令和4年3月10日判決言渡 令和3年(行ケ)第10062号審決取消請求事件 口頭弁論終結日令和4年1月18日判決 原告 ニプロ株式会社 同訴訟代理人弁護士 牧野知彦 岡田健太郎 同訴訟代理人弁理士 田村啓 大釜典子 被告 特許庁長官 同指定代理人 木村立人 倉橋紀夫 千壽哲郎 小島寛史 山田啓之 被告補助参加人 株式会社トップ 同訴訟代理人弁護士 清水節 渡邉佳行 鈴木隆太郎 同訴訟代理人弁理士 佐藤辰彦 吉田雅比呂 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は,補助参加によって生じたものを含め,原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 特許庁が訂正2020-390098号事件について令和3年3月31日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 原告は,名称を「留置針組立体」とする発明に係る特許(特許第6566160号,請求項の数3。以下「本件特許」という。)の特 消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等⑴ 原告は,名称を「留置針組立体」とする発明に係る特許(特許第6566 160号,請求項の数3。以下「本件特許」という。)の特許権者である。 本件特許は,平成29年6月2日(優先権主張平成28年6月3日)を国際出願日とする特願2018-521150号の一部を平成31年4月26日に新たな特許出願(特願2019-86620号)としたものであり,令和元年8月9日に設定登録された。(甲7,甲35) ⑵ 原告は,令和2年10月23日,請求項2及び3を訂正することを求めて特許庁に本件特許の訂正審判(訂正2020-390098号)を請求したが(同訂正審判における請求に係る訂正を,以下「本件訂正」という。甲36),令和2年12月11日付けの訂正拒絶理由通知を受け(甲37),令和3年1月15日付け意見書を提出した(甲38)。特許庁は,同年3月3 1日,結論を「本件審判の請求は,成り立たない。」とする審決(以下「本件審決」という。本件審決は別紙1のとおりである。)をし,その謄本は,同年4月9日,原告に送達された。 ⑶ 原告は,令和3年5月6日,本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。 2 特許請求の範囲の記載 ⑴ 本件訂正前本件訂正前(本件特許の設定登録時)の特許請求の範囲の記載は,次のとおりである。 ア請求項1針先を有する留置針と, 前記留置針の基端側に設けられた針ハブと,筒状の周壁を有し,前記針ハブに外挿装着されて針先側へ移動することで該留置針の針先を覆う針先プロテクタとを備え,該留置針の針先側へ該針先プロテクタが移動せしめられた所定位置において,該針先プロテクタに設けられた係止片が該針ハブに対して係止され 側へ移動することで該留置針の針先を覆う針先プロテクタとを備え,該留置針の針先側へ該針先プロテクタが移動せしめられた所定位置において,該針先プロテクタに設けられた係止片が該針ハブに対して係止され ることで該留置針の針先の再露出が防止されるようになっている留置針組立体であって,前記針先プロテクタは,針軸方向に延びる円筒状部を有し,前記円筒状部の基端側には,前記係止片と,前記円筒状部より大径で 前記係止片よりも外周側にあり,小径部と大径部とを備えた拡開部とが設けられ,前記大径部の周壁に,前記針ハブが係合されて前記留置針の針先が突出状態に保持される針ハブ係合部が設けられ,前記係止片は,前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し,前記大 径部側に前記円筒状部と一体形成される一方,前記小径部側には設けられておらず,前記小径部の外周面に凹部を設けることにより,前記凹部における前記小径部の肉厚寸法は,前記凹部を設ける前に比べて小さくされている,留置針組立体。 イ請求項2 針先を有する金属製の留置針と,前記留置針の基端側に設けられた針ハブと,筒状の周壁を有し,前記針ハブに外挿装着されて針先側へ移動することで該留置針の針先を覆う針先プロテクタとを備え,該留置針の針先側へ該針先プロテクタが移動せしめられた所定位置にお いて,該針先プロテクタに設けられた係止片が該針ハブに対して係止されることで該留置針の針先の再露出が防止されるようになっている留置針組立体であって,前記針先プロテクタは,針軸方向に延びる円筒状部を有し, 前記円筒状部の基端側には,前記係止片と,前記円筒状部より大径で前記係止片よりも外周側にあり,小径部と大径部とを備えた拡開部とが設けられ, クタは,針軸方向に延びる円筒状部を有し, 前記円筒状部の基端側には,前記係止片と,前記円筒状部より大径で前記係止片よりも外周側にあり,小径部と大径部とを備えた拡開部とが設けられ,前記大径部の周壁に,前記針ハブが係合されて前記留置針の針先が突出状態に保持される針ハブ係合部が設けられ, 前記係止片は,前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し,前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される一方,前記小径部側には設けられておらず,前記小径部の外周面に凹部を設けることにより,前記凹部における前記小径部の肉厚寸法は,前記凹部を設ける前に比べて小さくされている, 留置針組立体。 ウ請求項3針先を有する留置針と,前記留置針の基端側に設けられた針ハブと,筒状の周壁を有し,前記針ハブに外挿装着されて針先側へ移動すること で該留置針の針先を覆う針先プロテクタとを備え, 該留置針の針先側へ該針先プロテクタが移動せしめられた所定位置において,該針先プロテクタに設けられた係止片が該針ハブに対して係止されることで該留置針の針先の再露出が防止されるようになっている留置針組立体であって,前記針先プロテクタは, その先端部分に,翼状部を有し,針軸方向に延びる円筒状部を有し,前記円筒状部の基端側には,前記係止片と,前記円筒状部より大径で前記係止片よりも外周側にあり,小径部と大径部とを備えた拡開部とが設けられ, 前記大径部の周壁に,前記針ハブが係合されて前記留置針の針先が突出状態に保持される針ハブ係合部が設けられ,前記係止片は,前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し,前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される一方,前記小径部側には設けられておらず, 前記小径部の される針ハブ係合部が設けられ,前記係止片は,前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し,前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される一方,前記小径部側には設けられておらず, 前記小径部の外周面に凹部を設けることにより,前記凹部における前記小径部の肉厚寸法は,前記凹部を設ける前に比べて小さくされている,留置針組立体。 ⑵ 本件訂正の内容及び本件訂正後の請求項2及び3ア本件訂正の内容 本件訂正の内容は,次のとおりである。 (ア) 訂正事項1特許請求の範囲の請求項2において,「前記係止片は,前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し,」とあるのを,「前記係止片は,弾性変形可能で,前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し,」と訂正する。 (甲 36) (イ) 訂正事項2特許請求の範囲の請求項3において,「前記係止片は,前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し,前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される」とあるのを,「前記係止片は,弾性変形可能で,前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し,前記拡開部の内部にあって,前記大径部 側に前記円筒状部と一体形成される」と訂正する。(甲36)イ本件訂正後の請求項2及び3本件訂正後の請求項2及び3の記載は,次のとおりである(以下,本件訂正後の請求項2記載の発明を「本件訂正発明2」,本件訂正後の請求項3記載の発明を「本件訂正発明3」といい,本件訂正発明2及び3を併せて, 単に「本件訂正発明」という。また,本件特許の請求項1記載の発明,本件訂正前の請求項2及び3記載の発明並びに本件訂正発明を併せて「本件発明」という。)。(本件審決第3,4⑴)(ア) 請求項2(本件訂正発明2)針先を有する金属製の留置針と, 前記留置 件訂正前の請求項2及び3記載の発明並びに本件訂正発明を併せて「本件発明」という。)。(本件審決第3,4⑴)(ア) 請求項2(本件訂正発明2)針先を有する金属製の留置針と, 前記留置針の基端側に設けられた針ハブと,筒状の周壁を有し,前記針ハブに外挿装着されて針先側へ移動することで該留置針の針先を覆う針先プロテクタとを備え,該留置針の針先側へ該針先プロテクタが移動せしめられた所定位置において,該針先プロテクタに設けられた係止片が該針ハブに対して係止 されることで該留置針の針先の再露出が防止されるようになっている留置針組立体であって,前記針先プロテクタは,針軸方向に延びる円筒状部を有し,前記円筒状部の基端側には,前記係止片と,前記円筒状部より大径 で前記係止片よりも外周側にあり,小径部と大径部とを備えた拡開部と が設けられ,前記大径部の周壁に,前記針ハブが係合されて前記留置針の針先が突出状態に保持される針ハブ係合部が設けられ,前記係止片は,弾性変形可能で,前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し,前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される一方,前記 小径部側には設けられておらず,前記小径部の外周面に凹部を設けることにより,前記凹部における前記小径部の肉厚寸法は,前記凹部を設ける前に比べて小さくされている,留置針組立体。 (イ) 請求項3(本件訂正発明3) 針先を有する留置針と,前記留置針の基端側に設けられた針ハブと,筒状の周壁を有し,前記針ハブに外挿装着されて針先側へ移動することで該留置針の針先を覆う針先プロテクタとを備え,該留置針の針先側へ該針先プロテクタが移動せしめられた所定位置に おいて,該針先プロテクタに設けられた係 ブに外挿装着されて針先側へ移動することで該留置針の針先を覆う針先プロテクタとを備え,該留置針の針先側へ該針先プロテクタが移動せしめられた所定位置に おいて,該針先プロテクタに設けられた係止片が該針ハブに対して係止されることで該留置針の針先の再露出が防止されるようになっている留置針組立体であって,前記針先プロテクタは,その先端部分に,翼状部を有し, 針軸方向に延びる円筒状部を有し,前記円筒状部の基端側には,前記係止片と,前記円筒状部より大径で前記係止片よりも外周側にあり,小径部と大径部とを備えた拡開部とが設けられ,前記大径部の周壁に,前記針ハブが係合されて前記留置針の針先が 突出状態に保持される針ハブ係合部が設けられ, 前記係止片は,弾性変形可能で,前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し,前記拡開部の内部にあって,前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される一方,前記小径部側には設けられておらず,前記小径部の外周面に凹部を設けることにより,前記凹部における前記小径部の肉厚寸法は,前記凹部を設ける前に比べて小さくされてい る,留置針組立体。 3 本件審決の理由の要旨⑴ 訂正の目的について訂正事項1及び2は,特許法126条1項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。(本件審決第3,1) ⑵ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて本件訂正(訂正事項1及び2に係る訂正)は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,特許法126条5項の規定に適合する(以下,本件特許の願書に添付した明細 書を「本件明細書」,図面を「本件図面 した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,特許法126条5項の規定に適合する(以下,本件特許の願書に添付した明細 書を「本件明細書」,図面を「本件図面」といい,本件明細書と本件図面を併せて「本件明細書等」という。本件明細書等の内容は,別紙2(本件特許の特許公報)の該当箇所に記載のとおりである。)。(本件審決第3,2)⑶ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないことについて訂正事項1及び2は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するもの ではなく,特許法126条6項の規定に適合する。(本件審決第3,3)⑷ 本件訂正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであることについてア甲6発明(ア) 甲6(特開2017-196060号公開特許公報)は,本件特許の 優先日(平成28年6月3日,以下「本件優先日」という。)前の平成2 8年4月26日に,本件特許の出願人である原告とは異なる被告補助参加人(以下「補助参加人」という。)により特許出願され,本件優先日後である平成29年11月2日に特許掲載公報(公開特許公報)が発行された特許出願(特願2016-88440号,拡大先願)に係る公開特許公報であり,同特許出願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の 範囲及び図面は,別紙3(甲6)の該当箇所に記載のとおりである。 (イ) 甲6には,次の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されている。 (本件審決第3,4⑵)「前端が鋭利な針管2と前記針管2の後端部を支持するハブ3と, 筒状であって,前記ハブ3に組み付けられて該針管2を収容可能なプロテクタ4とを備え,該針管2の前端側へ該プロテクタ4が移動せしめられた所定位 前記針管2の後端部を支持するハブ3と, 筒状であって,前記ハブ3に組み付けられて該針管2を収容可能なプロテクタ4とを備え,該針管2の前端側へ該プロテクタ4が移動せしめられた所定位置において,該プロテクタ4に設けられた突片43が該ハブ3に対して係止されることで該針管2の再突出及び誤穿刺が防止されるようになっている プロテクタ付き医療用針1であって,前記プロテクタ4は,その先端部分に,翼状部材5を有し,針管2の軸方向に延びる大円筒部41を有し,前記大円筒部41の後端部には,前記突片43と,前記大円筒部4 1より大径で前記突片43よりも外周側にあり,小径部と大径部とを備えた拡幅部42とが設けられ,大径部の周壁に,前記ハブ3が係止されて前記針管2が突出した状態に保持される窓部42bが設けられ,前記突片43は,弾性的に変形することができ,前記プロテクタ4 の軸線に向かって傾斜した内側面を有し,拡幅部42の内部にあって, 前記大径部側に前記大円筒部41と一体形成される一方,前記小径部側には設けられていない,プロテクタ付き医療用針1。」イ甲6発明に基づく拡大先願について(ア) 本件訂正発明2についてa 対比 ⒜ 一致点「針先を有する留置針と,前記留置針の基端側に設けられた針ハブと,筒状の周壁を有し,前記針ハブに外挿装着されて針先側へ移動することで該留置針の針先を覆う針先プロテクタとを備え, 該留置針の針先側へ該針先プロテクタが移動せしめられた所定位置において,該針先プロテクタに設けられた係止片が該針ハブに対して係止されることで該留置針の針先の再露出が防止されるようになっている留置針組立体であって,前記針先プロテクタは, 位置において,該針先プロテクタに設けられた係止片が該針ハブに対して係止されることで該留置針の針先の再露出が防止されるようになっている留置針組立体であって,前記針先プロテクタは, 針軸方向に延びる円筒状部を有し,前記円筒状部の基端側には,前記係止片と,前記円筒状部より大径で前記係止片よりも外周側にあり,小径部と大径部とを備えた拡開部とが設けられ,前記大径部の周壁に,前記針ハブが係合されて前記留置針の針 先が突出状態に保持される針ハブ係合部が設けられ,前記係止片は,弾性変形可能で,前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し,前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される一方,前記小径部側には設けられていない,留置針組立体。」(本件審決第3,4⑶ア(ア)) ⒝ 相違点 ① 相違点1留置針に関し,本件訂正発明2は金属製であるのに対し,甲6発明はそのように特定されない点。(本件審決第3,4⑶ア(ア))② 相違点2小径部の外周面に関し,本件訂正発明2は凹部を設けることに より,前記凹部における前記小径部の肉厚寸法は,前記凹部を設ける前に比べて小さくされているのに対し,甲6発明はそのように構成されているか不明な点。(本件審決第3,4⑶ア(ア))b 本件訂正発明2と甲6発明の同一性⒜ 相違点1について 留置針組立体において,留置針を金属製とすることは,文献を挙げるまでもなく周知,慣用技術である。甲6発明は,針管2の材料について特定の例示はないが,実施に際し,針管の材料を具体的に金属製とすることは,上記周知,慣用技術に照らせば,単なる設計的事項である。よって,上記相違点1は周知,慣用技術を単に付加 した設計上の微差にすぎず,それにより新たな効果を奏するものと 体的に金属製とすることは,上記周知,慣用技術に照らせば,単なる設計的事項である。よって,上記相違点1は周知,慣用技術を単に付加 した設計上の微差にすぎず,それにより新たな効果を奏するものともいえないから,実質的な相違点とはいえない。(本件審決第3,4⑶ア(イ)a)⒝ 相違点2について相違点2に係る本件訂正発明2の構成について,「凹部を設ける前」 のものがどのような形状構造のものであるのかが明かでないし,そのような「凹部を設ける前」のものとの相対的な寸法が規定されるのみであるところの「小径部の肉厚寸法」は,具体的な寸法が何ら特定されていないものと解さざるを得ない。そうすると,本件訂正発明2の凹部は,その形状,大きさ,深さ等に特段の特定のない凹 形状というほかなく,また,当該凹部を設けたことの作用,効果も 本件特許の発明の詳細な説明を参酌しても何ら記載されていない。 むしろ,ほんのわずかに凹んだ小さな凹形状のものも含むものとなっているのであるから,そのようなものが何らかの作用,効果を奏するものとは到底認められない。したがって,当該凹部の有無は,技術的に意味がない単なる外形上の微差というほかなく,それによ り何らかの作用,効果を奏するものということはできないから,実質的な相違点とはいえない。(本件審決第3,4⑶ア(イ)b)⒞ 同一性相違点1及び2は,いずれも実質的な相違点とはいえないから,本件訂正発明2は甲6発明と実質同一である。(本件審決第3,4⑶ ア(ウ))c 独立特許要件本件訂正発明2は,甲6発明と同一であるから,特許法29条の2の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。(本件審決第3,4⑶ア(ウ)) (イ) 本件訂正発 本件訂正発明2は,甲6発明と同一であるから,特許法29条の2の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。(本件審決第3,4⑶ア(ウ)) (イ) 本件訂正発明3について本件訂正発明3と甲6発明は,前記(ア)a⒝①及び②記載の相違点1及び2において相違し,その余の点で一致する。 そして,相違点1及び2についての判断は,前記(ア)b⒜及び⒝のとおりであり,相違点1及び2は,いずれも実質的な相違点とはいえない から,本件訂正発明3は甲6発明と実質同一である。 したがって,本件訂正発明3は,特許法29条の2の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 (本件審決第3,4⑶イ)ウ特許法126条7項への適合性 本件訂正発明は,いずれも特許出願の際独立して特許を受けることがで きるものではないから,訂正事項1及び2は,特許法126条7項の規定に適合しない。(本件審決第3,4⑶エ)⑸ 本件訂正の許否について訂正事項1及び2は,特許法126条7項の規定に適合しないから,これらの訂正事項を含む本件訂正は認められない。(本件審決第4) 4 原告の主張する審決取消事由相違点2に関する判断の誤り第3 当事者の主張 1 原告の主張⑴ 本件審決の相違点2に関する判断の誤り(取消事由)の有無について 本件訂正発明において小径部の外周面に設けられた凹部は,周知技術又は技術常識として知られていた肉盗みにかかる技術を小径部に適用した構成であり,小径部の肉厚寸法を小さくしてエアの混入などを防止するという作用効果を有するものであって,本件明細書に接した当業者もそのように理解する。甲6には,小径部が肉厚であることやエアの 適用した構成であり,小径部の肉厚寸法を小さくしてエアの混入などを防止するという作用効果を有するものであって,本件明細書に接した当業者もそのように理解する。甲6には,小径部が肉厚であることやエアの混入を防止することなどに 関する記載はなく,凹部の記載はない。したがって,本件訂正発明と甲6発明は実質的に相違するものであり,凹部の有無は実質的な相違点とはいえないとした本件審決の相違点2に関する判断(本件審決第3,4⑶ア(イ)b)は誤りであり,本件審決は取り消されるべきである。以下,詳述する。 ⑵ 留置針組立体が樹脂製品であること及び肉盗みの技術が技術常識であるこ とについてア本件訂正発明の留置針組立体は樹脂製品であることに関して本件訂正発明の留置針組立体は針先プロテクタを備えたものであり(本件明細書の説明は,段落【0003】の従来技術の説明を含め,全てそのような留置針組立体の発明の説明になっている。),針先プロテクタ付きの 留置針組立体は,感染予防のために,一回使用した後に捨てること(いわ ゆるデイスポーザブル(disposable))を前提としている。そのため,針部分が金属製であることはともかく,針以外の部分に,高価で加工にも費用がかかる金属などの材質が用いられるはずがないのであって,針以外の部分が樹脂製でない製品は存在しないはずである。本件明細書も,このような技術常識を踏まえ,その記載の全てが,針以外の部分が樹脂製であるこ とを大前提とする記載になっている。例えば,段落【0047】では針ハブ本体の材質として「硬質の合成樹脂」を挙げ,段落【0053】では針先プロテクタの材質として樹脂のみを挙げ,段落【0063】では翼状部の材質として樹脂のみを挙げているし,「部材内へのエアの混入を効 ブ本体の材質として「硬質の合成樹脂」を挙げ,段落【0053】では針先プロテクタの材質として樹脂のみを挙げ,段落【0063】では翼状部の材質として樹脂のみを挙げているし,「部材内へのエアの混入を効果的に防止」(段落【0025】),「成形時の部材内への気泡の混入などによる寸法 誤差の発生や品質精度の低下が抑えられる」(段落【0078】)などの作用効果の記載は,樹脂製品であることを当然の前提とした記載である。また,「アンダーカット形状がなく成形も容易である」(段落【0082】)などの記載も,樹脂であることを前提に,「アンダーカット形状」や「成形」という用語を用いているのであり,その形状に関しても,金型成型により 簡単にできる形状の説明になっている。このような本件明細書を見て,針以外の部分が樹脂製でない製品を想起する当業者はいない。さらに,特許庁も,審査段階において,原告が上記の段落【0078】に記載された効果を「本願発明に特有の有利な効果」であると主張したのに対し,「樹脂製とは限らない」などの反論を一切することなく本件特許の登録を認めてい る。以上からすれば,本件訂正発明における留置針組立体が樹脂製品であることは,技術常識を踏まえれば当然のことであって,これを否定することは技術常識に反する。 イ肉盗みは技術常識であることに関して樹脂製品においては,製品の肉厚寸法が大きくなると部材内にエアが混 入するおそれがあるため,凹部を設けるなどして肉厚寸法を小さくし,エ アの混入を防止する技術(このような技術は「肉盗み」と呼ばれる。)が存在する。 例えば,「実用プラスチック用語辞典」(改訂版第四版,平成25年(2013年)甲39。以下「甲39」という。)には,「肉ぬすみ」の項に,「良い成形品を得る は「肉盗み」と呼ばれる。)が存在する。 例えば,「実用プラスチック用語辞典」(改訂版第四版,平成25年(2013年)甲39。以下「甲39」という。)には,「肉ぬすみ」の項に,「良い成形品を得るためには,肉厚はできるだけ均一にすることが重要な ポイントである.このために不必要な厚肉部分の肉厚を減じる設計変更のことを肉ぬすみという(図1).肉ぬすみを実施する際に考慮しなければならない点は,①構造上の強度,②離型時の強さ,③衝撃力の均等な分散,などで,製品肉厚の均一化が図れるほか,成形サイクルの短縮,品質の向上,軽量化などに効果がある.」,「参考までに,relief の動詞,relieve(in moulds)は,『(金型において)逃げをつける』ことで,『気体または余分の成形材料を漏出させるために金型の密封面の間の接触面積を減少すること』とJISK 6900では定義されている」とした上で,「図1 肉ぬすみの例」として,以下の図を載せている(左が肉盗みをする前であり,右が肉盗みを施した図である。)。 肉厚寸法を小さくし,エアの混入を防止する肉盗みの技術は,甲9の1ないし4のような,本件優先日前に発行された樹脂成形に関する文献にも記載されている(必ずしも「肉盗み」という用語が用いられていなくても,そのような内容の技術が記載されている。)。 このように,肉盗みは,本件優先日当時,既に周知技術又は技術常識で あった。 ⑶ 本件訂正発明において「凹部を設ける前」の小径部の形状及び肉厚についてア 「凹部を設ける前」の小径部の形状に関して本件訂正発明は,拡開部について,「小径部と大径部とを備えた拡開部」 という構成を備えるとこ 凹部を設ける前」の小径部の形状及び肉厚についてア 「凹部を設ける前」の小径部の形状に関して本件訂正発明は,拡開部について,「小径部と大径部とを備えた拡開部」 という構成を備えるところ,本件明細書には,「小径部と大径部とを備えた拡開部」について,次のような記載がある(下線は原告代理人が引いた。)。 「第6の態様は,前記第4又は第5の態様に係る留置針用針先プロテクタにおいて,前記拡開部が,互いに直交する小径部と大径部とを備えた略楕円筒形状とされており,該大径部の周壁で覆われた内部に前記係止部が 設けられていると共に,該大径部の周壁において前記針ハブが係合されて前記留置針の針先が突出状態に保持される針ハブ係合部が設けられているものである。」(段落【0023】)「本態様に従う構造とされた留置針用針先プロテクタによれば,拡開部が角部を備えていない略楕円筒形状とされていることから,拡開部が患者に 接触して患者が痛みを感じるおそれが低減され得る。特に,拡開部が小径部を備えていることから,患者への接触量を小さくすることができて,患者が痛みを感じるおそれが一層低減され得る。」(段落【0024】)このように,本件明細書では,「小径部と大径部とを備えた拡開部」が,互いに直交する小径部と大径部とを備えた,角部を備えていない略楕円筒 形状とされており,それは,患者が痛みを感じるおそれを低減するという 効果を奏する形状として記載されている。大径とは直径が大きいことであり,小径はその対義語であり,直径を想定できる形状のうち大径と小径を観念できるのは楕円しかないから,本件訂正発明の拡開部が「互いに直交する小径部と大径部とを備えた略楕円筒形状」であることは明らかである。 本件明細書の段落【0100】に他の形 状のうち大径と小径を観念できるのは楕円しかないから,本件訂正発明の拡開部が「互いに直交する小径部と大径部とを備えた略楕円筒形状」であることは明らかである。 本件明細書の段落【0100】に他の形態を許容する記載があったとし ても,上記に述べたところによれば,それは,本件訂正発明に妥当しない。 イ 「凹部を設ける前」の小径部の肉厚に関して(ア) 本件明細書の段落【0056】及び【0086】,本件図面中の図5(以下「本件図5」という。)及び図6(以下「本件図6」という。)について 本件明細書の段落【0056】及び【0086】には,拡開部の厚みに関して,次のような記載がある(下線は原告代理人が引いた。)。 「なお,大径部68,68における外周面は,先端側から基端側に向かって外径寸法が次第に大きくされており,円筒状部62の外周面から大径部68,68の外周面にかけては滑らかな湾曲面で接続されている。 また,円筒状部62から大径部68,68にかけての肉厚寸法は針軸方向で略一定とされているとともに,小径部66,66の肉厚寸法より小さくされている。」(段落【0056】)「大径部68,68に比べて厚肉とされた小径部66,66」(段落【0086】) このように,本件明細書には,円筒状部62から大径部68にかけての肉厚寸法は,小径部66の肉厚寸法より小さくされていること,すなわち,小径部66の肉厚寸法は,大径部68の肉厚寸法よりも大きいことが示されている。 そして,本件図5(本件図面中の図1に示された留置針組立体を構成 する留置針用針先プロテクタを拡大して示す斜視図。)及び本件図6(本 件図5に示された留置針用針先プロテクタの右側面図。)は次のとおりである。 【図5】 する留置針用針先プロテクタを拡大して示す斜視図。)及び本件図6(本 件図5に示された留置針用針先プロテクタの右側面図。)は次のとおりである。 【図5】 【図6】 本件図6では,拡開部の基端側における大径部68の肉厚寸法と小径部66の肉厚寸法とを比較すると,小径部66の肉厚寸法の方が大きくなっている。そして,本件図6は,本件図5に示された留置針組立体を基端側から観察した図であるところ,本件図5には,拡開部が,小径部 と大径部とを備えた略楕円筒形状であることが示されるとともに,小径 部に凹部が設けられた構造が示されている。 上記のような本件明細書の記載並びに本件図5及び6によれば,凹部を設ける前の小径部は,大径部68と比較して肉厚になっていたことが理解できる。そして,凹部を設けることにより,小径部が肉薄になっていることが理解できる。 (イ) 小径部が厚肉となりやすいことについて本件訂正発明は,拡開部の内部が厚肉になりやすいことから ,拡開部の大径部には内部に係止片を設け,拡開部の小径部には外周面に凹部を設けることによりそれぞれ厚肉を回避したものである。本件明細書の段落【0056】の記載からすれば,小径部の肉厚寸法が大径部の肉厚寸 法よりも大きいことが読み取れるが,仮に,小径部の肉厚寸法が大径部の肉厚寸法と同じかそれよりも小さい場合があり得るとしても,小径部が円筒状部と比較して厚肉になりやすいことに変わりはない。 本件特許は,原告の先行特許である特許第3134920号(その特許公報は甲5。以下「原告先行特許」という。)の発明の改良発明である ところ,原告先行特許の発 になりやすいことに変わりはない。 本件特許は,原告の先行特許である特許第3134920号(その特許公報は甲5。以下「原告先行特許」という。)の発明の改良発明である ところ,原告先行特許の発明においても,拡開部のうち係止片(可撓性衝合枝43)を設けていない部分は厚肉になっているのであって(甲5の図4),拡開部のうち係止片を設けていない部分が厚肉になりやすいことは,本件特許の基本特許である原告先行特許の発明からも理解できる。 (ウ) 実施例の記載の参酌について 本件訂正発明は,拡開部について,「小径部と大径部とを備えた拡開部」という構成を備えるところ,原告がこれまでに引用した本件明細書の段落【0023】,【0024】及び【0056】は,全てこの構成にかかる説明の記載であるから,これらは単なる実施例の記載ではなく,上記の構成の意味内容を説明する記載である。したがって,本件訂正発明の 意味内容を理解するためにこれらの段落を参照できることは当然である。 (エ) 拡開部の断面形状と内部空間を相似形とすることについてそもそも,針ハブに針先プロテクタが外挿装着される構造になっている本件訂正発明の構造では,拡開部の内部が厚肉になりやすいところ,小径部が大径部よりも厚肉となることが理解できる本件明細書の段落【0055】や【0056】の記載に加えて,大径部の内側に係止片を 設けることにより大径部が厚肉になることが回避されるという段落【0078】の記載からすれば,拡開部は相当程度厚肉になることが理解でき,本件発明においては,大径部の内側に係止片を設けることで大径部の厚肉を回避し,小径部の外周面に凹部を設けることで小径部の厚肉を回避していることを当業者は理解する。 拡開部の内部空間を,本件図6に においては,大径部の内側に係止片を設けることで大径部の厚肉を回避し,小径部の外周面に凹部を設けることで小径部の厚肉を回避していることを当業者は理解する。 拡開部の内部空間を,本件図6における拡開部の断面形状と相似形の略楕円形状とすることは,本件明細書にそのような記載がない上,内部空間を略楕円形状にすれば,内部に円筒状の針ハブを挿入したときに空間ができてしまって針ハブががたついてしまうから,本件訂正発明においてそのような構成は採用することはできない。また,本件明細書の段 落【0100】には,断面形状を内部空間と相似形にすることの記載はないから,段落【0100】の記載から,拡開部の断面形状を内部空間と相似形の略長円形状とすることに想到するとはいえない。 (オ) 小径部の肉厚の技術的意味について前記(ア)ないし(エ)のとおり,小径部は厚肉である。拡開部が小径部と 大径部とを備えた略楕円筒形状であること(前記ア)に加えて,小径部が厚肉であることを前提とすると,後記⑷のとおり,小径部の凹部は肉盗みのためのものといえる。 ⑷ 本件明細書に接した当業者は,本件訂正発明の凹部が肉盗みの技術を適用したものであると理解するか否かについて ア周知技術又は技術常識の参酌に関して 明細書は,当該発明に関する全ての技術を網羅してこれを説明しているものではなく,出願当時の当業者の技術常識を前提とした上で作成されるのが通常であるから,本件明細書に記載された発明を認定するに当たっては,技術常識を参酌することができる。肉盗みは,本件優先日当時既に周知技術又は技術常識であったから,当業者は,そのことを考慮して,本件 訂正発明の凹部を,肉盗みのために設けられたものと理解する。 イ本件図5に関して当 る。肉盗みは,本件優先日当時既に周知技術又は技術常識であったから,当業者は,そのことを考慮して,本件 訂正発明の凹部を,肉盗みのために設けられたものと理解する。 イ本件図5に関して当業者が,本件優先日当時に周知技術又は技術常識であった肉盗みの技術を前提として本件図5を見れば,本件図5では,比較的厚肉になっている小径部に,敢えて相当程度の大きさ及び深さを有する凹部を設けている のであるから,当該凹部は小径部の肉厚寸法を小さくしていること,すなわち,肉盗みの技術を適用したものであることを理解する。 ウ部材内へのエアの混入を防止できる旨の本件明細書の記載(段落【0025】及び【0078】)に関して原告先行特許(その特許公報は甲5)に係る発明においては,次の図の とおり,可撓性衝合枝43(本件特許に係る発明の「係止片」に相当する。)が上下方向に設けられていたが,このような態様では,皮膚に当たる拡開部が角部を備えているために,患者が痛みを感じるおそれがあった。 そこで,本件訂正発明では,拡開部を略楕円筒形状にすることにより,拡開部が患者に接触して患者が痛みを感じるおそれを低減した(本件明細書段落【0024】)。同時に,本件訂正発明では,これまでは小径部側にあった係止部を大径部側に移動させることで大径部の肉厚を薄くしてい る。これは,「単に肉厚の大径部を設けるのではなく,大径部の内部に係止部を設けることで,拡開部の内部スペースを巧く利用することができるとともに,部材内へのエアの混入を効果的に防止することができて,寸法誤差を小さくできるなど製品の品質も向上され得る。」(本件明細書段落【0025】。段落【0078】にも同旨の記載がある ことができるとともに,部材内へのエアの混入を効果的に防止することができて,寸法誤差を小さくできるなど製品の品質も向上され得る。」(本件明細書段落【0025】。段落【0078】にも同旨の記載がある。)ようにするためであ るところ,この記載が,大径部に対して肉盗みの技術を適用したことを示しているのは明らかである。本件明細書(段落【0025】及び【0078】)の記載により,本件訂正発明が「部材内へのエアの混入を効果的に防止すること」を実現することを知った当業者が,大径部よりも厚肉になりやすい小径部に凹部を設けることを示す本件図5を見れば,部材内へのエ アの混入を考慮して肉盗みを適用していると理解するのは当然である。 原告先行特許(甲5)可撓性衝合枝43(丸で示した)が上下方向に設けられている。 上述のとおり,大径部の内部に係止片を設け,大径部の肉厚寸法を小さくすることにより部材内のエアの混入を防止できるとの本件明細書の記載(段落【0025】)は,本件訂正発明を直接的に説明した記載の一つであるから,本件訂正発明が,樹脂製品の肉厚寸法を小さくすることによりエアの混入を防止できるという技術常識を前提にした発明であることを 端的に示している。そして,そのような技術常識が,大径部よりも厚肉な小径部にも同様に妥当することは,当業者にとって明らかであるから,小径部について,大径部の構成が奏する効果を生ずること,すなわち,肉盗みの構成が,部材内へのエアの混入を効果的に防止するという効果を生ずることは,当業者にとって明らかである。 エ小径部の寸法に関して本件明細書に接した当業者は,本件発明の凹部が,小径部に適用された肉盗みの技術であることを当然に理解する。肉盗みとしてどの程度の厚みが適切である 明らかである。 エ小径部の寸法に関して本件明細書に接した当業者は,本件発明の凹部が,小径部に適用された肉盗みの技術であることを当然に理解する。肉盗みとしてどの程度の厚みが適切であるかは,樹脂の材料や成形体の形状などにも依拠するものであり,一律に数値などで特定できるものではないから,これを具体的な寸法 などで特定する必要はなく,当業者であれば,作用効果の観点から適当な範囲を理解できる。技術常識である肉盗みについて,詳細な設計事項まで特定する必要はない。また,実質的に肉厚寸法が小さくなっているといえないようなわずかな凹みは,肉盗みとしての作用効果を奏する構成とはいえないから,本件訂正発明の「前記小径部の外周面に凹部を設けることに より,前記凹部における前記小径部の肉厚寸法は,前記凹部を設ける前に比べて小さくされている,」という構成には該当しない。 オ厚みを均一にすることに関して肉盗みは,樹脂製品の機能を損なわないようにしながら不必要な肉厚を減じる設計技術であり,肉厚をできる限り均一にすることが望ましいが, 厚みを均一にすることが樹脂製品の機能に優先するということはない。こ の点は,甲39の「図1 肉ぬすみの例」において,必ずしも厚みが均一になっているわけではないことに照らしても,明らかである。本件訂正発明は,拡開部を小径部と大径部とを備えた略楕円筒形状にすることにより,患者が痛みを感じるおそれを低減させているところ,拡開部が略楕円筒形状であることは本件訂正発明の作用効果に直結する形状であって,その形 状を維持しつつ,小径部の肉厚寸法を小さくするためには,小径部の外周面の一部に凹部を設ける本件図5のような形状が最も合理的である。当業者は,樹脂製品の機能を損なわない限度でエアの混 て,その形 状を維持しつつ,小径部の肉厚寸法を小さくするためには,小径部の外周面の一部に凹部を設ける本件図5のような形状が最も合理的である。当業者は,樹脂製品の機能を損なわない限度でエアの混入防止を図ろうとするのであって,肉厚が均一になっていないから肉盗みでない,と考える当業者はいない。 前述のとおり,拡開部は厚肉になりやすいのであり,拡開部において針ハブががたつかないような内部構造にしつつ,患者の肌に当たる外周部分の略楕円筒形状を維持するためには,本件訂正発明のように小径部の外周面の一部に肉盗みとしての凹部を採用することは極めて合理的な方法である。小径部全体を均一に薄く形成するという手段があり得るとしても, 上記の方法が否定されることはない。 カ凹部の機能に関してデザインとして凹部を作る意義はほとんど考えにくいことである上に,デザインとしての要素があったからといって,当該凹部が肉盗みであることが否定されるものではない。本件明細書上,デザインを意識した記載は 存在しない一方で,厚肉となる拡開部について肉厚寸法を小さくすることにより部材内のエアの混入を防止することができるなどの記載が存在している(段落【0025】及び【0078】)。そして,本件図5では,厚肉になりやすい小径部の樹脂を減らした典型的な肉盗みが形成されているのであるから,技術常識を踏まえた当業者が本件明細書等を読めば,本 件図5の凹部を肉盗みとして認識することは当然のことである。 また,一般的に樹脂製品の凹部について,肉盗みの他に落とし込み(ゲート跡の突出防止のための凹み)の技術があるとしても,凹部が厚肉になりやすい箇所に形成されていれば,肉盗みと理解することが通常である上に,落とし込みとしての機能があった ,肉盗みの他に落とし込み(ゲート跡の突出防止のための凹み)の技術があるとしても,凹部が厚肉になりやすい箇所に形成されていれば,肉盗みと理解することが通常である上に,落とし込みとしての機能があったとしてもそれと同時に肉盗みの機能を奏することも当然に想定されるから,落とし込みという技術が存在する ことによって,本件図5の凹部が肉盗みであることは否定されない。本件明細書にはゲート跡に関する記載はなく,本件図5の凹部にもゲート跡は示されていないから,当業者は本件図5の凹部を落とし込みであるとは考えず,肉盗みと理解する。 ⑸ 相違点2に関する判断について 相違点2に係る本件訂正発明の「前記小径部の外周面に凹部を設けることにより,前記凹部における前記小径部の肉厚寸法は,前記凹部を設ける前に比べて小さくされている,」という構成は,エアの混入を防止する肉盗みの技術を,大径部よりも厚肉となりやすい小径部に適用したものである。これは,拡開部について,従来は角部を有する形状で小径部側に係止部が設けられて いたものを,略楕円形状にした上で大径部側に係止部を移動させたため,小径部が厚肉になりやすくなったという,本件訂正発明に特有な構成に着目して,小径部に肉盗みの技術を適用して凹部を設け,もって,厚肉になりやすい小径部における「エアの混入を効果的に防止する効果」を奏するものであるから,当該凹部は,本件訂正発明に特有な作用効果と直に結び付いた構成 であって,単なる周知技術の付加転用とは到底いえない。 肉盗みの技術自体は技術常識ではあるが,だからといって,厚肉部分があれば必ず肉盗みを行うわけではなく,まして,本件明細書に接していない当業者であれば,本件訂正発明に特有な構成の下で小径部側が厚肉になりやすいことには気づかない。肉盗みの技術 らといって,厚肉部分があれば必ず肉盗みを行うわけではなく,まして,本件明細書に接していない当業者であれば,本件訂正発明に特有な構成の下で小径部側が厚肉になりやすいことには気づかない。肉盗みの技術常識を有する当業者が,本件図5を見 れば,小径部に設けられた凹部は肉盗みの技術を適用したものであると理解 できるが,本件図5などがない状態で,当然に小径部の外周面に凹部を設けるとはいえない。そして,甲6発明は,各別に成形された針本体とプロテクタとを容易に組み付けることができるという発明であり,甲6には,本件明細書のように,肉厚寸法についての記載や,厚肉を回避することによって部材内へのエアの混入を防止することについての記載は存在しない。また,小 径部が大径部よりも厚肉である旨の記載も存在しない。したがって,そのような甲6発明の拡開部の小径部に着目し,そこにエアの混入という課題があることを発見し,凹部を設けるとの解決手段を採用することまでもが,「課題解決のための具体化手段における微差(周知技術,慣用技術の付加,削除,転換等であって,新たな効果を奏するものではないもの)である」(審査基準) などとは到底いえず,相違点2は,「課題解決のための具体化手段における微差」ではない。したがって,本件訂正発明と甲6発明は,実質同一とはいえない。 2 被告の主張⑴ 本件審決の相違点2に関する判断の誤り(取消事由)の有無について 相違点2は実質的な相違点とはいえないとした本件審決の相違点2に関する判断(本件審決第3,4⑶ア(イ)b)に誤りはない。以下,詳述する。 ⑵ 原告の主張⑵(留置針組立体が樹脂製品であること及び肉盗みの技術が技術常識であることについて)に対しア原告の主張⑵ア(本件訂正発明の留置針組立体は (イ)b)に誤りはない。以下,詳述する。 ⑵ 原告の主張⑵(留置針組立体が樹脂製品であること及び肉盗みの技術が技術常識であることについて)に対しア原告の主張⑵ア(本件訂正発明の留置針組立体は樹脂製品であることに 関して)に対し本件訂正後の本件特許の請求項2には,留置針組立体が樹脂製品であることは特定されておらず,本件訂正発明はあらゆる素材・材料のものを技術的範囲に含むものである。 イ原告の主張⑵イ(肉盗みは技術常識であることに関して)に対し 樹脂製品において肉盗みの技術が周知技術であることの立証は,相違点 2の判断においては,何ら関係のない事項である。というのは,本件訂正発明の凹部が肉盗みであることは,本件訂正後の請求項2に何ら特定されておらず,本件明細書中にも記載がないし,前記アのとおり,本件訂正発明はあらゆる素材・材料のものを技術的範囲に含むものであるから,本件訂正発明の凹部について,樹脂材料に対する肉盗みの技術の適用であると 限定的に解釈することは許されない。本件訂正発明の凹部は,その形状,大きさ,深さ等について何らの特定をすることはできず,その素材・材料についても何らの特定がないものとして理解すべきである。 ⑶ 原告の主張⑶(本件訂正発明において「凹部を設ける前」の小径部の形状及び肉厚について)に対し ア原告の主張⑶ア(「凹部を設ける前」の小径部の形状に関して)に対し本件明細書の段落【0023】及び【0024】に記載された第6の態様に係る実施例においては,凹部を設ける前の小径部の形状は「角部を備えていない略楕円筒形状」であると理解される。しかし,本件明細書の段落【0008】及び【0012】の記載から,段落【0023】に示された 態様は,様々に列 を設ける前の小径部の形状は「角部を備えていない略楕円筒形状」であると理解される。しかし,本件明細書の段落【0008】及び【0012】の記載から,段落【0023】に示された 態様は,様々に列挙されたうちの一つの態様にすぎず,本件訂正後の請求項2において,凹部を設ける前の小径部の形状は何ら特定されておらず,本件明細書の段落【0100】によれば,凹部を設ける前の形状については,多様な実施態様をとり得るものと理解される。 甲40(「実用日本語表現辞典」)によれば,「大径」の意味は,「さしわ たしが大きいこと。特に車輪などにおいて直径が大きいこと。対義語は『小径』。」であり,「さしわたし」には,「直径」という意味もあるが,それとは別に「一方の端から他方の端までの長さ。」という意味もある(乙3(「日本国語大辞典第二版第六巻」),乙4(「広辞苑第六版」))。そうすると,「大径」,「小径」の語は,楕円に限って使用されるものではなく,一方の端か ら他方の端までの長さに大小のある図形一般について使用される用語と いえ,「大径部」,「小径部」との文言のみから拡開部が略楕円筒形状であると一義的に解釈できるものではない。また,本件特許の明細書の段落【0100】の記載からすれば,当該拡開部の断面形状である「略楕円形状」には様々なものが観念でき,凹部を設ける前の拡開部の形状は特定できないことに変わりはなく,したがって,凹部の具体的形状は何ら特定がされ たものとはなっていない。 したがって,本件審決が,「相違点2に係る本件訂正発明の構成について,『凹部を設ける前』のものがどのような形状構造のものであるのかが明かでない」と判断したことに誤りはない。 イ原告の主張⑶イ(「凹部を設ける前」の小径部の肉厚に関して)に対し 明の構成について,『凹部を設ける前』のものがどのような形状構造のものであるのかが明かでない」と判断したことに誤りはない。 イ原告の主張⑶イ(「凹部を設ける前」の小径部の肉厚に関して)に対し (ア) 原告の主張⑶イ(ア)(本件明細書の段落【0056】及び【0086】,本件図5及び6について)に対し本件明細書の段落【0055】及び【0056】と本件図6を併せて見た場合に,略楕円筒形状の拡開部に断面が略長円形状の内部空間を形成したことにより,小径部が大径部よりも厚肉となることが理解できる としても,内部空間を本件図6における拡開部の断面形状と相似形の略楕円形状とすること,あるいは,拡開部の断面形状を内部空間と相似形の略長円形状とすることにより,小径部と大径部との肉厚を均一とし,厚肉ではない小径部を形成することも十分に考えられるから,小径部が大径部よりも必然的に厚肉となるわけではない。 (イ) 原告の主張⑶イ(イ)(小径部が厚肉となりやすいことについて)に対し小径部が厚肉になりやすいことは,本件訂正発明に特定されている事項ではないし,前記(ア)のとおり,小径部が大径部よりも必然的に厚肉となるわけではないから,原告主張のように小径部が厚肉となりやすい とはいえない。 (ウ) 原告の主張⑶イ(ウ)(実施例の記載の参酌について)に対し前記アのとおり,段落【0023】及び【0024】に示された態様は,様々に列挙されたうちの一つの態様にすぎないし,段落【0056】は実施例についての記載である。本件訂正発明の要旨認定は,本件訂正後の請求項2の記載に基づいて行うべきであり,上記の実施態様や実施 例の記載を参酌して行うべき理由はない。本件訂正発明には,大径部の肉厚寸法がどの程度である 。本件訂正発明の要旨認定は,本件訂正後の請求項2の記載に基づいて行うべきであり,上記の実施態様や実施 例の記載を参酌して行うべき理由はない。本件訂正発明には,大径部の肉厚寸法がどの程度であるかや,小径部の肉厚寸法が大径部の肉厚寸法との関係でどの程度かは何ら特定されていないから,小径部の肉厚寸法と大径部の肉厚寸法との大小関係を把握することが可能な実施例が本件明細書中に記載されていたとしても,本件訂正発明はそのような実施例 に限定されるわけではない。 (エ) 原告の主張⑶イ(エ)(拡開部の断面形状と内部空間を相似形とすることについて)に対し本件明細書の段落【0100】の記載は,拡開部の断面形状の多様性を許容している。そのため,拡開部の内部空間を本件図6における拡開 部の断面形状と相似形の略楕円形状とすること,あるいは,拡開部の断面形状を内部空間と相似形の略長円形状とすることにより,小径部と大径部との肉厚を均一とし,厚肉ではない小径部を形成することも十分に考えられるから,小径部が大径部よりも必然的に厚肉となるわけではない。 また,本件明細書の記載から,がたつきを防止するという課題は把握できず,そのような課題を解決するための構成も記載されておらず,本件訂正発明はがたつきを防止することを意図したものとはいえない。さらに,適切に設計することにより,小径部を厚肉としなくても,がたつきの防止は可能である。本件明細書の段落【0059】及び【0060】 によれば,係止爪78,78の内周面と針ハブ本体26の小径筒部32 とはぴったりとはまり合う関係である。 (オ) 原告の主張⑶イ(オ)(小径部の肉厚の技術的意味について)に対し本件明細書の段落【0058】及び【0077】の記載によれば,本件明細 とはぴったりとはまり合う関係である。 (オ) 原告の主張⑶イ(オ)(小径部の肉厚の技術的意味について)に対し本件明細書の段落【0058】及び【0077】の記載によれば,本件明細書に記載された大径部68,68には,その内側に係止片74,74を収容するための機能がある。これに対し,小径部66,66は, そのような機能がないから,大径部68,68のように径を大きくする必要はない。また,段落【0024】及び【0077】の記載に照らすと,小径部66,66の径は,針先プロテクタの円筒状部62の径との差を可能な限り小さくし,円筒状部62の外周面と小径部66,66の外周面とが滑らかに連続するようにして,患者への局所的な接触圧力を 小さくすることにより,患者が痛みを感じるおそれが低減されることが理解できる。したがって,本件明細書の記載を踏まえると,小径部66,66を肉盗みが必要なほど厚肉とすることは,必要がないばかりか,適切でない。 ⑷ 原告の主張⑷(本件明細書に接した当業者は,本件訂正発明の凹部が肉盗 みの技術を適用したものであると理解するか否かについて)に対しア原告の主張⑷ア(周知技術又は技術常識の参酌に関して)に対し本件訂正発明は,樹脂製品であるという特定はされておらず,あらゆる素材・材料のものをその技術範囲に含むものである。また,小径部の凹部は,その形状,大きさ,深さ等に特段の特定のない凹形状としか把握でき ないから,本件訂正発明における「前記凹部における前記小径部の肉厚寸法」という構成は,あらゆる態様の「凹形状」に応じて変化し得ることとなり,そのような肉厚寸法について,肉盗みであると理解することはできない。また,小径部の凹部は,その形状,大きさ,深さ等に特段の特定がないから,ほんのわずか 態様の「凹形状」に応じて変化し得ることとなり,そのような肉厚寸法について,肉盗みであると理解することはできない。また,小径部の凹部は,その形状,大きさ,深さ等に特段の特定がないから,ほんのわずかにくぼんだ小さな凹形状も含むものであり,その ようなものが何らかの新たな作用効果を奏するものとは認められない。し たがって,本件優先日当時,肉盗みの技術が周知技術又は技術常識であったとしても,本件訂正発明の凹部は,肉盗みのためのものに限定されることはない。 イ原告の主張⑷イ(本件図5に関して)に対し本件図5からは,凹部が見受けられるというにとどまり,その具体的な 形状,大きさ,深さは明らかではなく,その目的,作用効果を把握することもできない。本件図5に示された小径部の凹部は,落とし込み(ゲート跡の突出防止のためのくぼみ)やデザインとも解し得るものであり,肉盗みのためのものであると一義的に解することはできない。 ウ原告の主張⑷ウ(部材内へのエアの混入を防止できる旨の本件明細書の 記載(段落【0025】及び【0078】)に関して)に対し本件明細書の段落【0025】及び【0078】に,部材内へエアが混入することの防止に関する記載があるとしても,本件訂正発明の凹部が肉盗みの凹部であると限定されるものではない。本件明細書の段落【0055】ないし【0062】には,拡開部(拡径部)及び係止部の構成につい て詳細に説明されているところ,本件図5に示される小径部の凹部が,肉盗みなどの技術的な意味を有するのであれば,本件明細書において詳細かつ具体的な説明がされるはずであるが,それにもかかわらず,小径部の凹部について何らの説明もされていないことからすると,小径部の凹部は技術的な意味を有する構成ではなく,デザ ,本件明細書において詳細かつ具体的な説明がされるはずであるが,それにもかかわらず,小径部の凹部について何らの説明もされていないことからすると,小径部の凹部は技術的な意味を有する構成ではなく,デザインのためのものであると解する のが自然である。 エ原告の主張⑷エ(小径部の寸法に関して)に対し原告は,実質的に肉厚寸法が小さくなっているといえないようなわずかな凹みは,肉盗みとしての作用効果を奏する構成とはいえないから,本件訂正発明の「前記小径部の外周面に凹部を設けることにより,前記凹部に おける前記小径部の肉厚寸法は,前記凹部を設ける前に比べて小さくされ ている,」という構成には該当しない旨主張するが,本件訂正発明の小径部の凹部は肉盗みのためのものに限られないから,原告の上記主張は理由がない。 オ原告の主張⑷オ(厚みを均一にすることに関して)に対し肉盗みに関する甲39の記載に照らせば,肉盗みとは,よい成形品を得 るために肉厚をできるだけ均一にすることを目的とするものであるところ,本件図5に示された小径部の凹部は,凹部の縁において肉厚が急激に変化する段差を形成しているから,肉盗みのための凹部ではない。また,甲39の記載によれば,肉盗みは,不必要な厚肉部分が存在することを前提とするところ,凹部を設ける前の小径部の肉厚は不明で,不必要に肉厚 であるか明らかでないから,小径部の凹部は肉盗みであるとはいえない。 肉厚を均一にしてよい成形品を得るためには,小径部全体を均一に薄く形成すれば足りるのであり,不必要な厚肉部分を設けた上で肉盗みを設ける理由はない。 カ原告の主張⑷カ(凹部の機能に関して)に対し 本件訂正発明の小径部の凹部は,落とし込みやデザインとも解し得るものであり,肉盗 不必要な厚肉部分を設けた上で肉盗みを設ける理由はない。 カ原告の主張⑷カ(凹部の機能に関して)に対し 本件訂正発明の小径部の凹部は,落とし込みやデザインとも解し得るものであり,肉盗みのためのものであると一義的に解することはできない。 ⑸ 相違点2に関する判断について本件訂正発明の小径部の凹部について,本件明細書には,請求項をそのまま転記した段落【0009】ないし【0011】以外には何ら記載がないか ら,そのような凹部は,課題解決のための具体的手段に何らの影響も及ぼさず,新たな作用効果を生ずるものではない。本件訂正発明の小径部の凹部は,本件特許の課題との関係において技術的に意味のない単なる外形上の微差であるから,本件訂正発明の小径部に凹部があり,甲6発明の小径部に凹部があるか否か明らかではないという相違点2は,技術的に意味はなく,実質的 な相違点ではない。したがって,本件審決が,相違点2について,実質的な 相違点とはいえないとした判断に誤りはない。 3 補助参加人の主張⑴ 本件審決の相違点2に関する判断の誤り(取消事由)の有無について相違点2は本件訂正発明と甲6発明の実質的な相違点ではないという本件審決の判断に誤りはない。 ⑵ 原告の主張⑵(留置針組立体が樹脂製品であること及び肉盗みの技術が技術常識であることについて)に対し本件優先日当時に肉盗みが公知技術又は技術常識であったことは争わないが,そうであるとしても,本件訂正発明の小径部の凹部は肉盗みであるとは認められない。 ⑶ 原告の主張⑶(本件訂正発明において「凹部を設ける前」の小径部の形状及び肉厚について)に対し本件図5や本件明細書の段落【0056】は実施例を示すにすぎず,本件明細書の段落【01 ⑶ 原告の主張⑶(本件訂正発明において「凹部を設ける前」の小径部の形状及び肉厚について)に対し本件図5や本件明細書の段落【0056】は実施例を示すにすぎず,本件明細書の段落【0100】には多様な実施形態があることが記載されているから,凹部を設ける前の小径部の形状及び肉厚は明らかではない。 ⑷ 原告の主張⑷(本件明細書に接した当業者は,本件訂正発明の凹部が肉盗みの技術を適用したものであると理解するか否かについて)に対し本件訂正発明は,小径部の凹部の大きさ,深さ,肉厚等を何ら特定するものではなく,本件図5は実施例を示すにとどまるから,本件図5に基づいて本件訂正発明の小径部の凹部の構成を限定的に解することはできない。 また,仮に本件図5を前提とするとしても,肉盗みとの関係で重視されるのは絶対的な肉厚であって,他の部分と比べた相対的な肉厚でないから,本件図5により,小径部が比較的厚肉であることが分かるからといって,小径部の凹部が肉盗みのためのものであるとはいえない。また,部材にエアが混入することを防止するためには,肉厚の均一性も重要であるところ,本件図 5の小径部では,凹部を設けることによって急激な肉厚の変化が生じてしま っているから,当業者は,本件図5の小径部の凹部を肉盗みと理解することはない。本件明細書には,本件図5の凹部について何らの技術的な説明がないから,そのような凹部は,デザイン,落とし込みのためであることもあり得るのであり,肉盗みと解されるものではない。 本件図6に示された構成において,大径部については,これを肉薄にする 処理がされているが,そのような処理をする前の大径部の肉厚に比べて,小径部のもともとの肉厚は薄いから,小径部に設けられた凹部が肉盗みのための た構成において,大径部については,これを肉薄にする 処理がされているが,そのような処理をする前の大径部の肉厚に比べて,小径部のもともとの肉厚は薄いから,小径部に設けられた凹部が肉盗みのためのものと理解されることはない。 ⑸ 相違点2に関する判断について本件訂正発明の小径部の凹部は,肉盗みのためのものであると解すること はできず,技術的な意味は不明であるから,本件訂正発明の小径部に凹部があり,甲6発明の小径部に凹部があるか否か明らかではないという相違点2は,技術的に意味はなく,実質的な相違点ではない。 また,仮に,当業者が本件訂正発明の小径部の凹部を肉盗みと理解できるとしても,甲6発明の小径部に技術常識である肉盗みの凹部を付加すること は,当業者なら当然に行い得る微差又は設計事項にすぎず,それによって新たな効果を奏するものではないから,相違点2は,実質的な相違点ではない。 したがって,本件審決が,相違点2について,実質的な相違点とはいえないとした判断に誤りはない。 第4 当裁判所の判断 1 本件発明について⑴ 本件明細書等の記載本件明細書には,次の記載がある。 ア技術分野「本発明は,血管に穿刺されて留置される留置針の使用後に当該留置針 の針先を保護する留置針用針先プロテクタを備える留置針組立体に関す るものである。」(段落【0001】)イ背景技術「従来から,輸液や採血,血液透析を行う際に用いられる留置針が知られている。この留置針は,先端に針先を備えている一方,基端は針ハブに固定されている。かかる留置針が患者の血管に穿刺されて留置されること で,針ハブに接続されるカヌラなどの外部管路を通じて,輸液や採血,血液透析が実施されるようになっている。」(段落 端は針ハブに固定されている。かかる留置針が患者の血管に穿刺されて留置されること で,針ハブに接続されるカヌラなどの外部管路を通じて,輸液や採血,血液透析が実施されるようになっている。」(段落【0002】)「ところで,留置針は,誤穿刺や再使用の防止,或いは廃棄処理の容易化などの目的で,使用後の針先を保護する針先プロテクタを備えているものがある。たとえば,かかる留置針用の針先プロテクタおよび針先プロテ クタを備えた留置針組立体としては,本出願人が提案した特許第3134920号公報(特許文献1)などがある。」(段落【0003】)「すなわち,特許文献1に記載の針先プロテクタは筒状の周壁を備えており,留置針の使用後に当該周壁を針先側に移動させることで,留置針の針先が針先プロテクタにより保護されるようになっている。具体的には, 留置針の使用前には,針先プロテクタと針ハブとが,留置針の針先が露出する状態で連結固定されているが,使用後に針先プロテクタと針ハブとの連結を解除することで,針先プロテクタが針ハブに対して針先側へ移動して針先を保護するとともに,係止部(可撓性衝合枝43)でかかる状態を保持することができるようになっている。このような針先プロテクタおよ び留置針組立体を採用すれば,留置針の針先が安全に保護できて,誤穿刺などのおそれが効果的に防止され得る。」(段落【0004】)「そして,本出願人は,かかる針先プロテクタを備えた留置針組立体の更なる改良を検討して,上記特許文献1に記載の留置針組立体よりも,安全性などに優れた本発明を開発し得たのである。」(段落【0005】) ウ発明が解決しようとする課題 「本発明は,上述の事情を背景に為されたものであって,その解決課題は,従来より れた本発明を開発し得たのである。」(段落【0005】) ウ発明が解決しようとする課題 「本発明は,上述の事情を背景に為されたものであって,その解決課題は,従来よりも安全性などの向上を図ることのできる,新規な構造の留置針組立体を提供することにある。」(段落【0007】)エ課題を解決するための手段「以下,このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載 する。なお,以下に記載の各態様において採用される構成要素は,可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。」(段落【0008】)「本発明の留置針組立体に用いられる針先プロテクタは,以下の態様を含みうる。」(段落【0012】)「第6の態様は,前記第4又は第5の態様に係る留置針用針先プロテク タにおいて,前記拡開部が,互いに直交する小径部と大径部とを備えた略楕円筒形状とされており,該大径部の周壁で覆われた内部に前記係止部が設けられていると共に,該大径部の周壁において前記針ハブが係合されて前記留置針の針先が突出状態に保持される針ハブ係合部が設けられているものである。」(段落【0023】) 「本態様に従う構造とされた留置針用針先プロテクタによれば,拡開部が角部を備えていない略楕円筒形状とされていることから,拡開部が患者に接触して患者が痛みを感じるおそれが低減され得る。特に,拡開部が小径部を備えていることから,患者への接触量を小さくすることができて,患者が痛みを感じるおそれが一層低減され得る。」(段落【0024】) 「また,単に肉厚の大径部を設けるのではなく,大径部の内部に係止部を設けることで,拡開部の内部スペースを巧く利用することができるとともに,部材内へのエアの混入を効果的に防止することができて,寸法誤差 また,単に肉厚の大径部を設けるのではなく,大径部の内部に係止部を設けることで,拡開部の内部スペースを巧く利用することができるとともに,部材内へのエアの混入を効果的に防止することができて,寸法誤差を小さくできるなど製品の品質も向上され得る。」(段落【0025】)「留置針組立体および留置針用針先プロテクタにおいて,針先の再露出 を防止する係止部が周壁の内部に一体的に形成すれば,係止部への意図し ない接触などが回避されて,安全性の向上が図られ得る。」(段落【0040】)オ発明を実施するための形態「以下,本発明の実施形態について,図面を参照しつつ説明する。」(段落【0042】) 「先ず,図1~4には,本発明の第1の実施形態としての留置針用の針先プロテクタ10を備える留置針組立体12が示されている。この留置針組立体12は,針先14を有する留置針16と,当該留置針16が針軸方向で移動可能に挿通される針先プロテクタ10を備えており,留置針16を患者の血管に穿刺して留置することで,留置針組立体12の基端側に接 続されるカヌラなどの外部管路18を通じて,輸液や採血,血液透析などが施されるようになっている。そして,留置針16の使用後には,留置針16を患者の血管から抜去するとともに,針先プロテクタ10を針先14側へ移動させることで,留置針16の針先14が針先プロテクタ10により覆われて保護されるようになっている。なお,以下の説明において,先 端側または前方とは,留置針16の針先14側である図1中の左方を言う一方,基端側または後方とは,留置針16の穿刺方向後方となる図1中の右方を言う。」(段落【0043】)「一方,針先プロテクタ10は,図5,6に示されるように,全体として針軸方向に延びる略筒形状 一方,基端側または後方とは,留置針16の穿刺方向後方となる図1中の右方を言う。」(段落【0043】)「一方,針先プロテクタ10は,図5,6に示されるように,全体として針軸方向に延びる略筒形状とされており,例えばポリプロピレンやポリ カーボネート,グリコール変性ポリエチレンテレフタレートやABS樹脂などのような硬質の合成樹脂により一体成形されている。すなわち,かかる針先プロテクタ10は,筒状の周壁58および当該周壁58の内部を針軸方向に貫通する内孔60を備えている。」(段落【0053】)「この針先プロテクタ10(周壁58)は,針軸方向で形状が異ならさ れており,先端側が,断面が略真円環形状とされた円筒状部62とされて いるとともに,基端側が,円筒状部62よりも大径で外周に広がる拡開部としての拡径部64とされている。すなわち,針先プロテクタ10の周壁58が,円筒状部62の周壁と拡径部64の周壁とを含んで構成されており,周壁58の内周面65が,円筒状部62の周壁の内周面と拡径部64の周壁の内周面とを含んで構成されている。」(段落【0054】) 「拡径部64は,図6にも示されるように,略楕円筒形状とされており,図6中の小径方向である左右方向における外周面の幅寸法に比べて,図6中の大径方向である上下方向における外周面の幅寸法の方が大きくされている。すなわち,拡径部64を構成する壁部のうち,図6中の左右方向の壁部を構成する部分が小径部66,66とされている一方,図6中の上 下方向の壁部を構成する部分が大径部68,68とされており,これら小径部66,66の対向方向と大径部68,68の対向方向とが互いに直交している。」(段落【0055】)「なお,大径部68,68における外周面は,先端側から基 大径部68,68とされており,これら小径部66,66の対向方向と大径部68,68の対向方向とが互いに直交している。」(段落【0055】)「なお,大径部68,68における外周面は,先端側から基端側に向かって外径寸法が次第に大きくされており,円筒状部62の外周面から大径 部68,68の外周面にかけては滑らかな湾曲面で接続されている。また,円筒状部62から大径部68,68にかけての肉厚寸法は針軸方向で略一定とされているとともに,小径部66,66の肉厚寸法より小さくされている。これにより,拡径部64の内部には,断面が,図6中の左右方向寸法より図6中の上下方向寸法の方が大きくされた略長円形状とされて,且 つ,基端側に向かって図6中の上下方向寸法が次第に大きくなる内部空間70が,針先プロテクタ10を貫通する内孔60の基端側に形成されている。」(段落【0056】)「また,大径部68,68のそれぞれには,板厚方向で貫通するとともに所定の周方向寸法をもって延びる針ハブ係合部としての貫通窓72,7 2が形成されている。かかる貫通窓72,72の周方向寸法は,フック5 6,56の周方向寸法よりも大きくされている。」(段落【0057】)「かかる内部空間70内において,周壁58の内周面65からは,内部に突出する一対の係止部としての係止片74,74が一体的に形成されている。これらの係止片74,74は,拡径部64における大径部68,68の内部において,大径部68,68に対応する位置,すなわち図6中の 上下方向で対向して(周方向で相互に離隔して)設けられている。」(段落【0058】)「すなわち,拡径部64の前端部分において,周壁58の内周面65には,所定の寸法C(図9参照)をもって軸直角方向に広がる環状の て(周方向で相互に離隔して)設けられている。」(段落【0058】)「すなわち,拡径部64の前端部分において,周壁58の内周面65には,所定の寸法C(図9参照)をもって軸直角方向に広がる環状の段差状面76が形成されており,当該段差状面76よりも先端側が基端側よりも 大径とされている。要するに,かかる段差状面76が,前方に向かって外周側に広がっている。なお,段差状面76における軸直角方向の寸法Cは,係止凹部36の先端側規制面42における軸直角方向の寸法Bよりも小さくされている。そして,段差状面76よりも基端側において,段差状面76から周壁58の基端側に向かって係止片74,74が突出形成されて いる。なお,かかる係止片74,74は,段差状面76から基端側に向かって針軸方向と略平行に延びているとともに,それぞれ周方向に湾曲しており,その突出先端(針軸方向基端)には内周側に屈曲する係止爪78,78が形成されている。」(段落【0059】)「これらの係止爪78,78の内周面はそれぞれ周方向に湾曲しており, 当該係止爪78,78の内周面における曲率半径は,針ハブ本体26における小径筒部32の外径半径と略等しくされている。また,係止爪78,78の内周面における径方向での対向面間距離は,小径筒部32の外径寸法と略等しくされている一方,テーパ状面34における先端部分の最大外径寸法よりも小さくされている。尤も,係止爪78,78の内周面におけ る径方向での対向面間距離は,小径筒部32の外径寸法よりも僅かに小さ くされていてもよいし,僅かに大きくされていてもよい。」(段落【0060】)「さらに,係止爪78,78の基端側端面(突出先端面)79,79は,内周側が所定の寸法D(図9参照)をもって軸直角方向に されていてもよいし,僅かに大きくされていてもよい。」(段落【0060】)「さらに,係止爪78,78の基端側端面(突出先端面)79,79は,内周側が所定の寸法D(図9参照)をもって軸直角方向に広がる垂直面79a,79aとされているとともに,外周側が,外周側になるにつれて先 端側に傾斜する傾斜面79b,79bとされている。本実施形態では,垂直面79a,79aにおける軸直角方向の寸法Dが,係止凹部36の基端側規制面40における軸直角方向の寸法Aと略同じか或いは僅かに大きくされている。これにより,後述するように,係止爪78,78が基端側規制面40に当接して針ユニット20の先端側への移動(針先プロテクタ 10の針軸方向基端側への移動)が制限される際には,基端側規制面40の全面が垂直面79a,79aに当接することとなり,十分に大きな当接面積が確保され得る。更にまた,垂直面79a,79aの外周側に位置する傾斜面79b,79bが,外周側になるにつれて先端側に傾斜していることから,垂直面79a,79aと基端側規制面40とが傾斜面79b, 79bに干渉されることなく当接することができて,針ユニット20と針先プロテクタ10の軸方向における相対移動防止効果がより確実に発揮され得る。」(段落【0061】)「また,係止片74,74の突出先端(係止爪78,78)は,拡径部64の基端よりも先端側に位置している。すなわち,係止片74,74の 全体が,拡径部64の内部空間70内において,収容状態で設けられている。」(段落【0062】)「そして,図7~9に示されるように,針ユニット20を針先プロテクタ10に対して後退移動させる(針ユニット20の針先14側へ針先プロテクタ10を前進移動させる)ことにより,留置針16の針先14が針先 そして,図7~9に示されるように,針ユニット20を針先プロテクタ10に対して後退移動させる(針ユニット20の針先14側へ針先プロテクタ10を前進移動させる)ことにより,留置針16の針先14が針先 プロテクタ10で覆われるとともに,係止片74,74の係止爪78,7 8が針ハブ本体26のテーパ状面34を乗り越えて弾性復帰して,係止凹部36内に入り込むようになっている。かかる状態では,係止爪78,78の特に垂直面79a,79aと係止凹部36の基端側規制面40とが当接する(係止爪78,78が基端側規制面40に係止される)ことで針ユニット20の先端側への移動(針先プロテクタ10の針軸方向基端側への 移動)が制限されるようになっている。これにより,留置針16の針先14の再露出が阻止されるようになっている。」(段落【0070】)「上記の如き構造とされた針先プロテクタ10および留置針組立体12では,留置針16の針先14の再露出を防止する係止片74,74が,筒状の周壁58の内部に,特にその全体が収容されて設けられていることか ら,意図せず外部から係止片74,74に接触することが略不可能とされている。それ故,針先プロテクタ10による留置針16の針先14の保護状態において,意図せず係止片74,74と係止凹部36との係止を解除して留置針16の針先14を針先プロテクタ10から再露出させることが効果的に防止され得る。」(段落【0076】) 「特に,係止片74,74は,針先プロテクタ10の基端側において拡開された拡径部64に設けられている。これにより,係止片74,74の大きさを十分に確保しつつ,係止片74,74間に挿通される針ハブ22(針ハブ本体26)も外径寸法が十分に大きなものが採用され得る。更にまた,本実施 4に設けられている。これにより,係止片74,74の大きさを十分に確保しつつ,係止片74,74間に挿通される針ハブ22(針ハブ本体26)も外径寸法が十分に大きなものが採用され得る。更にまた,本実施形態では,拡径部64が略楕円形状とされており,その外周 面が円筒状部62の外周面から滑らかに連続していることから,拡径部64などが患者に接触して,患者が痛みを感じるおそれが低減されている。」(段落【0077】)「さらに,係止片74,74が,かかる略楕円形状の拡径部64を構成する大径部68,68の内側に設けられていることから,大径部68,6 8の内側のスペースを巧く利用することができるとともに,大径部68, 68が厚肉となることも回避されて,成形時の部材内への気泡の混入などによる寸法誤差の発生や品質精度の低下が抑えられる。また,係止部(係止片74,74)は,大径部68,68と同じ方向(軸方向の基端側)に延びるように設けられることが好ましい。このように構成することで,拡径部64を必要以上に大きく設けなくてもよくなり,大径部68,68の 内側のスペースを巧く利用することができるとともに,大径部68,68が厚肉となることも回避されて,成形時の部材内への気泡の混入などによる寸法誤差の発生や品質精度の低下が抑えられる。」(段落【0078】)「なお,拡径部64は,基端側に向かって次第に外周側に広がる形状とされていることから,変形量制限部102,102は,基端側になるにつ れて次第に径方向寸法(図11中の上下方向寸法)が大きくなるようにされており,図11に示される縦断面では,略直角三角形状となっている。 そして,変形量制限部102,102の内周面は,係止片74,74と略平行(即ち,留置針16の針軸方向と略平行) が大きくなるようにされており,図11に示される縦断面では,略直角三角形状となっている。 そして,変形量制限部102,102の内周面は,係止片74,74と略平行(即ち,留置針16の針軸方向と略平行)に広がっている一方,基端面は,留置針16の針軸方向に対して略直交する方向に広がっている。か かる変形量制限部102,102の基端面は,係止片74,74の針軸方向基端(突出先端)よりも,針軸方向先端側に位置しており,変形量制限部102,102の全体が,拡径部64の内部空間70内に収容されている。」(段落【0085】)「特に,本実施形態では,それぞれの変形量制限部102,102が, 拡径部64の内周面65から基端側に突出する3つの突部104,104,104から構成されている。これら3つの突部104,104,104は,大径部68,68に比べて厚肉とされた小径部66,66を構成する壁部間(図10中の左右方向間)において,周方向で並んで設けられており,相互に離隔して配設されている。」(段落【0086】) 「さらに,前記実施形態では,針先プロテクタ10,100の先端側が 円環形断面を有する円筒状部62とされる一方,基端側が楕円筒状の拡径部64とされていたが,これらの形状に限定されるものではない。すなわち,針先プロテクタの先端側および基端側の拡開部における断面形状は,それぞれ,円形(楕円,長円,半円などを含む)や多角形状など各種形状が採用され得る。尤も,針先プロテクタの基端側に設けられる拡開部は必 須なものではなく,針先プロテクタは,単なるストレートの筒形状であってもよい。」(段落【0100】)⑵ 本件発明の技術的意義ア本件発明は,血管に穿刺されて留置される留置針の使用後に当該留置針の針先を保護す ,針先プロテクタは,単なるストレートの筒形状であってもよい。」(段落【0100】)⑵ 本件発明の技術的意義ア本件発明は,血管に穿刺されて留置される留置針の使用後に当該留置針の針先を保護する留置針用針先プロテクタを備える留置針組立体に関する ものである(段落【0001】)。 イ本件特許の請求項1記載の発明の構成は,前記第2,2⑴アのとおりであり,本件訂正発明2の構成は,前記第2,2⑵イ(ア)のとおりであり,本件訂正発明3の構成は,前記第2,2⑵イ(イ)のとおりである。 ウ本件発明の留置針組立体及び留置針用針先プロテクタにおいては,針先 の再露出を防止する係止部が周壁の内部に一体的に形成されているので,係止部への意図しない接触などが回避されて,安全性の向上が図られ得るとともに,留置針用針先プロテクタは,拡開部が角部を備えていない略楕円筒形状とされていることから,拡開部が患者に接触して患者が痛みを感じるおそれが低減され得るものであり,特に,拡開部が小径部を備えてい ることから,患者への接触量を小さくすることができて,患者が痛みを感じるおそれが一層低減され得ることに加え,単に厚肉の大径部を設けるのではなく,大径部の内部に係止部を設けることで,拡開部の内部スペースを巧く利用することができるとともに,部材内へのエアの混入を効果的に防止することができて,寸法誤差を小さくできるなど製品の品質も向上さ れ得るという効果を有する(段落【0024】,【0025】及び【004 0】)。 2 甲6発明について⑴ 甲6の記載甲6には次の記載がある。 ア技術分野 「本発明は,プロテクタ付き医療用針に関する。」(段落【0001】)イ背景技術「従来,先端に針管の後端部を支持し, ⑴ 甲6の記載甲6には次の記載がある。 ア技術分野 「本発明は,プロテクタ付き医療用針に関する。」(段落【0001】)イ背景技術「従来,先端に針管の後端部を支持し,後端に可撓性チューブが接続されるハブと,該ハブを収納可能な筒状のプロテクタとを備えるプロテクタ付き医療用針が知られている(例えば,特許文献1参照)。」(段落【000 2】)「前記プロテクタ付き医療用針は,針管が血管等に穿刺された後には抜け落ちることがなく,使用後にはプロテクタに収納された針管が再突出して誤穿刺することがないようにすることが望まれる。そこで,前記プロテクタ付き医療用針は,前記針管が前記プロテクタから突出した状態で前記 ハブを該プロテクタに解除可能に係止する第1の係止手段と,該針管が該プロテクタに収納された状態で該ハブを該プロテクタに解除不能に係止する第2係止手段とを備えている。」(段落【0003】)「前記プロテクタ付き医療用針によれば,前記針管が前記プロテクタから突出した状態で血管等に穿刺されたときには,前記ハブが前記第1の係 止手段により前記プロテクタに係止されるので,該針管が血管から抜け落ちることを防止することができる。また,使用後は,前記第1の係止手段による係止を解除し,前記針管を前記プロテクタに収納することができる。」(段落【0004】)「さらに,前記プロテクタ付き医療用針によれば,前記針管が前記プロ テクタに収納されたときには,前記ハブが前記第2係止手段により前記プ ロテクタに係止されるので再突出することがなく,誤穿刺を防止することができる。」(段落【0005】)ウ発明が解決しようとする課題「前記従来のプロテクタ付き医療用針では,前記ハブと前記プロテ ロテクタに係止されるので再突出することがなく,誤穿刺を防止することができる。」(段落【0005】)ウ発明が解決しようとする課題「前記従来のプロテクタ付き医療用針では,前記ハブと前記プロテクタとはいずれも合成樹脂製であり,射出成形により成形される。ところが, 各別に成形された前記ハブと前記プロテクタとを組み付けようとすると,前記第1の係止手段又は前記第2係止手段が障害となり,組み付けることができないという問題がある。」(段落【0007】)「本発明は,かかる不都合を解消して,各別に成形された前記ハブと前記プロテクタとを容易に組み付けることができるプロテクタ付き医療用 針を提供することを目的とする。」(段落【0010】)エ課題を解決するための手段「かかる目的を達成するために,本発明のプロテクタ付き医療用針は,先端に針管の後端部を支持するハブと,該ハブを摺動させて該針管を収納可能な筒状のプロテクタと,該針管が該プロテクタから突出した状態で該 ハブを該プロテクタに解除可能に係止する第1係止手段と,針管が該プロテクタに収納された状態で該ハブを該プロテクタに解除不能に係止する第2係止手段とを備えるプロテクタ付き医療用針において,前記ハブの先端部は,該ハブの軸線と直交する第1の軸線上に設けられ,該ハブの外周面から離間する方向に夫々突出する一対の第1突出部と,該第1突出部よ り後端側に第1の所定間隔を存して,該ハブの軸線と直交するとともに,該ハブの軸線からみて前記第1の軸線と所定角度で交差する第2の軸線上に設けられ,該ハブの外周面から離間する方向に夫々突出する一対の第2突出部とを有し,該プロテクタの後端部には,該プロテクタの軸線と直交する第3の軸線上に設けられ,該プロテクタの内周面から該プロテクタ られ,該ハブの外周面から離間する方向に夫々突出する一対の第2突出部とを有し,該プロテクタの後端部には,該プロテクタの軸線と直交する第3の軸線上に設けられ,該プロテクタの内周面から該プロテクタ の軸線に向かって後端側に傾斜しつつ夫々延出し,該プロテクタの軸線か ら離れる方向に弾性変形自在な一対の突片と,該プロテクタの突片より先端側に前記第1の所定間隔以下の第2の所定間隔を存して該プロテクタの内周面に設けられ,前記プロテクタの軸線からみて前記第3の軸線と前記所定角度で交差する第4の軸線上において互いに対向する一対の側壁部とを有し,該第2係止手段は,前記針管が前記プロテクタに収納された ときに,該プロテクタの前記側壁部の先端側が該ハブの該第1突出部に係止されるとともに,該プロテクタの該突片の後端側が該ハブの該第2突出部に係止されることにより構成され,前記一対の側壁部の間隔は,該ハブの軸線からみた第1の軸線と直交する方向における両突出部の最大幅以上であって,両突出部の一方突端から他方突端までの夫々の距離未満に形 成されていることを特徴とする。」(段落【0011】)オ発明を実施するための形態「次に,添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。」(段落【0029】)「図1に示すように,本実施形態のプロテクタ付き医療用針1は,前端 が鋭利な針管2を支持するハブ3と,ハブ3が組み付けられる筒状のプロテクタ4と,プロテクタ4に外嵌された一対の翼状部材5とを備える。」(段落【0030】)「プロテクタ4はポリプロピレン樹脂等の射出成形により形成されて針管2を収容可能とされており,翼状部材5は塩化ビニル樹脂等の軟質樹脂 の射出成形により形成されている。」(段落【 030】)「プロテクタ4はポリプロピレン樹脂等の射出成形により形成されて針管2を収容可能とされており,翼状部材5は塩化ビニル樹脂等の軟質樹脂 の射出成形により形成されている。」(段落【0031】)「図2Aに示すように,ハブ3は,後端に可撓性チューブ6が接続されるハブ基部7と,該ハブ基部7の先端から先端方向に延びる円筒状の小円筒部71とからなる。この小円筒部71の先端に,針管2の後端部が支持される。」(段落【0032】) 「ハブ3は,例えばアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹 脂(ABS樹脂)等の合成樹脂の射出成形により形成されている。」(段落【0033】)「図2B及び図2Cに示すように,小円筒部71は,先端側に針管2が挿入されて支持される針管支持部72aを備え,また,ハブ基部7は,後端側に可撓性チューブ6が接続される接続管部72bを備えている。この 針管支持部72aと接続管部72bとは,中間に設けられた空洞部72cを介して相互に連通している。」(段落【0034】)「ハブ基部7の後端部には,図2A及び図2Cに示すように,小円筒部71の中心軸に対して対称となるように,1対の腕部73,73が設けられている。腕部73,73は,ハブ基部7との間に間隔を存して,小円筒 部71の長さ方向に沿って設けられている。腕部73の先端部には頸部73aを介して鉤部73bが設けられており,鉤部73bの先端には小円筒部71に近接する側を鋭利とする傾斜面73cが先端側から後端側に向けて形成されている。」(段落【0035】)「ハブ基部7は,前述のようにABS樹脂からなるので,腕部73,7 3は矢示方向に押圧されることにより,小円筒部71方向に弾性的に変形することができる。また,腕 る。」(段落【0035】)「ハブ基部7は,前述のようにABS樹脂からなるので,腕部73,7 3は矢示方向に押圧されることにより,小円筒部71方向に弾性的に変形することができる。また,腕部73,73は押圧が解除されると,それ自体の弾性力により原状に復帰することができる。」(段落【0036】)「図2A乃至図2Cに示すように,小円筒部71の先端部の外周面上には,第1突出部74と第2突出部75とが設けられている。第1突出部7 4は,小円筒部71の先端に設けられ,第2突出部75は,第1突出部74より後端側に,第1突出部74との間に第1の所定間隔を存して設けられている。」(段落【0037】)「第1突出部74は,先端側から見たときに,腕部73,73を結ぶ線と直交する線(本発明の第1の軸線に相当)に沿って突出している。また, 第2突出部75は,先端側から見たときに,腕部73,73を結ぶ線(本 発明の第2の軸線に相当)に沿って突出している。」(段落【0038】)「第1突出部74は,先端部にスロープ74aを備え,上下(図2A参照)対称に1対設けられている。スロープ74aは,先端から後端に向けて徐々に高さが高くなるよう形成されている。また,第2突出部75は,後端部にスロープ75aを備え,左右(図2A参照)対称に1対設けられ ている。スロープ75aは,先端から後端に向けて徐々に高さが低くなるよう形成されている。」(段落【0039】)「また,小円筒部71の外周面上には,軸線に沿って,第1突出部74からハブ基部7まで全長に亘って条部76が設けられている。」(段落【0040】) 「なお,以下では,一方の第1突出部74の突端部から,他方の第1突出部74の突端部までの距離を「高さ」といい,各 ブ基部7まで全長に亘って条部76が設けられている。」(段落【0040】) 「なお,以下では,一方の第1突出部74の突端部から,他方の第1突出部74の突端部までの距離を「高さ」といい,各第1突出部74の高さ方向及び小円筒部71の軸線の両方と直交する方向の最大幅を単に『幅』という。なお,この定義は,第2突出部75についても同様とする。」(段落【0041】) 「なお,本実施形態では,突出部74,75は,小円筒部71の先端部の外周面上に各一対ずつ設けられているが,各一個ずつであってもよい。 また,第1突出部74と第2突出部75とは,位相が90度ずれて突出しているが,本発明はこれに限られることなく,第1突出部74と第2突出部75との突出方向が平行(0度,180度)でなければ,他の角度であ ってもよい。」(段落【0042】)「図3A乃至図3Cに示すように,プロテクタ4は,筒状の大円筒部41の後端部に平面視(図3B参照)において,先端側から後端側に次第に拡幅する拡幅部42を備える。大円筒部41の内部空間は,小円筒部71(突出部74,75を含む)が摺動可能とされている。」(段落【0043】) 「拡幅部42の後端部には,腕部73,73が挿入される挿入部42a, 42aを備えている。挿入部42aは,側方に窓部42bを備えており,挿入部42aに挿入された腕部73の鉤部73bが窓部42bに係止されるようになっている。即ち,ハブ基部7の腕部73,鉤部73bと,プロテクタ4の挿入部42a,窓部42bとにより第1係止手段が構成される。」(段落【0044】) 「また,図3A乃至図3Cに示すように,プロテクタ4の後端部には,突片43,43と側壁部44,44とが設けられている。」(段落【004 第1係止手段が構成される。」(段落【0044】) 「また,図3A乃至図3Cに示すように,プロテクタ4の後端部には,突片43,43と側壁部44,44とが設けられている。」(段落【0045】)「図3A及び図3Bに示すように,突片43,43は,プロテクタ4の軸線に向かって傾斜しつつ後端側に延びる板状部材である。突片43,4 3は,大円筒部41の後端部から連続して,左右(図3A参照)対称に一対設けられている。なお,この左右方向が,本発明におけるプロテクタ4の軸線と直交する第3の軸線に相当する。」(段落【0046】)「また,突片43は,プロテクタ4の軸線から外側に凸状に湾曲されている。一対の突片43,43の突端間は,第2突出部75,75の高さ以 下の距離に形成されている。なお,本実施形態では,一対の突片43,43の突端間の距離は,小円筒部71の直径と実質的に等しい長さに形成されている。」(段落【0047】)「プロテクタ4は,前述のようにポリプロピレン樹脂からなるので,突片43は,大円筒部41の軸線から離れる方向(図3Aの左右方向)に弾 性的に変形することができる。」(段落【0048】)「側壁部44は,図3A及び図3Bに示すように,突片43より先端側に第2の所定間隔を存して設けられている。この第2の所定間隔(側壁部44の先端から突片43の後端の距離)は,本実施形態においては,前記第1の所定間隔(第1突出部の後端から第2突出部の先端との距離)と実 質的に一致しているが,これに限られず,前記第1の所定間隔以下の長さ であればよい。」(段落【0049】)「側壁部44は,図3cに示すように,大円筒部41の内周面より内側において,水平方向に延びる平坦な板状部材である。側壁部44 隔以下の長さ であればよい。」(段落【0049】)「側壁部44は,図3cに示すように,大円筒部41の内周面より内側において,水平方向に延びる平坦な板状部材である。側壁部44は,突片43の上下方向に一対設けられている。この上下方向が,本発明におけるプロテクタの軸線からみて前記第3の軸線と所定角度で交差する第4の 軸線に相当する。」(段落【0050】)「一対の側壁部44,44の距離は,突出部74,75の幅以上であって,突出部74,75の高さ以下に形成されている。なお,本実施形態では,一対の側壁部44,44の距離は,小円筒部71の直径と実質的に等しい長さに形成されている。」(段落【0051】) 「また,各側壁部44は,一対の板バネ部材44a,44aからなる。 各板バネ部材44aは,大円筒部41の内周面から,水平方向に沿って中心方向に夫々延びている。また,板バネ部材44aと大円筒部41(拡幅部42)との内周面との間にはスペースが設けられており,プロテクタ4は,前述のようにポリプロピレン樹脂からなるので,板バネ部材44aは, 大円筒部41の外方(図3Aの上下方向)に弾性的に変形することができる。また,各側壁部44を構成する一対の板バネ部材44a,44aの突端は,所定の間隔を存することでスリット44bを夫々形成している。」(段落【0052】)「なお,本実施形態においては,スリット44bは,一対の板バネ部材 44aによって形成されているが,本発明はこれに限られるものではなく,側壁部44に溝部を設けることで形成することもできる。」(段落【0053】)「次に,図4及び図5を参照して,プロテクタ付き医療用針1において,針管2を血管等から抜去した後,プロテクタ4に収納する際の作動につい けることで形成することもできる。」(段落【0053】)「次に,図4及び図5を参照して,プロテクタ付き医療用針1において,針管2を血管等から抜去した後,プロテクタ4に収納する際の作動につい て説明する。」(段落【0054】) 「針管2が血管等に穿刺されるときには,図4Aに示すように,ハブ基部7の腕部73の先端に設けられた鉤部73bがプロテクタ4の窓部42bに係止されることにより,針管2がプロテクタ4から突出した状態とされている。」(段落【0055】)「そこで,針管2を血管等から抜去した後には,腕部73を矢示する方 向に押圧し,腕部73を小円筒部71方向に弾性的に変形させることにより,鉤部73bと窓部42bとの係止を解除する。」(段落【0056】)「そして,図4Bに示すように,腕部73を小円筒部71方向に変形させたまま,ハブ3を後退させる。これにより,針管2は大円筒部41内に引き込まれていく。このとき,図7Cに示すように,小円筒部71の条部 76は,スリット44bにより案内されるので,円滑に後退することができる。」(段落【0057】)「そして,ハブ3を後退させていくと,図5Aに示すように,第2突出部75,75が突片43,43に当接する。突片43は,前述のように弾性的に変形可能なので,第2突出部75のスロープ75aに案内されて大 円筒部41の軸線から離れる方向(図5Aの上下方向)に変形する。」(段落【0058】)「その後,さらにハブ3を後退させて,図示を省略した針管2を大円筒部41内に収納すると,図5Bに示すように,突片43,43は第2突出部75,75を乗り越え,それ自体の弾性力により原状に復帰して,第1 突出部74と第2突出部75と間の間隙に嵌合される。これに 部41内に収納すると,図5Bに示すように,突片43,43は第2突出部75,75を乗り越え,それ自体の弾性力により原状に復帰して,第1 突出部74と第2突出部75と間の間隙に嵌合される。これにより,平面視(図5B参照)において,突片43,43の後端は,第2突出部75,75の先端により係止される。」(段落【0059】)「このとき,前述のとおり側壁部44の先端から突片43の後端の距離(第2の所定距離)は,第1突出部の後端から第2突出部の先端との距離 (第1の所定間隔)と実質的に一致しているので,同時に側面視(図5C 参照)において,側壁部44の先端は第1突出部74,74の後端より係止される。」(段落【0060】)「つまり,プロテクタ4の突片43及び側壁部44が,ハブ3の突出部74,75によって挟持される。なお,本実施形態においては,ハブ3の突出部74,75と,プロテクタ4の突片43及び側壁部44とにより本 発明の第2係止手段が構成される。」(段落【0061】)「この結果,突片43及び側壁部44と突出部74,75との係止は,突片43を外方に変形させない限り解除不能であるので,大円筒部41内に収納された針管2は再突出することがなく,誤穿刺を防止することができる。」(段落【0062】) カ【図1】 【図3】 ⑵ 甲6発明の認定前記⑴の甲6の記載からすると,甲6発明は,本件審決が認定したとおり(前記第2,3⑷ア(イ))であるものと認められる。 3 相違点2に関する判断の誤り(取消事由)の有無について⑴ 特許法29条の2所定の「発明」と「同一であるとき」の意義特許法29条の2所定の「発明」と「同一であるとき」の判断に当たっ 。 3 相違点2に関する判断の誤り(取消事由)の有無について⑴ 特許法29条の2所定の「発明」と「同一であるとき」の意義特許法29条の2所定の「発明」と「同一であるとき」の判断に当たっては,対比すべき複数の発明間において,その構成やこれにより奏せられる効果が全て合致するということは通常考えられないことであるから,後願に係 る発明(後願発明)が,先願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明(先願発明)とは異なる新しい技術に係り,新たな効果を奏するものであるか否かという見地から判断されるべきであって,両発明に差異があっても,その差異が,新しい技術に係るものではなく,単なる課題解決のための具体化における設計上の微差であり,新たな効果を奏 するものでなければ,両発明は技術的思想の創作として実質的に同一である といえるから,上記「同一であるとき」に当たるというべきである。そして,上記の判断に当たっては,当業者の有する技術常識を参酌することができるというべきである。 ⑵ これを本件についてみるに,相違点2における本件訂正発明と甲6発明との差異は,小径部の外周面に関し,本件訂正発明2は凹部を設けることによ り,前記凹部における前記小径部の肉厚寸法は,前記凹部を設ける前に比べて小さくされているのに対し,甲6発明はそのように構成されているか不明な点であるところ,この点に関して原告は,本件訂正発明において小径部の外周面に設けられた凹部は,周知技術又は技術常識として知られていた肉盗みにかかる技術を小径部に適用した構成であり,小径部の肉厚寸法を小さく してエアの混入などを防止するという作用効果を有するものであって,本件明細書に接した当業者もそのように理解するのに対し,甲6には かる技術を小径部に適用した構成であり,小径部の肉厚寸法を小さく してエアの混入などを防止するという作用効果を有するものであって,本件明細書に接した当業者もそのように理解するのに対し,甲6には小径部が厚肉であることやエアの混入を防止することなどに関する記載はなく,凹部の記載もないから,本件訂正発明と甲6発明は実質的に相違すると主張する。 しかしながら,以下のとおり,相違点2は,実質的な相違点とは認められ ず,これと同旨の本件審決の判断に誤りはないものというべきである。 確かに,樹脂成形において,肉厚寸法を小さくしてエアの混入を防止する技術(肉盗み)は,本件優先日当時に周知技術又は技術常識と認められるところ,本件訂正発明の凹部が肉盗みの凹部を排除しているとはいえないとしても,本件訂正発明においては小径部の肉厚寸法について具体的な記載はな いし,当該小径部の肉厚は,外周面の形状だけでなく,拡開部の内部空間(段落【0056】は実施例の内部空間について触れている。)の形状によっても左右されるものであるところ,本件訂正発明において拡開部の内部空間の形状は特定されていないから,小径部の肉厚寸法がどの程度かは不明である。 また,凹部を設ける前の小径部が既に肉盗みの技術を用いた結果の形状であ る可能性もあるから,本件訂正発明の小径部が肉盗みの技術を必要とするも のであるかどうかは当業者にとって不明であるというべきである。さらに,肉盗みの技術が,部材へのエアの混入を防止する必要がない場合にまで用いられるものでないことは明らかであるところ,仮に本件訂正発明の針先プロテクタが樹脂製であるとしても,本件訂正発明の小径部が肉盗みの技術を必要とするものであるかどうかは不明である上に,肉盗みの技術をどこに適用 する は明らかであるところ,仮に本件訂正発明の針先プロテクタが樹脂製であるとしても,本件訂正発明の小径部が肉盗みの技術を必要とするものであるかどうかは不明である上に,肉盗みの技術をどこに適用 するのかについては種々の選択があり得るから,当該小径部に設けられた凹部が肉盗みの技術であることが当業者にとって明らかであるとはいえない。 そして,仮に当業者が「凹部を設ける前」の小径部の形状を想起することができるとしても,本件訂正発明の小径部の凹部における肉厚寸法は,そのような「凹部を設ける前」のものとの関係で相対的な肉厚寸法が定められ,凹 部を設けた場合は凹部を設けない場合よりも肉厚寸法が小さくなるということが示されているのみであり,上記小径部の「凹部」は,その形状,大きさ,深さ等に特段の指定のない「凹形状」であって,そのような「凹部」は,小径部の肉厚寸法を小さくしてエアの混入などを防止するという作用,効果を奏するための「肉盗み」の凹部であるとは限らず,デザイン上の凹部や落と し込みのための凹部を排除するものではないというべきである。 したがって,本件明細書に接した当業者は,本件訂正発明の凹部が肉盗みの技術を適用したものであると理解するとは認められない。 以上のように,本件訂正発明において小径部の外周面に設けられた凹部は,原告が主張するような肉盗みのための凹部と断定できるものではなく,その 形状,大きさ,深さ等は何ら特定されず,何らかの作用効果を奏するものとは認められず,他方,甲6においては,凹部の記載も小径部が厚肉であることやエアの混入を防止することなどに関する記載はないものの,逆に小径部の外周面に凹部を設けることを排除する記載や示唆もないこと,上記のとおり,本件優先日当時,肉盗みにかかる技術は周知技術又は技術常識として知 混入を防止することなどに関する記載はないものの,逆に小径部の外周面に凹部を設けることを排除する記載や示唆もないこと,上記のとおり,本件優先日当時,肉盗みにかかる技術は周知技術又は技術常識として知 られていたことからすると,小径部の外周面の凹部の有無は,新しい技術に 係るものではなく,単なる課題解決のための具体化における設計上の微差若しくは技術的に意味がない単なる外形上の微差であるというほかないから,本件訂正発明と甲6発明は実質的に同一であるというべきである。 4 原告の主張に対する判断⑴ 本件訂正発明の留置針組立体は樹脂製品であることに関して(原告の主張 ⑵ア関係)本件訂正発明において,針先プロテクタが樹脂製であることは特定されていない。確かに,原告が主張するように,本件明細書の【課題を解決するための手段】の項に,「部材内へのエアの混入を効果的に防止することができて」(段落【0025】)という樹脂製品を前提とする記載があり,実施例の説明 に,部材が樹脂製である旨の記載や,樹脂製であることを前提とする記載は存在する(段落【0047】,【0053】,【0063】,【0078】,【0082】)。しかし,樹脂以外の部材で本件訂正発明を構成することができないと記載されているわけではないし,本件訂正発明の形状構造が樹脂以外の部材により製造不可能とは認められないから,本件訂正発明の針先プロテクタ が樹脂製に限定されると解すべき理由はない。原告は,留置針組立体の針以外の部分が樹脂製であることは技術常識である旨主張するが,それを示す証拠はなく,本件訂正発明の針先プロテクタが樹脂製でなければならないことを裏付ける証拠もない。また,原告は,特許庁も,審査段階において,原告が本件明細書の段落【0078 ある旨主張するが,それを示す証拠はなく,本件訂正発明の針先プロテクタが樹脂製でなければならないことを裏付ける証拠もない。また,原告は,特許庁も,審査段階において,原告が本件明細書の段落【0078】に記載された効果を「本願発明に特有の有 利な効果」であると主張したのに対し,「樹脂製とは限らない」などの反論を一切することなく本件特許の登録を認めていると主張するが,特許発明の内容は,特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきものであり,特許出願の審査過程において審査官がその特許発明をどのように理解していたかによって左右されるものではないから,原告の上記主張により,本件訂正発明 の針先プロテクタが樹脂製に限られるということはできない。 ⑵ 本件訂正発明において「凹部を設ける前」の小径部の形状及び肉厚について(原告の主張⑶関係)ア 「凹部を設ける前」の小径部の形状に関して(原告の主張⑶ア関係)(ア) 本件訂正発明は,拡開部及び小径部の外周面の形状について次のような構成を備えるものである(次の構成は,本件訂正発明2及び3がい ずれも備えるものである。)。 「前記針先プロテクタは,針軸方向に延びる円筒状部を有し,前記円筒状部の基端側には,前記係止片と,前記円筒状部より大径で前記係止片よりも外周側にあり,小径部と大径部とを備えた拡開部とが設 けられ,前記大径部の周壁に,前記針ハブが係合されて前記留置針の針先が突出状態に保持される針ハブ係合部が設けられ,・・・前記小径部の外周面に凹部を設けることにより,前記凹部における前記小径部の肉厚寸法は,前記凹部を設ける前に比べて小さくされている,」。 本件訂正発明は物の発明であるところ,本件明細書には,小径部の外周面に凹部を設けない針先プ により,前記凹部における前記小径部の肉厚寸法は,前記凹部を設ける前に比べて小さくされている,」。 本件訂正発明は物の発明であるところ,本件明細書には,小径部の外周面に凹部を設けない針先プロテクタを一旦形成し,その後に凹部を形成するといった工程については記載も示唆もされていないから,上記の「前記小径部の外周面に凹部を設けることにより,前記凹部における前記小径部の肉厚寸法は,前記凹部を設ける前に比べて小さくされている,」 という記載は,小径部の外周面に凹部を設ける製造工程により発明を特定するものではなく,既に凹部を設けた小径部の形状により発明を特定するものであると解すべきである。そして,「凹部」としては,何に対して凹部なのかを相対的に比較する対象がなければ凹部であること自体を認識することはできないから,本件訂正発明における凹部についての上 記記載は,針先プロテクタの小径部の外周面に既に凹部が設けられてい ることを特定することに伴って,反射的に,小径部の外周面に凹部を設ける前の形状を比較対象として示しているものと解することができる。 (イ) 本件明細書には,課題を解決する手段の項に,拡開部の形状について,「第6の態様は,前記第4又は第5の態様に係る留置針用針先プロテクタにおいて,前記拡開部が,互いに直交する小径部と大径部とを備え た略楕円筒形状とされており,・・・」(段落【0023】),「本態様に従う構造とされた留置針用針先プロテクタによれば,拡開部が角部を備えていない略楕円筒形状とされていることから,拡開部が患者に接触して患者が痛みを感じるおそれが低減され得る。特に,拡開部が小径部を備えていることから,患者への接触量を小さくすることができて,患者が 痛みを感じるおそれが一層低減され得る 拡開部が患者に接触して患者が痛みを感じるおそれが低減され得る。特に,拡開部が小径部を備えていることから,患者への接触量を小さくすることができて,患者が 痛みを感じるおそれが一層低減され得る。」(段落【0024】)との記載があり,実施例の項に,「この針先プロテクタ10(周壁58)は,針軸方向で形状が異ならされており,先端側が,断面が略真円環形状とされた円筒状部62とされているとともに,基端側が,円筒状部62よりも大径で外周に広がる拡開部としての拡径部64とされている。」(段落【0 054】)の記載がある。また,本件図5においては,符号64が示す拡開部が立体形状を有するものであることが示され,本件図6は拡開部を基端側から見た場合には略楕円形状であることを示しているといえる。 そして,本件明細書には,小径部と大径部とを備えた形状として,略楕円筒形状以外の形状を含むものであることを説明または示唆する記載 はない。 そうすると,拡開部の外周面の形状は,「拡開部が小径部と大径部とを備えるとともに角部を備えていない略楕円筒形状」とされていること,「先端側から基端側に向かって外径寸法が次第に大きく」されていることを前提とした形状であることが理解できる。 (ウ) 前記(ア)のとおり,本件訂正発明の拡開部の外周面の凹部についての 記載は,拡開部の凹部の形状を特定するものであって,最初に凹部が設けられていない拡開部を作成してから凹部を設けるといった拡開部の製造工程を特定するものではなく,本件訂正発明の拡開部は,既に凹部が設けられた小径部を備えるものとしてその形状が特定されているものである。そして,当該凹部が設けられる前の拡開部の外周面の形状を考え た場合に,拡開部の外周面が前記(イ)のとおり角部を備 に凹部が設けられた小径部を備えるものとしてその形状が特定されているものである。そして,当該凹部が設けられる前の拡開部の外周面の形状を考え た場合に,拡開部の外周面が前記(イ)のとおり角部を備えていない略楕円筒形状を前提としていることからすれば,当業者であれば,既に設けられている凹部を埋めて,その埋めた分だけ肉厚寸法が大きくなった立体形状として,角部を備えていない略楕円筒形状を想起することができ,これと大きく異なる形状が想起されるとすべき事情は認められない。 (エ) 本件訂正発明の拡開部は,「大径」と「小径」を備えるものである。 被告は,甲40(「実用日本語表現辞典」)に,「大径」の意味として,「さしわたしが大きいこと。特に車輪などにおいて直径が大きいこと。対義語は『小径』。」と記載されており,「さしわたし」には,「直径」という意味もあるが,それとは別に「一方の端から他方の端までの長さ。」とい う意味もある(乙3「日本国語大辞典第二版第六巻」,乙4「広辞苑第六版」)ことから,「大径」,「小径」の語は,楕円に限って使用されるものではなく,一方の端から他方の端までの長さに大小のある図形一般について使用される用語といえるとし,「大径部」,「小径部」との文言のみから拡開部が略楕円筒形状であると一義的に解釈できるものではないと 主張する。 しかし,本件訂正発明においては,大径部と小径部を備えるということにより,針先プロテクタの拡開部の形状が示されている。そして,「さしわたし」という語のみを取り上げた場合に,「直径」の他に,「一方の端から他方の端までの長さ。」という意味があるとしても,円及び球以外 の図形・形状においては,すべて,一方の端から他方の端までの長さに 大小があるともいえるから, 「一方の端から他方の端までの長さ。」という意味があるとしても,円及び球以外 の図形・形状においては,すべて,一方の端から他方の端までの長さに 大小があるともいえるから,「大径」と「小径」があるということにより,一方の端から他方の端までの長さに大小があるということを表したのみであるならば,それは,円又は球でないというのみであって,それによっては形状を特定する意味はほとんどないことになり,そのような解釈は自然であるとはいい難い。「さしわたし」という語に「直径」という意 味があり,「大径」という語に,「直径が大きいこと」という意味もある(甲40)ことからすると,本件訂正発明における「大径」,「小径」とは,直径が大きいこと,直径が小さいことを意味すると解するのが自然である。「直径」は「円・楕円・双曲線で,中心を通り両端がその曲線状にある線分」(甲41「デジタル大辞泉」)であり,物の形状を表現する 上で,「大径」と「小径」は,直径を有する形状(楕円等)の存在を前提としていると解される。また,本件明細書の段落【0054】には,「この針先プロテクタ10(周壁58)は,針軸方向で形状が異ならされており,先端側が,断面が略真円環形状とされた円筒状部62とされているとともに,基端側が,円筒状部62よりも大径で外周に広がる拡開部 としての拡径部64とされている。」と記載されていることから,拡開部の断面形状は,円筒状部の断面形状である略真円環形状とは異なるものであると理解される。そうすると,「大径」及び「小径」を有し,真円形ではない拡開部の形状として,本件明細書の段落【0100】の「すなわち,針先プロテクタの先端側および基端側の拡開部における断面形状 は,それぞれ,円形(楕円,長円,半円などを含む)や多角 円形ではない拡開部の形状として,本件明細書の段落【0100】の「すなわち,針先プロテクタの先端側および基端側の拡開部における断面形状 は,それぞれ,円形(楕円,長円,半円などを含む)や多角形状など各種形状が採用され得る。」という記載に例示された楕円及び長円を略楕円筒形状と表現することは自然なことであると認められる。上記のとおり,「大径」と「小径」は,直径を有する形状(楕円等)の存在を前提としていると解されることからすると,「大径」と「小径」を有する拡開部の 形状が,角部を有する多角形の形状であると解するのは不自然であるか ら,段落【0100】の記載があることを考慮しても,当業者は,本件訂正発明の小径部の「凹部を設ける前」の形状が,略楕円筒形状ではない多角形等の多様な形状をとり得るものと理解するとはいえない。 そうすると,拡開部の小径部の「凹部を設ける前」の形状に関し当業者は,角部を備えていない略楕円筒形状を想起することができ(前記 (ウ)),そうではない多角形等の多様な形状をとり得るものと理解するとはいえない。したがって,本件審決が,「相違点2に係る本件訂正発明の構成について,『凹部を設ける前』のものがどのような形状構造のものであるのかが明かでない」として,その形状を何ら理解できないとも解し得る表現を用いている点は必ずしも適切であるとはいえない。 もっとも,上記のとおり,拡開部の小径部の「凹部を設ける前」の形状として,角部を備えていない略楕円筒形状を想起することができるとしても,前記3のとおり,小径部の凹部を肉盗みと解することはできず,本件審決の結論に誤りがあるということはできないから,本件審決の上記説示部分が適切でないということは,本件審決の結論が誤りであるか 否かという結論 ,小径部の凹部を肉盗みと解することはできず,本件審決の結論に誤りがあるということはできないから,本件審決の上記説示部分が適切でないということは,本件審決の結論が誤りであるか 否かという結論の判断に影響を与えるものではない。 イ 「凹部を設ける前」の小径部の肉厚に関して(原告の主張⑶イ関係)(ア) 本件明細書の段落【0056】及び【0086】,本件図5及び6について(原告の主張⑶イ(ア)関係)原告は,本件明細書の段落【0056】及び【0086】,本件図5及 び6に基づいて,小径部が厚肉であると主張する。 しかし,本件図6に示されているのは,拡開部の基端部側の,大径部に針ハブ係合部が設けられた部分の肉厚であり,段落【0056】の「円筒状部62から大径部68,68にかけての肉厚寸法は針軸方向で略一定とされているとともに,小径部66,66の肉厚寸法より小さくされ ている」という記載からは,拡径部64の大径部の肉厚が,円筒状部6 2から大径部68,68にかけて,本件図6に示された大径部68,68の肉厚とおおよそ同じであり,それは,本件図6に示された小径部66,66の肉厚寸法よりも小さいことは読み取ることができるが,拡径部64の小径部の肉厚が,円筒状部62から小径部66,66にかけてどのようになっているのかは明らかではなく,それが,本件図6に示さ れた小径部66,66の肉厚と同じであるかどうかは明らかではない。 また,原告の上記主張は,実施例に基づくものであるところ,実施例の小径部の肉厚寸法が大きいとしても,本件訂正発明においては,小径部の肉厚寸法が具体的に特定されていないから,本件訂正発明の小径部の肉厚寸法が必ず大きいとはいえない。 (イ) 小径部が厚肉となりやすいことについて(原告の主 ,本件訂正発明においては,小径部の肉厚寸法が具体的に特定されていないから,本件訂正発明の小径部の肉厚寸法が必ず大きいとはいえない。 (イ) 小径部が厚肉となりやすいことについて(原告の主張⑶イ(イ)関係)また,原告は,拡開部の小径部が厚肉になりやすいと主張するが,その主張を裏付ける証拠はなく,さらに,甲5の図4によって,その図に示された小径部の肉厚が厚いことは理解できるとしても,それによって,本件発明の拡開部の小径部が厚肉になりやすいと認めることはできない。 (ウ) 実施例の記載の参酌について(原告の主張⑶イ(ウ)関係)本件訂正発明の意味内容を理解するために本件明細書の段落【0023】,【0024】及び【0056】の記載を参照することができるとしても,それらの段落の記載から,拡開部の小径部の肉厚が厚いことが分かるとはいえない。 (エ) 拡開部の断面形状と内部空間を相似形とすることについて(原告の主張⑶イ(エ)関係)原告は,本件明細書の段落【0055】,【0056】及び【0078】の記載から,拡開部は相当程度厚肉になることが理解でき,本件訂正発明においては,大径部の内側に係止片を設けることで大径部の厚肉を回 避し,小径部の外周面に凹部を設けることで小径部の厚肉を回避してい ることを当業者は理解すると主張する。しかし,段落【0078】の記載から,本件発明において,大径部の内側に係止片を設けることで大径部の厚肉を回避することが理解できたとしても,本件発明を実施することによって必然的に拡開部が小径部を含めて相当程度厚肉になることが理解できるとはいえないし,小径部の外周面に凹部を設けることで小径 部の厚肉を回避していることを当業者が理解するとは認められない。小径部の外周面に凹 開部が小径部を含めて相当程度厚肉になることが理解できるとはいえないし,小径部の外周面に凹部を設けることで小径 部の厚肉を回避していることを当業者が理解するとは認められない。小径部の外周面に凹部を設けることにより,結果として小径部の肉厚が減少されることは理解できるとしても,小径部に凹部を設ける目的が小径部の厚肉を回避することにあることまでを認めることはできない。 原告は,拡開部の内部空間を本件図6における拡開部の断面形状と相 似形の略楕円形状にすれば,内部に円筒状の針ハブを挿入したときに空間ができてしまって針ハブががたついてしまうから,本件訂正発明においてそのような構成は採用できないと主張する。しかし,針ハブ本体26の外周面と周壁58の内周面65や,針ハブと針先プロテクタとの各種係合部分,係止部分等とを適切に設計することで,小径部を厚肉にし なくても,がたつき防止は十分可能である。本件明細書書の段落【0059】には,「なお,かかる係止片74,74は,段差状面76から基端側に向かって針軸方向と略平行に延びているとともに,それぞれ周方向に湾曲しており,その突出先端(針軸方向基端)には内周側に屈曲する係止爪78,78が形成されている。」と記載され,段落【0060】に は,「これらの係止爪78,78の内周面はそれぞれ周方向に湾曲しており,当該係止爪78,78の内周面における曲率半径は,針ハブ本体26における小径筒部32の外径半径と略等しくされている。」と記載されていることからすると,係止爪78,78の内周面と針ハブ本体26の小径筒部32とは,いずれの方向にもがたつきがないようにぴったりと はまり合う関係であるということができ,小径部を厚肉とすることとは 関係なく,がたつきの防止を図ることができ 小径筒部32とは,いずれの方向にもがたつきがないようにぴったりと はまり合う関係であるということができ,小径部を厚肉とすることとは 関係なく,がたつきの防止を図ることができるものと認められる。したがって,原告の上記主張は採用することができない。 また,原告は,本件明細書の段落【0100】の記載から,拡開部の断面形状を内部空間と相似形の略長円形状とすることに想到するとはいえないと主張するが,段落【0100】の記載は,拡開部の断面形状を 特定の形状に制限するものではないし,拡開部の内部形状を何ら制限するものではないから,原告の上記主張は,採用することができない。 (オ) 小径部の肉厚の技術的意味について(原告の主張⑶イ(オ)関係)前記(ア)ないし(エ)によれば,原告主張のように小径部が厚肉であるということはできず,小径部の凹部は肉盗みのためのものとはいえない。 ⑶ 本件明細書に接した当業者は,本件訂正発明の凹部が肉盗みの技術を適用したものであると理解するか否かについて(原告の主張⑷関係)ア本件訂正発明の凹部に関する当業者の理解前記3のとおり,本件明細書に接した当業者は,本件訂正発明の凹部が肉盗みの技術を適用したものであると理解するとは認められない。 イ原告の主張の検討(ア) 周知技術又は技術常識の参酌に関して(原告の主張⑷ア関係)肉盗みが本件優先日当時既に周知技術又は技術常識であったとしても,前記3のとおり,本件訂正発明の凹部は,肉盗みのためのものに限定されるものではない。 (イ) 本件図5に関して(原告の主張⑷イ関係)後記(オ)のとおり,肉盗みの技術内容に照らし,当業者は,本件図5の凹部を肉盗みの技術を適用したものと理解するとは認められない。 (ウ) 部材 (イ) 本件図5に関して(原告の主張⑷イ関係)後記(オ)のとおり,肉盗みの技術内容に照らし,当業者は,本件図5の凹部を肉盗みの技術を適用したものと理解するとは認められない。 (ウ) 部材内へのエアの混入を防止できる旨の本件明細書の記載(段落【0025】及び【0078】)に関して(原告の主張⑷ウ関係) 本件明細書の段落【0025】及び【0078】には,大径部が厚肉 になることを避けることにより,部材内へのエアの混入を防止できることが記載されているところ,当業者は,それらの記載から,肉厚寸法が小さくなれば,肉厚寸法が大きい場合に比べて,結果として,部材内へのエアの混入を防止できるという効果が奏されることを理解するということはできる。しかし,肉厚が小さい場合,その全てが肉盗みを目的と しているということはできず,上記の本件明細書の記載が,本件訂正発明の小径部の凹部が肉盗みのための凹部であるか,デザイン上の凹部であるか又は落とし込みの凹部であるかを区別することに結びつくとする根拠はない。そして,本件明細書には,小径部の凹部が肉盗みの凹部であること,その凹部を設けることによって肉盗みの効果を奏することは 記載されていないから,本件訂正発明の凹部がデザイン上の凹部や落とし込みのための凹部であることは排除されない。したがって,本件明細書の段落【0025】及び【0078】の記載があるとしても,本件訂正発明の小径部の凹部が肉盗みのための凹部であるとは認められない。 (エ) 小径部の寸法に関して(原告の主張⑷エ関係) 原告は,肉盗みについて詳細な設計事項まで特定する必要はなく,実質的に肉厚寸法が小さくなっているといえないようなわずかな凹みは,肉盗みとしての作用効果を奏する構成とはいえないから 関係) 原告は,肉盗みについて詳細な設計事項まで特定する必要はなく,実質的に肉厚寸法が小さくなっているといえないようなわずかな凹みは,肉盗みとしての作用効果を奏する構成とはいえないから,本件訂正発明の「前記小径部の外周面に凹部を設けることにより,前記凹部における前記小径部の肉厚寸法は,前記凹部を設ける前に比べて小さくされてい る,」という構成には該当しない旨主張する。 しかし,そのようにいえるのは,本件訂正発明について,小径部の凹部が肉盗みのためのものであることが明らかであり,小径部の肉厚について具体的な肉厚寸法を示していない場合にいえることであって,本件訂正発明について,小径部の凹部が肉盗みのための凹部であることは明 らかでないから,原告の上記主張は,その前提を欠くものであり,本件 訂正発明に当てはまるとはいえない。 (オ) 厚みを均一にすることに関して(原告の主張⑷オ関係)甲39には,肉盗みについて,「良い成形品を得るためには,肉厚はできるだけ均一にすることが重要なポイントである.このために不必要な厚肉部分の肉厚を減じる設計変更のことを肉ぬすみという(図1).」と の記載があるとともに,図1においては,凹部を形成する際に直角の凸部を形成していない。また,甲9の3(「【肉厚】量産のための製品設計その2」落合孝明,平成30年(2018年))は,肉盗みの技術を解説したものであり,「また,製品の肉厚はできるかぎり均一がよい。図1の様に肉厚が変化しているような断面も裏側の肉厚を調整し均一にするの が望ましい。あまりにも急激に肉厚を変化させてしまうとひけやボイド,そりといった不具合の原因になるので注意をしなければならない。」,「製品の機能や用途によってなかなか肉厚を均一にできな の が望ましい。あまりにも急激に肉厚を変化させてしまうとひけやボイド,そりといった不具合の原因になるので注意をしなければならない。」,「製品の機能や用途によってなかなか肉厚を均一にできないのも事実である。 その様な場合には,急激に肉厚を変化させてしまうのではなく,図2のように緩やかに肉厚を変化させ樹脂の流動性をよくすることで成形不良 を回避するとよい。」(2頁)との記載があり,「量産に向けた製品設計のポイント」として「1.肉厚はできる限り均一にする。2.肉厚に変化をもたせる場合にはできる限り緩やかに変化させる」(4頁)との記載がある。そうすると,肉盗みは,良い成形品を得るために肉厚をできるだけ均一にすることを目的とする技術であり,肉厚を均一にできない場合 には,急激に肉厚を変化させてしまうのではなく,できるだけ緩やかに肉厚を変化させて樹脂の流動性をよくすることで成形不良を回避する技術であると認められる。本件特許の本件図5の凹部は,小径部の肉厚を均一にせず,凹部の縁において肉厚が急激に変化する段差を形成しているし,肉厚を均一にできない場合にできるだけ緩やかに肉厚を変化させ るものでもないから,本件図5に接した当業者が,そこに示された凹部 を肉盗みの技術を適用したものであると理解するとはいえない。 さらに,甲39に「不必要な厚肉部分の肉厚を減じる設計変更のことを肉ぬすみという」と記載されているように,肉盗みの目的で凹部を設けるのは,不必要な厚肉部分があることが前提であるところ,前記⑵イで述べたとおり,小径部の肉厚寸法がどの程度かは不明であるから,小 径部に肉盗みを必要とする程に不必要に厚い部分があるかどうかは不明であり,そうすると,小径部に対して凹部を設けることが,直ちに肉盗みのため り,小径部の肉厚寸法がどの程度かは不明であるから,小 径部に肉盗みを必要とする程に不必要に厚い部分があるかどうかは不明であり,そうすると,小径部に対して凹部を設けることが,直ちに肉盗みのためであると解することはできない。また,仮に小径部へのエアの混入を防止するのであれば,小径部全体を均一に薄く形成すれば足りるのであって,あえて小径部に不必要な厚肉部分を設けた上で当該不必要 な厚肉部分の肉厚を減じるための凹部を設ける合理的理由は,本件明細書等から見出すことはできない。したがって,本件図5及び本件明細書の記載を踏まえても,本件図5に示された小径部の凹部について,当業者がこれを肉盗みの凹部であると理解するとは認められない。 (カ) 凹部の機能に関して(原告の主張⑷カ関係) 本件明細書の記載に照らして,本件訂正発明の凹部がデザイン上の凹部や落とし込みの凹部であることは排除されておらず,これまで述べたように,当業者が,本件訂正発明の凹部を肉盗みのためのものであると理解するとは認められない。 5 結論 以上によれば,本件審決の相違点2に関する判断に誤りはなく,本件審決に原告主張の取消事由は認められない。したがって,本件訂正発明2及び3はいずれも甲6発明と「同一」であり,特許法29条の2の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから,訂正事項1及び2は,特許法126条7項の規定に適合せず,これらの訂正事項を含む本件訂正 は認められないとした本件審決の判断に誤りはなく,原告の請求は理由がない。 よって,原告の請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官 主文 よって、原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。 理由 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官 東海林保 裁判官 上田卓哉 裁判官 中平健 (別紙省略)
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