- 1 -令和3年10月13日判決言渡令和3年(ネ)第10029号 特許権侵害差止等請求控訴事件(原審 大阪地方裁判所平成29年(ワ)第10716号)口頭弁論終結日 令和3年7月26日判決 控訴人 井上商事株式会社 同訴訟代理人弁護士 笠井計志同訴訟代理人弁理士 稗苗秀三同補佐人弁理士 藤原清隆 被控訴人 株式会社サンレール 同訴訟代理人弁護士 藤川義人同 雨宮沙耶花同 野中啓孝主文1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由第1 請求1 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。 2 上記取消部分に係る被控訴人の請求をいずれも棄却する。 第2 事案の概要(略語は原判決に従う。)1 本件は,発明の名称を「手摺の取付装置と取付方法」とする本件特許に係る - 2 -本件特許権を有する被控訴人が,控訴人の製造,販売する原判決別紙物件目録記載の製品(被告製品)に係る原判決別紙方法目録記載の方法(被告方法)は本件発明の技術的範囲に属するから,控訴人による被告方法の使用は本件特許権の直接侵害に該当し,また,控訴人による被告製品の製造,販売及び販売の申出は本件特許権の間接侵害(特許法101条4号,5号)に該当するとして,控訴人に対し,本件特許権に基づき被告製品の製造,譲渡,譲渡の申出及び被告方法の使用の差止(同法100条1項)並びに被告製品の廃棄(同条2項 権の間接侵害(特許法101条4号,5号)に該当するとして,控訴人に対し,本件特許権に基づき被告製品の製造,譲渡,譲渡の申出及び被告方法の使用の差止(同法100条1項)並びに被告製品の廃棄(同条2項)を求めると共に,本件特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償として7341万3015円及びうち1273万7186円に対する訴状送達の日の翌日(平成29年11月16日)から,うち1772万9552円に対する平成30年5月23日から,うち2775万9663円に対する同年12月27日から,うち1518万6614円に対する令和元年6月5日から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原判決は,被控訴人の差止請求及び廃棄請求を全部認容し,損害賠償請求を一部認容した。控訴人は,敗訴部分を不服として控訴した。 2 前提事実及び争点原判決「事実及び理由」「第2 事案の概要」の2及び3(3頁12行目から6頁6行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 3 当事者の主張控訴人及び被控訴人の主張は,控訴人の当審における主張を後記「第3 控訴人の当審における主張」のとおり補充するほか,原判決「事実及び理由」「第3 当事者の主張」(6頁7行目から34頁5行目まで)に記載のとおりであるからこれを引用する。 第3 控訴人の当審における主張1 本件発明の技術的範囲への属否(争点1)について⑴ 発明の目的について - 3 -本件明細書に本件発明の効果として記載されている唯一の点は,ガラス板を取り付けるための足場を不要にできる点であり(段落【0011】及び【0014】),足場を不要にすることが本件発明の目的であるといえる。これに対して,被告方法は,足場のある状態で手すりを取り付けるものであるから,少なく を不要にできる点であり(段落【0011】及び【0014】),足場を不要にすることが本件発明の目的であるといえる。これに対して,被告方法は,足場のある状態で手すりを取り付けるものであるから,少なくとも,本件発明をその目的を達成する態様で使用するものではなく,本件発明の実施には該当しない。 ⑵「係止」について本件発明の構成要件Iにいう「係止」は,係止爪15と被係止爪16を用いて支柱1と目地枠13を嵌め合わせる取付け方法であり,これは,従来から公知の取付け方法であった(乙58,59)。これに対し,被告製品においては,縦枠の固定は,押縁と止めゴムを用いる方法によっており,これは,縦枠を支柱に固定する取付け方法として控訴人が新たに確立した方法であって,「係止」とは全く異なる固定方法であり,単なる付加的な手段ではない。 被告製品においては,押縁と止めゴムを用いることによって,縦枠が手すり本体の長手方向にずれること及び係止爪から外れることを防止しており,これは,公知の取付け方法(乙58,59)において,シーリング(コーキング)の接着によって,縦枠が係止爪から外れることを防止しているのに代わる方法である。 以上のとおり,目地枠(縦枠)を支柱の屋外側から差し込み,スライドさせて係止する方法は,横スライドだけで係止する取付けとは明らかに異なる取付け方法である。 ⑶「係合保持」についてア 本件発明の構成要件I・Jにいう「係合保持」は,目地枠13とガラス板12(その側縁部12c・12d)とが当接(「係合」)することによって相互に「保持」される状態となり,長手方向の位置関係が規制されることを意味すると解釈されるべきである。その理由は次のとおりである。 - 4 -① 原判決は,被控訴人の主張を採用し,「係合保持」によってガラス板 となり,長手方向の位置関係が規制されることを意味すると解釈されるべきである。その理由は次のとおりである。 - 4 -① 原判決は,被控訴人の主張を採用し,「係合保持」によってガラス板12の板面と直交する方向の位置関係が規制されると解釈した。しかし,本件明細書によれば,ガラス板12の板面と直交する方向の移動を規制するためには,目地枠13が目地見付片31及び基部片29を有することが必須であるにもかかわらず,目地見付片31及び基部片29は特許請求の範囲に記載されていないから,特許請求の範囲にいう「係合保持」は,ガラス板面と直交する方向ではなく長手方向の位置の規制を意味すると解釈されるべきである。 ② 特許請求の範囲には,構成要件Iでは「目地枠13を……ガラス板12の側縁部12dに係合保持させ」,構成要件Jでは「ガラス板12の側縁部12cを……目地枠13に係合保持させ」,とそれぞれ記載されており(下線部付加),構成要件Iの記載に照らせば,目地枠だけでなくガラス板も「係合保持」の主体である。 ③ 本件明細書の段落【0027】及び【0034】の記載によれば,ガラス板12(その側縁部12d)と目地枠13とは「当接」している。 ④ 本件明細書の【図16】⒝によれば,ガラス板12(その左側の側縁部12d)と目地枠13とは「当接」している。また,支柱1の係止爪15と目地枠13の被係止爪16との関係は,係止爪15に被係止爪16が差し込まれているだけであり,目地枠13が長手方向に固定されていないのであるから,目地枠はガラス板で挟まれて長手方向に固定されている。 ⑤ 控訴人主張の解釈は,従来技術との対比からも整合的である。 すなわち,本件特許の出願経過において,手すりの取付装置の発明についての当初出願は拒絶されており,固定された左右の枠の されている。 ⑤ 控訴人主張の解釈は,従来技術との対比からも整合的である。 すなわち,本件特許の出願経過において,手すりの取付装置の発明についての当初出願は拒絶されており,固定された左右の枠の中にガラス板を位置させて,長手方向の移動を規制する方法は広く一般的に知られていた。 従来の取付方法は,固定された左右の縦枠と上下枠の四辺の枠によ - 5 -ってその中に位置させるガラス板について,長手方向及び前後方向への規制が完了する方法であった。 これに対し,本件発明は,縦枠(目地枠13)を固定せず(長手方向に移動自在)にガラス板と当接させて係合保持させ,さらに次のガラス板12,縦枠(目地枠13)を交互に連続して取り付け,全体として「長手方向略全域に複数のガラス板12が連続して手摺本体3とアルミ製目地枠13に囲繞されるようにして取り付けられる」方法である【請求項1】。 つまり,本件発明は,ガラス板12と縦枠(目地枠13)を接触させて交互に連続して取り付け,全体として囲繞させることによって,長手方向の規制が完成する方法であり,この点で進歩性を肯定されたにすぎない。 したがって,本件特許の出願経過からみても,「係合保持」とは,ガラス板と目地枠とを接触させる意味を有する。 イ これに対し,被告方法は,上下の枠と,押縁と止めゴムで固定した左右の縦枠によって,その中に位置するガラス板の長手方向及びガラス板面と直交する方向への移動を規制する方法であり,上下左右のアルミ枠で規制する従来の取付方法に近似する。 このように,被告方法は,縦枠をガラス板に当接(接触)させることによって長手方向の位置関係を規制するものではないから,本件発明の「係合保持」に該当しない。 ウ なお,被控訴人は,原審係属中の平成30年12月26日に,本 ,縦枠をガラス板に当接(接触)させることによって長手方向の位置関係を規制するものではないから,本件発明の「係合保持」に該当しない。 ウ なお,被控訴人は,原審係属中の平成30年12月26日に,本件特許に係る発明と関連する発明について新たな特許出願(特願2018-242557号,特開2020-105717号(乙57))を行った(以下「追加出願」という。)。追加出願において,被控訴人は,本件発明の構成要件Iに相当する箇所(乙57の2頁43~44行目)においては「目地 - 6 -枠13に……ガラス板12の側縁部12dを係合保持させ」と文言を修正し,本件明細書の段落【0027】に相当する箇所(同9頁32~33行目)においては「目地枠13を……ガラス板12の側縁部12dの端縁12eに連結片30が近接するまで摺動させる」と文言を修正した(下線部付加)。 したがって,少なくとも本件で対象とされている被告製品の販売(平成29年1月13日から令和元年6月5日まで)に関して,本件特許には抵触しない。 2 被控訴人の損害額(争点4)について本件発明の唯一の効果は施工に際して足場が不要になることであるところ,足場が不要となる手すり製品及び取付け方法は本件発明及び被告方法の外にも多数の同業他社によって提供されている上(乙60の各枝番),被告方法が実際に用いられているのは足場を設置する現場であること等の事情も考慮すれば,特許法102条2項の推定は99.5%の割合で覆滅されるべきである。本件と類似の事案についての知財高裁令和2年6月18日判決(令和元年(ネ)第10067号)が損害額の推定覆滅割合を7割と判断したことの対比からも,本件ではこのように高い割合の推定覆滅が認められるべきである。 第4 当裁判所の判断1 当裁判所は,争点1ないし 年(ネ)第10067号)が損害額の推定覆滅割合を7割と判断したことの対比からも,本件ではこのように高い割合の推定覆滅が認められるべきである。 第4 当裁判所の判断1 当裁判所は,争点1ないし4に関する原判決の結論は相当であると判断する。 その理由は,控訴人の当審における主張に対する判断を次項以下のとおり付加するほか,原判決の「第4 当裁判所の判断」記載のとおりであるから,これを引用する。 2 発明の目的に関する主張(前記第3の1⑴)について控訴人は,足場を不要にできることが本件発明の唯一の目的であるのに対し,被告方法では足場を使用していることを,構成要件非充足の理由として主張する。 しかしながら,まず,原判決を引用して説示したとおり,本件発明の目的と - 7 -しては,手すり本体の取付け後の効果ではあるものの,①外観上の体裁の良さ及び室内側への風雨の侵入防止,②取付け強度の高さ及び風圧に対する耐久性の良さ,を奏するという点も挙げられるから(原判決58頁12行目から14行目まで),足場を不要にできることが本件発明の唯一の目的であるとはいえず,控訴人の上記主張はその前提において相当でない。 また,そもそも,被告方法が実施される現場において足場を使用するか否かは,手すり取付け工事以外の工程などを含めた当該現場の状況によって定まると考えられるのであり,控訴人が証拠として工程表(乙50~54)を提出した現場においては足場が使用されたとしても,被告方法による手すりの施工だけを行うのであれば足場が不要である以上(乙2の1),被告方法は本件発明と同様の効果を奏し本件発明の目的を達し得る方法であるといえる。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 3 「係止」の意義に関する主張(前記第3の1⑵)について 法は本件発明と同様の効果を奏し本件発明の目的を達し得る方法であるといえる。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 3 「係止」の意義に関する主張(前記第3の1⑵)について控訴人は,被告製品では縦枠の固定は押縁と止めゴムを用いる方法によっており,「係止」とは全く異なる固定方法である旨主張する。 しかしながら,被告方法においても,押縁と止めゴムを用いた固定の前工程として,支柱突起部(本件発明の「係止爪15」に相当)に縦枠突起部(本件発明の「被係止爪16」に相当)が「係り」「止め」られており,このこと自体は控訴人も争っていない。本件発明は手すりの施工方法の発明であるから,その方法(工程)の中の一時点において爪と爪とが「係り」「止め」られた状態になれば,「係止」の要件は充足されるというべきであり,被告方法における押縁と止めゴムを用いた固定は,追加出願におけるビス止めによる固定や,その他の手段(コーキングや接着剤による固定)と同様の,付加的な手段にとどまるのであって,被告方法において,最終的に完成した状態における部材間の固定には他の手段が付加的に用いられるとしても,「係止」がなされていることには変わりがないというべきである。 - 8 -したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 4 「係合保持」の意義に関する主張(前記第3の1⑶)について⑴ 控訴人は,本件発明の「係合保持」は目地枠とガラス板側縁部とが当接することにより長手方向の移動が規制されることを意味するのに対し,被告方法においては長手方向の移動の規制は押縁及び止めゴムによっているから,被告方法においては縦枠とガラスとは「係合保持」の関係にない旨主張する。 しかしながら,本件明細書には,本件発明の目地枠13は基部片29と目地見付 の移動の規制は押縁及び止めゴムによっているから,被告方法においては縦枠とガラスとは「係合保持」の関係にない旨主張する。 しかしながら,本件明細書には,本件発明の目地枠13は基部片29と目地見付片31とが連結片30を介して一体形成された断面I字状の構成であり(段落【0027】及び【図16】),本件発明の方法による施工がなされるとガラス板12は基部片29と目地見付片31との間で挟持されて「係合保持」される(段落【0028】)との記載があり,当該記載からは「係合保持」によってガラス板面と直行する方向の移動が規制されることを読み取れるのに対し,本件明細書を精査しても,「係合保持」と長手方向の移動の規制とを関連付ける記載は見当たらない。 特許請求の範囲に記載された用語は,明細書及び図面を参酌して解釈されるべきであることに照らし,控訴人の主張は採用することができない。 ⑵ 控訴人は,「係合保持」の意義を控訴人主張のとおり解釈すべきことの根拠を,上記第3の1⑶ア記載の①ないし⑤のとおり主張するが,次のとおり,いずれも,控訴人の主張を十分に根拠付けるものではない。 ア 上記①について目地見付片31及び基部片29が特許請求の範囲に記載されていないとしても,技術的範囲の解釈は明細書及び図面の記載も参酌してなされるものであるから,これらを参酌して目地枠13の構成を上記⑴のとおり認定することは何ら妨げられない。 イ 上記②についてこの点に関する控訴人の主張の趣旨は必ずしも明らかではないが,これ - 9 -を善解するに,控訴人は,ガラス板が目地枠の前後方向の移動を規制することはあり得ないから,構成要件Iの「目地枠13を……ガラス板12の側縁部12dに係合保持させ」との記載からしても,「係合保持」は長手方向の移動の規制を意味する旨 が目地枠の前後方向の移動を規制することはあり得ないから,構成要件Iの「目地枠13を……ガラス板12の側縁部12dに係合保持させ」との記載からしても,「係合保持」は長手方向の移動の規制を意味する旨主張するものと解される。 しかしながら,構成要件Iの上記記載は,ガラス板12が係合保持の主体であるかのように読める文言ではあるものの,目地枠13の長手方向の移動を規制するためには,目地枠13を2枚のガラス板12が左右から挟み込むことが必須であることからすれば,「最初のガラス板12」1枚のみが嵌め込まれた構成要件Iの段階において,ガラス板12と目地枠13との「係合保持」によって長手方向の移動が規制されるということはあり得ない。そうすると,構成要件Iの上記記載は,目地枠13の中(より正確にはその目地見付片31と基部片29との間)にガラス板が収まることによって前後方向の移動が規制されるような位置関係に置かれることを意味すると解釈する方が,はるかに自然である。 ウ 上記③について手すり取付けの途中段階においてはガラス板12及び目地枠13のいずれも左右方向に摺動自在であることや,ガラス工事においてはエッジクリアランスを設けるとの技術常識(原判決42頁2行目)が存在することを考慮すれば,本件明細書においてガラス板12と目地枠13が「当接」するとの記載は,施工中の1時点における状態であると理解するのが自然である。なぜなら,すべての部材の取付けが終わって手すりが完成した状態において,個々のガラス板12と目地枠13との間が全く隙間なく「当接」していることを示す記載は本件明細書には見当たらず,上記の技術常識にも反するからである。 エ 上記④について本件明細書の【図16】⒝を,施工中の1時点における状態であると理解 - 10 -すべき 示す記載は本件明細書には見当たらず,上記の技術常識にも反するからである。 エ 上記④について本件明細書の【図16】⒝を,施工中の1時点における状態であると理解 - 10 -すべきことは,上記③についてと同様である。 また,支柱1の係止爪15と目地枠13の被係止爪16との関係が,係止爪15に被係止爪16が差し込まれているだけであるとしても,最終的に完成した手すりにおいて,長手方向の部材の移動が安全上・実用上十分な程度に(例えばガラス板12が目地枠13から外れない程度に,又は,目地枠13が支柱1から外れない程度に)規制されているか否かは,さまざまな要素(例えば,係止爪15及び被係止爪16の長さ及び相互間の摩擦力,エッジクリアランスの幅,目地見付片31の長さ,その他の固定部材(ビス,コーキング等)の有無及び数量等)によって定まると考えられるから,ガラス板12と目地枠13が隙間なく「当接」していなければならないものではない。 オ 上記⑤について本件特許の出願経過において,拒絶理由通知(乙15)を受けて被控訴人が行った補正は,当初出願(乙14)の旧請求項1を削除し,旧請求項2以下を補正後の現請求項1以下に順次繰り上げるものであった(乙18)。そして,拒絶理由通知においては,取付け工事完成後の手摺装置(旧請求項1)の発明は引用例(乙16,17)との関係で特許法29条又は29条の2に該当するとされていたが,取付方法の発明としての旧請求項2以下には拒絶理由を見出さないとされていたから,このような補正をすること自体は特許出願人の行動としてごく自然なものである。 そして,取付方法についての旧請求項2(本件特許の請求項1)は,旧請求項1と異なり,ガラス板12を倹鈍式で嵌め込むこと,ガラス板12及び目地枠13は上枠5と下枠7と としてごく自然なものである。 そして,取付方法についての旧請求項2(本件特許の請求項1)は,旧請求項1と異なり,ガラス板12を倹鈍式で嵌め込むこと,ガラス板12及び目地枠13は上枠5と下枠7との間を摺動させて取り付けること,係止爪15を被係止爪16に「係止」させること,等の発明特定要素を含むものであるから,これらの発明特定要素のそれぞれが新規性又は進歩性を基礎付け得るものであり,控訴人の主張のように,上記の出願経過から,本件発明は「長手方向略全域に複数のガラス板12が連続して手摺本体3とアルミ製目 - 11 -地枠13に囲繞される」ことのみをもって進歩性が肯定されたというものでないことは出願経過から明らかである。 ⑶ 被告方法に関する主張(前記第3の1⑶イ)についてこの点に関し,控訴人は,被告方法は縦枠をガラス板に当接(接触)させることによって長手方向の位置関係を規制するものではないから本件発明の「係合保持」に該当しない旨主張するが,上記⑵ウ説示のとおり,そもそも「当接」に関する控訴人の主張は誤りであるから,被告方法が「係合保持」に該当することは明らかである。 ⑷ 追加出願に関する主張(前記第3の1⑶ウ)についてこの点に関する控訴人の主張の趣旨も必ずしも明らかではないが,これを善解するに,控訴人は,追加出願において被控訴人が本件発明の文言を修正したことをもって,本件発明の「係合保持」は控訴人主張のとおり解釈されるべきことを自認したと主張するものと解される。 しかしながら,本件発明の「係合保持」はガラス面と直行する方向の移動の規制という趣旨に解釈されるべきことは前記⑴及び⑵のとおりであり,被控訴人が追加出願において文言を修正したことは,その趣旨を明確化するために行ったものと理解される。 したがって,控訴 向の移動の規制という趣旨に解釈されるべきことは前記⑴及び⑵のとおりであり,被控訴人が追加出願において文言を修正したことは,その趣旨を明確化するために行ったものと理解される。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 5 被控訴人の損害額(争点4)に関する主張(前記第3の2)について足場が不要になることが本件発明の唯一の効果であるとはいえないことは,上記2のとおりである。また,同業他社の製品(乙60の各枝番)の施工方法は,証拠上は必ずしも明らかではなく,本件発明及び被告方法のように,倹鈍式によるガラス板の嵌め込み,ガラス板及び目地枠を摺動させることによる取付け,係止爪と被係止爪との係止,といった工程を可能にするものか否かは定かでない。また,控訴人が引用する裁判例は,本件とは事案を異にし,本件における損害額の算定において参考となるものではない。 - 12 -そうすると,控訴人の当審における上記主張は,原判決を引用して説示したとおり推定覆滅率2割を相当とするとの判断を左右するものではなく,採用することができない。 6 結論以上のとおり,原判決の判断は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官東 海 林 保 裁判官上 田 卓 哉 裁判官都 野 道 紀 都 野 道 紀
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