平成12(ネ)4226 地役権確認等請求控訴

裁判年月日・裁判所
平成13年10月17日 東京高等裁判所
ファイル
hanrei-pdf-144.txt

判決文本文13,152 文字)

(原審・東京地方裁判所八王子支部平成8年(ワ)第959号地役権確認等請求事件(原審言渡日平成12年7月5日)) 主文 一原判決を取り消す。 二控訴人らと被控訴人らとの間において、控訴人らが別紙地役権目録記載の地役権を有することを確認する。 三被控訴人Aは、控訴人らに対し、別紙承役地目録記載二の土地のうち別紙図面(一)の赤線内部分に存するブロック塀及び樹木を撤去し、かつ、同部分に対する控訴人らの通行を妨害してはならない。 四訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人らの負担とする。 第一当事者の求める裁判一控訴人ら主文と同旨二被控訴人ら 1 本件各控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は、控訴人らの負担とする。 第二事案の概要事案の概要は、次のとおり訂正し、又は付加するほかは、原判決の「第二事案の概要」に記載のとおりであるから、これをここに引用する。 一原判決一枚目裏四行目を「一請求の概要並びに原審及び当審における判断の概要本件は、大型マンションの各戸の区分所有者である控訴人らが、被控訴人ら先代とマンション分譲業者間においてマンション敷地を要役地・これに隣接する被控訴人ら先代所有地を承役地として通行のための地役権設定契約が締結され、右地役権をマンション各戸の分譲を受けた控訴人らがマンション敷地に設定されている地上権とともに承継取得したことを理由に、地役権の存在を否定する被控訴人らに対し、地役権の存在確認と、地役権に基づく妨害排除として承役地に設置されたブロック塀等の撤去等を求めたものであり、主たる争点は、①マンション分譲業者と被控訴人ら先代間の地役権設定契約の成否、②地役権の消滅時効の成否及び③地役権の時効消滅を主張することと権利濫用の成否である。 原判決は、マンション建 のであり、主たる争点は、①マンション分譲業者と被控訴人ら先代間の地役権設定契約の成否、②地役権の消滅時効の成否及び③地役権の時効消滅を主張することと権利濫用の成否である。 原判決は、マンション建築に当たり被控訴人ら先代とマンション分譲業者間で地役権設定の合意を記載した契約書が作成されているが、これでは承役地の範囲を特定することができないことを理由に、控訴人らの本件各請求を棄却した。これに対し、本判決は、被控訴人ら先代とマンション分譲業者間の地役権設定契約により控訴人らが主張する部分を含む範囲を承役地とする通行のための地役権が設定されたことが認められ、その後、承役地にブロック塀等が設置され、控訴人らがこれを通行できなくなってから二〇年の消滅時効期間が経過したが、被控訴人らが地役権の時効消滅を主張することは権利の濫用に当たり許されないとして、原判決を取り消した上控訴人らの本件各請求をいずれも理由があるものとして認容するものである。 二前提となる事実(証拠を摘示しない事実は、当事者間に実質的に争いがないか、又は弁論の全趣旨により容易に認めることができる事実である。)」と改め、同一〇行目の「間に」の次に「不動産交換・地上権設定契約(以下「本件地上権設定契約」という。)を締結し」を加える。 二原判決二枚目表三行目末尾の次に「そして、本件マンション敷地につき、右同日設定契約を原因として昭和四七年六月六日受付で右地上権設定登記が経由された。」を、同六行目の「取得した」の次に「(建築は、株式会社長谷川工務店(以下「長谷工」という。)が施工した。)」をそれぞれ加える。 三原判決三枚目表五行目の次に行を改めて「7 本件マンション敷地は、別紙図面(二)のとおり、ほぼ北西方向から南東方向に細長く、その南東側が甲州街道(国道二〇号線。幅員一八・一メート れ加える。 三原判決三枚目表五行目の次に行を改めて「7 本件マンション敷地は、別紙図面(二)のとおり、ほぼ北西方向から南東方向に細長く、その南東側が甲州街道(国道二〇号線。幅員一八・一メートル)に面した旗状の土地である。甲州街道と接する入り口部分は、幅員(甲州街道との接面)約七メートル、奥行き約四〇メートルの路地状の土地である。右路地状部分を除く敷地の部分は、幅が北西側で約二九・七〇メートル、南東側で約二四・六メートルであり、北西側から南東側までの長さは約九八・一三メートルである。また、本件マンション敷地の北西方向には、甲州街道とほぼ並行して走る幅員約四メートルの公道(以下「北側公道」という。)がある。北側公道と本件マンション敷地の間に存する調布市a町b丁目c番dないしe、f、gないしh、i及びjの各土地(以下「北側通路敷地」という。)は、公図上、通路状を呈して本件マンション敷地と接しており、同所は、現況で幅員四メートル、長さ約七一・六メートルの舗装道路(ただし、本件マンション敷地に接する付近は、一部未舗装であり、そのほぼ真ん中に雑木が一本生立している。以下、右通路状土地を「北側通路」という。)となっている。(甲一、二、一六、二三、二九の1ないし8、三一) 8 北側通路については、亡Bの申請により、そのうち北側公道から南東方向に長さ三五メートル、幅員四メートルの部分が昭和三八年一〇月三日告示により、さらに、これに続くその南東側の長さ約二四・三メートル、幅員四メートルの部分(その南東端部の自動車回転広場を含む。)が昭和三九年二月一一日告示によりそれぞれ道路位置指定がされた。しかし、現況で右自動車回転広場は設けられていない。また、北側通路の北西端からその南東端、すなわち、本件マンション敷地との境界までの距離は約七一・六メートルであるか りそれぞれ道路位置指定がされた。しかし、現況で右自動車回転広場は設けられていない。また、北側通路の北西端からその南東端、すなわち、本件マンション敷地との境界までの距離は約七一・六メートルであるから、右位置指定道路は右境界にまで延びておらず、その間の約一四・三メートルの間は、道路位置指定がされていない。(甲三一、乙一) 9 本件マンション及びその敷地は、敷地が二八三〇・五一平方メートル、建物が鉄骨鉄筋コンクリート造地上一一階搭屋二階、建築面積一一〇三・四二五平方メートル、延べ面積一万一八六五・五七一平方メートル、高さ三八・五メートルである。(甲二)被控訴人Aは、c番kの土地のうち、別紙図面(一)の赤線内部分にブロック塀を設置し、樹木を植栽して(以下、右ブロック塀を「本件ブロック塀」と、樹木を「本件樹木」といい、合わせて「本件ブロック塀等」ともいう。)これを所有しており、控訴人らがここを通行等して利用することができない状況にある。」を、同八行目の「六日」の次に「、本件地上権設定契約の締結と同時に」を、同九行目の「要役地」の次に「(以下「本件要役地」ともいう。)」をそれぞれ加え、同行目の「を承役地」を「の一部である別紙図面(一)赤線内部分を承役地(以下「本件承役地」ともいう。)」と、同一一行目の「地役権設定契約」を「別紙地役権目録記載の地役権(以下「本件地役権」ともいう。)の設定契約(以下「本件地役権設定契約」という。)」とそれぞれ改める。 四原判決四枚目表三行目の「管理組合」を「本件マンションの管理組合であるD管理組合法人(以下「管理組合」という。)」と、同四行目の「通行地役権」及び同六行目の「地上権」をいずれも「本件地役権」と、同七行目の「要役地」から同行目の「承役地」までを「本件マンションの区分所有者の一人で、その敷地である 合」という。)」と、同四行目の「通行地役権」及び同六行目の「地上権」をいずれも「本件地役権」と、同七行目の「要役地」から同行目の「承役地」までを「本件マンションの区分所有者の一人で、その敷地である本件要役地の所有者であるとともに、本件承役地」と、同八行目の「地役権」を「本件地役権」と、同一〇行目の「調布市」から同一一行目の「及び」までを「北側通路敷地及び本件承役地の一部である」とそれぞれ改める。 五原判決四枚目裏一行目の「通行地役権」、同五行目の「本件通行地役権」並びに同一〇行目及び同一一行目の各「地役権」をいずれも「本件地役権」と、同一〇行目の「承役地」を「本件承役地」とそれぞれ改める。 六原判決五枚目表三行目の「原告ら主張の地役権」を「本件地役権」と同六行目の「承役地」を「本件承役地」と、同一〇行目の「c番l、kの土地につき、地役権設定契約」を「本件地役権設定契約」とそれぞれ改める。 七原判決五枚目裏五行目及び同六行目を「2 北側通路敷地及び本件承役地に実際に通路が開設されたことも、本件地役権が実際に行使されたこともない。」と、同七行目の「、通行地役権設定契約」を「本件地役権設定契約」とそれぞれ改める。 八原判決六枚目表四行目の「平成三年二月六日」を「平成四年一二月一二日」と、同六行目の「地役権設定契約」及び同八行目の「、原告ら主張のような通行地役権設定契約」をいずれも「本件地役権設定契約」とそれぞれ改める。 第三証拠証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録に記載のとおりであるから、これをここに引用する。 理由 一本件地役権設定契約の成否及び本件承役地の範囲について 1 昭和四六年二月六日亡Bとトーメン間に本件地上権設定契約が締結され、右同日設定契約を原因として昭和四七年六月六 理由 一本件地役権設定契約の成否及び本件承役地の範囲について 1 昭和四六年二月六日亡Bとトーメン間に本件地上権設定契約が締結され、右同日設定契約を原因として昭和四七年六月六日受付で右地上権設定登記が経由されたことは、前記のとおりである。 ところで、本件地上権設定契約を証するものとして控訴人らから「不動産交換契約並びに地上権設定契約書」と題する契約書(甲一。以下「本件契約書」という。)が提出されている。本件契約書は、もともとトーメンが所持していたものであるが、本件紛争発生後、管理組合が同社から譲り受けたものである(弁論の全趣旨)。これは、表表紙、裏表紙のほか、本文四枚及び物件目録一枚(いずれもB四版二つ折りの和紙に横書きでタイプ浄書されたもの)並びに建築関係の青焼き図面五葉からなり、その全体を袋綴じしたものである。このうち、本文四枚目表末尾の作成年月日欄は空欄であるが、その裏の最終頁には、上から、順次、甲として「東京都調布市a町b~m~nB」の署名押印、乙としてトーメン代表者の記名押印、立会人として長谷工東京支店支店長の記名押印があり、さらに、その下に公証人による昭和四七年六月一三日付けの確定日付印がある。 公証人による確定日付印は、袋綴じの部分にも押印されている。五葉の図面は、一葉目が現況求積図(昭和四五年一二月二四日測量に基づくE測量設計事務所作成のもの。作成日付なし)、二葉目が設計概要書及び面積表(作成日付昭和四六年四月一六日。長谷工作成)、三葉目が一階二階平面図(作成日付同年三月一五日。長谷工作成。図面番号5)、四葉目が三階ないし一一階及び搭屋平面図(作成日付同月一六日。 長谷工作成。図面番号6)、五葉目が配置図・案内図(作成日付同年二月二五日。長谷工作成。図面番号3。以下、右配置図を「本件配置図」、右案内図 葉目が三階ないし一一階及び搭屋平面図(作成日付同月一六日。 長谷工作成。図面番号6)、五葉目が配置図・案内図(作成日付同年二月二五日。長谷工作成。図面番号3。以下、右配置図を「本件配置図」、右案内図を「本件案内図」という。)である。本件契約書について、被控訴人ら(原審被告ら)はその成立を積極的に争わず、原審相被告トーメンは、基本的には控訴人らの本件地上権設定契約及び本件地役権設定契約の各締結及びその経過を争っていなかったこと等に照らすと、本件契約書は、全部真正に成立したものと推認することができ、これが偽造文書であるとか、本文と図面の編てつの仕方に作為があることを窺わせる状況は認められない。なお、本件契約書には、前記のとおりその作成日付の記載がないが、添付の図面に昭和四六年四月一六日付けのものが含まれており、公証人による確定日付が昭和四七年六月一三日付けとなっていることに照らすと、本件契約書自体の作成は、昭和四六年四月一六日以降昭和四七年六月一三日までの間にされたものと認めるのが相当である。 2 ところで、本件案内図(縮尺二〇〇〇分の一)には、本件マンション敷地が数条の斜線を引いて図示されているが、これには、北側公道は図示されていないし、右敷地から北側公道に至る通路が何ら記載されていない。しかし、本件配置図(縮尺三〇〇分の一)には、本件マンション敷地及びこれに接する北側通路敷地の一部(図上検尺で本件マンション敷地から約三一・八メートルの地点まで)並びに本件承役地が記載され、本件承役地及び北側通路敷地の右部分の輪郭線(黒線)上に赤鉛筆で赤線が引かれている。そして、右北側通路敷地の部分には「通路」と記載されており、その北側公道方向の延長上には「裏出口」との記載があり、その間の右「通路」の記載から「裏出口」の記載に向けて「←」の記載がある。本件 いる。そして、右北側通路敷地の部分には「通路」と記載されており、その北側公道方向の延長上には「裏出口」との記載があり、その間の右「通路」の記載から「裏出口」の記載に向けて「←」の記載がある。本件承役地の部分は、図上検尺によれば、北側通路敷地に沿って、幅約五メートル、長さ約一一メートルの大きさに図示されている。他方、本件契約書の本文の一九条には、「(通行地役権)甲は、本件土地北側の公道と本件土地とを直結する甲所有の道路(別紙図面(C)の赤線で囲まれた部分)については、本件マンションの道路として無償で使用することを同意した。」との規定(以下「本件規定」という。)がある。 そして、長谷工が作成した本件マンションの分譲用の案内パンフレット(甲二三)には、北側通路敷地の辺りに二条の線を引いて通路を図示した案内略図が掲載されている。 また、本件マンション建築中には、一時、工事用のトラックが北側通路を通って本件マンション敷地に資材を搬入していたことがあり、工事完成後の昭和四七年六、七月ころには、本件マンション各戸の分譲を受けてここに入居した者の中には北側公道から北側通路を経て引越荷物を搬入した者もいたこと、当時は、右通路上の本件マンション寄りに小さな木が一本あったが、本件承役地には工作物はなく、樹木も植栽されていなかったこと、しかし、その二、三か月後、遅くとも同年一二月一二日までに、被控訴人Aは、c番kの土地上に本件ブロック塀を設置し、樹木を植栽したことが認められる(甲二四ないし二七、三〇、三一、乙三の1、2、五)。 3 そして、これらの事実並びに前記前提となる事実及び本件規定の存在を総合すれば、本件規定にいう「本件土地北側の公道」は北側公道を、「甲所有の道路」は北側通路をそれぞれ指し、これ以外にはあり得ないことが明らかである。ところが、本件規定 提となる事実及び本件規定の存在を総合すれば、本件規定にいう「本件土地北側の公道」は北側公道を、「甲所有の道路」は北側通路をそれぞれ指し、これ以外にはあり得ないことが明らかである。ところが、本件規定には、右「甲所有の道路」の位置について前記のとおりかっこ書きで「別紙図面(C)の赤線で囲まれた部分」と記載されているのに、本件契約書に添付されている五葉の図面中には「C」図面は存在しない。しかし、本件契約書添付の図面番号「3」の本件配置図・本件案内図中の本件配置図には、前記のとおり、北側通路敷地の一部及び本件承役地の輪郭線上に赤鉛筆で赤線が引かれ、かつ、右北側通路敷地の部分には「通路→裏出口」の表示もされていること、また、前記のとおり、本件契約書の編てつの仕方に作為を認めることはできないことにかんがみれば、右本文と図面の表現の不整合は、あらかじめトーメン側が作成しておいた本文及び物件目録に、後日、長谷工側が建築確認申請用ないし建築工事用に作成した図面のうちの所要のものを抽出して、本件契約書の別紙図面として利用したことによるものと考えるのが相当であり、本件規定中の「別紙図面(C)」は図面番号「3」の本件配置図・本件案内図中の本件配置図を指すものと解するのが相当である。 そして、本件配置図の右記載によれば、本件規定によって設定されることとされた通行地役権の承役地の範囲は、北側通路敷地全体及び本件承役地であると認めるのが相当である。 そして、本件規定が本件地上権設定契約に係る本件契約書中に本件地上権設定契約に関する規定中に折り込まれて定められていることにかんがみると、本件マンション敷地を要役地、本件承役地及び北側通路敷地を承役地とし、目的、期間及び対価を別紙地役権目録記載のとおりとする地役権設定契約が本件地上権設定契約の締結と同時に締結されたも かんがみると、本件マンション敷地を要役地、本件承役地及び北側通路敷地を承役地とし、目的、期間及び対価を別紙地役権目録記載のとおりとする地役権設定契約が本件地上権設定契約の締結と同時に締結されたものと認めるのが相当である。 したがって、亡Bとトーメン間において、本件承役地についてこれを承役地とする控訴人ら主張の本件地役権設定契約が締結されたものと認めることができる。 二消滅時効の成否について 1 本件地役権設定契約が締結された当時、既に北側通路が開設されていて、ここを工事関係者や本件マンション居住者が通行していたのであり、右通路上の本件マンション寄りに小さな木が一本あったが、本件承役地には工作物はなく、樹木も植栽されていなかったことは、前記のとおりである。 ところが、本件マンションの新築工事が完了した後、遅くとも昭和四七年一二月一二日までに、被控訴人Aは、c番kの土地とc番l、i及びhの各土地との各境界上にコンクリート基礎をしてその上に八段積みの本件ブロック塀を設置し(北側通路に面した部分にドアーが設置されている。)、c番kの土地内に本件樹木を植栽した。その直後ころ、本件マンション居住者側において、本件マンション敷地の北西側境界一杯に、防犯用に、扉を付けた出入口のある緑色のネットフェンスを設置した。その結果、本件マンションの居住者は、本件承役地のうちc番kの土地の部分を通行することができなくなり、c番lの土地の部分は、幅員一・二メートルであるが、本件ブロック塀と右ネットフェンスに挟まれた人一人が通れる程度の路地となり、本件マンションの居住者、主に本件マンション敷地の北方向にある地元の中学校に通う子供達が通学のためこれを利用し、また、亡Bやその家族も、北側通路の両脇にある被控訴人A所有の建物(c番oの土地所在)等と亡B所有の本件マンショ に本件マンション敷地の北方向にある地元の中学校に通う子供達が通学のためこれを利用し、また、亡Bやその家族も、北側通路の両脇にある被控訴人A所有の建物(c番oの土地所在)等と亡B所有の本件マンション内の居宅及び甲州街道沿いの建物との行き来のために、本件マンション居住者同様、これを利用してきた。しかし、本件ブロック塀が設置されたことに対し、右設置当時及びその後長い間、トーメン及び長谷工のみならず本件マンション居住者らからも異議は出されず、亡Bがその生前被控訴人Aに対してその撤去等を求めたこともなかった。(甲二四ないし二七、三〇、三一、三三、乙二、五、六、控訴人F、被控訴人A) 2 右によれば、北側通路及びc番lの土地の本件承役地部分は格別、c番kの土地の本件承役地部分については、遅くとも昭和四七年一二月一二日以降本件ブロック塀等の設置等により本件地役権の行使を妨げる事実が生じたものであり、したがって、平成四年一二月一二日の経過により二〇年の消滅時効期間が経過したものと認められる。 控訴人らは、昭和五六年以降、管理組合が亡Bに対して本件承役地に対する本件地役権の存在を主張し、同人はこれを承認した旨主張する。証拠(甲三ないし一三、二〇ないし二二、三一、控訴人G)及び弁論の全趣旨によれば、本件マンションは、控訴人らの入居当初は、トーメンの子会社の管理会社がこれを管理していたが、昭和五五年ころ、右管理会社から管理委託費用の大幅値上げが請求されるに及び、全居住者が加入する「H会」が結成され、以後は、同会がこれを自主管理することになり、昭和五六年六月六日、同会を発展させた管理組合が正式に成立したこと、管理組合は、遅くとも昭和五九年一二月一六日に開催された第四回組合総会以降、組合総会等の機会において、継続的に、「北口通路問題」、すなわち、本件ブロック塀 会を発展させた管理組合が正式に成立したこと、管理組合は、遅くとも昭和五九年一二月一六日に開催された第四回組合総会以降、組合総会等の機会において、継続的に、「北口通路問題」、すなわち、本件ブロック塀等の撤去問題を含む北側通路の封鎖問題(甲一六のうちの平成九年八月三〇日撮影の北側公道から北側通路を撮影した写真によれば、北側通路の北側公道寄りの路面にはめ込み式の鉄パイプ製の自動車進入阻止ガードが設置されており、その脇には、「私道に付、関係者以外進入禁止」と書かれた移動式の立て看板が設置されている。)の解決を志向し、弁護士の指導を受けるなどして、亡Bに対して右問題の善処方を申し入れていたこと、しかし、問題の解決をみることなく昭和六三年二月一二日亡Bが急逝したため、問題が未解決のままとなっていること、北側通路敷地(c番dないしe、f、gないしh、i及びjの各土地)及びc番lの土地については、同年一〇月一四日地目がそれまでの畑又は宅地から公衆用道路に変更され、平成五年八月一一日その旨の登記がされたが、c番kの土地のみは地目の変更はされなかったこと(なお、右各土地のうち、c番dないしeの各土地は同番pの土地から、c番l及びkないしjの各土地は同番lの土地が同番l及びkないしqの各土地に、c番f及びgないしhの各土地は同番fの土地が同番f及びrないしhの各土地にいずれも昭和六二年一〇月一四日分筆されて、現在のような地番となったものである。)が認められる。右によれば、管理組合ないし控訴人らが、右消滅時効期間経過前後において、亡Bないし被控訴人らを始めとする亡Bの相続人に対して、本件地役権の存在を前提として本件承役地に存する工作物等の撤去を求めたことは推認することができるが、亡Bらがその存在を承認したものとはいまだ認めることはできず、他にこれを認めるに の相続人に対して、本件地役権の存在を前提として本件承役地に存する工作物等の撤去を求めたことは推認することができるが、亡Bらがその存在を承認したものとはいまだ認めることはできず、他にこれを認めるに足りる的確な証拠はない。 そうすると、c番lの土地の本件承役地部分については、いまだ本件地役権の消滅時効が完成したものとはいえないが、c番kの土地の本件承役地部分については、本件地役権の消滅時効が完成したものといわざるを得ない。 三消滅時効を援用することと権利の濫用の成否について 1 控訴人らは、被控訴人らが本件承役地に対する本件地役権の時効消滅を主張することが権利の濫用として許されない理由として、本件マンションは、その敷地が本件承役地及び北側通路に接することで建築基準法及び東京都条例等法令が規定する建築確認の要件を満たすものとして建築確認がされたものであるから、いま、本件地役権が時効により消滅したとされると、本件マンションの建替え等の場合に法令上制限を受けるのみならず、本件承役地等を通行することができないことによる災害緊急避難等に支障があると主張する。 2 管理組合は、有限会社八達サービスの一級建築士Jの調査に基づき、平成九年七月七日受付の特殊建築物等定期調査報告書により、調布市長(特定行政庁)に対し、建築基準法一二条一項に基づく本件マンションの定期調査の結果を報告し、これに対して、調布市長は、同月九日付けの文書により、所要の行政指導を行った(甲一五の1ないし3)。右一級建築士の調査のうち、道路・避難通路等の状況についての部分の説明及び意見は、本件マンション敷地は、前面(南東側)は、甲州街道に接し、建築物までの導入路は幅員六メートル、延長三五メートルを保持し、特に問題はない、北側は、建築確認図書によると、幅員五メートルの通路で本件マンション マンション敷地は、前面(南東側)は、甲州街道に接し、建築物までの導入路は幅員六メートル、延長三五メートルを保持し、特に問題はない、北側は、建築確認図書によると、幅員五メートルの通路で本件マンション敷地と接し、その先は四メートルの通路で北側公道に接することで建築確認申請が受理されているところ、現況では、北側公道に接することとされていた幅員四メートルの通路部分は幅員四メートルの最近整備された私道ができているが、本件マンション敷地に接することとされていた幅員五メートルの通路部分には本件ブロック塀があり、避難出口(前記ネットフェンスの出入口)からは約九〇センチメートル幅の通路しかとれていない、したがって、建築確認時の条件を満たしていない、現況で避難は可能であるが、後々、私有地のままで防災上使用できないことになれば、通路(幅四メートル以上)の両端の二公道(甲州街道と北側公道)接道について問題が起きる可能性があり、建築確認図書のような構図に復帰することが望ましいとされており、これに対する調布市長の行政指導の内容は、右調査で指摘された改善箇所は法基準を満たしていないばかりでなく、防災上及び安全上好ましくない状態であるとして、その改善の実施を求めるものであった。 3 ところで、建築基準法四二条一項本文及び四三条一項本文は、建物の敷地は、原則として幅員四メートル以上の道路(道路法の道路等)に二メートル以上接していることを要し、また、同条二項は、地方公共団体は、特殊建築物(二条二号。共同住宅はこれに含まれる。)等で延べ面積が一〇〇〇平方メートルを超える建築物の敷地が接しなければならない道路の幅員、その敷地が道路に接する部分の長さその他その敷地又は建築物と道路との関係についてこれらの建築物の用途又は規模の特殊性により、前項の規定によっては避難又は通行の安全 が接しなければならない道路の幅員、その敷地が道路に接する部分の長さその他その敷地又は建築物と道路との関係についてこれらの建築物の用途又は規模の特殊性により、前項の規定によっては避難又は通行の安全の目的を充分に達し難いと認める場合においては、条例で必要な制限を付加することができると規定している。そして、これをうけた東京都建築安全条例(以下「安全条例」という。)は、その一〇条において、本件地役権設定契約が締結され、本件マンションについて建築確認がされた当時、「特殊建築物は、路地状部のみによって道路に接する敷地に建築してはならない。ただし、安全上支障がない場合は…、この限りでない。」と定め、現在も、ほぼ同旨の規定を置いている(甲一七、弁論の全趣旨)。 そして、本件マンション敷地は路地状部分によって道路(甲州街道)に接しているのであるから、特殊建築物である本件マンションは、右建築基準法及び安全条例による建築規制により、安全上支障がないと認められる場合でない限り、建築確認がされず、建築が許されなかったものであり、現在も許されないことになる。しかるに、本件マンションについて、建築確認がされ、建築が許されたということは、右建築確認の申請において本件マンション敷地が前記のとおり南東側の甲州街道に接する路地状部分のみでなく、北西側において本件承役地及び北側通路によって北側公道に接するものとされていて、安全上支障がないと認められたことによるものと推認される。したがって、いま、右北側公道に至る北側通路及び本件承役地(これらは、いずれも幅員四メートルが確保されている。)のうち、c番kの土地の本件承役地部分について地役権の消滅時効が完成したものとして同所を通行の用に供することができないものとすると、本件承役地のうち通行の用に供することのできる残された部分 ている。)のうち、c番kの土地の本件承役地部分について地役権の消滅時効が完成したものとして同所を通行の用に供することができないものとすると、本件承役地のうち通行の用に供することのできる残された部分は幅員一・二メートルの部分(c番lの土地のうちの本件承役地部分)のみとなり、災害時等の避難等に支障が生ずることは明らかであり、前記2の調布市長による行政指導でも指摘されたとおり、防災上・安全上支障があるものといわざるを得ず、さらには、本件マンションは、現在においては、安全条例一〇条に適合しない不適格な建築物とされるおそれがあり、将来の増改築等に支障が生じるおそれもある。 4 他方、前記のとおり、亡Bは、本件地役権が設定された当時、本件マンション敷地を所有し、これに本件マンション所有のためにトーメンに対して存続期間を一二〇年とする本件地上権を設定するとともに本件承役地及び北側通路を承役地とする本件地役権を設定したものであり、右各設定契約当時、北側通路は既に開設されて通行の用に供され、また、本件承役地上には建物等の工作物及び通行に支障のある樹木等は植栽されていなかったところ、被控訴人Aは、本件マンション建築後、c番kの土地の前記位置に本件ブロック塀を設置し、その内側に本件樹木を植栽した。本件ブロック塀等を設置等した理由について、被控訴人A(乙五)によれば、本件マンションが建築されるに及び、見知らぬ居住者多数が亡B所有地を通行することを防止するためであったというのであるが、c番kの土地には、現在も建物等の工作物はない。 5 そうすると、c番kの土地の本件承役地部分に対する本件地役権が存在するとされることにより、被控訴人Aは、右承役地部分から本件ブロック塀等を除去し、控訴人らの通行を容認しなければならないのみならず、同所に建物等の工作物を設置してはな 役地部分に対する本件地役権が存在するとされることにより、被控訴人Aは、右承役地部分から本件ブロック塀等を除去し、控訴人らの通行を容認しなければならないのみならず、同所に建物等の工作物を設置してはならないという不利益を被るが、他方、右地役権の存在が否定されると、控訴人らは、単に右承役地部分を通行することができないというのみならず、前示のとおり、防災上・安全上の不利益を被ることになるのであって、その不利益は重大であり、社会的に容認し難いものであるといわざるを得ない。そして、被控訴人Aは、亡Bの相続人として、本件地役権設定契約上の設定者の地位を承継した者であり、しかも、その年齢からして、亡Bが右契約を締結した当時当然にそのことを知り、控訴人らが本件承役地につき本件地役権を有することを知りながら、c番kの土地の本件承役地部分に本件ブロック塀等の設置等に及んだものと推認されること、その他既に認定した事実関係を合わせ考えれば、被控訴人Aがc番kの土地の本件承役地部分につき本件地役権の時効消滅を主張することは、信義則に反し権利の濫用として許されないものと解するのが相当であり、この点の控訴人らの主張は、理由がある。 四よって、当裁判所の右判断と異なる原判決は不当であり、本件各控訴はいずれも理由があるから、原判決を取り消し、本件各請求をいずれも認容することとして、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第二〇民事部裁判長裁判官石井健吾 裁判官植垣勝裕裁判官櫻井登美雄は、転補のため、署名押印することができない。 裁判長裁判官石井健吾(別紙目録、図面省略) 押印することができない。 裁判長 裁判官石井健吾 (別紙目録、図面省略)

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る