてドレーン層を更に下流側に移動する措置を講じることとしたことが認められる。これらによれば,浸透方法についての検討等をした上で,A洞窟奥部の地下水に影響を与えないためにより万全な対策が検討され,これが講じられることとされたというべきである。これに対し,原告らは,本件国交大臣意見4がA洞窟奥部への影響を懸念して適切な措置を講じることを指示した以上,県は,A洞窟奥部への影響があり得ることを前提として適切な措置を講じなければならなかったなどというが,仮にそうであるとしても,上記のとおり,ドレーン層の設置がA洞窟の奥部に影響を与える可能性を考慮して,より万全な対策が検討され,上記のような措置を講じることとされているのであって,本件補正書及び本件国交大臣意見(以下「本件補正書等」という。)によっても,これが適切な措置でないというべき事情は認められない(原告らは,ドレーン層を10m下流に動かしたところで,A洞窟内に赤土を含む雨水が流入することに変わりはないなど- 71 - いう。)によっても,これが適切な措置でないというべき事情は認められない(原告らは,ドレーン層を10m下流に動かしたところで,A洞窟内に赤土を含む雨水が流入することに変わりはないなど- 71 -というが,本件補正書等にその裏付けは見当たらない。)。 そうすると,本件補正書が本件国交大臣意見4に対応していないということはできない。 (オ) 原告らは,本件補正書において本件国交大臣意見5への対応として記載されたところは,本件評価書に記載されていたところと基本的に何らの変わりもないものであり,新たな対応ではなく,また,その対応では本件国交大臣意見5が求めるコウモリ類の生息継続を達成できない可能性があるなどと主張している。 しかし,本件国交大臣意見5は「小型コウモリ類が生息する洞窟の周辺において樹林,草地等の改変を行う場合には,移動経路及び餌場を確保すること。また,移動経路及び餌場が出来る限り早く確保されるよう樹林,草地等の改変の工程を工夫すること。これらの検討の過程及び講じる措置を評価書に記載すること。」というものである(乙21)。本件事業がコウモリ類が生息する洞窟の周辺において樹林,草地等の改変を行うものであることは明らかであるのに,「この改変を行う場合には」としていることに鑑みても,本件国交大臣意見5は,本件評価書に記載された措置に加えて新たな措置を求める趣旨ではなく,本件評価書に記載された措置にはかかわらず,そのような場合に移動経路及び餌場を確保するという対応を求めるものであると解される。したがって,新たな対応でないとしても,そのことから本件国交大臣意見5への対応に当たらないということはできない。また,本件国交大臣意見5がコウモリ類の生息継続を達成すること自体を直接求めているわけではないことは,上記記載に照らして明 ,そのことから本件国交大臣意見5への対応に当たらないということはできない。また,本件国交大臣意見5がコウモリ類の生息継続を達成すること自体を直接求めているわけではないことは,上記記載に照らして明白であるが,その点をおくとしても,原告らがいうように,本件補正書に記載された措置によったのではコウモリ類が緑地の利用を放棄し,生息し続けられなくなると認めるに足りる根拠は少なくとも本件補正書等には見当- 72 -たらない。さらに,上記のとおり,本件国交大臣意見5が本件評価書に記載された措置以上の措置を求める趣旨であるとは認められず,本件補正書に記載された措置により創出される緑地面積では「餌場を確保すること」にならないと認めるに足りる根拠も見当たらない。 そうすると,本件補正書が本件国交大臣意見5に対応していないということはできない。 (カ) 原告らは,本件補正書で本件国交大臣意見6への対応とするところは,本件国交大臣意見5に対する対応と全く同じものと,既に本件評価書に記載されている新たな措置とはいえないものとを併せたものでしかなく,本件国交大臣意見6への対応とはいえないなどと主張している。 しかし,本件国交大臣意見6は「本事業の実施に当たっては,専門家の指導・助言を得た上で,工事の施工方法,時期等を検討し,これら小型コウモリ類の生息環境に急激な変化を与えないように配慮すること。特に,工事中の騒音・振動に対する環境保全措置については,小型コウモリ類の出産・ほ育の時期における工事を避けることも含め,適切な措置を講じること。また,これらの検討の過程及び講じる措置を評価書に記載すること。」とするものであるところ(乙21),これが,本件国交大臣意見のうちのその余の意見に対する対応とは切り離した別個独立の対応を求める趣旨であるとは らの検討の過程及び講じる措置を評価書に記載すること。」とするものであるところ(乙21),これが,本件国交大臣意見のうちのその余の意見に対する対応とは切り離した別個独立の対応を求める趣旨であるとは認められない。また,本件補正書は,専門家の技術的な助言・指導を得た上で,出産・ほ育の時期(5月ないし8月)及び冬期の休眠時期(12月ないし3月)は,A洞窟最奥部及びD洞窟から半径40m以内での振動ローラと同等の振動を出す作業及び半径100mの範囲での大型ブレーカと同等の騒音・振動を出す作業を避けること(7-65頁)に加え,新たに,A及びD洞窟を対象として,工事の実施により建設機械の稼働による- 73 -騒音・振動レベルが最大となる3年次ないし5年次(なお,1年次は大規模な土工事は行われず,2年次及び6年次はA及びD洞窟から相当程度離れた位置でしか土工事は行われない(6-1-10・11頁)。)の出産・ほ育時期及び冬期の冬眠時期にA及びD洞窟の洞口及び洞内において騒音・振動レベルを測定する事後調査を行い,その結果環境影響の程度が著しいことが明らかになった場合には,洞窟付近での作業を一旦休止し,専門家の指導・助言を得た上で適切な措置を講じることとしている(8-9~11頁)。 これらによれば,環境保全措置に加えて事後調査及びその結果により環境影響の程度が著しいことが明らかとなった場合の対応の方針による対処という形ではあるが,本件国交大臣意見6を踏まえた対応が図られているということができる(上記の事後調査等の措置につき,本件補正書には,本件国交大臣意見6に対する対応である旨の記載はないが,評価法及び本件主務省令等の関係法令を精査しても,24条意見への対応であることが補正書で明示されなければ24条意見への対応に当たらないと解すべき根拠は認め 意見6に対する対応である旨の記載はないが,評価法及び本件主務省令等の関係法令を精査しても,24条意見への対応であることが補正書で明示されなければ24条意見への対応に当たらないと解すべき根拠は認められない。なお,原告らが論じている確定評価書等外の事実に基づく主張は,その点を考慮していなくとも処分行政庁の裁量権の範囲の逸脱又は濫用を帰結するものではない。)。本件補正書が本件国交大臣意見6に対応していないということはできない。 (キ) 原告らは,本件補正書は,本件国交大臣意見9の内容に対し,抽象的なレベルで従うとの趣旨を述べるものにとどまり,具体的な対応内容は示されていない,本件国交大臣意見9は,検討することを要求しているのではなく整備することを要求しているのに,この点に関する本件補正書の記載は,整備は困難である可能性があるが検討するというだけのものであって,本件国交大臣意見9に対応したとは評価でき- 74 -ないなどと主張している。 しかし,本件国交大臣意見9は「人工洞窟については,専門家の指導・助言を得た上で,補正評価書の公告後のできる限り早い段階で設置すること。また,小型コウモリ類の習性を踏まえ,他の洞窟の形状及び気温・湿度等の生息条件,周辺の地形・地質や植生などの立地条件等を考慮しつつ,適切なものを整備すること。」というものであって(乙21),要するに,本件補正書の公告後のできる限り早い段階で,コウモリ類の習性を踏まえ,他の洞窟の形状等を考慮しつつ,適切なものを設置整備することを求めるにとどまり,それ以上に,どのような内容の人工洞窟を設置整備するのが相当かの検討経過や具体的な設置整備の内容を評価書に示すことまでは求めていない。そして,本件補正書には,上記のとおり設置整備することを実施する旨の記 上に,どのような内容の人工洞窟を設置整備するのが相当かの検討経過や具体的な設置整備の内容を評価書に示すことまでは求めていない。そして,本件補正書には,上記のとおり設置整備することを実施する旨の記載があること(7-71頁)に照らせば,本件補正書が本件国交大臣意見9に対応していることは明らかである。また,原告らは,県には適切な人工洞窟を整備することができないかのような主張もしているが,そのことを認めるに足りる証拠はない。 よって,本件補正書が本件国交大臣意見9に対応していないということはできない。 (ク) 原告らは,本件補正書には,事業実施区域や事業者が取得する地域の周辺の洞窟の保全や採餌場所としての林地に該当するいかなる区域において,潜在的なものも含めいかなる形態の土地利用について,いかなる権限を有するいかなる機関の部署に対して,いかなる土地利用上の配慮を要請したのか具体的な記載が全くないから,本件国交大臣意見10への対応としては不十分であると主張している。 しかし,本件国交大臣意見10は,「小型コウモリ類の保全については,事業実施区域や事業者が取得する地域の周辺の洞窟の保全や採餌- 75 -場としての林地の保全等周辺の土地利用が極めて重要であり,小型コウモリ類の生息に影響を与えないような土地利用が図られるよう,小型コウモリ類の保全,保全に関する情報の提供,石垣市や県等の関係機関への要請などを行うこと。また,その旨を評価書に記載すること。」というものであり(乙21),要するに,当該情報の提供,関係機関への要請などを行う措置を採ることとして,その旨を評価書に記載することを求めるにとどまるものである。本件補正書を作成する前の時点で,実際に関係機関に要請することまでを求めるものではないことが明らか への要請などを行う措置を採ることとして,その旨を評価書に記載することを求めるにとどまるものである。本件補正書を作成する前の時点で,実際に関係機関に要請することまでを求めるものではないことが明らかであるから,原告らが指摘するような記載がないとしても,そのことをもって本件国交大臣意見10への対応が不十分であるということはできない(原告らは,少なくとも県が想定している情報提供や要請がコウモリ類の生息に影響を与えないような土地利用が図られるという目的達成に十分なものであるかどうかを判断できるだけの具体的な記載は不可欠であるというが,本件国交大臣意見10の上記文言からそこまでの記載を求める趣旨を読み取ることはできない。)。 (ケ) 原告らは本件国交大臣意見11は,事業実施区域全体への降雨の海域への浸出の主要な経路である地下川(洞窟内を流れる地下水の流れ)の走り方(経路)及びそこの流量を,事業実施区域及びその周辺区域全体にわたって調査し,把握することを要求していることが明らかといえるのに,本件補正書はこれに対応していないと主張している。 しかし,本件国交大臣意見11は「事業実施区域及びその周辺区域への降雨及び流入水が,α5川に流入し,又は海域に浸出する経路及びその量について把握し,その結果を評価書に記載すること。」というものであり(乙21),その文言上,事業実施区域及びその周辺区域への降雨及び流入水がα5川に流入し,又は海域に浸出するに至る過- 76 -程でたどる道すじと,α5川への流入量及び海域への浸出量について把握し,評価書に記載することを求めたものであって,この海域への浸出量は総量の意味であると解され,また,特定事項の調査を求める旨の明示もない以上,地下川(洞窟内を流れる地下水の流れ)の走り について把握し,評価書に記載することを求めたものであって,この海域への浸出量は総量の意味であると解され,また,特定事項の調査を求める旨の明示もない以上,地下川(洞窟内を流れる地下水の流れ)の走り方(経路)及びそこの流量を調査すべきことまでを求めたものと解することはできない。 ところで,本件補正書では,事業実施区域及びその周辺区域への降雨及び表流水の流動について,新石垣空港地下水調査結果に基づき,α4岳南地下水流域及びその他3流域について水収支を算出し,その結果を6-6-25及び26頁に追記したことをもって,本件国交大臣意見11に対する対応であるとしている(13-7頁)。そして,6-6-26頁には,上記の水収支に加えて,表流水の向きが示された図面が付されており,α5川左岸地下水流域(西側)及び同流域(東側)についてはその向きのほとんど,又は多くがα5川に向かっているから,水収支によるこれらの流域の地表流出量とあいまって,α5川に流入する道すじと流入量のおおよそが把握できるものとなっている。 他方,本件事業予定地及びその付近の地下水の状況等(6-6-4~7頁),地形(6-7-3頁),地質(6-7-13~18頁),海岸部の浸出水の存在(6-6-22・23頁)等に照らし,上記4流域の地下水流出の相当部分は海域への浸出によっていると考えるのが合理的であるから,水収支による地下水流出量によって海域への浸出量は相当程度把握できるものというべきである。また,地下水流出は地表からの浸透によるところ,付近に分布する不透水層であるトムル層,透水層である琉球石灰岩等(6-6-33頁の表参照)の分布状況は把握されており(6-6-7頁),前記4流域それぞれの地層割- 77 -合も把握されているから(6-6-26頁),海域に浸 トムル層,透水層である琉球石灰岩等(6-6-33頁の表参照)の分布状況は把握されており(6-6-7頁),前記4流域それぞれの地層割- 77 -合も把握されているから(6-6-26頁),海域に浸出するに至る過程の道すじのうちいわば入口の段階については一応把握されているということができる。しかし,本件補正書には,海域に浸出するに至る過程でたどるその後の道すじに関する記載は見当たらないから,この点において,本件補正書の本件国交大臣意見11に対する対応は不十分であるといわざるを得ない。 もっとも,事業者に対し24条意見に対して必ず対応すべきことを義務付ける評価法又は関連法令の規定は見当たらず,確定評価書において24条意見に対応していない場合であっても,そのことから直ちに環境配慮審査適合性が否定されるということはできないことは既に説示したとおりである。24条意見に対応しない結果,外部手続を含む環境影響評価手続の結果(環境影響評価の結果)の合理性が損なわれることが明らかであるといった場合には,環境配慮審査適合性を認めた免許等を行う者の判断に裁量権の範囲の逸脱又は濫用が認められる余地が認められ,上記のような本件国交大臣意見11に対する不十分な対応についてもこのような観点から検討すべきであると解されるが,この点については,後記(2)において,α3のサンゴ類ないしα3サンゴ礁生態系の保全に関する原告らの主張を検討する中で,検討することとする。 (2) α3のサンゴ類ないしα3サンゴ礁生態系の保全に関する本件許可処分の違法性についてア原告らは,サンゴ類ないしサンゴ礁生態系の保全に関し,本件補正書の赤土等流出防止対策を問題として,種々の主張をしているので,これらについて検討する。本件補正書は,次のような赤土 てア原告らは,サンゴ類ないしサンゴ礁生態系の保全に関し,本件補正書の赤土等流出防止対策を問題として,種々の主張をしているので,これらについて検討する。本件補正書は,次のような赤土等流出防止対策を採ることとしている(2-9・10頁(以下,単に特定の頁を示す場合は本件補正書の該当頁を示すものである。))。 - 78 -(ア) 基本方針a 赤土等の流出防止対策に当たっては,濁水の発生から工事区域外への流出に至る一連の流出過程に応じた対策を実施する。 b 赤土等の流出防止対策は,県の赤土等流出防止条例や赤土等の対策に関わる技術基準・指針に準拠するだけでなく,本件空港の地域特性,自然特性を十分に考慮した対策を実施する。 c 工事に当たっては,施工や環境の専門家から成る「P16委員会」(仮称)を設置し,工事の状況について評価・提言を受けるとともに,提言を踏まえた対策案を検討し,実施する。 d 工事中においては,赤土等の流出防止対策が所要の機能を発揮していることを確認するためのモニタリング調査を実施するとともに,現場状況に応じた適切な施工を行うため,情報化施工(施工段階における進ちょく状況,施工範囲,裸地面積等の情報を逐次把握し,予測される台風等の降雨による影響を予測し,迅速な赤土流出防止対策を行う。)及び観測施工(施工中における海岸周辺の地下水状況の観測を通し,予測結果との比較を行いながら,施工による影響を把握するとともに,環境保全のための措置を講じながら施工を行う。)を実施する。 e 空港供用後に当たっては,これらの赤土等の流出防止対策による効果を適切に評価するため,「P17委員会」(仮称)を設置し,逐次報告を行う。 f 空港供用後に )を実施する。 e 空港供用後に当たっては,これらの赤土等の流出防止対策による効果を適切に評価するため,「P17委員会」(仮称)を設置し,逐次報告を行う。 f 空港供用後に不測の問題が発生した場合には,P17委員会において協議を行い,必要な対処策を実施する。 (イ) 赤土等流出防止対策工事中の赤土等流出防止対策は,「赤土等流出防止対策技術指針(案)(平成7年,沖縄県土木建築部)」に基づき,赤土等の流出を- 79 -防止することを基本として,各種の現場状況に応じ適切な発生源対策を実施する。発生源対策によって抑制された濁水については,地下浸透方式や機械処理方式の濁水処理対策を実施する。発生源対策及び濁水処理対策は次のとおりである。 a 発生源対策・降雨が多い時期(梅雨時期等)には盛土工事・切土工事を集中させないように工事工程を調整する。 ・広域的な掘削エリアの出現を極力避ける施工を実施する。そのために施工エリアを分割し,エリアごとに施工することで裸地面積を抑え,裸地部の浸食と土砂の流出を抑える。 ・裸地の状態の出現期間を短縮するような施工を実施する。 ・長期間放置される掘削面に対しては,流出抑制工を実施し,赤土等の流出を抑制する。 ・盛立面,掘削面においては,それぞれのエリアの中で雨水を処理するものとし,隣接エリアへの濁水の流出を極力抑えるものとする。 ・事業実施区域外からの雨水の侵入を避けるため,事業実施区域外周に排水路を設置する。 b 濁水処理対策・工事区域内の抑制された濁水の処理については,浸透ゾーンを利用した地下浸透方式を主とするが,地質等 を避けるため,事業実施区域外周に排水路を設置する。 b 濁水処理対策・工事区域内の抑制された濁水の処理については,浸透ゾーンを利用した地下浸透方式を主とするが,地質等の状況により実施できない場合は,機械処理方式を併用する。 ・機械処理方式の施設規模を設定するための降雨は,10年確率降雨を対象とする。 ・機械処理方式(凝集処理を検討しているが,その凝集剤の種類等については,環境への負荷を考慮して選定する。)を適用する場- 80 -合の排水基準は,生活環境の保全に関する環境基準(河川の水産1級)を準用し,浮遊物質(SS)濃度を25mg/l以下とする。 そして,本件補正書によれば,工事工程の1年次は試験盛土,7年次は建築工事を中心とし,土工事が行われる2年次から6年次は,6-1-10及び11頁の記載(特に,「年次毎の土工展開(その1)」及び「年次毎の土工展開(その2)」と題する図面)のとおり,年次ごとに施工エリアを決めて進め,広域的な掘削エリアが出現するのを極力避けるという年次ごとの土工展開がされる(もっとも,以下に示すものを含め,これらの計画は概略のものであり,詳細設計の際に変動することがあり得る。)。また,これらの図面と6-7-13ないし18頁の記載(特に,ボーリング地点及び地質図並びに推定地形断面図)とを対比すると,2年次及び4年次ないし6年次の工程は主として難透水層で本件事業実施区域の基盤岩であるトムル層から切土をしこれを透水層である琉球石灰岩上に盛土するものであり(ただし,2年次には,浸透ゾーンⅠ及びⅢを作るために主に琉球石灰岩及び沖積層を切土する部分もある。),3年次の工程は主として琉球石灰岩を(一部では琉球石灰岩の下層にあるトムル層までを るものであり(ただし,2年次には,浸透ゾーンⅠ及びⅢを作るために主に琉球石灰岩及び沖積層を切土する部分もある。),3年次の工程は主として琉球石灰岩を(一部では琉球石灰岩の下層にあるトムル層までを)切土して琉球石灰岩及び沖積層上に盛土するものであることが明らかである。6-1-21頁の記載によれば,切土区域の面積は琉球石灰岩が12.0ha,トムル層が52.8haである。 具体的な工事中の赤土等流出防止対策は,6-1-12ないし46頁に記載されている。地下浸透方式の濁水処理対策を実施する区域については,事前に工事区域内にろ過処理施設を設けて,濁水濃度の低減を図り,濁水のSS濃度を沖縄県赤土等流出防止条例の排出基準濃度である200mg/l以下まで低下させて浸透処理する。具体的には,発生源対策- 81 -(表土保護工)や流出抑制工を行い,続いて場内仮設調整池において自然沈降によりSS濃度をある程度低減し,当該処理水をコルゲート管等により浸透ゾーンの直前に設置するろ過沈殿処理施設に導入する。年次ごとの場内仮設調整池,ろ過沈殿処理施設等配置や排水の流れは6-1-34ないし36頁の図面に示されている。切土・盛土工事は,表土を除去した後に行われ,表土を除去した後に工事区域には高濃度の濁水の発生原因となる赤土等はなく,岩だけとなり,濁水の原因となるのは岩盤の切土の切削時や盛土の転圧時に発生する石粉だけとなる(6-1-21頁)。浸透ゾーンを利用した赤土等流出防止対策は,久米島空港建設工事等で施工された実績がある(11-2・5頁)。 本件補正書によれば,浸透ゾーンは,ほぼ北東から南西に細長く設けられる本件空港の北東側に二つ(浸透ゾーンⅠ及びⅢ),南西側に一つ(浸透ゾーンⅡ)が設けられる(より具体的な位置については,6-1-19 件補正書によれば,浸透ゾーンは,ほぼ北東から南西に細長く設けられる本件空港の北東側に二つ(浸透ゾーンⅠ及びⅢ),南西側に一つ(浸透ゾーンⅡ)が設けられる(より具体的な位置については,6-1-19頁の図面参照)。6-1-50ないし52頁のとおり,浸透ゾーンⅠは,空港海側法尻の細長い部分(南西から北東に延びている)の琉球石灰岩,沖積層及び名蔵れき層面を利用するもので,琉球石灰岩分布ゾーン(最も南西側)から名蔵れき層分布ゾーン(中間部分)までは傾斜地形となっており貯水ポケットを確保することが困難であるため,沖積層ゾーン(最も北東側)にフラット面を設けて必要容量を確保する。 また,浸透ゾーンⅢは,浸透ゾーンⅠの北側の付け替え農道と空港本体に囲まれた部分で,浸透面には沖積層とトムル層が分布する。さらに,浸透ゾーンⅡは,空港山側の切土面のうち北側に広く分布する琉球石灰岩を利用するものである。琉球石灰岩は南西側に行くほど分布が浅くなり,その下に名蔵れき層,トムル層が分布している。なお,浸透ゾーンの設置に当たっては,浸透した水が直接洞窟に入り込まないよう設置位置を検討する。浸透ゾーンと洞窟の位置関係は,6-1-55頁の図面- 82 -のとおりである(もっとも,前記のとおり,そこに示されている計画は概略のものであり,詳細設計の際には変動があり得る。)。 本件補正書によれば,実験の結果,石灰岩の上面に砂を敷設した場合,浸透機能を維持する上での効果が高いことが明らかになったため,浸透ゾーンには厚さ10cm以上の砂を敷設する。また,室内実験による浸透試験により導いた浸透係数に基づき,浸透ゾーンⅠの浸透面積は4万5600㎡(琉球石灰岩1万6800㎡,名蔵れき層6500㎡,沖積層2万2300㎡),浸透ゾーンⅡのそれは2万0900㎡(琉球石灰岩1 試験により導いた浸透係数に基づき,浸透ゾーンⅠの浸透面積は4万5600㎡(琉球石灰岩1万6800㎡,名蔵れき層6500㎡,沖積層2万2300㎡),浸透ゾーンⅡのそれは2万0900㎡(琉球石灰岩1万4000㎡,名蔵れき層3100㎡,トムル層3800㎡),浸透ゾーンⅢのそれは6300㎡(沖積層1800㎡,トムル層4500㎡)とするが,実施に当たっては,工事着手前に現地において面的な浸透試験を実施し,検証することとし,必要に応じて対策を講ずることとする(6-1-23~27頁)。浸透ゾーンの効果(ろ過機能)についての室内実験(SS濃度200mg/lの濁水を用いた浸透試験において,供試体下面より流出する水を採取して濃度を測定)によると,沖積砂層(沖積層の砂)直径10.6cm,厚さ100cmの供試体の場合がろ過率98.0%(流出水のSS濃度が4mg/l),琉球石灰岩直径5cm,厚さ10cm及びその上面に厚さ10cmの砂を載せた供試体の場合がろ過率は97.0ないし97.5%(流出水のSS濃度が5ないし6mg/l)であったことから,いずれも濁水のろ過機能があり,現地の層厚を考えるとより高い効果が期待できると考えられるとされている(6-1-23~28頁)。6-7-15ないし18頁の地質図及び推定地層断面図(その1~3)によれば,各浸透ゾーンの琉球石灰岩,名蔵れき層又は沖積層は10数mから20m以上の厚さを有しているものと認められる。 本件補正書によれば,浸透ゾーン等の施設の維持管理については,沖縄- 83 -県土木建築部「赤土等流出防止対策技術指針(案)」に基づき計画することとし,詳細については各現場条件に応じた管理マニュアル等を作成し,適切に行うものとするとされている。そして,浸透ゾーンの浸透能を計画どおりに維持していくための浸透 術指針(案)」に基づき計画することとし,詳細については各現場条件に応じた管理マニュアル等を作成し,適切に行うものとするとされている。そして,浸透ゾーンの浸透能を計画どおりに維持していくための浸透ゾーンの管理を行うほか,降雨前の集水施設について,点検簿を整備し,浸透ゾーンの各構成部分につき点検し,必要に応じて維持管理補修を行うことや,場内仮設調整池及びろ過沈殿処理施設の点検,ろ過沈殿処理施設と浸透ゾーンを結ぶ導水管等の管理を行い,加えて,降雨中は,浸透ゾーン,場内仮設調整池,ろ過沈殿処理施設,場内の導水路や沈殿池等をパトロールし,浸透ゾーンやろ過沈殿処理施設の濁水の濁度を監視するとともに,各施設が機能しているか監視し,その結果を記録して緊急時対応などに活用し,また,必要に応じて適切な対応を採るとされている(6-1-44・45頁)。 また,地下水に対する環境監視として,水位のほかに,SS濃度を調査し,また,浸透ゾーンの設置後の初期段階において,大雨により浸透ゾーンに濁水の流入があった場合,地下水の濁りについて観測を実施し,その結果環境影響の程度に著しい変化が認められる場合は,浸透ゾーンへの濁水の流入を一時中断した上で,工事区域内の調整池等の容量を増やし,濁水を貯留,濁水の前処理の強化,浸透ゾーンの底面への敷き砂の補強などの適切な赤土等流出防止対策を,専門家から指導・助言を得た上で講じるとされている(8-12頁)。 さらに,本件補正書は,難透水性の区域については,工事区域で発生した濁水を南側仮設調整池に貯留し,機械処理方式の濁水処理対策を実施する。南側仮設調整池は,空港南側の付け替え国道と空港本体に囲まれた部分でα5川側に流出する雨水排水処理を行うとしている。その概要は6-1-40ないし42頁に示された 械処理方式の濁水処理対策を実施する。南側仮設調整池は,空港南側の付け替え国道と空港本体に囲まれた部分でα5川側に流出する雨水排水処理を行うとしている。その概要は6-1-40ないし42頁に示されたとおりであり,使用を計画する凝集剤は,無機凝集剤,有機高分子凝集剤のうち,実験等により本件事- 84 -業実施区域の土質条件に適合し,環境への負荷が小さい種類,使用量などを総合的に検討して決定し,凝集剤の決定に当たっては,生物への毒性実験等を参考にするとしている。また,工事中,機械処理設備は,降雨終了後にα5川が平常流量に戻った時点で稼働させるほか(平常時),降雨が連続し,南側仮設調整池の貯留能力を超えるおそれのある場合に稼働させるとしている(6-5-40頁)。 本件補正書によれば,赤土等流出防止対策の実施を前提として検討した結果,機械処理水の混合後の河川のSS濃度は,平常時においては生活環境の保全に関する環境基準(河川の水産1級)の25mg/l以下に対して約半分の13.1mg/lであり,降雨時においては希釈される効果がみられるとされている(6-5-40~44頁)。 本件補正書では,南側仮設調整池及び機械処理施設の維持管理については,沖縄県土木建築部「赤土等流出防止対策技術指針(案)」に基づき計画することとし,詳細については各現場条件に応じた管理マニュアル等を作成し,適切に行うものとするとされ,降雨前の集水施設の点検,降雨時の監視は浸透ゾーンの場合に準じて行い,また,プラント設備については,機械処理施設の稼働中は処理水のSS濃度が目標値を満足しているか常時記録し,必要に応じて適切な措置を行うほか,処理に必要な薬剤などは常時確保し,また,台風等により電源の供給が不能となる事態を考慮して,動力は発電機を用い, 理水のSS濃度が目標値を満足しているか常時記録し,必要に応じて適切な措置を行うほか,処理に必要な薬剤などは常時確保し,また,台風等により電源の供給が不能となる事態を考慮して,動力は発電機を用い,緊急時に対応するよう十分に備えるとされている(6-1-46頁)。 イ以上のような赤土等流出防止対策に対して,原告らは,次のように種々の主張をしているが,以下に説示するとおり,いずれも採用することができない。 (ア) 原告らは,本件補正書の工事期間中の赤土等流出防止対策は,台風や豪雨の場合でも,赤土の微粒子は,事業予定地の浸透ゾーンの地盤- 85 -ないしその他の琉球石灰岩層に浸透し,時間が経過しても目詰まりは起こさず,浸透能力が低下することはないという仮定を前提としているが,その担保はなく,これがそのとおり実現されると考えることには多大なリスクを伴う,濁水を地下浸透させるという手法を採る以上,工事期間を通じて浸透能力が維持されるか,目詰まりを起こして能力が低下しないかは通常危惧される問題であり,その科学的根拠が立証されないとしても,それが生じた場合の重大なリスクを考慮し,慎重な予防措置として対策を講じることが必要であるなどと主張している。 しかし,前記のとおり,浸透ゾーンの浸透能力を維持するため,浸透ゾーンには厚さ10cm以上の砂を敷設され,また,浸透ゾーンの浸透能を計画どおりに維持していくための浸透ゾーンの管理が行われるほか,降雨前の点検,降雨中の監視がされ,必要に応じて適切な対応が採られるというのであるから,相応の対策は講じられるものであるというべきである。 (イ) 原告らは,α9地域は豊富な地下水流によって既に浸食を受けている地帯であり,琉球石灰岩は均質性に欠けるモ うのであるから,相応の対策は講じられるものであるというべきである。 (イ) 原告らは,α9地域は豊富な地下水流によって既に浸食を受けている地帯であり,琉球石灰岩は均質性に欠けるモザイク状の地質であって,直接洞窟地下川に濁水が流れ込むような切れ目が地表にあれば,ろ過機能は働かない,本件補正書は,工事により発生した濁水を水路を通じてろ過沈殿池,浸透ゾーンに集めることを計画しているが,その途中には,石灰岩層の表面の亀裂や土で覆われている部分の無数の割れ目や穴があるし,仮に,浸透ゾーンではろ過機能が効果を生じたとしても,全ての濁水を浸透ゾーンへ導くことは不可能であり,工事による濁水が洞口や地表に無数にある切れ目から洞窟内(地下川)に流れ込む危険があるなどと主張している。 しかし,本件補正書等に照らしても,浸透ゾーンの琉球石灰岩に直接洞窟に濁水が流れ込むような切れ目があることは認められない。むし- 86 -ろ,前記のとおり,本件補正書によれば,浸透ゾーンの設置に当たっては,浸透した水が直接洞窟に入り込まないよう設置位置を検討するというのであり,また,更に詳細設計によって具体的な位置の確定が行われるのであるから,その際にはそうした切れ目等の有無の確認が行われるものと考えられる。さらに,浸透ゾーンには厚さ10cm以上の砂が敷設されるのであって,仮に原告らが主張するような切れ目があるとすればその作業中にもその存在が判明するものと考えられる。 他方,浸透ゾーンに至るまでの濁水の流路については,そもそも,主要な土工事が行われる2年次から6年次までのうち,2年次及び4年次ないし6年次の工程は主として難透水層で本件事業実施区域の基盤岩であるトムル層から切土をしこれを琉球石灰岩上に盛土するものであることは前記の 事が行われる2年次から6年次までのうち,2年次及び4年次ないし6年次の工程は主として難透水層で本件事業実施区域の基盤岩であるトムル層から切土をしこれを琉球石灰岩上に盛土するものであることは前記のとおりであり,この場合,盛土面は,表土保護工として転圧締固等が施される(6-1-13頁)。3年次の工程では主として琉球石灰岩を切土して琉球石灰岩等に盛土するが,この場合でも,施工の現場においては,切土面についてのシート被覆工を含む発生源対策(表土保護工)等が行われ(6-1-12・13頁),また,「赤土等流出防止対策技術指針(案)(平成7年,沖縄県土木建築部)」(乙34)によれば,流出抑制工として施工される場内仮設水路は,必要に応じてシート等で被覆されるのであるし,場内の導水路等は前記のとおり降雨前の点検や降雨中の監視の対象とされ,必要に応じて適切な対応が採られることに鑑みても,万が一,琉球石灰岩に亀裂や割れ目,穴があり,そこから濁水が洞窟内(地下川)に流れ込むというような事態が生じれば,それが発見され適切な対応が採られるものと考えられる。さらに,地下水への環境監視として,SS濃度を調査し,また,浸透ゾーンの設置後の初期段階において,大雨により浸透ゾーンに濁水の流入があった場合,地下水の濁りについて観測- 87 -を実施して,その結果環境影響の程度に著しい変化が認められる場合は,浸透ゾーンへの濁水の流入を一時中断した上で,工事区域内の調整池等の容量を増やし,濁水を貯留,濁水の前処理の強化,浸透ゾーンの底面への敷き砂の補強などの適切な赤土等流出防止対策を,専門家から指導・助言を得た上で講じることとされている。以上によれば,むしろ本件補正書に示された浸透ゾーンによる赤土等流出防止対策の有効性は一応認められるといえ,原告らの上記主張をもって本 対策を,専門家から指導・助言を得た上で講じることとされている。以上によれば,むしろ本件補正書に示された浸透ゾーンによる赤土等流出防止対策の有効性は一応認められるといえ,原告らの上記主張をもって本件補正書の浸透処理方式に瑕疵があり十分に機能しないものであると認めることはできない。 (ウ) 原告らは,事業実施区域の海岸には,海岸全体から均等に水が流出しているのではなく,特定の箇所から集中的に地下水が湧き出す海岸湧水帯が存在し,さらに,増水時には水圧が高まり,湧水帯よりも沖合の海底から地下水が湧き出す可能性もある,琉球石灰岩層の地下洞窟を通った地下水は,パイピング空洞を通って,この海岸湧水帯及び海中から湧出するなどと主張している。 しかし,前記(イ)のとおり,本件補正書に示された浸透ゾーンによる赤土等流出防止対策の有効性が一応認められる以上,この主張を前提としても本件補正書の浸透処理方式に瑕疵があるということはできない。 (エ) 原告らは,P18が実施している赤土等堆積状況の調査の結果,平成20年冬(3月)の調査(甲82)では,本件空港建設工事現場に近いα5川河口沖合300mほどのポイント(E2)の赤土堆積度が最も高いランク8を記録するとともに,α5川河口より北側の3か所(E点ないしG点)すなわち本件空港建設工事現場前面あるいは近傍の海域では,いずれも海岸側直近よりも沖合側で高い堆積度が記録されるという過去と比較して顕著な違いが認められ,また,平成19年- 88 -秋以降の調査では,赤土の堆積量が,かつてはα5川河口部のE地点の数値が高かったのと比較して,本件空港建設現場前面のG地点・F地点で多くなる傾向が認められており,これらのことは赤土が直接海中から湧き出したものであ ,赤土の堆積量が,かつてはα5川河口部のE地点の数値が高かったのと比較して,本件空港建設現場前面のG地点・F地点で多くなる傾向が認められており,これらのことは赤土が直接海中から湧き出したものであることを示すなどと主張している。しかし,これらは,本件許可処分後の確定評価書等外の事実であって,その点を考慮していないとしても処分行政庁の裁量権の範囲の逸脱又は濫用を帰結することはないといわざるを得ない。また,この点をおくとしても,P18の平成20年春の赤土等堆積状況の調査(原告らの指摘する平成20年冬(3月)調査の次の機会の調査)では,α5川河口より北側の3か所(E点ないしG点)はいずれも海岸側直近から沖合の方に行くに連れて堆積度の値が低くなったことが認められ(乙38),必ずしも原告らの主張に沿う結果となっていない。さらに,P18の赤土等堆積状況の調査は平成12年夏から行われているから(甲29),過去との比較を論じるのであれば平成12年夏以降の調査結果の全てを検討する必要があるというべきところ,平成17年春より前の調査結果は見当たらないことに照らしても,過去と比較して原告らが主張するような違いや変化が顕著となっており,それが本件空港建設工事による赤土が直接海中から湧き出していることを示すものであるとはにわかに認めることはできない。 さらに,原告らは,P19委員会調査報告書(甲128)を引いて,平成20年6月7日の大雨の時に現地調査をしていたP19委員会によって,海岸湧水帯付近の砂浜を掘り下げると濁水が湧き出していること,海岸湧水帯周辺が他の地点と比較しても濁りが著しく,水深30cm以深は全く視認できない状況であったことが確認されており,このことも,正に地下の水路を通って濁水が直接海岸・海中に湧き出していること ,海岸湧水帯周辺が他の地点と比較しても濁りが著しく,水深30cm以深は全く視認できない状況であったことが確認されており,このことも,正に地下の水路を通って濁水が直接海岸・海中に湧き出していることを裏付けるものであるなどと主張している。しかし,こ- 89 -れが本件許可処分後の確定評価書等外の事実である点はおくとしても,上記報告書中の「海岸湧水調査報告」は,誰のものかも明らかにされない形で主観的な観察結果が示されたものにすぎず(証人P20も,何度か一緒にP19委員会の調査を行った人物が調査した結果であると供述するにとどまる。),湧水等の濁度等も明らかでなく,その記載内容にどれほどの正確性があるものであるかについてさえにわかに確認することができないこと(なお,甲第90及び第91号証の写真も,誰が撮影したものであるかさえ不明であり,撮影地点,濁水の濁度等も明らかでない。),濁水の流入・浸出の経路等は確認されているわけではなく,他の可能性もあることに照らしても,この報告内容等から直ちに本件空港設置工事による赤土が地下水路を通って直接海中等に湧き出しているとの事実を認定することはできない。 加えて,本件補正書が,後記(ケ)でも説示するとおりのモニタリング調査などの事後調査や環境監視等を行い,これに基づく対策を実施することを予定していることを考慮すれば,これらの点が本件補正書の予定する赤土等流出防止対策を不当とすべき事由になると認めることはできない。 (オ) 原告らは,本件の事業実施区域は,大量の地下水が集中し,その結果,多くの地下川・地下洞窟が密集しているという特殊性がある上,その地下には,浸食に弱く,地下水流に浸食された洞窟ができやすい性質のα7と呼ばれる琉球石灰岩層が広がっているところ,このような場所に事業用地か 地下川・地下洞窟が密集しているという特殊性がある上,その地下には,浸食に弱く,地下水流に浸食された洞窟ができやすい性質のα7と呼ばれる琉球石灰岩層が広がっているところ,このような場所に事業用地から生じた濁水を集中させ,自然の浸透より大量の濁水を流し込むという計画を立てる以上,地下水の流れの経路すなわち地下河川の状況を調査することは必須であるのに,本件補正書は,地下水の流れの調査すら行っていないなどと主張している。 しかし,前記(イ)のとおり,本件補正書に示された赤土等流出防止対- 90 -策の有効性は一応認められ,地下水への環境監視をし,浸透ゾーンに濁水の流入があり,環境影響の程度に著しい変化が認められるような場合は適切な赤土等流出防止対策を講じるなどの事後的対策も採られるというのであるから,原告らの主張するような調査がされていないために本件補正書の赤土等流出防止対策が不十分であるということはできない。また,同様の理由で,本件補正書が前記(1)オ(ケ)のとおり本件国交大臣意見11に十分に対応していないこと(事業実施区域及びその周辺区域への降雨及び流入水の海域に浸出するに至る過程の入口の段階以降の把握をしていないこと)についても,そのために本件補正書の赤土等流出防止対策が不十分なものにとどまっているという関係があるとはいえない。これらの点から本件許可処分について処分行政庁の裁量権の範囲の逸脱又は濫用が帰結されると認めることはできないというべきである。 (カ) 原告らは,本件補正書で浸透ゾーンの容量等を定める際の基礎となった浸透係数には誤りがあり,この誤りは,浸透ゾーンで確保する容量の誤りをもたらし,想定内の雨量でも濁水が浸透ゾーンからあふれ出るという結果を生じさせるものである,こうした浸 等を定める際の基礎となった浸透係数には誤りがあり,この誤りは,浸透ゾーンで確保する容量の誤りをもたらし,想定内の雨量でも濁水が浸透ゾーンからあふれ出るという結果を生じさせるものである,こうした浸透係数の誤りは,琉球石灰岩のわずか10cm径の1サンプルのみだけの実験結果により,しかも,琉球石灰岩とともに浸透ゾーンの地盤を構成する名蔵れき層については実験を行わずに導き出されたことからも十分に予測可能であり,このように誤った浸透係数に基づき算定された容量の浸透ゾーンによる対策で赤土流出防止が図られていると判断したことには,明らかな裁量判断の誤りがあるなどと主張している。 しかし,本件補正書では,浸透ゾーンの容量等を算定する基礎となる浸透係数につき,実施に当たっては,工事着手前に現地において面的な浸透試験を実施し,本件補正書の検討結果を検証し,必要に応じて- 91 -対策を講ずることとしていることは前記のとおりであり,その結果,本件補正書において示された浸透係数が見直されたとしても,そのことは本件補正書において想定済みのことであるということができ,これをもって本件補正書の浸透係数に誤りがあるということはできない。 実施設計をする場合の基礎とする浸透係数につき,室内実験による結果に基づくよりも,実際に工事を行う現場の地質に基づいて導く方が合理的であるが,他方,このような場合に,環境影響評価の段階において,あらかじめ現場の表土を取り除いて(さらには,浸透ゾーンを設置する部分に至るまで切土をして)実験をすることまで求めることは現実的でない。本件補正書の記載によっても,この点に関する対応についての基本的な考え方・方針は十分に提示されているということができ,また,実施段階で更に検討することも明示されている。そして,工事に当たっては い。本件補正書の記載によっても,この点に関する対応についての基本的な考え方・方針は十分に提示されているということができ,また,実施段階で更に検討することも明示されている。そして,工事に当たっては,施工や環境の専門家から成る「P16委員会」(仮称)を設置し,工事の状況について評価・提言を受けるとともに,提言を踏まえた対策案を検討し,実施することとされていることに鑑みても,本件補正書のこうした対応方法は合理的なものであるというべきである。本件補正書において浸透係数,ひいては浸透ゾーンの容量等が最終的なものとして提示されていない点をもって,本件補正書の赤土等流出防止対策の検討が不十分であるということはできない(なお,原告らは,実施設計段階におけるサンプルによる実験結果は,実際の浸透面の1万7232分の1あるいは16万2420分の1の面積によるものでしかないことを指摘して,その結果による浸透係数も信用に値するものでないなどと主張しているが,本件許可処分後の事情である点はおくとしても,そのことからにわかに当該実験方法が不当であると認めることはできず,他にこの実験結果によったのでは浸透ゾーンから濁水があふれ出すことを認めるに足りる証拠は- 92 -ない。)。 (キ) 原告らは,本件補正書では浸透ゾーンないし調整池の設置規模を策定するに当たり,1日当たりの雨量を基に10年確率規模の数値(日雨量259.4mm/日)を基準にしているが,このことは石垣島の地域的特性である局所的集中豪雨を過小評価するものであるなどと主張している。 しかし,本件補正書においては,浸透ゾーン等の規模を検討するに当たり,長期降雨強度による容量と短期降雨強度による容量をそれぞれ算定し,その比較により容量の上回る短期降雨強度により規模を定め しかし,本件補正書においては,浸透ゾーン等の規模を検討するに当たり,長期降雨強度による容量と短期降雨強度による容量をそれぞれ算定し,その比較により容量の上回る短期降雨強度により規模を定めており,この場合の短期降雨強度は短時間降雨資料により県河川課が作成した「石垣島における短時間確率降雨曲線」により算定したものであって,原告らが主張するような10年確率規模の日降雨量のみによったものではない(6-1-14~17頁参照)。さらに,本件補正書においては,10年確率規模による工事中の所要規模の検討のほかに,50年確率規模による空港供用後の所要規模の検討も行い,結局,50年確率規模の短期降雨強度に基づいた検討結果により浸透ゾーン等の規模を定めているのであって(6-1-16・49・50頁参照),原告らの上記主張は前提を誤っているといわざるを得ない。 そして,所要規模の検討においては安全率が考慮されていること,浸透ゾーンの容量を超える場合の対応として場内に仮設調整池を設けるとされていること(6-1-16頁参照)も併せ考慮すれば,本件補正書の浸透ゾーン等の規模の検討が石垣島の地域的特性を過小評価する不当なものであると認めることはできない。 (ク) 原告らは,本件補正書の記載は,凝集剤を使用した機械処理方式を採用するということ以上には何も述べていないに等しく,凝集剤の配合や,その凝集効果,環境負荷等について全く検討されていない,機- 93 -械処理方式には作業ミスあるいは機械の作動不良等が生じる可能性があるのに,それらの場合の対応が何もないか,抽象的な記載があるのみで,必要なマニュアル等の検討も欠いているなどと主張している。 しかし,本件補正書は,前記のとおり,工事中の赤土等流出防止対策につき「赤土等流出防止対 何もないか,抽象的な記載があるのみで,必要なマニュアル等の検討も欠いているなどと主張している。 しかし,本件補正書は,前記のとおり,工事中の赤土等流出防止対策につき「赤土等流出防止対策技術指針(案)」に基づくことを基本としており,同指針(案)(乙34)は,自然沈殿方式による排水基準を満足することができないおそれのある場合は,薬剤等を用いて強制的に沈殿させるものとし,使用する薬剤は無公害のものを用いるとともに,放流水はph調整を行うことなどとした上で,凝集剤による濁水処理フロー,凝集剤の種類と機能等についての技術指針を示している。また,本件補正書は,前記のとおり,機械処理方式の場合の凝集剤の種類等については,環境への負荷を考慮して選定するとし,具体的には,使用を計画する凝集剤は,生物への毒性実験等を参考に,無機凝集剤,有機高分子凝集剤のうち,実験等により本件事業実施区域の土質条件に適合し,環境への負荷が小さい種類,使用量などを総合的に検討して決定するとしているほか,工事に当たっては,施工や環境の専門家から成る「P16委員会」(仮称)を設置し,工事の状況について評価・提言を受けるとともに,提言を踏まえた対策案を検討し,実施するとしている。以上によれば,凝集剤を使用した機械処理方式の技術は相当に確立されているものと認められるところ,本件補正書において,凝集剤の選定に当たっての方針等が提示されており,また,必要に応じて「P16委員会」(仮称)から提言を受けることができることに鑑みても,凝集剤の配合等が具体的に示されていないことをもって直ちに,機械処理方式による赤土等流出防止対策が検討されていないに等しいとも,環境への配慮がされていないともいうことはできない。 - 94 -また,前記のとおり,機械処理設備は, って直ちに,機械処理方式による赤土等流出防止対策が検討されていないに等しいとも,環境への配慮がされていないともいうことはできない。 - 94 -また,前記のとおり,機械処理設備は,平常時においては,降雨が終わった後にα5川が平常流量に戻るまで稼働しないとされている(降雨時に稼働させるのは,降雨が連続し,南側仮設調整池の貯留能力を超えるおそれが生じた場合だけである。)。さらに,本件補正書は,南側仮設調整池及び機械処理施設の維持管理については,県土木建築部「赤土等流出防止対策技術指針(案)」に基づき計画することとし,詳細については各現場条件に応じた管理マニュアル等を作成し,適切に行うものとすること,降雨前の集水施設の点検,降雨時の監視は浸透ゾーンの場合に準じて行い,加えて,プラント設備については,機械処理施設の稼働中は処理水のSS濃度が目標値を満足しているか常時記録し,必要に応じて適切な措置を行うこと,処理に必要な薬剤などは常時確保し,台風等により電源の供給が不能となる事態を考慮して,動力は発電機を用い,緊急時に対応するよう十分に備えることを記載していることは前記のとおりである。さらに,「赤土等流出防止対策技術指針(案)」(乙34)では,機械処理方式(凝集沈殿方式)の濁水処理フローシートにおいて,凝集沈殿地で処理された処理水につき排水基準を確認した上で,基準を満たさない処理水は再度調整池に戻され,再びプラント設備において処理されるものとすることが示されている。以上によれば,処理水が基準を満たさない場合や機械の作動不良の場合への対応を含め,機械処理設備の管理方法の大枠は本件補正書において示されており,その上で,詳細につき各現場条件に応じた管理マニュアル等を作成し,適切に行うこととされているのであって,一応の維持管理方 の対応を含め,機械処理設備の管理方法の大枠は本件補正書において示されており,その上で,詳細につき各現場条件に応じた管理マニュアル等を作成し,適切に行うこととされているのであって,一応の維持管理方法が検討され,その結果が記載されているということができ(したがって,本件補正書において,このことに関する本件国交大臣意見13への対応もされているというべきである。),この関係から機械処理方式に赤土流出防止対策として欠陥が- 95 -あるとは認めることができない。 (ケ) 原告らは,環境保全のための最後の安全装置として事後調査ないしは環境監視が必要であるのに,本件補正書は,判断の誤りや作業ミスはないとして,事後の調査ないし監視は不要と断じているなどと主張している。 しかし,本件補正書は,前記のとおり,赤土等流出防止対策の基本方針として,工事に当たっては,施工や環境の専門家から成る「P16委員会」(仮称)を設置し,工事の状況について評価・提言を受けるとともに,提言を踏まえた対策案を検討し,実施すること,工事中においては,赤土等の流出防止対策が所要の機能を発揮していることを確認するためのモニタリング調査を実施すること,空港供用後には,これらの赤土等の流出防止対策による効果を適切に評価するため,「P17委員会」(仮称)を設置し,逐次報告を行い,不測の問題が発生した場合には,P17委員会において協議を行って必要な対処策を実施すること,浸透ゾーンや集水施設,機械処理設備等の降雨前の点検,降雨中の監視等を行い,浸透ゾーン等の濁水の濁度の監視,地下水のSS濃度の調査等,機械処理施設稼働中における処理水のSS濃度の常時記録化などを行うことを記載しているのであり,これらによれば,本件補正書が事後の調査ないし監視は不要と断じて の濁度の監視,地下水のSS濃度の調査等,機械処理施設稼働中における処理水のSS濃度の常時記録化などを行うことを記載しているのであり,これらによれば,本件補正書が事後の調査ないし監視は不要と断じているわけでないことは明白であるから,原告らの上記主張は明らかに失当である。 (3) 本件事業予定地周辺に生息するコウモリ類等の保全に関する本件許可処分の違法性についてア次に,原告らは,本件事業予定地周辺に生息するコウモリ類等の保全に関し種々の主張をしているので,これらについて検討する。本件補正書は,コウモリ類に係る環境影響評価の結果について次のように記載して- 96 -いる(9-29・30頁)。 (ア) 事業実施区域及びその周辺の洞窟でコウモリ類の生息が観察された。 利用時期は洞窟や種によって異なり,通年にわたる利用も観察されたが,一時的若しくは稀な利用も観察された。利用形態は出産・ほ育や冬期の休眠場所,この他の時期の昼間の休息場所としての利用が観察された。事業実施区域周辺のAないしE洞窟の利用状況及び集団遺伝学的分析の結果から,石垣島のカグラの個体群にとってA及びD洞窟は,冬期の休眠場所として島の南東部に存在するコロニーの中では非常に重要であることが示唆された。また,コキクガシラの個体群にとって,A洞窟は島の南東部の個体群では中心的な出産・ほ育場所であることが示唆された。ユビナガはA洞窟を利用しているが,出産・ほ育場所や冬期の集団での休眠場所としての利用は確認されず,また,個体数の変動が大きかった。AないしE洞窟以外に確認された11か所の洞窟等については,平成17年5月及び6月の調査で,事業実施区域内の4洞窟ではコウモリ類が確認されなかった。事業実施区域及びその周辺においてコウモリ類の採餌 AないしE洞窟以外に確認された11か所の洞窟等については,平成17年5月及び6月の調査で,事業実施区域内の4洞窟ではコウモリ類が確認されなかった。事業実施区域及びその周辺においてコウモリ類の採餌活動が確認された場所は,コキクガシラ,カグラでは樹林の林内や林縁,ユビナガでは樹林の上空や林縁が多かった。採餌活動時間帯における環境別の利用状況をみても,コキクガシラとカグラは樹林地を多く利用している。事業実施区域内の樹林はA,C及びD洞窟に生息するコキクガシラやカグラが採餌場所として利用していることが確認され,特に両種の採餌場所として樹林の重要性が高いことが示唆された。 (イ) 本件事業の工事実施による環境影響について,石垣島全体がコウモリ類の生息地であり,コウモリ類の個体数を将来とも衰退させることなく,維持するためには事業実施区域周辺のみにとどまらず,石垣島全体で考慮していく視点が重要であることから,長期的な視野で,環- 97 -境保全配慮として,①B,C及びD洞窟の保全対策,②人工洞の設置,③水みちとなるボックスカルバートの工夫,④α8ダムのトンネルをより有効に活用するための工夫を行う。なお,環境保全配慮の検討・実施に当たっては,専門家の指導・助言を得ながら,適切に講ずるものとする。 (ウ) 以上によっても,造成等の施工による一時的な影響として,①ねぐらの消失,②ねぐら周辺における生息環境の変化に伴う生息状況の変化,③樹林の消失による生息状況の変化,④建設機械の稼働による生息状況の変化,⑤生態系の基盤環境,生態系の機能と構造の変化に伴う影響がある。 このうち,①ねぐらの消失について,消失するねぐらを利用するコウモリ類の個体への影響をみると,B,C及びE洞窟を現在利用しているコウモリ類は,他 の機能と構造の変化に伴う影響がある。 このうち,①ねぐらの消失について,消失するねぐらを利用するコウモリ類の個体への影響をみると,B,C及びE洞窟を現在利用しているコウモリ類は,他事例において洞窟間における移動が確認されていること,これまでの調査の結果,標識調査で事業実施区域周辺の5洞窟間では移動事例が多く確認され,5洞窟とその他の石垣島の洞窟の間でも移動が確認されていること,集団遺伝学的分析のうち遺伝子交流集団の分析結果では,分析に用いた全てのコロニーは約98%の確率で一つの個体群とみなすことができることから,A及びD洞窟を含むその他の洞窟に移動できるものと考えられ,B,C及びE洞窟を利用する個体が消失するおそれはないと予測される。他方,B,C及びE洞窟の3か所のねぐらの消失によって,コウモリ類にとってねぐらの多様性が低下し,選択肢が減るという変化がある。C及びE洞窟の利用頻度が高いことと個体数割合の面から考えて,コキクガシラの個体群に生息状況に大きな変化があると予測される。一方,カグラの個体群にとって,B,C及びE洞窟は平均個体数や確認頻度,石垣島内の個体群の中での個体数割合という面からみて比較的重要性は低いと- 98 -考えられる。このため,B,C及びE洞窟が利用できなくなることによる石垣島のカグラ個体群の生息状況の変化は小さいと予測される。 また,ユビナガにとって,C洞窟が利用できなくなる点は,石垣島の個体群の中での個体数割合という面からみて比較的重要性は低いと考えられる。このため,C洞窟が利用できなくなることによる石垣島のユビナガ個体群の生息状況の変化は小さいと予測される。カグラ及びユビナガについて,B,C及びE洞窟を利用する個体数は少ないことから,これらの洞窟がなくなることによってB,C及びE洞窟以外 る石垣島のユビナガ個体群の生息状況の変化は小さいと予測される。カグラ及びユビナガについて,B,C及びE洞窟を利用する個体数は少ないことから,これらの洞窟がなくなることによってB,C及びE洞窟以外のねぐらの個体数が激変することはなく,受入可能であると考えられる。 コキクガシラについては,B,C及びE洞窟で通年あるいは冬期の休眠時期に観察された個体数は,移動先として考えられる洞窟において観察されている個体数の変動幅の範囲内であることから,移動先のねぐら及び餌場の環境収容力の範囲内であると考えられ,移動先のねぐらの個体数が増加しても長期的な影響は少ないと考えられる。 ②ねぐら周辺における生息環境の変化に伴う生息状況の変化について,ねぐらとして利用できる洞窟は,A及びD洞窟である。周辺の土地利用及び植生の変化に伴う洞窟内の環境変化の一つとして,一般的に地下水量の減少に伴う洞内の乾燥化が懸念されるが,A及びD洞窟は事業実施区域外の上流側に位置していること,A及びD洞窟の洞口周辺の樹林は伐採しないことから,A及びD洞窟内の地下水は変化しないと考えられ,洞内の乾燥化は生じないものと予測される。また,A及びD洞窟の洞口付近は改変されないことから,洞窟へのコウモリ類の出入りについては支障は起きないものと予測される。 ③樹林の消失による生息状況の変化について,土地の改変により,事業実施区域の樹林が約30ha消失し,採餌活動を行う場が消失することとなる。また,樹林の消失によって,洞窟から北東の餌場(海岸- 99 -林)へ移動するルートである北東ルート及びA洞窟から南の餌場(海岸林)へ移動するルートである南ルートが分断される。さらに,その途中にあるコウモリ類の採餌場所が減少し,コウモリ類のうち特に樹林環境を移動経 移動するルートである北東ルート及びA洞窟から南の餌場(海岸林)へ移動するルートである南ルートが分断される。さらに,その途中にあるコウモリ類の採餌場所が減少し,コウモリ類のうち特に樹林環境を移動経路として利用するコキクガシラ及びカグラについて,A洞窟やD洞窟をねぐらとする個体の生息環境が変化すると予測される。コウモリ類にとっての主要な餌場であるα10山方面の樹林やその餌場へ移動するルートは改変されない。 ④建設機械の稼働による生息状況の変化について,騒音・振動の調査結果,作業場所直下の地表から約3mの深さの洞奥部では,発生源から約7mの距離で騒音は最大約87.6db(A),振動は最大60. 5dbであった。このとき,洞窟内のカグラについては一斉に飛び立つというような顕著な反応は観察されなかった。また,建設機械稼働日と非稼働日についてカグラの行動を観察し検定にかけた結果,建設作業騒音及び振動によってカグラの行動が活発になるという結果は得られなかった。このことから建設機械による作業騒音・振動は,この調査では特にカグラの行動に顕著な影響を与えていないと判断された。 しかしながら,騒音・振動の発生時に可聴音が聞こえることがあったことから,警戒音が含まれている可能性が考えられた。また,出洞個体数は,建設機械稼働日と翌日で大きな変化はみられなかったものの,建設機械稼働日の出洞開始時間は翌日に比べて約30分遅かった。騒音・振動に長時間さらされたときの影響を考慮すると,A洞窟では,出産・ほ育の時期にA洞窟の最奥部直上付近において建設作業を実施すると,コキクガシラの出産・ほ育に利用されないおそれがあると予測される。また,D洞窟では,出産・ほ育の時期や冬期の休眠の時期にD洞窟付近で建設作業を行うと,カグラの出産・ほ育や冬期の休眠に利用され ると,コキクガシラの出産・ほ育に利用されないおそれがあると予測される。また,D洞窟では,出産・ほ育の時期や冬期の休眠の時期にD洞窟付近で建設作業を行うと,カグラの出産・ほ育や冬期の休眠に利用されないおそれがあると予測される。 - 100 -⑤生態系の基盤環境,生態系の機能と構造の変化に伴う影響の程度について,生態系の基盤環境の変化の予測結果によると,コウモリ類がねぐらとして利用している5か所の洞窟のうち3か所の洞窟が消失し,採餌場所の一部としての二次林環境がある「段丘-樹林地(亜高木林)」の改変の程度は中程度である。コウモリ類に利用されている3か所のねぐら(B,C及びE洞窟)が失われ,採餌場所の一部としての二次林が失われ,主要な餌場までの移動経路の一部の二次林が分断されることになるものと予測される。しかし,ねぐら及び出産,ほ育の場として利用されている2か所の重要な洞窟(A及びD洞窟)は残存し,失われる3か所の洞窟を利用するコウモリ類は,これらの残存する2洞窟を含む事業実施区域周辺の他の洞窟に移動できるものと予測されている。一方,主要な採餌場としての「段丘-樹林地」,「砂丘-海岸林」の改変はほとんどないが,採餌場所の一部としての二次林が失われ,また,主要な採餌場への移動経路の一部の二次林が分断されることにより,特殊性を指標するコウモリ類の餌環境が変化することが予測される。 (エ) 以上に対し,① A及びD洞窟周辺の土地を取得し,A及びD洞窟周辺の環境が改変されないよう維持すること,② A及びD洞窟周辺の餌場への移動経路の樹林を補完し,ねぐらと餌場とを連絡することによりねぐらの向上を図ること,③ 事業によって事業実施区域北東部の樹林,事業実施区域南西部のゴルフ場内の樹林といった餌場が減少することによ への移動経路の樹林を補完し,ねぐらと餌場とを連絡することによりねぐらの向上を図ること,③ 事業によって事業実施区域北東部の樹林,事業実施区域南西部のゴルフ場内の樹林といった餌場が減少することによる影響を低減するため,採餌場所となり得る緑地を早期に創出すること,④ 事業によって分断されるねぐらから採餌場所に至る移動経路が分断される影響を低減するため,「事業によって減少する採餌場所の創出」に併せて,事業実施区域の北東側の樹林に至る移動経路を早期に創出すること,⑤ 出産・ほ育及び冬期の休眠時- 101 -期の工事中の騒音・振動の影響を低減すること(A洞窟の最奥部は着陸帯端部の直下に当たり,出産・ほ育の時期にコキクガシラの幼獣のコロニーが観察されている。出産・ほ育の時期以外の多くの時期にはコウモリ類は着陸帯端部から直線距離で100m以上離れた場所を利用していた。また,D洞窟は浸透ゾーンⅡから最短で約40mの距離であることから,建設機械の同時期稼働台数の調整や専門家の意見を踏まえて工事を実施する。)を,環境保全措置として行う。 (オ) また,個体群の存続について環境保全措置の効果に係る知見が不十分であることから,①餌昆虫等調査,②生息状況及び利用状況,並びに建設機械の稼働及び航空機の離発着に伴う騒音・振動レベル,③洞内環境(温度,湿度),④移動状況の事後調査を行うとともに,工事の実施及び施設の供用後に,生息状況及び利用状況の環境監視を行う。 (カ) なお,本件補正書には,本件空港の存在又は供用による環境影響に対する環境保全配慮としても前記(イ)の措置を採ること,本件空港の存在又は供用による環境影響評価の結果として,航空機の運航に伴う騒音・振動による生息状況の変化について,航空機騒音の周波数分析では,中心周波数1Hzない しても前記(イ)の措置を採ること,本件空港の存在又は供用による環境影響評価の結果として,航空機の運航に伴う騒音・振動による生息状況の変化について,航空機騒音の周波数分析では,中心周波数1Hzないし100kHzの範囲について調査を行った結果,コウモリ類がエコロケーション(反響定位。鼻や口から出した超音波の反響をとらえることによって周囲の状況を把握すること)に使用する超音波の周波数帯が含まれる中心周波数20kHz以上の範囲では音圧レベルは約41ないし59dBで推移する傾向にあったこと,現空港の滑走路北側端から約250mの飛行経路直下にあるコキクガシラの生息が確認されている洞窟において航空機の着陸及び離陸時の騒音・振動の調査を行ったところ,着陸及び離陸時に通過したときの騒音は洞口で95.9ないし98.4dB(A)であり,洞内では洞口から奥に進むに連れて騒音の値は小さくなり,縦穴を下- 102 -りた中間地点及び最奥部では暗騒音と変わらなかったこと,他方,振動は,洞口では同機種の離陸時及び着陸時に33.5ないし35.7dBであり,洞内の最奥部では暗振動と変わらなかったこと,コキクガシラが出産・ほ育場所として利用するA洞窟やカグラが出産・ほ育場所及び冬期の休眠場所として利用するD洞窟では,航空機の離発着に伴う騒音や振動は伝搬しないことから,航空機の離発着に伴う騒音・振動に起因してA及びD洞窟を利用するコウモリ類の生息状況が変化することはないと予測されることなどが記載されている。 イ以上のような本件補正書に対して,原告らは,次のように種々の主張をしているが,以下に説示するとおり,いずれも採用することができない。 (ア) 原告らは,本件補正書の洞窟保全策は,物理的な空間(空洞)を空港の地下に残すことにはなるが に種々の主張をしているが,以下に説示するとおり,いずれも採用することができない。 (ア) 原告らは,本件補正書の洞窟保全策は,物理的な空間(空洞)を空港の地下に残すことにはなるが,温度や湿度,そして,空気の流れなど洞内の微気象は激変することが予測され,また,そうして保全された洞窟のコウモリ類による利用は,工事中の建設機械の稼動や供用後の航空機の離発着に伴う騒音・振動等により困難であるから,絶滅危惧種コウモリ類の保護には何の役にも立たない,コウモリ類は,環境変動や人為的なアクシデント等によってねぐらを変えていると予想され,利用している洞窟が複数存在することでかろうじて現在の個体数が維持されているといわれているから,相互利用できる洞窟が減ってしまえば,選択幅が減少し,環境収容力は低下してしまって,それらを利用する地域個体群は減少することが予測され,B,C及びE洞窟の消失により,コウモリ類の生存にとってかけがえのないα7地域洞窟群の一体性は完全に損なわれ,その影響は決して小さいとはいえないなどと主張している。 しかし,本件補正書7-68頁及び13-5頁の記載によれば,原告らが指摘する本件補正書の洞窟保全策は,本件国交大臣意見2への対- 103 -応として,前記アの記載では消失するとしているB,C及びE洞窟についてもできる限りコウモリ類が継続してそれらを利用できるよう,専門家の指導・助言を受けて検討した結果であると認められる。そして,その洞窟保全策により,B洞窟の洞口は閉鎖され,新たに洞口が設けられ,C洞窟の洞口側約半分は覆土され,洞奥側にトンネルが設けられた上で,新たに洞口が創出されるなどの変更が加えられることになるものの,新たな洞口は採餌場所や移動経路とのつながりに配慮して設けられるのであり,実施に 側約半分は覆土され,洞奥側にトンネルが設けられた上で,新たに洞口が創出されるなどの変更が加えられることになるものの,新たな洞口は採餌場所や移動経路とのつながりに配慮して設けられるのであり,実施に向けては,更に専門家の指導・助言を得た上で具体的な形状等を決定するとされていること(7-68~70頁参照)に照らしても,他に特段の事情も認められない以上,この洞窟保全策が単に物理的な空間(空洞)を空港の地下に残すことになるだけのもので,およそコウモリ類の継続利用にはつながらないものであるとは認めることができない。 また,保全された洞窟は,工事中の建設機械の稼動や供用後の航空機の離発着に伴う騒音・振動等によりコウモリ類により利用されることはないとの点については,本件補正書等を精査してもこれを認めるに足りる根拠は見当たらない(6-12-260頁以下の建設機械の稼働による生息状況の変化についての記載及び6-12-308頁以下の航空機の運航に伴う騒音・振動による生息状況の変化についての記載はもとより,外部者からの意見によっても,このことは認められない。)。 さらに,本件補正書6-12-157,163ないし167,244及び251ないし253頁の記載によれば,コウモリ類がねぐらを変えていることが認められ,また,利用できる洞窟が減ればねぐらの選択幅が減少するものと考えられるが,このことが直ちに個体数の減少につながるとまでいえる根拠は本件補正書等に見当たらない。 - 104 -一方,例えば,A洞窟についていえば,コキクガシラが最大約2200個体,カグラが最大約230個体,ユビナガが最大1000個体通年利用していることなどや,集団遺伝学的分析の結果から,石垣島のカグラの個体群にとってA洞窟 についていえば,コキクガシラが最大約2200個体,カグラが最大約230個体,ユビナガが最大1000個体通年利用していることなどや,集団遺伝学的分析の結果から,石垣島のカグラの個体群にとってA洞窟やD洞窟は,冬期の休眠場所として島の南東部に存在するコロニーの中では非常に重要であることが示唆されており,また,コキクガシラの個体群にとって,A洞窟は島の南東部の個体群では中心的な出産・ほ育場所であることが示唆されているとされ,特にコキクガシラとカグラについては,AないしE洞窟のうちの特定の洞窟から他の洞窟に移動することが,これらのうちのどれかの洞窟からこれら以外の他の洞窟に移動するよりも多いことが認められる(本件補正書6-12-156・172・173・252・253頁)。しかし,他方において,コウモリ類は,本件事業予定地から相当距離のある洞窟にも移動していることが認められ(同6-12-163~5頁),また,その移動の状況は,AないしE洞窟相互間のものとこれらの洞窟からそれ以外の洞窟へのものとの間で,格段の違いがあるとまではみえず,他にコウモリ類が本件事業予定地及びその周辺のみで完結的に生息していることを認めるに足りる根拠は見当たらない。さらに,本件事業予定地及びその周辺にある洞窟の一つでも欠ければコウモリ類が直ちに絶滅あるいは激減するといった関係にあることを認めるに足りる根拠も本件補正書等には見当たらないのであって,原告らが主張するα7地域洞窟群の一体性が,このような完結的,一体的な関係にあることを意味するものであるならば,そのような一体性を認めることはできないというべきである。 この点に関連して,本件補正書では,石垣島全体がコウモリ類の生息地であり,コウモリ類の個体数を将来とも衰退させることなく,維持するためには事業実 認めることはできないというべきである。 この点に関連して,本件補正書では,石垣島全体がコウモリ類の生息地であり,コウモリ類の個体数を将来とも衰退させることなく,維持するためには事業実施区域周辺のみにとどまらず,石垣島全体で考慮- 105 -していく視点が重要であるとしていることに対し,原告らは,これは,本件補正書の環境保全措置で足りると強弁するため,コウモリ類は石垣島で単一の地域個体群を成しているから石垣島の一部(α9地域)からコウモリが消失しても地域個体群が絶滅したことにはならないと言おうとしているものであるなどと主張している。しかし,本件補正書は,コキクガシラにつき石垣島全体で一つの個体群を形成していると考えられるとしつつも,更に二つの個体群に分けた場合,A洞窟はより大きなグループに入り個体群間の移動が頻繁に行われたと考えられたとし,また,カグラについても,島全体で一つの個体群を形成していると考えられるとしつつも,更に三つの個体群に分けるとD洞窟は南東部のコロニーに含まれたとしているのであって(6-12-156頁),コウモリ類が石垣島で単一の地域個体群を成していると断定しているわけではない。また,本件事業予定地及びその周辺に生息するコウモリ類が本件事業予定地から相当距離のある洞窟にも移動していることが認められ,その移動先には,出産・ほ育に利用された洞窟や冬期に100個体以上の集団で利用された洞窟も存在すること(本件補正書6-12-163~165頁参照。ただし,ユビナガの出産・ほ育に利用された洞窟は除く。)に照らし,本件事業予定地及びその周辺に生息するコウモリ類のねぐらの選択肢が本件事業予定地及びその周辺に存在する洞窟に限られるという理由はなく,このことはコウモリ類が石垣島全体で一つの個体群を形成しているかどう 事業予定地及びその周辺に生息するコウモリ類のねぐらの選択肢が本件事業予定地及びその周辺に存在する洞窟に限られるという理由はなく,このことはコウモリ類が石垣島全体で一つの個体群を形成しているかどうかにかかわらない。そして,移動先のねぐら及び餌場の条件が移動してきた個体数を受け入れることができるとされていること(同6-12-251・252頁),本件事業予定地及びその周辺にある洞窟の一つでも欠ければコウモリ類が直ちに絶滅あるいは激減するといった関係にあるという意味でのα7地域洞窟群の一体性が認められないことを- 106 -併せ考慮すれば,本件補正書が,コウモリ類の個体数を将来とも衰退させることなく維持するためには,事業実施区域周辺のみにとどまらず石垣島全体で考慮していく視点が重要であるとしている点には一応の合理性が認められるというべきである(よって,原告らの上記主張は失当である。なお,原告らは,「地域個体群」と明確に枠決めがされるかどうかにかかわらず,地域的な遺伝的変異が喪失すると,その総和としての地域個体群,さらに,その総和としての種の絶滅確率が加速度的に高まってしまうなどというが,α7地域洞窟群のコウモリ類の地域的な遺伝的変異が喪失することを認めるに足りる根拠は見当たらない。)。 (イ) 原告らは,人工洞の設置について,作った直後の人工洞にはコウモリ類は入らないから,生息場所を奪った後の保全対策にはならないなどと主張している。 しかし,作った直後の人工洞にはコウモリ類が入らないとしても,また,コウモリ類に利用されやすい代替施設を創設する技術はまだ確立されておらず,コウモリ類をそこに誘導する技術も同様であるとしても,他方において,人工洞をコウモリ類が利用している事例が相当程度あることが認められるこ 利用されやすい代替施設を創設する技術はまだ確立されておらず,コウモリ類をそこに誘導する技術も同様であるとしても,他方において,人工洞をコウモリ類が利用している事例が相当程度あることが認められること(本件補正書6-12-157・178頁参照)に照らせば,相応の条件が整えばコウモリ類が利用することが期待できるというべきであって,これが前記のように専門家の指導・助言を得ながら講じられるものであることを併せ考慮すれば,ねぐらの選択肢を増やすための保全対策としての有効性を否定することはできないというべきである(なお,原告らは,平成21年度には人工洞に入洞しているコウモリがほとんどいない状態であったというが,確定評価書等外の事実である点をおくとしても,人工洞の設置が長期的な視野での環境保全配慮であって,本件空港の存在又は供用による- 107 -環境影響に対するものでもあることに照らして,以上に説示したところは左右されない。)。 (ウ) 原告らは,わずか1日だけ建設機械各1台だけを使って実際とかけ離れた条件の下で比較的鈍感とされるカグラだけが生息する洞窟において行われた調査のデータに基づき考えられた出産・ほ育及び冬期の休眠時期の工事中の騒音・振動の影響の低減の措置(前記ア(エ)⑤)が適切かつ有効なものでないことは明らかであるなどと主張している。 しかし,実際の場合と全く同様の条件を設定して調査をすることは実際上不可能であり,また,そのような調査をしない限り適切かつ有効な措置を導くことができないとは考え難い。しかも,本件補正書は,上記の措置に加え,A及びD洞窟を対象として,工事の実施により建設機械の稼働による騒音・振動レベルが最大となる3年次ないし5年次の出産・ほ育時期及び冬期の冬眠時期にA及びD洞窟の洞口及び洞内にお 上記の措置に加え,A及びD洞窟を対象として,工事の実施により建設機械の稼働による騒音・振動レベルが最大となる3年次ないし5年次の出産・ほ育時期及び冬期の冬眠時期にA及びD洞窟の洞口及び洞内において騒音・振動レベルを測定する事後調査を行い,その結果環境影響の程度が著しいことが明らかになった場合には,洞窟付近での作業を一旦休止し,専門家の指導・助言を得た上で適切な措置を講じることとしていることは前記(1)オ(カ)のとおりである。これらによれば,原告らの主張を踏まえても,本件補正書の採用した工事中の騒音・振動に対する措置の有効性を否定することはできないというべきである。 なお,原告らは,P19委員会の報告書(甲4)に基づき上記のような主張をしているが,これは確定評価書等外の事実であり処分行政庁がこの点を考慮していないとしても裁量権の範囲の逸脱又は濫用を帰結することはないといわざるを得ない。また,原告らは,P21意見書(甲122の資料6)や証人P21の供述に基づき,平成16年1月から平成21年1月にかけてコウモリ類の個体数は減少傾向を示し- 108 -ている状態になっているというが,このことが確定評価書等外の事実であり,かつ,本件許可処分後の事情であることはおくとしても,上記資料に示された平成20年1月における県の調査結果とP18のそれとの間に大幅な違いがあることに照らしても二つの調査結果を同列に扱って傾向をみることに妥当性があるのか疑問があること,他方,証人P22は,コウモリ類の生息状況について有意な減少は認められていないと供述しており,平成18年度から平成20年度までのP16調査業務委託(その4)報告書(乙44~45)にその裏付けがあると認められることなどに鑑みれば,コウモリ類の個体数が減少傾向であるとにわかに認 供述しており,平成18年度から平成20年度までのP16調査業務委託(その4)報告書(乙44~45)にその裏付けがあると認められることなどに鑑みれば,コウモリ類の個体数が減少傾向であるとにわかに認めることはできない。 (エ) 原告らは,現空港近くのコキクガシラの生息する洞窟で行われた騒音・振動測定結果に基づき,航空機の離発着に伴う騒音・振動が残存するA及びD洞窟を利用するコウモリ類の生息状況を変化させることはないとした本件補正書の結論は,その調査,予測及び評価の手法そのものに重大な瑕疵があり,到底適切なものではないなどと主張している。 しかし,本件補正書6-12-308ないし312頁によれば,当該騒音・振動測定は,現空港の滑走路北側端から約250mの飛行経路直下にある洞窟の洞口や洞内において,航空機の離着陸時の騒音・振動を調査した結果に基づき,航空機の離着陸時のA及びD洞窟における騒音・振動の状況を予測した結果(6-12-308頁)に基づくものであり,相応に合理的な内容であると認められる(原告らは,本件補正書が光が届かないから音も伝播しないという不合理な前提で予測しているというが,本件補正書は,現空港近くの洞窟での調査において,洞内の屈曲により洞口が見通せない位置ではほぼ暗騒音に近い状態となったという結果に基づき,A及びD洞窟においても,洞内の- 109 -屈曲により洞口からの光が届かず当然洞口を見通すこともできない位置で同様の状態になるものと予測したものであることが明らかであって,原告らが主張するような前提に立つものとは認められない。また,原告らは,現空港近くの当該洞窟はA洞窟やD洞窟とは全く異なり,洞口から急に落ち込む音の入り込みにくい構造をしているなどというが,6-12-310頁の記載に照ら 提に立つものとは認められない。また,原告らは,現空港近くの当該洞窟はA洞窟やD洞窟とは全く異なり,洞口から急に落ち込む音の入り込みにくい構造をしているなどというが,6-12-310頁の記載に照らしても,これがA及びD洞窟についての予測をする前提とはできないほど全く異なる形状であるとは認められない。さらに,原告らは,繁殖集団への影響について何も検証されていないというが,本件補正書は,コウモリ類がねぐらとして実際に使用している洞窟内の場所は航空機の離発着の際にも暗騒音・暗振動の状態にあることを予測し,その点から生息状況に影響がないとしているのであり,このことは当該場所を使用するのが繁殖集団であるかどうかにかかわらないというべきである。)。そして,コウモリ類が洞内で生息するだけではなく出洞することを考慮に入れても,現空港近くの当該洞窟をコウモリ類が利用している実態があることに照らせば(6-12-308頁参照),航空機の離発着に伴う騒音・振動を原因として,現にねぐらとしており,洞窟内のねぐらとして使用する場所では暗騒音・暗振動の状態がある洞窟の利用をコウモリ類が放棄することはないものとの予測が一応でき,少なくとも,航空機の離発着の際の騒音・振動から,コウモリ類がA及びD洞窟の利用を放棄する蓋然性が高いということはできない。そして,本件補正書は,事後調査として,A及びD洞窟の洞口及び洞内において航空機の離発着に伴う騒音・振動レベルの測定を行い,その結果環境影響の程度が著しいことが明らかになった場合には,専門家の指導・助言を得た上で,遮音壁の設置や植林を行う等の適切な措置を講じることとしていること(8-9・11頁)を加味すれば,本件補正書は,航空機の離- 110 -発着に伴う騒音・振動によるコウモリ類に対する影響に関して,相応に適切な や植林を行う等の適切な措置を講じることとしていること(8-9・11頁)を加味すれば,本件補正書は,航空機の離- 110 -発着に伴う騒音・振動によるコウモリ類に対する影響に関して,相応に適切な対応を採ることとしているということができる(なお,8-14頁は,A及びD洞窟につき事後調査(著しい変化が認められた場合の対応を含む。)として行うのと同様の措置を,B,C及びE洞窟について環境監視として行うこととしている。)。 (オ) 原告らは,本件補正書が採用する採餌場所となる緑地と移動経路の創出のための樹木を植栽する環境保全措置は,創出される移動経路が1ルートのみで,また,創出される樹林面積は消失するそれの3分の1にも満たないから,餌量不足が生じ,個体群の維持に重大な影響が生じるおそれがあるなどと主張している。 確かに,本件事業の実施に伴う土地の改変により,事業実施区域の樹林が約30ha消失するのに対し(本件補正書6-12-259頁参照),緑地の創出範囲は消失面積に対応するほどの広さはなく(同7-64頁参照),また,本件事業予定地の東側にある海岸林への移動経路が2ルートあったものが1ルートになるものと認められる(同6-12-190頁,7-64頁参照)。しかし,本件事業の実施によってA及びD洞窟の洞口から北西方面のα11山,α10山方向の樹林が消失することはないものと認められるから(同6-12-242頁),上記の緑地の創出の環境保全措置のうち,A及びD洞窟の洞口からα11山,α10山方向の樹林とを結ぶ国道周辺の樹林を連続させるものは,純粋に樹林を増加させるものであって,本件補正書6-12-182・192頁及び7-64頁の図をみても主要な採餌場所の一つであることが明らかなα11山,α10山方向に至る移動経路は一部に狭 るものは,純粋に樹林を増加させるものであって,本件補正書6-12-182・192頁及び7-64頁の図をみても主要な採餌場所の一つであることが明らかなα11山,α10山方向に至る移動経路は一部に狭あいな部分があった従来と比較して明らかに充実し,コウモリ類が移動しやすいものとなり,また,それ自体がA及びD洞窟により近い場所に採餌場所を提供するものとなることが期待できる(同- 111 -6-12-242頁,7-64頁参照)。そして,創出される緑地に植栽される樹木は,コウモリ類の餌となる昆虫類の生息が見込める樹種とされ,緑地創出範囲及びその周辺につき餌昆虫等調査の事後調査をして環境影響の程度が著しいことが明らかになった場合には,P56委員会(仮称)の指導・助言を受けて,環境影響の回避・低減措置の強化や改善を図るとされていること(同6-12-318・319頁,7-63頁,8-10・11頁)に鑑みれば,面積比で考えた場合,消失する樹林以上の餌昆虫が供給されることも期待できる。さらに,北西方面のα11山,α10山の更に先には,採餌環境としては石垣島内では比較的条件のよいα12岳やα13岳を中心とした樹林が広がっており(同6-12-165・251頁参照),実際にもα12岳樹林が採餌場所として利用されていること(同6-12-182頁のグラフ参照)に照らして,本件事業予定地周辺に生息するコウモリ類に餌量不足が生じ,その個体群の維持に重大な影響が生ずるとは考え難いというべきである。加えて,本件補正書では,事後調査又は環境監視として,上記の餌昆虫等調査に加え,AないしE洞窟におけるコウモリ類の生息状況及び利用状況の調査を行い,その結果は事後調査結果などの検討・検証のために設置するP56委員会(仮称)に報告し,指導・助言を受け,また,環境影響の程度が ,AないしE洞窟におけるコウモリ類の生息状況及び利用状況の調査を行い,その結果は事後調査結果などの検討・検証のために設置するP56委員会(仮称)に報告し,指導・助言を受け,また,環境影響の程度が著しいことが明らかになった場合,環境影響の回避・低減措置の強化や改善を図るなどとされていること(8-9~14頁参照)に鑑みれば,本件補正書のコウモリ類の餌量確保に関する措置は相応に適切なものであるというべきである。 (カ) 原告らは,A洞窟はユビナガの出産・ほ育場所でもあり,県は,その可能性を示す調査結果を把握していながら,その事実を黙殺し,意図的に事実を隠ぺいしようとした疑いもあるなどと主張している。 - 112 -確かに,平成14年度新石垣空港コウモリ類調査業務(その2)報告書(甲3)には,原告らも指摘するとおりユビナガの幼獣が捕獲された旨の記載はあるが(甲3の7-9,10頁),その捕獲はA洞窟洞口であって洞内ではなく,別の機会に入洞して確認調査をした際には幼獣は観察できなかったことから,幼獣が他の洞窟から移動してきた可能性を排除できないこと(甲3の7-13頁参照)や,原告らも主張するとおりA洞窟内にユビナガの出産・ほ育コロニーが確認できていないことから,本件補正書では,A洞窟について出産・ほ育場所としての利用は確認されなかった(6-12-172頁)としたものと考えられ,こうしたことをもって,事実を黙殺したとか,意図的に事実を隠ぺいしたとかいうことはできない。 また,前記のとおり,A洞窟は本件事業が実施された場合でも引き続き利用できるのであり,また,これまでに説示したところに照らして本件補正書のコウモリ類に関する保全策の有効性は否定できないということができ,このことはA洞窟がユビナガの出産 実施された場合でも引き続き利用できるのであり,また,これまでに説示したところに照らして本件補正書のコウモリ類に関する保全策の有効性は否定できないということができ,このことはA洞窟がユビナガの出産・ほ育場所であったとしても左右されないというべきである。 原告らの上記主張は,結論において失当といわざるを得ない。 (キ) 原告らは,予備的工事着手後,A及びD洞窟自体並びに事業実施区域周辺(全体)のコウモリ類の生息数が激減し,事業実施区域周辺(全体)の個体数も減少してきており,このことは,本件補正書に重大な瑕疵があり,コウモリ類の保全に適切な配慮がされていないことを証明しているなどとして,種々の主張をしている。 しかし,これらの主張はいずれも,確定評価書等外の事実によるものである。また,この点をおくとしても,本件補正書がコウモリ類の個体数を将来とも衰退させることなく維持するためには,事業実施区域周辺のみにとどまらず石垣島全体で考慮していく視点が重要であると- 113 -している点に一応の合理性が認められること,原告らの提示する証拠(甲122の資料6,証人P21)によってコウモリ類の個体数が減少傾向であると認めることができないこと(なお,そもそもこれらの証拠は石垣島全体についてのものではない。)は既に説示したとおりであり,他に石垣島のコウモリ類が減少していることを認めるに足りる証拠は見当たらないことに鑑みれば,原告らの上記主張は失当であるといわざるを得ない(原告らが個々の洞窟のコウモリ類の生息数等につき種々論じているところは,これを前提としても,石垣島全体の状況が明らかとはならないから,以上の判断を左右しない。)。 (ク) 原告らは,県の調査方法に問題があったため,不適切な調査し 種々論じているところは,これを前提としても,石垣島全体の状況が明らかとはならないから,以上の判断を左右しない。)。 (ク) 原告らは,県の調査方法に問題があったため,不適切な調査しかされずA洞窟がユビナガの出産・ほ育洞であることを確認できないまま環境影響評価が行われた,P19委員会の平成19年6月の調査等によりこのことが確認されたものの,いまだA洞窟内にあるはずのユビナガの出産・ほ育コロニーの場所は確認されていないが,このままでは,本件補正書に保全措置として記載されているコウモリ類の出産・ほ育期及び冬季の休眠期における大型ブレーカの稼動制限区域が確定できず,工事による洞窟破壊の危惧も払しょくできないなどと主張している。 しかし,ほ乳動物学の専門家を含むP23委員会の指導・助言を得て作成された本件方法書に,目撃法による現地調査を行い,夜間踏査中は,飛翔するコウモリを確認するためにバットディテクターを携帯することなどが示され(4-23・24頁,4-45頁),本件準備書には,調査の手法として,洞窟探査を実施し,コウモリ類の生息及び洞窟の利用状況を個体数と観察内容から把握することが示され,洞窟内で懸下しているコウモリ類に赤色光スポットライトを照射し,目視あるいは双眼鏡使用により生息頭数の実数を数える方法を採った旨が- 114 -示されていること(5-67頁,6-12-5頁)に加え,本件方法書及び本件準備書に対する外部者からの意見において原告らが主張するようなコウモリ類の調査方法を採るべき旨あるいは本件方法書等で示された調査方法は不適切である旨を述べたものは見当たらないことに照らし,その調査方法が不適切であったと認めることはできない(なお,原告らは,P24委員会において,周年の調査を主張する委員などがいた された調査方法は不適切である旨を述べたものは見当たらないことに照らし,その調査方法が不適切であったと認めることはできない(なお,原告らは,P24委員会において,周年の調査を主張する委員などがいたにもかかわらず,論議はうやむやなものとなって,県の主導により,あえて不適切,不十分な調査が行われた,同委員会は県の早期事業推進の圧力に抗し得ない状況にあったなどと主張しているが,原告らの提示する証拠(甲52,53)を検討しても,同委員会自身が周年の調査を行う必要がないと判断してそのような調査まではしないこととしたことが明らかであって,県によって同委員会の議論がゆがめられたといった経緯があることは認められず,その他原告らが主張するところは明確な根拠もなく主観的な疑念を述べるものにすぎない。さらに,同委員会にはコウモリ研究や保護の専門家が2人いるということに照らしても,同委員会が早期事業推進の圧力に抗することができず,不当な指導・助言をしたと認めることは到底できない。)。 また,原告らが確定評価書等外の事実であるP19委員会の平成19年6月の調査等に基づき論じている点は,処分行政庁の裁量権の範囲の逸脱又は濫用を帰結しない。この点をおくとしても,証人P22は,例えば妊娠している雌がいたとしても出産をする際には他の洞窟に行く可能性があり,そうした例があることなどを示した上で,出産・ほ育洞であると認めるためには当該洞窟内で幼獣が確認できる必要がある旨供述しており,この供述内容そのものに不合理な点は認められない。他方,P21意見書(甲122)には,A洞窟からユビナガの授- 115 -乳中の雌が出洞したことを確認したことやC洞窟洞口でA洞窟から移動したと思われる妊娠しているユビナガの雌を捕獲したことのほか,ユビナガの生態観察結果からす は,A洞窟からユビナガの授- 115 -乳中の雌が出洞したことを確認したことやC洞窟洞口でA洞窟から移動したと思われる妊娠しているユビナガの雌を捕獲したことのほか,ユビナガの生態観察結果からすると出産に際して多くの個体が集まり出産雌のそばでコロニーを形成して出産するという習性があるところ,平成18年6月の出産期にA洞窟から1000頭を超えるユビナガが出洞するのを確認したことから,A洞窟はユビナガの出産・ほ育洞窟であると推認される旨記載があり,証人P21も同旨の供述をしている。しかし,同証人は,ユビナガの上記の習性について記載した論文を挙げることができず(同証人が多くのコウモリが集まってコロニーを形成していればその洞窟は出産・ほ育洞であることについて記載のある論文として挙げたものは,自らが意見書(甲122)でユビナガと別種で,生態も異なっているとする本州のユビナガコウモリに関する論文である。),また,石垣島のユビナガの習性については誰も研究していないと供述していることに照らし,P21意見書(甲122)や証人P21供述を根拠に証人P22の上記供述を排斥することは困難である(なお,「A洞におけるリュウキュウユビナガコウモリの授乳雌についてのアンケート結果の報告」と題する書面(甲134)には,コウモリの調査研究を行っている者10名から授乳雌が出洞した洞窟を出産・ほ育洞窟と判断することが妥当であるとのアンケート回答が寄せられたなどとの記載がある。しかし,事柄の性質に鑑みれば多数者の判断が必ずしも妥当であるといえる問題ではそもそもない上,それらの回答者の回答内容をみても,明確な理由を示していない者がいたり,また,P19委員会の調査結果(甲46)により示された事実以外の事実を前提として回答している者が複数認められたりする(例えば,捕食の の回答者の回答内容をみても,明確な理由を示していない者がいたり,また,P19委員会の調査結果(甲46)により示された事実以外の事実を前提として回答している者が複数認められたりする(例えば,捕食のために出洞したとの事実は認められていないのにこれを前提として回答した者がいたり,授乳痕跡までは認められ- 116 -ていないのにこれが認められたとの事実を前提に回答した者がいたりしている。)ことに照らしても,このようなアンケート結果から証人P22の前記供述を弾劾することはできないというべきである。また,P21意見書(甲212)は,特に新事実を付加する内容ではなく,以上に説示したところを左右するものではない。)。そして,P19委員会の調査によってもA洞窟内でユビナガの出産・ほ育コロニーは発見されていないというのであるから,そのような状況の下で,A洞窟がユビナガの出産・ほ育洞窟であるとはにわかに認められないといわざるを得ず,そうすると,原告らの前記主張は前提を欠いている。 (ケ) 原告らは,県が温度,湿度の記録を除き洞窟内の空気の流れなどの洞内環境調査をしなかったことに問題があり,そのため,A洞窟に存在する未知の洞口の存在を発見できず,その結果,本件補正書ではA洞窟の最奥部を出産・ほ育場所としているコキクガシラについて十分な配慮がされていないとの趣旨の主張をしている。 しかし,ほ乳動物学の専門家を含むP23委員会の指導・助言を得て作成された本件準備書に,洞窟内の環境の調査として,なぜコウモリ類がその洞窟を利用するかを知る一助として温度変化,湿度変化などを一年を通して把握する旨が記載されていること(5-67頁),P23委員会の指導・助言を受けて環境影響評価の手続が進められたこと(本件補正書4-24頁),本件準備書 一助として温度変化,湿度変化などを一年を通して把握する旨が記載されていること(5-67頁),P23委員会の指導・助言を受けて環境影響評価の手続が進められたこと(本件補正書4-24頁),本件準備書には,洞窟内のコウモリ類がコロニーを形成していた場所に環境測定器を設置し,温度を測定するとともに,入洞時に湿度を測定した旨が記載されたものの(6-12-6頁),それ以外の洞内環境調査についての記載はないところ,本件準備書に対する外部者からの意見において原告らが主張するような洞内環境調査を実施すべきである旨を述べたものは見当たらないことに照らし,そのような洞内環境調査を実施しなかったことが不適切- 117 -であったと認めることはできない。 また,未知の洞口(D1洞窟付近の亀裂洞口)の発見など,原告らがP19委員会の調査結果等として論じているところは,確定評価書等外の事実によるものであるが,この点をおくとしても,P19委員会が発見したという未知の洞口がA洞窟とつながっていることを客観的に裏付ける証拠は見当たらない(P19委員会の報告書(甲4,46及び63)を精査しても,そうした裏付けは示されていない。)。そうすると,結局上記D1洞窟付近の亀裂洞口がA洞窟の洞口であると認めることはできないから,原告らの前記主張は前提を欠いているといわざるを得ない。 (コ) 原告らは,A1洞窟について,県が目視調査をしただけで,洞口でのバットディテクターによるカウント調査をしないという極めて不適切な調査方法を採ったため,ほぼ周年を通じて少数ではあるがコキクガシラがねぐら場所として利用していることを把握できず,誤ってコウモリ類の利用は困難であると結論付けたなどと主張している。 しかし,これまで 周年を通じて少数ではあるがコキクガシラがねぐら場所として利用していることを把握できず,誤ってコウモリ類の利用は困難であると結論付けたなどと主張している。 しかし,これまでに説示したところに加え,A1洞窟は事業実施区域内にあってその洞口は盛土により覆われることとなるが,洞口から飛行場外まで水みち確保のため結ばれるボックスカルバートについてコウモリ類がA1洞窟への新たな出入り口として利用できるよう配慮されること(本件補正書6-12-177~181頁,7-70・71頁),こうした洞窟保全策はP24委員会で検討を行い,基本的な理解が得られていること(同7-68頁)に鑑みれば,上記主張をもってしても,本件補正書は相応の配慮をしているものというべきである。 (サ) 原告らは,平成19年8月23日に至って,水流があり洞窟延長は300m(歩行可能範囲は110m,狭さく部分は190m,うち事業地内95m)で,洞内には6ないし7mのホールもあり,C洞窟- 118 -とつながっていると考えられているという大規模な洞窟が見付かったことは,県の洞窟探索調査が極めて不十分だったことを意味しているなどと主張している。 しかし,当該洞窟が発見されたことは本件許可処分後の確定評価書等外の事実である。また,本件準備書に,地質の調査として,45地点で地質ボーリング調査を,21地点で電気探査を行うことなどや,コウモリ類の生態系調査としてではあるが,事業実施区域周辺での洞窟探査を実施することが示され(5-44・67頁),調査地域の地形や地質及び既存洞窟の水脈を参考に,事業実施区域を中心に踏査し,洞窟を探索したことが記載されていること(6-12-5頁参照),本件補正書では,洞窟の分布調査の結果が記載されていること(6-7-5~18頁), 既存洞窟の水脈を参考に,事業実施区域を中心に踏査し,洞窟を探索したことが記載されていること(6-12-5頁参照),本件補正書では,洞窟の分布調査の結果が記載されていること(6-7-5~18頁),本件準備書に対する外部者からの意見において洞窟探索調査の方法が相当ではないことを指摘したり,別途の探索調査方法を提案したり,場所を特定して未発見の洞窟が存在することを指摘したりするものは見当たらないことに照らしても,県が行った探索調査が洞窟探査調査の方法として不相当であったということはできない。 そして,本件補正書において,新たに洞窟が見付かった場合はコウモリ類の利用状況を調査し,利用が確認された場合はコウモリ類が継続してそれらの洞窟を利用できるよう専門家の指導・助言を得た上で可能な限り保全を図るとされていることなどのこれまでに説示したところによれば,上記主張を前提としても,本件補正書は相応の配慮をしているものというべきである。 (シ) 原告らは,平成18年以降に至って,P19委員会がD洞窟などにおいてコウモリ類以外の好洞窟性動物等を複数種発見したことは,県の調査が不十分である証拠であるなどと主張している。 - 119 -しかし,そうした発見は本件許可処分後の確定評価書等外の事実である。そして,本件準備書は,事業実施区域周辺の地域特性及び資料調査から把握した動物相を踏まえ,「自然環境保全基礎調査(環境庁)」などに準拠するなどして,洞窟性生物調査を見付け採り法,目撃法により実施する旨を記載しており(5-50頁。なお,本件方法書4-45・46頁参照),また,AないしE洞窟(5洞窟)にて,洞窟生物につき,洞窟地表面や壁面,鍾乳石上で活動する個体について目視観察及び見付け採りにより種名・個体数,確認地点を記録し,種名不詳の個体 45・46頁参照),また,AないしE洞窟(5洞窟)にて,洞窟生物につき,洞窟地表面や壁面,鍾乳石上で活動する個体について目視観察及び見付け採りにより種名・個体数,確認地点を記録し,種名不詳の個体のみ最低限の採取を行い液浸標本を作製し室内での種同定を行ったこと,洞窟踏査は洞内に生息するコウモリ類への影響を考慮し,時期や時間等に配慮し,なお,通常踏査の可能な範囲の踏査を行い,調査員の立入りが困難な小穴内は行っていないこと,さらに,調査洞窟の開口部周辺の地形や植生,周辺地域の環境特性,及び温湿度,相対照度の記録を行ったこと,温湿度と照度は天候のよい晴れた日中に各洞窟の開口部と近隣のゴルフ場コースで同時測定を行い,開口部の温湿度,日照条件の概要の把握を行ったこと(温湿度は1洞窟当たり1地点,照度は1洞窟当たり3地点で実施し,各項目とも3回測定した。)を記載していること(6-9-4・7),本件準備書に対する外部者からの意見において,洞窟性生物調査の場所や方法として別異のものを提案したり他にも把握されていない洞窟性動物が存在することを具体的に摘示したりするものは見当たらないことに照らしても,県が行った洞窟性生物調査が適切なものでなかったということはできない。 また,本件補正書は,重要な生物が新たに確認された場合は,専門家の指導,助言を得た上で,必要な調査を実施し,P56委員会(仮称)に諮り,適切な措置を講じることとするとしていること(8-4- 120 -頁)に鑑みれば,本件補正書が保全措置を一切示していないということはできず,むしろ,本件補正書は,相応の配慮をしているものというべきである。 (4) まとめ結局,本件事業に係る外部手続を含む環境影響評価手続の結果(環境影響評価の結果)につき環境配慮がされるものであ 正書は,相応の配慮をしているものというべきである。 (4) まとめ結局,本件事業に係る外部手続を含む環境影響評価手続の結果(環境影響評価の結果)につき環境配慮がされるものであると判断することに裁量権の範囲の逸脱又は濫用があると認めることはできず,また,前提事実のとおり,県が本件補正書に記載された本件事業に関する環境保全措置等の全てを本件事業において実施する計画であることを併せて考慮すれば,本件事業につき環境配慮審査適合性を認めた処分行政庁の判断に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるとは認められない。そうすると,環境配慮審査との関係では本件許可処分は適法である。 そして,これまでに検討したところによれば,本件事業において実施することが予定されている赤土等流出防止対策やコウモリ類の保全のための措置は,事業者である県により実行可能な範囲内で本件事業に係る環境影響をできる限り回避又は低減するものであると一応認められ,他に特段の主張立証がないことに鑑みても,本件事業において実施することが予定されているその余の環境保全措置等と相まって,本件事業の実施が本件事業予定地周辺に及ぼす環境影響の程度は小さいものとなることが十分に期待できるというべきである。 8 5号要件の充足の有無(争点(2)エ)について(承前)(1) 次に,前記5(3)での検討に引き継いで,本件事業につき土地収用法20条の定める事業の認定の要件が認められるかどうかを検討する。 (2) 前提事実並びに前記4及び5において認定した事実に加え,証拠(甲54~56,67の2,乙2,3,10,11,23,30)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 - 121 -ア本件事業によって設置される本件空港は,公共の用に供されるもので 4~56,67の2,乙2,3,10,11,23,30)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 - 121 -ア本件事業によって設置される本件空港は,公共の用に供されるものである。本件空港予定地の土地は,石垣市α14又はα3に所在する。 イ本件空港予定地の土地(合計360筆,面積合計142万0442㎡)の現況は,公衆用道路のほか,ゴルフ場(総面積47万4745. 02㎡),牧草地(総面積29万2250.64㎡),畑(総面積24万3104.8㎡),牧場(総面積18万5838.62㎡),牧草地・畑(総面積5万5054.33㎡),荒地(1万9023.36㎡),田(総面積9862.62㎡)等であり,そのうち本件共有地(2筆,面積合計1556㎡,現況はいずれも牧場),行方不明のP11が所有する土地(3筆,所在はいずれも石垣市α2,地番は×番ないし×番,地積は順に1978㎡,1120㎡,715㎡,現況はいずれも荒地)及び所有者P25が既に死亡しており相続人が不存在の土地(1筆,所在石垣市α15,地番×番,地積16㎡,現況は公衆用道路)を除いた354筆面積合計141万5057㎡は,被告又は県の所有であるか,その所有者(共有の場合共有者全員)が譲渡同意書を提出した土地によって占められている。 また,本件空港予定地の周辺には畑や牧草地,荒地,山林等が広がっており,付近に航空機騒音の被害を及ぼす人口密集地等は存しない。 ウ沖縄県は,東西約1000km,南北約400kmの広大な海域に39の有人離島を含む160余の島々が点在する島しょ県である。このような地理的特性から,沖縄県においては離島間の交通手段として空路が極めて重要な役割を担っている。 特に,石垣島を含む32の島しょ(うち11が有人島)から成る八重 する島しょ県である。このような地理的特性から,沖縄県においては離島間の交通手段として空路が極めて重要な役割を担っている。 特に,石垣島を含む32の島しょ(うち11が有人島)から成る八重山地域は,沖縄県の南西部,日本の最西南端に位置し,沖縄本島から石垣島までの距離で410km程離れており,地域と那覇,東京,大阪等の地域外との間の移動,特に人の移動はほとんど空路に頼っている状況- 122 -にある。八重山地域は,石垣市,沖縄県八重山郡α16町(以下,単に「α16町」という。)及びα17町(以下,単に「α17町」という。)の1市2町によって構成され,地域内人口は5万2000人で,石垣島を中心に交通アクセスが作られ(石垣島と地域内のα16島,α6島等とは海路によって結ばれているほか,α17島(海路は週2便しかない。)等には空路も設けられている。なお,周辺離島との海路のほか,隣接地域の宮古島(週3便)や台湾(週2便)への海路も設けられている。),地域の産業経済活動,生活圏域が形成されている。 地域の産業別就業者状況は,第3次産業,第2次産業,第1次産業の順であり,第3次産業の割合が60%強となっている。日本の最西南端に位置し,α18湾やα6国立公園に代表される亜熱帯の豊かな自然,独特の文化や芸能,農水産の特産品等が人気を呼んでいて,観光業が地域の主導産業に成長している。平成16年の観光客の入域は71万人,観光収入は499億円余であり,観光関連雇用は7300人と推計されている。各種調査やアンケートによれば,八重山地域は,行ってみたい観光地,行ってよかった観光地,ダイビング人気スポット日本一など,常に国内トップクラスを占め続けている(もっとも,県内の観光客シェアは13%程度であり,需要に十分応えられていない状況にあ ってみたい観光地,行ってよかった観光地,ダイビング人気スポット日本一など,常に国内トップクラスを占め続けている(もっとも,県内の観光客シェアは13%程度であり,需要に十分応えられていない状況にある。)。 また,農業については,経営農地面積が8160ha余で,県全体の20%を占め,作目もサトウキビ,水稲,パインアップル,肉用牛等多品目にわたり,特に亜熱帯海洋性気候の有利性を活かしたパインアップル,マンゴー,ドラゴンフルーツ,パッションフルーツ等があり,今後はパパイヤが期待されている。漁業においては,カツオ,マグロ,アカジン,アカマチ等の鮮魚類のほか,近年は養殖クルマエビ等が県内や本土の消費地に出荷されている。 エ現空港は,昭和18年に旧日本軍により建設された海軍α19予備飛- 123 -行場の跡地を民間商業航空路の開設に伴い昭和30年に整備,建設したものである。昭和31年から民間航空会社が運航を開始し,昭和40年にはアスファルト舗装が実施され,昭和43年には滑走路の延長とともにYS-11型機が就航し,沖縄が日本に復帰した昭和47年から3か年で滑走路が延長整備され,昭和48年には第3種空港として指定された。その後,増大する航空需要に対応するためジェット化が課題となったが,滑走路を延長することが困難であったため,新空港を早期に整備して移転することを条件として現空港周辺住民の理解を得ることで暫定的に,昭和54年から1500mの滑走路のまま小型ジェット機(B-737型機)を就航させている。 現空港は,現在,那覇,宮古等の県内路線の他,東京,大阪等の本土路線が就航する八重山地域の基幹空港となっており,平成16年度の利用実績は,乗降客数約179万人,貨物取扱量約1万1000tで,全国に55ある第3種空港の中でいずれも第1位と 他,東京,大阪等の本土路線が就航する八重山地域の基幹空港となっており,平成16年度の利用実績は,乗降客数約179万人,貨物取扱量約1万1000tで,全国に55ある第3種空港の中でいずれも第1位と非常に利用度の高い空港である。 しかし,滑走路が短いため,航空機の着陸時における急ブレーキの衝撃はかなり大きく,利用者から不安な声が上がっている上,昭和57年には機体のオーバーランによる大破炎上事故(重軽傷者発生),平成9年にはタイヤバーストによる空港全面閉鎖事故が発生しており,航空乗務員から滑走路延長の要請がされている。また,短い滑走路の下で安全航行を確保するため,貨客の重量制限をせざるを得ないほか,中型ジェット機を利用できないためコンテナ・大型貨物の輸送が不可能となっており,乗客数の増減によって貨物の積載量を調整したり,本土便も宮古や那覇で給油をしたり,本土への貨物を那覇空港で積み替える作業が必要となったりして,時間,コストを要するという問題が生じている。さらに,果樹等の生鮮物品の出荷最盛期と観光シーズンが重なるため,積- 124 -み残しや滞貨が生じるなど,八重山圏の産業振興の大きな制約となっている。さらにまた,視界不良時の発着を可能にするための計器着陸装置が設置されていないため,しばしば欠航が発生し,また,多くの発着便を扱うための平行誘導路が整備されていないという問題点も指摘されている。加えて,市街地に位置するため,航空機騒音が生活環境や教育環境に悪影響を及ぼしており,周辺住民は,現空港の拡張に反対し,新空港の早期建設を求める旨の要請を関係機関に幾度となく行っており,石垣市は,現空港の小型ジェット機就航につき新空港の移設をする前提で周辺住民と合意をした上での暫定措置として受け入れた経緯がある。 オ県は,昭和51 旨の要請を関係機関に幾度となく行っており,石垣市は,現空港の小型ジェット機就航につき新空港の移設をする前提で周辺住民と合意をした上での暫定措置として受け入れた経緯がある。 オ県は,昭和51年度に石垣空港基本計画調査を実施し,α3海上案,α20案,現空港の拡張整備案を挙げた上で,昭和53年度に基本設計を実施し,候補地の比較検討を行った結果,昭和54年5月,α3海上案を採用することを庁議決定した。県は,昭和55年12月,運輸大臣に対し新空港の設置許可を申請し,昭和57年3月,この設置許可を受けて事業に着手したが,α3の住民の強固な反対運動に遭い,また,国際的な自然保護団体が事業の見直しを求める決議をしたことなどもあり,平成元年4月,建設位置をα3海上案からα4岳東案に変更した。しかし,反対運動が継続されるなどしたこともあり,県は,平成3年2月に建設位置の再検討に着手し,平成4年にはα3海上案・α4岳東案とも撤回した。その後,県は,平成10年4月にα21案を決定したが,地元の強い反対にあい,事業は進展しなかった。 そのような中,県は,平成11年6月22日,従来の事業実施に至らなかった経緯等を踏まえ,望ましい建設位置の決定に資するため,学識経験者,地元関係機関の代表者及び地元選出の県会議員の合計36名で構成するP1委員会を設置し,全会一致の原則の下,望ましい建設位置を八重山地域の合意の下で選定することにした。建設候補地については,- 125 -石垣島の地形条件から,それまでに蓄積されたデータを基に,空港建設が可能な場所として,α4岳東案,α4岳陸上案,α21案,α20案の4つを対象とすることとした(各案の位置関係は,本件補正書の参考資料-2頁の図-2(2)のとおりである。)。現空港拡張案については,滑走路の北側に文化財 4岳東案,α4岳陸上案,α21案,α20案の4つを対象とすることとした(各案の位置関係は,本件補正書の参考資料-2頁の図-2(2)のとおりである。)。現空港拡張案については,滑走路の北側に文化財保護法により指定されたα22遺跡があり,南側に既成市街地が広がっており,これらの撤去,移転は現実的でないこと,現空港のジェット化について一時暫定的な措置として周辺住民の理解を得ていたものであり,航空機騒音により既に住環境がかなりの程度悪化していること(環境基準値WECPAL70を当てはめた場合,基準値を超える住居,施設の数は527に及んでいる。)等により地元の合意を得られる可能性がないこと,視界不良時の発着を可能にするための計器着陸装置を設置し,就航率の向上を図るためには空港の幅をおよそ2倍に広げる必要があり,さらに,平行誘導路を整備するためには更に拡幅が必要となるため,単に滑走路を500m延長するだけでは安定した航空輸送を確保することができないことなどから,対象から外された。 P1委員会は,学識部会4回,地元部会2回,全体会8回,合計14回の会議を開き,候補地の選定に当たっては,空港計画としての妥当性,環境保全上,農政上の課題を中心に24項目のデータから比較検討をして,その中で環境保全上の影響が最も大きいα4岳東案,農政上の課題が最も大きいα21案を除外し,残り2案の比較検討をした。α4岳陸上案には,α3海域の生態系への影響が懸念されること,α4岳の一部が切除され,周辺の自然景観を損なうおそれがあることなどの問題点が指摘される一方,α20案には,ラムサール条約登録の動きもあるα23湿地に隣接すること,周辺にカンムリワシの生息の可能性があること,地域のシンボルであるα24が切除され,滑走路北側の設置のため鳥獣保護区内の海 方,α20案には,ラムサール条約登録の動きもあるα23湿地に隣接すること,周辺にカンムリワシの生息の可能性があること,地域のシンボルであるα24が切除され,滑走路北側の設置のため鳥獣保護区内の海域の埋め立てが必要となること,土工量が膨大となること,- 126 -漁業権との競合が生じること,土地改良済みの優良農地が含まれることなどの問題点が指摘された上で,委員長を除く35名の委員の評価の集計をしたところ,α4岳陸上案を支持する者が31名であった。さらに,再審議を行い,α4岳陸上案を支持しない者の意見を求めた結果,P18委員会代表の委員がα4岳陸上案の選定に反対したが,最終的には,α4岳陸上案の選定を尊重するとし,α3海域の自然環境に負荷を与えないよう,位置の調整や工法等を検討するという条件を付すことにして,平成12年3月,最終的にα4岳陸上案が選定された。これを受け,県は,α4岳陸上案によることを決定した。 さらに,具体的な位置を検討するため,平成12年9月5日,地元の代表者で構成するP15会議が設置され,α4岳陸上案を基にした合計7案が検討され,航空機騒音の観点から飛行経路が集落の間を抜ける,α4岳をできるだけ削らない,海域からできるだけ離す,優良農地をできるだけ残す,土工量のバランスをよくする,小型コウモリ類の生息が確認された洞窟から離すなどの周辺への考慮をして,原案から約180m南側に移動した案が選ばれた。その上で,地元からの要望,将来の土地利用計画,優良農地,α4岳の切削等についての配慮をした審議を経て,ターミナルを当初の建設予定位置であった西側から東側に移した案で地元合意が得られた。そして,α4岳の切削量をできるだけ少なくすることや土工量のバランスに配慮して,本件空港の形状が決定された。 カ県議会は,県 の建設予定位置であった西側から東側に移した案で地元合意が得られた。そして,α4岳の切削量をできるだけ少なくすることや土工量のバランスに配慮して,本件空港の形状が決定された。 カ県議会は,県が本件空港を設置し,管理することを議決しており,空港整備法5条1項による関係地方公共団体との協議も完了しており,関係地方公共団体である石垣市は,石垣市議会の議決を経た上で,県が本件空港を設置,管理することに同意している。また,本件事業は8か年計画とされ,その総事業費420億円のうち,340億8030万円が国費により,残り79億1970万円を県が負担するものとされ,8か- 127 -年のうち県の負担が最大となる平成18年度でも県の負担総額はせいぜい18億円程度である。このうち平成17年度分2億5205万円を含むと認められる平成17年度県一般会計予算(歳出予算総額5859億3300万円,うち土木費961億9173万円)は平成17年第1回県議会の平成17年3月29日の会議において原案どおり可決されている。さらに,県は,本件空港の供用開始期日までに石垣市に新石垣空港管理事務所を設置し,管理事務所に管理要員10名を配置して,航空法施行規則92条に規定される保安上の基準に適合するよう管理する(管理の詳細は,国土交通省作成のガイドラインに基づき作成する飛行場手引き書による)計画である。県は,既に12の空港を設置,管理しており,その中には,滑走路の規模が本件空港と同等又はそれ以上と認められる下地島空港,久米島空港及び宮古空港が含まれる。 キ本件事業の環境影響評価法に基づく手続は実施済みであるほか,α5川上の架橋架設・場内排水取付,国有財産(里道)廃止,潮害防備保安林の解除,森林区域の開発行為の許可等の本件空港設置事業を実施する上で必要な関係 環境影響評価法に基づく手続は実施済みであるほか,α5川上の架橋架設・場内排水取付,国有財産(里道)廃止,潮害防備保安林の解除,森林区域の開発行為の許可等の本件空港設置事業を実施する上で必要な関係行政機関との諸法令手続等について,県からの協議に対し平成17年2月までに全ての関係行政機関から回答があり,その中には特段の支障があることを指摘するものはない。 ク県議会(平成16年11月29日),石垣市議会(同年3月8日全会一致),α16町議会(同月12日)及びα17町議会(同日)が本件空港の早期設置を要請する旨等の決議をしたほか,沖縄県市議会議長会及び九州市議会議長会も本件空港の早期建設を要請する決議をした。また,P26連合会が新空港早期建設に関する要請決議をしたほか,P27協議会,P28協議会,P29協議会などの23団体より構成されるP30会は,石垣市民の66%に当たる3万0235名(有権者である石垣市民の75%に当たる2万4442名)の本件空港早期建設の署名- 128 -を集めた上で,現空港周辺のα19,α8,α25及びα26の各地区の公民館に加えてα3の公民館(具体的には,各公民館の公民館長)ともども,平成14年11月6日,処分行政庁に対し,本件空港の早期建設につき要請をした。さらに,P30会は,平成16年には,1万人意見広告運動を展開し,本件空港の早期建設を訴えたほか,新石垣空港早期建設郡民総決起大会を開催し,本件空港の早期建設に関する要請を決議した。加えて,航空会社3社が関係機関に対し新石垣空港整備事業の早期着工を要請している。 他方,空港建設に反対しP31会(在石垣),P32会(在那覇),P33会(在東京)及びP34会(在大阪)は,平成13年6月3日に,P35ネットワークを結成し,本件空港の建設に反対している(そ 。 他方,空港建設に反対しP31会(在石垣),P32会(在那覇),P33会(在東京)及びP34会(在大阪)は,平成13年6月3日に,P35ネットワークを結成し,本件空港の建設に反対している(そうした運動の一環として行われているα3トラスト運動には,本件申請時に630名程度の参加者があり,そのうち22名が石垣市に住所を有し,うち16名がα3に住所を有している。)。また,P36ネットワーク,財団法人P37協会,財団法人P38研究センター,P39連合,財団法人P40,P41会,P42(発行者P43ほか),P44グループ及びP45会が,本件空港建設について環境保全に関する意見を示している。 平成17年11月10日に石垣市に所在する県八重山支庁において開催された本件空港設置許可に係る公聴会においては,公述の申込みをした16人全員が公述したところ,県を代表した公述人を除く15人の公述人の中には,本件空港の設置により自ら又は第三者の利益が害される旨を訴えた者は一人もなく,α3の住民の自治組織である公民館の館長を含めたその全員が本件空港の設置に賛成する趣旨の公述をした。また,α3の住民である原告P46,元原告P5らの陳述書(甲54~56)においても,α3の住民の反対運動により計画見直しを勝ち取ったα3- 129 -海上案やα4岳東案のときと比べると,本件空港予定地の地元といえるα3の住民の中で本件空港の設置について表立って反対する者は少なくなった,前回のようには反対運動が盛り上がらなかったなどとされている。 ケ本件申請書においては,路線別に過去の輸送実績と経済指標との相関分析により求めることを基本とした上で,東京を始めとする本土路線について分析に必要とされる十分なデータがないこと,那覇路線は,過去の実績に那覇を出発地 ては,路線別に過去の輸送実績と経済指標との相関分析により求めることを基本とした上で,東京を始めとする本土路線について分析に必要とされる十分なデータがないこと,那覇路線は,過去の実績に那覇を出発地・到着地とする旅客と,本土を出発地・到着地とし那覇を経由する旅客の双方が混在しており,那覇路線のみを対象として分析することは適切でないと考えられることから,本土路線及び那覇路線の需要予測については,一旦「那覇路線+本土路線」という形で相関分析による予測を行い,その後,旅客流動の実体(本土からの旅客と那覇からの旅客の割合)や本土における地域別将来人口を考慮して地域別・地域間需要を算定し,これらを路線別に集約して各路線の需要を予測するという手法による検討により,平成28年度の旅客需要を223万8000人,航空貨物の需要を1万2500tと,平成33年度の旅客需要を259万7000人,航空貨物の需要を1万3736tと予測した上で,この予測を基礎として,本件空港の必要計画規模として,エプロンのバース数を8,面積を7万5145㎡と,旅客ターミナル延べ床面積を1万8200㎡と,貨物ターミナル地区用地面積を7350㎡と,駐車場を1万9600㎡と,給油施設用地面積を7650㎡としている(なお,最も広さを必要とする着陸帯の面積(63万6000㎡)は,空港土木施設設計基準により滑走路の長さに応じて定められているため,この旅客需要とは直ちに関係しない。)。 コ国際民間航空条約第14附属書(ICAOANNEX14 飛行場第1巻第3章3.1)では,飛行場の滑走路の本数及び方位を決めるに- 130 -当たっては,当該飛行場の使用が予想される飛行機について,飛行場の予想就航率を95%以上とすることを基準とすべきであることを勧告しており,この勧告の適用に 路の本数及び方位を決めるに- 130 -当たっては,当該飛行場の使用が予想される飛行機について,飛行場の予想就航率を95%以上とすることを基準とすべきであることを勧告しており,この勧告の適用において,横風成分が滑走路長1500m以上の飛行場の場合で37km/h(20kt)を超えるとき(横風限界20kt),通常の環境では,飛行機の離着陸が不可能となると想定すべきであるとしている。本件空港の横風限界20ktの場合のウィンドカバレッジは,通年が98.30%,冬季が99.84%,春季が99. 92%,夏季が99.61%,秋季が97.69%であり,本件空港の予想就航率は上記基準を満足していると認められる。 (3) 以上の事実によれば,本件空港は,土地収用法3条12号に規定する航空法による飛行場で公共の用に供するものに当たるから,本件事業は,同法20条1号の要件を満たす。 (4) 次に,土地収用法20条2号は,起業者が事業を遂行する充分な意思と能力を有する者であることを要件としており,意思の点については法令上必要な意思決定がされているかどうか,能力の点については法的,経済的,企業的観点から客観的にこの能力があるかどうかという観点から検討すべきものと解される(もっとも,この場合の法的能力があるかどうかは本件許可処分が適法であるかどうかによることになることに鑑みれば,ここでは法的能力の有無の点は問題とはならない。)。 この点,前記(2)の事実によれば,本件事業の起業者である県が法令上必要とする県議会の議決を経た意思決定をしていることは明らかである。また,県が経済的,企業的観点から本件事業を遂行する能力を有することも明らかであるというべきであり,本件事業は,同条2号の要件も満たす。 (5) さらに,土地収用法20条3号は「事業計画 である。また,県が経済的,企業的観点から本件事業を遂行する能力を有することも明らかであるというべきであり,本件事業は,同条2号の要件も満たす。 (5) さらに,土地収用法20条3号は「事業計画が土地の適正且つ合理的な利用に寄与するものであること。」を規定しているところ,「公共の利益の増進と私有財産との調整を図り,もって国土の適正且つ合理的な利用に- 131 -寄与する」という同法の目的(1条参照)に照らすと,この要件は,その土地がその事業の用に供されることによって得られる公共の利益とその土地がその事業の用に供されることによって失われる公共的又は私的利益とを比較衡量し,前者が後者に優越すると認められる場合にその存在が認められるものと解すべきである。そして,この要件の存否についての具体的な判断は,事業認定に係る事業計画の内容,事業計画の達成によってもたらされるべき公共の利益,事業計画において収用の対象とされる土地の状況等諸要素の比較衡量に基づく総合判断として行われるベきものと解される。 そこで,この観点から検討すると,前記(2)の事実によれば,次のようにいうことができる。 ア本件事業は,島しょ県である沖縄の南西部,日本の最西南端部に位置する離島地域である八重山地域の交通の中心にある石垣島に中型ジェット機が就航可能な2000m滑走路を有する空港を設置しようとするものである。地域外との交通,特に人の移動はほとんど空路に頼らざるを得ない八重山地域において,空港は電気,水道にも比すべき極めて基礎的な社会基盤といえる。特に,現空港は,第3種空港の中で乗降客数,貨物取扱量とも全国第1位という極めて利用度の高い空港であるというのに,小型ジェット機の運航上貨客の重量制限をしなければならない1500m滑走路しかなく,また,計器着陸 ,第3種空港の中で乗降客数,貨物取扱量とも全国第1位という極めて利用度の高い空港であるというのに,小型ジェット機の運航上貨客の重量制限をしなければならない1500m滑走路しかなく,また,計器着陸装置や平行誘導路がないことから,円滑で効率的な航空輸送に支障を来す事態が生じている。その上,航空機の着陸時における急ブレーキの衝撃はかなり大きく,利用者から不安な声が上がっているほか,現に機体の滑走路オーバーランによる人身事故も発生しているなど,交通の安全・安心の面からも万全とはいえない状況にある。さらに,貨客の重量制限をしなければならず,また,現に生鮮品の積み残し・滞貨が生じていることに照らしても,現空港の- 132 -ままでは様々な航空需要に応じ切れていない状態にあることは明らかであって,地域の主導産業である観光業や地域を特徴付ける産業といえる農漁業の振興という観点からも,早急な空港整備が要請される状況にある。 イ空港整備については,昭和51年度に石垣空港基本計画調査が行われるなど,比較的早い段階から検討され,昭和54年4月にはα3海上案の採用決定(昭和57年3月には同案に基づく空港設置許可)があったものの,建設予定地周辺の住民の強固な反対があり,また,環境保全上の問題があって,結局計画は見直しに至った。その後も何度か建設位置の決定があったものの,その都度,建設予定地周辺の住民の反対があり,また,環境保全上や農政上の問題等があって,空港整備は進展しなかった経緯がある。 他方,本件空港の設置位置は,望ましい位置を八重山地域の住民の合意の下で選定するために,地元関係機関の代表者等から構成されたP1委員会,P15会議における審議検討を経て決定されたものであり,石垣市議会が全会一致で本件空港の早期設置を要請する旨等の決議をした 合意の下で選定するために,地元関係機関の代表者等から構成されたP1委員会,P15会議における審議検討を経て決定されたものであり,石垣市議会が全会一致で本件空港の早期設置を要請する旨等の決議をしたこと,石垣市の有権者の4分の3が本件空港の早期建設を求める署名をしていること,α3の自治組織であるα3公民館の館長が処分行政庁に対する本件空港早期建設の要請行動に加わったことなど前記認定の諸事情があることに鑑みても,本件空港予定地の地元であるα3を含め,八重山地域の住民の大半は,本件事業に賛成しているものと認められる。 その意味で,本件事業の実施には八重山地域住民の社会的合意があり,離島住民にとって生命線ともいうべき極めて基礎的な社会基盤である本件空港を現実のものとするよう求める地域住民の声は非常に大きいというべきである。 ウまた,新空港の設置位置の決定においては,昭和51年度に行われた- 133 -石垣空港基本計画調査以降に蓄積されたデータを基に,空港建設が可能な4か所を対象として,空港計画の妥当性,環境保全上,農政上の課題を中心に24項目のデータから比較検討がされ,環境保全上の影響が最も大きいα4岳東案,農政上の課題が最も大きいα21案が除外され,残された2案につき,問題点の検討がされた上で,P1委員会によってα4岳陸上案が選定され,その結果に基づき同案によることが決定された。さらに,P15会議において,航空機騒音の観点から飛行経路が集落の間を抜ける,α4岳をできるだけ削らない,海域からできるだけ離す,優良農地をできるだけ残す,土工量のバランスをよくする,コウモリ類の生息が確認された洞窟から離すなどの周辺への考慮をして,原案から約180m南側に移動した案が選ばれ,この案を基本に,地元からの要望,将来の土地利用計画,優良農 工量のバランスをよくする,コウモリ類の生息が確認された洞窟から離すなどの周辺への考慮をして,原案から約180m南側に移動した案が選ばれ,この案を基本に,地元からの要望,将来の土地利用計画,優良農地,α4岳の切削量をできるだけ減らすことなどに配慮して,ターミナルの位置などが定められ,新空港の設置位置やその形状が決定され,本件空港設置の事業計画に至った。 これに対し,原告らは,P1委員会の環境保全の観点からの審議は,過去に何らの環境調査も行われていないα4岳陸上案について,α4岳東案及びα21案のデータをほぼ機械的に足し合わせたデータしかなく,環境影響評価実施以降その保全が重要な議論の対象になっているコウモリ類やカンムリワシのことは一切記載されていない不十分な資料に基づいてされたずさんなものであるなどという。しかし,P1委員会の設置に至るまでの新空港の設置位置をめぐる経過に照らしても,新空港を建設することが可能な場所の現実的な選択肢として考えられるのは上記の4か所のみであったというべきところ,このうちからまずα4岳東案とα21案が除外されたことは,当該案が環境保全上又は農政上の課題が重大であることに加え,一旦設置位置と決定されたものの付近住民の反対等のため計画が進まなかった従来の経緯に照らしても妥当といえる。 - 134 -また,α20案は,土地改良済みの優良農地を含んだ場所を計画地とし,滑走路北側の設置のため鳥獣保護区内の海域を埋め立てるというものであり,ラムサール条約登録の動きもあるα23湿地に隣接することや土工量が膨大になることに鑑みても,α4岳東案に類似した問題点があるというべきであって,原告らが指摘する点を踏まえ,原告らがいうように自然環境保全上の観点を重視したとしても,α20案がα4岳陸上案よりも新空港の設 ることに鑑みても,α4岳東案に類似した問題点があるというべきであって,原告らが指摘する点を踏まえ,原告らがいうように自然環境保全上の観点を重視したとしても,α20案がα4岳陸上案よりも新空港の設置位置として合理的なものであったとは認め難い。 また,現空港拡張案は,P1委員会の検討の対象から外されているが,航空需要の大きい離島の基幹空港として整備するには,単に滑走路の延長のみでは足りず,その場合空港の幅を2倍を超える規模で拡張する必要があると考えられるところ,現空港の周囲の状態(滑走路の北側には文化財保護法により指定された遺跡があり,南側に既成市街地が広がっている。),周辺住民との関係(航空機騒音により既に住環境がかなりの程度悪化しており,ジェット化に際しても一時暫定的な措置として周辺住民の理解を得た。)等の前記の事情に照らして,これが現実的な選択肢として採り得ないとの判断は合理的でやむを得ないものであるというべきであり,仮に,形式的にP1委員会の検討の対象とされたところで,結果としてこの案が選定されることがあり得ないことは明白である。 新空港の設置位置をめぐる従来の経過や,P1委員会の検討の内容,本件空港を設置することに八重山地域住民の社会的合意があると認められること等に照らして,他に特段の事情の主張立証もない以上,新空港の設置位置が本件空港のとおりと定められたことは,その選定過程及び選定結果ともに合理的であるというべきである(原告らは,P1委員会の決定は,あくまでも全員一致とするというルールを踏みにじり,多数の意見で自然環境に配慮すべきであるという意見を押しつぶしたものであり,十分な議論がなされたものとはいい難いなどというが,α4岳陸- 135 -上案の選定に反対した委員も,最終的には,α4岳陸上案の選定を尊 然環境に配慮すべきであるという意見を押しつぶしたものであり,十分な議論がなされたものとはいい難いなどというが,α4岳陸- 135 -上案の選定に反対した委員も,最終的には,α4岳陸上案の選定を尊重するとし,α3海域の自然環境に負荷を与えないよう,位置の調整や工法等を検討するという条件を付すことにして,最終的にα4岳陸上案が選定されたことは前記のとおりであり,この選定結果に基づく本件空港の設置について八重山地域住民の社会的合意があると認められることに照らしても,P1委員会の選定過程が不合理なものであったということはできない。なお,国及び地方公共団体に対し,沖縄における住民の生活の利便性の向上及び産業の振興を図るため,航空を含んだ交通の総合的かつ安定的な確保及びその充実に特別の配慮をすることを義務付けている沖縄振興特別措置法91条の規定に照らし,新空港の設置が「住民の生活の利便性の向上及び産業の振興を図るため」の方策であることが明らかであることに鑑みても,県が新空港の設置位置の選定に当たって地元である八重山地域の住民の合意を重視したことはもっともなことであるというべきである。)。 エ本件空港の予想就航率は,国際民間航空条約第14附属書において勧告されている基準を満足している。 オ特に前記(2)エの事実によれば,2000mの滑走路を設けることとした本件空港の事業計画は相当というべきである。なお,原告らは,近隣にα17空港,宮古空港といった2000m級の飛行場が多く存在していること,石垣島の観光資源はサンゴ礁などの自然環境であるところ,近年の急速なリゾート開発により,近い将来石垣島の自然環境が破壊され,観光資源が失われるおそれが大きいことなどからすれば,県の航空需要予想は明らかに過大であるなどというが,そもそも,空路 るところ,近年の急速なリゾート開発により,近い将来石垣島の自然環境が破壊され,観光資源が失われるおそれが大きいことなどからすれば,県の航空需要予想は明らかに過大であるなどというが,そもそも,空路を除けば石垣島とは週数便の海路によって結ばれているだけのα17島や宮古島に2000m滑走路を有するα17空港や宮古空港があることと,八重山地域の交通の中心である石垣島の航空需要がどのように関係するとい- 136 -うのか原告らの主張はにわかに理解できないし,その主張の裏付けとなるような証拠も見当たらない。そして,他に特段の事情も認められない以上,県の航空旅客及び航空貨物の予測の合理性を否定することはできない。 以上によれば,本件空港の規模は適正であるというべきである。 カ本件事業を実施する上で必要な関係行政機関との諸法令手続によって計画が変更されるものを除き,本件空港予定地につき,本件事業と相反する土地利用の計画の存在は認められない。そして,それらの手続を行う上で特段の支障があることは認められないから,当該計画の変更も滞りなく実施されることが期待できる。 キ前記第2の3並びに前記第3の2ないし4及び7によれば,5号要件を除き,本件申請につきこれを許可すべき要件が認められる。 ク本件事業予定地の土地の現況は,ゴルフ場,牧場,畑,牧草地等であり,社会経済的効用としての観点からみた場合,本件事業予定地の土地それ自体がこれらの用途に用いられることによる利益と比較して,本件事業の実施によってもたらされる利益は明らかに大きいものというべきである。 また,本件事業予定地の土地の大多数(筆数比によれば98.3%以上,面積比によれば99.6%以上)は,被告又は県の所有地であるか,その所有者(共有の場合共有 大きいものというべきである。 また,本件事業予定地の土地の大多数(筆数比によれば98.3%以上,面積比によれば99.6%以上)は,被告又は県の所有地であるか,その所有者(共有の場合共有者全員)が譲渡同意書を提出した土地によって占められており,譲渡同意書を提出した者は,その所有地が本件空港の敷地とされることを基本的に了解しているものと認められる。さらに,本件事業予定地付近に航空機騒音の被害を及ぼす人口密集地等は存しないこと,本件空港設置許可に係る公聴会において,本件空港の設置により自ら又は第三者の利益が害される旨を訴えた者は一人もなく,公述人全員が本件空港の設置に賛成する趣旨の公述をしたこと,前記4の- 137 -とおり処分行政庁が本件空港の設置によって他人の利益を著しく害することとならないと認めたことは相当であることを併せ考慮すれば,本件事業の実施によって私的な利益が大きく害されることはないというべきである。 他方,原告らは,本件事業が実施され,更に本件空港が供用されることにより,本件事業予定地周辺にあるα9地域やα3海域の自然環境が破壊され,殊にコキクガシラ,アオサンゴなどが死滅してしまうと主張している。しかし,本件事業において実施することが予定されている環境保全措置等によって,本件事業の実施が本件事業予定地周辺に及ぼす環境影響の程度は小さいものとなることが十分に期待できることは前記7において説示したとおりであり,これらの環境保全措置等が実施されたとしても,本件事業の実施の結果,本件事業予定地及びその周辺のα9地域やα3海域の自然環境が破壊され,コキクガシラ,アオサンゴなどの野生生物が死滅してしまうことの証明はない(なお,原告らは,平成19年8月1日よりα3が海中公園に指定された趣旨から考えても,その環 域やα3海域の自然環境が破壊され,コキクガシラ,アオサンゴなどの野生生物が死滅してしまうことの証明はない(なお,原告らは,平成19年8月1日よりα3が海中公園に指定された趣旨から考えても,その環境は現状のまま保護・保全が図られるべきであるなどというが,本件許可処分の違法性判断に当たって本件許可処分後の事情を考慮に入れることはできないといわざるを得ない。)。そして,原告らは,他に本件事業の実施によって害される公共の利益があることについて特段の主張立証をしておらず,本件全証拠によってもそうした公共の利益があるとは認められない。 ケなお,原告らは,本件事業予定地に関して,次のように主張しているが,いずれも失当である。 (ア) 原告らは,本件空港の滑走路予定地直下に洞窟ないし空洞が存在し,それらが崩壊することなどにより本件空港の滑走路が陥没ないし崩壊するおそれがあるから,本件事業予定地は空港としての適地性を欠い- 138 -ているという。 確かに,証拠(甲11等)によれば,本件空港の滑走路予定地直下に洞窟が存在することが認められる。しかし,何らの対応もせずに滑走路を設けた場合にはこれが崩壊するおそれがあるとしても,現代の土木技術の水準(被告は,本件空港設置予定地のように地下に空洞が存在する土地の強度を確保するための工法として,例えば,地下空洞の規模が比較的大きい場合や空洞の形状や浸食状況等から充てん材料による空洞内への充てんが難しい場合には,開削工法により地下空洞部の上部及び不安定な地盤部を掘削除去し,空洞部を全て土砂等で埋戻し,転圧を行うことにより地盤の所要強度を確保する方法が,また,地下空洞が比較的小さい場合や開削工法が条件により採用できない場合には,空洞外部から,けい砂,セメントミルクやモル 部を全て土砂等で埋戻し,転圧を行うことにより地盤の所要強度を確保する方法が,また,地下空洞が比較的小さい場合や開削工法が条件により採用できない場合には,空洞外部から,けい砂,セメントミルクやモルタル等の充てん材料を充てんし,地下空洞内部を全て埋めることにより地盤の所要強度を確保する充てん工法がそれぞれ確立されていると主張しており,原告らは,この点につき争っていない。さらに,第10回石垣空港建設工法検討委員会においては,空洞対策工法として,①上載荷重を受ける工法である構造物工(構造物としては,コンクリート版(RC),コンクリート版(PC),ボックス構造(RC),アーチ構造(RC)その他が,基礎形式としては,直接基礎と杭基礎がその具体例である。),②上載荷重を軽減する工法である軽量盛土工(FCB(気泡混合処理軽量土工),SGM(軽量混合処理土工),EPS(発泡スチロール土木工法)がその具体例である。),③空洞上部の土質強度を増加させる工法である地盤改良工(高圧噴射かくはん工法,ジェット切削+モルタル充てん,恒久グラウト注入がその具体例である。),④空洞内部から補強する工法である補強工(ロックボルト,内壁補強がその具体例である。)が検討された上で,①及び②が選定- 139 -され,さらに,ボックスカルバート(直接基礎)工法(ボックスカルバートを構築し,これにより盛土・上載荷重を支持し直接基礎から地盤に荷重伝達する方法),アーチ(直接基礎)工法(コンクリートアーチにより,盛土・上載荷重を支持し直接基礎から地盤に荷重伝達する方法),アーチカルバート(直接基礎)工法(アーチカルバートを構築し,コンクリートアーチにより,盛土・上載荷重を支持し直接基礎から地盤に荷重伝達する方法)及びスラブ(直接基礎)工法(スラブ(板状の構造物)を構築し, バート(直接基礎)工法(アーチカルバートを構築し,コンクリートアーチにより,盛土・上載荷重を支持し直接基礎から地盤に荷重伝達する方法)及びスラブ(直接基礎)工法(スラブ(板状の構造物)を構築し,これにより盛土,上載荷重を支持し直接基礎から地盤に荷重を伝達する方法)が検討され,その結果,場所に応じてアーチ(直接基礎)工法又はスラブ(直接基礎)工法が最適であるとされている(甲11,弁論の全趣旨)。)によれば,十分に対応可能であるというべきであり,この点についての対応が不可能であって,本件事業予定地がおよそ空港としての適地性を欠くとみるべき根拠は見当たらない(原告らは,本件許可処分後に県が採用した対策が不十分であることを主張しているところ,それが本件許可処分後の事情である点はおくとしても,その主張をもってしても現代の土木技術では上記の崩落のおそれについて対応ができないということはできず,他に対応が不可能であることを認めるに足りる証拠はない。)。 (イ) 原告らは,乱気流発生のため,本件事業予定地は空港としての適地性を欠いているという。 しかし,原告らがその証拠として提示する新石垣空港における乱気流気象調査(沖縄県委託業務)に対する検証結果報告書(甲7)及び「新石垣空港乱気流問題強い乱気流の発生で危険な空港」と題する書面(甲8)においても,乱気流が航空機の運航に影響を及ぼす可能性もあるというにとどまり,また,この結論が同書面それ自体において不十分であるとする観測結果に基づいたものであることに照らして- 140 -も,この結論を直ちに採ることはできず,他に乱気流が航空機の運航に重大な影響を及ぼすことを認めるに足りる証拠はないから,乱気流発生のため本件事業予定地には空港用地としての適地性がないと認めるこ -も,この結論を直ちに採ることはできず,他に乱気流が航空機の運航に重大な影響を及ぼすことを認めるに足りる証拠はないから,乱気流発生のため本件事業予定地には空港用地としての適地性がないと認めることはできない。 (ウ) 原告らは,滑走路が津波で水没するため,本件事業予定地は空港としての適地性を欠いているという。 しかし,本件における証拠関係から本件空港の滑走路が想定される津波で水没することを認めることはできない(甲第72号証,乙第43号証によっても,このことは認められず,他にこのことを認めるに足りる証拠はない。)。なお,一般論として,想定外の規模の地震による津波が発生し本件空港の滑走路が水没する可能性があり得ることは否定できない(したがって,本件空港の供用に当たり,そのような事態に備えるための対策を講じることは,十分に検討されてしかるべきであるということができる。)としても,そのことを理由に本件事業予定地が空港としての適地性を欠くということはできない。 以上によれば,本件事業予定地が本件事業の用に供されることによって失われる利益と比較して,本件事業予定地が本件事業の用に供されることによって得られる利益は明らかに大きいというべきであるから,本件事業は,土地収用法20条3号の要件を満たす。 (6) さらに,土地収用法20条4号は「土地を収用し,又は使用する公益上の必要があるものであること。」を規定しているところ,事業計画自体の公益性は同条3号における検討事項であることに照らし,これは,同条1号ないし3号の要件が認められ,収用等の方法によることの相当性がある場合において,さらに,収用等の方法を採ることの必要性があり,それが公益上も是認されることを要件とするものと解される。 こ いし3号の要件が認められ,収用等の方法によることの相当性がある場合において,さらに,収用等の方法を採ることの必要性があり,それが公益上も是認されることを要件とするものと解される。 この点,5号要件の充足の有無を検討するために土地収用法20条4号の- 141 -要件について検討している以上,収用等の方法を採る必要がある場合であることは当然の前提となっている。また,同条3号の要件が認められる以上,工事の完成が余りにも遠い将来のことであるといった特段の事情がなければ,収用等の方法を採る必要があることが公益上も是認されるというべきところ,本件においてそのような特段の事情は認められない。原告らは,成田空港のような第1種空港とは公益的必要性において比すべきもののない第3種空港である本件空港のために,強固な反対意思を示している第1原告を含めた地権者に対して土地収用制度を利用するほどの公益的必要性があるとは到底認められないというが,以上に説示したところに照らし失当といわざるを得ない。 よって,本件事業は土地収用法20条4号の要件を満たす。 (7) 以上によれば,本件事業につき,土地収用法20条の定める事業の認定の要件が認められるから,県は,事業の認定を受けることが可能である。 よって,県にとって土地の収用が使用の権原を取得するために採ることができる現実的な方法であるといえる合理的な根拠があるということができる。 そうすると,本件空港の敷地の大部分について,県が既に所有しているもののほかは,国有財産法,空港整備法等の規定に基づいて取得を行う方法や,売渡しを受ける方法を現に採ることができ,この方法を採ることによってそれらの所有権を取得することが相当程度の確実性をもって期待でき(特に,被告及び石垣市の所有するものについては確 取得を行う方法や,売渡しを受ける方法を現に採ることができ,この方法を採ることによってそれらの所有権を取得することが相当程度の確実性をもって期待でき(特に,被告及び石垣市の所有するものについては確実に取得することができる。),その余についても売渡しを受ける方法によってその所有権を取得できる可能性があるということができ,さらに,この方法によったのでは所有権を取得することができないものについては,土地の収用によってこれをすることが可能であるから,県は,本件空港の敷地について,所有権を有するか又はこれを確実に取得することができると認められる。 - 142 -よって,本件申請が5号要件を充足するものとした処分行政庁の判断に違法はないというべきである。 9 本件許可処分の適法性について本件の争点に関する部分を除き,本件許可処分が飛行場設置許可の要件を充足していることについて当事者間に争いはなく,本件の争点に関してはこれまでに説示したとおりであるから,本件許可処分は適法ということができる。 第5 結論以上の次第で,第2原告らの本件訴えはいずれも不適法であるから却下し,その余の原告ら(第1原告ら)の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民訴法61条,65条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官川神 裕 裁判官小海隆則 裁判官須賀康太郎 - 143 -(別紙) 関係する法令の定め 1 航空法(1) 飛 官小海隆則 裁判官須賀康太郎 - 143 -(別紙) 関係する法令の定め 1 航空法(1) 飛行場又は航空保安施設の設置(38条)ア国土交通大臣以外の者は,飛行場又は政令で定める航空保安施設を設置しようとするときは,国土交通大臣の許可を受けなければならない。(1項)イ上記アの許可の申請をしようとする者は,当該施設について,位置,構造等の設置の計画,管理の計画,工事完成の予定期日その他国土交通省令で定める事項及び飛行場にあっては公共の用に供するかどうかの別を記載した申請書を提出しなければならない。(2項)ウ国土交通大臣は,飛行場の設置の許可の申請があったときは,飛行場の位置及び範囲,公共の用に供するかどうかの別,着陸帯,進入区域,進入表面,転移表面,水平表面,供用開始の予定期日その他国土交通省令で定める事項を告示するとともに,現地においてこれを掲示しなければならない。(3項)(2) 申請の審査(39条)ア国土交通大臣は,前記(1)アの許可の申請があったときは,その申請が次の(ア)ないし(オ)に適合しているかどうかを審査しなければならない。 (1項)(ア) 当該飛行場又は航空保安施設の位置,構造等の設置の計画が国土交通省令で定める基準に適合するものであること。(1号)(イ) 当該飛行場又は航空保安施設の設置によって,他人の利益を著しく害することとならないものであること。(2号)- 144 -(ウ) 当該飛行場又は航空保安施設の管理の計画が航空法47条1項の保安上の基準に適合するものであること。(3号)(エ) 申請者が当該飛行場又は航空保安施設を設置し,及びこれを管理するに足りる能力を有すること。( 又は航空保安施設の管理の計画が航空法47条1項の保安上の基準に適合するものであること。(3号)(エ) 申請者が当該飛行場又は航空保安施設を設置し,及びこれを管理するに足りる能力を有すること。(4号)(オ) 飛行場にあっては,申請者が,その敷地について所有権その他の使用の権原を有するか,又はこれを確実に取得することができると認められること。(5号)イ国土交通大臣は,飛行場の設置の許可に係る上記アの審査を行う場合には,公聴会を開き,当該飛行場の設置に関し利害関係を有する者に当該飛行場の設置に関する意見を述べる機会を与えなければならない。(2項)(3) 公共用飛行場の告示等(40条前段)国土交通大臣は,公共の用に供する飛行場について設置の許可をしたときは,当該飛行場の位置及び範囲,着陸帯,進入区域,進入表面,転移表面,水平表面並びに供用開始の予定期日を告示するとともに,現地においてこれを掲示しなければならない。 2 航空法施行規則(平成20年国土交通省令第44号による改正前のもの。以下同じ。)(1) 設置の許可申請(76条)ア航空法38条2項の規定(前記1(1)イ)により,飛行場の設置の許可を申請しようとする者は,次に掲げる事項を記載した飛行場設置許可申請書3通を国土交通大臣に提出するものとする。(1項)(ア) 設置の目的(公共の用に供するかどうかの別を附記すること。)(1号)(イ) 氏名及び住所(2号)(ウ) 飛行場の名称及び位置並びに標点の位置(標高を含む。以下同- 145 -じ。)(3号)(エ) 飛行場予定地又は予定水面並びにそれらの所有者の氏名及び住所(4号)(オ) 飛行場の種類,着陸帯の等級及び滑走路の強度又は着陸帯の深さ(5号)(カ) 計器着陸又 -じ。)(3号)(エ) 飛行場予定地又は予定水面並びにそれらの所有者の氏名及び住所(4号)(オ) 飛行場の種類,着陸帯の等級及び滑走路の強度又は着陸帯の深さ(5号)(カ) 計器着陸又は夜間着陸の用に供する飛行場にあっては,その旨(6号)(キ) 飛行場の利用を予定する航空機の種類及び型式(7号)(ク) 国土交通大臣の指定を受けようとする進入区域の長さ,進入表面の勾配,水平表面の半径の長さ又は転移表面の勾配(7号の2)(ケ) 飛行場の施設の概要(8号)(コ) 設置予定の航空保安施設の概要(9号)(サ) 設置に要する費用(10号)(シ) 工事の着手及び完成の予定期日(11号)(ス) 管理の計画(管理に要する費用を附記すること。)(12号)(セ) 予定する飛行場の進入表面,転移表面若しくは水平表面の上に出る高さの物件又はこれらの表面に著しく近接した物件がある場合には,次に掲げる事項(13号)a 当該物件の位置及び種類(イ)b 当該物件の進入表面,転移表面若しくは水平表面の上に出る高さ又はこれらの表面への近接の程度(ロ)c 当該物件の所有者その他の権原を有する者の氏名及び住所(ハ)d 当該物件を除去するかどうかの別(ニ)e 当該物件の除去に要する費用(ホ)f 当該物件の除去に係る工事の着手及び完了の予定期日(ヘ)イ前記アの申請書には,次に掲げる書類及び図面を添付するものとする。 - 146 -(2項)(ア) 次に掲げる事項の調達方法を記載した書類(1号)a 設置に要する費用,土地,水面及び物件(イ)b 前記ア(セ)の物件の除去に要する費用(ロ)(イ) 管理に要する費用の内訳及びその調達方法を記載した書類(2号)(ウ) 申請者が,飛行場の敷地について所有権その他の使用の権 及び物件(イ)b 前記ア(セ)の物件の除去に要する費用(ロ)(イ) 管理に要する費用の内訳及びその調達方法を記載した書類(2号)(ウ) 申請者が,飛行場の敷地について所有権その他の使用の権原を有するか又はこれを確実に取得することができることを証明する書類(2号の2)(エ) 飛行場の工事設計図書,仕様書及び工事予算書(3号)(オ) 実測図(4号)(カ) 公共の用に供する飛行場にあっては,風向風速図(飛行場の予定地若しくは予定水面又はその付近の場所における風向及び風速を,陸上飛行場及び水上飛行場にあっては3年以上,ヘリポートにあっては1年以上の資料に基づいて作成すること。)(5号)(キ) 公共の用に供する飛行場にあっては,飛行場の予定地若しくは予定水面又はその付近の場所における気温を記載した書類(国土交通大臣が定める基準に従い,5年以上の資料に基づいて作成すること。)(5号の2)(ク) 公共の用に供する飛行場にあっては,1年間に利用することが予想される航空機の種類,型式及び数並びにその算出の基礎を記載した書類(6号)(ケ) 削除(7号)(コ) 地方公共団体にあっては,設置に関する意思の決定を証する書類(8号)(サ) (略)(9号以下)(2) 実測図(77条)- 147 -上記(1)イ(オ)の実測図は,次のとおりとする。 ア平面図縮尺は,5千分の1以上とし,次に掲げる事項を明示するものとする。(1号)(ア) 縮尺及び方位(イ)(イ) 飛行場の敷地の境界線(ロ)(ウ) 飛行場の周辺百メートル以上にわたる区域内の地形及び市町村名(ハ)(エ) 予定する飛行場の施設の位置(ニ)(オ) 主要道路、市街及び交通機関と連絡するための道路(ホ)イ着陸帯縦断面図縮尺は、横を 辺百メートル以上にわたる区域内の地形及び市町村名(ハ)(エ) 予定する飛行場の施設の位置(ニ)(オ) 主要道路、市街及び交通機関と連絡するための道路(ホ)イ着陸帯縦断面図縮尺は、横を5千分の1以上、縦を5百分の1以上とし、次に掲げる事項を明示するものとする。(2号)(ア) 測点番号、測点間距離(百メートルとすること。)及び逓加距離(イ)(イ) 測点ごとの中心線の地面、施工基面、盛土の高さ及び切土の深さ(ニ)ウ着陸帯横断面図滑走路の両端及び中央の3箇所における着陸帯の横断面図とし,且つ,縮尺は横を千分の1以上及び縦を50分の1以上とし,次に掲げる事項を明示するものとする。(3号)(ア) 測点番号及び測点間距離(イ)(イ) 測点ごとの地面,施工基面,盛土の高さ及び切土の深さ(ロ)エ附近図縮尺1万分の1の図面(縮尺1万分の1の図面がない場合は,縮尺2万5千分の1又は5万分の1の図面とする。)に前記(1)ア(セ)の物件及び予定する飛行場の進入表面,転移表面及び水平表面の投影面を明示し,並びに当該物件の存する地域についての縮尺5千分の1以上の図面に前記(1)ア(セ)a及びbに掲げる事項を明示するものとする。(4号)(3) 設置許可等の申請の告示(78条1項)- 148 -航空法38条3項の規定(前記1(1)ウ)により,飛行場の設置の許可の申請があった場合において告示し,及び掲示しなければならない事項は,同条同項に掲げる事項並びに前記(1)ア(ア)から(オ)まで,(ケ)及び(コ)に掲げる事項とする。 (4) 設置基準(79条)ア航空法39条1項1号(前記1(2)ア(ア))の基準は,次のとおりとする。 (1項)(ア) 飛行場の周辺にある建造物,植物その他の物件であって,国 する。 (4) 設置基準(79条)ア航空法39条1項1号(前記1(2)ア(ア))の基準は,次のとおりとする。 (1項)(ア) 飛行場の周辺にある建造物,植物その他の物件であって,国土交通大臣が航空機の離陸又は着陸に支障があると認めるものがないこと。ただし,当該飛行場の工事完成の予定期日までに,当該物件を確実に除去できると認められる場合は,この限りでない。(1号)(イ) 滞空旋回圏(飛行場に着陸せんとする航空機の滞空旋回のために安全最小限と認められる飛行場上空の所定の空域をいう。以下同じ。)が既存の飛行場に設定された滞空旋回圏と重ならないものであること。(2号)(ウ) 陸上飛行場にあっては,特別の理由があると認められる場合を除き,着陸帯の等級別に,次に掲げる規格に適合した滑走路,着陸帯及び誘導路を有するものであること。(3号)(着陸帯の等級Cについての規格は次のとおりである。)a 滑走路幅 45m以上最大縦断こう配滑走路の末端から滑走路の長さの四分の一以下の距離にある部分0.8%上記部分以外の部分 1%最大横断こう配 1.5%- 149 -b 着陸帯長さ滑走路の長辺を両短辺の側にそれぞれ60mに延長して得たもの滑走路の縦方向の中心線から着陸帯の長辺までの距離計器用 150m以上非計器用 75m以上非計器用の着陸帯として必要な最小の区域内の部分の最大縦断こう配 1.75%最大横断こう配非計器用の着陸帯として必要な最小の区域内の部 5m以上非計器用の着陸帯として必要な最小の区域内の部分の最大縦断こう配 1.75%最大横断こう配非計器用の着陸帯として必要な最小の区域内の部分 2.5%上記部分以外の部分 5%c 誘導路幅 23m以上最大縦断こう配 1.5%最大横断こう配 1.5%d 誘導路縁と固定障害物との間隔 30m以上(エ) 陸上飛行場及び陸上ヘリポートにあっては,滑走路,誘導路及びエプロンがこれらを使用することが予想される航空機の予想される回数の運航に十分耐えるだけの強度を有するものであること。(4号)(オ) 陸上飛行場及び陸上ヘリポートにあっては,滑走路及び誘導路が,これらの上を航行する航空機の航行の安全のため,相互の間の十分な距離並びに接続点における適当な角度及び形状を有するものであること。 (5号)(カ) 陸上飛行場及び陸上ヘリポートにあっては,滑走路及び誘導路の両側並びにエプロンの縁に適当な幅,強度及び表面を有するショルダーを設けること。(5号の2)- 150 -(キ) 所定の区分により,飛行場標識施設(所定の様式による。)を有するものであること。ただし,舗装されていない滑走路又は誘導路で滑走路標識又は誘導路標識を設けることが困難なものについては省略してもよい。(9号)(5) 利害関係人(80条)航空法39条2項の規定(前記1(2)イ)による利害関係を有する者とは,次に掲げる者をいう。 ア許可の申請者(1号)イ飛行場の区域,進入区域又は転移表面,水平表面,延長進入表面,円錐表面若しくは外側水平表面の投影面内の区域の土地 有する者とは,次に掲げる者をいう。 ア許可の申請者(1号)イ飛行場の区域,進入区域又は転移表面,水平表面,延長進入表面,円錐表面若しくは外側水平表面の投影面内の区域の土地又は建物について所有権,地上権,永小作権,地役権,採石権,質権,抵当権,使用貸借又は賃貸借による権利その他土地又は建物に関する権利を有する者(2号)ウ上記イの区域内に鉱業権,温泉を利用する権利,漁業権,入漁権又は流水,海水その他の水を利用する権利を有する者(3号)エ上記イの区域を管理する地方公共団体(4号)オ飛行場を利用する者(5号) 3 評価法(1) 目的(1条)評価法は,土地の形状の変更,工作物の新設等の事業を行う事業者がその事業の実施に当たりあらかじめ環境影響評価を行うことが環境の保全上極めて重要であることに鑑み,環境影響評価について国等の責務を明らかにするとともに,規模が大きく環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価が適切かつ円滑に行われるための手続その他所要の事項を定め,その手続等によって行われた環境影響評価の結果をその事業に係る環境の保全のための措置その他のその事業の内容に関する決定に反映さ- 151 -せるための措置をとること等により,その事業に係る環境の保全について適正な配慮がなされることを確保し,もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に資することを目的とする。 (2) 定義(2条)ア評価法において「環境影響評価」とは,事業(特定の目的のために行われる一連の土地の形状の変更(これと併せて行うしゅんせつを含む。)並びに工作物の新設及び増改築をいう。以下同じ。)の実施が環境に及ぼす影響(当該事業の実施後の土地又は工作物において行われることが予定される の土地の形状の変更(これと併せて行うしゅんせつを含む。)並びに工作物の新設及び増改築をいう。以下同じ。)の実施が環境に及ぼす影響(当該事業の実施後の土地又は工作物において行われることが予定される事業活動その他の人の活動が当該事業の目的に含まれる場合には,これらの活動に伴って生ずる影響を含む。以下単に「環境影響」という。)について環境の構成要素に係る項目ごとに調査,予測及び評価を行うとともに,これらを行う過程においてその事業に係る環境の保全のための措置を検討し,この措置が講じられた場合における環境影響を総合的に評価することをいう。(1項)イこの法律において「第一種事業」とは,次に掲げる要件を満たしている事業であって,規模(形状が変更される部分の土地の面積,新設される工作物の大きさその他の数値で表される事業の規模をいう。後記ウにおいて同じ。)が大きく,環境影響の程度が著しいものとなるおそれがあるものとして政令で定めるものをいう。(2項)(ア) 次に掲げる事業の種類のいずれかに該当する一の事業であること。 (1号)a (略)(イないしハ)b 空港整備法2条1項に規定する空港その他の飛行場及びその施設の設置又は変更の事業(ニ)c (略)(ホ以下)(イ) 次のいずれかに該当する事業であること(2号)。 - 152 -a 法律の規定であって政令で定めるものにより,その実施に際し,免許,特許,許可,認可,承認若しくは同意又は届出(当該届出に係る法律において,当該届出に関し,当該届出を受理した日から起算して一定の期間内に,その変更について勧告又は命令をすることができることが規定されているものに限る。)が必要とされる事業(イ)b (略)(ロ以下)ウ評価法において「 た日から起算して一定の期間内に,その変更について勧告又は命令をすることができることが規定されているものに限る。)が必要とされる事業(イ)b (略)(ロ以下)ウ評価法において「第二種事業」とは,前記イ(ア)及び(イ)に掲げる要件を満たしている事業であって,第一種事業に準ずる規模(その規模に係る数値の第一種事業の規模に係る数値に対する比が政令で定める数値以上であるものに限る。)を有するもののうち,環境影響の程度が著しいものとなるおそれがあるかどうかの判定(以下単に「判定」という。)を評価法4条1項各号に定める者が同条の規定により行う必要があるものとして政令で定めるものをいう。(3項)エ評価法において「対象事業」とは,第一種事業又は評価法4条3項1号の措置がとられた第二種事業をいう。(4項)オ評価法において「事業者」とは,対象事業を実施しようとする者をいう。 (5項)(3) 国等の責務(3条)国,地方公共団体,事業者及び国民は,事業の実施前における環境影響評価の重要性を深く認識して,評価法の規定による環境影響評価その他の手続が適切かつ円滑に行われ,事業の実施による環境への負荷をできる限り回避し,又は低減することその他の環境の保全についての配慮が適正になされるようにそれぞれの立場で努めなければならない。 (4) 第二種事業に係る判定(4条)ア (略)(1項ないし5項)イ第二種事業を実施しようとする者は,評価法4条1項の規定にかかわら- 153 -ず,判定を受けることなく評価法(同条を除く。)の規定による環境影響評価その他の手続を行うことができる。この場合において,当該第二種事業を実施しようとする者は,同項4号又は5号に定める主任の大臣以外の者にあっては評価法(同条を除く。)の規定に の規定による環境影響評価その他の手続を行うことができる。この場合において,当該第二種事業を実施しようとする者は,同項4号又は5号に定める主任の大臣以外の者にあっては評価法(同条を除く。)の規定による環境影響評価その他の手続を行うこととした旨を同項各号に掲げる第二種事業の区分に応じ当該各号に定める者に書面により通知し,これらの主任の大臣にあってはその旨の書面を作成するものとする。(6項)ウ (略)(7項,8項)(5) 方法書の作成(5条1項)事業者は,対象事業に係る環境影響評価を行う方法(調査,予測及び評価に係るものに限る。)について,主務省令で定めるところにより,次に掲げる事項を記載した環境影響評価方法書(以下「方法書」という。)を作成しなければならない。 ア事業者の氏名及び住所(法人にあってはその名称,代表者の氏名及び主たる事務所の所在地)(1号)イ対象事業の目的及び内容(2号)ウ対象事業が実施されるべき区域(以下「対象事業実施区域」という。)及びその周囲の概況(3号)エ対象事業に係る環境影響評価の項目並びに調査,予測及び評価の手法(当該手法が決定されていない場合にあっては,対象事業に係る環境影響評価の項目)(4号)(6) 方法書の送付等(6条1項)事業者は,方法書を作成したときは,主務省令で定めるところにより,対象事業に係る環境影響を受ける範囲であると認められる地域を管轄する都道府県知事及び市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)に対し,方法書を送付しなければならない。 - 154 -(7) 方法書についての公告及び縦覧(7条)事業者は,方法書を作成したときは,環境影響評価の項目並びに調査,予測及び評価の手法について環境の保全の見地からの意見を求めるため,環境省令で定め (7) 方法書についての公告及び縦覧(7条)事業者は,方法書を作成したときは,環境影響評価の項目並びに調査,予測及び評価の手法について環境の保全の見地からの意見を求めるため,環境省令で定めるところにより,方法書を作成した旨その他環境省令で定める事項を公告し,上記(6)に規定する地域内において,方法書を公告の日から起算して一月間縦覧に供しなければならない。 (8) 方法書についての意見書の提出(8条1項)方法書について環境の保全の見地からの意見を有する者は,上記(7)の公告の日から,上記(7)の縦覧期間満了の日の翌日から起算して2週間を経過する日までの間に,事業者に対し,意見書の提出により,これを述べることができる。 (9) 方法書についての意見の概要の送付(9条)事業者は,上記(8)の期間を経過した後,上記(6)に規定する地域を管轄する都道府県知事及び当該地域を管轄する市町村長に対し,上記(8)の規定により述べられた意見の概要を記載した書類を送付しなければならない。 (10) 方法書についての都道府県知事等の意見(10条)ア上記(9)に規定する都道府県知事は,上記(9)の書類の送付を受けたときは,政令で定める期間内に,事業者に対し,方法書について環境の保全の見地からの意見を書面により述べるものとする。(1項)イ上記アの場合において,当該都道府県知事は,期間を指定して,方法書について上記(9)に規定する市町村長の環境の保全の見地からの意見を求めるものとする。(2項)(11) 環境影響評価の項目等の選定(11条)ア事業者は,上記(10)アの意見が述べられたときはこれを勘案するとともに,上記(8)の意見に配意して前記(5)エに掲げる事項に検討を加え,主務省令で定めるところにより,対象事業に係る環境影 ア事業者は,上記(10)アの意見が述べられたときはこれを勘案するとともに,上記(8)の意見に配意して前記(5)エに掲げる事項に検討を加え,主務省令で定めるところにより,対象事業に係る環境影響評価の項目並びに調- 155 -査,予測及び評価の手法を選定しなければならない。(1項)イ上記アの主務省令は,環境基本法14条各号に掲げる事項の確保を旨として,既に得られている科学的知見に基づき,対象事業に係る環境影響評価を適切に行うために必要であると認められる環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査,予測及び評価を合理的に行うための手法を選定するための指針につき主務大臣(主務大臣が内閣府の外局の長であるときは、内閣総理大臣)が環境大臣に協議して定めるものとする。(3項)(12) 環境影響評価の実施(12条)ア事業者は,上記(11)アの規定により選定した項目及び手法に基づいて,主務省令で定めるところにより,対象事業に係る環境影響評価を行わなければならない。(1項)イ上記(11)イの規定は、上記アの主務省令について準用する。この場合において、上記(11)イ中「環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査、予測及び評価を合理的に行うための手法を選定するための指針」とあるのは、「環境の保全のための措置に関する指針」と読み替えるものとする。 (2項)(13) 準備書の作成(14条1項)事業者は,上記(12)の規定により対象事業に係る環境影響評価を行った後,当該環境影響評価の結果について環境の保全の見地からの意見を聴くための準備として,主務省令で定めるところにより,当該結果に係る次に掲げる事項を記載した環境影響評価準備書(以下「準備書」という。)を作成しなければならない。 ア前記(5)アからウまでに掲げる事項(1号 備として,主務省令で定めるところにより,当該結果に係る次に掲げる事項を記載した環境影響評価準備書(以下「準備書」という。)を作成しなければならない。 ア前記(5)アからウまでに掲げる事項(1号)イ前記(8)の意見の概要(2号)ウ前記(10)アの都道府県知事の意見(3号)エ上記イ及びウの意見についての事業者の見解(4号)- 156 -オ環境影響評価の項目並びに調査,予測及び評価の手法(5号)カ評価法11条2項の助言がある場合には,その内容(6号)キ環境影響評価の結果のうち,次に掲げるもの(7号)(ア) 調査の結果の概要並びに予測及び評価の結果を環境影響評価の項目ごとにとりまとめたもの(環境影響評価を行ったにもかかわらず環境影響の内容及び程度が明らかとならなかった項目に係るものを含む。)(イ)(イ) 環境の保全のための措置(当該措置を講ずることとするに至った検討の状況を含む。)(ロ)(ウ) 上記(イ)に掲げる措置が将来判明すべき環境の状況に応じて講ずるものである場合には,当該環境の状況の把握のための措置(ハ)(エ) 対象事業に係る環境影響の総合的な評価(ニ)ク環境影響評価の全部又は一部を他の者に委託して行った場合には,その者の氏名及び住所(法人にあってはその名称,代表者の氏名及び主たる事務所の所在地)(8号)(14) 準備書の送付等(15条)事業者は,準備書を作成したときは,前記(6)の主務省令で定めるところにより,対象事業に係る環境影響を受ける範囲であると認められる地域(前記(8)及び(10)アの意見並びに前記(12)アの規定により行った環境影響評価の結果に鑑み前記(6)の地域に追加すべきものと認められる地域を含む。以下「関係地域」という。)を管轄する都道府県知事(以下「関係 び(10)アの意見並びに前記(12)アの規定により行った環境影響評価の結果に鑑み前記(6)の地域に追加すべきものと認められる地域を含む。以下「関係地域」という。)を管轄する都道府県知事(以下「関係都道府県知事」という。)及び関係地域を管轄する市町村長(以下「関係市町村長」という。)に対し,準備書及びこれを要約した書類(後記(15)及び(16)において「要約書」という。)を送付しなければならない。 (15) 準備書についての公告及び縦覧(16条)事業者は,上記(14)の規定による送付を行った後,準備書に係る環境影響- 157 -評価の結果について環境の保全の見地からの意見を求めるため,環境省令で定めるところにより,準備書を作成した旨その他環境省令で定める事項を公告し,関係地域内において,準備書及び要約書を公告の日から起算して一月間縦覧に供しなければならない。 (16) 説明会の開催等(17条)ア事業者は,環境省令で定めるところにより,上記(15)の縦覧期間内に,関係地域内において,準備書の記載事項を周知させるための説明会(以下「説明会」という。)を開催しなければならない。この場合において,関係地域内に説明会を開催する適当な場所がないときは,関係地域以外の地域において開催することができる。(1項)イ事業者は,説明会を開催するときは,その開催を予定する日時及び場所を定め,環境省令で定めるところにより,これらを説明会の開催を予定する日の一週間前までに公告しなければならない。(2項)(17) 準備書についての意見書の提出(18条1項)準備書について環境の保全の見地からの意見を有する者は,上記(15)の公告の日から,同条の縦覧期間満了の日の翌日から起算して2週間を経過する日までの間に,事業者に対し,意見書の提出 8条1項)準備書について環境の保全の見地からの意見を有する者は,上記(15)の公告の日から,同条の縦覧期間満了の日の翌日から起算して2週間を経過する日までの間に,事業者に対し,意見書の提出により,これを述べることができる。 (18) 準備書についての意見の概要等の送付(19条)事業者は,上記(17)の期間を経過した後,関係都道府県知事及び関係市町村長に対し,上記(17)の規定により述べられた意見の概要及び当該意見についての事業者の見解を記載した書類を送付しなければならない。 (19) 準備書についての関係都道府県知事等の意見(20条1項)関係都道府県知事は,上記(18)の書類の送付を受けたときは,政令で定める期間内に,事業者に対し,準備書について環境の保全の見地からの意見を書面により述べるものとする。 - 158 -(20) 評価書の作成(21条)ア事業者は,上記(19)の意見が述べられたときはこれを勘案するとともに,前記(17)の意見に配意して準備書の記載事項について検討を加え,当該事項の修正を必要とすると認めるとき(当該修正後の事業が対象事業に該当するときに限る。)は,次の各号に掲げる当該修正の区分に応じ当該各号に定める措置をとらなければならない。(1項)(ア) 前記(5)イに掲げる事項の修正(事業規模の縮小,政令で定める軽微な修正その他の政令で定める修正に該当するものを除く。) 前記(5)から後記(26)までの規定による環境影響評価その他の手続を経ること。 (1号)(イ) 前記(5)ア又は前記(13)イからエまで,カ若しくはクに掲げる事項の修正(上記(ア)に該当する場合を除く。) 後記イ及び後記(21)から後記(26)までの規定による環境影響評価その他の手続を行うこと。(2号)(ウ) 上 イからエまで,カ若しくはクに掲げる事項の修正(上記(ア)に該当する場合を除く。) 後記イ及び後記(21)から後記(26)までの規定による環境影響評価その他の手続を行うこと。(2号)(ウ) 上記(ア)又は(イ)に掲げるもの以外のもの前記(11)ア及び(12)アの主務省令で定めるところにより当該修正に係る部分について対象事業に係る環境影響評価を行うこと。(3号)イ事業者は,上記ア(ア)に該当する場合を除き,上記ア(ウ)の規定による環境影響評価を行った場合には当該環境影響評価及び準備書に係る環境影響評価の結果に,上記ア(ウ)の規定による環境影響評価を行わなかった場合には準備書に係る環境影響評価の結果に係る次に掲げる事項を記載した環境影響評価書(以下後記(25)までにおいて「評価書」という。)を,主務省令で定めるところにより作成しなければならない。(2項)(ア) 前記(13)に掲げる事項(1号)(イ) 前記(17)の意見の概要(2号)(ウ) 前記(19)の関係都道府県知事の意見(3号)- 159 -(エ) 上記(イ)及び(ウ)の意見についての事業者の見解(4号)(21) 免許を行う者等への送付(22条)ア事業者は,評価書を作成したときは,速やかに,次の(ア)及び(イ)に掲げる評価書の区分に応じ当該(ア)又は(イ)に定める者にこれを送付しなければならない。(1項)(ア) 前記(2)イ(イ)aに該当する対象事業(免許等に係るものに限る。)に係る評価書当該免許等を行う者(1号)(イ) (略)(2号ないし6号)イ上記ア(ア)又は(イ)に定める者(環境大臣を除く。)が次の(ア)又は(イ)に掲げる者であるときは,その者は,評価書の送付を受けた後,速やかに,当該(ア)又は(イ)に定める措置をとらなければ イ上記ア(ア)又は(イ)に定める者(環境大臣を除く。)が次の(ア)又は(イ)に掲げる者であるときは,その者は,評価書の送付を受けた後,速やかに,当該(ア)又は(イ)に定める措置をとらなければならない。(2項)(ア) 内閣総理大臣若しくは各省大臣又は委員会の長である国務大臣(後記(25)アにおいて「内閣総理大臣等」という。) 環境大臣に当該評価書の写しを送付して意見を求めること(1号)。 (イ) (略)(2号)(22) 環境大臣の意見(23条前段)環境大臣は,上記(21)イ(ア)又は(イ)の措置がとられたときは,必要に応じ,政令で定める期間内に,当該(ア)又は(イ)に掲げる者に対し,評価書について環境の保全の見地からの意見を書面により述べることができる。 (23) 免許等を行う者等の意見(24条)上記(21)イ(ア)又は(イ)に定める者は,上記(21)アの規定による送付を受けたときは,必要に応じ,政令で定める期間内に,事業者に対し,評価書について環境の保全の見地からの意見を書面により述べることができる。この場合において,上記(22)の規定による環境大臣の意見があるときは,これを勘案しなければならない。 (24) 評価書の再検討及び補正(25条)- 160 -ア事業者は,上記(23)の意見が述べられたときはこれを勘案して,評価書の記載事項に検討を加え,当該事項の修正を必要とすると認めるとき(当該修正後の事業が対象事業に該当するときに限る。)は,次の(ア),(イ)又は(ウ)に掲げる当該修正の区分に応じ当該(ア),(イ)又は(ウ)に定める措置をとらなければならない。(1項)(ア) 前記(5)イに掲げる事項の修正(事業規模の縮小,政令で定める軽微な修正その他の政令で定める修正に該当するものを除く。) 前記( イ)又は(ウ)に定める措置をとらなければならない。(1項)(ア) 前記(5)イに掲げる事項の修正(事業規模の縮小,政令で定める軽微な修正その他の政令で定める修正に該当するものを除く。) 前記(5)から後記(26)までの規定による環境影響評価その他の手続を経ること。 (1号)(イ) 前記(5)ア,前記(13)イからエまで,カ若しくはク又は前記(20)イ(イ)から(エ)までに掲げる事項の修正(上記(ア)に該当する場合を除く。) 評価書について所要の補正をすること。(2号)(ウ) 上記(ア)又は(イ)に掲げるもの以外のもの前記(11)ア及び(12)アの主務省令で定めるところにより当該修正に係る部分について対象事業に係る環境影響評価を行うこと。(3号)イ事業者は,上記ア(ウ)の規定による環境影響評価を行った場合には,当該環境影響評価及び評価書に係る環境影響評価の結果に基づき,主務省令で定めるところにより評価書の補正をしなければならない。(2項)ウ事業者は,上記ア(ア)に該当する場合を除き,上記ア(イ)又はイの規定による補正後の評価書の送付(補正を必要としないと認めるときは,その旨の通知)を,前記(21)ア(ア)又は(イ)に掲げる評価書の区分に応じ当該(ア)又は(イ)に定める者に対してしなければならない。(3項)(25) 環境大臣等への評価書の送付(26条)ア前記(21)ア(ア)又は(イ)に定める者(環境大臣を除く。)が次の(ア)又は(イ)に掲げる者であるときは,その者は,上記(24)ウの規定による送付又は通知を受けた後,当該(ア)又は(イ)に定める措置をとらなければなら- 161 -ない。 (ア) 内閣総理大臣等環境大臣に上記(24)ウの規定による送付を受けた補正後の評価書の写しを送付し,又は上記(24)ウ 当該(ア)又は(イ)に定める措置をとらなければなら- 161 -ない。 (ア) 内閣総理大臣等環境大臣に上記(24)ウの規定による送付を受けた補正後の評価書の写しを送付し,又は上記(24)ウの規定による通知を受けた旨を通知すること。(1号)(イ) (略)(2号)イ事業者は,前記(24)ウの規定による送付又は通知をしたときは,速やかに,関係都道府県知事及び関係市町村長に評価書(前記(24)ア(イ)又はイの規定による評価書の補正をしたときは,当該補正後の評価書。後記(26),(28)及び(29)において同じ。),これを要約した書類(後記(26)において「要約書」という。)及び前記(23)の書面を送付しなければならない。 (26) 評価書の公告及び縦覧(27条)事業者は,前記(24)ウの規定による送付又は通知をしたときは,環境省令で定めるところにより,評価書を作成した旨その他環境省令で定める事項を公告し,関係地域内において,評価書,要約書及び前記(23)の書面を公告の日から起算して1月間縦覧に供しなければならない。 (27) 対象事業の実施の制限(31条1項)事業者は,上記(26)の規定による公告を行うまでは,対象事業(前記(20)ア,(24)ア又は評価法28条の規定による修正があった場合において当該修正後の事業が対象事業に該当するときは,当該修正後の事業)を実施してはならない。 (28) 免許等に係る環境の保全の配慮についての審査等(33条)ア対象事業に係る免許等を行う者は,当該免許等の審査に際し,評価書の記載事項及び(23)の書面に基づいて,当該対象事業につき,環境の保全についての適正な配慮がなされるものであるかどうかを審査しなければならない。(1項)イ上記アの場合においては,次の(ア)又 載事項及び(23)の書面に基づいて,当該対象事業につき,環境の保全についての適正な配慮がなされるものであるかどうかを審査しなければならない。(1項)イ上記アの場合においては,次の(ア)又は(イ)に掲げる当該免許等(後記ウ- 162 -に規定するものを除く。)の区分に応じ,当該(ア)又は(イ)に定めるところによる。(2項)(ア) 一定の基準に該当している場合には免許等を行うものとする旨の法律の規定であって政令で定めるものに係る免許等当該免許等を行う者は,当該免許等に係る当該規定にかかわらず,当該規定に定める当該基準に関する審査と前項の規定による環境の保全に関する審査の結果を併せて判断するものとし,当該基準に該当している場合であっても,当該判断に基づき,当該免許等を拒否する処分を行い,又は当該免許等に必要な条件を付することができるものとする。(1号)(イ) (略)(2号,3号)ウ対象事業に係る免許等であって対象事業の実施において環境の保全についての適正な配慮がされるものでなければ当該免許等を行わないものとする旨の法律の規定があるものを行う者は,評価書の記載事項及び(23)の書面に基づいて,当該法律の規定による環境の保全に関する審査を行うものとする。 (3項)(29) 事業者の環境の保全の配慮等(38条)事業者は,評価書に記載されているところにより,環境の保全についての適正な配慮をして当該対象事業を実施するようにしなければならない。 4 環境影響評価法施行令(平成17年政令第375号による改正前のもの。以下同じ。)(1) 免許等に係る法律の規定(3条)評価法2条2項2号イ(前記3(2)イ(イ)a)の法律の規定であって政令で定めるものは,後記(5)別表第一の第一欄に掲げる事 もの。以下同じ。)(1) 免許等に係る法律の規定(3条)評価法2条2項2号イ(前記3(2)イ(イ)a)の法律の規定であって政令で定めるものは,後記(5)別表第一の第一欄に掲げる事業の種類(第二欄及び第三欄に掲げる事業の種類の細分を含む。)ごとにそれぞれ同表の第四欄に掲げるとおりとする。 - 163 -(2) 第二種事業の規模に係る数値の比(5条)評価法2条3項(前記3(2)ウ)の政令で定める数値は,0.75とする。 (3) 第二種事業(6条本文)評価法2条3項(前記3(2)ウ)の政令で定める事業は,後記(5)の表の第一欄に掲げる事業の種類ごとにそれぞれ同表の第三欄に掲げる要件に該当する一の事業とする。 (4) 環境の保全の配慮についての審査等に係る法律の規定(14条)評価法33条2項各号(前記3(28)イ(ア)又は(イ))の法律の規定であって政令で定めるものは,後記(6)に掲げるとおりとする。 (5) 別表第一(1条,3条,6条関係)(抄)事業の種類第一種事業の要件第二種事業の要件法律の規定四評価法2条2項1号ニに掲げる事業の種類 イ飛行場及びその施設の設置の事業(長さが2500m以上である滑走路を設けるものに限る。) 飛行場及びその施設の設置の事業(長さが1875m以上2500m未満である滑走路を設けるものに限るものとし,この項のイの第二欄に掲げる要件に該当するものを除く。)事業主体が国以外の者である場合につき,航空法38条1項 (6) 別表第四(14条関係)(抄)- 164 -一評価法33条2項1号の法律の規定であって政令で 国以外の者である場合につき,航空法38条1項 (6) 別表第四(14条関係)(抄)- 164 -一評価法33条2項1号の法律の規定であって政令で定めるもの・・・(略)・・・航空法39条1項・・・(略)・・・ 5 飛行場及びその施設の設置又は変更の事業に係る環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査,予測及び評価を合理的に行うための手法を選定するための指針,環境の保全のための措置に関する指針等を定める省令(平成10年運輸省令第36号。平成18年国土交通省令第20号による改正前のもの。以下「本件主務省令」という。)(1) 方法書の作成(2条)ア環境影響評価法施行令別表第一の四の項のイ,ロ又はハの第二欄又は第三欄に掲げる要件に該当する対象事業(以下「対象飛行場設置等事業」という。)に係る事業者(以下単に「事業者」という。)は,対象飛行場設置等事業に係る方法書に評価法5条1項2号(前記3(5)イ)に規定する対象事業の内容を記載するに当たっては,次に掲げる事項を記載しなければならない。(1項)(ア) 対象飛行場設置等事業の種類(設置の事業又は変更の事業の別及び変更の事業にあっては滑走路の新設を伴う事業又は滑走路の延長を伴う事業の別。次の(3)ア(ア)aにおいて同じ。)(1号)(イ) 対象飛行場設置等事業が実施されるべき区域(以下「対象飛行場設置等事業実施区域」という。)の位置(2号)(ウ) 対象飛行場設置等事業の規模(設置の事業又は滑走路の新設を伴う変更の事業にあっては滑走路の長さ,滑走路の延長を伴う変更の事業にあっては延長前及び延長後の滑走路の長さ。次の(3)ア(ア)cにおいて同じ。)(3号)(エ) 対象飛行場設置等事業に係る飛行場の利用を予定する航空機の 滑走路の長さ,滑走路の延長を伴う変更の事業にあっては延長前及び延長後の滑走路の長さ。次の(3)ア(ア)cにおいて同じ。)(3号)(エ) 対象飛行場設置等事業に係る飛行場の利用を予定する航空機の種類(4号)- 165 -(オ) 上記(ア)から(エ)までに掲げるもののほか,対象飛行場設置等事業の内容に関する事項(既に決定されている内容に係るものに限る。)であって,その変更により環境影響が変化することとなるもの(5号)イ事業者は,対象飛行場設置等事業に係る方法書に評価法5条1項3号(前記3(5)ウ)に掲げる事項を記載するに当たっては,入手可能な最新の文献その他の資料により把握した結果(当該資料の出典を含む。)を次の(3)ア(イ)に掲げる事項の区分に応じて記載しなければならない。(2項)ウ事業者は,対象飛行場設置等事業に係る方法書に上記ア(イ)に掲げる事項及び上記イの規定により把握した結果を記載するに当たっては,その概要を適切な縮尺の平面図上に明らかにしなければならない。(3項)エ事業者は,対象飛行場設置等事業に係る方法書に評価法5条1項4号(前記3(5)エ)に掲げる事項を記載するに当たっては,当該環境影響評価の項目並びに調査,予測及び評価の手法を選定した理由(次の(4)アに規定する標準項目を選定しなかった場合にあっては,その理由を含む。)を明らかにしなければならない。(4項)(2) 環境影響評価の項目等の選定に関する指針(4条)対象飛行場設置等事業に係る評価法11条3項(前記3(11)イ)の規定による環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査,予測及び評価を合理的に行うための手法を選定するための指針については,次の(3)から(10)までに定めるところによる。 (3) 事業特性及び地域特性の把握(5条) の項目並びに当該項目に係る調査,予測及び評価を合理的に行うための手法を選定するための指針については,次の(3)から(10)までに定めるところによる。 (3) 事業特性及び地域特性の把握(5条)ア事業者は,対象飛行場設置等事業に係る環境影響評価の項目並びに調査,予測及び評価の手法を選定するに当たっては,当該選定を行うに必要と認める範囲内で,当該選定に影響を及ぼす対象飛行場設置等事業の内容(以下「事業特性」という。)並びに対象飛行場設置等事業実施区域及びその周囲の自然的社会的状況(以下「地域特性」という。)に関し,次に掲げ- 166 -る情報を把握しなければならない。(1項)(ア) 事業特性に関する情報(1号)a 対象飛行場設置等事業の種類(イ)b 対象飛行場設置等事業実施区域の位置(ロ)c 対象飛行場設置等事業の規模(ハ)d 対象飛行場設置等事業に係る区域の面積(ニ)e 対象飛行場設置等事業に係る飛行場の利用を予定する航空機の種類(ホ)f 対象飛行場設置等事業の工事計画の概要(ヘ)g その他の対象飛行場設置等事業に関する事項(ト)(イ) 地域特性に関する情報(2号)a 自然的状況(イ)① 気象,大気質,騒音,振動その他の大気に係る環境(次の(4)ウ(ア)aにおいて「大気環境」という。)の状況(環境基準の確保の状況を含む。)((1))② 水象,水質,水底の底質その他の水に係る環境(次の(4)ウ(ア)bにおいて「水環境」という。)の状況(環境基準の確保の状況を含む。)((2))③ 土壌及び地盤の状況(環境基準の確保の状況を含む。)((3))④ 地形及び地質の状況((4))⑤ 動植物の生息又は生育,植生及び生態系の状況((5))⑥ 景観及び人と自然との触れ合いの活動の状況((6)) 状況(環境基準の確保の状況を含む。)((3))④ 地形及び地質の状況((4))⑤ 動植物の生息又は生育,植生及び生態系の状況((5))⑥ 景観及び人と自然との触れ合いの活動の状況((6))b 社会的状況(ロ)① 人口及び産業の状況((1))② 土地利用の状況((2))③ 河川,湖沼及び海域の利用並びに地下水の利用の状況((3))- 167 -④ 交通の状況((4))⑤ 学校,病院その他の環境の保全についての配慮が特に必要な施設の配置の状況及び住宅の配置の概況((5))⑥ 下水道の整備の状況((6))⑦ 環境の保全を目的として法令等により指定された地域その他の対象及び当該対象に係る規制の内容その他の状況((7))⑧ その他の事項((8))イ事業者は,前記(3)ア(イ)に掲げる情報を入手可能な最新の文献その他の資料により把握するものとする。この場合において,事業者は,当該資料の出典を明らかにできるよう整理するとともに,必要に応じ,関係する地方公共団体,専門家その他の当該情報に関する知見を有する者から聴取し,又は現地の状況を確認するよう努めるものとする。(2項)(4) 環境影響評価の項目の選定(6条)ア事業者は,対象飛行場設置等事業に係る環境影響評価の項目を選定するに当たっては,本件主務省令別表第一に掲げる一般的な事業の内容によって行われる対象飛行場設置等事業に伴う環境影響を及ぼすおそれがある要因(以下「影響要因」という。)について同表においてその影響を受けるおそれがあるとされる環境要素に係る項目(以下「標準項目」という。)に対して,必要に応じ,項目の削除又は追加を行うことにより選定しなければならない。(1項)イ事業者は,上記アの規定による選定に当たっては,対象飛行場設置等事 る項目(以下「標準項目」という。)に対して,必要に応じ,項目の削除又は追加を行うことにより選定しなければならない。(1項)イ事業者は,上記アの規定による選定に当たっては,対象飛行場設置等事業に伴う影響要因が当該影響要因により影響を受けるおそれがある環境要素に及ぼす影響の重大性について客観的かつ科学的に検討しなければならない。この場合において,事業者は,事業特性に応じて,次に掲げる影響要因を,物質の排出,土地の形状の変更,工作物の設置その他の環境影響の態様を踏まえて適切に区分し,当該区分された影響要因ごとに検討する- 168 -ものとする。(2項)(ア) 対象飛行場設置等事業に係る工事の実施(1号)(イ) 対象飛行場設置等事業に係る工事が完了した後の土地又は工作物の存在及び当該土地又は工作物において行われることが予定される事業活動その他の人の活動であって対象飛行場設置等事業の目的に含まれるもの(2号)ウ上記イの規定による検討は,次に掲げる環境要素を,法令等による規制又は目標の有無及び環境に及ぼすおそれがある影響の重大性を考慮して適切に区分し,当該区分された環境要素ごとに行うものとする。(3項)(ア) 環境の自然的構成要素の良好な状態の保持を旨として調査,予測及び評価されるべき環境要素(次の(エ)に掲げるものを除く。)(1号)a 大気環境(イ)① 大気質((1))② 騒音((2))③ 振動((3))④ 悪臭((4))⑤ 上記①から④までに掲げるもののほか,大気環境に係る環境要素((5))b 水環境(ロ)① 水質(地下水の水質を除く。)((1))② 水底の底質((2))③ 地下水の水質及び水位((3))④ 上記①から③までに掲げるもののほか,水環境に係る環境要素((4))c ロ)① 水質(地下水の水質を除く。)((1))② 水底の底質((2))③ 地下水の水質及び水位((3))④ 上記①から③までに掲げるもののほか,水環境に係る環境要素((4))c 土壌に係る環境その他の環境(上記a及びbに掲げるものを除く。)(ハ)- 169 -① 地形及び地質((1))② 地盤((2))③ 土壌((3))④ その他の環境要素((4))(イ) 生物の多様性の確保及び自然環境の体系的保全を旨として調査,予測及び評価されるべき環境要素(次の(エ)に掲げるものを除く。)(2号)a 動物(イ)b 植物(ロ)c 生態系(ハ)(ウ) 人と自然との豊かな触れ合いの確保を旨として調査,予測及び評価されるべき環境要素(次の(エ)に掲げるものを除く。)(3号)a 景観(イ)b 人と自然との触れ合いの活動の場(ロ)(エ) 環境への負荷の量の程度により予測及び評価されるべき環境要素(4号)a 廃棄物等(廃棄物及び副産物をいう。次の(5)カにおいて同じ。)(イ)b 温室効果ガス等(排出又は使用が地球環境の保全上の支障の原因となるおそれがある物をいう。次の(5)カにおいて同じ。)(ロ)エ上記アの規定による項目の削除は,次に掲げる項目について行うものとする。(4項)(ア) 標準項目に関する環境影響がないこと又は環境影響の程度が極めて小さいことが明らかである場合における当該標準項目(1号)(イ) 対象飛行場設置等事業実施区域又はその周囲に,標準項目に関する環境影響を受ける地域その他の対象が相当期間存在しないことが明らか- 170 -である場合における当該標準項目(2号)オ上記アの規定による項目の追加は,次に掲げる項目について行うものとする。(5項)(ア) 他の対象が相当期間存在しないことが明らか- 170 -である場合における当該標準項目(2号)オ上記アの規定による項目の追加は,次に掲げる項目について行うものとする。(5項)(ア) 事業特性により,標準項目以外の項目(以下この項において「標準外項目」という。)に関する環境影響が相当程度となるおそれがある場合における当該標準外項目(1号)(イ) 対象飛行場設置等事業実施区域又はその周囲に,次に掲げる地域その他の対象が存在し,かつ,事業特性が次のa,b又はcに規定する標準外項目に関する環境要素に係る環境影響を及ぼすおそれがあるものである場合における当該標準外項目(2号)a 標準外項目に関する環境要素に係る環境影響を受けやすい地域その他の対象(イ)b 標準外項目に関する環境要素に係る環境の保全を目的として法令等により指定された地域その他の対象(ロ)c 標準外項目に関する環境要素に係る環境が既に著しく悪化し,又は著しく悪化するおそれがある地域(ハ)カ事業者は,上記アの規定により項目の削除及び追加を行うに当たっては,前記(3)の規定により把握した事業特性及び地域特性に関する情報を踏まえ,必要に応じ専門家その他の環境影響に関する知見を有する者の助言を受けて行わなければならない。(6項)キ事業者は,環境影響評価の手法を選定し,又は環境影響評価を行う過程において項目の選定に係る新たな事情が生じた場合にあっては,必要に応じ上記アの規定により選定した項目(以下「選定項目」という。)の見直しを行わなければならない。(7項)ク事業者は,前記アの規定による項目の選定を行ったときは,選定の結果を一覧できるよう整理するとともに,選定項目として選定した理由及- 171 -び同項の規定により項目の削除を行った場合にあっては ク事業者は,前記アの規定による項目の選定を行ったときは,選定の結果を一覧できるよう整理するとともに,選定項目として選定した理由及- 171 -び同項の規定により項目の削除を行った場合にあってはその理由を明らかにできるよう整理しなければならない。(8項)(5) 調査,予測及び評価の手法(7条)対象飛行場設置等事業に係る環境影響評価の調査,予測及び評価の手法は,事業者が,次に掲げる事項を踏まえ,選定項目ごとに次の(6)から(10)までに定めるところにより選定するものとする。 ア前記(4)ウ(ア)に掲げる環境要素に係る選定項目については,汚染物質の濃度その他の指標により測られる環境要素の汚染又は環境要素の状況の変化(当該環境要素に係る物質の量的な変化を含む。)の程度及び広がりに関し,これらが人の健康,生活環境又は自然環境に及ぼす環境影響を把握できること。(1号)イ前記(4)ウ(イ)a及びbに掲げる環境要素に係る選定項目については,陸生及び水生の動植物に関し,生息種又は生育種及び植生の調査を通じて抽出される学術上又は希少性の観点から重要な種の分布状況,生息状況又は生育状況及び学術上又は希少性の観点から重要な群落の分布状況並びに動物の集団繁殖地その他の注目すべき生息地の分布状況について調査し,これらに対する環境影響の程度を把握できること。(2号)ウ前記(4)ウ(イ)cに掲げる環境要素に係る選定項目については,地域を特徴づける生態系に関し,上記イの調査結果その他の調査結果により概括的に把握される生態系の特性に応じて,上位性(生態系の上位に位置する性質をいう。),典型性(地域の生態系の特徴を典型的に現す性質をいう。)及び特殊性(特殊な環境であることを示す指標となる性質をいう。)の視点から注目される動植物の種又は生物 (生態系の上位に位置する性質をいう。),典型性(地域の生態系の特徴を典型的に現す性質をいう。)及び特殊性(特殊な環境であることを示す指標となる性質をいう。)の視点から注目される動植物の種又は生物群集を複数抽出し,これらの生態,他の動植物との関係又は生息環境若しくは生育環境を調査し,これらに対する環境影響その他の生態系への環境影響の程度を適切に把握できること。(3号)- 172 -エ前記(4)ウ(ウ)aに掲げる環境要素に係る選定項目については,景観に関し,眺望の状況及び景観資源の分布状況を調査し,これらに対する環境影響の程度を把握できること。(4号)オ前記(4)ウ(ウ)bに掲げる環境要素に係る選定項目については,人と自然との触れ合いの活動に関し,野外レクリエーションを通じた人と自然との触れ合いの活動及び日常的な人と自然との触れ合いの活動が一般的に行われる施設又は場の状況を調査し,これらに対する環境影響の程度を把握できること。(5号)カ前記(4)ウ(エ)に掲げる環境要素に係る選定項目については,廃棄物等及び温室効果ガス等に関し,それらの発生量その他の環境への負荷の量の程度を把握できること。(6号)(6) 標準手法(8条)ア事業者は,対象飛行場設置等事業に係る環境影響評価の調査及び予測の手法(標準項目に係るものに限る。)を選定するに当たっては,各標準項目ごとに本件主務省令別表第二に掲げる標準的な調査及び予測の手法(以下この項において「標準手法」という。)を基準として選定しなければならない。この場合において,事業者は,次のイに定めるところにより必要に応じ標準手法より簡略化された調査若しくは予測の手法(次のイにおいて「簡略化手法」という。)を選定し,又は次のウに定めるところにより必要に応じ標準手法より詳細な は,次のイに定めるところにより必要に応じ標準手法より簡略化された調査若しくは予測の手法(次のイにおいて「簡略化手法」という。)を選定し,又は次のウに定めるところにより必要に応じ標準手法より詳細な調査若しくは予測の手法(次のウにおいて「重点化手法」という。)を選定するものとする。(1項)イ簡略化手法は,次の(ア)から(エ)までのいずれかに該当すると認められる場合に選定するものとする。(2項)(ア) 当該標準項目に関する環境影響の程度が小さいことが明らかであること。(1号)(イ) 対象飛行場設置等事業実施区域又はその周囲に,当該標準項目に関- 173 -する環境影響を受ける地域その他の対象が相当期間存在しないことが想定されること。(2号)(ウ) 類似の事例により当該標準項目に関する環境影響の程度が明らかであること。(3号)(エ) 当該標準項目に係る予測及び評価において必要とされる情報が,標準的な調査の手法より簡易な方法で収集できることが明らかであること。 (4号)ウ重点化手法は,次の各号のいずれかに該当すると認められる場合に選定するものとする。(3項)(ア) 事業特性により,当該標準項目に関する環境影響の程度が著しいものとなるおそれがあること。(1号)(イ) 対象飛行場設置等事業実施区域又はその周囲に,次に掲げる地域その他の対象が存在し,かつ,事業特性が次のa,b又はcに規定する標準項目に関する環境要素に係る相当程度の環境影響を及ぼすおそれがあるものであること。(2号)a 当該標準項目に関する環境要素に係る環境影響を受けやすい地域その他の対象b 当該標準項目に関する環境要素に係る環境の保全を目的として法令等により指定された地域その他の対象c 当該標準項目に関する環境要素に係る環境が既に著しく悪化 影響を受けやすい地域その他の対象b 当該標準項目に関する環境要素に係る環境の保全を目的として法令等により指定された地域その他の対象c 当該標準項目に関する環境要素に係る環境が既に著しく悪化し,又は著しく悪化するおそれがある地域(7) 調査の手法(9条)ア事業者は,対象飛行場設置等事業に係る環境影響評価の調査の手法を選定するに当たっては,前記(6)に定めるところによるほか,次の(ア)から(オ)までに掲げる調査の手法に関する事項について,それぞれ当該(ア),(イ),(ウ),(エ)又は(オ)に定めるものを,選定項目について適切に予測及び評- 174 -価を行うために必要な範囲内で,当該選定項目の特性,事業特性及び地域特性を勘案し,当該選定項目に係る予測及び評価において必要とされる水準が確保されるよう選定しなければならない。(1項)(ア) 調査すべき情報選定項目に係る環境要素の現状に関する情報又は気象,水象その他の自然的状況若しくは人口,産業,土地利用,水域利用その他の社会的状況に関する情報(1号)(イ) 調査の基本的な手法国又は関係する地方公共団体が有する文献その他の資料の入手,専門家からの科学的知見の聴取,現地調査その他の方法により調査すべき情報を収集し,その結果を整理し,及び解析する手法(2号)(ウ) 調査の対象とする地域(以下「調査地域」という。) 対象飛行場設置等事業の実施により選定項目に関する環境要素に係る環境影響を受けるおそれがある地域又は土地の形状が変更される区域及びその周辺の区域その他の調査に適切な範囲であると認められる地域(3号)(エ) 調査に当たり一定の地点に関する情報を重点的に収集することとする場合における当該地点調査すべき情報の内容及び特に環境影響を受けるおそれがある対象 適切な範囲であると認められる地域(3号)(エ) 調査に当たり一定の地点に関する情報を重点的に収集することとする場合における当該地点調査すべき情報の内容及び特に環境影響を受けるおそれがある対象の状況を踏まえ,地域を代表する地点その他の調査に適切かつ効果的であると認められる地点(4号)(オ) 調査に係る期間,時期又は時間帯調査すべき情報の内容を踏まえ,調査に適切かつ効果的であると認められる期間,時期又は時間帯(5号)イ上記ア(イ)に規定する調査の基本的な手法のうち,情報の収集,整理又は解析について法令等により定められた手法がある環境要素に係る選定項目に係るものについては,当該法令等により定められた手法を踏まえ,適切な調査の手法を選定するものとする。(2項)ウ上記ア(オ)に規定する調査に係る期間のうち,季節による変動を把握す- 175 -る必要がある調査の対象に係るものについては,これを適切に把握できるよう調査に係る期間を選定するものとする。(3項)エ事業者は,上記アの規定により調査の手法を選定するに当たっては,調査の実施に伴う環境への影響を回避し,又は低減するため,できる限り環境への影響が小さい手法を選定するよう留意しなければならない。(4項)オ事業者は,上記アの規定により調査の手法を選定するに当たっては,調査により得られる情報が記載されていた文献名,当該情報を得るために行われた調査の前提条件,調査地域の設定の根拠,調査の日時その他の当該情報の出自及びその妥当性を明らかにできるようにしなければならない。 この場合において,希少な動植物の生息又は生育に関する情報については,必要に応じ,公開に当たって種及び場所を特定できないようにすることその他の希少な動植物の保護のために必要な配慮を行うものとする。(5項) において,希少な動植物の生息又は生育に関する情報については,必要に応じ,公開に当たって種及び場所を特定できないようにすることその他の希少な動植物の保護のために必要な配慮を行うものとする。(5項)カ事業者は,上記アの規定により調査の手法を選定するに当たっては,長期間の観測結果が存在しており,かつ,現地調査を行う場合にあっては,当該観測結果と現地調査により得られた結果とを比較できるようにしなければならない。(6項)(8) 予測の手法(10条)ア事業者は,対象飛行場設置等事業に係る環境影響評価の予測の手法を選定するに当たっては,上記(6)に定めるところによるほか,次の(ア)から(エ)までに掲げる予測の手法に関する事項について,それぞれ当該(ア),(イ),(ウ)又は(エ)に定めるものを,当該選定項目の特性,事業特性及び地域特性を勘案し,当該選定項目に係る評価において必要とされる水準が確保されるよう選定しなければならない。(1項)(ア) 予測の基本的な手法環境の状況の変化又は環境への負荷の量を,- 176 -理論に基づく計算,模型による実験,事例の引用又は解析その他の手法により,定量的に把握する手法(1号)(イ) 予測の対象とする地域(次のエにおいて「予測地域」という。)調査地域のうちから適切に選定された地域(2号)(ウ) 予測に当たり一定の地点に関する環境の状況の変化を重点的に把握することとする場合における当該地点選定項目の特性に応じて保全すべき対象の状況を踏まえ,地域を代表する地点,特に環境影響を受けるおそれがある地点,保全すべき対象への環境影響を的確に把握できる地点その他の予測に適切かつ効果的な地点(3号)(エ) 予測の対象とする時期,期間又は時間帯供用開始後定常状態になる時期,工事の実施によ がある地点,保全すべき対象への環境影響を的確に把握できる地点その他の予測に適切かつ効果的な地点(3号)(エ) 予測の対象とする時期,期間又は時間帯供用開始後定常状態になる時期,工事の実施による環境影響が最大になる時期その他の予測に適切かつ効果的な時期,期間又は時間帯(4号)イ上記ア(ア)に規定する予測の基本的な手法については,定量的な把握が困難な場合にあっては,定性的に把握する手法を選定するものとする。 (2項)ウ上記ア(エ)に規定する予測の対象とする時期については,供用開始後定常状態に至るまでに長期間を要する場合又は予測の前提条件が予測の対象となる期間内で大きく変化する場合にあっては,必要に応じ上記ア(エ)に規定する時期での予測に加え中間的な時期での予測を行うものとする。 (3項)エ事業者は,上記アの規定により予測の手法を選定するに当たっては,予測の基本的な手法の特徴及びその適用範囲,予測地域の設定の根拠,予測の前提となる条件,予測で用いた原単位及び係数その他の予測に関する事項について,選定項目の特性,事業特性及び地域特性に照らし,それぞれその内容及び妥当性を明らかにできるようにしなければならない。(4項)- 177 -オ事業者は,上記アの規定により予測の手法を選定するに当たっては,対象飛行場設置等事業以外の事業活動その他の地域の環境を変化させる要因によりもたらされる当該地域の将来の環境の状況(将来の環境の状況の推定が困難な場合及び現在の環境の状況を勘案することがより適切な場合にあっては,現在の環境の状況)を勘案して予測が行われるようにしなければならない。この場合において,将来の環境の状況は,関係する地方公共団体が有する情報を収集して推定するとともに,将来の環境の状況の推定に当たって,国又は関係する地方 して予測が行われるようにしなければならない。この場合において,将来の環境の状況は,関係する地方公共団体が有する情報を収集して推定するとともに,将来の環境の状況の推定に当たって,国又は関係する地方公共団体が実施する環境の保全に関する施策の効果を見込むときは,当該施策の内容を明らかにできるよう整理するものとする。(5項)カ事業者は,上記アの規定により予測の手法を選定するに当たっては,対象飛行場設置等事業において新規の手法を用いる場合その他の環境影響の予測に関する知見が十分に蓄積されていない場合において,予測の不確実性の程度及び不確実性に係る環境影響の程度を勘案して必要と認めるときは,当該不確実性の内容を明らかにできるようにしなければならない。 (6項)(9) 評価の手法(11条)事業者は,対象飛行場設置等事業に係る環境影響評価の評価の手法を選定するに当たっては,次に掲げる事項に留意しなければならない。 ア調査及び予測の結果並びに次の(12)アの規定による検討を行った場合においてはその結果を踏まえ,対象飛行場設置等事業の実施により当該選定項目に係る環境要素に及ぶおそれがある影響が,事業者により実行可能な範囲内でできる限り回避され,又は低減されており,必要に応じその他の方法により環境の保全についての配慮が適正になされているかどうかを評価する手法であること。(1号)イ国又は関係する地方公共団体が実施する環境の保全に関する施策によっ- 178 -て,選定項目に係る環境要素に関して基準又は目標が示されている場合には,当該基準又は目標と調査及び予測の結果との間に整合が図られているかどうかを評価する手法であること。(2号)ウ事業者以外の者が行う環境の保全のための措置の効果を見込む場合には,当該措置の内容を明らかにで 又は目標と調査及び予測の結果との間に整合が図られているかどうかを評価する手法であること。(2号)ウ事業者以外の者が行う環境の保全のための措置の効果を見込む場合には,当該措置の内容を明らかにできるようにすること。(3号)(10) 手法選定に当たっての留意事項(12条)ア事業者は,対象飛行場設置等事業に係る環境影響評価の調査,予測及び評価の手法(以下この条において「手法」という。)を選定するに当たっては,前記(3)の規定により把握した事業特性及び地域特性に関する情報を踏まえ,必要に応じ専門家その他の環境影響に関する知見を有する者の助言を受けて選定しなければならない。(1項)イ事業者は,環境影響評価を行う過程において手法の選定に係る新たな事情が生じたときは,必要に応じ手法の見直しを行わなければならない。 (2項)ウ事業者は,手法の選定を行ったときは,選定された手法及び選定の理由を明らかにできるよう整理しなければならない。(3項)(11) 環境保全措置に関する指針(13条)対象飛行場設置等事業に係る評価法12条2項(前記3(12)イ)に規定する環境の保全のための措置に関する指針については,次の(12)から(15)までに定めるところによる。 (12) 環境保全措置の検討(14条)ア事業者は,環境影響がないと判断される場合及び環境影響の程度が極めて小さいと判断される場合以外の場合にあっては,事業者により実行可能な範囲内で選定項目に係る環境影響をできる限り回避し,又は低減すること,必要に応じ損なわれる環境の有する価値を代償すること及び当該環境影響に係る環境要素に関して国又は関係する地方公共団体が実施する環境の保- 179 -全に関する施策によって示されている基準又は目標の達成に努めることを目 境の有する価値を代償すること及び当該環境影響に係る環境要素に関して国又は関係する地方公共団体が実施する環境の保- 179 -全に関する施策によって示されている基準又は目標の達成に努めることを目的として環境の保全のための措置(以下「環境保全措置」という。)を検討しなければならない。(1項)イ事業者は,前項の規定による検討に当たっては,環境影響を回避し,又は低減させる措置を検討し,その結果を踏まえ,必要に応じ,損なわれる環境の有する価値を代償するための措置(次の(14)エ及びオにおいて「代償措置」という。)を検討しなければならない。(2項)(13) 検討結果の検証(15条)事業者は,上記(12)アの規定による検討を行ったときは,環境保全措置についての複数の案の比較検討,実行可能なより良い技術が取り入れられているかどうかの検討その他の適切な検討を通じて,事業者により実行可能な範囲内で対象飛行場設置等事業に係る環境影響ができる限り回避され,又は低減されているかどうかを検証しなければならない。 (14) 検討結果の整理(16条)事業者は,前記(12)アの規定による検討を行ったときは,次に掲げる事項を明らかにできるよう整理しなければならない。 ア環境保全措置の実施主体,方法その他の環境保全措置の実施の内容(1号)イ環境保全措置の効果及び当該環境保全措置を講じた後の環境の状況の変化並びに必要に応じ当該環境保全措置の効果の不確実性の程度(2号)ウ環境保全措置の実施に伴い生ずるおそれがある環境への影響(3号)エ代償措置にあっては,環境影響を回避し,又は低減させることが困難である理由(4号)オ代償措置にあっては,損なわれる環境及び環境保全措置により創出される環境に関し,それぞれの位置並びに損なわれ 代償措置にあっては,環境影響を回避し,又は低減させることが困難である理由(4号)オ代償措置にあっては,損なわれる環境及び環境保全措置により創出される環境に関し,それぞれの位置並びに損なわれ又は創出される当該環境に係る環境要素の種類及び内容(5号)- 180 -(15) 事後調査(17条)ア事業者は,予測の不確実性の程度が大きい選定項目について環境保全措置を講ずることとする場合又は効果に係る知見が不十分な環境保全措置を講ずることとする場合において,環境影響の程度が著しいものとなるおそれがあるときは,対象飛行場設置等事業に係る工事の実施中及び土地又は工作物の供用開始後において環境の状況を把握するための調査(以下この条において「事後調査」という。)を行わなければならない。(1項)イ事業者は,事後調査の項目及び手法の選定に当たっては,次に掲げる事項に留意しなければならない。(2項)(ア) 事後調査の必要性,事業特性及び地域特性に応じ適切な項目を選定すること。(1号)(イ) 事後調査を行う項目の特性,事業特性及び地域特性に応じ適切な手法を選定するとともに,事後調査の結果と環境影響評価の結果との比較検討が可能となるようにすること。(2号)(ウ) 事後調査の実施に伴う環境への影響を回避し,又は低減するため,できる限り環境への影響が小さい手法を選定すること。(3号)ウ事業者は,事後調査の項目及び手法の選定に当たっては,次に掲げる事項をできる限り明らかにするよう努めなければならない。(3項)(ア) 事後調査を行うこととした理由(1号)(イ) 事後調査の項目及び手法(2号)(ウ) 事後調査の結果により環境影響の程度が著しいことが明らかとなった場合の対応の方針(3号)(エ) 事後調査の結果の公表の方法 ととした理由(1号)(イ) 事後調査の項目及び手法(2号)(ウ) 事後調査の結果により環境影響の程度が著しいことが明らかとなった場合の対応の方針(3号)(エ) 事後調査の結果の公表の方法(4号)(オ) 関係する地方公共団体その他の事業者以外の者(以下この号において「関係地方公共団体等」という。)が把握する環境の状況に関する情報を活用しようとする場合における当該関係地方公共団体等との協力又- 181 -は当該関係地方公共団体等への要請の方法及び内容(5号)(カ) 事業者以外の者が事後調査の実施主体となる場合にあっては,当該実施主体の氏名(法人にあっては,その名称)並びに当該実施主体との協力又は当該実施主体への要請の方法及び内容(6号)(キ) 上記(ア)から(カ)までに掲げるもののほか,事後調査の実施に関し必要な事項(7号)(16) 準備書の作成(18条)ア事業者は,評価法14条1項(前記3(13))の規定により対象飛行場設置等事業に係る準備書に評価法5条1項2号(前記3(5)イ)に規定する対象事業の内容を記載するに当たっては,次に掲げる事項を記載しなければならない。 (ア) 前記(1)ア(ア)から(ウ)までに掲げる事項(1号)(イ) 対象飛行場設置等事業の工事計画の概要(2号)(ウ) 対象飛行場設置等事業に係る飛行場及びその施設の区域の位置(3号)(エ) 対象飛行場設置等事業に係る飛行場の利用を予定する航空機の種類及び数(4号)(オ) 上記(ア)から(エ)までに掲げるもののほか,対象飛行場設置等事業の内容に関する事項(既に決定されている内容に係るものに限る。)であって,その変更により環境影響が変化することとなるもの(5号)イ前記(1)イからエまでの規定は,評価法14条の規定により事業 業の内容に関する事項(既に決定されている内容に係るものに限る。)であって,その変更により環境影響が変化することとなるもの(5号)イ前記(1)イからエまでの規定は,評価法14条の規定により事業者が対象飛行場設置等事業に係る準備書を作成する場合について準用する。この場合において,前記(1)イ中「その他の資料」とあるのは,「その他の資料及び次の(3)イの規定による聴取又は確認」と,前記(1)ウ中「上記イ」とあるのは「次の(16)イにおいて準用する上記イ並びに次の(16)ア(イ)」と,前記(1)エ中「5条1項4号(前記3(5)エ)」とあるのは「14条1項5- 182 -号(前記3(13)オ)」と読み替えるものとする。(2項)ウ事業者は,対象飛行場設置等事業に係る準備書に評価法14条1項7号イ(前記3(13)キ(ア))に掲げる事項を記載するに当たっては,前記(7)オ並びに(8)エ及びカにおいて明らかにできるようにしなければならないとされた事項,前記(7)カにおいて比較できるようにしなければならないとされた事項,前記(8)オにおいて明らかにできるように整理するものとされた事項並びに前記(9)ウにおいて明らかにできるようにすることに留意しなければならないとされた事項の概要を併せて記載しなければならない。(3項)エ事業者は,対象飛行場設置等事業に係る準備書に評価法14条1項7号ロ(前記3(13)キ(イ))に掲げる事項を記載するに当たっては,前記(12)の規定による検討の状況,前記(13)の規定による検証の結果及び前記(14)アからオまでに掲げる事項を記載しなければならない。(4項)オ事業者は,対象飛行場設置等事業に係る準備書に評価法14条1項7号ハ(前記3(13)キ(ウ))に掲げる事項を記載するに当たっては,前記(15)ウの 掲げる事項を記載しなければならない。(4項)オ事業者は,対象飛行場設置等事業に係る準備書に評価法14条1項7号ハ(前記3(13)キ(ウ))に掲げる事項を記載するに当たっては,前記(15)ウの規定により明らかにされた事項を記載しなければならない。(5項)カ事業者は,対象飛行場設置等事業に係る準備書に評価法14条1項7号ニ(前記3(13)キ(エ))に掲げる事項を記載するに当たっては,前記3(13)キ(ア)から(ウ)までに掲げる事項の概要を一覧できるようとりまとめて記載しなければならない。 (17) 評価書の作成(19条)ア上記(16)の規定は,評価法21条2項(前記3(20)イ)の規定により事業者が対象飛行場設置等事業に係る評価書を作成する場合について準用する。 (1項)イ事業者は,評価21条2項の規定により対象飛行場設置等事業に係る評価書を作成するに当たっては,対象飛行場設置等事業に係る準備書に記載- 183 -した事項との相違を明らかにしなければならない。(2項)(18) 評価書の補正(20条)事業者は,評価法25条2項(前記3(24)イ)の規定により対象飛行場設置等事業に係る評価書の補正をするに当たっては,補正前の対象飛行場設置等事業に係る評価書に記載した事項との相違を明らかにしなければならない。 - 184 -(別紙)本件許可処分の根拠及び適法性に関する被告の主張 第1 航空法所定の手続的要件の充足について前提事実のとおり,本件許可処分は,飛行場設置許可申請書の提出,航空法38条3項の告示等,同法39条2項の公聴会の開催,同法40条の告示等の手続を経て行われたもので,航空法の定める手続的要件を充足している。 第2 航空法所定の実体的要件の充足について処分行政庁は,次に述 告示等,同法39条2項の公聴会の開催,同法40条の告示等の手続を経て行われたもので,航空法の定める手続的要件を充足している。 第2 航空法所定の実体的要件の充足について処分行政庁は,次に述べるとおり,本件申請が航空法39条1項各号の要件を充足すると判断した。 1 航空法39条1項1号の要件(以下「1号要件」という。)の適合性処分行政庁は,本件申請の内容が航空法施行規則79条1項各号に定める基準(なお,同規則に数値基準の定めがない場合は,空港土木施設設計基準(乙8)に従うこととした。)に適合しており,1号要件を充足すると判断した。同項各号が定める基準(以下,同項各号が定める基準について,それぞれ「1号基準」,「2号基準」のように当該基準の号番号に対応させて略称する。)のうち,陸上飛行場に係る要件は,1号ないし5号,5号の2,9号である。 (1) 1号基準についてア 1号基準の内容航空法施行規則79条1項1号は,「飛行場の周辺にある建造物,植物その他の物件であって,国土交通大臣が航空機の離陸又は着陸に支障があると認めるものがないこと。ただし,当該飛行場の工事完成の予定期日までに,当該物件を確実に除去できると認められる場合は,この限りではない。」と規定する。ここに「航空機の離陸又は着陸に支障があ- 185 -る」とは,航空法49条において禁止されている制限表面を突出した物件が存在し,航空機の離陸又は着陸に支障を生じさせる状態をいい,これに抵触した場合は,飛行場の工事完成の予定期日までに当該物件を除去できるという見込みが存在するか否か等を検討することになる。 制限表面とは,進入表面,転移表面及び水平表面を総称したものである。このうち,進入表面とは,航空機(垂直に離着陸することができる特殊なものを除く。 見込みが存在するか否か等を検討することになる。 制限表面とは,進入表面,転移表面及び水平表面を総称したものである。このうち,進入表面とは,航空機(垂直に離着陸することができる特殊なものを除く。)が,飛行場から離陸し,又は飛行場に着陸するためには,ある角度をもって,飛行場からの上昇又は飛行場への進入をすることを要するものであり,飛行場からの上昇又は飛行場への進入のため必要な障害物件のない空間が必要であることから設けられた勾配を有する想像上の平面であり,着陸帯(航空法2条5項)の短辺に接続し,かつ,水平面に対し上方へ50分の1以上で国土交通省令で定める勾配を有する平面であって,その投影面が進入区域(同条6項)と一致するものをいう(同条7項)。また,転移表面とは,航空機の離着陸,特に着陸に際し,滑走路の中心線から逸脱した進入又は進入復行がなされる場合に,航空機の運航の安全を図るために設けられたものであり,進入表面の斜辺及び着陸帯の長辺を含む平面であって上方及び外方に傾斜する特定の平面であり,その範囲は,航空法2条9項で定められている。 さらに,水平表面とは,航空機が飛行場への離着陸に際し,飛行場及びその周辺の上空を低空で旋回飛行しなければならない場合があることから,この場合の航空機の安全を図るためのものであり,飛行場の標点の垂直上方45mの点を含む水平面のうち,この点を中心として4000m以下で国土交通省令で定める長さの半径で描いた円周で囲まれた部分をいう(航空法2条8項)。 イ 1号基準に適合していること(ア) 本件空港は,滑走路の長さを2000mとする陸上飛行場である- 186 -ことから,「着陸帯の等級」はCであるところ(航空法施行規則75条2項),この場合における進入表面については40分の1の勾配(同規則2条2号 の長さを2000mとする陸上飛行場である- 186 -ことから,「着陸帯の等級」はCであるところ(航空法施行規則75条2項),この場合における進入表面については40分の1の勾配(同規則2条2号),水平表面の半径については3000mとなる(同規則3条1号)。 (イ) 本件申請書(添付書類を含む。以下同じ。)によれば,本件空港の制限表面の上に出る物件又はこれに著しく近接した物件として,アンテナ,電柱,樹木,地形等が存在することが認められる。 これらの物件のうち,水平表面を超過する14物件については,障害灯の設置による対応が予定されており,これによって航空機の離陸又は着陸に対する支障はないと認められた。 また,進入表面を超過する27物件及び転移表面を超過する21物件については,飛行場の工事完成の予定期日までに除去するとされていた。このうち,電柱等については,その設置者である県において確実に除去し得ると認められた。さらに,樹木及び地形で除去が必要とされている部分についても,設置者において任意で土地等を取得した上,伐採又は切土をすることが可能であることに加え,本件許可処分の告示後,設置者は,航空法49条3項に基づき,制限表面の上に出る物件の除去をその所有者に対し求めることができること,本件空港の設置事業が土地収用法の収用適格事業であり(土地収用法2条,3条12号),法的には土地収用法7条の適用も可能であること等から,地形についても,本件空港の工事完成の予定期日までに,確実に除去できると判断した。 以上の点を踏まえ総合的に判断し,処分行政庁は,本件申請は1号基準に適合するものと認めたものであり,その判断に不合理な点がないことは明らかである。 (2) 2号基準について- 187 -ア 2号基準の内容航空法施行規則79条 政庁は,本件申請は1号基準に適合するものと認めたものであり,その判断に不合理な点がないことは明らかである。 (2) 2号基準について- 187 -ア 2号基準の内容航空法施行規則79条1項2号は,「滞空旋回圏(飛行場に着陸せんとする航空機の滞空旋回のために安全最小限と認められる飛行場上空の所定の空域をいう。・・・)が,既存の飛行場に設定された滞空旋回圏と重ならないこと。」と規定する。 処分行政庁は,航空機が着陸態勢に入ろうとする段階及び着陸態勢に入ってから着陸するまでの段階にあっては,その飛行態様は不安定な状態にあり,他の航空機との交錯はできる限り避ける必要があるため,他の飛行場との滞空旋回圏が重ならないか否かを専門的技術的観点から判断することとしている。 イ 2号基準に適合していること本件空港の供用を開始した場合,現空港は廃港となるため,従来の滞空旋回圏は消滅することとなる。また,石垣市内には現空港以外の空港は存しないため,本件空港の滞空旋回圏は,既存の飛行場に設定された滞空旋回圏と重ならないということができる。そこで,処分行政庁は,本件空港に着陸する航空機の安全は確保されると判断し,本件申請は2号基準に適合するものと認めたものであり,その判断に不合理な点がないことは明らかである。 (3) 3号基準についてア 3号基準の内容航空法施行規則79条1項3号は,「陸上飛行場にあっては,特別の理由があると認められる場合を除き,着陸帯の等級別に,左の表に掲げる規格に適合した滑走路,着陸帯及び誘導路を有するものであること。」と規定する。 イ 3号基準に適合していること(ア) 本件空港は,前記のとおり,着陸帯の等級をCとするものである- 188 -(航空法施行規則75条2項)。 そこで,本件空港の滑走路, 。」と規定する。 イ 3号基準に適合していること(ア) 本件空港は,前記のとおり,着陸帯の等級をCとするものである- 188 -(航空法施行規則75条2項)。 そこで,本件空港の滑走路,着陸帯及び誘導路の規格については,航空法施行規則79条1項3号に掲げる表の着陸帯の等級「C」欄の規格を有するものであることが必要である。 (イ) 滑走路滑走路については,幅につき45m以上であること,最大縦断こう配につき,① 滑走路の末端から滑走路の長さの4分の1以下の距離にある部分では0.8%を超えないこと,② ①以外の部分では1%を超えないこと,③ 最大横断こう配につき1.5%を超えないこととなる規格を有する必要がある。 これを本件申請についてみると,本件申請書によれば,滑走路の幅については45mとされていることが認められた。また,滑走路の縦断こう配については,滑走路末端から滑走路の長さの4分の1の距離では最大でも0.7%,これ以外の部分では最大でも0.8%とされており,基準値を超えていないことが認められた。さらに,滑走路の横断こう配については,最大でも1.3%とされており,基準値を超えていないことが認められた。 (ウ) 着陸帯次に,着陸帯については,その長さにつき「滑走路の長辺を両短辺の側にそれぞれ60mに延長して得たもの」(滑走路長に120mを加えた長さ),滑走路の縦方向の中心線から着陸帯の長辺までの距離につき,計器用(精密進入を行う着陸帯)として150m以上であること,非計器用(精密進入を行わない着陸帯)として75m以上であること,非計器用の着陸帯として必要な最小の区域内の部分(滑走路の長さが1280m以上の着陸帯については,滑走路の中心線から75m以内の範囲)の最大縦断こう配につき,1.75%を超えないこ 上であること,非計器用の着陸帯として必要な最小の区域内の部分(滑走路の長さが1280m以上の着陸帯については,滑走路の中心線から75m以内の範囲)の最大縦断こう配につき,1.75%を超えないこ- 189 -と,最大横断こう配につき,① 非計器用の着陸帯として必要な最小の区域内の部分では2.5%を超えないこと,② ①以外の部分では5%を超えないことという規格を有する必要がある。 これを本件申請についてみると,本件申請書によれば,着陸帯の長さについては,長さ2000mの滑走路の両端(過走帯)に60mずつを加えた2120mとされていることが認められた。また,滑走路の縦方向の中心線から着陸帯の長辺までの距離については,150mとされており(着陸帯の幅員は300mとされている。),精密進入を行う着陸帯として必要な着陸帯の幅があると認められた。さらに,非計器用の着陸帯として必要な最小の区域内の部分の最大縦断こう配については,1.5%とされており,基準値である1.75%を超えていないことが認められた。加えて,着陸帯の横断こう配については,最大でも2.44%とされており,非計器用の着陸帯として必要な最小の区域内の部分もそれ以外の部分のいずれの部分についても,基準値を超えていないことが認められた。 (エ) 誘導路さらに,誘導路については,その幅につき23m以上であること,最大縦断こう配につき1.5%を超えないこと,最大横断こう配につき1.5%を超えないこととなる規格を有する必要がある。 本件申請書によれば,誘導路の幅については,23ないし30mとされていることが認められた。また,誘導路の縦断こう配については,最大でも1.3%とされており,基準値を超えていないことが認められた。さらに,誘導路の横断こう配については,最大でも1.3% 30mとされていることが認められた。また,誘導路の縦断こう配については,最大でも1.3%とされており,基準値を超えていないことが認められた。さらに,誘導路の横断こう配については,最大でも1.3%とされており,基準値を超えていないことが認められた。 (オ) 誘導路縁と固定障害物との間隔加えて,誘導路縁と固定障害物との間隔については,30m以上と- 190 -なる規格を有する必要がある。 これを本件申請についてみると,本件申請書によれば,最も狭いところでも,33.25mの間隔が確保されていることが認められた。 また,処分行政庁は,事業者である県に対し,将来においても,誘導路縁から30m未満の箇所には固定障害物を設置しない旨の確約を得た。 (カ) 小括このように,本件空港の滑走路,着陸帯及び誘導路は,いずれも航空法施行規則79条1項3号に掲げる表の規格に適合することが認められたことから,処分行政庁は,本件申請は3号基準に適合するものと判断したものであり,その判断に不合理な点がないことは明らかである。 (4) 4号基準についてア 4号基準の内容航空法施行規則79条1項4号は,「陸上飛行場・・・にあっては,滑走路,誘導路及びエプロンがこれらを使用することが予想される航空機の予想される回数の運航に十分耐えるだけの強度を有するものであること。」と規定する。 この点について,処分行政庁は,空港土木施設設計基準(乙8の3. 7.3「設計荷重および設計反復作用回数の決定」)に従い判断することとした。すなわち,基本施設及びそれに附帯する施設の舗装の設計荷重は,設計の対象となる舗装上の設計年数(通常10年を標準とする。)にわたる推定交通に基づき,就航対象機材ごとにその区分を決定し,就航対象機材の中で最も厚い舗装を必要とする設計 る施設の舗装の設計荷重は,設計の対象となる舗装上の設計年数(通常10年を標準とする。)にわたる推定交通に基づき,就航対象機材ごとにその区分を決定し,就航対象機材の中で最も厚い舗装を必要とする設計荷重区分を選択することとした。 イ 4号基準に適合していること- 191 -本件申請書によれば,本件空港の利用を予定する航空機の種類及び形式については,ボーイング767型旅客機等とされ,滑走路の強度については,単車輪荷重31.5t,舗装体の設計強度LA-12とされていること,滑走路及び誘導路についてはアスファルトコンクリート舗装され,エプロンについてはセメントコンクリート舗装されることが認められた。 上記のLA-12という設計荷重は,本件空港で就航予定の航空機のうち最も厚い舗装を要するボーイング767型機に対応するものである。 したがって,処分行政庁は,本件空港で計画されている滑走路等は,これを使用する航空機の予想される運航回数に十分耐えるだけの強度を有するものであると認め,本件申請は4号基準に適合するものと判断したものであり,その判断に不合理な点がないことは明らかである。 (5) 5号基準についてア 5号基準の内容航空法施行規則79条1項5号は,「陸上飛行場・・・にあっては,滑走路及び誘導路が,これらの上を航行する航空機の航行の安全のため,相互の間の十分な距離並びに接続点における適当な角度及び形状を有するものであること。」と規定する。 この点につき,処分行政庁は,空港土木施設設計基準に従い判断することとした。同基準(乙8の3.5.5「誘導路と滑走路およびその他の誘導路等との間隔」)によれば,滑走路と平行誘導路との中心線間隔は184m以上にしなければならないとされている。また,取付誘導路は滑走路に対して直角に取付けられ 5.5「誘導路と滑走路およびその他の誘導路等との間隔」)によれば,滑走路と平行誘導路との中心線間隔は184m以上にしなければならないとされている。また,取付誘導路は滑走路に対して直角に取付けられ,平行誘導路は滑走路と平行に滑走路の全長にわたって設置されることとされている(乙8の3.5.1)。 イ 5号基準に適合していること本件申請書によれば,本件空港の滑走路と平行誘導路との中心線間の- 192 -間隔は184mとされており,相互間には十分な距離が確保されていること,滑走路と誘導路の接続点においても適当な角度(直角)及び形状を有することが認められた。 したがって,処分行政庁は,本件申請は5号基準に適合するものと判断したものであり,その判断に不合理な点がないことは明らかである。 (6) 5号の2基準の審査ア 5号の2基準の内容航空法施行規則79条1項5号の2は,「陸上飛行場・・・にあっては,滑走路及び誘導路の両側並びにエプロンの縁に適当な幅,強度及び表面を有するショルダーを設けること。」と規定する。 この点につき,処分行政庁は,温暖地域における滑走路長1500m以上2150m未満の滑走路を有する飛行場については,滑走路及び過走帯のショルダーの幅は7.5m(空港土木施設設計基準3.2.7),誘導路及びエプロンのショルダーの幅は5.0m(空港土木施設設計基準3.5.2及び3.6.4(4))を標準とすることとした。 イ 5号の2基準に適合していること本件申請書によれば,本件空港の滑走路及び過走帯の縁には幅7.5mのアスファルト舗装したショルダーが設けられること,誘導路の両側及びエプロンの縁には幅5.0mのアスファルト舗装したショルダーが設けられることが認められたことから,処分行政庁は,本件空港の滑走路及び誘導路の両側並 装したショルダーが設けられること,誘導路の両側及びエプロンの縁には幅5.0mのアスファルト舗装したショルダーが設けられることが認められたことから,処分行政庁は,本件空港の滑走路及び誘導路の両側並びにエプロンの縁に適当な幅,強度及び表面を有するショルダーが設けられるものと認めた。 したがって,処分行政庁は,本件申請は5号の2基準に適合するものと判断したものであり,その判断に不合理な点がないことは明らかである。 (7) 9号基準の審査- 193 -ア 9号基準の内容航空法施行規則79条1項9号は,「次の表の区分により,飛行場標識施設(・・・)を有するものであること。ただし,舗装されていない滑走路又は誘導路で滑走路標識又は誘導路標識を設けることが困難なものについては省略してもよい。」と規定する。 この点,処分行政庁は,空港土木施設設計基準(乙8の3.8.2~5)に従い判断することとした。 イ 9号基準に適合していること本件申請書によれば,本件空港には飛行場名標識,滑走路標識(指示標識,滑走路中心線標識,滑走路末端標識,滑走路中央標識,接地点標識,接地帯標識,滑走路標識),過走帯標識,誘導路標識(誘導路中心標識,停止位置標識,誘導路縁標識)が,それぞれ空港土木施設設計基準の規格で適切な位置に設けられることとなっていること,また,風向指示器も適切な位置に設置されることが認められた。 したがって,処分行政庁は,本件申請は9号基準に適合するものと判断したものであり,その判断に不合理な点がないことは明らかである。 (8) 小括以上のとおり,本件申請は,航空法施行規則79条1項各号が定める基準のうち,陸上飛行場に係る同項1号ないし5号,5号の2及び9号の各基準にいずれも適合するものであることが認められたことから,処分行政庁は とおり,本件申請は,航空法施行規則79条1項各号が定める基準のうち,陸上飛行場に係る同項1号ないし5号,5号の2及び9号の各基準にいずれも適合するものであることが認められたことから,処分行政庁は,本件申請が1号要件に適合するものと判断したものであり,その判断に違法な点がないことは明らかである。 2 航空法39条1項2号の要件(以下「2号要件」という。)の適合性(1) 2号要件の内容航空法39条1項2号は,申請に係る飛行場の設置によって,他人の利益を著しく害することとならないものであることを要件としている。 - 194 -この要件は,飛行場周辺地域住民の利益を一般的公益として配慮するほか,主として,航空法49条により制限表面による私権制限の対象となる私人の財産権に対し配慮すべきことを定めた規定である。そして,当該飛行場の設置が私人の財産権等に対する著しい侵害となっていないかを審査する目的で,同条2項において公聴会の開催が義務付けられているものと解されることから,処分行政庁は,公聴会における公述内容等を踏まえて総合勘案した上で,飛行場の設置によって他人の利益を著しく害することとならないかどうかを判断することとしている。 (2) 2号要件に適合していること本件申請書によれば,飛行場敷地部分の多くは山林や畑であることが認められる上,その大部分の所有者からは,その土地を本件空港の設置者に売り渡す旨の同意が得られていること,制限表面による制約が及ぶ区域内には人口・建物が密集する市街地はなく,集落地域の建物もおおむね低層建築物であることが認められた。 また,平成17年11月10日に石垣市で開催した公聴会においても,制限表面の設定によって建築物の高さが制限されることについて特段異論を述べる者はなく,飛行場の建設による自らの具体的な私 められた。 また,平成17年11月10日に石垣市で開催した公聴会においても,制限表面の設定によって建築物の高さが制限されることについて特段異論を述べる者はなく,飛行場の建設による自らの具体的な私法上の利益侵害を訴える趣旨の発言も一切なかった。 以上の点などを踏まえ,処分行政庁は,本件空港の設置によって,他人の利益を著しく害することとならないと判断し,本件申請が2号要件に適合するものと認めたものであり,その判断に裁量権の逸脱・濫用がないことは明らかである。 3 航空法39条1項3号の要件(以下「3号要件」という。)の適合性(1) 3号要件の内容航空法39条1項3号は,申請に係る飛行場の管理の計画が同法47条1項の保安上の基準に合致するものであることを要件としている。 - 195 -上記管理計画に関する保安上の基準については,航空法47条1項の委任を受けた航空法施行規則92条1号ないし15号において,施設の維持,点検,清掃,禁止行為の掲示,標識灯の設置,消火設備,救難設備,気象観測設備,飛行場手引書等に関する詳細な規定を設けている。 (2) 3号要件に適合していること本件申請書によれば,本件空港については,県において,新石垣空港管理事務所(職員10名)を設置し,管理計画に基づいて沖縄県空港の設置及び管理に関する条例(昭和47年沖縄県条例第20号)に基づいて本件空港を適切に管理するものとしていること,所定の飛行場手引書(セイフティ編,セキュリティ編)を作成し,上記事務所内に備え付けるとしていること,上記飛行場手引書には,航空法施行規則92条3号,5号ないし7号,9号,12号ないし14号の各規定を実行するものと認めるに足りる記載があったこと,制札等構造図及び配置図には同条4号を満たす記載があったことなどから,処分行政庁は 行規則92条3号,5号ないし7号,9号,12号ないし14号の各規定を実行するものと認めるに足りる記載があったこと,制札等構造図及び配置図には同条4号を満たす記載があったことなどから,処分行政庁は,同規則92条各号の要件を充足しており,本件申請は3号要件に適合するものと判断したものであって,その判断に不合理な点がないことは明らかである。 4 航空法39条1項4号の要件(以下「4号要件」という。)の適合性(1) 4号要件の内容航空法39条1項4号は,申請者が当該飛行場を設置し,及びこれを管理するに足りる能力を有していることを要件としている。 この点につき,処分行政庁は,申請者が当該飛行場を設置し,管理するために必要な資金調達能力,技術力及び経営能力等を有しているか否かによって判断することとしている。 (2) 4号要件に適合していること申請者である県は,現空港のほかに11空港の設置管理を行っており,現空港の管理体制の下で管理上の問題は生じていない上,本件空港につい- 196 -ても職員を適切に配置して管理する体制を整備していく旨を確認することができたため,処分行政庁は,県が本件空港を設置し,管理するに足りる能力を有していると判断したものである。 なお,資金調達についてみると,設置費用は沖縄振興特別措置法に基づき90%を国が負担するとともに,県も適切に予算措置を行う予定であり,また,管理費用は本件空港の使用料及び県の予算で確保することとなるものの,申請者が地方公共団体であることから,処分行政庁は,資金調達について問題があるとは考えられないと判断した。 以上の点を踏まえ,処分行政庁は,本件申請は4号要件に適合するものと認めたものであり,その判断に裁量権の範囲の逸脱又は濫用がないことは明らかである。 5 航空法39条1項 られないと判断した。 以上の点を踏まえ,処分行政庁は,本件申請は4号要件に適合するものと認めたものであり,その判断に裁量権の範囲の逸脱又は濫用がないことは明らかである。 5 航空法39条1項5号の要件(以下「5号要件」という。)の適合性(1) 5号要件の内容航空法39条1項5号は,「飛行場にあっては,申請者が,その敷地について所有権その他の使用の権原を有するか,又はこれを確実に取得することができると認められること。」と規定する。 ここに「確実に取得することが認められる」とは,取得しようとすれば,取得が確実に実現することとなるという見込みが存在することをいう。具体的には,処分行政庁は,① 飛行場用地の大半について,現に所有権を有する者から売り渡し等の同意を得ていること,② 未同意用地については,申請者による交渉の継続等により確実に取得することができるという見込みが存在すること等の事情を総合勘案して判断することとしている。 (2) 5号要件に適合していること処分行政庁は,本件空港の建設予定地のうち,敷地面積の99.6%についてはその地権者から用地取得の同意が得られていたこと,同意が得られていない用地のうち,0.3%は所在不明者2名が所有し,残り0.1- 197 -%は空港建設に反対する654名が共有している状況であること,同意の得られていない地権者については県が今後ともねばり強く説得に当たり,事業への理解と協力を求めていくこと等により,県の責任において当該土地を取得する旨を確約していること,仮に同意が得られなかった場合でも,空港建設事業の公共性に基づき土地収用法の適用が可能であること等の諸事情を総合勘案し,申請者である県が本件空港の敷地について使用権原を取得することが確実であると判断した。 以上の点を踏まえ,処分行政 港建設事業の公共性に基づき土地収用法の適用が可能であること等の諸事情を総合勘案し,申請者である県が本件空港の敷地について使用権原を取得することが確実であると判断した。 以上の点を踏まえ,処分行政庁は,本件申請は5号要件に適合するものと認めたものであり,その判断に裁量権の逸脱・濫用がないことは明らかである。 6 小括以上のとおり,処分行政庁は,本件申請につき所要の審査をし,航空法39条1項各号の要件に適合するものであると判断したものであり,この判断に何ら裁量権の逸脱,濫用があったと認め得る事情は存しない。したがって,本件許可処分は航空法所定の実体的要件を充足していることが明らかである。 第3 評価法33条1項の審査及び同条2項の「判断」として本件許可処分を行ったことに何ら違法はないこと 1 処分行政庁は,評価法所要の手続を履践していること評価書作成までの一連の手続が適正に実施されているか否かは評価法33条1項の審査の直接の対象ではないが,本件において事業者である県が行った環境影響評価の手続の詳細については,前提事実のとおりであり,その手続に何ら瑕疵が見当たらないことは明らかである。 このうち,処分行政庁が関与すべき手続については,前提事実のとおり,環境大臣に対する評価書の送付及び求意見をし,処分行政庁としての意見を述べ,補正後の評価書の受領及び環境大臣への送付をした。したがって,処分行政庁- 198 -は,評価法所定の手続を適切に履践しており,この点において何ら違法がないことは明らかである。 2 環境の保全の配慮についての審査等に何ら違法はないこと(1) 処分行政庁は,本件補正書の記載事項及び本件国交大臣意見に基づき,主として,主務省令の別表第一(6条関係)に掲げる標準項目及び主務省令6条1項により必要に いての審査等に何ら違法はないこと(1) 処分行政庁は,本件補正書の記載事項及び本件国交大臣意見に基づき,主として,主務省令の別表第一(6条関係)に掲げる標準項目及び主務省令6条1項により必要に応じて追加した選定項目,すなわち,大気環境(大気質(窒素酸化物,粉じん等,浮遊粒子状物質),騒音(建設作業騒音,道路交通騒音,航空機騒音),振動(建設作業振動,道路交通振動)),水環境(水質(土砂による水の濁り,水の汚れ),地下水),土壌に係る環境・その他の環境(地形及び地質),陸上植物(重要な種及び群落),陸上動物(重要な種及び注目すべき生息地),水生生物(河川,海域),生態系(陸域生態系(地域を特徴付ける生態系),海域生態系(地域を特徴付ける生態系)),景観(主要な眺望点及び景観資源並びに主要な眺望景観),人と自然との触れ合いの活動の場(主要な人と自然との触れ合いの活動の場),廃棄物等(建設工事に伴う副産物,飛行場の施設の供用に伴う廃棄物)の各項目に着目し,本件事業において,環境の保全についての適正な配慮がなされるものであるかどうかを審査したものであり(評価法33条1項),その詳細は,別紙「『新石垣空港整備事業に係る環境影響評価』の観点からの設置許可審査」記載のとおりである。 (2) このように,本件補正書によれば,本件事業の実施が環境に及ぼす影響を予測・評価した結果は,環境保全措置等を実施することによって,環境影響は回避ないし低減されており,また,必要に応じ,損なわれる環境の有する価値が代償されていることから,全体としては,事業実施区域周辺に及ぼす環境影響の程度は小さいものと判断されていること,また,本件国交大臣意見において指摘した24項目についても,いずれも適切な対応がされるものと認められたことから,処分行政庁は,本件事業につき, に及ぼす環境影響の程度は小さいものと判断されていること,また,本件国交大臣意見において指摘した24項目についても,いずれも適切な対応がされるものと認められたことから,処分行政庁は,本件事業につき,環- 199 -境の保全についての適正な配慮がされるものと判断したものである。このような処分行政庁の判断は,合理的な基準に基づき,評価法所定の所要の審査を行った結果であって,何ら違法がないことは明らかである。 3 本件許可処分は評価法33条2項所定の「併せて判断」したものとして何ら裁量権の逸脱・濫用はないこと評価法33条2項各号の「併せて判断する」とは,同条1項の審査の結果(環境保全上の支障を防止する利益)と免許等の審査の結果(免許等を付与することによる法益)とを比較考量し,総合的に判断する趣旨であると解されており,その判断が違法となるのは,環境への配慮を全く怠ったといえるような例外的な場合に限定される。ところが,本件空港の設置は高度の必要性が認められるものである上,本件事業は環境の保全についての適正な配慮がされるものと判断されたのであるから,処分行政庁が本件申請に対し許可を付与したことに裁量権の範囲の逸脱又は濫用がないことは明らかである。 第4 まとめ以上のとおり,本件許可処分は適法である。 - 200 -(別紙) 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)(第2原告らの原告適格の有無)について(被告)(1)ア本件許可処分は,知事を名宛て人とするものであり,原告らは,本件許可処分の名宛て人以外の第三者である。このような原告らに本件許可処分の取消しを求める原告適格が認められるためには,行政事件訴訟法9条1項にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」に該当する必要がある。 そこで このような原告らに本件許可処分の取消しを求める原告適格が認められるためには,行政事件訴訟法9条1項にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」に該当する必要がある。 そこで,原告らが原告適格を基礎付けるものとして主張する利益をみると,第1原告らは,本件許可処分により本件空港の「敷地」(航空法39条1項5号)内に有する土地所有権が侵害されることを主張している。 他方,第2原告らは,「陸海一体となったα3サンゴ礁生態系」に愛着を持ち,県にα4岳陸上案を撤回させ,かけがえのない地球の財産である「陸海一体となったα3サンゴ礁生態系」を次の世代へ残したいと願い,原告となったといい,ある特定の自然環境(α3サンゴ礁生態系)を保全する利益が侵害されることを主張している。しかし,そのような利益は一般公益というほかなく,第2原告ら個々人の個別的利益とはいい難い上,次のとおり,航空法のみならず,その関係法令を参酌しても,ある特定の自然環境を保全する利益を個々人の個別的な利益として法的に保護する趣旨,目的を含むものと解することはできないから,第2原告らが本件許可処分の取消しを求める原告適格を有しないことは明らかである。 - 201 -イ航空法39条1項2号の「他人の利益を著しく害することとならない」との規定は,主として,航空法に基づく制限表面等による私権制限の対象となる私人の財産権に対し配慮すべきことを定めたものであって,第2原告らが主張するような自然環境に関する利益を個々人の個別的利益としても保護する趣旨の規定と解することはできない。そして,航空法の他の規定をみても,同法が第2原告らが主張するような自然環境に関する利益に対する侵害の防止を図ることを目的とすることをうかがわせるような規定は存在しない。そうすると,航空法 きない。そして,航空法の他の規定をみても,同法が第2原告らが主張するような自然環境に関する利益に対する侵害の防止を図ることを目的とすることをうかがわせるような規定は存在しない。そうすると,航空法の公共用飛行場の設置に関する規制が第2原告らが主張するような自然環境に関する利益を個々人の個別的な利益として法的に保障する趣旨,目的を含むと解する根拠は同法には見当たらないというほかない。 ウ評価法は,33条の規定(いわゆる横断条項)によって,人の健康又は生活環境に係る被害が生じることや,広く公共のために確保されることが不可欠な自然の恵沢が確保されないことといった支障の生ずるおそれがないようにし,また,その手続規定を通じて,地域住民に限らず,広い範囲にわたって環境情報を収集することを趣旨,目的としているということはできる。 しかし,このうち,広く公共のために自然の恵沢を確保したり,あるいは,地域住民に限らず広い範囲にわたって環境情報を収集したりするといったことは,一般公益の確保を趣旨,目的とすることが明らかであって,個々人の個別的利益を保護することを趣旨,目的とするものということはできない。人の健康に係る被害という支障の生ずるおそれがないようにするという趣旨,目的を斟酌することで原告適格を基礎付ける余地はあるが,第2原告らは,そのような主張をするものでもない。評価法の諸規定をみても,評価法は,飛行場の設置許可に際し,横断条項や,その手続規定を通じて,第2原告らが主張するような自然環境に関- 202 -する利益を,公益にとどまらず,個別具体的な利益として法的に保護すべきとする趣旨及び目的までをも含むものでないことは明らかである。 そうすると,評価法の趣旨及び目的を参酌したとしても,航空法が第2原告らの主張するような自然環境に関する利 的な利益として法的に保護すべきとする趣旨及び目的までをも含むものでないことは明らかである。 そうすると,評価法の趣旨及び目的を参酌したとしても,航空法が第2原告らの主張するような自然環境に関する利益を個々人の個別的利益として保護しているということはできない。 エ評価法は,平成5年に制定,施行された環境基本法において,国の環境配慮義務(19条)とともに,環境影響評価について規定され,国はその推進のため,必要な措置を講じること(20条)とされていたことなどを受けたものである。この点,環境基本法は,環境の恵沢の享受と継承等(3条),環境への負担の少ない持続的発展が可能な社会の構築等(4条)及び国際的協調による地球環境保全の積極的推進(5条)という三つの基本理念を掲げ,これらを達成するため,国(6条),地方公共団体(7条),事業者(8条),国民(9条)の責務等を定めている。こうした環境基本法をみても,第2原告らが主張するような自然環境に関する利益が公益を超えて法的に保護されていると解し得る規定は見当たらない。 オ自然環境は,一般的にはこれを保護することに価値があるとしても,具体的な場面においては,個々人の自然環境に対する考え方や利害の内容,程度は多種多様であり,自然環境の保全の必要性,保護の程度,保護の態様等を決するには,関係する多数の者の利害や意見の調整を要するものである。ある個人が最も望ましいと考える自然環境を他の者は必ずしも最適とは考えず,また,ある自然環境の保護行為が利害関係人の財産権,活動の自由,開発利益の享受等を制約するといった事態が生じ得るのであって,自然環境に対する侵害の有無をめぐる問題は,利害や意見の調整が広範かつ複雑なものである。 また,自然環境に関する利益を享受する立場にあるという地位を想定- といった事態が生じ得るのであって,自然環境に対する侵害の有無をめぐる問題は,利害や意見の調整が広範かつ複雑なものである。 また,自然環境に関する利益を享受する立場にあるという地位を想定- 203 -しても,これは国民が広く有する極めて一般的な立場にすぎないというべきであり,直ちに,そのような利益を個々人の個別的な利益と解することはできない。 したがって,第2原告らが侵害されると主張する利益の内容,性質,態様及び程度を勘案するとしても,第2原告らの主張するような自然環境に関する利益が,個々人の個別的利益として保護されているということはできない。 (2) 以上からすると,航空法及び評価法は,飛行場の設置許可に関する規定を通じて,第2原告らが主張するような自然環境に関する利益を個々人の個別的な利益として法的に保護すべきとする趣旨及び目的を含むものと解することはできず,第2原告らが主張する利益は,専ら一般的公益の中に吸収解消されるにとどまるものというべきである。 よって,第2原告らが主張するような自然環境に関する利益は,法律上保護された利益に該当しないから,第2原告らは,本件許可処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」に該当しないというべきである。 (3) 第2原告らは,第1原告らの一部が,第2原告らを受益者とし,147共有地の共有持分を自ら受託者として管理する旨の本件自己信託をしたから,第2原告らは本件自己信託の受益者として「法律上の利益を有する者」(行政事件訴訟法9条1項)に該当するなどと主張している。 しかし,本件自己信託は,被告が本件答弁書において第2原告らに原告適格がないことを主張した後に施行された信託法3条3号で自己信託が認められたことから,平成21年5月18日付けで成立したものであるところ し,本件自己信託は,被告が本件答弁書において第2原告らに原告適格がないことを主張した後に施行された信託法3条3号で自己信託が認められたことから,平成21年5月18日付けで成立したものであるところ,本件自己信託の目的が,第2原告らが従前から本件訴訟において主張していた利益と同様のものであることに加え,本件訴訟の訴訟物と同じ本件許可処分が取り消されたときが信託の終了事由とされていることからすると,本件自己信託は,本件訴訟と強く関連付けられた信託行為であり,- 204 -第1原告らが第2原告らと共同して本件訴訟を追行している中で,本件自己信託をする実質的な必要性が見いだせない上,土地収用の補償金が本件自己信託の受託者に帰属するとされているなど本件自己信託の受益者が具体的な利益を得られるようにされておらず,また,対抗要件としての信託の登記をした形跡さえない。これらの事情を考慮すれば,本件自己信託は,本来原告適格のない第2原告らに受益権を形式的に付与することによって原告適格に関する主張を補充することを目的としたいわば便法であると認められるのであって,訴訟信託を禁止した信託法10条が典型的に想定した場面ではないにせよ,本来,原告として実体審理を受けられる立場にない者について,その地位を付与することを意図した信託という意味で,同条の趣旨に照らして無効であるというべきである。 また,本件自己信託が有効であるとしても,本件自己信託により,本件自己信託の受託者である第1原告らは,受益者である第2原告らに対し,本件自己信託の目的に反して147共有地の区画・形質の変更を行わないという債務及びこの目的に反して147共有地の持分を受益者たる第2原告ら以外の第三者に譲渡,貸与しないという債務を負い(原告らが主張するような,第2原告らが対価なく147共有地 形質の変更を行わないという債務及びこの目的に反して147共有地の持分を受益者たる第2原告ら以外の第三者に譲渡,貸与しないという債務を負い(原告らが主張するような,第2原告らが対価なく147共有地を使用できるという受益権は生じない。),第2原告らは,受託者たる第1原告らに対し,同じ内容の請求権を有することになる。しかし,その権利は,あくまでも,受託者に対する債権であって,ある特定の自然環境を保全する利益,あるいは自然環境に関する利益を享受する立場にあるという地位といったものは個々人の個別的利益とはいい難い上,航空法及びその関連法令がそうした利益を個々人の個別的な利益として法的に保護する趣旨,目的を含むものと解することができないことに照らしても,これが航空法その他の関係法令により保護された利益であるということはできず,第2原告らが行政事件訴訟法9条1項の法律上保護された利益を有するということはできない。 - 205 -(第2原告ら)(1)ア法令の規定から,その規定の趣旨がある利益を「一般的公益」として保護する趣旨なのか個々人の「個別的利益」としても保護する趣旨なのかを読み取ることは,一般的に非常に困難であり,このことは,裁判所の判断の安定性を損ない,あるいはその客観性に対する国民の信頼を損なうものといえる。行政事件訴訟法9条1項の「法律上の利益を有する者」の解釈として,原告の主張する利益を「一般的公益」と「個別的利益」に概念上区分し,処分の根拠法令や関連法令がどちらの意味で原告の利益を把握しているかということを各法令ごとに解明するという方法論(以下「公益・私益区別論」という。)は,判断基準としての安定性を欠いている。 また,今日においては,「国民相互間の多様な利益の調整」の機能を果たすことが行政の るという方法論(以下「公益・私益区別論」という。)は,判断基準としての安定性を欠いている。 また,今日においては,「国民相互間の多様な利益の調整」の機能を果たすことが行政の一大領域として非常に重要になってきており,それに対応して行政の活動領域は広範化かつ複雑多様化した。そのため,その特徴を「公益の実現」の一言で把握することはほとんど不可能であり,公益・私益を殊更に区別することで行政処分のチェックの在り方の決定的な違いを導き出すことに合理性を見いだすことは困難になっている。 むしろ,根拠法令ないし関連法令によって処分に際して考慮されるべき利益であることを把握することが可能である限り,処分の名宛て人の利益のみならず,処分に際して考慮されるべき第三者の利益についても,それが適切に保護されているか否かにつきチェックするシステムが確保されるべきであり,この観点から第三者の原告適格は広く認められるべきである。 イそもそも平成16年の行政事件訴訟法改正は,国民の利益調整が複雑多様化している現代行政にふさわしい行政事件訴訟制度とするための見直しの考え方として,法律の形式・規定振りや行政実務の運用等にとらわ- 206 -れずに法律の趣旨・目的や処分において考慮されるべき利益の内容・性質等を考慮するなど,原告適格が実質的に広く認められるために必要な考慮事項を規定するものとしている。そして,原告適格の拡大に関して,改正行政事件訴訟法9条2項は,同条1項の原告適格の規定における「法律上の利益」の解釈の際の配慮事項を定める形式で,原告適格が認められる範囲を拡張した。 そして,同条2項には,個別保護要件を原告適格判断の不可欠の前提とはしないことを明らかにするために,「根拠となる法令の規定の文言のみによ で,原告適格が認められる範囲を拡張した。 そして,同条2項には,個別保護要件を原告適格判断の不可欠の前提とはしないことを明らかにするために,「根拠となる法令の規定の文言のみによることなく」との文言が挿入された。行政事件訴訟法改正前と同様に個別的利益があれば当然に原告適格があるが,改正前と異なり個別的利益がないから原告適格がないということにはならないのである。要するに,たとえ規定の文言からはその利益が保護されていることが明らかではない場合でも,規定の文言だけでなくその利益の実質を見ながら原告適格を判断していくべきであり,そういう意味で,改正行政事件訴訟法9条2項の下では個別的利益という概念は重要ではなくなっている。 さらに,同項の規定は,原告適格の範囲の絞込みに個別保護要件の観念を使うことを前提とはしていないのであり,したがって,個別保護要件を理由に原告適格の範囲を絞り込むことは,立法趣旨に反することになる。改正行政事件訴訟法下においては,もはや公益・私益区別論を主張する意味はない。 (2) 後記4において詳しく主張するとおり,環境基本法,生物の多様性に関する条約,絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律,評価法及び新・生物多様性国家戦略との整合性の観点から,航空法39条1項2号の「他人の利益」には,原告らの環境的利益,特にコキクガシラやアオサンゴのような貴重な野生生物を生存させていくという生物多様性を確保することによる利益が含まれる。 - 207 -(3)ア(ア) 評価法は「事業に係る環境の保全について適正な配慮がなされることを確保し,もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に資すること」を目的とし(1条),この目的を達成するため「対象事業に係る免許等を行う者は,当該免許 保全について適正な配慮がなされることを確保し,もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に資すること」を目的とし(1条),この目的を達成するため「対象事業に係る免許等を行う者は,当該免許等の審査に際し,評価書の記載事項及び第24条の書面に基づいて,当該対象事業につき,環境の保全についての適正な配慮がなされるものであるかどうかを審査しなければなら」ず(33条1項),たとえ免許等の要件を規定する法の要件を満たしている場合であっても,環境の保全についての適正な配慮(以下「環境配慮」という。)がされていないと認められる場合には,当該免許等を拒否する処分を行い,又は当該免許等に必要な条件を付することができると規定されている(同条2項1号)。対象事業の免許等の要件は事業者が満たすべきものであるから,評価法は,上記審査によって事業者がその負担において環境配慮を行うことを要求していることになる。 環境配慮は,「現在及び将来の国民の健康で文化的な生活」という利益を保護するために必要となるものである(評価法1条)。ここにいう「現在及び将来の国民の健康で文化的な生活」という利益を具体化するに当たっては,評価法が環境基本法20条を受けて制定されたものであり,評価法は環境基本法の下に位置するのであるから,法体系上,環境基本法の趣旨を反映することが必要となる。 そして,環境基本法3条は「環境の保全は,環境を健全で恵み豊かなものとして維持することが人間の健康で文化的な生活に欠くことのできないものであること及び生態系が微妙な均衡を保つことによって成り立っており,人類の存続の基盤である限りある環境が,人間の活動による環境への負荷によって損なわれるおそれが生じてきていることにかんがみ,現在及び将来の世代の人間が健全で恵み豊- 208 -かな環境の恵沢 り,人類の存続の基盤である限りある環境が,人間の活動による環境への負荷によって損なわれるおそれが生じてきていることにかんがみ,現在及び将来の世代の人間が健全で恵み豊- 208 -かな環境の恵沢を享受するとともに人類の存続の基盤である環境が将来にわたって維持されるように適切に行われなければならない」と規定している。同条の規定する「人間」とは個体としての「ヒト」を意味し,「人類」とは「ヒト」という種全体の集団を意味する。また,「健全で恵み豊かな環境」とは自然と触れて得られる人間性の回復や保健休養としての効用等の恵沢が豊かに存在している状態の環境をいい,「環境の恵沢」とは人間に対して環境が与える有形,無形の福利を意味する。 以上より,「現在及び将来の国民の健康で文化的な生活」の内容には「ヒトという種全体の存続」という極めて抽象的な利益の他に,「個体としてのヒトが,自然と触れて得られる人間性の回復や保健休養としての効用等の人間に対して環境が与える有形,無形の福利を享受すること」という具体的な利益が含まれることになり,評価法は,環境配慮を確保することによりこのような利益を保護しようとしていることになる。 (イ) 対象事業に係る免許等を行う者が行う環境配慮がされているか否かの審査(以下「環境配慮審査」という。)は,評価書の記載に基づいてされるのであるが(評価法33条1項),評価法は,環境配慮の実現については事業者による事業のセルフコントロールを基礎としており,評価書はそのような事業者によるセルフコントロールの成果物である。そして,評価書に対する外部意見の反映につき,環境影響評価における意見提出手続は,地域の環境情報を収集することが主たる目的となるとされてはいるが,他方で,意見には環境の保全上の理由を述べた上で反対あるいは賛成 書に対する外部意見の反映につき,環境影響評価における意見提出手続は,地域の環境情報を収集することが主たる目的となるとされてはいるが,他方で,意見には環境の保全上の理由を述べた上で反対あるいは賛成の意を表する意見も想定されており,準備書の記載事項を周知させるための説明会(評価法17条1項)が実質的に意見交換の場として機能することは十- 209 -分に想定され得るところであるし,評価法60条は条例により公聴会等を開催することをも想定していると解されることからすれば,評価法は,外部意見については,単なる情報収集にとどまらず,意見提出者の事業に対する賛否,変更等の意見を評価書に反映させることまで想定していると解される。 評価法は,環境配慮の実現のためには,事業者による事業のセルフコントロールを基礎としつつも,その成果物たる評価書を媒介として外部の意見提出者を対象事業に係る免許等の審査に関与させることにより,意見提出者の意思を対象事業の免許等の審査に反映させるという構造を採っている。 (ウ) 方法書については環境の保全の見地からの意見を有する者(以下「有意見者」という。)が意見を述べることができ(評価法8条1項。以下,この意見を「8条意見」という。),対象事業に係る環境影響を受ける範囲であると認められる地域を管轄する都道府県知事も意見を述べることになるが(評価法10条1項。以下,この意見を「10条意見」という。),10条意見は,8条意見の送付を受けた上で出される市町村長の意見(評価法9条)を勘案するとともに,8条意見の概要に配意することとされている(評価法10条3項)。また,事業者が環境影響評価を実施するに当たっては,10条意見を勘案するとともに,8条意見に配意して,対象事業に係る環境影響評価の項目並びに調査,予測及び評 ることとされている(評価法10条3項)。また,事業者が環境影響評価を実施するに当たっては,10条意見を勘案するとともに,8条意見に配意して,対象事業に係る環境影響評価の項目並びに調査,予測及び評価の手法を選定する(評価法11条1項)。そして,準備書については有意見者が意見を述べることができ(評価法18条1項。以下,この意見を「18条意見」という。),関係都道府県知事も意見を述べることとなるが(評価法20条1項。以下,この意見を「20条意見」という。),20条意見は,18条意見の送付を受けた上で出される市- 210 -町村長の意見(評価法19条)を勘案するとともに,18条意見の概要及び18条意見についての事業者の見解に配意することとされている(評価法20条2項)。さらに,事業者が評価書を作成するに当たっては,20条意見を勘案するとともに,18条意見に配意することとなる(評価法21条)。なお,評価書に対しては,環境大臣が意見を述べることができ(評価法23条。以下,この意見を「23条意見」という。),免許等を行う者等も23条意見を勘案した上で意見を述べることができ(評価法24条。以下,この意見を「24条意見」という。),事業者は24条意見を勘案して評価書を補正することとなる(評価法25条)。 以上のように,評価書の作成過程において事業者が直接に考慮する意見は有意見者の意見と都道府県知事の意見であり,市町村長の意見及び環境大臣の意見は事業者が間接的に考慮するにすぎず,また,免許等を行う者等の意見は評価書を補正する際に勘案されるものである。しかも,都道府県知事の意見は,有意見者の意見の送付を受けた上で出される市町村長の意見を勘案するとともに,有意見者の意見の概要に配意して出されるものである。よって,評価書作成過程において,有意見者 しかも,都道府県知事の意見は,有意見者の意見の送付を受けた上で出される市町村長の意見を勘案するとともに,有意見者の意見の概要に配意して出されるものである。よって,評価書作成過程において,有意見者の意見は,他の意見と比較しても,最重要視されているといえる。なお,事業者が意見を考慮する際,有意見者の意見には配意し,都道府県知事や免許等を行う者等の意見については勘案するとして「配意」と「勘案」が使い分けられているが,これは行政主体から提出される意見は,それぞれの行政分野において責任を有する立場から述べられるものであり,意見を受ける側において十分慎重に受け止め,事業計画に反映することを検討する必要があるものであるのに対し,国民一般の意見は,様々な立場からの多様な方向性を持った幅広いものであることから,意見を受- 211 -け取る側は,それぞれに意を配りつつ,その中から有用な環境情報を事業計画に反映させていくなどの対応を採ることとなるという,意見を受け取る側の受け止め方の違いから,それぞれの取扱いについて適切な用語を当てはめたものである。これは,すなわち有意見者の意見は賛否両方向にわたり様々であってその全てを反映することは性質上困難であることに配慮したものであって,有意見者の意見を都道府県知事や免許等を行う者等の意見と比較して軽視する趣旨を含むものではない。 このように,評価法は,免許等の審査において有意見者の意見を事業に対する賛成,反対,その他提案事項等も含め尊重すべきことを要求していると解されるのであるから,これらの者の利益が害されないようにすることは,評価法の要請である。 (エ) 評価法7条は方法書の公告,縦覧について,評価法16条は準備書の公告,縦覧について規定する。方法書の公告は,環境影響評価の項目並びに調 ようにすることは,評価法の要請である。 (エ) 評価法7条は方法書の公告,縦覧について,評価法16条は準備書の公告,縦覧について規定する。方法書の公告は,環境影響評価の項目並びに調査,予測及び評価の手法について環境の保全の見地からの意見を求めるためにされるものであり,公告事項としては,方法書の縦覧の場所,期間及び時間,方法書について環境の保全の見地からの意見を書面により提出することができる旨等が挙げられている(環境影響評価法施行規則3条5号,6号)。そして,公告の方法については,官報への掲載,地方公共団体の広報誌への掲載,日刊新聞紙への掲載という方法が定められており(同規則1条),公告内容の伝達対象を地域的に限定することは予定されていない。準備書の公告は「準備書に係る環境影響評価の結果について環境の保全の見地からの意見を求めるため」にされるものであり,公告事項としては,準備書の縦覧の場所,期間及び時間,準備書について環境の保全の見地からの意見を書面により提出することができる旨等が挙げられている(同- 212 -規則7条1項5号,6号)。そして,公告の方法は方法書の場合と同様であり(同規則5条),公告内容の伝達対象を地域的に限定することは予定されていない。準備書及び方法書が縦覧に供されるのは対象事業に係る環境影響を受ける範囲であると認められる地域ないし関係地域内においてであるが(評価法16条,15条,7条,6条1項),上記公告は,その方法及び内容からすれば,同地域外の者に対しても縦覧の機会を与えるという趣旨を含むと解されるから,評価法が方法書及び準備書を縦覧しこれに対して意見を述べることを期待する者の範囲については,地域的限定を予定していないというべきである。他方,評価法8条1項は,方法書についての有意見者に限り から,評価法が方法書及び準備書を縦覧しこれに対して意見を述べることを期待する者の範囲については,地域的限定を予定していないというべきである。他方,評価法8条1項は,方法書についての有意見者に限り,方法書に対する意見を述べることを認めている。8条意見はあくまで「環境の保全の見地からの意見」であり,事業に対する単なる反対あるいは賛成とのみ記した意見は事業者及び都道府県知事が配慮すべき対象とはならないとされる。また評価法18条1項は準備書についての有意見者に限り,準備書に対する意見を述べることを認めており,18条意見の意義も8条意見と同様に解釈される。 以上により,評価法が法的保護を与えることを想定するのは,全国民のうち,居住地域は問わないが,方法書あるいは準備書に対して環境の保全の見地からの意見を有する者(有意見者)であるということになる。 (オ) 以上によれば,「個体としてのヒトが,自然と触れて得られる人間性の回復や保健休養としての効用等の人間に対して環境が与える有形,無形の福利を享受する」という利益を有する者のうち有意見者に当たるものが行政事件訴訟法9条1項にいう「法律上の利益を有する者」に該当すると解される。 イ本件許可処分により影響を受ける自然は広範にわたるが,その代表的- 213 -なものとしてα3サンゴ礁や本件空港予定地及びその周辺の洞窟群(α7地域洞窟群。)等が挙げられる。よって,これらと触れることにより人間性の回復や保健休養としての効用等を享受し,あるいはこれを享受する蓋然性があった者は,「個体としてのヒトが,自然と触れて得られる人間性の回復や保健休養としての効用等の人間に対して環境が与える有形,無形の福利を享受する」という利益を具体的に有する者といえる。 よって,これらの者のうち,現在,本件許 ヒトが,自然と触れて得られる人間性の回復や保健休養としての効用等の人間に対して環境が与える有形,無形の福利を享受する」という利益を具体的に有する者といえる。 よって,これらの者のうち,現在,本件許可処分がα3サンゴ礁やα7地域洞窟群等の自然に与え得る影響について環境の保全の見地からの意見を有している者は,評価法所定の有意見者に該当するといえる。 したがって,α3サンゴ礁やα7地域洞窟群等,本件許可処分により影響を受ける自然と触れ合い,あるいは触れ合う蓋然性があった者のうち,現在,本件許可処分がα3サンゴ礁やα7地域洞窟群等の自然に与え得る影響について環境の保全の見地からの意見を有している者は,本件訴訟の原告適格を有するというべきである。 ウ第2原告らは,α3トラスト運動に積極的に関わり,かつ,昭和58年に発足しα3サンゴ礁やα7地域洞窟群等の自然保護活動を行ってきたP33会の会員である。第2原告らは,評価法上の環境保全利益を有する者であって,有意見者に該当する。本件許可処分によりα3サンゴ礁やα7地域洞窟群等の自然に悪影響が及んだ場合,第2原告らの利益侵害の程度は著しい。 (4)アさらに,第2原告らは,本件自己信託の受益者である。 イ本件自己信託の効果として,委託者兼受託者は,本件自己信託の目的を達成するため147共有地の区画・形質の変更等に関する制限を受け,受益者である第2原告らに対してこの制限に反しない利用・処分を行なう義務を負い(信託法29条),また,受益者の利益に反する行為の制限も受ける(同法32条)。一方,受益者たる第2原告らは,委託者兼- 214 -受託者に対して,委託者兼受託者が目的に反する147共有地の利用・処分をしないよう監督する権利を持つ(同法2条6項,7項)。また,受益者は,受託者が信託行為 る第2原告らは,委託者兼- 214 -受託者に対して,委託者兼受託者が目的に反する147共有地の利用・処分をしないよう監督する権利を持つ(同法2条6項,7項)。また,受益者は,受託者が信託行為に違反する行為をするおそれがあり,かつ,信託財産に著しい損害を生ずるおそれがある場合,受託者に対してその行為の差止めの請求もできる(同法44条1項)。 このように,受益者は,委託者兼受託者の147共有地の処分権行使について密接な関係を有し,147共有地の所有権は委託者兼受託者にあるものの,むしろ,自己信託関係の設定によって受益者こそが147共有地の利用・処分に直接的な利害関係を持つ者となったと評価することができる。第2原告らは,本件自己信託がされたことによって,所有者(共有者)の使用処分権を制限し,その限度で消極的に147共有地の使用権を得たといえるのであるから,所有者(共有者)の権利と同等か又はそれ以上といってよいくらいに本件空港の敷地に対して密接な利害関係を持つ立場となったといえる。そして,第2原告らの受益権は,対価なく土地を使用できる権利という点で使用貸借による権利(航空法施行規則80第2項)に類似するものであるから,第2原告らは「土地に関する権利を有する者」(同項)に該当することが明らかである。 ウ以上のことから,第2原告らも航空法39条2項の「利害関係を有する者」に該当するのであり,法律上の利益を有する者(行政事件訴訟法9条)として本件処分の原告適格が認められる。 2 争点(2)ア(航空法38条2項及び3項並びに航空法施行規則78条1項及び76条1項4号の要件充足の有無)について(被告)(1) 本件許可処分は,航空法38条の申請書の提出,同条3項の告示等,同法39条2項の公聴会の開催,同法40条の告示等の手続を 78条1項及び76条1項4号の要件充足の有無)について(被告)(1) 本件許可処分は,航空法38条の申請書の提出,同条3項の告示等,同法39条2項の公聴会の開催,同法40条の告示等の手続を経て行われたもので,同法の定める手続的要件を充足している。 - 215 -(2) 原告らは,所有者の氏名及び住所の告示及び現地における掲示(航空法38条3項,航空法施行規則78条1項,76条1項4号)において,処分行政庁が本件共有地については共有者のうち1名の氏名及び住所しか示さなかったことが航空法38条3項に違反するという。 しかし,同項に規定する告示及び掲示は,飛行場の設置に関して利害関係を有する者に対し,飛行場の設置の申請があった旨を知らせ,公聴会において意見を述べる機会を得させるためのものであるところ,本件においては,一部の共有者の氏名及び住所を省略したという事実はあるものの,当該氏名を省略された共有者は,「P33会が中心となって再びα4岳陸上案予定地の土地を取得,空港建設のためには同土地を売却しないという」,「α3トラスト運動に参加している共有地主」であり,P33会等は,公聴会の前に記者会見を行い,公聴会の日時・場所を認識した上で公聴会不参加(ボイコット)を表明していることから(乙32),公聴会において意見を述べる機会が与えられたのに,これを放棄したことが明らかである。したがって,α3トラスト運動に参加している共有者について,氏名及び住所の記載を省略したとしても,公聴会において意見を述べる機会を与えるという航空法38条3項の趣旨は損なわれていないのであるから,その手続に違法は認められないというべきである。 (原告ら)(1) 航空法38条2項及び航空法施行規則76条1項4号によれば,飛行場の設置許可の申請者は,飛行 旨は損なわれていないのであるから,その手続に違法は認められないというべきである。 (原告ら)(1) 航空法38条2項及び航空法施行規則76条1項4号によれば,飛行場の設置許可の申請者は,飛行場予定地又は予定水面及びそれらの所有者の氏名及び住所を記載した申請書を処分行政庁に提出しなければならない。 申請書における飛行場予定地等の所有者の氏名及び住所の記載は,航空法39条2項で定められている公聴会で公述の申出をした者が当該区域内に私法上の権利を有しているか否かを処分行政庁が確認する(公述人の選定をする場合等)には不可欠なものであり,この記載は,公聴会において意- 216 -見を述べる機会を与えるという手続保障と密接に関連したものである。 しかるに,県は,平成17年9月12日,本件申請を処分行政庁にした際,本件空港の事業用地の譲渡で地権者から同意が得られていない本件共有地について,1名分を除き,所有者の氏名及び住所を本件申請書に記載しなかった。他方,同空港の事業用地の譲渡で地権者から同意が得られた他の土地については,共有者が4名より多い場合でも,共有者全員の氏名及び住所が本件申請書に記載されている。 そうすると,同意をしなかった土地の共有者に対する取扱いは,手続保障の欠落である上,明らかに差別的であるから,航空法上の重大な瑕疵であるというべきである。そして,処分行政庁は,本件申請書の記載が航空法38条2項及び航空法施行規則76条1項4号に違反した違法なものであり,かつ,その違法の程度が重大である。これを看過した本件許可処分は,航空法38条2項及び航空法施行規則76条1項4号に照らし,違法である。 (2) 航空法38条3項並びに航空法施行規則78条1項及び76条1項4号によれば,飛行場の設置許可の申請者は,飛行場の設置の許可の 8条2項及び航空法施行規則76条1項4号に照らし,違法である。 (2) 航空法38条3項並びに航空法施行規則78条1項及び76条1項4号によれば,飛行場の設置許可の申請者は,飛行場の設置の許可の申請があった場合において,飛行場予定地又は予定水面及びそれらの所有者の氏名及び住所を告示し,かつ現地において掲示しなければならない。「飛行場予定地等の所有者の氏名及び住所」の告示及び掲示は,飛行場の設置に関して利害関係を有する者に対し,飛行場の設置を知らせ,自らの土地が飛行場の区域内に存しているかどうかを確認させ,もって,公聴会において意見を述べる機会を与えるという手続保障の観点から要求されているものである(甲18)。 しかるに,県は,本件申請があった際,本件空港の事業用地の譲渡で地権者から同意が得られていない本件共有地について,1名分を除き,所有者の氏名及び住所を告示し,現地で掲示することを怠った(甲9)。他方,- 217 -本件空港の事業用地の譲渡で地権者から同意が得られた他の土地については,共有者が4名より多い場合でも,共有者全員の氏名及び住所を省略することはなかった。このことは,共有者全員の氏名及び住所を告示及び掲示することが手続保障の観点から不可欠なものであり,航空法38条3項並びに航空法施行規則78条1項及び76条1項4号により当然要求されていることの証左である。 そうすると,同意をしなかった土地の共有者に対する取扱いは,手続保障の欠落である上,明らかに差別的であるから,航空法上の重大な瑕疵であるというべきである。そして,処分行政庁は,告示及び掲示の懈怠が航空法38条3項並びに航空法施行規則78条1項及び76条1項4号に違反した違法なものであり,かつ,その違法の程度が重大であったにもかかわらず,これを看過して,本件許可処 庁は,告示及び掲示の懈怠が航空法38条3項並びに航空法施行規則78条1項及び76条1項4号に違反した違法なものであり,かつ,その違法の程度が重大であったにもかかわらず,これを看過して,本件許可処分をした。このような本件許可処分は,航空法38条3項並びに航空法施行規則78条1項及び76条1項4号に照らし,違法である。 (3) 確かに,P33会を含む5団体が平成17年11月7日に公聴会ボイコットを表明している。しかし,α3トラスト運動に参加している共有地主全員がこれらの5団体のいずれかに属しているわけではないから,α3トラスト運動に参加している共有地主の中にはボイコットとは無関係である者も少なからず存在する。また,航空法38条2項及び3項は個人に対し手続保障をする趣旨であるから,手続保障の放棄を理由に住所・氏名の記載を省略するのであれば,個人名を掲げてボイコットの意思を表明した者でなければならない。仮に,団体名義でのボイコットを理由とする省略を認めるとしても,少なくとも極めて強固に意思統一されている団体であって,団体名で表明した意思を全構成員個人の意思と同視してよい場合でなければならないはずであるが,例えば,上記5団体の構成員の多くが団体名で表明したボイコットの意思を知ったのは公聴会終了後に発行されたP- 218 -33会の会報によってであったことなどからすれば,上記5団体が強固に意思統一されている団体であるとは到底いえないし,被告がその点を根拠をもって認定した旨主張立証しているわけでもない。そして,県がα3トラスト運動のメンバーに対して,公聴会への参加を放棄する意思があるか否かについて個別に確認した事実も存在しないから,個人に対する手続保障を省略する根拠に欠けていたことは明らかである。 3 争点(2)イ(1号要件のうちの4号 ,公聴会への参加を放棄する意思があるか否かについて個別に確認した事実も存在しないから,個人に対する手続保障を省略する根拠に欠けていたことは明らかである。 3 争点(2)イ(1号要件のうちの4号基準の充足の有無)について(被告)(1) 航空法39条1項1号は,「当該飛行場・・・の位置,構造等の設置の計画が国土交通省令で定める基準に適合するものであること」と規定するところ,これは,飛行場を航空機が安全に離着陸できるものとするためには,処分行政庁の専門的技術的知見に基づく総合的判断が必要であることから,下位の国土交通省令で基準を定め,この基準に適合することを求めるものである。この規定を受けて,航空法施行規則79条1項各号が定められているが,この基準自体も裁量的判断の余地を残すものである。航空法39条1項1号の要件の充足の有無の判断には処分行政庁の専門的技術的な合理的判断に委ねられた部分があり,処分行政庁の行った判断が著しく不合理な場合に限り,違法となると解すべきである(行政事件訴訟法30条)。 (2)ア航空法施行規則79条1項4号は,「陸上飛行場・・・にあっては,滑走路,誘導路及びエプロンがこれらを使用することが予想される航空機の予想される回数の運航に十分耐えるだけの強度を有するものであること。」と規定する。この点について,処分行政庁は,設計基準(乙8)3. 7.3「設計荷重及び設計反復作用回数の決定」に従い,基本施設及びそれに附帯する施設の舗装の設計荷重につき,設計の対象となる舗装上の設計年数(通常10年を標準とする。)にわたる推定交通に基づき,就航対象機材ごとにその区分を決定し,就航対象機材の中で最も厚い舗装を必要- 219 -とする設計荷重区分を選択することとした。 本件申請書(乙3)によれば,本件空港の利用を予定す 交通に基づき,就航対象機材ごとにその区分を決定し,就航対象機材の中で最も厚い舗装を必要- 219 -とする設計荷重区分を選択することとした。 本件申請書(乙3)によれば,本件空港の利用を予定する航空機の種類及び形式についてはB767型旅客機等とされ,滑走路の強度については単車輪荷重31.5t,舗装体の設計強度LA-12とされていること,滑走路及び誘導路についてはアスファルトコンクリート舗装され,エプロンについてはセメントコンクリート舗装されることが認められた。 このLA-12という設計荷重は,本件空港で就航予定の航空機のうち最も厚い舗装を要するB767型機に対応するものである(乙8の3-55頁)。 したがって,処分行政庁は,本件申請書(乙3)によって,本件空港で計画されている滑走路等はこれを使用する航空機の予想される運航回数に十分耐えるだけの強度を有するものであると認め,本件申請は航空法施行規則79条1項4号に適合するものと判断したものであり,その判断は上記規定に適合するもので不合理な点がないことは明らかである。 イ本件空港敷地内の地盤の概況は,滑走路建設長2000mのうち,約2分の1の範囲において琉球石灰岩台地であり,この区域においては調査により洞窟の存在が確認されている(乙35の資料2添付の「図-1. 1.1 計画地周辺の水文地質図」)。そして,県は,深さ20m以内に琉球石灰岩が分布していることを確認していたため,地盤性状を把握するための地質調査で一般的に用いられている電気探査(電流の流れにくさの分布状況から地盤性状を把握するもの。電流が流れにくい空洞などは電流がそれを避けるように流れるのを利用して洞窟の有無,その形状を調べるという調査方法)によって20mの深さまで探査を行い,さらに,空洞が存在する可能性が高い箇所では, 。電流が流れにくい空洞などは電流がそれを避けるように流れるのを利用して洞窟の有無,その形状を調べるという調査方法)によって20mの深さまで探査を行い,さらに,空洞が存在する可能性が高い箇所では,ボーリング孔に小型カメラを挿入して空洞内部を詳細に調べるボアホールカメラ撮影による観測を行い,空洞の位置,形状等を推定している(乙34の資料2添付の- 220 -「図4-1-4 空洞分布概念図」)。その結果,断面1(甲146の1枚目下部の図面でいう解析断面①のこと)においては,重機荷重及び航空機荷重に対して,名蔵れき層を含めた地盤の安全率は1以上となり,安全であることが確認され,断面2(甲146の1枚目下部の図面でいう解析断面②のこと)においても,施工時の重機荷重,盛土荷重及び航空機荷重に対して,応力・変形上問題がないことが確認されている(乙28の2頁)。 また,県は,上記の電気探査等のほか,平成16年7月から,P47協会による洞窟群実態把握,洞窟の測量を行い,その結果,E洞窟については当初の電気探査で推定した位置ではなく,滑走路方向に蛇行しながら発達していること,E洞窟の一部区間において,E洞窟下半に名蔵れき層が出現していることを確認したことを受けて,更なる調査を実施している。すなわち,県は,上記調査結果を踏まえ,名蔵れき層は,琉球石灰岩と比較して弾性係数が小さいため,E洞窟下半が名蔵れき層で構成されていた場合,盛土及び航空機荷重に対し,洞窟の安定性が確保できない可能性があるとして,E洞窟下半が名蔵れき層で構成されていた場合を想定した2次元弾塑性FEM解析(滑走路下に存在する空洞について,空洞調査から得られた空洞の断面図を基に,空洞を構成する琉球石灰岩を細分化し,空港建設のための盛土荷重,工事に使用する建設機械荷重,空港 した2次元弾塑性FEM解析(滑走路下に存在する空洞について,空洞調査から得られた空洞の断面図を基に,空洞を構成する琉球石灰岩を細分化し,空港建設のための盛土荷重,工事に使用する建設機械荷重,空港供用後における航空機荷重が上に載った場合に琉球石灰岩の中に生じる力(応力)をコンピュータープログラムにより算出し,室内試験等から得られた琉球石灰岩の強さと比べる解析のこと)を実施し,洞窟の安定性を確認することとして調査を行い(甲146の1枚目),盛土,建設機械及び航空機による力が琉球石灰岩あるいは名蔵れき層の強さを上回る箇所が発生するか否かを判定した結果,荷重による力よりも琉球石灰岩あるいは名蔵れき層の強さが上回り,荷重の影響による空- 221 -洞崩壊はないものとしている。 したがって,この地盤の上に飛行場を設置すること自体が危険なものであったということはできない。もっとも,飛行場設置のための広大な用地の造成工事においては,滑走路,誘導路,エプロン等に悪影響を与える軟弱地盤等が部分的に存在することは当然ながら想定される。しかし,部分的な補強は,現代における土木技術水準により十分対応することが可能であり,地盤の部分的な箇所の強度に関しては,工事に入った段階で,十分な調査を行い対策を検討することが予定されているものというべきである。飛行場の敷地内は広大である上,設置許可の段階において用地買収が完了していない場合もあり得るから,設置許可の時点までに地盤の部分的な強度の詳細について調査を終えられるものではなく(そのような調査を要求すれば,調査時間,労力,コストは極めて莫大なものとなる。),そもそも航空法もそのようなことを要求していない。本件許可処分は,本件空港設置場所の地盤全体については,特にぜい弱なものであるとはいえないものであ 査時間,労力,コストは極めて莫大なものとなる。),そもそも航空法もそのようなことを要求していない。本件許可処分は,本件空港設置場所の地盤全体については,特にぜい弱なものであるとはいえないものであることを前提として,地盤の個別箇所については,工事を進めていく中で,随時地盤の強度等を十分調査し,個々の地盤の強度に見合う対策を講ずることとしてされたものである。 原告らの問題とする個々の地盤の部分的強度に対する対策は本件許可処分当時の計画なのであって,工事に入った段階における更なる対策を予定しているのであるから,本件許可処分の時点において処分要件が客観的に充足されていないなどという原告らの主張は明らかに失当である。 ウ原告らは,本件空港建設予定地の地下に広がる琉球石灰岩は,さんご礁が隆起しただけで全く圧密を受けていない新しい石灰岩である上,地下水による浸食の結果,相当空洞化しているのであり,たとえ琉球石灰岩の空洞を埋めたとしても,本件空港建設の際の浸透ゾーンの設置によって増量するであろう地下水によって,強度の低い琉球石灰岩は浸食を- 222 -受け,その結果,本件空港建設予定地地下の琉球石灰岩内の空洞が再び発生,拡大し,ついには滑走路予定地を含む本件空港建設予定地が陥没するに至るおそれがあるため,本件空港の滑走路は十分な強度を有していないなどとして,本件許可処分は航空法39条1項1号及び航空法施行規則79条1項4号の要件を満たしていないという。 しかし,本件空港予定地の琉球石灰岩の「浸食」の速さについては,平成17年8月7日の第15回P23委員会において,宮古島を含む石灰岩が雨水により溶出する速度について,専門家の委員から「1000年で1mmよりも早くはないと言える」(乙26)と報告されているところであるから,原告らの上記主張は事実 員会において,宮古島を含む石灰岩が雨水により溶出する速度について,専門家の委員から「1000年で1mmよりも早くはないと言える」(乙26)と報告されているところであるから,原告らの上記主張は事実を誇張したものにすぎず,前提を欠き,理由がないというべきである。 また,処分行政庁は,本件空港敷地内に未発見の洞窟があり得ることを想定し,それでもなお現在の土木技術水準をもって補強等を実施すれば,本件空港の滑走路及び誘導路等について,航空機の想定される運行状況に十分耐え得るだけの強度を確保し得ると判断したのであって,本件空港敷地内に新たな洞窟が発見された場合にも,「設置許可処分当時の計画」に従って本件空港を建設すると判断したものではないから,本件許可処分当時の計画によっては完成時の本件空港滑走路及び誘導路等の地下の地盤が十分な強度を有しているとはいえないなどという原告らの主張は前提を誤るものである。 そもそも,飛行場の設置工事は広大な土地を造成する必要のある事業であることから,飛行場設置に係る計画策定に当たり,処分行政庁は,航空機の安全運航に万全を期する上で必要となる航空路,空域,制限表面及び空港施設計画等の観点で空港の設置場所によって検討すべき事項について,設置の許可申請前の整備計画策定段階及び予算要求段階であらかじめ申請者に対して調整や指導を行っているところである。空港整- 223 -備法9条1項の規定により,地方公共団体が第3種空港を設置する場合,その滑走路等の新設又は空港用地の造成若しくは整備の工事を施行する場合には,その工事に要する費用は被告及び当該地方公共団体がそれぞれその100分の50(県においては,沖縄振興特別措置法及び沖縄振興特別措置法施行令により被告が100分の90)を負担することとされている。このため,当該地 る費用は被告及び当該地方公共団体がそれぞれその100分の50(県においては,沖縄振興特別措置法及び沖縄振興特別措置法施行令により被告が100分の90)を負担することとされている。このため,当該地方公共団体は,事業年度ごとに,補助金等交付申請及び空港工事協議を処分行政庁に対して行い,これを受けて,処分行政庁は,補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律6条の規定に基づき,当該工事計画について,土圧,地盤沈下の可能性等,地盤に係る設計基準を含む空港土木施設設計基準への適合性を審査した上で,交付決定及び空港工事の同意を行うことになっている。本件空港においても,設置許可申請者となる県が,平成14年度に本件空港の整備基本計画(案)を作成するに当たり,国土交通省に対し空港施設計画等の事前調整を実施しており,地盤に関する事項についても,処分行政庁は,赤土等流出防止対策及び施工計画を策定するに当たっての助言,指導を得るため,地盤工学等の専門家をメンバーとするP12委員会(乙27)を設置した旨の報告を受けていた。また,県が国土交通省に本件空港整備の新規事業採択要望を行った平成16年度には,全体の空港整備計画の内容について審査を行い,地下空洞の影響については,P12委員会において重機荷重,盛土荷重及び航空機荷重に対し安定性の検討がされ,いずれの荷重に対しても安定性が確保されていると評価したこと(甲15)について確認を行った。飛行場の設置工事に当たっては,毎年度,こうした手続が行われており,この過程において県は,滑走路や誘導路の舗装強度等を確保するため,地盤特性に係る詳細な検証を行い,必要に応じ構造物の設置に要求される地盤強度の確保のための対策工事を実施しているところである。 さらに,本件空港設置予定地のように地下に空洞が存在する土地の強- 盤特性に係る詳細な検証を行い,必要に応じ構造物の設置に要求される地盤強度の確保のための対策工事を実施しているところである。 さらに,本件空港設置予定地のように地下に空洞が存在する土地の強- 224 -度を確保するための工法として,例えば地下空洞の規模が比較的大きい場合や空洞の形状や浸食状況等から充てん材料による空洞内への充てんが難しい場合には,開削工法により地下空洞部の上部及び不安定な地盤部を掘削除去し,空洞部を全て土砂等で埋め戻し,転圧を行うことにより地盤の所要強度を確保する方法が,また,地下空洞が比較的小さい場合や開削工法が条件により採用できない場合には,空洞外部から,けい砂,セメントミルクやモルタル等の充てん材料を充てんし,地下空洞内部を全て埋めることにより地盤の所要強度を確保する充てん工法がそれぞれ確立されているのであって,原告らの主張は,現代の土木技術の水準を無視したものというほかない。なお,原告らは,飛行場設置許可処分時において滑走路予定地の地盤の強度が不足していることがその瑕疵であるかのような主張をしているが,飛行場設置許可処分時の状態では強度に問題がある地盤であっても,現代における土木技術水準により強度を補強することにより航空法施行規則79条1項4号を満たす滑走路等を構築することが可能ということであれば,同号に違反する瑕疵はないのであって,原告らの上記主張は失当である。 エ原告らは,第10回P12委員会において,本件空港の滑走路の真下に位置することとなるE洞窟の崩落の危険性が指摘されたことから,航空法39条1項1号及び航空法施行規則79条1項4号の要件を客観的に欠くと主張している。 しかし,本件申請書によって,本件空港で計画されている滑走路等は,これを使用する航空機の予想される運行回数に十分耐えるだ 号及び航空法施行規則79条1項4号の要件を客観的に欠くと主張している。 しかし,本件申請書によって,本件空港で計画されている滑走路等は,これを使用する航空機の予想される運行回数に十分耐えるだけの強度を有するものであると認められる。しかも,次のとおり,滑走路の真下に位置することとなる洞窟の対策も講じた上で,滑走路等を構築するのであるから,滑走路等の地盤に関しても問題を認めることはできない。すなわち,第10回P12委員会では,滑走路の真下に位置するE洞窟を- 225 -含めた洞窟の崩壊の危険性の評価を行い,これを踏まえて,問題の認められなかったA1洞窟も対策範囲に含めた最適対策工法が検討され,A1及びE洞窟のうち一部(ゾーン01ないし08)については,アーチ工法が最も適切な構造形式であり,E洞窟の他の部分(ゾーン09ないし12)についてはスラブ工法が最も適切な構造形式であると結論付けられた(甲11)。県は,こうした検討委員会の検討を踏まえて,滑走路の真下に位置する洞窟に存在する危険性を回避する工法によって滑走路を設置するのであって,設置される滑走路等がこれらを使用することが予想される航空機の予想される回数の運航に十分耐えるだけの強度を有するものであることは明らかである。 (3) 原告らは,本件空港滑走路予定地における乱気流発生の可能性を指摘し,本件空港の滑走路が航空機の予想される回数の運航に十分耐えるだけの強度を有するものとはいえず,航空法39条1項1号に違反するという。 しかしながら,そもそも,航空法施行規則79条1項4号は,滑走路舗装体の強度についての基準を規定するものであり,一時的な自然現象である乱気流による風向や風速の影響を審査するものではない。飛行場の設置許可申請時においては,同規則76条2項5号により風向風速図を 舗装体の強度についての基準を規定するものであり,一時的な自然現象である乱気流による風向や風速の影響を審査するものではない。飛行場の設置許可申請時においては,同規則76条2項5号により風向風速図を申請書に添付することが義務付けられているが,これは,飛行場の予想就航率を確認するためのものである。また,この点をおくとしても,県は,平成13年1月上旬から同年4月中旬までの3か月間の「乱気流調査」(乙29)を行ったが,航空機の運航上問題となるような乱気流は見られなかった。 なお,処分行政庁は,設置の許可の申請に当たっては,国際民間航空条約第14附属書(ICAOAnnex14)飛行場第Ⅰ巻飛行場設計及び運用(乙30)において予想就航率は95%以上とすべきとの勧告がされていることを踏まえ,風向と風速に基づく予想就航率を確認しているところであり,本件空港の設置許可の申請に当たっても,予想就航率が95- 226 -%以上であることを確認している。また,乱気流や横風にあおられるような気象条件下においては,飛行場の運用上,航空機の空港への離着陸は行われていない。 (4) 原告らは,本件許可処分が地震により滑走路が水没するおそれがあることを看過した違法なものであると主張している。 しかし,そもそも,航空法施行規則79条1項4号は,滑走路,誘導路及びエプロン舗装体の強度についての基準を規定するものであり,突発的な自然現象である津波による影響について審査するものではないから,原告らの主張は失当である。また,仮に,原告らが指摘する「沖縄県津波・高潮被害想定調査業務委託(宮古・八重山諸島沿岸域)報告書(概要板)」(甲72)で予測された津波高さを基に滑走路設置位置付近の遡上高を読み取り,想定遡上高と計画滑走路高を比較しても(乙43),約0.4m( 想定調査業務委託(宮古・八重山諸島沿岸域)報告書(概要板)」(甲72)で予測された津波高さを基に滑走路設置位置付近の遡上高を読み取り,想定遡上高と計画滑走路高を比較しても(乙43),約0.4m(同No. 12+40地点)から4.6m(同No.19地点)滑走路の方が高い位置にあることから,滑走路が水没することはない。なお,付言すると,そもそも津波が遡上している状況下においては,飛行場の一般的な運用上,航空機の空港への離着陸は行われていないし,本件空港においても同様である。 また,原告らは,航空法施行規則76条1項3号が飛行場の標高を含めた標点の位置を申請書に記載することを義務付けており,この記載には津波により航空機の離着陸に支障が生じることがなく,滑走路を使用することが予想される航空機の予想される回数の運行に十分耐えるだけの強度を滑走路が有していると認められるか否かを確認するという意味もあるなどという。しかし,同号が標高を含む標点の位置を申請書に記載するよう求めているのは,その位置が滑走路位置及び制限表面の基点となるからであって,突発的な自然現象である津波による影響を審査するためにその記載を求めているものではない。 (原告ら)- 227 -(1) 処分行政庁は,次のとおり,本件空港の滑走路直下に洞窟ないし空洞が存在し,それらが崩壊することなどにより本件空港の滑走路が陥没ないし崩壊するおそれがあるのに,そうした滑走路陥没ないし崩壊のおそれを看過して本件許可処分をした。したがって,本件許可処分は,航空法39条1項1号及び航空法施行規則79条1項4号に違反した違法なものである。 ア航空法39条1項1号及び航空法施行規則79条1項4号の文理解釈からすれば,「陸上飛行場の滑走路及び誘導路等が,滑走路及び誘導路を支える地盤に関する 79条1項4号に違反した違法なものである。 ア航空法39条1項1号及び航空法施行規則79条1項4号の文理解釈からすれば,「陸上飛行場の滑走路及び誘導路等が,滑走路及び誘導路を支える地盤に関する点も含め,想定される利用頻度で同飛行場を滑走する航空機の荷重等に十分耐えるだけの強度を有すること」が飛行場設置許可をするための必要条件としての審査基準となっていることは自明の理である。実際,平成20年の航空法施行規則の改正により,「空港等の種類,着陸帯の等級及び滑走路(陸上空港等及び陸上ヘリポートにあっては,基礎地盤を含む。)の強度又は着陸帯の深さ」が申請書記載事項とされ(同規則76条5号),「陸上空港等及び陸上ヘリポートにあっては,滑走路,誘導路及びエプロン(いずれも基礎地盤を含む。第7号及び第85条第1号において同じ。)並びにこれらの強度に影響を及ぼす地下の工作物がこれらを使用することが予想される航空機の予想される回数の運航に十分耐えるだけの強度を有するものであること」(同規則79条4号)が航空法39条1項1号を充足するための要件として明示されることとなったが(甲113,114,115参照),この改正は,従来から基礎地盤等の強度が審査の対象となっていた点を明確化するためのものであると国土交通省自らが説明している(甲116)。 そして,「陸上飛行場の滑走路及び誘導路等が,滑走路及び誘導路を支える地盤に関する点も含め,想定される利用頻度で同飛行場を滑走する航空機の荷重に十分耐えるだけの強度を有すること」という審査基準- 228 -を満たすか否かについては,必然的に当該地盤との関係での飛行場における航空機滑走の頻度,滑走する航空機の荷重,滑走路及び誘導路等の建造物の構造を考慮した上で個別具体的に判断することになり,設置許可処分当時の計 かについては,必然的に当該地盤との関係での飛行場における航空機滑走の頻度,滑走する航空機の荷重,滑走路及び誘導路等の建造物の構造を考慮した上で個別具体的に判断することになり,設置許可処分当時の計画が実現した場合における滑走路及び誘導路等の直下の地盤の客観的強度(補強等がある場合はそれを含めた強度)と飛行場における航空機滑走の頻度,滑走する航空機等の荷重,滑走路及び誘導路等の建造物の構造との相関関係により決せられる。 イ(ア) 平成16年に行われた実測調査において,本件空港の滑走路の地下を横断して西に向かって伸びているとされていたE洞窟が,滑走路の地下をおおむね滑走路に沿って南に向かって延びていることが判明した。これを受け,県は,平成16年12月,処分行政庁に対し,E洞窟の安定性を確保できないリスクがあることを伝えていた。しかし,処分行政庁は,安定性を確保できずにE洞窟が崩壊し,その上にある本件空港の滑走路が陥没するおそれを看過して,本件許可処分をした。 そして,本件許可処分当時,E洞窟には崩壊のおそれがあり,本件空港の滑走路の強度は客観的に不足していた。そうすると,本件許可処分は違法以外の何物でもなく,また,この瑕疵の治癒を認める余地もない。 平成19年7月23日に開催された第10回P12委員会において,E洞窟のうち滑走路の真下付近に位置する断面17E-2及び18E-2の部分については,既に現状(初期段階)から危険な状態にあり,本件空港建設のためにE洞窟のうち断面17E-2及び18E-2の部分の上を重機が通るとE洞窟が崩壊する可能性が生じることが明らかとなった(甲11の12頁)。さらに,盛土をして滑走路を整備し,実際に航空機を運用させた場合,断面17E-2及び18E-2の部分でE洞窟が崩壊する可能性が高いことが明らかになった( じることが明らかとなった(甲11の12頁)。さらに,盛土をして滑走路を整備し,実際に航空機を運用させた場合,断面17E-2及び18E-2の部分でE洞窟が崩壊する可能性が高いことが明らかになった(甲11の- 229 -12頁)。また,同委員会において,E洞窟のうち断面17E-1についても,滑走路建設のために盛土をした段階でE洞窟が崩壊する可能性が生じ,実際に航空機を運用させると,E洞窟が崩壊する可能性が高いことが明らかとなった(甲11の12頁)。さらに,同委員会は,石垣島地方で地震が発生した場合,断面17E-1,17E-2及び18E-1の部分で,E洞窟が崩壊する可能性があることも明らかにした(甲11の14頁)。そして,同委員会は,このE洞窟崩壊が空港機能への影響を与えることを認めた(甲11の11頁)。E洞窟の崩壊は,同委員会が空港機能への影響を与えるとしていることから,その真上にある滑走路の陥没をも当然意味する。 したがって,平成17年12月19日の本件許可処分当時を含めた平成19年7月23日に至るまでの計画が実現した場合の滑走路及び誘導路等の直下の地盤の客観的強度と飛行場における航空機滑走の頻度,滑走する航空機等の荷重,滑走路及び誘導路等の建造物の構造との相関関係から判断すると,本件許可処分当時の計画によっては完成時(計画実現時)の本件空港滑走路及び誘導路等の直下の地盤が十分な強度を有しているとはいえず,したがって,本件空港の滑走路及び誘導路等が航空機の想定される運航状況に十分耐えるだけの強度を欠いていることは明らかである。 そして,県は,同委員会において「空洞の崩壊の可能性がある箇所があることが確認され,・・・空洞崩壊対策工事を行うことにつき了承が得られたことから」,「現在,対策工事を施工するための実施設計を進めている て,県は,同委員会において「空洞の崩壊の可能性がある箇所があることが確認され,・・・空洞崩壊対策工事を行うことにつき了承が得られたことから」,「現在,対策工事を施工するための実施設計を進めているところであり,今後,設計が完了次第,対策工事を実施する予定である」としているのであり(被告準備書面(3)31頁),被告も,第10回P12委員会の内容を踏まえ,空洞の崩壊の可能性がある箇所が確認されたことを認めている(同)。この空洞対策工事- 230 -は決して軽微な補充工事ではないことからすれば,これらのことは,本件空港の設置許可申請者である県が本件許可処分時において航空法39条1項1号及び航空法施行規則79条1項4号の要件が客観的に満たされていなかったことを認め,被告も本件許可処分時においてこの要件が客観的に満たされていなかったことを認めたことになる。行政処分の要件の存否は,行政処分時を基準として判断されるのであるから,同時点において処分要件が客観的に充足されていなければ,行政処分主体の過失の有無にかかわらず,当該行政処分には違法の瑕疵があり,取消事由が存することとなる。そうである以上,本件許可処分に取消事由があることは明らかである。 さらに,本件許可処分後の第10回P12委員会以降,本件許可処分当時のプランニングが変更され,A1洞窟及びE洞窟の一部区間(ゾーン01ないし08)の上にアーチ状の構造物を設置し,E洞窟の一部区間(ゾーン09ないし12)の上に平板状の構造物を設置することとなり(甲11の19ないし23頁),平成22年7月に開催された第5回P48委員会において,更にこのプランニングが変更され,従来の変更に加えてC1洞窟にボックスカルバートを設置し,E洞窟の上流部に耐圧管を設置することとなった(甲220の資料3・1-7ないし た第5回P48委員会において,更にこのプランニングが変更され,従来の変更に加えてC1洞窟にボックスカルバートを設置し,E洞窟の上流部に耐圧管を設置することとなった(甲220の資料3・1-7ないし9頁)。このように複数回にわたるプランニング変更も,本件許可処分当時の計画がずさんであり,根本的な瑕疵を含んでいたことを示すものである。 (イ) 被告は,たとえ崩壊の可能性がある洞窟が滑走路の下に存在するなどの理由により滑走路の強度が不足していたとしても,現代の土木技術の水準に従って事後的に補強をすれば強度に問題がなくなる見込みであり,実際に滑走路の真下に位置することとなるE洞窟の上に構造物を置くという対策も講じた上で滑走路等を構築するのであるから,- 231 -滑走路等の地盤に関しても問題を認めることができず,本件許可処分は航空法39条1項1号及び航空法施行規則79条1項4号には違反しないと主張し,本件許可処分後の平成19年7月23日以降に出された本件空港の滑走路の強度を確保する対策にも言及し,その主張の根拠としている。この被告の主張は,処分行政庁が本件許可処分をした時点において,滑走路の強度が客観的に不足しているという本件許可処分に関する取消事由(瑕疵)が存在するとしても,事後的にその瑕疵が治癒され得るから,本件許可処分の効力には問題がないという趣旨の主張であると思われる。 しかし,本件における滑走路の強度が不足しているという瑕疵は,飛行場における滑走路の重要性に鑑みれば,到底軽微な瑕疵とはいえない。加えて,この瑕疵は,形式的,手続的要件の欠落ではなく,航空法39条1項1号及び航空法施行規則79条4号が定める滑走路の強度という実質的要件の欠落であるから,本件において,瑕疵の治癒を観念する余地はない。また,本件で不備のある 続的要件の欠落ではなく,航空法39条1項1号及び航空法施行規則79条4号が定める滑走路の強度という実質的要件の欠落であるから,本件において,瑕疵の治癒を観念する余地はない。また,本件で不備のある処分に該当するのは,本件許可処分であり,この処分をしたのは処分行政庁である。他方,不備を治癒する予定の機関は県であって処分行政庁ではない。この点からも本件で瑕疵の治癒を認める余地はない。 (ウ) 仮に,E洞窟の上に構造物を置き,本件空港の滑走路の強度を確保する対策が本件許可処分の違法性の判断と関係するとしても,そのような対策ではE洞窟の崩壊を防止することができないから,このような対策は意味がない。 被告の主張するような構造物をE洞窟の上に設置した場合,E洞窟の天板に強い圧力が掛かる上(甲195),E洞窟の乾燥が進む(甲193の3頁)。また,県は,E洞窟の支流に浸透ゾーンⅡの水を流すことにし,E洞窟の吐水口の穴も大きくした(甲200の1ないし- 232 -2頁)。これにより,空気がE洞窟内を流れるので,E洞窟内の乾燥に拍車が掛かる(甲199の3頁)。そのため,琉球石灰岩のはく離現象が進行する(甲193の3ないし4頁,甲199の3頁)。こうしたはく離現象によりE洞窟の天井が崩落し,それに伴い水流が変化したり(甲193の4頁),大雨等で増水したりする等の事態が発生することによってE洞窟の名蔵れき層部分が削られれば,E洞窟は拡がり,構造物の幅を超え,盛土の圧力によってE洞窟が崩壊し,滑走路が陥没する(甲200の1頁,6頁)。また,構造物の基礎が損壊し,構造物自体が崩れ,これによっても滑走路が陥没する(甲196の1頁)。そのため,たとえ被告の主張するような構造物をE洞窟の上に設置したとしても,E洞窟は崩壊し,その上にある本件空港 の基礎が損壊し,構造物自体が崩れ,これによっても滑走路が陥没する(甲196の1頁)。そのため,たとえ被告の主張するような構造物をE洞窟の上に設置したとしても,E洞窟は崩壊し,その上にある本件空港の滑走路は陥没するのである。実際,平成22年7月22日から23日に行われたE洞窟の調査において,E洞窟の乾燥が進み,はく離現象が多発していることが明らかになっており(甲203の1頁,4ないし5頁),こうした陥没のおそれは現実のものとなっている。加えて,本件許可処分後の第10回P12委員会以降,プランニング変更が複数回されていることも,本件許可処分以降に出された対策によれば大丈夫であるという根拠が乏しいことを示している。 ウ浸透ゾーンⅡには周辺の雨水が流れ込む(甲197の3頁)。そして,浸透ゾーンⅡ内の吸い込み穴はA洞窟やB1洞窟につながっており(甲189の4頁,同190の30頁),浸透ゾーンⅡに流れ込んだ水はB1洞窟やA洞窟とつながったA1洞窟にも流れ込む。A1洞窟は本件空港の滑走路の下を走っており,その吐水口は同滑走路の下にあるため,浸透ゾーンⅡに流れ込んだ水は,地下水として本件空港の滑走路の直下に溜まり,そこから粘土を巻き込んで流れることになり,本件空港の滑走路の直下で粘土が削られた分の空間が生じ,結果として同滑走路は陥- 233 -没する(甲200の2頁)。また,増水時には,B1洞窟は海抜26mの高さまで冠水する(甲194の1頁)。そして,B1洞窟は琉球石灰岩でできているところ,琉球石灰岩は透水性が高いため,冠水時にはB1洞窟周辺の土壌に高い水圧を掛けることになる(甲187の2頁,同224の1頁)。その結果,土壌が滑走路を支え切れなくなり,滑走路は崩壊する(甲193の5頁,同194の1頁,同196の18頁,同200の2頁,7 壌に高い水圧を掛けることになる(甲187の2頁,同224の1頁)。その結果,土壌が滑走路を支え切れなくなり,滑走路は崩壊する(甲193の5頁,同194の1頁,同196の18頁,同200の2頁,7頁,同224の1頁)。 このように,浸透ゾーンⅡからの水がA1洞窟を経由して滑走路の直下を流れて土壌を削ったり,B1洞窟が冠水し,水圧が掛かったりするために滑走路が崩壊する危険があるにもかかわらず,処分行政庁は,こうした危険を看過し,本件許可処分をした。 エ本件空港設置に当たり,排水処理にドレーンが三つ使用されている。 しかるに,そのうちの一つは,本件空港付近のケイブシステムを流れる水の出口(吐出口)と重なっており,増水時には大量の水が流れる。そのため,このドレーンに流れる水が周囲に漏れ出し,周辺の土壌を崩す可能性が高い(甲193の3頁)。また,残りの二つのドレーンは盛土内に設置されることになるが,浸透ゾーンIに近いところに設置されているため,ドレーンに土が詰まった場合には,水の力により滑走路が破壊される可能性が高い(同)。 このように,不適切なドレーンの設置により,滑走路が崩壊する危険があるにもかかわらず,処分行政庁はこうした危険性を看過し,本件許可処分をした。 オ(ア) 本件空港の滑走路直下には未知の空洞がある可能性が高く,このような未知の洞窟には,本件空港の設置に伴い,滑走路を整備するための盛土や航空機の着陸による圧力が掛かる。そのため,これらの未知の洞窟は,将来的に崩壊する可能性があり,そうした崩壊は,本件空- 234 -港の滑走路の陥没につながる(証人P20尋問調書32頁)。 また,本件空港の滑走路周辺には,そこに降った雨水のみならず,内陸部の石灰岩ではない地域の雨水も集まり,地下川となって流れ込んでくる(証人P2 滑走路の陥没につながる(証人P20尋問調書32頁)。 また,本件空港の滑走路周辺には,そこに降った雨水のみならず,内陸部の石灰岩ではない地域の雨水も集まり,地下川となって流れ込んでくる(証人P20尋問調書8頁,35頁)。さらに,本件空港建設中,赤土を含んだ雨水等を浸透ゾーンに集めてから地下に集中的に浸透させる計画であるが,この浸透ゾーンは本件空港建設予定地地下の琉球石灰岩の真上にも存在する(乙23の6-1-34ないし36頁,7-13ないし18頁)。その結果,本件空港の滑走路付近の地下川の水量は,浸透ゾーン設置時以前に比べ多くなるのは自明のことである。 そうすると,盛土や航空機の着陸による圧力が直接引き起こす陥没とは別に,琉球石灰岩の中にできた空洞が土壌で埋まっている,又は琉球石灰岩の表面が厚く土壌で覆われているときに,地下水の働きで土壌が流され,土壌中に空洞ができ,その上の土壌が空洞中に崩壊するという形での陥没も本件空港の滑走路下で起こり得,こうした陥没も,本件空港の滑走路の陥没につながる(証人P20尋問調書33頁,甲204,甲205,甲211の2頁)。 しかし,県は,本件事業実施区域のカルスト台地の特徴を全く踏まえないまま,つまり地下川の影響や未知の空洞が存在する可能性を全く考慮しないまま,何らの対策も講じることなく本件申請を行った。 そして,処分行政庁は,現存すると考えられる未知の空洞により滑走路が陥没する危険性を看過し,本件許可処分をした。 (イ) 本件空港の滑走路直下付近には,主要な地下川が3本ないし5本あるが,それ以外に,未知の支流が相当数ある。そして,県は,これらの地下川を把握しておらず,現在の地下空洞探査技術では,小さな流路まで正確な位置を全て把握することは不可能である(甲211の1,2頁)。 - 235 ,未知の支流が相当数ある。そして,県は,これらの地下川を把握しておらず,現在の地下空洞探査技術では,小さな流路まで正確な位置を全て把握することは不可能である(甲211の1,2頁)。 - 235 -そして,これらの地下川の流路は,① 地震等何らかの原因によって空洞の天井が崩壊したり,土砂が流入したりするなどして地下川の流れがせき止められ,これまでのように流れることができなくなる,② 流入する地下水の流量が増えて,現在の空洞だけでは排出することができなくなる,③ 地下水位が上昇し,あふれた水が高い位置にある空洞に流れ込む,④ 地下水位が下がり,高い位置にある空洞から低い位置にある空洞に流れが移るといったことで変化し,特に,地下水面勾配が急になる場合には,地下川による空洞の床への侵食が強くなって谷が形成されるが,その谷が別の空洞に連結すると一気に流れが変わることがある(甲211の2,3頁)。 このような変化の結果,水が流れなくなってそれまで水に満たされていた空洞が空になると,その上の地盤は水による支えを失って落盤することがあり,また,新しく水が流れ始めた空洞では,地下川の物理的浸食によって空洞が拡大する可能性があって,空洞の規模が大きくなるとそれを作っている物質の強度を超えた場合に落盤する。このような落盤は,地盤の強度,侵食の強さによるが,短ければ1年以下で起こることもあり得る(甲211・3頁)。そして,こうした落盤は,当然に本件空港の滑走路が陥没することを意味する。本件空港の滑走路の下に地下川が流れている限り,将来にわたって本件空港の滑走路の安全性が担保されることはなく,支流なども含め地下川の正確な把握は困難であるから,こうした落盤などを完全に食い止めることは不可能である。本件空港の滑走路が十分な強度を有するようにすることに 走路の安全性が担保されることはなく,支流なども含め地下川の正確な把握は困難であるから,こうした落盤などを完全に食い止めることは不可能である。本件空港の滑走路が十分な強度を有するようにすることには元来無理があるのであり,県も,空洞に対して人工的に対処することの困難性を認めている(甲219の18頁)。 しかるに,県は,このような地層の実態や将来的に滑走路が陥没する危険性を考慮せず,本件申請を行い,処分行政庁は,そうした危険- 236 -性を看過して,本件許可処分をした。 カ被告は,第15回P23委員会議事録(乙26)を根拠に,本件空港建設予定地の琉球石灰岩の浸食の速さは1000年で1mm未満であるという理由を挙げて,本件許可処分が航空法39条1項1号及び航空法施行規則79条1項4号には違反しないと主張している。 しかし,同委員会において検討され,1000年で1mm未満の速度と結論付けられている浸食は,雨水に溶けた二酸化炭素と琉球石灰岩との化学反応により生じる浸食のことを指している。他方,原告らの主張する浸食は,そのような化学反応により生じる浸食のみならず,地下水の流れによる水圧で琉球石灰岩が物理的に削られることにより生じる浸食のことも含んでいる。そして,本件空港建設予定地の琉球石灰岩に対しては,地下水に含まれる二酸化炭素と琉球石灰岩の化学反応により生じる侵食に加えて,原告らの指摘した物理的な侵食が生じるのであるから,1000年で1mm未満という数値よりも相当程度早いペースで進むことが明らかであり,実際の本件空港建設予定地の琉球石灰岩の浸食の速さは1000年で100mm程度と推定される(証人P20尋問調書35頁)。さらに,1000年当たりの浸食のスピードは,石灰岩全体の浸食についてのものである一方,実際の浸食は,全 琉球石灰岩の浸食の速さは1000年で100mm程度と推定される(証人P20尋問調書35頁)。さらに,1000年当たりの浸食のスピードは,石灰岩全体の浸食についてのものである一方,実際の浸食は,全体的に起こるのではなく,地下水が流れるところで集中的に起きるため,全体に関する1000年当たりの浸食スピードは余り参考にならない(同調書36頁)。被告の上記主張は失当である。 (2) 本件許可処分は,滑走路において強い乱気流が発生するおそれがあることを看過しており,航空法39条1項1号及び航空法施行規則79条1項4号に違反した違法なものである。 ア被告は,航空法施行規則79条1項4号は滑走路舗装体の強度についての基準を規定するものであって,一時的な自然現象である乱気流によ- 237 -る風向や風速の影響を審査するものではないという理由により,滑走路予定地における強い乱気流発生のおそれにより航空法39条1項1号及び航空法施行規則79条1項4号違反の問題が生じることはないという。 しかし,被告も認めるとおり,航空法施行規則76条2項5号により,風向風速図を申請書に添付することが義務付けられている。この風向風速図の添付には,飛行場の予想就航率を確認するという意味のみならず,強い乱気流により航空機の離着陸に支障が生じることがなく,滑走路を使用することが予想される航空機の予想される回数の運航に十分耐えるだけの強度を滑走路が有していると認められるか否かを確認するという意味もある。 したがって,処分行政庁が強い乱気流発生の十分な可能性を看過し,飛行場設置許可処分をした場合,当然,航空法39条1項1号及び航空法施行規則79条1項4号に違反することになる。 イ県は,平成13年1月から4月にかけて,本件空港の滑走路予定地周辺において,風向風速を 設置許可処分をした場合,当然,航空法39条1項1号及び航空法施行規則79条1項4号に違反することになる。 イ県は,平成13年1月から4月にかけて,本件空港の滑走路予定地周辺において,風向風速を観測し,高度別の10分平均風向,風速に加え,毎10分間の風速の変動度合(10分風速標準偏差)を記録した(甲7)。 また,航空機が離着陸に支障を来す規模の乱気流が発生するか否かを判断するために算定突風速度を算出する必要があるが,県は,その算出に用いられるピークファクターが2.01以上3.28以下であると算定した(甲7)。算定突風速度は,ピークファクターに10分風速標準偏差を掛けたものであり,この数値が10.67以上になると,アメリカ航空宇宙局(NASA)の乱気流階級にいう「強」と評価され,航空機の離着陸に支障を来すものとされる(甲7,8,乙29)。 本件空港には,α4岳からの吹き下ろしの風が吹き付け,乱気流を滑走路に生じさせるおそれがあることに鑑みれば,どのような乱気流が生じても本件空港における航空機の離着陸に支障を来すことはないといえ- 238 -るか否かを確かめるためには,県が算出した10分風速標準偏差を基に,地形に由来する要素による補正を掛け,その上で,ピークファクターの最大値である3.28を使用して算定突風速度を算定する必要がある(なお,昭和41年3月5日富士山風下で発生したBOAC911機の墜落事故に代表されるように,山岳波の影響は大惨事に直結するものであるから,山岳により発生する乱気流の影響に関しては特に慎重な調査が要求されることは言をまたない)。こうした方法によりP49研究会が算定したところ,本件空港滑走路予定地においては,算定突風速度が最大で10.71ないし12.82を記録した。すなわち,本件空港滑走路予定地では,アメリカ またない)。こうした方法によりP49研究会が算定したところ,本件空港滑走路予定地においては,算定突風速度が最大で10.71ないし12.82を記録した。すなわち,本件空港滑走路予定地では,アメリカ航空宇宙局(NASA)の乱気流階級にいう「強」と評価される乱気流が発生して,航空機の離着陸に支障を来す可能性が十分にある。 これに対し,県は,平成13年1月から4月にかけて行われた上記の観測(乙29)により算出したデータを基に,本件空港滑走路予定地では,上記の乱気流階級にいう「強」と評価される乱気流は発生せず,航空機の離着陸に支障を来すことはないと主張している。しかし,県は,ピークファクターを3.0に設置して算定突風速度を算定しており,考えられる乱気流全てを想定してはいない(甲7,8)。また,県の主張の根拠となっている算定突風速度は,本件空港周辺の地形の影響による補正を掛けないで算出したものであるから,正確性に乏しい(甲7,8)。さらに,風況は年による変動が大きいため一般的には3ないし5年間,理想的には10年間程度の観測が必要であるにもかかわらず,県はわずか3か月間の観測を行ったにすぎないのであるから,この点でも基礎データの信用性は乏しい。その上,県は,台風の影響等により1年のうちで最も強風下での運行を余儀なくされる夏のデータではなく,冬から春にかけて得られたデータを根拠に算定突風速度を算定しているため,算定- 239 -突風速度は過小に算定されている(甲8)。 ウ以上より,処分行政庁は,航空機の離着陸に支障を来す乱気流の可能性を看過し,本件許可処分をしたということができる。乱気流で航空機の離着陸に支障を来す滑走路は,もはや滑走路を使用することが予想される航空機の予想される回数の運航に十分耐えるだけの強度を有するものとはいえない。 件許可処分をしたということができる。乱気流で航空機の離着陸に支障を来す滑走路は,もはや滑走路を使用することが予想される航空機の予想される回数の運航に十分耐えるだけの強度を有するものとはいえない。したがって,本件空港は,航空法施行規則79条1項4号の要件を満たさず,その結果,航空法39条1項1号の要件も満たしていないというべきである。 なお,乱気流や横風が発生するタイミングは予測不可能であり,例えば,平成20年3月1日,ドイツのハンブルク空港で,着陸しようとしたP50航空機が強風にあおられ,墜落の危機に陥るというアクシデントが発生している(甲71)。したがって,乱気流や横風にあおられるような気象条件下においては,飛行場の運用上航空機の空港への離着陸は行われていないとの被告主張は失当である。 (3) 本件許可処分は,滑走路が津波により水没するおそれがあることを看過しており,滑走路が運航に必要な強度を有するとはいえないから,航空法39条1項1号及び航空法施行規則79条1項4号に違反した違法なものである。 ア県の「県津波・高潮被害想定(宮古・八重山諸島沿岸域)検討委員会」は,平成19年10月15日,石垣島南方沖でM8クラスの地震が発生した場合,石垣市α27付近で25mを超える津波が発生する可能性があるという調査結果を発表した(甲16)。また,県土木建築部海岸防災課が作成した「沖縄県津波・高潮被害想定調査業務委託(宮古・八重山諸島沿岸域)報告書(概要版)」によれば,石垣島周辺で発生する地震により,本件空港建設予定地に近いα3で24m,α28で33.5mの津波が発生するとされている(甲72の39頁)。さらに,明和- 240 -8年(1771年)4月24日に発生した「明和の大津波」は,本件空港建設予定地付近では高さ30m以上であっ 8で33.5mの津波が発生するとされている(甲72の39頁)。さらに,明和- 240 -8年(1771年)4月24日に発生した「明和の大津波」は,本件空港建設予定地付近では高さ30m以上であった(甲17)。そうすると,本件空港が供用された場合,津波により滑走路が水没する可能性が十分にあり,地震が石垣島周辺で起きた場合には,その直後に本件空港付近で津波が発生するから,航空機の離着陸に関する対策を講じる時間的余裕はない。 このように水没のおそれがある滑走路は,もはや滑走路を使用することが予想される航空機の予想される回数の運航に十分耐えるだけの強度を有するものとはいえない。したがって,本件空港は,航空法施行規則79条1項4号の要件を満たさず,その結果,航空法39条1項1号の要件も満たしていない。 イこの点につき,被告は,航空法施行規則79条1項4号は津波による影響について審査するものではないという。しかし,航空法施行規則76条1項3号は,飛行場の標高を含めた標点の位置を申請書に記載することを義務付けている。この記載には,津波により航空機の離着陸に支障が生じることがなく,滑走路を使用することが予想される航空機の予想される回数の運航に十分耐えるだけの強度を滑走路が有していると認められるか否かを確認するという意味もある。 また,平成20年の航空法施行規則改正により,本件空港のような陸上空港の新設又は改良において,津波のような変動波浪による損傷が滑走路等の機能を損なわず,継続して使用することに影響を及ぼさないことが航空法39条1項1号を充足するための要件とされることとなった(航空法施行規則79条7号)。この改正は,「陸上飛行場の滑走路及び誘導路等が,津波による影響を受けないという点で,これらを使用することが予想される航空機の予想され るための要件とされることとなった(航空法施行規則79条7号)。この改正は,「陸上飛行場の滑走路及び誘導路等が,津波による影響を受けないという点で,これらを使用することが予想される航空機の予想される回数の運航に十分耐えるだけの強度を有するものであること」が同改正以前から航空法39条1項1号- 241 -及び航空法施行規則79条1項4号における飛行場設置許可をするための審査基準となっていたものの,津波に対する安全性を確保する航空法の趣旨を明確にするために,同規則79条7号を大幅に変更するという形でされたものである(甲115)。 ウさらに,被告は,想定される津波の高さよりも本件空港の滑走路の高さが少なくとも0.4m高いと主張する。しかし,仮に被告の主張が正しいとしても,0.4mの差は予測の誤差の範囲内というべきわずかな差に過ぎない。被告の主張は失当である。 4 争点(2)ウ(2号要件充足の有無)について(被告)(1) 航空法39条1項2号は,「当該飛行場・・・の設置によって,他人の利益を著しく害することとならないものであること。」と規定するところ,「他人の利益」の内容について航空法は具体的な規定を置いておらず,「著しく害する」という規範的かつ抽象的な文言が採用されていること,2号要件の判断に当たっては,設置される飛行場の公共性の有無及びその程度とその設置によって侵害される他人の利益の侵害の程度,その侵害に対する補償措置等の内容を比較考量して行うべきものであることなどからすれば,2号要件を充足するか否かの審査に関する処分行政庁の判断は,その政策的な裁量的判断に委ねられているものと解すべきである。 したがって,2号要件の判断についても,処分行政庁のした判断が裁量権を逸脱又は濫用したものである場合に限り,違法になると解すべ は,その政策的な裁量的判断に委ねられているものと解すべきである。 したがって,2号要件の判断についても,処分行政庁のした判断が裁量権を逸脱又は濫用したものである場合に限り,違法になると解すべきである(行政事件訴訟法30条)。 (2)ア申請に係る飛行場の設置によって,他人の利益を著しく害することとならないものであることとの航空法39条1項2号の要件は,飛行場周辺地域住民の利益を一般的公益として配慮するほか,主として,航空法49条により制限表面による私権制限の対象となる私人の財産権に対し- 242 -配慮すべきことを定めた規定である。したがって,同号は,原告らが主張するような自然環境に関する利益を個々人の個別的利益として保護する趣旨の規定ではない。そして,当該飛行場の設置が私人の財産権等に対する著しい侵害となっていないかを審査する目的で,同条2項において公聴会の開催が義務付けられているものと解されることから,処分行政庁は,公聴会における公述内容等を踏まえて総合勘案した上で,飛行場の設置によって他人の利益を著しく害することとならないかどうかを判断することとしている。 イ本件申請書及びその添付書類(乙3)によれば,飛行場敷地部分の多くは山林や畑であることが認められる上,その大部分の所有者からは,その土地を本件空港の設置者に売り渡す旨の同意が得られていること,制限表面による制約が及ぶ区域内には人口や建物が密集する市街地はなく,集落地域の建物もおおむね低層建築物であることが認められた。また,平成17年11月10日に石垣市で開催した公聴会においても,制限表面の設定によって建築物の高さが制限されることについて特段異論を述べる者はなく,飛行場の建設による自らの具体的な私法上の利益侵害を訴える趣旨の発言も一切なかった(乙10)。なお, においても,制限表面の設定によって建築物の高さが制限されることについて特段異論を述べる者はなく,飛行場の建設による自らの具体的な私法上の利益侵害を訴える趣旨の発言も一切なかった(乙10)。なお,この要件が原告らの主張する自然環境に関する利益を個々人の個別具体的な利益として保護する趣旨をも含むものとは解されないことは前述したとおりである。 以上の点などを踏まえ,処分行政庁は,本件空港の設置によって,他人の利益を著しく害することとならないと判断し,本件申請が2号要件に適合するものと認めたものであり,その判断に裁量権の逸脱又は濫用がないことは明らかである。 (3) 原告らは,航空法39条1項2号にいう「他人の利益」には,コキクガシラのような絶滅の危機に瀕している野生生物やアオサンゴのように世界- 243 -的にも類を見ない大群落を形成している野生生物を生存させていく生物多様性を確保することによる利益が含まれるとの解釈を前提として,本件許可処分が同号に違反するものであると主張している。 しかしながら,同号は,飛行場周辺地域住民の利益を一般的公益として配慮するほか,主として,同法49条により制限表面による私権制限の対象となる私人の財産権に対し配慮すべきことを定めた規定である。したがって,原告らが主張するような自然環境に関する利益を個々人の個別的利益として保護する趣旨の規定ではないから,原告らの上記主張は,その前提を欠く。そして,原告らの主張は自己の法律上の利益に関係のない違法を主張するものとして失当である(行政事件訴訟法10条1項)。 また,野生生物は,所有権等の権利主体たる人格を有しないことからも,航空法39条1項2号の「他人の利益」にはこれら野生生物の利益は含まれないことは明らかであって,この点においても,原告らの上記主 また,野生生物は,所有権等の権利主体たる人格を有しないことからも,航空法39条1項2号の「他人の利益」にはこれら野生生物の利益は含まれないことは明らかであって,この点においても,原告らの上記主張は失当である。 なお,本件補正書によれば,野生生物の生育環境を保全するために必要な措置等につき適正な配慮がされており,本件空港の設置により原告らの指摘する野生生物の生態系に対する影響は,事業者において実行可能な範囲内でできる限り回避ないし低減されていると認められるのであるから(乙2の8頁参照),いずれにしても原告らの上記主張は理由がないというべきである。 (原告ら)(1) 平成5年に施行された環境基本法の目的は,環境の保全について,基本理念を定め,並びに国,地方公共団体,事業者及び国民の責務を明らかにするとともに,環境の保全に関する施策の基本となる事項を定めることにより,環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し,もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福- 244 -祉に貢献することである(1条参照)。そして,この目的を受けて,同法3条は「環境の保全は,環境を健全で恵み豊かなものとして維持することが人間の健康で文化的な生活に欠くことのできないものであること及び生態系が微妙な均衡を保つことによって成り立っており人類の存続の基盤である限りある環境が,人間の活動による環境への負荷によって損なわれるおそれが生じてきていることにかんがみ,現在及び将来の世代の人間が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受するとともに人類の存続の基盤である環境が将来にわたって維持されるように適切に行われなければならない。」と定めている。同条は,良好な環境の享受が人類の存続の基盤であることを明示しており,憲法13条又は25条 に人類の存続の基盤である環境が将来にわたって維持されるように適切に行われなければならない。」と定めている。同条は,良好な環境の享受が人類の存続の基盤であることを明示しており,憲法13条又は25条により認められる環境権を最も明確に具体化したものである。このような環境基本法の目的及び認識を受け,同法6条及び7条は,被告及び地方公共団体に対し,環境の保全に関する基本的かつ総合的な施策を策定し,実施する責務を負わせている。そして,同法14条は,環境の保全に関する基本的施策の実施については,「生態系の多様性の確保,野生生物の種の保存その他の生物の多様性の確保が図られるとともに,森林,農地,水辺地等における多様な自然環境が地域の自然的社会的条件に応じて体系的に保全されること」などの確保を旨として行われなければならないとしている。したがって,環境基本法1条,3条,6条,7条及び14条は,生態系の多様性を確保するという利益を含む法的利益を対象とした環境権を有することを確認しているものというべきである。 次に,平成5年に締約され,また,発効した生物の多様性に関する条約は,生物の多様性の保全及びその構成要素の持続可能な利用の実現を重要な目的としている(1条参照)。また,同条約6条(b)は,締約国に対し,生物の多様性の保全及び持続可能な利用について,可能な限り,かつ,適当な場合には,関連のある部門別の又は部門にまたがる計画及び政策にこ- 245 -れを組み入れることを求めている。さらに,同条約8条は,締約国に対し,生態系及び自然の生息地の保護並びに存続可能な種の個体群の自然の生息環境における維持を促進すること及び保護地域における保護を補強するため,保護地域に隣接する地域における開発が環境上適正かつ持続可能なものとなることを促進することを求めている な種の個体群の自然の生息環境における維持を促進すること及び保護地域における保護を補強するため,保護地域に隣接する地域における開発が環境上適正かつ持続可能なものとなることを促進することを求めている。加えて,同条約10条は,締約国に対し,生物資源の保全及び持続可能な利用についての考慮を自国の意思決定に組み入れることを求めている。被告は,これらの規定により,飛行場設置のような開発行為において,生態系の多様性の確保を可能な限り考慮しなければならないのである。 また,平成5年に施行された絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律は,野生動植物が,生態系の重要な構成要素であるだけでなく,自然環境の重要な一部として人類の豊かな生活に欠かすことのできないものであることに鑑み,絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存を図ることにより良好な自然環境を保全し,もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的としている(1条参照)。すなわち,絶滅のおそれのある野生動植物の保存により,生態系の多様性の確保を図っているのである。 そして,環境基本法20条を受けて,評価法が制定され,評価法33条以下により,対象事業に係る免許,許可等を行う者は,当該免許,許可等の可否の判断に際し,環境配慮審査をしなければならないものとし,その審査の結果を免許,許可等に反映させるものとしている。この審査においては,環境基本法の規定に鑑み,生態系の多様性を確保するという利益への適正な配慮がされているかも吟味されることになる。 さらに,環境庁(現在の環境省)は,平成7年,生物多様性国家戦略を策定し,平成14年にその改定を行っている。そして,改定された新・生物多様性国家戦略は,「人間生存の基盤である環境は,生物の多様性と自- 246 -然の物質循環を ,平成7年,生物多様性国家戦略を策定し,平成14年にその改定を行っている。そして,改定された新・生物多様性国家戦略は,「人間生存の基盤である環境は,生物の多様性と自- 246 -然の物質循環を基礎とする生態系が健全に維持されることにより成り立つ」,「生物多様性を尊重することは,適正な土地利用を行うことを通じて,トータルで長期的な安全性,効率性を保証する」,「生物多様性は,社会,経済,科学,教育,芸術,レクリエーションなど様々な観点から人間にとって有用な価値を持つ」,「生物多様性は人間生活を豊穣なものとし豊かな文化を形成するための根源となる」などと述べ,生物多様性の多元的な価値を説いている。 これらの環境基本法,生物の多様性に関する条約,絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律,評価法及び新・生物多様性国家戦略との整合性という観点から,航空法39条1項2号の「他人の利益」には,原告らの環境的利益,特に,コキクガシラ及びアオサンゴのような貴重な野生生物を生存させていくという生物多様性を確保することによる利益が当然に含まれるというべきである。 (2) この点につき,被告は,航空法の規定などに照らし,「他人の利益」には,私人の財産権は入るが原告らの環境的利益は入らないと主張している。 しかし,次の理由によりこの主張は失当である。 まず,航空法は,航空機の航行の安全及び航空機の航行に起因する障害の防止を図るための方法を定め,並びに航空機を運航して営む事業の適正かつ合理的な運営を確保して輸送の安全を確保するとともにその利用者の利便の増進を図ることにより,航空の発達を図り,もって公共の福祉を増進することを目的としている(1条)。この「航空機の航行に起因する障害の防止」には,上記のように環境基本法,生物の多様性に関する条約,新・生 を図ることにより,航空の発達を図り,もって公共の福祉を増進することを目的としている(1条)。この「航空機の航行に起因する障害の防止」には,上記のように環境基本法,生物の多様性に関する条約,新・生物多様性国家戦略等が定められ,環境的利益が重視されるようになった現在では,「生態系の多様性を確保するという環境的利益が侵害されることを防止すること」も当然含まれるものと解される。 次に,航空法38条2項及び航空法施行規則76条1項によれば,飛行- 247 -場の位置,構造等の設置の計画,管理の計画等を飛行場設置許可申請書に記載することが義務付けられ,さらに,同規則76条2項によれば,飛行場の工事設計図書等を申請書に添付することが求められている。これらの事項は,飛行場の設置予定地及びその周辺にどのような環境的影響が生じ,もって,原告らの環境的利益がどの程度影響を受けるかを判断するために必要な事項である。したがって,これらの規定は,環境的利益を考慮することを義務付けているのである。なお,同様の議論は,飛行場の設置許可申請があった場合の告示・掲示事項(航空法38条3項,航空法施行規則78条1項)にも妥当する。 さらに,航空法39条2項においては,飛行場を利用する者も公聴会において意見を述べることができるとされている。原告らは,いずれも石垣島とのつながりを有するから,飛行場を利用する者に十分該当し得る。そして,環境基本法,評価法等が整備され,環境に対する関心が高まった現在において,当該飛行場が環境的利益を侵害していないかについて飛行場を利用する者が関心を抱き,意見を述べることは至極当然のことである。 したがって,同項を根拠に航空法が環境的利益を考慮していないと解することは妥当でない。 加えて,航空法43条は,飛行場について特に重要な変更を加える を抱き,意見を述べることは至極当然のことである。 したがって,同項を根拠に航空法が環境的利益を考慮していないと解することは妥当でない。 加えて,航空法43条は,飛行場について特に重要な変更を加える場合に,環境的利益についての判断を慎重に行うという意味で処分行政庁の許可を再度受けなければならないとする一方,飛行場の範囲,進入表面,移転表面又は水平表面に変更を生じない場合には,飛行場による環境的利益への影響の変化が類型的に小さいので,飛行場の設置許可申請があった場合の告示・掲示事項や公聴会についての規定を準用しなかったと解することは十分可能である。したがって,同条を根拠に,航空法が環境的利益を考慮していないと解することも妥当でない。 以上より,航空法39条1項2号にいう「他人の利益」は,原告らの環- 248 -境的利益,特にコキクガシラ,アオサンゴなどの野生生物を生存させていくという生物多様性を確保することによる利益を含むものというべきである。 (3) 飛行場の設置が他人の利益を著しく害するか否かの判断に当たっては,設置される飛行場の公共性の有無の程度,その侵害に対する補償措置等の内容を比較考量して行うべきものである(静岡地裁平成12年12月22日判決・訟務月報48巻9号2167頁)。そして,前述のように,環境的利益,特に生物多様性を確保することによる利益が重視されていることからすれば,この比較考量に当たっては,環境的利益への侵害も十分考慮すべきである。 環境的利益,特に生物多様性を確保することによる利益は,一度失われると二度と回復できないものである。そのため,諸外国では広く環境的利益への影響を考慮する際に予防原則(環境保全についての政策の決定に当たり,具体的な環境への影響が発生しておらず,その原因と思われる行為との因果関係を ないものである。そのため,諸外国では広く環境的利益への影響を考慮する際に予防原則(環境保全についての政策の決定に当たり,具体的な環境への影響が発生しておらず,その原因と思われる行為との因果関係を科学的に証明できない場合でも,予防的に規制していくという原則)が採用されている。我が国においても,平成4年に採択した生物多様性条約が「生物の多様性の著しい減少または喪失のおそれがある場合には,科学的な確実性が十分にないことをもって,そのようなおそれを回避しまたは最小にするための措置をとることを延期する理由とすべきでないことに留意」(前文)することを日本政府に求めていることや,平成12年の第2次環境基本計画及び平成18年の第3次環境基本計画において予防的な方策を講じることが決定されたことを踏まえ,予防原則が採用されるに至っている。 したがって,処分行政庁による飛行場の設置が他人の利益を著しく害するか否かの判断についての裁量は,環境的利益による予防原則による制約を受けるものと解するべきである。 - 249 -既にα3におけるアオサンゴ生態系は危機的状況にあるところ,本件空港の建設による大量の赤土の流出や供用後の地下水脈の変更等により,アオサンゴ生態系が破壊され,アオサンゴの生息が不可能になる。また,本件空港の建設ないし供用によるごう音,振動等により,本件空港建設予定地付近に生息しているコキクガシラなどのコウモリ類の生存が不可能になり,種としての絶滅がもたらされる。そして,このようなアオサンゴ,コキクガシラなどの死滅は,原告らの生態系の多様性の維持による環境的利益を大きく侵害するものである。 そうすると,本件空港に公共性が認められることや処分行政庁に一定程度の裁量があることを考慮しても,原告らの受ける回復不可能な環境的利益の侵害に鑑みれば よる環境的利益を大きく侵害するものである。 そうすると,本件空港に公共性が認められることや処分行政庁に一定程度の裁量があることを考慮しても,原告らの受ける回復不可能な環境的利益の侵害に鑑みれば,本件空港の設置は,他人の利益を「著しく害する」ものであるというべきである。 5 争点(2)エ(5号要件充足の有無)について(被告)(1) 航空法39条1項5号は,「飛行場にあっては,申請者が,その敷地について所有権その他の使用の権原を有するか,又はこれを確実に取得することができると認められること。」と規定している。この規定は,飛行場設置事業の確実性に関するものであるところ,同号所定の「確実に取得することができる」とは,取得しようとすれば,取得が確実に実現することになるという見込みが存在することをいう。そして,取得の実現性については,取得のための法的手段(契約,収用等)の有無及び法的手段による目的達成の能否が考慮される。このような判断は,将来の予測に係る事項を含んでおり,その性質上,政策的又は専門的技術的判断を伴うものであるから,その要件適合性については,性質上,処分行政庁の裁量が認められると解すべきである。 したがって,処分行政庁のした判断が裁量権を逸脱・濫用した場合に限- 250 -り,違法となると解すべきであり(行政事件訴訟法30条),これを争う原告らにおいて,裁量権の逸脱・濫用があったことを基礎付ける事実を主張立証すべきである。 (2) 処分行政庁は,取得しようとすれば取得が確実に実現することとなるという見込みが存在することについて,具体的には,① 飛行場用地の大半について,現に所有権を有する者から売り渡し等の同意を得ていること,② 未同意用地については,申請者による交渉の継続等により確実に取得することができるという ついて,具体的には,① 飛行場用地の大半について,現に所有権を有する者から売り渡し等の同意を得ていること,② 未同意用地については,申請者による交渉の継続等により確実に取得することができるという見込みが存在すること等の事情を総合勘案して判断することとしている。 そして,処分行政庁は,本件空港の建設予定地のうち,敷地面積の99. 6%についてはその地権者から用地取得の同意が得られていたこと(乙3のⅡ-2頁),同意が得られていない用地のうち,0.3%は所在不明者2名が所有し,残り0.1%は空港建設に反対する654名が共有している状況であること,同意の得られていない地権者については,県が今後ともねばり強く説得に当たり,事業への理解と協力を求めていくこと等により,県の責任において当該土地を取得する旨を確約していること(乙11),仮に同意が得られなかった場合でも,空港建設事業の公共性に基づき,土地収用法の適用が可能であること等の諸事情を総合勘案し,申請者である県が,本件空港の敷地について,使用権原を取得することが確実であると判断した。 以上の点を踏まえ,処分行政庁は,本件申請は航空法39条1項5号の要件に適合するものと認めたものであり,その判断に裁量権の逸脱又は濫用がないことは明らかである。 (3) 原告らは,本件空港の計画区域内の土地の所有者である原告らの多数が,その土地を本件空港の建設用地に提供しない旨の強硬かつ明白な意思を内容証明郵便で表示していたにもかかわらず,処分行政庁は,これを看過し- 251 -て本件許可処分を行ったものであるとして,航空法39条1項5号に違反する旨主張している。 しかしながら,同号の要件該当性の判断については,その性質上,処分行政庁の裁量が認められ,処分行政庁のした判断がその裁量権を逸脱又は濫用した場 て,航空法39条1項5号に違反する旨主張している。 しかしながら,同号の要件該当性の判断については,その性質上,処分行政庁の裁量が認められ,処分行政庁のした判断がその裁量権を逸脱又は濫用した場合に限り,違法となると解すべきであるところ,その裁量権の逸脱又は濫用が認められないことは既に主張したとおりであって,原告らのこの主張には理由がない。 (原告ら)(1) 航空法39条1項5号にいう用地取得の確実性は,取得しようとすれば取得が確実に実現することとなるという見込みが存在することを意味するところ,航空法施行規則76条2項2号の2において,空港設置許可書に所有者等の同意書の添付が求められていることからすれば,この用地取得の確実性は申請時までに証明されなければならない。そして,航空法は,土地収用法の制定後に制定された法律であるから,立法者は,土地収用法が存在することを前提に,あえて5号要件につき(所有権その他の使用権原を)確実に取得することができると認められることと規定したことに鑑みれば,航空法39条1項5号の趣旨は,飛行場の設置においては,土地収用法の手続によらず,任意買収等の交渉により確実に土地の所有権その他の使用権原を取得できることが認められなければならないことにあると解すべきである。 また,いわゆる成田空港問題に関する平成3年5月以降の運輸省の対応方針等に鑑みても,用地取得の確実性があるといえるためには,原則として,土地収用法による手続ではない任意取得の方法により,取得しようとすれば取得が確実に実現することとなるという見込みが存在することが申請時までに証明されなければならないものというべきである。そして,この例外が認められるとすれば,① 海面埋め立てが主で陸上の地権者が元- 252 -来少数である空港で右地権者らが条件 することが申請時までに証明されなければならないものというべきである。そして,この例外が認められるとすれば,① 海面埋め立てが主で陸上の地権者が元- 252 -来少数である空港で右地権者らが条件闘争に転じて交渉のテーブルに着いている場合,② 事実上の同意を得ているものの,相続手続未了のためいまだ正式の地権者といえないために形式上は未同意地権者とせざるを得ない者が少数存在する場合,及び③ 同意を得たくとも居所不明で同意の取り付けようがない未同意地権者が1人,2人存在する場合のいずれかに該当するか,これらと同視できる特段の事情がある場合に限られるものというべきである(静岡空港建設反対運動をしていた団体の質問に対する平成6年10月24日の運輸省航空局飛行場部計画課長の回答参照)。 しかるに,本件空港の建設予定地に関しては,本件許可処分の時点で,相続人の不存在及び不在といった理由で未同意地権者が2名存在したのみならず,本件空港建設予定地内にある1556㎡の土地を654名の地主が共有しており,そのほぼ全員が未同意地権者となっていた。その上,これら未同意地権者のうち,少なくとも約300名が,平成17年8月から12月頃にかけて,処分行政庁に対し,「新石垣空港建設用地の不提供に関する通知」と題する内容証明郵便により,自ら所有する土地を本件空港建設用地に提供しない旨の意思を表示し,その意思表示は,同年8月から12月にかけて処分行政庁に到達している。本件では,土地収用法による手続ではない任意取得の方法により,取得しようとすれば取得が確実に実現することとなるという見込みが存在することが申請時までに証明されたとは到底認められず,かつ,証明が不要となる例外的事情があるとも認められないから,5号要件は充足されていない。 (2) 本件における任意取得の状況 という見込みが存在することが申請時までに証明されたとは到底認められず,かつ,証明が不要となる例外的事情があるとも認められないから,5号要件は充足されていない。 (2) 本件における任意取得の状況,任意取得に応じない者の数,その意思と強固さの程度は上述のとおりである。また,自らの環境的利益,特にコキクガシラ,アオサンゴなどの野生生物を生存させていくという生物多様性を確保することによる利益を守るという任意取得に応じない者の反対理由は合理的である。他方,現在の予定地に本件空港を建設する必要性は,代- 253 -替案の検討もされていない以上,十分に示されたとはいえない。また,県の一連の対応と具体的対策は,本件空港設置の申請に至る経緯に照らせばずさんである。 したがって,本件許可処分は,処分行政庁の有する裁量を著しく逸脱しており,航空法39条1項5号に違反した違法なものである。 (3) 仮に,5号要件にいう用地取得の確実性の判断において土地収用法による取得を考慮するとしても,本件の場合,次のとおり,土地収用法20条3号及び4号を満たしていないから,5号要件は充足していない。 アまず,土地収用法20条3号は,土地収用のための事業認定を受けるための要件として,「事業計画が土地の適正且つ合理的な利用に寄与するものであること」を挙げている。この要件は,当該土地が当該事業の用に供されることによって得られる公共の利益と,その土地が事業の用に供されることによって失われる公共的又は私的利益とを比較考量し,前者が後者に優越すると認められる場合に満たされるものと解される(東京高裁昭和48年7月13日判決(日光太郎杉事件控訴審判決)・行裁集24巻6・7号533頁参照)。 事業認定は,当該事業に必要な土地に着目して行われる処分であり,まず当該土地が当該事 解される(東京高裁昭和48年7月13日判決(日光太郎杉事件控訴審判決)・行裁集24巻6・7号533頁参照)。 事業認定は,当該事業に必要な土地に着目して行われる処分であり,まず当該土地が当該事業にとって適正なものであることを要する(適地性)。しかるに,本件では,滑走路が陥没ないし崩壊するおそれがあり,滑走路付近において強い乱気流が発生するおそれがあり,かつ滑走路が津波で水没するおそれがあるため,滑走路が構造上十分な強度を有していないから,本件空港建設予定地は,空港としての適地性を欠いている。 また,県は,新空港の利用客数の予想を平成33年には現在よりも40%以上も多い260万人と予想し,貨物の取扱量も同年には現在よりも25%も多い1万3700tと予想しており,本件許可処分はこれらの予想を前提としている。しかし,近隣にα17空港,宮古空港といっ- 254 -た2000m級の飛行場が多く存在していること,石垣島の観光資源はさんご礁などの自然環境であるところ,近年の急速なリゾート開発により,近い将来石垣島の自然環境が破壊され,観光資源が失われるおそれが大きいことなどからすれば,県の上記需要予想は明らかに過大である。 これに対し,自然環境は一旦破壊されれば再生は不可能である。すなわち,原告らの環境的利益,特にコキクガシラ,アオサンゴなどの野生生物を生存させていくという生物多様性を確保することによる利益は,失われてしまうと回復不可能である。また,平成19年8月1日よりα3が海中公園に指定された趣旨から考えても,その環境は現状のまま保護・保全が図られるべきことは当然である。 以上からすれば,本件における比較考量において,本件空港建設予定地が事業の用に供されることによって得られるべき公共の利益は,その土地が事業の用に供されることによって 図られるべきことは当然である。 以上からすれば,本件における比較考量において,本件空港建設予定地が事業の用に供されることによって得られるべき公共の利益は,その土地が事業の用に供されることによって失われる環境的利益に優越するとは到底認められず,本件は,土地収用法20条3号の要件を満たさない。 イ次に,土地収用法20条4号は,土地収用のための事業認定を受けるための要件として,「土地を収用し,又は使用する公益上の必要があるものであること」を挙げている。この要件は,当該事業に当該土地を強制的に収用する程の公益的必要性が認められるか否かによって判断される。 成田空港についてでさえ,地主らの激しい反対運動を前に,一旦申し立てた千葉県収用委員会への収用裁決申請が取り下げられた歴史的経緯からすれば,成田空港のような第1種空港とは公益的必要性において比すべきもののない第3種空港である本件空港のために,強固な反対意思を示している第1原告らを含めた地権者に対して土地収用制度を利用するほどの公益的必要性があるとは到底認められない。したがって,本件- 255 -は,土地収用法20条4号の要件も満たさない。 そうすると,土地収用法20条3号及び4号の要件を満たさない以上,仮に航空法39条1項5号にいう用地取得の確実性の判断において土地収用法による取得を考慮するとしても,本件は,5号要件を満たしていない。それにもかかわらずされた本件許可処分が処分行政庁の裁量権の範囲を逸脱しており違法であることは既に述べたとおりである。 6 争点(3)(評価法33条1項の審査との関係での本件許可処分の適法性)について(原告ら)(1) 評価法33条1項の審査及びこれについての司法審査の在り方についてア評価法33条1項の審査に基づく許認可等処分が違法になる 査との関係での本件許可処分の適法性)について(原告ら)(1) 評価法33条1項の審査及びこれについての司法審査の在り方についてア評価法33条1項の審査に基づく許認可等処分が違法になる場合評価法33条2項の許認可等処分は,裁量権の範囲の逸脱又は濫用がある場合を除いて司法審査が及ばないという意味での裁量処分(行政事件訴訟法30条参照)には当たらない。許認可等処分は,次のような場合には,評価法33条違反となる。 (ア) 環境配慮という絶対的考慮要素を欠いた場合評価法制定の経緯からすれば,環境配慮という要素の相対化が認められるのは,環境保全上全く支障のない場合又はせいぜい環境保全上極めて軽微な支障が生ずる可能性を完全には否定し切れないというレベル未満の支障が生ずるにすぎない場合に限られるというべきであり,このレベルを超えて環境保全上の支障が生ずる可能性が少しでもあるような場合には,環境配慮がされているとは到底いえず,絶対的な考慮要素を欠く場合に該当し,他の要素いかんにかかわらず,直ちに許認可等処分を行わない措置をとらなければならないというべきである。 この点,事業者としては,許認可等処分までの一連の環境影響評価手続において多様な環境情報に接し,さらに,許認可権者等から直接- 256 -意見を得て,環境保全についての適正な配慮を十分に行う機会が与えられていたのであるから,上記のように解釈しても,事業の決定・実施にとって何ら過大な制約を与えるものではない。 このように,環境保全上の支障を極めて軽微な支障が生ずる可能性を完全には否定し切れないというレベル未満にまで抑えられるだけの環境配慮がされていることは,絶対的な考慮要素として他の考慮要素との相対的な比較衡量が許されない。よって,これを欠く場合には他 る可能性を完全には否定し切れないというレベル未満にまで抑えられるだけの環境配慮がされていることは,絶対的な考慮要素として他の考慮要素との相対的な比較衡量が許されない。よって,これを欠く場合には他の要素いかんにかかわらず行政裁量は一切認められず,これを欠くにもかかわらず許認可等処分がされた場合には,当該処分は常に違法となる。 (イ) 判断過程において考慮すべきでない事項を考慮し,考慮すべき事項を考慮せず,又は考慮要素の認識や評価を誤って許認可等処分をした場合許認可等権者が許認可等処分をするに至る過程において,考慮すべきでない事項を考慮し,考慮すべき事項を考慮せず,又は考慮要素の認識や評価を誤った場合には,当該判断は結果いかんにかかわらず違法となるのであるが(前掲東京高判昭和48年7月13日判決参照),この判断は,評価法33条の審査の意義・性質により,特に科学的かつ客観的にされる必要がある。 環境影響評価制度における審査のプロセスは,準備書等の環境情報について十分なデータ,分析等が記載されているかどうか,環境保全についての適切な配慮がなされるものであるかどうかについて科学的かつ客観的な検討を加え,その妥当性を判断するプロセスであるから,評価法33条の審査においては,許認可等権者は評価書に記載された情報を科学的かつ客観的な見地から取捨選択・評価し,環境保全への適正な配慮がされているか否かを審査しなければならないのである。 - 257 -したがって,評価法33条の審査が,考慮すべきでない事項を考慮し,考慮すべき事項を考慮せず,又は考慮要素の認識や評価を誤った場合に該当するか否かを判断するに当たっては,情報の取捨選択や情報の評価が科学的かつ客観的な観点からされているか,科学的根拠に基づかない予測,許 べき事項を考慮せず,又は考慮要素の認識や評価を誤った場合に該当するか否かを判断するに当たっては,情報の取捨選択や情報の評価が科学的かつ客観的な観点からされているか,科学的根拠に基づかない予測,許認可等権者の主観等及び事業者の判断等に影響を受けていないかという点から検討する必要がある。 (ウ) 恣意的な環境影響評価手続に対し抑止効果を欠いた処分がされた場合環境影響評価手続は一次的には事業者によるセルフコントロールとしてされるわけであるが,評価法は,環境影響評価手続を事業者によるセルフコントロールに掛からせることにより,同手続が恣意に流れる危険があることを承知した上で,そうした事態を予防するための措置として,制裁措置を設けるのではなく,横断条項を置くことによる抑止効果で対応しようとしている。立法者自身,評価法は,許認可等権者によるチェックがなおざりになってしまうと環境影響評価手続の実効性を担保できず,骨抜きになってしまう可能性がある構造になっていることを承知していた。よって,横断条項は正に評価法の核となる条項であって,許認可等権者による審査は事業者に骨抜きの環境影響評価手続を行わせることのないよう厳しいものとならねばならないのである。評価法の存在意義は正にそこに掛かってくるのである。 したがって,評価法33条の審査は,たとえ当該事業により現実に環境保全上の問題が生じることはないと判断される場合や,当該事業が適切な環境保全措置を行っていると判断される場合であっても,環境影響評価手続が事業者の恣意的判断に基づいて行われた疑いがあれば,許認可等処分をしてはならないし,また,事後的に環境影響評価手続が事業者によって恣意的に行われた疑いが生じた場合には,現実- 258 -に環境保全上の支障が生じたか否かにかかわらず 疑いがあれば,許認可等処分をしてはならないし,また,事後的に環境影響評価手続が事業者によって恣意的に行われた疑いが生じた場合には,現実- 258 -に環境保全上の支障が生じたか否かにかかわらず,許認可等処分は取り消されなければならない。それが評価法の趣旨である。このような運用が定着して初めて,事業者に対する抑止効果が生じ,セルフコントロールを基本とする環境影響評価手続が事業者の恣意に流れることを予防でき,評価法の規定する環境影響評価手続が実効性あるものとなる。 このように,環境影響評価手続に恣意が含まれているおそれがあるにもかかわらず許認可等処分がされた場合には,その判断は違法となる。 (エ) 第三者的視点による補完機能を欠く処分がされた場合評価法は,33条に基づき許認可等が拒否されるという抑止効果によって,セルフコントロールを基本とする環境影響評価手続の適正を保とうとしている。しかし,評価法33条の審査を行う主体は,当該事業の許認可等権者である。いうまでもなく,許認可等権者は,当該事業の主務官庁の長等であるから,当該事業に強い利害関係を有するものである。事業者が環境影響評価手続を行い,当該事業の許認可等権者がこれを審査するというのでは,結局,事業の内容のみから許認可等を判断するという既存の枠組みを脱することができず,環境保全の観点からの公正な審査は期待できない。そうなると,評価法33条の審査による抑止効果も期待できないことになるから,結局,評価法は骨抜きになってしまう。 そこで,評価法33条の審査は許認可等権者以外の第三者が行うべきではないかという問題意識が当然生じるが,立法者は,同条の審査が許認可等権者によりされるのみでは不十分であることを承知の上で,これを環境保全措置に精通した環境大臣(評価法制定 以外の第三者が行うべきではないかという問題意識が当然生じるが,立法者は,同条の審査が許認可等権者によりされるのみでは不十分であることを承知の上で,これを環境保全措置に精通した環境大臣(評価法制定時には環境庁長官)の意見により補うことを予定している。このように,23条意見- 259 -は,評価法の核を成す評価法33条の審査に致命的に欠けている第三者的視点を補完するという決定的に重要な役割を果たすものである。 そして,23条意見は,環境の保全に関する行政を総合的に推進することを任務とし,関係行政機関の環境保全に関する事務を総合調整する環境大臣の意見であって,許認可等権者が意見を述べるに当たって相当の重みを持って受けとめられることが予定されているから,許認可等権者が評価法33条の審査を行う際には,23条意見に沿った審査がされなければならない。 したがって,合理的理由なくして23条意見に沿わない審査がされ,許認可等処分がされた場合には,その判断は違法になるといわなければならない。 (オ) 事後のフォローアップ機能を欠く処分がされた場合評価法38条1項は「事業者は,評価書に記載されているところにより,環境の保全についての適正な配慮をして当該対象事業を実施するようにしなければならない。」と規定している。この規定は,事業を実施しようとする者が,実施に取り掛かる際の心構えを規定するものであるが,この心構えをもって事業実施に取り掛からなかった証左とみなされる程度に事業の着手後に事業内容を大幅に変更するような場合にはこの規定に対する違反が問われることとなり,もって事業開始後に環境保全措置が適切に講じられるようフォローアップを図っている。 しかし,評価書の記載は事業者自身によりされるものであるから,事業者が「評価書に記載 違反が問われることとなり,もって事業開始後に環境保全措置が適切に講じられるようフォローアップを図っている。 しかし,評価書の記載は事業者自身によりされるものであるから,事業者が「評価書に記載されているところにより」フォローアップを行うというのでは,結局事業者による自作自演に終始し,事業者の恣意を規制することができない。そのため,評価法33条2項は「当該免許等に必要な条件を付することができる」と規定し,許認可等処分- 260 -をする場合であっても,条件を付して事業者を拘束することによってフォローアップを図っているのである。 以上のとおり,評価法33条は,評価法38条と併せて事業開始後に適切な環境保全措置が実施されることを担保するという機能があり,この機能に信頼を寄せているからこそ,フォローアップの不履行に対する指導,勧告,罰則等はあえて規定されていないのであるから,付すべき条件を付すことなく許認可等処分をするという判断がされた場合には,その判断は違法となる。 (カ) 評価書の記載事項の判断過程に誤りがある場合に(たとえ記載内容に誤りがなくても)これを是正せずに許認可等処分がされた場合評価法33条1項は,許認可等権者は「評価書の記載・・・に基づいて」環境配慮がされるものであるかどうかを「審査しなければならない」と明確に規定しており,評価書に基づく審査を行うことを許認可等権者に対して明文で義務付けている。そして,同項が評価書に基づいて審査を行うことを要求したのは,環境影響評価の手続の最終成果物たる評価書の内容を免許等に反映させることが必要であるからであるから,同条の「評価書」とは,評価法にのっとり作成された最終成果物であって,必要となる環境情報の全てを的確にカバーしているものを指す。 したがって,最 許等に反映させることが必要であるからであるから,同条の「評価書」とは,評価法にのっとり作成された最終成果物であって,必要となる環境情報の全てを的確にカバーしているものを指す。 したがって,最終成果物である評価書が,必要となる環境情報の全てを的確にカバーできていないおそれがある場合には,そのような評価書は評価法33条の「評価書」とはいえないのであるから,そのような評価書に基づいて審査がされた場合には評価法33条の「審査」がされたとはいえない。 評価書の作成過程に過誤等がある場合,許認可等権者がどのような判断をしようとも,その判断は裁量権を逸脱した違法なものとなるの- 261 -であり,ここにいう過誤等として,結論に全く影響を与え得ないような軽微な過誤等は除外するにしても,「看過し難い過誤」に限定する理由はない。 (キ) 評価書の記載内容に誤りがあるのにこれを是正せずに許認可等処分がされた場合許認可等権者は,評価書の記載に基づいて環境配慮審査をするのであるから,評価書の内容に事実と異なる記載がある場合には,許認可等権者の判断には事実誤認があることになる。そして,事実誤認が裁量の逸脱,濫用に該当することは確立した判例法理であるから,評価書の内容に誤りがある場合には,たとえ環境影響評価手続が適正にされていようとも,また,現実に環境保全上の支障が生じたか否かにかかわらず,そのような評価書に基づいてされた許認可等処分は事実誤認に基づくものとして裁量を逸脱し,違法となる。 (ク) 環境影響評価の手続違反を看過して処分がされた場合評価法33条の審査においては,環境影響評価の過程及び手続の瑕疵も審査の対象となり,これを看過してされた許認可等処分は違法となる(甲164の1参照)。同条の明文では手続的瑕疵に触れ がされた場合評価法33条の審査においては,環境影響評価の過程及び手続の瑕疵も審査の対象となり,これを看過してされた許認可等処分は違法となる(甲164の1参照)。同条の明文では手続的瑕疵に触れていないが,手続的瑕疵の存在は補正後の評価書(以下「確定評価書」という。)の記載から認識できるので,確定評価書が審査の対象となっていれば手続的瑕疵の審査に支障はない。 例えば,評価法はベスト追求型かつ住民の参加権を確保した環境影響評価制度を規定しているので,事業者には評価に関連する具体的な根拠を説明することが求められるため,この説明がされていないにもかかわらずされた許認可等処分は,違法性の承継ないし手続違反の看過として違法となる。また,立地に関して複数案の検討が行われてきた経緯がある場合に環境影響評価において立地の代替案の比較検討が- 262 -行われなかったにもかかわらずこれを是正することなくされた処分も,違法となる。 (ケ) 合理的理由を示すことなく24条意見に対応しなかった場合事業者は,24条意見に対応して評価書を補正しなければならないことが原則であり,24条意見に対応しないことが許容されるのは,24条意見に従わない方がより環境保全に資すると事業者が合理的理由を示して判断した場合に限られる。よって,合理的理由を示すことなく24条意見に対応しなかった場合には,環境影響の大きさその他の事項を考えるまでもなく,許認可等処分は直ちに違法になる。 (コ) なお,手続違反は当該手続が設けられた趣旨が没却される点や行政処分の内容に影響を与え得る点を考慮して取消事由とされるのであって,行政処分の主体が手続違反を犯した点に対する制裁的意味合いを持つものではない。よって,手続違反を犯した主体が何者 没却される点や行政処分の内容に影響を与え得る点を考慮して取消事由とされるのであって,行政処分の主体が手続違反を犯した点に対する制裁的意味合いを持つものではない。よって,手続違反を犯した主体が何者であるかにかかわらず,評価法33条1項の審査を経てされる行政処分の内容に影響を与え得るような手続違反がある場合はもちろん,行政処分の内容に影響を与えないような手続違反であっても当該手続違反が当該手続の趣旨に反する重大なものである場合には,当該手続違反を根拠として行政処分が取り消されなければならない。手続違反を犯したのが県で,行政処分をしたのが処分行政庁であるという点は一切関係ない。 また,取消訴訟に処分性が要求される趣旨は,処分性を訴訟要件とすることで濫訴を回避するという点にあり,決して処分性のない行政行為については違法を容認するという趣旨ではない。そして,行政処分は突如としてされるわけではなく,処分性のない多くの行政行為の積み重ねの末にされるものである。そうとすれば,行政処分の前に存在した行政行為の違法は後に控える行政処分に対する取消訴訟によって是正するというのが処分性によって取消訴訟の対象を絞った行政事件- 263 -訴訟法の趣旨であると考えられる。そして,評価法もこれと整合的に解釈すべきであるから,評価書作成過程における手続違反はそれ自体の有効性を訴訟で争うことが困難である以上,後に控える許認可等処分に対する取消訴訟によって是正することを予定しているというべきである。よって,評価書ないし確定評価書作成過程における手続違反は,違法性を帯びた評価書ないし確定評価書に基づく評価法33条1項の審査の結果された許認可等処分に対する取消訴訟によって是正することが評価法の考え方であるというべきである。 イ(ア) 被告は,評価法3 評価書ないし確定評価書に基づく評価法33条1項の審査の結果された許認可等処分に対する取消訴訟によって是正することが評価法の考え方であるというべきである。 イ(ア) 被告は,評価法33条2項の審査が違法となるのは環境への配慮を全く怠ったといえるような例外的な場合に限られるというが,被告の主張する行政裁量の範囲は,評価法制定前の事案において妥当した行政裁量の範囲よりも更に広い行政裁量を説くものであって,評価法が制定された意義を無視するものである。 (イ) 後述するように,事業者のセルフコントロールは事業者にベスト追求の責任と負担を負わせる趣旨であり,事業者の判断を尊重する趣旨ではない。評価法33条の審査において,許認可等権者は,事業者の判断に対して「科学的かつ客観的」に検討を加えなければならないのであって,審査においてその基準を外れる事業者の判断を尊重する余地などはない。 また,評価法は,事業の経済的効果や社会的影響など環境影響以外の面も含めた「総合的な見地から」広く一般に周知して事業の可否に関わる総合的な判断をするための制度ではなく,あくまで環境影響に焦点を絞った評価を目的としており,許認可等処分をするに当たって,許認可等権者に対し,上記基準を逸脱した情報の取捨選択ないし情報の評価を禁じている。許認可等権者の審査は,環境保全の見地のみならず他の要素も含めた総合的な見地からされるとしても,環境保全上- 264 -軽微でない支障が生ずる可能性がある場合には絶対的に許認可等処分をしてはならないし,そうでない場合であってもまた,不合理な比較衡量がされた結果許認可等処分がされれば,その処分は違法となる。 なお,環境影響評価制度は,個々の事業に係る政府の意思決定そのものに一般の人々が参加するための制度ではなく,環境に もまた,不合理な比較衡量がされた結果許認可等処分がされれば,その処分は違法となる。 なお,環境影響評価制度は,個々の事業に係る政府の意思決定そのものに一般の人々が参加するための制度ではなく,環境に配慮した合理的な意思決定のための情報の交流促進を目的としており,市民の意見表明の機会は,住民投票のように市民が直接意思決定を行う制度ではないものの,情報交流の促進を通じて市民の参加権を確保するという側面を有する(甲164の1参照)。 以上のことに鑑みれば,評価法33条2項の審査が違法となるのは環境への配慮を全く怠ったといえるような例外的な場合に限られるとの被告の主張は理由がない。 (ウ) 被告は,免許等の付与は,環境保全上の支障を防止する法益と免許等を付与することによる法益を比較衡量し,総合的に判断するものであるという。 しかし,評価法は,公共性の高低に関係なく平等に環境影響評価の実施及び横断条項の適用を規定しているのであるから,公共性が高い場合には環境影響評価が形骸化するような解釈が評価法の趣旨に反することは明らかである。横断条項の審査においては,環境保全上の支障が一定程度以上に抑えられているという絶対的考慮要素を満たした場合に初めて,免許等を付与することによる法益と比較衡量し,総合的に判断することが許されるのであって,環境保全上の支障が一定程度以上生ずる場合には,この法益がいかに大きくても,これと比較衡量をして免許等を付与することは許されない。評価法の「併せて判断する」という文言は,環境保全上の支障を一定程度以上に抑えるという絶対的考慮要素が満たされていることを前提として,それでもなお- 265 -環境保全上の支障がゼロではない場合に,環境保全上の支障と免許等を付与することにより得られる法益を比較衡量し,総 るという絶対的考慮要素が満たされていることを前提として,それでもなお- 265 -環境保全上の支障がゼロではない場合に,環境保全上の支障と免許等を付与することにより得られる法益を比較衡量し,総合判断により免許等を行わない処分をすることが可能であることを示すものである。 (エ) 被告は,環境影響評価制度が一義的には事業者の自主性に委ねられていることや,環境基本法の趣旨からしても環境への負荷の低減と社会の発展の両立を指向し,その比較衡量を行わなければならないことをも,比較衡量・総合判断の根拠として挙げている。 しかし,前者については,環境影響評価制度が事業者のセルフコントロールを基本としていることは,事業者の判断を尊重する趣旨ではなく,事業者にベスト追及の責任を負わせた趣旨である。つまり,事業者がベスト追求の責任を果たさず,事業者の判断では環境保全上の支障が十分に抑えられない場合には,むしろ積極的に許認可等処分を行わないことが望まれるのであって,事業者のセルフコントロールであることを環境保全上の支障が生じる場合であっても許認可等処分をすることができる根拠として挙げることは誤りである。また,環境基本法4条は,社会の発展を図るとは規定しておらず,持続的に発展できる社会を目指す旨を規定している。持続的に発展できる社会とは,環境に負荷を与えない社会のことであって,環境基本法の趣旨は,社会を発展させるとしても環境に負荷を与えないようにすべきであるというものであって,環境を保全するとしても社会の発展を阻害しないようにすべきであるという趣旨ではない。 (オ) 被告は,環境影響評価制度が事業者のセルフコントロールを基本としており,評価法33条は,セルフコントロールでは不十分な場合に備えて国が環境保全上の支障が いう趣旨ではない。 (オ) 被告は,環境影響評価制度が事業者のセルフコントロールを基本としており,評価法33条は,セルフコントロールでは不十分な場合に備えて国が環境保全上の支障が生じないことを確保するための手段として定められたものであるとし,評価法33条の審査においては,環境保全上の支障の有無のみが審査対象となり,手続的瑕疵は直接の審- 266 -査対象とはならないという。 しかし,事業者のセルフコントロールは,事業者の判断を尊重するための制度ではなく,事業者にベスト追及の責任を負わせるための制度であるから,事業者のセルフコントロールを根拠に,国の審査の範囲を狭く解することは誤りである。むしろ,被告は,事業者がベスト追及型の環境環境影響評価を適切に行っているかどうかを積極的にチェックする必要がある。そして,評価法は,環境影響評価の結果が適切なものとなるよう所定の手続を要求しているのであるから,所定の手続が適切に行われなかった場合には,環境影響評価の結果が適切でないものとなるおそれが生じる。つまり,評価法所定の手続が実施されていない場合には,ベスト追求型の環境影響評価が適切にされたとはいい難い。 したがって,評価法が事業者のセルフコントロールを基本としていることは手続的瑕疵が評価法33条の審査の対象から外れることの根拠とはなり得ないし,むしろ,事業者にベスト追求型の環境影響評価を適切に行わせるために,同条の審査は所定の手続が適切に行われたか否かも審査する場でなければならない。 (カ) また,被告は,事業者が行う環境影響評価はそれ自体行政処分ではなく,処分行政庁が行う許認可処分そのものの手続でもないから,行政処分になぞらえて評価法で定める手続違反が直ちに取消事由となることはないという。 ,事業者が行う環境影響評価はそれ自体行政処分ではなく,処分行政庁が行う許認可処分そのものの手続でもないから,行政処分になぞらえて評価法で定める手続違反が直ちに取消事由となることはないという。 しかし,事業者が行う環境影響評価が行政処分でないからこそ後に続く許認可等処分においてその違法性を争う余地を残す必要があるのであるし,環境影響評価が処分行政庁が行う許認可等処分そのものの手続でなくても,違法性承継の根拠は違反者に対する制裁ではなく,手続違反の事実それ自体にあるので,根拠法や手続主体が異なる手続- 267 -であっても先行・後続関係にある一連の手続であれば先行行為(環境影響評価手続)の違法性を後続行為(許認可処分)が引き継ぐのである。 (キ) 被告は,意見表明の機会は「環境保全の見地からの意見」を一定期間書面で述べることができるということ以上でも以下でもなく,評価法が市民の参加権の確保を趣旨としているということはできないという。 しかし,市民の意見表明が情報収集の手段であるということは,意見表明の一つの機能にすぎない。市民が述べる意見は,環境情報の提供を通して,環境影響が大きいから事業はやめてもらいたい,この環境情報に配慮した事業にしてもらいたいといった事業の賛否まで含み得るものである。市民からの環境情報の収集は,客観的な環境情報を収集するだけでなく,市民が主観的にその環境情報をどれだけ重視しているかという市民の意見を収集することでもある。そして,提供された市民意見に対する事業者の応答義務を定めたことによって,環境情報に対する市民の考え方や事業に対する市民の意見,及びそれらに対する事業者の対応が,評価書上で明らかにされることになる。その結果,評価書に基づいて行われる許認可手続においても,市民が当該環 環境情報に対する市民の考え方や事業に対する市民の意見,及びそれらに対する事業者の対応が,評価書上で明らかにされることになる。その結果,評価書に基づいて行われる許認可手続においても,市民が当該環境情報をどれだけ重視しているか,市民が事業実施に対してどのような意見を持っているかという要素も考慮されることになる。 よって,市民の意見表明は,単なる客観的な情報提供にとどまるものではなく,環境情報に対する市民の意見,事業の実施に対する市民の意見を許認可等に反映させるための制度であり,市民の参加権を確保する趣旨であると考えるべきである。 (ク) 被告は,評価法が24条意見における指摘に従ってそれに沿う措置を必ず講じるように求めているものではなく,事業者による検討の結- 268 -果,その指摘に係る事項の修正を必要と考えないという判断を許容するものであるという。 しかし,評価法が事業者のセルフコントロールを基本とした趣旨は,① 事業を行おうとする者が自らの責任と負担で事業の実施に伴う環境への影響について配慮することが適当であること,② 事業者が事業計画を作成する段階で環境影響についての調査,予測,評価を一体として行うことにより,その結果を事業計画や環境保全対策の検討,施工・供用時の環境配慮等に反映できることの2点にある。つまり,評価法は,事業者に一定の基準をクリアさせることを要求し,かつ,それで足りるという制度は採用せず,事業者自身の負担と責任で最善の環境配慮を検討し,それを適切に事業に反映させる制度を採用したのである。すなわち,評価法は,事業者のセルフコントロールを基本とすることによって,基準クリア型ではなくベスト追求型の環境影響評価を要求しているということである(甲164の1参照)。 事業者のセルフコントロール わち,評価法は,事業者のセルフコントロールを基本とすることによって,基準クリア型ではなくベスト追求型の環境影響評価を要求しているということである(甲164の1参照)。 事業者のセルフコントロールは,事業者にベスト追求型の環境影響評価を要求するための制度であって,事業者に環境配慮を行うか否か,及び行う場合にどのように行うか等に関する裁量を付与したり,事業者の判断を尊重したりするための制度ではない。よって,事業者のセルフコントロールであることが,事業者が大臣意見に従わなくてもよいことの理由になるかのような被告の主張は誤りである。 (ケ) 被告は,事業者には24条意見に従わない自由があるかのように主張する。 しかし,事業者の自主的判断に委ねられているといっても,事業者の自主的判断がベスト追求に沿わないものであれば,許認可等を行わない処分や許認可等に条件を付すことで是正されなければならない。 事業者にベスト追求の責任が課せられている以上,事業者が24条意- 269 -見に従わないことが許容されるのは,事業者が24条意見に従わない方がベスト追求型の環境影響評価に資すると判断した場合のみと考えるべきである。 (2) 環境影響評価手続違反を理由とする本件許可処分の違法性についてア方法書段階での手続違反があること本来,方法書(スコーピング)は,事業特性や地域特性を考慮しながら環境影響評価の項目及び手法の案を記載して住民等からの意見を聴取するためのものである。そして,事業者は,それらの意見を踏まえて具体的な環境影響評価の項目及び手法を決定し,その後に調査に入るなど環境影響評価の手続を進めていき,住民等の意見を反映して計画の見直しを図るという重要な意義を有する。スコーピングが不備であると, て具体的な環境影響評価の項目及び手法を決定し,その後に調査に入るなど環境影響評価の手続を進めていき,住民等の意見を反映して計画の見直しを図るという重要な意義を有する。スコーピングが不備であると,環境影響評価により調査予測すべき項目が欠けている場合やその項目が適切に選定されていないような場合が必然的に起こる。これらの場合には,それに不可欠な項目等についての十分な調査等がされない限り適法な評価書とはいえないことになる。そして,その瑕疵を看過してされた事業許可は違法となってしまう。このように,スコーピングの不備が必然的に違法状態を生起する以上,その不備自体が違法と評価されるべきである。 このように,方法書の手続の目的は,地域や事業の特性に応じて創意工夫のされた環境影響評価を可能にすること,及び事業の内容をより柔軟に変更できる計画の早期段階において,地方公共団体や住民,専門家等の意見を聴取することで,より良い環境配慮を事業計画に効果的・効率的に組み込むことを可能にすることにある。この目的を達成するために,事業者は,方法書の公告縦覧をし,現実に事業計画地付近で生活をしている住民や事業計画地に関心を有する住民から,例えば事業計画地及びその周辺に存在する貴重な動植物の生息地,湧き水や景勝地等の保- 270 -護すべきポイントの情報を収集し,方法書手続時点の事業計画(案)をこれらの情報に配慮して変更していくという作業を行うことになる。 そうすると,方法書の手続が意味を持つためには,最低限,① 方法書が公告縦覧に供される時点において,住民に対して計画の概要が明らかにされていること,② 特に,環境に対して与える影響が大きいと思われる設備等についてはその有無・内容・設置場所等が明らかにされていること,③ 公告縦覧により住民から入手した情報に基 画の概要が明らかにされていること,② 特に,環境に対して与える影響が大きいと思われる設備等についてはその有無・内容・設置場所等が明らかにされていること,③ 公告縦覧により住民から入手した情報に基づいて評価法12条の調査が行われることが必要である。①②が満たされなければ住民が情報を提供することができないし,③が満たされなければたとえ有力な情報を入手できてもそれが環境影響評価に反映されず,無意味だからである。 ところが,本件方法書の公告縦覧が行われたのは基本計画未発表の時点であったから,住民は,本件事業がどの場所に,自然環境のどの要素に,どの程度の影響を与えるかを判断する材料を与えられていなかった。 そのため,どれほど有力な環境情報を保有している住民であっても,同事業に当該環境情報が関連性を持つのか否か,持つとしてもその程度はいかほどのものかを判断することができず,その結果,およそ環境情報を収集することが期待できない公告縦覧手続となってしまった(前記①の点の欠如)。この点,被告は,方法書の縦覧(作成)に先立って,本件空港基本計画案が確定していなければならないわけではないと主張するが,「確定」かどうかは別として,方法書が,事業特性や地域特性を考慮しながら環境影響評価の項目及び手法の案について住民等が意見を述べるための手続である以上,住民等が相当の意見形成をすることができる程度に具体性のある事業情報が公告縦覧されていることが評価法の趣旨と解される。 また,本件方法書には本件空港建設によって設置される航空障害灯や- 271 -進入灯の記載がなく,県は,その公告公衆縦覧後に開かれたP23委員会で初めてその設置を明らかにした。このことは非常に大きな問題である。なぜなら,それらの設置工事及び完成後の設備が夜間に発する光が野生生物の生態 がなく,県は,その公告公衆縦覧後に開かれたP23委員会で初めてその設置を明らかにした。このことは非常に大きな問題である。なぜなら,それらの設置工事及び完成後の設備が夜間に発する光が野生生物の生態に大きな影響を与える可能性があり,それゆえ環境影響評価における重要な評価項目の一つとされているところ,障害灯や進入灯の設置位置,設置向き及び構造等が不明であれば,地形等の背景的要因による複合的影響も含めどの場所に生息するどのような種にどの程度の影響を与えるおそれがあるか,また影響を最小化する方法は何かについて大まかな予測を行うことはおろか,どのような情報を出せばよいかも判断する余地がないからである(前記②の点の欠如)。被告は,方法書の段階では航空障害灯の位置・形状等が決定されていなかったため,本件主務省令2条1項5号に照らし,その記載は必要はなかったと主張しているが,少なくとも本件空港建設予定地が決定されており,そこに航空障害灯を設置すべき高地になっている部分が存在することは明らかであり,そのため進入灯を設置する必要があることは空港を設置しようとする事業者にとっては常識というべき事柄であって,位置や形状が決まっていなかったから,記載がなくても問題ないという弁解は子どもだましにすぎない。むしろ,県の担当者は,本件方法書を準備する段階でこれらを設置すべき場所やその形状が分かっていたはずであるが,航空障害灯の設置が想定される場所は,近くに,絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律により国内希少野生動植物種に指定されている特別天然記念物で絶滅危惧1A類のカンムリワシの営巣木が確認されているなど貴重な野生生物の宝庫であることが発覚することをおそれて意図的に航空障害灯の位置・形状等の決定時期を遅らせたことが合理的に推認できる。 以上 惧1A類のカンムリワシの営巣木が確認されているなど貴重な野生生物の宝庫であることが発覚することをおそれて意図的に航空障害灯の位置・形状等の決定時期を遅らせたことが合理的に推認できる。 以上のような状況で行われた公告縦覧手続では,住民から有力な環境- 272 -情報を収集できないことは当然である。県のやり方からは,方法書の公告縦覧手続により地域住民から有力な環境情報を提供してもらい事業に役立てようという意識が微塵も感じられない。 その上,県の作成した本件方法書は,これから実施する環境影響評価の方法をどうするかという点が主体のものではなく,大半は既に実施された調査の結果をまとめたものであった。県は,実質上,本件方法書の縦覧前に住民等の意見を聴取することもなく評価法12条の調査に着手し,ほとんどの調査を終えていた(被告は,県が方法書の縦覧前に行った調査は,評価法に基づく調査に先立って,本件主務省令5条1項2号に掲げる「地域特性」を把握する必要があったために,任意に行ったものであるというが,調査の大部分が本件方法書の公告縦覧前に行われたという事実に変わりはないから,方法書手続違反の存在という観点からはこのような反論は無意味である。)。県は,上記のような無意味な公告縦覧手続でさえ,同条の調査の後に行ったのであり,本来であれば方法書に基づいてこの調査は行われなければならないのであるから,このような順序の逆転は方法書の存在意義を無に帰し,環境影響評価制度を骨抜きにして,事業を既成事実化するものである。 以上のとおり,本件方法書の手続は,方法書手続の意義を完全に没却するものであることは明らかである。方法書の手続は,環境影響評価手続における調査対象事項を過不足ないものにするために評価法により採用されたものであり,調査対象の決 続は,方法書手続の意義を完全に没却するものであることは明らかである。方法書の手続は,環境影響評価手続における調査対象事項を過不足ないものにするために評価法により採用されたものであり,調査対象の決定は環境影響評価手続全体の範囲を決定付ける。方法書の手続に不備があると,その後どれほど慎重な手続が行われたとしても重要な点を見落としていたということになりかねず,環境影響評価手続全体を無に帰すおそれがある。このように重要な方法書の手続を省略したといっても過言でないほど形骸化した手続を行った県の違反は,極めて重大である。 - 273 -イ準備書段階での手続違反があること準備書に不備があったために,対象事業の目的及び内容,調査等の項目及び手法,環境影響評価の結果,環境保全対策等に修正を加える必要があることを示唆する「環境の保全の見地からの意見」が出される機会が失われた場合,そのような意見に基づき準備書を修正するという評価法が予定する中心的な手続が無に帰することになるから,その違法性は非常に重大であり,取消事由となることが明らかな違法であるといわなければならない。 (ア) 平成15年度コウモリ類調査委託業務報告書,本件準備書及び本件評価書を対比すると,本件準備書には,平成15年度コウモリ類調査委託業務報告書の記載よりもコウモリの生息数や洞窟の利用頻度が少なく記載され,本件評価書で平成15年度コウモリ類調査委託業務報告書の記載に戻されている部分が極めて多数ある(数値等の変わり方は様々であるが,特に,空港建設予定地及びその周辺のAないしE洞窟については,平成15年度報告書よりも本件準備書の方が数値が小さい,あるいは利用頻度が少ない方向で数値等が変えられており,本件評価書では平成15年度報告書と同様の数値等に戻さ の周辺のAないしE洞窟については,平成15年度報告書よりも本件準備書の方が数値が小さい,あるいは利用頻度が少ない方向で数値等が変えられており,本件評価書では平成15年度報告書と同様の数値等に戻されている部分が多数目につく。)。特に,AないしE洞窟の利用頻度について,コウモリ類調査委託業務報告書及び本件評価書では通年にわたり利用とされているにもかかわらず,本件準備書では一時的に利用とされていることは重大である。 AないしE洞窟は本件事業で破壊される等の影響を受ける洞窟である。これらの洞窟が一時的にしか利用されていないという記載を見ればこれらの洞窟はコウモリ類の生活の本拠ではないと推測されるが,通年にわたり利用されているという記載を見ればこれらの洞窟がコウモリ類の生活の本拠であると推測される。 - 274 -本件準備書を見た関係都道府県知事,関係市町村長及び有意見者は,コウモリ類が本件事業の影響を受ける洞窟を生活の本拠としていることを知れば,洞窟にどれだけの影響があればコウモリの生活本拠として成立し得なくなるのか,生活の本拠を失うことがコウモリ類にどのような影響を与えるか,他に生活の本拠とし得る洞窟が石垣島内に存在するか,存在するとしても当該洞窟をすみかとしていた別のコウモリとの関係や餌の量等からして現実的であるのかといった点から様々な意見が寄せられることが期待でき,これらの意見に基づき検討すれば,AないしE洞窟に破壊等の影響を与えることを回避するために計画地の変更や計画地内における施設の配置変更,洞窟への影響をより低くするための保全措置を行う等修正が必要と判断される可能性が十分にあった。他方,AないしE洞窟が一時的に利用されるにすぎないと認識されれば,コウモリ類が生活の本拠を失うという視点からの意見が出されることは期待でき 措置を行う等修正が必要と判断される可能性が十分にあった。他方,AないしE洞窟が一時的に利用されるにすぎないと認識されれば,コウモリ類が生活の本拠を失うという視点からの意見が出されることは期待できない。 そうすると,AないしE洞窟がコウモリ類の生活の本拠であるにもかかわらずそうでないと誤認させるような不備は,対象事業の目的及び内容,調査等の項目及び手法,環境影響評価の結果,環境保全対策等に修正を加える必要性があることを示唆する意見が出される機会を失わせるほどの重大な不備である。 (イ) 「新石垣空港コウモリ類調査業務(その2)報告書」(平成15年3月県土木建築部作成)においては,「新空港の建設によって,A洞窟とD洞窟(カグラコウモリ)のコロニーが脅かされることは明らかである。」と記載されているのに対して,本件準備書では「A洞窟やD洞窟がコウモリ類に利用されなくなる可能性は低いと考えられる。」と正反対の評価が記載されていた。 この点,被告は,両評価は前提条件が異なるから特段おかしなこと- 275 -ではない旨を主張しているところ,その趣旨は,主に環境保全措置を講じることを前提としているか否かが異なるということのようである。 つまり,被告の主張は,本件事業はコウモリ類に悪影響を与えるものであるが,環境保全措置を講じることによりその悪影響は回避できるというものである。 しかし,被告がいう環境保全措置及びその効果こそ,正に準備書に記載されなければならない事柄である。つまり,準備書を作成し,これを市町村長,都道府県知事に送付するとともに公告し縦覧に供する手続は,多くの視点からの意見を募ることで準備書段階で暫定的に定められている環境保全措置の不備をできる限り洗い出し,最適のものへ近付けていくことをも目的とする手続である。 とともに公告し縦覧に供する手続は,多くの視点からの意見を募ることで準備書段階で暫定的に定められている環境保全措置の不備をできる限り洗い出し,最適のものへ近付けていくことをも目的とする手続である。そこでは当然,準備書段階において暫定的に予定されている環境保全措置及び事業者が予測する当該措置の効力に対する検証的意見も期待されている。よって,少なくとも環境保全措置がなければコウモリ類に無視できない影響を与えることが予想される本件のような場合においては,環境保全措置を講じるという前提を記載せずに,コウモリ類に与える影響は小さいという評価だけを準備書に記載することは無意味である。記載すべきは,その段階で事業者が予定している環境保全措置がどのようなものであり,事業者はその措置を採ることによって当該措置がない場合と比べてどのような効果を期待しているのかという点であり,この点について検証を受けるべく,関係都道府県知事,関係市町村長に送付するとともに公告し縦覧に供しなければならないのである。したがって,仮に,被告のいうとおり,準備書段階において,県が環境保全措置を採ることによってコウモリ類調査報告書と正反対の評価になると考えていたのであれば,想定していた当該措置の詳細を記述し,さらに,その措置を採らなければ本件事業はコウモリ類に悪影響を与えるもの- 276 -であるが,当該措置を採ることによりそれは回避できることを明確に記載しなければならなかった。そうすることによって,初めて当該環境保全措置に対する検証的意見が出されることを期待できるからである。 本件準備書のように,コウモリ類に与える影響は少ないという県の評価のみが記載されていると,本件事業は元々コウモリ類に大した影響を与えない事業であるとの誤解を招くことは当然である。そして,本件準備書 本件準備書のように,コウモリ類に与える影響は少ないという県の評価のみが記載されていると,本件事業は元々コウモリ類に大した影響を与えない事業であるとの誤解を招くことは当然である。そして,本件準備書にはコウモリ類調査報告書とは評価が異なるという事実すら記載されていないにもかかわらず,その点を指摘されると「前提条件が異なる」などと弁解をするところをみると,本件事業は環境保全措置を講じなければコウモリ類に悪影響を与えるものであるという事実を隠そうとしたものと疑われても仕方がないであろう。以上の次第で,上記不備がなければ環境保全措置の妥当性及び効果に関する様々な意見が寄せられた結果,環境保全措置が見直される可能性は十分にあったのであるから,上記不備が対象事業の目的及び内容,調査等の項目や手法,環境影響評価の結果,環境保全対策等に修正を加える必要性を示唆する意見が出される機会を奪うほどの不備であることは明らかである。 (ウ) 本件準備書には,絶滅危惧種コウモリ類に関する一部のデータが解析中として記載されていない上,投稿中で学術的な評価を経ていない未発表の「論文」が評価の根拠として引用されるなどしていた。解析中として記載されなかったデータが存在する場合,準備書を見た者は,そこに記載されている環境影響の予測が正しいかどうか判断できないから,この点に関する意見を差し控えざるを得ないし,解析結果を加味した場合に準備書の記載にそごが生じるかどうかという点も判断しようがない。しかも,沖縄の復帰以後激減し,環境省レッドデータブ- 277 -ックの絶滅危惧1B類に指定されていたコキクガシラなどコウモリ類の保護が最大の焦点になっていたにもかかわらず,これら絶滅危惧種コウモリ類に関する一部のデータが解析中として記載されていなかったことは, クの絶滅危惧1B類に指定されていたコキクガシラなどコウモリ類の保護が最大の焦点になっていたにもかかわらず,これら絶滅危惧種コウモリ類に関する一部のデータが解析中として記載されていなかったことは,後に修正すれば足りるという性質のものではない。準備書として一応の体裁は整えられているように見えるとしても,焦点となっている最も重要な部分において未完成の状態のまま公告され縦覧に供された事実は消えないのであり,本件準備書には,評価法14条1項7号イが求めているその時点での真正かつ適正であるべき「調査の結果の概要並びに予測及び評価の結果」が記載されているとはいえない。 この点,被告は,他のデータに基づき環境影響の予測・評価は十分にでき,実際,解析結果のデータを加味しても当初の予測判断に誤りは認められなかったという。しかし,被告の主張は,県が他のデータで十分であると判断したというものであり,解析結果を加味しても予測判断に誤りはないと判断したのも県である。被告の主張は,当該事業の環境影響評価に,関係自治体,環境保全の見地から意見を有する者を参加させ,その検証にさらすという評価法の趣旨に真っ向から反する主張であるというほかない。 解析中のデータが絶滅危惧種コウモリ類に関わるものであったことに照らし,上記不備がなければ絶滅危惧種コウモリ類に対する影響に関する意見が寄せられた可能性があり,この意見に基づき絶滅危惧種コウモリ類に関する環境保全措置が見直される可能性が十分にあった。 よって,上記不備が対象事業の目的及び内容,調査等の項目や手法,環境影響評価の結果,環境保全措置等に修正を加える必要性を示唆する意見が出される機会を奪うほどの不備であることは明らかである。 ウ代替案が検討されていないこと- 278 - 法,環境影響評価の結果,環境保全措置等に修正を加える必要性を示唆する意見が出される機会を奪うほどの不備であることは明らかである。 ウ代替案が検討されていないこと- 278 -本件方法書第2章8頁では,「(5) 新石垣空港建設位置の選定」の項目で,代替案を検討した経緯を記載している。しかし,方法書のこの箇所での位置選定に関する経緯の検討は,平成13年8月に設置されたP1委員会においてされた議論の概略が示されたのみの極めて不十分なものであり実質を伴っていない(しかも,このP1委員会での決定は,全員一致というルールを踏みにじり,自然環境に配慮すべきであるという意見を多数の意見で押しつぶしたものであり,十分な議論がされた結果ともいい難い。)。そして,本件の環境影響評価手続では,他に代替案の検討はされていない。 この点,被告は,代替案を検討するかどうかは事業者の判断に委ねられるべきものであり,当該検討が行われなかった場合には,もとより代替案の検討結果が評価書に記載されることはないと主張する。確かに,環境保全措置を決定する過程で常に代替案の検討が必要となるわけではないし,代替案検討の必要性の判断は環境影響評価手続の主体である事業者が行うことが原則であることは,被告の主張するとおりである。 しかし,新石垣空港設置事業に関しては,長年にわたり複数の事業計画地が検討されてきた経緯があり,α4岳陸上案以外にも複数の有力候補地が存在した。しかも,環境影響評価手続開始時においては,一応α4岳陸上案がP1委員会によって決定されていたものの,その決定経緯は極めてずさんなものであり,α4岳陸上案を建設地とする合理的な根拠は存在しなかった。すなわち,α4岳陸上案については過去に何らの環境調査も行われていない唯一の候補地であったため, の,その決定経緯は極めてずさんなものであり,α4岳陸上案を建設地とする合理的な根拠は存在しなかった。すなわち,α4岳陸上案については過去に何らの環境調査も行われていない唯一の候補地であったため,P1委員会の審議の中では,公益委員を含めて数人の委員から,α4岳陸上案の調査をしてから比較検討するべきであるとの意見が出ていたにもかかわらず,県は,調査には時間が掛かる等の理由を述べ,決まってから調査するとしてこれらの委員の提言を受け入れなかった。そのため,環境保全の観- 279 -点から候補地の比較検討を行う際,同委員会に県が提供した資料(甲73の自然環境の改変(環境保全上の課題)比較一覧表)においては,α4岳陸上案の自然環境に関するデータは,同案の比較的近くに位置するα4岳東案及びα21案のデータをほぼ機械的に足し合わせたデータでしかなく,環境影響評価実施以降その保全が重要な議論の対象になっているコウモリ類やカンムリワシのことは一切記載されていなかった。このようなずさんな資料に基づいて,環境保全の観点からの審議は行われ,さらに,選定委員の一人である自然保護団体の職員が,環境保全の観点からα4岳陸上案に反対したにもかかわらず,委員会発足当初からの原則であった全会一致による位置選定というルールを強引に突破して,α4岳陸上案が強行的に選定された。このような経緯をそんたくすれば,事業地の変更が現実的な選択肢であったことはもちろん,むしろ,環境影響評価の結果を踏まえて初めてα4岳陸上案の妥当性を検討し得るというべき状況であったのである。 また,過去2度のα3における新石垣空港建設事業が国際的にまで広がったサンゴ礁保全運動によって白紙撤回をせざるを得ない状況に追い込まれた経緯を踏まえ,しかも,α4岳陸上案がそのα3海域至近の陸上部に空港を建 2度のα3における新石垣空港建設事業が国際的にまで広がったサンゴ礁保全運動によって白紙撤回をせざるを得ない状況に追い込まれた経緯を踏まえ,しかも,α4岳陸上案がそのα3海域至近の陸上部に空港を建設するというものであることを考慮すれば,事業地を選択する際の視点として,自然環境保全上の観点は特別に重視されなければならないものであることは論を待たない。しかも,事業計画地の変更という選択肢が自然環境に与える影響を最も大きく左右する環境保全措置の一つとして位置付けられる。 このように,計画段階において複数の候補地があり,しかも,その段階での環境保全上の検討が不十分であり,環境影響評価手続開始時点においても他の候補地への変更が現実的な選択肢として残されており,候補地を選択するに当たって環境保全上の観点が特に重視されるような場- 280 -合,環境影響評価手続を行う事業者は,事業計画地の適否を再検討しなければならない義務を負うというべきであり,環境影響評価手続がこれに違反することは,許認可等処分の取消事由となるほど重大な違法であるというべきである。このことは,事業計画地の変更という環境保全措置の特殊性からしても裏付けられる。すなわち,いかなる環境保全措置を講じるかが原則として事業者の判断に委ねられるのは,事業者が手抜きの環境保全措置の検討を行ったとしても評価法33条1項の審査によって許認可等がされないという形で是正され得るからである。しかし,事業計画地の変更という環境保全措置に関しては,それが環境影響評価手続において検討され,その結果が評価書ないし確定評価書に記載されていなければ,評価法33条1項の審査が行われる際には当該事業計画地が既成の前提として扱われてしまい,許認可等権者が事業計画地の変更という環境保全措置の適否を審査することなく許 確定評価書に記載されていなければ,評価法33条1項の審査が行われる際には当該事業計画地が既成の前提として扱われてしまい,許認可等権者が事業計画地の変更という環境保全措置の適否を審査することなく許認可等が行われてしまう可能性が高い。このように,事業計画地の変更という環境保全措置は,他の環境保全措置とは性質を異にするものであり,このことからしても,事業計画地の変更という環境保全措置を検討するか否かを決める際の事業者の裁量は,他の環境保全措置と比べて相当程度狭いと考えなければならない。 本件評価書は,評価法21条2項1号,14条1項7号ロ括弧書きに反するものである。また,本件においては,事業計画地の変更という環境保全措置の検討すなわち代替案の検討を行うことが事業者の義務であったというべきであり,それにもかかわらず環境影響評価手続において代替案の検討がされなかったことには本件許可処分の取消事由となる重大な違法がある。 エ説明責任が果たされていないこと本件補正書の4-1頁以下に記載されている方法書に対する住民意見- 281 -の概要とこれに対する事業者の見解,及び11-1頁以下に記載されている準備書に対する住民意見の概要とこれに対する事業者の見解において,事業者の見解が住民意見に対する回答になっていないものがあり,これが看過されたまま許可が出された点は説明責任不履行による違法事由となる。 また,本件補正書における本件方法書及び本件準備書に対する住民意見への事業者の見解は,一つ一つの住民意見に対して述べられたものではなく,いくつもの住民意見を無理やり一つの項目にまとめ,それらに共通する意見やあるいは一部の意見を恣意的に選択して表明する方法で述べられている。そのため,次のように,事業者の見解が明らかにされていな く,いくつもの住民意見を無理やり一つの項目にまとめ,それらに共通する意見やあるいは一部の意見を恣意的に選択して表明する方法で述べられている。そのため,次のように,事業者の見解が明らかにされていない住民意見(意見の一部も含む。)も多く,これも当然のことながら説明責任不履行による違法事由となる。この点,被告は,意見を一括したり要約したり,環境の保全の見地からの意見と捉えられないものについて対応しないことは問題ないという。しかし,原告らが主張しているのは,環境の保全の見地からの意見について一括ないし要約の仕方が不適当であるということであって,一括ないし要約それ自体を否定しているわけではない。 (ア) 本件補正書の4-18頁の最上列では,立地を検討するに当たって現空港拡張案を候補に入れないのはおかしい旨の指摘がされているが,この点に関する事業者の見解は「現空港の滑走路延長ができない理由は準備書に記載しています。」というものである。当該住民意見の趣旨は,それぞれ長所と短所がある案を比較検討するに当たって,現空港拡張案だけ最初から検討に値しないとして比較の対象にすら含めないのはおかしいとして,現空港拡張案を候補に入れなかった点を問う趣旨であるのに,事業者の見解は現空港拡張案の短所を指摘するのみであって,比較の対象に含めない理由にはなっておらず,住民意見に- 282 -対する回答にはなっていない。 この点,被告は,環境影響評価実施前の位置選定経緯とともに,現空港の滑走路延長が種々の事情から不可能ないし極めて困難であるという趣旨を示しているから,回答はされているという。しかし,この住民意見は,環境影響評価実施前の位置選定経緯とは別に,環境影響評価手続において代替案として検討してもらいたいという趣旨と解されるから,環境影響評 しているから,回答はされているという。しかし,この住民意見は,環境影響評価実施前の位置選定経緯とは別に,環境影響評価手続において代替案として検討してもらいたいという趣旨と解されるから,環境影響評価実施前の位置選定経緯を示しても回答にならない。また,この住民意見は,客観的に見れば極めて合理的と思われる現空港拡張案をなぜ検討対象から外すのかというもっともな疑問を提示する趣旨と解されるから,単に現空港拡張案のデメリットを指摘するだけでは不十分である。現空港拡張案を検討対象からすら外すという不自然な選択に対して現実に疑問が寄せられているのであるから,県は現空港拡張案を検討対象に加えるべきであったし,少なくとも,環境影響評価実施前の位置選定経緯よりも進んだ比較検討結果を示す必要があったというべきである。 (イ) 本件補正書の4-22頁の下から3番目の列には,基本計画が発表されないうちに環境影響評価手続に入るのは順序が逆ではないかとの意見があるが,これに対する事業者の見解は一切ない。 (ウ) 本件補正書の11‐5頁最上列及び次の列には,赤土が地下浸透ではろ過されず地下水脈あるいは地下の空洞を通って海へ流入するおそれがあるとの意見の中に,「地下水系ルートさえ把握していない」という指摘があるにもかかわらず,それに関する事業者の見解は一切ない。この点,被告は,県が濁水浸透ろ過に関する見解を述べているので足りるというが,地下水系ルートを把握していないことに対する疑問が呈されているのであるから,県は,地下水系ルートを把握する必要はないと考えたのか,把握することが望ましいが把握しなくても問- 283 -題ないと考えたのか,それとも把握できなかったのかという点について,理由とともに回答を示す必要があったというべきである。 いと考えたのか,把握することが望ましいが把握しなくても問- 283 -題ないと考えたのか,それとも把握できなかったのかという点について,理由とともに回答を示す必要があったというべきである。 (エ) 本件補正書の11-33頁の最下列では,コウモリ類の餌場確保について,関係機関に要請するだけでは関係機関の協力が得られない可能性があるから不確実である,周辺緑地の公有地化等,緑地を確実に担保する手段とその面積を明記する必要があるとの住民意見に対して,「事業実施区域周辺の餌場となりうる場所については緑地の確保を関係機関に要請してまいります。」との事業者の見解を記載するのみであり,実質的な回答が全くない。 オ 24条意見に対応していないこと(ア) 本件国交大臣意見の第1項(以下,本件国交大臣意見の項目番号により,その第1項を「本件国交大臣意見1」,その第2項を「本件国交大臣意見2」というように呼称する。)は,「小型コウモリ類が出産・ほ育の場として利用しているA洞窟及びD洞窟については,その保全に万全を期すること。」とする。これは,本件工事によって,B,C,Eの各洞窟を元のままの状態で保全しないことにした結果として,この地域でのコウモリ類の生息を確保するためには,残されたA及びD洞窟の保全が不可避となることに鑑み出された意見であり,A及びD洞窟がこの地域に生息するコウモリ類の出産・ほ育の場所であり続けることができるよう確実な措置を採ることを求めるものである(本件国交大臣意見1には抽象的な表現が用いられているが,あえて本件国交大臣意見2以下とは別個に付されているのであるから,本件国交大臣意見2以下とは別個の取り組みを指示していると解するのが当然であり,24条意見が「環境の保全上の支障の防止」のレベルにとどまらず,よ 交大臣意見2以下とは別個に付されているのであるから,本件国交大臣意見2以下とは別個の取り組みを指示していると解するのが当然であり,24条意見が「環境の保全上の支障の防止」のレベルにとどまらず,より高い「環境の保全」のレベルを確保する観点から事業者の自主的な取組を促進するために述べられるものであることか- 284 -らしても,本件国交大臣意見1は,本件国交大臣意見2以下と別個に,より高い環境保全への取り組みを指示していると解すべきである。)。 これに対し,県は,本件補正書に,A,D洞窟について,コウモリ類の採餌場所への移動経路及び洞口環境並びに周辺環境の保全に万全を期すために,A,D洞口周辺の土地を取得することを追記した旨(6-12-256頁,317-318頁,7-63頁),A洞窟の奥部より海側の上部に設置するドレーン層は,A洞窟の奥部には影響を及ぼすことはないと考えられるが,A洞窟奥部への影響をより確実に回避するため,ドレーン層を更に下流側に移動して,より万全な対策を講じることを追記した旨を記載した(6-12-256~258頁)。 しかし,A及びD洞窟洞口周辺環境の保全のための土地の取得は,本件評価書にも,土地の取得を前提として「ゴルフ場残地を利用して」という表現で記載されており(乙19の7-58頁),本件国交大臣意見を受けての対応として新たに記載されたものではない。また,A洞窟奥部の上部に設置するドレーン層を下流側に移動をすることは,本件国交大臣意見4で求められたものであり,本件国交大臣意見2以下の他に独自の更なる対応(措置)を求める本件国交大臣意見1への対応ではない。県は,本件国交大臣意見1に何ら対応していないというべきである。本件国交大臣意見1の指摘に対応せずに本件事業を遂行すれば,A及びD洞窟においてコウモリ類 を求める本件国交大臣意見1への対応ではない。県は,本件国交大臣意見1に何ら対応していないというべきである。本件国交大臣意見1の指摘に対応せずに本件事業を遂行すれば,A及びD洞窟においてコウモリ類の保全を図ることは困難になる。B,C及びE洞窟の改変によるコウモリ類への悪影響は,少なくとも残存するA及びD洞窟の最大限の潜在能力によって低減することが必須であるから,そのA及びD洞窟においてコウモリ類の保全が困難になれば,コウモリ類の絶滅の危険は飛躍的に高まる。 (イ) 本件国交大臣意見2は,本件事業の実施に伴い消失するとしている- 285 -B,C及びE洞窟については,できる限りコウモリ類が継続してこれらの洞窟を利用できるよう,実態,機能等について専門家の指導・助言を得た上で,可能な限り保全し,また,検討の過程及び講じる措置を評価書に記載することとする。これは,消失するB,C及びE洞窟の残存する空間を小型コウモリが利用できるように保全,工夫することを求めるものである。 これに対し,本件補正書では,「B,C,E洞窟は,地下水の水みちであり,地下の空洞として残存することから,B洞窟は新たな洞口を創設する。C洞窟はトンネルを設け,敷地外に創出する緑地に新たな洞口を創設する。E洞窟は洞口部に溢水の受け皿枡を設置し,ボックスカルバートで導水することから,コウモリ類の利用に配慮して,ボックスカルバート内の工夫,洞口付近への樹林の植栽等を行う。また実施に向けては,さらに専門家の指導助言を得た上で,具体的な形状等を決定することを追記した。」とする(7-68~71頁)。これらは,地下に空洞として残存するこれらの洞窟を空港敷地外までトンネルなどでつなげて新たな洞口や緑地を創設するというものである。 しかし,本件評価書にも記載されている とする(7-68~71頁)。これらは,地下に空洞として残存するこれらの洞窟を空港敷地外までトンネルなどでつなげて新たな洞口や緑地を創設するというものである。 しかし,本件評価書にも記載されているとおり,工事中は事業地の植生が完全にはぎ取られた状態になっており,従前の状況と全く異なった状態が現出しており,当然ながらコウモリ類の利用は期待できない。そのため,本件空港の供用後においても,一旦利用できない状態になって空洞のみが残っている場所に再びコウモリ類が戻って来るかは極めて疑わしい。特に,E洞窟については航空機が着陸する滑走路の直下に当たるため,一層疑問である。要するに,空洞に出入りできるようにするというだけでは,コウモリ類の継続利用は期待できないのである。本件国交大臣意見2はコウモリ類の継続利用を要求するものであるから,空洞に出入りできることは当然の前提として,工事期- 286 -間中にコウモリ類の利用がなくなってしまった空洞や,滑走路の直下に残された空洞に,いかにしてコウモリ類を戻ってこさせるかという方策を要求しているのに,本件補正書では,その前提部分だけを記載しているに過ぎず,本件国交大臣意見2に対応したとは到底いえない。 被告は,本件国交大臣意見2はコウモリ類を戻ってこさせる方策まで検討するよう求めているものではないというが,本件国交大臣意見2はB,C及びE洞窟についてコウモリ類の継続利用を確保することを要求しているのであるから,まずは工事の影響によってコウモリ類が移動しない方策が重要であるが,工事の影響によってコウモリ類が移動してしまった場合には,戻ってこさせる方策が継続利用確保の方策となる。また,被告は,乙第46号証や証人P22の証言を根拠に,工事によってコウモリ類が減少したり戻ってこなくなったりすることはな 移動してしまった場合には,戻ってこさせる方策が継続利用確保の方策となる。また,被告は,乙第46号証や証人P22の証言を根拠に,工事によってコウモリ類が減少したり戻ってこなくなったりすることはないともいうが,今後の工事進行に伴うコウモリ類への影響を予測することは極めて困難であり(甲4参照),このような楽観的な予測を根拠に対策を採らないとすることはできず,コウモリ類が減少したり戻ってこなくなったりする場合を想定して対策を講じなければならない。 (ウ) 本件国交大臣意見3は,「事業実施区域及びその周辺で,A~E洞窟以外に確認されている洞窟については,コウモリ類の利用について,追加調査を行うこと。調査の結果,コウモリ類の利用が確認された場合は,できる限りコウモリ類が継続してこれらの洞窟を利用できるよう,専門家の指導・助言を得た上で,可能な限り保全すること。 また,検討の過程及び講じる措置を評価書に記載すること。」とする。 これは,事業用地内の洞窟の周辺は植生が消失させられ,コウモリ類が生息し得ない環境になるため,事業地外の洞窟からコウモリ類が発見された場合には,その洞窟におけるコウモリ類の生息状況の調査,- 287 -それに基づく保全措置が極めて重要なものとなるから,事業実施区域及びその周辺で確認されているAないしE洞窟以外の洞窟のコウモリ類の利用についての追加調査を求め,コウモリ類が確認されれば継続して利用できるように保全することを求めるものである。 これに対し,本件補正書では,「事業実施区域及びその周辺で,A~E洞窟以外に確認されている11洞窟について,平成17年5月,6月に小型コウモリ類の利用状況調査を実施した。調査の結果,数個体が確認された⑨,⑩洞窟は,事業実施区域外であり,事業により改変されることはない。事業実施区域内の 11洞窟について,平成17年5月,6月に小型コウモリ類の利用状況調査を実施した。調査の結果,数個体が確認された⑨,⑩洞窟は,事業実施区域外であり,事業により改変されることはない。事業実施区域内の②,④洞窟の空間は残存し,引き続き水みちとなるようボックスカルバートで飛行場の外側に導水する計画であるが,ボックスカルバートについては小型コウモリ類が洞窟への新たな出入り口として利用できるよう配慮することを追記した。」としている(6-12-177~181頁,7-70~71頁)。要するに,県は,事業実施区域及びその周辺の11洞窟について,平成17年5月及び6月だけ追加調査を行ったということである。 しかし,コウモリ類の生態を調査する場合に,平成17年5月及び6月の時期の調査だけでは,各洞窟のコウモリ類の利用を調査したことにならない。コウモリ類は,季節に応じて利用する洞窟を変えるため,通常は複数年にわたる調査,最低でも1年を通じた調査が不可欠である。国土交通省の外郭団体がまとめた「コウモリ類の調査の手引き(2),(3)」をみても,複数年かつ通年の調査が必要であることが指摘されている(甲51の10,11頁)。県は,自らの事業日程に合わせてこのような短期間の形だけの調査を行ったにすぎない。県は,この調査結果等に基づき11洞窟についてコウモリ類が集団で継続して利用する洞窟でないと結論付けているが,全く科学的なものとは評価できない(甲122の6頁,証人P21)。県の対応は,本件国交- 288 -大臣意見3への対応には全くなっていない。さらに,「洞窟の空間は残存し,引き続き水みちとなるようボックスカルバートで飛行場の外側に導水する計画である」とする点については,前述の本件国交大臣意見2で指摘したのと同様,空間に出入口を付けるだけではコウモリ類 間は残存し,引き続き水みちとなるようボックスカルバートで飛行場の外側に導水する計画である」とする点については,前述の本件国交大臣意見2で指摘したのと同様,空間に出入口を付けるだけではコウモリ類の継続利用は期待できず,出入口を付けた上でどう継続利用を促すかという本題に触れていない点で,やはり本件国交大臣意見への対応とは評価できない。 被告は,最低でも1年間の調査が必要であると指摘した甲第50号証及び第51号証の記載は,唯一絶対の調査方法を記載したものではないという。しかし,被告は,わずか2か月間の調査が妥当であった根拠を何一つ挙げることができていない。仮に,甲第50号証及び第51号証の記載が被告主張のようであったとしても,例外を一切認めない趣旨ではないという程度のことであって,原則として1年以上の調査が必要であることは明らかであり,わずか2か月間の調査で1年以上の調査の代替となり得るという特別事情がない以上,十分な調査であったと考える根拠はない。また,被告は,環境保全措置は事業者の自主的判断に委ねられるべきものであると主張しているが,事業者の自主的判断が行われることは事業者の判断を尊重する趣旨ではなく,事業者にベスト追求の責任と負担を負わせたものであることは既に述べたとおりである。 (エ) 本件国交大臣意見4は,「ヤエヤマコキクガシラコウモリが出産・ほ育を行うA洞窟奧部の上部にドレーン層が設置される場合は,A洞窟奥部の地下水に影響を及ぼすことがないよう,ドレーン層の位置,浸透方法についてさらに検討を行い,それらの見直しを含めた追切な措置を講じること。また,検討の過程及び講じる措置を評価書に記載すること。」とする。これは,現状のままではドレーン層がA洞窟奥部- 289 -の地下水に悪影響を及ぼすから,ド 見直しを含めた追切な措置を講じること。また,検討の過程及び講じる措置を評価書に記載すること。」とする。これは,現状のままではドレーン層がA洞窟奥部- 289 -の地下水に悪影響を及ぼすから,ドレーン層の位置と浸透方法を再検討して,ドレーン層がA洞窟奥部の地下水に影響を及ぼすことがないようにすることを求めるものである。 これに対し本件補正書では,「A洞窟の奥部より海側の上部に設置するドレーン層が地下水へ及ぼす影響を検討したところ,A洞窟の奥部には影響を及ぼすことはないと考えられるが,A洞窟奥部への影響をより確実に回避するため,ドレーン層をさらに下流側に移動して,より万金な対策を講じることを追記した。」(6-12-256~258頁)としている。これは,A洞窟奥部の上部に設置するドレーン層を下流側に移動(10m)するというものである。 しかし,本件国交大臣意見4で要求されている浸透方法についての再検討は行われていない。この点で,県が本件国交大臣意見に対応していないことは明らかである。また,ドレーン層を10m下流に動かしたところでA洞窟の上部にドレーン層があることは変わらず,ドレーン層を通じてA洞窟内に赤土を含む雨水が流入することにも変わりはない。それにもかかわらず,ドレーン層から流入した赤土を含む雨水がA洞窟奥部に影響を与えることを回避するための方策は一切採られていない。A洞窟奥部に影響を与えないことが本件国交大臣意見4の趣旨であるから,県の対応は,本件国交大臣意見4に全く対応していないに等しい。 この点,被告は,ドレーン層の設置がコキクガシラが出産・ほ育に利用しているA洞窟の奥部に影響を及ぼすことはないという見解を前提として,洞窟への影響をより確実に回避するため,ドレーン層の この点,被告は,ドレーン層の設置がコキクガシラが出産・ほ育に利用しているA洞窟の奥部に影響を及ぼすことはないという見解を前提として,洞窟への影響をより確実に回避するため,ドレーン層の位置を下流側に移動させたものであるから,対策として十分である旨主張している。しかし,本件国交大臣意見4がA洞窟奥部への影響を懸念して適切な措置を講じることを指示した以上,県は,A洞窟奥部への- 290 -影響はあり得ることを前提として適切な措置を講じなければならなかった。既に述べたとおり,事業者が24条意見に従わない判断をすることができるのは,従わない方がより環境保全に資すると判断した場合のみであるから,A洞窟の奥部に影響を及ぼすことはないという独自の判断を根拠に本件国交大臣意見4の要求を軽減して対応することは許されない。 (オ) 本件国交大臣意見5は,「小型コウモリ類が生息する洞窟の周辺において樹林,草地等の改変を行う場合には,移動経路及び餌場を確保すること。また,移動経路及び餌場が出来る限り早く確保されるよう樹林,草地等の改変の工程を工夫すること。これらの検討の過程及び講じる措置を評価書に記載すること。」とする。要するに,コウモリ類の移動経路,餌場の確保と樹林,草地等の改変の工程の工夫をすることによって,コウモリ類が継続して生息できるようにすることを求めるものである。 これに対し本件補正書では,「小型コウモリ類の移動経路及び餌場として事業実施区域西側及び北側に約50m幅の緑地を創出すること,また,A,D洞窟の洞口周辺から国道周辺の樹林に至る範囲に緑地を創出することを追記した。」(6-12-318~319頁,7-163頁),「事業による土地改変は段階的に実施し,樹林の伐採は,全体をー度に行わず,2~4年次に段 から国道周辺の樹林に至る範囲に緑地を創出することを追記した。」(6-12-318~319頁,7-163頁),「事業による土地改変は段階的に実施し,樹林の伐採は,全体をー度に行わず,2~4年次に段階的に行うこと,また採餌場所,移動経路となる緑地を早期に創出することを追記した。」(6-12-318・319頁,7-63頁)とする。これは,移動経路,餌場として50m幅の緑地を創出し,また,土地改変の段階的実施と緑地を早期に創出するということである。 しかし,これらの記載はいずれも本件評価書(乙19の6-12-310頁)に記載されていたところと基本的に何らの変わりもないも- 291 -のであり,新たな対応ではなく,この点で,県は,本件国交大臣意見5に対応していない。また,いくら事業による土地改変は段階的に実施し,樹林の伐採は全体をー度に行わず,2ないし4年次に段階的に行うとしても,結果として,空港予定地になる前はコウモリ類の餌場となっていた広大な低木の茂み,草地の部分の植生は全てはぎ取られることになる。その周囲にいくら緑地が形成されるとしても,植栽には一定の期間が必要であり,その間コウモリ類が利用できない期間が発生する。また,採餌場所,移動経路となる緑地を早期に創出するにしても限度があり,前記のコウモリ類が利用できない期間の存在のために,コウモリ類が利用を放棄する可能性がある。この点で,県の対応では本件国交大臣意見5が求めるコウモリ類の生息継続を達成できない可能性があり,県の対応は,内容面でも本件国交大臣意見5への対応として不十分である。 以上に対し,被告は,樹林の伐採を工区ごとに段階的に行うこと,緑地の創出に当たっては早期に植栽を行うこと等の措置で本件国交大臣意見5に対応したというが,本件国交大臣意見5は,本件評価書に記載さ 以上に対し,被告は,樹林の伐採を工区ごとに段階的に行うこと,緑地の創出に当たっては早期に植栽を行うこと等の措置で本件国交大臣意見5に対応したというが,本件国交大臣意見5は,本件評価書に記載されていた移動経路と餌場に加えて,更に移動経路と餌場を設けることを要求している。しかるに,本件補正書には本件評価書に記載されていた移動経路と餌場の確保のことしか記載されていないので,本件国交大臣意見5に対応したとはいえない。また,被告は,本件国交大臣意見5は消失面積と同程度の緑地面積を創出することまでは要求していないと主張するが,仮にそうであっても,本件国交大臣意見5が消失面積のわずか3分の1程度に過ぎない創出緑地面積を不十分であると考えて移動経路及び餌場を確保することを要求したのであるから,少なくとも消失面積の3分の1よりも相当程度多くの緑地面積を創出するよう要求していることは明らかであり,そのような対応が- 292 -本件大臣意見5に応えるものでないことは明らかである。 (カ) 本件国交大臣意見6は,「本事業の実施に当たっては,専門家の指導・助言を得た上で,工事の施工方法,時期等を検討し,これら小型コウモリ類の生息環境に急激な変化を与えないように配慮すること。 特に,工事中の騒音・振動に対する環境保全措置については,小型コウモリ類の出産・ほ育の時期における工事を避けることも含め,適切な措置を講じること。また,これらの検討の過程及び講じる措置を評価書に記載すること。」とする。これは,工事中の騒音・振動について,コウモリ類の出産・ほ育時期の工事を避けるなどの適切な措置を求めるものである。 これに対し本件補正書では,「事業による土地改変は段階的に実施し,採餌場所への移動経路が分断されないように配慮して,樹林の伐採は,全 育時期の工事を避けるなどの適切な措置を求めるものである。 これに対し本件補正書では,「事業による土地改変は段階的に実施し,採餌場所への移動経路が分断されないように配慮して,樹林の伐採は,全体を一度に行わず,2~4年次に段階的に行うことを追記した。」(6-12-318・319頁,7-63頁),「出産・ほ育の時期(5月~8月)及び冬期の休眠時期(12月~3月)は,A洞窟最奥部及びD洞窟から半径40m以内での振動ローラと同等の振動を出す作業及び半径100mの範囲での大型ブレーカと同等の騒音・振動を出す作業を避けることを記載した。」(6-12-267・320頁,7-65頁)とする。これは,出産・ほ育時期(5~8月)及び冬期の休眠時期(12~3月)については振動ローラ(A洞窟奥部,D洞窟から半径40m),大型ブレーカ(A洞窟奥部,D洞窟から半径100m)等の作業を避けるというものである。 しかし,その前半部分は本件国交大臣意見5に対する対応と全く同じであり,既に述べたことと同様に,本件国交大臣意見6に対する対応とはいえない。また,後半部分は本件評価書に記載された内容(乙19の7-60頁)と全く同じであり,新たな対応ではない。しかも,- 293 -本件国交大臣意見6は,コウモリ類に配慮した工事を行うことを要求しているのであるから,出産・ほ育期には,コウモリ類に影響を与え得る大型重機の使用を全面的に中断しなければ意味がない。しかし,県は,「振動ローラと同等の振動を出す作業」「大型ブレーカと同等の騒音・振動を出す作業」に限定して中断をすると記載しており,裏を返せば,県はこれ以外の大型重機の使用はたとえ出産・ほ育期であっても継続するというであるから,その内容面からいっても,本件国交大臣意見6への対応にはなっていない(実際,原告ら代理人ら しており,裏を返せば,県はこれ以外の大型重機の使用はたとえ出産・ほ育期であっても継続するというであるから,その内容面からいっても,本件国交大臣意見6への対応にはなっていない(実際,原告ら代理人らが平成19年6月に本件空港工事現場を視察した際に,出産・ほ育時期であるにもかかわらず,大型重機であるバックホーを使用して工事が行われていた。この件に関する県の弁解は,バックホーは大型ブレーカとは違うので問題ないというものであった。原告ら代理人らは,改善を申し入れたが,対応がされた形跡はない。)。県の対応は,単に一部の大型重機を使用しないということをもってコウモリ類に配慮したかのようなポーズをとっただけのものであって,工事に必要な大型重機があれば,たとえコウモリ類に影響があろうとも構わず使用するというものであるから,本件国交大臣意見6に対する対応にはなっていない。出産・ほ育期に空港建設工事を行うことの影響は重大であり,本件評価書及び本件補正書でも指摘している秋吉台の例を見ても,コウモリ類がその場所での出産・ほ育を放棄しかねないものである。現に本件空港予定地及びその周辺の地域(以下「α9地域」ということがある。)においてコウモリ類の数が減少している傾向を示していることは,工事がこの地域のコウモリ類の生息に深刻な影響を与えている結果と評価できる。 以上に対し,被告は,事業者は大臣意見を勘案して修正を必要とすると認めるときに措置を採ればよいのであるから修正措置を採らなか- 294 -ったことが評価法違反になるわけではないと主張するが,既に述べたとおり,事業者が24条意見に対応しない判断をすることができるのは24条意見に従わない方がより環境保全に資すると判断した場合のみであるし,その場合には判断の根拠を示す必要があるから,県に本件国交大臣 おり,事業者が24条意見に対応しない判断をすることができるのは24条意見に従わない方がより環境保全に資すると判断した場合のみであるし,その場合には判断の根拠を示す必要があるから,県に本件国交大臣意見6に従うか否かに関し広い裁量があるかのような被告の主張は失当である。 また,被告は,原告らが本件空港予定地でコウモリ類に深刻な影響を与えていると主張したことに対し,有意な減少はないとするが,コウモリ類が減少している傾向を示していることは,県の調査結果やP19委員会の調査結果から統計処理して変動する数値の傾向を明らかにしたデータ(甲122の資料6)を見ると,冬眠期のコキクガシラとカグラの減少傾向は明らかというべきてあり,長期的な傾向からすると,平成16年1月から平成21年1月までの間にいずれも約半数程度に減少してきていることがうかがえる。 さらに,被告は,出産・ほ育時期(5~8月)及び冬期の休眠時期(12~3月)については振動ローラ,大型ブレーカ等の作業を避けるという措置の根拠となる調査について,カグラが集団で生息するNo.39の洞窟で調査を行ったことについて,出産・ほ育期に行ったものではないこと,及びカグラ以外のコウモリの調査はできていないことを自認しているのであって,少なくとも出産期における影響の計測について科学的検討の結果実施されたものではなく,また,カグラ以外のコウモリへの影響がどうなるかについては何らの調査もされていないのであるから,前記の措置で足りるとの根拠は皆無である。むしろ,前述のように,コウモリ類が工事中において減少傾向を示していることは,前記の措置では不十分なものであったことを示しているといえる。 - 295 -なお,被告は,α6島のα29について,洞窟の直上を県道が通り,車両の往来が頻繁であると主張す 向を示していることは,前記の措置では不十分なものであったことを示しているといえる。 - 295 -なお,被告は,α6島のα29について,洞窟の直上を県道が通り,車両の往来が頻繁であると主張するが,大型重機が地面を掘削することにより生じる振動,騒音と,都市部とは比較にならないほどわずかな交通量による振動,騒音を同列に比較することはできない。このような県の採った方法が科学的であるというためには,No.39の洞窟を調査時に現実に発生した振動・騒音とα29の直上の県道を通過する車両によって生じる振動・騒音を比較すべきであるが,このようなデータも明らかにされていない。 (キ) 本件国交大臣意見9は,「人工洞窟については,専門家の指導・助言を得た上で,補正評価書の公告後のできる限り早い段階で設置すること。また,小型コウモリ類の習性を踏まえ,他の洞窟の形状及び気温・温度等の生息条件,周辺の地形・地質や植生などの立地条件等を考慮しつつ,適切なものを整備すること。」とする。これに対し本件補正書では,「人工洞の設置にあたっては,小型コウモリ類が生息している既存の人工洞の形状,洞内環境を参考に,形状,規模,土盛り厚等について検討し,専門家の指導・助言を得た上で具体的な形状,規模を決定すること,またできる限り早い段階で設置することを追記した。」とする(7-71頁)。 しかし,この記載は,本件国交大臣意見9の内容に対し,抽象的なレベルで従うとの趣旨を述べるものにとどまり,具体的な対応内容は示されていない(このようなことになった理由は,県による調査不備によって,どのようにすれば人工洞にコウモリ類が生息することになるかという点についての実証的なデータが欠如しているためである。実際,県は,本件補正書において,小型 とになった理由は,県による調査不備によって,どのようにすれば人工洞にコウモリ類が生息することになるかという点についての実証的なデータが欠如しているためである。実際,県は,本件補正書において,小型コウモリ類は人工洞の設置直後から利用するとは限らないことを自認している。)。本件国交大臣意見9は,検討することを要求しているのではなく,整備することを要- 296 -求しているのに,どのようにすれば適切な整備ができるのかが分からず,そもそも人工洞を適切なものに整備することなどできない可能性もあることを認めているような状況であって,県の対応は,到底本件国交大臣意見9に対応したものとはいえない。 これに対し,被告は,本件国交大臣意見9は人工洞について「適切なものを整備すること」を求めているのであって,人工洞の形状や気温,湿度等について具体的な検討結果を評価書に記載することを求めているものではないから,具体的な検討結果の記載がなくても問題ないという。しかし,本件国交大臣意見9は,現実に適切な人工洞を整備することを要求しているのに,県は,本件補正書において「小型コウモリ類は,人工洞の設置直後から利用するとは限らない」と記載した上,どのようにすれば適切な人工洞の設置が可能であるかの道筋は一切示せていない。つまり,県の対応は,整備は困難である可能性があるが,検討するというだけのものであり,到底,本件国交大臣意見9に対応したとは評価できない。 (ク) 本件国交大臣意見10は,「小型コウモリ類の保全については,事業実施区域や事業者が取得する地域の周辺の洞窟の保全や採餌場としての林地の保全等周辺の土地利用が極めて重要であり,小型コウモリ類の生息に影響を与えないような土地利用が図られるよう,小型コウモリ類の保全,保全に関する情報の提供 地域の周辺の洞窟の保全や採餌場としての林地の保全等周辺の土地利用が極めて重要であり,小型コウモリ類の生息に影響を与えないような土地利用が図られるよう,小型コウモリ類の保全,保全に関する情報の提供,石垣市や県等の関係機関への要請などを行うこと。また,その旨を評価書に記載すること。」とする。 これに対し本件補正書は,「本事業において実施された小型コウモリ類の調査結果,事後調査結果の情報を石垣市や県等の関係機関へ提供し,小型コウモリ類の生息に影響を与えないような土地利用が図られるよう要請などを行うことを追記した。」としている(p7-7- 297 -3)。 しかし,事業実施区域や事業者が取得する地域の周辺の洞窟の保全や採餌場所としての林地に該当するいかなる区域において,潜在的なものも含めいかなる形態の土地利用について,いかなる権限を有するいかなる機関の部署に対して,いかなる土地利用上の配慮を要請したのか,具体的な記載が全くない。このような記載では,本件国交大臣意見10に対応したと評価することはできない。 この点,被告は,単に「情報提供及び要請を行う」旨記載すれば本件国交大臣意見10への対応として足りるというが,少なくとも県が想定している情報提供や要請がコウモリ類の生息に影響を与えないような土地利用が図られるという目的達成に十分なものであるかどうかを判断できるだけの具体的な記載は不可欠であると考えるべきである。 県の対応では不十分である。 (ケ) 本件国交大臣意見11は,「事業実施区域及びその周辺区域への降雨及び流入水が,α5川に流入し,又は,海域に浸出する経路及びその量について把握し,その結果を評価書に記載すること」というものである。本件空港の建設では,工事で流出する赤土によるα3サンゴ礁への影響が最 流入水が,α5川に流入し,又は,海域に浸出する経路及びその量について把握し,その結果を評価書に記載すること」というものである。本件空港の建設では,工事で流出する赤土によるα3サンゴ礁への影響が最重要課題となっており,本件国交大臣意見11も,赤土汚染との関連で事業者に対し付けられた意見であることは明らかといえる。また,本件国交大臣意見11は「事業実施区域及びその周辺区域への降雨及び流入水が」となっており,事業実施区域への降雨のみならず,流入する水も調査評価の対象になっている。加えて,A洞窟の最上流部は,事業実施区域外の川の水が流れ込んでおり,その水が流れる経路及び量を把握せよというのであるから,本件国交大臣意見11が洞窟,つまり地下川の調査も求める趣旨であることは明らかである。さらに,事業実施区域全体への降雨の多くは,地下浸透して- 298 -海域に浸出していることは県も認めているところであるから(県は,降雨量のうち地下水として流出する量を49.6%と試算している(乙23の6-6-25頁)。),本件国交大臣意見11は,その主要な経路である地下川の走り方(経路)及びそこの流量を,事業実施区域及びその周辺区域全体にわたって調査し,把握することを要求していることが明らかといえる。浸透した地下水がどのような経路をたどり,どれだけの水量があるのかは,赤土等流出防止対策を検討する大前提である。その意味でも,地下川の経路及び水量を調査せよというのは至極自然なことである。 これに対し本件補正書は,「事業実施区域及びその周辺区域への降雨及び表流水の流動について,新石垣空港地下水調査結果に基づき,α4岳南地下水流域及びその他3流域について水収支を算出し,その結果を追記した。」(6-6-25~26頁)としている。 本件補正書の記述上,県が経 動について,新石垣空港地下水調査結果に基づき,α4岳南地下水流域及びその他3流域について水収支を算出し,その結果を追記した。」(6-6-25~26頁)としている。 本件補正書の記述上,県が経路の調査評価の対象とする「水」を勝手に「表流水」に限定し,県自身が降雨全体の約半分と試算した地下浸透した水が流れる経路を調査対象としなかったことは明らかである。 また,県は,本件補正書で水収支を明らかにしたというが,赤土の海域への浸出を防止する上では,地下水量が変わらないことよりも,地下水がどのような性質の場所をどのように流れているか,それに応じてどの地点でどのような対策を講じるかの方がより重要であることは論理的に明らかであり,本件国交大臣意見11と本件補正書の記述を単純に比較するだけでも,県の対応が本件国交大臣意見11の趣旨に沿わず,これに全く応えていないことが明白となる。地下水が流れる経路を把握しないまま工事を続行した場合には,浸透ゾーンの設置箇所を誤って海域に相当量の赤土を浸出させ,あるいは,供用後も,必然的に生じる地下洞窟河川の水量がやはり海域に相当量の赤土を浸出- 299 -させ,さらにコウモリの生息環境に重大な影響を与えることが危惧される。地下川調査をしていないことの違法は重大である。 この点,被告は,県はα4岳南地下水流域における蒸発散量,地表流出量及び地下水流出量といった水収支を算出し,そのデータに基づいてその他の三流域(α5川左岸地下水流域(西側),同地下水流域(東側)及びα4岳北地下水流域)の水収支を推定しているのであり,これが本件国交大臣意見11に対応するものであることは明らかであり,原告らがいう「地下川」がどのようなものを指しているのか定かではなく,原告ら独自の想定物を前提に調査の不備をいうものにほかならない これが本件国交大臣意見11に対応するものであることは明らかであり,原告らがいう「地下川」がどのようなものを指しているのか定かではなく,原告ら独自の想定物を前提に調査の不備をいうものにほかならないという。しかし,「地下川」が洞窟内を流れる地下水の流れを意味することは明らかである。本件補正書にも,Aケイブシステム(A,D,A1,A2及びD1洞窟),B,C,Eケイブシステムに水流の存在があることが記載されている(6-7-5頁)。また,本件補正書は,「経路」について全く触れていないことに照らしても,県が本件国交大臣意見11に対応しなかったことは明らかである。県が地下川の入口(C1洞窟・B洞窟)の真上に浸透ゾーンを設置してしまうというミスをしたのは,正に本件国交大臣意見11が求めた事項に対応しなかった結果であり,このような事象が生じていることからも本件国交大臣意見11への対応を欠いていることが明らかである。 (3) α3のサンゴ類ないしα3サンゴ礁生態系の保全に関する本件許可処分の違法性についてア(ア) α3サンゴ礁は健全な姿を何とか保ち続けてきたが,変わらぬオニヒトデや赤土流出の脅威に加え,地球温暖化をも背景とする白化現象(造礁サンゴが共生藻を失って,透明なサンゴ組織を通して白い骨格が透けて見え,白くなる現象)や,ホワイト・シンドローム(特に卓状ミドリイシ類に多くみられ,サンゴの組織が白い帯状に壊死しながら- 300 -広がっていくことが知られていている。病変部の拡大は速く,一般的に数か月から1年ほどで直径2mの卓状ミドリイシが死滅するといわれている。)などの病気,大型の台風など,様々の恐ろしい脅威にさらされ続け,これらの複合的な影響によってますます深刻な危機を迎えている。 (イ) 赤土とは,県の面積 リイシが死滅するといわれている。)などの病気,大型の台風など,様々の恐ろしい脅威にさらされ続け,これらの複合的な影響によってますます深刻な危機を迎えている。 (イ) 赤土とは,県の面積の約55%に分布している国頭マージという土のことである。ジャーガルと呼ばれる灰色系の土壌等も含めて赤土と呼び,これらによる濁水流出による環境汚染を赤土汚染と称することもある(甲23)。国頭マージは,土壌粒子が小さく,水はけの悪い土である。晴天が続くと乾燥して地面にひび割れを起こし,そこへ大量の雨が降ると流水の道ができて,土が侵食されていく。沖縄の雨は,落ちながら土を掘って溶かすというほど強烈である。土砂降りのレベルすなわち20ないし30mmの雨が沖縄では1年間に20ないし30回発生する(甲25)。そのような特性とも相まって,国頭マージは,V字型に土がえぐられていく侵食を生じる。山地地帯には川があるので,この川を通って浸食された土がサンゴ礁の海へと流出する。 樹木が土を覆っている自然の条件の下では,土は流れないが,人為的に植生の被覆がはがされ地肌がむきだしにされてしまうと,雨の影響をまともに受けて侵食が生じる(甲27の182頁以下)。 海に流れ出た赤土は,サンゴを始めとする様々な生き物たちに打撃を与える。まずは,懸濁の問題である。赤土自体に毒性などはないが,粒子が細かいため,一度水に混ざるとなかなか沈殿せず,長時間にわたって水を濁らせてしまう。すると,雨が止んだ後も日光がさえぎられ,サンゴは体内に共生している藻類による光合成ができなくなって,栄養不足になり,死んでしまうことがある。次に,堆積の問題である。 サンゴが直接赤土を被った場合,サンゴの呼吸を妨げたり,サンゴの- 301 -幼生が成長するためにはある時期に岩盤やサンゴ自体の骨格(造 不足になり,死んでしまうことがある。次に,堆積の問題である。 サンゴが直接赤土を被った場合,サンゴの呼吸を妨げたり,サンゴの- 301 -幼生が成長するためにはある時期に岩盤やサンゴ自体の骨格(造礁サンゴは石灰質の石の骨格を作る。)などに付着しなければならないが,その確率を低下させる。 海草の成長スピードは造礁サンゴの成長よりも速いのであるが,牧草地から排出される糞尿等の栄養物質を含む赤土流入によって海草が生育し,さらに,流入する赤土が海草に引っかかって溜まり海草が一層繁茂するというプロセスが進行しており,繁茂した海草が浅い部分の造礁サンゴを覆ってしまう結果,サンゴに光が届かなくなり,成長が止まる現象が起きていると指摘されている。また,底質中懸濁物質含量(SPSS)が30kg/㎥を超えると,枝状のサンゴの出現頻度が減少し,大きな群体は消える。400kg/㎥を超えると,濁った海に塊状のサンゴが点在するだけになり,漁業や観光などの資源は失われるという。 本件事業実施区域とα3地区の中間に位置するα5川は,土地改良事業が着手されるまでは赤く濁ることはなかった。1970年代に沖縄のサンゴ類がことごとく死滅する中でα3のサンゴが健全に生き延びていた理由の一つとして,α5川からは赤土がほとんど流出していなかったからだといわれてきた。現に,昭和63年4月末の大雨の際,赤土が一気に海へ流れ出した結果,α5川河口からα30と呼ばれる場所の近くに広がっていた枝サンゴの群落がほとんど死滅してしまった。その上α3サンゴ礁の広域にわたって赤土が堆積することにもなった。この地域は斜面が多いので地形的にも土壌の性質からみても土の流出しやすい条件がそろっている。また,この土地改良地区には排水溝が網の目のように走り,その全てが最終的にはα5川とつながる にもなった。この地域は斜面が多いので地形的にも土壌の性質からみても土の流出しやすい条件がそろっている。また,この土地改良地区には排水溝が網の目のように走り,その全てが最終的にはα5川とつながるようになっている。防止対策が不備な工事現場や農地から流れ出す赤土が,全てα5川に集中する。本来であれば,自然の湿地帯の存在に- 302 -よって沈砂地の機能を果たすはずのα5川は,排水路工事のため,下流の一部分を除いてコンクリート張りにされ,直線化されてしまっている。そのため,α5川に排出された赤土はそのまま海に流入することになる。 平成7年に沖縄県赤土等流出防止条例(平成6年沖縄県条例第36号)が施行されたことを受け,県内の開発事業に伴う赤土流出量は3分の1に減少したが,しかし,条例による濁水濃度の規制値である200mg/lは,なお高水準である。そして,大きな発生源と考えられる農業用地からの流出量は,ほぼ横ばいのままである。α5川流域では,これまでにも流出防止対策事業が実施されてきたが,実際の対策は,これらの事業に同意した農家が所有するわずかな農地などにとどまり,十分な防止対策は確立されていない。環境省の平成14年度の報告を見ても,「赤土に代表されるシルトの堆積については,本年度の調査では昨年と比較して若干の改善が見られた。ただし,これは台風による礁池の洗浄効果などの気象条件に拠るところが大きく,今のところ赤土流出対策の効果であるとは考えにくい。また,調査時期の相違から本調査の結果には反映されていないが,α5川周辺海域では昨年に引き続き大量降雨に伴う赤土流出によりサンゴ類に被害が発生しているなど,陸域からのシルトの流入が依然として深刻な海域汚染を引き起こしていることは間違いない。」としている。また,平成16年10月時点において, 量降雨に伴う赤土流出によりサンゴ類に被害が発生しているなど,陸域からのシルトの流入が依然として深刻な海域汚染を引き起こしていることは間違いない。」としている。また,平成16年10月時点において,近年の保全対策事業は,現状では海域の赤土堆積量の減少につながっておらず,特に,α5川河口周辺においては,夏から秋にかけての集中的な降雨による人為的な汚染が恒常的に起き,生物群集に何らかの負の影響を与えている可能性がある,α5川河口周辺域の状況から,流域レベルでの流出防止対策を早急に推進する必要があるという指摘もある。さらに,環境省が平成16年1- 303 -1月から平成17年2月までに石垣島周辺で行った調査結果でも,シルトの堆積状況及び底質中懸濁物質含量(SPSS)は,全体としては前年よりも改善傾向になっていたものの,これは平成16年に台風が多く石垣島周辺に接近して底質の洗浄効果が高まったためと考えられるとされている。 (ウ) このように,サンゴは,深刻かつ多様な脅威にさらされており,それらの脅威は,それぞれ複合的・相乗的に悪影響を与えている。その中でも,赤土汚染は長きにわたってサンゴに悪影響を与え続けている主要な人為的要因である。赤土問題が極めて深刻な状態にあることを改めて認識し,今まで以上に対策を急ぐ必要がある。また,近年極めて深刻な影響をもたらす脅威として白化現象が注目されている。白化現象は,地球温暖化を背景とする高水温化を主因としつつ,赤土汚染などのストレスが複合的な原因として作用している可能性があるが,現状ではメカニズムの詳細がまだ分かっておらず,即効性のある対策は当面は望めない。このような中では,特定種優先型のサンゴ群集の保全対策を強化し,陸域の開発行為などに起因する赤土の流入を抑制するなどの自然環境の保 ズムの詳細がまだ分かっておらず,即効性のある対策は当面は望めない。このような中では,特定種優先型のサンゴ群集の保全対策を強化し,陸域の開発行為などに起因する赤土の流入を抑制するなどの自然環境の保全が一層重要である。 本件事業によって現状よりも赤土流出が増加するとすれば,それは赤土汚染,白化現象,オニヒトデ,病気等によって,既に深刻な脅威にさらされている本件事業予定地付近のα3の貴重なサンゴに対する致命的な脅威となるおそれがある。また,サンゴが白化現象のように影響が甚大であり,将来にわたってほぼ確実に継続し,かつ,現状では有効な対策が全く採れない脅威にさらされている状況では,その他の回避し得る脅威を少しでも取り除いていくこと以外にサンゴを保全する対策はない。その意味で,現状の赤土流出を少しでも抑制することが必要であり,まして新たな流出源を加えることなどはぜひ回避さ- 304 -れなければならない。 イ本件補正書は,工事中に発生する赤土等が海に流出する経路として,α5川を想定しており,地下浸透後の地下水を経由しての赤土流出の危険性を全く考慮していない。そのため排水計画においても,浸透ゾーンを通じての地下浸透といわば地表の対策しか行っておらず,地下浸透後については,地下水の流れの調査すら行っておらず,全く対策が講じられていない。 しかし,本件事業予定地の地下には,α7と呼ばれる琉球石灰岩層が広がっている。琉球石灰岩,特にα7の琉球石灰岩は,浸食に弱く,地下水流に浸食されて洞窟ができやすい性質であることに加え,海岸に向かって背面(本件事業予定地の西側)が山に囲まれたボウル上の地形の底の部分に当たり,周囲に降った雨が集中する地帯であることから,大量の地下水が集中し,その結果多くの地下川・地下洞窟が密集しているとい って背面(本件事業予定地の西側)が山に囲まれたボウル上の地形の底の部分に当たり,周囲に降った雨が集中する地帯であることから,大量の地下水が集中し,その結果多くの地下川・地下洞窟が密集しているという特殊性がある。 本件事業予定地の浸透ゾーンⅡが設置される付近だけでも,コキクガシラらが生息するAないしE洞窟が存在しているとされたが,環境影響評価後にC1洞窟を始め,評価書作成時には未発見の洞窟が多数発見されている。こういった洞窟では,地下水や流れ込んだ雨水によって,地下川(地下河)を形成しているところも多く存在する。地下川には,雨天時には洞窟全体が完全水没するほど,水流がある(B洞窟やA1洞窟の天井でもベルホール(洞窟の天井に形成される半円状のくぼみ)が確認されている。)。そのため,事業地付近の海岸では,豊富に地下水が湧き出している。この湧出地点は,浸透ゾーンⅠ及びⅢと数百mしか離れていない。このような地点に事業用地から生じた濁水を集中させ,自然の浸透より大量の濁水を流し込むという計画を立てる以上,地下水の流れの経路すなわち地下川の状況を調査することは必須である。 - 305 -琉球石灰岩で洞窟が多数存在する地帯(カルスト地域)において,地下水系,特に地下川を調査することは,極めて初歩的かつ基本的な事柄である。しかし,本件の環境影響評価では,そのような極めて基本的な調査事項である地下水流・地下川については全く調査をしていない。ここに評価法上の重大な瑕疵がある。さらに,地下川が存在する以上,地下を通しての海域への赤土流出についても対策を講じる必要があるが,環境影響評価ではこの対策が全く講じられておらず,サンゴ礁保全のために万全を期すべき赤土対策にも重大かつ明白な欠陥が存在する。 ウろ過は,水分にとけ込んだ粒子が他の じる必要があるが,環境影響評価ではこの対策が全く講じられておらず,サンゴ礁保全のために万全を期すべき赤土対策にも重大かつ明白な欠陥が存在する。 ウろ過は,水分にとけ込んだ粒子が他の物質に付着することよって水中の粒が取り除かれることによって起こる現象である。他方,α9地域の琉球石灰岩層は,圧密を受けておらずすき間だらけのため透水性はあるが,水中の物質を付着することはない。したがって,琉球石灰岩層では,この「吸着」によるろ過能力はほとんどない。また,本件補正書の工事期間中の赤土等流出防止対策は,台風や豪雨の場合でも,赤土の微粒子は,事業予定地の浸透ゾーンの地盤ないしその他の琉球石灰岩層に浸透し,時間が経過しても目詰まりは起こさず,浸透能力が低下することはないという仮定を前提としている。しかし,その担保はなく,これがそのとおり実現されると考えることには多大なリスクを伴うものである。濁水を地下浸透させるという手法を採る以上,工事期間を通じて浸透能力が維持されるか,目詰まりを起こして能力が低下しないかは通常危惧される問題であり,その科学的根拠が立証されないとしても,それが生じた場合の重大なリスクを考慮し,慎重な予防措置として対策を講じることが必要である。だからこそ,本件国交大臣意見12でもその検討が求められている。 以上に対し,被告は,浸透ゾーンのろ過方式は,吸着によるものではなく,緩速ろ過方式であり,そのため目詰まりの危険はないという。しか- 306 -し,県の透水実験でも,濁水の注入量の増加に従い,透水係数が徐々に低下する傾向が確認されている(乙23の6-1-24頁)。これは,濁水による目詰まりが生じていることを示すものにほかならない。そのため,県も不十分ながらも,浸透ゾーン上に赤土が堆積している場合には 低下する傾向が確認されている(乙23の6-1-24頁)。これは,濁水による目詰まりが生じていることを示すものにほかならない。そのため,県も不十分ながらも,浸透ゾーン上に赤土が堆積している場合には,その除去等の対策を講じるとしている。このような目詰まり対策を講じておきながら,緩速ろ過であるから目詰まりの危険はないというのは矛盾している。また,α9地域は,豊富な地下水流によって既に浸食を受けている地帯であり,さらに,琉球石灰岩は,元々,ある部分では密度があったとしても,他の部分では空げきにサンゴの破片等が詰まっているだけの部分もあるという均質性に欠けるモザイク状の地質である。 直接洞窟地下川に濁水が流れ込むような切れ目が地表にあれば,緩速ろ過は全く機能しない。目視できる程度の大きさ(濁水を流すには十分すぎる大きさである。)の切れ目には,琉球石灰岩片を敷き詰めるというが,緩速ろ過が機能し得る程度の細かさの破片を敷き詰めれば,それは流出する危険が高く,反対に,流出しないような大きさの破片を敷き詰めれば,緩速ろ過は機能せず,石と石のすき間を濁水が流れるだけである。そして,濁水はすき間が多いところに集中する。浸透ゾーン全体にわたって水流を限界流速以下に落とすことで懸濁物質(水中に懸濁する浮遊物質の総称。以下「SS」ということがある。)を沈殿させるという機能が確保されることの保証は全くない(被告は,本件補正書の赤土防止対策が浸食による空間を含めて琉球石灰層群には大小の空げきが10%から13%存在していることを前提にしたものであるなどと主張している。しかし,ここで問題となっているのは,琉球石灰岩の切れ目の有無であって,空げき率とは無関係である。)。琉球石灰岩の表層から流入した水がそういった亀裂に至る前に琉球石灰岩のろ過機能によってろ過されること し,ここで問題となっているのは,琉球石灰岩の切れ目の有無であって,空げき率とは無関係である。)。琉球石灰岩の表層から流入した水がそういった亀裂に至る前に琉球石灰岩のろ過機能によってろ過されることも十分に考えられるという被告の主張は,希望的観測に- 307 -すぎず,環境に与える影響を「評価」し「対策」を講ずべしとする評価法の趣旨に反するものである。 エさらに,現実の工事による濁水が洞窟内に流れ込む要因として最も考えられるのは,洞口及び無数に存在する石灰岩の小さなすき間や切れ目から洞窟内に濁水が流れ込むことである。本件補正書の赤土等流出防止対策では,工事により発生した濁水は,水路を通じてろ過沈殿池,浸透ゾーンに集めることが計画されているが,その途中で石灰岩層の表面の亀裂や土で覆われている部分には無数の割れ目や穴が空いており,目視できる程度の亀裂ですら無数にあることが予測されるから,本件事業実施区域全体を補足するという対応は非現実的であって,全ての濁水を浸透ゾーンへ導くことは不可能である。被告は,このような切れ目の存在は確認されてないというが,琉球大学P51教授の平成22年3月23日付け意見書(乙48)の15頁では,「工事現場において,雨水が仮設調整池からろ過沈殿池を通って浸透ゾーンに流れる過程において,一部の雨水が地表面から浸透することは否定できない。」としている。P19委員会の調査でも,洞窟内の地下川の上流の流量に比べ,下流の流量の方が多いという結果が出ており(甲63の表5・6),これは,他の洞窟を流れる水(支流)が合流したり,あるいは,地表からの水が流れ込んだりしている証拠である。本件補正書においても,降雨がD洞窟からA洞窟へ流入することが報告されている(乙23の6-7-5頁)。そして,地表の切れ目から地下川 したり,あるいは,地表からの水が流れ込んだりしている証拠である。本件補正書においても,降雨がD洞窟からA洞窟へ流入することが報告されている(乙23の6-7-5頁)。そして,地表の切れ目から地下川に流れ込む濁水は,ろ過沈殿処理をされる前の高濃度の濁水である。台風あるいは局地的な集中豪雨で地盤が叩かれて生じた高濃度の濁水が前処理を経ないまま直接地下川に流れ込むことになる。被告は,細かい砕石を入れるなどして対応すると反論しているが,その有効性は,細かい砕石が水流などによって流出する可能性が高く疑問であるし,そもそも,無数に存在する切れ目を全て補足する- 308 -ことは不可能である。 また,大雨などで洞窟内に流入した赤土を含んだ濁水は,洞窟内の地下川を下流の海域に向かって流れることになるが,ここではろ過されないことは明らかである。なお,本件補正書は,この洞窟内の地下川について,A-A1-A2洞窟の地下水系と,B-C-E洞窟の地下水系の2水系を予測した(乙23の6-7-5頁)。しかし,P19委員会の色素追跡調査により,B洞窟地下水系は,C-E洞窟地下水系とは別の水系を成していることが明らかになり(甲63),県も,その後の調査では,B洞窟地下水系とC-E洞窟地下水系が別の地下水系であることを認めざるを得なくなった。このことは,環境影響評価時の県の調査不足を根拠付けるものでもある。 オ琉球石灰岩層の地下洞窟を通った地下水は,パイピング空洞を通って,海岸湧水帯及び海中から湧出する。パイピング現象による水みちの存在は,次のとおり,海岸湧水帯の存在,名蔵れき層に地下水が作用して形成されたE洞窟の存在,砂取り場の空洞等から根拠付けられる。しかし,本件補正書は,パイピング現象について全く考慮していないため,何らの調査 のとおり,海岸湧水帯の存在,名蔵れき層に地下水が作用して形成されたE洞窟の存在,砂取り場の空洞等から根拠付けられる。しかし,本件補正書は,パイピング現象について全く考慮していないため,何らの調査も対策も施そうとしていない。パイピング現象の存在を見過ごした本件補正書には,重大な欠陥があるといわざるを得ない。 (ア) 事業実施区域の海岸には,海岸全体から均等に水が流出しているのではなく,特定の箇所から集中的に地下水が湧き出す海岸湧水帯が存在する(甲第140号証の末尾の写真によっても,この海岸湧水帯を確認することができる。また,P19委員会の調査でも,海浜の波打ち際,平均海水面付近に,砂の中から水が湧き出す直径10ないし20cmの湧水孔が幅約80mの区間に60か所ほど存在していることが確認されている(甲63)。)。この湧水帯は,A1洞窟及びE洞窟の末端から海岸に向かう最短コース上に位置し,A1洞窟及びE洞- 309 -窟から海岸湧水帯の間をつなぐ特定の水みちが存在することを裏付けている(この点については,被告側は,何ら反論できてない。)。 (イ) さらに,増水時には水圧が高まり,湧水帯よりも沖合の海底から地下水が湧き出す可能性もある。α30の地形がリーフの切れ目から湧水帯に向かい深い谷状の地形が刻まれているのは,淡水の湧出のためにサンゴの成長が阻害されたためである。地元の人やダイバーからも,α30付近で冷たい水が湧き出しているということを聞いている(証人P20尋問調書20頁)。また,サンゴ礁学会の調査でも,海岸よりも沖合の方が低い塩分濃度が観測されている(甲141の11頁)。 これは,陸水ではなく,海中での地下水(淡水)の湧き出しを示すものである(同調書22頁)。このα30と海岸湧水帯の直線上の先には,A及びE 合の方が低い塩分濃度が観測されている(甲141の11頁)。 これは,陸水ではなく,海中での地下水(淡水)の湧き出しを示すものである(同調書22頁)。このα30と海岸湧水帯の直線上の先には,A及びE洞窟が存在している。したがって,この水みちは,海岸湧水帯の先の海中に達している。 (ウ) この水みちは,A1洞窟及びE洞窟から海岸までの名蔵層及び沖積層を通ることになる。この名蔵層及び沖積層に洞窟地下川の水が均等に浸透するのであれば,土砂の吸着作用によってろ過される。しかし,海岸湧水帯がある以上,洞窟地下川の水が,被告が主張するように均等に名蔵層及び沖積層へ浸透しているとは考え難い。そうなっていれば,海岸の特定の箇所のみから地下水が大量に湧出するという現象は生じないからである。 この名蔵層及び沖積層には,A1洞窟及びE洞窟から海岸湧水帯に向かって最短距離を進む,パイピング現象によって形成された水みちが存在し,洞窟地下川の水は,そこを通って海岸から湧き出している。 P19委員会報告書(甲63)に添付されている図7の写真は,工事によりなくなってしまったが,砂取場の壁面部分にあった空洞の写真である。この砂取場は,やはり,A1洞窟及びE洞窟と海岸湧水帯を- 310 -結ぶ中間点にある(甲140の末尾添付図面)。この砂取場には,このような空洞が多数形成されていたが,その形状,位置関係などからして,明らかに水流によって作られたパイピングによる空洞であり,この辺りにパイピング洞窟が形成される条件が整っていることを根拠付けるものである。 (エ) 被告は,本件空港事業地域と海岸を結ぶ沖積層の動水勾配が限界動水勾配を下回っているからパイピング現象は理論上生じないという。 しかし,被告の試算は,水が引力以外の圧力を受けず (エ) 被告は,本件空港事業地域と海岸を結ぶ沖積層の動水勾配が限界動水勾配を下回っているからパイピング現象は理論上生じないという。 しかし,被告の試算は,水が引力以外の圧力を受けずに均等に浸透するという条件の下,傾斜のみによる水圧のことしか考慮されておらず,その上流に当たる洞窟地下川の存在を看過している。α9地域の場合は,沖積層の上流に洞窟地下川が存在し,特に大雨時には水面が天井に達するほどの大量の水が流れ込む。地上の川であればはんらんするが,洞窟内の閉じられた空間の場合は,地下水は逃げ場をなくし非常に高い水圧が生じ,この圧力をもって,沖積層に水流がぶつかることになる。動物の巣穴などの小さな穴や切れ目があると,そこに水圧が集中し,傾斜がなくとも十分にパイピング現象を起こすだけの水圧(浸透流)が生じる(なお,洞窟内において増水により天井まで水がたまるような状況になると,水はその洞口からあふれ出すことになるから,空洞が分布する地域の地形上からも,パイピング現象を引き起こすような非常に高い圧力が洞窟全体に掛かることはないとの意見があるが,α9地域では,大雨のとき,通常の地下水面よりA1洞窟で3m,E洞窟では2.5mの高さにある洞口から水が噴き出している(甲176)。水面から3m,2.5mの高さにまで水が噴き出すということは,相当高圧の水圧が掛かっていることを意味しており,上記意見は,現地の状況を殊更に無視するものといえる。)。限界動水勾配に達していないからパイピング現象が生じないという被告の主- 311 -張は,大雨の際には洞窟を水没させるほどの水量がある洞窟地下川の存在を見過ごしたもので,本件事業実施区域の実態からかけ離れた主張である。 (オ) 本件事業実施区域の勾配であっても,現実にパイピング現 洞窟を水没させるほどの水量がある洞窟地下川の存在を見過ごしたもので,本件事業実施区域の実態からかけ離れた主張である。 (オ) 本件事業実施区域の勾配であっても,現実にパイピング現象が生じていることは,E洞窟の存在によっても明らかである。被告は,E洞窟について,琉球石灰岩層と名蔵れき層の境界に存在し,琉球石灰岩層が地表側,名蔵れき層が地中側に位置するのであるから,先に琉球石灰岩層に溶出等によって空洞が形成され,その空洞を流れる地下水の影響によって,名蔵れき層中の砂れき分が浸食や吸い出しを受けて形成された物であって,パイピングによる空洞ではないと主張している。しかし,琉球石灰岩層と名蔵れき層の境界に洞窟が存在する地点は,E洞窟全体の一部分に過ぎず,E洞窟の大半は,名蔵れき層を貫通する形で存在している。P19委員会報告書(甲63)添付の図6(写真)をみても,天井まで名蔵れき層に覆われていることが明らかである。C洞窟とE洞窟をつなぐ空洞も名蔵れき層中をパイプ状に貫通しており,空洞に石灰岩は全く露出していない。 名蔵れき層は,半固結の砂れき層で一応は固まっているが,スコップなどで容易に掘り進むことができる程度の堅さであり,しかも,石灰岩のように水には溶けない。したがって,名蔵れき層中の空洞は,水圧によるパイピング現象で掘り進められ形成された洞窟であることが明らかである(乙第48号証も,E洞窟がパイピング洞窟であることを何ら否定しておらず,むしろ,このことを裏付けるものである。)。 カ財団法人P18(以下「P18」という。)は,平成20年4月,α3に設置している「P52」が同年3月に実施した赤土等堆積状況の調査で,本件空港建設工事現場に近いα5川河口沖合300mほどのポイ- 312 -ント(E2)で,赤土堆積度が は,平成20年4月,α3に設置している「P52」が同年3月に実施した赤土等堆積状況の調査で,本件空港建設工事現場に近いα5川河口沖合300mほどのポイ- 312 -ント(E2)で,赤土堆積度が最も高いランク8を記録したことを発表した(甲82)。ここでいうランク8は,「立っているだけで足がめり込む。見た目は泥そのもの」という程度に赤土等が堆積している状態である。サンゴが健康に生育できる限界はランク4~5であり,ランク5を超える場合は,人為的な原因によるものとされている。また,同年冬の堆積状況は,ランク8という高い濁度が確認されたこと以外に,過去と比較して顕著な違いが現れている。それは,通常であれば,赤土等は,河川等の陸水に混じって海に流入するものであるから,当然,海岸に近いところが濁度が高く,沖合に行くにしたがって濁度が下がるという関係にあるのに,α5川河口より北側の3か所(E点ないしG点),すなわち本件空港建設工事現場前面あるいは近傍の海域では,いずれも海岸側直近よりも沖合側で高い濁度が確認されているということである。これは,赤土が直接海中から湧き出したものであることを示すものである。 さらに,赤土の堆積状況に変化が生じた平成19年秋以降の調査では,赤土の堆積量が,本件空港建設現場前面のG地点・F地点で多くなる傾向が認められる(甲208)。かつては,α5川河口部のE地点の数値が高かったのと比較して,明らかな変化である。これも,工事により発生した赤土を含む濁水が海中から直接湧出していることを裏付けるデータである。 また,平成20年6月7日の大雨の時に現地調査をしていたP19委員会によって,海岸湧水帯付近の砂浜を掘り下げると,濁水が湧き出していること,α5川河口から流入した赤土とは別に,海岸湧水帯周辺は,他の地点と比較して 6月7日の大雨の時に現地調査をしていたP19委員会によって,海岸湧水帯付近の砂浜を掘り下げると,濁水が湧き出していること,α5川河口から流入した赤土とは別に,海岸湧水帯周辺は,他の地点と比較しても濁りが著しく,水深30cm以深は全く視認できない状況であったことが確認されている(甲128)。このことも,正に地下の水路を通って濁水が直接海岸・海中に湧き出していることを裏付けるものである。 - 313 -キ本件評価書では,濁水処理を行う浸透ゾーンの容量を確定するため,室内での浸透実験により透水係数を導き出し,その数値に基づき,要浸透面積,容量及び有効水深を定めた(乙23の6-1-23頁)。そして,実施設計段階で改めて,浸透実験を実施したところ,浸透係数が変更され,これに伴い,各浸透ゾーンの容量の拡大あるいは浸透係数の高い位置への浸透ゾーンの位置変更が行われることになった(甲28号証)。 このように変更した根拠は,現地で大型浸透試験(サンプルの直径は60cm)をした結果,全地点において,室内実験値よりも低い透水係数値しか得られなかったため,必要容量,有効水深の変更あるいは透水性の高い位置への変更が迫られた(甲43)。この浸透係数の変化は,室内実験で直径10cmのサンプルから60cm径のサンプルでの実験に変更しただけで生じたというものであり,本件補正書の室内実験結果がいかに信ぴょう性のないものであるかを端的に示すものである。 浸透係数の計算の誤りは,いうまでもなく,浸透ゾーンで確保する容量の誤りをもたらす。したがって,本件補正書の浸透係数で実施した場合には,想定内の雨量でも,濁水が浸透ゾーンからあふれ出したはずである。浸透係数に信ぴょう性がないことは,各浸透ゾーンの浸透係数が各地点の琉球石灰岩のサンプル一つだけの実験結果 浸透係数で実施した場合には,想定内の雨量でも,濁水が浸透ゾーンからあふれ出したはずである。浸透係数に信ぴょう性がないことは,各浸透ゾーンの浸透係数が各地点の琉球石灰岩のサンプル一つだけの実験結果で導き出されていたことからも十分に予測可能であった。浸透ゾーンの浸透係数を算定するには,少なくとも,相当の数のサンプルでの実験結果によらなければならないことは明らかである。しかも,本件補正書では,琉球石灰岩とともに浸透ゾーンの地盤を構成する名蔵れき層については,何ら実験を行わずに,琉球石灰岩と同様な傾向と想定している(乙23の6-1-27頁)。琉球石灰岩層はモザイク状の不均質な地層であり,サンプルが採れるような固い部分があるかと思えば,その1mぐらい横には,サンゴの砂れきが詰まっているだけの部分もある(証人P20尋問調書6- 314 -頁)。このサンプル調査は,浸透ゾーン全体の岩盤を調査したとは到底いい難いものである。 したがって,わずか10cm径の1サンプルのみで得られた結果に基づく浸透係数,これに基づき算定された容積での赤土防止対策で赤土流出防止が図られていると判断したことは,明らかに裁量判断の誤りである。さらに,60cm径のサンプルによる実験結果も,わずか0.2826㎡の浸透面積での数値を示すものでしかない。実際の浸透ゾーンの面積は,この1万7232倍あるいは16万2420倍である。実験値のわずかな誤差であっても,実際に浸透ゾーンを設置し濁水処理を開始した場合には,面積の拡大により致命的な誤りをもたらす。また,実際の浸透ゾーン内の地質では,同じ地質でも一定ではなく,浸透しにくい部分もあることは明らかである。実施設計段階での浸透実験が,どの程度のサンプルを採取して行われたものであるかは不明であるが,ここで出された数値も信用に値 では,同じ地質でも一定ではなく,浸透しにくい部分もあることは明らかである。実施設計段階での浸透実験が,どの程度のサンプルを採取して行われたものであるかは不明であるが,ここで出された数値も信用に値するものでないこと,ひいては濁水があふれ出る危険性が払しょくされていないことが明らかである。 この点,被告は,本件補正書では,県が工事前に現地において面的な浸透実験を実施して検証し,必要に応じて対策を講ずることとし,そのとおり実行したのであるから,本件許可処分に誤りはないという。しかし,本件補正書に適切に対応する旨記載され,何らかの対応を採りさえすれば,その内容のいかんを問わずに環境配慮がされたものと判断するのであれば,環境影響評価を実施する意味は全くないに等しいものになる。 ク(ア) 本件補正書では,浸透ゾーンないし調整池の設置規模を策定するに当たり,1日当たりの雨量を基に10年確率規模の数値(日雨量259.4mm/日)を基準にしている。そして,この基準で99.95%をカバーし,非カバー日数は2日のみとしている(乙23の6-1- 315 --14)。しかし,この雨量を1時間雨量に換算すると,84.4mm/時である。石垣島α18では,平成12年11月12日に1時間雨量127mmの猛烈な集中豪雨を記録している。平成19月10月6日には100mm/時,平成18年4月26日には86mm/時と上記基準を上回る集中豪雨を記録している(甲44)。 石垣島は,夏から秋に掛けて台風の接近が多く,集中豪雨による環境汚染や赤土流出がα5川河口周辺でのハマサンゴ類の大量へい死の原因と指摘されていること,夏から秋に掛けての集中豪雨による恒常的な赤土堆積などの報告があることからも,局所的な集中豪雨は石垣島の地域的特性であるというべきであり,こ でのハマサンゴ類の大量へい死の原因と指摘されていること,夏から秋に掛けての集中豪雨による恒常的な赤土堆積などの報告があることからも,局所的な集中豪雨は石垣島の地域的特性であるというべきであり,これを視野に入れた環境影響評価が行われなければならない(甲28)。1日雨量を基準にしていることは,石垣島の地域的特性である局所的集中豪雨を過小評価するものである。 この点,被告は,浸透ゾーンないし調整池の規模の策定に当たり参考となる降雨量データは,浸透ゾーンに継続して流入する濁水処理に必要な浸透ゾーン容量を算定するためのものであるから,日雨量を用いることが相当であるし,平成12年11月12日の集中豪雨も想定する日雨量を超えていないというものである。 しかし,日降雨量を基準にすると,当該雨量が24時間,一定のペースで降り続けることを前提に容量を策定することになるが,本件補正書で基準にされた10年確率の日雨量259.4mmの1時間当たり雨量は10.8mmにすぎない。この規模で策定された容量では,平成12年11月12日の集中豪雨の規模(1時間当たり127mm)の集中豪雨に対応できるかは明らかに疑問といわざるを得ない。 1時間当たりでいけば,想定の12倍もの雨量が流入することになるからである。2年に1度の規模の1時間当たり雨量ですら58.8m- 316 -mで,県が想定している1時間当たり雨量の5.4倍に達している。 また,平成14年10月29日から30日にかけての豪雨時の雨量は,現空港で,降り始めの午後4時からの25時間の雨量が436mmであり,上記の日雨量を上回っているが,この規模の豪雨が工事期間中に事業実施区域内に降ることはないという確証は,何一つ存在しない。 (イ) 本件補正書は,国道を挟んで南側の地域には難透水 ,上記の日雨量を上回っているが,この規模の豪雨が工事期間中に事業実施区域内に降ることはないという確証は,何一つ存在しない。 (イ) 本件補正書は,国道を挟んで南側の地域には難透水性のトムル層が広がっているため,工事区域内で発生した濁水を一定量貯留し,規定の水質までの処理をした後に,機械処理方式を施し,SS濃度を25mg/l以下にしてα5川に排水するとしている。しかし,この関係について,本件補正書では,次の点について検討,記載されておらず,赤土等流出防止対策として万全であることを認めることはできない。 a 機械処理方式で使用する凝集剤について,本件補正書には,「使用を計画する凝集剤は,無機凝集剤,有機高分子凝集剤のうち,実験等により本事業実施区域の土質条件に適合し,環境への負荷が小さい種類,使用量などを総合的に検討して決定する。凝集剤の決定にあたっては,生物への毒性実験等を参考にする。」とあるのみである。 しかし,これでは,凝集剤を使用した機械処理方式を採用するということ以上には何も述べていないに等しいし,その凝集効果や環境負荷について全く検討されていない。凝集剤の配合は,同じ地質でも異なり,配合を間違えると全く凝集効果が得られない。したがって,凝集効果による赤土等流出防止対策が図られているとは,到底認めることはできない。 また,凝集剤の決定に当たっては,環境負荷が小さい種類,使用量を総合的に検討するとのことであるが,例えば,ここで毒性の有- 317 -無を確認する際の基準となる生物が何であるのかも,全く検討されていない。すなわち,凝集剤自体によるα5川あるいは海域に生息する動植物への悪影響の危険が全く考慮されていない。 b また,機械処理方式は,凝集剤の混合,プラント設備(機械)の ていない。すなわち,凝集剤自体によるα5川あるいは海域に生息する動植物への悪影響の危険が全く考慮されていない。 b また,機械処理方式は,凝集剤の混合,プラント設備(機械)の作動など,人の手や機械を介しての処理方式である以上,作業ミスあるいは機械の作動不良等が生じる可能性がある。 したがって,処理水のSS濃度が25mg/lを超えた場合の対応策が必要であるところ,ここでも「必要に応じ適切な措置を行う。」,「処理に必要な薬剤などは常に確保しておくこととする。」とするのみである。機械の作動不良についても「プラント設備の動力は,台風等による供給不能を考慮し発電機を用い,緊急時に対応するよう十分に備える。」と述べるにとどまり,機械自体の作動不良に対しては,何ら対策が採られていない(乙23の6-1-46頁)。また,この点に関しては,本件国交大臣意見13に「機械処理設備の管理方法についても検討を行うこと。これらの結果を評価書に記載すること」との意見が示されており,この場合の「管理方法」は,上記事態への対応策も含まれているところ,本件補正書の記載はこれに全く対応していないに等しい。 処理水のSS濃度が25mg/lを超えた場合の排水の停止などの対応や,機械にトラブルが生じたため,処理ができない間も調整池に流入し続ける濁水の処理等,当然に予想される事態への対応策についてのマニュアル等が検討される必要があるところ,これを欠いている以上,機械処理方式についても赤土等流出防止対策として欠陥があることは明らかである。 c 以上に対し,被告は,県が機械処理方式で用いる凝集剤は,無機凝集剤・有機高分子凝集剤のうち,実験等により土質に適合し,環- 318 -境への負荷が小さいものを選択する,県は,凝集剤の選定に当たっては,生物へ 被告は,県が機械処理方式で用いる凝集剤は,無機凝集剤・有機高分子凝集剤のうち,実験等により土質に適合し,環- 318 -境への負荷が小さいものを選択する,県は,凝集剤の選定に当たっては,生物への毒性実験を参考にする,工事実施中は,SS濃度が目標値の25mg/l以下を満足しているか常時記録し,必要に応じて適切な措置を行う等と述べているという。しかし,環境への負荷をどの程度の負荷まで許容することとするか,必要に応じた適切な措置の具体的内容,発電機にトラブルが生じた際のバックアップについて,何一つ明らかにされていない。 ところで,SS濃度は土壌の種類(懸濁物質の組成)やpH,初期濁度,無機凝集剤や有機高分子凝集剤の種類,添加量及びその割合などで変化し,条件によってはこの数値を達成できない場合もある。 本来は環境影響評価の過程において,現地の濁水試料を用いて,ジャーテストやシリンダーテストを行って適切な措置を明確にすべきであった。そのようなテストを繰り返していても様々な条件が逐次変化する実際の工事現場で,この数値を安定的に達成することは難しいのである。処分行政庁は,何ら資料・情報もないまま,事業主体が「適切に対応する」との一言で環境上の問題がないと判断したのと等しく,裁量権の逸脱があることは明らかである。 (ウ) 本件補正書は,総合評価として,赤土等流出防止対策は,環境保全措置として有効であると判断されることから,事後調査の必要はないとまとめている(乙23の9-8頁)。 しかし,本件補正書の赤土等流出防止対策は,上記のとおり,防止対策としては種々の欠陥を有している。また,仮に本件補正書に記載してあるような効果があることを前提にしたとしても,防止対策を採る上で,人為的なミスや機械のトラブルが生じる可能性がある。これ り,防止対策としては種々の欠陥を有している。また,仮に本件補正書に記載してあるような効果があることを前提にしたとしても,防止対策を採る上で,人為的なミスや機械のトラブルが生じる可能性がある。これによって赤土等が流出する事態が生じた場合に,その被害の拡大を発見し,新たな対策を検討し,環境被害の拡大を食い止める契機になる- 319 -のが,事後調査ないしは環境監視である。いわば,環境保全のための最後の安全装置である。 本件補正書の赤土防止対策は,神ならぬ人の計算値によって策定され,人の所為によって実施されるものである。それにもかかわらず,本件補正書は,判断の誤りや作業ミスはないとして,事後の調査ないし監視は不要と断じており,その態度はごう慢ですらある。これをもって環境上の問題はないと判断した本件許可処分に裁量権の逸脱があることは明らかである。 ケ以上のとおり,本件補正書の赤土等流出防止対策が不十分なものであることは明らかであり,α3のサンゴ礁は,今や待ったなしの危機の状態にある。このような状態の下で,このような欠陥だらけの赤土等流出防止対策を講じるのでは,赤土汚染によって,α3のサンゴ礁に壊滅的な被害を与えることになるのは必定である。 本件補正書は,調査の不足,事実評価の誤り等により影響評価を著しく誤っており,誤った環境影響評価に基づいてされた本件許可処分は,環境保全上の支障が生ずるか否かにかかわらず,違法となること(瑕疵ある評価書に基づく判断ゆえの違法)は既に主張したとおりであるが,さらに,本件評価書に記載された赤土等流出防止対策によっても赤土の流出という環境保全上の重大な支障を防止することができないのであるから,処分行政庁は,環境配慮を欠く場合であるのに,環境配慮がされるという誤った判断をしたものであっ 土等流出防止対策によっても赤土の流出という環境保全上の重大な支障を防止することができないのであるから,処分行政庁は,環境配慮を欠く場合であるのに,環境配慮がされるという誤った判断をしたものであって,その裁量を逸脱した違法がある。また,赤土が流出した場合の被害拡大の防止,あるいは,所期の対策が想定どおり機能しているかを確認するための事後調査や環境監視を行わないとして,その検証可能性や実効性確認の手段も欠いている点からも本件補正書は不十分であり,この点からも本件許可処分が裁量を逸脱したものであることが明らかである。 - 320 -(4) 本件事業予定地周辺に生息するコウモリ類等の保全に関する本件許可処分の違法性についてア(ア) 石垣島に生息している3種のコウモリ類のうち,カグラコウモリ(Hipposiderosturpis)は,環境省のレッドデータブックで絶滅危惧1B類(近い将来における絶滅の危険性が高い種)に記載されている。 八重山諸島(α6島,石垣島,α17島,α31島)の固有種であるが,α31島では既に絶滅している可能性がある。またα17島でもそれに近い可能性がある。石垣島でも繁殖洞が観光鍾乳洞化され,また様々な開発事業によるねぐらとしての洞窟の破壊や餌場としての森林の減少などによって,近年個体数が激減しているといわれている。 本種は,亜熱帯に生息する南方系の種でありながら冬眠しており,特異な生理的適応をしているなど,学術上非常に重要な位置付けを有している。 また,ヤエヤマコキクガシラコウモリ(Rhinolophusperditus)は,環境省のレッドデータブックで絶滅危惧1B類に登載されている,八重山諸島(α6島,石垣島,α16島,α32島)の固有種である。 石垣島では他の2種のコウモリ類 nolophusperditus)は,環境省のレッドデータブックで絶滅危惧1B類に登載されている,八重山諸島(α6島,石垣島,α16島,α32島)の固有種である。 石垣島では他の2種のコウモリ類と同様,繁殖洞の観光化や種々の開発による洞窟・森林の破壊などによって個体数の減少が著しい。本件事業に係る環境影響評価の詳細な調査でも,調査した島内の100以上の洞窟のうち繁殖洞は5洞しか確認されていない。本種は,南方系のものとして日本列島へ北上してきた種と考えられているが,地理的に隣接している台湾や沖縄本島のコキクガシラコウモリと体のサイズや音声(CF音)において不連続性を示している。またα6島産のものがインド洋のアンダマン諸島に生息するアンダマンキクガシラコウモリに近いとして,α6島産のものをイリオモテキクガシラコウモリとして別種とする見解もある。このように,本種は,地理的な分布とそ- 321 -の歴史的な背景の問題を含め,分類学的に未解決な問題を残すなど学術上非常に重要な位置付けを有している。 さらに,リュウキュウユビナガコウモリ(Miniopterusfuscus)は,奄美大島以南の南西諸島(奄美大島,α33島,α34島,沖縄島,久米島,石垣島,α6島)に分布する固有種である。環境省のレッドデータブックの絶滅危惧1B類に登載されている。沖縄島では南部の繁殖集団が数年前から姿を消し,久米島では全く見られなくなったという情報がある。石垣島ではかつては数か所の大集団が知られていたが,他の2種と同様,森林伐採などによる餌場の急激な減少や様々な開発事業による洞窟の消失などによって,個体数は急激に少なくなっていると推測されている。本件事業に係る環境影響評価の詳細な調査でも,石垣島全体で1800頭程度しか確認されていない上,出産・ や様々な開発事業による洞窟の消失などによって,個体数は急激に少なくなっていると推測されている。本件事業に係る環境影響評価の詳細な調査でも,石垣島全体で1800頭程度しか確認されていない上,出産・ほ育洞窟は確認されなかった(P19委員会によるその後の調査で,本件事業実施区域内のA洞窟が本種の石垣島内で唯一の出産・ほ育洞窟である可能性が高いと推測されている。)。本種は,各島しょで遺伝的分化が進んでいると予想されており,中国福建省産の個体が同種かどうかも問題になっている。また,本種は,高速飛行に障害のないまっすぐな洞窟と,天井が高く人によるこう乱のない出産・ほ育洞を必要とする。 (イ) 本件補正書によれば,石垣島には,平成16年1月現在でカグラ8900頭,コキクガシラ6700頭及びユビナガ1800頭,合わせて1万7400頭のコウモリ類が生息するとされる。一方,本件事業実施区域及びその周辺のα7地域洞窟群に生息する個体数は,カグラ最大数約4000頭,コキクガシラ3000頭,ユビナガ1000頭(ビデオ撮影法では1400頭がカウントされたこともある。)である。これらを合計すれば8000頭となり,全島の4ないし5割を占- 322 -めていて,石垣島のコガタコウモリ類の最大の生息地域となっている。 特に,ユビナガの個体数は約6割と高い値を示している。 石垣島は,島としての最大幅が約35kmしかないため,森林が連続していて飛翔移動が容易な環境であれば,島全体に生息する各種のコウモリをそれぞれ1つの個体群として扱うことが可能で,季節的移動に加えて,幼獣の分散を考慮すると長い時間経過の中で,移動交流とランダムな交配が行われ,比較的均質な遺伝構成になっていたと予想される。しかし,今日,人為的な影響で移動経路の多くが分断されている状態 に加えて,幼獣の分散を考慮すると長い時間経過の中で,移動交流とランダムな交配が行われ,比較的均質な遺伝構成になっていたと予想される。しかし,今日,人為的な影響で移動経路の多くが分断されている状態にあり,α9地域とその周辺地域も分断されていると考えられる。県の標識再捕獲による調査結果では,AないしE洞窟のコキクガシラの最大移動距離は7.8km,カグラで約10.8km,ユビナガコウモリで約22kmである(乙45)。こうしたことから,島内部で個体群の分化が進行している可能性がある。カグラについては,県による遺伝的解析から,遺伝的な距離と地理的な距離の間に相関がみられ,3つの個体群に分けられている。西部,北部,α9地域を中心とする南東部の3個体群で,特に北部と他の地域のコロニー間でわずかではあるが遺伝的な分化がみられている。したがって,α9地域の個体が消滅すれば,それを含む南東部の個体群は消滅(激減)する可能性がある。また,今後,各個体群が小さくなれば,近交弱勢(交配可能な集団が小さくなるほど,致死的遺伝子が発現する可能性が高まること)の負の連鎖に落ち込むおそれも予測され,絶滅へつながる可能性も否定できないと指摘されている。また,コキクガシラでは,カグラほど遺伝的な解析が行われていないが,カグラと同様に2つの個体群に分けられる。さらに,ユビナガについては,全く遺伝的な解析がされていない。しかし,本種の場合には繁殖場所(出産・ほ育場所)が発見されておらず,P19委員会の推測どおりにA洞窟が- 323 -唯一の繁殖場所であれば,A洞窟が繁殖場所として放棄された場合,個体数の激減を免れず,絶滅につながる可能性がある。 (ウ) 県の探索調査によれば,α9地域には主要とされるAないしE洞窟のほかに,A1洞窟,A2洞窟,D1洞窟等 して放棄された場合,個体数の激減を免れず,絶滅につながる可能性がある。 (ウ) 県の探索調査によれば,α9地域には主要とされるAないしE洞窟のほかに,A1洞窟,A2洞窟,D1洞窟等,合わせて少なくとも18洞窟が散在している。石垣島内には多数の洞窟が存在しているが,コウモリ類が利用している洞窟はその1ないし4割程度に過ぎない。 ましてや,コウモリ類の生存にとって極めて重要な出産・ほ育場所に利用されている洞窟や冬季の休眠場所(100頭以上)になっている洞窟は更に少ない。 しかし,このα7地域洞窟群の中には,少なくとも出産・ほ育洞窟が3か所,同様に冬季の休眠洞窟が4か所も存在している。α9地域にはこれら出産・ほ育洞窟や冬季の休眠洞窟を含め,多様な洞窟が散在し,また洞内に多様な環境が創出されていることによって,絶滅危惧種コウモリ類の各種数千頭にも及ぶ個体群が冬季,夏季を通じて同じ洞窟を利用するか,洞窟間を移動しながら共存している。日常の利用個体数が少ないからといってその洞窟が重要でないともいえない。そのような洞窟でも,環境変動などが起きたときの避難場所となり,そのような事態において個体群の生存を確保する重要な条件となり得るからである。ゴルフ場の設置や本件空港整備により生息環境が劣化した状況でも,ごく狭いこのα9地域に洞窟性コウモリ類総数8000頭が存在することは驚異的なことである。これは,比較的狭い地域に集中して存在する多様な自然洞窟群がコウモリ類各種で微妙に違うねぐらとなる場所の選択を許容し,また,洞窟周辺地域が採餌場所を提供し,洞窟と採餌場所への移動経路もかろうじて確保されているからである。 α9地域の小型コウモリの保全を考える上では,こうしたα7地域洞窟群の一体性を考慮しなければならない。 - 324 場所を提供し,洞窟と採餌場所への移動経路もかろうじて確保されているからである。 α9地域の小型コウモリの保全を考える上では,こうしたα7地域洞窟群の一体性を考慮しなければならない。 - 324 -(エ) このように,コウモリ類は,石垣島の生物多様性ないし生態系の重要な構成要素となっており,かつ,学術的に重要な意義を有するものである一方,既に絶滅のおそれに瀕している。α7地域洞窟群はコウモリ類の生息場所,とりわけ越冬・繁殖場所としての重要性が高く,石垣島南東部の各個体群の中心的な位置を占める場所であるといえる。 本件事業の実施によって,コウモリ類がα7地域洞窟群を利用できなくなれば,石垣島南東部の個体群の激減あるいは消滅は免れない。そして,そのような事態になれば,石垣島南東部の個体群の遺伝的形質が消失することになり,石垣島全体における各種の遺伝的多様性保全の観点から影響が非常に大きいと考えられる。 イ本件事業が実施されれば,α9地域に散在する洞窟は,破壊され,あるいは空港の下深くに消失し,直接的な改変を受けない洞窟であっても,工事中の建設機械の稼動による騒音や航空機の運行によるごう音によって,コウモリ類の生息環境が著しく悪化する。また,カグラやコキクガシラは,樹林内を移動経路として利用し,開けた空間を飛翔しないところ,今ある樹林の大半は伐採されることから,コウモリ類の餌場が減少するとともに,その餌場へのルートも分断され,コウモリ類に取り返しのつかない深刻な影響を与える。 これに対して,県の環境影響評価は,次のようにいくつもの点で誤っており,いずれもコウモリ類の生息環境の悪化を解消,低減できるものではない。本件事業の実施によって,コウモリ類各個体群が甚大な悪影響を受けることは明らかというほかない ,次のようにいくつもの点で誤っており,いずれもコウモリ類の生息環境の悪化を解消,低減できるものではない。本件事業の実施によって,コウモリ類各個体群が甚大な悪影響を受けることは明らかというほかない。 (ア) 県が環境影響評価の過程でコウモリ類の主要な利用洞窟として継続的な調査をしてきたAないしE洞窟は,わずか40m離れるD洞窟を除いて,全て本件事業実施区域内に存在する。また,本件評価書の縦覧の際に初めて明らかになったA1洞窟及びA2洞窟も本件事業実施- 325 -区域内の洞窟である。 本件補正書によれば,これらの洞窟のうちA,A1,A2及びE洞窟は盛土部分に当たり,滑走路の直下など空港の下になってしまい,A洞窟を除き洞口が閉塞される。また,B及びC洞窟は切土部分に存在するため洞口や洞窟の天井部分が大きく破壊される。A洞窟はその最奥部(コキクガシラの出産・ほ育場所になっている。)が事業実施区域端部の着陸帯の下になるが,洞口は事業実施区域外にあるためそのまま盛土される。E洞窟は現在の洞口からボックスカルバートで盛土区域外まで導き,導水とともに浸透ゾーンⅠに開口させる。その開口部周辺に樹林帯を設置するとともに,このトンネル内に一定間隔でホールを設けコウモリ類の利用に配慮するとしている。さらに,A1及びA2洞窟はそれぞれをトンネルで結んで,E洞窟のトンネルと合流させるとしている。B洞窟は破壊し,拡大した洞口を閉鎖する一方,コウモリ類の利用を可能にするため新たに別の洞口を創設し,その周辺に植栽するとしている。C洞窟については,破壊された天井部分をコンクリート板で覆い,浸透ゾーンⅡの地下を通してその外側までトンネルを伸ばし新しい洞口を設置,洞口付近は植林するとしている。 県は,A及びD洞窟が従来どおり残存するの ついては,破壊された天井部分をコンクリート板で覆い,浸透ゾーンⅡの地下を通してその外側までトンネルを伸ばし新しい洞口を設置,洞口付近は植林するとしている。 県は,A及びD洞窟が従来どおり残存するので,B,C及びE洞窟を利用できなくなってもコウモリ類は,A洞窟,D洞窟等に移動できるとして,B,C及びE洞窟の消失の影響は小さいと予測している。また,移動先のねぐらや餌場への影響についても,それぞれの環境収容力の範囲内であるとして環境保全措置を講じる必要はないという。 しかし,これらの洞窟保全策は,物理的な空間(空洞)を空港の地下に残すことにはなるが,温度や湿度,そして,空気の流れなど洞内の微気象は激変することが予測される。また,工事中の建設機械の稼動や供用後の航空機の離発着に伴う騒音・振動等によりコウモリ類の- 326 -利用は困難であり,絶滅危惧種コウモリ類の保護には何の役にも立たない。コウモリ類は,環境変動や人為的なアクシデント等によってねぐらを変えていると予想され,利用している洞窟が複数存在することでかろうじて現在の個体数が維持されているといわれている。したがって,相互利用できる洞窟が減ってしまえば,選択幅が減少し,環境収容力は低下してしまって,それらを利用する地域個体群は減少することが予測される。B,C及びE洞窟の消失により,コウモリ類の生存にとってかけがえのないα7地域洞窟群の一体性は完全に損なわれ,その影響は決して小さいとはいえない。 (イ) 県は,B,C及びE洞窟の消失によるねぐらの多様性が低下し選択肢が減ることを補うためなどの目的から,環境保全配慮として人工洞の設置を行うとしている。そして,被告は,人工洞窟の設置はコウモリ類の緊急避難場所としての意味があり,戦時中に構築された人工洞窟を石垣島のコウモ とを補うためなどの目的から,環境保全配慮として人工洞の設置を行うとしている。そして,被告は,人工洞窟の設置はコウモリ類の緊急避難場所としての意味があり,戦時中に構築された人工洞窟を石垣島のコウモリ類が利用しているという実態があるという。 しかし,この人工洞の設置について,P19委員会は,その報告書で,コウモリ類に利用されやすい代替施設を創設する技術はまだ確立されておらず,コウモリ類をそこに誘導する技術も同様であるとして,その効果について重大な疑問を呈している。作った直後の人工洞窟にはコウモリは入らないから,生息場所を奪った後の保全対策にはならないというべきであり,実際にも,平成21年度には,人工洞窟には入洞しているコウモリがほとんどいない状態であった(証人P21,甲212の11・12頁)。 (ウ) 県は,建設機械の稼動に伴う騒音及び振動の発生による環境影響のための環境保全措置として,出産・ほ育期(5月ないし8月)と冬期の休眠期(12月ないし3月)には,大型ブレーカや振動ローラなどは,A洞窟やD洞窟から一定の距離以内(大型ブレーカ等においては- 327 -A洞窟及びD洞窟から半径100m以内,また振動ローラ等においては同様に各洞窟から半径40m以内)を避けて作業を行うとしている。 しかし,実際の工事は長期間にわたり,そして,多い時には何百台もの多種の建設機械が同時に稼動し,様々な騒音をまき散らす複合的な騒音状況を呈するのに,この保全策は,県がA洞窟やD洞窟とは全く異なる構造及び形質の別の洞窟で行った騒音・振動試験のデータに基づき,単純に騒音源からの距離によって予測し決められたもので,洞窟構造などの差異は一切考慮されていない上,この試験はわずか1日だけしか行われておらず,しかも,上記建設機械各1台だけを使って行 に基づき,単純に騒音源からの距離によって予測し決められたもので,洞窟構造などの差異は一切考慮されていない上,この試験はわずか1日だけしか行われておらず,しかも,上記建設機械各1台だけを使って行われたものである。このように実際とかけ離れた条件の下で行われた調査データに基づき考えられた保全措置が適切かつ有効なものでないことは明らかである。さらに,試験調査された洞窟に生息していたのは,比較的鈍感とされるカグラであり,よりデリケートなコキクガシラにそのまま当てはめることもできない。この保全措置は,科学的根拠や前例が全くなく,建設機械の稼動に伴って発生する騒音や振動によるコウモリ類への影響を低減できるとは到底いえないものである。 平成17年にα9地域のコウモリ類生息実態調査をしたP19委員会は,その報告書(甲4)の中で,単に出産・ほ育や冬眠時期を避ければ工事の影響を回避できると速断することはできないこと,調査の結果,A洞窟につながる未知の洞窟の存在などが明らかになったから,それらの存在の有無や位置をまず確認しなければ,A洞窟の広がりを確定することができず,工事の騒音に対する適切な影響の回避(洞窟と稼動重機の距離確保など)を策定することはできないことを指摘している。しかし,このような指摘を受けていたにもかかわらず,県は,工事を続けてきており,その結果,平成16年1月から平成21年1月にかけて,コウモリ類の個体数は減少傾向を示している状態になっ- 328 -ている(甲122の資料6,証人P2113・14頁)。 (エ) 県は,現空港の北側から約250mの飛行経路直下にあるコキクガシラ(繁殖集団ではない。)の生息する洞窟で騒音・振動測定を行った。そして,その結果に基づき,航空機の離発着に伴う騒音・振動が残存するA及びD洞窟を の北側から約250mの飛行経路直下にあるコキクガシラ(繁殖集団ではない。)の生息する洞窟で騒音・振動測定を行った。そして,その結果に基づき,航空機の離発着に伴う騒音・振動が残存するA及びD洞窟を利用するコウモリ類の生息状況を変化させることはないと予測,評価し,環境保全措置を一切考えなかった。 しかし,現空港近くのその洞窟は,A洞窟やD洞窟とは全く異なり,洞口から急に落ち込む音の入り込みにくい構造をしている。また,県は,光が届かないから音も伝播しないという前提でA洞窟やD洞窟への騒音等の影響を予測しているが,これも大きな誤りである。光は洞窟内では反射しないので屈曲部があればさえぎられるが,音(音波)は洞窟内で反射するため屈曲部があるからといってさえぎられるとは限らず,光が届かないから騒音も伝播せず,影響がないと短絡的に結論を出せるものではない。洞窟内の音の伝播は,洞口からの距離だけではなく,各洞窟の内部構造によっても変わってくるものであり,それらの調査をすることもなく結論を出した県の予測・評価は適切なものとはいえない。そして,そもそも,現空港近くの当該洞窟の現空港供用前のコウモリ類の生息状況は不明であるから,当該洞窟をコキクガシラが現在利用しているという事実があったとしても,また,当該洞窟内の中間地点や奥部の騒音レベルがいかに小さいものであったとしても,それだけで生息状況に変化がなく,コウモリ類への影響はないとはいい切れないのである。 また,県は,A洞窟やD洞窟がコウモリ類にとって極めて重要な出産・ほ育洞窟であることを知りながら,繁殖集団への影響については何の検証もしていない。県が行った航空機の騒音・振動がコウモリ類に及ぼす影響についての予測・評価は,このような重要な観点が抜け- 329 -落ちていることからも,不十分,不適 団への影響については何の検証もしていない。県が行った航空機の騒音・振動がコウモリ類に及ぼす影響についての予測・評価は,このような重要な観点が抜け- 329 -落ちていることからも,不十分,不適切といわざるを得ない。 以上のように,県の予測,評価は,手法そのものに重大な瑕疵があり,そのような手法に基づいて出された結論は到底適切なものとはならない。 (オ) 本件補足書は,本件事業の実施に伴って,事業実施区域の樹林が約30ha消失し,A及びD洞窟から餌場への2つの移動経路が分断される。これについて県は,A及びD洞窟をねぐらとする各個体の餌条件が変化するため,環境影響の程度が極めて小さいとはいえないとして採餌場所となる緑地と移動経路の創出のために,樹木を植栽する環境保全措置を行うとしている。 しかし,創出される移動経路は北東側の海岸林への1ルートのみであり,また,新たに創出される樹林は,本件補正書の図面で見る限り,移動経路部分を含めても消失する樹林の3分の1にも満たない10ha未満しかないと思われる。これでは,α9地域に生息するコウモリ類の餌量不足が生じ,個体群の維持に重大な影響が生ずるおそれがある。それにもかかわらず,県は,当該環境保全措置の効果として餌場の消失及び移動経路の分断が低減されるとして,本件補正書に現況との変化は極めて小さいなどと記載している。これは看過できない重大な問題である。 ウ被告は,石垣島に生息するコウモリ類の個体数を維持するためには本件事業実施区域周辺だけでなく,石垣島全体という視点が重要であるといい,県は,コウモリ類が石垣島全体で一つの個体群を形成しているとの分析を踏まえて,本件空港設置工事に伴うコウモリ類への影響を回避ないし低減するための保全対策を採っているのであるから,本件事業が といい,県は,コウモリ類が石垣島全体で一つの個体群を形成しているとの分析を踏まえて,本件空港設置工事に伴うコウモリ類への影響を回避ないし低減するための保全対策を採っているのであるから,本件事業がコウモリ類を絶滅に追いやるものとはいえない,本件事業実施区域内の洞窟への影響のみを分断して個別に取り上げ,県のコウモリ類の保全措- 330 -置を批判するのは当を得たものではないと主張している。 この点,県は,本件事業実施区域において採り得る保全措置の効果が小さいあるいはないかもしれないと意識しており,A及びD洞窟を始めとするα7地域洞窟群において生息するコウモリ類への本件事業の影響を十分に回避しようとすれば,本件事業実施区域自体を変更せざるを得ないことを認識する一方,本件事業実施区域について代替案は検討しないとの方針を有していた。そこで,上記保全措置で足りると強弁するため,環境影響評価の対象であるα7地域洞窟群に生息するコウモリ類を保全する必要性を過小評価し,コウモリ類は石垣島で単一の地域個体群を成しているから,石垣島の一部(α9地域)からコウモリが消失しても,地域個体群が絶滅したことにはならないといおうとしているのである。 しかし,コウモリ類が石垣島全体で単一の地域個体群を成しているとの論理は,次の点から失当である。 (ア) 被告は,3種のコウモリ類がそれぞれ単一の地域個体群とする根拠として集団遺伝学的分析を挙げるが,集団遺伝学的分析の結果そのものからそのように断ずることは困難と考えられる。そもそも,分布する範囲の狭い野生動物は,一つの地域グループである地域個体群を成すとみられやすいが,その種に固有な生態に基づく何らかの障壁が存在し,移動ないし遺伝的な交流が困難となって,複数の地域個体群を形成しているとみるのが相当であることが 地域グループである地域個体群を成すとみられやすいが,その種に固有な生態に基づく何らかの障壁が存在し,移動ないし遺伝的な交流が困難となって,複数の地域個体群を形成しているとみるのが相当であることがある。(調査の範囲内で)石垣島に生息するコキクガシラについて4段階でグループ分けしたところ,各段階によって2から5の遺伝的変異の認められるグループが見いだされたとの報告がある(甲2,3)。しかし,集団遺伝学的分析によって判明することは,一定の範囲においても現在も行き来しているかどうかということではなく,過去から現在までの間に,一- 331 -定の範囲で交流があったかどうかということに過ぎない(証人P22尋問調書42頁)。したがって,遺伝子調査は,石垣島で一個体であるとする根拠たり得ない。 また,被告は,α9地域における洞窟に生息する個体数に変動が認められ,このことは他地域との交流状況を強く推測させる事実であるという。しかし,カグラやユビナガについて標識調査で移動が認められるとしても,それから,標識調査を行っていないコキクガシラについても移動が認められるとするのは根拠が薄弱であって,単なる推測にすぎない。また,標識調査によって移動が確認されたとしても,直ちに石垣島全体で一つの個体群とまではいえず,交流の規模,程度が問題となるはずであるが,県の示すデータは交流があるかないかといえばあるという程度のものにすぎないから(「平成20年度 H20新石垣空港モニタリング調査業務委託(その4)」(乙47)の99ないし103頁を見ても,α9地域内で移動しているコウモリの個体数に比べ,それ以外の洞窟に移動しているコウモリはわずかである。),石垣島全体で一つの個体群であるということはできない。 (イ) 地球上には,1000万から一億以上の種が存在して いるコウモリの個体数に比べ,それ以外の洞窟に移動しているコウモリはわずかである。),石垣島全体で一つの個体群であるということはできない。 (イ) 地球上には,1000万から一億以上の種が存在しているといわれている。種は,生物を分類する単位であり,更に亜種に分類される。 種・亜種に属する生物は,遺伝的な交流の在り方に応じた地域個体群として存在し,種個体群の内部を見ると,個体ごとの遺伝的な変異が見られる。この遺伝的な変異に富んでいることが種や個体群の多様性の前提となっており,逆に種地域個体群の外部を見ると,異なる種の個体群が集まって多様な生物群集を形成している。これと地形や気象,土壌,水,大気,陽光など無機物質とが系を織りなして形成しているのが生態系である。これらの種,遺伝子及び生態系の多様性は,適応進化(遺伝物質であるDNAに頻繁に起こる化学的な変化である突然- 332 -変異に,捕食関係,競争関係など生物間の相互作用などによる自然淘汰が働いてもたらされる。)と,遺伝的な交流を妨げる効果である隔離が加わって起こる種分化によって形成されてきた。人間の生存は,地球上の安定したエネルギーの流れ,栄養塩類や水を含む物質循環,そして,多様な生物間の相互作用に支えられている。前2者の物理的な作用にしても,生物の働きによって調節されている。他の惑星と異なり,極めて複雑で精密な生物圏の働きによって,地球表面には揺らぎのある物理的不均衡状態,つまり生物による動的平衡状態が生み出され,維持されているのである。その結果として,私たちを取りまく大気,水,土壌と多様な生物からなる自然環境が成立し,様々な経済的生産活動が可能となる。そこで,生物多様性に関する条約2条は,生物学的多様性ないし生物多様性について,全ての生物(陸上生態系,海洋その他の水界生態系 多様な生物からなる自然環境が成立し,様々な経済的生産活動が可能となる。そこで,生物多様性に関する条約2条は,生物学的多様性ないし生物多様性について,全ての生物(陸上生態系,海洋その他の水界生態系,これらが複合した生態系その他生息又は生育の場のいかんを問わない。)の間の変異性をいうものとし,種内の多様性,種間の多様性及び生態系の多様性を含むと定義し,その保全を図ることとしている。 このように,おおまかには遺伝子,種及び生態系間の各階層のレベルで,それぞれ多様性が保全されなければならないが,種の内部ではその地域グループである地域個体群間の変異,各個体群の内部では更に狭い地域ごとの変異が見られる。そのような変異が地域個体群,そして,種の多様性を生み出す基礎となっているのであり,「地域個体群」と明確に枠決められるかどうかにかかわらず,地域的な遺伝的変異が喪失すると,その総和としての地域個体群,さらに,その総和としての種の絶滅確率が加速度的に高まってしまう。母数が少なくなればなるほど,偶然などの確率変動性による影響は大きくなり,更に負の連鎖に陥りやすいためである。 - 333 -(ウ) 仮に,3種のコウモリ類全てが石垣島で単一個体群だと仮定したとしても(石垣島全体で見た場合でも),既に主張したα7地域洞窟群の一体性を考慮すれば,α7地域洞窟群はそれら地域個体群の保全に不可欠な環境条件となっているから,A洞窟とD洞窟が保全されるからといって石垣島全体でのコウモリ類への深刻な打撃のおそれを否定することはできず,本件事業の実施はその絶滅をもたらすおそれがある。 エ(ア) P19委員会のP21・P53により,平成19年6月9日,A洞窟から出洞してきた授乳中のユビナガの雌を捕獲した事実が明らかにされ,これによってA洞窟が石垣島において未発 それがある。 エ(ア) P19委員会のP21・P53により,平成19年6月9日,A洞窟から出洞してきた授乳中のユビナガの雌を捕獲した事実が明らかにされ,これによってA洞窟が石垣島において未発見であったユビナガの出産・ほ育場所であることが確認された(甲4,46,212)。 A洞窟がコキクガシラ及びカグラに続き,ユビナガの出産・ほ育場所であることが確認されたことにより,A洞窟が石垣島に生息するコウモリ類にとって更に重要でかけがえのない洞窟であることが明らかになった。 ところで,2002年度(平成14年度)新石垣空港モニタリング調査業務委託報告書には,A洞窟で,平成14年7月23日に幼獣メス4頭,オス11頭,同月25日にメス1頭,オス3頭を捕獲し標識を装着したとの記載がある(甲3の7-10頁表-5.1.7.1(3))。7月下旬はいまだほ育期であって,その時期にA洞へと幼獣が飛翔するのを捕獲したというのは,A洞窟がそれら幼獣の出産・ほ育洞であったことを意味するものであり,A洞窟を出産・ほ育洞と認定しなければならないはずである。α9地域にユビナガの出産・ほ育洞がある可能性は否定できず,A洞窟がその可能性が高いことが県による調査の中にもあるのである。 ところが,本件補正書は,この事実を黙殺して,「a)A洞窟リ- 334 -ュウキュウユビナガコウモリ」の項で「通年利用と判断できる(最大約1000個体)。出産・ほ育場所としての利用は確認されなかった。」としており(乙23の6-12-172頁),また,甲3の7-9頁には,幼獣が捕獲されたことを前提とする記載はあるものの,注意深く読み取り,かつ,ユビナガの生態に詳しくなければ,事実が分からないような記載となっている。これは「他洞窟から移入してきたと見られる幼獣」とすることによ れたことを前提とする記載はあるものの,注意深く読み取り,かつ,ユビナガの生態に詳しくなければ,事実が分からないような記載となっている。これは「他洞窟から移入してきたと見られる幼獣」とすることによって,意図的に事実を隠蔽しようとしたものとも読める。 (イ) 被告は,A洞窟の洞口付近で授乳中のユビナガの雌を捕獲したとしても,A洞窟から出てきたものかどうか分からないとし,この事実からはA洞窟が出産・ほ育洞であるとは断定できないと主張している。 しかし,P19委員会のP21らは,A洞窟の洞口からの飛翔個体を追視し,洞口上の林内でそれを捕らえているのである。 (ウ) 被告は,乙第33号証を引用した上で,乳頭の裸出のあるメスが出産・ほ育洞以外の洞窟で捕獲されていることから,乳頭の裸出のあるメスの存在と出産・ほ育洞であることとは関連性が薄いと主張している。 しかし,同号証の12頁の記載からは,少なくとも2個体のうちの1個体は,出産・ほ育洞で見付かっており,乳頭の発達したコウモリのいる洞窟は,50%の確率で出産・ほ育洞であったとみることができる。また,同記載は,乳頭が発達した個体で1年目,2年目に見付かったものの総数が7個体であり,そのうち1個体を除く6個体は出産・ほ育洞で見つかったことを示唆している。同号証の記載から,乳頭の発達した個体が出産・ほ育洞以外の洞窟で発見される方が一般的であるという結論を導くのはその趣旨を誤解しており,むしろ,乳頭の発達した個体が出産・ほ育洞で発見されるのが一般的であるといえる- 335 -のである。 (エ) 被告は,ユビナガに関する甲第212号証の記載につき,種々の理由を付けてその信用性に疑問を呈しているが,同記載は具体的かつ詳細なものであり,信用できるもので る- 335 -のである。 (エ) 被告は,ユビナガに関する甲第212号証の記載につき,種々の理由を付けてその信用性に疑問を呈しているが,同記載は具体的かつ詳細なものであり,信用できるものである。また,被告の主張は過重な立証を要求するもの,あるいは,ユビナガの生態を知らない議論であって,いずれも失当である。 オ(ア) 本件補正書は,A及びD洞窟のねぐらの保全あるいは事業実施区域周辺の重要な種の個体群の存続を環境保全上の基本的考えとして(乙23の6-12-317・320頁),種々の環境保全措置を行うことによって事業実施におけるコウモリ類への影響は小さいとしている。 しかし,予備的工事着手後,そのA及びD洞窟自体並びに事業実施区域周辺(全体)のコウモリ類の生息数が激減し,事業実施区域周辺(全体)の個体数も減少してきている。予備的工事後のコウモリ類に関する調査結果(現在のコウモリ類の生息状況)が本件補正書の重大な瑕疵を証明しているわけであり,コウモリ類保護への適切な配慮がされていないことのあかしとなっている。 被告は,石垣島に生息するコウモリ類について,平成20年度までは有意な減少は生じておらず,コウモリ類の個体数が激減しているとの原告らの主張は誤りであるという。しかし,コウモリ類の個体数について,変動を考慮した上で,全般的な傾向を統計処理したところ,減少していることは明らかというべきである(甲122の資料6,証人P2113・14頁)。コウモリの個体数に経年変化があるとしても,最大の数字で比較すれば,減少傾向にあるといえる。特に,本件空港の工事に着手する前(平成16年1月)と比較して,B,C及びE洞窟の状況を改変し従前のような利用ができない状態にする前の段階(平成21年1月段階)でも,統計処理した値で見ると いえる。特に,本件空港の工事に着手する前(平成16年1月)と比較して,B,C及びE洞窟の状況を改変し従前のような利用ができない状態にする前の段階(平成21年1月段階)でも,統計処理した値で見ると,平成16年- 336 -1月から平成21年1月までの間に,2分の1ないし3分の1程度の減少があり,これを全般的な傾向からみて激減と評価することは妥当というべきである。 なお,県のコウモリ類の個体数に関するデータは,最大個体数という,証人P22自身が説明することが不能な概念によって(証人P22尋問調書13・40頁),計測した個体数で表示されている。しかし,県の使用する数字が実際のコウモリの生息数を表しているものかどうかは疑問がある(甲212の4~6頁)。 (イ) 県は,平成18年10月末頃から最短距離で40mとD洞窟に近い浸透ゾーンⅡの試験盛土工事(掘削工事)を開始した。県によると,平成21年11月末以降の休眠時期は,本件補正書(6-12-267・320頁,7-65頁)に記載されているとおりであり,D洞窟から100m以内では騒音・振動の大きい大型ブレーカによる掘削工事はしていないとのことである。 しかし,県のコウモリ類に係る事後調査(甲45の10・12頁)によれば,D洞窟のコウモリ類の生息数は,平成19年1月及び同年3月の調査とも平成14年ないし平成17年度調査における同時期の個体数に比べて著しく減少している(ユビナガは0頭で不変)。また,P19委員会が平成19年6月の出産・ほ育期に行った調査でも,D洞窟のカグラの個体数は70頭,これは平成18年度の同時期(200頭)に比べて激減,加えて県が平成14年ないし平成18年に行った同時期の個体数の記録(150~400頭)を見てもはるかに下回っており,P19委員会報告書 は70頭,これは平成18年度の同時期(200頭)に比べて激減,加えて県が平成14年ないし平成18年に行った同時期の個体数の記録(150~400頭)を見てもはるかに下回っており,P19委員会報告書は,明らかに工事等の人為的な影響によるものと考えられるとしている(甲46の4頁)。 (ウ) C洞窟についてみると,カグラは,D洞窟での調査による生息妨害を受けた平成14年度以外はC洞窟を全く利用していなかった。しか- 337 -し,平成19年1月には850頭,同年3月にも640頭が利用し,平成14年度と同程度の生息数になっている。他方,コキクガシラは,1月ないし3月には通常数百頭が利用しているが,平成19年1月にはわずか2頭,同年3月に入っても160頭しか利用しておらず,カグラの侵入によってより弱小なコキクガシラが別の場所に追い出されたという事態になっている(甲45の10・12頁)。 (エ) さらに,P19委員会報告書によれば,平成19年6月におけるA洞窟のユビナガの個体数は81頭で,平成18年の同時期(1000頭)に比べて激減していた。ユビナガの個体数は,県が平成14年ないし平成18年に行った同時期の個体数の調査結果と比べても下回っており,とても経年変動の範囲とみることはできない,明らかに工事等の人為的な影響が現れていると判断せざるを得ない(甲46の3頁)。なお,A洞窟は,掘削工事現場から最短で75m,また,人工洞設置工事の現場から最短で30m程度しか離れていない。 (オ) α7地域洞窟群全体における各種個体数の総計(平成19年6月)も,P19委員会報告書によれば,前年同期に比べていずれも減少している。カグラは330頭が230頭に,コキクガシラは1580頭が1030頭に,ユビナガは1030頭が80頭に の総計(平成19年6月)も,P19委員会報告書によれば,前年同期に比べていずれも減少している。カグラは330頭が230頭に,コキクガシラは1580頭が1030頭に,ユビナガは1030頭が80頭にそれぞれ大幅に減っている。個体数減少の主因は工事及び工事による周辺環境の劣化,採餌場所の消失等の影響が大きいと考えられるとされている(甲46の5頁)。 (カ) 以上のとおり,既にこれまでの予備的工事でさえ,そのA及びD洞窟のコウモリ類に重大な影響が出ている。また,α7地域洞窟群全体における各種個体数も同様である。この事実に鑑みれば,本件補正書の前提となる調査ないしその結果に対する評価に重大な瑕疵があったことは明らかというほかはない。P19委員会は,本件補正書につい- 338 -て既に破たんしていると指摘し(甲46の4頁),A洞窟とD洞窟が保全されれば,α9地域の個体群が維持できるとする短絡的な発想は払しょくすべきで,α7地域洞窟群の重要性を再評価する必要があるとしている(甲46の5頁)。 カ本件の環境影響評価は,次のとおり,不適切,不十分な調査に基づいて進められたものである。 (ア) P19委員会は,平成19年6月,調査を実施し,夜間にA洞窟から出洞してきたユビナガのほ育中の雌を捕獲し,これによって,A洞窟がそれまで石垣島において未発見のユビナガの出産・ほ育洞であることを確認したこと(甲46の1~3頁)は既に主張したとおりである。 A洞窟がユビナガの出産・ほ育洞窟であることがそれまで分からなかったのは県の調査方法に問題があったからである。A洞窟のように構造が複雑な鍾乳洞の場合,洞内で調査できる範囲は非常に限られており,そのような場合,出洞してきた成獣ユビナガを捕獲しその繁殖状態を調べる方法がその 調査方法に問題があったからである。A洞窟のように構造が複雑な鍾乳洞の場合,洞内で調査できる範囲は非常に限られており,そのような場合,出洞してきた成獣ユビナガを捕獲しその繁殖状態を調べる方法がその洞窟が出産・ほ育洞であるかどうかを見分ける最も適切で正確な方法であり,調査圧にも配慮した極めて一般的なやり方である。しかし,県は,とおり一遍に出産・ほ育期の捕獲調査はコウモリ類への影響が大きいとして,あくまで幼獣を視認で確認する調査法にこだわった(甲46の3頁)。調査圧と調査の結果得られる重要事項のバランスを考えないこの不適切な調査方法のため,コウモリ類にとって極めて重要な出産・ほ育洞窟を確認できないまま,環境影響評価を行ったのである。 他方,P19委員会の平成18年の調査及びこれまでの県の調査でも,A洞窟内の人の入れる場所ではユビナガの出産・ほ育コロニーは確認されていない。したがって,ユビナガの出産・ほ育は,A洞窟内- 339 -の人の入れない未知のねぐらで行われていると推測されている。自然洞は人が通れないくらいの狭い坑道であっても,その洞奥は広大な空洞が広がり,コウモリ類数千頭のコロニーが形成されていることもしばしばある(甲46の3頁)。A洞窟は県がこれまで明らかにしてきた以上の広がりを持つ洞窟であり,この場所がどこにあるかを確認しなければ,本件補正書に保全措置として記載されているコウモリ類の出産・ほ育期及び冬季の休眠期における大型ブレーカの稼動制限区域が確定できず,工事による洞窟破壊の危惧も払しょくできないのである。 (イ) P19委員会は,平成19年の調査で,A洞窟にはこれまで明らかになっている本件空港予定地から最も離れている西側の3つの洞口のほかに,洞内環境調査の結果から別の未知の洞口が存在しているこ (イ) P19委員会は,平成19年の調査で,A洞窟にはこれまで明らかになっている本件空港予定地から最も離れている西側の3つの洞口のほかに,洞内環境調査の結果から別の未知の洞口が存在していることを推測した。そして,その場所として予定地内に掛かるA洞窟奥部に近く,A洞窟との連続性が示唆されているD1洞窟又はその周辺が考えられると指摘していた(甲46の6~7頁)。P19委員会は,その後平成19年の調査でその洞口亀裂をD1洞窟付近で発見し,そこからコキクガシラ150頭が出洞するのを確認した。その際発見されたD1洞周辺の亀裂は1か所のみであったが,洞窟環境の調査結果では複数あると予想されている(甲46の3~4頁)。 D1洞窟は空港建設によって盛土される区域に隣接している。こうした亀裂が盛土によって閉鎖されることになれば,空気の流れが変わり,A洞窟における洞内微気候の変化(好適な生息環境の破壊)は避けられない。また,A洞窟の中央プール手前(甲46の図1)より奥は,水面と天井とのすき間が非常に狭い部分が数か所あり,特に5ないし6月(出産・ほ育時期)の増水時にはそれらの部分が少なくとも数日は閉鎖してしまうことが考えられる。このような増水時の場合,- 340 -亀裂が閉鎖されれば洞奥部(コキクガシラの出産場所)から洞外への移動経路も消失してしまい,出産・ほ育に利用しているコキクガシラには極めて重大な影響を与えることが予測され,出産・ほ育場所やねぐら場所の放棄につながるおそれが強い。さらに,洞窟亀裂が閉鎖されないとすれば工事中の騒音や振動がA洞窟内の洞奥部に直接進入してくることになり,いずれにしても洞内環境の悪化は避けられない。 県は,これまで数年にわたってコウモリ類の生態調査をしているものの,洞窟内の空気の流れなど洞内環境調査はほとん の洞奥部に直接進入してくることになり,いずれにしても洞内環境の悪化は避けられない。 県は,これまで数年にわたってコウモリ類の生態調査をしているものの,洞窟内の空気の流れなど洞内環境調査はほとんどしておらず(温度,湿度の記録のみ),新たな洞口を発見することはできなかった。 (ウ) 県は,本件国交大臣意見3に基づいて,A1洞窟を平成17年5月と同年6月に目視確認による調査方法で実施し,水没するためコウモリ類の利用は困難であると報告した。 しかし,P19委員会の調査では,平成18年の冬季(2月),夏季(6月)及び秋季(9月)並びに平成19年の夏季(6月)に,いずれも数頭から16頭のコキクガシラがA1洞窟で確認されている(甲4,甲46)。また,P19委員会は,平成18年9月及び平成22年6月にはA1洞窟の最奥部まで入洞し,コキクガシラの生息とグアノを目視観察し,A1洞窟には増水時でも水没しない場所があることを発見した。これによって,A1洞窟はほぼ周年を通じて,少数ではあるがコキクガシラがねぐら場所として利用していることが確認された(甲4,甲46)。A1洞窟は増水時には途中までしか入洞できず,洞内調査は難しいが,洞口でのバットディテクター(コウモリの出す超音波を人の耳で聞こえる可聴音に変換する装置で,周波数によってその種別を明らかにできる。)によるカウント調査によりで利用個体数を確認できるにもかかわらず,県は,同調査もせずに目視調- 341 -査だけでいとも簡単に,コウモリ類の利用は困難であると結論付けた。 これは,極めて不適切な調査方法による誤った結論であり,そのような調査に基づいてA1洞窟の評価を行うことは,非科学的とのそしりを免れない。 (エ) 県は,平成19年8月23日に,浸透ゾーンⅡの掘 不適切な調査方法による誤った結論であり,そのような調査に基づいてA1洞窟の評価を行うことは,非科学的とのそしりを免れない。 (エ) 県は,平成19年8月23日に,浸透ゾーンⅡの掘削中に新たな洞窟が見付かったと発表した。水流があり洞窟延長は300m(歩行可能範囲は110m,狭さく部分は190m,うち事業地内95m)で,洞内には6ないし7mのホールもあり,C洞窟とつながっていると考えられており,コキクガシラ70頭とカグラのものと思われるふんが洞内で確認されているという(甲12)。しかし,既に開口部は掘削で大きく破壊されており,工事前にはこの洞窟をどの種のコウモリがどれくらいの数,どのように利用していたかを知る由もない。 これほど大きな洞窟が今頃になって発見されたのは,洞窟探索調査が極めて不十分だったことを意味している。洞口が破壊された後でもこの新洞窟を70頭ものコキクガシラが利用している事実から鑑みれば,この洞窟はAないしE洞窟に並ぶ,予定地周辺地域では極めて重要な洞窟であった可能性がある。 (オ) P19委員会は,コウモリ類を除く洞窟内動物でも新種と思われる好洞窟性動物を発見した(甲47の1・3頁)。 平成18年及び平成19年の調査でD洞窟のコウモリ類のグアノ(ふん)中から,ケシガムシ属の一種が発見された。本件補正書資料編の洞窟性生物出現種リストには記載・報告されていないものである。 洞窟内のコウモリのグアノ中に見られるケシガムシ属の種として,ドウクツケシガムシがあり,世界で唯一,熊本県の一洞窟に生息していることが報告されている。熊本県により準絶滅危惧種に指定されているが,近年は生息が確認されておらず,絶滅が非常に心配されている。 - 342 -D洞窟で発見されたケシガムシ属の一種は,このド していることが報告されている。熊本県により準絶滅危惧種に指定されているが,近年は生息が確認されておらず,絶滅が非常に心配されている。 - 342 -D洞窟で発見されたケシガムシ属の一種は,このドウクツケシガムシと発見環境が類似しており,未記載種(新種)の可能性が高いと専門家は指摘している。 このほかにも,P19委員会の調査によって,好洞窟性のトカラコミズギワゴミムシがA1,C及びE洞窟の洞内で初めて確認された。 県の調査が不十分なあかしである。また,真洞窟性で準絶滅危惧種(石垣島固有種)に指定されているムモンアメイロウマについては,本件補正書の中ではその保全措置について一切示されておらず,不十分極まりないといえる。 (カ) 以上のとおり,コウモリ類及び洞窟内動物に関する県の環境影響評価は,その基本となるべき調査そのものが極めて不適切,不十分であった。そのため,P19委員会の平成18年ないし平成19年の4回の調査だけでも,県の調査では明らかにできなかった環境影響評価を進める上では看過することはできない重大な事実が新たに発見されている。これらの重大な事実に配慮することなしに(できないままに)進められた環境影響評価は,当然のことながら環境の保全に適切に配慮されたものにはなり得ない。 キ 「コウモリ類調査の手引き(1)」(甲135)の編集に関わっているP54(NPO法人)は,県の環境影響評価におけるコウモリ類調査を当初より随意契約で実施してきているコンサルタントであり(甲2,3),自ら編集した手引きを知らないわけはない。また,県がコウモリ類に関する専門的な助言を得るために設置した「P24委員会」でも周年の調査を主張する委員などがいたにもかかわらず(甲52の9頁),その後の同委員会における調査回数等につい はない。また,県がコウモリ類に関する専門的な助言を得るために設置した「P24委員会」でも周年の調査を主張する委員などがいたにもかかわらず(甲52の9頁),その後の同委員会における調査回数等についての論議はうやむやになってしまった(甲53)。すなわち,事業主体である県の主導により,あえて不適切,不十分な調査が行われたことになる。 - 343 -また,P54の代表(理事長)であるP55氏は,この「P24委員会」の委員である。同氏は,奈良教育大学教授でありコウモリ類の専門家(分類学)ではあっても,県とともに環境影響評価手続を進める団体の代表であるため,第三者的立場の専門家等で構成されるべき委員会に加わるのは極めて公正さを欠くとして,P33会やP45会は,同氏の解任を求めている(県は,公正さを損ねるものではなく委員にふさわしい専門性と資質を有しているとしており,同氏は,今も委員のままである。)。 そして,「P24委員会」は,P55氏を含め5人で構成されているが,コウモリの研究や保護の専門家は,同氏を含めた2人だけであり,その人選に強い疑問の声が上がっている。「P24委員会」が,県による早期事業推進の圧力に抗し得ない状況にあったことは容易に推測される。 ク以上のとおり,工事の実施後,既にコウモリ類への影響が現実的に発生していること,P19委員会の調査によって県の不適切,不十分な調査が明らかになり,環境影響評価を進める上で欠かせなかった重大な事実がいくつも確認されてきていること,そして,県が環境影響評価書に対する本件国交大臣意見に適切に対応していないことなど,コウモリ類に関する県の環境影響評価は,環境の保全について適正な配慮がされたものとは到底いえない。 それにもかかわらず,処分行政庁が本件許可処分をしたことには 意見に適切に対応していないことなど,コウモリ類に関する県の環境影響評価は,環境の保全について適正な配慮がされたものとは到底いえない。 それにもかかわらず,処分行政庁が本件許可処分をしたことには,事実誤認,裁量権の逸脱があるから,評価法33条に違反し,違法となることは明らかである。 (被告)処分行政庁は,前記第2の3のとおり,本件補正書の記載事項及び本件国交大臣意見に基づき,主として,本件主務省令の別表第一(6条関係)に掲- 344 -げる標準項目及び本件主務省令6条1項により必要に応じて追加した選定項目に着目し,本件事業において「環境の保全についての適正な配慮がされるものであるかどうか」を審査した。 本件補正書によれば,本件事業の実施が環境に及ぼす影響を予測・評価した結果は,環境保全措置等を実施することによって,環境影響は回避ないし低減されており,また,必要に応じ,損なわれる環境の有する価値が代償されていることから,全体としては,事業実施区域周辺に及ぼす環境影響の程度は小さいものと判断されていること(9-1ないし9-35頁),また,本件国交大臣意見において指摘した24項目についても,いずれも適切な対応がされるものと認められたことから,処分行政庁は,本件事業につき,環境配慮がされるものと判断した。 この処分行政庁の判断は,合理的な基準に基づき,評価法所定の所要の審査を行った結果である。本件空港の設置は高度の必要性が認められるものである上,本件事業は環境配慮がされるものと判断されたのであるから,処分行政庁が本件許可処分をしたことに裁量権の逸脱又は濫用がないことは明らかである。 (1) 評価法33条1項の審査及びこれについての司法審査の在り方についてア本件事業は,「第二種事業」(評価法2条3項,環境影響評価法施行 ことに裁量権の逸脱又は濫用がないことは明らかである。 (1) 評価法33条1項の審査及びこれについての司法審査の在り方についてア本件事業は,「第二種事業」(評価法2条3項,環境影響評価法施行令6条,別表第一の四イ第三欄)に該当することから,処分行政庁は,航空法39条に基づく本件許可処分の審査に際し,環境配慮審査の結果を併せて判断することとなる(評価法33条1項,2項1号)。すなわち,処分行政庁は,飛行場設置許可の申請があったときは,その申請内容について,申請書及びこれに添付された書類や図面の記載内容等に基づき,また,航空法39条2項に基づく公聴会の結果を踏まえて,同条1項各号の定める要件に適合するか否かを判断する。そして,申請内容が同項所定の要件を全て満たしていると判断した場合には,評価法33条1項の審査の結果(環境保全上の支障を防止する法益)と航空法39- 345 -条1項各号の審査の結果(飛行場設置許可をすることによる法益)を比較考量し,評価法33条2項に基づき,当該申請に係る飛行場の設置を許可するか否か,許可に必要な条件を付するか否かを判断する。 そして,環境の保全に適正な配慮をして事業を実施するという場合,その配慮の仕方としては様々な方法が考えられるところであり,特に事業や環境保全措置の代替案がある場合にいずれを選択するかは事業者の自主的な判断に委ねられるべきものである。また,事業の可否は,当該事業を必要とする公共性,社会性やその雇用効果,経済効果なども考慮の上,更には時として政治的判断も加えられ,正に総合的見地から決せられるものである。そのため,主要諸国においても,環境影響評価は,主に環境を配慮した合理的な意思決定のための情報の交流を促進する手段として位置付けられ,個々の事業に係る政府の意思決定そのものに 決せられるものである。そのため,主要諸国においても,環境影響評価は,主に環境を配慮した合理的な意思決定のための情報の交流を促進する手段として位置付けられ,個々の事業に係る政府の意思決定そのものに一般の人々が参加するための制度とはされていない。評価法は,こうした主要諸国の状況等にも鑑み,中央環境審議会答申において,我が国においても同様の考え方に立つのが適当であるとされたことを受けて立案されたものであり,事業に係る意思決定に反映させるべき環境情報の形成を図る観点から環境影響評価制度を規定したものであるとされている。 そうすると,このような環境情報を得た上で許認可等処分を行うか否かは,結局,許認可等権者が上記の総合的見地から行う裁量的判断に委ねられているというほかなく,その裁量は広範なものであるから,評価法33条2項に基づく上記の判断が違法となるのは,環境保全への考慮を全く怠ったと考えられるような例外的な場合に限られるのである。 イ(ア) 原告らは,環境の保全は許認可等処分をするための絶対的な考慮要素であって,他の考慮要素との相対的な比較衡量は許されないなどという。 しかし,評価法33条1項は,「対象事業に係る免許等を行う者は,- 346 -当該免許等の審査に際し,評価書の記載事項及び第24条の書面に基づいて,当該対象事業につき,環境の保全についての適正な配慮がなされるものであるかどうかを審査しなければならない。」とし,同条2項は「前項の場合においては」として,本件許可処分のように「一定の基準に該当している場合に免許等を行うものとする旨の法律の規定であって政令で定めるものに係る免許等」の場合には,当該免許等に係る当該規定に定める「当該基準に関する審査と前項の規定による環境の保全に関する審査の結果を併せて判断」するもの のとする旨の法律の規定であって政令で定めるものに係る免許等」の場合には,当該免許等に係る当該規定に定める「当該基準に関する審査と前項の規定による環境の保全に関する審査の結果を併せて判断」するものとしている(同条2項1号)。 そして,この「併せて判断する」とは,同条1項の環境の保全についての審査の結果と免許等の審査の結果をつきあわせる趣旨であり,同項の審査の結果(環境保全上の支障を防止する法益)と免許等の審査の結果(免許等を付与することによる法益)と比較衡量し,総合的に判断する意であるとされている。原告らの上記主張によると,同条に基づく審査は絶対的な考慮要素を欠くか否かが基本となるようであり,「併せて判断する」ことができるのは,環境保全上極めて軽微な支障が生ずる可能性を完全には否定し切れないというレベル未満の支障が生ずる場合という,正に極限的な場合のみということになる。しかしながら,同条1項が,当該免許等の審査に際し,当該対象事業につき環境保全についての適正な配慮がされるものかどうかを審査することを要求し,その場合において,「併せて判断する」と規定したことからすれば,原告らが主張するような極限的な状況の場合のみ「併せて判断する」ことを要求しているものと考えることは到底できない。また,評価法において「当該免許等に係る法律の規定に反しない限りにおいて」という制約が課せられていないことから,原告らが主張するような「基準」が当然に導かれるわけでもない。 (イ) 原告らは,環境影響評価制度が基準クリア型ではなくベスト追求- 347 -型を志向するものであり,評価法33条2項に基づく許認可等処分は行政事件訴訟法30条の裁量処分には該当しないなどという。 しかし,評価法は,環境基本法20条が「国は,土地の形状の変更,工作物の新設その るものであり,評価法33条2項に基づく許認可等処分は行政事件訴訟法30条の裁量処分には該当しないなどという。 しかし,評価法は,環境基本法20条が「国は,土地の形状の変更,工作物の新設その他これらに類する事業を行う事業者が,その事業の実施に当たりあらかじめその事業に係る環境への影響について自ら適正に調査,予測又は評価を行い,その結果に基づき,その事業に係る環境の保全について適正に配慮することを推進するため,必要な措置を講ずるものとする。」と規定したことに基づき制定されたものであり,環境基本法は,「環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会が構築されることを旨と」するとして(4条),環境への負荷の低減と社会の発展の両立ないし統合を図っているのであって,環境の保全を絶対視して社会の発展を阻害してでも環境の保全を優先することまでを求めているものではない。また,環境影響評価制度は,環境基本法20条の規定からも明らかなように,事業者において自主的に環境保全上の適正な配慮がされることを期するといういわばセルフコントロールの考え方を基礎としており,評価法33条の横断条項は,事業者におけるセルフコントロールが不十分である場合に環境の保全上支障が生じないようにするための手段である。 評価法33条2項の「併せて判断」については,上記のとおり,環境影響評価制度が一義的には事業者の自主性に委ねられていることや,環境への負荷の低減と社会の発展の両立を指向し,その比較衡量を行わなければならないことからすれば,やはり許認可等権者の広範な裁量に委ねられていると解さざるを得ないのであって,例えば,環境配慮がされていない場合でも,許認可等を拒否する処分がされることもあれば,比較衡量の結果,許認可等を行う処分がさ り許認可等権者の広範な裁量に委ねられていると解さざるを得ないのであって,例えば,環境配慮がされていない場合でも,許認可等を拒否する処分がされることもあれば,比較衡量の結果,許認可等を行う処分がされることもあるの- 348 -である。 ウ手続の瑕疵により重要な環境情報が見落とされ,その情報への配慮を欠くこととなった結果,環境保全上の支障が生じるおそれがある場合は,手続の適否も免許等に影響を及ぼすこととなる場合も全くないということはできない。しかし,それが飛行場設置許可処分の違法事由となるためには,そのような場合に該当するか否かの判断も評価法33条1項の審査の一環としてされるものであるから,結局,この点についても確定評価書及び24条意見に基づいて判断せざるを得ないのであって,確定評価書及び24条意見に基づいて判断した結果,手続の瑕疵により重要な環境情報が見落とされており,その情報への配慮を欠く結果,環境保全上の支障が生じるおそれがあるということができる場合でなければならないし,その結果,当該処分が環境への配慮を全く怠ったということができるような場合に該当するということができなければならない。 したがって,最終成果物たる後の評価書の存在を無視して,方法書や準備書,評価書の段階における手続の瑕疵を主張し,それをもって直ちに本件許可処分の違法性を基礎付けようとする原告らの主張は,それ自体失当である。 エ(ア) 原告らは,評価書から存在を認識し得る手続的違法については,当然に許認可等処分の違法性を基礎付け得るなどという。 しかし,評価法は,上記のとおり,事業者に一定の手続を履践させることによって,事業者において自主的に環境保全上の適正な配慮がされることを期するというセルフコントロールの考え方を基礎としており, しかし,評価法は,上記のとおり,事業者に一定の手続を履践させることによって,事業者において自主的に環境保全上の適正な配慮がされることを期するというセルフコントロールの考え方を基礎としており,まず,事業者が環境影響評価の意義を十分に理解し,評価法に規定する手続を実施することにより,事業計画の策定において環境保全上の適正な配慮がなされることが期待されるものであり,評価法33条の規定は,セルフコントロールのみによっては,例えば事業者が- 349 -重要な環境情報を見落とした結果,重大な環境の保全上の支障を招くおそれのある事業計画が策定されてしまうといったケースも生じ得ることから,そのようなケースに対応するため,国としても環境の保全上の支障が生じないことを確保する手段として定められたものである。 評価法のこのような趣旨に鑑みれば,評価書作成までの一連の手続が適正に実施されているか否かは審査の直接の対象ではないが,手続の瑕疵により重要な環境情報が見落とされ,その情報への配慮を欠く結果,環境保全上の支障が生じるおそれがある場合等には,手続の適否も免許等に反映されることとなる。しかし,原告らが主張するように,手続的な瑕疵があれば直ちに,環境保全上の支障の有無に関係なく,当該事業を許可することが違法となるものではない。なお,原告らは,行政処分を引き合いにして,評価法で定める「手続違反が取消事由となる」と主張するが,事業者が行う環境影響評価はそれ自体行政処分ではなく,また,処分行政庁が行う許可処分そのものの手続でもないから,行政処分になぞらえて評価法で定める手続違反が直ちに取消事由となるとの原告らの主張は明らかに失当である。 (イ) 原告らは,事業者が説明責任を果たしていないことを看過して許可処分が出された場合には になぞらえて評価法で定める手続違反が直ちに取消事由となるとの原告らの主張は明らかに失当である。 (イ) 原告らは,事業者が説明責任を果たしていないことを看過して許可処分が出された場合には,当該許可処分は,評価法33条に反して違法となるなどという。 しかし,原告らが主張する「説明責任」の根拠となる規定は存在しない(仮に,評価法21条2項の規定が原告らのいう「説明責任」に関する規定となると解したとしても,事業者の見解に不備があるというだけでこれが記載された評価書に対する審査を経てされた許可処分が違法となることの根拠となる規定は存在しない。)。この点をおくとしても,原告らの主張は具体性に欠ける上,事業者が評価法21条2項の規定に基づき評価法18条1項の意見の概要を記載するに当た- 350 -って,例えば同種の意見が複数寄せられた場合には一括することや,長文の意見書が寄せられた場合には内容を要約すること等の対応を採ることは可能であり,また,事業の可否のみを表明する意見など環境の保全の見地からの意見と捉えられないものについては,特段対応すべき義務は生じないのであって,県が一つ一つの住民意見に対して事業者の見解を述べていないとしても何らの問題もない。 さらに,原告らは,県が見解を述べているにもかかわらず,回答がないなどとしている(例えば,原告らは,「現空港を代替案として検討してほしい。」旨の意見に対する県の回答は,住民の意見に対する回答になっていないなどというが,その回答の前に空港の位置選定に関する経緯が記載されているのを無視しているし,そもそも,上記回答は,現空港の滑走路延長が種々の事情から不可能ないし極めて困難であるという趣旨の回答であると考えられるのであり,当該意見に対する一つの回答となっている。)。また を無視しているし,そもそも,上記回答は,現空港の滑走路延長が種々の事情から不可能ないし極めて困難であるという趣旨の回答であると考えられるのであり,当該意見に対する一つの回答となっている。)。また,原告らが事業者の見解の不備であると主張する点は,非常にささいなものであり,立場によってどのようにでも解釈できるような内容にすぎない。事業者の見解に不備があった場合,それがどのようにささいなものであっても評価法21条2項違反であり,そのような不備のある評価書に対する審査を経てされた許可処分は違法であるというような帰結には何らの合理性もない。 (ウ) 環境影響評価の目的は,環境への負荷の低減と社会の発展の両立であり,仮に手続上の瑕疵があるとしても,必ずしも環境影響評価の目的自体が阻害されるわけではないことからすれば,手続上の瑕疵についても,環境への負荷の低減と社会の発展との比較衡量の中で考慮されれば足りるものである。行政事件訴訟法30条により,その比較衡量における裁量権の逸脱又は濫用の存否が司法審査の対象になるに- 351 -すぎないのであって,評価書作成までの一連の手続が適正に実施されているか否かは審査の直接の対象ではないというべきである。 オ原告らが依拠する平成22年3月14日付けP8及びP9意見書(甲164の1。以下「P8・P9意見書」ということがある。)に記載された意見には,次のとおり種々の点で問題がある。 (ア) P8・P9意見書では,「適正な配慮」について,評価法11条3項を引いて環境基本法14条に定める事項の確保を旨とするものであるという。しかし,評価法11条3項は,事業者が対象事業に係る環境影響評価の項目等を選定するに当たり従うべきものとされる本件主務省令を定めるにつき,環境基本法14条各号に掲げ 確保を旨とするものであるという。しかし,評価法11条3項は,事業者が対象事業に係る環境影響評価の項目等を選定するに当たり従うべきものとされる本件主務省令を定めるにつき,環境基本法14条各号に掲げる事項の確保を旨とするというものであって,「適正な配慮」の中身について規定したものではない。 (イ) P8・P9意見書は,適正な配慮は,単に法令の基準を遵守すること(基準クリア型)で足りるわけではなく,可能な限り環境負荷を低減し,最善の措置を採るべきこと(ベスト追求型)を意味し,まずは環境影響の回避策を採るよう努め,それが不可能なときに低減策を採り,低減策でも不十分な場合に代替措置を検討することが要請されているという。 しかし,「環境影響評価法第4条第9項の規定により主務大臣及び建設大臣が定めるべき基準並びに環境影響評価法第11条第3項及び第12条第2項の規定により主務大臣が定めるべき指針に関する基本的事項を定める件」(平成9年環境庁告示第87号)における「環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査,予測及び評価を合理的に行うための手法を選定するための指針」に関する基本的事項の中で(第二の一(6)),「評価は,調査及び予測の結果を踏まえ,対象事業の実施により選定項目に係る環境要素に及ぶおそれのある影響が,事業者- 352 -により実行可能な範囲内で回避され,又は低減されているものであるか否かについての事業者の見解を明らかにすることにより行うものとする。」と定められており,環境への影響回避,低減措置は,「その技術的な実行可能性に加え,措置の効果の程度,他の項目への影響の程度,事業目的との関係性等」との兼ね合いで実行可能な範囲内で採ることとされている。 したがって,P8・P9意見書が「ベスト追求型」について に加え,措置の効果の程度,他の項目への影響の程度,事業目的との関係性等」との兼ね合いで実行可能な範囲内で採ることとされている。 したがって,P8・P9意見書が「ベスト追求型」について,極限まで回避,低減措置を採ることが求められているという趣旨でいうのだとすれば,その理解は失当である。 (ウ) P8・P9意見書は,評価法21条2項の規定の趣旨は,市民の意見に高い位置付けを与え,市民の参加権を確保することを明確にするものであるという。 この「市民の参加権」の具体的内容は定かではないが,評価法が範囲を限定せずに一般の市民が意見を述べることができることとしたのは(8条,18条),一般の市民の意見を通じて環境情報を収集し,これを事業内容に適切に反映させるためであり,一般の市民が当該事業の環境影響評価に「参加する権利」があるとしても,その内容は,方法書や準備書について,「環境保全の見地からの意見」を一定の期間に書面によって述べることができるというものであって,それ以上でもそれ以下でもない。 (エ) P8・P9意見書は,「事業者の説明責任」なるものについて述べており,この責任の根拠は市民の参加権であると考えられる。しかし,評価法21条2項の規定が「市民の参加権」を保障した規定であると解することができないのは上記のとおりであって,この責任の根拠そのものに問題がある。 カ原告らは,空港設置場所について代替案の検討をせずにされた環境影響- 353 -評価は評価法に違反するという。しかし,「環境の保全のための措置(当該措置を講ずることとするに至った検討の状況を含む。)」を記載するよう求める評価法14条1項7号ロの規定は,代替案の検討の状況を必ず記載しなければならないことまで要求し 「環境の保全のための措置(当該措置を講ずることとするに至った検討の状況を含む。)」を記載するよう求める評価法14条1項7号ロの規定は,代替案の検討の状況を必ず記載しなければならないことまで要求しているものではない。 原告らは,事業地に関する代替案として現に複数の候補地が存在するという場合には,評価法は,環境影響評価において立地に関する代替案の比較検討をすることを義務付けているという(甲164の1・7ないし8頁も同旨)。しかし,事業地に関する代替案として現に複数の候補地が存在する場合に,なぜ事業者が立地に関する代替案について環境影価として比較検討することが義務付けられるのか,その根拠は明らかではない。原告らの主張は失当である。 (2) 環境影響評価手続の適法性についてア処分行政庁による評価法33条1項の審査は,確定評価書及び24条意見に基づいてされるのであり(同項の「評価書の記載事項及び第24条の書面」とは,本件の場合,本件補正書及び本件国交大臣意見を指す。),評価書作成までの一連の手続が適正に実施されているか否かは評価法33条1項の審査の直接の対象ではないが,本件において事業者である県が行った環境影響評価手続に何ら瑕疵が見当たらないことは明らかである。 このうち,処分行政庁が関与すべき手続として,処分行政庁は,環境大臣に対する評価書の送付及び求意見をし,処分行政庁としての意見を述べ,確定評価書の受領及び環境大臣への送付をした。処分行政庁は,評価法所定の手続を適切に履践しており,この点において何ら違法がないことは明らかである。 イ(ア) 評価法には,環境影響評価に着手すべき時期に関する明文の規定は存在せず,評価法においては,環境影響評価の結果を事業計画や環境保全対策に反映させることを予定していることからすれば である。 イ(ア) 評価法には,環境影響評価に着手すべき時期に関する明文の規定は存在せず,評価法においては,環境影響評価の結果を事業計画や環境保全対策に反映させることを予定していることからすれば,事業計- 354 -画が固まる前に環境影響評価を行うことが求められるというべきであり,事業者としてある程度具体的な事業計画を想定できる時期であって,その変更が可能な時期に開始されるよう個別の事業ごとに適切に検討されることが期待されているというべきである。したがって,本件方法書の縦覧(作成)に先立って,本件空港の基本計画案が確定していなければならないわけではない。 (イ) 原告らは,公告,縦覧された本件方法書に設置される航空障害灯や進入灯の記載がないなどとと主張している。 しかしながら,方法書の記載事項については,評価法5条において,「第2条第2項第1号イからワまでに掲げる事業の種類ごとに主務省令で定めるところ」によるとされ,本件主務省令2条1項5号は既に決定されている内容に係る対象飛行場設置事業の内容に関する事項に限り記載すれば足りるとしている。本件においては,方法書の段階では航空障害灯の位置・形状等が決定されていなかったのである。なお,事業者である県は,その後,航空障害灯の位置や形状等が決まった段階でP23委員会に報告し,調査方法等の助言の下で適正に環境影響評価準備書にそれらの記載を行っている。 (ウ) また,原告らは,本件方法書の大半が既に行った調査の結果であり,方法書の縦覧前に住民等の意見を聴取することもなく調査に着手し,ほとんどの調査を終えていたことは,評価法の手順を適正に経たものとはいえず,明らかに評価法違反であるという。 しかしながら,県が本件方法書の縦覧前に行った調査は,評価法に基づく調査に先立 手し,ほとんどの調査を終えていたことは,評価法の手順を適正に経たものとはいえず,明らかに評価法違反であるという。 しかしながら,県が本件方法書の縦覧前に行った調査は,評価法に基づく調査に先立って,本件主務省令5条1項2号に掲げられる「地域特性」を把握する必要があったために,任意に行ったものである。 他方,本件方法書作成後に行った調査は,評価法12条に基づくものであり,両調査はその法的位置付けが全く異なっている。 - 355 -ウ(ア) 原告らは,本件準備書について,① コウモリ類の生息数など多数の調査データが改ざんされて記載されたこと,② 県が実施したコウモリ類の調査報告書と全く逆の評価が記述されたこと,③ コウモリに関する一部のデータが解析中として記載されていない上,投稿中で学術的な評価を経ていない未発表の「論文」が評価の根拠として引用されるなど準備書として未完成の状態のまま公告され,縦覧に供されたことから,本件準備書には,評価法14条1項7号イが求めているその時点での真正かつ適正であるべき「調査の結果の概要並びに予測及び評価の結果」が記載されているとはいえないなどと主張している。 しかしながら,本件準備書にはその作成に至るまでの調査結果に基づき評価法14条1項7号イに規定する「調査の結果の概要並びに予測及び評価の結果を環境影響評価の項目ごとにとりまとめた」内容が適切に記載されていたというべきであり,原告らの主張は,次のとおり誤解又は曲解に基づくものであって,失当である。 a まず,上記①の点であるが,コウモリ類の調査結果の数値の誤記等が一部存在したが,これは数値等の改ざんではないから,原告らの曲解にすぎない。なお,本件評価書は,調査結果を詳細に整理・解析するなどして正確に分かりやすく記載されており,当該数値の変更 値の誤記等が一部存在したが,これは数値等の改ざんではないから,原告らの曲解にすぎない。なお,本件評価書は,調査結果を詳細に整理・解析するなどして正確に分かりやすく記載されており,当該数値の変更は予測結果に影響を与えるものではない。 b また,上記②の点であるが,本件準備書は,平成15年度までの調査結果を取りまとめて環境影響の予測を行い,環境保全措置を行うことも前提として評価を加えたものであり,コウモリ類調査報告書とは,その前提条件を異にするものであるから,これらを単純に比較するのは誤りである。 c さらに,上記③の点であるが,確かに,ごく一部のデータにつき- 356 -解析中ではあったが,県は,平成13年5月から平成16年1月までの調査結果等に基づき予測・評価が可能であると判断し,平成16年3月に本件準備書を作成したのである。そして,その後の調査結果を加味しても,当初の予測判断に誤りは認められなかった。なお,研究論文については,論文中に述べられている事実関係について引用しているものであり,同論文が未発表であるか否かは準備書の評価とは直接関係がない。 (イ) 原告らは,評価法14条1項7号及び同号を引用する評価法21条2項1号により,準備書及び評価書には,環境保全のための措置(当該措置を講ずることとするに至った検討の状況を含む。)を記載しなければならず,この規定の括弧書は代替案の検討を求めるものと解した上で,本件準備書及び本件評価書には代替案の検討の状況が記載されておらず,違法であると主張している。 しかしながら,評価法14条1項7号にいう「環境の保全のための措置」とは,事業位置の変更,基本的構造の変更から,工期の変更,運用条件の変更まで含んだ幅広い概念であり,また,同号にいう「(当該措置を講ずることとするに至った検討 項7号にいう「環境の保全のための措置」とは,事業位置の変更,基本的構造の変更から,工期の変更,運用条件の変更まで含んだ幅広い概念であり,また,同号にいう「(当該措置を講ずることとするに至った検討の状況を含む。)」とは,評価の方策としての複数案の比較検討や実行可能なより良い技術を導入したものであるか否かの検討の結果を記載する旨を明示したものと解されている。すなわち,評価法14条1項7号及び21条2項は,事業者が講じることとした環境保全措置及び当該措置を講じることとするに至るまでの検討の状況について準備書ないし評価書に記載することを義務付けているものであるが,必ず代替案の検討の状況を記載しなければならないことまでをも規定しているものではない。 評価法は,環境影響評価が適切かつ円滑に行われるための手続(1条)を定めたものであり,環境保全措置は事業者の創意工夫によって- 357 -自由に検討し得るものである。原告らがいかなる代替案を検討すべきであると主張するのかは必ずしも判然としないが,仮にその代替案が施設の位置,構造等を変更した設計を指すものであるとしても,そのような代替案を検討するかどうかは事業者の判断に委ねられるべきものであり,当該検討が行われなかった場合にはもとより代替案の検討結果が評価書に記載されることはない。 したがって,あたかも代替案の検討が評価法上の事業者の義務であるかのような原告らの主張は失当である。 エ原告らは,24条意見を反映していない場合には,環境影響の大きさその他の事項を考えるまでもなく,許認可等処分は直ちに違法になるという。 しかし,評価法は,当該事業について免許等を行う者は,必要に応じ,評価書について環境の保全の見地からの意見を書面により述べることができると規定し(24条),事業 ちに違法になるという。 しかし,評価法は,当該事業について免許等を行う者は,必要に応じ,評価書について環境の保全の見地からの意見を書面により述べることができると規定し(24条),事業者は,同条の「意見が述べられたときはこれを勘案し,評価書の記載事項に検討を加え,当該事項の修正を必要とすると認めるとき」に,各号の修正区分に応じた措置を採ることとすると規定する(25条1項)。この規定からも明らかなとおり,免許等を行う者の意見(24条意見)が述べられた場合,事業者は,その意見を勘案し,まず評価書の記載事項に検討を加え当該事項の修正を必要とするかどうかを判断すること,修正が必要であると判断する場合に評価法に規定する措置を講じることを要求しているのであって,評価法に規定する措置を講じるかどうかの判断は事業者に委ねられている。評価法は,24条意見について,その指摘に従ってそれに沿う措置を必ず講じるよう求めているものではなく,例えば免許等を行う者が環境保全措置等として必要と考えて指摘した事項であっても,事業者による検討の結果,その指摘に係る事項の修正を必要と考えないという判断を許容するものであるから,免許等を行- 358 -う者が考えるところの評価書の不備・不足等が修正・補完されていないからといって,事業者が24条意見に対応したといえないということになるわけではない(すなわち,24条意見に対応したといえるか否かは,評価書の不備・不足等が修正・補完されているか否かという観点からみなければならないことになるわけではない。)。このように,24条意見に対して,原告らのいう「対応」がないからといって,評価法25条の規定に反するものではなく,ましてそのことから本件許可処分が違法となるなどということはできない。 さらに,この点はおくとし 意見に対して,原告らのいう「対応」がないからといって,評価法25条の規定に反するものではなく,ましてそのことから本件許可処分が違法となるなどということはできない。 さらに,この点はおくとしても,県は,次のとおり,本件国交大臣意見を勘案して,本件評価書の記載事項に検討を加えた上,修正が必要である事項について評価法25条1項の規定に基づく措置を講じているのであり,また,修正の必要を認めない事項についても,本件国交大臣意見を踏まえて相応の措置を講じているのであって,本件国交大臣意見に対する県の本件補正書における対応に不十分な点はない。 (ア) 本件国交大臣意見1は,それ以外の本件国交大臣意見が追加調査事項や検討事項をある程度明示してその結果や検討の過程などを評価書に記載するよう求めるものであるのに対し(ただし,本件国交大臣意見9及び23は評価書への記載を求めていない。),明らかに,概括的かつ注意的な記載となっている。また,本件国交大臣意見1には,本件国交大臣意見2以下とは対応を別にするようには何らの明示もされていない。本件国交大臣意見1のこのような体裁及び記載内容をみる限り,本件国交大臣意見1は,事業者である県が環境保全措置を講じるに当たってその措置に万全を期するよう総括的に求めたものとみるほかないものである。少なくとも,原告らがいうように,本件国交大臣意見1が本件国交大臣意見2以下の他に独自の更なる対応(措置)を求めているというように解することはできない。 - 359 -この点をおくとしても,本件補正書には,ゴルフ場残地の利用だけでなく新たな土地を取得することが記載されているのであり,表現の修正にとどまるわけではないし,A洞窟の奥部より海側の上部に設置するドレーン層を更に下流側に移動してより万全な対策を講じること 利用だけでなく新たな土地を取得することが記載されているのであり,表現の修正にとどまるわけではないし,A洞窟の奥部より海側の上部に設置するドレーン層を更に下流側に移動してより万全な対策を講じることを追記した点は,本件国交大臣意見4のほか,本件国交大臣意見1を踏まえてされたものであって,県は,本件国交大臣意見1に十分対応している。なお,原告らは,本件国交大臣意見1の指摘に対応せずに本件事業を遂行すれば,A及びD洞窟においてもコウモリ類の保全を図ること,すなわちα9地域の個体群の保全は困難になるというが,何を根拠としてどのような経緯でコウモリ類の保全が困難というのか全く不明である。 (イ) 本件国交大臣意見2を受けて,県は,本件空港の供用後に引き続きコウモリ類の利用が可能となるよう,B洞窟であれば,コウモリ類が出入りするためには,洞口周辺が,樹木に覆われ,洞口に日光が差し込まないようにすることが必要であることを踏まえ,工事によって洞口を閉ざす必然性まではないものの,当該洞口は閉鎖し,採餌場所や移動経路として創出する緑地に新たに洞口を設けるとして(本件補正書7-69頁),C洞窟についても,浸透ゾーンⅡの地下部を利用してトンネルを設け,敷地外に創出する樹林となる緑地に新しい洞口を創出する(同7-70頁),E洞窟については,ボックスカルバート端にはコウモリ類が利用できるよう樹林を植栽し,ボックスカルバート内にはコウモリ類に配慮し,一定間隔で天井部にホールを設ける(同頁)といった措置を講じることとして,可能な限りの保全措置を講じることとしている。 これに対して,原告らは,本件国交大臣意見2は,いかにしてコウモリ類を戻ってこさせるかという方策を要求しているなどというが,- 360 -本件国交大臣意見2は,消失すると こととしている。 これに対して,原告らは,本件国交大臣意見2は,いかにしてコウモリ類を戻ってこさせるかという方策を要求しているなどというが,- 360 -本件国交大臣意見2は,消失するとされるB,C及びE洞窟の可能な限りの保全を求めているのであって,原告らがいうような方策までを検討するよう求めているものではないことは明らかである。 (ウ) 本件国交大臣意見3に対し,本件補正書は,事業実施区域及びその周辺で,AないしE洞窟以外に確認されている11洞窟について,平成17年5月及び6月にコウモリ類の利用状況調査を実施したなどとした。この点について,原告らは,コウモリ類の生態を把握するためには,複数年にわたる調査,最低でも1年を通じた調査が不可欠であるとして,県の対応は,本件国交大臣意見3への対応に全くなっていないという。 しかし,原告らがその主張の根拠とする甲第50号証(ⅵ頁)及び第51号証(20頁)の記載は,そこに記載された調査方法を唯一絶対のものとする趣旨のものではなく,原告らの主張は独自の見解を述べたものにすぎない。そもそも,環境の保全に適正な配慮をして事業を実施するという場合,その配慮の仕方としては様々な方法が考えられるところであり,特に事業や環境保全措置の代替案がある場合にいずれを選択するかは事業者の自主的な判断に委ねられるべきものであり,この点,県は,事業実施区域及びその周辺の洞窟について,平成14度及び平成15年度に実施した調査結果や本件国交大臣意見が出された後の調査結果,洞窟状況を総合的に判断して,コウモリ類が集団で継続的に利用する洞窟ではないと判断したものである。また,P24委員会において,既に調査を行ってコウモリ類の生息が確認できない洞窟について調査を繰り返すことは不要である旨の意 て,コウモリ類が集団で継続的に利用する洞窟ではないと判断したものである。また,P24委員会において,既に調査を行ってコウモリ類の生息が確認できない洞窟について調査を繰り返すことは不要である旨の意見が出たことから(証人P22尋問調書35・36頁),上記の対応となったのであり,本件国交大臣意見3に対応していないとの非難は当たらない。なお,原告らは,平成17年内に事業認可を受け,同年末の平成18度- 361 -政府予算案に事業費の計上を実現するためには形だけの短期間の調査を行うしかなかったと主張するが,何ら根拠のない主張である。 (エ) 本件国交大臣意見4について,原告らは,要求されている浸透方法についての再検討が行われていないなどという。 しかし,本件補正書(6-12-256頁)によると,「ドレーン層近傍の地下水位の変化とA洞窟との関係について,P12委員会を開催し,ドレーン層の位置,浸透方法及び影響等について検討を行った。」とし,「地下水・浸透水等は,透水性の異なる地層境界や透水性の大きい所を移動していく。このことから,ドレーン層に浸透した雨水は,フィルター層を通じ,面的に地下浸透が促され,線的にドレーン層が設置されたとしても,その一体にほぼ現況と同様に徐々に浸透するものと考えられる。」として浸透方法についても言及されているのであって,原告らの主張は事実誤認によるものというほかない。 県は,上記検討の結果,ドレーン層の設置がコキクガシラが出産・ほ育に利用しているA洞窟の奥部に影響を及ぼすことはないと考えるとして,当該事項の修正を必要とするとは認めないこととしたが,本件国交大臣意見1及び4を踏まえ,洞窟への影響をより確実に回避するため,A洞窟の範囲に相当する部分について,当該ドレーン層を更に下流側へ して,当該事項の修正を必要とするとは認めないこととしたが,本件国交大臣意見1及び4を踏まえ,洞窟への影響をより確実に回避するため,A洞窟の範囲に相当する部分について,当該ドレーン層を更に下流側へ移動して,より万全な対策を講じることとしている。このように,県は,本件国交大臣意見4に対応している。 (オ) 本件国交大臣意見5に対し,本件補正書は,「小型コウモリ類の移動経路及び餌場として事業実施区域西側及び北側に約50m幅の緑地を創出すること,また,A,D洞窟の洞口周辺から国道周辺の樹林に至る範囲に緑地を創出することを追記した。」,「事業による土地改変は段階的に実施し,樹林の伐採は,全体を一度に行わず,2~4年次に段階的に行うこと,また採餌場所,移動経路となる緑地を早期に- 362 -創出することを追記した。」としている(13-5,6-12-318ないし319,7-63頁)。 この点,原告らは,これらの記載は本件評価書に記載済みで新たな対応はないなどという。しかし,県は,本件国交大臣意見5のうち「移動経路及び餌場を確保する」という点については,環境保全措置として「事業によって減少する採餌場所の創出」及び「事業によってねぐらから採餌場に至る移動経路の創出」という措置を講ずることとしていることから(乙19の6-12-310,7-58頁),そのうち「移動経路及び餌場ができる限り早く確保されるよう樹林,草地等の改変の工程を工夫すること」という意見を勘案し,本件評価書の記載に検討を加え,樹林の伐採を工区ごとに段階的に行うこと,コウモリ類の移動経路を改変する時期を踏まえ,緑地の創出に当たっては早期に植栽を行うこと等の措置を講じることしたのであり(6-12-318,7-63頁),本件国交大臣意見5を受けて 階的に行うこと,コウモリ類の移動経路を改変する時期を踏まえ,緑地の創出に当たっては早期に植栽を行うこと等の措置を講じることしたのであり(6-12-318,7-63頁),本件国交大臣意見5を受けて,評価法25条1項3号に基づく措置を講じている。 また,原告らは,本件国交大臣意見5は,少なくとも消失面積と同程度の緑地面積を創出することを改めて求めたものであると主張する。 しかし,本件国交大臣意見5の内容に照らし,この主張は論理の飛躍でしかなく,また,処分行政庁が消失面積と同程度の緑地面積を創出することを求めようとするのであれば,端的にそれを求めれば足りるのに,本件国交大臣意見にはそのような内容は含まれていない。原告らの主張はその前提を欠いており,失当である。 (カ) 本件国交大臣意見6に対し,本件補正書は,「事業による土地改変は段階的に実施し,採餌場所への移動経路が分断されないように配慮して,樹林への伐採は,全体を一度に行わず,2~4年次に段階的に行うことを追記した。」としている(13-6,6-12-318な- 363 -いし319,7-63頁)。これに対し,原告らは,本件国交大臣意見5に対する対応と全く同じであり,本件国交大臣意見6に対する対応とはいえないなどというが,一つの対策が複数の本件国交大臣意見への対応となることも当然考えられるのあって,本件国交大臣意見5に対応する措置が同時に同意見6に対応することにはならないといった不合理な結論が導かれる理由はない。 また,本件国交大臣意見6に対し本件補正書が「出産・哺育の時期(5月~8月)及び冬期の休眠時期(12月~3月)は,A洞窟最奥部及びD洞窟から半径40m以内での振動ローラと同等の振動を出す作業及び半径100mの範囲での大型ブレーカ 件補正書が「出産・哺育の時期(5月~8月)及び冬期の休眠時期(12月~3月)は,A洞窟最奥部及びD洞窟から半径40m以内での振動ローラと同等の振動を出す作業及び半径100mの範囲での大型ブレーカと同等の騒音・振動を出す作業を避けることを記載した。」ともしていること(13-6,6-12-267,320,7-65頁)に対し,原告らは,本件評価書に記載された内容と全く同じで,新たな対応ではないという。しかし,評価法25条1項は免許等を行う者の意見を勘案して評価書の記載事項に検討を加えることを求めるものの,修正の措置を必ず講じることを要求しておらず,当該事項の修正を必要とすると認めるときに同項各号に定める措置をとらなければならないと規定するのみであるから,補正前の評価書と同様の内容であるからといって,同項に反するということになるわけではない。 さらに,原告らは,この県の対応が何ら科学的根拠のないものであって,コウモリ類が騒音や振動に敏感な出産・ほ育期に特に配慮した工事を求めた本件国交大臣意見6に対応していないのは明らかであり,その結果,現に本件地域においてコウモリ類の数が減少している傾向を示しているなどという。しかし,まず,本件空港予定地周辺におけるコウモリ類の生息状況について有意な減少は認められていない。また,科学的根拠がないとの点については,出産・ほ育時期において不- 364 -用意に調査を行うことによって予期し得ない影響を与える可能性を否定できない以上,出産・ほ育時期に調査を行うことには困難を伴うこと,α9地域に所在する洞窟と可能な限り同質,同形状の自然洞窟であること,洞内に調査器機(ビデオカメラ)を設置することが可能な空間があること,コウモリ類が集団で生息していること,建設機械を稼働させるに適した場所があること 窟と可能な限り同質,同形状の自然洞窟であること,洞内に調査器機(ビデオカメラ)を設置することが可能な空間があること,コウモリ類が集団で生息していること,建設機械を稼働させるに適した場所があること等の観点を踏まえた調査を行った上,α6島のα29の例(そこでは洞窟の直上を県道が通り,車両の往来が頻繁であるにもかかわらず,3種のコウモリ類は1年を通じて生息している状況が観察されている。)から,カグラの状況を他の2種のコウモリにも基本的に当てはめることが可能であると判断した結果であり,科学的根拠がないとの批判は当たらない。もっとも,騒音や振動の伝搬状況は,洞窟の形状等によっても影響されることが考えられるし,コウモリ類の種類ごとに騒音や振動によって受ける影響の度合等は異なることも考えられ,上記の調査による環境保全措置の効果に係る知見が十分であるとする根拠も見当たらないため,県は,事後においても引き続き調査を行うこと,環境影響の程度が著しいことが明らかとなった場合の方針についても,本件補正書に記載している(8-9~11頁)。 (キ) 本件国交大臣意見9に対し,本件補正書は,「人工洞の設置にあたっては,小型コウモリ類が生息している既存の人工洞の形状,洞内環境を参考に,形状,規模,土盛り厚等について検討し,専門家の指導・助言を得た上で具体的な形状,規模を決定すること,またできる限り早い段階で設置することを追記した。」としている(13-6,7-71頁)。この点,原告らは,本件補正書には具体的な対応内容は示されていないなどという。 しかし,本件国交大臣意見9は,その記載振りからも明らかなとおり,- 365 -人工洞について「適切なものを整備すること。」を求めているのであり,人工洞窟の形状や気温,湿度等について具体的 しかし,本件国交大臣意見9は,その記載振りからも明らかなとおり,- 365 -人工洞について「適切なものを整備すること。」を求めているのであり,人工洞窟の形状や気温,湿度等について具体的な検討結果を評価書に記載することを求めているものではない。本件国交大臣意見9は,本件評価書(7-64頁)において,「事業実施区域周辺の小型コウモリ類3種が棲み分けられるような人工洞窟を設置する。小型コウモリ類は,人工洞の設置直後から利用するとは限らないため,可能な限り早期に設置することとする。」と記載されていることに対して,そのような環境保全措置を是としつつ,「補正評価書の公告後のできる限り早い段階で設置すること。」及び他の洞窟の形状等を考慮して「適切なものを整備すること。」の意見を述べたにすぎない。原告らは,「整備すること。」に特別の意味があるかのような主張をするが,本件国交大臣意見9は,人工洞を設置するのであれば早期かつ適切なものを整備することを求めたにすぎない。そして,県は,人工洞の設置に関する事項の修正を必要とするとは認めないものの,本件国交大臣意見9を踏まえ,本件補正書7-71頁のとおりに追記したものである。 したがって,県は,人工洞の具体的な設置状況等を示してはいないが,上記意見を尊重して人工洞を設置していく旨表明しているのであるから,必ずしも本件国交大臣意見に対応していないとか,対応が不十分であるとはいえない。 (ク) 本件国交大臣意見10に対し,本件補正書は,「本事業において実施された小型コウモリ類の調査結果,事後調査結果の情報を石垣市や県等の関係機関へ提供し,小型コウモリ類の生息に影響を与えないような土地利用が図られるよう要請などを行うことを追記した。」としている(13-6,7-73頁) の調査結果,事後調査結果の情報を石垣市や県等の関係機関へ提供し,小型コウモリ類の生息に影響を与えないような土地利用が図られるよう要請などを行うことを追記した。」としている(13-6,7-73頁)。この点について,原告らは,具体的な記載が全くなく,このような記載では,本件国交大臣意見10に- 366 -対応したと評価することはできないなどという。 しかし,県は,本件国交大臣意見10を受け,本件補正書(7-73頁)において,同意見に沿うよう石垣市などの関係機関に対する情報提供及び要請を行う旨記載し,同意見に対応している。本件国交大臣意見10が原告らの主張するような点まで本件補正書に記載することを求めているものと到底解することはできない。 (ケ) 本件国交大臣意見11に対し,本件補正書は,「事業実施区域及びその周辺区域への降雨及び表流水の流動について,新石垣空港地下水調査結果に基づき,α4岳南地下水流域及びその他3流域について水収支を算出し,その結果を追記した。」としている(13-7,6-6-25ないし26頁)。この点について,原告らは,本件国交大臣意見11が地下川の調査も求める趣旨であることは明らかである,赤土流出対策との関連で付けられた意見であり,地下川の経路及び水量を調査せよというのは至極自然なことであるのに,地下浸透した水が流れる経路や経路ごとの水量について全く対応していないのは,本件国交大臣意見11を無視した対応というしかないという。 しかし,本件補正書(6-6-25・26頁)は,α4岳南地下水流域における蒸発散量,地表流出量及び地下水流出量といった水収支を算出し,そのデータに基づいてその他の三流域(α5川左岸地下水流域(西側),同地下水流域(東側)及びα4岳北地下水流域)の水収 下水流域における蒸発散量,地表流出量及び地下水流出量といった水収支を算出し,そのデータに基づいてその他の三流域(α5川左岸地下水流域(西側),同地下水流域(東側)及びα4岳北地下水流域)の水収支を推定しているのであり,これが本件国交大臣意見11に対応するものであることは明らかである。原告らは,「地下川の経路及び水量」について調査していないなどとするが,そもそも原告らがいう「地下川」がどのようなものを指しているのか定かではなく,原告らが独自の想定物を前提にそれへの調査の不備をいうものにほかならない。本件国交大臣意見11が「地下川の調査を求める趣旨」と解する- 367 -ことはできないし,「地下川」なるものを調査していなくても本件国交大臣意見11に対応していないことにはならない。 (3) α3のサンゴ類ないしα3サンゴ礁生態系の保全についてア本件補正書は,本件事業の実施(工事)中は,① 土工事は,年度ごとに施行エリアを分割し,裸地面積を小さくし,土砂の流出を抑える発生源対策を講じることとしている上,② 工事区域内で発生する濁水については,基本として浸透池,調整池において地下浸透処理をすることとし,さらに,③ 調整池の浸透能力を越える濁水については,機械処理方式により処理してα5川に放流することとし,加えて,④ 工事中は,P48委員会(仮称)を設置し,赤土等流出防止対策が所要の機能を発揮していることを確認していくこととし,複数の方法を組み合わせて,α5川流域からの赤土等(濁水)の流出によるα3のサンゴ礁生態系への影響を回避あるいは低減するための保全対策を採っている。 イ原告らは,県の赤土等流出防止対策に対して,赤土等流出防止対策として濁水を地下浸透させる方式を採用している以上,その濁水がどこに,どのような経路 避あるいは低減するための保全対策を採っている。 イ原告らは,県の赤土等流出防止対策に対して,赤土等流出防止対策として濁水を地下浸透させる方式を採用している以上,その濁水がどこに,どのような経路をたどって排出されるかを確認するのは当然であるにもかかわらず,県は,その検討を全くしていないなどと主張している。 しかしながら,原告らのこの主張は,濁水が直接海域に流出することを前提としているところ,このような前提の科学的根拠は何ら証明されていない。 また,この点をおくとしても,本件補正書では,赤土等流出防止対策として,本件事業実施区域の流域区分を勘案した上で,あらかじめ発生源対策,場内仮設調整池及びろ過沈殿処理施設を組み合わせることにより(6-1-29頁),浸透ゾーンに流入する濁水のSS濃度を県条例の排出基準である200mg/l以下に低減することとした上,さらに,琉球石灰岩層に設置する浸透ゾーンには,厚さ10cm以上の砂を敷設- 368 -することにより浸透能を十分発揮できる措置を講じているから,県条例の排出基準を満たす濁水が浸透ゾーンにおいて更に濁度を低減されて排出されるのであって,浸透ゾーンからの排出水が県条例の排出基準を下回っていることは明らかである。 さらに,本件補正書は,事業実施に当たっては,地下水の濁りについてモニタリングの調査結果を踏まえ,環境の影響の程度に著しい変化が認められる場合には,浸透ゾーンへの濁水の流入を一時中断した上で,工事区域内の調整池等の容量を増やし,濁水の貯留,浸透ゾーンで処理する濁水の前処理の強化など適切な赤土等流出防止対策を講じるとしていることから(8-12頁),浸透ゾーンを通過した濁水がどのような経路をたどって排出させるかの事前の検討が必要とする原告らの主張は当を得たものではない。 化など適切な赤土等流出防止対策を講じるとしていることから(8-12頁),浸透ゾーンを通過した濁水がどのような経路をたどって排出させるかの事前の検討が必要とする原告らの主張は当を得たものではない。なお,本件補正書は,浸透ゾーンの設置に当たっては,浸透した水が直接洞窟に入り込まないよう設置位置を検討することとして(6-1-55頁),新たな洞窟が発見されこれを保全する場合においても,浸透した水が直接洞窟に入り込まないよう専門家の指導・助言を得た上で対策を講じることとしている。 ウ原告らは,本件空港設置予定地の琉球石灰岩は,元々,全く圧密を受けていない密度の低い石灰岩であり,既に地下水の浸食を受けている,この浸食は自然の流量・流速を超えた水流(水圧)によって引き起こされるものであるという。 しかしながら,そもそも,石灰岩は,主成分である炭酸カルシウムが,雨水に含まれる二酸化炭素によって溶け出し,再結晶することで岩盤として形成されるものであり,圧力を受けることで岩盤として形成される砂岩等とは形成過程が異なるものである。また,琉球石灰岩中の空洞は,地下水の水流(水圧)によって引き起こされる浸食ではなく,二酸化炭素を含む雨水及び地下水による溶出が主な要因である。なお,溶出の進- 369 -行は極めて遅く,また,雨水及び地下水に接触している部分のみで進行するものである。 エ(ア) 本件空港建設地に分布する地層(本件補正書6-7-15頁において「Rl」とされているもの)は,主に石灰岩と石灰質未固結堆積物からなる琉球層群と総称される地層である。琉球層群は,氷河期と間氷期の繰り返しによる海水準面の昇降により,固結した琉球石灰岩と,サンゴ片,貝殻片,砂れき等の堆積物から成る未固結な層が交互に堆積して形成されたと考えられる。そして,石灰岩は 琉球層群は,氷河期と間氷期の繰り返しによる海水準面の昇降により,固結した琉球石灰岩と,サンゴ片,貝殻片,砂れき等の堆積物から成る未固結な層が交互に堆積して形成されたと考えられる。そして,石灰岩は,サンゴの死骸等が炭酸カルシウムの溶出により結合して形成されるものであるが,琉球石灰岩は,地質年代が約100万年前と新しいため,固結して硬くなった部分と,未固結で圧縮強度もさほど高くない部分があり,そのため,琉球石灰岩には空げきが充てんされていない部分が残り,多孔質な部分が存在する。また,石灰質未固結堆積物の層も,粒子が固結していないため,空げきが存在する。琉球層群は,沖積砂れき層と同様の性質を持ち,沖積砂れき層の空げき率が10ないし15%であることからすると,おおむね同程度の空げき率であると考えられる(10ないし13%であるといわれている。)。そして,そのすき間はモザイク状に発達する。 琉球層群に接した水は,琉球層群にある空げきを通って浸透するところ,その経路がモザイク状に形成されているため直線的に浸透することができず,その浸透路長(流路)が長いものとなる。そして流路が長くなると流速が遅くなり,流速が遅くなると,最終的に限界流速に至り,懸濁粒子は運搬されずに沈殿し,地下に浸透する濁水がろ過される。例えば,直径0.01mmの粒子の限界流速は,秒速1.02cmであり,これを下回る流速は,直径0.01mmの粒子を運搬する能力を欠くこととなる。一方,現地の琉球石灰岩層の透水係数は秒速0.01cmで- 370 -しかないところ,仮に動水勾配を1(高さの長さに対する比が1:1のことである。本地域の鍾乳洞が位置する場所から海岸線に至る地下水の動水勾配は0.01(高さの長さに対する比が1:100のことである。)ないし0.005である。 配を1(高さの長さに対する比が1:1のことである。本地域の鍾乳洞が位置する場所から海岸線に至る地下水の動水勾配は0.01(高さの長さに対する比が1:100のことである。)ないし0.005である。)としても,琉球石灰岩内における地下水の流速(流速=透水係数×動水勾配)は秒速0.01cmでしかない。したがって,本地域の鍾乳洞が位置する場所から海岸線に至る地下水の動水勾配を前提とすると,琉球石灰岩内における地下水の流速は極めて低速であり,その運搬能力は直径0.01mmをはるかに下回る粒子しか運搬することができない程度のものである。なお,琉球層群の透水係数が秒速0.01cmであるということは,1時間当たり雨量360mmの大雨が降っても雨水は琉球層群に浸透し,最終的には赤土の限界流速に達する能力があるということであり,大雨時でも浸透ゾーンの機能が保たれる(乙48)。 浸透ゾーンは,この琉球層群の性質を活かし,濁水を地下に浸透させ,その流速を赤土の持つ限界流速以下に抑えて粒子をろ過する緩速ろ過と呼ばれる方式を採っているものであり,むしろ地層中に一定程度の空げきがあるからこそ濁水がろ過されるのである(空げきがなければそもそも水が浸透しない。)。また,琉球層群の透水性から,一部の濁水は浸透ゾーンに流入する前に地表面からも浸透するが,ここでも上述した琉球層群のろ過機能により地下水として浸透する過程においてろ過される(乙48の14・15頁)。この点,原告らは,濁水のろ過機能は,ほんの数cm程度の空洞が生じることで失われるなどと,あたかも空洞があれば一律にろ過されないかのような主張をするが,堆積学や地質学の基本原理に対する理解を欠く主張である。さらに,原告らは,本件空港予定地の琉球石灰岩が浸食されており,ろ過機能について琉球石灰岩一般 あれば一律にろ過されないかのような主張をするが,堆積学や地質学の基本原理に対する理解を欠く主張である。さらに,原告らは,本件空港予定地の琉球石灰岩が浸食されており,ろ過機能について琉球石灰岩一般と同様の機能を有しないというが,北はα35島から沖縄島本島南部,- 371 -南は宮古島まで数多く建設されている地下ダムにおいて,その建設後に実施された揚水試験の結果,主要な帯水層である琉球石灰岩の有効貯留率(有効空げき率)はおおむね10%ないし13%の範囲内に収まっており,この空げきには,浸食による空間も含まれている。琉球層群のろ過機能は,浸食等があることを前提にするものである(乙48)。 なお,浸透ゾーンのろ過機能は,フィルターで懸濁微粒子を吸着するといったものではなく,吸着に限界があるということはない。琉球層群の空げきをセメントミルク等で人工的に埋めること,すなわち人工的に目詰まりを起こすこと自体困難である以上,自然に目詰まりを起こすことはより一層困難であると考えられるし,実際,河床・河川敷の下に分布している沖積砂れき層の空げきが河川の氾濫等により上流から運搬されてきた土粒子により充てんされ,目詰まりを起こして地下水の流れが遮断されることもなく,運用後約30年経過した地下ダムが目詰まりを起こして地下水が貯留不可能になったこともない(乙52)。自然に浸透する濁水によって琉球石灰岩層の空げきが埋まるようなことはおよそ考えられない。 (イ) 浸透ゾーンのろ過の仕組みは上記のとおりであるが,県は,濁水を確実にろ過するため,次の方策を講じるとしている。 a まず,浸透ゾーンにおいては,浸透機能を維持するため,石灰岩の上面にフィルター層として砂を10cm以上敷設する。この砂は,琉球石灰岩を破砕した粒径 ため,次の方策を講じるとしている。 a まず,浸透ゾーンにおいては,浸透機能を維持するため,石灰岩の上面にフィルター層として砂を10cm以上敷設する。この砂は,琉球石灰岩を破砕した粒径1/16ないし2mmの砂であり,透水係数は同じく秒速0.01mmである。したがって,濁水がフィルター層として敷設された砂を浸透する過程においてもろ過現象が生じていることとなる。なお,浸透ゾーンの底面は,ほぼ水平で,敷設された砂の限界動水勾配以下になるよう設計されており,濁水が流れ込むことによって浸透ゾーンからフィルター層に使用する砂が- 372 -流出することはない(乙23の6-1-27頁,乙48の15~17頁)。 b また,本件補正書では,浸透ゾーンに流れ込む濁水についても,土工事を年次ごとに施工エリアを限定して,大規模な土工自体を実施しないようにするほか,表土保護工や流出抑制工を施すなどの赤土等発生源対策を講じた上,発生した濁水についても,浸透ゾーンに直接流入させるのではなく,まず場内仮設調整池に流入させて赤土を自然沈降させ,次いでろ過沈殿処理施設に流入させて更にろ過処理を施した上で浸透ゾーンに流入させるといった他の方法を組み合わせて全体としてろ過機能の向上を図る(6-1-10~13頁)。 (ウ) P20教授は,意見書(甲140)及び証人尋問において,浸透ゾーンのろ過機能に疑問を呈する旨の意見を述べている。 aP20教授は,浸透ゾーンに集中的に濁水を流し込むことで,琉球石灰岩のすき間に詰まっている土砂が流出してしまい,ろ過が全くされないことは十分に考えられることであると述べている。しかし,前記のとおり,浸透ゾーンに浸透した濁水は琉球層群の中で限界流速以下となるのであるから,地層内の土砂を押し出すこと てしまい,ろ過が全くされないことは十分に考えられることであると述べている。しかし,前記のとおり,浸透ゾーンに浸透した濁水は琉球層群の中で限界流速以下となるのであるから,地層内の土砂を押し出すことはあり得ないのであって(乙48の18・19頁),濁水の流水によって琉球石灰岩のすき間に詰まっている土砂が流出することはあり得ない(同様の理由で,目視できる亀裂に琉球石灰岩を敷き詰めても,敷き詰めた琉球石灰岩が水流によって流出することはない。)。 bP20教授は,琉球石灰岩の割れ目に浸透した濁水について,部分的にはろ過されることもあると思われるが,全体としてはすき間の多い部分を水が流れるから,余りろ過されることはないという。 しかし,前記のとおり,モザイク状に発達した空げきを濁水が流れる過程で限界流速以下となり,濁水を構成する赤土は運搬されず沈- 373 -殿するのであって,十分にろ過能力を有する。さらに,P20教授は,琉球石灰岩の中に長さ約5ないし15mの亀裂が5ないし10m間隔で存在する可能性があり,こうした亀裂を濁水がろ過されずに通過し,洞窟に達するというが,地質調査においてこのような亀裂を生じさせるような断層等の地殻変動の痕跡は認められていない上,現在進められている琉球石灰岩の掘削工事においてもこのような亀裂は発見されていないことから,P20教授が述べるような亀裂が存在する可能性はない(乙48の19・20頁)。仮に,亀裂が存在しているとしても,琉球石灰岩の表層から流入した水がそういった亀裂に至る前に琉球石灰岩のろ過機能によってろ過されることも十分考えられるし(その場合,原告らのいう地下川に雨水が流入する前に懸濁粒子はろ過されていることとなる。),地下川等についてもその傾斜が緩ければ水流が限界流速以下に達するのであって,必ずし ことも十分考えられるし(その場合,原告らのいう地下川に雨水が流入する前に懸濁粒子はろ過されていることとなる。),地下川等についてもその傾斜が緩ければ水流が限界流速以下に達するのであって,必ずしも当然に限界流速以上の水流が生じるとはいえない。 オ原告らは,地下川を通じて濁水が直接海中に湧出する危険が極めて高いという。 しかしながら,「湧出」とは地下浸透した水が湧き出ることをいうのであり,沖積層や琉球石灰岩に浸透能があることは明らかである(乙23の6-1-23・24頁)から,「地下川を通じて濁水が直接海中に」流入することと「湧出」することとは相容れず,原告らの上記主張は失当である。 仮に,原告らの上記主張が処理前の濁水が地下川に直接流れ込むことを前提とするのであれば,本件補正書は,「土工事に伴い,降雨時には濁水が発生する。この濁水は,浸透ゾーンに導入して地下浸透させて処理する計画である。しかし,濁水に含まれる土粒子が浸透ゾーンの浸透能を低下させることが室内実験により確認されていることから,浸透ゾ- 374 -ーンの機能を十分に発揮させるために流入する濁水のSS濃度を低下させるため・・・,発生源対策を行い,続いて場内仮設調整池において自然沈降によりSS濃度をある程度低減し,当該処理水をコルゲート管等により浸透ゾーンの直前に設置するろ過沈殿処理施設に導入する。これらの手法を組み合わせることにより,浸透ゾーンに流入する濁水のSS濃度を200mg/l以下とする」としており(6-1-29頁),濁水は,県条例の排出基準を満たす濁度まで処理された上,浸透ゾーンにおいて更に濁度を低減された上,地下浸透されるのであって,処理前の濁水が地下川に直接流れ込むことはないのであるから,原告らの上記主張は前提を誤るものである。なお,海域に直 処理された上,浸透ゾーンにおいて更に濁度を低減された上,地下浸透されるのであって,処理前の濁水が地下川に直接流れ込むことはないのであるから,原告らの上記主張は前提を誤るものである。なお,海域に直接連続する地下川の存在については,確認されていない。 カ原告らは,E洞窟流末付近等で床に浸透した濁水は,パイピングによる空洞を通して濁水のまま海岸湧水帯又は海域へ流出するなどと主張している。 (ア) しかし,前記のとおり,本件空港建設事業地内で生じた濁水は浸透ゾーンを含め琉球層群内を浸透する過程でろ過されることから,そもそも工事現場で発生した濁水がろ過されないまま洞窟に達することはない。 (イ) また,原告らのいうパイピング現象とは,砂れき,砂,粘土などの未固結の土壌で生じ,浸透力によって土粒子が流出し,地盤内にパイプ状の水みちができる現象であり,未固結の地層で,周囲から地下水が集まり水圧が高まる場所に集中しやすいというものであるところ,E洞窟は,琉球石灰岩と名蔵れき層の境界に位置するものであり,琉球石灰岩が地表側,名蔵れき層が地中側に位置するのであるから(乙23の6-7-5・6頁,6-7-15~18頁),先に琉球石灰岩層に溶出等によって空洞が形成され,その空洞を流れる地下水の影響- 375 -によって,名蔵れき層中の砂れき分が浸食や吸い出しを受けて形成されたものであると認められ(乙23の6-7-5・6頁参照),砂れき,砂,粘土など未固結の土壌で生じるパイピング現象による水みちが形成されたものではない。また,原告ら主張の砂採取場跡地周辺のくぼ地についても,パイピング現象によるものとは確認されていない。 (ウ) そもそも,パイピング現象が生じるためには,今後施工する工事等において未固結の地層に周囲から地下水が集まる等地下水に水位差 くぼ地についても,パイピング現象によるものとは確認されていない。 (ウ) そもそも,パイピング現象が生じるためには,今後施工する工事等において未固結の地層に周囲から地下水が集まる等地下水に水位差が生じ,土粒子の流出が起きる程度の水圧が必要となるが,今後施行する工事においてこうした現場条件が発生するおそれはない。また,パイピングが生じるのは土粒子が地下水の浸透流で動くからであり,土粒子が動くほどの流速が土中で生じなければパイピングは生じない。 そこで,現地の動水勾配と土粒子が動き出す限界動水勾配を比較し,限界動水勾配を現地の動水勾配が上回るかを確認することなどによって,パイピング発生の可能性が判断できると考えられる。しかし,本件事業実施区域地下と海岸を結ぶ沖積層の動水勾配は,パイピングが生じる限界動水勾配を下回っている上,沖積層中の地下水の実流速も砂れきが運搬される限界流速に満たないことから,そもそもパイピング現象が生じる可能性はない(乙48の21・22頁)。 これに対し,P20教授は,α9地域では,洞窟の中を地下水が流れるので,増水したときは水が逃げ場がなくなって,洞窟内の地下水の水圧が非常に高まり,その先にある沖積層に流れ出した水の水圧も限定的に非常に高まることになり,そこにパイピング空洞が形成されることは可能であると考えられるという。しかし,A1洞窟及びE洞窟の下流側には吐出洞口が存在し,仮に洞窟の天井まで水が貯まるような状況になったとしても,水の逃げ場は存在するから,パイピング現象を引き起こすような水圧が洞窟の壁面に掛かることはない(乙4- 376 -8の22頁)。 (エ) P20教授は,ほかにもパイピング現象について次のように述べている。しかし,それらの意見は科学的根拠に乏しいものといわざるを得ない。 a ない(乙4- 376 -8の22頁)。 (エ) P20教授は,ほかにもパイピング現象について次のように述べている。しかし,それらの意見は科学的根拠に乏しいものといわざるを得ない。 aP20教授は,大雨が降った場合にはパイビング現象で海岸湧水帯に水が湧き出るが,そうでない場合にはパイプは形成されず,砂の間を浸透していき,海岸近くで合流して水が湧き出るという。しかし,そうであれば,通常の場合に海岸湧水帯で見られる湧水は,パイピング現象によるものではなく,砂の間を浸透してろ過された水が湧き出しているものといえる。そして,大雨の際にこれと異なる湧水の状況が確認されているわけでもなく,大雨の際にパイピング現象により水が湧き出すとの供述には根拠がない(甲第128号証21頁,25頁の図11によれば,大雨の後,70cm掘り下げて水の湧出を確認したとされているだけであり,掘り下げなくとも自然に水が湧き出してくるような状況すら確認されていない。)。 bP20教授は,E洞窟の洞口付近から海より,海岸林との間にあって掘削された場所には,直径1m近いパイピングによる空洞が多数形成されていたとして,これを本件事業実施区域周辺でパイピング現象が生じる根拠としている。しかし,仮にそれらの空洞がパイピング現象による洞口だとすると,現実にはあり得ない動水勾配によってできたものということになる。また,パイピング洞だとする空洞は地表から2ないし3m下にあるところ,仮に地表から2ないし3m下にパイピングが形成されるには,2ないし3mの厚さの砂れきが重さで崩れずにパイプの形状が損なわれないことが必要であるところ,粘着性がほとんどない砂れき層が崩れないはずはない。 P20教授が指摘する空洞がパイピング現象によるものだというに- 377 -は,不可能なことを パイプの形状が損なわれないことが必要であるところ,粘着性がほとんどない砂れき層が崩れないはずはない。 P20教授が指摘する空洞がパイピング現象によるものだというに- 377 -は,不可能なことを前提にしなければならない(乙48の22・23頁)。 cP20教授は,E洞窟について,水圧によるパイピング現象で掘り進められ形成された洞窟であると考えられるという。しかし,琉球層群中の未固結な層は,石灰岩層に比べて弱いため地下水の浸食を受けやすく,短期間で洞窟となりやすいところ,E洞窟は,琉球石灰岩の下の未固結な層が浸食されてできたものであり,パイピング現象によってできたものではない(乙48の23頁)。この点,P20教授は,E洞窟の天井の一部が管状になっていることを捉えてE洞窟をパイピング洞窟であると主張しているにすぎず,根拠が余りに薄弱である。 以上のとおり,本件空港周辺においてパイピング現象が生じることはなく,赤土を含んだ濁水が海中に流入することはない。 キ(ア) 原告らは,P18が平成20年冬期(3月)に実施した赤土等堆積状況の調査において,α5川河口より北側3か所の地点で,いずれも海岸側直近より沖合側で高い濁度が確認されているなどとして,α9地域の地下水の大半が地下川を通じて海中で湧出しているとするP19委員会報告書(甲63)の予測が裏付けられたという。 しかしながら,同報告書やP18の調査結果では,海中に赤土を含んだ濁水が湧出しているとの事実自体は確認されていない。また,上記平成20年冬期の調査結果がある一方で,P18による平成20年春の調査結果(乙38)によると,原告らが指摘する箇所であるG,F及びEの各地点の底質中懸濁物質含量(SPSS)は,G地点で6・5・3,F地点で7・6・4,E地点は6・6・3であり(数字の 成20年春の調査結果(乙38)によると,原告らが指摘する箇所であるG,F及びEの各地点の底質中懸濁物質含量(SPSS)は,G地点で6・5・3,F地点で7・6・4,E地点は6・6・3であり(数字の配列は,左から順に陸側から沖側に向かう地点のランクである。),陸側と沖側の中間地点の数値は,同年冬期の調査結果と比べて低下し- 378 -ている上(F地点は同じ。),海岸に近い地点よりも中間地点で高い数値を示していた現象も解消されている。原告らは,α9地域の地下水の大半(84%程度)が地下川を通じて海中で湧出しており,その際地下水とともに赤土が流出していると主張しているが,もし原告らの主張するような事態となっているのであれば,平成20年冬期の調査時から同年春の調査時というごく短期間のうちに地下水系が変化するとは考えられないのであるから,3地点全てにおける海底の底質中懸濁物質含量(SPSS)が変化したことを合理的に説明できない。 むしろ,このような短期間のうちに,3地点のいずれについても,海岸より沖合の方で高い数値が記録されるという現象が解消されたという事実からは,原告らの主張が憶測に基づくものであることが明らかである。 したがって,P18の平成20年冬期の調査結果が,α9地域の地下水の大半が地下川を通じて海中で湧出していることの根拠となるかのような主張は失当である。 (イ) 原告らは,赤土を含んだ濁水が湧き出していることも確認されているとして,赤土を含んだ濁水がろ過機能のない地下洞窟やパイピングによる洞窟を通って流出する可能性を裏付けるものであると主張している。 しかし,原告らがその証拠として提示する甲第90号証及び第91号証の写真がどの地点を撮影したものであるかは不明である上,仮に撮影場所が本件空港設置工事場所付近の海岸 ものであると主張している。 しかし,原告らがその証拠として提示する甲第90号証及び第91号証の写真がどの地点を撮影したものであるかは不明である上,仮に撮影場所が本件空港設置工事場所付近の海岸湧水帯であったとしても,「湧水」の濁度若しくはSS濃度の測定値が不明であって,上記主張はおよそ科学的根拠に基づくものとはいえない。 ク原告らは,本件補正書に記載された浸透係数について,実施設計段階で改めて浸透実験を実施したところ,浸透係数が変更され,これに伴い- 379 -各浸透ゾーンの容量の拡大ないし浸透係数の高い位置への浸透ゾーンの位置変更が行われることになったとし,わずか10cm径の1サンプルのみで得られた結果に基づく浸透係数,これに基づき算定された容積での赤土防止対策で赤土流出防止が図られていると判断したことは,明らかに裁量判断の誤りであるという。 しかしながら,県は,本件補正書(6-1-27頁)において,浸透ゾーンの評価について,「実施に当たっては,工事着手前に現地において面的な浸透試験を実施し,検証することとし,必要に応じて対策を講ずることとする。」としていたところであり,そのとおり実行したのであるから,判断に何ら誤りはなく,原告らの上記批判は当を得ないものである。 ケ原告らは,本件空港建設予定地に分布する琉球石灰岩(大浜層)は,15ないし7万年前の港川石灰岩に対比されることが明らかであるなどと主張し,これを那覇石灰岩と対比する乙第48号証が不正確であるという。 しかしながら,本件空港建設予定地西側にある底原ダムの基礎地質は,琉球石灰岩の下部に名蔵れき層,ブネラ粘土層に相当する地層が約90mの厚さに堆積しているものであるところ,この琉球石灰岩の厚さは,他の琉球列島の琉球石灰岩の最大厚さとよく一致している上 基礎地質は,琉球石灰岩の下部に名蔵れき層,ブネラ粘土層に相当する地層が約90mの厚さに堆積しているものであるところ,この琉球石灰岩の厚さは,他の琉球列島の琉球石灰岩の最大厚さとよく一致している上,そのうち宮古諸島伊良部島では,上記地層に対応する約100万年前までと決定されていることから,石垣島の琉球層群のほとんどは130万年前から40万年前の地層といえるのであって(乙53の6頁),この琉球石灰岩を那覇石灰岩と対比したことに何ら誤りはなく,港川石灰岩と対比することは誤りである。少なくとも,「新石垣空港建設地を含む石垣島全域に分布する琉球石灰岩である『大浜層』の堆積年代は,同時期に堆積した『名蔵層』(括弧内省略)から算出するナンノプランクトン化石,石灰質ナンノ化石の年- 380 -代ならびにサンゴ化石の年代から,『後期更新世』と推定」されていること(甲202)が明らかに正確で正しいということはできない。 コ(ア) 原告らは,浸透ゾーンないし調整池の設置規模の策定について,1日雨量を基準にしていることは,石垣島の地域的特性である局所的集中豪雨を過小評価するものであるという。 しかしながら,浸透ゾーンないし調整池の設置規模の策定に当たり参考となる降水量データとしては,浸透ゾーンに継続して流入する濁水処理に必要な浸透ゾーン容量を算定する必要があることから,原告らの主張する1時間雨量ではなく,日雨量を用いることが相当である。 なお,県は,浸透ゾーンの容量算定に当たり,日雨量として「259. 4mm」の数値を用いたものであるが,原告らの指摘する平成12年11月12日の石垣島α18地区の日降雨量は183mmであることから,原告らの指摘する局所的集中豪雨の記録日の降雨量を前提としても,県が想定した浸透ゾーンないし調整池の設置規模の策定は適切であ 年11月12日の石垣島α18地区の日降雨量は183mmであることから,原告らの指摘する局所的集中豪雨の記録日の降雨量を前提としても,県が想定した浸透ゾーンないし調整池の設置規模の策定は適切である。 (イ) 原告らは,県によって策定された容量で,平成12年11月と同じ規模(1時間当たり127mm)の集中豪雨に対応できるかは明らかに疑問といわざるを得ない,1時間当たりでいけば,想定の12倍もの雨量が流入することになるからである,この規模の集中豪雨が工事期間中に事業実施区域内に降ることはないという確証は何一つ存在しないなどという。 しかしながら,浸透ゾーンないし調整池の設置規模の策定に当たり基本となる降水量データは,浸透ゾーンに継続して流入する濁水処理に必要な浸透ゾーン容量を算定するために必要となるものであって,短時間の集中豪雨も想定した上で,降雨の継続時間は24時間を原則としていることから,原告らの主張する1時間雨量ではなく,日雨量- 381 -を用いることが適切である。なお,原告らは,日雨量について,当該雨量が24時間一定のペースで降り続けることを前提とした雨量と理解しているようであるが,本件補正書(6-1-15頁)に記載されている1時間雨量及び日雨量とは,降雨強度式を用いて算定した確率雨量を示すものであるから,これは誤解である。また,原告らは,想定の12倍もの雨量が流入すると主張するが,本件補正書(6-1-15頁)のとおり,200年に1度の確率規模の1時間雨量125. 8mmの場合でも日雨量(24時間)では402.9mmと算定されているにとどまるから,この点でも原告らには誤解がある。 県は,本件補正書(6-1-15頁)に記載されているとおり,本件空港の最寄りの観測所である石垣島地方気象台の31年間の降雨データ 算定されているにとどまるから,この点でも原告らには誤解がある。 県は,本件補正書(6-1-15頁)に記載されているとおり,本件空港の最寄りの観測所である石垣島地方気象台の31年間の降雨データに基づき降雨量を算出しており,同データには台風時等の降雨が全て含まれている。しかも,計画規模として設定した10年確率規模の降雨に対する日降雨量のカバー率は総降雨日数4294日に対し99.95%となっており,極めて高いカバー率となっている。 したがって,浸透ゾーン及び調整池の設置規模の算定に用いた降雨強度は適切である。 サ原告らは,機械処理方式で使用を計画する凝集剤について,凝集剤を使用した機械処理方式を採用するということ以上には何も述べていないに等しく,その凝集効果や環境負荷について全く検討されていないと主張し,また,SS濃度が25mg/lを超えた場合の対応策についても,処理水が25mg/lを超えた場合の排水の停止などの対応や,機械にトラブルが生じたため,処理ができない間も調整池に流入し続ける濁水の処理等,当然に予測される事態への対応策について,マニュアル等が検討される必要があるところ,これを欠いている以上,機械処理方式についても赤土等流出防止対策として欠陥があることは明らかであるとい- 382 -う。 しかしながら,本件補正書は,複数の方法を組み合わせて,α5川流域からの赤土等(濁水)の流出によるα3海域のサンゴ礁の生態系への影響を回避ないし低減するための保全対策を採っているのであり,機械処理方式の採用はそのうちの一方法にすぎない。しかも,県は,機械処理方式で用いる凝集剤について,「使用を計画する凝集剤は,無機凝集剤,有機高分子凝集剤のうち,実験等により本事業実施区域の土質条件に適合し,環境への負荷が小さい種類,使用量などを総 も,県は,機械処理方式で用いる凝集剤について,「使用を計画する凝集剤は,無機凝集剤,有機高分子凝集剤のうち,実験等により本事業実施区域の土質条件に適合し,環境への負荷が小さい種類,使用量などを総合的に検討して決定する。凝集剤の決定にあたっては,生物への毒性実験等を参考にする。」と明確に表明し(6-1-42頁),機械処理施設の維持管理についても,「機械処理施設の稼働中は処理水の放流は,処理水のSS濃度が目標値の25mg/l以下を満足しているか常時記録し,必要に応じ適切な措置を行う。」,「プラント設備の動力は,台風等による電源の供給不能を考慮し発電機を用い,緊急時に対応するよう十分に備える。」と明確に表明している(6-1-46頁)のであるから,原告らの上記主張には根拠がない。 シ原告らは,本件補正書の赤土防止対策が神ならぬ人の計算値によって策定され,人の所為によって実施されるものであるにもかかわらず,本件補正書は,判断の誤りや作業ミスはないとして,事後の調査ないし監視は不要と断じているなどいう。 しかしながら,原告らが引用する「土砂による水の濁りに係る環境影響評価の結果の概要」(乙23の9-7・8頁)及び「水の汚れに係る環境影響評価の結果の概要」(同9-9・10頁)の各「事後調査及び環境監視」欄の「環境保全措置として有効であると判断されることから事後調査の必要はないと判断した。」との記載は,本件事業に起因する水の濁りや水の汚れの原因となる赤土等流出防止対策の基本方針として,工事に当た- 383 -っては,施工や環境の専門家からなる「P16委員会」(仮称)を設置し,工事の状況について評価・提言を受けるとともに,提言を踏まえた対策案を検討し実施し,工事中においては,赤土等の流出防止対策が所要の機能を発揮していることを確認するため 16委員会」(仮称)を設置し,工事の状況について評価・提言を受けるとともに,提言を踏まえた対策案を検討し実施し,工事中においては,赤土等の流出防止対策が所要の機能を発揮していることを確認するためのモニタリング調査を実施するとともに,現場状況に応じた適切な施工を行うため,情報化施工(施工段階における進捗状況,施工範囲,裸地面積等の情報を逐次把握し,予測される台風等の降雨による影響を予測し,迅速な赤土等流出防止対策を行うこと)及び観測施工(施工中における海岸周辺の地下水状況の観測を通し,予測結果との比較を行いながら,施工による影響を把握するとともに,環境保全のための処置を講じながら施工を行うこと)を実施するとされていること(同2-9頁),地下水については,SS濃度の調査等の環境監視が実施されること(同9-11頁)を前提とするものであり,原告らのいうような判断の誤りや,作業ミスはないとして,事後の調査ないし監視は不要と断じた趣旨のものではない。なお,上記モニタリング調査については,平成18年度から実施されている。 (4) 本件事業予定地周辺に生息するコウモリ類等の保全についてア原告らは,本件空港の建設によって予定地内及びその至近のコウモリ類の利用する主要な5洞窟のうち3洞窟は破壊されたり,洞口が付け替えられたり,著しい改変を受け,残りの2洞窟も工事中の建設機械の稼働及び供用後の航空機の騒音振動で洞内環境は激変する,コウモリ類の生存にとってかけがえのないα7地域洞窟群の一体性は,本件事業によって完全に消失してしまうから,絶滅危惧種コウモリ類の生息に取り返しのつかない重大な影響を与えるのは自明のことであるなどという。 しかしながら,県は,本件事業に伴い,① 採餌場所や移動経路としての幅約50mの緑地(グリーンベルト)を創出し,② 出 の生息に取り返しのつかない重大な影響を与えるのは自明のことであるなどという。 しかしながら,県は,本件事業に伴い,① 採餌場所や移動経路としての幅約50mの緑地(グリーンベルト)を創出し,② 出産・ほ育の時期(5月ないし8月)や休眠時期(12月ないし3月)は,工事の実- 384 -施を一部制限して,工事に伴う騒音・振動の影響を低減することとしている。さらに,県は,本件事業に伴い,コウモリ類については,石垣島全体がコウモリ類の生息地であり,コウモリ類の個体数を将来とも衰退させることなく維持するためには,事業実施区域周辺のみにとどまらず石垣島全体で考慮していく視点が重要であるとの見地に立って,長期的な視野での環境保全配慮として,③ コウモリ類が利用可能な人工洞窟を設置すること,④ 洞窟周辺の用地を取得して周辺環境の保全を図ること,⑤ 一部改変される洞窟については,コウモリ類が利用可能となるよう新たに洞口を設けることなどの対策を行うこととし,さらに,これらの環境保全措置の効果に係る知見が不十分であることを踏まえ,⑥工事中及び供用後において,事後調査結果により環境影響の程度が著しいことが明らかになった場合には,専門家の指導・助言を得た上で,しゃ音壁の設置や植林を行うなど,環境影響の回避・低減措置の強化改善を図ることとしている。 現在B,C及びE洞窟に生息しているコウモリ類は,A及びD洞窟を含むその他の洞窟に移動し,生息できるものと考えられ,環境収容力の範囲内であり,B,C及びE洞窟の消失の影響は小さいと予測される。コウモリ類の移動先として可能性が高いのは,現在,既に移動が確認されている洞窟であるところ,標識調査の結果,コキクガシラ,カグラ及びユビナガの3種とも,A,C,D及びE洞窟相互の間で,また,A,C及びD洞窟と石 動先として可能性が高いのは,現在,既に移動が確認されている洞窟であるところ,標識調査の結果,コキクガシラ,カグラ及びユビナガの3種とも,A,C,D及びE洞窟相互の間で,また,A,C及びD洞窟と石垣島内の他の洞窟との間で移動していることが確認されている(乙23の6-12-156・163ないし167・252・253頁)。そして,次のとおり,移動先のねぐら及び餌場の条件は移動してきた個体数を受け入れることが可能であると考えられる。 (ア) カグラについては,B及びE洞窟では,通年で平均個体数は1個- 385 -体以下,C洞窟では,通年で平均個体数は約3個体であり(乙23の6-12-247・248頁),少ないことから,これらの洞窟がなくなることによって,これら洞窟以外のねぐらの個体数が激変することはなく,受け入れ可能と考えられる(同6-12-251頁)。 (イ) ユビナガについては,B及びE洞窟では利用そのものが確認されておらず,C洞窟では通年で平均個体数が約1個体以下であり(乙23の6-12-249頁),少ないことから,これら洞窟がなくなることによって,これら洞窟以外のねぐらの個体数が激変することはなく,受け入れ可能と考えられる(同6-12-251頁)。 (ウ) コキクガシラについては,B,C及びE洞窟を通年で合計最大約470個体が利用しており,冬期の休眠場所としては合計最大約320個体が利用している(乙23の6-12-251及び254頁)。 一方,B,C及びE洞窟以外の洞窟のうち,通年利用の移動先として考えられるのは,現在利用が確認されているA,No.28,No. 62及びNo.38-2の洞窟であるところ,それぞれの洞窟で約10ないし1920個体の変動が確認されている(同6-12-254頁)。また,冬期の休眠場所の移動先として考 ているA,No.28,No. 62及びNo.38-2の洞窟であるところ,それぞれの洞窟で約10ないし1920個体の変動が確認されている(同6-12-254頁)。また,冬期の休眠場所の移動先として考えられるのは,同じくA,No.28,No.62及びNo.38-2であるところ,それぞれの洞窟で0ないし約510個体の変動が確認されている(同6-12-255頁)。 したがって,B,C及びE洞窟で確認された合計個体数は,想定される移動先の洞窟で確認されている個体数の変動の幅の範囲内であることから,移動先のねぐら及び餌場の環境収容力の範囲内であると考えられる。 このように県は,コウモリ類が石垣島全体で1つの個体群を形成しているとの分析を踏まえて,本件空港設置工事に伴うコウモリ類への- 386 -影響を回避ないし低減するための保全対策を採っているのであるから,本件航空設置事業がコウモリ類を絶滅に追いやるものであるとはいえない。本件事業実施区域内の洞窟への影響のみを分断して個別に取り上げ,県のコウモリ類の保全対策を批判するのは当を得たものとはいえない。原告らは,A及びD洞窟のコウモリ類の生息数が,予備的工事着手後激減,事業実施区域周辺(全体)の個体数も減少してきているというが,以上の観点から失当である。 イ原告らは,人工洞の設置は非科学的な措置であるなどという。しかし,これは,コウモリ類の緊急避難場所等としてのねぐらの選択肢を増やすために実行可能な範囲内で提案された保全対策であり,石垣島のコウモリ類が戦時中に構築された人工洞を利用しているという実態を踏まえて,その設置を決めたものである(乙19の7-64頁,同23の6-12-57頁,同31)。そして,本件国交大臣意見を踏まえて,コウモリ類が生息している既存の人工洞の形状,洞内, るという実態を踏まえて,その設置を決めたものである(乙19の7-64頁,同23の6-12-57頁,同31)。そして,本件国交大臣意見を踏まえて,コウモリ類が生息している既存の人工洞の形状,洞内,洞口環境を参考に,形状,規模,盛土厚等について検討し,更に専門家の指導・助言を得た上で,具体的な形状,規模を決定するとしている(乙23の7-71頁)。 現段階で,コウモリ類による人工洞の利用はごくまれであるが,それは,設置から3年足らずの期間が経過したにすぎないからであって,今後,洞内外の環境が整うことによって利用されるであろうことは,コウモリ類が人工洞を実際に利用していることからも明らかである。 ウ原告らは,工事に伴う騒音・振動によるコウモリ類への影響に対する県の検討について,実際は,工事は長期間にわたり,そして多いときには何百台もの多種の建設機械が同時に稼働し,様々な騒音を撒き散らす複合的な騒音状況を呈するのであり,このように実態とかけ離れた条件の下で行われた調査データに基づき考えられた保全措置が適切かつ有効でないことは明らかであるという。 - 387 -しかし,県は,上記のとおり,一定の時期には工事の実施を一部制限するなどの環境保全措置を講ずるとともに,事後調査結果により環境影響の程度が著しいことが明らかになった場合には専門家の指導・助言を受けて環境影響の回避・提言措置の強化改善を図ることとしている。原告らの主張する「実態」と同一条件を再現するためには,空港建設工事に着工する以外に方法はないところ,本件許可処分前の調査として係る方法が相当でないことは明らかである。 また,原告らは,A洞窟やD洞窟とは全く異なる構造や形質の別の洞窟で行った騒音・振動試験であるというが,そもそも,同じ構造の洞窟が存在するとは考えられな る方法が相当でないことは明らかである。 また,原告らは,A洞窟やD洞窟とは全く異なる構造や形質の別の洞窟で行った騒音・振動試験であるというが,そもそも,同じ構造の洞窟が存在するとは考えられないし,洞窟は石灰岩が溶食されて形成されるのであるから,形質が全く異なる洞窟も考え難い。県の調査は,本件空港建設事業実施前の時点で,空港建設予定地のゴルフ場において工事と全く同一の作業を実施することが不可能であるという制約の中で,建設機械のうち,作業に伴って発生する騒音・振動が大きい大型ブレーカ及び振動ローラを用い,A及びD洞窟で確認されたカグラが利用していたNo.39洞窟において,作業時に発生する騒音・振動レベルやこれらに対するカグラの反応について確認するために実施されたものであり,A及びD洞窟における建設機械の騒音・振動レベルを予測するに当たっては,距離減衰の近似式を用いて算出したものであり,合理性が認められる。 さらに,原告らは,本件補正書では光が届かないから音も伝播しないという前提でA洞窟やD洞窟への騒音等の影響を予測しているが,大きな誤りであるという。しかし,県は,現空港の滑走路北側端から約250mの飛行経路直下にあるコキクガシラの生息が確認されているNo.77洞窟において航空機の離着陸時の騒音・振動の調査を実施した結果,離着陸のため飛行機が通過した時の騒音は,洞口では95.9ないし98.4dB- 388 -(A)であったが,洞口から洞奥に進むにつれて騒音の値は小さくなり,洞口が見通せる約13m奥の洞内では73.0ないし73.8dB(A),洞口が見通せない約23m奥の洞内では28.3ないし28.7dB(A)となって,暗騒音の28.2dB(A)に近い値を示し,洞口を見通せない屈曲部では騒音の値が小さくなることが判明したこ dB(A),洞口が見通せない約23m奥の洞内では28.3ないし28.7dB(A)となって,暗騒音の28.2dB(A)に近い値を示し,洞口を見通せない屈曲部では騒音の値が小さくなることが判明したこと(乙23の6-12-308頁)に基づいて判断したのであり,その判断は合理的である。 エ原告らは,県がコウモリ類の採餌場所となる緑地と移動経路の創出のために樹木を植栽する環境保全措置を講じるとしていることについて,α9地域に生息するコウモリ類の餌量不足が生じ,個体群の維持に重大な影響が出るおそれがあるという。 しかし,県は,コウモリ類の環境保全措置等として,A及びD洞窟の保全を図るため洞窟周辺の土地を取得し,また,採餌場所及び移動経路となる緑地帯の創出,出産・ほ育時期及び休眠時期における工事の抑制,B,C及びE洞窟の保全対策,人工洞の設置等の各種環境保全対策を実施する一環として樹木の植栽措置を講じているのであり,そのうち樹林の植栽措置のみを取り上げ環境保全措置の効果を議論することは当を得ない。また,本件事業により,採餌場所の一部としての二次林や主要な採餌場所への移動経路の一部の二次林は伐採されることとなるが,主要な採餌場所である山地林,海岸林はほとんど伐採されない。さらに,事業周辺洞窟からのコウモリの移動が確認された洞窟周辺には,α12岳やα13岳を中心とした樹林が広がっており,餌場環境としては,条件のよい場所であると考えられることから(乙23の6-12-251頁),直ちに餌不足が生じたり,個体群の維持に重大な影響が出るとは考え難い。県が各種保全対策の一つとして実施する緑地帯の創出は,ゴルフ場内の採餌場所が減少することによる影響を低減させ,主要な採餌場所に至る移動経路が分断される影響を低減させるものであり,その効- 389 -果 種保全対策の一つとして実施する緑地帯の創出は,ゴルフ場内の採餌場所が減少することによる影響を低減させ,主要な採餌場所に至る移動経路が分断される影響を低減させるものであり,その効- 389 -果として,当該措置を講じた後の環境の状況は,現況との変化は極めて小さいと判断される。 オ原告らは,予備工事着手後コウモリの生息数が激減しているとし,県は,A及びD洞窟の保全をコウモリ類の保護のとりでにしてきたが,既にこれまでの予備的工事でさえそのA及びD洞窟のコウモリ類に重大な影響が出ているなどという。 しかし,コキクガシラ,カグラ及びユビナガの平成20年度までにおけるそれぞれの個体数(出産・ほ育期,移動期及び越冬期のそれぞれの時期における個体数)について,有意な減少は認められていない(乙46の23~33頁,証人P22尋問調書12・13頁)。少なくとも,原告らが主張するようにコウモリの生息数が激減している状況をうかがうことはできないのであって,α9地域におけるコウモリの生息数が「激減」していることを前提とする原告らの主張は失当である。 カ原告らは,① A洞窟が石垣島唯一のユビナガの出産・ほ育洞窟であること,② A洞窟に通じる亀裂があること,③ A1洞窟のコウモリ類による利用の事実があること,④ 未知の重要な洞窟が存在していること,⑤ 新種を含む好洞窟性動物が存在することを挙げて,県の環境影響評価は,不適切,不十分な調査に基づいて進められたものであるという。 しかしながら,次のとおり,原告らのこれらの主張はいずれも理由がない。また,そもそも,原告らの上記主張は,本件申請に関しても,評価法33条2項1号によって審査された結果,環境保全上支障があるものと判断されるときは,評価法に定められている要件を欠くものとして,許可処分を ,そもそも,原告らの上記主張は,本件申請に関しても,評価法33条2項1号によって審査された結果,環境保全上支障があるものと判断されるときは,評価法に定められている要件を欠くものとして,許可処分を行ってはならないことになるとの独自の見解を前提とするものであり,その前提において失当である。 (ア) 原告らは,P19委員会の調査により,A洞窟が石垣島に唯一存- 390 -在するユビナガの出産・ほ育洞窟であることが確認されたという。 しかし,A洞窟内においてユビナガの幼獣の存在は確認されておらず,A洞窟がユビナガの出産・ほ育洞窟であることを示す「直接的な証拠」は存在しない。当該洞窟が出産・ほ育洞かどうかはその洞窟内で幼獣を現認する方法が確実であり(証人P22尋問調書15・16・54頁),この点は,ユビナガについて,授乳期の6月に出産・ほ育洞ではない洞窟で,乳頭,乳房が裸出し発達している雌が捕獲された事例があること(乙33)からも明らかである。洞窟の洞口付近で授乳中のユビナガの雌を捕獲したとしても,捕獲したというユビナガが当該洞窟から出洞したかどうか確定できないければ,直ちに当該窟内にほ育集団を形成しているはずであるということはできないし,仮に当該洞窟から出洞したとしても,出産時に移動する可能性を踏まえれば,当該洞窟が出産・ほ育洞であると直ちにいうことはできない。 甲第4号証によると,平成18年6月23日のA洞窟の調査において,出洞するコウモリの数をバットディテクターで計測したところ,ユビナガ合計1000個体が出洞したというが,バットディテクターとは,コウモリが発信する超音波を探知する機械であり,人間の耳では聞くことが生理的に不可能な周波数の音を人間の耳に聞こえる周波数に変換するものであって,これによって数を計測することは不可 ィテクターとは,コウモリが発信する超音波を探知する機械であり,人間の耳では聞くことが生理的に不可能な周波数の音を人間の耳に聞こえる周波数に変換するものであって,これによって数を計測することは不可能ではないが正確な数を計測することはできない(証人P22尋問調書18・19頁)。しかも,甲第4号証には,1000個体という数及び出洞した洞口が記載されているだけであり,1000個体のユビナガが出洞した時刻,出洞に要した時間等は何ら記載されておらず,その正確性を示す基本的な資料も存在しない。この記載に見合うほどの数のユビナガの出洞を確認したという事実があったとしても,そのとき出洞したユビナガの雌雄の比率は不明であるし,仮に,その多くが妊娠し- 391 -ている雌であるとしても,出産時に移動する可能性も考えられるのである。 (イ) 原告らは,P19委員会がA洞窟にはこれまで明らかになっている本件空港予定地から最も離れている西側の3つの洞口のほかに別の未知の洞口が存在していることを推測していたところ,その洞口亀裂をD1洞窟付近で発見し,そこからコキクガシラ150頭が出洞するのを確認した,こうした亀裂が盛土によって閉鎖されることになれば,空気の流れが変わりA洞窟における洞内微気候の変化(好適な生息環境の破壊)は避けられないとして,県の調査が不適切,不十分であったと主張している。 しかしながら,原告らの上記主張は,原告らが発見したという洞口亀裂がA洞窟に通じていることが前提となっているところ,この前提は推測にとどまり,確認されていないのであるから,原告らの上記主張は憶測を述べたものといわざるを得ない。 (ウ) 原告らは,A1洞窟について,ほぼ周年を通じて少数ではあるがコキクガシラのねぐら場所として利用されていることが確認されたとし,調査時 告らの上記主張は憶測を述べたものといわざるを得ない。 (ウ) 原告らは,A1洞窟について,ほぼ周年を通じて少数ではあるがコキクガシラのねぐら場所として利用されていることが確認されたとし,調査時に水没しておりコウモリ類の利用が確認されなかった旨の県による調査結果(乙23の6-12-180頁)について,不適切な調査方法による誤った結論であると主張している。 しかしながら,仮に,原告らの主張する数頭ないし16頭のコキクガシラによるA1洞窟の利用が認められたとしても,コキクガシラ(成獣のみ)は,現在までに生息場所が確認されただけでも石垣島全体で5168ないし5999頭程度生息していることが認められ,そのうち,A洞窟を利用するコキクガシラ(成獣のみ)は1300ないし1420頭程度いると認められる(乙23の6-12-156ないし162頁)。このように,原告らの主張を前提としてもなお,石垣- 392 -島全体を生息地とするコウモリ類にとってA1洞窟の重要性が高いとはいい難く,原告らの上記主張は当を得ないものである。 なお,県は,A1洞窟における調査において,平成14年7月7日にカグラ1個体を確認したのを最後に,平成17年5月30日,同年10月9日,平成18年7月4日,平成19年1月18日,同月20日,同年6月7日,同年7月16日の調査では,コウモリ類を確認できなかった(そのうち,平成19年1月18日,同月20日の調査では目視調査のみならず,バットディテクターを用いて調査を実施した。)。また,平成17年5月25日,同年6月22日,平成18年1月14日,同年6月3日,同年11月23日に調査に赴いた時には,洞口が水没し入洞が不可能であった。こうした調査結果に基づき,県は,A1洞窟について,コウモリ類の継続的な利用は困難であると判断しているも 4日,同年6月3日,同年11月23日に調査に赴いた時には,洞口が水没し入洞が不可能であった。こうした調査結果に基づき,県は,A1洞窟について,コウモリ類の継続的な利用は困難であると判断しているものであるから,その判断に不合理な点はない。 (エ) 原告らは,浸透ゾーンⅡの掘削中に新たな洞窟が見付かったが,これほど大きな洞窟が今頃になって発見されたのは,洞窟探索調査が極めて不十分だったことを意味していると主張している。 しかしながら,県は,将来新たな洞窟が発見される可能性を想定した上,本件補正書(8-11頁)において,「新たな・・・洞窟が見つかった場合は,小型コウモリ類の利用状況を調査し,利用が確認された場合は,小型コウモリ類が継続してこれらの洞窟を利用できるよう,専門家の指導・助言を得た上で,可能な限り保全をはかる。」としていたのであるから,新たな洞窟が発見されたからといって直ちに県の調査が不十分であったことにはならないし,新洞窟発見の事実が従前の環境影響評価に影響を及ぼすものでもない。 なお,本件補正書は,上記洞窟について,コウモリ類の現在利用状況の調査を実施しているところであり,今後,専門家の指導・助言を- 393 -得た上で,コウモリ類が継続して洞窟を利用できるよう可能な限り保全対策を講じることとしている。 (オ) 原告らは,D洞窟のコウモリのグアノ(糞)中から,ケシガムシ属の一種が発見され,好洞窟性のトカラコミズギワゴミムシがA1洞窟,C洞窟,E洞窟の洞内で初めて確認されたほか,真洞窟性で準絶滅危惧種(石垣島固有種)に指定されているムモンアメイロウマについては,環境影響評価書の中ではその保全措置について一切示されておらず,不十分極まりないといえるとし,これらのことをもって,県の調査が不十分なあかしであると主張している ているムモンアメイロウマについては,環境影響評価書の中ではその保全措置について一切示されておらず,不十分極まりないといえるとし,これらのことをもって,県の調査が不十分なあかしであると主張している。 a しかしながら, 原告らの主張する「ケシガムシ属の一種」については,環境保全措置の対象となり得る未記載種(新種,重要な種)に該当するのかにわかに特定し難いものである上,県は,将来重要な生物が新たに確認される可能性を想定した上,本件補正書(8-4頁)において,「今後,重要な生物が新たに確認された場合は,専門家の指導,助言を得た上で,必要な調査を実施し,P56委員会(仮称)に諮り,適切な措置を講じることとする。」としているのであるから,新たな生物が発見されたからといって直ちに県の調査が不十分であったことにはならないし,新たな生物発見の事実が従前の環境影響評価に影響を及ぼすものでもない。 b 次に,「トカラコミズギワゴミムシ」については,環境省レッドリスト,沖縄県レッドデータブック若しくは絶滅のおそれのある野生生物の種の保存に関する法律により保護される種,又は天然記念物等に選定されておらず,本件補正書にいう「重要な種」の選定基準に該当しないことから,環境保全措置等の検討の対象とはならないものである。 c さらに,「ムモンアメイロウマ」は,県が平成13年度ないし平- 394 -成15年度に実施した新石垣空港洞窟性生物調査において,「カマドウマの一種(Atachycines属の一種) 」としてA,B,C,D,E洞窟で生息を確認しており,本件補正書においては旧名の「カマドウマの一種(Atachycines属の一種) 」として記載されている(乙19の資-221頁)。 なお,「ムモンアメイロウマ」は,平成17年3月に刊行された「改訂・レ 正書においては旧名の「カマドウマの一種(Atachycines属の一種) 」として記載されている(乙19の資-221頁)。 なお,「ムモンアメイロウマ」は,平成17年3月に刊行された「改訂・レッドデータおきなわ」で準絶滅危惧種に選定されたことから,これに伴い県は,他の希少種と同様の保全対策を講じることとしたものである。 このように,県は,コウモリ類を除く洞窟内動物についても,他の希少種と同様に,事業実施に伴う環境影響の回避・低減措置の強化改善を図ることとしているのであるから,県の貴重動物の調査や保全対策を批判する原告らの上記主張は,当を得たものとはいえない。 キ原告らは,石垣島における3種のコウモリ類がそれぞれ単一の地域個体群であると断ずる根拠が示されていないなどという。 (ア) しかし,県が実施した集団遺伝学的分析の解析結果によれば,コウモリ類が石垣島全体で1つの個体群を形成しているということができる(乙19の資-450ないし453頁,乙23の6-12-156・244・245頁)。 (イ) また,カグラ及びユビナガについては,標識装着調査という直接的な調査方法によって洞窟間の行き来が実際に確認されている(乙23の6-12-163~169頁,同44の資料93・94,同45の資料92~96,同46の資料113~116,証人P22)。コキクガシラについては,標識装着調査による確認をすることはできなかったものの,時期(出産・ほ育期(夏期),移動期(秋期)及び越冬- 395 -期(冬期))によって,α9地域における洞窟に生息する個体数に変動が認められるのであり(乙46の23・24頁,証人P22尋問調書10~12頁),このことは,他地域との交流状況を強く推測させる事実である。 る個体数に変動が認められるのであり(乙46の23・24頁,証人P22尋問調書10~12頁),このことは,他地域との交流状況を強く推測させる事実である。
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