平成15年(わ)第4号業務上過失致死被告事件平成15年4月7日宣告判決 主文 被告人を禁錮3年に処する。 未決勾留日数中60日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は平成14年12月24日午後4時10分ころ,業務として大型貨物自動車を運転し,長野市・・・・先の信号機により交通整理の行われている交差点を荒神町方面から岩野方面に向かい左折するに当たり,同交差点の左折方向出口には横断歩道が設けられていたのであるから,同横断歩道上の横断者の有無及びその安全を確認して左折進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,同横断歩道上の横断者の有無及びその安全確認不十分のまま漫然時速約10キロメートルで左折進行した過失により,折から青色信号に従って同横断歩道を左方から右方に向かい横断歩行中のA(当時7歳)に気付かず,自車左前部を同人に衝突させて同人を路上に転倒させた上,同人を自車左後輪で轢過し,よって,同人に脳挫傷の傷害を負わせ,同日午後4時30分ころ,同市・・・・所在のB病院において,同人を前記傷害により死亡するに至らせたものである。 (法令の適用)被告人の判示所為は刑法211条1項前段に該当するところ,所定刑中禁錮刑を選択し,その所定刑期の範囲内で被告人を禁錮3年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中60日をその刑に算入し,訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,被告人が,ダンプカーを運転して,交差点を左折する際,青色信号に従って横断歩道を横断歩行中の小学生に自車を衝突転倒させた上,同児童を轢過し,死亡させたという事案である。 自動車を運転する者にとって,横断歩道上の歩行者の安全に対する配慮は最も基本的 ,青色信号に従って横断歩道を横断歩行中の小学生に自車を衝突転倒させた上,同児童を轢過し,死亡させたという事案である。 自動車を運転する者にとって,横断歩道上の歩行者の安全に対する配慮は最も基本的な注意義務の一つである。しかるに,本件交差点は見通しを妨げるものもないのに,被告人は,横断歩道の手前で信号待ちをし,青色信号に従って横断した被害児童に気付かずに左折をしている。その上,被告人は,本件被害児童のみならず,一緒に信号待ちをし,被告人運転車両の直前を横断した同児童の友人の存在にも気が付いていなかったと供述しており,被告人が横断歩道上の歩行者の有無及びその安全を全く確認せずに左折をしたことが明らかであって,被告人の過失は重大である。 また,大型車は普通車に比べて死角が広く,運転者はその点に十分留意して安全運転を心掛けなければならないにもかかわらず,被告人は,エアコンを効き易くするため,或いは洗車用具を外から見えないようにするためとの身勝手な理由から,フロントガラス下部の内側及び助手席ドア下部のガラス窓の内側にそれぞれ金属製の板を取り付け,あえて進路前方や左方の死角を広げる工作を施した上で本件ダンプカーを運転していたのであって,このような運転手としての基本的注意義務を軽視した被告人の運転態度は,厳しくとがめられるべきである。さらに,被告人が,平成7年にも本件と同じダンプカーを運転中,自車左側を走行中の自転車に接触させて,自転車の運転者を死亡させたことを内容とする業務上過失致死罪により,罰金50万円に処せられた前科を有しているのに,視野を狭めた状態で大型車を運転していたことは,歩行者らの安全を無視した粗暴な運転態度と評価できるのであって,このような状態で大型車を運転するようなことがないようにするという一般予防的な見地からも,被告人を厳罰に処す 大型車を運転していたことは,歩行者らの安全を無視した粗暴な運転態度と評価できるのであって,このような状態で大型車を運転するようなことがないようにするという一般予防的な見地からも,被告人を厳罰に処することは避けられないものと思料する。 加えて,被告人が,本件大型車のタコメーター内の記録紙を1か月以上も取り替えずにいたこと,本件犯行時,相当高率の超過積載をしていたこと等の事情もあり,これらを総合すると,被告人の安全運転に対する認識の欠如は甚だしいといわざるを得ない。 一方,被害児童は対面の歩行者用信号機の青色信号に従って横断歩道を横断歩行していたものであり,同児童には何らの落ち度も認められない。そのような7歳の女の子の尊い命,夢と希望あふれる未来が一瞬にして奪われたという結果は誠に重大である。 同児童がダンプカーの後輪に轢過された後の状況は,凄惨極まりなく,母親や同居の祖父ら遺族の悲しみと怒り,喪失感は筆舌に尽くせるものではない。示談も未だ成立しない等遺族の処罰感情も強固である。 また,本件のような横断歩道上の児童の死亡事故は,当該地域の児童を持つ多くの親らの不安感を高めるものであることも軽視できない。 他方,被告人が反省の情を示していること,任意保険に加入していることから,被害補償が見込まれること等の事情もあるので,これらを総合考慮して,主文のとおり量刑する。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑禁錮3年6月)平成15年4月7日長野地方裁判所刑事部裁判官青木正良
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