主文 被告人を懲役3年に処する。 この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予し,その猶予の期間中被告人を保護観察に付する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,Xと共謀の上,深夜に声を掛けて誘ったV子(当時18歳)を酒に酔わせて姦淫しようと企て,平成14年4月20日午前2時前ころから数十分間にわたり,兵庫県A市b番地の1所在のC展望台において,こもごも,すでに酔い掛けている同女にさらに酒を飲ませて,同女を酩酊のため意識もうろう状態に陥らせた上,同日午前2時20分ころ,同所の石張り階段踊り場において,被告人が心神を喪失した状態にある同女を姦淫したものである。 (証拠の標目)省略(主位的訴因を認定せず予備的訴因を認定した理由) 1 本件の主位的訴因は,要旨,「被告人がXと共謀の上,被害者を強姦しようと企て,いきなり被告人が被害者を仰向けに押し倒して嫌がる同女のジーパンと下着を引きずり下ろし,Xが同女の両手首を押さえつけるなどの暴行を加え,同女の反抗を抑圧して,被告人が同女を強いて姦淫した」というもの(刑法177条)である。 これに対して,被告人は,捜査段階で,「被害者と酒を飲んでいる途中で同女が酔ってきてだらっとした感じになってきたことから,同女をもっと酔わせようとして同女に酒を勧めて飲ませていたところ,同女が酔いつぶれたことから,先に自分が姦淫することにし,石張り階段踊り場で被告人が同女を姦淫し,Xはその付近で様子を窺っていた。被害者はだらっと身体の力が抜けたような状態で抵抗しておらず,嫌がるような声も上げていなかった。その後Xが被害者を姦淫しようと,同女の陰部を触るなどしていた際,同女は突然意識が戻ったような状態になり,嫌がり始めた。 体の力が抜けたような状態で抵抗しておらず,嫌がるような声も上げていなかった。その後Xが被害者を姦淫しようと,同女の陰部を触るなどしていた際,同女は突然意識が戻ったような状態になり,嫌がり始めた。そこでXと交代し,Xが被害者の後ろに回って胸を揉んだりし,自分が姦淫しようとしたが,同女が泣き始めたことから姦淫するのをやめた」旨供述する。そして,以上の経過に関しては,被告人は,当公判廷でも基本的に同旨を述べ,また,共犯者であるXの捜査段階の供述とほぼ一致している(なお,被告人は,当公判廷において被害者が承諾していたとも供述するが,この点が信用できないことは後に触れる。)。 他方,被害者は,検察官に対して概ね主位的訴因に沿い,当初から暴行によって抗拒を著しく困難にさせられて姦淫された旨の事実を供述している。そこで,相矛盾する両供述のどちらを信用することができるかが問題となる。 2 被告人の上記の供述内容は,それ自体において特に不自然な点はなく,捜査段階から一貫しており,声を掛けてから飲酒して談笑するまでの被害者の態度,被告人が姦淫しているときの様子,ことに被害者の姿勢や姦淫の体位,被害者の覚醒時の様子,姦淫後の被告人ら及び被害者の行動など,細部にわたって相当に具体的かつ迫真的である。のみならず,これらの点は,被害者の供述と大きく食い違っている一方で,共犯者であるXの供述とは詳細なところまで相当に一致している。 検察官は,被告人とXの供述が一致するのは罪を免れるための口裏合わせによるものだと主張するが,そもそも罪を免れるためのものにしては,酔わせて姦淫しようと考えていた準強姦の犯意は認める供述をしている点など,中途半端な内容のものである上,接見等禁止下での弁護人も選任されていない状況であったにもかかわらず,両供述が口裏合わせし難いような周辺部 しようと考えていた準強姦の犯意は認める供述をしている点など,中途半端な内容のものである上,接見等禁止下での弁護人も選任されていない状況であったにもかかわらず,両供述が口裏合わせし難いような周辺部分まで一致していること,被告人が,逮捕から数日後にXと同旨の供述を始めるまでは,身に覚えがない,被害者の同意があったなどと弁解し,公判においても,酒を飲ませたのは仲良くなるためで,被害者の承諾の下で性交したと思っていたなどと供述していることなどからすると,両供述の一致が口裏合わせによるものとは考えにくい。また,検察官は,飲酒量や犯行時間に関する供述につき変遷や共犯者との不一致があるとして被告人の供述が信用できない旨を主張するが,検察官指摘の点を検討しても,被告人供述全体の信用性を失わせるような点は見受けられない。 これに対して,被害者の検面調書の内容は,被告人らと飲酒したことにも触れた上で,被害状況についてそれなりに迫真性のあるものとなっており,無理矢理姦淫されたこと及び犯人に「中出ししようぜ」と言われたことについては被害を受けた当日に作成された被害届の内容と一致していること,被害後にパニック状態であったとの関係者の供述とも符合することなどからすると,それ自体からは直ちに信用性を否定することはできないようにも思える。しかし,平成14年5月28日に作成された告訴調書には,被害者と被告人らとの供述の違いを引き起こす重要な経過である飲酒の事実が全く触れられておらず,かえって,車から降ろされた後,いきなり暴行を加えられて姦淫された旨の記載になっている。しかも,司法警察員作成の捜査復命書謄本(検察官請求番号15,16)によれば,被告人らの取調べ及び同行見分の結果から被告人らがビール等を購入した事実が裏付けられ,それらをもとに同年6月18日に被害 かも,司法警察員作成の捜査復命書謄本(検察官請求番号15,16)によれば,被告人らの取調べ及び同行見分の結果から被告人らがビール等を購入した事実が裏付けられ,それらをもとに同年6月18日に被害者から事情聴取したところ,被害者がようやく飲酒した事実を供述した経過が窺われる。このように,本件で大きな争点となっている飲酒状況に関して,被害者の供述に看過できない変遷があり,被害者は,当初,被告人らとともに飲酒したという重要な事実を秘匿した上で姦淫の経過を説明していた疑いが濃厚であって,そのような供述態度からは,その供述内容に,被告人らの供述を凌駕する信用性を認めることはできない(なお,検察官においては,裁判所が被害者の警察官調書を証拠請求するか否かの検討を促し,また,被害者の告訴調書を刑事訴訟法328条により採用する意向を明らかにするなどして被害者供述の変遷状況に強い関心を抱いていることを明らかにしたにもかかわらず,被害者の供述変遷に関する上記疑問を解消する立証を何ら行おうとしなかった。ちなみに,検察官は,告訴調書の内容について,被害直後の混乱した心理状態の下で録取されたものである上,本質的かつ重要部分のみを記載する告訴調書としての性格上,飲酒の事実に触れていないにすぎないというが,この告訴調書は,被害直後ではなく,事件後1か月余り経過した後に,かつ,それまでに何度か警察で取調べを受けて供述を録取されてきた上で作成された点で,その主張は誤っており,供述態度の問題ではなく調書作成技術上の問題であるかのように主張する点も,前記捜査復命書の記載に照らし,到底首肯し難い。)。 こうした事情に照らし検討すると,被害者供述に十分な信用性を認めることはできず,むしろ,被告人らの前記供述を信用すべきものということができる。 3 そうすると,被害者の供述 ,到底首肯し難い。)。 こうした事情に照らし検討すると,被害者供述に十分な信用性を認めることはできず,むしろ,被告人らの前記供述を信用すべきものということができる。 3 そうすると,被害者の供述を前提としている主位的訴因にかかる事実を認定することはできない。 そこで,信用できる被告人の供述及びこれに一致するXの供述をもとに,予備的訴因にかかる準強姦の成否について検討するに,被告人は,Xと示し合わせて,被害者にことさらに酒を飲ませて泥酔させ,意識のはっきりせず,正常な判断能力を有しない同女を姦淫しているのであるから,被害者の心神を喪失させて姦淫したこと,すなわち準強姦の事実を認めるに十分である。 この点,被告人は,当公判廷において,被害者に「やってもいい」と聞いたところ同女が「ウーン」と答えたり,「ほんまにつきあってくれるん」などと言ったため,同女が承諾していると思った旨供述する。しかしながら,被告人は,被害者が泥酔して意識のはっきりしていないことを認識していたのであるから,仮に同女に上記に類した言動があったとしても,そのような態度が真意による承諾といえるものではないことは容易に判断できるはずであり,「承諾していると思った」旨の被告人の供述は到底信用できない。 また,弁護人は,被告人らが被害者に飲ませた酒量が少ない点を挙げ,同女を心身喪失ないし抗拒不能にいたらせる目的,意図のあったことを疑問視する。しかしながら,このような弁護人の主張にもかかわらず,被告人らは,被害者が余り酒に強くないことを知った上で,もう飲めないと断る同女に執拗に酒を勧め飲ませていることや「もうそろそろか」と聞いてくるXに対して「まだやな。もうちょっと待とう」などと告げ,同女が完全に酔いつぶれるのを待っていたのであるから,飲ませた酒量はともかくとして,被害 を勧め飲ませていることや「もうそろそろか」と聞いてくるXに対して「まだやな。もうちょっと待とう」などと告げ,同女が完全に酔いつぶれるのを待っていたのであるから,飲ませた酒量はともかくとして,被害者の正常な判断能力を失わせて姦淫する目的で酒を飲ませていたこと自体は明らかであり,準強姦罪の故意についても疑問を入れる余地はない。 したがって,被告人には準強姦罪が成立し,判示のとおり予備的訴因を認定したものである。 (法令の適用)・罰条刑法60条,178条,177条前段・執行猶予刑法25条1項・保護観察刑法25条の2第1項前段・訴訟費用不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)本件は,被告人が,共犯者であるXとともにいわゆる「ナンパ」をしていた際,帰宅途中の被害者を見付けて声を掛け,たわいのない話をするなどして同女の警戒心を解いて犯行現場付近まで同行させ,前記のとおりXと意を通じて同女に執拗に酒を勧めて泥酔させ,意識のはっきりしない同女を被告人が姦淫したというものであり,もっぱら自らの性欲を満たす目的だけのまことに卑劣で悪質な犯行というほかない。しかも,被告人は,Xに先立って姦淫しようとして目的を遂げているので,その目的を遂げなかったXに比べても,その犯情は悪い。 被害者は,誰にも助けを呼べない人気のない場所で意識がないところを姦淫され,自らが姦淫されたことに気付いた後,泣きながら交際相手方に電話を架けるなどしているのであって,その精神的ショックは察するに余りあり,被告人に対して抱いている処罰感情も大きい。 しかしながら,被告人とXでそれぞれ被害者に各100万円を支払って示談していること,被害者にも,強く誘われ勧められたとはいえ,ドライブに応じた上,一緒に酒を飲むなどした点で隙があったとい 大きい。 しかしながら,被告人とXでそれぞれ被害者に各100万円を支払って示談していること,被害者にも,強く誘われ勧められたとはいえ,ドライブに応じた上,一緒に酒を飲むなどした点で隙があったといえること,被告人は20歳と若年であって前科がないこと,母親が当公判廷に出廷し,今後の監督を誓っていることなど,被告人のために酌むべき事情も相当程度存在するので,今回に限って,主文の刑を量定し,刑の執行を猶予して,保護司の指導のもと社会内での更生の機会を与えるのが相当であると判断した。 (検察官萩原良典,国選弁護人岩﨑豊慶各出席)(求刑懲役3年)平成14年12月11日神戸地方裁判所姫路支部刑事部 裁判長裁判官伊東武是 裁判官小倉哲浩 裁判官平城文啓
▼ クリックして全文を表示