- 1 -平成26年7月3日判決言渡平成26年(行コ)第80号不許可処分取消請求控訴事件 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 東京都知事が控訴人に対し平成24年5月24日付けでした賃貸人控訴人,賃借人参加人間の原判決別紙1物件目録記載の土地の賃貸借契約の解約の申入れについてした不許可処分を取り消す。 3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要(略称は原判決のものを用いる。) 1 控訴人は,市街化区域内の農地である原判決別紙1物件目録記載の土地(本件土地)を所有する宗教法人である。控訴人は,昭和10年頃,参加人の父に対し本件土地を賃貸し,同人の死亡により参加人の母が相続により本件土地の賃借権を取得した後,昭和56年,同女の死亡により参加人が相続により本件土地の賃借権を取得した。控訴人は,平成24年2月23日付けで,東京都知事に対し,農地法(法)18条2項1号(賃借人が信義に反した行為をした場合)又は5号(その他正当の事由がある場合)の事由があるとして,同条1項に基づき本件賃貸借契約の解約の申入れの許可を申請したが,東京都知事は,同年5月24日付けで不許可処分(本件処分)をした。 本件は,控訴人が,本件処分について,控訴人の申請につき同条2項1号又は5号により解約の申入れを許可すべき事由があるのに,その解釈,適用を誤った違法がある旨を主張して,その取消しを求める事案である。 原審が控訴人の請求を棄却したところ,控訴人が控訴した。 - 2 - 2 本件における関係法令等の定め,前提となる事実,争点等及び当事者の主張の要旨は,原判決の「事実及び理由」欄の第2の1ないし3(原判決2頁11行 を棄却したところ,控訴人が控訴した。 - 2 - 2 本件における関係法令等の定め,前提となる事実,争点等及び当事者の主張の要旨は,原判決の「事実及び理由」欄の第2の1ないし3(原判決2頁11行目から同23頁24行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の本件請求は理由がないと判断する。その理由は,後記2に当裁判所の判断を補足するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の第3の1ないし3(原判決23頁末行目から同32頁8行目まで)に認定,説示するとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決29頁9行目の「否か」の次に「,当該農地を農地以外のものにすることを相当とするような特段の事情があるか否か」を加え,同30頁16行目の「有していない状況」を「有していないなど前記認定の諸事情」に改め,同31頁末行目から同32頁初行目にかけての「場合には,」の次に「当該農地を農地以外のものにすることを相当とするような特段の事情がない限り,」を,同4行目の「場合に,」の次に「上記特段の事情がないのに,」をそれぞれ加える。 2 当裁判所の判断の補足(1) 控訴人は,当審においても,本件土地について,平成4年度以降,市街化区域内の農地に対する宅地並み課税の実施により固定資産税が借賃を上回る逆ざやの状態が続く一方,参加人は土地の一部を家庭菜園として利用するのみであり,控訴人が本件土地の返還を受ければ,農地以外の用途に広く効率的な利用が可能であるのに,法18条2項5号による解約の申入れを認めないことは,市街化区域内の農地に対する宅地並み課税の制度や最高裁判所平成13年3月28日大法廷判決・民集55巻2号611頁(以下「平成13年判決」という。)にも反することなどを重ねて主張するとともに,当審において 区域内の農地に対する宅地並み課税の制度や最高裁判所平成13年3月28日大法廷判決・民集55巻2号611頁(以下「平成13年判決」という。)にも反することなどを重ねて主張するとともに,当審において,参加人には農業の後継者がなく,控訴人は農業と無縁で生産緑地地区の指定を申請し得る状況にないこと,本件土地の利用方法として,隣接する控訴人所有の墓地の利用に伴う檀家の休憩施設等とする考えがあり,- 3 -離作料の額を500万円から1000万円に増額する意思があることなどを主張し,本件土地の賃貸借契約の解約の申入れにつき法18条2項5号所定の「その他正当の事由」がある旨を主張する。 (2) そこで,検討するに,法18条2項5号所定の「正当の事由」が認められるか否かについては,法の規定及びその趣旨を踏まえつつ,個別具体的な事案毎に様々な状況を勘案し,総合的に判断することを要するところ,原判決が説示するように,法1条が法の目的の一つとして耕作者の地位の安定をうたい,その手段として農地を農地以外のものにすることを規制することを挙げ,法2条の2が農地について権利を有する者に対し,当該農地の農業上の適正かつ効率的な利用を確保する責務を課していることに加え,法18条2項が,農地の賃貸借契約の解約の申入れ等を許可することができる場合を1号(賃借人が信義に反した行為をした場合),2号(農地等を転用することを相当とする場合),3号(賃貸人による耕作等を相当とする場合),4号(賃借人が農業生産法人でなくなったなどの場合)及び5号(その他正当の事由がある場合)に限定して列挙し,農地の転用や賃貸人による耕作を相当とする場合について,特に同項2号,3号の規定を設けていることに鑑みると,同項5号所定の「その他正当の事由」があるというためには,賃借人を離農させて賃貸借 列挙し,農地の転用や賃貸人による耕作を相当とする場合について,特に同項2号,3号の規定を設けていることに鑑みると,同項5号所定の「その他正当の事由」があるというためには,賃借人を離農させて賃貸借契約を終了させることが当該農地の効率的かつ適正な利用につながると客観的に認められることを要すると解するのが相当であり,その判断に当たっては,賃借人による農地利用の状況,賃借人の農地利用の意思及び能力や,賃貸人による土地利用の必要性及び用途等からみて,当該農地を農地以外のものにすることを相当とする特段の事情がない限り,当該農地の農業上の適正かつ効率的な利用につながるかという見地から判断するのが相当である。 控訴人が援用する平成13年判決も,賃貸人の逆ざやによる負担自体が直ちに法18条2項5号所定の「その他正当の事由」に当たるとしたわけでは- 4 -なく,農地の賃貸人にとっての逆ざやの解消の必要性は,個別の事案における総合判断の中で,当該農地について,賃貸人自身による耕作の必要性や転用の相当性等を基礎付ける一つの事情として考慮されるにとどまると解されるから,上記解釈を妨げるものとはいえない。 上記解釈に照らして検討するに,原判決が認定,説示するとおり,本件処分当時,本件土地のうち,参加人による耕作の範囲は全体の25%弱程度で,耕作の目的も自家消費にとどまるものの,耕作面積は一定規模に及んでおり,本件土地において,昭和10年頃から参加人の父が賃借権を取得して耕作を開始し,参加人も,父ないし母から相続により賃借権を取得してから30年以上にわたって耕作してきたもので,本件処分時においても,耕作継続の意思を有し,耕作の能力に欠けることをうかがわせる証拠はなく,証拠(甲14,乙7)から認められる本件土地の耕作,管理の状況等も総合すると,上記耕作範囲 てきたもので,本件処分時においても,耕作継続の意思を有し,耕作の能力に欠けることをうかがわせる証拠はなく,証拠(甲14,乙7)から認められる本件土地の耕作,管理の状況等も総合すると,上記耕作範囲については,農地として適正かつ効率的に利用されていたということができる。そして,その余の土地部分についても,本件処分当時,十分な手入れが施されていない状態であったものの,本件全証拠によっても,参加人が農地としての利用を放棄して荒れるに任せていたとまでは認め難く,上記賃貸借契約の対象である本件土地について,本件処分当時,参加人が,農地としての適正かつ効率的な利用をなお継続していたということができる。 他方,控訴人は,本件処分当時,本件土地について,農地として利用する意思はなく,農地以外の用途についても定まった利用計画を有しておらず,本件処分後に隣接する控訴人所有の墓地の利用に伴う檀家の休憩施設を建築する考えを示しているにとどまる。 控訴人にとっての逆ざや解消の必要性についてみても,それ自体が直ちに法18条2項5号所定の「その他正当の事由」に当たるわけではないことは,先に説示したとおりである上,原判決が「事実及び理由」欄の第3の3の(2)- 5 -アにおいて説示するとおり,控訴人は,平成4年以降,本件土地につき,賃借人である参加人の同意を得て,都市計画の定めにおいて生産緑地法3条所定の生産緑地地区の指定を受けることにより,宅地並み課税を免れる途があったのに,これを選択せずに現在に至ったものであるから,本件において,逆ざやの解消の必要性を上記「その他正当の事由」を基礎付ける事情として重視することはできない。 この点につき,控訴人は,当審でるる主張するけれども,控訴人の当審における主張を踏まえても,これによって上記判断を左右するには至らない。 正当の事由」を基礎付ける事情として重視することはできない。 この点につき,控訴人は,当審でるる主張するけれども,控訴人の当審における主張を踏まえても,これによって上記判断を左右するには至らない。 以上の諸事情によれば,控訴人の主張する離作料を考慮しても,本件処分当時,本件土地の賃貸借契約の解約を認めることが本件土地の農業上の適正かつ効率的な利用につながるということはできず,本件土地を農地以外のものとすることを相当とする特段の事情があるということもできない。 したがって,本件土地の解約の申入れについて,法18条2項5号所定の「その他正当の事由」があったとは認めることができない。 3 以上によれば,控訴人の本件請求は理由がないから,本件控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第9民事部 裁判長裁判官下田文男 裁判官橋本英史 裁判官関口剛弘
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