平成14(わ)1093 窃盗被告事件

裁判年月日・裁判所
平成15年3月19日 神戸地方裁判所
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判決文本文3,875 文字)

主文 被告人を懲役2年4月に処する。 未決勾留日数中50日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,平成14年9月12日午後11時28分ころ,神戸市a区b町c丁目d番e号所在のA鉄道株式会社B駅上りホームにおいて,同所のベンチで仮睡中のCが所持していた手提げカバンの外側ポケット内から,同人所有の現金1万5260円及び定期券等6点在中の財布1個(時価合計9,676円相当)を窃取したものである。 (証拠の標目)-カッコ内は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠甲乙の番号省略(事実認定の補足説明) 1 弁護人は,本件被害品である財布は,Dなる人物から被告人に突然渡されたものであり,被告人が被害者から盗んだものではないと主張して窃盗の事実を争い,被告人もまたこれに沿う供述をするので,当裁判所が前記のとおり認定した理由について,以下補足して説明をする。 2 目撃証言の検討。 (1) 証人Eの当公判廷における供述及び証人Fの当公判廷における供述は,いずれも,警察官である両証人が仮睡盗,スリなどの捜査として勤務中,被告人の行動を不審に思い注視していたところ,E供述によれば,被害者が北向きのベンチに座っていたところ,被告人は同じ北向きのベンチにひとつ座席を空けて西側に座っており,被告人は,被告人と被害者の間のベンチの方に右手を伸ばし,その後被告人は立ち上がったが,被告人の右手には財布様ものもが握られており,被告人はそれをズボンの右ポケットに入れたことを目撃した旨,F供述によれば,被害者が北向きのベンチに座っていたところ,被告人は同じ北向きのベンチにひとつ座席を空けて西側に座っており,被告人は体を右の方に傾けて,右手を被害者が座っている方向,かつ,下 た旨,F供述によれば,被害者が北向きのベンチに座っていたところ,被告人は同じ北向きのベンチにひとつ座席を空けて西側に座っており,被告人は体を右の方に傾けて,右手を被害者が座っている方向,かつ,下方向に伸ばし,その後被告人は立ち上がりながら右の腰辺りに何かを隠す素振りをした旨いうのであり,両証人のこれらの供述には,特に不自然・不合理な点は存しないこと,具体的な供述をしていること,反対尋問にも動揺していないこと,両証人には虚偽の供述をしてまで被告人を罪に陥れなければならない理由は存しないこと,両証人の視力は良好であり周囲も明るかったこと,被害者はベンチに座り仮睡していたが,被告人と被害者の間のベンチ上には,被害者の鞄が置かれていたこと,その鞄のポケットには本件被害品である財布が入っていたこと,被告人が現行犯逮捕をされた際,本件被害品である財布を所持していたことなどからして,信用性が認められる。 (2) このように,両供述について信用性を肯定するが,その信用性の点について更に検討する。① 両供述は,南向きのベンチに座っていたアベックが午後11時27分発の電車に乗り込んだかについて相反する供述をする。しかし,中心的で重要な部分の記憶が残りやすいのに比べ,周辺的部分の記憶には変容が生じやすいことは経験則上明らかであるところ,本件においては重要部分に矛盾がないこと,アベックの存在によって前記供述する状況を見通すことができなくなるような状況では必ずしもないことからして,この点は周辺的部分の供述であり,両供述の前記信用性を動揺させるものではない。また,② 通常のスリ捜査の場合,2人で捜査を行うのが原則であるにもかかわらず,本件では2人が一旦別れようとしていたこと,③ F証人が,ホーム上で被告人を現行犯逮捕しなかったこと,に疑問がある旨弁護人は主 通常のスリ捜査の場合,2人で捜査を行うのが原則であるにもかかわらず,本件では2人が一旦別れようとしていたこと,③ F証人が,ホーム上で被告人を現行犯逮捕しなかったこと,に疑問がある旨弁護人は主張する。 しかし,②については,別の場所に分かれた方が犯罪を発見する率が高いこともあろうこと,③については,ホームから財布を捨てられる等の行為を防ぐこと,捜査員2名の内1名が被害確認をすることもあながち不自然とはいえないことからして,②,③とも捜査における方法の選択の範囲を逸脱したものとまでは言えず,ひいては,前記目撃証言の信用性に動揺を与えるものでもない。④ E証人は,前記ホーム上にいた被告人を服装,身長,歩く格好などから特定していたこと,F証人は,被告人と同一のホーム上で被告人の顔を確認していたことからして,人違いによる逮捕ではない。 3 被告人供述の検討。 (1) 結論として,被告人の捜査段階後半及び当公判廷における本件犯行を否認する供述自体及びその変遷があまりに不自然・不合理であり,前記目撃証言に照らしても信用できない。逮捕時ないしは捜査段階での犯行を認める供述は信用できる。 以下説明する。 (2) 被告人の捜査段階後半及び当公判廷における本件を否認する供述自体,次の点であまりにも不自然・不合理である。被告人の本件犯行を否認する弁解によれば,西脇市に戸籍謄本などを取るために向かう途中,同駅前で休んでいたところ,同所にて偶然Dなる人物と会い,同人から財布を渡されたにすぎない旨いうものである。しかし,次の点に照らしても信用できない。① E証人は,被告人が改札を出て,1,2秒目を離す状況になったが,その時間は一瞬にすぎないし,その間,被告人の供述するDなる人物が被告人に接触した形跡はない。② Dの頭髪について,被告人は当公判廷において,被 被告人が改札を出て,1,2秒目を離す状況になったが,その時間は一瞬にすぎないし,その間,被告人の供述するDなる人物が被告人に接触した形跡はない。② Dの頭髪について,被告人は当公判廷において,被告人のスポーツ刈りより短い五分刈りと供述したり,約10センチメートルあると供述したりするなど,人物像も定かでない。③被告人は午後8時30分に大阪を出発しており,この時間から西脇市役所に向かっても,同市役所が閉まっていることは明らかである(この点について,被告人は,内縁の妻にすぐに行けといわれたので朝一番に同市役所に行くことで誠意を見せたかった旨供述しているが,かかる供述内容は信用できない。)。④ 被告人は休憩していたJRB駅前の噴水のところで寝ようとも考えていた旨供述するが,被告人が供述する休憩していた時間帯は,雨が降っており,雨量は傘を差さなければずぶぬれになるようなものであった。⑤ 本件犯行の前には,噴水があった時期もあるものの,本件犯行時には花壇になっており,噴水は存在しなかった。 (3) 被告人供述の変遷は,次のようにあまりに不自然・不合理である。すなわち,① 被告人の本件犯行当日と翌日付けの警察官調書(乙2-弁解録取書,3),本件犯行の翌々日付けの検察官に対する調書(乙4-弁解録取書)では,被告人は盗んだことを認めている。この点について,逮捕した警察官が怖かったから犯行を否認できなかった旨当公判廷において供述する。しかし,他方で,被告人は検察庁での取り調べの際には,検察官は普通であった旨供述し,それでは検察庁で犯行を否認しなかった理由を説明できない。② 勾留質問調書(乙5)によると,被告人は被害者がベンチの上に落とした財布を盗んだ旨供述している。この点について,被告人は当公判廷において,被告人を逮捕した警察官の言い分に合わせたも 説明できない。② 勾留質問調書(乙5)によると,被告人は被害者がベンチの上に落とした財布を盗んだ旨供述している。この点について,被告人は当公判廷において,被告人を逮捕した警察官の言い分に合わせたものである旨供述するが,もし仮に警察官の言い分に合わせたものであるならば,なぜ従前通りカバンから財布を盗んだといわなかったのであろうか。③ 捜査段階での弁解の中で,中央改札口から出てくるDを噴水(現実には花壇)の位置から見た旨言うが,客観的には花壇から中央改札口は見通せない。また,この点について,公判廷では,警察官に押しつけられたから,そのような位置関係を供述した旨いうが,警察官がこのような供述を押しつける理由はない。 4 以上より,前記罪となるべき事実は優に認定できる。 (法令の適用)・罰条刑法235条・未決勾留日数の算入刑法21条・訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)本件は,被告人が,駅のホームのベンチで眠っていた仮睡者を狙って財布を盗んだという事案である。本件犯行の動機は金が欲しかっただけであり,動機に酌むべき点はなく,犯行態様も手慣れたものであり悪質であること,被害者の被った被害額が決して少額ではないこと,真摯な反省の態度が見られないこと,同種前科を含む前科が8件あることなどを考え併せると,被告人の刑事責任は重いといわざるを得ない。 してみると,被告人が現行犯逮捕されたことにより被害品が還付されたこと,相当期間勾留されていることなど被告人のために酌むべき事情を考慮しても,主文の刑はやむを得ないところである。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑・懲役3年)平成15年3月19日神戸地方裁判所第12刑事係乙裁判官前田昌宏 主文 よって,主文のとおり判決する。 (求刑・懲役3年)平成15年3月19日神戸地方裁判所第12刑事係乙裁判官前田昌宏

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