令和4年7月22日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成31年(ワ)第100号損害賠償請求事件口頭弁論の終結の日令和4年2月25日判決 主文 1 被告は、次の各原告に対し、次の金員及びこれに対する平成27年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (1) 原告X7(原告番号4-1)につき238万5172円(2) 原告X8(原告番号4-2)につき95万9457円(3) 原告X11(原告番号6)につき1234万2897円 (4) 原告X18(原告番号11-1)につき201万6617円(5) 原告X19(原告番号11-2)につき165万5500円(6) 原告X20(原告番号13)につき77万円(7) 原告X26(原告番号18)につき185万5383円(8) 原告X28(原告番号20-1)につき1638万7371円 (9) 原告X29(原告番号20-2)につき90万7500円 2 前項の各原告のその余の請求及びその余の原告らの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、別紙訴訟費用負担一覧表記載のとおり(各原告に生じた費用のうち同表中「各原告に生じた費用」「各原告の負担」欄記載の割合の費用及び被告に生じた費用のうち同表中「被告に生じた費用」「各原告の負担」欄記載の割合の費 用は同表記載の各原告の負担、各原告らに生じた費用のうち同表中「各原告に生じた費用」「被告の負担」欄記載の割合の費用及び被告に生じたその余の費用は被告の負担。)とする。 4 この判決は、1項に限り、本判決が被告に送達された日から14日を経過したときは、仮に執行することができる。ただし、被告が別紙担保一覧表記載の各原 告に対し同表中「担保金額(円)」欄記載の各 4 この判決は、1項に限り、本判決が被告に送達された日から14日を経過したときは、仮に執行することができる。ただし、被告が別紙担保一覧表記載の各原 告に対し同表中「担保金額(円)」欄記載の各担保を供するときは、当該原告との 間で仮執行を免れることができる。 事実及び理由 第1 請求被告は、原告らに対し、別紙請求一覧表中「原告氏名・商号」欄記載の各原告につきぞれぞれ同表中「請求金額(円)」欄記載の金員及びこれに対する平成2 7年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要平成27年9月に発生した台風の影響により、関東地方において記録的な降雨が観測され、この降雨により一級河川である利根川水系鬼怒川の水位が高くなり、茨城県常総市(以下、茨城県内の地名については県名を省略する。)内の流域にお いて、その水位が現況堤防高を越え、又は堤防が決壊し、これによる流入水が常総市内に広がる氾濫が発生した。原告らは、当時、常総市内若宮戸地区、上三坂地区、水海道地区に居住しあるいは主たる事業所を有していた者である。 本件は、原告らが、鬼怒川を管理していた被告に対し、被告には、①若宮戸地区について、堤防の役割を果たしていた砂丘を保全するために当該砂丘を含む区 域を河川区域に指定するべきであったにもかかわらずこれを怠り、当該砂丘が太陽光発電事業者により掘削された、②若宮戸地区について、他の地区に優先して改修整備するべきであった堤防整備を放置した改修計画(以下、常総市流域を含めた鬼怒川の改修計画を「本件改修計画」という。)が格別不合理である、③上三坂地区について、現況堤防高の低い箇所があったのに優先的に堤防整備を行うこ とを計画していなかった本件改修計画が格別不合理であるという河川 を「本件改修計画」という。)が格別不合理である、③上三坂地区について、現況堤防高の低い箇所があったのに優先的に堤防整備を行うこ とを計画していなかった本件改修計画が格別不合理であるという河川管理の瑕疵があったと主張して、国家賠償法2条1項に基づき、別紙請求一覧表中「原告氏名・商号」欄記載の各原告につきぞれぞれ同表中「請求金額(円)」欄記載の各損害金合計3億5870万5819円及びこれに対する上記氾濫の発生の日である平成27年9月10日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号によ る改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求 めた事案である。 1 関係法令等の定め(1) 河川法の目的河川法1条は、河川法は、河川について、洪水、津波、高潮等による災害の発生が防止され、河川が適正に利用され、流水の正常な機能が維持され、及び 河川環境の整備と保全がされるようにこれを総合的に管理することにより、国土の保全と開発に寄与し、もって公共の安全を保持し、かつ、公共の福祉を増進することを目的とすると規定する。 (2) 河川管理の原則等河川法2条1項は、河川は、公共用物であって、その保全、利用その他の管 理は、前条の目的が達成されるように適正に行わなければならないと規定する。 (3) 河川区域に係る定め河川法6条1項は、「河川区域」を「河川の流水が継続して存する土地及び地形、草木の生茂の状況その他その状況が河川の流水が継続して存する土地に類する状況を呈している土地(中略)の区域」(以下「1号地」という。)、「河川 管理施設の敷地である土地の区域」(以下「2号地」という。)及び「堤外の土地(中略)の区域のうち、第1号に掲げる区域(1号地)と一体 いる土地(中略)の区域」(以下「1号地」という。)、「河川 管理施設の敷地である土地の区域」(以下「2号地」という。)及び「堤外の土地(中略)の区域のうち、第1号に掲げる区域(1号地)と一体として管理を行う必要があるものとして河川管理者が指定した区域」(以下「3号地」という。)と定義する。 (4) 河川整備基本方針に係る定め ア河川法16条1項は、河川管理者は、その管理する河川について、計画高水流量その他当該河川の河川工事及び河川の維持(同法16条の2において「河川の整備」という。)についての基本となるべき方針に関する事項すなわち河川整備基本方針を定めておかなければならないと規定する。 そして、同条2項は、河川整備基本方針は、水害発生の状況、水資源の利 用の現況及び開発並びに河川環境の状況を考慮し、かつ、国土形成計画(国 土形成計画法に基づく国土の利用、整備及び保全を推進するための総合的かつ基本的な計画を指す。)及び環境基本計画(環境基本法に基づく環境の保全に関する基本的な計画を指す。)との調整を図って、政令(河川法施行令10条の2)で定めるところにより、水系ごとに、その水系に係る河川の総合的管理が確保できるように定めなければならないとする。 イ河川法施行令10条の2は、河川整備基本方針に、当該水系に係る河川の総合的な保全と利用に関する基本方針(同条1号)と河川の整備の基本となるべき事項(同条2号)を定めなければならないとした上で、後者については、基本高水並びにその河道及び洪水調節ダムへの配分に関する事項(同号イ)、主要な地点における計画高水流量に関する事項(同号ロ)、主要な地点 における計画高水位及び計画横断形に係る川幅に関する事項(同号ハ)、主要な地点におけ 調節ダムへの配分に関する事項(同号イ)、主要な地点における計画高水流量に関する事項(同号ロ)、主要な地点 における計画高水位及び計画横断形に係る川幅に関する事項(同号ハ)、主要な地点における流水の正常な機能を維持するため必要な流量に関する事項(同号ニ)を挙げている。 (5) 河川整備計画に係る定めア河川法16条の2第1項は、河川管理者は、河川整備基本方針に沿って計 画的に河川の整備を実施するべき区間について、当該河川の整備に関する計画すなわち河川整備計画を定めておかなければならないと規定する。 同条2項は、河川整備計画は、河川整備基本方針に即し、政令(河川法施行令10条の3)で定めるところにより、当該河川の総合的な管理が確保できるよう定められなければならないとするとともに(同項前段)、河川管理 者は、降雨量、地形、地質その他の事情によりしばしば洪水による災害が発生している区域につき、災害の発生を防止し、又は災害を軽減するために必要な措置を講ずるように特に配慮しなければならないとする(同項後段)。 イ河川法施行令10条の3は、河川整備計画の目標に関する事項(同条1号)及び河川の整備の実施に関する事項(同条2号)を定めなければならないと した上で、後者について、河川工事の目的、種類及び施行の場所並びに当該 河川工事の施行により設置される河川管理施設の機能の概要(同号イ)と、河川の維持の目的、種類及び施行の場所(同号ロ)を挙げる。 (6) 河川整備基本方針及び河川整備計画の作成の準則に係る定め河川法施行令10条は、「河川整備基本方針及び河川整備計画は、次に定めるところにより作成しなければならない。」と定めた上で、次のとおり、作成上 の準則を掲げている。 則に係る定め河川法施行令10条は、「河川整備基本方針及び河川整備計画は、次に定めるところにより作成しなければならない。」と定めた上で、次のとおり、作成上 の準則を掲げている。 ア洪水、津波、高潮等による災害の発生の防止又は軽減に関する事項については、過去の主要な洪水、高潮等及びこれらによる災害の発生の状況並びに災害の発生を防止するべき地域の気象、地形、地質、開発の状況等を総合的に考慮すること(同条1号)。 イ河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関する事項については、流水の占用、舟運、漁業、観光、流水の清潔の保持、塩害の防止、河口の閉塞の防止、河川管理施設の保護、地下水位の維持等を総合的に考慮すること(同条2号)。 ウ河川環境の整備と保全に関する事項については、流水の清潔の保持、景観、 動植物の生息地又は生育地の状況、人と河川との豊かな触れ合いの確保等を総合的に考慮すること(同条3号)。 (7) 平成9年6月4日法律第69号による改正前の河川法(以下「改正前河川法」という。)等における治水計画に関する定めア改正前河川法は、河川管理者は、その管理する河川について、計画高水流 量その他当該河川の河川工事の実施についての基本になるべき事項(以下「工事実施基本計画」という。)を定めておかなければならない(16条1項)、工事実施基本計画は、水害発生の状況並びに水資源の利用の現況及び開発を考慮し、かつ、国土総合開発計画との整合を図って、政令で定める準則に従い、水系ごとに、その水系に係る河川の総合的管理が確保できるように 定められなければならない(同条2項)、河川管理者は、工事実施基本計画を 定めるに当たっては、降雨量、地形、地質その他の事情によりし 、その水系に係る河川の総合的管理が確保できるように 定められなければならない(同条2項)、河川管理者は、工事実施基本計画を 定めるに当たっては、降雨量、地形、地質その他の事情によりしばしば洪水による災害が発生している区域につき、災害の発生を防止し、又は災害を軽減するために必要な措置を講ずるように特に配慮しなければならない(同条3項)と規定していた。 イまた、平成9年11月28日政令第342号による改正前の河川法施行令 (以下「改正前施行令」という。)10条1項は、工事実施基本計画は、次の各号に定めるところにより作成しなければならないと定めた上で、次のとおり、作成上の準則を掲げていた。 (ア) 洪水、高潮等による災害の発生の防止又は軽減に関する事項については、過去の主要な洪水、高潮等及びこれらによる災害の発生の状況並びに災害 の発生を防止するべき地域の気象、地形、地質、開発の状況等を総合的に考慮すること(同項1号)。 (イ) 河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関する事項については、流水の占用、舟運、漁業、観光、流水の清潔の保持、塩害の防止、河口の閉塞の防止、河川管理施設の保護、地下水位の維持等を総合的に考慮 すること(同項2号)。 ウさらに、同施行令10条2項は、工事実施基本計画には、①当該水系に係る河川の総合的な保全と利用に関する基本方針(同項1号)、②基本高水並びにその河道及び洪水調節ダムへの配分に関する事項、主要な地点における計画高水流量に関する事項、主要な地点における流水の正常な機能を維持す るため必要な流量に関する事項といった河川工事の実施の基本となるべき計画に関する事項(同項2号)、③主要な地点における計画高水位、計画横断形その他河道計画に における流水の正常な機能を維持す るため必要な流量に関する事項といった河川工事の実施の基本となるべき計画に関する事項(同項2号)、③主要な地点における計画高水位、計画横断形その他河道計画に関する重要な事項、主要な河川工事の目的、種類及び施行の場所並びに当該河川工事の施行により設置される主要な河川管理施設の機能の概要といった河川工事の実施に関する事項(同項3号)を定めなけ ればならないと規定していた。 エ平成9年6月4日法律第69号付則2条は、河川法の改正に係る経過措置として、次のとおり定めていた。 (ア) 河川法16条1項の規定に基づき当該河川について河川整備基本方針が定められるまでの間においては、改正前河川法16条1項の規定に基づき当該河川について定められている工事実施基本計画の一部を、政令で定 めるところにより、河川法16条1項の規定に基づき当該河川について定められた河川整備基本方針とみなす(平成9年法律第69号の附則2条1項。なお、平成9年政令第342号の附則2条1項によると、河川整備基本方針とみなされる当該河川について現に定められている工事実施基本計画の部分は、改正前施行令10条2項1号、2号及び3号イの部分とす るものとされた。)。 (イ) 河川法16条の2第1項の規定に基づき当該河川の区間について河川整備計画が定められるまでの間においては、改正前河川法16条1項の規定に基づき当該河川について定められている工事実施基本計画の一部を、政令で定めるところにより、河川法16条の2第1項に基づき当該河川の 区間について定められた河川整備計画とみなす(平成9年法律第69号の附則2条2項。なお、平成9年政令第342号の附則2条2項によると、河川整備計画とみなされる工事 2第1項に基づき当該河川の 区間について定められた河川整備計画とみなす(平成9年法律第69号の附則2条2項。なお、平成9年政令第342号の附則2条2項によると、河川整備計画とみなされる工事実施基本計画の部分は、改正前施行令10条2項3号ロに係る部分とするとされた。)。 2 前提事実(当事者間に争いがないか、括弧内に掲げた証拠及び弁論の全趣旨に より容易に認められる事実)(1) 当事者等原告らは、いずれも常総市内に住居所又は主たる事業所等を有していた者である。 被告は、国土交通大臣を河川管理者として、一級河川である利根川水系鬼怒 川の上平橋上流2km(利根川合流点から101.5kmの地点。)から利根川 合流点までの直轄管理区間を管理していた。 (2) 鬼怒川の概要及び流域の特性等ア鬼怒川の概要鬼怒川は、栃木県と群馬県との県境近くにある鬼怒沼(標高約2040m)を水源として、帝釈山脈や日光連山からの流れを集めて山間渓谷を流下し、 男鹿川、中禅寺湖より流れ出る大谷川を合わせ、宇都宮丘陵東側の平野部を南に流下し、江川や田川を合流した後、守谷市野木崎にて利根川に合流する、幹川流路延長177km、流域面積1761k㎡の一級河川である。なお、鬼怒川の流域等の状況については、別紙1「鬼怒川流域図」のとおりである。 イ鬼怒川の流域の特性等 (ア) 鬼怒川の河床勾配及び川幅鬼怒川の源流から大谷川の合流点に至るまでの101.5km地点(距離標の数値。利根川合流点からの距離を指すものである。以下単に「○〇km地点」という場合も同じ。)より上流の区間(以下「上流区間」という。)の河床勾配は1/108(高さ/距離。以下同じ。)、同地 距離標の数値。利根川合流点からの距離を指すものである。以下単に「○〇km地点」という場合も同じ。)より上流の区間(以下「上流区間」という。)の河床勾配は1/108(高さ/距離。以下同じ。)、同地点から筑西 市川島付近の44km地点までの区間(以下「中流区間」という。)の河床勾配は1/467ないし1/192、同地点から利根川に合流する地点付近の3km地点までの区間(以下「下流区間」という。)の河床勾配は1/1978ないし1/1097であった。また、中流区間の川幅は平均約700mであったのに対し、下流区間の川幅は平均約300mであった。 なお、若宮戸地区、上三坂地区、水海道地区はいずれも下流区間に存し、後述のとおり、若宮戸地区における溢水(以下「本件溢水」という。)が生じたのは鬼怒川左岸25.35km付近の地点(上流から下流を見たときの右側が右岸、左側が左岸であり、以下、ある地点を指す場合に「左岸○○km地点」などという。)、上三坂地区における堤防の崩壊(以下「本件 決壊」という。)が生じたのは左岸21.0km地点付近であった(乙19、 乙21)。 (イ) 鬼怒川の流域の気候及び降水降水量は、山岳部では年間約1600mmないし2100mm程度と利根川水系で最も多い地域となっているのに対し、平野部では年間約1300mmから1500mmと比較的少なく、山岳部と平野部の降水量の差が 大きい特徴があった。 (ウ) 鬼怒川における過去の降雨及び水害等平成27年9月9日以前に鬼怒川において記録された降雨及び発生した水害の状況については、別紙2のとおりである(以下、水海道水位流量観測所が所在する左岸10.95km地点(別紙2中の「鬼怒川水海道地 点」)を「水海 に鬼怒川において記録された降雨及び発生した水害の状況については、別紙2のとおりである(以下、水海道水位流量観測所が所在する左岸10.95km地点(別紙2中の「鬼怒川水海道地 点」)を「水海道地点」という。)。なお、平成14年7月に発生した水害では、流域平均3日雨量は約327mm、水海道地点における水位は5.78m、流量は2765㎥/sであった。 ウ鬼怒川流域の土地の利用状況等(ア) 鬼怒川の流域は栃木県と茨城県にまたがり、流域内人口は約55万人、 流域の土地利用は、山地等が約79%、水田、畑等の農地が約18%、宅地等の市街地が約3%となっている。常総市における平成17年の土地利用は、田畑がほぼ過半数を占め、宅地が約13%、商工業用地が約4.5%となっており、平成19年度における開発行為の傾向は、工業系が約41%、住居系が約20%、商工業系が約17%であった。 (イ) 常総市は、その中央に鬼怒川が流れ、東部は低地で広大な水田地帯、西部は丘陵地で集落や畑地、平地林が広がっており、鬼怒川に沿って市街地が形成されていた。上三坂地区の11km地点から21.0km地点までの区間については、右岸側は基本的に台地になっており、左岸側は鬼怒川と小貝川に挟まれた盆状の後背湿地で、上流側から下流側にかけて縦長で 地盤高が少しずつ低下していく細長い凹み状の低地の地形(谷底平野)と なっており、この低地の最下流部に水海道地区の市街地が広がっていた。 (3) 平成27年9月関東・東北豪雨(以下「本件降雨」という。)ア本件降雨の状況平成27年9月に発生した台風18号の影響により、同月7日から11日までに観測された総降雨量は、関東地方では600mmを超え、9月の月降 水量平年値の2 という。)ア本件降雨の状況平成27年9月に発生した台風18号の影響により、同月7日から11日までに観測された総降雨量は、関東地方では600mmを超え、9月の月降 水量平年値の2倍を超える大雨となった箇所があり、鬼怒川流域における雨量については、同月9日から10日にかけて、右岸75.13km地点(鬼怒川の計画の基準地点である石井水位流量観測所〔宇都宮市石井町地先〕が所在する地点。以下、「石井地点」といい、鬼怒川の計画の基準地点として表現する場合は「基準地点石井」といい、石井地点の上流域を以下「石井地 点上流域」という。)の上流域の流域平均最大24時間雨量は約409mmを記録した。これは、石井地点で観測を開始した昭和13年以来最多雨量であり、流域平均3日雨量は約501mmという最多雨量を記録した。 また、石井地点上流域において、昭和11年以降で時間雨量データが収集できた洪水のうち、上位10の洪水では、時間当たりの流域平均雨量20m m以上の降雨が発生したのは多くて5時間程度であったところ、本件降雨では、11時間にわたって発生した。 イ鬼怒川における水位及び河川の流量等(ア) 水位本件降雨に伴い、平方水位流量観測所(鬼怒川37.27km地点〔下 妻市平方地先〕所在。以下「平方地点」という。)において9.45mの水位を(なお、過去(昭和25年以降)最高の水位は、平成23年9月洪水の6.25mであった。)、水海道地点において8.07mの水位(過去(昭和11年以降)最高の水位は、昭和22年9月洪水の7.30mであった。)をそれぞれ記録し、これらは観測史上1位の水位であるとともに、平方地 点では同年9月10日午前7時から午後3時までの8時間にわたり、水海 道地点では同日午前1 7.30mであった。)をそれぞれ記録し、これらは観測史上1位の水位であるとともに、平方地 点では同年9月10日午前7時から午後3時までの8時間にわたり、水海 道地点では同日午前11時から午後4時の5時間にわたり、それぞれ計画高水位(平方地点では8.278m、水海道地点では7.33m)を超過した。 (イ) 河川の流量平方地点の最大流量は毎秒約4133㎥(過去(昭和25年以降)最大 の流量は、昭和41年9月洪水の毎秒約3126㎥であった。)、水海道地点の最大流量は、毎秒約3942㎥(過去(昭和11年以降)最大の流量は、昭和24年8月洪水の毎秒約3927㎥であった)と、いずれも過去最大となる流量を記録した。 (4) 本件溢水等による鬼怒川の氾濫(以下「本件氾濫」という。)の発生 ア常総市若宮戸地区若宮戸地区は、左岸に堤防が整備されていない区間であったが、鬼怒川の河道と住民らの居住地等との間には幅広い土地が存し、左岸25.35km地点付近には「十一面山」と呼ばれる砂丘(以下「本件砂丘」という。)があり、その高さはY.P.21.36mないし24.21m(Y.P.とは、 YedogawaPeil(江戸川工事基準面)の略で、利根川等の水位を測る際の基準となる、千葉県浦安市堀江所在の堀江水位観測所の水位標0mを基準とした水位を示す記号である。)であったが、平成26年3月頃、太陽光発電事業者により縦断方向長さ約200mにわたってY.P.19.7m程度まで掘削された。 本件降雨のあった平成27年9月10日、本件砂丘の存する左岸25.35km地点付近において、本件溢水が生じ、氾濫が発生した。本件溢水が生じた地点の痕跡水位はY.P.22mであった(甲2)。 イ常総市上三坂地 成27年9月10日、本件砂丘の存する左岸25.35km地点付近において、本件溢水が生じ、氾濫が発生した。本件溢水が生じた地点の痕跡水位はY.P.22mであった(甲2)。 イ常総市上三坂地区上三坂地区の左岸21.0km地点付近(以下「本件上三坂地区地点」と いうことがある。)においては、平成27年9月10日午後11時11分に は、河川水が堤防を越える越水が確認され、同日午後零時50分頃に本件決壊が生じ、氾濫が発生した。 本件決壊の機序は、鬼怒川流域における記録的な大雨により、鬼怒川の水位が大きく上昇し、決壊区間において水位が計画高水位を超過し堤防高をも上回り、越水が発生し、その越水により川裏側で洗掘が生じ、川裏法尻の洗 掘が進行・拡大して、堤体の一部を構成する緩い砂質土(As1)が流水によって崩れ、小規模な崩壊が継続して発生して、決壊に至ったというものであった。越水前の浸透によるパイピング(水位差のために砂質地盤の中にパイプ状の水の流れが発生し、土砂と水が噴き出す現象。)については、堤体の一部を構成し堤内地側に連続する緩い砂質土を被覆する粘性土の層厚によ って発生したおそれがあるため、決壊の主要因ではないものの、決壊を助長した可能性は否定できない。現地では、当初約20mの決壊幅が、時刻が経過するごとに広がり、最終的には約200m幅に達した。 ウ常総市水海道地区水海道地区は鬼怒川と小貝川に挟まれた低地であるところ、若宮戸地区及 び上三坂地区からの流入水により、浸水が発生した。 エ常総市内の被害若宮戸地区、上三坂地区、水海道地区を含む常総市においては、その約3分の1の面積に相当する約40k ㎡の地域が浸水し、常総市役所も孤立すると 浸水が発生した。 エ常総市内の被害若宮戸地区、上三坂地区、水海道地区を含む常総市においては、その約3分の1の面積に相当する約40k ㎡の地域が浸水し、常総市役所も孤立するという状況が生じた。 茨城県の公表資料によれば、宅地及び公共施設等の浸水がおおむね解消するまでに10日を要し、人的被害60名、住宅被害8540件に及んだとされている(乙48)。 (5) 鬼怒川における本件氾濫発生当時の改修計画の基本的な内容ア概要 鬼怒川については、本件氾濫当時、河川法上の河川整備計画が策定されて いなかったため、経過措置により、平成9年改正前の河川法16条に基づく平成7年策定の利根川水系工事実施基本計画(以下「平成7年工実」という。)の一部を河川整備計画とみなすとされていた。そのため、本件氾濫発生当時鬼怒川における改修計画として法令上有効であったものは、平成18年策定の利根川水系整備基本方針(以下「本件基本方針」という。)及び平成7年工 実の一部(以下「本件整備計画」という。)であった。 イ本件基本方針(乙20の1・2)(ア) 河川の総合的な保全と利用に関する基本方針a 概要河川の整備の現状、森林等の流域の状況、砂防や治山工事の実施状況、 水害の発生状況、河川の利用の現状(水産資源の保護及び漁業を含む。)、流域の歴史、文化並びに河川環境の保全等を考慮し、また、関連地域の社会経済情勢の発展に即応するよう首都圏整備計画、環境基本計画等との調整を図り、かつ、土地改良事業、下水道事業等の関連事業及び既存の水利施設等の機能の維持に十分配慮し、治水・利水・環境・土砂管理 等は相互に影響し合うものであることを踏まえて、水源 計画等との調整を図り、かつ、土地改良事業、下水道事業等の関連事業及び既存の水利施設等の機能の維持に十分配慮し、治水・利水・環境・土砂管理 等は相互に影響し合うものであることを踏まえて、水源から河口まで一貫した計画のもとに河川の総合的な保全と利用を図る。 b 災害の発生の防止又は軽減(a) 利根川の流域面積が大きく支川も多岐にわたり防御するべき地域も多いことから、それぞれの地域で特性にあった治水対策を講ずるこ とにより利根川水系全体としてバランスよく洪水に対する安全性を向上させることが利根川水系の治水の基本であるとの考えのもと、現況の河川の安定状況を踏まえ、洪水にできるだけ河道で分担して処理する。 (b) 河道で処理できない流量については、上下流や本支川のバランスに 配慮しながら、河道が有する遊水機能を一層強化し洪水を貯留すると ともに、既設洪水調節施設の徹底した有効活用を図った上で、洪水調節施設を新たに整備する。 (c) 各支川については、渡良瀬川、鬼怒川、小貝川、常陸利根川から利根川本川への合流量は、遊水池等の洪水調節施設により洪水調節して、本川の計画高水流量に影響を与えないようにする。 (d) 利根川から江戸川への分派については、両河川のバランス関係を保持することとし、適切な分派を行う。 (e) 流域が低平地で内水被害が生じやすい地域では、本川等に負担を与えない範囲での内水排除及び流域外への排水を実施する。 (f) 鬼怒川においては、既設洪水調節施設の掘削及び効果的な操作ルー ルの採用による治水機能の向上を図るとともに、洪水調節施設を整備する。 (g) 堤防の新設・拡築、河道掘削、治水 ) 鬼怒川においては、既設洪水調節施設の掘削及び効果的な操作ルー ルの採用による治水機能の向上を図るとともに、洪水調節施設を整備する。 (g) 堤防の新設・拡築、河道掘削、治水上支障となる堰・橋梁等の改築による河積の増大、護岸等の整備により計画規模の洪水を安全に流下させる。 c 河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関しては、渇水時における地盤沈下の防止、河川環境の保全や近年の少雨化傾向にも対応した利水安全度の確保のため、流水の正常な機能の維持のため必要な流量を計画的に確保する。 d 河川環境の整備と保全河川環境の整備と保全に関しては、わが国最大の流域面積を有する利根川は、渓谷、高水敷、遊水池、湿地等良好な景観を有し多様な動植物が生息・生育する豊かな自然環境があり、一方、都市内及び近郊に位置するため多くの人々がスポーツ、観光、自然観察に訪れるなど人とのか かわり合いが極めて高いことを踏まえ、現在の豊かな河川環境を保全す る。 (イ) 河川整備の基本となるべき事項a 基本高水並びにその河道及び洪水調整施設への配分に関する事項鬼怒川における基本高水は、昭和23年9月洪水、昭和24年9月洪水、昭和57年9月洪水、平成10年9月洪水等の既往洪水について検 討した結果、そのピーク流量を基準地点石井において8800㎥/sとし、このうち流域内の洪水調節施設により3400㎥/sを調節して、河道への配分流量を5400㎥/sとする。 b 主要な地点における計画高水流量に関する事項鬼怒川における計画高水流量は、基準地点石井において54 3400㎥/sを調節して、河道への配分流量を5400㎥/sとする。 b 主要な地点における計画高水流量に関する事項鬼怒川における計画高水流量は、基準地点石井において5400㎥/ sとし、河道低減量及び田川等の残流域合流量を見込み、水海道地点において5000㎥/sとする。 c 主要な地点における計画高水位鬼怒川における計画高水位は、基準地点石井においてY.P.+102.03m、水海道地点においてY.P.+17.25mである。 ウ本件整備計画河川工事の実施に関する事項として、主要な河川工事の目的、種類及び施行の場所並びに当該河川工事の施行により設置される主要な河川管理施設の機能の概要として、上流区間については、多目的ダムで洪水調節を図るとともに、各種用水の補給等を行い、中流区間については急流であるので霞堤 方式により洪水の安全な流下を図り、護岸及び水制を施工し、さらに掘削により河道を整正し、下流区間については、堤防の拡築、護岸等を施工し、さらに、河床の維持のため床固めを設けることとする。 (6) 治水経済調査マニュアル(案)(乙74)ア治水経済調査マニュアル(案)についての通達 建設省河川局河川計画課長が作成した通達(建設省河計発第37-1号・ 平成11年6月1日)において、治水経済調査について治水経済調査マニュアル(案)を作成し、河川法(昭和39年法律第167号)16条1項に規定する河川整備基本方針及び同法16条の2第1項に規定する河川整備計画の策定・変更の際に行う治水経済調査や、河川及びダム事業の新規事業採択時評価等の際に新たに行う費用対効果分析については、今後、本マニュア ル(案)を活用 法16条の2第1項に規定する河川整備計画の策定・変更の際に行う治水経済調査や、河川及びダム事業の新規事業採択時評価等の際に新たに行う費用対効果分析については、今後、本マニュア ル(案)を活用するよう通知された。 イ治水経済調査マニュアル(案)における堤防の安全性の考え方堤防の安全性の評価としては、堤防の高さが大きな指標となるが、浸透作用及び水衝作用に対する堤防の安全度についても評価を行う必要がある。このため、堤防の高さだけでなく、堤防の質も含めた機能評価を行うこととす る。 この方法としては、様々な方法が考えられるが、堤体内への河川水浸透に対する安全性を一つの判断基準として、これを堤体幅で評価することとし、定規断面によるスライドダウンを行って堤防の高さを補正することとする(以下「スライドダウン評価」といい、スライドダウン評価後の堤防の高さ を「スライドダウン堤防高」という。)。 上記のような評価を加味した堤防の高さを基に、河道計画で用いられている不等流計算法によって河道の流下能力を判定し、(中略)流下能力を超えた時点から越水氾濫が始まるものとして被害額の算定を行うものとする。 ウ最小流下能力の設定 このような水理解析法や水理条件を前提として、流量(Q)規模ごとの水位(H)を計算し、Q=a(H+b)2形式(a 及びbは適当な定数。)等のH-Q式を作成する。対象河道の各断面について、堤防をスライドダウンし、その天端高から計画の余裕高(判決注・本件改修計画では1.5m)を引いた高さをH1として、H-Q式に代入し、その流下能力Q1を算定する。また、 堤防位置における堤内地盤高か河道の高水敷高のいずれか高いほう(破堤敷 高となる標高)をH0 .5m)を引いた高さをH1として、H-Q式に代入し、その流下能力Q1を算定する。また、 堤防位置における堤内地盤高か河道の高水敷高のいずれか高いほう(破堤敷 高となる標高)をH0として、H-Q式に代入し、それに相当する流下能力Q0を算定する。 さらに、Q1について、河道計画において、堤防の安全を確保する上で計画されている低水護岸、高水護岸及び漏水対策について、これらが未整備の場合には、各々について適切に割り引いた流量Q1′を算定する。割引流量 Q1′とQ0のいずれか大きいほうを当該断面の最小流下能力とする。 (7) 治水安全度の設定(乙73。以下、必要な場合を除き枝番は省略する。)平成23年度時点において、上記(6)の方法で算出した最小流下能力(スライドダウン評価をした後の堤防高を前提として算出した流下能力(以下「スライドダウン流下能力」という。)と、堤内地盤高か河道の高水敷高のいずれか高 いほうの高さを前提として算出した流下能力の大きいほう。)を前提に、治水安全度を年超過確率1/30(1年間にその規模を超える降雨が1回以上発生する確率が1/30であることを意味する。以下、年超過確率の記載を省略する。)の規模の洪水に耐え得るもの、1/10から1/30未満の規模の洪水に耐え得るもの、1/10の規模の洪水に耐え得ないものの3段階に分類して 設定し、1/30の規模の洪水を安全に流下させることを目標に、1/30未満の箇所を整備箇所とし、1/10未満の箇所は早期に堤防整備が必要な箇所と設定した。この治水安全度の設定は、平成26年度も同様であり、引き続き鬼怒川の改修計画の前提とされた。 3 争点 (1) 若宮戸地区の本件砂丘を含む区域を河川区域に指定しなかったことが河川管理 。この治水安全度の設定は、平成26年度も同様であり、引き続き鬼怒川の改修計画の前提とされた。 3 争点 (1) 若宮戸地区の本件砂丘を含む区域を河川区域に指定しなかったことが河川管理の瑕疵に当たるか否か。 (2) 本件改修計画が若宮戸地区の堤防整備を放置して優先度の高くない地点の堤防整備を優先するものであり、それが格別不合理であるといえるか否か。 (3) 上三坂地区の堤防整備を他の地区よりも後回しにしたものとして、本件改修 計画が格別不合理であるといえるか否か。 (4) 被告が賠償するべき損害の範囲。 4 争点に対する当事者の主張(1) 若宮戸地区の本件砂丘を含む区域を河川区域に指定しなかったことが河川管理の瑕疵に当たるか否か。 (原告らの主張) ア河川管理の瑕疵は、河川管理における財政的、技術的及び社会的制約のもとでの同種・同規模の河川の管理の一般水準及び社会通念に照らして是認し得る安全性を備えていると認められるかどうかを基準として判断され、ここでいう安全性とは、その改修段階に対応して通常有するべき安全性、すなわち、段階的安全性を含むと解するべきである。そうすると、段階的安全性を 備えており、河川区域に指定することでその安全性を保全できる場合には、河川区域の指定をするべきであり、これを怠った場合には河川管理の瑕疵があるというべきである。そして、その段階的安全性の有無は、当該改修段階において対処することが予想された規模の洪水における流水の通常の作用から予測される災害の発生を防止するに足りる安全性を備えているかどう かによって判断し、改修途上の河川については、より具体的な基準として、水害発生の時点において既に設置済みの河川管理施設がその予定する安全 る災害の発生を防止するに足りる安全性を備えているかどう かによって判断し、改修途上の河川については、より具体的な基準として、水害発生の時点において既に設置済みの河川管理施設がその予定する安全性を有していなかったという瑕疵があるか否かは、右施設設置の時点における技術水準に照らして、右施設が、その予定する規模の洪水における流水の通常の作用から予測される災害の発生を防止するに足りる安全性を備えて いるかどうかによって判断するべきである。 イ若宮戸地区の左岸24.5kmないし26.0km地点には堤防が整備されておらず、代わりに上記各地点の上流堤防及び下流堤防に接して本件砂丘が存在していた。本件砂丘が掘削されるまでは、上記各地点間の堤防高は、本件砂丘を含まない場合には計画高水位を大幅に下回っていた(場所によっ ては2m以上下回っていた。)が、本件砂丘を含む場合には計画高水位をお おむね上回っており、被告が平成13年度、平成23年度及び平成27年度に行った鬼怒川堤防高の調査において、本件砂丘の高さが調査結果に反映されていた。被告は、平成23年の事業再評価資料(以下「平成23年度事業再評価資料」という。)において、本件砂丘をいわゆる「山付堤」として扱い、おおむね20ないし30年で堤防を整備する区間にも入れておらず、また、 平成24年3月策定の鬼怒川河川維持管理計画において、若宮戸地区を堤防整備不必要区間としており、平成15年度の若宮戸地区に築堤する詳細設計に関する報告書を改修事業に反映させていなかった。そして、被告は左岸25.35km地点で堤防が決壊した場合の浸水想定区域を計算しており、同地点で堤防が決壊すれば常総市の大半に被害が生じることを認識していた。 これらの事情からして、本件砂丘は堤防の役割 は左岸25.35km地点で堤防が決壊した場合の浸水想定区域を計算しており、同地点で堤防が決壊すれば常総市の大半に被害が生じることを認識していた。 これらの事情からして、本件砂丘は堤防の役割を果たすものとしておおむね20ないし30年の治水事業の過程における河川の改修、整備の段階に対応する段階的安全性を備えており、被告も本件砂丘をそのようなものとして扱っていた。 ウ上記のような本件砂丘の位置、その果たしていた役割及び被告の認識か らすれば、本件砂丘は河川法6条1項3号括弧書き及び河川法施行令1条1項1号の「地形上堤防が設置されているのと同一の状況を呈している土地のうち、堤防に隣接する土地」に当たり、かつ、同法6条1項3号の「第1号に掲げる区域と一体として管理を行う必要があるもの」に当たるから、被告は、本件砂丘を含む区域を河川区域に指定して、本件砂丘の有 していた段階的安全性を保全するべきであったが、これを怠った。 被告が本件砂丘を含む区域を河川区域に指定しなかったことにより、本件砂丘の所有者らが本件砂丘の樹木を伐採したり土地を掘削したりして、本件砂丘の地盤高が計画高水位より2m以上下回る状態となり、本件砂丘が有していた段階的安全性が損なわれた。 エしたがって、被告が若宮戸地区の本件砂丘を含む区域を河川区域に指定し なかったことは河川管理の瑕疵に当たる。 (被告の主張)ア本件改修計画において、若宮戸地区は堤防整備が必要な区間とされており、本件氾濫当時、現に築堤のための測量や堤防の整備等の作業が進められていたことからすれば、鬼怒川は、当時、本件改修計画に基づいて現に改修中の 河川であったから、河川管理の瑕疵が問題となる余地があるとしても、それは改修計画終了段階に 堤防の整備等の作業が進められていたことからすれば、鬼怒川は、当時、本件改修計画に基づいて現に改修中の 河川であったから、河川管理の瑕疵が問題となる余地があるとしても、それは改修計画終了段階において予定されている安全性若しくは予見可能な洪水を防ぐことのできる安全性を備えていないという「改修の遅れ」の問題と考えるべきである。 イ若宮戸地区は、本件砂丘を含めても地盤高が低い箇所があって、全体とし て堤防整備が必要な地区として扱われていたのであり、自然堤防とは、洪水によって濁水が河道からあふれ出るときに砂粒分やシルト・粘土分が繰り返し沈積・堆積して堤防上の高まりとなったものにすぎず、それ自体が河川管理施設としての堤防に当たるともいえないのであるから、被告が本件砂丘を「自然堤防」と表現したことがあるとしても、本件砂丘が河川管理施設とし ての堤防と同程度の治水安全度(流下能力)を備えていたと評価することはできないし、被告がそのように扱っていたともいえない。 また、「実態的に堤防のような役割を果たしている地形の調査結果について<直轄管理区間>」という資料は、一定の条件を満たす自然的な地形が全国的にどの程度存在するかを調査した結果の一つにすぎず、被告が本件砂丘 を堤防の役割を果たすものとして扱っていた根拠となるものではない。さらに、本件各事業再評価資料の「今後の改修方針」において若宮戸地区が明示されていないとしても、同資料作成のための測量対象となっていなかった若宮戸地区の24.75km地点付近及び25.25km地点付近については、治水安全度が不足しているとの認識の下、事業再評価の検討を行っていたか ら、若宮戸地区が改修の対象外であったとはいえない。そして、「鬼怒川河川 維持管理計画」は、これ自体河川 ては、治水安全度が不足しているとの認識の下、事業再評価の検討を行っていたか ら、若宮戸地区が改修の対象外であったとはいえない。そして、「鬼怒川河川 維持管理計画」は、これ自体河川の改修計画に該当するものでもなければ、同計画をもって改修の手順が検討されるものでもないから、若宮戸地区を堤防整備が必要な区域と扱っていた記載がないからといって、堤防整備が不必要とされていたとはいえない。 そうすると、本件砂丘が堤防の役割を果たしていたとも、被告が本件砂丘 を堤防の役割を果たすものとして扱っていたともいえない。 ウ以上を前提とすれば、若宮戸地区における堤防の不存在は「改修の遅れ」の問題であり、かつ、これが河川管理の瑕疵に当たるか否かは、本件改修計画が格別不合理であるといえるか否かによって判断されるべきである。そして、河川の改修計画において定めるべき事項について規定した河川法施行令 10条の2、10条の3において、河川区域の指定については何ら定められていないのであるから、若宮戸地区の本件砂丘を含む区域を河川区域と指定するかという点は、本件改修計画の前提となるものではなく、本件改修計画の格別不合理性とは無関係である。したがって、若宮戸地区の本件砂丘を含む区域を河川区域に指定しなかったことが河川管理の瑕疵に当たるとの原 告らの主張は失当である。 (2) 本件改修計画が若宮戸地区の堤防整備を放置し優先度の高くない地点の堤防整備を優先するものであり、それが格別不合理であるといえるか否か。 (原告らの主張)ア本件基本方針や本件整備計画においては、河川の改修工事の具体的な時期 及び順序が示されていないが、平成23年度事業再評価資料及び平成26年度の事業再評価資料(以下「平成26年度事業再 ア本件基本方針や本件整備計画においては、河川の改修工事の具体的な時期 及び順序が示されていないが、平成23年度事業再評価資料及び平成26年度の事業再評価資料(以下「平成26年度事業再評価資料」といい、平成23年度事業再評価資料と併せて「本件各事業再評価資料」という。)には、いずれも改修の内容と改修工事の場所、時期及び順序について記載されていた。 また、平成23年度事業再評価資料は、平成22年5月26日付け国土交通 省河川局治水課長通知において、事業再評価の際、河川法に基づく河川整備 計画が未策定の場合には、おおむね20ないし30年間の整備内容を想定し、河川整備計画に変えて事業再評価を実施することを前提に、当面の段階的な整備に関し実施箇所や事業内容を明らかにして総合的な事業評価をするように求められていたことを踏まえて作成されたものであり、本件各事業再評価資料作成当時、鬼怒川の河川整備計画は未策定であった。これらの事実か らすれば、本件各事業再評価資料は、河川整備計画に代えておおむね20ないし30年間の整備内容を記載し、河川整備計画に基づく段階的な整備に関して改修工事の内容、時期及び順序を明らかにしたものというべきであり、本件改修計画の重要な一部とみるべきである。 イ本件改修計画を構成する本件基本方針、本件整備計画及び本件各事業再評 価資料のいずれにも、若宮戸地区に堤防を整備する計画が記載されておらず、平成15年度に、若宮戸地区の24.5km地点付近から26.0km地点付近までの約1.5kmの区間について築堤の詳細設計が行われたが、この設計が本件改修計画及びその実施に反映されることはなかった。そして、争点(1)における被告の主張のとおり、被告が本件砂丘を堤防の役割を果たす ものとして ついて築堤の詳細設計が行われたが、この設計が本件改修計画及びその実施に反映されることはなかった。そして、争点(1)における被告の主張のとおり、被告が本件砂丘を堤防の役割を果たす ものとして扱っていなかったというのであれば、若宮戸地区においては、本件砂丘を含まない区域の堤防高を基礎とするべきことになり、その堤防高は計画高水位を大きく下回っている箇所があったのに対し、下流区域の他の地区において計画高水位を下回っている箇所はなかった。そうすると、若宮戸地区においては、当該改修段階において備えているべき段階的安全性を備え ていない状態であったといえる。 ウしたがって、若宮戸地区は他の地区に優先して改修整備をするべき地区であったから、若宮戸地区に堤防を整備することなく他の地区の堤防整備を優先していた本件改修計画は格別不合理である。 (被告の主張) ア改修計画とは、河川法16条にいう工事実施基本計画、河川整備基本方針 及び河川整備計画等が想定されているのであり、本件氾濫時に有効であったのは、本件基本方針及び本件整備計画のみであった。 本件各事業再評価資料は、行政機関が行う政策の評価に関する法律(平成13年法律第86号。以下「政策評価法」という。)に基づき、政策の決定後において政策効果を把握し、政策の見直し・改善や新たな政策の企画立案及 びそれに基づく実施に反映させるための情報を提供する見地から作成されたものであるから、対象となる事業の必要性、効率性及び有効性等の観点から評価したものにすぎず、河川の改修に係る計画の内容を構成するものではなかった。 イ本件基本方針は、地形、気候、開発の状況等に触れながら鬼怒川を含む利 根川流域の概要を摘示した上で、災害の発生の防止 すぎず、河川の改修に係る計画の内容を構成するものではなかった。 イ本件基本方針は、地形、気候、開発の状況等に触れながら鬼怒川を含む利 根川流域の概要を摘示した上で、災害の発生の防止又は軽減、河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持及び河川環境の整備と保全に係る考え方や方策について示し、利根川及び鬼怒川を含むその支川ごとに、基本高水並びにその河道及び洪水調整施設への配分に関する事項等河川法施行令10条の2に掲げられた事項に即して、鬼怒川における改修計画を定めていた。 また、本件整備計画は、鬼怒川について、ダムや霞堤の設置その他の工事の内容、目的の概要を摘示しており、河川法施行令10条の3に掲げられた事項に即して、鬼怒川における改修計画を定めていた。このように、本件氾濫時に鬼怒川の治水計画として有効であった本件基本方針及び本件整備計画は、法令で検討を求められている考慮要素を踏まえて策定されたものであり、 改修工事の具体的な内容や実施時期等が定められていなかったことをもって格別不合理であるということにはならない。 ウ改修計画の合理性を判断するには、河川管理の特質に由来する財政的、時間的、技術的及び社会的諸制約を考慮する必要がある。 鬼怒川の整備は、河川法上の河川整備計画とみなされる平成7年工実の一 部(本件整備計画)に基づき、上流区間については、多目的ダムで洪水調整 を図るとともに、各種用水の補給等を行い、中流区間については、急流であるので霞堤方式により洪水の安全な流下を図り、護岸及び水制を施工し、更に河床の維持のため床固めを設けることとして、長期的な整備目標を定めた本件基本方針に沿って計画的に実施されていた。このような鬼怒川の河川改修の経緯は、これを全体としてみると、上記 び水制を施工し、更に河床の維持のため床固めを設けることとして、長期的な整備目標を定めた本件基本方針に沿って計画的に実施されていた。このような鬼怒川の河川改修の経緯は、これを全体としてみると、上記整備計画の内容と合致するもの であった上、各種自然災害等の自然的条件の変化に応じて、順次対応策を講じてきたものであり、河川管理の一環としての工事の進め方に格別不合理、不相当なところはない。このことは、常総市内において近年降雨による大きな洪水被害が発生しておらず、一定の安全性は確保されていたといえることからも明らかである。 また、本件氾濫を発生させた本件降雨は、1時間当たりの流域平均雨量20mm以上の降雨が11時間にわたって発生するという極めて異例のものであり、これに伴い、鬼怒川においては、平方地点や水海道地点では、観測史上1位の水位を記録するとともに、長時間にわたり計画高水位を超過した。 このため、鬼怒川の全域にわたり本件決壊及び本件溢水が生じた箇所を含め た97か所で被災が生じた。このような異例の降雨に対しても対応できるような緊急的な改修を計画しなければ不合理であったとはいえない。 さらに、鬼怒川における河川工事の進捗状況をみると、本件降雨以前(平成23年度定期縦横断測量データ)の整備状況は、計画堤防高以上を確保している割合が約70%(計画高水位(HWL)以上が約98%)であり、鬼 怒川と同様に1/100の規模の洪水に耐え得ることを長期計画の目標規模としている河川の計画堤防高の確保状況と比較すると、小貝川では約86%(計画高水位以上が約99%:平成23年度同測量データ)、那珂川では約43%(計画高水位以上が約52%:平成24、25年度同測量データ)、渡良瀬川では約87%(計画高水位以上が約97% では約86%(計画高水位以上が約99%:平成23年度同測量データ)、那珂川では約43%(計画高水位以上が約52%:平成24、25年度同測量データ)、渡良瀬川では約87%(計画高水位以上が約97%:平成20年度同測量デ ータ)、久慈川では約59%(計画高水位以上が約91%:平成24年度同測 量データ)であったから、これらの河川と比較して、鬼怒川の河川整備の進捗が特段遅延していた状況にあったとはいえない。 エそして、改修計画は全体として格別不合理であるかが検討されるべきであり、若宮戸地区という一地点の堤防整備計画の不存在をもって本件改修計画の格別不合理性が認められる余地はない。そもそも、本件整備計画等によれ ば、若宮戸地区は整備対象区間とされ、現に測量等の作業が進められていたのであり、被告は、鬼怒川の整備に当たっては、洪水による被災履歴、流下能力の状況及び上下流のバランス等を総合的に勘案し、河川管理の制約の下、一連区間ごとに順次整備に着手し、これを進めてきたものである。 オしたがって、本件改修計画は格別不合理であるとはいえない。 (3) 上三坂地区の堤防整備を他の地区よりも後回しにしたものとして、本件改修計画が格別不合理であるといえるか否か。 (原告らの主張)ア争点(1)(原告らの主張)のとおり、河川管理の瑕疵は、段階的安全性を備えているかによって判断されるところ、改修計画が格別不合理であるといえ るか否かについても、当該改修段階における段階的安全性を備えているかという点が重要な考慮要素であり、改修計画に沿って河川の改修が実施されるにつれて段階的安全性が向上していくような改修計画でなければ、当該改修計画は格別不合理というべきである。 イ現況堤防高、計画高 が重要な考慮要素であり、改修計画に沿って河川の改修が実施されるにつれて段階的安全性が向上していくような改修計画でなければ、当該改修計画は格別不合理というべきである。 イ現況堤防高、計画高水位及び計画堤防高は、現況堤防高と計画高水位との 差(以下「現況余裕高」ということがあり、一定の区間において最も差が小さい部分を「最小余裕高」ということがある。)や現況堤防高と計画堤防高の差(以下「計画余裕高」ということがある。)を求めるために必要な高さであり、堤防整備の順序を決めるうえで最も基本的な事項として第一に考慮しなければならない。堤防決壊の最大の要因は洪水位が現況堤防高を越えること による越水であり、現況余裕高の低いところから順に越水する可能性が高い ことは明らかである。そして、現況余裕高に余裕があるところの堤防を整備してさらに高くしたとしても、現況余裕高の低いところに変化がなければ、その地点から越水する可能性が高い状態に変わりがないことになる。そうすると、現況余裕高が低く流下能力の小さい箇所から堤防整備を行わなければ段階的安全性が向上することはなく、このような時期・順序で堤防整備を行 う改修計画でない場合には、当該改修計画は格別不合理であるといえる。 ウ(ア) 鬼怒川の下流区域について、平成13年度時点においては、現況堤防高が計画高水位を下回っている箇所は存在せず、最小余裕高の小さい地点が存在しており、この地点が優先的に整備されなければならなかった。また、鬼怒川の右岸は基本的には台地になっているのに対し、左岸は鬼怒川と小 貝川に挟まれた盆状の後背湿地で、上流側から下流側にかけて縦長で地盤高が少しずつ低下しているという地形になっており、その最下流部に水海道地区の市街地が広がっているという自然的 岸は鬼怒川と小 貝川に挟まれた盆状の後背湿地で、上流側から下流側にかけて縦長で地盤高が少しずつ低下しているという地形になっており、その最下流部に水海道地区の市街地が広がっているという自然的、社会的条件下にあったことからすれば、右岸よりも左岸の堤防整備が優先されるべきであり、特に左岸22km地点は、鬼怒川流域において氾濫地域が最大になる決壊地点と して選択されており、同地点において決壊すれば大規模な被害が生じることが予見されていた。このような最小余裕高、自然的、社会的条件等を考慮すれば、堤防整備を行うべき優先順位は次のとおりとなる。 a 右岸6.5kmないし8km地点(最小余裕高0.2m)b 左岸10kmないし11.5km地点(最小余裕高0.4m) c 左岸19.5ないし21.5km地点(最小余裕高0.4m。本件上三坂地区地点を含む。)d 右岸16.5kmないし18km地点(最小余裕高0.5m)e 左岸16.5kmないし18km地点(最小余裕高0.6m)f 左岸18kmないし19km地点(最小余裕高0.7m) g 右岸23kmないし24.5km地点(最小余裕高0.7m) (イ) 平成20年度までの整備においては、右岸6.5kmないし8km地点(上記(ア)a)が整備され、左岸7.5kmないし10km地点、11.25kmないし12km地点、14.5km地点が整備されたが、上記各区間のうち(ア)a以外の各区間はそのままであった。平成17年度に行われた詳細な測量の結果、左岸20.98km地点付近の現況余裕高はわずか 0.06mであることが判明しており、上記各区間のうち、本件上三坂地区地点を含む(ア)cの地点は、さらに優先して整備されるべき区間であることが明らかとなっていた。 (ウ) 況余裕高はわずか 0.06mであることが判明しており、上記各区間のうち、本件上三坂地区地点を含む(ア)cの地点は、さらに優先して整備されるべき区間であることが明らかとなっていた。 (ウ) 平成23年度までの整備においては、左岸10kmないし11.5km地点(上記(ア)b)、右岸16.5kmないし18km地点(上記(ア)d)が 整備されたが、その他の上記各区間はそのままであり、各地点の最小余裕高はさらに小さくなっていた。 (エ) 平成24年度以降の整備においては、左岸15ないし16km地点、16.5kmないし18km地点(上記(ア)e)の一部、左岸18kmないし19km地点(上記(ア)f)の一部、右岸13kmないし14.5km地点 付近、15kmないし16.5km地点付近が整備された。本件氾濫までの間に、左岸19.5kmないし21.5km地点付近である約20.98km地点及び約21.47km地点においては、現況余裕高がない状態になっていたばかりでなく、本件上三坂地区地点付近における堤防の天端の高さは均一ではなく、堤防の本体というべきアスファルトで舗装されて いる部分の高さは計画高水位を0.08m下回っていた。 (オ) 以上によれば、本件氾濫時において、優先して整備されるべき上記区間のうち、未整備であった区間は次のとおりであり(最小余裕高の数値は、平成13年度時点、平成20年度時点、平成23年度時点のものを順に記載。)、その中でも最も優先して整備されるべきであった本件上三坂地区地 点を含む左岸19.5ないし21.5km地点の堤防整備がされず、優先 度の低い区間を優先して整備した本件改修計画は、格別不合理である。 c 左岸19.5ないし21.5km地点(最小余裕高0.4m→0.2m→0.2mと 5km地点の堤防整備がされず、優先 度の低い区間を優先して整備した本件改修計画は、格別不合理である。 c 左岸19.5ないし21.5km地点(最小余裕高0.4m→0.2m→0.2mと変化。このうち、2か所は現況余裕高がなかった。)d 右岸16.5kmないし18km地点(最小余裕高0.6m→0.5m→0.3mと変化。) f 左岸18kmないし19km地点(最小余裕高0.7m→0.5m→0.5m微減と変化。)g 右岸23kmないし24.5km地点(最小余裕高0.7m→0.4m→0.4mと変化。)エ被告は、鬼怒川の改修のために最小流下能力により算出した治水安全度を 設定し、それに基づいて改修を実施した。この最小流下能力はスライドダウンの方法を用いて算出されたスライドダウン流下能力を前提とするものであるところ、次のとおり、スライドダウン流下能力は、堤防の幅及び高さに係る安全度の評価において役に立たず、堤防整備の時期・順序を判断するためには使えないものであるから、前記のとおり、現況堤防高及びその流下能 力を前提に検討するべきであり、被告の設定した治水安全度を前提とする時期・順序で堤防整備を行った本件改修計画は格別不合理である。 (ア) スライドダウン堤防高を前提とした場合の流下能力は、その性質上、現況堤防高を前提とした流下能力よりも著しく低くなる。現に、被告の作成した各資料によれば、場所によっては、スライドダウン流下能力は、現況 堤防高を前提とした流下能力よりも毎秒2000t以上も過小評価となっている。堤防決壊の最も大きな要因は越水であることからすれば、越水に対する危険性を検討するべきであるが、スライドダウン堤防高を前提としたスライドダウン流下能力では、これを適切に検討する 小評価となっている。堤防決壊の最も大きな要因は越水であることからすれば、越水に対する危険性を検討するべきであるが、スライドダウン堤防高を前提としたスライドダウン流下能力では、これを適切に検討することができない。 (イ) 治水経済調査は堤防やダム等の治水施設の整備によってもたらされる 経済的な便益や費用対効果を計測することを目的として実施されるもの であり、「治水経済調査マニュアル」は河川事業等の事業評価における費用対効果分析をどのように行うかについての指針であって、河川工事についての調査・計画・設計をどのように行うかについての基準ないし指針ではないのであるから、同マニュアルを根拠としてスライドダウン流下能力により治水安全度を算出するのは不適切である。 (ウ) スライドダウン堤防は、河川浸透水による堤防損傷(その形態は裏法すべりである。)の防止という、堤防の幅(耐浸透能力)に係る安全性の観点から堤防の安全度を評価するものである。しかし、河川から堤防への浸透水(浸潤)による堤防決壊はまれであり、浸透水(浸潤)による堤防決壊は、当該箇所の堤体土の土質が透水性と安定性(せん断強さ)において悪 いことが原因である。そして、現況堤防の質の安全性の評価を、完成堤防に対する幅の不足によってするとしても、スライドダウン堤防の天端高の幅は、同じ高さの現況堤防の堤防幅よりも小さいのであり、現況堤防の幅の不足による堤防決壊に対する安全性を評価するのに、現況堤防によらずわざわざスライドダウン堤防で、さらにスライドダウン流下能力で行うの は意味がなく、用いるべき指標を誤っているというべきである。 (被告の主張)ア鬼怒川の堤防整備は、現況河道の流下能力の評価及び河川管理の諸制約等を基礎として 下能力で行うの は意味がなく、用いるべき指標を誤っているというべきである。 (被告の主張)ア鬼怒川の堤防整備は、現況河道の流下能力の評価及び河川管理の諸制約等を基礎として、整備の必要性・緊急性や鬼怒川全体のバランスに意を用いつつ、上流部を先行して改修した場合には下流部の水害の危険性を助長するお それがあることから下流部から上流部へと改修を進めるという下流原則に則り、鬼怒川全体において計画的かつ段階的に進められていたものであり、河川管理の一般水準及び社会通念に照らして本件改修計画が全体として格別不合理であったとはいえない。 イ左岸20kmないし21km地点の堤防整備よりも先に、原告らが指摘す る区間の堤防整備が行われたのは、次のような事情に基づくものであって、 相応の理由があったことは明らかであり、左岸21km地点の治水安全度が1/10超であって、早急に堤防を整備するべき箇所に当たらなかったことを考慮すれば、本件改修計画及びその実施が格別不合理であるとはいえない。 なお、ある地点が決壊した場合における氾濫域の広狭という要素は、改修計画において織り込み済みであるから、この要素のみを採り上げて検討するこ とは適切でない。 (ア) 平成13年から平成23年までの堤防整備a 左岸左岸については、治水安全度が低い区間について、当該区間がどの程度の長さで連続しているかや用地買収の状況等を踏まえ、原則として、 下流原則に則り、改修工事を実施してきた。 具体的に、左岸については、比較的下流部に治水安全度1/10超1/30未満の区間や1/10以下の区間が幅広く認められたため、被告は、平成13年度以降、用地買収が早期に完了した左岸9kmか 具体的に、左岸については、比較的下流部に治水安全度1/10超1/30未満の区間や1/10以下の区間が幅広く認められたため、被告は、平成13年度以降、用地買収が早期に完了した左岸9kmから10km地点までを含む一連の区間から改修工事を開始し、順次用地買収が 完了した箇所を含む区間において改修工事を実施した。なお、左岸11km地点付近の改修工事が平成23年度に至ってから行われたのは、同地点付近の用地買収の進捗状況が影響したためである。 b 右岸右岸についても、左岸と同様の観点から改修工事を実施した。 なお、右岸11km地点については、平成14年7月の洪水により家屋の浸水被害が発生した堤防未改修の区間であることなどを考慮して、総合的な考慮の結果、優先的に堤防整備を実施した。 また、右岸16.5kmないし18km地点については、被告の治水安全度の評価が1/10未満であった箇所を含んでいる上、当該箇所に 道路管理者により一般国道468号首都圏中央連絡自動車道(いわゆる 圏央道)の橋梁架設が計画されていた状況を踏まえ、被告は、当該橋梁の整備時期に合わせて同地点の堤防整備を実施した。一般に、河川を横断する橋梁(高架橋を含む。)を架設する場合、堤防を開削して橋台や橋脚を設置するなど、堤防自体の工事を伴うことが通例であるから、橋梁整備と堤防整備の調整を行うことが合理的であり、同地点の堤防整備は これを踏まえたものである。 (イ) 平成24年度以降の堤防整備被告は、左岸・右岸ともに、上記の観点から、継続して改修工事を実施した。 なお、右岸14kmないし17.5km地点については、治水安全度が 1/10以下の 堤防整備被告は、左岸・右岸ともに、上記の観点から、継続して改修工事を実施した。 なお、右岸14kmないし17.5km地点については、治水安全度が 1/10以下の箇所が多く、被告は、当該箇所を早期の堤防整備を要する箇所と判断していた。その後、河道状況等の変化によって、治水安全度が1/10以下の箇所が減少したものの、被告は、堤防整備の必要性自体に変化はないと判断し、用地取得等が完了した段階で堤防整備を実施した。 ウ堤防の安全度評価については、治水経済調査マニュアルにおいて、「堤防 の高さだけでなく、堤防の質も含めた機能評価を行うこととする」とされ、この機能評価の方法については、「堤体内への河川水浸透に対する安全性を一つの基準として、これを堤体幅で評価することとし、定規断面によるスライドダウンを行って堤防の高さを補正」し、「上述したような評価を加味した堤防の高さを基に、河道計画で用いられている不等流計算法によって河道 の流下能力を判定」するものとされており、堤防の物理的な高さのみによって行うことは適切でない。河川管理は、堤防の高さを高めることだけでなく、洪水を安全に流すことができるようにするという観点に立った整備を必要とするところ、治水安全度は、堤防整備によって堤防の形状を確保するとともに、河道の拡幅・掘削、護岸整備等によって河道の流下断面を適切に確保 することによって総合的に高められるものである。 また、堤防が決壊する原因は、越水だけに限られるものではなく、鬼怒川堤防調査委員会報告書においても、堤防決壊のメカニズムは、越水、浸透、侵食・洗堀の3形態があり、「これらのメカニズムが複合的な要因となって堤防決壊することもある」とされ、本件決壊においても浸透によ 堤防調査委員会報告書においても、堤防決壊のメカニズムは、越水、浸透、侵食・洗堀の3形態があり、「これらのメカニズムが複合的な要因となって堤防決壊することもある」とされ、本件決壊においても浸透によるパイピングが決壊を助長した可能性は否定できないとされている。そうすると、堤防 決壊要因として、浸透等の越水以外の原因を無視することはできない。 エしたがって、ある一時点の堤防高や天端幅を捉えて、上三坂地区について下流側より優先して堤防整備をするべきであったとする原告らの主張は理由がない。 (4) 被告が賠償するべき損害の範囲 (原告らの主張)ア原告らに共通する主張(ア) 住宅自体の費用に関する損害次の計算式による。ただし、実際に支出した費用が次の計算式により算出した損害額よりも低い場合には、低い方を損害として主張する。 a 住宅の取得価額が明らかな場合(計算式)損害=(取得価額-減価償却費)×被害割合(別紙3参照)減価償却費=取得価額×0.9×償却率×経過年数b 自宅の取得価額が明らかでない場合 (計算式)損害={(1㎡当たりの工事費用×総床面積)-減価償却費}×被害割合(イ) 家財に関する損害次の計算式による。ただし、実際に支出した費用が次の計算式により算出した損害額よりも低い場合には、低い方を損害として主張する。 a 家財の取得価額が明らかな場合 (計算式)損害=(取得価額-減価償却費)×被害割合b 家財の取得価額が明らかでない場合(計算式 a 家財の取得価額が明らかな場合 (計算式)損害=(取得価額-減価償却費)×被害割合b 家財の取得価額が明らかでない場合(計算式)損害=家族構成別家財評価額(別紙3の別表2参照)×被害割合 (ウ) 避難生活慰謝料原告らは、本件氾濫により、本件氾濫前に送っていた平穏な生活を阻害され、困難な生活を余儀なくされた。これによる精神的苦痛に対する慰謝料としては、次のaないしeの事由1つにつき1日あたり5000円が相当である。 a (自宅にて)生活の場が水没して不便な生活を余儀なくされた。 b 避難生活を余儀なくされた。 c 家族の別離・二重生活を余儀なくされた。 d 自身に要介護・障害・持病がある中で避難生活を余儀なくされた。 e 要介護者あるいは乳幼児(小学校入学以前)の世話をしながら避難生 活を余儀なくされた。 (エ) その他慰謝料前記(ウ)の避難生活慰謝料とは別個に、本件氾濫により生命又は身体に対する侵害の危険等を経験した場合や写真、アルバム、ビデオ等思い出の品を失った場合には、次の慰謝料が支払われるべきである。 a 生命・身体の安全が侵害される危険を経験した場合1回当たり10ないし50万円b 写真、アルバム、ビデオ等思い出の品を失った場合1人10ないし30万円イ原告ら個別の損害に係る主張 別紙4「原告別損害一覧表」記載のとおり。 (被告の主張)ア原告らに共通する主張(ア) 住宅・家財の費用に関する損害不法行為による物の滅失・棄損に対する賠償額は、特段の事由のない限り、滅失・棄損当時の交換価値に 主張)ア原告らに共通する主張(ア) 住宅・家財の費用に関する損害不法行為による物の滅失・棄損に対する賠償額は、特段の事由のない限り、滅失・棄損当時の交換価値によって定められるべきであり、修理費用 が被害時点における家屋の時価を超える場合には、時価の限度で請求できるにとどまる。修理費用が被害時点における家屋の時価を超えないとしても、通常経年劣化が生じており、修理部分については資材が更新されることにより価値が上昇するはずであり、特に大規模な修繕を行った場合には、家屋自体の経済的価値が大きく上昇すると考えられることからすると、少 なくとも修理費用をそのまま損害額と認定することはできない。 統計データ等の平均値又は中央値は、飽くまで原告らとは異なる者に対する調査から算出された統計上の数値で、現実に各原告に生じた損害と異なり、特に家財については各人の所得や保有資産の多寡の他、生活歴、居住の経緯及び趣味嗜好等に応じた個人差が非常に大きい性格のものであ ることや、例えば床上1.5m未満の浸水においては通常建物の2階部分には浸水の被害が生じていないにもかかわらず、被害割合が100%とされるなど不合理な結論となることなどからすれば、統計データ等を根拠とした損害算定は原則として許容されない。 家屋・家財そのものが流失した場合、漏電等により家屋が焼失したなど の限られた場合を除けば、損傷していたとしても家屋・家財そのものは残存しているはずである。また、使用不能となった家財等を再調達した際の領収証等が存在するはずであって、損害の発生及びその額については、具体的な主張立証が可能であるから、そのような主張立証がされていない以上、原告らに損害が発生したとはいえない。 (イ 領収証等が存在するはずであって、損害の発生及びその額については、具体的な主張立証が可能であるから、そのような主張立証がされていない以上、原告らに損害が発生したとはいえない。 (イ) 慰謝料 慰謝料は、被害の状況、侵害行為の態様を含めた様々な個別事情を考慮して算定されるものであり、事案において生じ得る事情を抽象的に類型化し、それぞれに一定額を定め、当該事情の数によって単純に金額を合算する方法によって算定されるべきものではない。 イ原告ら個別の損害に係る主張 否認又は知らない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実のほか、括弧内に掲げた証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 (1) 鬼怒川の現況堤防高等平成13年度、平成20年度、平成23年度、平成27年度における鬼怒川の6km地点から30km地点までの現況地盤高、現況余裕高及び計画高水位の変動並びに用地買収及び堤防整備が完了した区間は別紙5記載のとおりであり、平成13年度、平成23年度及び平成27年度の若宮戸地区における具 体的な数値(高さの単位はいずれもY.P.である。)は次のとおりであった。 現況堤防高は、測量範囲のうち最も高い地点の数値となっていた。また、若宮戸地区の現況堤防高は、本件砂丘を含めた地点を測量した結果であり、現況堤内地地盤高が反映されたものではなかった(甲1)。 ア平成13年度の若宮戸地区の各数値(甲14) 距離標(km) 計画高水位現況堤防高(左岸) 現況堤内地地盤高(左岸)24.5022.080 22.96018.99024.7522.170 23.52017.65025.0022.26 水位現況堤防高(左岸) 現況堤内地地盤高(左岸)24.5022.080 22.96018.99024.7522.170 23.52017.65025.0022.260 23.16017.47025.2522.350 23.43018.430 25.5022.440 24.32019.22025.7522.530 27.77022.18026.0022.620 23.92019.680イ平成23年度の若宮戸地区の各数値(甲15)距離標(km) 計画高水位現況堤防高(左岸) 現況堤内地地盤高(左岸)24.5022.080 22.81018.64824.7522.170 23.43017.49025.0022.260 23.15017.70025.2522.350 23.25018.92025.5022.440 23.51019.13025.7522.530 27.58020.33026.0022.620 23.71019.520ウ平成27年度の若宮戸地区の各数値(甲16)距離標(km) 計画高水位現況堤防高(左岸) 現況堤内地地盤高(左岸)24.5022.080 22.84018.65924.7522.170 23.32017.35525.0022.260 22.98019.53625.2522.350 20.19019.66625.5022.440 23.44019.60325.7522.530 27.52024.03026.0022.620 24.80024.120 19.66625.5022.440 23.44019.60325.7522.530 27.52024.03026.0022.620 24.80024.120(2) 本件砂丘の位置(甲44)本件砂丘は、若宮戸地区の左岸24.5kmないし26km地点に存在しており、上流側の端である左岸26km地点付近及び下流側の端である左岸24. 6km地点付近は、いずれもその上流側及び下流側の堤防と接していた。 (3) 実態的に堤防のような役割を果たしている地形の調査結果(甲17)国土交通省は、その管理する河川について、実態的に堤防のような役割を果たしている地形につき、①河川区域外で民有地に存在している、②一連区間の地形の平均的な高さが1.0m程度以上の地形を対象とする、③道路盛土等の近年人工的に造成された盛土、典型的な山付き区間及び堀込区間は除いている、 ④地形の物理的な形状により判別したものであり、地形の背後地の土地利用等の状況は考慮していない、との条件を設定して調査を行っており、鬼怒川については、本件砂丘を「いわば自然堤防」として挙げていた。 (4) 本件砂丘の利用状況(甲2)鬼怒川と市街地との間には、昭和20年代には本件砂丘のような砂丘が広く 分布しており、これらの砂丘は、昭和55年頃までに大きく減少したが、平成元年以降は大きな変化が見られなかった。 (5) 本件各事業再評価資料ア平成23年度事業再評価資料(甲7)(ア) 平成23年度から評価対象期間については、おおむね20ないし30年 間の整備内容を想定し、評価対象期間とすることとされた。 (イ) 人口、資産が集中している約3kmないし20km地点を 平成23年度から評価対象期間については、おおむね20ないし30年 間の整備内容を想定し、評価対象期間とすることとされた。 (イ) 人口、資産が集中している約3kmないし20km地点を先行し、堤防の高さや幅が不足する箇所の築堤や老朽樋管の改修を実施するとともに、約20kmないし45km地点においても堤防の高さや幅が不足する箇所の築堤等を実施する。このことにより、おおむね1/30規模相当の洪 水に対する安全を確保する。 (ウ) 当面7年間の整備区間及びおおむね20ないし30年間の整備区間を示した図には、若宮戸地区は含まれず、同地区にある本件砂丘は「山付堤」と表示されていた。 イ平成26年度事業再評価資料(甲8) (ア) 平成23年度事業再評価資料におけるのと同様に、当面7年間で整備す る箇所とおおむね20ないし30年間で整備する箇所に分けており、これを示した図において、若宮戸地区の一部がおおむね20ないし30年間で整備する箇所に含まれていた。 (イ) 当面7年間で行う予定の事業は、①洪水を安全に流下させるための対策(堤防が整備されていない地区や高さ又は幅が不足している地区につい て築堤を行い、流下能力を向上させる。)、②浸透・侵食対策(出水によりみお筋が変化したことで高水敷が洗堀され、堤防が侵食される危険性があるため、そのような箇所には低水護岸を敷設し、これ以上侵食されないように保護する。)とされていた。 (6) 平成23年度鬼怒川直轄改修事業事業再評価根拠資料及び平成26年度鬼 怒川直轄改修事業事業再評価根拠資料(甲41、乙73。以下「本件再評価根拠資料」という。)平成23年度において、次のような整備についての検討を行い、平成26年度 び平成26年度鬼 怒川直轄改修事業事業再評価根拠資料(甲41、乙73。以下「本件再評価根拠資料」という。)平成23年度において、次のような整備についての検討を行い、平成26年度は、平成23年度の内容を踏襲した。 ア整備目標の設定 事業再評価における整備目標の設定については、策定中の河川整備計画と同規模とし、1/30規模の洪水を安全に流下させることを目標として設定する。 イ流下能力の評価流下能力の評価の前提となる流下能力はH-Q算定方式により算出した。 ウ整備箇所の設定(流下能力評価に関する整備)堤防整備が必要な箇所で治水安全度が1/30未満を整備箇所とする。整備に当たっては原則下流から整備を実施するものとするが、治水安全度が1/10以下の箇所を早期に解消するものとする。 過去の測量結果から、キロポストでは評価できない24.75km地点付 近及び25.25km地点付近について地盤高が1/30にみたないと想定 されることから、おおむね20年ないし30年間で整備する箇所として、堤防整備に加えることとする。具体的には24.75km地点付近については140m、25.25km地点付近については90m整備延長とする。 (7) 鬼怒川の改修に係る経緯・状況鬼怒川の堤防整備は、昭和40年代までにおおむね完了したが、昭和48年 の工事実施基本計画における鬼怒川の計画高水流量を毎秒4000m㎥から毎秒6200m㎥に増加させたことにより、下流区間については、整備するべき堤防の規格を、これを前提とした計画高水位から余裕高1.5m、堤防天端幅6mまで確保することが必要となった(乙38、乙39)。 このような計画の改定及び り、下流区間については、整備するべき堤防の規格を、これを前提とした計画高水位から余裕高1.5m、堤防天端幅6mまで確保することが必要となった(乙38、乙39)。 このような計画の改定及び洪水の発生状況等を踏まえ、被告は、平成13年 以降、鬼怒川において、距離標ごとの流下能力に基づく治水安全度を評価した上で、洪水による被災履歴、流下能力の状況及び上下流のバランス等を総合的に勘案し、治水安全度の低い箇所を優先しつつ、いわゆる下流原則(上流部を先行して改修した場合には下流部の水害の危険性を助長するおそれがあるので、下流部から上流部へと改修を進めることが必要であること。)に基づき、原 則として下流から上流に向かって、堤防の整備(既存堤防の嵩上げ及び拡幅並びに無堤部への築堤)、具体的には、測量等の調査や設計、地権者との交渉による用地取得や補償、築堤工事の施工等を行った(乙71)。 具体的な堤防整備は本件再評価根拠資料に沿って行われており、その状況は別紙6のとおりである。平成13年以降の3kmないし27km地点について は、治水安全度を1/30の規模の洪水に耐え得るもの、1/10から1/30未満の規模の洪水に耐え得るもの、1/10の規模の洪水に耐え得ないものの3段階に分け、1/30の規模の洪水を安全に流下させることを当面の目標とし、1/10の規模の洪水に耐え得ない箇所について下流原則を踏まえつつ堤防整備を行い、これと並行して用地買収も行った(甲41、乙72、乙73)。 (8) 若宮戸地区の築堤計画 ア平成15年度(甲4、甲21、甲44)被告は、平成16年3月当時、若宮戸地区の左岸24.5kmないし26km地点の1.35kmの区間について、無堤区間であるとして築堤詳細設 ア平成15年度(甲4、甲21、甲44)被告は、平成16年3月当時、若宮戸地区の左岸24.5kmないし26km地点の1.35kmの区間について、無堤区間であるとして築堤詳細設計を行った。 堤防法線形は、河川境界をベースとして設定した線形(第1案)、地山(本 件砂丘)の尾根をベースに設定した線形(第2案)、1案と2案の考え方を合わせた線形(第3案)が検討され、いずれの案についてもデメリットを払拭しきれないため、第1案と第2案の両案について設計を実施することとした。 ただし、25.5kmないし26km地点の区間は、背後の地山が高く、計画高水位以上となっていたことを理由に、堤防整備の対象外とされた。 イ平成26年度(乙55、乙73)被告は、平成27年3月、若宮戸地区について、平成13年、14年出水により、自然堤防(判決注・本件砂丘のこと)前面の高水敷まで浸水した地区であり、平成24年には自然堤防の一部が民間開発により掘削されたことなどから、堤防整備について検討した。なお、平成23年度時点から、地盤 高が治水安全度1/30に満たないと想定されることを理由として、左岸24.75km地点付近の堤防整備を140m延長し、また、25.25km地点付近の堤防整備を90m延長することとされており、平成26年度時点も同様であった。 (9) 堤防決壊の原因に関する知見(甲49) ア堤防決壊の事例利根川水系において、堤防が決壊し氾濫原に洪水流があふれた事例についてみると、過去約80年間においては、堤防決壊による洪水が28箇所、構造物周りでの漏水が3箇所、一般堤防での漏水が1箇所となっていた。 イ堤防システムとしての安全性 かつて、河川堤防の安 去約80年間においては、堤防決壊による洪水が28箇所、構造物周りでの漏水が3箇所、一般堤防での漏水が1箇所となっていた。 イ堤防システムとしての安全性 かつて、河川堤防の安全性は連続堤防の中の一つの横断面を捉えて、その 流下能力や堤体の土質特性に基づいてその安全性を評価することに重点が置かれてきた。しかし、堤防は、河川の縦断方向に長いものであり、堤防の一横断面という点ではなく、縦断方向の線及びシステムとして捉える必要がある。すなわち、堤防が決壊あるいは越水した場合には、他の区間の水位が低下するなど河川全体の出水形態にも大きな影響を及ぼす。このため、河川 堤防の安全性は、一横断面だけではなく、左右岸あるいは上流から下流までの縦断的に連続した一連のものとしてその安全性を評価する必要がある。 堤防システムとして防御できる容量を超える洪水が発生した場合には、上下流に比べて部分的であっても相対的に堤防の高さの低いところで越水し、堤防決壊に至っている事例が多い。この洪水処理能力と関わる堤防のいわば 量的な問題は、河川の洪水流下能力と水位との関係、そしてそれに備える堤防の高さから捉え、安全性を把握する必要がある。また、越水なき堤防決壊については、堤防一般部では、堤体の形状、河川水や雨水の浸透のしやすさなどの堤体や基礎地盤の土質特性が、堤防決壊の原因になることが多いため、堤体の構成や材料等を明らかにしておく必要がある。 ウ越水による堤防決壊越水による堤防決壊について、現象論的・背景論的にその原因をみると、事例調査結果からは次のようなものが挙げられる。 ① 河道及び堤防システムの能力を超える出水で、越水が発生したもの。 ② 堤防が段階的な整備の途上にあり、その能 論的にその原因をみると、事例調査結果からは次のようなものが挙げられる。 ① 河道及び堤防システムの能力を超える出水で、越水が発生したもの。 ② 堤防が段階的な整備の途上にあり、その能力以上の洪水で越水が発生し たもの。 ③ 堤防のある地先の個別特殊な事情により、堤防の高さが上下流に比べて不足しておりそこから越水したもの。 エ堤防一般部での越水なき漏水による堤防決壊洪水が発生すると、堤防区間では多くの箇所で堤防漏水があることが普通 である。漏水による堤防の損傷には、堤防の基盤からの漏水によって水と土 砂が噴出しその噴出口付近に堆積するボイリング、パイピングと呼ばれる現象によるものや、堤体内へ雨水や河川水が浸透して堤防が弱体化しその安定性が減少して堤防の法面がすべり崩壊するものなどがある。 2 本件改修計画の内容(1) 証拠(乙63)及び弁論の全趣旨によれば、本件各事業再評価資料は、政策 評価法に基づく事後評価(政策が決定された後に行われる政策評価。)の成果として作成されたものであること、事後評価は、政策の決定後において、政策効果を把握し、これを基礎として、政策の見直し・改善や新たな政策の企画立案及びそれに基づく実施に反映させるための情報を提供する見地から行うものであることが認められる。同法が、行政機関が行う政策の評価に関する基本 的事項等を定めることにより、政策の評価の客観的かつ厳格な実施を推進しその結果の政策への適切な反映を図るとともに、政策の評価に関する情報を公表し、もって効果的かつ効率的な行政の推進に資するとともに、政府の有するその諸活動について国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的としていること(1条)を考慮すれば、同法による政策評価は河 し、もって効果的かつ効率的な行政の推進に資するとともに、政府の有するその諸活動について国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的としていること(1条)を考慮すれば、同法による政策評価は河川整備のみを対 象としたものではなく、本件各事業再評価資料は、当然に本件改修計画の一部を構成するものとして作成されたものとはいえない。 (2) しかし、本件各事業再評価資料は、上記のとおり、事後評価の成果として作成されたものであるから、その内容は、すでに決定された一定の政策を前提としているものであり、本件再評価根拠資料において策定中の河川整備計画と同 規模の整備目標を設定していることを考慮すれば、本件各事業再評価資料における事後評価の対象が鬼怒川の改修計画であることは明らかであるから、本件各事業再評価資料は本件改修計画について作成されたものであるといえる。また、被告が本件再評価根拠資料を基に鬼怒川の改修状況について主張していることに照らせば、本件再評価根拠資料が鬼怒川の改修状況を示す資料と評価す るべきものであることは明らかといえる。 そして、前提事実(5)のとおり、本件基本方針及び本件整備計画は、鬼怒川の改修計画全体につき、河川法等の法令に沿って河川整備における基本的かつ根本的な事項を概括的に定めているにすぎず、より詳細かつ具体的な改修計画については別途検討されることが予定されていたと考えられることからすれば、本件各事業再評価資料及び本件再評価根拠資料は、本件基本方針及び本件整備 計画を前提に本件改修計画の詳細かつ具体的な内容を検討したものであり、本件改修計画の内容を推認させるものとみるのが相当である。 (3) 以上を前提として本件改修計画の内容をみるに、認定事実(5)及び(6)ウのとおり、鬼 画の詳細かつ具体的な内容を検討したものであり、本件改修計画の内容を推認させるものとみるのが相当である。 (3) 以上を前提として本件改修計画の内容をみるに、認定事実(5)及び(6)ウのとおり、鬼怒川の改修に係る経緯・状況と本件各事業再評価資料及び本件再評価根拠資料の内容は、治水安全度を設定した上でより下流の区域から堤防整備を 行うなどの点において全体として合致していることからすれば、本件改修計画の内容は、様々な要素を総合的に勘案し、治水安全度の低い箇所を優先しつつ、いわゆる下流原則に基づき、原則として、平成13年以降、3kmないし27km地点について、治水安全度を1/30の規模の洪水に耐え得るもの、1/10から1/30未満の規模の洪水に耐え得るもの、1/10の規模の洪水に 耐え得ないものの3段階に分け、1/30の規模の洪水を安全に流下させることを当面の目標とし、1/10の規模の洪水に耐え得ない箇所について下流原則を踏まえつつ堤防整備を行い、これと並行して、用地買収も行うというものであったと推認される。要するに、本件改修計画は、本件基本方針及び本件整備計画を前提に、上記のような治水安全度を設定の上、後述の河川管理におけ る諸制約等様々な要素を総合的に勘案しつつ、治水安全度の低い箇所を優先的に整備することを内容とする計画であったものと認められる。 3 争点(1)(若宮戸地区の本件砂丘を含む区域を河川区域に指定しなかったことが河川管理の瑕疵に当たるか否か。)(1) 判断の準則 ア国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が通 常有するべき安全性を欠いて他人に危害を及ぼす危険性のある状態をいい、このような瑕疵の存在については、当該営造物の構造、用法、場所的環境、利用状況等 の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が通 常有するべき安全性を欠いて他人に危害を及ぼす危険性のある状態をいい、このような瑕疵の存在については、当該営造物の構造、用法、場所的環境、利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的、個別的に判断するべきものである。ところで、一般に河川は、管理の開始当初から上記の安全性を有しているものではなく、洪水等の自然的原因による災害をもたらす可能性を内包 し、治水事業を経て逐次その安全性を高めていくことが予定されているものであるところ、治水事業については、議会が国民生活上の他の諸要求との調整を図りつつ配分を決定した予算の下で必要性、緊急性の高いものから逐次改修を実施していく他はないという財政的制約、長い工期を要するという時間的制約、流域全体について総合的に調査検討の上、緊急に改修を要する箇 所から段階的に、また下流から上流に向けて行うことを要するなどの技術的制約、流域の開発等による雨水の流出機構の変化や治水用地の取得難等の社会的制約が内在するものである。したがって、河川が通常予測し得る水害を未然に防止するに足りる安全性を備えるに至っていないとしても、そのことから直ちに河川の管理について瑕疵があるとすることはできず、河川の備え るべき安全性としては、原則として、上記諸制約の下で施行されてきた治水事業の過程における改修、整備の段階に対応する安全性をもって足りるものとせざるを得ない。そして、河川の管理についての瑕疵の有無は、過去に発生した水害の規模、発生の頻度、発生原因、被害の性質、降雨状況、流域の地形その他の自然的条件、土地の利用状況その他の社会的条件、改修を要す る緊急性の有無及びその程度等の諸般の事情を総合的に考慮し、上記諸制約の下での同種同規模の河川の管理の一般水準及び社会通 地形その他の自然的条件、土地の利用状況その他の社会的条件、改修を要す る緊急性の有無及びその程度等の諸般の事情を総合的に考慮し、上記諸制約の下での同種同規模の河川の管理の一般水準及び社会通念に照らして是認し得る安全性を備えていると認められるかどうかを基準として判断するべきである(最高裁平成8年7月12日第二小法廷判決・民集50巻7号1477頁参照)。 イところで、河川の備えるべき安全性が上記諸制約の下で施行されてきた治 水事業の過程における改修、整備の段階に対応したものであるとすると、河川管理者には、河川法1条所定の災害の発生を防止するなどの河川管理の目的に照らし、そのような段階的な安全性が損なわれないように適切に河川管理をするべき義務があるというべきである。このことは、改修後の河川についてその河川管理施設等を適切に管理するべきことだけでなく、改修計画を 策定した時点で想定された安全性が損なわれないように管理するべきことを含むものと解される。なぜなら、河川の改修計画においては、上記諸制約の下で長期間にわたる治水事業の過程の中で必要性、緊急性の高いものから順に改修が実施されるのが通常であり、一定の治水安全度を有し、改修の優先度が低いとされた箇所については、改修がされるまでの間、その安全性が 維持されることが改修計画の前提とされており、また、事後的に当該箇所の安全性が損なわれるようなことがあったとしても、上記諸制約から計画の時期を繰り上げ、又は工事の順序を変更するなどの改修計画の変更を迅速に行うことは容易でなく、未改修の段階でも現状の治水安全度を確保するべきであると解されるからである。 そして、既存の河川管理施設等の治水安全度が損なわれないようにすることは、河川管理者がその権限を適切 容易でなく、未改修の段階でも現状の治水安全度を確保するべきであると解されるからである。 そして、既存の河川管理施設等の治水安全度が損なわれないようにすることは、河川管理者がその権限を適切に行使することにより達成できるものであり、上記諸制約の下で施行される治水事業そのものではないから、この点において河川の管理に瑕疵があるといえるかどうかは、改修計画が格別不合理であるか否かといった基準とは別に、河川管理者に権限が付与されている 趣旨・目的に照らし、河川管理者による権限の不行使が不適切であり、それにより河川の備えるべき安全性を欠くに至ったか否かという観点から判断されるべきである。 ウこの点に関し、河川法は、河川区域内の土地について、占用、土石等の採取、工作物の新築等、掘削等を行う場合には河川管理者の許可が必要である 旨を定めており、河川管理者は、河川管理に支障を生じさせるような開発行 為を制限することができる(河川法24条ないし27条)。そのような河川管理者の許否権限が及ぶ範囲である河川区域については、河川法6条1項各号がこれを定めているところ、同1号及び2号が法律上当然に河川区域となる場合を定めるのに対し、同3号は「堤外の土地(政令で定めるこれに類する土地(中略)を含む。(後略))の区域のうち、第1号に掲げる区域(1号 地)と一体として管理を行う必要があるものとして河川管理者が指定した区域」と、河川管理者の指定によって初めて河川区域となる場合を定めている。 ここにいう「堤外の土地に類する土地」とは、「地形上堤防が設置されているのと同一の状況を呈している土地のうち、堤防に隣接する土地(後略)」をいうものであり(河川法施行令1条1項1号)、同号の「一体として管理を行う 必要があるもの」として河 上堤防が設置されているのと同一の状況を呈している土地のうち、堤防に隣接する土地(後略)」をいうものであり(河川法施行令1条1項1号)、同号の「一体として管理を行う 必要があるもの」として河川管理者が河川区域に指定するべきか否かについては、河川区域の指定が私権の制約を伴うものであり、地権者との調整を要することなどを踏まえると、河川管理者の合理的な裁量に委ねられていると解される。もっとも、前記イに説示のとおり、河川管理者には、災害の発生を防止するために河川を適切に管理するべき義務があり、そのために上記掘 削等の許否の権限が付与され、その権限を行使する前提として河川区域の指定が必要となることからすると、上記河川法の趣旨・目的に照らし、同号の要件に該当する場合には、災害の発生防止の観点から、適切に河川区域の指定がされなければならないものと解される。したがって、特定の土地につき、同号の要件に該当するものと認められ、かつ河川法上の規制が及ばないこと により重大な被害が発生することが具体的に予見できる場合には、私権の制約に優越する利益があることは明らかであるから、特段の事情がない限り、河川管理者には河川区域に指定するべき義務があるというべきである。 以上を踏まえると、河川管理者において、上記の場合に当たるものとして特定の土地を河川区域に指定するべきであったにもかかわらず、これを怠っ たために河川が備えるべき安全性を欠いて他人に危害を及ぼす危険性のあ る状態となった場合には、被告の河川管理に瑕疵があるものと解するのが相当である。 以上に述べたところを前提として、被告が本件砂丘を含む区域を河川区域に指定しなかったことが河川管理の瑕疵に当たると認められるか否かにつき、以下、検討する。 (2) 本件砂丘を である。 以上に述べたところを前提として、被告が本件砂丘を含む区域を河川区域に指定しなかったことが河川管理の瑕疵に当たると認められるか否かにつき、以下、検討する。 (2) 本件砂丘を河川区域に指定するべき義務違反の有無ア本件砂丘は「地形上堤防が設置されているのと同一の状況を呈している土地のうち、堤防に隣接する土地」に当たるか否か認定事実(2)のとおり、本件砂丘は、若宮戸地区の左岸24.5kmないし26km地点に存在しており、上流側の端である左岸26km地点付近及び 下流側の端である左岸24.6km地点付近は、それぞれ上流及び下流の堤防と接していたから、「堤防に隣接する土地」と認められる。 また、山付堤とは、丘陵地と平野部が接する付近で、平野部には堤防が築かれているが、丘陵地部分では丘陵地が堤防としての役割を果たしているものを意味するところ(甲30)、認定事実(1)、(3)、(5)ア(ウ)のとおり、本件 砂丘は、上流及び下流の堤防と接する地点からほぼ鬼怒川の流形に沿った形状をしており、実態的に堤防のような役割を果たしている地形(自然堤防)として挙げられ、現況堤内地には計画高水位を上回る部分が存在しないが、本件砂丘の地盤高を含むことで現況堤防高が計画高水位を上回るとされ、山付堤として堤防の役割を果たすものと扱われていたことからして、「地形上 堤防が設置されているのと同一の状況を呈している土地」に当たるものと認められる。この点、認定事実(6)ウ及び(8)イのとおり、本件砂丘の一部が1/30の基準に満たない箇所があり、若宮戸地区にも改修計画が存在していたとしても、それにより若宮戸地区が山付堤であったことや被告が本件砂丘に堤防としての役割を認めていたことが否定されるものではない。 した たない箇所があり、若宮戸地区にも改修計画が存在していたとしても、それにより若宮戸地区が山付堤であったことや被告が本件砂丘に堤防としての役割を認めていたことが否定されるものではない。 したがって、本件砂丘は、「地形上堤防が設置されているのと同一の状況 を呈している土地のうち、堤防に隣接する土地」に当たると認められる。 イ本件砂丘は「一体として管理を行う必要があるもの」として河川管理者が河川区域に指定するべきであったか否か(ア) 前提事実(6)及び(7)のとおり、被告は、現況堤防高に対してスライドダウン評価を行い、最小流下能力を算出することで治水安全度の決定を行っ ており、現況堤防高の数値は治水安全度を評価する上で重要な指標となるものである。また、前記2のとおり、本件改修計画においては、3kmないし27km地点を含む部分については、治水安全度を1/30の規模の洪水に耐え得るもの、1/10から1/30未満の規模の洪水に耐え得るもの、1/10の規模の洪水に耐え得ないものの3段階に分け、1/30 の規模の洪水を安全に流下させることを当面の目標としていた。 そして、認定事実(1)及び(5)に照らせば、若宮戸地区の左岸24.5kmないし26km地点は無堤防区間であり、現況堤内地地盤高が計画高水位を大きく下回っていたが、その治水安全度は、現況堤内地地盤高ではなく、本件砂丘を含む範囲の現況地盤高に基づいて算出され、おおむね1/ 30の規模の洪水に耐え得るものと設定されていたから(平成23年度事業再評価資料において、若宮戸地区は当面の7年の整備区間及びおおむね20ないし30年間の整備区間に含まれておらず、本件再評価根拠資料では、本件砂丘のうち一部に1/30の基準を満たない箇所があると想定され、おおむね2 て、若宮戸地区は当面の7年の整備区間及びおおむね20ないし30年間の整備区間に含まれておらず、本件再評価根拠資料では、本件砂丘のうち一部に1/30の基準を満たない箇所があると想定され、おおむね20ないし30年間で整備する箇所とされたが、反対にそれ 以外の箇所は1/30の基準を満たしていたと認められる。)、被告は、本件砂丘があることを根拠にして、若宮戸地区について、当面の目標である1/30の規模の洪水を安全に流下させることができる程度の安全性が備わっているものと扱っていたものと認められる。このことは、認定事実(8)のとおり、平成16年3月当時、若宮戸地区の左岸24.5kmないし 26km地点について、無堤防区間であるとして築堤詳細設計が行われ、 地山(本件砂丘)の尾根をベースに設定した堤防法線形が検討されていたこと、25.5kmないし26km地点の区間の左岸は、背後の地山が高く、計画高水位以上となっていたことを理由に、堤防整備の対象外とされていたこと、また、平成27年度には、平成24年には自然堤防の一部が民間開発により掘削されたことを理由に堤防整備について検討されてお り、本件砂丘を生かした築堤計画や本件砂丘の掘削状況を考慮した堤防整備が検討されていたことなどからも裏付けられる。本件各事業再評価資料においては、認定事実(5)及び(7)のとおり、以上のことを前提として築堤計画や改修の優先順位等が検討されており、若宮戸地区が、平成23年度事業再評価資料では当面7年間及びおおむね20ないし30年間の整備 区間に含まれず、平成26年度事業再評価資料でも、その一部についてのみおおむね20ないし30年間の整備区間とされていたから、相当長期間にわたり本件砂丘の現状が維持されることが想定されていたものである。 そう れず、平成26年度事業再評価資料でも、その一部についてのみおおむね20ないし30年間の整備区間とされていたから、相当長期間にわたり本件砂丘の現状が維持されることが想定されていたものである。 そうすると、おおむね1/30の規模の洪水を安全に流下させることができる程度の安全性を有していた本件砂丘について、堤防区間と併せて山 付堤としてその現状を維持することは、若宮戸地区の治水安全度を維持する上で極めて重要であったというべきであり、これは例え一部において地盤高が1/30の基準を満たさない箇所があったとしても変わらない。したがって、本件砂丘については、その現状を維持するために、これを河川区域として管理を行う必要があったものと認められる。 (イ) そして、認定事実(4)のとおり、昭和55年ころまでの間に本件砂丘は大きく減少していたから、被告において、以後に本件砂丘が掘削等によりさらに損なわれてその尾根がより低くなる可能性は十分に認識することができたというべきであり、また、本件砂丘の掘削等がされ、現況地盤高が計画高水位を大きく下回るなどして(認定事実(1)のとおり、現況堤内 地地盤高はいずれも計画高水位を大きく下回っている。)、その治水安全度 が1/10の規模の洪水にも耐え得ないものとなった場合には、当該箇所に築堤されるまでに相当長期間を要することを考慮すれば、その間に1/10の規模の洪水が発生し、氾濫が生じる蓋然性を具体的に予見できたというべきである。 さらに、被告は、若宮戸地区で氾濫が発生した場合には多数の地域住民 らの生命・身体・財産に重大な被害が及び得ることは容易に予見できたものと認められる。このことは、遅くとも平成26年時には、鬼怒川左岸25.35km地点が破堤した場合を想定した浸水解析結果で 民 らの生命・身体・財産に重大な被害が及び得ることは容易に予見できたものと認められる。このことは、遅くとも平成26年時には、鬼怒川左岸25.35km地点が破堤した場合を想定した浸水解析結果である最大浸水深図が存在した(甲42)ことからも明らかである。 (ウ) したがって、本件砂丘を含む区域は3号地の要件に該当するものと認め られ、かつ、被告には当該土地を河川区域に指定するべき義務があったというべきである。 (3) 小括以上の次第で、被告は、本件砂丘を含む区域を河川区域として指定するべきであったにもかかわらず、これを怠っていたものであり、そのために本件 砂丘が掘削され、計画高水位を大きく下回る地盤高となり治水事業の過程における改修、整備の段階に対応した河川が備えるべき安全性を欠いて他人に危害を及ぼす危険性のある状態となったから、若宮戸地区に係る河川の管理については、本件改修計画の格別不合理性(争点(2))について検討するまでもなく、この点において、河川管理の瑕疵があったものと認められる。 4 争点(3)(上三坂地区の堤防整備を他の地区よりも後回しにしたものとして、本件改修計画が格別不合理であるといえるか否か。)(1) 判断の準則前記3(1)に説示のとおり、河川の管理についての瑕疵の有無は、過去に発生した水害の規模、発生の頻度、発生原因、被害の性質、降雨状況、流域の地 形その他の自然的条件、土地の利用状況その他の社会的条件、改修を要する緊 急性の有無及びその程度等の諸般の事情を総合的に考慮し、上記諸制約の下での同種同規模の河川の管理の一般水準及び社会通念に照らして是認し得る安全性を備えていると認められるかどうかを基準として判断するべきである。そして、既に改修計画が定め 総合的に考慮し、上記諸制約の下での同種同規模の河川の管理の一般水準及び社会通念に照らして是認し得る安全性を備えていると認められるかどうかを基準として判断するべきである。そして、既に改修計画が定められ、これに基づいて現に改修中である河川については、改修計画が全体として上記の見地からみて格別不合理なものと認められ ないときは、未改修部分につき改修がいまだ行われていないとの一事をもって河川管理に瑕疵があるとすることはできないと解するべきである(最高裁昭和59年1月26日第一小法廷判決・民集38巻2号53頁参照)。 そして、鬼怒川は既に改修計画が定められこれに基づいて現に改修中である河川であったことから、以上に述べたところを前提として、本件改修計画が格 別不合理なものであったと認められるか否かにつき、以下、検討する。 (2) 本件改修計画の格別不合理性の有無ア前提事実(6)及び前記2のとおり、本件改修計画は、治水安全度を設定した上で、様々な要素を総合的に勘案しながら、3段階に分けた治水安全度のうち低い箇所を優先的に整備するというものである。このような本件改修計 画の内容からすれば、治水安全度は優先的に整備をするか否かを決定するに当たり重要な考慮要素であるから、治水安全度の設定自体が不合理であるか否かは、本件改修計画全体が格別不合理であるか否かを検討する上で重要な要素となるものである。そこで、まず、治水安全度の設定が不合理であったか否かについて検討する。 イ前提事実(3)イ(イ)のとおり、鬼怒川の平方地点における過去の最大流量は昭和41年9月の毎秒約3126㎥、水海道地点における過去の最大流量は昭和24年8月の毎秒約3927㎥であり、平成元年以降は最大流量が毎秒3000㎥を上回ることがなかったところ ける過去の最大流量は昭和41年9月の毎秒約3126㎥、水海道地点における過去の最大流量は昭和24年8月の毎秒約3927㎥であり、平成元年以降は最大流量が毎秒3000㎥を上回ることがなかったところ、本件改修計画における4.0kmないし11km地点の治水安全度に対応した流量値は、1/10規模につ いては毎秒2858㎥、1/30規模については毎秒3578㎥であり、1 1.25kmないし27.25km地点の治水安全度に対応した流量値は、1/10規模については毎秒3076㎥、1/30規模については毎秒3863㎥であって、本件改修計画における治水安全度で想定されている流量値は、過去の水害発生時等の最大流量値を考慮したものであることがうかがわれる。 また、前提事実(6)のとおり、治水安全度は治水経済調査マニュアル(案)に記載された方法により算出された最小流下能力を基に設定されたものであるが、治水経済調査マニュアル(案)は、単に費用対効果分析のみでなく、河川整備基本方針及び河川整備計画の策定・変更の際に行う治水経済調査にも参照されるものであり、治水経済調査マニュアルに記載された堤防の安全 性評価の手法はこのような策定・変更においても当然に有用なものと考えられ、実際に、3kmないし30km地点ではこのような手法により設定された治水安全度に沿った改修が進められたのであるから、治水経済調査マニュアル(案)に記載された方法であることのみをもって、不適当な方法により治水安全度が設定されたとはいえない。 ウ他方、前提事実(6)及び(7)のとおり、治水安全度を算出するための最小流下能力は、現況地盤高からスライドダウン評価を行い、スライドダウン堤防高から更に1.5mを控除した高さを基礎として算出されており、このような 6)及び(7)のとおり、治水安全度を算出するための最小流下能力は、現況地盤高からスライドダウン評価を行い、スライドダウン堤防高から更に1.5mを控除した高さを基礎として算出されており、このような算出方法に従うと、最小流下能力は、現況地盤高から算出される流下能力よりも小さく評価されることになる。この点、認定事実(9)のとおり、利根川 水系における過去約80年間における堤防決壊が起きた32箇所のうち、28箇所が堤防越水による決壊であること、堤防の安全性評価において、堤防システムとしての安全性を検討するべきであり、堤防越水は上下流に比べて相対的に低い箇所から発生することが多く、洪水処理能力との関係では堤防の高さから安全性を把握することが重要であるとされていることに照らせ ば、スライドダウン堤防高ではなく、現況堤防高を基に安全性を把握するこ とも、堤防整備の考え方の一つとしてあり得ないではない。 しかしながら、前提事実(4)イ及び認定事実(9)のとおり、利根川水系における過去約80年間における堤防決壊が起きた事例には、越水による堤防決壊に比べると数自体は少ないが、漏水による堤防決壊が合計4箇所生じていること、越水がない堤防決壊において、パイピングによる場合や堤体内への 河川水の浸透により最終的に裏法すべりが発生して堤防が崩壊する場合等が挙げられていること、本件決壊においても、主要因ではないものの、越水前の浸透によるパイピングが本件決壊を助長した可能性を否定できないとされていることなどからすれば、パイピングや堤体内への河川水の浸透等による漏水を原因とする堤防決壊の危険性を全く無視することはできないと いうべきである。証拠(乙38)及び弁論の全趣旨によれば、河川管理施設等構造令(案)において、計画高水流 の河川水の浸透等による漏水を原因とする堤防決壊の危険性を全く無視することはできないと いうべきである。証拠(乙38)及び弁論の全趣旨によれば、河川管理施設等構造令(案)において、計画高水流量の多さに応じて堤防の天端幅として要求される長さが長くなっており(同構造令6条)、基本的に堤防の法勾配が2割以上の緩やかな勾配とすることとされていること(同構造令7条)に照らせば、パイピングや堤体内への河川水の浸透等を原因とする堤防決壊を 防止する観点から、安全性を確保するために堤防に一定の幅があることが要求されているものと認められる。そうすると、堤防整備においては、堤防の高さが重要であるのと同時に、越水以外による堤防決壊を防止する観点からの検討も必要であるというべきである。 このような堤防整備に関する考え方からすれば、現況堤防高を基礎とし、 堤防の幅に係る安全性からスライドダウン評価を行った上で最小流下能力を算出し、これにより治水安全度を算出するという方法は、パイピングや堤体内への河川水の浸透等を原因とする堤防決壊に対する安全性を一定程度担保しつつ、越水による堤防決壊に対する対策として堤防の高さを基に安全性を検討したものということができ、治水安全度の評価方法として相応の合 理性を有するものというべきである。なお、スライドダウン評価をするとし ても、スライドダウン堤防高における堤防幅を前提として評価すれば足り、そこからさらに1.5mの余裕高をとる必要はないとの考え方もあり得るところであるが、前記のような安全な堤防整備の観点からすれば、1.5mの余裕高を考慮することが格別不合理なものであるとまではいえない。 エこの点、証拠(甲40)及び弁論の全趣旨によれば、上三坂地区の左岸2 1.0km地点は、平成 整備の観点からすれば、1.5mの余裕高を考慮することが格別不合理なものであるとまではいえない。 エこの点、証拠(甲40)及び弁論の全趣旨によれば、上三坂地区の左岸2 1.0km地点は、平成23年度の詳細な測量の結果、約20.98km地点と約21.47km地点で計画高水位をそれぞれ数cm下回っており(認定事実(1)(別紙5)によれば、250mごとの測量結果では、上三坂地区の現況堤防高はいずれも計画高水位を上回っていた。)、また、同地点の現況堤防高として測定された部分の天端幅がかなり狭くなっていたことが認めら れることからすれば、上記地点について優先的に改修するべき箇所として計画されるべきとの考え方もあり得たところである。 しかしながら、前記のとおり、本件改修計画における治水安全度は、現況堤防高を基礎としつつ、スライドダウン評価を行って堤防の幅に対する安全性を考慮しているから、現況堤防高の天端幅がかなり狭く、いわば堤防とし ての実力を備えているのがより低い位置の高さと考えるべきであるとすれば、それはスライドダウン評価により考慮されているから、むしろ本件改修計画における治水安全度の設定が合理的なものであることをうかがわせる事情というべきである。また、上三坂地区については、平成23年度の詳細測量結果が判明するまでは計画高水位を下回る地点は確認されていなかっ たのであり、同詳細測量結果により判明した計画高水位との差も数cmに止まるものであったから、現況堤防高を考慮しても同地区が一定程度の安全性を備えていたということはでき、他にも被告の設定した治水安全度の低い地点が存在したことや河川の改修については様々な諸制約が存在することなども踏まえれば、特定の時点における上三坂地区に関する改修の時期、順序 等が改 はでき、他にも被告の設定した治水安全度の低い地点が存在したことや河川の改修については様々な諸制約が存在することなども踏まえれば、特定の時点における上三坂地区に関する改修の時期、順序 等が改修計画の格別不合理性を基礎づけるものとはいえない。 オ以上によれば、本件改修計画における治水安全度の設定が格別不合理であったということはできない。 (3) 実際の改修状況ア次に、実際の改修状況に照らして検討するに、認定事実(7)のとおり、必ずしも下流原則に則っていない箇所や治水安全度の低い箇所を優先していな い箇所が存在するが、前記3(1)アに説示のとおり、河川の改修には諸制約が存在するのであるから、改修計画の趣旨に反しない限り、その時点における状況に応じて柔軟に対応することも想定されているものというべきである。実際、治水安全度の低い順に堤防整備等を行わなかった箇所については、橋を架ける計画に伴い行ったことや下流区域における全体的な地盤沈下に 伴い治水安全度が変化したが、それ以外の状況に変化がないことなどを理由とするものであり、改修計画の趣旨に反するものであったとまでは認められない。 イまた、前提事実(2)ウ(イ)のとおり、鬼怒川の上三坂地区の11kmないし21.0km地点までの区間については、右岸側は基本的に台地になってい たのに対し、左岸側は鬼怒川と小貝川に挟まれた盆状の後背湿地で、上流側から下流側にかけて縦長で地盤高が少しずつ低下していく細長い凹み状の低地の地形(谷底平野)となっており、この低地の最下流部に水海道地区の市街地が広がっていたことからすれば、上三坂地区周辺においては、右岸よりも左岸で堤防決壊等が発生した場合の被害が大きかったことがうかがわ れ、このことは、左岸を優 低地の最下流部に水海道地区の市街地が広がっていたことからすれば、上三坂地区周辺においては、右岸よりも左岸で堤防決壊等が発生した場合の被害が大きかったことがうかがわ れ、このことは、左岸を優先する考慮要素にはなり得る。また、上三坂地区の本件決壊が発生した地点は、治水安全度が1/10未満の規模の洪水に耐え得ない部分を含んでいたのであり、同地点付近において決壊が生じた場合の被害状況を想定した報告書も存在することからすれば、同地点を優先する考慮要素がなかったとはいえない。 しかしながら、前提事実(4)イ及び認定事実(6)ウのとおり、上三坂地区で 本件決壊が発生したのは左岸21.0km地点付近であったところ、同地点よりも下流に治水安全度が同程度の箇所が複数存在していたのであり、下流原則に則ると上三坂地区をより下流の箇所に優先する必然性はなく、実際、基本的に下流の治水安全度の低い箇所が多く整備されており、本件改修計画に沿った改修整備が行われていたものである。また、鬼怒川の改修は、治水 安全度のみでなく、用地買収の状況や前記のような流域の状況の変化も考慮して進められてきたものであり、下流原則と治水安全度等の優先度を踏まえつつ、できる箇所から堤防整備を進めてきたものといえるから、そのような改修状況が本件改修計画の格別不合理性を基礎づけるとはいえない。 ウ加えて、上三坂地区の左岸21.0km地点における洪水位は、計画高水 位を約20cm上回るものであり、本件氾濫発生当時の雨量、水流量、過去の水害発生時の状況との比較等の観点からしても、本件の降雨が異例の雨量、水流量、水位であったことは明らかである。完成堤防と同等の安全性をより早期に備えることが望ましいことはいうまでもないが、前記のとおり、河川の改修について 等の観点からしても、本件の降雨が異例の雨量、水流量、水位であったことは明らかである。完成堤防と同等の安全性をより早期に備えることが望ましいことはいうまでもないが、前記のとおり、河川の改修については様々な諸制約が存在することに照らせば、改修中の河川で ある鬼怒川について、当時の改修段階において求められていた安全性を欠いていたとは認められない。 (4) 以上の次第で、この点において、本件改修計画が格別不合理であったとまではいうことはできず、本件決壊の発生につき、河川管理の瑕疵があったものとは認められない。 5 争点(4)(被告が賠償するべき損害の範囲)(1) 被告の河川管理の瑕疵と相当因果関係のある損害を被った原告の範囲ア以上に説示のとおり、若宮戸地区における本件溢水については、被告において本件砂丘を含む区域を河川区域として指定するべきであったにもかかわらずこれを怠った河川管理の瑕疵があり、他方、上三坂地区における本件 決壊については、本件改修計画が格別不合理であるということはできず、被 告において河川管理の瑕疵があったとはいえない。したがって、被告は、国家賠償法2条1項に基づき、原告らの主張する損害のうち、若宮戸地区に係る河川管理の瑕疵と相当因果関係のある損害の限度において、これを賠償するべき責任を負うものというべきである。 イ次に、前提事実(4)アのとおり、本件溢水が発生した若宮戸地区の痕跡水 位はY.P.22mであり、太陽光発電事業者による掘削により、掘削箇所である左岸25.35km地点付近の現況地盤高がY.P.19.7m程度となり、まさに当該掘削箇所において本件溢水が発生したものであって、仮に被告が本件砂丘を河川区域に指定し、掘削により現況地盤高が洪水位を大きく下回る km地点付近の現況地盤高がY.P.19.7m程度となり、まさに当該掘削箇所において本件溢水が発生したものであって、仮に被告が本件砂丘を河川区域に指定し、掘削により現況地盤高が洪水位を大きく下回ることを防止できていれば、浸水被害の程度及び範囲が相当程度小 さいものになっていたと認められる。この点、本件溢水が発生した左岸25. 35km地点付近はもともと本件砂丘を含めても現況地盤高が計画高水位を約1m下回っており、洪水位も若干下回っていたから(別紙7参照)、たとえ本件砂丘が掘削されていなくても一定程度の溢水が発生した可能性は否定できないが、若宮戸地区においては破堤には至らなかったことからすれば、 本件砂丘が保全されていた場合には浸水被害の程度及び範囲が相当程度小さいものになっていたものと優に推認されることから、このことによっても、本件溢水と浸水被害との間の相当因果関係は否定されない。 以上によれば、若宮戸地区での本件溢水により浸水被害を受けたと認められる原告については、同地区に係る被告の河川管理の瑕疵によって損害が生 じたものと認められる。 ウそこで、若宮戸地区に係る河川管理の瑕疵により浸水被害を受けたというべき原告の範囲について検討するに、証拠(甲10、甲損4、甲損6、甲損11、甲損13、甲損18ないし20)及び弁論の全趣旨によれば、本件氾濫発生当時、原告X7(原告番号4-1。以下「原告X7」という。)、原告 X8(原告番号4-2。以下「原告X8」という。)、原告X11(原告番号 6。以下「原告X11」という。)、原告X18(原告番号11-1。以下「原告X18」という。)、原告X19(原告番号11-2.以下「原告X19」という。)、原告X20(原告番号13。以下「原告X20」という。)、原告X26 う。)、原告X18(原告番号11-1。以下「原告X18」という。)、原告X19(原告番号11-2.以下「原告X19」という。)、原告X20(原告番号13。以下「原告X20」という。)、原告X26(原告番号18。以下「原告X26」という。)、原告X27(原告番号19。以下「原告X27」という。)、原告X28(原告番号20-1。以 下「原告X28」という。)、原告X29(原告番号20-2。以下「原告X29」という。)の住居所及び主たる事業所は若宮戸地区にあり(以下、若宮戸地区に住居所又は主たる事業所がある原告らを「若宮戸地区原告ら」と総称する。)、それ以外の原告らの住居所は上三坂地区及び水海道地区にあったことが認められる(具体的な所在地は別紙8の原告番号に対応する番号が付 された地点である。)。そして、証拠(甲27、甲50)及び弁論の全趣旨によれば、上三坂地区の左岸22.0km地点で堤防が決壊した場合を想定した浸水解析結果では、上三坂地区及び水海道地区の原告らの住居所が浸水範囲に含まれているが、若宮戸地区原告らの住居所又は主たる事業所は含まれていないこと、上三坂地区は若宮戸地区の下流側に位置し、一般に浸水地域 は下流側に広がると考えられることからすれば、若宮戸地区原告らは同地区での本件溢水により浸水被害を受けたものと認められるが、上三坂地区及び水海道地区に住居所を有する原告らは、本件溢水だけではなく、上三坂地区での本件決壊をも原因として浸水被害を受けたものと認められ、上記原告らについて、仮に本件溢水がなければ同程度の浸水被害を受けることはなかっ たと認めるに足りる証拠はない。そうすると、若宮戸地区での河川管理の瑕疵と相当因果関係のある損害が生じたと認められる原告は、若宮戸地区原告らに限られるというべきである。 けることはなかっ たと認めるに足りる証拠はない。そうすると、若宮戸地区での河川管理の瑕疵と相当因果関係のある損害が生じたと認められる原告は、若宮戸地区原告らに限られるというべきである。 (2) そこで、本件氾濫によって若宮戸地区原告らに生じた損害について、以下、検討する。 ア原告X7(原告番号4-1)の損害 (ア) 避難生活による積極損害 6万4000円証拠(甲損4の1・9、原告X8本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X7は、本件氾濫当時82歳であり、常総市C 所在の居宅において、妻である原告X8と居住していたところ、本件氾濫によってその住居が浸水したことにより、原告X8とともに本件氾濫の発生した日からつくば市内 のホテルに4泊し、宿泊費用合計6万4000円を支払ったことが認められる。 (イ) 住宅の被害 71万6839円a 住宅補修費用 71万6839円証拠(甲損4の1・3・8、原告X8本人)及び弁論の全趣旨によれ ば、原告X7は、常総市長から、上記居宅(建物は原告X8所有であるが、原告X7が世帯主とされ、原告X8と同居していること、同原告は住宅補修費を請求していないことから、これを原告X7の損害として認める。)につき半壊との認定を受け、本件氾濫による自宅修理費用として71万6839円を支出したことが認められる。なお、原告X8の本 人尋問における供述中には、ドアの修理費用として上記費用の他に35万円程度かかったとの供述部分があるが、これを裏付けるに足りる的確な客観的証拠がない。 b 住宅の片付け・清掃費用 には、ドアの修理費用として上記費用の他に35万円程度かかったとの供述部分があるが、これを裏付けるに足りる的確な客観的証拠がない。 b 住宅の片付け・清掃費用 0円これを裏付けるに足りる的確な客観的証拠がない。 (ウ) 家財の被害 316万2500円証拠(甲損4の1・3・10、原告X8本人)及び弁論の全趣旨によれば、本件氾濫によって上記居宅の母屋が床上40ないし50cmまで浸水し、建具、家具、家電製品、畳等の生活用品を廃棄したことにより、原告X7に家財の被害による損害が生じたことが認められる。そして、本来、 原告において損害の発生及びその額を個別具体的に立証することを要す るが、河川からの流入水により浸水被害を受ける家財は多種多様であり、かつ、その広範囲に及ぶことが想定されるから、個別の家財の種類、形状、金額等を正確に記録した資料を有していないことはある程度やむを得ないというべきである。また、浸水被害発生後の再取得時の領収書等を保管しておくことはさほど困難ではないと思われるが、いずれにしても、上記 領収書等のみにより多種多様かつ広範囲に発生する家財の被害全体を評価することは困難であることに照らせば、このことによっても、原告らの損害額の立証の困難性は左右されない。このような事情を考慮すれば、原告X7の家財の被害による損害額は損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるものというべきであり、民事訴訟法248条により、 相当な損害額を認定するのが相当である。 そこで、原告X7に係る相当な損害額について検討するに、まず、別紙3(甲損2の2)記載のとおり、国税局・税務署が作成した資料である により、 相当な損害額を認定するのが相当である。 そこで、原告X7に係る相当な損害額について検討するに、まず、別紙3(甲損2の2)記載のとおり、国税局・税務署が作成した資料である「大雨等の災害により被害を受けられた方へ(所得税及び復興特別所得税の全部又は一部の軽減)」(以下「国税局資料」という。)は、災害によって住宅 や家財等に損害を受けた場合の確定申告において、所得税及び復興特別所得税の全部または一部を軽減するための方法を記載したものであり、住宅や家財の被害について合理的な推計を前提に課税上有利な方法を選択することを認めたものであって、同資料の別表が世帯毎での平均的な家財額を前提に減価償却や被害割合等を考慮しており、これらの数値自体が不合 理であるというべき理由はないことに照らせば、同資料の別表に基づき原告らの損害を算定することは、相応の合理性があるというべきである。ただし、浸水による被害割合について、実際の被害状況を別途個別的に認定できる場合には、それによるのが相当である(家財の被害について以上に述べたことにつき、以下、各原告について同じ。)。 そして、証拠(甲損2の2・3、甲損4の2)及び弁論の全趣旨によれ ば、原告X7は本件氾濫当時50歳以上であり、母屋は平屋建てであったことが認められるところ、国税局資料の別表において、世帯主の年齢が50歳以上の夫婦の家財評価額が1150万円とされ、平屋の床上50cmの浸水の場合の家財の被害割合が40%とされており、原告X7の主張する損害額はこれらの評価額を下回る金額であると認められる。これらを踏 まえると、原告X7が家財の損害額として主張する316万2500円は相当というべきである。 (エ) 慰謝料 評価額を下回る金額であると認められる。これらを踏 まえると、原告X7が家財の損害額として主張する316万2500円は相当というべきである。 (エ) 慰謝料 32万5000円a 避難生活慰謝料 2万5000円原告X7は、原告X8とともにつくば市内のホテルに4泊して避難し ており、避難生活を強いられたものであって、これにより精神的苦痛を受けたことは明らかである。そして、その他本件に表れた一切の事情を考慮すると、避難生活慰謝料として、その主張する2万5000円は相当である。 b 生命・身体の安全が侵害される危険を経験したことによる慰謝料 10万円原告X7は、原告X8とともに本件降雨の中避難したこと、原告X7の自宅は床上40ないし50cmまで浸水したこと、その他本件に表れた一切の事情を考慮すると、原告X7の生命・身体の安全が侵害される危険を経験したことによる慰謝料として、その主張する10万円は相当 である。 c 写真、アルバム、ビデオ等思い出の品を失ったことによる慰謝料20万円証拠(甲損4の1・5、原告X8本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X8の所有する居宅が平成16年3月に建築されたことが認めら れ、本件氾濫により平屋建ての上記居宅が床上40ないし50cmまで 浸水したことに照らせば、本件氾濫により原告X7がそれまでの生活に係る記録が損傷されたことは容易に推認される。これらの思い出の品は、財産的価値とは別に所有者にとって主観的に重要な動産であるから、それを失ったことによる精神的苦痛は、家財に係る経済的被害に対する賠償のみでは填補できないものと 易に推認される。これらの思い出の品は、財産的価値とは別に所有者にとって主観的に重要な動産であるから、それを失ったことによる精神的苦痛は、家財に係る経済的被害に対する賠償のみでは填補できないものというべきである。そして、その他本件に 表れた一切の事情を考慮すると、原告X7が写真、アルバム、ビデオ等思い出の品を失ったことによる慰謝料として、その主張する20万円は相当である。 (オ) 損害の填補 -210万円当事者間に争いがない(以下、各原告について同じ。) (カ) 弁護士費用 21万6833円弁論の全趣旨によれば、原告X7は本件訴訟の提起及び追行をその訴訟代理人弁護士に委任したことが認められ、これに要した弁護士費用のうち、損害額の約1割に相当する金額は、本件氾濫と相当因果関係のある損害と認められる(以下、各原告について同じ。)。 (キ) 合計 238万5172円イ原告X8(原告番号4-2)の損害(ア) 家財の被害 54万7234円証拠(甲損4の1・7、原告X8本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X8は本件氾濫後にボイラーやエアコンについての工事費用を78万 1763円とする見積りを取得したことが認められ、本件氾濫によって原告X8の所有するボイラーやエアコンが損傷したことが推認される。そして、弁論の全趣旨によれば、これが原告X7の家財の請求に含まれていないことが認められることに照らせば、原告X8の家財の損害額は、上記見積りに係る費用の70%相当額である54万7234円(小数点以下切捨 て。以下、金額 これが原告X7の家財の請求に含まれていないことが認められることに照らせば、原告X8の家財の損害額は、上記見積りに係る費用の70%相当額である54万7234円(小数点以下切捨 て。以下、金額に割合を乗じて計算した場合につき、同じ。)が相当である。 (イ) 慰謝料 32万5000円a 避難生活慰謝料 2万5000円証拠(甲損4の1、原告X8本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X8は、原告X7と生活及び行動を共にしていたと認められるから、前記ア(エ)aと同旨の理由により、避難生活慰謝料として、その主張する 2万5000円は相当である。 b 生命・身体の安全が侵害される危険を経験したことによる慰謝料10万円原告X8は、原告X7と生活及び行動を共にし、原告X7と同様の経験をしたものと認められるから、前記ア(エ)bと同旨の理由により、原 告X8の生命・身体の安全が侵害される危険を経験したことによる慰謝料として、その主張する10万円は相当である。 c 写真、アルバム、ビデオ等思い出の品を失ったことによる慰謝料20万円原告X8は、原告X7と同居していたことに照らせば、原告X7と同 様に思い出の品を失ったと認められるから、前記ア(エ)cと同旨の理由により、原告X8が写真、アルバム、ビデオ等思い出の品を失ったことによる慰謝料として、その主張する20万円は相当である。 (ウ) 弁護士費用 8万7223円(エ) 合計 95万9457円 ウ原告X11(原告番号6)の損害 (ウ) 弁護士費用 8万7223円(エ) 合計 95万9457円 ウ原告X11(原告番号6)の損害(ア) 避難生活による積極損害 14万9784円証拠(甲損6の1ないし4・14、原告X11本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X11は、本件氾濫当時51歳であり、常総市D 所在の居宅において、妻、子2人(本件氾濫当時18歳未満)、母とともに居住して いたところ、本件氾濫によって上記居宅が床上1m程度まで浸水し、常総 市長から同居宅につき大規模半壊との認定を受けたこと、その母は本件氾濫当時84歳であり、同居宅の1階で主に生活していたこと、同母は本件氾濫後の平成27年9月25日から同年12月31日までの間、短期入所生活介護事業所に入所し、その費用として合計14万9784円を支払ったことが認められる。そして、原告X11の母の年齢や生活状況等に照ら せば、原告X11が母の面倒を見ながら居宅の復旧や仕事を両立させることは困難であったことが容易に推認される。 (イ) 住宅の被害 300万9420円証拠(甲損6の1・2・5・7・8、原告X11本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X11は、本件氾濫により、その所有する居宅につき大 規模半壊との認定を受け、その補修費用として合計300万9420円を支払ったことが認められる。なお、上記居宅は平成7年8月25日建築の2階建軽量鉄骨造(骨格材の肉厚3mm超4mm以下)であることが認められ、別紙3の算定方法に基づき同建物の時価額を算定すると1155万円{2100万円-(2100万円×0.9×0.025×20年 の2階建軽量鉄骨造(骨格材の肉厚3mm超4mm以下)であることが認められ、別紙3の算定方法に基づき同建物の時価額を算定すると1155万円{2100万円-(2100万円×0.9×0.025×20年)」}で あり、被害割合が50%(平屋で床上1m以上1.5m未満の浸水)であることからすれば、被害額は577万5000円(1155万円×50%)となるところ、原告X11が支払った上記金額はこれを下回る。したがって、上記住宅補修費用300万9420円は、その全額が本件氾濫と相当因果関係のある損害と認められる。 (ウ) 家財の被害 936万円証拠(甲損6の1・12、原告X11本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X11の所有する居宅は床上1mまで浸水したことが認められ、原告X11の家財に損害が発生したことは明らかである。 そこで、民事訴訟法248条に基づき相当な損害額を検討するに、前記 (ア)及び(イ)に認定したところのほか、証拠(甲損6の1・12、原告X1 1本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X11の居宅は本件氾濫により床上1mまで浸水したが、2階までは浸水しなかったこと、原告X11らは、1階が浸水するまでの間に動かすことが可能な家財の一部を2階に移動させたことが認められる。別紙3の別表2の家族構成別家財評価額によれば、世帯主が50歳以上の夫婦については1150万円であり、18歳 以上1名につき130万円、18歳未満につき80万円を加算するとされている。また、2階建て以上の建物で床上1m以上1.5m未満の浸水の場合、家財の被害割合が85%とされているが、被害割合は実際の被害状況により判断するのが相当であるところ、上記に認定した事情を考慮すれば、原告X11の て以上の建物で床上1m以上1.5m未満の浸水の場合、家財の被害割合が85%とされているが、被害割合は実際の被害状況により判断するのが相当であるところ、上記に認定した事情を考慮すれば、原告X11の家財の被害割合は65%と認めるのが相当である。した がって、本件氾濫により原告X11に生じた家財の損害額は936万円{(1150万円+130万円+160万円)×65%}が相当である。 (エ) 車両の被害 7万6148円証拠(甲損6の1・9・10、原告X11本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X11は、その所有する自動二輪車2台(車名「XJ900」 及び車名「SX200R」)が本件氾濫により浸水したため、その整備費用としてそれぞれ5万0090円及び2万6058円を支払ったことが認められる。なお、原告X11の妻名義の自動車(シャレード)の損害額については、請求がないから判断しない。 (オ) 休業損害 50万3717円 証拠(甲損6の1・12・13・15・16、原告X11本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X11は、平成27年6月23日、A株式会社(同年7月28日まではA1との名称であった。以下「A」という。)との間で、Aの開発業務を受注し、上記受注業務を平成28年2月28日まで行うことを予定しており、平成27年6月25日、Aから長周期システム 製造業務を報酬176万0220円で受注し、同報酬として同年8月31 日、同年9月30日、同年10月30日にそれぞれ58万6740円の支払を受ける予定であったところ、Aから、同年7月28日、同年8月31日、同年9月30日にそれぞれ58万6740円、同年10月30日に33万9 月30日、同年10月30日にそれぞれ58万6740円の支払を受ける予定であったところ、Aから、同年7月28日、同年8月31日、同年9月30日にそれぞれ58万6740円、同年10月30日に33万9595円の支払を受けたが、本件氾濫の影響により、Aではなく、株式会社Bの仕事を受注し、同年12月4日、同社から33万0168円 の支払を受けたことが認められる。 以上のとおり、原告X11は、本件氾濫の影響を受けるまでは、Aの開発業務を受注し、月58万6740円の報酬を得ており、これは平成28年2月28日まで継続することが見込まれていたものと認められ、本件氾濫が発生したのが平成27年9月11日であることを考慮すれば、原告X 11の同年10月及び12月の収入が減少したのは、本件氾濫によって業務に支障が生じたことによるものと認められる。そうすると、原告X11がAから得られる見込みであった同年10月及び同年12月分各58万6740円の合計117万3480円と上記各月に現実に得た収入である33万9595円と33万0168円の合計66万9763円との差 額である50万3717円は、本件氾濫による休業損害と認められる。 (カ) 慰謝料 71万円a 避難生活慰謝料 41万円証拠(甲損6の1、原告X11本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X11は、平成27年9月10日から同年11月30日までの合計8 2日間、その妻及び子2人を妻の実家で生活させ、その母を前記施設へ入所させて、避難生活を強いられたことが認められ、本件氾濫により精神的苦痛を受けたものと認められる。その他本件に表れた一切の事情を考慮すると、原告X11の避難生活慰謝料は41万円が の母を前記施設へ入所させて、避難生活を強いられたことが認められ、本件氾濫により精神的苦痛を受けたものと認められる。その他本件に表れた一切の事情を考慮すると、原告X11の避難生活慰謝料は41万円が相当である。 b 生命・身体の安全が侵害される危険を経験したことによる慰謝料 10万円 証拠(甲損6の1、原告X11本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X11は、その居宅において、庭に流れ込んだ濁流により土が見えなくなる状況を見たり、居宅内の家財を2階に移動させる作業中に1階和室の畳が水分により柔らかくなった部分を踏んだり、床下収納が持ち上がるところを見たりなどしたことが認められ、その他本件に表れた一切 の事情を考慮すると、原告X11が生命・身体の安全が侵害される危険を経験したことによる慰謝料として、その主張する10万円は相当である。 c 写真、アルバム、ビデオ等思い出の品を失ったことによる慰謝料20万円 原告X11の居宅は本件氾濫により床上1mまで浸水したこと、原告X11は平成7年10月頃から同居宅で生活してきたことに照らせば、それまでの生活に係る記録等思い出の品を失ったと認められるから、原告X11が写真、アルバム、ビデオ等思い出の品を失ったことによる慰謝料として、その主張する20万円は相当である。 (キ) 損害の填補 -258万8253円(ク) 弁護士費用 112万2081円(ケ) 合計 1234万2897円エ原告X18(原告番号11-1)の損害(ア) 避難生活による積極損害 32万82 081円(ケ) 合計 1234万2897円エ原告X18(原告番号11-1)の損害(ア) 避難生活による積極損害 32万8289円 証拠(甲損11の1ないし6、原告X18本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X18は、本件氾濫当時41歳であり、妻である原告X19及び子3人(いずれも18歳未満)とともに常総市E 所在の居宅で生活していたところ、本件氾濫により、同居宅は床上1.1m程度まで浸水して常総市長から大規模半壊との認定を受け、一時的にアパートへ転居しなけれ ばならなくなり、その入居費用として30万0289円を支払い、本件氾 濫による被害から復旧するための居宅のリフォームが完了した後、上記アパートから自宅に戻るために引っ越し、その引っ越し費用として2万8000円を支払ったことが認められる。 (イ) 家財の被害 435万5000円前記(ア)に認定した本件氾濫による原告X18の居宅の浸水状況から、 本件氾濫により原告X18の家財に損害が発生したことは容易に推認される。 そこで、民事訴訟法248条に基づき相当な損害額を検討するに、前記(ア)に認定したところによれば、原告X18の居宅は本件氾濫により床上1.1m程度まで浸水した結果、1階の家財は大半が使用できなくなった ものと推認される。そして、別紙3の別表2によれば、世帯主の年齢が40ないし49歳の夫婦の家財評価額は1100万円であり、子供(18歳未満)1名につき80万円を加算するとされている。また、2階建て以上の建物で床上1m以上1.5m未満の浸水の場合、家財の被害割合が85%とされているが、本件氾濫後にも自宅に戻って宿泊した 供(18歳未満)1名につき80万円を加算するとされている。また、2階建て以上の建物で床上1m以上1.5m未満の浸水の場合、家財の被害割合が85%とされているが、本件氾濫後にも自宅に戻って宿泊したことがあり、 2階については被害がなかったと考えられることを考慮すれば、原告X18及び原告X19の家財の被害割合は65%と認めるのが相当である。以上によれば、本件氾濫により原告X18に生じた家財の被害の損害額は435万5000円〔{(1100万円+240万円)×65%〕/2}〕が相当である。 (ウ) 休業損害 0円原告X18の本人尋問の結果によれば、原告X18は、本件氾濫後3日間欠勤したが、当該欠勤に対しては特別休暇が割り当てられることにより、年次有給休暇を消費することなく有給での休暇を取得したことが認められるから、原告X18に本件氾濫による休業損害は認められない。 (エ) 慰謝料 15万円 a 避難生活慰謝料 5万円証拠(甲損11の6、原告X18本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X18ら家族5人は、本件氾濫により、3日間、取手市内にある原告X18の妹のアパートに同居させてもらったが、全員が寝ることができなかったため、原告X18及び原告X19は、夜に子らが寝た後に居 宅に戻ってすごしていたこと、原告X18は取手市内から1時間以上かけて子を小学校に送っていく生活を送った時期もあったことが認められ、原告X18は、本件氾濫により避難生活を強いられたことによって精神的苦痛を受けたものと認められる。その他本件に表れた一切の事情を考慮すると、原告X18の避難生活慰謝料は 時期もあったことが認められ、原告X18は、本件氾濫により避難生活を強いられたことによって精神的苦痛を受けたものと認められる。その他本件に表れた一切の事情を考慮すると、原告X18の避難生活慰謝料は5万円が相当である。 b 写真、アルバム、ビデオ等思い出の品を失ったことによる慰謝料10万円証拠(甲損11の6、原告X18本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X18の長男は本件氾濫当時9歳であり、子らを撮影した相当数の写真やビデオ等があったこと、それらの多くはその居宅の1階に保管し ており、本件氾濫による浸水によって廃棄せざるを得なかったことが認められる。その他本件に表れた一切の事情を考慮すると、原告X18が写真、アルバム、ビデオ等思い出の品を失ったことによる慰謝料として、その主張する10万円は相当である。 (オ) 損害の填補 -300万円 (カ) 弁護士費用 18万3328円(キ) 合計 201万6617円オ原告X19(原告番号11-2)の損害(ア) 家財の被害 435万5000円前記エ(イ)と同旨の理由により、原告X18と同居していた妻である原 告X19にも本件氾濫によって家財の損害が生じたことが推認され、民事 訴訟法248条に基づき相当な損害額について検討するに、原告X19に生じた家財の被害の損害額は435万5000円〔{(1100万円+240万円)×65%〕/2}〕が相当である。 (イ) 慰謝料 15万円a 避難生活慰謝料 損害額は435万5000円〔{(1100万円+240万円)×65%〕/2}〕が相当である。 (イ) 慰謝料 15万円a 避難生活慰謝料 5万円 証拠(甲損11の6、原告X18本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X19は、本件氾濫により、その後、原告X18と同様の生活を送っていたことが認められるから、前記エ(エ)aと同旨の理由により、原告X19の生活避難慰謝料は5万円が相当である。 b 写真、アルバム、ビデオ等思い出の品を失ったことによる慰謝料 10万円前記エ(エ)b同旨の理由により、本件氾濫により写真、アルバム、ビデオ等思い出の品を失ったことによる原告X19の精神的苦痛に対する慰謝料として、その主張する10万円は相当である。 (ウ) 損害の填補 -300万円 (エ) 弁護士費用 15万0500円(オ) 合計 165万5500円カ原告X20(原告番号13)の損害(ア) 慰謝料 70万円a 避難生活慰謝料 40万円 証拠(甲損13の1、原告X20本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X20は、その居宅において妻、子2人と同居しており、本件氾濫により、平成27年9月11日から同月13日までの3日間、一時的につくば市内の宿泊施設に避難したが、同月13日頃からは自宅の2階に戻り、同年11月中頃に居宅の復旧工事が終わってその1階で生活でき るようになるまでの77 から同月13日までの3日間、一時的につくば市内の宿泊施設に避難したが、同月13日頃からは自宅の2階に戻り、同年11月中頃に居宅の復旧工事が終わってその1階で生活でき るようになるまでの77日間、当初は電気、水道、ガス等が使えず、1 階に悪臭が発生している中、遠方の店に買い出しに行くなどの生活を送ったことが認められ、このような生活を余儀なくされたことによって精神的苦痛を受けたと認められる。その他本件に表れた一切の事情を考慮すると、避難生活慰謝料として、その主張する40万円は相当である。 b 生命・身体の安全が侵害される危険を経験したことによる慰謝料 10万円証拠(甲損13の1、原告X20本人)及び弁論の全趣旨によれば、本件氾濫により、原告X20は本件降雨の中避難したこと、その居宅が床上70cmまで浸水したことが認められ、その他本件に表れた一切の事情を考慮すると、原告X20が生命・身体の安全が侵害される危険を 経験したことによる慰謝料は10万円が相当である。 c 写真、アルバム、ビデオ等思い出の品を失ったことによる慰謝料20万円本件氾濫により原告X20の居宅は床上70cmまで浸水したことからすれば、これにより原告X20の子らの幼少期のビデオを失ったも のと推認される。その他本件に表れた一切の事情を考慮すると、原告X20が写真、アルバム、ビデオ等思い出の品を失ったことによる慰謝料は20万円が相当である。 (イ) 弁護士費用 7万円(ウ) 合計 77万円 キ原告X26(原告番号18)の損害(ア) 住宅の被害 7万円(ウ) 合計 77万円 キ原告X26(原告番号18)の損害(ア) 住宅の被害 19万8712円証拠(甲損18の1ないし4、原告X26本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X26は常総市C 所在の2階建の居宅を所有して同居宅で一人で生活していたこと、本件氾濫により同居宅が床上35cm程度浸水して 常総市長から半壊との認定を受け、本件氾濫により損傷を生じた同居宅の 床板や内壁の補修工事を行ったことが認められる。 ただし、上記補修工事の金額を立証する領収書等の客観的な証拠はないが、上記のとおり、原告X26の居宅に本件氾濫により損害が生じたこと自体は明らかであることに照らし、その固定資産税評価額が平成30年6月7日時点において56万7750円であったこと、別紙3の別表3によ れば、2階建以上の建物が床上50cm未満浸水した場合の被害割合は35%であることを考慮して、本件氾濫によって原告X26に生じた居宅の補修に係る損害としては、19万8712円(56万7750円×35%)を認めるのが相当である。 (イ) 家財の被害 90万円 本件氾濫により原告X26の居宅に生じた浸水の程度に加え、証拠(甲損18の1、原告X26本人)及び弁論の全趣旨によれば、これにより、上記居宅内の冷蔵庫、洗濯機、テレビ等の家電製品のみならず、風呂の機能も損傷したことが認められ、原告X26の家財に損害が発生したことが推認される。 そこで、民事訴訟法248条に基づき相当な損害額を検討するに、本件氾濫により原告X26の居宅は床上35cm程度ま とが認められ、原告X26の家財に損害が発生したことが推認される。 そこで、民事訴訟法248条に基づき相当な損害額を検討するに、本件氾濫により原告X26の居宅は床上35cm程度まで浸水し、家電製品のみならず風呂の機能も損傷したこと、別紙3の別表2によれば、独身世帯の家財評価額は300万円であり、別表3によれば、2階以上の建物につき床上50cm未満浸水した場合の被害割合は40%であることなどを 考慮すれば、原告X26の被害割合は30%が相当である。その他本件に表れた一切の事情を考慮すると、本件氾濫により生じた原告X26の家財の被害の損害額は90万円(300万円×30%)が相当である。 (ウ) 慰謝料 58万8000円a 避難生活慰謝料 38万8000円 証拠(甲損18の1、原告X26本人)及び弁論の全趣旨によれば、 原告X26は、本件氾濫により、平成27年9月11日から自宅の改修工事等が終わる同年12月15日までの間、自宅の2階で寝泊まりをしつつ、ボランティアの援助を受けながら、1階の泥水等を排出する作業をしながら生活をしていた時期があることが認められる。その他本件に表れた一切の事情を考慮すると、原告X26の避難生活慰謝料は38万 8000円が相当である。 b 生命・身体の安全が侵害される危険を経験したことによる慰謝料10万円証拠(甲損18の1・5、原告X26本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X26は、本件氾濫により、自宅近くの小学校付近まで水が押 し寄せているという情報を得てすぐに本件降雨の中避難を開始したこと、その後、自宅近くで 原告X26本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X26は、本件氾濫により、自宅近くの小学校付近まで水が押 し寄せているという情報を得てすぐに本件降雨の中避難を開始したこと、その後、自宅近くでは1m近くの水位となったことが認められる。 このような状況からすれば、原告X26は、本件氾濫により、ともすれば鬼怒川からの流入水に巻き込まれる可能性があったのであり、生命・身体に危険が及ぶ経験をしたものと認められる。その他本件に表れた一 切の事情を考慮すると、原告X26が生命・身体の安全が侵害される危険を経験したことによる慰謝料は10万円が相当である。 c 写真、アルバム、ビデオ等思い出の品を失ったことによる慰謝料10万円本件氾濫により原告X26の自宅は床上35cm程度まで浸水した ことに照らせば、原告X26が居宅の居間に保管していた写真やアルバム等の思い出の品やそれまでの生活に係る記録が失われたものと推認される。その他本件に表れた一切の事情を考慮すると、原告X26が写真、アルバム、ビデオ等思い出の品を失ったことによる慰謝料として、その主張する20万円は相当である。 (エ) 弁護士費用 16万8671円 (オ) 合計 185万5383円ク原告X27(原告番号19)の損害(ア) 認定事実証拠(甲損18の1・7、甲損19の1、原告X26(兼原告X27代表者本人。以下、単に「原告X26本人」という。))及び弁論の全趣旨に よれば、原告X27は、農畜産物の生産、加工、販売、農作業の受委託等を目的とし、植物を栽培し販売する業務等を行っている株式会社(特例有限 、単に「原告X26本人」という。))及び弁論の全趣旨に よれば、原告X27は、農畜産物の生産、加工、販売、農作業の受委託等を目的とし、植物を栽培し販売する業務等を行っている株式会社(特例有限会社)であり、常総市C 所在の店舗(以下「本件店舗」という。)の周辺に4連棟ガラス温室、3連棟ガラス温室、連棟ガラス温室、集荷場を設置し、本件店舗から約200m南に土壌消毒作業所、その中間地点付近に育 苗ハウス、本件店舗から約250m西に3連棟ビニールハウス2棟、前記原告X26の居宅敷地内に培養土配合充填作業所を設置していたこと、本件氾濫により、本件店舗の周辺は水位1m程度、上記3連棟ビニールハウスの周辺は水位1.2ないし1.3m程度まで浸水したことが認められる。 以上に認定した事実を前提として、以下、検討する。 (イ) 車両の被害 68万1000円証拠(甲損18の1、甲損19の2・21、原告X26)及び弁論の全趣旨によれば、原告X27は本件氾濫により浸水したその所有する4tコンテナ車(登録番号省略)の修理費用として少なくとも68万1000円を支払ったことが認められる。 (ウ) その他の事業用資産の被害 1896万4132円a 井戸の修復費用 143万4645円証拠(甲損18の1、甲損19の2ないし5、原告X26本人)及び弁論の全趣旨によれば、本件氾濫により、①本件店舗付近、②土壌消毒作業所、③3連棟ビニールハウス付近にそれぞれあった井戸が浸水し、 原告X27は、このうち①の井戸につきポンプ工事等を依頼して工事費 用87万5880円を支払い、②の井戸につき取り換えの工事を依頼して工事費 ウス付近にそれぞれあった井戸が浸水し、 原告X27は、このうち①の井戸につきポンプ工事等を依頼して工事費 用87万5880円を支払い、②の井戸につき取り換えの工事を依頼して工事費用40万2840円を支払い、③の井戸につき水中ポンプ交換取り付け工事を依頼して工事費用77万0774円の合計204万9494円を支払ったことが認められる。そして、これらの工事により上記各井戸はいずれも新品となったことを勘案しても、上記各井戸の工事 費用合計額の7割である143万4645円は、本件氾濫と相当因果関係のある損害と認められる。 b 土入れ機、煙霧器等 144万8300円証拠(甲損18の1、甲損19の6、原告X26本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X27は、本件氾濫後、①園芸ポット土入れ機(S TK39P9D)1台を152万円、②丸山煙霧器(LVM16)1台を75万2000円、③静岡製機ホットガン(HG-NX)3台を53万5500円、④タイショー発芽機(INK-120C)1台を14万5000円、⑤丸山ポータブル動噴(MS072EH-A)1台を10万3000円、⑥播種機(THK2009B)1台を37万円、⑦催芽 機(AQ-150)1台を8万4000円、⑧苗箱洗浄機(NBC-300)1台を9万5000円で購入し、代金合計360万4500円を支払ったことが認められる。そして、上記各証拠及び弁論の全趣旨によれば、原告X27が本件氾濫より前から所有していたことが認められる農機具のうち、本件氾濫により損傷したスズテック土入れ機(STK3 8P9D)(上記①の農機具は、これに代えて購入されたものと認められる。以下、同旨の説明につき、上記新規購入の各農機具の番号のみを記載する。)、ス により損傷したスズテック土入れ機(STK3 8P9D)(上記①の農機具は、これに代えて購入されたものと認められる。以下、同旨の説明につき、上記新規購入の各農機具の番号のみを記載する。)、スズテック播種機(THK2009)(上記⑥)、タイガー催芽機(AQ-150)(上記⑦)、苗箱洗浄機(NBC-300)(上記⑧)については、本件氾濫による損傷の修理費用が本体価格を上回るも のとなったことが認められるが、他方で、上記②煙霧器、③ホットガン、 ④発芽機、⑤ポータブル動噴に対応するべき農機具について、本件氾濫後に修理費用が検討されたことを裏付ける証拠はなく、その他、原告X27が本件氾濫より前から上記②ないし⑤の各農機具に対応する農機具を所有ないし保有していたとの事実を認めるに足りる的確な客観的証拠はない。 したがって、本件氾濫による原告X27の損害として、上記新規購入の各農機具のうち、①土入れ機、⑥播種機、⑦催芽機、⑧苗箱洗浄機の購入代金合計206万9000円につき、元々所有していたものの型番を比較すると同等のものであることがうかがわれるから、これらが新品であることを勘案しても、原告X27の請求する上記各農機具の購入代 金合計の7割である144万8300円は、本件氾濫と相当因果関係のある損害と認められるが、上記②煙霧器、③ホットガン、④発芽機、⑤ポータブル動噴の購入代金は、本件氾濫による損害と認めるに足りない。 c ガラス温室修理 68万0400円証拠(甲損18の1、甲損19の7、原告X26本人)及び弁論の全 趣旨によれば、原告X27は、本件氾濫により損傷したガラス温室のガラス交換工事等を行い、その費用等合計97万2000円を支払ったことが認めら の1、甲損19の7、原告X26本人)及び弁論の全 趣旨によれば、原告X27は、本件氾濫により損傷したガラス温室のガラス交換工事等を行い、その費用等合計97万2000円を支払ったことが認められ、上記工事によりガラスが新品となったことを勘案しても、その7割である68万0400円は、本件氾濫と相当因果関係のある損害と認められる。 d ハウス加温機、暖房機 87万1797円証拠(甲損18の1、甲損19の8、原告X26本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X27は、本件氾濫により損傷したその所有する機械につき、ネポンハウスカオンキ(HK500型TEV)は交換部品終了のため代替品を提案され、ネポンハウスカオンキ(HK3022TE V)2台は部品供給終了のため代替品を提案され、ネポンハウスカオン キ(HK300型TEV)は修理費用が多額のため代替品を提案され、長府ハウス暖房機(FA-402三相200V)は修理費用が多額のため代替品を提案されたため、新たにネポンハウスカオンキ(HK-5027TEV)1台を136万1200円(消費税別)で、ネポンハウスカオンキ(KA-325TE)1台を49万7300円(同上)で、ネ ポンハウスカオンキ(HK-3027TEV)2台を184万7600円(同上)で、長府ハウス暖房機(FA404三相200V)1台を33万円(同上)で購入し、代金合計435万8988円(消費税8%込み)を支払ったことが認められる。そして、原告X27が購入した機械等と同原告が元々所有していた機械等を比較すると、新たに購入した機 械はいずれも新しい型であることがうかがわれ、特に、交換部品の供給が終了していることを理由に代替品を提案されたものが含まれていることを勘案すれ 有していた機械等を比較すると、新たに購入した機 械はいずれも新しい型であることがうかがわれ、特に、交換部品の供給が終了していることを理由に代替品を提案されたものが含まれていることを勘案すれば、上記代金合計額の2割である87万1797円の限度で、本件氾濫と相当因果関係のある損害と認められる。 e トラクタ、田植機 415万0050円 証拠(甲損18の1、甲損19の9、原告X26本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X27は、①クボタトラクタ(KL34ZCQMANP)1台を432万5926円(消費税別)で、②同トラクタの後部に取り付けて畑を耕したり整地をしたりする装置であるニプロロータリ(CX1710-4S)1台を60万円(同上)で、③クボタ田植機 (ZP65-T5FR)1台を267万6352円(同上)で、④同田植機に付属させるべき田植機用除草剤散布機(CS-30)1台を8万3000円(同上)で購入し、代金合計830万0100円(消費税8%込み)を支払ったことが認められる。そして、上記各証拠及び弁論の全趣旨によれば、原告X27が本件氾濫より前から所有しており、本件氾 濫により損傷したクボタトラクタ(KL38H)については修理費用が 506万0675円、同じくクボタ田植機(SPA6)については修理費用が301万4723円とそれぞれ見積もられ、上記①及び②のトラクタ及び田植機並びに各附属機器は、いずれも上記のとおり修理に新品の調達価格を上回る費用を要することとなったトラクタ及び田植機に代えて購入されたものと認められる。そして、本件各証拠によっても、 原告X27が本件氾濫より前から所有していた上記トラクタ等の購入時期や、新たに購入した上記①ないし④のトラクタ クタ及び田植機に代えて購入されたものと認められる。そして、本件各証拠によっても、 原告X27が本件氾濫より前から所有していた上記トラクタ等の購入時期や、新たに購入した上記①ないし④のトラクタ等がこれと同等のものであったか否かが不明であることを勘案すれば、上記代金合計額の5割である415万0050円の限度で、本件氾濫と相当因果関係のある損害と認められる。 f 栽培ベンチ、鉄骨ハウス修繕 692万8310円証拠(甲損18の1、甲損19の10、原告X26本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X27は、本件氾濫により損傷した鉄骨ハウス修繕工事を171万1800円で、栽培ベンチ修繕工事を818万5787円で注文し、その修理費用合計989万7587円を支払ったことが 認められる。そして、これらの工事により上記鉄骨ハウス等の耐用年数が伸びたと推認されることを勘案しても、その7割である692万8310円は、本件氾濫と相当因果関係のある損害と認められる。 g 作業所の補修 49万3479円証拠(甲損18の1、甲損19の11、原告X26本人)及び弁論の 全趣旨によれば、原告X27は、本件氾濫により損傷した集荷場につき、軽量シャフター修理及び現場取替工事を4万4250円(消費税別)で、板金工事を3万2500円(同上)で、土壌消毒作業所につき、シャフター下地取付及び現場解体取付一式を8万8500円(同上)で、培養土配合充填作業所につき、外部取替工事及び長天角波トタン張りを48 万7500円(同上)でそれぞれ注文し、その費用合計70万4970 円(消費税8%込み)を支払ったことが認められる。そして、これらの工事により上記作業所の耐用年 波トタン張りを48 万7500円(同上)でそれぞれ注文し、その費用合計70万4970 円(消費税8%込み)を支払ったことが認められる。そして、これらの工事により上記作業所の耐用年数が伸びたと推認されることを勘案しても、その7割である49万3479円は、本件氾濫と相当因果関係のある損害と認められる。 h 自動灌水装置 16万2000円 証拠(甲損18の1、甲損19の12、原告X26本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X27は、本件氾濫により損傷したその所有する灌水装置につき、灌水コントロール盤の機材が全損状態のため交換修理が必要となったが、コントロール弁(電磁弁)の交換部品が製造中止となっており代替部品の入手が不可能で修理ができないとされたため、灌 水コントローラ交換工事及び電磁弁取付交換を注文し、その費用合計81万円を支払ったことが認められる。そして、上記のとおり一部が製造中止となっていたことに照らせば、原告X27は本件氾濫より前から上記装置を相当長期間使用していたことがうかがわれること、上記工事等によりその部品が新品となったことを勘案すれば、その2割である16 万2000円の限度で、本件氾濫と相当因果関係のある損害と認められる。 i 土壌消毒器 159万4191円証拠(甲損18の1、甲損19の13、原告X26本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X27は、本件氾濫により損傷した、土壌の消毒 に使用する蒸気消毒器(SB-350)につき、修理を要する箇所につき全て交換すればこれに要する費用が新品の調達価格を上回ることから、同等の機種である定置式蒸気消毒器(SB-300)の購入を提案され、これを代金227 器(SB-350)につき、修理を要する箇所につき全て交換すればこれに要する費用が新品の調達価格を上回ることから、同等の機種である定置式蒸気消毒器(SB-300)の購入を提案され、これを代金227万7417円で購入し、同代金を支払ったことが認められる。そして、上記各証拠及び弁論の全趣旨によれば、原告X 27が新たに購入した上記機械は本件氾濫より前から所有していた機 械と同等の機種であることから、これが新品であることを勘案しても、上記代金額の7割である159万4191円は、本件氾濫と相当因果関係のある損害と認められる。 j 育苗ハウス等修繕 81万6480円証拠(甲損18の1、甲損19の14、原告X26本人)及び弁論の 全趣旨によれば、原告X27は、本件氾濫により損傷した低温発芽育苗室の水害修繕工事として、冷媒機、断熱材、遮光材他材料費を含めてその取付工事を45万3600円で、育苗ハウスの修繕工事を42万2280円で、出荷・移動台車の水害修繕工事を29万0520円で注文し、その修理費用合計116万6400円を支払ったことが認められる。そ して、上記修理により上記育苗室等の耐用年数が伸びたと推認されることを勘案しても、その7割である81万6480円は本件氾濫と相当因果関係のある損害と認められる。 k フォークリフトの損傷 38万4480円証拠(甲損18の1、甲損19の15、原告X26本人)及び弁論の 全趣旨によれば、原告X27は、本件氾濫より前から所有していたフォークリフト(5FG20・1991年11月製造)が本件氾濫によりエンジン内部等に泥水が混入して修理不可能とされたことから、これに代わるフォークリフト(製造16年式) 件氾濫より前から所有していたフォークリフト(5FG20・1991年11月製造)が本件氾濫によりエンジン内部等に泥水が混入して修理不可能とされたことから、これに代わるフォークリフト(製造16年式)を代金192万2400円で購入したことが認められる。そして、原告X27が本件氾濫より前から所有 していた上記フォークリフトは平成3年11月製造であり、本件氾濫発生当時において既に製造から20年以上が経過しているものであったことを勘案すれば、上記代金の2割である38万4480円の限度で、本件氾濫と相当因果関係のある損害と認められる。 l 商品としての苗類等の被害 0円 証拠(甲損18の1、甲損19の16・22・26・27、原告X2 6本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X27は、本件氾濫当時、ガラス温室、育苗ハウス、ビニールハウス等の複数の箇所で、商品である草花を栽培しており、本件氾濫により、上記商品のうち相当数に損傷等が生じて出荷できなくなったことがうかがわれる。 しかしながら、原告X27が本件氾濫当時栽培していた商品の交換価 値については、当時の流通価格に関する資料等により、その価格の相当性を裏付けることが可能であると思われるのに、これを認めるに足りる的確な客観的証拠はなく、当時における上記商品の交換価値として相当な金額は不明といわざるを得ない。また、当時栽培していた商品の個数についても、ある程度育ったものを栽培していたにせよ、種で仕入れて 栽培していたにせよ、仕入時の情報等から個数を推測することができるものと考えられ、原告X27が事業を営んでいる株式会社であることに照らせば、上記個数を裏付ける客観的な証拠があってしかるべきであると思われるのに、 せよ、仕入時の情報等から個数を推測することができるものと考えられ、原告X27が事業を営んでいる株式会社であることに照らせば、上記個数を裏付ける客観的な証拠があってしかるべきであると思われるのに、これを裏付けるに足りる的確な客観的証拠はなく、この点については、原告X27が証拠として提出した断片的な写真や原告 X26の本人尋問における供述等により、ある程度の数の商品があったであろうということまでしか明らかになっていない。さらに、原告X26の本人尋問における供述によれば、原告X27が本件氾濫当時栽培していた商品は、いまだ商品として販売できるに至っていない程度のものも含まれていたというのであって、上記の時点における上記商品の交換 価値はなおさら不明であるといわざるを得ない。 そうすると、原告X27が本件氾濫によりガラス温室等で栽培していた商品の相当数を失ったことは認められるものの、その商品の相当な価格や具体的な個数等は判然とせず、かえって、後記に説示のとおり、原告X27の本件氾濫後の売上額がさほど減少するに至っていないこと、 上記のとおり、この点について客観的な証拠の提出による立証が不可能 ないし困難であるとの事情は認められないことなどを考慮すれば、原告X27が本件氾濫により上記商品であるの苗類等を失ったことによる損害額は、本件各証拠によっても、これを認定することができない。この点に係る損害は、後記のとおり、証拠により認定し得る売上減の中に含めて評価されるにとどまるというべきである。 (エ) 休業損害及び収入減の損害 102万2881円原告X26の陳述書(甲損18の1)中には、原告X27が本件氾濫の後平成27年10月30日まで休業したとの記載部分があるが、これ 害及び収入減の損害 102万2881円原告X26の陳述書(甲損18の1)中には、原告X27が本件氾濫の後平成27年10月30日まで休業したとの記載部分があるが、これによる休業損害については、次に述べる売上げの減少による損害に含まれるというべきであるから、これと別個に考慮することを要しない。 次に、証拠(甲損18の1、甲損19の17ないし20・28、原告X26本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X27の各年の売上金額は、平成25年が3762万0770円、平成26年が3940万6412円、平成27年が3749万0710円、平成28年が3741万5054円であったことが認められ、本件氾濫のあった年である平成27年及びその 翌年である平成28年の売上額が本件氾濫の前々年である平成26年の売上額とさほど異ならないことに照らせば、原告X27に本件氾濫により売上額の減少という損害が生じたとみることは疑問である。この点について、原告X26の陳述書(甲損18の1)及び本人尋問における供述中には、原告X26は、本件氾濫後、種の状態で仕入れて短期間で栽培できる 草花を栽培して販売するなどの工夫をしたものであり、原告X27の売上額が本件氾濫後も大きく下がらなかったのはこのような企業努力の結果に過ぎないとの記載部分及び供述部分がある。しかしながら、そうであったとすれば、原告X27は、本件氾濫前と同等の売上げを確保するために相当の分量の商品等を仕入れたことにより、その仕入額が大きく上昇して いてしかるべきであるが、原告X27の平成27年の仕入額が他の年と比 べて大きく増えたとの事実を認めるに足りる証拠はない。ただ、前記lに説示のとおり、原告X27には本件氾濫によりその栽培していた かるべきであるが、原告X27の平成27年の仕入額が他の年と比 べて大きく増えたとの事実を認めるに足りる証拠はない。ただ、前記lに説示のとおり、原告X27には本件氾濫によりその栽培していた草花の苗類等の商品を失って損害を被ったこと自体は認められることを勘案すれば、この点に係る損害は、原告X27の平成27年の売上額とその前年及び前々年の売上額の平均との差にある程度反映されているものと考えら れる。この点も考慮して、原告X27の本件氾濫による収入減に係る損害としては、上記差額である102万2881円{(3762万0770円+3940万6412円)/2-3749万0710円}を認める。 (オ) 上記損害額合計 2066万8013円(カ) 損害の填補 -2142万9000円 (キ) 合計 -76万0987円以上のとおり、原告X27に生じた損害は全て填補されている。 ケ原告X28(原告番号20-1)の損害(ア) 避難生活による積極損害 26万7230円証拠(甲損20の1ないし7、甲損20の13ないし15、原告X29 本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X28は本件氾濫当時30歳、その妻原告X29は本件氾濫当時30歳であり、両名は、子2人(いずれも18歳未満。)とともに常総市C 所在の居宅で生活していたところ、本件氾濫により、同居宅は床上1.1m程度まで浸水して常総市長から大規模半壊との認定を受け、平成27年10月29日から同年12月24日まで の一時賃貸マンションへ転居し、賃貸マンションの入居費用等合計25万8230円及び入居に伴う まで浸水して常総市長から大規模半壊との認定を受け、平成27年10月29日から同年12月24日まで の一時賃貸マンションへ転居し、賃貸マンションの入居費用等合計25万8230円及び入居に伴う火災保険料9000円を支払ったことが認められる。 (イ) 住宅の被害 572万0112円証拠(甲損20の1・9・10・17、原告X29本人)及び弁論の全 趣旨によれば、原告X28は、その所有する居宅につき、本件氾濫により 床下消毒工事・清掃工事等の浸水災害復旧工事の費用として合計572万0112円を支払ったことが認められる。 (ウ) 家財の被害 624万円前記(ア)に認定したところのほか、証拠(甲損20の1ないし8、原告X29本人)及び弁論の全趣旨によれば、本件氾濫により、原告X28の居 宅は1.1m程度まで浸水し、原告X28の家財に損害が発生したことが推認される。 そこで、民事訴訟法248条に基づき相当な損害額を検討するに、原告X28はその妻原告X29及び子2人と居宅で同居しており、本件氾濫により居宅は床上1.1m程度まで浸水したことが認められる。別紙3の別 表2によれば、世帯主の年齢が30ないし39歳の夫婦の家財評価額は800万円であり、子供(18歳未満)1名につき80万円を加算するとされている。また、2階建て以上の建物で床上1m以上1.5m未満の浸水の場合、家財の被害割合が85%とされているが、本件氾濫後一時的に賃貸マンションに入居するまでの間2階で生活していた時期があり、2階に ついては被害がなかったと考えられることを考慮すると、原告X28の家財の被害割合は65%と認めるのが相当 件氾濫後一時的に賃貸マンションに入居するまでの間2階で生活していた時期があり、2階に ついては被害がなかったと考えられることを考慮すると、原告X28の家財の被害割合は65%と認めるのが相当である。以上によれば、本件氾濫により原告X28に生じた家財の被害の損害額は624万円{(800万円+160万円)×65%〕が相当である。 (エ) 車両の被害 241万2268円 証拠(甲損2の2、甲損20の12、原告X29本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X28は平成27年3月15日に自動車(商品名「セレナ」、グレード「HS-Sハイブリッド」)を代金268万円で購入したが、本件氾濫により浸水したことによって動かなくなったため廃車としたことが認められる。そして、別紙3の参考欄において、普通自動車の耐用年 数が9年、償却率が0.111とされていることに照らせば、上記車両の 被害による損害額は241万2268円(268万円-268万円×0. 9(残存価額10%を控除)×0.111(耐用年数9年の償却率)×1年(取得からの経過年数(1年未満切上げ)))が相当である。 (オ) 慰謝料 82万5000円a 避難生活慰謝料 52万5000円 証拠(甲損20の1・7・8・13ないし15、原告X29本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X28は、本件氾濫により、妻原告X29及び子2人とともに、平成27年9月10日から同月11日までの1日間は常総市内の地域交流センターに、同月11日から同月19日までの8日間は原告X28の実家にそれぞれ避難し、同月19日から同年1 0月29日までの40 27年9月10日から同月11日までの1日間は常総市内の地域交流センターに、同月11日から同月19日までの8日間は原告X28の実家にそれぞれ避難し、同月19日から同年1 0月29日までの40日間は自宅2階で生活し、同月29日から同年12月24日までの56日間は賃貸マンションで生活したことが認められ、これらの避難生活を強いられたことにより精神的苦痛を受けたものと認められる。その他本件に表れた一切の事情を考慮すると、避難生活慰謝料として、その主張する52万5000円は相当である。 b 生命・身体の安全が侵害される危険を経験したことによる慰謝料10万円証拠(甲損20の1・7・8、原告X29本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X28は、本件氾濫により、本件降雨の中、自動車で地域交流センターに避難し、その周囲の水位が1m程度まで上昇して孤立す る状態となったことを経験したこと、前記(ア)に認定のとおり、原告X28の居宅は本件氾濫により1.1m程度浸水し大規模半壊との認定を受けたことが認められ、原告X28は避難するための移動中ないし避難先において自らの身体に危険が及ぶ具体的な経験をしたものと認められる。その他本件に表れた一切の事情を考慮すると、原告X28が生命・ 身体の安全が侵害される危険を経験したことによる慰謝料として、その 主張する10万円は相当である。 c 写真、アルバム、ビデオ等思い出の品を失ったことによる慰謝料20万円原告X28の居宅の浸水状況に加え、証拠(甲損20の1、原告X29本人)及び弁論の全趣旨によれば、本件氾濫により、原告X28及 20万円原告X28の居宅の浸水状況に加え、証拠(甲損20の1、原告X29本人)及び弁論の全趣旨によれば、本件氾濫により、原告X28及び 原告X29自身の成長や両名が婚姻した後の生活、子2人の成長に係る記録等が損傷して廃棄を余儀なくされたことが認められる。その他本件に表れた一切の事情を考慮すると、原告X28が写真、アルバム、ビデオ等思い出の品を失ったことによる慰謝料として、その主張する20万円は相当である。 (カ) 損害の填補 -56万7000円(キ) 弁護士費用 148万9761円(ク) 合計 1638万7371円コ原告X29(原告番号20-2)の損害(ア) 慰謝料 82万5000円 a 避難生活慰謝料 52万5000円証拠(甲損20の1、原告X29本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告X29は、原告X28とともに行動及び生活をしていたことが認められ、前記ケ(オ)aと同旨の理由により、避難生活慰謝料として、その主張する52万5000円は相当である。 b 生命・身体の安全が侵害される危険を経験したことによる慰謝料10万円前記aに認定のとおり、原告X29は、原告X28とともに行動及び生活をしていたのであり、同原告と同様の経験をしたものと認められるから、前記ケ(オ)bと同旨の理由により、原告X29が生命・身体の安全 が侵害される 、原告X29は、原告X28とともに行動及び生活をしていたのであり、同原告と同様の経験をしたものと認められるから、前記ケ(オ)bと同旨の理由により、原告X29が生命・身体の安全 が侵害される危険を経験したことによる慰謝料として、その主張する1 0万円は相当である。 c 写真、アルバム、ビデオ等思い出の品を失ったことによる慰謝料20万円前記ケ(オ)cと同旨の理由により、原告X29が写真、アルバム、ビデオ等思い出の品を失ったことによる慰謝料として、その主張する20 万円は相当である。 (イ) 弁護士費用 8万2500円(ウ) 合計 90万7500円第4 結論よって、原告らの請求は、国家賠償法2条1項に基づき、主文1項の各原告が 被告に対して同項の損害金合計3927万9897円及びこれらに対する本件氾濫の発生の日である平成27年9月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからその限りにおいてこれらを認容し、上記原告らのその余の請求及びその余の原告らの請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴 訟法61条、64条、65条1項ただし書を、仮執行の宣言につき同法259条1項及び3項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。 水戸地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官阿部雅彦 裁判官原彰一 裁判官小林遼平は転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官阿部雅彦 裁判長 裁判官阿部雅彦 裁判官原彰一 裁判官小林遼平は転補のため署名押印することができない。 裁判長 裁判官阿部雅彦
▼ クリックして全文を表示